1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十九年五月八日(土曜日)
午後二時二十三分開議
出席委員
委員長 小林かなえ君
理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君
理事 田嶋 好文君 理事 林 信雄君
理事 高橋 禎一君 理事 古屋 貞雄君
理事 井伊 誠一君
牧野 寛索君 猪俣 浩三君
神近 市子君 木下 郁君
佐竹 晴記君
出席政府委員
検 事
(民事局長) 村上 朝一君
委員外の出席者
検 事
(民事局参事
官) 平賀 健太君
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本日の会議に付した事件
国際連合の軍隊に関する民事特別法の適用に関
する法律案(内閣提出第一六六号)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X05119540508/0
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001・小林錡
○小林委員長 これより会議を開きます。
国際連合の軍隊に関する民事特別法の適用に関する法律案を議題といたします。質疑を行います。質疑の通告がありますからこれを許します。林信雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X05119540508/1
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002・林信雄
○林(信)委員 ただいま委員会において質疑をなされんといたしますに際して、まず私は一、二の点についてお尋ねをいたします。もつともそれに関連いたしましてお答えによつては派生していろいろこまかい点をお伺いするかと存じます。
その一つは、第十三国会で制定されました日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う民事特別法、通称民事特別法と称せられておるのでありますが、これがすでに施行を見まして、その基本としてあるのであります。内容的にどういうようなものをこの場合に国連軍にも適用しようとする旨の法案であるか、これはさきに刑事特別法の関係においても同様の事態が起りましたように、その必要性は十分了承いたします。従つてその基本的なものともいうべき通称民事特別法の施行後のいわば実績といつたようなものは本法案の審議の上にはなはだ参考になると思うのであります。実はこの法案の内容についての多くの疑義を持たないのであります。むしろこの法案を結論づける上についてその参考になる事柄についてお尋ねすることを必要としておるのであります。かような関係より、私はただいま民事特別法の適用の実績といつたような言葉をもつていたしましたが、具体的には民事特別法が実施せられましてはたして事件的にどの程度の数字が現われて来たのか、そうしてその事件の解決はどのように、と申しますと、日時の関係において非常に日時を要する関係にあつたのか、あるいはきわめて短時日の間にそれがなされ、その結末を得まする間に非常に困難な特殊の事柄が起つたようなことがあるかないかというようなこと、同じ結末が出ましても、直接の被害者であります者が心からそれに満足する結論であつたのかどうか、結果は得ながらもあるいは不満の声が残されたというよりは、つけ加えられるようなことはなかつたかといつたような、要は傍系的な面よりその結論に至りますまでの経過あるいは結果についてこの際承つておきたいと存じます。申し上げるまでもなく二箇年の日子を経過いたしております。しこうして全然新たなる事態に対処する民事特別法である。承つて、しこうして参考になるものが多いかどうか、できるだけ事例等をあげまして詳細な御説明を願いたいと存ずるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X05119540508/2
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003・村上朝一
○村上政府委員 日米行政協定の実施に伴う民事特別法施行以来、この法律によりまして米駐留軍関係の事故による損害を日本政府が賠償いたしました件数を申し上げますと、ただいままでに公務上の事故として政府が賠償いたしました件数が千百二十八件、賠償金額にいたしまして七千八百万円ばかりになつております。これは政府の部門といたしましては調達庁が所管いたしておるわけでありますが、調達庁におきまして諸般の状況を調査し一定の基準に基きまして賠償金を支払うわけであります。これに不服があれば国を相手方として訴訟を起すことができるのでありまして、ただいままでに訴訟の起きました事件は一件でございます。
それからなおこれは民事特別法とは直接関係ないのでありますが、日米行政協定の十八条によりますと、駐留軍の構成員または被用者が公務外において行つた不法行為につきましては、民事特別法による国の賠償ということでなく、加害者個人が賠償の責めに任ずるわけであります。その場合におきましても、調達庁の方に申し出ますと、事実を調査いたしまして賠償額を認定してこれを米軍の方に通知いたしまして、米軍の方でその賠償額を相当と認めますと、米軍の方で加害者個人にかわつて慰謝料を払うということになつておりまして、こういう公務外の事故といたしまして支払いましたものが件数にいたしまして百四十六件、金額が約千二百万円となつております。これらの数字は平和条約発効後本年一月末日までの数字でございます。二月以降の処理件数及び支払い金額につきましてはまだ統計ができておりませんので御報告いたしかねるのでありますが、これに相当して増加しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X05119540508/3
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004・林信雄
○林(信)委員 数字の点はわかりますが、その数字におきましても何か特徴らしいものがあるでございましようか。たとえば年月の経過に従いまして漸減する傾向にある、あるいは漸増する傾向にあるとかいつたような事情はいかがなものでありましようか。なお、数字を離れましても、先刻から申し上げておりましたその他の事情、たとえば民事特別法の通過いたします審議の際にもすでに問題になつた点でありますが、同法の第一条の「軍隊の構成員又は被用者が、その職務を行うについて日本国内において違法に他人に損害を加えたきは、」云々の中の字句でありまする「職務を行うについて」、先刻お答えになりました公務上といつたような言葉にかわるもの、あるいはこの違法といつたようなこの言葉自体はわかるのでありますが、具体的になりますと、かなり問題の場合があろうかと思います。いなその解釈についてもかなり争いがあつたように承つております。こういう事態はすでに当時より予想せられまして、単なる法文の解釈ということだけでなくて、一つのオルガンを通しまして便宜その結論を出そうとする方法、実際には日米合同委員会に付議する、そうしてその結果を出すやに承つておつたのであります。これは一つの方法論としてわれわれも一応うなずけるのでありますが、さような点につきましても、過去二年の実績の間におきましてそういう点について明瞭ならざるものがあるが、便宜論であります日米合同委員会に付議いたしまして、そうしてその結論を出したというような事例でもあるのであるか、それまでに及ばなかつたといたしましても、なおさような便宜の方法は存置すべきであるのかといつたような点はいかがなものでありましようか、これをお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X05119540508/4
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005・村上朝一
○村上政府委員 先ほど申し上げましたアメリカ駐留軍によります不法行為の内容でありますが、ほとんど大部分が交通事故になつております。公務上の事故も公務外の事故も大部分交通事故になつております。過去二年間におきまして特に増減はなかつたように思います。大体大差ない状態にあろうかと思います。この公務上の不法行為であるか、公務外の不法行為であるかという点につきまして日本政府とアメリカ側と意見が違いました場合に、日米合同委員会で協議してきめるということになつておりますが、ただいままでに日米合同委員会へ持ち出しました事件は三件ばかりでございまして、いずれも日本側の主張の通り決定したようであります。そのほか運用においてさほど疑義その他の生じたことも聞いておりません。大体におきましてきわめて順調に処理されておるように承知いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X05119540508/5
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006・林信雄
○林(信)委員 そういたしますと、民事特別法の一条の職務を行うについての範囲について日米合同委員会に持ち込むということは、すでに実例もあるし、必要があるようであります。いわば実効をあげておるようであります。そこで、なお続いて違法の点でありますが、違法に他人に損害を加えた場合、これは私らの常識をもつてしましても、日本民法あるいは国家賠償法の規定等に準拠いたしまして、過失主義を原則として判定するようなことになろうかと思うのであります。またさようであるかのような政府の意見も述べられておつたかに承つておるのでありますが、これはそのように考えて実際の運営に当り、それで支障がなかつたものでありますか。あるいはその解釈について、何分にも外国の諸君に関係する問題でありますので、われにあらずして彼において異論があつたというようなことでもございましようか。一般的にはただいま、その他特段のトラブルといいますか紛糾を起したようなことはないというお話もございましたが、何か特に違法云々に関する解釈等について、すでに実例に現われたようなものがあつたのでありましようか、そうでなかつたのでありましようか。あつたといたしますれば、その実例をお示し願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X05119540508/6
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007・村上朝一
○村上政府委員 民事特別法の第一条でいつております「違法に他人に損害を加えた」場合という、この違法の点につきましては、国家賠償法並びに民法でいつております違法性の観念とまつたく同一でございまして、この民事特別法による賠償の請求は、被害者が日本政府に対していたすわけでございます。日本政府と申しますか調達庁において一応の判断をいたしまして、これに不服があれば日本の裁判所に訴えを起すことになるわけであります。先ほど申し上げました、訴訟になりました事件は一件だけでありまして、これも賠償の額に関する不服であります。その他調達庁と被害者との間に違法性の問題について争いが起きたということは、承知いたしておりません。なお日本政府とアメリカ政府との関係におきまして、日本側が支払いました金額の四分の三を、アメリカ政府が日本政府に支払うことになるのでありますが、これについては従来日本側の支払つたものに対してアメリカ側で異議を述べるというような紛争が起きたことはないようであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X05119540508/7
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008・林信雄
○林(信)委員 先刻数字を示されました件数と、しこうして賠償いたしました金額、これに牽連するのでありますが、被害のことでありますから、人的被害の場合もありましようし、あるいは物的被害の場合もあろうと思います。これは件数の関係においてもある程度の区別ができる。いわんや被害の金額については区別し得ると思うのでありますが、これはどんなことになつておるのでありましようか。
なお全般的な統計数字以外に、漏れ承つておるところによりますと、人的損害にいたしましても基準が出され、しかもそれは人一人の死亡といえども最高五十万円という限度、あるいは家屋の場合におきましても四万円といつたような限度になつておる。これでは実際の損害の賠償には足らざる場合が十分考えられる。それらの関係は、やはりさような基準が厳守せられまして処理されておるのでありましようか。従つて先刻からの数字は、さような基準のもとに出た結論のものであるのでありますか。かような関係はいかがになつておりましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X05119540508/8
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009・平賀健太
○平賀説明員 従来におきまする米国関係の事故の内容を申し上げますと、先ほど民事局長から御答弁申し上げましたように、交通事故が大部分なのであります。その他に飛行機の墜落によるものであるとか、海上における船舶の衝突とか、そういうのがおもな部分を占めておるわけであります。
それからなお調達庁の方におきまして、裁判によりまして事件を解決いたします際の補償の基準が、昭和二十七年五月十六日の閣議決定できまつておりまして、大体妥当な補償の基準がきめられておるのであります。たとえて申しますと、今お話の家屋に対する損害その他財産上の損害につきましては、四分の一とかなんとかいうことではなくて、全額補償するという建前になつております。それから死亡でありますとか、負傷、こういうものに対しましては、労働基準法、あるいは健康保険法なんかに災害補償の規定がございますので、その基準をこちらでも取入れまして、補償の基準にいたしておるのでございます。例を申しますと、労働基準法の災害補償の場合ですと、死亡の場合は最低が二十万円、最高が百万円となつておるのであります。これは収入の日額の千日分ということになる関係で、収入の日額が千円を越える人は一応千円を最高限にいたしておりますし、それから全然無収入の人は一日二百円という計算になつておるのであります。でありますから、たとえば幼児が死亡しましたような場合でも、やはり一日二百円として計算いたしまして、最低二十万円となるのであります。最高が百万円。そういうことでありまして、労働基準法あるいは健康保険法の補償基準をそのままこちらに取入れまして補償をいたしておる次第であります。そういう関係でありますので、被害者の方でもこの補償の額に服しまして、それに不服をとなえて訴訟になつたというのはほとんど例がなく、私ども聞いております限りでは、わずか一件しかないというふうに承知しておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X05119540508/9
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010・林信雄
○林(信)委員 いつも事件の結末についてのその結論が正しい、あるいは関係者において納得せられるということで、その後の不服の事実の現われて来る数字がよく説明に用いられるのでありますけれども、少くともそれが不服の全部ではない。不平不満の全部ではない。いろいろな関係でセーブされることがある。従いましてそれだけでは承服しかねるのであります。先刻の御説明では、財産関係は全額。これはわかる。それと同じように、やはり損害賠償というものは全額が原則だ。原状回復は民法にしても原則でありましようし、必ず金銭賠償でありますれば全額が原則です。もつとも人命を失いました場合には、その価額はこれはやはりいろいろな点から割出されるのであります。それに一つの最高限をきめるということはどうかと思うのでありますが、もつとも労働基準法あるいは健康保険法との関係におきましては、一極の約束的な観念が入つて来ておるんじやないか。あえて人の地位、環境等より区別して考えたくはありませんが、そういう一つの契約書の観念が入つて考えられるのではないかと思うのです。しかるに今回の法案に関連したような問題はそういうものとは違うのであります。一般民法の観念において考えられますように、また規定においてさような基準制限がないようにむしろそちらの取扱いをすべきである。まあ予算関係からあるいはなるべく出さないようにといつたような、広く国家財政よりの観点からであるといえば別でありますが、どうも概念的にはまずい。いわんや交通事故関係でありますと、必ずしも労働基準法に関係を持ちあるいは健康保険法に関係を持つている人のみが、その被害者になるわけじやもちろんないのであります。そういう観念から参りましても、これはひとつ再検討を試みる余地がなおあるのではないか、こう考えられますが、いかがなものでありましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X05119540508/10
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011・平賀健太
○平賀説明員 ただいま申し上げました補償の基準は一応の基準なのでありまして、要するにこれは裁判外で解決いたします際に、基準が区々になりまして、被害者の間に不公平が生ずることがあつてはいけない。なるたけ同一の基準で全国的に不公平のないようにというので基準が設けられておるものでございまして、決してこれ以上払つてはいけないという趣旨ではないのであります。調達庁の方で処理いたします際にも、特殊事情があります場合にはそれを考慮いたしまして、たとえば非常に高額の収入をとつている人が被害者でなくなつたというような場合でありますと、やはり特別に考慮いたしまして、この基準のわくを広げることも可能でございますし、またどうしてもこの調達庁の認定する額で不服である場合には、訴えを提起する道はいつでも開かれておるのであります。訴えが提起されますと、これは裁判所の認定によりまして、この基準にかかわりなく、いかなる賠償額も認定できるという建前になつておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X05119540508/11
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012・林信雄
○林(信)委員 一応わかるのですけれども、やはり基準がありますと、大体基準に従つて解決がなされておるだろうと思いますが、実際的に死亡した場合の件数はどのくらいでございますか。訴訟して要求があれば大分基準を離れてもやるので、訴訟前には基準でやつたということになりますと、訴訟をしたからしないからといつてどうせ国家が出すのですから、公は公です。出すものならあまり基準にこだわらないという考え方の方が正しいのではないかと思うのですが、実際としてはやはりどうも基準にこだわり過ぎるような解決になつておるのではないでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X05119540508/12
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013・平賀健太
○平賀説明員 大体基準に従つて賠償されておるように承知いたしております。それからなお死亡者の数字を今ここに持ち合せませんが、これは調達庁の方に尋ねまして次会にお答えさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X05119540508/13
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014・林信雄
○林(信)委員 これはおそらく全部が調達庁において直接取扱われた事例でありましようから、今ここであまりただいまの問題を検討いたしましてもどうかと思います。さような点を法務省関係においても御検討を願うことといたしまして、その問題はその程度にいたします。
もう一つ、民事特別法の第四条、すなわち除斥期間とこうなつております。「損害賠償の請求は、損害が生じた時から一年以内にしなければならない。」という規定、これは先刻申しますように、施行後二年を経過いたしておりますので、そういうことの起り得る年月に達したのでありますが、こういうことが起つたのではないのでありましようか。簡単に申しまして加害者は米軍である、軍人軍属である、損害の要求等は軍に対してしなければならないと錯覚します。それはとうてい自分たちにおいてなし得ることでないというような誤解をしておりました。ところが一年余を経過した後においてそれは日本政府が支払う、それは大して手続も困難ではない、出先の官庁においても取扱つておる、しかもそれはかなり親切にやつておるではないかというようなことが発見せられてそれではということで損害の請求に及びましたところが四条がある、ここでかきをつくられてそれを阻止されたというようなことになることも予想せられるのでありますが、そんなことがあるものでありましようか、ないものでありましようか。なおこれは非常にうかつなことをお尋ねいたしますが、これは民法にいう時効とは異なるのでありますか。異なるといたしますれば、どういう関係からこの規定がなされたのでありますか。やがてただいま審議いたしております法案の内容になつて来る問題でありますから、この点をお伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X05119540508/14
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015・村上朝一
○村上政府委員 まず民事特別法の第四条の一年の期間、これが時効であるかどうかということでありますが、これは除斥期間と解釈いたしております。これは日米行政協定の十八条におきまして日本政府がかわつて賠償の責に任ずる場合の条件といたしまして一年内の請求ということが掲げられておるわけであります。それを受けて一年という除斥期間をつくつたわけであります。この調達庁で所管いたしております賠償の事務につきましては、都道府県を通じまして市町村が窓口事務をやつておる。調達庁並びに市町村におきまして極力周知徹底の措置を講じておりますので、被害が起きました場合にはおおむね市町村の窓口に申し出るということが行われておるように思うのであります。どこへ請求してよいかわからない間に一年の猶予期間が過ぎてしまつたというような事例は耳にいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X05119540508/15
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016・林信雄
○林(信)委員 次に法案の第二条の関係でございますが、この法案は第一条において、いわゆる民事特別法をそのまま持つて来ると言えるような規定であります。そうといたしますれば、第二条に規定いたしますような事項は、民事特別法の第三条にすでにあるのでありますが、それを特にこの法案にあらためて掲げねばならなかつたのはどういう理由なんでありますか。少しこれは違うのでありますが、不敏にしてどうもすつきりいたしませんので、それをひとつお聞きいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X05119540508/16
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017・村上朝一
○村上政府委員 加害者所属国と日本国との関係におきましては、加害者所属国以外の国は第三者であります。他人ということになります。たとえば濠州軍所属の軍人の行為によりましてアメリカ等が被害を受けている、米軍の施設、車両等が被害を受ける、また逆に米軍所属の軍人の行為によりまして国連派遣国の一つであります濠州軍の物件が被害を受けたというような場合は、日本政府としては賠償をする責任を負わないのであります。そのことを両法案に明記する趣旨でございます。日米行政協定に伴う民事特別法だけでありますとその点の疑問が少いのでありますが、この日米行政協定に伴う民事特別法と、国連の軍隊に関する日本政府の責任に関して法律ができました場合、この二つの関係の法律におきましてやや疑問が生ずる余地がありますので、このことを明記いたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X05119540508/17
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018・林信雄
○林(信)委員 大体の趣旨は同様なものでありますが、やや疑問を生ずる趣旨からであるといたしますればそれも了承しておきます。それはその程度にいたしておきます。
最後に本法案の執行に要する予算措置の関係についてお尋ねいたします。私の承知いたしておるところでは、日本政府が被害者に対して賠償はする、しかしながらそれは日本国の終局の責任であるという理由はないのであります。いわば一時的な中間措置の性格であると思うのです。従いましてその全部は加害者の属する国において負担せらるべきである。しかるにいかなる理由でありますか、その比率が示されまして 一部は依然として日本政府が終局的に負担する、もつともその比率は大部分が加害者の属する国が終局的負担をする、こういうふうに承つておりますが、そうといたしますればその内容はいかがになつておりますか、すなわち比率であります。及び日米行政協定に伴う民事特別法関係においてはどの程度の予算が準備されておりますか。またことに国連軍関係で、この法案の通過を見ることによりまして、さらに新たなる予算が考えられなければならぬと思いますが、そういう経費のための予算はすでに見通しがついておりますか、今後の問題であるのでありますか。実際の負担関係と兼ね合せまして予算の関係をお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X05119540508/18
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019・村上朝一
○村上政府委員 被害者に対しましては日本政府が賠償の責めに任ずるのですが、国連軍に関する協定によりまして日本国の負担が四分の一、加害者所属国の負担が四分の三ということになります。この支払いに要しまする予算といたしましては、大蔵省所管の平和回復善後処理費の中から支弁されることになつておるわけでありますが、国連軍の過去において行いました不法行為による賠償額としてこの法律施行後賠償すべきものが約千七百万円、本年度内に今後起ります事件を予想しましての予算といたしましては千万円、合計二千七百万円を予定しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X05119540508/19
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020・林信雄
○林(信)委員 先刻の日本政府の負担は、賠償の比率は四分の一と言われましたが、これは何か基準があるのか、国際慣例か何からか来たものでしようか。先刻から言つておりますように、一時日本政府が賠償の当時者になるということは、これは国の義務というよりはむしろ国民に対するサービスといたしまして政府として適当だと思うのであります。最後にはその金はもらつてもらわなければ、せつかくもらつた国民に対しましても、とるはとつたけれども向うからとつたんではなしに、中間の世話人からもらつたというようなことではあまり気持のいい話ではないのですが、一体これは何から出て来てそうなつているものなんでしようか。これは法務当局が折衝してつくられたものではないと思うのですが、何かその辺の基準めいたものといいますか、国際慣例といいますか、また具体的にはどういう径路をたどつてそういうことができ上つたんでありましようか。これをひとつ参考のために伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X05119540508/20
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021・村上朝一
○村上政府委員 日米行政協定におきましては、この日米両国の負担率は明記しておりませんで後に協定いたしたのであります。協定いたしました比率が二五%対七五%という比率であります。この比率でありまして、この比率が出ました先例といたしましては、NATO協定がやはり同じ率なので、NATO協定の例によりまして日米間の比率が定められ、またこの国連軍協定におきましては、日米間の比率にならいまして同じ比率を協定の中に規定したのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X05119540508/21
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022・小林錡
○小林委員長 どなたか御質疑ございますか。――他に御質疑がなければ、本日はこの程度にとどめておきます。
次会は来る十日午後一時より民事訴訟法等の一部を改正する法律案の小委員会、午後一時三十分より委員会を開会することといたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後三時十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905206X05119540508/22
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