1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十九年四月十三日(火曜日)
議事日程 第三十三号
午後一時開議
第一 地方財政平衡交付金法の一部を改正する法律案(内閣提出)
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●本日の会議に付した事件
議員關谷勝利君、同岡田五郎君の逮捕について許諾を求めるの件
日程第一 地方財政平衡交付金法の一部を改正する法律案(内閣提出)
昭和二十九年度の揮発油譲与税に関する法律案(内閣提出)
地方財政法の一部を改正する法律案(内閣提出)
午後四時十二分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X03619540413/0
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001・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) これより会議を開きます。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X03619540413/1
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002・荒舩清十郎
○荒舩清十郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、議員關谷勝利君、同岡田五郎君の逮捕について許諾を求めるの件を議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X03619540413/2
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003・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 荒船君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X03619540413/3
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004・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
議員關谷勝利君、同岡田五郎君の逮捕について許諾を求めるの件を議題といたします。委員長の報告一を求めます。議院運営委員長菅家喜六君。
〔菅家喜六君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X03619540413/4
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005・菅家喜六
○菅家喜六君 ただいま議題となりさした議員關谷勝利君、同岡田五郎君の逮捕につき許諾を求めるの件について、議院運営委員会の審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本件は、東京地方検察庁検事河弁信太郎からの逮捕状請求により、東京簡易裁判所判事向井周吉からの要求に従つて、去る七日内閣から両君の逮捕につき本院の許諾を求められたものでありますが、その被疑事実を申し上げますと、議員關谷勝利君、同岡田五郎君は、衆議院議員として衆議院に於て、法律案その他の議案の発議、予算案、法律案等の審議、修正、質問、質疑、討論、表決等をなす職務を鞅掌中、昭和二十八年三月頃より飯野海運株式会社取締役副社長三盃一太郎並びに同会社調査部調査課員小山朝光その他より海運助成策の衆議院に於ける審議殊に外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法案並びに昭和二十八年度予算案等の審議表決等に関し、油槽船に対する日本開発銀行よりの融資額の増額利子補給及び損失補償法の適用範囲の拡大その他に関し、尽力方請託を受けその実現を見るや右請託実現の謝礼並びに今後竜同様な尽力を得たい趣旨の下に供与されるものであることを知悉し乍ら
一 被疑者關谷勝利は昭和二十八年九月上旬頃、東京都千代田区丸の内三丁目六番地飯野海運株式会社において、右三盃より現金二十万円を収受し
二 被疑者岡田五郎は同年八月下旬頃、同区霞ケ関二丁目二番地、第二議員会館において、右小山を介し右三盃より現金三十万円を収受し
夫々前記職務に関し収賄したものである。というのであります。
議院運営委員会におきましては、同日この案件の付託を受け、ただちに秘密会を開いて、犬養法務大臣及び井本刑事局長より本件の説明を聴取し、さらに張る十日及び十三日、同じく秘密会において質疑を行いまして、慎重なる検討を加えて参りました。
その審議の内容につきましては、秘密会のことでもあり、また前二回の同種事件の報告において申し上げましたと同様な議論の報告は差控えまして、特に委員会の了承を得ました質疑応答の若干を御報告申し上げますと、まず第一に、最近この種事件が事前に外部に漏れているが、これは検察当局が機密を漏らしておるがごとき感を与えるものである、検察当局は事前に捜査の秘密を外部に漏洩することにより議員の逮捕を拒否しがたいような世論をつくり上げ、かかる世論を背景にして許諾の要求を提出しておるがごとき印象を強くするものである、かくのごときはきわめて重大であつて、かかる捜査の機密漏洩について法務当局はいかなる考えを持つておるかとの質問に対して、法務当局は、秘密漏洩に関しては厳にこれを戒めており、検察当局の側から漏洩しておる事実はない、外部に一部が推測によつて漏れたことがあつたために、多くの人々に迷惑を及ぼしておるのははなはだ遺憾であつて、秘密保持については今後とも十分に注意するとの答弁がありました。
次に、検察庁の態度は、取調べはまず被疑者を逮捕し身柄を拘束して、精神的に肉体的に苦痛を与えて自白を強要するという旧来の態度から一歩も出でないように思われる、また証拠隠滅ということも、本件のように関係者が逮捕されていてその隠滅の余地がないと思われるので、真に逮捕を必要とする理由は、身柄拘束による自白の強要という捜査の便宜に出でたものとしか考えられないがどうかとの質問に対しては、法務当局は、犢職罪の性質上当事者の自供がきわめて重大な証拠となり、しかも本件に関しては相手方たる三盃、小山の両名がすでに起訴され、いつでも保釈され得る状態にあるので、保釈された後に双方打合せが行われては証拠隠滅のおそれが多分にあるのであつて、かくてはその捜査はほとんど困難と言わざるを得ず、検察当局においても慎重に慎重を重ねた末やむを得、ざるに出でたる逮捕許諾要求であるとの答弁がありました。
第三点は、被疑事実中に記載された「衆議院議員として衆議院に於て、法律案その他の議案の発議、予算案、法律案等の審議、修正、質問、質疑、討論、表決等をなす職務を軟掌中、」と書いてあるが、この文字は従来の要求書にはなかつた文字である、今回の要求書に限りこのような文句を特に入れたのは何か特別の理由があるのではないかとの質疑に対しまして、井本刑事局長より、この点は特別の理由はなく、被疑事実を記述するにあたり説明のための単なる前置きの言葉であるとの答弁がありました。
委員会は、事案の重大な性質にかんがみ、その取扱いに慎重を期して参りましたが、本日の委員会において、本件については諸般の事情からやむを得ぎるものであるとし、これに許諾を与うべきものであると決した次第であります。
以上、簡単ながら御報告申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X03619540413/5
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006・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 採決いたします。議員關谷勝利君、同岡田五郎君の逮捕について許諾を与えるに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X03619540413/6
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007・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて議員關谷勝利君、同岡田五郎君の逮捕について許諾を与えるに決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X03619540413/7
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008・荒舩清十郎
○荒舩清十郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、日程第一とともに、内閣提出、昭和二十九年度の揮発油譲与税に関する法律案及び地方財政法の一部を改正する法律案の三案を一括議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X03619540413/8
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009・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 荒船君の動議に御異議ありませんか。
[「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X03619540413/9
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010・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
日程第一、地方財政平衡交付金法の一部を改正する法律案、昭和二十九年度の揮発油譲与税に関する法律案、地方財政法の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。地方行政委員長中井一夫君。
〔中井一夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X03619540413/10
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011・中井一夫
○中井一夫君 ただいま議題となりました三案につきまして、地方行政委員会における審議の経過及び結果の概要を御報告申し上げます。
まず最初に、地方財政平衡交付金法の一部を改正する法律案について申し上げます。
本案の要旨は、第一に、地方財政の現況にかんがみ、現行地方財政平衡交付金制度と旧地方配付税制度の各長所を取入れる構想のもとに、題名を地方交付税法と改め、その交付税の総額は所得税、法人税及び酒税の一定割合に相当する額とすることといたし、第二に、各地方団体に対する交付の基準は現行制度のそれによることとし、各地方団体が、その地方税収と交付税による交付金とによつて、その行うべき地方行政の合理的水準的な運営を遂行し得べきことを目途としているものであります。
本案は三月十日本委員会に付託せられ、即日塚田国務大臣より提案理由の説明あり、昨四月十二日質疑を終了いたしましたところ、委員床次徳二君外三名より、昭和三十年度以降地方財政の上に赤字の生ずることなきを期する趣旨をもつて修正案が提出せられました。すなわち、本案に対し、その第六条並びに附則第三項の改正規定中百分の二十とあるを百分の二十五に改めんとするものであります。
提案者を代表し床次委員より趣旨弁明がありました後、原案及び修正案を一括討論に付しましたところ、北山愛郎委員は日本会党左派を代表し、修正案並びに原案反対の意見を表明せられ、加藤精三委員は修正案並びに修正部分をを除く原案に賛意を表明せられ、次いで門司亮委員は日本社会党右派を代表し、修正案並びに修正部分を除く原案に反対の意を表明せられました。
討論を終結し、採決の結果、修正案並びに修正部分を除く原案は賛成多数をもつて可決せられました。よつて本案は修正案の通り修正議決すべきものと決した次第であります。
次に、地方財政法の一部を改正する法律案について申し上げます。
本法案は、さきに申し述べました改正法律案及び補助金等の臨時特例に関する法律案に関連して、地方財政の健全かつ自主的運営をはかるため、地方公共団体における年度間の調整に関する規定を設けるとともに、国庫負担金に関する規定を整備することを主たる内容とするものであります。
本案は三月十九日本委員会に付託、翌二十日塚田国務大臣より提案理由の説明あり、本日質疑終了、次いで灘尾弘吉君外十名より本案に対する修正案が提案されました。その内容は、補助金等の臨時特例に関する法律案が昭和二十九年度限りの特例と修正されたことに一致させること及び本法の施行期が本年四月一日となつているのを是正することであります。
修正案に対する質疑の後、討論を省略いたしまして採決の結果、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも賛成多数をもつて可決せられたのであります。よつて本案も修正議決すべきものと決定いたした次第であります。
最後に、昭和二十九年度の揮発油譲与税に関する法律案について申し上げます。
本案は、別途政府の提案にかかる地方税関係諸法案と同様、政府の企図する今次地方税制改正に伴う措置として立案されたものでありまして、その内容を要約いたしますれば、揮発油税の昭和二十九年度における収入額の三分の一に相当する額を都道府県及び五大都市に譲与することとし、その予算として計上せられました七十九億円のうち四十八億円は道路整備五箇年計画に定められた都道府県道の面積に按分して譲与するものとし、残額は国道と道路整備五箇年計画に定められた都道府県道以外の都道府県道との面積に按分して譲与することとし、その使途は、四十八億円については五箇年計画に定めた都道府県道の改築修繕に充てなければならないが、残額は広く道路に関する費用に充てればよろしいということであります。
本案は、三月四日本委員会に付託せられ、三月六日塚田国務大臣より提案理由の説明を聴取、三月十五日建設委員会と連合審査を行うなど、関係法案及び地方財政計画の問題との関連におきまして慎重審議を重ねましたが、本四月十三日質疑を終了、討論に入り、北山愛郎君は日本社会党左派を代表して賛成の意見を、中井徳次郎君は日本社会党右派を代表して反対の意を表明せられました。
採決の結果、賛成多数をもつて可決せられ、よつて本案もまた可決すべきものと決定せられた次第であります。
以上、三案の御報告を申し上げましたわけであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X03619540413/11
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012・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 討論の通告があります。順次これを許します。石村英雄君。
〔石村英雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X03619540413/12
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013・石村英雄
○石村英雄君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいまここに上程されております地方財政平衡交付金法の一部を改正する法律案に対して反対の意見を申し述べ、自由党、改進党の諸君の良心に期待してその同調を求めんとするものであります。(拍手)
この改正案は、ただいま委員長報告にあります通り、平衡交付金を地方交付税に改めんとするものでありますが、その趣旨とするところは、これまでの平衡交付金が、地方財政の財源不足額を積み上げまして、これを国費をもつて補填するというのを改めて、国税たる所得税、法人税及び酒税の二〇%を——本年度は所得税、法人税は一九・六六%、酒税のみ二〇%、これが昨日の委員会において三十年度からはいずれも二五%に修正されたのでありますが、これを地方の独立財源として与えんとするものであります。従来の平衡交付金が、実際上は国の財政上の都合によつて伸縮され、必ずしも法律の規定するように積上げ方式によつていないのを改めまして、一定額を確保せんとするものであります。
これまでの平衡交付金も、理論上は地方にとつてけつこうな制度であつたのでありますが、過去四箇年余り、実際はその理論通りにやつていなかつたのであります。やらなかつたからこれを改めると言いますが、やらなかつたのはだれか。言わずとも自由党政府であります。自分が法律の定める通りにやらないでいて、すなわち四年余りでたらめをやつていて、今度からは悔い改めてちやんとやるというのならわかるのでありますが、そうでなくて法律を改めるのだというのであります。悔い改めて、これまでのことはまことに相済まなかつたと謝罪するのかと思うと、恬然として法律を改めるのだというのであります。まことにかつてな申分であつて、かりに今度の改正の趣旨を是認するとしても、自由党政府のかかる態度では、今度もやはり当てにはならない、懸念は当然起つて来るのであります。
このことは、改進党が率の二〇%を二五%に引上げるという修正案を昨日の委員会で簡単にのんだことでも、自由党の方針がいかにでたらめであるかということがわかるのであります。(拍手)ほんとうに考えて二〇%が妥当として出して来たものなら、これを二五%——約三百億円の増額になるのでありますが、二五%に引上げるということは、自由党としては是認できないはずであります。それは、大体二〇%がでたらめであるから、改進党は三十年度からというので、どうせ命旦夕に迫つておる自由党政府が、いまさら三十年度のことを言つても始まらないというのかもしれませんが、あるいは保守新党のやかましい今日、改進党のごきげんを損じないように聞いておけというのかもしれません。(拍手)また改進党の修正案も、二五%でなければならないというのなら、二十九年度から主張すべきものであります。(「その通り」拍手)ところが、二十九年度からとしては、もとより自由党が承知しない。いな、予算の関係から承知できない。そこで、鬼も笑う三十年度からということにして自由党とも握手し、地方団体に、それ見ろ、わが党はこのように考えてやつているのだということを示そうとするさもしい根性から出て来ておるのであります。(拍手)
だから、二〇%といい、二五%といつても、いずれもいいかげんなものでありまして、この改正案を認めるかどうかということは、平衡交付金の考え方を放擲するとして、まず率がほんとうに妥当であるかどうかということに帰着するのであります。この率が地方財政の現状から見て適当なものであるならば、あるいはその考え方も妥当だと言い得ましようが、しさいに検討してみますと、ただいま二〇%を二五%に修正するという点で、改進、自由両党の態度が、いかにいいかげんなものであるかということを明らかにいたしました通り、まつたくでたらめであります。
政府原案の二〇%がどうして出て来たかと申しますと、今年度の地方財政計画の財源不足額を政府は千二百十六億と推定いたし、それに対し、まず酒税二〇%を充て、残りを所得税、法人税に振り当てたところ一九・六六%となつた。そこで、本年度はその一九・六六%のままとして、平年度二〇%といたしたというのであります。だから、問題の出発点は千二百十六億であつて、この数字が妥当であるかどうかという点にかかつているのであります。
ところで、この千二百十六億円はどうして出したかというと、今までの平衡交付金を出したときと同様の方法で
やつているのであります。今までの平衡交付金は、理論上はよかつたが、実際上は国の財政に左右されていけなか
つたという、そのよくない方法で千二百十六億を算出しているのであります。昨年度よりも百六十億円少い金額であります。大体国の財政に左右されてと言われますが、そもそも大蔵省は、地方財政にはきわめて冷淡であります。自分はたらふく食つて子供には食べさせないという、このごろはもう世間にも跡を断つた、まま母のまま子いじめを相かわらずやつているのであります。(拍手)昨日の委員会の討論の際に、同僚門司委員が、政府自体の報告書によつてこの点をついたのでありますが、すなわち二十七年度の地方財政の決算額は百八十五億の財源不足となつている、これに対して国の財政は剰余金二千四十九億円に達している、これによつて大蔵省がいかに地方財政について冷酷無残なものかはよくわかると申し述べますと、満場割れるような拍手が起つたのであります。(拍手)われわれだけの拍手にしてはと思つて見ますと、自由党の委員諸君が拍手しておられるのであります。(拍手)門司君に対して、いかにもよく言つてくれた、多年の欝憤ここに晴るという感謝のまなざしを門司君に向け、欣喜雀躍して拍手しておられるのであります。
これをもつてしても千二百十六億の正体は明らかになつたことと存じますが、委員会で検討された詳細な数字は省略いたしまして、皆さんが御承知の昭和二十九年度予算の説明という冊子によつて申しますと、政府は、つまり大蔵省は、自然増を地方財政におきまして四百十一億と見ております。このうちの詳細は、先日の地方税改正案に対する本議場での北山君の討論に詳しく論じられておりますが、たとえば固定資産税は、税率を下げたといいながら九十八億六千万円の増加を見ております。昨年は米の価格がよかつたから農地が高くなつたと申していますが、先日の農林省の発表いたしました農家経済の調査によりましても、二十八年は二十七年よりも約五百円収入は減つているのであります。それを、米の値がよかつたからといつて、すぐ農地の評価額を引上げて増収を見込んでいるのであります。また、地方財政はこれまでの赤字が三百六十億といわれておりますが、何らこの二十九年の政府の地方財政計画には考えられていないのであります。千二百十六億の中には、全然この赤字の処理が考えられておりません。
塚田国務大臣は、赤字の素因たる原因を剔抉してと言つて、財政規模の是正額として百四十九億をあげています。つまり、今まで財政計画の需要額を算入する場合に、その算入漏れが百四十九億あつた、だからそれを今度算入いたしたのだ、こう申しております。つまり、地方財政が赤字だ、こういう、政府の計画では困るのだという地方の声にこたえて、百四十九億を算入したと申しておりますが、塚田さんの御説明をさらに聞くと、その口の下、百二十億の既定経費の節約を要求しておるのであります。つまり、一方では百四十九億を認めてやると言いながら、百二十億を差引いておる。
あの、朝三暮四と申しますか、支那で、さるを飼つてえさをやるのに、きげんが悪くなつたからといつて口でごまかす、晩に四つにするところを朝四つにしてごまかしたというふうに、さすが吉田さんは国会を動物園にたとえ、国会議員をさるにたとえたが、その首尾一貫して、知事、市町村長あるいは国民までも実はさるにしてごまかしておるのであります。まことに首尾一貫したと言つてほめるわけにも行きませんが、しかし、私がただいま申し上げた数字は、何も私の独特のものではないのであります。吉田さん自身がこのことは認めておいでになる。
すなわち、国会に対し三月九日付で内閣総理大臣として吉田さんが報告しておいでになる地方財政の状況というこの冊子の中に、実はちやんと書いてあるのであります。おそらく、地方財政の委員でない方は、おもらいになつても、それぞれの委員会でお忙しくて、お読みになるひまがなかつたか思いますが、この七十二ページに、もようど私の申し上げたことがそのます書いてあるのであります。この冊子の、吉田さんが自分でお出しになつか報告を貫く精神は、ただいま私が申し上げた二十九年度の地方財政計画の痛烈なる批判をもつて貫かれておるのであります。自分で二十九年度の財政計画を立てながら、千二百十六億という平衡交付金に当る交付税を算出しながら、一方ではこの冊子で、この千二百十六億がいかにでたらめであるかということを自分で書いておいでになる。(拍手)この七十二ページを読みますと、既定財政規模の是正として少くとも三百億円の必要を指摘しているにもかかわらず、その半分程度の百四十九億円しか是正されていないと、「しか」という言葉を使つておる。つまり、塚田さんが算入したと言つて自慢しておられる百四十九億は、吉田さんから見て「たつた百四十九億円しか」であつた、こうおつしやつておるのであります。その次に、「しかも、財政規模の合理的縮減を期待して節約額百二十億円を予定しているのである。」一方で与えて一方で差引いたということを、この吉田さん自身が認めておいでになるのであります。このように国民を愚弄した今度の交付税の改正法を、私はとうてい容認することはできないのであります。
なぜ吉田内閣がこんなことをするかということは、結局首相官邸の道がアメリカのウオール街につながつておるからです。国民を苦しめ、国民をひぼしにする。今まで何とも言わないでいて、年がかわると、インフレだつたから今度はデフレ緊縮予算だというように、自分が今までやつて来たことはすべてたなに上げて、今度は緊縮デフレにおかえになる。物価を下げなければならぬということである。
なるほど、二年、三年の先にはあるいは物価が下つて、国民はいいことになるかもしれませんが、それまで国民はみんなひぼしにならなければならない。その二、三年ひぼしになることは全然お考えにならずに、そして物価を下げるのだ、緊縮予算だ、こうおつしやつておられる。そうして、地方財政もこれにならつて、やはり今まで以上に引締めて来ておるのであります。
また警察法にいたしましても、こうして地方財政を苦しめて、その警察を取上げる。しかも、二十九年度を見ますと、自治警察を現行のままに置いておけば金がかかるのだと言いながら、二十九年度の地方財政計画では、反対に百五億円の増加に実はなつておるのであります。ころいうようにして、すべて国民を苦しめ、飯が食えなくなつた——飯が食えなければパンを食えという話があるかもしれませんが、飯が食えなければパンを食えでなしに兵隊に出て来いというのが、吉田さんのお話であります。
一発の水素爆弾が落ちる場合には、下関から室蘭までもの広い地域を交通禁止しなければならないという時代に、国民を苦しめてアメリカの言いなりほうだいにならんとして、アメリカの水素爆弾の実験に協力するというのも、アメリカの駐日公使岡崎勝男氏が日本の外務大臣だからだというような言葉が、世間の人から口に出るような時代になつておるのであります。こらして国民を苦しめて、そうしてすべて兵隊に出て来なさい、ニクソン副大統領さんもそうおつしやつたというのが、本地方財政平衡交付金法の改正のまたねらいであります。われわれをすべて兵隊に持つて行く、国民を苦しめて再軍備をしてアメリカに協力しようという線が、実はこの平衡交付金の改正案のねらいであります。(拍手)われわれは断じてこれには承服できないのであります。自由党の諸君といえども、おそらく皆さんに良心があるならば、こうした方向は絶対に容認されぬことと存じます。どうか、平衡交付金に反対することによつて、吉田内閣のアメリカに従属した方向に反対する意思を御表明になつていただきたいものと存じます。
私はこれをもつて反対討論を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X03619540413/13
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014・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 門司亮君。
〔門司亮君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X03619540413/14
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015・門司亮
○門司亮君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題になつております地方財政法の一部を改正する法律案並びに修正案に対しまして反対の意見を申し述べようとするものであります。さらに、同じように提案されておりまする揮発油譲与税法案、地方財政平衡交付金法の一部を改正する法律案並びに同修正案に対して反対の意思を表明しようとするものでございます心
第一に、地方財政平衡交付金法の一部改正に関する法律案でございまするが、この法律案は、その内容といたしておりますものは、第一に、地方財政平衡交付金法の一部改正という法律案が出ておるのにもかかわらず、その内容は、この法案によつて題名を地方交付税法と改正するということが明確に書かれておるのであります。地方財政平衡交付金法は、御存じのように、政府自体の財政を地方に交付するという一つの法律であり、今回これを改めようとするものであります。地方財政平衡交付金法の一部改正にあらずして、交付税法ということを明確に書いておる。従つて、もし税法であるといたしますならば、政府はその責任におい、て、交付額の義務づけられたものを必ず出さなければならないことは当然である。いわゆる税法でありまする限りにおいては、地方公共団体は政府に向つてこれを請求するの権利を持ち、政府はまた責任を持つてこれを地方に税として配付しなければならないことは当然である。従つて、この法案は、事実の上においてはまつたく別個の法律を提出しているにもかかわらず、地方財政平衡交付金法の一部を改正する法律案というような、立法的に見て参りますならばまつたくごまかしの法案であるということを、はつきりと言わなければならないのであります。(拍手)
なぜこういうごまかしの法案が出されなければならなかつたかということを、その内容について少し申し上げておきたいと思いまするが、その内容は、まつたく従来の地方財政平衡交付金法の算定の基礎をそのままここに流用いたしておりまして、さらに配付の方法といたしましても、従来の地方財政平衡交付金法の配付のそのままの姿をここに現わしておるというところに大きなごまかしがあるということであります。さらに、これをなぜそういうことに政府はごまかさなければならなかつたかということは、今日までの地方財政が非常に大きな赤字であつて、そうして地方財政を何とかしなければならないということが、地方財政の問題にからんで、いわゆる地方制度調査会において大きく取上げられて参りましたときに、地方制度調査会では、従来の地方財政平衡交付金というような形で、時の政府が、時の大蔵省の意向によつて、さらに国家財政の都合によつて、ある年は多く、ある年は少く交付するというようなことでは、地方公共団体が自主的の財源によつて十分に運営することができない、従つて何とかこれを確保するということのために、かつて昭和二十四年まで日本にありましたいわゆる配付税法的の性格をもつて、政府は所得税、法人税、酒税の一定割合を必ず地方に交付しなければならないという、いわゆる地方財政確立の意味からこの法案を提出すべしということが、地方制度調査会の答申にあつたと考えざるを得ないのであります。またその通りであつた。このことについては、政府は一応そういう地方制度調査会の意見をいれたかのごとく仮装してここに提案したということが、こういう間違つた法律の取扱いをしなければならなかつた最大の原因であるということを申し上げなければならないのであります。(拍手)
さらにさかのぼつて、今日の地方財政が非常に苦しくなつておりまする一体原因はどこのあるか。われわれは、少くとも民主国家において、日本の民主化のためには、地方公共団体の自主的自立性によつて日本の民主化を達成しなければならないとホうことは、憲法の九十二条以下九千五条まで明確に記載してある通りである。従つて、この趣旨にのつとつて、少くともわれわれが与党としての責任にありました昭和二十四年においては、配付税として法人税並びに所得税の総額の三三・一四を地方税に配付しなければならないという、いわゆる配付税法の制定をいたして参つたのであります。しかるに、昭和二十五年自由党の内閣になつて参りますと同時に、この三三・一四を一六・二九に切り下げて、われわれが地方に配付すべき額の半分に切り下げたということが、今日の地方財政の赤字の最大の原因であるということを、よく知つていただきたいと思うのであります。(拍手)自由党の諸君は、もしこのことについて気がついて参りますならば、責任を持つて地方財政の赤字を解消するの決意を新たにされなければならないはずであります。
しかるにもかかわらず、今回提案されておりまするこの法律案は一体何であるか。さらに今日、先ほど石村君からも申し上げて参りましたが、地方財政法の第三十条の二の規定によつて内閣総理大臣から堤衆議院議長に提出されておりまする地方財政の二十七年度の決算の報告書を見てみますれば、一体何と書いてあるか。私は以下政府から提出されましたものをそのままの姿において朗読いたしまするので、よく聞いておいていただきたいと思うのでございます。すなわち、昭和二十七年度国庫財政と地方財政の決算額についての比較、昭和二十七年度国庫財政歳入総額は一兆七百八十八億円になつておる、しかるに歳出総額は八千七百三十九億円であつて、歳計剰余金は二千四十九億円になつており、このうちから翌年度繰越し算出の財源充当額千百九十億でありまするから、これを差引いて参りましても、なおかつ実質決算剰余金は八百五十九億であるということが明瞭に書いてある。しかるに、地方財政の決算の状況をその報告書によつて読んでみますれば、歳入総額は八千五百三十億であるが、歳出総額は八千四百二十億であつて、歳計剰余金は百十億となつておるのでございますが、このうち翌年度繰越し歳出、いわゆる事業の繰延べ及び支払いの繰延べ等の財源充当額が二百九十六億でございまするので、実質決算においては百人十五億の財源不足となつておるということが明確に書かれておるのでございます。これは地方財政が著しく窮乏の状態にあるということを決算面から知ることができるのであります。
さらにその報告書にはどう書いてあるか。さらに個々の地方団体の決算状況について見ると、決算上歳計不足の赤字団体が千六十九団体で、前年度に比して一・五倍である、その歳出不足額は百五十四億であつて、金額にづいては二・四倍である、しかも翌年度繰越し歳出、事業の繰越し及び支払い繰延べ等の充当財源を控除した実質決算の財源不足団体は二千六百三十一で、金額は財源不足額三百億であるということが明確に書かれておるのであります。しこうして、さらにこれの内訳として、国庫の財政においては、税収入、いわゆるタバコ専売納付金を含む歳入総額は、政府の歳出予算の中で七八%を占めているのであります。しかるに、地方財政においては、租税収入の総額というものはわずかに歳入総額の三六%しか占めていないということが報告されているのであります。従つて、地方財政平衡交付金及び一般財源というものは、歳入総額に対して、すなわちこの地方財政平衡交付金を合算いたして参りましても、なおかつ五二%にすぎない、残りの四八%というものは起債、補助金その他によつてこれがまかなわれているというのが、政府の昭和二十七年度の決算報告書の中に明確に記載してあるということを、よく御了承願いたいと思うのであります。
かくのごときことを考えて参りまするときに、一体自由党の諸君はこの地方財政に対していかなる考えをお持ちになつておるのか。ことに、現在の政府は一体何を考えておるのか。われわれは、この地方財政が非常に逼迫しておる、しかも赤字が年々歳々二百億以上もふえておるという現状において、これをいかに処置するかということを真剣に委員会において討論いたしまする場合において、ことにこの二十九年出反の予算は御承知のように一兆億予算を堅持するということのために、まず第一に地方にしわ寄せされて参りましたものが一体何であつたか。ただいま議題になつておりまする揮発油譲与税のごときは、その七十九億は、当然国にありましても建設省の道路整備五箇年計画によつてこれが支出されなければならない財源であるにもかかわらず、これを地方に移譲することによつて、しかもそれは二十九年度一年限りということになつて参りますならば、一体来年度の予算はどうなるのか。さらに入場譲与税については約五十億の歳入欠陥を来すであろうということは、これまた自治庁から申し上げておる通りである。これらの問題に対しましても、わずかにその処置をするのは、二十九年度限りに一般財政からこれを繰入れるということしか書いておらない。来年度の地方財政は一体どうなるか。本年度における百五十数億に上ります赤字と、来年度のそうした財政上の措置が十分講じられていない現状において、われわれが真に地方財政を憂え、真に地方公共団体の一切の業務が円滑に参りますことのために努力を払つておるにもかかわらず、その一兆億予算を組んで地方財政にしわ寄せをいたして参りました張本人である大蔵大臣は、一分間といえども地方行政委員会に顔出しをしなかつた事実は一体何を物語るか。(拍手)今日、自由党の諸君が、現吉田政府が、いかに知事会、市長会あるいは議長会等に参りましていろいろなことを申し上げられるといえども、この地方財政に対する冷酷無比なる態度に対しては、強くわれわれは批判しなければならないと思うのであります。(拍手)
およそ国の施策はいかなる施策でありましようとも、国の施策の完全なる遂行は、あげて地方公共団体の健全なる財政と、地方公共団体の円満なる行政の運行にまたなければ、断じて国策の遂行はでき得ないだろうということは、火を見るよりも明らかである。しかるに、政府は、ただMSAの援助を受けるとか、あるいは再軍備のために多額の費用を使うために、地方の公共団体にしわ寄せをされておる。さらに、補助金等の整理に関する法律案等により、当然現在まで行つており、また将来も行わなければならない幾多の事業を打切らなければならない悲運に到達をいたしておりまするが、政府は一片の法律によつてこれを打切ることは可能かもしれないが、しかしながら、現実に現業庁として、サービス官庁として地方住民に直接関係して行政の運行をいたしておりまする地方の公共団体は、中央でこれらのものを打切つたからといつて、ただちにこれを打司るわけには参りますまい。地方住民の負託にこたえて、やはりなすべき仕事はどうしてもしなければなりません。これらの財源措置を一体どうするのか。私どもは、これらのことを考えて参りまするならば、今回のごとき、この地方財政平衡交付金を交付税法にただ題名だけを塗りかえるというような、ごまかしの法律案に対しては、断固としてこれに反対するということをはつきり申し上げる。(拍手)
次に問題となつて参りまするのは、いわゆる地方財政法の一部改正でございますが、地方財政法によりましても、先ほどからるる申し上げておりまする通り、一体地方財政に対して、いかなる観点に立つて、いかなる施策を講じようとするのかということについて、政府当路の責任者でありまする大蔵大臣に対して、その意図を十分に尽すことができなかつたうらみを私はここに申し上げざるを得ないのであります。もし自由党にして、あるいは吉田政府にして、一片の良心と、地方公共団体に対して真に親切と、日本の国策遂行のために誠意があるならば、少くとも、この地方財政に関しては、政府の責任者みずからが出て参りまして十分なる意見を述べ、さらにわれわれが納得の行く答弁をすることが当然であるにかかわらず、私どもはこれを承ることができなかつたことをきわめて遺憾といたしまして、私は、ここに修正案を含む三法案の一切に対して、日本社会党を代表いたしまして反対の意思表示をするものでございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X03619540413/15
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016・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) これにて討論は終局いたしました。
まず、日程第一につき採決いたします。本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X03619540413/16
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017・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り決しました。(拍手)
次に、昭和二十九年度の揮発油譲与税に関する法律案につき採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
[賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X03619540413/17
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018・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)
次に、地方財政法の一部を改正する法律案につき採決いたします。本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
[賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X03619540413/18
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019・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り決しました。(拍手)
本日はこれにて散会いたします。
午後五時九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X03619540413/19
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