1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十九年五月二十二日(土曜日)
議事日程 第五十一号
午後一時開議
第一 盲学校及びろう学校への就学奨励に関する法律案(内閣提出)
第二 文部省関係法令の整理に関する法律案(内閣提出)
第三 公職選挙法の一部を改正する法律案(内閣提出)(閣法第七号)
第四 出資の受入、預り金及び金利等の取締に関する法律案(内閣提出)
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●本日の会議に付した事件
議員請暇の件
米価審議会委員任命につき国会法第三十九条但書の規定により議決を求めるの件
日程第一 盲学校及びろう学校への就学奨励に関する法律案(内閣提出)
日程第二 文部省関係法令の整理に関する法律案(内閣提出)
教育職員免許法の一部を改正する法律案(内閣提出)
教育職員免許法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理に関する法律案(内閣提出)
農業委員会法の一部を改正する法律案(小枝一雄君外十六名提出)
農業協同組合法の一部を改正する法律案(金子與重郎君外十六名提出)
午後五時二十七分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05419540522/0
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001・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) これより会議を開きます。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05419540522/1
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002・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) お諮りいたします。議員池田正之輔君から、ベルリンにおいて開催の世界平和評議会並びにストツクホルムにおいて開催の世界平和大集会に出席のため、本日より本会期中請暇の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05419540522/2
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003・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて許可するに決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05419540522/3
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004・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) お諮りいたします。内閣から、米価審議会委員に本院議員佐藤洋之助君、同綱島正興君、同松山義雄君、同今井耕君、同足鹿覺君、同川俣清音君、参議院議員梶原茂嘉君を任命するため議決を得たいとの申出がありました。右申出の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05419540522/4
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005・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつてその通り決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05419540522/5
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006・荒舩清十郎
○荒舩清十郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、日程第一及び第二とともに、内閣提出、教育職員免許法の一部を改正する法律案及び教育職員免許法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理に関する法律案の両案を追加して、四案を一括議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05419540522/6
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007・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 荒船君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05419540522/7
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008・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
日程第一、盲学校及びろう学校への就学奨励に関する法律案、日程第二、文部省関係法令の整理に関する法律案、教育職員免許法の一部を改正する法律案、教育職員免許法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理に関する法律案、右四案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。文部委員長辻寛一君。
〔辻寛一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05419540522/8
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009・辻寛一
○辻寛一君 ただいま上程せられました文部関係の四つの法案につきまして、その内容の要点と、文部委員会における審議の経過を御報告申し上げます。
まず初めに、盲学校及びろう学校への就学奨励に関する法律案について申し上げます。
学校教育法が昭和二十二年に制定実施せられ、盲学校及び聾学校の小中学部も義務制となりまして、本年度中学一年まで進行しておりますが、その就学状態を見ますと、大体学齢児の三割くらいにとどまつておりまして、残り七割近いものは就学いたしておらないのであります。その原因を見ますと、かかる児童生徒は、元来身体の障害者であるため、通学はもちろん勉学上の不便が多い上に、経済的にも精神的にも負担がかさみ、しかもその家庭は貧困なものが概して多いというような悪条件によるのであります。このことは、教育の機会均等と義務教育制の建前にかんがみますとき、まことに遺憾なことでありますので、その就学上の経費について保護者の負星をなるたけ軽減し、義務教育の普及向上をはかろうとするのが本法案の趣旨であります。従いまして、盲学校及び聾学校の学齢児童生徒の就学費のうち、教科用図書費、学校給食費、通学または帰省及び付添人の交通費、寄宿舎居住に伴う経費につきまして、その全部または一部を、国立の場合は国においてその全額、都道府県立の場合は当該都道府県と国とでおのおの二分の一を負担することを規定したのがその要点であります。
本委員会の慎重な審議の結果、長谷川峻君より、身体、精神等に故障を有する養護学校の学齢児童生徒に関しても、なるべくすみやかな機会に義務制を実施して、この法案の対象とすべきであるから、養護学校を加える必要があるという修正案が提出せられました。
討論を省略いたしまして採決の結果、修正案並びに修正部分を除く原案は、ともに全会一致をもつて可決となり、本案は修正議決せられました。
次いで、坂田道太君より、なるべく早い機会に幼稚部、高等部をも含めて本法案の対象とし、なお就学費用の範囲も広げて補助し得るように措置すべきである旨の附帯決議の動議が出されましたが、全会一致で可決せられました。
次に、文部省関係法令の整理に関する法律案は、明治年代の制定にかかろ法令三件及び昭和七年度制定の市町村立尋常小学校費臨時国庫補助法の計四件を、すでに法的実効性を失つておりますので廃止しようとするものでありますが、原案の通り全会一致をもつて可決いたしました。
次に、教育職員免許法の一部を改正する法律案及び教育職員免許法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理に関する法律案について申し上げます。
この法案は、教員の仮免許状並びに校長、教育長及び指導主事に関する免許状を廃止いたしまして、現行法を簡素化し、直接養成における所要単位の内容を充実し、一方、現職教育においては上級免許状のとり方を実情に合うようにしようというのが主眼であります。
すなわち、第一の要点として、免許状の種類とそのとり方についてでありますが、現行の一級と二級の普通免許状、臨時及び仮免許状の四種類のうち、仮免許状は教員の資質の現状にかんがみましてこれを廃止することといたし、新たに直接養成によつても高等学校教諭の一級普通免許状を授与することとし、同時に一般につきまして大学で修得すべき専門科目の内容を充実強化しようとしております。
次に第二点といたしまして、現職にある教員が上級免許状を得ようとする場合、所定の単位を修得する必要があるという現行の方法を改めまして、その単位の一定範囲まではこれを教職経験年数をもつてかえ得るようにしようとするものであります。
第三点は、校長、教育長、指導主事にも免許状を必要としておりましたのを全部廃止して、行政事務を簡素化し、別に教育公務員特例法でその任用資格を規定しようとするものであります。
次に第四点としまして、仮免許状の廃止によつて現職者が不利益にならないように経過措置を設けようとしております。
続いて審議の経過を申し上げます。この法案は、教育の内容に重大な関係を持つとともに、教職員の利害に直接響くところが多いので、詳細にわたつて慎重な審議を尽しました結果、坂田道太君外二十四名より、職業課程の実習を担当する教員の免許状については当分の間実地経験の年数をもつて所要の単位にかえ得るように措置し、技術教育の充実をはかること、その他教育の実情に即する特例を設ける点について修正案が提出せられました。
討論を省略、採決の結果、修正案並びに修正部分を除く原案ともに全会一致をもつて可決となり、本案は修正議決せられました。
以上御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05419540522/9
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010・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 四案を一括して採決いたします。日程第二の委員長の報告は可決でありますが、その他の三案の委員長の報告は修正であります。四案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05419540522/10
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011・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて四案は委員長報告の通り可決いたしました。
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012・荒舩清十郎
○荒舩清十郎君 日程第三及び第四は延期せられんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05419540522/12
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013・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 荒船君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05419540522/13
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014・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程第三及び第四は延期するに決しました。
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015・荒舩清十郎
○荒舩清十郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、小枝一雄君外十六名提出、農業委員会法の一部を改正する法律案、金子與重郎君外十六名提出、農業協同組合法の一部を改正する法律案、右両案を一括議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05419540522/15
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016・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 荒船君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05419540522/16
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017・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
農業委員会法の一部を改正する法律案、農業協同組合法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。農林委員長井出一太郎君。
〔議長退席、副議長着席〕
〔井出一太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05419540522/17
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018・井出一太郎
○井出一太郎君 ただいま議題と相なりました、金子與重郎君外十六名提出、農業協同組合法の一部を改正する法律案、並びに小枝一雄君外十六名提出、農業委員会法の一部を改正する海律案、右両案につきまして、農林委員会におきます審議の経過並びに結果の大要を御報告申し上げます。
まず、農業協同組合法の一部を改正する法律案について申し上げます。
御承知のごとく、昭和二十二年現行農業協同組合法が制定されましてからすでに六年有余を経過いたしておりますが、この間、農業協同組合は社会的、経済的にはげしい変動に遭遇いたし、このために経営不振に陥つた組合も少くなく、農業協同組合法について数次にわたる一部改正を行う一方、農林漁業組合再建整備法あるいは農林漁業組合連合会整備促進法の制定等を行いまして、組合の健全な発展の促進を期する方途を講じて参つたのであります。しかしながら、農業協同組合は、経済力の脆弱な農民を構成員といたしておりますので、その経済的基調は依然として弱く、なお整備の強化を必要とする部面が少くないのであります。従いまして、この際指導体制の確立を期しまするとともに、現行組合制度にも若干の修正を施しまして、今後におきまする国民経済の推移に即応して、組合事業の振興と経営の刷新、安定をはかる目的を持ちまして、本法案が提出せられたのであります。
次に、改正の要旨を申し上げますると、およそ次の三点に要約されると思うのであります。
第一点は、組合の総合指導組織の確立をはかるため農業協同組合中央会を全国及び都道府県の区域に設置いたし、国はこれら中央会の事業に要する経費の一部を毎年度予算の範囲内で補助することといたしたことであります。
第二点は、組合に関する規定を整備いたしたことでありまするが、その第一は、農業協同組合の地区の全部または一部を地区とする農業協同組合及び同地区内に住所を有する農民が組織する団体につきましても准組合員たる資格を認め、農村の実態に即応した措置を講じましたこと、第二といたしましては、信用事業を行う組合につきましては新たに定期積金の受入れをお行うことができ、共済事業を行う組合につきましてはその事業が健全に行われますために必要な規定を設けたこと、第三といたしましては、組合の役員の責任を明確化いたしまするとともに、新たに役員の選任の規定を設けましたことでございます。
次に第三点は、行政庁の監督規定を整備強化いたしまして、組合の健全な発達に資しましたことでございます。
本法案は去る四月二十八日付託と相なり、同日提案者を代表して金子委員から提案理由の説明がございました後、本委員会の審査に付し、爾来引続き提案者との間に真剣なる質疑を行い、また去る十八日には学識経験者から参考意見の聴取をも行いまして、真摯かつ慎重なる審議をいたして参りましたる結果、昨二十一日質疑を終局いたしました。
本日、自由党、改進党及び日本自由党を代表して佐藤洋之助委員から、また左派社会党を代表して足鹿委員から、それぞれ修正案が提出されました。
佐藤委員提出の修正案の要旨は、一、全国中央会及び都道府県中央会の准会員たる資格の条件について、原案に規定された者のうちからさらに定款で定めるものといたしたこと、二、都道府県中央会の総会は、会員総会を原則とするも、定款で定める場合は代議員をもつて組織し得ること、三、行政庁が組合に対して共済事業の承認の取消しまたは解散の命令を行おうとする場合、その組合に対し弁明の機会を与えるとともに、都道府県中央会または全国中央会の意見を聞くものとすること、四、農業協同組合中央会の発行する証書、帳簿については印紙税法の適用を除外すること、五、農業協同組合本来の教育事業を行うことに是正したこと等を内容とするものであります。
また、足鹿委員提出の修正案の要旨は、一、都道府県農業協同組合中央会の名称を都道府県農業協同組合地方会に改めること、二、都道府県地方会及び全国中央会の会員についての加入及び脱退を自由とすること、三、都道府県地方会の総会は会員総会とすること、四、全国中央会の都道府県地方会に対する指示等は全国中央会の正会員たる都道府県地方会に対してのみ行い得ること、五、全国中央会の正会員たる都道府県地方会の会長のみが当然に全国中央会の代議員となるものとすること、これらを至要な内容といたし、その他につきましては佐藤委員提出の修正案と大体共通いたしておるのでございます。
次いで討論に移り、社会党芳賀委員から、足鹿委員提出の修正案のごとく修正すべきで、しからざれば本法案に賛成しがたい旨を申し述べられました。また社会党小平委員は、全国農業協同組合中央会への当然加入については、農業協同組合の本質にかんがみ、にわかに賛成しかねるが、指導体系をすみやかに確立しなければならない現状と、全国農業協同組合中央会そのものの性格にかんがみ、政府はこれが対策に遺憾なき措置を講じ、原案の当然加入はそれまでの暫定措置とすべきである旨を強く要望して賛意を表せられました。
以上をもつて討論を終り、採決に入り、まず足鹿委員提出の修正案について採決の結果、少数をもつて否決、次に佐藤委員提出の修正案を採決、多数をもつて可決、次いで右の修正部分を除く原案について採決いたし、これまた多数をもつて可決いたしました。よつて、本法案は佐藤委員提出の修正案のごとく修正議決すべきものと決しました。
次に、農業委員会法の一部を改正する法律案について申し上げます。
御承知のごとく、現行農業委員会法は、昭和二十六年、第十国会で成立を見、同法に基き市町村農業委員会及び都道府県農業委員会が発足いたし、爾来今日まで二年有半、農地調整、自作農の創設維持、農業総合計画の樹立推進等、農民の代表機関としての使命の達成に努めて参りましたが、これまでの経験にかんがみ、さらに今後におきまする情勢の推移に即応して一層の発展を促し、もつてこれが使命の完遂を期したい趣旨をもちまして、ここに本改正法案が提出されたのであります。
次に、改正のおもな点を御説明いたしますと、およそ次の三点であります。
第一点は、農業委員会委員の選挙方法を簡素化したことであります。すなわち、現行法によりますと、委員の選挙は公職選挙法を準用いたしておりますが、改正案におきましては、市町村条例で行い得ることとし、選任委員につきましては、市町村長が五人を限り選任しなければならないことといたし、また委員の任期を現行の二年から三年に改めたことでございます。
第二点は、都道府県農業委員会にかわつて新たに法人格を持つた都道府県農業会議を置くことといたし、従来の都道府県農業委員会の所掌した事務のほか、農業及び農民に関し意見を公表し、行政庁に建議し、その諮問に答申すること、及びその他啓蒙宣伝、調査研究等を行うことといたし、なお、国は毎年度予算の範囲内でこれに補助を与えることといたしましたほか、法人税、所得税、事業税等の免除を規定いたしたことであります。第三点は、全国農業会議所を新たに設置することでございます。全国農業会議所は、都道府県農業会議、全国農業協同組合中央会、全国農業協同組合連合会、その他学識経験者等を構成員とする社団法人でありまして、その設立、解散、加入、脱退は自由でありまするが、全国を通じ一個といたし、農業、農民に関し意見を公表し、行政庁に建議し、その諮問に答申するほか、啓蒙宣伝及び調査研究、さらにこれら業務についての都道府県農業会議の指導、連絡を行うことといたしましたことであります。
本法案は去る四月二十八日付託となり、同日提案者を代表して小枝委員から提案理由の説明がありました後、先に御報告申し上げました農業協同組合法の一部改正案とともに一括して審議に付し、慎重なる検討を続けて参りました結果、本日質疑を終局いたしました。
次いで、自由党、改進党並びに日本自由党を代表して佐藤洋之助委員から修正案が提出されました。その内容は、土地区画整理法の成立並びに地方税法の一部改正に伴い、関係条項、字句につき整理を行わんとするものであります。
続いて討論に付し、社会党井手以誠委員、同じく社会党小平委員から反対意見の開陳がございました。
討論を終り、ただちに採決に入り、まず修正案について採決の結果、多数をもつて可決、次に修正部分を除く原案について採決の結果、これまた多数をもつて可決、よつて本案は修正案のごとく修正議決すべきものと決しました。
以上御報告を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05419540522/18
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019・原彪
○副議長(原彪君) 両案中、農業協同組合法の一部を改正する法律案に対しては、芳賀貢君外四名から成規により修正案が提出されております。この際修正案の趣旨弁明を許します。芳賀貢君。
〔芳賀貢君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05419540522/19
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020・芳賀貢
○芳賀貢君 ただいま議題となりました二法案のうち、農業協同組合法の一部を改正する法律案に対し、私は、日本社会党を代表して修正案を提出し、これが趣旨の弁明を行わんとするものであります。(拍手)
本法律案は、自由党、改進党、日本自由党の三党共同提案による議員立法でございますが、すでに去る第十五、第十六両国会におきましても、いわゆる農業団体再編成なる名のもとに、農業委員会法の一部改正法律案とともに、内閣提出法律案として衆議院農林委員会において再度審議未了となつたものを、今回、中身はほとんどそのままの中古品を、議員提案なる衣がえを行つて今国会に提出されたものでありまして、かかる経緯を熟知する私どもといたしましては、これを率直に了承することに困惑すると同時に、かかる擬装された法律案に対しましては、十分なる審議の重要性を痛感するものであります。
修正案につきましては、お手元に配付されておりますので、以下修正の主要なる九点につき説明を加えたいと思います。
第一の点は、協同組合の役員の選任制の問題であります。従来、組合の理事、監事等の役員を選任する場合は、すべて選挙による方法を法律によつて示されておつたものを、原案におきましては総会における選任制を認めようとしておるのでありますが、このことは、今日まで協同組合が組合員の自由なる意思に基く役員の選任を行つたものを総会において選任するわけでありまして、かかる選任の方法をとつた場合においては、通例といたしまして、数名の選考委員等の手によつて、しかも農村におけるボス的な一部の支配勢力が、かかる役員の選考の場に顔を出して、悪意的な動きを示すことは必然でございますので、組合員全体の正しい意思というものは反映することが不可能であります。(拍手)しかも、農協の民主化を守り、組合員の一人一票の平等権を守る上からも当然のことといたしまして、現行通りの選挙制とするよう修正いたしたのであります。
第二に、名称の点でありますが、原案によりますと、全国農業協同組合中央会、都道府県農業協同組合中央会なる名称を用いておるわけでありますが、この改正法律案の中におきましても、協同組合の都道府県並びに全国段階におけるところの農業協同組合の連合会の系列の中において、特にこの中央会に対しましては優位性と指示権を与えるところに改正案の目的があるわけでありますが、かかる協同組合の連合会の組織形態の中において、特に中央会のみに優位性を与えるということは、協同組合の自主性を大いにそこなうものとわれわれは感ぜざるを得ないのであります。(拍手)かかる観点におきまして、指示権を行う場合におきましては、全国中央会が都道府県中央会にのみ指示を与えるということを前提といたしまして、その系列の区分と中央地方の組織の相関関係を明確にするために、名称を全国中央会、都道府県におきましてはこれを地方会と改めるようにいたしたのであります。
第三の点は、いわゆる指示権の問題でありますが、全国中央会が、原案によりますと、都道府県地方会並びに地方会の正会員たる市町村農業協同組合に対しまして、事業計画の設定もしくは変更、業務または会計の重要事項について指示を行うにとになつておるわけでありますが、かかる点に対しましては、これをただ単に都道府県地方会段階のみに指示権を行い、末端の正会員であるところの市町村農業協同組合に対しましては全国中央会は優位性を持つた指示権を認めないというように修正を行つた次第であります。
第四の点は、会員資格の問題でありますが、都道府県地方会並びに全国中央会の准組合員たる資格を有するものは、原案によりますと、組合の行う同種の事業を行う法人であり、全国及び都道府県それぞれの地区内に住所を有するものとのみ規定してありますので、その限界と具体的な適格条件が非常に不明確でありますので、これを定款で定めるものと明確にいたしたのであります。
第五の点は、都道府県地方会及び全国中央会の加入脱退の問題であります。協同組合の加入脱退の自由は組合の基本原則として守られて今日に至つたのでありますが、原案によりますと、市町村農業協同組合が都道府県中央会への加入脱退は自由であるが、全国中央会の場合においては、市町村農業協同組合が地方中央会に加入し正会員となつた場合におきましては、すべて全国中央会に強制加入をさせるとというのが原案の趣旨であります。全国中央会なるものが協同組合法に規定された組合組織である限りにおいては、加入脱退の自由の鉄則というものはあくまでも堅持せらるべきでありますので、(拍手)全国中央会に対する強制加入の項目を、修正案におきまして全面的に削除いたしたのであります。
第六の点は、都道府県地方会の総会を、原案におきましては原則として代議員による総会といたしたのでありますが、かかる傾向は、正会員であるところの市町村農業協同組合が、地方会の総会に出席いたしまして、毎年度の事業の計画、予算、決算の承認、役員の選挙、定款の変更等、重要なる問題の審議に関与する機会を与えず、さらに現在都道府県農業協同組合各連合会がことごとく会員総会の成果をあげておるという現実にかんがみ、かかる代議員制度なるものが農協連合会の民主的な会員総会制に及ぼす悪弊をもおもんばかりまして、会員総会制に改めることにいたしたのであります。
第七には、全国中央会の代議員の資格を、原案におきましては会員たらざる地方会の会長をも当然資格としてありましたものを、全国中央会の正会員たる会長のみを当然資格者といたしたのであります。
第八には、原案によりますと、行政庁の協同組合に対する監督規定が非常に厳重になり、たとえば協同組合の行う共済事業等に対する承認の取消し、あるいはまた協同組合に対する解散命令の発動等の規定が加えられたのでありますが、かかる有権的な発動をいたす場合においては、必ず協同組合の当事者に弁明の機会を与えると同時に、全国中央会、都道府県中央会等の意見を聞いて処理いたすように修正を行つたのであります。
第九の点は、全国中央会、都道府県地方会の団体の公益性を認め、原案において脱落したと認められる印紙税法の適用除外をいたしたのであります。
以上申し述べた九点が修正案の内容でございますが、今回の本法改正を通じて見のがすことのできない傾向は、農業協同組合の国有の性格を歪曲し、今日まで協同組合の発達の歴史を貫いて堅持された、いわゆるロツチデールの原則ともいうべき協同組合の政治に対する中立性、一人一票の平等権の確立、加入脱退の自由、これらのバツク・ボーンがまさに崩壊されんとする方向に置かれているということであります。(拍手)かかる民主主義を無視した、いわゆる全体主義的傾向は、意識的に農村における民主化の基盤ともなる農業協同組合の組織の中に新たなる力の台頭をおそれてこれを抑圧すると同時に、ややもすれば失われんとする農村におけるボス勢力の温存と失地回復を企図したものと断定する場合におきまして、私どもは断固としてこれらの逆コースの傾向を排除しなければならないのであります。(拍手)
農協法の改正を行わんとする場合におきましては、あくまでも、組合員たる農民が、みずからの意識と協力によつて経済的に団結し、農業の生産力を高め、経済的、社会的地位の向上に真剣なる努力を傾注する方向に対し、これに力を与え、これを育成強化するところに基盤を置くべきであると信ずるものであります。しかも、一面におきましては、農民に対しましては、現在の政府の行つている農業政策なるものは、あくまでも低米価をしい、食糧増産等の重要施策に対しましては国家財政の支出を極端に圧縮し、MSA協定等によりましてわが国をアメリカの余剰農産物の市場として提供し、軍事的にも経済的にもますますその隷属性に拍車をかけようとしている陰に四千万農民の窮乏の犠牲があることを、われわれは忘れてはならぬのであります。(拍手)
政府がMSA小麦五千万ドルの供与を受けて、わが国の農民の犠牲を米国への隷属の代償としているごとく、今回の農業協同組合法の一部改正が、政府の手から全国中央会、地方中央会に対する一年もずかに七、八千万円の補助金をもらう代償として、農業協同組合の原則ともいうべき一人一票の投票の平等権と加入脱退の自由の、この二本の旗までをも失うことを、わが党はあくまでもおそれるものであります。(拍手)
さらに、わが党といたしましては、農協法の根本的改正は当然現段階におきまして取上ぐべき事柄とは信じますが、このことは、単に農業協同組合法の改正のみならず、農民組合法の制定、農業委員会法の抜本的改正等によつて、たわゆる広汎なる農業団体の本質的な再編成の上に立たざる限り、これらの改正というものを軽々に行うことは、そこから非常に危険が生ずるということを指摘しなければならぬのであります。
かかる意味に立ちまして、わが党といたしましては、今回の協同組合法の一部改正案に対しまして、その時代からの逆コースと民主主義の抑圧に対する危険を防止し、この一わく内において協同組合の運営というものが本来の成果をかち得ることの可能な修正を行つた次第であります。
最後に、本修正案を提出するにあたりまして、わが党の友党である右派社会党の同志より、この農業協同組合の民主主義の旗を守るための共同と協調を得ることができず、遂に協同組合の一人一票の平等の原則と、協同組合に対する加入の自由の原則というものを、わが党単独の力をもつて守らざるを得なかつたというこの事実は、実に一大痛恨事であるということを付言いたしまして、私の修正案に対する趣旨弁明を終る次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05419540522/20
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021・原彪
○副議長(原彪君) これより討論に入ります。吉川久衛君。
〔吉川久衛君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05419540522/21
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022・吉川久衛
○吉川久衛君 農業協同組合法の一部を改正するという問題は、農業委員会法の一部を改正する問題と一連の関係を持たせて、農業団体再編成の別称をもつて、前二回の国会にそれぞれ政府提出議案として上程審議されたことは、委員長の報告の通りでございます。農業団体の系統組織の整備をはかり、もつてその事業運営を刷新強化して、不振の農村経済の振興を期さんとするものであつたのであります。しかるに、提案者である政府当局、ことに担当責任者である保利農相の不熱心と、一部には農業団体は根本的に整理すべきであるとの強い意見等もありまして、遂に二回とも審議未了になつたものであります。
最近の政府の大資本に偏向する自由放任の経済政策の結果は、ようやく中小企業や農村にしわが寄せられる結果となり、不況の徴候が顕著になつて来たことは、諸君の樹案内の通りであります。今にしてその対策を樹立するにあらざれば、手のつけられない事態に追い込まれるおそれが強く感ぜられるので、そこでこの機会に、農民生活を改善し、立ち遅れたる農村経済を助長育成するところの農業団体の整備強化の問題が今日国会の課題として検討ざれることは、むしろ当然と申さねばなりません。(拍手)
農業団体の整備の問題に関しましては、わが国ほど農民のためという団体の多い国は世界にその比を見ないのでありまして、それが完全に農民、農村のために奉仕しているかというと、必ずしもそうばかりとは申されない現実があるのであります。そこで、理想を申せば、農村の民主化のためにも、農村、農民の生活はあくまでも彼らみずからの力によつて成長、発展がくふうされなければならないことは言うまでもないのであります。しかしながら、敗戦によつて日本は四割五分の国土を失い、資源は戦争のために使い果し、言うべきほどのものを持つておりません。しかるに、人口はといえば、戦前六千九百万台のものが、今日では八千七百万を越えております。この狭隘なる国土に厖大なる人口をかかえ、持たざる国の悲哀を身にしみて感ずるとき、貿易不振による国際収支の逆調は日を追つて深刻となつておる。しかも、世界の景気後退の徴候は、国際経済の一環として存在するわが国経済に影響しないわけには参りません。ここにデフレ政策となり、計画性を持たない現政府の政策は遂に場当りのその日暮しの政治となり、破綻を招来するは理の当然と申さなければならないのであります。すなわち、これを防遏せんがために、もつぱら金融引締め措置にのみたよつて、購買力を抑制し、消費の節約を行い、輸出貿易の振興を企図していたのでありますが、朝鮮動乱による特需、新特需によつて資本の蓄積もしくはこれを活用して企業の合理化をはかるべきであつたものを、あえてこれをなさず、無為無策に終つた結果が、今日わが国の物価が国際価格を上まわり、輸出は思うにまかせず、国内の市場も日に悪化の一途をたどり、中小企業の倒産となり、失業者は日に累増の傾向にございます。(拍手)
それのみならず、年々増加する数十万の新たなる就業希望者に与えらるべき職はなく、農村のかかえる顕在失業者は、内閣統計局の調査によれば百七十一万余人といわれております。零細なること世界的特徴を持つわが国農業経営者が、この失業者をかかえて、その日の生活に希望を失いつつある現状でございます。一方、農民の生産するものの主たる米穀は、その価格、供出数量、供出の時期まで一方的に決定されたものが押しつけられている。しかも、その購買する生活必需物資から農業生産資材に至るまで、すでに統制は撤廃され、買うものは高く、売るものは安い、いわゆるシエーレのために農民の生活はますます窮地に追い込まれております。自由放任の無計画の経済施策の行われる社会においては、これは必然の帰結であると申さねばならないのであります。(拍手)そこで、当分の間わが国農民はしよせん独自の力をもつて立つて行けないことは、零細企業者や未組織勤労大衆とともに、政治の格別の配慮がなされなければならない、すなわち社会保障の一環としての農業保護政策が採用されなければならないのであります。
わが国農業政策の中における最も重要な地位を占める農業協同組合のあり方についても、その本来の性格はあくまでも民主自立のものでなくてはならないことは私の申すまでもないところでありますが、農業協同組合法が制定されましでから今日まで五年有余、諸種の悪条件と闘いながら、農業生産力の増強と農民の経済的、社会的地位の向上をはかり、あおせて国民経済の発展に寄与するために努力して来ていることは、これを認めるにやぶさかではないのであります。しかしながら、前にも申しました通り、恵まれない基盤の上に立ち、はげしい経済的、社会的変動と、その間に処する主体的条件の不十分のために経営不振の状態に陥つた組合も少くないのでありまして、そのままで放置しがたいものには整備促進の措置を講じて来たのでありますが、それにもかかわらず、組合の組織、事業及び経営の現況はなお一層の整備強化を必要とする部面が少くないので、特に組合の指導体制を確立し、組合の総合的指導を行うために、全国及び都道府県の区域に協同組合中央会を設置し、会員である組合のために指導教育を全国的規模において統一的かつ効果的に行わんとすることは、今日まで組合の指導組織として全国及び都道府県を区域とする指導農業協同組合連合会等がありまして、主として会員たる組合のために指導教育事業を行つて来たものが、法制上の性格、組織、事業及び財務の状況から見まして十分でなく、農業協同組合系統組織の全国的な組織活動に必要であるところの統一性と機動性を確保し、十分に組合事業の振興と経営の刷新及び安定をはかり得るような指導教育を行うことが困難であつたからであります。従いまして、この点は今回の改正によりまして相当な効果を期待することができると信ずるものであります。
前述しました通り、わが国農業はその基盤きわめて脆弱でありますので、自主独立でなくてはならない農業協同組合も、少くともその指導機関に関する限り、特段の財政援助の方策を期待することは、またやむを得ないことと考えるものであります。従つて、都道府県中央会に加入することは自由であるが、加入すると同時に全国中央会の会員となつて、法律上の保護、便益を受けることは当然でありまして、民主主義に反するがごとき説をなす者のあることは、まつたくその真意を解せざるものと申さなければなりません。(拍手)農村の実情に即応して、農民のほかに農民の組織する団体が組合員として加入することができるとか、組合員と同一の世帯に属する者とか営利を目的としない法人の貯金や定期積金の受入れができるようにしたことも、組合の事業分量の拡大をはかり、経営の健全化策として、まことに適切なる措置と申すべきであると思います。
昨今とみに農村の金が都市に集中する傾向が強くなつて参りました。零細なる農民の金は、何らかの形において、大都市に、大金融機関に集中され、その金は多くはイージー・ゴーイングの道が選ばれ、大企業もしくは比較的大きな企業、しかもそれが非農業的方面に流用されて、農村に還元されるものは少いのであります。昨年の救農国会において政府は低利な営農資金の融資を行つたとはいえ、その大部分は、何ぞ知らん、農民みずからが預けた金を随喜の涙で借り受けているのであります。
そこで、共済事業としての火災、生命等の保険事業を行い、農民みずからの生活の安定を期すると同時に、資本の蓄積を行い、自立自営の基礎をつちかい、相互扶助の、共存共栄の農村社会の健全化をはからんとするものであります。従いまして、行政庁の監督規定を設けるとともに、役員の責任の明確化がとられたことはこれまた当然であります。ただ、役員の組合に対する忠実義務を明文化した点は適切であると思うのでありますが、組合に対する任務を怠つた場合における組合及び第三者に対する連帯損害賠償責任に関する規定において、任務を怠つた程度、故意もしくは重大なる過失の判定等に慎重な考慮を要する点が必ずしも明確でないのでありまして、これは、他の営利法人等の場合と異なり、その運用の辛きに過ぎれば、役員になり手がなくなり、組合の運営に支障を来すことになることをおそれるのであります。むしろ、この点は、今後少数精鋭主義をとり、常勤役員の兼職禁止の方途を講じ、待遇改善等の措置をとるべきではないかと私は思考するのであります。組合の監督権は本来好ましくないのでありますが、組合の実情はいたずらに形式的な自主性のみを尊重することを許さないものがありますので、当分の間やむを得ないものと考える次第であります。
佐藤洋之助君の提案になる修正案は、本法律案の補完をなすもので、きわめて適当なものであり、社会党左の足鹿覺君の修正案は、同案中の第七項は行政権の認可の取消しまたは解散を命ずる問題でありまして、ただいま芳賀貢君が説明された問題でございますが、これは佐藤君の修正案に盛られておりますし、その他の部分は観念的な理想論として傾聴に値しますけれども、現実はこれをいれるにあまりに懸隔のあることは、はなはだ遺憾とするところであります。(拍手)
農業委員会法の改正案に関しましても、国の助成団体としては、農民の利益団体としての農政活動を行わしめることは矛盾するというのでありますが、農村の現状は、食糧調整の問題、農地改革の成果の維持等の農業委員会本来の使命を達成せしめつつ、農民の経済的地位の向上と農民の民主化を促進する農政活動をあわせ行わなければならない実情を考察いたしますとき、時の権力者に助成されるのではなく、制度としての助成の方式を立てることは、現段階としてはやむを得ないものと考えざるを得ないのであります。
社会党の諸君の申されるように根本に触れた改正をわれわれも企図したこともないわけではありませんが、一挙に踏み切ることは今日の農村における諸般の現実がこれを許さないので、本案は、ベスト案とは申せませんが、現行制度に対してベターであると信ずることができるのでありまして、よりよき方向への一歩前進である本案に、改進党を代表して賛成の意を表するものであります。(拍手)
なお、この際特につけ加えさせていただきますが、日本自由党の安藤覺君が、連日にわたる各党間の意見の調整にあたり、本二法案の委員会通過に尽されたる御努力に対し、心から感謝の意を表する次第でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05419540522/22
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023・原彪
○副議長(原彪君) 足鹿覺君。
〔足鹿覺君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05419540522/23
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024・足鹿覺
○足鹿覺君 日本社会党を代表して、ただいま議題となつておりますいわゆる農業団体二法案中、農業協同組合法の一部を改正する法律案に対するわが党提出の修正案に賛成の意見を述べ、かつ要原案並びに佐藤君提出の修正案に反対の意見を加え、あわせて、農業委員会法の一部を改正する法律案に対しては、農業団体再編成に対するわが党の基本的態度を表明しつつ、反対の討論を行わんとするものであります。(拍手)
この二法案は、このたびは自改両党の共同による議員提出の形式をとつておりますが、実は昨年三月の第十五国会並びに六月の第十六国会の両度政府より提案をせられ、そのたびごとに、事実上審議を行われずして、審議未了となつて流産をした因縁付の悪法であります。審議未了の原因は、両社会党、改進党、日自党、野党四派の強力な反対の態度を堅持したことと輿論の反撃とにあつたことは明瞭と言わなければなりません。しかるに、今国会の会期末、四月二十八日に及んで、突如として自由党、改進党、日本自由党三党の妥協によつて提出され、しかも、審議状況は、農林委員会において、わずか公聴会を含めこの重要法案を五日間の短期間をもつて事実上審議打切りを強行するがごとき非民主的かつ不十分な審議により、本日、しかも緊急上程せられておるのであります。
本法案はいずれも一部改正となつておりますが、その内容は、多年懸案となつていた農業団体の再編成の重要な一環であり、今後農村団体のあり方を決定するとともに、わが国農政上の根本施策の動向をも決定づける重要法案であります。かかる経過と本質を有する法案を、政府は、過去二回の審議未了について深く反省することを怠り、議員立法に名をかりて安易に提出するの無責任さと、国会も自改両党の妥協によつて乱暴な短期間の審査により通過せしめんとする態度につきましては、わが党は断固として反対せざるを得ないのであります。(拍手)このようなやり方については、全農民並びに心ある農村指導者や農民、農業団体をして納得せしめるものではなく、従つて真の協力を得て成果をあげることはきわめて困難であることを強く指摘いたしたいのであります。(拍手)
次に、農協法案のおもなる内容についてでありますが、まず農協法の改正案中、組合に関する事項中共済に関する事項の整備強化のための改正については、わが党の従来主張し来つた点であり、この点だけは賛成でありまして、これが成立いたしますことについて、あえて協力を惜しまないことを、この際明確にいたしておきたいのであります。
この点を除く組合の管理に関する事項中、組合役員の忠実義務を明文化したと称しつつ、連帯による損害賠償責任の規定を設けた点は、協同組合役員の責任の明確化そのものの結果として、経済力の乏しい、貧しい農民や、清新な情熱をもつて組合運動に邁進せんとする青壮年の役員選出の道を遮断し、農業を専業としない、いわゆる財産家や、組合運動の認識や経験なきボス的存在の人々によつて多数を占められ、農協運動が転換期に直面しつつある今日、農協役員に適材を得がたいことになり、組合の後退を余儀なくせしめることは必至でありまして、わが党の賛成しがたい点と申さなければならないのであります。(拍手)また、監督の強化によつて、行政庁が組合業務の全部または一部を停止し、役員の改選を命じ、進んでは組合の解散まで命ずることが強行いたされることになる点につきましては、協同組合の自主性に対する官僚の不当干渉を招来することとなり、民主主義の原則によつて立つ協同組合に対する官僚支配を現出する危険性すら包蔵するのでありまして、わが党は、組合員たる農民とともに、断じて容認し得ない点であることを指摘したいのであります。
次に、農業協同組合中央会を発足せしめんとする、まつたく新しい改正点についてでありますが、これは、要するに、極度の行き詰まりに直面いたしております全指連、都道府県指導連の救済のために八千万円程度の補助金を交付する代償とでも申しますか、中央会を設立し、これに下部の各級農協を義務加入せしめ、地域、業種等の各級系統農協の上位にこの中央会を君臨せしめ、しかも強大な指示権を付与せんとしておる点であります。このことは、地方行政庁の監督権の拡充強化と相まつて、完全なる官庁の農協支配であり、組合組織の基本原則である自由と民主主義の根本を破壊するものと言わなければなりません。ただいまわが党より提出いたしました修正案こそは、実に農協の大原則を確保し、組合の自主性を擁護せんがための九項目にわたる真撃なる修正条項でありまして、政府並びに自改両党の反省を強く要求し、もつて修正案に対し心からなる賛意を表するものであります。
次に、農業委員会法の一部改正について、反対意見の要点を、時間の都合上きわめて簡潔に申し述べます。
念のため前もつて表明したいことは、わが党はただ単に平面的に本法案に反対するのではありません。来る七月を期して、再度の任期延長にもかかわらず、農業委員の任期が満了し、委員の改選が行われるのであります。これを機会に農業団体の再編成を抜本的に断行すべき絶好の機会と言おなければなりません。しかるに、政府は、農業委員の任期を過去において二回延長したのでありますから、その間時間的にも余裕があり、諸般の準備を講ずべきであつたにもかかわらず、いたずらに躊躇逡巡いたしまして、その責任を怠つて参つたのであります。その無責任さは、まさに農民とともに糾弾に値すると言わなければならないのであります。
この法案のねらいは、農業委員会、都道府県農業会議、全国農業会議所、この三段階を系統的に改組、法人化し、特に都道府県全国段階におきましては、その性格を農民の利益代表機関として広汎な農政活動を行わしめんとし、一面、市町村委員会は、従来通り農地、食糧、農業総合計画等の処理機関として、政府の末端行政の一部を担当せしめ、それぞれ国費の支弁を受けて運営せられることとなつておるのであります。まことに矛盾撞着をきわめた性格と目的を同一系統組織内に持つておるのであります。すなわち、国より補助金を受ける政府まるがかえのこの団体が、はたして農民の利益代表機関として真に農民、農村の声を代表する農政活動が展開できるかいなかという点であります。農政活動の基本は、要するに、政府の農業政策の欠陥あるいはあやまち、それらから発する弊害に対し、毅然たる態度と厳正なる批判、しかして果敢なる行動をもつて、たとい権力者に対しても断固たる闘いをいどむことにあつてこそ、農民はこれを信頼し、支持、協力して行くのであります。しかるに、その経費、全額は国庫の支弁を受け、非民主的間接選挙によつて構成される都道府県以上のこの団体が、政府に向つて何を言わんとし、何を要求せんとするかは、おのずから明白と言わなければなりません。(拍手)すなわち、農民の真の要求や訴えを官製化する翼賛農政運動の復活であり、戦後版農業会の再出発以外の何ものでもないとわれわれは断じたいのであります。(拍手)
反対の第二点は市町村農業委員会についてでありますが、最近の反動的風潮と政府施策の欠如、またこれを助長せんとするがごとき農地政策に対することさらの無為無策は、旧地主を先頭とする農地改革の逆転を目的として地主全国組織が成立し、失地回復の要求の運動となつて現われておるのであります。全国にわたつて、やみ小作料の横行、農地の取上げ、転売、移動等の激増しつつあるにもかかわらず、市町村農業委員会は、かつての旧農地委員会当時の階層別選挙が改正せられまして以来、その委員会の構成は急変し、旧地主、農村ボス等に支配権を握られたため反動化し、農地に対する農民的処理能力を失うのみならず、この反動的傾向にむしろ拍車を加えるがごとき実情を各地に現出いたしておることは、御存じの通りでございます。この実情に対してこそ適切なる施策を講じ、働く農民の土地を守り、進んで農地改革の成果を維持するため、農業委員会の農地委員会への再改組、厳正なる運営を中心とする農地法の改正をもつて対処すべきであるにもかかわらず、今回の改正によつて、さらに農業委員会を後退せしめ、市町村農業委員会をまつたく骨抜きにせんとするがごとき改悪に対しましては、わが党は断じてこれを許容することができないのであります。(拍手)
さらに重要な点は、農業技術指導体系とそのあり方についてであります。この農業技術の指導体系に対し、抜本的な対策を講ずることを政府並びに原案提出者は放棄し、これを全然無視し、市町村農委に職員を置くというがごとき、あいまいな処置をもつて当面を糊塗せられ、暗に旧帝国農会の基盤を温存せしめるがごとき印象を受けることは、わが党の断じて理解することができない点であると申し上げなければなりません。(拍手)市町村における農業技術のあり方について何ら真筆な検討を加えていない点は、まことに遺憾千万である。かかる措置をもつてしては、とうてい日本農業の生産力の発展向上に寄与することはできない。従つて、農民生活の安定、農業経営の改善、これらに貢献できないことは言をまたないところでございます。
かかる実情にかんがみ、わが党は、右派社会党と共同して、去る第十六国会に農民組合法を提出したのでありますが、今第十九国会におきましても、この団体二法案の提出に先んじて、本年四月二十四日再び農民組合法を両社会党で提出したが、保守党の諸君は、この重要な組織法案に対しては冷然たる態度をもつて臨んでいるのであります。この農民組合法は、農民が団結して自主的に農民組合を組織し、団体交渉または団体協約の締結を行い、もつて農民の経済的、社会的地位の向上と農村の民主化を促進することを保護助長する基本立法でありまして、これを確立し、もつて農民がみずから農政運動憂展開し、進んで農民解放をするゆえんであると信ずるのであります。
最後に、農業団体再編成に対するわが党の態度を表明して討論を終りたいと思います。すなわち、一、農政は農民組合で、二、経済行為は自主的農業協同組合で、三、農地調整については農地委員会で、四、農業技術の体系は、受入れ体系は市町村で自主的に、専門技術の指導は国家で行う、この四大原則のもとにそれぞれ必要な立法措置を講ずるとともに、惜しみなき国の財政支出をもつて裏づけて行くことを、われわれは主張いたしたいのであります。(拍手)かくして、農業委員会の持つ重大使命はそれぞれ所を得て発展するのみであります。
わが党は、この農業委員会法一部改正に対する単なる反対ではなく、建設的方針のもとに発展的解決をはからんとするものであることをこの機会に表明いたしまして、討論を終りたいと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05419540522/24
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025・原彪
○副議長(原彪君) 足立篤郎君。
〔足立篤郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05419540522/25
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026・足立篤郎
○足立篤郎君 ただいま議題となりました農業団体二法案につきまして、私は、自由党を代表して、佐藤洋之助君提出の修正案並びに修正部分を除く原案に対しまして、いずれも賛成の意を表明せんとするものでございます。
いわゆる農業団体再編成と申されております本問題につきましては、過去数年間、農業団体関係者はもちろん、政界、学界各方面を通じて議論のきわめて多かつた問題でありますが、昨年春、政府は、その最大公約数とも申すべき調整案を作成いたしまして、第十六国会に政府提案としてこの二法案を提出したのであります。その後三国会にわたりまして審議を続けたのでありますが、遂に審議未了となつて参りました。そこで、今回は、以前の政府提案を修正いたしまして、保守三派間において慎重協議の結果、問題になりました諸点の調整をはかりまして、完全なる意見の一致を見出し得ましたので、議員提案として提出されたものでございます。
農業協同組合法の一部改正に関しまして私どもが賛成せんとするおもなる点は、次の三点でございます。
その第一は農業協同組合中央会を設立いたしまして、組合に対する総合指導組織を確立せんとすることであります。すなわち、組合の組織、事業及び経営の指導、組合の自治監査、組合に対する教育及び情報の提供、組合間の連絡その他調査研究等、諸般の事業を総合的に行うことといたしているのであります。農業協同組合組織は、御承知の通り、占領政治のもとにおいて、農村民主化の支柱として民主的農業協同組合の組織ができ三つたのでありますが、府県及び中央段階におきましては、その組織があまりにも細分化されたために、事業の運営に総合性を欠き、経営上も幾多の困難が伴つているのでありますが、特に市町村農業協同組合の経営、指導並びに自治監査等の自主的指導組織につきましては著しい欠陥を有し、農業協同組合の再建整備その急を要する今日、これが指導体制の確立こそ喫緊の要事と申さねばなりません。今回の改正案が、この点に第一の目標を置きまして、さきに申し述べました通り、中央会を設け、強力なる指導組織をここに確立せんとするねらいは、まさに時宜を得たものと確信する次第であります。(拍手)
次に、組合運営の責任を明らかにした点でありますが、最近における農業協同組合不振の原因は種々ありまして、政府も今日まで再建整備促進の方策を講じて来ておりますが、経営不振の一因としてあげられますことは、役員の責任につき明確なる規定を欠いておる点があげられるのであります。一改正案におきましては、役員が任務を怠つた場合、組合及び第三者に対する損害賠償責任に関する規定を設け、役員の組合に対する忠実義務を明文化しておる点が、組合員の利益を擁護するため適切なる処置と考えるのであります。
第三点は、農業協同組合の行う共済事業に関する規定の整備をはかつた点であります。すなわち、組合が共済事業を行おんとするときは、共済規程を定めて行政庁の承認を受け、共済事業を行う組合は出資組合でなければならぬ等の規定を設けているのでありますが、これは、農民の相互扶助の協同体として生れた農業協同組合の本質にかんがみ、当然の処置と考えるのであります。
次に、農業委員会法の一部改正案につきまして申し上げます。
農業委員会法が制定されまして以来満三年になりますが、この間、農業委員会は、農地の調整、自作農の創設維持、農業総合計画の樹立並びに食糧供出の調整事務等、農民の代表機関としてその使命の達成に努めて参つたのでありますが、この間の経験にかんがみ、さらに今後の情勢の推移、特に国際的農産物価格の値下りによる国内農村恐慌襲来のおそれのあります重大なる段階にある今日におきまして、その使命達成に万全を期しますため、従来の組織を一段と強化いたし、都道府県農業委員会を法人として、その名称を都道府県農業会議に改め、広く農業及び農民の代表機関として自主的活動のでき得ることを期待いたし、さらに農業及び農民のための全国的組織を結成し得る道を開かんとするのが本改正案であります。(拍手)
今日農民の利益を代表する団体としては農民組合がございますが、まことに遺憾なことには、その多くは政治的イデオロギーに偏し、思想的政治活動を行うことにうき身をやつしまして、団体間においては常に相剋摩擦を続けている現状でございます。かくのごとき現状におきましては、農民組合が広く全国農民の利益代表機関たることはとうてい思いも及ばぬことでありまして、まことに悲しむべき事態と申さねばなりません。しかしながら、わが国農業の宿命とも申すべき小農経営に基く農民の孤立分散性は、農業の利益を代表する政治的発言力を極度に弱めつつありますことは、いなめない現実の事実でありまして、恵まれざる農業及び農民のために広くその利益を代表する機関の確立こそ絶対に必要であり、この機能を通じて初めて他の産業に対して強くその意思を表明し、また行政に対しましても有権的に発言せしめることは、きわめて重要であると申さなければなりません。(拍手)今回の改正が、この点に着眼いたして、先に申し上げました通り、中央及び府県における委員会に法人格を与え、広く農業団体関係者を集めて自主的活動を期待せんとするねらいは、まさに時宜を得たものと確信いたす次第であります。
次に、芳賀貢君外提出にかかる修正案につきましては、提案の御趣意はよくわかるのでありますが、中央会に対する当然加入の問題等は、加入脱退自由という形式的明文よりも、むしろ、今日の段階におきましては、中央会による強力なる自治監査ないしは経営指導こそ農業協同組合再建途上において急務中の急務であつて、真に農民の利益を守りますためにも、この際原案によるべきであると確信いたしますので、遺憾ながらこの修正案に対しましては同調できないのであります。
以上申し上げました通りの理由により、私は佐藤洋之助君提出の修正案を含むこの二法案に賛成するものでありますが、農業団体の将来のあり方につきましては多くの議論のあることは御承知の通りでありまして、私は、今後、農民の経済団体たる農業協同組合が、その組織の合理化、経営の刷新をはかり、真に農民の信頼するに足る健全なる歩みを続けますとともに、他方、農民の一般的利益を代表し、農民の社会的、経済的地位の向上のために今回生れんとする農業会議が、いよいよその基礎を固めて、全国農民の代表機関として農民の信頼をかち得ますことを、心から念願するものであります。
以上をもちまして、私の賛成討論を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05419540522/26
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027・原彪
○副議長(原彪君) 日野吉夫君。
〔日野吉夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05419540522/27
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028・日野吉夫
○日野吉夫君 私は、日本社会党を代表し、ただいま上程中の農業協同組合法の一部改正の案に賛成し、農業委員会法の一部改正案に対し反対の意見を述べんとするものであります。(拍手)
本案は去る十六、十七国会に政府提出として提案されましたが、二回の国会とも審議未了になつているのであります。今回議員立法として新しく登場して来たもので、本法案の一は、指導連を中央会とし、補助を与え、農業協同組合の指導監督の機関たらしめようとする法案であり、他の一つは、農業委員会法を改正して、これも補助を与え、農業会議所をつくり、農政面の指導に当らしめんとするものでありまして、幾多の不備と不満があり、いずれは近く根本的な改正が企図され、抜本的な再編成が行われなければならない運命にあることも予想せられるのであります。
世上この案を農業団体再編成と呼んでおるのでありますが、われわれは、農業団体再編成に対しましては、五つの原則をもつて臨んでおるのであります。一、農政活動は農民組合に、一、経済活動は農業協同組合にやらせ、一、技術指導は国がこれに当り、一、供出関係事務、農地調整事務等は農業委員会に、一、さらに各種団体の代表をもつて農業会議所をつくり、農政全般の意思決定の機関とするというのであります。
日本農業の実情を大写しにしてみるときに、四つの島に八千三百万の人口、その四八%が農民であり、しかして食糧は二割の不足をしておる、イギリスに次ぐ世界第二の食糧輸入国であり、昨年度の輸入食糧は六億四千百万ドルに達して、輸入総額の三分の一を占め、自立経済達成上の一大悪条件をなしていることは、これは何人も認めざるを得ないところでございます。この悪条件の解消こそ国の重大懸案であり、この解決のために日本農政の重要性があり、農民に対する国の要請もまたここにあると言わなければならないのであます。しかるに、政府は、この問題の解決にはなはだ冷淡であり、今年度は一兆円予算の犠牲にまず農林予算を削減しておる。そうして農民の憤激を買い、さらにMSAの受諾に伴つて、食糧増産五箇年計画を持ちながら、自国食糧の自給政策を放棄して、外米、外麦依存の態勢をつくつて、農民に一大不安の種をまいているのであります。MSA小麦こそは、アメリカの新聞がこれを緑の反乱と呼んでいるもので、昨年の十一月、米下院の選挙にあたり、ウイスコンシン州の保守党絶対の地盤において、農業不況に対し保護政策をとらなかつたアイゼンハウアーの政策の欠点によつて、ここで一大惨敗を喫した歴史を持つこの因縁付の小麦である。この名誉回復として、農産物価格維持法に基く農業教書によつて買い上げた因縁付の小麦であることを、われわれは銘記しなければならないのであります。(拍手)
以上のような事情のもとで、国の要請たる国内食糧の自給を目ざし、その自給度を高める自立経済の基礎条件の一つとして最も重要な意義を持つものがこの農業団体で一あることは論をまたないのであります。この団体の再編にあたり、いかにそれぞれの自主性を尊重して、摩擦なく、生産意欲を旺益にするかが最も知能的考慮を払わなければならない問題であるにもかかわらず、今回提出されました二法案は、その名のごとく、きわめて消極的なそれぞれの一部改正案であつて、両案とも国が若干の補助を与えて補強工作を試みるがごときものであつては、われわれは断じて日本農村の根本的解決策たり得ない点において遺憾の意を表せざるを得ません。(拍手)かかる意味から、われわれは、農業団体再編成の五原則を主張するとともに、日本農政のあり方、団体編成のあり方は、必ずわれわれの主張するこの五原則の線まで到達しなければ安定しないことを確信するものであります。
今日上程の協同組合法の一部改正に対しましては、経済活動の中心たるべき協同組合の弱体化は、今日農村の不安を巻き起しておる実情であります。これに対し、左派社会党と協力いたしまして、全幅の努力をいたしましたにもかかわらず、その一致点を見出し得なかつたことはまことに遺憾でございまするが、現段階における農協の実情にかんがみ、若干の不服は忍んで、農協強化の観点から、次に読み上げます条件を付してこれに賛成をいたしたのであります。
附帯決議
農業協同組合の本質よりすれば、あくまで加入脱退の自由を主張すべきで、従つて原案による都道府県中央会に加入した単位農業協同組合が中央会への当然加入には賛成できないが、農業協同組合の現状よりして、すみやかに農業協同組合の指導体系を確立せねばならぬ緊急性に迫られている現状と、中央会そのものの性格にかんがみ、政府はこれが対策に万遺憾なき措置を講じ、その実現を期すべきで、原案の当然加入はそれまでの暫定措置という条件を強く付して原案に賛成する。
こういう意味で、この案にやむを得ず賛成したという事情になるのであります。(拍手)
次に、農委法の一部改正に対しましては、いかなる観点からするも賛同し得ないという結論に達せざるを得ないのであります。
本法案の意図する農業会議所は、政府の補助を受けて立つ農業団体の代表をもつて構成するものでありまして、この団体が正しく農民の意思を代表し得ると考えるならば、実にこつけいと言わなければならないのであります。(拍手)今、日本農民が正しく意思を表示し、団体交渉並びに団体協約により一歩々々利益を守り、農民の権利を主張し得る民主的団体は、農民組合以外には断じてないのであります。労働組合法がすでに施行せられ、国民の四八%を占める農民のために農民組合法のないことは、いかにも片手落ちではないか。われらは前国会から農民組合法案を提出しておるのでありますが、何ゆえか、この両法案が通過したにもかかわらず、農民組合法案は審議未了として残されようとしておる実情にあることを、まことにふしぎに感ぜざるを得ないのであります。(拍手)ただいま足立君から農民組合に対する非難がありましたけれども、あまりにも時代感覚を欠くものと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)かくして、正しい農民の要求に対し一顧も与えるの雅量なく、黙々増産にいそしむ農民に報ゆるに約束の違反と期待権侵害を常習とする吉田内閣並びに与党諸君に対し、われわれは率直に警告せざるを得ない。声なき農民に黙々反抗の用意があるということを。MSA小麦の輸入が、景品にアメリカの緑の反乱をも輸入しつつあるということを。
保守三党の諸君、釈然として農業委員会法を否決し去り、農民組合法をすみやかに通過せしめられんことを望んで、私の討論を終る次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05419540522/28
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029・原彪
○副議長(原彪君) これにて討論は終局いたしました。
まず、農業委員会法の一部を改正する法律案につき採決いたします。本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05419540522/29
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030・原彪
○副議長(原彪君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り決しました。(拍手)
次に、農業協同組合法の一部を改正する法律案の採決に入ります。
まず、本案に対する芳賀貢君外四名提出の修正案につき採決いたします。芳賀貢君外四名提出の修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05419540522/30
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031・原彪
○副議長(原彪君) 起立少数。よつて修正案は否決されました。
次に、本案につき採決いたします。本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05419540522/31
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032・原彪
○副議長(原彪君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り決しました。(拍手)
本日はこれにて散会いたします。
午後七時二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05419540522/32
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