1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十九年五月二十五日(火曜日)
議事日程 第五十二号
午後一時開議
第一 北海道開発審議会委員の選挙
第二 公職選挙法の一部を改正する法律案(内閣提出)(閣法第七号)
第三 出資の受入、預り金及び金利等の取締に関する法律案(内閣提出)
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●本日の会議に付した事件
放射能を含む降灰の国民健康に及ぼす影響の対策に関する緊急質問(松前重義君提出)
有機合成化学工業の振興に関する決議案(首藤新八君外二十三名提出)
地方財政法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院回付)
日本国とアメリカ合衆国との間の二重課税の回避及び脱税の防止のための条約の実施に伴う所得税法の特例等に関する法律案(内閣提出、参議院回付)
日程第一 北海道開発審議会委員の選挙
日程第二 公職選挙法の一部を改正する法律案(内閣提出)(閣法第七号)
日程第三 出資の受入、預り金及び金利等の取締に関する法律案(内閣提出)
航空機製造法の一部を改正する法律案(内閣提出)
農林漁業組合連合会整備促進法の一部を改正する法律案(足立篤郎君外十名提出)
午後三時十一分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/0
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001・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) これより会議を開きます。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/1
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002・荒舩清十郎
○荒舩清十郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、松前重義君提出、放射能を含む降灰の国民健康に及ぼす影響の対策に関する緊急質問を許可せられんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/2
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003・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 荒船君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/3
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004・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
放射能を含む降灰の国民健康に及ぼす影響の対策に関する緊急質問を許可いたします。松前重義君。(拍手)
〔松前重義君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/4
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005・松前重義
○松前重義君 私は、日本社会党を代表いたしまして、原子灰の降下いたしております現状に対しまする、これが国民生活に及ぼす影響につきまして、政府の対策につきまして緊急の質問を行おうとするものであります。(拍手)
去る三月一日ビキニ環礁付近のアメリカによる水爆の実験は、有史以来のできごとでありまして、これは人類の歴史始まつて以来私どもが当面いたしました最初の、いまだ知らない経験であつたのであります。この実験によりまして、折しも畠漁いたしておりました日本漁船第五福龍丸は、危険水域よりはるかに遠く位置しておつたのにもかかわらず、乗組員二十三名は、死の灰をかぶつて放射能による原子病状を呈し、見るも無残な姿となつて帰国いたしたのであります。第五福龍丸事件以後、南方から帰つて参りまする漁船やまぐろには必ず人工放射能が検出されまして、最近におきましては近海の魚族にも放射能を保有するものさえ発見されて参りました。しかしながら、まぐろや漁船にのみ放射能が発見された時代は過ぎまして、最近では、局地的、局部的な水爆の恐怖時代は去りまして、全国的な、普遍的なものになろうとしておるのであります。
張る五月十六、七日の雨の日には、降下いたしましたその雨の中に含まれた放射能は、京都では八万カウントであるといい、京都大学よりこれが報告されたのであります。大島に降下した灰は限界量の約十倍に達しておると新聞紙は伝えております。もしこれが真実であるといたしますれば、これこそ住民の生命に関する問題であります。昨今全国に降り続く雨には幾千カウント、幾万カウントの放射能が検出され、全国津々浦々に至るまで原子灰が雨とともに降つておるのであります。野菜からも魚からも水道からも放射能が検出されております。五月二十三日宮古に帰つた神通丸の乗組員は、七名が放射能症の疑いで白血球の減少が認められておるとのことであります。船長の話によれば、三回にわたる水爆実験当日には、この船は爆心地より千二、三百マイルも離れた所に位置していたということであります。
このような事実に照しまして、今日の各地の原子灰の降下の現象を政府はどのように見ておられるのであるか。政府の諸機関の動きはまことに断片的でありまして、総合性を欠いて不活発なように見受けられるのでありますが、この点に対してどのようにお考えになつておるかを伺いたいと思うのであります。
わが党は、いち早く原子力特別委員会を設置いたしまして、政府に対しまして、厚生、文部、通産、農林、気象台、学術会議等の各機関にわかれております研究事項を統一いたしまして、その対策本部を設け、総合的な調査を行うことを申し入れたのであります。第二に、各国より飛んで参ります原子灰の研究を行いまするために、これが検出と、原子灰によつて汚染した場合、都市、農村からの待避——どのように農村から待避するか、これらの原則を決定するための基本研究を確立すること、これらの二つの問題を申し上げたのであります。また、米国に厳重なる抗議を申し込むことをも、あわせて要請いたしたのであります。ところが、水爆実験の結果、あの文盲の多いところのマーシヤル群島の気の毒な住民たちまでが、国連にその水爆実験に対する抗議を申し込んだのであります。その原水爆の実験に対しまして、政府はいまなお拱手傍観して対策をお持ちでないのかどうか、この点につきまして、具体的な対策がありましたら、お伺いしたいと思う次第であります。
重要なことは、原水爆の恐怖も、放射能の雨の降下も、その科学的な対策の樹立によりまして、その危険限界の決定によりまして、少くとも、具体的な対策さえ立ちますならば、国民の原子灰に対する恐怖だけは払拭できるのであります。私は、ここに、二、三の観点から、政府に忠告をし、政府に質問をいたしたいのであります。これは私の質問に答える一片の答弁でありませんで、政府の具体的な、責任をもつて実行されるところの御答弁をお願いいたしたいのであります。
まず第一は、原子灰降下の現代に対する公衆衛生上の対策であります。わが国に降下いたします雨や、また大空に充満いたしております空気と気流、水道や野菜、動物などを初め、特に人体への影響等につきまして、ぜひ総合的な一貫した調査研究が必要であります。この調査は、全国的に計画的に降灰現象を測定いたしまして、その測定方法や単位などを規格化いたしまして、一定の基準を設定することが必要であります。現在のところ、これはまことに乱雑な状態に放置されております。このようにいたしまして、この調査研究の結果が出るといたしますれば、これこそ原子灰の降下の恐怖におののいておりまする国民大衆をして、安堵の胸をなでおろさせるものであると申すことができるのであります。これらの断片的調査は、大学のあるところ、研究所、気象台の存在するところで行われているのみでありまして、これを局地に限定することなく、山村や僻地にまで及ぼすべくこれを組織化しなければ何の意味もないのであります。奄美大島や九州地方、四国地方、八丈島などに対しても、普遍的にこの調査を行わなければなりません。雨は大地の至るところに降下するのであり、人は大地上のどこにも生活しているのであります。また、この調査は、長期にわたつてその反応を調査せなければなりません。このような意味におきまして、この調査は、長期におたり、白血球の減少の状態をもここに具体的に医学的に調査しなければならないのであります。まず政府はこれらの降灰に関しまする調査費をわずかながら支出することになつたようでありましたが、このような断片的な、小規模な、計画性のない予算では、とうていこの目的を達することはできないのであります。政府は、この総合的な調査に対しまして、どのような抱負と構想をお持ちであるかをお伺いいたしたいのであります。
公衆衛生上の対策の第二は、以上の調査により、人体にいかなる影響を与えるかを調査しなければなりません。現に、一部では、初めに申し上げました通り、白血球の減少状態や、これが長期にわたつて人体にいかなる作用を及ぼすか、これらに対する詳細なる調査が行われなければならないのであります。これによつて新しい医学上の問題の総決算の道を見出すべきであると思うのであります。これに対する政府の調査の現状並びにその計画について、国民の納得の行く御答弁をお願いしたいのであります。(拍手)
以上の二つの基本的な調査によりまして、どれだけの放射能が放出されればはたして人体は危険であるか、その危険量の決定が問題であります。国民は、日々の新聞によりまして、幾十、幾百、幾千、幾万カウントの放射能が危険であるかについて疑問畠持つているのであります。暗中模索の状態であります。この不安を除去するために、危険量の決定と危険区域の設定がぜひ必要であると思うのであります。しかして、いたずらに国民を不安に追い込むことのないように、明確なる対策を樹立すべきであります。政府のこれに対するお考えを承りたいと思うのであります。
さらに、現在問題になつております雨や野菜、その他水のみでなく、いわゆる上層気流の関係と空気の汚染の調査が必要であります。この課題については日本のどの機関も研究されていない問題でありますが、これまたわが国国民健康保健上ぜひ必要なものであります。これに対する政府の具体的な構想はどのようなものをお持ちであるか、これを承りたいのであります。
以上が私のお伺いしたい諸点でありますが、この研究にぜひ必要なものは恒久的研究機関の設置であります。断片的、瞬間的な個別的調査と研究は、それ自体対策を樹立するには不可能であります。私どもは、今こそ原子力に対し、アジアにおける被害を受けた唯一の文化を有する国といたしまして、その義務を感じ、世界人類に対して歴史的使命を果すべきであります。これこそ、ちやちな軍隊や自衛隊よりも何よりも、日本民族の生存にとつて最も必要なる自衛の手段であると信ずるのであります。(拍手)政府はここに恒久的調査研究機関を設立する意思があるかどうか、お伺いいたしたいのであります。
わが党は、左派社会党とともに、科学技術の振興の観点からぜひとも科学技術庁の設置が必要であることを唱え、現在議員立法として科学技術庁設置法案を衆議院に提出いたしておるのであります。今申し上げました原水爆対策につきましても、恒久的総合機関が必要であり、これからの問題こそ科学技術庁設置の必要性を物語つているのであります。しかしながら、科学技術庁の設置について、政府はどのようなお考えをお持ちであるか、ここに明確に御答弁を願いたいと思うのであります。この恒久的調査研究機関の設置、科学技術庁の設置など、その他今まで申し上げました総合的調査には相当の国費を要するものと考えるのでありますが、この予算の支出を早急に行うべきであると存ずるのであります。これこそ思い切つてぜひとも支出しなければならない予算だと信ずるのでございますが、予算支出の御意思があるかどうかをお伺いいたしたいのであります。
以上、私の質問は、政治論を離れ、緊急欠くべからざる原子降灰に関する国民健康上の質問でございまするが、最後に一点政府にお伺いいたしたいことは、この恐るべき原水爆実験の結果発生いたしましたもろもろの被害と恐怖に対して、国連や米国に対して何らかの意思表示をなされたのであるか、またなされようとなさつておるのであるか、これらの点についてお伺いをいたしたいのであります。かつて岡崎外相が原水爆実験に協力すると演説された問題でありまするが、まさかこの国民の犠牲を甘んじて受けるというのではないでございましよう。まことの協力は、世界に向つての科学的資料に基く平和への発言でなければならないと信ずるのであります。(拍手)すなわち、水爆実験に対して、厳重なるこれが禁止と警告を発することにあると信ずるのでありまするが、政府の所見をお伺いいたしたいのであります。
以上をもちまして私の質問を終ります。(拍手)
〔国務大臣緒方竹虎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/5
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006・緒方竹虎
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。ただいまの問題は、るるお述べになりましたように、国民生活に影響するところ大きいと考えまするので、政府といたしましては、十分調査の上、早急に所要の具体策を立てたいと考えております。
なお、詳細につきましては所管大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣草葉隆圓君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/6
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007・草葉隆圓
○国務大臣(草葉隆圓君) 第五福龍丸事件以来、ことに最近の降雨につきましては、検査いたしました結果、雨水中にかなりの放射能の存在を認められておりまするので、上空には放射能を帯びた塵埃が流れておることが想像されるのであります。張る五月十七日以降は降雨ごとに検査をいたして参つておりまするが、その汚染の度は降雨ごとに減じて参つております。現在は、各地の大学なり気象台等の協力を得まして、でき得る限りのデータの収集に努めている次第でございます。
そこで、御指摘の点につきまして、第一に人体に対じまする影響でございまするが、これは、放射能の関係におきまして、現在まだ世界的には確たる恕限度が学問的に確立されておらない状態たと存じております。ただ、アメリカにおきまして相当詳しい資料等が出されておりまするが、それによりますると、一週間大体三百ミリレントゲン程度までは、人体は恕限度として示されておる次第でございます。なお、現在実際的な影響はどの程度に来るかというのは、今後これらの資料を十分連続的に調査研究いたしまして、そして科学的に集計した結果でないと、にわかには判定しがたい状態であると思います。
なお次には、体内的に及ぼしまする経口的——口から通りまする体内的の影響の問題でございまするが、放射能物質が吸収されて、これが体内に沈着いたしまする場合におきましては、従来の例から考えまして、物質の種類によりまして、吸収率なり、あるいは沈着場所なり、なお効力持続の期間なり、排泄率等に相違を来して参つておりまするから、一応一律に恕限度を決定することは困難であると存じます。これらの点を総合いたしまして、第五福龍丸以来、従来の原爆症調査研究協議会を拡充強化いたしまして、この方面によりまする公衆衛生、食糧等にまで手を広げて検討をいたしておりまするが、なお現在の状態——降雨等、あるいは雨水等にありまする関係から、今後十分調査を広範囲にわたつていたす必要を感じておりまするので、現在の機構をもつと広げて根本的な調査をいたして参りたいと考えております。これらの点につきまして、現在の調査方法の充実と完備につきましては、御意見を十分尊重いたして参りたいと思います。(拍手)
〔国務大臣保利茂君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/7
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008・保利茂
○国務大臣(保利茂君) 水爆実験による太平洋上のわが国漁業に及ぼす影響につきましては、あるいは海流、海水の影響がどうであるか、生物の影響がどうであるか、魚体に対してどういう影響を及ぼしているか等について根本的に調査をする必要がございましたので、千四百万円の支出をいたしまして、水産講習所の俊鶴丸で、東大の檜山教授を初め十六名の学者、専門家を現地に派遣いたしまして、ただいま根本的な調査を実施中でございますから、漁業に対する根本の対策の必要がございますれば、その調査の結果にまつことにいたす所存でございます。
なお’農産物等に関しまする影響につきましては、農業技術研究所でかつて長崎の原爆被災の際に相当研究をいたしておりますが、今次のことにつきましても農業技術研究所をして十分調査研究を遂げしめ、そうして必要な措置を講ずる考えでございます。(拍手)
〔政府委員福井勇君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/8
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009・福井勇
○政府委員(福井勇君) 先般日本学術会議において放射能の影響についての研究連絡を行う総合委員会ができまして、その一部門として、諸般の測定の連絡と測定の基準の統一を目的として具体的方法を検討中であります。その結果は近く政府に答申せられまして、科学行政協議会の議を経て関係機関においてこれが実施せられることになるはずであります。いずれにいたしましても、これが緊急の対策は、地球上初めての被害者である日本の機関でこの研究に万遺憾なきを期すべきであることは当然でございますが、あの事件以来、これらの問題について一歩先に研究しておるであろうと思いました米国側にいろいろその連絡をし、あるいはイギリスのハーウエル研究所、あるいはフランスのサツクレーやシヤテイヨン、あるいはドイツのハイゼンベルグ等に私はただちに連絡をいたしましたが、まだこういう種類の被害に対する検討がなされておらないのか、その返事がまだございません。しかし、日本は自主的に、その検討についてはせつかく遺憾なきを期したいと存じております。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/9
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010・荒舩清十郎
○荒舩清十郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、首藤新八君外二十三名提出、有機合成化学工業の振興に関する決議案は、提出者の要求の通り委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/10
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011・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 荒船君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/11
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012・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
有機合成化学工業の振興に関する決議案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。首藤新八君。
〔首藤新八君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/12
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013・首藤新八
○首藤新八君 私は、ただいま議題となりました首藤新八君外二十三名共同提案による有機合成化学工業の振興に関する決議案に対し、提案者を代表して、決議案を朗読の上、趣旨弁明をいたし、各党一致の御賛成をお願いいたす次第であります。
まず決議案を朗読いたします。
有機合成化学工業の振興に関する決議案
わが国経済自立の目的を達成するため、特に国際収支の現状にかんがみ、政府は、この際有機合成化学工業を急速に確立するよう万全の措置を講ずべきである。
右決議する。
わが国経済の動向、盛衰に決定的役割を持つ手持ち外貨資金の情勢を見ますると、朝鮮事変以来一昨年二十七年末には十一億数千万ドルの巨額に達しましたが、これがためかえつて国内の物価高と消費のブームを出現いたしまして、昨年春以来の貿易は俄然逆調に転じ、遂に昨年の国際収支は一億九千万ドルの支払い超過となり、せつかく蓄積した外貨手持ちは年末九億ドル台に転落したことは、すでに御承知の通りであります。しかも、本年に入りましても依然として支払い超過が続いております関係上、三月末には遂に八億三百万ドルに激減いたしたのでありますが、しかもこの中には、インドネシアの一億三千万ドルを初め、貿易面における清算勘定国に焦げつきとなつておる合計約一億ドルを含んでおるのでありまして、これを差引きますると当面使用できる外貨は六億ドルとなり、これに加えて別途に綿花借款並びにその他の借入金は一億ドルに上つておるのでありまして、これらを清算いたし、ますれば、わずかに五億ドル内外という驚くべき枯渇を示しております。しかも、輸出貿易は最近若干好転七ておりますけれども、なお入超を継続し、駐留軍の消費並びに特需発注の不振、外航運賃の低迷等々相まつて、今後なお一層減少するであろうことが想像されるのでありまして、一歩誤れば経済破局即悪性インフレ突入という、まさに重大なる経済危機に直面しておると申し上げてもあえて過言でないと信ずるものであります。いわんや、近い将来決定するであろうところの東南アジア諸国に対する賠償の支払い、米国に対するガリオア、イロア等、占領下に受けた一連の経済援助に対する決済と、さらに、将来駐留軍の撤退が実現せんか、これによつて必然的に起る特需の激減並びに年額二億ドル内外に上つておる軍人及び関係者の費消しておつたドル貨が皆無になる場合に思いをいたしますれば、いよいよ暗澹たるものがあり、最近世界各国ともわが国経済の前途に異常の関心と悲観的見解を持ち、為替レートの引下げが云々されておりますことは、実に如上の事情に胚胎するのでありまして、まことに憂慮にたえません。すなわち、このときにこそ、政府は、何ものにも優先して、直面せるこの経済危機に対し、総意、総力を結集し、もつて危機を回避し、進んで国際収支改善による自立経済達成に抜本塞源的方途を講ずべきだと確信いたすものであります。
むろん、政府も、これらの点を重要視し、緊縮政策のもとに、食糧の増産、輸出の振興、輸入の抑制等々、総合的かつ強力なる施策を推進しつつあることは何人も認めるところでありますけれども、わが国工業技術の水準、並びに輸出相手国がおおむね自国の経済強化に専念し、国内産業保護政策に一貫しておる現状から見て、これによつて行き詰まつたわが国経済の打開を期待するほど輸出の振興を見ることは思いも寄らぬことでありますとともに、さらに政府は、一方においては、MSA協定による援助の一環として、円払いによる五千万ドルの小麦を輸入し、本年もまた巨額の輸入を推進しつつあるやに聞くのでありまして、当面まことにやむを得ない措置だとは理解できますけれども、結局目先の危機を糊塗する弥縫策であつて、根本的の経済政策改善には何ら効果なきのみならず、将来あくまでも返還せなければならぬ借款でありますがゆえに、かえつて大きな禍根を残し、わが国経済の将来をいよいよ弱体化し、いよいよ破局に追い込むであろうことを憂え、かつ遺憾とするものであります。すなわち、私は、かかる安易な弥縫策に終始することなく、思い切つた輸入の抑制と、これにかわるに国産原料をもつてする産業の振興を強く主張するものであります。
御承知のごとく、由来、もが国は資源に乏しきゆえをもつて、加工貿易を宿命と考え、むしろこれを国是として推進しておるのでありまして、ことに敗戦のため国土の大半を喪失した今日、一層この考え方に衆知を結集しておるのでありますが、わが国にも、他国に比して遜色なく、むしろ豊富と思われるものに、低廉なる水力電気、無尽蔵の石灰石、低品位の石炭及びかんしよが数えられるのでありまして、この国産原料を経済自立の活素剤として、有効適切なる処理、すなわち有機合成化学工業の振興に格段の措置を講じますれば、直面せる経済危機打開も必ずしも困難でないことを確信いたすものであります。
近年世界各国における繊維の動向を見ますと、衣料品はむろん、工業用に至るまで、加速度に合成化学繊維に移行しつつあるのでありまして、品質の向上と価格の安定によつて、遠からず合成化学繊維万能時代の到来を予想されるのであります。わが国におきましても、人絹、スフ等、化繊の生産は年年増加しつつありますが、遺憾ながら資源に限りがあつて、手放しの楽観は許されないのでありますが、もし無尽蔵の石灰石と低品位の石炭を原料とする合成化学繊維の振興に格段の措置を講じ、将来国内需要に原綿の輸入を根絶するところまで増産せしめますれば、年額少くとも三億ドル以上の外貨節約は期待できるのであります。
さらに、合成ゴムもまた、最近各国とも品質、価格いずれも天然ゴムにまさること万々とし、かつ国防的観点からも、競うてこれが増産に強力なる措置を講じておるのでありますして、米国のごとき、国営のもとに、昨年の生産は九十万トンに達し、全消費量の大半を合成ゴムに代替し、経済的にも政治的にも顕著なる効果を発揮しておるのであります。ひとりわが国のみ、敗戦当時合成ゴムの生産を禁止されましたがゆえに、今日なお生産皆無の状態に放任されておりますが、もし、かんしよを原料とするアルコールによつて合成ゴムを生産いたしますれば、農家経済の強化はむろん、アルコール産業をも振興し、低廉にして安定せる価格と優秀なる品質によつてゴム工業の発展と繁栄に画期的効果をあげ得ることは、各国の事実が明白にこれを立証いたしておるのであります。
さらにまた、合成樹脂の生産も、政府にして強力なる措置を講じますれば、鉄鋼、木材その他のわが国の稀少
資材の代替、及び新資材としてその用途をいよいよ拡大し、これによつて資材輸入のため消費しつつあります外貨を節約するに大きな効果を期待できるのであります。
すなわち、以上、政府のよろしき措置を講じますれば、少くとも推算年額五億ドル以上の外貨支払いの節約を確信するものでありまして、これによつてこそ、初めて国際収支を根本的に改善し、自立経済の確固たる基盤を築き、よつてもつて民生の安定、経済の繁栄を期待されますがゆえに、政府は、右有機合成化学工業育成のため、所要資金の確保、租税の軽減、その他急速かつ適切なる措置をとらるるよう強く勧告する次第であります。
何とぞ御賛成をお願いいたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/13
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014・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/14
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015・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて本案は可決いたしました。
この際通商産業大臣から発言を求められております。これを許します。通商産業大臣愛知揆一君。
〔国務大臣愛知揆一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/15
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016・愛知揆一
○国務大臣(愛知揆一君) ただいまの御決議に対しまして政府の所見を申し述べます。合成繊維、合成樹脂等有機合成化学製品が、天然繊維、鉄鋼製品等の代替品といたしまして使用せられ、これらの輸入防遏に多大の効果があり、さらに進んで輸出による外貨獲得にもきわめて有望でありますことは、ただいま御趣旨の御弁明にもありました通りでございます。政府といたしましても、従来から有機合成化学工業の育成と技術の振興に努力して参つたつもりでございますが、このたびの院議による御決議の御趣旨に沿いまして、努力を新たにし、さらに一層その育成に努めまするとともに、その他の合成樹脂並びにこれらの原料製造工業、たとえば石油化学工業等に対しましても、格段の推進措置を講じ、その急速な育成確立に努力いたしたい所存でございます。(拍手)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/16
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017・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) お諮りいたします。参議院から、内閣提出、地方財政法の一部を改正する法律案、日本国とアメリカ合衆国との間の二重課税の回避及び脱税の防止のための条約の実施に伴う所得税法の特例等に関する法律案が回付されております。この際議事日程に追加して右回付案を逐次議題とするに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/17
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018・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
右回付案を逐次議題といたします。
地方財政法の一部を改正する法律案の参議院回付案を議題といたします。
〔森三樹二君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/18
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019・森三樹二
○森三樹二君 ただいま議題となりました、内閣提出、公職選挙法の一部を改正する法律案につきまして、特別委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
まず、議案の趣旨を簡単に申し上げます。
昨年六月十八日出されました自治庁の選挙部長通達以来、学生選挙権の問題は世上種々の論議を引起した問題でありますが、政府は、何らかの立法措置によりこの問題の解決をはからんとして、その具体的内容について選挙制度調査会に諮問をいたしたわけであります。選挙制度調査会は、昨年十月二十一日以来慎重に審議し、十二月十七日に、現在における学生、保安官等の生活の実態にかんがみ、公職選挙法中、修学のため寮、下宿に居住する学生、生徒または営舎内もしくは船舶内に居住する保安官もしくは警備官の住所は、その居住地または営舎もしくは定繋港の所在地にあるものと推定する、但し郷里を住所として申し出た場合はこの限りではないという趣旨の規定を設け、これらの者の選挙権の行使及び住所の認定を容易ならしめることを適当と認める旨の答申を政府に提出し、政府としては、この答申を尊重し、その趣旨を具体化せんとして、この法律案が提出された次第であります。
その内容は、まず第一に、公職選挙法上の住所に関する要件を認定するにあたつては、引続き三箇月以来修学のため同一市町村の区域内にある寮、下宿等に居住している学生、生徒については、引続き三箇月以来その市町村の区域に住所を有するものと推定することといたしたのであります。但し、すべてのこれらの者の住所が修学地にあると推定されますと、か心つて住所の実態から離れる憂いもあることとて、学生、生徒が父母その他の親族が現に居住している他の市町村の区域内に住所を有するものと当該市町村の選挙管理委員会に申し出た場合には本規定は適用されないことにいたし、この際については、市町村の選挙管理委員会が具体的事情によつて判定することになるわけであります。
改正の第二点は、営舎または船舶内に居住する保安官または警備官についても、前に述べました学生、生徒と同様の取扱いをするように規定されたのであります。
第三点は、以上の推定規定は、本人の申出によつて排除され、市町村の選挙管理委員会によつて具体的に決定されるわけでありまするが、その他の方法によつて反証をあげ、推定をくつがえすことも選挙管理委員会の権能にあることを、念のために規定した確認規定であります。
委員会は、本案の付託以来、塚田長官より提案理由の説明を聴取いたしまして、その後数回の委員会を開催し、政府に質疑を行いまして、特に自由党大村委員、鍛冶委員よりは学生、生徒の住所の要件、生活の本拠の意義、住民登録との関係等について、改進党の高瀬委員よりは、さらに地方選挙における選挙の適正化等について、また社会党両派の島上委員、竹谷委員よりは、保安官、警備官の選挙権行使の実情等に対し、きわめて熱心なる質疑が行われました。その内容は省略して会議録に譲ることといたします。
その後、去る五月六日、自由党の鍛冶委員より、学生、保安官及び警備官の選挙権の要件たる住所は郷里にあるものと推定し、特に申し出た場合はこの限りではないという修正案が提出せられました。この修正案に対する質疑のおもなる内容について申し上げますと、まず島上委員より、政府の提案に対し与党たる自由党より修正案を提出しなければならなかつた埋骨由について、並びに提出者の主張する民法上の住所の要件に選挙法上の住所を一致させなければならない理由について、他の法律における用語の意義が必ずしも同一でないことの例を引いて修正案の提出者に質疑が行われ、これに対し、提出者よりは、法理論上政府案では妥当でないと考えられるので修正案を提出したのであり、用語については、法律上用語の定義が示される場合と示されない場合とでは取扱いが異なり、選挙法上の住所は民法二十一条の住所と一致さすべき旨の答弁がありました。なお島上委員は、この修正案によつて学生の選挙権の行使は不便となり、選挙権剥奪にひとしい結果を招来するのではないかとの質疑が行われました。この質疑に対しましては、法律はただ便宜の面より解釈することは不当であるというような答弁が行われ、なお並木委員、石村委員等からは、塚田国務大臣に対し、法案提出の責任者として、政府原案と修正案のいずれを支持するか、またこれの本会議における表決に際してはいかなる態度をとろうとするのかとの質疑に対し、塚田国務大臣は、法案の提出者としては当然原案を支持するが、表決に際しては党人として党執行部の決定に従う旨の答弁がありました。次に飛鳥田委員より、住所の意義について種々の例をあげて、選挙法上における住所を目的論的に解釈すべきではないか、また選挙法上の住所を必ず私法である民法の住所と一致させなければならないとするのは、どうしても理解ができないではないかとの質疑が行われました。提出者よりは、住所はただ便宜という目的論的見地から解釈することは絶対に不可であり、正しい概念規定に基いてのみ解釈すべき旨が力説せられ、内閣法制局からも、現在判例、学説ともに、選挙法上の住所は民法上の住所と同一としている旨の答弁がありました。さらに川上委員より、この修正案は学生の選挙権を剥奪するものではないか、これは学生の選挙権行使を妨害しようとする政府及び与党の陰謀であるとの質疑に対しましては、塚田国務大臣及び修正案の提出者より、そのようなことは絶対にない、修正案によつても、学生が選挙権を行使しようとするならば、その要件を備えておれば、その申出により、何らの問題もなく選挙権を行使させようとするものであり、その行政事務の執行には極力学生の便宜をはかるよう措置すれば、その危惧は除かれる旨の答弁がありました。竹谷委員よりは、選挙権の行使は、国民はひとしく法のもとに平等であるべきであり、学生にのみ選挙権の行使に際してことさらに申出等の行為を要求することは、憲法第十四条に違反するものではないかとの質疑に対しましては、修正案の提出者より、決してさようなことはなく、学生が選挙権を修学地で行使しようとするならば、要件を備えて選挙管理委員会に申し出ることによつて、何らその行使が妨げられるものではない、そのおそれは全然なく、住所をすべて住民登録によつて規定することが最も妥当な方法と考える旨答弁され、なお鈴木委員よりも、修正案は選挙権の行使を困難ならしめるものではないかとの質疑が行われました。
かくて、去る二十一日質疑を終了し、ただちに討論を行いましたところ、自由党の田嶋好文君、改進党の高瀬傳君より修正案賛成、社会党飛鳥田一雄君、鈴木義男君より原案賛成、小会派川上貫一君より修正案、原案ともに反対の討論が行われました。
採決の結果、起立多数をもつて修正議決すべきものと決した次第であります。
なお、詳細は速記録で御承知を願います。
以上御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/19
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020・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) これより討論に入ります。島上善五郎君。
〔島上善五郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/20
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021・島上善五郎
○島上善五郎君 私は、日本社会党を代表して、ただいま上程になりました公職選挙法の一部を改正する法律案に対しまして、公職選挙法改正調査に関する特別委員会において修正可決されました案に反対し、政府原案に賛成の意見を開陳せんとするものであります。(拍手)
学生の選挙権行使に関する住所の推定につきましては、在来、一般人と同様に、三箇月以来引続き居住する修学地の寮、下宿にあるものとされまして、その間に何らの矛盾、不都合もなかつたのであります。しかるところ、昨年六月十八日、自治庁選挙部長の名によつて、学資の大半を郷里から仕送りを受け、休暇等に帰省する学生の住所は郷里にあるものと認められるとの通達を全国都道府県選挙管理委員会あてに発しまして以来、この問題に一大混乱を生じ、各地の学生諸君の間における猛反対はもとより、言論機関、学者、識者等の間からも、この通達に対して、学生の政治的人格よりも財産関係を重く見、旧憲法時代の家族主義にとらわれた見解であり、現在の学生生活の実態を無視し、学生の選挙権行使に重大なる制約を加えるものであるとして、こうごうたる非難と反対の声が起つたのであります。本院の公職選挙法改正調査に関する特別委員会においても、この問題を取上げ、調査検討いたしました結果、昨年九月二十一日の委員会において、自治庁選挙部長通達はこれを撤回すべしとの動議を可決いたしたのであります。(拍手)このような経緯の中に、政府は選挙制度調査会にこの問題につき諮問した結果、先ほど委員長の報告にもありました通り、昨年末、十二名の出席委員の全会一致の決議をもつて、現在における学生生活の実態にかんがみ、修学のため寮、寄宿等に居住する学生生徒の住所はその居住地にあるものと推定する、但し郷里を住所として申し出た場合はこの限りでないとの旨を公職選挙法中に規定し、これらの者の選挙権行使及び住所の認定を容易ならしめることが適当であると答申したのであります。また最近、水戸、宇都宮両地裁が相次いで、この問題につき、きわめて明快に、選挙権行使の場合の学生の住所は修学地に認むべきものとの判決を下しておることは、諸君御承知の通りであります。(拍手)
かくして、学生の選挙権問題に関する輿論はまつたく一致したので、吉田政府も遂にかぶとを脱ぎ、選挙制度調査会の答申の趣旨に基いて、改正法律案を本国会に提案して参つたのであります。われわれは、政府がこのようにその非を認めて参りました以上は、過去のことは深くとがめ立てをせずに、すみやかにこの法律を成立せしめ、一年間にわたる紛糾を解決し、学生選挙権の所在を明確にせんとしたのであります。しかるに、何たることか、与党として政府と一心同体であるべき自由党が、政府提案に反対し、これとは全然逆の修正案を出して参つたのであります。修正案とは言いまするけれども、これはまつたく正反対であつて、白と黒ほど相違する案でございます。(拍手)この修正案の提案者は、民法の住所と選挙法の住所を一致せしめることを表面上の唯一の理由として、輿論の四面楚歌の中に葬り去られた自治庁通達を、おくめんもなく法的に復活せしめんとするものであり、まことに理不尽きわまる横車と言うのほかはありません。(拍手)
次に、この修正案が理論的にも実際的にもいかに不法不当であるかを明らかにいたしたいと思います。
まず私が第一に問題としたい点は、選挙法における住所は選挙法の目的に適合するよう解釈さるべきものであるという点であります。言うまでもなく、法律は民衆の利益のために存在すべきものであつて、法はそれぞれその目的に適合するよう、その規定する対象に従い、合理的に解釈されなければなりません。選挙法の目的とするところは、憲法に保障された国民固有の参政権を一人でも多くの国民に公明かつ適正に行使せしめ、もつて健全なる民主政治の発達を期するにあり、この目的に照して選挙権行使の要件としての住所を考える場合、第一に、選挙権を最も有効に行使せしめること、第二に、選挙権を最も容易に行使せしめること、しかして第三に、住所の認定が最も容易かつ確実になし得ることを基準とすべきであります。
選挙権を有効に行使するには、候補者の人物や日常の行い、その政党や政見をなるべく多く知ることが必要であります。選挙権とは、単に一票を投ずるだけではなく、選挙の運動を受けて、一票を正しく行使する権利であるのであります。(拍手)もし学生が郷里に帰つて投票するということになりますれば、この選挙運動を受ける権利、知る権利を著しく制限され、勢い盲投票とならざるを得ないのであります。また、もし不在者投票ということになりますれば、この弊害はさらに極端であります。第二に、選挙権を容易に行使するという点になりますれば、問題はさらに重大であります。夏季、冬季のわずかな休暇に帰省する以外、一年の大部分修学地において勉学に励んでいる学生が、大小数多い選挙の都度一々帰省することが、時間的にも経済的にも許されるかどうかは、議論の余地がないところであります。(拍手)修学地において投票せしめることこそが最も容易に選挙権を行使せしめるゆえんであることはきわめて明白であります。しいて郷里において投票せしめようとすることは、大部分の学生に棄権を強要することであり、選挙権を剥奪するにひとしいことと断ぜざるを得ません。さらに、住所の認定が容易にかつ確実になし得る点から考えましても、現実に居住している修学地が最も適当であることは言うまでもありません。修正案によるならば、親元との連絡不十分のために二重に登録される者ができたり、郷里、修学地のどちらにも登録されない者ができたりするであろうことは、自治庁通達以来全国各地に起りました混乱の事実に徴して明らかであります。(拍手)しかして、公職選挙沫二十二条による毎年十一月の基本選挙人名簿の縦覧、同二十三条の異議申立ての権利が、学生には事実上与えられないことにもなるのであります。
次に私が言たい点は、修正案提案者の金科玉条とする民法二十一条の住所の解釈による場合についてであります。この場合の住所すなわち生活の本拠なる解釈も、今日では、旧憲法時代のごとき親元、郷里、本籍地的解釈をとらず、一般生活関係においてその中心をなす場所、あるいはその者の正常なる社会生活を営む場所と解釈するのが通説となつており、従いまして、学生の場合、学資の仕送りを受けていようがいまいが、修学そのものと、それに付随する生活が正常なる社会生活であり、修学地の寮、寄宿舎こそが一般生活関係において中心をなす場所と解するのが最も妥当であります。(拍手)
以上によつて、自由党の修正案はいかなる角度から見ても、不法不当なものであることが、ほぼ明白になつたと思います。修正案提案者は、この不法不当を隠蔽せんがため、本人が申し出れば修学地に認めるのだから、結果において政府原案と大した違いはないと強弁しておりますが、これこそ大きなごまかしであります。一般人の場合、同一市町村の区域に三箇月以上居住することによつて生ずる選挙権を、学生なるがゆえに、何がゆえに住民登録をして申し出なければならないのか。ここに明らかに一般人と学生との間に不均衡があり、そしてこれは、一般人同様、学生をその財産的、身分的地位においてではなく、完全に独立した政治的人格と見る公職選挙法の精神に背反するものであります。また、申し出たら必ず修学地に認めるかと言いますと、決してそうではありません。修正案第四項には、申し出た場合必ずそうなる趣旨のものと解釈してはならないとあり、選挙管理委員会が申出を拒否し得る余地を残しておるのであります。このようにして、修正案によれば、学生の選挙権は郷里にくぎづけされ、盲投票か、しからずんば棄権を余儀なくされ、実質的には学生の選挙権を剥奪するにひとしい重大なる結果となることは明らかであり、違憲立法の疑いさえあると言わなければなりません。(拍手)何がゆえに保守党の諸君は輿論に逆行し、四十万学生諸君の熱烈な要望をしりぞけて、このような横車を押そうとするのか。諸君の中にも、この暴案にまゆをひそめている人が少からずあることを私は知つております。(拍手)家に帰つたら、むすこに大反対をされて、私もこの案に反対でありますと、現に自由党の議員が私に述懐しておるのであります。(拍手)
最後に、私の言いたいことは、この法案に対する政府の不可解なる態度についてであります。言うまでもなく、政府は原案提案者でありまするから、その提案に際しては、与党と十分に連絡して意見調整をはかり、原案通過に努力しなければならぬことは当然であります。しかるに、政府は、何らこの努力をすることなく、与党から正反対の修正案を出されて、それに押されて、原案を通過せしめようとする熱意が微塵も見られなかつたのであります。当の責任者たる自治庁長官のごときは、委員会において、選挙制度調査会からA案、B案と二つの答申があつたのだから、どちらでもよろしいと、でたらめきわまる答弁をいたしまして、私に、答申はただ一つであるという事実を追究指摘されまして、答弁を訂正し、陳謝するというような醜態を演じているのであります。(拍手)この政府の態度の底には、輿論に押されて一応修学地とする案を出すには出したが、実際にはその逆のことを考えておつたのではないか、さきの自治庁選挙部長通達を生かそうとする反動的意図を持つた芝居ではなかつたかと疑われる点が多々あるのであります。私は、この問題は単に学生のみの問題ではないと思う。最も良心的であり、真理と正義に忠実で純真な学生諸君が、都会地で投票すると大部分が革新派に集中する、それを妨げようとする保守党の党利党略から出ているのではないかと思う。(拍手)学生の参政権を分散せしめ、その行使を制約することは、学生を政治的に去勢することであり、これは日本の民主政治そのものを去勢し、反動化せしめんとする以外の何ものでもないと断言してさしつかえないと思う。(拍手)MSAの援助を受け、再軍備を急ぎ、軍国主義と警察国家を復活せしめようとする反動逆コースと、まさにその軌を同じゆうするものと言わなければなりません。
われわれは、国民固有の参政権を守り、民主政治の発達を心からこいねがうがゆえに、委員会可決の修正案に絶対反対し、あくまで学生の選挙権を修学地に認めよと主張してやまないものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/21
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022・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 鍛冶良作君。
〔鍛冶良作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/22
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023・鍛冶良作
○鍛冶良作君 私は、自由党を代表いたしまして、ただいま議題となりました公職選挙法の一部を改正する法律案に対する修正案に賛成の討論を試みんとするものであります。(拍手)
そもそも、本法案は、原案といい、修正案といい、ともに選挙法上、遊学中の学生諸君の住所を原則として郷里にあると認めるか、遊学地にあると認めるかという問題にすぎないものでありまして、選挙権そのものに何らの関係のないものであります。(拍手)しかるに、この修正案をとらえて、学生の選挙権を制限するとか、はなはだしきは剥奪するとか言つて偽称し、純情なる学生諸君を扇動して自党の宣伝に利用し、他党の悪評をかち得んとするものでありまして、まことに遺憾しごくと申さなければなりません。(拍手)
本改正案の提出せられましたのは、委員長の報告にもありましたが、従来、選挙法上の住所については、民法上の住所と同一のものであるということで、別段の規定を設けず、その認定を選挙管理委員会にまかせてあつたのでありますが、学生諸君の住所につきましては、戦後の混乱期において認定が困難なため統一を欠いておりましたので、自治庁は、選挙部長名をもつて、一応遊学地にあるものと推定してよろしいという通達をしたのでありますひところが、その後、一般社会の秩序も平静にもどり、住民登録法も制定いたされまして、この取扱いが重視されることになり、かたがた判例等もありましたので、昨年六月、あらためて自治庁から、遊学中の学生諸君の住所は郷里にあるものと推定すべきであるとの通達を出したのであります。すると、さきに、住民登録法施行の際、これは再軍備の前提をなすものであると言つて拒絶した一部の学生が中心となつて、またもやこれを利用いたしまして、これは学生の選挙権を制限するものであると騒ぎ出し、(「その通りじやないか」と呼び、その他発言する者あり)さらにこれに加えて、一部の政治家までが、この機逸すべからずと、学生選挙権制限の悪通達であるとはやし立てたのであります。そして、遂に騒ぎをこれだけに大きくいたしました。これはまことに遺憾なことだと考えるのでございます。(拍手)
そこで、自治庁は、この取扱い方針を法律で明定しておく方がよろしいと考えまして、これを選挙制度調査会に諮問いたしたのであります。その結果、調査会ではA案とB案との二つが出たのであります。今島上君は一つの案だと言われまするが、二つの案の出たことは間違いございません。しこうして、A案というのは、先ほど言われた通り、修学のため寮、下宿その他に居住する学生、生徒の住所は寮または下宿の所在地にあるものと推定する、但し郷里に住所があると申し出た場合はこの限りでないというのであります。B案は、これに反して、学生、生徒の住所は出発直前のいわゆる父兄の住所地にあるものと推定する、但し寮、下宿その他の居住地に住所を移したものと申し出た場合はこの限りでないというものであります。そこで、調査会では、両説はありましたが、結局A案を採用することとして、B案のあつたことを参考として書き添えて答申されたのであります。そこで、自治庁は、このA案をもとといたしまして法律案を作成し、本院に提出せられた次第でございます。
われわれ委員会におきましては——これは本年一月提出せられてれ第十九国会第七号議案でございます。ここに五箇月の間慎重審議をいたしました。その審議の中心は、結局、選挙法にいわゆる住所とはいかなるものであるか、その住所がどこにあるものと推定するのが純理にかなうかという問題が中心でありました。われわれは、慎重に研究討論の結果、第一住所とは何ぞやという問題につきましては、これを明定いたしておりますのは民法であります。しこうして、民法は、生活の本拠のあるところが住所であると明定いたしております。従つて、他に特別の規定のない限り、これと同一に解釈すべきものであるということは理の当然であると言わなければならない。(拍手)そこで、遊学中の学生、生徒の生活の本拠はどこであるかということになりますと、遊学中は勉学のため郷里を離れておるものである、勉学が終つたならば郷里へ帰るということが本則であります。(拍手、発言する者多し)なるほど、今実例をもつて言うならば、四月から七月の間だけをとつて言えば住所が東京であるように考えられますが、学生、生活全体を考えまするならば、生活の本拠を移したとは絶対に認めることができません。われわれはかような結論に達したのであります。(拍手)しかし、これはどこまでも原則としての推定でありまして、本人が私はもう郷里を離れてここへ生活の本拠を移したのであると申し出た場合は、これをも拒む必要はない。また、本人が申し出なくても、遊学地へ生活の本拠を移したと認められる事実があるならば、ここに選挙権があるものとして取扱つてよろしい。これは第四項でありまして、ただいま、島上君は、これに反した説明をしておられますが、私は故意であるならばもつてのほかであると思う。そうでないならば、もう一ぺん慎重にここで論議すべきものだと忠告いたします。(拍手、発言する者多し)また、営舎、船舶内に居住する保安官や警備官の住所についても、これと同様に考えてよろしかろうという結論に達しましたので、本修正案を提出した次第でございます。
ところが、これに反対せられる人々は、修学地で申出をしなければ選挙権が行使できないということにすれば、学生、生徒の選挙権の行使が困難になる、従つて実質上の選挙権の制限になると言われるのであります。しかし、諸君、これはまことに当らざるもはなはだしいものでございます。(拍手、発言する者多し)よく聞きたまえ。遊学地に来ておるということは、元の住所をここに移したことであるという諸君の議論の通りとしても、こつちへ移したということ、従つて一地域で選挙権を行使するとするならば、移住して来たことを申し出、また住民登録をする際には、ここに住所を移したと申し出て住民登録をせなかつたら、選挙管理委員会がこちらへ移つたということはわかりません。選挙管理委員会にわからないものが、ここで黙つておつて選挙権の行使できる道理がない。これは、本修正案がなかろうが、やらなければならぬ当然のことでありまして、これをしも選挙権の制限であると言うがごときは、まことにためにせんがための暴論と言わなければならない。
次に、法律は便宜なように解釈すべきもので、選挙法の住所と民法の住所と一致させなければならぬという根拠はないという議論であります。しかし、特別の規定のない限り、民法に明示せられたるものと同一に解釈せなければならぬことは法律上当然のことでありまして、便宜のために法を二、三に解釈するがごときことは許すべからざる議論である。法律はあくまでも純理に従つて解釈すべきもので、便宜論は法律適用の面においてのみ考慮せらるべきものでございます。従つて、本修正案においても、第二項及び第三項に但書を置いてこれが調節をはかり、さらに第四項を設けて、でき得る限り便宜のとりはからいを規定しておいたものでありまして、絶対に反対の余地のないものでございます。近時、宇都宮その他で、私の説に反する判例がありましたが、これはいずれも選挙法の住所と民法の住所と異なつてよろしいという議論でございますから、上訴において必ず破棄せられることを確信して疑いません。
これを要するに、本修正案は、選挙権所在地の原則を定めたものにすぎないものでございまして、選挙権そのものの存否を定めたものではなく、また行使の面におきましても、原案と修正案との間に実質上のかおりは全然ないのであります。しかるに、いかにも大変革であるがごとく吹聴し、はなはだしきは選挙権の剥奪であるなどと言いふらしまして、純情なる学生諸君を迷わさんとするがごときは、まさに政治上の謀略であると断定しなければなりません。(拍手)
私は、このゆえに、条理に徹し実際に適合したる本修正案に全員御賛成あらんことを切望して討論といたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/23
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024・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 竹谷源太郎君。
〔竹谷源太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/24
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025・竹谷源太郎
○竹谷源太郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、公職選挙法の一部を改正する法律案、すなわち政府提出法律案に賛成をいたしまして、鍛冶良作君外提出にかかるこれに対する修正案に反対をいたすものでございます。(拍手)
政府原案は、学生、生徒の公職選挙法上の住所は修学先の寮、下宿等にあると推定するものでありますが、修正案はこれに反対でありまして、学生、生徒が寮、下宿等、これに類するところに居住する直前に同居をした父母その他の親族の現に住所を有する地、いわゆる郷里に住所があると推定するというのであります。すなわち、修正案は、修正にも名をかりた全然反対内容の法案でございまして、かくのごときものは別個の法案として提出すべきものであつて、まつたくのごまかし修正案であり、国会の議事手続に悪例を残すものであります。これ修正案に反対の第一の理由でございます。
公職選挙法上の住所は、私法上の住所と別でもよいか、それとも一致しなければならないかについては諸説紛々でございますけれども、年齢満二十才以上の日本国民は、当然に参政権を有し、投票する基本的人権を持つているのでございます。ただ、選挙が公正に執行せられるための手続といたしまして選挙人名簿をつくります。この名簿の登録要件として、三箇月以上同一市町村に住所を有することが必要であるにすぎないのでありまするから、住所の認定が便宜であり、選挙権行使を容易ならしめることを土台といたしまして、選挙法上の住所を定むべきものと考えるのであります。かくのごとき観点に立つて、三箇年も四箇年も修学のため同一市町村に居住して勉学する学生をして、修学地において選挙権を行使させようとする政府原案は妥当なものであり、郷里に帰るか、あるいは不在者投票の手続をしなければ投票できないようにするところの修正案は、断固排斥せらるべきものであると存じます。(拍手)
学生の選挙法上の住所は修学地にありや郷里にありやに関しましては、戦前は、事実認定によるとは申しながら、大体郷里にありとする実例、判例であつたのでありまするが、当時学生生活の実情は郷里との関係がきわめて濃厚密接である者が多く、かつまた二十五才以上にならなければ選挙権を与えられなかつたので、選挙権のある学生、生徒はきわめてまれでありましたから、あまり問題とならなかつたと思うのであります。しかるに、戦後、婦人に参政権を認められ、選挙人の年齢は引下げられました、有権者数は一躍三倍に激増したのであります。学生の大部分は有権者となつたばかりでなく、日本の社会的、経済的事情の変化に伴いまして、学生は多くアルバイトによつて学資を調達し、あるいは経済上からも郷里に帰ることも少くかりました。学生生活の実態が著しく変化をしたこの実情にかんがみまして、当時の内務省は、昭和二十一年五月二十二日、地方局長名をもつて各地方長官あてに通牒を発しまして、修学のため寮、寄宿舎または下宿等に居住している学生、生徒の住居は原則としてその寮、寄宿舎または下宿等の所在地にあるものとする断案を下したのであります。なお進んで、昭和二十二年に、北海道の選挙管理委員会から、修学地にある学生にして、全部または一部の学資を郷里から送付を受け、休暇には郷里に帰省する者の住所は郷里にあると思うがどうかとい、う質問に対しまして、内務省地方局長は、照会にかかる学生住居認定の件は、前の通牒の通り、原則として修学地にあるものとして取扱おれたいと、はつきり回答をいたしております。この住所認定の方針に従いまして、以後七箇年間もろくの国及び地方の選挙が執行せられ、何らの支障も摩擦もなく、問題も起らなかつたのであります。
〔議場騒然〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/25
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026・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 静粛に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/26
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027・竹谷源太郎
○竹谷源太郎君(続) ところが、たまたま昭和二十七年に、仙台高等裁判所で、仙台市で修学する青森県に郷里を有する一学生の住所認定に関しまして、この学生の住所は郷里にあるとする判決がありましたところ、自治庁は、あわてたようにいたしまして、従来の解釈方針を一変して、学資の大半を郷里から仕送りを受け、休暇に帰省する学生の住所は郷里にあるものとする、こういう通牒を発して、いたずらに平地に波瀾を巻き起すに至つたのであります。裁判所は個々の事件の具体的妥当性を求めんとするものでありまして、その後、水戸と宇都宮の地方裁判所は、その反対の判決を下しているのであります。
本院の公職選挙法特別委員会は、この事態に対処いたしまして、昨秋、学生選挙権は郷里にあることを確認決議するとともに、政府に対しまして、本問題を専門家を網羅する選挙制度調査会に付議し、十分に研究討議の上、学生選挙権に関する政府案を提出すべきことを要求いたしたのでございます。自由党の牧野良三君を委員長とする十六名の斯界の権威者をもつて構成する選挙制度調査会が、昨年十月から約二箇月にわたり慎重審議を重ねた結果、満場一致をもつてなされたる答申、その答申そのままを内容とするのが政府原案でございます。その政府案に対しまして、政府与党の自由党から、多少の修正ならばまだしも、修正案と称するまつたく反対の提案をするとは、もつてのほかでございます。(拍手)
自然人の住所は単一でなければならないという考え方は、もはや過去の法理論でございます。人々が狭い範囲の市民生活を営むにすぎなかつた時代と異なりまして、高速度交通が発達し、人間の生活、行動、業務関係の複雑多岐化した今日においては、法の目的に従つてそれぞれ住所を認定すべきであります。住所単数論に立つところの鍛冶君は、学生の住所はその郷里にあると推定するにすぎない。修学地にあるとする学生は、引続き三箇月以上修学地に住所を有するものとして当該市町村の選挙管理委員会に申出をすれば、修学地の選挙人名簿に登録されるから、何らさしさおりはないと申しております。しかしながら、学生の住所は、修学地にあると認められるものが断然多数でございます。このにとは、塚田自治庁長官が、選挙法の委員会において、たびたび明言し断言をいたしておるところでございます。そうであるとしまするならば、修正案によりますると、住所が当然修学地にある大多数の学生は、区役所や市町村役場に出向きまして、そうして一々選挙管理委員会に自分の住所は修学地にある旨を申し出なければならない。そういう積極的な手続行為をとらなければ投票ができないのでございます。多くの学生はそのような煩瑣な手続をいたしませんから、事実上学生から選挙権を奪うというゆゆしい結果を招来するでありましよう。(拍手)
さらにまた、質的に優秀であるところの投票を拒否するということは一層重大な問題でございます。日本国憲法第十四条によれば、すべて国民は法のもとに平等であつて、社会的身分によつて政治的関係において差別はされないのであります。しかるに、学生のみが特別の手続をとらなければ投票できないようにするところの法律は、憲法違反の疑いがあるのであります。二十五日付の読売新聞は、茨城大学学生選挙権擁護連盟は、修正案が立法化するならば違憲訴訟を提起する旨報道しているのでございます。自由党、改進党の諸君は、何ゆえに、このように事理きわめて明白な問題について、理不尽をあえてなさんとするか。それは、都市に集中した学生の進歩的投票を棄権せしめるか、あるいは地方に分散せしめんとする党利党略に発しているということを、われわれは断言するものでございます。(拍手)
なお、修正案は、相かおらず学生を親の従属物と見ようとする封建思想から出たところの反動立法でございまして、(拍手)この意味からも、われわれは強硬に反対するものでございます。
今や、汚職、疑獄によりまして、国会は国民の間にその信を失おうとしており、民主政治の危機に直面しておるのであります。国会は、汚職、疑獄発生の主なる原因と目されるところの金のかかる選挙を革正するために、選挙公営の拡充、罰則、連座制の強化、政治資金の規正あるいは選挙区制等、選挙法の徹底的改善をはかるように、その立法化を全国民からわれわれは要望せられておるのであります。われわれ議員は、異常なる熱意を持つてみずから反省し、選挙法改正のことに当るべきにかかわらず、この熾烈なる国民的要望を無視して顧みず、学生の選挙権を剥奪せんとする修正案通過に血道を上げるがごときは、いよいよ保守党みずからの墓穴を掘るものでございます。(拍手)いかしながら、このことは、ひとり保守党の諸君のみならず、国会全体の信用を失墜することを私は深く悲しむものでございます。
願わくは、自由党や改進党の諸君も、いわゆるやみ金融取締法案の金利三十五鏡の修正案を撤回して三十銭の政府原案に改めたように、前非を悔いまして、われわれの意見に潔く賛成せられんことを望みまして討論を終る次第でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/27
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028・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) これにて討論は終局いたしました。
採決いたします。この採決は記名投票をもつて行います。本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参せられんことを望みます。閉鎖。
氏名点呼を命じます。
〔参事氏名を点呼〕
〔各員投票〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/28
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029・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 投票漏れはありませんか。——投票漏れなしと認めます。撰集箱閉鎖。開匣。開鎖。
投票を計算いたさせます。
〔参事投票を計算〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/29
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030・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。
〔事務総長朗読〕
投票総数 三百四十四
可とする者(白票) 二百八
〔拍手〕
否とする者(青票) 百三十六
〔拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/30
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031・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 右の結果、本案は委員長報告の通り修正議決いたしました。(拍手)
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〔参照〕
公職選挙法の一部を改正する法律案を委員長報告の通り決するを可とする議員の氏名
相川 勝六君 逢澤 寛君
青木 正君 青柳 一郎君
赤城 宗徳君 秋山 利恭君
淺香 忠雄君 麻生太賀吉君
足立 篤郎君 天野 公義君
荒舩清十郎君 有田 二郎君
安藤 正純君 伊藤 郷一君
飯塚 定輔君 池田 清君
池田 勇人君 石田 博英君
石橋 湛山君 今村 忠助君
上塚 司君 植木庚子郎君
内海 安吉君 江藤 夏雄君
小笠 公韶君 小澤佐重喜君
小高 熹郎君 尾崎 末吉君
尾関 義一君 越智 茂君
緒方 竹虎君 大西 禎夫君
大野 伴睦君 大橋 武夫君
大橋 忠一君 大平 正芳君
大村 清一君 岡崎 勝男君
岡田 五郎君 岡野 清豪君
岡本 忠雄君 岡村利右衞門君
加藤 精三君 加藤 宗平君
加藤常太郎君 加藤鐐五郎君
鍛冶 良作君 金光 庸夫君
川島正次郎君 川村善八郎君
河原田稼吉君 菅家 喜六君
木村 文男君 菊池 義郎君
岸 信介君 岸田 正記君
熊谷 憲一君 黒金 泰美君
小枝 一雄君 小金 義照君
小平 久雄君 小西 寅松君
小林 絹治君 小峯 柳多君
佐々木盛雄君 佐藤 榮作君
佐藤善一郎君 佐藤 親弘君
佐藤洋之助君 坂田 英一君
坂田 道太君 迫水 久常君
篠田 弘作君 島村 一郎君
首藤 新八君 助川 良平君
鈴木 仙八君 鈴木 善幸君
鈴木 正文君 關内 正一君
關谷 勝利君 田口長治郎君
田子 一民君 田嶋 好文君
田中 好君 田中 彰治君
田中 龍夫君 田中 萬逸君
高橋圓三郎君 竹尾 弌君
武田信之助君 玉置 信一君
津雲 國利君 塚原 俊郎君
坪川 信三君 寺島隆太郎君
徳安 實藏君 富田 健治君
中井 一夫君 中川源一郎君
中川 俊思君 中村 幸八君
中山 マサ君 仲川房次郎君
永田 良吉君 永田 亮一君
長野 長廣君 灘尾 弘吉君
夏堀源三郎君 南條 徳男君
丹羽喬四郎君 西村 英一君
西村 久之君 羽田武嗣郎君
葉梨新五郎君 馬場 元治君
橋本登美三郎君 橋本 龍伍君
濱田 幸雄君 林 讓治君
林 信雄君 原 健三郎君
原田 憲君 平井 義一君
平野 三郎君 福井 勇君
福田 赳夫君 福田 一君
福田 喜東君 船越 弘君
船田 中君 降旗 徳弥君
保利 茂君 堀川 恭平君
本間 俊一君 前尾繁三郎君
牧野 寛索君 益谷 秀次君
松井 豊吉君 松永 佛骨君
松野 頼三君 松山 義雄君
三池 信君 三浦寅之助君
水田三喜男君 南 好雄君
村上 勇君 持永 義夫君
森 幸太郎君 八木 一郎君
安井 大吉君 保岡 武久君
山口六郎次君 山崎 岩男君
山崎 巖君 山崎 猛君
山中 貞則君 山本 正一君
山本 友一君 吉田 重延君
吉武 惠市君 渡邊 良夫君
赤澤 正道君 荒木萬壽夫君
有田 喜一君 五十嵐吉藏君
池田 清志君 今井 耕君
臼井 荘一君 小山倉之助君
大麻 唯男君 岡田 勢一君
岡部 得三君 金子與重郎君
喜多壯一郎君 吉川 久衛君
楠美 省吾君 小泉 純也君
小島 徹三君 河野 金昇君
佐藤 芳男君 齋藤 憲三君
櫻内 義雄君 笹本 一雄君
椎熊 三郎君 須磨彌吉郎君
鈴木 幹雄君 田中 久雄君
高瀬 傳君 高橋 禎一君
竹山軸太郎君 舘林三喜男君
千葉 三郎君 床次 徳二君
内藤 友明君 中島 茂喜君
中嶋 太郎君 中村三之丞君
中村庸一郎君 廣瀬 正雄君
鵜田 繁芳君 古屋 菊男君
町村 金五君 松村 謙三君
三浦 一雄君 柳原 三郎君
山下 春江君 吉田 安君
否とする議員の氏名
阿部 五郎君 青野 武一君
赤路 友藏君 赤松 勇君
足鹿 覺君 飛鳥田一雄君
淡谷 悠藏君 井手 以誠君
井谷 正吉君 伊藤 好道君
猪俣 浩三君 石村 英雄君
石山 權作君 稻村 順三君
小川 豊明君 加賀田 進君
加藤 清二君 片島 港君
勝間田清一君 上林與市郎君
神近 市子君 木原津與志君
北山 愛郎君 久保田鶴松君
黒澤 幸一君 佐藤觀次郎君
齋木 重一君 櫻井 奎夫君
志村 茂治君 柴田 義男君
島上善五郎君 下川儀太郎君
鈴木茂三郎君 田中 稔男君
多賀谷真稔君 高津 正道君
滝井 義高君 楯 兼次郎君
永井勝次郎君 成田 知巳君
西村 力弥君 野原 覺君
芳賀 貢君 萩元たけ子君
長谷川 保君 福田 昌子君
古屋 貞雄君 帆足 計君
穗積 七郎君 細迫 兼光君
正木 清君 松原喜之次君
三鍋 義三君 武藤運十郎君
森 三樹二君 八百板 正君
安平 鹿一君 柳田 秀一君
山口丈太郎君 山崎 始男君
山田 長司君 山中日露史君
山花 秀雄君 山本 幸一君
横路 節雄君 和田 博雄君
淺沼稻次郎君 井伊 誠一君
井上 良二君 井堀 繁雄君
伊藤卯四郎君 池田 禎治君
稲富 稜人君 今澄 勇君
受田 新吉君 大石ヨシエ君
大西 正道君 大矢 省三君
岡 良一君 加藤 勘十君
加藤 鐐造君 春日 一幸君
片山 哲君 川俣 清音君
河上丈太郎君 木下 郁君
菊川 忠雄君 小林 進君
河野 密君 佐竹 新市君
佐竹 晴記君 杉村沖治郎君
杉山元治郎君 鈴木 義男君
田中幾三郎君 竹谷源太郎君
辻 文雄君 堤 ツルヨ君
戸叶 里子君 土井 直作君
冨吉 榮二君 中井徳次郎君
中居英太郎君 中崎 敏君
中澤 茂一君 中村 高一君
中村 時雄君 西尾 末廣君
西村 榮一君 日野 吉夫君
細野三千雄君 前田榮之助君
松井 政吉君 松前 重義君
三宅 正一君 三輪 壽壯君
水谷長三郎君 門司 亮君
矢尾喜三郎君 山口シヅエ君
山下 榮二君 吉田 賢一君
岡田 春夫君 川上 貫一君
久保田 豊君 小林 信一君
辻 政信君 中村 英男君
安藤 覺君 河野 一郎君
松永 東君 三木 武吉君
山村新治郎君 有田 八郎君
只野直三郎君 原 彪君
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/31
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032・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 日程第三、出資の受入、預り金及び金利等の取締に関する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。大蔵委員会理事内藤友明君。
〔内藤友明君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/32
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033・内藤友明
○内藤友明君 ただいま議題となりました出資の受入、預り金及び金利等の取締に関する法律案について、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
この法案は、いわゆる町の金融と称して、最近の事例に見られるごとく、不特定かつ多数の者から金銭の受入れをして、後日出資者に不測の損失を与え、一般経済の秩序を乱した事態にかんがみ、出資金の性格を誤認せしめるような出資の受入れを禁止し、大勢の人人を惑おすような金銭の受入れの方法をなくして、金融秩序の維持をはかろうとするものであります。
この法案の内容の概略を申し上げますと、第一は、何人も不特定かつ多数の者に対して後日出資した金額以上を払いもどすことを示し、またはこのような払いもどしのあることの誤解を生ぜさせるような仕方で出資金の受入をしてはならないとしておるのであります。第二は、他の法律に特別の定めのある場合を除いて、何人も業として預かり金をしてはならないこととし、預かり金の解釈規定を設けるとともに、主として貸金を業とする者が社債の発行により不特定多数の者から貸付資金を受入れるときは、業として預かり金をするものとみなしているのであります。第三は、貸金業等の取締に関する法律は廃止することとし、同法中の金融機関役職員などに対する浮貸しなどの禁止規定は存置することとしまして、おおむねこれと同様の規定を設けているのであります。第四は、金銭の貸付を行う者が、その貸付利息について、日歩三十銭の限度を越えてこれを契約しまたは受取つたときは刑事罰を科するとともに、金銭の貸借の媒介を行う者は、その手数料について媒介金額の五分の限度を越えてこれを契約しまたは受取つてはならないこととしているのであります。第五は、罰則につきましては、高金利処罰のほか、出資金の受入れの制限、預かり金の禁止、浮貸し等の禁止及び媒介手数料の制限の各規定に違反した者及びこれらの各規定の脱法行為をした者に対して刑事罰を科することとしているのであります。
この法案は三月の八日大蔵委員会に付託されて以来、文字通り慎重審議を続けて参りました。詳しくは会議録をごらんをいただきたいと思います。
かくて、去る二十日、改進党内藤友明から、自由党、社会党両派、日本自由党及び改進党の五派共同の、そしてまた自由党、日本自由党及び改進党の三派共同の、この二つの修正案が提出されました。
両修正案の内容は、まず五派共同修正案は、第一条の「後日出資の払いもどしとして出資金の全額若しくはこれをこえる金額に相当する金銭の支払がある旨の誤解を生じさせるような仕方を用いて」という規定は、きわめて漠然とした表現であつて、拡張解釈されるおそれがあるので、これを削除し、また貸金業等の取締に関する法律を廃止して貸金業を行う者をまつたく放置することは適当でないので、貸金業の届出の義務を課し、大蔵大臣は、貸金業の実態調査のため必要があるときは報告を徴しまたは調査する権限を有することとし、この権限の全部または一部を都道府県知事に委任することができることとするのであります。
次に、三派共同修正案は、第五条の高金利の処罰規定中三十銭とあるのを、特に庶民金融の実情にかんがみ、三十五銭に改めたのであります。
次いで討論に入り、改進党を代表して内藤は、附帯決議案を付して両修正案及び両修正部分を除く原案に賛成の意を表しました。附帯決議案の内容は
本法第二条第二項の不特定且つ多数の者という中には、株主といえども特定できるものはこれを包含しない趣旨であるから、本条の運用に当つては、不当に検察権を発動することのないよう、十分に慎重適切を期せられたい。というのであります。次いで、井上良二委員は社会党両派を代表されまして、各派共同修正案及び同修正部分を除く原案に賛成し、三派共同修正案に反対の旨討論せられ、山本勝市委員は自由党を代表されまして、両修正案及び両修正部分を除く原案に賛成の意を表されました。
次いで採決しましたところ、五派共同修正案は起立総員、三派共同修正案は起立多数、修正部分を除く原案は起立総員をもつて、また附帯決議案は起立総員で、いずれも可決され、よつて本案は修正議決いたしました。
以上御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/33
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034・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) これより採決に入ります。
まず、本案の委員会報告にかかる修正中、第五条の修正、すなわち金利の最高限度日歩三十銭を三十五銭に改める部分につき採決いたします。この修正部分に賛成の諸君の起立を求めます。
〔起立者なし〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/34
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035・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 起立者がありまもん。よつて第五条の修正部分は否決されました。
次に、第五条の修正を除くその他の委員会修正は委員長報告の通り、修正部分を除く原案は原案の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/35
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036・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて第五条の修正を除くその他の委員会修正は委員長報告通り、修正部分を除く原案は原案の通り決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/36
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037・荒舩清十郎
○荒舩清十郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出、航空機製造法の一部を改正する法律案を議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/37
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038・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 荒船君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/38
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039・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
航空機製造法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。通商産業委員長大西禎夫君。
〔大西禎夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/39
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040・大西禎夫
○大西禎夫君 ただいま議題となりました航空機製造法の一部を改正する法律案の通商産業委員会における審議の経過並びに結果を御報告いたします。
現行航空機製造法が施行されましてより二箇年を経過いたしましたが、その間、修理事業より発足したわが国航空機工業も、最近に至つて製造事業の再開により漸次活発となつて参りました。しかし、この反面、新規企業の設立が相当多くもくろまれておりますることは、需要の僅少な現状においては、単に航空機工業の健全な発達を阻害するばかりでなく、過剰投資の弊を生み、国民経済の健全な運行を妨げるおそれがあります。しかるに、現行法は検査を主眼とした技術立法でありますため、このような事態に対処するには不十分であり、新たに事業法としての諸規定を整備する必要が認められるのであります。
次に、本法案の大要を申し上げますと、第一には、航空機の製造または修理の事業について現行法の届出制を改めて許可制とし、技術の優秀性と経営の健全性とを基調とした事業分野の確立をはかるため、事業の開始についても許可を要することとしたことであります。第二には、許可の適用を受けるものは航空機、原動機、プロペラ等、航空機製造事業の主体をなすとともに、事業調整を行う必要が特に大きいものに限定したこと等であります。
本法案は四月五日通商産業委員会に付託されましたので、四月六日政府委員より提案理由を聴取いたしました。本法案の審議は五月十四日より五月二十五日まで前後六回にわたりきわめて活発に行われましたが、その詳細は会議録を御参照願います。
五月二十五日、質疑も終了いたしましたので、質疑を打切り、討論採決の結果、多数をもつて本法案を可決すべきものと議決した次第であります。
以上をもつて御報告といたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/40
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041・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/41
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042・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/42
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043・荒舩清十郎
○荒舩清十郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、足立篤郎君外十名提出、農林漁業組合連合会整備促進法の一部を改正する法律案を議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/43
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044・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 荒船君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/44
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045・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
農林漁業組合連合会整備促進法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。農林委員中村時雄君。
〔中村時雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/45
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046・中村時雄
○中村時雄君 ただいま議題と相なりました、足立篤郎君外十名提出、農林漁業組合連合会整備促進法の一部を改正する法律案につきまして、農林委員会におきまする審議の経過並びに結果の大要を御報告いたします。
御承知のごとく、現在農業協同組合及び同連合会は、農林漁業組合再建整備法及び農林漁業組合連合会整備促進法に基き、国から助成を受けまして、鋭意再建整備に努力いたしております。従いまして、これら組合または同連合会といたしましては、収支の成り立たぬ事業は廃止いたしますとともに、これに関係のある固定設備等につきましても、すみやかに処分する必要がございます。しかるに、これら固定設備のうちには金融機関再建整備法によつて旧勘定に属するものが多く、これらの固定資産につきましては、すべて確定評価基準が決定して調整勘定が閉鎖されまするまでの間は、主務大臣の認可を受けなければ自由な処分ができないことになつており、これが組合及び連合会の再建整備促進上重大な障害となつております。従いまして、この際金融機関再建整備法の特例を設け、調整勘定をすみやかに閉鎖し得ることといたし、これら旧勘定に属する固定資産の処分を促進いたしますとともに、その利益金の一部を優先的に農業協同組合または同連合会の整備または再建整備促進の使途に充当しようとするのが、本法案の目的でございます。
本法案は去る十五日付託となり、同日提案者を代表して足立委員から提案理由の説明がございました後、本委員会の審査に付しました。
本法案の趣旨につきましては各委員とも異議がございませんので、本日質疑を打切り、討論を省略、採決の結果、全会一致をもつて可決いたしました。
以上御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/46
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047・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/47
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048・堤康次郎
○議長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。
本日はこれにて散会いたします。
午後五時二十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905254X05519540525/48
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