1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十九年五月十九日(水曜日)
午前十一時六分開会
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出席者は左の通り。
委員長 佐藤 尚武君
理事
團 伊能君
佐多 忠隆君
委員
重宗 雄三君
杉原 荒太君
宮澤 喜一君
梶原 茂嘉君
高良 とみ君
中田 吉雄君
羽生 三七君
加藤シヅエ君
鶴見 祐輔君
政府委員
外務政務次官 小滝 彬君
外務省条約局長 下田 武三君
大蔵省主税局長 渡辺喜久造君
事務局側
常任委員会専門
員 神田襄太郎君
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本日の会議に付した事件
○所得に対する租税に関する二重課税
の回避及び脱税の防止のための日本
国とアメリカ合衆国との間の条約の
批准について承認を求めるの件(内
閣提出、衆議院送付)
○遺産、相続及び贈与に対する租税に
関する二重課税の回避及び脱税の防
止のための日本国とアメリカ合衆国
との間の条約の批准について承認を
求めるの件(内閣提出、衆議院送
付)
○外務省関係法律の整理に関する法律
案(内閣提出、衆議院送付)
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001・佐藤尚武
○委員長(佐藤尚武君) 只今から外務委員会を開会いたします。所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアメリカ合衆国との間の条約の批准について承認を求めるの件、遺産、相続及び贈与に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアメリカ合衆国との間の条約の批准について承認を求めるの件、以上二件を一括して議題といたします。質疑のおありのかたは順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/1
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002・羽生三七
○羽生三七君 或いは昨日御質問があつたかと思うのですが、この条約の随所に出て来るこの「恒久的施設」という場合、これは恒久的であるかないかの限界というものはどういうふうにして判定されるのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/2
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003・渡辺喜久造
○政府委員(渡辺喜久造君) 所得のほうの条約の第二条第一項の(c)を御覧願いますと、そこに「恒久的施設」の一応の定義が出ております。「事務所、工場、作業場、支店、倉庫その他事業を行う一定の場所をいう。但し、偶発的且つ一時的に使用される単なる貯蔵施設を含まない。また、代理店で、代理人が企業のために契約を協議し及び締結する包括的権限を有し、且つ、これを常習的に行使するもの又は企業のために通常注文に応ずるに足りる在庫品を有するものは、恒久的施設に含まれる。」それからまだ相当続いておりますが、一応ここで定義がしてあるわけでございます。それで具体的な場合になりまして相当問題があろうというふうに我々も思つておりますが、例えばセールズ・マンがやつて参りまして、ただ一応販売或いは宣伝をして行つたという意味では恒久的施設には入らない。併し例えばホテルの一室に常時駐在しまして、そこを連絡場所にして一応の販売をしておるといつたような場合には恒久的施設に入るのじやないかと考えておりますが、これは日本人がアメリカへ行つて商売する場合にも同じだと思います。具体的なケースにつきましては更に細目的にそうした一々の例を挙げましてきめようと思つておりますが、なお納税者の側としまして、例えば日本の商社がアメリカへ行きましてそうしてアメリカのほうでは恒久的施設として課税をして来た。ところが商社として考えますとこれを恒久的施設として課税するのは少し無理じやないか。こういうような場合におきましては第十八条に別に規定がございまして、日本の商社が今言いましたようにアメリカへ行つて或る行為をした。これは商社だけに限りませんが或る行為をした。アメリカのほうで制限納税義務者として課税をしたという場合にはこの行為は無理である。勿論この場合にはアメリカの税法に従いましてアメリカのほうでそれに対して異議の申立、訴訟を起すこと、これはアメリカの国内法で当然できるわけですが、もう一つの方法としまして、それがこの条約に違反しているというように認められます場合に、今の恒久的施設と認めるか認めないかというのはそのほうに入り得ると思いますが、その場合におきましては日本の当局者にその旨を申入れて、日本の当局で成るほどそれは無理だ、納税者の言分に理由があるというふうに考えまし大場合におきましては日本の当局とアメリカの当局とが折衝をしまして、そして合意に達するように何とか話合をつける。こういうような措置になつておりますので、まあそれらの措置をも併せ考えることによりまして妥当なる課税が両国でお互いにできるのじやないかと、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/3
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004・羽生三七
○羽生三七君 この(c)項の場合は今御説明でよくわかりますが、日本人がここに規定されたような事務所や工場、作業場というものを持つておつてそれを外人が何かちよつとそこに名義だけを借りるという場合でも、それはそういうことに関係なしにこれは当然適用されることは当り前と思うのですが、それはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/4
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005・渡辺喜久造
○政府委員(渡辺喜久造君) 施設の所有者がたまたま日本人でありましても、それを賃貸借か使用貸借かいずれの恰好をとりましても同じですが、外国人がそれを使いましてそこで事業をするということになれば、お説のように恒久的施設を持つているということに該当いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/5
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006・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 対象になる税が連邦所得税、附加税、日本側では所得税と法人税だと思うのですが、連邦所得税の課税ということはどういうふうなことになりますか。と言いますのはまあ直接国税としてこれでバランスがとれているのでしようけれども、所得税に類する例えば市民税式のもの、やや以前の附加税に準ずるような性質を持つておつたと思うのです。そういう関係のバランスはどうなるのですか。実際上問題としては直接国税以外の事業税であるとか、そういう種類、そういう地方税的のものも実質的には相当関係があるのじやないかと思うのです。そういう点はこの協定では関係ないことになつておるのですけれども、そういう而において二重課税の問題、或いは脱税の問題というような点についてはどういうふうに両国で考えられておるのですか。その点を一つお伺いしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/6
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007・渡辺喜久造
○政府委員(渡辺喜久造君) 第一のこの附加税というふうに日本語で訳してありますこの問題でございますが、これは日本でシヤウプ勧告前に考えられて実行しておりましたが、国が本税をとりまして地方団体、府県市町村などが附加税をとると、そういう意味の実は附加税じやないのでありましてアメリカにおきましては所得税の中が二つに分れておりまして、ノーマル・タツクス、これは三%の一律の比例税率でありまして、そのほかにサー・タツクスがあります。これがまあ累進税卒になつている。ですから昔日本で分類所得税をやつておりまして、それと総合所得税をやりましたが、分類所得税と多少違いますが、あれがまあ比例税率で課税しておりまして、総合所得税で累進税率を課税している、それといわばまあ似ておりますような意味のあの当時の総合所得税に当るようなものが現在サー・タツクスと呼ばれております。それがここで言われる附加税と訳しております。そうなつておるわけでございまして結局ノーマル・タツクスとサー・タツクスと一緒になりまして所得税になつておる。こういう姿のものでございまして、両方ともやはりフエデラルのインカム・タツクス、連邦所得税と言いますか、多少それと言い切つただけでははつきりしない点もあるかと思いますが、アメリカと結んでおります協定におきましてはサー・タツクスを含むと書いてありますので慣例に従つたわけであります。内容といたしましては今申上げたように向うの税制になつております関係上、これを入れたものが所得税だというふうに御理解願つていいと思います。
それから第二の御質問の、これでまあ両方の国税の二重課税防止ができるというが、地方税関係をどう考えるか、この点は我々も一応問題として取上げてみたのでございますが、地方税になりますと、いよいよ両国の実は税制が相当違つております。それからアメリカは御承知のようにステートが相当大きな権限を持つておりまして連邦政府と話合うというだけではなかなか問題が片付きません問題でもあるわけでございます。そういうような関係もあろうかと思います。が、アメリカはすでに二十数カ国とこういうような租税協定を結んでおりますが、地方税関係はどこの国でもまだ措置ができておりません。まあそんな関係もございまして、将来の問題としてもう少し我々もいろいろ検討してみたいと思つておりますが、なかなか地方税関係につきましての二重課税、どの課税がどういうふうになるかという問題も実は実質的にどういう二重課税になるかという問題も実はあるわけでございますが、それともう一つは交渉の相手方の問題でございまして常に将来の問題として検討すべきものじやないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/7
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008・佐多忠隆
○佐多忠隆君 私も実は昨日出なかつたので或いは質問があつたかも知れませんが、あつたらその旨お答え頂けば速記録で読みますが、一応お尋ねしておきます。
第一条の日本国の所得税及び法人税、それから合衆国の連邦所得税、これがまあ問題になる税でありましようが、現在アメリカが日本国の所得税及び法人税を払うようなことになるこの税の対象になる所得額、それから逆に合衆国の連邦所得税の対象になるような日本人の所得額、そのおのおのがどれくらいになるのか。実際のこの租税協定がない場合と、これができた故にそれがどういう税額の問題として変化して行くか、それらの事情、おわかりでしたら御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/8
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009・渡辺喜久造
○政府委員(渡辺喜久造君) 今御質問の第一の点は、データがすぐに整つたものがございませんが、多少ばらばらで恐縮でございますが申上げますと、アメリカ人の日本に居住している者が約八千五百八十人、うち子供十四才以下二千三百五十人おりますので、この全部が所得を持つている者とは言えませんが、このうち事業活動に従事していると思われるものが、給与所得者を含めまして約二千人、それから源泉所得者で申告納税をしている者約一千人、源泉徴収が行われている者が毎月三百人、所得税額にしまして申告の分が約一億三千万円、源泉の分が約二千八百万円、ほかに一年未満の者が居住矛で約一千万円ぐらいの税金が納まつている。なお法人につきましては米国法人の在日支店の総数が約百七十、二十七年の四月から二十八年の三月末に終了する事業年度について見ました場合におきまして、これらの法人の納税額が約六億二千九百万円、それからなお日本に住んでおりません、いわゆる非居住の米国人、或いは日本に恒久的施設とかそういうようなものを持つておりませぬアメリカ行人のいろいろな投資の関係、或いはロイヤルテイの関係で日本へ税金を納めることになつておりますこの分が、支払金額としまして約百十一億、これに対して税金はいろいろな、種類によりまして相当の特別措置をやつておりますせいもありますが、まあ大体一割くらいとお考え願つてよいと思いますが、そうしますとまあ十一億くらいの税金になるのじやないかと考えられます。
それから今度は逆に日本人及び日本法人のアメリカにおける活動の点でございますが、この点につきましてはちよつと今手元にございますのが商社の数だけでございますが、ニューヨークにあるものが五十八社、以下多いのはサンフランシスコに十四社、ロスアンゼルスに十二社、そのほかのワシントンとかシカゴとかダラスとかにあります分が二十三くらい一応数字として載つております。それからこれらの支店に約二百八十名の者が勤務しているものと思います。まあ御要求の的確な数字がありませんで恐縮でございますが、大体そのくらいのものがこの問題に特に関係のあるものだというふうに御了解願いたいと思います。
それからその次に条約ができた場合とできない場合とどういう違いがあるかという御質問でございましたが、アメリカにはこの条文にもちよつと出ておりますが「内国歳入法第百三十一条」という規定がありまして、日本で税金を納めますと、その納めた税金をアメリカで納めた税金から差引くということになつております。それから日本のほうにも昨年の所得税法及び法人税法の改正によりまして、この具体的な事例で言いますとアメリカで納めた税金は日本の税金から差引く、まあこれは正確には全額差引かれますのは日本の場合で言いますと、アメリカの税金が安かつた場合でして、アメリカの税金が高い場合におきましては所得に比例した程度にしか差引いておりませんが、まあ一応そういう規定がございます。その関係がまあそのままこの条約のほうに一応載つているわけでして、その点からそれだけではまあ現在でも或る程度二重課税の防止ができておりますし、すぐにこれによりまして変りはないのでございますが、ただその差引く税金というものを、結局アメリカに商社があつた場合、或いはアメリカから映画料金をもらつた場合、そうしたアメリカにおける制限納税義務者として、日本人が向うに活動した場合に課税される分を差引くわけでございますが、そういう問題が起きますのも結局アメリカと日本とにおいて、お互いに課税権が競合するから起きる結果なのでございます。それで条約の一つの効果は、その競合する課税権を、どういうふうに調節するかという点に一つございます。それでアメリカのほうの例をとつて参りますと、アメリカのほうでは例えば映画料金を日本に払うような場合におきましては、三割国内法では源泉徴収することになつております。条約がありませんとその三割源泉徴収されたものが日本で差引かれるわけでございます。それが若しも日本の税率に比べまして高過ぎる分は差引かれないということになるのでございますが、この条約によりますと三割のは一割五分をこえてはならないということになつておりますので向うで差引く金がそれだけ減ります。課税する金が減ります。で日本のほうとしても差引く金が減る、そういつた課税権の競合をお互いに調節し合う、これが一つの効果だろうと思つております。
それから第二の点といたしましては、これはこの条約の十四条の(c)項に出て参りますが、日本では御承知のように配当に対しましては二割五分控除の制度があるわけでございますが、この制度は所得税と法人税との関係をイギリス流に考えておるシヤウプ勧告から出ておるわけでございますが、アメリカにおきましては昔の日本の法人税、所得税の関係のように、法人税と所得税は全然別個のものだ、こういう考え方で現在来ております。従いまして日本から受取つた配当に対しまして、これについてもう所得税がかかつているのだから控除しろというので二割五分控除をアメリカでも行なつてほしい。これは実は随分今度の租税協定交渉の非常に大きな山であつたわけでございますが、これは協定があつて初めて恐らく認められるところでございまして、協定がありませんとなかなか向うとしては呑まないところじやないか、かように考えております。更にこの協定ができますとお互いに資料を交換し合いますとか、それから先ほど申しましたこの協定に違反したと思われる事項につきましては、納税者が自国の当局に異議を中立てることができる、自国の当局が相手方の当局とお互いに話合つてもらえる、こういうようなことがこの条約で初めてできるわけでございまして、そういうような点まで考えて参りますと、こういう租税協定を結びますことによつての両国間の経済的な交流は大いにスムーズに行き得るのではないか、条約のなかつた場合とあつた場合との違いといいますと、大体今思い付くままに申上げましても、以上申上げたようなことが言えると思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/9
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010・佐多忠隆
○佐多忠隆君 今のその御説明の所得税、法人税の対象人員、それから所得額、それからそれに対する税額、それらが協定ができたときと、協定以前のときとの、特にアメリカの場合の何か一つ資料にまとまるようでしたらまとめてあとで結構ですからお出し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/10
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011・渡辺喜久造
○政府委員(渡辺喜久造君) かしこまりました。ただちよつと一言附加えさして頂きますと、日本のほうでは例えば源泉課税の税率は一五%になる、この協定でいたしますと。現在におきましては措置法でこれより安くしているわけです。従つてこの協定ができたからといつてすぐに影響を受けますのは、先ほどの十四条の(c)項と結びつきました配当に対して源泉課税をしないという程度の減収だと思つております。アメリカのほうは協定がありませんと、三割で従来課税をしておりましたやつが一割五分になる。これが相当の開きはあるわけですが、こちらのほうでもらう金が割合に少うございますから、額的にはそう大きなものにならんのではないか、かように考えております。御要求の資料はでき次第提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/11
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012・羽生三七
○羽生三七君 この協定には直接関係のないことなんですが、この日本の円レートの問題で、三百六十円レートが実質上崩されて、外国為替に関する何らかの措置をとらなければ非常な困つた事態になるのではないかということが専門家筋では盛んに言われているわけです。参議院の経済安定委員会あたりでもその問題の具体的検討をやつておるようでありますが、実際上どういうふうになつておるのかここでどなたか御関係のかたでお答え願えましたら、御関係がなければ又はかの機会に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/12
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013・佐藤尚武
○委員長(佐藤尚武君) ちよつと無理だと思うと局長が言つておられますから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/13
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014・渡辺喜久造
○政府委員(渡辺喜久造君) 余り責任のあることを申上げられませんので、非常に恐縮でございますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/14
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015・羽生三七
○羽生三七君 では適当な機会に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/15
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016・佐藤尚武
○委員長(佐藤尚武君) ほかに御質疑は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/16
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017・佐多忠隆
○佐多忠隆君 遺産、相続及び贈与に対する租税ですが、これは今までアメリカ人が日本でこういうものを払つた実績はあるんですか。それから今後若干実際上出て来るあれは予想されるのか。予想されるとすればどのくらいのものが問題になるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/17
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018・渡辺喜久造
○政府委員(渡辺喜久造君) 過去におきましても全然ないと思つておりませんが、比較的少かつたと思つておりますし、今すぐにここでデータを持つておりませんので、ちよつとすぐにお答えできないと思つております。今後におきましてもまあやはり全然ないとも思つておりませんし、所得に対する協定を結ぶ機会におきましてこういう協定もやはり一応合理的に物事を片付けて行く上におきましてはきめておいたほうがいいのではないか、相当な件数はやはり或る程度出て来るのではないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/18
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019・加藤シヅエ
○加藤シヅエ君 この所得に対する二重課税のほうでございますが、第十条の問題にちよつと関係したことでございますが、この(b)項で「日本国の国民たる個人に対して日本国が支払う給料、賃金及びこれらに類する報酬は、合衆国の租税を免除される。」ということは、つまり日本の外務省の役人に対して日本国政府が支払う給料のようなものに対しては租税が免除される、向うで何も払う必要がないということでございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/19
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020・渡辺喜久造
○政府委員(渡辺喜久造君) さようでございます。多少敷衍さして頂きますと、外務省の役人のかたでございますと、これはまあ国際慣行といいますか、お互いに外交官特権によつて認められておりまして、租税協定前におきましても実は向うで税金を払つておりません。その代り日本のほうで所得税を課税されております。でこの協定によりましてそのほかに外交官以外の官吏が向うに駐在した場合におきまして、やはりこの協定があることによりまして向うの税金は払わなくて済む。こういうようなことになるわけでございまして、外交官だけでは実はないわけですが、特に外交官だけでございますと、協定以前におきましても外交官特権という名前の下に今まで課税されておらん。併し大体一番大きく該当しますのは、実際問題としては、今のお話のように、外務省のかたがたがこれに当るとお考えになりまして間違いないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/20
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021・加藤シヅエ
○加藤シヅエ君 それでは日本にある米国の大使館で日本人が俸給を受けている場合に、それはどういうふうに扱われるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/21
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022・渡辺喜久造
○政府委員(渡辺喜久造君) アメリカの大使館に日本人がおります場合におきましては、それは日本の所得税が課税される。アメリカの市民だけに限る、こういう考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/22
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023・加藤シヅエ
○加藤シヅエ君 その大使館から俸給を日本人が受けている場合に、どれだけ受けているかということはどうやつてわかるのでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/23
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024・渡辺喜久造
○政府委員(渡辺喜久造君) その点につきまして実際問題としていろいろ相手国によりましていろいろな経理あるようでございますが、外務省にお願いしましてどれだけの給料を払つておるかという資料を御提出願いまして、それによつて課税している、こういうことになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/24
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025・加藤シヅエ
○加藤シヅエ君 十二条の「宗教、慈善、学術、文芸又は教育の団体から交付金、不当又は奨励金を受ける」云云と、ここの問題でございますけれども、こういうようないわゆる法人或いは公共団体というようなものが寄付を受ける場合に、この寄付に対する税金の免除がアメリカの場合と日本の場合と非常に違うのでございますけれども、こういうような場合例えば日本にある団体に対してアメリカ人が寄付した場合には、アメリカの税金の規則によつて免除される。又逆に日本人が若し向うへ行つて寄付した場合には、やはり日本の税法によつて税金を払わなくちやならないことになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/25
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026・渡辺喜久造
○政府委員(渡辺喜久造君) 寄付金を課税の上でどう扱うかという問題は、今のお話のように、寄付をする人ですね、その人の所得の問題と考えるわけでございます。従いましてアメリカの人が寄付した場合には、その人がアメリカの所得税を払わなければならん人でございますと、これはアメリカの慈善団体に寄付した場合におきまして或いは日本の慈善団体に寄付した場合におきましても、結局アメリカの税法で規制されるわけでございます。それから日本人が寄付をいたします場合におきましては、日本の慈善団体に寄付した場合におきましても、これは日本に住んでいる人と御了解願いたいのですが、日本に住んでおります日本人が寄付した場合におきましては、日本の慈善団体に寄付いたします場合もアメリカの慈善団体に寄付する場合も同じように日本の税法できめられるというふうになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/26
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027・加藤シヅエ
○加藤シヅエ君 旅行者の場合はどうですか。アメリカの旅行者が日本の慈善団体に寄付した場合には。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/27
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028・渡辺喜久造
○政府委員(渡辺喜久造君) アメリカの旅行者が日本の慈善団体に寄付しましても、旅行者に対しましては日本の所得税という課税の問題は起きませんのでございますから、結局その人の所得の全体に対しましてアメリカの所得税がかかるわけでございます。その場合にその寄附をどう扱うか。これはアメリカの所得税法が規定しているところによるということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/28
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029・中田吉雄
○中田吉雄君 この外務省から頂きました資料の説明書に昭和二十六年の暮から日米両国の税務専門家がこの問題について基礎的な研究を行なつて専門家の草案を作成したとありますが、その概要を一つ御説明願いたいと思います。その資料がありましたらそういうものは前提条件ですから一つお願いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/29
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030・渡辺喜久造
○政府委員(渡辺喜久造君) 資料と申しましても実は余り、ちよつとないのじやないかと思いますが、いきさつを簡単に御説明申上げますと、昭和二十六年の暮、実は私縁がありましてそのとき東京の国税局長をしておりまして私が日本側の専門家としてワシントンに参りましたのであります。そうして昭和二十六年の十二月から昭和二十七年の一月にかけまして第一回の交渉をいたしました。当時はまだ講和条約が発効しておりません頃でございましたから、結局講和条約が発効し両国の国交が正式に行われるようになりましてからのちに結ぶというにしましても一応話合はしてみよう、ただこの場合におきましては結ぶとか結ばないとかいう話合と申しますよりも、お互いに両国の税法の関係、課税の実際、これをよく話合いましてそうして両国間に将来租税協定を結ぶだけの素地ができているかいないかという点を検討してみようじやないか、こういう形式でお互いに話合つたわけでございます。で、まあかなり一致できる意見もあつたわけでございますが、同時に二、三互いにまあ意見の一致をみることができなかつた問題もありました。その後におきまして昭和二十七年の十月に私のほうの鈴木財務官、それから主税局からは事務官が一人参りましてれ第二回の交渉をし、それから二十八年の十月に最後の第一向の交渉をしまして、大体現在のような結論が出た、こういう次第でございまして、その間いろいろまあ話合の経路はございますが、大体現在条約として調印されたものに進んでいつたわけでございます。問題としてまあ残つておりましたのは、一つは航空機関係の免除関係の問題でございましたが、私が参りました当時におきましては、まだ日本の飛行機はアメリカへ行つておりませんで、すぐに相互免除するのがいいかどうかという点について、ちよつと躊躇せざるを得なかつたという問題が一点と、先ほどもちよつと申しました十四条のC項の関係が向うとしてなかなかのみ込み得なかつた。この二点がまあ大体一番いつまでも、最後まで話が残つておつたんでございますが、大体日本側の主張が納得してもらえまして現在のような形になつた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/30
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031・中田吉雄
○中田吉雄君 局長がまあ日本側の代表として参加されたので大体わかるわけですが、この説明書には昭和二十六年の暮から基礎的な研究をやつて条約案の専門家の草案ができたので、大体まあ過ちないのだから、通せばいいというようなことも含めてこのなにができているので、一つそういうものを先ず見せて我々の審議の前提条件を大体整えてもらわんと、こういうものはいつも杉原委員が言われるように、我々もできるだけ議事進行には協力したいと思いますので、一つ専門家の作成した草案があるのだから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/31
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032・下田武三
○政府委員(下田武三君) この如何なる条約につきましても交渉の過程におけるいずれかの提案、或いは交渉の過程において専門家が合意に到達した草案という途中の過程の案を立法府にお出しして御審議の参考にするということは、これは国際慣例といたしまして相手国に対する信義の関係がございますので、いずれの国でもこれは行われない点でございますので御容赦を願いたいのでございますが、この問題に関する限りは、たとえそれを御覧になりましても、これはどつちが譲歩したとかいう政治的、経済的の大きな問題は全然ございませんので、非常にむずかしい問題をお互いに両国の担当当局のかたが御折衝になりましてれ私どもにも実はわかりかねるくらいのむずかしい交渉をなさつておりましたのでございまして、中田先生の仰せ御尤もでございますが、実は御覧になりましても余り御参考にならないのではないかと思うし、それからもう一つは先ほど申上げました途中の案をやはりお出しするのは相手国に対する憚りもございますので御容赦願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/32
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033・中田吉雄
○中田吉雄君 出しても余り参考にならんということは、わからんという意味ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/33
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034・下田武三
○政府委員(下田武三君) そうではございませんで恐らく途中の案に比べて日本側でこういう譲歩をしたのがけしからんというようなお叱りをこうむるような結果になるかと思うのですが、この条約の場合はそういうお叱りをなさろうとしましてもなさりようがないという意味でございます。(笑声)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/34
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035・中田吉雄
○中田吉雄君 私はいつもまあここ一、二年条約案の審議に参加しましていつでも思いますことは、アメリカ以外の関係の外交交渉においてはなかなか優れた手腕を示されているように思うのですが、事アメリカに関してはたいてい軟弱外交のそしりを免れない、と言つては恐縮ですが非常にまあへびに狙われたかえるのように弱い立場を示しておられる、と言つては恐縮ですが、七百カ所の軍事基地を持つたりして。そういうこともあり、どうも我々としては却つて主張された点は譲歩されたと言いますか、そういう関係がどうも却つて対米関係が面白くないように、長い間の親善関係を結ぶ真の意味の親善関係においても却つてプラスにならんじやないかというような懸念を持つものですから、そういう過程を示して頂けばまあ判断の資料になるのではないかと思つてお尋ねしたわけなんです。まあ事情は了としましたからその点はやめますが、只今羽生委員が申されましたが、為替レートの維持の問題についていろんな闇ドルその他の問題で、為替レートの維持を困難にするようないろんな外国人のドルの売買とかいろいろなことあるということですが、そういうことについては局長どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/35
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036・渡辺喜久造
○政府委員(渡辺喜久造君) この租税協定に関する限りにおきましてはもつぱら双務的な立場で実は話合を続けまして、向うが合意すればこちらも合意しろと、そういう考え方で考えて来たと思つております。それで為替レート維持の問題と関連しまして、例えば輸出促進のためにいろいろな措置をとるとかいつた問題は、これは租税協定の外になりまして、日本のまあ国内法的な関係で必要があれば措置すると、この関係におきましてはそういう問題とは別個にもつぱらお互いの対等な譲り合によつて一つの結論を出そうと、こういうことでやつて参つております。従いまして例えばローヤルテイの問題などにおきましても、特に日本の再建に必要な場合におきましては、税率を一〇%に下げるというのが措置法にございますが、この条約におきましては一五%をこえない、こういうところに限度を作つておりまして、それから更に五%下げていいといつたものはむしろ国内的な措置だと、こういうふうな考えかたで日本の外資導入或いは輸出振興、そういつた問題における措置は、これは日本の国内法としてやるべきものはやる、こういうような観点に立つべきものである。同時にこの租税協定自身は本来の日本の、まあ措置法に対して本法と、言つておりますが、本法において考えられておるものとアメリカの税法と見比べまして、そうしてお互いにフイフテイ、フイフテイの立場で話合いを続けて行こう、こういうところで実は結論を出しております考えかたで、この租税協定を締結しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/36
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037・羽生三七
○羽生三七君 先に私が為替レートのことをお伺いしたのは、直接この協定に関係があると思つたのでは勿論ないのです。これは協定の審議外の問題ですが、どうもいろいろな専門家の意見を総合してみますと、結局この行政協定から来ておる通産省の所管する一般的な為替レートの問題としてではなしに、行政協定から来る抜穴から闇レートができてそれが日本のレートの維持を殆んど困難にしておる、根本的に再検討をやらなければもうだめな段階が来ておるんじやないかというのが有力筋の見解です。だから今日はまあ他に外務省の関係者がおいでになつておつたんですから、そういう問題も十分検討しておいて頂いて、他日我々の参考になるようなお答えを願いたいと思つて私は質問したわけであります。だから私は今ここで御即答願おうとは思いませんから、この問題は十分御研究おき願いたいと思うんです。これは行政協定の各条項に、課税その他詳細ありますが、やはり抜け穴になつておるということはいろいろ専門家筋でそれぞれ検討されておるようでありますから、関連で私はお尋ねしたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/37
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038・中田吉雄
○中田吉雄君 それは例えばたばこについても、ラッキーストライクその他、私専売局の関係で専売局長に聞いたのですが、ああいう関係で百億くらい入つておる。実際入つて専売収入に少くとも百億に該当するくらいです。只今言われたようなことで入つたりして、いろいろな関係であると思うんですが、その点一つ将来の課題として気をつけて頂きたいと思いますが、この条約の対象になります企業の所得ですが、これについては佐多委員ですかお尋ねになつて、かなり詳細にお答えになつたということですが、この企業の種類とか、所得、日米双方のそういう仕分けをした資料はそれは要求されたそうですが、いつ頃出ますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/38
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039・渡辺喜久造
○政府委員(渡辺喜久造君) 余り完全なといいますか詳細なものもできかねるかも知れませんが、現在あります資料の限りにおきまして、とりまとめて数日中に御提出できると思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/39
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040・佐多忠隆
○佐多忠隆君 その場合に事業所得、それから利子所得、無体財産権使用料、不動産所得、そういう分類分けも付けてお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/40
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041・渡辺喜久造
○政府委員(渡辺喜久造君) その点は或る程度できると思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/41
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042・中田吉雄
○中田吉雄君 その点でそういうものが出てから採決するというふうにしたら、これは提出を促進ずけることになりはせんかと思うんですが、なかなか要求しつ放しにしても条約が通つてしまうと軽くあしらわれる虞れがありますから私発言しておきます。それからこれは一見平等なようでも、むしろこの条約の対象になるのが、日米双方の経済力の相違その他で、事業をやつているのが、実際はこの受益はアメリカ側のほうが多いんじやないか。脱税防止の関係でどうなりますか、そういう関係はありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/42
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043・渡辺喜久造
○政府委員(渡辺喜久造君) その点につきましては相当我々は注意をしたつもりでございます。例えば支払利子の課税価額、例えば日本で支払う利子と、それから日本人がアメリカから受取る利子、或いはロイアリテイの問題にしましても、日本で払うロイアリテイ、アメリカで払うロイアリテイ、こういうものが考えられるわけであります。大体租税協定の場合によくある例は、そういうものについてはお互いに両方とも免除し合おうじやないかというのがよくある事例なんでございますが、今中田委員のお話になりました点を考慮しまして、大体ロイアリテイとしての利子なんかにしましても、どうも日本で以て払うことが多いんじやないか。そうすると、形式的にはお互いにまけ合うということでそういうことになりましても、実質的にはこちらのほうが失うところが多い。そこで協定におきましてはまけ合うというところまで参りませんで、まあ一割五分を限度とする、日本におきましては大体租税措置法などがございまして、現にもうすでに一割程度にまけておりますから、一割五分を限度とするということは、国内法的には法規の改訂で特にまけるというほうには入らない。アメリカのほうでは協定でございませんと三割で課税することになつております。これはまあ半分になるわけであります。従いましてまあ絶対額という問題になりますと、お互いにこれは取りやりの額がありますから別ですが、形式だけの双務的な立場というのじやなくてやはり御指摘になりましたような実質的な意味における、こちらがどつちかといえば債務者国であるという立場も考慮した上でこの内容をきめて行く、そういう考え方をとつておつたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/43
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044・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 一点だけ伺いたいんですが、すでに質問がされておつたらその旨をお話願いたいと思います。アメリカと日本以外の多数の国と同種類の協定がある旨の御説明があつたのでありますが、この日本との協定と内容において相当違つた点があるのか、大体殆んど変りはないのか、若し違つた点があるとすれば、違つた点の主な点をお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/44
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045・渡辺喜久造
○政府委員(渡辺喜久造君) アメリカと他の国との協定関係でございますが、結局租税協定の問題は、これはまあ申上げるまでもなくおわかりと思いますが、日本の税制とアメリカの税制、これはまあ相当逢つている、このまあ橋かけを租税協定でやるわけであります。従いましてアメリカが例えばイギリスと結んでおる場合におきましては、イギリスの税制とアメリカの税制との橋かけをする、従つてイギリスの税制と日本の税制が違つている限りにおきましては、おのずから米英の協定と日米の協定との間には幾つかの違いが出て来ることはこれは止むを得ないところであると思つております。そういうふうな事情にございますので、アメリカが他の国と結んでおります場合におきましては、それぞれ相手国の税制というものに、日本の税制とは違つたそれぞれ特徴がございますから、それを受入れましてできているわけでございます。大体の考え方として相違点という、ものをちよつと幾つか申上げてみますと、恒久的施設に対する課税のやり方、これはどの国との協定も大体これと同じような考え方になつていると申上げていいと思つております。これはまあ商社関係としては一番大きな関心の的でございますが、これは大体アメリカが他の国と結んでおります場合におきましても同じような考え方をとつております。それから割合にまあ違つております点は、先ほども中田委員の御質問にお答えした点、要するに日本が利子を払う場合、或いはアメリカが利子を払う場合、この場合におきまして、或いはロイアリテイを払う、これは他の国とアメリカとの場合におきましてはどちらも課税権を放棄する、アメリカのほうへ払う場合に生きましては、国内で税金をとつている場合におきましても、他の国との関係におきましては、税金をとつている場合においても租税協定において課税権を放棄する、その代り英米の関係でいいますと、イギリスが払う場合におきましては課税権を放棄する、アメリカからイギリスへ払う場合も課税権を放棄する、こういうふうに相互に免除し合う、こういう関係をとつているのが割合に多うございます。これは一つはその国のそうした海外へ払う利子につきまして課税する国内法の規定がない場合もあるのでありまして、例えば北欧のごときはそんなふうにちよつと話を聞きました。そんなようなこともあると思いますが、割合に課税権を放棄し合う場合が多いのでありますが、これにつきましては先ほども御説明しましたように、一五%を限度に課税し合う。なぜそういうことにしたかというのは、先ほどの中田委員に対する答弁で御理解願いたいと思つております。それから俸給給与などのサービスに対する関係におきましては、大体考え方は他の国の関係も同じでございます。金額が多少まあ違う場合もありますが、日本の場合はどちらかといえば日本の生活レベルが比較的低いということでありまして、できるだけ低いところを狙つて実はこの協定を結んでおるという違いがあるんじやないかと思つております。
それからもう一つこの協定の特色は十四条の先ほども申しました(c)項の関係でございます。アメリカとイギリスとの関係におきましては、イギリスのほうの法人に対する所得税が、個人の所得税の前取りであるという点で、丁度この(c)項に該当するというような規定が、相当実は形態は違つておりますが、ありますが、その代りイギリスとしましてはアメリカに払つた法人税をやはり所得税と同じように見て引いてやる、こういう規定になつておりますが、日本の法人税はイギリスの法人税と精神は非常に似ており、同じであると言つてもよいと思いますが具体的にやり方が相当違つておりますのでイギリスの例そのままとるのもなかなかできませんので、結局到達しました結論は向うで日本の法人税を払つているが故に配当に対しては二割五分控除してくれる。その代り法人税でそういうふうに一応とつているならもう一遍配当の源泉課税をとるというのはとり過ぎじやないか、この分はアメリカのほうに課税権を渡してやろう、こういうふうなところで妥協ができたのでありまして、大体挙げ得るところは今のような点であると思います。その他脱税防止の関係、情報交換の関係、或いは異議申立の関係、これは各国の租税協定が大体これと同じような規定がございまして、我々が見ましても合理的だと思われますし、一つの型ができておつてそれに則つたというふうに御理解願つても間違いないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/45
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046・中田吉雄
○中田吉雄君 この本店、支店の関係で所得の按分の関係なんかはどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/46
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047・渡辺喜久造
○政府委員(渡辺喜久造君) 本店支店の按分の関係につきましては一応条約にも原則的な規定はできております。それは第三条の第三項の規定でございます。「一方の締約国の企業が他方の締約国内に恒久的施設を有する場合には、その恒久的施設が独立の企業として同一又は同様の条件で同一又は同様の活動を行い、且つ、独立の立場でその恒久的施設を有する企業と取引を行つたと仮定した場合に取得しうべき産業上又は商業上の利得が、その恒久的施設に帰せられる」原則としてはこれで一応謳つていると思つております。要するにその支店が例えばナシヨナル・シテイ・バンクの東京支店というものがある。その場合に東京支店が独立した銀行であつた場合に一体どれだけの利益が東京支店にあるか。従いまして本店勘定とのやりくりの関係でございますね、資金が本店のほうから支店のほうへ来過ぎになつておる場合、こちらの金が向うから来過ぎになつておればこちらのほうとしては相当利子を支払う計算。或いはこちらのほうの金が行き過ぎになつておれば利子をとる計算、それと総掛りをとる、こういうふうなところで具体的には計算しているものと思つております。
なお更に付加えて申しますと、そこでまあ納税者としてはこれはどこまでも原則でございますから具体的な事例におきましてはいろいろな意見の相違が出て来るわけでございます。その場合におきましては先ほど来申しております十八条の規定ですか、条約に違反したと思われる場合には自国の当局に申入して自国の当局から相手国の当局に申入をしてもらうということで問題を解決して行く、こういう考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/47
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048・中田吉雄
○中田吉雄君 これは実はこれに似たようなことを私地方議会におつて本店が東京にあつて支店が地方にあるというので、いつも支店の所在地はしてやられて、いろいろな操作で実際それは按分するようになつているのですが、地方税の配分が本店所在地の東京が有利で、それは実に苦杯をなめているのですよ。そういう関係ができはしないかと思うのですが、それはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/48
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049・渡辺喜久造
○政府委員(渡辺喜久造君) こちらのほうが率直に申しましていろいろ資料が足りない場合もありますから、本店支店の関係において御心配のような点が全然ないとも申せないと思いますが、それは実は現状においてなおそういう問題があるわけでございます。それで租税協定ができますとお互いに情報交換もできますから、現状に比べますればずつと改善されて行く道があり得るのじやないか、こういうふうに考えております。できるだけそういうことのないように扱つて行きたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/49
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050・中田吉雄
○中田吉雄君 その問題は私やはり税務当局の折衝するいろいろ語学の不便とかいうようなこともからんで、かなり所得の計算その他でもう言いなり放題になつたりしている点があるのじやないかと思うのですが、それは東京に本店があり地方に支店がある場合でもなかなか所得の課税対象の計算等で非常に困難な問題がある。そういう場合は地方税については内閣総理大臣に訴えていろいろするというような規定もあるのですが、実際は殆んど適用困難でそういう場合もあるのじやないかと思うので、その点は考慮しておいてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/50
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051・渡辺喜久造
○政府委員(渡辺喜久造君) 確かにむずかしい問題でございまして、同時に我々としましては、国税庁として十分御心配のような点をなくすように努力すべきものであるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/51
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052・佐藤尚武
○委員長(佐藤尚武君) 別に御発言ございませんか。質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/52
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053・佐藤尚武
○委員長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。
これより討論に入ります。御意見のおありの方はそれぞれ賛否を明らかにしてお述べ願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/53
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054・中田吉雄
○中田吉雄君 資料の問題ですが、大体資料が出ればそういう問題の背景のものをつかんでいろいろ質問があると思うのですが、一つ委員長のほうから条約が通つたからといつて不同にされることのないように、今後資料は必ず近いうちに出してもらうということで採決してもらうことに、委員長の立場を了として。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/54
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055・佐藤尚武
○委員長(佐藤尚武君) 討論の段階に入りましたが、御意見のある方は、繰返しますが賛否を明らかにしてお述べ頂きたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/55
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056・佐多忠隆
○佐多忠隆君 今議題となつております日米所得条約、日米遺産、相続条約のこの両条約の批准について承認を求める件に同意をいたします。
いろいろ御説明を伺つたのですが、これらの条約が効力を生ずると、両国間における二重課税及び脱税の問題は有効適切に処理されることとなり、日米両国の国民が今後安心してその経済上文化上の活動に従事することができると同時に、更に日米両国の経済協力も一層円滑に行われるようになるという御説明でありますので、そういう趣旨、結果には我々も賛意を表しますが故に両条約に賛成をいたします。ただ併しこれまでのいろいろな実例によると、両国の経済協力を一層円滑にするという名の下に、日本経済がアメリカ経済に従属し依存する傾向なり事実を更に強化するというようなことがしばしば結果的に行われておりますので、そういうことの絶対にないように、両方平等の立場において両方の自主独立性を更に強めるという形において両条約が運営をされることを切に希望いたしまして、そういう希望を附加えて賛成をいたすものであります。同時にこれまでしばしばいろいろな条約並びに協定を審議いたします場合に、条約或いは協定の文面の解釈その他についてはいろいろ詳しい御説明がありますが、その条約或いは協定の実質的な内容に関するいろいろな御説明、特にそれに対する資料の整備等々においては非常に欠けるところがあることを痛感をいたしますので、今後こういうものの審議をする場合には、それらの問題もきちんとした資料を整備してあらかじめ提出をするなり、或いは要求があつたらすぐ提出されるような準備をしておいて議題に載せて頂きたい。このことを強く希望をいたしまして賛成の意を表します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/56
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057・佐藤尚武
○委員長(佐藤尚武君) 別に御発言もないようでありますので、討論は終局したものと認めます。
これより採決に入ります。所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアメリカ合衆国との間の条約の批准について承認を求めるの件、遺産、相続及び贈与に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアメリカ合衆国との間の条約の批准について承認を求めるの件、以上を一括して採決いたします。
両件を承認することに賛成のかたの挙手をお願いします。
[賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/57
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058・佐藤尚武
○委員長(佐藤尚武君) 全会一致であります。よつて両件は承認すべきものと決定いたしました。
なお本会議における委員長の口頭報告の内容は、本院規則第百四条によつてあらかじめ多数意見者の承認を経なければならないことになつておりますので、これは前例通り委員長に御一任願います。
それから本院規則第七十二条によりまして、委員長が議院に提出する報告書につき多数意見者の署名を附することとなつておりまするから、両件を可とされたかたは順次御署名願います。
多数意見者署名
佐多 忠隆 羽生 三七
梶原 茂嘉 中田 吉雄
加藤シヅエ 宮澤 喜一
團 伊能 杉原 荒太発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/58
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059・佐藤尚武
○委員長(佐藤尚武君) 次に外務省関係法律の整理に関する法律案を議題に供します。本案に関して御質疑のあるかたは順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/59
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060・杉原荒太
○杉原荒太君 これは特に重要なことでもないけれども、いつぞやこの整理に関する法案を内閣から出したことがあるのですが、あのときこれはなぜ一緒にやつておかなかつたのですか、何か実際上今までは残しておく必要があつたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/60
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061・小滝彬
○政府委員(小滝彬君) 別段の理由があつたわけではございませんけれども、実はこの二つが相当古いものでありまして、漏れておつたわけであります。ところが先般の閣議で各省とも十分精査して廃止することを必要とするものを全般的に見て、この廃止の措置をとるようにという決定がございましたので、その趣旨によつてこの二つの法律の廃止について御承認を得ようとする次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/61
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062・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 この整理方針ですが、この案を見ますと二つの法律は実質的には完全に死んでおつて、本当に死んだものを整理するだけのことであろうと思う。そういう意味合の勿論整理の方針もあると思いますが、何と申しますか、或る程度生きておると、併し今の情勢から見てむしろこれをなくしてしまつたほうが好ましい、又そのほうがいいんだというふうな法令が相当あるのじやないかと想像されるのですが、こういうふうに完全に死んで、整理すること自体に意味合はないわけなんですね。もう少し意味合のある整理方針というものがないのかどうか。又そういうような法令が外務省関係において一体あるのかないのか、その点を一つ御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/62
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063・小滝彬
○政府委員(小滝彬君) 今度廃止しようとするものは完全に存在価値をなくしたというものでありまして、これを御審議願つておるわけでありますが、併し実際上余りよく動いてはおらないけれども、相当修正し、又今の実情に適するように改めて存続することを適当と認めるというようなものもないわけではございません。これは各省にあると思いますが、外務省に関しまする限りは移民法でございます。非常に古くなりまして現在の実情には即しませんので、目下これを改正方検討中でございますので、そのうち御審議をお願いするようになるだろうと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/63
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064・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 これはこの審議の際でなくても結構ですけれども、適当な機会にそういう法律のリストを、件名だけで結構です、出して頂きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/64
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065・小滝彬
○政府委員(小滝彬君) これまでずつと調査させましたところによりますと、今指摘いたしました移民法だけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/65
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066・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 それでは結構です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/66
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067・團伊能
○團伊能君 念のために伺つておきたいのですが、これは今全く死法となつておつて死んでおるのでございますが、どういうプロセスでこれが死んだか。死んだ形を一つ伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/67
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068・小滝彬
○政府委員(小滝彬君) この清国及朝鮮国在留帝国臣民取締法は、これは両国に駐在しておりました日本の領事が、両国において行政、司法に関する権限の一部を行使するということを前提として作られたものでありますが、この根本は日清講和条約、或いは日清通商航海条約、日清修好条約というようなものに基いております。併し清国につきましては、その後国名は変つておりますけれども、昭和二十七年の八月五日に発効いたしました日本国と中華民国との間の平和条約第十四条によりまして新らしく律せられるということになつたために、これまでの法律は適用されないということになつたわけでございます。又朝鮮国につきましては、これは韓国の合併に関する条約によつて、韓国は日本の領土になりましたため、朝鮮国に関する限りこの取締法はずつと前から死文化しておつたというような関係にあります。又居留民団法も今申上げました通りの理由で、律することができない状態になつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/68
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069・佐藤尚武
○委員長(佐藤尚武君) 速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/69
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070・佐藤尚武
○委員長(佐藤尚武君) 速記をつけて下さい。
別に御発言もないようでありまするから、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/70
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071・佐藤尚武
○委員長(佐藤尚武君) 御異議ないものと認めます。これより討論に入ります。御意見のあるかたはそれぞれ賛否を明らかにしてお述べ願います。……別に御発言もないようでありまするので、討論は終結したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/71
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072・佐藤尚武
○委員長(佐藤尚武君) ではこれより採決に入ります。
外務省関係法律の整理に関する法律案を採決いたします。本案を可決することに賛成のかたの挙手をお願いします。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/72
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073・佐藤尚武
○委員長(佐藤尚武君) 全会一致であります。よつて本案は可決すべきものと決定いたしました。
なお本会議における委員長の口頭報告の内容は、本院規則第百四条によつて、あらかじめ多数意見者の承認を経なければならないことになつておりますが、これは前例通り委員長に御一任願います。
それから本院規則第七十二条によりまして、委員長が議院に提出する報告書につきまして、多数意見者の署名を附することになつておりますから、本案を可とされたかたは順次御署名を願います。
多数意見者署名
羽生 三七 梶原 茂嘉
中田 吉雄 加藤シヅエ
鶴見 祐輔 宮澤 喜一
杉原 荒太 團 伊能発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/73
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074・佐藤尚武
○委員長(佐藤尚武君) 速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/74
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075・佐藤尚武
○委員長(佐藤尚武君) 速記をつけて下さい。外務委員会は、本日はこれにて散会いたします。
午後零時三十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101913968X03519540519/75
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