1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十九年三月十八日(木曜日)
午後四時二十一分開会
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委員の異動
三月十七日委員菊川孝夫君辞任につ
き、その補欠として吉田法晴君を議長
において指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 大矢半次郎君
理事
藤野 繁雄君
小林 政夫君
委員
青柳 秀夫君
岡崎 真一君
白井 勇君
土田國太郎君
成瀬 幡治君
東 隆君
平林 太一君
事務局側
常任委員会専門
員 木村常次郎君
常任委員会専門
員 小田 正義君
参考人
日本興行組合連
合会事務局長 加藤 巌雄君
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本日の会議に付した事件
○入場税法案(内閣送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914629X02019540318/0
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001・大矢半次郎
○委員長(大矢半次郎君) これより大蔵委員会を開会いたします。
入場税法案を議題といたしまして、参考人として日本興行組合連合会事務局長加藤巌雄君より意見を聴取いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914629X02019540318/1
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002・加藤巌雄
○参考人(加藤巌雄君) 本日参議院大蔵委員会が入場税法案に関しまする業者の意見を聴取下さいますために、本委員会に出席陳述する機会をお与え下さいましたことに対しまして、心から感謝いたしますと共に、これから述べまする意見は、業者の立場からのものでございまするので、多少手前勝手な意見とお考えになる点があるかも知れませんけれども、全国四千館の映画館、特に弱小館の真剣な叫びである点にお心をとめられまして、何とぞ暫くの間お聞きとり頂きますようお願い申上げる次第でございます。
我々全国の業者は、今回御提案になつておりまする入場税法案に対しましては全面的に反対でございます。従来通り入場税は地方に存置されたいのでございます。
その第一の理由といたしましては、我々業者は、入場税に対しまして、地方税として沿革的にも又性格的にも親近感を持つているからであります。我々は、現在地方税法によりまして特別徴収義務者となつております。この特別徴収義務者は、他の税法の中にも、言葉は変つておりますが、存在いたしております。併し、入場税に関する特別徴収義務者ほど強い制約の下に置かれておるものはないのでございます。御承知のごとく、入場の際に入場者に渡しまする入場券はすべて公給でございまして、一連番号を付され、それに使用枚数、残存枚数につきましては、常時報告し、厳重なる監督を受けておるのでございます。若し少しでも滞納がございますならば、直ちに翌日からの票券の公給を停止せられまして、従つて営業することが不可能となります。即ち、事実上の営業停止の処分を受けることになるのであります。私は税法を仔細に研究はいたしておりませんけれども、このような厳重な制限を受けておりまする徴収義務者は他の法律にはないのではなかろうかと考えておるのであります。このような取扱を受けながらも、業者は納税に協力いたしまして納税成績を挙げ、昨年度におきましては、九二%にも達する納税成績を挙げておるのでございます。それは、その税金が地方の各種の施設、例えば道路でありまするとか、或いは橋梁でありまするとか、警察、消防等のいろいろな施設に充てられまして、それによりまして、興行場の営業成績が向上いたしますし、営業成績か向上することによつて税収入が増加して参ります。税収入が増加すれば、又これらの各種の施設が改善されるのであります。このような相関関係がこの税に対する我々の親近感を深めて来ておるのでありまして、納税にかれも協力して参りました一つのゆえんでもあるのであります。今回国税に移管されまして、その九〇%は人口割で地方に還元されるということになりますと、成るほど結果的には地方の経費に充当されるのでありましようが、東京や大阪の税金が青森や鹿児島で使われるようなことでは、その結び付きは間接的でありまして、郷土との繋がりが薄くなるのでございます。かくては、今まで長い間涵養されて参りました納税意欲にも面白からぬ影響がないとは言えません。その点、誠に寒心に堪えないところであります。九〇%も地方に還元するのでございますならば、むしろそのまま地方税として存置できないものでございましようか。
第二に、我々は入場税は性格的にも又沿革的にも地方税であるべきだと考えておりまするし、従つて、この税金は地方自治運営上極めて妙味のある税金でございます。これが国税に移管されましては、たとい九〇%は還元されるといたしましても、地方自治、民主政治の正しき発展を期待することは困難ではないでしようか。税源の偏在を是正するとの美名の下にかかる措置をとりますることは、角を矯めて牛を殺すがごとき暴挙と言わざるを得ないのであります。都府県民としての立場から、我々はかかる措置に対して反対せざるを得ないのでございます。
第三に、入場税の国税移管の理由といたしまして、地方税源の偏在是正ということが挙げられております。成るほど入場税は大府県に偏在をいたしております。併し大部分の税金が大府県に偏在いたしておるのでありまして、入場税だけが偏在いたしておるのではないのであります。税源偏在是正につきましてほかの方法は考え得らなかつたでございましようか。我々は、大府県に対しまする義務教育費の国庫負担を打切り得なかつたことに対する政府の対抗的な処置といたしまして、この最も弱い而も徴収し易い入場税の国税牧管ということがなされたのではなかろうかと邪推いたしておる次第であります。而も地方制度、税制両調査会が、共に入場税と遊興飲食税の国税移管を答申いたしまして、政府も又、当初はその方針で進まれて参りましたのに、何故中途におきまして遊興飲食税のみ地方税として存置され、入場税のみを国税に移管されたのでございましようか。若し巷間伝うるがごとく、運動の強弱によつてその態度を変えられたものとするならば、矛盾も甚だしく又甚だ遺憾に堪えないところでございます。成るほど我々業者は、遊飲業者に比しますれば、その数も少く、政治的な力も弱いかも知れません。併し我々も遊飲業者と同じく、地方税として残ることを希望し、運動し、本年に入つてからは、全国業者は常時交替で東京に常駐し、各方面にお願いに参つておるのでございます。数は少く、声は低いかも知れませんが、その叫びは深刻でございます。昔から声なきに聞くとさえ言われておりまするが、この我々の真剣な叫びに耳をかされまして、遊飲税と同様に地方に残して頂きたいのでございます。我々業者は、どちらかと言えば穏健で保守的なものでございまするが、政治的な力が弱きが故に、この不合理な差別待遇を受けるということになりますならば、将来その政治的な態度も考えなければならないとも限らないのでございます。何とぞよろしく公平なお取扱をお願い申上げたいのでございます。
最後に我々の現在の経営の実情を申し述べまして、入場税を是非地方に残して頂けるような御配慮を願いたいのであります。現在、入場税は五割でございます。これは世界におきましても、最も高い税金でございます。又、他の税金に比べまして極めて高率でございます。現在御審議中の奢侈繊維税法案においてすら、洋服の生地が一着分三ヤールといたしまして一万三千五百円、着物は一反七千五百円といたしまして、それに一割五分の税金がかかることになつております。これに対しまして大衆か一日の勤労後の慰安として見る映画に対しましては、一回百円の入場料金に対しまして、五割という高率な税金がかかるのでございます。現在の入場料を見てみますと、税込の全国の映画館の平均の入場料金は、昨年の十月の日銀の小売物価指数に比較いたしますると、一一三%でございまして、他の物価に比して相当高くなつております。本年の正月のごときは、すでに入場人員は頭打ちという状況でございます。成るほど歌舞伎座の切符が闇で売られておりましたり、一流封切館の前には、日曜、祭日には行列が見られたりいたします。そのために興行は甚だ景気がよいように思われがちであります。併しこれは大都市の歩合興行を行なつておりまする一流館の状況でございまして、大多数の興行場は経営に困難な状況であります。東京、大阪の一流館も地方の都会の場末の映画館も、同じように五割の税金を取られるのでありまして、人件費とか、電力費等の諸経費等を考えてみますと、これは大した差もないのであります。従つて経済的の地位の低い都市や、農村にある映画館や、或いは場末の生活程度の低い観客層を相手にいたしております映画館の経営の困難を訴えるのは、当然のことであります。而も従来は十五割、十割の税率のときもございまして、これらの時代の滞納金を、五割に税率が下りました昨年の一月に、殆んど完済いたしたのでございまして、その負担から未だ抜け切れないような状況にあるのでございます。このような地域的な特殊の事情によりまする各館の経営内容というものを、地方税務当局は十分知悉しておられまして、よほどの悪質者でない限り、徴税に当りましては極めて同情的な態度で臨んでおられるのでございます。地方の税源を枯渇することのないように、実際の収入に応じた徴税が行われておるのであります。若しこれが国税になりまして、転々として異動し、中央の指令を唯一無二のものとしている税務官吏が、かかる親心を持つて徴税に当り得るでございましようか。ただ法律を楯にとつて、少しでも滞納があれば直ちに入場券の公給を停止したり、或いは差押え滞納処分を行いまして、自己の責任を果したとして得々とするのではないでしようか。かくては地方の農村や中小都市において、大衆の文化的娯楽の窓が大部分塞がれまして、大衆はいわゆる巡業屋と称する者の映画を悪い環境で見るのほか、すべなき状況になるのでございます。又、大蔵省は今度の法案におきまして、税率の段階を設けまして、地方の弱小映画館の税率を低くし、実状に即した取扱いをしておると言つておるのでありますが、これも単なるごまかしに過ぎないのでございます。先ず税率について申上げますならば、二十円以下を免税としておるのでございますが、二十円というこの料金は、都会の僅かなニユース館のほかは、殆んど常設興行場においてはない料金でございます。従つてこれはただ今まで税金を納めたこともないようなもぐり巡業屋を保護するに過ぎないのであります。これは一方まじめな常設興行主を経済的に圧迫する結果となるのでございます。又今回の法案で二割の税率になりまする四十円未満の映画館は、全体の一二%にも過ぎない状況でございます。大部分の映画館は殆んど減税の恩恵に浴さないのでございます。又、政府の予算面からこの点を見て参りますると、来年度の入場税の歳入見積りは百九十二億円でございまするが、これは三月分の入場税が取れませんから、平年度に直して考えますならば、二十八年度の二百二億円に対しまして、約九%の増でございます。而も二十八年度の二百二億円の中にはいわゆる第三種として徴収されておりましたパチンコでありますとか、麻雀、ダンスホール、ゴルフ場等の入場税額約二十五億円が含まれてないのでございますから、その増収見込率は更に大となるのでございます。これは今回の国税におきましては削除しながら而も九%の増を見込んでおるということは、名目的に税法上の減税を行なつて、実質的には徴税を強化し、増収を図らんとする意図は極めて明瞭なところがあるのでございます。十分この点に関しまして御考慮をお願いいたしたいと思うのであります。
なお最後に一言附け加えさして頂きたいのでございますが、この入場税の国税移管の問題に対しましては、地方の業者は極めて真剣に考えておるのでございまして、その為す行動がいいか悪いかは、これはいろいろの批判はごさいましようけれども、実は本日約一時間くらい前に長野県の興行組合から電話がございまして、どうも国税移管の問題については極めて悲観的である。従つて我々としては、政府に対する反省を求めるために、来週の写真替りの三十四日から長野県下一斉休館を行う、無期限の一斉休館を行うという通知があつたのでございます。この問題はいろいろと批判の余地がございまして、必らずしも適当だとは言えないような御意見があるかも知れませんが、ただ、かくのごときことをやるほど真剣にこの問題を考えておる一つの例として、十分お考えを頂きたいのでございます。
以上いろいろと入場税国税移管反対に対しまする業者の立場を陳弁いたしましたが、何とぞこの問題に対しましては十分御考究の上、地方税に残して頂きますように、格別の御配慮をお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914629X02019540318/2
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003・大矢半次郎
○委員長(大矢半次郎君) 御質疑あるかたは御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914629X02019540318/3
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004・成瀬幡治
○成瀬幡治君 一つお伺いいたします。税率が非常に高いというので、引下げの運動を、あなたのほうというわけではなくて、文化人などと一緒に相当やられて、実際成果が上つたわけなんです。そのときは私は相当大衆の支持の下に闘われたと思つたのです。ところが実際それじや税率は下つたから入場料金というものが十割のものが五割になつたのだから相当下るのじやないか。こう思つておつたところが、実際下らなかつたというような点、これは私はあなたのほうの経営内容というものがそうなつたのかどうかという点はよくわかりませんですけれども、若干大衆はその期待を裏切られたやに思つておるわけなんです。その間の事情を御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914629X02019540318/4
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005・加藤巌雄
○参考人(加藤巌雄君) 昨年の一月から五割になつたのでございます。それで映画の入場料金は、慣行といたしまして、正月の入場料金というものは二十円なり三十円高く取るのが従来の慣行でございます。そのときはいろいろ税金が下つた場合に、大衆に還元する必要があるという建前から、暮の入場料金をそのまま据置きまして、正月料金を上げないでそのままにしておきました。それで正月の第四週からは税込百円の入場料につきまして十円だけ下げるということにいたして、それは実行いたしておるのであります。ただその正月料金が従来上げる慣行をそのままにしておつたということに対しまして、税金が一月から下つたのに下げてないじやないかという感を一般大衆に与えましたことと、五割下ればもつと、うんと入場料金は下げていいという建前から、いろいろ非難が出たと思うのでありますが、その百円について十円下げましたその根拠を申上げますと、百円といたしますと、十割時代は手取り五十円の税金五十円でございます。五割になりますと、手取りが六十六円六十七銭、税が三十三円三十四銭、これは割り切れませんから……、そういう数字になります。それで、こりうち約十円を大衆に、約十円を興行者、約十円を配給会社というふうに、一応私のほうで三等分いたしまして、その程度下げるということにいたしたのであります。その後、御承知の通り、これはいい悪いは別といたしまして、映画が順次二本建興行になつて参りました。従つて二本建興行になりますと、どうしても一本建興行よりは入場料金を高くとらなければならん。そういうところから、去年の中頃ぐらいからもう殆んど二本建興行になつたものでございますから、入場料金が上つて来た。そういう点につきまして、表面的には税金を五割下げて頂いたのにちつとも大衆に還元しないじやないか、こういう非難が出たと思いますが、興行者の立場といたしましては、実は今申上げましたような状況になつているのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914629X02019540318/5
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006・成瀬幡治
○成瀬幡治君 あなたのほうの一番言いたいところは、第三点に書いてある遊興飲食税と一緒なんだろうと思うのですが、その遊興飲食税の組合、あの関係しておられるあの組合のほうと、あなたのほうと、何か一緒になつて打合せして、そうして国税移管反対というようなことをやられたことはございますか。全然これは連絡なしでおのおのが反対運動をやつているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914629X02019540318/6
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007・加藤巌雄
○参考人(加藤巌雄君) 最初事前に打合せて運動いたしたことは全然ございません。両方とも期せずして反対ののろしを揚げまして、そうしてその後はお互いに情報の交換をやりながら運動は続けて参つたような状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914629X02019540318/7
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008・成瀬幡治
○成瀬幡治君 この点について余りお聞きしても私ども何か変ちくりんな話が出て来てもいかんと思いますからやめますが、とにかく私たち聞いていても何か不明朗なものがあるような気がいたします。併しそういうものがないとおつしやればそれまでですが、これは又あなたのほうの問題ではなくて、政府のほうの問題になつて来る。以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914629X02019540318/8
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009・大矢半次郎
○委員長(大矢半次郎君) ほかに御質疑がなければ、入場税法案の審議は本日はこれを以て終ることにいたします。速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914629X02019540318/9
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010・大矢半次郎
○委員長(大矢半次郎君) 速記をつけて。
本日はこれを以て散会いたします。
午後四時四十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914629X02019540318/10
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