1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十九年四月二十六日(月曜日)
午後一時五十一分開会
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出席者は左の通り。
委員長 内村 清次君
理事
石村 幸作君
堀 末治君
館 哲二君
委員
伊能 芳雄君
伊能繁次郎君
小林 武治君
島村 軍次君
秋山 長造君
若木 勝藏君
松澤 兼人君
加瀬 完君
国務大臣
国 務 大 臣 塚田十一郎君
政府委員
自治庁税務部長 奥野 誠亮君
事務局側
常任委員会専門
員 福永与一郎君
常任委員会専門
員 伊藤 清君
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本日の会議に付した事件
○地方税法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
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001・内村清次
○委員長(内村清次君) それでは地方行政委員会を開会いたします。
地方税法の一部を改正する法律案を議題に供します。一般質問の続行をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914720X02819540426/1
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002・加瀬完
○加瀬完君 御説明を頂きました点について質問するのが当然でありますが、御説明になつておらない点で、その基本になるような問題で一、二先に伺いたいと思うのであります。それは御説明でもはつきりとしておりますように、今度の地方税の改正が地方財源の充実及び地方財政の強化、こういうことを主眼にして改革が行われたということはよくわかるのであります。そこで問題は地方財源の充実或いは地方財政の強化といいましても、それには一つの地方財政の適正規模と申しますか、地方財政の一つの標準という目安がなければ、強化と言つても充実と言つてもはつきりして来ないということになると思います。それについては一体どういうものを適正財政規模と考えたか、或いは地方財政の規模の標準と考えたかという点で、長官のお話或いは政府当局のお話を伺つておつたのでありますが、どうもそういう点から考えるならば、地方自治法というものが全面的に改正されまして、事務配分といつたようなものが明瞭になつて参りませんと、この地方自治団体の、例えば市町村の性格、都道府県の性格というものがわかりかねるということにもなると思います。長官の御説明の中にも例えば地方自治の基本は市町村に置くのだ、府県というものは言はば国の出先機関といいますか、中間機関といいますか、そういうものに持つて行こうという個人的な構想はあるのだといつたようなお話もあつたわけであります。そこで私はつきりと知つておきたいのは、国なり府県なり或いは市町村なりのこの事務配分は現状においては明確ではない。少くとも市町村と都道府県というものの事務というものが明確になりませんと、それが適正な財源であるか、或いは強化された財源であるかという判断に迷うのであります。一つの例を申上げますれば、今度警察法が改正されるわけでありますが、その警察法改正の御説明では、これは府県の自治体の警察にするということになつておるのでありまして、これは長官の個人的な御見解でもありますが、府県は国の出先機関として考えるということになりますと、警察法そのものも、一体自治体警察という構想なのか、府県警察という構想なのか、戸惑いを生ずるということになつて参るわけであります。そういう点を考えますと、どうも府県の性格というものが明確を欠いておつたままで財政或いは税制というものをいじりましても、根本に問題の解決を残す点があるのではないか、こういうふうなことを考えまして、一体地方の適正財政規模の標準というものをどういうふうにお考えになつておられるのか、この点についてもう少し御説明を承わりたい、こう思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914720X02819540426/2
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003・塚田十一郎
○国務大臣(塚田十一郎君) お尋ねの点は御尤もだと私も思うのでありまして、自治団体の財政を強固にするということは、一つは全体として自治団体の財源を殖やすということと、それからして今度全体として殖えたものを個個に配分するときに成るべく無駄を少くして、そうして適正に配分をして、一方に黒字が出て一方に赤字が出るというようなことが配分の適正でないということから来ないようにということにあると思うのであります。全体としてはどういう工合にしたらば充実されるかということは、御指摘のように結局過去の財成規模の策定の上で考えられておらなかつた点を充実して行くということにある。全体として地方財政がそういうふうに充実されて行きますならば、府県と市町村というような間に事務の若干の移動があつても、これは府県、市町村の間の財源配分で或る程度まで是正ができる、こういうことになると思うのであります。ただ国から事務が地方に更に大幅に持つて行かれるということになると、その点は若干又変つて来るのでありますが、今考えておりますいろいろな自治法の改正その他の構想では、国から新らしく地方に事務を持つて行くということは考えておらないわけでありまして、一番大きなものは警察法でありまして、警察法の改正を前提として一応財源措置というものが講じられてある、こういうことになつておるわけであります。でありますからして、この財政規模の策定が十分でないという御意見は、先般来交付税の御審議そのほか財政計画についての御審議の機会からしばしばいろいろと御指摘を受けて、私ども十分今後考えたり努力したりしなければならん点だと思つておるのでありますが、一応先般も大蔵大臣もおいでになつたときに、大蔵省側の立場、自治庁の私たちの立場をしばしば御説明申上げたような状態で、今年の財政規模というものが地方財政についてもきまつているわけであります。なお又いろいろ御意見を伺つて善処して参りたい、こういう考え方をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914720X02819540426/3
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004・加瀬完
○加瀬完君 今の御説明にもありましたように、例えば警察行政というものが地方、特に都道府県に委譲されるという形になりますと、これは国の事務というものが今まで府県が持つておらなかつた点にそれだけ強化されるわけであります。それならば例えば地方財政が強化されたにいたしましても、それがただ新らしく再配分された警察事務の経費だけ、或いはそれを上廻るものでないということであれば、それは現状の規模というものを押えましても、現状の規模に非常に財政が充実されたとか、或いは強化されたということにはならないと思うのであります。で、警察の問題が出たのでありますので附加えて伺いますと、御説明によりますと、例えば税収入の増加として六百二十四篇というものが、これは原案によりますれば考えられておる。府県分は三百八十八億である。このうち警察制度の改正によつて負担増されるものが二百九十四億であるので、概算九十三億というものは府県にとりましては前年度より増だという御説明があるのであります。併し府県に個々に当つてみますると、必ずしもそうではなく、むしろ警察事務というものを配分されることによつて、ことによると持出しをしなければならないという現状であるというふうな幾つもの説明を私ども承わるのであります。そうなつて参りますると、これはまあ大まかに考えて、この財政強化の差引九十三億というものは一応警察行政を負担するためにまあせいぜいとんとんといつたようなくらいにしか見込がつかないのじやないかということも考えられるのであります。そうなつて参りますると、結局自治庁の御調査にも出ておりましたように、地方財政の窮乏の理由として給与関係経費の増加、或いは政府施策による地方負担の増加、物価高による行政諸費の増加、こういうものによつて地方財政が窮乏しておるんだ。この窮乏の原因というものは今度の増税分によつては何ら除去されないということにならないか。そうであるならば、一体この一応財政収入の強化というものと共に地方特に府県の事務配分そのものを全然考えないで地方財政を強化しようといつても、これも片一方しか考えないということになるんじやないか。そういう点でもう少し御説明を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914720X02819540426/4
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005・塚田十一郎
○国務大臣(塚田十一郎君) これは警察法が改正されて警察が府県単位の自治警察になるということで、それに対して今度のこの二十九年の財政計画で以て措置をいたしました措置の額が十分でないという御意見はいろいろの方面からお伺いするわけであります。併しまあ私どもといたしましては、今まで市町村に警察があつたものにどれくらいの金がかかつておつたか、又国に警察があつたものにどれくらい金がかかつておつたか、それが一本に統合されることによつて人員も相当数減るという予定をいたしておりますし、まあそういうことを相当計数的に検討いたしました結果、二十九年の財政計画を策定をいたしておりますので、私どもは警察法の改正に伴う地方財政に対する措置というものに不足があるというようにはまあ考えておらないわけであります。それは勿論運営の仕方によつては幾らでも金も要ることになるんでありましようが、是非この範囲で一つ警察を賄えるように運営してもらいたいという考え方を強くいたしておるわけであります。で、そういうように個個に原因がありますものは、今度は御承知のように全部二十九年度におきまして二十八年度の財政規模の上にプラスをして参つておりますから、これは私どもといたしましては、財源措置は十分とは勿論行かないけれども措置はいたしてある。その上に更に今までの考え方から来る措置で以て十分でなかつた面がいわゆる既定計画の財政規模の是正という形において総枠というものを検討し、これもまあ十分ではありませんが、百五十億程度というものがプラスされた、その地方財政の総枠というものをどういう形で賄うかという面において、成るべく独自の財源を殖やすようにという考え方からして税というものを考え、それから交付税というものを考え、譲与税というものを考えて配分をして来たという考え方をいたしておりますので、まあ私どもとしましては、繰返して申上げますけれども、今日のような国家財政、国民負担の非常に過重な状態でありますから、十分な措置というものはできませんけれども、この基盤に立つて自治団体の理事者にも又御協力を願うならば、何とかやつて行つて頂くことができるのじやないだろうか、又是非そうなるようにしたいという考えをいたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914720X02819540426/5
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006・加瀬完
○加瀬完君 自治庁の資料によりますると、昭和九年と昭和二十七年と抑えますときに、国と地方との膨脹の比率というものは、国の四百三十二倍に対して地方が三百三十六倍ということになつておるようでございます。昭和十一年を押えますと、国に対して地方の歳出というものは一・二〇九倍というふうになつております。こういう二つの面から類推いたしましても、国の膨脹の比率と地方の膨脹の比率というものは非常に地方のほうが下廻つておるわけであります。併し事務はどうかというふうに考えますと、国の事務というものは、或いは国の経費というものは戦前のほうよりも戦後のほうがむしろ減らなければならないはずでありますし、地方のほうは非常に殖えて来なければならないはずだというふうに大まかに考えられる。而も地方と国との比率がそこに陥りがある。こういう姿が、四百三十二対三百三十六という比率が果して妥当なものと認められるかということが一つ考えられるわけであります。たくさん出されました資料のうちでも、地方団体は現状において財源不足或いは赤字で悩んでおるということも言われておりまして、特に二十七年度におきましては、前年度に比して地方財政は自主性が後退しておる、国庫財政への依存度が強まつたと、こう言つておるのであります。或いは又地方財政における人件費の増加とこれを賄うべき一般財源の増加とが均衡がとれておらない、これが財政窮之の一因でもあると説明しておるわけであります。併し先ほども自治庁の説明を例に引いたのでありますが、この給与関係或いは物価高による行政諸費の増加、或いは政府の施策による地方負担の増加というものは、これは地方だけで解決をつけろといつても解決のつき得ない問題じやないかと思う。そういうものを睨み合せまして、更に新らしい警察業務というものを引受けるという立場を府県にとらせました上で考えましたときに、この地方税の改正によるところの増収分或いは強化分というものが割合に、比較的にと申しましようか、健全な地方行政を行うためにこれで十分だという裏付けがありましようかどうかという、こういう問題が一つ考えられるのじやないか。この点御説明頂きたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914720X02819540426/6
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007・塚田十一郎
○国務大臣(塚田十一郎君) これは過去における国と地方の財政規模の大きさ、現在のそういうものの比率というものを比較検討いたしますときに、よほど気をつけませんとなりませんのは、過去におきましての国がどういう支出をしておつたのか、又地方がどういう支出をしておつたのかということ、従つて過去の国の財政規模というものが何に原因しておるのかというようなこともよほど慎重に検討いたして比較をいたしませんと、却つて数字の上だけで比較をしておることが非常に無理が起きて来る原因になると思うのでありまして、その点私も実はそういう細かい点までは検討しておらんのであります。検討できておりませんからして、私どもとしましては、今の財政の規模の考え方というものは御承知のように昭和二十五年というものを基礎に置きまして、その後の変動というものを逐次積み上げる式で地方財政の規模というものを考えて来ておる、こういうことにもなつておるわけであります。
〔委員長退席、理事堀末治君着席〕
まあそれが十分でないということが逐次明らかになつて参りまして、既定財政規模の是正ということが国会側におきましても昨年中問題になつて、給与の面で相当程程の是正を願い、又今年の予算の編成におきましても、国のよほど締めた予算にもかかわらず、地方だけはかなり是正をしてもらつたという結果になつておるわけであります。従つて私はこの問題を検討いたしますときに、やはり殊にこの地方財政の場合には国の予算を組みます場合と違いまして、国の場合には一つ一つ国が予算をきめて参るわけでありますからして、収入がそれ以上にあつたからといつて、それに対して国の財政規模が大きくなるということにはならないわけであります。ところが地方の場合には一方足らない分を面倒見なきやならんという考え方をしなければならんと同町に、絶えず余り無駄なものが使われるということにならないように両面から検討を進めて行かなければなりませんので、私も自治庁長官といたしまして、非常にものを考える場合に苦慮をしておるわけであります。まあ非常に財政規模が小さ過ぎて窮屈であるからこれを何とか大きくしたいということを考えると同時に、やはり個々の地方団体においてどの団体においても成るべく無駄の大きくならないように、こういうことを絶えず頭に置きながら問題を考えたわけであります。それが赤字が出る赤字が出るということが非常にやかましく言われますけれども、御承知のように赤字が出ているのは全部の団体でない、又出ておる団体でも同じような比率において赤字が出ておるというようなわけではないというようなことも考えると、そういう財政規模を大くして来ることによつて財政の膨脹というものについてもよほど真剣に考えておかないと、そういう過ちをしでかすという危険が非常に大きいわけであります。そういうような両面の苦慮いたしながら、まあ尤もだと思われるものを逐次やつて参る、拡張して参るということになつておると思う。その場合に地方の仕事が国の仕事と違つて非常に住民に直接接触をいたしておりますからして、なかなか一旦やり始めたらやめられない、又やらないで放つておくわけに行かないという面のあることは私もよく承知をいたしておりますけれども、そういうことを苦慮しながらも、なお且つ今の日本の国民負担の状態では、したいことを何でもすべきである、又できるのだというような状態でないのだということも併せて考えて、国の場合にもしたいことはたくさんあるが、やはり相当予算のことを考えて先に見送るなり、しないで済ませるなりしておるというような状態を頭に置きながら、地方財政の運営もやつて行つて頂かなければならないということに問題点がなるのじやないか。従つてしたいことがされずに済んでいるということを考えなければならんと同時に、国民負担を考えながら伸ばせることは成るべく伸ばして行くのだ、こう行かなければならんということになると思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914720X02819540426/7
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008・加瀬完
○加瀬完君 お説のように、したいことをしようと思う、そういう立場で地方財政を考えているときに非常に不足がある、こういうものの考え方をするということであれば、これは一応おつしやる通りでありますが、そうではなくて、私どもこれは見方、立場の相違ということになるかも知れませんが、一応地方自治体というものを考えまするときに、地方自治体に、長官の御説明の中にもありましたように一応の地方財政の計画性、自主性を与えて行こうという立場から考えるときに、現状におきましては最低限しなければならないこともできないという状況にあるのじやないか、そこでもう少し自主性或いは計画性というものを、独自の計画性というものの計画のでき得るような性格というものを与えて行きたい、こういうような考えで議論を進めておるとお考え頂きたいと思うのであります。
そこで、現状の地方自治体というものと国というものを考えまするときに、お互いに一応国の経済事情というものから考えてセーブするにいたしましても、地方のほうを余り国に比べて搾り過ぎておるのじやないか、もう少し国に対して地方の比率というものを引上げてもいいのじやないか、こういう点が一つ。それから国の歳入に対しましても地方の歳入に対しましても、国民が全部負担を賄うわけでありますが、この国民の負担の配分というものが国のほうに非常に大きくて地方のほうにはそれに比べて非常に少いのじやないか、もう少し国の分というものを地方に廻すということが考えられてよろしいのじやないか。それからもう一つ、最低限の仕事すらもできないというのは投資経費と消費経費というものを考えまして、戦前を較べるまでもなく戦後におきましても、消費経費が増大しまして投資経費が非常に減少しておる。これは地方自治体というものの仕事がこれではできなくなるのじやないか。特に府県をとりますと、市町村の中でも町村などは非常に貧弱な所がありますから、町村の仕事というものも何か県の援助によりましてやろうとする傾向が非常に強いのであります。そういたしますと、県は町村に対するサービスというもような立場から、その独自な投資経費というものを組まなければならん。併しそういうものをたくさん組んでやりますと、一つの放漫財政というような形をとりがちである。市町村の現状におきましても赤字を出さない所があると言われましたのですが、赤字を出さないと所というものを検討して参りますると、単にすべき仕事もしないでただ赤字を出さないということだけで、行政そのものが却つて制限をされておる、こういう赤字を出さないということであれば、健全な行政とはやはり言われないのじやないか。まあ最低限、町村にたいしましても府県にいたしましても、このくらいの行政費というものは組まなければならんという形で組んで行つたときに、赤字が出るとすれば、その赤字というものはこれは当然行政上出る赤字でありますから出さないように考えて行かなければならんのじやないか。私はむしろ後者のほうの赤字というものが今問題になつており、又占めておるパーセントも大きいのじやないかと思うのでありますが、この点大臣はどういうふうにお考えになつておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914720X02819540426/8
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009・塚田十一郎
○国務大臣(塚田十一郎君) これはなかなかむずかしい問題でありまして、まあ赤字を出しておる所があり、赤字を出しておらない所がある。まあいつも申上げるのでありますけれども、今の地方財政を自治庁が考えておる従来の平衡交付金制度というものを基礎にして考える考え方からすれば、我々の考えるような考え方で財政運営をやつて頂けば、赤字が出る団体というものはないのじやなかろうかという考え方をしておるわけであります。大体御承知のように、或る標準財政規模というものを頭に置いて問題を考えておるわけで、そうしてその規模まではとにかくできるだけ財源措置というものをしておるのでありますから、その計算が非常に間違つておるとか、或いはこの財政規模の考え方自体に非常に無理があるということであれば、
〔理事堀末治君退席、委員長着席〕
私はまあ赤字が出て来る、その場合には恐らく大体同じ比率でどの団体も赤字が出て来るという考えが出て来るのじやないかと思つておるわけでありまして、いろいろ地方の赤字を出しておる団体の現実の状態を逐次調査をいたしておるのでありますけれども、成るほど尤もだと思う面もありますし、まあこういうところは少し使い方が多過ぎるとか、又こういうところはもう少し税を徴収して頂くことにならないと、その不足分を国が面倒を見るというわけに行かない、こういうふうな面もかなりあるのでありまして、なかなか一律に赤字が三百億あるから、四百億あるからというような考え方ばがりでこの地方財政というものを見るわけに、自治庁は地方の自治団体の財政計画というものを個々に見ておるわけではないのでありますから、なかなか行きにくい面がある。そういうことが原因して大蔵省と自治庁が折衝するときにいつも意見の相違でけんか別れになつてしまうという形になつておるわけであります。殊に私が非常に心配いたしますのは、最近地方財政というものは非常に人件費の比率が確かに多いのでありまして、消費経費が非常に多くなつて投資経費がだんだん少くなつて来ておる。これは人件費の重圧がかかつて来ておるわけで、これは地方団体全般の傾向だと思います。ところがやはり赤字を出しておる団体と赤字を出していない団体というものを見ると、人間の使い方に上手下手というものがやはりあるように思われるのでありまして、ところが現実に検討して見ると、給料でこのくらい要るというときに、給料の額というものは検討のほかになつてしまつておるのでありますから、私どもからすれば人間を余計使い過ぎておる、従つて地方税を負担してもらつても大部分は給料に払われてしまつておるという場合においては、一体何のために自治団体があるのかというようなことは、自治団体の住民の側から見ると又言えるというようなこともないわけではないのでありまして、なかなか最終的に一概に結論というものが出しにくいわけであります。まあ私もでき得るならば国税を減らして地方税をだんだん殖やして行く、こういう工合に税の配分は持つて行くということのほうが正しいと思います。恐らく国の側でも緊縮財政を立てながらだんだんと税も徴収をして、その余つた部分を逐年減税するという方向に持つて来ておりますから、私は国の財政計画全体としてはそういう方向に逐次なつて来ておると思うのでありまして、最近の国の財政計画の建て方を見ておりましても、国が地方税を余計とつて、そうして余計だんだん仕事をして行くという考え方ではなしに、成るべく財政はつめて、自然増収その他でゆとりができれば国税を減らして行くという方向に逐次持つて来ておるからして、私はそのほうが正しいと思つておる。ただ、今のような段階では国税が減つたからすぐに地方税が殖やせるというところまでまだ行かないけれども、将来の方向としては国税は成るべく減らして地方に税源を与えてくれるという形になつて行くことが正しいのじやないか、又そういう方向に努力をして参りたいと思つておるわけであります。
それから地方との比率の問題でも、地方が住民と接触する第一線でありますからして、仕事が成るべく第一線の住民の気持を汲んで行われるという意味におきましては、仕事が成るべく地方に廻されて、従つて地方財政規模が大きくなるということ自体が私は方向としては正しいと思つております。ただ先ほども申上げますように、余りに緩やかな物の考え方をすると、ここから浪費の原因が出て来るから、そういう点については十分検討しながら、地方財政のだんだんの拡張拡大というものを考えて行かなければならないと、こういう感じがしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914720X02819540426/9
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010・加瀬完
○加瀬完君 この地方経費についての赤字の問題で、赤字の一番の原因が放漫な給与費といいますか、給与費の増額というふうに考えられがちでありますが、府県なんかにおきまして、一体府県職員そのものの給与費というものは最低限に切つたところで、高が知れていると思うのであります。むしろそうではなくて、地方団体の膨脹というものは事務的経費の増加というものが非常にあるのじやないか、政府のほうでは事務的経費の増加ということに対しては案外それだけの責任を感じておらないような後答弁がたびたび見受けられるのでありますが、これを見逃すことができないと思うのであります。例えば今度の地方税の収入というものを非常に引上げまして、大体これが三九%程度見合うようにする現状は三三、三%であるから、相当独立財源或いは財政収入というものが殖えたのだ、こういうことでありますが、それではその三二%から三九%に引上つたその新らしく殖えた収入の面というのがどこに振向けられておりますかというと、又警察行政といつたような一つの事務的経費に振向けられる点が多いのであります。こうなつて参りましては、独自な自治体としての仕事をするということになりましては、やはり経費の不足をかこたざるを得ない。そこで先ほども申したのでありますが、大臣は市町村或いは都道府県を通じましての消費経費と投資経費の割合というものを現状におきまして止むを得ん、或いは止むを得んとも思わんが、一応これで進めて行つても地方行政そのものには大して問題がない、こういうふうにお考えでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914720X02819540426/10
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011・塚田十一郎
○国務大臣(塚田十一郎君) この点は私も今のように消費的な経費が非常に大きくて投資的経費が非常に少いということは、少くとも国が健全に発展をして行くという場合に適当でないと私も思うのであります。ただ全体としてこの消費経費増大、殊に給与費の増大というものは、恐らく警察でありますとか、教育職員でありますとか、そういうものが大部分を占めておると私も思うわけでありまして、これは止むを得ないわけであります。そういう工合に消費経費が増大すると、一方国民負担というものがそれ以上はそう大きくできないというときには、やはりこれは成る時期の間は投資経費が伸びないで暫く辛抱しておくという結果になるのも止むを得ないのじやないかと思うわけでありまして、逐次国民に能力ができて来るに応じて投資経費も殖やして行く、又健全なる経済形態になるためには消費経費が殖えないように抑えながら努力して行くということもある。その上に地方の場合には数多くの自治団体のことでありますからして、恐らく個々の自治団体が同じような規模で同じような気持で緊縮して、節約すべきものを節約してやつて頂いているとは思えないのであつて、やはり経営者の物の考え方でありますとか、当該自治団体の議会の物の考え方などが影響して、或る所は相当緩やかに、又或る所は非常に細めてというふうにやつておると思われるのでありまして、私どもはそういうものにはどうかその締めておる団体に緩やかな団体も一つ倣つてやつて頂く工夫がないだろうかというふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914720X02819540426/11
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012・加瀬完
○加瀬完君 別の問題になりますが、これも地方税全般を考える前に伺いたいと思う問題でありますが、交付金制度が今度交付税制度に変るわけでありますが、そういう点から言いますと、財政補償制度と申しましようか、そういう点はむしろ地方財政計画が交付税によりまして抑えられるという逆な傾向になるんじやないかと思われるのであります。例えば今度の原案は随分修正されておりますから、原案通りの財政計画というものが立たないわけであります。そうすると、どうしても私どもはしわ寄せは交付税に頼らざるを得ない。この交付税は来年度から二五%であります、率というものは。これは大蔵大臣の御説明によりましても大分異論があるようであります。そうなつて参りますと、どうも今言つたように交付税によつて賄えないということになりますと、それでは財政補償制度というものが非常に稀薄になつて参りまするから、その欠点をどこで補うか、それはどうしても独立性によります財源強化、或いは貧富団体間の財力是正というものが最も効果を現さない限りにおいてこの問題は解決できないということになると思うのであります。でそういう点から見まして、今度の地方税全般の改正というものはこれらの問題というものを解決しておるのでございましようが、或いはこれらの目的というものを注しておると言われるのでございましようか、こういう点若干心配がありますので、御説明を重ねて頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914720X02819540426/12
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013・塚田十一郎
○国務大臣(塚田十一郎君) これは、この平衡交付金を交付税に変えましたということは先般もちよつと申上げましたように、考え方、理窟の上では確かに少くとも単年度をとつてみますと、財源の補填が十分いかないという場合があり得ることは御意見の通りだと思う。併し理窟の上では十分財政の補填ができておるはずであつた交付金の場合、過去の実例を見てもなかなか大蔵省側と完全な意見の一致を見るということはむずかしいことで、絶えず国会側の非常な熱心な御協力を頂いて報うじて財政措置をして来たというのが現状で、まあ十分に行つておらなかつたことも事実なんであります。そうして絶えず国と地方との間にいろいろの問題が起きておつた。従つて私どもといたしましては、そういう面におきましても現実的にものを見るならば、交付金制度が交付税制度になつたということは、単に理窟の上で財政の補填の力が、性質が弱くなつたというだけのことではない、問題はそうではないんだ、殊に別の面から見ますれば今度は国税の一定率ということで参つておりまするから、その面におきましても独立性、自主性というものが殖えて参つて、このほうが遥かに私どもは軍用の実際に照してよくなるだろうと、こういうふうに考えるわけであります。大蔵大臣が二五%に対して反対の強い意思を表示されておつたようでありますけれども、私は併し大蔵大臣の御反対になつておるのはどこまでも原則的な物の考え方だと思うのであります。私はそうは考えないのでありまして、勿論交付税というものは一旦税率をきめた以上は、そうしばしば変えないという前提に立つてきめることでありまして、又そういうふうに運営して行くのでなければ、足らないときに殖やすということであれば、余ると減らされるにきまつておるのですから、やはり独立性、自主性というものはなくなつてしまうのですから、私は動かさないという大原則は大蔵大臣の言われることに賛成でございますけれども、併し財政計画を策定する上においてその率をどこに置くかということをそういうことで検討してきめておりますからして、その基盤が変つて来た範囲においては、私どもはその率を変えるのはむしろ正しいのであつて、変えなければならないのだと思つております。恐らく当初政府が考えましたあとに発生いたしましたいろいろな事態に対応しての分は、私は交付税の税率若しくは交付税の税率と併せて他のものの税率、例えばたばこ消費税の地方に配分される率などによつて必ず是をされるべきであるし、又是正してもらわなければならないと考えておるわけです。従つて私どもは当初の我々の考えた考え方からして、その後に起きたものに対して、今後恐らく修正されるであろう見通しをつけて、今度の地方財政に対して自治庁が、政府がとつた措置というものは、少くとも過去のものよりは格段地方財政にとつてプラスのものができておる。そういうように考えているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914720X02819540426/13
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014・内村清次
○委員長(内村清次君) 本会議の都合で暫時休憩をいたします。
午後二時三十一分休憩
〔休憩後開会に至らなかつた〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914720X02819540426/14
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