1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十九年五月二十一日(金曜日)
午後一時四十四分開会
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委員の異動
五月二十日委員高橋進太郎君辞任につ
き、その補欠として酒井利雄君を議長
において指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 中川 以良君
理事
松平 勇雄君
加藤 正人君
海野 三朗君
委員
黒川 武雄君
西川彌平治君
酒井 利雄君
岸 良一君
豊田 雅孝君
西田 隆男君
白川 一雄君
衆議院議員
始関 伊平君
小笠 公韶君
国務大臣
通商産業大臣 愛知 揆一君
政府委員
農林省農林経済
局長 小倉 武一君
水産庁長官 清井 正君
通商産業省軽工
業局長 中村辰五郎君
中小企業庁長官 岡田 秀男君
事務局側
常任委員会専門
員 林 誠一君
常任委員会専門
員 山本友太郎君
常任委員会専門
員 小田橋貞寿君
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本日の会議に付した事件
○砂利採取法案(衆議院送付)
○硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨
時措置法案(内閣提出、衆議院送
付)
(第十八回国会継続)
○通商及び産業一般に関する調査の件
(韓国のり輸入に関する件)
○中小企業安定法の一部を改正する法
律案(衆議院提出)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/0
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001・中川以良
○委員長(中川以良君) 只今より通商産業委員会を開きます。
本日は先ず最初に砂利採取法案の提案理由を提案者より聴取いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/1
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002・始関伊平
○衆議院議員(始関伊平君) 只今議題となりました砂利採取法案について御説明申上げます。
砂利の重要性、即ち砂利が、道路や鉄道、港湾などの公共施設を初め、水力、地下資源などの開発、或いは耐火建築工事など、種々の土木建築工事に絶対不可欠の要素であることは、改めて申上げるまでもありません。我が国における砂利の生産量は現在年間約五千万トン、金額にして約三百億円に上るのでありますが、これらの需要は、セメントの増産と相待つて、年と共に増加の一途を迫る趨勢にあるのであります。然るに、すでに今日においてさえも、特に土木建築工事の集中する都会地方のごときは、その供給円滑を欠き、ために工事の進捗が阻害せられることも少くはないというのが実情であります。従つてこの重要な基礎物資の供給を確保するは勿論、その適切なる価格を維持するがため、砂利採取業の安定並びに合理化を図ることは、経済自立の上からも、又民生安定の見地からも、当面緊急の要務であると申さなければなりません。
併しながら他方において、これら砂利採取のため、いやしくも河川を破損して洪水氾濫の原因を作つたり、道路その他の公共施設に危害を及ぼしたり、或いは農業その他の産業の利益を損なうがごときことのないよう、厳重な監督を加えなければならないことも又論議の余地のないところであります。
本法案の提出は、砂利に関するこれらの要請に応えんがためでありまして、その内容を申上げまするならば、第一の点は、採取管理者を常置して現場における作業を監督させることであります。即ち、砂利を採取するため他に累を及ぼすがごときことのないよう、不断の監督とこれに基く適切な処置を講ぜしめようとするものであります。
第二の点は、河川等における採取を許可する際には、業者の合理的経営を維持できるよう考慮すべき旨の規定を設けることであります。それと申しまするのも、従来河川等における砂利の採取は、専ら河川法等に基く都道府県令によるのでありますが、往々許可面積が余りにも狭かつたり、或いは期間が著しく短かかつたり、又同一区域に重複して許可せられたりして経営の安定はおろか、事業の継続さえも困難な場合が少くはないからであります。
第三の点は、河川等以外の土地における採取に対して採石法を準用して砂利採取権を認め、又砂利を搬出する通路の敷設等について、必要最小限度の土地使用権を認めることであります。けだしこれら一般民有地における採取については鉱業法や採石法のごとき事業法のよるべきものがなく、単に地主その他の権利者との契約によるのほかないため、その採取権たるや頗る薄弱不安定であり、常に紛争の絶間がなく、従つて折角有望な事業場でありながら、運搬道路の開設が不可能なため、みすみすこれを放擲せなければならなかつたり、或いは又採取料の不当な値上げを強要せられて、結局採取契約の更新が不可能となるなどの事例が少くないからであります。
以上本法案の提出理由並びにその内容に関する概要を御説明申上げました。何とぞ御審議の上御賛同下さるようお願い申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/2
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003・中川以良
○委員長(中川以良君) ちよつと速記をとめて。
午後一時四十九分速記中止
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午後二時三分速記開始発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/3
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004・中川以良
○委員長(中川以良君) 速記を始めて。
只今提案者より提案理由の説明を聴取いたしたのでありますが、これは只今懇談会の席においてもお聞きになつた通りに、本法秦は建設省、農林省並びに各地方庁とも密接な関連のある法案でございまするので、衆議院議員の議員提出法案でございまするが、通産省とされましても本問題について各関係者ともすでにお話合いがあると存じまするが、どういうふうに通産大臣が御見解をお持ちかどうかを先ず今後法案審議をいたします前提といたしまして通産省側のお立場を承わりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/4
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005・愛知揆一
○国務大臣(愛知揆一君) 只今提案者の代表である始関衆議院議員から懇談会で詳細に御報告がありました通りでございますが、通産省といたしましてもやはり建設省その他関係方面、地方公共団体等たくさんございまするので、それらの方面と十分通産省の立場におきまして連繋をとりまして、各省事務当局閥におきましても全く意見の一致を見まして、意見の相違するところはないということに結論として相成つておるわけでございまして、政府側といたしましても、この法案に対しましては速かに御審議頂きたいと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/5
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006・中川以良
○委員長(中川以良君) それでは本日はこの法案につきましてはこの程度にいたしまして、次回に延ばしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/6
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007・中川以良
○委員長(中川以良君) 御異議ないと認めます。それではさように決定をいたします。
速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/7
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008・中川以良
○委員長(中川以良君) 速記を始めて。
それでは肥料関係二法案を議題といたします。前回に引続き質疑を行います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/8
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009・豊田雅孝
○豊田雅孝君 今回肥料の輸出振興を図るために肥料輸出会社が設立せられる想定の下に法律案が出ておるわけですが、私は輸出振興を図るためには輸出入取引法を先般も国会で非常に強化いたしまして、輸出組合制度ができておりますので、輸出組合制度によつて輸出振興を図つて行くのがいいというふうに考えておるのであります。と言いますのは、輸出の振興を特定の品種について図るために特に輸出会社を設立する、又これに伴つての特別法を作るということは今後輸出振興第一主義の政府の方針を推進せられる上において将来肥料にとどまらず或いは鉄鋼関係或いは化学製品、いろいろとこれが将来先例となつて問題が出て来やしないかということを憂慮するのであります。若し組合制度に足らないところがあるならばこれを改正いたしまして、その輸出組合制度の縦横無尽の活用によつて輸出の振興を図つて行くことがいいのではないかというふうに考えられるのであります。従つて今後輸出振興の非常に徹底した振興を図る方策をとる場合におきまして、かような輸出振興会社というか、そういう性格のものを今後作つて行くということのお考えは恐らくはかにはないと思うのでありまするので、その点を念を押しますると同時に、今後輸出組合制度の改正を徹底的に行われまして、輸出振興のためのカルテルの形式というものは会社方式でなく、組合形式でやつて行くというお考えがあつて然るべきかと思うのでありますが、その点についての大臣の今後の方針を伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/9
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010・愛知揆一
○国務大臣(愛知揆一君) 先ず第一にこういつた硫安についての輸出機構につきましても輸出入取引法によつて解決し得るのではなかろうかというような御意見に対して私どもの考え方を申上げたいと思いますが、当委員会におきましても従来縷々事務当局からも御説明申上げておることと存じますが、現在の硫安につきましては操短ということは考えられない。従つて国内需要を満たす以外の余剰分は輸出に充てるべきでありますことは当然でございますが、この輸出につきましては合理化が達成されてコストの引下げが実現するまでの間は損失をこうむることが予想されるのであります。而もその損失は国内消費者に転嫁することは硫安の農業に対する基礎資材としての特殊な性格から申しましても、又農家経済に対する重要性から申しましても消費者に転嫁するということは許されない。そこで内需と外需とは数量的にも、経理的にも明確に遮断する必要があると考えるのでございまして、この点は輸出入取引法による勘定では不十分でもありますし、内需と外需を明確に遮断する機構を設ける必要があると認めましたので、特殊の輸出機構、輸出会社を法律によつて作らせて頂くことのほうが、硫安につきましては実効が挙るというふうに考えたわけでございます。
第二の点は他の物資につきましてこういうふうな輸出機構を考えておるかというような、将来の方針の問題でございますが、只今のところその他の輸出物資等についてはこの硫安と同じような考え方で輸出機構を作るということは考えておらないわけでございます。それほどこの問題は現在のところでは特殊的な取扱をすることが妥当であろうと考えております。
それからなお輸出入取引法につきましては最近も改正が行われたわけでございますが、更に硫安以外の物資等につきまして改善を必要とするところがあるといたしますれば、それらの点については今後十分検討を進めて見たいと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/10
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011・豊田雅孝
○豊田雅孝君 私が特に懸念を持ちましたのは、先般輸出入取引法の改正の際に輸出組合制度を強化したことによりまして、単に商社のみならず輸出メーカーでも輸出の意図とその能力がある場合においてはこれを組合化、カルテル化することによつて一手買取、一手販売等もできるという強い行き方が先般の改正で行われるようになつたのでありまして、一方今回のこの会社を見ますると、もう差当りのところ赤字の出るのは当然である。その赤字は結局出資者であるところの輸出メーカーに出さして行くのじやないか。結局狙うところは組合を作るカルテルの行き方と全く会社とは言いながら実質においては余り変りがないという点と、もう一つ今後輸出振興を積極的に図る場合におきまして、輸出価格の引下げを行うことによつてこれを国内市場相場に転嫁のできない点におきましては、肥料も、その他の商品におきましてももう程度の相違はありましようが、本質的な相違はないというふうに考えざるを得ないのであります。特に国内物価の引下げを徹底的に図ろうとするこの際においては、特にそういう感を深くするのでありまして、今大臣の御答弁によりますと、肥料は特殊の商品であり、又この会社で行く行き方はいわゆる全くの特例としてこれだけに限るというなお話でありまするけれども、只今も申しましたように、これは程度の相違であつて、今後只今の輸出入取引法による輸出組合制度というものが足らないところがあるという前提で進んで参りますると、とやかく言つているうちに徹底的に輸出振興を図ろうという場合には会社方式をとる。少くとも業界ではそういう方向へ向つて行きやしないかという懸念を持つのでありまして、そういう点において能うべくんばこの際輸出入取引法の改正を行なつて、足らざるところを補つて、輸出組合制度で今後如何なる商品についての輸出振興を徹底的に行う場合においても輸出組合制度によるという方向へ行くことが望ましいのでありますけれども、併しながら今回は特別の場合だということで行くといたしましても、一方輸出組合制度というものを、将来かような輸出振興会社の形で行かなくても事が足りる程度に整備しておく必要があるのじやないか。そうしないと、必ずや将来特別法によるよらないにかかわらず、会社形式をとるという方向に向いて行きはしないか。それの裏付といたしまして今度は国内市場相場、或いは需給調整の見地から国内の統制を誘発するようになりはしないかという点も考えられるのであります。そういう面において特に懸念をいたしておりますが故に、今の御答弁によりまして大体の方針はわかるのでありますが、輸出組合制度自身の今後の改正、更に今後輸出組合制度を積極的に活用する意図をお持ちになつておるのかどうか、そういう点について伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/11
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012・愛知揆一
○国務大臣(愛知揆一君) 先ほど申し遅れましたが、この輸出機構の設立につきましては、御承知のように肥料軒策委員会におきましても非常に長い時間と努力を傾けたことで、輸出による損失はメーカーが自主的に負担をする、自主的に処理すべきものであるという答申があるわけでございまして、この御趣旨を体しまして輸出機構はメーカーのみの責任で設立されなければならないと考えて参つたわけでございます。ところで輸出組合でございますが、これは輸出業者が主体となるベきものでありますが、仮にメーカーが輸出業者となりましても取引法で要求いたしておりまする輸出組合の最小限の構成員は三十人でございますので、現実の問題として業者メーカーの数が不足するわけでございます。そういたしますと、現在の十四社しかない関係でメーカーの数が不足でありますからして、それ以外のものも認めなければこの法律による輸出組合は作れないことになります。このことは只今申します委員会の答申の趣旨にも反しますし、さりとてこの輸出組合についての構成員をこのためにだけ直すということも如何であろうかとも考えまするのと、先ほど来申しましたような意味で、やはりこれは特殊の輸出会社というほうがよろしいのじやなかろうか、こういうふうに結論を出したようなわけであります。申すまでもなく先ほど申しましたが、輸出組合につきましても輸出入取引法の先般の改正によりまして、輸出振興のためには大いに輸出組合が活用されなければならない、活躍を期待しておるわけでありますから、そのほうにつきましては他の物資につきまして、先般修正を御審議願いましたときの御趣旨に従つて、有効適切な活用を図つて参りたいと考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/12
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013・豊田雅孝
○豊田雅孝君 只今お話のありましたように、輸出組合のほうは三十人以上のメンバーというようなことを前提にしておることは承知しておるのでありますが、こういう点において非常に窮屈になつておると思うのであります。何故に三十人以上に限定しなければならんか、更に一見商社中心のごとくいつておる点もやはりこれも窮屈に過ぎるのだと思うのでありますが、併しこれは先般審査の際に商社だけでなくとも、メーカーであつても輸出の意図と能力がある場合には組合制度で十分輸出の振興を図り得るというようなことを言つておつたのでありますが、この点は現法でも賄い得ると思うのでありますが、人数の点等に制限を加えておること自身が輸出組合制度というものが十分に活用せられなくなる。そうしてついつい今後輸出作興を徹底的に図ろうとするというと当該業種については会社の設立を業界から要望して来るというような問題が誘発せられると思うのであります。そういう面におきまして私はもう少し輸出組合制度というものを弾力性のある運用のできるように改正せられることが、輸出振興第一主義をとられる通産省としては当然とるべき措置であろうというふうに考える次第でありまして、さうな措置を今後とられますと同時に、かような輸出振興のために特殊の会社を作るということは今後再び起らないように御戒心を願いたい。それを希望いたしまして私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/13
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014・愛知揆一
○国務大臣(愛知揆一君) 只今の御希望は私どもも先ほど申上げました通り、他の物資の輸出につきましては特殊な輸出会社ということは考えておらないわけであります。
それから輸出組合の関係におきましては人数の点は先ほど申上げました通りでありますが、なお任意加入であるというような点で、やはり硫安の場合には特殊のものがよかろうということを考えた次第でございまして御了承を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/14
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015・豊田雅孝
○豊田雅孝君 もう一度只今お話がありましたので申述べたいと思いますが、任意加入の点も、今回同じく中小企業安定法が提案せられておりますが、その趣旨等から見ましても任意加入に仮になりましても、これに対して強制加入と同じような行き方ができることになつておるのでありまして、こういう行き方を、なぜ輸出振興を最も図らなければならん組合制度である輸出組合制度を用いないか。これが海外の事情或いは海外に対する影響というようなことを考えられたかと思うのでありますが、そういう点については、特別の業種について会社を作るということの、海外に及ぼす影響等と、私はいずれが有利であるかという点も非常に疑問を持つのであります。そういう点について輸出組合制度に人数の制限をするとか、或いは任意加入であるが故に、最後の締めくくりのつかないようなカルテルとなるようなことについて再検討を加えまして、完璧な輸出振興のカルテルが実現できるような方途を御考究になつて然るべきじやないかというのでありまして、その点今後御研究を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/15
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016・愛知揆一
○国務大臣(愛知揆一君) 承知いたしました。それらの点につきましては至急検討を加えまして、御趣旨のような輸出振興に貢献できるような組合にいたしたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/16
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017・海野三朗
○海野三朗君 私のお伺いいたしたいのは、この硫安の輸出会社ができまして、農民のほうに対しては、一定の価格から上げないようにやつて行かれるということは非常に結構なことでありまするが、その逆の場合、例えば輸出が非常に振わない、そうして国内の硫安の生産高が相当過剰になつておる、そういう場合にやはり需給の関係からして、その価格というものは、一定の価格も保持できない、つまり安いことになつてしまう、そういう際にはやはり硫安の値段というものを、一定価格を保持して、これを農民に、そういう場合にはやはり相対するのであるが、過剰になつた場合には、需給の関係からして安くなつて来る。そういう際に対して、安いほうに対しては、きめ手がないのだからという昨日の政府委員の御答弁でありましたが、そういう際にはやはり需要供給の関係で、幾らでもそのときに応じて値段を安くして行くというお考えがあるのかどうか。その点をお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/17
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018・愛知揆一
○国務大臣(愛知揆一君) 誠に御尤もなお尋ねと思うのでありますが、私はこういうふうに考えておるのであります。申すまでもなく第一に硫安というものは、非常に強大なといいますか、市場を海外に持つておるわけでございます。例えば中共等をも含めて考えれば、非常に莫大な市場だと思いますが、差当り考えられるところだけでも百五十万トン以上の輸出を消化し得るということは易々たるものではなかろうかと思うのでありますから、自然基本的に御心配のような御懸念は起らないものと、硫安については考えます。
併し第二段に、仮にそういうことを申しておりましても、どういう状態が出て来るかわかりませんから、仮に国内において見れば、非常に供給過剰の状態が起つた場合に、値段がどうなるか、この点は御承知のように最高価格をきめておるわけでございまするから、値段を下げることを抑制するということはないのでございまして、私はさような場合が、供給過多の場合が仮に起りましても、御懸念のように価格が下ることを阻止するような構成にはなつておらないと思います。従つて御心配のようなことは起らないと、こういうふうに考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/18
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019・中川以良
○委員長(中川以良君) ちよつと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/19
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020・中川以良
○委員長(中川以良君) 速記を始めて。
それでは暫時休憩いたします。
午後二時二十五分休憩
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午後二時五十一分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/20
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021・中川以良
○委員長(中川以良君) それでは休憩前に引続きこれより再開いたします。
最初に私から御質問を申上げたいと存ずるのでありまするが、これは通産大臣と農林大臣に特に御質疑を申上げたいと存じまして、一昨日でございますか農林大臣の御出席を本日はお願いしておつたのでありまするが、不幸にして御出席がないことが誠に遺憾に堪えないのであります。水産庁長官が見えておられまするので、どうぞ農林省側を代表いたしての御見解をお述べ頂きたいと存じます。
御質問申上げる点は、韓国海苔の輸入に関する問題でございまするが、昨日の日本経済新聞にもございまするごとく、こじれる韓国の海苔輸入ということで以て出ております。私どももこの問題は先般来いろいろ各方面から承わつておつたのでございまするが、たまたま五月の十日の当参議院の水産委員会におきまして韓国海苔輸入措置に関する決議というものがなされまして、これによりますると、その決議の趣旨は韓国の海苔の輸入はこれは止めろ。止むを得ない場合にはいわゆる生産者の納得する適切なる輸入方式等を樹立して国内生産に悪影響を生じないようにしろ云々とあるのであります。水産委員会の決議の趣旨はよくわかるのでございまするが、私どもは大きな見地からこれを眺めまするときに、どうも余りに小さい目先の事態を捉えての議論ではないかと、又お互い利害関係が対立するために大きな国の輸入政策に対してひびを入らせるようなことになるのではないか、こういう点を実は懸念をいたしておる次第であります。特に韓国との只今いろいろ国交の問題があり、貿易の問題等がいろいろこじれておつて問題になつておる矢先だけに、私は当委員会としてもこの問題は等閑視するわけには参らないと思います。まあ一つにお尋ねをいたしたいのは、今年の海苔の生産がかなり各方面ともいろいろな潮流その他の影響で不作であつたことは事実であります。然るが故に、価格は非常に海苔が高騰をいたしております。この際海苔の生産業者を保護するために輸入をしちやいかんといつておりまするが、今年よりも生産の多かつた昨年におきましても韓国の海苔は二百万ドル程度輸入をしておるのであります。今年も同額のものを輸入いたしましても決して供給過剰になるどころではなく、これによつて私は価格も著しく安定をいたし、又国民大衆に対しましても食生活の上に相当な利便がこれは図られるものだと考えております。こういう点につきましてどうも海苔の生産者側の見解が狭いのではないかと思うのであります。それから海苔の生産者は三月までに生産物のすでに八〇%はもう問屋に売渡しておる現状であります。現在輸入品が仮に入つて参りましても、その影響は生産者にはなくて、むしろ問屋側に私はあるのではないかと思います。従つて今この韓国の海苔が入りましても生産者を圧迫するようなことは私はないと思うのであります。生産者側から買い叩いたということを生産者側は言つておるのでありまするが、昨年も二百万ドル程度のものは輸入されておりまして、又この輸入に当りましては生産者と問屋の間がよく話合いがついて、国内の生産のほかにこの二百万ドル程度の朝鮮の海苔が輸入されるということを前提にして商談が進められておるものであつたのであります。今日、今又韓国から入るからこれが非常に弱気材料となつて生産者が極端に苦境に追込まれるということは私は考えられないのではないかと思います。然るに逆に今日生産者は輸入阻止運動を展開しておりまして、海苔の価格を吊上げようとする傾向すら見られておる、その結果がむしろ一般の消費者にこの値上げが転嫁をされることになりまするので、大きな国策的見地から考えまして、只今低物価政策を強硬に推し進めておりまする際に、かような措置が果して適切かどうかという点につきましても、慎重なる検討の要があると思うのであります。それからなおこの決議を見ますると、止むを得ない事情によつて輸入をしようとする場合には、国内の生産者の納得行く適切なる輸入方式を樹立をせられたいということを先ほど私が冒頭に申しましたように言つておるのであります。併しながらこれは現在の私は外貨資金の割当方式を見まする際に、輸入貿易管理令に基きまして輸入業者又は需要者に割当てることが建前となつておるのでございまして、若しかような主張が容れられまして生産が拘束されることに相成りますると、現在の外貨資金割当方式と違つた方式によつて割当をしなければならんということになります。通産省といたしましては今後の通産行政の上から非常に私は歪められて参ることが起つて参る、輸入方式制度等につきましてもいろいろな問題を惹起して、あらゆる物資について生産者がかような主張をした場合には一体どうなるかという点も懸念をされてやまないのであります。更に現在韓国との貿易関係を挑めて見まするときに、我が国は非常に御承知のごとく出超なつておる。昨年の四月から本年の三月の輸出は九千二百万ドルあるに対しまして、輸入は僅かに八百万ドルしかないのであります。儀か一年間におきまして八千四百万ドルも出超となつておりまするような現状であります。四月二十日の極く最近の総出超のバランスを見ましても、四千二百万ドルに達しておるような次第であります。一方日韓のオープン・アカウントによるスウイングは二百万ドルに過ぎないのでございまするから、韓国は日本にドルを以て四千万ドル反対に支払わなければならない義務が負わされておる実情でございます。ところが先方はこれを支払拒絶をいたしておりまする現状でありまして、その主なる原因は日本側が輸入の制限をしておる、特に韓国としてはどこにも売ることのできない海苔を二百万ドルからの生産があるにかかわらず、日本が買つてくれないということについて、一つの報復的な手段といたしまして、日本に対する輸入を拒否する、又あらゆる面におきまして、この点が問題を惹起しております。こういう点につきましても、一つ通産大臣、農林大臣は如何に考えておられるかという点を、先ずお伺いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/21
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022・愛知揆一
○国務大臣(愛知揆一君) 韓国の海苔の問題につきましては、これは農林省からも詳細に御説明いたすべきであると思いますが、私の立場から只今の委員長のお尋ねに対してお答えいたします。実は只今の御指摘がございましたように、最近、例えば昨年の四月から今年の三月までの二十八年度の貿易の状況を見てみましても、輸出が九千二百万ドル、輸入が八百万ドルであるというような非常な出超で、他の地に例を見ないような片貿易になつておるのでございます。従いまして、通商という立場、或いは国際収支の立場から申しましたならば、適当なものがあれば日本としては、韓国から買いたいということが、通商政策の立場から言えば、申し得ることでございます。
それから更にいろいろ韓国をめぐりまするFOAの関係、特需等の関係につきましても、とかく両国間の関係が円満でないために受ける影響するところが非常に多い状況でございまするので、両国の国交関係から申しても、多少のものを買つて、向うが希望するものならば、こちらで受入れて上げるということが、こうした国交の調整という場合役立つのではなかろうか。これが延いて経済政策の面におきましても、相当の効果があるものと、私どもはかねがね考えておるわけでございます。従つてでき得るならば、韓国の海苔を輸入いたしたいということは、通産省の立場としては、かねがね考えておつたところであり、又農林省等にも御相談をし、お願いもしておつたようなわけでございます。ところがたまたまそういつたような協議をいたしておりまするその時期におきまして、この難国の海苔の輸入の措置に関する御決議が、水産委員会でできましたことは、私は率直に申しまして、ちよつと困つたことになつたと思つておるのでございます。併しながら五月の十日に御決議がありまして、その前後に水産委員長と御懇談をいたしたのでありますが、ここに掲げてある文章の中に解釈等につきましては、例えば只今申しましたFOAの関係、その他国交を調整するための具体的な海苔の輸入をするならば、これだけの利益があるというようなことが考えられる場合に、それまで阻止するというような意図はないのであると、そういう点は十分農林省、或いは水産委員会等とも連携をとつて下されば、できるだけの便宜はお図りをするつもりであると、こういうふうな非公式ではございましたが、御説明を承わりましたので、やや安堵したような次第でございます。今後におきましても政府部内といたしましては、農林省及び外務省と、緊密に連携をとりまして、只今私が申しましたような趣旨において、できるだけ一つ海苔の輸入についても、大所高所から、処置ができますように、又韓国との関係におきましても、円滑に問題が処理できますようにやりたいというふうに考えておるわけでございます。私が申上げますことは、この御決議に対して非難をするとか、批評するとかいうことなく、通産の立場というものを率直に御説明いたしまして、お答えにする次第でございます。なお又生産業者の納得する適切な輸入方式というものは、必ずしも非常に厳格な意味でないのではなかろうか。先ほど申しましたように、基本的な考え方として、こういう話合いの場合に、こういう程度の輸入量ならば、認めてやつてもいいのではないかということが、農林当局におきましては、認められた場合において、輸入方式等は従来通産省が考えておりましたような方式でやつて差支えないのではなかろうか。そういうようなふうにして頂きたいものであるというふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/22
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023・清井正
○政府委員(清井正君) 只今韓国海苔の輸入の問題について、委員長から詳しくお話がありました。又只今大臣よりお話があつたわけでありますが、この問題につきましては、私ども極めて、非常に重大な問題と考えておるのであります。やはり貿易という観点から考えて、非常に只今四千二百万ドルという数字をお示しになつたのでありますが、そういうような事態にあるということは、実は、私ども遺憾ながら認識しているのであります。併しながら只今私どもとして、一番重要に考えておりますることは、何といつても李承晩ラインの措置に関するいわゆる漁業者全体のこれに対する一つの非難と申しますか、これに対する気持ということも、水産行政をやつて参ります上においては、無視できないこともあると思われるのであります。御承知の通り、李承晩ラインは、我が国の講和発効を前後として、発せられたのでありますが、昨年九月を契機といたしまして、突如実力行為に出たような次第であります。未だ百隻以上の船が拿捕され、数百人の人が抑留せられておるというような実情であります。而もラインは非常に広汎を極めております。中には航行しておる船もつかまつたというようなこともあり、水産庁の監視船もすでにつかまつたような次第であります。そのうち人々はぼつぼつ帰つて来たようでありますけれども、船の返還については、まだ何らの見通しもつかない状態であります。なお又中断された日韓漁業会談も、そのままになつておるというような事態にありますために、いつどうなるかわからないというような事態にありますために、関係する漁業者が、これによつて受ける損害は極めて莫大なものがあるのであります。これについての関係漁業者の何らかのこれに対して、適切な交渉による措置をとつてくれという要望は、かねてありますし、私どもといたしましても、一日も早くこの問題の平和的な話合いをいたしたい。何とかしてその方面の問題を解決することによつて、水産業界の立場からする問題を提出するようなことのないようにいたしたいというので、頻りに努力しておるのでございますけれども、残念ながら未だその曙光は見られないというようなことで、私どもといたしましては、誠に苦慮いたしておるような状況であるのであります。そういうような状況であります。実は民間におきましても、日韓漁業対策本部というようなものを設置いたしまして、相当大きな日本の全水産業者を以て組織しておるのでありますが、そこではつきり韓国の海苔をどうするかということに対して反対の意思を表明しておりまして、今なおこの反対の意思を強硬に続けておるのであります。輸入されるというふうな問題が起りかかつているというようなことを聞きまして、すぐ飛んできまして、それは絶対困るということを頻りに私どもに強く要望しているような事態も十分御了承願いたいと思います。なお又生産海苔業者の問題につきましては、いろいろお話も承わつたのでありますが、確かに海苔の生産業者も相当の部分は困つておるのであります。手持は僅かでありまして、それからだんだんと手持のものを少しずつ売つて行くというような事態にあることは事実のように思います。又生産数量全体の問題につきましても、これはなかなかつかみ得ないのでありますけれども、業者によりまして、ちよつと見方が違いますので、何とも申しかねるのでありますが、大体十二億枚か十三億枚の生産があつて、それより今年は減つているという見方と、それより殖えているという見方と両方あるのでありまして、恐らく去年と同様程度が本当の数字ではないかと思われますが、確たることは申上げられません。いずれにしても推測の域を出ないのでありまして、確かに去年よりも生産が又下つているということも、これは輸入業者は別といたしまして、そうはつきりしたことは答えられない。そうかといつて、相当の生産があるということもはつきり言えないということが公平であろうと思うのであります。そういうようなことであると思うのであります。そういうようなことでありまして、これは生産者に対する影響ということは無論あるのでありますが、非常に私どもといたしましても李ラインの問題に対する全水産業者のそれに対する考え方ということが、やはりこれに重大な関連を持つておると思わざるを得ないと思うのであります。全水産業者の意向に対しましても、私としましては無視いたすわけには行かないということをよく御考え願いたいと思うのであります。そういうことでありまして、先般来実は通産省当局でも十分事務的にいろいろお話を承わつておるのでありまして、私といたしましても何とか李ライン問題が一日も早く問題が解決することが、この問題を解決する方法であると実は考えておるのでありまして、何しろ今申上げたような状況でありまして、私としましても何とか李ラインの問題が根本的に解決するということが、根本的な本問題のキイポイトであると考えますので、何とかこの問題を進めたいと目下話を進めておりますが、なかなか現状においてはそれの見通しもつかないというような状態でありまして、従つてこの問題につきましても、私どもとしましては慎重な態度を持つて臨まざるを得ないという気持を現在持つておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/23
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024・中川以良
○委員長(中川以良君) 只今のお説にございましたごとく、李承晩ラインの問題、これは私は誠に遺憾な問題で、我が国の漁船がたくさん拿捕されておるというような不法な韓国の行為に対しましては、私ども誠に憤慨に堪えないのでございまするが、併しこの問題は一刻も早く日韓会談が再開されまして、円満に解決されることを切に希望をしておるのでございますが、なかなかこの会談も再会の時期に至つていない。併しこういうような状態でございましても、私は経済交流というものは、こういう感情を超越して、私は当然行われるべきではないかと思う。現に中共貿易にいたしましても、対ソ貿易にいたしましても、促進せんと努力を政府も払つており、韓国に対してのみこういうような状態に、いわゆる貿易関係がございますことは誠に残念なことでございます。殊に韓国政府は最近は、今も大臣がお触れになつたように、FOAの物資の買付まで日本から買わないということを報復的に出ております。これがために日本の業者もいろいろと打撃をこうむつている。特に繊維関係の人絹、或いは絹織物等に対しまする契約がこのほどキヤンセルされたというような状況等もございますが、こういう点を考えましても、日韓会談は日韓会談で進め、それを並行的にこの貿易関係は何とか善処して進めてもらいたい、殊に韓国が売ろうという海苔に対しては、日本は今海苔が少いのでありますから、当然これは早く許すべきではないか、それから内地において生産者、問屋、輸入業者等に対しても、行政指導によつて私は円満にやつて行かれる措置が幾らでもあるのではないか。只今新聞にございますごとく、輸入方式において生産者が、輸入調整協議会というものを生産者と問屋だけで新たに設けて、いろいろ政府の輸入方式に対しまして掣肘を加えるというようなことをやりますると、これは先般バターにおいてもそういう問題があつたのでありますが、あらゆる物資がこういうふうに出て参りますると、これは由々しき問題だと存じまするので、こういう点はどうぞ一つ慎重に御配慮願いたいと思うのであります。殊に国内における海苔の生産に対しまして、今日水産庁が懸命に指導をされまして、順次各地で以て海苔の生産が進められ、増産をして参りますることは、非常に喜ばしいことでございまして、これは当然安い海苔を国民大衆、殊に勤労大衆生活におきましてなくてはならん海苔を広く供給しようという御配慮であると思うのでありまして、今日朝鮮の海苔の輸入に対しましても、これは朝鮮から何か物を持つて来なければ貸越しになつておるのでございますから、これは持つて来て而も朝鮮海苔が安ければこれを安く国民大衆に供給をするということが主眼でなければならないと思います。こういう意味合いにおきましてどうぞ農林省、通産省はよく一つお話合いを頂きまして、この際に一つ日韓貿易の問題の改善を一つ一歩進められるという御見地の下に、日韓会談が進まなければ輸入をしないというようなけちな考えでなく、一つ御進行をお願いいたしたいと私は特に要望する次第でございます。
それからこれに附言してお尋ねをいたしたいのは同時に鮮魚の問題でございますが、これも昨年からいろいろ問題になつておるのでございまして、一時輸入をすることを許可されましたのが、又長い間輸入が停止をしております。これらも私は日本の漁業者の圧迫には少しもなつていない、むしろ鮮魚を取扱いまする者は是非輸入をしてもらいたいということをしばしば申出ておるのでありまして、これらもやはり成るべく早い機会に一つ許可をされまして、鮮魚の輸入も円滑に参りますように、而もこの輸入に当りましては、この輸入の権利を転売をして、いわゆる不労所得を得る者がおりますので、問題があると思います。こういう点等も一つ十分に実績を調査されまして、明瞭な措置をとられることをくれぐれもお願いをする次第でございます。この点等につきまして一応水産庁側の御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/24
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025・清井正
○政府委員(清井正君) 鮮魚の問題につきましては、実は韓国海苔についての私の考えと全く同じ基調をなしておるのであります。これは昨秋僅か輸入の許可があつたのでありまして、これの全体の我が国の漁業生産高に及ぼす影響というものは、よほど観点が違つて考えられるということは率直に言えると思います。併しながら問題は、只今申上げたような李承晩ラインの問題に対する我が国の水産業者のこれに対する考え方、こういうことが一番基礎になつておるわけであります。この問題につきましても、只今韓国海苔につきまして申上げたと同じような考え方で私どもといたしましては措置せざるを得ないというような状況でありまして、一刻も早く韓国問題を何とか解決することが要するに根本問題の解決になる一歩であるというふうに信じます。その方面にできるだけ努力を尽すということをいたしておるのでありますが、要するに問題は海苔と同様、鮮魚についても同じような問題がその根本にあるということを十分一つ御承知おきを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/25
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026・中川以良
○委員長(中川以良君) 日韓会談がうまく済んでしまうまでは、絶対輸入しないという御見解でございますか。この点は通産大臣の御答弁と大分大きな食違いがあると思うのでありますが、その点どうですか、通産大臣は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/26
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027・愛知揆一
○国務大臣(愛知揆一君) これは先ほど来水産庁長官が申しておりますような背景と環境の中にある問題でありますけれども、これは日韓会談というもので限定するということは実際に即さないものであると思うのでありまして、日韓会談の一日も早い再開並びにあらゆる問題の話合いというものが済むことが何より望ましいわけでございますが、同時に政府部内におきましても、必ずしもそこまで行かなくても、その間にきめ得ることも相当あろうかと思いますので、それらの点については、これは農林省或いは通産省だけの立場でなくて、外務省も勿論でございますが、政府全体としての立場を至急検討いたしまして結論を出したいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/27
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028・中川以良
○委員長(中川以良君) どうぞ一つ至急に御善処をお願い申し上げます。
それから水産庁長官がおられますので一言伺つておきたいと思うのでありますが、先般提出されておりまする輸出水産業の振興に関する法律案についてでございますが、これにつきましては、この法案を拝見いたしますと、これは通産省も輸出水産物の生産に当りましては密接な関係があると存じます。殊に輸出入取引法又は中小企業安定法等を見ましても、いろいろな面におきまして関係省の大臣とは連絡がとれるようになつておる。ひとりこの法案だけは農林大臣の権限でございまして、通産大臣には何ら同意を求めるようなことがないのでありまして、先般も当委員会の総意によりまして、水産委員長にこの点御修正を願うべく御申入をしておるのでありまして、この点はすでに水産庁長官も十分御承知だと存じます。私どもはこの法律案が日本の水産の振興のために、是非一刻も早く通過することを念願をいたしておる次第でございまするが、その点だけ一つ修正をしてもらうことを強く要望しておるのでありまするが、これらは当時法案をお作りの際に通産省とも十分お話合いがあつたものと私どもは存じておりまするが、それらの経緯はどうであつたか、又こういう修正は好ましくないか、或いは当然の修正であるとお思いになるか、その点を一つ承わりたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/28
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029・清井正
○政府委員(清井正君) この法律は、実は純然たる議員立法ということで出て参つておりまするので、私のほうからとやかく申上げるということは限界がございますのでありますが、この議員立法がなされましたるときから、私どもは事務的には通産省方面と十分連絡をとつて来ておるつもりであります。いろいろ御意見も伺い、或いは一部その寄つて、いろいろ衆議院の水産委員会におきましても、いろいろこの問題につきまして御議論があつたようであります。只今参議院の水産委員会で御審議になつておられるのでありますが、これ又当委員会より水産委員会のほうにお申入があつたということも聞いておりますが、私どもといたしましては、委員会としてのこれは御意思の決定でございますので、何ともその点については申上げかねますが、ただ一点私として申上げられることは、私といたしましては、この法律が如何なる形であれ、きまりましたる場合においては、運用の面につきましては、これはもう通産省と密接な関係があることは申すまでもないことであります。従いまして運用の面においても極めて円滑に物事が運ぶよう措置をしなければならんことは無論のことでございます。参議院におきまする御決議の問題と併せまして、私の意見といたしましては、この法律が円滑に事務的にも行きますように万全の措置を講じたいというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/29
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030・中川以良
○委員長(中川以良君) この点は一つ通産大臣からも農林大臣と十分御連繋を頂きまして、将来に悔を残さないように一つ御処置を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/30
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031・海野三朗
○海野三朗君 私は通産大臣にお伺いいたしたいのは、硫安の輸出会社のことであります。この輸出会社のことは今まで輸出組合というものがあつたのだからそれを活用すればいい。ここに輸出株式会社を設立しなければならないというそのはつきりした御説明を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/31
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032・愛知揆一
○国務大臣(愛知揆一君) 只今の点は先ほど豊田委員のお尋ねにお答えしたところでございまして、一つは硫安というものの性格から来ておるものと私は考えるのであります。即ち先ほどもお尋ねがございましたが、農家経済に対して国内的には非常に大きなウエイトを持つ必需品であります。併し同時に輸出品として考えた場合には、全額が外貨の手取になるというような非常に優秀なる輸出品である。而も価格の面や需要の面は、外需と内需を切離したほうがいいという、これが第二の特色のあるものであると思います。そうして第三番目の問題といたしまして、合理化が十分に促進するのは、その切離した外需と内需の関係で外に輸出をすることにおいて生ずるであろうところの損失は、これは肥料対策委員会で十分御審議を願いましたように、製造業者がその損失というものをなし崩しに負担して、処理するということが最も妥当ではないか、こういう考え方をとりましたので、これが全部の要請を噛み合せた結論といたしましては輸出機構として特殊の輸出会社を作ることが適当である、かように考えたわけでございます。勿論先ほど豊田委員のお尋ねにお答えいたしましたように、そのほかに現実の問題として現行の輸出入取引法の下における輸出組合には向かない、或いは法制的に何と申しますか、十分ぴつたり行かない点もあるのでありますから、勿論輸出組合について改善を考えなければならんという点は別個の問題としてございますけれども、この硫安についてはこの会社組織というものが一番よろしいと、併し同時に他の物資については今申上げましたような特殊の性格がございませんので、こういつたような輸出機構、輸出会社を作ることは現在のところ他の物資については考えておらないわけでざいます。私どもの気持はそういう気持からこの案の立案をいたしたような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/32
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033・海野三朗
○海野三朗君 今の御説明を伺つて見ますと、つまり外貨獲得を目指してこの合理化及び輸出会社を作るのだというお話でございますが、それが赤字になつた場合にはその会社に損害を負わしめるというお話でありまするけれども、それでは政府がそこまで力を入れてこれをやる以上はその損失というものに対して政府のほうではどの点まで責任をお持ちになるのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/33
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034・愛知揆一
○国務大臣(愛知揆一君) これは肥料対策委員会の答申の趣旨も同様でございまして、私どもの考え方は次のような考え方であります。これは損失を生ずることは期間的にそう長いことはございませんが、差向きのところ合理化が十分促進しない間は或る程度の損失を生ずるであろう、こう見込んでありますが、その損失は絶対に国内の農民にかけてはいけないということでこの会社機構を考えたわけでございます。而してその損失というものは今後二、三年、例えば二、三年の間の努力によつてなし崩しに会社、メーカーがこれを処置し得るものである、又処置しなければならない、こういうふうに考えておりまするから、政府として政府出資をしたり、或いは政府補償をしたりというようなことはこの会社については考えていないのでありまして、従来特殊会社という構想でありますれば当然そこに補償とか政府出資とかいうものが必ず入つておつたのでありますが、それをとらない、而も農民に転嫁をしないということにこの案のみそがあるものと私は考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/34
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035・海野三朗
○海野三朗君 そういたしますと、その硫安を造るのは同一会社でありますから、これは農民にその損害をかけないようにということになりますと、どういうふうな具体的な構想がその会社において行われますか、ここにはつきりした規律がなければやはりその赤字というものは自然々々と国内の消費のほうにかぶさつて行くわけではございませんでしようか。その点をはつきりお伺いしたいと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/35
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036・中村辰五郎
○政府委員(中村辰五郎君) 大臣に代りまして御答弁を申上げます。輸出会社は法律上の性格から申しますと商法上の普通の会社でございます。従いましてこの会社が仮に本法施行期間の最終の際に赤字であります場合が生じた場合は、当然これは株主の損失に帰属するのであります。御質問の国内に売ります硫安と、輸出に向けます硫安では需給安定法に規定してございます需給計画に基きまして輸出会社が、その計画の範囲内において買取るのであります。所有権を移転するのでありまして、その間内需との経理的な遮断ができるのであります。勿論合理化等によりましてこれが最終的には赤字を解消して参るということに相成るのでありますが、この最終におきます赤字を個個の会社がどう処分せられるかということでありますが、その際は勿論再評価によりまする留保財産のなし崩しとか、或いは他の企業をやつておりますれば、他の企業の利益を以て補填せしめるのですが、勿論輸出会社は資本金を持つておりますので、その資本のなし崩しを先ず最初にいたすのでありますが、その資本のなし崩しでなおできない部面は、先ほど申上げましたような資産再評価によります留保財産から出す、或いは他の企業から出す、或いはその後におきます事業の利益によつてここに処理して参る国はこれに対して何ら補償的な措置はとらない、こういう趣旨であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/36
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037・海野三朗
○海野三朗君 合理化につきまして政府はどれくらいのお金を融資しなさるお考えでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/37
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038・中村辰五郎
○政府委員(中村辰五郎君) 先般当委員会に御配付いたしました資料によりまして五カ年間に大体資本投下として二百億前後の数字になつておりますが、このうち、自己調達或いは他の金融機関との間の協調融資というようないろいろな形がございますが、政府が財政投融資として考えておりまするのは、開銀としては六十億、或いはこれを多少超えるかどうかという程度を期待しておるのであります。勿論最近の金融引締め等の措置がございまして、これらの計画が行き得ないというふうに考えられる余地もございますので、先般もお答えいたしましたように、硫安工業の残されておる再評価の余地もございますので、これらの再評価によります。自己調達というものも併せ考えますと、大体五カ年に考えております二百億、特にそのうちの財政投融資に期待する六十億乃至八十億程度の調達は可能である、こういう工合に考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/38
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039・海野三朗
○海野三朗君 やはりそういう場合には開発銀行から出すことになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/39
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040・中村辰五郎
○政府委員(中村辰五郎君) 只今の六十億乃至それを上廻る財政投融資と申しましたのは、開銀融資を言つておるのです。それ以外に普通の市中銀行ではありませんが、長期信用銀行でありますとか、こういつたものについても協調融資の形でお願いすることになると思いますし、又その方面に期待いたしおるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/40
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041・中川以良
○委員長(中川以良君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/41
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042・中川以良
○委員長(中川以良君) 速記を始めて。
それでは肥料関係の法案に対しまする質疑はこの程度にいたしておきたいと存じます。御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/42
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043・中川以良
○委員長(中川以良君) 御異議ないと認めます。
なお農林委員会から連合委員会の申入れがあるのでありますが、当委員会として他にいろいろ審議をする議案がたくさんございまするので、連合委員会には応じることができないという旨を農林委員長にお答えを申上げます。御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/43
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044・中川以良
○委員長(中川以良君) 御異議ないと認めます。
それでは両法案の審議は本日はこの程度にいたしておきます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/44
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045・中川以良
○委員長(中川以良君) 次に中小企業安定法の一部改正の法律案を議題といたします。前回に引続き質疑をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/45
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046・加藤正人
○加藤正人君 中小企業安定法の一部を改正する法律案について提案者に先ず、次に通産大臣に順次質疑をいたしたいと思います。
私は前以てお断りをいたしておきますが、今日日本の経済復興に重要なる役割を果しつつある中小企業の安定、これは最も私賛成でありますが、この法案の施行に伴つて起るであろういろいろな摩擦、不安という点について一応質疑をして円滑なる実施が行われるように期待をして行きたいと思うのであります。この意味において質問をいたしたいと思います。
先ず本提案理由の説明を見ますと、調整組合及び連合会に一種の調整権とでもいうべき権限を与える云々とあるのですが、それは一体本文でどこに明記せられてありますか。そういうような権限を与えているという具体的にはつきり認識のできるような法文が私には見出しがたいのでありますが、一体どこにそういうことが表現されておるのかという点を先ず以て提案者に伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/46
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047・小笠公韶
○衆議院議員(小笠公韶君) 調整組合に調整権を付与するというのは俗に言つたのでありまして、法文の上ではつきりは出ておりません。それは強いて申しますと、今度の改正の中心点でありまする二十九条の第二項は、御承知の通りに、組合の調整規程の全部若しくは一部を指定して、その定に従うべきことを通産大臣が省令を以て命ずることができる。その結果的な帰納論として、その実施の衝に役職員が当るということからそういうことになる。法文上ではお話のような点ははつきりは出ておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/47
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048・加藤正人
○加藤正人君 次に伺いますが、二十九条の一項命令と二項命令というのは、一体実質的にどういう点で相違がありますか、伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/48
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049・小笠公韶
○衆議院議員(小笠公韶君) 御質問の実質的という意味がどう解釈するか、それによつても違つて来ると思うのでありまするが、両方ともアウト・サイダーの取締をするということについては同じ意味であります。ただ違いますのは、今度の改正によりまして二十九条第一項命令の場合は、業界の安定と申しまするか、不況に対して業界を維持安定させるという強い、より公共的な考え方をとるということにいたしましたので、調整規程の全部又は一部をそのまま持つて行かなくて、その趣旨を参酌して命令をするというところが違つて参つておるのであります。即ち命令の出し方、出す際の考え方の頭の置き方が若干違うことが一つ。第二の問題は出す命令の内容が違つて来る、こういう点が両者の相違かと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/49
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050・加藤正人
○加藤正人君 読んで見るとそういうふうに見えまするが、第一項命令のほうでは「当該総合調整計画又は調整規程の内容を参しやくして、」云々というふうに書いてあります。二項命令のほうでは、「組合の調整規程の定の全部若しくは一部を指定し、その定に従うべきことを通商産業省令をもつて命ずる」ということが書いてある。この意味を両方をよく考えて見ますと、どちらかというと、一項命令のほうは参酌してするというのであるからして、非常にその幅が広いと思うのです。であるから、二項命令のその定に従うべき場合も、つまり参酌すれば一項命令の中でできるといういわば一項命令さえあれば一項命令の中で二項命令の意味も遂げられるのじやないかと思うのでありますが、その点どうしてこう二様にやりましたか。これが次に一号二号というようなことがついてありますが、それさえ一項命令のほうに附属させれば何も二項命令をわざわざ出す必要はないじやないかと考えておりますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/50
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051・小笠公韶
○衆議院議員(小笠公韶君) 法律の形としては全くお説の通りでございます。だが今回の改正の中心点は、この前も御説明申上げました通り、現行の第二十九条の運用上、いろいろな意味においてやりにくい点があるという事実から、第二項のような規定にやることが中小企業の安定の策の一環として適当であるという考え方から改正をいたしたのであります。即ち言葉を換えて申しますると、調整組合若しくは同連合会においてインサイダーに対して、お互いの調整規程或いは総合調整計画というもので一つの調整事業を行う。それでうまく行くならばアウト・サイダーの問題は起らないのであります。ところがアウト・サイダーの問題が起つて参りますので、アウト・サイダーを一つの調整の方向に従わせるという方法として、現行法におきましてはすぐ政府の省令による直接統制という形をとつておることは御承知の通りであります。この直接統制をやるということになりますと、差当り極く業界がまとまつておるというような場合には、又発動のケースが少いというような場合においてはそれでも差支えない場合が多々あるのでありますが、業態によりましては現在の行政機構並びに行政機能の状況からもつては十分にそういう要求に応じ得ないという事実があるのであります。で、そういう場合には、通産大臣が第二項命令によつて調整規程の全部若しくは一部を指定して、アウト・サイダーに従わせる、従うような命令を出し、組合の役職員をしてこれに協力せしめるという形のほうがいいのではないか。又発動の場合が多くなつて参りますと、そこに官治統制的な色彩が少くなつて来るというようなことも考えられまするので、特に第二項の改正規定を入れたのでありまして、純法律論として第一項命令があればカバーするじやないかという点はお説の通りであります。併しながら運用の実際の問題等から考えて見ますると、今申上げましたような事情で、なかなか動きにくいという点から今回の改正をいたしたのであります。これは私から申上げるまでもなく、今後の日本の産業政策の基本的な動かし方として、従来は経営の自由と申しますか、からして、事業者団体法に基いて私的団体にこういう権能は禁止されておつたのであります。従いましてこれは終戦後の一大特色でありますが、日本の中小企業というようなものの実態を考えて見まするときに、そういう形だけではなかなか行きにくいのじやないか、どうしても適切なる監督の下に適当なる調整措置を講じて、適当なる準備措置を講じました場合には、が一つの統制と申しますか、調整が実施上やつて行けるような途を開くことが適当だ、こういうような考え方から今回の改正案を出したような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/51
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052・加藤正人
○加藤正人君 第一項命令のほうは参酌をしてやるという点に大分信頼性があるようであります。特に第二項命令のほうには二号の規定がありまして、「事業者の総数に比して極めて少い場合である」というようなことになつております。そこで正誤表で削られた三号というのがありますが、何でも原案にはこんなに「極めて少い場合」ということがあつたそうであります。私はこの三号に「極めて少い場合」という規定がここにあつたほうがいいと思う。そうでなく、単にその二項命令でこの三号が発動するような場合になりますと、たまたま大メーカーの能力が中小企業者全体の生産能力に比して余り差異のない場合でも第二項の調整命令を出すことが可能になる。こうなるとしますると、この中小企業者の組合の統制力が大企業者をも支配できるということになるようなわけであります。かような次第でありますから、私はこの制度に、削除されたその前の原案にあつたと伝えられておる「極めて少い」という字を入れたものを復活と申しますか、新たでもよろしい、これを存置したほうがこういう危険を避け得られるのではないかと思うのでありますが、その点はどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/52
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053・小笠公韶
○衆議院議員(小笠公韶君) 正誤表で三号を落しましたが、落しましたのはミスでありまして、すでに御配付いたしておりまする原案には「極めて」はございません。「極めて」はございませんので、いわゆるアウト・サイダーの設備能力が、アウト・サイダーも含めた当該業界の全部の力よりも少いということは日本語として自明の理であろうから削除いたしたのであります。これは整理漏れであるのであります。ただ審議の過程におきましてそういう意見のあつたことを否定するものではありません。それからいわゆる経緯の問題といたしましては、そういう経緯でありまするが、実質的な問題といたしまして加藤委員のお話の点でありまするが、いわゆる設備能力がたまたま大企業の兼営の場合が相当数あるという場合については本改正案の適用をできたいようにしておいたほうがいいではないか、こういうお考えでありまするが、私はその点につきましては逆の考え方をいたしておるのであります、いわゆる第二項命令の発動は第二項の前段に掲げておりまするように「左の各号に該当する場合において、当該業種に関し同項に規定する事態を除去するための措置として特に必要を認めるときは、前項の命令に代えて、」と書いてあるのであります。従いまして第一項命令を出すか第二項命令を出すかということはその業種、業態の実情に応じて主管大臣の認定の下に発動すべきものであると考えるのであります、従いまして加藤委員の設例のごとき場合にその歩合が、大企業の兼営部門の業種がどの程度の場合はいいか、どの程度はこの適用外にしておくかということにつきましては私は判断がむずかしいと思う。大企業の兼営部門に相当の同一事業を行なつておる場合でも調整組合の実態、その運営の能力その他から考えまして、第二項命令を発動したほうが便利と主管大臣が認定した場合はこれによつて然るべきではないか、非常に逆な議論をしますと、大企業の兼営部門が多い場合、相当数ある場合は本改正案の適用の外に置くという、あらかじめ適用の外に置いておくという考え方をしなくてもいいんではないか、各業種、業態に応じて先ず発動は通産大臣の認定に基くのでありまするから、その業態が兼営部門が多かろうと少なかろうと、或いは兼営部門がないにしても、大企業の兼営部門がないにしても、すべての中小企業と申しまするか本法に指定する中小企業においてこの事態が必要になつた場合にはアベイラブルな制度にしておくほうが私は制度として公正ではないかという考え方を実はしておるのでありまして、加藤委員と少くともその点においては見解を異にいたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/53
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054・加藤正人
○加藤正人君 通産大臣はどうされましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/54
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055・中川以良
○委員長(中川以良君) 今十分ばかりして参ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/55
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056・加藤正人
○加藤正人君 通産大臣に聞いていてもらいたいと思いますが、それじや先ず通産大臣がいなくても差支えない部分につきまして……、第三十一条の一項に検査員に関する規定がありますが、検査員がアウト・サイダーの工場に立入検査をなし、又帳簿の検査をなし得ることになつておるのであります。この点は問題だと思うのですが、こういうことをやつてそれに伴う弊害はないとお考えでこういう規定を設けられたか、その点について……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/56
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057・小笠公韶
○衆議院議員(小笠公韶君) 私は結論から申しますと、弊害がないことを祈るのであります。従いまして弊害が起らんような意味において必要な規定を整備いたしておるのであります。即ち検査員に対しましての選任、解任権を通産大臣に置くとか、或いは又その犯罪行為につきましては公務員と同様に扱うとかいうふうな従来のこの種の法制に伴いまする必要な規定をいたしておるのであります。従いまして検査員がイン・サイダー或いはアウト・サイダー、こういうような工場に臨検検査をするというのは条文の執行に必要なる最小限度の範囲内においてやるのでありまして、公的な意味において公的な資格を以てやるということでありますので、こういうような法制をとります以上こういう措置が必要になつて来ると私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/57
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058・加藤正人
○加藤正人君 そういう場合には検査員は官吏と同行するのでありますか、単独に行くのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/58
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059・小笠公韶
○衆議院議員(小笠公韶君) 単独で参る場合もございましようし、同行の場合もあろうかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/59
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060・加藤正人
○加藤正人君 この調整組合に入らないもの、即ちアウト・サイダー、これはいろいろの事情で入らぬものもあるでしよう、がときにアウト・サイダーになつていたいというものはその事業に対する特別な、技術的にほかに持つていない特殊な技術を持つておるというような点で彼らとは別だというような矜持を持つておる業者もないとは限らんと思う。そういう工場に同業者の職員がかような使命を帯びて入つて行つて自由に設備、帳簿などを点検できるというような措置をとられるというようなことはどういうものでありましようか、これは遺憾な事件がそこに起らないと言えんと思うのです。我々はそれを非常に恐れる。そういうケースは大いにあると思いますが、あなたがたはこれをないと考えられてこういう立法をされたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/60
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061・小笠公韶
○衆議院議員(小笠公韶君) アウト・サイダーでとどまつております理由につきましては、お示しのような事例もありましよう、文通に悪質なものとして一方で、調整組合の大部分のものがまとまる場合に外におることが有利である、こういうふうに考えて外におる場合もありましよう、その動機につきましては種々雑多な場合か私はあると思うのであります。この命令を出す場合におきましてそういうふうないわゆる特殊な技術、特殊な一つの意匠というようなものを持つておるのを保護するというふうな措置の必要さというものは私は考えます。それはどういたしましても調整規程の中で調整規程のきめ方に一つはかかつて来ると思うのであります。従いまして、調整規程は所管大臣の認可にかかつておりますので、認可に際してそういう弊害が起らないような規定を考えて行くということによつて御心配の点は避けられるのではないかと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/61
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062・加藤正人
○加藤正人君 提案者はそういう御認識であるからこういう立法をされたのだと思いますが、その点について私は非常に憂慮をしております。なおかような権限を与えられた検査員は公務員並みの罰則では私はむしろいかんと思います。よほど罰則など厳重にしなければならんように私は思うのであります。
大臣が来られましたから又別の法文に移りますが、とにかくこの一項命令を発動するか、二項命令を発動するかという時期はそのときの事情によつて通産大臣が考慮していずれかを選ぶのでありましようが、若し二項命令を発動するような場合には非常な権限が同業者に与えられますから、これには非常に厳重な私は条件を附さなければならんと私は思うのであります。更に私は遡つて伺いたいのは、そもそも調整組合の結成を政府が認める場合にその資格、能力という点について十分調査が行われて現在までおつたかどうか、これはどうも二項の発動を委す調整組合に対してはよほどこの資格を厳選されなきやならんと思うのでありますが、今日までそういう態度で行われておるかどうか、これは通産大臣に承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/62
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063・愛知揆一
○国務大臣(愛知揆一君) 現在までのところどういう状態にあるかという詳しい認定等につきましては中小企業庁長官からお答えすることにいたしたいと思います。
それから私今ちよつと急な用事で中座いたしまして誠に失礼いたしました。お尋ねの点についてはすでにお答えを申上げたかと思いますが、この一項命令と二項命令、これの関係、並びに三項命令においては調整組合が非常な権限を持つから立派な要件を備えなければならないということは御指摘の通りであると考えます。そもそも統制的な措置というものは、国家自身の手によつて行うことを建前とするものでもございましようから、まあ私は一項命令が原則であつて、二項の命令は例外的な措置とならざるを得ないということを第一に考えます。それから三項命令におきましては、一項命令の発動のためのいろいろの要件と全く同一の要件が要求されることは勿論であると思いますが、これに加えまして例えば行政庁の人員や予算などの関係から国家が直接にみずからの手で需給調整措置を講ずることが著しく不適当であるというような場合であるというようなことも条件になると思いまするし、アウト・サダーの有する設備の生産能力の合計が非常に小さく、その数が極めて少数であつて、組合が円滑に調整事務を行い得る場合というようなことも条件の一つとなろうか、条件といいますか、要件の一つとなり得るものと考えてあります。それから組合の調整事務を公正且つ能率的に行うに十分な能力を有しておる場合がやはり要件として望ましいと考えるのであります。冒頭に申しましたように、現在につきましては中小企業庁長官からお答え申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/63
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064・岡田秀男
○政府委員(岡田秀男君) 調整組合の現状といたしましては、この安定法が一項命令だけを予定いたしておりまして、二項命令におきますように、当該連合会とか、調整組合が総合調整計画とか、或いは調整規程を総合的且つ能率的に運用するに十分なものというような条件が従来ありませんでございましたので、従来安定法の法律要件としては十五条に掲げておりまするものがありますればそれで法律要件を一応満たすということで認可いたしておるのでありまするが、それにいたしましても、いやしくも調整組合を認可いたしまする以上は、調整組合が内部において調整規程の運用が十分できるということはこれは当然その審査の場合に考慮いたすべきことでございます。更にこの二項命令ができますれば今後におきましては一層内部の運用状況というものについて我々のほうでも調査なり研究というものを従来以上に詳しくやらねばならんということが起つて参るのでありますけれども、現状におきましてもここに書いてありますようなことを我々のほうで調査する一応の体制には相なつておりますが、それを更に強化して行くということは今のところ考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/64
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065・加藤正人
○加藤正人君 只今大臣は原則として一項命令で、二項命令は特殊なものであるというふうなお考えでおられますが、これは私も満足いたします。要するに今長官もおつしやつたように、こういう権限を与えられます以上、よほどその性格などにつきましてもふだんから特別の監督をして頂いて、このアウト・サイダーが安んじて信頼してむしろこれに協力するような風を馴致するようにして行きたいのであります。本来の目的を達成するためにはこれがために他に迷惑を及ぼさないという用意が十分でなければできないと思います。それによつて初めて同業者がアウト・サイダーであると否とにかかわらず全体の協力が得られることによつて本来の目的が当然に達成されると思うのであります。そういう意味において今長官のお話がありましてだんだんよくなるのだろうと思いますから、申上げないかと思いましたが、この実例を申上げるとよく腑に落ちるのでありますが、二十七年十二月に綿スフ織物調整組合連合会の作つた調整規程の内容を見ましても、実質上の効果は期待しない、形式的なものであるということであります。生産制限するに際しましてその基となる過去の生産数量は勿論、設備数量についても客観的に妥当と認められる統計資料がないというようなこと、又そのために結局過去一定期間の運転延台数と運転可能延台数との比に一定の率をかけて将来の操短率を定める方法がとられるが、これは実質上組合員の任意の算定に基いて行われておる。若しこの元の運転率を適当に上げさえしておけば実際上殆んど制限を受けないことさえ可能であつたということであります。従つて実際上制限の効果があつたとは到底客観的に納得しない方法であつたということであります。右の調整規程を実施するについて二十八年一月紡績についてできるだけ協力するよう通産省繊維局長から通牒があり、その趣旨に副つて紡績業者が協力したことは勿論であり、これに基く報告を継続的に出したにもかかわらず、その後の状況では右のごとく調整規程そのものが実行を期することはあいまいな点があつたために結果において組合員そのものの制限はあいまいにしておいて、統計数字のはつきりしている紡績の生産のみを制限することとなつた傾向が多分にあつたような、どこまでが真相であるかもわかりませんが、かような疑点を持ちつつこの統制に服するようでは本当の協力はできないと思うのであります。十分安心してこの大目的に協力して日本の経済復興に重要な役目を持つている中小企業の安定を実現し得るようにするためには、そのような危惧を蔵しつつ、法律であるから同調せざるを得ないから止むを得ず同調するというようなことは私はいかんと思うのであります。この点について長官の今後とも一層の御努力をお願いしたいと私は思います。
更に私は今日から留守になるからあとの委員諸君にお願いしておきますが、衆議院においてはこの法律に附帯決議案、これはいろいろ二、三ありましたが、主なる点は紡績にこの法律が妨げにならんようにということであります。これは誠に私たちは有難いことと感謝しておるわけであります。ここに我々の希望として御了解を委員諸君にお願いしたいのでありますが、今や繊維業界では総力を挙げて輸出に努力をしておるのであります。この安定法の発動で輸出努力を阻害することのないように留意したいということであります。即ち繊維品の輸出は業界多年の努力でありまして、特定メーカー又は特定商社の銘柄製品に対する海外市場のなじみによるいわゆるチヨツプ品の買付が大部分でありまして、どんな品物でも輸出できる性質のものではないのであります。又国内の需要と違つて輸出品は海外市場の需要を見越して、見込生産が必要とされるのであります。従つてこの観点から輸出に関する限りは安定法第二十九条関係の実施は、これを除外することが必要であります。即ち縦横糸の本数、番手が国内消費の分と一緒である。調整組合の所属業者と同じであつても、これが輸出に出す場合には織り溜めをして行かなければならんというときに、これは多いからその生産をとめろというようなことを言われますと、いわゆる消費が動くかもわからんから織り溜めをしておかなければならんというものまでその統制に服さなければならんということになりますと、折角輸出振興に努力している業界全体の目的に齟齬することになる。なお、これは紡績の所属チヨツプばかりでなく、いわゆる紡績は下請の織屋を皆持つております。これらもそういう意味の製品を作つておるのでありますから、この点についても、やはり紡績同様の発動の場合には御配慮を特にお願いしたいという点をここで皆さんに力説して御協力を願いたいと思います。大体において私はこの法律の制定には賛成でありますが、かようないろいろな点について懸念する点がありますので、今日諸君に申上げて御了解を得たいと、こう思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/65
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066・小笠公韶
○衆議院議員(小笠公韶君) 実は衆議院のほうの附帯決議をちよつと御披露申上げたいと思います。
第一項は、本法の施行に当り通産大臣に対する要求でありまするが、本法施行に当りまして、企業経営の合理化、技術の向上を阻害しないということが第一点。第二点は、国民生活の安定及び輸出の伸長……、伸長があつたかどうか、輸出を阻害しないということ。第三点は、本法に基く申請があつた場合に、二十九年度の発動申請があつた場合に、通産大臣は速かに措置をとれ……、調査を進めろとかという意味で措置をとる。この三件が附帯決議になつているわけで、それから加藤委員に一つ申上げておきたいのは、今度の二十九条の二項命令で、特に工夫いたしましたのは、新らしい制度でありまするから、従来の工業組合法、或いは輸出組合法、商業組合法という場合にはこういう形を一応とつておつたのであります。その場合に、命令発動に際してアウト・サイダーの意見を聞かずに、組合の意見だけでいい。これは必ず事前にアウト・サイダーの意見を聞かなければならんということを先ず課しているのであります。そしてそのアウト・サイダーの意見を中小企業安定審議会の審議にかけますが、これは必ず通産大臣はその意見を提出しなければならんというふうにして、独善に陥ることをできるだけ避けるような配慮はいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/66
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067・豊田雅孝
○豊田雅孝君 只今の衆議院の附帯決議を本委員会にお配り願つているんでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/67
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068・中川以良
○委員長(中川以良君) 今ここにございまするから、ちよつと読み上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/68
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069・豊田雅孝
○豊田雅孝君 衆議院の附帯決議をちよつと……、相当慎重に検討して行く必要があると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/69
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070・中川以良
○委員長(中川以良君) 刷り物でお配りいたします、一応今間に合いませんから念のために申上げます。
附帯決議
通商産業大臣が本法案に基く命令
を発する場合は、特に左記事項に付
き留意すべきである。
一 当該中小企業の技術の向上、
合理化の促進を積極的に推進す
ること。
二 我が国の国民生活及び輸出産
業に悪影響を及ぼさざること。
三 申請のあつた場合はすみやか
に処置を講ずること。
以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/70
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071・豊田雅孝
○豊田雅孝君 先ず最初通産大臣にお伺いいたしたいと思うのでございますが、今回の改正は、だんだん統制が、いよいよ本格的に場合によつては行い得るという画期的な行き方だと思うのでありますが、これは時代の現状から見まして止むを得ない。又かくあらねばならんことだと思うのであります。併しながら本会議等で総理大臣は統制ということを非常にいやがられるようでありまして、積極的に統制などは必要があつてもやるというふうには言われんようであります。併しながら通産大臣は、必要ある場合においては、統制も止むを得ないというようなことは、通産大臣の新任当時から言われているようでありまして、吉田総理と通産大臣とは、その表現において必ずしも一致をしておらんというふうに見られる点があるのであります。又今回の議員立法をせられた議員の諸君とも、必ずしも表現は、少くとも一致しておらんというような点が見受けられるのでありますが、併しながら只今申しまする通り、事態は刻々かような団体統制も必要止むを得ずやらざるを得ないというところへ行つておるのでありまして、今後政府最高首脳部としてもその事態を率直に認識せられて、必要止むを得ない統制は積極的に自由党内閣としてもやるんだということをはつきり言われて何ら憚かるところがないんじやないかというふうに考えられるのであります。この点は総理の施政方針演説等におきまして統制をやらないんだというような表現が現れつつ、実際面においては統制が刻々現われて来るということは私は世間を惑わすと思うのでありまして、そういう点において今後内閣全体として如何なる方針で進まれるか、そういう点につきまして通産大臣の御意見を先ず伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/71
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072・愛知揆一
○国務大臣(愛知揆一君) 物事の表現につきましてはいろいろ人によつて特色のある表現をいたしますので、経済政策につきましても、吉田総理が不用意に言われる言葉の中には或いは一切の経済計画というようなものが不必要であるかのような印象をお与えしたことが或いはあるかと思うのでありますが、併しその場合におきましても、総理の気持というものは、例えばソ連流の生産等について一つのノルマを設定してこれに反する者は、又及ばざる者は罰則をかけるというような意味の統制経済をやらない、それはソ連流のやることであるというふうに言つておるのでありまして、これは私どもの考え方と変るところはないと私は信じておるわけでございます。例えばこの改正法案にいたしましても、御案内のようにいわゆる議員立法で、衆議院の自由党の議員諸君を中心としたかたがたの立案になるものでありますが、閣議におきましても十分これは検討して賛意を表しておるわけでございます。それからよく私ども申すことでございますが、外貨予算の編成にいたしましても、或いは財政投融資の割振りにいたしましても、現にいわゆる計画的な経済はやつておるわけでございます。又過般当委員会におきましても御審議を得ました国際的供給不足物資等についての法律の一部改正によつて一年間あの法律を施行期日を延期して頂きました。それに基きまして重油類の消費の規制の法的根拠も与えて頂いてこれを今後実施しようとしておるようなわけでございますから、これらの具体的の事実によつて行われておりますことは、我々の是なりとしてやつておることなのでございまして、今後におきましてもできるだけ物資の直接統制というようなことはできるだけ避けたいとは考えておりまするけれども、そのときとぎの情勢等によつて経済の安定、輸出の振興、或いは国民生活の確保という面において何らかの措置を必要とするというようなことがあれば、これは必要な法律案等によりまして御審議を願つた上で実行に移すということは考え得るところであると、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/72
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073・豊田雅孝
○豊田雅孝君 今後施政方針演説、或いは本会議の答弁等におきまして誤解のないような表現をしてもらうということを私は希望するのでありまして、その点において愛知通産大臣は閣僚中での知性派であられるのでありますし、又経済審議庁の長官でありまするので、今後施政方針演説の起草であるとか、或いは答弁の際に、いやしくも従来のような誤解を生じないように内部で細心の補佐を願つて、経済界にその行くべきところを誤らしめないような行き方を善処して頂きたいということを希望いたしておきます。
次に質問をいたしますが、すでに加藤委員から相当一項命令、二項命令の相互関係のものにつきましては触れられましたので、そういう点は省略をいたしまして、私の疑問といたしまする点を二、三質問をいたしたいと思います。
その第一点は、今回団体統制を実施し得るように相成りましたにつきまして、これは業界の実情に即応して行われた改正案であり、又これに基いて今後その必要に応じ、臨機応変に運用せられて行く必要があると思うのでありますが、さような際に現行法は当該業種を指定しておるのでございまして、その業種の指定あるが故に、場合によつては非常に必要でやるや否やについては慎重に検討はせられるでありましようが、その発動必要なりということを結論付けられつつも指定業種になつておらんということのために、ただそういう形式的な事柄だけのために迅速なる発動ができん、それがために業界の折角の統制が時期遅れになるというようなことが懸念されるのであります。そういう点についてかような団体統制まで行うようになつたにかかわらず、依然として業種指定制を残しておかねばならんという理由がどこにあるのか、その点を伺いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/73
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074・小笠公韶
○衆議院議員(小笠公韶君) 実は本法の適用業種は法律で指定するということに実はなつておつたのであります。それを十六国会におきまして政令で指定するということに実は変えたのであります。更に一歩進んで業種指定をやめたらいいじやないか、こういう御議論が出ると思うのであります。私は原則的な考え方として自由競争、いわゆる公正な自由競争を基本として事業経営をやらして行くということが適当だと考えておるので、そこでこういうふうな調整の措置を講ずる。いわゆる不況対策の一つとして調整の措置を講ずるという場合に、どういう業種を中心的に考えて行くかというふうに選択的な考え方をとるのは差当りの段階においては適当でないと考えておるのであります。いま少し進んで参りまして、公正な自由競争の場が確保されるような経済の実態、特に中小企業界の実態になれば指定というものを取つてもいいのじやないかというふうに考えておるのであります。差当りの措置として必要が起れば政令で指定が臨機にやれるような制度に変えておることで差当りはいいのじやないかと実は考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/74
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075・豊田雅孝
○豊田雅孝君 政令になつておる点は、その点ややよくなつておると思うのでありますが、これもやはり一つの物の考え方、思想といいますか、そういう問題に関連があると思うのでありますが、ここまで来れば只今不況でなくてもいつ何どき深刻な不況に見舞われるかも知れんのでありまして、かような制度というものは慎重に扱わなければならない、いよいよやるときには迅速にやるということでなければその効がないと思うのでありまして、そういう面において一日も早く指定制度の廃止せられるように希望しておきたいと思います。
次の問題は、今回命令違反について体刑をやめられたのでありますが、それにつきましてはどういう考え方で体刑をやめられるようになつたのか、その点を伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/75
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076・小笠公韶
○衆議院議員(小笠公韶君) 実は非常にむずかしいところでありまして、第二十九条の第二項のような制度を布くに当りまして問題になる点が一つあるわけであります。一つの問題は、経済政策の基本の切替えの問題、即ら私的団体に統制を或る程度認めるかどうかという政策の基本の切替えの問題、これはまあ御了解願えるかと思います。第二の問題は、罰則適用に関連して憲法との関係において罪刑法定主義との関連をどう見て行くかという問題が実は一つあるのであります。他の今国会におきまして審議中の法令の中にも相当思い切つた制度も出て来ておるようでありますが、すなおに読んでその問題をどう解決するかということを考えましたときに、体刑というふうな考え方よりも軽度の罰則で臨む、いわゆる罰金刑で臨むほうが今言つた問題を軽減するのではないかというふうな考え方から体刑を実は取つたのであります。それからいま一つの問題は、経済違反、経済統制違反に対して罰則を適用するということは望ましくないのでありまして、できるだけ一致の行動をとらせるような行政をやるということが望ましいのであります。その違反に対しまして軽い罰則でも相当程度目的を達成し得るのではないかということが考えられるのであります。若しも、事業者にとりまして一番痛いのは、戦争中の経済にもありましたように、事業自体が維持できんということであります。事業自体を維持させるために若しもこういう命令が出た、二十九条の命令が出たような場合に、その調整のやり方によつて相当痛い目が見せられやせんか、こういうふうな配慮も考えまして、体刑制度を現行法にあるのをやめたというのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/76
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077・豊田雅孝
○豊田雅孝君 私はその点は考え方を根本的に異にしておるのでありまして、統制はなるべくやらんほうがいい、併しやる以上はもう徹底的に統制するという行き方でないと、正直者が馬鹿を見ましたり、或いはもう初めから罰金だけを積んでおいてくぐり、悪いことをやり放題というようなことは、もう統制につきものなんであります。従つて今度は罰金刑だけになつておりますと、事経済行為に関する問題でありますから、もう初めからそろばんをはじいてかかるというものが出ないとは限らんのでありまして、この点は他の方面においていろいろ御苦労になり進歩を見ておると思うのでありますけれども、この刑罰関係、制裁関係においては従来最も欠けておつたところを今度ははつきりこう露呈をせられる、折角従来体刑で行つておつたものを罰金刑に戻されるという点において、今後この統制の確保という点から私は非常に懸念を持つておるのであります。この点については意見に亘るかも知れんのでありますが、併しそういう点は提案者の小笠議員も従来から十分経験もおありであるのでありますから、今の御説明だけではなくて何かはかにもつと止むなくかような行き方をしたという理由があるのではないかとも推測するのでありますが、如何でございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/77
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078・小笠公韶
○衆議院議員(小笠公韶君) 今申上げた通りであります。(笑声)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/78
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079・豊田雅孝
○豊田雅孝君 その点については私は今後施行の上において非常に懸念を持つのでありまして、事態の推移を見られて将来私は統制をやる以上は徹底的にこれの確保を図るようなことを留意をしてもらいたいということを希望として申上げておきます。
次にあと各委員の質問もあろうかと思いますので二点だけ併せて質問をいたしますが、一点は第二項命令で調整規程を周知さす程度の予告期間が必要ではないかどうか、こういう点についてどういうふうになつておりますか、その点が一つ。それからもう一つは、二十九条の二でありますが、これは細かい点でありますけれども、現行法は許可を受けるべき旨を命ずるのでありますから、標題も「設備の新設の許可等」ということになつておるのでありますが、今回の改正案は設備の新設の制限、禁止をやり、許可には全然触れていないのでありますが、標題のほうは依然として従来通り「設備の新設の許可等」ということになつておるのでありますが、何かこれに含みがあるのでありましようか、この点を伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/79
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080・小笠公韶
○衆議院議員(小笠公韶君) 前段のお尋ねでありますが、予告期間と申しますか、周知徹底させる方法は是非とりたいと考えておるのであります。それは運用の面に待ちたいと先ほども申上げましたように、調整組合の組合員は当然に事務を知つているわけですから調整組合のアウト・サイダーにつきまして命令を出す場合でありますが、加藤さんにも申上げたようにあらかじめアウト・サイダーの意見を聞かなければならない、命令を出す場合に、命令を言う制度を布いてあるので、そうしてアウト・サイダーのこの調整規程に対する意見を聞いたその結果を更に安定審議会に提出して審議をするという段取になつておりますので、できるだけそういう法律的な構成のほかに行政的に周知させる方法を講じなければいかん、こう考えております。
それから第二十九条の二のお話でありまして、標題が何かおかしいというお話でありますが、実は標題のところが今度の場合は、前は「許可を受ける」と、今度は「制限をし又は禁止することができる。」と、こういうふうに字句を変えておるわけでございます。これは当然これに伴いまして見出しのところを「設備の新設の制限」というふうに直すべきでありますが、整理漏れであります、遺憾ながら。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/80
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081・海野三朗
○海野三朗君 私は次にお伺いいたしますが、この法案自体が、この前も私はちよつと論及いたしましたが、或る一部の業者を救う、共倒れを防ぐのであるということは誠に尤ものように見えますけれども、日本の現況といたしましては、つまり食うて行けないのである。食うて行けないから、従つてそこに競争が生じて来るのである。それを個々の在来のもののみを保護して行こうということは、私は自然の法則に反したる行き方じやないかと、こう思うのです。生産数最の制限とか、生産数量を増して行けば行くほど相当値が安くつくというような場合もあるのです。で、そういうようなことに干渉することは一種の統制であつて、私は自然の発達して行く状態から見ると、時代に逆行したような私は感じを抱くのでありますが、その点について小笠議員の御所見を承わりたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/81
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082・小笠公韶
○衆議院議員(小笠公韶君) 日本の経済の発展の持つて行き方として、今お話のように公正な自由競争に任して行く、そうすると、いい品物が漸次安く出て来るだろうということが言われるだろうと思うのです。で、然らば日本の中小企業の実態を考えて見ますると、実は終戦後の中小企業というものが、例えば一つ陶磁器製造業をとつて見ましても、戦前より営業者の数がずつと殖えております。人絹、絹織布の例をとりましても殖えて参つております。一方販路になりますと、朝鮮、大陸を失いまして、御承知のような状況に相成つておるわけです。ここに日本の中小企業の問題としては、業者数が多過ぎるといいますか、設備が過剰と申しますか、そういう点から不当な競争をやる。この不当な競争は一部に行われますために、ますますいい企業でも潰れて行く、あおりを食つて行くというような状態が出て参つておるのであります。特に不況が進化しますと、その傾向が強くなつて参るのであります。で、そういうような事態は放つて置いたほうがいいんじやないか、消費者の立場から言えば安い物が買えていいのじやないか、こういう意見も出るのであります。併しながら、日本の産業を安定さして行くということが、長い目で日本の国力増進の基盤になりますので、そういう不況の際に対して、共倒れ的な、必死の競争を防止して行くという措置を講じて行くということが、或る程度必要なんじやないか。言葉が適当かどうか知りませんが、ネセサリ・イーヴルじやないかというふうな実は感じがいたしておるのであります。このネセサリ・イーヴルとして、こういう安定法のような措置を講じて行くということが、日本の国の全体の経済力を増して行く上に必要なんだと、こういうような考え方から、この法律ができておると私は考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/82
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083・海野三朗
○海野三朗君 何故にそういうようになるかと申しますと、やはり日本は人間が多いのだと、つまり仕事がないのだということに帰すると思うのです。それでありますから、この法案というものは或る一部分の中小企業者のみを救うのであつて、そのほかの人間たちをつまり弾き出すような法案のように私は受取れるのです。そうすると、その余分な人間をどういうように日本の現状としては、さばいて行くかというほうがより根本に遡つたる問題であつて、この一部の人たちの共倒れを防ぐということが、本当に極く一小部分であつて、正当なる行き方であると私は考えるのでありますが、どういうようにお考えになつておりますか、その御所見を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/83
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084・小笠公韶
○衆議院議員(小笠公韶君) 非常にむずかしい問題でありまして、私から答弁するのもどうかと思うのでありますが、結局日本の国民生活の問題にしましても、社会保障の問題にしましても、産業問題にしましても、非常にむずかしいところは、いわゆる人口過剰にあると実は私も思うのであります。この問題をそのまま放つて置いて、いろいろないわゆる源を清めずして、支流のほうを清めても何にもならんじやないかと、こういう御意見のように実は思うのでありますが、全体の日本の人口問題、特にこれに対する職場の配分というような問題を、どう考えて行くかという問題につきましては、これは政治家として、それぞれの智慧を絞つて考えて行かなければならん問題だと思うのでありますが、一方この法律の適用によつて、或る程度の援助が受けられる部分というものは、非常に僅少ではありますが、この僅少にいたしましても、産業基盤というものがそれによつて落ちついて来ることによつて、又逆に日本の人口問題というようなものに対するいろいろな寄与ができて行くのじやないかと私は思うのであります。そういうような意味で、今の産業政策というものが、特に中小企業というようなものが潰れて参りますと、思想の問題にいたしましても、輸出の問題にいたしましても、或いは社会不安の問題にいたしましても、非常に困難な問題に拍車をかけますので、いわゆる中小企業の部分については取りあえず不況を乗り越す、私は今年は籠城経済だと思うのでありますが、籠城経済ができるようにつつかい棒をつけてやる形を、差当りとつて行くという必要があるのではないか。それが結局において、人口問題から来るいろいろ問題の解決の極く僅かではありますが寄与になる。そういう意味からこの法律を改正して、少しでも中小企業の安定に資して行く、こう考えているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/84
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085・海野三朗
○海野三朗君 今一つの理由をとつて申上げますならば、先ず髷屋であります。髷を作る商売であります。ところがこの髷を作る商売は、何軒というてまあ大体きまつているといたします。そうしますと、ほかのものにこれまねして作つちやいけないのだということになつて来ますというと、そこに髷屋であるということの一つの特権を持つていることになりますから、在来の技術の上にあぐらをかいておつてでも品物は売れて行く、そうするというと、ここに進歩一向上というものがなくなると私は思う。この法案で保護しなさるのは誠に親切ないいお考えでありますが、それは技術の進歩向上阻止という欠陥を生むのではないか。自然の勢いといたしまして如何にかして生きんとするところの努力、それが即ち研究となり発達となつて、進歩改良となつて行くのでありまするから、この法案自体が私は甚だ全体を考えざる法案ではないか、こういうふうに思うのであります。で、今まで仕事をやつて来た、例えば名刺なら名刺にいたしましても、これはそれだけの、作るだけの特権を持つておりますから、とにかくあぐらかいておつても、とにかくそれだけの品物を作つて行けばいいのだというようなことでは、そこに進歩発達というものがおろそかになり勝ちだ、如何にかして生きんとする、何とかしてここに存在して行こうと努力するところにおいて、初めて進歩があり、発達があるのでありますから、この法案によつて中小企業を保護しようとしなさること自体がどうかと私は思うのでありますが、その点については如何ようにお考えになつていらつしやいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/85
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086・小笠公韶
○衆議院議員(小笠公韶君) 先ほども申上げましたように、私は経済の発達、特にこの良品廉価の形は、公正な自由競争ができる、この公正な自由競争の結果においてもたらされるものと実は考えておるのであります。ところが統制というようなもの、調整というものをやりますと、お話のような、ともすれば権利の上に眠るというふうな弊害が出て参るのであります。併しながらこの法律の狙つているところは、権利の上に眠るどころか、明日がわからないというふうな危篤状態にありますので、その一時の注射をして行くという考え方であります。これを放つて置いて危篤状態にあるものを死なす。何の手も打たずに死なして行くというのではなくて、注射でともかく繋いで行こう、そうして景気の波の回復に際しまして、これが一生懸命に働いて努力をして行くその機会まで先ず助けてやる、こういう考え方が実は基本的なこの安定法の考え方であります。従いまして如何なる場合にもこの二十九条の命令とか調整規程による調整をやらせるという考え方は実はないのであります。今申上げましたような意味で、全体を見ない立法だと仰せになりますが、私は高い見地から見ると、そうだと思うのです。正直に申すとそう思うのです。でありまするが、こういう危篤状態にあるものに対して注射で繋ぐということも又これやらざるを得ないという考え方からこの案を提出しておるという状況であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/86
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087・海野三朗
○海野三朗君 この五頁のところにあります生産数量、出荷数量、こういうことについてはやはり制限をされるということでありますが、生産数量は数量を増して行けば増すほど値段が安く出て来る場合もありますし、それは無限にそうなるわけじやなしに、或る程度の限度というものがあつて、最も安価に生産する数量の点があるのでありますが、そういう点は如何ようにお考えになつておるのでありますか。ただ数量を限定して行くということは生産価格の問題、そういうものと密接な関係があると思うのですが、こういうように数量、それからいろいろここに制限をお加えになるということは、どうもおかしいじやないかと思うのですが、それはどういうふうにお考えになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/87
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088・小笠公韶
○衆議院議員(小笠公韶君) ここで列挙いたしておりますはの、二十九条の命令を出し得る事項について列挙をいたしておるのであります。この生産数量というもののきめ方によつて利幅もきまつて来る、値段もきまつて来る、こういうことになるのが普通の状態でありますが、問題は、数量を野放しにしておいては、結局安売競争に陥つて、経営の基盤が危くなるのであります。現在においてそういう傾向が見えかけておることは御承知の通りであります。そこでお話のような心配のないようにするのは、例えば一定期間、四半期なら四半期——三カ月をとつて、当該業界の生産数量を幾らにきめるか、このきめ方によつていろいろ違つて来ると思うのであります。で、例えばこれは数字は違うかも知れませんが、日本の国で現在マツチの消費というものが年間三十万トンかそこらだと、月三万トンを割る……マツチトンでありますが、程度だと考えるのであります。これでまあ随分困つておるのでありますが、安値になつて……。それに数量制限をする場合に、まあ大体一家平均どれくらい使うという、八千七百万の国民がどれくらい使うというふうな計算をして、それにライニング・ストツクというようなことも考えて、例えば年間三十七万トンにするとか、三十六万トンにするとか、余裕を持たせつつ数量をきめてやつて行くというような行き方が普通よくやられるのであります。私は生産数量のきめ方を幾らにきめるか、又これは時期的にいろいろ問題があると思うのであります。時期的にどういうふうにきめて行くかということは、産業官庁のほうで従来の実績、これからの景気の動向とかいうものを慎重に考えておきめになる。これをきつく締めるということになると、結局値段が上つて来て、消費者の利益を害する、更に又輸出を困難にする、こういうことになりますので、そこらの点は所管大臣がおられますので、所管大臣のほうで遺憾のないようにきめて行かれると、私は実は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/88
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089・海野三朗
○海野三朗君 今お話を承わつたのでありますが、只今私が申上げましたのは、生産数量というものは、数量によつて値段が大分響いて来るのであります。それを原材料の購入方法とか購入価格などの制限を定めること自体がいけないのではないか、一番安い値段でできる数量というものは、業者が一番よく知つておるわけでありますから、その一審安いところの限度において作つたほうが消費者のほうとしては非常に助かるのでありますが、こういう点はどうも非常に一方的なようにお考えになつておるとしか思われないのでありますが、そういう点は如何なものでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/89
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090・小笠公韶
○衆議院議員(小笠公韶君) 実はここに列挙いたしておりますのは、業界業界によつて、例えば先ほど挙げましたマツチの業界、或いは又織物の業界、或いは琺瑯鉄器の業界というように、それぞれの業界によりまして不況の事態が来ておる原因がいろいろあると思うのであります。その原因の事態を探つて、それに対して必要な調整を加えるということに実はなるのであります。従いましてここに列挙しておるようなことを全部やるわけではないので、業種、業態に応じてそれをやつて行くということに実はなると思うのであります。これを全部書いて来ましても、恐らく所管官庁といたしましては認めないことは当然だと思うのであります。本法が不況対策の一時のカンフル注射のような考え方でありますから、ここだけカンフル注射を打つ。そうするとどうにかもつて行くだろうという、その急所のところを認可して行く、こういうことになると思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/90
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091・白川一雄
○白川一雄君 提案者から先ほど陶磁器の引例がありましたので、丁度二十年ほど前陶磁器のほうの組合の役員をしておつたときの経験を申上げまして御参考に供したいと存じますが、その当時は、二十年前は丁度現在の陶磁器の業者の状態と同じだつたろうと思うのでありますが、工業組合或いは輸出組合というものが非常に発達いたしまして一応正常な姿になつて堅実な貿易をし始めたところ、戦争で占領政策ですつかり壊されて、五里霧中になつてしまつたのが今日の状態で、丁度二十年前の姿に返つてしまつたようなわけです。そのときの実情から見ると、非常にこういう法律の必要であるということを痛感するのでありますが、その当時大企業が小企業を非常に痛みつける一つのフアクターがあつたことを申上げておきたいと思うのであります。それは輸出に関連してでありますけれども、同じ陶磁器でも文明国へ輸出する品物と、昨日まで椰子の葉で飯を食つておつた所へ輸出する物とはおのずから品質が違いますので、アメリカへ送つたりするような品物はジヤバ、スマトラまでは必要としないのであります。そうすると、その方面に送る物は当然品質は悪いが、値段は安い。アメリカのほうは品質はいいが、値段が高い、こうならなければならないものを、価格の統制ということのために、高いところに価格の統制をしますと、非文明国のほうの輸出取引をやつておつたものは成立たなくなります。結局そういうものは非常に輸出ができなくてむしろ文明国と同じような品物のみを扱つておるもののほうが非文明国へ行くというような現象を呈しまして、非常に困つて、その当時通産省の吉田さんとか橋井さんというかたがおられた頃でありますが、いろいろ交渉した結果、値差を付けて統制を地域別にするということで、やつとまとまつたことがありますので、どうしても我々の経験から言つて統制力がなければ成立たないということはよくわかるのでありますが、裏にそういういろいろな綾があるという点を法律運用の上によほど深甚に考えて頂かないと弱い者いじめの結果になるということについては十分……これは二十年前の自分の経験を申上げまして御参考に供したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/91
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092・中川以良
○委員長(中川以良君) お諮りいたしますが、本日はこの程度にいたしておきたいと存じますが、御異議ございませんですか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/92
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093・中川以良
○委員長(中川以良君) それでは本日はこれにて散会いたします。
午後五時一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914793X04419540521/93
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