1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十九年三月九日(火曜日)
午前十時四十三分開会
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出席者は左の通り。
法務委員
委員長 郡 祐一君
理事 宮城タマヨ君
委員
小野 義夫君
加藤 武徳君
楠見 義男君
棚橋 小虎君
羽仁 五郎君
地方行政委員
委員長 内村 清次君
理事
石村 幸作君
堀 末治君
館 哲二君
委員
伊能繁次郎君
島村 軍次君
秋山 長造君
若木 勝藏君
加瀬 完君
政府委員
法務省刑事局長 井本 台吉君
事務局側
常任委員会専門
員 西村 高兄君
常任委員会専門
員 堀 真道君
常任委員会専門
員 福永与一郎君
説明員
国家地方警察本
部警備部警ら交
通課長 後藤田正晴君
法務省刑事局参
事官 下牧 武君
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本日の会議に付した事件
○交通事件即決裁判手続法案(内閣提
出)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/0
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001・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 只今から法務・地方行政連合委員会の第二回を開会いたします。
前回は交通事件即決裁判手続法案について参考人から意見の聴取をいたしましたが、本日は政府側より法務省の刑事局長、下牧参事官、国警から後藤田警ら交通課長等出席いたしておりますので、御質疑を願いたいと思います。連合委員会でありまするから、先ず地方行政委員の各位から御質疑を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/1
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002・若木勝藏
○若木勝藏君 私二、三伺いたいと思うのであります。この提案理由書を見まするというと、非常に交通事故が多い。驚くべき増加の傾向を示しておつて、二十八年度は八万件の交通事故が発生しております。そこでいろいろこういうふうな即決裁判手続法案というふうなものを政府としては考えられたというふうに窺われるのでありまするが、何だかこの理由書を見まして、大変交通事故が多くなつて来たから、これを手つ取り早く処理しなければならんというふうなところに重点があるように思うのでありまするが、併しこういうふうな交通事故の問題は、殖えて来たからそれを手際よく速かに処理するというふうな立場で以て行くべきものじやないと、こう考える。こういうふうな事故がなぜ一体殖えて来たかというふうな原因についてもう少し検討する要があるんじやなかろうか。その原因についてどういうふうに法務省としてはいろいろな今までの事件を取扱われてお考えになつておるか、この点を先ず質問したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/2
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003・井本台吉
○政府委員(井本台吉君) 直接法務省が所管いたしておるわけではございませんが、私どもといたしましては自動車等の非常な増大並びにそれに伴う道路の設備等が不十分であるということに結局帰着するのじやないかと思いますが、所管ではございませんので、警察関係の方からお聞取りを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/3
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004・後藤田正晴
○説明員(後藤田正晴君) お答えいたします。御質疑の通りに最近の交通の事故は毎年約四〇%ずつ激増をいたしておるのでありますが、この原因といたしましては、申すまでもなく先ず道路の施設、それから車の状況、それと運転手の状況、この三者であろうと私は考えるのでございます。でこの道路、自動車等につきましてはこれは私どもの所管で実はないのでございまして、道路については建設省、自動車につきましてはこれは運輸省の所管に相成つておるのでございます。道路の状況につきましては、これは御承知の通りに戦争で大変傷んで、その後逐次改善を見つつあるようでありまするけれども、何と申しましても日本の道路が非常に劣悪であるということは、これはもう私から今更申上げるまでもないと存ずるのでございます。自動車につきましては、終戦後の大きな特徴といたしましてスピードの速い車が先ずたくさんできて来たということ、それから車体が道路に比較して非常に大きなものが動き出したということ、それから申すまでもなく数が非常な激増を示しておるということ、終戦前に日本で一番自動車の数が多かつたのは、たしか昭和十三年であつたと思いますが、当時は自動車の数が約二十二、三万台であつたのでございます。ところが最近はこれが非常に殖えまして、昭和二十七年の末において七十二万台、昭和二十八年の十二月末の詳細のものはございませんが、従来の増加の率から見まして恐らく九十万台くらいになつておるのではなかろうか、かように考えておるのでございます。このように非常に自動車が激増をしておる。これらが大きな事故の原因をなしておるのだということはこれは申すまでもないと思うのでございますが、ただここで一つの特徴といたしまして自動車の増加の率よりも事故の増加の率のほうが少し多い、これは否定し得ない事実でございます。
更に第三番目に運転者の然らば状況はどうか、こういう問題でございますが、運転者は免許の状況は大体一カ年最近三十万人といいますか、件と言つたほうが適当でございますか、一人で数種持つのがございますので、一つの免状を基礎にして申しますと大体三十万でございます。これが毎年殖えておる。で、昭和二十七年の末で百七十万の免状が出ておるのでございますが、それが毎年三十万は殖えておる。これを人について申しますと、昭和二十七年の末でたしか百二十五万人の運転手があるようでございます。従つて車両に比較しては運転手の数というものは先ず先ずここらでいいのではなかろうかと思いますが、何分にも非常に多くの人が、新らしい運転手がどんどんできておる。これらの運転手の諸君が果して十分なる技能を持つておるかと申しますと、勿論厳重なる試験はいたしておりまするけれども、これに数倍する人が受験をしておるような状況下において、まあ比較的未熟な人もあるのではないか、こういうようにも思いますが、まあ運転手の数は大体そのように殖えておるのでございます。そこでこれらの運転手につきましては、私どもとしては業者といいますか、雇主等にも働きかけまして、一番いいのが業者みずからのこれらの教養訓練という点をやつて頂くのが一番いいということで、まあこれらに働きかけをいたしておるのでございます。
ただ、この運転手の教養、或いはこの運転手の平素の仕事のやり方等につきましては、私どもとしてできる範囲の只今申したような働きかけはいたしておりまするが、この最近の事故の原因を分析してみますというと、運転手のみに帰せられない。つまり先ほど申しました自動車の数の増加とか、道路の施設は一応別にいたしまして、運転手それ自体について見ました場合にも、運転手のみに責任を必ずしも帰し得られないという面があることは否定できないのでございます。それは、一つは経営のやり方、つまり端的に申しますと、勤労条件と賃金制度、この二つに相当大きな欠陥があるのではないか、こういうように考えておるのでございます。
そこで私どもといたしましては、警察は取締り一本で行かざるを得ないのが法の建前でございまするし、而もこの交通に関する警察が、いわゆる私どもの警察のみならず、運輸省、労働省の共管となつておることでございまするので、私どもとしては労働省、それから運輸省というところと連絡をとりまして、三者相並進した取締りの強化ということを実はいたしておるのでございます。この点につきましても、従来は私ども指導の面を重点にして昨年までやつて来たのでございますが、どうも事故の増加はやまんということで、止むを得ず取締りの強化という面に進まざるを得なくなつたという面があるのでございますが、この取締りについても、只今申しましたような三者相並進した取締りのやり方をやつて行こう。そうしなければ警察の、いわゆる私どもだけの取締りの強化は運転手いじめ、いわゆる運転手いじめに堕する、而も効果が上らん。こういうことでございますので、三者相並進した取締りの強化ということを昨年の八月からやつておるのでございますが、その結果お手許に配付いたしてあります資料でおわかりの通りに、昨年の八月以降は事故の増加の率がとまつておるということが、これは私どもの資料の証明をいたしておるところでございます。で、やはり何と申しましても私どもとしては警察のみならず労働省、運輸省というところと相協力いたしまして取締りの強化をすることがまあ次善の策として一番いいのではないかと、こういうように考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/4
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005・若木勝藏
○若木勝藏君 今の御答弁で非常に私の聞こうとしたことの重点が答えられておりまするが、いわゆるこの運輸省並びに労働省、それから警察側のこの三者の並進のいろいろな研究によつて、そうしてこれを予防して行くということが非常に私は重要なことだと思うのであります。ただ事故を起したところの運転手に対して取締るという一点張りばかりでは、私は単なる運転手いじめに堕ちるのじやなかろうかとこう考える。そういうふうな方針で進まれるということは誠に当を得たものと思うのでありますが、ただ、そうすることが一番いいのではないかというふうな点にあるのでしたらば私は異存がある。それではこれまで三者がどういうふうに事故の予防に対して協議を進められ、どういう方法をとられたか。それらのもつと詳細な点を一つ伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/5
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006・後藤田正晴
○説明員(後藤田正晴君) 先ず運輸省のほうと私どものほうとの関係は、主務の課長が定例的に集まりまして、そのときどきの状況・話合い、そうしてお互いにこういう方法をとろうじやないかと、こういうようなことを緊密に実は連絡をしてやつているのでございます。
労働省のほうとも、これは定期的な話合いはいたしておりませんが、第一線の警察においてはそれぞれの出先の労働省の機関或いは運輸省の機関等と定期的なそういつた会合を持つてやつておりますが、私どもとしては労働省と定期のものはやつておりませんが、緊密な連絡をとつてこの労働条件について何とか一つ直してもらうわけにはいかんだろうかということを昨年来話しておつたのでございます。最近新聞紙の伝えるところによりますと、労働基準法の施行令を改正して二十四時間隔日勤務という条件を改めるという記事を見たのでございますが、これらは私どもが従来から喧しくお願いしておつたところであります。こういう点に一歩々々改善の努力をいたしているところでございます。御了承を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/6
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007・若木勝藏
○若木勝藏君 前に交通事故のことにつきまして、地方行政でもいろいろ警察側から伺つたことがあるのでありますが、トラックの事故が非常に多い。これは現在においても変りがないかどうかその点をお伺いいたします。而もそのトラックの事故が非常に多いということは非常に労働過重である。そのためにまあ朝早くあたりから起されて運転して来るので居眠りしたために崖から落ちる。そういう事故が非常に多いのじやないかと思います。それらに対して特にトラック業者の方面と十分連絡がついているか、その後どういうふうな検討をされているかこの点を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/7
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008・後藤田正晴
○説明員(後藤田正晴君) トラックの関係いたしております交通事故は、お話のように全自動車の交通事故の五五・四%を占めておりまして一番多いのでございますが、それは車両数それ自体もこれが一番多いということも関係をいたしているのでございますが、相当トラックの事故が多いことは事実でございます。殊に郡部におきましてはトラックが圧倒的に事故が多い。都市においては乗用車のほうが多い、これは数の関係上当然だろうと思いますがこれらが多い。トラックにつきましては而も郡部におきまして大きな事故を起すのは長距離貨物輸送でございますが、これが交通違反も多いし事故も多い、こういう結果を示しているのでございます。これは長距離貨物輸送が経営上いろいろな御都合もあるのでございましようが、運転手一人に助手が一人、二人ということで、例えば名古屋から東京に来る、ところが途中でまま運転手と助手とで交替運転をやる、こういうことが多いのであります。或いは途中で泊まらざるを得ない所で、甚だしい例になりますというと、ヒロポンをうつということが行われているのでございます。こういうような点も私どもとしては原因がわかつておりまするので、業者に対しましてはその恐るべき実例を全国のこの業者の団体がございまするので、それに対して私どものほうから直接にこういう実例がある。これでは到底危険で交通の安全上非常な支障があるので、十分一つ協力をして指導をしてもらいたいということを要求いたしておるのでございます。又出先のそれぞれの警察隊なり自治体警察においても同じような処置がとられております。所によれば定期的な会合をやる、そういうようなことで相互の連絡をして先ず予防措置をとつてもらいたいということを要求をして、相互に事故の防止に努力をいたしておる、これが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/8
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009・若木勝藏
○若木勝藏君 更にその点について二、三伺いたいと思うのでありますが、いわゆるこれは道路の面から言いますというと、都市計画などにも相当私は関係を持つて来るのじやないかと思うのであります。例えば都内でも阿佐ヶ谷のほうへ行つてみますというと、非常に狭い道路で人が通るのもなかなかゆるくないような所をバスやトラックが通つておる、その道路にすぐ引込んで学校がある。ああいう所をバスやトラックが通るということは一体どういうものかということも私らしばしば考えておつたのでありまするが、こういう方面に対してはいわゆる東京都或いは都市計画上何か一つの基準があるものかどうか、この点を一つ伺いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/9
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010・後藤田正晴
○説明員(後藤田正晴君) 或いは御質問に対しまして直接私の所管でございませんのでお答えにならんかと思いますが、その点あらかじめ御了承を願つておきまして、一応私の承知いたしております実情を御説明申上げたいと思います。このトラックの営業なり或いは乗用車の営業なりにつきましては、御承知の通りに定期路線の免許とそれからいま一つは地域免許と二通り免許の種類があるのでございますが、これらにつきましては従来は例の陸運審議会で審議をいたしまして、一定の資格条件を備えた業者についてのみそういつた営業の免許が与られえておつたのでございます。そこでこの陸運審議会に私どもの何といいますか、警察の取締りを担当しておる者の意見がややともすれば反映しない、つまりこの委員の構成メンバーに私どもはなつてなかつたのでございます。これは警察が取締り一本で行くべきであるという法の趣旨に鑑みて、そういつた行政的な事務を担当する面には入らんほうがよかろう、こういうようなことで法律上も私どもが入るようになつておりませんでしたし、事実入つていなかつたのでございますが、そこで私どもとしてはそういう免許をする場合には公安委員会としての意見を聞いて頂きたいということを、従来運輸省のほうにお願いをいたしておつたのでございますが、昨年道路運送法が改正をせられまして、たしか十月一日から施行になつたと思いますが、その際に従来の道路法に基く陸運審議会が道路運送協議会という名称に改まりまして、その協議会のメンバーに道路管理者とそれから道路の交通取締りの任に当つておる者とが一名ずつ委員に入るということを運輸省のほうでお考えになつて、私どものほうに御連絡があり、それぞれの陸運局ごとに警察の代表者が入りまして、この所はこういう地域であるし、そういう免許についてはどうであろうかといつたような意見を申述べる機会が実はできたのでございまして、それによつて昨年の十月からは私どもの率直な意見がそういつた免許の際にも幾分御考慮を願い得るという状況になつておるのでございまして、その点をお答えいたしまして、都市計画その他につきましては私どものほうから只今この席で何ともお答えできないのは甚だ残念でございますが、御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/10
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011・若木勝藏
○若木勝藏君 次にお伺いしたいのでありまするが、東京都で我々の非常に経験するところは、この頃のいわゆるあのタクシーでございますが、これは非常に多くなつて来た。そうして相当のまあスピードで以て走つておるのでありまするが、これは何といいますか賃金は距離制というふうなことになつておるのですが、或る一定の距離に対して基本料金が何ぼ、それから延びた場合に何ぼ増しという工合になつておるのですね。そのためにそのお客さんをその距離を運んで直ちに別なほうへ転換して又稼ぐと、こういことのために一方においてはスピードを出すし、一方においては十字路あたりにおいて信号の出ておらないようなところは、わざわざそこに人が通つておるのに、これもかまわずに自動車のほうが先を越してしまう、こういう非常な危険も起つて来ておるように思います。私も実際においてはその点は経験をしておるのであります。自動車のほうが重大であるのか、人のほうが重大であるのかわからんという状態で進行して行くのであります。そういうことから考えまして、今の距離制といつたようなものは一体適当なものかどうか私は疑問を持つておる、或いは距離でなしに、一人のお客さんを乗せた場合に時間制で何分間乗せたならば賃金何ぼといつたほうが、ああいう危険性が起つて来ないじやないかと思いますが、それに対して東京都としてはどういうふうにお考えになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/11
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012・後藤田正晴
○説明員(後藤田正晴君) これも実は私どものほうの所管ではございませんのですが、運輸省の方がおられませんので、私からお答えいたしたいと思いますが、料金は只今お話の通りにメーターによるつまり距離制でございます。これに対しましていま一つ考えられまするのが時間制、これも考えられる制度でございます。これも実は私どもがこの点は一つ第一線で研究してみてくれ、果して現在のような距離制だけで行くのがいいのか或いはもう少し時間制というものを加味することはできないのかということで実は只今研究をしてもらつておるのでございます。私外国に行かれた方に聞きますと、パリの制度はこれは時間制だそうでございます。ただ私がその研究を第一線の方にしてもらうように話をいたしまして間もなく聞きましたことは、仮に距離制をやめて時間制のメーターにいたしましたときにはメイン・ストリートが一ぱいになつてしまう。東京の場合はそいういう結果に恐らくなつてしまうんじやないか、こういう心配が一つある。と申しますのは現在のこの距離制の場合ではできるだけ青信号、赤信号或いは交通巡査の整理のない裏道裏道を行つている車が多いのでありますが、そういうものがみんなやまつてしまつて表通りに出て来るというようなことになりはしないかという話も聞いておるのでありますが、現在これはいずれがいいか研究をいたさせておるのであります。なおタクシーの増加のお話がございましたが、これは戦前東京都内の九千台に対しまして現在一万二十台でありましてこれは全国的にはタクシーは戦前水準に達しておりません。これは一般にも誤解をせられておるところでございますが、全国的には数倍に殖えておるにもかかわらず、まだタクシーは戦前の域に達しておらないという実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/12
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013・若木勝藏
○若木勝藏君 では法案につきまして法務省の方に一つお聞きいたしたいと思いますが、大体この法案につきまして調べてみますと、随分いろいろなことをお考えになつて、手続万端抜かりのないようによく考えられたとも思うのでありますが、ただ私この法案を見まして、即決という言葉は何か事故の件数が非常に多くなつて来たので、手つ取早くこれをやつてしまおうというような響きを持つような言葉のように思うのであります。そういうふうな言葉の上の響きから行きますというと、取扱いというふうなこともそれに応じてやつてしまうというふうな、いわゆる現場の考え方がそういうことに支配される憂いがあるのじやないか、こういうふうなことも考えるのでありますが、何とか簡易裁判というのがありますが、そういうふうな意味のものであれば、まだ法文の内容にマッチして来るように思うのでありますけれども、即決というのはどうもこれはそういう面から考えて、往々にして即決されてしまうようなことになりはしないかと思うのであります。そういう点をどういうふうにお考えになつたか。この点伺いたいと同時に、裁判所にかける前に、いわゆる何と言いますか、その場で処理してしまうような微罪と言いますか、そういうふうな違反事項などがあるだろうと思うのでありますが、その辺の限界がどういうふうになつて来るのか、その点をお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/13
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014・井本台吉
○政府委員(井本台吉君) 即決裁判という名前がどうも適当ではないのではないかというお話でございますが、私どもといたしましても何か適当な名称がないかと思いまして、特別裁判手続とか或いは簡易裁判手続とかいろいろ考えたのでございますが、特別裁判手続というのも、何か特別な裁判をするというので印象がよくありませんし、簡易裁判手続はすでにこの前の刑事訴訟法の改正の際にさような類似の名前が出ておりますので、これもどうかということで即決裁判手続というような名前を考えた次第でございまして何か適当な名前があれば、私どもといたしましては別にこれは固執する気持はないのでございます。
微罪をどの程度にするかという点につきましては、直接扱つております警察のほうから御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/14
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015・若木勝藏
○若木勝藏君 つまりその場でいわゆる即決してしまう場合と、それから検挙する場合との限界ですねこれを……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/15
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016・後藤田正晴
○説明員(後藤田正晴君) 警察の取締りの基準につきましてお答えをいたしたいと思います。御承知の通りに、取締りの基準と申しましても、それぞれの地域につきましていわゆる交通警察の地域性というものがございまする関係上、一律に中央からこういう場合にはこういうことにしなさいということを画一的にお示しをすることは、必ずしも交通警察については適当でない点が多いのでございます。従いまして私どもといたしまして先ず国警におきましては、極めて抽象的でございますが、自動車については無免許運転、速度違反或いは酩酊運転等のいわゆる無謀操縦その他悪質事犯についてはこれは別であるけれども、事犯軽微なものについては、違反が二回以上になつた場合に検察庁に立件送致をするのがよかろう、こういうことを示しておるにとどまるのでございます。自動車以外の自転車、それから歩行者等につきましては、これは私ども行政庁内部の扱い方といたしまして交通違反のカードを作つておりますが、この交通違反カードを違反者に渡して反省を促すことにして、違反が三回以上に亙つた場合には立件送致をしたらばよかろうと、こういう程度のことしか示していないのでございまして、細部の状況は、これは各地々々の実情に応じて当該地区の警視庁ともお打合せをして一応の扱い方をきめておると、こういうふうに存じておりますが、本部といたしましてはこの程度しか示していないのでございます。そこで例といたしまして東京警視庁の場合を私どものほうで問合せまして資料でお出しいたしてありますので、資料でよく警視庁の場合の基準をお読みとり願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/16
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017・若木勝藏
○若木勝藏君 そういたしますというと、大体の基準は本部のほうから現場のほうに示され、それによつて現場のほうでそれを基準にして検挙し、或いはその場で訓戒を与えて釈放するということになつておるようでありますが、現在におきましては、その結果は大体本部の方針通り行つておるか、或いはこれはその場で以て釈放すべきであるのに、わざわざこういう手続をとつておるか、そういうふうなことについて実際の結果はどういうふうになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/17
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018・後藤田正晴
○説明員(後藤田正晴君) これは大変むずかしい御質問だと思いますが、私どもといたしましては先ず先ずここらでいいのではないかというふうに思つておりますけれども、これも実は見方によりましては、スタンド・ポイントが違うとこれはどうもきついじやないかという御意見もこれは当然出て来るだろうという考えを持ちますけれども、私どもといたしましては現在の警察の扱いが必ずしも過酷である、これはひどいじやないかというような取締りもままこれはないとは申しませんけれども、一般的に言えば先ず私どもとしては私どもが中央において考えておる程度のことが行われておるのではなかろうか、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/18
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019・若木勝藏
○若木勝藏君 この点について実際を取扱つておるところの法務省に伺いたいのでありますが、従来あなたのほうで取扱の実情から見ましてその点が妥当に行つておるかどうか、そういうような方面についてお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/19
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020・下牧武
○説明員(下牧武君) お尋ねの点は、大体申しますと、送致事件の質の内容でございますが、まあまあというところじやないかと存じます。併し具体的に必ずこれは守られておるかと言いますとそうも申されませんので、例えば資料に載つております警視庁の送致基準といたしまして、速度違反は原則として九キロ未満は訓戒、こう書いてございますが、検察庁のほうで処理いたしました不起訴の事件のうちに五キロ未満のものもございます。これも資料に載せてございます。そういうふうなことで多数ある事件のうちでございますから、若干の食い違いは勿論これはあろうかと存じます。全体的に見まして大体いいのではないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/20
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021・加瀬完
○加瀬完君 若木委員の一番最初の質問に関連する問題でもございますが、第一点といたしまして、この法案の根拠といたしまして交通事件の迅速適正な処理ということを目的にいたしておるわけでありますが、併しながら激増する交通事件というものは、必ずしもこの即決裁判という方法だけによりまして、その原因なり事由なりが根絶するということにはならないと思うのです。といいますのは、例えば、自動車の規格を今のように野放しにしておいてよろしいか、或いは自動車の使用道路に全然制限を加えないでいいか、或いは又運転免許制度というものを現行通りに置いていいか、こういうような問題については、全然交通事故の原因というものを感じないのか、そういう意味の原因、事由というものに対して、この問題のほかの何か法的処理というものを考えておられるか、これを第一にお尋ねいたします。
第二には、現在の略式命令に比べますと、刑の内容が相当拡大されていると思います。この点略式命令より遥かに正式裁判に進展する部分が多いと予想もされるわけであります。一応本法は被疑者側にも喜んで受けられるという面がありませんでは、考えておられるような即決裁判の効果というものが上つて来ない。併しながらその刑の内容というものが非常に重いということでありましては、その適用というものは甚だ漸減されて参るということになりかねないのです。そこで略式命令よりも本法におきまして遥かに刑の巾を拡げた理由はどういうわけであるか。又こういうふうに巾を拡げてしまつても、実際効果というものは期せられるか、こういう点を第二点にお尋ねいたします。
策三点が、その第三条の中に没収を科し、その他附随の処分をするということがありますが、この没収ということ、或いは附随の処分ということの、具体的には例えばどんなことを言うのか。
第四点は第四条でありますが、略式命令では同意を書面で明らかにしなければならないことになつておりますが、ここでは書面でその旨を明らかにする必要はない。それは裁判官の前で異議を申立てる機会と権利が保有されておるからこういうふうになつておるのでありますが、検察官はこの法律ができますると、この法律をどうしても多く適用するような便宜を考えて来ると思う。一般人というものは法を扱つている方ばかりはおりませんので、法の解釈がどうしても不十分でありまするので、異議を申立てる権利が保有されおるといいましても、なかなかその認識の度合いが薄いので、裁判所に連れて参られますると、これはもう本当に言うことを聞かなければならないものかということになりまして、被疑者がみずから好む個人の権利を守る方法というものを十二分に言い出せないようなことになつて参らないか。そうなつて参りますると、それは必ずしも被疑者個人の権利というものは十分に守られないという心配がある。こういう点について略式命令と違つて、書面で同意をしなくていいというふうにしたのは、何か個人の本当の言い分が聞けないような悪い条件というものを与えるようなことに、結果的にはならないか。この点を伺いたいと思います。
それから第五点でございますが、仮納付の制度が刑事訴訟法よりも遥かに緩和されておりまするけれども、これは見方によつては個人の権利に対しての非常に侵犯ということになりかねないのであります。少し便宜主義に陥つているのじやないかと思いますが、こういう点で何か御見解がありましたら承わりたいと思います。
第六点は、これは現場の警察官によりまして取締られる形をとりまするので、こういう法律ができますると現在の取締よりももつと摘発主義というものを助長することにならないか。以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/21
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022・井本台吉
○政府委員(井本台吉君) 交通事故の現状を考えますのに、取締るだけが最上のものであつて、そのほかは問題でないということは毛頭考えておりませんし、免許或いは自動車の規格、道路をどうするかというような点を考えますのは、もとより当然でございますが、ただ私どもといたしましては、検挙、取締りも確かに交通事犯を少くする一つの原因になるのでありまして、その職分を持つておりますので、この点でできる範囲のことをしたいと思つてやつておる次第でございます。
第二といたしましては、刑事裁判の略式命令と今回の即決裁判の手続とでは巾を広くしたのではないかというお話でございますが、これは大体同じでございます。少しも拡げておるつもりはございません。
第三点の没収、附随処分の点でありますが、没収の問題は殆んどないのでありますけれども、この仮納付というような点は、これは執行の面から行きまして、検察庁といたしましては、執行の関係でも相当手続が面倒でありまして、何回も書類を出すというようなこと、或いは法の定める強制執行等をするということを規則にはできておりますが、さようなことは到底できませんので、さような点が非常に便宜になるのでありますが、一面から言うと、結局納付しなければならない罰金を違反者が支払うと、簡単に受取るということで、仮納付の手続も、被告になる方に対しても相当便宜を与えるのではないかと私は考えておる次第であります。この没収、附随処分というのは、そういうような点を考えておる次第であります。
それから第四点といたしまして、正規の裁判でなく、即決手続を承認するというのを書面で取らないのはどういうわけかというお尋ねでございますが、これは十分検察官が簡易手続の説明をいたしまして、他の手続によることもできるのだということを説明する建前になつております。従つて若し異議があれば、当然そこでこの即決裁判の手続は要らないということができることにもなりますし、更に裁判官のほうに参りましても、勿論異議があればさような手続はしないのでありまして、万事成るべく手数を省くという点から、書面が非常に面倒であるので、書面を省こうという観点から書面を取らなかつたので、その保障は、すぐ裁判官がこれを受け継ぎまして、裁判官の面前で即決をするということで、十分担保できると考えておる次第であります。
それから第五点、仮納付が何か権利侵犯になるのではないかというお話でございますが、これは勿論執行側のほうの便宜もございますが、先ほど申上げましたように、納付する側のほうの便宜を十分考えておるのでございまして、若し金がないというような場合、或いは分納して欲しいという場合は、勿論それを禁止する手続はないので、分納手続をとることも考えております。
最後に手続が便宜になつたから、どんどん摘発して事件が殖えるのではないかという御懸念でございますが、さような点は十分私どもといたしましても、戒心を加えて、科料のほうにはどの程度になれば起訴しなければならんかという一定の基準を定めてやるつもりでありますし、さような御心配はないと考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/22
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023・加瀬完
○加瀬完君 これによりまして、事故の原因というものが幾分薄められて来るということは考えられるのでありますが、私の伺つておりますのは、事故の原因の主たるものは、例えば自動車の規格でありますとか、或いは使用道路の問題とか、運転免許制度問題にも大きな点があるのではないか。これらに対して法的措置を講ずる考えがあるのかないのか。問題はむしろ私が今申述べた点に多くの原因を持つているのではないか、こういう点を伺つておるのであります。
第二の点の略式命令と今度の即決裁判は刑の内容が同じだということでございますが、私には同じように思われないのでありますが、重ねて御説明頂きたいと思います。
それから次の点の略式命令では書面で同意を必要とする、今度はそれをやらない、警察官においても十二分に説明されるというし、裁判官においても説明されるのであるから、そういうことはないということでございますが、検察官が十二分に説明をいたしたからといいましても、被疑者のほうでそれに対して十二分の理解が得られるかどうかということは非常に問題だと思う。或いは又裁判所というふうなところへ連れて参られまして、被疑者が結局これは正式裁判に訴えることもできるのだと言われたところで、連れて行かれてしまうとそれに従うというような懸念もある。そこで法に対する十二分の理解の行かない国民に対して、略式命令と同じように前以て口頭でなくて書面で本人の意思というものを確かめるという必要が全然ないのかこういう点であります。
最後に仮納付制度というものは申出制度ではなく、命令になつておるのであります。そうなつておりますると仮納付をしてもいいということでなくて、仮納付をさせられるという形になりますので、これは少し便宜主義じやないか、こういうふうな点心配があるのであります。その点御解明順きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/23
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024・井本台吉
○政府委員(井本台吉君) 先ほど申上げましたように、この事件を通じましてさような点が問題になれば、これは関係諸官庁と連絡いたしまして十分その対策を立てたいということで、勿論私も道路とか交通機関の規格その他について交通事故が……、さような点に十分戒心を加えなければならんという点のあることは否定いたしません。
それから略式命令の巾と、即決裁判手続の巾とは刑は同じでございますから、五万円以下で同じようになつておるはずでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/24
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025・加瀬完
○加瀬完君 略式命令は五万円ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/25
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026・井本台吉
○政府委員(井本台吉君) 五万円になつておるはずです。
それから何というか、即決裁判に付するかどうかという点につきましては、これは十分本人の意向を聞きまして、本人に異議があれば、勿論それらの手続はとらないのでございます。なおこの点につきましては、例えば検事のほうから威嚇的に即決裁判に付せよというようなことは毛頭させないつもりでございます。なおすぐ先に裁判官がおられまして又異議がないかということをお確めになるのでありますから、威嚇的に不服の人間に対して正式裁判を簡易手続にむりやりに付させるというような点はないと考える次第でございます。
それから仮納付の問題も先ほど申上げたように、とにかくこれは裁判所が適当でないと認めれば仮納付は命令を出さないのでありまして、出しても執行の面につきましては、いろいろ当事者のそのときの状況によつて便宜取計られると考えますので、さような権利侵害というふうな点はないと考える次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/26
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027・加瀬完
○加瀬完君 没収ということになりますが、交通事件の場合の没収というものの対象になるのは一体どういうものであるか。それから没収というものが結局五万円という本刑よりも上廻るというふうなことも考えられるわけでありますが、そういう具体的なことで御説明頂きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/27
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028・井本台吉
○政府委員(井本台吉君) 今のところ没収というのはちよつと考えに浮ばないのでありますが、お話のように没収が五万円の刑より重くなるというようなことは勿論この刑の性質上あり得ないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/28
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029・加瀬完
○加瀬完君 それから先ほど質問いたしました点で一つ聞き洩らしましたのか、お答えが頂けなかつたのか、略式命令と今度の即決裁判で書面で承諾をするという点が省いてありまするが、これは私が考えまするには、どうも被疑者の本当の意味の権利といいますか、そういうものの意思表示に甚だ不明を来すことになるのじやないかと思いますが、この点伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/29
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030・井本台吉
○政府委員(井本台吉君) 略式命令の際には裁判までには相当期間もありまするし、さような点で特に書面を取つたのでありまするが、今回の手続は検察官、裁判官が流れ作業式にすぐそばで裁判するということになりますので、本人が若し即決裁判が嫌であるということであれば、直ちにこれは普通の手続に廻すことができるのであります。全然違つた場所、日時を距てて略式命令を出すという場合とは非常に違いますので、この点につきましては十分本人の意思が間違いないということが担保されると私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/30
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031・秋山長造
○秋山長造君 国警の後藤田さんに若干お伺いしたいのですが、先ず第一は頂いておる資料についてですが、資料の昭和二十七年中交通取締結果対象別枚挙送致調という表がありますが、この表を検討してみますと、先ほど後藤田さんのおつしやつた交通警察の地域性ということが数字の形で非常にはつきり出ておると思うのであります。ただ併しこれは単なる交通警察の地域性というだけでなしに、更によく検討してみますと同じ法律を適用して取締をやつておるはずでありながら、地域によつて非常に地域性というようなこと以上に余りにもでこぼこが多過ぎるように思うのです。例えば東京管区の中の東京と神奈川を比べてみますと、自動車の検挙数において東京は一万八千七百七十一件、神奈川はその数倍の五万三百七十二件ということになつております。ところが少しあとのほうの歩行者の違反事件を比べてみますというと、東京のほうは三万八千五十一件、神奈川のほうは十数倍でありますが四十二万九千二百九十四、こういうようなことになつておる。我々の常識から考えますと、東京と神奈川と言えば東京のほうがはるかに大都市でもあるし、車の数から言つても、何から言つても、取締から言つても非常に交通違反が多いわけですけれども、併しこの統計によるとこういう形になつておる。それから更に又その下のほうに行きまして大阪管区を見ますと、大阪の管区の中で和歌山県だけは自動車の違反七千三百十一件、他の府県に比べて驚くべく少いわけであります。又歩行者の検挙数にしましても一万三千二百十四件で、他の府県に比べて非常に少い。それから又次の表の二十八年の上半期を見ますというと、東京と大阪では今度は二十七年とは逆に東京のほうが十八万七千五百二十二件、ところが神奈川のほうは逆に一万四千六百九十四、二十七年と二十八年では全然これは逆になつておる。その逆になるのが非常に激しいように思う。こういうような数字は、ただ事実が同じような取締をやつてそういう数字になつたのではなくして、やはり年度により、或いは地域によつて交通違反の取締を非常に余りにも行過ぎたほど厳重にやつたり、又然るべくやつたりというようなことが、所、時によつて非常にむらがあるのではないかと思うのです。その点について実情がどういうふうになつているのかちよつとお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/31
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032・後藤田正晴
○説明員(後藤田正晴君) 取締のでこぼこにつきましては、只今御指摘になりましたように、私どもが考えておる所期の点まで合理的に行つておるものというようにも、必ずしも私そこまで申上げる自信が実はないのでございまして、できるだけそういうものは、地域性はありますけれども、その地域性にふさわしいだけの扱いをやはりしてもらわにやあ因るというような工合に私ども考えておりまして、そういう指導は絶えずいたしておるのでございます。ただ、お話のようにそれが必ずしも十分行つていないということは、これは私どもといたしましても否定をする実は勇気はないのでございます。ただ、今お話の東京、神奈川の例は、これはちよつと私からお答えするのは失礼なんですが、ちよつと表のお読みが違うのではないかと……。東京、神奈川の場合、第一表のほうは警視庁が除いてある。第二表のほうは警視庁が実は入つておるのでございまして、そういう関係ではないだろうかと、こういうふうに思います。両方合せてみれば只今申されたほどの被害は実はないのではないか。もとより歩行者につきましては、東京警視庁を東京都に加えてみましても少い。これは、東京警視庁の計となつております表は歩行者のうち送致した数でございまして、上の取締件数とは若干表の実は性質が違つておりますので、この点は私から御説明申上げなけりやなりませんが、そういう関係になつておりまするので御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/32
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033・秋山長造
○秋山長造君 今の点はまあ成る程度了承しますが、併しこれは東京と神奈川だけのことでなしに、全国的に、まあ例えば大阪管区の和歌山県ですが、和歌山県などはこれは抜けておる町は何にもない、全県下だろうと思うのですが、こういうものは随分違うのですね。隣の県などと比べて、こういうもので見ると、特に附近の県に比べて車が少いとか特に運転手が非常に交通道徳の水準が高いとか、歩行者が特に他の県とは違うということは考えられない。やはりこれは同じ国警の取締でも地域性と言うべく余りにも地域性があり過ぎると思う。勿論この少いに越したことはない。そこでそういう少い所でなしに、少い所に比べて圧倒的に多い所が非常に多いのですが、そういう所はやはり地域によつて非常に行き過ぎがあるのじやないかと思うのです。で、先ほども課長がおつしやつたように、例えば東京あたりのように人口の非常に密集した所での取締りと、人口の非常に散漫な地方での取締りはおのずから違わなければならないはずなんですけれども、実際全国の交通取締りの実情を少くとも私が見聞きした限りにおいては、なかなか最近は地方の末端に至るまで徹底した取締りはない。あの白いジープですね、交通取締りの……。あれがもう農村の山の中の道にまで、まあ暇に委せてというわけではないのだろうけれども、随分細かく廻つているのですね。で、農村の、一日に何十回もトラックや乗用車が通ることのないような極く閑散な途で、例えば自動三輪の練習をしているとか、或いは軽二輪の練習をしておる、スクーターの練習をしておる場合というようなのをすぐ遠くから見つけてそこへ追駆けて行つてつかまえて、無免許じやないかということですぐにこれを検挙する。で又最近は国警本部の御方針かどうか知りませんけれども、米のやみと交通違反は絶対に検察庁へ行くのです。これはもうそういうことが定説になつておる。これはもう如何に警察に行つて頼んでも米のやみと交通違反だけはどうしても検察庁に行くというのが原則になつておる。で、さつきおつしやつた、何とか軽度のものは二回とか三回とか重なつた場合に初めて送致するというようなお話がありましたけれども、そういう方針はなかなか地方まで徹底していないのじやないかと思うのですがね。この前も、参考人を呼びましたときに我々もいろいろ聞いたように、いろいろ国警のほう或いは法務当局の御尤もな御説明にもかかわらず、やはり実情は検挙主義といいますか、点数主義といいますか、とにかくもう一人でも多く挙げることが交通取締りの成績が挙つたことになるのだという主義で、徹底してやつておられるのじやないかと思うが、その点如何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/33
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034・後藤田正晴
○説明員(後藤田正晴君) 先ほどお答えいたしましたように、私といたしましても、必ずしも私どもがここまでは是非ありたいものだというところまで至つていないという実情が相当各地にあるということはこれは私否定いたしませんし、そういう点は御説のようなことのないように十分将来とも指導を加えて行きたい、かように考えております。ただ送致の基準につきましては、これは各地々々で実は検察庁のほうと警察のほうと打合せて、その地その地の実情に合うようなやり方をしてやつておるのでございまして、その点御了承を頂きたいと思います。
なお田舎の山道まで取締をやつておるのではないか、白のジープが走つておるとおつしやるのでありますが、これは実はそうではないのでありまして、あれは交通取締りの車ではございません。交通取締りの車は白バイ一本で、あれは警邏用の実は無線自動車でございますので、その点何か誤解されておるのではないか、こういうように考えておるのでございます。
なお各国の例をちよつと送致の点で申してみますと、大体これは私書物で読んだので実地はよく知りませんが、事故の件数の大体一〇乃至一五の指数、これが処罰を受けるために送られるというのが先ず先ず普通ではないか。これが、道路の状況なり交通機関のいろいろな状況で違いまするけれども、大体それが書物で言われておることであります。事故件数に対する十乃至十五、これが送致件数、で、日本の例で申しますと、昨年はたしか八を示しておるのでございます。送致件数が事故件数の指数八でございます。従つてそういつた各国の書物で私が承知いたしている範囲よりはやや送致件数は少いのではないか、こういうように実は考えておるのでございます。これは仮に送致件数が事故に対して三十なり四十なりを占めてもなお且つ事故の件数が減らないという場合には、これは取締のやり方では駄目だ。何かほかに大きな欠陥があるのだというように書物には書いてあるのでございます。これは参考に申上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/34
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035・秋山長造
○秋山長造君 この表を見ますと、更にこの車以外の歩行者の交通違反が非常に多いのですね。而もかなりな数のものが検察庁まで行つておるのですが、この歩行者の検挙というのは大体どういう標準によつて実際に行われているか、その点お伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/35
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036・後藤田正晴
○説明員(後藤田正晴君) 今横断違反とか信号無視とかいろいろなのがございますが、これは実は検挙と書いてございますが、検挙のほうは大体それを叱りおくといつたようなものまで実はこれには入つておるのでございますが、送致のほうが相当多いではないかというお話ですが、全部で千五百五十七件、この程度私はこれは幾ら歩行者といえども実際は止むを得んのではないか、かように考えておるのでございます。或いは酩酊者とかいろいろな関係がございまするので……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/36
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037・秋山長造
○秋山長造君 千五百五十七件ですか……、ところが二十八年度になりますと上半期半年だけで実に九千四百二件になつている。これは上半期だけですから恐らく二十八年度一ぱいということになるとこの倍、或いはそれ以上になるかも知れないですが、二十七年と二十八年とそう急に殖えるというのは何か歩行者に対する取締当局の取締方針というようなものが非常に厳しくなつたというようなことがあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/37
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038・後藤田正晴
○説明員(後藤田正晴君) これは実は昨年交通警察の運用をどうするかということを全国の自治体それから国警集りまして協議をいたしました際に、交通取締をやるというと、よく実情を調べるとどうも運転手のみに責任が帰せられないのではないか、歩行者なり自転車なりが非常によくない、悪いではないかという非難が運転手の側から相当あるのだという話を実は私ども強く言われたのでございまして、そういう面でまあ大都市で少し歩行者についても余りひどいものは、三回も四回も違反をやるというような者は一つ送ろうではないかというようなことの話も実は一部にあつたのでございまして、そういう結果が或いは送致のほうに影響したのではないか、かようにこれは私の推察でございますが考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/38
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039・秋山長造
○秋山長造君 更にお伺いしますが、先ほど御答弁で歩行者の検挙数というのは必ずしも文字通りの検挙というような大げさなことでなしに、ちよつと叱つたくらいのも全部この中に含まれているのだというお話なんですが、叱るといつてもやはり警察署とか交番とかどつかへ連れて行つて、そうして氏名、住所というようなものを警察の書類に記録をするわけなんですね、よくそこら辺でこらと言つてやつているのは警察は覚えてないだろうと思うのですね。やはりこの検挙という言葉通り、かなりなところまで行くのじやないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/39
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040・後藤田正晴
○説明員(後藤田正晴君) 実は交通違反というのはこれは法規違反であることはこれはもう間違いがない。如何なるものであつても違反は実は違反なので、現行犯処理を本来はすべき筋合いのものになるのですが、これは具体的妥当性を欠くわけでございまするので、そういうことはやめたほうがよかろうということでやつてない、そこでまあ注意ということになるわけでありますが、先ず第一段に考えられますのは現場における注意、これが一審歩行者については多いかと思いますが、更に又悪質な者になれば署まで来るとか或いは交番まで来てもらうということもありましようし、更に悪質ということになれば送致ということに、三段階になるかと思うのですが、ここに書いてあります検挙はそれらのすべてを含んでおる。而も現場で交通巡査から注意を受けた者もこれも一応違反であるということはこれは交通違反の特質上止むを得んということで数字としては上げてある、こういうわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/40
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041・秋山長造
○秋山長造君 そうなりますとこれはすでにできておる法律なんですが、この道路交通取締法だとか或いは取締法施行令というようなものを読んでみますというと、実際我々の日常生活の実情に即しない、例えば対面交通だとかそれから又車道の通行の禁止だとかいうような点、どうも我々の実際の日常生活に即しない或いは限界が、非常に道路その他の不整備のために非常につけにくいというような点が大いにあると思う。にもかかわらずそういう違反に対しては科料に処するとか何とかいう罰則までついているんですがね。こういうものを飽くまで厳重に励行をして行くことがいいのか或いはこういうものは思切つて削除するなり、或いは一般の交通道徳の昂揚に委ねるなり何かそういう別な方法を考えるなりしたほうが却つていいのじやないかというような気もするのですが、こういう点について取締当局の御見解をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/41
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042・後藤田正晴
○説明員(後藤田正晴君) 確かに只今お話の点はまあ法を道徳という問題をどこで線を引くかというむずかしい問題が含まれておるように思いまするので、私どもとしても検討してみたいと思いますが、歩行者について見ますると成るほどおつしやるような点がございますので、実は昨年九月の改正で罰金刑があつたのをこれは不適当であろうということで、実は科料にとどめたのでございます。と申しますのは刑訴のほうの関係で、そうしますれば逮捕等ができんわけでございますので、歩行者の違反については科料にとどめるということで、昨年の九月に改正をしたというようないきさつもございますので、従つて私どもの考え方が奈辺にあるかということを一つ御了承を賜りたいとかように考えるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/42
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043・秋山長造
○秋山長造君 どうも私はこの表を検討し更にいろいろ当局の御説明を聞いて考えますことは、交通事故が非常に飛躍的に激増しておるということもわかるのですが、又一面取締当局の取締方針というものが歩行者などの細かいところまで非常に行過ぎた取締をやつているために余計交通事故が、交通違反というものが飛躍的に殖えているという結果になつておる面があるんじやないかというようなことを感ずるのです。その点はこの前の連合委員会から再三当局のお答えによつて、当局が決して検挙第一主義或いは点数主義というようなものはとつていないということを言明なさつておるわけですから、私といたしましてもその言明通り更に交通取締の面については緩厳よろしきを得て、余り行過ぎにならないように、やはり社会通念といいますか、そういう線を決して超えることのないように特に御配慮頂きたいと思うのです。
次に法務省の方へお尋ねしたいのですが、この提案説明によりますと、従来この交通事件については事件が発生してから裁判の執行までに平均四カ月かかつている。これではとても面倒でかなわないので、スピード化をやるのだという説明なんですが、今度のこの法律ができますと、大体その過程が日にちにしてどのくらいスピードアツプされるのか、そのめどをお尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/43
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044・井本台吉
○政府委員(井本台吉君) 大体一週間前後と考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/44
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045・秋山長造
○秋山長造君 一週間前後までスピードアップされるというお話なんですが、従来この交通事件の処理が非常に手間どつておつたということは提案説明の中にもありますように、違反者がなかなか出頭しないとか、或いは書類の作成、送達に非常な手数がかかる。或いは裁判の執行に非常に手間どるというようなことも確かにあつたと思うのです。併し同時に又さつき言いましたように手が足りない、手続が面倒なのに、その上に余り検挙或いは送致を求めて多くしておつたきらいがあるのではないかという点についての疑問が一つ、それからもう一つは今度は逆に交通事件と問わず、一般の事件にいたしましても、検察庁にも裁判所にも山積しおつてなかなか捗らないということが実情だと思うのです。それについてはさつき言いましたこの余りにつまらないものまで検挙をやり過ぎるという行過ぎ的な面があるかと思いますが、同時に半面又人力に限りがあることでありまして、現在のこの交通違反事件の処理に当る係官というものの陣容が果してできているのかどうかという点なんです。先だつても朝日新聞だつたか、この交通関係者の投書が出ておるのを読んだのでありますが、その投書によりますと、如何にこんな法律を作つたところで、人の面を考えない限り、とてもスピード・アツプなんかできるものじやない。それを強いてこの法律の趣旨を活かすためにスピード・アップをやろうとすれば、勢い基本的な人権の尊重というような面が非常に軽視されて、簡単にいわゆるさつき若木委員のおつしやつたような即決という言葉から受ける印象通りに簡単に即決で押し付けて、威圧的に片付けられてしまうというようなことに堕する虞れがあるのではないかというような点を疑問に思うのてすが、その両点について御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/45
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046・井本台吉
○政府委員(井本台吉君) 検察庁、裁判所といたしましては別に点数主義などもあるわけじやございませんし、できるだけ合目的的に法律を運用して行こうという立場でやつておるわけでございますが、何しろ略式命令で書面が非常に複雑で書面の作成に非常に手間取るのでございますが、そのためにこの日数もかかる、手数もかかるという次第でございます。今度の新らしい手続におきましては、捜査の面をもつと書類の上よりも実質的に大事にいたしまして、十分実体を究めるということに努力をして行きたいと考える次第でございます。さようにいたしますれば、従つて人権の擁護にも十分なりと私は考える次第でございます。
なお陣営、事を処理する人の問題でございまするが、現在でも相当手薄になつております。できれば相当数庁舎も人員も欲しいのでございますけれども、消費節約で予算も増額しないという観点から行きまして何とか今の陣容でできるだけ賄つて行きたいと考える次第でございます。この限られた予算と限られた人員の範囲で最も人権をよく尊重するということになりますれば、この現在のような書面を略しまして実際の捜査の面に努力を注ぐということが結果的にはいいのじやないかと私どもは考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/46
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047・秋山長造
○秋山長造君 先般来只今のような御答弁を繰返されておられるので、その御答弁通りにやつて頂くように強く希望をしておくほかはございませんが、併しやはりそれだけの御言明を聞きましても、先ほど来各委員から御質問がありましたように、何かこの法律ができてそうして交通取締という面か又画期的に強化され、そうして又その処理をスピード・アップされる、能率化される。同時にその裏として基本人権の尊重というような面が多少とも犠牲になるのじやないか、この点は今日のこの警察制度の改革というような問題とも関連をいたしましてやはり気遣われるのでございますが、その点について飽くまで警察当局としても、又検察側といたしましてもこの扱いについてどれだけ慎重にやられてもやり過ぎるということはないのでありましてこの点について最後にもう一度警察側並びに法務省側の心がまえをお尋ねしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/47
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048・井本台吉
○政府委員(井本台吉君) 何回も繰返すようで恐縮でございますが、この手続自体が裁判の前の手続でありまして、この手続をやることによつて勿論官憲側も非常に利益されることは当然でございますけれども、裁判を受ける側の方のほうも日数その他におきまして相当裨益をされるという点がございます。なお今申上げましたように、裁判前の手続でありまして、本人が不服であればいつでもこれは普通の正式裁判にのせることができます。先ほど他の委員の方から御要求がありまして答弁申上げたのでございますが、書面の即決裁判同意書をとらないのも、一遍書面を出しますると、当然これはこの手続にのせてしまつて、途中から異議が申立てられないということになりまするが、その手続におきましては、仮に即決裁判で裁判所に廻しましても、裁判の途中で当事者から異議があれば、それは当然正式裁判にのる次第でございます。かような点からいたしましてこれは当局側の便宜という点も勿論ございますけれども、被告側の方のほうの便宜も相当これは考えておる制度でありまして而もいつでも普通の裁判に乗せ得る状況にあつて裁判を進めるということになつておりまするから、人権の擁護については相当配慮が払われている建前であると私どもは考えておる次第であります。
なお、運用におきましても人権の擁護については十分注意いたしたいと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/48
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049・後藤田正晴
○説明員(後藤田正晴君) 私どもといたしましても、この法律ができましたからと申しまして、検挙主義の弊に堕すといつたようなことのないように十分配慮を加えて行きたいと考えております。私どもといたしましては、道路の交通安全確保という観点から、合理的な、而も合目的的な交通警察の運営をやつて行きたいと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/49
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050・内村清次
○内村清次君 大体只今若木委員も、それから秋山委員からも、今回の即決裁判の人権の擁護に対しましては、十分当局の意図するところを明確にされておるわけでございますが、私も又、これは少し重複するというきらいもございますけれども、地方行政の建前からいたしますると、先般この地方行政委員会でも道路交通取締法の一部改正をやつたわけでございましてそうしてこの法律の中にありまするように、この違反者に対して司法処分と行政処分の両者が併課せられるという場合を、これははつきりとさせておるわけですが、そのうちの行政処分に対しては、先の道路交通取締法の改正によつて、一定期間以上の運転免許の停止又は取消しに対しては聴問会を開くと、そうして公安委員会が一方的な処分をすることに対して慎重を期するというような改正をしたわけでありましてこういうようなことにも人権或いは又その被疑者に対するところのいろいろの押付けがましいような従来の建前を破つて、そうして慎重な建前を確立したわけです。で先ほどから、今回の即決裁判がそういうような被疑者に対しての期間も短縮されるのだと、或いは又別法としても、本訴その他の三審制度も厳存しておるのだというような訴追の方法ありたも御答弁になつておりまするが、どうしてもこれはやはり即決をするために裁判官が押付けがましいような、人権を無視するような態度がここに現われて来はしないかということを、どうしても我々といたしましてはこの点を心配しておるわけです。これに対しまして、先ほどからの各委員の質問に対しましては、人権は擁養して行くんだということだけれども、まだ私たちはその気持が残つておるわけですが、これをどういう方法によつて、例えば裁判官の素質の問題もございましようが、この法律の施行からして裁判官に対するところのそういう心がまえをどういうような方法を以てやるか。又これは警邏課長のほうもこの法律の制定に対してはどうせ連絡があつてのことだろうと思うのですが、こういうような道路交通取締法の改正をやつた当委員会のそのときの気持からしても、各委員の気持も又よく警邏課長は知つていらつしやるのですから、そういう観点からして、この法律に対してどういうような感じを持つて同意をして、そうして今後処して行かれるか、こういう点を最後に一つ私はここではつきりして頂きたいと、かように思つておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/50
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051・井本台吉
○政府委員(井本台吉君) 裁判官は、御承知の通りこれは独立でありまして、練達堪能の方が裁判をするので、私どもといたしましては、それに対して指揮、指示のしようもない、別個独立であるのでありますから、何ともいたし方ないのでありますが、裁判を行いまするのには、当然これは検察官の起訴があつて裁判になるということで、検察官が裁判に重要なタッチをするということで、検察官は私どもの指縄指示に服しておるわけでありますから、いろいろな面において十分この裁判が適正に行われるよう考えて進めて行きたいと思う次第でございます。例えば送致の基準をはつきりさして、無理な起訴をしないというような措置も考えられます。それから裁判官の面前でもめるような場合には、正式の裁判手続に乗せると、これは普通の正式の裁判にいつでもなるのでありますから、普通の正式の裁判に乗せるというようなことを考えれば、押付けがましいというような点は当然なくなるものと私は考えるのでございます。それから裁判の進行なども、口頭でありまするから、極くくだけて本人によくわかりやすいように、むずかしい裁判用語などを使わないで進行さして行くというようなことも考えております。
一番強調いたしたいのは、先ほど申上げましたように、何どきでも本人に不服があつて異議があれば、普通の裁判手続に乗せるということになりまするので、それがいろいろな意味で手数がかかり、本人が好まないかも知れませんが、若し御希望であれば、直ちに普通の裁判手続に乗せるということになりまするから、押付けがましいことは当然そこではとられないということを、私は十分期待できると思うのでございます。その他何回も繰返しまするようで恐縮でありまするが、警察官から裁判所に廻す段階におきましても、十分本人の意思を尊重し、且つこの簡易手続がどういうものであるかということを説明いたしまして、その納得の上に手続を進めて行きたいというように考えております。十分人権を尊重したいと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/51
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052・後藤田正晴
○説明員(後藤田正晴君) 本法案の当委員会におきまする審議の最初から只今までのお話で、委員の皆様方の本法案に対すると申しまするか、交通警察の運営に対するお気持は十分私といたしましてはわかつておりまするので、若し本法案が施行ということになりますれば、いずれ係官を集めまして、本法案の趣旨その他十分説明を加えねばならんと思つておりまするが、そういう際に、委員の皆様方の審議過程におけるお気持を十分伝えまして、遺憾のないような運営をいたしたいと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/52
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053・羽仁五郎
○羽仁五郎君 ちよつと関連して……。二点ありますが、一つは委員長のほうに伺つておきたいのでありますが、この連合委員会の空気でもそういうことは出ておると思うのですが、やはり大きな都会、東京都その他のことが切実な問題になつて出ておるようでありますが、東京都長官に東京都の都市計画について我々が問題にしておつたような点を聞くような機会を与えられるかどうか、それを委員長にお伺いしたいと思います。
それから第二は、国警のほうとそれから法務省のほうに同つておきたいのですが、この連合委員会及び法理委員会でも各委員から述べられた点で主な点は、やはりその人権尊重という点、それについては点数主義、検挙主義というものを脱却すべきだというような点がこの法案について主な点だつたと思うのでありますが、この委員会で述べられていたようないろいろな疑惑或いは憂慮というものに対して国警では、国警長官に御報告があつて国警長官のほうの御意見でどういうことになつているのか今伺えれば伺つておきたい。それから警視総監のほうもこういう法律が審議されておる過程において、連合委員会及び法務委員会において問題になつておる問題について聞き、承知されたに相違ないのだが、それに対してどうされるか。それから法務省に対しても、今刑事局長からお答えを頂いても結構なんですが、相当に重要な、さつき申上げたように人権の尊重の点、それから点数主義、これは主として警察の問題なんでしようけれども、それの弊害というような点があると思うのでありますが、要するにこういう法律が成立すれば裁判所も、まあ裁判所は独立だから別に特にここで伺うというのもあれですが、法務省としても検察庁としても警察としてもよほどの利益を受けられるけれども、それについていわゆる裁判を簡易にするといつても、裁判が粗末になつて、人権が侵されてはならん。それから又それに伴つて点数主義、検挙主義というものの弊害が存置されてはならないというような点について今の内村委員長からのお答えではそういう点は十分考えておるというお答えだつた。それから秋山君の御質問に対しても考えているというだけであつたのでありますが、考えているというだけでなく何かなさる御意思があるかないか、それを承わつておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/53
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054・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 先ず委員長への御質問に対してお答えいたします。私は本法案につきましては、先般の警視庁からの参考人の説明の中にも若干触れられておりましたし、問題は大きい問題でございますけれども、この法案審議につきましては、東京都知事を参考人に呼び出す必要もないかのように私は考えております。併しおつしやいますことの重要な点は十分承知はいたしておりますから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/54
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055・井本台吉
○政府委員(井本台吉君) 点数主義、検挙主義の弊害は十分考えておりますので、現場の仕事をしております検察官に命じまして警察と連絡して、かような点数主義、検挙主義を脱却して十分この目的に副うようにやるよう指示するつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/55
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056・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 羽仁君よろしうございますか。……それでは本連合委員会として他に御質疑はございませんか……。他に御質疑がございませんようでありまするから、本連合委員会はこれを以て終りたいと存じますが御用議ございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/56
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057・秋山長造
○秋山長造君 私連合委員会を終るに当つて一言お願いを法務委員会のほうへしておきたいと思うのですが、まあ繰返すまでもないことですけれども、先ほど来やはりこの法律を施行するについては、よほどこの人権の尊重という面が事件の処理の過程において犠牲になることのないように特に慎重に配慮いたして預かなければならんというのが、我々殆んど御発言になつた傍さんのこれは一致した強い要望たんです。で、法務委官公におかれまして何らかの形でそういう連合委員会の強い空気を附帯決議なり何かの形において或いは委員長報告においても、まあそれは適当にお任せしますが、強くやはり当局に対して要望をしておいて頂きたい。これは私お願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/57
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058・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 法務委員会におきましても、問題は事件の適正迅速な処理、人権の擁護を完全に両立させるようにという点が従来も論議の中心になつておりましたが、何らかの形において御趣旨に副うことが可能だと存じております。
それでは先ほどお諮りいたしました連合委員会はこれを以て終了いたしますことに御異議ないものと認めてさよう決定いたします。
本日はこれを以て散会いたします。
午後零時二十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915201X00219540309/58
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