1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十九年三月十一日(木曜日)
午前十時七分開会
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委員の異動
三月十日委員赤松常子君辞任につき、
その補欠として小林亦治君を議長にお
いて指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 郡 祐一君
理事
上原 正吉君
宮城タマヨ君
委員
青木 一男君
小野 義夫君
加藤 武徳君
楠見 義男君
三橋八次郎君
棚橋 小虎君
一松 定吉君
羽仁 五郎君
政府委員
法務政務次官 三浦寅之助君
事務局側
常任委員会専門
員 西村 高兄君
常任委員会専門
員 堀 真道君
説明員
法務省刑事局参
事官 下牧 武君
国家地方警察本
部警備部警ら交
通課長 後藤田正晴君
最高裁判所長官
代理者
(事務総局刑事
局長) 江里口清雄君
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本日の会議に付した事件
○交通事件即決裁判手続法案(内閣提
出)
○議員派遣要求の件
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001・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 只今から本日の委員会を開会いたします。
前回に引続き交通事件即決裁判手続法案につきましての御質疑をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/1
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002・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 交通と件即決裁判手続法案につきまして、二、三質問したいと思つております。この手続法の中に、少年事件はどういうふうに取扱われておりますでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/2
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003・下牧武
○説明員(下牧武君) 少年事件は普通の少年と同じように、家庭裁判所に送りまして、家庭裁判所で大体は不問に付する場合が多い。極く少数、数字はちよつと持合せておりませんけれども、極く少数は逆送になりまして、検察庁で処理されるという場合が多いのであります。その逆送になりまする事件と申しますのは、これはよほどの事件でございまして、刑法犯を起して人命に支障があつたというような事件とか、或いは単なる道路交通取締の法令関係の違反だけでいたしますれば、例えば店先に突つ込んで、そうして大損害を与えた。併しそれに告訴がない。器物毀棄刑法犯は成立たないというようなそういう特殊の事件だけであります。従来こういう軽い事件でございますると、この中でも重要な事件が逆送されるという程度である。こういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/3
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004・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 家庭裁判所の事件を調べてみますと、大抵どこの裁判所でも事件の過半数は、不開始不処分が多いのでございます。又少年事件として不開始不処分ということは大変問題がございますので、その内容をよく調べてみますというと、道路交通違反が多いということでございます。そこでこの即決裁判手続法をいろいろお考えになりますときに、何かこの少年に対しまして特別簡易な何と申しますか、簡易に処置する、つまり即決裁判というようなことでございませんで、非常にこれは家庭裁判所に送りましても結局不開始不処分になつて煩らわしいだけなんでございますが、何かお考えはなかつたか、伺いたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/4
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005・下牧武
○説明員(下牧武君) 只今の少年の取扱い、ちよつと考えてみたのでございますが、それでやはり少年法を変えてまでこの家裁送をとめるというのはどうかという気もいたしまして、一応家庭裁判所のほうに送り、この従来の措置に乗つけたらよかろうじやないか、ただまあ家裁のほうが大分面倒のようであります。併し一応そのまま簡単に済ますというのも、やはり事犯によつては違反は違反でございますから、一応家裁で以てお叱りを受けたような形で以て終つて行くというのが、将来のためにやはりよいのじやないかというような気もいたしまして、特にその点を特別の措置を講ずるということをとらないことにいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/5
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006・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 勿論私は少年事件を即決裁判でしてもらうなんということは大反対でございます。それは当然家庭裁判所に送るべきでございますが、その家庭裁判所の事件の大部分は今の道路交通違反であつたと聞けば、野放しになり野放しになりというようなことを繰返して、ただ煩わしく事件ばつかり殖えますることも問題でございますから、何かここに適法はないかというようなことを、子供を守る意味におきましても、交通者の安全を守る意味におきましても一つ考えられなければならないような気がいたしますので、その点を伺つてみたのでございますが、これは一つ将来ともよく家庭裁判所とも御相談の上で、一つ問題にして頂きたいと思つております。
それからその次でございますが、この運転手の免許証の資格でございますが、これはまあ保護観察に付されました少年というようなものは、別に問題になつておりませんでございますか。つまり保護処分を受けた少年はどういうことになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/6
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007・下牧武
○説明員(下牧武君) その点は保護処分を受けたかどうかということによつて免許証を与えるかどうかということの条件にはいたしておりません。事実上も考慮されておらないようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/7
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008・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 前科者はどうなつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/8
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009・下牧武
○説明員(下牧武君) 前科者も要件になつておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/9
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010・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 そうすると、まあ前科何犯といつたような者でも、運転手にはなり得るのでございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/10
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011・後藤田正晴
○説明員(後藤田正晴君) 運転手の資格につきまして、原則として身分上の大きな制約はないのでございますが、ただ、交通事件でございますね、これで処罰を受けたといつたようなものについては、公安委員会が免許を拒否することができるし、場合によれば一定期間保留するという規定があるわけであります。それ以外には特別制約はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/11
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012・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 この精神鑑定をまあことごとくではないとしましても、その条件としてときに鑑定もし智能指数も調べ、それから又ヒロポン中心なんかにかかつておりますというようなものなんかも私非常に問題になると思いますがね。こういうことについての何か検査というものはございませんものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/12
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013・後藤田正晴
○説明員(後藤田正晴君) そういつた身体的ないわば欠陥を持つております精神、身体に欠陥があるといつたような人は、これはただ免状がありましても、取消停止の理由になつている。又免許資格と受験資格と二つあるわけでございますが、受験のほうの資格もやはりそういう場合には制限がございまして、受験それ自体が制約を受けておるということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/13
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014・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 それはこのヒロポンの中毒なんかになつております者が何か事故を起したときに、常に取消停止ということになるのでございますか。初めからヒロポン中毒者ではないかという試験はないのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/14
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015・後藤田正晴
○説明員(後藤田正晴君) それは一番最初運転免許の試験がございますから、その際にわかれば、これは問題になりませんが、一応免許を取つておりまして、その後そういう事態になつて、これが何かの事故を起して発見があつたということになれば、その際に勿論駄目になるわけでありますけれども、それ以外には方法がないわけでございます。ただ、そこで現在の道交法でも自動車運転者は三年に一回免許証の定期検査というものを受けねばならんことになつているわけであります。この免許証の定期検査というものは、実は目的が三年間の間にいろいろな身体的条件で運転者として不工合になつているようなことはなかろうかということを実は調べるのが目的なのでございます。従いまして、その際に身体検査その他があるわけであります。そのときにそういつたことが発見になれば、当然これは運転免許が取消される、こういうことになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/15
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016・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 今の、万に一つの事件が起つたときに、例えば非常なヒロポン中毒者であつたとか、それから前科の重つたもので、何か金にときどきふらふらとして誘惑されるといつたようなものが事故を起してからもう取消しの停止をされても、間に合わんというのでございますがね。その点一つ今まで野放しになつておりましたというのなら、何とかお考え願うわけに行きませんでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/16
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017・後藤田正晴
○説明員(後藤田正晴君) 私のお答えが或いは不明確であつたかと思いますが、実はそういつた常習酩酊者とか、或いは麻薬の常習者、或いは覚醒剤常用者といつたようなものは、受験資格がないのでございます。従つて先ずそういうことは受験それ自体についてはあり得ない。検査がありますから、だから運転手をやつておつて、途中でそういうことになつたという場合以外はないわけであります。その検査が三年に一回あるわけである、こういうことになつておりますので御質問のような場合は大体今のところ防げているのではなかろうか、こういうわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/17
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018・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 そうしましたら、麻薬の中毒者かどうかということは、受験のときに身体検査がございますのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/18
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019・後藤田正晴
○説明員(後藤田正晴君) これは身体検査の際にわかれば……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/19
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020・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 わかればでなくて、わかる方法が講ぜられているかどうかということが問題なんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/20
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021・後藤田正晴
○説明員(後藤田正晴君) これは医師の診断書を実は持つて来ないと受験はできないのでございます。だから警察といたしましては、一般医師の診断書を実は信用しているということになるわけでございます。警察それ自体としては、特別にこういうことがはつきりしているということについては別といたしまして、そうでなければ医師の診断書を信頼する、こういうことになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/21
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022・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 それからもう一遍伺いますが、それじや前科者については資格に関係ございませんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/22
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023・後藤田正晴
○説明員(後藤田正晴君) 前科者につきましては、一般的には関係ございません。ただ交通事件によつての前科があるといつたような場合には、先ほど申しましたような、公安委員会が試験を受けさせますけれども、免許の際に、この人はどうもこういう情状では、今直ちに免許はできないということであれば、保留ということになりまして、これは到底許されないということであれば、拒否するということがあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/23
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024・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 それではその点はそれだけにいたしておきます。
いま一つは、運転手がずつと事故がなかつたという者に対しての、表彰の方法が設けられておりますのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/24
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025・後藤田正晴
○説明員(後藤田正晴君) 優良運転手の表彰につきましては、これは各警察隊、それぞれの自治体警察、みんな表彰をときどきいたしております。そのやり方は、交通安全協会という協会がございますが、こういつたものと一緒になつてやつております。民間ではそういう団体でありますが、それ以外に、運輸省とか私のほうが、そういつたところに協力して交通安全運動というのを、毎年予算を頂いてやるわけでございます。年に二回やりますが、そういう際に優良運転手の表彰ということは、これはもう毎年の恒例の行事になつております。そういう運転手の表彰をやつております。表彰を受けました運転手は、例の運転免許証に、これはまあ悪いことばかり書くのではございませんで、そういつた表彰を受けているということをやはり書くわけでございます。そうしますと、つい過つたといつたようなときには、そういつたもののお褒めに預つているということであれば、いろんな行政処分やなんかのときには、こちらとしても十分参酌する。こういつたことになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/25
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026・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 運転手でなくて、交通警察官が、これは事故を起さなかつたほうがいいんでございますか。事故を起して点数を稼ぐ点数稼ぎの高いほうが、交通警察としてはいいんでございますか。事故が一遍もなかつたというほうがいいんでございますか。取締りの一番の頭としたら、どつちをお褒めになりたいのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/26
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027・後藤田正晴
○説明員(後藤田正晴君) 大変むずかしいお話でございますが、まあ警察一般のこれは目的から割出す以外にないと思いますが、要するに犯罪のないのが一番私どもはいいものだと、こう考えます。殊に交通警察なんというものは、事故を少くするというのが私は主眼点であろう。こういうように思つております。ただ現実に、それじやそれぞれの警察官の勤務振りを見るときに、今の御質問の御趣旨がどういうところにあるか、私はつきりいたしませんが、全く何もしないというのは、これはどうも……。先般来申しますように、いわゆる点数主義というのは、交通警察はメリツトとしてもやつておりませんし、又羽仁先生からお叱りを受けているような意味合いのことは警察としては実はやつていないのでございまして、そこらで御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/27
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028・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 実はそれはとつても根本問題に触れると思つておりますけれども、私どもが車に乗つておりまして、ときたま軽い違反なんかを運転手がやりましたときなんかの警察の態度というものについて、私なんかも非常に不満の点があるわけなんです。やつぱり点数稼ぎをしているという感じがしているのでございます。ところが私はもうかれこれ二十年も前になりますが、私が検事正の官舎に生活をしております時代に、日比谷のゴー・ストツプが初めてできた頃に、いい交通整理のお巡りさんがいまして、私なんかもときどきものを考えて歩くときに、ゴー・ストツプに違反するようなときに随分叱られました。そのように運転手もそこで叱られる人が多いらしいのですけれども、懇切に注意をして叱りはしますけれども、一遍もそのお巡りさんは交通事故をそこで挙げなかつたというので、恐らく警視庁としたら、そのお巡りさんは成績不良だつたかも知れませんが、そこを通ります運転手さんたちがそのお巡りさんが、辞めるときに、皆な醵金しまして金時計を増つたのでございます。私もその中に加えて頂いた。たびたび叱られきて、併し許されている経験者ですから……。そういうことがあつたのです。私は、だから点数を稼ぎまして、たくさん成績がいいといつたほうが一体あなたがたの気に入るのか、それとも何にも事件を起さなかつたというのがあなた大の理想かということを今聞いているんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/28
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029・後藤田正晴
○説明員(後藤田正晴君) いわゆる点数主義といいますか、メリツトといたしましては、これは先般来私しばしばお答えいたしておりますように、防犯が主眼でございます。従つて、これは併し警邏隊についての話でございますが、警邏隊というのは、受持責任を持つておりますから、当該受持区域内の交通事故も含めて、およそ犯罪というものを起さないことが、一番重要な点になつておると思うのであります。それから交通の今のお話の点になりますと、これはお手許にお配ばりいたしてあります資料でおわかりのように、検挙件数に対しまして送致件数その他を御覧になつて頂けばわかりますが、大変な開きがあるわけでございます。で、この検挙件数というものの数には、只今宮城先生が御指摘になりましたような注意をしてそれにとどめたというのも実は検挙件数に入つておるのであります。でその数が非常に私は交通については多いと思う。で送るものというものはおよそ総検挙件数の一割にも満たんのじやないか、こういうふうに思うのです。従つてむしろ今先生が御指摘になつたような取扱いが交通については一番多いのではないかというように私は考えておるのでございます。で巡査の成績如何ということになりますと、そういう、その何というか、現場で説諭したということまで全部これは報告になつて来るわけであります。従つて何もしないということはないので、これは全部警察としてはわかつておるわけであります。巡査がそういう注意をしたのも、今日こういうことでこういう注意を何遍したということは報告になつて来るわけであります。それが検挙件数として挙つて来るわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/29
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030・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 そうすると検挙件数ということになると、やはり住所を調べたり、まあいろいろ調べてそこへ書き抜かなければならんわけでございますね。ただ、その今したことがこれは間違つておるから、注意しなければいけないじやないかと言つて、許されるということじやないわけでございますね、検挙件数は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/30
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031・後藤田正晴
○説明員(後藤田正晴君) 住所その他はそういう場合には一々調べておりません。というのは、交通違反が御承知の通り全部とにかく違反と言えば皆違反になつてしまうわけでありますから、従つて検挙件数という形で挙つて来るわけですけれども、単なる注意にとめるといつたような場合に、そういう一々現場で住所、氏名、年令等までを私は聞いてやつておるというように了解してないのでございます。ただ単なる注意といつたものも、松挙件数の中には、交通については挙つておるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/31
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032・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 それは併し私納得できませんね。ただ単に注意だけして名前も聞かないというのを、件数にして上司に報告するということはあり得ることでございましようか。一つお調べ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/32
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033・後藤田正晴
○説明員(後藤田正晴君) 交通については、そういう御疑問がありましようけれども、そういう数が確かに入つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/33
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034・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 入つておりますかね。
それから初めにこの交通整理に婦人の警察官がよく見えましたがね。今は姿を消したようでございますが、これは何か不都合でもございましたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/34
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035・後藤田正晴
○説明員(後藤田正晴君) 丁度私警視庁の警務課長をやつておりました頃に、婦人警察官はたくさん入れましたのですけれども、これは実は婦人警察官というのは、先生にどうも誠に申訳ございませんが管理が一番むずかしいのですこれは……。殊に進級の時期になりますと大変な厄介な存在に実はなるわけであります。男のはうは割に癪に触わつても諦めるということになるが、なかなかこれはむずかしい。それでまあ婦人警察官制度それ自体については私はああいう制度はいい制度だと思うのですけれども、人事管理が大変むずかしいということが一つ、それから交通警察につきましては勤務が非常にきびしい。これは婦人の勤務には無理でございます。そういう意味で交通等についても外勤はやめて、交通外勤はやめて、内勤には使つております。交通内勤にはですね、これはあるわけでございます。従つて婦人警察官は現在は少年の事件の内勤に使うとか、或いは家事相談に使うとか、或いは交通の内勤に使う、こういうような方面に使うように今逐次やつて来ております。当初はいろいろな、珍しい制度でございましたから、各方面に一通り使つてみようということでやつたので、街頭にも一部進出しておりましたが、最近は外勤が勤務がきついということで、どこでもやめておる、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/35
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036・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 婦人警察官のことについては又改めて伺うとして、私はこれでよろしうございます。終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/36
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037・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 他に御質疑のおありの方は御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/37
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038・羽仁五郎
○羽仁五郎君 前回までに大体総括的な件を伺つたんですが、恐らく委員長のお考えの順序に従つて逐条別に……。提案者に伺いたいのですが、先日来の質疑応答の空気にも鑑みられて、この法案の名称を変更せられるお考えはないだろうか。で即決裁判手続ということは、第一にはその名前が与える影響が甚だ面白くない。でこの内容から言いますと、これは必ずしも昔の即決というようなものとは関連のないものだという御説明がしばしばありましたけれども、併しやはりこういう言葉を使いますと、この与える影響は何か日本の裁判が再び昔の時代のように戻つて行くのではないかという感情、感じを与えるという点が第一点。それから第二には、この内容におきましても、この法律案が成立した場合に、その運用される場合、この表題が即決となつているということはその運用が誤られて、折角の裁判の民主化が崩れる虞れがあるのではないか、従つてこの法律案の内容に忠実に即せられて、これが正式裁判の前段の手続に過ぎないということを現わすに適当な名称に変更せられる御意思やお考えはないだろうか、それを伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/38
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039・下牧武
○説明員(下牧武君) お尋ねの点は、もともと法案を作りますときから頭をひねつた点でございまして、この即決という言葉を必ずしも私は固執する意思はございません。他に適当な言葉がございますればそれで結構かと存じますが、ただまあいろいろ考えまして一審適当な名前は、簡易裁判というのがいいのじやなかろうかというので、ずつと最初から原案を作りますぎりぎりのところまで、簡易裁判という、言葉を使つて参つたのですけれども、どうも簡易公判手続と間違える覆れがありまして、而もこの性格は飽くまで公判手続を簡易化するという形じやなくつて、公判前の手続とする。その辺の性格をはつきりいたしたいということになりますと、どうも簡易裁判という言葉が通常裁判における簡易公判手続という言葉と混同する虞れがあるというので、まあその点をやめにいたしまして、それからその次は特別裁判という言葉も考えてみたのでございます。併し特別裁判と申しますと、何か普通の裁判に特別の何かまあ裁判をやるというような感じ、而もこの法案の性格も出ないというので、どうもこれも適当じやないのじやなかろうか。そこで即決という名が出まして、それじや昔の違警罪即決例を思い起させるので、その頭がある方にはどうもこれはおかしいじやないかと、我々も知つておりましたので、その点をすぐ連想したのでございますが、考えてみまするというと、とにかく時代が変つておりまして、そして大体の流れが、即決裁判というものがすぐ直ちに違警罪即決例を思い起すのは、比較的老年組のほうにとどまるのじやなかろうかという点が一点と、それから即決裁判といたしました以上は、これは違警罪即決例とは、又その裁判という言葉が付けば、幾分そこに違警罪即決例をすぐ連想させて、それとイクオールというふうにもならんじやなかろうか。而もこの法案の手続は長い日をかけないで早くやるというところに主眼点がございますので、まあ即決裁判が適当ではなかろうかというので、止むを得ずこういう言葉を使いながらも、なおおつしやるような割り切れない気持を持つておるわけであります。適当な言葉がございますれば、それに変えることは決して固執いたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/39
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040・羽仁五郎
○羽仁五郎君 今の御説明のようであると、やはり提案者御自身としても確信を持つておられない。そういうことであるならば、やはり提案者の御自身も確信に立たれ、そしてこれが法律として成立した場合には、その運用を誤らないようにするために、やはり私はもつと正確な名称に改められることがよいのじやないか。今御説明の中にも出ておりました公判前の裁判手続を規定する法であるというようになさることがよいのじやないかと思うのです。つまり交通事件即決裁判手続法案というものを改められて、交通事件公判前裁判手続法案というようにされるほうがよろしいのじやないかと思いますが、その点についてお考えはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/40
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041・下牧武
○説明員(下牧武君) 公判前裁判手続と申しますと、現在の略式手続も公判前の手続でございます。それで公判前裁判手続と申しますと、それも含む観念において、略式手続と区別して、而も公判前という感じを出す、何か特別り言葉が欲しいというのでいろいろ頭をひなりましたが、そしてまあ成るほど違警罪即決例を連想しておかしいじやないかという意見もございましたし、それからむしろ簡易裁判でやつたらいいんじやないかというので、裁判所、検察庁その他警察のほうの御意見もいろいろ聞きましたけれども、まあ即決裁判くらいのところで大体性格が出るのではなかろうかと、こういうことでこういう名称をとつたわけでございます。おつしやつたように、どうも違警罪即決例を頭に置きますと、すぐにそれに連想が向いて行くということは免れないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/41
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042・羽仁五郎
○羽仁五郎君 それじやその第一条についてなんですが、今この法案の名称において伺つたような点について、どうも確信に立つていないということであると、この第一条の場合にも、やはりこの「交通に関する刑事事件の迅速適正な処理を図るため、」というように、それからそのあとに「その即決裁判に関する手続」、我々がこの提案者の意図を善意に解釈すると、むしろここに迅速というような言葉を入れられるほうが運用の上で誤りが起るのじやないか。それからその即決裁判の場合にも、やはりここに公判前の即決裁判ということがはつきり言われていることが必要じやないかと思うのです。特に、こういうところに迅速ということが言われる。そうして、公判前ということを必ずしも、こういうように強調されないというところにも、名称との関係において疑惑が生ずる、その点においてはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/42
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043・下牧武
○説明員(下牧武君) この迅速ということは、この法案のやはり一つの大きな狙いでございまして、この迅速ということをこの法律の趣旨を謳う以上は、やはりこれを抜かすわけにはいかんのじやないかと思います。それからこの適正という面は、これは従来の略式に比べて、従来闇でやつておつたのを、特に裁判官の面前で事実を確めるという意味で、これを適正化するという意味で、迅速適正という言葉を使います。それから公判前の手続であるということは、これは第三条の第二項ではつきり書いてございます。第三条第一項に、「簡易裁判所は、交通に関する刑事事件について、検察官の請求により、公判前、即決裁判で、」ということで、ここで性格がはつきり出ているわけでございます。第一条にこれを繰返して書くのは、むしろ法律的に重複の形になりまして、これは立法技術的な問題でございますけれども、技術的には如何かと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/43
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044・羽仁五郎
○羽仁五郎君 私の申上げたのは、この裁判の迅速ということを調われることは、その実際において裁判に対する国民の信頼を減らす虞れのほうが多分に多い。先日来参考人などの御意見などに鑑みてみても、やはりその交通事件というものの特質に基く裁判の手続ということを考えられるならば、認めるとしてもいいけれども、交通事件というものを媒介にして裁判を迅速にやるというお考えが、提案者にあるとするならば、これは裁判を粗末に扱うもので、裁判民主化の趣旨に反するのじやないかというお考えが出て来るのが当然であろうと思うのです。
それから第二に、この法律そのものが、飽くまでこの憲法に規定しているような公判というものを受ける国民の権利があるということを、第一条で認めて、併し交通事件の特質から、公判前の簡易手続というものを設けることが第一条にも出ておつて、初めてこういう法作案を提出されようとする趣旨が了解されるので、第三条にやつてあるから、第一条でやつてなくてもいい、それは反覆になると言うのは、逆じやないか。むしろ第一条にこそ、公判を請求する権利というものを少しも制限するものではない、ただ事件の性質から、公判前に手続の簡易化を図るということがいい、そのほうがいいのじやないかと思う。こういうところからこの立案の精神の上に、今御説明にもありましたけれども、少し技術的に走つて、民主主義裁判の本質というものを飽くまで守つて、そうして実際の実情というものに適応して行こうという感じが出ないのじやないのじやないかと思いますがどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/44
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045・下牧武
○説明員(下牧武君) まあ技術的に走つているという御批判でございますれば、或いはそういうことはあるかと存じます。併し只今おつしやいましたことは、法律に書くといたしますれば、むしろ技術的な面でございますが、これは前文に類する、むしろ前文にこれは書くべき性質の事柄かと存じます。そういう場合の例に、前文を法律に謳つているのは、警察法に例がございますが、政府の方針といたしまして、そういうものはだんだん落して行こうというので、警察法でも前文は今度の法案でも落ちております関係で、技術的とおつしやれば技術的ですが、従来の一般のしきたりに従いましてこういう形式をとつたわけであります。そうして迅速適正ということを第一条に載せたがために、これは軽く取扱つていいという趣旨が出るかと申しますと、そのようには考えておりませんので、むしろ刑事事件というものは一般に迅速適正にやらなければならない。これはもう当然でございます。刑事訴訟法の第一条にも、迅速処理ということを一つの使命にしております。裁判が遅れるということが、これが一番逆な面から言いますれば、裁判制度そのものの本来の考え方と矛盾することでございます。ただその場合に事実が間違うようなことがあつちや因りますから、そこでいろいろな手続を設けて、そうして間違いのないようにして行きたいということで、複雑な手続の規定が設けられているわけであります。そこで交通事件というものは、御承知のように一つの定型化された事件で、事件の内容といたしましては、まあ我々から見ますれば、普通の一般事件と比較して、比較的簡単な事件でございます。それを一々複雑な手続に載せること自体、これがむしろ問題じやなかろうか。言い換えれば、俗な言葉で申しますれば、鶏をさくに牛刀を以てするということであれば、却つてそこに本当の目的に副わないことが出て参りますので、そこで事件の性質に即応した簡単なやり方がなかろうかというので苦慮いたしました。併しそうやつた結果、これで若し事実関係において、或いは裁判の結果において、これが間違つたということになりますと、大変でございますから、従来略式命令においては、本人も調べずに命令を出しておつたのを変えまして、裁判官が面前に本人を呼んで、そこで事実関係を確かめてやるという点で、そこを担保いたしたというふうに持つて参つた次第でありまして、私どもといたしましては、第二条以下のほうは、手続をやはりこの第一条の趣旨を敷衍して考えたつもりでおるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/45
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046・羽仁五郎
○羽仁五郎君 只今のお答えの第一段は、この前文に書くべきことであるということはお認めになつたわけなんでありますが、ただその前文というものを付けないという考え方だとすれば、前文に書くべきことで、前文を書かないとすれば、第一条に書いたほうがいいのじやないか、やはりそういう印象を受ける。
そこで伺いたいのは、立案者は一体この法律案というものは現在臨時に発生している問題、即ち現在の都市計画の不十分或いは現在の裁判機構の充実が達成せられないという、そういう臨時の問題に対処するために、この法律案を出しておられるのか。それとも裁判の原則を何らか変えて、問題の性質によつては憲法が保障しているような堂々たる裁判というものでない、別種の裁判制度というものを作られようというお考えに立つておられるのか。この点が今の質問を伺つておる間に更に一層疑惑が強くなつて来るのですが、どつちをおとりになろうとしているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/46
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047・下牧武
○説明員(下牧武君) 私どもといたしましては、この法律案が通りましても、交通事件というものの質並びに量、これは当分の間はなかなか減少たさないかと思つております。むしろ統計によりますれば殖える傾向にございます。その原因といたしましては、おつしやる通り行政措置の面において十分でないところがあるわけでございます。それで単にこの処罰の点という見方からいたしますれば、行政措置が不十分なところへもつて来て、それを処罰の面だけで賄うということは怪しからんじやないかという、これは成るほど筋の通つた御意見で、さもあらんと考えるのでございますが、一面違反者の立場に立つと同時に、やはり全体の公衆の立場も我々は考えて見なければならんのじやないかと思います。その面からいたしますと、如何にして事故を防止するかというふうな面からこれは考えて行かなければならん問題だ。そうなりますと、成るほどその行政措置の面とそれを裏付ける司法措置の面というものが相並行して、その秩序を保つて行くということが、やはり全体の大衆のためじやないかというふうにまあ考えられるわけであります。ただ、考え方といたしまして、その行政措置とそれから司法措置というものは、これは飽くまで盾の両面で行き、而も司法措置というものは何と申しましても行政措置のあとから行くべきもので、行政措置を単に裏付けるだけのバツクとして動くべき、いわゆるパツシイブな動きをするべきことは、これは当然であると思いますけれども、併しこの両者というものがやはり盾の両面として行われて、初めて全体の交通秩序の維持ということが保たれるというふうに考えるわけであります。その意味からいたしまして、交通事件というものの取締というものが、一面の交通秩序を維持するための要素をなしているということは否定し得ないことでありまして、而も私どもはその消極的部面を受持つておるわけであります。その消極的部面において最もこの事件の性質に即した処理をして行く。而もそこでその手続を簡易化した半面、被疑者の権利が非常に損われるということになつては、これはもう困ることでございます。その点の手当は私どもといたしましては相当手当をいたしておりますつもりでございます。勿論この運用については、運用上私どもといたしましては十分今まで御論議頂いた点も考慮いたしまして、通牒もいたしたいと考えますけれども、こういう事態においてもこれによつて人権保障の点に欠ける穴があるというふうにはちよつと考えられないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/47
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048・羽仁五郎
○羽仁五郎君 私のさつきの質問はちよつと語弊がありますけれども、簡単に申せば時限法的な考え方でこれを立案しておられるか。それとも何か特殊裁判所というものを考えるような考え方で立案しておられるか、そのいずれだろうかということを伺つているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/48
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049・下牧武
○説明員(下牧武君) これを臨時法とは考えておりません。而も特に俗に言われております限時法というような性生のものは、本来一時的な経済現象、それから広い意味じや交通現象を入れても私はいいかと思いますが、そういうものに対処するためのほんの臨時のための法律を限時法と中しております。そういう意味でこれを考えておるわけじやございませんので、ただ交通事件が殆んどなくなつてしまつて、特にこんな手続が必要じやないということになりますれば、これは又そのときの情勢を見て考えるべきだろうと思いますが、ちよつとそういう時代がいつ来るか、目下のところ我々としては直ちにそういうことが来るとも考えられませんので、一応これは限時法という頭で……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/49
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050・羽仁五郎
○羽仁五郎君 ほかの手段がある場合に、その手段のほうの努力が十分なされないで、法律によつて救おうという考え方は、これは非常に危険じやないかと思います。で現在の交通の実情を御覧になればよくわかるように、例えば道路の中央に線を引いて、そうして高速を持つておる車はその右に寄り、それほど高速でないものはその中間を通り、更にその左を自転車が通るというようなことが定めてあります。ありますけれども、今の狭い道路でそんなことはとてもできやしない。それであらゆる場合に、殊にトラツクなんかは中央の線より右に半分くらい車輪をかけて走つております。それでああいう事実をそのままにしておいて、そうして新らしい法律を作るということは、これは随分問題だと思う。それでそつちの方面の努力というものがなされていない、国においても或いは都市においてもなされていないで、その責任をその警察なり或いは検察なり或いは裁判所なりに負わせるということは、私は民主主義の原則に反すると思う。又そういうことをやれば法を作つても、実際に実行できない。ですから取締りを受ける人の大部分が現に常に道路の中央の線より右を走つておる。それで自分は違反をやつておるということは知りながら、併し取締りのほうでもそれを一々違反として検挙することはできないのです。だからああいう規則は作られながらも実行されていない。又この法律も作られながら、恐らくはそういう意味で実行することは無理だろう。そういう点で私は若しそれにもかかわらず法律によつて救おうとされるならば、その精神をよほどはつきりさせておく必要があるのではないか。それでいずれをとるのが正しいかということを私が主張するのではなくて、立案者のお気持として、やはりそういう点がもう少しはつきりしていないと、この法律を作ることによつて救われるものは殆んどなくして、そして弊害のほうが多いということになるのじやないか。その意味で今の御答弁ではちよつとやはり満足できないのです。
次へ進みますが、第三条について伺います。第三条の一項に「没収を科し、」とありますが、これはどういうことを意味しておられるか、御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/50
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051・下牧武
○説明員(下牧武君) これは略式手続の場合にございます言葉をそのまま書いておるのでございますが、交通事件について没収を科する場合が事実上あり得るかと考えますと、将来実際ちよつと想像はいたしかねるのでございます。ただ理論的に申しますれば、道路標識を破壊しました事件がございます。それを例えば何でございますか、金槌を使つてこわしておつた現場を現行犯として捕えた。そういう場合にはその金槌は犯罪の用に供したものでございます。これは当然刑法上没収を科せられるという場合も予想されるのであります。そのほかどういう場合がございますか、理論的に考えますれば、或いは運転免許証というと、ちよつと語弊が出るかも知れませんが、例が悪いかも知れませんが、そんなものを偽造して無免許運転をいたすという場合には、その偽造した免許証というものは没収の対象になる。そういうようなもので、理論的にあり得ることでございますから、一応没収を科すということも略式命令と同じくここにそういうことを入れたわけであります。実際上ただこの事件は、こういう軽微な事件では没収を科すようなことは行われておらない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/51
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052・羽仁五郎
○羽仁五郎君 次に第三条の第二項ですが、「即決裁判は、即決裁判手続によることについて、被告人に異議があるときは、することができない。」というのは、その異議があつたのかなかつたかということは、どういうことで証明されるのですか。この点について先日来いろいろ伺つたときに、被告人が異議があるということを書面で明らかに取ると、途中で正式の裁判の請求をするということがむずかしくなる虞れがある。だからいつまでも正式の裁判を請求することができるという意味で、一々その異議があるかないかということについての書面を取るということを必ずしも要件としていないというお答えがあつたと思う。これは第四条の第二項についても同じ問題がありますが、この正式裁判を受ける権利があるという、憲法の保障する重大な権利というものを決して制限するものではなくして、いつでもそれが生きて来るものだということの精神が全都に貫かれているとするならば、第三条第二項、第四条第二項において、それぞれ第一にはそれをはつきりさせる、この即決裁判手続によることを自由の意思に基いて承知するということの意思の明示、それからそれに持つて行つて、但し一旦それを承認しても、その後の動きにおいていつなんどきでも正式裁判というものを又受けることができるのだということの規定その二つが置かれていることが、若し先ほど御説明になつたような立案の御精神であるとするならば、忠実なゆえんじやないかと思うので、そういうことを特に明記せられない理由を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/52
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053・下牧武
○説明員(下牧武君) その点は御尤もなお尋ねでございますが、若しこの検察官が第四条第二項の告知の際に、この異議のないことの書面を取るということになりますと、本人は文書で以て異議のないことを承知したことを、これがはつきりいたします。その書面を取つた上で、その書面を受取つて裁判所に出てから、それは困りますということでありますれば、その書面を取ること自体が無意味であります。それよりもむしろ裁判の手続の如何なる段階にあることを問わず自由にこの異議を述べられ、その異議を述べた場合においては、もうその場合にはこの手続で進められないという建前をとつておきますれば、とるほうがむしろ本人の権利を擁護することになります。然らばそれをどうして本人が知るかということでございますが、第四条第二項には、本人にその点を告げてございますし、それから裁判所も本人を調べておいて、途中で異議を言われたら、これはもうその手続をやめなければならん。無駄な手続をすることになりまするから、第三条第二項のごとく、いつでも異議があれば、これはもうできないということにいたしておきますれば、裁判所といたしましても、本人を呼んだときに、その場で最初この手続によることに異議はないねということぐらいは当然出て来ることで、これは裁判官の事実上の運用に委せて差支えがないと、かようにまあ考えております。それから若しそれでも、まあその当時は異議がなかつたんだけれども、一応即決裁判で宣告がございまして、その宣告があつたというその宣告の場合には、やはり十四日以内に正式裁判の申立てができるということを今度は裁判官から本人に告知する、こういうようにいたしてございます。それは第十二条の第一項、これらの規定によつて、その点の担保は十分かと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/53
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054・羽仁五郎
○羽仁五郎君 御説明の趣旨はよくわかるのですけれども、立案の精神の底には、民衆の権利というものを、国民の権利というものを尊重する意思がある、十分あるということは私もわかるのです。併しながらこの法律案を拝見すれば、それがこの案に率直に現われているとは思えない。現に今のように、いつ何時でも異議があれば、公判を請求することができるということは、それこそ前文とか第一条とかに書いてあるならば、これは実によくわかるのですが、よほど注意していなければそのことがわからないという虞れがあるのじやないか。現に先日参考人の意見もお聞き取り下すつたと思いますが、正式裁判を請求するという者は、よほど骨のある運転手でなければできないということを、これは業者の自動車協会のほうの方の御意見にありましたが、よほど骨のある人間でなければできないような制度じややはりいけない。骨なんぞはなくてもやれるというふうでなければ困ると思います。その意味で私はなぜこういうふうにされているかということが了解できないのですが、続いて先に進みますが、第四条の第二項です。この第四条の第二項では、検察官は、被疑者に対してあらかじめ、即決裁判手続を理解させるために必要な事項を説明し、又刑事訴訟法の定める手続に従い、裁判を受けることのできる旨を告げた上となつていますね。これを告げなかつた場合にはどうなりますか。ちよつと続いて即決裁判手続によることについて異議がないかどうかを確めなければならないというふうになつております。これらをいずれもなさなかつた場合にはどうなるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/54
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055・下牧武
○説明員(下牧武君) この手続は、結論を申上げますと、この第四条の第二項は訓示規定でございます。それでこの手続をされなかつたと言つて、その即決裁判の請求が無効になるようなことはございません。併し本人に異議がある場合においては、これは直ちに裁判官の面前に出るのでございますから、そのときに異議があれば、異議があることがわかりまして、そこでこの手続によらずに正式裁判のほうに廻されるという運用になります。で本来ならばこれは略式手続におけると同様に、この場合に異議がないかどうかを確めて、それを確めた上で、異議がないということの書面を取つてそうしてそれを付けるということになりますれば、これは一番まあ確実ということにはなりまするけれども、それでは先ほど申上げました通り、却つてもうそこで本人の意思が確定されてしまうということに相成りますので、この点は訓示規定としておけば、検察官としても、無暗にやれば、必ず裁判官の面前で本人の意思が判明いたして、そこで蹴られてしまうことになりますから、運用上訓示規定として置けば十分じやないか、かように考えたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/55
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056・羽仁五郎
○羽仁五郎君 その点はやはり私さつきも申上げた、よほど骨のある被疑者でなければ、これによつて誤まつた運営による権利の侵害を防ぐことが私はできないだろうと、今の御説明の程度では思う。で、書面を取つてもいつ何時でも正式裁判を請求する権利があるのだということが前文なり第一条なりに書かれていれば、そういう書面を取られることに少しも支障が私はないだろうと思う。今も御説明があつた通り書面を取つたほうがよいけれども、書面を取ることによつてあとから正式裁判を請求するということができにくくなるという例があるから書面を取らないという御説明であるのです。それであるならば前文なり第一条なりに、この手続はいつ何時でも正式手続に引替えることができるということがちやんとはつきり明記してあるならば、今のような御心配はない。そして先ほどおつしやられたような点なり私が又質問したような心配もなく行くのじやないかと思うのです。
続いて先へ進みますが、この第八条「即決裁判期日における取調及び裁判の宣告は、公開の法廷で行う。」というふうになつていますが、この公開の法廷とは憲法第三十二条による裁判所ですか、そうではありませんか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/56
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057・下牧武
○説明員(下牧武君) 憲法で保障しております裁判所というのは、私どもといたしましてはいわゆる通常手続の厳密な意味における審理をする裁判所と考えております。ただ、この手続をいたしますのもこれはやはり法廷という場所でやる、単なる行政的な処分の簡易なやり方じやないので、あくまで裁判官が判断するということをはつきりさせるために法廷という場所でやる。而もやるのもガラス張りの中でやる方法がいいのじやないかというので、公開の法廷ということにいたしましたが、あくまでこれはこの憲法に保障いたしますその通常の第一審、第三審まで至るあの手続とは別物で、その前の手続というふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/57
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058・羽仁五郎
○羽仁五郎君 どうでしようか、提案者がそういう御説明をなさると、かなり問題がそこにあるというふうにはお考えにならないでしようか。私は非常に心配するのです。一つの例外を作るということは、やがて第二、第三の例外を作る途を開く虞れが多分にあることは御承知の通りですが、これは問題が交通事件だものですから、比較的に非難の余地がないように見えるのです。併しこの事件の性質によつて憲法の保障する裁判所じやないところで刑罰を宣告されるということを、その先例を開くことは、私は歴史上に多々その実例があることで、今度は交通事件じやなくして、政治事件或いはその他の問題についてそういうことが現にそういう前例はこれは交通事件についてあつたのだということになつて来ると、これはいろいろそこに問題が出て来るのじやないかと思います。で、今の御答弁では、ますます心配の気持がするのですが、先に行きます。第九条の……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/58
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059・一松定吉
○一松定吉君 ちよつと関連して……。それは何ですか、三十二条の裁判所じやないのですか、この公開の法廷というのは……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/59
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060・羽仁五郎
○羽仁五郎君 ないというのだ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/60
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061・一松定吉
○一松定吉君 なぜそれはないと解釈するのですか。三十二条でもいいじやないですか。三十二条の裁判所でない……、そうすると今のお問いのように、裁判所というこの憲法の裁判所以外の公開の法廷というものを設けるのですか、新規に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/61
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062・下牧武
○説明員(下牧武君) ここのこれを三十二条に言う裁判所じやないと申上げましたのは……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/62
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063・一松定吉
○一松定吉君 若しそれでないとするならば、ここに公開の法廷というようなことについて、公開の法廷というようなものをこしらえるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/63
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064・下牧武
○説明員(下牧武君) そういう意味じやございませんので……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/64
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065・一松定吉
○一松定吉君 それならば三十二条の裁判所の法廷ということになぜ説明しないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/65
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066・下牧武
○説明員(下牧武君) 憲法三十二条に言いますところの裁判所において裁判を受ける権利と申しますのは、通常の手続による裁判を受ける権利を奪われないということで、若しこれを仮に略式手続になりますというと、これは裁判所における裁判ということを広く読みますれば、これは権利を奪わないということにはなつておりますけれども、ここに言う裁判を受ける権利というのは、やはり内容的に、通常に一審から三審まで行われておるところの裁判というものを予想しておるものじやないかと考えるわけでございます。そこでそういたしますと、この略式手続の場合もそういう意味における裁判所の裁判を受ける権利というものは、これは受けていないわけです。ただこの裁判所という所で、而も裁判官によつて裁判を受けておるということになりますれば、その点においては裁判所の裁判を受けておることは間違いございませんから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/66
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067・一松定吉
○一松定吉君 私のお尋ねするのは、このいわゆる八条の公開の法廷ということは、憲法第三十二条のいわゆる裁判所じやないですかということを聞くのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/67
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068・下牧武
○説明員(下牧武君) その意味でございますれば、これは三十二条に言う裁判所であることは間違いございません。ただ公開の法廷ということになりましても、それは憲法に言つておりますところの公開の法廷……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/68
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069・一松定吉
○一松定吉君 憲法には公開、非公開というものはありはしない。ただ、裁判所というものは、公開をするときには公開して、公開を禁ずるときには公開を禁ずるということになる。ここの公開の法廷というのは憲法三十二条にいわゆる裁判所と同じじやありませんかと、こう言うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/69
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070・下牧武
○説明員(下牧武君) 憲法三十七条第二項の「すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。」、これを私ちよつと混同いたしました嫌いがございます。それでここに言う公開の裁判ということと、それと三十二条における裁判を受ける権利ということをいささか混同いたしましたが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/70
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071・羽仁五郎
○羽仁五郎君 いや混同していない。次にそれを伺いたいと思つておるのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/71
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072・一松定吉
○一松定吉君 つまり私の言うのは、公開の法廷というのは裁判所ということでしよう。裁判所の法廷でやるということでしよう。裁判所以外に法廷というのをこしらえるのじやないのでしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/72
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073・下牧武
○説明員(下牧武君) さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/73
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074・一松定吉
○一松定吉君 それならいいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/74
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075・羽仁五郎
○羽仁五郎君 今の質疑応答のような問題が私はここにあると思う。それで勿論この法案の提出者がフアシストでないということは私は固く信じておる。そこまで私は心配しないけれども、形式においては裁判所の形式をとつて、次第に内容においては裁判所にあらざるものが作られた歴史上の事例はそう数百年も前のことじやございません。従つて恐らくは今ここに法律を以て作られようとしておる公開の法廷というのは、形式の上においては裁判所であるが、実質においては裁判所たるの趣旨を少しでも失うところがあるとすれば、その責任は立案者に帰せられなければならんという点を心配して伺つておるので、私はその心配は絶無じやないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/75
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076・下牧武
○説明員(下牧武君) 只今の御質問でございますが、これは略式手続自体に含まれる問題でございまして、略式手続のときに相当この問題を考えたわけでございます。ただそのときの考え方といたしますれば、裁判を受ける権利というのは、やはりこの通常の裁判を受ける権利というふうに私どもは読んだわけでございます。而も本人の同意がなしに、公判前の手続だからということで略式を押付けたら、これはやはり憲法上の問題が起るので、飽くまでそれは本人の同意にかけた上で、本人の自由意思によつてこれを選ぶことにいたしたいというので、略式手続そのもののときも問題がございましたが、一応これを合憲ということで判断いたしまして、それで従来裁判所もそれを認められてその通り行われているわけです。その意味におきまして今度のこの三十二条の裁判所において裁判を受ける権利ということを、先ほど申上げるときにちよつとこだわつて申上げたのですが、裁判所であることは、ここに言う裁判所に間違いございませんけれども、そういう趣旨で略式自体に含まれる問題でございますれば、略式命令は一応それで片付いている。その前提に立ちまして今度その略式を今少しく鄭重にして行こう。こういう頭で今度の手続を考えておりますから、今度の手続はむしろ略式が許される以上は当然憲法上許されるということに相成るかと、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/76
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077・羽仁五郎
○羽仁五郎君 それはますます僕は心配になるのですよ。時間の御都合もありましようから詳しく述べませんけれども、本人が自由な意思で承認したということであるならば、そして正式裁判の前の手続であるならば許されるということなら、どういうのでも許されるか。弁護人も何かなければ、或いは証人も呼べない、或いはことによると裁判官の中に正式の裁判官にあらざる人が入つてやつてもいいか。そして刑罰を受ける、人権を制限されるということは行い得るかと言えばそういうことはできない。ですから今のような御説明じやますます心配になるばかりで困るのですけれども、先に進みます。
次は第九条の第三項「弁護人は期日に出頭することができる。」というのは、できなくてもいいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/77
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078・下牧武
○説明員(下牧武君) 出頭しなくてもいいわけでございます。本人が弁護人に一緒に行こう、行つて下さいということで、弁護人と一諸に来るということは、これは自由であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/78
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079・羽仁五郎
○羽仁五郎君 そういうことは差支えないというわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/79
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080・下牧武
○説明員(下牧武君) さようでございます。必ずしも弁護人を連れて来なければ期日に開けないということにいたしておらないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/80
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081・羽仁五郎
○羽仁五郎君 それは憲法三十七条一の関係はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/81
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082・下牧武
○説明員(下牧武君) この規定はやはりまあかね合いの問題でございますが、弁護人を付ける権利というものは、これは本人が弁護人を依頼する意思がないのにかかわらず、どうしてもこれは強いて弁護人を依頼しなきやいかんということにはなりません。本人がみずから弁護人を依頼したいという事情があるにもかかわらず、そういう意思であるのにかかわらず、何かの事情によつてそれを依頼することができないという場合に、初めて国としては弁護人を付ける義務を有する、こういうことに相成るかと存じます。そこで弁護人を依頼するかどうかという点は、これはやはり然らば如何なる事件でも全部国として義務を生ずるかと申しますと、そこはやはりその事件の性質とか何とかのかね合いの問題でございまして、刑事訴訟法におきましても強制弁護事件というものの線を或る程度この法によつて区分しているわけでございます。この場合は必ずしも弁護人を付けなくてもいいというのはこれは当然の結論かと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/82
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083・羽仁五郎
○羽仁五郎君 事件の性質、事件の性質というふうにおつしやいますけれども、併し罰金を受けるとか、その他刑罰を受けるという点においては、事件の性質とは関係はないのですよ。人権が制限される点じやね……。だからこの事件の性質、交通事件だからという御説明は、私は納得しかねる節もあるのですけれども、先に進みます。
第十条の「期日においては、裁判長は、まず、被告人に対し、被告事件の要旨及び自己の意思に反して供述する必要がない旨を告げなければならない。」これは先日の提案の逐条説明のときに、やはりこれも簡単な事件だからと事件のほうに理由を置いて、公判手続の厳守を必ずしも必要としない。従つて検事の起訴状朗読を略す、それから黙秘権の告知も略すというのですが、そういうことをなさるのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/83
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084・下牧武
○説明員(下牧武君) 検事の起訴状朗読はいたしません。それから黙秘権の告知の代りに捜査機関が告げますところのいわゆる供述拒否権と同じような措置をするということにいたしてあるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/84
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085・羽仁五郎
○羽仁五郎君 続いて第十条の三項、四項、ここの提案者の説明では、裁判に親しみを与えるようにという、非常に有難い御説明があつたのですが、この前に証人を呼ぶことができるということはどうして入つてないのでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/85
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086・下牧武
○説明員(下牧武君) 特に公判手続におけるような証拠調べを必要とする事件は、本来この手続に副わないというふうに私ども考えておりますので、特に証拠調べを必要とするような場合には、やはりそういうような複雑な事件でありますれば、これは正式裁判に廻すべきものである。ただ在廷証人と申しますか、そういうようなもので参考人がたまたまそこに出頭しておつて、その場で簡単に取調べられるというような場合は、その参考人の陳述を聞くということで十分じやなかろうか。少くともこの手続にのせる以上は、その程度のことで十分である、かように考えたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/86
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087・羽仁五郎
○羽仁五郎君 提案者はこの法律には決して人権が失われるような穴はないというふうにおつしやつたのですが、今の御説明でも国民の側から考えてみると、証人を呼ぶことは、この手続によるのではなくて、正式裁判でやるのだからというふうで、この手続の上では証人を呼ぶことができないということになる。そこにやはり現実の問題としては人権が侵害されるかも知れない穴ができて来るのじやないかと、私はそれを心配するのです。それで次に伺いますが、十条の三項「被告人又は参考人の陳述を聴き」というのだけれども、この陳述が偽りだつた場合にはどうなるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/87
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088・下牧武
○説明員(下牧武君) これはやはりそ陳述を信用するかどうかということは、これは裁判官の重要な心証に委ねられているわけであります。その陳述を聞いたために本人は不服である、而もそれで以て刑がが重くなつたというような場合におきましては、これはやはり正式裁判によつて争うということになるかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/88
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089・羽仁五郎
○羽仁五郎君 それは法律条引の御説明でなかなか国民にはそういうふうには私は行かないだろうと思う。それから続いて先に行きますが、第十五条では「裁判所は、即決裁判の宣告をする場合において相当と認めるときは、附随の処分として、被告人に対し、仮に罰金又は科料に相当する金額を納付すべきことを命ずることができる。」これは裁判の判決の確定を待たないでこういうことができるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/89
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090・下牧武
○説明員(下牧武君) その通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/90
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091・羽仁五郎
○羽仁五郎君 それでよろしいのでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/91
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092・下牧武
○説明員(下牧武君) これが前々から申上げました通り、執行面において非常な又手数がかかつておる、又場合によつては本人が出て来てわざわざ罰金を納付しに来るということで、本人の出頭の面においても煩しさがあるわけでございます。それを流れ作業式に一貫してやつて行く、本人が罰金を受けまして、そして大体それで異議がないということでありますれば、その場で一応仮に罰金を納めて、そして刑が確定いたしますれば、それが本刑に充当されるという仕組になつておるわけでございます。それから若しその裁判に不服で正式裁判を申立てますれば、通常手続によつて審判を受けて、その場合には無罪になればその金は返される。それから有罪になりますればその部分は又罰金のほうに充当されるという仕組でございますから、而もこの「相当と認めるときは、」というのは、これは大体本人がまあその場で金を持合せておつて、而もすぐ納めて行くというような意思が見受けられるような場合を予想いたしておりますので、又実際の運用も本人がその場で納められないのに、すぐ仮納付をやるということもこれは問題がございますし、この法律の趣旨にも合いませんから、当然この法律の趣旨からいたしまして、運用といたしましては、その場で本人が異議がないという場合に納められるということになるだろうということで、このようにいたしたわけでございます。この制度はまあ刑事訴訟法にも認められている制度でございますが、その要件を緩和いたしましたことはさして本人の不利になるというふうには私どもは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/92
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093・羽仁五郎
○羽仁五郎君 今の問題は十三条の問題なんかとも関連して矛盾を生ずる場合が絶無だとは考えられないし、そして又今の御説明は、この法案が仮に成立した場合に、この法が善意によつて運営されるということを前提としておるが、それはよくないですよ。法律案というものは、大岡越前守がやればうまく行くというならば封建的な法律だつていいのですから、だから法律案としては、善意によつて運用されるということを予想してはならない。そういう意味で、今御説明のような御趣旨であるならば、それがやつぱりどこかにはつきり書かれてね、そして明示されていることが必要じやないかというふうに思います。
以上で私は逐条質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/93
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094・一松定吉
○一松定吉君 この十五条、これはどうですかね。少し行過ぎじやないかね。十五条は裁判官がこれを命ずるのでしよう。今まで執行は皆検察官がやつておるのですね、すべて刑の執行はね。それを裁判官が命ずるというようなことは、これは少し私は行過ぎだと思うな。成るほど簡易手続にやるということは結構でありますが、判決のきまらんうちにそういうものを而も裁判官が納付すべきことを命ずる。少しこれは裁判官の何を、権限の域を脱しておるような規定だが、こういうことをするのはどうですかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/94
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095・下牧武
○説明員(下牧武君) この制度はもともと刑事訴訟法の三百四十八条にございまして、この場合には相当絞りがかかつてございます。その要件を幾分締和いたしまして、ここへ借りて来た……
〔委員長退席、理事上原正吉君着席〕
それともう一つ、交通事件の場合の府納付がどれだけ動くかという問題でございますが、これは現在東京で略式命令の場合に在庁略式というのをいたしまして、それに対して仮納付を命ずる。今裁判を行なつておりますが、これは極く最近初めましたので、二月の一日から実施いたしておると思いますが、その仮納付の際の執行状況を見てみますると、最初のうちはやはり非常に一割五分とか三割くらいしか納めませんでした。それがだんだん成績が上つて行きまして、たしか今から二週間くらい前か十日ほど前に検察庁に尋ねた際には、一昨日は確かに八割か九割納めて来ておる。それから昨日は十二割も納めて来ておる。というのは仮納付を納めたほかに前の遅れたのを納めたということになるだろうと思いますが、そういう状況で、この刑を受けるほうでも仮納付というのは実際の運営から見ましても現実にこれを希望しておるというか、早くとにかく済ませたいということで、これは実際の動いておる実績が出ておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/95
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096・一松定吉
○一松定吉君 あなたの言う三百四十八条は、判決の確定を待つてはその執行をすることができず、又執行に著しい困難を生ずる虞れのあるときに限るのです。これはそういうことではないんですね。だから私の言うのはそれです。これでは執行がとまる、或いは執行に著しい困難を生ずるというようなことであれば、こういう簡易な……。これは非常な例外規定です。その規定をここに持つて来て、これは又一層例外規定だ。これは困難を生ずるとか生ぜんとか、或いは納付することについての執行が不能になるということではなくて、いきなりこんなことをぽんとやるというのはどうかと言うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/96
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097・下牧武
○説明員(下牧武君) おつしやる点は御尤もな点があると存じますが、実は立案の過程においては、本人の同意にかけたらどうかという点も考えて見たのでございます。ただそういたしますと、宣告する場合に何か初めに罰金を裁判官が被告人に知らせるような恰好になりまして、どうも法文としてはこれはまずい結果が出ますので、「相当と認めるときは」ということにいたしておきまして、そうして運用としてそういう面で注文をつければ、裁判官に対しては注文をつけることはできませんけれども、今までの常識から言いまして、大概その面でこの狙いとするところはそういう場合だという趣旨にいたしますれば、その通りを酌んで裁判実例も行われるのではなかろうかということで、裁判官の判断に委ねた形で「相当と認めるとき」という言葉にしたわけで、実際はこれは本人に異議がない場合を予想して書いた条文でございます。ただ表現がこれは裁判官が勝手に認めればすぽんとできるじやないかということでございますが、それは裁判官に対する信用の問題になるのじやないかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/97
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098・一松定吉
○一松定吉君 これは併し何だね、あなたは刑事訴訟法のことを言われるが、刑事訴訟法の三百四十八条にしても三百四十九条にしても、皆検察官が請求してやつておる。特別の事情があつて困難だというときにやるのであつて、このように何でもないのに、判決も確定しないのに裁判官が、請求していないのにすぐそれをやつてしまうということになると、民衆は裁判官からそういうことを言いつけられると、非常に今お話のように畏怖を感じたり、すぐにもこれは払わなければならないのだと思つたりする。今あなたのおつしやるように同意を得てということならこれはいいと思うのだが、すぐにこれをお前に対しては罰金これこれを出せということを命ずるのだ。そうすると否応なしにそれは出さなければならない。それがいやなら正式裁判を請求するということになつて来ると、折角簡易裁判、即決裁判を求めた趣旨は没却されてしまつて、手数のかかる正式裁判を初めからやつたほうがよかつたなということになる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/98
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099・下牧武
○説明員(下牧武君) その点はもう一つ運用上考えておりますのは、「附随の処分というのは、検察官が請求するかどうかということを法文上は表わしてございませんけれども略式手続の場合と同様にやはり仮納付の必要があれば、
〔理事上原正吉君退席、委員長着席〕
又仮納付の意見を検察官が付し、求刑意見も附するという運用を考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/99
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100・一松定吉
○一松定吉君 検察官はこの前言う通り立会つてもいいが立会わんでもいいのでしよう、この問題の八条の……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/100
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101・下牧武
○説明員(下牧武君) その場合は立会わなくてもよろしうございますが、即決裁判の請求をいたします場合に、その書面でその請求書の中に、立会わない場合は、求刑はどれだけ、それから仮納付の請求だという処分をすることになるわけで、これは附随意見でございますが、附随処分に対する意見ですが、そういうことをいたしまして、そこで検察官としましてその仮納付の意見を附する場合にあらかじめ、検察官だからいいだろうと存じますが、大体これくらいになるがお前金持つておるかくらいのところを確かめて、そうして本人においてやはり異議がない、すぐ納めて行かれるというような場合にこの仮納付の意見を附すと、それを掛配して裁判官のほうでこの命令をして頂くという形に動くことを実は予想しておつたわけで、そういたしますれば大体同意を得てという形がここへ出るのじやなかろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/101
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102・一松定吉
○一松定吉君 私は検察官が即決裁判を請求するときに、この本人の同意を得て、そうしてそういうことをやると、或いは検察官の職権で仮に金額を即決で納付するようにしてくれいということの意思表示をしたと、それに対して裁判官が、検察官の請求がいいか悪いかということは裁判官が判断して、この被告については罰金の納付をすぐ命ずることがよかろうと思えば命ずるし、検事はそういうことを言うておるけれども、この被告に対しては命ずることが悪いと思えば命じなくてもいいという裁判官にその裁量の余地を与えることがいいと思う。これはもう裁判官がすぐ被告に対してこれを納付することを命ずることができると、こう裁判官が自分の独自の意見で命ずる。裁判官には、検事がそういうことをした場合に、その検事の判断がいいか、悪いかを判断して裁判官の考えによつて命ずる場合もあるし、検察官の言うことを却下する場合もあるというふうに裁判官の裁量の余地を残したほうがいいのじやないかと思うのですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/102
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103・下牧武
○説明員(下牧武君) お説の通りだと存じます。併しそのうちの略式の場合でも仮納付の場合、それから罰金の求刑意見、これも全部検察官が附しておりますから、この場合も必ず運用におきましては検察官がこれは附することになりますので、特に法文上書かなくてもそういう運用になるという結果になりまするから、そこまで書かずに、裁判官が判断するぞということさえ書いておけば、検察官の意見を受けて裁判官がその当否を判断するということになるという頭でまあこれはできております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/103
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104・一松定吉
○一松定吉君 私の言うのは、やはりその被告人の頭をこれは加味した判決でなければいかんということです。被告人の頭はどうでもいい。裁判官が命ずるということになるというと、へいそうですかということですぐ命に服して、納付することができるものはいいですよ、納付することができなかつたならば、その命令に反する行動をとろうと思うには、正式裁判を申立てなければならん、そういう手続をすることがつまらんじやないかという、こういうことです。それだからして納付すべきことを命ずることはできる。但し被告人に異議あるときはこれを撤回することができるということでもしておけばこれはいいでしよう。けれども命ずることについて被告人の異議があるときには正式裁判申立をしなければこの命令を撤回できんということになるというと困りやしませんか。あなた方の立法の趣旨から行くならば命ずることはできる。但し被告人において異議あるときにはこれを撤回することができるかということでも、文字はどうでもいいですよ、そういう意味のことを書いておけば、正式裁判の申立をしなくてもいい。又裁判官も判決確定した後に納めてもいいということになれば、非常に余地があつて大いに同情心がそこに発露しておるということになるのだが、そういうふうなほうがよくはないか。すぐ裁判で命ずるとどうも納めなければなりませんからね。正式裁判手続に持つて行けばいいじやないかというと、初め即決裁判を求めた趣旨と反する行動をとらなければならん。そこがどうですかと、こういうのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/104
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105・下牧武
○説明員(下牧武君) まあ御尤もな点でございまして、これは技術的な面を申上げて恐縮なんでございますが、どうも裁判前に、本人にこれくらいの罰金だが異議あるかどうかということを確かめるということが需骨に出るということは、どうも法文作成上も工合が悪いと存じますし、それからあとから一旦命じたやつを異議によつて立ちに撤回するというような形をとりますのもまあ如何かと存じますので、これはまあ「相当と認めるときは、」といたしましたのは、今まで申上げたような趣旨をこうやつておけば、この運用の面からいずれ検察官も意見を附しますし、意見を附しました場合はやはり本人から事実上いろいろなことも聞いて意見を附するんでございますし、それから裁判所が仮納付を命ずるといたしましても、それは事実上その辺のところを裁判官のほうで見当をつけてやる運用になるだろうというので、その「相当と認めるときは」という言葉で表わしたので、まあ形の上では如何にも裁判所が自由にやれるというようになつておりますが、運用においてはまあこの点はうまく行くだろうという、まあ私どもの従来の経験から見ましてまあこうしておく、法文を作る技術の関係もございまして、かような形にいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/105
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106・一松定吉
○一松定吉君 それならば裁判所は即決裁判の宣告をする場合において、被告人において異議なきときはとこう言いたほうがいいのですね。「相当と認めるときは」とせんで、もつと具体的に異議なきときは、附随の処分として、被告人に対しこれこれのことを命ずることができる。そうすると「仮納付の裁判は、直ちに執行することができる。」ということと、異議なきときはということと相マツチして、非常にスムースに行くと思う。「相当と認めるときは」というような疑いのあるような、如何ようにも解釈のされるような言葉を使わずして、即決裁判の宣告をする場合において被告人において異議なきときは、附随の処分としてこれこれのことを命ずることができる。こういうふうにしたほうがよくはないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/106
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107・下牧武
○説明員(下牧武君) そこで最初異議なきときはということを考えてみましたが、異議なきときはということは仮納付をしていいかどうかということを裁判官から尋ねるだけでは被告としては何にもわからない。一体これは五千円やられるからどうとか、二千円やられるからまあまあというかね合いになつて来るかと思う。それを裁判官が裁判を言い渡す前に、そういうことを裁判官が本人に告げるということは裁判として踏切りがつかない。そこで先ほど来何度も繰返すようで恐縮でございますが、検察官が仮納付の意見を罰金二千円と出す。そして仮納付ということで意見をつけてそういう裁判を求める場合も、そのあらかじめ大体こんな見当で、お前金を持つておるか、まあこれくらいなら結構ですということで、仮納付ということで意見を附してできる。そして裁判官もそういう意見がありますれば、とにかくそれを果して納められるかどうかという点をまあ確かめるのは法文上は露骨に表わさずに、事実上はその見当がつき得る。くだけて本人と相対しておりますので、まあ「相当と認めるときは」ということを書いておきますれば、その趣旨で第十五条の第一項ができておるということがはつきりいたしますれば、裁判官の良識においてそれを見て運用して頂けるだろう。又最高裁判所のほうでもそうやつておけば、まあ運用して間違いはなかろうということになる。どうも裁判官があらかじめ、罰金が幾らになるということを言い渡す前に知らせることを恐れたわけでございます。運用は飽くまで今一松先生のおつしやいました通りの形で考えて行く……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/107
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108・一松定吉
○一松定吉君 私の申上げるのは、被告人の意思をここにやはり尊重してやるということになつて来ると、スムースに行くのじやないかと思う。直ちに執行するにしても、被告人が異議がなくて納められるのではないかとこういうことです。そこに「命ずる」という文字があるでしよう。これは被告人の意思がどうあろうとなかろうと、裁判官が命ずるんだ。お前に一万円の罰金の納付を命ずると、そうするとこれは納めなければならない。納めるには金がない。仕方がないから正式裁判をしようということになるでしよう。だからそれをやはり被告人の意思を尊重する意味において、被告において異議なきときは、これこれすることができると、その異議なきときはのうちに、罰金、科料に相当する金額を今お前に命ずるのだよということに、そこに異議ないということでなくして、まあ私は家のほうに五千円持つておりますから、このくらいなら何とかしましようということを言い得ることができるでしよう。それでは足らんと思うときには、もう少し何とかして、親類から借りて来ても何とか納めましようということは言うでしよう。そういうものを参考にして納付するところの金額を命ずるということになればスムースに行くのじやないか。正式裁判を求めるということで、その納付の命令に反抗する態度をとらんでもいいんじやないか。それを「相当と認めるときは」という抽象的文字を入れるよりも、被告において異議なきときはということにしたほうが、まあ運用が行きやすいのじやないかと思うのですが、これは議論になりますから、これ以上申しません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/108
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109・青木一男
○青木一男君 先ほどからの質疑応答を伺つておつて、確める意味で極めて幼稚な質問を一、二したい。つまりその手続は大体において軽微なる事件に対して、正式裁判の手続をやられるということは、国家の司法権の運用としても、常識的に考えて非常に不釣合の結果になることは勿論ですが、それと同時に、被告人の立場からでも、こういうふうにすぐ解決してもらうことが営業の継続その他から見て非常に利益である、こういうことが大きな狙いであるように伺つたのですが、この点は間違いないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/109
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110・下牧武
○説明員(下牧武君) 大体そういう狙いでございまして、迅速処理という面と、被告人のほうがその反射的な効果として、被告人のほうの便宜も考えて、成るべく便宜に行くように早く済ませるようにしたいという狙いがあつたわけでございます。特に、被告人のほうを狙つたというようなそういう口はばつたいことは申されないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/110
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111・青木一男
○青木一男君 それから先ほど御質問がありました憲法と裁判を受ける権利との関係でありますが、これは正式裁判の権利を奪うものではない。裁判手続の前において、両方とも都合のいいような手続をする途を開いたものである。従つて憲法の関係から言えば、そういう点において、飽くまで憲法に違反しない、こういうふうに理解してよろしうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/111
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112・下牧武
○説明員(下牧武君) さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/112
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113・青木一男
○青木一男君 それからこの憲法に与えられたる権利を擁護されるということは、法律にも書いてありますけれども、普通の場合、正式裁判を中立てることができる。ただ、被告人にはつきりそのことを意識させて、この手続を進めるということについては十分遺憾なきを期しておられるのでございましようか、その点について……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/113
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114・下牧武
○説明員(下牧武君) これはこの手続の内容自体、これは被告人に全部説明することにいたしております。これはその検察官が一先ず異議がないかどうかと確めます場合、この手続の大体の概略と申しますか、公判前の手続であつて、そして判事さんの前に出て、そして調べられるのだと、而もそれに不服がある場合には、正式裁判の請求もできるということを付けて、それでこの手続でやつてよろしいか、而もすぐ罰金も納められるというようになつているという点まて知らせて、そのほかに通常のやり方もある。或いは略式に行つて、書面だけで調べられるやり方もある。そのうちでどれがよかろうかということで、この手続で結構ですと言つた場合に、初めてこの手続にのせられる、こういうことになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/114
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115・青木一男
○青木一男君 もう一点ですが、勿論略式手続でありますから、この憲法の正式の裁判から見れば、非常に簡略化されることも、権利擁護において手続上遺憾な点もあるように見えることもあろうと思うのですが、その点において、現行の略式手続と比べてみて、文字通り人権擁護の点において、更に日没これを広く制限を加えたような点があるのでありますか。現行の手続との比較においては如何でありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/115
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116・下牧武
○説明員(下牧武君) 現在の略式手続と比較いたしましては、私どもはむしろ人権擁護の面を強く出したと考えております。と申しますのは、現在の略式手続は、検察官が調べて略式の請求をいたしますれば、それで裁判官が書面審理によつて、略式命令を出すという仕組になつております。この場合は即決裁判をいたします前に、本人を一度呼んで、そうして事実関係を確かめた上で、そこで心証を取つた場合に、初めて即決裁判の言渡をするということになりますので、その面では非常に大ぎな飛躍であろうかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/116
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117・青木一男
○青木一男君 わかりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/117
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118・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 次に前回御質疑のございました本法実施に伴います人的、物的の受入の態勢につきまして、最高裁側の意見を、江里口最高裁刑事局長から御説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/118
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119・江里口清雄
○説明員(江里口清雄君) 前回も申し上げました通り、この法律を理想的に実施いたしますためには、簡易裁判所の判事の増員、それから法廷の増設というものを必要とするのでありますが、この法案は裁判所におきましても結構な法案と思つているのであります。その成立を心から希望するものでありまして、今後予算の認められます範囲内で、できるだけこの法律による即決裁判を実施いたしまして、その余の部分につきましては、従来通りの刑事訴訟法による略式手続で処理して行くことによつて賄つて行きたい、かように考えております。その点につきましては、法務省及び検察当局と十分打合せを遂げまして、遺憾のないようにいたしたい、かように思つております。その上で逐次予算の獲得に努力いたしまして、判事及び法廷の整備を待つて、この法律の完全実施ということを実現いたしたいと思つております。なお、前回岸上経理局長から申上げました趣旨も、本日私から申上げる趣旨も、変りないのでございますので、さよう御了承頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/119
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120・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 他に御質疑はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/120
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121・一松定吉
○一松定吉君 私はこれはやはりいろいろ質疑応答をしたことについて、それぞれ修正の考えもありましようし、又もう修正せんでも、政府当局の意見を聞いたから、これで我慢もできるという意見もありましようから、やはりそういうことについて検討する時間を多少与えて頂かんと、今すぐここで討論、採決じや困りやせんかと思います。私の意見だけ申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/121
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122・郡祐一
○委員長(郡祐一君) ちよつと速記をとめて。
午後零時四十九分速記中止
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午前一時三十六分速記開始発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/122
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123・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/123
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124・一松定吉
○一松定吉君 私はこの法案に対しましては全体的には賛成でありますが、ただこの法案は刑事訴訟法の例外規定でありまするから、成るたけ簡易、迅速に処理するという精神には何らの異議はございませんが、ただこの第三条の二項にありまするように、この即決裁判するについては被告人に異議のないことを前提条件としておる建前から、第十五条の判決の確定しない前に裁判官が罰金又は科料に相当する金額の納付を命ずることができるというとの規定は、これは著るしく被告人の意思を考慮に入れずしてこういう命令を出すということは、第三条の立法の精神と相反するような考えを持つておりまするから、でき得べくんばこの被告人の意見を聞いて、その意見を参酌して然るのちに……、自分はあらかじめ納付することを命ずることの裁判所の御意見にはあえて反対はいたしませんというような意思表示のあつたことを前提として、こういう異例の手続をとるということのほうがいいと思うのです。然るにそういうことでなくて、この本文は「相当と認めるときは」ということだけに限定されて、あとは裁判官の自由裁量に委せられておるということは、第三条の趣旨とも反するように思いまするが、この点について運用の上にどういうような考慮を払い、そうしてこの第十五条を運用するかということについての手続上の問題について、一応政府当局の御意見を承わつておきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/124
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125・下牧武
○説明員(下牧武君) 只今お尋ねの点は御尤もな点でございまして、私ども立案の側といたしましても、本人の意思に副うてこの仮納付の運用をするというようにもともと考えておつたのでございます。その意味におきまして検察官がこの即決裁判の請求をいたしまする場合に付けまする意見、これはまあ求刑意見もございまするが、その際に仮納付の意見を付けまする場合には、あらかじめ本人に異議がないかどうかをよく確かめまして、そしてその異議がないかどうか、異議がないという場合に限つて仮納付の意見を付けるように運用をいたして行きたいと存じます。又検察官として本人の意向を確かめる手続をとつて、本人に異議がないということを何らかの形において裁判官のほうにも反映させる措置を講じたい、かように考えております。例えばこの起訴状の欄に仮納付という欄を作つた場合に、本人の同意の有無というような欄を作つておきまして、そうして同意というところへ検察官が印を捺して、その点を確めてあるぞということを裁判官のほうに反映させるというような方法でも講じまして、その点はもう少し工夫いたしたいと存じますが、例えばそういうような方法で以てその点も裁判官のほうにも反映させ、裁判官が「相当と認めるときは」の判断をする場合の資料といたしたいとかように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/125
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126・一松定吉
○一松定吉君 それではそういうようなことをあらかじめ裁判所に訓令なんということは不穏当でありましようが、何らか裁判官がそういう趣旨を満法することができるような手続をおとりになる考えがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/126
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127・江里口清雄
○説明員(江里口清雄君) 仮納付というのは、確定前に納付を命ずる裁判でございますから、これは全く御趣旨の通り例外中の例外であります。従つてこれが被告の意思も全然聞かないで、その意思に反しまして無理に行われるということになりますと、これは大変なことになりますので、そういう点、只今検事のほうの運用では被告に仮納付について異議がないかどうかということを確めて、異議がない場合に仮納付を求める。又起訴状或いは検事の裁判所に提出する書面の中に、仮納付について異議がないという書面を出す運用にされるそうでありますが、裁判所におきましてもこの運用が無理のないように十分運用の面において注意いたします。それから会同を保した際におきまして、この運用が「相当と認めるとき」ということになつておりますが、被告の意思もやはり汚職に入れて運用に無理のないように十分いたすように、御趣旨を徹底いたさせたい、こういうふうに思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/127
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128・一松定吉
○一松定吉君 それでは十五条に対する質問はよしまして、今度は第八条第九条、第八条の三項の「検察官は、法廷に出席することができる。」第九条は「弁護人は、期日に出頭することができる。」こういうことは裁判所の刑事訴訟の建前から言いますると、検察官も弁護人も立会いで、なかんずく人権擁護の建前から刑事事件については弁護人は必ずつけなければならんことになつておる。然るに第九条には「期日に出頭することができる。」と書いてある。八条には、「検察官は、法廷に出席することができる。」と書いてあるのだから、これは出頭してもよし出頭しなくてもいいということになりますが、この点についてはこれは簡易な手続であるからこれで結構でありましようが、その列席することができる、若しくは期日に出頭することのできる機会を与えるために、この裁判には検察官及び弁護人に対しては、今日はこうこういう裁判を開くのだからということた通知して、出廷するか或いは出頭するかということの機会を与えるだけの、例えば呼び出しとか通知とかいうようなことはおやりになるつもりですかどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/128
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129・下牧武
○説明員(下牧武君) その点は考えておりません。それでまあ前々から申しげておる通り、事件が起きましたその日に呼び出すということはこれはいたしません。それでそれから三、四日の期間をおいて違反者、本人が都合のいいという時期を狙つて呼び出して参りまして、その日にずつと一挙に審理を進めたいとこういう考えでございます。それで検察官もまあ場合によれば法廷に出て意見を述べる。又事件が深めて来るような場合に、ちよつと心見を間かれるというような場合もあるかと思います。又警察が違反だと言つたけれども、自分は違反だとはこれは思わんという場合に、弁護人と一緒にその日参りまして、そうして検察官のところで、それが不起訴になればよろしうございますが、又それがそういう場合は大体争う場合ですから、この手続にはのらないと存じますが、そういう場合でも、若し仮にこの手続にのつたという場合には、弁護人がその期日に出頭いたしまして、それは困るということで異議を申立ててもよろしうございます。又事実関係が間違いがなければその本人のほうのいわゆる刑の量定について本人の言いたいところを弁護するというような運用を考えておるわけでございます。それで一々その期日に出廷を通知してそうしてその出廷を待つてやるという手続はむしろこの即決といいますか、この手続を早く進める点においても如何かと存じましてそういうふうにはいたしません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/129
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130・一松定吉
○一松定吉君 私の言うのはね、検事や被告人が出廷することを条件にする云々じやなくて、そういう機会を与えるように通知とか呼び出しとかいうような手続はとりますかと聞くんです。機会を与える。例席する機会或いは期日に出頭する機会を与えなければ、こういうことを知らんでただどんどんやる。検事は出廷しなかつた、弁護人は出なかつた。なぜかというとそういう法廷が開かれておるかどうか知らない場合があるだろうから……。出廷することのできる機会、列席することのできる機会を与える。その機会を与える方法は通知でもよければ、通告でもいいし、呼び出しでもいいでしようが、そういう手続はおとりになりますか。それをお聞きするのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/130
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131・下牧武
○説明員(下牧武君) その点は先ほど申上げたつもりでございますが、考えておりません。出頭は飽くまで検察官の責任において、又これは被告人が弁護人を依頼した場合には弁護人の責任においてする。被告人が大体出て参りますから、そのときに期日が開かれるということになりますので、被告人と弁護人との連絡で進めて行きたい。それから検察官のほうはやはり事件を起訴いたしておりますし、このなにがいつ開かれるかというので、自分が特に立会いたい事件ならば、関心を持つておるわけでありますから、みずからのおのおのの責任において出頭する、こういう措置にいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/131
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132・一松定吉
○一松定吉君 憲法の規定からいいますると、刑事事件はすべて弁護人を付けなければならん。本人が付けなかつたら国選弁護人を附けなければならんということで、人権擁護に重きを置いておる。こちらは例外規定だから必ずしも付けんでもよろしい、付けてもよろしい、併しながら付ける者には出頭する機会、こういう公判期日が開かれるのだという通知をするか、或いは被告人を連れて来いということを言うか、何とかの機会を与えなければ、この弁護人が出頭したいと思つても、いな開けるかわからなかつたから出頭しなかつたということになるが、出頭するとしないとに弁護人乃至被告人に任していいが、機会を与える方法はおとりになるほうがいいと思うがどうですか。その機会を与えるのですかと附くのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/132
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133・下牧武
○説明員(下牧武君) 本人が出て来なければ期日が開けないようなことになつております。それで本人について出て来るかということについては、これに運転免許証と引換えに渡した保管証によつてその日が明示されるわけです。それで被告人が出る期日が必ずわかつておるのでありますから、本人の出る日が公判期日の行われる日でございます。でございますから、その日に弁護人が出て来ればいい。その連絡はこれは弁護人と本人との岡に任しておくということに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/133
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134・一松定吉
○一松定吉君 私の言うのは機会を与えるというのだから、だからして被告人、運転手なんかという者は弁護人をつけていいのかどうか知らんことが多い。だから被告人の運転手を呼び出すときに、お前は弁護人を連れて来ることができるということを書いておけば、それは機会を与えたことになる。そういうような親切な手続はおとりになるのですかどうですかと聞くんです。運転手なんですから、弁護人を付けていいかどうかわかりやしません。呼出状に、お前が出頭するときには弁護人を連れて来ることができるぞよということを書いておけばいいわけです。そういう機会を与えるということは親切な取扱いだが、そういうことはしますかしませんかということを聞くんです。法文にはありませんから、呼出状に但しあなたのために弁護人を付けてもよろしうございますよとか、或いは弁護人と同道して出頭してよろしうございますよというようなことを呼出状に書いておく、或いは呼出状でなくて口頭で伝えられるときには、弁護人を同道して来てもいいぞよということを言つて附かせば、本人は弁護人を連れて来る。そういう機会を与えますか与えませんか。法律に書いてあるだけは、わかりますけれども、運転手は法律を一々見ておりませんから、そういう知識を与えるということはこの法文に矛盾したことでも何でもなく、むしろ親切に法文を運用する上において必要だから、それだけの親切なことをおやりになるつもりですか、おやりにならんつもりですかと聞くのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/134
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135・下牧武
○説明員(下牧武君) お答えいたします。只今の点でございますが、呼出状で呼出す場合は、呼出状の端にちよつと書くぐらいは当然でございます。それから保管証の場合もその保管証のどこか端にでも、裁判所に出る場合は弁護人を連れて来ることができるというくらいの注意書はいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/135
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136・一松定吉
○一松定吉君 それで結構です。私の質問はありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/136
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137・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 他に御質疑はございませんか。……御発言がないようでございまするから、質疑は終局したものと認めてこれより討論採決に入りたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/137
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138・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 御異議ないと認めてこれより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/138
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139・三橋八次郎
○三橋八次郎君 この法律案は、まだ細部に亘つていろいろ問題があるようでございますが、これは漸次改善することにいたして、条件をつけまして本案に賛成するものでございます。
先ず第一番に、この法律実施に当りましては、十分人権を尊重するように善処をして頂きたい。第二番目は、検拳主義の弊に陥らないようにしてもらう。第三番目は、交通事故の予防手段につきましては、今後十分に考慮をして頂きたいということでございます。それから第四番目は、即決が適正に行われますように現場の警察官の貧打の向上並びに本法律の実施に当りまして、受入態勢というものが十分にできるような措置を講じて頂きたいという、この四つの条件を附けまして本案に賛成するものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/139
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140・羽仁五郎
○羽仁五郎君 私は、本法案に反対いたします。反対の理由を申述べます。
反対の理由の第一は、あらゆる法律というものは、その法律によつて解決される問題の原因の正確な把握というものがなければならん。ところが御承知のように、この交通事件に関して、今この法案が解決しようと思つている問題は、現在の日本の交通に関する設備、都市計画などの極めて不完全な点から来ているものであります。従つてそういう極めて不完全な都市計画が、又極めて不完全な道路というものの上に交通事件の違反ということを規定しましても、実際においてその違反を止むを得ずして行わなければならない事情が存在しているのですから、そうした規定に違反するというような人々は、どうしてもそれに対する罪の自覚というものが期待することがむずかしいのです。そういう意味で、現在の日本の都市計画の現状、又道路の事情というものから発生して来る問題を、都市計画や、道路施設の改善ということによつて先ず解決すべきが第一であつて、その努力を十分になされないで、こういう即決裁判手続というものによつて解決されようとすることは、承服することができません。
第二に、あらゆる法律は、それが是非ともなければならないというものである点と、そして又濫用の恐れがないという二つの点をいつも厳格に守らなければならん。ところがその第一の、この法律が是非ともなければならないか、他の手段では解決できないかと言えば、今申上げたように、極めて簡単に都市計画の実行によつてこれが解決することのできる問題である。必ずしもこういう法律を要しない。然らば濫用の恐れはないかと言えば、やはり提案はしばしば繰返して、現在行われている略式裁判よりも濫用の恐れが少くなつたものだというふうにお答えになるけれども、併し現在行われている略式裁判というもの、これに憲法上の問題がないかと言えば決してそうではない、その問題があるのであります。従つてそれを幾分解決する程度ということであつて、憲法に違反する濫用の虞れが除かれるということはできないのであります。その点の恐れがあるものと断ぜざるを得ません。
第三に、反対の理由としては、この日本では、今申上げましたような社会的な、又政治的な原因によつて起つている問題をそのままにしておいて、それで裁判所が過大な亘川を背負われるという場合に、それを解決するというために、とかく裁判の簡素化、或いはスピード・アツプ、或いは流れ作業というようなお考えを持たれる。これにはやはり恐るべき危険があると言わなければならない。その現実の原因を除去しないで、それで裁判所の負われる過大な負担を解決するということはできないのに、それをやろうする結果は、必ず裁判が適正に簡素化されるのじやなくして、一言で言うならば粗末になつて来る。裁判の迅速適正ということは、民主主義的な慣行、慣習というものが確立している場合にのみ許されることであり、現在日本に民主主義的な慣習や慣行が確立されているとは断ずることができないことを甚だ悲しまざるを得ない。
それで只今条件を附けて賛成の御意見が述べられましたが、これらの条件というものが実現されるということを私は信ずることが非常にむずかしいことを遺憾とするものであります。日本の警察官の中には、まだ不幸にしてその素質が向上していないために、検挙主義の弊は蔽うべからざるものがある。そして而もこの法律案が即決裁判手続という名前を以て現われて来る以上は、その精神は、その現場の第一線に立つ警察官の場合にも、即決という言葉から来る弊害を防ぐことはできないだろうと恐れざるを得ないのです。こういう意味で現在日本に民主主義の確立がない、そうした慣習がない、そうした慣行がない、それなのに裁判を簡単にするということは、これは裁判を粗末にする慮れが多分にある。現に今まで行われております憂うべき事実というものについては、先日来委員会の質疑応答の際に詳しく申述べましたから、今ここに繰返しませんが、例えば実害がない軽微な場合については、二回以上の違反というものがあつて、初めてこれを問題にするというお答えがありましたけれども、併し実際の実情を聞いてみれば、その第一線の警官のその日の気分次第で似てどんどん送検されるということがあることは、皆さんの御承知の通りであります。そういうふうに考えてみると、この法律を作つたことによつて、折角今警察の、殊に交通取締の、交通関係の警察の民主化ということを努力されているところによい影響を与えるだろうか、悪い影響を与えるであろうかと言えば、悪い影響を与えると判断せざるを得ないのであります。以上の点から、この現在の実情から考えてみても、この法律案が通過することには反対せざるを得ない。で、この国民の憲法によつて保障されておりますところの貴重なる基本的人権、又民主主義の精神というものに対しては、我々は余りに敏感過ぎるのではないかと考えられるほどに敏感でなければならないと私は固く信ずるものであります。基本的人権に対する敏感というものなくして、民主主義を確立することはできません。この程度のことはいいのじやないかというように考える、そこから民主主義というものは崩れて行く。憲法の命じている通り、我々は時々刻々不断の努力をして、民主主義というものを築き上げて行くという任務を負うているのであります。而してその又任務を誇りとするものであります。
最後に端的に育つてこの法案の作ろうとしておるところのいわゆる裁判所というものは、形式上においては裁判所のごとくに見えるけれども、実質には裁判所ではありません。百歩を譲りましても形式と突貫と相備つた裁判所といささか異なるものであるということは、どなたもお認めになるだろうと思う。現にそこには弁護士がいないということもできるのですから、そういう意味から言いましても、憲法の保障しているところの第三十二条、憲法第三十七条、これらが鄭重に保障しているところのものに、その鄭重の趣旨どいうものに多少相去るところがあるものだということは、どなたが御覧になつてもそういうふうにお考えにならざるを得ないと思う。勿論この憲法が我々に保障しているような、罰金というものであろうとも、何であろうとも、この我々の基本的人権を制限する場合には、立派な裁判所で裁判を受ける権利があるのだというこの原則が一挙に後えるということならば、我々は必ずしもそう問題にしないんです。その際には国民もこぞつて立上るでしようし、世論もこぞつてこれに反対するでしようし、又およそ良心のある人はそれに賛成することはないでしよう。併し歴史の示すところでは、常にこの基本的人権の尊重ということに、徐々に徐々に、それを幾分離れて行くものができて来る、或いはそういう法律ができて来る、或いはそういう事実ができて来る。そうして基本的人権の尊重、民主主義の確立ということと全く相反するような、そういうことが生れて来る下地を徐々に作るということが非常に問題である。ここにできるものは、名称は事件の特殊な性質、即ちこの交通事件という軽微な事件であるからというように言われるし、そうして又現在裁判所が非常に過重な負担を負われている、それから又交通事件を起される人々にとつても非常に重い負担があるからという、現状見るに忍びないということを理由とされるんですけれども、併しおよそあらゆる例外的の措置をとつて行く場合には、何かの理由はあるものです。けれども、たとえこれが交通事件という問題であろうとも、そうして又現状見るに忍びざるものであろうとも、憲法の保障する完全なる裁判所というものといささか違つている裁判所をここに作られるということは、私は恐るべき害があると思います。やがて交通事件ではない、ほかの事件についてもこういうことが言えるんじやないか。或いはほかの性質の違つた現実のいろいろ困る問題の処理ということについても、多少完全な裁判所でない裁判所で裁判してもいいのじやないか。そういうふうにして折角裁判官が、十分の裁判官として裁判を守られるというところに、裁判官と少し違うような人が入つて来たり、或いは検察官或いは弁護人というものと少し違うものが入つて来たりして、最後には裁判官もいなければ弁護人もいないところで、国民が刑罰を受けるというところに行く。そこまで行つてから、我々はそれを食いとめようとすることはできない。恐らくここにいらつしやるどなただつてそこまで行つてから、それを防ぎ得るというふうに断言される方はないと思う。我々はそこまで行かない第一歩、第二歩のところでそういう悲しむべき事態というものをあらかじめ防いで行かなければならない。現在実際交通事件に関する現状というものは見るに忍びない。又交通事件というものは如何にも軽微なものである。それらを解決する他の方法があるのに、憲法の保障する民主主義裁判というものの原則を一歩たりとも譲るというようなことを法律を以て定めるということになれば、私は飽くまで反対せざるを得ないものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/140
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141・楠見義男
○楠見義男君 私はこの法案に賛成いたします。
この法票は交通違反事件の処理についてそれの迅速適正を図るために現行の略式手続を更に法律化せんとするものでありますが、その趣旨に賛成であります。
ただ本案に賛成をするに当りまして、若干の希望意見を附しておきたいと思うのであります。それは審議の過程におきましてもいろいろ論議せられましたように、単に違反者に対する処分を迅速にするとか、或いはその処分に当つて便宜を期するとか、そういうような点に重点が置かるべきではなくて、むしろ違反を未然に防ぐという点に最善の努力を払うべきであると考えるのであります。従つてその意味から提案理由にもございましたが、交通秩序の遵守或いは尊重というような点について特段の配慮を払われたい。例えば営業用の自動車の運転手或いは又雇用者等に対しましても十分の啓蒙を図ることに努められますと同時に、一面取締りの職に当る警察官等に対しましても、良識ある態度を以て事に当るよう十分に指導監督させられたいと思うのであります。
なお、この法律実施に関しましては、相当の予算を必要とするのでありますが、この確保についても最義の努力を払われんことを希望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/141
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142・棚橋小虎
○棚橋小虎君 本案はいろいろ議論の余地のある法案でありますけれども、現在交通事犯というものは非常に激増している。裁判が長引いて、それがために非常に困難するというそういう実際上の必要から出されたものと思うのでありまして、私はこの案に賛成をいたします。
但し、それにつきましては条件があるのでありまして、これは刑事訴訟法の普通の裁判手続によらない簡易な裁判手続であります。併し裁判手続を簡易にするということは、人権の尊重をおろそかにしていいということにはならんのでありますから、これはどこまでも人権を尊重するということに運用の方面において留意して頂きたいということを希望するわけであります。
なおもう一つは、この法律を十分に実行せんとするには、裁判官の増員であるとか、或いは法廷の増設であるとかいうふうな施設が十分伴わなければその目的を達することはできないと思われるのでありまして、この点について十分に施設を充実されるということを第二の希望といたしまして、賛成をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/142
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143・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 他に御発言もなければ、討論は終局したものと認めて直ちに採決に入ります。
交通事件即決裁判手続法案を同類に供します。本案を原案通り可決することに賛成の諸君の御挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/143
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144・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 多数と認めます。よつて本案は多数を以て原案通り可決すべきものと決定いたしました。
なお、例によりまして本会議における委員長の口頭報告の内容その他は便宜委員長に御一任願います。
本案に賛成の諸君の御署名を願います。
多数意見者署名
上原 正吉 一松 定吉
宮城タマヨ 三橋八次郎
棚橋 小虎 小野 義夫
楠見 義男 加藤 武徳
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/144
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145・郡祐一
○委員長(郡祐一君) なお、議員派遣に関する件についてお諮りいたします。
本委員会におきましてかねて懸案となつておりました大村入国管理事務所及び同人国者収容所の施設及び事務処理の状況の実地視察につきまして、国会開会中のことでもございますので、三名五日程度で議員派遣を行いたいと思いますが、御異議ございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/145
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146・楠見義男
○楠見義男君 ちよつとお尋ねしますが、今の議員派遣というのは、現にこの委員会で審議中の法案の審議に資するためにやるのか、その法案はどういう法案かお聞かせ頂きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/146
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147・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 外国人登録法の一部を改正する法律案に若干の関係を持つておると思いまするが、それよりむしろ大村の入国管理事務所につきましては、かねがね本委員会で視察すべきものという御意見がしばしば出ておりましたので、この際お諮りをした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/147
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148・一松定吉
○一松定吉君 私はこの非常に経費節約のときに、近頃議員が地方に出張していろいろな調査をする機会の多いことを実は慨歎しておる一人です。それだけの国費を使つて出張して、それだけの効果が挙れば、これは極く結構なことでありますが、ただ頭数を揃えて出かけて行つて、そうしてちよつと外観だけを以て帰つて、そうして報告もろくすつぽしないでそうしてやるなんというようなことは、本当に今日の時局から見て、ここでよほど慎重にやらなければならんと思うのです。本日のこの出張について異議を言うわけじやございませんが、一つこういう点について本当に国会議員の全部が頭の切り替えをして、成るべく費用を節約して、そうして出張等は少くして、若しどうしてもしなければならんのなら、人数を減して、そうして有効適切な視察をせられるということに御留意をせられることが必要と思う。さなきだに国民はこの出張の多いこと等については随分いろいろな非難の声を聞く折柄でありまするから、そういうような意味からして御考慮を願いたい。でありまするから三人行くところは二人行く。五人行くところは三人行くというようにして、本当に効果の上るような視察をして頂いて、それがこの国会のいろいろな各方面の法案、予算の審議等に本当に効果が挙がるというように御留意をして頂くことを前提にして私は賛成いたしますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/148
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149・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 御趣旨をよく体しまして、殊に国会の開会中でございまするから、日数の切りつめ等の点については私もよほど留意しなければならないと思つております。さような留意をいたしまして本件を取扱い、議員派遣をいたしますことには御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/149
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150・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 御異議ないと認めます。さよう決定いたします。
なお、派遣議員の人選等については、便宜委員長に御一任願いたいと思いますが御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/150
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151・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 御異議ないと思います。
次回は三月十六日火曜日午前十時から開会いたします。
本日はこれを以て散会いたします。
午後三時十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X00819540311/151
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