1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十九年五月十一日(火曜日)
午前十時五十二分開会
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出席者は左の通り。
委員長 郡 祐一君
理事
上原 正吉君
宮城タマヨ君
亀田 得治君
委員
楠見 義男君
中山 福藏君
三橋八次郎君
棚橋 小虎君
一松 定吉君
羽仁 五郎君
国務大臣
国 務 大 臣 木村篤太郎君
政府委員
法制局長官 佐藤 達夫君
保安庁長官官房
長 上村健太郎君
事務局側
常任委員会専門
員 西村 高兄君
常任委員会専門
員 堀 真道君
説明員
保安庁保安局調
査課長 綱井 輝夫君
法務省刑事局公
安課長 桃沢 全司君
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本日の会議に付した事件
○日米相互防衛援助協定等に伴う秘密
保護法案(内閣送付)
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001・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 只今から本日の委員会を開きます。
日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案を議題にいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/1
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002・羽仁五郎
○羽仁五郎君 この本法案のようなものが是非必要であるのかどうかという点と関連しまして、この日米安全保障条約に伴つて刑事特別法というものがすでに成立しておるので、日本に駐留するアメリカ軍隊の秘密の保護というものがその法によつてなされているのであります。それでもなかなかその法律というものだけでは、日本の防衛隊に借りているアメリカの軍機の秘密というものは防げないというところから本法の立法を求められているのでありましようけれども、併し本法のようなものを作らなければならないかどうかということを我々が考える上に、その前に日米安全保障条約に伴う刑事特別法の運営の実際はどうなつているか、それについて御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/2
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003・桃沢全司
○説明員(桃沢全司君) 前回いわゆる刑事特別法第六条違反事件が二件と申上げたのでありますが、その後調査の結果正式に立伴いたしましたのが四件あることがわかりました。この四件について大体の内容を御報告申上げますと、その一は、米国駐留軍の機密に属する日本防衛空軍の移動などの事項を記載した文書を所持した者を、他の事件で検挙いたしまして、そのような文書があるということがわかつたのであります。その結果、刑特の第六条違反として捜査を進めたのでありますが、結局この文書を第三者から預つていたというので、その内容は知らないという弁解を容れまして不起訴処分にいたしておるのでございます。
第二の事件は、或る料理店で米駐留軍の将校から合衆国軍隊の機密事項であるB二九型飛行機の性能構造等を聴取して探知したこういう事件でございます。この事件はMPのほうで丁度そこに居合せておりまして、この米軍の将校を検挙した模様でございます。これに関連して日本側でもそれを聞いた会社員を取調べたのでございますが、これは軍事機密を探知する気持がなかつた、雑談を始めたところが、その中尉がたまたまそういうことを話出したに過ぎない、こういう事情が判明いたしましたので、これも不起訴処分にいたしておるのでございます。
第三の例は、合衆国軍隊の機密である軍事施設の位置、航空機の編制、装備等に関する事項を記入した文書を人に配つているのを発見いたしましてこれを取調べたのでございますが、その内容がアメリカ合衆国軍隊の機密であるかどうか、これを十分検討いたしました結果、これには該当しないということが判明いたしましたので、これも不起訴処分にいたしております。
第四例は合衆国軍隊の基地におきまして写真撮影禁止の表示をしているにもかかわらず、その内部を写真撮影していた、又同じくその基地の機関銃座及び機関銃を写真撮影していたということで、取調をいたしたのでございます。この機関銃座につきましては、一応機密に該当するのではなかろうかという疑いがあつたのでございますが、併しながら検察庁といたしましては、この一般人の通行し目撃し得る場所と、状況において撮影したものがありまするから、結局公にされているものと判断すべきものと思いまして、これも不起訴処分にいたしているのでございます。
以上四件だけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/3
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004・羽仁五郎
○羽仁五郎君 大変有益な御説明を頂載いたしまして、その文書を参考のために頂載するわけにいきませんでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/4
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005・桃沢全司
○説明員(桃沢全司君) 只今申上げた程度でよろしうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/5
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006・羽仁五郎
○羽仁五郎君 はあ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/6
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007・桃沢全司
○説明員(桃沢全司君) 承知いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/7
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008・羽仁五郎
○羽仁五郎君 それは日米安全保障条約に伴う刑事特別法の事件は、日本側のその四つの事件は、先ず第一にその事件が告発されたのは、それはどういう手続で告発されたのか、今おわかりでございましようか、おわかりであれば……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/8
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009・桃沢全司
○説明員(桃沢全司君) この捜査の端緒のわかつているものもございますし、わからないものもあるのでございまして、若し御必要ならばなお原局のほうに問合せをいたしまして明瞭にさせたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/9
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010・羽仁五郎
○羽仁五郎君 それではついでにお願いして恐縮なんですが、その告発の端緒というものは、それとそれから日本側のそれは検察庁でお扱いになつて日本側の裁判所で裁判されているわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/10
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011・桃沢全司
○説明員(桃沢全司君) 日本側の警察で逮捕したのもございます。それを検察庁が身柄を引継ぎまして、検察庁或いは在宅のまま取調べを検察庁でいたしまして、検察庁で不起訴処分にいたしております。裁判所のほうに起訴はいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/11
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012・羽仁五郎
○羽仁五郎君 そうしますと先ほどの事件の端緒がどういうことで始まつておりますかということと、それからもう一つは今御指摘になりましたように、いずれもいわゆる軍事上の秘密に該当するのじやないかという疑いがあつたけれども、該当しないという結論を得られたというわけですが、その軍事上の秘密に該当するかしないかということを検察庁で断定、判断をされますときの根拠ですね、何に基いて機密に該当するとかしないとかいうことを判断されましたか。検察庁の独自の判断でされたのか、或いはどこかの意見を聞かれたのか、その点おわかりでしたら……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/12
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013・桃沢全司
○説明員(桃沢全司君) これが刑特のいわゆる機密に属するかどうかという点は、刑事特別法の規定の建前から申しましても、アメリカ合衆国の軍のほうに問合せをしなければわからないという関係になつております。併しながらそれが公にせられているかどうか、されているものであるかどうかというような法律判断は、これは独自の立場で検察庁でいたしておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/13
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014・羽仁五郎
○羽仁五郎君 これはなお只今のお願いしましたようなことについてのお調べを頂戴してから伺うべきことがあると思いまするが、今伺つておりました四つの例でも、第二の場合ですか、その料亭において米軍の将校と会食中に機密に触れるような問題についての話を聞いたこと、これなどは全く先日来本法案において私が強調しております部内の機密ということの問題で大部分の問題が解決されるということではないかと思う。で、まあやはり恐らく米軍の場合は別でしようけれども、日本の場合、乏しい国費、而も国民の犠牲において置かれているところの保安隊なり何なりそういうところの方々が、しばしば料亭に出入されるというようなことは恐らくないと思うのですが、併し世間ではそういう点の批判もないとは言えない。そうして而もそういうところで以てまあ普通の世間の言葉で言えば、得意になつていわゆる秘密に類するようなことを言う。これは木村長官御自身にしてからが現在の日本の保安隊には大した軍事上の秘密はないのだろうという国会議員の質問に対して、さにあらずというような、言葉を使われて、フリゲート艦にレーダーなり何なり高度の秘密があるというようなことを、まあこれも客観点に見れば、一種の放言に類するのじやないかという疑いを受けやしないかというふうに思われるようなふうにも思えるようなこともおつしやる。で最高の責任を持つておられる方がそうであれば、多数の方の中には、いわゆるこれはもう秘密ということに伴う心理上必然的のことでして、戦争中にも我々しばしば経験したように、これは秘密なんだがなんと言つてその話をされる、甚だ迷惑、而もそれは大した秘密でもありやしない。これはやはり国民にとつて非常な迷惑です。これは秘密なんだけれども君にちよつと話しておくのだ、というようなことを言つて話をするような気風が戦時中は非常にありました。それで随分迷惑をこうむつた人もあるのです。第二の例は、端的にこの種の問題というものを、先ず第一に部内の規律の確立ということによつて解決されるということを表わしていると思います。ですから刑事特別法において今御説明になりました四つの例の中の二五%というものは明瞭に内部規律によつて解決される。この四つの例だけでパーセンテージまで申上げるのは、議論が少し行き過ぎるかも知れませんけれども、大ざつぱな議論としては、そういうこともいえるのではないか。
それから第一の例、即ち米軍の移動に関する書類を持つていたということですが、これは昨日申上げました、万一日本に原爆基地などが置かれているのではないかということがあれば、やはり国家の安全ということに対する一つの善意に基いて国民がそれらについて知りたいというふうに考える、そのよい例……。恐らくこれは年月日を伺わなければ断定できませんが、朝鮮で戦争がだんだんひどくなるのではないかというようなことを国民が、一部の人は喜んだかも知れないが、大部分の国民は非常に悲んでいた、そういう時代の事件じやないか。従つてやはり政治が軍事に優先するという原則が貫かれる限り、軍隊の動きというものに対して国民が知りたいと考えるその権利はあるのだ、そういうことと関連して来る。
それから第三の例は、もう少し詳しく御説明を伺わないとわかりませんが、想像するに、恐らく学校、文教地区とか、そういう近所に米軍の施設ができるとかいうことじやないか、それに反対をしなければならない。文教地区の近所に米軍の施設ができれば、その近所に風紀上性教育関係などで、処理のできないような問題が起つて来るというようなことから、それに反対される方々がそういうようなものを配つておられたのではないかと思う。
それから最後の場合は機関銃座の写真を写したということをいえば、これは如何にも機密を探知しようとした、これも木村長官がしばしば繰返されるようなお言葉や、或いは日本の外務大臣などがそういうことを不謹慎にも言つておられるが、何かソビエトの手先にでもなつて、アメリカの機密を探ろうとしている悪質なものだという議論をやつて行けばそういう議論にもなる、そういうような虞れが辛うじて検察庁が健在であるためにさつきのような御処分になつたのではないかと思う。そういうふうな点についてなおこの四つは、これは今までに刑事特別法の適用を受けている全部の例でしようか、まだこのほかにもあるでしようか。若し全部の例だとすれば、これらについてもう少し詳しい御説明を頂いて、後に審議の参考にしなければならないというふうに思うのですが、これは全部でございましようか。そしてもう少し詳しく御説明を頂けますでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/14
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015・桃沢全司
○説明員(桃沢全司君) 検察庁で正式に取上げまして処理いたしましたのは、この四件だけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/15
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016・羽仁五郎
○羽仁五郎君 この問題に関連して、やはり前からお願いをしておいたのですが、法務省のほうから一度、この最近、昨年から本年あたりにかけて、かなり人権蹂躙の事件が頻発していたように思いますので、それについての御説明を伺つておきたいと思つたのですが、これもどうぞ一つ、人権蹂躙を根絶したいということはお互いに全力を挙げておることでありますので、決して私ども枝葉末節の点をほじくつたり、或いは揚げ足をとつたりしようという気持は毛頭ないのでありますから、どうか詳しく……。或いは郵便配達をされている方に向つて警官がそれに信書の秘密を侵す虞れのあるような行動をとられた場合とか、或いは思想調査として社会上問題になつた場合であるとか、或いはこれは法務省の所管には属せられないのですが、東京警視庁の警察防犯協会というようなものの副会長が前科七犯の方であつて、而もそれが最近詐欺かなにかをされて逮捕されて、そういうことがわかつた。それで田中警視総監は、新聞に載つておつたところでは防犯協会というようなものは直接タツチできないという建前になつているというふうなことをおつしやつて、それで遺憾に堪えないということを言つておられます。誠に堅白同異の弁というのか、自分のほうを有利にするためには、タツチできないというふうに言われる。他面では十分タツチされている場合もあるというような点で世間の批判を受けておられるようですが、これらの事件が多々あります。それから東大教授でしたか、東大の教員の方の留守宅に警官か何かが入られて奥さんが拒絶されるのに本箱を検査したというような事件、こういうような事件が新聞で我々が見ましたところでも随分多く発生していますので、これらについて必ず人権擁護局なりなんなりで一般に御調査があると思いますが、それについての御説明を頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/16
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017・郡祐一
○委員長(郡祐一君) その点につきましては、私から申上げますが、羽仁委員のお話がありましたので手配をいたしました。それで公安調査庁、人権擁護局、それから今お話の中の事件の若干につきましては、この委員会でも或る程度詳しく聞きました部分もございますが、その後時日が経過しておりますので、関係のそれぞれの責任者に出席するようにいたしておりますから、これは日を改めまして一つ答弁させる、それから……ちよつと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/17
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018・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/18
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019・羽仁五郎
○羽仁五郎君 今の人権蹂躙問題については、やはり本法案が人権を蹂躙するようなふうに運営される虞れがあるという批判もありますので、この本法案の審議の過程において今の人権蹂躙問題についての説明を伺つておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/19
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020・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 承知をいたしました。大体十四日又は十五日、大臣の出席を要しませんので、政府委員から聞きます日に入れるつもりで予定をいたしておりますから、必ず本案審議中に入れることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/20
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021・中山福藏
○中山福藏君 私が大臣にお尋ねしたいのは、極めて大ざつぱな問いでありますが、大臣が先に衆議院においてなさつた御論議を新聞で見まして、それに基いてちよつとお尋ねしておきたいと思うのですが、木村保安庁長官は先達つて憲法の改正近きにありということと、それから自衛隊というものは、私個人としては軍隊であると思うという御言明があつたと承つておりますが、これは野村吉三郎氏が先般公述人として衆議院に出た際に、日本の自衛隊というものは立派な軍隊であるということを言つたということを参酌してのお話であるのか、或いは自分自身そういうふうにお考えになつておるのでありましようか。これは秘密保護法関係をあとからお尋ねする立場から、一応前以つて長官の思召しを聞いておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/21
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022・木村篤太郎
○国務大臣(木村篤太郎君) 御承知の通り軍隊とは何ぞやということであります。これははつきりした定義はないことは御承知であろうと思います。そこで外部からの不当侵略に対して対処し得る実力部隊を軍隊と称するのであれば、まさに自衛隊は軍隊と言つてよかろう、こういう意味であります。併しながら御承知の通り憲法第九条第二項においてはいわゆる交戦権、交戦国として有する権利を持たないということになつておるのであります。これを含めて軍隊の定義を下すなれば、これは或いは純粋の意味における軍隊ということは言えないかもわかりません。併し大体において外部からの不当侵略に対する実力部隊を通称軍隊と言つているようでありますから、その意味におければ軍隊と言つてよろしい、こういう意味のことを申しておるのであります。それから憲法改正問題については、憲法改正の論議はまさに近く行われるであろうと思う。併し憲法改正ということは、国の基本法を改正するのであるから、これは国民の総意に待つべきは当然である。国民が憲法改正の時期至れりとするなれば、これは憲法を改正すべきである。この意味においては、だんだん国民の間にも憲法論議が行われておるようだから、憲法改正の問題も近く生ずるたろう、こういう意味のことを申したのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/22
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023・中山福藏
○中山福藏君 私がなぜこういう質問をするかと申しますと、政府は国民をごまかしているという感じを国民に与えているのです。これは、上これを行なえば下これにならうでありまして、嘘をつかない国民を育て上げるということが、政府のとるべき最も必要にして、又最も留意をしなければならん点だと思うのであります。いわば裏表のない人間が一番必要じやないかと思う。だからよく戦前には権力者、いわゆる政権を握つている人はどういう行動をしても、国民は御無理御尤もでこれについて行くのだという思想が堕性となつて、日本国民の心理のどこかに潜んでいると私は考える、これは今日といえどもなお払拭されていないと私は見ているのであります。従つてこういう新らしい憲法から発足したところの、いわゆる文化的にして而も民主的な国民を作り上げる、而も真理と平和を希求する人類というものを育成しなければならんというような観点から参りますと、政府の一挙一動というものは人心に偉大な影響を及ぼすということは、大臣みずから御存じの通りであります。従つて、おれは個人としては軍隊だと思うけれども、政府人としては戦力なき軍隊であるとかいろいろな説明をせられる、自分としては軍隊と思うが、併しその政府の大臣の席におるから、どうもそう言うわけにいかんというような理論をいうものが、如何にも私は窮屈に聞えるのです。今日ではもう小さい子供までも、汚職事件保全経済事件とかというものに注意を払つて、目を皿のようにして新聞を読むのです。大臣というものの御談話が非常に影響を及ぼす、自分としては軍隊だと思うけれども、止むを得ず政府に列しておるから、軍隊じやないと言わなければならんというような挙措は、その表裏があるのじやないかという疑いを与えているのですね、これは大変に大事なことだと見ているのですが、こういうことにつきまして、はつきり態度をおきめになつて、大臣であろうが私人であろうが、自分の意見というものはまさにこの通りであるという合一した意思表明をなさるということでなければ、私は国民の思想善導とか、又国民にかれこれ言う政府の資格はないのじやないかと実は思うのであります。これは私のためじやございません。政府のため、又木村長官のために絶対に必要であると考えておるのであります。今日こうして秘密保護法案が出ましたけれども、国民の中には、おれなんかにこうして秘密保護法案をおつかぶせて、おれなんかだけを取締ろうとしておるけれども、政府というのは裏表ばかりやつておるじやないかというような感じを与えているのじやないか。あの新聞記事を見てから私としては非常に関心を持つておるわけでございますが、これは長官の只今のお答えは憲法の改正近きにあり、自分は自衛隊を軍隊だと思つておるということから推して行けば、結論的には憲法の改正をどうしても云々しなきやならんということになつて来るわけでありますが、そういう考え方からこのMSA協定というものがここへできまして、他の国とMSA協定を結んだアメリカとの関係を見てみまするというと、殆んど全部が軍事的な援助ということになつておりますが、日本に関する限りにおきましては経済援助であるかのごとき言明なり、或いは政府の発表になつておるようでございます。従つて先ほど大臣にお尋ねしたが、裏表ということとこのMSAの関係について日本政府の国民に対する何と申しますか、御発表もやはり裏表があるのじやないかということを国民が考えるようになつているのですね。ですから外国対アメリカの関係から行けば、殆んど全部が全部軍事援助という姿をとつておるのです。日本に参りました際には、これは軍事援助じやないということから、それじや軍事援助でなければ秘密ということが生まれて来ないじやないかという感じを持ち得るのですよ。国民はその点について知りたがつている。米国の外国と日本とに対する軍事援助の内容は一緒ですよ。政府の表裏ある発表が国民の思想に悪い影響を与えておるのじやないかと実は気遺うのですかね。こういうのが蓄積して、累積して参りまするというと、原子灰か累積して人体に害を及ぼすということになると同じような結果になるのではないか、少量で今は人体に影響を及ぼさないでおる。毎日々々つもつて行くというと、大量になつたら、これは人体に影響を及ぼすようになると思うのです。こういうことが重なつて行きますと、何か政府は横着にあんたことばつかりやつておるということになつて、政府の威信が損われるようになるから、この点は私ははつきりさしておくほうが木村長官のおためだと考えますが、どうでしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/23
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024・木村篤太郎
○国務大臣(木村篤太郎君) 重ねて申上げますが、私は余りに言葉の末に眼がとらわれておるのじやないかという感じかするのであります。先ほども申上げましたように、軍隊であるとか何とかいうことより根本問題は、論議されるのは結局憲法と自衛力の関係であろうと考えるのであります。そこで先ほども申上げましたように、一体軍隊というものはどういうものだ、これは学説上私は定説がないと考えております。そこで外部からの不当侵略に対して対処し得る実力部隊を軍隊と呼ぶのであれば、これは自衛隊も軍隊と呼んでよろしかろう。その意味から行けばまさに軍隊になる。こういうことは私ははつきり、言つておるのであります。従いまして我々の考えておるところは、終始一貫しておると私はこう考えております。それでこのMSA援助にいたしましても、これは外務大臣もはつきり言つておりますように、根本は軍事援助なんであります。これに附帯するのが経済援助なんであります。これはもう筋が通つておると思います。で我々といたしましては、どこまでも日本の独立と安全を期するために、外部からの不当侵略に対処し得る実力部隊を持たなければならん。この意味において防衛庁設置法、自衛隊法を立案して提案したわけであります。私の考えといたしましては、およそ一国としてはこれは自衛権を持つておるのは当然だ。これは人間が正当防衛権を持つておるのと同じことだ。如何なる国といえども独立国家たる以上、自衛権を有することは当然である。憲法もこれを否定しておるわけでない。その自衛権の裏付になるものは自衛力だ。ただ安保条約にも言つておりまするように、日本といたしましては他国に対して攻撃的脅威を感ぜしめるようなそういうような大きな実力部隊は持たない。それは結局自衛となることにおいて、他国の侵略の用に利用せられるようなことがあつては相ならんという観点から、憲法第九条ができていると我々考えておるのであります。その範囲内で置けば自衛力は持つてよろしい。そしてこの自衛力というものはその範囲に至らざる程度のものであつて、日本の国家の独立と安全を期するために設けられるものである。この趣旨を終始一貫して私は述べておる次第であります。或いはこれを十分御理解下さいますれば、私は納得が行かれるものと信じて疑わないところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/24
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025・中山福藏
○中山福藏君 よくわかりました。長官の言われることはよくわかるのです。併しそうおつしやることがそれは長官の考えておられる本筋だと私は思う。そうするとこれは明らかな軍隊であり、軍事に関するところの装備であり、又或いは情報であるのであります。そこに嘘というものが国民の頭に投げつけられておるのじやないかと私は非常にこれを気遣う。私は長官の言われることはようわかります。国家の自衛は人体における白血球と同じように、黴菌を抹殺する力を備えておらなければならんということは、我々人体を備えておる人間はことごとくよくわかる。赤血球だけでは生きておれんということはよくわかる。安価な私は平和論者でない。遠心力と求心力が中心に向つて並行しているときに、初めて社会は安寧だという確信を私は持つておる一人であります。従つて白血球の役は自衛隊であります。だからこれを否定するものじやありません。然らば私が申上げたいのは、MSA協定というものはそういう力を持つておるところに初めて軍事の秘密、いわゆるそういう情報、装備品に対する秘密というものが生れて来るのであります。経済援助だつたら秘密はないはずだ。そうすると憲法の第九条と秘密保護法案と裏はらのまるきり表向きはこれは憲法に禁じてあるような感じを与える法律であるということが言える。そこをさらりと男らしく達磨大師式に悟りを開いて、ぴしやりと国民に、これは憲法はこうなつているけれども、こういうふうにして行かなければ国は持てんのだ。だからこれを憲法改正するに至るまでやれは、白血球の役を務めるところの装備品、設備、情報というものに対して国家としての秘密は、どうしても要るのだと、なぜ私はあつさりと言つてくれないのか。憲法の第九条はこれは憲法論者によつて如何様ともこれは解釈できるのです。だから長官は法律家であるからよく御存じで、清瀬理論なんかも間違つていると言えば間違つているのです。これは間違つていないとも言えるのです。学説は紛々として入り乱れておるのでありますから、これがいずれが正しいかということは言えないと思うのです。その言えないものを両方から利用しているということがある。政府もこれを利用している。私はこの態度は卑怯だと思うのです。こういうことは文明国家としては私はやつてはいけない事柄ではないかと、少くとも国民思想の上に及ぼす影響を考えて、こういうところから割切つたすべての制度が生れ出ない根源が日本の国に存在しておるのではないかと実は心配しておるのです。だからしてもう少しあつさりとした融け合つた気分で丸い卵も切り様で四角になるのですから、これは政府の方々もあつさりと悟りを開いた態度で国民に抱きついて、こうして行こうじやないかという融け合つた気分がそこに生まれて来なければ、これはなかなか大変ですよ。こうしたお互いに議論ばかりしてこうして嘘か本当か憲法九条の解釈はどうかというような実に下らん、下らんと言つちや実は語弊がありますが、余り時間をかけてはならないようなことに、その日暮しを議会でもやつているのです。それはさらりとした悟りをお互いに開いていない結果だと私は見ておる。私はそういうふうな気分を持ちまして国家というものはやはり人体における白血球を備えて、動脈に入つて参りまする黴菌を殺すところの力が必要なんたから、身体これ即ち国家であります。私はその点に関しては一つの信仰を持つております。だから私の議論は間違いないと私はこういう確信を持つておるのです。この只今申上げるように、これが軍需品でなければこれは秘密は要りませんよ。そうするとこれは憲法の精神に反して来ることになりますから、こういう点を一つ十分お考えになつて、単に憲法九条の範囲内では自衛隊は設置し得るのだというような細かい御解釈をなさらずに、もう少し大つぴらに堂々と私はこういう点は御努力になつて、早急にそういう意味において憲法改正をするから安心してくれとなぜ言えないのかと私はこう考えておるのです。これは秘密保護法ですからね。これに含まれております保護される客体というものはよく私にはわかるのです。だからそういう点を一つ、その基本観念を今は大臣がおられるからちよつと聞いておきまして、あとは局長さんか法制局長官にお尋ねしたいと思いますから、一遍その根本理念をもう少し、一つ何でございますから、剣道の達人と言われております木村長官は、一事は万事に通ずるで、沢庵禅師は柳生但馬守と非常に仲がよかつた。悟りの道は武道に勝ると言われておるのです。私はいずれの道でも共通することだと考えておりますが、もう少し一つあつさりした気持でこういう点に関する一つお気持ちを発表して頂きたいということを特に私はお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/25
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026・木村篤太郎
○国務大臣(木村篤太郎君) 只今切々たる議論を拝聴いたしました。私が先刻申上げたことは、自分の信念を吐露しておるつもりであります。繰返すようでありまするが一応理論づけるために申上げたいと思います。
先ず第一に、憲法の問題であります。もとより国家といたしましては自衛権の存在することは当然であります。自衛権の裏付けはいわゆる自衛力であります。この自衛力は勿論憲法第九条一項によりまして国際紛争解決の手段として、或いは戦争をしたり、或いは又武力の行使をしたり、武力の威嚇をしてはならん、これは当然であります。併しながら外部からの不当侵略に対してこれを排除しよう、これはいわゆる個人の正当防衛と同一であります。当然これはなし得ることであります。これは自衛権の範囲内であります。自衛権を行使するための自衛力、これは国家として当然であることは論を待たないのであります。ただ自衛力の名の下に、大きな戦力に至るようなものは持つてはならないことは第二項に規定されておるところであります。即ち戦力に至らざる実力は、当然国家として持ち得ることは論を待たないところであります。而して今御審議を願つておりまする自衛隊法による自衛隊はいわゆる我が国の平和と独立を護り、国の安全を期するためにこれを設置せらるるものであります。要は外部から不要侵略に対してこれに対処する。いわゆる間接侵略、直接侵略に対して日本の国を防衛するために設けられたものであります。これは私は憲法の範囲内において当然許さるべきものと、こう考えておるのであります。而してこれを軍隊と称するかどうかということになりますると、先刻申上げた通り軍隊というものは何ぞやということの定義ははつきりしていない。併し外部からの、不当侵略に対して対処する実力部隊を以て軍隊と称するなら、まさに自衛隊は軍隊である、軍隊と称してよろしい、こう私は申しているのであります。だからその意味において国民が自衛隊は軍隊だと言うてこれは一向差支えない、私はこう考えているのであります。
而して更に秘密保護法は、この自衛隊が将来MSA協定によつてアメリカから供与を受ける装備品の中で高度の秘密性を持つているものを保護して行こうという目的を持つて立案しているわけであります。根本から申しましたら、この秘密保護法案というものは結局我が国の平和と独立を守り、国の安全を期することを目的とするものである。こういうふうに我々は解すべきだと思います。これは私の信念を以て申上げる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/26
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027・中山福藏
○中山福藏君 おつしやることはよく私もわかるのであります。法律上の因果関係を、どうも因果関係が中断されているような、いわゆる憲法との関係ですね。連絡が一貫しておりませんので、その点をちよつと御注意を喚起するためにも、私はお尋ねしておかなければならないと思いまして、お尋ねした次第であります。そこで戦力でも何でも、いろいろ議会でもおつしやつておりますが、どんな小さくてもやはり武器は戦力になり得るのです。これは相対的なものです。例えばモナコのような国と戦争するときには、モナコに対して圧服するだけの武力を備えておれば、これは幾らアメリカと対等な戦争ができないときでも、やはり戦力であると言える。例えば朝鮮と戦争するにしても、これは相対的なものでありまして、向うをやつつけるような力があればやはり戦力であります。併しこういう法律の論議を幾らしても、これは私はもう論じ尽されているのでありますから、そういう点については御答弁を煩わしたくないのであります。どうも議会というものはこの三年来この問題にひつかかつて、ずい分政府も議員の方々も苦労しているのでありまするから、もう少し両方から和やかな春風駘蕩たる論議を戦わして、早急に憲法の改正ということが必要であるということを私は痛感しているのであります。そういうことはもう一応これで打切りますが、ただ一遍、私は本会議で長官に御質問申上げた点で、どうも長官からひやかし半分の答弁がありましたので、ちよつと又念を押しておきたいのですが、中山さんに惚れた女が云云という言葉を使われて、私も少し年寄りなから赤面したのですが、あのときのお言葉は、秘密を探るのに一番手取り早い問題は、女を暗躍させることであると私は思う。併し外面的に不当な手段によらないで秘密を探知し得る方法という、不当なということはその場合入らんのですね。酒を飲ましたり、麻薬を飲ましたり、そういう不当な手段を以て秘密を探知したときにこれにひつかかることになつておりますけれども、向うさんがおいでになつたときに、これはその人間の一つ関心を呼び起せば、好意を持たれようと思つて、男というものは心理的に弱いものですから、ややもすると秘密を打ち開ける。これは酒を飲ませないでも、麻薬をかがせないでも、進んで男のほうから言うのです。これは不当な手段に入らない。これか一番多いのですよ、世界では……。そういうときにどういうふうにお取扱いになるかということ、一つその一点だけをあなたにお尋ねして、ほかは他に譲りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/27
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028・木村篤太郎
○国務大臣(木村篤太郎君) よくわかりました。この不当の方法というのは、つまり高度の秘密を探ろうとするものが相手方に対して用いる手段が不当かどうかということが問題であると思います。探ろうという意思がないにもかかわらず、相手のほうから何かの都合でいろいろなことを秘密のことを言つて聞かせる。それを聞いたということだけでは、これは本法案の刑罰の対象にはならんと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/28
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029・中山福藏
○中山福藏君 それで結構です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/29
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030・郡祐一
○委員長(郡祐一君) ちよつと速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/30
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031・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/31
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032・羽仁五郎
○羽仁五郎君 今中山委員から非常に重要な点についての御質問があつて、それに対し政府側の非常にはつきりした答弁があつたのですが、これはやはり私は非常に重要な問題だと思うのです。でこれは恋愛というふうな関係というのか、愛しているというふうな関係から述べたというふうなことについては、木村長官は本法に該当しないと非常に同情のある態度を頂いて、(笑声)私も中山委員のおつしやる通り非常になごやかに拝聴して、心なごむ思いがしたのでありますが、人の真情である行為というものが脅かされるというようじや、実際MSAに伴つて日本が軍事援助を受けている限りは、日本人としてはうつかり人に愛情を抱くとか、好意を抱くということはできない。それじや折角政府がお守りになろうとする我が国土の防衛というものも、殺伐たる国土の守りということにしかならない。そういう意味で私は国が守るということがいつも政府は至上命令のようなお言葉をお扱いになりますが、併しこれは抽象的には誠にその通りです。併しやはり他面守るに値いする国を作るという努力と並行して行かなければ、バランスがとれなければ、守るには守つたが、併しそこには愛情もなければ好意もない、人と人が会つても互いに話さない。先月の文芸春秋にロバート・ユンクという人がロス・アラモスの現状について書いている。これは是非政府側も御覧願いたい。なかんずく保安庁においても十分に御考え願いたい。ロス・アラモスという町に科学者と、それと刑事探偵とこの二種類の人間しか住んでいない。そこで働いている学者の一人々々の背後には探偵がついている。その科学者が過失によつて、又は故意で原子力研究に関する秘密を漏洩しやしないかというので、一々ついて歩く。科学者が従つて家庭に帰つても自分の一日どういう苦労をして帰つて来たか、その苦労を愛する妻や家族に語つて苦労を慰められたいと思つても、語ることもできない。これはまあ今日保安庁や法制局にお勤めになつている方も、だんだんそういうふうになりつつあるのではないかと思つて恐れているのですが、このロス・アラモスの光景というものは戦慄すべき光景です。勿論日本はああいうところにまでは持つていらしやるおつもりはないでしようけれども併しアメリカだつて初めからああいう一言にして言えば非人間的な、人間がいなくなつて秘密だけがある、人間がいなくなつて国だけ守ろうとしているようなところに、初めからアメリカが行こうとしていたのではないことは言うまでもありません。併し一歩々々ああいう状況に立至つて、それを防ごうとしているときには、恐らくアイゼンハワー大統領もあれを防ごうと思つても防ぐ手段がないでしよう。今日マツカーシー議員というような人がオツペンハイマー教授を迫害しているということにまでなつている。国の安全を害する目的というものについてマツカーシー議員の解釈、オツペンハイマー博士の解釈、いずれが明らかだということは今日客観的に明らかであるし、後日歴史がこれを明らかにすることでありましよう。然るにマツカーシー議員が勝誇つてオツぺンハイマー博士を迫害する。こういうところへ我々が本法案によつて一歩近ずいて行くということを憂える人が日本国内にあることは、実に慶賀すべきことだと思います。そういうことを心配する人がいるのが、まだせめてもの望みの綱ではないかと思う。ですから私はこの国の安全を害する目的ということについては政治的な問題だと、男らしいとかフエアプレイというのはその点です。自分のほうにも間違いがあるかも知れない、相手のほうか正しいかも知れないということも、やはりここでこういう政治上の問題になれば問題になる。ですから私は最近吉田首相の生命を奪おうとする人が現われているということを、言論機関が非常に問題にしております。これはやはり本法案などとも関証がある問題です。つまりやはり人間としては或る所まで努力するが、併しそれで解決しない問題についてはこれは自分のほうが退くという場合がフエアプレイです。それでも押切つて行くというようになれば……。ですから今の法律案では如何にも刑罰もそんなに非常に重いものではない。けれども併しこれが頭を出して行けば、そして飽くまで、昨日からおつしやつているように国の秘密を守るということによつて国を守ろうという考え方がこの法案によつて確立し、それが拡大されて行くならば、その秘密を破るようでは遂に死刑を以て臨むということに必ずなる。そういう方向に行くことを我々は飽くまで阻止しなければならない。ですから私は今のような中山委員から御質問になつたような場合は適用にならないということであるとすれば、やはり私はどうしてもこの法律案について政府は新聞記者の活動、国会議員の活動というものは本法の対象とするところではないということをお答えになるべきであると思う。その点は重ねてお答えを頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/32
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033・木村篤太郎
○国務大臣(木村篤太郎君) いろいろお説を承わりましたが、これは結局世界観、人生観の問題に私は帰着するだろうと思います。およそ世の中で我々は一番考えさせられることは、世界の人類が皆平和に豊かに暮し得ることである、これは私は理想であると思います。併しこれは人間の悲願であります。我々三千年来人生を、生命を享けておるが、平和を求めなかつたものは幾人もなかろう、ことごとく平和を求めて来ていると思う。併しその平和を求め得て得べからざることは、得ざりしことは歴史の示すところである。これは私はだんだん文明が進むに連れて、最近私は書物を読んでいるが、あなたも同様御承知の通り、いわゆる西洋文明も、恐らく文明によつて人間も没落するのではないか、誠に私は悲しむべきことであると思う。世界人類がだんだん進歩して行つて、結局文明によつて人類は没落するような時期が来るのではないか、恐るべきことである。我々も決して国家が武力を持つということは欲つしません。一日も早く全世界が武力を放棄して、そうしてお互いに友愛の精神で暮して行けることを私は希つているのであります。これは皆さん御同様であると思う。併し現実はそうは行かない。現実に対してどうして処して行くかということはこれは当面我々に与えられたる課題であろうと考えております。御承知の通り只今は世界は二つに割れている。この二つの構想の中に我々は巻込まれているのであります。これをどうして切抜けて行くかというとについて、我々は相当考慮を払わなければならない。私はソビエトにおいても一日も早くあの鉄のカーテンを拭い去つて、世界の国国と共にお互いの手を握つて行くことの日を私は期待しております。アメリカも又率直にソビエトと手を握つて、そうして世界人類の幸福を希うべきであろうと考えております。真意は私はそこにあろうと考えております。併しその真意がお互いに通じないところにおいて、この悲劇が繰返されておるのであります。我々といたしましても、どうかして世界の平和が来るように何とかして努力をしなければならんということは、当然の義務であろうと考えております。併し差当りの問題として、我々は日本の国の平和と秩序をどうしても守らなければならんのだ。併し一面において日本の社会生活を危局に瀕してまでさようなことをやつてはならんということを常に申しておるわけであります。日本の国民の生存を守りつつ、どうして我々は他国の侵略に対して防衛して行くか、ここに大きな悩みと我々の努力があると考えております。今日御審議を願つております法案につきましても、いずれもその観点から私は出ておるのであります。自衛隊も、これはかようなものを置くことの必要のない時期を私は希つております。併し現段階においてはさように参らんのでありまするから、我々といたしましては憲法の許す範囲内において日本の防衛の途を講ずるということに主眼を置いて、自衛隊の設置を我々は立案したのであります。この自衛隊に対してアメリカから供与を受ける高度の秘密性ある装備についてこれを保護するということは、いわゆる自衛隊を守つて行くという上において必要なことであるのであります。これは私は必要上当然なことと考えておるのであります。事は結局日本の平和と秩序を守つて、これがやがて世界の平和を保つて行く一つの契機となるべきものであろうと、我々はこう考えておるのであります。他意はありません。この法案にいたしましても、成るたけ国民に迷惑をかけない最小限度において我々は秘密の保持をするように努力したのであります。只今御議論の報道人、国会議員の活動に対してはこの法案の適用がないようにというような御議論であります。もとより私は報道人に対してその活動を制約しようというような意思は毛頭もありません。報道人がいわゆる常識を以て取材活動をするものについては、この法案は何ら対象になつておるものではありません。併し報道人のうちにおいてもたまたま過つて、故意に秘密を収集し、これを他人に漏泄しようという者がありますると、これを取締つて行かなければならん。これは報道の普通の活動を超越したものであります。何らかの意図をもつてやる、これが危険であります。報道人の普通の取材活動においては何らの制約をしない、この建前からこの法案はできております。又議会人の活動についても、この法案については決して制約々加えるものではないということは私は断言できると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/33
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034・羽仁五郎
○羽仁五郎君 言論の自由及び国会の機能というものを制限するものでないというお答えを頂いたことを非常に有難いと思うのであります。で、これは今ふと思い出したのですが、我々の先輩である、明治初年の末広鉄腸の書かれた新聞記者回顧録というあの本の中に、末広鉄腸が逮捕されて、それで警察の留置場に放り込まれて、雨がびしよびしよ降つているときに、手枕をして寝ていた。そうしたら警察の小使が窓の外で偶語をして曰く、新聞記者を縛るということがあるかというように言つていた。これは私は実際人の恋愛の自由というものが尊重せられなければならないと同じような意味において、新聞記者が国民に対する任務のために活動せられる、その自由というものを少しでも制限して行くことは、やはり国の将来にとつて非常な憂いがある。現在の日本の新聞も十分に言論の自由の使命というものを発揮しないというのは、明治以来の伝統があつて、ともすればやはり問題になることはやめたほうがいいというふうになつてしまい、国会議員の場合も同様である。やはりこの法が適用されますときに、今の長官のお言葉の中にもありました、又それをお繰返しになるお気持も決して私どもはわからないわけではないのでありますが、新聞記者であつても、それが不当な行為である、或いは国会議員であつても、それが純粋なものとは考えられないという場合には、取締らなければならないというふうにおつしやるのですが、そのお気持のほうが主になつてしまうと、やはり折角の今の長官の本意、本当の御意思としてお考えになつているところが架空になる虞れがあります。それで新聞記者としても、つまり私は古来新聞記者が秘密を探知したために国が滅びたということはないと思う。反対に新聞記者が言論の自由の活動を制限されたために滅びた国は多々ある。一回くらい新聞記者が或いはこれは少し行き過ぎの方法じやないかと思われる方法で秘密を探知しても、それによつて起る実害というものはそう大したことはない。そうして新聞記者が活動しているのは同僚が多くいますから、新聞社においてもこれは如何にも新聞記者の仮面を被つてスパイ活動を働いているなんという人が新聞記者として続けて働くことができるはずがない。国会議員の場合も同様であります。国会議員の仮面を被つてスパイをやつているというような人が、国民によつて選挙されるはずがない。次の選挙においては必ずそれを国民が選挙しない。従つて新聞記者が不当な活動をする。国会議員が不当な活動をするということは、おのずからそれによつて是正される。而もその害は決してそれによつて国が滅びるなんていう重大な実害がそこに発生するはずはない。従つてこれらについては、そうした方法もあることを考えられて、いわゆるフエア・プレイによつて新聞記者なり国会議員がその職務に関してなしたことに対して、それを問題にしないということが原則であるという立場を守つて頂ければいい。新聞記者であろうが国会議員であろうが、おかしなことをすれば容赦しないというような気分が若し発生しますと、私は秘密によつて国を守るのではない、言論や国会によつて国を守るのだという木村長官の御本意となさつているところが架空に帰するのではないかと思います。これは仮に本法が成立しましても、どうかそういう点が絶無であるように御努力をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/34
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035・一松定吉
○一松定吉君 中山君の質問に牽連して少しばかり伺つてみたい。第三条の一項の一号ですね。「わが国の安全を害すべき用途に供する目的をもつて、」ですからそういう目的を持つて探知し、若しくは収集しなければならない。そういう目的でなくて探知したり、若しくは収集したりしたときには、勿論この犯罪は成立しないことは議論はないと思いますが、これは間違いないでしようね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/35
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036・桃沢全司
○説明員(桃沢全司君) 仰せの通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/36
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037・一松定吉
○一松定吉君 そこで或る人が、今の中山君の言うように、男女の関係で秘密を洩らされた、洩らされたときは、それは探知したのでもなく、収集したのでもない。これは犯罪にはならない。長官の言うのはよくわかります。その女が今度は他人に洩らす。そのときにこの第二号で「探知し、又は収集することができないようなもの、」探知し若しくは収集することができないようなものということの認識がなければ勿論いかんだろうと思うが、これはどうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/37
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038・桃沢全司
○説明員(桃沢全司君) その点も仰せの通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/38
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039・一松定吉
○一松定吉君 無諭そうだろう。そうすると、自分の色男からそういうことをまあ聞いたと、それを他人に洩らしたという場合に、不当な方法によらなければ、探知し若しくは収集することができないようなものだということを知らんで他人に話した。そうしてその他人が、今度は洩らしたときにはこれは問題にならん。その洩らされた人間が今度は不当の方法によつて聞いたのでもなければ、不当の方法によつて収集したものでもないのを外部に洩らしたらどうなるのです。女から洩らされたことを伺つた。探知したのでもなければ収集したのでもないから、それを自分がほかに洩らしたら、それは今度はどういう工合に取締るか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/39
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040・桃沢全司
○説明員(桃沢全司君) 理論的には第三番目に聞いた者になります。最初に洩らした者があり、それを聞いた者を第二番目に知得した者といたしまして、それから聞いた第三番目の者でございますね、今言われたのは……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/40
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041・一松定吉
○一松定吉君 第一番目は、色恋で洩らされた。それだから不当でも何でもない。探知でもなければ収集でもない。色恋で洩らされたものが、これは不当な方法によらなければ探知し若しくは収集することができないというようなことは知らない。そういういわゆる認識がない。認識がない女が人に洩らした。その洩らされた人間が今度は人に洩らしたら、どうなるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/41
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042・桃沢全司
○説明員(桃沢全司君) その者を第三番目と私は申上げたのです。やはり理論的には、通常不当の方法によらなければ探知し若しくは収集することができないものであるという認識がなければ、これはこの法案の対象になりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/42
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043・一松定吉
○一松定吉君 ならんだろう。そういうところへ穴がたくさんある。そうでしよう。そういうような穴のあるものをこしらえて秘密の保護ができるかね。どうです。これはもうすぐ行われることなんです。本当に秘密の保護をやろうと思うなら、もう少しがんじがらめにするかどうかしなければ、穴だらけです。僕はこれから一つ一つ穴を拾つて見るが……。
そこで今度はその先の、いわゆる公になつていないもの、第一条の三項の、「公になつていないもの」というのですから、これはどういうようなことで、それが世間に知れておれば、公になつているものと言うのですか。新聞とか、ラジオとか、雑誌とか講演とかというようなこと、これは勿論公になつておるのであるからして、そうでないものは公になつていないものであるという範囲に、どの程度に入るか。例えば或る人が外国、これはアメリカと日本ですが、今度はロシアのほうが、アメリカはこういうような兵器を作られてかようかようだと言うて、ロシアの人が故意にそれを新聞、ラジオ、雑誌等に発表したのですね。そういうようなものを日本にそれを発表したときにはそれはどうなるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/43
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044・桃沢全司
○説明員(桃沢全司君) 公になつていないと申しますのは、ひとりアメリカ、日本に限りませんで、或いは中国、或いは中共で、或いはソ連でそういうものを新聞、雑誌で発表したり、或いはラジオで放送した、これはやはり公になつているものと解しておりまする発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/44
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045・一松定吉
○一松定吉君 そこで或る人が、金でももらつて処分を受けようと思つて、その探知したものを発表する。その者は罰せられるが、発表したことによつてもう公になつた、その公になつたものを次から次に発表するということになると、取締りできんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/45
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046・桃沢全司
○説明員(桃沢全司君) 公になつてから後のものは、これは処罰の対象にはなりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/46
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047・一松定吉
○一松定吉君 そういうようなことを取締る必要はないのかね。立法者として……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/47
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048・桃沢全司
○説明員(桃沢全司君) 先ほどの御設例の場合と関連して参ると思いますが、一応一松委員の仰せられますように、秘密の漏洩というものをどこまでも防止するという建方にいたしますと、例えば先ほどの問題でありますと、偶然の事由により知得し又は領有したものを他に漏泄した者を処罰の対象にするということになりますと、先ほどの御設例の場合にも、やはり処罰の対象になるわけです。これは旧軍機保護法のとつておつた方式でございます。併しながらそういたしますと、又半面において多くの善意の国民がやはり罰条の対象になるということで、非常に大きな影響をもたらす、この調和を考えまして、この法案の程度でよいのではなかろうかとかように考えたわけでございます。只今御設例の新聞などで出たもの、或いは外国で発表されましたようなもの、これはもう恐らくその場合には秘密性というものもだんだんなくなつて来るのではないかと思いますので、それを処罰の対象にする必要があるかないかという点は問題があろうかと思います。殊に軍機保護法当時でございますが、戦争中アメリカなどですでに秘密を知つておるにもかかわらず、日本人だけは国内で耳をふさがされておりまして、それを言えば処罰される。もうすでにあの当時の敵側か知つておるようなことを言つてはいけないというような形になつておつたわけです。そういうようなことのないようにこの法律では考えて、国民全般の保護という面が相当この法文には盛られていると我々は考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/48
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049・一松定吉
○一松定吉君 そうすると、その裏面解釈からしまして、これは公になつていないものだと思つて発表した。ところが実際はロシアでどんどん発表しておるというようなときは、勿論犯罪は成立せんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/49
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050・桃沢全司
○説明員(桃沢全司君) それが証拠上はつきりいたしました場合には、犯罪を構成しないということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/50
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051・一松定吉
○一松定吉君 そこで公になつているのかいないのかということを知る方法としては、それは一々関係官庁に向つて問合せなければならんのかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/51
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052・桃沢全司
○説明員(桃沢全司君) ここに申します防衛秘密は、先ほど木村長官からもお話のありましたように、相当高度なものでございまして、そうやたらに発表せられる性質のものとは違うと存じます。併しながら或いはスパイにより、或いはその業務を取扱つた者の不注意によりまして公けになるという場合にも考えられますので、その場合にはこの防衛秘密から外す、こういう考え方でございます。一応は公になつていないものと推定されるだろうと思いますが、併しながらこの公になつていないということの立証がどの程度要求されるかは、個々の事件によりまして又判断いたさなければなりませんが、この立証責任は検察側にあると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/52
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053・一松定吉
○一松定吉君 これはもう公になつているものだと思うので発表したらば、犯意がないのだから犯罪は成立しないね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/53
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054・桃沢全司
○説明員(桃沢全司君) 成立しない場合が多かろうと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/54
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055・一松定吉
○一松定吉君 そういうことは、つまり私はこれは公になつているものだと思いますというので、例えば公になつているものと思うと誤解しておつて、そうして本当は公になつていない事柄を発表したときには、これは非常に公安を害するけれども、犯意がなかつたというので処罰ができないね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/55
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056・桃沢全司
○説明員(桃沢全司君) その場合処罰できない場合もあろうかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/56
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057・一松定吉
○一松定吉君 場合もあろうじやない、それはちやんと神様が見て、これは即ち認識かなかつたのだときめてかからなければいけない。事実上この人はそれだけの認識がなかつたのだと、こうきめた時分には、この公になつていないものということは知らなかつた、公になつているものだと思つて発表した。こういうことであれば勿論犯罪は成立しないわけですね、認識がないから、犯意がないから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/57
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058・桃沢全司
○説明員(桃沢全司君) 仰せのように認識のない場合には犯罪は成立しないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/58
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059・一松定吉
○一松定吉君 どうもこの法律はむずかしいのだが、第二条の「防衛秘密について、標記を附し、関係者に通知する等防衛秘密の保護上必要な措置を講ずるものとする。」とあるが、「関係者に通知する」ということでなくて、これを国民に周知せしめるというような方法をとつたほうがいいのじやないか。このMSA協定の第三条の第二項で、「各政府は、この協定に基く活動について公衆に周知させるため、」云々という言葉を使つている。ところが、これはそうでなくて、「関係者に通知する」ということだけであるが、これは範囲が非常に狭い。むしろMSAの「公衆に周知させるため、秘密保持と矛盾しない適当な措置を執るものとする。」ということのほうがいいのじやないかと思うが、これはなぜこういうように変えたのですか。これは一つ木村長官から答えてもらおうかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/59
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060・木村篤太郎
○国務大臣(木村篤太郎君) このMSA協定第三条第二項の「公衆に周知させる」とあるのは、これはさようなことではないのであります。それはこの条文を読めば極めて明瞭である。これは「この協定に基く活動について公衆に周知させる」、併し「秘密保持と矛盾しない適当な措置を執る」という意味であつて、秘密保持について国民に周知させるものではない。この協定に基く活動そのものについて国民に周知させる、併しその周知させるものが秘密の保持と矛盾してはならない、秘密の保持はどこまでも保つて行く、こういう意味であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/60
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061・一松定吉
○一松定吉君 私の言うのは、「関係者に通知する」ということでなくて、やはりこれは国民を罰するか罰しないかの問題だから、一般に、これは秘密活動だということを周知せしめるという方法のほうがいいのじやないだろうか。周知せしめないで関係者にのみ通知する、……刑罰法令は公布した以上は、何としても親切丁寧にするにはやはり「関係者に通知する」とかいうことよりも、公衆に周知せしめるというような方法をとつたほうがよくはなかつたのじやないでしようかと聞く……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/61
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062・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) 御尤もですが、この第二条で言つておりますのは、この秘密のものそのものずばりをつかまえて、兵器であればそれに標記を附する、或いは又設計図のようなもの、或いはその他のものについては口でこれはこの防衛秘密に当るものだぞと言つて気を付けよという、極く密接な取扱いの関係のある人に注意をして伝えるという趣旨であります。もう一つの協定のほうの三条ですが、これはむしろ協定そのものの実施についてのいろいろなことを含んでおりますが、例えばこの法律の場合について言えば、こういう法律ができたから気を付けなさいよというような趣旨の普及宣伝をする、これは今の協定のほうから出て来るだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/62
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063・一松定吉
○一松定吉君 今あなたのお話の、「関係者に通知する等」そこまではお説の通りでいいですが、「防衛秘密の保護上必要な措置を講ずる」、防衛秘密の保護上必要な措置を講ずるということであれば、成るたけ周知徹成せしむるということが、いわゆる秘密保護上必要な措置じやないかと思うから、今のようなことを聞くのです。保護上必要な措置、これであなた方の立法者のほうで、これで取締りは十分だということならば、何も私はそれ以上のことは言わない。
その次に三条の三号の「業務により知得し、又は領有した防衛秘密を他人に漏らした者」とある、これは昨日、職務と業務は同じだというので、私は反対しませんが、或る人が、防御秘密に対して関係のある官吏なら官吏が、防衛秘密のことについていろいろなことを知得している、若しくは領有している、それを他人に漏らした者、これは素人が見ると、人に教えたことも漏らしたことになるのじやないかというふうに素人考えでは行くが、これは正当な業務によつて生徒に向つて教えるとかというようなことは、刑法総則の規定によつて勿論犯罪を構成せんものと思うが、こういうことはやはりここに、この前に不当だとか不正とかという文字を使つておるならば、業務により知得し又は領有した防衛秘密を「不当」にという文字を入れたほうがよくはないかと思うのですが、どうですか。業務により知得し、又は領有した防衛秘密を不当に他人に漏らした者、不当でなかつたら、例えば或る教官が、漏らしたのじやなくて生徒に向つて教える、それは漏らしたのじやなくて、刑法総則の規定によつて当然犯罪を構成しない。併し疑いを持つような文句だからここにやはり、防衛秘密を不当に漏らした者、若しくは不法にとかという言葉を入れたほうがよくはないかと思うが、入れないわけはどういうわけですかと聞くのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/63
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064・桃沢全司
○説明員(桃沢全司君) 仰せの場合には、刑法三十五条の正当業務行為として違法性が阻却されることによつて賄えるのではなかろうかと考えております。業務により知得し、又は領有した防衛秘密を他人に漏らす、刑法三十五条の適用外で漏らしたという場合には措置がされるということで、差支えないのではなかろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/64
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065・一松定吉
○一松定吉君 そうだろうと思うが、成るたけ素人にわかりやすいようにするのには、そういう文句を入れたほうがよくはないか、こういうだけです。刑法三十五条の規定で、そういう不正な行為をやつた場合には勿論罰せられるが、不正でなかつたら免責行為なんだから異論ないと思うが、その点は気付いたから申上げる。
それから元へ返りまして、不当と不法と不正と、どこが違うのですか、それを明らかにしておいてもらいたい。刑法なりその他の法律では、不法若しくは不正ということがあるが、この不当という文字も近頃アメリカが来てからこういうように使われるようになつた。その区別を明らかにしておいたほうがいい。不当、不法、不正、それを一つ具体的に説明しておいて下さい。これはあとで問題になる。どういうのが不法で、どういうことが不当で、どういうことが不正だ、ここに言う不当というのは不正、不法を合すのなら合すのだということを明らかにしておいてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/65
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066・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) 取りあえず私からお答え申上げます。不法は御承知の通りに違法という場合に近いと思います。例えば家宅に侵入するというような方法をとる場合にはこれは不法であろうと思います。ところが先ほどちよつと例にも出ておりますように、酒を飲まして酔つぱらわすというようなことは不法という観念にはこれは入りにくい。併し不当な方法、これには入り得るであろう、そういうものがあり得るわけであります。従いまして不当な方法というのは不法な方法よりも広いということに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/66
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067・一松定吉
○一松定吉君 不正とはどこが違うのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/67
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068・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) 仰せられる不正と不当というところまでは研究したことはございませんが、むしろ不法よりも不正と言えば不当に近いと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/68
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069・一松定吉
○一松定吉君 まあ今はこのぐらいにしておきましよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/69
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070・郡祐一
○委員長(郡祐一君) ちよつと速記をやめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/70
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071・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて。
午後一時半まで休憩いたします。
午後零時二十二分休憩
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午後一時四十五分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/71
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072・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 午前に引続き委員会を再開いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/72
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073・一松定吉
○一松定吉君 午前中に申上げましたように、本法は非常に用語が難解の用語であり、若しくは拡張解釈される虞れのあることが非常に多いのですから、そういうようなことについて、後日法を運用する上において国民に余り迷惑にならないように、この委員会においてそれらの用語等について十分に明らかにしておいて、国民をして向うところを知らせる必要があると思いますので、そういう意味で、私は質問を続けたいと思います。この法案の成立について妨害するとか、成立は不要であるというような、若しくは憲法違反であるというような、そういうMSAの協定の承認された今日においてはそういうことはいたしませんから、そのつもりで一つ……。
そこでいろいろありますが、この日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約の第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法、この法律の中の取締りが大分この本法には取入れられておるようでありますが、この刑事特別法の第六条、第七条、第八条の規定を本法案の第三条、第四条、第五条、第六条の規定とを比較してみますると、刑事特別法の規定よりも範囲が非常に広くなつておる点がある、若しくは少しくどうだかなと思うようなことがありますから、そのことについて一つ伺つてみたいと思います。刑事特別法の第六条の規定は本法の第三条の規定とほぼ同一でありますが、そこの第三号の「業務により知得し、又は領有した防衛秘密を他人に漏らした者」という規定がこの刑事特別法にはないのですな。これは刑事特別法にないのを、ここに本法において範囲を拡げる必要があるのかどうかということ。それからこの刑事特別法には、本法の第四条の「業務により知得し、又は領有した防衛秘密を過失により他人に漏らした者は」云々という規定がない。然るに本法にそういう規定を設けたのですから、これを一つなぜここに範囲を拡大しなければならんか。若しこれが必要があるなら、刑事特別法になぜこれを用いなかつたのかということを一つ説明して頂きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/73
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074・上村健太郎
○政府委員(上村健太郎君) この法案の「業務により」と申しまするのは、保安庁職員はもとよりのこと、非常に広い防衛秘密を扱うことを業務とするものというものが相当ありまするので、ここに規定いたしたのでございますが刑事特別法のほうは直接この秘密を扱いますものがアメリカ合衆国軍人が主たるものでございまして、その点においてやや相違があると存じまするので、こちらに規定がありしまして刑特法にはないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/74
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075・一松定吉
○一松定吉君 そうすると何ですか、刑事特別法のほうには、日本のこの保安庁とかその他の方面の人が関与することが少いから、刑事狩別法には業務により、云々という規定は要らないのだ、併し本法には要るのだと、こういう御説明ですか。若しくはそれは刑事特別法にも入るべきものであつたのをうつかりして入れなかつたのだ、気が付いたから本法に入れるのだというようなことなら納得が行くのだが、露骨に本当に言わないと、屁理屈をつけては……。本法に入れるならば、やはり刑事特別法にも入れなければならない。併し刑事特別法にないので本法に入れる、あとで気が付いたので入れたので、本当は刑事特別法にも入れるのだというならば納得が行くのだが、今の点のようなことでは納得ができないのですがね、もう一遍一つ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/75
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076・綱井輝夫
○説明員(綱井輝夫君) この刑事特別法の立法に携つておりませんので、法務省の係官がもうすぐ参ると思いますが、ただ立案に際しまして、議論になりました点は、この刑事特別法のほうは何と申上げましても駐留するアメリカ合衆国軍隊の秘密である。この度提出いたしました秘密保護法案は第一義的には日本の自体の防衛上の秘密である。従いまして他国の秘密を守る、もとよりこれでおろそかであつていいというわけではございませんが、今回の場合におきましては、何よりも日本の防衛の秘密という点、それから防衛生産等に関連いたしまして多数の民間の人も業務としてこれの対象とする。そういう立場からこの刑事特別法には欠けておるというのを承知の上で業務により知得し、又は領有した防衛秘密を過失により他人に漏らした場合をも罰するという規定をここに置いたのであります。又他面こういう業務により知得する者が厳重な管理をすれば、秘密の漏洩の機会が非常に少い、以上の二点からいたしまして刑事特別法にない規定を人れた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/76
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077・一松定吉
○一松定吉君 そうするとこれは何ですか、昭和二十七年の五月七日法律第百三十八号として公布せられた刑事特別法にはそれはわざとこしらえないのだ、併し本法はわざとそれは必要があるからこしらえたのだと、こう解釈するのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/77
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078・綱井輝夫
○説明員(綱井輝夫君) 最初に申述べましたように、わざと刑事特別法には入つていないのか、或いはまあそういうことはないと思いますが、何と申しますかついうつかりして入れなかつたのか、その点は一向にわかりませんが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/78
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079・一松定吉
○一松定吉君 そう言えばいいのです、初めから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/79
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080・綱井輝夫
○説明員(綱井輝夫君) いや、そこがわかりませんので、ないのを承知して本法案のほうには入れたということを申上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/80
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081・一松定吉
○一松定吉君 それでは刑事特別法に入れべかりしものをどうかして入れなかつたので、本法は入れることが必要だと思うから入れたと、こう解釈すればいいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/81
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082・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) 刑事特別法の場合には、あえて入れる必要はなかつたから入れませんでした。今度の法案につきましては必要があるといたしましたから、入れたわけであります。その理由は結局刑事特別法のほうは先ほど説明員が説明いたしましたように、これはアメリカ軍そのものの秘密の問題でありまして、業務上の関係がかぶさつて参ります場合はアメリカの当該担任者即ちアメリカ軍隊の構成員が主として対象になるわけであります。これらの制裁関係は又別にアメリカの軍律というものがあるわけであります。何も日本で法律を作つて世話をやくというべぎ筋のものでないということが一つと、それからもう一つは、修理工場等の関係で修理のために出すという場合は、観念上は考えられますけれども、日本のものであれば勿論日本の工場に出して修理させますからして、修理工場のほうから漏れるということも今度の法案としてはそれに応ずべき措置をとらなければなりませんけれども、アメリカの場合はもう手持ちのほうの自分の工場と申しますかそういうほうでなおすのが大部分でありますからして、そのほうの心配も少いだろうということで、実際の実情が違つておりますからして法律の形も変つて来た、こういうことになるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/82
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083・一松定吉
○一松定吉君 そうしますと何ですか、刑事特別法は日本人には適用がないのですか。あなたのおつしやられるようなことは、日本人にも適用があれば、やはりアメリカの人に対しても、若しくは日本の人がこの刑事特別法の犯罪を犯した場合にも適用があるならば、日本人がこの刑事特別法の中に規定してあるようないろいろな問題について業務上知つているようなことをこれを漏らすというようなことはあるのではないか、あり得べきことである、それをここに規定していないのは、これは刑事特別法は主としてアメリカのほうに適用するのであるから云々ということであるが、刑事特別法のこの運用は、日本人が業務上いろいろな機密を知つたような場合に、やはり漏らすことがあるのではないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/83
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084・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) 私の言葉がちよつと足りませんでしたが、逆におとりになつたわけですが、この刑事特別法の場合は、この機密を保管しているものはアメリカの軍隊が保管しているわけで、日本人が業務上の立場でそれに携わる場合が一体あるだろうかというところから考えて参りますと、仮にまあ保安庁の役人が或いは保管しているアメリカ軍の機密に携わるということがこれは観念上はあるかも知れませんが、実際上はこれはないことで、アメリカの軍人さんが業務上の保管者として保管するのが普通であろうと思います。その意味でこの刑事特別法のほうでそこまでも特に取り立てて処罰規定を設ける必要はないので、それはアメリカの軍人そのものの何と申しますか、管即行としての受けべき制裁ということについては、アメリカの制裁が又あることでありますので、そこまでこちらの法律で考えるという必要はないであろうということと、それから業務上の関係で出て来るのは、修理工場などへ兵器を出した場合に、その修理工場の担任者というものか業務上それを知り行る状態になるわけでございますので、日本でもらつた今度のものについては、これはもう日本のものでありましようから、日本の工場に出して修理させる場合が多いだろう。従つて業務上の問題が出て来ますけれども、アメリカの保管している、この特別法で言つているようなアメリカの秘密というものはアメリカから日本の工場に出すということは大体そういうケースは少いであろう、むしろ自分の手持ちの工場でなおす、軍の内部の工場でなおすということでありましようから、法律の建前として業務上云々のことを謳う実益はないであろうということで謳わなかつた。従いましてその結果日本人の適用がないということは、業務上の関係で日本人の適用関係が乏しいであろうということを言つているのでありまして、それ以外の一般の関係において例えばそれを探知したとか、或いは漏らしたとかいうことは、日本人としても罰せられることはあるわけであります。部外のスパイ行動というものがあり得ます以上は、それを特別法で処罰する、そこに重点を置いてある、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/84
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085・一松定吉
○一松定吉君 そうするとこの刑事特別法にある秘密を日本人か業務上知得してこれを他人に漏らしたような場合はどうするのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/85
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086・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) これは一般原則で六条でございますか、六条にはまるわけでございます。ただ精密に申しますと、今の業務上の違いが出て来るのは、御承知のように今度の法案では第四条に「過失により」というのがございます。四条で「過失により他人に漏らした者は、」それだけが実際的に違つて来るというわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/86
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087・一松定吉
○一松定吉君 それは又あとで……。
それからその次にお伺いしたいのは、本法によりますと、第六条で「第三条第一項第一号」即ち「わが国の安全を害すべき用途に供する目的をもつて」云々のこれ、若しくは二項「防衛秘密で、通常不当な方法によらなければ探知し、」云々この二つ、それとこの前条五条の第一項の分、「第三条第一項の罪の陰謀をした者は、」云々、これだけについては自首したときはその刑を減軽し、又は免除する。そうするとこの第三条の第一項の三号それから第五条の第二項、第三項、こういうときには自首減軽は認めないのですか。認めないことになつているが、認めないのはどういうわけでそれは認めないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/87
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088・綱井輝夫
○説明員(綱井輝夫君) 本来秘密というものは漏れることを防止するのが建前でありまして、すでに漏れてしまつた秘密についてはこれは救済のしようがない。従いまして立法政策の見地からいたしまして漏れる前に自首したときはその刑を減軽し、若しくは免除する。そのほうか漏洩を防止する目的の上において効果的である、こう考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/88
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089・一松定吉
○一松定吉君 そうすると漏れないときに自首したら減ずるが、漏れてしまつたらもう自首は用いんと、こういうことですか。若しくは刑法の一般の規定によつて、まだ官に知れないとかというふうなことで自首減軽を認めるというのですか、そこはどうなります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/89
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090・桃沢全司
○説明員(桃沢全司君) 先ほど一松先生の第三条第一項の第一号、これは第六条に入つて来ますが、その次の「若しくは第二項」とございますのは、この未遂罪を指しているのでございまして、第二号の「他人に漏らした者」というのは、これは漏らしてしまつてそれが既遂になつている場合には、第三号と同様自首の減軽の対象にもしないというようなことになつているのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/90
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091・一松定吉
○一松定吉君 私のお尋ねするのは、第三条の第一項の一号と第二項これは自首減軽があるが、第一項の二号、三号に自首減軽がない、これはどういうわけかとお尋ねしたのです。そうしたら漏らしてしまつたのたからもう自首しても駄目だ、こういう御意見であつたようですが、それは漏らしてしまつてもまだ官に知れないようなときには、その良心の呵責にあつて自首するということになれば、減軽してもいいじやないか、人を殺して、殺してしまつたんだから自首してももう減軽はないのだ、殺してもまだ官に知れないときには自首すれば、自首減軽ということが刑法総則で認められているのだね。然るに漏らしたときには自首減軽が認められないということはおかしいじやないかと聞くのです。漏らしてしまつたからといつて、人を殺してしまつたからといつて自首減軽は要らんのだ、火をつけてしまつたから自首減軽はいらんのだと言つても、犯人が誰だかわからないときに私が殺しました、私が火をつけましたといつて、やはり自首古すれば刑を減軽、刑法総則の規定によつて自首減軽がある。然るに本法にないのはどういうわけかと聞くのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/91
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092・桃沢全司
○説明員(桃沢全司君) 只今のお話の一般の自首の場合でございますが、この自首の刑法総則における規定は当然この法律にも適用はあると思います。即ち第六条で減軽し又は免除するという規定のない部分につきましては、総則の自首の規定が適用になつております。第六条のはうは総則の規定とは異なりまして、減擁することを得ではなくて、減軽し若しくは免除するというふうになつている点が違つていると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/92
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093・一松定吉
○一松定吉君 そうすると何ですか、刑法総則の規定によつてすべてのやつは自首すれば減軽若しくは免除することができるとある、ここはもう必ず減軽若しくは免除しなければならんから、それでここに特別のこの条項を挙げてそういう規定をしたのだ、こういうわけだね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/93
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094・桃沢全司
○説明員(桃沢全司君) さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/94
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095・一松定吉
○一松定吉君 それはそういうように解釈すれ、ば、専門家が見ればそうなるが、素人が見ると、これだけが減軽であつて、ほかの業務上の秘密漏洩だとか、過失漏洩だとかいうようなことは自首減軽にならんように思われるからして、むしろこれは第六条なんというものは書かなくても、刑法総則の規定に自首、減軽はあるのだからというようなことではいけないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/95
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096・桃沢全司
○説明員(桃沢全司君) 先ほど申上げましたように第六条に該当するものが自首いたしましたときは必ず減軽するか、又は免除するというふうに非常に軽く取扱うことになつておりまして、刑法総則以上にこういう規定を設けることがこの法案の運用に当りまして適切である、かように考えた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/96
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097・一松定吉
○一松定吉君 それでは第五条の二項、三項、これには自首がない。然るにこれよりも重い第五条の第一項の「陰謀をした者は、五年以下の懲役に処する。」これだけは六条の規定によつて、自首すれば必ず刑を減軽若しくは免除するのだ、その罪を犯すことを教唆し、若しくは扇動したもので、まだ実行に至つていないときも同じように、自首減軽免除というものを用いたほうがいいと思うのに、五条の二項、三項にこれがないのはどういうわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/97
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098・桃沢全司
○説明員(桃沢全司君) 確かに仰せのような問題があると存じます。私ども考えておりましたのは、第五条の第一項は別でございますが、第二項の「教唆し、又はせん動した者」これは教唆、扇動が独立犯として取扱われておるわけでございます。教唆した者が、その相手方において受付けなかつた、これはどうも目的を遂げない、それじや一つ自首して免除してもらおうというようなことで免除されるということでは、これは又法の精神にも反するのでございまして、その教唆、扇動者に対しては、その行為で処分を決すべきであつて、自首した場合の減免の規定を置く必要はない、かように私ども考えた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/98
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099・一松定吉
○一松定吉君 それではこの第五条第一項の陰謀した者との権衡を失するように私は思うのですがね。陰謀した者はもう陰謀だけしたので、もう恐ろしいからやめようといつて自首した、犯すことを教唆、扇動したけれども、相手方が応じてくれなかつた、教唆若しくは扇動したのが悪かつたなと思つて自首した。その情状においては私ども同じよりに思うんだが、それを区別してわざわざ設ける必要があるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/99
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100・桃沢全司
○説明員(桃沢全司君) 只今申上げましたように、外部からの働きかけだけがこの第五条の第二項で規定してあるのでございまして、第一項のほうの陰謀は自分が何びとかと相談して、これからやろうという程度の陰謀者が、そういうことは悪いということに気が付いて自首した場合が第一項でございまして、その間第二項の働きかける者との間には法律的な差があるのではなかろうかと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/100
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101・一松定吉
○一松定吉君 私はこの刑とか何とかというものは公平でなければならんという建前から、こういうような恐ろしい罪を陰謀した、併しこれは良心の呵責にあつて、やめようと思つて自首した、こういうことを一つ我々としてはさせようと思つて教唆若しくは扇動した、併しまた彼は教唆にして、被教唆者が扇動を受けたけれども実行しなかつた、これはどうも悪かつたなと言つて自首したということを、同じように取扱うことのほうが刑事政策上いいと思うのですがそれは如何でしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/101
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102・桃沢全司
○説明員(桃沢全司君) 先生のようなお考え方も成立つと思いますが、この教唆、扇動は先ほど申上げましたように独立犯として考えておるのでございまして、あおり唆しておいて、相手が応じなかつた。それから警察に駈け込むという者までも、果して自首減免の適用をすべきであるかどうか、私どもは疑問に思つておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/102
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103・一松定吉
○一松定吉君 まあそれはその程度にいたします。
それからこの秘密保護法に反するような行動は、これはよく言ういわゆる政治犯だとかというような犯罪ですか、どうですか。この秘密保護法案が……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/103
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104・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) 政治犯という定義は非常にむずかしいのでありまして、昔の治安維持法のようなものは、これはまあ明白に政治犯と言えると思います。これは別に定義というものがきまつておりませんために、個々に判断して参らざるを得ないので、従つて学者の考え方もいろいろあるわけでありますが、まあ私どもの一応の考え方としては、この第三条の一号の「わが国の安全を害すべき用途に供する目的をもつて、」云々というようなところになつて参りますと、どうも政治犯的なものであると言つたほうが適切じやないか、そういう気持ちを持つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/104
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105・一松定吉
○一松定吉君 第三条の第一号は確かにこれは政治犯だと思うのですね。そうすると、この憲法八十二条との関係はどうなります。憲法八十二条の「裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。」これはまあそうでしよう。「但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつている事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。」これはもう明らかにしておけばいいと思うのです。学者がこれを議論していることだからね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/105
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106・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) 当然そういうお尋ねが出ることと思つておつたわけでございますが、この関係では、我我の今お答えしたしたところから言うと、政治犯に入るということになると思います。併しまあこれは先ほど申しましたように、学者の議論がありますし、第一憲法のこの条文の運用は裁判所そのものがなされることでありますから、裁判所がどういう判断をされるか、これは又別問題でありますから、我々として肯定的な解釈を申上げたところで、裁判所に対して拘束力も何もありませんので、その点は御遠慮しなければなりません。併しながら先ほど申しましたようなお答えからすれば、おのずからこの関係では公開になるでしようということになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/106
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107・一松定吉
○一松定吉君 そこで、まあ裁判所の判断は如何ようでもいいのですが、立法者としてこれはどういう趣旨でここまで規定したのだということを明らかにしておくことによつて、裁判官の判断の資料になるのですからして、裁判官に任したら如何ですか。いわゆる立法者はこういう考えでやつたのだと、そこで第三条の第一号が政治犯である、そうすると常に公開しなければならんのだということになつて来ると、秘密の保護はできないね。それを公の秩序に関することだと、こう解釈すれば、この憲法八十二条の前段で、いわゆる裁判官が全員一致でこれを秘密にするとか、公開せんでよろしいということになると、秘密の保護はできるのだが、そこはどうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/107
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108・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) それもその通りでございます。前段のほうでは公の秩序、善良の風俗ということで行きますからして、勿論後段の文章を除けて前段だけで考えますならば、当然公の秩序より秘密の問題は入つて参りますからして、前段によりまして非公開になり得る、これは当然のことと思いますが、ただ後段但書にあります政治犯罪ということに該当するというふうに裁判所で認定しますならば、これは結局秘密法廷ということは憲法で許されないことになります。どうしても公開で行われなければならない。ただ私ども考えておりますのは、公開で裁判されたということが、即ちイクオール秘密の公開になるということには、これは私は必ずしもならないと思いますが、一応少くとも法廷は公開でなければならない、こういう結論にならざるを得ないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/108
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109・一松定吉
○一松定吉君 それはあなたの御解釈の通り私も思うのですが、これが政治犯罪ということになると、いわゆる但書は本文よりも優先するという法の解釈からすれば、それは公序良俗に反しようとも、政治犯罪だから公開しなければならんのじやないか、例外は原則に優先するのですから……。そう解釈するということになると、この秘密の保護ができんということになる。これをなんとかここに立法者として、本当に秘密を保護しようと思うならば、何か考えなければならんことがあると思うのですが、その点については考慮をいたさなかつたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/109
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110・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) その点は例の先ほど来お話に出ています刑事特別法の際にも同じ問題があつたわけで、その当時から考えてはおりますけれども、まあ、結論を申しますと、要するに先ほども触れましたように、裁判所の良識ある判断に待つほかはないことでもございますからして、我々としては一応かように考えますという程度のことを申上げるほかはないと思つて、ずつと来ておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/110
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111・一松定吉
○一松定吉君 これは一つ木村国務大臣から伺つてみたいのですが、折角こういう法律を作つて防衛の秘密を保持しようというときに、こと政治犯というようなことで、公開の席において審理しなければならんということになると、この秘密の保護ということはできんのだが、これはどうでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/111
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112・木村篤太郎
○国務大臣(木村篤太郎君) 何が政治犯であるかどうかということは非常に疑いがあると私は考えております。そこで本法に該当するような問題がたまたま発生した場合において、これが具体的に政治犯なりや否やということは、各個人の犯罪当時の考え方、その他万般の事情から推定して裁判所において判断すべき事柄であると考えております。併しこの法案に該当すべき犯罪すべてが我々は政治犯とは毛頭考えておりません。要は良識ある裁判所において具体的事象を捉えて、各種の情勢及びその他の事情を判断して決すべきものである、こう我々は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/112
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113・一松定吉
○一松定吉君 そこはまあ結局裁判官がどういうようにするか、これが国家機密を守らなければならないので、このままに公判を開いていけないと思えば、裁判官の良識において適当に処理するということに、まあ期待いたしておきますが、その質問はよしておきましよう。
そこで私はこの法案をずつと詳細に検討してみますと、非常に疑わしい、解釈が如何様にもできるし、政府当局若しくは関係当局において、これはこうだと言つて我がまま勝手に自由に解釈できるように非常に範囲が広いですね。疑いが多いです。こういう点も先刻申上げたようなふうに、一つ政府当局と我々との間に成るべく疑いを少くして議論をして、国民がこういう犯罪にひつかからないようにしたいという意味において、少しくしつこいですけれども、一つお尋ねするのですが、この第一条の第二項の「この法律において「装備品等」とは、船舶、航空機、武器、弾薬その他の装備品及び資材」これは「その他の……資材」でしよう。「をいう。」これが即ち問題になるのです。「その他の装備品及び」「その他の……資材」というのは、どういうことを言うのですか。もう少し具体的に、この「船舶、航空機、武器、弾薬」に附随して、こういうものがやはり「その他の装備」になるのだ、こういうものが「その他の……資材」になるのだということを、もつと具体的に明らかにしてもらいたいね。こういうことはすぐにこれは問題が出て来るのですが、「その他の装備」……これはその他の装備に入るんだ、いや入らないんだ、その他の資材に入るんだ、いや入らないんだというようなことがすぐ疑いがあるからして、成るべく疑いのないようにこの文句を明らかにしておくためには、この際一つそれを具体的にこういうようなものがいわゆるその他の装備品、こういうものがその他の資材に当るんだという一つ例を、なるべく詳細に挙げておいて頂きたい。どなたでも結構です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/113
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114・上村健太郎
○政府委員(上村健太郎君) ここに書いてございます船舶、航空機、武器、弾薬のほかは例を挙げますと、通信器材、光学器材、或いはこれは非常に少いものと思いますが、施設器材及びこれらのものの部品、或いは交換用の予備部品、更に挙げますれば、これらの原材料等を含むものと解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/114
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115・一松定吉
○一松定吉君 それから一条の三項の第一の「日米相互防衛援助協定等に基き、アメリカ合衆国政府から供与される装備品」供与される装備品です。供与された装備品はどうなるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/115
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116・上村健太郎
○政府委員(上村健太郎君) 供与された装備品は勿論含まれておりまするし、又供与されるべき装備品につきましても、技術その他についてはあり得ると存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/116
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117・一松定吉
○一松定吉君 日本の用語としては供与される装備品というのはこれから将来に属する、されたというのは既往に属する。あなたの供与される装備品というのは、既往も将来もみな含むんだという解釈なんで、この文字の用い方はどうでしようか。疑いありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/117
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118・上村健太郎
○政府委員(上村健太郎君) ちよつと申上げるの間違いまして恐縮でございますが、供与される装備品と書いてございますのは、この協定に基きまして供与された装備品の意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/118
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119・一松定吉
○一松定吉君 そうすると供与された装備品と供与される装備品というのは、日本の用語として同じだとこういう御解釈ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/119
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120・上村健太郎
○政府委員(上村健太郎君) 協定に基きましてまあ現在供与されたものもございまするし、今後供与されるものもあるわけでございまして、協定に基きまして貸与又は供与される装備品を含んでおるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/120
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121・一松定吉
○一松定吉君 それなら文句を合衆国政府から供与された装備品又は供与される装備品とこういうように明らかに書いたらどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/121
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122・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) 御尤ものようなところが大分ありますが、要するにこれは装備品の属性を言おうとして「供与される」と言つたわけなんであります。これは日本語の文法としては間違いないと思いますが、ただ、今のようなお尋ねがありますというと、供与されたとした場合を仮に仮定すると、これは多少こじつけのようにお聞きとりになつてもかまいません。かまいませんが、この法律ができた瞬間に供与されたものだけに限るとか、法律が施行時期に入つてから向うからどんどん送つて来る、送つて来ればこの適用を受けるという意味の今の官房長のお答えだと思いますが、そういうものを含んでおる、これはまだ来ないものは情報の問題ですから、この法律の施行の点を基準として考えれば、施行後にどんどん送つて米られるものもあるわけなんですが、それも含むという意味は、供与されるということも出て来るのじやないか、かようなことが言えると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/122
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123・一松定吉
○一松定吉君 そうすると或る特定の人が、供与される装備品のことについては私は何も秘密を漏らしたつもりはございません。供与された装備品だけについてやつたのです。供与された袋備品はこの法文に支配されないものと思うてやりました、こういうと犯意はどうなつて来るのですか。その人のいわゆる犯罪の意思ですね。それはどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/123
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124・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) その人が犯罪のときにおいて、それが供与されているものであるという認識があれば、言葉の言い廻しはこれは別でありますけれども、そういう認識があるかないかをさぐつて、それがあるということになれば罰せられるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/124
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125・一松定吉
○一松定吉君 いや私は供与される装備品というのは、日本の文法から言えば未来ですね。ところが供与された装備品はもうすでに既往です。だからこの法律の制裁を受けるのは、供与される装備品についての秘密を保護しているのであつて、もうすでに供与された既往のもの、もう日本にちやんと来てしまつておるもの、そうすればこの制裁は受けないんだと思うてこれを漏らした。こういうものは犯罪の意思がないんだというので無罪になりはせんかというので聞いておるんです。犯意の問題です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/125
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126・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) ちよつと私の頭に入りませんが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/126
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127・一松定吉
○一松定吉君 こう言いましよう。これを供与される装備品ということになつて来ると将来でしよ。日本の用語から言えばこれから供与される装備品、すでに供与されてしまつておる装備品は供与された装備品、そうすると供与された装備品のことをもう今から二カ月も、三カ月も前にアメリカ合衆国から日本に供与された装備品がある、そのことを書く。そのことを新聞に書き出し、雑誌に書きテレビに出す、これはこの法の取締りの、秘密保護法の取締りには入らんのだと思つて、これは違法にならんとと思つて、そういう確信の下にこれを発表した時分にはいわゆる犯罪の意思がないということになる。犯意がないんだから罰せられんということになりますかというのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/127
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128・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) 要するにされるというのは、日本語として、は将来のことでしよう、とおつしやるところに我々の考えとちよつと違うところがございますので、先ほど申しましたように供与される装備品というのは、装備品の属性を言つておるのでありますから、違う言葉で言えば、供与されているという意味にお考え願わなければならんと思います。そういう趣旨で書いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/128
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129・一松定吉
○一松定吉君 日本人に見せる法律ですから、日本人の間において通用される言葉を使わなければ……。法制局長官のようにこれを解釈されれば、それは法制局長官解釈、日本人解釈じやないんですから、(笑声)そういう疑いのある文句は疑いのないようにしようじやないか、こういうことを申上げるために今の質問をしておるんですから、それを無理に「される装備品」というのはされた装備品だというようなことは、日本人の文法解釈では通じませんよ。そうすると今私の言うように犯罪の意思があつたかなかつたかということは、それが犯罪を構成するかせんかということになりますと、あなたのような御解釈をなされば、この文句では不穏当だから、それを何かお変えになる……、あなたの意思が両方含まれるような言葉を使わなければいけないのじやないか、こういうことを今お聞きしておるんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/129
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130・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) これは率直に言つて、もつといい言葉が得られれば、お智慧を借して頂いたらと申上げて結構です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/130
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131・一松定吉
○一松定吉君 それからさつきの「公になつていないものをいう」というこの問題ですが、これは非常にあいまいなもので、公になるとかならんとかいうことは、官庁若しくは新聞雑誌等に公にされておるものに限る、或いはアメリカと日本以外の他国で公になつているようなものも含んでいるかどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/131
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132・木村篤太郎
○国務大臣(木村篤太郎君) これは私から大体の御説明を申上げましよう。この「公になつていないもの」というこの規定を設けたのは、裏を返せばもうすでに公になつておれば、この法案の対象にはならんぞ、非常に寛大なる気持でやつておる。すでに公になつたものであれば如何なる方法においても、その原因と方法とを問わず、すでに公になつた以上は、この法案の対象にしない。今仰せになりました如何なる国といえども、ソ連たるを問わず、或いはチエコ・スロバキヤたるを問わず、或いは中共たるを問わず、すでにそういう国において公になつておるものは、この法案の対象にはならない、こういう意味であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/132
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133・一松定吉
○一松定吉君 そうすると不法な方法によつていわゆる法案に書いてあるような不当な方法によつて防衛秘密を探知した者がこれを発表した。そうするとそれはつまり公になつたものということになるのですが、その不法な方法によつて探知領得したものを公にした、その公にしたものを次から次へこれを発表するということは、もう取締りの目標にならんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/133
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134・木村篤太郎
○国務大臣(木村篤太郎君) お説の通り、もう一度不当な方法でも公になつた以上は、この法案の対象にならん。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/134
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135・中山福藏
○中山福藏君 ちよつとお尋ねしますが、公になつたことの立証責任は、これは被疑者のほうで立証する必要があるのですか。その探知方法、或いはその捜査方法が、ソ連なんかへ行つて調べるわけに行きませんので、その間に収容された場合の国家補償というものは、やはり普通の原則でやるわけですか、そこをちよつと確かめておきませんと……。或いは一年ぐらいかかるかも知れませんね。そうすると相当長い間収容されていなければならんということになるわけですが、保釈とか何とかということになつて、出れば……。これはそういう場合の立証責任というのは、これは政府から一応調べてもらうのですか、又本人がしなければ泣寝入りということになるのですか、その辺はどういうことになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/135
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136・桃沢全司
○説明員(桃沢全司君) その点午前中にもちよつと申上げたのですが、「公になつていないもの」を入れた一つの理由は、例えばラジオで聞いた、或いは外国の雑誌で見てそれを新聞に出したのだという弁解があつた場合に、これはもう公になつたかどうかということを調べることは極めて簡単であろうと思います。ただ第一条で規定しておりますところは、非常に高度の秘密でございますし、又その多くのものはサイエンス、科学、科学的な技術知識でございますので、そうやたらに公になるということは考えられないと思います。従いまして事件が起きたときに、それが直ちにソ連では公になつておるであろうとか、中共ではどうであろうか、アメリカではどうであろうかというような捜査は、これは不可能でもありますし、又いたさんつもりでございますが、併しそういう高度の秘密でありますから、これが漏れていないであろうという状況なり、証拠といいますか、そういうようなものは我々のほうで集め得ると存ずるのでございます。その程度で一応公になつておるかいないかという立証の責任を果し得るのではないかと考えております。従つて只今中山委員の仰せられましたそういう点を一応明確にしないで、勿論起訴せざるまま身柄を拘束するということは、これはありませんし、或る程度の確信を持つて若し身柄つきのまま起訴するといたしますと、この公になつていないという確信を持つてやつておるということになりますので、そういう御心配はないのではないかと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/136
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137・中山福藏
○中山福藏君 それが非常に心配なんですよ。実は今日の科学の進歩から申しましても、偶然の一致ということがあり得る。科学上においては例えば軍事兵器の研究なんかの場合においても、アメリカの研究の程度と日本の研究の程度と、或る段階においてこの一定の線が引ける場合がある。そうするとそれがたまたま秘密を漏洩したのではないかというようなことが日本においては起り得るわけです。そうすると、自分のは自分の研究だから発表していいと思つて発表したと、それがアメリカにおいてこれが軍機の秘密を要するものだという、まあ結局秘密事項に適応するものだとしての取調べを受けるような場合も、これはあり得るのです。この場合においては、これは、それからアメリカで公知、公告せられているものが、たまたま政府の手落ちなんかで、まあこれは秘密事項だとして収容され得る場合があります。そのときの挙証責任の明確というものを、こういう法律の場合においては、国民の前に示して置かれないと、政府にあるのか被疑者にあるのか、とてもわからんようなことになりますと、とても被疑者じやこれは挙証できません。こういうことは「公」という字を法律に使つてあります以上は、これはやはりそういう場合においては、如何なる原則があろうとも挙証の責任を一つ政府が負つてもらうならば負つてもらうというように、はつきりそこへ明確にして頂くということが、国民一般に対するこれは親切だと私は思うのですがね、それはどうですか。その点若し政府がすべての材料を収集して頂くということになつて、それで手落ちが政府にありましたようなときは、これは政府として責任を持たれるのですか。一遍今おつしやつた方に、一つ言うて頂きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/137
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138・桃沢全司
○説明員(桃沢全司君) 最初中山先生の仰せられた、自分がいろいろ研究してその結果を発表したら、たまたまそれがここに言う「防衛秘密」と内容が一緒だつたという場合は、これは勿論この法案の対象としていないところでございます。
それから立証責任を明らかにせよと仰せられるのでありますが、その点私ども公になつていないということの立証責任は検察側にある、かように申している、ほかの機会にも申している次第であります。なお検察官のほうでは、公になつていないものと確信いたしまして起訴した。ところがその後の調べによつて、それはこの漏泄した、或いは探知、収集した以前に、どこかで公になつていたということが明らかになりますると、この場合は犯罪を構成しないことになりまして、無罪の判決があると思います。この無罪の判決かありました場へ品には、刑事補償法の適用がございまして、然るべき補償があることと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/138
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139・中山福藏
○中山福藏君 それはわかるのですよ、刑事補償法の問題は……。ところが無罪判決の確定する前に、有罪の判決が確定する場合がありますよ。日本の内地の事柄なら簡単に行きますけれどもね。それを私は心配してるんですよ、非常に……。これは「公」という字をここに入れてありますからね。有罪になつて、本人が服役して、刑の執行が終つて帰つて来てから、ははあ、これは無罪になるべきものだということがあり得るのですよ。これだけの距離があるのですから、諸外国と日本とは……。それは向うへ行つて、無罪の材料をたまたま仕入れて来ても、恐らく刑の執行を終つたあとにこれは来る。だから国家補償の補償する補償事項、或いは補償を要求する事項は、普通の国家補償法でちやんとやり得るものだと思つておりますが、この時効関係なんているものは、これに関連した法律だと思う、これは一応やはりこの調整を行う必要があるのじやないかと思いますね、国家補償のなし得る期間の延長なりなんかで……。そういうことはお考えになつたことはないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/139
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140・桃沢全司
○説明員(桃沢全司君) 只今御設例の場合は、現在におきましても、例えば人違いで起訴された。而もその判決が確定したという場合が、確定して服役したということもあり得るので、まあそれらにつきましては、改めて無罪の判決を受ける途が講ぜられておりますので、その無罪の判決が確定したときから時効が進行する。従つて刑事補償も受け得られる、かような関係になると存ずるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/140
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141・中山福藏
○中山福藏君 最後に一つ聞いておく。あなたのおつしやるのは、再審の訴えか何かしてくれという意味でありますが、それはそういうこともありますが、なかなかこれはむずかしい問題だと思いますが、私はこれは一松さんの邪魔になるから関連事項としてはこれくらいにとどめておいて、あとに留保しておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/141
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142・一松定吉
○一松定吉君 問題は「公になつていないもの」、その公というものの範囲をきめてもらわなければならんのですが、例えばそこに数人のものが集まつておる所で演説をした、不特定多数の人が集つておる所で説教をしたというときは、勿論これは公だと思うのだが、その公の範囲がなかなか認定がむずかしいのですが、一つ例をあげてこういうのは公だ、こういう程度は公じやないのだという場合を、明らかにしておく必要があると思います。一つ法制局長官から公ということを御説明して頂きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/142
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143・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) 今のお言葉にありましたように、不特定多数の人が知り得る状態になつておれば、公になつたことになると思います。先ほど来の例に出ておりますような、新聞に出たとか、ラジオに報道されたというような場合も勿論さようであります。今の御演説の場合でも、不特定多数の人の聞いておる所で演説をすればこれは公であると申上げてよろしいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/143
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144・一松定吉
○一松定吉君 そうすると、そういうような、これは公になつておるものだから私は発表したのですというふうに、立証責任は勿論主張者にあると思うから、公であるものだと私は思いましたと言えば、そのときに、どこそこで法制局長官が演説しました、法制局長官をすぐ呼んで下さい、法制局長官がその演説をしたということになれば、これは秘密保護法に当らん、こういうことに解釈してよろしいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/144
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145・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) それはそうであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/145
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146・一松定吉
○一松定吉君 妙な字句を使つてあるので困りますが、第三条の二号、「収集することができないようなもの」これは何ですか、犯人自身の意思で主観的に決定するのですか。勿論法文の解釈で犯罪の成否から言えば、犯罪人自身の意思が、不当な方法によらなければ探知し若しくは収集することができないようなものだなあ、これを我々はここで漏らすのだから、この犯罪が成立するのだなあとこう思えば、犯罪の意思がある、犯意があつたのだから罰せられる。ところがそういう考えにならない、当然これはもう知ることができるものだと思つて、犯人に漏らした時分には犯罪が成立せん、こういうことになるのだから、「この収集することができないようなもの」ということは、犯罪人の意思によつて決定するのですか、どうですか。それを一つ明らかにして頂きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/146
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147・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) 第一次的には「ようなもの」というのは、客観的にきまつたことで一つあるわけであります。そこで今のお話でそういう「ようなもの」であるということを犯罪人が認識しておらなければ、罪にならんということは、おつしやる通りだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/147
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148・一松定吉
○一松定吉君 そうすると、私は「ようなもの」とは知らないのです、こう言われたら、立証責任はどつちにあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/148
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149・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) それは検察官のほうで立証しなければならないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/149
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150・一松定吉
○一松定吉君 どういうところを検察官が立証すれば、「ようなもの」を一松は知つておつたのだということの立証の具になりますか。私は「ようなもの」は、そういうことは考えていないのだと言うときに、検事が、いやお前はこうこうこういうことがあつたから、「ようなもの」をお前は知つているのだ、こういうことを挙げなければ有罪の認定ができない。そのときにどういう証拠を挙げるか。俺は「ようなもの」というのは考えていないのだと、こう言うて、こつちが頑張るときに、検事が、その「ようなもの」はお前には「ようなもの」があつたということの立証を検出がするのだが、どういうところを立証すれば、立証ができたということになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/150
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151・桃沢全司
○説明員(桃沢全司君) 仰せのように非常にむずかしいと思いますが、このむずかしさは現在の訴訟法下においてはほかの事件とは非常に密接な関係がございます。正確には個々の事件でその担当の検察官が、非常に苦労してそういう証拠を集めるということになると思いますが、例を申上げますと、その防衛秘密というものが如何に保護されているか、その保護の状況、例えば非常に厳粛に倉庫の中に鍵をしめて入れてある。秘密というものを知るためには、その鍵をあけて中に人らなければ知り得ないというような状況下にあるということも、一つの又立証の材料になろうかと存ずるのであります。而もそういうことを被告が知つていた、被疑者が知つていたということになりますと、それも被疑者の認識があつたという一つの材料になるのじやなかろうかと思います。非常に抽象的なお答えでありますが、その個々の具体的事件について相当苦労して検察官がその収集に当るということになろうかと存ずるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/151
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152・一松定吉
○一松定吉君 非常に苦労しなければ解釈ができないのだとか、犯罪の証拠を挙げることはできないとかいうような文字を使うことそれ自体がよくないと私は思います。一体「できないようなもの」ということを、犯罪人の意思で主観的にきめなければ犯罪の意思がある、犯意があるということは言えないのですか。そういうような文字を使わんで、ほかにそういう何かきちんと当てはまる文字はないのか、その点の研究はどうですかと、私はそういうふうに聞いておるのです。法制局長官、あなたはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/152
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153・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) どうもむずかしい問題ばかり私にあれされるのでなんですが、これもたしか刑事特別法のときにも研究したことでありますが、問題の根本は、元の軍機保護法のように、偶然の原由によりというような形ですぱりと簡単にやつつけてしまえば、これは文字としては簡単なわかりやすい結果になりますけれども、それでは先ほどから申上げておるように一般の人々に及ぼす影響、迷惑というような点から言つてどうだろうかということから、何か法理的な言葉でしぼつて行こうじやないか、そういう苦労がこういうところに出ておるわけでありまして、これも先ほど申しましたようにもつと的確な言葉があれば、これは又別でありますが、事柄自身はこれはそういう趣旨でやはり限定をしておくのが筋であつて、そうしてこれは今のお答えにありましたように、検察官のほうには或いは御苦労であるかも知れないけれども、検察官が楽々とやれるということは、結局一面飜訳すれば、一応楽々と引つ張られやすいということになりますから、丁度そのかね合いの苦労がこういう言葉になつて現れておるということに御同情を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/153
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154・一松定吉
○一松定吉君 まあこういうことは議論したつて、仕方がないから、この程度にしておきましよう。
それからよく新聞記者や雑誌記者がこの法案については非常に心配しておるのは、取材活動について、ちよつとしたことに引つかかりはしないだろうかということで、こういうことで非常に心配しておるのですね。それが安全を害すべき用途に供する目的を以てしたのではないということが明らかになり、又許されておつた所にひよこひよこ入つて行つたら、たまたまそういう秘密の機械器具がそこにあつたのをちよつと自分が見たと、こういうことで新聞とか雑誌とかに発表しても、それはこの制裁を受けないと思うが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/154
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155・木村篤太郎
○国務大臣(木村篤太郎君) 受けません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/155
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156・一松定吉
○一松定吉君 受けないならば、結局この秘密保護をするために、こういうようないろいろな条件をしてやつておるが、何か本当に秘密の保護ができるような方法でこれを立法するということをお考えになつたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/156
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157・木村篤太郎
○国務大臣(木村篤太郎君) それは苦心の賜物であります。一番我々の危険と考えるところは、いわゆるスパイ活動です。それは御承知のように国際情勢極めて微妙であります。アメリカから供与を受ける装備品についての最高機密を探らんとする者は、ややともするとあり得ると我々は考えております。これに対してスパイ活動が行われることはおよそ想像がつくだろう。先ずそれについて大きな我々は考慮を払う、これか眼目であります。それと同時にこの秘密装備品を往々にして業者に修復修理させる場合が出て来る。それらの面からいろいろな不当な方法で以て秘密を収集、探知しようとする者も出て来る。これらをやはり守つて行かなければならんということに我々は主眼を置いておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/157
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158・一松定吉
○一松定吉君 そこでこの法律は、つまりアメリカから日本にこういうような装備品を供与することに関係しての秘密保護法であるのたが、これから先、この国防軍だとか、憲法九条において許されたる軍備の拡大強化というようなことについて随分敵国に知られたり、若しくは……、まあ敵国はないが、スパイに知られたりするようなことで、日本の不利益になるようなことは当然保護しなければならんと私は思うのです。同じこういうことでも、もう少し綿密に規定しなければならんと思うのに、ただこれだけ、こういうものをぽつと出して、あとから次々と例えば軍艦とか飛行機とかいうものについて、なお秘密を要するようなものについて、この秘密保護法のスパイ以外に秘密を守らなければならんというようなことに関して立法しなければならんと私は思うのですか、そういうようなことの御用意はなさりつつあるのですか。もうこれで済んだとお考えになつておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/158
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159・木村篤太郎
○国務大臣(木村篤太郎君) 只今のところではこれで賄つて行けると考えております。と申すのは、このMSA協定によつて供与を受ける装備品の中に、いわゆる高度の秘密性を持つたもの、これは端的に言うと、そう幾らもなかろうと私は考えておる。およそ各国で使つておる兵器というものは、どこの国でもどういうものかわかり切つている。そのうちで特に秘密を守らなくてはならないという高度なものがあり得るわけですが、それは私はそう数はなかろうかと考えております。そこで差当りMSA協定によつて受ける装備品の中で、アメリカにおいても高度の秘密性を要するものとして保護しておるもの、これらについてはやはり日本においても保護する必要がある、こう考えております。これらのものについての秘密保護についてはこれを以てすれば、事は先ず差当りの問題として足りる、こう考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/159
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160・一松定吉
○一松定吉君 それからこの前ちよつと本会議でお尋ねしたんですが、国会議員が保安庁長官あたりの説明ではよくわからん、実地を視察しなければならんというようなときで、こういう秘密に属するような場所、機具等を実地検証するとか、実地に見て説明を聞くというようなことは、これは当然できるわけですね。そういうときにね、いわゆる領得したところの知識を以て国会でこれを演説しても、憲法の第五十一条の規定によつて処罰を受けない。ただ懲戒とかいう問題が起こるけれども……。これはどうなるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/160
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161・木村篤太郎
○国務大臣(木村篤太郎君) これは非常にからみ合つた問題ですが、少くとも高度の秘密性を持つておるものについて、これは公にすることは、我々は差控えてもらわなければならんと、私はかように考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/161
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162・一松定吉
○一松定吉君 これは憲法に国会議員の権利として保護されているのだから、つまり「両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。」というのですから、現行犯は別だが、これとやはりこれとが衝突するようなことが当然あり得るのたがね。何かこれを一つ調和して、こういうことのないようなことを……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/162
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163・木村篤太郎
○国務大臣(木村篤太郎君) それは実際問題として私は良識ある国会議員の判断に任せるよりほかないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/163
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164・一松定吉
○一松定吉君 良識ある国会議員ばかりいるなら問題はないのたが、良識のない国会議員が多いから問題がある。これはお考え下さい。こんなことを言つても仕方がない……。
そこで又元に戻るが、第一条の「政令に定めるところにより、」だとか、或いは「保護上必要な措置を講ずる」とかいうものを、もう少し具体的に、この法案を通そうと思えば、政令ではこういうような案を持つているのだ。保護上必要な措置というものはこういうような措置をするものだというようなことを、やはり国会議員にあらかじめ研究の資料を与えるということが必要じやないかと思う。それというのは、やはりこれを我々実はこういうことをするのだということであれば、そうかと言つて納得してこの案を通過するのにも容易なことになるのだが、そういう資料はないかね。あつたら一つ配付してくれ給え。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/164
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165・木村篤太郎
○国務大臣(木村篤太郎君) 配付しなかつたかね。もうできておるのだが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/165
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166・上村健太郎
○政府委員(上村健太郎君) 施行令の要綱案というものを作つておりまして、御審議を頂く委員には差上げておつたと思うのですが、今すぐ持つて参りますから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/166
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167・一松定吉
○一松定吉君 「保護上必要な措置」というものはこういうような措置をとるつもりだというような何か手続法か何か、規則とか細則とかありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/167
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168・上村健太郎
○政府委員(上村健太郎君) それもあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/168
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169・一松定吉
○一松定吉君 今日は私この程度でやめておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/169
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170・羽仁五郎
○羽仁五郎君 今の一松委員の御質問に関連して私も伺つておかなければならないと思いますが、この日米相互防衛援助協定のほうでは、英語の文によるとセキユリテイ・メジユアというふうになつているのですが、セキユリテイというものは今度の秘密保護法で秘密というふうになつておりますが、秘密というふうに決定することは、他方で言えば時間が移つて行くのをとめようとする随分無理なところがあるのじやないか。その点で今御質問を伺つていて問題になると思いますのは、新聞記者がこの間公述せられましたときにも言われていたのは、この第一条第三項などによつて個々の機材というものについてはこれで明らかになるわけですが、この幾つかのすでに公になつている知識というものを総合して一つの結論を出して行く、そういう場合も本法にかかるものであろうか、若しそうであるとなると、新聞記者はそういうような資材、公になつているものに基いて公になつていない結論を出した場合、それは本法に該当するものだろうかどうか。この点の心配を言つておられたんですが、木村長官にお答えを願つておきたいのは、やはりこれが、機密というものをときがどんどん移つて行くのに固定するということの無理が余り行過ぎてしまうと、新聞記者が努力をするということもできないし、又学者が努力をするということもできなくなつてしまう。従つて私は当然その公になつている個々の知識というものを総合して、公になつていないものを新聞記者の活動として、或いは学者の活動として出して来るということは、本法には該当しないじやないかというように解釈が明確にして頂ければ、学者や新聞記者もそういう努力ができます。そうでなくて公になつているものを繋ぎ合わせて、そしてそういうまだ公になつていない知識を引つ張り出すということは困るということになつてしまうと、まあ学問の進歩というものもできなくなると思います。この間の水爆などの事件の場合にも日本の学者が新聞にも発表したように、あれは恐らくこういうものであろうということをこれはすでに公になつている知識を総合して、或る意味においてアメリカではまだ秘密にしていることを新聞などで推論されているわけです。これらは該当しないものだというように私は考えますが、政府の御意見ではどうでありましようか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/170
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171・木村篤太郎
○国務大臣(木村篤太郎君) すでに公になつているもろもろの情勢なり事情なりを総合して学者がこれに基いて一つの結論を出して発表するということは、何ら本案の対象とはならんものと思料いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/171
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172・羽仁五郎
○羽仁五郎君 それからもう一つ、やはり今の質疑応答を伺つておりまして問題になるのじやないかと思うのは、その人か逮捕されたといいますか、検挙せられたというときには、それはまだ公にされていなかつたものなんです。逮捕されて裁判でもされている間に、そのことかアメリカの新聞に出たりなんかするという場合はこれはどうなんでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/172
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173・桃沢全司
○説明員(桃沢全司君) 先ほどもちよつとそれに触れたのでございますが、防衛秘密を探知し、又収集した後に公になつたという場合には、探知、収集罪はこれは成立しているのでございます。漏洩の場合も同様でございまして、漏洩した後に公になつても、これはその漏洩罪とは関係ない、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/173
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174・羽仁五郎
○羽仁五郎君 それがどうも前の御答弁と矛盾して来るのじやないかと思います。前の御説明のときには、高度の秘密でそうあちらにもある、こちらにもあるというものじやない。だから心配はないという御説明で、我々もそういう印象を受けるのですが、ところが今のように探知した、然るに探知して間もなくそれが公にされたというようなものであれば、それは余り高度な秘密だということはできないのじやないか、そこに矛盾がないでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/174
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175・桃沢全司
○説明員(桃沢全司君) 理論的に私のほうは法律問題としてお答えをしているのでございまして、そういうことは少なかろう、稀有の例であろうと思います。併しまあ過失によつて漏洩される場合もありますし、或いは業務により知得し、領有したものか、何かの都合でこれを親しい者に漏らした、その漏らしたものがそういうことを知らずに或いは新聞に出るというようなことは、これはあり得ることなんでございますから、さような場合にはその後はこれは公になつたものとして扱われる。併しその前のものはこれは探知収集罪或いは漏洩罪として犯罪を構成するということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/175
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176・羽仁五郎
○羽仁五郎君 その点について木村国務相のお考えを伺わせておいて頂きたいのですが、昨日も縷々申上げましたように、やはりこの防衛秘密とか或いは軍事関係の秘密というものは、その当面の責任者というものは自分の専門の見地からはかり考えて、かなりもうすでに高度の秘密でなくなつているものでも、まだ秘密の指定をしているということが間々あり得るのであります。ところが一般の社会なり学問なりの進歩のほうから言うと、もはやそれは大した秘密ではなくなつている。先日も原子力についてアメリカでは非常な高度な秘密として保存しておるものが、イギリスではもう市中でほんの百円か二百円くらいで買えるパンフレツトになつて売られているという事実が報道されておりましたが、本法の場合にはそれはすでに公になつているから問題にならないでしようが、アメリカの場合ではそういうものまで問題になつている。日本の戦争時代にも、さつきの御説明にもあつたように、アメリカでは十分承知している日本の秘密を、日本の人には知らされないということになつてしまう。そこで今この点について御意見を伺いたいのは、そういうふうに直接の関係者は、つまり職務に忠実な余りと言えば褒めたことになるわけですが、余りくよくとして秘密として守つている。併しそれを、こんなことを秘密にしているということはよくない、こういうことは国民に知らしたほうがいいということで、それが形式からいえば不当な方法で探知したということになるのですが、それが現に裁判の過程において公にされて来るということだと、それは秘密として指定していたことのほうの措置にもいささか行き過ぎがあつたのじやないか、そういう意味で私は形式のほうからの御説明では今も桃沢さんのほうから御説明になつた通りなんでしようが、そういう点においては、やはり本法適用の場合に反省すべき点があるのじやないかと思うのですが、如何でしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/176
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177・木村篤太郎
○国務大臣(木村篤太郎君) まあお説の通り当事者が高度の秘密を持つているものと認識しておつても、実はそうじやないという場合もこれはあり得るだろうと思うのです。併しそういう場合は往々にしてもう既に何らかの方法で多数不特定人がそういうことを知つておる場合と私は想像します。従つてそういう場合はすでに公になつたものとして取扱われて然るべきものだと思います。今お説の通り一つの事件が法廷の問題になつた。その後においてこれは全く公になつておるものだということでなにした場合において、これは犯意の問題は今桃沢説明員から申上げたように、もうすでにその犯罪事実があつた場合を基準にしてやるのですから、これは罪を免れることはできませんが、情状において酌量せらるべき点は幾多あるだろうと思いますが、これは良識ある裁判所がそれに対して、どう処置すべきかという問題に帰着するだろう、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/177
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178・羽仁五郎
○羽仁五郎君 午前中に伺つた時には大分安心したのですが、先ほど一松委員からの御質問に対するお答えで、まだ何だか危なくなつて来たので重ねてお伺いいたしますが、要するに私は初めから問題にしているのですが、この秘密という観念で行くか、クラシフアイド・マテリアルという観念で行くか、これは大竹公述人の御意見の中にもそれがありまして、その意味で大竹公述人の御意見は標識を附するということによつて、これが秘密であるということができるほうが正しいのじやないかという考え方を、今申上げた意味で言つておられたと思うのです。それはつまりクラシフアイド・マテリアルという考え方になつて来るだろうと思う。クラシフアイド・マテリアルという考え方に相当するものは即ち内部規律としてやつて行く。ところが今のこの法案ではそれをもう少し拡大されて外部一般にも及んで行く。それからクラシフアイド・マテリアルという考え方だけに極限されないという考え方に行くのです。そこでこれは是非木村国務相に政治的な判断を伺つておく必要があると思うのですが、日本では先ほど桃沢さんからのお答えにもありましたように、或る犯意があつたかなかつたか、つまり一松さん繰返し言われたそのようなものであると思つていたがどうだ、本人はそうだとは思つていなかつたということは、過去においては治安維持法の場合は絶えず問題になつて来ました。私自身なども国体を変革し、私有財産を否認するというそういう目的を持つていたんだろうというふうに飽くまで言われる。それをどういうことで立証なさるのかと言つて伺うと、私の著書などをあつちこつち断片的に引用されまして、そこにスターリンの言葉が引用されてある。それでお前はスターリンと同じように国体を変革するのだろうというふうに、そんなことが常識的な、学問的な見地から証拠になるのだろうか、ならないことは明らかだと思うのです。そういうふうなことまでなされて、これは私は木村長官も同じ御意見と思いますが、そういうような押付けがましい拷問に類するような、そして一方的な立証方法でなく、客観的な、科学的な立証方法によつて立証されるということは、これは本法にも関連がございまして、一般刑事関場係で御努力を頂いていることだと思うのです。そこで伺わなければならないと思いますのは、スパイというものがある、これは事実としてある。私は問題はスパイを根絶するということはこれはなかなかできないことで、そのスパイというものに対しては学問で対抗して行くようにするか、それともスパイというものを刑罰なり何なりで以て、とにかくそういう禁止するという方向で以てやるというか、この二つの方向が私は大分問題になるのじやないか。それでフエアプレイというような点も先日も申上げておいたのですが、外国なり、何なりの場合には、スパイを処理するのにスパイに対してはアンチ・スパイ、エスピオナージに対してはゲーゲン・エスピオナージ、それで対して行くのが一番妥当なるフエア・プレイの方法だ。従つて或る程度の機密をスパイに知られれば、学問上もう少し進んだ兵器なり、何なりを考える。そういう努力をやつて行くということが外国においては学問を発達させ、又検察、警察の取調べの方法も科学的な調査ということにもなつて行つたのじやないか。ところが日本のほうではそれをフエア・プレイといいますか、そういう学問が科学的に発達して行つたのじやなくて、いやしくも秘密が漏れないというほうをやつて行く結果、警察、検察の捜査も科学的にもならないし、又学者のほうでも余り研究するということは問題が起るといけないということで、学問も進歩しなくなつてしまつたのじやないか。そういう点もお考え下さいまして、特にこれは国民全般に対して本法が適用される場合にそういうお立場をとつて頂きたいのですが、併しその中でも新聞記者なり、国会議員なり、科学者なりという人々の活動については、これが新聞記者であろうか、スパイであろうか、これはスパイであろうか、国会議員であろうか、一松委員のお言葉の中に国会議員の中にも随分良識のあると考えられない人があるとおつしやるのですが、そういう人は次の選挙に必ず落選するという方法はあるのですから、科学者であろうか、スパイであろうか、これらの場合にはやはり私は政治的な見地からは、それをスパイのほうに疑ぐつて考えて行くよりも、やはりできるだけこれは新聞記者の活動であつたのだ、これは国会議員の活動、これは科学者の学問上の活動であるというふうにお考えになつて、本法が適用されるのが当然ではないかというふうに考えるのでありますが、高邁な識見を是非知らして頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/178
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179・木村篤太郎
○国務大臣(木村篤太郎君) 私はこう考えております。将来日本の発展は科学の力に待たなければならん、従いまして科学者の自由な活動を我々は要望するのであります。又政府もその方針で行かなければならんと考えております。科学者をスパイ扱いにするというようなことはとんでもないことだ、科学者の自由の活動こそ我々は望んでおります。従いまして我々は科学者が自己の創意で以てどんどん新らしいものを発見されて行くということに対して何ら干渉するわけではない、むしろ我我は奨励しなければならんと考えております。決してスパイ扱いするというような考えは毛頭もありません。又新聞報道人においてもそうであります。国民に正しい認識を与える、これは新聞紙の使命であります。その点において我々は新聞活動の闊達なることを欲するのであります。従いまして我々は新聞報道人を決してスパイ扱いする意思は毛頭ないということをここに確信を持つて申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/179
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180・中山福藏
○中山福藏君 ちよつと今日長官おられますから、最後にお伺いいたしたいと思います。
この秘密保護法案でも、あの自衛隊の問題でも、狙うところは結局国土の安全ということに帰着すると思うんですが、先般このスパイ関係とか、そういうものが非常に跳梁跋扈していると承わつている。間接侵略後直ちに武装できるものが或る守門家のお話によると六十万ぐらい内地におるということを私は聞いております。これは落下傘で武器を投下する等の方法で六十万は直ちに武装ができるだろうということを聞いている。そういう点についてそういう懸念のある分子がどれぐらいあるでしようか。そういう連中の大部分のものがスパイ行為をやつているのではないかという憂えを私は持つているわけです。これは戦時中の情報部長でありました海軍の或る元少将、これは特務機関の任に当つておつた人が非常によく調べているんですね。まあそういう専門家の言によりますと、そういうことを言つている。ですからスパイに対する秘密保護法案でもやはりそういうのを取締られるためにこれを設けておられると思うんですが、そういう対象が人体の見込が付かなければこの法案を審議をするについても私どもとしてはどの程度必要かということに一応考えを及ばさなければならんと思いますので、参考に一遍承わつておきたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/180
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181・木村篤太郎
○国務大臣(木村篤太郎君) 今御質問になりましたいわゆる間接侵略を予想してのお話であります。幾らぐらい危険分子がいるか、お話のいわゆる危険分子と称せられるものは約四、五十万はいるだろうと考えております。正確な数字はわかりません。これは御承知の通り公安調査庁によつて十分に調査をしております。併しその全部が直ちに武装蜂起し得る態勢にあるものとは私は考えておりません。このうちのいわゆる中核隊を構成する精鋭分子がこれは幾万いるか、ここが一番問題点であろうと考えております。これに我々は終始目を付けていなければならん、非常に危険なものであります。繰返して申しますと、実数は四、五十万はいると考えられるが、果してそれが中核隊の危険精鋭分子がそのうちの何割を占めているかということの実数は、まだ私は申上げる段階に至つておりませんし、終始それらの行動について十分に調査をし、それに対する対処方を普段から考えておかなければ、我々は容易ならん事態を発生するということがあつては危険であります。普段からまあお話のように日本の秩序、自由と安全を守るために是非ともこれに対する対処方を検討いたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/181
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182・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/182
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183・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて。
それでは次回は十二日午前十時から再開することにいたしまして、本日はこれを以て散会いたします。
午後三時二十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03319540511/183
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