1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十九年五月十三日(木曜日)
午前十一時二十六分開会
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委員の異動
五月十二日委員加藤武徳君辞任につ
き、その補欠として山縣勝見君を議長
において指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 郡 祐一君
理事
上原 正吉君
宮城タマヨ君
委員
小野 義夫君
楠見 義男君
中山 福藏君
棚橋 小虎君
羽仁 五郎君
衆議院議員 猪俣 浩三君
国務大臣
国 務 大 臣 木村篤太郎君
政府委員
法制局長官 佐藤 達夫君
法制局次長 林 修三君
保安庁長官官房
長 上村健太郎君
事務局側
常任委員会専門
員 西村 高兄君
常任委員会専門
員 堀 真道君
説明員
法務省刑事局公
安課長 桃沢 全司君
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本日の会議に付した事件
○日米相互防衛援助協定等に伴う秘密
保護法案(内閣送付)
○刑法の一部を改正する法律案(衆議
院送付)
○接収不動産に関する借地借家臨時処
理法案(衆議院提出)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/0
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001・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 只今から本日の委員会を開会いたします。
前回に引続き日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案を議題に供します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/1
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002・羽仁五郎
○羽仁五郎君 この本法案に関連いたしまして、私は恐らく最後の機会だろうと思いますが、佐藤法制局長官に伺つて、二つの根本問題についてあなたの動かない、終生動かない御見解を伺つておきたいと思います。その第一は、基本的人権と公共の福祉との関係、第二はいわゆる眼前明白の危険、私はこれから伺いますことの御答弁を、あなたの終生のお考えというふうに伺いますから、どうか一つ十分に私の質問の趣旨をお聞き取り下さいまして、最もレベルの高いお答えを頂きたいと思います。
第一に、基本的人権というものは制限し得ないという考えがあることをお認めになりますか。且つこれが有力なる根拠による考えであるということをお認めになりますか。先ずこれから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/2
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003・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) あとのお尋ねが出て来ないと、私のお答えも完結はいたしませんけれども、今のお尋ねの段階においては基本的人権は制限し得ないもの、こういうふうにお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/3
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004・羽仁五郎
○羽仁五郎君 第二に、この基本的人権が制限し得ないということの根拠は何によるものでありましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/4
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005・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) これはまあ非常にむずかしい問題でありますが、少くとも我々法律的の立場からお答えすれば、これは天賦の人権としての日本国憲法が保障しておりますから、こういうふうにお答えすれば、合格だろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/5
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006・羽仁五郎
○羽仁五郎君 第三に伺います。基本的人権が侵すべからざるものであるということの有力な理由として、或いは第一の理由として、この基本的人権というものの確立のために人類が今まで多年に亘つて努力して来た、その血と涙による努力というものが無視すべからざるものであるという点についてはどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/6
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007・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) 人類の多年に亘る努力の結果、ここに確立されたものであるということは、憲法にも明らかに謳われておりますから、おつしやる通りだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/7
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008・羽仁五郎
○羽仁五郎君 そこでこの第二に、今第一の以上の点を伺いましたので、基本的人権というものが制限し得ないものである。その制限し得ない理由は、多年に亘つて人類が、その基本的人権を制限しようと、一等最初には基本的人権を認めないという力に対して、それからその次には、制限しようとする力に対して、そういう力と闘いながら長い間、実際一つ一つの事件を思い起してみても、或いはその人がみずから命を落す。或いは家族をも塗炭の苦しみに陥れる。いろいろなまあ筆舌に尽しがたい苦労をして、そして今日の基本的人権というものを築いて来たのであるから、従つてそこから特に基本的人権が制限し得ないものだということは、或る意味において歴史を否定することはできないという意味を持つているものだ、そこで第二段に今度伺いますのは、それにもかかわらずこれを制限せざるを得ないという場合がある。これはどういう根拠に基いてこの基本的人権が制限される場合があるということになつておるのでありましようか。あなたのお考えを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/8
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009・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) この間もちよつとその点に触れたのでありますが、基本的人権は公共の福祉によつて制限され得るものだというようなことを楽な気持で言つておるわけであります。併しこれは先ほど来の私のお答えから言うと、それは矛盾した答えになりはしないかということになるわけで、その意味で私の答えは後の言葉と一緒になつて完結するものであると申上げたわけですが、もつと精密というか、掘下げて考えて見ると、基本的人権というものの幅というものはどういうものかということが第一に本当は問題であつて、それをきめてかからなければ、それを侵すとか侵さないという問題は出て来ないと思うのであります。その点から申しまして、私どもの考えておりますのは、とにかく人間としての自由ということが基本的人権の中心になりますが、これは動物的の自由というものと比べた場合に、はつきりその幅の違いがわかるのじやないか、こういう気持であります。動物的の自由は、申すまでもなく自由奔放でありまして、自分の生存を保つために、お腹が減つた場合には、よそのものでも取つて食べるということは、動物的には私は自由だろうと思いますけれども、ところが人間の場合におきましては、もとより社会的生活を営むということが本質となつておるわけでありますから、他の人との関連性、連関性というものが必然的に想定されて来なければならないということになりますというと、今の動物的自由というものと基本的人権というものとは又その幅に違いがあるのじやないかということを考えるわけであります。で、この間も何かの機会に触れましたように、羽仁委員も御承知のように、フランスの人権宣言の第四条が一番そこのところを素朴な形ではつきり言つているのじやないかと思います。自由というのは、他の者を害せざるすべてをなし得ることを言う、と言つておりますし、各人の自然的権利の行使は、社会の他の各員をして同じ権利を享有させるということのほかには制限がないというような言い方をしておるわけです。これは非常に素朴な形で、わかりやすい観念を示してくれていると思いますが、これが本当じやないかと思うわけであります。従いましてこれを日本国憲法の条章で、十二条でどうこう、十三条どうこう、即ち公共の福祉云々ということでお答えしておりますが、それはかねてお答えしたこともありますように、他の人の基本的人権とその人の基本的人権との境界線をどこに引くかということを言つておるので、公共の福祉といつたところで、国家とか全体とかいつたものじやむしろなくして、自分の隣人たちの、不特定の隣人たちの一人々々の基本的人権の集まつたものだと翻訳して考えるのが、私としては筋の通つた考え方だろうと思います。従いましてそういう関係から基本的人権というものには本来の限界がある。その限界を打ち割つて、これを侵害するということは絶対に許されない。ところがその限界を打ち割らない外枠、即ちまあ私の言葉で言えば一種の動物的自由というものが外廻りにあるわけです。その動物的自由の範囲で基本的人権を打ち破らない、その間の一種の地帯をどう扱うか、これは立法政策の問題で、或いは動物的自由のままで放つておいてもいいかも知れん。併しこれもどうしても困るという場合には、基本的人権の境界線のところまで動物的自由というものを切り込んで行つてしまう。これは今フランスの人権宣言の言つておる、各員をして同じ権利を享有させるということのほかには制限を受けない。その制限は法律で定めるとこう言つておるわけです。そこでびしやつと話が合うので、今の問題はその基本的人権の限界発見というものが第一であつて、それを割つてはいけないということ、それから基本的人権の外の枠で動物的自由の範囲になつておるところを立法政策上如何ように制限するかということが要点になつて、すべてを眺めて行かなければならないと、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/9
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010・羽仁五郎
○羽仁五郎君 今の御説明でも、基本的人権の制限せざるを得ないような場合があつても、その基本的人権の制限ということは容易に行われるものでないということを御説明下すつたのだと思うのですが、そこでこの第二の問題で、基本的人権は容易に制限し得ない、そこで第二にそれにもかかわらず日本円憲法では公共の福祉というものによつて制限し得るかのように考えておるのですが、そこで端的に伺いたいのは、基本的人権という観念と、それから公共の福祉という観念とは同じレベルに立つものだというようなお考えになるかどうか。私の今まで勉強して来たところでは、どうもこれは同じレベルの上に立つというふうには考えられない。これは前にも申上げたことがありましたが、その理由の第一は、基本的人権というものは、その背後に歴史的根拠がある。一個の抽象的な観念ではない。基本的人権の根拠をなすものとしては人類の多年に亘るその涙と血によるそういう努力が含まれているのです。いわばそういう歴史的根拠を持つておる、これを否定するということはできないと思う。或いは非常に否定しがたい。ところが公共の福祉というのは、この点においては一個の抽象的観念というか、勿論公共の福祉にもその背後に歴史的ないろいろな理由はありますけれども、併しながら基本的人権と比較し得るような歴史的な背後の事実というものはない。且つ又これが同じレベルの上に立つものだという考えならば、論理上も基本的人権の制限ということは、そんな厄介な問題じやない、調和を保てばよろしいという程度のことになるものじやないかと思うのです。これは私が今まで勉強して来たところでありますが、これをあなたはどういうふうにお考えになるのか。私の考えが間違つていれば、これを教えて頂きたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/10
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011・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) 私の結論はもう前に述べたところの結論として当然出て来ますが、要するに公共の福祉というものを全体主義的に考えて、国家的に目を付けて、国の便宜だとか国の政策上の都合だとかいうような頭で見ることは、これは間違いだと思うのです。若しもそういう頭で見て、なお且つ公共の福祉のほうが極先ずるというならば、これは昔の全体主義そのものであつて、それでは民主主義の根本というものに矛盾すると思いますから、そんなことを憲法はきめておるはずはないと思います。そこで私の先ほど来の言葉を続けて行きますというと、結局この公共の福祉というものは、或る特定の人の基本的人権から見た場合には、その周囲の隣りの人、隣人たちの基本的人権でありますからして、これは基本的人権と基本的人権との問題でありますから、平等であると言わなければ私は筋が通らない、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/11
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012・羽仁五郎
○羽仁五郎君 若しあなたのお考えが正しいとしますと、こういう論理上の矛盾ができはしないか。基本的人権というものがあつて、然る後に初めて基本的人権と基本的人権との関係ができるのであつて、従つて対等というならば、これを堂々めぐりになつてしまうので、基本的人権の確立というものがあつて、それと他の基本的人権というものとの関係ができて来るという関係から言えば、飽くまで二次的なものであるというふうに考えるほうが妥当じやないでしようか。その対等のものだというお考えはどうでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/12
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013・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) まあ素朴な頭でお答えしておるわけですが仮にロビンソン・クルーソーというものが一人で島の中で暮しておる、これは基本的人権を持つておるわけです。これは自由奔放にやれるわけです。そうしてそれを先ず先に考えておいて、今度一人、二人とその島に上つて来た、そのためにその人たちが基本的人権を持つて皆渡つて来たから、ロビンソン・クルーソーが仮に持つておつた基本的人権という言葉は当らないかも知れませんけれども、基本的人権という言葉は、私から言えば動物的自由だと思います。その動物的自由というものは、隣人が殖えるということによつて制約されて来ると思います。これはロビンソン・クルーソーの例で言えばそうでしようけれども、もつと本質的に立入つて考えれば、先ほど申しましたように、本来人は社会生活を営む社会的動物であるという、本来そういうものであるということになれば、その基本的人権の幅というものは本来きまつているはずであるというふうな考え方になつて参りますから、ロビンソン・クルーソーの例はこのたとえにはまらんのじやないか。あれは偶然の例であつて、一般の原則としてははまらんのじやないかということになりますと、公共の福祉と基本的人権というものを抽象的に比べて見た場合に、どつちが上だということは言えないのじやないかというふうに結論が出て来ます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/13
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014・羽仁五郎
○羽仁五郎君 それでは今の点は私が基本的人権の確立が先で、然る後に基本的人権と基本的人権との関係が問題になるのじやないかということを申上げたのは、そのロビンソン・クルーソーの例などのような意味で申上げたんじやなくて、理論上から申上げたので、併しあなたの考えとして伺つておきます。併し第二の点からはどういうふうにお考えになりますか。即ち、それは基本的人権の背後に、決してセンチメンタルの意味においてではなくして、多くの人が多年に亘る非常な苦心をしてこれを築いて来たものである。公共の福祉の背後に勿論歴史的な事由がなければ全くそういう観念も成立たないのでありますけれども、それに比較できるような歴史的事実の背景があるとお考えになりますかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/14
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015・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) 羽仁委員は歴史家でいらつしやいますから、歴史のことを非常に重きを置いていらつしやるとは申しませんけれども、強調されますけれども、私は不幸にして歴史家ではございませんからして、余り強調いたしません。飽くまでも理窟一点張りで申上げるわけで、その意味から率直に申上げれば、歴史というようなことは余り私としては重きを置いて申上げたくないのであつて、歴史がどうあろうと、これが尊重すべき貴重なものであるということは私は動かんことだと思うのでありますからして、その裏付けとしてなおこういう歴史もあるという意味では大いに傾聴するわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/15
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016・羽仁五郎
○羽仁五郎君 只今の質疑応答は、公共の福祉の背後には、基本的人権の背後にあるような歴史的事実はないというお答えと伺つておきます。というのは、私はないと考える。あなたはあるということを立証されない限りないと、こういう結論になると思います。
そこで今度は第三に、私は基本的人権のほうがやはり優越するのじやないかと思いまするのは、第一に論理上の理由、第二には歴史上の理由、それから第三には、実際上の問題といたしましても、例えば一つの法律は、これは基本的人権制限に関する法律ばかりではありませんが、あらゆる法律がどういうふうにして成立するかというと、それがいわゆる憲法に適合しているというふうにして立法されるでしよう。然る後にそこに事件が起つてテストされなければ、法としては成立しないというように言われておる。そのテストされなければというのは、そこに事件が起つて、その事件というものは現在の事件ですけれども、併しやはり一つの歴史的事件となつて来るのじやないかと思います。従つてこの第二の点について、あなたが私に対して対等の立場を主張されるところの歴史主義的でない法理論的な立場というものをおとりになるとすると、判例というようなもの、或いはコンモン・ローというようなもの、そういうものに法そのものがやはり歴史的の根拠というものを持たなければならんという考え方と矛盾して来やしないでしようか。やはり一応形の上で形式的には基本的人権と公共の福祉とが対等に解決されるかのごとく見えて、そこに一つの法律というものができるにしても、それはやり歴史的にテストされなければ法律とならない。そういう点からもやはり私はこの歴史主義的な歴史の背景というものを重く見るということは、必ずしも歴史主義というふうに非難せられることはできないんじやないかと思いますが、如何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/16
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017・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) ちつとも非難はしていないので、今思い出しますと、先ほどのお言葉にも、センチメンタルではないという意味でとおつしやつたから、その意味では賛成であります。私は多少センチメンタル性を加味して、余り尊重していなかつたわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/17
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018・羽仁五郎
○羽仁五郎君 この第二の点については、基本的人権というものと公共の福祉というものとあなたは対等とお考えになる。併しながら私は対等とは考えない。基本的人権のほうが高いものであつて、公共の福祉というものはそれより一段下つたものであるという私の考えがあるというだけでは仕方がないんですが、これが相当に有力なる考えであることをお認めになるかどうか。相当に有力なる考えであるということの証拠として、私は国家公務員法改正当時に、やはり人事委員会における質疑応答の際に、同じ質問を私はその当時というか、現在もそうですが、浅井人事院総裁に対して伺つたときに、浅井人事院総裁は私と同じ意見である、基本的人権と公共の福祉とは同じレベルのものとは考えられない。基本的人権のほうがレベルの高いものであるというようにお答えになりました。併しそのすぐあとで、当時法務総裁は殖田俊吉君でありましたが、この殖田法務総裁に同じ質問をしたときに、殖田法務総裁は同じレベルのものだというお考えに立たれて、それは恐らくあなたのアドバイスによられてそういう考えになられたものだと思いました。従いましてこれは両方の考えが政府の中にもあるんだと思いましたが、当時はそれ以上追及しなかつた。そこで伺つておきたいのは、基本的人権と公共の福祉とは、基本的人権のほうが高い考え方もあり得るということをお認めになるかどうかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/18
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019・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) これは根本の考え方によることでありますからして、一概にどつちが高いと言つたからといつて、それが間違つておるということは言えないことだと思う。そういうことを言うては僭越なことだと思います。私言おうとするのは、公共の福祉と基本的人権を比べると、結局Aの基本的人権とBの基本的人権と比べると、同じ意味から同じだと言わなければ、片方のほうの基本的人権が軽蔑されることになりますから、素朴な態度で言つておるので、そういう態度をとれば、私の言つておることが又違つた角度からお考えになれば、又そのほうが正しいということは言えましよう。ですから結論はもう現実的に、例えばこういう問題についてこれでどうだといつた場合に答えが違うかどうか、それによつて判断するほかはないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/19
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020・羽仁五郎
○羽仁五郎君 その点あなたの考えで基本的人権と公共の福祉とは同じレベルのものであるということは、第一の点を覆すものではないと思います。従つて基本的人権は公共の福祉によつて軽々しくというか、容易に制限されるものだということにはならないと思いますが、あなたの考えを伺つておると、つまり同じレベルのものだというふうになれば、公共の福祉というものに出あえば基本的人権というものは制限される場合が五分々々くらいのような感じがして来るんですが、それはどうでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/20
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021・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) これはよほどゆつくりもう少し四角張らずにお話合いをしないと、私はいつまでも並行になるんじやないかと思います。と申しますのは、この基本的人権というものは、私はもうそのあるべき姿そのものを裸にして考えておる。一つの見方から言うと、私の考えております基本的人権の廻りに、私のいわゆる動物的自由というものをもう少し広く認めておいて、それを侵すじやないかという前提でお話されるということになりますと、私の申上げておることとその前提のお話とは一致しないはずであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/21
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022・羽仁五郎
○羽仁五郎君 それではその第二の問題の最後の質問ですが、あなたのようなお考え、即ち基本的人権と公共の福祉とは同じレベルのものであるというお考え、そうしてあなたが法制意見局長官当時以来、日本国政府の立法に関係して来られました経過を御覧になりまして、それらのそういうお考えで以て立法して来た立法というものは、日本における現在の基本的人権を発達させることに著しく役立つたか、それとも基本的人権を制限することに貢献したか、あとのほうについて御意見を伺うのは少し残酷であるように思いますので、前のほうです。つまり国家公務員法の改正であるとか、或いはその後の警察法の改正であるとか、一々申上げませんが、そうして又本法律案を含むこれらの基本的人権というものが日本において確立していなかつた。ところがこれらの法律によつて著しく基本的人権が確立されたという事実があるというふうに判断されるんでしようか。それともそういう点については残念であつたというふうにお考になりますかどうでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/22
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023・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) 私が考えて来ておつた基本的人権の限界の発見という点においては、その発見された限界なりとされておるところは、間違つていなかつたと思います。それが縮小されたか伸長されたかというようなことについて、私の考え方から言えば隣りの、隣人の基本的人権とパラレルの……、何と申しますか反比例することになるかも知れません。知れませんからそういうことは一概に答えが出て来ないので、要するに基本的人権の限界線を割られたか割られなかつたか、その限界線なりとされておる点が間違つておつたかどうかということにしかならないので、それは間違つておりませんでしたとこういうお答えをするほかないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/23
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024・羽仁五郎
○羽仁五郎君 その点について実際問題として考えて頂きたいのですが、例えば国家公務員法の改正によりまして現業といいますか、一般に労働者といわれておるような仕事をしておる人までが特別職でなくなつて一般職になつて来て、そうしてそういう人たちにその後公共企業体とかいろいろ名称がつきましたけれども、要するに政府関係の仕事をしておる人で実際においては労働者の生活をしておる方々の争議権というものが奪われておる。それによつて人事院というものがそういう人々の生活を保障するということで、先ほどの基本的人権と公共の福祉との関係において立法されたが、それが今日までにうまくフアンクシヨンしているというふうに御覧になりますでしようか。私はいないと思います。その理由を二つだけ申上げますから、それを含味して頂きたい。その一つは、いわゆる人事院の勧告、或いは国鉄の裁定というものが一回も実行されたことがない。それから第二は人事院は廃止されようとしている。こういう点から見ますと、ああいうふうに基本的人権を公共の福祉で制限したということは成功でなかつた、失敗であるというふうに私は判断いたしますが、あなたはそれを成功したとお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/24
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025・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) 成功であるか、失敗であるかは私の立場からは責任あるお答えはできませんが、それは要するに政治のやり方としていいやり方であつたか、悪いやり方であつたか、政治の問題だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/25
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026・羽仁五郎
○羽仁五郎君 成功であつたという証明をすることはできなかつたというように伺つておきます。(笑声)
そこで第三の問題で……、なぜお笑いになりますか。若し成功していればあなたは政府委員としての責任において立派に成功しているということを証明なされると思う。それは政府委員としての責任だ。併しそれはなさらないということは、反対に失敗されたということを政府委員として言いにくい。これはよく了解いたします。併し成功であつたのなら、何も言いにくいことはないし、いやそうでないこういうふうに、成功しておるという証明がおできになると思う。それがなされないのは、即ちその権利を放棄されたものと考えます。そうですね、違いますか……。(笑声)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/26
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027・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) 私が笑いましたのは、今のお答えでおわかりのように、私の政府委員としての受持ちの範囲を超えておることでありますからして、その分について笑つても、私は政府委員として笑つたことにはならないと思つて笑つただけでございます。その点はお気に触りましたら……。(笑声)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/27
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028・羽仁五郎
○羽仁五郎君 これは世論の判断に任せます。
第三の点について特に本法などに関連しまして、この基本的人権が公共の福祉に制限されるという立場を仮にとるといたしまして、その基本的人権が如何なる場合に公共の福祉によつて制限されるかという場合の基準となるものがあなたもよく御承知の眼前明白の危険ということです。この点については恐らく二つの考え方があるのだろうと思う。先日来のあなたのお考えを伺いながら、私の考えていたこととあなたのお考えとは大分違うのですが、併し二つの考え方ということですが、時間の関係上整理して申上げますが、違つていればあとから訂正して頂きたいのですが、私の考えでは眼前明白の危険というのはやはり事実でなければならないだろうと思うのです。で私の考えでは一とう私自身がわかりやすく了解しているのは、そこに人殺しがあるとか、或いは家が焼けるとかという、そういうような事実、この場合には明瞭に今あなたのおつしやるようなほかの人の基本的人権を護るため、自分の基本的人権が制限されるという場合が事実起つて来ます。こつちの、ここに中心をおいて眼前明白の危険ということを考える考え方と、それからあなたのお考え、又今政府の主張されているお考え方と伺つてみますと、そういうもので必ずしもないので、抽象的に、まだそういう事件が起つているわけではないが、例えば本法案において、前の刑事特別法時代でもそう大した事件が起つているわけじやない。それから今までこういう法律の保護がなくて、保安隊に、フリゲートに様々な秘密があつた、それが漏れて非常な実害を及ぼしたということもない。けれども今後そういうことが起り得るという考え方から、それをやはり一種の危険とお考えになつて、場合によつてはそれを非常に強調されている。木村国務相などは常にこれが漏れてしまえば、我が防衛体制は端から崩れてしまうのだというように烈しい言葉をお使いになつて、私ども気の弱いものを非常に圧迫せられるのでありますが、そういうような考え方と二つどうもあるのじやないかと思います。そこであなたの考えをこの際はつきり伺つておかないと、今後質問して行くのに困りますので、どちらをあなたはおとりになるのかというように思いますが、如何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/28
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029・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) 眼前明白の危険についてはこの間もお話が出ましたし、破壊活動防止法のときにも申上げたわけでありますが、もう一遍試験を受けるつもりで申上げますと、例のホームズ判事が御承知の通りに言い始めたことなんです。その最初の考え方、気持というものは、今お話の最初に出ました人殺しの例だとか或いは言論の場合でも名誉毀損とか、こういうようなものは大体頭においておらない。もつとそこに幅といいますか、何かもやもやしたものがあるような言論、殊に言論についてこれは言われて来たものだと思います。で、要するにたびたびこれ羽仁委員もおつしやるように、言論に対しては言論を以てということがあるのだから、すべての場合に言論がいけないからと言つてそのものに反対する言論の働きを待つまでもなしに禁止してしまうということは行き過ぎだということが根本のアイデアになつて出て来ているのだと思います。そこで更にこの沿革的のことを探つて見ますというと、もう一つその場合に例えばこの法律、秘密保護法のような立法そのものについてのその適用関係の問題と、それからその立法の運用についての適用関係の問題と二つ、理論という言葉を使うのがいいかどうか知りませんが、そういう場面が出て来ている。沿革的に考えるというとむしろその法律そのものの適用関係についてこれが大いに強調されている。具体的の言論が犯罪事件になつてそれに対して刑罰に処するか、裁判をするかという場合、その具体的の言論自体が眼前明白の危険がありや否やということでそこに適用される。それからもう一つは破壊活動防止法のときに出ましたように、例のプライア・レストレイントと申しますか、事前抑制の行政措置というものが立法によつて認められている。その行政措置の運用に当つての一つの基準としてそれが出て来るという、むしろ現実の適用関係を中心にして始まつて来た考え方であつて、そういうことを今日認めている法律そのものがいいか悪いかという問題は、むしろ考え方としては当時は外の問題に私はされておつたと思います。併しこの考え方は今のお話に出て来ますように、法律そのものについてもこれは勿論考えてちつとも悪いことのないことなんで、法律がいい法律であるか悪い法律であるかということを判断するときに、その尺度が勿論あつて差支えないことだと思います。ただ法律の場合は、これは将来起り得る危険性というものをすべて法律の本質として持つているわけであります。これが過去に起つた事犯についてやることになればエックス・ポースト・フアクトウ・ローになつてしまつてそういう過去の事犯を法律で処罰するということは法律そのものとして許されないのでありますから、立法になりますとこれは必ず過去の問題になつてしまうという本質的なものを持つているものでありますから、そういう眼前明白という問題も現実行動の場合にあてはめる場合とはやはりそのままいかないので、こういうことが仮に起つたとすれば、必ずこういう川口な危険があるのだということが立法の際に予想されておらなければならない、そういう形で出て来るものだと思います。従つて今御引用になりましたように木村国務大臣が答えられたところはそういう趣旨のところをお答えになつていたのだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/29
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030・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/30
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031・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/31
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032・棚橋小虎
○棚橋小虎君 私の質問は全部長官からお答え下さらなくてもいい質問がありますから、その点を最初に申上げておきます。
この第一条の三項二号の「日米相互防衛援助協定等に基き、アメリカ合衆国政府から供与される情報で、」という情報という字句ですが、この情報という言葉は相当広い内容を持つておるんで、法律的にその内容を限定するということになると、かなり主観的な解釈をしなくちやならんことになるのではないかと、こう思われますが、これはどういうふうに解釈されておるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/32
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033・上村健太郎
○政府委員(上村健太郎君) 「情報で」という言葉は、一般的には非常に広いような感じがされまするけれども、こここに書いてございます通り前後イからハまでに関すること、即ち構造又は性能或いは製作、保管又は修理に関する技術及び使用の方法というものに関する情報に限定をされておるのでございまして、これらの情報はいわば知識と申しますか、そういうような意味の言棄でございます。例えて申しますと、防衛生産のための秘密部分に関する設計図というふうなものに関する知識という程度のものを意味していると解しているのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/33
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034・棚橋小虎
○棚橋小虎君 一応そういうふうに内容付けてもわからんことはないのですけれども、併しこれを拡張して解釈しようと思えば、この言葉は相当拡張できる言葉になるので、適用上から不都合が生じるようなことはないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/34
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035・上村健太郎
○政府委員(上村健太郎君) これは防衛秘密というもの自体が相当高度のものを予定いたしておりまするので、普通言われる情報というふうなものは防衛秘密として扱わないつもりでございまして、従いまして普通の武器の構造というものに関するもの、或いは武器に関しまする情報というふうなものは防衛秘密としては指定しないつもりでございますから、そう広く解せられるというふうな懸念は私どもとしてはないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/35
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036・棚橋小虎
○棚橋小虎君 それから原爆に関することは、これはまだアメリカからいろいろ情報でも受取つてはおらんわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/36
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037・木村篤太郎
○国務大臣(木村篤太郎君) 原爆に関する情報その他については、アメリカから何ら日本政府は受取つておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/37
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038・棚橋小虎
○棚橋小虎君 この間のビキニの原爆被害のことについていろいろ日本医学界でいろいろ研究したり、それから灰の内容を分析したり、いろいろそういうようなことをやつている。ああいうことのうちには、アメリカの政府として発表してもらいたくないような部分も相当あると思うのですが、今後ああいうようなこと起つて、いろいろそれについての学問上の発表とか、いろいろそういうことがあるでしようが、それに関してはこの法律は取締はできないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/38
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039・木村篤太郎
○国務大臣(木村篤太郎君) 御承知の通り、この法律ではアメリカから供与される装備品についてはイロハと関係していると思います。アメリカから供与を受けないものについてはこの法案の対象とならない。今仰せになつているようなものについては、この法律は何ら関与しないことになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/39
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040・棚橋小虎
○棚橋小虎君 ここにある第一条の二項の「この法律において「装備品等」とは、船舶、航空機武器、弾薬その他の装備品及び資材をいう。」とこういう言葉のうちに原爆に関することは含まれないのですか。そういうふうに解釈はできないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/40
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041・木村篤太郎
○国務大臣(木村篤太郎君) この原爆に関する装備が仮にアメリカから日本に供与されるということになつて、アメリカとの間にまあ高度の秘密性を持つているものとしてこの法律で保護しようということであれば、まさにその通りであります。併しアメリカから供与を受けないものについては、この法案の対象とはならないと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/41
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042・棚橋小虎
○棚橋小虎君 それからこれは問題になつているようですが、第一条の第三項の「公になつていないものをいう。」というこれは事実これは日本のほうでは公になつていないが、外国では公になつていると、又外国でもアメリカでも公になつていないが、それと対立している国が、第三国が特にアメリカのそういうような内容を暴露するというような意味から公にしているような場合がある。そういう内容の秘密を暴露しているような場合、こういうふうなものはどうなつているのですか、これは入るのですか、入らないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/42
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043・木村篤太郎
○国務大臣(木村篤太郎君) 公になつているものはこの対象にはならないのであります。公になつていることがアメリカといわず、ソビエトといわずいずれの国においても一たび不特定多数人の間に公になつたものは、この法案の対象にはなりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/43
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044・棚橋小虎
○棚橋小虎君 併しそういうようなことは国内では個人についてはよくわからないのですが、そういうことについては国民に対して知らせる方法は何かとれないわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/44
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045・木村篤太郎
○国務大臣(木村篤太郎君) 公けになつているものを国民に知らせるということのことでありましようか……。公けになつておれば、自然に国民にわかるわけであります。全部ではないでしようが、何人かにわかる。それを政府のほうでこれは公になつているものだという積極的の周知方法は、これはやれるわけじやないと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/45
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046・棚橋小虎
○棚橋小虎君 つまり公になつているかなつていないかというようなことがこの防衛秘密の範囲をきめる場合にはつきりしなければならんことであるが、この第二条に「防衛秘密について、標記を附し、関係者に通知する等」ということになつておるが、これは一般に周知せしめるというふうにすれば、国民全体がどこまでが防衛秘密であり、何が防衛秘密でないかということがはつきりして、この法律の適用上非常にいいかと思うのですが、これはなぜ一般に周知せしめる等ということになさらないのですか、「関係者に通知する等」ということでなしに…。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/46
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047・木村篤太郎
○国務大臣(木村篤太郎君) 標記を附し、或いは立入禁止という表札を掲げるような場合は、結局公に周知せしめる一つの方法だろうと思います。例えば或る文書についてこれは極秘だということの取扱をすることを明記すれば、一般国民はこれは保護されるべき対象物であろうということがわかるわけです。又これを扱う者に対してそういう標記をしておればわかるわけであります。又扱う者に対してこれは秘密に取扱うべきものだということを知らせれば、従つて間接的に一般に対してもこれを秘密のものであるということがわかるはずであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/47
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048・棚橋小虎
○棚橋小虎君 そう簡単に長官の言われるように、関係者にわかれば一般にもわかるというふうには考えられないこともあると思うのですが、そこにこの法律の非常に危険性のある、拡張解釈をされたり或いは不測の、そのつもりでなくて、この法律に掲げるようなことが出て来る虞れが多分にあると思うのですが、ここに言う関係者というのは、どういうことなんですか、内容を言うと……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/48
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049・上村健太郎
○政府委員(上村健太郎君) これは防衛秘密を取扱います民間の生産業者がその主なるものでございますが、その他にも防衛秘密に関係をして来る人があると思います。例を挙げますとそんなところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/49
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050・棚橋小虎
○棚橋小虎君 只今までお聞きしたことによつて非常に適用上疑義を起したり或いはあいまいな点が頗る起つておるのでありますが、つまり公になつているとか、なつていないとか、或いは情報ということもはつきりしない。そういうようなことで、何かこれは例えば言論、或いは報道というようなことに従事する人が、これらのいわゆる装備品等について書いたり話したりしようというときには、相当これに触れないようにするために注意しなければならない。そこで前以てこの取締官憲の意見を聞くとか、昔の言葉で言えば、伺いを立てるというようなことが必ず起つて来るだろうと思う。そういうことをしなければならなくなつて来るということが、結局検閲制度の復活と五十歩百歩ということになるので、結局この法律を施行することになれば、その検閲制度というものがこれに続いて起つて来るのではないか、こういうふうに感じますが、この点長官はどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/50
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051・木村篤太郎
○国務大臣(木村篤太郎君) 私はそうは考えていないのです。この対象となつているものは高度の秘密性を有するものであることは、しばしば申上げる通りであります。そのものについて更に標記を附する、或いはものによつて、置いてある場所に立入を禁止する、それらによつて一般の人たちが殆んどこれに対しては関係ないわけであります。標記を附すれば、これは秘密を守らなければならない。立入禁止は、これは中に入つてはいけないということがわかるわけであります。それ以外において報道人がいろいろな情勢判断からこういうものを、日本の自衛隊なら自衛隊が持つておるということを公にしたところで、一向差支ないわけであります。従いまして事前検閲とかいうようなことは起つて来ない、私はこう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/51
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052・棚橋小虎
○棚橋小虎君 第三条の一の「不当な方法」ということがあるが、これは頗る内容が広く、又むずかしい字句ではないかと思う。例えば、装備品の品目及び数量というようなことがある。タンクとか大砲というようなものの数量が秘密にされておるような場合に、外部からは囲いがあつたり、塀があつたりして見えないけれども、高い山の上から見るというと、タンクの数量がはつきりわかる。何げなく高い山の上から見てタンクの数量を、タンクが幾つあつたということがわかつた。そういうことを知つたということになれば、これは不当な方法で防衛秘密を探知し又は収集したということになる虞れがあると思うが、その点はどうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/52
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053・桃沢全司
○説明員(桃沢全司君) 只今の御設例の場合には、不当な方法で探知し、収集したことにならないと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/53
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054・棚橋小虎
○棚橋小虎君 無論こういうところで話をする場合には、一応それは収集したことにならんと言う、これはもう明らかなことでありますが、私も収集したことにならんと思うのであるが、それが万一そういうことを人に話したりしたのが警察にでも知れて、そうして問題になつて来たときには、初めからそういう考えで山の上から探知したのだろう、不当な方法で探知したのだろう、これは必ず警察としてはそういうふうに出て来るのであります。そうでない言つて弁解してもなかなかその弁解は通らんことになる。そういう場合はどうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/54
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055・桃沢全司
○説明員(桃沢全司君) この法案の第一条の第三項第一号の三の、「品目及び数量」と規定してございますが、恐らく私どもの考えておりますところによりますと、品目及び数量が防衛秘密に該当するという場合は非常に少いのではないかと、かように考えております。それで今お話のような、そこにあつた大砲の数とかそういうようなものは、もうこの法案の対象にはならないのでございまして、一般人にすぐ目に付くような、そういうような状況にあるものが防衛秘密になるということはなかろうと思つております。なお、不当な方法であるかどうかということは、これは窮極においては、社会通念に照して妥当とは認められないような方法でございますが、仰せのような場合には山から見えた、そういうふうなものは当然不当な方法には入らないと、かように考えておりますので、捜査に当りましても、御心配の点はなかろうと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/55
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056・棚橋小虎
○棚橋小虎君 不当な方法であるかないかということは、はつきりと不当な方法であるということが、今のような場合には、むしろその解釈は非常に主観的なものになつて来るのじやないかと思われるので、その不当な方法ということに私は疑問を持つのですけれども、これはこれ以上申上げません。後に譲ります。
それから第二に、不当な方法によらなければ探知し又は収集することができないようなものを他人に洩したということになりますが、自衛隊の隊員、自分の息子でも、これからして秘密を何げなしに聞いたというような場合、これは通常不当な方法によらなければ探知したり或いは収集することができないような秘密を偶然に向いたというような場合もありますが、これを他人に洩らしたらどうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/56
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057・桃沢全司
○説明員(桃沢全司君) その場合息子から聞いた人が、その秘密が通常不当な方法によらなければ探知し、又は収集することができないようなものであるということの認識があつた場合及び客観的にそれが通常不当な方法によらなければ探知し、又は収集することができないようなものである場合、この場合にはこれを又第三者に洩らしたときは、それは第上三条の第一項二号に該当いたしますが、そうでなくて、息子から非常に気軽に聞いた。それでそういう内容のものが簡単に聞けるというように考えておつた場合、これは法条は第二号には該当しないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/57
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058・棚橋小虎
○棚橋小虎君 こういう法律は社会でも非常にやかましく言つておるわけなんですが、言論とか報道、そういうことの自由を制限し、非常にむずかしい問題を惹き起す慮れがあると思いますが、あなたは用語には非常に厳格に、あいまいな点のないようにはつきりした言葉を使わなければならんと言われるのでありますが、こういう点についてこの法律に非常に不適当な言葉或いは内容の不明確な言葉が少くないように考えられるのですが、これは種々一般的なことでありますが、長官はその点についてこの言葉は完全で適当な言葉をみな使つてあると、こういうふうにお考えになつておるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/58
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059・木村篤太郎
○国務大臣(木村篤太郎君) 仰せのごとく法案を作成するについては、一般によく理解できるような用語を使うことは当然必要なものだと考えております。そこで現実の問題として考えて見まするに、最近の法律の用語というものが、我々若い時代のものとよほど変つて来ておる。成るべく国民にむずかしく思うような感じを与えないように、平易に書こうということに注意を払つておるわけであります。従いまして簡潔という点に関しては普ほどでないということは私も率直に認めざるを得ない。併しこの法案を作成するに当りましても、実はもう少し簡潔な文章を用いたらどうかという考え方もあるわけでありますが、今申上げましたように成るたけ平易にわかりやすいという観点からいろいろ工夫したわけであります。批判さるべき点は私はなきにしもあらずと考えております。先ずこの程度であれば、理解されるのじやないかという観点からいたしましてこの法案の立案に当つたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/59
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060・郡祐一
○委員長(郡祐一君) それでは秘密保護法案については更に午後引続き委員会を開会いたします。一応質疑は午後に続行いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/60
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061・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 只今から刑法の一部を改正する法律案予備審査、接収不動産に関する借地借家臨時措置法案本付託、両案とも衆議院提出、両案を問題に供します。
先ず刑法の一部を改正する法律案について提案者から趣旨の説明を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/61
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062・猪俣浩三
○衆議院議員(猪俣浩三君) 刑法の一部を改正する法律案の提案理由を御説明申上げます。
この法律案は、刑法の一部を改正して、新たに「演職ノ罪」の章壷に、公務員の斡旋収賄罪を処罰する旨の一条を加えると共に、併せ斡旋収賄をした公務員に対して贈賄をした者をも処罰しようとするものであります。御承知のように、現行刑法に規定されておりますところの贈収賄罪につきましては種種の態様があり、処罰をするために必要なさまざまの要件が規定されておりますけれども、公務員がその地位を利用して他の公務員の職務に属する事項に関し斡旋をなすこと又は斡旋をなしたことにつき賄賂を収受する等の行為及びかかる賄賂を供与する行為につきましては、従来これを処罰することができる旨の規定を欠いていたのであります。のみならず、いわゆる斡旋贈収賄を処罰すべきであるか否かにつきましては、沿革的に従来から問題が存していたのであります。即ち、先ず昭和十五年に刑法並監獄法改正調査委員会の総会の決議として発表いたされました改正刑法仮案におきまして、初めて公務員のいわゆる斡旋収賄罪及びこれに関する贈賄罪の規定が設けられたのでありました。次いで、翌昭和十六年当時開会中の第七十六回帝国議会に政府から提出されました刑法中改正法律案にも、この斡旋贈収罪について規定が置かれたのでありますが、この法律案は、貴族院においては、政府提出の原案通り可決されたのにもかかわらず、衆議院におきましては、種々論議がなされた結果、この斡旋増収賄罪に関する部分のみは削除されて通過したのであります。その後昭和十八年の第八十三回帝国議会におきまして戦時刑事特別法の一部が改正された際に、官公署の職員の斡旋収賄及びこれに関する贈賄を処罰する旨の規定が加えられるに至つたのでありますが、同法は戦時特別立法でありましたために、終戦と共に廃止されて今日に至りました。即ち、今日におきましては、先に述べましたように公務員の斡旋収賄及びこれに関する贈賄を処罰すべき何らの規定もないという状態なのであります。然るに、御承知のように、最近におきまして公務員の汚職問題が頻りに発生いたし、而もその汚職行為の態様は、次第に複雑化の様相を示し、特に公務員がその地位を利用して他の職務を有する公務員に斡旋をなし、これが報酬として金品を受領するがごとき実例が頗る多いように思われるのでありますが、たまたま、かかる行為を処罰する規定がないために、制裁を免れる者が多く、これによつて道義は地に墜ち、綱紀は頽廃して、誠に寒心に堪えないものがあるのであります。従つてこの際公務員の廉潔を確保し、綱紀の粛正を図るため、いわゆる斡旋贈収賄を処罰する必要のありますことを痛感いたしまして、ここに前記のような趣旨のこの法律案を提出いたしました次第であります。
次にこの法律案の内容について申上げます。この法律は、公務員がその地位を利用し、他の公務員の職務に属する事項に関し斡旋をすること、又は斡旋をしたことについて賄賂の収受、要求又は約束をした者に三年以下の懲役を科し、及びかかる賄賂の供与、申込又は約束をした者をも三年以下の懲役又は五千円以下の罰金に処せんとするものであります。そして、これらはすべて公務員たる身分を有する者に対する処罰の規定でありますので、他の公務員に対する処罰に関する規定と同じく、日本国外における行為も処罰することといたしました。
以上提案の理由を申上げました。何とぞ慎重御審議の上、御可決あらんことを切望する次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/62
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063・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 次に、接収不動産に関する借地借家臨時処理法案について提案者の説明を聴取いたします。猪俣衆議院議員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/63
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064・猪俣浩三
○衆議院議員(猪俣浩三君) 只今議題となりました接収不動産に関する借地借家臨時処理法案について提案理由の御説明を申上げます。
御承知のように終戦直後旧連合国占領軍の進駐を見るや、占領軍は直ちに不動産の接収を開始したのであります。この不動産接収は戦後の非常処置であつたのにもかかわらず、日本国政府は土地工作物使用令のほかは特別の法律を設けませんでした。これがため民法における賃貸借の規定や、借地借家法等では、接収解除後の不動産に関する権利者間の紛争は処理し得られないのであります。
すでに平和条約発効後駐留軍に対する不動産の提供につきましては、行政協定に基く土地使用等の法律による不動産の提供が根拠法となつておるわけであります。従いまして戦災地との対比からも、接収地に対する権利の調整のため、何らかの臨時特例法による解決が必要であるというのが内容から見た本案の提案理由であります。
考えまするに占領軍の接収の跡始末は、政府みずからなすべきものであります。然るに特別調達庁、法務省、大蔵省、東京都庁等の間に議が合わず、特別調達庁の立案いたしました連合国軍使用不動産に存した賃借権等保護法案も、次官会議におきまして成案を得なかつた由を聞きましたので、接収不動産関係者の損害を見るに忍びず、止むを得ず衆議院法務委員会において立案に着手するに至つたものであります。爾来本法案は第十三国会、第十四国会、第十五国会を経て第十八国会まで継続審議となり今日に及んだのでありますが、接収不動産の問題の解決方法としては、国家補償、賃貸借期間の進行停止等が考えられますが、いずれも政府、裁判所等により早急に実現される可能性が少ないのでありまして、解決方法としましては、戦後最も国民に親しまれている罹災地に関する法律に準じて行う方法があります。よつて接収不動産の処理を原則的に罹災都市借地借家臨時処理法の規定により解決する方法をとることにいたしました。併しながら接収地域と罹災地域とは戦争を原因とする被害では同様ではありますが、終戦直後の住宅事情と接収解除後の建物事情とでは相当の差異がありますので、罹災都市借家臨時処理法のおもな規定を接収地域に準用するにとどめました。
次に今国会に提供された修正実により修正された法案の内容について申上げますと、第一に、接収当時借地をしていたものは、解除後敷地の優先借受けができる。接収当時借家していたものは、解除後建物の優先借受けができないことになつております。
第二に、接収当時の土地や建物の所有者は、解除後自己使用する場合や、すでに権原により自己又は第三者が使用している場合には、接収当時の賃借人の優先借受けを拒否することができることになつております。
第三に、その他の規定の多くは、借地において互いに利害の相反する賃借人と所有者との権利を調整した規定であります。即ち、賃借人の承諾の擬制や、優先借受権の存続期間や、土地使用の義務や催告による賃借権の消滅などは、いずれもその両者調節の規定であります。
第四に、接収とは何ぞやの問題がありますのでその定義を掲げ、且つ、この法律の目的を条文の冒頭に掲げました。
最後に、強制疎開地にして後に接収せられた、地域についてこの法律を適用し、借地の借地人に救済の手を延ばしております。
以上提案理由の御説明を申上げました。何とぞ慎重御審議の上御可決あらんことをお願い申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/64
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065・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 只今提案理由を聴取いたしました両法案につきましては追つて質疑等審議をいたすことにいたしたいと存じます。
午後二時まで休憩いたします。
午後零時四十分休憩
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午後二時十七分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/65
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066・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 只今から午前に引続き委員会を再開いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/66
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067・中山福藏
○中山福藏君 この秘密保護法案に入るに先立ちまして、基本理念と申しますか、いわゆる基礎的なことを二、三お伺いしておきたいと思います。殊に長官は法律の再門家でございますから、お伺いする次第でありまするが、実は私先般予算委員会において、兵隊に関するその統帥権とか、或いは編制権、或いは兵隊の数、量というようなことに関しまして、これは少くとも基本的人権に関係あることであるから、憲法に一つの基本規定がなければ、自衛隊というものを募集するということは憲法違反の虞れがあるのじやないかという質問をしたのです。それはどういうわけかというと、旧憲法、いわゆる帝国憲法というものはちやんと条章が定められおりまして、おのおのその規定を持つておつたわけですね。ところが今回の新憲法には、勿論この憲法第九条の規定の精神から、どうしてもそういう規定を置くわけに行かなんだと思うのですが、たまたま今回自衛権というような問題が起きて、その結果自衛隊というものを置かなければならん。従つてまあ秘密保護法というような法律も必要になつて来るわけですが、私がお尋ねしたいところは、その質問をいたしましたところが、木村長官はどういう答弁をしたかというと、いわゆる内閣の行政権の行使によつてこういう自衛隊という組織ができるんだ、まあ簡単にそこを片付けておられるわけなんです。そこで私の問いたいところは、これはもう仮に志願制度だといたしましても、少くとも生命、身体というような基本的人権の殆んど絶対的な拘束を受けるという結果が現われて来ると思うんですが、憲法第九条の規定から、そういう単に行政権の行使というようなことで、憲法にそういう規定がなくても自衛隊というような組織、編制、数量というものをきめることができるかどうか、この点について専門家として一つ見解を承わつておきたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/67
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068・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) 根本の問題でございますが、私どもの考えておりますところは、大体今のお尋ねの中に二つ要点があると思いますから、第一点から先に申上げます。今木村長官のお答えを御引用になりましたが、その問題については木村大臣の答えた通りであろうと思います。要するに今の国の作用というものを三つに分けるという、いわゆる三権分立の一般の分類を今の憲法においてとつておりますからして、こういう、即ち外敵を防ぐとかいうようなことが国の作用として許されておるという前提をとりますならば、その作用は立法にあらず、司法にあらず、それは行政の作用であろうということが言い得ると思います。それが一体許されておるかどうかという問題に触れなければなりませんが、これは非常に現実具体的な形では今まで出ませんでしたが、例えばこの憲法ができます際の帝国議会の審議の際において、この憲法は一体無抵抗主義であるのかという御質問が貴族院でありました場合に、決して無抵抗主義ではございませんということを言つておるわけであります。外敵に対して一応許された範囲においての抵抗というものはあり得ることを前提としておりますと答えておるわけでございますからして、できたときの趣旨から言つても、そういうことはあり得るという前提で参つておりますからして、そういうことは今の三つの権力に分けて分類すれば、行政権であろうということが言えると思うのです。ただ、憲法が違つた形でできておつて、仮にいわゆる四権の一つとしての統帥権というものを憲法が作れば、これは憲法を作るその政策の問題としては考え得られますけれども、とにかく三権ということで行つております以上は、その実体は行政権であり、行政作用であろうということであります。従いましてその点は木村大臣の答えた通りであると考えております。
それから第二の問題は、先ほど募集というようなお言葉がございましたが、この自衛隊に入つておる人たちの使命というものは、場合によつては生命を擲つてでも国のために防禦に従事せなければならないという点においては非常に重大な、まあ生命にかかわるような大きな責任なり義務を持つわけであります。そういうことが許されるかという問題であります。これは今のお言葉にもございましたが、とにかく本人の志願に基くものでございますから、問題にはなりませんでしよう。こういうお答えをしておるわけであります。これはそれを深く突込んで行きますならば、仮に志願、即ち、契約の形で行つても、その契約の内容が公の秩序、善良の風俗に反するような内容であれば、これは民法から申しましても無効になるということであります。これはとにかく国民として国を守るということは、ソ連の憲法を引用するわけではありませんが、一つの崇高な義務だというような見方をしておる所もあるわけでありますから、この内容が直ちに国を守るために身命を擲つという、そういう契約が公序良俗に反するということは、普通の常識では考えられないことであります。その点から申しましてもその契約は無効ということは言えないでしよう。かたがた本人の同意ということが前提になつておりますから、まあ法律的には問題にならんだろうという結論になるだろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/68
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069・中山福藏
○中山福藏君 そこが大変むずかしいところであると私は思つておりますが、成るほどこの憲法六十五条ですか、内閣は行政を行うという規定があるように記憶しておりますが、単なる行政権の行使として志願に基く自衛隊というものを扱つていいかどうかということは、これは非常な問題だろうと私は思います。これは憲法第九条の外敵の侵入に対して自衛するために、いわゆる国土保全の立場から止むを得ないということで簡単に片付ければ、これは一応無理なりでも、一応はその議論としては承知ができるように考えるのでありますけれども、いやしくも法治国としての基本体制を確立するという関係から行けば、旧憲法のごとき、人命をあたかも紙一肩のように取扱つた時代にすらも、これはちやんと憲法に第何条々々々と言つて明らかに謳つておるのでございますが、これだけ基本的人権というものを尊重する新憲法下において、単にこれを行政作用の一つとして片付けるということは、私は憲法自体というものが如何におろそかに制定せられたものであるかということを裏付けをすると同時に、誠に基本的人権というものを軽んじておるというような嫌いがあるのではないかと、私はかねがねかように考えておる。併しながら新憲法は、単に第九条にまあ戦争を放棄したというようなことを書いてあるので、持つて行きようがないから、結局そういうふうな解釈でこれを片付けて行くというようなことに落ちついているんじやないか。只今長官の言われました御議論からいつても、どこにも持つて行きようがないんじやないか。将来憲法を改正するときには、こういう事柄については明らかに規定を設けなければならんと実は考えておるんですが、当然何らかここに条章を設けるとか、項目を設けてそのことを明記しなければならんと考えるので、この点をどうお考えになりますか。それが一つと、それから第九条の中に、これは間接侵略であろうと直接侵略であろうと、若し国際的にこれが行われました場合に、国際紛争という形をとつて来るんじやないかと思うんですよ。国際紛争というものを解決するために武力を用いてはならない、こうなつて来ると、その事態の如何にかかわらず、国際紛争というものに形が現われて来た場合においては、自衛権の発動というものはそういう場合にあり得るかどうか。これは直接にはこの秘密保護法案には関係ありませんけれども、結局そういう事態というものを予想しなければ、結局秘密保護法というものはできまいと考えますから、この点は一つ純法律的な立場から長官の御意見を承わつておきたいと思います。憲法第六十五条でしたか、はつきり覚えておりませんが、行政権の作用ということでこういう条項を簡単に片付けていいかどうか。これは政府委員とか何とかは一応ここで念頭からその気持を一つ去つて、一人の法律家として御覧になつたときはどうかというこを、重ねて私はその点お聞きしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/69
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070・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) お尋ねの点は、何も政府委員として捉われる必要もないことでございまするから、まあ私の法律的の考え方をすなおに申上げます。今の行政権についてのお言葉でございますが、この問題はもう少し掘下げて考えてみますというと、一応は私は国を守る作用ということは、結局今の内乱が起つた場合に、その内乱を抑える、それを防ぐというような作用というものとは、根本性質は同じものであろうと思いますからして、これをよそから眺めた場合には、要するに立法権でないことは明瞭、司法権でないことは明瞭ということで、一応行政権でございますと答えておるわけでございます。この限りにおいては、その本質をつかまえて言えば、行政作用であることはどうも誤まりないように思います。ただ、今の掘下げてと申しますのは、その行政作用と一応考えましたところで、その行政作用を受持つ機関或いはその関係の補助をする機関というものを考えます場合に、恐らくそれを先生はお考えになつておるものと思いますが、いわゆる統帥権の独立という考え方がそこに来るわけであります。統帥権の独立ということを強く持つて参りますというと、昔の憲法のように天皇が直接それを握られて、そうしてその補佐機関というものは内閣とは又全然違つたものが、独立のものが補佐に当つている。そうして内閣もその関係では責任は負いません、或いは議会もその関係に口ばしを入れることは許されないという形のものができ得るわけであります。そういう形のものは今の憲法ではこれは当然許されないことでありますが、仮に憲法を改めるということになれば、それは純理論として申しますれば、もとの明治憲法の例もございますからして、そういう形も観念上の問題としてはとり得ることにこれは勿論なるわけであります。ところが結局は今度は今の憲法の精神というものから、或いはそれを延長して行つたこの先々の我々の考え方として、そういうことがいいことか悪いことかということが一般の世論によつて批判されなければならないことになろうと思うわけでありまして、その意味ではこの民主主義という原則を打立てて今後も行くということでありますれば、国会も口ばしを入れられないというような形の統帥権の独立というものは、恐らく大多数の国民は望まないであろうと思います。むしろそういう統帥権のできることを恐れるほうの側の気持が強く働くであろう。従つて一つの憲法改正の際の論点としては、御承知のように昔の明治憲法では天皇は陸海軍を統帥するとあつて、実はそれが統帥権の独立を意味するものかどうか、文章の上では決してはつきりしておりません。少くとも普通の天皇の大権として内閣の輔弼事項であるがごとき形になつておつたのでありますが、それにもかかわらず明治憲法制定の当初からすでに統帥権の独立ということが既定の事実のようになつておつて、内閣すらも口ばしをいれられんものとしてずつと育られて来て、ああいう間違いのもとになつたという、むしろそちらのほうの過去を反省した考え方から、新憲法を、今度の憲法を仮に改正するという場合におきましても、むしろそういう意味の誤解のないような形に規定をはつきりしておきたいという気持が、むしろ国民の側としては強く働くのではないか。即ちそういうような統帥権の独立というものはむしろないのだということをはつきりさせる方向へ条文を明らかに持つて行こうというような気持が恐らく出て来るのではないか。これは単純な推理の、予想の問題でございますけれども、そういうように考えられるのでざいます。
それから第二点の国際紛争の問題でありまして、第九条の第一項においては、お言葉にありましたように、国際紛争解決の手段としては武力行使等を許さない、その趣旨はこれはずつと前から政府として考えておりますところは、他国との間に相互の主張の間に齟齬を生じた、意見が一致しないというような場合に、業をにやして実力を振りかざして自分の意思を貫くために武力を用いる、そういうことをここで言つておるのであつて、日本の国に対して直接の侵害が加えられたというような場合に、これに対応する自衛権というものは決して否定しておらないということを申しておるのであります。その趣旨は、私は今のお言葉にも出て来ましたように、恐らく突如として敵が日本に攻め込んで来るということはむしろ例外の場面であつて、何か初めにいざこざがあつて、そうしてそのいざこざのあげくに向うから手を出して攻め込んで来るという場合に、これが常識上普通の場合だ。いざこざがあつて向うから手を出して攻め込んで来た場合に、一体日本がそれを迎え撃つということが国際紛争解決の手段として武力行使になるかどうかと申しますと、それはならないと考えるべきであろうと思います。即ちいざこざが前にあろうとなかろうとこちらから手を出すのは、これは無論解決のための武力行使になりますけれども、いざこざがあつて、そうして向うのほうから攻め込んで来た場合、これを甘んじて受けなければならんということは、結局言い換えれば自衛権というものは放棄した形になるわけです。自衛権というものがあります以上は、自分の国の生存を守るだけの必要な対応手段は、これは勿論許される。即ちその場合は国際紛争解決の手段としての武力行使ではないんであつて、国の生存そのものを守るための武力行使でありますから、それは当然自衛権の発動として許されるだろう、かように考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/70
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071・中山福藏
○中山福藏君 これは政府が不用心にいろいろな説明を発表なさることから、私の質問が生れておるのでありまして、例えば先日の木村長官のお答えのように、個人としては軍隊だと考えると、併し政府の一員としてはこれは自衛権の発動の片鱗を示しておるんだというような御説明で、まあこの点については木村長官の御質問は大体お気持ちもかわつておるのでありますが、すでに陸海空というものを事実上設けられて、その軍が設けられておるのでありますが、その陸海空に関する自衛隊というものが設置されておる以上は、先般本会議において高木正夫君がその陸海空軍の指揮権というものは誰が持つておるかということを尋ねましたところが、それは総理大臣が持つておるんだということをお答えになつておる。総理大臣が持つておるとすれば、総理大臣が持つというところの規定が、これはやはり明確にしておかれなければ、その都度刹那的な説明によつて、その指導、指揮権というものが変つて行くというようなことではいかんと思いますから、その点をはつきりして将来の憲法改正或いはその他の法律上の改正に資するために、私はお尋ねしておるわけでございまして、旧憲法のいわゆる天皇主権の時代と民主主義の今日の人民主権との間には非常な違いがあると思いまするが、私は仮にこの民主主義の国であつても、仮に自衛権の発動であつても、私は指揮権の所在というものは明確にしておかなければならんというのが私の考え方であるのであります。
そこで一つ、第二の問題をもう一つ念を押して長官の御意見を承わつておきたいのは、この間、私の調べによりますると、例えば第三国人がここで平装束の、普通の洋服を着て普通の人のように生活をしておる場合に、これが内々密通をして、結局これは秘密保護法に引かかるでしようが、内々外国と連絡をとつて、そして一夜の間に落下傘で以て武器を投下してこれが武装したときには、これはやはり国際紛争という事態が惹起されるんじやないかと思うんですね。国際紛争が生じた場合に自衛権というものを、みずから進んで自衛権というものはありませんが、みずから進んで武力行使をするということはやめるというようなことに私聞えたのでありますが、そういう場合に武力行使をするということは、一つの自衛権の発動として武力行使になつて現われるんじやないかと思うんですね。そうするとその紙一重のところと解釈していいのか、紙一重という姿も現われて来ないのじやないかと実は思う、そういう場合には……。これは一国が故意に落下傘によつて武器を投下して一晩のうちに相当数の人が武装する、そういうことになりましたらこれは侵略です。侵略というものがはつきり現われて来ると思うのですが、それは何でございますか、普通口頭で紛争をやつておるということだけがいわゆる法律上の国際紛争というものに入るとおつしやるんですか。或いは武装して蜂起した場合において、いろんな混乱、紛乱が生じた場合には、それも国際紛争だとおつしやるのか、それはどうですか。口頭上の紛乱、或いは武装してお互いに斬り合い、殴り合いが始まるということも国際紛争に入るのか。それは区別して考えておるんでしようか、どうでしようか、その点一つ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/71
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072・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) おつしやる通り、紙一重どころではない、はつきり分れておると思います。今の例でございますが、私どもの国際紛争と申しますのは、もうその実力行動が始まつてしまつた場合は、これはここで、憲法で考えておるような国際紛争ではないのであつて、憲法の考えておる国際紛争は、今お言葉にありましたように、口頭と申しますか、連論戦と申しますか、そういう意見のお互いの疏通がつかん、一致がないという場合を典型的の場合として考えておると思いますからして、今の実力行使の場合、例えば第三国人が普通の生活をしておりながら、突如として空から落下傘で落された武器を持つて蜂起する、それが第三国の示唆に基くものであろうとなかろうとそれはすでに一極の内乱とかというような形、暴動という形になるわけでございます。その形に対応してこれを抑えるということはもう当然にできなければならんことであると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/72
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073・中山福藏
○中山福藏君 その点はもうこの法律に直接あんまり関係がないようでございますから、基本問題としてお尋ねしたわけなんですが、最後に一つ民法上の先ほど長官仰せられた善良の風俗という問題でございますね。生命身体というものを国に捧げる契約をするというのは、明らかにこれは個人としては善良の風俗に反する問題なんですが、国家としては命の取合いに対して契約をなさつても、普良なる風俗には反しない。憲法の第十一条ですか十二条ですかあれは十二条だつたと思うが、その中にあれは公共の福祉のために基本的人権を提供するということはこれはお互いの責任であるという意味のことが書いてあるのですが、その条項の趣旨から長官は「自分の意見を吐露しておられるのですが、そういう意味で民法上のの風俗に反する行動であつても、是認していいとこういう御意見なんですか、そこを一つお尋ねしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/73
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074・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) 民法上の問題の典型的な問題は釈迦に説法でございますけれども、中山委員と私が契約して私の命を中山委員に差上げます、存分になさつても異存はございませんという一札を入れて契約した、これは今の公序良俗に反する契約として無効と考えるのでございます。ところがその今回のお尋ねの例の場合は、先ず自衛隊というものはどういう趣旨の下にできておるかどうかということから申しまして、日本の国を守るということであるということからいたしまして、その国を守るために自分の身命を擲つてでもそれに従いましようと言つて契約を結ぶ、このことは先ほども触れましたように国を守るという事柄自身は、単なる一個人の相手方に対して自分の命を預けるということとは違うわけであります。只今御引用になりました公共の福祉のために利用する責任を負うというような言葉もそれと繋りがないとは言えません、あると言つてもよろしうございましようが、あんまりはつきり言いますと、今の羽仁委員あたりのほうから又公共の福祉とは何ぞやという御笠間が出て参りますので、併し性質は共通した性質のものであるというふうに私は申上げてよろしいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/74
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075・中山福藏
○中山福藏君 これは非常に法律の解釈でも、民法と憲法といわゆる公法関係とごちやまぜにして何とかしてそこの一つカテゴリーの中に推し進めて行きたいというような見せかけであるような御答弁としか受取れない。長官も御承知の通りソ連の憲法でも、中共の憲法でも、北鮮の憲法でもみんな書いてある。二つの名誉である、自分の身を挺して国家を守るということは自分一個の名誉であるばかりでなく、国に対するところの当然の責務であるということがはつきり書かれてある。だから私はやはりこれは早急に憲法を改正するということはできませんけれども、将来やはり憲法に一条項を加えるということが絶対的にこれは必要じやないか、憲法の第十二条にはめ込んだだけでそれと繋りがあるのであるというお言葉でありましたが、結局こういうことは明記しなければならんのでございますから、その点は法律改正のときに長官から一つ十分に進言をして頂きたいということをお願いいたしまして次に秘密保護法のほうに入りたいと思います。
先ず第一にお尋ねしたいのは、日本とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定、つまりこの秘密保護法の出て来ます根源となつておりますこの条項ですね、第三条、ここに「各政府は、この協定に従つて他方の政府が供与する秘密の物件」、この秘密の物件という秘密の言葉の範囲ですね。これはまあアメリカと日本と相談して、これくらいのところは秘密になるのだろうというようなことを相談してきめるということに大体なつているように思うのでありますが、一方では秘密ではないと思うし、一方では秘密であると相互に意見が違うときには、どうしてもまとまらないというようなときには、その秘密の範囲はどちらが主導権を握るのですか。これはどうなるのでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/75
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076・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) 考え方の筋を辿つて参りますというと、先にも触れたと思いますが、今回の法律というものは要するに第一次的には少くとも日本の国防上、国を守る上において遺憾なからしめるためという趣旨でございますので、この秘密を如何なるものを秘密とするかどうか、如何なるものを保護する措置をとるべきかということは、第一次的には日本が考えなければならないことであると思います。而してその武器なり又は今のアメリカからのもらい物である、或いは借り物であるという関係から、それはアメリカにおいても非常な関心を持つておるし、向うで秘密の保護を真剣にやつておるというようなものであるという関係から、そこで日本のさつき申上げましたような自主的な秘密保護の考え方というものと向うの考え方とはここで一致して参るという筋になると思います。で観念上の問題としては今の相互の云々ということがありますけれども、第一次的の日本の立場ということから申上げますというと、観念的な考え方としては、それは勿論日本の意思のほうが優先いたします。殊に向うの秘密の保護は狭くて、こつちはもつと広いものが秘密であるべきだという考えで考えられた場合には、日本のほうが勝ちます。これは観念論としてはさようなことになりますけれども、これは実際上の問題といたしましては、向うで秘密の扱いをしておらんものは、結局向うでいつでも漏れ得るということになりますので、そういうものは日本として秘密の保護を特に法律を以てどうというところまで来ることは、実際上の辻棲が合いませんので、結局それは相一致する、而もこの附属書にございますようにお互いに同等の扱いをしよう、扱いをしようというのは、これはいわゆる階級と申しますか、等級ではございますけれども、要するに結論はそれが一致するということに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/76
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077・中山福藏
○中山福藏君 長官御承知の通りMSA協定を結びました結果、防衛に関する産業施設、設備等が日本に置かれるということになるのですが、日本独得のもので防衛をするための器具、機械をこしらえた場合に、日本独得の秘密の機械器具類がそれに入つておつて、これがやはり機密保持の上において最も必要であると思われるようなもの、而もそれがアメリカから送られた資料ともう結び付いているというような場合ですね。これが完成された場合においては、一つの一箇の品物としての秘密の価値がある場合に、それを組織しておりまするその構成分子である日本の物、外国の、いわゆるアメリカの物ですね、この二つが合せてここに立派な機械ができたような場合において、その半分だけのアメリカから提供された物だけが秘密保護法の適用を受けろのか、或いはそれが一体としての保護を受けるのか、そこはどういうふうになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/77
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078・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) これは今の法律の表からはつきりいたしておると思いますが、要するに今の一体ではなくて、その物、部分だけということになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/78
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079・中山福藏
○中山福藏君 これは非常に大事なところだと思うのですが、それじや秘密保護法の適用を受けるということになりますると、半分だけが秘密保護法に引つかかるということになつて、半分とり除けた場合は役に立たんということになるときには、これは保護する必要はないんじやないか、秘密を保持する必要はないのじやないかという感じもするのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/79
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080・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) それはこの法律自体で予定しておるものにも、その先般来備品とか何とか申上げましたが、例えばレーダーと言つても、レーダーそのものとしては大体同じような機能を果すものであるが、或る種のレーダーについては、その部分的に非常に秘密を要するものがあるというような、レーダーの例は私は素人で間違つておるかも知れませんが、要するに部分そのものを抑えての秘密というものも、この法律としてはあり得るわけでありますから、その点は同じことじやないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/80
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081・中山福藏
○中山福藏君 これは改進党なんかで、この秘密保護法の客体になるところの目的物が、単にアメリカから供与されておる、貸与されておるという物件だけでは誠に不備なものではないかという論拠が出る私はゆえんだと見てお尋ねしておるわけですが、何ですか、このアメリカと日本がこういう協定を結んで、秘密を保持するということになつておりますが、日本独特の品物、これは絶対に秘密保護をしなければならないという場合においては、又別の法律でやろうとなさるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/81
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082・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) この立案に当つての我々の考え方を率直に一つ申上げまして、聞いて頂きたいと思うのですが、今お話のような或いは又改進党で言つておられるとか、噂に聞いておりますような一つの考え方、即ちアメリカはアメリカ、協定は協定と、協定をそう引かないで、もつとその日米とか、協定という文字なしの形というものができないだろうかということは、当然研究の過程には出て来ておるものであります。ただ、今日の現在におきまして、昔の第二次大戦前の日本ならばいざ知らずでありますが、今日の現在の日本におきまして、いわゆる自衛隊或いは保安隊等の持つておる武器、これを見渡して見た場合に、昔であれば非常に高度なものを、独自なものを持つていたかも知れませんが、今日の現在において、それを見渡した場合において、結局悲しいことにはアメリカからのもらいもの、これらのものが一番高度の秘密性のものになつてしまう。上位にこれが位するものになつてしまう。そうすると、仮にこの援助協定、或いは借りもの、もらいものということでなしに、日本独自のものを含めるような形にいたしますというと、実は法律の形としては、その最高度のもの、即ちアメリカからもらつたもの以外のものも、ずつと入るような広い形になるわけであります。そういたしますと、又それはそれで、不必要に法律の範囲を拡げた形をとつて来るわけでありまして、たびたび御議論に出ましたような国民の迷惑、人権をめぐつての迷惑というものが不必要に大きくこれが現われて来るということで、そういうことは、それは又そのときに、そういうものの必要が現実にできたときのことにして、取りあえずは今申しましたように持物を見渡して見ると、結局保護する機密はもらいものにだけしかないということにはつきりさせたほうが、むしろ他の弊害を避けるゆえんじやないか、それでこの形にしたのであります。たまたま形はそうなつておりますけれども、保護せんとする法益というものは、飽くまでも日本の防衛上欠陥なからしむるためというのでありますから、その意味で、飽くまでも日本の自主的な必要性から出て来ておるのであります。ただ、その秘密の限界をきめるきめ方としては、この相互防衛援助協定というものによつて限界をきめた、そういう意味くらいにむしろこれを考えて頂いていいのじやないかと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/82
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083・中山福藏
○中山福藏君 そうしますと、長官はこれで十分だというお考えですか。万一私の言つたようなことが、そこに起つて来た場合においては、それはどうなさるのですか。そのときはどういうふうな御処置をなさるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/83
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084・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) これは木村保安庁長官がたびたびれ申上げておりますように、そういう必要が起れば又別に考える、現在においてはこれで十分でございますということを、まあお答えしているわけであります。私どもとしては、まあその実体のほうの問題は、責任を以て判断すべき立場にございませんから、これは木村長官のお答えを以て政府のお答えとお聞取り願つたほうがいいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/84
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085・中山福藏
○中山福藏君 それからこの公にされたということにつきましては、昨日、一昨日でしたか、私からいろいろお尋ねしたのですが、世界中において、いずれの地においてか公になつたもの或いは公に行われているものを、まあ俗に公知、公告という言葉を使つているのでありますが、このどこの国において公になつたかということは、反証を挙げて、被告の立場にありまする者が、自分で立証をする責任を負うということになるのでありましようか。そういうことは誠に面倒でありますから、こういうものは公になつているものだということを、相互に普段から通知し合うというような話合いを、アメリカとか或いはその他の国となすつておつて、こういうものはすでに公になつているのだということを、私はこれは法律を作る以上は、一般大衆に知らしめる必要があります。それが国家の当然とるべき親切な態度ではないかと思うのですが、ただ政府だけが、公になつているから差支えないとか、公になつていないからいかんとかいうことを、政府がひとりだけこれを知つておつて、国民は何にも知らずに、これは大丈夫だろうというようなことを考えて、その秘密事項に関するものを公にしたというときには罰せられるということでは、これはやはり封建時代の政治の、暗黒時代の遺物的な考え方ではないかと思うのですが、そういう方面に相当の予算を組んで、そうしていつも情報を交換して、こういうものはもうすでにはつきり現れているのだというようなことをなさる御所存はないのですか。それだけの親切がなければ、これは非常に危険だと思うのですが、国民はこれを公になつているかどうかということは、なかなかこれは野良に出て働く百姓なんかにはとてもこれはわからん。この前の戦争中でありましたが、たしかあのマーシャル群島でありましたかね、あのところで航空母艦が沈んだときに、私の友だちが短波のラジオをこしらえましてね、それで航空母艦が沈んだということを、たまたま自分のうちで作つたラジオで聞いて、それを女中に伝えましたが、それを女中は隣りに行つてしやべつた。ところが海軍の情報部で発表したものは、赫々たる戦果を挙げたということを発表している。それを反対に、航空母艦が沈んだということを、短波で聞いた私の友人が女中にしやべつて、女中が隣りの人にそれをおしやべりしたために、懲役八カ月になつた。反対のことを、本当のことを伝えたから懲役に行つて、政府の嘘を言つたのは、平気な顔をして金モールをぶら下げて威張つていた。そういうふうな暗黒時代の記憶を、私は今もつて拭い去ることができないのですね。そういうことを考えますというと、やはりこの情報の交換をなすつて、常に日本全部の国民にこれを知らせるということは、私は当然民主主義の国においてはなさるべき事柄ではないか、又それは当然の責任であると私は考えているのでありますが、そういう点について一つ御所見を伺つておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/85
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086・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) 一応私から……、今のお説成るほどと思つて拝聴したのでありますが、これは当時御承知のように流言飛語罪という重いのがございまして、相当これが活溌に適用されて、処罰がされておつたわけでありますから、それらの問題でございますけれども、今の御懸念の点は、先ず第一には、この一般の野良に働いている人たちとか、我々一般の者が、この公になつているのかいないのか、それさえも確かめるような場面に普通遭遇しないような非常に高度なものをまあ考えている。これは今までのお答によつて御推測できるだろうと思います。従つてなつているかいないか、際どい問題になることすらも、すぐには考えられないことだと思いますけれども、併しお話の趣旨はよくわかることでございまして、少くとも何が公になつているかというようなことくらいは、当局の者は成るべくこれを常に知るように心がけなければならないことだと思います。これは当然心がけることと考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/86
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087・中山福藏
○中山福藏君 その点はややもするというと、日本という国は逆戻りをする癖がある。この頃右翼なんというものが盛んに頭をもたげて、古いかびの生えておるような論説ばかり出している。私は左右両派にも決して味方することはできません。国を生成発展させるために、防風林を私どもこしらえるということが法律をこしらえるゆえんだと私はいつも考えている。その防風林の立場をとる法律というものは誠に公正でなくちやならんと私は考えております。そういう意味において、近頃のわけのわからん鋼鉄のような頭で何とかかんとか復古調を盛んにしておるような徒輩に私は与したくないのです。だからこういうあなたに質問をして、国民大衆というものは、本当に人間の尊厳を重んじる政府であり、国民でなくちやならんと私は考えるのでありますから、こういうことをあなたにお尋ねしているわけであります。この復古調を見た日本の官吏がどれだけ国民に対して親切であるかということは、こういうことが一つの証左になると私は考える。一般大衆にどうか一つ長官が白髪の生えないうちに一つそういう処置をとつて、万遺憾なきを期して頂きたいと私は考えております。
それからもう一つお尋ねしておきますが、このMSA協定の附属書Bというところのうちに、「日本国が受領する秘密の物件、」というところの前に「秘密保護の等級と同等のものを確保するものとし、」というのは、この等級とか何とかというものは、これは資料が送られて来ておるのか。又等級はもう日本にすつかり向うのほうから通知があつたものか、これはどうなつておりますか、現在は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/87
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088・上村健太郎
○政府委員(上村健太郎君) 現在もらつておりますものにつきましても、やはり米国側の秘密区分に従いましてこれは極秘である、秘であるというような区分を言うて来ております。従いまして今後もらうものについて、この法律ができますると、米国側が指定しておりまする秘密区分と同等のものを日本で区分をいたして行くことになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/88
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089・中山福藏
○中山福藏君 ちよつともう一つ特に念を押しておきますが、「アメリカ合衆国政府の事前の同意を得ないで、日本国政府の職員又は委託を受けた者以外の者にその秘密を漏してはならない。」と書いてあるのです。この事前の同意を得ないで若し秘密を漏した場合には、これはどうなるのですか。どの法律で縛るのですか、これは……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/89
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090・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) これはアメリカとの協定でございますので、日本国として秘密を漏さないということを約束しているわけでございます。結局万一それに反するというようなことがあれば、それはむしろ国際信義の問題になる。罰則というような問題は生じて来ないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/90
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091・中山福藏
○中山福藏君 国際信義だけでこれはよいのでしようか。一方において事前の同意を得ずにそういうものを漏らした場合に、これを国際信義だけで片付けておいたら、秘密は干上つてしまいますが、どういうようになりますか。どういうような処置をとりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/91
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092・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) これは二段に分けて申上げないといかんと思いますが、要するに秘密が漏れては困るということは、当然今の第三条そのものからも来るわけであります。そのためもありまして、今度の法律を作つておるわけであります。これで国内措置としては万全を期しておる。更に自衛隊の内部その他についての訓令等がありますが、とにかく国内的な措置としては万全を期しておりますからして、この協定そのものの本質からはこれで十分な手当ができておるわけであります。ただ附属書Bの関係は、これは日本国政府とアメリカとの話合いで日本国が受領しておる秘密の物件を日本国政府の職員或いは委託を受けた者以外の者に、これは或は他の必要において漏らさなければならんことがあり得るかも知れません、これは正当な理由に基いて……。そういう場合にアメリカ合衆国の事前の同意ということが加わつておるだけでありまして、これに違反したからと言つて、この法律の問題にはならないわけであります。この附属書或いは協定そのものについての問題にとどまるというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/92
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093・中山福藏
○中山福藏君 それはどうも考え方が非常に幼稚のように私は思うのです。大体近頃は人間が利好になりましてね。人殺しの方法にも完全智能犯というものがある。何にも証拠を残さないものがある。いわんや他国の秘密を知るということは命がけの仕事なんです。ですから完全智能犯的な頭脳を持つておる者がこれを事前に漏らして国際信義だけに、その上に乗つかつて安楽椅子で居眠りしようという者が必ず出て来る。今頃自分の命を取られる馬鹿げたスパイはこれは余りいないのじやないか、それは正直な日本人だけだろうと思う、そういうものに引つかかるのは……。そういうものについては、私は完全智能犯的な人間がこういうことを必ず起し得ると考えます。それについて単に国際信義だけにお任せになつておるということは片手落ちではないかと思いますが、どうでしようか、そんなことでうまくやつていけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/93
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094・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) ちよつと私の言葉が足りませんために、大分濡衣を着せられているように思いますが、申し上げんとする趣旨は、アメリカとの関係においては確かにこの附属書Bで秘密を漏らさない、政府職員或いは委託を受けた以外の者には漏さないということになつております。先ほどもちよつと触れましたが、政府職員即ち自衛隊関係当局、これが第一次的に秘密を握つておるわけでありますから、それらに対しては厳重に部内の規制というものは及びます。又それらの者が漏らしたという場合には、この間も触れたと思いますが、この法律の罰則により罰せられる「業務により知得し、又は領有した」云々という条文に当ります。その手当はそういう意味で十分にできておるわけであります。役人がそういうことをすれば、これは懲戒の制裁を受け、この法律の処罰の規定を受ける、こういうことで保障されておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/94
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095・中山福藏
○中山福藏君 もう一つだけ、これは木村長官にこの間尋ねまして、そうして羽仁さんから注意を受けて、その年になつて、余りそんなことを言うなというような気持ちでいろいろ御親切なお言葉を賜わつたところですが、私が一番恐れるのは色仕かけのスパイです。これはこの間も本会議で私が尋ねたが、この一番大事なことか抜けておるのです。それで木村長官はそういう場合には罪にならんのだとおつしやつた。これは女さえ使えば知り得られる。殊に鼻の下の長い外国人、外国の兵隊なんか平気で漏らしますよ。そういう者から知り得たものは法律の網にはかからない。女が種をばらまいて歩いたときには、不当な方法で知り得た材料でたいのだから、幾らばらまいても引つかかりません。而もそれが九分九厘まで女を使つてのスパイが世界中を横行しておる。それだけは引つかけずにおかれるつもりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/95
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096・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) この開のここでの木村長官とのお話は恋愛論であつたと思います。そこで際どいなあと思つて、実は傍で拝聴しておつたのでございますが、色仕かけと純粋な恋愛というものはやはり区別をしなけれげいかんと、ひそかにそのときから思つておつたのですが、要するに色仕かけになりますと、明白に不当な方法に入ります。ただ、この間のお話に出ておつたような純粋な恋愛関係から、何らの悪げなしについ話をしたというような場合は、これはここの条文には当りませんが、今度はそれを聞いた人が、或いはそれを漏らしたへ……、そもそも恋愛感情はあつても漏らした人というものは、例えばこれは例は悪うございますが、自衛隊の関係職員であればこれは業務により知得したものを他人に漏らした、これは恋愛関係であろうとも漏らしたらば処罰がかかるわけです。又相手方の人がそれを聞いてそれを第三の他人に漏らしたというときには、二号に該当して処罰を受けるわけであります。そのほうの封じ手はしてあるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/96
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097・中山福藏
○中山福藏君 私はブラック・チエンバーという書物を読んだことがあるのですが、あれを見ますというと、実に世界のスパイの恐ろしさに戦慄を覚えるわけなんです。今おつしやつたように恋愛か色仕かけかというものは区別はつかないのです。殊に男なんというものは一種の気狂いですからね、早く言えば……。そうして、そんなものはなかなかわかりや知ませんよ。それは色仕かけか恋愛かということは、あなたのおつしやるようなのは、あなたはわかるかも知れないけれども、併しほかの人はわからんですよ。だからこういう一番大事なものを不当な方法によるにあらざればという一つの型にはめて考えることができるかどうかということは、これは非常な問題なんです。法廷にひかれましてもこの点は恐らく裁判長は判断がつかんだろうと思う。だからそういうことはこれは別途にでもよろしいですが、又これと同時に一つお考えになつてこの法の不備を一つ補うというふうにする必要があるのじやないかと思うのですが、これは一番大きなところが抜けておると思う。これはふざけて言えば誠にくだらん話ですよ、厳粛に言えば世界の今日までの歴史を読んで御覧なさい、傾城という言葉がそれははつきり現わしておる。もうそういうものなんですよ。要するに食うこととこの人類の保存ということに全部が凝集しておるわけですから、社会のすべての問題というものは、人間を如何にして保存するかという問題に結集されておるわけですから、そのポイントを衝けば、どんなことでもわかる。これはもう世界万国、あそこに歴史家が座つておられるからよくわかるのですけれども、恐らくこれで動かないものはないのですよ、うまくやれば……。これはこの法律を整備する意味において、そういう穴を塞ぐということを、一松さんじやありませんが、お考えになつて頂く要があると思う。それがこれには抜けておる。不当な方法ということはこれは裁判長でも判断つきませんよ。どうですかね、その点……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/97
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098・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) 御心配の点はよくわかります。仮に以前の軍機保護法のような形であれば、不当な方法であろうが、なかろうが、探知、収集したと認めれば、皆厳罰を以て臨むという方法をとつております。併し又一方から言いますと、先ほども触れましたようないろいろな善意の人に対して不測の迷惑をかけるということが又そういう面から必然的に起るわけですから、そこでこの不当な方法ということによつてそこに限界を認めて、そうして客観的に見て不当な方法であり、その本人が意識してやつたような悪性のものをつかまえて、更にそれから先のものは二号、三号で抑えて行こう、こういう形をとつたわけであります。これは刑事特別法のときからそういう考慮のもとに一考いたしておるわけであります。従いまして要するに要点はこれは人を罰するための法律ではございませんので、秘密が漏れないようにということが唯一の狙いとしておることでありますから、罰則に頼るということよりも、むしろやはりこの関係当局者というものは全然この法律が動かないくらいに、秘密が漏れないように留意、配慮をしてもらう、これが最も大事だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/98
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099・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 次回は明十四日午前十時から開会することにいたし、本日はこれを以て散会いたします。
午後四時四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03519540513/99
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