1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十九年五月十四日(金曜日)
午前十一時十八分開会
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出席者は左の通り。
委員長 郡 祐一君
理事
上原 正吉君
宮城タマヨ君
委員
青木 一男君
小野 義夫君
中山 福藏君
棚橋 小虎君
羽仁 五郎君
政府委員
保安庁長官官房
長 上村健太郎君
法務省人権擁護
局長 戸田 正直君
公安調査庁次長 高橋 一郎君
事務局側
常任委員会専門
員 西村 高兄君
常任委員会専門
員 掘 眞道君
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本日の会議に付した事件
○日米相互防衛援助協定等に伴う秘密
保護法案(内閣提出、衆議院送付)
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001・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 本日の会議を開きます。
前回に引続き、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案の質疑に入ります。都合によりまして暫時休憩いたします。
午前十一時十九分体感
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午後零時二十八分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03619540514/1
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002・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 休憩前に引続き委員会を再開いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03619540514/2
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003・羽仁五郎
○羽仁五郎君 本法案審議の必要上、本法案は国民の人権に関係するところが深いと思いますので、どういう状況の下に本法案が立法されたのかということから、現在における人権擁護の現状を我々が認識することができますように、政府から現在人権が侵されていないと言えるか、その点詳しく御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03619540514/3
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004・戸田正直
○政府委員(戸田正直君) 昭和二十三年の二月に新らしい憲法の施行に基きまして国民の基本的人権を擁護する機関といたしまして、当時の法務庁に人権擁護局が設置せられたのであります。当時人権侵犯事件を人権擁護局が受理いたしました事件は、設置早々でありまして、国民の人権が侵害せられた場合に、どこに救済を求めたらいいかということがまだ一般に周知せられておりませんような関係上、二十三年度におきまして受理しました事件の件数は僅かに四十八件でございました。その後人権擁護委員制度というものを設置いたしまして、民間の有識者を選びまして人権擁護局に協力する機関として人権擁護委員というものを設けたのでありまして、この活動と相待ちまして漸く一般国民にも人権思想というものが普及せられ、又自分の人権が侵された場合には泣寝入りをしてはいけない、みずからの人権を先ずみずからが護る心がまえを打たなければならんというようなことから、人権が侵されたというような場合に人権擁護委員、人権擁護局或いは各地にございます地方法務局の人権擁護課等に人権侵害の救済の申立てをする事件が漸次殖えて参りまして、二十四年度におきましては五千七十六件、二十五年度には五千六百九十二件、更に人権擁護委員の委嘱を全国的に増加いたしまして、各市町村に人権擁護委員法に基いて委員の増加をいたしました。更に人権思想の普及活動に力をいたして参りまして、一般の認識も高まつて参りましたような関係から、二十六年度におきましては一万五千六百八十九件、昭和二十七年には更に増加いたしまして二万七百五十七件、昭和二十八年、昨年度におきましては二万九千百四十四件という数に逐年増加いたしまして、本年に入りましては、三月までの統計によりますとすでに八千二百件を超えておるというような状態になりましたので、人権擁護局で受理いたしまする事件は逐次増加をいたしておる傾向にある、大まかな申上げ方でございますが、さような状況になつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03619540514/4
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005・羽仁五郎
○羽仁五郎君 今御説明になりました数字は、制度が次第に整つて来ましたために、国民のほうからもその侵されたのではないかというように考える事件を訴える場所がはつきりできて来たので、それで効えた点もあると思うのですが、今御説明の人権擁護委員が全国的に委嘱が終られた以後に増加しているのは、恐らく制度の完備によつてその訴えをする見当がついて来たというだけではなく、客観的にも人権侵害関係の事件が殖えて来たんじやないかというふうに心配されるのですが、その点如何でございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03619540514/5
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006・戸田正直
○政府委員(戸田正直君) 人権侵犯事件の増加したことがどういう理由からこうなつて来たかということは直ちには判断いたしかねるのでございますが、先ほど申上げたように人権思想が一般に行き渡つて来た、普及して来たということと、なお人権に対する理解というものが十分にされておらない、例えば公に奉仕する公務員であるものが権力を濫用して、国民に奉仕するという概念がまだ本当に理解されないで、権力を濫用して往々にして人権を侵害するというようなのもあとを断たないばかりじやなく、むしろ統計上においては増加をいたしておるというふうに考えるのでありまして、従つて客観的な侵犯事件というものが過去の数年前より今日が客観的に殖えたかどうかということについては、一概に判断を今申上げたようにできないのでありますが、人権思想の普及となお人権尊重の理念に徹しておらないものがまだ非常に多いというような二つの面から、この侵犯事件が増加しつつあるのじやなかろうかというふうに考えておる次第、でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03619540514/6
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007・羽仁五郎
○羽仁五郎君 人権擁護局から頂戴しました資料によりますと、特に本法案のような関係においては特別公務員による人権侵犯の問題が重大だと思うのでありますが、その総数が昭和二十七年では五百九十七件、二十八年では六百七十三件、それから本年二十九年になりますと一月が四十二件、二月四十六件、三月五十五件、これがいずれも特別公務員による人権侵犯事件ですが、これは特に制度上は同じでありますし、それから短い間に国民の人権についての自覚が高まつて来たということはこれは喜ばしいことであつて、国民の人権の自覚が高まつて来るということと、特別公務員が国民の人権を尊重する意識が高まつて行くということが、言うまでもなく並行すれば、まあ許されるというのであつて、本来から言えば特別公務員の自覚のほうが高まつて行かなければ、国の責任というものは、公務員の責任というものは憲法が要求するように果されておるということが言えないのじやないかと思う。従つて先ほど伺いました客観的に人権侵犯事件が特別公務員によるものが殖えて行くように心配する根拠があるように思うのです。
それから私人による侵犯事件というものは、これは又実に恐るべく殖えております。これは昭和二十七年にはおよそ二万件ですけれども、昭和二十八年にはおよそ三万件、そして昭和二十九年になりましても一月、二月、三月毎月二千六百或いは二十七百というようになつております。これも人権擁護局、政府において十分これに対して努力して頂かなければならないのすが、私は恐らく特別公務員による人権侵犯の事実というものが、一般の私人による侵犯にやはり影響がかなりあるのじやないかというふうにも心配をするのてす。問題を限定しまして昭和二十九年三月特別公務員による人権侵犯事件が五十五件でございます。この五十五件の中に重大な基本的人権の侵害の事実があるものでしようか、或いはどんなになつておりますか。若しお手許に資料がおありになれば御説明を願いたいと思います。と申しますのは、人権擁護局から頂戴いたしました資料の中に、人権侵犯事件処理例の中に、一、二拝見して驚いたのですが、昭和二十七年十二月に国家地方警察北海道旭川方面S地区警察署においては拷問が行われた。これは先般来しばしば委員会においてこの問題について政府にお尋ねしたときに、拷問というようなことは、これは重大なことであつて、今日根絶しておる、万一にもないというような御説明を伺つておつたのでありますが、この最近頂戴いたしました資料によりますと、これは人権擁護局においいても拷問の事実あり、自白強要の事実ありというように断定をせられて、北海道札幌検察庁に告発の手続をとつておられます。この資料によりますと、この結果がどうなつているかわからないのですが、これはどういうふうな結果になつておりますか。若しおわかりでしたらこれも御説明を願いたい。以上二つの点をこの事実について御説明を頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03619540514/7
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008・戸田正直
○政府委員(戸田正直君) 羽仁先生の御質問の御趣旨大変御尤もでありまして、人権思想は普及せられているにもかかわらず、なお特別公務員等がしばしば人権を侵しておるという実例であとを絶たないばかりか、統計上におきましてもその数が殖えて参つておりますことは、これは甚だ遺憾なことでありまして、特に侵犯事件といたしましては、私人間の対等間における人権の侵害というより、権力者といわゆる非権力者との間における人権の侵害というものが人権侵犯上最も重大であり、由々しい問題だとかように考えておりまして、人権擁護局におきましても、権力者による人権侵害というところに実は重点を置いておる次第であります。にもかかわらず、先ほど羽仁先生の仰せになりましたように、事件が逐次殖えておるということは、いわゆる逆コース的な傾向にあるのじやなかろうかという疑いを打たれるのでありまして、この点甚だ遺憾だと、かように考えておるような次第であります。なお、今後人権擁護局といたしましても、特別公務員の事件についは重点をおいて慎重に調査処理をいたしたいと、かように存じております。
なお、只今御質問になりました旭川の地方法務局におきまして取扱つた事件でありますが、これは昭和二十七年の十二月の一日の事件でありますが、国家地方警察の北海道の旭川におきまする駐在所、勤務の巡査の事件でありますが、これはすでに数年前にジヤツキといいまして、何か荷物を持上げる機械だそうでありますが、この盗難事件によつてすぐに捜査されて、何でもなかつたということによつて済まされた事件であります。それが三年後におきまして、いわゆる検挙週間に当りまして、この検挙週間に再びこの問題を取上げて駐在所呼んで調べた。まあ犯罪の捜査の内容等につきましては詳細に詳らかにすることはできませんが、被疑者の言うところによると、あれは預かつたものであつて、それを修繕に出した。而もその点を調べればもうすでにわかることであるにもかかわらず、その点をどうしても調べてくれない。そうして駐在所の中の座敷に入れて、お前は柔道を誰々に習つているだろうというので、俺が一つ柔道を教えてやるというので巴投げを三回ほど投げてそこへ叩きつけた。そのために意識が不明になつてしまつて、暫らくして気がついてから、もう帰つてよろしいというので帰された。その途中で巡査も気になつたと見えて、雪の中を約半道くらいついて来たそうですが、その途中とうとう倒れてしまつた。そこでその巡査は自分の家にその被疑者を連れて行つて介抱をしておるのでありますが、爾来その被旋者は二十七年十二月ですから、私のほうで告発いたしました当事、捜査を開始しておりました当時、まだギブスをはめて寝ておるというような状態で非常に重症であつたのであります。これが警察の駐在所内の事件で他に目撃者はないのでありますが、諸般の事情を調査いたしまして、これは警察官による暴行である。かように認定いたしまして、特にこの種の事件は悪質な事案として、私のほうは強硬な態度をとつて札幌の検察庁に告発をいたしたのでございます。その告発いたしましたのが昭和三十八年の八月二十六日でありますが、実はその後事件が捜査されておりますが、まだ捜査中ということでありまして、実はこれも多少遺憾でございますが、少し遅れております。そこで札幌の法務局にもこれを督促するようにいたしておりますが、丁度検事正でしたか次席検事が異動がありまして、何か遅れておるような事情がありまして、新らしい検事が赴任されたら早速やるというようなことで、只今捜査中ではございますが、かなり遅れております。この点も私のほうとしてもただ告発のしつ放しでよろしいというわけには参りませんので、そのあとの処置に対してもやはり十分注意をいたさなければならん。かように考えておりますので、なおこの点につきましても、その後の処理又捜査状況等につきましても十分調査をいたしたいと、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03619540514/8
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009・羽仁五郎
○羽仁五郎君 このような問題については人権擁護局としてはどういうふうな結果を、告発の結果ですね、得ることを期待されておるのでしようか。お差支えなければ伺いたいと思います。
それから続いてさつき伺いました、特にこれは少し古い事件ですけれども、最近この二十九年の三月の五十五件の内容について、只今御説明がありましたような札幌の事件のような重大なものがあるのでしようか、どうでしようか。その点も合せて御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03619540514/9
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010・戸田正直
○政府委員(戸田正直君) 人権擁護局といたしましては、人権侵犯がございましたときに慎重に調査いたしまして、これは人権擁護上一般の将来の注意或いは単に処分を勧告するだけでは人権擁護の其の目的は達せられない。気の毒であるが、これはやはり一応の懲戒なり懲をしなければ本当に反省しないだろう。かようなものに対しましては特にこれは重い処置でありますが、検察庁に告発をいたして処理をいたしておるのでございます。今年に入りましてからはすでに告発が、従来人権擁護局の告発というものは遺憾と申上げたらいいのか、或いは告発は少いのがいいのか、これはいろいろ議論があると思いますが、今まで少かつたのであります。今年に入りましてからは告発事件が非常に多くなりまして、すでに一月から今日まで四件の告発をすでにいたしておる状態。あります。この中には警察官による事件が大体三件ぐらいありまして、一件は九州の福岡における鉱害ボスと言いまして、鉱山にはびこる非常な暴力団的なボスがあります。これが鉱山の経営者等に恐喝をいたしまして千数百万円に上る大きな恐喝をいたしました。これは十二名の暴力団を組織いたしまして、警察等においても事件がわかつておるのでございますが、手がつけられないという非常にむずかしい、而も悪質な事案でございまして、これは福岡法務局におきまして非常な決意を以て、勇気を振つてこの事件を調査いたしました。その結果十二名全員に対して非常に詳細な調査を、危険を冒して調査をいたしまして、これを全部告発いたしまして、多分これはもう起訴される段階にあるように承知いたしております。検察庁におきましても早速調査に着手いたしまして、ほぼ犯罪事実も固まつたようでありまして、起訴されるような段階にあるように承わつております。さようなわけで、悪質な事案に対しましては、将来の戒めとして人権思想というものを本当に理解してもらつて、再び人権の侵害のないようにするということがもう先ず大事なことでありますが、事案の性質によりましてはもうその程度では駄目だ、刑事処分を以て当らなければならん、かようなものに対しては告発の方針をとつております。又人権擁護局としても今後成るべくそういう事案に対しては積極的に一つ調査の方針等を進めて行こう。かように考えまして、今年に入りまして今申上げたような、かなり事案に対しても厳格に私のほうは取扱つておりまして、すでに四件の告発をいたしておるというような事情でございます。それからいろいろ事件もたくさんございますので、どの事件というものを一つ一つ挙げるというのは私ちよつと…。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03619540514/10
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011・羽仁五郎
○羽仁五郎君 それでは特定の事件について質問しますから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03619540514/11
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012・戸田正直
○政府委員(戸田正直君) 私ちよつと気の付いたものがありますからこれを申上げます。これは釧路の、やはり北海道でございますので、北海道ばかりでありますが、釧路の地方法務局で取扱つた事件でありますが、これは昭和二十八年の四月二十八日の午後九時頃に、これは名前を、評しいことは各署に配られますので、今私の手許にありますのは仮名になつておりますので、御承知願いたいと思いますが、非番中の〇市警察署勤務のS巡査が、「〇市N町飲食店「ちよつ平」方附近を通行中、同店階上において宴会を催し泥酔していた。大学学生等七名の内一名が二階窓より通路に嘔吐していたので、通行人に迷惑を及ぼすものと考え仰ぎ見たところ、Tは酩酊してい為私服であるS巡査を与太者が睨んでいると誤認し、暴言を浴せた為口論となり、同巡査は「ちよつ平」方に至りTに階下へ来るよう要求したが応ぜられなかつたので、自ら二階へ上つて行こうとしたところ、折から宴を終えた学生達が降りて来たのでTに対し警察まで来て呉れと要求した為同人は怒り出し、更にS巡査に暴言を浴せ且つ突掛らんとしたが、他の学生の仲裁により事なきを得た。その後Tは通路に出てから通行に突掛つて眼鏡の縁を壊したのを目撃したので、暴行現行犯として本署連行しようとしたが、小指を咬まれる等の暴行を受けたので、本署に電話連絡してE、K両巡査の来援を得てTに手錠を施し、〇市警察署に連行した。然るにS巡査はTの行動に憤激し、本署裏口土間に倒れていた同人の顔面を手拳にて五、六回殴打し且つ事務室に引擦り込み、警棒を以て三、四回腰部、背部を強打暴行を加えたものである。」こういう事案でありまして、これは被害者側にも酒を飲んで暴れたというような多少の非もあつたのでありますが、警察官の行為としても行過ぎがあるというので、かようなものに対しては将来を戒める勧告をいたした次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03619540514/12
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013・羽仁五郎
○羽仁五郎君 この最近の、私どもが新聞を見ておりまして、特に重大な人権侵害の事件が頻々とあるように思う。その中でも特に新聞がそういう問題を重要視して取上げていおる問題だと思いますが、これは本年の四月に東大助教授の宅に制服警官が上り込んで、その動静を調査したということが新聞に報道されております。それから四月の二十日、これは朝日新聞ですが、函館市のやはり警察官が青年団員の思想調査をしたことがあつたということが報道されております。それから最近には国警或いは公安調査庁などの公務員が郵便物の調査といいますか、信書の秘密を侵しておるという事件がどうも頻々として起つておるのじやないか。そのために四月の二十日には全逓の従業員組合がこれを問題にされておりますし、逐に最近に至つて警察大学の中で密封された信書開封する講習をやつておることが衆議院で猪俣議員によつて指摘せられて、そうして政府側もその事実があることを認められております。この以上の申上げたような点の中で特に重大なのは、やはり思想の自由の権利の侵害だと私は考えるのです。これらに対してこの東大助教授の関野君の問題は、人権擁護局でもすでにお取上げになつたのじやないかと思うのですが、それはその後どういうふうになつておりますか。これが一点、この点のお答えを先ず願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03619540514/13
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014・戸田正直
○政府委員(戸田正直君) 只今お尋ねの関野教授の事件は、人権擁護局においても取上げまして処理をいたしておりますが、この事件は三月の三十日の午前十時半頃でございましたか、赤蒜保正といいます谷中警察署の巡査が案内簿を、元は戸籍簿といつておりましたが、只今は案内簿言つておりますが、案内簿を持ちまして防犯等の注意かたがた案内簿を持つて関野助教授宅に参つた、かように言つておるのですが、この赤蒜巡査は関野助教拙宅に参りまして、こちらは文部教官でございますねというようなことで、それに出た奥さんが、さようでございます、御主人はどちらにお勤めですか。東大に勤めてておりますというような内容の末に玄関の中をじろじろ見ておりましたが、玄関の正面のところにあります障子に一けたといいますか、障子の貼らないところが一つる。こちらに覗き穴を作つておられて大変用心がよろしうございますねというようなことを話して、これは前に来られておつた巡査の方がこういうふうにしておくと、防犯上よろしいという注意があつたのでこういうふうにしておりますというふうな話から、間もなくその巡査があつちこつち見廻わしておりましたが、すぐ玄関の前の四畳半に本箱が置いてありまして、本がぎつしり詰つておつた。これを見た赤蒜巡査は、本を見せて頂けませんかと突然言われて奥さんが、まあはあと言つて、余り突然なので、どう返事していいかわからないといううちに、靴をぬいで帽子をかぶつたまま上り込んで、その木箱の中からソ同盟の自然改造、それからマルクス、エンゲルスの芸術論等の本を抜き出して読み出した。それを隣の奥の部屋におりました関野助教授が出て参りまして、一体何をしているのか。人の部屋に上り込んで何が故に一体人の蔵書を見るのかというようなことで、そこで、押し問答があつたようでしたが、その巡査言うところによりますと、自分は前から盆栽、骨董等に趣味がある、本に対しては別に趣味も何もなかつたが、前からそういうような気持があつたので、何気なく上つて見てしまつたというようなことを言つておるのでありますが、結局何がためにそういう本を上り込んで見たかということに対してははつきりいたさないのでありまして、従つて、これが思想調査であるかどうかということに対しては、私のほうとしても直ちに判断はできないのでございますが、諸般の事情から何がために一体本を見たかということの理由が、私のほうとしてもはつきりいたさないのであります。そこで、私のほうといたしましては、この安蒜巡査の行為というものは、警察権を超えた行為であつて、警察官の態度としては甚だ遺憾なので、そうして、まあ思想問題がやかましくなつておりまする時期に、こうした警察官の行為というものが憲法に保障されておる思想の自由等を侵したと思われるような疑いを持たれても仕方がないじやないか、かような疑いを持たれるような行為をすることは警察官としてふさわしくない、かような見解からこの事案に対しましては、警視総監に宛てて懲戒処分の勧告をいたした次第でございます。で、まだ懲戒の勧告をいたしたばかりでありまして、その後の処理等につきましてはまだ報告を受けておらないのでありますが、警視庁からも課長がこの勧告文を取りに参りまして、大変お世話になつたと言つてお礼を言つて帰つたという程度でありまして、その後の処理につきましては、如何ようになされまするかは、まだ私のほうとしてもはつきり承知いたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03619540514/14
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015・羽仁五郎
○羽仁五郎君 この防衡秘密保護法案のような関係では、私はやはり特に今のような再想調査といいますか、そういう思想に関係して起る人権侵犯事件が殖える慮れがあつては大変だというように考えますので、特に一般に特別公務員による人権侵犯事件について政府が十分の努力をなさるということを期待する中でも、とりわけ憲法に保障されております思想その他一切の表現の自由という問題については、厳格にお考えを願い努力を願わなければならない、こういうふうに思つております。
最後に、特に最近起こつておりますいわゆる信書の秘密を侵しているのじやないかという事件、これは一回二回ぐらいでありますと、必ずしもここで取り立てて伺うということも如何かと思うのでありますが、どうも頻々としてこういうことが起つているのではないか。それでこれを政府部内においてもこれに重大な関心を持たれ、郵政局の局長会議でこの問題を取り上げられている。そうして郵務局次長の指示によつて、先頃から警察官による信書の秘密の侵害の疑いがある事実がたびたびあるけれども、今月十二日に開かれた地方郵政局、地方監察局長会議でこの問題を取り上げ、渡邊郵務局次長から郵便物調査の要求については警察に協力する必要はないと次のような指示を行なつた。上田市の公安官が郵便物を調査した事件以来、公安官又は警察官が郵便物を調査しようとした事例は相当あつたが、幸いにその都度これを拒否したので事なきを得た。通信の秘密の保持については去る四月二日の通達で十分承知していると思うが、十一日の齋藤国警長官の国会における答弁から一般の誤解がないように、郵便関係者は不用意にもこのような警官の要求に協力することのないような末端にまで徹底さしてもらいたい。こういうような指示を出しておられます。それでこの十一日の齋藤国警長官の一会における答弁というのは、言うまでもなく、先ほども申上げた衆議院でこの問題が問題になつた場合の答弁で、警察大学において信書の封緘、密封されている信書を開ける技術を講習しているということなんです。この問題については参議雄院の本会会議で私が緊急質問をしたところが、政府は憲法で禁じている信書の秘密を侵害しているという事実はないと思うというような答弁をしておられた。その答弁の趣旨はあいまいで私もよく了解しなかつた。
そこであなたに向つて伺つて置きたいのですが、今日そういうような信書の秘密を侵す、密封されている信書を本人に無断で開封するというようなことが、人権侵犯の虞れなく許されるという根拠が現在あるのでしようか、どういうものでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03619540514/15
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016・戸田正直
○政府委員(戸田正直君) 信書或いは通信の秘密を犯してはいかんことは、これはもう憲法にはつきりいたして議論の余地はございません。この信書とか、通信とかこれは国民の生活の平穏な自由である。平穏の見地からも、飽くまでも守らなければならんことで、常に自分たちの通信が誰かによつて見られておるというようなことになりますと、国民の個人の自由又生活の自由というものが侵されることになるのであります。さような児地から憲法においても又基本的人権の大きな自由として認めているわけであります。従つて信書の秘密或いは通信の秘密が侵されてよろしいという理由は私はないと思います。
ただ犯罪等につきまして令状によつて捜査をするというような場合に信書が差押えられてこれを見ることができるということは、これは刑事訴訟上も認められているのであります。犯罪による令状による場合は、これは許されるものとかように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03619540514/16
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017・羽仁五郎
○羽仁五郎君 只今の御説明の令状によつて信書を開封する場合には、別に本人にわからないようにひそかに開封する必要はないのだろうと思いますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03619540514/17
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018・戸田正直
○政府委員(戸田正直君) 必要はあるかどうかは、それはちよつと今想定いたしかねますが、勿論ひそかにやらなくてもこれは中を開けて見ることができるのでありますから、ひそかにやらなくてもできる。ただ、或いはその手紙をひそかに見ることはいかんということはないと思いますので、成るべく傷つけずに見ようというようなこともあり得る場合もあるかと思うのですが、令状による場合必ずしもひそかに見なければならんというようなことはございません。まあ令状によりましても、成るべく現状をこわさずに見てやろうというような場合も考えられる。例えば金庫を開けることを訓練しておるというようなことを新聞で当時拝見したのですが、真実わかりませんが、これも令状によれば鍵がなければこわしてもいい。併しこれをこわすということは、経済的からいつてもあれでしようし、或いは妥当でないでしよう。その場合鍵がなくても若し開けられる方法があるとすれば、成るべくこわさずに開けるということのほうが、むしろ金庫等の場合においてはむしろ適切じやないかというような場合もあると思います。手紙等をひそかに見なければならんというようなことはございませんが、ひそかに見ることがいいような場合も或いは捜査上或いは極端な例ですがあり得る場合も絶無でないというふうにも考えておりますが、実際の措置に当つておりませんので、そこのところよくお答えいたしかねます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03619540514/18
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019・羽仁五郎
○羽仁五郎君 この問題は今月の十二日の毎日新聞ですか、などにも衆議院でこの問題が問題になつた。殊に警察大学において手紙の秘密開封などの特殊な教育をやつておるのじやないか、それに対して政府側でも齋藤国警長官などがそういう事実を認めたというような報道がなされておるのですが、人権擁護局ではこの問題はまだ注目されておいでにならないのでしようか。それともこういう問題は取り上げる方針でないというお考えなんでしようか、どうでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03619540514/19
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020・戸田正直
○政府委員(戸田正直君) 新聞によりましては私もこの事実を承知いたしておりまして、やはり人権の問題として注目すべきものであるとかように考えております。この問題に対しても十分に調査いたしたいとかように考えております。新聞等で私などよく事情がわかりませんので、よく調査いたさないので結論が出ないのすが、要はその目的じやなかろうか、これが一番大きな眼目だというように考えております。これも調査の上でなければ結論が出ませんですが、目的がどこにあるかということは、これはなかなか調査が困難じやなかろうかかという気がいたしております。その一般の信書を侵すためにこれをやるということになれば、これはもうよろしくないことは言を持たないところです。その他の何の目的のためにやるかということが、この問題のいいか悪いかの一番大きな分点になるのじやなかろうかとおもうのです。先ほど申上げましたように、一般の人たちが自分たちに来る手紙が開封されて、わからんうちに開封されておるかも知れんということを若し国民の全体が持つとすると、これは私は由々しい問題だとかように考えております。むしろそういう不安を与えるということが国民の自由を侵すことになるのだというように今のところ考えておりませんし、よくその点も十分調べて見たいかように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03619540514/20
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021・羽仁五郎
○羽仁五郎君 この建前といいますか、明らかに事件が起つてから、それを人権擁護局で処置せられるということは勿論必要なことでありますが、この信書の秘密の事件については、郵政局ではこうした局次長の指示というもので先般の上田市における事件以来、相当こういう事件があるということを認められて、それで郵政局における国家公務員等はそういうものに協力しないということを、末端に至るまで徹底するという努力をされております。従つてこれは私は今あなたのおつしやつた明らかに一般に不安を与えておるもの、一般に不安が与えられてなければ、同じ政府部内の郵便局でこういう問題を取上げるはずがないと思うので私はこの段階において、むしろ人権擁護局がこの問題を慎重にお考えになるということが必要ではないかと思う。その慎重にお考えを願う上に、すでに過去においてこの故なく信書の秘密を侵しておると考えられる事件が上田市にすでに発生しておる。そうしてこれはあなたも御覧になつたろうと思うのですが、朝日グラフの本年の四月十四日号に、その第一面に「陰鬱な流行品」という題で、この極秘という判こを判こ屋さんが彫つておる写真が載つております。これは今の防衛秘密保護法案が通ると、こういう判こが非常に必要だという考えで判こ屋さんで、こういう判こを彫つておるのかも知れないのですが、あらゆる書類、いろいろな書類にこういう判が捺されるということで、この朝日グラフという印刷物の性質は御説明するまでもないことと思います。これは国民の不安を代表して一部の人がこういうことを不安に思つておるというのじやないかと思います。第二面は「信書にのびる調査の手」という題で、長野地方公安調査局の玄関から調査官が活動に出かけられるところから、そのほか郵便のほうの方々の写真などが入つて非常に大きく取上げられております。すでに相当に関心を持たれ調査をされているのじやないかというふうにも思つたのですが、その点はどうでしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03619540514/21
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022・戸田正直
○政府委員(戸田正直君) 只今のお尋ねの事件につきましても、人権擁護局といたしましてすでに調査をいたしたのであります。事案は昨年の暮と本年の三月十六、十七、三月二十日の四回に亘りまして公安調査官の竜堀忠次と申します者が上田郵便局の外務員の洞口十四雄等に対しまして同人がマークしている特定の個人を指名して、その者の郵便や小包の送り先やその名前等を質問し通信の秘密を破るような強要をした、こういう事案ありますが、これはまだ幸いに侵すまでには参らなかつたのてあります。侵すことを局員に要求した事件であります。そこでこの事件を長野の地方法務局に送りまして、指示して調査した事件でありますが、この調査の結果はこの公安調査官がかような郵便局員に対して調査を強要したという事実が認められたの、ありまして、そこで私どもとしましてはこの長野の調査に基きまして、これはやはり公安調査官の行為としては甚だ遺憾なことである、通信の秘密はまだ侵しておりませんが、侵そうとしたというこの行為に対しては、やはり責めらるべきじやないか、かように考えておりまして、この竜堀忠次の責任と更に一般公安調査官に対する将来の反省を促したい、かように考えておりまして、この問題に対しても今後そういうことのないように勧告をいたしたい、かように考えております。まだいたしておりませんが、しなければならないだろうと、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03619540514/22
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023・羽仁五郎
○羽仁五郎君 我々国会諸員として一方で防衛秘密というようなものを立法によつて規定し、そうしてそれに対して刑罰を以て臨むというようなことをやるとするならば、他方において一般的な条件で基本的人権が尊重されておるという確証がなければ、これはなかなか重大問題になるということは説明を申上げるまでもないことだと思います。そしてそれならばこそ、こういうふうな一般的な状況の下においてますます政府が人権擁護局という機関によつて、いやしくも基本的人権の侵害がないために全力を傾注されることだと確信しております。なお、以上申上げました問題、又私の質疑全体を通じて御了解頂いたと思いますが、特にこの思想の自由或いは信書の秘密という極めてデリケートな問題について十分御努力願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03619540514/23
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024・郡祐一
○委員長(郡祐一君) ちよつと速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03619540514/24
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025・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03619540514/25
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026・羽仁五郎
○羽仁五郎君 只今の最後の問題につきまして、公安調査庁のほうからも御説明が願えれば有難いと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03619540514/26
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027・高橋一郎
○政府委員(高橋一郎君) お答えいたします。上田市の郵便物関係の事実関係は、今人権擁護局長から申上げた通りでございます。これは私どものほうの調査の落度でございまして、誠に遺憾に存じております。それでこの件につきましては、すでに三月三十日の参議院の本会議で永岡さんの緊急質問に対しまして法務大臣から御答弁申上げ、それから四月三日の衆議院郵政委員会で山花さんの御質問に対しまして、私から詳細又御返事申上げたのであります。それで私どもとしては問題が通信の秘密という問題に関しまするので、今後このようなことがないようにということで、すでに四月十四付で私の名で通牒を出しまして、この問題に関しまして国会における速記録を添えまして全国に再びかようなことのないようにという通牒をいたしまして、今月の十日、十一日に全国八カ所のブロックの公安局長会議をいたしまして、その席上でもよく経過を話しまして、十分職員に徹底するようにいたしておるのであります。私どもとして本人に対する厳戒は勿論、そういう意味で先ず最善の努力はしておるつもりでおります。ただ、附加えて新聞などに信書の秘密が侵されたというふうに一般に響いておるように存じます。実際は只今人権擁護局長から申上げたように郵便の差出人或いは個数というようなことについて尋ねたのであります。従いまして狭い意味のいわゆる信書の秘密というような、例えば他人の手紙の内容を探つたとか何とかというものではございませんので、ただそれがやはり憲法のいわゆる広い意味の通信の秘密というものに該当する行為、行為そのものは単純なる行為でございますが、その影響は非常に大きいということで、先ほど申上げたような万全の方法を講じて参つたのであります。その点結局落度でございますので、こういう弁解もせずもがなと思いますけれども、余り何と申しますか、信書の秘密ということで非常に悪質な程度のことを公安調査官がしたというふうに誤解を受けても、又公文調査庁として大変残念であるというふうに考えますので、その点一言附加えさせて頂いたわけあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03619540514/27
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028・羽仁五郎
○羽仁五郎君 只今御説明頂きまして公安調査庁においてはこの問題を十分にお考え下さつて、それぞれ必要にして十分な処置をおとり下さつているように御説明を頂いたので、十分御努力に対しては深く感謝をいたします。この点につきましては破壊活動防正広案が本院で、この当委員会において審議せられた当時に、やはりこの問題が非常に心配になりましたので、政府と質疑応答を重ねました。それらの記録は十分御覧下さつていることと存じますから、今ここで重ねて申上げません。十分最高の責任を負うておられる方々におかれましては、こういう問題についての認識が十分におありになることと拝察をするのですが、併し全国に亘つて数千人に上られる公安調査官がおられるのですから、そういう方々が活動せられる場合には、間々只今申上げたような破壊活動防止法がどういうふうな経緯を経て、どういう国会における立法者の意思というものを反映して制定せられたかということについて、或いは十分の注意を払われていない場合があつたのじやないかというように思いますので、今後そういう点について特に御留意願いたいと思います。只今御説明の中にございましたように、そして御弁解というお答えもございましたので、それを壷ねて申上げることは失礼になりますが、憲法で言つているのは、やはり通信の秘密ということはかなり広い意味で育つていることであろうと思われますし、必ずしも密封の信書を開封して、その内容を読むということばかりに限定されないことは十分御了解下さつていることだと思うのであります。
なお、破壊活動防止法の審議の際に、特に破壊活動防止法の中の非常に重大な人権に対する制限、なかんずく団体に対する規制及び言論に対する規制、団体を解散するとか、或いは新聞紙などの発行をやめさせるというような規制が行われた場合に、それが後に裁判で無罪になりました場合には、ここに全く救うことの不可能な基本的人権の侵害が生じます。御説明申上げるまでもないと思いますが、団体はその期間全く解散されてしまうのですし、そる新聞はその期間全く発行が停止されてしまうのです。その団体が解散されていた、或いは又その新聞の発行を停止されていた間の基本的人権の侵害、又そのほかの損害というものは、これはどういう手段を以てしても救うことのできないということは、当時の質疑の際にも明らかになつておるのであります。従いましてこういうような意味において救うことのできない不当な基本的人権の侵害が行われた場合にはどういう言うにして責任をおとりになるかということについて、私から伺つたときに、当時の政府の公式の御答弁としては、この責任は最高のレベルにおいてとられなければならないものであるということを了解されていたように伺つております。これはまさにその通りであろう。従つて公安調査庁長官なり或いは次長なりにおかれては重大なる責任を持つておられるので、その点も御自身十分御自覚になつていることはもう深くお察しを申上げておるのでありますが、多数の庁員と言いますか、多くの公安調査官の方々の活動の場合に、私はやはり初めからそういう重大な事件が起らないものと思いますけれども、個々の問題についての認識がやはりその点において飽くまで人権を尊重し、そうして破壊活動を防ぐのだという点が第一の前提であり、人権の尊重の意識が少しでも薄らぎますと、恐るべき事態が発生するのじやないかと考えますから、只今御説明下さいましたような点と、私から今申上げましたような点をもお加え下さつて、それで更に御努力を願いたいと思うのであります。如何でしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03619540514/28
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029・高橋一郎
○政府委員(高橋一郎君) 御趣旨は誠に御尤もでざいまして、私も全くおつしやる通りに考えております。それで処分問題は勿論でありますが、広く調査の面におきましても、いささかも行過ぎのないようにというふうに注意して参ります。前回関総務部長からもお答え申上げましたように、一つの方法としましては、研修の機会などに始終職員にその点徹底させておるのでありますが、これは何も研修という場面だけに限らず、あらゆる機会に、例えば実務を通していつもそういうことは忘れないように努力して参るつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03619540514/29
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030・羽仁五郎
○羽仁五郎君 実はその点についても当時の法務総裁でしたか、法務大臣でしたか、木村さんからも研修というか、そういう教養の点についても万遺憾なきを期するというお答えがあつたのですが、最近の警察大学においてどうも信書の書面をひそかに開くというふうな講習をするというふうなことがありますと、我々がその期待した講習というものとは全く別の講習が行われるようになつてしまつて、破壊活動防止法案の審議のときにそういうまさか意味でおつしやつたのじや毛頭なかろうと思うのですが、そうして又やはり私はどうしても日本の従来の慣習から、お役人が非常に職務に熱心であるということは、日本の非常に誇りとされているところなんですが、併し民主主義においては、やはり役人が職務に熱心な余りこういうことをしたということは許されないことだと思うのです。どうもそういう考えが一般にもまだ拭い去られていないところがあると思いますので、特に公安調査庁などにおかれては、こういう問題に非常にデリケートに関係して来る点が多いので、いやしくも職務に非常に熱心であつたからというふうな理由を挙げられるということのないようにお願いしたいと思うのであります。これは何も今更民主主義になつたから憲法はアメリカが日本に強要したものだというような、実にけしからん議論が横行しているときに、特に御注意を願いたい。古来中国の諺にも虎よりこわい、良い役人というのは虎よりこわいということは事実であるので、職務に熱心な余り国民の基本的人権が侵されるということが万一にも、何か場合によつては許されるようにお考えになつている方があるとすると、大変困ると思いますので、職務に熱心であるということは、やはりその法なり職務なりの最も最高の点を常に念頭に置かれるということでなければならない。警察法には前文にそのことが書いてございますし、破壊活動防止法の場合にもやはりこれが民主主義を守るためのものであるということは、十分に現れていることだと思いますので、そういう点につきましてもどうか留意願いたい。
予算の面などにおかれましても、先日も関さんにも申上げたのですが、十分……、今日国立大学の研究室などにおいては一年に十万円くらいの予算しか与えられないで、それで学問上の研究をやつておられる際に、公安調査庁においてはその調査費としてかなり多額の国費を使つておいでになるのですが、その国費の使い方の面でも、やはり密告を奨励するとか、或いは買収をするとか、いわんや挑発するとかというような事件が一つでもあるということは、非常に歎くべきことだと思うのです。先ほど参議院の本会議でそういう点に言及したのでありますが、これはすでに十分慎重にお考え願つていることと思いますが、昭和二十七年の二月に、宇部窒素の工場でございますが、そこでベース・アツブの問題で、労働争議が起つておりましたときに、第二組合の事務所に向つて爆弾を投げ込んだという事件があります。そしてそれらの爆弾を投げ込んだ人々が逮捕せられて、裁判の結果有罪であるということが明らかになり、その主犯というのでしようか、主な方の一人が七年の刑を宣告せられたのでありますが、その方が、自分は、これは当時の特審局ですが、当時の特審局の方に依頼されて、それでそういうところへ爆弾を投げ込んだのだ。だからしてこういう七年という刑を受けるということは、約束が違うというように青い出されて、広島の高等裁判所に控訴されている事件がございますが、この事件については、勿論御承知のことと思いますが、どんなふうにお考えになつておりますでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03619540514/30
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031・高橋一郎
○政府委員(高橋一郎君) 只今おつしやつた事件も、勿論私そういう事件が、問題があるということを存じております。それでまあ一応の感じとしましては、まさかそういう非常識なことはない、相手の、現に被告人になつておる人が、何らか言い過ぎてておるのではないかという感じでありますけれども、それは別といたしまして、この問題については、現在折角裁判の上で明らかにされようとしておるので、その経過を見て適切なる措置に出たいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03619540514/31
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032・羽仁五郎
○羽仁五郎君 この問題につきましては、只今の御答弁で満足をいたすものでございますが、破壊活動防止法案の審議の際にも、万一公安調査庁のほうの方からの挑発によつて事件が起つたような場合には、それは当然無罪である。且つ又その挑発をされたような方方の、或いはそれを監督された方々の責任というものも明らかにされなければならないというように考えて、質疑し、政府もそれに同意をせられておると思いますので、この宇部窒素の問題につきましては、只今御説明下さいましたように了承いたしますが、一般にどうかそういうふうな疑いを仮に与えると、国民に非常に不安を与えることになりますから、いやしくも挑発に類するようなことが今後全くないように御努力を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03619540514/32
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033・高橋一郎
○政府委員(高橋一郎君) 承知いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915206X03619540514/33
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034・郡祐一
○委員長(郡祐一君) 暫時休憩いたします。
午後一時四十四分休憩
〔休憩後開会に至らなかつた〕
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