1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十九年三月十七日(水曜日)
午前十時五十八分開議
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議事日程 第十九号
昭和二十九年三月十七日
午前十時開議
第一 防衛庁設置法案及び自衛隊法案(趣旨説明)
第二 日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定の批准について承認を求めるの件、農産物の購入に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件、経済的措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び投資の保証に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件(趣旨説明)
第三 地方税法の一部を改正する法律案、入場譲与税法案、昭和二十九年度の揮発油譲与税に関する法律案及び地方財政平衡交付金法の一部を改正する法律案(趣旨説明)
第四 日本国とインドネシア共和国との間の沈没船舶引揚に関する中間賠償協定の締結について承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)
第五 第二次世界大戦の影響を受けた工業所有権の保護に関する日本国とデンマークとの間の協定の締結について承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)
第六 国際連合総会の定めた条件を受諾して国際司法裁判所規程の当事国となることについて承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)
第七 外務省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第八 簡易生命保険法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/0
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001・河井彌八
○議長(河井彌八君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
―――――・―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/1
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002・河井彌八
○議長(河井彌八君) これより本日の会議を開きます。
この際お諮りいたします。地方行政委員長から、警察制度の運用並びに町村合併促進状況を実地調査するため、大阪府、奈良県に堀末治君、若木勝藏君、加瀬完君を、愛知県、長野県に伊能繁次郎君、島村軍次君、秋山長造君を、本月十八日から四日間、法務委員長から、出入国管理特に韓国人の強制送還の基準及び収容所における処遇についての苦情に関し、実地調査のため、長崎県に宮城タマヨ君、羽仁五郎君を本月十八日から五日間の日程を以てそれぞれ派遣されたい旨の要求書が提出されております。各委員長要求の通り議員を派遣することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/2
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003・河井彌八
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつて各委員長要求の通り議員を派遣することに決しました。
―――――・―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/3
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004・河井彌八
○議長(河井彌八君) 日程第一、防衛庁設置法案及び自衛隊法案(趣旨説明)
以上両案に付き国会法第五十六条の二の規定により、内閣からその趣旨説明を求めます。木村国務大臣。
〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/4
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005・木村篤太郎
○国務大臣(木村篤太郎君) 今回提出いたしました防衛庁設置法案及び自衛隊法案につきまして、提案の理由並びにその内容の概略を御説明いたします。
御承知のごとく、保安庁は昭和二十七年八月、当時の警察予備隊及び海上警備隊を統合して創設したものでありまして、我が国の平和と秩序を維持し、人命財産を保護するため特別の必要がある場合において行動することを任務としたものであります。保安庁は創設以来一年有七カ月、保安庁法の規定するところに従つて、その任務を遂行するため着々諸般の整備を図り、必要なる訓練を行なつて今日に至つております。然るところ、今般政府におきましては、現在の国際及び国内の諸情勢に鑑み、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、この際更に自衛力を増強することを適当と認めるに至りました。よつて今回、保安隊及び警備隊を陸上自衛隊、海上自衛隊に改め、自衛官等の定員を増加すると共に、新たに航空自衛隊を設けることといたし、且つその任務として、外部からの侵略に対する我が国の防衛を明確に規定する等の目的を以て、保安庁法を改正して防衛庁設置法及び自衛隊法を制定せんとするに至つた次第であります。
次に、両法案の内容の概略について申述べます。先ず防衛庁設置法案について御説明いたします。防衛庁は総理府の外局として設置するものでありまして、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つことを目的とし、陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自衛隊を管理し、運営し、これに関する事務を行うことを任務とするものであります。(「ゆつくりやれ」と呼ぶ者あり)防衛庁の長は、従前の通り国務大臣を以て充てるものでありますが、今回内部部局に新たに教育局を加えますと共に、防衛庁の所掌事務に関する基本的方針の策定について長官を補佐する参事官の制度を設けることといたし、他面従前ありました内部部局の課長以上の職に対する制服職員の経歴者の任用制限は、これを設けないことといたしました。
次に、幕僚監部につきましては、航空自衛隊の新設に伴い、従前の第一幕僚監部、第二幕僚監部に相当する陸上幕僚監部、海上幕僚監部のほか、航空自衛隊についての幕僚機関として新たに航空幕僚監部を設けることといたしました。又自衛隊の増強に伴い、陸上、海上、航空の各自衛隊を統合した見地からの防衛計画、後方補給計画、訓練計画の方針の作成及び調整や、出動時における指揮命令の統合調整等に関して、長官を補佐することを任務とする統合幕僚会議を新設して自衛隊の総合的且つ有効なる運営を図ることを期することといたしました。なお、このほか陸上、海上、航空各自衛隊の所要物件並びに役務の調達の可及的一元化と能率化を図り、建設工事等についても、これを統一的且つ経済的に処理せしめるため、新たに防衛庁の附属機関として調達実施本部及び建設本部を設けることといたしました。
次に、国防会議について申上げます。(「ゆつくりやれ、わからん」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)国防会議は国防に関する重要事項を審議する機関として内閣に置かれるものれありまして、国防の基本方針、防衛計画の大綱、防衛計画に関連する産業等の調整計画の大綱、防衛出動の可否等に関して内閣総理大臣の諮問に答え、国防に関する重要事項につき、必要に応じ、内閣総理大臣に対して意見を述べることを任務とするものであります。国防会議の構成、運営等は、別に法律で定めることといたしております。
次に、自衛隊法案について主要な事項を御説明申上げます。この法案は、自衛隊の部隊の組織及び編成、自衛隊の行動及び権限、隊員の身分取扱等に関し、おおむね現在の保安庁法の内容を基礎として規定したものでありますが、次に述べる任務に即応し、必要な規定の追加、整備を行なつております。先ず自衛隊の任務といたしましては、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対して我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じて公共の秩序の維持に当たるものといたしまして、その防衛の任務を規定いたしました。
次に、自衛隊の行動につきましては、外部からの武力攻撃に際して、我が国を防衛するため必要があるときは、内閣総理大臣は、原則として事前に、特に緊急の必要のある場合には事後、直ちに国会の承認を得まして、自衛隊に対し防衛出動を命ずることができることといたしました。この防衛出動時における自衛隊の武力行使は、国際の法規、慣例を遵守し、且つ事態に応じ合理的に必要な限度にとどまるべきものとし、又この場合には原則として都道府県知事を通じて一定地域において施設の管理、物資の収用、業務従事命令等を行うことができることとしております。
このような事態に処して、自衛隊の防衛に当る実力を急速且つ計画的に確保することを目的として、この法案におきまして、新たに志願による予備自衛官制度を規定いたしました。予備自衛官は、防衛出動時に内閣総理大臣の承認を得て発せられる長官の防衛招集命令に応じた場合には自衛官として勤務し、その他の場合においては、所定の期間、訓練招集に応じて訓練を受ける以外には勤務することのない隊員でありまして、その採用は自衛官等の退職者中よりの志願により、三年を期間として任用することといたし、その手当等について規定しておるのであります。前述の防衛出動のほか、公共の秩序維持のため、間接侵略その他の緊急事態に際して、一般の警察力を以ては治安を維持することができないと認られる場合における内閣総理大臣の命令による出動、治安維持上重大な事態につき都道府県知事の要請があつた場合における出動、海上における警備行動、災害時における救援のための行動等、すべて現行保安庁法に認めていると同様の規定を設けておりますが、更に外国の航空機が不法に我が領空に侵入した場合における必要な措置について規定いたしました。
この法律案中に規定するその他の事項は、前にも述べたごとくおおむね保安庁法と同様でありますが、自衛隊の指揮監督、部隊等の組織及び編成の大綱等を規定し、隊員の服務についてのよるべき明確な規定を設け、罰則を整備し、関係法律の適用について一層の整理を行う等必要なる整備を行なつております。なお、この法律の施行に伴い、現在の海上公安局法は、これを廃止することといたしました。
以上、今回提出いたしました法律案の提案の理由及び内容の概要を申上げた次第であります。何とぞ慎重御審議の上、速かに御可決あらんことをお願いいたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/5
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006・河井彌八
○議長(河井彌八君) 只今の趣旨説明に対し質疑の通告がございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/6
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007・河井彌八
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。
―――――・―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/7
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008・河井彌八
○議長(河井彌八君) 日程第二、日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定の批准について承認を求めるの件、農産物の購入に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件、経済的措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び投資の保証に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件(趣旨説明)以上四件につき、国会法第五十六条の二の規定により、内閣からその趣旨説明を求めます。岡崎外務大臣。
〔国務大臣岡崎勝男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/8
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009・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) 去る三月八日、日米両国政府を代表いたしまして私とアリソン米国大使との間に署名を了するに至りました日米相互防衛援助協定、農産物の購入に関する協定、経済的措置に関する協定及び投資の保証に関する協定の批准又は締結につきまして国会の承認を求めるの件に関し、提案の理由を御説明いたします。
昨年六月、アメリカ合衆国議会におきまして成立いたしました相互安全保障法改正法によりまして、米国がすでに世界の三十カ国に近い国に対して供与をいたしておりまする防衛援助が我が国にも供与され得ることとなつたのであります。当時の政府の考え方を申上げますと、何分MSAは我が国にとりましては全く新らしい計画であると共に、戦力の保持をいたさない国としては、かかる援助を受けることの適否等について十分検討の必要を感じたのであります。政府は、平和条約発効以来、憲法の規定の範囲内において、独立国としての自衛力を漸増するとの方針をとつて参つたのでありますが、この立場と米国のMSA援助を受入れる場合との関連につき、先ず率直に米国政府の意向を確めることを適当と考え、我がほうの問題とするところを米国政府に質した結果、我がほうの見解は大筋において米国政府の見解と一致することを確めました。これが即ち昨年六月二十四日及び二十六日の私とアリソン米国大使との間の往復書簡でありまして、当時御報告いたした通りであります。
政府といたしましては、この基礎に立つてMSA援助が我が国の防衛力増強に役立ち、我が国の経済にも好影響をもたらすものと判断し、而も我が国の憲法その他の法規の範囲内でこれを受け得るものと認めましたので、昨年七月十五日より交渉を開始するに至つたのであります。この間の交渉につきましても、本会議等において中間報告をいたしましたほか、委員会の論議に際しましてもでき得る限り御説明をいたしたつもりでありますが、政府としましては、この問題に寄せられました国民一般の強い関心にも鑑み、慎重の上にも慎重を期し、この協定が我が国の政治及び経済に及ぼす各般の影響について十分なる考慮を加えつつ折衝を続けて参つたのであります。
その結果、今般両国政府間において合意せられるに至りました日米相互防衛援助協定は、米国がすでに他国と締結している同種協定と大綱において同様な形式及び内容を有しておりますが、又同時に、我が国の特殊事情に鑑み、諸外国の例に見られない二、三の規定も設けておるのであります。
今回の協定は十一カ条、その附属書は七項目より成つております。その内容はすでにお手許に差上げてありまする協定文に明らかな通り
一、援助の供与及びこれに関連する免税その他の措置
二、我が国生産物の譲渡
三、秘密の保持及び弘報活動
四、産業上の技術的情報の交換
五、軍事顧問団及び行政事務費
六、MSA第五百十一条(a)項のいわゆる六条件
七、憲法及び安全保障条約との関係
等の規定を含むものであります。
今その主たる点について御説明をいたしますと、先ず第一に、相互安全保障法第五百十一条(a)項に掲げられました六条件に関しましては、我が国としてこれを受諾しても何ら差支えないものと考えましたので、これを挿入いたしました。この条件中には、憲法との関連におきまして、国内の一部にとかくの議論をされる向きもありましたので、念のためこの協定の実施が日米両国それぞれの憲法の条章に従つて行われる旨を明確にいたし、解釈上疑義の余地なきを期した次第であります。又我が国がこの協定上負うべきいわゆる軍事的義務とは、日米安全保障条約に基く義務以外に何ら新らしい義務はないのであります。又しばしば論議されたる海外に部隊を派遣するや否やというがごときことは、勿論MSA援助とは何ら関係のない、もつぱら我が国のみの決定する問題でありますが、この点につきましても国内で懸念する向きもありましたので、本協定は如何なる意味でも海外派遣を含むものでないとの趣旨を、これ又念のため署名式における挨拶において明らかにいたしておきました。
第二に、我が国経済との関連につきましては、我が国防御力の増大にとつて経済の安定が不可欠の要素であることを明らかにいたし、又米国政府は、我が国の防衛産業助長のため、日本及び他の国の使用に供すべき装備及び資材を極力我が国内において調達すること、又我が国の防衛産業に対し情報を提供し、その技術者の訓練を促進することを約しております。この協定はもとより防衛援助の性格を持つものでありますが、かかる規定を設けることにより附随的なりとは言え、今後この協定の実施が我が国経済に好影響を及ぼすものと確信いたしております。
平和を脅威する国との貿易統制については、最近米国が他の自由諸国と結んだ同種協定にはこの点に関し、明文を掲げることを通例といたしているのでありまするし、又我が国の国連協力の方針からしましても、この程度のことは約束して差支えないと認めましたが、本院の決議の次第も十分に尊重いたしまして、本問題はこれを附属書に落し、我が国としては、この目的のために米国及びその他の平和愛好国と協力する旨を規定するにとどめた次第であります。
又、軍事顧問団につきましては、その自分を大使の指揮下に置くように取りきめ、その員数及びこれに被援助国が提供すべき行政事務費につきましても、我が財政状況にも鑑みまして、これを最小限度にとどめた次第であります。
なお附属書は、援助の内容、装備の標準化及び行政事務費の金額並びにその取扱い等、協定本文の細目取りきめ七項目について規定しております。
以上の諸点は、特に交渉の過程においても取扱に慎重を期し、従つて交渉も意外に長引いたのでありますが、我が国の特殊事情に対する考慮は十分に織り込み得たものと信ずるのであります。
援助の内容に関しましては、今後更に協議決定さるべき次第でありますが、たまたま予算編成期に当り、明年度の我が国自衛力増強計画も明確になりましたので、これに見合う援助が得られることは、大体見通しがついております。
なお、本協定に基きまして、装備の返還に関する取りきめも同時に行いましたが、これは我が国に供与された装備等が不要になつた場合の処分方法につき規定するものであります。
次に、相互安全保障法第五百五十条に基く農産物の円貨による購入及びその円貨の使用に関しましては、農産物の購入に関する協定及び経済的措置に関する協定の二つの協定を作成いたしました。その結果、農産物の購入代金たる五千万ドルに相当する円貨のうち、二〇%は我が国防衛産業の振興に使用されることとなり、残余の円貨は米国が日本における域外買付に使用することとなりました。これは防衛産業の強化と、我が国経済の発展に役立つものと考えております。購入すべき農産物といたしましては、差当り小麦五十万トン、大麦十万トンを予定しておりますが、これは、外貨を使用せず円で購入し得る点、その価格が国際小麦協定の価格と同様の廉価なる点を考慮すれば、相当有利な条件で我が国食糧事情の緩和に寄与するものと考えております。
又、今回同時に署名を見ました投資保証協定は、全文三カ条の簡単なものでありますが、その要旨は、我が国の外貨事情等により、米国民間投資の元本及び収益のドル交換が不可能となつた場合並びに当該投資財産が国内で収用された場合に、米国政府は投資家にドルによる補償を与えると同時に、その債権を継承することを内容とするものであります。これは民間投資者が、米国政府の保証により安心して我が国に資本投下をなし得る途を開かんとしたものであります。
以上概要を報告いたしました相互安全保障法関係諸協定は、全体といたしまして、先ず我が国の防衛力を強化し、併せて我が国産業の発展に資せんとするものであり、而も我が国現行憲法その他の法規の範囲内で実施されるものであることを示していると考えております。政府としましては、今回の諸協定が我が国の自立自衛に貢献することを信ずるものであり、又これにより日米両国の協力は更に強固の度を加え、自由世界の安全保障の維持に貢献せんとする我が国の意図も、その実現に一歩を進めたものと考える次第であります。
つきましては、以上の諸点を考慮せられ、これら協定につき慎重審議の上、速かに御承認あらんことを希望いたす次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/9
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010・河井彌八
○議長(河井彌八君) 只今の趣旨説明に対し質疑の通告がございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/10
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011・河井彌八
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。
―――――・―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/11
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012・河井彌八
○議長(河井彌八君) 日程第三、地方税法の一部を改正する法律案、入場譲与税法案、昭和二十九年度の揮発油譲与税に関する法律案及び地方財政平衡交付金法の一部を改正する法律案(趣旨説明)
以上四案につき、国会法第五十六参の二の規定により、内閣からその趣旨説明を求めます。塚田国務大臣。
〔国務大臣塚田十一郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/12
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013・塚田十一郎
○国務大臣(塚田十一郎君) 只今議題となりました地方税法の一部を改正する法律案、入場譲与税法案並びに昭和二十九年度の揮発油譲与税に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概略を御説明申上げます。
現行地方税制は、シヤウプ勧告を基礎として、昭和二十五年に制定されたものでありますが、その一部は未だ実施に移されない等、世上に相当の批判もありますので、政府におきましても、鋭意これが検討を加えると共に、特に地方制度調査会を設置いたし、その具体的な改革の方法を諮問いたしましたところ、先般その答申がなされ、次いで税制調査会からも、国税、地方税を通ずる改正の一環として、地方税制の改革案が答申されたのであります。ここに提案いたしました法律案は、いずれもおおむねこれらの答申の趣旨に副つて立案されたものでありますが、これを要約いたしますれば、改正の基本的方針は、次の五点にあると申すことができるのであります。
第一は、地方団体の自立態勢の強化に資するため、独立財源の充実を図つたことであります。言うまでもなく、地方団体の自主財源を拡充して、財政運営に対するその責任の所在を明確にして参りますことは、地方自治の健全な発達の上からも、財源の効率的使用の上からも、極めて肝要なことであります。(「朗読をやめろ」と呼ぶ者あり)終戦後屡次に亘る改正により、地方税制は次第に充実強化せられたのでありますが、なお、地方歳入総額に対する(「ゆつくり読みなさい」と呼ぶ者あり)地方税収入の割合は、全体を通じて三二乃至三%に過ぎず、他面、国庫補助負担金、地方財政平衡交付金及び地方債の中央政府に依存する歳入は、歳入総額の五六乃至七%にも達するような状況でありますので、今回の改正に当りましては、たばこ消費税や、不動産取得税の新設、揮発油税源の一部の譲与税化等により、国民負担の実質的増加を避けながらも、六百二十四億円の独立財源の増強を図つたのであります。この結果、地方税収入の歳入総額に占める割合は三九%、中央政府に依存する歳入の歳入総額に占める割台は五〇%程度となる見込であります。
基本方針の第二は、地方団体相互間における税源配分の合理化を期することであります。現在地方税収入がその総体において不足していることは前に述べた通りでありますが、更に立入つて、各団体ごとに見ました場合、その不足の程度には、甚だしい差異があることは周知の通りであります。勿論いわゆる富裕団体と言われる地方団体にあつても、住民の福祉向上のための自治行政を行う上からは、あえてその税源を取上げるべきではないのでありますが、国民負担の現状におきましては、これら富裕団体の税源の一部を割いて、他の地方団体の自主財源の強化に振り向けることもやむを得ない措置であると考えまして、大規模償却資産に対する固定資産税の一部を市町村から道府県に移し、入場税を国税に移管して、その徴収額の九割を譲与税として人口に按分して道府県に譲与することにすると共に、法人事業税の道府県間の分割方法につきましても、より一層の合理化を図つたのであります。
基本方針の第三は、地方税の税種相互間における負担の均衡化を図つたことであります。即ち個人事業税の現行税率による負担は重きに過ぎますし、事業相互間の税率区分につきましても、世上相当の非難がありますので、その税率の引下げと、税率区分の合理化とを図つたのであります。又土地や家屋の値上りを考えました場合、固定資産税の負担は過重であると思われますので、償却資産に対するその負担の緩和をも企図して一面においては、不動産取得税を設けると共に、他面においては、固定資産税の税率を引下げようとしております。このほか自動車税につきましては、揮発油税の負担をも考慮し、揮発油以外の燃料を使用する車及び高級乗用車を中心として税率を引上げることといたしたのであります。
基本方針の第四は、道府県に対し、住民が広く負担を分任する税種を与えるということであります。周知のように、現行税制の下においては、道府県税の殆んど全部を占めます事業税、入場税、遊興飲食税及び自動車税は、いずれもその税源を専ら都市に依存しているのでありまして、換言すれば、農山漁村においては、道府県から幾多の行政上の利益を受けながらも、見るべき税負担をしていないという実情にあるのであります。かような税制の下においては、道府県民全体の意思を反映して行われるべき道府県自治行政の円満な運営は困難であると認められるばかりでなく、そもそも自治の基本は、構成員が広く負担を分任することにあると考えられますので、この際、道府県民税及びたばこ消費税を新設して、道府県税制上におけるこの欠陥を是正しようといたしたのであります。
基本方針の第五は、税務行政の簡素化、合理化を図ると共に、国、道府県及び市町村の三者間に徴税上の協力体制を確立することであります。御承知のようにシヤウプ勧告に基く現行税制は、租税の賦課徴収について国、道府県及び市町村の三者間における責任の帰属を明確にすることを基調としております。このことは、地方自治の確立のためには必要なことではありますが、半面そのために税務行政が区々になり、経費の増加と徴税事務の重複を来たし、納税義務者に対しても無用の手数を煩わしていることが少くないのであります。かかる点に鑑みまして、今次の改正案におきましては、事業税の課税標準の算定は原則として国税のそれによることとし、個人に対する道府県民税の賦課徴収事務についても、これも市町村に委任して、市町村民税と共に取扱うこととし、又不動産取得税及び大規模償却資産に対する固定資産税における評価事務等については、道府県と市町村のいずれか一方の決定に統一することといたしたのであります。併しながら統一に走るの余り、明かに事実に相違することをも不問に付するということは、租税原則から見ましても穏当ではございませんので、かかる場合にはそれぞれ国、道府県及び市町村の三者間において相互に連絡し合うことにより、税務行政上の合理化と協力化とを図るようにいたしているのであります。
ここに提案されました三つの法律案の立案における基本的方針は以上の通りでありますが、そのうち地方税法の一部を改正する法律案につきまして、その具体的内容について概略を御説明いたします。
改正事項の第一は、道府県民税の創設であります。道府県民税の納税義務者の範囲は、市町村民税のそれと全く同じくし、市町村民税の一部を委譲して道府県民税を起すこととし、従つて個人に対しては均等割及び所得割を、法人に対しては均等割及び法人税割をそれぞれ課することとし、標準税率につきましては、個人均等割は百円、法人均等割は六百円、法人税割は法人税額の五%、個人所得割の総額は、その道府県の所得税額の総額の五%と定めております。
第二は、事業税に関するものであります。附加価値税はシヤウプ勧告によつて制定されて以来、遂に今日まで実施を見るに至らなかつたのでありますが、今日の経済情勢並びに国民輿論の動向を考えますときは、これが実施は不適当と考えますので、これを廃止することといたし、その代り現行の事業税及び特別所得税を統合して事業税とし、次のような修正を加えて存置することといたしたのであります。その一は、負担の軽減を図るため、個人事業税において基礎控除の額を引上げ、税率を現行のおおむね三分の二程度に軽減し、法人事業税においては、所得五十万円までの部分についてその税率を一〇%に引下げることといたしているのであります。その二は、税率区分の合理化を図るほか、原則として非課税の範囲を整理したことであります。その三は、課税標準たる所得の算定方法を所得税、又は法人税のそれに合わせたことであります。
第三は、不動産取得税であります。これは土地又は家屋の取得に対しまして、その土地又は家屋の所在する道府県において課するものであり、その課税標準は不動産の価格とし、標準税率は三%であります。ただ本税の創設が、現に払底している住宅の建設を阻害することがあつては適当でございませんので、新築住宅については百万円、新築住宅用の土地については六十万円までの部分に対してはそれぞれ課税しないように考慮を払つているのであります。
第四は、自動車税に関するものであります。車種相互間の負担の合理化を図るため、税率の一部引上げを行うと共に全般的に調整をいたしたのであります。
第五は、たばこ消費税の創設であります。日本専売公社が小売人に売渡すたばこに対し、小売定価を課税標準として、小売人の営業所所在の道府県及び市町村において公社に課することとし、税率は、道府県たばこ消費税にあつては百十五分の五、市町村たばこ消費税にあつては百十五分の十としているのであります。
第六は、市町村民税に関するものであります。おおむね道府県民税の創設に伴うものでありまして、税率につきましては、道府県民税に委譲したものをそのまま引下げる措置をとつておりすす。
第七は、固定資産税に関するものであります。その一は、税源配分の合理化を期するため、市町村の人口段階別に規定する一定の価額を超える大規模の償却資産については、その償却資産所在の市町村の課税権を制限し、この一定の価額を超える部分については道府県に固定資産税の課税権を与えようとするのであります。この改正規定は、市町村財政の激変を避けるため、昭和三十年度から実施することとするほか、若干の緩和措置を考慮いたしております。その二は、税率につき、不乱産取得税の創設とも関連いたしまして、昭和二十九年度は一・五%と、昭和三十年度以降は一・四%とすることといたしたのであります。その三は、我が国の経済再建上重要な機械設備等について課税標準の特例を設けて、経費負担の軽減を図るほか、償却資産に対する固定資産税の免税点を五万円に引上げようといたしております。
改正事項の第八は、その他の税についてであります。その一は、狩猟者税の税率を一本化したことであり、その二は、徴税事務の簡素化を図る意味におきまして、現行の自転車税及び荷車税を統合して自転車荷車税といたしたことであり、その三は、電気ガス税の非課税品目につき、現行品目との均衡を考慮し、地方鉄軌道、金属鉱物の掘採等を追加し、次に電気料金の改訂が行われますときから実施するものといたしたことであります。次に、入場譲与税法案について御説明いたします。
御承知のように入場税は古くから地方税でありましたものを、昭和十三年に、支那事変特別賞に充てるため、国税に委譲されると共に、その一部を地方団体相互間の調整財源として還元されることになつたのでありますが、戦後地方団体一致の強い要望の下に、昭和二十三年、再び地方税となつたのであります。
今回、先に申上げました基本方針の一つであります地方団体相互間における税源配分の合理化を期する見地から、比較的地方財政平衡交付金の不交付団体に収入の多い入場税を、形式的には国税に移して、人口按分により各都道府県に平等に還元する方法をとることによつて、これらの団体の独立財源を少くした上で、半面普遍的に収入の得られるたばこ消費税を国から委譲を受けるなどにより、全地方団体に対して新たに独立財源を付与する途を選ぶことといたしたのであります。
以下本法案の内容につき御説明いたしますと、この入場譲与税は、入場税の収入額の十分の九に相当する額とし、都道府県に対し、その人口に按分して譲与するものでありまして、その使途につきまして国は条件を付けたり制限を付けたりしてはならないものといたし、入場譲与税が一般財源であることを明らかにいたしたのであります。
最後に、昭和二十九年度の揮発油譲与税に関する法律案につきまして御説明いたします。
御承知のごとく、揮発油の大部分を使用して運行される自動車が道路を損傷いたしますことから、揮発油税は道路整備の財源に充てられるべきであるとの論はつとになされていたのであり、昨年、道路整備費の財源等に関する臨時措置法が制定され、揮発油税相当額は道路整備五カ年計画の財源に充てるべきものとされたゆえんもここにあるものと考えるのであります。併しながら、自動車の利用度の多い都道府県道は勿論、国道も管理責任者は都道府県及び五大市、又はその長であり、その道路の管理に要する費用は都道府県及び五大市の負担となつております関係上、揮発油税を道路損傷負担の一部であると考えますならば、その収入の一部は都道府県や五大市に帰属させることが相当と思われるのであります。殊に道路整備五カ年計画の対象に取入れられる道路は、改築、修繕を要する国道並びに都道府県道の一部でありまして、これらについてはその負担金又は補助金に伴う地方負担分の財源が必要であり、又この計画に取上げられない一般の都道府県道、その他の道路の維持、改築及び修繕に関する費用はいずれも都道府県や五大市において負担しなければならないのであります。このような点を考慮いたしまして今回本法律案を立案いたしたのであります。
以下この法律案の具体的内容を簡単に御説明申上げますと、揮発油譲与税は、揮発油税の昭和二十九年度における収入額の三分の一に相当する額とし、都道府県及び五大市に譲与するものでありますが、その譲与の基準は、揮発油譲与税の総額のうち、四十八億円は道路整備五カ年計画に定められた都道府県道の面積に按分して譲与するものとし、残額は国道と道路整備五カ年計画に定められた都道府県道以外の都道府県道との面積に按分して譲与するものといたしておるのであります。従いましてその使途につきましても、総額のうち四十八億円は道路整備五カ年計画に定められた都道府県道の改築又は修繕に充てなければならないものとし、残額は広く道路に関する費用に充てればよいものといたしておるのであります。
以上地方税法の一部を改正する法律案、入場譲与税法案並びに昭和二十九年度の揮発油譲与税に関する法律案につき、その提案の理由並びにその内容の概略を御説明申上げたのでありますが、何とぞ慎重御審議の上、速かにこれら法律案の成立を見ますようお願いいたす次第であります。
次に、地方財政平衡交付金法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概略を御説明申上げます。
現行の地方財政平衡交付金制度は、昭和二十五年、いわゆるシャウプ勧告に基く地方税財政制度改革の一環として創設せられたものでありまして、爾来地方財政の計画的な運営に果して来た役割は誠に大なるものがあるのでありますが、未だ制度の安定が見られぬままに、毎年度その総額の決定をめぐつて国と地方団体との間に争いが絶えず、とかく政治的な解決を求めがちであつたこと、地方財源の窮乏とも相待つて、地方団体はその財政運営の結末をすべて地方財政平衡交付金の交付に求める風潮を醸成し、結局において地方財政平衡交付金本来の理念とは逆に、とかく地方財政の自主自律性を損い、安定性を減じ、中央依存の風潮を招きがちであることは認めざるを得ないのでありまして、理想はともあれ、現行地方財政平衡交付金制度の中にも欠陥が存在しておることを肯定せざるを得ないのであります。このような観点から政府は、先になされた地方制度調査会及び税制調査会の答申の趣旨を尊重しつつ、現行地方財政平衡交付金制度に検討を加えた結果、地方財政平衡交付金を改めて地方交付税とし、その総額を国税である所得税、法人税及び酒税の一定割合として、その地方独立財源である性格を明らかにし、地方財政の自律性を高め、安定性を確保する一方、その交付の基準は、現行地方財政交付金制度のそれによることとし、地方税収入と相待つて地方行政の計画的な運営を保障することとし、大法律案を提案いたした次第であります。換言すれば、地方交付税制度は、基本的には現行地方財政平衡交付金制度と同じく、地方団体に対しその必要な財源を保障することを目的とするものではありますが、地方財政平衡交付金とは異り、その保障の仕方は、単年度ごとにではなく、長期的であり、旧地方配付税と同じく、地方団体の独立財源とすることによつて、地方財政平衡交付金制度に比し、より一層地方財政の自律性及び安定性を高めようとするものであります。
次に本法案の内容につきましてその概要を御説明申上げます。
第一は、地方交付税の総額に関するものであります。その一は、毎年度分として交付すべき交付税の総額であります。地方交付税は所得税、法人税及び酒税の二〇%でありますが、毎年度分として交付すべき地方交付税の総額は、予算技術上、所得税、法人税及び酒税の収入見込額の二〇%に、当該年度以前の年度において収入見込額によりすでに交付した額と決算額との過不足分を加減した額といたしたのであります。その二は、交付税の種類であります。交付税の種類は、地方財政平衡交付金におけると同様、普通交付税と特別交付税との二種類でありますが、交付税の総額が一応自動的に定まつて参りますために、その額は従来と異り、交付税の総額の百分の九十二を普通交付税と、百分の八を特別交付税とすることといたしたのであります。その三は、普通交付税の総額と各地方団体の基準財政需要額が基準財政収入額を超える額の合算額との調整であります。普通交付税の総額は、一応法律上自動的に定まるのでありますが、その総額は交付税の性格上、本来各地方団体の基準財政需要額が基準財政収入額を補填することを究極の目標といたしております結果、各地方団体について現実に算定した基準財政需要額が基準財政収入額を超える額の合算額が、引続き普通交付税の総額と著しく乖離することとなつた場合においては、或いは地方行財政制度等制度の改正を行い、或いは又交付税の所得税、法人税及び酒税に対する割合を変更することによつて調整をいたすこととしたのであります。ただこの差額が、計算上の誤差とも考えられるような僅かなものである場合においては、地方財政自体において処置することといたしております。なお、財源不足額の合算額を超えて地方交付税を交付いたしました場合においては、地方団体自体において財政調整の措置をとることを建前とし、別途御審議を願います地方財政法の一部改正法案において所要の改正を準備いたしております。
第二は、交付税の交付方法に関するものであります。交付税の交付方法は、交付税本来の性格上、原則として現行地方財政平衡交付金の交付方法によるものとしたのでありますが、先般行われました給与改訂の平年度化等、諸状況の変化に鑑み、若干の変更を加えることといたしました。その一は、給与改訂の平年度化等に伴い、単位費用に所要の改訂を加えたことであります。その二は、測定単位の数値、補正係数及び基準財政収入額の算定方法を法定いたしたことであります。
以上が本法律案の内容の概略であります。何とぞ慎重御審議の上、速かに御可決下さらんことをお願い申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/13
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014・河井彌八
○議長(河井彌八君) 只今の趣旨説明に対し質疑の通告がございます。順次発言を許します。堀末治君。
〔堀末治君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/14
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015・堀末治
○堀末治君 私は只今提案になりました地方税法関係諸法案につきまして、自由党を代表して、総理大臣並びに大蔵大臣、自治庁長官に対して若干の質問を申上げたいと思います。(「総理大臣呼んで来い」と呼ぶ者あり)
先ず地方自治の育成振興に対する政府の基本方針でございますが、総理大臣がおいでになりませんければ、緒方副総理に代つてお答え願いたいと存じます。新憲法の理念に基いて地方制度の画期的改革が行われましてからすでに数年を閲するのでありますが、我が国今日の地方自治の状態は果してどうでございましようか。総理は常に、地方自治が民主政治の基盤であることに鑑み、これが育成に不断の努力を尽して来たと申されておりますが、事実その成果が所期のごとく挙がつておるでありましようか。私は遺憾ながら地方自治の現状は不安定、若しくは混乱の一語を以て表現するもあえて過言ではないと信ずるものであります。(「そうだそうだ、自由党の責任だ」と呼ぶ者あり)
府県は市町村と対立し、大府県と貧弱県、大都市と中小都市とはその利害必ずしも一致せず、殊に政府は府県の機能を尊重せず、各省競つてその出先機関を地方に濫立して、徒らに混乱を助長し、(「その通り」と呼ぶ者あり)或いは中央の一方的立場において事務を委任し、又は補助金を交付して仕事を押付け、而も十分な財源措置を講じないため、それらの費用はすべて地方財政にしわ寄せせられ、地方財政の窮乏にさなきだに拍車をかけておるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)地方団体側においても、その行財政において徒らに中央に依存し、頗る放漫な点のあることは十分反省されなければならないのでありまするが、ともかくも地方自治体の現状は誠に寒心に堪えないところであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)かようにして地方自治体はその適従するところに迷い、あらゆる問題を中央に持込んで請願、陳情をこれこととし、事務当局は言うに及ばず、我々国会議員もその煩に堪えない実情であります。従つてこれに要する経費、時間の浪費は莫大なもので、たださえ窮乏の財政に一層の重荷を加えておりますことは、今更説明を要しないところであります。
総理は、戦後徒らに膨脹したこれらの中央、地方の行政整理を断行すべき旨をたびたび声明しておられますが、今日なお以てその成果に何ら見るべきもののないのは、与党の私どもといたしましても甚だ遺憾とするところであります。(拍手)果して総理におきましては、国民に公約せるこれらの政策を果敢に断行する御決意があられるのであるかどうか。
又、本日提案された地方税諸法案と表裏一体をなす地方自治法の改正の提案の遅れているのも、政府の怠慢と非難されても、恐らく弁明の余地がないのではなかろうか。(「その通り」と呼ぶ者あり)そもそもこれらのごときは、政府の地方自治体に対する熱意に欠けるところに基因しているのではございませんでしようか。誠に申しにくいことではございますが、塚田国務大臣は、郵政大臣、自治庁長官、行政管理庁長官という繁忙な職務を担当して、全く一人三役を兼ね務めているという状況であります。もとより塚田大臣は練達堪能のお方でありまして、私どももこれを認めるところでありますが、併し人間の能力には限界があつて、一つのことでも精力を集中するということはなかなか至難なことであります。従つて今日自治法改正が遅れ、行政機構改革が延び延びになつていることも、そういうところに大きい原因があるのではなかろうかと思うのであります。地方行政委員会におきましては、今国会における地方制度の諸改革は、頗る重大な諸問題を包蔵しているという点に鑑み、先般専任大臣を置くべきであると満場一致の決議を以て総理大臣に要請申したことは、すでに御承知のことと存じます。(拍手)閣内人事の問題について干渉がましいことを申上げることは甚だ恐縮に存じますが、(「恐縮じやない」と呼ぶ者あり)地方行政の重要性に鑑み、速かに善処されんことを希望する次第であります。
次に、緒方副総理並びに行政管理庁長官にお尋ねを申上げたいと存じますが、戦後徒らに膨脹、複雑化した行政整理、機構改革、事務の簡素化、これらは現下喫緊の国家的課題で、国民ひとしく熱望してやまないところであります。幸いに両大臣は本部長であり、或いは長官としてその成案を得られるのに日夜苦心をしておられる点については、深く敬意を表するものでありますが、併し今以てその成案が立法化せられないのは、一体どうしたことでありましよう。定員法が数日前提案されたことは承知いたしておりますが、それも僅かに警察制度の改革によつて行われる警察官の整理等を以てお茶を濁しているような感を呈していることは、大方の非難を免かれないところでありまして、誠に遺憾に存ずるのであります。殊に地方制度調査会の諸氏があのような努力を払つてなされた行政の簡素化、合理化、能率化に関する事項が、今国会において何ほども具体化されておりません。然るにもかかわりませず地方財政計画に対する只今の塚田大臣の説明要旨には、財政計画策定の基本方針として、調査会の答申も指摘いたしておりますように云々として財政需要額についてはその必要最小限度の額を加算し、更に行政整理、警察制度の改革に伴う財政需要の増減額を加算した後、地方財政についても国庫予算に準じて所要の節約を期待することとして、その財政規模を測定したと説明しておられますが、前申しました通り何ほどの行政整理も、又事務の再分配も行わないで、果して幾ばくの節約が期待し得られるか、甚だ心許なく存ずる次第であります。何とぞこれに対する政府の御所見を承わりたいと存じます。
次に、府県の性格について、残念ながら今日は総理大臣がいらつしやいませんが、幸いに代つて緒方副総理並びに塚田長官から承われれば有難いと思いますが、総理並びに塚田長官が、新聞紙等においてたびたび府県知事は官選がいいのでないかという私見を発表されて、世上とかくの論議をかもしていることは御存じの通りであります。かく申す私は、我が国の国情からいたしまして、地方自治体は市町村のみとして、府県は国の一部として、あらゆる出先機関をこれに統合して事務の簡素化、敏速化を図るほうがいいのではなかろうかという感じを持つておりますが、もとよりこれはまだ研究の途上にありますので、的確なことは申されませんが、とにかくこの問題は、世上多大の関心が持たれておりますので、この機会において両大臣のいつわらない御見解を承わつておきたいと思うのであります。
次に、財政規模について大蔵大臣及び自治庁長官にお尋ねいたしたい。明年度の地方財政計画は九千六百七十七億で、国の財政規模とほぼ等しいものになつておりますが、御承知の通り戦前においては、地方財政の規模は、ほぼ国のそれを二、三割上廻つておつたのであります。行政費といたしましても、国は地方の二分の一程度が、戦前の姿であつたと思いますが、現在は中央が厖大に膨れて、地方は逆にやせ細つているという状態であります。公務員の比率におきましても、戦前においては国が六で地方が大体七の割合であつたのが、今日では大体五分五分の比率になつているのであります。戦後民主憲法の結果、国の基盤をなす地方団体がより以上大きくなるべきが当然であるのに、逆にやせ細つているということは、今日までの政府の施策、特に財政計画が中央重点主義に置かれました結果ではないでありましようか。
次に、税制問題について同じく両大臣にお尋ねいたしますが、只今も塚田長官から税制改革の基本方針として五項目を申述べられましたが、これは誠に適切な処置であると考えて、原則的には賛意を表するものであります。併しその具体的内容及び改正税種目及び運用について、果して御説明の通りになりましようかどうか。御提案によれば、歳入に対する税収入の割合が、なおまだ甚だ低きに過ぎるのではありますまいか。即ち地方自治の強化育成のためには、地方財政の自主性を確立する方策が最も緊要の条件であらねばなりません。併し今回の改正でも、地方税がその歳入総額中に占める割合は、従来の三二、三%を三九%に引上げたに過ぎません。私は地方財政の自主性の確立のためには、少くとも五、六〇%必要とすると思うのであります。現に明治から大正の中頃までは五、六〇%になつておつたのであります。これを外国の例に徹しましても、イギリスは五三%、アメリカは七〇%でありますが、政府は今回程度の引上を以て十分とお考えになつておられましようか。或いは将来更にこれをお引上げになるおつもりであるか、御意見を伺いたいと存じます。
次に、只今御説明のありました地方財政平衡交付金制度を改正して地方交付税制度としてその総額を所得税、法人税、酒税の一定割合、即ち二〇%を交付することによつて地方財政の運営を安定、合理化せしめると申されておりますが、その総額は、明年度においては千二百十六億に抑えられておるのであります。これでは弾力性に乏しい地方財政が、その財政需要額の増嵩に対処し得ない虞れがありまして、甚だ不安ならざるを得ないのであります。尤も、各地方団体の基準財政需要額が基準財政収入額を超える額の合算額と著しく異なる場合は、右の二割の率を変更することがあるべしと、かようになつておりますが、著しき率ということは、一体どの程度をおつしやつたのか、でき得ることならばこの機会においてこれらの点についても明確にして頂くことを希望するのであります。従来政府の方針は、常に国税偏重で地方税を軽視するきらいがあつたことは否めないところであります。毎度減税を標榜しながら、そのしわ寄せが地方税になされたこともここ数年来の傾向のように思われます。(「その通り」と呼ぶ者あり)国民は税金と申せば国、地方を通じて一本の観念に立つておることは当然のことでありまして、殊に政府は国家予算の編成上、たびたび配付税の配付率等を変更したことは、当時の情勢上やむを得ない事情のあつたことは本員もこれを認めるのでありますが、これらは国民の最も納得の行きかねる点であります。現に塚田国務大臣の説明の要旨にも、「従来往往にして見られました国税予算のしわ寄せが地方財政に及ばないように十分考慮を払いつつ」云々とあります通り、これらの方針がたびたびとられたことを問わず語りに物語つておると思うのであります。従つてこのことは譲与税、或いはたばこ消費税の配付率等にも同様に懸念される点でありまして、どうぞこの点も再びかような方針が繰返されないようなことを、大蔵大臣としてこの機会に明確にして頂きたいと存じます。
次に、税目の点について一、二お尋ねを申上げますが、そもそも地方税は応能主義と其に応益主義を建前としているのでありまして、住民をして自治体経営のため、負担分任の精神の高揚によつて初めておのおの郷土の経営がなされるのでなければならないと思うのであります。その精神はこのたびも市町村民税、或いは固定資産税、新税種の道府県民税等にも盛られておりますが、シヤウプ勧告の附加価値税はその精神を最も端的に示したものと思うのであります。もとよりこの税種は、先ほど大臣の説明にもありました通り、我が国の国情に適合するかどうか、常に論議の交わされたところでありまして、今日まで遂に延期になつておつたこともよく承知いたしておるのでありますが、併しその精神は何らかの形によつてこれを採用して存置すべきではなかつたかと思うのであります。殊に本税は、昭和二十五年第七国会の際に塚田大臣は衆議院において我が党を代表してこれに賛成演説を行なつておられるお立場上、たとえ地方制度調査会の答申があつたとしても、余りあつけなく捨てられた点については、非常に遺憾に存ずるのであります。(笑声)又道府県民税に対しても、負担分任の点からは首肯し得られますが、その徴税の方法が果して負担分任の精神に合致するかどうか、又その結果が市町村民税の増徴を来たすような結果を持ち来たさないか、甚だ懸念なしとしないのであります。以上を併せて長官の御所見を伺いたいと存じます。
次に、地方税の偏在を是正して、地方団体相互間の税源配合の合理化を図る目的として入場税及び揮発油税の一部をそれぞれ比率を設けて地方税に譲与することになつた点はよく了解できるのでありますが、地方制度調査会の答申による遊興飲食税をそのまま地方税に存置したことは、いささか首尾一貫しない憾みがございます。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)殊に揮発油税のごときは、一カ年の暫定制度といたしたことは甚だ賛成しがたい。これらに対しても次期国会において善処を期待してやまないものであります。
次に、地方債制度に関する事項について地方公共団体中央金庫を創設することと、赤字公共団体の再建整備に対する事項について地方制度調査会からそれぞれ傾聴に値いする答申が行われているのでありますが、今回の改正提案中、これらの点について何ら触れることのないのは甚だ遺憾とするところであります。(拍手)殊に昨日配付された地方財政白書によりますと、二十七年度において三十五府県、二千五百九十六市町村で三百億円の赤字を出しているという報告をいたしておるのであります。このままにして、これらの赤字府県並びに市町村を放置しておくなれば、地方財政は日ならずして破綻に瀕し、国家的に重大な問題を惹起すると思うのであります。要するに、かくのごとき多数の赤字団体を生じたことについては、ひとり政府の罪に帰するわけには参りません。地方団体自体の放漫財政の結果に由来するところも多いのでありますが、只今の地方自治法では、政府はそれらに対して監督権が認められておりません。交付金或いは補助金、負担金等、地方に対しては多額の国費を投入している関係上、地方財政に対する指導乃至は監督等の措置を強化することは緊急の要務と存ずるのでございまするが、大臣の御所見は如何でございましよう。尤もこの赤字再建整備と地方公共団体中央金庫創設の二問題は非常に重要で、且つ十分に研究を要する点も多々あると共に、財政措置を要することでもありますので、政府としてもその成案を得るのに困難を感じておられることとお察しをいたしますが、今国会中においてこれらに対する法案をお出しになる予定か、若しできなければいつの機会にお出しになるお考えか、これもできれば明確にお答え願いたい、かように存ずるのであります。
最後に、本案とは直接関連がございませんで、いささか地方的色彩がございますが、幸い大野大臣もお出かけのことでございますから、少しく北海道の問題についてお尋ねすることをお許し願いたいと存じます。実は北海道は戦後我が国に残された唯一の未開発地でありまして、これが開発によつては人口問題或いは食糧問題、産業の振興等に資することが多大でありますことは今更私が申上げるまでもございません。政府もこの点を十分認識せられまして、先般有力な国務大臣をその開発庁長官に任命せられましたことは、政府の意を諒とし、大いに賛意を表するものであります。もとより同地の開発は、多大の資金を投入することの必要性は今更申上げるまでも、ございませんが、ただ併し同地方の開発には、徒らに資金の投入ばかりによつては到底その成果は望み得ません。住民の生活安定、福祉の向上を期することが唯一の方策と思うのであります。同地は御承知の通り北辺、積雪寒冷の地でありまして、衣料、燃料、住宅その他の生活の諸費においては、到底他の府県の方々に比ぶべくもありません。すでに官公庁の職員の方々に対しては、それぞれ寒冷地手当、石炭手当等の特別支給がなされておることも皆様御承知の通りでありまして、かかる官公労組の方々、或いは有力な諸会社の従業員は、幸いにこれらの恩恵に浴することができますものの、一般の住民はおのおのの努力によつて辛うじてこれらの諸費を賄つておるという状況でございます。どうぞかような点も考慮せられまして、何らか北海道の住民に対してこれに代るべき措置、でき得ることならば、所得税或いは固定資産税等に寒冷地控除というような特別措置を講じて頂きましたならば、誠に有難いと思うのでございますが、大蔵大臣の御所見如何で、ございましよう。
なお、又もう一つお願い申上げたいと思いますことは、右の寒冷地手当、石炭手当、これには幸いにそういう好い措置はとつておられますものの、四割二分からの税金がかかるのでありまして、折角の効果も非常に減殺せられるという状況になつております。これも税の根本から言えば、免税ということは困難ではございましようが、併し最近大蔵省によつて或いは宿直料、日直料、これらに対しても免税の措置が講ぜられたのでございますから、そういう趣旨において、これらに対しても、何らかそういう特別の措置を講ぜられることを特に希望いたしまして、両大臣の御答弁を伺いたいと、かように存ずる次第であります。
以上を以て本員の質問演説を終了いたします。(「良心的だ」「こつちの席に入つたらどうだ」と呼ぶ者あり、拍手)
〔国務大臣緒方竹虎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/15
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016・緒方竹虎
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。
政府の地方自治に対する態度でありまするが、政府は地方自治に対しましては、これを尊重する建前を従来ともとつておるつもりでございます。ただ現行地方制度につきましては、今御指摘になりました地方自治の現状或いは財政の放漫、その原因がどこにあるか等、今後いろいろ検討を要するものがあると考えます。政府といたしましては、地方制度調査会で、この制度につきましてもなお検討を尽しまして我が国情に適しない点が若しあれば、改善をして参りたい所存でございます。
それから地方自治に関して専任大臣を置いたらどうかという御意見でありまするが、現在のところ成るほど塚田大臣の多忙ということは、今御指摘の点、あえて否認はいたしませんが、専任大臣がないために、地方行政にさして支障が生じておるとは考えておりませんので、只今のところ専任大臣を置く考えを持つておりません。
それから行政整理の点でありますが、今回の行政整理につきましては、政府といたしましても必ずしも十分であるとは考えておりません。今後とも行政事務の改廃と行政運営方式の改善等を行いまして、行政規模の整理減縮の努力を進めて参りたい考えであります。
なお、知事官選のことにつきましても御質疑がありましたが、これは地方制度の根幹に触れる大きな問題でありまするだけに、地方制度調査会におきまして十分の御検討を煩わしまして、その後に政府の態度をきめたいと考えております。(拍手)
〔国務大臣塚田十一郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/16
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017・塚田十一郎
○国務大臣(塚田十一郎君) お答え申上げますが、或いは順序が不同になるかも知れませんが、御了承頂きたいと存じます。
最初に知事官選についての考え方を言えということでありましたが、只今副総理からお答え申上げた通りでありますが、私も地方財政それから行政機構、そういうものをいろいろと扱つて見まして、只今堀議員が御指摘になりましたように同じ考え方でおるわけであります。併しこれはまだ個人の意見の程度でありますので、事柄も極めて重大な問題でありますから、今後十分検討して、政府としての結論を得たいと考えております。
それから次に、地方財政の規模と国の財政規模とをお比較になりまして、いろいろと御意見がありましたが、恐らくそういうことになつておると思うのでありますけれども、まあ地方財政の規模がどうなるかということは、結局地方行政がどういう工合の範囲の仕事をしておるかということに関連をすると思うのでありまして、政府といたしましては、このたび、現在やつておる地方行政というものの前提において、できるだけ財政規模に欠減の生じないようにという努力をいたしたつもりであります。それから第三に、今度のいろいろな改革で、地方の税収の総体の収入に占める割合というものを相当直したのでありますが、これで十分であるかどうかというお尋ねであります。私は大体この程度で今の段階ではいいのではないかという感じを持つておるのでありまして、勿論もう少し国民負担に余裕ができて参りますならば、もう少し地方税も上げて行くということは可能かと思うのでありますけれども、今の状態では大体四〇%程度は税収入、あと四〇%程度は交付税、補助金、負担金という形、あと二〇%程度は起債、雑収入というような形で、まあ行くのが大体の今の状態ではいい線じやないかと、こういうような感じをいたしておるわけであります。
それからして今度の交付税制度が地方財政に弾力性を持つようになつたか或いは却つてそれが乏しくなつたかという御意見でありますが、これは先ほども御説明申上げましたように、私は今度の制度のほうが今までの制度よりは弾力性があつて、却つてよくなつたのではないか。今度の制度は全体として考えますと、財政に伸長性が出て参つておると思うのであります。地方財政の需要が殖えるに応じて、それに員合うような歳入も殖えて行くという仕組に大体なつております。それからもう一つ今度の制度の改正で以て、特に申上げられると思いますのは、地方財政に伸縮性が幾らか出て参つたので汁ないかと思う。現在の地方税は相当に率が高いものでありますから、個々の地方団体が、もう少し仕事をしたいという場合にも、地方税を標準率以上に上げて取るということは、なかなかできにくい実情にあつたと思うのでありますが、今度は相当事業税、固定資産税などを減率をいたしましたからして、個々の団体に特殊の事情があつて、そういうものを上げようという場合には、幾らか伸縮性が出て参つておるんじやないかと、こういう考え方をいたしております。
それからこの交付税を率を変える場合があるかどうかということであります。先ほども御説明申上げましたように、著しく不足が出て来れば、勿論変えるという考え方でありますが、その著しくというのはどれくらいの標準を考えておるかというお尋ねでありましたが、まあ少くとも九割五分程度はこれは確保したいという考え方をいたしておるわけであります。それから今度の考え方では、今までのこの過去にありました配付税制度の当時のように、この交付税の、法人税、所得税、酒税に対する比率がちよいちよい変えられるということはなくなつておるということを私は確信をいたしております。
それから次に、附加価値税でありますが、これは誠に御指摘を受けて恐縮をするわけでありますけれども、私も今の税制が立案になりました時分には、この税は考え方として非常にいい税であるとまあ考えておつたわけであります。又今日も理論的にはやはり相当たくさんの長所を持つておるという考え方に変りはないのでありますが、併しながらあの税ができまして今日まで実現に移されないでおりますいろいろの事情を考えてみますと、やはり日本の今日の実情には適しないのじやないかと、こういう考え方を持つておるわけであります。御承知のように、現在の事業税は約総額千億程度あるのでありまして、この千億程度の事業税の総額を崩さないで、附加価値税に事業税を変えて参りますと、この負担が中小企業の部分は非常に軽くなるわけであります。併し法人の部分が非常に重課になる、今日のように非常に経済力の各産業とも基盤の非常に浅い、基盤の脆弱な状態のときに、そういうこの負担の急激な変化を起すということは、どうも日本産業の今日の状態としては、できにくいのじやないかというような、いろいろな考え方を持つておりまして、今度の改正のような措置をいたしたようなわけであります。殊に今度の改正で非常に気を使いましたのは、先ほども申上げますように、附加価値税に直ることによつて、中小企業が相当税負担が軽減されるはずであつたのが、それが実現できないでおつたわけでありますからして、今度は事業税はその点を特に考慮いたしまして、基礎控除の引上それから税率の引下ということをいたしたわけであります。
それからして遊興飲食税を県に残しておる理由は何かということでありますが、これは地方制度調査会の答申では遊興飲食税と入場税をどちらも国税に持つて行くという考え方であつたわけでありますが、今度はいろいろな税配分、それからして偏在の是正というような事情を勘案いたしますと、一方は残しておいてもいいじやないかという考え方で、遊興飲食税だけを地方に残すという措置をいたしたわけであります。それから揮発油譲与税は二十九年度限りにした理由はどうかということでありますが、これは考え方としては私も恐らく御指摘のお気持と同じと思うのでありますが、ただ只今御審議願うことになつておりますこのような形の揮発油譲与税は二十九年度限りにしておきたい。そうして三十年度以降どういう形になるか、或いは揮発油譲与税というものをなしにするかどうか。それには全体的な又税体制等を考えなければなりませんが、それは三十年度以降改めて考えるということにしたい、今の揮発油譲与税の形では二十九年度限りと、このように御了承願いたいと思うのであります。
それから地方制度調査会の答申にあります地方公共団体中央金庫をどうして作らなかつたかということでありますが、これは今の地方起債に相当公募の枠が御承知のようにあるわけでありますが、この公募をうまく消化いたしますためには共同の力を利用するために、こういう機構が是非あつてほしいという考え方があるわけであります。ただいろいろ検討いたしました結果、今日の段階ではいろいろな分野に独自な金融機関があるということは、金融政策の一貫統合性を破るというような意味においてかなり反対があるものでありますから、なおこれは検討中であるわけであります。
それからして地方財政の赤字をどうするか、殊に地方制度調査会の答申にある再建整備の考え方をどうしたかということでありますが、これは御指摘の通りでありまして、大体私どもも、二十八年度におきましては実質的には三百六十億ぐらいの赤字が出るのではないか、従つて形式的な赤字でも二百億ぐらいになるのではないか、現在形式的な赤字は大体未払と一時借入ということになつておるのであります。勿論この未払の中には国に対する未払が約九十億程度ありますから、全部が外からの未払ということではないようでありますが、併しこのために地方財政が非常に困難をしておることはもう申すまでもないことであります。何とかこれをこの機会に是正をしたいという強い考え方をいたしておつたわけであり手が、今度のこのいろいろな制度改革の結果考えられますことは、今までの地方団体、殊に個々に地方団体を取上げてみた場合に生じておる赤字の状態と、今度の制度改革の結果同じように赤字が仮に生ずることがあるにしても、非常に様相が変つて来るのではないか。そういたしますとその変つて来る様相を見届けた上で、再建整備の方法を考えても遅くはないのじやないかというふうに感じられます面、殊にそうすることになれば下手に再建整備の方法を立案いたしまして、却つて地方財政の濫費を起すようなことが起つてはならないという懸念もありまして、かたがた国の財政金融政策全体、預金部資金の枠などの関係と睨み合せて、少し解決が遅れるのではないかと思いますが、今会期中にできるかどうかはちよつとまだはつきり申上げられませんが、できるだけ早い機会に、重要な問題でありますから解決をいたしたいと考えております。
それから地方財政の赤字には、国の責任ばかりではなく地方団体の責任もあるという御意見でありますが、私もその通りであると思います。ただそれを国から監督をするという形で、この是正をさせる行き方がいいかどうかということは、これは地方自治というものの本質とも考え合せてかなり問題点があるのではないか。今は現行自治法では御承知の通り勧告権しか自治庁長官は持つておらないのでありますが、もう少し何らか中央と地方の有機的な関連性を強化して監督という形にならんで、これらの点を是正してもらう工夫があるのではないかということを、今地方自治法の改正に関連して考えておるわけであります。
なお地方自治法の改正が非常に遅れておるというお叱りを受けて誠に恐縮でありますが、何にいたしましてもこの広汎多岐に亘つて非常に重要な問題が多いものでありますので、なかなか結論が得にくくつてまだ遅れておりますが、成るべく早くこれは今会期中に御提案を申上げて御審議を得たいと考えております。(拍手)
〔国務大臣大野伴睦君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/17
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018・大野伴睦
○国務大臣(大野伴睦君) 堀議員の御質問にお答えをいたしまするが、今日北海道の開発事業は国策上最も必要なことである。これに第一線で昼夜挺身いたしておりまする北海道の公務員で石炭手当及び寒冷地手当を支給される方々の、これは所得税法によりますか、四割二分のこういつた特別支給に対しても税金がかかるということは誠にお気の毒に私は思います。故にできるならばこういつた特別手当に対して何か免税等の方法があれば、是非大蔵当局の英断によつてこれが実施をして頂きたいと私自身は考えております。今後大蔵当局とも十分協議いたしまして、どうかしてこれら公務員諸君のために十分研究の上最善の努力をいたしたいと、かように考えております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/18
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019・河井彌八
○議長(河井彌八君) 大蔵大臣は、後刻出席の際答弁される趣きであります。
この際、暫時休憩いたします。
午後零時二十七分休憩
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午後一時五十四分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/19
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020・河井彌八
○議長(河井彌八君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。小笠原大蔵大臣。
〔国務大臣小笠原三九郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/20
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021・小笠原三九郎
○国務大臣(小笠原三九郎君) 先刻は他の委員会に出ておりまして御答弁ができませんでしたので、堀さんの御質疑に対してお答えいたします。
最初は、従来から国税偏重の嫌いがあるがどうかということでございましたが、これにつきましては、地方団体の独立税は、できるだけ個々の地方団体に普遍的に相当の収入を期待されるものが適当であるのであります。現行地方税制におきましては、若干この点において修正すべき税目も存すると思われますので、たばこ消費税を道府県税及び市町村税として新たに創設することといたしましたと共に、入場税を国税として徴収し、或いは大規模償却資産に対する固定資産税の一部を道府県税とする等、所要の改正を行う予定でございます。なお入場税は国税として徴収いたしますけれども、その収入の九〇%は入場譲与税といたしまして道府県に還元するもので、国税を特に多くするものとは考えられませず、所得税、法人税及び酒税の収入の二〇%は地方交付税として法律で定めまして、或いはガソリン税収入の三分の一を揮発油譲与税とする等、地方財源の明確化を期しておる次第でございます。
その次に、地方交付税、地方譲与税の配分率は低下させないよう要望するがどうかというお話でございましたが、政府は、御趣旨をよく尊重いたしまして、地方交付税の二〇%、入場譲与税の九〇%の率は、中央及び地方を通ずる財政の著しき変動のなき限り、この率を変更するようなことは考えておりません。
第三に、北海道の特殊性に鑑みて石炭手当及び寒冷地手当に対する現行課税を宿直手当などと同様に撤廃をしてもらいたいという意味のお話がございましたが、実は所得税は国民の最低生活費と財政需要と睨み合せましてその負担をきめているものであり、その間に寒冷地又は温暖の地方等、多少生活費等に差異がございましても、これらを通じて一般的なものを標準といたしておる次第でございます。従いまして特に北海道についてのみ所得税法の特例を設けることは適当でないように考えられるのであります。
又、今回少額宿直料等につきまして課税上特例を設けましたのは、少額の食事代等の現物給与に関する非課税取扱等の釣合の上から考慮いたしたものでございまして一般的にこういつたものを非課税にしようとするという考え方から出たものでは、ございませんので、どうかさよう御了承をお願いいたします。(拍手)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/21
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022・河井彌八
○議長(河井彌八君) 島村軍次君。
〔島村軍次君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/22
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023・島村軍次
○島村軍次君 私は只今提案されました地方税法の一部改正案その他三案について若干の質問をいたさんとするものであります。
先ず第一は、基本となるべき地方自治の本質に関する問題であります。独立後の我が国地方自治は、申上げるまでもなく自立態勢の見地よりいたしましても、又憲法の条章にありまする主権在民の理念によりましても、民主的体制を地方行政に取入れると共に、これによつて国の民主的政治体制の基礎を培養すべきであることは何人も異存のないところと思うのであります。先に設立されました地方行政調査委員会議の設立に当りまして吉田首相みずからは次のごとく述べておるのであります。即ちこの調査会議によつて新憲法の意図した地方自治の本旨が実現するような案が勧告されるであろう、又地方公共団体の機構及び運営に関する整備は漸次拡充強化されて、その裏付となる財源賦与の部面においても地方分権の確立が期せられるであろう、これを深く期待しておると強調しておるのであります。然るに副総理の答弁によりますれば、地方自治は尊重するの意味だけにしか答弁がなかつたのである。これは一体政府みずからが地方自治に対して如何なる認識を持つておるか誠に疑わざるを得ないのであります。かのシヤウプ使節団が当時地方自治の欠陥を指摘いたしまして我が国の民主化を推進するためには強力なる地方公共団体を作る必要がある、そうしてそのためには地方財政力を強化する方策と並んで、国と地方公共団体とのいわゆる事務の再配分を行い、且つ、先ず市町村並びに次に都道府県にその事務を優先せしめる、これが第一であります。而してその後国は、地方公共団体では有効に処理することのできない事務を引受けるように、事務のいわゆる配分をすべきであることを勧告しておるのであります。政府は、この勧告を尊重して思い切つて地方分権を断行し、国民の民主化を推進する、かような説明をいたしておるのであります。政府は更にこれらに関して一体如何なる認識を持つておられるか、即ち第一に、いわゆる責任の明確化、第二には、国、地方を通ずるいわゆる能率化、第三には、地方公共団体の優先の原則、即ちこの三つの原則が立てられまして事務の再認分が企画されんといたしたのであります。又地方制度改革に関する審議会におきましても、このいわゆる三原則に則つた答申がいたされ、吉田内閣はこの三原則を一枚看板として数次に亘つて首相みずからが声明し、各閣僚それぞれ各地方において力強い声明をしたにもかかわらず、今日のその現われは全く先に堀さんの指摘された通り、誠に微温的であり、而も地方自治の伸張に関する気魄と能力とを疑わしむるような嫌いさえいたすのでありまして、この点に関しまして、私は改めて総理大臣代理である緒方副総理の再認識を強調いたすと共に、政府が声明いたしておりまする第一には、この自治の本質に関して如何ような考えを持つておるか、何を意味してかくのごとき声明を発せられておるか。第二には、現在ややもすれば占領政策の行き過ぎ是正という美名の下に、中央集権化されんといたしつつある地方自治の伸張に関してどういう首相は考えを持つておられるのであるか、その基本的な考え方について数次に亘る声明と変化がないのかどうか、この点を伺いたいと思うのであります。第三には、地方自治の民主化の徹底とは、政府みずからがその自治の機構や運営に関して如何なる方途、企画を以て推進されんとしておるか、この点であります。第四には、いわゆる事務の再配分につきまして、地方公共団体に優先委譲するということを言われておりますが、この点に対しては如何なる計画を有せられるのであるか。第五には、国会がいわゆる後目的な監督行政ということではなくして、もつと親切な援助方策をとるべきである、かようなこともたびたび声明され、権力的な監督を排すべきであると思うのでありますが、この点に関する所見如何。又第六には、国の地方に対する委任事務は、原則として国が経費の全額を負担すべきであるということをもう調査会或いはその他の答申に示されておるのでありますが、即ち政府はこの際、行政の簡素化或いは事務の再配分等、先に申上げましたいわゆる三原則に対して抜本塞源的な改革を断行いたしまして、地方公共団体を強化すべきであると信ずる次第でありますが、これらの諸点に関する副総理の所見を伺いたいのであります。
更に、先に強調されました専任大臣の設置に関しまして、副総理は行政運営上差支えはないというような簡単な答弁で葬らんとされたのでありまするが、その意図が果して奈辺にあるのでありまするか、私はこの際改めて、地方と国との間の関係がますます複雑になつて、将来唇歯輔車の関係をいよいよ強化するための地方自治団体の強化に対して、国は大いに調整協力に関して努力をすべきであらねばならんと思うのでありますが、政府のこれに関する猛省を促さんといたすものであります。改めてこの点に関しても、もつと誠意のある御答弁を得たいと思うのであります。如何に有能な塚田長官においてしても、現状においては到底驥足を伸ばすことはできないと思います。責任の所在を明らかにし、いわんやいわゆる民主政治の体制を強化し、或いは地方分権を強化するという見地から、どうしてもこの際この点に関して重ねて認識を深めて頂きたいと思うのであります。
かのシヤウプ使節が来朝と同時に、夏の暑い最中に全国に亘つて行脚し、国民の総意を受けて勧告を行い、我々日本国民はこの態度に対して非常な敬意を払つたということは記憶になお新たなるところであります。甚だ悪い例であるかも知れませんが、遠くは昔北条時頼が時の執権として幕府の内政事務を処理するに当つて、地方を行脚して、いわゆる地方分権の確立を期した、これは歴史に明らかなところであります。又水戸黄門光圀公は、地方漫遊に当つて、ただ我々が膝栗毛の講談に興味を感ずるというのではなくして、その行政が如何に地方の発達に寄与したかということは、時代と方法とは異なつておるとは申しますものの、民の心を心としたいわゆる地方自治の伸張の気魄を示した大きな示唆を与えておると言わねばならんと思うのであります。この際重ねて内閣、特に首相の勇断を以て、直ちに専任大臣の設置を重ねて要望することは、ひとり私のみの意見ではなくして、国民の総意であることを銘記して頂きたいと思うのであります。
次には地方財政に関してであります。今回提案されました地方税制諸法案は、要するに地方団体の財政の強化に関するものであります。申上げるまでもなく、戦後府県及び市町村は完全なる自治体として再発足をいたしたのであります。その機構や運営は大よそ整備されて参つたのでありまするが、その財政規模は国の財政とほぼ同額であるばかりでなく、負担金或いは寄付金等を差引きますと、国家財政の一〇〇に対して一五六に相当いたしておるのでありまして、実質的には国家予算に比して五割以上の財政規模を持つておる。従つて国家全般の財政の上に極めて重要な位置を占めておることは申上げるまでもないところであります。ところが、この財政が逐年窮迫の一途を辿つて、二十七年度の決算におきましては、先にお話の通りに三百六十億にも達し、赤字団体は漸次多くを加えつつあるのみならず、更にその他の赤字を持たない地方におきましても、著しく財政は悪化の一途を辿つておるのでありまして、全く地方の財政は危機に直面しておる現状であると言わねばなりません。而も、その財源が極めて貧弱であることは、今回の税制整理によつて多少の増加を来たしたとは申しまするものの、全くこれのみを以てしてはいわゆる焼石に水に過ぎないのであつて、全くこの行詰りの状態は砂上の楼閣にも等しきものであつて、徒らに高層建築をいたしましても、中身は全く貧弱そのものであつて、容器は準備ができましたが、受入れるものは何もないという情勢が今日の事情であると率直に認めなければならんのであります。その結果は、国に頼る、国の委任事務に忙殺されまして、下請的な仕事をやつて行く。従つてこれが中央依存となつて、いわゆる叩頭政治に終始しておるのが今日の現状でありまして、誠に憂惧に堪えないと同時に、これらに関する国と団体との相互間のアンバランスをこの際抜本的に是正することが、我々国民の務めであると同時に、政府みずからもこれに対する確固たる方針がなければならんと思うのであります。先に答申されました地方制度調査会或いは税制調査会等の答申によりまして、警察制度の一部改正、或いは地方譲与税等の創設等が行われたとは申しまするものの、これは誠に微温的な措置であつて、その病根は全くこれを救うことができないというのが実情であると思うのであります。従いまして、内閣全体が、兼任大臣である自治庁長官に任すというようなことなくして、この問題に対しては地方制度調査会或いは税制調査会の答申を待つばかりでなく、みずから進んで病根を根本的に根治せしめるという施策が必要であると思うのであります。而も来年度の緊縮予算におきまして、これが地方財政にしわ寄せされておるということは、政府の抗弁がありましようとも、決してこれは事実否むことができない問題であると思うのであります。特に私はこの際指摘いたしたいことは、今回提案されましたる補助金整理に関する臨時特例に関する問題であります。二十八年度の国の予算のうちでも補助金及び委託費、交付金等を合算いたしまするというと、三千数百億円になるのであります。而も今回の提案は補助金整理という美名の下に僅かに件数にして二十三件、三十億の節約に過ぎないのであります。特にその財源が大部分が問題になつておる自転車競技法等の廃止に伴う二十億円がその主なるものであつて、国の節約額は僅かに十億にも足らざる現状であります。而してその裏付は交付金等でやつたと、こういうことを申しておりまするけれども、誠に大きな補助金、交付金等のさ中において、極めて少額なものを以て法律案を出し、而してこれに関して大蔵大臣みずからは、今回の国家財政緊縮の際に補助金等を思い切つて整理した、こういうことを言つておられることは、その措置こそ我々は噴飯に値いすると言わねばならんと思うのであります。財政のしわ寄せは政府の一方的の考え方、即ち自治庁のお調べによりますと、これらの問題は別途の財源を考慮しておると言われておりまするけれども、地方団体は政府の形式的に調べた財源以外に、みずからが相当の負担をしておるという蔭に隠れたたくさんな措置をやつておるということを知らねばならんと思うのであります。この点に関して大蔵大臣の改めての所見を承わりたいと思うのであります。
地方税制に関しましては、幾多の諸問題を蔵しておるのでありますが、各項目につきましては、委員会に譲ることといたしまして、先ずその根本的な問題について二、三の質問をいたしてみたいと思うのであります。
政府の今回の提案によりますというと、第一に独立財源の充実を図り、税源配分の合理化を図り、又或いは地方税間の負担の均衡を図り、或いは住民が広く負担を分担するの措置を講ずる、或いは又税務行政の合理化等を挙げられておるのでありますが、申上げるまでもなく地方の財政の税の占める割合は僅かに三割六分に過ぎない現状であり、特に府県税におきましては、二割六分にしか当つていないのであつて、その税目が常に普遍性に乏しく、税種が限定されておることが現状であります。我々はこの政府の示されましたる今回の提案に対しては一応の賛意を表するものでありまするけれども、政府が先に示されましたる美辞麗句の提案理由にもかかわらず、シヤウプ勧告案の指摘しておりまするように、果してこれが住民の意思を反映しておるかどうか。又五項目に亘る政府の方針に果して合致しておるかどうか。即ち第一点として挙げられましたる地方団体の自立態勢強化のための独立財源云云の問題につきましては、その内容が府県民税の創設であつて、これが独立財源の強化のごとく主張されております。併しながら、これは市町村民税として従来徴収せられておつたものの一部分を分割したに過ぎないのであつて、地方経済の最も大きなウエイトを持つているところのいわゆる教育費は義務教育に関するものであり、産業経済に関しての問題、或いは社会保障の制度等の国の社会立法によるものの多くは市町村でやつておるのでありまして、国の委任事務で賄つておると、こういう現状であります。従つて今回の住民税を分割したそれ自身は、やがてこれらの市町村にしわ寄せされますと同時に、市町村の住民税に圧力を加えることを招来するの慮れがないかどうか。私はその憂いが多分にあることを認めざるを得ないのであります。誠に政府の声明のごとく、果して独立したる財源であるという大きなふれ出しをする価値があるのかどうか。勿論独立税としての価値は相当ありましよう。併し只今指摘したような点に対する政府の所見は、果して将来に禍根を残さないものかどうかという点に対して、明確なる答弁を要求いたしたいと思うのであります。
第二は、財源偏在の是正に関する措置に関してでありまするが、今回の入場税及びたばこ消費税の委譲に関しましては、一応その配分、偏在是正についての一端を改善されたものと認められるのでありますが、併しながらその配分方法がいわゆる人口割によつておるのでありまして、偏在是正の点から言えば、貧弱府県におきましては、僅かに税収が全体の一〇%にしか過ぎないというような府県におきましては九牛の一毛、焼石に水の感がないとは言えないのでありまして、殊に今回のこれらの配分に当つて、機械的な人口分配によることは、府県と市町村との競合を起す基礎になるということが指摘されるのでありまして、今後この配分に関して特別なる措置を講ずると認められるが、果してその所見如何ようでありますか、御開陳を願いたいと思うのであります。今回税制調査会の答申によつて考えられましたる遊興飲食税が国税移管を中止されました運命については、何だかすつきりしない面があることは先に指摘された通りでありまして、私はこの際国民の前にこれらの経緯及び将来の方針について、はつきりと大蔵大臣及び自治庁長官の所見を伺つておきたいと思うのであります。この遊興飲食税につきましては、現在課税の客体が、宿賃であるとか、或いは小さい大衆の飲食等にまで及んでおる不合理を是正するのが本来の方針でなければならんのであつて、これらの問題を解決して而してこれを国税にするか、或いは地方税にするか、而して国税に引上げた場合には、やはり偏在是正のためにこの配分方法をどうするかということに対する検討を要すると認められるのであります。率直なる具体的な御意見を承わりたいと思うのであります。
第三は、固定資産税に関する問題であります。これは今回の措置によつて、多少の従来のシヤウプ勧告案の過重であつた点は是正された点はこれを認めることができるのでありまするが、ここに特に指摘いたしたいと考えまする点は、減税をしたごとくではありましても、いわゆる評価の増額によつて負担の不均衡を来たすことがあるかどうか。あるようなことの結果になりがちであるということを指摘いたしたいと思うのであります。即ち今回の固定資産税を農村の例にとつてみまするというと、東京における高層建築である丸ビル一つの利用価値と農家の家屋、特に納屋或いは堆舎等の比較、又東京都内の一坪の土地が最近非常な値上りをしておる。これを客体にし課税標準にすることは当然でありましようが、山間地における不毛にも値するような農地とを比較いたしまするときに、税制上単なる坪数や利用の価値、使用の限度等の機械的な問題だけでこれを処理することは極めて合理性を欠くことと考えるのでありまするが、これに関する所見を承わつてみたいと思うのであります。今回の税制改正によつて評価の改正が行われるために、農村には約四十億円の負担が増加すると称せられております。果してかような算定の基礎が考えられるかどうか。又現在我々は、前段で申上げましたように、固定資産税がすでにシヤウプの勧告案当時から考えまして、その負担の限界に来ておる。農村において特に然りである場合において、むしろ増徴でなくして軽減すべきである際に、結果的に四十億円の増徴となるがごときことは我々のとらざるところでありまして、この点に関する政府の所見をはつきりと伺つておきたいと思うのであります。
地方交付税に関する問題につきましては、将来幾多の問題を残しておるのでありまするが、今回の交付金制度が地方交付税として変つた際における、いわゆる財政需要額との調整に関して、果して適正に行われるかどうか、むしろ富裕県が不急な仕事をやつて財政膨脹の結果を来たすようなことがないではない。かくの、ごとき不合理を生ずる弊はないかどうかということに対する所見を伺つておきたいと思うのであります。
最後に、地方債の現在二千八百億に相当する償還については、先に堀議員の質問のありました通り、いろいろな制度が考えられるのでありまするが、或いは中央金庫の制度、再建整備等の考え方について、この際重ねて政府の積極的措置を望んでやまないのであります。
以上を以て私の質問を終りたいと存じます。(拍手)
〔国務大臣緒方竹虎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/23
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024・緒方竹虎
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。
地方自治の本質をどう心得ておるかという御質問でありまするが、これは窮極するところ、地方行政について関係住民がみずから責任を持つということにあると考えております。先ほど私が堀君にお答えいたしました尊重という言葉が甚だ手ぬるいというお叱りでありましたが、政府といたしましては、この地方自治の本質には十分なる理解を持つておるつもりでありまして、憲法の主権在民の体制を築き上げまする上に、地方自治の完成ということは、これはその基盤をなすものでありまして、政府といたしましてもその点に理解を持ち、地方自治の育成に努力をいたしておるつもりでございます。
それから地方自治が最近中央集権化の傾向があるという御意見でありましたが、政府といたしましては占領下に制定されました諸制度の中で、その後の実績に鑑みまして、我が国情に適しないものも何と申してもあるので、それらのものの改正につきましていろいろ考究して参つたのでありまするが、その間におきましても常に民主的の保障の確保乃至地方自治の尊重ということには意を用いておりまして、憲法の基本的な考え方につきましては、決してその途中において変化いたしておるものではございません。
それから事務の簡素化、再配分の問題でありまするが、事務の簡素化、再配分その他の問題につきましては、地方制度調査会におきましても取上げて参つたところであり、御指摘になりました三原則を尊重いたしまして、今回の税法の改正又は警察法の改正等におきましても十分に考慮を費しておるつもりであります。今後とも国政全般との関連におきまして検討して参りたいとくさように考えております。
それから地方自治に対する権力的な監督を廃止すべきではないか。これは初めに申上げました地方自治に対する政府の考えから、勿論その点に十分の注意をいたしておりまするが、ただ地方も国から独立しておるものではありません。これは申すまでもないことでありますが、そういう意味から国と地方公共団体とは相協力して参らなければならないのでありまして、この面から或る程度の国の監督は必要であろう、そういう考えの下に監督を進めて参つておるのであります。
それから専任大臣の問題でありまするが、これは先ほども堀君にお答えいたしたのでありますが、現在地方自治に関しまして国務大臣が当つておるのでありまするが、今の政府部内の事情から、その大臣がほかの職務を兼ねておるために御不満があると存じまするが、この点は政府といたしましても従来考慮をいたしまして、できるだけ現在の大臣の負担の軽いようにと考えておりまするが、まだほかの兼職を解くまでに参つておりません。これにつきましては更に考慮を重ねたいと存じております。
以上、お答え申上げます。(拍手)
〔国務大臣塚田十一郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/24
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025・塚田十一郎
○国務大臣(塚田十一郎君) お答え申上げます。
最初に、二十九年度の地方財政が国の緊縮財政のしわを寄せられておらないか、そうして地方財政全体として非常に財政困難になつておる点に、どういう解決策が講じられておるかというお尋ねであると思うのでありますが、今年の二十九年度の財政計画を私が策定いたします場合、殊に大蔵省側との折衝をいたします場合に最も意を用いましたのは、御指摘のように国の緊縮方針のしわ寄せを地方財政にしてはならないという点であります。勿論国が緊縮方針をとります場合に、地方も緊縮方針に則つて行くことは当然でありますが、併ししわを寄せられない。そこで二十八年度以前の財政計画の上で適正に考慮されておらなかつた面があるならば、この機会に十分これは考慮しなければならない。そこで財政規模の先ず是正をいたしまして、二の是正をした上に国と方針を合せて緊縮を考えたというのが今年の地方財政の計画であります。その結果は御承知のように国におきましては、総枠においても減つておるわけでありますが、地方におきましては五百億以上のむしろ増加になつておるという点、又、御意見によつては、却つて地方が国と歩調を合せて緊縮ができておらないのやないかという御意見さえあるほど、地方財政については意を払つたつもりであります。
なお、この財政全般の困難、殊に累積しておる赤字の解決策でありますが、この点は先ほどちよつとお答え申上げたのでありますけれでも、過去の赤字は先ほどお答え申上げたところで御了承願いたいと思うのですが、地方財政全般の非常な困難というのは、一つは財政の総枠の不足にあつたと思うのであります。その点はできる限り是正をしたことは今申上げた通りであります。いま一つは、その総枠の中の配分が適正でなかつた点にあつたと思うのであります。その点も今度の改革におきまして、偏在是正という措置を非常にいたしたことは御承知の通りであります。参考までに偏在がどれくらいに今度の制度改革によつて是正できておるかと申しますと、入場税の譲与税化による偏在是正が四十七億、事業税の分割基準の改正による偏在是正が十億、道府県民税の創設に基く偏在是正が二十九億、それに更に三十年度以降は大規模償却資産の偏在是正がありますので、これが二十四億、従つて三十年度以降平年度化いたしますと、年間百十億というものが偏在是正によりまして、これだけが同じ枠の中から有効財源が増加したという結果になるわけであります。
それからして次に、自立態勢が財政の考慮の上にとられておるかどうか、殊に道府県民税は市町村民税を分けただけではないかという御疑念でありますが、自立態勢をとるかどうか、又どういう形でとるかということは、府県、市町村を通じた総体の上で考慮いたしておるわけでありまして、その総体の上で自立態勢がとつてあるということは、先ほど御説明申上げた通りでありますが、その枠の中で住民負担を殖やさないという方法で市町村民税の一部を道府県民税に持つて行つたのでありますから、市町村民税が道府県民税に分けられたことによつて、自立態勢の強化が損われておるということはないと考えております。
それからして偏在是正の点は、先ほど申上げた通りでありますが、この偏在是正の考慮の中に、遊興飲食税がどうして取り上げられなかつたかということでありますが、これは先ほど申上げましたような大体の偏在是正の見通しを付けて、本来地方税であるべきものは成るべく最小限度に国へ持つて行くという考慮から、遊興飲食税までも国税に移管する必要はないという考慮で、遊興飲食税は残つたものと御了承願いたいと思います。
それから固定資産税でありますが、これは御承知のように税法の建前が時価を基礎にして行くということになつておりますので、時価が上るに連れて税収は上つて参るという建前になつております。併しだんだんこの税の負担が重くなるということを考慮いたしておりますから、先ほど申上げたように一・五、三十年度以降は一・四に税率を引下げてそれを考慮するということにいたしております。殊に御指摘になりました農村の少額の固定資産、これは御指摘のように単に農村の固定資産だけでなしに、少額のものについては特段の考慮をしなければならないと考えますので、先ほど御説明申上げたようにこれは免税点の引上という措置によりまして、今まで三万円の免税点を五万円に引上げたわけであります。これによりまして約三十四万の人が今まで納税されておつたものが納税圏外になられる計算になつております。
それから地方交付税に平衡交付金制度を改めたことによつて、富裕団体になお偏在がないだろうかということでありますが、これは配分の方法は、地方交付税の場合におきましても、今までの平衡交付金のやり方と同じ方法によることになつておりますから、この配分によつて富裕団体に偏在が起きるということはございません。勿論今度の改革全体を通じまして、なお富裕団体に若干の偏在的財源というものは残るわけでありますが、その程度のものは、まあ自治団体本来のあり方としてやむを得ないものではないかと、こういうふうに考えておるわけであります。
それからして財政の根本対策として地方債の枠をもつと拡げたらどうかということであります。殊に公募の措置をとつたらという御意見のようでありますが、御承知のように今年の公募債は国、地方を通じて一二百九十億となつております。これは金融政策、金融情勢全般の睨みから来ておる数字でありますが、そのうちで二百億が地方債の公募になつておるわけでありますが、この地方債というものは成るべく公募でないほうが適当である。なぜかと申しますと、この地方債の用途からむしろ来るものでありますが、ああいう用途に使われるものが公募で、殊に利率の非常に高いものであるということは、地方債には将来の負担過重を残す意味において成るべく公募でないほうを私は希望するわけでありますが、やむを得ず二百億ということに今年はなつておるわけであります。なおこの上に若干の増加程度は考えられるかも知れませんが、ここも大幅な増加というものは考えられないのではないかと、こういうように考えておるわけであります。(拍手)
〔国務大臣小笠原三九郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/25
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026・小笠原三九郎
○国務大臣(小笠原三九郎君) 只今塚田自治庁長官の御返事で大体御答弁済んでおるかと思いますが、一応大蔵省の立場から一、二の点だけ申上げておきます。
地方財政の窮乏については島村さん御指摘の通りでありまして、従つて地方の税財政制度とか警察制度の改正を今度前提としまして、通常の財政需要とか財政収入のほかにそういつた改正を織り込んでいろいろな財政計画を立てた次第でございますが、ただ地方公共団体に法令等に基いて実施いたしております補助金のうちで、職員の設置費とか或いは事務費とか或いは地方的な事務、事業費、こういつたものに関する補助金というものは大体全額をむしろ地方財源の計算のうちに織り込んでやるべきものじやあるまいか。まあこういつた考え方が強く働いておるのであります。或いは補助金を低減するのとどつちが妥当かということにつきましてはいろいろ考えました結果、政府としては国の財政の健全化とか、中央地方を通ずる税、財政調整の見地から補助金に対する整理の必要を痛感いたしましたので、二十九年度予算で大体合計百件約六十億円に上る整理を行うことといたしたのであります。そのうちに法律上の措置を必要といたしまするものが約二十三件三十億円ございまして、それが補助金等の臨時特例等に関する法律案、こういうものをお出しいたしまして本国会で御審議を願つておる次第でございます。
それから入場税の問題についての話でございましたが、実は入場税及び遊興飲食税或いは事業税、こういつたものは現行の道府県の税制では主要なものとなつておりまするし、而もそれが少数の都市府県に集中しておつて、多数の農林府県とでも申しまするか農林県では、こういう独立財源に乏しく、大体こういうものが少いので、多額の平衡交付金に依存しなければならん。こういつた状況にあることからして、今度地方財政の現状と国の財政とのいろいろな勘案いたしまする場合に、地方制度調査会及び税制調査会などでの意見を参酌いたしまして、これをとり入れて入場税及び遊興飲食税が国税として徴収することにいたしまして、幾らかでも道府県間におけるこれらの収入の調整を図ろう、こういう答申案に基いたような考え方でいろいろ検討したのでありますが、先ほども塚田長官の答弁の通り、この際一挙に国税に両税を移管するのもどうかというような意見等もございましたので、かたがた今回はその二つの税のうちで、より一層片寄つておるものはどれかというと入場税でございましたので、従つてこれを国税として徴収するにとどめておくというのが実際でございます。なお入場税を国税として徴収いたしましたが、これは申すまでもなく特別会計を作りまして収納いたしまするし、その収入額の九〇%を道府県に還元することといたしておりまするので、この点は決して地方の自主的財源を奪うものでないと、かように考えおる次第でございます。(拍手)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/26
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027・河井彌八
○議長(河井彌八君) 秋山長造君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/27
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028・秋山長造
○秋山長造君 文部大臣が見えていないのですが、文部大臣を呼んで頂きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/28
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029・河井彌八
○職長(河井彌八君) 秋山君に申上げます。
議長は、先刻来文部大臣の出席を求めております。ところが、只今は衆議院の委員会に出席しておるということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/29
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030・秋山長造
○秋山長造君 委員会よりも本会議のほうが大事なんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/30
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031・河井彌八
○議長(河井彌八君) そこで秋山君に御相談いたします。文部大臣が出なければ質疑をなさらない。御都合が悪いですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/31
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032・秋山長造
○秋山長造君 文部大臣を今からでも呼んで頂きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/32
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033・河井彌八
○議長(河井彌八君) 議長としましては、引続いて文部大臣の出席を求めております。そこで文部大臣が出席したときに秋山君に対して答弁をするということの取扱をして如何でしようか。議長といたしましては、できるだけきまつた日程をばそのままに進行して行きたい。こういう考えを持つておるからであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/33
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034・秋山長造
○秋山長造君 只今のお言葉御尤もですけれども、なお再度出席を要求して頂きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/34
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035・河井彌八
○議長(河井彌八君) 承知いたしました。秋山長造君。
〔秋山長造君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/35
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036・秋山長造
○秋山長造君 私は日本社会党を代表いたしまして、只今提案されました地方税財政関係法案につきまして、吉田総理以下関係者大臣に若干の質問を試みんといたすものでございます。
長い間揉み抜いて幾多不明朗な話題をまいた地方税制改正問題も、近く提案を予定されておりまする地方自治法の改正と共にいよいよ大詰に来たわけでありまして、本改正案が国会を通過いたしますならば、いやでも応でも私ども国民は新地方税を負担しなければならないことになるのでございます。およそ自主財政のないところに地方自治の発展はない。地方自治を確立するためには国庫財源の大幅委譲による地方財源の充実と強化が絶対に急務であることは今更繰返す必要もないところでございます。只今の塚田国務大臣の提案説明におきましても、改正の基本方針の第一といたしまして、地方団体の自立態勢の強化に資するため独立財源の充実を図つたことが謳われておるのであります。併しながら一方においては警察法の改悪やら知事官選論によつて地方自治が根底より揺がされつつあるときに、この言葉が如何に白々しいものであるかは何人も直ちに気付くところであります。(「その通りだ。」と呼ぶ者あり)従つて我々は先ず地方自治の行方をじつと見定めた上でなくては、本改正案に盛られたところの意義を批判することはできないのであります。
そこで第一に吉田総理大臣にお尋ねしたいのは、地方団体の自立態勢の強化に資するためであるとか、或いは漠然と地方自治を尊重いたしますとかいうような、そういう単なる言葉のあやではなくして、真に地方自治を尊重し、これを育成強化するところの熱意を政府は果して持つた上でこの改正案を準備されたかどうかということであります。と申しますのは、過去の中央集権的な軍国時代のことは暫く別といたしまして、現吉田内閣の辿りつつあるMSA再軍備の方向と、警察法改悪や或いは教職員弾圧立法等一連の反動、的施策は、権力の分散と住民の福祉を基調とするところの地方自治とは全く相反するものであるからであります。(拍手)吉田総理が知事官選論者でありますことは天下周知の事実であります。又緒方副総理もしばしば同様の見解を発表され、これが違憲論に対しましては、憲法第九十三条にいうところの地方公共団体の枠から府県を外しさえすれば違憲にはならないなどと、まるであの戦力問答のような放言をされてはばからないのであります。更に塚田自治庁長官も、又そのひそみに倣われまして、先般全国知事会の席上、知事官選論を表明いたしまして、その単純軽卒な態度をたしなめられたと聞くのであります。憲法にいうところの地方自治の本旨とは、最も直接的には、従来の官吏たる知事を持つていた府県の性格を完全自治体たらしめることにあつたことはおのずから明らかであります。知事公選制こそ、憲法の保障する地方自治の核心たるにもかかわらず、何故にこのような明々白々たる事実にあえて目をつぶろうとされるのであるか。政府は、地方自治団体の赤字と、府県に委任事務の多いことを理由に知事官選論を正当付けんとするもののようでありますが、赤字の原因と、その責任の所在を徹底的に究明しようともせず、委任事務の整理と固有事務の拡充と、そうしてそれに必要な財政措置とを怠つて、いきなり公選制を否定するがごときは、徒らにフアツシヨ的な権力集中の意図を露骨に表明するものであつて、本末顛倒も甚だしいと言わざるを得ないのであります。(拍手)これに対する副総理の見解をお伺いしたい。又塚田自治庁長官の見解をも併せてお尋ねをしておきたいのであります。
第二に、政府のいう地方団体の自立態勢についてであります。今日窮乏に喘ぐ地方財政の確立を図るためには、先ほども政府与党の堀委員すら口を極めて強く指摘された通り、何よりも先ず、従来不当に低く見積られた財政規模の是正と、五百億円になんなんとするところの赤字の解消が急務中の急務であるにもかかわらず、地方制度の調査会の答申に強調された三百億円程度の財政規模の是正すら殆んど骨抜きにされ、赤字団体の再建整備や地方公共団体中央金庫の新設は全然取上げられず、相次ぐ災害、増大した給与費、各種国庫補助金の大幅削減は、今回の地方税改正ぐらいではとても償いは付かないのであります。幾らかでも具体的な事業をやろうとすれば、勢い人員の整理か給与の切下げということになるのでありまして、現に職員の昇格、昇給を停止或いは延期したものだけでも秋田、群馬、奈良、広島等八県に上つておるのであります。吉田総理のお膝元の高知県のごときは、月給の一割を強制寄附せしめて非常措置をとつたと聞くのであります。又新年度百万人の児童生徒増に見合うところの財政措置が全然ストップされましたために、各府県とも現在深刻な教員不足に悩みつつあるのでありまして、女だからといつて特別に不利、不公平な扱いはしたいと、一昨日この議場におきまして緒方副総理の言明があつたにもかかわらず、地方の実情は、高給者を整理して、薄給者でこの穴埋めをするという窮余の策からいたしまして、共稼ぎの女教員であるとか或いは四十才を過ぎた女教員でありますとか、とにかく教員のみに人員整理のしわ寄せが一方的に行われておるようなこの全国的な現象をば、副総理は如何にお考えになるのか、お伺いしたい。(拍手)更に又、大達文部大臣は、こうごうたる世論の反撃をも顧みず、教育破壊のあの二法案を遮二無押し通そうとされておりますが、この百万人の児童生徒増と、これに見合うべき教員定員の完全ストップが捲き起しつつあるところの全国的な混乱にどう対処されんとするのでありますか。教育基本法第十条には、「教育行政は、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。」と謳つてあるのでありますが、児童生徒の百万人増というごとき、教育行政の最も基本的なこの問題の解決を放棄し顧みず、ひたすらに教員の弾圧、取締にのみ急なあの態度は、教育行政の最高責任者として余りにも無責任且つ怠慢であると考えるが、文部大臣のこの点についての御見解を篤と承わりたいと存ずるのであります。(拍手)文部大臣は不幸にして欠席をされておりますので、早い機会に大臣の口から直接この点についての御答弁を聞かして頂きたいと存じます。
要するに政府の立てました九千六百五十三億円の地方財政計画は、地方財政の実態を把握して、合理的に下から積み上げられたものではなく、地方制度調査会の答申の中で、政府、大蔵省に都合のいい点だけを食い荒して、一兆予算の伜から弾き出したところの、いわゆる当てがい扶持でこね上げた、極めて杜撰極まる机上計画に過ぎない。自立態勢の強化どころか、地方財政はいよいよ窮乏を告げ、大衆負担は増大し、地方自治は根底から崩れ去る虞れがあると思うのでありますが、政府は今後この事態に如何に対処されんとするのでありますか、重ねて塚田長官並びに小笠原大蔵大臣の見解を承わりたい。
第三に、今回の税制改正による増収は、一応六百二十四億円となつておりますが、警察法改正に伴う府県の警察費を差引くと、結局二百二十億円の増加に過ぎない。国の一兆予算のしわ寄せによる国庫補助金の削減や地方交付税の見積過小、更に又今後予想される委任事務の激増等によつて、地方経費の増大を考えますと、これで果して地方財源が強化されるとは思われないのであります。而も府県の増収分三百八十八億円は、主として市町村税から吸い上げられて、その大部分が警察費の引当といたしまするならば、前述の赤字対策と相待つて、今後府県といわず市町村といわず、地方税全般の増徴が必至となりまして、二十九年度国民所得増三百億円に対し国税百五十一億円、地方税六百二十四億円、計七百七十五億円の負担増は更に一層加重されるものと思われるのでありますが、塚田長官はこの点についてどうお考えになつておるか。
第四にお尋ねしたいのは、府県民税の創設についてであります。府県の住民が広く負担を分任するという建前にはあえて私も反対するものではありませんが、一方において知事官選論を唱えながら、住民自治の理念を強調して府県民税を創設しようとするのは一つのごまかしであり、矛盾ではないか。又国税を府県に委譲するならともかく、逆に市町村民税から百七十億円を吸い上げることは、市町村に多大な犠牲を強いることになり、甚だしい改悪と考えるが、地方財政の悪化につれてこれがいよいよ増徴をされ、人頭税的な市町村民税と共に今後非常な大衆課税となる虞れがありますが、塚田自治庁長官はこの点はどうお考えになつておられるか。
第五に、たばこ消費税の創設であります。たばこ消費税の創設は、酒消費税と共に地方財政多年の要望でありましたが、府県百分の十、市町村百分の二十という当初の線が崩れまして、それぞれ百十五分の五、百十五分の十に切下げられ、而も府県分九十七億円は、警察制度改正による負担増の百五億円の財源としてであり、市町村分百九十四億円は、市町村民税から府県民税として府県に委譲する百七十三億円と、固定資産税の課税対象から除かれるところの大規模償却資産分二十億円に見合うものでありまして、少しも地方財政の強化にはなつておらないのであります。
第六に、入場税の国税移管は、地方税として徴収の最も容易確実な重要財源を奪うものであり、一応その九〇%を譲与税として地方に還元することにはなつておりますけれども、その比率たるや極めて不安定でありまして、税そのものを地方に確保するに如くはないのであります。而も、当初、偏在是正の名目の下に、入場税及び遊興飲食税を一体なものとして共に国税移管を企てながら、料飲業者の猛反対にあつてにわかに遊興飲食税の移管をとりやめたごときは、はしなくも政府の無定見を暴露したものであり、これによつて政府案の企図したという貧富団体間の税源調整は腰砕けとなり、今次税制改正の意義を半減した、こう立案に当つて大蔵当局みずから告白いたしておるのであります。先ほども大蔵大臣は、きれい事を並べておられましたけれども、そういうきれい事ではなくして、これが料飲業者の猛反対によつて中止になつたということは、はつきりしておるのであります。而も某現職大臣の、ごときは、みずから料理屋の女将連中の先頭に立つて大蔵省に反対運動に乗り込んで、世人の顰蹙をかつたと開くのでありますが、吉田総理は内閣統率の責任者として、かかる不謹慎なる閣僚の行動に対して如何なる処置をおとりになるのか、お伺いしたい。(拍手)
申すまでもなく、遊興飲食税の徴収成績は極めて振わず、二十六年度七四・三%、二十七年度七四・四%に過ぎないのに対し、入場税は、二十六年度九九・八%、二十七年度九二・一%という高率を示しておるのに、この極めて伸張度の高い入場税のみを国に取上げ、徴収の困難且つ不確実な遊興飲食税のみを地方に残すが、ごとき片手落ちは、断じて地方財政の自主性を尊重するゆえんではないと考えますが、今後この問題については如何なるお考えでおられるのか。大蔵大臣並びに自治庁長官の御見解をお伺いしたい。
第七に、最大の地方税であるところの事業税について、その課税標準たる事業所得を国税所得の決定額によることとしたのは、事業税の所得税附加税としての二重課税的性格を一層強めるものであり、現行法では府県知事が個個の実情に即して独自に決定すべきであるにもかかわらず、便宜的に所得税の決定額をそのまま利用して零細業者との間に深刻なる摩擦を起している事態をそのまま法制化したものといたしまして、反対の声が極めて強いのでありますが、自治庁長官はどうお考えになつているか。
更に又、同じ事業税でありながら、法人においては、報酬、給与、償却費等を必要経費として適当に落せるのに、個人の場合はそれが一切認めらはないため、両者の間に非常な不均衡が生じておりますことは周知の事実でありまして、改正案のごとく、言訳的に、個人の税率百分の十二を百分の八に引下げ、又、基礎控除を一、二万円程度引上げてみたところで、問題は一向に解決されないのであります。特に、従来、事業税について相当無理な調定を強行して来ております地方の実情から見るときに、個人事業税八十三億円の減税が果して政府の思惑通り保障されるのかどうか。今次税制改正の基本方針として、「税種相互間の負担の均衡を図る」という一項があるのでありますが、その前に、先ず一つの税目自体の中に存するところのこの種の不均衡を根本的に是正すべきであり、それが若しどうしても不可能だということならば、基礎控除額五万円の大幅引上げを断行してでも負担の公平を先ず第一に図るべきかと考えますが、自治庁長官の御見解をお伺いしたい。
第八は固定資産税についてであります。現行の標準税率百分の一・六を百分の一・五に引下げることによつて五十六億円の減税を見込んでいるとおつしやるが、一方、資産の評価替によりまして実質的には百十億円程度の増収となつているのであります。これが一般納税者に相当な負担加重となることは明らかであります。而もその半面において、発送電施設であるとか或いは地下鉄道軌道、外航船舶、航空機等々の重要産業、大企業の機械設備につきましては、特例を設けて、その課税標準を新設後三年間は評価価格の二分の一乃至三分の一として課税するなど、負担の軽減に実に細心且つ周到なる注意が払われていますことは、新税制の持つ大資本偏重の性格を最も端的に物語るものと思うのでありますが、如何でありましようか。
第九に、今回の税制改革は、税務行政の簡素化と、国、府県及び市町村三者間に徴税上の協力体制を確立したというけれども、それが必ずしも課税の合理化、適正化にはなつておらないという点であります。例えば事業税の課税標準を国税の決定額によらしめることは、確かに取る側からすれば便利でございましようけれども、地方の実情を無視したいわゆる割当課税が強行されておる現状をそのままにして、これによらしめることは、特に不況に喘ぐところの中小商工業者に対して苛酷な課税となり、税率を多少引下げても、税金そのものの軽減にはなかなかなりがたいのであります。むしろ逆に、そのしわがいろいろ弱小業者に寄せられることは必然だと考えるのでありますが、政府は如何なる対策を用意されているのでありますか。
又、府県民税の賦課徴収事務を市町村に委任し、市町村民税と同様に取扱う場合、市町村を異にすることによつて同額所得者でありながら、府県民税の不均衡が生れて来るのであります。又、合併町村にして町村合併促進法の特例により、市町村民税に不均衡が存する場合は、それがそのまま府県民税の不均衡となりまして、負担の公平が著しく損われる結果になるのでありますが、政府はこの不均衡を如何にして是正しようとなさるのであるか。更に又、これによつてシヤウプ税制に基くところの従来の独立税主義を放棄して、附加税主義に順次切替えて行く御方針であるのかどうか。その点についても政府の見解を伺つておきたい。
最後に地方財政調整制度についてであります。即ち、現行の地方財政平衡交付金を廃止して、所得税、法人税、酒税の一定割合からなるところの地方交付税制度をとろうといたされるのでありますが、平衡交付金が基準財政需要額と基準財政収入額との差額に応じて配分されるところの、下からの積上げ方式をとるのに対しまして、地方交付税は国税の一定割合を固定化してしまつて地方に交付するところの、いわば当てがい扶持的な方式をとるわけでありまして、その配分は差当り現行の平衡交付金方式によるものとはされておりますけれども、その一定割合たるや極めて不安定なものであることは、曾つて戦時中配付税の定率がそのときそのときの政府の御都合によつて、勝手に変更された苦い経験に照らしまして明らかであります。これによつて国の地方財政に対する保証責任は軽減されるかも知れませんけれども、逆に地方の財政不安は却つて高まるばかりでありまして、むしろ現行の平衡交付金制度を存続し、これを合理化する方向を選ぶべきではないかと考えるのでありますが、大蔵大臣並びに自治庁長官の御見解をお伺いしたい。
以上、要するに今回の地方税改正は、国税の大幅委譲による地方の自主財源の拡充という地方自治本来の基本線からいささか外れまして、新たな大衆負担を伴うところの現行地方税の単なる枠内操作に過ぎない。いうところの画期的な改正などには全然なつておらないのであります。貧乏な日本が無理な再軍備を強行しようとすれば、中央から地方に割き得る財源のないことは当然であります。政府は今後地方自治確立のために国税を更に大幅に地方に委譲いたしまして、文字通りの画期的な税正改正を断行されるおつもりはないかを最後にお伺いいたしまして、質問を終ります。(拍手)
〔国務大臣緒方竹虎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/36
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037・緒方竹虎
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えいたします。
地方自治に対する根本方針ということにつきましては、先ほど来申上げましたので重ねて繰返しませんが、御質問は、そういうことを口の先で言いながら実際の熱意があるかどうかという御趣旨のようでありまして、これは申すまでもなく憲法の精神でありまするいわゆる主権在民、この主権在民の体制を築き上げまする上に一番の基盤はやはり地方自治の確立でありまして、そういう意味から政府におきましては不十分ではありますが、今回地方税制の改正を企てましたそのことも、地方自治体制の確立を目途とするものにほかならないのであります。ただ地方自治の確立と申しましても、それがお題目であつてはならないので、政府といたしましては、一方に自立態勢の育成に努めますると同時に、今日の地方行政が果して国情に合つておるかどうか、現実に地方行政の実績が上つておるかどうか、地方財政の放漫に流れがちであることも、又地方自治の現況等につきましても、まだいろいろ問題があります。そこで知事官選論も一面に出て参るのでありまして、政府といたしましては、今日の地方制度が果してよく国情に合つておるかということに常に関心を持つておるのであります。ただ知事の官選を実施するかどうかということは、これは地方制度の根本にかかわりまする非常な大きな問題でありますだけに、地方制度調査会において十二分な検討を経た後に、政府といたしましても判断を下したいと、さように考えておる次第であります。(拍手、「人員整理の答弁がない」と呼ぶ者あり)
〔国務大臣塚田十一郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/37
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038・塚田十一郎
○国務大臣(塚田十一郎君) 今度のこのいろいろな制度改革の基本になつておる政府の地方自治というものに対する考え方はどうなのかというお尋ねでありますが、いろいろとお尋ねの要旨を伺つておりますと、秋山議員のお考えでは、現在行われておる地方制度の機構というものをそのままに保持して行くということが最も正しい有効な地方自治の考え方であると、こういう前提に立つていられると思うのであります。私どもは地方自治というものは育成強化をして行かなければならない、殊に民主政治の確立のためには、地方自治が如何に重要な役割を果すかということはよく承知をいたしておるのでありまするが、併し今日の日本に行われておる地方制度それをそのままやつて行かなければ地方自治というものが成り立たないということは考えられないのじやないか、国力と国情に応じ地方自治の形というものがおのずからあるのじやないか、そういう観点から終戦後にやりました今日の制度というものにいろいろ検討を加えて見る必要があるのじやないかというのが私どもの物の考え方であり、従つて地方自治というものに対する熱意や認識というものは、決して御指摘のような甘い、ゆるい、そういうものではないといことを御了承願いたいと思う。そういう考え方ではありますが、併し当面の制度の改革といたしましては、やはり現在の制度を基準に置いて考えなければなりませんものでありますからして、今府県民税というものも、府県という地方団体を存置いたします限りにおいては、これは考えなければならないという考え方で、府県民税というものを創設いたしたわけであります。
そこで、地方財政全体において、もう少し国税を大幅に委譲して、画期的に地方財政の充実を図るべきであるいうお考えでありますが、私どもも基本の考え方においてはその通りだと思うのであります。併し、私どもはそれと同時に国、地方を通じて財政をどういう工合に持つて行くかということは、併せて国民負担との限度、相関関係というものを考慮いたさなければなりませんから、そういう考慮から来ると、やはり国と地方の財政配分というものはこの程度で行かざるを得ないのではないかというのが私どもの結論であります。併し、そのようにいたして、今度策定いたしました地方財政は国の緊縮にかかわらず、相当程度必要があり、理由があることによつて膨脹いたしておることは先ほども申上げた通りであります。これを府県と市町村別に考えますならば、実質的に府県は百億程度の財源の拡張になつておると思いますし、市町村は四百四十億程度の財源の拡張になつておると考えます。勿論十分であるとは考えませんが、国力と国民負担の現状を考えれば、私は自治団体においてもその気持でやはり自治運営というものをやつて頂いて、今後赤字が生ずるということのないように努力をして頂きたいということを希望せざるを得ないわけであります。なお、過去におきまして累積をいたしました赤字につきましては、何分かの措置をとらなければならないと考えておりますが、それに対する考え方は先般来幾たびかお答えしたところでありますので、答弁を省略さして頂きます。
それからたばこ消費税の物の考え方が制度調査会の考え方と大分ずれておるという御意見でありますが、併しこの個々のものを一々お取上げ頂いて、この地方制度調査会の考え方とずれておるというように御指摘頂いては誠に当惑いたすのでありまして、地方制度調査会の全体の構想を取上げました場合には、結局すべてのものがそうならざるを得ないのでありますが、いろいろな事情で全体の構想は取上げられておらんわけであります。従つてそれに関連しまして当然財政の枠というものも変つて参り、その枠の中においていろいろと考えられると、たばこ消費税はこの程度という結論になつたわけであります。
それから府県民税が市町村民税から分けて取つたからしてこれは非常に改悪であるという御意見でありますが、私どもはそうは考えないのでありまして、むしろ市町村民税と府県民税が同じ府県及び市町村住民によつて負担され、而も総体の負担額が殖えないで行くという形が最もいい形ではないかと考えております。
それから入場税を国税に移管した、而も遊興飲食税を移管しなかつたという理由ということでありますが、これも先ほどお答え申上げたのでありますが、なおこの機会に今後遊興飲食税を国税に持つて行く考えはないかという御意見でありますが、今後そういうことは考えておりません。
それから事業税についていろいろ御指摘を頂いたのであります。殊にこれが個人と法人の間に不均衡があるということであります。これは若干この徴税の実際の面において不均衡があるということは、私も争えないと思うのでありますが、併しそういう面は逐次是正されておると存じますし、又そういう点を考慮されながら、今度は基礎控除の引上げでありますとか、税率の引下げが行われておるわけであります。まあ税率は一二%を八%に引下げたのでありまして、これは三分の一の引下げでありますから、私は税率の引下げは相当大幅なものと考えております。
それから固定資産税でありますが、これも大企業の考慮に偏重しておるのではないかということでありますが、大企業について相当考慮した面は確かにあります。併しそれも個々について御検討願えば、それぞれに十分な理由があつて、そうして或るものは大企業の育成のために、或いは或るものは大企業をそういうふうな措置をすることによつて、例えば電気などの場合におきましては、料金の値上げを抑えて、そうして従つて大衆に負担をかけないという考慮から行われたものでありまして、特に大企業偏重というような考え方はいたしておりません。
それからこの地方交付税制度と地方財政平衡交付金制度との関係でありますが、これは御指摘の点は、私も若干理由があると考えるのでありまして、今までの平衡交付金制度は下からの積上げる形式であつて、考え方としては非常に理想的であつたと思うのであります。足らない分は国が全部面倒を見る、併し残念ながら国の中央の財政の都合などで十分これが理想通りに行われておらなかつた。それが延いては地方財政の独立性というものを非常に阻害しておつたというような実情に鑑みますならば、私は今度の税率、所得税、法人税及び酒税の率を一定して、而もこれを相当程度大幅な変動が起きない限りは、率は変えないというはつきりした意図の下にできた今度の地方交付税制度は、遥かに地方財政の確立のために役立つものではないかと考えておるわけであります。
それから税務行政の改正の点に関連いたしまして、この事業税その他が国税の決定に基礎を置いておるのは適当でない。殊に国税がしばしば割当課税になつておる実情から適当でないという御意見がありましたけれども、私どもは過去においてそのようなことが若干あつたかと思いますが、併し国税の徴収の実情は非常に改善されて今日ではそういうものがどんどんと是正されておるという状態に鑑みますならば、私はそれに基礎を置くことのほうが、そういう意味において不適当であるとは考えないわけであります。又そういうような措置をいたしましたことは、主としては税務行政の便宜又納税者のいろいろな面倒を省くという考え方から出たものでありまして、それによつて附加税主義をとつて地方税の独立性というものを捨てたという考え方ではありませんので、御了承願いたいと存ずるのであります。(拍手)
〔国務大臣小笠原三九郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/38
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039・小笠原三九郎
○国務大臣(小笠原三九郎君) 地方財政の規模が二十八年度に比べて五百億から殖えて九千六百五十三億に膨脹云々ということについていろいろお話がありました。この点につきましては別にこれは偶然こういうようになつておるのでありまして、これは国の予算一兆円云々というようなものとの関係は全然ないわけでございますが、併し国の財政緊縮の折柄、こういうふうに地方財政が膨脹しますことは、私どもは誠に遺憾に存じておるのでありまして、これはできるだけもう少し地方においても財政規模を圧縮してもらいたいものと考えておる次第でございます。なお、政府といたしましては、今回中央、地方の財源調整の見地からいたしましてたばこ消費税二百九十二億、揮発油税七十九億を新たに地方団体の税源に加えましたので、入場税を十九億差引きましても、なお三百五十二億が地方団体の税源として新たに増加しておる次第でございますので、これは地方の財源独立には相当寄与しおると考えておるのであります。
なお、入場税と遊興飲食税の問題は、すでに御答弁の通りでございますが、実は私ども今回地方税及び警察制度のいわゆる行財政制度の改正を行うことになりましたので、富裕都府県とそれから然らざるものとの間の不均衡、不釣合というものはよほど減じて参りましたので、只今のところ遊興飲食税を国税に移管するという考えは持つておりません。
これを以てお答えといたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/39
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040・河井彌八
○議長(河井彌八君) 文部大臣は、先刻から引続いて出席を要求しておりますが、まだ衆議院の委員会に出ておりまして、本会議に出席ができません。従いまして出席いたしましたときに、答弁させるように取計らいます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/40
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041・河井彌八
○議長(河井彌八君) 村尾重雄君。
〔村尾重雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/41
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042・村尾重雄
○村尾重雄君 地方財政関係法案に対し前の質問者との重複を避けまして、なお重要だと思う点に関しては、重ねてお尋ねをいたしたいと思うのであります。
このたびの税制改革案は国税、地方税を通じ或いは直接税、間接税を通じて税体系の調整を大幅に行わんとするもので、その内容から言つて昭和二十五年のシヤウプ勧告に基いて行われた税制改革と同様に、税制における最も重要な改正であると思うのであります。同時に又数年の間、毎年なし崩しに行われて来たシヤウプ税制に対する政府の修正運動に一応の結末がつけられ、よかれ悪しかれ税制が新らしい方向に踏み出されようとする動きが現われている点において、最も注目されねばならない法案であると思うのであります。そこで以下副総理、大蔵大臣、自治庁長官にそれぞれ質問したいと思います。
政府の説明によれば、今回の地方税改正の方針は、地方団体の自立態勢の強化に資するにあると言つているのでありますが、政府は今国会においてすでに警察法の改正案を提案し、自治警を廃止して国家警察の一本化を図り、このために市町村を基礎的団体とする憲法第九十二条の精神を無視し、或いは地方自治法第二条の地方分権を阻害してまでも、その強力なる中央集権化を策しているのであります。又、他方においては、知事官選論を唱えているといつたごとく、地方自治の精神を剥奪し、地方団体の自主的活動を根底から覆えさんとしている現在におきまして、そのような地方団体を強化するために税制改革を行うという政府の言葉が、正札通り受取ることができないのであります。それだけに今回の税制改革が地方自治との関連において如何なる意図の下に行われ、如何なる意義を持つかということを明らかにすることは、誠に重要であると思うのであります。
この法案内容を検討すれば、各種地方税の総収入の予想は三千七百二十六億円でありまして、二十八年度より約六百二十四億の増収になるのでありますが、実際は先ほどの議員がいろいろと質問されたごとく、警察法改正による府県を単位とする国家警察費の増額四百億円を差引くと結局二百二十四億円の増加に過ぎないのであります。その他国家予算一兆円のしわ寄せによる国庫補助金の削減或いは委任事務の増加、将来における地方経費の増大等を考えると、内容的に言つても地方財政の独立性の強化であるとは考えられないのであります。然るに府県税が三十八億円の増収をみたことは、従来のシヤウプ勧告による市町村税強化の方針に比し、府県財政の強化に重点が移されたと言えるのであります。これは如何なる理由によるものか、先ずお伺いしたいのであります。
知事官選論が政府、又与党から叫ばれている今日、府県財政強化の方針は将来における中央集権の強化に連なるものであると思われるが、副総理のこのことに関して明確なる答弁を重ねてお聞きしたいのであります。
更に三百八十億円の府県税増収と共に、府県財政の安定性が少しでも増したということは言えるにしても、それは主として市町村税からの割譲によるものであり、而も増収分が警察費に食われるために、将来においては府県だけでなく地方税全般に、特に住民税等の増徴は必至であると思われるのであるが、将来住民税等の増徴などのように考えておられるか、これ又政府の方策をお聞きしたいのであります。
次に、譲与税の新設の問題について伺いますが、ガソリン譲与税七十九億二千万円、入場税の九割百七十二億八千万円、総額二百五十二億円が中央から譲与されるのであります。この譲与税については貧富団体間の税源調整として一時最も重視されたものでありまして、当初遊興飲食税をも併せ対象を予定されていたのであります。然るに遊興飲食税の国税移管だけが中止されたことは周知のところであります。そうして入場税だけが国税に移管されたのでありますが、入場税は先ほどもいろいろと述べられたように、昭和二十三年以来遊興飲食税と共に地方施設としての関連性が極めて強く、従来から同一税として同一の取扱いが行われて来たものであります。而して府県から見れば近年完全に軌道に乗つた税種であると言われておりますし、一〇〇%徴収し得る段階に来ておるのであります。このような府県にとつて重要な税源となつている入場税が国税に移管せられるということは、府県財政自主権の抑圧と言わねばなりません。政府の府県税領域を圧縮せんとする意図からすれば、このようなことは当然のことであると言えましようが、かような観点から同様に遊興飲食税も又将来において国税移管を予想され得るのであります。政府は何故入場税のみを国税移し、遊興飲食税を中止したのかについてはすでに質疑が交されていますので、私はただ将来遊興飲食税をも国税に移管することを考えているのかどうかということをこの際聞きたいのであります。聞くところによれば、大蔵省では遊興飲食税について今年は取止めただけで、決して断念し切つているわけでないとたびたび言つておられるようでありますが、特に大蔵大臣の明確なるお答えを聞きたいのであります。
次に、政府は譲与税創設の理由として府県間における税源の偏在調整を行い、地方財政独立を強化すると、たびたびこれを裏付けるところの答弁が本日もあつたのでありますが、戦時中行われた配付税は地方財政の調整には役立つたのであります。併しこの配付税は地方財政の一方的な統制でありまして、戦時中においては許され得るといたしましても、他方財政の自主権が確認されている今日、当然否定排撃されねばならないのであります。このような配付税的の思想と同様な意味において入場税を国税移管し、譲与税を創設して府県間の偏在調整を行うことは、地方財政の自主権の侵害であると思うのであります。同時にそのような抑圧によつて施行される譲与税が、果して一部府県を除いた他の府県の財政収入にプラスとなるかどうか、ここにも疑義があるのであります。成るほど入場譲与税と入場税のみを比較すれば、東京、神奈川、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡の七大府県を除いた他の県における収入はプラスになるのでありますが、これを入場譲与税と地方交付税との関連から見れば、これら他県における財政収入はプラスにはならないのであります。即ち入場譲与税による増収の分は、当然地方交付税において差引かれるのでありまして、このことは今回提案になつている地方交付税法の第十四条により基準財政収入額の算定方法が規定されており、又基準財政需要額もその枠はきまつておりまして、入場税を存置した場合よりも入場譲与税として配分されたほうが多くなる県においては、それだけ地方交付税は少くなるのであります。このことは地方財政全体から言つて何らプラスにはならないのでありまして、政府の言うごとく一般府県の財政強化にはなり得ないのであります。この点に関し入場譲与税創設により、府県財政の強化になり得るとい政府の理論的な根拠をお示し願いたいのであります。
次に伺いたいのは、大都市財政制度に関してであります。地方制度調査会及び税制調査会の答申によれば、大都市に対しては現行の画一的な税財政制度を改め、他の行政の特殊性に応じた大都市財政制度を樹立すべきであると言つているのでありますが、今回の政府案では僅かに市内の国、府県道管理に伴う揮発油税配分を認めた以外は、全く一般市町村と同一の税制が適用されることになつているのであります。大都市行政の特殊な事情に基く問題は、近年来大いに論じられて来たのでありますが、政府は大都市財政について何故に地方制度調査会、税制調査会答申案の完全実施を行わなかつたのか、又将来大都市財政制度の確立のために全般的な改革は必要であると思うが、どう考えられるか、その方策を伺いたいのであります。
次に、今回新設される地方税としての都道府県民税、たばこ消費税、不動産取得税等が挙げられているのでありますが、先ず府県民税について私は伺いたいのであります。先ほどもこの問題の御質疑がありましたが、なお重ねて伺いますが、市町村民税は大衆課税の傾向が今日あるのであります。これに比例して今回創設されました府県民税は今後大衆課税の性格を帯びて来る懸念があるように思うのですが、その点政府は重ねてどのように考えられるか、一つ意見を聞きたいのであります。御承知のように現在の市町村民税が一つの枠が決定を見ております。一つの標準を例えば所得割においては超えない標準がきめられております。併しながら今日市町村においてこれらの枠一ぱいの、標準一ぱいの徴収がすでに行われんとし、これをオーバーしようとする傾向があるのであります。これに新たに府県民税が加わりましたときに、この枠を打破つた大衆課税性格を持つこと歴然たるものありと我々は心配を持つのであります。この点についてのお考え方をば重ねてお聞きしたいのであります。更に現在の市町村は昭和二十七年度決算において百六十三億円に上る巨額の赤字に喘いでおり、約三百の都市のうち二百五市は総額百三十億の赤字を出し、破滅に瀕しているのであります。このような市町村の情勢下にあつて、今回の府県民税は市町村民税の一部委譲並びにその徴収を市町村に委任して、それを義務付けているのでありますが、何故このような市町村の赤字財政を無視してまで、府県財政の強化を図らなければならなかつたか、これは国家警察強化による政府の中央集権化のための手段としか考えられないのでありますが、政府の明快な答弁をお聞きしたいのであります。
次に、たばこ消費税につきましては、入場譲与税等と共に地方に譲与されることになつているのでありますが、この譲与率が今後国の財政の需要と関連して、いつまで続くか疑問であることは、たびたびの質疑によつて明らかであります。即ち政府の計画によつて再軍備の増強は今日急速に進行しております。又輸出の振興であるとか、賠償であるとか、将来における国家財政需要はますます膨脹することは必至であります。その際、これらの地方譲与率は切下げられる虞れが十分にあることは想像に難くないのであります。又切下げを理由として地方自治体統制圧迫の懸念があるのであります。政府は将来においても入場税の地方譲与率と併せてたばこ消費税等の地方譲与率の切下げを行わないということをば言えるかどうか。最初に希望するという要望がありましたが、私は、はつきりこの際政府の考えを承わりたいのであります。
次に、事業税改正について、個人事業税の税率が三分の一軽減され、基礎控除額が二十九年度において六万円、三十年度から七万円に引上げられたことにより、幾らかの負担均衡には役立つと思われるのであるが、問題になるのは、事業所得決定方法が、国税所得税の決定額を原則として採用するということであります。従つて国税には基礎控除のほかに扶養控除等があるために、課税標準額は少くなるのでありますが、事業税については、基礎控除だけが引かれるに過ぎないのであります。最近中小企業の中で法人組織化するものが多いのでありますが、これは償却費等を収入から適当に落すこと、特に家族労働者に対する報酬、給与を損金として落すことによつて税負担を自己の有利にするという理由によるものでありますが、中小法人との関係から言つても、非常に不均衡であると思うのであります。政府は、個人事業税の対象となる弱小企業対策としても、或いは不均衡を是正するためにも、当然基礎控除を相当に引上げ、同時に税率を引下げるべきであると思うが、考え方を承わりたい。
次に、建設大臣にお聞きいたしますが、不動産取得税についてであります。固定資産税率引下げの見合いとして新設されたものであります。本税が土地六十万円、住宅百万円の免税点を設けて、庶民住宅新築の緩和を図つておりますが、新築でない庶民住宅、即ち登記価格五十万円程度の古住宅、六十万円程度の宅地等の取得に対しても、当然同様の処置をとるべきかと考えます。更に、高層建築物等は当然課税さるべきものと存じますが、一方において耐火建築促進法の下に、都市不燃化の助成を行なつている現状に鑑みまして、基礎、柱、床、壁等の主要構造部が耐火構造の場合、その部分に対しては非課税とし、内装、外装等贅沢な化粧の部分には高率課税とすべきものと考えますが、建設大臣の見解を伺いたいのであります。
最後に、大達文部大臣に伺いたいのでありますが、昭和二十八年度教育予算中、義務教育諸学校の教職員給与は半額負担法によつて行われて来たが、当初政府は富裕府県、即ち政令府県への支出はこれを中止する予定を持つておつたが、これは国会において成立せず、根本的に見込み違いとなり、地方財政に重大なる影響を与えたのであります。即ち正確には半額負担とならず、政府の支出金より地方の支出金は上廻つておるのであります。果せるかな、本年会計年度において概略十億円の不足が地方により請求され、或る県においては、三月分の給与金支払い不可能となつている。文相はこの事実を御存じかどうか。又これに対して如何なる処置を講ぜんとするものであるかどうかを伺いたい。又右の事情により、現行半額負担法によつて常に地方財政は圧迫され、結局のところ、地方において教職員の首切りとなつて現われておるのであります。文部省は教職員の人員の整理はたびたび行わないと常に述べているが、この問題は定員の問題でなくて、財政の理由によつて教職員の身分は常に不安定なのであります。今回の改正によつて、この状況が一層悪化すると思うのですが、文相の所見をお聞きしたいのであります。又教職員の人員整理の現状について、文部大臣として如何なる見解を持つているかも、重ねてお聞きしたいのであります。
私はもう持ち時間が切れますので、最後に、総括的に緒方副総理にお尋ねしたいことが一点あるのであります。この地方税法は、警察法の改正が前提としてこれが提案されておるのであります。その警察法が今日提案されてよりのち、国会外において輿論の厳粛なる反対を受け、又良識ある人の批判を受けておるのは御存じの通りであります。又国会内におけるこの警察法の審議が非常に今日難航とされております。なお、聞くところによりますると、この法案が任命権であるとか、人事に関する修正であるならば、この地方税法とは関連はいたしませんが、これが三十万とか五十万の自治体警察をば、その住民の意思において若し残すというように修正を見るに至つた場合においては、この地方税法の取扱は重要なことになると思うのであります。そこで今日の情勢において、あなたは仮定の前に意見を述べられないとおつしやるかも知れませんが、今日の衆議院における段階は仮定を通り越して、その修正は如実に今日審議されおるのであります。こういうような点において、若し警察法が今日修正を受けるとなつた場合において、この法安もとより、予算の組替等においてどうお考えになつておるか、あなたのお考えを伺つて終りたいのであります。(拍手)
〔国務大臣緒方竹虎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/42
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043・緒方竹虎
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。
私への御質問は、警察法の改正或いは知事官選論がときどき現われるのは、これは地方自治育成を唱えながら、中央集権をその根本的に、基底的に考えておるのではないかという御質問と承わつたのでありますが、現在の二本建の警察法又民選知事の制度は、これは占領政策の一環として行われたことは御承知の通りでありまして、それらの制度がすでに八年の経験を経ましたので、一応これを再検討いたしまして、果してこれらの制度が日本の国情に適切であるかどうかということを見るのは、これは当然のことであると考えます。そういうことから警察法の改正を企てておるのでありまして、知事の官選論につきましては、これは勿論まだ政府としての意見ではございません。ただ今日の地方自治の実際が、必ずしも制度が期待した通りによく行われていない点もありまするので、そういう点から地方制度の知事の民選に対する批判も起つておるのでありまして、その一つとして知事官選論が唱えられておるのも事実であります。併しながら現在の民主憲法が現に存在いたしまする限り、如何に政府が中央集権ということを考えましても、これは決してそういうことの行われるものではない。私は国会が健在であれば、その点についての御心配は御無用であると考えるのであります。
最後に、この警察法がどの程度かの修正を余儀なくされ、具体的に仰せになつたのは、人口三十万以上の都市の自治警察を除外例として残すような修正が起つた場合には、それを撤回するか、或いはそれに応じて地方税法の改正もこれを撤回するかというような御意見と承わつたのでありまするが、政府といたしましては、この大都市の自治警察、これは絶対に残さないつもりでありまして、いろいろ修正の意見は私どもの耳にも入つておりまするが、この点につきましては政府与党、あらゆる努力を払いまして、そういう修正が起らないようにいたしたいと考えております。(拍手)
〔国務大臣塚田十一郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/43
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044・塚田十一郎
○国務大臣(塚田十一郎君) お答え申上げます。
お尋ねの第一点、市町村よりも府県財政の強化に重点を置いた理由はどうかということでありますが、これはこの改革の、部分的に御覧下さいますと、そういう面も確かにあるのでありますけれども、全体として御覧頂きますならば、先ほども申上げたように、むしろ今度の改革は、市町村に重点を置いて財政の考慮がされてありまして、先ほどもちよつと申上げました通り、府県の場合には三百九十億税収の増加が大体見込まれておるのでありますが、御指摘のように警察などの事務の増加というものがありますから、そういうものを除きますと、大体百億程度の実質増ということになるわけであります。市町村におきましては二百三十億の増加があるのでありますけれども、市町村が今まで持つておつた警察を離すことによりまして負担の軽減がありますから、それを考慮いたしますと、四百四十億程度の財政の増加があるわけであります。そういう意味におきまして、むしろ市町村が余計重点が置かれてあります。
それからして地方税全般、特に住民税の増徴は必至になると思うがどうかというお尋ねでありますが、今度は問題になつておりますように、府県民税と市町村民税に分けて、総体の枠は崩さないという考え方で行つたのでありまして、これが分けて、ばらばらになつた関係で、どちらにも増税の懸念があるのではないかというお尋ねでないかと思うのでありますけれども、大体増税をいたします場合には自治庁に届出をしなければならないようになつておりますので、その面において私どもの手でも相当チエツクができると考えております。それからして増税をいたします場合には、そのほかにそれぞれの議会の議決を経なければなりませんから、今日の住民負担の状態では増税というものがそうやすやすと私どもは起るとも考えておりませんし、又そういう事態の生じないように最小限の措置はいたしておりますから、そういうことはないのではないかと考えております。
それから遊興飲食税を将来国税に移管する案はないかということでありまするが、御承知のように今度の改革は、総合的に判断をいたしまして、偏在是正の措置として入場税だけを取上げたのでありますから、今日の財政のものの考え方が続いて行く限り、又財政の枠が大体の傾向で以て変つて行く程度である限りは、これを国税に持つて行くということは絶対にないと考えております。
それから次に、譲与税制度を創設して、どうしてこの地方財政独立の強化になるかというお尋ねでありますが、これはそれだけを見ております限りは私もならないと申上げざるを得ないと思うのです。併し先ほどからしばしば申上げますように、地方財政の独立強化は、全体の改革を総合していたしましたのでありまして、そうしてその総合して強化した中からこの入場税を、財源の偏在を是正する一つの手段として国に持つて行つて譲与税の形にいたしたと、こういうことであります。
それからして大都市財政についての地方制度調査会の答申通りにやつておらないという御意見でありますが、これは先ほどもちよつと申上げますが、これは先ほどもちよつと申上げましたように、財政措置をどうするかということは、制度がどうなつたかということに関連して考えて行かなければなりませんので、制度調査会が予定しておりました警察を大都市に置くという考え方が、我々ではとらなかつた関係上、従つてそういう面で、財政の面におきましても制度調査会の答申と若干変つて来るということになつておるわけです。併し私どもは、全体としては将来大都市にだんだんと事務が余計配分されて行くのではないかという見通しを持つておるわけでありますが、そういう場合には、その事務の分量の増加に応じた財政の枠が当然拡げられて行くべきものであると考えておるわけであります。
それから府県民税のお尋ねに関連しまして、この府県民税が非常に大衆性がある、大衆課税であるというお尋ねであります。これは私らも、府県民税を納められる人の数、層が、大体所得税等の倍になつておるという意味におきましては、相当大衆的な性格を持つておることは承認せざるを得ないと思うのでありますけれども、私は府県若しくは市町村の住民が府県及び市町村の負担をいたしますという意味におきましては、所得税とは若干趣きが違つて、相当たくさんの人が負担をされるということは、むしろ税の考え方として正しいのではないか、こういう考え方をいたしております。なお分けることによつて負担過重になるという懸念はないということも、先ほど申上げた通りであります。
それから入場税やたばこ消費税の率の切下げが、今後国の財政需要の厖大化することによつて切下げが行われることはないかということでありますが、私は国が仮に財政需要が厖大になりましても、地方の必要が減らない限りは、地方財源の確保という観点からして、これが理由なしに切下げられるということは絶対にあり得ないと考えております。
それから法人事業税が非常に重いという御意見でありましたが、御指摘の通り私どもも考えますので、今度のような控除額の引上げ、税率の軽減を行なつたわけでありますが、勿論十分であるとは考えませんけれども、財政全体の総枠の考慮の上からであるということで御了承頂きたいと存ずるわけでございます。(拍手)
〔国務大臣小笠原三九郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/44
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045・小笠原三九郎
○国務大臣(小笠原三九郎君) 殆んどすべて塚田大臣が答弁いたしました通りでございます。ただ一つだけ、たばこだけ申上げますと、たばこの消費税につきましては、これを地方財源が充実するまでは、率を変えるとか減額するとか、さような意思は全然持つておりません。(拍手)
〔政府委員南好雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/45
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046・南好雄
○政府委(南好雄君) 大臣が休んでおりまするので、私が代つてお答えを申上げます。
不動産取得税の創設によつて住宅対策に悪い影響を及ぼしますことは好ましくないので、新築住宅につきましては、一戸当り百万円を控除し、住宅新築のための土地の取得につきましては一戸当り六十万円を減額する、こういうふうにいたしております。売買等による新築以外の住宅の取得についても軽減すべきではないかとの御質問でありますが、一応御尤もであると考えておりまするけれども、固定資産税を軽減するという考え方、そうして而も担税力を捕捉しやすいときに課税するというような考え方につきましても一理があります。のみならず又三%というような低い税率でありまするので、地方財政の非常に困つておりまする現状から鑑みまして、賛成をいたしておるような次第でございます。
で、あとの御質問の第二は、この耐火建築物の主要構造部分以外の部分についてのみ課税するという考え方、これにつきましても誠に一理のある考え方と存じまするが、併し現段階におきましては、耐火建築促進法による助成につき、課税標準について補助金の控除を図るというのみならず、耐火建築帯内の耐火建築物で、住宅金融公庫の融資を受けたものにつきましては、木造建築と耐火建築の差額の二分の一を控除するというような方法を講じまして、今暫らく経過を見たいと考えているような次第でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/46
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047・河井彌八
○議長(河井彌八君) 文部大臣は、後の出席のときに答弁いたしますよう取計らいます。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/47
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048・河井彌八
○議長(河井彌八君) 加瀬完君。
〔加瀬完君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/48
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049・加瀬完
○加瀬完君 質問をいたします。
自治庁は、地方財政の状況報告において、二十七年度赤字団体は千六十九、前年の一・五倍、赤字額は百五十四億で前年の二・四倍、実質決算における赤字団体は二千六百三十一団体、不足額は三百億と報じておるのであります。
〔議長退席、副議長着席〕
又、この赤字の原因を国庫財政では租税収入が歳入総額の七八%を占めておるのに対し、地方財政では三六%、これに平衡交付金を加えても五二%に過ぎなく、従つて地方財政における一般財源、特に地方財源の拡充増加を必要とすると指摘しておるのであります。又、税収入及び交付金の増加にもかかわらず、一般財源が地方歳入総額中に占める割合が、前年度より都道府県においては四・九%、市町村においては一・八%低下していることは、地方財政の自主性の後退であるとも指摘しておるのであります。且つ又、国庫財政も財政抑制を図つておる現状においては、交付金、補助金等に依存することもできず、地方財政の窮乏は免れない。このような地方財政における財源不足が、地方自治の伸張を阻んでいる現状でもあると認めておるのであります。塚田長官もこの点を提案説明におきまして、地方団体の自立態勢の強化に資するため、独立財源の充実を図ると言われておるのであります。
そこでお伺いをいたします第一は、地方自治の伸張された姿、地方団体の自立態勢の形、こういうものを一体長宮はどう考えられておられるのか。例えばたびたび議論が出ましたけれども、知事官選というものはやらないのかやるのか。都道府県及び市町村というものをどういうような自活体として見て行くのか。地方財政の赤字処理に早急の手を打たなくともこの目的は達しられるのか、以上三点について先ず伺います。
質問の第二は、独立財源の充実が果されたのか、それともこの税制改革によりまして、国庫の財政抑制のしわを寄せられたか、こういう点であります。地方税の総収入が三千七百二十六億、六百二十四億の増と示されてはおりますが、このうち四百億が警察費への振替となるし、二十九年度地方財政計画では、臨時事業費の減二百四十五億、節約減百二十億、単独事業費。臨時事業費計百四十億等の減額を以て、歳出入のバランスをとつておるのであります。これでは地方団体は、全然事業は成立たないのであります。ここに無理がないのか。恐らく残りの二百億は、この無理を埋めるのに手一ぱいで、新計画への財源とはなり得ないであります。すると財源が充実されたのか否かは、平衡交付金と、交付税及び譲与税の合算したものとの比較ということになるのであるが、入場税はもともと地方税の吸上げでありますから、これを除くとすると、二十八度平衡交付金の千三百七十六億に対し、地方交付税は千二百十六億、譲与税は七十九億、計千二百九十五億となり、二十九年度地方財源は、この意味では二十八年度よりも遥かに減退しているのであります。なお、起債額を縮小し、一方雑収入を過大に見積つている点を検討いたしますとき、政府は地方自治体の独立財源の充実という名分だけを与えて、地方団体強化のための財政援助という実を、実際には如何にして与えまいかという点で苦労されたに過ぎないのでありすす。複雑な税種と手続を絡み合せて、国庫財政のしわ寄せを地方にかぶせて来たのが、この税制であると思われるのであります。そうでないとするならば、純然たる地方財政強化のために、政府が持ち出した新らしい持ち出し分は、幾らであるかを説明して頂きたいのであります。この点大蔵大臣にお答えを頂きたいと思うのであります。
質問の第三は、入場税を特別会計に受入れるのは、財政法違反ではないかという点であります。入場税は国税に移管されたもの故、当然税収入として一般会計に繰入れ、然る後特別会計に入れるべきものと思うが、而も国庫収入の一割を雑収入に入れておりまするが、これを租税及び印紙収入の部に入れてはならない理由並びに如何なる理由によりまして、財政法の如何なる条項によりまして、こういう方法をとつたのかを明らかにされたいのであります。
質問の第四は、この税源で地方教育費が完全に賄い得るかという点であります。国庫歳出と地方蔵出の戦前、戦後を比較いたしますと、昭和元年から十一年までは九五%から一二〇%、平均一〇一%となつております。然るに昭和九年と昭和二十七年を比べますと、国庫歳出の四百三十二倍に対し、地方歳出は三百三十六倍と甚しく低下しております。又戦前戦後における地方行政費の構成比較を見ますると、昭和九―十一年の平均は、教育費三一%であるに対し昭和二十六年は二八%、土木費が前者が二四%に対し後者が一七%と、いずれも低下しているのであります。特に最近におきましては消費経費は六六%に対し、投資的経費は三三%となつております。従いまして地方団体は、どうしてもその本来の自治体の発展のために投資的経費を豊富にして事業の進展を図りたいことは当然であります。然るに国は一兆円予算で抑えて、例えば土地改良干拓費、農産物増産助成費、或いは文教施設賛、食糧管理費等、甚だしいのは義務教育教科書無償配布費までも、大巾に切つております。このしわを全部地方に寄せられるといたしましたならば、一体一番強くしわの寄つて来るのはどこでありましよう。教育費なんであります。地方におきましては、老朽校舎も、教育施設も、先ほどからいろいろ質問者が述べられた通り、教職員の定数まで縮減しようとする動きが顕著であります。このたびの地方税の改正が、地方教育を振興するに足る財源を持つているものと認められるのか。具体的に言うならば、現状の学校事務職員、養護教諭等の措置が確保できるのか。こういう点に対しまして、文部大臣に伺いたいのであります。
質問の第五は、税種及び徴税方法について伺います。その一つは、貧富団体間の税源調整を狙いつつ、遊興飲食税を切り離した理由は何か。又入場税中課税対象を狭め、或いは非常に不適当に残しておつたのはどういうわけか。
その二は、固定資産税の修正によつて見られる大資本、大企業に対する細心な考慮に比べて、事業税における零細個人企業と法人との間が、例えば課税標準二十万円に対して個人は一万一千二百円、法人は二千円、三十万円に対して個人は一万九千二百円、法人は七千百円といつたような不均衡をそのまま認めてよいのか。更に住民税が大衆課税化しつつ進むことは当然であります。又増徴の傾向も当然であります。こういつた徴税の方法というものをこのままに認めておつてよいか。
その三は、電気事業等に対する税逓減の配慮は、必ず電気料金等を引上げさせないという配慮があつてのことか、以上お答えを頂きます。(拍手)
〔国務大臣塚田十一郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/49
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050・塚田十一郎
○国務大臣(塚田十一郎君) 地方団体というもののあり方を今度の改革の上にどういう工合に考えているかということでありますが、今度の改革の上に考慮してあります考え方は、大体現在の制度をそのまま踏襲をして行く。従つて市町村を一般的な自治団体とし、都道府県、それを広域の自治団体という考え方で物を全部考えてあるわけであります。併しそれとは別個に将来のあり方というものをどういう工合に考えているかということをお尋ねであるようでありますので、殊に知事の官選制度に関連してお答えを申上げますのは、先ほども大体申上げた通りでありますれども、私は現在いろいろな制度の上、財政の上、そういうものから考えて見て、どうも今の自治団体は二段階に置かなければならないという制度は、必要性からいつても現実性からいつてもどうも合致していないのじやないか、国情、国力に合致してないのじやないかという強い考え方を持つております。そこでまあ公選の知事を廃止するということが平つたく知事の官選という形で言われているのでありまして、私は今日の第一線の自治団体である市町村がだんだんと育成強化されて来るならば、中間の自治団体であるところの都道府県は少くとも別の形になつて然るべきものである。ただそれをどういう形に考えるかというところまで私もまだ十分考え方が固まつておりませんが、少くとも今のような形でないほうがいいのではないかという考え方を持つているわけであります。
それから地方財政の赤字については私も非常に懸念をいたしておりますので、何とかしなければならないという考え方を持つておりますことは、先ほどからお答え申上げた通りで、重ねてお答えを申上げるのは御容赦を願いたいと存じます。
それからしていろいろ数字を挙げられまして、独立財源の強化、充実ができているかどうか、起債の減少や税収の過大見積りなどを見ると、この財政計画がちつとも独立財源の強化ができておらないじやないかという御意見のようでありますけれども、殊にお挙げ下すつた数字を一々ここで比較をして見るというわけには参りませんのでありますが、私どもの考え方は先ほどもちよつと申上げましたように、今年の財政計画の増は、九千六百五十三億というものは、先ず第一に二十八年度以前の財政計画で当然計上さるべくして計上されておらないものをこの機会に全部計上する、これを既定規模の是正と言つているのでありますが、これが百四十九億程度の是正をしております。その上に新らしく二十九年度において考えられるいろいろな需要増加というものを全部二十八年度の財政の規模上に累加いたしまして九千六百五十三億という数字を得、従つてこれだけのものをどこから得るかということで、独立財源として税をどういうものをどれだけ殖やすか、又地方交付税の率をどうするかというように総合的に勘案をいたしましたわけでありまして、その結果において起債の枠というものもおのずからきまつて参つたわけでありまするから、私は問題になる点は、或いは税収見積りが過大でないかという点が一点確かに問題になると思うのであります。
〔副議長退席、議長着席〕
この点についても私は十分確信を持つておるのでありまして、大体地方税収入の一番大きなものになつておる事業税、それから府県民税、市町村民税、そういうものは大体所得に基礎を置いておりますからして、私どもの見積りが過大になるという慮れはございません。それからして問題は固定資産税でありますが、固定資産税は現在の時価から見れば評価の基準は邊かになお全体として低目にいたしております。併しだんだんと負担が大きくなりますので、税率の引下げを考慮しておることは先ほど申上げた通りでありまして、そのほかに考えられておりますいろいろな地方団体のこの税の要事御覧下さいましても、決して過大見積りというものはあり得ない。むしろ私どもは今後の経済情勢の推移によつては、相当自然増収が今の計算の上になお見込まれるのではないかとさえ考えておるくらいでありまして過大見積りに陥つておるというようなことは少しも考えておらないのであります。(拍手)
〔国務大臣小笠原三九郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/50
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051・小笠原三九郎
○国務大臣(小笠原三九郎君) 地方税制の改正後におきまする二十九年度の地方税の収入は、丁度二十八年度に比べますると約六百二十四億円増加する見込でございまして、地方財源は強化されると考えられるのであります。ただ今度の改正で国と地方団体との関係はどうなつたかと申しますと、たばこ消費税を約二百九十二億円、揮発油譲与税約七十九億円、これが地方団体に加えられまして、その代り入場税の減少が約十九億円でございますので、それを控除しますと、差引三百五十二億円が地方団体の税収として増加いたしておる次第でございます。
入場税を特別会計に受入れるのは財政法違反ではないかというお話でございますが、財政法第十三条には「国の会計を分つて一般会計及び特別会計とする。」としてありまして、特定の歳入を以て特定の歳出に充て一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合に限り、法律を以て、特別会計を設置することを認めておるのであります。入場税収入という特定の歳入は、殆んど大部分を入場税譲与税としまして地方団体に譲与するという特定の歳出に充てるものでありまするから、直接この会計の歳入として受入れるのが適当であると考えて、特に本特別会計法第三条におきましてその旨を既定しておりまするので、何ら財政法に抵触するものではないと考えております。
更に数字をお示しになつて地方財政規模が拡大したと言うが、一向拡大していないのではないかというお話でございますが、戦前と現在におきましては、国及び地方団体それぞれの財政需要が変動しておるのみならず、国と地方団体の間におきまする財政の調整制度も変つておりまするし、又過去の地方債に対する国の公債費等の割合も、戦後のインフレによりまして低下したというような事情もありまするので、戦前と現在とを単純に比較するということは意味がないように考えるのであります。併し昭和九―十一年度と二十九年度とを一応比較いたしますると、地方の歳出は四百三倍となり、国の歳出は四百五十倍ということになるけれども、国の歳出の中から地方財政調整のための地方交付税及び揮発油譲与税を控除いたしますと三百九十五倍となるのでありまして、従つて地方財政の規模を戦後圧迫したというようなことは考えられないと思います。
なお、電力会社のことについての話でございましたが、これは直接の私どもの所管ではございませんが、その設備等に関する課税は公共的性質と、あの設備、そういつたものの本質から見ましてああいうふうに取計らつたのでありますが、私どももこの電力料金の値上げは心から希望せざるところでございます。(拍手)
〔国務大臣塚田十一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/51
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052・塚田十一郎
○国務大臣(塚田十一郎君) 答え漏れをいたしましたので三…。
事業税の点をお答え漏れをいたしましたが、事業税はいろいろと法人と個人の数字をお取上げになつて不均衡を御指摘になつたのでありますが、その数字を見ておりますと、その通りなんであります。これは御承知のように、法人の場合には、経費として支払われた部分の中に又所得税を納めている者などがありまして、この数字だけでは比較ができないことは御承知の通りだと思うのであります。併し私どももこれは所得税の場合において、国税の場合においても同じでありますけれども、絶えず法人と個人との均衡がとれているかどうかということを、いつも懸念しながら、法人個人間の税率の決定をいたしておりまするので、そう大きな開きがあるとは考えておらないのであります。
なお、徴収面におきまして、法人と個人とが、帳簿の記帳が上手であるとか、下手であるとかということで若干の相違はどうもまだあるようでございますけれども、これも今後徴税の面におきまして、公正を期することによつて是正をして参りたいと思つております。
なお、電気税は、只今大蔵大臣からも御答弁がありましたが、二十九年度の電気施設につきまして特別に半額の控除をいたしましたのは、電気料金の値上を抑えるという一助になつているわけであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/52
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053・河井彌八
○議長(河井彌八君) 文部大臣の答弁は、出席の際に答弁いたしますように取計らいます。
これにて質疑通告者の発言は、全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
―――――・―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/53
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054・河井彌八
○議長(河井彌八君) 日程第四、日本国とインドネシア共和国との間の沈没船舶引揚に関する中間賠償協定の締結について承認を求めるの件
日程第五、第二次世界大戦の影響を受けた工業所有権の保護に関する日本一国とデンマーク国との間の協定の締結について承認を求めるの件
日程第六、国際連合総会の定めた条件を受諾して国際司法裁判所規程の当事国となることについて承認を求めるの件(いずれも衆議院送付)
日程第七、外務省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
以上四件を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/54
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055・河井彌八
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。外務委員長、佐藤尚武君。
〔佐藤尚武君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/55
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056・佐藤尚武
○佐藤尚武君 只今議題となりました日本国とインドネシア共和国との間の沈没船舶引揚に関する中間賠償協定の締結について承認を求めるの件につきまして、外務委員会における審議の経過と結果を御報告いたします。
政府の説明によりますると、我が国のインドネシア共和国に対する賠償に関しましては、先に来朝したインドネシア使節団と折衝の結果、昭和二十七年一月にサンフランシスコ平和条約第十四条の規定に基く中間協定案が作成されましたが、この案はインドネシア本国政府の承認するところとならなかつたのであります。その後、同国政府は、昭和二十八年三月に締結せられました日本国とフィリピン国との間と沈船引揚協定と同種の協定を、日本との間に締結したいと希望して参りました。そこで政府といたしましては、インドネシアとの正常な外交関係の樹立を促進し、且つその実現にとつて重大な障碍となつておる賠償問題の早期解決を図る見地から、この先方の申出に応ずることとしまして、昨年十月来朝いたしましたスダルソノ氏一行の賠償調査団との間に累次折衝を続けて参りました結果、両国当時者間の意見がまとまりましたので、昨年十二月十六日に東京でこの協定の署名が行われた次第であります。
この協定は、第十六回特別国会で御承認を得ましたフィリピンとの沈没船舶引揚に関する中間賠償協定と同一の目的及び意義を有するものであります。そしてその内容は、前文と本文五カ条及び末文からなつておりまして、これをフィリピンとの沈船引揚協定の内容と比較いたしますると、異なる点は、本協定の前文において、両国間に二国間平和条約を速かに締結し、且つその条約の一部として、戦争賠償を解決するために、両国政府が努力すべきであることに同意した旨を定めておること。第一条において、六十隻より少くない沈船を引揚げること。これに充てられる賠償総額は二十三億四千万円、即ち六百五十万ドルに相当する額を超えない旨を規定しておること。及び第四条において、本協定の解釈に関する両国間の紛争で、協議によつて解釈されないものは、三人の委員よりなる仲裁委員会において決定することを定めたこと。以上の三点でありまして、その他はフィリピンとの協定と大差はございません。
なお、第二条は、インドネシア政府は、日本政府に協力して便宜を供与し物品調達の援助を行うこと。第三条は本協定の実施細目は、両国政府当局間の協議によつて定めること。第五条は、この協定が将来両国間に締結される二国間平和条約中の最終賠償取極の不可分の一部となること。及び本協定は、それぞれの国内法上の手続に従つて承認せられたことを通知する公文が交換されたときに効力を生ずる旨を規定しております。以上が政府の説明でありました。委員会は、二月八日以来三回に亘り審議を行いましたが、次に質疑の主ななものを申上げますと、「日本とインドネシア両国間の正常な外交関係樹立につき話合いがあつたか、その見通しはどうか、又賠償問題はどうなつているか、二国間平和条約の内容の大綱はできているか」という質問に対しまして、「これらの問題については逐次話合いを進めているが、いつ正常関係が樹立せられるか、はつきりした見通しはつかないというのが実情である。賠償総額はまだきまらない。二国間平和条約は、我が国とインドとの間の条約に似たものを予定している」との答弁がありました。又「中間賠償は沈船引揚に限定せず、経済的に協力するとか、例えば病院施設の設置について協力するとか、いま一層役務の観念を広範囲のものにして日本側の誠意を披瀝する考えはないか」との質問に対しましては、「そのように考えたい」との答弁がありました。
委員会は三月十五日質疑を了し、ついで討論に入りましたところ、羽生委員は、「本件を承認することに賛成する。尤もこの協定は飽くまで中間賠償であるから、その根本である賠償協定を速かに締結し、国交回復につき速かなる方策を実行されんことを要望して、これに賛成するものである」との意見を述べられました。次に、團委員は、「現在日本とインドネシアとの間の国交は未回復であつて、その原因は賠償問題に関係がある。この協定が成立すれば、将来賠償問題が解決され、ついで国交回復に進むことになると思われる。そしてそれは誠に喜ばしいことであるので、その意味で本件の承認に賛成をする」との意見を述べられました。
かくて討論を終結し、採決に入りましたところ、本件は承認すべきものとして、全会一致を以て決定された次第であります。
次に、議題となりました第二次世界大戦の影響を受けた工業所有権の保護に関する日本国とデンマークとの間の協定の締結について承認を求めるの件につき、外務委員会における審議の経過と結果を御報告いたします。
政府の説明によりますると、第二次世界大戦と、これに続く日本の連合国による占領のため、約十年間は日本、デンマーク間の通信連絡は異常状態に置かれ、その結果として、右期間においては工業所有権関係の出願書類を相手国に郵送したり、又特許料、登録料等を相手国に送金納付することが極めて困難であり、ヌ時によつては全く不可能であつたこともありました。更に連合国の占領政策は、一時日本政府が外国人の出願を受理したり、又は日本人が外国に出願することを禁止いたしておりました。これらの理由により、日本デンマーク間においては互いに相手国民の工業所有権を保護するための措置をとることができない状態にあつたのであります。ところが一昨年十月に至り、デンマーク政府から我がほうに対して、これらの権利を相互的基礎に立つて救済するための協定を締結したい旨の申入れがあり、東京で交渉を行いましたところ、両国間の意見が完全に一致しましたので、昨年十月二十一日に協定案に署名を行なつた次第であります。
この協定の内容は、第一に、工業所有権の特許又は登録のための優先期間の延長について定め、第二に、消滅した工業所有権の回復並びに無効となつた特許出願又は登録出願の効力回復について規定しておるのでありますが、先に第十六回特別国会で御承認を得ました、我が国とドイツ連邦共和国及びスイス連邦との間の協定の内容と殆んど差違がないのでありまして、この協定の締結は、両国間の友好関係及び技術提携関係を増進させるのに役立つものと信ずる旨の説明でありました。
委員会は、二月八日以来、三回本件の審議を行いました。質疑の要点を御報告いたしますると、「日本とデンマークがそれぞれ相手国において有する工業所有権の登録数はどれくらいあるか」との質問に対しまして政府委員より、「デンマークが日本に持つている有効な工業所有権は全部で八十一件、その内訳は、特許四十一件、実用新案六、商標一件となつていて、このうち本協定によつて効力を回復すると思われるものは約二十件である。他方日本がデンマークに持つている工業所有権については事情が判明していな下ので、目下先方に間合せ中であるが、殆んどないものと推定される」との答弁がありました。次に、「この協定附属の交換公文は何を意味しているのか、又どんな必要があつて公文を交換したのか」との質問に対して「この交換公文中、我がほうよりの往翰には、この協定の規定が対日平和条約のいずれの規定の適用にも影響を与えない旨が示されているが、これは同条約第十六条の規定に関連したものである。即ち同第十六条は、日本国の捕虜であつた間に不当な苦難をこうむつた連合国軍隊の構成員に対する償いとして、戦争中、中立国であつた国にある日本国及びその国民の資産を赤十字国際委員会に引渡し、赤十字国際委員会はこれを被害者のために分配する旨を規定しておるのであるが、デンマークにある工業所有権が乙の赤十字国際委員会に引渡すべき資産中に含まれるのかどうか必ずしも明らかではないために、この工業所有権の処理につき、平和条約署名国の中から、右第十六条の規定に基いて異議の申出があるかも知れない。そこでかかる場合を予想して、あらかじめ誤解を避けるために、日本が平和条約に忠実である旨を表明して、我がほうの立場を明らかにした次第である。他方デンマークよりの復翰は、同国は対日平和条約の署名国でないから、同平和条約はデンマークの何ら関知するところではない。従つて同国にある日本の工業所有権を平和条約の規定に従つて赤十字国際委員会に引渡すかどうかとの問題は、同国の関係するところではないとの趣旨を明らかにしたものであるという、そういう趣旨の答弁でありました。その他の詳細につきましては会議録により御承知頂きたいと思います。
委員会は三月十五日質疑を終了し、討論を経て、採決を行いましたところ、本件は承認すべきものと全会一致を以て決定した次第であります。
次に、議題となりました国際連合総会の定めた条件を受諾して国際司法裁判所規程の当事国となることについて承認を求めるの件につきまして、外務委員会における審議の経過と結果を御報告いたします。
政府の説明によりますると、この国際司法裁判所規程は、一九四五年十月二十四日に発効したものでありまして、現在当事国は六十二カ国に上つております。その内容は、国際司法裁判所の構成、任務、権限、適用法規、訴訟手続等を規定してあるものであります。国際連合憲章第九十三条によりますると、すべての国際連合加盟国は当然に国際司法裁判所規程の当事国となるのでありますが、同条2には、国際連合の加盟国でない国も、安全保障理事会の勧告に基いて総会が各場合に決定する条件で国際司法裁判所規程の当事国となることができる旨の規定があるのであります。我が国は先に昭和二十七年六月二十三日に国際連合への加盟申請をいたしたのでありますが、安全保障理事会で否決されたため、加盟は実現しないまま今日に至りました。併し政府は国際紛争を平和的に解決する見地から、右国連憲章第九十三条2の規定に従い、国際司法裁判所規程のみの当事国となる方針をとり、昨年十月二十四日国連事務総長に我が国が国際司法裁判所の当事国となるための条件を承知したい旨を申入れました。これに対し国連総会は直ちにこれを安全保障理事会に回付して後、同理事会の勧告に基き、同年十二月九日、五十一対零、棄権五、欠席四にてその条件を可決し、同月十四日、国連事務総長より我がほうへ正式に右条件に関する総会の決議を通告して参りました。その内容は、一、国際司法裁判所規程を受諾すること。二、国連憲章第九十四条に基く国連加盟国のすべての義務を受諾すること、三、裁判所の費用を分担すること、以上の三つでありまして、これらは先にスイス及びリヒテンシユタインがこの規程の当事国となつた場合の条件と同様で妥当なものと考えられる次第であります。我が国はこの条件に対する受諾書を国連事務総長に寄託することにより、国際司法裁判所の規程の当事国となることができるのでありましてかくして我が国は今後諸外国との国際紛争をこの規程の定むるところに従つて国際司法裁判所に付託することより、これを平和的に解決する道が開かれることになるのであります。よつて本件につき国会の御承認を得たいとの政府の説明でありました。
委員会は二月二十二日以降三回に亘り本件の審議を行いました。質疑におきましては、「国際紛争が外交手段で解決し得なかつた場合に、国際仲裁裁判や国際司法裁判に付することは現実問題としては十分に慎重にやる必要があり、軽々に決すべき問題ではないと思うが、外務当局の考えはどうか」との質問に対しまして、「アラフラ海の真珠貝採取の問題は長い間の交渉の末、濠州との間に国際司法裁判所に提訴する話合いができたのであるが、国際司法裁判所に参加したからといつて今後も軽々しく問題をこれに持込むというわけではない、十分慎重を期するつもりである」との答弁がありました。
委員会は三月十五日質疑を了し討論を経て採決を行いましたところ、本件は承認すべきものと全会一致を以て決定いたした次第であります。
最後に議題となりました、外務省設置法等の一部を改正する法律案につきまして、外務委員会における審議の経過と結果を御報告申上げます。
政府の説明によりますると、本案は、第一条外務省設置法の一部改正、第二条在外公館の名称及び位置を定める法律の一部改正、第三条特別職の職員の給与に関する法律の一部改正及び第四条在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部改正の四点に分れております。
第一条の要旨は国際連合日本政府代表部の設置及び名誉総領事館並びに名誉領事館に関する規定の改正の二点であります。政府は、昭和二十七年六月国際連合に対し正式に加盟申請をいたしましたが、遺憾ながら加盟は実現しないで今日に至つております。併し我が国は同年十月オブザーヴアーの地位を認められて以来、国連の各種会議に出席すると共に諸種の事業に積極的に参加し、かくて我が国の国連における地位は事実上逐次確立されつつあるのであります。政府といたしましては一昨年十月以来在米大使館から所要の人員をニユーヨークに駐在せしめ、対国連関係事務の処理に当らしめて来たのでありますが、我が国の対国連関係事務がますます増大し、且つ我が外交上その重要性も加わつて参りましたので、在外公館の一つとして国際連合日本政府代表部をニユーヨークに設置し、その長を特命全権大使とすることといたした次第であります。
次に名誉領事制度につきましては、政府は平和条約発効後大、公使館及び領事館の設置に主眼をおいて参りましたため、未だこの制度を活用するに至つておりませんが、漸次名誉総領事及び名誉領事任命の必要も増して来たので、昭和二十九年度から必要な個所に適当な人を名誉総領事及び名誉領事として任命したい所存であります。
現行外務省設置法によりますと、名誉総領事館及び名誉領事館は在外公館の一つとして法律を以て設置し、然る後に名誉総領事並びに名誉領事を任命する建前としておるのでありまするが、その身分、職務等の性質上から見て名誉総領事館及び名誉領事館を在外公館として規定することは必ずしも必要でなく、且つ同制度の運用上甚だ不便であります。そこで今般の改正の趣旨は名誉領事制度の実態に即してその運用を簡便ならしめるため、これを在外公館として法律を以て設置することなくして、名誉総領事及び名誉領事を任命し得るようにするものであります。
次に第二条は在外公館十二館の設置及びエジプト公使館の大使館への昇格を要旨としております。政府は平和条約発効後我が国外交施策の実施に必要な個所に在外公館を設置して参りましたところ、本年一月末現在開設済みのものは大使館十八、公使館二十一、総領事館十六、領事館十、在外事務所一館、合計六十六館でありまして、このうち九館は兼轄公館となつております。政府といたしましては、特に我が国の経済外交推進の見地から昭和二十九年度における新設公館につき慎重検討を加えました結果、在ホンジュラス、エル・サルヴアドル、コロンビア、アフガニスタン、イラク、シリア及びレバノンの七公使館並びに在シドニー及びハンブルグの二総領事館のほか、在トロント、メダン、レオポルドヴイルの三領事館、合計十二館を設置し、又在エジプト公使館を大使館に昇格することに決定いたしました。なお右新設予定の十二館のうち、在ホンジュラス及びエル・サルヴアドル各公使館は在メキシコ大使館に、又在アフガニスタン公使館は在イラン公使館にそれぞれ兼轄させるものであります。
第三に、本案第三条は大使及び公使の給与に関するものでありまして、その俸給月額は現行法律では一号から三号までおのおの三段階に分かれておりますが、政府といたしましては、官民双方から新進気鋭の士を抜擢し大使又は公使に任命しやすくするため、現行一号俸の下にそれぞれ新たに低い号俸を設けようとするものであります。
第四に、本案第四条は、本案第一条の国際連合日本政府代表部の設置、第二条の在外公館十二館の設置及びエジプト公使館の大使館への昇格に伴いまして、これらの在外公館に勤務する外務公務員に支給すべき在勤俸の額を定める必要がありますので、これに従つて当該法律の一部を改正せんとするものであります。これらの在勤俸の額は既設の在外公館分について算定いたしましたのと全く同じ方法に基き算定いたしたものであります。
なお本案附則において本案の施行期日を四月一日といたしておりますが、在コロンビア、アフガニスタン及びイラク各公使館に関する部分につきましては、国交回復後政令で定める日から施行するよう措置いたしました。
以上が政府の説明でありました。
委員会は三月八日以来三回に亘り本件の審議を行いました。次に質疑の主なるものを御報告いたしますると、第一に「名誉領事制度は、従来十分に活用されていなかつたのではないか。実費弁償の程度にとどまらず、もつと経費を殖やし、その機能を発揮させる考えはないか」との質問に対し、「名誉領事に関し来年度予算に計上された額は三百七十万円であつて、従来とも名誉領事には謝礼金を出す程度で給料は支給していないが、その多くが土地の資産家や名望家である点を考慮する必要がある。結局、人の問題であるが、その活用には十分努力する」との答弁でありました。第二に、「在外公館はこれだけでは足りないのではないか。外交陣営をもつと拡充する必要はないか。又、その配置は従来ヨーロツパ中心主義のごとく感じられていたが、現在の情勢から見ると、米国、アジア諸国をも重点的に考えるべきではないか」との質問に対しまして、「戦後、外交陣容は著しく縮減された。在外公館二十三の増設を希望したが、予算の関係で、来年度は予算を必要としない兼轄の二館を除けば十館の増設が認められた。米国内に増加することは差当つて考えていないが、中近東、東南アジア、南米等は順次増加して行きたいと考えている」との答弁がありました。第三に「国交未回復のアフガニスタン、イラクとの関係、韓国との関係並びに今後の見通しはどうか」との質問に対し、「韓国に対しては、相互主義の立場から、しばしば公館の設置を要望しており、日韓会談後もこれを申入れたが、先方からは現在日本の代表部を設置することは適当でないとの回答があつた。先方は日本人の入国を厳重に制限しておる実情であり、現在のところ公館設置の見込みはつかない状況である。アフガニスタンは第二次大戦中は中立国であつたが、国交は断絶していて、未だその回復を見ない。併しインドを通じて話合いを進めているので、遠からず外交使節を交換することになつておる。イラクについてはエジプトを通じて話合いを進めておるが、戦前における貿易上の支払決済について対日請求権の問題があつて、同国はこれを国交回復の条件としておるが、遠からず公使を交換することになると思う」との答弁がありました。第四に「エジプト公使館を大使館に昇格せしめた理由は何か」という質問に対し「エジプトはアラブ諸国中の最大の国であり、我が国との貿易関係から言つても重要であり、現に約二十カ国がエジプトと大使を交換しておる。先方も日本との大使交換を希望しておるので、大使館に昇格することにした」との答弁がありました。その他、経済外交促進のための民間人の任用とその活用、外務省とその他関係各省との人事の交流等につき活発なる質疑が行われました。
委員会は三月十五日質疑を了し、引続き討論に入りましたところ、加藤委員は、「在外公館の使命は重要であり、日本のあり方を率直に代表する必要がある。自分の外国旅行中に得た印象によれば、在外公館中には往々にして以前の日本帝国を背負つておるがごとき代表ぶりをしておるものがあるように感ぜられたことがある。よく新憲法下の日本の代表である建前を再認識して活動することを望む」との意見を述べて本案に賛成されました。かくて討論を終り、引続いて採決を行いましたところ、本案は全会一致を以て可決された次第であります。
以上御報告申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/56
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057・河井彌八
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
先ず日本国とインドネシア共和国との間の沈没船舶引揚に関する中間賠償協定の締結について承認を求めるの件。
第二次世界大戦の影響を受けた工業所有権の保護に関する日本国とデンマークとの間の協定の締結について承認を求めるの件。
国際連合総会の定めた条件を受諾して国際司法裁判所規程の当事国となることについて承認を求めるの件。
以上三件全部を問題に供します。委員長報告の通り三件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/57
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058・河井彌八
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて三件は、全会一致を以て承認することに決しました。
―――――・―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/58
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059・河井彌八
○議長(河井彌八君) 次に外務省設置法等の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/59
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060・河井彌八
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて本案は、全会一致を以て可決せられました。
―――――・―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/60
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061・河井彌八
○議長(河井彌八君) 日程第八、簡易生命保険法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
先ず委員長の報告を求めます。郵政委員長池田宇右衞門君。
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〔池田宇右衞門君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/61
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062・池田宇右衞門
○池田宇右衞門君 只今議題となりました簡易生命保険法の一部を改正する法律案につき、郵政委員会における審議の経過並びに結果について御報告申上げます。
簡易生命保険の保険金の最高額は現在八万円に制限されておりますが、最近の経済事情の推移により、この金額では制度本来の機能を十分に発揮できないので、政府は、最近における物価事情、特に医療費、葬祭費、遺族生活費等に鑑み、又民間経営の保険事業の状況等を考慮の上、これを十三万円に引上げようとし、今回の提案となつたのでありますが、衆議院において十五万円に修正され、本院に送付されたのであります。
郵政委員会におきましては、制限額引上げは当然の措置として、質疑はもつぱらその金額を十三万円とした根拠等について集中せられたのでありますが、それらの詳細は会議録によつて御了承願いたいと存じます。
かくて質疑を終り、討論に入りましたところ、永岡委員より、衆議院送付案に賛成すると共に、衆議院において付されたものとほぼ同様な附帯条件を付したい旨の発言があり、三木委員、最上委員より同じく賛成の意見が述べられ、次いで瀧井委員より、今回の引上げによつて資金が増加集積せられるが、これに伴い、その資金の運用範囲を現在より拡大し、中小企業等、地方公共団体以外にも融資し得るよう希望条件を付して、衆議院送付案に賛成の意見が述べられました。かくて討論を終了し、採決の結果、衆議院送付案は、全会一致を以て可決せられ、附帯決議案は少数を以て否決せられました。なお郵政大臣より、永岡委員提出の附帯決議案及び瀧井委員よりの希望条件に対しては、その趣旨を十分に尊重して善処したい旨の発言があつたことを付言しておきます。
以上御報告を申上げる次第であります、(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/62
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063・河井彌八
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/63
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064・河井彌八
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて本案は、全会一致を以て可決せられました。
本日の議事日程は、これにて終了いたしました。次会は、明日午前十時より開会いたします。議事日程は、決定次第公報を以て御通知いたします。
本日は、これにて散会いたします。
午後五時一分散会
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○本日の会議に付した事件
一、議員派遣の件
一、日程第一 防衛庁設置法案及び自衛隊法案(趣旨説明)
一、日程第二 日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定の批准について承認を求めるの件、農産物の購入に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件、経済的措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び投資の保証に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件(趣旨説明)
一、日程第三 地方税法の一部を改正する法律案、入場譲与税法案、昭和二十九年度の揮発油譲与税に関する法律案及び地方財政平衡交付金法の一部を改正する法律案(趣旨説明)
一、日程第四 日本国とインドネシア共和国との間の沈没船舶引揚に関する中間賠償協定の締結について承認を求めるの件
一、日程第五 第二次世界大戦の影響を受けた工業所有権の保護に関する日本国とデンマークとの間の協定の締結について承認を求めるの件
一、日程第六 国際連合総会の定めた条件を受諾して国際司法裁判所規程の当事国となることについて承認を求めるの件
一、日程第七 外務省設置法等の一部を改正する法律案
一、日程第八 簡易生命保険法の一部を改正する法律案発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X01919540317/64
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