1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十九年五月二十六日(水曜日)
午前十時五十一分開議
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議事日程 第五十一号
昭和二十九年五月二十六日
午前十時開議
第一 公職選挙法の一部を改正する法律案(内閣提出閣法第七五号、衆議院送付)(委員長報告)
第二 中小企業安定法の一部を改正する法律案(衆議院提出)(委員長報告)
第三 壱岐対馬電報料の件を廃止する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第四 日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う公衆電気通信法等の特例に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第五 臘虎膃肭獣猟穫取締法の一部を改正する法律案(森崎隆君外五名発議)(委員長報告)
第六 盲学校及びろう学校への就学奨励に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第七 輸出用黄板紙の鉄道貨物運賃引下げに関する請願(委員長報告)
第八 傷い軍人に国鉄無賃乗車証交付復活の請願(委員長報告)
第九 鹿児島県大島郡の航路補助に関する請願(委員長報告)
第一〇 大飯線鉄道を秩父市に延長ずるの請願(委員長報告)
第一一 第十次造船計画促進に関する請願(委員長報告)
第一二 財団法人日本海員会館に元日本海運報国団財団資産無償譲与に関する請願(委員長報告)
第一三 北陸線強化促進に関する陳情(委員長報告)
第一四 本州、四国間航空路再開促進に関する陳情(委員長報告)
第一五 第十次造船計画促進に関する陳情(委員長報告)
第一六 第十次造船計画促進等に関する陳情(委員長報告)
第一七 自家用自動車の許可制等に関する陳情(委員長報告)
第一八 新潟港西護岸一帯のしゆんせつ費国庫負担に関する陳情(委員長報告)
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001・河井彌八
○議長(河井彌八君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
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002・河井彌八
○議長(河井彌八君) これより本日の会議を開きます。
日程第一、公職選挙法の一部を改正する法律案(内閣提出閣法第七五号、衆議院送付)を議題といたします。
先ず委員長の報告を求めます。地上行政委員長内村清次君。
〔内村清次君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/2
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003・内村清次
○内村清次君 只今議題となりました閣法第七五号、公職選挙法の一部を改正する法律案につきまして、地方行政委員会における審査の経過の概要並びに結果について御報告申上げます。
本法案の提案理由は、教育委員会制度発足以来の経験、現行地方公共団体の他の選挙制度の事例、地方財政上の負担の軽減等、諸般の事情を考慮いたしまして、教育委員会の委員の半数改選の制度を一斉改選に改めたいというのでございます。
次に、法案の内容の大要を申上げますると、改正の第一点は、教育委員会の委員は、二年ごとにその半数を改選するという制度を廃止して、四年ごとに一斉に改選するように公職選挙法第三十三条に改正を加えたのであります。改正の第二点は、附則第二項の規定であります。即ち教育委員会の現任委員のうち、任期満了が早く到来する半必の委員の任期を二年延長することにつて、現任委員全員の任期満了を同一時期となるようにし、次の選挙かは、一斉改選が行われるようにいたしたのであります。なお、以上の主要な改正点のほか、これに伴い定例選挙の期日、繰上補充、補欠選挙に必要な経過措置等について、関係規定の整備を図つたのであります。
地方行政委員会におきましては、三月九日、塚田自治庁長官より提案理由の説明を聞いたのち、これを公職選挙法の改正に関する小委員会に付託し、又五月十九日には地方行政、文部連合委員会を開く等、慎重に審議を重ねたのであります。委員会における質疑応答の主なもの二、三を御紹介いたしますると、「本法案は、教員委員会の育成強化に役立つどころか、却つて一歩後退を意味するものではないか」との質問に対しまして、大運文部大臣より、「一斉改選に改めることは、これによつてむしろ教育委員会制度存続の方針をはつきりさせるのであつて、決して教育委員会制度の後退を意味しない」旨の答弁がありました。二、「一斉改選は、半数改選に比べて民意反映の可能をより少くし、教育委員会の機能に空白を生ずる危険を多くするものではないか」との質問に対しましては、同じく文部大臣より、「半数改選の主たる狙いは教育行政の急激な改変を避け、その保守性を保とうとするものであり、一斉改選によつて、特に民意反映や空白を避ける上に、特に困難を来たすとは考えられない」旨の答弁がございました。その他教育委員会の本質にも触れた多くの熱心な、活撥な質疑応答が行われましたが、その詳細につきましては速記録に譲ることをお許し願いたいと存じます。
五月二十二日、討論に入り、若木委員は「政府は、教育委員会の育成強化を強調しながら、その財政的裏付を怠り、教育委員会本来のあり方から見て重要意義を有する半数改選制を一気に廃止しようとすることは、現行制度の改悪であるから、本法案には反対である」旨を述べられました。小林委員は、「選挙は、一斉改選がベターであり、経費節約の点からも本法案に賛成する」旨を述べられました。松澤委員は、「政府が、教育委員会に対する一般の認識を深め、協力を得ようとする努力を怠つて、単に財政的理由を掲げて半数改選制を一斉改選制に改めようとする本法案に反対する」旨を述べられました。笹森委員は、「半数改選制を一斉改選制に改めることは、政府の挙げる理由のほかに、民意代表の地域的、思想的偏在を是正する効果もあるので、本法案に賛成する」旨を述べられました。加瀬委員は、「本法案は、その本質において教育委員会本来の意識をそこない、民主教育の基本精神に悖るものであるから、これに反対する」旨を述べられました。
かくて討論を終り、採決の結果、本法案は、多数を以てこれを原案通り可決すべきものと決定いたしました次第でございます。
以上、御報告申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/3
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004・河井彌八
○議長(河井彌八君) 本案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。秋山長造君。
〔秋山長造君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/4
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005・秋山長造
○秋山長造君 私は社会党を代表いたしまして、只今議題となりました公職選挙法の一部を改正する法律案に反対の意思を表明するものであります。
本法案に反対する第一の理由は、立法趣旨において教育を軽視するということであります。法案の重点としておるところは、教育委員の半数改選制度を廃止して、四年ごとに一斉改選にすることに改め、この法律の施行の日から二年以内に任期の満了すべき教育委員会の委員の任期を更に二年間延期するところにあるのでありますが、これは教育行政の上から見て、誠に重大な問題であります。民主主義国家の建設に向つた新日本において、なかんずく戦前の国家主義的中央集権の教育を廃止して教育基本法の下に新学制を布き、民主主義教育の実現を期しまして、これが最善の教育行政制度として設置されましたのが、現在の教育委員会でございます。従つて当初の教育委員会法審議に当りまして、最も重要な点と考えられるのは、教育委員の公選制ということでございます。その点から考えまして、いやしくもこの教育委員の公選に関する限りは、教育の本質、教育行政の動向等に対しまして、慎重な検討を加えて然る後にこれが改廃を論ずるのでなければならないはずでありますが、その法的な措置といたしましても、当然これは教育委員会法の改正という形によつてなされるのが至当でございます。にもかかわらず、政府は、教育行政への影響については、何ら信頼すべき究明も行わなければ、調査も行わず、単に今日においては、教育委員会制度発足以来、六年を経過しており一運用の経験から考えて、半数改選制度を維持することは、積極的な理由に乏しいとか、或いは現在の地方公共団体の選挙において、他に半数改選制度をとつておるものがないので、これに対する選挙民の理解が薄く、投票の熱意を殺ぐこととなつて、選挙民の意思を十分反映することができない憾みがあるとか、かたがた地方財政上の負担を軽減する一助にもなるとかの理由を付けて、半数改選の制度を廃止するという、極めて浅薄な考え方の下に、この重要な制度を事もなげに公職選挙法の一部改正によつて片付けようとしておるのでありまして、教育の軽視も甚だしいと言わざるを得ないのであります。(拍手)殊に審議の過程に看取されましたことは、もともとこの法案の提案は、一兆円の緊縮予算による教育費の犠牲に端を発し、教育委員の公選費十六億円の節減のために考え出されたものでありまして、このようなことは、教育が正常な姿を持ち得ないところのいわゆる大達文政の性格を最も雄弁に物語るものであります。特に市町村教育委員会につきましては、時期尚早という世論を無視いたしまして、大達文相は、これが存置と育成強化を強硬に主張して参つておるのであります。併しながらこの大達文相の存置論は、教育の民主化というよりも、むしろその狙いは、教員の監督取締上必要ありとするところにありますことは、その後の文部大臣累次の言明なり、特に今次の教育二法案審議の過程において、明らかにされたところであります。文部大臣が、真に教育の民主化のために、これを存置するというならば、当然これに対する育成強化の責任を負い、又その方法にも万全の努力が払われて然るべきものでありますが、実情は甚だ遺憾に堪えないものがあるのであります。(拍手)即ち一兆円の予算の枠で、僅か十六億円に過ぎない公選の費用を抹殺され、重要な半数改選の制度を廃止してしまつたり、又市町村の専任教育長設置の費用、僅かに六億円の予算の要求さえも、大蔵省から一蹴をされております。又、現に千六百名の助役兼任の教育長は全国に実在しておるという始末であります。更に又、小学校一年生の教科書無償配給制という、僅か三億円の経費で足りて、而も非常に重大なる効果を収めつつあるところのこの教科書無償配給制さえも、捨てて顧みないという実情であります。このような教育行政の極めて重要な基本問題を放置いたしまして、徒らに教員を弾圧し、教育を破壊するところの教育二法案の制定にのみ狂奔しておるところの大難文政こそ、誠に的はずれの文政と言わざるを得ないのであります。(拍手)
反対理由の第二点は、委員の半数改選制度の廃止は、当然に教育委員会制度そのものに大きな制限を加えるということになることであります。教育行政の民主化の徹底を期するためには、委員を公選することが必須の要件であることは言うまでもございません。而してこの公選制に半数改選を加味したことは、教育の特殊性に立つたものでございます。即ち教育委員を一斉改選にいたしました場合には、当選の決定を見るまでの期間に、本来、一貫性、安定性を生命とするところの教育行政に重大なる空白を生ずることになるので、これに対して教育の重要性に鑑み、一日の空白も許せない。こういう慎重な考慮からして、この制度が設けられたのでありまして、これは知事などの場合は勿論、他の一般行政委員会等の場合とは、全く趣きを異にしておるのであります。この重要な点を没却し、ただ単に常識的、便宜的の考え方から、もはやこの制度を維持する積極的な理由がないとして、これを廃止いたしますがごときは、教育委員会制度そのものに重大な制限を加え、やがて伝えられるところの知事の官選とか或いは地方議会の権限縮小とか、いわゆる行政の中央集権的な逆コースの波に乗りまして、教育委員の任命制に移行するところの重大な要素を含むものでありまして、我々の絶対に承服し能わざるところであります。(拍手)
以上の理由からいたしまして我が社会党は、本法律案に反対をいたすものであります。(拍手)
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006・河井彌八
○議長(河井彌八君) 松澤兼人君。
〔松澤兼人君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/6
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007・松澤兼人
○松澤兼人君 私は日本社会党第二控室を代表いたしまして、只今議題とたつております公職選挙法の一部を改正する法律案に反対の意思を表明するものであります。
今回提案せられました公職選挙法の一部を改正する法律案の要点といたしますところは、第一には、教育委員今の委員の半数改選の制度を廃止して、四年ごとに一斉改選をするという点であります。第二には、教育委員会の委員の次点者から繰上げ補充をする場合は、その選挙の日から三カ月以内に限るということであります。第三には、教育委員会の委員の再選挙又は補欠選挙は、当選人の不足又は委員の欠員の数が、通じて都道府県にあつては三人以上、市町村にあつては二人以上に達したときに行う。第四といたしましては、この法律の施行の目から二年以内に任期が満了すべき教育委員会の委員の任期は、その任期が満了すべき日の翌日から更に二年間延期するという点にあるのであります。
我々がこの法律案に対して反対しようとする第一点は、教育委員会制度そのものには私どもは賛成でありますけれども、町村の末端にまで現在の教育委員会を設置することは、時期尚早であると我々は反対して参つたのであります。大達文部大臣は、日教組対策といたしまして、突如としてこれまでの教育委員会をまだ準備も何もできておらない町村の末端までこれを設置しようとすることを強行して遂に実現を見たのであります。現在、町村教育委員会の実情というものは、誠に、大達文政の念願にもかかわらず、甚だ悲惨なものであるということは私が申上げるまでもありません。反対の第二点として、私はその点を指摘いたしたいと考えるのであります。
市町村教育委員会、特に町村教育委員会の実情は、政府の報告によつても明らかであるごとく、或いは教育長と助役が兼任をいたしましたり、或いは又、学校長と教育長が兼任いたしましたり、いろいろの方法によりまして実際にこの教育委員会が行政の不当の支配から排除されるというこの教育委員会法の目的が、末端におきましては実施されておらないという実情を来たしているのであります。教育委員会法の精神であります教育の不当支配、行政の不当支配から教育を解放するという趣旨は、誠に我々の念願であり、且つ又民主主義を達成する上からいつて、誠に必要なことであるのでありますが、大達文部大臣のその行政の理想というものは、口に教育の民主化ということを言つておりますけれども、実際におきましては全くその実が伴つておらないのであります。先ほども秋山議員から申されましたように、今回の予算におきましても、専任教育長を作る経費として六億の要求があつたのでありますが、大蔵当局によつてこれが削除されてしまつた。或いは教科書無償配付に要する費用三億円というものを削除されてしまつた。こういう実情にありまして、大連文部大臣は教育委員会の保護育成ということを常に口を開けば申すのでありまするが、財政的な裏付けというものが全然ない誠に悲惨な状態になつているのであります。私たちは、この実情から考えてみましても、現在町村教育委員会の実情がかかる状態でありますならば、我々としましては教育委員会制度そのものに対しても深い疑惑を感じなければならないのであります。
反対の第三点は、公職選挙法改正の提案理由によりますというと、委員会制度は実施後六年を経過し、その運用の経験に鑑み半数改選の積極的理由が乏しく、運営の空白を生ずる虞れがなく、他にかかる制度の存在しないという、そういう事実を考えて、半数改選の制度をやめて全員改選の制度をとつたということを述べているのでありますが、最も大きなその半数改選制度をやめたということの理由は、その選挙に必要である十六億の財源が大蔵当局によつて削除されたという事実に基くのであります。これが若し事実であるとするならば、我々はそういう理由で教育委員会の半数改選制度を廃止して全員改選制度をとるということに何らの意味を見出すことができないのであります。特に私たちは、二年に一回教育委員が改選せられるということによつて、住民は教育委員会制度そのものに対して深い関心を持つことができるのであります。四年に一回の改選でありまするならば、住民の教育委員会に対する関心というものが薄らぐことは当然であると言わなければなりません。
第四点といたしまして、我々は、教育委員そのものの公選制に対する改正であるという点であります。従いまして私たちは、どこまでも公選を主義とするところの教育委員会制度というものは、これは一体をなすものであつて、その全員改選の制度によつて著しく教育委員会制度の本質が損われることを心配するのであります。
最後に、私はこの公職選挙法の改正という形をとつて、その実は教育委員会法そのものの改正を実現しようとしている政府の意図に対して深い反対と遺憾の意を表明しなければなりません。若しも教育委員会法の改正でありまするならば、一切の論議が大達文政に来ることを恐れまして、簡単に公職選挙法の改正という手段をとつたものであると想像されるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)我々は、かかる一つ一つの些細なる、法律が全く簡単なる方法によつて民主主義を否定し、その民主主義の否定の上に日本の前途というものを導いて行こうとする現在の政府のやり方に対しては、非常に大きな不満を抱かざるを得ないのであります。
かかる意味から、私は只今上程になつております公職選挙法の一部を改正する法律案に対して反対の意を表明するものであります。(拍手)
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008・河井彌八
○議長(河井彌八君) 加瀬完君。
〔加瀬完君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/8
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009・加瀬完
○加瀬完君 只今議題となりました公職選挙法の一部を改正する法律案に対し、無所属クラブを代表いたしまして反対をいたします。(拍手)
政府の説明によりますと、本改正によつて第一に、教育委員選挙の認識が一段と深まる。第二に、教育委員会制度について世上これを任命制にするとか、或いは廃止するとかいう議論が盛んであるけれども、本改正によりまして、一斉改選という政府の施策を強行することによつて、本制度の維持を明確にすることができる。第三に、半数改選の理由とした行政の一貫性等は、他の行政委員会との釣合いから見ても今やその理由を認めなくてもよい。第四は、余りにも選挙に金がかかり過ぎる。特に政府の大方針である一兆円予算のためにも選挙経費の節約をする必要がある。大体以上の四点を主たる提案の理由とされているのであります。私どもはこの理由のみによりましては、遺憾ながら反対をせざるを得ないのであります。
反対理由の第一は、教育委員会法制定当時の事情及び教育委員会法の持つ意味が、全然本改正によりましては没却されておることであります。即ち教育行政の一貫性を通すためには半数交替によりまして、行政面に間隙を生ずることを防いだのであります。又教育委員会と知事、市町村長、或いは地方議会の議員、これらの相違に検討を制定当時されまして知事に対しましては、若し民意に反するということであるならば不信任という方法もとれる。地方議会に対しましては、解散という方法もとれる。併しながら一体教育委員というものに対しましては、他の執行機関でありますところの知事或いは市町村長と比べ合せましたときに、民意の反映をより可能にする方法がどういうふうにしてとられるか、こういう問題が検討されました結果、半数交替ということによりまして、民意に副わないものを民意に副うような交替の方法というものをとることがよろしいのではないかという意味合いにおいて、半数交替制というものが強く支持されたのであります。こういうことは、今度の改正によりましては、全然忘れ右られておるのであります。
反対の第二は、一斉改選によりますると、教育委員会の機能が停止する危険がある点であります。教育委員会法の三十三条の二、同三十六条、同四十一条、同五十二条の三、同六十四条、こういうものを相関的に検討をいたしますときに、教育委員会というものが、一人で行うべきものではなくて委員会制であることは自明の理であります。そうなつて参りますると、知事や市町村長の独任制のものであるならば簡単に代理者を選ぶことができるのでございますけれども、多数会議制をとる教育委員会の建前におきましては、完全なる法的な代理者というものはどこから考えても得られないのであります。政府は説明をいたしまして、併しながら現職のまま立候補するわけであるから空席にはならない。間隙は生じない。こういうのでございますが、これは理窟の上では、さようでありまするけれども、実際に教育委員会の運営の上に、立候補をしてしまつたところの教育委員が、教育委員会の開催に非常に熱心に、立候補しない当時と同じように職務に忠実になり得るということは、これは考えられないのであります。少くともこういう一斉改選ということによりまして、半数改選であつたときよりも、遥かにその行政の一貫性というものを損うことは明らかであります。そうなつて参りますると、当然これは一斉改選ということによりましては、教育委員会の機能が一時停止する危険というものを感ぜざるを得ないのであります。こういうことをあえてするということは、教育委員会法或いは教育委員会制度そのものを否定することになりまするので、我我は賛成するこことができません。(拍手)
反対の第三は、教育委員会法を改むべきを、選挙法のみで教育委員会法の内容を変更するがごときことをすることは、本末顛倒とも言うべきか、法の運用を甚だしく誤つたことであると思います。
反対の第四は、教育委員会の根本改正を忘れました姑息な手段であるということであります。なぜなら、今教育委員会におきまして一番問題の多いのは、地方教育委員会制度というものを現状のままにしてよいかどうかということが一つ。地方教育委員会の教育長を助役の兼任、或いは教育長を得られないままの事務の代理者、こういう形に放置いたしておきまして、教育委員会の制度の運営が完璧を期せられるか。こういう問題が教育委員会にとつては一番大きな問題である。ところがこういう問題には全然手を触れませんで、一番世上批判の多い問題には手を触れませんで、単に半数改選を一斉改選にするというような安易な方法によりまして、それが先に述べたように、教育委員会の性格をも変えることをあえてする、こういうことは、断じて私どもは許すことができないのであります。若しも半数改選という問題だけを取上げて、政府が言明されるがごとく、教育委員会制度というものを尊重するので、我々は飽くまでも教育委員会を強化育成するために、半数改選を一斉改選に改めたと言いましても、世論は政府の言明をそうであるかと信用するには、甚だ政府の誠意を疑わざるを得ないと思うのであります。(拍手)
反対の第五は、本法案は、教育基本法第十条の定める教育行政の原理を破るものであります。文部大臣は、この改正は理論的なものではなく、政策的に見てこれでもよいとして、この方法をとつた。こういう説明を繰返して申されておるのであります。理論的なものではない、併しこうやつたほうが政府が都合がよいから、こういう方法をとつた、若しもこういうことを、絶えず政府が用いるといたしましたならば、法治国におきますところの法の定めるところの理論的根拠というものは、どういう位置に置かれるのでありましよう。法の軽視も甚だしい。(拍手)こういう行政の理由のみによりまして変更されるということになりまするならば、それは単に教育委員会法のみならず、教育基本法のみならず、あらゆる法の軽視というものが、我々の議会の上にも、或いは全体の国民の生活の上にも、及ぼす影響というものは測り知れないものがあると思う。(「その通り」と呼ぶ者あり)そういう方法をとらないように細心の注意をするのが政府の第一の義務でありますのに、理論的にはいろいろ異論があるかも知れんけれども、政策的にはこのほうが都合がよいからこういう方法をとるということは、断じて為政者として許しがたい措置であると思います。(拍手)
以上の五つの理由からいたしまして、私どもは断じてこの改正案に反対をせざるを得ません。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/9
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010・河井彌八
○議長(河井彌八君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案の表決は記名投票を以て行います。本案に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上御投票を願います。氏名点呼を行います。議場の閉鎖を命じます。
〔議場閉鎖〕
〔参事氏名を点呼〕
〔投票執行〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/10
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011・河井彌八
○議長(河井彌八君) 投票漏れはございませんか……投票漏れないと認めます。
これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。
〔議場開鎖〕
〔参事投票を計算〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/11
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012・河井彌八
○議長(河井彌八君) 投票の結果を報告いたします。
投票総数 百九十三票
白色票 百二十五票
青色票 六十八票
よつて、本案は可決せられました。(拍手)
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〔参照〕
賛成者(白色票)氏名 百二十五名
河野 謙三君 佐藤 尚武君
小林 武治君 小林 政夫君
北 勝太郎君 上林 忠次君
楠見 義男君 柏木 庫治君
井野 碩哉君 石黒 忠篤君
加賀山之雄君 赤木 正雄君
森 八三一君 森田 義衞君
宮城タマヨ君 三木與吉郎君
三浦 辰雄君 前田 穰君
前田 久吉君 廣瀬 久忠君
早川 愼一君 野田 俊作君
西田 隆男君 中山 福藏君
豊田 雅孝君 常岡 一郎君
土田國太郎君 田村 文吉君
館 哲二君 新谷寅三郎君
島村 軍次君 白井 勇君
横川 信夫君 深水 六郎君
木村 守江君 伊能 芳雄君
青柳 秀夫君 高野 一夫君
西川彌平治君 石井 桂君
井上 清一君 関根 久藏君
川口爲之助君 吉田 萬次君
酒井 利雄君 佐藤清一郎君
剱木 亨弘君 森田 豊壽君
谷口弥三郎君 宮本 邦彦君
長島 銀藏君 長谷山行毅君
田中 啓一君 大矢半次郎君
岡崎 真一君 石原幹市郎君
植竹 春彦君 岡田 信次君
大谷 瑩潤君 團 伊能君
一松 政二君 西郷吉之助君
中川 幸平君 北村 一男君
左藤 義詮君 中川 以良君
吉野 信次君 重宗 雄三君
津島 壽一君 大達 茂雄君
青木 一男君 大野木秀次郎君
小滝 彬君 古池 信三君
伊能繁次郎君 杉原 荒太君
榊原 亨君 大谷 贇雄君
宮澤 喜一君 高橋 衞君
横山 フク君 重政 庸徳君
小沢久太郎君 鹿島守之助君
木内 四郎君 藤野 繁雄君
雨森 常夫君 石村 幸作君
青山 正一君 秋山俊一郎君
入交 太藏君 仁田 竹一君
松平 勇雄君 上原 正吉君
山本 米治君 小野 義夫君
平井 太郎君 川村 松助君
堀 末治君 白波瀬米吉君
島津 忠彦君 松野 鶴平君
小林 英三君 草葉 隆圓君
泉山 三六君 石坂 豊一君
岩沢 忠恭君 木島 虎藏君
白川 一雄君 野本 品吉君
三浦 義男君 石川 清一君
最上 英子君 深川タマヱ君
武藤 常介君 寺本 広作君
井村 徳二君 紅露 みつ君
八木 幸吉君 有馬 英二君
堀木 鎌三君 笹森 順造君
菊田 七平君 一松 定吉君
苫米地義三君
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反対者(青色票)氏名 六十八名
永岡 光治君 三輪 貞治君
湯山 勇君 大和 与一君
木下 源吾君 内村 清次君
秋山 長造君 阿具根 登君
海野 三朗君 大倉 精一君
河合 義一君 岡 三郎君
亀田 得治君 小松 正雄君
近藤 信一君 竹中 勝男君
清澤 俊英君 成瀬 幡治君
小林 亦治君 小酒井義男君
佐多 忠隆君 江田 三郎君
小林 孝平君 久保 等君
堂森 芳夫君 田畑 金光君
森崎 隆君 高田なほ子君
安部キミ子君 矢嶋 三義君
藤田 進君 岡田 宗司君
田中 一君 戸叶 武君
栗山 良夫君 吉田 法晴君
藤原 道子君 小笠原二三男君
菊川 孝夫君 山田 節男君
天田 勝正君 松本治一郎君
中田 吉雄君 三橋八次郎君
千葉 信君 羽生 三七君
野溝 勝君 三木 治朗君
山下 義信君 市川 房枝君
東 隆君 松永 義雄君
松浦 清一君 赤松 常子君
松浦 定義君 須藤 五郎君
加藤シヅエ君 鈴木 一君
加瀬 完君 千田 正君
松澤 兼人君 上條 愛一君
長谷部ひろ君 木村禧八郎君
相馬 助治君 村尾 重雄君
棚橋 小虎君 羽仁 五郎君
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/12
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013・河井彌八
○議長(河井彌八君) 日程第二、中小企業安定法の一部を改正する法律案(衆議院提出)を議題といたします。
先ず委員長の報告を求めます。通商産業委員長中川以良君。
〔中川以良君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/13
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014・中川以良
○中川以良君 只今議題となりました中小企業安定法の一部を改正する法律案につきまして、通商産業委員会における審議の経過と結果を御報告申上げます。
御承知の通り中小企業安定法は一昨年に制定、昨年、大幅な改正を見ましたが、最近における経済事情に鑑み、調整命令の発動形式を主体として、衆議院議員小笠公韶君外二十七名により本改正法案の提出を見るに至つた次第であります。
本改正案の骨子を申上げますると、本法第二十九条の調整命令の発動形式として、現行法のもののほかに、一定の条件の下に、当該事業者の全員に対して一定の期間を限り調整組合又は連合会の調整規程の全部又は一部に従うべきことを命じ得る、即ちアウトサイダーをして組合の調整に服せしめるという方式を加えたのであります。便宜上従来の方式による政府の直接の調整方式を一項命令と称し、新たな形式によるものを二項命令と呼びますが、本改正案は、この二項命令を追加したことと、これに関しては必要な監督規定その他を設けたことが中心でございます。
本法案について、当委員会では、極めて慎重且つ熱心に審議を進められましたが、その詳細は、速記録を御覧頂きたいと存じます。
質疑を終り、討論に入りましたところ、先ず高橋委員より、「中小企業へのしわ寄せを調整する必要があるので、これには賛成をするけれども、運用には種々の問題があるので次のごとき附帯決議を行いたい」との提案がございました。
附帯決議案
政府が本法に基く命令を発する場合は左記事項に関し特に慎重を期すべきである。
一、当該業種に属する事業者の技術向上と合理化促進とを積極的に指導すると共に、企業努力への意欲を失墜せしめざること。
二、輸出の振興を阻害せざる場合に限定すること。
三、第二十九条第二項による命令については、命令の公平なる実行を重視し、同項第一号の調整組合又は連合会の資格要件につき厳正を期すること。
なお、その他の委員より、「本法案は団体統制の最初の容認であり、従つて第二条の業種指定も廃止し、迅速に調整命令を発動できるよう将来改正すべきである。」又、「既存業者が既得権に安住して、技術の向上や発明などの意欲が阻止されないように留意すべきである」等の希望条件を附し、それぞれ賛成意見が述べられました。
次いで採決に入りましたところ、本改正法律案は、全会一致を以て衆議院送付の原案通り可決すべきものと決定をいたしました。
次に、高橋委員よりの提案の附帯決議案も、全会一致を以て可決をいたしました。
以上、御報告を申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/14
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015・河井彌八
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/15
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016・河井彌八
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて本案は、全会一致を以て可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/16
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017・河井彌八
○議長(河井彌八君) 日程第三、壱岐対馬電報料の件を廃止する法律案
日程第四、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う公衆電気通信法等の特例に関する法律の一部を改正する法律案(いずれも内閣提出、衆議院送付)
以上、両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/17
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018・河井彌八
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。電気通信委員長左藤義詮君。
〔左藤義詮君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/18
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019・左藤義詮
○左藤義詮君 只今議題となりました壱岐対馬電報料の件を廃止する法律案について、電気通信委員会における審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
本件は、明治二十三年法律第十六号壱岐対馬電報料の件、「本年四月以降ニ於テ壱岐対馬二発着スル電報ノ料金ハ内国普通ノ納額ニ依ルヘシ」という法律を廃止しようとするものでありまして当時内地相互間の電報料金は、明治十八年七月以来均一料金制を実施しておりましたが、壱岐対馬関係のみは例外で、やや高額となつておりましたのを、この法律によつて内地相互間の料金と同一となつたものでありまして、今日においては、この法律は、すでにその使命を果し、実効を失つておりますので、法令整理の趣旨に鑑み、これを廃止しようとするものであります。
当委員会におきましては、本件について内閣法制局、郵政省、電々公社の関係官及び担当者について本法案の取扱方、本件法律制定当時の事情並びに壱岐対馬における通信事情、その他について詳細な質疑応答が行われたのであります。その詳細は速記録によつて御承知を願いたいと存じます。
昨五月二十五日、質疑を終えて討論に入りましたところ、別段発言もなく、採決の結果、本件は、全会一致を以て原案の通り可決すべきものと決定した次第であります。
次に、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う公衆電気通信法等の特例に関する法律の一部を改正する法律案について、電気通信委員会における審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
本案の提案理由といたしますところは、日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の締結に伴いまして、国際連合の軍隊にかかる電気通信関係の取扱を日米安全保障条約に基くアメリカ合衆国の軍隊に対する取扱と同等にいたすため、所要の法的措置を講じようとするものでありまして、その内容は、現行の日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う公衆電気通信法等の特例に関する法律の一部を改正して、同法の規定を国際連合の軍隊にかかる電気通信関係に準用して、電信電話の料金及び電話設備費負担並びに有線電気通信設備の設置及び使用について、公衆電気通信法、電話設備費負担臨時措置法、有線電気通信法の適用を除外して、それぞれ日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の定めるところによることとし、その適用を前二者については、本法の当初施行日たる平和条約発効の日に、又後者については有線電気通信法施行の日たる昭和二十八年八月一日に遡及しようとするものであります。
当委員会におきましては、本案について慎重審議をいたしたのでありますが、その詳細は、速記録によつて御承知を願いたいと存じます。
昨五月二十五日、質疑を終えて討論に入りましたところ、別段発言もなく、採決の結果、本案は多数を以て、原案の通り可決すべきものと決定した次第であります。
以上、御報告申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/19
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020・河井彌八
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。
先ず、壱岐対馬電報料の件を廃止する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/20
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021・河井彌八
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて本案は、全会一致を以て可決せられました。
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/21
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022・河井彌八
○議長(河井彌八君) 次に、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う公衆電気通信法等の特例に関する法律の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/22
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023・河井彌八
○議長(河井彌八君) 過半数と認めます。よつて本案は、可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/23
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024・河井彌八
○議長(河井彌八君) 日程第五、臘虎膃肭獣猟獲取締法の一部を改正する法律案(森崎隆君外五名発議)を議題といたします。
先ず委員長の報告を求めます。水産委員会理事千田正君。
〔千田正君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/24
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025・千田正
○千田正君 只今議題となりました臘虎膃肭獣猟獲取締法の一部を改正する法律案の委員会における審議の経過並びに結果を御報告いたします。
先ず提案理由を申上げます。同法におきましては、臘虎膃肭獣の猟獲、その獣皮の製造その他の行為の禁止、制限に違反いたしました者については、主刑として「一年以下ノ懲役又ハ十万円以下ノ罰金」に処するほか、附加刑としてこれらの違反行為に供した物、違反行為により得た物等を没収することを規定しておりますが、この没収は、いわゆる必要的没収でありまして、およそ違反行為があり、主刑に処すべき場合には、必ず没収がなされることになつており、而もその物件の中には船舶、船具等も含まれているのであります。この点につきましては、違反行為が軽微の場合にも、すべて没収刑が科せられますことは、いささか苛酷に過ぎる感がいたしますのみならず、現在のところ、特に本制度を維持しなければならんという格別の理由もありません。又他の漁業関係法規、例えば漁業法、各種漁業取締規則、水産資源保護法等におきましても同様な規定がありますが、いずれも任意的没収、即ち「没収することができる」という規定でありまして、これらの規定との関係におきましても均衡を失するきらいがあるのであります。以上の理由からして、この際、現行法の必要的没収を任意的没収に改めることにより、裁判所が情状によつて適宜の措置をとり得る途を開きたいというのが本法改正の狙いであります。従つて改正条文も極めて簡単でありまして、同法第六条「前条ノ犯罪行為ニ供シタル船舶船具猟具及第一条ノ規定ニ依ル禁止若ハ制限ニ違反シテ猟獲シ差合所持シタル臘虎膃肭獣又ハ同条ノ規定ニ依ル禁止若ハ制限ニ違反シテ製造シ加工シ販売ニ供シ若ハ所持シタル臘虎膃肭獣ノ獣皮若ハ其ノ製品ニシテ犯人ノ所持スルモノハ之ヲ没収ス」とあるのを、「没収スルコトヲ得」に改め、次の「若共全部又ハ一部ヲ没収スルコト能ハサルトキハ共ノ価額ヲ追徴ス」とあるのを「追徴スルコトヲ得」と改正するものであります。
水産委員会におきましては、かねてからこの問題について、しばしば検討を加えておりますので、別に質問もなく討論に入りましたが、各委員から、すでに主なる刑として「一年以下の懲役又は十万円以下の罰金」に処する規定があるのだから、更に船舶、船具を没収するのは余りに苛酷である。近き将来漁民が安心して猟獲できるよう根本的な改正を加えるべきであるという強い要望があり、採決の結果、全会一致、原案通り可決すべきものと決定いたしました。
右、御報告いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/25
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026・河井彌八
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/26
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027・河井彌八
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて本案は、全会一致を以て可決せられました。
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/27
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028・河井彌八
○議長(河井彌八君) 日程第六、盲学校及びろう学校への就学奨励に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
先ず委員長の報告を求めます。文部委員長川村松助君。
〔川村松助君登壇、拍手]発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/28
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029・川村松助
○川村松助君 只今議題となりました盲学校及びろう学校への就学奨励に関する法律案につきまして、文部委員会におきましての審議の経過並びに結果について御報告申上げます。
御承知の通り、憲法及び教育基本法は、すべての国民に対し、ひとしくその能力に応ずる教育を受ける権利を保障いたしております。併し、このような教育の機会均等の原則にもかかわらず、我が国の生徒、児童の中において、極めて多数に上る盲者、ろう者に対しましては、未だ十分に教育の手は及んでおりません。昭和二十三年度からは、盲、ろうの児童生徒につきまして、盲学校及びろう学校への就学義務制が施行されては参りましたが、通学上の障害と、乗車賃、寄宿費、介護費等、多額を要する学資金による保護者の負担過重等の理由によりまして、就学は困難を極めております。このような事情による就学状態を改善いたしますためには、少くともこれらの学校への就学による保護者の経済的の負担を軽減いたすことが、現在何よりも必要であります。そのために国及び地方公共団体が必要な経済的援助を行うことを法律に規定いたし、以てその就学を促進し、義務教育の普及向上に資しようとするのが、政府においてこの法律案を提案した理由であります。
次に法案の骨子を申上げますと、国は国立の盲学校又はろう学校に就学する学令児童、生徒につきまして、都道府県はそれ以外の盲学校又はろう学校に就学いたす者のうち、当該都道府県の区域内に住所を有する学令児童、生徒につきまして、その就学のため必要な教科用図書の購入費、学校給食費、通学又は帰省に要します交通費及び付添人の付添に要する交通費並びに学校附設の寄宿舎居住に伴う経費の全部又は一部を支弁いたさねばならないこととし、国はこのために都道府県が支弁する経費の二分一を負担しようとするものであります。
本法案は、衆議院において法律の題名を「盲学校、ろう学校及び養護学校への就学奨励に関する法律」に改め、新たに養護学校を法律の対象として取り入れる趣旨の修正がなされております。
委員会の質疑応答の過程におきましては、第一に、「精神薄弱児等を収容するために設けられる特殊学級は現在約八百に上つているが、これは本法案の対象であるか」という質問に対しまして、政府からは、「これらは市町村が独自に自己の費用負担で開設しているものであつて、本法案成立後もその対象とはならない」旨の答弁がありました。第二、「衆議院の修正によれば、養護学校も一応本法案の対象として取り入れられたが、現実に、本法案による財政的援助が行われるのか」という質問に対しましては、「本法案が現実に就学奨励の対象としているのは、就学義務を持つ児童、生徒に限つておるから、養護学校が義務設置とはなつていない現在としては、養護学校の児童、生徒に対しては、現実には本法案による就学奨励は行われない」旨の答弁がありました。第三に、「本法案による就学奨励と生活保護法による教育扶助との関係につきましては、就学奨励のほうがやや幅が広く、且つ生活保護法第四条第二項によつて就学奨励費のほうが教育扶助に優先する」旨の答弁がありました。
かくして質疑を終了いたし、討論に入りましたところ、高田委員から政府に対し、養護学校、特殊学級を早急に整備するため必要な措置を講ずべきことを要望し、附帯決議を附して本案に賛成する旨の討論があり、相馬委員から、高田委員提出の附帯決議を含めて本案に賛成する旨の討論がありました。結局委員会は、全会一致を以て、衆議院送付案を可決すべきものと決定いたし、次いで、高田委員提出の附帯決議につきましても、全会一致を以て、これを附することに決定いたしました。その他の詳細は、速記録を御覧頂きたいと存じます。
次に、附帯決議を朗読いたします。
附帯決議
一、盲学校、ろう学校及び養護学校の幼稚部及び高等部についても将来義務学年に準じて就学奨励の措置を講ずること。
二、盲学校、ろう学校及び養護学校への就学の特殊事情にかんがみ、これらの学校への就学による保護者の経済的負担を軽減し義務教育の充実をはかるため、国又は都道府県が支弁し及び負担する経費の範囲を将来速かに学用品及び通学用品の購入費並びに実験実習見学費にまで及ぼし、更に寄宿舎居住に伴う食費その他援助費目全体について予算的措置の拡充をはかること。
三、盲者、ろう者以外の心身に故障のある者に対する義務教育の現状にかんがみ、これが充実を図るため、関係法令及び養護学校、特殊学級等の教育施設の整備その他必要な措置を速かに講ずること。
以上を以て御報告といたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/29
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030・河井彌八
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/30
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031・河井彌八
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて本案は、全会一致を以て可決せられました。
議事の都合により、暫時休憩いたします。
午後零時一分休憩
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午後二時五十七分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/31
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032・重宗雄三
○副議長(重宗雄三君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。
参事に報告させます。
〔参事朗読〕
本日委員長から左の報告書を提出した。
日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案修正議決報告書
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/32
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033・重宗雄三
○副議長(重宗雄三君) この際、日程に追加して日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案(内閣提出、衆議院送付)を議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/33
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034・重宗雄三
○副議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。法務委員長郡祐一君。
〔郡祐一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/34
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035・郡祐一
○郡祐一君 只今上程されました日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案の委員会における審議の経過とその結果について御報告いたします。
先般、日本国とアメリカ合衆国との間に相互防衛援助協定と船舶貸与協定とが締結されまして、合衆国から我が国に対して、船舶、航空機、武器、弾薬等の装備品や資材を貸与することになりました。これらのうちには、相当高度の秘密を持つものがあり、かようなものにつきましては、貸与する当事国が、その秘密の保持を期待するのは当然でありまして、協定と一体である附属書でこの趣旨が明定されておるのであります。アメリカ合衆国と、大体同一の性格内容を有する協定を締結しております諸外国も、又同様に秘密保護のため所要の措置を講じなければならないわけでありますが、これら諸外国におきましては、この種の秘密保護に関する既存の取締法令によつて十分に賄うことができますので、新たに立法措置を講ずる必要はありません。我が国におきましては、いわゆる刑事特別法はありまするが、これは、在日米軍の機密を保護するためのもので、国内的の秘密を保護するための一般的な取締法令は存在しないりであります。
本法案は、かような趣旨、目的及び必要性に基いて提案されたものであります。
本法律案は、六カ条と附則一項より成るものであります。その概略について申述べますと、第一条におきましては、用語の定義を定め、特に防衛秘密たるものとして、特定事項にして且つ公けになつていないものと規定し、第二条は、国民が秘密事項そのものを認識し、併せて秘密の漏せつを防ぐため、秘密の物件その他に標記を附する等の措置を講ずることを定めております。第三条から第五条までは罰則でありまして、秘密を探知又は収集する罪、秘密を漏らす罪、業務上の秘密を漏らす罪等を規定し、業務上の秘密については、過失犯を認め、更に独立犯としての教唆、扇動を認めております。第六条は自首減免についての規定であります。
本法案は、先ず本会議において提案理由の説明及び質疑応答がありましたが、委員会は極めて慎重且つ熱心に審議をいたしたのでありまして、回を重ねますこと二十一回に及び、その間、外務委員会と連合し、或いは公聴会を開き、各界の公述人より意見を聴取いたしました。審議の過程におきましては、殆んど全委員より適切なる質疑がなされました。問題となりました事項は、法案の内容に関することは勿論、本法案と憲法及びMSA協定との関係等の根本的なことについてであります。それらは非常に多岐広範囲に亘りますので、詳細は会議録に譲りたいと思いますが、その主な点を申しますと、大体次の通りであります。
現行刑法は、旧刑法の外患の罪の大部分を削除したが、これは憲法第九条に照応するもので、外国の侵寇に対し、組織的な抵抗力を持つことは許されないのではないか。かような見地に立つと、自衛隊の存在は違憲であり、本法案も同様になるのではないかという点。或いは基本的人権と、これを制限し得るとする公共の福祉の性質とその関係。MSA協定第三条第一項の、両政府の間で合意する秘密保持の措置の意義及び本法案との関係。米国との関係において本法案のごときものを制定する必要があるか、法律でなく、行政庁の内部措置のみで足りないかという点等であります。法案の内容については、「公になつていないもの」の意義が先ず問題となり、特に標記の有無と犯意との関係、防衛秘密の本質、政治犯と裁判の公開等であります。次に、「情報」、「不当な方法」、「業務」等の意義、学者の研究や報道人の取材活動と本法の取締との関係、秘密の区分、本法を修正した場合に協定の実施に及ぼす影響、第三条の罰則において、刑が一本になつているが、これを区分すべきではないか等についてであります。
これに対し政府より、それぞれ答弁がありましたが、その主なものを申しますと、大体次の通りであります。
憲法上の問題は、結局、自衛隊が憲法上許されるか否かの問題に帰するわけであつて、戦力に至らざる程度の自衛力を持つことは憲法に違反するものではなく、従つて、それに関し、或る程度の秘密保護の方途を講ずることは当然である旨。協定第三条の合意とは、防衛秘密の内容、具体的には本法案第一条第三項の各号について合意すべきことを意味するのであつて、法律を以てするや否やは、日本が独自の判断によつて決定する事項である。ただ米国と同等にするためには法律による必要があると考える旨の答弁がありました。法案の内容につきましては、先ず「公になつていないもの」の意義であります。即ち、「公になつている」とは、不特定多数の者が知り得る状態にある場合をいうのであつて、それは、国、場所、手段、方法の如何を問わない趣旨である。従つてこれは犯罪構成要件についての「しぼり」となるわけである。国民の大多数は、いつ、どこで公になつたか知らない場合が多いので不安だという点については、本来、本法案の防衛秘密は、相当高度な科学的な秘密であるが故に、一般国民の日常生活に殆んど無関係な上に、この点についての挙証責任は検察側にあるので、この非難は当らない。なお公になつていないことについても認識を必要とするが故に、標記が脱漏していた場合においては、多くの場合、犯罪は成立しないとの答弁がありました。「不当な方法」とは、社会通念上不当なる観念であつて、例えば金品その他で誘惑したり、深酒を強いたりするがごときことをいうのであつて、家宅に侵入するがごとき「不法」な場合より広い概念である旨。「業務」は必らずしも防衛関係の業務に限られない。例えば秘密漏せつ事件担当の裁判官、弁護人も含まれるわけである。要するに業務上当然知るべき地位にある場合をいうのであつて、報道業務は含まれない趣旨である旨。又、学者の研究、たまたまそれが防衛秘密と吻合することがあつても、本法の対象にはならないし、新聞人の取材活動は、特別な意図を以てやる場合は論外として、通常の場合は、不当な方法で行われることは想像できない旨の答弁がありました。
最後に吉田内閣総理大臣の出席を求め、国会の審議権については、総理大臣より、これを十分尊重する旨、又、本法の制定が憲兵制度復活の慮れがないかというのに対し、そのようなことは全く考えていない。本法の施行によつて基本的人権の侵害される懸念の有無については、その尊重に特に意をいたすとともに、個人の名誉の尊重についても国民と相協力して進みたい旨、本法の根本的改正については今のところこれを考えていない旨、原爆、水爆の使用の脅威による文明の危機については、世界平和の達成に政府としても意を用いているが、これは世界全体の問題として好転せしめられるであろうとの答弁があり、これを以て質疑は終了いたしました。
討論におきましては、一松委員より本法案に対する修正案が提出され、その趣旨について説明がありました。その全貌は会議録に譲りますが、主な修正点は次の通りであります。
第一に、罰則のうち、防衛秘密の漏せつについて、我が国の安全を害する目的を以てするものと然らざるものとを分ち、特に後者の刑を軽くして五年以下の懲役に処することとし、第二に、第三条及び第四条の「業務により」を、「防衛秘密を取り扱うことを業務とする者で、その業務により」との趣旨に改めるとともに、第三に、過失漏せつについて、右の業務による場合と、それ以外の業務による場合とを分つて、後者の刑を軽減し、第四に、本法案の第七条として、法の解釈適用について、国民の基本的人権を侵害することのないように規定を設ける等の点であります。
なお一松委員より、この修正をなすに当つては、防衛秘密の保護の趣旨を一般国民に周知させることによつて、一般国民が不注意で本法の罪を犯したり、不当に国民の言論出版等の自由が抑圧されないよう特段の考慮を払うことを要望する趣旨の附帯決議案を提案し、本法案に賛成する旨の発言がありました。
次いで青木委員より、「一松委員提出の修正案、修正部分を除く原案及び附帯決議案にそれぞれ賛成する。本法案は、日米相互防衛援助協定に伴つて、日米両国間の申合せにより、国際信義に基き、我が国の安全を防衛する必要上立案せられたものであつて、戦争放棄と国民の基本的人権の尊重の憲法の規定に違背するものではなく、反対論の多くは運用上の懸念から来るものである。その取締の範囲及び処罰の内容についても十分なる制約がなされているので、善良なる国民を脅かすものでなく、一般人の故意、過失を対象とするものではない。修正案については、字句を明確にし、処罰の均衡を合理化した点、解釈適用についての訓示規定を設けた点等、いずれも適切であり、附帯決議の趣旨も妥当である」旨、楠見委員より、MSA協定が成立した以上は、協定上必要な義務は、国際信義上守らねばならないという意味で、本法案をよいものにしたいとの立場をとると前提され、原案は種々の疑点、例えば「公になつていないもの」、「不当な方法」とかいうようなものがあるし、又濫用の危険がないわけではないが、修正によつて疑義も明確にされ、又訓示規定を入れて濫用の危険の防止が図られ、又、刑や業務を区分したこと等、適切な修正がなされたので、本法案は一応妥当であると解されるとの趣旨で、修正案、修正部分を除く原案及び附帯決議案にそれぞれ賛成する旨の発言があり、更に本法の運営に当つては慎重なことが要請されるので、総理府に防衛秘密審査会というようなものを設け、本法の罪は総理大臣の請求を待つて論ずることとし、総理大臣はその請求に当つては、審査会の意見を聞かねばならないとするような制度を設けたいとの構想を、希望意見として述べられたのであります。次に棚橋委員は、本法案はMSAによる義務立法であるが、日本国がMSAによる援助を受けるためには、その代償として軍事的協力、経済的協力などの、国力に必ずしも相当しない苛酷な条件を満たさねばならぬ。なお、自衛力漸増のために新武器の研究発明などもあろうが、これに伴う秘密の範囲が拡大されることは、国民生活が圧迫され、往年の憂欝な事態に立ち帰るように思われる。又本修正案によつて法条の意味、例えば業務の意義などの不明確の点は、若干はつきりはしたが、「公になつていないもの」「不当な方法」などは、やはり不明瞭な点が解消されないばかりでなく、報道の自由は、或いは却つて圧迫されるようにさえ考えられるところもあるので、本修正案に賛成するわけにはいかんとの理由で、修正案、原案及び附帯決議に反対する旨、次に亀田委員は、本法によつてその秘密を保護される兵器を使用する保安隊の存在が、憲法上許されないと思うから、本法に違憲の虞れが十分あること、本法の施行によつて基本的人権、例えば表現の自由が制限を受けることになる。基本的人権が制限されるためには、公共の福祉のためにする切実な要求がなければならないが、これがそれほど差迫つたものと考えることができないから、結局公共の福祉の濫用である。修正案についても、秘密保護のためには、保安隊等防衛秘密に携わる職務にある者が、先ず第一に真剣にこれに当るべきだが、そのための修正が行われていない。その他各法条について、「不当な方法」の語義は甚だ不明で、その適用に拡張解釈される虞れがあるし、漏せつ罪については、見方によつては、原案より拡げられた結果となつている。その他各条についても疑義が晴れない。なお、この法案によつて、国民の一切のことを知ることの権利が、新らしく一部分阻まれ、憲兵制度の復活は、政府は否定しているにかかわらず、予想されるところがある。これらの諸点を考え合せて、修正案を含めての本法案に反対する旨、羽仁委員は、元来法律は、それが是非とも必要なものであつて、且つ、濫用の慮れのないものでなければならない。これは法制定に関する大原則である。この原則に立つて本法案を見るときは、元来、歴史は絶えず秘密を公にして行くものであるが、本法案は、時に逆行するものであり、かるが故にさまざまの悲劇が起るわけである。又我が国には、本来の意味において、軍事秘密はないのであつて、秘密の対象が存在しない。又本法を必要とするような眼前明白な危険はない。故にさような意味で、本法の必要性は認められない。又本法は憲法に違反するものであると共に、必ず濫用されると思われる。仮に本法が成立しても、本法が役に立つとは考えられないという趣旨を以て、修正案、原案及び附帯決議にそれぞれ反対する旨の発言がありました。
以上を以つて討論は終了し、採決に入りました。先ず一松委員提出の修正案、次いで修正部分を除く原案を問題に供しましたところ、それぞれ多数を以て、可決すべきものと決定いたしました。
更に、一松委員提出の附帯決議案につきましても、同業多数を以て可決すべきものと決定いたした次第であります。
以上、御報告いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/35
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036・重宗雄三
○副議長(重宗雄三君) 本案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。亀田得治君。
〔亀田得治君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/36
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037・亀田得治
○亀田得治君 私は日本社会党第四控室を代表して、日米相互防衛援助協定に伴う秘密保護法案に対し、反対討論をいたしたいと存じます。細かい点は省略をし、大きな問題を五つの点にまとめて反対の理由を申上げて見たいと存じます。
その第一点は、本法は憲法違反の法律であるという点であります。即ち、本法によつて保護しようとする法益は、保安隊、自衛隊の使用する装備品等の秘密でありますが、その保安隊、自衛隊が憲法第九条違反であることは殆んど世論の常識であります。吉田内閣のみがひとり憲法違反でないと強弁しているに過ぎません。日本が敗戦後現在の平和憲法を作つたときには、いわゆる外敵に対する組織的抵抗力、即ち、軍隊というものを保持しないという方針を決定し、それに基いて刑法の外患に関する規定を整理したのであります。世界中でいずれの国を見ても、保安隊、自衛隊のごとき組織を持ちながら、それが刑法上の特別の保護を受けない国はないのであります。日本刑法がそれを否定しているということは、取りもなおさず保安隊、自衛隊のごとき存在は、憲法上だけでなく、日本の法体系中より抹殺した証拠なのでございます。このように憲法上許されない組織に持たす装備品等の秘密を被害法益とする本法案は、明らかに憲法に違反するものと断じなければなりません。
反対理由の第二点は、本法はMSA協定によつて事実上義務付けられた立法であり、日本の主権を侵害するとの点であります。本法案の審議の過程における岡崎外務大臣の説明によりますと、秘密保護法を作るかどうかは日本政府の自由な判断に任されているというのであります。若しそうだとするならば、何も今慌ててこのような法律を作る必要はないのであります。いわんやMSA協定が国会を通過しないうちに、いわゆる同時審議の方式で国会に急いで本法案を提出するのは、余りにも先走り過ぎていると言わねばなりません。現に昭和二十七年十二月二十七日、日本国とアメリカ合衆国との間の船舶貸借協定第七条においても、MSA協定第三条の規定のごとき秘密保持の規定がおかれております。日本政府は、現在までその船舶貸借協定の規定に対して、別に秘密保護法を作ることなく、行政上の措置のみを以て今日まで対処して来たのであります。而もそれで何ら不都合な事態が起らなかつたことも、質疑において明確になつているのであります。又日本に駐留しているアメリカ軍の秘密保持については、いれゆる刑事特別法が存在しておるのでありますが、現在までにその違反によつて処罰された日本人が一人もいないことも、委員会の質疑で明白になつたのであります。
以上申したことく、若し政府が言明するように本法を作ることが、必ずしもMSA協定上の義務でなく、それは日本政府の独自の判断に基くものであるとするならば、船舶貸借協定或いは刑事特別法に関する実績に徴しても、今急いで本法を作る必要は少しもないと私は考えるのであります。それにもかかわらず、政府が万難を排して本法案を提出された裏には、やはりアメリカ政府の強い要請があり、それに屈したのが真相ではないかと思うのであります。世間でも、又本法をMSA協定に基く義務立法と見ておるのであります。政府の諸君も、国会の正規の質疑を離れた際には、そのような心がまえで物を言つておられることがしばしばあるのでございます。これが真相だといたしますれば、私はこの立法制定の過程において、日本の主権が大きな侵害を受けたものと断じなければなりません、更に本法が成立した後においても、この点も質疑によつて明確になつたのでありますが、結局何を秘密にするかについては、装備品を日本政府に渡す際に、一々アメリカ政府が結局指定して来ることになるようでありまするから、本法の運用面、即ち行政権の面におきましても、アメリカ政府の容像を認めることになるのでございます。以上のような意味で、本法の成立は、日本の主権をみずから傷付けるところの屈辱的な法律と言わなければなりません。(拍手)
反対理由の第三点は、本法の内容が甚だ広過ぎる点であります。委員会における政府の答弁から判断しても、本法の対象となる秘密は、そんなに数は多くないのであります。従つてそれを取扱う防衛秘密に関係ある官吏が、十分注意して行動すれば事足りるのであります。防衛秘密に関係ある官吏以外の者を問題にするといたしましても、せいぜい政府より常時委託を受けて兵器を修理する業者、或いは悪質のスパイぐらいのものでよいのであります。このような観点から、本法の内容を批判いたしますると、例えば本法第三条第一項第一号の不当な方法による探知、収集罪或いは本法第三条第二項の普通の秘密漏せつ罪のごときは、明らかに現段階における秘密保護法としては行き過ぎたものであります。これでは、ややもすれば普通の人が何ら悪意もなく秘密について話したり聞いたりしたことも取締の対象になつて来る虞れも十分あるのでございます。勿論私といえども、国家の秘密を探知、収集或いは秘密の漏せつということを積極的に是認する意味で申すのではありません。たとえそれが芳しくないことだと思つても、それを防ぐには第一に防衛秘密を取扱う官吏の問題であり、この点に問題を集約しないで、これを一般国民に直ちに拡げることは甚だしく間違つたやり方と言わねばなりません。かくのごときやり方は、結局は官吏の義務と責任を一般国民に転嫁するものと言わなければなりません。同じような立場から本法第五条が教唆、扇動の規定を設け、特に教唆については犯罪の一般原則に反してこれを独立犯として処罰しようとしていることも、甚だ広過ぎる立法と言わなければなりません。
反対理由の第四点は、本法の制定は、日本の社会に新らしく秘密主義の立場を抬頭させる危険があることでございます。日本国民は新憲法下においては、公の問題については何事でも知る権利を持つているのであります。いわゆる逆コースの風潮は、保護すべき個人の秘密、例えば信書の秘密を侵す、こういうことを一方ではやりながら、他方では公の問題については、却つて国民の耳目を塞ぐ傾向を持つて来ているのでございます。本法案の内容そのものは極めて限られた秘密に関することであるかも知れないが、これが秘密主義の好きな吉田内閣によつて運用される場合、多くの弊害が予想されるのでございます。
その第一点は、国会議員の審議権の問題であります。吉田総理は、五月十九の参議院本会議において、外遊問題についての我が党中田議員の質問に対し、又昨日の法務委員会において、同じく私の質問に対しても、実質的な答弁を拒否しているのでありますが、これは明らかに憲法第六十三条の違反であると思うのでありますが、而もその答弁拒否の法的根拠というものを明白にされないのであります。
本法案審議の委員会において、政府委員は私の質問に対して、「本法の秘密事項について、国会の秘密会ではすべて説明できる」と答弁しているのでありまするが、外遊問題についてすら、今なお国会議員の質問に対し答えようとしないような吉田総理の態度から推測いたしますると、先ほど述べた委員会における政府委員の答弁は、実際の場合に当面いたしますると、吉田総理によつてふみにじられ、従つて国会の審議権というものは、そういう角度から制約されて来ることを私どもは心配するのでございます。(拍手)
第二点は、本法が憲兵制度復活の一つの足場になる点であります。憲兵制度復活そのものにつきましては、吉田総理もこれを否定しておるのでありまするが、併し自衛隊法案と関連して私どもが注意して問題を検討いたしますると、その虞れが十分あるのでございます。例えば自衛隊法案第九十六条第一項第三号によると、民間人の秘密保護法違反被疑事件についても、警務官が捜査権を持つておるのであります。このように警務官の権限が民間人にも及ぶことを認めることは、この特殊捜査機関をして不必要に大きな権力を揮わせることになるのであります。政府委員の説明によれば、民間人の秘密保護法違反被疑事件の捜査は、政令によつて一般警察に任す方針であるというのでありますが、法律上そのことが明確になつていないのであつて、政令の制定の仕方によつては、いつでも警務官の権限を民間人に及ぼすことができるようになつておるのでございます。
第三点は、検閲制度の問題であります。本法案に関する質疑において、政府はたびたび検閲制度を否定しておるのでありまするが、本法の運用如何によつては、実質的に検閲の芽生えが出て来るようなことになる虞れが十分あるのでございます。(「そうだ」と呼ぶ者あり)
以上は、新らしい秘密主義の抬頭に関する二、三の例に過ぎないのでありますが、このような民主主義に対する危険を冒してまで本法を作る必要はどこにもないのであります。(拍手)本法によつて幾らか政府は取締上の便宜があるかも知れないが、日本の社会全体から見れば結局マイナスになると断定しなければなりません。
最後に反対理由の第五点として、再び憲法問題に論及しなければなりません。即ち本法は、憲法第十九条、第二十一条、第二十三条等の国民の基本的人権を制限するものであることは明らかでありますが、この点に関し、政府はいわゆる公共の福祉を以ち出して、その制限の憲法上の根拠としておられるのであります。併し佐藤法制局長官自身、委員会で言明したごとく、公共の福祉によつて国民の基本的人権を制限するには、おのずからそこに基準があるのでございます。即ちその基準とは、第一に立法の必要性が現在しておること、第二に他に手段方法がないこと、第三に利益と弊害とを比較して利益が多い点であります。このような基準に照らして公共の福祉の上から止むを得ないことであるとの結論が出されたときに、初めて止むを得ず基本的人権に手をつけることができるのであります。然らば、この法律案は、このような厳密な検討を経たものかと言うに、決してさようではないのであります。
即ち第一に、現在の日本には、秘密保護法の対象になる秘密そのものが殆んどないのであります。これから初めてどんな秘密が来るか、だんだん政府自身も明確になるのであります。而もこれまですでに持つておる僅かの秘密保持についても、今までは本法のごときものがなかつたからとて別に不便を感じなかつたことは、先ほど委員会の質疑の内容を申上げた通り明らかになつておるのでございます。このような状態を以てしては、国民の基本的人権の制限にかかわるごとき立法をする必要性が現在していると申すことは断じてできないのであります。
第二に、他に手段方法がないかどうかの点であります。先にも述べたごとく、秘密を守るには、保安庁及び自衛隊の職員に対して厳重な行政上の措置をとることが先決問題であります。更に現行法によれば、保安庁の職員が秘密を漏らした場合には、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処することになつておるが、防衛秘密については、もつと刑罰を加重することによつて秘密保護の目的が達せられるのではないか。これらの諸点を十分検討することなく、直ちに本法案のごときものに手を着けることは行き過ぎた態度であると言わなければなりません。
第三に、いわゆる利益と弊害との比載の問題であります。本法のごときものができれば、成るほど政府にとつては便利であり、その限りにおいては利益であるかも知れませんが、併し同時に、私がすでに述べたごとき各種の社会的弊害が予想されるのでありまして、それらの弊害を避けようとするならば、政府の少しくらいの便利はこれを自制すべきものであります。
以上のごく各種の条件を具体的に検討するならば、いわゆる公共の福祉の理由の下に国民の基本的人権に制限を加え得る状況にあるかどうかは、極めて疑わしいと言わねばなりません。
そこで最後に、この問題を現行法の具体的規定と比較して検討してみたいと思います。即ち現行刑法、民法によれば、いわゆる正当防衛、緊急避難の行為を認める前提として、即ち咄嗟の場合に他人の権利を侵害することを認める前提として、止むを得ず最小限度の加害行為をした場合にのみ、その正当性を認めておるのであります。或いは憲法上保障されておる土地所有権を公共の利益の立場から強制的に国家が買上げることを認めておる土地収用法においても、公共の利益と個人の利益との厳重な比較検討を要請しておるのであります。これらの現行法の体系から割出しても、今日のごとき状況の下では本法律案を提出することは、明らかに憲法のいわゆる公共の福祉の濫用であり、断じて許されない立場と言わねばなりません。
以上五つの点を申上げまして、私の反対討論とする次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/37
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038・重宗雄三
○副議長(重宗雄三君) 青木一男君。
〔春木一男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/38
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039・青木一男
○青木一男君 私は、日米相互防衛援助協定に伴う秘密保護法案につきまして、法務委員会で修正議決されたものに賛成するものでございます。
本法案は、MSA協定に基いてアメリカ合衆国政府から供与される装備品又は情報について、その秘密の漏せつを防止することを目的とするものであります。即ち日米相互防衛援助協定第三条において、米国政府の供与する秘密の装備品又は情報について、その秘密の漏せつ又はその危険を防止するため両政府間で合意する秘密保持の措置をとるべきことが約定されておるのであります。米国政府といたしましては、我が国に供与した武器その他についての秘密が漏れるということは、米国自体の国防の安全を保つ上からも堪えがたいことでありますので、かような約束のできたことは当然と言わねばなりません。我が国がこの条約に基く約束を果すため本法律を制定することは、国際信義の上から言つても妥当の措置と言うべきであります。米国から武器の供与を受けている諸外国でも、米国との間に、右と同様の秘密防衛の約束を含んだ条約を締結しておるのでありますが、諸外国ではすべてこの種の秘密保護については既存の取締法がありますので、その適用によつて米国との約束を果しているのでありますが、我が国にはかようなスパイ防止法その他の取締法令が全く存在しておらないために新らしい立法を必要とするに至つたものであります。併しながら本法制定の理由は、単に米国との約束を果すというだけにとどまるものではありません。米国から供与を受けた武器その他の装備品は自衛隊の手で我が国の防衛に使用されるのでありまして、従つてこれについての秘密の漏せつを防止することは取りも直さず我が国の安全を図るために必要なる措置となるのであります。要するに国際上の責任を履行することと、国家の安全を図るという二つの方面から考えて、本法制定の必要を認めるものでありまして、これが私の本法案に賛成する理由であります。
本法律案につきましては、一部に憲法違反であるとか、或いは違反の疑いがあるという非難があるのであります。只今も亀田議員より、この点を指摘されておるのでございます。その論拠の一つは、憲法第九条との関係であり、他の一つは、憲法に保障された国民の基本的人権との関係であります。
先ず第一の点について論者は、我が国は憲法第九条によつて、戦争及び武力の行使を放棄し、戦力の保持を禁じておる。然らば我が国には軍隊も軍の機密もないはずである。防衛秘密といつても、内容は、従来の軍事機密と異なるところがないから、憲法に抵触するというのであります。併しながら国際紛争解決の手段としての戦争を放棄しても、自衛権を失うものではありません。外部の侵略に対し、国家を防衛することは、国家構成の本質的基本観念であります。これがため我が国の自衛力を漸増する方針は、今日ではすでに国家の意思として決定しておるのであります。即ち日米安全保障条約の締結、日米相互防衛援助協定の締結、保安庁法の制定、保安庁又は防衛庁予算の承認等によつて国家意思として決定しておるのであります。然らば国家の安全を図るため防衛秘密の漏せつを防止するための法律を制定することは、右に述べたような国家意思に副うゆえんでありまして憲法に抵触するものではないのであります。
憲法違反論の第二の根拠は、本法と憲法第三章に規定している基本的人権との関係にあるのであります。即ち本法の制定は、憲法に保障された言論、出版その他の表現の自由と学問の自由を侵すものであるから憲法違反であるとなすものであります。併しながら憲法に保障した基本的人権は、決して無制限のものではないのであります。若し各人の自由を無制限とする者があるならば、直ちに他の人の自由権との衝突を来たし、社会の秩序は一日も保つことができないのであります。(拍手)憲法第十二条において、国民の自由権が公共の福祉によつて制約を受けることを明らかにし、又第十三条において、自由権の濫用を戒めておるのは当然の規定であります。論者の中には、憲法第二十一条の言論、出版その他の表現の自由には、公共の福祉の制約がついていないから、無制限であると主張する人もありますけれども、併し幾多の立法の実例から見ても、表現の自由の無制限でないことは明瞭であります。国家の安全を図るためスパイ行為その他防衛秘密の漏せつの取締立法をなすことは、何ら憲法に抵触するものではないのであります。亀田議員は、本立法を必要の限度にとどめるため、常時防衛秘密を取扱う保安庁当該官の取締を強化すればよいではないかということを、只今も主張されたのでありますが、私も保安庁関係者に十分警告を与えることには異存はありませんが、それだけによつて秘密漏せつが完全に防止できるものとは信じ得ないのであります。
世上の本法に対する反対論の多くは、むしろ本法の運用についての懸念から出発しておるものと考えます。これは戦時中、軍機保護法などが濫用され、ために国民の人権を侵害し、言論、出版その他の表現の自由を著しく阻害したという記憶がありますため、これを連想して本法の運用に危惧を抱くのであります。併しながら戦時中の軍機保護法は、当時政府を超越して実権を把握していた軍の威力を背景としたために、その運用に弊害を生じたのであつて、憲法上、内閣の権力から離れた軍という組織のなくなつておる今日、同じようなことの起る虞れはないのであります。又政府当局は委員会において、繰返し本法の運用については、いやしくも濫に流れ、不当に人権を侵さないように注意をすると申しておりますから、往年のごとき弊害を繰返す虞れはないものと信ずるのであります。又規定の内容においても、昔の軍機保護法と根本的に異なるところがあります。軍機保護法の軍事上の秘密の種類、範囲は頗る広汎でありまして而も陸海軍大臣が、命令を以て自由に定め得ることになつておりました。然るに本法案の防衛秘密というのは、米国から供与される装備品とこれに関する情報中高度の秘密に属するものに限局されておるのでありまして事実上、極めて狭い範囲のものであります。
又秘密の探知、収集の処罰についても、軍機保護法では、無条件、無制限であつたのに、本法では、スパイの目的又は不法、不当の手段で実行した場合に限つて処罰することとしてあります。秘密漏せつの処罰についても同じように、両者間に顕著なる差異があります。要するにスパイ行為をやるとか、不法、不当の手段で防衛秘密を探り又はこれを漏らすというような反国家性、反社会性の行為を意識的にやつた場合だけ法に触れるのでありまして善意の国民が、知らない間に法を侵すというようなことにはなつておらないのであります。ただ防衛秘密を取扱う業者その他の者が、業務により知得し、又は領有した防衛秘密を過失によつて他人に漏らした場合、軽い処罰を受けることとなつておるのでありますが、防衛秘密を取扱う業者に対し、特別の注意義務を課するのは妥当の措置であつて、いずれにいたしましても、業務に関係のない一般人が不注意又は過失によつて処罰を受けるということはないのであります。新聞その他の報道関係の者が、「この業務により」に該当するものではないかという懸念があつたのでありますが、委員会の質疑応答によつて、この点が明瞭になり、「業務により」という言葉の意義は、従来の立法例からしても、又学説、判例等によつて定説があり、職務権限により知つたというのが、「業務により知得し」に当るのであるから、新聞その他の報道関係は、「業務により」の観念に含まれないことが明瞭となりましたので、この点の不安はなくなつたのであります。
本法案反対の一理由として、本法制定の必要性と緊急性を欠いておる点が挙げられているのであります。その根拠の一つとして、一昨年五月に制定された日本国と米国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法の実例が引用されておるのであります。この法律には、合衆国軍隊の機密保護について、今回の防衛秘密保護法の原案と同じ規定を設けているのであります。この刑事特別法の施行以来二カ年を経過したのでありますが、この間違反事件があつたかといいますと、只今亀田議員も申されたごとく、僅か数件軽微なものがあつただけであり、而も起訴された事件は一件もなかつたのであります。そこで委員会において或る委員は、こういう事件は、この刑事特別法施行状況の示すように容易に起るものではないから、本法も急いで立法する必要はないではないかと主張されたのでありますが、私はそれは刑事特別法という予防立法があつたから問題が起きなかつたものと解するものでありまして、本法の場合も、問題が起きてから立法しては遅きに失するものと考えます。この点を理由とする反対論には賛成ができないのであります。併し、ともかく刑事特別法が施行以来二年を経て一つも起訴事実のなかつたということは、こういう立法は全く予防手段であつて、違反事件は容易に起るものではないということを実証すると同時に、広く世間で心配しておる法の濫用というようなこともなかつたことを示しているのであります。併し本法制定後においての適用については、飽くまで濫用を慎み、基本的人権を尊重せねばならないことは当然であつて、今回の修正案においても、これに関する警告の一条文を加えたことは適当なる修正と考えておる次第であります。
次に、本法案の修正について申上げます。
委員会においては幾つもの修正案が提出され、その重点は、罰則に集中されたのでありますが、中には原案の趣旨と著しく飛び離れたものもありました。その理由は、違反行為の範囲を狭めることによつて、本法の濫用を防ぎ、基本的人権を護らんとするにあつたのであります。併しながら著しく網の目を粗くしたり、又網の破れ目をそのままに放置するというようなことは、徒らに反国家主義者たちに抜け道を与えるだけであつて、本法制定の趣旨を没却することになるのであります。亀田委員は、只今申されましたが、秘密の探知収集或いは漏せつの罪、いずれもスパイ行為、即ち国家の安全を害する目的を以てする行為を取締れば足るではないかというお話があつたのであります。併しながら、スパイをやる人のこの目的というのは、その首領者だけがその目的を持つておるのでありまして、その手下となつて、或いは利益に惑わされ、そういう秘密の探知、収集、漏せつということをやる人たちは、目的を知らないのでありますから、手段方法の不当不正或いはそういう方法を若し放任したならば、これは全部無罪となるのでありまして、そういうことでは本法制定の目的は達しがたいことが明らかであります。そこで明らかにこの法の盲点を残すような修正案には、我々は同意しなかつたのであります。(拍手)委員会可決の修正案は、本法制定の目的を損しない範囲で、法文の明確化、合理化に努めておりますので、私はこの修正に賛成するものであります。
先ず第三条の罰則についてであります。政府原案によりますと、防衛秘密で通常不当な方法によらなければ探知し、又は収集することができないようなものを他人に漏らした場合には、一律に十年以下の厳罰に処することにしてありましたが、通常不当な方法によらなければ探知できないものという観念は明瞭を欠く嫌いがありましたので、これを改め、一般人の場合には、我が国の安全を害する目的を以て防衛秘密を他人に漏らした場合に限り、原案通り十年以下の懲役に処し、その他の場合には五年以下の懲役という一段軽い刑罰に処することに改めたのは合理的であると考える次第であります。又、原案第三条第一項第三号には、「業務により知得し、又は領有した防衛秘密を他人に漏らした者」は、これ又十年以下の厳罰に処することになつております。「業務により」という表現は、幾多の立法例にその例を見るところであり、いずれも職務権限によりという意味でありまして、解釈上疑問の余地はないのであります。併し職務権限により防衛秘密を知る者の中に二種類あるのでありまして、防衛庁の当該公務員或いは秘密兵器の修理を担任する業者のごとく、常務として防衛秘密を取扱う者と、検察官、警察官吏、裁判官、弁護士、国会議員のごとく、常務としてではないが、特殊の場合に公務上当然防衛秘密を知得し得る者との二種類があり、原案では両者共に十年以下の厳罰に処することになつていたものを改め、前者は、原案通り十年以下の懲役、後者は、五年以下の懲役と分けたのは、これ又合理的な修正であると信ずるものであります。
次に、第四条の過失により秘密を漏らした罪の処罰であります。原案におきましても、一般人については過失によつて防衛秘密を漏らした行為は罰しておりませんが、業務により知得し、又は領有した防衛秘密を過失により漏らした者は、一律に二年以下の禁錮又は五万円以下の罰金に処することとなつております。併しこの場合も、第三条の場合と同様に修正して、防衛秘密を取扱うことを業務とする者、即ち常務として防衛秘密を取扱う者については、原案通りの刑罰とし、その他の者、即ち一時的に業務により防衛秘密を知得したるものについては、その刑罰を一年以下の禁錮又は三万円以下の罰金に改めたことは、これ又合理的の修正であると信ずるものであります。
次に、原案になかつた第七条を新たに加えた点であります。この法律の適用に当つてこれを拡張解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害してはならないという警告は、修正の沿革から申上げますと、第三条第一項第一号との関係から来たものであります。即ち第一号の原案には、我が国の安全を害すべき用途に供する目的を以て、又は不当な方法で防衛秘密を探知し、又は収集する者を十年以下の懲役に処することになつております。然るに不当な方法という表現は広過ぎて拡張解釈される虞れがあるから、不法な方法に改むべしという意見が広く行われたのであります。併しながら、例えば秘密兵器の修理を担任している工場の技師を買収して秘密を探つたという場合には、その技師は公務員でないために収賄罪を構成せず、不法な方法と言い得ないのであります。併しこの場合にも、それは不当な方法であることは社会通念上明らかであります。その他にも同様な場合がたくさん予想されますので、不法な方法と改めて法の盲点を残すことは適当でないので、原案を改めないこととし、その代り第七条を設けて拡張解釈し、濫用に陥ることを残しめた次第であります。かくのごとく第七条は、沿革上は第三条の不当の字句に淵源するものでありますが、併し一旦法文となつた以上は、その法意は第三条に限定されるものでなく、その精神は本法全体に当嵌るものであります。
私は今後本法の運用に当つては、第七条の精神を体し、いやしくも濫用に陥り、国民の基本的人権を侵すがごときことのないよう要望を附して、私の賛成討論を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/39
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040・重宗雄三
○副議長(重宗雄三君) 小林亦治君。
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〔小林亦治君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/40
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041・小林亦治
○小林亦治君 私は、このいわゆる秘密保護法案に対し反対する理由を、日本社会党の名において、極めて簡単に討論したいと存じます。青木議員とは、私の立場は対蹠的であり、従つて亀田君と全く同様でありますので、重複する点を省きまして、概括的に結論を申上げて討論を尽したいと思います。
およそ如何なる悪法といえども、それが制定せられまする場合には、輝かしい理想を以て出発するのであるが、一旦でき上つたところの法律は、でき上りましたとたんに立法者の手を離れて、その執行が下級行政官の手に移るのが通常なのだ。その執行するところの下級行政官の執行状況如何によりましては、全く予期せざるところの悪結果を生じ、稀には立法者自身も、その被害者になつたり、一般国民の怨嗟をかうことが往々でありまして、その最たるものを挙げますれば、旧憲法、即ち大日本帝国憲法のあの第八条の緊急勅令然り、その第十一条のいわゆる統帥権、この統帥権は、僅か文字で十なのだ。「天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス」というのが、いわゆる統帥大権を規定したところの旧憲法の十一条である。これらの超国家主義そのもが、遂に国を亡したことや、その憲法下にほしいままにはびこつた軍機保護法、治安維持法のごときは、これ又幾多の善良な国民、熱情のある愛国者を理由なきに投獄し、或いは獄死せしめた無漸なる事実、更には正常なる言論機関を圧殺して顧みなかつたことなどを考うるならば、すでに当初から悪法の匂いが歩々としておる、少くとも危険法案とされるこの法案、拡張解釈しないことを繰返して念を押さなければならんような、而も又その上に附帯決議を以てしなければならんような本法案は、過去の歴史に鑑みても断固反対しなければならんものと存ずるのであります。(拍手)
反対理由の第二は、MSA協定が憲法第九条に違反し、なお幾多の違憲立法が予測せらるるところでありまして、我々は当時、極力これに反対したのであるが、果せるかな、このMSA協定の母体から嫡出第一号として、言論抑圧法とも言うべき本法案が誕生するに至つては、我々は何らの説明を加うることなく反対することが当然でございます。
反対の第三の理由は、若しもこの法案が法律となつたならば、亀田君も指摘せられました通り、さしずめ憲法第十九条、第二十三条違反が問題となります。だが、なかんずく憲法第二十一条の表現の自由が奪われてしまい、言論自由を担保している外堀が、この悪法一つによつて埋められてしまうのみならず、占領下と異なつて、すでに独立を回復した今日、アメリカの要請とか、或いはMSA協定なる条約によつて、日本国憲法を変更し、或いは停止することは許されません。本法違反の具体的事件が若し将来発生したといたしまするならば、憲法の番人であるところの最高裁判所は恐らく違憲立法として無罪の判決をするに相違ありません。言を換えれば、一片の法律によつて基本法たる憲法を抹殺するがごときは、常識的な極く幼稚な法理論から申上げましても、乱暴極まる誠に沙汰の限りと申さなければなりません。(拍手)
〔副議長退席、議長着席〕
そこで簡単な私の結論は、この悪法が下級官吏の手に渡され、時の政府に権力的な指揮権が握られることに思いをいたすならば、緑風会の諸君、改進党の諸君、この両派の良識各位が、何とかして政府原案を通すまいとして、その修正に並々ならん努力をされた、その熱意は、私どもこれを高く評価するにやぶさかではございません。併しながら、私どもは独立国の国民であり、人間である限り、表現並びに言論の自由を主張し、これを護るためにも断固この法案に対しては反対を表明するものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/41
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042・河井彌八
○議長(河井彌八君) 中山福藏君。
〔中山福藏君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/42
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043・中山福藏
○中山福藏君 私どもは人間として衷心から永久の平和を希うのであります。平和を希いまするが故に、平和な社会を持ち来たすための環境を作り上げることは何より肝要であると考える。諸君、御承知の通り国家は生成発展して行くのである。人間が春夏秋冬に応じて別仕立の異なつた着物を着ると同様に、このことはやはり国家にも適用することができると思惟するのであります。即ち国家が進展するにつれ、その時代に適応する制度、文物をまとわしめるというのは当然であります。(「その通り」「規則に反している、議長注意しろ」と呼ぶ者あり)而して私は只今上程せられております日米防衛援助協定に伴うこの秘密保護法案、これに対して修正案が提出されておりますが、これに賛成をする。更にこの修正案を除外した政府原案に賛成し、なお且つ附帯決議案にも賛成の意を表して、これより逐次自己の意見を開陳してみたいと思います。(「前置きが長いぞ」と呼ぶ者あり)
即ち先ず第一に、この法律がなぜ必要であるかという問題であります。日米防衛援助協定第三条第一項並びに附属書のBに基き、アメリカ合衆国政府から供与される秘密の装備品又は情報等について、その秘密の漏せつ又はその危険を防止するため必要な措置を講ずる必要があり、又過般両国間に締結しました船舶貸借協定第七条によつて合衆国から貸与された船舶についても、その情報並びに装備品に関する秘密を擁護することが必要であります、申すまでもなく、MSA協定を議会において認めました以上、当然これに伴うこれらの秘密を国家において保護することは結論的に当り前のことであると感じておるのであります。(拍手)只今青木君の言われました通り、MSA協定に伴うアメリカ合衆国対諸外国、殊に欧洲諸国の秘密保護に関する立法措置は、すでに大方整つておると言われておりますけれども、日本においては未だ駐留米軍に関する刑事特別法がある以外に、一般大衆に対する何らの規定が設けられていないのは甚だ遺憾であり、誠に手落ちであると考えるのであります。只今亀田君や小林君が、憲法第九条によつて戦争を放棄したと言われる一方に、この秘密保護法案が憲法第九条に反すると種々御議論がありましたが、未だ日本においては独立の憲法裁判所はないのである。(「何を言つておるか、最高裁判所があるじやないか」と呼ぶ者あり)従つて自衛隊設置が憲法第九条に反するかどうかということにつきましては、議論囂々たるものがあつて、どちらのほうにも未だ軍配が挙つていないのであります。でありますから、自己の国を守るためには、どういうふうな方針をとるほうがいいかということは、国民みずからこれを判断しなければならん重大な国民としての国家に対する義務であると考えておる。故にこういう意味合いにおいて、この秘密保護法が違憲なりや否やにつき、どちらにも軍配が挙らない現在、国民として、国家の利益になるようにこれを解釈して行くのが当り前でなくてはならないのである。諸君は、国家があつての国民ではないか。国家の恩恵を受けながら超国家的な態度をとるような国民が若しあるとせば、それは空中楼閣の上に安居を求めんとする人々であると断じていいと思う。(拍手)現在我が国の憲法は、民主的にして文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献することをその目的としておる。従つて私どもはこの見地に立つて、当然今日の日本を守る上においては、MSA協定に伴う秘密保護法によつて、アメリカより供給される情報並びに装備品についての秘密を保護することが肝要である。諸君の胸には、真理は痛いのだ。真理が痛いだろう、痛いから弥次るのだ。その化膿の部分を扶ぐつてやるから、暫く辛抱しなさい。こういう意味において、先ずこの法案の必要性を認めざるを得ない。従つてここに一松氏の出しておられます修正案、その部分を差し引いた残余の政府原案、並びに附帯決議案に賛成するものであります。
なぜ然らば修正するかという問題でありますが、皆さんが政府原案を御覧になりますと、同法案第一条には、「供与される」となつておりますが、これを修正案では、亀田氏試案の通りにされたとしております。これでその意味がはつきりした次第であります。次に、第三条の第三項につきまして、これは業務に関する内容、輪廓が頗る不明確でありましたが、これが明瞭になつた。只今小林君のおつしやつたように、憲法第二十一条の言論表現の自由、或いは憲法第二十三条の学問の自由、これ等の権利が侵されるというようなことがあつては大変でございますから、この業務の内容及び範囲を明確ならしめておると思うのであります。なお、最後に、基本的人権の侵害云々ということを言われましたけれども、我々の基本的人権は憲法第十二条によりまして公共の福祉のためにはお互いに辛抱して利用する責任があるのでありますし、みだりに超国家的な議論をして、あたかも外国人であるかのような喧噪を極めるというのは、これは丁度自分は世界人であつて日本人じやないというようにも聞こえるのである。なお又、「不当」という字が削られておるのでありますが、これを削るかどうかについて、いろいろと協議したのでありますが、これはどうしても存置させなければいかんということになりましたので、その代りにこの修正案の第七条に、基本的人権を尊重する意味において、この法案が通つた場合、拡大解釈をしないように、この一条を入れた次第でありまして、個人の尊厳を重んずるために、この第七条を設けたのであると考えるのでございます。
最後に、附帯決議案の問題でございますが、あの決議案は、本法案の内容を一般大衆に周知せしめるために、適当の方法をとらなければならんというのは、これは公になつたものは秘密ではないということが、政府の原案の解釈上に現われておりますので、果して秘密事項に属するかどうか、アメリカにおいてすでに公になつておるかどうか、又諸外国においてすでに公になつておるかどうかということを親心を以て一般大衆の人々に注意を喚起すると同時に、これを周知せしむる適当な措置を講ずることは、まさに政府としてなさなければならんことであると思料するのであります。よつてこの附帯決議を付けるのは勿論でございます。
皆さん、木を見て森の評価をするような愚論はやめましよう。富士の山を眺めて、富士の山のきれいなことを忘れて、富士の登坂道に馬糞の落ちておるのを論議するような馬糞論議はやめましよう。私は本法案の全体としての価値を十分に国会人が判断しなければならんと思うのであります。皆さん、私の言うことを盛んに弥次るが、よほど痛いだろう。諸君は痛いはずだ。私はこの意味において、本修正案と修正部分を除いた政府原案の残部と附帯決議案に賛成の意を簡単に述べて降壇する次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/43
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044・河井彌八
○議長(河井彌八君) 羽仁五郎君。
〔羽仁五郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/44
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045・羽仁五郎
○羽仁五郎君 私は、只今議題になつております法律案に反対するものであります。
悲惨な戦争のあとに新らしく生れた日本というものは、日本の歴史にも今までなかつたような、そうして現在の世界にも今までになかつたような美しい日本が生れたのです。民主主義の日本、主権在民の日本、そうして平和主義の日本、この今まで見たことのない新らしく生れた日本というものを日に日に汚し、目に日にそれを破壊しようとしておるものがあります。先日、本法案のもととなつたいわゆるMSA法案が本議場において通過しましたときに、あの傍聴席で傍聴していた一人の国民が、そのあとで私に手紙をよこしました。この方の住所は豊島区西巣鴨、いわゆる巣鴨のプリズンの中からよこされた手紙です。この手紙の中に、この若い人はどういうことを言つているか。この若い人をかり立てて、戦争に追いやつた人々は、現在その若い人々を牢獄の中に閉じ込めているのです。そうしてそれらの人々を未だ解放することなくして、再び国民を戦争にかり立てようとしているものがあるのです。この青年は、いずれあの白票を投じた連中を、私の代りにこの巣鴨に入つてもらいます、と書いておられます。(拍手)
本法案に反対して、各新聞はことごとく批判を続けています。新聞協会、又は日本弁護士連合会、いずれも本法案に反対を続けている。最近日本の最も大きい新聞の一つは何と言つているか。この国会は悪法国会の感がある。その中でも最も暗い、陰気な法律はこれである。これが私の本法案に反対する第一の理由です。
第二の理由は、この日本に軍事的秘密がないということほど美しいことはないのです。そうして又憲法もこれを命じているのです。そうして又刑法からも、そういう関係の条項は削除されているのです。それが新らしい日本の行き方なのです。それを再び古い日本の行き方に引き戻そうとしている。国の防衛と言われるけれども、一体先ず第一に、その美しい国を作り上げることが第一です。ヨーロツパのスウエーデンはMSAにも加入していない。そうして現在スウエーデンの牢獄はからである。政治家、或いは国会議員が先ず第一に努力すべきことは、牢獄をからにすることです。(拍手)牢獄を一ぱいにしておいて、その国を守るというのは、牢獄を守るに等しい。いわんや新らしい法律を作つて、ますます牢獄を充満させようとしている。我々が努力すべきことは、国民生活の安定、それに全力を挙げるべきであつて、かかる片々たるいわゆる防衛秘密などというもののために国民を脅かすべきではありません。これが私の反対の第二の理由です。
現在、いわゆる力を入れている防衛力というものについては、世論は何と言つているか。保安隊続々汚職、国民生活が安定していないときに作られるいわゆる軍事的な力というものは、腐る一方、そして太る一方です。国民生活が安定していないのですから、国民経済はバランスがとれていない。そのバランスのとれていないところに軍隊のようなものを作れば、これは必ず腐るのです。従つてその腐る一方、そしてこれを国民が腹がすいているのだから、とても主権在民と言つても、この軍隊が太つて行くことを抑えることはできない。その太つた軍隊が、寝てばかりいられないと言つて、どこかに出掛けて行く、いわゆる侵略に転ずるのです。而もこれにプラス本法案、即ち秘密が加わつて来る。腐る一方、太る一方の軍隊に秘密が加わつて来るということは、まさに危険極まりないことです。(拍手)
皆さんが御承知のように、最近アメリカのいわゆる防衛関係というものがどういう様相を呈しているか。ユンクという人が「未来はすでに始まつた」という書物を書いておりますが、ロス・アラモスという所は、学者と刑事しか住んでいない所なんです。或いは最近のアメリカのフオート・マンモスという所に勤めている学者たちは、ほかの職業があつたち一刻も早くそこに転じて行きたい。併し転じて行く際に、何かいやな理窟を付けられるのは困るので、まだそこにいると言つている。私は今のような腐る一方、そして太る一方、そしてその秘密を今本法案によつて保護されようとする軍隊に日本の学者が協力するはずはないと思う。従つて、ここにできて来るものは、非民主主義的な、非能率的な、そして侵略的な、そして国民を圧迫する、そういう防衛力ができて来ることなのです。この意味から、私は本法案に飽くまで反対しなければならない。
第四の私の反対理由は、こういう種類のいわゆる秘密立法というものは、すでに過去の立法です。原子力の時代に、秘密保護などによつて国を守ることはできるものじやない。これを何よりもよく現わしておるのは、最近アメリカにおいてオツペンハイマー教授が迫害されているという事件でよくわかるのです。戦争に勝つことが問題なのではない。武力などによつて国を守るのではない。世界の平和によつて国を守るのだという考え方に、世界の世論が動いているのです。オツペンハイマー教授の事件のようなものを眼前に見て、而も区々たる防衛秘密によつて学者を圧迫するような本法案の反対せざるを得ないのです。
第五の理由は本法案はあらゆる点でジレンマに満ちております。憲法違反ではないということを政府は言われるけれども、然らば何故にこれを絞るのか。この法律案が軍機保護法というものかと言えば、そうじやないと言う。それでは憲法が許すような行政部内の内部規律によつて機密を守る程度のものかと言えば、そうでもないと言う。とすれば、その間をこの法律案が絶えず右に寄つたり左に寄つたりしている。現に政府が本法案を提出されました当初に考えていたものは、これよりも遥かに幅の広いものであつた。或いは動員であるとか、作戦であるとか、防衛出動であるとか、そういうものを含んでおるものです。こういうことを含んでおるものは、明らかに軍機保護法です。本法案は、委員会の討議の際にも、例えば一松委員から指摘されましたように、穴だらけの法律案です。その穴だらけの法律案の穴を埋めようとすれば、或いは憲法違反となるのです。而も国を守るために秘密が漏れては大変だという議論をなさるかたは、必ず最後には、その国の秘密を漏らさないためには死刑を以てこれを防がなければならないという考え方まで行くのは当然です。この法律案にはまだ死刑は出ていません。併しながらいわる防衛秘密を飽くまで守るのだという考え方に立つならば、憲法を蹂躪し、且つ文死刑というような無謀にして残虐な刑罰を以て臨まなければならなくなることは明らかです。この法律案のいう国の安全を害すべき目的を以てという、いわゆるその目的を立証することは極めて困難だということは、政府みずから認めている。今日憲法が黙秘権を認めているという限りは、そういうことを立証することは殆んど不可能です。そうすれば、こういう法律を厳格に施行して行こうとすれば、遂に黙秘権を否定し、憲法を否定せざるを得なくなつて行くのです。或いは憲法を破るか、この二つの間をさまよつて行くような本法律案に賛成することはできないのです。
私の反対の第六の理由はすでに亀田委員からも指摘されましたから省略いたしますが、要するに眼前に明白なる危険というものがないのに、基本的人権を制限しようとすることは、憲法違反であり、許さるべきことではありません。
第七に、日本に秘密がないのに、こういう法律案を作ろうとするのは、別個の目的があると断ぜざるを得ないのです。その別個の目的とは何かと言えば、一つには、国民全体を圧迫しようとしている。二つには、国際関係の自由なる解決というものを妨げようとしていることです。
第八に私の反対する理由は、本法案は必ず裁判所制度、裁判の正義を壊すものです。戦争中に日本が行なつた裁判で、講和条約発効後再審をしなければならないという恥ずべき法律案を我々は国会を通しました。戦争中やつた裁判で、再審しなければならなかつた裁判というのは今までに三つある。その三つは、旧軍機保護法及び国防保安法に関するものです。こういう種類の法律が如何に裁判所の正義を壊すものかということは、これを以ても明らかです。
第九に、本法律案は、何らの効果はない。先ほど申上げましたように、一松委員が指摘せられたように穴だらけです。そうしてその穴を塞ごうとすれば憲法違反になる。
最後に私は諸君にお願いしますが、どうかいわゆる防衛というふうなことよりも、外交によつて日本の安全を図るべきです。旧式な考え方によつて、兵隊に鉄砲を持たせて国を守るというようなことではないのです。国民の経済生活を安定させ、最後に国を守るものは、今日のいわゆる自衛隊のようなものじやない。国民のレジスタンスよりほかに国を守るものはないのです。国民がみずからレジスタンスに立ち上ることができるように、国民生活の安定した国家を作ることこそ本当の国の防衛です。(拍手)そうして戦争に勝つことを考えるのじやない。世界平和の確立の中に、国際緊張の緩和の中に、我が国民の幸福と安全とを図ることこそ我々の唯一の使命であると考えます。
以上が、私の本法案に対する反対の理由であります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/45
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046・河井彌八
○議長(河井彌八君) 一松定吉君。
〔一松定吉君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/46
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047・一松定吉
○一松定吉君 私は改進党を代表いたしまして、本案に対しまして賛成の意を表明するものでございます。(拍手)
先ず申上げておきたいことは、こういうような法案が必要であるかないかというようなことに関しましては、いろいろ議論の存するところでございますが、私は社会党の諸君と異なりまして、いわゆる憲法九条の解釈が違うのであります。憲法九条は正当防衛権までも放棄したのであるという解釈が、いわゆる社会党のかたの御解釈。私どもは正当防衛権の行使は憲法九条において放棄していないという信念に立つております。(「曲解だ」と呼ぶ者あり)これは曲解でも何でもない。我々人間、生きとし生きておるものは、ことごとく自分に対して侵害をやつて来る場合においては、これを防衛することは、これは生きているものの当然の権利であるのであります。(拍手)これらのことは、法律において制限すべきものでも何でもない。これは人間が、今、私がここに立つておるときに、或る人が私に打つ掛つて来たならば、私は手をこまねいてその危害を受けなければならん理由はない。当然これに向つて反抗するところの私は自然の権利を持つているのである。これは人間ばかりではなく、生きとし生けるものことごとく然り、「にわとり」でも、「鼠」でも、猫でも、「さけ」でも、魚でも、牛でも、(笑声)ことごとくそうなんです。(拍手)これはもう当然の権利だ。法律を研究する人は、このくらいなことは誰も知つているわけです。亀田君にしても、若しくは小林君にしても、当然知つている。ただ問題は、この憲法九条で、いわゆる正当防衛権若しくは軍を、装備までも、これを禁止しておるのであるか、どうであるかということが、いわゆる憲法九条の解釈の異なるところなんです。この点については、私は今申上げましたように、生きとし生けるものはことごとく、自己の身体、生命、財産を守るところの権利は、法律、憲法等に規定されなくても、当然与えられているものである。たまたま刑法の三十六条等において規定されておるのは、これは世間の誤解を招き、法律の適用について誤まりなからしめるための規定であるが、かくのごとき規定がなくても、当然自分を守るところの権利というものは、生けるものにはことごとく存在するということを前提としてです、憲法九条の、いわゆるあの戦争放棄ということは、九条を見ればわかる、「国際紛争を解決する手段として」だ。「国際紛争を解決する手段として、永久にこれを放棄する」んだ。故に、「前項の目的を達するため」には、いわゆる「陸海空軍その他の戦力は」保持しないのだ。いわゆる国際紛争を解決するためには、こういうものは要らんのだ。(「その通り」と呼ぶ者あり)但し自分の国を他国が侵害して来るような場合に、手をこまねいて侵害に任せるという規定ではない。このことが、いわゆる前項の目的を達するためにはいけないのであるが、国際紛争を解決の手段じやなくて独立国として自分の国を自分が守るということは、この憲法九条の範囲外に属するものであるという解釈を私はとつておるのであるが故に、社会党の諸君の、いわゆる戦争を放棄している九条の規定に反するからいけないという論拠には、私は賛成はできないということを前提として、私の所見を申上げてみたいのであります。(拍手)
そこで、今こういうような規定が必要であるかないか。備えあれば憂いなし。我が国は、すでに独立国となつた以上は、他国が我が国を侵害するような場合に、我々は手をこまねいて、そうして、じつとしてその侵害を受くべきものではありません。正当防衛権の行使は当然である。ただ、今、現政府の説明するように、どこまでも陸海空軍を拡大強化して、それが憲法九条の規定に反するか、反しないかということについては、ものの尺度は、国際紛争を解決する手段としてそういうことをやつているのであれば、それは憲法違反であります。そうでなくして、自分の国を守るために、いわゆる保安隊、自衛隊が必要であるという範囲内においてやるということは、憲法九条の違反ではありません。これを前提として、この問題を解決しなければならない。そこで、我が国が、即ち、アメリカによつて今我が国の秩序は保護されておつてアメリカの駐留軍がいる。この駐留軍が、日本が秩序を維持することのできる、ひとり立ちのできるようになつたならば、我々は何時でも日本を撤退するんだ。こういう故に、一日でも速かに我々は撤退してもらいたい。その撤退してもらうのには、即ち我が国を我が国の力においてこれを自衛するだけの、いわゆる自衛若しくは保安というだけの勢力を持つことは当然でなければならんのであつて、この点には社会党の諸君も恐らく反対はありますまい。それならば、いわゆる国を守るに必要なだけの勢力というものは持たなければならん。それを持つということは、これはいわゆる当然の、独立国としての権利である。又一面から言えば義務である。
こういうときに、いわゆる我が国を守るために陸軍、海軍、空軍が必要だ。その必要なときに際して、これらの必要であるところの武器、弾薬、船舶等をアメリカさんが貸して下さる(笑声)ということがMSAの協定である以上は、この協定がすでに成立した以上は、この協定によつて向うから貸与されるところの秘密というものを守るということは、アメリカのためでもありましようが、一面、我が国を守るところの兵器を、我々が秘密を保持するということは、これは又当然でなければならんのでありまするから、(拍手)この法案が必要である。かように考えて、私はこの法案に賛成いたすものでありますが、これは今、刑仁君が言われましたように、この原案は穴だらけであつたのであります。故にその穴を埋めて、そうして完全に我々が安心して守ることのできるようにしようということについて、我々委員が全力を挙げて話合いの上で、この修正案ができたのです。亀田君もこの修正案につきましては協力をせられたのです。(笑声)わかりましたか。亀田君も協力をする。(拍手)又、棚橋君も、我々も協力するのである。できるならばこれを協力しようということを話された。ところが、併しながら亀田君も棚橋君も、党議であるが故にというお話でありまするから、我々政党員としては(拍手、笑声)いわゆる党議に服することは当然であるから、我々委員としていろいろ意見を述べても、党議がそう決定した以上は党議に服さなければならんからと言つて、好意ある私に対するお話がありましたから、私は政党員として当然だから、どうかさように反対意見をお述べなさい。さように申上げたのであつて、両君には、委員としては、成るだけこれを簡明にして、穴のないようにして、これは通過せしめたいという熱意のあつたことは、(笑声、拍手)これは社会党の左派も右派もお認めになると私は考えております。こういう意味において私は、この穴を埋める、この穴を埋めるについて、皆さんと御協力を申上げまして、今日お手許に出してあるような修正案が通過したのでありまして、この修正案ならば、まあ、どうかこうか穴は埋めたのであるが、亀田君の心配するように、人権を侵害してはならないから、どうしてもこれは一つ入れなければならんという御熱意を私は買いまして、亀田君のその御好意に報いなきやならんということで、(笑声)第七条というものを設けて、そうしていわゆるこの法律を拡大して解釈して我々の人権を侵害するようなことがあつてはならない。かような趣旨を取入れたのであります。又、棚橋君は、いわゆる「不法」ということでなければ、「不当」ではいけない。これは、どうも範囲が広過ぎて人権を害するようなことに相成るから、これは是非、「不法」ということにしなきやならんという熱心なる御勧告がありましたから、私はさように取計らつておつたのでありまするが、「不法」と「不当」ということは範囲が違いまして、いわゆる「不法」よりも「不当」のほうが範囲が広い。若し「不法」ということにすれば、色仕掛でこの秘密をさぐり、或いは酒で酔つぱらわして秘密をさぐり、或いはだまして秘密をさぐるというときに、「不法」に入らないということであれば、さような悪質なものは逃れるということになれば、ただ文字にこだわつて「不法」と「不当」ということに争わなくても、やはりそれならば「不当」ということにして、かくのごとき悪質なものを包含するように取締つたがよかろう。かようなことにいたしまして、それと同時に、この「不当」ということも、やはり拡大解釈をして人権を蹂躪してはいけないということが、即ちこの亀田君の第七条の規定並びに私のつけた附帯決議がその意味を盛り込んだのでありまして、これは社会党の左派の諸君並びに右派の諸君の委員の御意見を尊重して入れたことであるということを(拍手)御了承賜わりまして私は本案に賛成するものであります。(拍手、笑声)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/47
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048・河井彌八
○議長(河井彌八君) これにて討論の通告者の発言は、全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。委員長の報告は、修正議決報告でございます。本案の表決は、記名投票を以て行います。委員長報告の通り、修正議決するごとに賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上、御投票を願います。氏名点呼を行います。議場の閉鎖を命じます。
〔議場閉鎖〕
〔参事氏名を点呼〕
〔投票執行〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/48
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049・河井彌八
○議長(河井彌八君) 投票漏れはございませんか……投票漏れないと認めます。
これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。
〔議場開鎖〕
〔参事投票を計算〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/49
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050・河井彌八
○議長(河井彌八君) 投票の結果を報告いたします。
投票総数 百八十九票
白色票 百十七票
青色票 七十二票
よつて本案は、委員会修正通り議決されました。(拍手)
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〔参照〕
賛成者(白色票)氏名 百十七名
河野 謙三君 小林 武治君
小林 政夫君 北 勝太郎君
片柳 眞吉君 上林 忠次君
楠見 義男君 柏木 庫治君
井野 碩哉君 石黒 忠篤君
加賀山之雄君 赤木 正雄君
森 八三一君 森田 義衞君
宮城タマヨ君 溝口 三郎君
三浦 辰雄君 前田 穰君
廣瀬 久忠君 後藤 文夫君
早川 愼一君 野田 俊作君
中山 福藏君 土田國太郎君
竹下 豐次君 新谷寅三郎君
横川 信夫君 深水 六郎君
木村 守江君 安井 謙君
伊能 芳雄君 青柳 秀夫君
高野 一夫君 西川彌平治君
石井 桂君 井上 清一君
関根 久藏君 川口爲之助君
吉田 萬次君 酒井 利雄君
佐藤清一郎君 森田 豊壽君
谷口弥三郎君 宮本 邦彦君
長島 銀藏君 長谷山行毅君
瀧井治三郎君 田中 啓一君
大矢半次郎君 石川 榮一君
石原幹市郎君 植竹 春彦君
岡田 信次君 松岡 平市君
大谷 瑩潤君 一松 政二君
西郷吉之助君 中川 幸平君
北村 一男君 左藤 義詮君
寺尾 豊君 中川 以良君
山縣 勝見君 吉野 信次君
重宗 雄三君 津島 壽一君
大達 茂雄君 青木 一男君
大野木秀次郎君 小滝 彬君
伊能繁次郎君 杉原 荒太君
大谷 贇雄君 重政 庸徳君
小沢久太郎君 鹿島守之助君
木内 四郎君 藤野 繁雄君
雨森 常夫君 石村 幸作君
青山 正一君 秋山俊一郎君
入交 太藏君 仁田 竹一君
松平 勇雄君 上原 正吉君
郡 祐一君 山本 米治君
小野 義夫君 平井 太郎君
川村 松助君 堀 末治君
白波瀬米吉君 島津 忠彦君
松野 鶴平君 小林 英三君
黒川 武雄君 石坂 豊一君
井上 知治君 岩沢 忠恭君
木村篤太郎君 木島 虎藏君
白川 一雄君 野本 品吉君
三浦 義男君 有馬 英二君
深川タマヱ君 武藤 常介君
寺本 広作君 井村 徳二君
最上 英子君 堀木 鎌三君
笹森 順造君 菊田 七平君
鶴見 祐輔君 一松 定吉君
苫米地義三君
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反対者(青色票)氏名 七十二名
永岡 光治君 三輪 貞治君
湯山 勇君 大和 与一君
木下 源吾君 内村 清次君
秋山 長造君 阿具根 登君
海野 三朗君 山口 重彦君
大倉 精一君 河合 義一君
岡 三郎君 亀田 得治君
小松 正雄君 近藤 信一君
竹中 勝男君 清澤 俊英君
成瀬 幡治君 小林 亦治君
小酒井義男君 佐多 忠隆君
重盛 壽治君 江田 三郎君
小林 孝平君 久保 等君
堂森 芳夫君 田畑 金光君
森崎 隆君 高田なほ子君
安部キミ子君 矢嶋 三義君
藤田 進君 岡田 宗司君
田中 一君 戸叶 武君
栗山 良夫君 吉田 法晴君
藤原 道子君 小笠原二三男君
菊川 孝夫君 山田 節男君
天田 勝正君 松本治一郎君
中田 吉雄君 三橋八次郎君
千葉 信君 羽生 三七君
野溝 勝君 三木 治朗君
山下 義信君 市川 房枝君
東 隆君 松永 義雄君
松浦 清一君 赤松 常子君
松浦 定義君 須藤 五郎君
八木 秀次君 加藤シヅエ君
鈴木 一君 加瀬 完君
千田 正君 松澤 兼人君
上條 愛一君 長谷部ひろ君
木村禧八郎君 相馬 助治君
村尾 重雄君 棚橋 小虎君
羽仁 五郎君 大山 郁夫君
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/50
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051・河井彌八
○議長(河井彌八君) 日程第七より第十二までの請願及び日程第十三より第十八までの陳情を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/51
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052・河井彌八
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。運輸委員長前田穰君。
〔前田穰君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/52
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053・前田穰
○前田穰君 只今上程されました日程第七から第十二までの請願及び第十三から第十八までの陳情につきまして、運輸委員会における審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
先ず、日程第七は、黄板紙の鉄道貨物運賃の価格に占める割合が大きいので、海外市場における競争上も下利な点が多いため、輸出用黄板紙について三割の運賃割引をしてほしいというのであります。日程第八は、従来傷痍軍人に交付されていた国鉄無賃乗車証は、終戦後廃止され今日に及んでいるが、これを戦前通りに復活交付してほしいというのであります。日程第九は、鹿児島県奄美群島の物価高は海上運賃の割高によるものであるから、その日本復帰に伴い、航距補助の措置を講じてほしいというのであります。日程第十三は、北陸地方は電力及び地下資源に恵まれ、又観光資源にも恵まれているが、輸送面で制約を受けているので、国鉄の操車場の建設、線路改良等を促進すると共に、速かに電化並びに複線化を図つてほしいというのであります。日程第十四は、戦争により長く中断されていた本州、四国間の航空路を速かに再開してほしいというのであります。
以上は委員会におきまして、現地の事情或いは当事者の事情等を十分考慮し、審議の結果、いずれも願意を妥当と認めました。
日程第十は、飯能から秩父市に至る間に鉄道を敷設し、沿線の森林資源、地下資源を開発し、併せて沿線住民の文化の向上等を図つてほしいと言うのであります。
委員会におきましては、審議の結果、一応調査する必要あるものとして願意を妥当と認めました。
日程第十一、第十五及び第十六は、いずれも十次造船計画は未だ決定されておらず、このままで推移するならば、近く全国造船所の船台は空白状態となり、総合工業たる造船業の特殊性からして、由々しい事態を生ずる慮れがあるから、速かに十次造船計画を実施してほしいというのであります。委員会におきましては慎重に審議しました結果、造船の促進は現下我が国経済の現状に鑑み、願意はおおむね妥当と認めました。
日程第十二は、元日本海運報国団財団の資産は現在接収された国有財産となつているが、この財産は、もともと船員の零細な資金の醵出にかかるものであるから、財団法人日本海員会館に無償で譲与するための法律を制定して欲しいというのであります。委員会におきましては事情を考慮し、審議の結果、願意を妥当と認めました。
日程第十七は、自家用自動車の営業類似行為は、輸送秩序を乱し弊害が多いので、現在の届出制を許可制にするか、又は警察の取締の強化をするような措置を講じて欲しいというのであります。委員会におきましては審議の結果、輸送秩序の確立の見地から、願意を妥当と認めました。
日程第十八は、新潟港西護岸一帯が、毎年雪解期より雨期にかけて埋没し、現在浚渫費の一部を地元関係業者で負担しているが、これを全額国庫負担とし、永久的な対策を樹立してほしいというのであります。委員会におきましては審議の結果、願意はおおむね妥当なものと認めました。
よつて委員会におきましては、日程第七から第十一までの請願及び第十三から第十八までの陳情は、いずれも議院の会議に付するを要し、内閣に送付するを要するものと決定し、又日程第十二の請願は、議院の会議に付するを要し、内閣に送付するを要しないものと決定いたしました。
以上、御報告申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/53
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054・河井彌八
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。これらの請願及び陳情は、委員長の報告の通り採択し、日程第十二の請願のほかは内閣に送付することに、賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/54
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055・河井彌八
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつてこれの請願及び陳情は、全会一致を以て採択し、日程第十二の請願のほかは内閣に送付することに決定いたしました。
本日の議事日程は、これにて終了いたしました。次会の議事日程は、決定次第公報を以て御通知いたします。
本日は、これにて散会いたします。
午後四時五十三分散会
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○本日の会議に付した事件
一、日程第一 公職選挙法の一部を改正する法律案
一、日程第二 中小企業安定法の一部を改正する法律案
一、日程第三 壱岐対馬電報料の件を廃止する法律案
一、日程第四 日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う公衆電気通信法等の特例に関する法律の一部を改正する法律案
一、日程第五 臘虎膃肭獣猟獲取締法の一部を改正する法律案
一、日程第六 盲学校及びろう学校への就学奨励に関する法律案
一、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案
一、日程第七乃至第十二の請願
一、日程第十三乃至第十八の陳情発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X05119540526/55
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