1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十九年六月八日(火曜日)
午前十一時四十六分開議
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議事日程 第六十二号
昭和二十九年六月八日
午前十時開議
第一 農業委員会法の一部を改正する法律案(衆議院提出)(委員長報告)
第二 農業協同組合法の一部を改正する法律案(衆議院提出)(委員長報告)
第三 蚕糸関係の風害等対策に関する請願(委員長報告)
第四 桑園等の凍霜害対策に関する請願(委員長報告)
第五 国有林野払下げ等に関する請願(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X06019540608/0
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001・河井彌八
○議長(河井彌八君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X06019540608/1
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002・河井彌八
○議長(河井彌八君) これより本日の会議を開きます。
日程第一、農業委員会法の一部を改正する法律案
日程第二、農業協同組合法の一部を改正する法律案(いずれも衆議院提出)
以上、両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X06019540608/2
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003・河井彌八
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。農林委員長片柳眞吉君。
[片柳眞吉君登壇、拍手]発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X06019540608/3
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004・片柳眞吉
○片柳眞吉君 只今議題となりました農業委員会法の一部を改正する法律案及び農業協同組合法の一部を改正する法律案につきまして、農林委員会における審査の経過及び結果を報告いたします。
先ず、農業委員会法の一部を改正する法律、案について申上げます。本法律案は、農業委員会法が制定されましてから今日まで三年有余、その間における経験に鑑み、且つは情勢の推移に即応して、その使命を達成するため、事、務の完遂に最も適当した構成をとることが肝要であるとの意図を以て、農業委員会の構成等を若干改正し、又、都道府県農業委員会を廃して、これに代つて法人たる都道府県農業会議を置くこととし、更に全国的組織として、これ又法人である全国農業会議所を設置するため提案されたものでありまして、これが内容の主な点は大要次のごとくであります。即ち第一は、市町村農業委員会の改正でありまして、その一は、選挙による委員の定数が、現在十五人となつておりますのを、十人から十五人の範囲内で市町村条例で定めることとし、同時に選挙方法を簡素化し、その二は、選任による委員を必ず置かなければならないこととし、その数は選挙による委員の実数の三分の一以内とし、農業協同組合、又は農業共済組合の推薦したその理事及び市町村議会の推薦した学識経験者を五人を限つて選任しなければならないこととし、その三は、委員の任期を現行の二年から三年に改めた等であります。
第二は、都道府県農業会議に関するものでありまして、現在の都道府県農業委員会に代つて、法人たる都道府県農業会議を設けることとしたのであります。而して都道府県農業会議は、会議員を以て構成することとなし、会議員について一定の資格を規定しているのであります。又、その業務は農地法その他の法令によつて所掌することになつている事項を行うと共に、農業及び農民に関し、意見の公表、行政庁に対する建議、その諮問の答申、啓蒙宣伝、調査研究等を行うことができることとしております。而して国は毎年度予算の範囲内において都道府県農業会議に要する一定の経費を負担し、又、その他の経費を補助することができることとなし、なお、法人税、所得税、事業税及び固定資産税等を免除することにし、その他設立、役員、監督及び運営等に関する諸般の事項を規定しております。
第三は、全国農業会議所についてでありまして、全国農業会議所は、都道府県農業会議、全国農業協同組合中央会、全国農業協同組合連合会その他農業の改良発達を図ることを目的とする団体、学識経験者等を以て構成される法人でありまして、農業及び農民に関し意見を公表し、行政庁に建議し、その諮問に答申し、又、啓蒙宣伝及び調査研究並びにこれらの業務についての都道府県農業会議の指導連絡等を行うことを主たる目的とし、加入及び脱退は自由で、全国を通じて一個とし、これに対しては免税措置並びに国庫補助をなし得ることとしております。
次は、農業協同組合法の一部を改正する法律案でありまして、農業協同組合法制定以来、今日まで六年有余、その間農業協同組合の育成発展のため、自他を通じ幾多の措置が講ぜられ、多大の努力が払われて来たのでありますが、組合の組織、事業及び経営の現況は、なお整備強化を必要とする部面が少くないものがあるとして、ここに組合の指導体制を確立すると共に、組合制度に若干の修正を加えんとするのが本法律案提案の理由でありまして、これが内容の骨子は大略次のようであります。
第一は、組合の事業についてでありまして、信用事業を行う組合においては新たに組合員の定期積金の受入れをも行うことができることとなし、而して組合員と同一の世帯に属する者及び営利を目的としない法人の貯金及び定期積金の受入れ、組合員と同一の世帯に属する者の共済事業の利用については、員外利用の制限を適用しないこととして農村の実情に即応せしめると共に組合の事業分量の拡大を図らんとするものであります。
第二は、農業協同組合の行う共済事業についてでありまして、共済事業を行う農業協同組合連合会は、他の事業を併せ行うことができないこととすると共に、事業の健全性を期するため、所定の手続を経て行政庁の承認を受けなければならないこととなし、第三は、農業協同組合の組合員たる資格の拡大でありまして、農業協同組合の地区の全部又は一部を地区とする農業協同組合及びその地区内に住所を有する農民の組織する団体も新たに組合員たる資格があるものとし、第四は、組合の管理についてでありますが、その主なるものは役員の責任の明確化でありまして、従来不明確でありました理事の組合に対する忠実義務を明文化し、且つ理事が任務を怠つた場合は、組合及び第三者に対して連帯して損害賠償の責任に任ずることとして、その責任の所在を明瞭にし、なお、役員を選出する場合、新たに選任によることができることとなし、第五は、行政庁の監督権を強化したことでありまして、行政庁の監督権は、本来、できるだけ小範囲にとどめることが望ましいのでありますが、併し組合の実情は、徒らに形式的な自主性のみを尊重することを許さないという見解を以ちまして、行政庁は、組合が必要な措置命令に従わないときは、期間を定めて、組合の業務の全部若しくは一部の停止又は役員の改選を命じ、又、共済事業を行う組合については、事業の承認の取消し或いは組合が法定の事業以外の事業を行なつたとき、或いは正当な理由がないのに成立後一年たつても、事業を開始せず、又は一年以上事業を停止したとき等において組合の解散を命ずることができることとする等、行政庁の監督権の強化を図らんとすることであり、第六は、農業協同組合中央会の設置に関するものでありまして、組合の健全な発達を図るため、法人たる都道府県農業協同組合中央会及び全国農業協同組合中央会を設け、組合の組織、事業及び経営の指導、監査、教育及び情報提供、連絡及び紛争調停、調査研究並びに行政庁に対する建議等の事業を行うこととし、国は中央会の事業費の一部を補助することができることとし、中央会の会員は、正会員と準会員として、全国中央会の正会員は、都道府県中央会、都道府県中央会の正会員たる組合、都道府県の区域を超える区域を地区とする組合であつて、前二者は当然に加入するものとし、都道府県中央会の正会員は、都道府県中央会の地区の全部又又は一部を地区とする組合であつて、加入脱退を自由とし、而してこれら中央会の設立、役員、運営、解散、監督及び非課税の特例等に関する諸般の事項を規定したものであります。
かかる原案に対しまして、衆議院において大体次のような修正が行われております。即ち第一、都道府県中央会及び全国中央会の準会員たる資格を有するものについて或る程度の制限を加えたこと、第二、都道府県中央会の総会は、会員総会を原則とし、定款で定めた場合には、総会を代議員を以て組織することができることとすること、第三、行政庁が共済事業の承認の取消の処分をし、又は組合の解散の命令をしようとするときは、あらかじめその理由を通知して、組合に弁明の機会を与えると共に、都道府県中央会或いは全国中央会の意見を聞くものとすること、第四、中央会の発する証書、帳簿については印紙税法を適用しないこととする等の修正を加えて議決し、本院に送付せられたものであります。
両法案は、曾つて世上、農業団体再編成関係法案と称されまして、すでに第十五回特別国会及び第十六回特別国会の二回に亘つて、政府から当院に予備審査のため提案され、その都度衆議院において審議未了となつている同じ題名の法律案に通ずるものでありまして、委員会におきましては、両法律案の性格からして、これを一括して審議することとなし、農業団体の問題は、農政の基本問題であり、占領下の大よその政策が再検討に迫られておりますとき、農業団体についても同様な事情にある際でありますから、審議は極めて慎重であり、政府当局及び提案者代表に対して、先ず我が国、農村及び農民の現況並びに我が国農政の基礎的理念に関する事項を初めとし、農業団体の現況及びこれが不振の原因並びにそのあり方及びその育成の方針、農業団体問題の推移その他本法律案の前提をなす諸条件、今回は議員提案となつておるが、議員提案となつたその理由等、本法律案提案の経緯、先に政府の提案による同種法律案の内容と本法案との相違点、本法律案に対する予算的裏付、農業協同組合の行う共済事業と農業共済組合における任意共済事業との関係等、諸般の事項に亘つて、熱心な質疑が行われ、審議が遂げられたのでありまして、これが詳細は、会議録によつて御了承を願いたいのであります。併しながら、問題の焦点は、我が国農業に即応した農業団体の再編成と、これに関連して農業団体の真のあり方の問題に置かれ、「この種の法律案は、先に二回に亘つて政府から国会に提出され、審議未了になつているのであるが、これら法律案と、その内容において類似しておると言われておる本法律案を、今回は議員提案として提案された理由はどこにあるか、農業団体の再編成は当面の要務であつて、抜本的な対策が必要であるにかかわらず、今若しかような法案が成立するようなことがあれば、これで一応固定し、農業団体の根本的な再編成はうやむやになる虞れはないか、本法律案に対して、政府は従来の経過に鑑みて如何なる考えを持つているか、本法案は農業協同組合の自主性を喪失せしめ、国庫補助の餌を以て、これを政府の御用機関化させるものであり、農地問題を初め農村事情が反動化しつつある際、更にこれに拍車をかけるものではないか、農業団体の真の姿をどう見るか、農業団体の真のあり方は自由な農民による完全に独立したものであるべきではないか」等、政府及び提案者の所見が質されましたところ、これに対して、「前回、政府提案のものは、農業委員会が系統的に組織され、且つ技術指導体系が多元化されること、農業団体が更に分派されること、農業協同相合について抜本的改正が必要であること等から反対であつて、農業協同組合の抜本的改正は時間を要するので、今回は当面する問題の解決を図るにとどめ、農業団体再編成というような大袈裟なことは本注案では考えていない。再編成は政府において衆智に諮つて検討すべきである。農業団体のあり方は、農民自身の盛り上る力と自己の負担によつて作り上げらるべきではあるが、これを単に傍観しておることはよろしくないのであつて、これが育成に努むべきである。農業技術指導体系のことは極めて重要な問題であつて、他日の検討を期したい。今後農業団体としては、経済行為に重点を置いて、農村、農家の発展を図る農業協同組合と農政一般を推進する団体の両建が望ましい」旨、提案者から答弁があり、又政府当局からは、「政府としても、現実の問題としてこの程度のものでも本法案の成立を望んでいる。根本的な問題はできるだけ近い機会に検討したい」旨の趣旨の答弁がなされたのであります。
かくして質疑を終り、右両法律案を一括して討論に入りましたところ、河野委員から、「政府をして、できるだけ速やかなる機会において、農業団体問題について衆智に諮つて再検討して必要な措置を講ぜしめることとなし、このため必要な修正を加えたい」旨の動議が提出され、松浦、戸叶及び佐藤各委員から、それぞれ意見或いは希望を附して賛成があり、江田及び清澤各委員から、詳細な理由を挙げて反対があり、なお、農業協同組合法の一部を改正する法律案については、佐藤委員から、次のような附帯決議、即ち、
一、農業団体の問題は、農政の根幹をなす極めて重大な問題であつて、これが取扱いは特に慎重を期さなければならない。
今回の措置は一応の考え方であると思われる。併し、なお幾多重要な問題が残されていることは審査の過程においても明らかにせられたところである。
よろしく政府は、従来の経過に鑑み、且つは本法実施後の成績に徴し、衆知に諮り、できるだけ速かなる機会において、農業団体の問題の解決に抜本的な措置を講ずべきである。
一、政府は速かに、農業協同組合が行う共済事業と農業共済組合が行う任意共済事業の両者事業について、これら両者事業の分野を調整し、農業共済組合が行う任意共済事業についても、これが健全性を確立するため適切な措置を講ずること。
一、右につき、今回農業協同組合法の改正によつて、農業協同組合が行う共済事業が、農業共済組合が行う任意共済事業より重視せられているような印象を与え、かかる結果を招来しないよう、政府において遺憾なく措置すること。
という附帯決議の動議が提出せられました。
続いて採決の結果、農業委員会法の一部を改正する法律案は、多数を以て衆議院送付案に、河野委員提案の修正を加えて、又、農業協同組合法の一部を改正する法律案は、これ又、多数を以て衆議院送付案に、河野委員提案の修正を加え、且つ佐藤委員提案の附帯決議を付して、可決すべきものと決定いたしたのであります。
右、御報告申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X06019540608/4
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005・河井彌八
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。両案全部を問題に供します。委員長の報告は、修正議決報告でございます。委員長報告の通り、修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X06019540608/5
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006・河井彌八
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて両案は、全会一致を以て、委員会修正通り議決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X06019540608/6
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007・河井彌八
○議長(河井彌八君) 日程第三より第五までの請願、これを一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X06019540608/7
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008・河井彌八
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。農林委員長片柳眞吉君。
〔片柳眞吉君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X06019540608/8
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009・片柳眞吉
○片柳眞吉君 只今議題となりました農林関係請願三件につきまして、農林委員会における審査の経過及び結果を報告いたします。
右三件の内容は、表題の示すところによつて御了承願えることと考えますが、いずれも、趣旨妥当と認められますから、院議に付し、内閣に送付して、速かにその実現を期せしむべきものと決定いたしました。
右、御報告いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X06019540608/9
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010・河井彌八
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。これらの請願は、委員長報告の通り採択し、内閣に送付することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X06019540608/10
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011・河井彌八
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて、これらの請願は、全会一致を以て採択し、内閣に送付することに決定いたしました。
本日の議事日程は、これにて終了いたしました。次会の議事日程は、決定次第公報を以て御通知いたします。
本日は、これにて散会いたします。
午後零時十二分散会
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○本日の会議に付した事件
一、日程第一 農業委員会法の一部を改正する法律案
一、日程第二 農業協同組合法の一部を改正する法律案
一、日程第三乃至第五の請願発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101915254X06019540608/11
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