1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十九年十二月二十日(月曜日)
午前十時四十七分開議
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議事日程 第三号
昭和二十九年十二月二十日
午前十時開議
第一 日本国とビルマ連邦との間の平和条約の批准について承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)
第二 日本国とビルマ連邦との間の賠償及び経済協力に関する協定の締結について承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)
第三 恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(衆議院提出)(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102115254X00319541220/0
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001・河井彌八
○議長(河井彌八君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102115254X00319541220/1
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002・河井彌八
○議長(河井彌八君) これより本日の会議を開きます。
去る十五日、内閣総理大臣から、国土総合開発審議会委員石川清一君の辞任に伴う後任者を指名されたいとの申出がございました。
つきましては、この際、日程に追加して、国土総合開発審議会委員の選挙を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102115254X00319541220/2
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003・河井彌八
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102115254X00319541220/3
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004・寺本廣作
○寺本広作君 国土総合開発審議会委員の選挙は、成規の手続を省略し、議長において指名せられんことの動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102115254X00319541220/4
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005・松岡平市
○松岡平市君 私は、只今の寺本君の動議に賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102115254X00319541220/5
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006・河井彌八
○議長(河井彌八君) 寺本君の動議に御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102115254X00319541220/6
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007・河井彌八
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつて議長は、国土総合開発審議会委員に菊田七平君を指名いたします。(拍手)
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102115254X00319541220/7
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008・河井彌八
○議長(河井彌八君) 日程第一、日本国とビルマ連邦との間の平和条約の批准について承認を求めるの件。
日程第二、日本国とビルマ連邦との間の賠償及び経済協力に関する協定の締結について承認を求めるの件(いずれも衆議院送付)
以上、両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102115254X00319541220/8
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009・河井彌八
○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。外務委員長石黒忠篤君。
〔石黒忠篤君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102115254X00319541220/9
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010・石黒忠篤
○石黒忠篤君 只今議題となりました日本国とビマル連邦との間の平和条約の批准について承認を求めるの件並びに日本国とビルマ連邦との間の賠償及び経済協力に関する協定の締結について承認を求めるの件につきまして、外務委員会における審議の経過と結果を御報告いたします。
政府の説明によりますと、我が政府は、かねてサンフランシスコ平和条約の当事国でないビルマ連邦との間におきまして正式の国交を開くために種々努力を重ねて参りましたが、前内閣の時代、即ち本年八月、ウ・チヨウ・ニエン氏を団長とするビルマ親善使節団の来朝を機会に、両国間の最大の懸案である賠償問題について先方と交渉を重ねました。その結果円満妥結を見るに至り、九月二十五日に両国間平和条約中の賠償関係条項及び両国間賠償経済協力協定の仮調印が行われたのであります。次いでラングーンで両国間平和条約に関する交渉が行われまして、これ又円満妥結を見るに至りましたので、十一月五日に至つて、この両国間の平和条約と賠償及び経済協力に関する協定がラングーンにおいて正式に調印せられるに至りました。よつて政府は、この条約を批准することといたしたく、又この協定の締結について国会の承認を求めるために本件を提出したのであります。
然るところ、ビルマ側におきましては、本条約の早期実施を希望いたして、明年二月に同国国会にこれを提出し、その承認を求めることになつておるのであります。若し右期日までに日本側の批准が済んでいないと、先方も我がほうの態度の決定を待つて審議を行うことと相成ることと存ぜられるので、従つて本条約の批准及び実施は、数カ月の遅延を来たすことを免れないという情勢にあるのであります。かくのごときことは、両国の正常国交関係の回復の一日も速かならんことを希望する我がほうにとりまして、大いなる損失と申さなければならないので、あえて急速に国会の承認を要請することとなつた次第であるということでございます。
さて、本条約及び協定の内容を要約して述べますというと、第一に平和条約について見ますと、本文十カ条より成り、その実質的眼目とするものは賠償及び経済協力に関する規定でありまして、即ち第五条の第一項(a)に、我が国はビルマに対し今後十年間、先ず賠償として年平均二千万ドルにひとしい七十二億円の価値を有する日本人の役務及び日本の生産物を供与すること。次に経済協力として年平均五百万ドルにひとしい十八億円の価値に達する日本人の役務及び日本の生産物を同国の使用に供すること。更に他のすべての賠償請求国との賠償が最終的に解決したときに公正、且つ衡平なる待遇に対するビルマの要求を再検討するという旨を規定しております。而してこれ以外の諸条項は、先に締結せられましたインドとの平和条約とほぼ同じ内容を有しており、即ち一には、両国間の平和及び友好関係の確立。二、戦前の二国間の条約の復活。三、通商関係、漁業等の協定に関する交渉の開始。四、ビルマ政府の在ビルマ日本財産の処分。五、在日、ビルマ財産の返還及び補償。六、戦前の債務が戦争状態の存在により影響されないこと。七、我が国の対ビルマ戦争請求権の放棄。八、紛争解決の手続等に関して規定を設けており、なお本条約は批准書交換の日において効力を発生する旨を定めております。
次に、賠償及び経済協力に関する協定について見ますると、この協定は、右平和条約中の賠償関係条項の実施に関するものでありまして、本文七カ条、附属書及び交換公文から成り立つております。その第一には、経済協力は、双方の共同事業の形式で行われること、役務及び生産物は、附属書に掲げられた事業のために供されること。二、ビルマは、賠償及び経済協定の実施のため必要な措置をとること。三、共同事業におけるビルマ側の持分又は所有株式の割合は、原則として六〇%より少くないものとすること、及び日本人の持分等に対してビルマ政府が行うことあるべき強制収用のこと。四、協議勧告機関として合同委員会を設置すること。五、本協定の実施細目を決定すること。六、紛争解決のためには仲裁裁判所を設置すること等に関して規定をいたしておるのでございます。而して本協定は、各当事国が国内法上承認した旨を通知する公文交換の日において効力を生ずることを定めております。
次に交換公文は、日本国政府が年平均二百万ドルにひとしい七億二千万円の価値に達する日本人の役務及び日本の生産物を十年間ビルマ政府に貸付ける用意がある旨を明らかにしておるのであります。
以上が、付託せられました本件の概要であります。
委員会はこれに関しまして、十二月十七日より三回に亘つて審議を行いました。委員会におきましては重光外務大臣、一萬田大蔵大臣、その他政府委員との間に極めて熱心な質疑が行われましたのであります。時局柄、現下外務関係のことは国内的にも国際的にも極めて重大でありまして、且つ微妙なる政情の上にありまするために、委員会におきましても付託せられた案件のみならず、現下の国際情勢、新内閣の外交方針等に関して幾多の重要な問答が交わされ、頗る熱心な審議が行われました。これは正にしかあるべきことであると存じます。諸君にもお知らせいたしたいことでありますが、委細、速記録によつて御承知を願うことといたして省略しまして、ここには委員会に付託された条約及び協定に関して委員会において行われた主なる質疑応答の要点を次に報告いたしたいと思います。
第一に、「賠償問題は、国交再開、通商関係増進等の大局的見地より、できるだけ速かに解決する必要があるが、その交渉に当つては徒らに金額にこだわるために解決が遅延するようなことはないか」という質問に対しまして、「趣旨は極めて同感である。この条約と協定は、前内閣よりの貴重なる遺産である。一般的に申して賠償の解決は急がなければならないと考える。このために大蔵大臣、通産大臣、経済審議庁長官等の関係閣僚と協議をして賠償方針を決定するという仕組にする考えであつて、閣僚の了解をも得ておる」という答弁がありました。
第二に、「ビルマにつき、賠償二億ドル、経済協力五千万ドルに妥結した経緯は如何なる経緯をたどつたのか。又、フイリピン、インドネシア、仏印三国に対する賠償金額の目安はどうであるか」という質問に対しまして、「ビルマについては、最初日本側は一億ドル、ビルマは四億ドルという線から出発をいたして交渉を重ねた結果、双方が歩み寄つてこの条約に落着をいたした。他の求償国の分については、岡崎前外相が昨年東南アジア諸国訪問の際に、フイリピンに二億五千万ドル、インドネシアに一億二千五百万ドルの数字を提示いたしたことはある。今後の交渉に当つては、経済財政等全局的に考えて有利に進めて行きたいと思う。将来どれだけの金額を目当てにやつて行くか、正確な数字は考えることが極めて困難である。交渉によつてきめるものであり、それで進むよりいたし方がないと思う」という答弁がありました。
次に、「仮にフイリピンに対する賠償額を大野・ガルシア協定の線に従い、二十年間に四億ドルといたして、インドネシアと仏印三国についてはビルマの例に従い、これと同額になるとすれば、合計年額六千万ドル即ち二百二十億円の多額の財政負担がビルマの上に加わることになる。而して賠償金額は根本問題である日本の賠償能力を基礎として決定せらるべきものであるが、我が国には具体的にどの程度の賠償能力があると見ておるのか。賠償の予算措置は又如何にするのか。」こういう質問に対しまして、「我が国の経済力及び財政状態からすると、賠償の支払は頗る困難な状態にある。賠償能力を具体的に想定をいたして数字に示すことはむつかしいが、その検討は必要と思う。国際収支等の観点よりも考えなければならない。賠償金額の予算措置としては平和回復善後処理費百五十億円のうちから支出することとなつておるが、昭和三十年度予算における具体的数字はまだきめておらない」という答弁がございました。「賠償及び経済協力の実施に関連して、ビルマ側の計画及び附属書列記の項目との関係は如何であるか。又、日本から帝国石油の者がビルマに行つておるが、石油事業はこの協定との連関があるのか」という質問に対しまして、「ビルマの福祉国家建設計画、いわゆるビダウダ計画は約十五億ドルの資金によつて開発計画を実行せんとするものであつて、そのうち五億ドルは外貨を必要とする趣であり、従つて我が方の賠償と経済協力による計二億五千万ドルはこの計画の実施に極めて役立つ次第である。次に、協定附属書列記の項目中に肥料工場、砂糖工場建設等のごとき利益を上げ得るものは、主として経済協力による資金を使用いたさしめ、水力発電所、製鉄所の建設等国営事業となるもの等については専ら賠償の金額が用いられるものと思われる。ビルマ石油事業には現在英国との合弁事業のものがあるが、このほか新たに油田開発の見込もあるようであり、その場合は附属書第十九項に従つてなし得るわけである。なお、合弁事業の実施計画については、今月初旬彼の地に赴いた稲垣使節団が、目下実地調査中であり、近く先方よりも案が提出せられるはずである」との答弁がございました。
次に、「条約第五条第一項(b)の規定によつて没収せられる在ビルマの日本財産の総領はどのくらいであるか。この没収財産額は賠償中に繰入れることはできないのか。又協定第三条に連関をいたして、合弁事業における我が方の持分等が強制収用されて賠償に繰入れられるようなことはあるのかないのか。この規定は私有財産権の侵害であるが、これに対する国内での補償はどうなるのか」という質問に対しまして、「在ビルマ日本財産の全貌は、正確にはつかめていないが、その額は極めて少い。没収財産は賠償とは別であつて、その中に繰入れられない。これはサンフランシスコ平和条約に定められておる原則である。又、日本人の持分等が強制収用されて賠償に繰入れられるようなことはない。没収財産に対する補償については、国家が十分に考慮すべきことは勿論であつて、大蔵省では目下これについて検討中である」という答弁がありました。
次に、「本協定実施により、ビルマとの貿易はどの程度増進されると見ておるのか、賠償が通常貿易の中に食い込むようなことはないか」との質問に対して、「ビルマとの貿易は昨年度の輸出三千二百万ドル、輸入四千八百万ドルに上つて、昨年十月に両国間に貿易取極ができたような次第である。又、ビルマが英連邦との特恵関税を撤廃した関係もあり、今後我が国との貿易はますます増進するものと予想せられる。賠償実施に際しては、その都度先方とよく話合いをいたして、賠償が通常貿易を害することのないようにやつて参りたい」という答弁がありました。
このほか、「賠償実施の方式及び機構はどうなつているのか。民間側の参加についてはどう考えているか。又日本の業者が競争意識から、先方との契約において出血受註をしたり、役務について日本人技術者の給料を格段に安くするようなことのないように注意が肝要だと存ずるが、政府の考えは如何であるか。又条約、協定に規定のない事項で、日緬双方から挿入することを希望したものはあるのかないのか。どういうことがあるか。防衛問題、文化問題は両国の間で如何に取扱つたか」というような質問がありました。これに対しまして、「賠償実施の機構については、先ず賠償連絡部を設けて、将来必要に応じて強化して行く考えである。賠償庁のごときものを必要とするに至るかも知れないが、差当りは現在の機関でやつて行くつもりである。民間との関係については審議機関を設けて、その意見を徴して円満に実施を図りたい。業者の不正競争を防ぐためには、業者の契約について政府が最終的に承認を与えることといたして、価格については先ずビルマ側とも話合つて行くようなことといたしたい。技術者の給料については、A、B、C級というような表を作つて、あらかじめ基準をきめて相当に維持して行きたい。又、この条約、協定に日本側が挿入したいと希望していたものは、日印条約第二条(b)の項にあるような最恵国待遇に関する規定を挿入したいと考えておつたが、先方は、いずれの国に対しても最恵国待遇を与えていないとの理由でこれに反対をして、遂に入れなかつた。併し実際上、我が国に不利益をもたらすこともないわけであつて、挿入しないことに同意をいたした。防衛問題、文化問題は、交渉の際に論議に上らなかつた。」こういう答弁がありました。
更に、「この条約と協定には、日本文と英文のいずれを正文とするかの規定がないが、どういうわけか」という質問に対しまして、「英語は双方にとつて第三国語であるから、英語によるものだけが正文であるが、国会においては日本語のものによつて審議を仰ぐことになつている」という答弁がありました。
なお、質疑応答の詳細につきましては、速記録を御参照頂きたいと存ずるのであります。
熱心なる審議は、非常な熱心を以て続けられまして、十九日日曜の夜にまで至りましたが、なお質疑は綿々として尽きず(笑声)、応答も又、諄々として倦むところを知らんように察せられたのであります。且つ我が国の財政経済上、政策法制上、なお細かに審議を及ぼすべきこともあるように存ぜられましたが、それは本件のみに限つたものでなく、広く根本の問題に触れておるものと思われましたので、私は委員会運営上、この審議は、この上更に続けて行くことは許されぬ事情の下にあると考えまして、委員長といたしまして、左の発言をいたしたのであります。
「付託せられました案件は、我が国初めての賠償に関するものであつて、極めて重大であると同時に、極めて緊急を要することになつております。これについては、前内閣の時代において政府が全力を尽してやり上げたところであり、且つ重光新外相は、極めて公明にして含蓄のある襟度を以て、我々の前でこれを前内閣の貴重なる遺産であると考えておると申されております。これは条約及び協定の内容は勿論、形式等においても別段改むべき欠陥を持たない良いものであると認められたことであるから、我々委員会は、それらの事実に信頼をいたして、この程度で審議を終了することにしては如何か」と委員会に諮りましたところ、委員会の承認がありましたので、質疑を打切りまして、討論に入つた次第であります。
討論に入りまして、小瀧委員は、「自由党を代表して本件に賛成する。本条約は、前内閣時代の努力の賜物である。(笑声)特にウ・チヨウ・ニエンビルマ代表のステーツマン・シツプに対して、敬意を表するものである。本件については議論の余地もあるが、これが成立は、大局的見地より、我が国にとつて一歩も二歩も外交関係を前進せしめるものであるから、賛成である。今後この条約を基礎として両国の親善関係が増進せられ、両国に有利なる発展を遂げ、且つ他の求償国との間においても、これ以上立派なるものができ上ることを期待をいたしてやまない。本条約、協定は基礎的なものであるから、今後両国間に通商条約、漁業協定、文化協定等、各種の協定が作られ、経済協力が円満に行われ、業者の間に不正の競争などの行われないように、政府においても努力せられんことを要望する」と述べられました。緑風会の高橋委員は、「本件に賛成である。ビルマが永年の荊の道を辿つて、先年独立の宿願を遂げたことに対して先ず祝意を表し、同国がフイリピン、インドネシア等に先立つて我が国に対して戦争の終結を宣言し、今回又、条約の成立を見たことに対して、ビルマ政府と国民に対して謝意を表するものである。賠償額は、ビルマから見れば、その蒙つた損害に比べると少額に過ぎるかも知れないが、戦敗国日本にとつては、非常に大きな負担である。併し我が国といたしては、これは当然負うべきものであり、これによつて平和がかち得られるわけであるから賛成である。又これによつて我が国は経済協力を将来発展せしめ、国力を伸長せしむる好個の機会を与えられたものでもあるから、この条約の精神を正しく生かして行きたいと思う。現外務当局としても貴重な遺産としてよくこれを活用せられんことを念願する」と述べられました。次に羽生委員は、「社会党第四控室を代表して賛成する。不幸な戦争の後、国交未回復の国と国交を回復することは当然であるが、本件は、軍事的なものであるならば反対をするが、単純に国交の回復が目的であるから、全幅の賛意を表する。且つこれを機会に速かな中ソその他の国との国交回復を希望する。協定に関しては、ビルマとしては賠償金額について不満もあろうが、ウ・チヨウ・ニエン代表の来朝によつて長い間討議をされたもので、その合意の結果によるものであるから妥当と考える。ただ協定実施に当つて、当局において熱意を持つて遺漏なきように配慮ありたい。又この協定の後には、他の求償国との問題が控えており、日本の国力や支払能力を考えれば、幾多の問題が存しないとも言えないのであるから、これらをよく勘案して賠償問題について万全の措置を講ぜられたい」と述べられました。曾祢委員は、「社会党第二控室を代表をいたし賛成する。その理由は、第一に、日本の自主独立と経済自立の完成のためには国交未回復国、特にアジアの新独立国との国交樹立と経済提携が必要である。この意味で賠償問題のさきがけとしてビルマとの間に、解決に成功したことは慶賀すべきことである。第二に、この協定成立には、ビルマの政局が安定し、同国国民が復興の希望に燃えている実情がこれに幸いし、ウ・チヨウ・ニエン外相のステーツマン・シツプに負うところが多く、且つビルマが社会主義の実験をしている国であるということがこれに大きな役割を演じたと考える。ビルマが植民地的覊絆を脱するために敢然として闘い、赤色の脅威にも耐え得べき社会秩序を求めて立派にやつているのに対して、我が国の賠償はその社会福祉に貢献できるのであるから、我が国にとつてその負担は大きいのであるけれども、我が国民も忍んでこれをやつて行つてもらえることと考える。なお賠償問題は、我が国の全支払能力と連関するものが深いのであるから、賠償のみを切離して考えずに、我が国の民生、防衛等の諸問題との関係について、はつきりした見通しをつけて十分勘案して予算上に組入れるように政府に要望する」旨を述べられました。次いで民主党の杉原委員は、「本件に賛成である。本条約、協定は、我が国の対外関係打開の上において重要な意義を持つものであり、内容もおおむね妥当である。本件の打衝に当つた前内閣の努力に敬意を表し、且つビルマ政府の努力を多とするものである」と述べられました。最後に、無所属クラブの大山委員は、「賠償協定には進んで賛意を表するにやぶさかでない。ただ条約については、サンフランシスコ条約に反対の立場であるので、同条約との連関においてビルマとの平和条約については、なお疑義を持つておつて、只今如何なる態度をとるべきかということについて決定をしておらないで甚だ苦心をしている。故にその条約に関しては棄権をいたしたい。」こう述べられました。
かくて討論を終結いたしまして、採決を行いましたところ、委員会は、全会一致を以て両案はそれぞれ承認を与えることに決定をいたしました。
右、御報告を申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102115254X00319541220/10
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011・河井彌八
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより両件の採決をいたします。
先ず、日本国とビルマ連邦との間の平和条約の批准について承認を求めるの件全部を問題に供します。委員長報告の通り、本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102115254X00319541220/11
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012・河井彌八
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて本件は、全会一致を以て承認することに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102115254X00319541220/12
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013・河井彌八
○議長(河井彌八君) 次に、日本国とビルマ連邦との間の賠償及び経済協力に関する協定の締結について承認を求めるの件全部を問題に供します。委員長報告の通り、本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102115254X00319541220/13
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014・河井彌八
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて本件は、全会一致を以て承認することに決しました。(拍手)
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102115254X00319541220/14
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015・河井彌八
○議長(河井彌八君) 日程第三、恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(衆議院提出)を議題といたします。
先ず委員長の報告を求めます。内閣委員長荒木正三郎君。
〔荒木正三郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102115254X00319541220/15
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016・荒木正三郎
○荒木正三郎君 只今議題となりました恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審議の経過並びに結果について御報告いたします。
本法律案は、衆議院内閣委員長の発議による法律案であります。先ずこの法律案の発議された理由と内容につきまして御説明いたします。
さきに公務員恩給に関する在職年数の加算制度は原則として廃止されたのでありますが、蒸気機関車乗務員等のごとく、特に不健康且つ危険な業務に従事する職員の加算制度については、別途措置せられることになつておりましたので、それまでの間、なおこれらの人々については加算を認めることに、第十九回国会において恩給法の改正が行われたのでありますが、昭和三十年三月三十一日を以てその期間が満了いたしますので、更に一年その期間を延長し、以て移行による空白を補うための措置をいたそうとするのが、本案の要旨であります。
内閣委員会は、本月十八日委員会を開きまして、本法律案の審議に当つたのでありますが、本法律案が議員提出法律案の形をとり、政府提出法律案の形をとらなかつた理由如何。又、不健康業務に従事する一般公務員の恩給加算について、従来暫定措置をたびたび繰返しておるが、この暫定措置と密接な関係のある不健康業務に従事する各種公共企業体の共済組合法案の成立の見通し等の問題について、質疑応答がありましたが、他に特に質問もなく、ついで討論に入りましたところ、討論省略の動議が提出され、この動議が成立いたしましたので、直ちに本法律案についで採決をいたしました。その結果本法律案は、全会一致を以て可決すべきものと議決せられました。
以上で報告を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102115254X00319541220/16
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017・河井彌八
○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102115254X00319541220/17
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018・河井彌八
○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて本案は、全会一致を以て可決せられました。
本日の議事日程は、これにて終了いたしました。次会の議事日程は、決定次第公報を以て御通知いたします。
本日は、これにて散会いたします。
午前十一時三十二分散会
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○本日の会議に付した事件
一、国土総合開発審査会委員の選挙
一、日程第一 日本国とビルマ連邦との間の平和条約の批准について承認を求めるの件
一、日程第二 日本国とビルマ連邦との間の賠償金及び経済協力に関する協定の締結について承認を求めるの件
一、日程第三 恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102115254X00319541220/18
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