1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年六月一日(水曜日)
午後一時三十七分開議
出席委員
委員長 原 健三郎君
理事 有田 喜一君 理事 木村 俊夫君
理事 山本 友一君 理事 青野 武一君
理事 中居英太郎君
岡崎 英城君 佐伯 宗義君
中嶋 太郎君 濱野 清吾君
堀内 一雄君 真鍋 儀十君
關谷 勝利君 徳安 實藏君
畠山 鶴吉君 井岡 大治君
栗原 俊夫君 下平 正一君
正木 清君 池田 禎治君
大西 正道君 小山 亮君
出席国務大臣
運 輸 大 臣 三木 武夫君
出席政府委員
運輸政務次官 河野 金昇君
運輸事務官
(自動車局長) 真田 登君
委員外の出席者
専 門 員 堤 正威君
専 門 員 志鎌 一之君
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五月三十一日
戦傷病者に国鉄無賃乗車復活に関する請願(野
依秀市君紹介)(第一三九七号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
自動車損害賠償保障法案(内閣提出第八六号)
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001・原健三郎
○原委員長 これより運輸委員会を開会いたします。
最初に自動車損害賠償保障法案(内閣提出第八六号)を議題といたします。
初めに運輸省当局に説明を求めます。運輸省自動車局長真田登君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/1
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002・真田登
○真田政府委員 自動車損害賠償法案の概要について御説明いたします。
最近におきまする自動車運送の発達には、まことに目ざましいものがあります。その両数についてみましても、終戦の年には約十四万二千両にまで激減したものが、わずか十年後の二月末におきましては約百三十四万両に達し、戦前最高の昭和十三年の約二十二万両に比べまして、六倍を越えようという盛況を示すに至っておりますが、今後ともこの勢いはいささかも衰えるきざしを見せようといたしておりません。このような膨大な両数が、今日まのあたりにごらんになる通りの自動車交通の輻湊ぶりをもたらすに至ったのであります。
しかしながらこれとともに、諸般の事故防止対策の強化徹底にもかかわらず、自動車事故はおおむね車両数の増加に比例して激増の一途をたどっておりまして、まことに憂慮すべき事態に至っているのであります。これを自動車事故件数についてみますと、二十八年は六万二千百九件、二十九年は七万四千五百六十件で、戦前最高の両数をこえて三十一万両に達しました。二十四年の実績に比べまして、二十八年が三・一倍、二十九年が三・七倍という増加率を示しており、また死傷者数についてみますと、二十八年が五万八千九百十七人、二十九年が約七万二千五百人で、二十四年の実績に比べまして、それぞれ三・二倍、四倍という増加率を示しているのであります。すなわち昨今では、昼夜を通じまして一時間に約八件の事故が発生し、これによりまして約八人の犠牲者を生むに至っているのであります。
自動車事故の対策といたしましては、一般国民における交通道徳の高揚、警察における交通取締りの強化、運輸省における自動車検査の充実等、その防止対策の強化徹底が何よりも必要であることは、今さら申し上げるまでもありません。私ども関係者といたしましても、今後とも事故防止対策の強化徹底によりまして、悲惨な事故を未然に防止するよう努力する所存であります。しかしながら一方におきまして、まことに遺憾なことでありますが、ある程度の自動車事故発生は、不可避な現象を呈していることを否定することもできないのであります。産業革命によってもたらされた機械文明の高度の産物ともいえます自動車が、生産社会はもとより、私どもの消費生活にまでも深く浸透して参りました昨今におきましては、その高速度化、大型化及び輻湊化によりまして、国民のすべてが日夜自動車に接し、その危険にさらされているからであります。
諸外国におきまして、自動車事故による被害者を救済するため、自動車損害賠償保障制度がつとに確立を見ましたのも、このような事情のもとにでありました。最初の立法例は一九〇八年にオーストリアにおいて見られ、その後一九三〇年代にかけて各国において成立を見るに至ったのであります。本法案は、諸外国の立法例にならいまして、自動車損害保障制度を確立し、不可避的な自動車事故による被害者の保護に万全を期そうこするものでありまして、去る第十六国会におきまして改正されました道路運送法の第百二十五条の二の規定の趣旨にも沿うものであります。
以下、本法案の要点について御説明いたしたいと存じます。
本法案は、七章九十一カ条及び附則から構成されておりますが、これを大別いたしますと、第二章にあります賠償責任を適正にするための規定と、第三章から第五章までにあります賠償能力を確保するための規定との二つになるのであります。
第一章は、本法案の目的と定義とを規定するものであります。
第一条の規定は、本法案の目的を規定しております。道路運送法第百二十五条の二の趣旨に従い、自動車による人身事故における損害賠償を保障する制度を確立することによりまして、被害者の保護をはかるものであることを宣明するものでありますが、同時に本制度が反射的効果として、自動車所有者側の経理的基礎の安定をもたらし、自動車運送の健全な発達にも資するものなることをも規定するものであります。なお本法案におきましては人身事故のみを対象とし、物的事故を対象から除外しておりますのは、制度の漸進的実施を期したものであります。
第二条の規定は、本法案における用語の定義を規定するものであります。第一項は、本法案の対象とする自動車が、道路運送車両法による自動車であり、スクーターまでも含まれることを規定しており、第二項は、本法案中に使用される運行とは、道路運送車両法による運行と異なり、道路の内外を問わないことを明示しております。第三項の保有者とは、保険契約に関する規定において用いられる用語でありますが、第四項の運転者とか正当な権原がなくて自動車を使用する者と対照的な概念でありまして、自動車の所有者や賃借人が通常これに該当するものであります。第四項の運転者とは、保有者に対照した概念であります。助手を含みますが、保有者みずからが運転する場合は含みません。
第二章は、自動車による人身事故の場合におきまして、保有者等自己のために自動車を運行の用に供する者の損害賠償責任を適正にいたしますために、民法の特例を設けるものであります。現行民法によりますと、被害者は故意または過失が加害者側にあることを自分の方で証明しませんと、第七百九条による損害賠償を受けられないことになっておりますが、さきにも触れましたように自動車事故の発生が不可避的なものと観念せざるを得なくなった現状におきましては、被害者の保護をはかるために必ずしも公平なものといえなくなって参ったのであります。ここにおきまして自動車事故と同じく、高度の機械文明が不可避的にもたらすものといえます工場災害および鉱害に対しつとに採用されております無過失責任主義にならいまして、自動車事故に対しても、その賠償責任を無過失責任主義へ接近させることにしたのであります。
第三条は、これを規定したものでありまして、保有者その他自己のために自動車を運行の用に供する者は、人身事故に対して、自己及び運転者に故意過失がなく、同時に被害者または第三者に故意過失があったことを証明できない限り、賠償責任を負うことにしているのであります。本条によりまして挙証責任及び責任の主体に関しまして、民法の特例が設けられるわけでありますが、最近における判例を見ましても、訴訟法的にはすでにこのような線に近づいている模様であります。
自己のために自動車を運行の用に供する者の損害賠償責任につきましては、第三条の特例のほかは、すべて民法の規定によるのでありまして、慰謝料に関する第七百十条及び第七百十一条、共同不法行為に関する第七百十九条等、すべて適用されることになります。第四条は、この旨を規定しております。なお運転者の損害賠償責任につきましては、現行通り民法の規定によることにいたしました。
第三章は、自動車側に常時賠償能力を確保するための措置の骨幹をなす強制保険制度につきまして、主として大陸法系の例にならい規定するものであります。第一節は、自動車損害賠償責任保険の締結強制について規定しております。
第五条は、強制保険の実体規定でありまして、自動車はこの法案で定める責任保険に付保されているものでありませんと、運行の用に供してはならないことにしております。ただし第十条にあります通り、国、会社、都道府県等の自動車に対しましては、賠償能力の点から法律において適用を除外いたしますし、また政令により国際慣習から外交官等に対しても適用しないことにいたしております。
第六条は、強制保険の保険者を定めるものでありまして、すでに任意の自動車損害賠償責任保険を運営している民間保険会社及び外国保険事業者にこれを行わせようとするものであります。なお本保険の事業運営につきましては、第三節において厳重な監督規定が置かれております。
第七条から第九条までの規定は、強制保険制度の励行をはかるための措置であります。これによりまして原則として自動車は今後、道路運送車両法による自動車検査証と道路交通取締法による運転免許証とのほかに、本法案による自動車損害賠償責任保険証明書をも備えつけなければ運行の用に供してはならないことになり、また道路運送車両法による自動車登録、検査その他の処分を受けるについても、同証明書の提示が必要となるのであります。
第二節は、強制保険の契約についての商法の特例を規定するものであります。
第十一条は、商法第六百二十九条の規定を本保険について具体化したものでありまして、第三条の規定による賠償責任の発生を保険事故とし、保有者及びこれと不真正連帯債務の関係にある運転者を被保険者にする旨を明記しております。
本保険の保険金額は、第十三条の政令で業態別、車種別に定めますが、たいだまのところ一人当り死者三十万円、重傷者十万円、軽傷者三万円、一事故当り三十万円ないし百万円という試案を持っております。
第十四条は、商法第六百四十一条の特則であります。現行法によりますと、保険契約者または被保険者の悪意による場合はもとより、重大な過失による損害についても保険会社は免責になるのでありますが、これでは被害者の保護に万全を期せられませんので、保険の範囲外であります悪意の場合についてのみ免責とし、重大な過失による場合その他いかなる場合にも免責を認めないこととしたのであります。これによりまして、現行のように保険約款に各種の免責条項を設けることも認められなくなるわけであります。なお悪意による場合にも、あとで申し上げます通り別途被害者の救済策を講じてあります。
第十五条及び第十六条は、賠償責任が確定した場合におきまして、被害者に迅速確実に賠償が行われるようにするための規定であります。第十五条の規定によれば、被保険者は被害者に賠償の支払いをしなければ保険金の支払いを請求することができないこととなり、第十六条の規定によれば、被害者は被保険者に対してでなくても直接保険会社に対して賠償を請求する道が開かれるのであります。この場合におきましては、保険契約者または被保険者の悪意による場合にも支払われることにいたしておりますが、保険としては免責事項に属しますので、政府に対して補償を請求することができることにしております。
第十七条は、賠償責任がいまだ確定しない場合におきまして、被害者が当座の出費に充てるため、賠償額の一部を保険会社から仮渡金として支払われる道を開くものであります。仮渡金の額は、ただいまのところ保険金額の四割ないし一割を予定しております。なお仮渡金を支払った後におきまして、保有者に賠償責任が発生しなかったことが判明しましたときは、保険事故には該当しませんので、悪意による場合と同様に、政府に対して補償を請求することができることにいたしております。
第十八条は、被害者の保険会社に対する賠償の直接請求権及び仮渡金請求権が、社会保険における保険金請求権にも比すべき地位にありますので、これに差し押え禁止の措置を講ずるものであります。
第二十条は、商法第六百四十四条に規定されております契約締結時において申込者が告知すべき重要な事実等の内容を、簡明に法定するものでありまして、この告知義務違反による解除の要件を明確にするものであります。
第二十一条及び第二十二条は、保険責任に空白が生ずることを防止するための規定であります。第二十一条は、商法第六百四十五条の特則でありまして、現行法によりますと、ハイヤー、タクシーの車を自家用車と偽わったりして契約締結時における告知義務に違反したときには、将来にわたって保険会社は解約することができ、解除前に事故が発生しても免責にされておりますが、これでは被害者の保護に欠けることにもなりますので、この場合においても損害を填補することにするものであります。
第二十二条は、商法第六百五十六条及び第六百五十七条の特則でありまして、現行法によりますと、自家用車がハイヤー、タクシーに変ったりして保険期間中に危険が増加または変更したときには、保険契約が効力を失い、または保険会社が契約を解除することができることになっておりますが、これではやはり被害者の保護に欠けることにもなりますので、本保険については、このような場合には当然に新たな危険に対応する保険契約に変更されたものとみなすものであります。
以上が本保険契約についての商法の特例でありますが、本保険も責任保険の範疇に属しますので、第二十三条によりまして、このほかの事項について商法のうち損害保険の総則を適用することにいたしております。
第三節は、強制保険の保険事業について、保険業法、損害保険料率算定団体に関する法律及び外国保険事業者に関する法律の特例を規定するものであります。
第二十四条は、保険会社に対し本保険の引受義務を課するものでありまして、自動車側に付保を強制いたします措置に対応するものでありますが、保険料の支払いがない場合等正当な理由がある場合には拒絶できることは、当然のことであります。
第二十五条は、保険料率の認可基準を設け、その算定に当りましては、適正原価主義をとり、営利目的の介入を許さないことにしております。この措置は、本保険運営におきまして最も重要なものでありまして、保険会社を保険者としながらも、本制度の社会保障的色彩にかんがみまして、保険運営において非営利性を確保しようとするものであります。
第二十八条は、保険約款及び保険料率に関する大蔵大臣の処分につき、運輸大臣の同意制を設けたものでありまして、保険行政と自動車行政との調整をはかっているのであります。
第三十条は、本保険の代理店につきまして特に法律的地位を付与し、強制保険制度の円滑な実施を期したものであります。
第四節は、自動車損害賠償責任保険審議会の設置を規定するものであります。本案審議会は、強制保険の運営の民主化をはかりますため、大蔵大臣の諮問機関として本保険に関する重要事項を調査審議し、及びこれらに関する必要と認める事項を関係大臣に建議するものでありまして、第三十四条及び第三十五条に規定しておりますように、関係行政機関の職員四人、学識経験者三人、自動車運送に関し深い知識及び経験を有する者二人並びに保険事業に関し深い知識及び経験を有する者二人の総計十一人の委員をもって組織するものであります。
第五節は、強制保険に対して行う政府の再保険事務について規定するものであります。本保険が、自動車側に付保を強制したり、保険会社に引受義務を課したりして、社会保障的色彩が濃厚なものであることにかんがみまして、その保険運営につきましては、国が介入することが適切と考えられますし、また本保険につきましては、保険会社は引受義務を課せられたり、保険料率の算定に営利目的の介入を許されなくなりますので、その保険運営につきましては、その危険の一部を国が負担する国営再保険の形態が望ましいと考えられるのであります。
第四十一条は、再保険の当然成立制を規定し、第四十二条及び第四十四条は、本再保険事業が元受保険の六割を比例再保険すべき旨を規定するものであります。
第四十三条は、再保険料率に関する規定でありますが、再保険料は元受の純保険料の六割を予定しております。
第五十条は、本再保険特別会計に対します一般会計からの繰入方法でありまして、業務費を国庫負担すべき旨を規定しておりますが、本年度予算案としましては千八百三十九万六千円を計上いたしております。
このほか、本再保険事業に関しましては、農業共済再保険、漁船再保険、輸出再保険、本船再保険等、政府の再保険事業における例にならいまして、第四十八条の免責、第五十一条の審査の請求等種々規定いたしております。
第四章は、強制保険制度の例外的方法としまして、アメリカの例にならい、自家保障制度について規定するものであります。
第五十五条は、強制保険制度の特例を認めるものでありまして、多数両数の所有者で資力信用あり事故率の少い者が、第五十六条の許可基準に適合して運輸大臣の行う自家保障の許可を受けますと、付保することなしに自動車を運行の用に供することができる道を開いております。これらの者の賠償支払い能力につきましては、保険にかけることを強制しなくても本法案の目的を達成することができると考えられるからであります。自家保障者は第五十七条により、保険のかわりに賠償支払い準備金の積み立てを強制されますとともに、これに見合う資産については、流動性を担保するように第五十八条によって規制を加えられることになるのであります。準備金の積立額は、おおむね強制保険の純保険料を基準として算定する予定であります。
第六十条の先取特権および第六十一条の仮渡金の制度は、自家保障者における被害者の保護に万全を期したものでありますが、仮渡金を支払った後において、賠償責任が発生しなかった場合における政府補償につきましては、強制保険の場合と同様であります。
第六十六条は、許可の取り消しを規定しておりますが、特に引き続き自家保障者たることが被害者の保護に欠けるおそれがあると認めるときも要件として本制度をきわめて厳格に運用しようとするものであります。
第五章は、強制保険または自家保障制度によっても保護し切れない被害者に対して行います政府の保障事業について規定したものであります。
第七十二条は、保障事業の業務を規定するものであります。業務といたしましては、ひき逃げ事故または正当な権原がなくて使用した者もしくは付保義務違反者による事故の被害者に対して保険金の支払いに相当する金額を填補いたしますことと、先に申し上げましたように、保険契約者または被保険者の悪意による場合の賠償額の支払いとへ賠償責任がなかった場合の仮渡金の支払いとに対しまして、保険会社に補償することとの二つの分野があるのであります。なお保障事業の窓口業務につきましては、第七十七条によりまして保険会社に委託する道を開いております。
第七十三条は、保障制度が各種保険制度によっても救済し切れない被害者に対する最終的救済措置であることにかんがみまして、社会保険による給付との調整等を規定したものであります。第七十六条、第七十八条、第七十九条及び第八十二条は、保障事業の財源について規定するものであります。第七十六条は、代位権または返還請求権の設定によって填補額を回収する道を開き、第七十八条は、保険会社自家保障者等に賦課金を課し、第七十九条は、義務違反者から過怠金を徴収するものであります。
第八十二条は、保障事業に対する国、外交官等の自動車に対する賦課金相当額及び業務費の国庫負担について規定するものであります。保障事業は、再保険特別会計において再保険事業と合せて経理されることになりますので、国庫負担額は、一般会計から再保険特別会計に繰り入れられることになりますが、本年度予算案としては七百九十七万円を計上いたしております。
第六章は、各章にわたる事項について補充的に規定するものであります。
第八十三条は、再保険事業及び保障事業の業務を運輸大臣が管理することを規定し、第八十四条は、自家保障制度、保障事業及び保険証明書等の提示に関する権限を委任する道を開くものであります。
なお運輸大臣は、本法の運用に当りましては被害者と直後交渉する場合が多いので、第八十六条におきまして、特に被害者の保護に欠けることのないように努めるべき旨を規定いたしております。
第七章は罰則であります。
第八十七条から第八十九条までの規定は、強制保険制度及び自家保障制度の励行をはかるための罰則を整備するものでありますが、第五条は賠償能力を確保するための措置の骨幹をなす実体規定でありますので、違反行為に対しては特に体刑に処することにしております。
第九十条は両罰規定であり、第九十一条は、保険業法の例にならい、保険事業関係の違反行為に対し過料に処するものであります。
附則は、施行期日、他の法律の改正及び経過措置について規定するものであります。
附則第一項は、施行期日について規定するものでありまして、審議会、再保険の引き受け等は八月一日から、完全実施は十月一日からを予定しておりますが、発足に際しての事務処理の円滑化のために、さらに適切な措置を検討中であります。
附則第四項は、保険業法の改正でありまして、保険会社における強制保険の四割の保有分につきまして共同計算を可能にするため、独占禁止法の適用除外の措置を講ずるものであります。
附則第五項は、印紙税法の改正でありまして、強制保険の契約証書等を免税とするものであります。
附則第六項から第十一項までの規定は、完全実施の予定日であります十月一日前に任意に締結された自動車損害賠償責任保険と今回の強制保険との間の調整措置であります。すなわち、十月一日前に締結された旧契約の旧契約者は、強制保険を締結したときは第六項によって旧契約を解除することができ、その場合には第七項によりまして、法定の解約返戻金が支払われることになります。また旧契約と強制保険とを併存させる場合には、強制保険がまず填補し、なお不足額があるときに旧契約による填補が行われるものといたし、これに伴って起ります旧契約の危険の減少に対しましては、保険料減少額の返還または保険金額の増額の方法によって調整することにいたしております。
なお本法案による再保険事業及び保障事業の実施につきまして、会計から合計二千六百三十六万六千円の繰り入れを伴う予算案は、すでに御審議を受けており、またこれを経理するための自動車損害賠償責任再保険特別会計法案も本法案とともに提出されております。
以上によりまして、自動車損害賠償保障法案についての御説明を終りますが、何とぞよろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/2
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003・原健三郎
○原委員長 これより質疑に入ります。關谷勝利君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/3
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004・關谷勝利
○關谷委員 内容についてお尋ねをいたします前に、まず第一番に大臣にお尋ねをしてみたいのでありますが、今回運輸委員会に提案されておりますところのこの自動車損害賠償保障法案、あるいは海上運送法の一部を改正する法律案、日本航空株式会社法の一部を改正する法律案等、すべてを共通して私たちに受け取られるところは、どうも現内閣は監督権の強化をすればそれですべて事足りるというふうなことであって、監督行政にのみ重点を置いて、助長行政というふうなところには何ら考慮が払われておらないというのが、私たちが直接ぴんと感じられるところであります。すべて行政というものは、むしろ監督行政をできる限り廃止して、助長行政に持っていくべきものである。そうして助長することによってその事業の振興をはかり、従って安全性も確保することができる、こういうことになりますし、被害者も少くする、こういうことができると私たちは考えておるのでありますが、現内閣の方針、特に運輸大臣は運輸行政について監督行政の強化によってすべてをやっていこうとするのか、助長行政をどのように考えておるのか、この点根本的な問題でありますので、まず承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/4
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005・三木武夫
○三木国務大臣 今日航法あるいはこの自動車損害賠償保障法等が、監督権の強化ばかりに堕しておるという關谷委員のお話しでございましたが、日航法の例をとりましても、今まで航空事業が立ちおくれた日本として、政府はこれに対して助成をすべきであったと思います。こんなに立ちおくれたものが、すぐにペイをして国際航空がやれるわけがない。それを今まで直接の補助は与えなかった。これはやはりある程度の赤字が出るということもやむを得ないものがある。今回初めて直接の補助を与えるの道を開いたわけでありまして、金額は三億五千万程度であるけれども、航空事業に直接の補助を与える道を開いた、こういう点で、これは今お話しの監督行政というよりは、国際航空に対する助成政策の現われであると御承知を願いたいのであります。またこの自動車損害賠償保障法案にいたしましても、これは監督権の強化というよりかは、御承知のような状態で、自動車が数量の上においても十年の間に十倍もふえておる。事故がいろいろ起って、その間その事故に対する補償の道もないというので、これは監督権の強化にあらずして、一面における社会保障的な性格を持つわけでございまして、これもまた社会保障的な性格というものの底を流れておるのはそういう考えてある。これも政府の監督権の強化というものが、この法案の根底にあるものではない。しかしながらあるいろいろな面において、それと並行してある程度のやはり監督権というものも考えなければいけないのですが、運輸行政の根底に流れるものは監督権を強化して、それでやっていこうというものではない。助成というものを根幹にしながら、適当な監督権というものもそれと並行して考えていくのであって、根底にあるものはやはり助成であるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/5
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006・關谷勝利
○關谷委員 まことに上手に、わずかな金を出したことをもって、助長行政をやっているかのごときお話でありますが、私はもってのほかであると思います。日本航空あたりに三億五千万程度、スズメの涙ほどの金を出して、それで助長行政をやっておるというようなお話でございますが、以前からも直接の補助はしないといいましても、乗員養成費等には補助が出ております。やっておるのがわずか三億五千万で、まさに助長行政をやっておるということは、私どもには受け取れない、詭弁であるというふうに考えられるのでありまして、すべて今度出てきております法案は、もう少し大臣によく読んでもらいましたならば、その中には監督の面に重点を置いておるか、助成の面に重点を置いておるかとうと、監督の面に重点を置いておることは争い得ない事実であります。もう一度よく読んだらわかる。私はこの点に対して民主党の行き方というか、今の内閣の行き方というのは、監督権強化ということに重点を置いておる、このように考えておるのでございまして、これ以上はいずれ水かけ論になりますから、よく内容を御検討を願いたいと思います。
それから損害賠償保障法案は、保険者と被保険者とが、保険金を受け取る者とが異なっております点に非常にむずかしさがありますために、いろいろ事務当局も苦労をしておる跡は見えるのでありますが、この法案の一番骨子といいますか、一番問題になりまする点は、保険の料率をどういうふうにきめるか、もちろんその金高もでありまするが、保険料をどの程度にきめるかということも大きな問題であります。その保険料を算定いたします要素が何であるかということが、これからの議論の一番根拠になるのでありまするし、私たちがこれからお尋ねしようといたしますることも、もしその保険料の算出の要素といいますか、それによっていろいろ了解のできる点もありまするので、この法律案の審議に入ります際に、この保険料率をどんな要素で、どのくらいな程度にきめようとしておるのか、この点はこれだけの法案を提出するのでありますから必ずあるはずでありまして、これを政令に譲っておられますので、もし政令にまかしておりますると、せっかくでき上ったところの法律が、議会の精神と全く反したような結果になるということがたびたびあるのであります。私はこの法案の審議に入りまする先に、まず料率の算定をするのは、どういうふうな方法で、いかなる要素でやるのか、また金高をどういうふうにしようとするのか、その点が一番大事な点でありまするので、詳細の御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/6
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007・真田登
○真田政府委員 算出の方法等につきましては後ほど申し上げますが、まず大体われわれの方で予定いたしました保険金額は、乗合自動車で百万円、営業用の乗用車で七十五万円、自家用の乗用車で五十万円、普通貨物が五十万円、小型貨物が三十万円、軽自動車、これはスクーターでございますが、これにつきましては三十万円、そういう一応の計算が出たわけでありまして、これは一事故当りこれだけということでございます。それから一人当りどのくらい支払うかという金額は、死者で大体三十万円、重傷者十万円、軽傷三万円、こういう数字が出たわけであります。なおこれは強制に付します限度がこれだけであるということでございまして、死者は三十万円ときめてしまったとかいうふうなことではございません。その計算を出しますのには、過去におきます自動車事故の統計を拾いまして、その一事故当りに何人の人が死に、何人の人がけがをした、こういった数字を全部集積いたしまして算出したわけでありますが、そのために乗合自動車と営業用乗用車の事故の比率も違う。従いまして乗合自動車の百万円に対しては、保険料は現在予定しておりますのは一万二千四百円という数字になっておりますが、これもいずれ保険審議会にかけて決定していただく数字ではありますが、百万円に対して一万二千円程度であるものが、営業用の乗用車は割合事故の率が多いので、七十五万円に対してもやはり一万二千円ほどの保険料を支払うというふうな数字になっております。これは事故率が営業用の方が多いということなのであります。なおこの三十万円という数字は、過去の実績と申しますか、各事故が起りましたときに会社等が支払いました金額を拾ってみますと、大体死者に対しては二十万円ないし三十万円払っておる。重傷者に対しましては七万円ないし十万円、軽傷者に対しましては二万円ないし三万円程度しか払っていなかったということなのでありまして、その今あげました数字の最高限度をとりまして、これを強制の最低の線にする、こういうふうにいたしましたわけであります。この自動車事故報告規則による実態調査によりまして、業態別、車種別の一事故当り平均死傷者数をこれに乗じまして出したものが、一事故当り保険金額というふうになっておるわけでございます。なお最近国鉄の大事故等で支払いました金額は、これより大きかったのでありますが、自動車関係では国鉄が支払いましたほどの金額を払った実例はないわけでありまして、今度の保険が強制でやりますこと、なお現在の自動車事業者がかけております保険の割合と申しますものは、大体全自動車の二〇%くらいしか現在では保険に入っておりません。それを全部保険に入れるということでございますので、やはり漸進的に参りませんと、自動車側の負担のことも考えなくてはなりませんので、こういうふうな数字にきめたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/7
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008・關谷勝利
○關谷委員 そうしますと保険料率をきめまするのは、こういうふうな最高の頭を押えておいて、保険収入を事故の数で割った、こういう簡単な割り方でできておる料率と見て差しつかえないわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/8
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009・真田登
○真田政府委員 この保険料率につきましては先ほど申し上げましたように最終的には保険審議会の専門家の方々に御審議願って決定いたしたいと思いますので、私たちの試算した数字でございます。これは大体今まで事故が起きましたときの数字を実際の事故率によって、各自動車の種別に分けたわけであります。なおこれは純保険料と付加保険料というものになっておるわけでありますが、現在までは保険会社の付加保険料は四〇%ないし五〇%であったように聞いておりますけれども、今回はほんの事務費だけが付加保険料として入る。従いまして一七、八%ないし二〇%で付加保険料は済むのではないか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/9
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010・關谷勝利
○關谷委員 この保険料率の算定は専門家の方にまかすということですが、今のお話を聞きますと今まで専門家の意見は何も聞いておらぬ、こういうことになるわけです。そうするとどのような料率が出てくるかわからない、こんなことになってくると大へんなことになりますが、そこをはっきりと御答弁願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/10
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011・真田登
○真田政府委員 その数字につきましては、今までも関係方面の方々に集まっていただきまして、この制度について御相談願ったときにも、こういった数字は一応出しております。これについて最終的によかろうというお話はいただいておりませんが、今までそういった専門家の方々からも、特に見当違いの数字だというふうな御批判はいただいておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/11
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012・關谷勝利
○關谷委員 専門家といいますのは、今までの営利本位でやっております損害保険の関係だろうと思います。今度の場合は営利の介入を許さないということになって、考え方が根底から変ってくるわけでありますが、そういうことを基礎にして専門家の意見をいろいろ徴せられまして、大体どのような政令案を作るか、これに近いものだというようなものが何かできておらぬことには、ただばく然とそういうふうなものを政令に譲るということになりますと、この保険あたりは被害者の利益を擁護し、しかも業者を擁護しようというのがそのねらいでありますが、その場合にわれわれの意思と反したとんでもないものができ上ってこないとも限らないのであって、政令にゆだねる部分をこの際資料等ではっきりと提出をしてもらいたいと思いますが、その資料の提出ができますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/12
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013・真田登
○真田政府委員 保険料は政令ではきめません。ほかのことをお読みになったのではないかと思いますが、政令できめますのは一般の保険会社から申請させましたものを審議会にかけて、適正な原価を償うものであり、また営利目的の介入がないということをきめるわけであります。政令できめるわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/13
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014・關谷勝利
○關谷委員 それならなおけっこうなことであって、険保会社から申請をさせるというのであれば、保険会社から大体こういう事件ができればどの程度に保険料率をきめたらよいかというような資料は、もう取っておられなければならぬと思いますが、そういうふうな資料を取っておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/14
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015・真田登
○真田政府委員 まだ保険会社からは受け取っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/15
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016・關谷勝利
○關谷委員 これだけ大きな法案を提出するのに、そういうふうに何らの意見も徴しておらずして、ただあとから保険会社が持ってきたものを、それが適当であるかどうかを審議会にかけてそのまま出そうというふうなことになりますと、それこそとんでもない金高が出てこないとも限らないのでありますが、保険会社あたりではすでにこういうふうなものを、営利を除外してやった場合にはどの程度というふうなことを——これは車の種類あるいは台数がわかっておりますし、事故の件数がどのくらいということが大体見当がついて、提案理由の説明にも、いろいろの表にも出ておるのでありますから、その際にこれで計算した場合に概略はどのくらいになるということの資料を取っておくべきであって、それがなしにこの審議に入れといったところで、なかなか審議に入ることはでき得ないと思うのでありますが、それらの資料を早急にまとめて提出することができるかどうか、いつまでにできるかということをはっきりとお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/16
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017・真田登
○真田政府委員 純保険料につきましてはすでに話し合いはいたしておりますが、付加保険料についてはまだ話し合いが進んでおらないわけでありまして、決定的なものはなかなか出ないと思いますが、さっそく概算的な数字を保険会社といろいろと話し合いまして、出してもらうようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/17
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018・關谷勝利
○關谷委員 これは非常に重要な事柄でありますし、それに純保険料はすでに話し合ったことがあるというのでありましたならば、相当程度話し合いができておるはずでありますので、確定的なものでなくても、参考になるような資料がかなりあるはずでありますから、次の委員会までに必ず提出をするようにお願いをしておきたいと思います。
そこでこの法案の内容についての御質問を申し上げたいと思うのでありますが、この法案は自動車の事故が発生いたしました後に、その人命に対します損害賠償の責任を有することを規定いたしておるのでありますが、この法案を通じてみましても、事故防止というふうなことがこれには一つも含まれておらないのであります。何かこういうふうな方法をしたならば事故の防止が考えられるかというようなことが、全文を通じてみてもどこにもないのでありますが、どういうふうにしてこの法律を適用して事故の防止をしようとするのか、それがもしこの条文の中にあるというならば、どの条項にあるということを示していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/18
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019・真田登
○真田政府委員 この法律では事故の防止ということは書いてございませんが、事故の防止ということは当然のことでございますので、この法案を出しますにつきましても、これと一緒に事故の防止の面についてどういうことを考えるかということで、関係のところといろいろ相談しておるわけであります。現在事故の起きております原因はいろいろあるわけでございますが、大体一番多いのは約五〇%が操縦の誤まりということでございますので、この操縦の問題を一番大きく取り上げなくてはならない、われわれはそう考えておるわけであります。従いましてその他車の整備の問題などございますが、運転手の問題、あるいは運転そのものの技術の問題ということから考えていかなくちゃならないわけであります。その根本としての、自動車側はもちろんのこと、一般国民の交通道徳の高揚といいますか、そういったことがまず第一に考えられることでありますが、その次に具体的な措置としての運転の問題であります。これは現在では運転の免許そのものは公安委員会がやっておるわけでありますが、われわれの方で政令によりまして、旅客を扱う自動車の運転手は二十才以上でなければいけない、実務経験が半年ないし一年なければ乗せてはならないという制限をつけておるわけでありますが、その制限をもう少しきびしくしたらどうだという一つの案もあるわけであります。たとえば実際に車に乗った経歴の一年を延ばす、あるいは年齢の二十才をもう少し上にした方がいいということであります。それからわれわれの方の省令で、運転手の採用その他についていろいろと事業者の守るべき規則を定めておるわけでありますが、これにつきましても、運転手の管理者を置いて運転手の指導に当らせるとか、そういったことにつきましては、すでに法律によらないで実施している面もありますが、そういった面について特に注意して参りたい、こういうふうに考えております。
なお車両検査、それから車を持っている人自身による車両の整備の問題もございますが、車両検査につきましては、予算とか定員の関係で非常に苦しんでおったわけでありますが、ことしはある程度人間の増加も認められまして、車両検査についても積極的にやれるというふうな明るい見通しになっております。なお車の整備等につきましては、われわれの方ではそういった関係の規程といいますか、事業者自身が守るべきいろいろの規則の中に入れておるわけでありまして、その他道路の問題とか、あるいは公安施設の問題等もあるわけでありますが、これらにつきましても、建設省等といろいろお話し合いをしておるわけでございます。以上のような程度であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/19
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020・關谷勝利
○關谷委員 今局長の言うことは何もこの法律案と関係のないことで、この法律があろうがなかろうが、それは当然運輸省としてしなければならぬことであって、この法律ができたがために特にどうということは何にもない。答弁にはならぬのであります。ただ私がお尋ねいたしたいと思うのは、人命あるいは身体に損害を与えた場合に、そういうふうな補償制度ができておるのだ、そのためにはすでに掛金がかけてあるのだという安易な気持といいますか、そういう気持が起ってきて、この法律ができたがために、防止しなければならぬ事故がかえって頻発するようなことになりはしないか、こういうことをおそれておるのでありまして、この法律ができたために、そういうふうなことが起るような懸念はないか、そういうふうなことを考えたことがあるかないか、これをお尋ねしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/20
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021・真田登
○真田政府委員 この法律の立案の途中で、そういった議論はしょっちゅう出まして、いろいろと問題になったわけでありますが、この制度が外国で実施されましてもう三、四十年になるわけでありますが、保険をかけたために事故がふえたという例は見当らないのであります。なお運転手にいたしましても、その良識と申しますか、人間的な面から見まして、そういったことを考えるということはわれわれとしては思いたくないわけであります。なお業務上の過失傷害とか、運転免許の取り消しとか停止、あるいは労働関係の事故があったために解雇されるといったことがあるのを、あえて保険がかかっておるからといって事故を起すといったふうな気持にはなれないというふうに私たちは考えたいのであります。なお保険料につきましても、事故を起さなければ無事故のための割引とか、あるいはそういったような報奨的な考え方をして、事故を起さないものはだんだんと保険料が安くなるように持っていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/21
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022・關谷勝利
○關谷委員 これで事故が今までより多くなるとは考えたくないということでありますが、まことにけっこうであります。私たちはその推移を見ていたいと思います。実際にどういうふうになるか、これから先の状況を見てまた申し上げたいと思いますが、ただ私が先ほど料率のことをしきりに言ったのは、事故防止の面から料率算定の際に考えなければならないことがあるはずだ。ただ事故の件数をいろいろ計算をしてみて、保険料を割り当ててみて、保険の掛金と事故とによって料率を算定するというふうな簡単な行き方では大へんであるというので、私がその要素というふうなことをたびたびお尋ねしても、一向そういう返答がなかったのであります。これは事故防止の方法としては、どうしてもそういうふうな要素を取り入れなければならない。この返答が私はほしかったのでありますが、そういうふうな答弁はなかったのであります。そういうようなことが保険料率の算定の際に含まれておるのかないのか、その点はっきり伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/22
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023・真田登
○真田政府委員 今ちょっと触れましたように、無事故割引制ないしは報奨制、あるいは事故率による個別的差別料率制、事故率による業態別、車種別料率制、事故率による地域差等、そういうようなことは考えておるわけであります。最初の発足の際にこれがどの程度取り入れられるかはむずかしい問題だと思いますが、過去の統計によってわかっておる範囲においては取り入れて参りたい、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/23
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024・關谷勝利
○關谷委員 今のお話でありますが、今の地域差なども、これはまたあとでお尋ねしたいと思ったのでありますが、これも取り入れるということになるのですね。それから無事故の者に対しての料率の割引ということも、今回の保険料率の算定の際に取り入れられるのですか、これをはっきり御答弁願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/24
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025・真田登
○真田政府委員 ただいま申し上げましたように、過去の統計においてわかっております範囲は取り入れて参りたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/25
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026・關谷勝利
○關谷委員 やはりそういう保険料率の算定につきましては、そういうふうなものをどの程度にどういうふうに織り込むかということについて、一つ資料を提出する際に、詳細にそういうものを含めての資料の提出を願いたいと思います。
それからこの損害補償でありますが、運転手等は労働者の災害保険に入っておるはずでありますが、そうすると、この自動車損害賠償保障法というものは、事故があった場合には、これは両方入るというふうなことになるのか、これからは運転手あるいは車掌というふうな者は省かれておるのかどうか、この点を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/26
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027・真田登
○真田政府委員 この保険の被保険者といたしましては、車を持っておるといいますか、車の使用の権利のある人たち、それから運転手及び助手、これだけを含んでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/27
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028・關谷勝利
○關谷委員 そうすると、これも被害を受けた場合にはこの法律による損害の補償を受けられるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/28
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029・真田登
○真田政府委員 この被害者の中には運転手及び助手は入っておりません。これは事故の当事者でありますので、この保険の制度の適用はないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/29
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030・關谷勝利
○關谷委員 そうすると、これは労災保険によって給付を受けるのであって、事故のあった場合にはこの法律は適用しない、こういうわけですね。
それから先ほどちょっと一事故当り一件当りの簡単な数字だけを承知いたしたわけでありますので、まだ十分な比較をしておりませんが、この損害補償を受ける額と、労災保険などのようなほかの保険で給付を受ける金高との間において、大体均衡がとれておるというふうなことに制定をせられておるのかどうか、その点をちょっと伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/30
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031・真田登
○真田政府委員 労災関係の方はこの金額よりも大きくなっておりますが、労災関係の方は定額でございますが、こちらの方は最低をこれだけ必ず付保しろということでございまして、実際に事故が起りまして、もっと賠償額を支払わなくちゃならないというときには、保険のほかに加害者が支払わなくてはならないということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/31
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032・關谷勝利
○關谷委員 この法案を一歩進めて、いわゆる労災保険等のごとき定額というふうなことに将来において持っていくという気持——あるいは今回でもそういうことに変更できないこともないのでありますが、そういうふうなことに持っていこうとする気持があるかないか、この点を伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/32
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033・真田登
○真田政府委員 労災等の場合は、大体同じような条件の人たちが集まってやっておるわけでありまして、その定額制をきめます際についても割合きめやすいかとも思われますが、この自動車による被害者は、国民のすべてを含むわけでありまして、それを一定の金額できめてしまうことは、なかなかむずかしいのじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/33
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034・關谷勝利
○關谷委員 それほどむずかしいとも思えないのでありまして、車の種別あたりで金高を決定するくらいなら、こういうようなことも、年令あるいは職業、その収入というふうなことから勘案して大体のランクを設けるくらいのことは、技術的にできないことはないのでありますが、そういうふうな意思がないということなら、まずそれもいいと思います。
先ほど物的損害は考慮しておらないが、将来これを考慮する、こういうふうなことでありまするが、外国あたりの例は、この参考資料を見ますると、みな物的な損害補償というのが入っておるようであります。先ほどの説明に、将来漸進的に考慮する、こういうふうな話であったが、いつごろこれをやろうとしておるのか、これを伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/34
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035・真田登
○真田政府委員 いつごろという時期については、現在まだ申し上げる段階まできておりませんが、物的事故をはずしましたことについては、先ほど申し上げましたように、現在かけておりますものが二〇%程度であって、あとの八〇は今回の保険で強制される形になる。従いまして全部一ぺんにやるということは、相当な負担になるだろうということで、はずしたわけでございます。現在のところ、その物的事故については、まだはっきり申し上げることができないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/35
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036・關谷勝利
○關谷委員 これは大臣にお尋ねをしたいのでありますが、海上運送法等においては、先般改正をせられました際に、第十九条の二におきまして、危険のおそれのある場合には保険契約の締結を命ずることができるというふうな、しかもこれはさほど強くは主張しておらないようであります。ただ締結を命ずることができるというふうな規定で、簡単なのであります。海上においてもしきりにこのごろ事故が起きておるようでありますが、海上の方ではさほどこういうふうなことに重きを置かず、本法では強制保険というふうなことになっておりますが、それを一貫したものにするというふうなお考えがあるのかないのか、将来これをどういうふうに持っていこうとしておられるのか、この点今までの通りでいこうというお考えであるのか、あるいは陸上を強制というふうな面にするのなら、海上の方も同じような状態にあるものはする、こういうふうなお考えか、この点伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/36
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037・三木武夫
○三木国務大臣 やはりこういうものに対して、全般的に人命の損傷、そういうものに対する保険制を考えるということは、一つの考え方だと思います。しかし何分にもこういう制度は日本は立ちおくれておって、外国では自動車の損害賠償などはもう五十年くらい前からの歴史を持っている。こういうものがいまだにできなかったのですから、しこうして最近は船の方もぼつぼつ被害がありますが、何としても陸上の自動車事故というものが、事故の上においては圧倒的な比率を占めているので、今までなかったこういう面について損害賠償の保障制度をここで確立して、将来はやはりこういうものに対しては検討をすべき一つの課題だと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/37
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038・關谷勝利
○關谷委員 この法文だけで見ますと、一事故に対して——大きな事故というものにつきましての質問は後でいたしますが、ただ一人というふうな場合は、乗客の場合でも、また通行人の場合でも、同じような扱いをするのか。既存の損保のものにつきましては、車内賠償とか、車外賠償というようなことで、段階のついているような場合もあったのでありますが、この法案によりますと、そこらの点がはっきりわからぬのであります。もちろんあとから提出してもらう資料の料率の算定の中に、そういういろいろな種類のものが出てくるのかもしれませんが、通行人あたりにけがをさせた場合と乗客の場合と、これが同じ一人の場合であったときは同じ扱いをするのか、それとも異なった扱いをするのか、その点を伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/38
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039・真田登
○真田政府委員 乗客の場合と外の場合とは、法律的には多少違いがありまして、乗客の場合には、一つの契約の履行の上での問題が競合するわけでありますが、この法律では両者を同じように扱いたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/39
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040・關谷勝利
○關谷委員 先ほど伺っておりますと、乗合あたりで一事故当りの最高限は百万円というお話をちょっと聞いたのでありますが、一つの事故によって多数の死傷者を出したというふうな場合には、こういうふうな保険がなかったならば会社が負担をし切れないというふなことで、そういう場合こそこの保険の必要があるのであって、小さな事故というふうな場合には、それと比較いたしますと会社にも負担能力があるということになってくるわけでありますが、一度に大勢の死傷者を出したという場合には、従ってそれに対しましての支払い金高も多くなるわけであります。そういうときにこそこれは活用しなければならぬのでありますが、その際に百万円で限定するということになると、この法律を作る意味合いというものがなくなるのじゃないか、こういうように考えられますが、その点どう思っておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/40
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041・真田登
○真田政府委員 お話しの通りそうした大事故が起りましたときには、この百万円ではとても間に合うべきものではございませんが、そういった大事故を基準にして全部を強制するということになりますと、これは大へんなことになりますので、とてもそういったことを基準にして保険料率をきめ、保険金額をきめるというところまで強制するわけに参らない。大きな事故は世間でいろいろとやかましく言いますが、実際に起っております事故は、日常そこらで起っておって、しかも泣き寝入りしているというふうな事故が多いのであります。たとえば鉄道と自動車の事故は、死傷者数につきましても、自動車の死傷者数の方が断然多くて、約九〇%というものが自動車によって起っている。しかしながら世間の耳をそばだてるような大きな事故は時にしか起らない。従いまして日常だれにも気づかれずに起った事故で、しかも被害者が泣き寝入りしているといった事故を対象として、この金額がきめられたということをお考え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/41
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042・關谷勝利
○關谷委員 言うことが矛盾しておるわけであります。一つの事故として考える場合には、そういう国民の耳に入るような事故は少いのだというふうなことなら、少いからそれが全般に及ぼす影響、全般の負担にはならないわけになってくるので、ただいまの答弁から聞くと大へんおかしな話になる。そういう妙な考え方でおったら大へんなことになります。そういう大きな事故、めったにない事故が起った場合に会社に支払い能力がない、従って迷惑をかけるから、この法律を作るというのが本来でなければならないのでありまして、それをやるからといって、めったに事故が起らないものなら、それが一般の加入者、保険契約者に対して大きな迷惑をかけるということにはならないはずだと思います。ちょっと答弁がおかしいのでありますが、その辺をもう一回はっきりお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/42
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043・真田登
○真田政府委員 御承知と思うのですが、自動車の現在の数は自家用が約八七、八%で営業用というのは一五%以内ということなので、実際には三輪のトラックとかいうものによって起る日常の事故が非常に多い。そういうことを対象として考えたということなのでありまして、保険金額を百万円にしましたのは、そういうところから数字を割り出したわけであります。全部そういった何百万円あるいは何千万円に達するような事故を基礎として数字を出すといたしますと、保険料については相当な額になると考えたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/43
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044・關谷勝利
○關谷委員 今の答弁はなっておらぬと思うのであります。そういうふうな大きな事故はめったにない、そういうめったにない事故を考える際に支払い能力がない、従って被害者に迷惑がかかるのだからというので、それを救済するというのでなければ保険の意味が成り立たない。それで計算すると危険負担がたくさんあるという。しかし危険負担は、そういうふうなことは数が少いのだから、全般の百三十四万二千台というものにこれを分担さす場合にはそう高くなるはずがないのであって、もし今のようなことを言われるのであったならば、国が再保険する必要がないというような議論も起きてくるのであります。これを計算に入れた場合にどれだけ高くなるものか、そういうふうな百万円限度で打ち切った場合に、今までの十年間そこらの統計が取れると思いますが、それを入れた場合にどれだけ高くなるか、入れない場合に保険料率がどうなるか、この比較の点も一つ参考のために資料を提出してもらいたいと思います。またそれに対して今の答弁はどうもおかしいのであります。一方ではそれをやったならばふえるからと言い、一方では事故が少いのだと言う。これを矛盾と言うのであろうと思うのでありますが、もう一回答弁のし直しをしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/44
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045・真田登
○真田政府委員 事故の回数が少いから保険料に大して響かないであろうということは、仰せの通りかもしれないのでありますが、しかしながら強制してみんなを入れるという考え方からいきますと、そういうめったに起らない事故のためにみんなが多額の保険料を払うのだという印象を受けることは、強制という考え方からいきますと感心しない。従いましてそういった事故のために、被害者の保護に欠けるというふうな御心配があるわけでありますが、大体保険会社、民間の事業会社としましては、そういった事故の心配があります場合には、任意保険で幾らでもかけていいわけであります。ただ強制の最低を基本にするという意味から、そういった数字が出てきたわけでありまして、その点考え方の問題だと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/45
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046・關谷勝利
○關谷委員 考え方の問題にしては、あまりにも悪い考え方であるということをはっきり申し上げておきます。そういう考え方ではこの保険の趣旨というものは非常に薄れてくる。ことにあまり金高は違わないと思うが、心理的影響を考えておられる。まるで一兆円予算と同じようなことであります。この心理的影響を考えるというようなことでなくして、私はそこにどれだけの差があるのか、それは資料によって御提出願いたいと思います。今の局長の答弁では私はふに落ちないものがあるとともに、世間も納得しないだろうということをはっきり私は申し上げておきます。それでこの法律によりますと、自家保障者と一般の保険契約を締結する者、被保険者というのですか、被保険者との間には非常な差別扱いが出てくると思うのであります。一方の自家保障者の方は、これは大体純保険料に見合うだけのものを積み立っておく。事故のなかった場合には、当然それはその積み立った自家保障者のものになるのだと思います。これを政府が取り上げる法はないはずであるし、この法律の中にも何にも書いてないのであります。ほかの保険加入者というか、被保険者というか、所有者、運転者などはこれをかけますが、かけたものはそれは戻らないのであります。保険の常識からいうと戻らぬことになっておるが、一方は積み立ったものは自分のものになる。事故がなかったらよい。一方は事故がなくてもかけ捨てになってしまう。こういうことになって非常に不公平な扱いということになってくるのでありますが、私どもはどうもこの保険というものは、事故のないものが事故のあったものをカバーするということで成り立つと思うのでありますが、自家保障者というので、自家保障者はこれは自分のものになる、そうすると自家保障の方では事故がなかったから奨励金で何とかしてやる。そういうようなことになればなおさら慎重になる。そうしてそれらの積立金は戻ってくる。幾分が保険会社に行く。そういうわけで自家保障者は必ずそういう方法をとると思いますので、一方はもうかけ捨てになって戻ってこないということになってくるのでありますが、こういう矛盾はどういうふうに解消せられんとするのか。その方法を承わっておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/46
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047・真田登
○真田政府委員 この保険の趣旨は、被害者の保護がまず第一ということでございまして、被害者の保護に欠けるところがなければいろいろの方法を考えてよい。こういうことから出発して自家保障ということも考えておるのでありまして、今のお話の事故が起らなかったら片一方はかけ捨て、片一方は残る。そこで事故の起る割合というか、そういうものから自家保障についても、両数その他いろいろ考えなければならない。ただ起らなかったときはそうでありますが、たった一両しか持っていなくて、それが偶然事故を起したというときには非常な損害になる。それが保険に入っておれば、そういったものを一ぺんに出さないで済む。保険の目的はそこに事故が起ったときにということでありまして、大体百両なり二百両なり持った場台は、その中の一両が一年に一回事故を起す。そうすると積み立ったものは大体それに使われてしまうというような計算から、大体何十台持っておるものは自家保障にして積み立てをさせよう、こういうふうに考えて自家保障の条項を入れたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/47
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048・關谷勝利
○關谷委員 実際はそのようなことはないので、ただ机の上で考えるとそういうことになるのであります。それと今被害者を主として考えたということでありますが、こういうようなものを考える場合に、被害者ばかりを考えて、業者の方は考えないでよいのだ、それはほかの大蔵省あたりで考えることならこれはともかくでありますが、運輸省として考える場合に、業者の保護と被害者の保護と両方を考えるべきものであって、被害者のことばかり考えてそんなことは考えておらなかったというふうな答弁は、なっておらぬ答弁であります。この点もう一回伺っておきたいと思います。さらに自家保障と一般の保有者との関係ですが、一般の分は、あなた方の考えでは事故が少いというふうに考えておるのかもしれませんが、もしそうであるならば、それを一本にまとめていった場合、なおそういう事故のあった場合の救済策になってくる、料率も下ることになってくる、こういうふうになるのじゃないかと思います。自家用の比較的安全なものを取り除いて、あとの事故の多いものだけを一本にしておくのだというようなことになってくると、自然料率がおいおい高くなってくる。しかも一方の自家保障の方は、料率が高くなったところで、積み立てておいて事故がなかったら返ってくるのだというような、非常に不公平な場合が起きてくると思うのでありますが、こういうようなことを考えたことがあるかないか、はっきりと答弁してもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/48
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049・真田登
○真田政府委員 自家保障を認めますのは、ごく例外的にやって参りたいと考えております。両数にいたしましても、百三十数万両あるうち、この自家保障の適用を受けるものは二、三万両以下だろうと思います。従いまして全体の影響は、それほど大きなものとは私ども考えていないのであります。
それから事業者のことを考えないというお話でありましたが、大体先ほど申しました自家用車が八十何%ありまして、あとが事業者の車でありますが、その事業者のうちで非常にたくさん持っておるものが自家保障をやってみたい、こういうふうに言っておりますので、事業者のことを考えなかったわけではないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/49
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050・關谷勝利
○關谷委員 これは二、三万両だけであるから影響は少いのだということだが、一般の影響は少いかもしれませんが、その二、三万両の所有者だけが特別の保護を受けるというような格好になる。一つの法律の適用に当って、一部分のものが特別な保護を受けるということになってくるのは非常に不合理なことでありまして、この点はやがて事実が物語ってくれると思う。今局長と議論する余地はないが、やがてこれが問題になって、自家保障をやめてくれということが必ず起きてくるということを予言して、この点は質問を打ち切ることにいたします。
いかなる損害保険でありましても、保険料収入というものと保険金で支払われる金高との間に非常な差があるのであります。いろいろこれに含むのでありますけれども、総体的に見て保険料収入というものは二割ないし三割、よほどいいもので四割、五割というふうなことであって、はなはだしいのになると二割程度のものしか払わないというのが損害保険の実体である、こういうふうに考えられておるのでありまして、この経費というものを非常に多額に見ておるのが普通でありますが、今度の場合保険金の純保険料というものと、その手数料等を含むいろいろな雑費というふうなものとの割合がどうなるのか。なおその保険料と賦課金の問題がありますが、賦課金との割合はどうなるのか、この点をはっきり御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/50
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051・真田登
○真田政府委員 今度の予定しております純保険料と付加保険料の割合でございますが、大体一〇〇のうち一七、八%が付加保険料、八二、三%が純保険料というふうに、われわれが試算をやりましたときは考えたのでありまして、一般の保険では大体五〇%、五〇%とか、あるいは六〇%と四〇%程度と申しますか、四〇%ないし五〇%程度の付加保険料を取っているように聞いております。これにつきましては、そういった余分の付加保険料が取られることのないように、今後も十分考えていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/51
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052・關谷勝利
○關谷委員 今の御説明によると純保険料と付加保険料——その付加保険料というのは、これは手数料とかいろいろなものが含まれるのが付加保険料であろうと思うのであります。私は保険の専門家でないからわかりませんが、それが八二、三%と一七、八%くらいな割合だ、こういうふうなことでありますが、それより別に事業賦課金の方はどうでありますか、事業賦課金の方はどの程度のものを取ろうとするのか、それを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/52
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053・真田登
○真田政府委員 ただいまの御質問は七十八条の賦課金の場合だと思いますが、これは一両について約八十円くらいになるだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/53
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054・關谷勝利
○關谷委員 全部同じにですか。車種を問わずですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/54
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055・真田登
○真田政府委員 現在のところはそういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/55
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056・關谷勝利
○關谷委員 納得のいかないところがたくさんあるのですか、あまり長くなってもどうかと思いますので、次に大事なことをお尋ねしておきたいのは、この付加保険料の中には、先ほど私がお尋ねしたいわゆる無事故の表彰の基金というようなものに充てますものが幾分か含んでおると解釈していいかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/56
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057・真田登
○真田政府委員 付加保険料は純粋に事務的なものとか、代理店を作った場合のその事務といいますか、その手数料的なものでありまして、純粋の保険料の増減には関係ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/57
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058・關谷勝利
○關谷委員 そうすると今の無事故の者を表彰して事故を少くさす、そういうふうな意味のものは純保険料の中に含まれる、こう解釈していいわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/58
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059・真田登
○真田政府委員 その通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/59
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060・關谷勝利
○關谷委員 それから二十九条の規定であったと思いますが、保険会社の共同行為というようなことがありますが、これはむだな競争をして、そのためにいろいろな経費を使うというふうなことから、付加保険料が高くなるということが考えられるわけであります。それともう一つ節約をするという意味におきまして、この共同行為というふうなものを強制するというふうな、何かこれは手が打てるのではなかろうか、そうすることが事務費を節約することになるのではなかろうか、こういうふうなことを考えるのでありますが、今のこの規定だけで置いておくと、優秀な会社で事業が非常に好調にいっており、しかもそれが全国に組織網を持っておるというようなところは、そういうふうなものを併用するというような関係から経費が非常に少くなってくる。そうすると優秀な会社の方は経費が少くてもうかるのだというふうなことになりますと——もうかるのを返さすというわけにもいかぬでしょうが、ボロ会社は比較的経費が多いということになってきまして、それが標準になってくる。従ってそれが被保険者の負担になってくるというようなことで、やがて保有者の負担になってこないとも限らないのでありますが、その点私はむだな競争を排除して事務費を節約するという意味その他から、今の優秀な会社あるいはボロ会社——といっては言い過ぎになるかもしれませんが、経営状態のよくない会社あたりの事務費の差というものを縮める意味において、これを共同行為による共同計算というところに持ってくるのが一番理想的なのではないか、またそういうふうにすべきものではないかと考えるのでありますが、いずれこの法律も強制であるししますので、そういうふうな加入者だけを強制にせずして、そういうふうな面もあわせて事務を節約してみなの利益をはかり、負担を少くする、こういうふうなことに持っていくべきではないかと思いますが、これに対する——これは大臣でもけっこうですが、大臣にわざわざ答弁をわずらわすほどでもないかもわかりませんが、この点伺ってみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/60
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061・真田登
○真田政府委員 ただいまのお話は、二十九条の関係のお話だと思うのであります。あるいは大蔵省関係の人に御説明願った方がいいかもしれませんが、私の考えておりますところでは、今度のこの制度では強制であり、また引き受けの方も強制していくということでございますので、あまりむだな競争を行わせるというふうな結果は出てこないのではないかしらぬと思っております。なおこの関係で代理店につきましては、できるだけ自動車に関する組合とか、あるいは事故防止に関する組合といったようなものを代理店に使うというふうなことに考えておりますので、そういった末端をうまく活用してやって参りたい。それからこれは当然全会社が、この関係では共同計算をやりたいということを申し出ておりますので、届出の通知というふうになっておりますが、実際にはおそらくこれが行われるだろうというふうに予定しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/61
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062・關谷勝利
○關谷委員 それから先ほど保険料率の算定の際に、地域差というふうなものを考慮に入れる、こういうふうなことでありましたが、この点はいずれ資料を提出してもらうことになったら、その要素にそういうものが含まれておるかおらぬかということがわかって参りますので、この質問は保留をすることにいたしておきます。
自動車損害賠償責任保険の審議会でありますが、これは第八十六条によって被害者の保護に欠けることがないように努めるのは運輸大臣の任務である、こういうふうに書いてあるのでありますが、被害者の面はそういうふうに了承いたしております。法律には書いてないにいたしましても、自動車の業者あるいは所有者の保護はもちろん運輸省としては育成強化すべきものであると思いますので、その面におきましても大臣は責任があるはずであります。しかるにこの自動車損害賠償責任保険審議会は、大蔵省にこれを設置する、こういうことが書いてあるのでありますが、これは当然運輸省に置くべきものであるというように私たちは考えますが、この点大蔵省と折衝してみたことがあるのかどうか、大臣の御意見と、事務当局のお考えの両方をお尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/62
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063・真田登
○真田政府委員 この保険事業そのものの監督権というか、権限と申しますものは、現在では大蔵大臣に所属いたしておりますので、その権限としては大蔵大臣に所属させる。しかしながら実際にはその審議会にも運輸省から人が出る。また実際に処分するときには必ず運輸大臣に相談していただく、こういうことで大蔵省と話し合ったわけです。それまでにいろいろと交渉はありましたが、こういうふうにきまった趣旨はそういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/63
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064・三木武夫
○三木国務大臣 今のようないきさつで、運輸大臣も報告を受けるし、いろいろこれに対して関与できるような……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/64
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065・關谷勝利
○關谷委員 大臣の気持を聞きたいので、いきさつは事務当局でけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/65
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066・三木武夫
○三木国務大臣 しかし国で保険するような事業は、大蔵大臣の所管になっていて、運輸大臣と連絡をとってやれば、關谷さんの御心配のような場合も解決できるという考えで、この条項に賛意を表しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/66
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067・關谷勝利
○關谷委員 その点はそれくらいで了承しましよう。
代理店契約の問題でありますが、これは第三十条に規定してあります「団体その他の者」というのでありますが、「その他の者」というものは、どういうふうなものかということを一つはっきり伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/67
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068・真田登
○真田政府委員 事故防止のためにいろいろと組合とか何かを作っておりますものが、この保険について代理店として協力をしたい、こういう申し出がありましたのと、現在すでに代理店をやっている人たちを排除するということは無理じゃないかということで、その両方の考慮から「その他の者」という字を入れたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/68
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069・關谷勝利
○關谷委員 「その他の者」という字を入れたために——先ほど事故防止の点については表彰その他というようなこともありますが、たとえば業種団体等がいろいろ指導もし、あらゆる面におきまして協力をし、指導することによって、事故防止というようなこともできるのでありますが、従来代理店をやっておった者にもやらすというようなことになりますと、ほとんどがその方へ集中せられて、結局事故防止等に役立たせなければならないところの事業者団体等が、非常に少いということを聞いておるのでありますが、これを施行してみればすぐわかるのでありまして、ほとんどが旧来の代理店をやっておった者のところへ吸収せられてしまって、団体等はほとんどそういうふうなことがやれないようなことになりはしないかということが、一部でいわれておるのでありますが、「その他の者」というふうなことは、こういうような事業団体が活動をして、事故防止等に協力しておるという場合には、そのような者だけにやらすのだ、こういうふうな方向に持っていったらどうかと思いますが、この点もう一回伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/69
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070・真田登
○真田政府委員 最初に、今までやっていた代理店に大部分とられてしまうだろうというようなお話なのでありますが、今度の制度による保険料を定めますときに、非常に低い付加保険料というか、手数料的なものも非常に低くきめられるのではないか、従いまして今までの一般の保険のような手数料がおそらく手に入らない、従ってそう希望しないだろうと考えられますことが一つであります。それから今のお話の、今までの代理店を排除して、こういった団体にだけやらせるというお話は、この条文をきめるまでの過程にはいろいろと議論が出たわけでありますが、法制的にも、そういう人に限定するということを規定することはどうもむずかしいという意見が圧倒的でございましたために、こういうふうになったわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/70
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071・關谷勝利
○關谷委員 それからこれは大臣におお尋ねをしておかなければならぬのでありますが、以前に区域免許制を廃止をしろというふうな運動が非常に盛んに起ってきたのでありますが、その際に区域免許制を廃止した場合に、小さい一台くらいの業者がどんどんふえてきて、そういうものが他人の人命あるいは身体に損害を加えた際に、負担能力がないから、こういうことで、この免許制を存続する一番大きな機運になって、もしそれをやるなら、この損害賠償保障制度というものができてから後でなければならぬ、こういうふうなことがその当時の言い分であったのでありますが、この法律を施行した場合に、区域免許制というふうな声が必ず起ってくると思うのであります。その際に大臣はこれにどういうふうに対処しようとせられるのか、区域免許制を廃止しようとせられるのかどうか、この点大臣の根本方針を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/71
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072・三木武夫
○三木国務大臣 たしかに一つの弊害がこれで救われる面はあると思います。いろいろこの問題について私自身も疑問に思っている点もあるので、いろいろ検討してみたいと思っておりますが、今私は結論を出していないのであります。こういう法案といろいろにらみ合せて、検討の余地のある問題の一つだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/72
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073・關谷勝利
○關谷委員 いずれあとで資料が出た後に、またお尋ねしなければならぬことがたくさんあるのでありますが、あまり長くなりますので、きょうはこれでやめます。料率を算定する要素というようなことを私先ほどから申し上げておるのでありますが、その中には、いわゆる運転手の技量、経験というふうなものが、要するに入っているのかいないのか、これは資料を見ればわかることでありますし、なお車の新しい古い、これもやはり料率算定の基礎にはなりましょうし、なお付随してひき逃げをやった場合をどのくらいに想定しておるかというふうなことは、資料が出て後にわかることだと思いますので、私は一応この程度で打ち切りまして、資料が出て後に質問をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/73
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074・原健三郎
○原委員長 井岡大治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/74
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075・井岡大治
○井岡委員 この法律には私たちは原則的には賛成なんですが、若干お聞きしたいことがあります。まず第一点に、現在まで自主的におのおの会社が保険に入っておられるようでございますが、これはどのくらいの率を示しておるか。いわゆる全車両中のどのくらいの率を示しておるか、お知らせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/75
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076・真田登
○真田政府委員 大体現在の付保率の表は、車種によって違いますが、平均いたしまして二三・四%というのが現在までの統計でございまして、これはお手元に行っておるのではないかと思います。自動車損害賠償保障法案説明要項の六十二ページと六十三ページにございます右の数字の一番下のところに、平均二三・四%、こういうふうに書いてございます。車種別に見ますと、乗合自動車は五〇%、営業用の乗用車では一七%、なお自家用の乗用車では二四%、普通貨物は割合よく入っておりまして、自家用が五一%、営業用が約五六%、それから小型の貨物は、自家用はほとんど入っておりませんで五%、営業用は四一・六%、こういうふうなことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/76
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077・井岡大治
○井岡委員 これらの保険料というものは大体おわかりですか。今ただちにわからなければ、あとで資料を出していただきたいと思います。
それから法の除外の措置を講じてあるその理由を、一つお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/77
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078・真田登
○真田政府委員 今お話のは、責任保険の除外のお話だと思います。これにつきましては、国と公社と都道府県を抜いております。このほかに政令によって除外すると書いてございますのが、大体予定しておりますのは、外交官、それから行政協定によります車、これは除外するつもりでおります。国についてはこの保険の強制をしなくてもいいということなのでありますが、国に準ずる機関としての公社、国鉄とか、そういったものもこれから除外しても、別に被害者の方について心配することはない。それから地方公共団体についてどこまで考えるかという問題であったのでありますが、自治庁ともいろいろ御相談いたしたのでありますが、県においては国に準ずる措置をしてもいいだろう、しかし市町村についてはいろいろとピンからキリまでといいますか、大きい小さい、まちまちだから、それを一律に除外するというわけにはいかないから、市町村については自家保障の方で特例を認めてはどうか、こういったようなお話し合いで抜きました。それが今までの交渉なり、きめましたまでのいきさつでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/78
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079・井岡大治
○井岡委員 市町村というように考えると、なるほど大きい都市も小さい都市もあり、あるいは村、こういうことも考えられると思うのですが、現在市で経営をいたしておりますいわゆる公営企業なんかを除外する意思があるかないか、この点をお尋ねいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/79
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080・真田登
○真田政府委員 先ほど申し上げましたように、市のやっております公営企業等につきましては、自家保障ということによって、実際には強制保険の適用を除外するといいますか、自家保障の規定に従って、これの賠償能力を確保するというふうに持っていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/80
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081・井岡大治
○井岡委員 なるほど一方において自家保障の制度を認めておる。従って自家保障でこれをやっても大してその違いはないではないか、こういう御趣旨であろうと思いますが、しかしながら先ほど關谷さんが言われましたように、現実の問題としてこの保険が成り立っていかないというようなことになってくると、これは非常に自家保障の問題に対する検討が行われてくると思う。従って市で経営をいたしておる公営企業というものは、これは比較的大きな都市でないと、バス事業というものは経営いたしておらない。国、公社あるいは都道府県と同様に、被害者に対して十分賠償の能力を持っておる、こういうように理解するのが正しいのじゃないか、こういう観点から、もう一度この点を明確にお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/81
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082・真田登
○真田政府委員 賠償能力がありますということは確かにお話しの通りでございます。ただ市をどこで切るかといったような切り方の問題もございましょうし、これを区別して規定することは非常に煩雑でありましたこともございまして、やはり府県で切っておこうということにしたわけでございまして、賠償能力が十分ありますことは私たちもよくわかっておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/82
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083・井岡大治
○井岡委員 切るのがどこで切るか、非常にむずかしいということですが、私は非常におかしいと思うのです。公営企業を営んでおるというように切れば、これは最も切りやすいのです。なるほどあなたの言われるように、町あるいは村というようなことになってくると、切りにくい点もあろうかとは考えまするけれども、現実に市で公営企業を営んでおる、あるいは国鉄であるとか専売であるとか電電公社であるというような組織で切れば、何らむずかしいことはないと思うのですが、この点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/83
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084・真田登
○真田政府委員 お話の出ましたのは、おそらくたとえば横浜市とか大阪市とかいうような大きな都市をお考えだと思うのでありますが、公営企業をやっておりますところにもいろいろございまして、秋田市なら秋田市営、あるいは徳島市営とか相当数がございまして、町営でもやっておるものがございます。ですからそういう切り方で必ずいいかどうかということは、私は疑問だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/84
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085・井岡大治
○井岡委員 市が経営している、こういうように切ると、あるいは村営でやっているとか町営でやっているとか、理屈は成り立とうかと思いますが、公営企業法というものは明らかにその従事員の数によって、これだけでなければ公営企業法を適用しないということを書いておる。従って村営とか町営とかいう論議は出てこない、こう思うのですが、その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/85
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086・真田登
○真田政府委員 私今公営企業法の適用を受ける市と受けておらない市営のバスの区別がちょっとわかりかねますので、これについては後ほど調べさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/86
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087・井岡大治
○井岡委員 それではこの点は後ほどに譲ります。
それからこの法律では保険料をだれが負担するかということを明記しておらない。この点はどういうようにお考えになりましたか、一つお聞かせをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/87
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088・真田登
○真田政府委員 この保険料負担については、この条文では書いてございませんか、大体の場合は保有者、すなわち車を自己の利益のためにといいますか、自己の支配のもとに使う人がかけることになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/88
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089・井岡大治
○井岡委員 大体においてはとこういうことでございますが、今日事故が起っている一番の原因というものは、現在運転手が二重の処分を受けている。事故を起すと会社からその損料を取られる、同時にまた警察の方で処分を受ける。そのために、私は毎日ハイヤーで通っておりますが、去年までは月収が大体三万円近くあった。最近では不景気になったのと、会社がそういう方面で非常に窮屈になってきておる、いわゆる負担をしておる、こういう点で二万円そこそこしか収入が取れない。そのために悪いとは知りながらスピード・アップをやり、従って事故が起る。どうしてもいわゆる借金の足を抜け切ることができない、こういうように言っておるのです。従って大体においてその保有者が持つというような条件では、当然これは会社が従業員に負担をさせてくる、こういうことになろうかと考えるのです。現に入っておる保険会社はほとんどそういう格好をとっておる。こういう事実を見て、私はこの点明らかにする必要があると思うのですが、この点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/89
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090・真田登
○真田政府委員 お話しの運転手にそういったものを負担させたくないということにつきましては、われわれといたしましても保有者がこれをかけることが望ましいと考えておるわけでございます。ただこの保険料の経済的な負担をだれがやるかというような問題は、内部関係といいますか、その車の所有主ないし雇い主と労働者との関係でございますので、これを保有者のみが負担すべしというように規定してみましても、実際にはその両者の間の力関係できまってしまうようなことになりはしないか。従って罰則をつけてみるとか、あるいは無効要件をつけるというような方法は考えてみたのですが、これもどうも法律的にはあまり適切でない。そういったことでこの法律の趣旨から申しまして、そういった関係の事柄を規定することが適切かどうかという事柄も非常に疑問がございますので、そういったことについてはっきり規定はしなかったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/90
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091・井岡大治
○井岡委員 その規定をしなかったというよりは、法律的な関係ではいろいろあることだろうとは思いまするけれども、今一番大きく事故を起している原因というものは、もちろん自動車の輻湊ということもあるでしょう。道路の狭隘ということもあるでしょう。しかし現実には運転手が生活ができないために、無理な運転をやっておるというところに問題があると思うのです。この点はお認めになると思うのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/91
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092・真田登
○真田政府委員 現在の運転手関係の事故が、全部そうした待遇問題と申しますか、そういったものからだけだとは考えておりませんが、その一部にはそういったものがあるということはわれわれも承知いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/92
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093・井岡大治
○井岡委員 私の言ったのは、全部だとは言っておりません。そういうことは当然大きなウエートを占めておると言うのですが、この点はお認めになるでしょう。現に待遇の問題はその一部だとはおっしゃっておられますけれども、現実にハイヤー、タクシーの勤務状態というものは、ひどいものになると二昼夜やって、そして一日を休ましてやるというような方法をとっている。こういうことからくる疲労、従って晩の十二時、一時に歩いてごらんなさい。ハイヤー、タクシーの運転手はほとんど寝ておるという状態です。やれないと言っておる。ここに事故の大きな原因があると思うのです。しかもそれは自分の生活苦からくる過労、こういうものが非常に大きいのです。従って法律的にいろいろ意見はあろうとは思いますけれども、この点を明確にしておかないと、かえってその結果からくる事故がふえてくる、こういうふうに考えるのですが、この点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/93
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094・真田登
○真田政府委員 事故の原因としてただいまお話しがありました労務管理の問題が大きなウエートを占めておるというお話は、その通りであります。これにつきましては、その勤務につきまして労働基準法との関係から、今まで適用除外になっておりましたものを、適用除外をまた削除するということで適用されることになったのでありますが、実際の勤務の態様と、労働基準法に規定されます規定とが、すぐこれに追っついていけないというような形になっておりますために、これを一、二年の間に実施するということでやらしてもらえないかというのが、自動車事業者の一般の希望であるようであります。また実際に運転に従事しておられる方々も、休養施設の問題とか、あるいは自分の家の問題とかいうことから、急激にそういった厳格な規定に戻りますと、かえって収入が減るということで、必ずしも希望していない向きもあるというふうに聞いておりまして、そういった点でなかなかこの問題はむずかしいわけでありますが、ただこの法律に保有者が負担して運転手が負担すべきじゃないということを書きますということは、先ほど申しましたような点から非常にむずかしいと思うのであります。ただ保険をかけることによって、運転手の負担が急にふえるだろうということは、実際にはそうじゃないのでありまして、今までにも当然運賃の原価計算等には、保険というものについて原価計算の中に含まれておったわけでありまして、従ってそういったものは今までも当然車両主としては払うべきであったということなんでありますが、それが現実に運転手さんにかかっていたかどうかという問題でありまして、今後強制されたために、今までかけてなかった人が、自分の収入の中からかけるのなら運転手にこれを振りかえるというふうなことは、そういうことはあり得ることだと思いますが、ただ全部持たせるのがいいか、あるいは二人の間でどのくらいの比率で持つとかいうふうな問題もあることと思います。いずれにしましても、そういったことをこの法律の上に表わすのは非常にむずかしいものですから、そういうことについては全然触れてなかったわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/94
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095・井岡大治
○井岡委員 ちょっと余談になるようですが、労働基準法の問題について、事業主の方が希望しないのはわかるのですが、労働者が希望しないというような御答弁をなさっておるようですが、私はそれはとんでもないことだと思うのです。どなたにお聞きになられたかは知りませんが、私はそういう答弁をする者は一人もおらないと思うのであります。同時に収入の問題ですが、収入が少いから無理をしておる、これはもう事実なんです。どのような答弁をされようとも、これは事実なんです。従って事故を防止するといういゆわる自動車行政の立場からいくと、そういう問題について考えてやらなければいかないことなんです。さらにもう一つ私は今の答弁から意外に感じたことは、現在ハイヤー、タクシーの労働組合ができないというのも、事業主が圧迫をしておるからできないのです。こういう状態の中で、いわゆる法文の上でいろいろ異議があったとしても、これを原則として保有者が持つことが望ましいというようなことだけでは、問題が解決しない。むしろこれを明確にしてやらない限り、これは当然運転手に対して責任が転嫁をされることは、火を見るより明らかなんです。その結果また無理をする、同時に事故が起る、こういうことになると考えるのです。従ってこの点はどうしてもあなたの方で考えてもらわなければならぬ、こう思うのですが、どうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/95
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096・真田登
○真田政府委員 先ほど運転手が労働基準法を希望しないというふうにとられるようなお話を申し上げましたのは、私の言い方が悪かったと思うのでありますが、現在の休養施設が完備していないとか、あるいはうちが遠いために、そういったものをやるなら、必ずそういうものを完備してからやってもらいたいという意味におとり願いたいと思います。そういったために、そんなことではよけい疲労が増して困るからという話が出ておるわけであります。それから、どうしても保有者にといいますか、雇い主に持たせるというふうに書けというお話なのでありますが、なおもう一度研究さしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/96
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097・井岡大治
○井岡委員 この点については後に譲ります。それから賠償の保障、この査定を政令できめる、こういうように言われておるようですが、この点についていわゆる査定委員会というようなものを設ける意思がないかどうか、お尋ねをしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/97
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098・真田登
○真田政府委員 実は自動車事故についても、たとえば海難審判庁のようなものを設けたらどうだというふうなお話があったことがございますのですが、海難審判庁が実際にやっておりますことは、海難の原因を調べまして、海事従事者だとか水先案内人にこういう過失があったときに免許を取り消すとか、業務の停止をするというふうな処分をする機関でございまして、もしそういうようなものを設けるとすれば、むしろ警察関係のことでありますが、関係の方面に聞いてみたのですが、海難と違って、事実認定等に別に特別の専門の知識は要らないしするから、そういうものを認めるつもりは今のところないという話です。またもし賠償責任の決定をどこかで査定するというふうなことになりますと、これは純粋に民事事件的なものでございますので、法務省の方に一応御相談してみたのですが、現在のところではそういったものを特別に設けないで、一般の手続でやりたいというふうな意見を言っておられました。なおこの問題につきましては、あるいは法務省の方に御答弁願った方がよろしいかとも思いますので、私の知っております範囲でお答え申し上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/98
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099・井岡大治
○井岡委員 なおだいぶあるわけですが、実はさらに今の答弁並びに何かを整理して、明日続行さしていただきたい。本日はこれで打ち切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/99
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100・原健三郎
○原委員長 それでは本日はこの程度にして散会いたします。
午後三時四十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X01519550601/100
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