1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十年七月十三日(水曜日)
午後一時三十九分開議
出席委員
委員長 原 健三郎君
理事 有田 喜一君 理事 今松 治郎君
理事 臼井 莊一君 理事 木村 俊夫君
理事 山本 友一君 理事 青野 武一君
理事 大西 正道君
岡崎 英城君 濱野 清吾君
堀内 一雄君 眞鍋 儀十君
關谷 勝利君 徳安 實藏君
永山 忠則君 畠山 鶴吉君
井岡 大治君 下平 正一君
正木 清君 池田 禎治君
竹谷源太郎君 小山 亮君
出席国務大臣
運 輸 大 臣 三木 武夫君
主席政府委員
運輸政務次官 河野 金昇君
運輸事務官
(海運局長) 粟澤 一男君
運輸事務官
(自動車局長) 眞田 登君
運輸事務官
(自動車局業務
部長) 岡本 悟君
委員外の出席者
参議院議員 仁田 竹一君
専 門 員 志鎌 一之君
—————————————
七月十三日
委員伊藤郷一君辞任につき、その補欠として永
山忠則君が議長の指名で委員に選任された。
同日
理事中居英太郎君理事辞任につき、その補欠と
して大西正道君が理事に当選した。
—————————————
七月八日
上越西線直江津、越後湯沢間の鉄道敷設促進に
関する請願(内藤友明君紹介)(第三六四八
号)
同月九日
五島及び壱岐対馬航路の国営に関する請願(石
橋政嗣君紹介)(第三八三三号)
の審査を本委員会に付託された。
—————————————
本日の会議に付した案件
理事の互選
連合審査会開会申入れに関する件
海上運送法の一部を改正する法律案(内閣提出
第四九号)(参議院送付)
自動車損害賠償保障法案(内閣提出第八六号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/0
-
001・原健三郎
○原委員長 ただいまより運輸委員会を開会いたします。
お諮りいたすことがございます。中居英太郎君より理事を辞任いたしたい旨申し出がありますが、これを許すに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/1
-
002・原健三郎
○原委員長 御異議がなければ、さよう決定いたします。
これが補欠選任につきましては、委員長において指名いたすことに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/2
-
003・原健三郎
○原委員長 御異議なしと認めます。それでは大西正道君を指名いたします
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/3
-
004・原健三郎
○原委員長 この際お諮りいたします。御承知のごとく国土開発縦貫自動車道建設法案が建設委員会に付託されておりますが、本法案に関しましては、本委員会といたしましてもきわめて重要な関係がありますので、この際建設委員会に連合審査会の開会を申し入れたいと存じますが、御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/4
-
005・原健三郎
○原委員長 それではさよう決定いたします。
なお開会の日時等に関しましては、建設委員長と協議の上決定いたし、後日御報告申し上げます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/5
-
006・原健三郎
○原委員長 最初に去る七日付託になりました海上運送法の一部を改正する法律案につきまして、参議院における修正部分につきまして、修正案提出者仁田竹一君の出席を求めておりますので、その修正の趣旨について説明を求めます。仁田竹一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/6
-
007・仁田竹一
○仁田参議院議員 それではただいまから海上運送法の一部を改正する法律案に対しまして、修正いたしました点につきましてその内容を御説明申し上げたいと思います。一応修正案を朗読いたします。
海士運送法の一部を改正する法律案に対する修正案
海上運送法の一部の改正する法律案の一部を次のように修正する。第二条第二項の改正規定を削る。第四条の改正規定中第五号及び第六号を次のように改める。
五 当該事業の経理的基礎が確実性を有すること。
六 当該事業の開始によって港湾(河川を含む。)における船舶交通の安全に支障を生ずるおそれのないものであること。
第十九条の見出し及び同条第一項の改正規定を削る。
第二十条の次に七条を加える改正規定のうち、第二十一条第一項の規定中「及び特定の者の需要に応じ、特定の範囲の人の運送をする不定期航路事業」を「、特定の者の需要に応じ、特定の範囲の人の運送をする不定期航路事業及び省令の定めるところにより、短期間人の運送をする不定期航路事業」に改め、同条第二項の規定中「第三号」を「第二号、第三号及び第五号」に改める。この要旨を簡単に申し上げますと、
まず第一は、旅客定期航路事業の免許基準にかかるものでありまして、原案は事業の適確な遂行能力及び事業開始の公益上から見た支障の有無をも審査するよう免許基準を改めようとしているのでありますが、これらの基準はいずれもきわめて抽象的な概念でありまして、かかる規定は往々にして行政庁による法の恣意的運用を許すおそれもありまして、事業費の能力に関する基準につきましては、具体的の現行法の定めを存置いたしますとともに、公益上の支障の有無に関する基準につきましては、政府当局の意図するところを考慮いたしまして、より具体的に表現したことであります。
第二は、旅客不定期航路事業にかかる修正でありまして、この事業と臨時の旅客運送との区別が不明確でありますので、許可制の適用を受けない臨時の旅客運送の範囲を省令において定めることといたします。なお不定期航路の性格にかんがみまして、許可基準を緩和したことであります。
第三は、旅客定期航路事業者に対する改善命令にかかる修正でありまして、原案では船舶その他の輸送施設の改善を新しく命令事項にしようとしているのでありますが、船舶の安全性の確保につきましては、別途船舶安全法の規定もあり、この法律でも第十六条の規定がありますし、また桟橋、待合所等の輸送施設の改善のごときは、港湾の公共施設になっているものもあり、また事業者の施設は事業者の良識に待つべきものであって、法律をもって強制することは妥当でないと考えますので、サービス改善命令につきましては改正を取りやめ、現行通りとしたことであります。
第四は、船舶運航事業の定義にかかるものでありまして、法の適用を有償船舶運航事業に限定しようとする改正は、実際には有償でありながら、無償と称して法の適用を免れる者を生ぜしめるおそがありますので、この改正を取りやめたことであります。
以上が修正案の要旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/7
-
008・原健三郎
○原委員長 質疑は次会に譲ることにいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/8
-
009・原健三郎
○原委員長 次に自動車損害賠償保障法案について質疑を行います。山本友一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/9
-
010・山本友一
○山本(友)委員 過ぐる八日、運輸大臣に関谷委員の関連事項として質問申し上げたのであります。私は概念論を申し上げたのでありますが、あれから静かに考えてみまして、どうしても自分の気持に承服しがたい面がこの法案の中にあります。それは国家保障、社会保障的の性格を持ちながら、一つも国家の裏づけがないということです。すべてこういうような保障法の適用を受けるものは、平等の立場に立たなければならぬという私の感覚から申しましても、大へん不合理な面が残っている。こういう保険制度というものは、一体いかなる理由でああいう特定事項を認めなければならないかということが納得しかねる。また同じ強制的にやられる業体でありながら、国、府県はこれから除いている。また同じ業体に属するような市町村の経営いたしておりますもの、あるいは所有いたしておりますものは、この法律の適用を受けることになっているが、これは一体いかなる理由か。かりにそういうような補償力があるということに定義を置くならば、町や市はその補償力がないかということであります。自動車一台の起しました事案に対して、これらの団体が果してその能力がないという定義がどこから出たのか、また国や県がその特権を持つという定義が一体どこにあるか、今日の定義といたしましては、国の持つ自動車でも、県の持つ自動車でも、人をひかないという原則はないはずです。その場合に国なら補償力がある、県なら補償力があるという内容になっておるようでありまするが、その国の持つ、たとえば運輸大臣の持っておる車でも、場合によりますれば、運輸大臣以外に使っておる人があるかもしれない場合に、偶然大臣以外の、つまり国用以外に使ったときでも、人をひく場合があると思うのです。その場合、国用に使っておらぬ国の所有の車が、果してこの起った現実の事態に対しましてどういうような処置をするかということであります。国の用でないからおれの方はそれには責任を持たぬというようなやんちゃな方針を持つということは、この立法の運用に非常に適正を欠くうらみがあります。こういうところにまで自家保険制度の特典とそれから官庁の持つ特権をつけていくという制度は、どこから出ているのかということを、詳しく納得のいくように説明をしていただきたいと思います。こういうような問題が原則的に解決いたしますれば、あとはいずれ——こういうような問題点は過渡期のまだ試験が済んでいない問題であるし、料率等におきましても、これは予算でありまするからやってみなければわからぬ。それは幾らでも是正はできますが、大きな根本問題だけははっきりと国民の前に私は定義を言うていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/10
-
011・三木武夫
○三木国務大臣 自家保険というのは一つの例外措置です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/11
-
012・山本友一
○山本(友)委員 その例外が何のために必要かということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/12
-
013・三木武夫
○三木国務大臣 そういう例外を認めますときには、非常に厳格な基準を持っている。基準によって経理上からいって賠償能力が十分あるという厳格な解釈を持って、それに適用する会社は必ずしも強制をしなくても——この目的は何かといえば、被害者に対してそういう事故などを救済しようというのですから、自分の力でそれだけの賠償能力があるものは、それを全部強制しなくても、例外的処置を認めることが立法の精神にそむくものではない、こういう考え方でそれに例外的な処置をとったのであります。
それからもう一つは、府県、官庁などはこれは賠償能力があると思う。今御承知のように事故が起っても、それに対して賠償能力がないというようなことで、悲惨なことがいろいろ起っておるのであります。官庁の場合はその賠償の能力を持っておるということで、これを除外をいたしたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/13
-
014・山本友一
○山本(友)委員 大臣の御説明によってわかりましたが、しからば賠償能力のあることについて、市あるいは町村を除外するということは、一体どこに理由があるのか。国ならある、あるいは県ならある、市町村なら一台持っておる車の能力もないかということは、私は定義の上から成り立たないと思う。官庁という一語で尽きるならば、なぜそれを特殊扱いをするか、それからまたさっき私がお問いをしましたように、事件が起りました場合に官庁用の車が官庁用の場合には名分が立つでしょうが、もし雑多な用件のために使っておったということがないとはいえぬ。これは現実の問題と思いまするが、その場合に官庁に籍を置いている車は、いかなる場合にでも無条件にこの保険の性格に適用する処置がとれるのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/14
-
015・眞田登
○眞田政府委員 府県を入れて市町村を入れなかったのは、これは府県その他の扱いについて自治庁と御相談いたしました。府県は国に準ずるものとして扱っても、そう大きい、小さいの差もないから、これは一律に扱ってもおかしくはないが、市町村についてはどこで切るかという切り方もないので、一応適用あることにして、自家保障の方で必要な場合にはそれを強制保険に入らないでも済むようにする。なお車両数とかあるいは積立金等については一般の会社並みにしないで、公共団体としての特殊性を認めて、できるだけ自家保障に持っていけるようにすればいいのではないだろうか、こういうふうなお話し合いで市町村を除くことにいたしました。
それから先ほどの官庁の車を私用で使いました場合のお話でありますが、これは正式に借り受けております場合ですと、これはやはり借りたということによって、保険に入っていただかぬと困るわけです。ただ一時使用しましてたまたま事故を起したような場合に、責任者が官庁でもないということになりますと、とりあえずは保障事業の方で保障いたしまして、それから責任者に対して保障事業の方から今度は損害をまた填補してもらうように請求する、こういう段取りになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/15
-
016・山本友一
○山本(友)委員 繰り返すようですが、私はそういう一貫した行政指導を行うのに、資格に等差がつく、あるいは官庁とかなんとかいうようなものから等差がつくという、この原則がどうしても納得しかねる。そういう別問題の事案が起り得る、法律も複雑になるし、また運用も複雑になるのに、何ゆえにかように複雑化しなくてはならないか、大臣の言われますように、保障の対象が厳然としておるから、あえてそれを目的の法律だからいいじゃないか、あえて立法の精神に抵触するものではないというようなことは、ただ唯物的に考えましたときには確かにそうでございましょう。しかしながら公平であらねばならぬということから考えますと、一方の自家保険というものは、かりに事故がなかった場合にはあくまでもこれは一つの蓄積になるでしょう。また損保に落されるか落されないかということは、これはまさしくその対象には私はなりがたいと思う。事故のあった場合においてのみそれの対象ということがいえるが、事故がなかった場合にはいわゆる自己資金の蓄積になる性格を持っておる。一方は掛けずてになっておるというようなことなんでございますから、私はあくまでも基本は甲であろうが乙であろうが、いわゆる特定な大きな資本家のものであろうが、社会相互扶助のラインに沿って、有無相通じて実体的にこれを立法の精神で運用していただくようなことがいい。かつても申し上げましたように、このことは私は理論的にどうしても承服できぬので、ある人に話しておりましたところが、ある有力な業者が、われわれは運輸省の立案者に対して、自家保険を認めなくちゃ賛成しないのだという条件がついて、初めてこれが提案に乗ったのだということを聞いて、僕は不可解千万に思った。これを裏から返してみます場合には、そういうような有利な条件がついたから賛成しておるのであって、私の言いますことが真理であるということは、私はどこまでも撤回したくない。法律は原則として公平を欠かない建前で、国民のためにする政治であれば、そういうようなへんぱなものがあってはならない。大臣の言われるように、ただ物を対象とするのならもっと方法があるはずです。かような方法をもう一ぺん考えてもらいたいし、私はこの問題はあくまでも反対いたします。私は通っても通らなくても、自己の信念は曲げません。こういうことは納得ができません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/16
-
017・眞田登
○眞田政府委員 この法律を作りますにつきまして、われわれといたしましても、一つの理論の問題と実際に運用して参ります上での円滑化という両面から、いろいろと話し合いをいたしました。今のお話の自家保障が非常に有利であるというふうな印象は、この前もお話し申し上げたと思いますが、積み立てて事故が起らなかったときには、その積立金を損金に算入してくれという希望があったわけであります。それについてもできるだけ希望をいれたいというふうな話し合いをしておりましたので、自家保障するといかにも得だという印象を受けておったわけでありますが、事故を起さなかったときにその積立金を損金に算入するということはやめたい、いかにもひいきをしているように見えてまずいということで、損金に算入することをやめました。
それからもう一つは、事故の限度が百万円では、大きな事故が起ったときにとてもまかなってもらえない、そういうのに保険をかけるくらいなら——大きな事故を起す危険のある会社なんかでは、事故が起ったときに非常に大きな金を支払うような結果になる会社、たとえばバスなどの場合には、百万円というような限度ではとてもまかない切れない、そういうのに入るくらいなら、自家で積み立てた方が気がきいているというような考え方も持っておったようでありますが、これも先ほど申し上げました、その限度はとって、何百万円の事故でもこれをまかない得るという形に持っていくようにいたしますと、損金には算入されない、大きな事故が起っても必ず払ってもらえるということになってきますと、自家保障が得であるか、保険に入った方が得であるかということについては、必ずしも一がいに結論が出ないのではないか。ただそういうことを希望して、強制を受けないでも被害者の保護をはかっていくことができるという自信のある会社が言ってくるならば、考えてやってもよろしいということで、この制度を一応置いておきたい、こういうふうに考えたわけであります。なお自家保障につきましては、積立金とか、あるいはそれに対する資産の確保という義務規定もございますし、事故が起りましたときには、その会社の総財産の上に被害者が先取特権を持つ、こういうふうな形にもなっております。また監査も十分やって参りますし、事故を起しましたときの仮渡金も一般の場合と同じように渡さなければならない、そういうことにいたしまして厳重な監督をいたしますが、なお被害者の保護に欠けるようなことがありましたときには、直ちに自家保障を取り消すというつもりで、この規定を残しておきました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/17
-
018・山本友一
○山本(友)委員 局長のお話を聞きますと、当初自家保障に期待をした業者の気持は、損金の対象もなくなったのでさほどのことでもないというお話であります。しからば一番楽しみにしておった楽しみがなくなったのだから、何ゆえに平等が悪いということが残るのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/18
-
019・眞田登
○眞田政府委員 自家保障の積立金を損金に算入するということを一番楽しみにしておったということではないのでありまして、自分のところで、たとえば百両のバスを持っておれば、保険金に使うだけのものを会社で——もちろんこれは保険金に該当するだけでは足りないのでございますが、積み立てておいて、そうして少しでも事故をなくすることによって積立金が残ってきた場合には、それを会社の内部で何とかに使いたい。それは損金に算入いたしませんので、四二%の法人税は当然取られますが、それでも事故を起さないということによるものは残ってくるわけであります。そういう意味では小さな会社が保険金をかけて、事故を起さなかった場合には取られたきりになるが、逆に事故が起きたときには、かけた保険料よりもずっと大きな保険金がもらえるという一つの期待の問題と見合いにできるのではないか、こんなふうに私たちは考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/19
-
020・山本友一
○山本(友)委員 御説明を聞きますと、私の方が負けるかもしれませんが、私はどうしてもまだ納得ができません。あなたの方が上手ですけれども、私の言うことの方が道理において狂いがないのであります。なぜなれば、あなた方は楽しみにしておらなかったと言われますが、楽しみにしておらぬのになぜ条件をつけて、それなら賛成するが、これなら賛成しないという理由が、一体どこから生まれてくるのかということが、直ちに反射的に出るわけであります。私はあなたに言葉に負けても、理念の方で私の方は勝っておると思いますから、これで了承いたしますが、私はかような点において、運輸省が特定の業者のために、こうしたら利益になろう、ああしたら利益になろという親心の心配は、業者としてはありがたいことではありますが、しかしながら私どもは、運輸省いわゆる国がする法律であります以上、国民の前にあくまでも公平の原則を欠いてもらっては困る、かようなことであります。業者の定義を、何ゆえに金持ちの業者と貧乏人の業者に区別するか、位階勲等もなければ華族制度もない時代に、同じ位取りでなぜ不足なんだということであります。それで何のためにこの保険をするかということに私はなお疑義が起る。金持ちのための保険でしたら、それを優遇する保険でしたら、相互扶助なんということは要らざることだ。かような意味合いにおいて、運輸省がもし特定の人のために政治を行い、あるいは行政権を有利に行使するというならば、これはとりもなおさず職権の乱用であって、汚職であります。そういうようなことがあってはならないということを私は常に思っておるのでございまして、その感覚だけ申し上げておきます。今は過渡期でございます。およそ率なんかにつきましても、まだやったことがない、予算でありますから、やってみなければわからぬのでありますが、偉い役人さんばかりにまかせますと、費用がよけい要って、理屈ばかり並べて効果の上らないことを方々で見ております。見ておりまするから、私どもは自動車業者がたえ得る適正な料金でやってもらいたい。これは専門家に聞いてみますと、この率では金が余って始末がつかぬと言います。もし余ったらまた不自然が起ります。なぜ戻すということがはっきり言えないかということを私どもは疑うものでありますが、これもはっきり戻すとは言わない。
それからまた、これは概念的に一つ申しますと、事故の起りますのは、おおむね六大都市の輻湊したところで起っておる、今日の法案の精神から見ますると、自動車業というものに、一般的の強制をしいられておるのでありまして、地域とかなんとかは、これは次に修正で考慮されるかもしれませんけれども、現在考慮されていない。そうすると、いなかの業者は、都会の犠牲になって料金を、納めるということにしかならないのであります。いなかの業者はこういう事故があったら大へんでありますが、これは事故の統計にも明らかな通り、いなかで起る事故は、東京なんかで起る事故とは非常に違っておるわけであります。それが平等の料率をかけられて、都会の犠牲をいなかの業者が負担するというようなことはごめんこうむりたいということが、はっきりした真理であり、理念である。私どもはこういう点を今から順次皆さんに御研究願って、是正してもらいたい、かように思っておりますので、つけ加えて申し上げますが、この点いなかの犠牲で都会のこういうような処置をすることだけは、ごめんこうむりたいと思います。ここら辺をはっきり御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/20
-
021・三木武夫
○三木国務大臣 山本さんの、行政は公平でなければならぬということは、全く同感であります。私もさような見地で運輸行政をやっておるわけであります。この自動車賠償法案は、特定の業者を利するものではございません。これは法の対象は、事故などによって何らの補償を受けない一般国民が対象でございますから、こういう法案によって、特定の業者を利するという目的はいささかもないのでございます。ただしかし今御指摘のように地域差、六大都市と地方とでは、いろいろ事故の起る度合いも違うのではないかということはごもっともです。これは政令において保険料率などをきめるわけでありますから、審議会等に保険料率を諮問する場合に、地域差はつけるべきものだ、六大都市と地方の地域差はつけなければならぬ、こう私も考えております。あるいはまたこれは一年度でありますから、そういうふうに、山本さんは金が非常に余って困るだろうという御指摘でありますが、いろいろ一年やってみなければわかりませんが、もし余れば当然に返すべきものだ。これは営利を目的とするものではございませんから、そういう場合には返すべきものである、具体的に御指摘になった二点については、山本さんの御意見に同感であるということを申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/21
-
022・原健三郎
○原委員長 永山忠則君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/22
-
023・永山忠則
○永山委員 本案の目的であります被害者の保護をはかって、自動車運送の健全なる発達に資するという観点が完全に行われるということができますれば、本案は実に時宜を得たものであると考えられるのでございますが、この点に対して、本案を施行されることによって自動車運送の健全なる発達でなくして、現在でも経営の苦難状態に陥っておる業者が、この強制無過失損害保険によりまして、いよいよ経営が窮地に追い込まれるという状態になるのではないかということを憂慮いたしまして、質疑をいたしたいのでございます。
そこで結局業界が健全なる発達をする上において必要なことは、何といっても需給の調整で、経営の安全ということが第一義でなくてはならぬのであります。第二は事故防止に対する施策が十分できておらなければいけないのでございます。すなわち善良なる国民に被害を与えないような根本的施策と相待って、これらは行わるべきものでありまして、その需給調整の根本を誤まって経営困難なる状態に追い込んでおき、さらに事故防止に対する施策を当局は持たず、この自動車事故の急報する抜本的施策にメスを入れずして、ここに無過失損害強制保険を強要しようというところに、根本的な議論があるのであると考えておるのでございますが、ただいま山本議員から質問いたされました点に関連して、法案の根本問題は順次に質疑をいたすとしまして、せっかく有効な、傾聴すべき質疑がございましたので、その問題とさらに関連をして質問を申し上げたいのでございますが、公平の原理ということは、ことに相互扶助の立場において社会保障をやろうという今日において、力の強いものだけが有利な地位におるというようなことは、断じて許さないという大臣のお考えに対しては同感でございますが、いま少しく相互保険事業というものは、力の強いものが弱いものをかかえて、相互的な共助の精神によってのみその危険分散を合理化いたしまして、そうして保険経済の確立をはかるのでございます。保険経済の確立の面からみましても、力の強い、すなわちバス百台以上、あるいはタクシー、ハイヤー三百台以上のこういう会社を、本強制保険事業から自家保険に逸脱せしめるということは、時代錯誤の最もはなはだしいものでございます。この点は大臣は、断じて自家保険を認めないのだということをここで強く御言明されるか、しからざればそれらを自家保険に認めるならば、加入義務者の組織する共済制度、すなわちバス百台あるいはタクシー、ハイヤー三百台というものを、業者が協同組合もしくは共済組合によってこれの結成をいたした場合においてはどのように扱うか、このいずれかをはっきりしなければならないのでございます。すなわち今日すでに健康保険において赤字に悩んでおるということは、いな各種の保険経済が非常に困難な情勢になっておるという点については、いろいろございますけれども、健康保険において一番大きな問題は、千人以上の従業員を持っておるところのこの組合を認めまして、政府管掌から逃避せしめておる。すなわち弱い従業員を持っておる中小企業者のみを健康保険の政府管掌の対象といたしておるというところに、根本的な赤字の問題が存在しておるのでありまして、今やこの社会保険といいますか、相互保険の保険経済が赤字になっておるということについては、国をあげての大問題であるこのときにおいて、最も経済力の強い団体をこの強制保険の対象から、自家保険へ追い出すというようなことは許されないことであるのであります。そのことは何を意味するかといえば、大会社は労働組合の組織が強化いたし、経済内容がいい関係上、車の整備もできております、労働管理もよくできておるのであります。資金運営の面からみましても、車両の更新もできておるのであります。こういう金融面、あるいは車両の面から、あるいは労働の面から、すべての経営が合理化されておりますので、ここに事故率が非常に少いのでございます。従ってこういう大組織の大会社を、この範疇から自家保険に追い出すということは、結局弱いものが非常に苦しい立場において相互扶助をやらねばならぬという結果に至りますから、現在の健康保険が赤字の状態で現実に悩んでおるこのときにおいて、かくのごとき案が出てくるということは、われわれが最も遺憾に思う点でございますので、この点まず大臣の方から、自家保険を認めないというのか、しからざればそれと同一数量の車両をそろえた共済組合もしくは協同組合の組織体にどのような自家保険を認めるべきか、この点は法文上ではっきり是正されなければならぬ問題だと思うのであります。単なる附帯決議や議論でこれをごまかすことはとうていできないと考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/23
-
024・三木武夫
○三木国務大臣 自家保険は、先ほど山本さんのときにもお答えしましたように、賠償能力があり、経営の基盤もしっかりしておる、厳重な基準を設けて、その基準にかなうというものは例外的に自家保険を認めたわけであります。これは山本さんも同様な御趣旨でありましたが、一律に強制したらどうか、それも一つの御意見だと思います。しかし自分で損害賠償する能力のある場合には、例外的な措置として自家保険を認めることが適当でないかということで、政府は自家保険を認める提案をいたしておるわけであります。なお協同組合などで、ある台数をまとめて自家保険を認めたらどうかということは、出発の当初においてはそういう形の自家保険は考えていないのであります。しかし将来においては考慮すべき問題だと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/24
-
025・永山忠則
○永山委員 賠償能力のあるものは自家保険へという考え方であるならば、それは根本的に思想が違うのであります。賠償能力の強いものこそが保険経済の中に入って、相互扶助の精神によって保険経済の確立をいたすべきで、この強制保険の無過失損害賠償保険経済の確立があり、本旨もそこにあるのでありますから、この点はとくとお考えをいただかなければならぬのでありまして、もし賠償能力ということを中心にいたしますならば、賠償能力なきものに対しては営業は許可されてないはずでございますが、この点どうお考えになりますか。すなわち道路運送法の適用によりまして、賠償能力があるということでこれを許可いたした。もしそれがないということでこの保険ができておるならば、運輸省の許可が誤まっておったということをはっきり言わざるを得ないのであります。われわれは業界をあげてこれに協力しなければならぬとは存じておるのでございますけれども、みずから立つあたわざる情勢に追い込まれては、どうしても協力はできないという絶対の運命に追い込められておるのではないか。われわれは反対のための反対をするというような考え方ではないのであります。この点大臣の考え方をお聞きしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/25
-
026・眞田登
○眞田政府委員 免許と賠償能力の問題でございますが、外国方面での免許の状況を見ますと、事業を開始するには一定額以上の保険をかけなければいけないわけで、賠償能力ありやなしやということがもちろんその内容になるわけでありますが、保険をかけるということが賠償能力のあることを示す一つの方法であるわけであります。従って、事業者として保険をかけないでも事故を起さないでやっていけるなら別でありますが、事故の心配のある業者は保険をかける。保険をかけるということは賠償能力を確保しておるということでありますから、従って望むらくは事業者は全部保険をかけておいていただきたいということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/26
-
027・永山忠則
○永山委員 そんなことを議論しても、全く子供のような議論でありまして、局長はよく御存じのはずじゃありませんか。賠償能力がある業者であらねばならぬということが許可の絶対条件でありまして、従って資本金においても、車両数においても、それを申請する人の資産状態、動産、不動産、積立金まで、あらゆる面を調べて許可いたしておるのでございますから、そういうようなつまらぬ小さいことにこだわらずに——賠償能力なくして許可されるものじゃない、それを許可されたならば、それこそ道路運送法の精神に反するのであります。往々にして道路運送審議員の中にいろいろな問題を起して、賠償能力のない者に許可するのではないかというようなことが論議されて、当局としてはしばしばこれに対していろいろの角度で警告も発し、注意もされたことなのでありますから、賠償能力の問題だというならば、営業関係は全部を除いていくべきでございましょう。しかも自家用の関係において賠償能力の十分あるものは除いたらどうですか。これはそういった性格の保険ではない。それでわれわれは賠償能力のあるものがこの圏外へ出るということに対して、保険経済の面から、相互扶助の精神の面から見まして、さらに公正公平の政治原理の面から見ましても、絶対に許すべからざるものであると思うのであります。水かけ論をやってもしようがありませんが、特に大臣に御考慮を願わなければならぬと思うのでございます。
最後に、小さいことですけれども、山本議員の質問に関連しておるのでありますが、市町村を入れて都道府県を入れてないという点については、幾多疑義のあるところでございまして、この理論から十分検討を続けなければなりません。官庁の車が私用で——宴会かなんかから帰りに事故を起した場合には、どういう取扱いをしようとするのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/27
-
028・眞田登
○眞田政府委員 官庁の車が事故を起しました場合には、官庁が賠償いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/28
-
029・永山忠則
○永山委員 私用でやった場合においても、官庁が全部責任をとると言われるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/29
-
030・眞田登
○眞田政府委員 それは内部的の関係でありまして、その事故について責任のあった者が、最終的の賠償責任を持つわけであります。官庁が一応当事者として賠償しましても、運転手に責任があった場合には運転手、もし乗っていた人が借りて運転した場合にはその人ということで、内部的には責任のあるところに求償権がいくわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/30
-
031・永山忠則
○永山委員 具体的な問題はあとにして、根本的な問題についてお聞きいたしますが、この自動車損害賠償保険というのは歴史があるのでございます。運輸省は最初相互保険制を考えておったが、大蔵省の反対を受けて引っ込めた。しかもそれに対しては国家の補助を考えられておったのでございますが、これを引っ込めたということは、大蔵省は保険業者、いわゆる現在の保険会社というものに対する一種の営業制約である、今日大蔵省がとっておる態度は、自分の子飼いであるところの事業に対しては、あらゆる角度でこれを保護してやる。金融関係であるとか、あるいは保険事業であるとか、あるいは酒造関係であるとか、大蔵省の関係については、あらゆる角度でこれを擁護いたしておるのでありまして、われわれはむしろ大蔵省の今日のこの考え方について、どうしても一矢を報いねばならぬ。運輸省当局と手を合わして、どこまでも一つ大蔵省の考え方にメスを入れなければならぬということで、努力を続けてきたものでありますが、遂に大蔵省の、この保険会社の事業を制約するという考え方、金融資本的な強い考え方等によりまして、運輸省当局がこれを引っ込めざるを得なくなったということが、第一の歴史である、こうわれわれは思っておるのであります。第二の歴史は何であるかと言えば、保険会社を入れるこの法案ならば、しかも大蔵省は賠償課を運輸省に設置する千八百万円の費用だけは出す。社会保障である。大体社会保障制度に対しては、原則としては事務費を全部政府が出しておる。労災関係は特殊の工場及び資本家の関係でありまして、その他の社会保険に対しては、給付の補助まで今出しておるのであります。さらに事務費は全額補助である。この性格はすなわち社会保障である。この社会保障の性格に対して、大蔵省は運輸省案の前の状態ならば、これに対して事務費補助を出さねばならぬ。しかもひき逃げ等によってやるところの分は一切政府が持たなければ、持つ責任者がない。その金額実に潜在ひき逃げ等を一緒にいたしますれば、三億数千万円だろうといわれておるのでありますが、これらの分に対しても大蔵省は出さない。こういったようなものは大蔵省は出さずに、しかも保険業者を中核に置くということで、運輸省を追い詰めてきたのでございます。しかるところ運輸省は、これを何とかして成立させたい、ということは、われわれも同じ考えでございます。何とかして成立させねばならぬという意思を強く持っている。ところで業界の方では、百台以上持っておるバス会社、あるいは三百台以上持っておるところのタクシー、ハイヤー、これの中核をなすものは日通でありましょう。あるいは大会社でありましょう。これらの人々が猛然と反対をいたしました。自家保険を認めれば賛成してやろうということで、運輸省当局に申し出た。運輸省当局は何でもかでもこれをやりたいという考え方のもとにおいて、ついに大蔵省当局の、保険金融資本を擁護するという立場から、政府の金を社会保障であっても出すまいという、いわゆる大蔵省の金融至上主義の立場に立つこの強い力に圧迫され、一方は強い業者の反対を受けて、その要撃を受けて自家保障を認めるというようなことで、この法案は全く力の弱い、今日経営に困っている中小企業者だけに危険負担をせしめて、相互扶助でやろうという、実にその名はりっぱでありますけれども、実は一番弱い弱小企業者に一切のしわ寄せをしてやるというこの法案に転落をいたしておるのでございます。この歴史的経過をわれわれは承知いたしておるのでありますが、この点に対する大臣の御意見を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/31
-
032・三木武夫
○三木国務大臣 最初この保険をやる場合に、私も保険金をある程度国が出すことが適当であるという考えでした。そういうことで大蔵省には折衝いたしました。しかしいろいろ今年度の財政的な理由からして、それは実現しなかったのであります。この賠償法案がそのまま社会保障だとは私は思わない。まあ社会保障的という的を使えば言えましょうが、そのまま社会保障だとは私は思いません。あるいは外国においても、これは社会保障だとは言えないと思う。まあしかし日本のような場合は、これは社会保障的性格ということは言えるでありましょう。こういう点で的にしても、社会保障的性格を持っておるのですから、少し国の事務費でなしに、保険金の補助もやはり取りたいと思いました。相当努力はしたけれども、実現はしなかった。まあ将来の一つの課題と考えております。そういうことになってくれば、この法案自体が多少の国の補助でも出るということになれば、いろいろもっと考え方もあったと思います。そういうことで、経過は一応永山さんのおっしゃるような、大蔵省と大企業者の要撃にあって、これが非常に曲げられた、そうも考えてもおりません。大業者、大きな自動車業者が私のところへは何びとも、来た者は一人もございませんでした。私自身がそういう大業者の圧迫というようなものはございません。圧迫どころか、陳情も一人もございません。そういうことで、大業者自身にしましても、自動車局長がお答えしておる通りに、これは自家保険ということが必ずしも採算上どうか、これはやってみなければわからぬ点があります。準備金などを税金で損金に落さないのですから、せいぜいよくできて自家は少い。そうなってくると、課税対象からのがれるわけにはいかないから、これが大業者、大自動車業者を保護しておるとは私は思わない。そういう意味から、いろいろお述べになった経過は、大蔵省との関係は御指摘のような面がございますが、しかしこれは大業者を保護するというよりは、われわれがまっすぐに一筋に考えたのは、日本のような場合に、事故が起って何らの給付を受けない多数の不幸な人々のために、何とかこれを救済できないかということが、この法律を貫いた精神である。大業者を保護するとかなんとかいうことは、これは少しも脳裡にあったことではございません。しかしこの法律は初めてできるのでありますから、いろいろ各委員の御指摘のような不合理な点もございましょう。これはやはり将来において是正をしていかなければならぬ面が、経験を通じて起ってくる。完璧なものだとは思っておりません。しかしこういう不完全なものでもある方がいいのか、ない方がいいのかといえば、やはり国民大衆の利益からすれば、不完全なものでもある方がいいのではないか、これを今後の実際の経験を通じて、完全なものにしていきたいと考えておるのでありまして、大業者というような人の利害を頭の中に入れたことは毛頭ないということは、一つ御了承を願いたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/32
-
033・永山忠則
○永山委員 われわれもこの自動車損害賠償がすみやかにでき上ることを希望しておるものでございますけれども、経済的に最もしわ寄せを受けて、経営難に陥っている中小業者の犠牲においてやることは、断じて許されぬところでございます。ただいまの大臣のお話をもってすれば、もちろん経過はそうであったろうが、しかし大企業者をこれから除くという考え方はない、またその圧迫を受けたものではないということもまたそうであらねばなりませんけれども、事実においては、大企業者がこの案を考えられたのは三年前ないし四年前であります。その当時から絶えず大企業家と大蔵省とが折衝を続けられまして、ようやく大企業者をこの自家保険で押えて、それがまとまるという前提にのっとって、事務当局が決議をいたした、そうして大臣のところに出るまでに激しい論議が戦わされた事実を、われわれは目をおおうて見ないということであってはならぬと思います。しかしながらこの法案に対してまっこうから絶対に反対だということを言い得るものはないのでありまして、すなわち今日の自動車事故の情勢、あるいは社会保険のあり方、社会保障の問題等、時代の要請から考えまして、やはりすみやかに成り立てるようにしたいということが念願でございますけれども、われわれの手においてしかも現段階において、これをよりよきものに是正していくことができ得る状態にありながら、政府原案であるがゆえにこれをそのまま押さねばならぬという、そういう考え方であってはならぬと思う。大臣においても謙虚な立場で、これらの不備をわれわれとともによりよきものにするという方向に、できるならば一段と想を練って御協力を願わなければならぬと思うのでありますが、すでに大企業家はこの自家保障ということに対して、必ずしも喜んでいないのだということであるならば、これを吸収いたすという態勢に持っていくこともまた必要なことであります。もしもこれをのがすならば、さらにまた共済組合制度のような、これと並ぶものを認めることにもなるのでありますから、この点をさらに御考慮願いたいのでございます。今日この問題に対して業界の方において旗をあげての反対がないということは、大企業家がすでに自家保険に出ているということ、またこうした社会保障制度の確立こそ、現時の思想体系であるという考え方に立ちまして、業界を指導しておる大会社、大指導者が、みずから自家保障の段階に入っているところから、あげて反対をいたしていないわけでありまして、それと逆な意味において、われわれはほんとうに反対する声さえも持たない中小企業者のために、まじめにこの法案と取り組んで研究してやらねばならぬと思います。そういう義憤に燃えて私はここに立ち上っておるものでございます。そうして真剣に本法案をよりよきものに持っていきたいという念願を持つものでございます。
〔委員長退席、山本(友)委員長代理着席〕
そこで、問題の焦点は、これが民法上の七百九条と本法第三条との関連性において、業者が非常な負担を受けて、営業がとうてい成り立たない状態に追い込まれるのではないかという点であります。これは結局無過失損害賠償でございまして、補償責任を加害者が持つのでございます。いわゆる無過失損害賠償の範疇であり、社会保障の範疇であるということは、もう言を左右にすることはでき得ないのであります。その意味において、私はどうしても政府はこれに対して助成するということが、絶対の原則でなければならぬと思うのであります。従って政府はこれに対して絶対に補助するという態勢を、来年度の予算に盛っていくというまでは、これが実施を延ばすべきだと思います。こういう自動車損害賠償保険法を実施している国の例を見ましても、これが通過したからというので、すぐ十月一日から実施するというふうなことをやっておる国はない。少くともこれに対するあらゆる角度の準備が行われてからにしておる。アメリカでは二カ年の猶予期間を置いて、その期間において事故防止の施策、さらに自動車営業の健全企業への再編成、それに対する業者団体の組織力の強化、あるいはそれに対する助成というふうに、一切の諸準備というものを完了した上でやってきておるのであります。それでこの法案の性格上、どうしても政府が助成するというところへ持っていかなければならぬ、これを助成しかなればこれを実施せず、実施の時間を先に延ばして、そうして大蔵当局にこれを必ず出さねばならぬということを法文に入れていただきたい。すなわち事務費の全額負担くらいは大したものではありません。保険金が六十億だとすれば、その二割で十二億ではありませんか。さらにひき逃げ等に対する保障負担が三億だとすれば、十五億です。ですから、政府はこの事務費の全額負担、さらにひき逃げ等に対する保障負担、これだけのものは政府が出すということを法案に記入して、そうしてこれが実施を予算とともにやるという考え方でいかなければいかぬと考えるのでありますが、大臣の御意見を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/33
-
034・三木武夫
○三木国務大臣 この保険金が業者に対して非常に過大な負担になるとは、運輸当局では考えていないのであります。従来においてもこういう場合の準備は、各業者がやっておったわけでございます。しかしながら今永山委員の御指摘のように、自動車事故に対する賠償保険の根本は、やはり事故防止ということにあるわけでございますから、そういう点で、たとえば事故防止の対策あるいは自動車の需給調整、こういうものを伴わなければならないというお考え方には全く同感であります。そういう点で、最近の交通事故の頻発にかんがみまして、かつ交通取締りには各省関係するものが多いものですから、運輸省だけではありませんで、いろいろの衆知を集めて事故防止の万全を期していきたいということで、最近において政府はそういう対策本部を内閣自体に設けたのでございます。あるいは運輸省自身としても全国一律というわけには参りませんけれども、大都会においてはこれは需給調整というものはやらなければならない。まあ車の少いような地域は別として、需給調整というものも真剣に、これは従来もそういうことはやって参りました。御存じのように新しい免許なんかを押えておるわけでございますが、今後もこれは需給調整をやっていかなければならぬ。こういうことでやはりとの賠償法の実施について考えなければならぬことは御説の通りでございますが、しかし現にこれはもっと早くこういう立法を日本は持つべきであった。それがいろいろな事情で今日まで非常におくれたわけでございますから、永山さんのおっしゃるように、これを来年度予算を取ってから、予算を見きわめてからというふうには考えていない。一日もすみやかに御審議を願って、こういう一般の人が救われるのでございますから、一般の国民の人人にも最小限度の一つの安心感と申しますか、そういうものを与えるととは事実でございますから、すみやかに実施したい。しかしその保険金が中小企業に対して非常な圧迫になるという事実が現われて参りますならば、これはいろいろな点で考慮することが可能だと思います。今当委員会においてほかの委員の方々は、これはもう保険金が余り過ぎて困るではないかという意味の御発言が多いのであります。むろんそうなればこれは返すべきものであり、保険料率なんかの算定ももっと低くすべきでございましょう。あるいはまたそれが非常な負担になってくれば、やはりこの料金、運賃などに対しても考慮を加えなければなりますまい。そういう点で永山さんのおっしゃるように、もうこれを実施すれば中小企業はみな立ち行かぬようになるのだ、こういうふうにその結論を考えてはいないのであります。これをすみやかに実施して、国民の人々に対して交通事故の救済をしたい。その保険料というものがいろいろタクシーあるいはバス自動車事業に対して、いろいろな影響を与えたという場合には、これを別途考えていく、こういうことでどうか来年とおっしゃらずに、すみやかにこの法案が通過できるように御審議を願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/34
-
035・永山忠則
○永山委員 根本的に負担が増大をして、中小企業者は成り立たぬのだということが問題の中核でございまして、この点については詳細に議論を進めていかなければなりません。その議論を進める上において、現在の乱発の状態であるこの営業のあり方、あるいは自家用の営業行為の問題、あるいは名義貸し等の問題、あるいは不安定なる車両の問題、あるいは二十四時間労働基準の問題といったような、あらゆる点が総合的に運営をされてこそ、初めて中小企業者は成り立っていくのでありまして、それらの点は目をおおうて見ない。そうしてこれに対して施策はやらねばならぬということを強く言うだけであって、根本的な、具体的な施策が並行せず、事故防止においてもしかりでございます。これらのものはあとに回して、この保険事業だけを先行さすということが、実に業界として全く不況に陥らしめるのであるということを、逐次論議を進めていかなければなりません。また大臣が負担は根本的に重くならぬのだと言う、その考え方の根本論についても論議を進めなければいけません。負担は絶対に驚くべく増大するということは、法の本質からしかるべきものでございます。民法の損害賠償責任を、無過失損害賠償責任への転換において、すでに負担の絶対なる増大ということを考える。その負担の増大があってこそ、初めて被害者が有利な地位になる。被害者はそれによって救われる。負担をせずに被害者が救われるということは、政府の補助もなくしてできるものではありません。今日すでに横浜市長を中心として、市のバス業者が、われわれは平均五万円か十万円で済んでおった。それを三十万円ないし五十万円に補償額を引き上げるということでは、負担は増大するのだということを言っている。それ自体が負担が上るということに間違いないのである。また現在事故があった場合において、ほんとうに涙金しかやらぬ、あるいは事故があったときに十分の損害賠償をしていない、だからしてこれを無過失損害賠償にして、被害者の損害を賠償してやろうということが目的であるならば、負担そのものが政府でない場合において、政府が援助せぬ場合、業者の負担が上らぬという理由はないじゃありませんか。大臣の基本的観念をまず変えてもらわなければならぬと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/35
-
036・三木武夫
○三木国務大臣 これは自動車営業の場合に、こういういろいろな事故があるわけです。そういう場合に賠償の支払いも起ってくるし、堅実な自動車事業の場合には、こういうものが営業費の中にすでに算定準備されておるべきものであります。そういう点から考えて、この賠償法が通れば、それだけ従来にない負担が新しく加算されるとは考えておりません。従来もそういうものは、そういう支出があったに違いないのであります。それのいろいろ算用の点では、事務当局は従来に比べて重くならぬのだと算用しております。しかし私はこの法案を実施して、どういう数字になってくるかというものは、必ずしも事務当局のはじいたそろばんだけでもいくまいと思います。そういうことでこの実施をした経験に徴して、保険料率などについても慎重に考えてみたい。またこのことが非常な負担になって、中小企業に属すべき自動車業者が立ち行かぬというときには、それは別に考えるべき方法は、永山委員御承知の通り幾らもあるわけであります。われわれが運輸行政をやります場合に、どうしても自動車業者の経営の基盤を安定さすということは、運輸行政の一つの大きなねらいでございますから、この賠償保険金の支払いのために、日本の自動車業界が非常な窮地に陥るというようなことはありません。それは別途需給調整の面、あるいは運賃改訂の面、こういうものを通じて中小企業が他の理由ならともかくとして、この保険金をかけることによって、致命的な打撃を受けるというようなことはいたさない方針でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/36
-
037・永山忠則
○永山委員 しからば民法七百九条と本法の三条の問題について、大臣の所感を承わらなければならぬのでございますが、われわれは需給の調整、さらに事故防止の問題、経営の健全化の問題、あらゆるものと総合されて、しかも無過失損害賠償の範疇に入る、社会保障的の面については政府が補助を出すという、これらが総合的の運営をされて初めて賠償法というものが、国家のためにまた業者のために、被害者のために総合的に喜ばしいものであると考えておるのでございますからして、少くともこれが施行は四月一日にして、大蔵省から事務費の補助は全額取るということとあわせて、事故防止の問題、需給調整の問題、さらに業界の健全なる、企業の問題等が総合運営されるということを強く言っているのでございますが、ここに負担は驚くべく増大をしてきて、弱小中小企業者は経営が成り立たぬだろうということを申し上げることは、この民法七百九条と第三条との関係でございます。すなわち民法の損害補償は、被害者が挙証責任を持っておるのであります。従って被害者がその立証をしなければ、訴証行為に及ぶことができないのであります。第三条はこの民法の損害賠償を打ち消しまして、加害者が三つの立証をしなければこれを取り上げない。そうして損害賠償の責めに任ずるのでございまして、挙証責任を加害者に置いておるのであります。運行者においておるのであります。この挙証責任こそ、旧来挙証責任が被害者にあったがために、被害者の方においては十分の賠償を受けることができなかったということは、逆に今度は挙証責任が運行者にあるということになれば、運行者はまた十分の挙証をすることができないから、ここに無過失的性格があり、社会保障的性格がありまして、そしてこれの負担が必然的に増大をするということは申すまでもないのであります。この第三条によって民法の七百九条を押えたことに、この法案の骨子がある。そこに無過失損害賠償といわれ、社会保障といわれる骨子があるのでございます。そして被害者によりよく賠償をするということがねらいなんだ。だから負担が減るというようなことはとうていあり得ないと考えるのであります。この点はすでにはっきりわかっておることでございますが、さらに大臣の意見を承わりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/37
-
038・三木武夫
○三木国務大臣 無過失の責任主義はとったのでありますが、やはり自動車事故というものの姿が、非常に複雑でありまして、一々被害者が立証をせよといっても、なかなか立証が困難な場合もございます。何分にも自動車が近代的な生活に欠くべからざるもので、ふえてくるその傾向は阻止できない。しかも都市交通が複雑になってきて、なかなか自動車事故がほかの事故のように簡単なものでない。非常に複雑ですから、一々過失を立証するということは、自動車の場合にはなかなか困難な場合がある。そういうことでむしろ無過失の責任主義をとることが、近代の社会においては責任の公平を期するゆえんではないかというところに、立法の出発点があるわけでございます。これが今後段でお述べになりました非常に負担の過重になるのではないかということについては、いろいろの数字などではそうはなっていないのです。従来もやはりこういう事故に対しての、何と申しますか、準備金のようなものは、各業者がやはり相当計上しなければならなかったので、この保険金によって数字の上では重くなったような数字にはなってないのでございます。これはあとで自動車局長から申し上げてもいいのでありますが、私が言うのは、やはりこれはやってみて、その経験を通じて将来においてこの保険料率等は今後再検討をいたしたい、もしどうしてもこういうことで中小企業が非常な圧迫を受ける場合には、今度は運輸行政の見地から、これをそういうふうな致命的圧迫にならないような方法を講じたいということを申し上げておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/38
-
039・永山忠則
○永山委員 被害者の方が立証が困難だということであるし、自動車事故は複雑多岐である。だからまた同じように運行者の方も立証が困難でござまして、そのしわ寄せを運行者へ持ってくれば、当然に運行者の負担が多くなる。そうして被害者に対して損害を補償できるというところに法のねらいがある。われわれはまたこれに賛成いたしておる。この社会保障的性格に対しては賛成しているのであります。そういうことを反対しているのではない。しかし負担が軽くなるということはあり得ないと申し上げているのでありまして、そのことはすでに公聴会でも言っているごとく、一件五万ないし十万、運輸省の試案においても死亡者に対しては三十万円、重傷者には十万円、軽傷者には三万円を考えているということを言われているのでありますが、全国平均では一体どうなっているか、その全国平均の統計をお聞きいたしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/39
-
040・眞田登
○眞田政府委員 ただいま負担の増にならないかというお話がございまして、現実の賠償額の支払いが全部三十万、十万、三万とはなっておりません。従って今まで被害者がそれより少い金額でしんぼうをさせられていたということでありまして、もしこれだけの金額が払われるということになれば、確かに被害者はそれだけの救済が得られ、加害者側は今まで払ってなかったものを払うということはその通りでございますが、実際は払うべきものを払わなかったといこうとでありまして、それを払わせようというのが今度の法律の趣旨でございますが、なおわれわれの方で事業者についての運賃の原価計算をいたします際には、必ず事故賠償金というものを何がしか見込むというようにして原価計算をやっているわけでありまして、従いましてキロ当り三十円なら三十円というタクシーの原価が出まして、これが実車率その他の関係で二キロ八十円なら八十円というふうにきまっておりまして、この中に賠償のために充てる金が、たとえばキロ当り六十銭というふうに入っているわけであります。その金額が今度の賠償を強制したものと比べてどうかという問題はございますが、かりに一万円の保険料を年に払うといたしますと、一日約三十円と考えられるわけであります。現在の東京付近では、タクシーは一日三百キロ近く走っているのが普通のようであります。いい悪いは別といたしまして、三百キロ走っておりますと、この三十円が十銭という計算になるわけであります。キロ当り十銭というものが強制保険で加重されてくる。今まで事故賠償金として考えておりました六十銭程度のものの中から、強制の保険料としてそれだけを差っ引いて払ってもらいたい、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/40
-
041・永山忠則
○永山委員 私が質問いたしたのは、全国の事故について、一件当り死亡に対してはどのくらいになっているかということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/41
-
042・眞田登
○眞田政府委員 具体的な賠償額について、個々にわれわれのところへ報告が参っておりませんので、わかりませんが、しかしながら重大事故としてわれわれの方に報告が来ましたときには、その被害者に対する賠償をどういうふうにしたか、跡始末をどういうふうにしたかということを調べておりますので、大きな事故については大体のところはわかっておりまして、今までのところは死者に対しては大体二十万から三十万というのが、大きな事故の起きました場合の支払いの金額であります。それから重傷の場合には五万から十万くらいの額になっておりますので、この二十万ないし三十万のうちの三十万を保険の限度ととり、また五万ないし十万という重傷に対する賠償金の十万というものを保険金として考えた、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/42
-
043・永山忠則
○永山委員 この問題を起してからすでに四年になんなんとする間において、これらの根本的調査ができてないということは、全く本法案通過に対する当局の怠慢であるといわなければならないのでありまして、これらの数字が信を置けないことは申すまでもないのであります。私が大臣に質問を続けんとするのはなぜかといえば、今局長の言われたごとく、やるべきものをやってないのだということを言っておって、大体大きい事故は二、三十万円だ、そして傷害関係は十万円くらいだ、だからそれを見舞ってやるのだということでは、これは法案の体をなさぬ。これは民法七百九条によって、民法上損害賠償責任を業者は持っておるから、それに従ってやっているのであります。この法案が出れば、いわゆる三条によって無過失損害賠償の責任を今度は持たされる。だから、やるべきことをやらなかったのじゃない。民法上の責任を遂行した。従ってその賠償金額が少いのじゃないか。今度は無過失損害賠償の本法の三条の適用を受けるのだから、当然に負担が上るということは、もう論議する余地はない。これらの点を十分お考えをいただきますれば、負担が上らぬのだということでまず始めようという考え方が間違いでありまして、負担は当然上るのだ。いわゆる民法上の相互過失相殺の補償責任を被害者が持っている。この民法の方を制約して、そして運行者が挙証責任を持つ無過失の損害賠償へ持ってきたのだ。だから被害者が、旧来十分被害に対して損害を補填してもらわなかったのを補填してやるのだというととろに、われわれは賛成している。それでなければ本法の意義はない。従って、旧来もらっておったような状態をこのまま強制保険にしてやるということでは、意義がない。また三条の精神からそういうことはあるはずはない。それを負担は同じくらいだということで、数字をごまかしていくことは、観念的に間違っている。負担が同じであってはならない。同じならば、何もこの法案を提出する理由はない。旧来のやり方が十分な損害補償をしていないのだ。それは民法七百九条によって、相互過失だ。被害者が挙証責任があるから、なかなかその挙証ができない。だから、第三条の無過失に持ってきて、挙証責任を運行者へ持ってきてやらなければならぬ。そして損害を十分に補償してやろうというところに、本法の性格がある。社会保障的、無過失的責任がある。そうなれば負担は増大しなければいけない。だからその増大する部分に対しては、国家が補償すべきである。国家が補助金を出すべきだということが、議論の中心になってやっておるのでありまして、ただあまり負担はかけないということで、いたずらにこの法案を通過させさえすればいいのだという考え方で、議論をさるべきではないのでございます。そこでお聞きいたすのでありますが、本法制定に当って、一人当りあるいは一事故当りというものを政府の方では方針をきめられておりますが、それは關谷委員の方から質問があって、撤廃することになっているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/43
-
044・眞田登
○眞田政府委員 一人当りの金額については、そのままでございます。それから一事故当りについては、撤廃するつもりでおります。なお今第三条と七百九条の関係、その他負担の増か増でないかというお話がございましたが、責任があるかないかということを誉めるのについての問題が、七百九条と三条の関係であります。現在では、判例的にはすでに三条と同じような建前で進んでいるわけであります。
それから負担の増の問題は、現在被害者に対してどれくらい払っておったかということにかかるわけでありまして、実際にわれわれの方で調べてみました判例その他でも、大体死者については三十万円程度という例が多い関係から、そういうふうにきめたわけでありまして、負担がふえるであろうということは、確かに払うべきものを今度は払わなくちゃいけないという意味においてふえてくると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/44
-
045・永山忠則
○永山委員 これは大法案で、世界においてもこれを完全にやっているのはドイツとスイスくらいで、あとは十分調査ができていない。だからこれは幾多やるべき道がある。これだけでいくべきものでなくて、他に方法がある。
それから質問を続けますが、どうしても挙証責任が運行者にあるという点に対しては、本法を制定した趣旨から見て、それだけは上らざるを得ないことは局長といえどもお認めにならざるを得ないし、またそういうお言葉でございます。一人当りの保険金額の制限は、これを撤廃せない、こうおっしゃるのですが、關谷委員の答弁では、それは撤廃するように聞いているのですが、もう一度。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/45
-
046・眞田登
○眞田政府委員 一人当りの保険金については、原案通りやりたいと思っております。一事故当りの総額については、その最高を百万円とかあるいは七十五万円とかいうのは、はずしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/46
-
047・永山忠則
○永山委員 そこで大問題になるのでありまして、一人当り三十万円というものが、挙証責任がある。運行者は挙証ができずしてこれが決定した場合においては、その後の三十万円をこえる損害に関しては、当然に残るわけでございます。この点は前から質問を続けておりますから、申すまでもございません。三十万円で打ち切られるのだ。いな三十万円という言葉は使いますまい。この無過失強制賠償保険によって、一切の問題を解決してもらえるのだ、損害問題は解決するのだということであって、初めてこれが業界その他の方においても、これならば現在の経営上合理化をはかることによって、何とかやるというようなことをも考えられる一縷の望みがあるかもしれませんけれども、との一人当りの保険金額に制限を受けたならば、どういう結論が出るかというのであります。すなわち挙証することができずして、自己の責任になって、ここに損害賠償の死亡三十万円を払った場合におきまして、次の損害賠償について訴訟が起きた場合においては、すでに自分の方が損害の挙証ができない。自分の方で挙証できないから、自分に過失がありと認めたのでありますから、抗弁の余地を持たないのであります。そうなってきた場合においては、ほとんど無条件的に運輸省が現在支払ってるおところの洞爺丸並びに紫雲丸のような人命に対する—運輸省の性格において算定をされておるホフマン方式と申しますか、この範疇に、人命でございますから、当然損害は要求をされてくるものである。またそれだけのものを支払うことによって、初めて被害者に対する国家補償的な性格が表われてくるのであると考えておるのでありますが、一人当りで制約をするということは、さらにより以上の損害を要求するところの起点となると考えるのでありますが、この点を一つお聞きいたしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/47
-
048・眞田登
○眞田政府委員 お話の責任がどちらにあるかという問題と、それからその責任があったときに損害額を、あるいは損害賠償額を幾らとするかという問題とは、別の問題だと考えます。責任があるときまりましても、その損害額が幾らであるかというととは、第一次的には示談できまりますし、もしそれについて不服であった場合には、訴訟を起すということになると思いますので、三十万円になるか、あるいはそれより下になるか、あるいは実質的にもっと多くなったために、保険金額では間に合わないということがあるかもしれませんが、それは損害賠償の額の決定の問題であって、責任の所在の問題とは別個に考えなくてはいけないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/48
-
049・永山忠則
○永山委員 私が御質問申し上げるのは、挙証責任のある運行者が、相互過失を主張いたして、三十万円が二十万円になったという場合においては、ただいまの局長の議論は一部肯定できるのでございますが、すでに自分の方で挙証することができずして、損害の責任者となった、そして三十万円払ったならば、次に訴訟行為が起きた場合において自分の方が責任者であり、挙証することができぬのでありますから、運行者としては一切の責任を持っておるわけであります。従って当然にその人の人命に対する補償の残りを負担するという判決を受けることは、当然であると考えるのでありますが、この点をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/49
-
050・眞田登
○眞田政府委員 今のお話の最初に三十万円払うということが示談できまったという場合のお話で、そのあとで訴訟を起したということのように受け取れるわけでありますが、いずれにしましても訴訟を起した場合には、その損害額を幾らにするかという問題は別途裁判によってきまるものでありまして、は三十万円が正しかったという結論になりますか、あるいはもっと払えという結論になるかは、別の問題だと思います。ただ責任があるということについては、一応認めたというお話はよくわかったのであります。ただ額の決定はやはり裁判所が幾らが正しいかということをきめるまではわからない、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/50
-
051・永山忠則
○永山委員 結局民法七百九条を第三条によって打ち消したのでございますから、そこで損害を起した運行者が自己の損害なりと認定をいたして、三十万円を支払った場合においては、それは当然に次の人命に対する不足額が要求をされてくるのでございまして、そのことが示談によって、訴訟を起さないから三十万円にしてくれ、あるいは訴訟を起すからというような問題とは、この法文の性格は違うのでございまして、法文の性格は挙証責任があるが、挙証できぬ場合においては当然に三十万円払わなければならない。挙証できぬのだから、自分の責任、自己の過失であります。自己の過失だときまったものが、三十万円でがまんするはずはないじゃありませんか。今日裁判所においてあるいは今日の民法七百九条における損害賠償が絶えず事案が延びていき、その金額が押えられていくということは、挙証責任が被害者にあるから、そうすると運行者がこういう理由でありましたということを言って論争していくから、相互過失の線があって、そこで損害金が押えられてくるのでございますけれども、民法七百九条を打ち消されて、本法の第三条で決定づけられた以上は、すでに自己に責任ありということを認定した以上は、その人の生活状態、あらゆる状態から見まして、裁判所はこれを決定するのでありますけれども、裁判所の決定のときにおいては、私が個人の会社であるときにおいては、私の負担能力並びに個人の事業関係のあらゆるものを総合をいたし、その被害者の家族等いろいろのものを総合してきめるのでございますが、そのきめる基準となるべきものは、国家管掌をいたしておるところのこの無過失損害賠償者である運輸省に賠償課を設けて、そうして国家補償的性格でもってこれを指導しておるものであるというならば、その賠償額は運輸省の他の事故に匹敵したものを中心に、当然にその線をそろえるべく判決を受けられるということは、これはもう自明の理ではございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/51
-
052・眞田登
○眞田政府委員 お話の通り、そのときの賠償額というものは、加害者の状況も見ましょうし、被害者の方の状況も見て具体的にきまるわけであります。ただわれわれの方で一応三十万円くらいを適当と考えましたのは、今までのわれわれにわかっております報告による事故の賠償額、それから判例等を調べてみましたところの賠償額、そういったものが大体その見当でありましたので、それを一応今度の保険の基準に置いた、こういうことでございますが、責任があるときまりました場合の賠償額というものは、そういったふうに個々の場合にきまるのでありますが、この三条及び七百九条の問題は責任があるときまるまでの問題であります。それを現在ではすでに訴訟法的には民法七百九条がこの三条にありますような方向に持っていかれておる。従って現在大体その方向にありますものを成文化した、こういうふうにお考えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/52
-
053・永山忠則
○永山委員 民法七百九条が社会情勢に応じて挙証責任が被害者にある、その挙証責任を比較的に軽く見ておるという判決の傾向があるというようなことは、それは民法七百九条を中心にして考えられることでございまして、その民法七百九条を本法の第三条において打ち消してしまっておれば、本法において新しい判例を作られ、判決は作られるのでありまして、従って古い民法の七百九条の挙証責任が被害者にあるときのこの判例、並びにその被害者に挙証責任があるところの民法の損害賠償のこの事例を中心に、これを立案をし、計画を立てるということはあり得べきことではありませんが、それを打ち消すためにこの自動車無過失損害賠償という線を打ち出したのであります。そこで外国の事例を見ましても、民法の七百九条の相互過失責任制というものを打ち消さずに、即決裁判制をもってやっておるというのが一般通例であります。無過失損害賠償の線に飛躍するということは、すなわち国家保障を強化しようというようなドイツにおいては、その他国家保障制度の確立を主張しておるところの社会主義国家体制においては、そういう傾向になるのであります。われわれはここに無過失自動車損害賠償保険に反対するのではない、これをよりよきものにして、すみやかに実行したいという点を申し上げておるのでありますが、それにはどうしても新判例となる新事例でいくのでございますから、そして無過失の部分に対するだけは政府が金を出すべきだ。社会保障ではないか、無過失ではないか、政府が金を出さずして、弱い業者だけの責任においてこれをやるということがいけないということを申し上げたい。政府が金を出さないならば、即決裁判制をとっていくということをやって、無過失という線をのけて即決裁判に持っていって、強制保険は生かしていくという行き方が幾らでもあるではありませんか。われわれはもちろん無過失の社会保障制を希望するものですから、その次善案をとるものではありません。すなわち今の運転手にやっておるような即決裁判制です。しかしこの第三条は、民法七百九条をそのまま残すのだ、相互過失責任制を認めるのだ。しかし即決裁判制だ。すでに裁判まで社会保障的性格に移行しようとするならば、それでも差しつかえないではないかということは理論的に言われるのであります。それをもさらに飛躍していこうというならば、無過失でいくならば、なぜ政府が補償しないか。過失があって三十万円出すということで金を払って、そのあとは当然政府管掌の損害補償ではありませんか。運輸省に賠償課を設けた、損害賠償であるならば、国民的感覚は、必ずや人命の点につきましては多い方がいいのだ。ビキニの人命補償以来、人命の補償の金額が上りつつあることは好ましいことだ。その好ましい例に社会常識を自然に持っていくということは当然でありますから、自己の責任において三十万円の損害を出した者は、必ずホフマン方式によって百万円、子供は五十万円、こういう運輸省の紫雲丸の線に飛躍すべきだ、またそこにいくのだということが考えられるのであります。だからして、今日業者はおそるべき負担を受けて、経営が成り立たないじゃないか。かるがゆえに、一人当りの保険金額の制限を撤廃いたして、かりに保険料は上りましても、このプールにおいて相互社会扶助の性格でやるべきでありまして、これを一部負担をして、その他の人命の損害補償は残しておくというような、かわいそうな業者の状態を少しも考慮せずしてやるということであってはならぬと思うのでありますが、この点を一つお伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/53
-
054・眞田登
○眞田政府委員 一人当りの金額についても撤廃してはどうかというお話がありましたが、保険料を算出いたしますのには、何らかの形で基準というものがございませんと、なかなか簡単に保険料を算出するわけには参りませんし、三十万円という線は最近の情勢では決して十分だとはわれわれは考えておりません。人命をその程度に考えるということがあるいは間違いかもしれないのでありますが、ただその程度でも被害者が救済されるということと、一方では、これをどんどん高くいたしますと、また強制保険がかけられますのに、保険をかける人の負担が大きくなるであろうといったようなところから、現在払っております程度を一応の基準とするというふうに考えたわけであります。これを撤廃する案は考えておりません。それから結局こういうふうに強制保険をかけ、被害者を救済することが主たる目的ならば、国が援助をなすべきではないかという御意見は十分よくわかりましたが、われわれといたしましても、今後できるだけ国家的な援助ができますように努力いたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/54
-
055・永山忠則
○永山委員 政府が一人当りの保険金額の制限を撤廃してこそ、業者の負担を相互社会扶助精神によってプールしていくことでありまするから、負担の軽減ができるのであります。その制約をいたして、そうして無過失損害賠償の第三条に自動車事故を追い込めているところに、この人身事故に対しての、生命に対しての損害はさらに飛躍をいたすものでございますので、この点の制限を撤廃するということが、業界の経済の安定をはかる点から見ましても、さらにまた被害者がこれによって訴訟を起して、さらに損害賠償を要求するという手数を省く点から見ましても、本法の負担の点から見ても好ましいのであって、相互危険負担による組織によりましての負担でございまするからして、これはいわゆる現在のままの行き方よりは、よりよき結果になるということを、保険事業を中心に考えたときには、本法の精神から見ましても当然に必要であるというように考えられるのであります。ですから、大臣は一つこの点を十分に御考慮を願いたい。われわれが附帯決議というようなことを幾ら言っても、運輸省の政治的力は弱いのでありますから、法案に縛って、そうして大蔵省がどうしても出さねばならぬということに制約づけてやることが、運輸省のお考えをほんとうにこの法案によって実行するゆえんであるというように私は考えるのであります。そこで問題の焦点はこういうことです。これで非常なる負担を受けることになり、また相互過失であるということで論争をいたして三十万円以下にしぼったものに対しては、訴訟になりましても、比較的その損害は不測の損害を受けるようなことはないかもしれませんけれども、すでに過失を承認して三十万円を払ったものに対しましては、あとの人命に対するところの損害の不足というものは飛躍的に払う。そうしてさらに新判例としては、運輸省の賠償課を設けているが、おそらく国家管掌的性格からいえば、運輸省の人命に対する損害額の線に引き上げられるだろうということが想像されてくるのでございますが、そこでおびただしい負担となり、業界はとうていたえることができない情勢になるのではないかという議論をいたす点はそこであります。
その次には、現在業界は負担能力があるかどうかという問題でございます。もちろん自家保険に逃げました範疇の大会社は、あるいは負担の能力を持つものがあるかもしれませんけれども、中小企業の範疇にありますところのタクシー、ハイヤー、トラック業者というのは、現在の保険料においても赤字が出ておるのでありまして、現在の保険料は民法七百九条を中心にする保険料の算定が行われておりますが、本法第三条による無過失の損害賠償の範疇においての保険料がこれに加わってくるということであったならば、私はとうていこの負担は困難であるというように感ずるのでございます。何となれば、今日運輸当局の施策よろしきを得ずして、ついに乱許、乱発となってきたのであります。従ってその結果といたしましては、先般来大騒動がありました東京都におけるダンピングであります。すでに保険料を加えた料金に引き上げるというようなことはできない状態であります。料金を引き上げるのじゃない、むしろ料金を下げなければ需要がないのだということで、料金ダンピングへ入ってくるのではありませんか。貨物自動車に至りましても、確定運賃制は厳に守っております。確定運賃、定額運賃より下げても上げてもいかぬというて、強く指導しておるのです。この運賃はすでに下げてはいかぬというのに、下げざれば運行できないという営業状態に陥っておるときに、その負担能力があるかないかということは当然わかるじゃありませんか。業者に負担能力がないのだ、だから負担能力ができるような需給の調整をせよ、事故防止をしろ、こういうものと並行してこれを行うべきであるから、どうしても来年四月一日から実行いたし、これらの負担能力ができるような経営の内容の改善、事故防止の問題、さらに政府から補助金を出す、あらゆるものが総合されてこういう実に飛躍した——われわれ国民は非常に希望いたしておることではございますけれども、ただ単に業者の犠牲においてのみ、この飛躍した理想の社会保障制度をやるということであってはならぬ。だから総合運営をして、そうして大蔵省をたたいて補助金を出して、そうしてこれを完全なものにして業界も成り立っていく。また被害者も喜んで、この法案に対しては国民が喜んで賛成するという域に持っていかなければならぬと思うのであります。まだ質問はどんどんございますが、今から負担能力の問題に入りたいと思うのであります。負担能力の点を一応聞いて、次の質問に移ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/55
-
056・三木武夫
○三木国務大臣 負担能力の点につきましては、しばしば申し上げます通り、これは永山委員が御指摘のように、自動車業者が致命的な打撃を受けるものとは考えていないのでございます。しかし今後この法案を御審議の結果、御採択を願って、経験に徴しましてそういう事態が出て参りますならば、これはいろいろ方法がございますから、今御指摘のような政府のあるいは補助金という問題もございましょうし、あるいは自動車業界自体にもこの負担の軽減をはかるような方法はとり得るのでございますから、今後の法案を実施した経験に徴して考えてみたいと思います。今この法案で直ちに自動車業界に致命的な打撃を与えるとは考えていない、こう思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/56
-
057・永山忠則
○永山委員 実際大臣がそういうお考えであることが残念なんです。現実においてダンピング料金であの騒動をしなければ、業界は立っていかない。好んで違法行為をやるのではない、好んで運賃値下げをやっておるのじゃないのであります。結局車両を食い、運転手を食い、そうして赤字経営を続けておるというタクシー、ハイヤーの苦しい状態でありまして、労働基準法の二交代制さえもこれを実行するということは、会社側においても、また労働者の現在の状態においては、労働者自体においても非常に困難だということを言わざるを得ない経営状態に追い込んで、そうして労働過剰、労働ダンピング、料金ダンピング、さらに車のダンピング、車を食うていくという経済状態に追い込まれている状態を見ながら、この法案を実施すべきではないのであります。これらのものと総合してやるべきでございまして、これらは運輸省がいろいろな計数を有利にお出しになるかもしれませんが、事実がそれを物語っておる。大臣も御苦労された。おそらく大臣が強い決意と腹をもっておやりになりましたから、あれはおさまったのでありまして、それは敬服をいたしておりますけれども、事実そのこと自体は非常に苦しい経営であるということを物語っておるのであります。私はこの場合にトラックの関係を申し上げるのでございますが、トラックはもちろん赤字経営で、いわゆる確定運賃を守ることができずに、トラックもダンピングへ入っておるのであります。従ってこれは負担能力はありません。一部の経営のいいものはそういう状態であるかもしれませんけれども、最近の昭和三十年六月二十日の調査によりまして大臣に出しておきますが——北海道初め各県のトラック事業者が、ほとんどみな赤字であるという計数が出ておるのであります。これは一々読み上げることは避けたいのでありますが、御了解を得れば速記録へ出していただき、後ほど大臣にも見ていただきたいのでございますが、全く赤字経営に悩んでおるのであります。運輸省が最近出しました調査によりましても、ガソリン税の二千円の値上げをしたならば、もうどうもならぬという計数が出てくるのであります。ガソリン税を二千円上げる、これは何でもないじゃないか、また保険料を無過失の分を少し上げるのだ、これも何でもないじゃないか。現在赤字経営に悩んでおるそのときにおいて、さらに追い打ちをしていくことは、致命的な打撃を与えることであると言わなければならぬのであります。そこを十分お考え願わなければならぬのであります。これは運輸省自動車局において、昨年の六月——本年はさらに悪いのですが、昨年六月実地調査いたしたる区域トラック運送会社二十三社の平均収入を出されたものでございます。さらに運輸省が最近出されたものでは、ガソリン関係においては負担能力があるという別の計数を委員会へお出しになっておりますが、自分の有利なような会社と有利なような統計において、法案通過のために専念をされておるその心情はわかりますけれども、事実を曲げることは許されないのであります。すなわちこれによりますと、一車両一キロ当りの利潤は六十九銭、そうして一車の一日当りが五十七円三十五銭でございます。これが運輸省自動車局において昨年六月に実地調査をしてお出しになりましたものでございまして、これに対して揮発油税がキロ当り二千円増徴された場合は、燃料費のみの増加で次のようになるのであります。すなわち二千円の増税によりまして、一車一キロ当りの燃料費の増加が六十六銭になります。これは揮発油一キロリットル当り平均走行キロを三・三キロにして計算をいたしておるのでありますが、そうすれば、一車一キロ当りの利潤が六十九銭で、増税による燃料費の増が六十六銭なら、一車一キロ当りわずかに三銭しか残らぬのであります。さらにこれを一車一日当りにして計算をしてみますれば、このガソリンの値上げによりまして一車一日当りが五十四円七十三銭であります。これが燃料増加の費用であります。そうすれば利潤は五十七円三十五銭から燃料費の増加五十四円七十三銭を引きますと、一車一日当りわずかに二円六十二銭しか残らぬという計算が出るのでありまして、さらにこれにこの強制保険が適用されるということになりましたならば、運輸省が昨年六月にお出しになりました調査によりましても、とうてい負担することはできない状態である。これを精細に検討いたしましても、もう議論の余地はない。業者が経営難に陥っているということは現実の事実なんです。しかるにガソリン税が二千円上る、さらにまたこの強制保険をかけるというところに持ってこられることになりますれば、負担能力はないのだ。そのことは本案に反対するということではございません。どうしても本案を実施する上において、あらゆる角度から総合的に運輸行政が行われまして、初めて本案が生きるのでございます。法を通過させるがゆえをもって、あるいは現実の状態に焦慮いたしまして、角をためんとして牛を殺すの類に陥ることを憂慮いたしておるのでございますが、果してこれでもなお事実負担能力ありというお考えであるかどうかをお聞きしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/57
-
058・眞田登
○眞田政府委員 先ほど申し上げましたように、この事故賠償に対する経費というものは、運賃の原価計算の基礎の中に入っております。しかしながら新たに上ってくるガソリン税等につきましては、別に運賃の計算の基礎に入れておりませんので、ガソリンの問題と、今度の損害賠償の保険の掛金とは、別の観点から考えていただかなければならないと存じます。私たちが先ほどから申し上げておりますように、現実に事業者が着実に保険をかけているかいないかという問題は別といたしまして、原価計算をいたしますときには、事故賠償に対する経費として、原価計算の中に何がしかのものは必ず入っておるわけであります。その点から強制保険の保険金を払っていただきたい、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/58
-
059・永山忠則
○永山委員 それではまたあとで質問をすることにして、この問題だけをはっきり申し上げておきます。局長が保険料は現在の運賃へ算定されているということは、民法七百九条における損害賠償保険のものが算定されておるということであります。本法に出ましたそれを上回る保険料というものは、現在の運賃の許可基準になっていないのであります。算定されていない。従って運賃算定をする場合におきまして、本法が実施される場合における保険料の値上り、あるいはガソリン税の値上り等を加えて、運賃はあらためて算定してこれを上げざるを得ないのであります。しかしそのことは、上げることができれば問題はない。先般船の関係において保険をやりましたときには、船運賃を上げるのだということで一応の了承をいたした。今度は上げることはできない。上げるどころではない、ダンピングをして料金を下げて、そして車を食い、運転手を食うて、しかも最後には会社を食おうとするこの現状下において、上げることのできぬ情勢に置かれておるにもかかわらず、当然に上げねばならぬ算定というものがここに法律案として出てくるのでありますから、そこでわれわれは結局業界の経営の健全化ということがこれと並行し、いなこれに先行せなければどうしてもいけないということを申し上げておるのでありまして、これ以上運賃を上げることはできない情勢にあるとの現状を、われわれは無視してはいけないのであります。
負担能力の問題については一応この程度にしまして、あすは一つ警視庁と検察庁の自動車事故の取扱い関係の人を呼んでいただきまして、事故防止並びに経営の健全化の問題について質問したいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/59
-
060・山本友一
○山本(友)委員長代理 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。
午後三時五十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02819550713/60
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。