1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年五月二十八日(土曜日)
午前十一時十三分開議
出席委員
委員長 植原悦二郎君
理事 大橋 忠一君 理事 菊池 義郎君
理事 須磨彌吉郎君 理事 北澤 直吉君
理事 福永 一臣君 理事 穗積 七郎君
草野一郎平君 大岡 大輔君
並木 芳雄君 山本 利壽君
犬養 健君 稻村 隆一君
高津 正道君 細迫 兼光君
森島 守人君 戸叶 里子君
西尾 末廣君 岡田 春夫君
出席国務大臣
外 務 大 臣 重光 葵君
出席政府委員
外務政務次官 園田 直君
外務事務官
(大臣官房長) 島津 久大君
外務省参事官 寺岡 洪平君
外務省参事官 矢口 麓蔵君
外務事務官
(アジア局長) 中川 融君
外務事務官
(経済局長) 湯川 盛夫君
外務事務官
(条約局長) 下田 武三君
外務事務官
(国際協力局
長) 河崎 一郎君
通商産業事務官
(通商局長) 板垣 修君
委員外の出席者
外務事務官
(経済局次長) 西山 昭君
外務事務官
(経済局第三課
長) 吉良 秀通君
専 門 員 佐藤 敏人君
専 門 員 村瀬 忠夫君
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五月二十七日
委員松岡松平君辞任につき、その補欠として芦
田均君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
関税及び貿易に関する一般協定のある締約国と
日本国との通商関係の規制に関する千九百五十
三年十月二十四日の宣言の有効期間を延長する
ための議定書への署名について承認を求めるの
件(条約第一号)
婦人の参政権に関する条約の批准について承認
を求めるの件(条約第六号)
在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部
を改正する法律案(内閣提出第四四号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/0
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001・植原悦二郎
○植原委員長 これより会議を開きます。
関税及び貿易に関する一般協定のある締約国と日本国との通商関係の規制に関する千九百五十三年十月二十四日の宣言の有効期間を延長するための議定書への署名について承認を求めるの件を議題といたします。本件につきましてはすでに質疑が終了しておりますが、前会戸叶里子君の質問に対する答弁が残っております。この際その答弁を求めます。西山経済局次長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/1
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002・西山昭
○西山説明員 可燃性織物につきましては、昨年の七月一日から連邦法が実施されておりまして、これにつきましてはその実施以前に、日本からの輸出が相当影響を受けることを考慮しまして非常に運動いたしまして、絹スカーフが本件の法律の趣旨の危険物でないという建前から、法律からの適用の除外を非常に強く運動したわけでございますが、結局法律からの適用除外ということにはなりませず、危険の判定のテストの標準時間であります四秒間というのを三・五秒に圧縮することに成功したわけでございます。日本政府といたしましては、絹スカーフを可燃性織物法の適用から除外する方針には依然として変更をいたしません。その後も引き続きアメリカ政府及び関係者に運動しておるわけでありまして、本年の三月には絹スカーフを可燃性織物法から適用除外するという修正法案が下院に提出されておりますが、本件につきましてはまだその帰趨をはっきりいたさない次第でございます。これに関連いたしましてことしの四月に、連邦法と趣旨を同じくします法律がニューヨーク州におきまして制定されまして、七月一日から実施される予定になっております。ニューヨーク州以外におきましても、ニュージャーシーあるいはペンシルヴァニアの州におきましては同様な法案が審議されておる模様でございます。内容は連邦法と同一のものでございまして、連邦法におきまして可燃性織物のカテゴリーの中から、日本からの輸出の大宗であります絹スカーフが除外されますれば、州法におきましても同様に除外される見通しを持っておる次第でございます。
以上答弁といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/2
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003・戸叶里子
○戸叶委員 ただいまのお話では、つまり下院に、その絹スカーフを可燃性織物法の適用から除外してもらうように提出してあるというお話でございましたね。そうしますと、その見通しはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/3
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004・西山昭
○西山説明員 見通しといたしましては、下院におきまして五月の末に通過しまして上院にかかる見通しを持っていたのでございますが、目下いまだ下院において検討中の模様でございまして、ただいまの段階でははっきりそれが両院を通過するかどうか確信を持って申し上げられない状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/4
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005・戸叶里子
○戸叶委員 これがもしも除外されないということになりますと、日本の絹スカーフの輸出という点から見て非常に大きな問題になってくると思うのです。そこで外務省の方でもぜひ可燃性織物のワクからはずしてほしいという御努力は今後も続けられると思いますが、この見通しもわからないということでは非常に私は心配だと思うのです。さらにニューヨーク州におきましてもこれと同じようなものを今提出中だとおっしゃったのですか。さっきごたごたしていて、ここまで聞えなかったのですけれども……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/5
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006・西山昭
○西山説明員 そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/6
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007・戸叶里子
○戸叶委員 その点、ニューヨーク州で出しました州法の見通しということも伺いたいのです。それからもしもこれが下院を通過しなかった場合には、一体日本からアメリカへ行くべき絹スカーフのこうむる痛手はお金に直してどのくらいになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/7
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008・西山昭
○西山説明員 昨年連邦法が通過します前の見通しといたしましては、絹製品につきましては、輸出の約六〇%、絹織物につきましては輸出の約五〇%が輸出できなくなるのではないかと心配いたしたわけでございます。その理由といたしましては、従来アメリカに輸出します絹製品の内容は軽目のものが多かったわけでございますが、テストの結果、軽目のものが輸入できなくなる公算が多かったわけでございます。一方におきましては、今後の輸出市場を確保いたしますためには、従来といたしましても、軽目のものは品質も悪く、永続性もなかったわけでございますので、わが国としましては軽目のものを重目のものに品質を改良して輸出市場を確保するという措置をとりますとともに、他方不燃性の加工その他工夫をいたしまして、昨年七月一日から法律が実施されましてその後の実際の経過を見ますと、輸出は減退しないのみかむしろふえておる傾向でございます。ただしいろいろのテストの標準その他につきまして問題もなきにしもあらずでございますので、理想といたしましては、絹スカーフそのものを可燃性織物法の適用を除外をするように努力しておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/8
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009・戸叶里子
○戸叶委員 この点は大事な問題ですから、私まだ伺いたいのですけれども、外務大臣、時間の制約がおありのようですから、またの機会にこの点について伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/9
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010・植原悦二郎
○植原委員長 本件の質疑はこれにて終了いたしました。
本件は別に討論の通告もありませんので、討論を省略して直ちに採決いたします。本件を承認すべきものと議決するに御異議はありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/10
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011・植原悦二郎
○植原委員長 御異議なければさように決定いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/11
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012・植原悦二郎
○植原委員長 次に、婦人の参政権に関する条約の批准について承認を求めるの件を議題といたします。
本件につきましても質疑を終了しており、討論もないようですので、直ちに採決いたします。本件を承認すべきものと議決するに御異議はありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/12
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013・植原悦二郎
○植原委員長 御異議がなければさように決定いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/13
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014・岡田春夫
○岡田委員 議事進行について、特に外務大臣のおられるときに、私は一言外務大臣の所信を伺っておきたいと思いますが、当外務委員会は御承知の通りに、国会法に基いて外務万般のことを審議することになっております。当然当該主管大臣である外務大臣の所管の事項について、条約、協定その他の事項についての審議が行われているのであります。先週の土曜日以来、最近の変転する国際情勢に照応いたしまして、各委員諸君からいろいろな問題について、外務大臣の出席を要求して答弁を願いたいということを委員長を通じて再三要求いたしているのであります。しかるに、何ゆえか私は存じませんけれども、現在まで外務大臣がこの委員会に御出席にならないということは、私は外務大臣が国会の審議についてこれを軽視しておるのではないか、実はさように考えられる節もあるように思いますので、この際は一つ外務大臣から、国会の審議権についてはどのようなお考え方を持っておられるのか、そして今まで御出席にならなかった理由は一体どういう理由であるのか、また今後どのようにされるつもりであるかということをこの機会にはっきり伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/14
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015・植原悦二郎
○植原委員長 岡田春夫君、議事進行の御発言でお許しいたしました。今の形は外務大臣に対する質疑の形のようになりますが、議事進行ならば、あなたの意向を外務大臣に伝えまして、そして外務大臣の御意向を伺ってあなたにお答えするようにいたします。今外務大臣がお答えになるならお答になってもいいです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/15
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016・重光葵
○重光国務大臣 今私が出席しなかったということでありますが、実は私は、要求がありますときは、ほかに故障がなければ必ず出席することにいたしておるのでございます。むろん、国会の審議が一番重要だと考えておることは当然のことであります。私はそのことについては誤まった心がけは持っていないつもりでございます。もっとも予算委員会の関係もございますし、また外国の使臣の信任状の奉呈だとか、いろいろな国務としてやらなければならぬ仕事がございます。宮中に行ったりすることはこれはお許しを願わなければならぬと思います。それらのこと以外において、私の時間の許す限り、私は出席を拒んだことは一回もないつもりでございます。これで一つ御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/16
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017・岡田春夫
○岡田委員 もう一つ委員長に御意見を伺っておきたいのでありますが、先ほどの大臣の御意見を伺っておると、こちらから出席の要求があったときには出なかったことはなかったというようなお話であったのですが、そうすると、委員会として大臣に対して出席の要求をしなかったために、今日まで一週間出られなかったというように解釈されるのでありますが、委員長として、そういうようなわれわれの要求の手続を怠ってされなかったのであるかどうか、この点を伺っておきたいと思います。
それからもう一つは、これはあとで大臣に質問するときにいろいろお伺いするつもりですが、先週の土曜のこの委員会におきまして、原子力問題について資料の提出を要求したのであります。これに対して、あなたはおいでになったはずでありますが、園田政務次官は、一週間以内に必ずその関係資料をまとめて提出いたしますということをはっきりと答えられているにもかかわらず、きょうで一週間は過ぎたのであります。しかるにアメリカの原子力法については、英文の原文だけを配付いたしまして、日本語に翻訳した文書をいまだに配付いたしておりません。
それから、またあとで申し上げますが、きょう配付になっておりますところのアメリカ・トルコの協定の問題にいたしましても、これはすでに外務省のある一部においては、これを民間団体に対して配付をいたしております。ところが、われわれが委員長を通じて外務省に対して資料の提出を要求しておったにもかかわらず、昨晩私が非常に強く要求した結果、やむなくこの日本分に翻訳したものをきょうの朝間に合せて持ってくるというような状態なのであります。これは明らかに外務省全体としての国会軽視の現われであると私は考えますので、委員長はこの点をどのようにお取り計らいであるか、この点をもう一つ私は伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/17
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018・植原悦二郎
○植原委員長 岡田君に対して委員長からお答えいたします。外務大臣や総理大臣などの出席の関係については、ただいま外務大臣の御答弁通りだと私は承知いたしております。からだは一つしかないのでありますから、どこへでも出席するということができないことは、賢明なる岡田君の御存知のことと存じます。他に差しつかえない限り、予算の関係のときには、予算委員会と両方で打ち合せをしてこちらに出られるだけ出てもらっております。また一昨日は、必ず出席していただくつもりでありましたけれども、御承知の通り暫定予算に関することや、またソ連との関係で松本大使が立たれるので、その前日にやはり超党派外交と申しますか、この趣旨には岡田君も御賛成だと思いますが、そういうことの地固めのために、やむを得ない用務により、総理大臣や外務大臣がここに出席できなかったことは、委員長からも申し上げたのであります。今日は、御承知の通り、暫定予算が一昨日きまりまして参議院に送られておりますが、この暫定予算は今月中にどうしても審議を終了せしめなければならないので、きょうはやむを得ず参議院の方に総理大臣も外務大臣も出席して、ここにはおいでにならなかったのでありまして、故意に怠慢であるとか、故意に衆議院の外務委員会を軽視するとかいうようなことでなく、特に考慮を払って、この前などはずいぶんおそくまで総理大臣も外務大臣もお勤めになったことは、岡田君が御承知の通りだと思います。岡田君がいろいろの質問をまだなさる用意があって、そのことは再三委員長も承知いたしております。どうかその御質問も完了するようにと思って、総理大臣や外務大臣に督促しておりましたが、次のときには必ず出席されるようにしたいと思います。他にそれ以上にやむを得ないことのない限りということだけは御承知を願いたいのであります。
また今の資料の問題であります。資料の問題はただいま初めて伺って私承知いたしたことでありますが、すでに外務省としては皆様方に御要求の資料を配付していることだと思いましたので、それが遅延したことに対してはまことに相済まないことと思いますから、特に委員長からも外務当局に対して、将来そういうことのないように、要求された資料はきわめて迅速に提出するように注意することといたしまして、岡田君の御了承を得たいと思います。
なおただいま採決いたしました二件に関する報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議がありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/18
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019・植原悦二郎
○植原委員長 御異議がなければ、さように決定いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/19
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020・植原悦二郎
○植原委員長 次に、在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。本件に関し質疑を許します。大橋忠一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/20
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021・大橋忠一
○大橋(忠)委員 今度の案によりますと、大使なんかが非常にふえておるのであります。いろいろ地域と国交を開くということは、非常にけっこうなことでありますが、その代表者を置くに当っても、その土地の重要性と、それからどういう仕事をやるかということをよく考えた上に置かれないと、いたずらに大切な外貨を使うだけであって、国家のためにならないと私は思う。ことに大使という職は、戦前におきましてはいわゆる親任官、すなわち大臣に相当するところの重大なる職でありまして、これはむやみに置くべきものではない。これはやはりキー・ポイントの、だれが見ても、なるほどここには大使が必要であると思われるところ以外には置くべきものでないと思います。しかるに今度の提案によりますと、仏印の三国のような小国にもみな大使を置く。従って大使なるものの権威の上にも関係するだろうと思うので、どういうわけで大使を置かなければならぬか、そのわけを一つ御説明を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/21
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022・島津久大
○島津政府委員 大使、公使の区別その他につきましては、戦前とこのたびの戦争後と大分慣行が変って参りまして、ことに戦後できました新しい独立国などの在外公館は、大体大使を置いておるようでございます。のみならず、従来ほとんど在外に大使を置きませんで、公使ばかりを置いておったような国も変って参りまして、これらの国との間にだんだんと大使を交換する数がふえて参ったのでございます。御承知の通り、アメリカの在外公館は、大使でないところはほとんどないくらいな状態になっております。御意見まことにごもっともでございますが、慣行が非常に変って参りまして、その上に、相手の方から大使を交換したいという希望がございました場合に、むげに拒絶する立場にはないように思います。大体そのような、戦前におきまする大使と戦後の大使とは、観念的にも相当変って参っているように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/22
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023・大橋忠一
○大橋(忠)委員 そうすると、今度大使を置くというラオス、カンボジア、セイロン、スイス、イラン、アフガニスタン、こういう国に対してどの国が大使を置いておりますか、それを一つ聞かしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/23
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024・島津久大
○島津政府委員 ヴェトナムにあります大使館は、アメリカ、英国、フランスと日本でございます。カンボジアは、アメリカと英国と日本とフランス、フランスは高等弁務官、セイロンにつきましては、アメリカと日本であります。イランにつきましては、大使館はフランス、トルコ、アメリカ、インド、イラク、日本、ソ連、イギリス、エジプト、イタリアの十カ国であります。ことに日本政府といたしましては、アジア重視の見地からも、当然これらの地域は大使を置くべきものであろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/24
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025・大橋忠一
○大橋(忠)委員 一体大使を置くのと、公使を置くのと、事実上その働く上における便宜がどういうような点が違うのですか。大使にしないで公使を置いて差しつかえがある点がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/25
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026・島津久大
○島津政府委員 本質的には大した差異はないのでございますけれども、実際上大使と公使との取扱いは、その国によって自然大使の方が優先いたして参る、仕事をする上におきまして、また外交団のうちにおきましても、大使の方が当然重要視されることになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/26
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027・大橋忠一
○大橋(忠)委員 外交団のうちにおいて重視されない、あるいは仕事の上にも優先的でないということでありますが、これらの国との関係は主として通商問題だろうと思う。重大な政治問題なんかを、向うと議論するなどということは、ほとんどないだろうと思う。従って本来を言うならば、通商代表的なもの、商売に明るい人間を置いて、日本の商社との連絡を密にして、日本の商権を向うの方に大いに拡張するというところに力点を置くべきものであって、向うの外務大臣と会う順序が狂うとか、外交団における席次がどうこうというようなものではないだろうと思う。従って僕は、大使を置いても、公使を置いても、そういうことは違いはないだろうと思う。
第二には、かりに向うの方が大使を交換したいと言って来た場合、これを拒絶しては向うのプライドを傷つけて困るというならば、こちらもやはり名目上の大使を置いて、その待遇は公使と同じ待遇をしておけば、それでけっこうだと思う。ところが、在勤俸はちゃんと大使としての特別の在勤俸をきめる。私はそういう点において非常に了解に苦しむのであります。在勤俸は、大使であろうが、公使であろうが同じにしてけっこうだと思う。
なお大使、公使を置く場合に、私は戦後の新しい職階制を知りませんが、一定以上の者でなければ大使になれぬ、公使は何級から何級までというような区別になっておりますか。あるいはいかなる下の者でも大使に任命することができるか。幼稚な御質問かもしれませんが、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/27
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028・島津久大
○島津政府委員 大使、公使は、御承知の通り認証官でございまして、いわゆる一般職とは異なっております。従って、どこからと申しますと、語弊がございますが、前におりましたところの地位に関係なく、任命できることになっております。
なおまた、大使、公使在勤俸のお話がございましたが、在勤俸は大使の間では同一でございますが、本俸におきましては、四段階を設けております。公使にも四段階がございます。これが対応いたしまして、公使の一番上が大使の二番目くらいに当るというような考え方もいたしております。従って、先ほど申しましたような、在外におきます活動につきまして、優先するとか、しないとかいう問題はもちろんございますが、大使、公使そのものの区別につきましても、その任国の事情に適合するように、国内的には融通ができるようにしてあるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/28
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029・大橋忠一
○大橋(忠)委員 それならますます僕は反対なんです。そういう大きな人間を置く必要はないと思う。従って、名だけは大使にするが、待遇は公使同様にするのならいいが、大使は公使より一段高い認証官である。従って昔ならば親任官に当る。そういう大きな地位をたくさん作って行くということになると限りがない。従って、私はこういうことには絶対反対なんです。
それから、東南アジアや、そういう重要なところにたくさん公館の網を張られることはけっこうでありますが、同時に要らないものをどんどん廃止したらどうですか。僕は北米に行って参りましたが、たとえばポートランドとか、シアトルとか沿岸の各公館あるいはその他の各公館におきましても、仕事はそうありはしない。むしろ向うの日系なりアメリカ人のいい人を名誉領事くらいにしてけっこうなところがたくさんある。そういうところをどしどしやめて、重点的に日本に関係の深いところに置きかえられるというならいいけれども、ふやすばかりで減らすことがない。どこまで外交官の網が伸びても、それが一向国家の実益にならぬというようなことでは、今蓄積の為替も非常に豊富であって、今は差しつかえないかもしれぬが、将来必ず行き詰まるときがある。従って在外公館について真に実用上どれだけの果効があるかという点とよく睨み合されて一ぺん再検討をせられる必要があると私は思う。もう少し極端なことをいえば、国益を中心にしてまじめに在外公館の網を考えていただきたい。今度のこういう非常に高い地位の者を、本来いうと通商代表に毛のはえたようなものでけっこうくらいなところへ——東南アジアは重大だが、昔の親任官に当るような高い人をあちらにもこちらにも置くということは事実上不必要であるのみならず、それによって大した効果はない。むしろ通商貿易についてのエキスパートを送って、名は大使にして向うの国家的のプライドをそこなわないように考慮すべきである。こういうふうにしたら、東南アジアだけでなくして、アフリカからも、南米からも、みな大使にしてくれということになって、国家としては大へんな負担である。従って私は今度の大使の全面的昇格ということには賛成できません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/29
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030・島津久大
○島津政府委員 先ほど大使と公使の待遇について申し上げました御説明が不十分であったと存じますが、大使と公使にはそれぞれ四階級ございまして、公使の第一階級が大使の第二階級と同様というようにかみ合っているのでございます。大使と公使が上と下という関係にはなっておりません。従いまして問題にされました地域におります大使が、大物過ぎるとか待遇がよ過ぎるとかいうことはないのでございます。公使と実質上は余り変わらない待遇になっております。
次に在外公館で要らないところがあるじゃないかという御意見でございますが、まことにごもっともでありまして、常に私どもは在外公館の活動をよく見ておりまして、そういう不必要なところが出て参りますならば、もちろん廃止のための措置をとる所存でございます。ただ何分にも戦後まだ日が浅く在外公館の数も全部でき切っていないのでございます。共産圏を別にいたしまして、なおこの上とも十館くらいは新設いたさなければならないと考えております。しかしながら、できましたものが、全部そのままでなくちゃならないということではございませんので、十分検討して、まじめに考えたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/30
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031・大橋忠一
○大橋(忠)委員 こういうふうに東南アジア方面の小さな国にまで大使を置く、その他の南米、中米方面ですね。そういうところもこれから移民問題なんかで相当重大になってくるのですが、みな大使になります。そうして認証官をみな派遣せられるという意図なんですが、私は結局つり合いがとれなくなって、こういうふうに大使館を濫設すると全部大使にしてしまわなければならぬと思う。それからまた今日の日本は昔の日本と違いまして、英米がやるから日本もそれをまねなければならぬということはないと私は思っておるのです。従って私は消極主義かもしれぬけれども、もう少し国家の利害得喪をよくお考えになった上に再検討ができぬものか。それからこの人事の任命に当っても、今私が申しましたような、どういう運用をやったならばほんとうにためになるか、よく御検討の上にやる覚悟があるか。いたずらに高い大使を作って外務省の古手官僚のやり場を作る。ことにこのごろの外務省の人事というものを見ますと、どうも情実が非常に中へ加わっておりまして、どの人間はどこに適任だから持っていくという国家の利害ということと離れた、情実から任命されるような点が非常に多いように思って、非常に遺憾に思っております。またこういう大使を作って、そうして情実人事をやられるということになっては、とうとい外貨をいたずらに使うばかりで、国家のためには何にもならぬということになる。従って私は、今度大量的な大使館昇格の問題に関連いたしまして、そういう点をもう少しはっきり割り切ったように御説明がない限りは賛成しかねます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/31
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032・植原悦二郎
○植原委員長 高津正道君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/32
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033・高津正道
○高津委員 在外公館から寄せられる報告は非常に重大だと思うのでありますが、フィラデルフィア付近にある領事館とか総領事館の一番近いのはどこですか、どこに置かれておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/33
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034・島津久大
○島津政府委員 ただいまの御質問の管轄の領事館はニューヨークでございます。フィラデルフィアまで汽車でたしか二時間くらいかと存じます。私もあの辺におりまして、フィラデルフィアヘもときどき出向きまして緊密に連絡をとっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/34
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035・高津正道
○高津委員 今並素地の輸出に対して外務省や通産省が禁止措置をとられて、四月十五日以後は積み出せないことになっておりますが、向うからの報告では、アメリカではちっともそういうものを排斥しておる空気もないし、それが関税問題になるようなこともないし、ダンピングになるのだともちっとも認めておらぬ、そういうのがアメリカの情報であり、またバイヤーが来て言うところもそうなんだが、向うの各地からの通報では、並素地の陶磁器がいかにもアメリカで不評判になっておって、そんなものを出してはいけないような報告が来ておるように、通商局では業者に説明しておられるが、そういう報告が来ておるのですかどうですか。ちょうど板垣通商局長が見えておるから、板垣通商局長にお尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/35
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036・板垣修
○板垣政府委員 ただいまの御質問は在外公館からの報告の問題でございますので、外務省からお答えいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/36
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037・吉良秀通
○吉良説明員 ただいまの御質問は、並素地陶磁器の輸出に関しての御質問だと思います。並素地の陶磁器の中にも、普通のテーブル・ウェアに属する陶磁器もあります。いわゆるディナー・セットになる陶磁器もございます。今御質問になったのは、おそらく今問題になっておりますところの並素地の陶磁器のディナー・セットであるということで、お話を進めたいと思いますが、この並素地の陶磁器のディナー・セットがアメリカに相当多量に出ていきまして、従来わが国が長年の間につちかって参りました白素地の陶磁器の市場をくずすのではないか、それからアメリカの悪品質の陶磁器の生産業者の利害と衝突するのではないか、そういうところから一つにはダンピングの非難も起りはしないかということが主たる原因になりまして、通産省の方でこの並素地の陶磁器のディナー・セットの輸出を、検査等を厳格にいたしまして、事実上できないようにする措置をお考えになりまして、これを外務省に御相談に来られたわけであります。さっそく在外公館、と申しましてもやはりアメリカが市場でございますので、アメリカの在外公館に本問題の調査を命じました。そうしてわれわれの心配しているような、アメリカの利害との摩擦及び日本の従来の高級陶磁器の市場との摩擦、これが果してあるかどうかということの意見を徴したわけであります。これは全公館にやりまして、ニューヨーク、ワシントン、ニューオルリアンス、ロスアンゼルス、サンフランシスコ、シアトル、シカゴ、全公館から参った意見はほぼ軌を一にいたしまして、やはりこういう悪品質の陶磁器の輸出は非常に慎重にやらなければ、今までの市場をこわすばかりでなく、アメリカの国内の陶磁器業者の利害と衝突を来たすおそれもある。各公館からの報告には若干ニュアンスの差はございましたが、大体そういうふうな報告でございましたので、それを通産省の方にお知らせして、それに基いて通産省の方で検査基準を厳格にいたしまして、悪品質の陶磁器、ディナー・セットがアメリカの方に流れていかないという処置をおとりになったのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/37
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038・高津正道
○高津委員 アメリカにも金持ちもあれば貧乏人もあって、白素地の高級品を買う層と、普通のいわゆる貧乏人の買う層と違うわけなのですよ。それで、日本の業者もちゃんと白素地と並素地は区別しておるし、向うでもそれを混同するような者はないのであって、値段がまるで違うのである。だからアメリカからちっとも関税上問題になっておらぬということを言うて来ておるし、大使館からもそう言って来ておるのであるから、くれくれというものは喜んで出せばいいとわれわれは思うのですよ。アメリカの並素地業者と競合して何も問題になってはいない。去年の六月ごろから今まで十一ヵ月も毎月五万、八万、十万というように出しておって何ら問題が起きておらぬのに、それをどうして四月十五日以後は輸出禁止というような措置をとるのか。この内閣は中国の貿易に対してもどうも不熱心であるように思えるし、輸出振興ということを言いながら、アメリカから買いたいと言ってきておるのに、日本の方でどうしても出さぬというのは全く理由がわからないのですよ。私はアメリカの力による世界政策には反対するものだけれども、商品は、そんなに言ってくるところへはどんどん出したいと思うのです。そのバイヤーから聞くところによれば、二十五万セット、月十万ドル、二年間でも関税問題なんか起らぬから安心して予約ができるというようなことを言っておるのだが、僕が計算してみると、十万ドル二年間分といえば八億六千万円ですよ。そういう大きな注文でも発しようとしておるものを、どうして通産省や外務省はそういう措置をとられるのか。その利害は白素地の製造業者の利害と完全に一致しておるのであって、今一番陶磁器業界で困っておるのは、白素地をやっておる人よりも並素地をやっておるところに倒産者が続出して失業者がどんどん出て、陳情にも上京しておるし、賃金は遅配になって非常に困っておるのでありますが、ちっとも問題になっておらぬのにこっちから遠慮する必要は一つもないと思うのです。これに対する御見解を聞きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/38
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039・板垣修
○板垣政府委員 お答えをいたします。私ども通産省といたしまして現在の措置をとっております最も大きな理由は、ただいま御指摘になりました輸出を阻害することなく対米輸出振興策のために現在の政策をとっておるわけであります。ただいま御指摘になりました中小企業の問題は一応別問題でございますが、陶磁器の対米輸出という全般的な見地からいたしまして、現在の措置が最も妥当ではないかというように考えてこの措置をとっておるわけであります。と申しますのは、私どものドル地域の輸出振興策といたしましては、どうしてもアメリカ、カナダというような購買力の高いところには、安いものでなくて高いいい物を出して、できるだけドルをかせぐということで考えておるわけであります。これを陶磁器にとってみますと、御承知のように、一番高級なものはアメリカのビトリファイド・チャイナでありまして、その次にイギリス、ドイツあたりから出ているチャイナ、それから日本の今まで出ておりますボーン・チャイナというものが位するわけであります。これにつきましては、従来の経験からしばしば関税問題が起るおそれがあったわけでありまして、この経験からいたしまして、日本の陶磁器輸出は、どうしてもアメリカにありますいわゆるアースンウェアと競合しないように輸出をしないと必ず問題が起る。そこで私どもがチェック・プライスをきめましたのは、アメリカで生産されますアースンウェアより上回るところに値段をきめるということで、九十三ピース、十六ドルを基準としてきめているわけであります。この日本のボーン・チャイナがアメリカで六十ドルから七十ドルで売られているわけですが、このたび問題になっているバンブー・チャイナというのは、大体その半分で出ております。これはショート・セットのもので九十三ピースに換算すると三十ドルくらいになります。そうするとちょうどアメリカの陶器と競合いたすのであります。これについては、一部のバイヤーは、消費層が違うから問題はないと言っておりますが、しかしこれもごく一部のアメリカ人関係者が言うだけでありまして、一般的な識者に聞いてみても、ダンピングではないかもしれないが、関税問題が起らないとは保証できないと言っております。今外務省から御説明がありましたように、日本の在外公館でもいろいろ研究した結果、やはり問題を起す可能性があるということの報告が期せずして各地方からきている次第でありまして、そういう見地からいいましても、日本の陶磁器の対米輸出政策といたしましては、やはりアメリカの陶器と競合しない、それより上回る値段で出すということが、結局外貨の手取りからいっても、関税問題を惹起せずこれを未然に予防する見地からいいましても、やむを得ない方法ではないかというように考えて実施をいたしている次第であります。ただ今の中小企業の国内の問題は、別途解決さるべきものであると信じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/39
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040・植原悦二郎
○植原委員長 高津正道君、さっきの理事会では、今日の質問は、在外公館の名称と位置に関する質問と限定されておるのであります。あなたの質問は、ガットの関連した質問としては成り立つと思います。また国際情勢の方で御質問なさるならよいのでありますが、理事会の決定によりまして、これ以上委員長としては、あなたの質問は中止していただきたい。理事会の決定を尊重する意味において、さように願いたい。国際情勢とか、通商の問題に対して御質問なさるなら別ですが、きょうはかなりむずかしい問題で、理事会においては、在外公館の問題以外には質問をしないということになっておるのですから、さよう御了承を願います。
次会は公報をもってお知らせいたします。本日はこれにて散会いたします。
午後零時七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203968X01119550528/40
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