1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年五月三十一日(火曜日)
午前十一時十九分開議
出席委員
委員長 中村三之丞君
理事 大石 武一君 理事 松岡 松平君
理事 大橋 武夫君 理事 吉川 兼光君
植村 武一君 臼井 莊一君
亀山 孝一君 草野一郎平君
小島 徹三君 山本 利壽君
横井 太郎君 亘 四郎君
越智 茂君 小林 郁君
野澤 清人君 八田 貞義君
岡本 隆一君 多賀谷真稔君
滝井 義高君 中村 英男君
長谷川 保君 横錢 重吉君
受田 新吉君 神田 大作君
中原 健次君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 川崎 秀二君
出席政府委員
厚 生 技 官
(公衆衛生局
長) 山口 正義君
厚 生 技 官
(医務局長) 曾田 長宗君
労働政務次官 高瀬 傳君
労働基準監督官
(労働基準局
長) 富樫 総一君
委員外の出席者
厚生事務官
(大臣官房総務
課長) 小山進次郎君
厚 生 技 官
(公衆衛生局環
境衛生部長) 楠本 正康君
専 門 員 川井 章知君
専 門 員 引地亮太郎君
専 門 員 浜口金一郎君
専 門 員 山本 正世君
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五月三十日
委員帆足計君辞任につき、その補欠として多賀
谷真稔君が議長の指名で委員に選任された。
同月三十一日
委員八木一男君及び千葉三郎君辞任につき、そ
の補欠として中村英男君及び森山欽司君が議長
の指名で委員に選任された。
同日
理事松岡松平君委員辞任につき、その補欠とし
て同君が理事に当選した。
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五月三十日
健康保険法等の一部を改正する法律案(岡良一
君外十一名提出、衆法第五号)
日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案
(内閣提出第一〇三号)
労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案
(内閣提出第一一一号)
同月二十七日
理容業界の安定対策確立に関する請願外五件(
淺沼稻次郎君紹介)(第一〇三九号)
同外二件(松岡駒吉君紹介)(第一〇四〇号)
同(足立篤郎君紹介)(第一〇八八号)
生活保護法の最低生活基準額引上げに関する請
願(西村彰一君紹介)(第一〇四一号)
未帰還者留守家族等援護法による療養給付適用
期間延長に関する請願(西村彰一君紹介)(第
一〇四二号)
クリーニング業法の一部改正に関する請願(矢
尾喜三郎君紹介)(第一〇四三号)
同(松岡駒吉君紹介)(第一〇八五号)
同(田中武夫君紹介)(第一〇八六号)
同(上林山榮吉君紹介)(第一〇八七号)
同(平田ヒデ君紹介)(第一一二七号)
同(杉山元治郎君紹介)(第一一二八号)
国立療養所の附添廃止反対に関する請願(猪俣
浩三君紹介)(第一〇四四号)
同(西村彰一君紹介)(第一〇四五号)
同(小澤佐重喜君紹介)(第一〇四六号)
同(稻葉修君紹介)(第一〇四七号)
同外一件(亘四郎君紹介)(第一〇四八号)
同(山下春江君紹介)(第一〇九七号)
同(三宅正一君紹介)(第一〇九八号)
同(八木一男君紹介)(第一一〇〇号)
同(櫻内義雄君紹介)(第一一〇一号)
同(福田篤泰君紹介)(第一一〇二号)
同外一件(淺沼稻次郎君紹介)(第一一三八
号)
同(柳田秀一君紹介)(第一一三九号)
同(三鍋義三君紹介)(第一一四〇号)
国立療養所の附添廃止反対等に関する請願外一
件(柳田秀一君紹介)(第一〇九九号)
同外一件(岡本隆一君紹介)(第一一四一号)
同(福田昌子君紹介)(第一一四二号)
戦傷病再発医療費全額国庫負担に関する請願(
助川良平君紹介)(第一〇四九号)
同(柳田秀一君紹介)(第一〇五〇号)
同(古井喜實君紹介)(第一〇五一号)
同(亀山孝一君紹介)(第一〇五二号)
同(中川俊思君紹介)(第一〇五三号)
同(首藤新八君紹介)(第一〇九〇号)
同(有馬英治君紹介)(第一〇九一号)
同(永山忠則君紹介)(第一一三五号)
健康保険による医療費の被保険者負担反対に関
する請願(細野三千雄君紹介)(第一〇五四
号)
戦傷病者の割当雇用に関する請願(助川良平君
紹介)(第一〇五五号)
同(古井喜實君紹介)(第一〇五六号)
同(亀山孝一君紹介)(第一〇五七号)
同(中川俊思君紹介)(第一〇五八号)
同(有馬英治君紹介)(第一〇九二号)
同(首藤新八君紹介)(第一〇九三号)
同(小川半次君紹介)(第一〇九四号)
同(廣瀬正雄君紹介)(第一〇九五号)
未帰還者留守家族等の援護強化に関する請願(
山下榮二君紹介)(第一〇五九号)
同(菅太郎君紹介)(第一〇六〇号)
技能者養成機関の助成費国庫補助に関する請願
(永山忠則君紹介)(第一○八九号)
未帰還者留守家族等援護法による医療給付適用
期間延長等に関する請願外一件(奥村又十郎君
紹介)(第一〇九六号)
生活保護法の最低生活基準額引上げ等に関する
請願(福田篤泰君紹介)(第一一〇三号)
同(福田篤泰君紹介)(第一一〇六号)
東京都に結核アフター・ケア施設設置等に関す
る請願(福田篤泰君紹介)(第一一〇四号)
健康保険給付の制限反対等に関する請願(福田
篤泰君紹介)(第一一〇五号)
戦没者遺族等の援護強化に関する請願(野依秀
市君紹介)(第一一〇七号)
同外二件(永山忠則君紹介)(第一一三三号)
同(石橋政嗣君紹介)(第一一三四号)
医業類似療術行為の期限延長反対に関する請願
(生田宏一君紹介)(第一一二九号)
同(吉田重延君紹介)(第一一三〇号)
同(逢澤寛君紹介)(第一一三一号)
同外一件(岡本隆一君紹介)(第一一三二号)
美容師法制定に関する請願(楯兼次郎君紹介)
(第一一三六号)
中国人ふ虜殉難者遺骨送還に関する請願(柳田
秀一君紹介)(第一一三七号)
同月二十八日
美容師法制定に関する請願(纐纈彌三君紹介)
(第一二二六号)
同(小山長規君紹介)(第一二二七号)
医療審査による未回復者退所反対に関する請願
外一件(福井順一君紹介)(第一二二八号)
生活保護法の最低生活基準額引上げに関する請
願外一件(福井順一君紹介)(第一二二九号)
国立療養所の附添廃止反対に関する請願(河野
密君紹介)(第一二三〇号)
同(三輪壽壯君紹介)(第一二三一号)
同外一件(岡本隆一君紹介)(第一二三二号)
同(坂本泰良君紹介)(第一二三三号)
同(吉川兼光君紹介)(第一二三四号)
同(齋藤憲三君紹介)(第一二三五号)
同(岡崎英城君紹介)(第一二三六号)
同(帆足計君外一名紹介)(第一二三七号)
同(關谷勝利君紹介)(第一二三八号)
同(草野一郎平君紹介)(第一二三九号)
同(福井順一君紹介)(第一二四〇号)
医療扶助審議会の設置反対に関する請願(福井
順一君紹介)(第一二四一号)
クリーニング業法の一部改正に関する請願(吉
川兼光君紹介)(第一二四二号)
同(細野三千雄君紹介)(第一二四三号)
同(神近市子君紹介)(第一二四四号)
同(井谷正吉君外二名紹介)(第一二四五号)
同(田子一民君紹介)(第一二四六号)
同(前田正男君紹介)(第一二四七号)
同(草野一郎平君紹介)(第一二四八号)
医業類似療術行為の期限延長反対に関する請願
(川崎末五郎君紹介)(第一二四九号)
理容業界の安定対策確立に関する請願(三輪壽
壮君紹介)(第一二五〇号)
同月三十日
国立療養所の附添廃止反対に関する請願(柳田
秀一君紹介)(第一二七一号)
同(松前重義君紹介)(第一二七二号)
同(吉川兼光君紹介)(第一二七三号)
同外一件(勝間田清一君紹介)(第一二七四
号)
療術の規制促進に関する請願(野澤清人君紹介
)(第一二七五号)
戦傷病再発医療費全額国庫負担に関する請願(
岡崎英城君紹介)(第一二七六号)
未帰還者留守家族等援護法による療養給付適用
期間延長に関する請願(川村継義君紹介)(第
一二七七号)
医療扶助審議会の設置反対に関する請願(中原
健次君紹介)(第一二七八号)
クリーニング業法の一部改正に関する請願(木
下哲君紹介)(第一二七九号)
同(佐竹晴記君紹介)(第一二八〇号)
同(成田知巳君紹介)(第一二八一号)
同(淡谷悠藏君紹介)(第一二八二号)
美容師法制定に関する請願(田村元君紹介)(
第一二八三号)
理容業界の安定対策確立に関する請願(野田武
夫君紹介)(第一二八四号)
国民健康保険法の改悪反対に関する請願(齋藤
憲三君紹介)(第一二八五号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
理事の互選
けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護
法案(内閣提出第七二号)
右案の公聴会開会承認要求に関する件
労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案
(内閣提出第一一一号)
毒物及び劇物取締法の一部を改正する法律案(
内閣提出第三八号)
結核予防法の一部を改正する法律案(内閣提出
第四八号)
附添婦制度に関する件
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/0
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001・中村三之丞
○中村委員長 これより会議を開きます。
まず、理事の補欠選任を行います。去る五月十四日、松岡松平君が委員を辞任せられたのに伴い、理事に欠員を生じましたので、その補欠選任を行いたいと存じますが、再び委員に選任されました松岡松平君を理事に指名するに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/1
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002・中村三之丞
○中村委員長 御異議なしと認めて、そのように決します。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/2
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003・中村三之丞
○中村委員長 労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案を議題とし、審査に入ります。
まず、高瀬労働政務次官より趣旨の説明を聴取いたしたいと存じます。高瀬政務次官。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/3
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004・高瀬傳
○高瀬政府委員 ただいま議題となりました労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。
このたびの改正は、漁業を新たにこの保険の強制適用事業に加えること及び土木、建築等の事業にいわゆるメリット制度を適用することをその主要点といたしております。
最初に、強制適用事業の範囲を拡大し、総トン数五トン以上の漁船による水産動植物の採捕の事業を加えた点について申し述べます。御承知のように、労働者災害補償保険は、労働者の業務上の災害についての事業主の災害補償責任の裏づけとして設けられた制度でありまして、そのねらいとするところは、業務上の災害をこうむった労働者に対して、迅速かつ公正な補償を行い、あわせて労働基準法に定められた事業主の災害補償責任に基く負担を分散軽減させようとするところにあるのであります。
この目的に沿いますために、この保険制度におきましては、比較的災害が発生するおそれの多い事業を強制適用事業として保険に加入させることにより、災害の危険にさらされる労働者の保護の万全を期するとともに、他方、保険に加入している事業主からは、その事業の属する産業の災害率に応じた保険料を徴収する等の方法によって、負担の公平をはかるよう考慮されているのであります。しかしながら、従来労働基準法の適用を受けております三十トン未満の漁船による水産動植物の採捕の事業につきましては、災害発生の危険が相当に高く、また災害が発生いたしましたときは、往々にして相当大規模な災害となるのでおりますが、その事業の特殊性及びその特殊性に基く保険技術上の制約もありまして、現在まで任意適用事業として取り扱われて参ったのであります。それにもかかわらず、漁場等の関係よりこれらの小型漁船の活動範囲は著しく拡大され、これに従いまして災害発生の危険性もますます増大する傾向にありますので、政府といたしましては、かねてこの点につき何らかの措置を講ずる必要を認め、その実情の把握に努めますとともに、当保険におきましても、特に災害発生のおそれのある遠距離水面における漁掛に従事する漁船につきましては、保険に任意加入をするよう強く要望いたして参ったのであります。
たまたま昨年初頭以来北海道近海を初めとして所々に相次いで起りました台風等による大規模な災害の発生を契機といたしまして、関係者の間に漁業を強制適用事業にするようにとの強い要望が高まってきたのであります。このような事情より、このたび特に災害発生のおそれある水面において漁撈に従事する総トン数五トン以上三十トン未満の漁船による水産動植物の採捕の事業について、これを強制適用事業に加えることとし、漁業労働者の保護をはかるとともに、事業主の負担の分散軽減をはかることといたしたわけでございます。
次に、いわゆるメリット制度を、土木、建築等の事業に適用する点でございますが、過去の災害の実績に基きましてその事業についての保険料の額を
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/4
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005・高瀬傳
○高瀬政府委員 ただいま議題となりました労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。
このたびの改正は、漁業を新たにこの保険の強制適用事業に加えること及び土木、建築等の事業にいわゆるメリット制度を適用することをその主要点といたしております。
最初に、強制適用事業の範囲を拡大し、総トン数五トン以上の漁船による水産動植物の採捕の事業を加えた点について申し述べます。御承知のように、労働者災害補償保険は、労働者の業務上の災害についての事業主の災害補償責任の裏づけとして設けられた制度でありまして、そのねらいとするところは、業務上の災害をこうむった労働者に対して、迅速かつ公正な補償を行い、あわせて労働基準法に定められた事業主の災害補償責任に基く負担を分散軽減させようとするところにあるのであります。
この目的に沿いますために、この保険制度におきましては、比較的災害が発生するおそれの多い事業を強制適用事業として保険に加入させることにより、災害の危険にさらされる労働者の保護の万全を期するとともに、他方、保険に加入している事業主からは、その事業の属する産業の災害率に応じた保険料を徴収する等の方法によって、負担の公平をはかるよう考慮されているのであります。しかしながら、従来労働基準法の適用を受けております三十トン未満の漁船による水産動植物の採捕の事業につきましては、災害発生の危険が相当に高く、また災害が発生いたしましたときは、往々にして相当大規模な災害となるのでおりますが、その事業の特殊性及びその特殊性に基く保険技術上の制約もありまして、現在まで任意適用事業として取り扱われて参ったのであります。それにもかかわらず、漁場等の関係よりこれらの小型漁船の活動範囲は著しく拡大され、これに従いまして災害発生の危険性もますます増大する傾向にありますので、政府といたしましては、かねてこの点につき何らかの措置を講ずる必要を認め、その実情の把握に努めますとともに、当保険におきましても、特に災害発生のおそれのある遠距離水面における漁掛に従事する漁船につきましては、保険に任意加入をするよう強く要望いたして参ったのであります。
たまたま昨年初頭以来北海道近海を初めとして所々に相次いで起りました台風等による大規模な災害の発生を契機といたしまして、関係者の間に漁業を強制適用事業にするようにとの強い要望が高まってきたのであります。このような事情より、このたび特に災害発生のおそれある水面において漁撈に従事する総トン数五トン以上三十トン未満の漁船による水産動植物の採捕の事業について、これを強制適用事業に加えることとし、漁業労働者の保護をはかるとともに、事業主の負担の分散軽減をはかることといたしたわけでございます。
次に、いわゆるメリット制度を、土木、建築等の事業に適用する点でございますが、過去の災害の実績に基きましてその事業についての保険料の額を増加しまたは軽減する制度でありますところのメリット制度は、適用事業の事業主の保険料負担の公平をはかる上に効果があったのみでなく、過去の災害率が保険料に反映されることに刺激され、事業主の災害防止の関心を高めさせ、この方面におきましてもきわめて大きい成果をあげて参ったのであります。しかしながら、現在行われておりますメリット制度は、過去三年ないし五年の災害の実績に基き、個々の事業の翌年度の保険料率を変更するというものでありまして、土木、建築等の事業のごとく、期間の定めのあるいわゆる有期事業につきましては、これを適用することができなかったのであります。しかるに、一昨年以来電源開発工事等の進捗に伴い、土木、建築等の事業における災害は顕著に増加いたし、昭和二十九年度におきましては、当該産業における収支の均衡は著しく破れ、本年度において大幅に保険料率を引き上げざるを得ない結果となったのであります。かかる事態に即応して、政府といたしましては、従来のメリット制度実施の成果にかんがみ、保険料負担の軽減と公平をはかり、あわせて災害防止の実をあげるため、一般の事業に適用された従来のメリット制度の方式とは異なり、土木、建築等の事業の実態に応ずるよう、保険給付の額と保険料の割合により、確定保険料の額を更正いたし、その差額を追徴または還付する方法によって、新たに土木、建築等の事業にメリット制度を実施することといたしたのであります。
以上二点のほか、保険事業の運営の合理化するために、このたびあわせて改正することといたしました点につきまして、次に簡単に御説明申し上げます。
第一に、数次の請負によって行われます事業につきましては、従来その元請負人のみをこの保険の適用事業主として参りましたが、保険料負担の資力のある下請負人がある場合には、この下請負人を事業主として取り扱う方がより合理的と認められる場合もありますので、かかる下請負人が元請負人と書面による契約で保険料を負担することを引き受けましたときには、政府の承認に基きまして、その請け負う事業について別個の保険関係を成立させるよう取り扱うことといたしたのであります。
第二に、従来強制適用事業が任意適用事業になった場合に、その保険関係を申請によりまして消滅させるのには、保険関係成立後一年を経過することを要するものと取り扱われていたのでありますが、この制度をはずすこととし、保険加入者の便宜をはかることといたしました。
第三に、漁業を強制適用にすることに関連して沈没、滅失、行方不明となった船舶、航空機に乗り組む労働者の生死が三カ月以上わからない場合等に、民法の失踪宣告を待たずに死亡の推定を行うことといたしまして、本法の遺族補償費等の規定をすみやかに適用することができるようにいたしました。
第四に、保険料の報告及び納付の手続を合理化いたしますために、その期限を調整いたしました。
第五に、追徴金及び延滞金の徴収免除に関する規定を整備するほか、その他法規定を整備いたしたのであります。
以上がこの改正案を提案いたしました理由及びその内容の概略でございます。なお、この改正案につきましては、労働者災害補償保険審議会及び社会保障制度審議会に法案要綱により諮問いたしましたところ、満場一致で異議なく賛成の答申を得ました次第でございます。
何とぞ御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/5
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006・中村三之丞
○中村委員長 以上で説明は終りました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/6
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007・多賀谷真稔
○多賀谷委員 今提案理由の説明をなさいました問題について、いずれ審議をいたしますが、その際一つ資料を出していただくことを要請いたしておきます。それは、従来の労働委員会でも、労災の問題については比較的タッチをしていなかったのでありまして、われわれも非常に暗いのであります。そこで第一に、労働者災害補償保険法が実施されて以降の労働者災害の実情を産業別に出していただきたい。第二はメリット制実施の前後における災害補償の実態を統計で出していただきたい。第三は、強制適用事業の範囲を拡大されましたその事業の実態を、もう少しはっきり出していただきたい。以上三つの資料を要求しておきます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/7
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008・中村三之丞
○中村委員長 次に、毒物及び劇物取締法の一部を改正する法律案を議題とし質疑に入ります。亀山孝一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/8
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009・亀山孝一
○亀山委員 毒物及び劇物取締法の一部を改正する法律案につきましては、私はまことに時宜を得た改正だと思うのでありますが、二、三当局に御質問申し上げたいと思うのでございます。
それは、かつて青酸カリの乱用によりまして、いろいろ世上の物議をかもしましたことは、御案内の通りでありますが、パラチオンを初め農薬である毒物劇物につきましても、いろいろな中毒症状が出ておりまして、先般政府委員から簡単に提案の説明の際に伺いましたが、どういうような中毒症状が出ておりますか、その点の概略をこの際お伺いしたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/9
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010・曾田長宗
○曾田政府委員 問題を起しておりますのは、有機燐製剤パラチオンでありまして、先般も簡単に申し上げたのでございますが、二十九年の年間におきまする中毒の総件数は二千八百九十件ほどになっております。その中で三百七人ほどが死亡をいたしております。なおその三百七人の死亡者の中で、二百三十七人は自殺でございます。その他の七十名という人数が、散布中に中毒をして死亡したとか、あるいはその他散布中ではございませんでも、散布地に後ほど立ち入ったとか、その付近におったとかいうようなことによって死亡をいたしておるような次第でございます。大体総件数はさような程度に相なっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/10
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011・亀山孝一
○亀山委員 今伺いますと、自殺なりあるいはこれが施薬中に中毒症状を起したということを伺っておりますが、かつて砒酸塩が農薬に使われました場合、あるいは青酸カリの場合に、でき得ればこれが保存あるいは使用の際の注意として、何か表示と申しますか、色をつけるなり特別な表示をして、使用者の注意を喚起すべきであるという意見があったと記憶いたしております。それにつきまして、今度新たに改正されます毒物劇物なり、その他今御説明のように自殺なり中毒にかかるような毒性劇性の強いものにつきましては、何かそういう点の御考慮がありますかどうですか、御研究になっておりますれば、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/11
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012・曾田長宗
○曾田政府委員 今御指摘のような点を、現行法よりより完全にいたしたいというのが、今回の改正の一番大きなねらいでございまして、具体的に申しますと、第三条の二という条文を新たに起しまして、従来は毒物につきましても、一定の住所姓名を書いて判を押せば、だれでも手に入るというふうな建前でありましたのを、一定の資格を持った者でなければ買えないし持てないというふうな建前にいたしまして、自殺等に使われるというようなことのないようにいたしたいということをねらったことが一つ。それから表示等につきましては、それぞれ本法に根拠規定がございまして、政令で詳しく表示をいたすとか、あるいは着色をいたす、そういうふうな規定をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/12
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013・亀山孝一
○亀山委員 今度新たに毒物劇物の廃棄処分について規定をお入れになったのでありますが、これはどういうふうなことをお考えになっておりますか、お伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/13
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014・曾田長宗
○曾田政府委員 廃棄につきましては、御指摘のごとく、毒物劇物そのものの廃棄ということにつきましては、現行法では規定がないのでございます。ただ政令に、毒物を入れた容器につきまして、廃棄の規定があるだけでございます。それで十五条の二の規定を入れまして、廃棄の方法について政令で技術上の基準を定められる根拠規定を置いていきたいと思うのでございます。その技術上の基準として政令で定めたいとただいま考えておりますことは、たとえば可燃性の毒物または劇物は少量ずつ焼却するとか、あるいは水溶性の毒物または劇物は、酸またはアルカリで中和したり、または加水分解棄却等を行うことによって、安全な水溶液とした後に処理せよ、あるいはガス体の毒物等は、火気を取り扱う場所または引火物もしくは発火性のものを堆積するような個所及びその付近を避けて、かつ通風のよい場所で、保健衛生上危害のない方法で少量ずつ焼失しろとか、一例でございますがそういうふうな性質によりまして詳しく政令で定めて参りたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/14
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015・亀山孝一
○亀山委員 この毒物劇物は、毒薬劇薬と表裏をいたすもので、申すまでもなく工業用のものが毒物劇物になっておるのであります。今度の改正の問題には、あるいは毒薬劇薬の方は触れぬかと思いますが、その点はどういうようになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/15
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016・曾田長宗
○曾田政府委員 仰せのごとく毒物劇物は毒薬劇薬でない、医薬品でないということになっておりまして、今回の改正は毒物、劇物の方でございまして、毒薬、劇薬の方には何ら影響はございません。と申しますのは、今ねらっておりまするような強烈な毒性を持ったものにつきましては、これらが医薬品としてしょっちゅう使用されておるという状況はございませんので、医薬品の方の関係は、何ら今回の改正による影響はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/16
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017・亀山孝一
○亀山委員 大体疑問に思いましたところを伺いまして了解しました。
この機会に、薬務局長がおられますので、ちょっと他の点にも触れてよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/17
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018・中村三之丞
○中村委員長 関連でありますれば、よろしゅうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/18
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019・亀山孝一
○亀山委員 いずれ近い機会にヒロポンの問題について、厚生当局、国警及び関係当局にお伺いをし、またお願いをしたいのでありますが、一つ前もって御準備をお願い申し上げる次第であります。
私の質問はこれで打ち切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/19
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020・中村三之丞
○中村委員長 他に本案について御質疑はございませんか。
なければ、本案についての質疑は終了したものと認めるに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/20
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021・中村三之丞
○中村委員長 御異議なしと認め、本案の質疑は終了いたしたことと認めます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/21
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022・中村三之丞
○中村委員長 次に、結核予防法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。質疑の通告がありますので、順次これを許します。長谷川保君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/22
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023・長谷川保
○長谷川(保)委員 昨年小範囲であったけれども、結核の実態調査をしたということでありますが、一昨年の実態調査と比較いたしまして、どんな結果が出ておりましょうか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/23
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024・山口正義
○山口(正)政府委員 昨年実施いたしました結核の実態調査は、一昨年実施いたしました結核の実態調査——全国で二百十地区、人数にいたしまして五万人のうちから、層化任意抽出法によりまして三分の一の七十地区を選びました。人数にいたしますと、その間少し出入りがありましたので、約一万五千人になるのでございますが、その人たちにつきまして、一年間の発病状況あるいは一年間の経過というようなものを調べたのでございます。従いまして、二十八年に実施いたしました調査と二十九年に実施いたしました調査を直ちに比較するということは、つまり患者の増減等について比較することができないような状態なのでございます。二十八年に結核患者と診定されました者が、一年間の間にどういう動きを示したかということ、あるいは二十八年のときには健康者であったものが、一年間にどれくらい発病してきたかということを調べたわけでございます。従いまして、その成績につきましてごく概要を申し上げますと、二十八年の調査でいわゆる健康者と認められました者のうちから、一年間の間に約〇・四%の新発病があったのでございます。それから二十八年に結核患者と認められました者のうちに、二十九年の調査で結核患者でなくなった者が約一九%、それから病状がよくなった者が約一五%、病状が変らなかった者が約四八%、病状が悪くなった者が約一七%、結核で死亡した者が一・三%、そういうような数字になっているのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/24
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025・長谷川保
○長谷川(保)委員 二度目の実態調査で、最初の二十八年の実態調査のときにツベルクリン反応が陰性であった者が、どれくらい陽性になったか、こういうような調査がしてありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/25
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026・山口正義
○山口(正)政府委員 ツベルクリン反応が転化、つまり二十八年の陰性者のうちで二十九年にどれくらい陽性に転化したかという数字でございますが、これはごく弱陽性も全部加えますと、三〇%余り陽性に転化いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/26
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027・長谷川保
○長谷川(保)委員 一年間に三〇%以上陽性転化をするということは、普通でない、異常であると思うのでありますが、その陽性転化の原因とか詳細について、もう少し承わりたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/27
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028・山口正義
○山口(正)政府委員 ただいま長谷川先生から御指摘のように、一年間に三〇%も陽性転化するということは、非常に従来の考え方からいたしますと、大きな数字になっているわけでございます。従いまして、その理由につきまして分析して、現在それを詳細に学問的に検討してもらっている最中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/28
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029・長谷川保
○長谷川(保)委員 今、分析している最中だということでありますが、大体の見通しはどういうところにその原因があるということでありましょうか。当局の方としての大よその見当、どういうところにその大きな原因があったかということについてお話をいただきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/29
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030・山口正義
○山口(正)政府委員 もちろん、その間に自然感染があるということは、これは先生も御承知のことでございます。ただ、それにいたしましても、非常に率が高うございます。いろいろファクターを分けて検討いたしておりますが、学問的にどうも少し割り切れない点もございますので、その点現在専門的に検討していただいておりますから、その結果が出ますまで、少しお許しを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/30
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031・長谷川保
○長谷川(保)委員 非常に自然感染が多いということは、結局家庭か職場に開放性の患者が多いということを意味すると考えてよろしいと思うのですが、その原因はどこにあるか。たとえば化学療法というようなことが行われて、開放性であるけれども、一応の臨床的な所見が、肥えたり熱がなくなったりということで、しろうと目に非常によくなっているというようなところから、家庭に病人がおるというようなこと、あるいはそういうところから療養所に入りたがらない、そういうような点が相当影響しているのではないかと思うのでありますけれども、これは私のしろうとの考えであります。今学者諸君が、一生懸命に真の原因を追及しておられるのであれば、それがわかりましてから十分承わりたいのですが、しかし、 いずれにいたしましても、こう急速に初感染者がふえていくということは容易ならぬことで、これを安閑と見ておる性質のものでない。当然当局としましては、それらについて学者を督励なさいまして、正確な原因をつかむべきであると思います。それとともに、さらに結果の判明がおくれるならば、急速に何らかの対策を立てなければならないのじゃなかろうか、こう思いますが、これに対して当局としてはどういうふうなお見通しでございましょうか。学者ですか、厚生当局ですか、学問的な結果が判明するのはいつごろでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/31
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032・山口正義
○山口(正)政府委員 学問的な検討がわかります時期につきまして、私まだここではっきり申し上げかねるのでありますが、しかしいずれにいたしましても、学問的な結果がわかるまで、この自然感染の多いという事実を放置するということは、結核対策上できないことでございます。ことに、これは一昨年の実態調査の成績から見ましても、開放性結核患者、一回の検たんでございますが、結核菌を排出しておる者が全国に約八十万人おるというふうに推定される。これは一部の成績からの推定でございますが、推定されるのでございます。しかも二百九十二万人と推定されます結核患者のうちで、自分で自覚しておる者はそのうちのわずか二〇%、他の八〇%は無自覚でおる、そのうちに開放性結核患者が相当多数におる、そういうことがやはり自然感染の非常に多くなる原因だというふうに推定されるのでございます。従いまして、私どもといたしましては、これらの対策として、やはり感染源を早く見つけ出す。そうして隔離を要する者は隔離をし、また感染を受けるおそれのある者に対してしかるべき措置をするということが必要だと思うのでございます。そういう意味からいたしまして、今回御審議を願っております結核予防法の改正におきましても、感染源を早く見つけ出すという意味では、健康診断の範囲を拡大してそれを強化して、見つけ出した患者に対してしかるべき措置をし、未感染者に対しては予防接種をやっていきたいという趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/32
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033・長谷川保
○長谷川(保)委員 その御趣旨はよくわかりますが、実際現場を見ておりますと、たとえば保健所でもって工場の従業員の検査に行きますと、レントゲンで見つけられるおそれのある諸君は、その日は頭が痛いとかなんとかいう理由をつけて早びけしてしまう、こういうことをやっておるのがその実態だと思う。あるいは適当に上手に出張とかなんとかいうことで、ごまかしてやらない。これを防がないと、結核のための健康の検査ということでやっても、事実は全く底が抜けておるという格好です。これをまず一般にやるときには、そういう点が非常に困難だと思います。こういう点について、当局は何らかの効果を上げる具体的な方法を考えていらっしゃいますか。これは非常にむずかしいと思いますが、それをやらなければ、実際には何にもならないと思うのです。それをどんなふうにお考えになっておるか、対策が立っておりましたら一つお教え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/33
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034・山口正義
○山口(正)政府委員 職場の健康診断につきましては、ただいま長谷川先生から御指摘の通りの事実が、従来見られるのでございまして、ほんとうに健康診断を受けなければならないような者で抜けているものがある。これはやはり職場におきまして、結核と診定されたあとの措置につきまして、あるいは職場からすぐ出されるかもしれないという心配、あるいは職場を変えられて収入が減少するというような点もございます。そういう点は、私ども労働省の方と連絡して、労働省でも労働者の保護という立場から、そういう点は今までもしばしば注意してやってきておるのでございますが、現実の問題として、なかなかそれが達成されないというのが現実の姿でございます。これは社会保障制度審議会でもいろいろ御意見がございましたが、療養しながら軽い職場につけるというようなものにつきましては、やはりそういう措置も講じていかなければならぬと思います。またどうしても休まなければならない者に対しては、経済的な不安を与えないようにしていかなければならない。これは昔からいわれておることで、なかなか行われにくいということでありますが、やはりその線に向って進んでいかなければならないと思うのでございます。また健康診断をほんとうに受けなければならないもので受けない者があることは事実でございますが、実態調査をやりました場合には、健康診断の受診率が非常に高い、一〇〇%近くまで受診しておる。これはやはり事前の趣旨徹底と申しますか、教育と申しますか、そういう点が徹底すれば、喜んで健康診断を受けられるようになると思います。そういう面も、これから私ども努力していかなければならないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/34
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035・長谷川保
○長谷川(保)委員 だから、そこには非常に大きな社会問題が含まれております。つまり、失業という問題が控えておるところにそういう問題がある。だから、この点は全般的な社会保障を十分推進しなくては、なかなか大へんである。実際幾らやっても、穴があいておってはだめだと思うのですが、いずれにいたしましても、それらの施策全体については、一つ当局におかれましても——これは局長さんのお仕事の範囲を越えるかもしれませんが、今日は大臣も次官もおりません、ぜひとも厚生省としては早急に対策を立てていただきたい。とにかく、ずいぶん骨を折っておっても、今のお話で開放性の危険性のあるものが健康診断を逃げておる、これではどうにもならないのであります。これは十分考えていただきたい。ことに、さらに考えていただかなければならないことは、これは社会局長さんのお仕事でしょうが、アフター・ケアの仕事であります。このアフター・ケアは、今度のような消極的なことでは絶対にだめだと思うのです。これは療養所に入ってくる人の診断をやるばかりでなく、一方出て行く人のアフター・ケアの施策をしっかりして、閉鎖性にしてしまわなければ絶対だめである。今日のように、一年のうちに必ず出なければならないという方針ではだめだと思うのであります。それからさらに化学療法及び外科手術の結果、ちょっと表面だけよくなったということだけで出していくということでは、これはもういつまでたってもいたちごっこで、だめだと思うのです。だから、これについては、よほど厚生省は大きな対策を立てなければこの問題は解決しない、むしろ政府全体としてやらなければだめだと思います。これらにつきましては、またいずれ時を改めまして、大臣とも話し合うことにいたしまして、一応公衆衛生局の方に対する話はこれで終ります。
次に医務局長にお伺いいたしたい。ただいま結核予防法のことで、公衆衛生局の方にいろいろお話を伺ったのですが、一昨年の実態調査に比べて、昨年の調査では非常に大きな初感染者が出てきているらしい。三〇%も出ておるということです。この原因はどこにあるかという問題について、今いろいろお話を承わったのでありますが、その原因として患者が家庭におるということであります。聞くところによりますと、全国の国立病院及び療養所に最近空床ができているということですが、この空床の数、実態について承わりたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/35
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036・曾田長宗
○曾田政府委員 ただいま飛び込んで参りましたので、あるいは御質問の趣旨をはき違えておるかわかりませんが、国立病院、療養所のベットの利用状況でございますが、いろいろ計算の仕方がございますので、幾つかの数字が出てはおるのでございますけれども、これは私どもの方の統計調査部でもって、各経営主体別の療養所というものについて、ベッドの数と、それからふさがっております患者の入っておるベッドというものの割合を、いわゆる病床和風率と称して計算しております。これで見ますと、今申し上げましたように、最後的な計算になっておりませんので、少し数字は動くかもしれませんが、昭和二十八年度は九六・五%でございました。二十九年度としましては九四・二というようなことで、ちょっと下ってはおるのでございます。しかしながら、多少ではありますが、低くなりかかっておるということは申し上げられるのではないか。しかし、また一方から見ますと、多少下って来ておるといいながらも、あまり大違いはないという見方もできると思うのであります。私どもとしましては、幾分利用率が下る傾向がある、ただそのほかに、いわゆる待機患者がございますが、この待機患者というものの数が逐次減って来ておるようであるというような事実が、各療養所から報告されております。決して待機患者がなくなったとい意味ではございませんので、私どもはそれが幾分減じつつあるということが事実ではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/36
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037・長谷川保
○長谷川(保)委員 これはどちらの局長に伺っていい問題かわかりませんが、すぐ入院をしなければならぬ者が百三十七万人あるという一昨年の実態調査で、大体推測ができるというときに、全国の結核療養所のベットが十八万前後であるというときに、待機患者が減るという原因は一体どこにあるか。これはどちらの局長でもよろしゅうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/37
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038・曾田長宗
○曾田政府委員 今までお話があったと思うのでありますが、実態調査の結果として、患者がどういう数字で出て来ておるかということは御承知の通りであります。さてこの結核患者の蔓延の状況——蔓延の状況というのにもいろいろな意味があると思うのでありますが、いわゆる現在患者という意味、あるいは新たに発生する患者というような意味、かように考えてみますと、ここ二、三年におきまして、結核患者がますます多く発生しておるものであるかどうかという問題と、それからあるいは新しい発生はある程度押えられておる、しかしながら患者の病気の経過が長くなるというようなことのために、新しい発生はそれほどふえておらぬけれども、たまっておる患者の数は逐次ふえておるというようなことも考えられると思うのであります。今まで、私どもいろいろ省内でもって論議いたしました限りでは、実情がどっちの方に向いておるかということを、必ずしも的確に今までの資料でつかみ切れないというような状況にございます。そういうような事情が土台になりますと、今の御質問に対しまして、どうして待機患者が逐次減っていくのだろうかということにつきましては、あるいは一番根本的な問題であります患者、あるいはもっと言いますれば、新たに発生する患者が、年々発生しておる数というものを的確につかむ方法がありましたならば、あるいは幾分ずつ新発生は押えられておるというような事情があるかもしれない、これを否定はできない。しかし、それを積極的に主張する根拠も今のところではまだございません。それに対しましては、もう一つは、患者の新たに発見される率というものが高まって参りますと、従って医療を受け、入院を希望する者がふえてくるわけでありますが、この把握率と申しますか、発見率と申しますか、二九が必ずしも思うようこ伸びて来ておらぬというようなことになりますと、つかまれた患者、従って入院を希望する者があまりふえてこないという事情も一つのファクターとしては考えられる。もう一つは、最近におきまして化学療法がいろいろ発展してきまして、この使い方で、必ずしも入院しなくとも、在宅治療で相当な効果が上るというようなことが、方々の学者から報告もされておるわけであります。それもまだ最後的な結論にはなっておりませんけれども、さような見解を持つ学者あるいは医師がふえて参りますと、この入院しなくともという人たちがふえてくるのじゃないか。さらに、そのほかいろいろ患者の家庭的な事情とか、経済的な問題とかいうようなもので、幾分待機患者が減少の傾向を示したというようなことではないかというふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/38
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039・長谷川保
○長谷川(保)委員 きょうは時間もありませんから、詳しいことはいずれ健康保険法の改正がありますから、そのときに譲りたいと思います。しかし、いずれにしましても、一方におきましては初感染の者が一年間に三〇%余も実態調査でふえておるということがはっきりしておる。さらにまた、社会情勢は決してよくない、失業者がふえ、あるいは生活に困難する人々がふえておるという事情が一方にある。さらにまた、一方におきまして療養所待機患者がふえ、療養所の空床がふえてくることは、やはり総合的によほど原因をしっかり考えていかないと、せっかくここまで参りました日本の結核の対策が、あと戻りをするというおそれがあると思う。今までせっかくやって参りましたことが、結局最後にいつて画龍点睛を欠いて、結核の日本の情勢がまた逆戻りをするおそれが多分にある。これは、いずれ健康保険法の改正のときに譲っていただきたいと思います。きょうはこの関係の質問はこれでやめておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/39
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040・中村三之丞
○中村委員長 滝井義高君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/40
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041・滝井義高
○滝井委員 ちょっと一、二点お尋ねしたいと思います。
まず第一に、今度の民主党内閣になってから、大体どういう結核対策をとっていくのか、今年の結核対策を、系統的にこういうものとこういうものとが特徴的なものだということをちょっと御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/41
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042・山口正義
○山口(正)政府委員 今後の結核対策の行き方でございますが、これは先般来滝井先生からもしばしば御指摘を受けましたように、こういう結核対策は、予防面に重点を置いていかなければならないというふうに考えるわけでございます。従いまして、患者の健康診断を強化いたしまして、患者の早期発見、早期治療、それから未感染者に対する措置ということに重点を置き、また在宅患者につきまして、どうしても家族内感染を起す可能性が非常に強いという部面に対しましては、先般来御説明申し上げました療養室というようなことを考えて参りたい。また患者家族の健康診療を徹底させて、家族内感染をできるだけ防止していきたい、そういうふうに考えているわけでございまして、まず予防面に重点を置いていく、またその予防活動を十分ならしめますために、保健所の整備もやっていかなければならない、機動力も増さなければならない、そういうふうに考えているわけでございます。かといって、現在出ております患者をそのまま放置するということはできませんので、それに対しましては、やはり一定の病床数の増床なり、あるいは医療費という問題を考えていかなければならぬ、そういうふうに考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/42
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043・滝井義高
○滝井委員 予防面に重点を置くとするならば、必然的にBCGの接種というものが順当に行われなければならぬと思う。さいぜん長谷川委員からも、初感染の状態についていろいろ御質問があったようでございますが、あなたの方から出ておる統計を見てみましても、昭和二十六年においては、BCGの接種者の数は千四百二十一万四千七百八十五人あったのですが、それが昭和二十九年には六百六十万に減っておるということで、BCGの接種者が非常に減っておる。これはどういう理由によるのか。たとえば最近ああいうソーク・ワクチンとか、赤痢のワクチンとか、いろいろワクチンで問題が起ったために、大衆が、こういうBCGの接種は、一つの潰瘍を生ずるために忌避して、こういう状態が起っておるのか。この数字の推移というものは、日本の結核対策を推進する上において、きわめて重大な問題だと思うのですが、こういう減少をした——これは年年減少していっておる。二十六、二十七、二十八、二十九と比較してみますれば、ずっと減少していっておる。私は、BCGを年々確実に、たとえば半年ごとにやるならば、この初感染における肋膜等はずっと消し得ると考えておるのですが、この減っておる理由をもっと明確に述べてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/43
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044・山口正義
○山口(正)政府委員 このBCG接種者の実数がだんだん減ってきておりますということは、いろんなファクターが考えられると思うのでございますが、一つには、やはり感染者がだんだんふえて参りまして、未感染者が減ってきているということもございます。またBCGが、昭和二十六年から結核予防法に取り入れられまして——その前は予防接種法に取り入れられておったのでございますが、このBCGそのものに対しますいろいろな改良が、二十六年のBCG論争のときにも問題になったのでございますが、それが加えられて参りまして、BCGによる、接種をいたしまして陽性転化して、その持続期間が割合長くなってきているというようなことも、一つの原因であるというふうに考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/44
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045・滝井義高
○滝井委員 基本的には、感染者が増加をしてきたというようなことが、もし 原因だとするならば、必然的に間接撮影や精密検査というものが強化されなければならぬことは当然です。そういう強化が予算的に行われておるかどうかということについて、たとえば過去二十六年から今年の予算までをずっと見て、そういう間接撮影や精密検査のための予算というものが飛躍的に増加をしておらなければ、結核の予防というものはできないと思うのですが、そういう状態が出てきておるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/45
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046・山口正義
○山口(正)政府委員 ただいま滝井先生御質問の予算的の数字につきましては、ちょっと今私の手元にございませんが、お手元に差し上げました資料にもございますように、エキス線の間接撮影の実施数は、二十六年から逐年増加いたしているわけでございます。それから三十年度の予算におきましても、これは対象が非常に拡大されます関係もございますが、相当大幅に実施できるような予算をお願いしているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/46
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047・滝井義高
○滝井委員 これはあとで予算上の数字を一ついただきたいと思います。
それから、いよいよ結核に感染した人が、結核の公費負担を申請することになるわけですが、たとえば、あなた方の方から出ておるこの資料の九十八ページなんかを見てみますと、化学療法にしても、人工気胸療法にしても、申請、合格、承認、こういうことになっておるわけです。そうしますと、たとえば人工気胸療法なんかを見ると、十一万九千二百四十一申請をして、合格が十一万五千三十あります。承認には七万七千八百六十三人しかなっていない。そうすると、合格だというのは、おそらく各保健所ごとにできておる結核審査協議会で、これは公費負担を受けるに十分な病状であるという認定があったからこそ、合格になったものだと私は思うのですが、そうでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/47
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048・山口正義
○山口(正)政府委員 ただいま滝井先生の御指摘の通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/48
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049・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、ああいうりっぱな公的な機関で、これは化学療法なり外科手術が必要であると認定したものの中から、さらに七万七千八百六十三の承認をするということは——大体そういう承認とか不承認というのは、どこで決定をしておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/49
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050・山口正義
○山口(正)政府委員 ただいま御指摘のように、保健所に設置されました保健所の審査協議会で合格と決定いたしましたあとで、若干の人の動きがあることも一つの原因ではございますが、大きな原因は、やはり年度末になりまして予算が足りなくなったというようなことが一つの原因だと思うのでございます。地方財政の関係等もございまして、この結核予防法の医療費公費負担の予算が十分計上されず、従いまして、合格とされました者全部に対して公費負担が行われ得ないということは、まことに遺憾なことだというふうに考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/50
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051・滝井義高
○滝井委員 それでは答弁にならないのです。結核審査協議会で、あなたは公費負担を受ける資格があります、その病状に全く適合しておるのだ、こういうことを折紙をつけてきめたものを、その中から結果的に承認とかあるいは不承認になる人が出てくるわけですが、合格者の中から不承認になるということは、大体どこできめるのかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/51
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052・山口正義
○山口(正)政府委員 見当違いの答弁を申し上げまして恐縮でございますが、それはやはり保健所できめるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/52
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053・滝井義高
○滝井委員 保健所できめるといっても、あなたは合格だといって一ぺんきめたならば、おそらくその療養を担当しておる医者なりに伝えておるはずだ。そうすると医者は、それによって、急ぐような患者については、もうすでに薬物を投与して治療しておる。患者もまた当然受け入れられるものとして、公費負担が来るものとして、おそらく家計なんかの予算を組んでおるわけだ。医者自身も、自分の金を出して薬物を買って投与してやっておるわけだ。そうした場合に、あとで不合格といった場合には、その損害というものはどこかで持たなければならぬ。現在、それはおそらく医者なり患者が出しておると思う。これではなかなか困ると思うのです。こういうものが五人か十人ならいい、ところが、この統計を見てみても、十一万五千の合格があって、七万七千しか承認されていないのです。だから、ここに約四万の人たちがそういう悲惨な目に会っているのです。これはやはり私は大へんなことだと思う。こういう点、もっと明確に御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/53
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054・山口正義
○山口(正)政府委員 審査協議会で合格といたしましても、本人にはその段階では通知しないのです。本人に通知するのは、承認の場合に通知するわけでございます。従いまして、滝井先生の御指摘のようなことは起らないのじゃないかというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/54
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055・岡本隆一
○岡本委員 ちょっと今の問題ですが、私はこう解釈しているのです。病態は、パス、マイシンあるいは手術その他の結核予防法に規定する治療を受けなければならないような病態である、しかしながら経費の都合でもって結核予防法では承認しない、しかしながら、健康保険もしくは生活保護法によって治療を受けてくれという不承認通知がやってくるわけです。結核患者のすべてに対して、結核予防法が全部予算的な裏づけを持てば、こういう問題は起らないのです。しかしながら、その予算の裏づけを持たないから、結局予防法の対象として当然結核予防法によって国が負担しなければならない治療費を、健康保険や生活保護法にしわ寄せしている。それが不承認通知となって現われて、結局十一万のうち四万という数の人たちが、全部健康保険によって結核予防法によってまかなわるべき治療を受けているということで、従ってそんな数の開きが出ていると思いますが、そうじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/55
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056・山口正義
○山口(正)政府委員 先ほどの滝井先生の御質問に対して、合格、承認の取扱いにつきまして、私の申し上げ方が悪かったので、ただいま岡本先生から御注意を受けたわけでございますが、先ほど滝井先生の御質問の最後のところでも申し上げましたように、審査協議会では合格という結果になりましても、患者あるいは医療担当者に対しましては承認ということが参りません。予算的な関係もございまして、ある程度のものは承認といきません。一部——一部と申しましては語弊かありますが、ここに上りました数だけが承認という通知が行くわけでございます。ただいま岡本先生の御指摘の通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/56
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057・滝井義高
○滝井委員 財政上の問題で、今四万という数をちょっと言いましたけれども、これは何も人工気胸だけの問題ではなくして、そのほかに化学療法とか人工気腹というものをかけて、あるいは外科手術をかけていくと、莫大な合格者であって不承認になる人が出てくるということなんです。そこでお尋ねするのですが、そういうように莫大な不承認者が出てくるということは、一にかかって地方財政のためと、国の財政で二分の一のまた二分の一ですから四分の一しか国が負担しない、こういうところに原因がある。そうしますと、この前あなたの方からいただいた昭和二十九年度・三十年度医療費対照表によりまして、昭和二十九年度、三十年度と比較してみますと、昨年そういうものに使った医療費は六十二億だったわけです。——はしたがありますが、六十二億です。本年は五十六億である、六億余りの減少になっているわけであります。結核というものはどんどん内攻している、しかも開放性の患者はますますふえている。死亡率は減ってきたけれども、むしろ内攻の状態が出てきた。こういう情勢の中にあるときに、こういうように公費負担が減るというととは、どうも私は納得がいかない。なるほどパス、マイシンその他の値下りということもあるでしょう。値下りで予算が節減できて昨年は一億ばかり供出されました。あれはほかの結核対策に回されるべきでございますが、実際よく経費の節減に持っていかれて供出されたと思う。そういうことで、とにかく今年は六億ばかり削減になっている。削減のおもなところを見てみますと、人工気胸と人工気腹が四億ばかり減っている。しかし私は、もしこういう主として外科手術に近い人工気胸、人工気腹の費用を減らすならば、むしろこれは外科手術の方に回すべきだと思う。それを正直に四億ばかり減らされている。もちろんこれは人工気胸を受ける対象人員が減ったからだと思います。人工気胸というものがあまりきかないということになったからかもしれない。しかしそれにしても、結核対策が推進されなければならないときに、こういう公費負担の面でこれをあなた方が減らされた理由はどこにあるのか。あなた方が減らされれば、それに対応して地方公共団体が減らすことは火を見るよりも明らかであるのに、なぜこれを減らされたか、その減らされた理由。結核対策を推進しなければならぬときに、一番大事なこういう公費負担を減らされた理由を一つ御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/57
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058・山口正義
○山口(正)政府委員 ただいま御指摘の人工気胸、人工気腹の方は、それらの対象者がむしろ現在化学療法の方に回りつつあるという状況でございますので、私ども人員としてはそっちの方に持っていきたいというふうに考えているわけでございます。外科療法は昨年と大差ないというようなところでございます。全体としてなぜ減ったかということでございます。これは先般も御説明申し上げたかと存じますが、パス、ストレプトマイシンをヒドラジッド、パスに切りかえるというようなことによりまして、対象人員はできるだけ従前と同じ程度確保したいということなのでございます。この結核医療費公費負担が十分行われていないという点は、先ほど滝井先生から御指摘がございましたが、地方財政との関係がございますので、最近では付与額が割合少くなってきているのでございますが、地方財政が苦しいために、国が予算を組みましても、なかなかそれが消化し切れないという実情でございます。従来、私どもこの点につきましては、結核予防法で負担できないものは、先ほど岡本先生からも御指摘がございましたが、健康保険、生活保護法に回って参りますので、こういうことにならないように地方庁といろいろ連絡してやっておったのでございますが、なかなか思うようにそれが消化し切れないというところでございました。これはやはり国の負担率あるいは地方の負担率との割合があるということも考えられるのでございまして、私ども、できればこういう公費負担率あるいは国庫補助率というものを根本的に考え直してやっていければ、一番いいというふうに考えているのでございますが、三十年度はいろいろな関係でそれができなかったわけでございまして、地方財政との関係もございまして、一応この線で落ちついたわけでございます。不十分ではございますが、この予算で大体昨年と同じくらいの人数をまかなっていきたいという考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/58
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059・滝井義高
○滝井委員 地方財政との関係で、今年はこういう工合に減っている、こうおっしゃるわけですが、私は実はここが盲点だと思う。ほんとうに結核対策を推進されようとするならば、地方財政に依存をしておってはできない。私はおそらくこれは年々歳々細っていくと思う。なぜならば、これは局長さん御存じのように、昭和二十八年決算においても、四百六十二億の赤字です。今度の地方財政計画を見ても、いわゆる人件費においても、三百七十億ないし三百八十億の赤字が地方公共団体に出る。しかも、六十八億の節減を政府は要求しておる、しかも財政計画の中に百四十億の穴があいておる。その穴があいたものをまた節約して埋めましたら、いわゆる四分の一、二分の一の公費負担をやる結核対策費というものが出てくるかというと、断じて出てこない。あなた方は、わずか五十六億五千八百九万二千円の予算を組んでおられますが、おそらくこれは実行できないで余って返ってくると思う。その証拠には、昨年の実績を見ても、富裕県においてすら結核対策の四分の一の予算を組んでいないじゃないか。東京、兵庫のごときは組んでいないと思います。そういう富裕県が、結核に対して協力をしていないということなんです。いわんや、貧弱なところにおいては協力ができないと思います。そこで、どういう県が一番結核予防法に協力していないか、ここで一つ大きくあげてもらいたいと思います。公費負担で一番不熱心であった都道府県をちょっとあげてみてください。これは必要なんだ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/59
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060・山口正義
○山口(正)政府委員 一応国が全体の予算を各府県に割り当てまして、その割り当てました予算を消化する率のよしあしでございます。それに対しまして、その府県がこの問題にどれくらい予算を出しているかということで協力程度がわかるわけでございますが、その府県別の率をきょう持ってきておりませんが、先ほど御指摘ございましたような大府県におきましても、協力程度が非常に悪いということは事実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/60
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061・滝井義高
○滝井委員 そういうように、富裕県のいわゆる大府県が計上していないのです。そういうことで、富裕県さえも計上できないような政策が依然として続けられておる。これは川崎厚生大臣に来てもらわなければいかぬと存じますが、私はここが盲点だと思うのです。どうです、局長さん、一つこの結核予防法の三十四条を改正して、少くとも患者なりその保護者の申請があったときに、その二分の一を負担することができるじゃなくて、負担することを義務規定にしなければならぬと思うのです。そういう改正をする意思があるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/61
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062・山口正義
○山口(正)政府委員 ただいま滝井先生の御指摘の三十四条を義務規定にするかどうかということでございますが、これは事務的に私ども内部でもいろいろ検討いたしておりまして、まだ非公式ではございますが、財政当局ともいろいろ話し合っていろわけでございます。現在の無差別平等の原則をそのままにして義務規定にするかどうかということを、今後検討しなければならぬ、そこらに問題があるように思うのでございまして、ただいま御指摘の三十四条を義務規定にしたらどうかという御意見は、しばしば私ども伺っております。私ども自体としても検討を続けておるわけでございまして、率直に申し上げまして、結核予防法による医療費の公費負担、これは出発は適正医療の普及、それから社会保障の線ということで進んで参ったのでございますが、結核医療費のうちの一部だけ公費負担いたしておりますことも一つの原因でございますし、いろいろまだこの制度だけではまかない切れないという面が非常に多いのでございますので、これは昨年実態調査の成績がわかりましてから、厚生省内でもいろいろこの医療費の公費負担制度については根本的に検討して参ったのでございますが、遺憾ながら三十年度におきましては従来の線を踏襲するということになっているのでございます。この問題につきましては、ただいまの義務負担制度の問題もあわせまして、根本的にできるだけ早い機会に検討を終らなければならない、そういうふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/62
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063・滝井義高
○滝井委員 小山さんがおられるのですが、昨年あなたの方で、厚生省の結核対策の構想を発表された。そのときに改正すべきものは、結核の公費負担の中で、国の負担を三分の一にふやさなければならぬ、こういうことをやるんだ、これは省議で決定したのだ、こういうことを発表された。あとから草葉厚生大臣が来られて、そういうことは私は全然知らないと言われて変なことになったのですが、あのときは三分の一ということは省議で決定しておったはずです。それがいつの間にか消えてしまったのですが、どういう理由で三分の一ということをあのときに言われたのか。これはあなたの方の所管だと思うのですが、それがどういう工合でまた元になったのか、その間のいきさつを御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/63
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064・山口正義
○山口(正)政府委員 結核予防法による公費負担制度に欠陥があるということは、いろいろ御指摘を受けているところでございまして、その一つの点は、先ほどの公費負担率の問題と国庫補助率の問題でございます。これを地方でも、地方財政の苦しい折柄ではありますが、予算をできるだけ組んで、これを必要とする人たちに普及さしていくためには、公費負担率なりあるいは国庫補助率というものを検討しなければならないのではないかということで、省内でいろいろ検討いたしまして一応考えをまとめたのでございますが、何分にもそれらを実施して参りますのには、財政問題も大きくからんで参ります。これはちょっとやそっとのからみ方ではございません、非常に大きくからんで参りますので、先ほどお話のございましたそういうふうにするか、あるいは義務負担制度にするかというような点も、根本的にここでもう一段と考えて検討し直そうということになったわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/64
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065・滝井義高
○滝井委員 結核対策を推進できるかどうかということは、ここにかかってきていると思うのです。もちろん、まだいろいろ根本的にやり直さなければならぬ点がありますが、当面われわれがやり得るポイントというものは、ここ以外にないという考えさえ持っておるくらいですから、ぜひ一つ局長さんにおいても、川崎厚生大臣によく御説明願って努力していただきたいと思います。
それからもう二つお尋ねいたしますが、あなたの方の昭和二十九年度・昭和三十年度医療費対照の中で「その他」という中に、昭和二十九年度は六万六千五百二十一人対象者がある。三十年度におきましては公費の対象者が「その他」の中では六万二千七百人になっている。外科療法が「その他」の中に入っておるんだと思うのですが、さっきお聞きしたら、入っているということですが、そういうことなのかどうか。
いま一つは、あなたの方の資料の八十七ページの医療の状態を見ますと、aの必要とする医療の中には、外科療法が二十一万入っております。しかもその中には、その他の療法が四十八万ある。それからその下のbの入院を必要とする患者数百三十七万、この内訳の中の外科療法が四十二万になって、その他の療法が四十一万となっております。同じ厚生省から出た統計の作り方で、一方は外科療法が「その他」の中に入っている。一方は外科療法がはっきり出て、「その他」というものが別にある。こういうことはちょっとわからないのですが、これを御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/65
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066・山口正義
○山口(正)政府委員 最初に滝井先生の御指摘になりました昭和二十九年度・昭和三十年度の医療費対照の中の「その他」の中には、外科療法が入っているわけでございます。それから別の資料の八十七ページの「その他」と申しますのは、これは単に安静療法というような特別な治療を加えないというような分け方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/66
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067・滝井義高
○滝井委員 そこでちょっとお尋ねしたいのですが、日本における結核療養所の病床は、今年で多分二十一万ぐらいになっておりますが、そうしますと、胸郭成形術という外科手術をやり得る一年間の能力というものは、大体どの程度に見ておるか、これは一つ局長さんに御答弁願いたいと思います。
それから医務局長さんにお尋ねしますが、最近長谷川委員から、ベッドのあきが出てきたということをいろいろ質問しておりました。それで昨年は利用率は九四・二%ぐらいであった、一昨年もそれよりちょっと多いくらいで大して変っていない、こういうことなんです。ところが実際に行ってみると、相当あいておるところが多いのです。多いところで二百床、三百床もあいておる。こういう状態は、今のいわゆる地方財政における公費負担の関係ができないために、もはや結核療養所に入れない状態が出てきておるということなんです。もちろん、この前私もここで述べましたが、清瀬病院の島村さんが「世界」にも、化学療法というものは一応の勝利をおさめた、しかし勝利というものはきわめて見せかけの勝利で、見せかけの治癒のために減ってきている。それからデフレ政策の影響のために、大衆はみんな金がなくて入院料がなくなってきたのと、いま一つは生活保護の引き締めのために減ってきたということを指摘されておりますが、私は現実に最近は相当あいてきていると見ている。生活保護で入院ができない。私の知っておる限りでも、生活保護なんか全部切り落されている実情である。それから公費負担で地方財政がますます窮乏し、六百億の赤字が出てくるだろうといわれておる。そうしますと、入院ができない状態が出てくる。自費で結核療養所に入院しようなんということはとてもできない。胸郭成形術などをやろうとすれば、一カ月五万も七万も金がなければ入院ができない。そういう状態では十万も給料をとるサラリーマンならば行けるが、日本における中産階級以下の層から出る結核患者というものは、とても療養所には入院できない。今あなたが九十何パーセントだとおっしゃいましたが、とてもそれどころではない、最近は相当あいてきている事実があるわけです。従ってベッドはあいてきておる。公費負担という制度があっても、これは動かない、こういう事態が徐々に起りつつある。しかしあなた方は、保険財政を守るためには無情な切り方をしておる、しかも健康保険について審査を強化してきておる、こういうあらゆる手を打ってこようとしておる。そういう状態では、かわいそうなのは結核患者ばかりで、そのしわというものはおそらく結核患者に来る。療養所は、ベッドがあいてカンコドリの鳴く状態になれば、楽になります。しかし、それは科学者としては非常に困る状態なんです。だから、島村さんも言っておる日本の結核というものを百日ぜきの状態で解決をするか、それとも精神病の状態に追い込んで結核を解決するかということは、もはやそれは医者の問題ではなくて政治の問題である。すでに結核患者や結核の療養を担当している医者の前には、たんたんたる大道が開けておるけれども、悲しいかな政治家にはそれがわからない。ここに日本の結核に対する悲劇があるのだということを言っておる。こういう点、ほんとうにわれわれが結核に対するたんたんたる大道を開こうとするならば、これは今の病床があいておるという現象の根本的原因にメスを加えていかなければならぬと私は思う。こういう点について、お二方の明確な御答弁を願って、そうしていずれ御答弁によって、あとで健康保険もありますから、大臣にも来ていただいて、今の根本的な問題についてもう少し御質問したいと思います。二人のお方に一つ御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/67
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068・山口正義
○山口(正)政府委員 第一の外科手術能力、これは正確な数字を把握することは、なかなか困難ではございますが、全国で一年間に大体四万というふうに私ども推定いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/68
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069・曾田長宗
○曾田政府委員 私から御答弁申し上げるのが適当であるかどうかわかりませんけれども、私ども一応お預かりしておりますのは、国立の療養所でございます。国立以外の療養所におきましても、国立療養所と同じような傾向が現われておるものであろうというふうに私も思っております。ただいまお話しのように、ベッドは相当にふえてきておる、しかしながら、それに対して入院をし、手術を受けるというようなすべがなくて、これが十分に利用されないような状態があるのではないかという御意見に対しましては、私も一部分といたしましては、さような事情があるのではないか、あるかもしれないというふうには考えておるのであります。しかし、先ほど長谷川先生から御質問もございましたように、この数がある程度減りつつあるのではないかということになりますと、私はこれは絶対に数は減っておらない、むしろふえておるというようなことは申し上げかねると思う。これはいろいろ厳密な資料に基いて、またいろいろな角度から検討してみなければならぬというふうに思います。ただ、ただいまの御質問につきまして、ベッドもある、また医者の手もまだまだ手術はできるのだ、しかしながら、入院することは、いろいろ自費としてこれを負担することができない、あるいは健康保険あるいは生活保護というものの経費の関係で伸び悩んでおるというような事実が、一つのファクターとして考えられるであろうという御意見に対しましては、私は一つのファクターとしては考えられると思っております。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/69
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070・中村三之丞
○中村委員長 この際、公聴会開会承認要求の件についてお諮り申し上げます。
ただいま当委員会に付託になっておりますけい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法案につきましては、その重要性にかんがみ、先刻の理事会において来たる六月九日、十日の両日、公聴会を開会いたすことにきまりました。公聴会を開会するにつきましては、衆議院規則第七十八条により、あらかじめ議長の承認を得ておかなければなりません。よってこの承認要求をいたすこととし、手続等につきましては、すべて委員長に御一任願うことに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/70
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071・中村三之丞
○中村委員長 御異議なしと認め、そのように決します。
午前中はこの程度にとどめ、午後二時三十分まで休憩いたします。
午後零時四十九分休憩
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午後二時四十七分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/71
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072・中村三之丞
○中村委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。
結核予防法の一部を改正する法律案を議題とし、休憩前に引き続き質疑を継続いたします。亀山孝一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/72
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073・亀山孝一
○亀山委員 今次の結核予防法の改正におきまして、健康診断につきまして年令の制限を撤廃されたことは、わが国結核対策上非常にけっこうだと思うのでございますが、それにつきまして、当局にお伺いしたいのは、先般の結核白書にも出ておりますように、結核の感染年令、発病年令と申しますか、日本の結核が、最近、老年結核、中老年結核に戦後変ったというようないろいろの発病状態にかんがみまして、健康診断を行う年令層を、たとえば小学校の就学期あるいは卒業期、あるいは週令期、あるいはある一定の中年層というようなところに重点を置いて健康診断を行い、そして結核の蔓延するのを防止し、あるいは早期発見に努むべきであろうと考えるのでございますが、この点についての当局の御意見をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/73
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074・山口正義
○山口(正)政府委員 結核の健康診断に関して、今度全般的に年令層を広げてやるのであるけれども、特に重点を置いてやる年令層を考えないかどうかというお話でございます。御承知のように、先般御報告申し上げました昭和二十八年に実施しました結核の実態調査の成績から見まして、従来青少年層に多いと見られておりました結核が、むしろ三十才以上の年令層に多く発見されるという事実がございました。従いまして、今回御審議をお願いいたしております案のように、従来特定地区では三十才以下だけを健康診断する——集団生活を営んでおる者は別といたしまして、一般の国民の人は三十才以下の人たちを健康診断するという建前で進んでおりましたのを、今度年令の制限を撤廃して、全年令層にわたって健康診断を実施するというふうに改正をお願いしたいというわけなのでございます。一方また昨年実施いたしました結核の実態調査、これはけさ長谷川委員からの御質問にお答え申し上げましたことにもございましたが、一昨年の実態調査の際に異常なしと認められました者のうちで、一年間に発病してきた者がどういうふうな状態にあったかということを見たわけでございますが、その際に新しく発病する者は、やはり年令の若い方に割合多いというような点もございます。それから一昨年実施いたしました結果では、高年令層にすでに現存している患者が相当多数あるというような事実がございます。従いまして、今回は全年令層に広げるわけでございますが、しかし、おのずから実施いたしますときには、どういう部面に重点を置いてやったらいいか、発病の多い点に、発病防止という観点から重点を置いてやった方がいいということも考えられます。また高年令層では、すでに慢性になって感染源になっている結核患者を発見するという観点から、そういう点の年令層に重点を置いてやった方がいいというふうなことも考えられます。従いまして、法の建前といたしましては、今回お願いいたしておりますのは、全部一様にということになっておるのでございますが、実際にこれを実施に移します場合には、ただいま亀山先生からも御指摘がございましたが、おのずからそこに重点を考えて実施していった方が効果的であるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/74
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075・亀山孝一
○亀山委員 ただいまの御説明でよくわかりましたが、実はこの結核が、今日わが国の亡国病であります関係上、結核に重点を置かれて健康診断を行うということはやむを得ないと思います。けれども、わが国の国民の健康状態を、ある一定の年令層において健康診断をして、たとえば結核以外の、かなり蔓延しておると伝えられる花柳病、トラホームあるいは寄生虫病というふうな、そういう方面を、往年の徴兵検査において発見され、早期診断となったようなことにかんがみまして、結核直接ではありませんが、これと関連を持ちつつ、今申し上げたような健康診断を行われることがいいのじゃないかと思うのでありますが、さらに公衆衛生局長はそういう方面にも関連しておりますので、その点の御所見を一つお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/75
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076・山口正義
○山口(正)政府委員 健康診断を実施いたします際に、現在わが国の保健衛生の上から、一番大きな問題である結核に重点を置いて健康診断をするのはもっともだけれども、その際に、せっかく多くの人を健康診断をするのであるから、やはり国民の保健の上から考えて、大きく取り上げなければならない性病の問題とか、寄生虫の問題、あるいはそのほかの疾病についても、健康診断をした方がいいんじゃないかというような御意見かと思うのでありますが、現在私どもの考えております健康診断のやり方といたしましては、結核の健康診断、一応ツベルクリン反応はいたしまして、そうして陽性者に対して結核のレントゲンの間接撮影を実施するというようなことをいたします。その際に、疑わしい者に対しましては、さらに精密検査を実施するということになっておりまして、今回お願いしております健康診断の対象者すべてに、臨床医学的な検査をするという建前にはなっておらないのでございます。また全部の者に臨床医学的検査をするということは望ましいことではございますけれども、実施能力その他の点から考えて、なかなか困難な点があるのであります。しかしながら、せっかくこういうふうに集まられるいい機会でございますので、その際に、ただいま御指摘のような疾病についての注意を与え得るような場があります場合には、そういうものをできるだけ利用していくのがいいのではないかというふうに考えるわけでございます。結核以外の性病とか寄生虫というようなものに対して、全国民にいろいろ健康診断をやっていくということは、たといこれがいいことであっても、実施がなかなかむずかしいという状態でございます。特に必要のある部面には、またそれに従った健康診断を実施するという建前で、現在トラホーム予防法なり寄生虫予防法あるいは性病予防法というものを活用して、実施しておるわけでございます。しかし、先ほど御指摘のように、一般国民を一カ所に集めて、主眼点は結核であるが、健康診断をやるのであるから、その際に他の疾病についてもでき得るならばいろいろ注意を与えるというようなことを心がくべきであるという点、ごもっともでございます。私どもも、そういう点は十分注意をして、かといって、結核の健康診断それ自体に支障がいろいろ生じては困りますので、その点支障のないようにして、できるだけ御趣旨に沿うようにしてやっていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/76
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077・亀山孝一
○亀山委員 ただいまの御説明ではございますが、もちろん現在の健康診断においては、結核のみであると思います。けれども、結核の予防に関連するという意味で、伝染性疾患あるいはその他、本人に健康保持上注意すべき事項は、その際指示するというようなことは、私はあってほしいと思う。もしもそれに必要な経費が要るならば、これは将来厚生省当局において考慮されたい、かように考えるのでありますが、もう一度その問題についての御意見をお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/77
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078・山口正義
○山口(正)政府委員 先ほども申し上げましたように、こういう機会にそういう伝染性疾患について注意を与えるということは、必要なことだと思います。ただ、ただいま亀山先生から御指摘の経費の問題もからんでくると思うのでございますが、やはり人的の実施能力と申しますか、今回お願いいたしております健康診断を十分実施するにつきましても、先般来いろいろ御心配をいただいておりますように、人的、物的の施設の面で、なかなか楽観を許さない点がございます。そういう点は人の面もからんで参りますので、経費の面、人の面と両方勘案して、御趣旨のような点を今後検討して参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/78
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079・亀山孝一
○亀山委員 今御説明のように、確かに物的の問題よりも、これに協力して下さる医師各位のお方の問題だと思います。そこで、これは今度の健康診断の経験に徴せられて、なるべくすみやかに今申し上げたようなこの機会に、公衆衛生の立場から、結核直接といいますか、間接的の、今申し上げたような健康診断の指示のできるように、一つ御処置願いたいと思います。
次に、幸い労働基準局長が見えましたから、関連する問題としてお伺いしたいのでありますが、結核予防法の定期健康診断は、政令によりまして大体年二回定期の健康診断を行うことが原則であると聞いておる。この予防法四条一項と労働基準法の五十二条とは表裏をなしておる問題ですが、これに対して労働基準法の改正は必要であるのかないのか、なさる御意見があるかどうか、この点を一つお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/79
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080・富樫総一
○富樫(総)政府委員 労働基準法におきましては、法律の規定を受けまして安全衛生規則におきまして、現在結核健康診断を含めた健康診断を、危険有害作業につきましては年二回、その他のものにつきましては年一回やっておるわけでございます。今度結核予防法においてそのような措置が講じられますれば、当然表裏の関係にございますので、仰せの通り年二回やっておりました分につきましては、その一回分はこれに適合するように直す、他のものにつきましては、新たにもう一回必要な分を追加する。これにつきましては、申すまでもなく労働基準審議会の議を経、かつ公聴会にかける手続を要しますが、その方向に措置する所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/80
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081・亀山孝一
○亀山委員 ぜひそういう御改正を願いたいと思います。
これは労働基準局長になるか、公衆衛生局長になるか、いずれでもけっこうですが、中小企業者、この方面の健康診断の実績があまりよろしくないと聞いておる。そこでこれに対する今後の対策について、御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/81
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082・山口正義
○山口(正)政府委員 ただいま亀山先生から御指摘のように、大工場、大企業におきましては、みずからいろいろな医療施設なり保健施設を持っておりまして、みずからの手で健康診断を実施し、またそれに必要な措置をいろいろ講ずるということをやっているのでありますが、中小企業、ことに中小工場などにおきましては、なかなかそこまで手が回らない。従いまして、今までのやり方といたしましては、ときには巡回して参るときもございますが、大体、保健所にいついつ集合して健康診断を受けてくれというようなことを申しましても、事業主の方としては、それだけ時間がさかれるのは生産の方に響いてくる、また労働者とすれば、それだけの時間をさいて職場を離れることになれば、請負の場合なんか、生産高にも影響してくるというようなことで、実際にはなかなか受診率が上らないというのが実情でございまして、しかも実際の問題としたしまして、そういう中小工場に比較的不健康の人が多くいるという統計も出ておるのでございます。従いまして、私ども今回結核予防法の改正をお願いするに際しまして、そういう点を労働省当局ともいろいろ協議をいたしまして、今後健康診断の実施能力をあげていかなければならぬと考えているわけでございます。それには、労働省当局の方から、それぞれの事業主に対して健康診断を受けさせるように、また労働者に対しては健康診断を受けるように指導していただかなければならないと思っておりますが、その健康診断の実施に当ります衛生当局、これは大体保健所の手で今まで引き受けてやっておりますが、そういう衛生当局としましては、単に保健所に健康診療を受けに行ってほしいというようなことでは、なかなか実績が上りませんので、今回、予算でもお願いしておりますように、保健所の機動力を増加いたしまして、レントゲン自動車を増強し——現在も全国で百四十台ばかりございますが、なおさらに増加いたしまして、少くともAクラスの保健所には一台ずつくらいの割合で整備して、そうしてこちらから出向いて行って、中小工場の人たちが手軽に健康診療を受けられるようにしていきたい、そういうふうに考えております。その際、けさほど長谷川委員からもお話がございました、いろいろ社会保障の問題もからんでくるのでございますが、とりあえず健康診療の実施率を上げていくという点で、私どもも労働省と相談して、そういう手を打っていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/82
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083・亀山孝一
○亀山委員 そこで労働基準局長にお伺いしたいのでありますが、今中小企業の問題に対して、公衆衛生局長からお話がありましたが、この問題はよほど両省がよくタイアップしていかなければならぬ。それでなければ、実効は上らぬと思うのです。そこでそれに関連して、労働基準法の適用事業場、事務所等の健康診断の実施の状況を一つお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/83
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084・富樫総一
○富樫(総)政府委員 基準法に基きます実施率につきましては、まだ昨年度につきましての数字の集計はできておりませんが、それまでの実績によりますと、昭和二十六年におきまして七四%、昭和二十七年におきまして八〇%、二十八年におきまして八四%と、逐年実施率が向上して参っております。病気の性質上、われわれといたしましては、特に安全衛生週間その他の機会を利用いたしまして、その向上に努力しておる次第でございます。中小企業につきましては、ただいま山口政府委員から申し上げましたように、十分に提携して進める所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/84
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085・亀山孝一
○亀山委員 次に、これはあるいは公衆衛生局長に御質問するのは権限外かと思いますけれども、できればあなたから答弁願いたいと思います。それはアフター・ケアの問題でございます。これは厚生省の社会局で担当しておられますが、アフター・ケアの問題で私どもが一番懸念することは、アフター・ケアでからだをならすのでありますけれども、問題は、これと就業との関連性をどうしても持たなければならぬ。それでなければ、幾らアフター・ケアを作りましても、実際の役に立たぬのじゃないかと思う。そこでアフター・ケアの、そういう方面の運用につきまして、一つ御意見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/85
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086・山口正義
○山口(正)政府委員 アフター・ケアの所管は、ただいま亀山先生から御指摘のように社会局でございますが、結核対策の一環といたしまして、私どももアフター・ケアの問題は十分関心を持って、厚生省として実施しておるわけでございまして、御指摘のように、アフター・ケア施設は、一応医療の手を離れました者が、職場に帰ります前にからだをならす、そうして職場に帰りましたあとで、また再発等の起らないようにするというようなこと、あるいは家庭に帰る前に、この時期を通っていくというようなことで、アフター・ケア施設の運用をやっておるのでございまして、従いまして、職業を覚えさせるということが本来の趣旨ではないと思うのでございます。職業を教えるということになりますと、職業補導施設、これは労働省の所管になるかと思うのでございます。しかし、アフター・ケアでからだをならすという時期の間に、職業を覚えるという点も兼ねてできれば、一番けっこうなことじゃないかというふうに私どもは考えております。責任ある御答弁は、主管局長でございませんからできませんが、そういうことでお許し願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/86
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087・亀山孝一
○亀山委員 一応、予防法改正問題についてのことではありませんけれども、この際結核予防に関して、幸い楠本環境衛生部長がお見えになっておりますので、お二人のいずれかから御答弁願いたいと思います。先般来、同僚議員からいろいろと結核予防の問題のお話がございました。結局結核予防の問題としては、いろいろありますが、要は健康生活と申しますか、お互いの生活を衛生的に持っていくということが、まず何よりの第一歩の結核予防というか、疾病予防の第一歩ではないかと思います。そこで、どっちかといえば、まあありふれたことであり、軽視される問題ではあるのですが、鼠族、こん虫駆除の励行ということ、これが結核予防、またひいては今申し上げた健康生活に非常に影響があると思う。伺うところによると、公衆衛生局の環境衛生部では、だいぶんこの方面の各地方における実施の成績、あるいはそれの結果等があるそうでありますが、それについてのお話を楠本環境衛生部長からお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/87
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088・山口正義
○山口(正)政府委員 詳細にわたりましては、あとで楠本部長から御報告申し上げたいと存じますが、ただいま亀山先生から御指摘のように、結核予防の施策を実施して参りますのにつきまして、先般もこれだけ健康診断の範囲を広げるのに、果して実施がうまくできるかどうかというような点について、いろいろ御質問いただいたわけでございます。その際にお答え申し上げましたように、いろいろな人的、物的の施設を拡充して、実施能力を上げていくということと同時に、やはり一般の方々に対して結核予防、それから健康診断というようなことについて理解を深めていただく。そのためには、民衆地区衛生組織というようなものを育成していきたいということを申し上げたわけでございますが、その地区衛生組織を育成していきます場合に、これは入り方にいろいろな手段があると思うのでございますが、その際に、ただいまお話のございました鼠族、こん虫駆除というようなこと、これは実地に現在全国各地で実施いたしておりまして、非常に成績を上げているのでございますが、そういう面から入って参りまして、ただ単に鼠族、こん虫駆除だけでなしに、それに伴って一般の公民意識が向上して参ります、従って健康生活を具現できるというような、ただいまの亀山先生の御指摘の通りでありまして、そうすれば、従って結核予防というものに対する認識も深まる、また私どもの行政的に実施いたします仕事に、一般の方々の協力をいただいて、結核予防の実を上げ得るのではないかというふうに考えているわけでございまして、そういう意味で、私どもただいま御指摘のような点、まことにけっこうなことだと思うのでございます。
なお、楠本部長から詳細御報告申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/88
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089・楠本正康
○楠本説明員 お答え申し上げます。こん虫駆除事業につきましては、御指摘のように、ただいま全国的に実施をいたしておりますが、最初に、ただいま御質疑の効果の点について申し上げますと、有形無形にいろいろな効果が現われておる点、最近全国約一千カ所、人口にいたしまして八百万人の実績から集計し得たのでありますが、まず第一に、医療費の面におきましては、実施地域の国民健康保険の一人当り支払い額が五百八十一円であるに対しまして、全国平均の一カ村の国民健康保険の一人当り支払い額は九百八十八円、きわめて大きな開きがございます。従って、これらのものは、私どもは、単に蚊やハエ、ネズミ等によって媒介される疾病だけではないのでなかろうかと考えまして、さらにいろいろ調べましたところ、特に内科的疾患あるいは小児疾患等が、一般に著しく減少しているのでございます。医療費の節減の効果は、きわめて大きいものがあると考えております。
次に、人間の健康が増すだけでなく、家畜類の健康も著しく増しますために、家畜の医療費というものがきわめて減少いたします。のみならず、逆に牛乳、卵等の生産が約二割方増産と相なっております。また千葉県におきましては、従来子豚を六カ月飼育して十三貫に達したものが、蚊やハエを駆除した地域におきましては、同じ子豚が五カ月で二十貫になると報告されております。
これらの効果のほかに、さらに注目すべき点は、これらの仕事が効果がきわめて率直に現われる点、あるいは実践的な技術性を持っている点、また一方各部落あるいは町等が共同しなければ成績が上らない点等から、知らず知らずの間にこん虫駆除事業が実践教育の場となりまして、総合的に各方面の生活改善に発展していく傾向を持っております。これらの点は、昨年来新生活運動として表彰されました各地域の成績を見ますと、いずれもかような経過をたどって発展をいたしております。
従いまして、これを総括的に申し上げますと、一つの実践訓練の場を与えまして、これによって合理的なものの考え方、あるいは真の健康生活のあり方、あるいはそれに引き続いて社会連帯の意識、つまり公民意識の高揚というようなものが、知らず知らずの間に育成されてかような結果となると考えております。従って私どもといたしましては、今後できるだけこれらの仕事を、地方の国民の盛り上る意識によって、真の健康生活を実現すると同時に、現在国民生活の中に最も欠けております地域社会の観念、公民意識というようなものの培養に努めて参りたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/89
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090・亀山孝一
○亀山委員 ただいま伺いますと、鼠族、こん虫駆除という問題は、健康生活、ことにひいては結核予防に非常な効験があるということでありまして、何よりに思うのでありますが、今の御説明では、今後これをどういうふうに指導なさるおつもりか、その点の御説明がなかったのであります。そういういいものを、厚生当局は今後どういう工合に実施なさるつもりでありますか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/90
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091・楠本正康
○楠本説明員 当初、この仕事は補助事業として実施されておりました。その当時は、保健所あるいは県等の職員が直接薬をまいて歩くというような形で進んでおりました。そのために、国民の気持からすると、国家にまかせ切りになって、ほとんど関心を持たない、従って効果も上らぬというような状況でありました。ところが、たまたま補助金が平衡交付金に切りかえられたのを機会に、私どもは非常にこれはさびしく思いましたが、やむを得ず各地にモデル地区を指定いたしまして、ここにおきまして、民衆運動としてこれを実施していく、しかもこれに対して、保健所は単に技術的な援助等を与える方針を立てまして、もっぱら民衆の組織活動によってやったところが、きわめて優秀な成績が期待以上に実証されましたので、われわれといたしましては、今後できるだけ各地域の民衆の組織活動を育成いたしまして、これを基盤としてこれらの民衆の盛り上る力、その実践意欲をかって目的を達していきたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/91
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092・亀山孝一
○亀山委員 幸いに川崎厚生大臣御出席でありますので、お見えになる前に公衆衛生局長並びに環境衛生部長に御質問申し上げたのでありますが、鼠族、こん虫の駆除という問題が、きわめてありふれた、どちらかといいますと軽視されるような事業ではありますけれども、これが実施の成績は、今伺いますと、健康生活、ひいては結核予防の面に大いに役立つものであるということでありまして、われわれは今後大いに実施上の促進をはからなければならぬ、かように思うのであります。大臣も、おそらくお聞き及びのことと思いますが、これに関しましての大臣としての御所見を、この機会に簡単に一つお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/92
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093・川崎秀二
○川崎国務大臣 ただいま御質問の鼠族、こん虫の駆除ということにつきましては、私も非常に関心を持っております。
これとは別でありますけれども、たとえば近年世界の各国におきまして、ことに後進国家とも見られるところが、衛生国家を目ざして蚊とハエの駆除ということを全面的に行なっておるわけであります。中国なども、最近におきましてはこれを国の一つのおきてとして行なって、非常な実績を上げておりますので、昨日は環境衛生部長を呼びまして、この問題に対して、政府が全面的に乗り出して、何カ年かの計画においてこれを根絶するような方向に持っていきたいということを話して、実は来週の閣議にその具体的な案を取りまとめてくるようにと内示をしたばかりであります。
これと並行しまして、やはり鼠族こん虫の駆除ということも、同様に重大な問題になろうかと思いますので、結核予防等にも関連をいたしまして、私としても十分の対策を立てたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/93
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094・亀山孝一
○亀山委員 ただいま大臣から非常に心強いお答えをいただきまして、満足いたしました。ちょうど大臣がおいでになりますし、公衆衛生局長も環境衛生部長もおられますので、お許しを得まして簡単に上水道及び簡易水道の問題にちょっと触れさせていただきたいと思います。というのは、健康生活にからみ、大事な問題が上水道の普及であり簡易水道の普及である。ところが、これは起債の問題があるいは認められないのじゃないかということを最近うわさに聞くのでありますが、その点はどうなのでありますか、はっきりとこの際御答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/94
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095・楠本正康
○楠本説明員 お答えを申し上げます。御指摘のように、簡易水道は別といたしまして、上水道は一応補助金が削除となりまして、全面的に起債に依存することとなった次第であります。しかしながら、私どもといたしましては、百億余りの事業費に対して、わずか数千万円の補助金では、これはきわめて典型的な少額補助の観点等からいたしまして、むしろ当然の結果だと考えております。ただ問題は、今度起債の配分計画に、あるいは水道の布設計画になりますが、これらの点につきましては、厚生省といたしましては、たとい補助金はなくても、与えられた起債のワクの範囲内において、しかも厚生省が行政の責任の立場から、また衛生行政の観点から、必要なところに必要な事業を興し得るようにする必要があると考えております。つまり、起債の配分に対して、厚生省が相当な発言権を持つことが必要と存じております。これらの点につきましては、目下大蔵省と折衝中であります。従って、何分の結論が得られると存じます。そういたしますれば、たとい補助金が落ちても、十分に目的を達していけるものと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/95
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096・亀山孝一
○亀山委員 簡易水道はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/96
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097・楠本正康
○楠本説明員 簡易水道につきましては、起債は補助の裏づけ起債でございまして、補助金がきまりますと同時に、起債の総額がきまって、各地方に配分されるのが例となっております。本年も一時新聞等に多少問題も出ておったようでありますが、最後的には、大体本年はやはり一括いたしまして地方負担の六割程度起債を認めよう、こういうことに相なっております。従って、これは従来通り地方負担分の六割程度は、簡易水道については当然確保されるものと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/97
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098・中村三之丞
○中村委員長 受田新吉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/98
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099・受田新吉
○受田委員 大臣おいでになった機会に、結核対策について、国策の重点的立場から一言だけお尋ねしておきます。
ただいま関係法律案の審査がされておるのでありますが、けさほど来、委員諸君の質疑の重点は、結核の予防に当って、国家としてもう少し徹底的に急速なる施策をとる必要はないか、予算なども、むしろ対策費を減らしておるような状況になっておる。これらについても、さらに病床の増加の割合についても、もっと積極性を持たしてはどうかという意見が多数出たわけであります。特に厚生大臣は、この結核対策については、非常な積極性を持った意見を持っておられるのでありまして、本年度予算に見られる一万床の病床を増設するという程度で、御本人としてあきたらないことは、私たち御推察できますが、この機会に、この法律改正にあわせて今後の結核対策について、政府の施策として基本的な案を、かつ急速に実施できる方向へ持っていく必要はないか。その具体的な例といたしましては、金のない人、経済的に非常に不幸な立場に立っている人は、経済的な事情に恵まれておる人々よりは、病状が悪化しておるにかかわらず、そうした治療を受ける機会に恵まれずして、やや条件のいい、経済的事情の豊かな人が安易な治療法を講じて治癒していき、進んだ患者が経済的事情で苦痛のどん底で死期を早めておる、こういう矛盾したことがないような施策が必要じゃないか、こう私は考えます。これらについては、できれば思い切った病床の増設策をとる用意はないか。
第二の問題としては、今度の改正案では、政令で予定する定期健康診断の回数のこともあげてあるのですが、そういうことをもっと範囲を広げて、全国民に及ぼすところの定期健康診断というようなものを考えておらないか。私、各地の引揚者の住宅などを視察しておりますが、集団的に結核患者がこれらの地区に蔓延しておる。ここに特に県知事が指定する蔓延のおそれのある地区ということがあげられてありますけれども、それらに漏れて、引揚者の住宅地帯が非常な険悪なる空気に包まれておるという状態を、私非常に拝見しております。結局政府が法案の上に意図するところが、なかなか予算の関係なんかで、実際には思うようになっておらない。また予算とか健康診断に当るお医者さんの数とかで、せっかくこの法律に規定してあるところのこれらの施策についても、思い切った措置がされておらぬというおそれがあるのです。こういうところについても、思い切って、疑わしい地区については漏れなくこれが定期検診をさしあたり実施するように、各都道府県に対するこれらの対策費というものを増額せしめるような考慮を払わなければならぬと思うのでありますが、これらについて、大臣としては何らかのお考えを持っておられるのではないかと思うのであります。
もう一つは、最後の問題として、病気がなおって後の対策であります。治癒した後における職業をすみやかに与えてやる、しかもその職業は健康者の場合とは違った考慮が払われなければならない。そういうところに対する深い思いやりが、結局長い闘病生活で立ち上ろうとする人たちに対して希望を与えることになるのであるし、将来治癒した後に希望を持たせ、現在の患者にも光を与えることになるのでありますが、そうした治癒後の職業に対する思いやり、こういうところをもっと積極的に考える必要はないか。特に政府が出された資料を見ますと、最近は若い人の死亡率がうんと減って、老年の結核患者が大いに増加していることを拝見しておるのであります。この表で見ますと、何年か後には、今ここでなおって一時的に死期が押えられていた者が急に再発して、だたっと死ぬようなおそれがあるのじゃないかという不安も、この統計の上で感じられるのでありますが、こういう問題に対して、絶対に再発せしめないところの事後の対策として、そうした仕事のことなども考えてやらないと、途中でまたせっかくなおった人の死期を早める再発の機会を与えるおそれがあると思うのであります。こういうことに対する今後のあたたかい思いやりの施策ということにつきましての大臣としての御意見を伺いたい。法律の改正案を拝見しまして、私の思い当ったおもなる点を申し上げ、御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/99
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100・川崎秀二
○川崎国務大臣 結核対策といたしましては、御質問の通り、昨年より結核対策費総額におきまして二億一千万円ほど減になっておりますので、この点につきましては、各委員からおしかりをこうむっておる次第でございます。私といたしましても、結核対策を十分にすることが、今日の社会保障行政の重点であるということは、前々より承知はいたしておりまするし、この程度の病床の整備で満足をいたしておるものでないことは、たびたび答弁申し上げた通りでございます。しかしながら、本年の緊縮予算のため、非常に新設を見合せたりなどしたところもありまして、そのために十分な施策が行われないことは、はなはだ残念に思っておりまするが、新しい機軸を出した面も、ただいまの御質問ではありましたが、あるのであります。それは、たとえば健康診断の対象を広げるということにつきまして、本年は昨年の実態調査の結果にかんがみまして、新たにその対象を大幅に拡大いたしまして、だんだん全国民を対象にしたものにいたしたいと考えております。事実、本年は相当大幅な者に対して健康診断も実施をすることに相なっておるわけでありまするから、結核対策全体といたしまして、いま少し思い切った措置をすべきだという御意見は、十分に尊重いたしまして、今後の施策には盛り込んでいきたい。ことに、本年度は不十分でありましたけれども、すでに本年は六月を迎えようとしておりまするし、来年度の予算編成の最初の時期も、すでに八月の末に迫っておることでありますから、これらも勘案いたしまして、十分な施策を実施していきたいと考えておる次第でございます。
なお、結核回復者に対する余後措置といいまするか、アフター・ケアの問題は、しばしば各委員から御指摘のありました通りで、たれはわが国が欧米先進諸国に対して最もおくれておるところであるということを自覚いたしております。最近、民間諸会社におきましても、東京電力その他の会社におきまして、だんだん理想的なアフター・ケアの施設を備えようとしておるところが、すでに先覚的に二、三ございますが、これが全般に行き渡るように、やはり厚生省としては指導をし、結核にかかった者のアフター・ケアに対する施設と指導を十分にしていきたいと考えております。もとより就職の問題につきましても、これは官庁あたりで心がけませんと、結核回復者に対してやはり他の者に対するところの警戒からか、なかなか採用してくれません傾向にありますが、これは一つ皆様方のお力をもかりまして、ことに政府部内におきまして労力をあまり要しないという仕事については、優先的にこういう人々を採用してもらうようにいたしたいと考えておる次第でございます。
いろいろまだまだお話を申し上げなければならぬ点があるかと思いますが、ただいま御質問のありました点に触れまして、お答えを申し上げた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/100
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101・中村三之丞
○中村委員長 野澤君、簡単ならば関連質問を許します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/101
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102・野澤清人
○野澤委員 これは結核対策ではないのでありますが、先ほど亀山委員から質問がありました上水道のことについては、幸い大臣が来ておりますので、ごく簡単に質問したいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/102
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103・中村三之丞
○中村委員長 一問でお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/103
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104・野澤清人
○野澤委員 実は起債のワクについて、大蔵省にほとんど押えられてしまって、厚生省の自由に査定ができないという現在の段階において、今まで大臣として大蔵省または自治庁、建設省等との連絡あるいは交渉等をされたかどうか、そうしてまた至急にこれの解決策を講ずる方針でおられるかどうか、この点はっきり一つお答えを願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/104
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105・川崎秀二
○川崎国務大臣 上水道の起債につきましては、地方財政との深い関係もありますので、この三月の末に新規起債を全然許さぬというときに、折衝をしまして、若干残したものがあることはあります。それは、私自身が折衝いたしますとともに、民主党政調会の力もかりまして、昨年の残り分については、じかに折衝したこともございますが、なるべく上水道の趣旨にかんがみまして、起債のワクがふえることをこちらとしては熱願いたしておるのでありますが、地方財政並びに国家財政の関係上、今日まで十分な措置になっておらぬことは認めざるを得ません。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/105
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106・中村三之丞
○中村委員長 次に、附添婦制度に関する件につきましてお諮りいたします。
本件につきましては、当委員会といたしまして、数回にわたり慎重に討議して参りましたが、先刻の理事会において協議いたしました結果、本件について決議をいたし、関係各大臣に参考送付すべきであるとの結論を得ました。
文案を朗読いたします。
附添婦制度に関する件
昭和三十年度において政府は国立
療養所の看護要員の充実を計る意図
であるが、これに伴って直ちに現行
附添婦制度を全面的に廃止するが如
きことは、実状にそわざるものと考
えられる。
よって、政府はこの実情を考慮の
上、療養所管理の実態の改善のため
充分なる方途を講ずべきである。
以上の通り決議いたすことに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/106
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107・中村三之丞
○中村委員長 御異議なしと認め、そのように決します。
なお、文書の作成その他取扱いに関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/107
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108・中村三之丞
○中村委員長 御異議なしと認め、そのように決します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/108
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109・川崎秀二
○川崎国務大臣 ただいま委員長の御発議によりまして御決議になりました趣旨につきましては、今後の実施において尊重して参りたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/109
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110・中村三之丞
○中村委員長 次会は公報をもって通知することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後三時四十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X01619550531/110
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