1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十年六月八日(水曜日)
午前十一時九分開議
出席委員
委員長 中村三之丞君
理事 大石 武一君 理事 中川 俊思君
理事 大橋 武夫君 理事 山下 春江君
理事 山花 秀雄君 理事 吉川 兼光君
植村 武一君 臼井 莊一君
小川 半次君 龜山 孝一君
小島 徹三君 森山 欽司君
横井 太郎君 亘 四郎君
野澤 清人君 岡本 隆一君
多賀谷真稔君 滝井 義高君
中村 英男君 受田 新吉君
神田 大作君 堂森 芳夫君
中原 健次君
出席国務大臣
労 働 大 臣 西田 隆男君
出席政府委員
労働事務官
(労政局長) 中西 實君
労働基準監督官
(労働基準局
長) 富樫 總一君
委員外の出席者
労働基準監督官
(労働基準局労
働衛生課長) 加藤 光徳君
専 門 員 川井 章知君
専 門 員 引地亮太郎君
専 門 員 濱口金一郎君
専 門 員 山本 正世君
—————————————
本日の会議に付した案件
けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護
法案(内閣提出第七二号)
駐留軍労務者の健康保険問題に関する件
富士自動車株式会社の人員整理問題に関する件
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/0
-
001・中村三之丞
○中村委員長 これより会議を開きます。
まずけい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法案を議題とし、質疑を続行いたします。受田新吉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/1
-
002・受田新吉
○受田委員 この法律を新しく制定されようとする政府といたしましては、これまでいろいろな角度からの御調査をされた結果の御提案と思いますので、十分その審理の徹底を期したいと思いますが、外国においては、このけい肺の関係者のために、いかなる措置をとっているかというような外国の立法なども、その要点をお伺いして、比較検討したいと思います。従って、外国において、けい肺に関する法律の中に、今回政府が提案をしておりますこの法律案と比較いたしまして、特に外国のおもなる国々、あるいはアフリカのごとき未開国、未開地、こういうようなところと並べまして、特筆すべき立法例がありましたならばこれをお示し願いたい。なお、けい肺に関する外国のその罹病率といいますか、法律の施行してある国と、しからざる国との患者の数、あるいは患者の予後における就職に対する比較検討等をいたしたいと思いますので、この方面の政府の御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/2
-
003・富樫總一
○富樫(總)政府委員 わが国におきまして、けい肺に関する研究が特になされましたのは、大臣の提案理由にも申し上げましたように、遺憾ながら、戦前におきましてはごく一部の研究者に限られまして、全般的な研究に着手いたしましたのは戦後のことでございます。戦後の混乱期におきまして、国内の調査にあわせまして外国の事情を十分に調査する余裕がございませんで、あるいは内容についての御満足のいける御説明ができないかも存じませんが、今のところわれわれの知っておる限度内において、一応申し上げたいと思います。
けい肺に関する立法につきましては、おおむね二つの立て方があるようでございます。一つは、たとえばイギリスのごとく、社会保障制度の一環としての純粋の社会保障、すなわちたとえば経費におきましては、国と事業主と労務者と三者がそれぞれ負担してやるという、これは他の社会保障と同じやり方で扱っておる。それから南ア連邦、これは昨日森山先生から話がありましたように、世界的に最も古くからこのけい肺に力を入れた国でございますが、この南ア連邦を中心といたしまして、フランス、イタリア、スペインといったような国は、事業主の全額負担による、いわゆる無過失損害賠償責任と申しますか、それで全部まかなっておる、こういうような二つの体系があるようでございます。従いまして、それぞれの体系に応じまして、法の立て方ができておるわけであります。
第一に、健康診断につきましては、いずれの国におきましても、ほとんど例外なく本法案と同じように、雇い入れの際と定期の健康診断を——これは期間が法的にはっきりわかりませんが、定期に健康診断を行うというふうになっております。そして一定の段階に到達した患者につきましては、粉塵作業からの転換を規定してございます。さらに転換につきましては、事業主の無過失損害賠償責任という建前のところにおきましては、粉塵職歴の年限に応じ、あるいは前職賃金との差額に応じ、国によっていろいろ違うようでございますが、これは昨日多賀谷先生からお話ありましたような補償という観点に立っての転換補償が、それぞれ規定されております。特に南ア連邦におきましては、さらに詳細に、ちょうどこの御審議いただいております法案と同じように、けい肺につきまして第一期、第二期、第三期というふうに、症部の段階を設け、それぞれの措置を講じておるようでございます。このけい肺についての措置は、実際のいろいろな行政措置と相待ってできておるようでございまして、従って法律だけ見ても、実際の行政措置との関連で、現地に行ってほんとうに調べてみませんと、なかなかわからぬような状況でございます。一応この程度にいたしまして、要すれば、さらに後に資料によって詳しく御承知願うことといたしたいと存じます。
罹病率につきましては、これもわが国で入手できる統計が十分ございませんが、各種の文献によりますと、多くの場合は、けい肺の専門の学者、研究家としてのお医者さんが、それぞれの研究成果としての発生率を出しておるのでありますが、これは、その学者方が患者を発見するために、特定の工場とか鉱山とか、つまり粉塵の濃度の高いところを調べている場合と、そうでない場合とで非常に違います。また昔調査したものほど、濃度が高いようでございます。最も公的なのは、アメリカの公衆衛生局の一九三七年の調査によりますと、第一期が六・五%、第二期が三・四%、第三期が〇・四%、こういうふうになっております。この三期に分けたということで、二期がこの法案では二期、三期になっておるわけですから、第三期〇・四%というのが、本法案の第四症度に該当するものだろうと考えます。
それから個人の研究によって一番高い率を示しておるのが、一九三一年にドイツのロゼンタールという学者の調査によりますと六八・一%、同じドイツにおきましてもマッツェンという学者が一九三七年に調べますと、二三・二%というふうに、学者の調査は非常に高低があるようでございます。また、けい肺のレントゲン診断を甘く診断するか、厳密に診断するかによりましても、いろいろ比率が変ってくるようでございます。同じアメリカにおきましても、役所の調べた数字はさようでございますが、同じ時期にセーヤースという学者が調べたときには二三%という大きな数字も出ておる。こういうようなことで、遺憾ながら外国におきましても整然と全体の情勢が、先生のおっしゃいましたような観点に立つて判定し得る資料はないような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/3
-
004・受田新吉
○受田委員 外国における概略のけい肺対策をお伺いしたのでありますが、日本といたしましては、初めてこうした立法措置をなさろうとする関係上、将来におけるこうした特殊立法の一つの基準ともなり、人道的立場から考えられるケースともなるのでありますので、昨日大臣からも、この点については非常な誠意をもって当ったことを御説明に相なっておったのだと思います。
ところが、さらにこれに関連して第八条に掲げてあります作業の転換と、第九条の職業紹介等でありますが、昨日の大臣の御説明の御趣旨などにのっとって考えましても、少くともこれらの作業の転換とか、職業紹介というような問題は、一つの人道政策にもつながるものであると思います。従って、ここに掲げてあります作業の転換につきましては、現在政府がこの法律案をお出しになる以前において、何らかの対策を立てておられるのではないかと思います。過去において、こうした作業の転換、職業紹介等に便宜を供与している実例があるならば、まずそれをお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/4
-
005・富樫總一
○富樫(總)政府委員 従来におきましては、率直に申しまして、行政指導といたしましては、主として労働基準局がしておった関係で、労働基準法の五十二条の四項でございますか、使用者の衛生健康管理という観点から、けい肺健康診断の結果、要転換者を発見した場合には、行政的に転換を勧告して参っておるわけで断ります。その結果、どういうふうな転換効率を示したかということにつきましては、実際例をいろいろ集めてございますが、統計的には十分に整備しておりません。その状況によりますと、大きな会社におきましては、おおむね円滑な転換を示し、その場合に賃金が安くなりますれば、労使の協定によりまして、若干のそれ相応の転換給付を会社において支給して、転換をしておるようでございます。今までのところにおきましては、要転換が——今度の法案におきましては第三症度の全部と第二症度の一部でございますが、従来は第二症部まで全部を要転換者として扱ってきたために、割合に深刻さがなかったせいか、転換ができないから離職するというような状況は、われわれの耳にはほとんど顕著に入っておりません。しかし今後は、特に法的に転換を勧告し、かつまた、その症度も、それぞれしぼった上の症度についてなすので、場合によりましては離職のやむを得ざる場合になるかもしれないということで、特にここに第九条という規定を設けたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/5
-
006・受田新吉
○受田委員 作業の転換を行った場合において、その症度が第三症度から第四症度の症状に進んで療養を必要とするような、そういう場合における給付、その次の条項にあるのでありますが、その給付は、第四症度としての法定のものを支給するような措置がされますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/6
-
007・富樫總一
○富樫(總)政府委員 要転換者が転換した場合には、さしあたり一カ月分の転換給付をいたすのでありますが、さらに第三症度の者が粉塵作業から離れますれば、原則的には、その症状はほとんど進行しないのであります。一たん吸った粉塵が溶け切らないで残っているものが溶けたために、若干進行するということはございますが、新たにこれが進行する原因がなくなりますので、原則的には、転換した者は、まず第四症度に進まないのでありますが、まれに後に結核が合併いたしまして、けい肺結核にかかったために第四症度になるという場合が、ときどきあるのであります。これは、もちろん転換後といえども、第四症度として、休業補償ないし療養補償は、通常の場合と同様に受けられることになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/7
-
008・受田新吉
○受田委員 作業転換に当って、政府もしくは都道府県からの勧告をする場合に、ここに掲げられてある規定では、ある程度命令的な要素が入っているように思うのでありますが、命令的な条件を含むものと解釈してよろしいでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/8
-
009・富樫總一
○富樫(總)政府委員 これは法文に明瞭に書いてございますように、転換をするように努力すべきことを勧告するのでございますから、法的に命令でないことは明らかでございます。しかしながら事柄は、黙っておれば、近き将来に不治の病にかかるのでございますから、心持の上におきましては、この努力は、労使ともに話し合い、かつまたそれが不可能な場合には、政府も一緒になってぎりぎりまでこれに努力する、こういうことでございますが、その努力過程におきましては、昨日来お話がございましたように、表面の観点は生命、衛生の関係で、医学的観点でございますが、裏の関係におきましては、経済上の問題もございますので、そういうものを総合いたしまして処理いたしたい、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/9
-
010・受田新吉
○受田委員 内容的には、精神的には一つのワクをはめられたような強力な規定であると御答弁をいただいたと思うのでありますが、使用者が政府の勧告を受けた場合において、作業転換をさせるのに当っては、本人の意思というものがまた十分に尊重されなければならないと思うのでありまして、本人がどういうところを希望するかという本人の希望を十分参酌して後の作業転換が行われるような措置をとる必要上、この条文の上において、何らかの規定をする必要はありませんか。本人の意思に反した作業転換がされるおそれが多分にあると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/10
-
011・富樫總一
○富樫(總)政府委員 そういうことのないように十分努力いたしますし、またそういうことはあってはならない。何も強制労働をさせるわけではございませんので、本人の意思は当然に入らなければならぬわけでございます。しかし、いろいろ御心配の向きもあるようでありますので、施行規則等におきまして、その趣旨を何らかの形において明らかにするように検討いたしたい所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/11
-
012・受田新吉
○受田委員 第九条に掲げられてある事項は、その使用者が努力したにかかわらず、適当な作業につくことができないような状態になったときに、職業紹介、職業補導等について適切な措置を講ずるというのでありますけれども、この政府としての職業紹介、職業補導等の適切な措置の内容は何らかの形で用意されておると思いますが、それをお伺いしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/12
-
013・富樫總一
○富樫(總)政府委員 これにつきましては、職業安定局といろいろ打ち合せておるのでございまして、もし詳細が必要でありますれば、職業安定局長からお答えすべき筋合いでございますが、一応私からお答弁申し上げます。
第一に職業紹介につきましては、私の方の基準機関から職業機関によく連絡いたしまして、本人の技能あるいは希望、家族状態というようなことを聞き取りまして、それに相応した求人開拓をいたします。そうして合わさればそこへ行くわけであります。特に力を入れたいと考えておりますのは、こういう要転換者は、すでに相当の年令に到達しておるのが実情でございます。従いまして、坑内夫が普通の他の職場に転換するというときには、技能の転換が当然伴うわけであります。そういう場合には、できるだけ本人の希望に応じた職種の職業補導所に入所いたさせます。この期間は、たいてい六カ月ないし一年でございます。むろんその間入所中といえども、失業保険はもらえる扱いになるわけでありますが、そういうことをいたしたい。そのほかに、さらにあとで出てきます政府の援助ということで、酪農業の経営なり、あるいは共同作業所に入所させるというような、総合的措置によって処理する考えでございます。さらにもっと具体的なことは、法施行後政府が全面的に行う健康診断の結果によりませんと、的確な対策は立ち得ないわけです。どこにどういう程度の要転換者がいるか、それは年令的にどのくらいの者か、家族的にどんな者がどういう職種転換を希望するかというような調査も、この健康診断と相待って把握できますので、それに応じまして、逐次具体策を立てて参りたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/13
-
014・受田新吉
○受田委員 今度は、関連して大臣に御答弁願いたいのであります。
〔委員長退席、中川委員長代理着席〕
このけい肺対策というものは、特殊の職業病として、一般の労災法その他の適用では救われない人々を対象とする新立法である、大臣もさように申されて、非常な熱情を傾けてこの法案を提出したということであります。しからば、このけい肺そのものの発生を防止するためには、予防が何よりも大事なことであるのでありますが、最初の方に掲げられてある予防対策といたしまして、はなはだ意を満たしていない点が多分にあると思うのであります。何となれば、この間からの政府の答弁を聞いておると、鉱山保安の関係から、通産省の所管に属することもあるというようなことであるし、責任の転嫁ということが、そこにすでに発生するおそれがあると思うのであります。できれば、こういう病気を発生させないために、万全の措置をとって、たとえば経費が少々かかっても、使用者側が少々の犠牲を払ってでも、また作業の能率が上らなくて、マスクを用いることが大じかけになっても、人命を尊重する方がまず第一番なのでありますから、人命を尊重することを、幾分犠牲を払ってでも、生産の復興のためには、けい肺患者の発生を考慮した上の計画を立てなければならぬのだという、われわれにとってはなはだ悲壮といいますか、患者にとってはほんとうに相済まぬ発言を昨日大臣はしておられたようです。私は、患者を絶滅することを目標に、このけい肺法というものが立法されなければならぬと思うのでありますが、この職業病を絶滅するという基本政策をまず前提とするところの立法の趣旨ではなかったのであるか、この点をまずお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/14
-
015・西田隆男
○西田国務大臣 お答えいたします。私、昨日の答弁で、今、受田さんの言われた答弁をしたことは、記憶いたしておりません。最初から申しますように、この法律案のねらいは、けい肺病にかかる人がだんだん減っていくことをもちろんねらいといたしておりますが、現在のけい肺病に対する予防措置というものは、決定的な予防措置がわかっておりませんために、この法律案の中におきましても、労働基準法と鉱山保安法による一応の、現在行われております予防措置を講じましただけで、特別にけい肺に対する予防措置を講じてないというだけで、これは講じないという意味ではございません。現在はっきりした予防措置がきまっておりませんので、きまっていないのに対策の立てようもありませんし、実際にマスクをつけるとか、つけないとかいうことも、現在においても、各使用者側においては、マスクをつけさせることを非常に奨励しておりますけれども、現実の作業面において、働いておられる人々がおつけにならない場合もあり得る。そのためのけい肺の罹病率が大きいということも考えられますので、使用者側も注意いたしまして、今後は労働者側の方においても、けい肺というものが悲惨な病気であるという認識が総体的に広がっていきますれば、マスクをおつけになることも結局徹底していくだろうと考えております。従って、何回も申すようですが、現在におきましては、医学的に技術的に、けい酸の吸入によることを防止するという完全な予防措置が講じられておりませんので、現在におきましては、労働基準法と鉱山保安法によって規定されておるより以上の具体的な方法はないという意味合いで、この法案の中には特別な規定をしていないのでありますから、どうかさように御解釈を願いたい。けい肺対策審議会、あるいは技術者の間において、けい肺の予防措置が完全に結論が出ますならば——完全に出ませんでも、進歩した予防措置が考えられます場合においては、必ずそういう措置をとっていきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/15
-
016・受田新吉
○受田委員 技術的に医学的に絶滅する予防法がまだ講じられていないという、はなはだ遺憾な状況であるということでありましたが、これは今のマスクを用いること、あるいはこの粉塵を避けるために水を同時に使用するとかいう措置をとること等、人智の進歩した今日において、経費と労働力というものを最善に扱うならば、われわれはこの予防方法がないとは言いがたいと思います。この点は、経済上の観点から非常に莫大な費用を要するとか、あるいは作業能率を低下させるからというような使用者側の便宜のために、当然救われる患者が、発生しておるようなおそれが多分にあると思う。今まで大体予防というものがおろそかにされていたのは、そういうところからくると思うのでありますが、経済上の問題とか作業能率とかいう問題を乗り越えた非常に高い観点から見て、絶対にけい肺患者を発生せしめないという措置をとるならば、これが予防は徹底すると思うのです。従って、労働省と通産省の両方が一つの協議会などを作って、その間を研究するような機関でも設けて、常に密接な連絡をとって、鉱山保安の関係からと、また労働者の災害防止の立場からの両方から、知恵を貸し合うという手を打つ必要はないか。それに非常な積極性を持つ態度をとることが必要でないかと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/16
-
017・西田隆男
○西田国務大臣 もちろん現在においても、連絡は緊密にとっておると考えておりますが、受田さんの御意見ごもっともであります。協議していくというのでなくして、一緒の姿で将来はこのけい肺の防止には全力を傾注したいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/17
-
018・受田新吉
○受田委員 大臣は、この不幸な運命になった人は、これを就職その他においても十分便宜をはかっていき、要保護者を救っていきたいという御発言を先日もなさっておられました。しからば、このけい肺患者で作業転換等で適当な場所がない、あるいはお役所の都合で、ぜひけい肺の患者を、あるいは要保護者をそのできる範囲内の作業に従事させるために、労働省あるいは厚生省のけい肺担当のお役人に、臨時職員にでも任用規定に特別の道をとってでも、これらの人々をけい肺専門の研究技術者あるいは研究のための事務員として採用するというような便法をとってけい肺患者に希望と光を与える。あるいは同じ悩みに立つ人を、行政の立場から協力してやろうという、そういう措置をとらしめる御用意はないか、この点大臣としての御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/18
-
019・西田隆男
○西田国務大臣 受田さんのお尋ねは、けい肺にかかっておる者を、この法律の施行に伴うけい肺の事務的な方面、あるいは科学的な研究の方面に採用してやる意思はないか、こういうように私は受け取ったのですが、これは学問の程度の問題と、今までやってこられた専門の仕事、年令等といろいろ関連性を持つと考えますが、もし採用しても、仕事のできる適当な人があれば、それは積極的に採用してやるべきだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/19
-
020・受田新吉
○受田委員 これで私の質問を終らせていただきます。政府のこの法律案を出された御趣旨、今まで多年叫ばれておったこの問題に対して、前進基地を与えてもらったという点においては、大いにわれわれ自身も喜んでおる次第です。従ってこの法律にできれば、スタートからある程度可能な限度における充実した内容を盛って出発してもらいたい。予算の都合という点が多分に手伝って、残念であるが思うような結果にならなかったということは、政府当局としてもしばしば御説明の通りですが、少くとも予算措置において、この恵まれざる人々、当然この仕事に従事すればそうした危険にぶつかるというわかり切った職業病の人々に対しては、思い切った措置をとったとしても、他の関係省の間においても絶対に問題が起らないと思う。従って、人道政策を加味する意味において、予算措置において、この間から審議されたいろいろな角度から、もう少し思い切った措置をとるような政府としての態度の転換をこの際なさって、この方面に予算の充実を来たしたとしても、影響するところは、各方面とも十分納得してくれると思います。この点十分御考慮の上、今後の予算措置あるいはこれに対する規則等を設定せられる場合に、十分あたたかい心をもってするようなやり方にされんことを要望して質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/20
-
021・西田隆男
○西田国務大臣 御説まことにごもっともであります。この法律案の初年度におきまする予算の計上に、金額はあまり多くありませんので、誤解もあろうかと思いますが、この法律案の内容が完全に実行に移されます場合には、これは推測ですが、平年度において五、六億円くらいの予算をこの内容でも必要とすると私は考えておます。従って、私はいつやめるかわかりませんけれども、労働省のお役人さんたちは末長く残るでしょうから、次官以下に予算を獲得するように極力一つお願いしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/21
-
022・中川俊思
○中川委員長代理 滝井君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/22
-
023・滝井義高
○滝井委員 このけい肺に対しては、現在確実な予防法がない、こういうことから、この法律の中には予防的の面が欠けておることになっておるわけであります。人間を死に追い込むようなこういう一つの職業病というものに対して、予防法がないということは、これは非常な悲劇だと思います。従ってそういう悲劇があるということになれば、その職業病が軽いうちに見つけられるということに、政策の重点が置かれなければならないと私は思う。現在、日本のいろいろな医療保険のあり方を見ても、病人あるいはけが人が出た場合に、その対策についてに非常に熱心であるが、病人やけが人を出さない予防的措置についてはきわめておくれておるというのが、現在の日本の現状であります。そういう意味から考えると、まず予防の万全が期し得られないとするなら、次善の策として、軽いうちに早期に発見するということに政策の重点を置くことが当然であると思います。そこでまず、先般けい肺の健康診断について少しく問題にしましたが、さらに突っ込んで聞いてみたいと思いますのは、それは、この従来ありました労働安全衛生規則における健康診断で行ういろいろな診断法があるわけでありますが、その場合の健康診断とこのけい肺の健康診断とは、どういう点が異なるかということなのであります。従来のこの安全衛生規則でも、こういう粉塵の立つ作業場、たとえば炭鉱の坑内とか、あるいはさく岩機を使うところとかいうようなところは、これは当然一年二回の健康診断をしなければならぬことになっておる。それを、あえてこの法律だけに限って三年に一回。もちろん、雇い入れるときにもやるが、三年に一回である。こうならなければならぬ理論的理由がわからない。今までの規則でも、当然一年二回やらなければならなかったが、 特こういう大事な単独立法にひとしいものを作ったときにおいて、なぜ三年に一回でよいということになったのでありますか、これをまず御説明を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/23
-
024・富樫總一
○富樫(總)政府委員 従来も安全衛生規則によりまして、粉塵作業に従事する労務者には、健康診断を年二回することになっておることは仰せの通りでございます。この健康診断の内容は、特にけい肺健康診断ということになっておりませんで、たとえば、この胸部に関する診断につきましては、通常の単純肺結核を発見するということについての健康診断でございます。つまり、ツベルクリンの反応、エキス線写真の検査及び赤沈の検査ということであるのであります。これは法律の規定によりますれば、間接撮影のレントゲン写真ということになっております。けい肺に関するレントゲンの所見は、法律にも書いてありますように、第一型の段階のごときは、粟粒のごとき非常にこまかい結節像ということが問題になるわけでございます。また結核合併症におきましては、塊状陰影を伴うというような関係で、間接撮影の現在の段階における鮮明度をもっていたしますれば、そういうこまかい結節像を発見することは困難、あるいは部分的のレントゲン写真をもってやりますれば、塊状陰影を見のがすことが多いのであります。そういうことで、どうしてもまず間接写真をとって、それから普通の結核検査のときのように、そこでまず要注意を発見して、さらに精密写真をとるという過程を踏むことが、今日の段階におきましてはほとんど不可能に近い。そこで、そういう年二回の通常の健康診断とは別に切り離しまして、このけい肺健康診断、つまり直接撮影のレントゲン写真、粉塵職歴検査、そうしてそこに所見が発見された者につきましては、さらに機能検査あるいは結核合併症の疑いのある者につきましては、結核精密検査をするわけであります。こういうことで、現在の安全衛生規則とは、別の観点に立たざるを得ないような状況であるのであります。
さてそこで、それならば安全衛生規則とは別に、本法案で年に一回やったらいいじゃないか、あるいは二回やったらいいじゃないかという御議論があるのでございますが、これにつきましては、もちろんやったに越したことはないと存じます。しかし、従来のけい肺の専門の方々の調査研究によりますれば、この症状の進行はきわめて微々たる慢性的経過をたどるので、最初の健康診断は、正常なものにつきましては三年に一ぺんでまずまずよかろう、そしてその健康診断の結果、所見の現われたものについては、自後毎年一ぺんやる、こういうことでよかろう。これはけい肺対策審議会の中立委員であります専門のお医者さんも、まずそういうことでよかろうというふうにおっしゃっていましたので、多々ますます弁じますけれども、しかし一方におきましては、何もむだに手数をかけ、経費をかける必要もなかろうということで、かようにいたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/24
-
025・滝井義高
○滝井委員 法律の書き方としては、こうなることは、私もやむを得ないと思うのです。しかし、現実に粉塵の立つ作業場においては毎年二回やるのですから、しかもやることは、このけい肺健康診断の中で行う健康診断と、労働安全衛生規則で行う健康診断とは、ほとんど違うところがないのです。違うところは、たとえば今おっしゃった直接撮影の面だけなんです。あとはほとんど全部、胸部の検査というようなものも、粉塵の立つ場所で健康診断を行うならば、当然重点は結核か、けい肺に置かれることは常識なんです。そうして、もし結核になれば休養しなければならぬことも当然です。そうしてこの労働安全衛生規則においては、過去においてどのくらいこういう仕事場において従事したかということは、医者としても過去の職歴というものについて尋ねることは当然です。そうすると、残るのは直接撮影かどうかということだけなんです。ところが、労働安全衛生規則の方には、レントゲンの間接撮影とエクス線検査と書いてある。エクス線検査というのは、間接撮影と直接撮影と両方あると思う。そうすると、経費の節約の上から間接撮影だけをやって、同時に胸の状態を見て所見がある、あるいは過去の職歴を聞いてみて、非常に長くてこれは怪しいぞということになれば、間接撮影で疑いが持たれれば、すべて直接撮影をとることは当然なんです。従って、この労働安全衛生規則でも一年に二回行うならば、その二回を、少し注意さえしてもらえば、しかもわずかな金をつぎ込めば、何もここで三年に一回とする必要はないと思う。あとの二回については、労働安全衛生規則によるものでかえることができるという温情的な規定を入れることが私は当然だと思う。そうして経費も、その事業場でやれるのですから、ちっともかからないし、事業主の負担にもならないと思う。こういう点を大臣にお聞きしたいと思う。これは今までの法律でも、当然やらなければならぬことになっておる。何もこの法律で、今度は一回でもいいんだということを書く必要はないと思う。この点、大臣の所見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/25
-
026・富樫總一
○富樫(總)政府委員 専門的なことにわたりますので、まず私からお答えいたします。前にも滝井先生からのその御質問に対しましては、大臣から、もちろん多々ますます弁ずるけれども、しかし専門的医学的見地から、三年に一ぺんでよかろうということでこうなりました、こうお答え申しておるわけでございます。結局、結論におきましては、それを繰り返すことになるわけでありますが、しかし仰せの通り、三年に一ぺんの健康診断の合間におきまして、毎年二回今仰せの健康診断をすることに別途なっておる。そこで、法律で義務づける必要は、けい肺専門のお医者さんの御意見からいえば、ないわけでありますが、しかし問題が問題でございますので、簡易な年二回の健康診断に際しても、その方に気をつけてやりたいというところが、またあるかとも存じまして、たとえば法案の第七条におきまして、定期健康診断の合間合間において、使用者と労働者との間の話し合いで任意の健康診断をして症状決定の申請をすれば、これを受け付けて決定するという道を開きまして、その間に医学的に必要な限度ということと、心理的に心配だから、自分たちでさらに厳密にやりたいということとの調和をとっているわけでございます。
なおちょっとの経費と申されますけれども、必ずしもそうではございませんで、われわれの腰だめでは、基準法による健康診断は一回八十円程度、けい肺健康診断を精密にやりますれば五百円前後というふうに、約六倍くらいの経費がかかるのであります。何も経費がかかるから必要なものをしないというのではなく、そういうことでもございますので、法律上の義務は必要な限度にとどめる、こういう趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/26
-
027・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、これは三年に一回で、必要なときには労働組合等と協議して事業主がやるのだということになりますと、この労働安全衛生規則による一年に二回やらなければならないという健康診断は、きわゆておざなりのものになってしまう。どうせ三年に一回やるのだから、やってもやらなくてもいいのだというようなことになる。あなたの言は語るに落ちたので、粉塵作業場でも、こういう精密検査は大してやっていない。これはもちろん、必要を認めない場合はやらなくてもいいことになっておりますから、必要を認めないということで今まで大してやっていない。おそらく鉱山でも同じです。臨床医学的な見地から、ツベルクリン反応、エックス線検査、赤血球沈降速度の検査、喀痰の検査というものは、精密にやっていない。もしけい肺の起るような作業場で、三年に一回でいいということになれば、この労働安全衛生規則における一年に二回やらなければならぬということは、おそらく空文になって、おざなりに、ただ裸にしてお医者が聴診器をちょこちょこ当てるという形になってしまうと思う。予防法がないといわれる病気ですから、この法律を活用して毎年毎年ある程度の金をかけてやっておれば、あとで一回に五百円もかけなくてもいいことになる。かかるものは、レントゲンの直接撮影に金がかかるだけだと思う。あなたの方で、労働安全衛生規則を空文にしないように毎年二回やらせる、なおその二回のほかに、労働組合と事業主との間の話し合いでやるならば、これは一年に三回やることになる。三年目には、おそらく四回くらい一年にやるという形が出てくると思いますが、労働安全衛生規則とこれとの重なりはどうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/27
-
028・富樫總一
○富樫(總)政府委員 先ほども申し上げましたように、安全衛生規則の胸部の検査は、申すまでもなく単純なる結核検査の規定になっております。そうしてその実施率は、一昨年におきまして、いつかお答え申し上げましたように、八十数%というある程度相当高い実施率を示し、年々この実施率は向上しておるのでございます。しかしながら、どこまでもこれは単純結核の検査ということで、従来とも行われました。けい肺健康診断につきましては、各会社あるいは民間に診断能力のあるお医者さんがないせいもございましたが、ほとんどがわれわれの方の役所で行う直接の巡回健康診断ということによってなされておるような実情であります。今回特にこれを法的に、精密に行政指導で巡回検診をするというようなことになりますと、中には、きょうは忙しいから、いつかそのうち来てくれというて、腕曲に拒否するところもあったようでございますが、そういうことのないようになるわけであります。なお、法的にこの安全衛生規則の診断と本法の診断とが重複するように見えるということであります。一応そういうふうに見えるのでありますが、実は法案の第三条の第六項におきまして、このけい肺健康診断と重複する限度におきましては、基準法の方の健康診断はしなくともよろしい、こういうことにいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/28
-
029・滝井義高
○滝井委員 とにかく、こういう現実にやらなければならぬ規則があるので、もう少しこれをわれわれが活用すべきだと思います。そうしますと、今専門家がそれらの粉塵の発生する事業場にはなかなかおられない、こういうことですが、ではこの法律を実施したならば、すぐにそういう医者が各粉塵発生の事業場に配置されるような措置を労働省はおとりになるつもりでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/29
-
030・富樫總一
○富樫(總)政府委員 現在のところ、そういうけい肺診断能力のある専門のお医者さんがきわめて少いということも、一つの理由となりまして、法施行当初における健康診断は、政府みずからいたすことにしておるのであります。それも政府がやれば、専門の医者がすぐわいてくるわけじゃございませんので、政府がやるといたしましても、当面民間におる在野の専門家を委嘱いたしましても、おそらくは三、四十人くらいだろう、これに関係の職員をつけまして、それぞれ診断班を編成して、全国的に巡回させるわけであります。そういうことで、たとえば九月から施行いたしまして、年度内に全部終えたいのでありますが、政府みずからやるといたしましても、おそらくは来年度一ぱいでこれが済めば、非常な努力であるという状況でございます。そこで、事業主のなす健康診断は、大体において再来年度から行われるのでありますが、その間におきまして、各大学あるいは医師会と連携いたしまして、レントゲンの症状判定の限界基準なども、文章では書いてありますが、実際のレントゲン等によっていろいろな形のものを示しまして、講習会なり研究会なりをいたしまして、そういうものを養成して参りたい。しかも、それならば再来年度から完全に山間僻地までそういう医者ができるかと申しますと、必ずしもそうも参らぬと考えまして、法案におきましては、そういう場合におきましても、私の方で巡回レントゲン自動車その他をもって専門の医者が一緒について、事実上そういうところについては御援助するということを三十八条の前段に規定しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/30
-
031・滝井義高
○滝井委員 この健康診断は、今の御説明を聞いても、なかなか問題のあるところだと私たちは考えざるを得ません。というのは、粉塵の出る五人以上の事業場というものは、非常に散在的にあることだし、しかも鉱山というようなものは、山奥にもありますし、健康診断そのものに、多くの困難を伴っておるだけに、今後慎重に検討を要する問題だと思います。
そこで、時間がありませんので次に移りますが、作業転換をやる勧告で、第三症度のけい肺にかかっておるものと決定された者は、転換の勧告を受けることになるわけであります。一症度、二症度は、まだ三症度という上がありますから問題ないのですが、問題は三症度の場合の勧告を必要とする範囲、これをどういう工合に決定していくかということなんです。三症度というものはこういうものだと出ておるのを見ましても、なかなか複雑で、三症度の中でも非常に幅があるわけです。従って、三症度でも非常に四症度に近い三症度の者もある。こういうことで、ここらあたりの作業の転換の勧告の範囲というものは、私は非常に微妙な問題が出てくると思うのです。そこで、こういう勧告を必要とするその範囲を、どういう工合に具体的に決定をしていくか、これは非常に専門的になると思いますが、非常に大事なことだと思います、この点、何かこういう構想でやるのだという構想だけでもけっこうです、伺いたいと思います。専門的にはまた、専門家に聞いてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/31
-
032・富樫總一
○富樫(總)政府委員 まことにごもっともでございます。これはけい肺だけでなくて、通常の単純結核の場合におきましても、レントゲン所見においていろいろの症状分類があって、それにつきましても、専門家の先生方の間に所見を異にするという場合が多くあって、ある医者にかかって信用できぬから、よその医者に行った、すると、そっちの方が軽かったというようなことがいろいろあるわけでございます。しかもこの段階は、段階でなくして継続しておるところに便宜線を引いたわけで、軽々にやりますと非常な不統一な結果になるかと存じます。そこで、政府の健康診断に際しましては、法律の規定におきましては、地方の労働基準局長が地方の労働基準局に配属された診査医の所見をもとにして決定することにいたしておるのでありますが、当初におきましては全部中央にさらに移送しまして、中央において最高権威の方々にお集まり願いまして、そういうものについて慎重な判断を加えたいと考えておるのであります。場合によりますれば、第三症度についても、A、B、Cというくらいの段階もできますれば作りたい。そういうことについて、実際的にはなかなかむずかしいようでございますが、しかし理論的には、継続段階でございますから、こういうことがやってできないことはないわけでございます。なお、そういうことはあまり専門的で私わかりませんが、行政的に考えますと、第三症度におきましても、粉塵職歴が二、三十年もあって、年令が五十才を過ぎておる、こういうけい肺に対する耐久力の強い方などは、その後の進行度はほとんど問題にならないという場合があるようでございます。またエキス線写真の像が第二型である。第二型であるけれども、軽微の機能障害が断る。軽微の機能障害があるために、第二型だけれども第三症度になったというのもあるわけであります。しかし、こういう人たちは、その作業が窯業とか鋳物のきわめて重労働といえないような作業でありますれば、その作業は昨日も申し上げましたように、軽度の機能障害には負担にならない仕事に現在従事しておるというような者は、何も法的な勧告の対象にする必要はなかろうというふうに考えておるのであります。この点につきましては、なお詳細にけい肺対策審議会の専門部会に御検討願いまして、実情に沿うた基準を立てて参りたいと考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/32
-
033・滝井義高
○滝井委員 それはそういうことにして、作業転換を勧告した後の問題でございます。この前ちょっと御質問を申し上げたのですが、大臣は、作業転換を受ける三症度までの者は、病気である、しかし労働能率は落ちていない、こういうことです。しかもその病気は、おそらく療養を必要としない病気だ、こういう考えだと思うのですが、そう考えて差しつかえないのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/33
-
034・富樫總一
○富樫(總)政府委員 その通りでございます。
〔中川委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/34
-
035・滝井義高
○滝井委員 今まで働いておった作業場を転換せしめるということは、いわば広義の療養になるのじゃないかと思うのです。なるほど、この患者自身は、作業能率は落ちていない、こう自覚しておる。たとえば、結核の開放性の患者がおります。そうすると、本人は毎日仕事場で一生懸命働いております労働能率も落ちていない。しかし、その患者のたんを調べたならば、その患者は結核菌を排出しておった。レントゲンで見ると、また空洞があった。しかしこの患者は、自己は何ら労働能率も落ちていなければ、健康であるという自信さえも持っておるわけです。有疾無感なんです。病気があるけれども、その病気というう感じを持たない。これは明らかに療養を必要とする。だから、これは職場からどけなければならない。そのままおいておけば、その患者は結核で死ぬことは火を見るよりも明らかである。それと同じように、その結核患者をそのままおいておけば、死ぬることは明らかです。ですから、死なせないためには、ヒューマニズムの立場に立って、この人をその職場から別なところに持っていくということは、ちょうど結核患者を療養所に入れると同時に、その人個人にとっては、新しい、粉塵の立たない、清浄な空気のところに持っていくことが即療養だと思う。そうだとするならば、ただ療養を必要として、われわれが労災保険の上において解雇等の制限の恩典を受けるということは、療養をしておる、そして同時にその人が休業をしておるという、療養と休業とが二つ重なった上に、解雇の制限を受けておるわけですね。ところが、たまたまその人が、あるいはけい肺の三症度だと言われたならば、これはとても療養して同時に休業しなければだめです、こういうことになれば、これは休業をしなければならぬことになると私は思うのです。これはレントゲンで客観的に見ても、幾ら先生がおっしゃっても、私はどうも息切れがしてしようがありません、こう言われれば、こういう症状というものは、客観的なもので見るよりは、主観的なものです。たとえば、局長さん、あなたはおなかが痛いんだ。そうすると、私が外から見て、おなかが痛いということはわからない、おなかが痛いということは、あなたの自覚症なんです。だから、私は今までは十回鉄棒に下ることができたけれども、お前は三症状だと言われてから、どうもどうきがして作業できませんといって、休業を要求したら、これは休業させなければならぬことになると思うのです。ところがそれは、レントゲンの像で見ると第三症度なんです。レントゲンの像ならば、三症度でいいけれども、非常にどうきの訴え方が激しい、心臓や肺の機能が普通よりも激しいということになれば、四症度になってしまう。こういう点がきわめて微妙な問題をはらんでくると思うのです。そこで、第三症度までの勧告をやる場合に、これは大臣は明らかに病人だということを認められる。労働能率も落ちていない。こういうことになっておるのですが、私は作業転換は療養だと思うのです。この点にどうお考えになりますか、療養でないとお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/35
-
036・富樫總一
○富樫(總)政府委員 医学関係について、専門の先生の御意見でございますが、けい肺病というものにつきましては、いろいろまだ研究の余地が広範囲に残って不明な点があるのでありますが、少くともけい酸粉塵を吸入したことによって起るということは、国際的にも確定しておるのであります。病気の定義を、療養の段階に至らないものをも病気という名前をつければ、これは病気とも言えますけれども、配置転換によりまして、その人は自己の粉塵を吸わないことになる、病気の原因がなくなる、そして普通の労働ができるのだ。医学的な手当でなく、そういう結果になるわけで断ります。結核の要注意者に対するいろいろな手当をいたして進行しないようにいたす医学的な措置が、通常療養と呼ばれると、私しろうとながら考えておるのでありますが、そういうこととは違った意味において、むしろ物理化学的な関係で、新たに粉塵を吸入しないということで進行しないのでありますから、それをも言葉の用語で療養と呼ぶかどうかは、任意ではございましょうが、通常の意味における療養ということとは性質が違うのではないかと存じますが、しろうとでございますので、さらに詳しいことは労働衛生課長がおりますので、答弁させてもよろしゅうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/36
-
037・滝井義高
○滝井委員 医学的な処置を必要とするものが療養だ、こうおっしゃるけれども、たとえば結核患者で、医学的な療養をも必要としない、処置をも必要としない場合がうんとある。たとえば、もう菌も出ない、大体無理をしなければいいんだということで療養所を出して、そしてあなた方の今後やろうとするアフター・ケアあるいはコロニーを作らせる、結核患者の集落を作らせる。こういうような状態になると、これは医学的な処置を必要としない。しかし、そういうことが、むしろ広い意味の医学的な処置だとは言えますよ。コロニーの中に入れて普通の社会人の生活と同じ状態にしておくということは、広い意味の医学的な処置です。あるいはアフター・ケアに入れて、そして他の労働と違った、たとえば速記を練習させるとか、試験管でいろいろの細菌検査をやらせるとかいうような、こういうことも、いわば広い意味の医学的な処置になる。そういう意味からいえば、このけい肺の三症度までのものを勧告させて職場の転換をさせるということは、それは普通のそういう健全な肉体でやれる労働をやっておったのでは、特に粉塵の立つところでやっておっては大へんだからということで、広い意味の医学的な処置になる。そういう意味からいくと、結核のいわゆる後保護施設なんかに収容しておる患者、あるいは療養所ですでに菌が出なくなって、外科手術をやって、もう大丈夫というような患者と、これはちっとも変わらない。そこで、これは私は、今までの労働基準法の概念では律することのできない一つの形態が現実に出てきたことだと思うのです。新しい職業病というものの取扱いについて、新しい概念を今は打ち立てるべきではないかと私は考えている。それを政府の方では、旧来の労働基準法の概念にとらわれて、新しく出たところの職場転換をしなければならない、しなければ死ぬという職業病であるけい肺患者に、新しい概念をもって適用する状態を作ってないということなんです。依然として今までの労働基準法の関係のみにとらわれておる。私は、新しいそういう職場転換という概念で、もっと労働者を保護してこういう新しい概念を作る時期が来たと思う。おそらく、今後、単にこういうけい肺病だけでなくて、まだいろいのものが、私はこういう形でこれを契機として出てくると思う。従って労働基準法の中に、こういう職場転換の新しい保護措置というか、立法措置を必要とする時期が、現在このけい肺病を契機として私はやってきておると思うのですが、大臣はその点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/37
-
038・西田隆男
○西田国務大臣 お答えいたします。滝井さんの言われるように、広義に解釈すれば、病気に間違いございません、そのゆえに、この法案に規定してあることは間違ってはいないと思います。多少混淆しておることも、これは事実でございます。もしこのけい肺病の治療方法が確定しておりまして、医学的な治療、狭義の治療をすることによって、第三症度の者が第二症度になり、第二症度の者が第一症度に返り、第一症度の者が健康体に返るという結果が現実にあるといたしましたならば、これは言うまでもなく普通にいう病人です。ところが、たまたまけい肺というものの完全な治療法が現在認められていないというところに、今あなたがおっしゃったように、労働基準法とは別な観点に立ってのけい肺対策というものが、今までのお役人さんの常識からいったら考えられなかったという、多少ニュアンスの違いが、この法案の中に現われていることは事実と考えております。将来こういう問題が次次起きておりますならば、これはけい肺病そのものの法案の修正でなくて、労働基準法そのものを改正するような時期が、滝井さんのおっしゃるように当然来るであろうということも、私は予測がつきます。これは広義に解釈することと狭義に解釈することとの違い、現在けい肺病が、医学的治療の方法がない。軽減する治療の方法がないというこの三つの問題がからみ合って、滝井さんのおっしゃるようなことまでに至っていない、私はこのように解釈しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/38
-
039・滝井義高
○滝井委員 とにかく、これは思想の過渡期ですから、いろいろ混乱があるということはお認めいただいたと思うのです。従って、ある程度そういう思想の混乱を防ぐためには、労働基準法自体の中に、やはりこういう職場転換というものについても、ある程度保護する形が出てこなければならぬ時代が来ていると思うのです。そういう観点から考えてみると、たとえばけい肺の四症度だといっても、治療法がないのです。ただ病院へ行って寝ておるだけです。それはただ、機能障害、心臓やあるいは肺のどうきが多いか少いかという程度で、対症的な治療がちっとも行われていない。何も三症度の患者と四症度の患者で、大きく治療上の相違というものはない、けい肺そのものをなおすことができないという観点に立てば、ないわけです。ただ、片一方は心肺機能が悪いから、それは何もけい肺そのものではなくて、けい肺から出てきた副作用をここでやるだけであって、けい肺そのものについては何も変っていない。従って、四症度のものは療養の必要があるという概念から病人として扱うというところにも、問題が出てきておると思うのです。こういう点は、もう少しぜひ局長さんの方で御研究をいただいて、今後の労働基準法の改正に、けい肺等のこういう職業病の職場転換の場合のものを考えてもらわなければならぬと思います。
それからいま一つは、政府の行う給付についてでございますが、現在政府の行う給付については、まず第一に転換給付という、三十日分の給付についての三分の一をやります。これは今度修正になって二分の一になったわけですが、原案では三分の一。それから今度は、いよいよけい肺だ、君は療養しなければならぬという四症度くらいになりますと、休業給付と療養給付が行われるわけです。この状態を考えてみると、五年間のこのワクの中で、まず最初の三年については労災保険の適用を受けて、この法律がなくても、今までもそれで大体やれたのです。ところが、今まで三年の中でやっておった療養給付と休業給付について、今度三分の一をわざわざ政府が負担をしたわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/39
-
040・富樫總一
○富樫(總)政府委員 三年は、従来通りに事業主の無過失責任と申しますか、全額事業主負担でありまして、本法によります追加の二年分について一部国庫が分担する、そういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/40
-
041・滝井義高
○滝井委員 わかりました。そうしますと、私が勘違いをいたしたわけで、今の質問はそれで打ち切ります。
それから、打ち切り補償のあとにおけるこの患者たちの生活保障の問題ですが、現在五年が終ってしまえば、そのまま病院をおっぽり出されるか、どういう形をとるか知らぬが、そういう形をとるようになるのですね。そうすると、それは必然的にやはり同じ国の金である生活保護に入ってしまうわけです。これは三年の打ち切り補償をもらったならば、それからあとの二年においても、おそらく平均賃金の百分の六十くらいもらっても、なかなか家族まで養っていけませんので、もうおそらくその段階から生活保護の段階に入ってくると私は思うのです。とにかく五年も過ぎれば、生活保護対象者となっていくということはほとんど確実です。そうすると、究極においては、同じ国の金で救う形が出てくるのですね。今後いろいろ予防法が徹底していけば、こういう病人の数というものは非常に少くなってくる。そうすると、同じわれわれの税金が、単に労災の形で持っていくか、あるいは生活保護の形で持っていくかという、ただ取扱いのスタイルの違いだけなのです。そうだとするならば、それから先はおそらく大部分は生活保護でやるのですから、その分を国がやるということに考えが及ばなかったかどうかということですが、大臣も、これは全額、生涯を国が見てやりたいという思想を初めから持っておったのだ、こういうお話でございました。そうだとするならば、どうせ生活保護でやらなければならぬとするならば、むしろ日本の労働立法の進展の上から考えて、国があとを見る形を作ってやった方がいい。簡単な結論からいえば、生活保護のものをそのまま労働立法の中に移しても、私はただ厚生省の社会局の金を労働省の方に移すだけのものだと思うのですが、そういう考えはないのか。それから現実にそういう五年——今までのけい肺患者の運命というものは、この前鬼怒川に行った方々の御意見では、もうそれが切れたら、みんな死んでしまうのだということでございました。大体結核患者も、傷病手当金の切れた時が命の切れる時だというのが現実です。これは、この前私はここで申しました。おそらく結核よりか、もっと望みの断たれておるこのけい肺患者というものは、私はそういうものだと思うのですが、そういう点、生活保護との関係等の考えを、もう一ぺんお伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/41
-
042・西田隆男
○西田国務大臣 お答えいたします。昨日も当委員会でお答えいたしましたが、お前は理想を言うといって怒られましたけれども、私は決して理想ではなくて、現実の問題として、治療の確定していない、当然死ぬということが予測されておるようなけい肺病の患者に対しては、死ぬまで国がめんどうを見るべきだ、国だけでめんどうを見なければ、事業主と国が共同でめんどうを見るべきだということで、私は予算の折衝もやったのですが、私の政治力がないゆえんか、私の理論構成が悪かったためか、結果においては、死ぬまで見るということにならないで、こういう規定を残したわけであります。私どもとしては、滝井さんのおっしゃるように、死ぬまで見るべきだ。治療法でも発見されて、その治療の仕方によって治癒ができるということであれば、死ぬまで見るという考え方は必要でないかと考えますけれども、現在の段階においては、私はこういう不幸な人たちは、当然死ぬまで見るべきだ。しかも滝井さんがおっしゃったように、第四症度になって突き放されて、治療の方法がなくなってしまった場合には、これは理屈でなく、人間そのものの感情的な問題で、急にからだが衰弱して死を早く招くということは、想像にかたくないところであります。後とも、死ぬまでめんどうが見れるようなふうに、私としては一つ努力していきたいと考ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/42
-
043・滝井義高
○滝井委員 それから、第三症度で作業転換をします。そうしますと、今度それが、さいぜん局長の御答弁で、進行する人は非常に少いか、ときに結核になる、こういうことであります。進行した者、あるいは結核が合併した者については、第四症度と同じ取扱いをしていく、こういうことであります。そうしますと、これは問題は、職場転換をしていく、そうしてそれが一年か二年後にそういう形に起ってくればいいわけなんです。第四症度なり結核が合併してくればいいわけですが、そういう肺の機能に季節的な機能障害は大してなくても、臓器自身に粉塵が沈着して、ある程度の器質の変化を持っている人は、これはやはり結核を合併しやすい要素があるわけです。しかし、これが転換した後に十年とか十五年後に結核になったという場合の取扱いはどうなるのですか、これだけを最後に質問して、一応私の質問は終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/43
-
044・富樫總一
○富樫(總)政府委員 今まで健康診断が十分でなかった情勢もございまして、今までにおきましても、すでにそういう事例がずいぶんあったわけであります。すでに粉塵の全然立たない別の会社に勤めておって第四症度が発見された、そういうものにつきましては、従来とも職歴調査をいたしまして、粉塵作業の会社をやめた時にその病気が発生したものとみなして、労災保険の適用をさしてございます。今後とも、全く同じ扱いで職場転換後、あるいは会社転換後、あるいは全然仕事をやめて家に帰っている者でも、みなその元に戻ってそういう取扱いをするわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/44
-
045・滝井義高
○滝井委員 要綱の取扱いですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/45
-
046・富樫總一
○富樫(總)政府委員 そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/46
-
047・中村三之丞
○中村委員長 それではけい肺に関する質疑の残余のものは後日に譲ることといたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/47
-
048・中村三之丞
○中村委員長 この際駐留軍労務者の保険問題について発言を求められております。なおまた労働大臣より、富士自動車の人員整理の問題につきましても、経過の説明を聴取いたしたいと存じます。
まず駐留軍労務者の保険問題につきまして、野澤清人君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/48
-
049・野澤清人
○野澤委員 時間がありませんから、要点だけ簡単にお尋ねをいたしたいと思います。五月十七日の委員会だと思いますが、駐留軍要員の健康保険組合の料率引き上げの問題について、この委員会で質疑があったようであります。なお、その後約三週間経過しております。日米合同委員会の中に、健康保険組合の専門委員会を作るというような覚書も手交されたというようなことを聞いておりますけれども、この特殊な駐留軍要員の健康保険組合の財政というものは、日本の法律に従って組合の運営をしておりますけれども、実際は料率を引き上げるという問題になりますと、簡単に厚生省だけで認可ができない。従って、この問題については、労働大臣の責任において米軍の方との折衝が当然行われていると思うのでありますが、その後の経過がどうなっておりますか、簡単でけっこうでございますから伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/49
-
050・西田隆男
○西田国務大臣 お答えいたします。今までの経過については、御承知のようでございますから、最近の結論だけを申し上げます。
一両日前の日米合同委員会におきまして、駐留軍労務者の健康保険の問題が議題になりまして、いろいろ議論がありましたが、結果としましては、さっきおっしゃったサブコミティを作りまして、そこで一つ駐留軍側の要請されておる問題、日本側の主張しておる問題、この二つの問題点についての結論を早急に出そう。もしサブコミティでその結論が出ませんでした場合においては、これを日米合同委員会に再び還元してかけよう。その要点と申しますと、アメリカ側が、日本の法律の範囲内で健康保険組合の経理の面に対する管理権と申しますか、方法があるか、あればその方法に従うかという問題、それからその反対として、日本の法律の規定に違反してでもアメリカ側が主張するとなれば、これは今までの主張と同一でありますから、当然決裂すると思いますが、サブコミティを作って、日本の法律の範囲内におけるアメリカ側の経理に対する発言権の確保が、いかなる具体的な方法でできるかという問題をサブコミティで検討する。そしてこれができるという結論がつきました場合においては、それが決定をいたします。結論がつかなかった場合には、再びこれを日米合同委員会に戻して、そこで結論を得よう。従って現在の段階におきましては、アメリカ側としては、日本の法律に従って、その範囲内でやる方法について検討をする、そして結論を出そう、こういうことです。
それから料金の引き上げの問題ですが、これは現在御承知のように、アメリカ側としては反対をしておるわけですが、日本政府としましては、日本の政府自体がこれを負担をするというようなことも考えられておるようでありますけれども、そういうことは不可能でございます。どこまでもアメリカ側に料率引き上げが可能になるような形で交渉を今後も続けたいと思います。従って、現在の予算が六月一ぱいで終りますが、六月一ぱいの間に何らかの結論を見出すべく努力したい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/50
-
051・野澤清人
○野澤委員 米軍との交渉の経過については、三月の二十二日付の合同委員会の覚書及び今回の六月一日付の覚書等によって、今大臣の言われる通りだと思うのです。そこで、この見通しでありますが、何せ米軍との交渉でありますから、そう簡単には参らないと思います。今後わずかの期間で——もう期限も切れてきますし、一方また厚生省の方としても、労働省の方、調達庁長官の方の御返事によって予算等の認可もしたい。ところが、四月、五月、六月は正式に予算の認可もなければ、何らの命令もない。要するに法的根拠なしに現在のところ運営されている。しかも、この日米等の交渉の経過というものが、ようやくここで軌道に乗った状況ですから、今後何カ月継続されるか。それから、しかもこの前の十七日の、ちょうど私予算委員会に出ておりまして、この委員会におりませんでしたので速記録を調べてみますと、厚生省の方としては、もし妥結ができなかった場合には、やむを得ないから政府管掌の健康保険にしても仕方がないのだ、こういふ結論を出していますが、もしそういうことになってきますと、料率も、もちろん今度の政府原案千分の六十五になってしまいます。しかもまた、現在の診療所等も、鉄さく内にある診療所が使えない。こういうことで、もし追い込まれてきますと、相当混乱した状態に持っていかれるのではないか。従って、この問題に関して交渉を進捗させるため、また善後策を講じるために、厚生大臣と労働大臣とで直接善処するようなお話し合いをされたことがあるかどうか、また今後ともそれを至急におやりになるお考えがあるかどうかをお聞きいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/51
-
052・西田隆男
○西田国務大臣 今までの合同委員会における話し合いは、さっき申し上げました小委員会で、健康保険組合の経理の管理をやろうという考え方で、そこでぶつかったのです。今度はそうではなくして、日本の法律の範囲内でやれる方法を具体的に検討しようというのであります。今までよりか一歩も二歩も前進した形で、今後サブコミティが持たれる、こういうことになっておりますので、私はこれに対して一縷の希望をつないでおるわけであります。
それから、厚生大臣との話し合いはどうかということですが、これは個人的に、閣議で正式に発言したわけではありませんが、川崎厚生大臣と私との二人の間の話し合いでは、もし六月一ぱいにアメリカ側との話し合いがつかないという段階がきた場合には、仕方がないから、厚生省としては、日本政府が一時立てかえ払いをするという形において、将来国際問題として外務省を通じて正式に話を進めるより方法はなかろう。これは保険料率の高い国の管轄のもとにおける保険業務を扱うというようなことは、理屈はどうであっても、常識的には負担を増すばかりでいい方法ではない。これが逆に保険料率が下ってするというのであったら、これは国としても仕方がないが、六十五のものが六十八へ上げれば済む、これをこういうふうに扱うのは、政治的に見て、いかにもまずい方法だから、厚生大臣も一つそういう方法をとってもらいたい。それについては、厚生大臣が当局に会いたいという希望がございますので、長官に連絡をとらせまして、今月の十五日に厚生大臣に福島長官がつきまして、先方との会談の機会をただいま作って、先方の了解を得ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/52
-
053・野澤清人
○野澤委員 大体筋道がはっきりしましたが、ただ専門の小委員会をお作りになって今後折衝していきます際には、日本の法律の範囲内でということが主眼点だと思うのです。そうしますと、今度の覚書によりますと、もしその法律の範囲内でできない場合にどうするかという問題までいくようでありますが、おそらくこれは私たちの杞憂かもしれませんが、今月中に妥結はむずかしい。そういたしますと、今お話がありましたように、厚生大臣と労働大臣と、閣議の発言ではないがプライベートに話し合いをして、一時政府の借入金でやっていく、こういうことに了承して差しつかえありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/53
-
054・西田隆男
○西田国務大臣 まだはっきり厚生大臣との間に、そういうことを両方で発表し、決議したということになっておりませんけれども、一応そういうふうに話し合っておりますので、なお早急に、厚生大臣が十五日以降に会いますから、十五日になるか、十六日になるかわかりませんが、先方と会いました結果によって、はっきりした態度を一つ決定したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/54
-
055・野澤清人
○野澤委員 もう一言ですが、それで、仄聞するところ、アメリカ軍がこれまで折れてきたということは、衆議院でこの問題が取り上げられたといううわさが先方に通じて、多少尊重された、こういううわさも聞きまして、状況によったら、この交渉を促進するための決議案でも衆議院の委員会で出そうかという考えの人もあります。これを早急にどうする、こうするということでなしに、少くともこの米軍との折衝でありますから、ただおそいとか早いとか、まずいとか上手だとかいうような問題でなしに、一日も早く妥結しなければいかぬ、こういう観点から、われわれも十分に御協力を申し上げたいと思うのです。
それで、何せ調達庁の長官も、りっぱに御交渉されておるのでありますから、この点は、何ら間違いないと思いますけれども、結局時期が来てどうにもならないという適法の処置のできない状態に追い込まれたのでは、全く気の毒だと思います。従ってこの点に関しては、労働大臣も、厚生大臣にももちろんこれは申し上げますが、責任を持って、至急に解決するように、プライベートな会合も必要でありましょうが、正式な会合もどんどんお持ちになって、一日も早く解決されるようお願いいたしたいと思います。なお必要があれば、委員会にお諮りしまして、委員長の方からお取り計らいを願いたいと考えております。どうかよろしくお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/55
-
056・西田隆男
○西田国務大臣 お答えいたします。御承知のように、日米合同委員会と申しますのは、二週間に一回しか開かれない規約になっておりますので、ずるけたわけではございませんけれども、今までのひまの要りましたことについては、一つ御了解を願います。サブコミティが持たれますと、これはそういう制約がありませんから、何回でも会合して、日本側の主張をできるだけ通したいと考えております。
なお、委員会において決議その他のことについて助力をするというお話、まことにありがとうございます。できるだけやりまして、どうしてもいかなかった場合においては、一つ御援助をお願いいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/56
-
057・中村三之丞
○中村委員長 最後に、西田労働大臣より富士自動車の人員整理問題についてその経過を承わります。西田労働大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/57
-
058・西田隆男
○西田国務大臣 富士自動車の今回の人員整理の問題は、五月十一日に、米軍側から会社側に対しまして、今までの発注しておった数量の六割を減少した程度の発注しか七月以降はやれない、こういう通知があったのでございます。これに対しまして、会社側としては、当局の人に向っていろいろその問題についての善処方をお願いしたわけでございますが、なかなか話がつきません。従って富士自動車の会社側といたしましては、リンド准将という、参謀次長ですか参謀ですか、そういう要職におられる人に対して会見を申し込みましたが、その会見も拒否されたという結果でございましたので、政府側といたしましては、外務省に申し入れをしまして、そして外務省からリンド准将に交渉の結果、会社側の代表者との会見を拒否しておったことを取り消して、会見をするという段階にまで運びました。会社側としては、社長がリンド准将に会見をいたしまして、いろいろこの問題の打開のために御相談を申し上げましたけれども、なかなか米軍側の意向は固くて、ちょっと見込みのないような段階まで追い込まれたわけでございます。と申しますのは、米軍と富士自動車との契約は、一カ年の契約期間になっております。従って、六月三十日で契約が切れる。そして七月以降のことは、新しく契約を結ばねばならないような契約の仕方になっておりますので、米軍側としては、理論上は何ら責任を負わねばならぬという規定が設けて断りません。そういうために、交渉は非常に難航いたしました。政府側といたしましては、会社側を呼びまして、いろいろ事情を聴取しまして、これに対する交渉をするために通産省、郵政省、労働省、外務省で連絡会議を持ちましていろいろ検討いたしまして、アメリカ側とも何回も会見をして折衝いたしましたけれども、なかなかアメリカ側がアメリカ側の今までの主張を変えませんので、非常に交渉は困難をきわめております。その過程において、労働組合側あるいは社会党の議員の諸君が、何回かリンド准将その他と会見をいたしまして、その問題の解決方に対する善処方を要望したようでございます。特に、神奈川県といたしましては、神奈川県鶴見の工場がありまして、地元でありますので、神奈川県知事以下非常に心配いたしまして、この問題について米軍側との折衝を二、三回やったようでありますが、その最後の折衝におきまして、米軍側としてはエドワード大佐、クイック中佐、県側は内山知事、佐々木渉外事務局長、宇井労働部長、それから会社側から山本社長、こういう連中が出まして、米軍側との交渉をした結果として、軍側では六月五日に、軍側代表に、労務者の住む関東地区内の他の施設における就職の開拓に努力するはもちろん、整理を最小限度にするため、引き続き問題を研究する、こういう旨を日本側に約したという声明をいたしております。従って、神奈川県側といたしましては、この問題の結論がどういうふうに出るかわからないが、結論が出るまで日本政府側としては待機の姿勢でおってもらいたい、こういうふうな話が先方からありましたので、この結論がどういうふうに生まれるかということで、日本政府側は、また国内における外務省と米軍側の交渉だけで、必ずしも解決するとも考えておりませんので、正式な外交交渉にでも移さねばならないようなことになるかもわからないというので、しょっちゅう連絡をつけておりますけれども、現在待機の姿勢でいるわけであります。
大体以上がその内容であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/58
-
059・中村三之丞
○中村委員長 次会は明日午前十時三十分よりけい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法案についての公聴会を開会いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時五十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02019550608/59
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。