1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十年六月十三日(月曜日)
午前十時四十七分開議
出席委員
委員長 中村三之丞君
理事 山下 春江君 理事 山花 秀雄君
理事 吉川 兼光君
臼井 莊一君 亀山 孝一君
床次 徳二君 森山 欽司君
山本 利壽君 越智 茂君
小林 郁君 中山 マサ君
野澤 清人君 八田 貞義君
岡本 隆一君 多賀谷真稔君
滝井 義高君 中村 英男君
井堀 繁雄君 神田 大作君
田中 利勝君 中原 健次君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 川崎 秀二君
労 働 大 臣 西田 隆男君
出席政府委員
総理府事務官
(調達庁労務部
長) 海老塚政治君
厚生事務官
(保険局長) 久下 勝次君
通商産業事務官
(企業局長) 徳永 久次君
労働事務官
(労政局長) 中西 実君
委員外の出席者
外務事務官
(欧米局第二課
長) 安川 壯君
専 門 員 川井 章知君
専 門 員 引地亮太郎君
専 門 員 浜口金一郎君
専 門 員 山本 正世君
—————————————
六月十三日
委員神田大作君及び山下榮二君辞任につき、そ
の補欠として田中利勝君及び井堀繁雄君が議長
の指名で委員に選任された。
—————————————
六月八日
戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する
法律案(山下義信君外一名提出、参法第九号)
(予)
同月九日
健康保険法の一部を改正する法律案(内閣提出
第一〇二号)
同月八日
クリーニング業法の一部改正に関する請願(長
谷川四郎君紹介)(第一九七七号)
同(杉浦武雄君紹介)(第一九七八号)
同(鳩山一郎君紹介)(第一九七九号)
同(井堀繁雄君紹介)(第一九八〇号)
同(田万廣文君紹介)(第一九八一号)
同(愛知揆一君紹介)(第一九八二号)
同(川野芳満君紹介)(第一九八三号)
同(今村等君紹介)(第一九八四号)
同(福井盛太君紹介)(第一九八五号)
同(小松幹君紹介)(第一九八六号)
同(井手以誠君紹介)(第二〇二九号)
同(辻政信君紹介)(第二〇三〇号)
同(松澤雄藏君紹介)(第二〇三一号)
同(徳田與吉郎君紹介)(第二〇三二号)
同(櫻内義雄君紹介)(第二〇三三号)
同(藤本捨助君紹介)(第二〇三四号)
同外一件(林博君紹介)(第二〇三五号)
同(眞崎勝次君紹介)(第二〇三六号)
同(笹本一雄君紹介)(第二〇三七号)
国立療養所の附添廃止反対に関する請願(本名
武君紹介)(第一九八七号)
同(楢橋渡君紹介)(第一九八八号)
同外一件(有馬英治君紹介)(第二〇三八号)
同(菅野和太郎君紹介)(第二〇三九号)
同外一件(滝井義高君紹介)(第二〇四〇号)
同外一件(門司亮君紹介)(第二〇四一号)
同外三件(田中稔男君紹介)(第二〇四二号)
身体障害者の更生資金制度実現に関する請願(
保科善四郎君紹介)(第一九八九号)
同(保科善四郎君紹介)(第二〇四三号)
美容師法制定に関する請願(山手滿男君外一名
紹介)(第一九九〇号)
理容師美容師法の一部改正反対に関する請願(
越智茂君紹介)(第一九九一号)
国民健康保険に対する国庫助成金増額に関する
請願(安平鹿一君紹介)(第一九九二号)
健康保険における医療給付費の二割国庫負担等
に関する請願(愛知揆一君紹介)(第一九九三
号)
健康保険法の一部改正反対に関する請願(山口
丈太郎君紹介)(第一九九四号)
同和問題に関する請願(足鹿覺君紹介)(第一
九九五号)
生活保護法の最低生活基準額引上げ等に関する
請願(長谷川保君紹介)(第二〇四四号)
同月十日
クリーニング業法の一部改正に関する請願(大
坪保雄君外一名紹介)(第二〇八八号)
同(加藤精三君紹介)(第二〇八九号)
同(内田常雄君紹介)(第二〇九〇号)
同(佐竹新市君紹介)(第二〇九一号)
同(木原津與志君紹介)(第二〇九二号)
同(山口シヅエ君紹介)(第二一二三号)
同(熊谷憲一君紹介)(第二一二四号)
同(加藤清二君紹介)(第二一二五号)
同(八木昇君紹介)(第二一五三号)
同(松平忠久君紹介)(第二一五四号)
生活保護法の最低生活基準額引上げ等に関する
請願(長谷川保君外一名紹介)(第二〇九三
号)
医業類似療術行為の期限延長反対に関する請願
(首藤新八君紹介)(第二〇九四号)
同(保科善四郎君紹介)(第二〇九五号)
同外一件(中村時雄君紹介)(第二〇九六号)
同(田中武夫君紹介)(第二〇九七号)
国立公園施設整備費国庫補助復活に関する請願
(平野三郎君紹介)(第二〇九八号)
同(楯兼次郎君紹介)(第二〇九九号)
同(纐纈彌三君紹介)(第二一二六号)
身体障害者の更正資金制度実現に関する請願(
愛知揆一君紹介)(第二一二七号)
国立療養所の附添廃止反対に関する請願(永田
亮一君紹介)(第二一二八号)
同(田中角榮君紹介)(第二一五七号)
健康保険における医療給付費の二割国庫負担に
関する請願(中馬辰猪君紹介)(第二一二九
号)
未復員患者の医療区分撤廃等に関する請願(臼
井荘一君紹介)(第二一三〇号)
生活保護法の最低生活基準額引上げに関する請
願(臼井莊一君紹介)(第二一三一号)
美容師法制定に関する請願(穗積七郎君紹介)
(第二一五五号)
未帰還者留守家族等援護法による医療給付適用
期間延長等に関する請願(井手以誠君紹介)(
第二一五六号)
の審査を本委員会に付託された。
—————————————
本日の会議に付した案件
参考人招致に関する件
健康保険法の一部を改正する法律案(内閣提出
第一〇二号)
厚生年金保険法の一部を改正する法律案(内閣
提出第一〇四号)
船員保険法の一部を改正する法律案(内閣提出
第一〇五号)
日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案
(内閣提出第一〇三号)
特需関係労務者の人員整理に関する件
全国金属鉱山関係の労働争議に関する件
中小企業における労働争議に関する件
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/0
-
001・中村三之丞
○中村委員長 これより会議を開きます。
まづ健康保険法の一部を改正する法律案、厚生年金保険法の一部を改正する法律案、船員保険法の一部を改正する法律案及び日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案の四法案を一括して議題とし、審査に入ります。まず川崎厚生大臣より趣旨の説明を聴取いたします。川崎厚生大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/1
-
002・川崎秀二
○川崎国務大臣 ただいま議題となりました健康保険法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を説明いたしたいと存じます。
具体的な提案理由に入ります前に、当面いたしております健康保険の諸問題と、これの処理対策につき、御説明いたしたいと思います。
健康保険制度は、昭和二年実施以来、わが国社会保険の中核として、労働者の生活に不可欠の制度として親しまれ、その制度内容も逐年充実を重ねてきておりますが、昭和二十八年度の末に至りまして、相次ぐ医療費の増高が収入を上回り、特に昨年に入って以来、保険経済はきわめて困難な事態に立ち至ったのであります。この情勢に対処して、政府は、昨秋来被保険者の報酬の実態把握、不正請求、不正受診、不正受給の排除、保険料収納率の向上等の行政措置を強化し、極力財政の健全化をはかって参りましたが、それにもかかわらず、政府管掌健康保険においては、昭和二十九年度約四十億円の赤字が生じ、昭和三十年度においては、その赤字額がさらに約六十億円と見込まれるに至ったのであります。医学の進歩と国民の保健衛生思想の向上とに伴い、医療費が逐年増加する趨勢にありますことは、当然の傾向たる要素をも含み、やむを得ないことでありますが、問題は、この医療費をいかにしてまかなかうかにあります。社会保険の従来の仕組みの中において、この医療費の増高をまかなうに足る保険料収入が確保されるならば、問題は簡単でありますが、今日の健康保険の情勢は、従来の制度のままで毎年増大する医療費に対処することがきわめて困難な情勢にあると考えられるのであります。従って、健康保険制度の将来にわたっての恒久的な発展を期するためには、この際、本制度の根本的な検討が必要であると考えられ、引き続き調査研究を重ねている次第であります。しかしながら、問題はきわめて重大であり、かつ広汎にわたりますため、その結論を得るまでには、なお若干の日時を必要としますので、昭和三十年度の予算の編成に際しましては、さしあたり当面収支の均衡の取れる財政措置を講ずることといたしたのであります。すなわち、昭和三十年度の予算におきましては、前年度と今年度との赤字見込み総額約百億円に対し、七十億円については、国の財政的援助によって解決することとし、残りの約三十億円については、保険経済自体において収入増加の措置を講ずることといたしたのであります。保険経済自体における収入増加措置といたしましては、法律に認められている範囲内における保険料率の引き上げを中心として、標準報酬等級の改訂等を考慮した次第であります。
以上申し述べましたように、当面の健康保険の財政的措置といたしましては、予算措置及び行政措置によりまして、赤字の大部分を解消することとし、あわせて健康保険法の一部を改正することにより、これに対処することといたしたのであります。
この法律案は、主として右の趣旨に基き提案いたしたのでありますが、改正の機会に、従来から問題がありました点について制度の不備を是正し、その他制度の合理化をはかるために、若干の改正を行わんとするものでありまして、その内容は、第一に、被扶養者の範囲を、被保険者の三親等内の親族までとすること、第二に、標準報酬の等級を最低四千円から最高四万八千円までの二十三等級に改めること、第三に、厚生大臣又は都道府県知事の検査に関する規定を整備すること、第四に、継続給付資格期間を一年に延長すること。第五に。不正受給者に対して損失を補てんさせる措置を講ずること、第六に、第三者の行為によって発した事故につき受給権者が損害賠償を受けたときは、保険者は保険給付の責を免れること等であります。
以上がこの法律案を提案いたしました理由であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。
次に、同じく議題となっております厚生年金保険法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。
この法律案は、厚生年金保険の標準報酬の最低を引き上げ、現行の厚生年金保険法の施行前に被保険者の資格を喪失した女子に対する脱退手当金の支給条件を緩和いたしますとともに、規定の整備を行いますことを内容としているものでありますが、この法律案に規定しております改正点の第一は、健康保険法の改正に伴いまして、標準報酬の最低を、現行の月額三千円から健康保険のそれと合せるよう月額四千円に引き上げることであります。厚生年金保険と健康保険とは、現業事務をともにいたしております関係上、事務の簡素化をはかる意味でこの改正が必要とされるのであります。
その第二は、現行の厚生年金保険法の施行前に被保険者の資格を喪失した女子の一部に対しても、脱退手当金を支給しようとするものであります。同様の事情にある男子に対しましては、現行の厚生年金保険法により支給できるようになっておりますので、これと均衡を取ります必要上、女子に対する脱退手当金支給の根拠規定を設けようとするものであります。
その第三は、規定の整備を行うことであります。現行の厚生年金保険法は、その施行より一年になりますが、この間の経過を検討いたしますに、多少規定の明確を欠く面がありますので、これを明らかにし、解釈上の問題が起ることを避けますため、所要の規定の整備を行うものであります。
以上が、この法律案を提案いたしました理由であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。
次に、健康保険法と並行しまして、その裏打ちともいうべき船員保険法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。
船員保険制度は、昭和十五年実施以来、船員の生活を守るために重要な役割を果しておる制度でありますが、その疾病給付面の財政は、数年来、療養の給付及び傷病手当金に要する費用が増加の一途をたどっておりますため、収支の均衡は悪化を来たして参りました。よって昨年五月保険料率の改正を行なったのでありますが、その後も支出の増加は著しく、昭和二十九年度におきましてもまた赤字を生ずるに至ったのであります。これに対処して、政府は昨秋来行政措置として報酬の実態把握、不正請求、不正受診、不正受給の排除、保険料収納率の向上等に努め、財政の健全化をはかってきておりますが、将来にわたって恒久的な解決をはかるためには、医療保険制度の根本的な検討が必要であると考えられ、引き続き調査研究を重ねている次第であります。しかしながら、その結論を得るまでには、なお若干の日時を必要としますので、さしあたって、昭和三十年度の予算におきましては、昭和二十九年度中に生じた赤字及び昭和三十年度中に生ずべき赤字のうち、船員法に規定する災害補償相当分を除いたものについては、一般会計からの財政援助によるのほか、保険料率の引き上げ、標準報酬の等級の改定及び給付の節減をはかる等の措置によって対処することといたしたのであります。
この法律案は、右の方針に即応して所要の改正を行わんとするものでありますが、改正点の第一は、標準報酬につきまして、現行の最低四千円を最低五千円といたそうとするものであります。これは船員の給与の実態に沿って標準報酬を定めるとともに、あわせて収入の増加をはかろうとするものであります。
その第二は、職務外の療養の給付、傷病手当金等を被保険者の資格喪失後において受けるためには、資格喪失前の一年間に三月以上被保険者であることを要することといたすものであります。健康保険においては、これと同様の制度がとられておりますが、船員保険におきましても今回新たにこの制度を設けることといたし、被保険者間の公平をはかるとともに、支出の節減をはかろうとするものであります。
その第三は、傷病手当金について所要の改正を行わんとするものでありますが、職務外の傷病手当金につきまして、最初の三日間は待期期間として支給せず、四日目からこれを支給することといたし、同じく職務外の傷病手当金であって被扶養者のない者が入院中に支給される金額を、一日につき標準報酬日額の百分の六十から百分の四十といたすものであります。これも第二と同様、被保険者間の公平と支出の節減に資することとに立脚したものであり、健康保険においても実施いたしておるものであります。
改正の第四は、疾病給付所要財源に充てるため、保険料率を千分の九引き上げることであります。これは以上の改正を行いましても、なお生ずべき財源の不足分に充てるため、やむを得ず実施いたそうとするものであります。
なお、この他に被扶養者の範囲、行政庁の質問検査あるいは不正受診の防止等につきまして、このたびの健康保険法の一部改正案と同様の改正を行おうとするものであります。
以上がこの法律案を提案いたしました理由であります。これまた慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。
最後に、日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。
日雇労働者健康保険は、昭和二十九年一月に発足いたし、当初は療養の給付期間は三カ月でありましたのを、同年四月、給付費の一割国庫負担実現により、これを六カ月に延長し、自来一年順調に運営いたして参ったのであります。しかしながら、本制度の給付内容は、健康保険等他の疾病保険に比較しまして、いまだ十分とは申しがたく、ここに主として給付内容の改善をはかるため、法律改正をいたしたいと存ずるのであります。
この法律案に規定しております改正点の第一は、療養の給付期間を、現行六カ月から一年に延長することであります。その第二は、療養の給付範囲を拡張し、歯科診療における補綴を含むものとすることであります。その第三は、死亡及び分べんに関する現金給付を創設することであります。その第四は、被扶養者の範囲を拡大し、被保険者と同一の世帯に属する三親等内の親族で、主としてその者により生計を維持するものを含めたことであります。
なお、今後におきましても、本制度運営の実績を十分検討いたし、財政事情ともにらみ合せた上で、内容改善をはかりたいと存ずる次第であります。
以上がこの法律案を提案いたしました理由であります。以上四案に対し御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/2
-
003・中村三之丞
○中村委員長 以上で説明は終りました。なお本案についての質疑は、後日に譲ることといたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/3
-
004・中村三之丞
○中村委員長 次に、特需関係労務者の人員整理に関する問題についての調査を進めます。発言の通告がありますので、順次これを許します。井堀繁雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/4
-
005・井堀繁雄
○井堀委員 特需労働の問題につきましては、第十六国会以来、本委員会で審議を継続しておりますことで、多くを論ずる必要はないと思うのでありますが、われわれの危惧いたしておりました事柄が、だんだんと大きな社会的な問題を背景にしながら現われて来つつありますことを、非常に遺憾に思うわけであります。その一つの現われとして、追浜にあります富士自動車の大量首切りの形に現われているわけであります。このことは、申すまでもなく日本国とアメリカ合衆国との間に取り結ばれた行政協定のワクの中において行われておりますことは、われわれも承知しているのです。そこで問題は、この行政協定のワクの中においてしかるべき解決をはかるということが第一になると思うのであります。第二の問題は、この行政協定を改訂する必要が、ここからも起ってきていると思うのであるが、この問題は本委員会に直接関係の少いことでありますから、これに言及することは避けたいと思います。
すなわち、第一の行政協定のワクの中において現われております事柄で、政府にただしたいと思いますのは、この行政協定の内容を見ますと、解釈の上に多少われわれといたしましては疑義をはさんでおりますので、その点について、一応政府当局の見解を伺ってから、私のお尋ねいたしたい中心の問題に触れたいと思うのであります。
問題を、ただいま起っております追浜の富士モーターに限定してお尋ねいたしますが、アメリカ軍の使用目的は何であるかは別といたしまして、日本の労務者による大量の役務を提供していることも事実でありますし、それからその仕事がどういうものであるかということについても、明らかでありますから、これが行政協定のどの条項に基いて行われているかを、まず伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/5
-
006・安川壯
○安川説明員 行政協定の第十二条にはっきりしておると思いますが、第十二条の第一項に「合衆国は、この協定の目的のため又はこの協定で認められるところにより日本国で供給されるべき需品又は行われるべき工事のため、供給者又は工事を行う者の選択に関する制限を受けないで契約する権利を有する。」とあります。従いまして、富士モーターと軍との契約は、この条項に基いておると考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/6
-
007・井堀繁雄
○井堀委員 第十二条の一項について条文の朗読がありました。そこで、私は労働大臣にお尋ねいたしたいのでありますが、その二項に「現地で供給される合衆国軍隊の維持のため必要な資材、需品、備品及び役務でその調達が」云々とありますが、一体この資材、需品、あるいは備品及び役務のすべてが、ただいま追浜の工場で契約されておるものであるかどうか。あるいは役務の提供であるか、その一部であるか、どれかについて一応お伺いいたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/7
-
008・西田隆男
○西田国務大臣 富士自動車と駐留軍側との間の契約は、労務の提供ではなくて、商取引、商行為による契約だというふうに解釈しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/8
-
009・井堀繁雄
○井堀委員 そこで、この場合一部じゃなくすべてだということになると思いますが、私どもの調査しております範囲内で参りますと、形式は自動車その他の修理作業ということになっておるようでありますが、実質は、アメリカから修理の計画、工程、さらにその修理工程の中における管理一切をアメリカのプランに基いて、しかもあちらの監督のもとに事業が行われておるということには相違がないので、この点お調べになったかどうか。お調べになっておるとすれば、それはただ日本の政府が修理の場所、その設備の一部を提供して、事実は役務の提供という実態になっておるとわれわれは見るのでありますが、その辺の観察はどうされておるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/9
-
010・西田隆男
○西田国務大臣 私の承知しております範囲では、米駐留軍と富士自動車との間に、日本でされるような商習慣そのままは採用されていないようでありますが、きわめて細目にわたっての請負契約と申しますか、工事契約と申しますか、そういうふうな形において契約が結ばれておると私は承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/10
-
011・井堀繁雄
○井堀委員 その詳細にわたったというのが、私が今指摘したように、一から十まで向うの管理に基いて行われておると思いますが、それに相違ないかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/11
-
012・西田隆男
○西田国務大臣 結果的に見れば、あるいはそういうことが言えるかわかりませんけれども、要するに富士自動車からオファーしたものが、アメリカ側でそのままのまれておるものもあり、あるいはアメリカ側の意見によって修正、訂正されたものもあるし、その量が果してどちらが多いかという点は、私は承知いたしておりませんけれども、形としてはどこまでも米駐留軍と富士自動車との契約という形で成り立っておると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/12
-
013・井堀繁雄
○井堀委員 まだ労働大臣はその事実を認識していないようであります。修理加工でありますから、向うから提供された品物、それを修理する計画なりあるいは管理一切は、あちら側の指揮命令で、しかも向うの現場における二重三重の監督が行われておる、こういうことも事実であります。実質は、役務の提供になっておるとわれわれは見ていいと思う。しかし、それはよく御調査をいただきたい。
それから、私がお尋ねしようとすることは、その事実が明らかでないと答弁が正確でないと思いましたので、申し上げたのでありますが、この二項の先ほど読み上げたあとの方であります。「日本国の経済に不利な影響を及ぼす虞があるものは、日本国の権限のある当局との調整の下に、また、望ましいときは、日本国の権限のある当局を通じて又はその援助を得て調達しなければならない。」こうあるのであります。この解釈でありますが、「日本国の経済に不利な影響を及ぼす虞」、それからその場合における「日本国の権限のある当局」、この二つのことについて、まずお尋ねしようと思います。「日本国の経済に」というのは、広い意味の経済をいっておると思うのですが、その「影響」の範囲に関する解釈上の問題であります。日本政府は、この契約は一体日本経済に不利益を与えるような契約であるかないか、まずこの問題に対する見解を一つお尋ねいたし、それからこの条文に対する解釈が、もし他にあるとすれば、お聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/13
-
014・安川壯
○安川説明員 私の答弁は逆になると思いますが、富士モータースと米軍の契約が、日本経済に不利益を及ぼすかどうかということについては、私、ちょっと御答弁をする立場にないのですが、この条文の解釈として、これはどういうことを意味しておるかということについて、若干この協定ができますときの問題の背景と、その後の日本政府の措置について申し上げたいと思います。
この条文は、そのような表現になっておりますが、当時、この条文の意図したところは、当時まだ日本国内にいわゆる希少物資と称せられるものがあった。日本国内の需給関係が非常に逼迫しておるような物資がかりにあった場合に、それを一方的に米軍の方の調達によって米軍に納めたために、国内の需給関係を圧迫するようなおそれのある物資につきましては、事前に日本政府と調整する、場合によっては日本政府を通じて調達するというのが、条文の本来の意図であったと了解しております。その後、合同委員会の下に調達調整委員会というものを設けまして、いわゆる希少物資につきましては、米軍に納める年間のワクをそこで協議いたしまして、そのワク内で米軍が調達しておったわけであります。これは現在も続いておりますが、情勢が変りましたので、いわゆる希少物資の範囲は非常に減っておりますが、まだ若干の品目については、希少物資として米軍に納める数量のワクを設けております。この条文ができましたねらいは、そういう点にあったと考えておりますし、またその後の運用もそういう面でやっておるというのが実情であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/14
-
015・井堀繁雄
○井堀委員 条文の解釈については、一応われわれは了承いたします。そこで、労働大臣にお尋ねいたしたいのですが、今説明がありました範囲内といたしましても、問題がありますのは、今日、この富士モータースに限ったわけではありませんが、日本の特需の契約の形態というものが、たびたびこの委員会でも問題になりまして、政府当局も、その是正方についていろいろ苦慮しておる答弁が何回も行われておるわけであります。その最も大きな矛盾しておる点は、自由契約でありますから、もちろん公正に契約を取り結ばなければならないことは、常識で疑う余地はないわけであります。ところがその実際は、日本の限られた市場、ことに日本の経済産業事情からいえば、激甚な国内競争の中にあって、一つでも仕事を得なければならないという日本の産業経営者の立場からいたしましたならば、国内でも、かなり激しい競争が行われて、それがいろいろな社会悪を作り上げておることは、申すまでもないわけであります。こういう日本の悪条件の中に、しかも、契約の相手方がアメリカ合衆国の軍当局である。その軍当局と、この脆弱な基盤の上に、悪条件の上に立たされております日本の一営利企業者との間に、公正な契約が行われる筋のものでないということも常識で判断することが可能なんです。こういう矛盾したものが、今日の契約の上にいろいろ現われてきておるわけでありますが、こういう点に対して、政府は御調査をなさったか。また労働大臣は、政府の立場を代表して、こういう矛盾についてどのような処置を講じようとしておるか、この点をまず伺っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/15
-
016・西田隆男
○西田国務大臣 井堀さんも御承知のように、最初の間は、日本政府が責任を持つという形における間接受注でございました。いつの間にどういう理由でこれが直接発注に変ったか、その理由は私もよく承知いたしておりませんが、現実の問題として富士自動車の問題を考えますと、こういう形において、しかも特需がぐんぐん増加していく見込みのあるときは、あるいはそれでもいいかもわからぬと思いますが、特需がだんだん減退していって、しまいにはなくなるということが予想されるような現段階におきましては、今おっしゃるように、非常に脆弱な日本の個々の企業と米駐留軍との間の直接契約そのままで、将来の問題が片がつくかどうかという点については、私も非常に懸念をいたしておりまして、関係各省でどうすべきかという問題については、今話し合いを進めてはおりますが、できますならば、間接受注というようなもとの方法に変える方が妥当でないかと、私個人としては考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/16
-
017・井堀繁雄
○井堀委員 この点では、政府とわれわれの所見が一致しております。確かに今日の契約は、非常に不合理に満ちたもののみでありまして、これは一日も早く改めなければならない事柄だと思うのです。そこで、これは将来の問題として、ただちに政府当局はその処置を講ぜられることを私は希望しておきたいのであります。しかし、現状においてそういう不合理に満ちた契約のもとに、日本の労務、役務が提供されておるということは、しかも、かっては国際収支の悪化から日本経済の危機に当面しておりました際に、特需による外貨の力でその危機を切り抜けることができたということも、奇蹟的ではありますが、日本経済にとっては大きな貢献でありました。そのために日本の特需関係のもとにありました、特に役務の提供の直轄雇用あるいは特需関係のもとに働いた労働者の犠牲というものは、高く評価されなければならぬと私は思うのです。こういう、いわば国の危機を救ったような功績を立ててきた労働者が、今日雇用条件の上で——私も調査しておりますし、労働省も調査されたと思うのでありますが、一般の日本の民間の同一産業の労働条件に比較いたしまして、劣っておるともすぐれたところはどこにも見出すことはできません。ことに、こういう特需のような性質からいいますならば、永続性がない、いわば一定の期間が見通せる臨時的な仕事に雇用される労務については、すなわち雇用の安定性のない職場には、賃金や退職手当その他の労働条件を特によくすることによって、そういう労働力をあがなっていくというのが、国内における労使関係の慣行である。ことに日本国を代表して労務、役務を相手方に送り込むのですから、国内の労働条件以下で契約されるというようなことが、もし認められるとするならば、それは言うまでもなく、この条項に基く日本経済の全体に及ぼす不利益のみならず、日本の労働条件を世界的な水準に引き上げなければならぬということを主張したのは、日本の労働者はもちろんでありますけれども、世界で民主主義を標榜する人々、言いかえますならば、ポツダム宣言の中にもこのことが規定されて、日米行政協定の相手方であるアメリカ合衆国自体から日本の労働法に、あるいは日本の労働者の低劣な労働条件、苛酷な封建的な労使関係を払拭するために、勧告を受けたくらいであります。その勧告をした相手方でありますから、世界の労働条件の水準以下で雇用するということは、申すまでもなく不本意なことでなければならぬはずであります。それが日本の国内の労働条件以下で雇用しておるということは、これは契約当事者である日本の経営者の責任はもちろん問われますが、これを条約によって保護を与えなければならぬことは、先ほどの説明の範囲内においても了承できると思う。そういう契約を行われておるものを、日本政府が目をつむっておるということは、言うまでもなく権利に眠ることであるし、また国民の保護を当然職務とする日本政府としては、その怠慢のそしりを受けると思う。こういう事態を一体どのように労働省は即刻解決する方針をお持ちでありましょよか、この点について順次伺っていこうと思うのであります。まず、一応その大まかなお考え方を労働大臣に伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/17
-
018・西田隆男
○西田国務大臣 富士モータースと米駐留軍との間に、米会計年度による本年度分の一カ年間の契約をいたします場合に、その前年度、前々年度において、多少日米合同委員会等で問題に取り上げられたこともありましたので、特別調達庁といたしましては、特に富士自動車に対して、不利な契約に関する個々の条項をあげまして、十分なアドヴァイスをいたして、契約することを慫慂いたしておりましたけれども、結果的に見まして、特調の方でアドヴァイスしたようなことが全面的に受け入れられないままに、本年度の契約が富士自動車と米駐留軍との間にされておって、そのために、労働条件の内容が、日本の一般の労働者との間に、均衡の差が非常についておるかと申しますと、それは今ここで数字は説明をさせますが、日本の労務者よりも劣悪な条件だということは、一カ年間の契約であって、その契約が米軍の考え方でどう変るかわからないという点は、労働者に対して非常な不安定なことではありますけれども、その他の条件につきましては、日本の内地の労働者との間に賃金差等において、不利な条件下に置かれておるとは私は考ておりません。従って、井堀さんのおっしゃるように、日本政府側が怠慢ではないかというおしかりは、さっき申しましたように、特調から十分に書類をもってアドヴァイスをいたしておりますその通りに契約がされてなかったということが、現在労使双方の間に紛糾を招いておる原因でございまして、もう一つの問題は、駐留軍と富士自動車との間の契約の内容いかんによって、もちろんすべての条件はきまるだろうと思いますけれども、富士自動車そのものは、相当高率な配当を前々年度も前年度もやっておりますので、労働組合側との団体交渉によって、もし劣悪な労働条件であれば——それは全然会社側が、米駐留軍との契約のために束縛されて、賃金その他の面で支払いができなかったという経理内容ではないと、私は承知いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/18
-
019・井堀繁雄
○井堀委員 私は、労働大臣と見解を異にしておりますが、一般の同一産業の労働条件に比べて、退職手当以外の点については、決して劣っていないという見解については、今ここで議論をしても水かけ論になりますから、できるならば、この委員会へ直接会社側、労働組合の代表を呼んで調査をしていただければ明らかになるので、その後にいたしたいと思います。一般産業の者よりは、低い条件に雇用契約が結ばれておる、こういうふうに私の調査ではなっております。しかし、それはあとに譲りまして、そこで労働大臣のおっしゃられる通りに、一応ここでは話を進めます。
民間産業の労働者と同一の雇用条件である。ところが、さっき申し上げたように、片方は特需ですから、政府もいわれるように、この性質からいえば、必ず先細りもしくは今年の大量解雇を予期するということは、一応あり得る。それを予定した。すなわち、今の退職手当は、いろいろな学説はありますけれども、ある意味においては、賃金のあと払いのような形になる。あるいはその雇用が不安定でありますから、それを補償するため、まあ日本の労使慣行によって退職手当というものをもらっておるわけであります。こういうものに対して、退職手当というものは見込んでいなければならぬわけです。ところが、不幸にしてそれが見込まれてないということは、退職手当が他に比較して非常に低い。それは労使関係の問題になると思うのですが、私どもの調べたところによると、結局は受注契約に軽労働条件のしわ寄せがなされている。すなわち、先ほど言っておりますように、米軍と日本の弱体な業者の直接契約というものが、全くへんぱな契約になっている。だから出血受注、労働者を奴隷的な状態に置いて、相手方の修理特需を引き受けたという結果になっていることは争えぬと思います。私は、その理屈のいい悪いをここで論議したところで仕方がありません、事実を明らかにするために言っている。こういう事実であることについて、政府もお認めであると思いますが、もしお認めでないとすれば、所見を伺ってもけっこうです。こういう点では、確かに不利益であります。そこで、その不利益をこうむっております現実についてどうするかが、この委員会で政府にただしたい私の中心眼目である。それを申し上げる前に、事実について食い違いや、見解の食い違いがあってはいけないからお尋ねしておきます。もしただいま私が申し上げたことについて見解を異にされるなら、明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/19
-
020・西田隆男
○西田国務大臣 給与問題については、職業労務者と米駐留軍の直接雇用の労務者との間に、大して賃金差があろうとは考えておりません。それから退職金につきましては、これも直接雇用関係にあります特調で責任を持っておりますものに対しては、アメリカ側の考え方のように一カ月前に解雇予告をすれば、一カ月働かせてそれでもう予告手当はやらないということで、今まで特調関係の労務者の問題は処理されてきているようであります。今回も富士自動車では、これが第一の問題になったようでございまして、日本側の常識としましては、予告通知を出して、一カ月間働かないまま一カ月分の予告手当を出すというのが、日本側の常識として行われているように私ども承知しておりますが、これの調整が会社側と労働組合側との間に成立していないということも聞いております。退職金につきましては、富士自動車の労働組合側との団体協約をした点では、段差と申しますか、段差がついておりまして、段差を取って支給する場合、米駐留軍側がこれを承認した場合においてはそういうこともできるというような団体協約に大体なっているようでございます。私個人の考え方ですれば、会社側に支払い能力があれば、十二分に労働組合側の意向を体して、当然支払ってやるべき義務がある、かように私は解釈いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/20
-
021・井堀繁雄
○井堀委員 そう特別食い違いがあろうとは思いませんので、この点はこの程度にとどめます。
そこで、次にお尋ねしたいと思いますのは、会社と組合との間に話し合いが円満に妥結してくれれば、事は一応おさまるわけです。その見通しについて、私は非常に悲観的な立場を取っております。というのは、今まで会社と組合との団体交渉の経過につきまして、私の調べたところによりますと、会社側は今日のように大量解雇を行いますに当りまして、他にこれを転職させるとか、あるいは日本の平和産業の他のものに切りかえて、職場をほかに移すとかいったような解雇によらない。すなわち、失業防止の立場で雇用関係が続けられることが望ましいことは申すまでもありません。しかし、この点は一応会社と労働組合の交渉の段階では、絶望的であるとわれわれは聞いている。そういたしますと、次に来たるものは三千七百人という大量解雇がここで行われるということになりますと、これはひとりその首の座にすわっている労働者の死活の問題だけではないのであります。言うまでもなく、あの追浜のような比較的小都市に、今度のような失業問題が起きますれば、ここにいろいろな商業その他の総合社会生活を作っております人たちも、一大打撃がありましょうし、それから三千七百人の失業者が一ぺんに街頭に出るわけでありますから、まあ失業保険がありますので、この問題ではすぐにどうということはないと思いますが、しかし、これが直接間接に日本の失業問題に対して心理的な、あるいは政治的な社会的な影響というものを、私は軽視することばできないと思う。ことに、この種の特需関係の労働者が、かなりの数に上っているわけです。これが非常な不安に動揺させられることは言うまでもない。この関係に当面した関係労働者は、きっとかかる事態に対処するための労使関係の協約の改訂を迫る運動が起ってくると思う。これを押える何ものも、理由がなくなってくるわけです。こういうように、事柄は三千七百の人々の解雇によって、その人たちの関係でなくして、社会的な影響というものがきわめて甚大だと私は思う。従いまして、この解決を労使間において、対社会的に少しでも弊害を少くするような解決を望むことは、国民ひとしく一致した要望であろうと思う。特に労働者側の立場はそうだろうと思う。その場合の解決の道ということになれば、失業保険で六カ月その足りない分を補うということが一つあるでしょう。それから六カ月後に、必ず就職に出会うという見通しはだれもできぬ。特に今後失業増大の傾向というものは、決して楽観できぬ。そうすると、六カ月後における生活の問題を解決しようというようなこと等が、日本の言うまでもなく退職手当制度の慣行になってきた一つの理由である。この点では、アメリカの労使関係と日本の労使関係の大きな食い違いである。特にこの点、特需関係の労働問題について、労働省に考えてもらいたい。この協約書を私はよく調べてみた。その協約書の中には、アメリカ的な感覚で押しつけられたといえば押しつけられたのでありましょうが、そういうワクの中だから自然そうなるというようなものが、かなりにじみ出ている。中には、ちょっぴりよいものもあります。一例をあげれば、アメリカの国祭日であるというようなものを、公休休暇を与えるということになっている。しかし、それが結果においては経営者側の負担になるのであります、アメリカの負担にはなっておらない。こういうようなものも、ちょっぴりありますが、その他のものは、全く日本の慣行とは沿わない。すなわち、アメリカの労使関係というものは、日本ほど貧困の差が多くない。労働条件がまるで違う。そういうまるで基盤の違った高い水準において労務関係が協約されているものを、経済的な社会生活の低い労働者のところに善意につけ悪意につけ、押しつけている、ここに労使関係というものがはっきり出てきている。この点を注意しなければならぬ。だから、ここには決して自由な労使関係の労働協約というものが結ばれていないという証拠が幾つもある。たとえば、作業場が軍の管理に属されているということで、軍規のもとに律せられる。ここでは、言い方を変えまして、日本の思想からいたしますと、人格は極度に制約を受けるような、たとえば写真と名前を書いたものをここにつるしている。これは日本で問題になったことがある、刑務所の囚人と同じような扱い方なんです、ここには、日本の労働者の人格を尊重するという姿は見られません。アメリカでこんなことをやったら、大問題が起きる。単なるそういう事柄でありますけれども、ここでは日本の労働者の人格というものは認めていないのです。ただ一介の労働力を提供するという機械的な労務を要求して管理されているということを、よく調査しなければいけません。これは、理屈でなくて事実です。こういうことをやるのでありますから、そのかわりに労働者の経済的負担においては、アメリカがどっさり出すというのであれば、これはまた別な意味において妥協できると思う。この行政協定の中の権限のようになると思う。しかし、一方的支配に屈しておるということは、言語道断といわなければならぬ。それをただ単に経営者の個人の責任だということになりますと、日本はそういうものとは別世界である。この協約書は、あとで触れますけれども、そんな勝手なところだけを、アメリカの政府と、アメリカの軍と日本の業者とが単独に契約を許すような姿ではございません。そこで、今御報告申し上げたように、実際はアメリカのよい慣行はどこにも入れてない、悪いものだけが押しつけられている。日本の法規や慣行に従って、この行政協定の精神が運営されるということであれば、また一つの行き方、そうだとすれば、日本の場合はアメリカと違って、このいう場合には退職手当をどっさりもらうのです。日本流で言いますと、ものは言うべし、酒は買えということになる。理屈を言うかわりに経済負担を要求しているというのは、きわめて素朴な日本の慣行になっている。でありますから、ここに写真をくっつけて、お前の人格は物としか認められないというやり方なら、それも仕方がない、向うの御都合でよろしい。その自由を奪うかわりの報酬は、十分出さなければならぬ。それが今の契約でいきますれば、請負単価の中に見込まれていなければならぬ。請負単価の中に見込まれたような契約だと政府は想像するのですか、あるいは見込みがないという事実が出てきたのですか。ないとすれば、これは単なる経営者の責任とみなされるのか、あるいは経営者の片棒をかつぐ要があるとお考えになるのか、この点をお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/21
-
022・西田隆男
○西田国務大臣 お答えいたします。富士モータースと米駐留軍との間に契約書を交換されましたときにおいては、政府側としては、契約の内容がどういう内容であったかということは、これははなはだ悪いことかもしれませんが、少しも知っていなかったのであります。今度の問題が起きまして、初めてどういう契約になっておるかということを、私たち調べてみました。その結果としましては、井堀さんの言われるように、アメリカ側の考え方は、非常にシヴィアでない、あなたのおっしゃるような含みを契約の中に加味してない。一部分は加味しておるところがあるかもしれませんが、総体的にそういうことは加味しないで、非常にシヴィアに契約されておらぬというように私は承知いたしております。従って、日本政府はこれに対して責任を持たないでいいのかという御意見に対しましては、現在まで政府の考え方としては、直接に契約をしておって契約当時もしくは契約終了後にも、契約内容を日本政府側は知る由もなかったという関係から、政府は逃げるわけじゃございませんけれども、責任は経営者側が負うべきものである。そういう姿においても、今後の特需の受注関係というものは望ましくないので、将来は間接受注に持っていってこれを救う以外にはないだろう、こういう結論を現在踏んでおるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/22
-
023・井堀繁雄
○井堀委員 政府は、責任をのがれようといたしましても、この行政協定を結んだ責任をのがれることはできぬわけでありますから、この行政協定には縛られる。そこで行政協定のことをさっき私はお尋ねしたのですが、ここで一つ政府に猛省を促したいと思います。それは特需を提供する場合に、日本経済に不利益な影響を及ぼすおそれのあるときは、日本政府とアメリカはいつでも話し合う機会を持たなければならぬ。こういうことは、今あなたの御答弁で想像されればおわかりのように、はなはだ不利益を与えておる。それは契約のやり方が悪いからということで、一応結論は出ますけれども、そういう契約が悪ければ、契約を改めさせるということも、この条項の拡大解釈として当然日本政府の責任、こういう問題になってくる。直接の契約にそういう弊害があるなら、直接の契約を改めさせて、かつてやっておりましたように、間接的に政府の媒介によって、保護によって、日本の国民の権限が侵されないようにするということは、この条文の解釈上できるわけです。こういう点は、私は当然政府の責任として追及されるべきだと思う。これは、何も負いたくないとかなんとかいうことではどうにもならぬ。これはこのくらいにしておきます。
次に、さらに労働条件のことについて、同じ十二条の五項でこういうことが規定してある。「賃金及び諸手当に関する条件のような雇用及び労働の条件、労働者の保護のための条件並びに労働関係に関する労働者の権利は、日本国の法令で定めるところによらなければならない。」というふうに、きわめて明らかにされておるわけであります。アメリカの慣行で押しつけたり何かすることは、すでに日本の労働法を軽視した具体的な現われです。そこで労働省は少し考えなければならぬと思う。ただ日本の資本家、日本の労働者でありますならば、同一利害の上に立った国のワクの中で呼吸しておりますから、いろいろ労使間の利害関係の対立がありましても、損益はない。ところが、この労使関係というものは、三つの立場を異にしたものが一つの共同生活を営んでおるということは事実であります。ことに、一方は占領軍という最高の権限を持っております支配者であります。このもとに何とか事業を維持していきたいという、屈従的だといっていいくらい受注のためにはあらゆる犠牲も顧みないという日本の弱い企業者の立場、そのものに労務を提供する人々であることを十分認識しなければならぬ。その場合に、日本の労働法の精神に基いて、労働者の基本権や労働者の当然享有すべき権限について、一般の者よりは特殊の気を配って保護を与えていくという措置がとられなければ、この条文というものは死んでしまう。こんなことは、何も私の見解でもなんでもありません。日本の監督政治力というものが、そこまで及ばなかったと善意に解すれば、それまでです。しかし、事実はここまで来たのです。私ども調査して参りましたところでは、非常に遺憾と思う。その傾向を一つ申し上げていきますから、政府は直接お調べになって、この次に御報告いただきたいと思う。
それは、私はあそこの受注の契約の内容と、その契約がどのように履行されておるかという経過を事実について調べてみた。ところが、契約についてもいろいろな制限があります、単なる自由な契約ではありません。向うのあてがわれたものをのみ込んでくる。ただ形式的にのみ込むというような、それも悪い条件になって出てくるわけです。いよいよ契約が結ばれますと、たとえば自動車の例をとってみますと、その自動車はこういう規格に基いてこういう修理をするという命令が出ておる。その命令通りやらなければ、契約違反で処分規定がついておる。しかもその道路を実行させるために、日本の事業場でありますならば、部課長の制度や職制がそれぞれ幾つかありますが、世間並の部課長その他の制度が日本にあると同じように、軍の方から向うの名前で、どういう意味か知りませんが、DAC、ちょうど日本の部長に位する地位の人が、またその下にサージャント、課長、係長クラスの軍あるいは軍属の人々が配置されておる。実質は、この人たちの指揮命令で労働者が作業を続けておる。日本の経営者というものは、補助者というような役割りを演じておるのは事実である。この点について、直接お調べいただきたいと思う。そこで、私は非常に遺憾に思ったことでありますけれども、こういうことを調査しておる間に、そういうDACあるいはサージャントといったような人々に、タイピストあるいはクラークといって、事務員でありますが、そのクラークに日本の女子を配属しておる。その女子の労働の実態を一つ御調査いただきたい。公開の席でありますから多くを申し上げませんが、問題を起したこともあるそうです。すぐれたタイピストでありますから、技術的にタイプを打つことの優秀な技能者を送り込むと、ごきげんが悪いそうです。それから、もしタイピストや女事務員に対する監督の地位にある人が、いろいろと機構上のことや、あるいは作業秩序のことに対して注意を与えたことによって、あちら側からその監督者の処分をされたという例もある。これはお調べになったらわかる。こういうことは、非常に大事なことだと思う。というのは、なぜかといえば、あの中へ入るときには、御案内のように、門に入りますときは、会社側の人がその指揮命令をするのではありません。アメリカの軍が日本の雇い人を使っておりますが、それは日本人であっても軍の使用人であります。それが一々出入りの身体検査から、指揮命令をしている。それから作業中でも、そういう人たちが監督して、たとえば、ちょっと便所に入るにしても、時間を見ているそうです。アメリカ式なら、それもいいかもしれぬが、日本人の労働慣行というものは、そういう姿ばかりに組織立っておりませんから、そういう点で、日本の慣行でちょっと一服タバコを吸うことは、火気の関係その他でやかましいということはあるかもしれませんが、そういう、日本でいえばささいなことであるのが、解雇という断罪に処せられる。それを指摘しているのは、日本の職階制による上司ではないのであります。会社には何らの関係もない。それは軍の管理下にあるということで、そういう雇用の問題の一番重大な解雇に処断するような処置が平気でとられている。労働者は、これはやむを得ぬもののように泣き寝入りをしておる。経営者側の方も、当然な処置だとして放任してきているということ、こういうことは、形式は日本の業者が日本の労働者を雇用して向うの仕事をしているということになっておるけれども、実質的には、全く役務を向うに提供している。こういう実態を説明するために、そういうことを調べた。これをお調べいただきたい。そのことは、私はいい悪いを言うのではありません。軍の作戦上、あるいは軍の作業につながることでありますから、そうしなければやむを得ぬかもしれません。今は戦争をやっておりませんが、朝鮮戦争のときなんか、そういうこともあるかもしれない。だから、それはやむを得ぬと思う。だから、そういうことであるならば、それに見合うような労働条件の要求が、日本の労働者から行われて、また経営者はこれを受けて、そうして受注の際、それを条件に満たしていくということが、私はとりもなおさず公正なる契約の取引であると思う。ところが、これがくずれているということは、たびたび申し上げている。こういう事実をよく御認識いただかなければ、日本のよき労働慣行や日本の労働法規に従うといってみたところで、から回りをするわけであります。こういう点で、私はこの条項はから回りをしておると思う。この点については、経営者を呼んで、あるいは労働組合を呼んで、その辺の事実をこの委員会で調べていってくれると思うのでありますが、その前に、日本の政府自身が、そういう事実について十分な御調査をいただきたい、そしてその報告をぜひ次会に受けたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/23
-
024・西田隆男
○西田国務大臣 井堀さんのおっしゃるように、慣習の違う二つの国の国民対国民の問題でありますので、慣習の差によるものの考え方、判断の仕方によって、多少の紛争が起きておることも、私承知いたしております。なお、アメリカ軍と富士自動車の契約の内容についても、いろいろ慣習が違うのに、アメリカ側の主張をうのみにしたような格好で契約をされておることも、私は承知いたしております。従って、日本の政府としまして、今まで自由契約に基く特需の問題に対して、井堀さん御承知のように、通産省に特需課という課が一つあるだけで、米駐留軍側に対抗できるような正式な機関は、何も設けないでしておったというところに、いろいろな紛争が起きてくる原因が私はあるだろうと考えております。従って、どうしてもこういう問題を解決づけるためには、日本の政府全体として米駐留軍側との関係を取り結んで、日本政府の責任において、日本の企業家が、下請というと悪いですが、契約を結んでいくという姿に持っていかなければ、この問題の解決はなかなか至難であろう、かように考えまして、さっきも申しましたように、関係各省ではそういうふうにすべく、せっかく協議を進めております。今また実際の調査をせよというお話でありますが、この問題に対しては調査を十分させまして、当委員会に報告をいたします。
それから、もう一つの問題、失業者が大へんふえるから、失業者になったという姿を招く前に、何とか解雇された人たちの就職のあっせんができなければいけないじゃないかという井堀さんのお説、ごもっともと考えております。労働省としましては、この富士自動車の問題が起きまして、ずいぶん各省とも連絡をとりまして、日米合同委員会等を通じましていろいろ工作をやっております。その結果、残っておりますのは、ただ神奈川県知事に対する米軍側の回答がまだ来ておらないという一つだけで、日本政府に対しては、日米合同委員会で主張したのに対しまして、これを認容しがたいという回答が参っております。従って、富士自動車の問題に関しまして今まで経営者並びに日本政府側としてあっせんの労をとりましたことは、ほとんど見込みはないのではないか。従って、今後もし交渉するとすれば、これを外交交渉に移して今の問題の解決をつける。将来の問題に対してどういう方法でいくかという、基本的な問題を検討するということ以外には、もう労働省としても、経営者としても手がないであろう、こう私は考えておる。従って三千七百五十名ですか、三千八百名に及ぶ職を失われる人々に対しましては、労働省としましては、配置転換の対策本部を設ける準備を完了いたしております。神奈川県知事を本部長にいたしまして、東京、千葉、埼玉、神奈川、それから富士の労使双方の関係者、労働省はもちろん参画いたしますが、こういう人たちをもって配置転換対策本部を設けまして、熟練工、言いかえれば技能工の人々の就職あっせんをいつでもやれる態勢に持っていく、技能工でない人たちは職業補導所に収容することによって、将来の就職のあっせんをいたしたい。これが今労働省として考えております最後の点でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/24
-
025・井堀繁雄
○井堀委員 今日、失業する人々の行く先をお世話して下さるという御親切な態度には、まことに感謝にたえないのでありますけれども、そのことは、言うまでもなく失業不安にさらされておる熟練労働者の労働市場を、いたずらにひっかき回す結果になって、これは日本の経済自身の受け入れ態勢ができていないところに、急にこれだけの人を働かすといってみたところで、すぐ弱いところをはぐって強い者を押し込むことには成功するかもしれないが、こういう問題の解決としては、きわめて小乗的な処置にしか終らぬ。しかし、やってもらいたいことは、ぜひやってもらいたい。
次に私がお伺いしたいことは、——さっき行政協定の精神を私はただしたわけでありますが、この行政協定の前文に、一つ政府は御留意いただきたい。前文の中ほどにこういうことが書いてあります。「安全保障条約に基く各自の義務を具体化し、且つ、両国民間の相互の利益及び敬意の緊密なきずなを強化する実際的な行政取極を締結することを希望する」と、こういう精神がうたわれておるわけであります。この精神からいいますと、この行政協定によって生まれてきた事実は、さっき外務省の解釈のように条文上は狭く解釈してみても、まだ交渉の余地はある。しかし、行政協定はわずかな文章でこんな大きなことをきめるのでありますから、不十分であろうことは想像できる。そこで、こういう精神がこの前文にうたわれておるわけです。この精神こそは、私は日米外交交渉のよりどころになると思う。このよりどころを振りかざしてアメリカと日本の、この意味ではアメリカ国と日本国の国民の共同利益をはかる——アメリカの政府が、アメリカ国が、日本の七千の労働者を救済する経済能力はないなどとは、笑止千万といわなければならぬ。こういう当面の問題こそ、私は外交交渉の爼上に上すべきだと思う。一体アメリカは、日本に誠意があるのかないのか。誠意があれば——アメリカの軍作戦に協力させた日本の労働者を、部分的には奴隷的な行使をしておる、こういう事実をあげていったらいい。えげつないことを言うようでありますが、二百人から四百人の女子労働者は、私は正常な労務の提供だとは見がたいのであります。特需資本家が自分の利益を維持したいという欲望もありましょうが、私はもっと好意的に解釈して、日本経済の危機を特需によって救おうという愛国心もあったと思う。そういうことが、日本の年のいかない娘を労務提供させて、その契約の円満な遂行をはかろうとするような、少し行き過ぎかもしれませんけれども、そういう事態まで今まで起してきた。この事実を具体的に政府はお調べになって、アメリカにお示しになって、日本にこういう皮肉な現象が起っておる、政府はこういうふうにして就職あっせんしようとしてみたところが、労働市場はもうあぶれておる、要するに、アメリカの予算の編成や軍の作戦の一片の計画で、日本の国民にこんな大きな衝撃を与えるような事柄を、アメリカの責任において解決してもらえぬかという交渉ができる。こういう点について、一つ政府は大いに外交交渉の中に取り上げて——これはひとり富士の問題だけではありません。こういう具体的な問題を外交上の爼上に上せて、具体的解決を迫るということが、私はこの精神を相手方にただす外交交渉の生きた行き方だと思う。こういうことに対する政府の所見をお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/25
-
026・西田隆男
○西田国務大臣 お答えいたします。私が、交渉が悲観的だと申し上げましたのは、米駐留軍の現地におる人々との交渉が悲観的だ、こう申し上げたのでありまして、最後の結論は、神奈川県知事に対する回答によって大体きまると考えております。従って、その後の問題に対しましては、正式に外務省を通じましてワシントン政府との間に、今、井堀さんがおっしゃったような点について外交交渉を開始する。しかし、これは富士自動車の今起きておる問題を、すぐ解決をつけるという間に結論が出るか出ないかということは、なかなか見通しがつきませんので、日本政府側としては、現実の問題は現実の問題、将来の問題は将来の問題と二つに分けて、外務省を通じて正式に交渉を進める、こういう考え方を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/26
-
027・井堀繁雄
○井堀委員 政府の御答弁で、私はある程度満足いたします。現実の問題を、外交交渉の形ですぐ片づけろというような無理を言っているのではない。しかし、向うに誠意があれば、解決することのできる可能性の一番あるものだということを相手に理解させることができない外交は、意味がないということを私は強調いたしておる。私の見解をもってすれば、これだけのストライキになってから、どれだけ大きな反響を呼んでおるか、これが国民全体に知れ渡ることは、私はアメリカにとっては利益じゃないと思う。そのことがわかれば、そろばんに対しては敏感な相手方でありますから、日本政府よりも、よほど利口な手を打つだろう、こういう想像を実は持っておったものですから、申し上げたわけであります。一日も早く日本の労働者のアメリカ軍による奴隷的な雇用状態を解消するために、一つこの辺を中心にされて、積極的な外交交渉を展開されるよう政府の御努力をお願いいたします。
なお、あとこの委員会の方にお願いをして、参考人として会社の社長あるいは労働組合の代表あるいは従業員の特殊な仕事をしておられる方たちを呼んでいただいたり、あるいは直接現場調査などをお願いして、国会の方でも調査してもらうつもりでありますが、政府もこれに劣らない努力をされて、事実をはっきりつかんで、具体的な処置を提案されることを要望いたしまして、私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/27
-
028・中村三之丞
○中村委員長 山花秀雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/28
-
029・山花秀雄
○山花委員 ただいま富士モータースの問題に関しまして、同僚井堀君からいろいろ質問がございましたが、私はこれに関連いたしまして、若干政府の、特に労働大臣のお考えをお伺いしたいのであります。今、現実に現われましたのは、富士モータースの特需の関係でございますが、日本の特需関係は、富士モータースだけでないのであります。関東におきましても、たとえば昭和飛行機であるとか、三菱の下丸子とか、たくさん関連した工場がございますが、おそらく私の考え方から申し上げますと、特需が大体先細りをしてくるというような感じがするのであります。今、富士モータースだけでいろいろ問題を起しておりますが、こういう問題は、当然各特需関係の労使の間に広がってくると思うのであります。
そこで、私は労働大臣にお尋ねしたいことは、この問題に対してどういうお考えを持っておるか。この点は、相当重大な決意を持って対策を立てられないと、日米外交の上にも当然悪い影響を及ぼし、また日本の国内経済の上においても、相当悪い影響を及ぼすと私は思うのであります。特に、労働省が設置されましたときには、一般的には、労働省の役割は、労働者に対するサービス省というふうに一応規定されていたのであります。ところが、その概念が最近ずいぶん変って参りましたが、一応この際、労働大臣から労働省の行政の役割に対するお考え方と、特需に関する労使間の将来の見通しについて、御意見をお聞かせ願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/29
-
030・西田隆男
○西田国務大臣 お答えいたします。労働省は労働者のサービス機関ではないかという御意見でございますが、もちろん公正な立場において、労働者に対しましては、できるだけの範囲において、援助し、補助し、指導をやりたいと思います。
それから、特需労務に対する将来の見通しはどうかということでありますが、大体本年度、三十一年三月三十一日までにおきまして、どういう状態になるかということに対する推定を一応つけておりますが、兵器製造部門で整理されるであろうと思われるのが、四千九百名、車両等修理部門で七千二百八十名、この中で、社内における配置転換が可能な人員が、兵器製造部門で二千七百名、結局失業と同じような格好になられる人が、兵器製造部門で二千二百名、それから車両等の修理部門で、配置転換できる者は非常に少くて四百名、結局六千八百八十名が対策を要する人員になります。しかしこの六千八百八十名の中に、富士自動車の三千八百名が含まっておりますので、富士自動車を除きますと、三千名程度、結局五千二、三百名の人が、三十一年三月三十一日までの間に、対策を立てて就職のあっせんをするような結果になるのではないかという見通しを一応労働省はつけております。
それからこのほかにLSOの状態はどうなるかというと、現在総員で十六万六千名、これは呉市の一万一千名と、駐留軍関係の十五万名ですか、これを加えて十六万六千名、このうちで三十一年三月末までに、大体一般で二万名、呉地方で二千名ないし三千名という人々が職を失うのではないか。これに対しまして、結局何らかの対策を講じなければならぬという一応の見通しをつけておりますが、このLSOは、大体アメリカの会計年度が始まりましても、日本の暦日からいいますと、十月以降に対して処置をとればいいのではないか、こういう考え方で、通産省その他と連絡をとりまして、具体的な収容の方法に対して今検討中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/30
-
031・山花秀雄
○山花委員 先ほど井堀委員の質問に関しまして、日本とアメリカとの国情の相違、あるいは慣習の相違というようなことを労働大臣は言われましたが、それが契約に大きな影響を及ぼしておる。ところが、私どもすべて善意に解釈したいと存じておりますが、慣習の相違というようなことだけでなくして、率直に申し上げますと、アメリカ側がこの日本を見ておる眼であります、全く奴隷的な、従属的な関係で見ておる。この僣越しごくな態度が、今日こういう不祥事態を起しておる最大の原因になっておると私は思うのであります。従って、幾ら善意にこれを解釈しようとしても、具体的に現われてくる一つ一つの事実は、善意に解釈できない。はっきり申し上げますと、わが国の立場が尊重されず、侮べつをされておるというような感じを私どもは持つのでございますけれども、労働大臣はこの点について、どういうふうにこの慣習の相違あるいは国柄の相違という点をお考えになっておるか、この際大臣のお考えを一つ明瞭にお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/31
-
032・西田隆男
○西田国務大臣 お答えいたします。非常にデリケートなお尋ねでございますが、これは山花さんも御承知のように、アメリカと日本だけの関係じゃなくて、どこの国にもたくさんな国民がおりますし、そのたくさんおりまする国民の中には、必ずしも常識的に円満で、公平で、正しい人ばかりとは限っておりませんので、きわめて遺憾なことではありますけれども、その一部分の人々の考え方とか行為とかいうものによって、感情的に日本人が刺激されるということがあるであろうことは、これは私も予想しております。従って、アメリカと日本との関係におきましては、少くともこの労務の提供、特需品の買い上げ、企業の契約等におきましては、日本で制定された法律を十分に尊重して、そして日米間に合意を見るということでなければならぬと考えておりますけれども、これは理屈であって、実際の問題としましては、御承知のように、日米合同委員会で労働三法の問題、あるいは日本の国内法に抵触する問題等について、いろいろ取り上げて、ディスカッスが行われておるような実態でございまして、これはアメリカだけの一方的な問題でなくて、アメリカも日本も、双方お互いに話し合って、そしてそういう問題の一日も早くなくなるようなことに努力しなければならない、私はさように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/32
-
033・山花秀雄
○山花委員 日本とアメリカとの関係になりますと、駐留軍労務の提供の問題にも、やはり特需労働者と同じような関連性があると思うのでございます。この問題は、過去の労働委員会でもずいぶん協議されましたが、一点労働大臣の所見をお伺いしたいことは、いわゆる保安解雇の問題であります。これは行政協定云々というようなことで、日本の駐留軍労務が、解雇問題に関して非常に——これは大体国内法で処理するということにはなっておりますが、実際的には国内法でございますと三十日の予告、ところが労務の基本契約あるいは行政協定その他等々によって、十五日というような、差別をされた一つの形態が現われてきておるのであります。これは日本の外交が、弱い国と弱い国との関係で、こういう結果になったのじゃなかろうかと私は思うのでありますが、そうなりますと、これは政府の外交手腕の一つの責任に帰すべき問題であって、こういう不利益をもたらす責任を直接労働者に負わせるのは、少し荷酷であろうと思うのであります。従いまして、こういう場合には、その反面実質的に不利益も来たさないような措置が、労働当局あるいは政府としては、とられないものであろうかどうかという点を、労働大臣にお伺いしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/33
-
034・西田隆男
○西田国務大臣 お答えいたします。ただいまの具体的な引例に対しましては、そういうことがあったかなかったかということは、事務当局からあとで御答弁いたさせますが、私が今度の富士自動車の問題を通じて知っております範囲内においては、アメリカ側の考え方は、日本の法律を無視するという考え方ではなくて、一カ月前に予告をしさえすれば、それで予告手当は出さないでもいいではないかという見解をとっておるようでございます。従って、急に解雇する場合におきまして、十五日前に予告をして、あと十五日の予告手当を払わないで解雇するということは、富士自動車の今度の問題を通じて、私には考えられません。具体的な問題については、あとでお答えをさせていただきます。
そういうふうで、日本側としましては、結局解雇の予告通知を受けました場合において、一カ月前に受けましても、同じ工場で一カ月間すなおな気持で働くということ自体が、まだ日本の常識になっていないように考えられますので、そういう点において、アメリカ側の考え方と日本側の慣習と申しますか、そういうものに非常な隔たりがあるので、でき得れば契約期間中は働かせて、契約期間の最終日において予告をして、一カ月分の予告手当を日本の法令に基いて出してもらう、こういう姿が日本側としては最も好ましい姿である、かように私は解釈いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/34
-
035・中西実
○中西政府委員 ただいまの十五日の問題でございますが、これは保安解雇につきまして、現在の基本契約を過渡的に訂正して実施しておる約束の中に、保安解雇は、今の基本契約では直ちに排除されるのですけれども、今度の過渡的なものにつきましては、十五日の協議期間があるということになっております。従って、予告期間につきましては、これはもう日本の基準法通り、やはり三十日前の予告、これには変りはございません。
それから保安解雇につきましては、個々の問題につきまして、できるだけのめんどうを見ております。ただいまのところは、LSOあるいは特需関係におきまして、問題は起きていないように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/35
-
036・山花秀雄
○山花委員 たとえば軍が保安解雇の通牒を、中に入っておる監督官庁に発した場合に、監督官庁の、何と申しますか不始末によって、よくこれがおくれるというような場合が、これは具体的事例として往々あるのです。そういうときには、必ず労働者が不利益をこうむるのです。そういう場合、不利益をこうむらないような形に、別途に何か方策を設ける準備があるかどうか、こういう点であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/36
-
037・海老塚政治
○海老塚政府委員 保安解雇について、手続の問題で時日がかかるという点につきましては、その結果が非常に重大なものでございますので、調査に慎重を期しているというためにおくれているのでございます。なお、その間につきましては、六〇%の休業手当が支払われることに現状はなっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/37
-
038・山花秀雄
○山花委員 もう一つお伺いしたいのは、これは独立国家の日本としては、非常に重要な問題になるだろうと思うのでありますが、国内法を適用する——国内法では、御承知のように不当労働行為というのが一つ問題になり得るのです。そういう場合に、これは不当労働行為であるという見地から、労働委員会に労働者側から申請をするという場合に、労働委員会の呼び出しに、おそらく応じたことがないというような、これが一つの慣習のような形で取り扱われておるのであります。全部労働委員会に出席しないとは私は申し上げませんが、そういたしますと日本のこの労働委員会制度の権威にも関すると私どもは考えております。こういう問題の取扱いに関して、労働当局はどうお考えになっておるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/38
-
039・中西実
○中西政府委員 ただいまの問題につきましては、実は私ども一つの大きな問題だとして、今、米当局にも交渉いたしておるのでございます。おっしゃったごとく、理解のある出先におきましては、軍と関係者が出てくれております。しかしながら、最近往々にしてこれに協力的な態度を示さない例が出ておるのであります。この点は目下合同委員会にも持っていきまして、早急に何らかのはっきりした解決をはかりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/39
-
040・山花秀雄
○山花委員 最後に一点お伺いしたいのは、これは労働大臣ではあるいは御無理かとも思われますが、例の司法権の問題であります。せんだって駐留軍労組が労働争議を行いまして——これは埼玉県の事例でありますが、ずいぶんMPに暴行を受けております。この暴行が裁判ざたになりましたところが軍務の期間中は日本に裁判権なしというようなことで、全部、日本流でいえば無罪釈放、こういう扱いがされておるのであります。われわれ日本国民といたしましては、これくらい腹の中が煮えくり返えるような感じはないのであります。これは労働行政の一端にも相なっておりますが、この問題に関して、労働大臣はどうお考えになっておりますか。それとも、こういう問題の解決のために、どういう形で日本の独立を自主的に守るという措置をおとりになるかという一点をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/40
-
041・西田隆男
○西田国務大臣 お答えいたします。その問題につきましては、私、新聞紙上でちょっと承知いたしただけで、今、山花さんのお話でも、具体的な内容はよく理解できませんが、いずれにいたしましても、米駐留軍と日本国民との間に、労働者であろうがなかろうが、紛争が起きるようなことは、はなはだ遺憾なことと考えております。かつまた、今の労働者の問題が、軍務中という解釈が、果して勤務時間中という解釈であるのか、あるいは特別ないわゆる軍務という重要な仕事に従事しておる期間をさすのか、そういう点について、私はまだはっきりわかりませんので、私の意見を申し上げるわけには参りませんけれども、さっき申しますように、いずれにせよ両国国民の間にそういうことが起きるということは、好もしいこととは考えておりません。従って、労働省といたしましても、よく調査いたしまして、もし米軍側に行き過ぎがある場合におきましては、それは日本の正式な外交機関を通じまして、あるいは日米合同委員会等において、大いに日本側の主張をいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/41
-
042・山花秀雄
○山花委員 この問題に関しましては、この問題が発生したときに——私はずっと労働委員を長くやっておりましたが、ちょうど労働委員をやめてほかの委員を担当していたように考えておるのでありますが、たしかそのときに、労働委員会でも担当問題になって、これはアメリカ側のやり方が悪いというような審議があったように——これは私の推測であります、委員会にいなかったからちょっとわかりませんけれども——そうして今後こういう結論が出たということに相なっておると思うのであります。こういうようなことが、そのまま黙認されるということになりますと、駐留軍労働者は、国内法によるスト権というのは全然ない、ストライキがあれば、ぶんなぐられてそれでおしまいだという、そういう結論が生まれてくると、率直にいって私は思うのであります。これは日本の国民としては、非常に国辱ものの形ではないかと私は思うので、まことに恐縮ですが、労働省におきましても、この真相を十分に一つ究明していただいて、そして事の真相をこの委員会に御発表を願う労を取っていただきたいと思います。私ども、当該労働組合の方にも、十分誤まりのない調査を求めて、後の労働委員会で、この問題は、双方誤解があれば誤解のないように、もし誤まっておればこれを是正するようにしていきたいと思いますので、ぜひとも労働省当局においても、真相を一つ明らかにしていただきたいことをお願いいたしまして、時間も相当切迫しておりますので、私の質問はこれで終りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/42
-
043・中村三之丞
○中村委員長 関連質問の申し出があります。神田大作君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/43
-
044・神田大作
○神田(大)委員 この富士自動車問題は、非常に重要な問題でありまして、井堀委員が質問されました当時、基本的には、外交問題によってこれを解決しなくてはならぬ、こう考えているのでありますけれども、富士自動車の人員整理にからみまして、非常に時間的に緊迫しておると思うのでございます。六月一ぱいに、とにかく四千人からの人員を整理しろ、もしこの人員を六月一ぱいに整理しなければ、富士自動車に対する米軍の契約を打ち切るというようなことまでもほのめかして、強制的な首切りを強要しているような、こういう緊急な事態に対しまして、今まで、政府はどのような態度をとっていたか。こういう事態が速急に起るというようなことは、もうすでに数年前にわかっていたことであるにもかかわらず、今日までこの問題を放任しておりましたところの政府の責任は、私は重大であると思いますが、こういう問題につきまして、労働大臣はどのように考えておるか、またこれを速急に外交問題として取り上げて解決する意思があるかどうかについて、お尋ね申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/44
-
045・西田隆男
○西田国務大臣 お答えいたします。これは井堀さんにさっきから何回もお答え申し上げましたように、契約の内容自体が、政府側には皆目わかっていなかったために、実はこの問題が五月になって起きて初めて承知いたしました。これは、五月十一日に米軍側から、七月一日以降六〇%程度の注文を削除するという通告が外務省を通じてなされまして、そのときに、私は初めて承知をいたしたわけであります。その後、会社側の人を呼んだり、あるいは関係官庁でよく連絡をしたり、米軍側にいろいろ日米合同委員会を通じ、あるいは特殊な会合を通じ、ほとんど連日のように富士自動車の問題に対しての善処方を、米駐留軍側と交渉いたしました。その結果がさっき井堀さんにお答えしましたように、国内の駐留軍との間における折衝では、あまりに望みがない、しかし、ただ一つ今残っておりますのは、神奈川県知事のあっせんによりまして、共同声明みたいなものが発表されておりますので、これに対して、ここ一両日中に神奈川県知事の方から駐留軍側に連絡を取った結果がどういうことになるか、また交渉するような余地が生じてくるかどうかという点だけになっておりますので、政府側としましては、関係各省とよく協議しまして、結局現地軍にも一回交渉を行うかどうか、あるいは交渉しないうちに、すでに外務省を通じて正式にワシントン政府との間にこの問題、今後の問題等について外交交渉を開始するかどうかという問題について、今各省連絡して協議をいたしております。結果におきましては、ワシントン政府の方に外務省を通じて外交交渉をせねばならないということが起きてくるのではないか、かように私、考えております。政府側が怠慢ではないかという御意見もございますが、政府側としましては、五月十一日の通告以来、結果は望ましい結果になっておりませんけれども、あらゆる手を通じて最近まで交渉を続けてきたということは、お認め願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/45
-
046・神田大作
○神田(大)委員 私は、今度の富士自動車の人員整理に対します労働者側の態度というもの、非常に謙虚な態度を取って、米軍側が多少の人員整理をしなくちゃならぬということを了承いたしまして、少くとも、一挙に四千名というような人員整理ではなしに、漸減的にやってもらいたいというような態度で政府並びに会社側、米軍側に申し入れをしておるというような、この謙虚な態度を取っておる労働者側の心情を考えると、まことにお気の毒な次第であると思うのでございます。そういう謙虚な労働者の態度に対しまして、政府並びに会社、米軍はこれをくみ取って、そして富士自動車と同様に、たくさんの特需労働者の首切り問題が起るであろう今後のことに対処いたしまして、政府は強力な腰を持ってこれを外交問題に取り上げて、速急に解決するような御努力をされんことを切にお願い申し上げまして、私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/46
-
047・中村三之丞
○中村委員長 午前中はこの程度にとどめまして、午後二時半まで休憩いたします。
午後零時三十一分休憩
————◇—————
午後三時一分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/47
-
048・中村三之丞
○中村委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。
全国金属鉱山関係労働争議に関する問題についての調査を進めます。
本問題につきまして、政府当局より発注を求められておりますので、これを許可いたします。中西政府委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/48
-
049・中西実
○中西政府委員 現在争議の続行中でございます全国金属鉱山の問題につきまして、御説明申し上げます。
御承知のごとく、全鉱組合は、三月十日から十三日まで定期大会を開きまして、ここで今春の賃金闘争の方針をきめました。大体方式は、大企業の闘争とそれ以外というふうに分けて、大企業闘争委員会は六社関係、すなわち日鉱、三井、三菱、住友、同和、古河、この六社関係をもって大企業闘争委員会を作る。要求は三月三十一日に提出する、賃金につきましての要求内容は、一律に千円アップということでございます。なお、期末手当につきましても、同時に要求を出しまして、期末手当につきましては、大体前々期の実績をこの期もほしいという要求でございます。
これに対しまして、会社側の最初の回答が四月十三日に出されました。六社それぞれ回答の内容は違いますけれども、おおむね賃金要求につきましては、賃金ベースのアップはできないが、昇給として三百円ないし二百五十円を認めよう。これは会社によって違いまして、二百円のところもございますし、二百五十円のところもございます。ただし、古河はこの四月十三日の回答では、賃金要求はゼロ回答でございます。それから期末手当につきましては、組合の前々期実績というのに対しまして、これも会社によって違うのでありますけれども、若干その実績よと下回る、すなわち一割ないし一割五分ほど下回ったものを回答いたしております。
そこで、組合におきましては、これに対する闘争計画を立てまして、まず第一波としまして、五月六日に全山一斉二十四時間ストをいたしました。参加人員は約五万三千でございます。第二波としまして、五月七日、北海道・奥羽・秋田のブロックが、一斉二十四時間スト及び溶鉱炉関係全山一斉二十四時間ストをやりました。八日には溶鉱炉関係全山一斉二十四時間ストをいたしました。九日以降は全国を四ブロックに分けまして、そのブロックごとに九日には、東北・関東・東京ブロック、十日には近・中・海・北ブロックというふうに順次一斉二十四時間ストを反復する、それが十六日まで続きました。それから五月十七日に全山一斉二十四時間ストをいたしました。それから第四波といたしまして、五月十八日、溶鉱炉関係の重点部分無期限ストに入りました。それから五月十九日から製練部門溶鉱炉関係重点部分無期限ストをいたしました。なお若干部分ストの部門がふえておりますけれども、大体今まで部分ストがずっと続いてきておるわけであります。
労使の交渉は、その後たびたび持たれておりまして、現在までのところにおきましては、会社によって回答が違いますけれども、大体昇給を含めて四百円ないし四百二十円のアップ、ただ古河だけは二百八十円程度になっております。第一回の回答よりは若干上回った回答をしております。
ところが、その回答以後、ほとんど双方話し合っても進展いたしませんで、今日に及んでおるのでありますが、全鉱といたしましては、先週の金曜日に、中労委に出てもらいたいという申し入れをいたしまして、中労委はその晩に経営者の出頭を求めました。これに対しまして、日鉱と同和は、すでに大体労働側と話し合いをし、もうこれ以上してもむだだから、さらにわれわれ自主的にやるんだというので、出て参りません。結局三井、三菱、住友、古河、この四社が中労委に出向いたわけであります。しかしながら、現段階においては、経営陣といたしましては、自主交渉で行きたいということで、中労委のあっせんを一応断わりました。土曜日、それから昨日も交渉をやったところがございますが、さらに今日、相当熱心に交渉をやるということを会社側も組合側も申しております。現在のところ、自主交渉によって早ければ今晩、でなければ近日中に、ある程度の妥結点を見出すのではなかろうかというふうに考えております。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/49
-
050・中村三之丞
○中村委員長 次に、中小企業における労働争議の問題について調査を進めます。まず政府委員より説明を聴取いたしたいと思います。中西政府委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/50
-
051・中西実
○中西政府委員 この間お申し出によりまして愛世病院の紛争と生光会療養所の紛争、それに杏林製薬の争議、細井化学の争議、この四つにつきまして調査をいたしました。東京都の紛争事例でございますので、一応これから申し上げます御報告は、東京都から取ったものでございます。
まず愛世病院の紛争について申し上げます。財団法人愛生会が結核療養施設を持って医療の事業を行なっておるのでございます。従業員は九十三名でございます。
まず争議の発生までの経過を申し上げますと、この病院に藤岡という医者がおるのでありますが、昨年の五月十五日以降、組合の委員長としまして、病院側の独立採算制に反対いたしまして、待遇改善、厚生施設の整備、医療施設の充実、患者の給食改善等の交渉に当ってきたのでございます。そこで財団の理事長は、この藤岡医師、これは内科部長であったのでありますが、これを内科医長であるとして、松田という医者を内科部長としてその上に任命したのであります。組合は、昨年十一月二日に、この人事は不当であるとして、大会を開いて松田内科部長の拒否を決定いたしました。
今年に入りまして、一月三十日、理事長は藤岡医師を解雇したのでありますが、これに対しまして、藤岡医師は、二月五日に東京地裁に対し身分保全仮処分の申請を行い、財団側もまた、二月九日に東京地裁に、藤岡氏の立ち入り禁止仮処分の申請をいたしました。なお組合は、二月二十八日、都労委に対しまして、藤岡氏の解雇を不当労働行為であるとして申し立てを行なっております。
その後財団の理事長は、大村、北川といういう二人の人を労務担当の嘱託として雇い入れまして、五月二日ごろから、毎日若い男約二十名ばかりが院内を歩き回って、職員、患者にいやがらせを行なっておるということを組合の方で申しております。
なお五月九日には、この藤岡氏が闘争のための組合側の協議会で協議中、これを室外に連れ出して暴行を加えた者があった。そこで都労委では五月十日、事が重大化してきましたので、都労委とそれから委託会社の幹事会、支援協議会、組合、それと財団との五者の会談を提案したのでありますが、財団側としましては、藤岡氏の解雇を前提としたために、五月十六日に至り、その五者会談の提案は不成立に終りました。組合は、五月二十五日に大会を開いて、六月六日から無期限ストを行うことを決定し、翌二十六日に財団側、都労委にこの旨を通知してきております。
六月二日に、組合内において、かねてから病院事業における実力行使反対を唱えていました副院長兼外科部長の古賀氏を委員長とする第二組合が結成されました。この組合員は五十名で、そのうち第一組合から参加した者は十三名でございます。
六月五日、都労委のあっせんにより、大体次のような協定書が締結されました。藤岡氏の身分取扱いについては、現に東京地裁において係属中の地位保全仮処分命令申請に対する決定に従う。前項の決定があるまでは、病院の診療業務には従事しない。現状維持でいく。第三番目は、財団法人及び組合は、第三者を病院から退去せしめるとともに、病院関係者以外はみだりに病院へ立ち入らしめないような適当な措置をとる。四番目に、組合は本協定調印と同時にストライキ態勢を解除し、業務の正常な運営に協力するということで、一応協定が成立いたしまして、その後、特に紛争が生じていないという状況でございます。
次は、生光会療養所でございます。従業員は、五十八名、結核療養の委託病棟を持っておるのでございます。
争議の経過は、この療養所は、前から就業規則もなく、給料の明細なきまりもなく、はっきりしないので、労働条件の改善、給与体系の確立などを要求するために、この四月二十七日に、鷲野という人が組合長となって組合ができたのであります。ところが、同日、財団側は組合員二名の解雇を通知いたしました。
そこで、組合は四月二十八日に、組合員二名の解雇撤回を含む十六項目の要求を出して団体交渉を行い、五月十三日までに回答を要求いたしました。そこで、これに対しまして、財団側は二名の解雇を撤回いたしました。
しかしながら、さらに要求事項として、炊事長である吉田某という人の解雇を要求しました。これは、過去において組合を弾圧した張本人だという理由でございます。それから雑役の給与を八千円として、給与は最低国の療養所並みとする。それから危険手当、経験手当の支給及び給与体系を確立してくれ、労働協約の締結をするようにというのが、大体おもな要求項目でございますが、こういった要求事項につきまして、五月十三日から五月二十五日までの間に、七回にわたり団体交渉を行いましたが、理事長が出席しないために、団体交渉が進みません。ただし、この間、五月十八日以降は阿部哲郎——これは後に事務局次長になっておりますが、この人が理事長の委任状を持って団体交渉に臨んでおります。五月二十四日に、例の井上日召師の作る護国団員四名が警備の腕章をつけて受付などを行なったのであります。翌二十五日に警備員が十名にふえました。さらに二十六日に、これら警備員は護国団親衛体の腕章にかえて十七名くらいになったようであります。
組合は、五月二十七日に三多摩地労、全医労各支部、東医労、日共清瀬地区委員会等九団体と生光会争議共闘会議を作りました。
一方財団側は、二十六日付で組合員六名の解雇通告をいたしました。これに対して、組合側は地裁に、地位保全仮処分申請をするとともに、都労委に不当労働行為として訴えております。
五月二十八日、護国団警備員は、第三者の立場から紛争早期解決に努力すると声明して、さらに三十日に、部外者が引き揚げなければ実力行使も辞さないという警告文を出しております。組合側は、同日理事者側に対して、この通告文に対する反対抗議を出すとともに、警視庁の方に抗議をいたしております。なお、同日都労委に対しまして、団体交渉の再開、労働協約の締結、解雇撤回の三点について、あっせん申請を行なっております。
都労委は、六月一日からあっせんを開始いたしまして、六月二日にあっせん中特別警備員を引き上げる、組合は平常通り勤務する、外部団体の病院構内立ち入りを禁止するという覚書を、両当事者間で取りかわさせまして、あっせんを続けたのでありますが、理事者側は、六名の解雇を強硬に主張いたしまして、六日以降、特にあっせんは行われていない。ただし、六名のうち一人は婦人で、関係がないというので復帰しまして、目下五名の解雇ということになっております。現在は小康を保っておるようでありますが、楽観は許されないという状況にあるという報告でございます。
次に、杏林製薬の争議でございますが、従業員百二名で、組合員は九十三名でございます。この杏林製薬は、姉妹会社に日本科研を持っておりまして、日本科研は杏林製薬の下請加工をしておるのであります。
杏林製薬は岡谷工場に主力を注ぐということで、東京工場を次第に縮小する方針をきめて、徐々に設備を岡谷工場に移転したために、東京工場の労働力が余って参りました。同時に、下請である日本科研に対する加工も中止をしたために、従業員の仕事がなくなりました。そこで三月二十三日、日本科研、杏林製薬両従業員が共同して組合を結成いたしまして、三月二十四日に、会社に対して団体交渉を要求いたしました。
三月二十四日、組合長の大倉務の解雇を発表いたしました。組合は、直ちに所轄労政事務所にあっせんを依頼いたしております。労政事務所では、事情を聞いて、不当労働行為を起さぬように勧告いたしております。三月二十五日、団体交渉の開催があったのでありますが、その際に解雇を撤回いたしまして、解雇は一応解決したのであります。
五月四日になりまして、会社側は、経営不振を理由に東京工場の閉鎖を発表し、五月十日までに希望退職募集を申し入れました。これに対して、組合は、五月六日に職場大会を開きまして、職場放棄、会社の擬装解雇反対、希望退職募集反対を決定いたしまして、組合は交渉権を社会党北部支部長飯塚都議、幹事長近藤区議に委任いたしました。
五月十日、会社は株主総会を開きまして、東京工場の解散を決議いたしております。
五月十二日、労政事務所の仲介によりまして、都労委飯崎委員の傍聴で団交を開催しましたが、会社側より経営内容について説明がなかったために、結局組合員が室内で相当喧騒して、会社側は団交を打ち切ってその日は退去いたしました。
五月十三日、従業員二十七名に対し、解雇通知を郵送しております。
五月十四日、組合員は全部出勤いたしました。これに対して、会社側は入場を拒否したため、出勤時に小ぜり合いを生じ、工場長と組合長が負傷したという報告になっております。会社側が警察に連絡しましたので、警察は事情を聞いたのでありますが、検束者は出ておりません。
五月十六日に、会社側は東京工場の臨時休業を発表し、組合側は全員出勤、作業をするという事態になりました。十七日に、都労委にあっせん申請が組合側からなされました。二十三日、会社側から、第三者を交えないで自主的に組合と交渉したいということを組合側に申し入れました。そこで三十一日、都労委の会議室で団体交渉を開催し、都労委では、会社側の自主的交渉の申し入れを承認してあっせんを一時中断し、事態の推移を見守ることになりました。
今月の七日、東京の地裁におきましては、会社側から提訴された立ち入り禁止仮処分の審査を行いまして、裁判長からは組合側に対して、解散になった以上は解雇はやむを得ないと述べて組合側の弁護人を説得、弁護人が組合側を説得するということになりました。
九日、労政会館で団体交渉を再開し、会社側から解雇者二十七名の会社構内の立ち入り禁止、ただし、時間外の立ち入りは許可するという条件が出されたために、組合側はこれを拒否して団交は物別れとなっております。そうして、組合員数名が本社にデモを行い、その際組合員が毆打された事件が起って、非公式ではありますが、日本橋署に訴えておるという事態が発生しております。現在なおその段階にとどまっております。
最後に、細井化学争議の概況を申し上げますと、この細井化学は、農業薬品を作っております。従業員百二十名であります。
この会社は、従業員の平均賃金は、月二十六日稼働で平均八千円弱、三月中旬ごろから組合結成の参加署名が行われて、四月二十七日百二名の署名を得て結成大会を開いたのでございます。四月二十七日、東部労政会館で、九十二名が出席いたしまして結成大会が開かれました。二十八日、組合側から二項目の要求が会社に出されました。一つは、団体交渉に自今応ずること、二は、組合事務所及び組合の告知板の設置を認めることという二項目であります。二十九日、会社側は、職長を通じて組合員全員を解雇して日雇いを雇う。社宅にいる組合員は社宅より出てもらうと、非公式に組合側に伝えております。三十日、会社側は正式に要求に対する拒否の回答を行なっております。五月二日、組合側は亀戸の労政事務所に善処方を申し入れました。六日に、会社側は「同憂の士に告ぐ」という檄文を発表しまして、細井化学危機突破労使懇談会を約二十名くらいで結成しまして、このために十三名の組合員が組合から脱退するに至りました。七日、社長は、組合幹部全員を集めて、要求の全部を拒否する旨を言い渡しました。
五月十日から、組合は残業拒否を指令いたしました。なお、江東地区労から、現在の組合を解散して、全員を含めた組合を作るということ、会社の不当労働行為は即時やめるという二つの提案がなされまして、会社側はこれに賛成しましたが、組合側は、今組合を解散したら、再び組合が結成できないとして反対しましたので、この江東地区労からの提案は不調に終っております。
五月十一日、組合側から都労委にあっせん申請がございました。都労委は、十六日、団体交渉に応ずること、組合事務所などを認めることという二項目のあっせん案を提示いたしましたが、会社側は全面的にこれを拒否いたしました。そこで、都労委の委員から、五月末までに全組合員を対象とする労働組合を結成したらどうかという勧告をいたしておりますが、この点はその際は聞き入れられておりません。五月三十日、都労委はあっせんを打ち切りまして、あらためて組合側から都労委に対して不当労働行為の提訴がなされております。
六月九日、組合側はストに入りました。そこで社長は、城東警察署長を訪れまして署長と相談しました結果、署長は、江東地区労の田中議長に相談したらいいだろうと勧めまして、直ちに三者会談を行なった結果、一応以下申しますような妥協案が成立いたしました。
第一は、組合は否定しない。二、解決後即時役員改選を行う。三、全従業員をもって組合を運営する。四、上部団体については将来の問題として検討する。五、全従業員をもって組合が構成されるまでは現行の就業規則による。六、解決後犠牲者は出さない。七、立ち上り資金は考慮するが、社長の一存とする。
六月十一日午前三時、この解決の妥協の案に対して調印がなされまして、事態は一応解決したということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/51
-
052・中村三之丞
○中村委員長 それでは、全国金属鉱山関係労働争議に関する問題について質疑の通告がございますから、順次これを許します。多賀谷真稔君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/52
-
053・多賀谷真稔
○多賀谷委員 若干政府にお尋ねしたいのですが、現在争議が行われております会社の日本鉱業、三菱金属鉱業、三井金属鉱業、住友金属鉱山、同和鉱業、古河鉱業、こういうところ及びその他のメタル・マイニングの会社の経理の状態を見ますと、公けに発表をしております分だけでも、かなりの収益を上げておる。これは現在の炭鉱の不況を、非常に違う対照的な点を表わしておると思うのであります。日本鉱業にいたしましても、株価だけを見ましても八十四円しておる。三菱は八十五円、三井金属が百十三円、住友が九十一円、同和鉱業が百十二円、古河は石炭鉱業がずいぶん入っておりますので六十円と、今日の状態でも、そういうような状態々示しておるようであります。株の配当にいたしましても、三井金属が二割、同和鉱業が二割、古河を除きましたその他が一割五分と、こういう状態でありまして、一応経理上からいいますと、現在要求しておる金額が出ないわけは、どうもないようでございます。そこで、お尋ねいたしたいのは、一体金属鉱業の労働者の賃金はどの程度になっており、ことに坑内と坑外を分けて説明していただきたいと思いますが、坑外夫は他の産業に比してどの程度の賃金をもらっておるか、これをわかりましたら御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/53
-
054・中西実
○中西政府委員 大手だけから申しますと、この大手六社でも、若干差がございますが、坑外の成人の月平均は大体一万七百円から八百円、古河が六社のうちでは一番低くて一万三百円、それから坑内外の差は、これも会社によって違いますけれども、坑外の三〇数%から四〇数%増というのが大体のベースであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/54
-
055・多賀谷真稔
○多賀谷委員 今、局長から答弁をいただいたわけですが、現在一万七百円から八百円といいますと、これは現在の職種別の賃金表から見ますと、非常に低位な状態である。会社は、各産業の中で非常な利益率を上げておるにもかかわらず、労働者はそのような低位の状態にある。これは経営者の、地下産業労働者に対する考え方が非常に違っておるのではなかろうかと考えるわけですが、そういう点は、明日一応経営者にも来ていただいて、いろいろお聞きしておきたいと思いますので、申し上げませんが、私は、同和鉱業と日本鉱業が、中労委のあっせんに乗り出そうという態度に対して、拒否をしておる、いわば自主的にやりたい、こういうことで出頭しなかった、こういう点を聞いたわけでありますが、このことを聞くにつけまして、一昨々年二十七年の争議の際、すなわち炭鉱労働組合が争議いたしました際にも、同じような傾向が現われておったと思うのであります。その際は、局長はちょうど中労委の事務局長でありましたので、十分その事情も御承知のことであると思いますが、中労委が乗り出そうとすると、とかく経営者の方が拒否の態度を続けて、自主的に交渉いたしますから、もう解決いたしますからということで、常に拒否しておる、そういう状態が遂に六十三日の長い争議になってしまったわけでありますが、今年も、私はそういうような状態になりはしないかということを非常に憂えておるわけであります。と申しますのは、どうも今度の争議の様子を見てみますと、私たちは外部で、それにタッチしておる者ではございませんけれども、新聞その他によって見ますと、どうも経営者は賃金のベース・アップそのものを拒否しておるのでなくて、むしろ、全国鉱山労働組合連合会が統一闘争をやっておる、その統一闘争がどうも気に食わぬ。企業内の闘争であるならば、この程度の賃金は出してやるけれども、どうも統一闘争をやっておるから出せない、こういう組織分断の考え方が依然としてあるのではなかろうかと考えるわけでございます。実は、常に問題になっておりますピケッティングの問題にいたしましても、日本の労働組合に、特有といえば語弊がありますけれども、なぜあれほど先鋭なピケッティングが現場で熾烈に行われておるかということを、われわれいろいろ学者を呼んで聞いたわけでありますが、その根拠と申しますのは、実は外国と事情が違うという点にあります。すなわち外国は、ストライキをしておる場合に、ピケッティングというようなものは、本日ストライキをしておりますから立ち入りを遠慮していただきたいというようなプラカードを持って、二、三人の労働者が歩いておるにすぎない。しかるに、日本はそういう状態でない。そのゆえんのものは、実は産業別の労働組合が確立されていないからだということを聞いたわけであります。これは、学者が異口同音に申しました。そこで私たちは、やはり産業別の労働組合を組織して、そうしてその交渉を十分に認め、そして常に産業別労働組合を育成強化することによって、よりよい労使関係の確立ができるのではなかろうかと考えるわけでございますが、どうも今度の争議も、実際の経営者の真意は連合会、ことに全鉱の組織の分断にあるように考えるわけでありますが、労政局長はどういうようにお考えであるか、お聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/55
-
056・中西実
○中西政府委員 この問題は、われわれとしまして軽々に結論を出しにくい問題でございます。私どもも、大体規模、それから産業の内容等が同じものにつきましては、労働条件その他も同じである方が、労使関係の安定にもいいにきまっておりますので、その意味におきましては、あえて産業対産業の話し合いというものが悪いとは申しません、かえってその方が便宜があるようにも考えられます。この金属山につきましても、かっては、御承知のように経営者の協会とそれから組合の集団と、いわゆる集団交渉をいたしておったのでございますが、補給金政策がなくなりまして以来、経営陣はこの協会の機能を変えまして、各社ごとに交渉するということになったわけでございます。問題は、企業ごとに相当内容に格差がある、それから石炭よりも金属山は非常に内容がまちまちだ、銅山もあれば、亜鉛もあれば、あるいは鉛もある、その掘り出す金属もいろいろ違う。同じ銅にしましても別子の銅山、生野、小坂の銅山、それぞれやはり様子が違います。従って、会社の経理もやはり会社によって相当の格差が出てくるということは、容易に想像がつくわけでございます。そこで、えて日本の従来の集団交渉におきましては、集団でありますと、一律何円アップとか、あるいは一律何%アップとかいうふうな要求、またこれを主張してなかなか譲らないという傾向も確かにありますので、ここらが、双方よく企業実態を考慮に入れて、常識的に双方が話し合ってきめるということが、双方に信頼を持って考えられるようになりますれば、あるいは問題もこうこんがらがらないで済むのでなかろうかというふうに考えておりますが、今のところ、経営陣は一応、そういう事情かどうか知りませんが、とにかく上部の団体と交渉することを非常にいやがっておることは事実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/56
-
057・中村三之丞
○中村委員長 田中利勝君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/57
-
058・田中利勝
○田中(利)委員 今同僚の多賀谷委員からもお話がありましたように、全鉱の争議は、今年当初における大規模な争議でありまして、しかも経済の地固めをしなければならぬというこの重大な時に、基礎産業たるべき非鉄金属が全国的に争議に入り、しかもその様相は、溶鉱炉がとまってしまった、さらに坑内の採鉱に至るまでもとまった、まさに溶鉱炉の火が落ちてカンテラの灯が消えてしまった、全く事態は重大でなければならないと思うのであります。しかも、この産業のストライキが関連産業に及ぼす影響は、きわめて大きいと思うのであります。しかも、要求たるものを考えてみますと、全く低賃金によって生活の貧困が結びつけられているという実態であると、私どもは見ておるのであります。しかるに、経営者がまじめに誠意を持って団体交渉の道を開こうとせず、高圧的に拒否しているということは、われわれ全く不可解であると思うのであります。しかも、最近の銅を中心としてその価額を見てみますと、三月から一万九千円値上げされておる。そして二十九万九千円となって、さらに再値上げの折衝を通産省をして行わしめているという状態であるのであります。今、全鉱が掲げている要求というものは、私どもから見ますならば、支払い能力がないとは言えないのであります。団体交渉の当初においても、支払い能力がないということは、一言半句言っていないと聞いておるのであります。こういう事態に対して、労政当局として——賃金の問題につきましては、先ほど同僚委員から質問がありましたが、経営の実態というものに対して、どういうふうに見ておるか、御意見をお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/58
-
059・中西実
○中西政府委員 われわれも、新聞や経済雑誌で、一応金属工業の動向は承知いたしておりますけれども、実は経営陣から経理の内容の詳細については聞いておりませんので、果して賃上げは全く不可能なのか、あるいはどの程度なのか、その辺のことは実は詳細には存じておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/59
-
060・田中利勝
○田中(利)委員 問題がきわめて深刻であり、その解決の見通しは、今日容易でないとわれわれも考えておるものでありますが、政府においても、事態が大きいだけに、問題を慎重に考えると同時に、この問題の早期解決に努力しなければならないと思うのであります。明日当事者が見えるのであります、さらにわれわれは当事者にそれぞれ質問をいたす考えでありますが、政府においても、問題の早期解決のために努力を払われたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/60
-
061・中西実
○中西政府委員 われわれも、この争議の事態を非常に注視いたしております。中労委も、そのために二、三度出ようといたしたのですが、先ほど申しましたように、目下のところは労使で自主的に話し合って解決したい——これは経営陣だけではございませんで、労働側にもそういう意向があるやに聞いております。そこで今日あたりも相当活発に団体交渉をするというふうに聞いておりますので、しばらくその自主的な交渉を見守りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/61
-
062・多賀谷真稔
○多賀谷委員 先ほどの日本科学研究所の閉鎖に伴う問題でありますが、これは局長にちょっと誤解があるかと思うのです。実は、閉鎖されたのは姉妹会社であります株式会社日本科学研究所の方でございます。それで杏林製薬東京工場の方は閉鎖になっていないのです。われわれの調査によりますと、従来それは下請関係にあり、仕事は同じ仕事を同一職場でやっておりまして、実際は自分の身分がどちらであるかということがはっきりしなかったようなわけであります。先ほど局長は、最初から経営者の方は東工工場の方を閉鎖する考えがあったと言っておりますが、事実は東京工場は増築をやっているようであります。そうして、組合を作りましたところ、急に日本科学研究所を閉鎖した。日本科学研究所の方の従業員は、勤務年数が長いという関係で、組合の幹部はほとんど日本科学研究所の方に属している。こういう理由から、組合の方では、これは明らかに擬装解散であると言っているのでございまして、そういう点も、一つ十分御調査願いたいと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/62
-
063・井堀繁雄
○井堀委員 関連して。今の細井科学の問題ですが、私も多少事情は承知しております。局長の御答弁の中で、すでに明らかになっていると思うのですが、中小企業の労使関係が最近荒れて参った。この傾向は、よほど注意をしなければならない。特に労働省の足元の東京で、こういう前時代的な労使関係というものは、よほど気をつけてもらわなければいかぬと思う。どうも最近労政事務所とか、地労委などの行動が、はなはだ不活発になってきている。こういう事態については、労政事務所や出先機関が、それぞれ先にキャッチしなければならぬと思う。これは全く人権じゅうりんです。この問題は、一応解決したとは言っておりますけれども、表面解決しても、労働組合の自主的な勢力が、そう急に盛り上るものではないと思うので、特にこれらの問題については、出先機関を通じて、その後の経過について十分御注意いただき、でき得るなら、ごく最近のそういう傾向もあると思うので、そういうことについて、出先の意見を聴取されて御報告を願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/63
-
064・吉川兼光
○吉川(兼)委員 いい機会ですから、私も関連して伺いますが、千葉県の市川市で起ったのですが、あの地方の新聞や東京の新聞の地方版などでは、第二の近江絹糸事件などと報道されるほどの騒ぎがありました。もう問題は解決しておりますが、いい機会だから、労政事務所その他の地方の機関を通じて、一応あなたのところでお調べになっておいて、真相を一つキャッチしてもらいたいと思うのです。これは第二精工社の下請工場の小島製作所というところで起った事件です。ちょっと人数は正確に覚えていませんが、百人近い、地方にあります中小工業としては相当なものです。そこは、もう就業規程のごときものすらもなくて、ひどいのは工員同士の男女の交際を禁ずるというような、まことにだれもほんとうにしないような工場があるわけです。これは日本経済という新聞が取り上げまして大分騒いでおったようでありますが、すぐあの地方の組合などが参加しまして、一応現場で解決いたしておりますけれども、この種のことが——市川と申しますと、御存じのように、もう東京の江戸川を一つ隔ててくっついておるのでありまして、東京といってもいいようなところで、そういう町工場があるのでありますから、今の多賀谷君あるいは井堀君などの御質問に関連して、いい機会でありますから、労政当局のそういう方面における御関心といいますか、あるいは御調査といいましょうか、そういう面を一つ一段と拡充してもらいたいということを切望しておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/64
-
065・中村三之丞
○中村委員長 ほかに御質問ございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/65
-
066・山花秀雄
○山花委員 ただいま労政局長から、都下に起った四つの中小企業並びに小人数の労働組合の争議の実態報告がございましたが、これはこの四つに限られた問題ではないと私は思うのです。しぼり出した四つの形態ということになっておると思うのでありますが、これらの小人数の中小企業であるとか、あるいは経営者の関係においては、おおむね——かようなことを申し上げて失礼でございますが、労働組合法の何ものであるか、あるいは基準法の真の把握というものがなくて、感覚的に明治時代の経営方式でやっておるというところから、これらの争議が発生したということは、ただいま労政局長の御報告によりましても、うかがわれると思うのであります。本来ならば、私は労働基準局長並びに法務関係の政府委員の御出席を得て、いろいろただしたいと思うのでありますが、質疑は後刻に譲ることにいたしまして、労政局長がおいでになっておりますから、労政局長に若干質問をしたいと思うのでありますが、報告の違う点があるのです。最後に御報告願った細井化学は、解決しておりません。きょう昼私の手元に——これは私の関係しておる労働組合の下部組織でございまして、調印を行なったが、従業員大会にかけて承認されずに、ストが継続をしておるという経過であります。そこで、私ちょっと聞き漏らしましたが、最後に調印をいたした契約条項の七項目を、ちょっともう一度お聞かせを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/66
-
067・中西実
○中西政府委員 第七項は、立ち上り資金は考慮するが、おそらくその額はという意味でしょうが、社長の一存とする……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/67
-
068・山花秀雄
○山花委員 いや七つの項目を全部……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/68
-
069・中西実
○中西政府委員 一は、組合は否定しない。二番目が、解決後即時役員改選を行う。三が、全従業員をもって組合を運営する。四が、上部団体については将来の問題として検討する。五が、全従業員をもって組合が構成されるまでは現行の就業規則による——これはちょっとおかしいのですが——六が、解決後犠牲者は出さない。七は、立ち上り資金は考慮するが社長の一存とする。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/69
-
070・山花秀雄
○山花委員 これは労働運動を少し経験しておるくろうと筋が見れば、この解決条項がいかにインチキな解決条項であるか、これは全面的に組合否定であります。組合は否定しないといっておりますが、五の項目に、全員締めつけるという格好がうたわれているのであります。このいきさつには、社長が説得をして、十何名か第二組合に参加するメンバーが出た。全員締めつけるということになりますと、結局それらの社長の意を受けた御用組合員が奔走すれば、絶対に組合ができません。それから、上部団体は将来の問題として考えるというようなことは、今日の近代的労働組織を理解しない一つの形態であろうと思うのであります。こういう条件で解決するわけはないのです。大体、これが上部団体が介入せず、しろうとが出て、しかも中小企業における事業主の優越感と従業員の卑屈感が伴って調印された。それが大衆会議で否決されるということは、当然私はあり得ると思うのです。これは争議が解決しておりませんから、もう少し調査を願いたい。
それからもう一つは、愛世病院にいたしましても、生光会にいたしましても、あるいは杏林製薬にいたしましても、全部待遇が悪く、それから労働組合の組織運動が起き、労働組合が結成されると、その主謀者の首切りという形になっておるのであります。私は、これは理由はどうつけられようとも、明確に不当労働行為に該当するのではなかろうかと、調査をしてみないと確言はできませんが、そういう感じがするのであります。特にこれらの中小企業あるいは小人数の労働組合の争議には、えてして事業主の方も法規に暗く、労政事務所も、無関心とは申し上げませんが、指導よろしきを得ない関係もございまして、町のダニといわれる暴力団が介入してきておるのであります。先ほど、局長からいろいろ御報告がございましたように、たとえば生光会の争議に、初めは四人、それがだんだん人員がふえて、最後には相当数の護国団親衛隊——この護国団親衛隊というのは、私の記憶によりますと、ついせんだって暴力団の容疑で検挙されたというようなことを本聞いておる、これは井上日召が主宰する、一人一殺ということをスローガンに掲げて、この民主主義の世の中に、ずいぶんとっぴなスローガンを掲げて運動をやっておる団体でございますが、こういう団体が、しかも意識の低い労働組織の中に介入してくれば、これは当然暴力ざたが起ると私は思うのであります。たとえば、杏林製薬の問題につきましても、私の手元に来ておりますのは、二十一名の診断書をつけてきておるのであります。十七、八の婦女子が、全部暴力を受けておるのであります。また細井化学におきましても、ただいま局長さんから、逐条的に日誌のような形で報告されましたが、五月二十七日とか、五月三十一日というように、暴力団の被害がやはり私どもの手元に報告されてきておるのであります。あらゆる争議にこの暴力団が徘回する。こういうことが頻発して参りますと、日本の民主主義の将来に、私は非常な危険をもたらしめるというように考えておるのであります。こういう中小企業の争議を一々この労働委員会に取り上げるということは、やるべきでない、私はこう考えておりますが、事の本質がそういう形態に流れておるということであるならば、民主主義を守るためにも、私は国会論議を少しやっていきたい、こう考えておる。と同時に、労政事務所関係、あるいは労働基準関係も、先ほど吉川委員が言われましたように、少し弛緩しておるのではなかろうかというふうに考える。これらが、東京という政府のお膝元にひんぱんとして起るということは、これは労働省の労働行政に関する一つの黒星だろうと考えておるのであります。少くとも帝都においてはかようなことのないように、政治の中心地の東京においては、こういうような時代おくれの労使の紛争議というようなものがないような御指導を、一つ労政当局の方でもやっていただきたい。労働者にはよく労働教育というのを懸命にやっておられると思いますけれども、やはり経営主の方にも、近代的労使の感覚を植えつけるような教育を一つやっていただきたいことをお願いいたしまして、先ほどの局長さんの報告は、東京都の方から取られた報告であろうと思いますが、争議団諸君が、私どもの方に訴えて参った報告とは、ずいぶん食い違いがございますので、できれば、それは委員長におかれましては、これら労使を喚問していただいて、事情聴取をやっていただいて、将来正常なる労使関係の確立と、労働行政の確立のできるような方策を、この委員会で論議していきたい、かように考えておるものであります。
なお、法務の関係あるいは労働基準の関係は、後日それぞれの担当責任者がおいでになったところで詳しく質疑をしていきたい、かように考えておりますので、意見もまじりましたが、一言申し上げた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/70
-
071・中村三之丞
○中村委員長 ほかにございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/71
-
072・中原健次
○中原委員 ただいま同僚委員の諸君から、それぞれ御指摘がございましたが、ただいまの四つの中小企業の中における不当労働行為とみなされるいろいろな動きについて、局長から御説明があったわけです。もちろん、これは私からお尋ね申し上げるまでもないことでありますが、局長におかれては、この報告をなさるお立場から、どのようにお考えになられましたか、一つ局長の御感想を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/72
-
073・中西実
○中西政府委員 これは世間でも申しておりますし、私どももそうかと思っておりますが、近江絹糸の争議以来、中小企業におきまして、労使のいろいろな紛議が割合頻発しておるようでございます。これは、確かにその原因があるわけで、結局中小企業におきましては、やはり労務管理の点におきましても、若干新時代に即応しない点があるためだというふうにわれわれも考えておるわけでございます。そこで、労政行政としましても、特に最近中小企業の労務管理ということについて、よき相談相手あるいはよき教育宣伝の機関として活動するようにということで、各部のわれわれの機関を督励いたしております。先ほど、出先の労政事務所その他がきわめて緩慢だというお話もございましたけれども、せんだっても、実は日経連に、懇談したいからというので話し合いましたところが、労政事務所が、最近盛んに中小企業の方の労働側に働きかけて組合を作らせたり、労働側をおだてるようなことばかりするというような非難を浴びたのでございます。私はそれに対しまして、それは労政事務所のことだから、あるいは古い気持からいうと、若干労働側に味方するような話をするかもしれないけれども、しかし問題は、やはり中小企業の経営陣の頭を、新時代においては相当変えてもらう必要がある点が多いじゃなかろうか、その方が、かえってわれわれとして日経連の指導者たちにもお願いしたいところだといって反駁をしておいたくらいであります。
ただ問題は、日本の組合が最近非常に健全化はしてきましたけれども、組合といえばすぐにスト、また組合員自身も、ストをしなければ組合でないような傾向も、今までなきにしもあらずであった。そうしますと、中小企業におきましては、一たまりもなく企業自体がつぶれてしまう。そこで、必要以上に中小企業の経営陣が、組合というものに対して嫌悪の気持を持っておるということも、否定できないのではなかろうかと思うのであります。そこで、これは双方にそういった理解の不足もあるわけで、なお先ほど護国団の警備員が入り込んだということでございますけれども、同時にまた、組合側としましても、地区のいろいろの外部の団体、さらには破壊的な団体までがこれに協力して応援するということになりますと、つい対抗手段をとるというようなことも、ときに経営人としては考えるということにもなろうかと思うのであります。ここらは、両々さらに経験を経まして、常識ある態度を持するようになりますれば、中小企業の問題も、そう心配するようなことにならないで、新しい労使関係というものが生まれてくるのじゃなかろうかというふうに考えまして、いずれにしましても、今後は特に中小企業の新しい労務管理ということについて、十分に一つわれわれとしましても力をいたしていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/73
-
074・中原健次
○中原委員 ただいまの御答弁は、ちょっと私は受け取りがたいのです。労働組合が、ややもするとストライキをするということでありましたが、元来、労働組合が、労働者の経済的、社会的な地位を守るがために、いろいろな要求をする場合、まずほとんどといってもよろしいくらい、しばしば実力行使的な方針をとらざるを得ないようなことが起りがちであります。従って、かりにストライキという傾向に出て参りましても、これにはおのずからストライキの戦術を用いざるを得ない事情が介在しておるということは言えるわけでありますが、その議論をしようとは思いません。この四者の場合、果してしからばストライキを最初に打ち出した問題であったかどうか。そうではなさそうです。労働組合を作ったということそのことが、経営者側に取って非常にきらわれておる。従って、経営者側は、労働組合を結成したということそのものに対して、対抗的な方針を持ち出したということが、この場合には明らかに出ておると思います。こういう傾向は、やはり全国的にもあるのではないか。そこで、やはり今日の段階で、労働組合を結成すべきことが当然の労働者の義務でもあり、また権利でもあるという事情に直面しておりますときに、労働組合の側をもっと保護するような措置が、当然講ぜられなければならぬと思いますし、とりわけ労働省としては当然のことだと思う。従って、そういう場合に、ただいまの日経連あたりのそういう御提案は、ちょっとこれもおかしいと私は思います。しかも、かてて加えて、この動きの中に、すぐに第三者が、しかも暴力的な姿で介在しておるということは、これは明らかに組合の結成を否定する、あるいは組合を破壊する一つの攻勢的な行動といっても差しつかえないと思う。ところが、ただいま局長の言葉の中に、組合の方でも破壊的な他団体の力を得ておるという言葉がありました。私はそのことがわからぬです。労働組合を応援する場合、必ず労働組合を正しく育成しようとする、労働組合を正しく強化、成長させようとするそういう同調的な気持で、労働組合に応援をしておるというのが、まず大体ほとんどだと思う。あるいは、他団体と申しましても、やはりつながった労働団体である、あるいは上部団体である場合がほとんどであります。従って、他団体という言葉でさえも適当でないということも言えるのでありますが、その議論は別といたしまして、一方破壊的な団体までがという、その言葉を明らかにしていただきたい。労働組合が破壊的な団体を導入して、自分の労働組合の主張を強めるための行動をしたことがあるとは、私は寡聞にして存じません。従って、この点は明らかに御答弁が願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/74
-
075・中西実
○中西政府委員 日本の労働組合の現状から見ますと、ときに、ほんとうに解決するつもりでやっておるのか、あるいは、ただ力を添えておるのかわからない事態が、これは実例としては否定できないのであります。従って、ほんとうに責任を持っていい組合を助成し、そしてほんとうの健全な労使関係を確立するためにやられる場合なら、これはもうわれわれとしては大いに助長すべきだと思っております。この四つの事案につきましては、仰せのごとく、やはり入口において相当経営陣において古い頭を変えてもらわなければならない点があるように考えられます。従って問題は、日ごろの労務管理にあると思うのでございまして、大ていは、やはりよくよくのことで、ついて労働者側も立たざるを得ない、そのために組合を結成し、ぶっつかるというので、ついストにいく、これも私はよくわかります。近江絹糸の場合も、確かにそうなんです。暁に組合の結成をいたしましたが、あの近江絹糸においては、ああしなければ組合ができなかっただろうということも想像できるわけであります。そこで問題は、特に中小企業においては、ストなど実力行使をやりますことは、労使に取って非常な不幸でありますので、日ごろの労務管理ということに、われわれとしても十分な努力を払っていかなければならないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/75
-
076・中原健次
○中原委員 最後にもう一言。ただいまの、労働組合側にも破壊的な他団体の力をかりて労働組合を防衛する、あるいは行動を進める場合があるという言葉について、これはしつこいようでありますけれども、こういうことは、軽々に出されるのは慎しんでいただきたいと思うのです。これは労働者の面目のためにも、ちょっと許しがたい御発言と思いますから……。私どもが関知する範囲では、そのようなことは目にも耳にもとまっておりません。これはやはり反動的な、むしろ暴力的な立場からものを考える側の、いわば時代を少し錯誤しておるような側からの労働組合に対する見解そのままのお言葉のようにさえ私は思う。これはいささか御失言ではなかろうかと思います。しつこく申し上げてなんですけれども、はなはだこの言葉が気になる。これは一つ願わくばお取り消しが願いたいのであります。
なお、なるほど四つの中小企業の問題でありましたけれども、最近全国的に、こういう傾向が必ずしもないではないと思います。そういう関係から、今日の段階で正常な労働組合運動の成長を願う立場から考えましても、先ほど山花委員から御提言になられました関係組合並びに関係者の人々の出席を求めて、参考的なお尋ねをしてみたいということは、私もそのように思います。これは委員長にお願いいたしたいのでありますけれども、山花委員の先ほどの御提言に対しまして賛成すると同時に、私もあわせて委員長にそのようなお取り計らいをお願いいたしたいと思います。なお、その他の場を通しまして、われわれは問題をもっと明確に把握いたしたいと思いますから、何分ともによろしくお願いいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/76
-
077・中村三之丞
○中村委員長 この際お諾りいたします。特需関係労務者の人員整理問題及び全国金属鉱山関係労働争議の問題に関しまして、理事各位と協議いたしました結果、明十四日委員会を開き、参考人より意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/77
-
078・中村三之丞
○中村委員長 御異議なしと認め、そのように決します。
次に、参考人といたしまして、特需関係労務者の人員整理問題に関しましては、富士自動車労働組合追浜工場委員長三富博君、同じく鶴見工場委員長の片岡優君、関東特需労働組合協議会副議長の細貝義雄君、富士自動車社長山本惣治君、同じく追浜工場長大野竹二君、全国金属鉱山関係労働争議の問題に関しましては、全日本金属鉱山労働組合連合会中央執行委員長原口幸隆君、日本鉱業協会総務部長北里忠雄君、以上の諸君を選定し、申し出による参考人の変更その他手続等に関しましては、すべて委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/78
-
079・中村三之丞
○中村委員長 御異議なしと認め、そのように決します。
次回は明日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後四時二十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02119550613/79
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。