1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十年六月二十二日(水曜日)
午前十時五十一分開議
出席委員
委員長 中村三之丞君
理事 中川 俊思君 理事 松岡 松平君
理事 大橋 武夫君 理事 山下 春江君
理事 山花 秀雄君
植村 武一君 臼井 莊一君
亀山 孝一君 草野一郎平君
小島 徹三君 床次 徳二君
森山 欽司君 横井 太郎君
越智 茂君 中山 マサ君
八田 貞義君 岡本 隆一君
多賀谷真稔君 滝井 義高君
中村 英男君 受田 新吉君
吉川 兼光君 中原 健次君
出席政府委員
厚生事務官
(保険局長) 久下 勝次君
通商産業事務官
(鉱山保安局
長) 正木 崇君
運輸事務官
(船員局長) 武田 元君
労働基準監督官
(労働基準局
長) 富樫 總一君
委員外の出席者
専 門 員 川井 章知君
専 門 員 引地亮太郎君
専 門 員 浜口金一郎君
専 門 員 山本 正世君
—————————————
六月二十一日
委員小島徹三君、堂森芳夫君及び吉川兼光君辞
任につき、その補欠として芦田均君、岡良一君
及び井堀繁雄君が議長の指名で委員に選任され
た。
同月二十二日
委員芦田均君、井堀繁雄君及び岡良一君辞任に
つき、その補欠として小島徹三君、吉川兼光君
及び堂森芳夫君が議長の指名で委員に選任され
た。
—————————————
六月二十一日
医師国家試験予備試験の受験資格の特例に関す
る法律案(大石武一君提出、衆法第二一号)歯
科技工法案(内閣提出第一三五号)(予)
同月二十日
クリーニング業法の一部改正に関する請願(塚
原俊郎君紹介)(第二四〇二号)
同(灘尾弘吉君紹介)(第二四〇三号)
同(横川重次君紹介)(第二四〇四号)
同(保科善四郎君紹介)(第二四三二号)
同(小牧次生君紹介)(第二四三三号)
同(吉川久衛君紹介)(第二四三四号)
同(亀山孝一君紹介)(第二四三五号)
同(滝井義高君紹介)(第二四六八号)
同(森島守人君紹介)(第二四六九号)
同(西村彰一君紹介)(第二四七〇号)
同(小金義照君紹介)(第二四九八号)
同(栗原俊夫君紹介)(第二四九九号)
同(今澄勇君紹介)(第二五〇〇号)
同(加藤高藏君紹介)(第二五〇一号)
同(安藤覺君紹介)(第二五〇二号)
同(唐澤俊樹君紹介)(第二五〇三号)
理容美容業における徒弟制度復活反対に関する
請願(吉川兼光君紹介)(第二四三六号)
同(加藤常太郎君紹介)(第二五〇五号)
理容師美容師法の一部改正反対に関する請願(
加藤常太郎君紹介)(第二四三七号)
同(臼井莊一君紹介)(第二四三八号)
戦傷病再発医療費全額国庫負担に関する請願(
坊秀男君紹介)(第二四三九号)
戦傷病者の割当雇用に関する請願(坊秀男君紹
介)(第二四四〇号)
身体障害者の更生資金制度実現に関する請願(
保科善四郎君紹介)(第二四四一号)
強制医薬分業反対に関する請願(竹尾弌君紹
介)(第二四六七号)
同(小西寅松君紹介)(第二五〇四号)
鹿児島と畜場の使用料に関する請願(中馬辰猪
君紹介)(第二四七三号)
国立療養所の附添廃止反対に関する請願(江崎
真澄君紹介)(第二四九七号)
社会保険関係諸法規の改悪反対等に関する請願
(井上良二君紹介)(第二五〇六号)
同(小西寅松君紹介)(第二五〇七号)
同(野原覺君紹介)(第二五〇八号)
国立公園施設整備費国庫補助復活に関する請願
(田子一民君紹介)(第二五〇九号)
の審査を本委員会に付託された。
—————————————
本日の会議に付した案件
けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護
法案(内閣提出第七二号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/0
-
001・中村三之丞
○中村委員長 これより会議を開きます。
けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法案を議題とし、質疑を続行いたします。森山欽司君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/1
-
002・森山欽司
○森山委員 前会逐条的に質疑事項が残っておりましたので、政府の所見をお伺いしたいと思います。
第二条第一項第二号に、粉塵作業として「けい肺を生ずるおそれがないと認められる政令で定める作業を除く。」となっておりますが、これについては、けい肺審議会において三年間けい肺健康診断をやってみて、それから政令を定めるのだということでありますが、そういうことでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/2
-
003・富樫總一
○富樫(總)政府委員 審議の過程においては、そういう話もありましたが、それだけということでなく、今後さらにけい肺審議会においてもっと具体的に審議する、こういう予定になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/3
-
004・森山欽司
○森山委員 もっと具体的に審議するというのは、どういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/4
-
005・富樫總一
○富樫(總)政府委員 確かに三年間全然実績が出てこないというのも一つの基準であり得る。しかし、政府の健康診断によって、現在すでに過去十年なり二十年そういう粉塵作業に従事しておったにかかわらず、全然起っておらないというものも考えられる。それからいわゆる恕限度が千である。——千であるということについては問題がありますけれども、明瞭に百とか五十とかいうふうに、通常考えられている幅の恕限度より極度に低い。そうしてけい肺が診断の結果現在一人もいないというようなものも一つの基準にもなり得る。そこら辺はもう少し基準を検討したい、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/5
-
006・森山欽司
○森山委員 そうしますと、六月九日の本委員会の公聴会で、北里参考人が「金属鉱山に例をとって申し上げますと、石灰石あるいは石膏あるいは石綿、水銀というふうな業種は、一応鉱業法の鉱物の採掘ではございますけれども、ただいま申し上げたように、今までにけい肺の一人も発生しない事業場でございます。また将来も、岩石その他の分析によって、科学的にその可能性がないということが立証されておるものであります。」こういうものも、当分の間一応粉塵作業としてやるというのはおかしいという見解を述べておるのですが、この種の事業場は、さしあたり審議の上で政令で除く、こういう御意図を持っておられるわけでございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/6
-
007・富樫總一
○富樫(總)政府委員 ただいまのおあげになりました岩石は、そのもの自体にはけい酸を含んでおらないのでありますが、それを掘る際に、まわりから石英なり花崗岩なりから一緒に遊離けい酸が出る場合がむしろ多いのであります。従いまして、さしあたりは除かないで、現地の調査の結果、この山はなるほどほんとうに出ないというようなことがわかった場合にそれを逐次はずしていく、こういう考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/7
-
008・森山欽司
○森山委員 これは北里参考人がその際、粉塵作業場ならばこれはこの法の対象になる。「ただ粉塵作業場を持っておるからこれに対して適用され、しかも、その結果は負担を負わされるということは、少し趣旨が違うのじゃないかと思うのであります。これはおそらく保険財政といったような意味合いから、その範囲を拡大されているのじゃないかと思うのでございますが、これは労働省からの確かな説明を受けておりませんので、私の想像にすぎないとお考えいただきたいと思います。」と、こう言っていますが、保険財政のやりくりから、少しでも金を取りたいということで、この政令で定める作業を除くというような条文ができておるのかどうか、一つ御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/8
-
009・富樫總一
○富樫(總)政府委員 保険財政の見地ではございません。つまり北里氏の言ったのは、別表第二表の濃度の濃い粉塵作業だけでいいと考えられるのに、それに相当の外延をつけて別表第一表をこの粉塵作業と定義した、そのこと自体が、よけい金を取るというか、必要な金額はきまっておるのだけれども、もっと幅広くみなに負担させたい、こういうことではなかろうかということを、この間申したようでありますが、そういう意味ではございませんで、別表第二は通常起り得るもの、別表一は、ほとんど心配はなかろうが、しかし発生するおそれのあるものを大事をとって幅を広げてある、これだけのことでございます。しかし防塵措置なり、あるいはその山の岩盤の性質によりまして恕限度以下である、あるいは実際問題として、けい肺患者が一人も出ないというようなところがあれば、それは何も入れておく必要はございませんので、適当な基準を設けて逐次はずしていきたい、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/9
-
010・森山欽司
○森山委員 第二条第一項第二号に「けい肺を生ずるおそれ」というのがありますが、「おそれ」というのは、何を基準として「おそれ」というように考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/10
-
011・富樫總一
○富樫(總)政府委員 これは先生も御承知のように、学理的に申しますれば、遊離けい酸の濃度あるいは含有度、いわゆる恕限度というようなものを基準にするのが学理的でございますが、御承知のように、恕限度そのものについても、必ずしも学説が一致しておるわけでもございませんし、またそれを法的に規定いたしましても、現実の行政面において測定その他に非常な問題を生じますので、われわれの過去七年間の巡回検診の結果、実績に基いて将来もおそれがあるだろうというものをここにあげたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/11
-
012・森山欽司
○森山委員 それからこの法律は外傷性脊髄障害について規定してございますが、負担金率につきまして、十九条に書いてあるのですが、けい肺に関する附則第十六項のような規定がないので、一体けい肺のやり方と外傷性脊髄障害のやり方は、負担金率の処理については別途のものになるのか伺いたいと思います。すなわち、過去の実績によるのか、あるいは将来起ったものは起ったとき取るのか、また審議会というような手続を経ないで取るのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/12
-
013・富樫總一
○富樫(總)政府委員 けい肺の方につきましては、過去の実績と申しましても、たとえば、転換給付につきましては過去の実績がないのであります。しかるに外傷性脊髄障害は、転換給付というものはございませんで、休業給付と療養給付だけの問題でございますので、それについては明瞭な過去五カ年間の実績があるので、こういう附則は要らないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/13
-
014・森山欽司
○森山委員 審議会はございませんから、要するに労働省がこれはごく簡単に処理する、こういうことでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/14
-
015・富樫總一
○富樫(總)政府委員 そうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/15
-
016・森山欽司
○森山委員 それから、第二条の定義の中に、第五号の「労働者」という定義がございますが、普通労働法規には、労働者とかあるいは使用者とか、いろいろな定義がございますが、労働者だけを定義された理由はどういうわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/16
-
017・富樫總一
○富樫(總)政府委員 ここにおきまして労働者の定義をいたしますれば、それを使用する者というのは当然明瞭である。問題は、たとえば基準法等におきまして使用者の定義をいたしましたのは、主として罰則との関係において、両罰規定を設けるという趣旨でああいうふうに規定されておるのでありますが、最近の両罰規定の書き方は、一般的にあの基準法のような書き方でなく、本法のように罰則の方に両罰規定を設ける、そういう扱いに法務省及び法制局が近年しているのだそうであります。従いまして、本法案におきましても、罰則の方に使用者関係の両罰規定がございますので、これでよかろうということで、実質的に建前を変えるという趣旨はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/17
-
018・森山欽司
○森山委員 次に、第二条第二項のけい肺第四症度について、結核性のけい肺症の問題がございます。これは従来も同様の規定があるのでありますが、先般本委員会の席上でありましたか、別の席でありましたか、北里参考人から、これは肺結核ときわめてまぎらわしい、しかも実際問題としてはけい肺患者の六〇%はけい肺結核患者であるということで、純肺結核との均衡の関係上、経営者の労務管理上、けい肺第二症度以上と活動性肺結核の合併したものと、単純に規定する方がいいのだという意見を聞いたことがあるのですが、そういう見解が使用者側にあるということについては、どういう御見解を持っておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/18
-
019・富樫總一
○富樫(總)政府委員 経営者側におきましては、けい肺と結核の合併症ということにつきまして、経費負担の関係から相当神経質であるということは、私ども承知いたしております。しかしながら、専門の学者の見解にのっとりまして、この法案におきましては、けい肺第一型の者に結核合併症があるときは、これは当然にけい肺結核として本法によって扱うべきであるという建前は、これはその何とか何とかという問題でなく、医学上の問題でございますから、截然と法にそういうふうに規定したわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/19
-
020・森山欽司
○森山委員 第三条第二項に、三年以内ごとに一回、定期のけい肺健康診断を行うということになっておりますが、これについては、けい肺病の発生率とか、粉塵のけい酸の含有量、濃度によって、業種別あるいは職場別に、三年というのが場合によっては二年の場合あるいは一年の場合ということが起り得ると思うのですが、現在の問題はともかくとして、将来そういう問題が起きないかどうか、予測されないかどうか、局長の見解を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/20
-
021・富樫總一
○富樫(總)政府委員 現在のところにおきましては、御承知のように、本法案におきまして正常な者を中心として三年に一度、症度のある程度出た者につきましては毎年一回やるということで、まずまずよかろうという考えでありますが、お話のように、職場の遊離けい酸粉塵のいかん等によりまして、今後の研究によりましてそういう必要性が出るならば、その際に善処したい。とにかく、相当の問題点としての検討事項であるというふうにわれわれ考えております。今後、けい肺審議会におきましても、研究をわずらわしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/21
-
022・森山欽司
○森山委員 第三条第一項第三号に関連いたしまして、これによりますれば、新しく粉塵作業場に入る労働者は、けい肺健康診断を行わなくてもよいということになっておるわけでありますが、入職時、直接撮影を含む検診は、結核を確実に診断して、その流入を防ぐためのほかに、将来のけい肺変化を確実につかまえるために必要であって、諸外国では必ず行うことにしておるのが例であるというふうに聞いております。従って、この第三条第一項第三号は必要がないという見解が取られると思いますが、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/22
-
023・富樫總一
○富樫(總)政府委員 原案におきましては、ともかく従来のわれわれの調査の実績におきましては、三年以内にけい肺第一度にかかった者が絶無であるという結果になっておりますので、将来、あるいは会社自体が健康管理の必要を認めて、みずからやることはもちろんけっこうでございましょうが、そういうものに、法律上過大の要請を規定することはいかがかと考えまして、原案のようにしたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/23
-
024・森山欽司
○森山委員 この問題につきましては、各党よりいろいろ御議論がございますので、この際これ以上言及しないことにいたしますが、同条第五項におきまして、労働者は、正当な理由がある場合を除いて、経営者が行うけい肺健康診断等を受けなければならない、正当なる理由がある場合は、使用者が行うけい肺健康診断を受けなくていい。ただし、使用者が指定した医師のけい肺健康診断等を受けることを希望しない場合、こうなっておるのでありますが、この「正当な理由」というのと「希望しない場合」というのとがどういう関係にあるのか、また正当な場合とは、どういう具体的な場合をお考えになっておられるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/24
-
025・富樫總一
○富樫(總)政府委員 ここの「正当」とただし書きとは、直接の関係はございません。通常主として正当な理由として考えられておりますのは、本人がそのときにかぜを引いて寝ておるとか、あるいは葬式で忌引で休んでおるとか、社会通念上その日には無理だということをいうのであります。そうして、ただし書きの方は、それと関係なく、正当な理由の有無にかかわらず、とにかく会社の指定医は何となく感じが悪い、そういうような場合には、こういうふうにして自分の好きな医者の診断を受けてもよろしい、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/25
-
026・森山欽司
○森山委員 これが労使双方の立場から、それぞれ乱用される危険性はないかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/26
-
027・富樫總一
○富樫(總)政府委員 従来の基準法の安全衛生規則の運用上からいいましても、今まで別段乱用とかどうとかいうようなことを聞いておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/27
-
028・森山欽司
○森山委員 第五条第一項に、地方けい肺診査医というのがございますが、これは現在全国に何人くらいございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/28
-
029・富樫總一
○富樫(總)政府委員 数字を正確に覚えておりませんが、現在約二十人、それからこの法律施行に伴いまして、さらに民間なりあるいは大学の研究の先生方にお願いする予定がさらに追加二十人、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/29
-
030・森山欽司
○森山委員 五条第三項に、けい肺にかかったということを労働者に通知するというようになっておりますが、これについて、たしかこれは北里参考人の話であったと思いますが、軽症の者は通知する必要があるか、欧米ではそういうことをやっていないのじゃないかというようなことを言っておりました。それについては、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/30
-
031・富樫總一
○富樫(總)政府委員 これは軽症の者といえども今後注意を要するという意味におきまして、この症状決定は本人に知らせる必要があると思います。またその者が他の職場に転換した場合におきましても、健康診断との関連におきまして、自分はいつ受けてどういう症状であったという判定とか、あるいは一度の判定を受けたとかいうことを新しい事業主に知らせるというようなこととも関連して必要だと存じます。欧米におきまする事情、こういう詳細の点は承知しておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/31
-
032・森山欽司
○森山委員 第八条に関連いたしまして、作業転換の勧告を受けた。ところが作業する場所がないということで、金属鉱山等では、この転換をどうやらやってきた場合があるのでありますが、その他の職場のような場合には、非常に転換が困難だという場合がある。そういう際に、使用者がこれを解雇したというような場合は、一体どうなるのか。特に転換補償というのが転換するともらえるのですが、首になったときでも転換補償はもらえるのか。また転換して首にするというようなことは、もちろん労働関係の他の条件がからまりますけれども、そういうことで起るトラブルについて、どういうお考えを持っておられるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/32
-
033・富樫總一
○富樫(總)政府委員 その職場に適当な転換先がなくて、どうしても離職のやむを得ざるに至るというような場合においては、他の条文にございますように、職業安定機関が職業紹介、職業補導、職業指導等に努め、さらに要すれば、国が設けます就労施設等に収容して処置したいと考えております。転換給付につきましては、離職した場合でも、粉塵作業を離れたということによって別途失業保険は当然もらえます。転換給付は、離職した場合でも当然支給するということであります。トラブルにつきましては、問題が問題でございますので、円満にそこら辺は解決していただきますことを期待しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/33
-
034・森山欽司
○森山委員 その作業転換した場合における職業紹介等については、自信をお持ちですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/34
-
035・富樫總一
○富樫(總)政府委員 作業転換は職業安定機関と国の就労施設等によりまして、まず心配はないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/35
-
036・森山欽司
○森山委員 第十条でありますが「粉じん作業に従事しなくなったときは」ということについて、先ほど転換給付については、離職したときも入るということでありますが、転換給付というのは、元来は減収補償ということが建前でおきめになったのじゃないかと思いますが、その辺の理屈はどうでしょうか。従って、粉塵作業に従事しなくなったときというよりは、実は粉塵作業以外の作業に従事するときということの方が、ほんとうは正確な表現だという考え方はできないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/36
-
037・富樫總一
○富樫(總)政府委員 たとえば一たん離職しまして、職業補導所に入って半年なり、一年なりして新たなる技術をつけて他に就職する場合もございます。ですから、他に就職した場合というだけに限定する必要はなく、離職の際にそういうものをやった方が、関係者には有利になるだろうと考えて、こういうふうにしたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/37
-
038・森山欽司
○森山委員 第十二条に関連いたしまして休業補償という言葉がありますが、現在の労働基準法によりますと、三年の療養期限が切れますと、打ち切り補償をやって解雇できるわけであります。解雇されたものが休業給付というのは、何か言葉がおかしくないかと思いますが、いかがでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/38
-
039・富樫總一
○富樫(總)政府委員 言葉がおかしいというと、あるいはおかしいかとも思いますけれども、その金額なり要件なりが休業補償と同じものであるということをわかりやすくする意味におきまして、この言葉が非常にわかりやすい言葉だろう、こういう面でこういうような言葉を使ったわけであります。さよう御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/39
-
040・森山欽司
○森山委員 そうすると、打ち切り補償をやっても、必ずしも解雇をしなければならぬということはない。労働省が休業給付という言葉を使ったのは、打ち切り補償をやっても解雇しないというようなことで、休業給付という言葉をお使いになったのではないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/40
-
041・富樫總一
○富樫(總)政府委員 むろん打ち切り補償をしたからといって、当然解雇しなければならぬということはございません。会社におきましては、そのまま社宅に置いて休業の形をとる場合もあるかとも思います。両々相待ちまして休業給付という言葉を使ったわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/41
-
042・森山欽司
○森山委員 十四条の国庫負担についてでございますが、国庫負担をこの法律についてするということの理由として、たしか政府の説明では、社会保障法的なものであるから、それについて国がそういう意味で負担をしてやるのだ、こういうお話があったように記憶しておりますが、社会保障的なものでなくとも、労働基準法の体系内にある特別立法であっても、一般に対して例外的規定を設けるのであるから、従って、それについては経営者に、その種の業主に特別負担をかけるのは気の毒であるから、無過失損害賠償の理論の例外にはなるが、労働基準法の体系の例外となっておる二年分については、一部国がめんどうを見てやろうという理論も成り立ち得るのではないか。労働省の御説明のほかに、そういうような考え方も成り立つのではないか。無過失損害賠償理論の上に立っておる法体系の中においても、国庫負担ということは、考え方としては成り立ち得るのではないか、基準局長の見解を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/42
-
043・富樫總一
○富樫(總)政府委員 人によりまして、いろいろの考え方はあり得るかと存じます。しかし、これは補助金ではございませんで、かねて重ね重ね申し上げておりますように、国家的な給付について国庫が金を出すということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/43
-
044・森山欽司
○森山委員 論争するつもりはないですよ。ただ非常に重要な点だからお聞きしておる。もちろん、あなたのような考え方は成り立つ。しかし同時に、無過失損害賠償理論の上に立つ体係の中にあっても、一般に普通は三年、これは事実上五年になる、二年間だけ飛び出たことについては、こういう経済状態であるから、気の毒であるから半分だけ国が持ってやろうという理屈も成り立つのではないでしょうかということを聞くのであります。それについての見解を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/44
-
045・富樫總一
○富樫(總)政府委員 無過失損害賠償に基く負担、あるいはその他のいろいろな社会保険の負担、その他におきまして経営が困難だ、だから補助金を出そうという考え方も、もちろんあり得ると考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/45
-
046・森山欽司
○森山委員 私は、ただいまの富樫政府委員の御答弁は、まことに欣快でありますが、もし最初からそういうお考えをとっていただければ、労働基準法が特別体系としても、おそらく労使一致した線において、この法案に対する最大の問題が解決できたのじゃないかというふうに、私は今日の段階において考えておるわけでございます。この法律を出されるに際しましては、本年度の予算に関連いたしまして早急に成案を急がれたということのために、それだけの下準備ができなかったのかとも思っておりますけれども、さきに私が申し上げましたような考え方の上に立って、労働省がうまく御処理願ったならば、私は労使間の意見は必ずや一致したであろうというふうに考えております。
その次に、三十八条の「けい肺にかかった労働者のために適当な就労のための施設」ということは、どういうことをお考えだか伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/46
-
047・富樫總一
○富樫(總)政府委員 これも、前に大臣から申したのでありますが、国の一般的な健康診断の結果、要配置転換者がどういう地域、そうしてどういう性格というものを具体的に把握した上で、具体的な計画を早急に樹立したいと考えております。たとえば山間部におきましては、農場、酪農場といったようなもの、都会地におきましては、共同作業場というようなものを一応考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/47
-
048・森山欽司
○森山委員 非常に画期的な法案が今や成立しようとしておるわけでございますが、これらの法律を運営するについては、国の公権力だけで動かしていく以上に、もっと一つの民間運動的なものとしても、けい肺予防ないし補償という問題について、今後啓蒙していく必要がある。そういう意味で、けい肺に関する協会のようなものについて、この条文の一つのコロラリーというようなことでお考えになる気持はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/48
-
049・富樫總一
○富樫(總)政府委員 現在労災協会というのがありますが、もしその労災協会のほかに、特にそういうものが有効適切に独立の国体として成り立つ、またそれが非常に便利であるということであれば、考慮の余地は相当あろうかと思います。しかし現在の労災協会は、労災病院の運営を委託しておりますが、一つの病院がけい肺患者と一般の労災患者を扱うというような場合もありまして、そこら辺は相当技術的に検討を要する余地があるかと思いますので、今後の研究事項といたしたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/49
-
050・森山欽司
○森山委員 四十八条以下に労働基準監督官の権限がございますが、先般使用者側の意見を本委員会の公聴会において聴取しました際に、鉱山においては鉱務監督官がおるので、それに権限をゆだねたらどうだというような意見がございましたので、そういう意見に対する労働省側の御見解を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/50
-
051・富樫總一
○富樫(總)政府委員 これにつきまして、北里公述人からいろいろ意見がございましたが、この監督官の粉塵測定権限は、単に北里氏が言うように、粉塵作業からはずすかどうかという場合だけの権限でございませんで、実際に健康診断と関連いたしまして、レントゲン写真に出ました結節像が、果して遊離けい酸に基くものか、あるいは他の炭肺等に基くものかというような、健康診断上直接に必要な場合があるのであります。従いまして、本法に基く所要の監督権限でありますから、本法施行に当る基準系統が当然に権限を持つべきものと考えておるのであります。しかし実際問題として、鉱務監督官がすでに正確なる粉塵測定をいたしまして、その資料が信頼するに足るものがございまする場合におきましては、もちろんそれを利用することは経済的な、能率上当然のことと考えますので、その点につきましては、鉱山保安局と十分なる連携なり了解を遂げる、こういうことにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/51
-
052・森山欽司
○森山委員 これは法案全体から見れば大したことはないのですけれども、この問題については、両省間の権限問題から見ればきわめて重要だと思います。十分な了解連絡というものは、何かもっと具体的なものがある程度考えておられるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/52
-
053・富樫總一
○富樫(總)政府委員 すでに話し合いがついておりまして、向うの信頼するデータがございますればそれを利用するし、もしデータのない場合に、われわれは鉱山の中のことについてはなれておりませんので、鉱務監督官に依頼して、向うではかってくれればそれを利用する、またそれが信憑性がないという場合には、鉱務監督官と一緒になってこちらが行って調査するという了解は、現在すでにできております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/53
-
054・森山欽司
○森山委員 鉱山保安局長も来ておられるそうでありますから、ちょっとこれに関連して伺いますが、私が先般本委員会で質疑をいたしました際に、鉱山において、粉塵防止のために、さく岩事業を行う場合は湿式型を使用するとか、マスクを使用するとかいうことが規定されておる。しかし、一方炭鉱の爆発防止のために粉塵をまくようになっておる。しかも実際問題として、けい肺にとって最も有害と認められるけい酸質の粉塵が手近にあることをもって、これが往々にして散布されておるという状況で、鉱山保安法としては、鉱山に対するけい肺の予防面について、これを担当する性格も持っておるはずであるのに、首尾が一貫しておらないということを指摘いたしましたが、その後の保安局長のこれに対する御措置を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/54
-
055・正木崇
○正木政府委員 先般の委員会で御指摘がございました点につきまして、その後検討を加えましたが、私どもといたしましては、予防上の措置として万全を期する意味におきまして、炭鉱におきまする岩粉の使用につきましても、遊離けい酸質の低いものを使う、あるいはないものを使うというような点につきましての法的の規制を加えたいというように考えております。なお、その他の点につきましても、予防上若干不備な点も見受けられましたので、その点についても、なお研究を進めたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/55
-
056・森山欽司
○森山委員 四十三条に、けい肺審議会がございますが、けい肺問題は非常に重要な問題でありますので、こういう審議会に国会の代表を加えるという意見が一部にございますが、それについては、あなたはどういう考えを持っておりますか。労働省の他の審議会には、そういう例はありませんが、こういうふうな、労使が対立する場であるよりは労使協調の場である、しかもこの種の問題を大いに今後伸ばしていかなければならないというような問題については、そういうことが必要であるという見解も成り立たないか、あなたの御見解を承わっておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/56
-
057・富樫總一
○富樫(總)政府委員 行政官庁の諮問機関に国会議員の先生方を御加入願うのは、原則的にいかがかと考えます。他の労働省関係の審議会は、すべて先生方をわずらわさないということになっておりますので、さよういたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/57
-
058・森山欽司
○森山委員 これについては、他の省については幾多の前例がございます。労働省はそういう一貫したやり方でやっておられる。今回の審議の際に、これに対しては拘泥はいたしませんけれども、今後の労働法関係の審議会については、今後問題になり得る事項ではなかろうかと思っております。
最後に、五十三条の第一号でございますが、第三条第一項に違反した者は五千円以下の罰金ということになっております。使用者が健康診断を行わなければならない。それが一人拒んだら一件か、十人拒んだら十件か、いわゆる罪数の問題でありますが、これはどういうふうな御見解でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/58
-
059・富樫總一
○富樫(總)政府委員 これはいわゆる集団検診でやるわけでありますから、当日十人やる予定をやらないという場合には、それが一件、それから毎日一人ずつやる予定のところ、その日やらないという場合には、それも一件、こういう解釈でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/59
-
060・森山欽司
○森山委員 以上、前回質疑を残しました逐条的な審議をこれで終るわけでございますが、私は昭和二十六年以来、本法の成立の一日も早かれかしということを祈って今日に参ったわけであります。今回の法案に際しましても、私としての個人的な意見は持っております。しかしながら、私は今日与党の立場でありますために、それらのすべてを今度の本法の中に織り込むことができなかったことは、私の立場としては遺憾でございます。しかし、大局いたしまして、労働大臣を初め、労働省の係官の御努力によって、ともかくこの法案が提出されましたことに対しまして、ここにあらためて賛意を表しまして、私の質疑を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/60
-
061・中村三之丞
○中村委員長 中原健次君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/61
-
062・中原健次
○中原委員 一、二点について御質疑をいたしたいと思います。先ほど森山委員の御質疑の場合にちょっと関連しますが、作業転換の決定の場合、その次に起ってくるいわゆる転換職場の保障されがたいことが間々考えられる、いや、あるいはしばしばそういうことがあると思うのですが、そうなって参りますと、作業転換をなさなければならぬということが、今日のいわゆる就労事情の中から考えますと、一面には失業を約束づける、こういうことになるのじゃないか。これはやはり今日の日本の経済事情の段階で、まずもってこのことが最初の問題点になるのではないか、私はそう思うのです。従って、そういう客観情勢の中で行われる作業転換は、関連する失業の問題と結びつけた配慮が必要じゃないかというふうに考えられるのです。これについていかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/62
-
063・富樫總一
○富樫(總)政府委員 まことにごもっともでございます。そこで法律におきましては、職業安定機関の特別な活動ということを規定いたしまして、その者につきましては特別の就職、求人開拓あるいは職業紹介、あるいは優先的に職業補導所に入れる、あるいは職業指導をすることということを、特に、一般の法律にはない特別の規定をここに特筆いたして規定いたしますとともに、別の規定にもございますように、国が何とか就労施設を設けまして、そこにできる限り家族ともに収容して万遺憾なきを期したい、こういうふうに考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/63
-
064・中原健次
○中原委員 その一応の措置は、もとよりわかるわけですが、しかし一応の措置にもかかわらず、現実の実態から考えますと、そのような措置の計らいを乗り越えて、やはり完全な失業状態に追い込まれる可能性が非常に強いということが言えるように私は思うのです。そうであってみれば、それに対する裏づけとしては、一体さらにどうあるべきかという問題が論議の焦点になることは当然だと思うのです。従って、その答えとして、いわゆる転換補償の給付が取り計らわれておるということになるでありましょうが、しかし、そうであってみると、この転換補償の三十日分ということをきめられたその根拠に、相当問題点が残ってくるのではないか。つまり、言いかえれば三十日というのは、あまりにも軽きに失するということなのです。この点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/64
-
065・富樫總一
○富樫(總)政府委員 転換給付の金額につきましてそういう御意見がありますことは承知しておりますが、転換給付というものの性質が、離職後の生活を保障するという性格のものでなく、むしろ職場転換した場合に、通常賃金が一時的でも不利になるであろうからということでございます。もとより、この要転換者の現実の労働機能は、機能障害による場合におきましても、この機能障害の限度は、いわゆる四十キロの重量物の挙手を基準としていたしますので、通常の意味におきましては相当の重労働に近い労働能力を保持いたしておるわけであります。従いまして、その問題と転換給付との関係を、直ちにどうという関係にはなかろうかと存じます。問題は、要転換者の発生率は、平年におきましては、前に資料としてお配りいたしましたように、全国的に見て約四百人前後、その大部分は大会社、大鉱山でございますので、大体会社内部におきまして転換可能である、ごく少数の者が、場合によってそういう場合があり得るということでございますので、今後、ただいま御審議中の失業保険法が通過いたしますれば、この人たちには大体において長期の勤続者でございますので、失業保険の受給期間も長くなります。その間に職業補導なり特別の職業あっせんをする。それから、困難な者につきましては、国の就労施設等に収容するということで、まず万遺憾なきを期し得られるのではないかというふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/65
-
066・中原健次
○中原委員 労働機能が必ずしも全部消耗したわけでもなんでもない、軽度の労働作業は可能であろうということは言えると思うのです。しかし、一応そういう症状を持っておるからには、その労働者が受ける心理的な非常に大きな影響、あるいはそれと関連してその人の生涯に対する非常に大きな精神的な負担が課せられてくることになるわけです。従って、不治の病の一つの症状を持っておるということは、その後におけるいろいろな進行に対する不安も伴うて参りますし、かれこれ考えて参りますと、その症状を持たない他の側から考えれば、きわめて簡単に、いわゆる機械の消耗度を考える程度の考え方で扱われるかしれないけれども、私は人間という立場から考えると、非常に大きな精神的あるいは肉体的な障害事項であると思うのです。従って、そういう大きな障害を受けた労働者の作業転換についての給付というものは、そういうものを含めた考え方が要るのじゃないか。機械が何ぼか消耗した、しかもその消耗は回復しがたい消耗だからほかの方に使う、第二の場所で使うという場合に考えられる判断とはだいぶ違う。つまり、機械ではない、人間ですから、そういう考慮が当然必要になってくるのじゃないか。かれこれ思いますと、やはりそのためになされる作業転換の補償というものが三十日でよかろうといわれることに問題があるように私は思うのです。ことに今いった失業の条件がその次に実は付加されるのです、必ず失業という条件が伴うているというわけです。そうすると、一般の失業の場合のいわゆる予告手当と大体見合うた程度の補償費が払われておるにすぎないということになってくれば、どうもこの取扱いが軽く、かつ不親切である。とにかく、ほかに転換すれば足りるというような心がまえの作業転換としての措置のように受け取れてならないわけです。従って、こういう計算をなされた基礎というものが非常に問題になってくるので、この点について一つ伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/66
-
067・富樫總一
○富樫(總)政府委員 この転換補償、要転換者と申しますのは、ただいま機能障害の場合、軽微の仕事と仰せでございましたが、実はそうではございませんで、通常人間のなし得る相当の重労働までなし得るのであります。他へ職場を転換しますと、職種が変ったり何かいたしまして、ある程度不利になる場合があるであろう。しかし、その不利の限度というものをどの程度に科学的に測定するかということは、非常に困難でございます。その間いろいろ労使の間におきまして、あるいは労働協約等によって、現実にいろいろの取りきめをしておるところがあるようでございますが、本法といたしましては、やはり画一的な扱いを国としては技術的にいたさざるを得ないので、この程度ということにいたしたわけでございます。
なお、おっしゃいまするうちで、確かにお前は要転換者であるということは、精神的なショック、いわば傷あとが残っておるということについて、単なる傷あとでなく、何か心配するということにつきましては、できるだけその無用の心配をさせないように、昔は、結核にかかったなどと言われると、精神的に本人のみならず家族までも参ってしまっていたのですが、最近はそれが是正されております。けい肺につきましても、要転換程度で転換したものは、ほとんど大丈夫なんだという啓蒙なり措置なりを十分に講じて参りたいと存じます。失業問題につきましては、先ほど申しましたようにいろいろな措置を講じて、万全を期したいと考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/67
-
068・中原健次
○中原委員 結論的にいいますと、三十日は少な過ぎはしませんか。これでいいとお思いになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/68
-
069・富樫總一
○富樫(總)政府委員 これは多々ますます弁ずるといえば、弁ずるわけですが、まずこの性質の問題につきましては、この程度ということで、原案を作成しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/69
-
070・中原健次
○中原委員 やはり病状が進行しないと確実に言い切ることはできない。そうしますと、やはり大きな負担を受けることになるのですが、少くともこういう場合の転換の給付というものは、そういう大きな精神的に、肉体的に受けた負担を正当にねぎらうといいますか何といいますか、そのために必要な金額を割り出されるための努力が要ったように思うのです。従って、平均賃金の三十日分に相当する額を支給するということだけで事が足りるようには私は思いません。そういう場合は、少くともこの程度の補償を受ければという気持を労働者自身が持つことができるような、そういう金額上の措置が講ぜられなければならないのではないか。従って、これはこのままではいけない、当然当局としては、こういう場合の作業転換の補償というものを、もっと飛躍した額に補償されるような措置を講ずることを考えなければならないし、またわれわれとしても、これに対するしかるべき措置を講ずべきであるということを痛感するわけです。
さらに、それらと関連いたしまして、療養期間の限界点のことです。これは三年間ときめられ、打ち切り補償がされることになっておりますが、本来この病気が療養を要するような状態になって参りますと、ほんとうは三年や五年ではどうにもならない、いやむしろ、その病のために一生を終るのではないかということがいえると思うのです。ほんとうに残念な言い方になりますけれども、現実の医療科学の状態から考えますと、まだそこまで到達しておらないということは、だれも言えるわけです。そうなってみれば、これをそのような意味での打ち切り補償の措置でもってよろしいというように考える考え方が、当然私は問題になると思うのです。だからこそでありましょう、その後の二年間の療養を行うことができることになってはおりますけれども、これをわざわざ念入りに二段構えにするという考え方、その二段構えに取り扱おうとする考え方に、理論的に非常な矛盾があるのじゃないか。二段構えでよろしいとする根拠を聞かせてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/70
-
071・富樫總一
○富樫(總)政府委員 これは先ほど森山先生からも御質問と同時に御見解をお示しいただいたのでありますが、この法律の考え方といたしましては、けい肺というものは、他の業務上の疾病と同じように業務上の疾病である。従いまして、その観点からいたしますれば、使用者の無過失損害賠償責任は、他の業務上の疾病と同じように余後の補償をしろ。しかし、一方におきまして、けい肺は不治の病といわれているので、これは国家的と申しますか、国民的と申しますか、そういうヒューマニズムの発露として別途特別の保護措置を講じよう、こういうところに二段構えの、反対の御議論もございますが、政府原案におきましては、そこに二段構えのむしろ積極的な意味があるというふうに考えて構成されているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/71
-
072・中原健次
○中原委員 ヒューマニズム、まことにけっこうでありますが、私はこのような場合の措置として、ただヒューマニズムの立場でこれが取り上げられているというだけでは済まない。むしろ、そういう温情によって措置されているという立場にだけ労働者としては立つわけにいかない。だから、これはやはりその病にかかる度をだんだん軽減していくという措置が当然必要になってくるわけです。しかるに、この法案によりますと、そういう措置は全く見つかりません。ただ病にかかるであろうし、かかればこうするということになっているにすぎないのであります。予防措置というものが、当然講ぜられなければならないはずです。これは粉塵の吸入の度合いによって病がどうこうなるものではないというような説明があったと思いますけれども、私はそうじゃないと思う。やはり粉塵の吸入の度合いによって病の進行あるいは罹病の状態が変るわけです。これはどう考えたって変るわけです。従って、これに対する予防措置というものが、当然講ぜらるべきものであったはずです。しかるにかかわらず、それはまだ科学的にはっきりと証明がされ尽しておらぬから、一応たな上げしておく、いずれは、そういうことが立証されれば何とか措置するであろうというようなことで、当面を糊塗しているように思われる。そういうことで措置が講ぜられない、予防措置ははなはだ遺憾ながら現在の鉱山保安法の限度以上には考えられないというのでは、労働者自身の立場から考えますと一大事なのです。もう一つは、さらにその損害に対し、その大きな運命を決するような事項に対して、国家はやはり当然補償措置を講ずるということにならなければならぬ。そういう意味で、この人の生命に対する補償措置を講ずるという観点から考えますと、やはり一般並みのいわゆる三カ月間の治療期間をまず一応基礎として、そうしてその打ち切りをした後に二カ年の継続という措置をもってがまんしてもらいたいというような考え方をもって、ほんとうに足りるであろうかということが私は言えると思うのです。しかも、これだけの予防措置を講じたけれども、なおかつこうなったという場合とだいぶ違のと思う。予防措置は講じがたい、しかも予防措置がほとんどないというこの場合に起ってきた病状に対する措置としては、はなはだお粗末過ぎるのじゃないかというように感ずるから言うのですが、この点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/72
-
073・富樫總一
○富樫(總)政府委員 仰せのような趣旨もありまして、前に大臣も申し上げておりますように、でき得べくんば死ぬまでこの給付をなすべきであると考えて、ただ現実の諸条件が二年延長というところは、現実とその望ましいというところの差であって遺憾であるというふうに大臣は申されているのであります。そこら辺は、大臣の意向も御了察願いたいと思うのでありますが、その予防措置につきましては、遊離けい酸粉塵そのものに対する特有の防塵措置というものは、現在発見されておらないのであります。従いまして、将来発見されますれば、当然この法律の中に繰り込んで改正措置を講ずるわけでありますが、といって全然この措置がないかと申しますと、そうじゃないのでありまして、石炭塵とか、アルミ塵とか、あるいはセメント塵とか、一般に遊離けい酸を含めた粉塵一般についての防止措置というものは、今日相当発達しておりまして、それぞれこの鉱山保安法に基く保安規則あるいは基準法に基きます安全衛生規則にそれぞれ相当規定されております。それらの規定の施行運用に際しましては、特に一番危険な遊離けい酸粉塵職場につきましてそれらの規定を厳密に励行し、さらに行政措置によりまして、できますればそれ以上のことも勧奨するということで措置して行きたい。この粉塵防止につきましては、形の上におきましては、この法律におきましては特有の措置がないということでこうなっておりますが、実際の扱いにおきましては、できるだけの重点的な予防措置を講ずる、こういう考えでいるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/73
-
074・中原健次
○中原委員 もとよりどうにも措置できないというわけではないと思うのです。たとえば労働時間を短縮する、普通八時間実働時間とすれば、これを五時間に短縮する、こういうことは、実をいえば考えられるわけです。やはりそれだけ私は罹病率は当然軽減されると解釈するわけです。従って、そういう時間の短縮その他の措置について、相当研究をしておいでになることと思いますが、時間を短縮してみたらどうだろうかというような観点から、何か御研究になられたことがありますかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/74
-
075・富樫總一
○富樫(總)政府委員 御承知の通り、遺憾ながらわが国におきましては、特殊の一、二の人を除きまして、相当に公的に一般的にけい肺に関する研究がなされたのは戦後のことに属するのでございます。世界的に、遊離けい酸粉塵が繊維増殖性の変化をなぜ起すかというそのこと自体について、物理的な性格に基く、あるいは化学的な性格に基く、あるいは鉱物学的性格に基くというような根本的な学理が、ほとんど憶測を出ない状態にあるのに対して、さらに日本におきましては、十分なる実験的な研究データもきわめて不備である。ただいま仰せのような時間短縮がいかなる効果をもたらすか、前に申し上げましたように、今までの研究データによりますれば、遊離けい酸粉塵を吸収することによってけい肺にかかることは、もちろん確かでありますが、しかし、その分量と進行の度合いとは必ずしも並行しないというような、意外ではありますがそういうデータも出ておるようなわけであります。今までの行政措置におきましては、予防的観点で、できるならば時間短縮も有効ではなかろうかというような指導もしておるわけでありますが、まだそこら辺につきましては、明確な研究ができておらないのであります。そこで、毎々申しておりますように、この法律は現在の研究の段階と見合って作られておりますので、今後研究の進行の度合いと相待ちまして、この法律の改善をはかる、また行政施行基準も漸次改善していきたい所存であります。けい肺審議会におきましては、それぞれの専門部会を設けまして、さらに研究を継続していくわけであります。今後とも、先生方の心づきなり何なりをわれわれに教えていただきますれば、大へん仕合せと考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/75
-
076・中原健次
○中原委員 そこに実は問題があると思うわけです。まだ研究が十分なされておらないというところにも問題はあるわけですが、しかし、大体今日までのいろいろな研究のデータを基礎として考えますと、私は作業を軽度にしていくということは、これは当然考えられていいことだと思います。しかるに、それができない。それは今日のいわゆる資本主義経済の下では、なかなかむずかしいということにも、拡張すればなるでしょうと思うのですが、従ってそれだけに、やはり国家的な責任が重いということになると思うのです。しかも、そういう一つの不治の病を宿命のように背負い込まなければならぬ作業に従事させられる労務者、その立場は、やはり国家がこれに対して、普通一般の作業よりさらに格別の措置を講じなければならぬという義務が伴ってくる。だから、こういう単独立法で特に処理されたということになるでありましょうが、しかしそうであるならば、なおさらこの立法措置がはなはだ不満足であるばかりか、考え方の点がやはり欠けておるのではないかという、こういう疑問が出て参るわけです。
それと関連してくるのですが、またそればかりではありませんが、休業いたしました場合の休業給付でもそうなんです。百分の六十という金額は、実は病者の生活をささえるにははなはだ不満足なんでして、従ってこういう一般的な扱い方にやはり終っておるように思います。そうなって参りますと、休業期間中というものは、実はまさに、もう家族的にいえば、みなが飢餓に瀕する状態に落ち込まざるを得ないわけです。従ってこういう点についても、もっと考うべきところがあり得るのではないか。せっかくの御配慮によって特別立法措置が講ぜられておるにかかわらず、この点に対して、従って私ははなはだ不満を感ずるわけです。これは転換の場合の補償措置についても言えることだし、療養期間中も言えるし、休業給付についても、すべてこの給付問題全般につながって同じことが言えるわけです。従って、やはりこれをもってよしとするのではなくして、今後に問題を残しながら、これに対する特別措置をあくまでも講ずる必要のあることを当局におかれては十分心にとめてもらいたい。もとより私どもも、もっともっと要求したいことが当然従ってあるわけです。こういう意味から申しまして、せっかくの立法措置ではございますが、この法律案全般にそういうものの判断の基礎的な条件が、必ずしも妥当なことになっておらないというふうに私は思うわけです。そのような意味から、この療養期間中のいわゆる打ち切りの制限の三カ年というのを、特別に五カ年にすべきものだったということになるように思いまするし、同時にまた、休業給付の問題につきましても、百分の六十の措置をもってよしとすることは、そのような意味から考えても、どうも妥当でないという感じが非常に強くなって参るわけです。
いろいろお尋ねしたい点がないではありませんが、大体私は一応そういう補償万般についての考え方の基礎の置きどころがどうも違うのではないかということを気づかうためにお尋ねしたわけです。これに対して、今後これをもってよしとするわけではもとよりないと思いますが、政府の、ことに行政担当者の立場から考えて、今後これに対する気がまえ、あるいはそれに対する努力というものを、もっと具体的にどのようにしなければならぬかということについての御決意を、一つここで伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/76
-
077・富樫總一
○富樫(總)政府委員 人道的にも問題なけい肺につきまして、いろいろな御意見をるる拝承いたしたのでありますが、この法律は、現在の、たとえば医学の未熟な研究段階と相応しておるという意味合いにおきまして、同じ未熟さもあるかと思います。医学的あるいは人道的観点から、これを一つの出発点といたしまして、今後法的あるいは行政的その他の面を総合いたしまして、逐次充実改善していく熱意には十分燃えておるということを申し上げまして、答弁にかえたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/77
-
078・中村三之丞
○中村委員長 受田新吉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/78
-
079・受田新吉
○受田委員 このけい肺法案の五十一条に、国家公務員についての適用除外規定が掲げられておりますが、その理由はいかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/79
-
080・富樫總一
○富樫(總)政府委員 国家公務員に対する労働保護措置に関する法体系は、一般の労働法と別個に取り扱われております。従いましてまた、たとえばこの法律に基く各種の経済的措置は、労災保険特別会計と一体不離の関係をもちまして運営されていることにもなっておるわけであります。従いまして、国家公務員につきましては、本法によって措置することは、ほとんど技術的に不可能と考えられるのであります。従いまして一応除外いたしましたが、この法案の五十ページの附則の二十五項におきまして、国家公務員災害補償法におきまして同じような扱いをするというこの修正を同時にいたしておきましたので、それで支障なかろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/80
-
081・受田新吉
○受田委員 国家公務員のうちで、けい肺にかかる人がどのくらいある可能性があるか、その職種等についてお示しを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/81
-
082・富樫總一
○富樫(總)政府委員 現在のところ、国家公務員のけい肺の起り得る可能性のあるのは、窯業試験所だけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/82
-
083・受田新吉
○受田委員 今御指摘の国家公務員災害補償法の規定に、こちらの法律との関係を十分考慮するようにと掲げられてあります。「十分考慮」ということは、同等ということ、あるいはしなければならないという強行規定でないと思いまするが、その間があいまいもこになる可能性はありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/83
-
084・富樫總一
○富樫(總)政府委員 この国家公務員災害補償法におきましては、基準法に基きまする業務上の災害に対する補償につきましても、同じような文言をもって、実際に基準法の業務上の補償を下らない措置を講じておるのであります。従いまして、この補償法のこういう文言による改正によりまして、絶対に間違いなく、本法より下らない保護措置が講ぜられる、こう断言して差しつかえないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/84
-
085・受田新吉
○受田委員 先般労働大臣に、第三症度程度のけい肺患者が作業転換の必要を生じた場合に、労働省として特にこのけい肺関係を担当する職員に、特別の任用規定による採用をなし得ることがあるかどうかと御質問申し上げたら、さようなことは十分考慮したいという御答弁がありました。しからば、けい肺患者を国家公務員に採用した場合における保護措置はいかに考えられるか。ここまで十分検討を加えた法案の用意が必要だと思いますので、局長の御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/85
-
086・富樫總一
○富樫(總)政府委員 具体的に役所の仕事とその人の能力がマッチして、そして空席がございますれば、もちろん就職していただくわけでありますが、そういう場合におきまする健康管理は、もちろん各——たとえば労働省では、役所の中に診療所を持っておりまして、十分なる健康管理をいたすことはもちろんでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/86
-
087・受田新吉
○受田委員 今局長の御答弁になられた国家公務員災害補償法の第二十三条のこの規定、労働基準法との関係規定でありますが、ここにあるその「つり合を失わないように十分考慮しなければならない。」というこの文言は、もっと厳格に掲げる必要はないか。実際にこの規定を尊重しておるから間違いないとおっしゃっておられましたが、実はもっと厳密に書いておかないと、この「十分考慮しなければならない」というようなことは、考慮しない場合もあり得る可能性があるのです。この文言について、もっと厳格に規定する必要をお感じになりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/87
-
088・富樫總一
○富樫(總)政府委員 今日におきまする公務員で、けい肺にかかる可能性のあるのは、先ほど申し上げました窯業試験所だけでございますが、ただいま申しましたように、要転換者で、役所で採用した、採用した後に第四症度になりまして、本法による給付を必要とするという希有の例がかりに発生したといたしました場合には、それは前の粉塵職場に返りまして、その川口の鋳物工場なら鋳物工場において発生した患者として取り扱うのでありまして、それは国家公務員災害補償法の対象にはならないわけであります。と同時に、この文言は、先ほど申しましたように、他の法律によります補償の場合と同様の文言でございます。これで絶対に間違いないということを断言申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/88
-
089・受田新吉
○受田委員 国家公務員と関連する問題になるのでありますが、この法案には船員を除外しております。この船員を除外している理由はいかなるものであるか、運輸省の船員を管轄する局長及び厚生省の保険局長より、それぞれ御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/89
-
090・武田元
○武田(元)政府委員 この法律から船員が除外されておりますが、運輸省で所管しております船員法第八十九条によりますと、船員の職務上の疾病または負傷につきましては、船舶所有者にそれがなおるまで療養に必要な費用を負担する義務を課しており、また一方船員法第九十一条で、なおるまで毎月一回一定額の傷病手当を支払わねばならぬものとしておりまして、けい肺というのは、船員についてはほとんどございませんが、外傷性脊髄障害につきましては、これもレア・ケースでまれではございますが、この外傷性脊髄障害についても例外ではございません。従いまして、船員法によりますと、労働基準法の打ち切り補償に該当する規定はないのでございます。
ただ、つけ加えて申しますと、船員保険法についてちょっと触れたいと存じますが、船員保険法におきましては、あるいは運輸省事務当局といたしましては、船員保険法第三十一条第二号ただし書きの運用によって、外傷性脊髄障害についても、なおるまで療養の給付をなし得るものと考えておったのでございますが、このすべての職務上の障害を、三年をこえてなおるまで保険給付をするということにつきましては、保険理論上、あるいは保険財政面等で実施できない場合も考えられますので、実は昨年来船員法の改正につきまして、船員中央労働委員会に対しまして、船員法の第九十五条に、その限度において責めを免れるという字句を入れることの可否について諮問いたしておりまして、その答申を待って検討を進めたいと考えておるわけであります。この「限度において」という字句を入れた場合には、船主が保険の切れたあと、めんどうを見ることになるわけでございます。もっとも、運輸省といたしましては、船員保険法は船員法の災害補償の裏づけをなす法律である、船員法を全面カバーするという原則を推進いたしたいと考えておるわけでございますが、先ほど申しましたように、保険という特殊な立場から、必ずしもその原則通り実施できないという場合も考えられますので、先ほど申しましたように、船員法の改正につきましても目下検討いたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/90
-
091・久下勝次
○久下政府委員 大体の筋道は、ただいま船員局長からお答えを申し上げた通りでありますが、私どもといたしましても、船員労働に関する基本的な政策は船員法によって定めるもので、その裏づけとして船員保険制度というものがあるものと考えておる次第であります。そこで、今、船員局長からお話がありましたように、船員法の八十九条には、なおるまでということになっておりますけれども、同法の九十五条によりまして、同一の事由によって船員保険法による保険給付を受けられますときには、船舶所有者は災害補償の責めを免れる、こういう規定があるわけでございます。そこで、現在の船員保険法の筋道を申し上げますと、今、船員局長から話がありました第三十一条におきましては、療養の給付及び傷病手当金の支給につきまして、まず第一号に、障害年金または障害手当金の支給を受けるに至りましたときには、療養の給付または傷病手当金の支給をいたさないという規定になっておるのでございます。一方、障害年金及び障害手当金を支給いたします根拠規定によりますと、療養の給付を始めましてから三年たちましたならば、病気がなおりましても、あるいはなおらずにその期間を経過いたしましても、その人の廃疾の状況を判断して療養の給付を打ち切り、年金あるいは手当金に切りかえるということになっておるわけでございます。さような関係上、現在の船員保険法の立て方から申しますと、こういう特殊な疾病だけ特別な扱いをするということは、法律上不可能でございます。もちろん、船員保険法第三十一条の解釈につきましては、ただいま船員局長からも触れましたように、同条第二号に職務上の事由による疾病または負傷の場合にはこの限りにあらずという規定があるものでございますから、その関係上、若干の疑義がありましたことは事実でございます。そこでこの点につきましては、すでに昭和二十七年に、私どもとしては内閣法制局にも問い合せをいたしました結果、同条第一号に明らかに、障害年金または障害手当金を受くることを得るに至りましたときには療養の給付及び傷病手当金の支給はこれをやめるということが前提になっております関係上、先ほど来私が御説明申し上げたような解釈以外にいかんともいたしがたい、こういう正式な解答を得ておりますので、すべての場合につきまして、さような取扱いをいたしているわけでございます。
くどくど申し上げましたけれども、要するに私どもの考え方といたしましては、船員につきましてきわめてまれに起る可能性があります外傷性脊髄損傷につきましては、船員法の立場から、ただいま船員局長からお話もございましたように、特別な考え方をする必要があるかどうかということにつきまして、検討をしていただく必要があると思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/91
-
092・受田新吉
○受田委員 これは非常に重大な政府の大失態だと思います。少くとも船員法に規定してあるところの補償規定が、船員保険法で差し繰りされておるわけであります。この船員保険法を実際に運営管理する方は厚生省であって、保険局長でいらっしゃる。従って運輸省側で船員を管理する立場にある方が、船員法に基く規定で補償を考えておるにかかわらず、厚生省は一方で船員保険法の三十一条の規定で差し繰って補償打ち切りという措置に出る公算がはなはだ大であるということになると、船員は非常に不安定な状況に置かれるわけであります。従って、この外傷性脊髄患者は、少数であっても、船員で発生し得る状況にある人たちをいかに救うかということは、この法律が出たこの機会に、目下考慮中などというあいまいもこたるお考えでなくて、はっきりした船員法の八十九条の規定をここに十分適用するように法律改正案をお出しになるか、何らかの措置をおとりになる必要があると思うのですが、この点について、いま一度、このいわゆるけい肺法にこの問題をうたうか、あるいは船員保険法を改正するか、いずれの措置をとろうとするのであるか、政府の態度をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/92
-
093・武田元
○武田(元)政府委員 運輸省といたしましては、先ほど申し上げましたように、船員法を全面カバーする、船員法の裏づけをなす船員保険法によって全面カバーをしてもらうという方向に進んでもらいたいという希望を持っておるのでありますが、船員保険というものが特別のものであり、保険理論なり保険財政というようないろいろの点から考えまして、必ずしも実現ができないという場合に備えて、船員法の改正を検討しておるわけでございます。いずれにいたしましても、船員保険法あるいは船員法の改正によりまして船員保護に支障を来さないように措置することにつきまして、厚生省当局とさらに打ち合せの上、検討を進めたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/93
-
094・受田新吉
○受田委員 船員局長に関連してお尋ねいたしますが、船員の方々が、船員法の上で災害補償については、陸上の勤務者と比較して特に優遇されておる面があるかどうか。この点を、外国の例などと比較して特に御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/94
-
095・武田元
○武田(元)政府委員 船員につきましては、その海上労働としての特殊性、あるいは船というものの国際性に基きまして、国際条約等の関係等からいたしまして、陸上の労働者と比べまして、特別の保護につきまして立法措置が講ぜられておるわけでありますが、災害補償につきまして一、二の具体な例を申し上げますと、ただいま申しましたように、八十九条、これは療養補償の規定でございます。陸上の労働基準法には、補償の打ち切りの制度がございますが、船員法では、職務上については、負傷または疾病がなおるまで療養を施し、療養に必要な費用を負担しなければならない。また職務外の場合は三カ月に切ってございますけれども、やはり療養が施されることになっておるわけであります。そのほか、たとえば遺族手当、これは船員法の第九十三条でございますが、遺族手当を取り上げて見ますと、遺族に対しましては、船員が職務上死亡したときは標準報酬の月額の三十六カ月という遺族手当を支払うことになっております。これは労働基準法の方はたしか千日ということでございますから、船員法が上回っておるわけでございます。そういうふうに、船員法によりまして陸上の労働者に上回った保護措置が講ぜられておるわけでございます。なお、諸外国の例におきましても、一般的に陸上に比べて上回った保護が講ぜられております。これは国際条約をそれぞれ批准し、あるいは批准しなくとも、その条約の内容通り、あるいは内容に近づいた措置を国内法でとっておるという状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/95
-
096・受田新吉
○受田委員 国際法上の規定で、陸上勤務者よりはやや有利な条件が立法措置してあるということであります。しからば、船員保険法の方においては、国際法上の規定を無視して、国内法としては少しこれを下回るように措置しなければならぬというような結果になって、船員保険法が船員法に規定された約束を実行してないという結果になっておるのではないかと思うのでありますが、厚生省の保険局長といたされましては——今、船員局長の申された国際法上の規定に基いたお約束を船員の方に規定した、ところが国内法の規定としては、ほかの労務者との関係があるので、船員だけに優遇措置をとることはできないというので、職務上の傷病者に対しても国内の陸上勤務者にしわ寄せするような措置をしなければならなかったというような形に、結果的になっておると思うのでありますが、さよう心得てよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/96
-
097・久下勝次
○久下政府委員 船員法八十九条の規定そのままの形が船員保険法に現われておりませんことは、事実でございます。しかしながら、職務上の傷病につきましては、先ほど申し上げましたように三年間の療養給付をいたしまして、三年たちましたときに、その廃疾の程度を認定いたしまして、一級から六級の程度に区分して、第一級に該当するような廃疾の程度にあります者につきましては、その人の一生涯、八カ月分の障害年金を支給することになっておるわけでございます。陸上の労働者につきましては、私から申し上げるまでもなく、労働者災害補償保険法によりまして一定の期間は療養の給付及び打ち切り補償等を受けられますけれども、それ以後におきましては何ら特別な措置がなく、一般的な厚生年金保険法に基く障害年金のわずかなものが支給されるにすぎないわけでございます。そういう意味合いにおきまして、現在の制度のままにおきましても、海上労働者につきましては、陸上労働者と違いました特別な優遇措置は講ぜられておるわけでございます。ただ、船員法八十九条そのままではないということはあるのでありますが、この点につきましては、九十五条の規定を再三指摘して申し上げておりますように、私ども船員保険法の改正なり何なりをいたします場合に、決して厚生省だけ独断で仕事をしておるわけではございません。政府部内におきまして常に関係省と緊急な連絡をとりまして、その了解の上に改正をし、今日に至っておるわけでございます。船員法の九十五条に規定がありまして、一応政府全般といたしましては国会の御承認を得まして、現在のような八十九条そのままの形ではありませんが、陸上労働者に比較いたしますれば、相当上回った優遇といいますか、待遇が与えられておるということに御了承を願いたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/97
-
098・受田新吉
○受田委員 今船員法九十五条に規定してあるその限度において、特に保険の切れた後においても使用者がめんどうを見るという措置もあるのだからという、何だかこれまたいささか言いのがれのような形におっしゃっておられるのでありますが、この限度においてという言葉にも問題がございますし、また実際にその適用を受けておる人がどのくらいあるかということに非常に不安があるのですが、先ほど船員法に規定された例の職務上の傷病者、特に一級に当る者などは、一体どのくらい政府としては適用者として認めておるのでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/98
-
099・久下勝次
○久下政府委員 船員保険法に基いて、法律制定以来今日まで、現在障害年金あるいは障害手当金を支給いたしましたもののうち、傷病名として腰椎骨折あるいは胸椎骨折、脊髄損傷というような名前のあがっておりますものが、合せて二十件でございますが、そのうち障害年金一級一号——おそらくただいま御審議をされております法律の適用を受けるような傷害の程度の場合と認められます一級一号に該当いたしましたものは、従来わずかに二件にすぎないのでございます。これも業務上、職務上の原因といたしましては戦争危険ということで、二名の人が一級一号の障害年金を受けております。その他の腰椎骨折あるいは腰椎転換不能というので障害年金を受けておりますものは四件でございまして、これは廃疾の程度の最低の六級に該当しておる人でありますが、その他の残りましたものは、全部障害手当金、一時金を支給されておるものでございますので、従いまして、廃疾の程度はそれよりはるかにまだ低いものである。繰り返して申し上げますと、現在障害年金を支給しております人の中で、この法律に該当するであろうと推定をせられますものは二件でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/99
-
100・受田新吉
○受田委員 今の御答弁によると、一級一号に該当するものは二件というようなお言葉であったようでありますが、二件ということは、きわめて希有のことに属することであります。希有に属することを、いかにも職務上の傷害に対して手厚い手当てをするごとくに御宣伝になったので、こういう問題が残っておるのです。私は、きわめてまれな措置、一、二の全く例外的な措置をされたことが、この法律にうたってあるりっぱな恩典だというように御説明になったような気がしてならないのであります。もっと基本的に、船員法八十九条に規定する事項が船員保険法にはっきりと保証されるような措置、この船員法と船員保険法の食い違いというものを是正する基本的な対策を、何かの形かで現わしていただけないでしょうか。この点と、もう一つは、このけい肺及び外傷性脊髄障害に関するこの法律にうたってある船員の該当者を救済するのには、何かこの法律にうたう必要はないか、あるいは船員保険法に具体的にさらにうたう必要はないかということを確かめておきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/100
-
101・久下勝次
○久下政府委員 まず私の立場から申し上げてみたいと思いますが、先ほど私申し上げましたように、船員法の八十九条なり、あるいは九十三条なり、九十五条なり、一連の災害補償に関する規定と、現在の船員保険法の給付の関係におきましては、実質的な問題は別といたしまして、法律的には私は筋が通っておると考えておるものでございます。そこで、先ほど私が二件の事例があるということを申し上げましたのは、傷病名から推察いたしまして、この法律に関係がありそうな脊髄損傷と認められるようなものだけを拾ったのでございまして、もちろん一般の職務上の傷病に対して年金または手当金を支給いたしておりますものは相当たくさん、おそらく千件に近くあると思っております。それを一々申し上げなかったために、何か非常に希有のように申し上げたのでありますが、問題の取扱い方は、私の考えを率直に申し上げますと、この法律のような特別な労働政策上の考え方を、船員保険法の改正によって解決するという行き方は、どうであろうかということを申し上げておるのであります。これはやはり船員労働政策という特別な建前から、脊髄損傷について特別な扱いをするということでありますれば、まず現行の船員法に必要な改正を加えていただくということの方が筋であろう。私どもとして、この扱いを船員保険法の改正でいたします限りにおきましては、筋としては、職務上の傷病は独立の扱いをせざるを得ないのではないかというふうに考えておりますから申し上げたのでございまして、その意味におきまして、先ほど船員局長の御説明にもありましたように、船員法の改正がただいま慎重に検討されておる際でございますので、その際に御検討いただくべき筋合いではなかろうか、このように考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/101
-
102・武田元
○武田(元)政府委員 運輸省といたしましては、船員保険法が船員法の裏づけをなす表裏一体で運営されるという原則を進めて参りたい。労働政策の立場から立つ船員法の裏づけとして船員保険法が運営されることを希望しておるわけでございまして、運輸省の立場といたしましては、その線に沿って措置がなされることを希望しておるわけでございますが、厚生省当局といろいろ打ち合せの上、もしそれが困難である、不可能であるという場合も考えまして、船員法の検討を現在進めておるわけでございます。船員法の改正につきましては、船員法によりまして、船員中央労働委員会に諮問をいたして、その答申を待って政府が立案するということになっておりまして、目下審議中でございますので、この答申を待たなければ改正に着手いたさないのでありますが、われわれの運輸省事務当局といたしましては、見通しといたしましては、次の国会には船員法の改正を提案いたしたいというふうに考えておるわけでございます。船員法の改正については、さように考えておりますが、根本的な考え方といたしましては、ただいま申し上げたような考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/102
-
103・受田新吉
○受田委員 厚生省としては、船員法改正を運輸省にお願いして、外傷性脊髄患者なども、その方で一環の労働対策の立場から運輸省へ御苦労願いたいというお気持のようですが、しかし、今当面この特別保護法によって外傷性脊髄患者が救済される立法措置がなされようとしているときに、船員だけ例外であり得るようなことであったならば、これは非常に片手落ちだと思う。従って、この際何らかの規定を、審議会の答申を待つことなくなすべきであり、また厚生省としても、労働省としても、各省間の連絡によって、この問題を政府原案の中に盛り込むべきであると私は思います。従って、この際運輸省、厚生省、労働省の三者の話し合いによって、この船員の場合、少数ではあるが、外傷性脊髄患者が発生するこの現実を、いかにして救済するかについての結論を早く出してもらいたい。それを立法の責任者となられた労働省において、局長より最後に御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/103
-
104・富樫總一
○富樫(總)政府委員 われわれといたしましては、船員は労働省の所管外の事項でありますので、特別にこれに対する発言を申し上げますのはいかがと考えますが、この法律の精神からいたしますれば、政府といたしましては、船員たるけい肺、脊髄損傷患者につきましても、本法と実質的には同等の措置を当然に講ずべきものと考えております。従いまして、不備な点がありますれば、それぞれの官庁におきまして急速に改善の措置をなされることを期待するわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/104
-
105・受田新吉
○受田委員 運輸省では、船員局長さん、大へんお疲れでありましょうが、この外傷性脊髄障害に当る人が、この船員保険法で何かの形で救われるというように今御解釈のように思いますが、それをもう一度はっきりとした理由をお示しを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/105
-
106・武田元
○武田(元)政府委員 先ほど保険局長から御答弁いたしましたが、私の方は運輸省事務当局といたしましては、船員保険法三十一条第二号ただし書きの解釈によりまして、運用によってまかない得るものと考えておったのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/106
-
107・受田新吉
○受田委員 その運用が、きわめて希有の例をもって今お示しになりまして、一級一号は二名というような例をお示しになったのです。これは、今まで取り扱った件数はそれだけだとおっしゃるのですけれども、この少数の例外的な数字が、今後この法律の適用によって是正されると解釈されますか、運用の面において私非常に不安があると思うのです。この点、不安を一掃していただくような措置をとっていただかないと、責任転嫁のおそれが多分にあると思うのであります。この点、いま一度安心のできる御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/107
-
108・武田元
○武田(元)政府委員 脊髄障害につきまして、船員法、船員保険法によってこれを救済措置をする間におきましては、よく厚生省当局と打ち合せをすることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/108
-
109・多賀谷真稔
○多賀谷委員 関連して、運輸省並びに厚生省にお尋ねいたしたいと思いますが、船員法の八十九条では、結局疾病がなおるまで療養するということになっていますから、船員法を別に改正する要はないと思います。問題は、九十五条によって、船員保険法によってこの義務は免れているのですから、保険法の方を改正すればいいのではなかろうか、かように私は考えるわけですが、一体どういうように保険局長はお考えになりますか、それから船員局長はどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/109
-
110・久下勝次
○久下政府委員 先ほど運輸省当局と、微妙なところで意見の食い違いがあるようになっておりますが、先ほど来くどくど私申し上げておりますように、船員法と船員保険法とは、表裏一体の制度でございまして、所管は分れておりますけれども、その意味におきまして常に連絡をとり、打ち合せをしつつ運用をしておるつもりでございます。そこで、船員保険法でこの問題を特別扱いをするということは、私の考えを率直に申し上げますと、絶対に不可能とは申し上げられませんが、何分にも特別扱いをする部分について、特別な国庫負担もあるというようなことでもありますし、また考え方の相違かもしれませんが、私としては、船員の外傷性脊髄損傷がおもでありましょうが、ともかくそれにつきまして特別な扱いをするということは、やはり船員労働政策の基本的な問題の一つであると考えるものであります。この労働政策の所管をしておりません私どもの方で、厚生省所管の法律の改正によって問題を解決するということよりも、この法律案に歩調を合せてそういう特別な労働立法をするということでありますれば、これはやはり現在の制度の建前上、各省所管の関係から申しまして、運輸省所管の船員法の中に特別な規定を設けるか、あるいは船員法の特別立法をするというような解決でいくのが筋だと私は考えております。なお、この点につきましては、船員局長からたびたび申しておりますように、両省間で十分至急にこれを打ち合せたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/110
-
111・武田元
○武田(元)政府委員 運輸省の見解は、先ほど申した通りでございまして、厚生省の保険局長のような考え方もあり得ると思いますが、私の方の考えは前に申し上げた通りでありまするが、なお、保険局長のお話のように、至急打ち合せをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/111
-
112・多賀谷真稔
○多賀谷委員 その点八十九条に、なおるまで療養するとこういうようになっている、九十五条で減免の措置を講じている。それは船員保険法の保険によって災害補償をするからと、こういうようになっておるのです。そこで、このけい肺はないにいたしましても、外傷性脊髄障害はなおるまでやるという観念ならば、保険法の方によって特別の措置、すなわち、たとえば船員保険法四十条なら四十条に、三年以内に治癒せざるも、その期間を経過した場合において、こういうのをカッコか何かに入れてただし書きをつけるなり、そういう措置ができないものだろうか、こういうふうに考えるわけです。
それから労働省にお尋ねしたいのですが、船員法では、原則として疾病がなおるまでということになっておるのですから、これ以上これを入れるということも、これまた実際立法としては無理なものではなかろうか。そうすると、むしろこの法律はこれだけを特別法をもって、基準法並びに労災法、こういう関係の適用者、さらに船員法関係の適用者もこの法律によってやるのだということになれば、この法律に基いて実際の取扱いを船員保険法でしてもらう、こういうことになりはしないかと思うのです。これはどういうふうになるとお考えですか、保険局長並びに基準局長にお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/112
-
113・久下勝次
○久下政府委員 前段の問題、私から申し上げます。先ほど申し上げたことと重複を来たしますけれども、私は先ほども申し上げた通り、船員保険法の改正によって措置することは、不可能とは考えませんということを申し上げたはずでございます。ただ、船員保険法の扱いの考え方といたしましては、特別な疾病、傷病につきまして特別な扱いをするということ、そういう考え方を取り入れることは、いわゆる労働政策そのものでございまして、船員保険を船員に対する労働政策を規定しておる船員法をそのまま引き継いでやるとすれば、職務上傷病全般についての扱いをせざるを得ないのでございます。脊髄損傷だけを特別に取り上げてやるということは、船員法の建前としては無理ではなかろうかということを申し上げておるのでございまして、その辺のところは、私としては船員保険法がそういうところまで手を出すということにつきまして、若干の疑念を持っておりますので、先ほど来申し上げておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/113
-
114・富樫總一
○富樫(總)政府委員 先ほども申し上げましたように、本法の対象労働者と船員とは、他の労働条件、労働保護措置におきましても、相当に法体系を截然と区別してなされておるわけでございます。この法体系及び特別会計の扱い方において截然たる区別をされておりますので、船員につきましては、本法の精神にかんがみ、実質的にこれに下らざる保護措置が、その方の法体系において整備されることを強く期待するわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/114
-
115・多賀谷真稔
○多賀谷委員 法体来々々々と言われますが、このけい肺並びに外傷性脊髄障害に対する特別保護法というのは、これは国民病だ、こういうお話です。そこで、何もこれは基準法にそのまま乗っかる問題でなく、便宜的に基準法並びに労災法に、ことに労災保険を使ってそうして政府が見てやる、こういう形になっておる。ですから、船員の方に問題がありますのは、結局治癒するまで見てやる、こういう規定があるから、そこに法律関係が輻湊するわけですけれども、これは何も労働基準法、労災法だけというわけじゃないのですから、本来ならばこの法律をそのまま——条文はもちろん直さなければなりませんけれども、船員に適用して、そして船員保険法によって取り扱わせればできるのじゃなかろうか。もちろん、法律の改正は必要としますけれども、そういうように扱われるのがいいじゃなかろうかと思います。と申しますのは、船員法を改正するといいましても、今ごろ保険局長は言われますけれども、これはちょっと常識上考えましても、なおるまで療養させてやるというのに、さらにこれをいかにいろいろ文句をひねってみましても、どうも条文として体裁が合わないと思うのです。その点船員法を改正しましても、法律としてどうもすっきりいかない。船員保険法だけ改正すれば、本法のどこかに、法律に根拠がないという問題が起るでしょう。なぜ保険経済としては外傷性脊髄障害だけを取り扱うか、こういう疑問もあると思います。そこで、どこかに法律の根拠を求めなければならぬというのなら、やはり労働省が今お出しになっておる法律に船員保険法を乗っけて、そうして船員保険によって取り扱わせたがいい、かように考えるわけですが、もう一度基準局長の見解をお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/115
-
116・富樫總一
○富樫(總)政府委員 この法律は国家的ヒューマニズムの所産ということで、建前は基準法、労災とは関係を遮断しておるのでありますが、法律技術的な行政技術面におきましては、一体不可分の関係になっておるということは、分担金の徴収あるいは監督の方式、それから会計の扱い方等におきまして明らかなところでございます。もちろん船員につきましても、この法体系に乗せることが不可能とは申しませんけれども、それを不可能でないからといって、技術的な無理を押し切ってやることは、そこに非常な無理が生じ、行政運営の円滑さを非常に欠くことになると思うのであります。従いまして、われわれといたしましては、船員法の方の体系において一つ適当な案を急速に考案せられて処理せられることを期待せざるを得ないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/116
-
117・多賀谷真稔
○多賀谷委員 具体的に申し上げますと、例の年金をもらっておるのですから、あるいは年金を給付する期間を二年間延期して、その間休業給付とさらに療養給付をもらう、こういうことになると思います。そこで、実際問題としては、政府の費用の分担金の問題もありますけれども、例の民主党と自由党で、予算で決定いたしました二分の一を支出するといたしましても、この二年間の給付に二分の一を出せばいいわけです。そこで、従来すでに使用者が出しておりますところの年金の分といえば、いわば療養給付も一部含んでいるかと思いますけれども、大体休業給付で考えていいのじゃないかと考えられるのですが、その点がきわめて明確ではないのです。しかし、何にいたしましても、療養給付分だけをプラス・アルファするのか、あるいはやはり二年間療養給付分も、さらに休業給付分も二分の一を政府が負担すべきものかどうか、そこは政府当局でお考えになればいいわけですけれども、要するに費用を船員保険の方に政府からお出しになって、そうして実際の問題を取り扱われたらいいと思うのです。私たちは本来ならば、いやしくもこの法案がかかっておるときに、しかも今船員の適用について問題があるときに、この船員の問題を解決せずして通過さすわけにはいかないと思うのですけれども、政府では具体的にどういうようにお考えになり、そうしていつの時期に法律案の提出ができるのか、これを明確に御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/117
-
118・富樫總一
○富樫(總)政府委員 船員につきましては、先ほどから話のありましたように、船員法におきましては、そもそも基本的には業務上の疾病についてはなおるまで、あるいは死ぬまでという基本原則があるわけです。その基本原則がその保険法との関係において、ややいびつになっておるということでございますから、それさえ調整されれば、本法どころじゃない、非常に十分な措置が講ぜられるので、あえてこっちの方でこせこせいじり回すよりも、その方が非常に円滑にいき、かつ十分にいく、その点につきましては、先ほど船員局長が、法改正につきましては次期国会までに善処したい、こういうことを申されておるわけでありますから、さよう何とぞ御了承いただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/118
-
119・受田新吉
○受田委員 結局船員だけは次期国会までお預けということになるのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/119
-
120・武田元
○武田(元)政府委員 先ほど申しましたように、厚生省当局と至急打ち合せをいたしますが、船員法の改正も、今船員中央労働委員会で審議中でございますが、船員法の改正を行いますとなると、次期国会になります。具体的な船員の保護につきましては、現在のところ脊髄障害がないわけでございますが、今後起った場合も、三年間は船員保険でカバーされるわけでありますから、現実の問題としては、もし次の国会で船員法を改正する場合には、その間において保護の点においては欠くるところはない、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/120
-
121・受田新吉
○受田委員 これもごくわずかな例外を今お取り上げになって、現状においては別に措置しなくても、三年間は何とかなるんだというお話ですが、問題は今二人ほどおるわけですね。この二人の方々はどういう措置なんですか、それを一つ伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/121
-
122・久下勝次
○久下政府委員 先ほど私が二人の事例を申し上げましたのは、年金給付の決定が、一人は二十二年の九月、一人は二十三年の三月にすでに決定いたしておるので、年金の支給中のものでございます。今日となりましては、すでに療養給付の問題は、法の改正がありましても当然に起ってこないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/122
-
123・受田新吉
○受田委員 大体、船員法と船員保険法は表裏一体をなすものであって、船員法で規定する災害補償を船員保険がやってくれるのですから、それは全く一本のものでなければならないので、これが今ちぐはぐになっているということは、これは重大な法的欠陥です。従ってこの法律を、いわゆるけい肺法を採決するまでに、願わくは、船員保険を何とかすれば私はいいので、これは今の多賀谷君と同意見ですが、船員法をいじくるよりも、船員保険でその裏づけをすれば、この外傷性脊髄患者も当然吸収されるのですから、船員法の八十九条が空文にならないような措置を船員保険の方できちっときめておけば、簡単に片づく問題だと思います。従って、そういう点を十分三省間において御連絡をしていただきまして、法案審議の最終過程で、一日も早く結論をお出しいただくことを要望して、質問を終りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/123
-
124・中村三之丞
○中村委員長 滝井義高君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/124
-
125・滝井義高
○滝井委員 まず先に、今の御質問に関連しますが、外傷性脊髄障害の範囲を、大体どの程度に持っていくか、この法律の予算面で、どの程度の適用者が考えられるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/125
-
126・富樫總一
○富樫(總)政府委員 外傷性脊髄障害につきましては、法律の第二条第四号に規定しておりまして、脊髄が完全に、またはこれに近い程度に——この近い程度にと申しますのは、医学的にまず半身不随という程度のものを、この言葉で表現していると了解しております。この法律施行に関連いたしましてこの九月から年度内に打ち切り補償をなされて、本法によって療養及び休業給付のなされる対象人員は二十四名と計算しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/126
-
127・滝井義高
○滝井委員 今、船員保険のことで一級一号はわずかに二件だ、こういうことですが、そういうように、せっかくこういうりっぱな法律ができたにもかかわらず、その対象者が二十四名だ、しかもそれは脊髄が完全に切断をされたり、あるいはそれに近い程度に損傷される、こういうことになると、二十四名ぐらいでは非常に希有のことになってしまう。それに近い者は、いわゆる三年の障害打ち切りでそのままになってしまうわけですね。私はこれは、もう五十歩百歩だと思うのです。脊髄のある程度の損傷が、完全とかあるいはそれに近い程度にいかなくても、もうこれは不具廃疾、一生寝て、やがて死ぬる者が多いですね。そうしますと、これは実は船員保険で気づいて、うっかりして私はこの二条の四についてはあまり議論をしなかったのですが、これは私はもう少し程度を緩和する必要があると思うのです。保険局長にお尋ねしますが、現在この労災で、どの程度の者が外傷性脊髄障害の治療を受けておるのですか。大きな病院に行きますと、一人、二人は二年も三年もベッドを占領をしておるという外傷性脊髄障害の患者というものが、炭鉱あたりに行くとどこにも二名、三名はあるものです。そういう人たちの多くは二年、三年寝るために褥瘡ができて、その運命というものはもう果かないものなんですね。ところが、今の御説明では全国において二十四名ということです。そうしますと、この外傷性脊髄障害をわざわざけい肺と銘打って出したその法律の効果というものは、きわめて及ぶ範囲も少いということになるわけです。そういうことになると、われわれは、予算の問題もありますが、ヒューマニズムの見地から考え直さなければならぬと思うのです。現在おわかりになっておる程度でけっこうです。急な質問でわかりかねるかと思いますが、過去の実績等からも、これは労災の金を一番食うものだとは心得ておりますが、およその過去の数字でけっこうですから御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/127
-
128・富樫總一
○富樫(總)政府委員 こういう外傷性脊髄損傷患者があまり多いということは、むしろ不幸なことで、少い方がいいと考えるのでありますが、実績におきましては、過去基準法施行以来、外傷性脊髄損傷にかかりまして打切り補償を受けた者が百七十七名でございます。そして現在療養中の者は百三十八名、そのうちこの九月以降年度内に打ち切られる者が二十四名、こういうふうな数字になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/128
-
129・滝井義高
○滝井委員 そうすると、現在療養中の百三十八名の中で、打ち切られる二十四名だけについてこの法律を適用するということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/129
-
130・富樫總一
○富樫(總)政府委員 百三十八名のうち、二十四名が年度内に打ち切られて本法の適用を受ける、残りの者は来年度あるいは再来年度にこの打切り補償を受けて、それから本法の適用を受ける、こういうことになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/130
-
131・滝井義高
○滝井委員 その百三十八名というのが、この法律に書いてある完全に、またはこれに近い程度に損傷した者の数になるわけですね。そうしますと、そのほかに、やはり脊髄損傷をこうむれば、もはや再起不能で歩行できないという者が相当多いのですが、そういうものはどの程度ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/131
-
132・富樫總一
○富樫(總)政府委員 今の私の言葉は、医者でないので、しろうとで完璧な表現がしにくいのでございますが、おっしゃいますように歩行できないというような者は、従来からもこの症状に該当するという扱いにしておるようでございます。なお要しますれば、専門の医者から詳しく申し上げてもよろしゅうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/132
-
133・滝井義高
○滝井委員 次会に一つ外傷性脊髄障害に対する専門的な見解を御説明願いたいと思うのです。
次にお尋ねしますが、あなたの方の今までのいろいろな御説明によれば、このけい肺というものは国民病だ、こういうことを一貫して御主張になってきたわけです。ところが、けい肺対策審議会の労働大臣に対する答申案によれば、労使あるいは学識経験者等は、やはり本法は職業的病としてのけい肺に対する保護措置として推進してもらいたいという意見を述べておるわけです。こういう専門的な学者が職業病として保護措置をしてくれと言うのに、なぜ政府の方はわざわざヒューマニズムの見地に立った国民病というむずかしいことを言わなければならないかということですが、これを一つ明快にしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/133
-
134・富樫總一
○富樫(總)政府委員 この病気が、業務に基因する限りにおきましては、職業病と申すべきことは当然かと存ずるのでありますが、これを大臣が国民病と呼んだ意味合いは、いわゆる一般的な意味合いにおける国民病という定義とは、私も聞いておって、やや異なると思うのです。職業病ではあるけれども、しかし相当の予防措置を講じてもなかなか予防し得ないで、どうしてもかかる不治の病、そういう職業などは元来は禁止すべきである、しかしながら、国家経済の存立上、また産業上の存立を認めざるを得ない、従ってこの病気というものは、その意味においては国民病、あるいは国家的にめんどうを見てやるべき意味合いのものである。いわゆる一般に結核が国民病であるとか、何とかが国民病であるとかいう意味合いとは違って、そういう意味合いで表現したというふうに私どもは了解しておりますし、先生にもさよう御了承いただければと考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/134
-
135・滝井義高
○滝井委員 国民病の定義をあなたの方が勝手に作られている。結核も国民病である、社会的な疾患であるということは、日本の通念になっている。そうすると、けい肺も国民病だということになって、けい肺だけを二年間わざわざ国が二分の一出してやるという概念が出てくるならば、結核も当然二分の一出さなければならぬことになります。ところが、今度はあなた方が、しかしそれは職業病ではあるということもまた言っている。ある場合には国民病と言ってのがれ、ある場合には職業病と言ってのがれている。しかし、私は現在の労働法上の観念からいえば、職業病であるという概念をどこかで区切るところがなければならぬ。そうしないと職業病と言いながら、国民病と言って逃げる可能性がある。だから、結核その他の国民病というものと区別して、けい肺というものが、なるほど国民病的な要素を持っている職業病だということをきめるならば、これは現在の労働法上の概念からだんだん詰めていけば、どうしても現在の労働基準法の十九条のああいう概念以外には出て来ない。それをあなた方は、わざわざ国民病だと言って作られている。しかし、これを勝手に作られるならば、結核についても、その概念を民主党の政府は適用してもらわなければならぬことになります。これはもう当然なんです。国民は何も自分がかかりたいと思って結核にかかったわけではない。正常な、健全な社会生活をしているのに、いつの間にか結核菌が入って結核になった。ただ片一方は小さな粉塵であるか、小さな結核菌であるかという違いだけなんです。これはどちらも国民病という見地に立つならば、なぜけい肺に国が二分の一出して、結核に出せないかというその理論の説明が必要になる。結核が多いから出さぬ、けい肺は少いから出すのだという理論は立たない。これは国民病的な要素を持った職業病だという観念が、どうしてもけい肺には出て来なければならないと思う。こういうところを、滝井さんも、国民病だというからその通り了承してくれと言ったって、なかなか了承できない、筋が通らないのです。もっとはっきり筋を通して、結核とはどういうところで違う、従って結核ではこういう理由で二分の一やれない、けい肺はこういう理由で二分の一やれるのだという、もっと明白なところを出してもらわなければ困ると思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/135
-
136・富樫總一
○富樫(總)政府委員 結核の場合も、まれには業務上かかる場合もあり得るわけでありますが、一般的に言いまて、けい肺がいわゆる国民病と言われる結核と違うゆえんのものは、業務に基因してかかるからでございます。一般的に業務に基因してかかる病名を職業病と呼んでいるわけであります。そこで、けい肺は三年間職業病であって、あとの二年後は職業病でなくなるということではないのでございまして、職業病は職業病でございます。それに対する使用者の無過失賠償責任は、基準法で他の職業病と同じように取り扱う。ただ、先ほど申しましたように、用語は御批判の余地もあると存じますが、そういう不治の病にかかるような産業を、元来国家は禁止をすべきものである、こう考えられるけれども、国家経済存立上やむを得ず認める以上は、そこに出てきた者については、事業主の無過失損害賠償責任を越える分につきましては、それを国が見てやるべきである。大臣が、できるならば全額国庫負担と言ったのは、そういう観点から出ているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/136
-
137・滝井義高
○滝井委員 どうもなかなか納得しにくいのですが、とにかくもう少し職業病の概念というものについて、今後労働省はもっと明白に打ち出してもらう必要があると思うのです。そういう希望を述べて次に移ります。
この法律では、いわゆるけい肺というものは遊離けい酸塵あるいは遊離けい酸塵を含んでおるほこりを吸って起ったものということになっておる。そうすると、普通の石炭山に炭肺というものがある。いわゆる炭塵沈着症、同じように繊維が増殖する形をとるのです。そうしますと、炭肺という病名をつけられたものは、けい肺とは違うわけですが、この法律の適用を受けますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/137
-
138・富樫總一
○富樫(總)政府委員 純然たる炭肺は——私しろうとで詳しいことは存じませんが、医者の結論だけを申し上げますと、それは肺臓機能にそれ相応の障害をもたらしましても、けい肺とは格段の差がある、こういうふうにいわれておるのであります。実は従来、ことに戦前から数年前までの炭鉱においては、遊離けい酸の粉塵がないのだから、レントゲンで出てくる結節像はすべて炭肺であるというふうに過去においては誤まって処理しておったという場合が、率直に申しますと相当あったかと思います。しかしながら最近におきましては、われわれの方で石炭山を巡回検診をいたしまして、現実に粉塵測定をあわせ行った結果、これは肺臓を切って見なければ実際にはわからないのですが、現実の粉塵測定によりまして遊離けい酸がある場合は、これは単なる炭肺でなく、けい肺であるという扱いにここ数年来是正いたしております。今後はこの法律におきまして、炭坑内も遊離けい酸粉塵の飛ぶ作業場であるという前提のもとに扱いますから、数年前の過去におけるがごとき乱暴な誤まった扱いは、すっかり是正されると考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/138
-
139・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、結論的に申しますならば、大体炭肺というものは、遊離けい酸を含む粉塵、こういう解釈のもとに、それはけい肺の取扱いをしていくということですね。そうしますと、もう少しその範囲を広めて、いわゆる塵肺です。こういうものは石炭山ばかりでなく、石綿、滑石、アルミニウム、黒鉛、鉄、バリウム等いろいろなところで塵肺が起ってくるわけです。こういうものは今の石炭山における取り扱いと同じように、けい肺として取り扱ってもらえるかどうかということなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/139
-
140・富樫總一
○富樫(總)政府委員 他の塵肺とともに遊離けい酸粉塵が現実にそこの職場にある限りは、肺臓の中にできた結節像は、他の塵肺とともに遊離けい酸粉塵のためにできた結節像であると推定するほかはない。それを積極的にくつがえす根拠がない限り、他の塵肺であると同時にけい肺であるというふうに診断するほかない、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/140
-
141・滝井義高
○滝井委員 きわめて明快になりましたので、次にお伺いいたしますが、いわゆる粉塵作業場に働いておって今度離職をした。ところが、その当時はけい肺は一度ぐらいであったのだけれども、だんだん他の職場で働いておるうちに、どうもからだの調子が悪くなったということで、たまたま身体検査を受けたいという場合、これは一応職業病だということもありますが、政府の方では、そういう粉塵作業場から離れて他の職についている離職者について、何か適当な行政措置によって、身体検査をやってやる便宜をはかってやる意思があるか、あるいは具体的にどういう取扱いでそれをやられる所信なのか、これを一つ御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/141
-
142・富樫總一
○富樫(總)政府委員 従来とも、そういう方々が労災病院に来まして、健康診断を受ける場合が相当あったように聞いております。その場合、診断の結果、けい肺になっておったという場合には、労災病院におきましては、その診断の結果をざっくばらんに申しまして、便宜療養給付の中に含めて扱うことにしておると聞いておりますが、今後もこのけい肺病院は、公益法人たる労災協会に委託経営をさせていますが、この公益法人たる労災協会をして、そういう場合に十分善処させる、こういう行政措置を講じたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/142
-
143・滝井義高
○滝井委員 これでよろしゅうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/143
-
144・中村三之丞
○中村委員長 それでは次会は明二十三日午後一時四十分より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後一時二十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X02619550622/144
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。