1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年七月一日(金曜日)
午前十一時三分開議
出席委員
委員長 中村三之丞君
理事 大石 武一君 理事 中川 俊思君
理事 大橋 武夫君 理事 山下 春江君
理事 吉川 兼光君
臼井 莊一君 草野一郎平君
小島 徹二君 床次 徳二君
山本 利壽君 亘 四郎君
中山 マサ君 永山 忠則君
岡本 隆一君 滝井 義高君
長谷川 保君 山花 秀雄君
横錢 重吉君 受田 新吉君
神田 大作君 堂森 芳夫君
山口シヅエ君 山下 榮二君
中原 健次君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 川崎 秀二君
出席政府委員
厚生事務官
(医務局次長) 高田 浩運君
厚生事務官
(保険局長) 久下 勝次君
委員外の出席者
大蔵事務官
(理財局資金課
長) 福田 勝君
専 門 員 川井 章知君
専 門 員 引地亮太郎君
専 門 員 濱口金一郎君
専 門 員 山本 正世君
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七月一日
委員森山欽司君、佐々木更三君、井堀繁雄君及
び八木一男君辞任につき、その補欠として千葉
三郎君、山花秀雄君、受田新吉君及び長谷川保
君が議長の指名で委員に選任された。
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六月三十日
健康保険法等の一部を改正する法律案(岡良一
君外十一名提出、衆法第三五号)
国民健康保険法の一部を改正する法律案(山下
春江君外十名提出、衆法第三六号)
同日
医業類似療術行為の期限延長反対に関する請願
(菅野和太郎君紹介)(第二九五九号)
健康保険法等の一部改正に関する請願(林博君
紹介)(第二九六〇号)
同(大島秀一君紹介)(第二九六一号)
同(山口好一君紹介)(第三〇四二号)
同(田中角榮君紹介)(第三〇四三号)
クリーニング業法の一部改正に関する請願(清
瀬一郎君紹介)(第二九六二号)
同(松山義雄君紹介)(第二九六三号)
同(青木正君紹介)(第二九六四号)
同(福永健司君紹介)(第二九六五号)
同(五十嵐吉藏君紹介)(第三〇三八号)
同(古島義英君紹介)(第三〇三九号)
同(松永東君紹介)(第三〇四〇号)
同(川島金次君紹介)(第三〇四一号)
失業対策事業に対する就労者わく増加に関する
請願(中馬長猪君紹介)(第二九六六号)
旧軍艦陸奥の遺体引揚げ促進に関する請願(眞
崎勝次君紹介)(第二九六七号)
未帰還者留守家族等の援護強化に関する請願(
藤本捨助君紹介)(第二九六八号)
同(宮津胤勇君紹介)(第二九六九号)
同(保科善四郎君紹介)(第三〇六八号)
志布志町に授産所設置の請願(二階堂進君外三
名紹介)(第二九七〇号)
強制医薬分業反対に関する請願(大平正芳君紹
介)(第二九七一号)
同(平野三郎君紹介)(第二九七二号)
同(伊藤郷一君紹介)(第二九七三号)
同(木村俊夫君紹介)(第二九七四号)
同(青木正君紹介)(第二九七五号)
同(松山義雄君紹介)(第二九七六号)
同(内田常雄君紹介)(第三九七七号)
同(周東英雄君紹介)(第二九七八号)
同(足立篤郎君紹介)(第二九七九号)
同(小平久雄君紹介)(第二九八O号)
同(荒舩清十郎君紹介)(第二九八一号)
同(神田博君紹介)(第二九八二号)
同(薄田美朝君紹介)(第三〇四四号)
同(野依秀市君紹介)(第三〇四五号)
同(加藤常太郎君紹介)(第三〇四六号)
同(植原悦二郎君紹介)(第三〇四七号)
同(纐纈彌三君紹介)(第三〇四八号)
同(上林山榮吉君紹介)(第三〇四九号)
同(山口好一君紹介)(第三〇五〇号J
同(高見三郎君紹介)(第三〇五一号)
同(山手滿男君紹介)(第三〇五二号)
同(田中久雄君紹介)(第三〇五三号)
同(山本粂吉君紹介)(第三〇五四号)
同(横井太郎君紹介)(第三〇五五号)
同(牧野良三君紹介)(第三〇五六号)
同(阿左美廣治君紹介)(第三〇五七号)
同(阿部五郎君紹介)(第三〇五八号)
同(成田知巳君紹介)(第三〇五九号)
同(風見章君紹介)(第三〇六〇号)
同(下川儀太郎君紹介)(第三〇六一号)
同(長谷川保君紹介)(第三〇六二号)
同(森島守人君紹介)(第三〇六三号)
同(神近市子君紹介)(第三〇六四号)
同(星島二郎君紹介)(第三〇六五号)
理容師美容師法の一部改正に関する請願(大野
市郎君紹介)(第三〇六六号)
在華日本人遺骨の慰霊並びに遺骨引取りに関す
る請願(柳田秀一君紹介)(第三〇六七号)
母子福祉法制定に関する請願(米田吉盛君紹
介)(第三〇六九号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
連合審査会の開会申入れに関する件小委員の補
欠選任
健康保険法の一部を改正する法律案(内閣提出
第一〇二号)
厚生年金保険法の一部を改正する法律案(内閣
提出第一〇四号)
船員保険法の一部を改正する法律案(内閣提出
第一〇五号)
日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案
(内閣提出第一〇三号)
日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案
(八木一男君外十四名提出、衆法第一七号)
国民健康保険法の一部を改正する法律案(山下
春江君外十名提出、衆法第三六号)
医師国家試験予備試験の受験資格の特例に関す
る法律案(大石武一君外四名提出、衆法第三七
号)
医療施設の火災予防設備に関する問題
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/0
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001・中村三之丞
○中村委員長 これより会議を開きます。
連合審査会の開会申し入れの件についてお諮り申し上げます。現在法務委員会において審査中の売春等処罰法案について、連合審議会の開会を申し入れたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/1
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002・中村三之丞
○中村委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/2
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003・中村三之丞
○中村委員長 山下春江君外十名提出の国民健康保険法の一部を改正する法律案を議題とし、審査に入ります。提出者より趣旨の説明を聴取いたします。山下春江君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/3
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004・山下春江
○山下(春)委員 ただいま上程されました国民健康保険法の一部を改正する法律案の提案理由につきまして、御説明申し上げます。
この法律案につきましては、以前自由党、日本民主党、両日本社会党の四党より、それぞれ本院に改正法案が提出されていたのでございますが、その主たる趣旨内容は何れも相似たものでございまして、この際各党の共同提出として御審議願うことの方が、むしろ適当であると思われましたので、ここに自由党、日本民主党、両日本社会党の四党の共同提出の形として提出いたしたわけでございます。
次に、その趣旨内容につきましては、以前各提出者より御説明がございました点とほぼ同様のことでございますので、その詳細は省略させていただくことといたしまして、この法律案の内容について概略を申し上げますならば、保険者に対する国庫補助金のうち、療養の給付、保健婦並びに事務の執行に要するそれぞれの費用に対して交付する補助金につきましては、国の義務支出といたし、療養給付費に対する補助については、毎年総額の二割を下るを得ないことといたしておりますし、保健婦に要する費用及び事務の執行に要する費用に対する国庫補助金の各保険者に対する補助率は、それぞれ三分の一及び全額である旨を法律に明文化することといたし、交付要件及び具体的な交付方法につきましては政令にゆだねることといたしております。
以上のほか、国庫は政令の定めるところにより、予算の範囲内におきまして補助金を交付しまたは貸付金を貸し付けることができるものといたしているのでありますが、さらに現行法におきまして、都道府県及び市町村は国民健康保険に要する費用について補助金を交付することができることとなっておりますのを、貸付金の貸与をも行うことができるものといたしております。
この法律案を提出する理由並びにその内容の概略は以上の通りでございます。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことを切望いたす次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/4
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005・中村三之丞
○中村委員長 本案に対する趣旨説明は終りました。
次に、質疑に入ります。御質疑はありませんか。なければ、お諮りいたします。本案につきましては、先回撤回を許可いたしました本案と同趣旨の法案につき、質疑は尽されていると思われますが、質疑を省略し、直ちに討論終局の後、採決に入るに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/5
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006・中村三之丞
○中村委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。
本案につきましては、別に討論の通告がありませんので、これを省略するに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/6
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007・中村三之丞
○中村委員長 御異議なしと認め、そのように決します。
これより採決いたします。本案に賛成の諸君は、御起立を願います。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/7
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008・中村三之丞
○中村委員長 起立総員。よって本案は原案の通り可決いたされました。
なお、本案に関する委員会の報告書の作成等に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/8
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009・中村三之丞
○中村委員長 御異議なしと認め、そのように決します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/9
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010・中村三之丞
○中村委員長 大石武一君外四名提出の医師国家試験予備試験の受験資格の特例に関する法律案を議題とし、質疑に入ります。御質疑はございませんか。
それでは本案に対する質疑は省略し、直ちに討論、採決に入るに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/10
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011・中村三之丞
○中村委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。
これより討論に入ります。本案に対しましては別に討論の通告がございませんので、これを省略するに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/11
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012・中村三之丞
○中村委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。
これより採決いたします。本案に賛成の諸君は御起立を願います。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/12
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013・中村三之丞
○中村委員長 起立総員。よって本案は原案の通り可決されました。
なお、本案に関する委員会の報告書の作成等に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/13
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014・中村三之丞
○中村委員長 御異議なしと認め、そのように決します。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/14
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015・中村三之丞
○中村委員長 この際小委員の補欠選任についてお諮りいたします。去る六月二十七日に長谷川保君及び六月二十九日に受田新吉君が、それぞれ委員を辞任せられたのに伴い、医業類似行為に関する小委員に欠員を生じておりますので、補欠選任を行いたいと存じますが、委員長より指名するに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/15
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016・中村三之丞
○中村委員長 御異議なしと認め、医業類似行為に関する小委員に、長谷川保君及び受田新吉君を指名いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/16
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017・中村三之丞
○中村委員長 健康保険法の一部を改正する法律案、厚生年金保険法の一部を改正する法律案、船員保険法の一部を改正する法律案、日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案及び八木一男君外十四名提出の日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案、以上五法案を一括して議題となし、質疑を継続いたします。滝井義高君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/17
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018・滝井義高
○滝井委員 お尋ねいたします。今回健康保険法の改正が出ておるわけですが、政府はその改正を、赤字対策の一環として出しておると私は思うのです。ところが、この政府の赤字対策というものが、一つの無理を含んでおると思われる現象が、すでに現われて来出したということです。昨日の朝日の「声」欄に、今まで大体毎月七万二千円の保険料を納めておった。ところが五月になったところがその保険料が十万円近い保険料になった。そこで、おそらく社会保険出張所だと思いますが、それを問い合せたところが、使用人の雇い入れの日とそれから保険を届け出た日との食い違いのために、特に今まで七万二千円であった保険料が五月から十万円にはね上った、こういうことがわかったということです。七万二千円か十万円ぐらいの事業場といえば、大した大きい事業場ではない。こういうことは、やはり政府は赤字を——今までそういう使用人の雇い入れの日と保険の届出の日を大して気にとめていなくて処置をしていたと思う。ところが今度赤字が出たために、取れる財源は根こそぎ一切取っていこう、こういう考え方のもとに、おそらく全国的にこういう手が打たれつつあるのではないかと思うのです。これは氷山の一角として朝日の「声」欄に出ておるのですが、この点について、局長はどうお考えになっておりますか、お聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/18
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019・久下勝次
○久下政府委員 お答え申し上げます。まずそういう問題は、実は今回特に始まった問題ではないはずでございまして、もともと健康保険法は、法律の規定する事業所に働く被保険者に対しましては、強制適用の建前をとっておるわけでございます。そこで従来、また現行法のもとにおきましても、そうした適用事業所におきまして雇用の実態があります以上は、当然に事業主として保険の必要な届出をなす義務があるわけであり、そこに入っております被保険者は、雇用の事実が発生いたしました日から被保険者であるのは当然でございます。そういう考え方で従来とも扱っておるのであります。中には事業主によりましては、強制適用の被保険者をかかえておるにもかかわりませず、公正な届出を怠っている向きがあるのであります。ただいま御指摘になりました問題は、全然届出をしなかったのではなくて、届出はしておりましたけどれも、その標準報酬の額等に関する届出が誤まっておったという事例があると思うのであります。この問題は、実は私どもとしては、従来もそういう傾向が間々ありますので、必要な届出が正確に行われ——特に報酬の点につきまして、保険料を通脱するために低額の届出をするような場合が間々ございまするので、随時実際調査をいたしまして、そうして給与簿等も審査しました上で、届出が誤まっておれば、その届出を正確なものに直させる方法をとっておるわけであります。赤字対策としてよりも、むしろ保険制度の根本の建前に触れることでありますので、従来とも、この点は随時やっておるわけであります。健康保険を担当する者は三千数百名きり全国に持っておりません。これが二十三万の事業場、五百万人の被保険者についての仕事をしておりますので、二十三万の事業場全部にわたって正確の調べはできませんので、必要と思われるものについては、出張をいたしてかような指示をいたしておるようなわけであります。おそらくそういう問題がたまたま新聞の記事になって現われたものと思われるのでありますが、別に私どもとしては、赤字対策としてこの問題を特にやっておるというのではございません。従来から、当然なすべきこととして行なっておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/19
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020・滝井義高
○滝井委員 同じ投書の中で、もしそういうことを、今度は五人以上の事業場について徹底的に調査して調べてやられたならば、おそらく今の中小商工業は全部つぶれてしまうだろうということも、同時に書かれておるわけであります。おそらく私は雇い入れの日と保険届出の日が一致してぴたっといっておる事業場は、案外に少いのじゃないかと思うのであります。これは先般来、医者の監査の問題というようなものを非常に取り上げておりましたが、むしろ厚生省は、こういう点は私はやはり着目しなければならぬ点ではないかと思う。今、五百万人の被保険者、二十三万の事業場はなかなか調査することは困難である、しかし当然五人以上の事業場で法の対象となるものは強制適用されておる、こういう趣旨の御答弁があったのであります。同時に、同じ三十日、昨日の毎日新聞の「明日へのために」という投書欄がございますが、ここでは今度は反対のことが出てきた。今答弁されたこととは違ったことが出ておる。この投書をしておる人は、二十人の事業場に勤めておる、健康保険がないので、港区の社会保険出張所に向って、すみやかに健康保険を一つ適用してもらいたいと申し出た。ところが、それから数日して、なるほどその二十人ばかりの従業員のおる某事業所は、社会保険出張所に呼ばれたらしい。ところが、どうも呼ばれただけで、そのまま放置されておる。そのままになって、まだ自分は被保険者にならぬで困っておるのだという投書が来ておるのですが、同じ日に今度は毎日新聞の「明日へのために」というところへ出てきておる。こういうふうに、これは私は、今度は少し腹黒い言い方かもしれませんけれども、あまり小さい事業場をどんどん社会保険に入れておると、これは保険料の滞納が出てくることは当りまえであると思う。今のような赤字をかかえて、入れておったのでは大へんだ。だから、赤字対策でわざとこういうものを入れないで放置するということも、考えられないことはないのです。これは私は今、腹黒い言い方だと言ったのですが、こういう違った面が、赤字を前にして出てきておるということです。これは期せずして朝日と毎日と同じ日に出てきておるのです。今、局長さんは、強制適用をやるのだから全部やるのだ、こうおっしゃいましたが、このように、すでに一方においては、かたったところの中小企業者に対しては、保険料を根こそぎ取り上げている。これは取り上げるのは当然だけれども、とにかく取り上げていこう。しかし、あまり貧弱な企業は、保険料が取れぬから、かたっておらぬのはほおかむりしていこう、こういうことが新聞の上に現われておる。こういう点については、どうも私は今の御答弁では納得がいかない。これは港区の社会保険出張所とはっきり新聞に出ておるのだから、言っても差しつかえないと思いますが、おそらく東京の中小事業場というものは、こういうものが非常に多いと私は思う。川崎厚生大臣は、社会保険というものは社会保障制度の中核をなす、こう言っておられるので、こういう弱い事業場に対する取扱いは慎重でなければならぬと思う。しかも労働者がぜひ保険にかかりたいと言っておるのに、その社長を呼びつけておいて、そのまま放置しておる。おそらくこういう会社は、強制適用になって、前にさかのぼって保険料を取れば倒れてしまうので、当然法で適用をされるべきものが適用されておらない。保険料をさかのぼって取るなどということになると、これは大へんなことになる。こういう取扱い、あるいはあなた方のこれに対する態度、こういう点を一つ明確にしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/20
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021・久下勝次
○久下政府委員 私はその投書も一応見ております。まだ実は具体的な問題につきまして調査が済んでおりませんので、その辺のところにつきまして、はっきりしたお答えはいたしかねますけれども、ただ毎日新聞の投書を見まして、私が想像いたしました点をつけ加えて申し上げますれば、御指摘のように、それはやはり強制適用の事業所であって、事業所が怠慢のために届出をしなかったという事例であろうと思います。そういう場合でありますれば、前段に申し上げた通りでありまして、当然に事業所に対しまして届出を強制して、被保険者の利益のために健康保険並びに厚生年金保険の摘要をいたすべき事業所であると考えるのであります。そういう意味から申しますと、その投書にありますようなことが事実だとすれば、これは社会保険出張所の取扱いの怠慢でございまして、もっと敏速にその措置をとるべきものと考えておる次第であります。その辺のことにつきましては、多少推測を加えておりますので、実際の問題を取り調べまして、厳重に注意をいたすつもりでございます。
私が前段申し上げたことと、ただいま問題になりましたこととは、私は矛盾をしていないと思っておるのでありまして、いずれにいたしましても、労働者の福祉のために健康保険法並びに国民厚生年金法というものが、ほとんど同一の事業場に適用されることになっておりまして、そうして雇用の事実の発生した日から当然強制適用被保険者になるという建前をとっております。ただしかしながら、昨年のそれぞれの法律の改正によりまして、保険料の徴収の時効が切れる。つまり二年間の期間以上はさかのぼらないという法律の改正が行われましたので、それ以上には参りませんけれども、ただ問題は、健康保険法の場合と厚生年金法の場合と、おのずからその辺の取扱いには区別と申しますか、考え方が違ってくるのでございます。先ほど申し上げましたように、ほとんど大部分の事業所は、両方の法律の強制適用を受けるわけでございます。従いまして、被保険者の利益のために、特に年金の問題などについて申し上げますと、過去の何カ月なりあるいは何カ年なりの被保険者期間というものが、事業所の怠慢によってむだになるということでありますと、これは将来の年金受給権に大きな影響を及ぼすものでありますので、制度の建前から申しますれば、私たちとしては、当然にさかのぼって適用することが至当だと思うのであります。ただ、いろいろな実際の問題もございましょうから、その辺は多少の行政上の措置のゆとりはつける方が、あるいは至当であるかと思いますが、法律の適用の上から申しますと、実はその辺は厳密にやらざるを得ないのであります。しかし、今具体的な問題になりましたようなことにつきましては、私の方としても事実をよく調査をいたしまして、適正な指示をいたすつもりでございます。
なお、念のために、御質問にはございませんけれども、私どもとしては、強制適用事業所に関する限り、強制適用被保険者に関する限りは、厳正に現在の法律の執行をいたすようにやっておるのでございますが、いわゆる任意包括適用、法律の強制適用事業所ではないのでありますけれども、その事業所の被保険者の同意を得て事業主が届出をして、申請をして参りました場合には、強制適用事業所と同じように法律の適用をし得る場合がございます。この場合につきましては、行政の扱い上、私どもとしてはそれを承認するかどうかということについて、一定のワクをはめて指示をいたしております。つまり具体的には、非常に標準報酬の低い事業所が任意包括適用を申請をして参りましたときに、それを認めるということによって全体の財政にも悪影響を及ぼし、強制適用の被保険者なり事業主なりに負担をかけて、損失を及ぼすというようなことにもなりますので、任意包括の事業所の認定につきましては、標準報酬の額等に十分検討を加えまして、あまり低いものが、しかもたくさん入ってもらうことによりまして、強制適用事業所の被保険者、事業主が不測の損失をこうむらないようにするのが、私どもの使命であろうと思いまして、この点につきましては若干の手心を加えておりますことを、念のために申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/21
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022・滝井義高
○滝井委員 中小の事業場におきましては、事業主にしても、労働者にしても、それぞれこういう社会保険の諸法律の知識が十分普及徹底しておるとは考えられないので、もしもやくし定木通りに法律を適用するということになれば、特定事業場に至っては、あるいはそのために金融上の措置がつかずにつぶれてしまうという事態が起らないとも限らないので、その間は十分一つ行政上の温情をもって——ときには峻厳にやらなければならぬ場合もあると思いますが、やっていただきたいと思います。
そこで、こういう健康保険のいろいろな赤字の対策というものが、私は現在そういうような面にも現われているのじゃないかという疑いを持ったわけですが、同時に、これは国民保険にも少しく現われてきたということです。それはもちろん、市町村の財政の赤字ということのための原因もあると思いますが、たとえば、最近往診料や何かを、もう給付の対象から除外するところが出て参ったということです。私の方の福岡県におきましても一、二そういうところが出てきました。今までモデル・ケースといわれておった国民健康保険の運営をやっておる市町村の中にも出てきておる。こういうことは、やはり私たちは十分考えなければならない問題だと思うのです。そこで、現在の状態で放置しておりますと、この国民保険自体というものが、将来社会保障制度の根幹として伸び行かない状態が出てくるのじゃないかということを私は心配するのです。こういう点について、今後どういう方針で、大体国民健康保険の制限治療を防止をしていく所存なのか、これを一つあわせて述べていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/22
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023・久下勝次
○久下政府委員 国民健康保険につきましては、今日の段階におきましても、市町村によりましては、今御指摘の往診料は自己負担にしたい、あるいは入院料に対しても一部自己負担にしたい、歯科補綴の給付をしない、いろいろな給付制限を行なっているところがあるのであります。これは医療保険の理想から申しまして、当然漸次改善をしていかなければならないものであると考えまして、実は私どもが現在やっております指導なり何なりを一通り申し上げてみたいと思います。
まず第一には助成交付金の——その前にちょっと御了承を願いたいと思いますのは、そういうふうにやっておりますについては、大体調べてみますると、財政上の理由によるやむを得ざる措置であるところが多いようであります。従ってこの点は、ある程度は了承せざるを得ない面もあるのでありますけれども、しかしながら、昭和二十八年に助成交付金が実現をいたしまして以来、私どもとしては、この種の給付制限につきましては、漸次健康保険と同等の給付をするようにということを一つの目標にいたしまして、三年ないし五年計画で、その実情に応じて給付内容の改善をはかるように、一般的に指示をいたしておる次第であります。助成交付金という新たなる財政援助ができるようになりましたので、この点は、かなり強く指示できるような工合になったのでありますが、一方市町村の一般会計の繰入金も、実は助成交付金が出ましたとたんに、あちこちで一般会計繰入金を取りやめようというような機運が現われましたので、これにつきましても、今申し上げた財源確保という面から、むしろこれはだんだんふやすことこそ適当でございまして、助成交付金が出たことを理由にして、一般会計からの繰入金を減らすようなことは適当でないということで、この点も厳重に指示をいたしておるわけであります。一般会計繰入金も、そういうような指示のせいばかりではないと思いますけれども、市町村自身も国民健康保険の重要性を認識せられたことが、もっと大きな理由であろうと思いますが、実績によりますと、年々一般会計繰入金もふえておりますような状況であります。そういうふうに、助成交付金なり、あるいは一般会計繰入金なりが増すことによりまして、給付内容は漸次改善をされつつあるわけでございます。
なお、保険料の額につきましても、大体現在は、一世帯当り二千二百円くらいまでになっておりますが、これも逐年大体二、三百円ずつ保険料の額が平均でふえております。こういうことで、財源も漸次確保されておりますので、ただいま御指摘のような問題は、少し長い目をもって見ていただきますれば、漸次改善をしていくのではないかと思うのでございます。
なお、つけ加えて申し上げますが、多少間接的な措置ではございますが、助成交付金の交付をいたします場合の交付方法が、すでに御案内の通りきまっておりまして、四つの方式をそれぞれ加味してやっておるのでありまするが、その中に療養給付費助成交付方式というのが一つ入っております。これは療養給付費の被保険者一人当りの額の高低に応じまして、助成交付金を配分をする割合を変えておるのでございまして、比較的費用のかかりますような国民健康保健には、それだけ比率の高い助成交付金を交付するというような算定方式をとっておるのでございます。この辺は、ただいま申し上げました給付内容の改善には、間接的な効果ではありますが、給付内容を改善すれば、当然療養の給付費が高まって参りますので、そういう意味合いにおいて、これだけのものについてはそれに応じて、全部ではございませんけれども、助成交付金交付そのものの中にもそういう考慮は加えられておることを、つけ加えて申し上げたいと思います。
以上申し上げたようなことを総合的に指導をいたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/23
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024・滝井義高
○滝井委員 大蔵省が見えておりますので、健庫保険の問題はもう少しあと回しにさせていただきまして、理財局の福田資金課長にお尋ねします。
今回のこの自民の予算修正によりまして、資金運用部の運用計画に相当の変化が起ってきておるわけですが、どの点とどの点に変化が起っておる、そして資金運用部のやり繰りといいますか、それはどういう工合になっている、こういうことをまず一つ簡単に御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/24
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025・福田勝
○福田説明員 ただいま御質問のございました点につきまして御説明申し上げます。
資金運用部の財政投融資金計画のうちにおきまするその一部といたしましての運用計画につきまして、お話しのございましたように、自民両党の一般会計の予算修正に関連いたしまして、当然影響を受けましたために、所要の改正をすることになったわけでございます。
原則的な大きなところから申し上げますと、修正前におきまして、一般会計からこの政府の財政投融資計画の財源として使うことになっておりました二百六十二億というものが、修正によりまして百七億に減額された次第でございます。従いまして、そのそれだけ減額になった分を資金運用部その他簡保資金でございますとか、何らかの財政投融資上の措置によって補うことが必要になった、それが一つ。それからその次は、今度財政投融資の増額修正と申しますか、財政投融資面の需要の増加がございまして、それがたしか四十億ふやすことになったわけでございます。
そこで、その二つを考えます場合に、一般会計の方から減ったものを、それだけ資金運用部の、たとえば郵便貯金が伸びるとか、あるいは資金運用部でなくても、簡易保険の当初の予算を提出いたしました当時の見込みがそれよりもふえるとかいう問題があって処理することができれば、それも一つの方法であったと思いますけれども、御承知のように今年度は非常に当初から、従来のインフレ経済のもとと違いまして、資金の蓄積もそう思ったよりも、どんどん伸びていくといったような傾向も比較的なくなって参りまして、そこらを相当注意して現実的に見なければならないように相なっておりますので、結局資金運用部といたしましては、先ほどから申し上げましたことを数字的に申しますと、資金運用部の当初金融債を引き受けることにいたしておりました額の中から、四月、五月中に、すでに暫定予算に関連いたしまして引き受け済みのものを除きました今後引き受ける予定であった金融債を全部引き受けないことにいたしまして、百四十一億一千万円というものを資金運用部の面から新たに財源として出す。これはつまり、資金運用部の今御説明いたしましたような郵便貯金その他の原資の増加ということでなくて、今までのほかに使うという予定をしておったものを、それだけ圧迫いたしまして、それは民間資金によって今年度さらによりよく調達されるであろうという想定のもとに、資金運用部の財政資金は出さないということにいたしまして、百四十一億円の運用の節減によって財源を出す。それからそれのほかに、資金運用部と実はやはり一貫した問題になるのでありますが、国鉄に対して資金運用部から貸すことにしておりました金額の中から四十五億ばかりの金額は、国鉄が一般民間金融市場で消化いたします公募公社債をふやすということによりまして、さらに財源を浮かす。それでもなお足らない分が、二十八億九千万円ばかり出て参りますので、それはこの予算を提出いたしました当時におきまして資金運用部の原資を見ておりました見方を、それから以後の数カ月間における実際の傾向によって見直しをいたしまして、外国為替特別会計その他の決算の見込み等も立って参りましたので、そういったものによりまして、確実であると思われる修正をいたしましたことによりまして、原資を二十八億九千万円ばかり出す。ただいま申し上げました金融債の減少の分とそれから国鉄の公募債に資金運用部から貸すことを切りかえるという措置によるものと、それから最後に申しました原資の増加というこの三つの要素によりまして、二百十五億というものを、新たなる組みかえに伴う資金運用部の増加というものの方に充てる財源として出した次第でございます。二百十五億円の中で、まず最初に申し上げましたように、四十億は純粋な意味における財政投融資の需要の増加に充てるのでございます。
この二百十五億を、しからばどういうふうに支出の方に使ったかということを次に御説明申し上げますと、今申しましたように、四十億は純粋な財政投融資の増加に使いまして、二百十五億から四十億を引きました残りの百七十五億の中で、二十億は一般会計の予算修正に伴いまして当然必要になって参ります地方債の増加に充てることになったわけでございます。そうしますと、残りは百五十五億ということになります。この百五十五億は、一般会計から財政投融資の方へ一般会計の金を繰り入れることになっておったものを、繰り入れをしなくなったということに対する見返りとして出した、こういうことになっておるわけでございます。
さらに百五十五億の中を詳しく申しますと、六十七億は、それは究極的には減税の財源として寄与することになり、八十八億は一般会計のそれによるもろもろの御修正になりました歳出の増加に充てられるということになっておったわけでございます。で、純粋の意味における財政投融資の増加の四十億というのは、もう御案内のように、十億は電源開発会社の資金が足らないということに充てられ、残りました中で中小企業金融公庫にさらに十億を追加いたしまして、国民金融公庫に五億追加いたしまして、それから国有鉄道の新線の建設に五億追加になったわけでございます。
両党の修正によりまして、大体の全体の御趣旨はそういうようなことで、結論といたしまして、資金運用部では先ほど申しましたように二十八億九千万円という新たな財源をその後の情勢を見直して出したほかは、結局必要な財源は、すでに運用に予定しておりました金融債の運用を大幅に削減する、それから国鉄へ貸すことにいたしておりました額を減らしまして、それを国鉄の一般金融市場における調達の公募債によってまかなうようにすることによって組みかえをいたしたわけであります。なお、表にしたものを、あとで御提出してよろしければ御提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/25
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026・滝井義高
○滝井委員 運用計画の大体は今お聞きしたのですが、詳細なことは、あとで表にしていただきたいと思います。そこで問題は、今の御答弁の中で、インフレからデフレに経済が転換することによって、資金の蓄積が思ったようにいかない、こういうことでございます。そこで、今度の修正によって、少くとも二十八億九千万円ばかりの資金運用部の原資に不足が出てきた。これを外国為替特別会計等の決算によって、そういうものから出てきたということですが、問題はこの二点なんです。二十八億九千万円というものを、もうちょっと具体的に御説明願いたいということが一点と、いま一つは、今後の日本経済の運営の面から、原資がどの程度ふえてくるかということです。運用計画は全部で千六百八十三億ですか、これが少し変ってくることになるのですが、そういうものが、とにかく今年中にどの程度の増加があるか、この二点を少し御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/26
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027・福田勝
○福田説明員 ただいまお尋ねになりました二点につきまして、まず最初の二十八億九千万円ばかりの内容についての御説明を申し上げます。御承知のように、政府のあらゆる特別会計その他の収支の余裕金その他も、全部反映して参りますような組織になっておりますので、非常にテクニカルな判断を必要といたしますので、その情勢によって、常にある程度の動きがございます。その点は御了承いただきたいのでございますが、この二十八億九千万円を出しました当時におけるわれわれの見通しにおきましては、まず外国為替特別会計におきまして、前年度の決算の見通し並びに本年度中における確実だと思料せられる資金繰り等から十一億程度というものを増加に立てたのでございます。その次に国有林野特別会計におきまして、実は農林省関係のいろいろな仕事の御計画がございましたので、年度途中におきまして払い戻しを十億くらい見ておかないといかぬのじゃないかという情勢にございましたが、その後いろいろな点で変って参りまして、その払い戻しの十億というものを見込まないでもやっていけるように相なりました。そういたしまして、残り約七億九千万、八億くらいのものでございますが、これは非常にいろいろな印刷局特別会計とか産業投資特別会計、輸出保険特別会計、中小企業特別会計、貴金属特別会計等の、きわめてささいな情勢変動によりまして、一億ないし二、三億の金が確実だと見込まれるように相なりましたので、それによって措置いたした次第でございます。
それから御質問の第二点の本年度の資金の伸びの問題、おそらく御質問の背景には、健康保険特別会計に、予算で資金運用部から六十億お貸しすることにきめられております点についての確実性について、考慮をなさっていらっしゃるのじゃないかと想像いたしますが、全般的な問題といたしまして、今年度の今後におきます郵便貯金の伸びであるとか、あるいは簡易保険、厚生年金その他の各特別会計の積立金の余裕金、積立金の予想というような問題並びにその他の民間の資金蓄積の問題ということにつきまして、一般論的なものを申し上げますれば、経済審議庁その他の計画におきましても、国民所得も伸びることになっておりますので、理論的にわれわれの方でずっと歴史的な国民所得の伸びと、それから郵便貯金その他の伸びとの対比研究等をいたしてみましても、三十年度におきまして、二十九年度よりも非常に減っているだろうというふうには必ずしもいえないのでございます。従いまして、資金運用部でただいま一番重要な基礎的なべース・ラインになっております一千百億の郵便貯金の純増というものが期待されているわけであります。これは前年度約一千十四、五億の実績に対しまして、約八十五億程度のさらに増加、伸びを見ておりますが、これが今の段階におきまして、絶対にできないというふうな判断は、必ずしもしないでいいというふうに考えております。これは毎日のような郵便貯金の伸びを数次にわたりまして非常に研究いたしておりますが、今年度、例年に比べまして年度当初における傾向は必ずしもよくございません。新聞その他にも出ておりますように、農業協同組合関係の預貯金の伸びと郵便貯金は、必ずしもよくないのでございますけれども、一方民間資金の方の伸びは、銀行その他はいいようでございますので、財政資金以外の、先ほど申しました国鉄の肩がわりをやって民間資金調達に変えていきました財源の方は、まず大体において今年度資金蓄積が、今までよりはデフレ下であっても、十分行くだろう。残りました資金運用部の方の財政資金の源泉である資金が、結局一千百億の郵便貯金を中心とするわれわれの方の想定が行けるかどうかということが問題になるわけでございますが、郵政省側におきましても、この七月以降非常に力を入れて貯蓄増進運動を推進することに計画しておられまして、また大体例年におきましても、一月の郵便貯金のでき方というもの及び二月あたりが天下分け目になるくらい、実は貯蓄の増強では重要なシーズンになっております。そういうことから申しまして、現在の段階におきまして、直ちに郵便貯金一千百億の見通しを変えなければならぬかどうかということについては、必ずしも変えなくてもいいのじゃないかというふうに思っているわけであります。ところが、先ほど申しましたように、おそらく御質問の背景にある、そもそも六十億というものは、当初ここに上っている計画が、さらに年度の末までに六十億ふえなければできない勘定になるのじゃないか、だから、そういう当初の計画ぐらいができるということだけでは、健康保険の方に資金運用部から確実に貸せるという答えにならぬじゃないか、こういう御議論になると存じますが、その点につきましては、もう再三本会議及び予算委員会におきましても、大蔵大臣から御答弁申し上げておりますように、とにかくいかなることがあっても、万難を排して健康保険の六十億の赤字の貸付をやるということは、政府としても答弁をいたしておりまして、そういう決意でございますので、従いまして、かりに郵便貯金だけが一千百億以上に伸びなかったというような——今申しましたように、郵便貯金だって一千百億以上になるかもしれませんが、かりに郵便貯金が一千百億に据え置かれたり、またはそれ以下にかりに下った場合でも、その他の伸びというものを努力いたしまして、それによってやるということであり、また年度の過程におきまして、実は御承知のように財政投融資の計画の中でも、産業資金の見込みなどというようなものにつきましては、みな予想されている時の事業計画なり、あるいは物価ベースなり、海運の市況であるとかいろいろな動き、経済ファクトを入れた問題でございまして、実行の過程におきましては、常に増加があり減少がございますので、それらの過程において、われわれとしては必ず年度内に六十億の貸付は実行する、こういう考え方でおります。
そこで、まあ客観情勢として、一体、全体的な預金なり資金蓄積というものが楽なものであるかどうかという御質問に対して、総合的に申し上げれば、それはもちろん二十八年度までにおきます日本経済のときのように、ぼうっとしておってもどんどん金が資金運用部の方に入ってきて、大てい補正や何かのあれに事欠かなかったというようには、目下の段階におきまして楽なものであるとは、われわれは良心的にいって考えておりませんけれども、ただいまの六十億の関連におきましては、そういうような操作におきまして、必ず年度末までに実行いたしたい、またできるというように確信いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/27
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028・滝井義高
○滝井委員 福田さんは、質問しないところまで背景を言うて答えてくれましたが、ありがとうございました。なかなか眼光紙背に徹しておられて大したものですが、実はどうも予算委員会等で私が質問をしても、納得いかないのです。今のように、大蔵大臣も決意は語られる。しかし、やはり資金運用部の運用計画というものは、当然資金運用部の審議会の議を経てわれわれの手元に出てきているものなんです。やはりこれは信念だけでは満足ができない。こういうものは、やはり予算にすでに数字で現われてきているのです。借入金として厚生保険特別会計にぴっと六十億現われてきているのですから、従って、当然あなたなり大蔵大臣なり主計局長の信念ではなくて、やはり数字の背景を示してもらわなければいけないのです。それは郵便貯金が二十九年においては九百億円一応原資が入るであろうと見ておったのが、これが千十四億入っているのですから、約百十億入ってきているわけですね。しかし、これは、私は何といっても資金運用部の原資の大宗をなすものは、郵便貯金だと思うのです。これは今あなたの御説明のように、農協あるいは郵便貯金の伸びというものが非常に鈍化していることは隠れなき事実です。そういう情勢の中で昨年の金融情勢と本年の金融情勢とを比べると、これはもうはるかに今年の方が金融情勢が悪い。予算も一兆円で締められている。よくない。よくないから、自民の予算修正というものは、われわれが非常に勉強してもわからないような資金のやりくりをやって、しかもこの金融債というものを、公債発行の端緒を開くではないかといって野党から攻撃されるような道まで開かなければ、財政投融資のワクというものにおさまらなかったのです。そういうような情勢の中で、この千百億円という、過大ではない、むしろ適正であっても、昨年よりか二百億多く、予算面では原資の運用を見積っている。それでもなお逆にプラスの百億くらいが加わってこなければ——これは何も健康保険の六十億だけではないので、今後いろいろな問題が出てくることは、昨年の前半の運用計画と実際の運用計画の開きというものがやはり百億くらいあった、これを見てもわかるのです。そうすると、健康保険の六十億というものは、すでに予算を組む当初からきまっていることです。おそらくこの六十億にプラスの百億くらいのものが、去年あるいは一昨年の例から見て出てくる情勢にあるわけです。なるほどあなたは、六十億は確保する、確保するとその信念を述べられておるけれども、やはり日本の経済情勢を見た文字の背景というものが、ここに出てこなければいかぬと思うのです。私は、これは大蔵大臣なり厚生大臣が来たら言いたい点ですが、おいででないので、どうも保険局長に言わなければならぬことになるのですが、なぜ自民の予算修正のときに、こんなに大幅な資金運用部の計画の変更をしたときに、六十億入れなかったかということなんです。これは川崎厚生大臣が、十億の金を取ったのだと盛んにいばられておりますけれども、私はこれを現実的なものにするためには、当然この予算修正のときに入れるべきものであったと思う。それをなぜ入れなかったか、その理由を私はお聞きしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/28
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029・福田勝
○福田説明員 はなはだ恐縮でございますが、厚生省のお答えになる前に、ちょっと一言御説明を補足させていただきます。
まことにごもっもなお話だったと思いますが、実はからいばりな、そういう単なる客観情勢と離れて信念だけを申し上げているわけでは決してないのでございまして、そういう無責任なことは、これはもう事務当局としてはできませんから、客観情勢からいって必ずできるという裏づけがなければいけないということが一つと、それかもう一つは、なぜ当初から六十億予算の中へ組んでないかということに対して、完全に御納得がいかないまでも、多少なりともそうかなとお考えいただける程度の理由がなければおかしいと思うのです。それから最後に、修正の際に六十億資金運用部に——一般会計の修正についてのお話であれば、全然私から申し上げる筋ではありませんが、預金部の繰りかえ修正になぜ六十億入れなかったかという厚生省側に対するお話であったとすれば、その点について、いささか利の方からお答えしなければならない道徳的義務があると存じますので、その点だけ三つ話させていただきます。
まず第一に、最初から六十億の借入金というものが、ほかと同じように上ってないということは、何だか誠意がないやり方ではないかというふうに見える。これはわれわれが説明しなければ、そう見えると思うのであります。その点について申し上げますが、実は特別会計というものは、非常な恩典と申しますか、財政と申しますよりは、日本の国庫制度その他におきます一つの恩典がございまして、それがすなわち国庫金余裕金の繰りかえ使用という実は制度なのでございます。これが民間の、たとえば金融債を引き受けておる銀行であるとか、あるいは制度的にはともかくとして、実際問題として住宅金融公庫であるとかいったようないろいろなものには、余裕金の繰りかえというものをやるかというと、こういうことはやらないわけでございまして、これはとりもなおさず政府の国庫金というものが、一般会計も特別会計も全部日本銀行という一つのところを中心にして出たり入ったりいたしますので、そこに集まった金というものは、ある会計が非常に困っておるときは、ほかの余っておるところの会計から使うといったような、いわば常識的に御説明すれば、そういうようなことによりまして、日本銀行を中心にして出入りいたします国の金を効率的に使うという制度から、相手が国である限り、特別会計にそういう制度があるわけです。この制度でいけば、金利なども、いわゆる借入金として借りるよりは非常にいいわけでございまして、そういう点からいって、必ずしも最初から資金運用部に六十億を立てて、そうして堂々と男らしく借金をした方がよいわけでもございません。もちろんその方が、おっしゃるように安心感はあると思いますけれども、しかし、そういうわけで年度のぎりぎり一ぱいまでともかく余裕金の繰りかえという制度をやった方が、厚生省の方も御便利だということは、これはうそでもなんでもないのでございます。
そこで、しからば一体財政投融資の支出の方の見通しにしても、収入の見通しにしても、これは神様でない限り、どんな偉い大蔵大臣がおっても、どんな優秀な理財局長がおりましても、これは神ならぬ人間である限り、今から十二カ月後に日本全土の情勢がどういうように変ってくるかという結果は、資金の伸びは、あるところは伸びるし、あるところは伸びない。これはあまり抽象論をやっておりますと、御信用にならぬに思いますから、端的に一例をあげて申し上げれば、去年の今ごろにおいては、日本のプラント輸出は非常に重大問題で、輸出入銀行の去年の財政投融資の計画は、金が入っていないじゃないかということで、連日新聞では、預金部資金百億不足して、一体これをどうするかというような問題を書きまして、通産省その他からずいぶん大蔵省などに要求がございました。ところが、金がないというようなことを言って、輸出が伸びないということを言うことは、日本の経済にとって自殺的だと思うのですが、何だかんだといっておるうちにその契約ができたけれども、実際金が出ていくのはおくれるという理由によって、百億足らぬというのだけれども、もう年度すれすれ一ぱい三十年度までのところ、ほんとうに厳格な現金だけのベースでもって見ますと、なくてもやっていけたというような格好に去年の財政投融資でもなったわけです。それも、技術的になって恐縮でございますが、輸出契約というものから見て、確かに金は九十億も食い込みになっております。従って今年度におきましても、大蔵省といたしましては、来年もプラント輸出二百二十億を見ておりますが、これは輸出が伸びるということを言う人から言わせれば、二百七十億あっても足らぬぞというお話がくるわけでございます。その他もう電源開発でも中小企業でも、足らぬ足らぬというお話でもってわれわれの方にはくるわけでございます。実際一年間の経過におきましては、そういった需要の変動というものは、これはどうしても人間である限りやむを得ないと思う。われわれとしては、筋の立つ一番妥当であるという線において見込みをやっておるわけであります。従いまして、その結果として各方面、どの方面においても、十分御満足のいっているところは一つもないという結果になると思いますが、そういうことによりまして、必ず年度の過程において減になってくるところもある。今年度の問題などについても、わからぬということがございます。しかしながら、かりに万一どうしても減の方も思うようにいかない——それから先生のただいま御指摘になりましたように、何も健康保険六十億だけを考えておればお前の方はいいというのじゃないだろう、ほかの方に災害が起きてくるかもしれない、これはごもっともな話で、われわれも六十億をお貸付することを考えるに当っては、もちろんそれ以外の例年のように起きて参ります災害その他における地方債その他に関連する融資の増をどうするか、そういったような問題を全部考えた上で、ただいまでも考えておるわけでございます。それでも、いよいよ最後になってどうしてもいけないというときに、なおかつ六十億やるという自信がある。それも決して空言ではないのでございまして、もうそこまで御追及になれば、それは今のわれわれの事務当局として、最後のあれでございますけれども、どうしてもやむを得ないというような情勢が一われわれはそうはならぬというふうに、今までの体験によって確信を持っておりますが、万一どうしても仕方がないという場合には、繰り越しを、われわれが今まで、資金運用部の運営の憲法としては、絶対に手をつけないというふうにやって参りました繰越金を多少食い込んでも、六十億というものはやらなければならぬ、こういうふうになるわけでございます。それなら、ほかの方に対して今まで繰り越しというものには手をつけないでやってきたものが、どうしてこれだけは手をつけることができるか、こういうことになると思いますが、それはただいま申し上げましたように、年度までの期間において裕余金繰りかえでいける。それから来年度になりましても、今われわれは六十億は借入金でずっとお貸しして、それでいいのでございますが、もしも厚生省側の方で御要望があれば、若干はまたお貸ししたあとで、年度を越してから国庫余裕金の方にかえていくということも、御相談によっては考えられる問題でありまして、まあとにかく、決していいかげんな、場当りなことを申し上げた次第ではございません。
それから第三点に申し上げました、なぜ一体厚生省は、予算組みかえに関連する資金運用部の修正計画のときに、六十億を上げさせなかったかという御追及がございましたが、それにつきましても、あの段階におきましても、われわれとしては十分その問題も検討したのでございますが、最初に申上げましたように、年度の過程は余裕金でもっていけるという特別会計の制度を生かしていくという観点との関連におきまして、今の段階においてわれわれが、あの金がふえるだろう、この金はこうだとかいうふうな修正をやるよりも、もっと確実になった今年の秋以後、もしくはもう来年の初めに入って、そのときの確実な資金の予想を見た上で、その六十億を掲げる組みかえ案を資金運用審議会にかけて、所要の手続をとった上で二、三のあれをお約束した通り実行した方が、事務的には正しい手続だ、こういうふうに考えましてやった次第でございまして、別に他意があったわけでもなんでもございませんので、十分御納得いくところまではとても行かぬと思いますけれども、まあ多少なりともわれわれは良心的にやっておるという点だけ一つ御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/29
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030・久下勝次
○久下政府委員 資金課長の説明で、私からつけ加えるほとんど何ものもなのでありますが、私どもといたしまして、資金運用計画の中に、この六十億の計画が載っておりませんことは、予算折衝の最後の段階におきましてすでに承知をしながら、しかも、ただいま資金課長から申し上げたような、大蔵省のこの方面の担当の責任者の責任のある答弁でもありましたので、今説明にありました通りに、私どもといたしましては、すでに毎年実行しておりまするし、また特別会計法の中に国庫余裕金を使用できることになっております。現実にも、本年度に入りまして四月早々に三十億の国庫余裕金の繰りかえ使用をいたしました。六月末に二十億の繰りかえ使用をいたしまして、保険給付に必要な支払いをいたしておるわけでございます。この金は、申すまでもなく、保険料の方は、月を経るに従いまして漸次徴収が高まって参る性質のものでありまして、年度当初におきましては、資金運用のために、従来とも、赤字のないときでも、毎年国庫余裕金の繰りかえ使用をして、年度末までに漸次償還をするというようなやり方をしておるのでありまして、金繰りから申しましても、実は年度当初に六十億をまるまる一時に借り入れる必要はないわけであります。そういう意味合いと、それよりも根本的には、問題は利払いの問題に関連して参りますので、国庫余裕金の繰りかえ使用という制度を活用すれば、短期の資金ではありますけれども、利払いの問題が起ってくることはないということから、保険財政の上から見ましても、この点は将来折衝に残されておりますが、国庫余裕金の繰りかえ使用でできるだけの期間をしのいでおいた方がいい。しかも、年度末になりますれば、これはいずれにしましても借り入れをしなければならないものでございますから、そのときになって借り入れをして決しておそくないし、今説明にありましたように、理財局当局が責任を持って言明をされましたので、私どもとしてもその言明を信頼して、しかも健康保険財政の上に有利な措置をとる方が、全体のためにいいと考えまして、資金運用計画にしいて載せることを要求しなかったのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/30
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031・滝井義高
○滝井委員 それはどうも、私の考えておることと同じことを述べていただいたわけで、大へんけっこうなことですが、まず福田さんの、非常に情勢が変化する——情勢が変化するから、実は私は、してもらわなければいかぬと言うのです。神ならぬ身で、あなたは非常に自信を持って述べておられるけれども、やはり複雑な日本経済の中で、あなたは自信を持ち、私は疑うということは、五分々々なんです。赤字が出ることの方が確実なんですから、それを六十億あの大幅な改訂をやるならば、親切心があれば、そのときにやってくれてもいいわけです。これはいろいろと議論になりますから、あなたを信頼しますから、やっていただかなければならぬが……。
それから局長にお尋ねしますが、今のような御答弁だと、私はちょっと納得がいきかねる。予算委員会等で、私はあなたの今のような主張をしたのです。資金運用部から借りれば、利子が少くとも年間五分五厘はつきます。あるいは六分くらいつきます。五分五厘ついても三億三千万円。だから、資金運用部から借らずに、これは国庫余裕金を借りて、六カ年間ずっと回転していった方がいいのではないかという主張を私はした。私自身がその主張をしたら、主計局長なり川崎厚生大臣は、それはいけません。やはり借るのです借るけれども、それは一番最後に、年度末にたった一日になってから借りて、そうしてやります。こういう答弁をした。それならば何も、一番最後になってその金を六十億お返しして、四月一日になってから夕方また六十億借りたらいいじゃないか、そうしてずっと国庫余裕金でまかなっていけば——今福田さんも、いよいよとなればそれでいきます。こうおっしゃっておるのだから、年間三億六千万円浮いてくる。いわゆる貧しい大衆の納めた保険料が、もし六分なら三億六千万円になりますが、これが医療費の方に回ってくると、六カ年間ならば二十億以上の金が出てくる。私はそれを主張した。ところが、それは反対だと言ったのです。ところが、今あなた方事務当局は、大蔵大臣も、主計局長も、厚生大臣も、滝井さんの言うことは反対でございます。大蔵大臣と同じでこれは借るのだと言った。ところが今あなたたちは、どうも利子の点から申せば、余裕金の方がいいのだと言われておる。しかも予算書には、借入金としてちゃんと載ってきておる。余裕金でまかなって年度末までいくならば、これは借入金の必要はない、借入金ならば当然利子がついてくるから、利子をどこかに計上しなければならぬが、利子は書いてない。これは全く数字の上のごまかしだから、私は納得がいかない。これを余裕金でまかなっていくならば、これはこういう予算書に上げる必要はない。一時借入金でも出てこない。一時借入金なら、たとえば、あのへん特別会計なんか見ても、一時借入金——とにかく一時借入金なら予算書に出てこない。ところが借入金として、資金運用部から借るといって予算書に堂々と出しておって、そうして今のような状態で、いよいよ資金繰りがつかないというのは国庫余裕金の繰りかえで行きます。その恩典を特別会計に与えております。このあたりちょっと私の主張と今のあなた方のあれは、突き詰めていったときには態度が違ってくるけれども、私はあなた方に賛成なんです。大臣の方はみんな、年度末にはそれはしません、やります。こう言った。だから、ちょっと違うのです。私はあなた方に賛成なんです。何もこの苦しい会計が、六十億の金を資金運用部から高い利子を出して借る必要はない、今のようにずっと運用していける。今あなた方は、それがいいのだと言った。どうですか、私はそうしてもらいたのですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/31
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032・久下勝次
○久下政府委員 私は、ただいま滝井先生の御指摘になりました大臣の答えたということと、変っていないことを申したつもりでございます。と申しますのは、実は国庫余裕金の繰りかえ使用というのは、法律の定めによって、その年度末には必ず返さなければならぬ。返さなければならぬといういうことは、六十億という金額は、保険料の額から、月平均にしますと約二カ月分に相当します。もっとも年末ですから、その辺は多少普通の月よりもたくさん保険料が上ってくるとは言えますけれども、もちろん二カ月分に相当します。しかしながら、少くとも年度末に六十億の金を返さなければならぬというためには、保険の給付に充てるための保険料というのは、おそらく二月ごろからに一切そのためにためておきまして、そうして年度末に繰りかえて一応とにかく現金として返すということをしなければならぬわけでございます。現にこの問題は、本年の春三月に起った問題でございまして、二十九年度当初に二十五億、それに二十億の繰りかえ使用をいたしまして、合せて四十五億の繰りかえ使用があったのでございます。これは三月三十一日までに当然に国庫に返納いたさければならないために、三月の初めから、ほとんど政府管掌の保険料は、あげてこの返却に充てまして、一カ月まるまる実は政府管掌分に関する限りは支払いをとめたわけでございます。そうして三十一日に返して、四月の早々に三十五億を借りて、おくれました分を追っかけて支払いをした、こういうような金繰りになるわけでございます。ことに今年度はその上に六十億、さらに巨額な金になりますので、つまり支払い遅延というものは一カ月なり二カ月近くというものが起ってくるわけでございます。それを防ぎますためには、どうしてもこの予算に組んであります借入金というものは年度末までに、しかもできるだけ早期にしなければならないわけであります。そういう事情のありますことを御了承願いませんと、繰りかえ使用だけで切り回して参りますことは、実は不可能であります。しかしながら、利子の問題を解決いたしますためには、借りるのはなるべく年度末迫って借りました方が、少くとも本年度の利息はその分だけ助かります。そういう意味で申し上げておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/32
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033・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、やはり年度末早く借る方がいいということになってきたわけですね。そうしますと、やはり借らなければならないということになれば、今度の自民の予算修正においては、厚生省は全くつんぼさじきに置かれておったのではないかと思う。先般私が指摘したあの保険料と所得の五%の概算控除の選択においても、今度の予算修正においては、何ら大蔵当局と厚生省とが折衝した跡が見えない、全くつんぼさじきに置かれておる。年度末にやるというならば、自民の予算修正は、おそらく資金運用部の計画審議会にもかかっていないのじゃないかと思います。それならば水増ししてもけっこうですから、入れてもらっておくべきだと思う。それがなければ支払いが遅延し、年度末になればもうほとんど不可能だ、こういう御言明なら、日本経済はどういう変化をするかわかりません、災害が起るかもわからないのだから、それならば入れてもらっておかないと、今福田さんが言われたように、それは繰りかえや何かで不可能だということになる。私はそれでできるというきわめて浅い認識しか持っていなかったので、そういう主張をした。今のあなたのような御答弁で、支払いができない、しかも二カ月分の保険料であって、とてもそれは三月三十一日じゃだめだということになれば、これは十二月ごろにはやっておかなければならぬということなのです。そうしなければ、二カ月分たまるといったら大へんでしょう。そういうことになれば、当然これはやってもらわなければならぬ。だから、少くとも第三・四半期までにはやれるかどうかということなのです。これははっきりしておかないといかぬです。と同時に、第三・四半期まで確実にやってもらうということと、自民の修正にかかるところの運用部の計画の変更は、すでに審議会の議を経ているかいないかということです。これはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/33
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034・福田勝
○福田説明員 今指摘になりました、自民の修正に伴う資金運用部資金計画というものを、審議会の議を経ておるかという御質問に対しましては、手続的にはまだその点を経ておりません。
それから、先ほどから滝井先生の考えておられる点につきまして、多少補足的に説明させていただくことをお許し願いたいと思うのであります。何か非常に資金運用部の資金計画を尊重していただいて恐縮でありますが、実際もうよく御承知のように、予算は資金運用部の審議会にかける運用計画以上の権威を、最高機関としての国会がおきめになって持っておるわけでありまして、その特別会計の歳入に、借入金を六十億ということがきまっておる予算が成立しておるということは、何よりも確実な保証であると考えるべきだと考えております。従って残った問題は、資金運用部の資金計画に、いつの時期においてその数字が計上されるかということは、われわれはテクニカルの問題だと考えておるわけであります。実際問題として、審議会におきましても、六十億の予算できまっておる問題を、これは資金運用部でない措置によってやろうというようなことを、従来も予算と全然クロスするような決定をするというような前例もありませんし、またそういうことも考えられないわけでありまして、従いまして、第三・四半期までに必ずやっておかないといかぬじゃないかとおっしゃる点については、決して滝井先生に反論を加える意思は毛頭ございません、そういうふうにお考えになるお気持も十分拝察する次第でありますけれども、われわれが冷静に見まして、その点は、技術的にも手続的にも問題じゃない。これは別に反対するためにそういうことを申し上げておるのではなくて、実際問題として、予算で決定されたものと資金運用部審議会の審議にかけた時期というものがぴったり一致しておらなかったということは、従来からもあるのであります。たとえば、前にも国鉄は、この資金運用部に返すことになっておる条件を変更するということ、予算ではもう年度の当初ごろに国会できめて、実際それが資金運用部の運用審議会で議決されたのは、その年のいよいよ実行の直前においてやるというような実際の前例もございます。決して、ためにするところのある措置を考えておる次第ではございませんが、その点は御了承いただきたいと、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/34
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035・滝井義高
○滝井委員 実は予算できまっておる問題だから御心配は要らない、こうおっしゃる。もちろんわれわれは、資金運用部運用審議会は諮問機関であるから、それは私は国会よりは重しとは見ておりません。しかし、予算できまっておる問題が、資金運用部の問題に載っていないところに問題がある。なぜならば、予算で借入金にきまっておるなら、国庫余裕金でまかなえますか。予算できまっておるじゃないか、それを国庫余裕金でまかなっておる。ごまかしておる。余裕金なら予算には出てこない、年度末にいって予算を修正したらいい。原理的に申せばそうなる。ところが、予算にきまっておる問題がやられていないから、予算の権威を重んずるために言っておる。その点をあなたが逆説して、予算にきまっておるから、六十億出るときまっておるじゃないか。私は安心ができないからこそ、予算上にきまっておるなら、資金運用部からなぜ出さないか。逆説を言うなら出しなさい。なぜ出せないか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/35
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036・福田勝
○福田説明員 大へん逆説でおしかりを受けましたが、決してそういうつもりで申し上げたのではないのでありまして、これはわれわれの説明の仕方がまずいから、そういうようにお考えになるのじゃないかと思うのであります。そうではございませんで、たとえば、借入金というふうに予算に計上されておるもので、国庫余裕金というふうに計上されておらなくとも、これが国庫余裕金でやっておるのはおかしいじゃないか、こういうお話でございますが、それはおかしくはないのでございまして、たとえば国鉄なんかにいたしましても、資金運用部からの借入金年間に百億、こういうふうに予算がきまります。国鉄は昔特別会計でございましたので、公社でございますけれども、やはり特別会計と同じように、余裕金の組みかえということができることになっておりまして、実際は年度の終りになるまで、それから必要であれば年間の途中において一ぺんぐらい、すなわち借入金を実行するといときがございますけれども、大体は借入金の予算の実行を国庫余裕金でやっております。従いまして、決して健康保険特別会計だけそういうふうに予算に借入金とあげておりまして、そうして国庫余裕金で年間を泳ぐというような異例の措置をやっておるわけではないのでございます。その点は一つ、決して逆説を申し上げたのではないのでありますから、御了承を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/36
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037・滝井義高
○滝井委員 それはただ悪い慣例としてやっておるだけであって、法律的に見れば、借入金と一時借入金と国庫余裕金というものは、その年度限りのものだということはぴしゃっと法律できまっておる、厚生保険特別会計を見てもきまっておるわけです。長期借り入れをする場合には、当然厚生保険特別会計で長期借り入れをするという規定があるわけです。明らかに長期の借り入れと一時借入金と余裕金とは、厳密にいえばみな法律的に区別されておる。ただそれを一つ一つ財政的にそういうことをやると、非常に不便な面もあるし、あなたの言われる技術的に、手続的に非常に煩雑になるというところで、そういうことをやっておるのであって、実際の予算上の面からいえば借入金と出て、当初予算で六十億というものは資金運用部から借り入れますと言ってわれわれに説明したら、原則はやはり運用計画に、少くとも予算書に説明が載ってこなければならぬ、それが筋なんです。ただ例外的に、あるいは技術的、手続的に煩瑣を防ぐために、あなたの言われるようなことが、たまたま慣行的に行われておるというのは、私はいわば例外だと思う。それが一切の慣行ならば、何も一時借入金、長期借入金、国庫余裕金と分ける必要はない、めちゃくちゃにやったらいい。それでは会計のけじめがつかない。けじめがつかないからこそ、われわれはこういう問題を——特に健康保険の赤字というものは、大衆の金で相互扶助でやるので、支払いその他が遅延すれば、そのしわ寄せが大衆に来るから、画一にしてもらわなければならない。ほかのものが修正ができて十億や二十億追加になったのだから、こんな——貧いし者のための社会保障が一番大事だということを、内閣がスローガンとして掲げておるのに、六十億というものが赤字になった、そこが不満なんです。あなたのやったことについて不満なんじゃない、内閣自体、社会保障というものについてあれだけスローガンとして掲げて、熱意を持っておるその内閣が、予算には借入金として羊頭を掲げておいて、実際は狗肉的な処置しかやらぬということを私は言いたいのです。あなた方事務当局を責めようとは思わない、ほんとうは大蔵大臣と厚生大臣に来てもらってやらなければならぬ。この間の答弁とだいぶ違ってきておる、そういう点で言っただけで、しかも借入金と書いていながら、利子も何も計上されていない。初めからあなたの方の話し合いで、繰りかえ金でいくのだ、だから利子なんか要らぬということできめられたのでございましょう。利子が、三億五千万円予備費から出すといえばそれまでだから、今の赤字の中ですれば、九億ぐらいしかない予備費から、三億も取られたら大へんです。利子というものが当然出てこなければならない、そういうものも組んでない。だから予算の組み方自体からして、からくり的な組み方だということに私は気がついておる。だから、そういうことを言うのではないけれども、内閣のスローガンとして住宅、減税、社会保障を掲げたものを、しかも予算に堂々と、これは資金運用部資金でやりますといって、わざわざ説明書までつけておるものをやっていないということに問題がある、こういうことなんです。資金繰りでやるというならば、資金繰りでやったらいい。資金繰りでやれば、年度末は二カ月保険料をためてしまわなければならぬから、払いませんということになれば、十二月までやらなければならぬという限界が出てくる、だからそれを要望しておるのです。あなたの方でやられるお気持——さいぜんのように、自信がおありになれば、十二月までには責任を持って運用計画に載せます。こういう答弁をしてもらえば私は幸いだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/37
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038・福田勝
○福田説明員 先ほどから一貫して御説明申し上げました趣旨は、今、滝井先生の最後におっしゃったことと、実は全然同じつもりで申し上げておったのでございます。大臣その他の答弁と食い違っておるというふうにおっしゃいましたが、私は必ずしも食い違ったことを申し上げたつもりはございません。要するに一時借入金は、先生のおっしゃる通り財政制度として長期借入金とは違う、国庫余裕金とも違うのでありまして、私が申しましたのは、国鉄などのやり方として、そういう区別をわきまえてやるのじゃなくて、これから長期借入金で行かなければ年度末は行けないものでございますから、従って長期借入金で組まれておる予算というもので行くというのが正しいのであります。従いまして、十二月ごろになると支払いがとまったり何かするようなことがあっていかぬじゃないかというようなお話に対しまして、要するに、昨年支払いをやむを得ずとめたとかいうような、先ほど厚生省の保険局長から言われましたような事態をもう一ぺん繰り返すことは、毛頭考えておるわけじゃないのであります。要するに六十億の健康保険の赤字借り入れというものによりまして、でき得る限り健康保険制度の円滑なる運営に資することを、われわれも衷心から願っておるわけでございます。従いまして、それを資金運用部資金の長期借り入れとしてあげなければならぬ時期が、先生のおっしゃるように、もし十二月になったら、健康保険特別会計の運営上長期借入金に国庫余裕金を切りかえなければならない、切りかえるのが適当だということにはっきりなったとすれば、それはそのときに、われわれとしても必ず運用計画に上げるようにするつもりでございます。ただ問題は、その時期がどうであるかということは、私は健康保険の専門家でございませんので、先ほどのように手続的の問題だと申し上げただけなのでございます。もちろんそういう必要な時期、適当な時期が来れば、必ず運用計画に上げていくつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/38
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039・滝井義高
○滝井委員 福田さんからそういう御言明をいただいたので、これ以上追及はいたしませんが、財政的に見ても、技術的に見ても、支払いその他に支障の来たさない時期に、大蔵省としては責任を持ってぜひやっていただき、厚生当局も心臓を強く大蔵省に要望していただきたい、こういうことで、次の質問に移りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/39
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040・中村三之丞
○中村委員長 滝井さん、午前中はこの程度で……。
それでは午前中はこの程度でとどめまして、午後三時まで休憩いたします。
午後零時三十七分休憩
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午後三時四十七分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/40
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041・中村三之丞
○中村委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。
医療機関の防火設備の問題につきまして発言の通告がありますので、これを許します。横錢重吉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/41
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042・横錢重吉
○横錢委員 大臣にお尋ねをいたします。先般の千葉県の市川市の式場精神病院の火災については、御存じのことと存じます。この精神病院の火災には、最近の例を見ましても、二十四年に国府台の病院が火災を起しまして、五名ほど焼け死んでおります。それから二十八年には神奈川におきましてこれまた精神病院が焼けまして、二十名ほどの焼死者を出した。それから二十九年には中山の脳病院が焼けまして、このときに七名の死傷者を出しました。三十年、本年に入りまして式場病院で十八名の大量の焼死者を出しておるわけであります。この問題を見ますのに、式場病院におきます精神病院としての施設は、きわめて劣悪なものでありまして、致命的な欠陥を持っております。その一つは木造の建築物であるということ、第二には、看護人の不足ということ、第三には、かぎが全部違うかぎがかかっていた、第四には避難口が閉門されておった、第五には廊下が狭く避難に適当しなかった、第六には消火施設がなっていなかった、こういうようなあらゆる悪条件が重なっておりまして、その重なったところに火災が発生したものですから、この大量の焼死者が出たわけであります。この問題に関しまして、これは式場病院の問題でありますが、隣接の国立精神病院もございますので、この事件の後に、厚生省の方としてはどういうような処置をとられたか、あるいはまたとられつつあるか、この点についてお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/42
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043・川崎秀二
○川崎国務大臣 昨年の暮れに、御承知のごとき横浜における養老院の火事があり、また最近におきましては、式場君のような精神衛生学の権威者が経営されておる著名なる病院から発火をして、遂にあのような悲惨事を見ましたことは、民間病院のことでありますから、民間病院自身の防火設備を充実することの責任においては、もとより民間側でとらなければならぬ面も多いのでありますが、はなはだ遺憾でありますとともに、厚生省といたしましても、その指導の責任は痛感いたしておる次第でございます。病院の防火設備につきましては、医療法あるいはその他の関係諸法規におきましてそれぞれ規定してありますので、それに従って、設備には万全を期しておるものと思っておったのであります。医療法施行規則第三章によりますと、病院、診療所及び助産所の構造設備につきまして、第十六条から二十三条にまたがりまして、かなり広範なる規定がつけられております。これには、火気を使用する場所については、当然防火上適当な設備を設けることであるとか、あるいは避難階段の問題であるとか、その他それぞれの規定があるのでありますが、かような事故を出しましたことは、まことに遺憾であります。その後、厚生省といたしましては、六月二十七日医務局長の名をもちまして、各都道府県知事あてに、医療施設における事故防止についてという次のような通牒を出しております。
概要を申し上げれば、六月十七日に千葉県に発生したるところの精神病院の火事は非常に遺憾なことである、医療施設の特殊性にかんがみて、かかる事故の防止については、特に甚大な関心を払う必要があると思量する、ついては、各機関においては次のような点について御協力を願いたいといいまして、第一に、医療施設の構造設備、特に防災上及び避難上必要な構造設備について、医療法施行規則等法令の基準に合致しているかどうかにつき、あらためて十分調査すること。第二は、医療施設の管理の面につきましても特に留意をし、医師、看護婦その他の従業員の勤務体制などに関しては、事故を未然に防止し得るよう努めるとともに、事故発生の場合における避難に遺憾なきを期し、特に夜間における事故の際、臨機応変の措置をとり得るよう平常から準備しておくこと。第三に、消防署等関係方面から事故の防止、特に防火訓練等の実施につき協力を求められたときは、積極的にこれに協力すること。以上のような通牒を出しまして、各都道府県知事に対し指導、監督をいたすよう通牒を発した次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/43
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044・横錢重吉
○横錢委員 式場病院の火災に関連しまして、直ちに各府県に通牒を出されたということは適宜な措置と存じますが、ただそれだけのことでは、とうてい医療機関における防火設備は完成することができない。例をあげますならば、式場病院に隣接して国府台の精神病院があります。この精神病院の状態を一言にして言うならば、火葬場の中に、精神病患者を入れておきまして、いつ火をつけるかの時間の問題である、こういうようなことが言えるわけであります。今、構造上の設備等でいろいろ言われておりますが、設備が至って悪い。木造でもって、一つの建物は日清戦争のときに作ったもので六十年以上経過しております。もう一つの建物は満州事変のときに作ったものでありまして、きわめて設備が悪いのであります。また精神病患者の特質から、かぎがかけてありますが、このかぎがドアと、もう一つかぎをかけてないとこわされるために、二重にかけてある。従って、もしここに火災が発生した場合には、このかぎをあけるだけが精一ぱいであります。しかも日清戦争のときに作ったという病棟におきましては、夜間は八十五人の患者の収容に対して、看護人はわずかに二人しかいない。従って、これはかぎをあけるだけが精一ぱいであります。御承知のように精神病患者は、火が出た場合に、かぎをあけても逃げることをしないて、部屋の内にじっとこもっておるという習性を持っておる。従ってその場合には、かぎをあけ、あるいは避難救護に当る者がいなければ、式場病院の二の舞を繰り返すことは、火を見るよりも明らかでございますが、その通牒を出されました今日におきましても、国立の精神病院においてこういうような状態に置かれておるわけであります。おまけに、消火施設は全然なっていない。水道からは、きわめて高い台地の上であります。防火用水はすべてどろどろになっておりまして、使用することができない。一たび火災になりましたならば、とうてい役に立たないような施設だけができておるわけでありますが、この点について、どういうふうにお考えになっておるか、あるいは対策を立てておられますか、お伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/44
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045・川崎秀二
○川崎国務大臣 式場病院の問題につきまして、具体的な御質問なので、私も、一般の法則に沿うかどうかは知りませんが、少し申し上げてみたいと思います。
式場君は、私も個人的にはよく知っておる間柄でありまして、ことにスポーツ関係の方で長年御指導を賜わっておるような関係で、あの火事につきましては、公的な立場で心配申し上げるとともに、私人といたしましても、心配をいたしておるのであります。そうしてラジオ等でも、いろいろ式場氏の談話なるものが発表されておりましたが、何でもそういうようなことの防火設備にいたしましても、あるいは避難設備にいたしましても、ことごとく兼ねておらない、はなはだ老朽施設であるということは、御自分でも直覚せられたそうでありまして、この秋には一つ改築しようという計画のもとに、弟さんでありますか、現在の病院経営者と連絡をとりつつ、ほとんど全面的に修築しようと思っておったやさきに、ああいう事件が起きたということを私は聞いたのであります。その後、今後の再建につきまして、一つの病院に対して融資をするというのは、原則的な意味からいってどうかとは思いますけれども、とにもかくにも、あれだけの精神衛生病院であり、かつ日本でこの方面に一番通暁をされておる、深い知識を持っておられる人が経営されておるところでありますから、ああいう火事を出したということは、国内だけではなしに、実は海外に、ことにフランスやベルギーあたりに多くの友だちを持っておる式場君のところからああいう事故が起きたということで、国際的な反響が悪くはないかということを、実は個人的に心配いたしておるようなわけであります。従いまして、ただいま御質問の点は、重々厚生省としても残念なことであると申し上げるよりほかにないのでありまして、医療法の規定その他にのっとって今日までやってもらっていれば、かような間違いはなかったと存じますので、今後の再建につきましては、十分に協力いたしたいと思って、現に中小企業金融公庫に対しまして、式場病院の再建については十分なる融資をしてもらうようにというので、側面的な協力をいたしておるような次第でございます。
なお、原則的に申し上げるならば、かかる精神衛生病院などの設備は、この際を機といたしまして、鉄筋コンクリートに修築をするということが一番肝心なことではないか、かように存じておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/45
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046・横錢重吉
○横錢委員 大臣は、私の質問をちょっと勘違いされておると思うのです。私は、第一の段階におきましては、式場病院の点で申し上げたのですが、第二の段階におきましては、式場病院の隣に国立の国府台精神病院がある、この精神病院の状態が、式場病院よりもさらに悪いわけであります。建物が今申し上げましたように、日清戦争のときの建物である、それからかぎを二重にかけなければならないような状態になっておる、あるいはまた八十五人の患者に対しまして夜間は二人しかいない、避難口はきわめて狭い、消火施設はなっていない、こういうような状態が今日の国立の療養所としてあのだが、式場病院が大火に見舞われた後におきまして、こういう状態についてどう考えておられるか、こういう意味であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/46
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047・川崎秀二
○川崎国務大臣 御質問の趣旨を取り違えまして、大へん恐縮でございます。これはもう私的な病院が、そういうような施設で火事を出しました際でありますから、国立療養所あるいは公的医療機関等で、かような設備になっておりまするものは、できるだけ近い機会におきまして改めていきたい、かように存じておるような次第でございます。今回予算が通りましたならば本日は参議院において成立を見ましょうが、これらの点につきましては一そう留意をいたしまして、近い将来におきまして、国立療養所とかあるいは国立病院ないしは公的医療機関において、かような被害がないように努力をいたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/47
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048・横錢重吉
○横錢委員 国立の療養所各所を回ってみますと、若干の費用が出て病院の施設の改造をしたところがあります。その改造の点等を見ますと、最も大切な病棟であるとか、あるいは手術室であるとかいうようなところの改造には払われないで、実際において払われておるところは、所長室あるいは事務室、こういうようなところだけが第一に改造される。これは千葉県下の国立療養所を回ってみればすぐわかる。そうして一番大事な病棟は、ほうり出されたままになっておるわけであります。従って、今の大臣の御答弁については、こういうような日本人の一番悪いやり方、事務室だの所長室だのを直すことを先にするやり方、そういうものをやらずに病室の改造、病室を不燃性の建物に建てかえる、そういうような意味でございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/48
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049・川崎秀二
○川崎国務大臣 国立病院は七十四カ所、しかして国立療養所は二百カ所あるわけでありますが、それらの病院は、ことごとく今日では木造建築でありまして、今回のような出火を見ますときに、病院の再建計画といいまするか、修築計画につきましては、相当大幅な予算を要求をして、今後かかる悲惨事のないようにいたしたいと思います。本年は病院におきましては十一億、療養所におきましては三億の整備費が計上されておりまするけれども、私の最近感じておりますることは、この程度のものではとうてい充足できませんので、その点では、老朽校舎の修築というものが相当に大きな問題になりまして、一昨年以来国策として推進をいたしておる文部省の老朽校舎修築の考え方と同じようなことで、国立療養所、国立病院の少くとも鉄筋化ということにつきましては、来年度あたりからは根本的な対策を立ててみたい。むしろこれは党の政策というか、内閣の政策などで打ち出してみたいと思っておるような次第であります。本年といたしましては、こういう事故がまだあまりに大きく起って参らなかったときだけに、われわれの考え方等も、非常に未熟なものであったことを実は恥じておるような次第であります。最近民間におけるサナトリウム建設であるとか、あるいは病院の計画などがあります際におきましては、なるべく他の施設を圧縮しても、一つの病棟を作る際に、四十ベッド、五十ベッド作るときに、そのベッドの数を多少少くしても、病棟は本建築でいってもらいたい、すなわち鉄筋コンクリートでいってもらいたいということを、実は私個人ではそういう指導もいたしておるような次第であります。これはぜひとも厚生省の方針としても採用されるように注意をいたしたい。かように存じておるような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/49
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050・横錢重吉
○横錢委員 今の木造の建物に対する考え方はわかりましたが、これは一に今の精神病院だけでなしに、松戸の療養所あるいは佐倉の療養所あるいは柏の病院、これらがすべて倒壊寸前の格好になっておるので、この点は同様の見地から進めていただきたいと思います。
さらに、火災発生の可能性は、今申し上げたようにきわめて悪い条件のもとに置かれておりますので、今のような対策が具体的に予算となって現地で実施されるまでの間第二の火災が起らないとも限らない、この場合における責任を一体どうするかという問題であります。ただいまの式場病院においても、当時の看護人が連日連夜警察の方の取り調べを受けて、七人おった者が一人はそのために病気になってしまった。そのあとの六人の者は、一日大てい二人ぐらいずつ交代で呼び出しを食って、今調査を進められておる、こういうような状況でありますが、今申し上げました国府台の精神病院を見ても、ここでもし夜間に火災が発生した場合には、大量の焼死者が出るだろう、焼死者が出た場合における責任というものは、病院長であるとかあるいは看護人であるとかいうような下級責任者の問題ではなくして、大臣であるとか次官であるとか局長であるとか、こういうような本省における最高の責任を持つ者の責任として考えなければならないのではないか。そうでなければ、今日のままでなしに応急の措置としての何らかの措置をとっておかなかったならば、この場合における措置は果し得ない、こう考えておるわけでございますが、この点に関して、さらに念を押しておきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/50
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051・川崎秀二
○川崎国務大臣 事故が発生をいたしました場合の環境、条件等をも考えてみなければなりません。不可抗力によるものか、あるいはその際における職員の怠慢によるものかというようなことが、そのときどきの責任の判定になってくると思いますけれども、常識的に申し上げまして、今日規則通り行なっておるところで事故が起る、そういう設備をしておりながら事故が起るということになりますれば、これは何らか職員の怠慢あるいは現地に最高責任者以下の不注意等にも相当よってくることにもなりますので、そういう場合における責任は、やはり病院長、あるいは直接その場における責任者ということになりましょうが、一般的には、もとより厚生大臣も責任を免れるものではないことは明らかにいたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/51
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052・横錢重吉
○横錢委員 最後に、委員長にお願いしますが、この国立病院、特に精神病院等の防火の施設は、ただいまの大臣の答弁で安心できる点もありますが、今日置かれている立場は、きわめて悪い条件でありますので、社会労働委員会としても、調査団を派遣いたしまして、今日の療養所あるいは病院の施設がどういうような状態になっておるか、これらに対するところの視察のために派遣をしていただくよう、委員長の方でお取り計らい願いたいと思います。お願いをいたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/52
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053・中村三之丞
○中村委員長 了承いたしました。
次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。
午後四時十一分散会
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03319550701/53
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