1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年七月十三日(水曜日)
午後三時一分開議
出席委員
委員長 中村三之丞君
理事 大石 武一君 理事 中川 俊思君
理事 松岡 松平君 理事 大橋 武夫君
理事 山下 春江君 理事 山花 秀雄君
理事 吉川 兼光君
植村 武一君 臼井 莊一君
小川 半次君 亀山 孝一君
草野一郎平君 小島 徹三君
床次 徳二君 山本 利壽君
横井 太郎君 越智 茂君
小林 郁君 中山 マサ君
野澤 清人君 岡本 隆一君
多賀谷真稔君 滝井 義高君
長谷川 保君 福田 昌子君
八木 一男君 井堀 繁雄君
神田 大作君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 川崎 秀二君
労 働 大 臣 西田 隆男君
出席政府委員
労働基準監督官
(労働基準局
長) 富樫 總一君
労働事務官
(職業安定局
長) 江下 孝君
委員外の出席者
厚 生 技 官
(公衆衛生局環
境衛生部長) 楠本 正康君
専 門 員 川井 章知君
専 門 員 引地亮太郎君
専 門 員 浜口金一郎君
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七月十二日
委員多賀谷真稔君辞任につき、その補欠として
佐々木更三君が議長の指名で委員に選任され
た。
同月十三日
委員佐々木更三君、中村英男君及び横錢重吉君
辞任につき、その補欠として多賀谷真稔君、福
田昌子君及び八木一男君が議長の指名で委員に
選任された。
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本日の会議に付した案件
失業保険法の一部を改正する法律案(内閣提出
第九四号)
労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案
(内閣提出第一一一号)
理容師美容師法の一部を改正する法律案(内閣
提出第一三二号)
駐留軍労務者の健康保険に関する件
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/0
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001・中村三之丞
○中村委員長 これより会議を開きます。
まず失業保険法の一部を改正する法律案及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案の二法案を一括して議題となし、質疑を継続いたします。多賀谷真稔君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/1
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002・多賀谷真稔
○多賀谷委員 労災の関係についてお尋ねいたしたいと思います。まず土木建築業をメリット制にするということでありますが、その前に私は局長に対して、昭和二十六年からメリット制が保険会計において実施されたわけでありますが、メリット制ができたことによって、どの程度災害が少くなったか、そういう効果が現われたかどうか、こういう点についてお聞かせを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/2
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003・富樫總一
○富樫(總)政府委員 一般の製造業等につきましてメリット制を実施いたしましたのは、御承知の通り昭和二十六年からでございます。その結果どういう効果が生じたかということでございまするが、この効果は、必ずしもメリットだけの効果ということには言いかねるかとも思うのであります。安全行政の徹底等の結果もありましょうが、要するにメリット制が一つの刺激となりまして相当の効果を発揮したと考えております。たとえば、お配りいたしました資料の第二の年度別度数率及び強度率によりましても、製造業は、度数率におきまして昭和二十六年の約三十回から昨年は十八に顕著なる低下を見せ、また強度率におきましても一・六から一・三に下っておるわけであります。またこの結果料率におきましても、たとえば金属精練業におきましては一円につきまして二銭という料率が、一銭四厘に平均的に下りましたし、船舶製造業のような事業におきましても、一銭六厘の料率が一銭四厘に平均的に下るというようなこともございます。最近におきまして私どもが実施しております無災害記録の業績等を見ましても、関係業界におきましては、この安全に対する関心が、単に係員というだけでなく、会社社長以下が非常に熱心に、かつ労働組合、労務者の方々も自覚されて、非常ないい成果をこの方面においてもたらしておると確信しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/3
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004・多賀谷真稔
○多賀谷委員 もちろんメリット制によってのみ災害が少くなるということはいえないと思います。安全衛生規則その他の十分なる行政官庁としての指導があったから下ったのであろうと思うのですが、しかし私は、その下ったことにかなり疑問を持っておるのであります。なぜかといいますと、今御指摘がありましたように、度数率において下った、しかし強度率においては依然として平行線であるということはどういうことを意味するか。すなわち、この負傷の状態を見ますと、死亡とか重傷というのが下っていない、むしろ人員の増加とともに上っておる。そうなりますと、結局は軽傷が下っておる、こういうことになります。度数率が非常に下って強度率が下っていない、そういうことを意味するのであります。そういたしますと、私はむしろメリット制の実施によって、なるほど従来いろいろ問題がありました労使双方なれ合いの災害の届出はなくなったかもしれませんが、それ以上に、私は現実の問題として、事業場においては、軽いけがでありますと、それは労災ではない、事業場の災害ではない、こういうことで係員がそれを認めてくれない。こういうところから、災害が非常に下っておる、件数としては下っておるけれども、強度率、要するに災害損失日数が依然として平行線をたどっておるということは、むしろ休む日の多い重傷とかあるいはその他において、多くのけがが出ておるのじゃなかろうか、こういう点を憂うるわけであります。私は、このメリット制の実施によって、むしろ軽傷というものが事業場の負傷でないということでオミットされていないか、こういう点を考えるのですが、どういうふうに把握されておるか、お聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/4
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005・富樫總一
○富樫(總)政府委員 度数率は顕著に下っておるのに、強度率は、下ってはおりますがそれほど下っておらないということは、われわれといたしましても、きわめて遺憾のことと考えております。この方につきましても、安全行政面において、大いに改善方の努力をいたしておるのであります。しかしながら、だからと申しまして、ただいま先生のおっしゃいましたような弊害の結果起ったとは、必ずしも考えておりません。メリット制を実施している事業というのは、御承知のように百人以上の従業員を使用しておる事業所でございます。零細企業と違いまして、事業主の封建的圧迫というようなことは、相当希薄でございましょうし、また相当の組合もあって反発もいたします。また労災保険の面におきましても、もともとちょっとしたかすり傷等は扱っておりません、八日以上のけがについてだけの扱いでございますので、そう軽々に使用者の圧迫によってそれがやみに葬られるというようなことも、あまり考えられないのではなかろうか。またこれをやみに葬りますと、一方において多くの場合考えられることは、健康保険の方に回るわけであります。御承知のように健康保険の力も、一生懸命乱給を防止しておるというような状態で、労災保険にかかるべきものを向うに回すというようなことのないように、非常に厳重に双方の出先機関が連係してその的確を期しております。しかし、必ずしも絶対ないとは限りませんので、御意見もございまするし、今後ともその方につきましては、十分に出先を督励して、そういうことのないように気をつけたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/5
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006・多賀谷真稔
○多賀谷委員 今、強度率のお話があり、強度率は若干下っておるというお話ですが、製造業は下っておりますけれども、全産業平均によりますと、むしろ二十九年度はぐっと上っておる、こういうような状態になっておるのです。そこで私は、度数率がこれだけ下って、災害損失日数が依然として同じ状態を続けておる、こういうことは、負傷でも重傷が非常に多くなっておる、こういうことを考えなければならない。そうすると、重傷が非常に多くなっておるというのは、一体どういうところから多くなっておるのか、この点を一つお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/6
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007・富樫總一
○富樫(總)政府委員 今まで申し上げましたのは、従来メリットを実施いたしました製造業等を中心として申し上げたのでありますが、全産業平均として見ますと、確かに先生のおっしゃるような傾向があるのであります。この傾向は、主として土建に原因するわけであります。従来メリットを適用いたしておりませんでした土建におきまする災害の状況を、わかりやすく端的に申し上げますと、死亡災害が、昭和二十上の休業の件数を見ましても、土建におきましては昭和二十七年が六万三千人であったのが、昨年には十万を突破する、こういうように、土建における災害は増加率が非常に顕著でございます。従いまして、この四月からは土建の保険料も一挙に二倍に上げざるを得ないというような状況、それが全産業平均の数字の改善を阻害している主たる原因で、これがまた今回提案いたしました法案改正におきまして、土建にメリットを実施するという一つの重要な契機になっておる、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/7
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008・多賀谷真稔
○多賀谷委員 従来土木建築事業には、どの程度の安全に対する処置がなされておったか、これをお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/8
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009・富樫總一
○富樫(總)政府委員 土建につきましては、最近に至りまして、ただいま申しましたようにその災害が非常に顕著な増加を示し、特に重傷、死亡事故も多いので、近年安全行政の面におきましては、最重点を置いてその改善に努力しておるわけであります。
具体的に申しますれば、申すまでもなくまず安全規則の実施の励行を厳重に求める。土建現場に対して、労働基準局の監督官が監督に出張いたします場合においても、安全重点監督ということで、基準法のその他の条項はさておいて、安全に関してどうやっているかというような、重点監督を行なっておるのでありますが、一方におきまして、最近における土建災害の原因を究明すると、いろいろあるのであります。たとえば終戦後、ことに最近に至りまして大規模な電源開発、そこにおきまして、外国からの近代的な大規模なな工事機械を使用する、それに対する労務者や技師の扱いがなれない、あるいは電源開発に関する発注者側が、非常に無理な注文を土建業者にいたしまして、突貫工事を要請するというようなこと、あるいは土建の現場におきまする一、二の安全管理者はともかく、会社全体として、土建会社の社長、重役が、そういう方面に対して十分な関心がないというようなこと等もございまして、これにつきましては、法規を離れて、それぞれの原因解消に努力いたしております。特に今年になりまして料金を二倍に上げたという現実的、経済的な負担増という、これこそ深刻に業者に身にしみまして、最近におきましては土建の、特に会社の社長さんみずからが災害防止対策の協議会を作るとか、土建業界みずから安全についての研究会、講習会をやるということで、ごく最近におきましては、これに対する関心がきわめて急速に上りつつあるということは、これは正直に確信して申し上げ得る状態でございます。今回の新たなるメリット制がもし成立いたされますならば、ここ一両年後における成果は、相当期して待つべきものがあるのではなかろうかというふうに期待いたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/9
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010・多賀谷真稔
○多賀谷委員 これに関連して、高層建築のガラスふきなどは、どういう安全の対策ができているでしょうか。私が聞きましたのは、学生のアルバイトがガラスふきをやって、これから落ちて死んだというようなのがあるのです。ところが、学生アルバイトですから、平均賃金の算定といたしましても、ごくわずかです。ところがその請負業者というのが、五人か六人ぐらいしか使ってなく、もちろん労災保険なんかは、法律上は入らなければならぬ状態にあるでしょうが、入っていない、資力もないからもらえない、こういうことで、非常に気の毒な例を知っているわけですが、ああいうのはどういうような安全に対する措置が具体的になされているか。私は実際にその後気をつけて高層建築のガラスふきを見ておりますと、別に何にも安全の措置がしてないように考えるわけですが、そういう点は法規上はどうなっているのか、実際の扱いはどうなっているのか、お答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/10
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011・富樫總一
○富樫(總)政府委員 私、二、三カ月前に基準局長になったばかりで、そういうこまかいことは、率直に申しましてよく存じません。的確な答弁のために、安全課長が説明員として説明することをお許し願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/11
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012・浜口金一郎
○浜口説明員 率直に申しまして、高層ビルのガラスふき作業について、具体的に表現した安全規定はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/12
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013・多賀谷真稔
○多賀谷委員 どういうようにされておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/13
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014・浜口金一郎
○浜口説明員 高層作業に対して救命具を使えというような規定を置いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/14
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015・多賀谷真稔
○多賀谷委員 実際はこれを防ぐ措置は講じられないわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/15
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016・富樫總一
○富樫(總)政府委員 私も個人的に都内を歩いたりして、ほんとうにひやひやしたりすることが多いのであります。ただいまの安全課長の答弁のように、実際にも規則及び行政監督面においても、必ずしも十分ではないようであります。幸いに現在安全衛生規則の全般的再検討をやりつつありますので、御注意もございますから、その点につきましても、必要な改善方について検討を加えてみたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/16
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017・多賀谷真稔
○多賀谷委員 それはぜひお願いいたしたいところでございます。土木建築にメリット制をしくについて、今、社長さんみずから乗り出して防災に努めておられるというお話で、けっこうなお話であると思います。実は、これはあなたの方の関係ではありませんが、労災としては関係のある鉱山保安法の関係の炭鉱なんかについてみますと、死亡とか、重傷とかが全然減らない、ただ軽傷だけが減っていっているという状態でございます。この軽傷が減っているというのは、なるほど鉱員が最近はあまり異動しませんので、熟練ということもございましょうけれども、むしろそういうことでなく、メリット制の関係で、小さな山等においてはそれを災害と認めない、要するに事業主負担の問題とは考えないという点にもあるのではなかろうかということを危惧するわけであります。そこで、封建制の強い土木建築においては、メリット制を実施するにつきましては、十分一つ注意をしていただきたい。もしもメリット制を実施したけれども、死亡とか重傷は全然減らないで、むしろ増加の一途をたどって、軽傷のみが減ってきておる、こういう事態が起きましたら、これはやはりそういうような点があるのではなかろうかということで、十分監督をしていただきたい。これを希望いたしまして、労災関係の質問は打ち切ります。
続いて失業保険法関係でございますが、安定局長に一つだけお尋ねいたします。この前若干質疑をしておきました同一事業主の問題でございます。同一事業主について、一般的にどういうように考えておられますか、一つお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/17
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018・江下孝
○江下政府委員 この同一事業主ということにつきましては、先回も申し上げたと思うのでございますが、事業主の名前が変るとか、あるいは違った事業主に変るという場合、その他いろいろな場合が実はございまして、同一事業主という言葉の解釈いかんでは、相当問題がある。いつか先生がおっしゃっておりましたように、これを単に商法的な、あるいは民法的な考え方で押すと、非常に限定的な考え方になるが、私どもは実はそう考えていないのであります。この同一事業主というものは、例を申し上げますとよくわかると思うのでありますが、たとえば会社の合併、分割という場合、それから事業が売買されまして、事業が包括的に継承されたという場合、あるいは事業が相続されたという場合、それから労働組合の専従役職員となっておった人がもとの会社に帰るという場合、こういう場合は、すべて同一事業主に雇用されたというふうに私どもは取り扱いたいのであります。抽象的になりますけれども、権利義務が包括的に承継されたという点に主眼を置いていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/18
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019・多賀谷真稔
○多賀谷委員 合併、相続、労働組合の専従者、こういう扱いは、実際問題として局長がここでお話しになっておるように扱われると思います。問題はやはりいわゆる売買による譲渡の場合の権利義務の関係が、全部包括承継をされたかどうかという点がかなり問題になろうと思うのです。そこで私は、たとえば一応旧事業主が打ち切って退職金を出した、こういうような場合でも、同じ事業場に勤めておるということになれば、あるいは債権債務の関係は一応打ち切るかもしれませんが、労働者としては、同じ事業場に勤めておるのですから、やはり同一事業主と考えていいのじゃないか、かように考えるわけです。また同一事業主と考えることが無理であるならば、私は立法としては同一事業主という言葉を変えなければならない、かように考えるわけですが、そういう場合はどういうようなりますか、お聞せ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/19
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020・江下孝
○江下政府委員 その場合は、途中で雇用関係が一度はっきり終了してしまうという形をとるのでございますから、かりに同一事業主であっても、引き続かないという考え方じゃないかと考えております。だから、あるいは同一事業主という関係にはなるかもしれませんけれども、一度雇用関係を打ち切られてそこですべて精算されたという場合には、引き続いて同一事業主に雇われたということにはちょっとならない、こういう考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/20
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021・多賀谷真稔
○多賀谷委員 ならないとすると、私たちは賛成できない。やはり同じ事業場に労働者としては同じような状態で勤めておる、こういう場合には、失業保険の関係は同じように扱うべきである。たとえば同じ事業主、AならAがずっと引き続いております場合と、AとBとの間に売買による譲渡があった場合、しかも事業場が同じであるという場合には、給付を受ける労働者を差別して取り扱うということは、非常に根拠が薄いと考えるわけですが、その点について、どういうようにお考えであるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/21
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022・江下孝
○江下政府委員 実はこれは非常に技術的な問題になるのです。なぜかと申しますと、かりに同一事業場でございましても、一度縁が切れますと、大ていみな失業保険がもらえるようになるわけです。そこで、それでは一体五日あいたらどうか、十日あいたらどうか、一カ月あいたらどうか、こういう問題になる。私どもがこの法案を作りましたのは、引き続き五年以上というのは、途中で失業保険をもらってないということでないと、これは筋が通らない。その線でいきますと、技術的に、それじゃいつに線を引くかということはむずかしいわけです。だから、仰せのような場合には、同日か翌日ということだったら、これは扱いとしては同一事業主として扱っていいのではないかと思いますが、その間に期間が相当ございますと、これは必ず失業保険をもらったり、その他いろいろな離職者としての恩典を一度受けるわけですから、どうしても続けるというわけにはいかない。そういう技術的な問題があるために、以上のように説明したのです。そこで取扱いの場合には、私、もう少し研究してみなければわかりませんが、とにかく同日付か翌日付ということならば、その間の問題は起らないのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/22
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023・多賀谷真稔
○多賀谷委員 一応失業保険の受給資格ができましても、一回も支給を受けておらない、こういう者には、何らか条文上書きようがあったのではないかと思うのです。それで、議論はかなり同一事業主から離れて参りますけれども、引き続き被保険者たる期間が五年なら五年、十年なら十年というような取扱いにしたらどうでしょうか、こういうことになりますと、非常に矛盾が出てくるでしょうか。また引き続き被保険者というのは、失業保険の給付を一回も受けていない者、こういうようにさらに何か註釈的な規定を入れれば、私はかなり救済されるのではなかろうかと考えるのですが、そういう点について、お聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/23
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024・江下孝
○江下政府委員 実は仰せの点、ごもっともな点もあると思うのです。ただ、これを実施する場合には、過去五年、十年の実績をつかまえなければならないわけです。以上のような点について、たとえば、この人は過去に保険をもらったかどうか、それからどういう事業場を転々としたかということは、具体的にやりますと、実際にはつかめない。今回のこの改正によって確認制度をとる。確認制度をとれば、今後におきましては、ある程度確実に事業場から事業場に動きました被保険者についての把握はできますけれども、しかしながら、少くともこの保険法が始まりましてから現在までの事業場の移動をつかむということは、同一事業主に引き続き雇われたという場合以外は、非常に困難だと思う。一人々々についてそういう調査をすることは、実際問題としてできない、こういうことで、実はこういう規定を置いておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/24
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025・多賀谷真稔
○多賀谷委員 御存じのように厚生年金は、勤務した期間がずっと通算されるわけですが、厚生年金の方の調査によれば、私はわかるのではなかろうかと考えるのです。若干事業主が違いますけれども、しかし、それはわずかな範囲ですから、官庁が協力してやるということであれば、坂扱いができるのではないかと考えるのです。厚生年金は厚生省の関係だからというわけで、おれの方で調査しなければ納得できないというわけでもないでしょうけれども、そういう関連はどういうようになっておるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/25
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026・江下孝
○江下政府委員 厚生年金の方につきまして、実は厚生年金の場合と失業保険と同じように調査ができますかどうか、これは私少し調べてみないとわからないと思うのでありますが、厚生年金の場合は、前から一応厚生年金法の適用を受けるものとして、長期にわたって記録を取っておるだろうと思うのです。失業保険の場合は、そもそも最初から目的が違っておりますから、厚生年金で取っている者も一部はあるということは言えると思いますけれども、全部は厚生年金によってカバーされない。それから、今のお話のように転々とした者について、本人の申し出その他によって把握できるではないかと、これも実は考えてみたのですけれども、実際問題としては、過去十年にさかのぼって事業場を動いたという場合の把握は、なかなか立証するのが私は困難だと思います。その関係だけで、実はこの規定をこういうふうに窮屈な規定にしたのであります。
それから、これは委員も御同意だと思いますが、途中で失業保険をもらったという人は、これは困るのでございます。そこで、結局引き続き五年以上同一事業主といいますのは、今の事務的な点と、過去において失業保険の恩典を受けたことがある人は除外する、この二つの点で、結局われわれとしては、こういうような立法技術にならざるを得なかった。決して安易に考えたわけではなかったのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/26
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027・多賀谷真稔
○多賀谷委員 立法技術としての点は、よく私もわかるのです。何とか修正でもしてみたいと思って調べてみたのですが、なかなかむずかしいこともよくわかります。しかし、厚生年金保険の関係は、被保険者たる期間が、一つの支給要件に関係をするわけです。その点、今までの社会保険にはない点が、厚生年金にはただ一つあるわけです。その点を今度は失業保険に持ってこられておるわけですから、今までの社会保険の体系で、勤続年数というものの要素が支配されるというのは、厚生年金だけだと思います。そこで厚生年金の方は、ある会社に何年、ある会社に何年という、そうしてその間に納めた金額というものが、やはり支給される場合の要件になるのですから、私はかなり確実に取ってあると、かように考えるわけです。そうして、何も役所が直接取る必要はありませんけれども、労働者をしてその社会保険出張所でそういう立証をする書類をもらえば、あなたの方で認定をするということであれば、過去の分も大体片がつくのではなかろうか。ただ事業主が、厚生年金の加入者とあるいは失業保険の加入者との間で違う部分が出てきますから、その方々についての何らか別途の立証方法を考えたらいいのではなかろうかと、かように言っておるわけです。その点を一つもう少しはっきり御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/27
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028・江下孝
○江下政府委員 同一事業場にずっとおりました場合は、これがはっきりつかめるのです。ところが、事業場を変りましたという場合の、事業が包括的に承継されたとか、あるいは分割されたとか、こういう場合は比較的つかめるわけです。ところが、全然違った事業場に行った場合、どのくらい期間があった、失業保険をもらったか、もらわないかというようなことは、今われわれの方の手元には、そういう過去十年までさかのぼった詳細な記録というものはないわけであります。そこで、もしそういうことを調べますと、非常た手数が要るし、一つ一つが審査事例になってきて、大へんな問題になるのではないか。これは決していいかげんに考えたわけではございませんけれども、一応この規定といたしましては、従来よりは五年以上十年以上というものに対する特別な恩恵を与えるという考え方に立って、幅をできるだけ広げるということは必要でございますけれども、そういうように、事務上やむを得ないという限度においてこの恩恵をしぼることは、私はやむを得ない措置ではないか、こういうふうに了解しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/28
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029・多賀谷真稔
○多賀谷委員 そういたしますと、政府側におきましては、同一事業主というのは――引き続き同一事業主に雇用された期間というのは、売買による譲渡等があっても、失業保険を一回も受けてなく、同じ事業場に働いておった者は、引き続き同一事業主に雇用されておるものとみなす、こういうように解釈していいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/29
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030・江下孝
○江下政府委員 だから、先ほどから申し上げておりますように、譲渡されまして、包括的に権利義務が譲渡されて、それを空間なく承継された場合は、これは仰せの通り適用になる、こういう意味であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/30
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031・多賀谷真稔
○多賀谷委員 包括的に承継がなくても、私はそれはいいのではなかろうかと思うのです。純然たる市民法の関係でいきますと、それは困るという話も出るのですけれども、あなたの方では、助けてやりたいけれども、法技術上むずかしいというお話ですから、あえて引き続き同一事業主であるということにこだわっておられない、こう解釈すれば、同一事業主の解釈をするよりも、同じ事業場で同じように勤務をしており、AからBに移るとき、会社の関係は包括的な承継でなくても、一応債権債務を打ち切った形でも、引き続き雇用形態が存続しておる、こういう場合において、しかも失業保険を一回も受けていない、こういう場合には、包括的な承継がなくても、この法律の恩恵を受けることができると、こう解釈していいですか、こう聞いているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/31
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032・江下孝
○江下政府委員 大体、それで私はいいと思います。ただ、やはりこれは具体的に判定しませんと、今のような抽象的な例で判定することは、非常に危険だと思います。しかし、今仰せの趣旨は、私はそのように広げていい、できるだけそういうふうに解釈しなければ、今の事務上の不備を補うという趣旨になりません。その趣旨は私は考えてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/32
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033・多賀谷真稔
○多賀谷委員 包括的な承継ということをあまり固執されない、こういうことで、具体的に先ほど申しましたような場合には、大体というのは、どうも私として了承しかねるのですけれど一も、恩恵を受けさす、こういうような意味に解していいような話でありますので、その点は大体わかりました。
もう一つ具体的に、例の国連軍の労務者の問題です。この前に私質問をいたしましたが、私も若干事例を十分把握していなかったので、退職金の支給について、ちょっと間違った質問をしたと思いますので、あらためて質問をいたしますが、国連軍の労働者は、御存じのように直接雇用から間接雇用に移ったわけです。そこで、本来ならば事業主が変ったというように労働法上では見られませんけれども、一般の概念では、そういうように考えられないこともない。ところが実際問題としては、これは単なる外交問題で変ったのでありまして、本来同じところに同じように間断なく勤めておる、こういう状態でございます。聞くところによりますと、退職金も一応若干の支給は受けましたけれども、その後においては通算をするという話でありますので、この点はどういうように扱われるつもりであるか、再度一つ御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/33
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034・江下孝
○江下政府委員 英連邦軍が昨年の七月直接雇用から間接雇用に切りかえられましたが、これは先ほど来から申し上げておりますような、この事業の同一性という点から見まして、私どもの扱いは、同一事業主として取り扱って差しつかえないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/34
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035・中村三之丞
○中村委員長 よろしゅうございますか、滝井義高君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/35
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036・滝井義高
○滝井委員 先に失業保険についてちょっと一点だけお尋ねいたします。今回失業保険法の改正が行われるに当りまして、適用事業を広げておられるのですが、その中で、今回の労災保険の改正においては、水産動植物の採取をやる三十トン未満五トン以上のものには、労災を適用することになったわけです。現在日本の水産業界の状態を見てみますと、私は、むしろ労災保険を適用する前に、失業保険を適用することが緊急の要務ではないかと思う。と申しますのは、日本を取り巻く海の中には、李承晩ラインというようなものがあるし、それから沿岸にはそれぞれ七十有余の米軍の基地があって、なかなか沿岸漁民というものは漁業ができないという状態になっておる。最近の情勢を見てみますと、漁民のうち、特に零細漁民の中から、どんどん転業者が出ておる。しかも転業ができずに、日雇い労働者の群れの中に入っていく漁民が、非常に多くなってきているということは事実なんです。こういうことで、労働省の中で、基準局は労災保険を適用するという一歩を踏み切られたのだが、なぜ安定局で失業保険を適用するところまで踏み切れなかったかということです。これを一つ御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/36
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037・江下孝
○江下政府委員 仰せのごとく、今回の改正によりましては、農林水産の関係につきましては、強制適用いたしておりません。これを強制適用いたすことができない理由は、いろいろございますが、第一は、雇用形態が明確につかみにくい状態が非常に多いということ、いま一つは、季節的な変動が非常に多いということ、これによって、絶えず失業保険のぐるぐる回しということが行われるというような事情で、実は一般的な強制適用にはいたしてないのであります。しかしながら、御承知の通り失業保険には、任意包括の適用制度がございます。これは五人以上の人を雇用いたします場合は、農林であろうと、水産であろうと、すべてその業者が労働大臣に認可を申請しまして、認可を得てこれを実施するということになっております。そこで現在でも、今、先生のおっしゃったような漁業から失業して出ていくという人に対しましては、農林省とも相談をして、現実に任意包括による失業保険の適用をやっておるわけでございます。数字もございますし、その点についてはあえて強制適用にしなくても、十分の保護ができるというふうに考えまして、以上申し上げましたように、今回も強制適用にはいたさなかったのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/37
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038・滝井義高
○滝井委員 任意包括の制度があるので、それで農林省と話し合って相当やっておるということでございます。実は、これは私労災保険と比較して質問をするのですが、労災保険においても任意包括制があった。労災の任意包括ではかたり手がいなかったのです。従って、今回これは強制適用になっておる。それと同じで、やはり同じような関係の保険ですから、失業保険においても、任意包括というものがあっても、現在の漁村の状態では、とうていかたる音心欲というものはわいてこない。こういう点で私は、労働省の内部で、労災保険で一歩踏み切ったからには、失業保険でもやはり踏み切るべきだと思う。今、局長さんが、非常につかみにくいとか、季節的な関係があると言われることは、これは失業保険でもそうであるように、労災保険でも同じなんです。同じ保険でつかむということになれば、労災保険でつかめるものが、失業保険でつかめないはずがないわけです。あなたはそういう答弁をされるが、おそらく向うはつかみいいからこそやったんだというふうに、労働省の内部で意見が二つ出てくると思います。これは同じ保険ですから、そこまでは私は今の御答弁ではちょっと納得しにくい。おそらく労働基準局長は、われわれはつかみ得るからこうやったんだとおっしゃるでしょう。言わなければ無意味になるのですから、やはりこれは労働省内部においても、こういう保険というものについて、ばらばらだ状態が、ここに具体的に出てきていると私は思うのです。こういう点で、もっと意思の調整をしてもらわないと、保険自体の見通しにおいても、一つの誤まった考え方が出てくると思うのです。こういう点一つどうですか、意思の調整ということをおやりになって、労災が出たからには、失業保険についても考える必要があるんじゃないかと思うのですが、その点もう一回御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/38
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039・江下孝
○江下政府委員 先ほど申し上げましたように、漁業というのは、非常に季節的に行われるものである。そこで、たとえば春漁場に出た、休んでおる間失業保険、これでは、前々申し上げますように、失業保険の面から見ますと、強制適用にすることは相当問題であると私は考えております。ただ先生のおっしゃったように、水産業がだんだん人を減らしていく、たとえば底びき網等の船の数を減らしていく、こういうような事態がだんだん出てきておる。これは農林省からもお話がございました。そこで何とかこれを失業保険に適用してみたらどうだというお話でございましたので、任意包括制度によってその面は救済をしたのでございます。
それからなお、水産業方面では、先生のお話では、その適用がないというようなお話でございましたけれども、私どもの方には、うんとこれを任意包括でやってくれという陳情がたくさん参って、実は私の方で押えるのに困っておるというのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/39
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040・滝井義高
○滝井委員 任意包括でずいぶんたくさんやってくれという人が多ければ、私の認識不足でけっこうでございます。
次にお尋ねしたいのは、特に失業保険法の七条で、国、都道府県、市町村、その他これに準ずるものに雇用される者は、失業保険の適用を受けないことに一応なっているわけです。もちろん、なるための条件というものには、失業保険で受ける保険給付と、それからそれらの国とか都道府県、市町村その他これに準ずるものに雇われている者のその職場で規定されている法令とか条例、規則に基いて支給を受くべき諸給与との比較が問題になっているようでございます。現在、地方財政というものは非常に窮迫をして、政府自身が地方財政再建のための特別措置法まで出してくる、こういう事態というものは、明らかに市町村における相当大量な行政整理が履行されておるということが考えられるわけです。市町村自体の職員の地位というものは、必ずしも安定をしていない状態が、現実の地方財政の状態から出てきつつある。六百億になんなんとする赤字をかかえておるという現状から考えれば、きわめて不安定な状態が出てきておるということなんです。そこで私は、これは今の市町村あるいは国、県の職員、官吏のあり方についても、再検討をしなければならない情勢が出てきておると思うのでございますが、今度の失業保険の改正に当って、そういう失業関係についても検討をしたことがあるのかどうかという点でございます。これを一つ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/40
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041・江下孝
○江下政府委員 この規定によってわかりますように、国または都道府県、市町村、それに準ずるところの職員は、失業保険からは原則として除外されておる。なぜ除外したかという点は、先生もよく御承知だと思いますが、一般の民間におきましては、失業保険料の負担は事業主がやるわけです。ところが、国家公務員あるいは地方公務員等におきましては、国または地方公共団体が保険料の負担をするわけでございます。本人の分以外の事業主としての負担をする。それからいよいよこれを支給いたします場合には、国が三分の一の負担を出して支給する、こういうことになる。なぜ国の場合除外したかと申しますと、国の場合におきましては、保険料の納入におきましてすでに国で一部負担をする、支出におきましても一部負担する。民間に比べましてこれが二重負担になっておる、こういう関係で、国が同じく自分の使用するものに対して二重の保護を加えるのはおかしい。民間の場合は、これは退職手当等につきましては、自前で計算をして出すわけです。国の場合は、やはり同じく保険料、保険金と同じく、一般から徴収いたしました税金をもって支出をすることになるわけでございますから、この場合は、国としての保護が二重になるということが私はいえると思います。その趣旨をもって、従来はこれは失業保険の適用を除外しておったというのでございます。ただ、必ずしも全部ではございませんで、このうち退職手当等の規定の適用のない臨時の職員がございます。これは失業保険の適用があるわけでございます。これは現実にも適用しておるのでございますが、一般の職員については適用をしない、こういうことになっておるのであります。今回の行政整理等が盛んに行われるというお話でございますし、私どもも、その点については若干承知いたしておりますか、行政整理が行われました場合には、国家公務員につきましては、御承知の通り倍近い退職金を出します。それから地方公共団体等におきましても、退職金の面で、従来から相当実績をふやすというのが例でございまして、やはり失業保険の面でこれを調整することは必要ないじゃないかということで、今回はこの規定は変更いたさなかったのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/41
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042・滝井義高
○滝井委員 今の御説明では、国が保険料の一部を負担しなければならぬということと、それから国が失業保険そのものに三分の一の国庫負担をしておる、こういう二重のものが主たる原因になっております。ところがそういうものがないかというと、実はそういうものがあるのです。たとえば都道府県の共済組合は、共済組合の金というものは、いわゆる都道府県の一般財源で、その共済組合の組合員の保険料と、それから都道府県がある程度それに出しております。と同時に、今度はその共済組合、健康保険の除外の組合になるわけです。従って、国民健康保険を共済組合は別に作っております。そうしますと、国民健康保険を作ることによって今度は二割の国庫負担が共済組合にいくことになる。こういう二重になるのがあるわけであります。従って、これは理論的にいえば、あったにしても、事業主という点においてわれわれの面に現われてくることは、国であろうと民間の事業主であろうと変らないことは、現在健康保険の診療報酬や、あるいは保険医の指定等をやる中央社会保険医療協議会というものがありますが、それに厚生省の保険局長が今度事業主代表として出てきているということです。だから、こういう点はちっとも変らない。国であろうと、事業主であるという点においては同じであります。なるほど、それは普通の民間のストライキその他とは違いますが、団体交渉の相手を、国としてやっておることはみな変らない。従って、今の社会保険立法の発展の傾向から見て、二重になっておっても、やってもいいという理論は、今の共済組合の問題等から考えまして、私は出てこないことはないと思う。これは議論にわたりますので、そういうこともあるということを一応私は主張しておきたい。
そうしますと、この失業保険法の施行規則の六条の第一項三号で「市町村又はこれに準ずるものであって、市町村又はこれに準ずるものの長が、その雇用する者を被保険者としないことについて、都道府県知事に申請し、労働大臣の定める基準によって、その承認を受けたもの」こういうことになっておる。従って、当然ここには、労働省には労働大臣の定めた基準というものがあって、失業保険を適用するかしないかという、こういう形が出てきておるわけでございますが、その基準は、具体的にどういう基準をもって入れる入れないということを定めてあるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/42
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043・江下孝
○江下政府委員 この基準は、結局一言で申し上げますと、国家公務員の退職手当に関する臨時措置の法律がございますが、あの程度以上の退職手当に関する規定を持っておる市町村の吏員等については適用しない、こういう基準でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/43
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044・滝井義高
○滝井委員 そうしますと、比較の対象が片一方は、いわゆる官公吏については退職金、それから普通の労働者については失業保険の給付、こういう比較になるわけですね、端的にいえば。それは私は比較の仕方が不公平だと思う。失業保険をもらう労働者も、当然退職金はもらうのですから、退職金と失業保険を加えたものと退職金とを比較して、それが基準にならなければうそだと思う。失業保険の給付額と退職金の比較では、これは比較の仕方が必ずしも正当でない。これは常識論としてこういう断定ができると思うのですが、それはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/44
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045・江下孝
○江下政府委員 だいぶどうも突き詰められて、困りましたが、実は退職手当というものは、民間で出しておるのが普通でございますが、出ないところもあり得る、六カ月ぐらいのところでは、出ない事業所も相当ある。そこで、それでは退職手当の出ないところでは、保険を適用するというわけにも参りませんし、やはり民間は保険料も負担をしておりますので、一律に、多少二重保護のきらいはございますが、これは失業保険法も適用しようということでなかったかと思います。ただ国の場合には、一般の税金を使うわけでありますから、一つできるだけ合理的に論理的にこれをやろう、こういう線で、こういうふうにきまったというふうに聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/45
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046・滝井義高
○滝井委員 国家公務員はとにかくとして、現在地方自治体の地方公務員の生活は、必ずしも安定をしていないのであります。将来やはり失業保険の適用については、具体的に検討する段階になってきておるものと思いますので、これを検討していただきたいと思います。それで失業保険に対する質問は終ります。
次に、労災保険についてでありますが、今度新しく五トン以上三十トン未満の、水産動植物の採捕の事業に従事するものに強制適用ということになったのでありますが、最初も申しますように、現在の日本の水産業界の現状を見てみますと、非常に零細漁業が多くて、水産業界の窮乏化というものが非常に目立って参ったということです。それはさいぜんも申しますように、米軍の演習地の拡大や、李承晩ライン等が、一つの大きな原因をなしておると思います。沿岸漁業というものの範囲が非常に狭められてきた。最近は三十トンあるいは四十トン以上のものは、沿岸や沖合いに行くよりか、むしろ北洋方面のサケ、マスの採捕にだんだん転業を勧めるという状態が出てきておるということです。こういう情勢から申して、同時に、日本自体におけるいろいろな漁民の統計を見ても、二十五万の世帯で二百九十万の漁民がおるのですが、その八五%というものは、三トン以下の船によって生活しておるという人なんです。そうしますと、ここに三十トン未満五トン以上、こういうことにくびってしまっておるのですが、この対象というものは非常に少い、こういう情勢が出てくることになるわけです。しかし少いにしても、順当に保険料その他が払えていけば、これは問題ないと思う。現在北海道その他漁連あたりの新聞をだんだん見てみると、今まで任意包括でもかたる人が非常に少かった。その原因を見ると、災害率が非常に少いということです。これは沿岸漁業というものは、大して危険がないので少かった。ところがここ数年、台風その他によって、急激に災害率がふえてきたということが、一つの強制適用をする理由に、提案理由書では書かれております。そこで、この災害率が少いということが一つと、日本の水産業界の経営というものが、次第に困難になりつつあるというこういう情勢判断を一応頭に置いてみると、果して保険料というものが順当に入ってくる情勢にあるかどうかというととなんですが、この点の見通し、さいぜんのつかみがたいとか、季節的な点が多いとかいうことを抜きにして、一つ率直な局長の御答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/46
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047・富樫總一
○富樫(總)政府委員 五トンないし三十トンの小漁業、そうしてそれが最近、特に終戦後の困難な情勢、それとからんで保険料が的確に収納できるかという御質問でございます。確かに私ども安易に収納ができるとは必ずしも考えておりません。そこで問題は、円滑に徴収するということにあるわけでございます。もっとも、その前提といたしましては、こういうことを考えておかなければいけないわけでありまして、この保険に加入することになったために、新たにこういう負担が出るということではございませんで、この保険に加入しておらなければ、災害が起った場合には、基準法に基いて一度に何十万円、何百万円払わなければならない、こういうことを頭に置いて考えますと、第一にそういう苦い経験にかんがみまして、業界においても、一つふだんから若干の保険料を納めていこうじゃないか、その意味で、この強制加入の方がよろしい、こういう意見に業界の方もなっておるわけでございます。またこの強制加入になりますと、現在、任意加入は六万人の労働者でございますが、約二十二、三万の加入労働者になります。従いまして、現在料率は四銭二厘かになっておりますが、強制加入後は、この料率も若干引き下げ得ると見込んでおるのであります。またこの納入につきましては、年三回の分割納付も認めるということになって――従来の漁業におきまする保険料の納入率は九五%でございますが、そういうことを勘案し、特に窮乏したもの等につきましては、たとえば国税徴収法の例にならいまして、かえって無理して徴収すれば、先の料金がとりにくいというような場合には、徴収を猶予するというような弾力的な道もございますので、先ほど最初に申し上げました基本的なことを頭に置き、かつ、あとで申し上げました弾力的な措置と相待って、できるだけ円滑に処置して参りたいと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/47
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048・滝井義高
○滝井委員 できる限り保険料の徴収は円滑にやりたいということでございますが、この労災が強制適用になった場合に惹起すると思われるのは、しけですね、漁業がうまくいかないというときの滞納の問題が一つある。それから漁業一般の経済情勢が困難なために、やはり保険料の負担そのものが非常に困難な情勢があるということが一つ、それから漁業関係では、必ずしも雇用関係が明白でないということが非常に多いのです。私医者で、あまり漁業のことを知らないが、多い。というのは、この前のビキニの灰をかぶったあの人たちでも、船員保険のいわゆる標準報酬というものを非常に低く見積られておる。いよいよああいう天災ともいうべき水素爆弾の灰をかぶったところ、それが低かったということで、いろいろ問題になったことを記憶いたしております。それと同じように、三十トン、四十トン以上の船になれば、雇用関係というものはややはっきりしておりますが、とにかく五トン以上三十トン未満ということになると、雇用関係がはっきりしない。こういう点から、適用労務者の把握が非常に困難になってくる、こういうおそれが十分にありまして、さあ船がしけその他で災害にあった、してみると、それは適用労働者ではなかったのだということが、今まで過去においても、任意包括のときでもあり得ておると推定をするのですが、そういう点に対するもっと具体的な防止策というか、あなた方のいい考えがあれば御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/48
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049・富樫總一
○富樫(總)政府委員 この点につきましては、先般横井先生からの御質問にもある程度触れたわけでございますが、そういうことが従来任意包括、任意加入の場合には間々あったのでありますが、今度強制加入にいたしますと、まず漁船そのものが漁船法によって登録されておりますので、五トン以上三十トンの漁船の把握は、その方面から割合に把握しやすいのであります。まずそれを基盤に置きまして、さてそれに乗り組む人たちの雇用関係はどうかという第二段構えの段階になる。その際に、仰せの通り、この雇用関係あるいは賃金支払い形態なども、普通の雇用労働者と違った形をとっておるわけであります。そこで、たとえばけい肺におきます土工、石工の一人親方を救済するためにどうするかということにも関連して、同じことが考えられたのでありますが、いわゆる協定賃金を指導いたしまして、私の方の出先が業主及び従業員の両者と円満に話し合いいたしまして、これこれのものはこの適用のある乗組員、そうしてこの賃金はほぼこれこれというふうに協定する。現在の漁業の任意加入につきましても、約八〇%方は私どもの方の指導によりまして、そういう協定賃金を結んでおるわけであります。従いまして、そういう手続を経なくても明確であるものは別でございますが、そうでないものにつきましては、極力そういう協定賃金の締結を指導勧奨いたしまして処理して参りたい、こういうふうに考えておるのであります。またその指導勧奨に若干の経費も要しますが、その経費も予算では組んでおるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/49
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050・滝井義高
○滝井委員 そうしますと今の御説明では、保険料の算定の基礎となるものは、労働省の方で漁業者に指導しておる協定賃金でやっていかれるということのようでございますが、実は漁連あたりの世論調査を見てみますと、漁業形態の賃金の支払い方式というものは、非常に複雑なようでございます。漁獲高を基準にしてやってくれというような意見もあるし、そういう漁獲高を基礎にした平均賃金、あるいはあなたの言われる協定賃金、あるいは給与総額でやってくれ、あるいは業種別の標準賃金、それぞれの沖合、沿岸あるいは底びきという、業種によっていろいろ違うと思うのです。こういう業種別の標準報酬を基礎にしようというふうに、いろいろな意見があるようでございます。今のように協定賃金一本でまとまれば、これは私非常にけっこうだと思うので、ぜひそうしていただきたいと思いますが、そうしますと、協定賃金でまとまったということになると、現在二十五万世帯あって約二百九十万の漁業関係者がおられるわけですが、五トン以上三十トン未満で強制適用することになると、これらの人の多くは零細な漁業経営者自身であり、あるいは家族労働によって成り立っておるものなんです。そうすると、経営者と家族労働者をどけてしまう形になると思うのですが、私はやはりその経営者自身が船に乗って出る、あるいは家族も乗って出るという場合は、これらの者にも労災保険をかけなければ画龍点睛を欠くと思うのですが、そういう者についてはおかけになるのですか、それともやはり労働者だけになるのですか、その点を御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/50
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051・富樫總一
○富樫(總)政府委員 これも前回横井先生の御質問に関連いたしまして、たとえば、そういう場合に漁業協同組合でも作りまして、そこの使用者、雇用人というような形でもうまくできればともかく、実際この筋を通して参りますればいいのでありますが、事業主及び賃金をもらわない家族従業員は、もともと基準法の適用がないので、非常に困難なわけであります。理屈を申しますと、そういう人たちは、あらかじめ生命保険なり何なりに入っておくということになりますが、しかしこういう近代的体制をとっておらない漁業でありますので、重箱のすみをつつくような法律論よりも、実情に即した賃金協定の指導の際に、あわせて考慮して善処して参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/51
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052・滝井義高
○滝井委員 私はこういう強制適用をやっていかれるとするならば、零細な漁業経営者あるいはその家族労務者というものについて、やはりこの際明確な態度が必要だと思うのです。というのは、たとえば北海道の調査によってみましても、年間十万円以下の収入のものが、北海道の漁民の五五%を占めておるということです。十五万円以下が二七%。だから、八割二分というものは十五万円以下の年所得者であるということなんです。こういうことから考えると、これをしゃくし定木に、お前らで当然生命保険にかかるべきだ、あるいは労災保険にかからなければ、それは労働基準法の適用を受けるのだといったところで――これはあとでそれに関連する質問があるのですが、こういう人に雇われておる人たちは、もしこの人たちが、零細のゆえをもって保険料を滞納しておったとしたならば、たといその人たちが強制適用を受けて労災保険に加入しておっても、保険料が滞納しておればもらえないのです。私のところにも、中小炭鉱のそういう例が最近出ておる。中小炭鉱で落盤があった。調べてみたところが、事業主が保険料を一年も滞納しておるために、命を失ったけれども、給付は半額になってしまったということが多いのです。生命保険料をかけずに生命保険金をもらうことはけしからぬという理論からいけば、これは一言の申し開きもできないということになるわけでありますが、こういう実態から考えてみて、使用人の問題もあるが、自分自身の問題さえも解決できぬものが、いわんや使用人の問題を解決できるはずがないのです。今後こういう零細な五トンや六トンの漁業経営者を入れるのですから、その保険料の徴収については、よほど責任を持っていただかないと、保険は入ったけれども、事故が起ったときに保険金が労務者にいかないという事例が、現実に中小炭鉱にはたくさん起っておるのです。私の心配なのはそこなんです。私のところに幾らでもそういう例があるのです。現在保険料を納めずに保険金をもらうことは不可能だと同じように、労災保険でも同じだと思う。こういう点の予防を、具体的に労働省はどうしてやられるかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/52
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053・富樫總一
○富樫(總)政府委員 法律論から言いますと、事業主であるおやじさんまで入れるということは、先ほど申し上げました協同組合というような形態でもとらぬと、とても無理ですが、家族従業者につきましては、いかなる賃金支払い形態をとろうとも、他の乗組漁夫と同じ形で賃金を払っているというのであれば、同じように加入ができるわけであります。
なお、滞納と給付制限との関係、ごもっともであります。ただ、台風が吹いて船を飛ばされた、同時に死人が出たというときには、その後滞納が生じましても、過去の保険料の納付によってそのときの死亡給付が行われるわけですから、炭鉱が落盤やら何やらでつぶれてしまった、破産と同時に前の保険金がもらえぬというほどのこともなかろうと存じます。御承知のように、私が最近基準局にかわりましてから、九州その他の中小炭鉱の、ただいまのような事例を深刻に聞き及びまして、最近になって通牒を出しまして、税金も未納であり賃金も遅配がちである、そして客観的に見てどうしても支払い能力がない、しかしまじめに支払おうという意欲はある。現在一万円なり二万円なりたまっておる、これを今後一年間になしくずしにこういうふうにしてやっていきたいというような誠意と努力と客観条件があるならば、普通の場合のように、むげに給付制限をすることなく、保険給付そのものは支給するようにという通牒も出しておるのであります。それが先々月でございましたか、その後の運用状況はまだ詳細に聞き及んでおりませんが、そういうことと同じ精神をもちまして、あるいは場合によってはそれよりも一段と深刻な精神に基きまして、漁業の保険料の未納問題に対処して参りたいと考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/53
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054・滝井義高
○滝井委員 今のような答弁は、なかなかりっぱですが、それは現在の九州の炭鉱についても、あるいは五トンか六トンの漁業者についても同じだと思います。現在非常に多くの借金を背負っておる。そうして炭鉱であれば、炭鉱の一切の機械設備その他も差し押えをされてしまっておる。国税もたまり、健康保険も失業保険も労災保険も全部たまっており、持ち物一切が差し押えをされておるときに、落盤があって、労働者が五人死んでしまった。ところが、失業保険を半年も納めていないので、何か労働省で省令があって、そういう場合には五割の給付制限があって、死ななくて外傷の場合には全部払うが、死んだ場合には五割の給付が行われておる。たとえば、五十万円もらうものは二十五万円くれます。ところが、あとの二十五万円は、もしその事業主が破産の宣告を受ければ、国が責任を持って出しますが、破産でない場合には、二十五万円は事業主からもらいなさいということが現実に現われてきているのです。これはあなた方の指導が現実に行われておることは事実だと思う。私はそういう事例を幾らでも持っておるわけです。そうなった場合に、もう一切のものは差し押えをされて、破産の宣告に追い込まれるということになれば、現実に百人なり二百人働いておる労働者が路頭に迷うことになって、五人死んだ者の遺族を助けるか、現実に働いておる二百人の労働者を助けるかということになれば、二百人を助けなければならぬということになって、五人の遺族は泣き寝入りをしなければならない。それなら、五人の遺族はその炭鉱主から労災に見合うだけの弔慰金を取り得るかというと、まる裸で取れない。取れればどこからでも取ってくださいと言ったって、全部のものが差し押えされてしまって、何もないという状態なんです。こういう状態の中で、一番ばかを見るのは労働者だ。こういうものに対する救済方法というものは、今の法律ではないですね。ところが、その善意の労働者を救うための保険料の責任者は、事業主にありながら、事業主の滞納のゆえに労働者が一切の責任を負わなければならぬというのが、現在の法律の形態なんです。そういう場合に、労働者に責任を負わせずに、労働者を何らかの形で救ってやる対策というものが、今の労災には欠けておると私は思う。これは私は一つの盲点ではないかと思うのですが、何ら労働者には責任がない、いわば無過失のものに一切の責任を負わせていく形なんです。これが対策というものは、今の法律ではないと思うのですが、あれば教えていただきたいし、ないのですから、今の御通牒はまことにけっこうですが、労災保険、失業保険、あるいは健康保険等の滞納が、現在のデフレ下においては非常に多くなっておることは、これはあなた方自身が保険料徴収の強化をうたわなければならぬことが裏書きしていると思うのです。こういう点について、何か対策があればお示しを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/54
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055・富樫總一
○富樫(總)政府委員 一面におきまして、あまりゆるやかにいたしますと、客観的にそういう要件を備えておらないのに、口先だけうまくして滞納のがれをしようというものも相当ないではないので、そう甘いことばかり言ってはおられないわけです。しかし、他面におきまして、現在の中小炭鉱の現状なるものは、これは相当客観的に窮乏の状態にあることはわかるわけでございます。法律におきましては、滞納したものについては給付制減をすることができる、少くともいいことになっておる。どっちでもいいわけです。ですから、何も脱法行為ではないわけです。ただ甘いことをあまり言っていると、国民経済が成り立たない、また善意の他の業者の保険料で払うことになるということもありますので、寛厳よろしきを得なければならぬ。中小炭鉱についての最近の扱いにつきましては、先ほど申し上げました先々月に出しました通牒によって、だいぶ実情に合うようになっておると私は確信しております。これは個々の具体的なケースが円滑にいくかどうかの問題でございますので、もし何かお気づきの点などございまして、具体的に御注意をいただきますれば、善処いたしますが、一般的にはそういう方針で、客観的にそういう公文の通牒も出したということで、御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/55
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056・滝井義高
○滝井委員 今の御答弁で、行政上の運営によって、それぞれのケースについては、ある程度考慮はできるということが大体わかりましたので、なおそれを法的にどうするかということを将来の研究問題にしていただいて、私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/56
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057・中村三之丞
○中村委員長 井堀繁雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/57
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058・井堀繁雄
○井堀委員 労災保険について一、二お尋ねいたしたいと思います。ごく簡単な改正でありますので、大要についてはのみ込んだつもりでおりますが、ここで適用事業場を拡大なされようとする意図につきましては、一般の労働保険と同様に、私どもは日本の特殊事情を十分に考慮されて、この際拡張されるなら、事情が許すならば五人未満の事業場も、基準法に併行して適用事業場を拡大すべき-だという考えを絶えず持っておるのでありますが、この際直ちにそのことは困難であろうという事情も、ある程度了承いたしておるのであります。こういう立場でお尋ねをいたすのでありますが、ここで一部適用事業場を拡大されることによって、まず労災保険の保険経済に及ぼす影響が、まだ数字の上で伺ってないと思いますので、ごく概略でけっこうでありますが、この範囲を拡大することによって、保険経済にどういう影響があるかということを一つ明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/58
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059・富樫總一
○富樫(總)政府委員 昨年度におきまして、漁業につきまして任意適用、こういう形で漁業に関する限り保険経済が営まれてきたわけでありますが、任意加入下におきまする昨年一年間の漁業における収支状況は、保険料として取った金が約一億、支払った金が二倍の約二億、こういうことでございます。これは昨年特に災害も多かったという理由にもよりますが、そういう状況であります。そのために、今年少し保険料率を上げたのでありますが、今度これを強制加入にいたしますと、従来任意加入で入っておった労働者数が六万人であったのに対して、保険料が一億、これが今度二十二万人の労働者が加入して、取る金が二億五千万円という程度になるわけであります。全体といたしまして、漁業そのものにおきまする保険料が、だいぶ平均的に率が低下されると同時に、収支率が円満にいく。保険経済全体に対する影響ということにおきましては、これはプラス、マイナス両面におきまして、きわめて微々たるものである、こういうふうに申して差しつかえないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/59
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060・井堀繁雄
○井堀委員 大体範囲拡大による保険経済については、御心配がないというふうに了承いたします。そこで、私はもう少し拡大していただきたかったのでありますけれども、今日の場合、時間的に無理があると思いますので、他の機会にお願いしたいと思います。
次に、第八条の改正の点であります。これは他の委員からもお尋ねがあったようでありますが、私の伺いたいと思いますのは、従来元請業一本にしてきたものを、下請に切りかえられるということは、証書による契約ということで保証の道が開かれても――それは保険料徴収の上に、ある程度の保証が得られるということは私も了解ができますし、ただ保険料を取ればいいという考え方だけであれば、私は格別疑問を持たないのでありますが、しかしこれは今後も保険をだんだんと育てていく福祉国家としての社会保障制度の一環として、こういう保険というものは、大きく生長を遂げなければならぬ性質のものである。そういう点から考えますと、こういう行き方は、非常に発展過程における行き方とすればコースが逆ではないか。この点に対して、どういうお考えをお持ちであるか、立案された事務当局の見解を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/60
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061・富樫總一
○富樫(總)政府委員 労働保護法規の建前が、こういう場合には原則として元請人が負うべきである、こういう原則は、もちろんこの際においても変えておらないのであります。しかしながら、実際問題として多少の余裕もなければなるまいということで、この第一次の下請人については、責任を分散する余裕がある規定が現在基準法にはあるのであります。それに対して、労災保険法においてはこの原則に対して全然例外がない。といって、われわれは単に窮屈だから例外を設けろというのでございませんで、法文を読んでいただきますとわかりますように、これは一定の形式、手続だけでなく、政府の承認にこれをかけておるのであります。どういう場合に例外としてこの承認をするかということが問題でございますが、われわれの運用の方針は、この承認はきわめて少い場合である。どういう場合かと申しますと、形式は下請であっても、実態は元請と変らない。たとえば、ある商社が東芝から電源開発の大きな機械を県直営の電源開発工事に納入する、こういう契約をするときに、商事会社が同時に据付まで請負う。しかし、商事会社にこの大きな電源開発機械を据え付ける能力はないのでありますから、実際にはちゃんとした据付業者に下請させる。その場合に元請と下請の関係というのは、通常の場合の上と下の関係ではないので、いわば契約上の形だけの下請と元請である。そういうときに元請に責任を負わせますと、かえって商社ですから、安全とか何とかいうことについての関心はない。下請したほんとうの据付業者の方も、安全について何かけががあれば、元請の納めた料金から支払われるのだというふうなことで、この安全についての配慮がおのずから希薄になる。そこで普通の元請、下請の関係とは違う、最近出てきましたそういう事例に対処いたします実質的には元請と変らぬもの、そうして資力もあり、そうして責任も負う、そうして安全についての実際の配慮もする、こういうものが最近少しずつあるようであります。そういうものにつきましては、認めてやる道を開いてもよかろうという、これは条文として堂々と掲げておりますが、適用の場面は、きわめて異例なそういう場合を考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/61
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062・井堀繁雄
○井堀委員 はなはだ遺憾な答弁を伺って残念に思います。この改正条文の中に、かなり用意周到なお考えがあることは――いきなり元請を下請に切りかえるというのではなくて、政府がなお検討の余地を残しているということは私はいいと思う。これをくずしてならぬことはもちろんでありますが、今の答弁で伺いますと、何か元請を下請に切りかえた合理的な理由の一つとしてだと思います。あるいはそれがすべてかもしれませんが、安全管理についての責任の所在を強調されたようであります。これは笑止千万と言わなければならぬ。保険の精神というものは、そういうところにはないのです。これは、第一条にも明らかに書いてある。そういう疾病や災害に対して、この保険は迅速かつ公正なる保護を与えるというところに大目的があるわけでありますから、このことと安全管理の問題とを同時に考えることは、ある意味においては正しいと思うのです。しかし、この保険法改正の際における思想としては、これは基準法に基いて安全管理の道はきびしく法が規定しておる。そういうことが、保険料金が元請によって支払われる保証がついておるから、安全等理について不注意になるというようなことは、事実をあまりに曲解しておられると思う。安全管理をおろそかにするということは、保険とは直接関係がないことです。もしそういうお考えであるとするならば、基準監督局長としては、今後の安全管理についてわれわれが心配する。まだ就任して間もないことでありますから、せいぜい勉強していただけばおわかりになると思いますが、この点は思想的に私は十分注意をしていただきたいと思いますので、警告的な意味でお尋ねをしておきます。
次に、もう一つお尋ねをしておきたいと思いますのは、この労災保険の非常に重要な役割りが、この法改正の中には出ておりませんけれども、それは労災病院すなわち医療施設の問題です。これは一条にもこの趣旨を明らかにしてある。これは保険が政府管理であると同様に、こういう事業も政府が管理するのが建前だと思うのであります。この管理を他の団体にまかされておる。もちろん厳重な監督は行われておることと思いますけれども、この機会は療養施設が現在どういう状態であるか。というのは、今日の保険法を遂行していくために、療養としてはもちろん十分じゃないと思いますが、何とか間に合うとお考えであるか、あるいはこれを積極的に拡大しなければならぬという事態にあるとお考えであるか、この点に対する当面の責任者の御所見を承わっておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/62
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063・富樫總一
○富樫(總)政府委員 労災の病院につきまして、第一に労災協会に委託いたしましたところの形をとっていることについての御質問でございますが、この委託いたしましたところの形式をとっております主たる理由は、先生も御承知の通り、役所直轄にいたしますと、何かと、たとえば会計法の規則とかなんとかいうことによりまして、いわゆる役所仕事になります。病人の診療というきわめて実情に即した扱いを、円滑かつ迅速に行わなければならないということとのギャップを除くための、きわめて形式的な便宜の措置でございます。しかしながら、その間にだれた扱い、間違った扱い、本旨に反しておる扱いなどのあっていけないことはもちろんでございます。十分なる監督、実質的には直営とほとんど変らぬくらいの監督をいたしておるわけでございまして、今後のこの施設が現状で十分か、拡充の必要はないかということでございますが、現在病院が約二十一あるのでありますが、これが完成した病院は、たしか四つくらいでございます。他の病院は部分的にしかできておりません。ある意味におきましては、やや間口を広げて奥が足りないということでございますので、今後は新設をできるだけ整備いたしまして、現在の建てかけのものの充実に努力するつもりでございます。現に昨年におきましては、労災病院のその方の金が約十億の予算でありましたが、今年は新営をずっとしぼりまして、拡充の方に重点を置きつつ、なおかつ予算は十二億にふやして、今後の実際上の扱いに支障のないように努力したいと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/63
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064・井堀繁雄
○井堀委員 私も官僚経営はよくないと思いますので、そういう意味では、今の制度には特徴があるように思います。しかし、その特徴を生かしていくための措置は、よほど考えられねばならぬのではないかと思われます。ここにはそういううわさを聞きませんけれども、一般国営あるいはこれに準ずる公営の療養所に対するとかくの非難の声も高いので、こういう制度の中から、そういう失敗がかりそめにもありました場合、こういう事業に非常に大きな障害になりますので、そういう事態に相ならぬように、今日こそ重大な関心を持つべきではないかと思うので、十分御注意いただきたいと思います。
それから施設の問題については、はなはだしく不自由を感じておるという被保険者の訴えを私どももよく聞くのです。これは予算の許す限り、どんどん充実拡張していかれることが願わしいことでありますが、にわかに困難でありますれば、できるだけそういう計画をすみやかにお立てになって、またそういう計画かおありになりましたなら、一つ資料を提供していただきたいと思います。
それから、ついでにお願いしておきたいと思いますが、病院の管理の上で一番重要な経理の面について、われわれに資料がもし提供できるなら、一つ出していただきたいと思います。
以上、簡単でございましたが、労災法改正に関する私の質問を終ろうと思います。
そこで、次に失業保険について一、二この前労働大臣にお尋ねいたしました折りに保留しておきましたことがありますので、ごく端的にお尋ねをいたしたいと思います。この前、局長は御記憶に残っておると思いますが、私と労働大臣の質問応答の間に明らかにされましたことは、また政府がこの法案を国会に提案するに当りましての趣旨弁明の中に、一昨年の末から実施された政府の緊縮政策に伴い、失業情勢は悪化し、これが急速な改善を今直ちに見込まれないのであるという前提で、失業保険の改正をしたいということを強調されました。この点に対して、私はいろいろ所見をお尋ねいたしました。そこで、私はこれをもっと具体的に、政府の見方をこの際はっきりただしておきたいと思います。この見方が誤まりますと、この保険法の改正は、その前提において心配があるということになると思いますし、特に私は失業保険については、日本の雇用行政を取り扱う者にとりましては、非常に貴重な資料になっておると思うのです。でありますから、時間が許しますれば、このことについて私どももお尋ねをし、また政府もこういう機会に御答弁を願っておくことが願わしいと思うのでありますが、思うような時間がないようでありますから、別な機会にまた資料を提出していただき、また私たちも研究して政府に御注意申し上げたい点もございます。
そこで、この法案改正に直接関連のあることについてお尋ねいたします。この失業保険の資料の中で、受給者の人員が動きますが、この受給者の人員の動きについて江下局長は、さきの提案趣旨の説明と比較して、今ここに政府がこの法案を提案するに当って、一体これから失業保険の被保険者の数が、向う一年の会計年度の間にどういうカーブをたどるかということについての見通しを伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/64
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065・江下孝
○江下政府委員 昭和三十年度の失業保険の受給者がどう動いていくだろうかという御質問でございます。実はこの失業保険の受給者につきましては、御承知の通り、一昨年から相当カーブが急激に上って参りました。昨年度の上期におきましては、初回受給者等も、かつてない数字を示しておりました。ところが、昨年度の下期におきましては、季節的な労働者は除きまして、おおむねやや小康を得た感じがするのであります。大体昨年度の下期の初回受給者は、季節的な労働者を除きまして、実績は毎月七万五千の数字でございます。
そこで、本年度の上期にこの数字がどうなるかということにつきまして、私ども相当慎重に検討をしたのでございます。いわゆるデフレ政策によりまして、急激な企業整備というものは昨年ほどの勢いでは行われないであろう。しかしながら、依然としててこ入れ時代でございますので、やはり企業整備というものは相当あるであろう。大体の考えといたしましては、本年度の上半期におきましては、昨年度の下期と大体同様の数字を示しているのでございます。そこで実績を申し上げますと、本年の三月の初回受給者が七万五千でございます。それから四月になりまして、これが減りまして七万三千になっております。五月になりまして若干ふえて七万八千何がしと相なっております。今までのところは、大体私どもの予想の通り、初回受給者が上半期七万五千という数字をたどっているのでございます。下期の問題でございますが、下期におきましてはある程度地固めをやっていくという考え方で、季節労働者を除きまして初回受給者は若干上期より減るのではないか。そこで、下期におきましては毎月平均七万人の初回受給者を一応考えて-そのほかに季節労働者はございますが、一応そういう予想で本年度の予算編成をしたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/65
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066・井堀繁雄
○井堀委員 そこで、少し込み入ったことをお尋ねして恐縮でありますが、私どもは受給者の動きと、もう一つそれに関連して重要な問題が統計の上に現われていると思います。それはこの受給資格が切れて、それから次に安定所が紹介をし、就職するまでの率がここに統計に出ております。この統計をそのままわれわれは一応信用してお尋ねするわけでありますが、ごく最近の数をずっと見ていきますと、職業紹介所が紹介いたした数についてふえてきているということは、職員の努力を示すものとすれば、かなり一生懸命やっているというふうに見ることができる。ところが、その努力に比較いたしまして、就職の件数についていろいろな統計によって相違があるようであります。私もこの事実を二、三ひどいものについて、府県に直接当って調べて見ましたが、驚いたことには、公務員としての規定ののりを越えて、全く自分の仕事に熱中した職員が数多くおるところは非常に成績が上っており、今日の公務員の許された範囲内の仕事でお役目通りやっているところでは、非常に悪いとは言わぬでも、普通にしかやっていないというように、私は事実について調べてそういうように受け取っておる。この点は、こういう場所で討議をしますのは、時間がかかると思いますけれども、これは公けの機会に明らかにしておきたいと思いますので、私はわざわざこういうことを申し上げておる、局長はこういった末端の動きについて、どういう洞察をされておるか。私はこのことは失業保険法改正の上に重大な問題だと思いますので、この統計の動きと同時に、府県のそれぞれの動き方と職員の配置や監督上の問題について、どのようなお考えをお持ちになっておるか、数字に並行して一つお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/66
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067・江下孝
○江下政府委員 職業安定所におきます職員が、受給資格者に対しましていかに職業紹介を行なっておるかという点について、十分な実態把握ができておるかということであろうと思います。私どもといたしましては、失業保険の受給者に限りませず、一般に安定所に出て参ります求職者に対しましては、安定法の規定にのっとりまして、とにかくあとう限りの努力を尽して職業紹介に従事しておるのでございます。仰せのごとく、これはその安定所その安定所によりまして、あるいは多少の違いはあるということは否定できないのでございますけれども、私から申し上げますのはおこがましいのでございますが、全国一万五千人の安定所の職員が五百三十四カ所の安定所に配置せられまして、これが全般的な業務の運営に当っておるのでございますけれども、非常にむずかしい雇用情勢下におきまして、この仕事とほんとうに真剣に取り組んでやってくれておると思っております。ただ御承知の通り、庁舎あるいは物的な施設、人的な施設におきまして、必ずしもこれは十分というわけには参りませんために、ところによりましては、もっと能率が上るのじゃないかと思われる方法も、ほかに考えられるとは思うのでございますけれども、しかしながら、なかなかこれが一朝一夕に改善を見ませんために、すべての安定所の業務がすべて一番よい能率を上げるというところには、まだなかなかいっていないということは認めざるを得ないのであります。なお、県によりまして、相当な紹介あるいは就職の比率の差等はございますが、それは結局そういう点もございますし、またその地方々々の雇用の実情というものにもよりまして、一がいにどこの県がどうというように今ここで申し上げるわけにはいかない次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/67
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068・井堀繁雄
○井堀委員 何も個々のそれぞれについてお尋ねするわけではありません、今のお答えである程度了解できます。ちょうど幸いに労働大臣もお見えでございますから、もう一度局長にかわりましてお尋ねいたしますが、申すまでもたく、失業保険法の改正に当って、この前からいろいろ皆さんが議論されておりますように、一番大事なことは、新しい就職の機会を与えるということが、保険経済を助けることにもなるし、失業保険を健全な道に生かすことでもあると思う。しかし一般論としては、せんだって労働大臣と私との間に一、二質疑応答をいたしましたように、経済全体のデフレ政策遂行による失業の増大を余儀なくされておる政策のために行われる対策としては、私は失業保険にばかり依存することは、この制度を危機に陥れると思う。やはり経済政策の上でそういう破綻ができるものは、それに見合う政策によって対策を講ずべきであります。こういう恒常的な保険によって、いわゆる政策の大きなカーブの犠牲をこれに負わせるということは、私は間違っておると思う。こういう意味で、この前労働大臣と私との間の議論で相当明らかになったのですが、この際ちょっと伺っておきたい。この提案趣旨の説明によると、経済政策の結果、相当の失業が出る。それをこの失業保険によって生活の保障をはかろう、こう説明をされておるわけであります。この点について、今局長から答弁がありましたように、末端の職業あっせんのための公務員の努力は、そのまま失業の業務に取り組んでおるものと私どもそう信じたいのでありますけれども、しかし、なおかつこういう非常にむずかしい仕事の一つでありますから、公務員の特別な訓練、教育と申しますか、資質を向上するための措置が一方にとられ、またそのための生活の保障の道も考えられなければならないでしょうし、それから局長が認められたように、この人たちの作業しておる設備がはなはだしく実情にそぐわないままで放置されておるので、こういう改善も至急に急がなければならない。そういうものはそのままにして、この保険法だけをいじっていこうというところにも、かなり本末を誤まっておる。この点は、二つの意味において、私は政府提案趣旨の中に誤謬をおのずから発見されるのではないかということを思っております。この点について、一つ労働大臣に所見を伺いたい。これが解決のために、予算措置を伴うことはもちろんでありますが、予算審議の際には、労働大臣が、失業対策については、まずまずこの予算でやってのけられるということを答弁されておりますが、実際はなかなか困難な問題が出てきておる。こういうものを、どういうようにして解決されようとしておるか、一つ労働大臣としての御所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/68
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069・江下孝
○江下政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、職業安定行政、特に安定所の窓口の仕事は、今の国の出先機関のうちでも、最も困難な仕事の一つであると私は思っております。現在一万五千人の職員がこの仕事にとにかく朝早くから働いておるということは、私、責任者といたしましても、常に感謝をしておるのでございます。今お話しのように、どうも安定所の庁舎、あるいは人員等も整備しないで、ただ仕事をふやすばかりでは困るではないかという点でございますが、これはもう何度も繰り返すように、痛感をいたしております。この点については、特にまた来年度の予算要求等の際におきましては、上司にもお願いいたしまして、十分この業務が円滑に行われて参るようにぜひいたしたいということを申し上げて、御答弁にかえたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/69
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070・井堀繁雄
○井堀委員 ただ、もう一つ聞いておきたいと思いますのは、さっきちょっとお尋ねいたしましたのに、他のことでお答えをいただけなかったのですが、失業保険の統計の数の上からずっと見ていきますと、就職の率が非常に困難になってきておるということは、先ほどの議論で明らかになりました。そうすると、失業保険で六カ月を九カ月に切りかえるということで、ここに数字が明かにされておりますが、この保険経済に及ぼす数字の問題で論議をしてくると、私はきっとこの法案に対していろいろな不満足と危険を感ずるものであります。こういうものに対して、十分かといえば、もちろん必ずやりますと言うにきまっておると思いますが、この次、これは数字になってすぐ出てくるわけでありますから、こういう点に対して、全体の見通しの上に、審議の過程において、政府は十分考えなければならぬ事柄がだんだんと出てきたと思います。そういうものに善処すべき用意がなければならぬ。そういう点に対して、一体どういう方法が一もし保険財源の中で大幅な狂いを生じてきた場合に、補正予算はやらぬといっておりますから、むずかしい問題かもしれませんが、何かそういうことに対するお考えがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/70
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071・江下孝
○江下政府委員 先ほど御答弁いたしましたときに、申し落したのでございますが、一応三十年度の予算といたしましては、先ほど申し上げました線でございますが、これには予備費が四十三億ついております。これによりますと、昨年度予算よりは、なおかつ三%増の失業保険金の給付ができるわけでございます。さらに、御承知の通り二百五十億の積立金を持っておりますので、現実の失業保険経済が、かりに異常な危険にさらされましても、ここ二、三年におきましては、御心配のような事態は起らぬと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/71
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072・井堀繁雄
○井堀委員 そこです。今明らかになりましたように、保険の積立金によってこの危機を打開しようというお考え方が、私はありはしないかと思って、ひそかに心配をしておりましたが、このことは、大臣に一つ十分聞いておいていただきたい。今まで保険の制度が始まってから、ずっと保険を今日のように築き上げてきたのは、被保険者の努力、また雇い主の協力にあったことは言うまでもないと思います。元来保険のそういう積立金で、政策の転換によって起る穴埋めをするというようなことは、こういう保険を経営するものとしては、最も危険な思想であります。絶体絶命の場合にそういうことが行われるというのでなければならぬのです。私はそういう点で、今回この失業保険法の改正に現われている政府の思想というものは、おそるべき思想だ。私は、こういう角度からながめますと、責任ある保険経済というもの、保険のやはり長期的な性格というものに対して、保険を構成している人々の建設的な意思というものに、絶えず発展的な刺激を与えなければならぬ、幻滅の悲哀を与えるようなやり方をしてはならぬということは、こういうところにあると思う。こういう点が非常に重要でありますので、私はこの保険法について最初から非常な疑念を抱いておったのです。いろいろありますが、この点で、私はただいまの御答弁によって、もしやと思っておりましたことに、はっきりしたお答えをいただいて非常に遺憾に思います。いずれまた討論の機会がありましょうから、その節申し上げることにいたしまして、一応時間の都合がございますから、私の質問は終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/72
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073・中村三之丞
○中村委員長 ほかに御質問はございませんか。なければ、両法案についての質疑は、いずれも終了したものと認めるに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/73
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074・中村三之丞
○中村委員長 御異議なしと認めて両法案に対する質疑は終了いたしました。
次に、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案についての討論に入りますが、本案については別に討論の通告もありませんので、これを省略し、直ちに採決に入るに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/74
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075・中村三之丞
○中村委員長 御異議なしと認め、そのように決します。
これより採決いたします。本案を原案の遮り可決するに賛成の諸君の起立を願います。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/75
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076・中村三之丞
○中村委員長 起立総員。よって本案は原案の通り可決せられました。
なお、本案に関する委員会の報告書の作成等に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/76
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077・中村三之丞
○中村委員長 御異議なしと認めてそのように決します。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/77
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078・中村三之丞
○中村委員長 次に、理容師美容師法の一部を改正する法律案を議題となし、質疑を継続いたします。現在通告の質疑者は四人おります。順次これを許します。野澤清人君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/78
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079・野澤清人
○野澤委員 理容師美容師法の一部を改正する法律案についての、総括的な質問はすでに終っていますので、私は今回政府がこの法律案を出しましたほんとうのねらいがどういうところにあるのかということにつきまして、すでに提案理由の説明を見ますと、第一点、第二点、第三点とも、ほとんど保健衛生上の、理容所あるいは美容所に対する管理面、あるいは業務管理、さらにまた免許取消しとか業務停止というような三点を指摘して、提案理由の説明にいたしております。ところが、実際問題として、この理容師美容師の期待いたしております事項というものは、単なる開設の際のしちめんどうくさい開設規格と申しますか、条件と申しますか、そういうことのねらいよりも、逐年ふえてきます同業者間における不徳行為をどうするかということが、根本だと思うのです。うわさを伝え聞いておりますと、たとえば一応成規の手続をとって開設したものが、料金の低廉を独断でやる、あるいはまた組合の相談というようなものについての申合せについてもこれを厳守しない、こうした面について、少くとも開設の際に厳重な施策を講じて、将来そうした異端者の生まれないようにしたいというのが、業者全体の願いじゃないか。そこで、今度の法律のねらいは、そうした点にまで波及し得るような立案の仕方をしておるのか、あるいはそうした問題は、法律には載せないが、省令や通牒等で特別行政措置として、今後業者の安心のいくような指導監督をされる御意思があるか、この点についてお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/79
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080・楠本正康
○楠本説明員 お答えを申し上げます。ただいまの御指摘の点でございますが、なるほど表面的には、衛生措置の徹底というようなことが主体となって規定されておりますが、ただいま御指摘のように、これらの法律の運営によりまして、最近問題になっております低料金競争からくる衛生状態の低下、あるいは低料金競争からくる組合の混乱というようなものを、できるだけ防ぎたい意思はもちろんございます。ただこれらを、純然たる言葉で法律の上に現われますことは、法律の性格上等についても、いろいろな問題がありますので、それらの気持を勘案しつつ、今後運営に誤まりなきを期していきたい、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/80
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081・野澤清人
○野澤委員 大体わかりましたが、それでは今後行政府として、理容師、美容師の内心大いに期待しております部面に対しての施策を、具体的に着実におやりになる御意思があるかどうか。ただこうした管理面についての着実な監督や指導をする、適法な措置を講ずるということだけでは、業者全体の期待に相反すると考えますが、この点いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/81
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082・楠本正康
○楠本説明員 これは業者の要望のうち、それが社会公共上まことにもっともだと思われる事項であり、しかもそれが結果として業者の利益にかりになるとすれば、それらの範囲においては、当然私どもといたしましても、運営上注意をしていかなければならぬ、かように考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/82
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083・野澤清人
○野澤委員 こまかい問題で恐縮ですが、たとえば日本橋の三越の付近の業者の中で、ほとんど大半が男の散髪は二百円、ところが三越の筋向いの散髪屋では新規開業して百円である、こういう事例がありますが、各地で今後経済情勢の逼迫とともに、必ずそうした問題はたくさん出てくると思います。これに対して、自治的に業者が組合員にしたり指導しておりますけれども、もうおそらく限界に達しているのではないか。こうした問題は、法的措置によって何らか監督強化をしてほしいというのが、業者の切実なる願いだと思いますが、この切々たる願いに対して、当局とされてはどういう指導方針で臨まれるか。いろいろな法律の手前もあるから、そのまま放任するのか、あるいは保健所等を介して、積極的にこれらのアンバランスを調整する御意思があるのかどうか伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/83
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084・楠本正康
○楠本説明員 行政手段といたしましては、それぞれ規定されました基準あるいは取扱いの原則がございますから、それらにかなっております以上は、料金等の問題に対しては、行政措置としてはあまり触れたくないと考えております。しかしながら、その結果正しい当然行うべき事項を行いますれば、やはりやがては適正なる料金が生は、これは適正な料金――ある程度の幅を持ちました適正なる料金というものを考えまして、できるだけその線によって指導をいたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/84
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085・野澤清人
○野澤委員 そうしますと、適正な指導監督をして適法な措置を講じ、しかもまた料金等についての干渉は直接はできない、間接的にそうした指導監督もされるという御意思と了承して差しつかえないですか。
ついでに、今度の法案を見ますと、従来十五日前に届け出る届出制というものを、検査制度に切りかえたということであります。法文の建前から見ると、りっぱな法律であり、また必ず厳格に実施されるような感じがいたすのでありますが、ただこの立法措置の根本を貫く考え方に、多少もの足りない点があるのではないかということは、どなたか委員の方も質問されておりましたけれども、少くとも都道府県の免許なり国家免許なりを与えられた免許者の直接の開業の場合と、第三者がこの資格者を雇用して開業する場合とにおいて、開業の限度というものにはおのずと厳格な区分がなければならない。これはひとり理容、美容の問題だけでなしに、全般に通ずる問題だと思うのであります。長年の学校生活をし、インターンをして、せっかく試験を受けて、その資格を取った者が、直接自己の資金で開業する場合と、人に雇われて開業する場合との開設の要領並びに認可の点というものは、同じ届出制で開設されているが、これはむしろ第三者が開業する場合には、免許制度に改めるのが至当ではないか。そうした公けの免許に伴う開業に対しては、おのずと区別すべきじゃないか。こうした考え方を、便宜的に床屋だから、あるいはパーマネントだからということで、政府の方ではそれを同律に考えたのか。あるいはそうした基本的な考えはあったけれども、現在の戦後における民主的な立法措置としては、なるべく区分はしたくないけれども、行政上取締り上今後厳格な区分を不文律のうちに蓄えて、あるいはまた指導監督していく、従って不当行為をした場合には、厳重にこれを罰するのだ、こういうお考えのもとにやられたのか。万一そういう考えで、便宜主義におやりになるとすれば、罰則がきわめて軽過ぎるのじゃないか、こういう感じがいたします。この辺の考え方を、率直にお述べ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/85
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086・楠本正康
○楠本説明員 御指摘のように、資格者が開業をいたします場合と、無資格者が第三者として開業いたします場合とでは、当然差等を設けていいものと考えております。ただこれを制度の上ではっきり許可制度、あるいは届出というふうに区別いたしますことは、これはただいまのお言葉もありましたように、全体の考え方からしては、多少の無理がいくのじゃなかろうか、かように考えます。従って、実際問題といたしましては、届出の省令の範囲において、その内容に相当な区別をつけまして実施をいたしたいと考えております。そういたしますれば、体系はくずさず、しかも実質的には同様な効果が上るので、さような差等を考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/86
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087・野澤清人
○野澤委員 この省令の内容等において差等をつけるというお話でありますが、これは答弁として、実にあいまいな御答弁だと思う。そこで具体的に、たとえばどういう差をつけるのか。これは私は、なぜそういうことを申し上げるかというと、統制経済中にも、戦時中にも、御承知の通り日本の各種の営業の中で、やみ行為のなかったのは散髪屋だけです。散髪屋だけは安売りとやみで高く取ることのできない商売なんです。このまま放任しておきますと、実際に収拾のつかない、組合の分裂等も起ると思う。そこで、そういう差等をつけるという意味は、具体的に言うとどういうことであるか。業者の業態というものを、ほんとうに育成するという面から、的確な御回答を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/87
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088・楠本正康
○楠本説明員 省令の段階におきまして、第三者の場合、特にそれが第三国人であるというような場合には、居留証明書を添付せしめる、あるいは第三者の場合には管理者の姓名、資格等を明記せしめる、あるいは従業員数を明記せしめる、さらに他にどういう営業をしているか、たとえば他に同じような理容美容の店舗を構えているかというような点をも届け出させまして、これによって行政上差等運営の万全をはかりたい、かように考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/88
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089・野澤清人
○野澤委員 大体の政府の意向はわかりましたから、その程度でけっこうでありますが、ただやみ行為のない理髪業の業態を、単に法律が出た、省令が出されたからというて、しゃくし定木の監督指導だけでは困るわけです。同時に、業者がどんどんふえてきますし、距離の問題もあり、地域の問題も当然生まれてくると思います。そうした面について、少くとも他の業種と違うという面から、環境衛生あるいは保健衛生の面からも、積極的に業者が国民に奉仕するという体制に万全の策を講じて、あたたかい気持で一つ御指導を願いたい。かく希望いたしまして、私の質疑を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/89
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090・中村三之丞
○中村委員長 福田昌子君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/90
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091・福田昌子
○福田(昌)委員 簡単にお尋ねいたしたいのでございますが、この美容師法の改正案は、美容師の方々の意見をどれだけ尊重されて、意向をどれだけくんでお作りになったのでありますか、その点をまず伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/91
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092・楠本正康
○楠本説明員 かねて理容師会並びに美容師会の意見も十分参考といたしまして立案をいたしました。しかしながら、特に美容師会等におきましては、いろいろまとまらぬ意見もあったかに伺っておりますので、私どもにおいて最も妥当と思われる点を採用いたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/92
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093・福田昌子
○福田(昌)委員 美容師の団体には、非常にたくさんの団体があるように聞き及んでおりますが、こういうそれぞれのグループの人たちの意見を一応尊重なさってお聞きの上に、この改正案をお作りになったのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/93
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094・楠本正康
○楠本説明員 御指摘の通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/94
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095・福田昌子
○福田(昌)委員 教育制度に関することですが、インターン制度が、この美容師の教科課程につけられておるのでございますが、このインターン制度につきまして、ことに美容の教科課程におきましては、実地の修練というものが、学理の修練と同じように大へん重要な問題となっているので、そういう教科課程になっておるのでございます。それにもかかわらず、特にまたインターン制度、実地修練の制度を一年もつける、こういうような教育制度というものは、美容業界それ自体も、非常に反対をいたしておりまして、インターン制度の廃止を願っておると思うのでありますが、こういうインターン制度の廃止を今回お考えにならないで、やはりインターン制度を存続しておられるということは、私どもといたしましては、時宜に適した措置とは思えないのであります。このインターン制度に対しまする御見解を、厚生大臣から承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/95
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096・楠本正康
○楠本説明員 インターン制度の根本問題につきましては、あるいは私から御答弁申し上げるのもどうかと思いますが、少くとも理容、美容につきましては、従来多年徒弟制度というような考え方で進んでおります。しかしながらこれらも、日本の現状として直ちに全部を切り捨てることもできません。かたがた理想から申しますれば、教育の課程においてすべてを完了するということが理想ではありましょうが、現実的な問題としては、いまだインターン制度を設けておくということは、徒弟制度の関連等を考慮いたしますれば、妥当な措置ではなかろうか、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/96
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097・川崎秀二
○川崎国務大臣 ただいまインターンの問題につきまして御質問でございましたが、むしろ理容師美容師法の根本の趣旨と、それからこれに伴いまする業界あるいはその他の関係のことは、私から御説明申し上げた方がよかろうと思います。
この件につきましては、昨年来、東京都内あるいは大阪等の重要な都会におきまして、業界の系列を乱すような非常な低い賃金で、美容の設備もなく、また十分なる近代的施設を欠いたまま営業をいたし、そのために非常に業界で問題になったことがあるのであります。業界におきましては、今回提案を見ましたるものよりもさらに厳重なる規定を置いてくれ、あるいはさようなものをなるべく禁止してもらうような意味での各種の要望があったのでありますが、これらは、諸般の事情から各政党の政調会あるいは政府におきまして十分勘案をいたしました結果、最も妥当なる線は、今回提案をいたしたもので一応十分であろうということで提案をいたしたのでありまして、これにつきましては、各政党の政調会の御意見なども、かなり盛り込まれておると思いますので、この点は十分御信頼を願っておきたいと思うのであります。もとより一部業界と申しますか、美容師だけのサークルにおきましては、さらに理容師美容師法というものを分けてくれということにつきまして、相当の運動が今日ありますが、これは今後におけるところの問題といたしまして、一応この線をもって今日は出発をしたいということに相なっておるわけでありまして、この点もまた御了解を願いたいと思います。これは環境衛生部長の御説明に落ちておったと思いますので、あらためてつけ加えておきます。インターンの問題につきましては、ただいま環境衛生部長が答弁をいたした通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/97
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098・福田昌子
○福田(昌)委員 今日インターン制度がとられておりますのは、たとえば医師とか歯科医師、それからこの理容師というようなことになっております。医師、歯科医師にインターン制度が作られましたのは、これはまた別の理由から作られておるわけでございますが、美容師の場合の教科課程におけるインターン制度というものは、これは先ほど楠本部長のおっしゃったように、従来の徒弟制度に対する緩和策として考えられておったのでございます。こういうような意味合いから作られたインターン制度であれば、時代も進んで参りましたし、美容師の教育の内容も、また身分の保障の点におきましても、ずっと地位が高まって参っておるわけでございますから、こういうような徒弟制度の一つの逃げ道として、緩和策として作られたようなインターン制度というものは、私は当然今日において廃止してしかるべきだと考えるのでございます。従いまして、この点につきまして再度の御配慮をお願いしたいと思います。
次にお伺いいたしますが、ただいま厚生大臣の御答弁によりますと、理髪師と美容師を分けてくれという陳情もたびたび来ておるが、これは今後の問題であるというお話でございましたが、今後の問題であるとして、どういう点を考えておられるのか、そしていかに処置なさろうとしておられるのか、この点を伺っておきたいと思います。大臣の御見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/98
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099・楠本正康
○楠本説明員 きわめて技術的な内容にもなりますので、私から御答弁を申し上げます。
現段階におきましては、理容、美容も、実際にこれを法文の上に書いてみますれば、大体同じ形態になって参ります。従って現段階におきましては、分けることかちょっと無理かと存じます。しかしながら、理容、美容は、おのずから目的も違います。特に美容におきましては、今後全身美容その他いろいろな技術的なこまかい問題が出て進んで参ると思います。さような時代になりますれば、当然理容とはおよそ大きな差がついて参りますので、そこまで発達いたしますれば当然分けるべきもの、かように考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/99
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100・福田昌子
○福田(昌)委員 理髪と美容の範囲というものが、文章に書けば、さらにまた現実の問題として考えてみれば、大体同じような範囲に入るから、ただいまのところ一本にしてあるけれども、将来これが進んで、美容というものがさらに全身美容の範囲に入ってくれば、当然法律は分けるべきである、こういう見解に伺ったのでございますが、そうですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/100
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101・楠本正康
○楠本説明員 そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/101
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102・福田昌子
○福田(昌)委員 そうだとしますれば、私は部長の現実に対する認識がすでに間違っておると思うのであります。美容の今日の研究というものは、すでに全身美容の範囲まで進みつつあるということがいえるのでございまして、私ども全くしろうとでありますが、床屋さんが始終いろいろな形で勉強――講習会を開いて勉強しておられるということは、あまり聞かないのですが、美容師の団体は、相当高い講習料を払われまして、内容はどうか知りませんが、ともかく研究会なるものを再々持っておられるということは言えると思うのであります。そして、その美容師の方々の研究の内容におきましても、たとえば大学の皮膚科の教授を招いて皮膚の衛生についての勉強をしておるとか、あるいはまた整形美容の立場からの研究を、進んで医学的なものまで学び取ろうとしておるとか、あるいはまた八頭身は無理でありましょうが、いろいろな形でスタイルの問題を研究しておるとかいうようなことも、美容師の一つの研究課題になっているのが現実の状態でございます。こういうような姿を考えてみますと、現在はすでに先ほど申し上げましたように、全身美容の段階に入っておるということが言えるのでございます。そういう段階の現実を考えますれば、当然これは理髪と美容というものを分けるのが、私は妥当だと考えられるのでございます。そういう意味合いにおきまして、今後の措置に対する御見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/102
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103・川崎秀二
○川崎国務大臣 これは福田委員から非常に専門的なお話がありまして、私もだんだんそういうことに進んでいくのがやはり国の方向であろうと思っております。しかしながら、社会党の議員の方からそういう御質問が出るということは――私の考え方といたしては、今日の状態としては、日本の国民が一般に美容を目的としたものを自分の生活の体内において作り得る段階には、大衆生活の水準というものは向上いたしておらぬのではないかというふうにさえ考えられるのでありまして、これはわれわれがもっともっと社会保障などを徹底いたしまして生活水準が上ってきますれば、自然こういう法律もでき得ると思うのであります。もとより、近ごろはファッション・モデルとかいろいろなものが出て参りまして、社会の職業におきまして、相当な変化があるのでありますから、美容を目的とするものは、将来一つの体系として成立をするというのは、当然のいき方と思いますが、これはやはり社会の環境が変ってくることを待って提案をいたしたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/103
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104・福田昌子
○福田(昌)委員 ただいまの厚生大臣の御見解には、私はいささか申し上げたいことが、異議があるのでございますが、そういうことで時間を取りますことを非常に残念に思いますから、一応またの機会に譲らせていただきまして、ここで重ねてお尋ね申し上げたいのは、先ほど楠本部長の御答弁によりますと、床屋さんの低料金における業界の乱れに対する一つの行政的な措置といたしまして、適正料金というものを考えて、その基準によって行政的に考えていきたいというようなお話がございました。私どもも、この業者の中で、いたずらに低料金によりまして業界を乱すということは、それ自体はなはだ好ましい行為とは考えませんし、そういう業者が全体の中にないことを願いますが、その問題はさておきまして、適正料金なるものを厚生省がおきめになるというお話でありますが、適正料金は、どういうものを基準にしてどういう程度のものを適正料金として考えておられるか、この点を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/104
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105・楠本正康
○楠本説明員 私がお答えを申し上げましたのは、ある程度の幅を持たせてその範囲内において料金をきめて、これをもって業者を指導するということを申し上げたわけでございます。しからば幾らと幾らの範囲かという点につきましては、地方の実情等も相当な差がありますので、今後これらを十分研究いたしまして、その幅を勘案いたしたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/105
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106・福田昌子
○福田(昌)委員 この適正料金には、ある程度幅を持たせて、その幅は今後御研究になるということでございますから、ただいま具体的な例をお伺いすることははなはだ適当でないかと思いますが、たとえば、先ほどの野澤委員のお話にもありましたが、散髪して二百円というところと、あるいはまた地方によりますと七十円か八十円のところもありますが、こういうことに対しては、厚生当局としてはそれをすべて幅の中にお入れになりまして、それを黙認なさるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/106
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107・楠本正康
○楠本説明員 適正料金の幅を設けるということは、現状は不合理であるから設ける、かような意味でお答えをしたわけでございます。従って、もっと合理的な幅を設ける、こういう意味に一つ御了解を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/107
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108・福田昌子
○福田(昌)委員 私よくわからないのでございます。現実が不適当であるから、もっと妥当なる範囲に幅を設けるということが、よくわからないのでございますが、たとえばどういうことでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/108
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109・楠本正康
○楠本説明員 現在料金競争におきましては、たとえば七十円床屋、あるいは二百円という御指摘もございましたが、これはまだ安い方で、まだ高いのもあるように聞いております。従って、現在かような自由競争のもとに行われておる料金は、高い安いは別として、必ずしも適正な範囲でない、こういうように私どもは一応考えております。従って私どもといたしましては、これは慎重に研究をしなければなりませんが、たとえばある一定の範囲を設けて、これでもってできるだけ業界を指導をしていく、こういうことを申し上げておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/109
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110・福田昌子
○福田(昌)委員 高い安いでなくて、適正でないというその御見解が、わからないのであります。うすうすは想像できるのですが、高い安いは問題でなくて、しかし適正でないというその御意見を、もっと具体的に御説明していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/110
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111・楠本正康
○楠本説明員 と申しますのは、これは安いほどけっこうなわけでございますが、その反面、規定されました衛生上の措置が徹底を欠く場合には、これは安いが自慢にならぬわけでございますので、さようなきめられた措置を厳守しつつ、しかも地方の実情によってどの程度の料金がおおむね妥当であるかということは、これはおわかりいただけることと、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/111
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112・福田昌子
○福田(昌)委員 ただいまの御説明は、厚生省できめられた衛生的な問題を大体加味しておって、技術的にも適当な技術のもとにされるものであるならば、安いに越したことはないから、その範囲で適当な料金をきめていきたい、そういう御意見でございますね。それからさらに追加いたしますれば、その上にさらにいろいろなサービスを付加することによって、場合によっては料金がそれ以上になっても、それはまたそれとして適正として認めよう、こういう御意見だったと想像できるのですが、そういたしますと、厚生省として、衛生施設を十分完備いたしまして、衛生的な仕事をいたしまして、しかも技術においても、まあそれほど技術の低下をはからないという範囲内においての適正料金というものは、たとえば散髪においてはどれくらいの御見当でございましょうか。美容においては、たとえばパーマを基準にいたしますれば、どのくらいを御見当いたしておられるのでございましょうか。これはあなたの方でおきめになるというお話でございますから、大体の目安をお持ちだと思うのでございます。何十何銭というようなお話はけっこうでございますが、どれくらいかという目安を御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/112
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113・楠本正康
○楠本説明員 今ここで幾らが妥当であるかということを申し上げるのには、まだ研究が十分いたしておりませんが、私が申し上げたい点は、これを一律にきめることは、当然不可能である。といって、何でもどんな高くてもよいのだということは言えないのではないかということを申し上げておるわけでございまして、至急この資料等につきましてよく研究をいたしまして、その幅の範囲内において、できるだけ業界を指導いたしたい、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/113
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114・福田昌子
○福田(昌)委員 大へん御慎重な御答弁でございまして、責任のあるお立場として、さような御答弁がなかなか賢明な御答弁かと思いますが、私どもといたしましては、非常に残念な御答弁であります。
そこで、それでは重ねて伺いますが、先ほどの例では、二百円以上の散髪料のところもあるというお話でしたが、二百円以上の散髪屋さんもあれば、七、八十円の散髪屋さんもある。それはそれなりとして、高い安いじゃなくて適正にきめるのだという幅でございます。現行の料金の上からすれば、相当ひどい高低の差がございますが、これはそれなりにして、料金の上において特別に高いとか安過ぎるとかいうお考えは、今のところはないわけですね。ごくばく然とお考えいただいた場合、散髪の料金が最低は七、八十円で最高が三百円でも、現行としては、その技術によって差がつけられておって、厚生省としては、まあある程度やむを得ぬだろうというふうに黙認されておるわけですね。この点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/114
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115・楠本正康
○楠本説明員 従来は料金競争、それを基礎とした業界の混乱というようなものは、あまり見受けませんでしたので、私どもは、これは何ら指導を加えてございません。しかし、今後はさようなこともあるであろうということを申し上げておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/115
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116・福田昌子
○福田(昌)委員 私どもは、こういう業界に料金競争が起って参りまして、業界が混乱するということは、ある程度厚生省の監督が足りなかったという点がいえると思うのであります。従いまして、今後こういう混乱が起らないように御措置をいただきたいと思います。
そこで、これは少し飛び火をいたしますが、その適正料金なるものをこれから御研究だそうですが、衛生的な施設だとか、技術というものをしんしゃくしての料金ということになりますと、その技術の評価というものは相当なされておると思うのでありますが、その技術の評価は、やはり仕事に対する難易、むずかしいとかやさしいという程度、それと教育課程が、相当年限も長いというようなこともしんしゃくされるわけでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/116
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117・楠本正康
○楠本説明員 理容は、もちろんこれは技術が提供されるわけでございますから、ただいまも申し上げておりますように、ある程度の幅が必要だ、こういうわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/117
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118・福田昌子
○福田(昌)委員 大へんこだわってしつこく言いまして、時間を取って恐縮でございます。一点だけ申し上げますが、今、技術をしんしゃくして床屋さんは三百円から七、八十円というお話でありますが、同じような適正料金という幅で考えられております医療というものを中心にして考えますと、医者の総合技術である初診料というものは、今日四十六円でございます。こういうことは、あなたの所管とは少し別かと思いますが、こういう技術の評価というものは適当とお考えになりますかどうか、この点あなたの御意見として伺わせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/118
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119・楠本正康
○楠本説明員 私はまだかような仕事を担当いたしたことは毛頭ないのでございまして、今まで別に研究したこともございませんし、今かような席上で何とも批判のできるようなもとがございませんので、御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/119
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120・福田昌子
○福田(昌)委員 だんだん飛び火をして横道に入りますから、もうやめますが、これはぜひ厚生大臣によくお聞き取りを願いたいのであります。今、楠本部長から御答弁がありましたように、技術の評価ということになりますと、その技術の難易、またその教育課程というものを、非常に重点的にお考え願わなければならないのでありますが、こういう点をお考えいただきました場合、四年間も学校教育を受けて、一年のインターンを受けて、その後に国家試験を受けて、その医者の総合技術である初診料は四十六円であるというようなことは、これはどう考えてもあまり妥当な適正料金ではないと思うのであります。飛び火いたしましたが、こういう点におきまして、今後の医療の面における料金についても、一応厚生大臣のお考え直しないし御反省をいただきたいと思います。
また理容師、美容師法に戻りましてお尋ねさせていただきたいのでありますが、やはり料金の問題であります。各地で美容師の方々は、非常に高い講御料を払って講習会を盛んに持っておられます。一週間、三日間の講習料が一万円であるというようなことを聞くのでありますが、そんな高い講習は、ほかの業態ではあまりたいのであります。こういうことに対しまして、厚生省は全く野放しの状態にあると思います。それは内容が優秀であれば、講習料金も高いのでございましょうが、内容と料金が一致しておるかどうかということは、まだ非常に検討を要する問題だと思いますが、こういうような状態をこのまま放置することは、私はまた混乱を来たす原因になっておるかと思います。従いまして、これに対します対策が一点。もう一つは、この講習会に使います教科書とか、あるいは同じような教科書においても、学校で使われている教科書もありますが、この教科書の価格も非常にまちまちであるし、こういう教育課程、講習課程における費用とか講習料に対する何らの監督がなされていないと思うのでおりますが、こういう面に対する厚生当局の御見解を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/120
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121・楠本正康
○楠本説明員 ただいまお話のございましたように、かなり高価な講習会というようなものも実施されておることは、事実のように存じております。従いまして、私どもといたしましては、今後これらの趨勢がどう変っていくかをよく見きわめまして、その結果適当な措置を研究いたしたいと存じております。何分にも、これは高くても行く者があれば仕方がないという原則もありますので、従って、この点は今後の推移をよく見まして、適当なる措置を講じたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/121
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122・中村三之丞
○中村委員長 山下春江君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/122
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123・山下春江
○山下(春)委員 私はただいま福田委員の御質問を聞いておりまして、はなはだ奇異の感を抱くのであります。そもそもこの美容師理容師の法律を作りましたときの委員が、この中にも何人かおられると思いますが、インターン制の廃止という御議論が出たので、私非常に奇異な感を持って聞いたのであります。当時こういうことは今後起ってくるいろいろな情勢から、農村のごく貧農の娘でもなんでも、この制度によって試験が受けられるような方法にしなければいけないということで、私はインターンが長過ぎるし、これはむしろ技術が主たる生命であるから、する必要がないのではないかということで、非常に委員会で論議をいたしましたが、社会党の方々の、徒弟制度の復活なんてけしからぬということで、大へんなおしかりを受けまして、遂に少数意見として私は引っ込んだのでありますが、ただいま福田委員から徒弟制度の廃止という御議論が出まして、非常に奇異の感を持って伺っておったのであります。それは別といたしまして、社会党の皆様が非常にこの現実に目ざめておいでになったことであろう、従いまして、これは聞き流すといたします。
私はインターン制につきまして、厚生当局に四点ほど伺いたいのでありますが、まず理容師美容師の養成の通信教育の簡素化について伺いたいのでもります。個条書きに簡単に伺います。
第一の問題は、今日とり行われております面接授業の時間数であります。これが長過ぎるために、非常な不便を感じておりますが、この点は今後どういうふうになさろうとなさいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/123
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124・楠本正康
○楠本説明員 現在通信教育を受けております対象を調べてみますと、大部分が見習い等に従事しておる者でございます。従いまして、面接授業というようなものは、御指摘のように、できるだけ短縮することが実情に適するものと考えております。従いまして、さような場合には、私どもは現在の四百二十時間を半数以下、百六十時間程度にこれを定めたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/124
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125・山下春江
○山下(春)委員 百六十時間に定めたいということは、多分政令の改正等で定められるであろう、こう了承してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/125
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126・楠本正康
○楠本説明員 御説の通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/126
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127・山下春江
○山下(春)委員 次にお尋ねいたしますのは、面接授業の場所でございます。これが一定の場所を指定いたしますと、その授業を受けに行きます者が、経費あるいはその他の問題で非常に困却しておりますが、この問題については、今後はどうなさろうとなさいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/127
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128・楠本正康
○楠本説明員 現在は、所属の学校まで行って、面接教育を受けなければならぬことになっております。従って、ただいま御指摘のように、実際問題としては、距離の関係等で、きわめて不便な場合がございますので、今後は、学校に限らず、適当な施設があれば、たとえば病院であるとか、研究機関であるとか、さような適当な場所があれば、そこにおいて面接授業を受けられるようにいたす所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/128
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129・山下春江
○山下(春)委員 次の問題であります。通信課程の定員の問題であります。これは経営者の側といたしましては、授業料その他の問題で、定員をあまり厳重にされますと引き合わないために、非常に困難でございますが、これらにつきましては、定員を越えても、場合によってはやむを得ないというふうにお考えかどうか、その点を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/129
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130・楠本正康
○楠本説明員 通信教育の場合には、現在は一応の定員を設けてございます。しかしこれは面接授業の関係等から、むしろ場合によってはこの制限を緩和いたしまして、楽に面接授業その他が受けられ、しかもりっぱな通信教育が受けられるような施設には、定員にかかわりなく、できるだけ多数の人間を収容して便宜をはかることがよかろう、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/130
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131・山下春江
○山下(春)委員 その点はわかりました。次の問題でありますが、施行規則に入学金それから授業料の問題がございます。これも前から申しますように、農村の相当貧乏な農家の娘さんたちなども、ぜひこの授業に入りたいというのだが、授業料が高過ぎる、入学金が高過ぎるということで、非常に困却をいたしておりますが、政府はこの問題についてはどのような御措置を今後おとりになろうとするのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/131
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132・楠本正康
○楠本説明員 この点も全く御指摘の通り、由来通信教育は、家庭の事情等で当校に通えない者に設けられた制度であります。それにもかかわらず、授業料が高いために十分便宜を与えることができないとすれば、これは本来の趣旨を転倒したものでありますので、今後はできるだけ通信教育に関する限り授業料を安くしていきたいと存じております。今いろいろ原価計算等をいたしておりますが、二百五十円以内でこれを実施したい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/132
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133・山下春江
○山下(春)委員 私どもも、そのくらいにしていただければ、授業を受けます人たちが非常に助かると思っておりました金額でございますので、大へんけっこうだと思います。
もう一点だけ、これは講義録でございますが、従来の方法でございますと、講義録を作成する方が、もうかり過ぎて、どうもその点で厚生省の監督が足りなかったのではないか。今申し上げた事情の子供たちに読ませる講義録でありますから、できるだけ安価に読ませるということが必要だと思うのですが、その点の厚生省の考え方を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/133
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134・楠本正康
○楠本説明員 これも全く御指摘の通りでありまして、今後私どもといたしまして本、通信教育制度の始まったときの本委員会の御趣旨に沿いまして、てきるだけ低額の料金でしかもできるだけ完備した教材を発行いたしていくようにそう監督を厳にし、指導を徹底いたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/134
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135・山下春江
○山下(春)委員 以上厚生当局との質疑応答によりまして、私どもがかく修正をしてもらいたいと思いました点は、政令の改正によりまして、私どもの希望点が満たされるわけであります。そこで、そういう点についてこの政令の改正を直ちに御実行になる御意思がございましょうかどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/135
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136・楠本正康
○楠本説明員 法律の改正が幸いに成立いたしますれば、直ちに所要の手続を進めて改正をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/136
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137・山下春江
○山下(春)委員 その厚生当局の言明を信じまして、私の質問はこれで終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/137
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138・中村三之丞
○中村委員長 滝井義高君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/138
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139・滝井義高
○滝井委員 三、四点あるのですが、時間の関係で、一つだけお尋ねしたいのです。
先般、実は私不勉強のために、理容師美容師の団体というものが、法律で組織することができるようになっておることを知らなかったのであります。そのために、少し質問の的がはずれておったのですが、前の委員会で環境衛生部長の御答弁では、業者団体の強化策として、事前に理容師、美容師の営業所というか仕事をする場所ですね、そういうものの検査をその団体に下見をやらせろ、こういうことも強化策の一つになるのだという御答弁があったのです。私は、料金の問題、あるいは営業所外の営業の問題、それから免許の、無免許であるというような取締りの問題こういうものが、現在の保健所の人員、機構だけでは、なかなかやれない、そういうことになれば、当然業者の団体を強化して、そうして料金やそういう一般的な衛生上の問題等の自主的な取締り事項、自浄作用をやらせるべきだ、こういう主張をこの前からしておったのですが、そういう点で、環境衛生部長もそういう方向に持っていきたいということでございました。そこで私は、やはりこういう法律で、理容師、美容師が理容師会あるいは美容師会を組織して、技術の向上なり施設の改善なり、会員の指導及び連絡に資することができるということを規定しておるとすれば、これは医師会等の団体のように、当然法人格を認めるような、たとえば社団法人というようなものを組織きせて、そうして厚生省が事務的にそういうものと連絡をとれば、その団体の料金あるいはいろいろな問題を一括して握り得るという体制を作る方が、今後環境衛生の向上の面からも非常にいいのではないか、もちろんその団体がボス的な者によって指導されるということは、厳に慎しまなければならぬ。しかし、そのボス化するということの防止は、その会員の資質が向上すれば、おのずから会員自体の中から出てくると思うのです。そういう点で、今過渡期の段階にある理容師あるいは美容師の団体を強化する意味においても、法律にわざわざ規定されておるのだから、そういう方向に、厚生省はある程度内面的な指導といいますか、そういう点で助力すべき段階に来ておると私思いますが、こういう点どうお考えになるか。これを明確に御答弁順えれば、私はこれで質問を打ち切りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/139
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140・楠本正康
○楠本説明員 御指摘の点は、なるほど一応はごもっともでございますが、ただ公益法人、社団法人等となりますと、これはつまり利益をもっぱら対象としない一つの公法人になります。ところが業者団体というものは、何といたしましても、その性質上さような公法人的な性格は持てないのではなかろうか、かように考えます。少くとも公益法人の性格は持てないのではなかろうか、さように考えております。しかしながら、御指摘のように、今後自主的にこの業者組合を強化し、結束を固めまして、それを通じていろいろ環境衛生上その他の問題を解決していくことにつきましては、私もできれば賛成でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/140
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141・滝井義高
○滝井委員 ぜひそうしてもらうことを希望して、終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/141
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142・中村三之丞
○中村委員長 ほかに御質問ございませんか。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/142
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143・中村三之丞
○中村委員長 なければ、本案についての質疑は終了したものと認めるに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/143
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144・中村三之丞
○中村委員長 御異議なしと認め、本案についての質疑は終了いたしました。
これより討論に入ります。本案につきましては、別に討論の通告もありませんので、これを省略し、ただちに採決するに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/144
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145・中村三之丞
○中村委員長 御異議なしと認め、そのように決します。
これより採決いたします。本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を願います。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/145
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146・中村三之丞
○中村委員長 起立総員。よって本案は原案の通り可決せられました。
なお、本案に関する委員会の報告書の作成等に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/146
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147・中村三之丞
○中村委員長 御異議なしと認め、そのように決します。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/147
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148・中村三之丞
○中村委員長 この際厚生大臣より、駐留軍労務者の健康保険に関する問題について発言を求められておりますので、これを許します。川崎国務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/148
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149・川崎秀二
○川崎国務大臣 お疲れでございますので、簡単に報告いたします。
駐留軍の健康保険の問題につきましては、新聞紙上御承知の通りでありまして、閣議において、千分の五十の保険料率を千分の五十八に引き上げることにつきまして、大体各大臣の了承を得たわけであります。駐留軍に対しまして強硬な申し入れをいたしまして、先般来駐留軍としても非常に考えてくれまして、ゲーノー少将並びに司令官より、緊急に結論を出す、十四日までに出すということで、明日のジョイント・コミッティまでに向う側の回答があることを期待しておるのでありますが、作業が相当に厖大になります関係上、明日はあるいは結論が出ないのではないかということを昨日受けましたので、私は、それは困る、この問題については二年間研究をしてきたのであって、そのような態度は、アメリカ側として従来いろいろな日本との交渉がおるけれども、最も不徳義な点ではないかということまで指摘をいたしておるような状態であります。しかして、最終的にどのようなことになりましても、厚生大臣の権限として引き上げられるということは、アメリカ側も確認しつつあるような状態でありますので、あるいは近々のうちに、厚生大臣の権限をもって千分の五十を五十八に引き上げることに相なると思いますので、それらの点をもあわせて御報告を申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/149
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150・中村三之丞
○中村委員長 次会は明十四日、十時理事会、十時半より委員会を開会することとして、本日はこれにて散会いたします。
午後六時三分散会
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04019550713/150
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