1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年七月十四日(木曜日)
午前十時五十二分開議
出席委員
委員長 中村三之丞君
理事 大石 武一君 理事 中川 俊思君
理事 松岡 松平君 理事 大橋 武夫君
理事 山下 春江君 理事 山花 秀雄君
植村 武一君 臼井 莊一君
亀山 孝一君 小島 徹三君
越智 茂君 加藤鐐五郎君
小林 郁君 八田 貞義君
岡本 隆一君 滝井 義高君
中村 英男君 長谷川 保君
八木 一男君 受田 新吉君
神田 大作君 山下 榮二君
出席政府委員
厚生政務次官 紅露 みつ君
厚 生 技 官
(医務局長) 曾田 長宗君
厚生事務官
(医務局次長) 高田 浩運君
厚生事務官
(引揚援護局
長) 田邊 繁雄君
委員外の出席者
専 門 員 川井 章知君
専 門 員 引地亮太郎君
専 門 員 浜口金一郎君
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七月十四日
委員多賀谷真稔君、福田昌子君及び井堀繁雄君
辞任につき、その補欠として佐々木更三君、中
村英男君及び山下榮二君が議長の指名で委員に
選任された。
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七月十三日
未帰還者留守家族等の援護強化に関する請願(
松平忠久君紹介)(第四一一二号)
健康保険における医療給付費の二割国庫負担等
に関する請願(松山義雄君紹介)(第四一一一
三号)
同(伊瀬幸太郎君紹介)(第四一一四号)
同(松平忠久君紹介)(第四一一五号)
同(松澤雄藏君紹介)(第四一一六号)
同(山下榮二君紹介)(第四一一七号)
同(内藤友明君紹介)(第四一一八号)
同(内田常雄君紹介)(第四一一九号)
同(有馬輝武君紹介)(第四一二〇号)
同(井岡大治君紹介)(第四一二一号)
同(横錢重吉君紹介)(第四一二二号)
同(楯兼次郎君紹介)(第四一二三号)
同(阿部五郎君紹介)(第四一二四号)
同(三鍋義三君紹介)(第四一に五号)
同(西村彰一君紹介)(第四一二六号)
同(伊東岩男君紹介)(第四一二七号)
同(草野一郎平君紹介)(第四一二八号)
同(池田清志君紹介)(第四一二九号)
同(小泉純也君紹介)(第四一三〇号)
同(松浦東介君紹介)(第四一三一号)
同(菊池義郎君紹介)(第四一三二号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法
律案(内閣提出第六九号)
戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する
法律案(内閣提出第七〇号)
あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法
の一部を改正する法律案(内閣提出第一四五
号)(予)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/0
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001・中村三之丞
○中村委員長 これより会議を開きます。
まず、公報に記載されてあります通り、昨日内閣総理大臣から衆議院議長に、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会の議決を求めるの件(内閣提出、議決第一号)について、その裁定を実施し得ることが明らかとなった旨の通知がありました。
文書を朗読いたします。
内閣通産甲第七号
昭和三十年七月十三日
内閣総理大臣 鳩山 一郎
衆議院議長 益谷 秀次殿
本年三月二十二日国会に提出した「公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会の議決を求めるの件」は、公共企業体等仲裁委員会の「アルコール専売事業職員の勤務地手当の支給または級地改訂に関する紛争」に対する本年一月二十九日の裁定内容が、昭和三十年度本予算が成立していないので、公共企業体等労働関係法第十六条第一項の「予算上又は資金上不可能な資金の支出を内容とするもの」との規定に該当するものとするのが妥当と認められましたので、同条第二項の規定により国会の議決を求めたのでありますが、今般「昭和三十年度特別会計予算」が成立し、右裁定を実施しうることが明らかになりましたので、この旨を御通知いたします。
以上の結果、本件は自然消滅となりましたので、御報告いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/1
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002・中村三之丞
○中村委員長 あん摩師、はり師、きゅう師及び柔道整復師法の一部を改正する法律案を議題となし、審査に入ります。まず趣旨の説明を聴取することといたします。紅露政務次官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/2
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003・紅露みつ
○紅露政府委員 ただいま議題となりましたあん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。
現在、あんま師、はり師、きゅう師及び柔道整復師以外には、何人も医業類似行為を業としてはならず、ただ、昭和二十二年末、あんま師、はり師、きゅう師及び柔道整復師法の公布の際、引き続き三カ月以上医業類似行為を業としていた者で、同法施行後三カ月以内に一定の事項を届け出た者に対してのみ、経過的措置としてなお昭和三十年末まで、当該医業類似行為を業とすることが認められているのでありますが、今回の改正は、この経過措置が本年末をもって打ち切られることになりますので、これに対する措置を講ずることを目的としております。
改正のおもな点は、従来、医業類似行為の一種として取り扱われてきました指圧は、原理の上からも、施術の方法におきましても、あんまの業務に含めることができ、かつ妥当であると考えられるに至りましたので、この際、これをあんまに含まれるものといたしますとともに、現在医業類似行為を行うことを本年末まで認められている、いわゆる既存業者に対し、期限を三年間延長し、同時に、その間にあんま師試験の受験資格を認め、これに合格したときは、あんま師の免許を受けることができることにいたしたのであります。
以上が、この法律案を提出するおもな理由でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/3
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004・中村三之丞
○中村委員長 これにて趣旨説明は終りました。
なお、本案についての質疑その他につきましては、後日に譲ることといたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/4
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005・中村三之丞
○中村委員長 次に、未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律案及び戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案を一括して議題となし、質疑に入ります。発言の通告がありますので順次これを許します。山下春江君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/5
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006・山下春江
○山下(春)委員 戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正が出たのでありますが、私は今回の改正に当りましての基本的な考え方を、援護局の立場である局長から聞きたいと思うのであります。たとえば、今回の戦争によっての犠牲を受けましたのは、これはもう戦闘員、非戦闘員を問わず、一般国民が大なり小なり、みな犠牲を負ったのでありますが、特に私はその中で非常に遺憾と思いますことは、戦地と非戦地というものの区別が、昔の古い法律のワクの中で考えられておる。すなわち、この問題の考え方は、日清戦争、日露戦争あるいは第一次欧州大戦あるいは日支事変、太平洋戦争の初期まではその考えでよろしい。しかしながら、事いやしくもサイパンが陥落して、台湾あたりがあれだけの大きな空襲を受け、本土もまた苛烈な戦場と化しました太平洋戦争末期の状態は、従来の非戦地、戦地の区別の考え方のワクの中では、解釈し切れないものがあると思いますが、援護局長は、その問題に対してどのようなお考えをお持ちでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/6
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007・田邊繁雄
○田邊政府委員 お答えいたします。援護法におきまして戦地と非戦地とを区別しておりますのは、軍属についてでございます。御承知の通り、内地の有給軍属につきましては、戦争中から、共済組合において戦時災害による犠牲者に対し、年金を支給する道が開かれておったのであります。戦地の有給軍属につきましては間に合わなかったという理由のために、そういう道が開かれておらなかったわけであります。終戦後の今日、内地の有給軍属に対しましては、旧共済組合によりまして、年金が依然として支給されているのに戦地の者について支給しないということは公平を失しますので、当然当時において支給さるべきであったという考え方から、これを対象に加えたわけであります。
それから、法律上におきましては、そういう区別をしているにすぎないのでありますが、問題は、軍人が在隊中死亡した場合、それが公務上の死亡であるか、公務外の死亡であるかという個々の認定に当りましての問題でありましたが、その際戦地におけるものが公務性が濃厚であり、内地のものが戦地におけるよりも公務性が濃厚でないという点は、一般的にいえると思いますが、戦地だから全部いい、内地だから全部がだめだという考えはとっておらないのであります。この点は、従来からのいろいろな認定のやり方、つまり、従来と申しますのは、恩給局における従来のやり方というものを基準としながら、今度の戦争の特殊性に即応するようにいろいろと工夫をこらし、実情に沿うように努力をいたしているわけでありますが、内地におけるものでございましても、おっしゃる通り、終戦直前における状態というものは、相当環境が悪く、また勤務の内容も相当激烈であったことが十分考えられますので、個々の裁定に当りましては、そういう実情も勘案して参らなければならないものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/7
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008・山下春江
○山下(春)委員 その点は、援護局長は私どもと大体同じ考えをお持ちであることによって、今回の改正案が出されたということでありまして、以前よりも、そういった援護法の本来の法の建前というものが、よく尽されているように存じております。今度の改正案で、まだもう一つ私どもが考えなければならないではないかと考えられることは、戦没者の身分の問題であります。この身分の問題につきましては、常に議論になる点でございますけれども、過去の国家総動員法その他のいろいろな国家権力によりまして軍務に協力し、あるいは戦闘に参加したというような非常に広い範囲の方々が死没され、あるいは戦傷を負われ犠牲を負っておられるのでありますが、この身分の範囲につきましては、今回どういう程度まで、どういうお気持でお取り上げになりましたかをお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/8
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009・田邊繁雄
○田邊政府委員 お答えいたします。戦没者遺族援護法の対象である戦没者、つまり戦没軍人軍属の範囲をどこに限るかという問題は、援護法を立案いたします当初から、これが国会を通過する最後まで、また今日においても、議論の種となっている大事な問題だと思います。これは、当初からわれわれの方でもいろいろ議論をしたのでございますが、結局現在のような法案の程度に落ちついているのは、われわれとしては、それだけの理由があると考えているわけであります。その点につきましては、今回は年金の支給をされる戦没者の範囲というものの対象は、従来通りにいたしております。これは、たびたび委員会においても申し上げたのでありますが、援護法は、制定の当初から旧軍人恩給復活の暫定的措置ということを主眼としつつ、あわせて戦争中にあった制度ないしは当然あるべかりし制度を、この際付加的に追加するという考え方をとっているわけであります。その結果、戦地における雇用人等の有給軍属と、それから船員、雇用人、軍属に該当しないところのいわゆる非船員、これを対象にしたわけであります。この非船員は、御承知の通り全額国庫負担をもって船員保険法において国家補償をいたしておったのでありますが、それを船員保険法から援護法に移しかえたわけであります。援護法である以上、有給軍人ないしは有給軍属以外に対しても年金を支給せよという議論もあり、またわれわれも一がいにそれを否とするものではございませんが、国家財政の点を考え、また戦争による犠牲者というものは、それからそれへと多少のニュアンスを持ちつつ、膨大な数に上っております。それをどこで区別をするかということもきわめて困難であります。かたがた国家が法的権威ある資料なくして年金を支給することも、技術的な面からいえば非常な困難を伴う。現にわれわれが三万円の弔慰金を支給している対象におきましても、非常に難渋をいたしております。これは国会におきまして、全体の立場から軍人軍属以外の者に対しましては三万円の一時金としての弔慰金を支給するということが、三十四条におきまして規定されております。個々の認定に当りましては、私ども非常に苦労しているわけであります。遺族が自分がそうだということを主張した場合に、果してそれが真実であるかどうかということは、役所側には何らの資料がないのであります。お互いにその点は政府も良識をもって対処しなければならないし、申請をする人及びそれを取り巻く市町村の方々も良識をもってやっていただかなければ、とうてい適正な運営はできないと考えておりますが、今日まで皆様方の御援助、御協力によりまして、何とかとなしているわけでございます。一時金、弔慰金ということでございますので、あるいはそういうふうにおさまるのかもしれませんが、年金ということになりました場合は、やはり国家の法的な権威ある一つの資料がまとまらない以上、容易にこの問題は結論を下すことができない問題ではないか、こう考えまして、慎重に考えているわけであります。そこで理由といたしましては、先ほど申しました通り大戦後の国家財政の困難な今日、一応戦争中にあったそういった年金の制度を復活するという考え方の限度にとどめるのが穏当ではないかという考えで、今回はその範囲を広げることをいたしておらないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/9
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010・山下春江
○山下(春)委員 法的根拠がないのに、国家の補償を与えるということでは、取扱い責任者として非常にいろいろな意味で御苦労をかけることはよく了承いたすのでありますが、その法的根拠ということなのであります。私が前段申し上げましたように、法的根拠の当てはまるような状態でなかったということは、これは何としても事実なのであります。従来、これらの問題に関します法律を日本が作りましたときの状態がそういう状態でなかったということは、遺憾ながらあの苛烈な戦いの最後になりますと、全く軍属にいたしましても、これは有給軍属だからこうだ、無給軍属だからこうだ、あるいはその他の身分の差によって、その戦闘行為に参加する程度をかげんしたなどということは、全然ないのでありまして、そういう点、援護法を扱われる事務当局としては、あの戦いに傷ついた人、死没した人、それらのものを何でもかでも一切無制限に扱え、そんなことはできないと思いますけれども、しかしながら、この改正案によりますれば「公務以外の事由により負傷し、又は疾病にかかったことが明らかでないときは、第二十三条第一項第一号及び第三十四条第一項の規定の適用については、援護審査会の議決により、」というのでありますが、私どもが非常に心配いたしますことは、この援護審査会というところで、またどんどんしぼられまして、どうもわれわれが、こうしたい、ああしたいということが、すっかりまた漏れてしまいそうなおそれがあるのであります。ということは、要するに、法的根拠といわれますと、これはわれわれといえども、立証することはなかなか困難でございます。ただ、従来のものさしではかったのでは答えが出ないけれども、しかし、あのままの実態を考えるときに、これは当然弔慰金の範囲あるいは弔慰金、年金を支給する範囲ということにきめていただかなければならないと思うのであります。そういう意味で、私はこの改正がいささか気になって、これをこのままにしておくと、どうもまた範囲がずっとしぼられそうに考えますけれども、その点は、局長どうでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/10
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011・田邊繁雄
○田邊政府委員 先ほど私が申し上げたことが不十分でございましたので、あるいは先生の誤解を招いたのではないかと思われますが、私が先ほど申し上げましたのは、援護法の年金の支給対象を広げるということについては、どういう態度をとったかという御質問でございましたので、法的根拠がないということを申し上げたのではなくて、そういう対象には、国家の権威ある公的資料がないということを申し上げたのであります。もちろん、この戦争の特殊性から考えまして、従来の法的根拠がないからこうだ、こうだという考えはございませんけれども、個々の実際の事務に当りましては、何と申しましても、その人はこういう身分の人であった、死亡した当時の状況はこうであったということについての公的な権威のある資料が必要でないか、こういう観点から申し上げたのであります。
次に、今回のいわゆる公務死の範囲の拡大に関する条文の適用についての御懸念でありますが、私どもは、今度の戦争の特殊性からいたしまして、また個々の審査に当りまして、むしろかような規定が、当初からあった方がよかったのではないかという反省をいたしておるわけであります。御遺族が死亡当時の状況の資料を集めるために、あるいは戦友のところ、あるいは部隊長のところをお回りになる、あるいは病院等に行かれるというととは、非常にお気の毒でもございますし、またそれがなければ公務死として裁定をしないという建前に、現在の法律ではなっておるわけでありますが、しかし、今度の戦争、ことに後半期におきますあの混乱を考えますと、負けいくさでございますから、一々あの死亡当時の正確な資料が整備されていないのが普通でありまして、一々そういう資料がなければ公務とは裁定しないのだという考え方を変えまして、原則的には戦地における傷病は一般的に考えて公務性が濃厚でございますので、この際公務でないということがはっきりしないものについては、全部公務とみなしていこう、こういう考え方であります。問題は何が公務であるかないかということについては、従来通りしぼるのではないかという御懸念は、ごもっともでございますが、私は、できるだけ大東亜戦争の特殊性に即応するように、明らかであるかないかということでございますので、何人が見ても明らかであるものに限定すべきものだ、私はこういう考えを持っているわけであります。われわれは、公務でないものを公務にするということは、法律上はっきり表わすわけには参りません。これは恩給法の根本に響く問題であり、援護法の根本に響く問題であり、またこの法律の根本理念は、いわゆる労働基準法の業務災害に相当するものでありますが、業務災害でないものを業務災害にするととはできないと同じように、公務上の傷病でないものを公務上の傷病とみなすという建前は法律上とれないが、公務上の傷病の認定に当りまして、できるだけそれを実情に即応するように扱おう、こういう考えであります。われわれが今まで公務でないと裁定したものにつきましても、この際もう一ぺん考え直し、新たに実情に即応する考え方をとろうというのが今回の法律であります。しかし、そうだからといって、極端に、全部だという考えも極端なのでありまして、そこはやはり極端から極端に走るということは、援護法なりこういう問題の際に、われわれが最も警戒しなければならぬ。やはり筋が通り、しかも実情に即応するように運営をして参りたい、こう考えております。もちろん戦地におけるものを全部公務にするということもできない場合があると思います。だれが見ましても公務上のものにできないというものは、あり得るはずでありますし、また現にあるわけであります。かようなものは除外いたしまして、できるだけ実情に沿うような運営をして参りたい、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/11
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012・山下春江
○山下(春)委員 お気持はわかりますけれども、今の援護審査会があることがいけないとは私は言いません。それは従来裁定をされましたものが、されっぱなしになるということはいけませんから、援護審査会で、範囲を拡大した気持において再び審査を受ける、これは大へんけっこうなことでございますが、疾病にかかった場合において、厚生大臣が公務上負傷し、または疾病にかかったものと同視することを相当と認めるということですが、そこが援護局とわれわれとの考え方が違うところでありまして、あの苛烈な、たとえば医療機関もまるっきりない、医官に見てもらいたくても、なかなかそばにいない、薬もないというような、全く想像に絶するような、これまで日本国民が経験したことのない苛烈な戦場にあった者といたしましては——戦地にあって死没した者、あるいは傷を負うた者、あるいは病気にかかった者を、全部どれもこれも公務とみなすことはできない、こう言われますけれども、しかしながら、それは援護局長が御心配のようなケースも、おそらくまれにはあろうかと思います。範囲を拡大しておきますと、その中にもぐり込んでくることがあろうと思いますが、それは世の中のどんな法律にもあると思います。それは何としましても、厳重な、たとえば今非常に大きい問題になっておる健康保険の乱診へ乱療、乱給といってみたところで、これもほんの一部に違いないけれども、そういうものがないかというと、厳然として法律があっても、中にもぐり込んでくるのがあります。逆選択ということもある。御説ごもっともでございますし、お気持はわかるのですけれども、こういうふうにしぼるということは、せっかく局長が持っていただいておる気持と法律の文章とは合致していないと思いますが、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/12
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013・田邊繁雄
○田邊政府委員 山下委員の質問は、二つの点を一緒にして御議論しておるような感じがするのであります。援護審査会の議決を要するという要件があるから、しぼられるのではないかという御懸念でありますが、この点は、一応そういうことも考え得るわけであります。その御議論は、むしろ私どもを信頼するから、援護審査会の議決なんか要らないのではないか、また援護審査会にかければ、どうしても手間取るのではないか、こういう議論なら一つの議論でございます。この点は、十分に御審議いただきたいと思います。そのことと、公務のいわゆる観念的な範囲の拡大とはまた別であります。片方は手続の問題でございます。一、二の例外があってもやむを得ぬじゃないかという考え方は、やはり事の正確を期するわれわれとしては、建前としては承認できないのであります。私どもが、法の建前上一番苦労いたしますものは、この法律と他の法律とのいろいろな均衡もございまして、観念的に公務でないというものも観念上公務にするということが、立法の根本の趣旨に触れるという点を申し上げておるわけでございます。個々の認定に当りましての問題は、いろいろございましょう。しかし、公務でないという建前のものを、個々の認定に当って公務であるか公務でないかというのではなく、観念的に考えまして公務でないものを公務にするという立法の仕方は、それは援護法の根本に触れる問題であると思います。だから、個々の例に当って、心配だから全部公務にしろ、非公務のものも公務にしておけばそういうことはないのだというのは極端でありまして、建前としては、公務でないものもあり得るという建前をとらざるを得ないのであります。この点を区別して申し上げたので、御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/13
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014・山下春江
○山下(春)委員 それはその通り区別して私も考えておるのであります。援護審査会というものがあるために、そこでしぼられるのではないかという心配も一応ありますが、しかし、この制度は必ずしも今すぐ取ってのけなければならぬものとは考えません。過去の裁定を受けた人たちが、間違ったということじゃないのですが、過去の裁定の場合はそれへ入らなかったけれども、今回多少拡大して考えればそれが入るというようなこともありましょうから、これを直ちに今取ってのけろというわけでないのです。局長と私どもの考えとの食い違いは、局長は明確な資料のないものを公務と認定することはできないという一つの範疇の中におられます。私は、あの際に公務とみなす適当な資料を得ることは困難ではないか、だから、重大な自分の過失とか、その他自分の責めに属するもので病気になったり死んだりしたものは、これは仕方がないけれども、その自己の責めであるということがはっきりわからないものは、全部公務として扱ってもらいたい、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/14
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015・田邊繁雄
○田邊政府委員 山下先生の御議論は、私も非常にこまかな点で表現が食い違うのですが、おっしゃる通り、今度の戦争の特殊性で、公務であることを積極的に立証することが困難なケースが起るから、こういう立法をしたのであります。何が公務であり、何が非公務であるかという認定の問題につきましては、故意または重大な過失がないということが重大な要素になると思いますが、われわれは公務であることを立証する適当な資料がある場合だけ公務にするという考え方を反省しておるわけであります。おっしゃる通り、非公務であることが明らかである場合には、もちろん除外いたしますが、それ以外のものは全部公務にしろという考えであります。何か公務であるか、何が非公務であるかという認定の問題を言っておるわけなのでありまして、その場合に、故意または重大な過失以外のものは全部非公務であることが明らかでないと見てほしい、こういうととでございますが、そこには観念的に相違があるということを申し上げたわけであります。故意または重大なる過失がなくても、職務に全然関係のない死亡というものも生じてくることがあり得るわけであります。従って、観念的に公務でないものを公務にするという建前の立法はこの際とるべきではない、こういうことを申し上げておるのでありまして、何が公務であるか、何が公務でないか、何をもってそれが明らかであるか明らかでないかを区別するかという基準の問題につきましては、これは客観的に、また医学的良識をもって判断するよりほかはない、こう考えておるわけであります。その問題については、一々援護審査会の議決を経なくても、明らかだからいいじゃないか、あるいは手続も簡単でいいのではないか、そういう御議論でありますならば、議論も立ち得るわけでありますから、この点は十分御審議いただきたいと思います。私が申し上げておるととは、前段の故意または重大な過失という点と非公務であるということの条文の比較を申し上げた際は、立法の建前としては、われわれの建前の方がいいのではないか、こういうことを申し上げておるわけであります。援護審査会の議決を要するかどうかという問題は、技術的な問題でありますので、それは根本の問題とは切り離して十分御審議いただけばけっこうかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/15
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016・山下春江
○山下(春)委員 多少食い違っておったかもしれませんが、しかし、政府がお出しになりました疾病にかかった場合において、これはむろん私はだれでもかれでもとは申しません、軍人軍属の場合のことであまして、戦地の近辺にいたものを何でもかんでも拾えということを申し上げておるのではありません。もちろんそういう乱暴なことを申し上げておるわけではございません。けれども、あなたのお気持がこの法文にそのまま現われていて、今局長が言われるように、この文章をもって自己の責めによらない、故意または自己の重大な過失でないものは、全部救われるとおっしゃるのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/16
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017・田邊繁雄
○田邊政府委員 それは表現が違うのであります。極端に申しますと、故意は公務ではないということは、現在の法律の解釈から当然出ておるわけであります。現行法の範囲においても、故意というととは書いてございません。恩給法あるいは同種の立法では、故意に死んだ場合は公務でないということは、解釈上当然だということになっております。重大なる過失があった場合には年金を支給しないということは、現行法にも書いてございます。公務であっても、公務執行と傷病との間に因果関係がありということを認定された場合も、その間に重大な過失があれば、年金を支給しないということは現行法にある。そういうことは、別に要件としなくとも、ちゃんと除外されるわけであります。そういたしますと、突き詰めてみますと、戦地における負傷は全部公務であるということを書いても、同じことになるわけであります。戦地における負傷、疾病という中には、理論的に考えて公務上のものと公務外のものとあることは、観念上当然であります。それが全部だというととは、立法の根本に触れるのではないかということを申し上げておるのであります。個々の認定に当りましては、故意または重大なる過失のないものは、大部分は公務であると考えます。公務でないことが明らかでないという範疇に入ると思いますけれども、しかし観念的に違うわけでありますから、たくさんのケースの中で、あるいはそういうものはないとは申されない、若干はあるかもしれませんけれども、そういうものは無視したらよいではないかという議論は、私らから見れば多少乱暴な議論であります。やはり個々のケースに当って判断を下す、個々のケースに入りました場合は、適正な判断を下さなければならぬ、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/17
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018・山下春江
○山下(春)委員 今の局長のお話は、そうすると、故意または重大なる過失などというものは、当然公務から除外されておるのであるから、立法の建前上そんなことを言うのはおかしいのであって、ここに書いてある通りの文句で、これで今言う故意または重大なる過失でなかったものにはこの文章でもいくのだ、そんなことは心配ないのだと言われるかどうか。そう言われるのなら、多少一人、二人の誤まったケースがあっても仕方がないじゃないかという議論は乱暴じゃないか、あまり飛躍し過ぎるのじゃないかという議論、私は同じ戦地、事変地において、一人、二人という間違ったものを、一体どうして局長は認定しようとするのであるかということをついでにお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/18
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019・田邊繁雄
○田邊政府委員 私はたくさんの例を扱って知っておりますけれども、あまりそういうことは申し上げたくありませんが、これはたまらぬというケースというものはあるわけであります。やはりこういう法律というものをやっていく以上、ごく少数でありましても、法律の根本に触れるものは、法律の根本に基いて扱うのがいいのではないか。どうも今までがこうだからここからここまでいくという考え方は、極端に流れるのであります。とかくそういう議論が起きがちであります。こういう問題を扱っておりますと、それぞれ多少のニュアンスを持ちつつ全部につながっておる問題でありまして、そういう立法をするならば、何ゆえに戦地だけに限定するかという問題も出てくるわけであります。故意または重大なる過失がない場合に公務とするならば、なぜ戦地だけに限るのか、限る理由はございません。故意または重大な過失という建前をとる以上、それは第二番目の故意または重大な過失と同じような結果になるのかということでありますが、大体においてはそういう例が多いだろうと思います。しかし、もし故意または重大な過失がないものは全部公務と認める方針かということを聞きますので、必ずしもそういうふうにはならない場合があり得る、また現にあるだろうということを申し上げておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/19
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020・山下春江
○山下(春)委員 それはしかしどうもそれでないという——たとえば、今のお話で大体いいようでありますけれども、故意または重大な過失でないものを全部公務にする、故意または重大な過失のものは、公務でないことは初めからわかっている、だからこれは公務には入らない。ほかのものは全部入るかというと、そうでもないのだ。そのそうでもないということが、戦地あるいは事変地においての、局長の特に力説されるケースというのは、どういうのでございますか、例をあげてお示し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/20
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021・田邊繁雄
○田邊政府委員 山下委員は、観念上の建前の問題と、実際の結果と二つお話しになっておられますが、私は建前の問題を最初に申し上げておる。故意または重大なる過失以外のものは、全部公務にしたらどうかというお考えに対しましては、そういうことになりますと、観念的に行き過ぎではないかということを申し上げておる。それで、先ほど援護審査会にかけると、しぼるのじゃないか。これは私の方が実情に即した考え方であって、援護審査会あたりは何かしぼるのじゃないかという御懸念のようでありますが、そういう御懸念は、援護審査会を経た場合に非常に手続に手間がかかる、こういう議論も一つの議論でございますから、その点は十分御審議いただきたいということを申し上げておるのであります。私は建前の問題として、戦地の傷病であっても、公務でないものと公務であるものとがあり得るわけでありますから、その公務でないものを公務にするという立法は、援護法の根本の建前上どうかということを申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/21
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022・山下春江
○山下(春)委員 これは観念論と建前の問題とがいつもごっちゃになるので、どうも観念的にいうと、局長の言われることが、私はなかなか納得できないのです。一番最初に申しましたように、あの大東亜戦争の最終段階の状況というものを、一つの法律のものさしの中へ入れよう、入れようとする役所の考え方というものが、どうしてもわれわれの観念にぴったりこない。何かどとかでしぼろう、しぼろうとしているようなふうに見えてならないのであります。そうことでなく、一つ故意または重大な過失のないものに対しては、全部公務と認めてもらいたいという気持の観念と、あなたの法律の建前から来る結論は同じだというようなところを、今盛んにつついているのだと私は思います。そういうことですから、これは何べん言っても、私の観念とあなたの観念とは違いまして、違うというのは、あるいは私の考え方が法的な根拠、法の建前を熟知しないせいから起ってくることだと思うのです。ですから、それは私もそう深くは追及いたさないのですが、どうしても援護局長は、故意または重大な過失によるものを除くのほかということでは法の建前上乱暴だ、その法の建前を知らない山下の言うことの気持はわかるが、そういう言い方じゃ乱暴だと言われるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/22
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023・田邊繁雄
○田邊政府委員 この公務の範囲の拡大というものは、実は私どもも、部内ではいろいろ苦労してここまで持ってきたのであります。率直に申しますと、政府部内におきましても、この問題については、いろいろ有力な反対意見があったのであります。それは何かと申しますと、公務でないものを公務にするという立法はいけないという議論でございます。それはその通りだと思います。その議論に触れないで、しかも公務の範囲を拡大する名案はないかということを研究した結果、こういう条文になったわけであります。一たん公務でないものとして裁定で却下したものは、すでに公務でないものと政府は認めたものでございます。それをもう一ぺん考え直して公務にするということは、相当の考えをもってわれわれとしてはやったわけでございます。これは、先ほど申し上げました通り、またお説の中にありました通り、今度の戦争の特殊性ということを考えた場合においては、公務であることが明らかであったときに初めて裁定するのだ、従って却下した場合においては、非公務だということが明らかだということではない、公務であることが明らかでないから却下した、こういう建前になっております。それでは実情に即さないじゃないか、むしろ逆に公務であることが明らかでないものは全部公務だ、つまりだれが見ても非公務だという場合は非公務とみなしていとう、その同じ気持から出発して、それを先生は現行法の法律の根本に触れるところまで行こうとされる、私は根本に触れる建前をとりたくない、こういうことを申し上げておるのであります。これは援護法で公務と裁定されたものは、無条件で恩給法の公務になるものでございます。その点は、恩給局の御意見も十分われわれしんしゃくしつつやっておるわけでありまして、従いまして、恩給局におきましても、従来非公務なりとして恩給局で却下したものを、この際くつがえそう、こういう条文でございますので、これは公務の範囲を拡大する点で、政府のとった措置としては、相当思い切った措置であると思います。しかし、そうかといって、第一条の公務傷病に対する国家の損失補償であるといった根本の建前を、ひっくり返すようなところまで行くのは、私どもとしてはどうしても賛成できないということを申し上げておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/23
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024・山下春江
○山下(春)委員 私はこの問題にそうこだわってもしようがないと思いますが、どうもそれでは私はおかしいと思うことは、法の建前としては、それは援護法が公務と認めたものは恩給法の方へ移行されることになりますと、恩給法との関連を断ち切って考えることは困難でありましょうけれども、しかしながら、援護法とは社会保障制度的感覚をもって処理すべきものと、局長は常にわれわれにそれを言われている人なんです。これは恩給法と断ち切って考えるということは、いろいろな関連があるから、無理でありましょうけれども、あるところに一線を画してものを考えないと、ことできめたことはすぐ恩給法に影響するのだ。現実に影響するのでしょうけれども、そういう考え方のワクの中で考えるということは、私どもは常に党内でも、そういうことにおいていつもいつも議論をするのでありますけれども、援護法と恩給法はどうしても不即不離のものである、いつでも交錯しているものだという考え方によると、援護法で年令が六十才にならなければやらない、妻の場合とか扶助料とかなんとかいうことでなく、老父母あるいは老祖父母に対して六十才が来なければやらないという考え方、あるいは子供が十八才に触れば打ち切るという考え方へ私はこういうことは、援護法だからこそ、局長は強くそういうことを主張されると思います。そういう点が、いつも恩給法に関連するからという議論でいったのでは、それは議論の建前からいえばそうでありましょうけれども、故意または重大な過失でなかったものの中で、どの人をピック・アップして、一体これは公務で安いといえるか。それは援護法の考え方としては、お前は公務でないということを断言する人は、それは僭越な考え方で、苛烈な戦争の中にあって、だれもが立証できない。ただ、故意または重大な過失だけは立証できたという以外の人は、みなやるべきだと思いますが、これはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/24
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025・田邊繁雄
○田邊政府委員 公務でないことが明らかだということを立証する場合、政府にそれだけの立証する根拠がなければ、全部公務になってしまう、それだけの話で、きわめて簡単でございます。ただし、私は言いたくはありませんけれども、これはたまらぬという例があるのでございます。それを言えとおっしゃれば、私は申し上げますけれども、そういう例を私はあまりこういうところで申し上げたくないのでございますから、申し上げません。それで、観念的に考えるならば、戦地における傷病であっても、公務であるものと公務でないものがあることは当然だと思います。私はそれは援護法と恩給法の根本問題に触れると思うのであります。公務上の傷病ということをはっきり書いてあるのを取ってしまうということは、一つの議論であります。その場合には、広く社会的な見地から、戦争犠牲者は全部援護法に関係があるということになるわけであります。その方が、また実際事務をとる場合におきましては、過去の身分がどうであったか、あるいは過去の死んだ原因がどうであったかということを調べるだけでありますから、厚生省としては非常に楽であります。しかし、これはいわゆる国家補償といいますか、公務災害に対する補償を根本としつつ、それに援護的な要素をかみ合せてやるという建前がその方針なのであります。ただ、先生の御議論は、公務でないことが明らかであるか明らかでないかの個々の認定に当っては、故意または重大なる過失以外のものは全部公務であるということが明らかでないのだと言われるのでありますが、観念的にもそういうことは言えないし、具体的な事例もあると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/25
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026・山下春江
○山下(春)委員 それはその程度にいたしまして、今回援護法が改正されるに当りまして、過去の国家総動員法その他のことによりまして、国家権力をもって軍務に協力させ、あるいは戦闘に参加させたという非常にいろいろなケースがあります。このケースの中で、満州義勇隊の青少年の人々の実情を聞きましても、非常に手薄な国境警備を年若い者がさせられておったという多くの資料を私は得ておるのでありますが、ソ連参戦のときに当りましては、全くその主力は南方に行ってしまって、そういう年若い人たちだけで非常に惨たんたる戦闘をやりまして、大部分の者が死没しておるようであります。これと同じようなケースがたくさんあるようでありますけれども、こういうケースに対しては、当局はどうなさろうとお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/26
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027・田邊繁雄
○田邊政府委員 今度の大東亜戦争の末期におきまする特殊な様相から、沖繩あるいは満州の辺境地帯において、軍隊の中に入って戦闘行動をやって、りっぱな戦死を遂げられた方がおられるわけでございます。私どもはこういう方々は、常識的に考えますと、軍人ではなかったかと考えておるわけでありますが、手続その他の点において、軍人に召集するという手続をとっておらない方もあったようでありまして、私はこれはあまり詳しくはわからない何なりの資料を調べてみますと、こういう方々を軍人として扱う道も開かれておったように聞いておりますので、個々の実情に即して、そういった方々は召集された方として、死亡後そういう身分を付与している事例が相当あるのではないかと考えております。沖繩におきまするいわゆる学徒挺身隊という問題もございました。これも単なる雇用人、軍属としての任務ではなかったというふうにも考えられますので、詳細検討、なお十分研究してみなければならぬと思いますが、個々の実例に即しまして、軍人として取り上げることのできる者は軍人としての身分を付与する道が開かれておったし、また過去においても極力そういう道を活用しているはずだと考えておりますが、なお具体的な事例につきまして、よく検討し研究させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/27
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028・山下春江
○山下(春)委員 今、沖繩の鉄血勤皇隊のお話にちょっと触れられましたが、これは実は前に引揚委員会で援護局へお願いをしておいたのでございます。これは今、多少軍人として扱うこともできるのではないかというようなお話もございましたが、軍人として扱うことが至当であろうと思われるような法律が前にたくさん出ておるのでございます。もしこれが軍人として扱われることに、援護局の方で腹をおきめになりますれば、私はせめて満州の青少年義勇隊は、軍人として扱っていただきたいと思いますが、鉄血勤皇隊というものに対して、援護局の方で相当御審査がお進みになったでございましょうか、その点をちょっと伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/28
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029・田邊繁雄
○田邊政府委員 引揚委員会の方で、関係係官から一応実情について御説明があったと思うのでありますが、軍人という身分が与えられるためには、召集または入営ということが必要でございます。召集または入営をするためには、少くとも第二国民兵役に編入されておらなければならない、こういうことでございます。問題は、当時沖繩等の学徒隊を編成するに当って、どういう手続で、またどういう話し合いのもとに行われたかということを、一応調べておく必要があると思うのであります。また彼らの任務が何であったかということも、十分調べておく必要があると思います。たま運び、あるいは築城作業という程度であったのか、あるいは軍人と同じような戦闘行為をすることを任務として要求したかどうか、との点も十分に研究を要すると思うのであります。実情が、必ずしもまだ十分個々の例で明らかになっておりません。ことに十四歳、十五歳ぐらいの方で、すでに二階級特進をしている方もあるということでありますが、私の方では、まだそういう事例はつかんでおりません。今、私の方でつかんでおりますのは、学校に入っているために召集または入営が延期になっておった方々で戦死された方を軍人にしておる例は、たくさんございます。これは延期になっておったと申しますか、学校が解散になった関係上、当然に召集または入営させたということにしておるわけであります。これはお話の通り、沖繩だけの問題ではなしに、他にも関係があり、他にもそれと同じような実情の者につきましては、当然波及していかなければならない問題でございますので、今日の行政的な取扱いできるのかどうか、あるいは過去にさかのぼってそういう立法的措置が要るのかどうかということも、当然研究してみなければなりませんので、とりあえず実情につきまして、もう一ぷん正確な資料を作るように努めておりますが、それと並行してすでにわかっておる個々の事例につきましても、検討を進めて参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/29
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030・山下春江
○山下(春)委員 これは戦後非常に調査のしにくい場所であったということで、調査がおくれておると思いますが、ただいま援護局から調査に行っておいでになるように聞いておりましたが、それは沖繩へ調査のためにあなたの方から人を派遣しておいでになるということでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/30
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031・田邊繁雄
○田邊政府委員 今現に二人行っておりますが、十分こまかな点まで指示をいたしまして資料も集め、研究もさせ、またそれをすぐ中央の方へ連絡するように申し伝えてございますので、もうしばらく時日をかしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/31
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032・山下春江
○山下(春)委員 これは現地の沖繩の地方では、厚生省の方に予算がなければ、そんな十五日とか二週間とかいう費用しかないのならば、あとの精密な調査ができるまでは、地元で費用を持ってもいいから精細な調査をしてもらいたいという切なる願いがありますが、考えてみますれば、沖繩というところは、ほんとうにあれだけの苛烈な戦いをやりながら、日本に復帰もかなわず、苦しんでおるのでありますから、これだけはぜひとも精密な御調査を願って、軍人として扱うべき者はそのような処遇をし、軍属として扱うべき者はそのような処遇をすみやかにしてやるべきだと思いますが、満州の義勇隊の方は、どのようなお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/32
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033・田邊繁雄
○田邊政府委員 満州の青少年義勇隊の問題については、死亡当時の状況がいろいろ非常に違っております。開拓訓練本部に配属になっておって、それから終戦まぎわに各方面に動員された。中には軍需工場に動員されて協力していた者もございまして、終戦になりまして引き揚げを待っている間に、病気等によって死亡された方もございます。また中には、仰せの通り辺境地帯において戦闘行動によって死亡した方もございまして、いろいろ状況が違っておりますので、沖繩方面とにらみ合せまして、戦闘行動を行なった義勇隊につきましては、同様に扱うべきではないかと考えております。もし違うなら、その違う理由を明らかにいたしたいと思います。もうしばらく調べさせていただきたい。沖繩の話が出ましたが、実は沖繩の戦死者の中で、内地から動員して連れて行った方はわかっておりますが、現地で召集されて現地で戦死された方が相当あるようであります。その方々が、果して召集されたかどうという記録が、現在全然ございません。それを地元の現地の町村の方々その他の方々に十分証明していただきまして事実を確認していただきますには、ある程度の日数がかかる。もしその証明ができまして、書類が沖繩の政府を通じまして出てきますと、あとは簡単でございますが、現地に行ってそういう点を、こういう順序、こういう手続で証明をつけて出すように指示しておりますので、おくれているのはこの点でございます。内地から派遣されたもの、また沖繩で応召しましても、相当初期の動員の方々ははっきりしているので、早く済んでいるわけでありますが、おくれているのは、一般的に申しますと、現地召集された方々で、全然記録のない方々の、召集されたという事実の証明をすっかりつける点に手間取っている。これが趣旨がだんだん徹底いたしますと、早く進むようになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/33
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034・山下春江
○山下(春)委員 この戦争によって非常に打ちのめされました沖繩、しかも、戦後は日本に対する帰属をあれだけ熱願しているにもかかわらず、いまだにそれがかなわないという沖繩に対して、せめて日本人であるということの誇りを持たせる一つの大きなあたたかい手を日本から差し伸べることは、重大な問題であります。この問題の処遇を誤りまして、非常に冷やかな扱いをやるというようなことになりますれば、沖繩県民と日本本土との感情の上に、大きなみぞができるのではなかろうかというほど、これは重大な問題でございますので、十分な御調を査願うことは、もちろん大切なことでございますけれども、実は本日は厚生大臣に——私どもとしては、これをあくまで軍人として扱うべきものだ、こういう考えを持っておりますけれども、しかしそれはわれわれもまことに粗末な資料をもってそれを断言することはできませんので、援護局長は調査に行かれるわけでありますが、調査の結果は、一つ十二分なる処遇をしていただきたいということを希望を申し添えておきます。同時に、これはもう十年もたっておりますので、できるだけ早い時間に、あとう限りすみやかにとの調査を完了されまして、処遇決定のお態度に出ていただきたいということを切望いたしておきます。
それから、これも私は調査があまり厳密でないから、援護局長に伺うのでありますが、前に戦地から除隊になりまして、帰る帰りがけの船の中で撃沈された人に対する処遇を改めましたが、同様な意味で、召集令状を受け取って営門に入る、あるいは召集令状を受け取って台湾その他に向う、そういったような途中において撃破されて死没したというような問題があろうかと思いますが、その状態についての御調査の結果をお聞かせを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/34
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035・田邊繁雄
○田邊政府委員 入営応召途上にいて空襲等で死亡された事例については・私も聞いておりますが、今どれだけそれがあるかという資料を持っておりませんので、後日調べましてお答え申し上げたいと思っておりますが、現行法であります外地から内地へ帰還して郷里に帰るまでの間の問題でございますね、これは実は終戦後の復員のやり方の特殊な過渡的な時代に対する措置でございます。ほんとうから申しますと、外地から復員して来た方々は、部隊を組んで郷里に帰られるわけでありますから、郷土において解散する時期が復員の時期であるべきはずです。ところが、終戦後外地から引き揚げがあったときは、占領軍の命令で上陸とたんに復員させられてしまったわけです。ところがその後になりまして、ソ連からの引き揚げの際には、それが改められまして、家に帰るまでは復員ではないというように改められた経緯もございます。それは、まあ行き過ぎの手続であって、というふうにわれわれ考えまして、郷士に帰るまでは復員でないという考え方に改めたわけであります。入営応召途上の問題は、どこからどこまでが入営途上かという問題があろうかと思いますが、これは昔からそういう問題があるようでございまして、恩給法の解釈といたしましては、営門に入らないうちは軍人という身分が発生しないのだ、従って在職期間内における死亡とはいえないという解釈で臨んでおられたようでございます。これはその解釈でいけるかどうか、なお一そう恩給局の方と連絡を取って、どのくらいの実例があるかという点とあわせまして、お答えを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/35
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036・山下春江
○山下(春)委員 営門に入らなければ、その範囲にちょっと足らない、十のうち一か二か足らぬと思いますが、しかし、これは潜在的には軍人であろうと思います。それと同様な問題が、軍属にも起ってきますが、軍属で、指定された工場に到着する途中というような場合は、どうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/36
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037・田邊繁雄
○田邊政府委員 軍属の場合は、指定された工場とおっしゃいますと内地だろうと思います。これは援護法ではなしに、共済組合法の方で扱っております。外地の場合には、軍属になっておりますから、外地に行く船の中で、すでに雇用人、軍属たる身分が発生しておりますから、これはもう当然該当すると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/37
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038・山下春江
○山下(春)委員 そうしますと、今の軍人の場合は、召集令状から営門というこの間のことでございますね、今の局長の言われたのは。そういうケースがはっきりわかった場合に、どう扱うかということは、営門に入ってからということだからまだはっきりしない。軍属の場合は、指定の戦地へ向う途中、船に乗っているときにやられても、それははっきりしている、こういうような説明ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/38
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039・田邊繁雄
○田邊政府委員 それは軍人でも同じでございまして、軍隊に入って部隊を編成して宇品なら宇品から輸送船で戦地に向う途中で沈没しますと、当然これは公務上の死亡になる。それから徴用された軍属が、輸送船で戦地に向う途中でやられましても、同じであります。問題は、召集を受けた方が、入営応召する途中において空襲等で死亡した場合、これは現行法の解釈としては、従来の取扱いでは、公務つまり軍人ではまだないという取扱いになっておるわけであります。その点は、軍属の場合も同様だと思います。戦地へ行く途中においての問題は、一般的には、集団をなして行くような場合には、すでに軍人という身分は発生しておりますから、それはもう問題なく公務になるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/39
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040・山下春江
○山下(春)委員 従来は軍人としての身分が発生していないから扱われていなかったということですが、私はこれは確実な事例を持っておりませんから、むしろ御調査願いたいのでありますけれども、たとえば召集令状を受けて広島の連隊に入ろうとしたところが原爆でやられた。あるいは営門に入る時間と原爆の落ちた時間との間に多少の差がありますから、あるいはそういういろいろな解釈も出るかもしれません。けれども、あす入隊しようと思って今晩来て広島に泊っていたから、ここでやられたというようなのもあるのでございまして、これを一体当局が軍人とみなしてくれるかどうか。そういうケースは現在どのくらいあるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/40
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041・田邊繁雄
○田邊政府委員 確実な数は知っておりませんが、こういう例は私承知しております。広島に御両親がおられるわけです。それで広島市以外の土地にお勤めになっておった、それが召集令状が来ましたので、応召する前にお父さん、お母さんのところで少し静養してから入隊したいということで、工場の方から休暇をいただいて、そしてうちへ帰って栄養をとっておられたといいますか、休養しておられた。それで入隊までにあと二週間ぐらい日があるときに、広島の原子爆弾でなくなられた例を知っております。そこまでいきますと、問題は非常にむずかしくなって参りますが、召集令状を受け取って台湾の部隊に入隊を命ぜられて、船で一人だけ下関から出発して向った、その途中その船が敵の潜水艦でやられた、こういう場合などは、まことにお気の毒な事例に入るわけであります。現在の法律の解釈で、そういうものは何とかならぬかという気持は持っておるのでございますが、どうも今までのところでは軍人ではない、身分は発生しておらない、こういうことでございます。先ほど申し上げましたように、さらに恩給局と連絡をとっていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/41
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042・山下春江
○山下(春)委員 要するに、今回政府が改正案を出されましたが、田邊さんのお気持では、これでもう援護局でなそうとすることの全部をなし得たということではなく、今後ともどもにまだ非常に研究しなければならないものが残っておるとお思いでございましょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/42
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043・田邊繁雄
○田邊政府委員 昨年から、遺族会からも、また各方面からも、援護法の不備を指摘されまして、改正するようにという御要望があったわけであります。当委員会におきましても、どなたがどういうことを具体的に要望されたということを私はよく覚えております。今回改正案を出した中にも、これはどなたの非常な熱烈な要望かということが、よく頭に入っているくらいであります。従いまして、今後国家財政の状態等ともにらみ合せまして、各方面の均衡ということも十分考えながら、検討は重ねて参りたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/43
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044・山下春江
○山下(春)委員 お昼でございますから、私は質問を留保して、本日は私の質問をこれで打ち切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/44
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045・中村三之丞
○中村委員長 受田新吉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/45
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046・受田新吉
○受田委員 午前中時間がないようですから、ごくかいつまんで一、二点だけお尋ねして、午後へ賃問を続けたいと思います。
田邊局長さんは、終始この援護法のために御努力された厚生省部内における、いや日本の敗戦後におけるこの問題の処理に当った最大の功労者であることは、私はよく確認します。従って、前後の関係をよく御存じであるので、終戦後引き続きこの業務に従事されたという立場から、厚生省部内の至宝であることも私は確認するのですが、あなたのお取り扱いになられた援護法そのものは、これは恩給法と比較検討して、次の点において、いかなる見解を持っておられるかを、まずただしたいと思います。それは援護法は、その第一条に掲げてありますような、潜在的には恩給法の改正前における暫定措置、表面においてはここに掲げてあるような、「軍人軍属の公務上の負傷若しくは疾病又は死亡に関し、国家補償の精神に基き、軍人軍属であった者又はこれらの者の遺族を援護することを目的とする。」というような、援護することを目的とするという立場から言うならば、援護法は、極度に恩給法の要素を考慮して考える必要はないのではないか。援護法独自の立場から、恩給法に規定するものをあまり強く取り上げないで、社会保障的な性格のものも十分取り入れた法律たらしむべきではないかと私は思うのでありますが、局長はいかがお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/46
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047・田邊繁雄
○田邊政府委員 理論的には、そういうことが十分考えられます。しかし、国家財政その他のことを十分考えた場合に、一体国家補償としてなすべき範囲いかんという問題は、別途起るわけでありまして、これは今日の国家財政の現状からした場合には、この程度でやむを得ないのではないか、こういう考えを持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/47
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048・受田新吉
○受田委員 しからば、国家財政その他の立場から考慮する、いわゆる政治的配慮に基いて援護法の改正には難点があるということに重点が一つあるということになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/48
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049・田邊繁雄
○田邊政府委員 これは援護法の制定以来のことをよく御承知でございますすので、申し上げませんが、援護法を作るときには、実は軍人恩給が復活するのか、しないのかわからなかったのであります。われわれの事務的な立場からいいますと、非常にその点は苦労いたしたのであります。結局、復活すれば復活して差しつかえないように、万一復活したい場合で毛差しつかえないようにということで最初立法した関係上、当初の立法は非常に窮屈になっておりました。その後、政府の方針がきまりまして、こういうことになってしまいますと、今日から振り返ってみますと、援護法は、軍人恩給に漏れている者に対して処遇するという、補完的な役割になってきたわけであります。その補完的な役割を果す場合に、援護法というものは、厚生省でやっておる性格を十分考えなければならぬ、根本の立場としては、援護という立場を守るべきである。それからもう一点は、損失補償といいますか、いわゆる損失補償的な取扱いをする場合に、その損失補償の立場をどこにとるかという場合に、やはりわれわれは公務災害、国家公務員ないしこれに準ずる国家公務員的な身分を持った方の公務災害に対してやるんだ、こういう考え方をとっておるわけであります。従って、補完的作用と申しましても、根本におきましては、恩給法と同じような公務災害に対する損失補償的立場をとりつつ、同時に援護するという援護的立場、との二つをとっているわけであります。援護的立場というものは、どうしてもこれは理論上から出てくる問題でございますが、損失補償的立場というものは、それではどこまで対象を広めていくかという問題になりますと、これはいろいろ議論がございましょう。技術的な点から申しますと、実は厚生省で扱う場合は、額がどうだとかこうだとかいうととは言わぬ方が非常にやりやすい。現状においてはお気の毒だという点は、やった方がやりやすいわけであります。そうなりますれば、おそらく範囲は戦争犠牲者全部でなければ非常に困難である。ああであった、こうであった、ここのところはどうだという個々の例は、みなつながっております。広くやるのでなければ、とうてい困難である。また資料その他の関係から、こまかい点を取り上げまして、この人は過去においてこういう身分があった、あるいはこういう病気の仕方をしたのだというようなことは、とうてい今日せんさくするととは不可能でございます。そこに技術的な面及び財政な両面から、自然に制約せざるを得ない点があるだろうと考えまして、私の方では、これやかれやを考えまして、先ほど山下さんに申し上げました通りの立場、一応の立場でございますが、戦争中に存在し、また当然存在すべきであった制度はこの際やる、しかし、戦争中に一時金等で処理されておった方は、この際はそれでがまんしていただくという考え方で一応線を引いておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/49
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050・受田新吉
○受田委員 しからば、戦傷病者戦没者遺族等援護法と書いてある題目、名称から見るならば、これは援護的性格がはっきり出ている法律だと思います。しかも、戦没者遺族等と書いてあるこの「等」ということなどについて、そのほかに含む要素は何があるかを、もう一度局長にお尋ね申し上げて、そして援護法的性格を十分考慮する法律というところに建前はとるべきではないか、こう私は考えるのであります。お答え願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/50
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051・田邊繁雄
○田邊政府委員 戦傷病者戦没者遺族等となっておりますのは、内地の場合をとってみますれば、戦傷病者でなく、あるいは戦没者でなくても、公務上の負傷者、傷病者がございます。戦傷病者戦没者というのは、戦争の際の傷病でございますから、極端に申しますと戦地という観念が入るのが戦傷者の観念でございますが、内地における場合も、やはり公務の場合は入れるということになりますので、内地で公務上死んだ方及び内地で公務上けがをした方一もこの法律の対象になるわけであります。それから終戦後抑留中のいろいろな災害等も、これは厳密に申しますと、果して戦傷病者と言えるかどうかという点もございますので、そういう点を考慮に入れまして「等」という言葉を使ったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/51
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052・受田新吉
○受田委員 今御指摘になったものは、いずれも戦争に基因した戦傷病者であり、あるいは戦没者であるということになる。当時、戦争のために公務に従事したのであって、戦争に参加しない公務従事者というのはなかった。結局、国家総動員法その他の法律に基いて、すべて戦闘に参加した結果の傷病であり、死亡であるというととは、大きな概念から言えるのです。従って、そういうこまかい概念にとらわれる見方をすることになりますと、問題が起ります。援護法の第二条にあげてあります「この法律において、「軍人軍属」とは」という解釈、軍人軍属の解釈を、第一項に規定したような非常に厳格松、恩給法の特例に関する件の第一条に規定するものをあげるとか、あるいは、内閣総理大臣の定める者以外のもとの陸軍または海軍部内の公務員または公務員に準ずべき者、こういうふうに厳格江ワクをはめることに触るならば、これは全く恩給法の規定するものを対象にしておるという基本的な観念になってくると思うのです。そういう点において、援護的性格のものであるならば——広く戦争に基因したところの戦傷病者や戦没者を援護するという立場に解釈するならば、これはここにあげてある今私が申し上げましたよう血ものを厳格に解釈することは、援護法の精神から言ったならば狭量であり過ぎる、こう考えるのでありますが、御意見を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/52
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053・田邊繁雄
○田邊政府委員 法律の表題の「等」というのは、なぜ等という言葉を使ったかという御質問でありましたので、戦争に関係のない時代の内地における傷病者も対象になっておりますから、こういうふうになっておるということを申し上げたのであります。その問題と、それから今あなたのお話しになった第二の問題は、直接関係のない問題だと私は思います。援護法の根本の建前として、同じく戦傷病者、同じく戦没者でありながら、軍人軍属以外の者を何ゆえ対象にしないのか、援護法の建前上狭隘ではないか、こういう御指摘でございます。先ほど私が申し上げました通り、軍人恩給に対する補完的作用を営むものである、こういってよいだろうということを申し上げたのでありますが、その場合において、補完的作用を営む場合の根本的立場が援護であるならば、対象を広く取り上げたらよいのではないか、こういう御質問であります。その点については、先ほど申し上げましたように、理論上は成り立つことでありましょう、成り立つことは十分認めますが、しかしながら、国家財政及びいろいろな事情を考えたときに、そこまで援護できないのが現状である、こう申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/53
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054・受田新吉
○受田委員 この法律の題と法律の規定してある適用の内容とを違った見方をされては困る、この法律の名前は、との第一条及び第二条に掲げてあるものと強いつながりを持ったものがつけられておるのだ、そう解釈しなければならぬと思うのであります。今の田邊さんの御説明によると、「等」という言葉と比較して、違った意味にわれわれは見なければならぬのだという御説明だったと思いますが、これは納得しがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/54
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055・田邊繁雄
○田邊政府委員 法律の名前と第一条、第二条とは食い違っておるのじゃないかという御質問でありますが、戦傷病者、戦没者という言葉だけにいたしますと、これが大部分ではございますけれども、そういう概念に入らない方もあるということを申し上げたのであります。従って、非常に正確を期する意味において「等」という言葉を使ったわけであります。戦争が全然なかった時期におきまして、内地等におきまして服務のために公務上死亡された、あるいは公務上傷病にかかった傷病者、いわゆる公務死没者、公務傷病者というものもあるわけであります。これも法律の対象にしようという趣旨で、名前に「等」ということを入れたわけであります。非常に正確を期するために入れた言葉であります。そういう気持から名前はできておりますが、内容は一条、二条に触れたものを、一応この法律の対象にしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/55
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056・受田新吉
○受田委員 第二条の第一項には、その後二回にわたる法律改正によって新しいものが加えられた。船舶運営会の関係の船舶乗務員のごとき、こういうような法律改正がされるととは、局長としては本意でないとお考えになられますかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/56
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057・田邊繁雄
○田邊政府委員 ただいま御指摘になられました点につきましては、政府部内としても十分慎重に検討をいたしまして、また当委員会におきましても十分の御審議をいただいたのでありまして、これはこの法律の対象とすることが至当であろう、こういう結論になったわけであります。本意であるも本意でないもこうしなければ均衡を失するということなのであります。というのは、法律を最初に作るときに、純然たる軍人恩給の暫定措置という立場もとり得たわけであります。従って、内地の有給軍属は、一般的には共済組合において年金をやっておりますから、その系統でそういう措置を新たにしていただくことも一つの方法でありますし、また船員につきましては、船員保険法におきまして、一般の船員とは区別をいたしまして、こういう戦時災害による犠牲者に対しましては、全額国庫負担をもって、一定の年金、傷病年金等を支給しておったのであります。それをベース・アップするということも一つの方法であったと思います。ところが、船員法の関係もありますので、その特殊なものをベース・アップするということも困難だという事情もありまして、いろいろ考えました結果、戦争中にあった制度でございまするし、ことに均衡上やはり配付してやるということになったわけであります。戦争中にあった制度ないしは戦争中に当然生かすべき配付の範囲と見てもいいのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/57
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058・受田新吉
○受田委員 今の局長の御説明によれば、軍人軍属以外の者を均衡上加えるということにもなり、また手落ちのないようにもしたいという気持も手伝っておるようにも思います。しからば、最初からここで山下さんがお話しておられたときのことを聞いておりますと、軍人軍属の解釈を非常に厳格にしておられる。沖繩の少年兵のごときにおいても、それは国民兵役に属していない者であるからというふうに、非常に厳格にしておられる。それと今の御説明とは、非常に観点が違うと思うのです。つまり援護的な性格のものを漏れなく、できるだけ均衡を保って救済したいというようなことであるならば、広くこの援護法そのものに、もう少し援護的な要素を取り入れるようにしたらどうか。たとえば、今の船舶運営会の職員の場合におきましても、今との第一条、第二条によって、またこの法律によって救われている人々には限界がある。なお現行法から漏れている船員は、陸海軍大臣から航路の指定を受けて、兵員やあるいは軍の物資の輸送によって敵対行動等の軍事任務を課せられたもとの陸海軍の配当船及び陸海軍指定船の乗り組み船員のようなもの、あるいは船舶運営会の所属の船員で、終戦後もとの陸軍及び海軍の弾薬投棄作業等の終戦処理業務や、終戦に伴う復員業務等に従事させられた船舶乗組員、こういう者が残っておる。こういう人々は、この法律の解釈によって、あるいはこれに伴う政令に漏れるような人が相当数できておる。こういう人々を広く漏れなく救済するような措置も、当然とられていなければならぬと思うのでありますが、これらについて、解釈を非常に厳正にし過ぎられて、こういう問題にまだ遺憾な点が残っておると思いますが、これはいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/58
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059・田邊繁雄
○田邊政府委員 船員につきましては、船舶運営会の運航する船舶乗組員と相なっておるわけでございます。当時、当然船舶運営会に所属すべきはずであった船というものはあります。個個に当ってみますと、それは何らかの手続等においておくれておったというような事例もあるようでありまして、私は個々の認定に当りましては、同様の事情にあった者は同様に処理するという見地から、そうやかましいことを言っていないつもりでございます。ただし、その純然たる会社所属の船であって、船員も何も全部会社の職員であって、会社から俸給をもらっておったという方で、船舶運営会の船でなかったということがはっきりしているものもあると思います。そこまでその法律の解釈を拡張することはできないと思いますが、いろいろ調べてみますと、当然船舶運営会の船であったはずだが、どうも船籍には載っていないし、よく調べてみなければわからないというのもあります。こういうのは、筋からいって、そうであったはずだというものもございますので、できるだけその範疇に入れるような気持は持って取り扱っております。沖繩の問題は、これは軍人であったかどうかということが問題でございまして、有給軍属であったかどうかということではございませんので、これはもう少し研究させていただきたいということを申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/59
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060・受田新吉
○受田委員 今、法律の取扱いにおいて、一例を沖繩と船員にとったのですが、今の船員の場合におきましても、軍部大臣からの航路の指定を受けるとか、あるいは軍のいろいろな輸送その他に協力の指示を受けるとか、こういうような軍人に協力の任務をはっきりと課せられて従事させられて、常時危険な状況にあるという船員などは、これは漏れなく救済すべきであると思います。それがいつも解釈が厳正になり過ぎて、船舶運営会に所属していなかったという、単にそれだけの理由で、それが削られておるというようなことがあるので、これらにつきましては、援護法でありますから、運営の妙味というものは十分考えて、手落ちがないような措置をしていただくことが私は妥当ではないかと思いますが、田邊局長はいかがお考えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/60
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061・田邊繁雄
○田邊政府委員 法律の解釈が許す限り、できるだけ実情に即するように運用をして参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/61
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062・受田新吉
○受田委員 ちょっと委員長に伺いますが、昼から間違いなくやられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/62
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063・中村三之丞
○中村委員長 ちょっと速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/63
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064・中村三之丞
○中村委員長 速記を始めて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/64
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065・受田新吉
○受田委員 どうもこの援護法と恩給法とをいつも比較して、田邊さんは何か受給資格とかあるいは公務死の範囲とかいうものは、厳正に考えなければならぬということを今まで考えてこられたと思うのです。そうしてもう一つは、今の軍人軍属とみなす方の人はなるべく避けたい。さっきからのお言葉によると、軍人軍属に厳重なワクをはめ、軍人軍属とみなすワクのものをなるべく除外したいというお気持がある。ことにこの法律の第三十四条、弔慰金の支給対象になる人々に対しましては、田邊さんは、実際にわれわれが扱ってもこれは大へんなことだというさっきお言葉があったと思います。これは大へんなことだという非常に困難なる状況を来たしておるというお言葉があったのでありますが、これは軍属とみなす人々である関係上、そういう困難があるのでありますかどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/65
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066・田邊繁雄
○田邊政府委員 援護法と恩給法との関係は、これはいきさつをずっと申し上げれば、自然に御了解願える問題でございまして、二つを比較してどうこうということは、できない問題になってきておるわけであります。そこで私は、その立場というものは、先ほど申し上げた通りの立場でおるのでございまして、これに関連してのお尋ねだと思いますが、先ほど山下先生に申し上げましたのは、現在、戦争中に年金の対象になっておらない人は、一時金でがまんをしていただくということになっておる。それは国会修正によって、三十四条によって、一時金を支給するという条文が出たわけでございます。ところがこの条文たるや、まことにはっきりしない点がある条文でございまして、そのはっきりしないと申し上げるのは、役所に資料がないということを申し上げるのであります。およそこういった年金なり一時金なりを支給する場合におきましては、その身分なりあるいは死亡の状況等について、国家の権威ある裏づけのある資料がない場合においては、本人が申し出た場合において、それを審査する基準の材料というものはないわけでございますので、その点に非常に苦労しているということを申し上げるわけであります。たとえば戦時災害で死んだ場合というのは、空襲によって死んだ場合です。ところが、終戦後膓チフスで死んでおる。膓チフスは、どう見ても戦時災害とは認められないわけであります。ところがその後、最近になって、あれは膓チフスはうそだ、実はこういう病気だったということで、その当時の医者が、またその当時の死亡証明書を書きかえたり、法務省に対してもその死亡診断書の変更を願い出たという例があって、向うでもそれを受け付けてしまった。私の方では、果してそれがほんとうかどうかということは、実は頭をひねらざるを得ないわけであります。最後まで争って、そうじゃないということを言い切れるかというと言い切れない、こういう事例が相当あるわけでございます。おそらくその対象を拡大するとか、あるいは年金の支給対象を拡大するというような場合においては、事務の責任者といたしましては、そういうことも十分考えなければならぬ。そういう点で、これは一例を申し上げたのでございますが、いろいろのこしゃこしゃした例があるわけであります。しかし、法律がもうできている以上は、私の方で何とか善処して、妥当な措置をしていかなければならぬわけであります。そこにいろいろ苦慮しておるという実情を申し上げまして、今後の御審議の御参考にしていただく、こう申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/66
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067・受田新吉
○受田委員 ただ局長さんをして言わしめれば、三十四条の国会修正部分は、非常に乱暴な修正であるというようなことに考えられる。さっきから、乱暴なという言葉がちょいちょい出ましたが、そういうような、つまり自分たちで、あなたは調査に非常に困難なものを非常にむずかしい形でこれを押し付けられた、法律の中に取り入れられた条文としては、はなはだわれわれは困ったものをもらったんだという印象に私聞きますが、さように心得てよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/67
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068・田邊繁雄
○田邊政府委員 私はそういうことを申し上げておるわけではなく、戦争中の犠牲者に対しまして、せめて弔慰金を一時金として支給するというお気持は、われわれも全く同感でございます。こういう立法をされた場合に、資料がないからお断わりするということも、あまり狭隘な考えである、そのような立法は歓迎すべきだと思います。しかし、資料がないという現状も、われわれとしてつらい点で、しかし出た以上は、役所で善処して、妥当な措置をしなければならぬ責任がある。従って、われわれは非常に苦慮しつつやっておるということを申し上げた。従って苦慮しつつやっているという実情は、今後年金支給の対象を拡大するという場合におきましては、十分参考にして御審議をいただきたい、こういう気持を申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/68
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069・受田新吉
○受田委員 弔慰金と特別弔慰金の問題とか、あるいはこの弔慰金該当者を遺族年金の支給対象にするとかいうような問題は、これは非常に微妙な問題だと私は思うのです。しかし、田邊さんといたされましては、今のこの三十四条の国家修正部分、すなわち国家総動員法に基くところの動員その他徴用を含めた調査をし、その資料を集めるのは非常に困難であるが、それらは当然国家の至上命令で動いたという点では、これは同じ立場でやらなければいかぬという基本線を持っておるというふうに私は解釈しておるわけです。そういうところからいうならば、今の弔慰金と遺族年金との微妙な関係等も克服して、この際弔慰金の該当者、あるいは特別弔慰金と弔慰金との差等とか、こういうものを乗り越えて、遺族年金の支給をする対象としても、援護法の精神からいうならば当然これは考えられる問題じゃないか。国家財政の問題を抜きにしたならば、援護法の立場からいえば、弔慰金の支給該当者は、当然遺族年金の該当者として取り扱うべき性質のものである、こういうふうに考えるべきではないかと思うのでありますが、いかがお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/69
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070・田邊繁雄
○田邊政府委員 私は理論的な立場からは、そういう立場が一つ成り立ち得るけれども、そうでなくてもよろしいという理論的立場もあり得ると思います。理論的な問題といたしましては、私は両方あると思います。また三十四条関係の中におきましても、いわゆる国家の要請の強度あるいは権力発動のあるなしという点におきましては、微妙な相違がございます。非常に強度なものがあるし、きわめて要請の弱いものもございます。一がいに言えないと思います。ただ援護という立場からいうならば、果して三十四条関係だけでいいかということも当然問題になってくる。狭過ぎるじゃないか、もっと広くやったらいいじゃないか、援護を徹底する限りは、これをもっと広くしていいじゃないかということも出てくる。なぜしないかといえば、それは国家財政の制約も出てくるが、それは程度の問題になる。われわれが社会保障ないし援護という一点を強調するならば、もっと広範囲に、あるいはもっと戦争ということに関連なく広くいくということの方が理論的に正しいのじゃないか、そう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/70
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071・受田新吉
○受田委員 すでに政府といたされましては、第二条第一項に規定するところの旧援護法の対象者を、旧国家総動員法、関東州国家総動員令に基いて設立された船舶運営会に該当する人々を含んでいるわけです。これらは明らかに局長さんのお説によるところの広い意味の立法実施が、この法律にうたわれたものだと私は思います。しからば、旧軍人軍属である者だけを支給対象に考えた当初の考え方から、その第二条において基本的にそうした国家総動員法に基く人々をここへ取り上げるという段階に来ている以上は、すでに援護法という法律の内容は、明らかに援護的性格を濃化したものであると私は思いますし、また三十四条の支給対象がぐっとふえてきており、またその中には、濃厚の差はあるけれども、広く漏れなくこれに国家の至上命令及びこれに準ずるものを含もうする努力がされるという点から見ましたならば、この法律そのものは、援護的な性格がぐっと浮び上った法律である。恩給法は、まだ厳重なるかせがされておりまして、旧来の例の恩給法の精神である文武官に対する退職後の生活を保障し、その在任中の公務に殉じた、経済獲得能力を減らしたその代償を払うとういう基本的なものが残されておる。そういうことを考えると、この際援護法によって、国家財政の許す限度内において、思い切って支給対象などを広げるという態度をおとりになる必要はなかったかと思うのです。従って、その前進的の一歩として今回出された政府案には、三十四条などに二つ三つそうした受給資格の拡大事項、あるいは三十五条の三親等内の親族を含む規定とかいうようなところがちょいちょい入っておる。これらは、援護的要素が明らかにわれわれとしては含まれておるものだと思うのです。そういう意味からいったら、一歩前進された。政府としては、財政上の余裕があるならば、また財政的にはあまり影響のないようなごくこまかいわずかな数字で片づくような問題もあるのですから、そういうようなものは、この際思い切って取り入れられて、恩給法の何百億に比べればわずかのことで済むのですから、一つ広く国家の至上命令に基いて戦争のために犠牲になられた人々を救うということをお考えになるならば、沖繩の問題なども簡単に片づく問題だし、あらゆるところで問題点が一挙に処理できると思うのです。そういうところを局長いかがお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/71
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072・田邊繁雄
○田邊政府委員 私は、理論上そういう考え方が成り立つということを、否定するものではございません。しかし、国家の要請の度合いと申しましても、三十四条関係を取ってみた場合に、いろいろ違います。たとえば、ことに国民義勇隊という言葉を使っております。これは広島の原子爆弾でなくなった人で、疎開作業に従事しておった人々を言うわけです。これらの中には隣組に似たようなものもあるという印象を強く受けるわけです。しかし、これも国家から強い要請があったことは事実であります。法律に基きまして、学徒の動員等は、これは個々に指名をして動員するわけではございませんで、何人か一カ所の工場に協力してほしいという程度であります。これに違反した場合において、罰則等があるわけではない。徴用の場合におきましては、個々人に指名が参ります。その場合におきましても、新しく徴用になった人と、現任徴用と、申しまして、その工場に勤めておった人を均衡上徴用にかけるという場合がありました。これは社長以下工場長まで、全部徴用になっております。これは国家の強い要請に積極的に参加されまして、いろいろ防空作業等において国土のために働いて、なくなった方々を私は知っております。それがこの法律に漏れております。極端にそれからそれへと取っていく場合に、私は受田さんのおっしゃるようになさるならば、戦災死亡者全部にやらなければ、具体的に公平を期するわけにいかないということになるのではなかろうか。それをあなたは、そうでなかった、こうでなかったといって資料をあげることは、相当困難じゃないかと思います。現在の三十四条関係において、年金を支給していけないという積極的な理由は、なかなか困難でございますが、そこまで及び得ないといういろいろな事由は、私、先ほどから御説明申し上げた通りでございます。そういう立場が理論上十分成り立ち得るということは、私、否定するものではございませんが、先ほどから申し上げているような事由によって、われわれはそこまで手を及ぼし得ない現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/72
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073・受田新吉
○受田委員 田邊さんは、理論上成り立つことを盛んに申しておられるのでありまして、この点私は、その政治的良識は十分尊敬申し上げます。今、私が考えておることは、この援護法で、まず当面救済する対象としては、国家の至上命令、あるいは自己の自由意思を極度に曲げなければならなかった環境のもとに、当時の軍に協力した人々は、これは漏れなくまずこの援護法で救わなければならぬが、従って、今徴用とか、学徒動員とか、自己の自由意思の限界があったんだとおっしゃったけれども、当時、私たちその空気を知っておりますが、徴用で呼び出された者が、もし協力しなかったらば、非国民のように宣伝をされて、とうてい隣組などの生活においては、全くの落伍者、のけ者であったわけであります。学徒動員なども、参加する学生がりっぱな学生であって、いやと言う学生は、これまた非国民的にあしらわれたのであって、ほとんど例外なしに国家の至上命令、あるいはこれに準ずる国家の公務に協力した人々なんです。これは私、明らかに言えると思うのです。当時の状況をよく知っておったら、はっきり言えるわけです。従って、少しでも強制的要素があったもので動かされた人々、それから爆弾その他で急に空襲等でやられた場合とは、この援護法においては一応区別して考えて、少しでもそうした国の直接の命令、あるいはこれに準ずる状況において行動した者をまず救済して、それから残された人々へ、今度一般の空襲でなくなった人々というようなものへ発展すべきではないか。援護法そのものの精神からいったならば、私は今申し上げたような線をまず漏れなく拾って、今局長のお話しになられた中で、非常に進んで協力した人で漏れた人があるということを聞きましたが、そういう人たちをこれに漏れなく入れていけば、これは調査の結果は、そうたくさんの人じゃないと思うのです。そして予算措置においても、弔慰金を出す程度のものであれば、そう私、国家財政に影響があることとは思いません。この三十四条の修正をしたときの弔慰金の予算が幾らであったか、ここに資料がないのでちょっとわかりませんが、そういうものを考えてみましても、今度の恩給法の改正などと考えると、何とかこの際できそうな対象だと思うのです。従って、できればこの機会にそういうものに該当する人々は、できるだけ広く救ってあげて、せめて援護法で救ってあげて、そうして国家からわれわれはこれだけの補償をされているんだという気持を、その遺族の人々にも持っていただく方が、筋としては通るのじゃないか、理論的にも、また現実の問題としても通るのじゃないかと思うのです。つまり——まあそこまで一つ…。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/73
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074・田邊繁雄
○田邊政府委員 援護法は、公務災害に対する補償という精神を根本としておるわけであります。この公務災害というものは、国家公務員という観念を一応基準にしておりまして、恩給法から漏れておる者、国家公務員であったという者を基本として、補償する立場をとっておるわけであります。国家公務員的な色彩の強いものを、順次広げていったらどうかという御意見でございます。これは数は大したことないじゃないかとおっしゃいますけれども、現在までに未裁定のものは、相当たくさんおるのでございます。外地における戦闘協力者、これはまだ裁定が十分進んでおりません。非常に難渋をきわめておる関係上、範囲はまだ進んでおりません。特別未帰還者につきましても、まだそこまでは手が伸びておりません。私は率直に申し上げますと、こういう政策をやる場合におきましては、だんだん、だんだんとおっしゃいますけれども、これは国家財政という点からみますと、どこまで広げるのだということを十分考えておかなければならぬと思います。二十数万の外地において死亡した引揚者並びに途中での死亡者は全然考えないでよろしいか。それの中にも、国家の強制力によって行ったと同視すべき状態の人が、ほとんど大部分じゃないかと思うわけであります。南方における引揚者も、強制的に移動させられたわけであります。とれもまた相当たくさんにおるようであります。そうなってきますと、先ほどおっしゃる通り、内地における一般戦災者はどうなるか、ことまで当然になってくるわけであります。それをどこで切ってよろしい、どこで切って悪いというようなものが、はっきりしたものがあれば、これはまたいいわけですが、おそらくは困難ではないかと思う。そこで、私は先ほどから申し上げているように、国家財政とそれから資料というものが十分でないという関係、両方にらみ合せて現在にとどまっておるので、現在にとどまっておることも必ずしも理由がないととじゃない。戦争中にあった制度、約束した制度については復活をする。しかし、当時の状態としては、学徒援護会、徴用援護会等の一時金によって差し上げて、それで一応済んでおった方は、敗戦後のあるような特殊事情におきましては、一応年金的なものからは御遠慮いただいて、一時金でがまんしていただくという点に一線を引いておるわけでございます。この問題は、援護法上、いつも出る議論でございまして、そのつど、私、先ほど申し上げたようなことを申し上げておるわけであります。援護法が恩給法の暫定措置として出発して今日に至るまでの間、その議論は毎国会、受田先生から熱心な御質問があるわけであります。しかし、私どもの方でも、取り上げていい問題は、決しておろそかにしておるわけでない。先生方の熱心に御主張になっておりました弔慰金を受けるべき遺族の範囲のところで、強い御要望のあった点なども、今回の改正案で措置いたしておるわけであります。今後も十分研究をすべきであるし、現在法律で不備な点がございますし、また国家財政等の関係から、措置できるものは今後といえども措置をしていく、その点については変りはない気持であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/74
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075・受田新吉
○受田委員 もう一つ、この終戦時に責任自殺をした軍人、軍属の遺族に対する遺族年金の支給規定ができたわけでありますが、これは終戦時という限定をした理由はいかがですか。この間説明をされたかもしれませんが、ちょっと……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/75
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076・田邊繁雄
○田邊政府委員 終戦前の自決につきましては、現在まで裁定した事例もあり、現行法の解釈でやれるという恩給局との打ち合せができたわけでございます。ところが、終戦後の自決につきましては、どうしても公務上の傷病という解釈からいきますと、どうも入りにくい。いろいろ研究はいたして参りました。しかし、これはやはり軍人たるの身分に伴う特別の事情に基く一つの災害というふうな解釈になるのでありますが、軍人の公務執行と自決というものとの間の関係を、現行法の範囲で厳密に分析していきますと、若干疑問が残るわけでございます。疑問が残ったままで措置するよりは、新しく立法する方が当然ではないかという考えで立法したわけでございます。現行法でも、軍人たる身分に伴う特別な事情に関連して起った不慮の災害は、援護審査会の議決によって公務上の災害とみなすという規定がございます。これは現行法の解釈では公務にはならないけれども、この規定によって公務と同視されるわけであります。従って、いろいろ、研究をした結果、かような措置をとることが妥当だということになったわけであります。終戦前における自決につきましては、現行法の解釈によって措置して参るつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/76
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077・受田新吉
○受田委員 今、局長の申されたような解釈によって、すべてが救済されるのであれば、責任自殺に限らず、あらゆるものの解釈が非常に有利になるのであります。そして軍人のそのときの状況で、当然公務死とみなされるような解釈にすればいいわけです。そうすればあらゆるものが解釈されるわけであります。
別に終戦時を取り上げなくたって、終戦後であっても、復員の途中で船が沈んでしまったような場合は、公務死になっておるのでありますから、そういうような場合を考えると、わざわざここに、終戦時に責任自殺をした軍人をうたわなくても、全部公務死という判定を下そうと思えば、できるわけだと思うのです。もしこれでやることになると、責任自殺の規定をはっきり、職務上やむなくそういう情勢に置かれてきたのであるからと、うたってあげる方が、あいまいもこたる人々を救うには、はっきりしていいと思うのです。従ってかような、時を終戦時に限った法律よりは、ずっと前にさかのぼっていけば、恩給局などともいろいろ相談してやらぬでも、ぴしっと一ぺんに片づく。相談などの時間をかけぬでも、解釈をあまりむずかしく考えぬでも、法律によってすぐ適用されるということになって、かえって楽に片づくのじゃないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/77
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078・田邊繁雄
○田邊政府委員 同じ気持で、実は今日までこの法律の改正案ということを考えなかったわけであります。しかし、最後のどたんばにきまして、非常にこまかく研究をして、恩給局その他と打ち合せました結果、やはり若干疑問があるわけです。立法した方が、やはり万全であるということから立法したわけであります。これは、なぜ立法が必要かというポイントは、戦争の終結したという詔勅の出たあとの自決という点に問題がある。戦争中の自決でありますと、従来裁定した事例もあり、また解釈上もできるということでございますので、その点は従来もやっております。終戦後の事態につきましては、部内でも議論して、意見が出て参りまして、現行法の解釈でもやれないこともないかもしれませんが、限られてしまうということが出てきますので、これはやはり国会の御審議によってきめたがいいのではないか、こういうことで御提案申し上げたのであります。終戦前の自決はだめだというわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/78
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079・受田新吉
○受田委員 この解釈を広義にすれば、相当広いところまで救済できるので、さっき船員の場合を申し上げたのですが、船員などでも厳重な解釈をし過ぎ、今申し上げた船舶運営会に入ってない分は、全然だめなことになっているのです。そういうようなところを、もっとゆるやかに解釈をする。政府としては、とかく厳重に解釈されるんじゃないでしょうか。厳重に解釈されるということになれば、できるだけそういうこまかい規定を、法律または政令等ではっきり営めておいた方がいい。この法律などは、受給資格該当者と自分で思っている人々には、非常に不親切なやり方だ。これを見ると、ずっと前におれの主人は責任自殺したのだが、おれたちの方は回ってこないんだという、その心理的影響だけでも、相当のマイナスになると思うのです。やはりそういうのは、法律に一応親切にうたってあげる方が、やや繁雑になるようであっても、国民に対しては、国民の法律ですから、われわれは筋が通ると思のです。そして、今の局長のお言葉によって、すべて法律は広義に解釈して、できるだけこれで救済するように努力しているんだというお言葉があったわけです。そういうことになれば、この援護法のあらゆる条項に対して、救われる人々がもっともっと多数出てこなければならないと思うのです。この点一つできるだけ広義に解釈する、広義に解釈できないところは、法律でこまかく規定する。こまかく規定しないところで、あいまいもこたるものも、なるべく広義に解釈して救っていきたいという、その気持が実際に現われてもらいたいと思いますから、その点を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/79
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080・田邊繁雄
○田邊政府委員 この間も、責任自殺の問題に関連して、戦争終結前の自決は解釈でやれるということを申し上げたのですが、これは現に恩給局がやっておるのですから、私は解釈でやれるということを——これは広くするも狭くするもない、そういう実績があるのですから、その実績に基いてやっていけば済むわけです。解釈を広げれば何でもできるといいましても、やっていきますには限度がございます。限度に漏れているものは立法すべきである、その通りでございます。しかし私どもは、そういう問題を扱う場合に、解釈でいけるものは解釈で措置するこういうことに措置しているわけでございます。しかし、解釈でいけないものも、勝手に法律を適当に解釈するということは、行政官庁としては最も慎しまなければならないことでございますので、いやしくも疑問のあるものは、法的措置をとる方が妥当であろう、こう考えております。責任自殺の点を出しましたのも、そういう考えからでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/80
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081・受田新吉
○受田委員 この戦争の公務でなくなられた方々や、傷病でなくなった人々は、何とかして恩給法の方の適用を受けたいという気持を持つわけです。しかし、自分たちの当時のいろいろな立場が、援護法のワク内でしか処理されてないという人々にとりましては、非常にさびしい気持を持っておられるだろうと思うのでありますが、いずれも公務に従事してなくなられたという立場からは、どうしても恩給法と援護法の調整をしていかなければならないときがくると思う。これは援護法で一応救っておいて、そうしてさらに恩給法の該当者に回していくという操作が、今行われておるわけですが、願わくば、この援護法が、せっかくたびたびの改正で、そのワクを広げられつつある今日、恩給法の該当者となられる人人に対しては、すみやかな措置によってこっちへ転換して——恩給法の該当者となられる人々に対しては、すみやかに措置しておるとおっしゃるでしょうが、それに転換され、そうしてまた新しい該当者として、援護法に取り入れるべきであるというときには、すみやかな改正をされて、終始研究を続行しておられると思いますが、できるだけ多くの人を救っていくような形に持っていく必要がある。局長のさっきのお言葉によれば、国民義勇隊——広島の国民義勇隊などというものは、とんでもない程度の低かったもので、それよりもまだまだ高いものがあるというお言葉があったわけです。だから、法律でこれを規定されたのですが、軽重の差はあったとしても、法律にすべてうたわれておるのですから、うたわれておる以上は、その線から上にあるものは、その線まではなるべく取ってやるような気持が、やはり立法者としては必要だと思います。こういう点におきまして、今後援護法の改正、恩給法への調整とかいうことについて、一段と御研究をされんことを希望いたしまして、質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/81
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082・田邊繁雄
○田邊政府委員 広島の義勇隊などのことについて、ちょっと誤解がおありのようですから、御説明申し上げます。国家の協力の要請の度合いにおいては、いろいろ違いがあるということを申し上げた。国民義勇隊の中には隣組的な要素のものも中にはあったと思われるということを申し上げておるのです。国家の権力の発動によってやられたものもあるし、それからそうでないものもある。同じ権力の発動の場合におきましても、いろいろニュアンスの相違がある。権力発動ではない広島の疎開作業のような場合には、隣組的なものもあったと思われるということを申し上げた。全部が隣組的なものであると申し上げたのではない。あれは閣議決定において、それに基いて編成されておるわけでございますから、単なる隣組的なものではないわけでありますが、中にはそういうものも含まれておったように考えられるということを申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/82
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083・中村三之丞
○中村委員長 次会は明日午後二時より開会することといたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時五十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04119550714/83
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