1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年七月十九日(火曜日)
午前十一時十六分開議
出席委員
委員長 中村三之丞君
理事 大石 武一君 理事 中川 俊思君
理事 松岡 松平君 理事 大橋 武夫君
理事 山花 秀雄君 理事 吉川 兼光君
植村 武一君 臼井 荘一君
小川 半次君 亀山 孝一君
草野一郎平君 小島 徹三君
床次 徳二君 山本 利壽君
横井 太郎君 亘 四郎君
越智 茂君 加藤鐐五郎君
小林 郁君 野澤 清人君
八田 貞義君 岡本 隆一君
滝井 義高君 中村 英男君
長谷川 保君 柳田 秀一君
横錢 重吉君 井堀 繁雄君
神田 大作君 堂森 芳夫君
中原 健次君
出席国務大臣
労 働 大 臣 西田 隆男君
出席政府委員
警 視 長
(警察庁刑事部
長) 中川 董治君
厚生政務次官 紅露 みつ君
厚 生 技 官
(医務局長) 曾田 長宗君
厚生事務官
(薬務局長) 高田 正巳君
労働事務官
(職業安定局
長) 江下 孝君
委員外の出席者
議 員 早川 崇君
専 門 員 川井 章知君
専 門 員 引地亮太郎君
専 門 員 浜口金一郎君
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七月十九日
委員八木一男君及び山下榮二君辞任につき、そ
の補欠として横錢重吉君及び井堀繁雄君が議長
の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
覚せい剤取締法の一部を改正する法
律案(早川崇君外四十名提出、衆法第三九号)
失業保険法の一部を改正する法律案(内閣提出
第九四号)
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001・中村三之丞
○中村委員長 これより会議を開きます。
まず早川崇君外四十名提出の覚せい剤取締法の一部を改正する法律案を議題となし質疑に入ります。質疑の通告がございます。簡単であるとのことでございますからこれを許します。亀山孝一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04519550719/1
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002・亀山孝一
○亀山委員 覚醒剤の問題につきましては、今さらちょうちょう申し上げるまでもないと思いますが、大体われわれが聞いているところでは、百万内外の中毒患者があるというのでありまして、これの対策につきまして、一昨年来政府当局の対策で、非常に改善の跡顕著なるもののありますことは、まことに喜ばしいことであります。そこでお伺いしたいのは、どうもこういう問題が中だるみになるといいますか、やや最近手薄になった感じがあるのでありしまて、これにつきまして、まず厚生当局から簡単に、現在とっておられます覚醒剤の対策本部の計画及び運営状況等につきまして、お伺いいたしたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04519550719/2
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003・高田正巳
○高田(正)政府委員 覚醒剤は、各省に仕事がまたがりますので、当委員会におきましても、各省と連絡を十分にとるようにという御注意もございまして、本年の一月に入りまして、閣議決定で政府部内に覚醒剤対策推進本部と申しますものが設置されたようなわけでございます。ここには関係の各省が全部入っておりまして、非常にひんぱんにお互いの施策につきまして相談し合い、さらに対策をいろいろと練って歩調を合せてやっているような次第でございます。覚醒剤の対策につきましては、皆様方よりしばしば御指摘がございましたように、大きく分けて三つあると思うのです。第一に密造、密売あるいは不正使用の違反者に対する取締りの問題でございます。これにつきましては、昨年の六月に法律を改正していただきまして、罰則が強化されて以来、関係当局も非常に成績を上げていただいているようでございます。その点につきましては警察庁の刑事部長が見えておりますから、後ほどお話しを願いたいと存じます。
さらに啓蒙宣伝の問題でございますが、これは覚醒剤禍に陥る者を防止するという意味におきまして、非常に大きな意味を持っているかと存じます。考えようによりましては、この施策が基底になると申しても過言でないと思うのでありますが、それにつきましては、対策本部におきまして、年間の啓蒙宣伝計画を樹立いたしまして、これに従いまして、各省が都道府県あるいは各省の出先の地方機関と連絡をとり、さらに民間の諸団体と連絡をとりまして、年間の啓蒙運動を展開いたしつつある、かような状況であります。それは年間の運動でありますが、盛り上りを五月と十一月にいたしたい。
第三点は、中毒者の保護の問題でございます。これにつきましては、昨年のやはり六月であったと思いますが、当委員会の御提出によりまして、精神衛生法の一部改正をお願いいたしまして、精神衛生法の規定を覚醒剤の中毒者にも全面的に準用するという改正をしていただきまして、その結果、これが改正に基きまして、その方向で施策をして参っておるわけでございます。これにつきましては相当な金を要しますので、昨年は特にこのために特別な当初予算がなかったのでございますが、既定の経費等を回しまして、約千五百万円、二百五十床くらいのものだと思いますが、増床をいたしました。本年度は御決定をいただきました当初予算に二千百床、一億二、三千万円の経費が計上されております。かようなわけ合いで、この部面につきましても、これは厚生省公衆衛生局が中心でございますが、努力をいたしておるような次第でございます。
非常に簡単でございますが、概略かけ足でお答えをいたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04519550719/3
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004・亀山孝一
○亀山委員 今、中毒患者の数は大よそどのくらいというお見込みでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04519550719/4
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005・高田正巳
○高田(正)政府委員 覚醒剤の中毒患者並びに嗜癖者の総数、これは新聞紙上等には百万とかあるいは百五十万とか、あるいは七十万とかいうふうに伝えられておりますが、実は正直に申し上げまして、正確な数字をつかみかねております。ただ昨年でございましたか私どもがある方法によりまして調査をいたしました数字をもとにいたしまして、推計をいたしました数字としましては、六十万見当という数字が出ております。これは私の大体の見当でございますが、いろいろな新聞、雑誌等でいわれているほどの多数のものはない、大体六十万から七十万ぐらいのものが正確な数字ではあるまいかという推定をいたしております。ただ、これを正確に調査いたしますには、相当な費用と相当な手間をかけませんと、正確な数字が出て参りません。御存じのように、覚醒剤を使用すること自体が犯罪でございますから、これを調査たしますには、相当な困難を伴うわけでございまして、ただいまのところは、その程度の数字しか押えておらなような現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04519550719/5
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006・亀山孝一
○亀山委員 今度の提案でいわゆる覚醒剤の原料をある程度まで取締りの対象とされたことは、まことに時宜に適したものと思いますが、これについて、一般業界その他には大した迷惑はかからぬように思いますが、その点についての当局の御意見をちょっと拝承したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04519550719/6
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007・高田正巳
○高田(正)政府委員 覚醒剤が非常に害毒を流すので、その覚醒剤の取締りの完璧を期するために、その原料までも規制をするという改正案が御提出に相なっておるようでございます。その中身を拝見いたしますと、これら原料の関係業者について、正当に商売をやっておる上においては、さしたるめんどうな負担をかけないという配慮が非常に行われておるのでございます。この程度のことでありますれば、私どもの考えるところにおきましては、さしたる支障はないのではないか、一応こういうふうに考えております。原料として、別表で指定されておりますものは、医薬品に属するものと、それから工業薬品と申しますか、医薬品以外の化学製品、この二つに分れるわけでございます。そして医薬品に属するものにつきましては、従来とも薬事法の規整が行われておりまして、御提出になりましたこの新しい改正案によりましても、従来から行われておる薬事法の規整を尊重いたしまして、規定がされておるようでございますから、これは影響ないと存じます。新たに、今まで全然規制の行われておらなかった化学工業薬品等につきましては、これは製造業者なり販売業者なり、それぞれ関係の業者が指定を受けるという手続が規定されておるわけでございます。しかしながら、このうちで一番問題になりますのはフェニル酢酸だと存ずるのでございますが、このフェニル酢酸の製造業者というものは数社しかございません。それからその需要の大部分は、医薬品のペニシリン・メーカーがこれを培養基として使うのが需要の大部分でございます。ほんのわずかが香料の関係に使われております。なお試薬として若干使われておる、さようなわけでございまして、産業界にさしたる影響を与えないものと私どもは考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04519550719/7
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008・亀山孝一
○亀山委員 次に、警察庁当局にお伺いしたいと思うのでありますが、覚醒剤の取締りは、幸いに警察庁が非常に力を入れておることは顕著だと思うのでありますが、現在の取締り状況とその対策、それから、どうも密造事犯というものが多くは第三国人によっておるようと思うのですが、そういう統計がありましたらお伺いしたいし、同時に覚醒剤中毒者というものは、第三国人が非常に少いという現象をどうお考えになるか、その点をちょっとお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04519550719/8
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009・中川董治
○中川(董)政府委員 ただいまお述べになりましたように覚醒剤事犯の罪悪が非常に重大である、こういう前提を中心にいたしまして、各警察におきましても、本事犯の捜査には重点的に従事しております。こういう状況でございます。昨二十九年一カ年間に、覚醒剤違反をもって検挙いたしました人員が五万六千人弱あるわけでございますが、この違反捜査を、私ども警察の関係としてどういう方面に中心を置くかという点につきましては、所持その他も、もちろんやっておりますけれども、密造事犯、とりわけ原末を密造する事犯、この犯罪捜査に重点を置いておるのでございます。所持事犯その他もちろんやっておりますけれども、密造事犯を根本的にやって参るととが、この対策の根本になろうかと思ってやっておるのでありますが、製造事犯に相なって参りますと、関係者は非常に隠れて、隠蔽した方法で犯罪を行いますので、捜査に困難をいたします。それで各警察におきましても、そういう方面をもっぱら専務とする職員等を設置いたしまして、いろいろ捜査の技術的方法を工夫してやっておる状況でございます。お尋ねの密造事犯を犯した人間で、国籍別と申しますか、朝鮮人の占める割合の御質問でございますが、一般の全覚醒剤違反に対しまして、朝鮮人が占める率は約一五%、すなわち所持事犯を含めて全犯罪で朝鮮人が占める率は一五%程度しかないでございますが、密造事犯になりますとこれが逆になりまして五〇%ないし六〇%、むしろ六〇%前後が朝鮮人が犯している状況でございます。従いまして、朝鮮人は密造等に従事して、使用等は比較的日本人が多くやっておる、こういう結果になろうかと思うであります。その密造の関係は、ただいま申しましたように、まことにその根本をなすものでありますので、警察捜査の重点をそこに置いておるのでありますが、その密造のうちで、さらに分けまして、ほんとうに原末を密造する者と、それからでき上った原末を注射器に入れる作業をする者と、いずれも現行法では製造事犯に触れるわけでございますが、その両者の関係のうちで、原末を製造するという面になりますと、化学上の知識、薬学上の知識が要る関係等もありますので、この方は朝鮮人が、そう五割までも占めていない。ところが、そういう原末から注射器に入れる作業等につきましては、薬学上の知識も比較的必要でありませんので、この方面に朝鮮人が相当働いているこういう結果に相なっておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04519550719/9
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010・亀山孝一
○亀山委員 最後にお願いを申し上げたいと思うのでありますが、あへん問題にも匹敵するといわれるこの覚醒剤の問題、どうか当局におかれまして、わが国民を守るために、厳重なる取締りの御励行とともに、この法案にもありますように、原料の点で押えられて、いわゆる密造事犯の根絶に一つこの上ともお力添えをお願い申し上げまして、私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04519550719/10
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011・中村三之丞
○中村委員長 ほかに御質問はありませんか。
なければ、本案についての質疑は終了したものと認めるに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04519550719/11
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012・中村三之丞
○中村委員長 御異議なしと認め、本案についての質疑は終了いたしました。
これより討論に入りますが、本案につきましては別に討論の通告もありませんので、これを省略して、直ちに採決するに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04519550719/12
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013・中村三之丞
○中村委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。
採決いたします。本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を願います。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04519550719/13
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014・中村三之丞
○中村委員長 起立総員。よって本案は原案の通り可決せられました。
なお、本案に関する委員会の報告書のの作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04519550719/14
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015・中村三之丞
○中村委員長 御異議なしと認め、そのように決します。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04519550719/15
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016・中村三之丞
○中村委員長 次に、失業保険法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。ただいままでに、委員長の手元に、社会党両派共同提案にかかる本案に対する修正案が提出されております。この際提出者より趣旨説明を求めます。横錢重吉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04519550719/16
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017・横錢重吉
○横錢委員 失業保険法の一部を改正する法律案に対する修正案を、両派社会党として提出をいたします。
失業保険法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。
第二十条の二第二項の改正規定を削り、同条第三項の改正規定中「前二項」を「前項」に改める。
附則中第六項を削り、附則第七項を附則第六項とし、以下順次一項ずつ繰り上げる。
こういうのでございますが、この提案についての説明をいたします。
失業保険法の改正案が、政府より提出をせられました。その提案のおもなるものは、季節関係の労働者による手当の支出が多いために、この改正をなして、保険の給付の状態を安定なものにするというところに、その趣旨があるようでございます。しかしながら、これをさらにつぶさに見ますときには、政府の言うところの趣旨は一貫性がないのであります。北海道に出かせきをする東北の労働者が、半年働いて半年給付を受ける、かような状態は法制定の目的に反するものである、かような考えのようでございますが、これを昨年度の実例に見ますならば、東北六県に対するところの給付は十二億円でありまして、九州七県におきましてはこれが十九億の給付となっておるのでございます。従って北海道に出かせぎをする東北の労働者が特に失業保険に赤字を出さしめたという理由にはならないのでありまして、この赤字の出てきました——昨年度において約十億の赤字の出ました理由については、政府が一兆円予算を組み、デフレ経済を実施したがために、全国的な失業の状態が発生をいたしました。その結果が、かような状態を呈したと見るべきでございます。従って、本案の提出の趣旨というものは一貫性がないわけでございまするし、さらにまた、この改正原案によりますならば、被保険者の期間に応ずるという原則が立っていないのであります。六カ月から九カ月の被保険者に対しては、三カ月しか給付をしない。五年以上の者に対しては二百十日、十年以上の者に対しては二百七十日の給付をする、かように改正を行わんといたしておるのでありますが、しからばその考え方というものは、被保険者としての期間が短かい者に対しては給付を少く、長い者に対しては給付を多くするという大原則を貫いているのかと見まするならば、そうではない。短かい者に対してだけこの案を適用いたされまして、長い者、いわゆる五年以上、十年以上という者に対しましては、これは引き続き同一事業主に属した者がその恩典を受けるという、いわゆる例外の規定でございます。従って、この例外規定の適用を受ける者は、現在までの実績を見ましても、約一五%程度しかおらないというのでありまして、ただいま申し上げた原則が貫かれていないわけでございます。
この政府の改正原案をいれまするならば、これによって影響を受ける者は最も雇用条件の悪い者がその影響を受ける結果になるのでございます。デフレ経済を組むからには、当然これに伴って出るところのたくさんの失業者に対する失業保険の払い出しに対して備えなければならないわけでございまするし、かようなる状態の場合に、あらかじめ保険金の増額の措置さえも講じられているのでございまして、もし真に政府の方がこの案の目的を生かそうといたしまするならば、保険金増額の措置を講じてこれらの短期のものに対する支払いに応ずべきものと考えるのでございまして、このためには、また保険金の増徴もやむを得ないものと考えるのでございますが、かようなる措置をとらずして、雇用状態の最も悪い者に対してこれを行わんとする考え方に対しては、われわれ賛成をいたしかねる次第でございます。
かようなる理由より、ただいま政府の方から出されましたところの改正案の短期の条項に対して、これを削除いたそうと考えるものでございます。
以上が修正案提出の理由でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04519550719/17
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018・中村三之丞
○中村委員長 これにて修正案の趣旨説明は終りました。
次に国会法第五十七条の三には、委員会は法律案に対する修正で、予算の増額を伴うもの、もしくは予算を伴うこととなるものについては、内閣に対して、意見を述べる機会を与えなければならないと規定しておりますので、この際内閣より発言があればこれを許可をいたします。それでは内閣の代表として労働大臣に発言を許します。西田労働大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04519550719/18
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019・西田隆男
○西田国務大臣 ただいま御説明になりました修正案につきましては、提出いたしておりまする政府原案では、保険給付の合理化と失業保険の乱用防止が大きな目的になっておりますが、ただいま承わりました修正案の内容によりますと、保険の乱用の防止が非常に困難な状態に置かれますことと、それから予算的に約十億円の増額をしなければならないという結果になりますので、政府といたしましては、この修正案には賛成をいたしかねます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04519550719/19
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020・中村三之丞
○中村委員長 これにて本修正案に対する内閣の発言は終りました。次に、修正案並びにただいまの内閣の修正案に対する意見についての御発言はありません。次に、失業保険法の一部を改正する法律案並びに本案に対する修正案を一括して討論に付します。討論は通告順によってこれを許可いたします。小島徹三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04519550719/20
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021・小島徹三
○小島委員 私は日本民主党を代表いたしまして、両派社会党の共同提出になります修正案に反対して、政府原案に賛成するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04519550719/21
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022・中村三之丞
○中村委員長 大橋武夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04519550719/22
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023・大橋武夫
○大橋(武)委員 私は自由党を代表いたしまして、社会党提出の修正案に反対をいたし、かつ政府の原案に対して賛成をいたします。
このたびの失業保険法の改正についての政府原案は、この保険の給付の合理化並びに乱用防止の対策といたしまして、第一には強制適用の範囲を拡張すること、第二には長期の被保険者に対しては給付の期間を延長し、短期の被保険者に対してはこれを短縮すること、第三は不正の保険受給を防止しようとすること、第四には職業補導所の充実及び日雇い労務者福祉施設の強化による保険給付の内容の充実、こういうことが内容となっておるようでございます。これらはいずれも今日の社会的の実情並びに保険経済の状況から見まして、適当な施策と存じまするので、これに対して賛成をいたす次第なのでございます。
特に社会党から短期の被保険者に対し、政府原案において給付期間を短縮しようというこの条項を削除しようという御趣旨の修正が提出せられておるのでございますが、今日六ヵ月未満のいわゆる季節的労働者諸君が、雇用契約の終了後におきまして、失業保険の被保険者となるということは、これはまさに制度の欠陥というべきものではないかと存じます。かつまた、これが保険経済を非常に危険に陥らせておるという実情にかんがみて、この点については政府原案のごとき修正はこの際やむを得ないものと存じまするので、遺憾ながら社会党の修正案に対しましては反対をいたす次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04519550719/23
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024・中村三之丞
○中村委員長 井堀繁雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04519550719/24
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025・井堀繁雄
○井堀委員 私は社会党を代表いたしまして、政府原案に反対し、社会党両派修正案に賛成をいたすものであります。
その理由は、政府の提案しておりますこの改正案は、二つの点において非常な間違いを犯しておると私は指摘をいたしたいのであります。
その一つは、鳩山内閣がこの第二十二国会に提案されております昭和三十年度予算並びにこれに関連いたします一連の法律は、いずれも鳩山内閣の政策を貫く一貫したものの中に、大きな矛盾を私どもは発見せざるを得ないのであります。それは、一方にはデフレ政策を強調しながら、当然デフレ政策の結果として現われてくる問題について、その処置を、怠っておるというよりは、放棄しておるといった方が妥当であると思うのであります。かような政策上の破綻を、かかる恒常的な保険制度に肩がわりをするようなやり方は、最もおそるべき行き方であると思うのであります。もしこういうことを政府が大胆に、数の力で押しまくるようなことをいたしまするならば、社会秩序を維持するということについて、私は問題を起すと思うのであります。少くとも政府が、よしそれがインフレ政策であろうとデフレ政策であろうと、またどういうような経済政策を立てようと、政府の責任において、また国民の了解を得られることにおいては、われわれはとやかく申すものではないのであります。しかしその政策が一貫しなければならぬことは申すまでもないのであります。こういう点において、本案の改正を意図いたしておりますところに非常な誤まりがある、ことに本委員会におきまして、政府を代表して労働大臣からの提案理由説明の中にもあることは、きわめて明確になっておるのであります。私どもはそのような意味において、まず本法案の提案の出発点において、大きな誤謬のあることを指摘いたし、反対の理由にいたすのであります。
第二の理由といたしましては、この保険経済の安定と将来性を期待することについては、私どもも人後に落つるものではありません。ことに保険運営に当りまして、最も合理的で、しかもその趣旨に適合するような方針を誤まってはならぬことについても同感であります。そこで、乱用防止であるとか、保険経済の危機を予測して、これを阻止しようとする措置をとることについても、むろんわれわれは了承しておるのであります。しかし、ここに提案されております内容は、本末を転倒しておるものと申し上げたいのであります。元来、保険の精神は、きわめて明確に失業保険法の第一条に規定してありますように、失業した労働者に対して、保険金を支給して生活の安定をはかろうということでありまして、これは申すまでもなく、失業がその労働者個人の責めに帰すべきものではなく、社会連帯の責任において行うという趣旨もありまするし、また相互扶助の精神に基いて、やや余裕のある者が、比較的困難に遭遇したものを救済していこうというこの精神にあることは、今さら申すまでもないのであります。
かような観点からいたしますると、ここに二十条を改正しようとすることは、すなわち季節労働を排除しようという考え方には、私も同意をいたすものであります。元来この法律の中には、季節労働を対象としておらぬのであります。しかし、それがいつとはなしに行政的措置の間にそういうことがとられてきたことについては、私は政府の責任においてこれは始末すべきことであると思う。しかし、季節労働をこれに入れたことをけしからぬと攻撃するものではないのです。その必然性を認めるのであります。そうすれば、この点に対する改正案を十分考慮すべきであって、これと並んで短期雇用の理由をもって失業保険のワクからはずすということは、これは私は質問のときにも申し上げたように、一番今失業保険の対象として、日本全体の立場から考慮を払わなければならぬことは、日本経済の、これは世界のどこの国に比べましても一大特質と言われておりまする中小企業、零細事業、あるいは近代的な経済からいいますとやや立ちおくれておりまする家族制度の上に立つ家内労働というものが、日本経済の非常に大きなウエートを占めておることは申すまでもないのでありまして、このもとに働いております労働者が現在社会保険の恩典から除外されておるという事態は重大問題であるということを、他のときにも強調し、政府もこれを認めておるわけであります。本来ならば、そういうふうに拡張すべきが保険の当然の方向でならねばならぬのであります。しかるに、季節労働をはずすということと、保険経済の危機を排除するという、こういうことだけで、この失業保険の対象として最も重視しなければならない今日の中小企業や零細事業のもとにおける労働者が、長期の雇用を願いながら、また雇い主が長期の雇用を希望しながら、経済の現状はこれを許していないこと、私が一々ここで例証をあげるまでもないのであります。こういう現実に沿えるように保険というものが改善されてこそ、社会保険の進歩もあるのであります。この点では、まさに本末を転倒し、すなわち角をためて牛を殺すところのおそるべきところの改正であると申さなければならぬのであります。
こういう意味で、政府の猛省を促したのでありますが、強引に押し切られる今日におきましては、私はことに全面的な改正を困難とする場合においては、せめて第二十条の改正をさらに修正しようとする社会党両派の提案を支持するのみでなく、全員の賛成を得たいと念願いたしておるものであります。
以上の点から、この政府原案に対しましては、どうしても賛成することができません。ここに社会党両派修正案に賛成し、皆さんの御共鳴を得たいことを申し述べて私の討論を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04519550719/25
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026・中村三之丞
○中村委員長 中原健次君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04519550719/26
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027・中原健次
○中原委員 私は本改正法律案に対しまして、政府原案に反対いたしまして、なお社会党両派の修正案に対しましては賛成であります。
なお、本法律案の採決に際しまして、一言前提いたしたいと思うのであります。そのことは、すでに周知のように、社会福祉対策協議会というものがございまして、この協議会は総評、総同盟、全労、新産別、産別、現下わが日本における各種労働団体のすべてをもって構成されておるはずであります。この協議会は、日本労働者の意思を反映いたしましてか、この失業保険法の改正案に対しまして、強力なる反対の意思表示をいたしております。同時に私は、これらの関係労働者組織から選出されておるはずだと考えられる職業安定の審議会並びにその専門部会等から、ことにその専門部会における決議あるいは議事録等々の報告書を示されたいことを、かねて要求いたしたのでありますが、まことに了解のできがたいことながら、その専門部会のこれらの会議の議事録等々の文書がすなおにわれわれの手元に配付されることを拒否されておる。これは、これらの審議機関の取扱い処置等を少くとも基礎として改正案が提出されておらなければならぬはずでありますし、そうであってみれば、その改正案の内容を一そう正しくわれわれが把握いたしますためにも、このような関係文書は当然これをわれわれに示すための運びをなすべきである。しかるに、それに対しまして、せっかくその配付方を申し入れておるにもかかわらず、これがわれわれの手元に示されないままに今日に至っておるわけであります。もちろんその理由については、局長から釈明のあったことはもとよりでありますけれども、私はその釈明に対しましても、はなはだ了解ができません。それだけに、この法律の審議は必ずしも妥当なる諸条件を具備して審議されたとはいいがたい点があることをまず指摘をいたしておきたいと思います。
ことにこれに関連して、これらの審議機関の審議委員各位の御苦労を願って、各般の審議模様等について参考意見を徴したいということの希望を申し入れ、その手続の運びを期待いたしておったのでありますが、これもそのまま取り上げられるところとならず、かれこれ考えて参りますと、この法律案の審議が、まことに不満足遂わまる状況の中で今日の結論に到達したということを、はなはだ遺憾であると思うということを最初に申し上げておきたいと思います。
さて、この法律案につきまして、逐一意見を申し述べたいのでありますが、時間の関係も考慮いたしまして、極力その討論の内容を短縮いたしまして、一、二の点だけ、改正部分に対する私どもの所見を申し上げておきたいと思います。
まず第一番には、本案の提出に際しまして、大臣は、いわゆる保険金の給付の乱用の防止あるいは合理化などという言葉を冒頭に便っておりますが、この言葉が果してそのままに妥当する現状であろうかどうか。これにつきましては、はなはだ遺憾ながら、むしろ問題はその反対のところにあると私は思うのであります。ことに現在の急速度に上昇されております失業状態、この失業状態を起しました負うべき責任の所在はどこか。それはもはや論議するまでもない、現在の政府そのものに負うべき責任があることは言うまでもないのであります。そうなってみれば、社会的国家的責任において、本人の意に沿わざる失業状態に対しまして、当然これを完全に補償する失業政策が取り上げられなければなりません。従ってそのためにこそ、失業保険の措置も取り計らわれなければならぬと思うのであります。しかるに、この改正案の目ざすところは、いわゆる給付額を減額する、あるいは被保険者であるための資格の確認の問題をますますあいまいにいたしまして、あるいは窮屈にいたしまして、当然資格条件を持っているはずの失業者が、しばしばその取り扱いのらち外に締め出される危険さえ伴っておることをわれわれは指摘しなければなりません。ことに五年以上の長期勤務の労務者、五年以上の長期にわたって被保険者として勤務しております者のパーセンテージは、局長の答弁の中からも出て参りましたように七・四%、これを除く五年以下の短期者が従って九二・六%、こういうようなパーセンテージが出てくると思うのであります。ことに当該の、翌月から九月の間の該当者は二七・七%、三割に近い厖大な数を示しておる現状であります。そうなって参りますと、この保険金の給付額の取扱いの時点からも出て参りますことは、労働者に保証しました保険給付額を全般として大削りに削るわけであります。言いかえれば失業を保険するその措置が、ために非常に削減される。従って、現在の政治の悪から当然出てきておりまする実に巨大な失業増加に対しまする計らいとしては、まことに遺憾しごくのことといわなければならぬのであります。
なお、その他改正案におきましては、いわゆる季節労務者ということが、非常にこの法律案の説明の代表的な言葉になり、かつ季節労務者という言葉の中に、すべての注意点が集中させられているきらいがありまするが、よくよく調べてみると、必ずしもそうも言い切れない。むしろ一般短期労務者、臨時工まで含めましたそういう短期労務者を大量にこの中に包含しておるということが、容易に見出すことができるのであります。それをかりに、よし季節労務者であるといたしましても、季節的労働のもとに、季節的に労働を行使いたしまして、その残る期間は職から離れなければならぬという条件に置かれておりまする、特に今日の農村における二男三男の青年諸君の苦労を見ますると、これは大へんなことだと思います。決してこれをただ単に季節労務者という言葉の一片の表現で葬り去るがごとき考え方は断じて許されない。言うまでもなく、彼らは労働をきらい、労働をいとい、労働からのがれて遊ぶことを求めおるのではないのでありまして、この点に対しても、十分の認識を持たなければならぬはずであります。それらの見地から考えましても、この給付制度の改変は、はなはだ遺憾しごくでありまして、どのような観点から考えましてもこれは賛成するわけに参りません。これにあわせまして、両派社会党が当然この問題を問題として取り上げ、修正案を提出になりましたことは、きわめて妥当でありまして、ために私はこの修正案に賛成をいたすわけでありますが同時にこの被保険者の資格確認の問題について、一言触れておきたいのであります。
それは第六条は、そのことを確認する手続としては、すでに当然取り上げられてしかるべきはずのものであります。にもかかわらず、このようにあらためて確認の条項を設けるということは、ひっきょうするに、その第六条の法の示すところを否定する一種の手続とも考えられるからであります。これはもとより立法上のことといたしましても、相当問題が残されておるかと思います。ただこの場合に、この確認に当りまして、確認の手続の問題といたしまして、局長の答弁の中にありましたように、これは事業主側の届出の措置を時点として、当然これを確認するという措置をとる、こういう言葉がございましたので、私はその答弁をさらにここで確認をいたしておきたいと思うのであります。
なお、福祉施設の問題がここに麗々しく掲げられておりまするが、これはもはや言うまでもなく、福祉施設なるものは当然、現在わが日本の国内における経済情勢から生まれて参りまする失業の実態から考えますれば、この福祉施設は当然一般国費をもって営まなければならない避けることのできない要求でありまするし、また負担でなければねらぬと思います。しかるに、この福祉施設の費用が、やはりその保険金の中から引き出されて使われてくるということでありますれば、また保険経済に対するこの福祉施設の及ぼす負担というものが、確かに問題になってくるわけでありまして、これも取り計らいからいえば、妥当でないということを私は明らかに申し上げておきたいと思うのであります。
思うに、二十九年の赤字十億というのが問題となって、その赤字十億を補てんするという大あわてのあわて方から、この改正案が出発しておる。ゆえにこそ、大臣の答弁にも伺われましたように、本年度の残余の期間中、大かせぎにかせいで三億の黒字を出す、さらに平年度は十二億ないし十三億の黒字を出すことが可能と考えられる、こういうふうになっておりまするが、思うにこれは二十九年十億の赤字、その赤字とこの改正による黒字分転換、両者を加えますと、平年度において二十二億ないし二十三億の黒字をかせぐ、こういうことにもなって参ると思います。そうなって参りますると、失業保険制度そのものが一体現下の失業状態に対する深いおもんばかりから出発したものではなくて、その失業状態を一つの奇貨といたしまして、労働階級のふところから料金を吸い上げ、そうしてその前年度までにすでに蓄積されておるはずの二百六十二億円、こういう黒字の金が政府の意図する方向に転用されて、言いかえれば、資金かせぎとも言って言い過ぎでないとさえ思われるような感がするのであります。かようなことについても、われわればもっともっと掘り下げて検討を要する問題が、この中に多々包含されておることも見のがすわけには参りません。従いまして、こういうような保険財政の実情をあわせて考えますと、この法律案の改正のねらうところは、九十日に圧縮いたしまして、その間から出てくる三カ月間のさらなる失業状態を一つのねらいとして、言いかえれば、これを無給付状態に追い込むための条件を作って、そうして膨大な産業予備軍を作っていきながら、あわせて労働条件の低下を行い、結局労働階級を、農村の青年を含みました日本の勤労する国民大衆を、現在とりつつある、とらんとしておる憲法改正の方向、再軍備の関係——この面から、この失業保険法の改正は、きわめて合理的な改正のごとく説明しながらも、その本質は、はなはだ残念ながら、かくのごとき国民の意思に反した戦争政策につながる現下政府の政策の裏打ちをする、これが一環にもなろうとしておることさえ私は指摘をしなければならぬことを、はなはだ遺憾に思います。
以上の遂わめて簡単な要約点だけをもって反対の意思表示をし、両派社会党の修正案に賛成の意を表明いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04519550719/27
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028・中村三之丞
○中村委員長 以上で討論は終結いたしました。
採決いたします。まず社会党両派共同提案の修正案について採決いたします。本修正案に賛成の諸君の起立を求ります。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04519550719/28
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029・中村三之丞
○中村委員長 起立少数。
念のために反対の諸君の起立を求めます。
〔反対者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04519550719/29
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030・中村三之丞
○中村委員長 起立多数。よって本修正案は否決せられました。
次に、政府原案について採決いたします。本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立」発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04519550719/30
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031・中村三之丞
○中村委員長 起立多数。よって本案は原案の通り可決せられました。
なお、本案に関する委員会の報告書の作成等に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04519550719/31
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032・中村三之丞
○中村委員長 御異議なしと認めてそのように決します。
次会は明二十日午前十時より理事会、十時半より委員会を開会するととといたします。
なお、午後一時から第十三委員室において、石炭鉱業合理化臨時措置法案についての商工委員会、社会労働委員会連合審査会が開かれますから、念のためお知らせいたしておきます。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04519550719/32
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