1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年五月九日(月曜日)
午前十時四十七分開議
出席委員
委員長 田中 角榮君
理事 首藤 新八君 理事 長谷川四郎君
理事 山手 滿男君 理事 内田 常雄君
理事 永井勝次郎君 理事 中崎 敏君
菅 太郎君 菅野和太郎君
齋藤 憲三君 笹本 一雄君
鈴木周次郎君 野田 武夫君
淵上房太郎君 森山 欽司君
加藤 精三君 鹿野 彦吉君
小平 久雄君 南 好雄君
村上 勇君 加藤 清二君
片島 港君 櫻井 奎夫君
田中 武夫君 帆足 計君
八木 昇君 佐々木良作君
出席国務大臣
通商産業大臣 石橋 湛山君
出席政府委員
通商産業政務次
官 島村 一郎君
通商産業事務官
(大臣官房長) 岩武 照彦君
通商産業事務官
(重工業局長) 鈴木 義雄君
中小企業庁長官 記内 角一君
委員外の出席者
専 門 員 谷崎 明君
専 門 員 越田 清七君
専 門 員 円地与四松君
専 門 員 菅田清治郎君
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三月三十一日
委員五島虎雄君辞任につき、その補欠として加
藤清二君が議長の指名で委員に選任された。
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四月二十五日
計量法等の一部を改正する法律案(内閣提出第
一二号)
ニッケル製錬事業助成臨時措置法を廃止する法
律案(内閣提出第一三号)(予)
五月六日
中小企業金融公庫法の一部を改正する法律案(
内閣提出第二三号)
商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案(
内閣提出第二四号)
四月五日
只見川電源開発工事促進等に関する請願(塚田
十一郎君外八名紹介)(第二四号)
輸出絹人絹織物用設備の合理化促進に関する請
願(南好雄君外六名紹介)(第六三号)
電気料金値下げに関する請願(山下春江君外一
名紹介)(第六五号)
中小鉱山開発のための専門金融機関設置等に関
する請願(床次徳二君紹介)(第七〇号)
東北地方の鉱業振興に関する請願(愛知揆一君
紹介)(第七一号)
石油資源総合開発五箇年計画促進に関する請願
(伊藤卯四郎君紹介)(第九七号)
国土総合開発促進に関する請願(鈴木善幸君紹
介)(第一二〇号)
同月十四日
只見川電力確保に関する請願(渡邊良夫君紹
介)(第一三六号)
同(松井政吉君紹介)(第一七九号)
只見川特定地域総合開発促進に関する請願(渡
邊良夫君紹介)(第一三七号)
同(松井政吉君紹介)(第一八一号)
鹿児島市に通商事務所設置の請願(上林山榮吉
君紹介)(第一七八号)
只見川電源開発工事促進に関する請願(松井政
吉君紹介)(第一八〇号)
電気料金値下げに関する請願(中村時雄君紹
介)(第一八二号)
同(平田ヒデ君紹介)(第一八三号)
同(粟山博君紹介)(第二〇二号)
五月七日
中小企業金融公庫の融資対象業種指定に関する
請願(淺香忠雄君外一名紹)(第三八八号)
の審査を本委員会に付託された。
同月十三日
対中共輸出制限緩和に関する陳情書
(第三〇号)
新宇部火力発電所新設に関する陳情書
(第三一号)
離島振興法に基く事業促進に関する陳情書
(第三二号)
離島電源増強に関する陳情書
(第三三号)
石炭鉱業界不況対策確立に関する陳情書
(第三四号)
電気料金値下げに関する陳情書外一件
(第七四号)
を本委員会に送付された。
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本日の会議に付した案件
計量法等の一部を改正する法律案(内閣提出第
一二号)
中小企業金融公庫法の一部を改正する法律案(
内閣提出第二三号)
商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案(
内閣提出第二四号)
昭和三十年度通商産業省関係予算、通商産業行
政の基本施策及び昭和三十年度財政投融資計画
に関する説明聴取
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X00719550509/0
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001・田中角榮
○田中委員長 これより会議を開きます。
この際、委員会の開会について一言申し上げます。先般の理事会の申し合せにより、本日より十三日までの五日間商工委員会を開き、最初の三日間は通商産業の基本施策に関し、次の二日間は日本経済の総合的基本施策に関し、それぞれ調査を進めることにいたしたいと存じます。さよう御了承願います。なお理事会の申し合せにより、各党の持ち時間は、おおむね質疑答弁を含めて一人約一時間でございますから、御協力をお願いいたしておきます。
通商産業の基本施策に関し調査を進める前に、去る四月二十五日本委員会に付託せられました計量法等の一部を改正する法律案並びに去る六日本委員会に付託されました中小企業金融公庫法の一部を改正する法律案及び商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題となし、その趣旨の説明を聴取することにいたします。鈴木政府委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X00719550509/1
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002・石橋湛山
○石橋国務大臣 ただいま提案になりました中小企業金融公庫法の一部改正案につきまして、提案の理由及びその概要を御説明申し上げます。
まず提案の理由について御説明申し上げます。中小企業金融公庫は、中小企業者の行う事業の振興に必要な長期資金を供給するために、昭和二十八年八月に設立されたのでありますが、本年三月末までに三百三十九億五千四百万円余の貸し出しを行い、中小企業の振興に貢献し来っておるのであります。しかしながら、中小企業の合理化、近代化を促進し、その振興をはかる上において、中小企業金融公庫の果す役割はいよいよ重要でありますので、この際中小企業金融公庫法の一部を改正し、もってその機能を拡充強化いたしたいと考える次第であります。これが本法案を提案した理由であります。
次に本法案の概略を御説明申し上げます。第一は、資本金の増加であります。政府の一般会計からの出資金は、現在百五十五億円でありますが、今回新たに十五億円を出資し、資本金を百七十億円に増加するものであります。
第二は、役員の増加であります。公庫の業務は、資金量の増大に伴い、毎年増加しておりますが、本年度よりは、これに加え新たに一部直接貸付を実施する予定でありますので、これら業務量の増大に対処するため役員の増加をはかるものであります。
第三は、業務上の現金を郵便振替貯金とし、または銀行に預け入れることができるようにすることでありまして、直接貸付の実施に伴い、元利金の回収等を円滑ならしめるための措置であります。
第四は、日本開発銀行からの承継債権で、整理の必要上従来同行からの借入金として扱ってきたもののうち六十九億三千四百万円を産業投資特別会計から公庫への出資金に振りかえることであります。なお、これに伴い附則において日本開発銀行の資本金及び産業投資特別会計からの日本開発銀行に対する出資金を、それぞれ同額減額する等所要の規定を設けております。
第五は、公庫の商工組合中央金庫に対する貸付金の返済期限を延長することであります。商工組合中央金庫に対する法定貸付金の返済期限は本年八月に到来するのでありますが、同金庫の資金繰り状況にかんがみ、これを政令で定める時期まで延長しようとするものであります。
以上が本改正案の内容の概略であります。何とぞ慎重御審議の上、可決せられますようお願い申し上げる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X00719550509/2
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003・田中角榮
○田中委員長 引き続いて商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案を議題となし、その趣旨の説明を求めます。石橋通商産業大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X00719550509/3
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004・石橋湛山
○石橋国務大臣 ただいま提案になりました商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案の提案理由及びその概要を御説明申し上げます。
商工組合中央金庫は、中小企業等協同組合の系統金融機関として、中小企業金融の重要な一翼をになっておるのでございますが、最近の金融事情にかんがみ、同金庫に対し、政府より十億円を出資して、その機能の強化をはかり、もって中小企業金融の円滑化に資することといたしたいと考え、本法案を提案した次第であります。
商工組合中央金庫は、戦前政府民間それぞれ同額の出資をもって発足したのでありますが、その後数々の経緯を経て、現在では政府出資二百十万円、対日援助見返り資金による優先出資三億七千二百万円、組合よりの出資十二億九千七百九十万円、合計十六億七千二百万円の資本金となっているのであります。
御承知の通り、商工組合中央金庫は、その原資の相当部分を商工債券の発行によりまかなっておるのでありますが、現在のまま進みますと、商工債券も遠からずその発行限度に達しますので、この際政府出資を十億円増額して商工債券発行の基盤を強化いたしますとともに、将来の民間出資増額の基礎を与え、もって組合金融の確保、中小企業組織化の一層の推進をはからんとするものであります。
以上が本法律案の提案理由及びその概要であります。何とぞ慎重御審議の上、可決せられますようお願い申し上げる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X00719550509/4
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005・田中角榮
○田中委員長 以上両案に関する質疑は後日に行くことにいたします。
それでは、まず昭和三十年度通商産業省関係予算との関連において、通商産業に対する基本施策に関し、石橋通商産業大臣より説明を聴取いたします。石橋通商産業大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X00719550509/5
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006・石橋湛山
○石橋国務大臣 今日のわが国の経済に課された最大の問題は、国際収支のバランスを保ちながら、しかも年々増大する労働人口に職場を与え、いわゆる完全雇用の社会を実現することであります。しかしながらこの問題は、先般本会議でも申し上げましたように、あまりに急激に実行いたしますと、種々の弊害を生じますので、昭和三十年度の予算の編成に当りましては、前記の大きな目的を考えつつ、むしろ非常に慎重な態度をもって、貿易の振興、中小企業の育成、産業の合理化、資源の開発等の事柄を重点的に遂行いたして、逐次完全雇用の状態に持っていこう、かような考えで予算の編成をいたした次第であります。
以下、通商産業省としての施策の概要について申し上げます。第一は、貿易の振興でありますが、昭和二十九年度の国際収支は、輸出がきわめて順調な伸張を示しまして、受け取り十六億二百万ドルと、前年度に比し三億五千六百万ドルの増加を記録いたしました。他面輸入支払いは十六億九千百万ドルと、前年度に比し五億一千三百万ドルの大幅な減少を示しました。このため特需収入が五億九千万ドルということになりまして、前年度に比し二億二千万ドル減少いたしたにもかかわらず、差引三億四千四百万ドルの受け取り超過に終り、その結果二十九年度の保有外貨は十一億七百万ドルに達したのであります。
次に、昭和三十年度については、輸入が前年度の輸出増加による食いつぶし、在庫の補填等を見込みまして、一応十八億七千五百万ドルを予定いたしております。と同時に特需収入も四億ドルないし四億五千万ドル程度に減少するものと予想いたしまして、輸出を十六億二千万ドルないし五千万ドルと見込んでおる次第でありまして、もしかようになりますれば、若干の黒字となるのでありますが、しかし必ずしも昭和三十年度の国際収支は楽観を許す状況にはございません。しかも現在、世界経済の動向は、主要通貨の交換制の回復、それに伴う貿易の自由化に向って進む趨勢にございまして、本年三月のガット総会の決議によっても明らかでありますように、今後輸入制限をするということは漸次困難となる状況がございます。他方輸出競争はいよいよ熾烈さを加えておりますので、わが国としてもこれに対応する態勢を急速に整備することが必要と存じます。
しかしてこれが根本的対策としては、まず基礎産業と輸出産業の基盤を充実整備して、そのコストを切り下げることによりまして、産業の国際競争力を培養するとともに、自給度の向上に努力することが緊要でありますが、これと並行して、わが国の貿易為替態勢を整備して、世界貿易の自由化傾向に備え、国をあげての輸出振興態勢を確立すべきときであると存じております。これがため政府といたしましては、第一に経済外交を推進して、ガットへの正式加入をはかり、またビルマ賠償の解決を契機といたしまして、東南アジア、中近東、中南米諸国との経済協力を促進いたすべく、これが一環として海外投資に関する問題等を考慮いたしておる次第でございます。
第二、中ソその他共産圏との貿易につきましては、自由諸国に対する国際協力の線に沿いました制限の範囲内において、できる限りこれを伸張せしめていきたいのであります。特に中共との貿易は、最近相当に増加しておりますが、貿易収支が二千万ドルに及ぶ大幅な入超を示しておる実情もございますので、極力戦略物資の禁輸制限の緩和に努めるとともに、商業渡航の活発化、取引態勢の整備、自由品目に対する中共側の買付促進等によりまして、見返り輸出の拡大をはかっていくことといたしたいのであります。
また、さきに述べました貿易自由化の趨勢に対処いたしまして、為替貿易面において外貨予算に基く輸入方式に検討を加えまして、資金割当の長期化、自動承認品目の拡張、無公表制の拡大等を行いますとともに、補償リンク、原材料リンク等の特殊貿易を縮小廃止いたして参りたいのであります。このほか為替集中制度に改善を加えて、貿易商社の外貨保有を認める等の方策を講ずることを考究中でございます。これらにより貿易商社の統合強化を大いに促進して参りたい考えであります。
次にこれとともにわが国商社の海外における無用の競争を解除し、輸出取引秩序の確立をはかるため、今次国会において輸出入取引法を改正して輸出業者の協定締結事由を拡大いたしまして、生産業者の協定を認め、アウトサイダー規制を強化する等の措置を講じ得ることにいたしたい考えであります。
また昭和三十年度予算案には、プラント輸出の振興に必要な輸出入銀行資金として二百二十億円を計上いたしましたが、このほか、貿易振興のための予算として、海外見本市への参加のために二億三千万円、貿易斡旋所の増強のために一億円、重機械相談室の機能の強化のために二億八百万円、本邦商品の海外紹介宣伝の積極化のために一億五千八百万円、海外市場調査の実施のために七千五百万円等、昨年度に比し約五億九千万円増に当る八億八千三百万円の予算を計上しているのでありまして、これにより画期的な輸出振興の実を上げ得るものと信じておるのでございます。
なお以上に述べました輸出入銀行に対する財源の一部として、砂糖、バナナ等輸入利益の過大な物資の輸入差益金をこれに充当いたすべく、所要の法案を提出することとなっております。
第二に産業基盤の強化でございます。わが国の国際収支の均衡を達成せしめるためには、以上のごとき輸出振興対策を強力に推進するのと並行して、産業基盤を強化し、商品のコストを引き下げ、品質を向上させて、輸出の基礎となる産業の国際競争力を培養するとともに、国内自給度の向上に努め、あわせて価格の安定ないしは引き下げをはかるための方策を講ずる必要があります。
それにつきまして、第一、民間資本の蓄積、これがためにはまず民間の資本蓄積を増強いたしまして、企業経営の健全化をはかることが肝要であると考えられます。すなわちわが国の企業は、その資本構成において、自己資本がきわめて劣弱でありまして、しかも一方借入金が多くて、その重圧に悩み、いわゆるオーバー・ボローイングの状況において経営基盤は相当不安定のものとなっております。これがため政府といたしましては、法人税の軽減、預貯金利子課税及び配当所得課税の減免を行うことといたしております。このほか今後とも金利の引下げに一層の努力を尽す方針でありまして、これらにより漸次一般の企業内容も健全化の方向をたどるものと考えております。しかしながらなお一部産業、すなわち戦後国家的要請に基く大量の設備投資を続行させられまして、今後においてもまた従来以上の設備投資の継続を必要といたしております産業につきましては、特にオーバー・ボローイングの改善のための何らかの特別策を講ずる必要があると考えまして、目下その具体策を考究中でございます。
次は投資の重点化、計画化であります。重要産業の合理化を促進し、資源を開発するためには、まずこれに必要な資金の確保をはかることが必要であります。これがため昭和三十年度資金として、開発銀行については自己資金を合せまして五百九十五億円、電源開発会社につきましては約三百億円、資金運用部資金及び簡易保険資金による金融債の引き受けには百七十億円の予算を計上した次第でありますが、さらにこれらの資金の運用に当りましては、開発銀行の保証制度の実現と相まちまして、極力その重点的、効率的運用に留意する考えでございます。
なお以上のほか、民間資金につきましても、投資の計画化をはかるため、投資協議会の設置を考究中でございます。これらによりまして、将来の拡大均衡への基盤を築き上げたいと考えております。
次は工業技術の振興と生産性の向上でございます。科学技術の振興をはかるためには、民間における発明および鉱工業技術研究に対する助成を強化して、その効率的運用に努めるとともに、民間企業のみではなし得ない基礎的試験研究はこれを国立の試験研究機関において強力に実施せしめることが必要でございますが、このため、鉱工業技術研究補助に五億四百万円、国立試験所特別研究費に二億三千五百万円の予算を計上しております。またこのほか新たに科学研究の総合研究機関として科学研究所を育成強化いたすために、これに対する一億円の補助金も計上しております。
なお原子力の平和的利用開発研究につきましては、前年度からの繰越金を合せまして三億六千七百万円の予算をもって、前年度に引続きこの研究を推進して参るつもりであります。
次にわが国産業の生産性の向上をはかる目的をもちまして、さきに発足をみました日本生産性本部の事業活動につきましては、余剰農産物見返り資金からの一億五千万円の融資と、五千万円の補助金を供与する予定でありますが、これによりまして、FOAからの援助と相まって、訪米、訪欧チームの派遣、コンサルタントの招聘等を活発に行わしめることといたすつもりであります。
最後に、それぞれの個別産業の対策について申し述べます。重要産業について、これに対する考え方はかようにいたしております。
第一は、石炭鉱業でありますが、これにつきましては、縦坑開発を中心とする合理化を推進いたしまして、高能率炭鉱を中核とする生産体制の集約化を行い、そうしてその炭価安定のための所要の措置を講ずる必要があると考えまして、これに要する法律案を近く提出する予定でございます。なお、石炭界の不振と合理化の進捗に伴いまして、石炭産地に発生する失業者につきましては、失業対策事業、鉱害復旧事業の重点的機動的な運用と、また鉄道線の建設、水道工事等の公共事業を集中的に実施いたしまして、失業者の集団的な吸収に努める計画でございます。
以上と関連いたしまして、重油等海外燃料への過度の依存を排して、石炭、水力を中心とする国内資源の有効利用をはかるため、燃料の総合対策を検討しておりますが、このうち特に重油の消費規正については、これに必要な立法を国会に提出する予定でございます。
電力については、既定計画の線に沿いまして開発を推進いたしますが、その開発の促進に必然的に随伴する電力コストの上昇に対処いたしまして、これに対する適切な方策を目下慎重に考究中でございます。
硫安につきましても、先般かます当り五月ないし七月の販売価格の引き下げを行いましたが、今後とも大いに合理化と増産に努力して、輸出ワクも拡大し、近き将来においてさらに一層の価格引き下げを実現することといたしたいのであります。
なお、最近原材料価格の上昇、輸出の好転等から、鉄鋼、非鉄金属等一部物資について若干値上り傾向も見られます。この傾向が永続するならば、今後の輸出伸張を阻害することになるので、個々の物資についてそれぞれこれに適応した具体策を講じております。これと関連して、特に鉄鋼業については、その合理化を促進するとともに、その価格安定をはかるための措置に関し、これまた目下研究中であります。
このほか、わが国の国産原油は、その将来が相当有望視されておりますので、本年度は特にこれに三億円の助成金を交付して、これが試掘に努めることとしております。さらに石油化学その他わが国において新規産業として育成を適当とするものについては、試験研究の助成、税法上の優遇等、政府としてもあとう限りの助成措置を講じて参るつもりでございます。
次に中小企業の育成でございますが、これに関しましては、そのわが国経済社会に占める重要性にかんがみまして、政府としてもその健全なる助成発展に従来とも最も意を用いている次第であります。すなわち、中小企業の経営の改善、近代化については、中小企業者自身においても格段の努力をなされることが期待されるのでありますが、これら企業努力を効果あらしめるため、政府としても側面から大いに援助をいたしたいと考えております。すなわち、中小企業者の団結強化の方途については、協同組合と調整組合の調整を中心として、目下慎重に検討を進めておりますが、特に協同組合の健全な発達をはかるため、その設立に認可制をしき、その指導連絡機関として全国及び都道府県に特に協同組合中央会を設ける等、中小企業等協同組合法の改正法案を用意している次第であります。
中小企業の経営合理化、近代化につきましては、これまで顕著な成績を上げてきた中小企業診断制度を一層推進し、また中小企業の設備近代化及び協同組合の共同施設の設置につきましては、前年度に引続き三億二千万円の国庫補助を行うとともに、本年度より新たに中小企業金融公庫の直接貸付の道を開くことにより合理化資金の融資の円滑化をはかる考えでございます。
金融面においては、昭和三十年度は、中小企業関係金融機関がいずれも昨年度以上の貸付を行い得るよう中小企業金融公庫に百十億円、国民金融公庫に百五億円、商工中金に政府出資として十億円の財政投融資予算を計上しておりますが、このほか、中小企業信用保険制度について、その保険範囲の拡大、填補率の引き上げ、保険料率の引き下げ等を行うことにより、中小企業金融の円滑化をはかるよう、これに必要なる法律を提出するつもりでございます。
次に、中小企業製品が輸出貿易に直接、間接に占める重要性にかんがみまして、政府としては、特に輸出振興を中小企業対策の重点として推進する所存であります。すなわち、前に述べた中小企業等協同組合の共同施設の設置及び中小企業者の設備近代化等に対する助成、企業診断による合理化指導、中小企業専門金融機関による積極的なる金融等の諸施策を重点的に輸出適格中小企業に実施することによりまして、その輸出力の強化をはかる所存であります。また貿易振興のための海外市場の調査と商品の紹介宣伝も、特に中小企業製品に重点を置いて実施するとともに、さらに海外見本の収集、意匠の改善、新規輸出商品試作に対する助成等を積極的に行うことにより、中小企業の輸出の振興に努める考えでありまして、これらに要する予算を計上している次第であります。
なお、中小企業者、特に零細企業者は、経営、金融、税務等の知識に暗く、経営も不健全な場合もありまして、若干の指導を加えることにより顕著な便宜を受け得る状況にあります。そこで、政府としては、各自治体、商工会議所等により経営せられている全国六百二十五ヵ所の中小企業相談所のうち、所管事業所数も多く、利用度の高い相談所を重点的に選定して、これに専任の計理士、税理士、経営専門家等を配置して、零細企業者の身近な相談に対し、的確なる指導を行わしめたいと考えまして、昭和三十年度予算に三千万円の補助金を計上した次第でございます。
以上は通商産業省の施策の概要でございますが、本委員会に対しましては、通商産業省より種々の重要法案を今後提出して御審議をわずらわさなければなりませんから、よろしくお願いを申し上げまして私のごあいさつを終ります。ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X00719550509/6
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007・中崎敏
○中崎委員 議事進行ですが……。今の通産大臣の説明の要旨を印刷にして、早急に配って下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X00719550509/7
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008・田中角榮
○田中委員長 承知しました。
引続き、通産省関係予算の概要について説明を求めます。官房長岩武照彦君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X00719550509/8
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009・岩武照彦
○岩武政府委員 お手元に「一般会計予算の推移」と申します表と、それから「昭和三十年度財政投融資計画」という一枚刷りと両方お配りしてあります。両者につきまして概要を御説明いたしたいと思います。
通産省所管一般会計の今年度経費要求額合計は七十四億四千一百万円でございます。昨年に比べまして六億六千一百万円増加いたしております。
その内容につきまして順次御説明申し上げますと、最初の一枚をおめくり願いまして、貿易振興費と申すのであります。その最初の国際見本市等参加補助であります。これは昨年来やっております海外の国際見本市に日本側が参加いたします経費の補助で、本年はカナダのトロントほか七ヵ所を予定しております。合計八ヵ所でございますが、そのほかに、アメリカにおきまして百貨店の相当有力なるものが内部で見本市をやる企てもございますから、その経費の補助にも充てたいと考えております。なお国内におきまして、先ほど田中委員長からお話がありましたような国際見本市をやっておりまして、現在東京でやっておりますが、明年度におきまして大阪において開催したいと思います。その経費の補助を、明年五月でございますから、一部を今年度予算に計上しておるわけでございます。なおこの国際見本市は、日本におきましては東京と大阪と年一回ずつ交互に開きまして、その所要の経費の一部を補助したいと考えております。
それからその次の貿易斡旋所補助でございますが、これは現在アメリカ及びカナダに三ヵ所ある斡旋所の経費の補助が中心でございまして、なお今年度新たに農機具あるいはニンジン等の軽機械類のサービス・センターをビルマに設けたいと考えまして、その関係の設置の補助もこれに入っております。
それからその次の海外紹介宣伝費、これは特別な目新しいものもございませんが、主としましてアメリカのドル市場中心のいろいろな広告宣伝費を加えております。
それから海外市場調査補助、これは日本貿易振興会でやっております市場調査関係の補助で、昨年来続けておるわけであります。
それから重機械類輸出振興費補助、これも現在東南アジア及び南米に重機械類技術相談室というのを六ヵ所持っておりますが、その関係の経費の補助でございます。
それから中小企業輸出振興補助、これは今年新たに設けました費目でございますが、内容としましては、いろいろな海外におきます意匠、ことに雑貨系統のデザインでありますが、この改善費の補助でありますとか、あるいはいろいろな見本を集めまして、これによって海外の嗜好を探って国内の生産に新機軸を開くというような企ても考えております。そういうような費目を合せまして、一応中小企業輸出振興費補助というふうになっております。
それから農機具の展示会の経費あるいは海外商品意匠権等侵害防止対策補助、この海外意匠権等侵害防止対策費は、御案内のようにイギリスの方としまして、いろいろ日本の輸出商品が既存の海外のデザインを侵害しているという非難がございますので、これに対しましていろいろ海外のデザインを集め、あるいはそれを現実の注文と対照しましてチェックするというような仕事をやらしておりますので、その補助であります。商事仲裁の関係は前年同様。
ICC東京総会補助、これは国際商業会議所の東京総会が本年開かれますので、その関係の補助でございます。
それから輸出会議運営費、これも役所におきまして昨年来いろいろお話しておりましたが、輸出会議というような組織で業界の輸出意欲を増進して参ろうということで、この事務費でございます。合計しまして本年は通商振興関係が八億九千七百万円、前年に比べて三倍近い増額になっております。
その次の産業基盤の強化でございますが、当初にあります国産原油増産補助、これは先ほど大臣の御説明にありました国産原油の増産五ヵ年計画の初年度の経費の補助でございまして、五ヵ年後に原油の生産百万キロリットルを目標に画期的な増産を行いたい、その関係の試掘あるいは探査等の経費の補助でございます。なおこれにつきましては、さらに大きな経費あるいは新しい機構をもって行おうといういろいろな構想を持っておりましたが、なお十分でない点もありますので、一応この程度でスタートしたいという考えできたわけでございます。
それから重要鉱物探査補助、これは昨年来あります経費でございますが、ここでちょっと御注意願いますのは、備考にございますように、金の関係の探鉱補助費は本年度は廃止いたしました。これは御案内のように、昨年度までは産金量の百分の二十七を国家で買い上げて、残りを自由販売させておりましたが、金鉱業の採算が合わなくて休廃する山もふえて参りますのと、他方におきまして通貨価値維持の見地から、国家の買い上げを全然やめるというわけに参らないというような関係もありまして、一応本年度以降は国家の買い上げを産金量百分の五に減らしまして、残りを自由販売ということで、一応その面から金鉱業の生産継続をはかりまして、従ってこの探鉱補助金の方をこれに見合って廃するということにいたしたわけであります。重要機械国産化補助、これは昨年来続けておりますいろいろな新しい機械の国産化の補助でございます。
生産性向上対策補助、これは先ほど大臣の御説明のありましたごとく、イギリスあたりでやっております生産性向上運動の例にならいまして、ちょうどイギリスの例が、アメリカと協定を結びまして、いろいろ経営、技術、あるいは労務対策等の面から、視察団等を相互に交換いたしまして、また国内においていろいろな啓蒙宣伝等を行いまして、生産性向上運動を起しております。しかもイギリスでは相当効果見るべきものがあったというふうになっておりますので、日本におきましても米国と協定を結びまして、この関係の仕事をやって参りたいという考えでございまして、五千万円の一般会計の補助と産業投資特別会計の方から出ます一億五千万円と、このほかに民間の経費をもちまして、この運動の経費に充てたいと考えております。
その次の三つばかりの項目の機械関係の補助費でございますが、これはいずれも昨年同様廃止いたしております。
それから中小企業対策費でございます。これは一般会計の方は、ここにございますような項目で昨年来続けて参りました施策でありますが、新しく中小企業相談所に対しまして積極的な援助をいたしたいと考えております。現在全国にあります相談所の中から相当事業所の多い地域にあります相談所に対しまして、この事業活動を円滑に行いますように経費の補助をいたしたいと考えております。
その次の技術振興対策費でございますが、最初の科学技術研究補助、これは昨年同様の趣旨の経費でございます。鉱工業の応用研究並びに工業化に対しまして、国でテーマを指定いたしまして、それに合いますものに補助いたして参る、こういう関係のものでございます。
次の科研の補助でございますが、科学研究所に対しましては、従来はこの上にあります一の経費の方から特定のテーマに合致いたしたものに補助しておりましたが、本年度は特に総合研究所である科研の機能を十分に発揮いたしたいという考えで、ここに取り出して特掲したわけでございます。
それから原子力平和利用研究でございますが、これは昨年の国会修正によりまして計上いたしました二億三千七百万円の経費の次でございますが、昨年の経費のうち、一億六千四十万円だけ本年度に繰り越しております。それで新規のものと合せまして三億六千万円余の経費で続けて参りたいと思っておりますが、本年度は特に実験用の原子炉の具体的な築造あるいは設計運転等のいろいろな研究等、それからこれに要します石墨を初めといたしますいろいろな材料の面の研究に重点を置きたいと思っております。五ヵ年後に相当規模の炉を築造いたすという考えで進んでおるわけでございます。
それから四の経費、これは特別のものでございませんから省略いたしまして、五、六、七の特許発明の関係でございますが、本年度は新たに外国出願、これは貸付金でございます。これは現在国内におきまする優秀な特許、発明で、権利を設定しておりますものが、海外にこの権利を設定いたしますにつきまして相当の経費を要しますので、せっかくの優秀な発明の権利が国際的に保護されにくいという状況にありますので、その関係につきまして援助をいたしたいという考えから出ましたもので、今年度の実績を見まして明年度以降さらにこれを拡充して参りたいと考えております。大体以上が一般会計のおもな費目の概要でございます。
次に財政投資の方でございますが、財政投資の方はお手元の一枚刷りの紙に、いろいろ各政府機関の分も並べて書いてございますが、そのうちの通産省関係は、特に関係の深いのは上にありまする八つばかりのものでございます。
最初の開発銀行でありますが、これは昨年度の融資ベースが五百九十五億ございました。本年度も自己資金を合せましてこの程度の投資を行わせたいと考えております。この内容につきましてはまだ十分確定いたしておりませんが、この電力関係に二百八十億、それから造船関係が百六十億、その他が百四十億程度考えております。電気関係は、九社の関係は一応山を越しましたので若干減っておりますが、その他の関係におきまして、石炭の関係あるいは鉄の関係等につきましては、今年は昨年よりも相当増加した投資を行いたいと考えております。石炭の合理化の問題、鉄鋼の設備改善の問題等に相当力を入れたいと考えております。
それからその次の輸出入銀行でありますが、これは昨年は新しい繰り入れがわずか五十億程度でございましたので、本年は資金の関係も大分枯渇して参りましたので、二百二十億を財政面から出しまして、自己資金と合せまして四百八億の貸付を行う予定でございます。これは昨年末以来船舶輸出の関係も相当増加して参ったわけでありまするし、またその他のプラント物等も大分拡張を予定いたしておりますので、この資金で何とか問に合うという程度かと考えております。
それからその次の中小企業金融公庫でございますが、これは本年度の財政資金の方から百十億出しまして、自己資金と合せまして二百四十五億、月平均二十億をこえる融資のベースを持ちたいと思います。
なおいろいろ御要望のございました直接貸付等につきましてもこの際検討を続けておるわけでございます。
それから電源開発会社でございます。電源開発の方はちょうど今年、明年あたりが開発のピークになりまして、相当多量の資金を要することとなりまして、一応本年度二百九十八億五千万円という数字を財政から出しまするが、自己資金と合せまして三百一億となっておりまするが、なかなかこれでは困難なことも考えられまするので、一部市中借り入れ等の手も打ちたいと考えております。
それから商工中金でございます。これは先ほど大臣から提案理由の御説明をいたしましたように、一般会計から新しく十億の出資をいたしたいと考えております。
それから国民金融公庫、これは昨年度よりも五十五億上まわった月平均四十億近い貸付を行い得る態勢になっております。
金融債は、これは通産省所管ではございませんが、これを発行いたしました興業銀行あるいは長期信用銀行等の資金がわれわれの方の所管の産業に回るのも相当ございますので、あわせて書いておるわけでございます。
生産性本部の問題は、先ほど説明したことに尽きます。
そこでちょっと当委員会の御審議に関係がありますので、この表につきましてお説明いたしまするが、この財源の欄に輸入物資という欄がございまして、本年度七十億を計上いたしまして、これが輸出入銀行に一応入るようになっております。これは例のバナナ、パイカンあるいは砂糖というふうに特殊な輸入利益の存しまする物資につきまして、差益を国庫に納付いたしまする制度を設けまして、それを特別会計を通じまして財政投資の方に回そうというふうな企画でございまして、この特別会計は特殊物資納付金等処理というふうな新しい特別会計が大蔵省所管で設けられまして、それに対しまして先ほど申し上げましたような特殊な輸入利益の存しまする物資の輸入差益を納めるという建前になっております。通商産業省関係としましては、このうちの輸入処理の面に関しまする法案の成案を得まして当委員会の御審議をお願いしたいと考えておるのであります。ここに単位は百万円とありますが、これはミスプリントで億であります。その他につきまして特別会計は通産省は四つ持っておりますが、これにつきましては特に申し上げることはございませんので、一応説明を省略いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X00719550509/9
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010・田中角榮
○田中委員長 先ほども申し上げましたが、質疑に入ります前に質疑時間のお諮りをいたします。先般理事会において申し合せもございますので、開会を予定しております五日間を通じまして総質疑時間は二十時間、各派の質疑時間はそれぞれ五時間として、一日の全会派の質疑時間の総計は四時間、各会派の質疑時間は一時間とすることに決定いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X00719550509/10
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011・田中角榮
○田中委員長 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。
質疑に入ります。質疑は通告順によってこれを許します。念のためこの際申し上げて置きますが、政府委員として、石橋通商業大臣、岩武官房長、重工業局長鈴木義雄君、中小企業庁長官記内角一君、会計課長出雲井正雄君、そのほか関係政府説明員が出席されております。森山欽司君。——ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X00719550509/11
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012・田中角榮
○田中委員長 速記を始めて。
それでは明日午前十時から会議を開くことにし、本日はこれをもって散会いたします。
午前十一時四十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X00719550509/12
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