1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年七月十一日(月曜日)
午前十時五十四分開議
出席委員
委員長 田中 角榮君
理事 首藤 新八君 理事 中崎 敏君
秋田 大助君 小笠 公韶君
菅野和太郎君 齋藤 憲三君
笹本 一雄君 鈴木周次郎君
森山 欽司君 加藤 精三君
鹿野 彦吉君 神田 博君
南 好雄君 村上 勇君
加藤 清二君 田中 武夫君
帆足 計君 八木 昇君
伊藤卯四郎君
出席国務大臣
通商産業大臣 石橋 湛山君
出席政府委員
公正取引委員会
委員長 横田 正俊君
通商産業政務次
官 島村 一郎君
通商産業事務官
(大臣官房長) 岩武 照彦君
通商産業事務官
(企業局長) 徳永 久次君
通商産業事務官
(繊維局長) 永山 時雄君
中小企業庁長官 記内 角一君
通商産業事務官
(中小企業庁振
興部長) 秋山 武夫君
委員外の出席者
議 員 春日 一幸君
専 門 員 谷崎 明君
専 門 員 越田 清七君
専 門 員 円地与四松君
専 門 員 菅田清治郎君
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七月十一日
輸出品取締法の一部を改正する法律案(山手滿
男君外七名提出、衆法第四四号)
同月九日
戦争受刑者等の更生資金調達のための有為替輸
入許可に関する請願(山下春江君紹介)(第三
八三〇号)
海外に陶磁器合弁会社設立等に関する請願(早
稻田柳右エ門君紹介)(第三八三一号)
百貨店法制定に関する請願(早稻田柳右エ門君
紹介)(第三八三二号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
中小企業安定法の一部を改正する法律案(小笠
公韶君提出、衆法第二四号)
百貨店法案(春日一幸君外十三名提出、衆法第
一八号)
下請関係調整法案(春日一幸君外十三名提出、
衆法第二〇号)
繊維製品品質表示法案(内閣提出第一三七号)
輸出品取締法の一部を改正する法律案(山手滿
男君外七名提出、衆法第四四号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/0
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001・田中角榮
○田中委員長 これより会議を開きます。
中小企業安定法の一部を改正する法律案、繊維製品品質表示法案、下請関係調整法案、百貨店法案を一括議題にいたします。質疑を許します。中崎敏君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/1
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002・中崎敏
○中崎委員 まず百貨店法案についてきわめて簡単に質疑をいたします。近年百貨店が大きな資本力と組織力とを利用し、その背景に金融力を従えて強大な組織となって参りました、これがために多数の中小企業者は、非常な犠牲の前に立たされまして、ことに最近における不景気が手伝いまして現在深刻な状態に追い込まれておるのでございます。全国の中小企業者はこぞって、百貨店のこれ以上の進出に対して、自分の生存権の問題であるというふうな考え方から、何らかこの制限をやってほしいという要望が強く起ってきておるのでありますが、この提案の趣旨は中小企業に対してどういうような考え方の上に立って提案されておるのか、それをお聞きしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/2
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003・春日一幸
○春日一幸君 ただいま中崎委員から御質問になりました通り、わが国の産業構造の中に占めております小売業者の分野というものは圧倒的な多数を占めておりますし、これが国民の経済生活上必要欠くべからざるものであるという理解の上に立ちまするとき、御指摘のように百貨店がその背後にある大資本の威力を思う存分に行使いたしまして、公正かつ自由な方式に従わないで、大資本の暴威暴力をほしいままにする、すなわち弱肉強食にすらわたるような威力を次第に示しつつある傾向にございまして、これが勢い小売業者を不当に圧迫する、こういうような状況をほっておきましては、ただいま申し上げましたように、わが国の産業構造上必要にしてかつ現存しております小売業者が、正当な営業行為を行なっていくことが不可能な状態に陥るの危険がございますので、この際こういう単独法を設けて、公正かつ自由の原則を守りつつ、百貨店は百貨店として存立ができ、小売店はまた小売店として存立ができていける、そういう関係をこの法律の中で規制していこうと考えておるのでございます。
なおこの機会に申し上げたいと思いますが、これは通産省商務課の調べでありますが、昭和三十年六月十八日で調べたところによりますと、現在百貨店の新増設工事及び拡張工事の行われておるものの概要を申し上げますと、新築計画では、東京都におきましては、十合東京店、丸物池袋店、川崎においてはさいか川崎店というようなものがあります。拡張工事が現に行われておる百貨店としては、秋田において木内、金沢に大和、鹿児島に山形屋、福岡に岩田屋、和歌山において丸正、姫路において三共、小倉において井筒屋、東京において伊勢丹、三越、松坂屋上野店、名古屋においてオリエンタル、丸栄、浜松において松菱、こういうように拡張工事が現在行われております。さらに拡張工事計画中のものが岐阜における丸物、丸宮ほか全国各地にわたり六店、なお拡張の意向を有し計画中のものが札幌における丸井、今井のほか九店、こういう工合で、百貨店の新増設計画、拡張計画というものは今非常な勢いで進められておるのであります。従いましてこういうようにもし百貨店がじゃんじゃん大拡張されて参りますと、その分量だけ小売店が圧迫を受けるという形になりまして、小売店の存立の基礎をも危うくする。かくいたしまする場合、その労働人口を吸収する道もありませんし、従って小売業者の立場というものが全然圧殺されてしまう。これすなわち大資本の威力によって中小企業が圧迫を受けてしまうので、独禁法がいうところの公正かつ自由の原則に反すると考えます。従いましてこれは現在独占禁止法によって公取の統制等もいろいろあるのでございますけれども、しかしながら昨年公取から発せられました例の特殊指定、こういうものによりましては効果を上げることが全然できません。すなわち特殊指定が行われましたそれぞれの項目が、現実に各地において行われておりますることは、これは全国各地から寄せられております小売業者の苦情、陳情等によって、明らかに証明されておるところであります。さらに公取委員会も効果の上っていないことをみずから詠嘆いたしておるのであります。従いまして今回この単独法によってその間の秩序を明確に規制をして、そうして小売業者の存立の基礎を固めていきたい、こういうのが本法提案の趣旨であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/3
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004・中崎敏
○中崎委員 この際政府の方にお聞きしておきたいのでありますが、百貨店、これは全体としてでもいいですし、あるいはそのうちの主たるものでもいいのでありますが、最近の決算期ごとにおけるところの営業成績並びに配当率、これについて簡単でいいのでありますが、御説明願っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/4
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005・秋山武夫
○秋山政府委員 私百貨店関係を直接所管しておりませんので、今御要求のような資料を持って参ってきておりません。百貨店と申しましても非常に差があります。たとえば三越のごときは非常に高率配当をいたしております。いわゆる仕手株に属するような、額面の数倍あるいは十数倍というような価格を唱えております。また地方の百貨店におきましては、必ずしもそう高利潤でないものもあるようでございます。詳細につきましては資料として差し上げることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/5
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006・中崎敏
○中崎委員 最近の状況を見ましても、たとえば東京都内におけるところの言貨店が、千葉県方面までも配達をやらしておる。こうしたことは消費者に対する一つのサービスであるということだけは疑いないのでありますが、その大きなる組織と資本の力によって、しかも相当べらぼうな利益の中から、そうした費用までもひねり出して、そうして一面サービスを与えながらも、ますます強固な組織に発展していく姿と考えられるのでありますが、こういうふうなことについて、提案者は一体どういう措置を講ずる方が妥当であるとお考えになるか、お聞きしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/6
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007・春日一幸
○春日一幸君 それは本法第五条の中におきまして、販売行為の制限、これは制限といいましても、禁止ではないのでございまして、通商産業大臣の許可を受けなければならない、こういう規制を加えんといたしておりますが、その中に四項目ございまして、それは中小企業に不当に影響を与えるがごとき月賦販売、それから積立金組織による予約販売、特定顧客に対する限定展示即売行為、生産者の即売行為のために売場を提供する行為、これらの販売行為に制限を加えんといたしておるのでございます。これは昨年の十二月の二十一日に、公正取引委員会の告示第七号でもって告示をいたしました特殊指定の中に、おおむね含まれておるのでございまして、独禁法の規定に照らして、これこれは独禁法の規定に違反をするから、百貨店においてはこれこれのことを特に行なってはならぬ、こういう指定を行った事柄をこの中に集約し整理しまして、条文として制限列挙いたしたわけでございます。そこの中に、御指摘の配達行為ということが含まれていないのでございまして、提案者はこの配達行為に対する見解いかんという御質問でございますけれども、これはいわゆる小売業者の陳情の中には、この百貨店の配達行為はこれは過当なサービス行為であるので、これを制限してくれという要請がございました。しかしながら私ども提案者たちは、その要請をも取り上げていろいろと検討を加えてみたのでありますが、本法の第一条のこの法律の目的は、ただ単に百貨店と小売業者との関係を規制するばかりでなく、百貨店と小売業者と卸業者と、同時に消費者大衆の利益というものをもよく考え合せて、この四者一体の形において均衡のとれた法律を作らなければならぬ、こういう立場で、御指摘の配達行為の問題を取り上げてみましたとき、これはやはり消費者大衆の利益になることでもあり、さらに小売店同士が協同組合を結成して共同設備を行なって、その配達行為を行おうとすれば、これは小売店でもやろうと思えばできないことではない。やろうと思えばできることをやらずにおくということは、これはむしろサービスを怠る行為である。従いましてなし得る、すなわち小売店側において自由かつ公正な立場において競争のできることは、すべてこの法律の制限の中から除外をいたしたわけでございまして、その立場は消費者の利益を確保するという立場におきまして、配達行為はこれは認めてよろしかろう、こういうことにいたしました。従いまして小売店が百貨店に対抗して同等の立場を確保するためには、協同組合の共同設備によりまして、そういうような共同配達を行うことによって、百貨店と自由な立場において競争ができるのではないか、そういうような方向の指導は別途の措置を講じて小売店の側においてなし得る、こういう想定のもとに、その配達行為の制限は加えなかったのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/7
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008・中崎敏
○中崎委員 次に百貨店が各問屋等に対して品物を入れさせて、そうして売れ残りのものはそのまま返していくということが、しばしば問題になっておるにもかかわらず、現在においては公然とやられておる。ほとんど無遠慮にやられておるという事実があります。これらの点について提案者はどういうような観察をしておられるか。そうしてまた公正取引委員長も実はきょうは来てもらって、そういうことを聞いてみたいと思うのでありますが、来ていないようであります。いずれにしても提案者として、今後こういうふうなことについては、またこの法案が国会を通過すればどういうふうなことになるかを、一つ御説明願っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/8
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009・春日一幸
○春日一幸君 これは公正取引委員会が昨年の十二月二十一日に特殊指定を行いましたとき、問屋に対する不当返品、これこれのことは不公正な取引方法であるという特殊指定を行ないました中に、特に第一項目に取り上げてこれを次のごとく規定をいたしておるのでございます。それは納入を受けた商品が、納入業者の責任に帰すべき事由のもとに汚損し、毀損し、その他瑕疵のあった場合において、納入を受けた日から相当の期間内にその商品を当該納入者に返品する場合、こういう場合はいい。それからもう一つは、納入を受けた商品が注文した商品と異なっていた場合において、納入を受けた日から相当の期間内にその商品を当該納入業者に返品すること、あと三項目ありますが、こういうような場合のほか、一たん納入されたものを季節がはずれてから売れ残り品を返品する行為、あるいは仕入れたときから相当値段が暴落をして、暴落したときにおいて返品する行為、それから陳列中の汚損、欠損品、こういうようなものを返品する行為、こういうような返品を仕入れ価格によって返品する行為はいずれもこれを不公正な取引である、こういう工合に公取の告示によってこれが明確に規定されておるのでございます。従いまして本法案におきましても、第六条の中におきまして、第五条が販売行為の制限をいたしましたと同じ立場において仕入れ行為の制限をいたしておるのでありますが、そこの中に御指定の項目は、第四項に仕入れ商品の返品と、それから第五項に仕入れ後における商品の値引き、こういう事柄を規定いたしまして、こういうような事柄を行いまする場合は事前に通産大臣の許可を受けなければならぬ、一般的にはそういうような、俗に言われておりまする不当返品をできない事柄として本法に規定をいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/9
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010・田中角榮
○田中委員長 小笠公韶君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/10
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011・小笠公韶
○小笠委員 ただいま議案になっております百貨店法案並びに下請関係調整法案の二法案について一、二提案者にお伺いをいたしたいのであります。その第一点は第一条の目的でありますが、百貨店の事業活動を規制することによりその活動が一般消費者云々と書いてございますが、本法案を通読いたしまして、消費者の利益と小売業者の利益、卸業者の利益は必ずしも一致するものではないのであります。その点におきまして特に本法案によって消費者の公正な利益が守られるということはどこにあるのか、お教えを願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/11
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012・春日一幸
○春日一幸君 消費者の利益を法律で守る、特に新しい利益をここの中から作り出していくというのはむしろ本法の目的ではないのでございまして、現在消費者が得ておりますところの利益、便宜、こういうようなものが本法の制定によって不当にこれが減殺されることのないようにと、そこに特別の考慮が払われておるのでございます。すなわち本法を施行することによって消費者が得ておりまするところの利益は何ら減殺されるところはないのでございまして、すなわち本法によって新しい利益は発生しないのでございまするが、既存の利益というものは損傷しないという意味において消費者の立場を特に考慮した、表現の中身はそれであるのでございまして、いろいろ小売業者と百貨店との関係を規制するに当りまして、ともすれば消費者の利益が相当侵害される事柄があったのでございまするが、その問題は特に本法においてそれぞれ消化をいたしておりますので、そのような事情であるということを一つ御了承願っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/12
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013・小笠公韶
○小笠委員 ただいまの御説明は実は納得がいかないのであります。それは今日の百貨店業に対する認識の問題からくると思うのであります。たとえば第五条第一号第一項に、小売業に不当な影響を与えるがごとき月賦販売という一例をとってみても、今日一般消費大衆に対して消費金融の道がない、しかも時代の進運に伴って文化生活を要求する声が強い、そのときに許されておるのは何といっても月賦販売によるものだと思います。この月賦販売が制限されることによって消費者の利益というものが失われないのだという理屈がどこから出てくるか。私は今日の月賦販売が、もし公正にして不当な利潤をとらないとするならば、消費生活における消費金融に当るものだと実は考えるのであります。その意味から考えまするときに、消費者の利益を公正に保護するという立場から見る場合に、百貨店の規制の仕方というものは非常にむずかしいのだと私は思うのであります。ここに百貨店問題の取り上げ方として本法第一条の、ごとく消費者の利益というものを特に強く取り上げた場合と、リテーラーの立場を保護するという立場は、必ずしも一致しないことと考えるのであります。この観点から考えますとき、本法第一条と第四条、第五条、特に第七条のごときものを考えますとき、果して大衆消費者の利益がそこなわれないかどうか、私は疑問を禁じ得ないのであります。この意味から考えますとき、百貨店問題の取扱い方の頭の持ち方をどこに置くか。ここに商業活動における大企業としての百貨店と小売業あるいは卸業とのいわゆる相剋の調整の点に置くのか、しかも一方において多くの消費者の利益をあまり害しない範囲において考えていくという基本的な考え方をとるのか、この提案された法案のように、頭から消費者の利益の保護をはかっていくのだと強く出していくのがいいのか、ここは私は本法の扱い方において非常に慎重に考慮を要する点だと考えるのであります。従いまして提案者のただいまの本法各条において一般消費者大衆の既存の利益を害しないのだという御説明は、私は納得できないと考えるのであります。これは非常にむずかしいところでありますが、この点は特に百貨店問題の取扱い方の態度からくる問題だと思うのであります。しかもこの一条においては商業活動の調整の問題も考える、同時に消費者の利益を増進する、少くともそこなわないという両面をかけた法案であります。両面をかけた法案なるがゆえにそこがはっきりしておらないと私は考えるのであります。この点もう一度明確に御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/13
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014・春日一幸
○春日一幸君 そこが御指摘の通り提案者の苦心の存するところでございましたが、第五条の第一項はかくのごとく一つ御理解が願いたいと思うのであります。それば小売業者に不当に影響を与えるべき月賦販売、すなわちこの第一条をただ単に月賦販売となまでこれを規制事項といたしますれば、これは小笠委員御指摘のごとくに、すでに消費生活者が月賦によって得ている利便というものが侵害されるのでありますが、提案者たちも御指摘の点を特に重視をいたしましてこういう表現を行なっておるのでございます。これを具体的に申しますと、どういう中身を想定したかと申しますると、こういうような極端な例を想定いたしました。それは百貨店は今大資本といたしまして、背後にシンジケートもありましょうし、従いまして百貨店が総売上額の全部を月賦販売にすることもあるいはこれは不可能ではない。たとえば六ヵ月の月賦をそれぞれの会社から手形で受け取る、そういたしましてそれを銀行へ割引をする、そういたしますると百貨店自体としては総販売に対して受け取った手形の全部を現金にかえる道もあるわけでございます。一方その債権保全の道は、現在会社の方においてそれぞれ退職金の制度もあり、月給から差し引いてもらうというような契約をいたしますれば、確実なる支払いの保証がつくものでありますから、銀行側においても、その受け取った月賦販売の手形を全部商業手形として割り引くこともできる。そういたしますと、百貨店は現在の金融資本との連携によりまして、自分の総販売量の一〇〇%を月賦販売におくこともあるいは不可能ではないのではないか、こういう事柄をも想定いたしました。現に百貨店におきまする月賦販売は総売上高の五%から一〇%になり、一五%になり、絶えずこれが上昇の形をとっておるのでございます。そこでそういうようなことが小売店の側においてできるかどうかという問題になるのでありますが、小売店の側においても同様の立場において競争ができる経済秩序、経済態勢、金融態勢の上にありますならば、われわれは問題ではないと思いますが、遺憾ながら現在の金融制度、それから経済的な構造というものは、すなわち百貨店に対しては信用度が高いのでコマーシャル・べースによって商手を割り引くこともできるでありましょうが、信用度の低い小売店につきましては、同様の応諾をすることはできない。従いまして自由公正な立場において小売店と百貨店とが月賦販売制度を中心にいたしまして競争するということは事実上不可能な状態にあるのでございます。そこで規制をいたしておりますのは、現在百貨店が行なっております月賦販売はまさしく消費者にとっては利便であるので、これを全面的に禁止するというのではなくして、読んで字の通り、その百貨店の月賦販売が現在のパーセンテージからさらに増加いたしまして、そして物を買うなら百貨店で買え、百貨店へ行けば六ヵ月月賦で買えるではないかというようなことになってしまえば、これは小売店に対して不当な影響を与えることにたりますので、そういうような月賦販売を禁止しょう、従いましてそのパーセンテージが百貨店の三割以上の場合か、五割以上の場合か、六割以上の場合を規制するかどうかということはあげて政令に譲っておるのでございまして、そこはすなわち経済秩序、社会情勢、それから百貨店がどの程度の月賦販売を行なっておるかという諸要素を勘案いたしまして、この辺の限界を政令できめていこうというわけでございます。従いまして消費生活者が品物を購入いたします場合、現在は品物を現金で買うのが社会通念になっておりますが、その社会通念の範囲においてこれを扱っていく、それから月賦で買えるようなさらにプラス・アルファーのサービスについては、そのプラス・アルファーのサービスによって他の小売業者の存立の基礎を危うくするようなサービスは、やはり国の全体的立場においてこれを抑制していこうではないか、こういうわけでございまして、すなわち現在消費生活者が得ておる便利というものは、この第一条の規定によっては現実には阻害を来たさないと考えるのでございます。
それから第四条の生産者の即売行為のために売り場を提供する行為でございますが、現在の商業行為は生産者から卸、卸から小売と一つの段階を経ております。小売業者はそういうような段階を経て品物を買っておりますので、この際生産者が自分で卸マージンあるいは小売マージンというものを考えないで、オリジナル・コストで直ちに小売をやるということは、これがずっと永続的にかつ普遍的に行われれば、これはこれでありましょうけれども、しかしわずか一年に一回とか二回とか、あるいは手持品が暴落したからといって、輸出の解約品とか、そういうものを不当な値段で投げ売りを行う、それが百貨店のような信用度の高い売り場において行われますと、あるいはそれが市場価格であるかのごとく誤認を与えることによりまして、すなわち一般的な市場を混乱せしめるような憂いなしとはいたしません。従いまして百貨店の持っておりまするところの社会的信用が高いならば高いだけに、売られますところの価格が標準価格になりまするので、従って生産者が卸利潤、小売利潤を加えないところの即売行為が百貨店で行われることは、全般的な経済秩序に悪い影響があると考えまして、そういうこともここに規制をいたしているのでございます。
それから御指摘の第七条の公共企業体あるいは地方公共団体が百貨店業者に対して施設を店舗として供与することを禁止しておるのでありますが、これはやはり独禁法の精神、すなわち自由にして公正な立場において競争させるということから考えますると、そういうような施設を特に百貨店に供与いたしますれば、百貨店がそれだけ便利を受け、そのことは結局経営の面におけるコストの引き下げともなって参るわけであります。従いましてその販売行為を営むに要する経費の中にそれがいろいろと影響して参りまして、不当に安い値段で売る。そうすれば小売業者はこれに対して公正なる競争にたえがたい。こういうことからこの問題を取り上げているのでございまして、従って小売業者が自分の資本で土地を求め、自分の資本で売り場を作っているという現状から考えまして、すなわち第三者の資金によって売り場を得るということは、やはり平等の立場における競争の基本的な考え方をここで混乱せしめる心配なしとはいたしません。従ってこれもここで規制をいたしているようなわけでございます。原則といたしましては、この精神は独占禁止法の自由公正かつ平等な立場における商業活動の競争ということでありまして、すなわち金融資本との結託あるいは公共機関との特殊な連携、こういうことによって不当にその百貨店が利益を得ることのないように、ここでこういう規制をいたしているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/14
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015・小笠公韶
○小笠委員 第五条第一項第一号のいわゆる月賦販売の問題についての御説明は実は納得ができないのであります。現在小売業者が百貨店の月賦販売というものに対して非常に神経質になっているのは、これは事実であります。ところがただいまの御説明によると、現行程度はいいんだ、百貨店の売上げ総数の三分の一とか、あるいは全部がそういうような形になったときは困るのだという御説明では、私は本法は動かないと思う。その点は大きな問題として消費者の利益と商業活動調整の問題のところにもう少し腹を据えて御答弁を願わないと、納得できない点であると考えるのであります。それはいずれにいたしましても、提案者はそれは通産省令にまかすんだ、省令にまかすから通産大臣がしかるべく扱うだろうというお考えかもしれませんが、問題は現在においてはあくまで本商業活動の相剋と消費者の利益との交錯点であります。この消費者の利益と商業活動の相剋の交錯点に対しまして、明確なる提案者の意思なしに全販売量の三分の一くらいまではいいんだというような御説明では、私は納得いたしかねるのであります。この問題は言葉をかえて言えば、あくまでも百貨店問題のつかまえ一方にはっきりした態度が要請されるものと考えるのであります。
次にお伺いいたしたいと思うのは、本法の三条、四条、特に四条の関係におきましては外形的なことでありまするから、比較的つかまえやすい。しかしながら五条、六条のいわゆる商業活動自体になりますると、事態はしかく簡単に捕捉いたしかねるのであります。捕捉しにくいところが商業活動の一つの特色だとも考えられる。私はその点について提案者が前委員の質問に対するお答えの中で、独占禁止法による特殊の指定によってやってみたがだめだ、そこで独立立法によってやればこれが可能だという御説明があったようでありますが、独禁法に基く特殊指定も、本法に基くいわゆる許認可事項にいたしましても、行政権の作用としては私は同じだと思う。行政権の作用が同じだとすれば一方ではできないが、一方ではできるという立論の根拠をどこに求めているか、私はその点をまず伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/15
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016・春日一幸
○春日一幸君 独禁法によりますと、小笠委員御承知の通りこれは公正取引委員会の所管事項でございまして、この機会に申し上げますならば、公正取引委員会が独禁法に基いて国家から大きな権限を付与されていることは御承知の通りでございます。これはすなわち行政機関であり、同時に指導機関としての大きな任務を負うております。そこでわが国経済の万般にわたるところの調整を行わねばならぬ任務を持っておりますが、しかしながら実際には果してどの程度の効果を上げているがと申しますと、公取は定員がわずか二百三十何名ですかしかございませず、そしてその審問、審決を始めてその書類を最終的に処理いたしますまで大体二年、三年という長い期間を要しているのが実情でございまして、実際的の経済的な効果は上っていないのでございます。法的の効果も上っていないのでございます。従いまして私どもは遺憾ながらこの公正取引委員会は経済現象としての基本的な法律を守護することはできるけれども、行政機関としてはその機能がほとんど備わっておりません。丸ビルのような大建築をするのに五人か六人の人夫を派して、これで丸ビルを作れというようなもので、日本経済現象の万般を取り締っで参ります公坂がわずか二百三十何名でこれをやれというのは私はむしろ無理じゃないかと思うのであります。そこで単独立法を行いますれば、これによって府県庁からさらにはまた裁判所から、さらにはまた警察機構からこれを単独立法といたしまして、国の行政の万般の機関をこれに活用することができるわけでございまして、従ってその機動力というものは何十万倍かに高められると考えるのでございます。従いまして今まで公坂の告示によって上っていなかった効果が、この単独立法によって容易におさめ得る、こういう想定の上に立ったものでございまして、これが特に単独立法を制定せんとするわれわれのねらいであるのでございます。
なお第一項目において消費者の利益と百貨店の立場をどういうふうに考えるかという御指摘がございました。これは非常にデリケートな問題で、これは小笠委員御指摘の通りでございますが、提案者たちがこの問題について実に長い期間をいろいろな要素を加えて検討いたしましたが、それは極端なことが百貨店ではでき得る。申し上げましたようにやろうと思えば百パーセントの月賦販売でもやってやれないことはない。そういうことが小売店ではできないので、従って小売店ででき得る範囲のことを百貨店でもやってもらうように、それじゃ大体の水準がどの程度であるかということは、これはあげて行政当局の検討にゆだねる、こういう慎重な態度をとっているわけでございます。従いましてただいま小笠委員は三割ならばいいと提案者は大づかみにつかんでいるということでございますが、これは三割がいいか一割がいいか、二割がいいか、四割がいいかということは、これはそれぞれの要素を十分行政当局が的確な資料によって判断を願って、そうしてそのあやまたざる水準をきめていただくということにあるのでございまして、従ってねらいはこれによって現在消費生活者が受けている利益が損耗しないということがねらいであり、同時に小売店も存立できるという態勢を確保したいというのでございます。なお消費生活者に対しますところのいろいろな消費金融ということにつきましては、御承知の通り別途労働金庫等も。ございますし、この労働金庫の資金を拡充することによって金融制度として、これを考慮さるべきものでございまして、販売行為の中にすなわち商品は月賦で買うのだ、こういう考え方で消費金融のことを考えるのではなく、やはり消費生活者の立場において別途金融制度としてそういう問題は論じられるべきであり、品物は月賦で買うのだという前提においてこの問題が論ぜらるべきではない、こんなふうにわれわれは理解をいたしているわけでございまして、よろしく御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/16
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017・小笠公韶
○小笠委員 今のいわゆる法的効果の問題につきましては、いろいろ御議論もありますが、私は非常にむずかしい問題だと思うのです。そこらのところはよく御検討願いたいと思うのでありますが、繰り返し私の伺いたい点は、冒頭に申し上げましたその問題が商業活動の相剋の調整と消費者の利益を確保するという問題について提案者の御説明がいろいろございますが、私はもう少し明確な御説明のない限り納得いたしかねるということを申し上げまして、次の下請に移りたいと考えます。
下請関係調整法の問題で一つ伺いたいのは、私は中小企業問題の一つの焦点として、下請関係が大きな焦点になることは認めるのであります。これに対して何らかの解決策を求めなければならぬことも事実でありまするが、この法律のねらっているところによって果して効果が出るかどうかということがまず疑問なのであります。かえって指定された下請業者、親企業あるいは下請企業が現在の世相においては白眼視され、かえって仕事を失っていくというところに追いやられはしないかということを心配いたします。その意味におきまして、いわゆる本法律の適用になる下請業というものをどういう前提で今言ったような心配点をどう防止して指定してきめていくか、これをまず伺いたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/17
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018・春日一幸
○春日一幸君 この法律は第二条で下請関係とは別表に掲げる産業部門、そして第一番目に兵器産業それから機械工業、こういう工合に第一回を考えているのでございまして、現在におきましてはこの兵器の下請と機械の下請関係において代金の遅欠配が顕著である、特に最近悪くなりまして、二百十日の台風手形まで出ているという状況でございまして、今御指摘のようにこれを文句言えば白眼視される、出入りを差し止められるというようなきらい等もございまして、法律の効果についてはいろいろと案じられている面もあるのでございますけれども、しかしながらそれかというてその無拘束、無政府状態というような形でほうっておくということば、私は下請関係の諸君が受けているところのその不当な圧迫に対して、政治的に何らの救済を行わないということも、これまた不当であろうと思うのでございます。従いましてその効果が十分上るか上らないかは別といたしまして、少くとも現在の無拘束状態よりも一歩前進したものである。すなわち代金の支払いは十五日の返品期間を経て六十日後には払われる、払われない場合にはそれに対して日歩五銭の金利をもって経済的な弁償を受けられる、こういう諸規定があるのでございまして、特に第十一条の罰則規定等もございまして、これによって今まで親企業が不当にその有利な立場を乱用いたしまして圧迫をいたしておりました下請関係に対して、相当の救済が行われると確信をいたして提案いたしている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/18
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019・小笠公韶
○小笠委員 先ほど申し上げましたように、下請関係が中小企業の難問の一つであることは御承知の通りであります。何らかの手を打たなければならないことも事実であります。その意味からこの法律をお出しになったお気持はよくわかるのでありますが、もしも法律を作っても効果が疑問だ、あるかないかもわからぬという程度ならまだしも、かえって逆の効果が出てきて中小企業にあだになるような法律を作ることが果して親切かどうか、そこは問題だと私は思うのであります。いろいろ頭の上で考えて、こうもありたい、ああもありたいということはわれわれも考える。しかしこれをはっきり法的に規制して、果してそれが確保できるような態勢になるかどうか、そこまで考えて参らなければ、法律としてはどうかと実は私は考えるのであります。ただいまの点にかんがみまして、私が本法案を通じて心配するのは、情があだになりやせぬかという点であります。それらの点につきましても十分慎重にお考えを願いたい。私の質問はそれだけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/19
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020・鈴木周次郎
○鈴木(周)委員 春日君のただいまの御答弁中に無政府的状態ということがあったが、無政府というのはどういう意味なんですか。言葉のあやでありましょうか。御訂正願った方がいいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/20
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021・春日一幸
○春日一幸君 無政府というのは無拘束、放任という事柄を意味いたしておりまして、これは抽象的な表現であるのでございまして、その説明を申し上げるならば、無統制、無規制、野放図、放漫というような含みを持っているものとお考え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/21
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022・田中角榮
○田中委員長 下請関係調整法案及び百貨店法案両案に対する質疑は次会にまた行います。提案者春日一幸君には御多用中のところ御苦労でございました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/22
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023・田中角榮
○田中委員長 次に田中武夫君より中小企業安定法の一部を改正する法律案について質疑の申し出がありますからこれを許します。田中武夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/23
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024・田中武夫
○田中(武)委員 中小企業安定法の一部を改正する法律案に対しまして、提案者に一、二御質問いたしたいと思います。本法の改正は、石炭鉱業合理化法案やあるいは輸出入取引法の改正法案とともに、独禁法を緩和するための改正である、こう思われるのですが、そこで問題となるのは、中小企業といってもいろいろあるわけでありまして、そのうちのより零細な業者に対して圧迫とならないか、こういう点が大事なんですが、提案者はその点についてどういうようにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/24
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025・小笠公韶
○小笠委員 この法律は御承知の通りその仕組みが業種を指定してやっていくことになっておるのであります。従いまして、一般的な中小企業の安定をはかるというよりも、特定中小工業ということになっておりますので、この業種指定に当りましては、業界の全体的な状況を十分に調査して、第二条の規定の要件を満たしておるときに初めて行われる、こういうようなことになっておりますので、御心配のような点は一般論としては私は起らぬのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/25
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026・田中武夫
○田中(武)委員 同一業種の中にでもいろいろと大きいのと小さいのとあると思うのです。そのうちのより零細な業者に対してはどうなるか、こういうことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/26
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027・小笠公韶
○小笠委員 同一業種の中で御承知の通り三分の二というものが入らなければいかぬ、こういうことになっておるのであります。従いまして本法の二十九条を発動する場合は別といたしまして、通常の場合は合意の上で調整組合を結成するということになっております。従いまして同一業種のうちの零細業者を圧迫するという事実はあり得ない。もしありと仮定すれば、二十九条の命令を政府が出すときにその認識が不足であったら起り得るというふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/27
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028・田中武夫
○田中(武)委員 そうすると問題は調整組合の運営にある、こういうふうに思うわけです。先日の輸出入取引法の改正に関しての参考人の意見の中にも、輸出組合の運営に対して小さい業者の不満が委員会においても吐かれておった、こう思う。従って調整組合の運営という問題について、いわゆるこの組合の中の勢力を持つ大きな業者が、小さな業者を圧迫するような運営がなされていないかどうか。あるいはまたそういうような他の組合にあり得るような不満が起っておるかどうか。また今後そのようなことについてはどのような指導をなされようとしておるか。こういうような点について伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/28
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029・小笠公韶
○小笠委員 まず第一に御質問の輸出入取引法におきまする輸出組合または輸入組合あるいは今後できる輸出入組合と本法に基く調整組合の差は、輸出組合あるいは輸入組合というものは、大きいのも小さいのも全部入り得る。ところがこの調整組合においては、第二条において頭打ちをしておる。従業員三百人以下という中小企業だけしか入れぬというような形に実はなっておるのであります。従いまして輸出組合あるいは輸入組合のごとく大小の懸隔は少い。主として中小企業による業界と認められるものに適用されるのでありますから、その点は若干違うのではないかと私は考えます。先般の取引法の参考人の意見の中にいろいろな運用上の問題で、特に組合幹部のボス化の問題が強く指摘されておったようであります。私はこの点につきましては、いかなる制度によっても、制度上としてはボス化を防ぐ道はなかなかむずかしい。ただ運用上の問題として、特にこの安定法におきましては行政官庁の認可にかけておるところが非常に多いのであります。従いまして行政指導の認可に当りまして、調整規定の認可その他に当りまして、ボス化を防ぐ余地というか、手がかりは相当多いと思うのでありまして、ただいま御指摘のような弊害の起らないように行政当局の運用を私どもは希望するわけであります。今日までの実情においてそういう事実はあったかなかったか、こういうお話でありますが、ただいまのところ二十六業種が指定されておりますが、ただいままでのところは起っておりません。将来戒心すべきことだと私は考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/29
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030・田中武夫
○田中(武)委員 おっしゃるように調整組合は三百人という限度において押えてある、こういうことでありますが、その三百人以下の中にもやはり大小があるわけです。やはり大きなところが小さなところを、より小さなところを圧迫しないか、こういうことなんです。そういうことは輸出組合の場合でも調整組合の場合でも同じことが言えるのではないか、こういうように思うのですが、どんなものでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/30
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031・小笠公韶
○小笠委員 理論的にはお話の通りだと思うのであります。片一方は頭を切っておるが、その中で相対的な大小がありますからお話の通りであります。ただその際に運用上の問題として私が申し上げたいのは、いわゆる三井、三菱のような大きなのが入っておるのと違って懸隔の差がないということを申し上げたのであります。ただ運用上ボス化し、一部の指導者の横暴といいますか、そういうことにならぬようにするのには、やはり指導に当って注意して参らなければならぬと考えております。全く同感であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/31
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032・田中角榮
○田中委員長 帆足計君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/32
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033・帆足計
○帆足委員 小笠さんのお話を承わりまして、中小企業に非常に理解を持たれておることに対しては敬意を表します。その同じ精神を持っておるならば、百貨店法などには積極的に御賛成になるべき立場でおられるものと考えるわけですが、哲学というものは、一貫してこそ哲学といえるので、それが一貫してないとすると、これは性格分裂症ということになるのであります。
それでお尋ねするのですが、中小企業安定法の場合でも、今田中君の言われましたように、零細業者とそれから二百人、三百人使う大きな業者との間に非常に開きがあるわけですから、その民主的運営を公平にやるということは、まず一社一票にしておけば形式的の平等は与えられるが、私は運用上それがさらに公正合理に行われるように何らかの機構的な準備をしておくことができれば一そういいのじゃないかと思うのです。政府委員はそれは官庁の認可のときにチェックすると言いますが、官庁の考え方、いわゆる官僚統制ということとそれから民間のボス化しやすい状況というものは、日本の封建性の上に咲いた双生児で、大体において兄弟のような間柄のもので、どちらにも弊害があるのです。従いまして、日本のように封建性の強い国で物事を公平に行おうということは非常にむずかしいことですけれども、それだけに組合創立の精神から見まして、そういうことをせめて附帯決議に書いておくとか、または定款、施行細則にうたうとか、または近ごろアメリカの影響を受けて法律に道徳的なお題目を書くということが非常に流行しておりますから、そういう教訓を法文の上にもたれておくとか、もう少し考慮の余地があるのじゃないかと私は思います。しかしこの修正案をお作りになった精神からいいますならば、同じ精神を他の組合にも及ぼすべきであって、中小企業の利益の擁護はこの法案だけでは不可能であって、他の組合法の中における中小企業の立場がやはり正当に擁護されねばならぬのじゃないかと思います。たとえば輸出入組合などにおいて強制命令が出ますときは、関係事業者、消費者並びに中小企業の利益を適切に考慮に置くこととか、あるいは組合が政府に申請をしますときには少数意見をも付してこれを政府に、届けることとか、そういうようなことをあちらこちらでよく考えておくことが、組合法というものを従来のようた陳腐なものにせずに公平なものにするために必要だと思うのですが、そういうような考え方に対しては御賛成であろうと思いますけれど——どういう文句にするかということは別です。そういうような哲学については御賛成であろう思いますが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/33
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034・小笠公韶
○小笠委員 本法案の運用につきまして、御承知のようにボス化しない、一部の力によってリードされないような形に持っていくことは全く同感であります。ただ本法におきましては、事柄が事柄でありますので、中小企業安定審議会というものが作られまして、そこで二十九条の命令であるとかあるいは重要な事項をきめる場合に関係方面の意見を聞き、そこに適当な調和点をとって進めるということに実は相なっておるのであります。それで中小企業安定審議会には、関連産業、消費者、学識経験者というものは、最小限の必要条件のように運用されております。そこにおいてお話のような利害の調整が行われてくると私は考えておるのであります。
それから冒頭の、余分のお話でありましたが、私は先ほど百貨店法の質問に際して、百貨店法に反対の意見を表明したのではないのであります。これはお聞きの通り、百貨店問題をいかにつかまえていくか、そのつかまえ方について私は質疑をいたしたわけでありまして、決して精神分裂症に陥ってはいないつもりであります。今日商業活動の増強を調整するのにいかなる考え方でもっていくかという場合に、消費者の利益擁護、その交差点をどうするかという点について提案者の真意をただしたにすぎません。その点誤解のないようにお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/34
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035・帆足計
○帆足委員 ただいまの御説明を伺いまして了解いたしました。特に百貨店については、近代的なそうして文化性のある機関であることもわれわれよく知っておる。その上において中小企業の擁護を考えたいということも同感であります。そこで輸出入組合のような、極端に大きな業者と中くらいな業者、小さな業者がおるような組合におきまする中小企業の利益の擁護もあわせて考えておかねばならぬと私は思うのであります。せっかく中小企業安定法並びにその修正案等をお考えになるならば、大中小一緒におる組合におきましては、中小企業安定法の立案に参画し、これに賛成された方々は、大中小混合してできた組合の運用のときには、中小企業安定法と同じ精神で、中小企業の発言なり利害が考慮され得るように配慮する必要があると思いますが、それについて御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/35
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036・小笠公韶
○小笠委員 安定法につきましての考慮は、先ほど申し上げましたような具体的な方法をとっておることは御承知の通りであります。一般産業政策に対しまして何かを考える場合に、大中小、ことに中小の中でも中と小との関係が実は問題が多いのであります。そういう問題についての調和点をどこに見つけていくかという考え方は十分配慮すべきであって、ただ一方だけ見て走っては困るのではないか、国のためにならぬと私も考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/36
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037・帆足計
○帆足委員 ただいまの御回答でけっこうですから、いずれ輸出入取引法のときに御質問いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/37
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038・田中角榮
○田中委員長 中小企業安定法の一部を改正する法律案に対して質疑はありませんか。——質疑なしと認め、本案に対する質疑は終了いたしました。提案者には御苦労さんでした。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/38
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039・田中角榮
○田中委員長 次に、この際日程に追加し、本日本委員会に付託になりました輸出品取締法の一部を改正する法律案を議題となし、審議に入ります。
まず提案者より、その趣旨の説明を求めます。首藤新八君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/39
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040・首藤新八
○首藤委員 輸出品取締法の一部を改正する法律案の提案理由を御説明いたします。
わが国の輸出品につき、その海外における声価の向上のため必要と認められる商品に対しては、輸出品取締法に基く検査制度が実施せられているのでありますが、駐留アメリカ合衆国軍隊及び国際連合の軍隊のpx等の物品販売機関またはこれらのための物資調達機関に納入する物品については本法の適用がなかったのであります。
これらの物品は韓国、沖繩等に輸出せられ、あるいは国内駐留軍将兵等に販売せられているのでありますが、そのうち耐久性消費物品についてはほとんどこれを本国に持ち帰り使用せられている現状であります。かかる物品のうち特にその納入数量の大きいものについては、その品質の良否は、当該品目のみならず本邦輸出品全般に対する品質上の声価を左右するものであって、かような物品に対しては、その品質の維持、向上をなし、本邦品の声価の確保、向上をはかるため、輸出品に対すると同様に、品質に対する検査を実施する必要があるのであります。
本改正案は、以上の趣旨により、本邦輸出品の声価向上のため、その品質を規律する必要があると認められる右物品に対し、輸出品取締法の諸条項を適用し得る法的根拠を定めようとするものであります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことを切望いたす次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/40
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041・田中角榮
○田中委員長 本案に対する質疑は次会にお願いいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/41
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042・田中角榮
○田中委員長 政府委員が出席をいたされましたので、繊維製品品質表示法案について質疑を許します。笹本一雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/42
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043・笹本一雄
○笹本委員 この際繊維産業に対する総合施策について大臣のお考えを伺っておきたいと思います。繊維産業は戦後の復興に一期を画すると言ってもよい重大な転換期に来ておることは皆様御承知の通りでございます。ここにおいて今度この法案が出された機会に大臣のお考えをお伺いいたしておきたいのであります。
近来政府が繊維産業に対しましていろいろな政策を持ち、一方においてはまた織物業者の設備制限あるいはまた綿紡業者の操業の短縮であるとか、他方においてまた合成繊維、酷酸繊維の育成対策に対しましていろいろな施策を講じ、その影響はまことに関係業者の関心事であることは言うまでもありませんが、また消費者もこれに非常な注目をしていることも御承知の通りであります。繊維の大宗は何といっても綿紡績になっております。ことしの五月以降の通産省の通牒によりまして、休日制度とかあるいは封減制などによって操業の短縮をしております。ところがこの三ヵ月の実績を資料その他で見ますると、当初の目的であるところの綿糸の月産十七万四千コリ、それに対して十八万コリ以上の生産がやはり続けられておるということ、綿糸価格の安定もまた輸出の安売りの防止もこういうふうな状態ではできておらないというふうに思われるのであります。そこで紡機でありまするが、綿紡機は統計に現われておるところを見ますと七百九十万錘、その他を合せますると八百二十万錘に達すると言われております。最近の世界の市場で綿の交易量が減少の傾向をたどっておる、これも御承知の通りでありまするが、これに伴って国内ではやはり綿の比重が下り始めているのも事実であります。いち早くわが国の綿業の適正規模を策定しておかないと、ほんとうに長期の安定ははかられないと思うのであります。ところがかりに適正の範囲が何万錘ということがわかってみても、一度設備いたしますると、その紡機を転換したり処分したりすることは、また綿紡業者にとっても非常に困難なことであります。それでそもそも最近の綿糸と綿織物がスフの発達に伴ってスフと混紡される場合が非常に多く、またスフ糸あるいはスフ織物の代替性も大きいのであります。綿業だけを切り離して安定対策を推進することには無理があろうと思うのでありますが、スフは昨年世界各国への輸出の著しい増大が見られたほか、内需用にも今後増産がはかられる余地がいまだ十分にあると思われる。従って今後もスフ紡機の増設が行われる際には、過剰となった綿紡機を改造してスフ紡機とするといったような綿、スフあるいは両者あわせて使えるようなことにすることは必要な
ことであります。
〔委員長退席、首藤委員長代理着席〕
また一方、他方におきまして昨今ナイロン、ビニロン、アセテート系統、または合成繊維、酷酸繊維の発達は政府の育成もあってきわめて目ざましいところの発達をしておるのであります。天燃繊維と違いまして、その原料のほとんどが国産でまかなえるのでありますから、わが国にとっては非常に喜ばしいことであります。そのために明治以来の輝かしい歴史を持つところの繊維産業に無用の混乱を招くことは避けなければならない。そうして円滑な計画的な転換が行われるように考慮しなければならないということば申すまでもありませんが、そこで飜って衣料を買う方の一般の消費者の立場を考えれば、これらの転換政策の実行の面において、衣料は生活費の大きな部分を占めておるのでありますから、羊毛、綿花の輸入制限によって、毛製品、綿製品がいち早く価格の暴騰をするようなことは反対であります。しかし新しい繊維製品については、品質を保証して、安く入手できるようにわれわれは希望してやまないのでありますが、そこで今度提案された表示の問題については、私はもう根本からこれには賛成するものであります。繊維産業界がそういうことによって不当に混乱をすることは、これをよく考えて混乱のないようにしていただきたい。そういうようなことから、このようにそれぞれの特別な事情と困難とを持っておる多様な繊維業界が、お互いに競合しておる現状でありますので、関係業者としても繊維全体の総合的な見通しを持って、安心して仕事ができるような状態にしなければならないと思うのであります。政府はその関係業者の仕事の指標を示すとともに、政府の繊維業者に対するところの諸政策の基礎とするために、長期的な見通しのもとに総合対策を樹立する必要がある。これについては大臣はもう非常に関心を持っておると思いますが、一時的なものでなく、総合的に、みながいろいろな製品を作る上において、また営業する上において、いろいろの策はありましょうが、一つの長期的な、そうして国際的にも、国内的にも信用して物が買え、信用して輸出ができるということをするには、この機会に、長期的な見通しのもとに総合政策をお考えにならなければならない。あわせてもしかような総合対策を実施する場合には、政府機関において、ここに当局者が来ておられますが、単に机上の空論でなく、実際の事業家あるいは輸出業者あるいは需要者というものの実際面を把握しまして、空論でなく、ほんとうに実行しやすいところの案を作られて、関係業者が迷惑するおそれのないように施策を実行してもらいたい。それには総合対策を樹立検討をする機関として、関係業界の最高責仕者、あるいはまた各界における学識性験者、あるいはまた内閣においては関係の閣僚等によりまして権威あるところの審議機関を政府部内に設置してやっていくお考えはないか。あるいは行政管理庁とかなんとかということになりますと、自分の行政関係のことだけで、そうして繊維ばかりでなくすべての産業の育成、そういう地に着いたそして不偏に長期にいかれるということを考えても、役所においては行政管理庁のごときは法令とかいろいろなものを一つのたてにとりまして生きた政治をしようということに、今までとかくいろいろ産業関係にもそういうものを作っていこうということが阻止されております。今度この繊維の問題については将来非常に長期的に考えまして、輸出にも国内の事業者が安心していかれるというのには、どうしてもそういう審議会というものを作るということを一番先に行うべきじゃないか。これには今いろいろ言う各省との関係、特に行政管理庁のいろいろな横やりもありましょうが、これを実行する点については、一つ権威あるところの今言う審議機関のようなものをお作りになって、不偏の政策をとっていったらどうか、これに対するところの大臣のお考えを聞かせていただきたい、こう思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/43
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044・石橋湛山
○石橋国務大臣 今の御意見はごもっともでありまして、私ども通産省としては、他の役所からどういう批評があるか知りませんが、繊維の総合対策を立てるために、お話のような各方面の知識を十分に集め得るところの一つの審議会を作ってその評議にかけるという決意をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/44
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045・笹本一雄
○笹本委員 今大臣の力強い決意のほどを拝聴いたして、必ず今提案になっておるところの問題についても業界あるいはまた輸出に関係する人たち、ひいては輸出を受け取る国側においても大臣の今の力強い決意のほどを実行面に現わしていったときに、すばらしい成績を上げられることと確信いたします。ぜひこれを力強く実行されることを希望いたしまして、私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/45
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046・首藤新八
○首藤委員長代理 中崎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/46
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047・中崎敏
○中崎委員 ただいま笹本委員から適切な意見の御開陳がありました。私たちも同じ考え方の上に立って質疑をしたいと思います。
さて繊維産業の中で、ことに紡績事業につきましては、日本の紡績の歴史というものは操短の歴史である、従ってまたこれが紡績業の発達の歴史であると同時に、一面労働階級搾取の歴史とも見受けられるのでありますが、ことに最近になりまして、また例の紡績操短のことが行われておるということになっておるようでありますが、さてこうした五月の紡績操短をしなければならなくなったというその事情並びに今後の方針について一応説明をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/47
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048・永山時雄
○永山政府委員 ただいまの御質疑に対しましてお答えいたしますが、綿紡の操短につきましては、実は綿業界は昨年初頭から不況状態でございまして、特に綿織物の関係におきましては、その傾向が非常に顕著でありました。従ってそれに対する第一の施策といたしましては、まず新しく織機がふえることを防止をするという意味におきまして、昨年の十二月から設備制限をいたしまして、織機の増設を制限をいたしたのでございます。それからさらに本年の二月に入りまして、全国的に調整組合というものができておりますが、その調整組合が従来の操業に対しまして一割二分ほどの生産制限を実行しようということで組合がその決議をいたしましたので、政府といたしましてもこれに認可を与えまして、積極的にできるだけ協力をするという方針をとったのでございます。ところがこれらの措置によりまして、その措置のとられた直後におきましては、若干の改善の傾向は示したのでございますが、ただ何分にも条件が一般的にすこぶる悪いということと、特に生産制限につきましては、機の専門の業者のほかに、紡績と一貫をして機をやっておりますいわゆる兼業者というものがございますが、この紡績の兼業者が生産数量からいきまして約四割近く、三割何分という大きな生産をいたしておるのでございます。この紡績兼業者がただいま申し上げた生産制限に同調をしない限りにおきましては、生産制限の実が上らないというような点もございまして、せっかく二月一日から一割二分の操短を実行いたしましたが、その効果は十分に現われなかったというような経緯をたどったのでございます。従って綿織布関係の不振状況を改善するためには、結局綿糸の問題から対策を立っていかなければならない、ほかに残るところの手は、まずもって手を尽したというような状況に立ち至りましたし、また綿糸そのものの価格もだんだんとことしの三、四月あたりから下降傾向を顕著に示して参りました。従って綿糸の価格自体からいきましても、操短をいたしましても、まずもって不当な値段じゃない、また日本の綿業の原料であります原綿は、海外から輸入をいたしておるわけでございますが、この原綿の消費状況も、毎年外貨予算で政府が計画をいたしておりますその標準消費量というものから見ますと、従来かなり過剰消費の傾向になつておるというような点もございましたので、いろいろな点を総合勘案をいたしまして、今年の五月一日から綿紡績につきましても、一割二分の操短勧告をするということにいたしたのでございます。しかして五月、六月続けて一割二分の操短をいたし、また七月におきましてもいろいろ操短の状態を続けておるということでございますが、綿糸布の需給関係から申しますと、これは季節的に多少異動があるのでございますが、現在の輸出の状況、それから国内需要の状況というものを見ますと、大体月に十七万コリくらいのところが普通の需要量、消費量ではなかろうかというように私ども考えおります。従来は月にいたしまして約十九万六、七千コリ、二十万コリ足らずのものが生産されておったのでございます。従って過剰生産、それからまた従来から累積しております在庫数量も相当に多いというようなことで、いわゆる需給関係がバランスを失しておったのでございますが、ただいま申し上げました五月から操短を実行いたしましたので、逐次生産は下りつつあります。まだ六月の確たる状況はわかりませんが、大体五月は十八万コリくらい、六月も多少の異同はございますが、まずそれに近いものではなかろうかというように推測をいたしておるのでございます。おそらく七月、八月と月を重ねるに従って、操短の方の態勢も軌道に乗って参ると思いますので、だんだんと需給関係が改善をしてくる、かように考えております。従って一時六月の当初におきまして、御承知のような綿価格の暴落状況を呈したのでございますが、これもただいまの操短の関係、あるいは海外の原綿の価格がある程度持ち直してきたというような事情から、昨今におきましてはかなり安定をした状況に立ち至っておるのでございます。引き続き今後の綿の需給関係というものを見通しをいたしまして、ある程度の操短は継続して参りたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/48
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049・中崎敏
○中崎委員 大体十七万から、もう少し程度が従来の需給の常態であるというようなお考えで、現在の状況では約十八万程度できておるということであります。そうすると、大体五月当時にどの程度のストックがあったかということを、一つお聞きしておきたいのであります。ふだんの場合においては三十万コリ程度のストックが通常の状態であるのが、五十万コリになった、そこで綿の需給関係から見て、少し多過ぎるから、、そうした面からもまた紡績の操短をやらざるを得なくなったという見通しだというのでありますが、そうなると、かりに十八万コリが継続されたとしても、この面からは月々の需給量というものはこれで大体マッチするから、五十万コリ程度、言いかえれば、二十万程度多い状況が相当長く続くものと認められるので、ありますが、これらの将来のストックの見通しは一体どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/49
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050・永山時雄
○永山政府委員 大体お話のように、在庫の数量は五十万コリくらいでございます。従って需給関係をできるだけ正常な状態に戻していくという意味におきましては、やはり何といっても生産の関係をある程度縮小するということはやむを得ない処置である、かように考えております。今後の需要の状況を見ますと、国内の需要は別段特別に新しい変化を予想させるような事情もございませんし、それから輸出の関係は、これは一時非常に輸出も減るのではなかろうかという、多少行き過ぎの心配がされておったようでございますが、現状におきましては、輸出の関係はそれほど心配をする必要がない状態でございます。そうかといって、今の五十万コリの在庫を顕著に減らしていくような作用をするほどの名案があるとも思えませんので、従ってある程度操短を着実に実行をして参りまして、少し長い時間をかけてもだんだんと正規な状態に戻していくということが必要ではなかろうかというふうに考えております。それで先ほど申し上げましたように、現在の状態では大体十八万コリ強の生産がこの一、二カ月の実績でございますが、できるだけこれを十七万コリ台に下げて、実際の需要に近い数字、あるいは若干でもそれを減らしていくような状況に持って参りたい、かように考えております。ただしこれは工場も生きものでございますので、労務者をかかえ、あるいは毎日毎日の金融で動いておることでございますので、急激に工場を休むとか、あるいは操業をカットするとかいうようなことは、非常に困難あるいは副作用を呼んで参りますので、従ってできる限りゃはり長期の操短という態勢にだんだんと業者自体も努力をさせて、積極的に失業者を出さないというような配慮をいたしておりますが、逆にいえば、新しく人員の増加をする、雇い入れをするというようなことはできるだけ避けるという方策を講じまして、逐次操短率をある程度強化をして参りまして、そうして需給関係のバランスを合わせる。ただしこれも同時に綿糸の方の価格の方の面もあわせて考慮していかなければなりません。あまり綿糸の価格が高くなるというようなことになりますと、これは態勢としては操短をだんだんと強化していくという方向に持っていくべきだと思いますが、これはそのときどきの事情を見ながら、その態勢にだんだんと進んでいくように心がけなければならぬ、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/50
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051・中崎敏
○中崎委員 長年多大の犠牲を払って紡績業を今日まで持ってきている経営者もそうでありますが、ことに従業員に対しまして、いわば今日こうした事態を起さしたということは、一面において政府の大きな責任だと考えております。ことにたとえば今綿花の割当外貨というものを政府が一手に握っておるのであります。その綿花の割当等によって、たとえば三十万コリのストックで常態であるべきものが、五十万コリもある、これは一時的で、また次の需要が現実にあって、これが何ヵ月の間になくなった、三十万コリに返るというふうなことであれば、別に言うことはないのでありますが、こうした慢性状態において、しかもここに一割何分の操短までやって、今後も操短をこれ以上やらなければならぬというふうな行き方を来したということは、一にかかって政府の計画性の欠除である、産業指導の能力において十分に職責を果さなかったと私たちは言いたいのであります。これがさらにこの操短を強化することによって、次にまた労働者に対して大きな出血犠牲をしいるということになると、私たちはこのままで見ておることはできないということになるのではないかと思うのであります。しかもそればかりでなく、今必要以上に長期間ストックをさしておって、同時に市価を不当に混乱せしめるというふうな大きな障害を来たしておるという事実等を考えてみたときに、もう少し政府の行政のやり方が、計画的な、しかも信念の上に立ったところの一つの方向が示さるべきものだと私たちは考えておるのであります。そこで今この操短に当面して、原綿の割当等によってさらに操短の一つの計画に基く調整の問題があるのかないのか、あるとすれば、これをやる考えがあるのかどうか、それを一つ伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/51
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052・永山時雄
○永山政府委員 原綿の割当によって操短の問題の処置があるのではないかというお話でございました。これはまことにごもっともなことでございますが、ただいまお話のような意味で検討研究はいたしておりますが、ただ原綿の輸入につきましても、日本が自由に、たとえば輸入を縮小するとか、あるいは買わないとかいうことのできる市場というものは、比較的少いのでございまして、通商協定上こちらのものを買ってもらうかわりに、向うの原綿も入れるとかいうような、 いわゆるバーター的な売り買いになっておるものが非常に多いのでございます。従ってそういうような関係からいたしますと、一面において日本の輸出というものをできるだけ減らしたくない、むしろふやしていきたいというような意味合いからいたしますと、ある程度国内事情というものもがまんしながら、場合によっては買わざるを得ないというような事情もございますので、内の操業短縮というような問題とからみ合せて、できるだけ原綿の方も操短の態勢に合致し得るような、原綿の外貨予算といいますか、輸入といいますか、というような問題も国内の操短態勢に合致し得るような態勢にいたしたいということで現在研究をいたしておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/52
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053・中崎敏
○中崎委員 そこで通産大臣にお聞きしたいのでありますが、いわゆる外国との協定によるため、日本の事情でときには必要でなくても買わなければならぬというような制約を受けておるというような今の局長のお話でありましたけれども、いわゆる国策遂行の犠牲となって、そうして何ら直接の関連がないところの業者に対して犠牲をしいるということは好ましき姿でないと思います。そこでかりに綿花をある程度輸入をしなければならぬというようなはめに追い込まれる、そういう協定をしたとしても、もし綿花が過剰である場合にも買い入れなければならぬというなら、それを政府の手に買い込んでこれをストックするというような方法でも考えられるのかどうなのか、あるいは倉庫会社に委託して政府の方で一時金を何して、そしてそこへ預けて保管させておくとか、こういうような手を打つのが当然国家としての正しいあり方だろうと思うのでありますが、こういうことについて大臣は一体どういうふうにお考えになっておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/53
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054・石橋湛山
○石橋国務大臣 海外諸国との関係上綿花の輸入も必要だということも、面そういうことはありますが、同時に私は国内の業者の方でもいきなり綿花の制限をされたらすぐたちまち操業を非常に縮小しなければならぬ、従って労務者の首切りをしなければならぬということも起りますから、国内の事情から申しましても実は徐々に縮小するという以外には道がないのじゃないか、すぐにはっきり割り切ってしまったらたちまち大きな混乱が起るということがありますから、はなはだ煮え切らない政策でございますが、やはり原綿の割当、たとえば現在の中小紡ですぐに操業に困るようなものに対しては、特に考慮して原綿の割当をするというようなことを現在やっておりますが、こういうようなことをやらざるを得ないのです。ですからお話のように原綿の側面からいきなり数字に合うような操短を実行するということは、事実上私は困難だ、今の方法で逐次やっていくということが一番適当だ、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/54
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055・中崎敏
○中崎委員 大臣はこの内閣において、いわゆる総合的計画経済の上に政治をやるのだということを公約しておられる。大臣自身もしばしばその総合的計画経済の上に立って、たとえば綿紡なら綿紡に対策を立てるのだということを言明しておるわけです。そうすれば大体三十万コリなら三十万コリ程度は、通常な状態においてストックしてあるべきだ、それが一万コリ、二万コリふえして、そうして五十万コリ、約倍額程度になった。ということは相当長期にわたって野放図に放任しておいたところにそういう原因がある。そういう問題が起る前に、五十万コリもストックが起る前に、これは人間を倍にふやしたのじゃない、言いかえれば、苛斂誅求じゃないけれども、やたらに時間まで延ばしてやっている。たとえば夜間操業でも、観念からいえばもう十時なら十時でいいものが、慢性的に十時半まで延ばされた。それでかの人間の労働力の苛斂誅求によってそういうことが行われておる、そういう対策を講じてそうして正常な状態において一体どういうふうにするのかということをまず検討して、しかる後に今の対策を講ずれば、あなたが言われるように一ぺんに、余ったら今すぐ首を切れ、すぐ操短しろということを言わぬでもやっていけるはずなのです。そこを言っているのです。だからそういう政策を総合的ににらみ合せてみて、これが一番この業界としてとるべき方針であるということを講ずべきだ。その際において、たとえば一カ年間の計画が実際においては先にいってみるととても狂いそうだ、それでは綿花が三十万俵はことしは多そうだ、そうすれば政府の方でストックして配給をまずとめておこうじゃないかということもある程度できるのではないか、そういうような考え方について一つ聞いて、おるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/55
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056・石橋湛山
○石橋国務大臣 品物の需給の予測というものはそう簡単ではないと思います。今ストックがふえましたのも、なるほど政府の政策が間違ったといえば間違った点もあったと思います。しかしたとえばアメリカの綿花がこういうふうにアメリカの政策によって動いてくるということも非常に大きな作用をなしておりまして、その結果現在のような状況になった。過去のことを言えばいろいろの方面に欠点がございますが、しかし現状においては上にかく先ほど申したように、一つ至急に総合対策をも立てて、将来においてはできるだけかような困難を来たさないような方策を講じたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/56
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057・中崎敏
○中崎委員 そこでことしの五月に紡績操短の勧告を出しておられるというのでありますが、これはどういう根拠に基いてどういうふうな内容の勧告をされたかをお聞きしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/57
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058・永山時雄
○永山政府委員 これは実態的な事情は先ほど申し上げましたように、まずこの一年半ばかり続いております綿業特に綿布の価格が非常にいわゆる不況状況というような状況に該当いたしておりまして、われわれの方でもいろいろ詳細に調べたのでございますが、正常なコストを割っているというような状況でございます。従ってこのために、たとえば品質が落ちるとかあるいは粗悪品かどうしても出ざるを得ないとかいうような、いろいろな弊害が出て参っておりますので、従って先刻申し上げましたようないろいろな方策を講じて参ったのでございますが、どうも綿糸の問題を切り離して綿布だけの市況の改善をするということは、従来から……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/58
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059・中崎敏
○中崎委員 その説明でなしに、どういう法的根拠に基いてやられたかということを聞いている。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/59
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060・永山時雄
○永山政府委員 実態的な根拠は、今申し上げましたような綿布の改善の問題、それから原綿の過剰消費の問題、それから綿糸自体が価格的にいってかなり低い値段になってきておる、あるいはまた輸出の安売りを防止するというような事情で、それによりまして政府が行政権に基きまして個々の綿紡績業者に対しまして操短をするようにという意味の勧告を出したのでございます。法律的に言いますると、行政権の一つの作用としてするということでございます。内容は従来の操業基準にいたしまして、全体として大体一割二分くらいの減産をも一たらそうという趣旨で、休日あるいは設備の封緘ということの方法をとったのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/60
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061・中崎敏
○中崎委員 一つの事業界に対して一定のカルテル行為といいますか、一つの生産の制限等を、勧告といっても実際はこれに従わなければ綿花の割当はやらないというふうな、一つの国家権力を背景とした罰といいますか、処罰の伴う一つの権力発動の行為たというふうに見るのです。こうしたようなことは独禁法に対して一体どういう関係を持つのか、独禁法には全然触れないものであるのか、独禁法の趣旨に確かに触れるものであるのか、そこのところを一つお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/61
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062・永山時雄
○永山政府委員 独禁法でも御承知のように一種の不況カルテルといいますか、非常に価格が下落をいたしまして、その業態全体を危殆に陥らしめるというような場合には、いわゆる不況カルテルを結成いたしまして、ある程度のある種の生産制限の申し合せをする、それを政府側が認可をするという道が開けておるのでございます。ただ今回の綿紡操短につきましては、先ほどから実態的な事情を特にくどく申し上げましたように、理由が単に綿糸の価格が下ったということだけではなく、むしろ綿布の価格そのものが非常に不況の状態で、これを改善する必要があるということ、それから原綿の消費が過剰状態、いわゆる自転車操業といいますか、現在の経済状況でやむを得ず操業を続けざるを得ないというような自転車操業の面に追われまして、原綿の過剰消費の現象が出てきております。それからまた輸出品につきまして安売、これは過剰生産の結果からそういうような問題も出てきていると思いますが、輸出の安売というような現象も出て参りまして、これも前から海外の競争国から相当痛烈な批判攻撃を受けてきております。従ってこういうような公益的な事情からいたしまして、結局これらを改善するためには綿糸そのものについて生産制限をする必要が遡る。これは個々の業者が好むと好まざるとにかかわらず、国家的な立場、国民経済の立場からいたしまして、ある種の生産制限をさせる必要があるということが主たる事情であったのであります。ただしむろん綿糸の相場そのものが相当値段がよろしい、高いというような場合におきましては、操短によりましてさらに価格が上るという副作用も出て参ります。従ってこれも操短を決定する一つの考慮すべき事情、ファクターではあるのでございます。従ってその点をにらみ合せて、従来綿糸操短につきましては非常に慎重な態度をとって参ったのでございますが、先ほどからるる申し上げましたように、尽すべき手段をいろいろ尽したが、どうも綿糸の操短そのものに手をつけなければ今申し上げたような事情の解消ができないということ、それからたまたま幸か不幸か綿糸の相場も当時におきましてはかなり下落をして参りまして、採算点から見まするとあるいは採算点を割るか、コストすれすれというような状態で、この際綿糸につきましても操短を勧告をいたしましても、まず価格的にいってもそう不当なことにはならないというような事情も加わりましたので、五月一日からただいま申し上げたような内容で操短の勧告をしたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/62
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063・中崎敏
○中崎委員 とりあえずどろぼうを見てなわをなうようなことで、非常にあわててやっておられるようです。それぐらいの事情はわからぬでもないのでありますが、いやしくも国家権力をもって一つの事業に対して命令を出すからには、やはり法的根拠がなければいけないのじゃないかと思うのであります。
〔首藤委員長代理退席、小笠委員長代理着席〕
ただ単なる行政権の発動として出したのだというだけでは、どうも私は納得がいかないのであります。そうした法的根拠について、理由がわかりましたから、もう一度説明を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/63
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064・永山時雄
○永山政府委員 法的の根拠の問題は、先ほど申し上げましたように、今回の操短が業者側の発意といいますか、希望というようなことではございませんで、役所側から見て、全体的の立場から見て操短をさせることが必要である、かように考えましたので、通産省の一般の行政権といいますか、行政指導といいますか、それに基きまして勧告をするということにいたしたのでございます。ただ、お話のように相当業界に対しましていろいろな意味の影響を与える問題でございますので、本来ならば法的な根拠というか、特に何らかの条文的な根拠があるということが一番望ましいと思いますが、ただし私どもは先ほど申し上げたような一般的な行政指導、行政権ということに基いて勧告いたしましたので、別段違法だとは存じておりませんが、さらに条文的な根拠がありますれば一そう適切であろ、かような感じはいたします。従って今後、先ほど大臣から御答弁をいたしましたような総合対策というようなものが練られます場合に、今後の問題としてこうしたことにも何らかの明確た根拠を与えるようた機会がありますれば、非常にけっこうなことでなかろうか、かように感じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/64
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065・中崎敏
○中崎委員 あまりこの問題には深く突っ込みませんが、いずれにしても法治国民として、国家の権力をもって国民に臨む場合において、今言われるように一つの法規の根拠もなくしてやられるということは、われわれ国民としても非常に不安を感じておる。さらにこうしたことがしばしば発動されるということになると、結局において法治国民としてのあり方といものがわれわれわからなくなってくるということを一つお含み願って、今後対策を立てる上においては万全の措置を講じておかれることを要望しておく次第であります。次にまたこの操短のことに入るのでありますが、今度の操短の勧告といたしましては、休日制の採用もしくは封印制の勧告をされたというのでありますが、封緘をやって操短をするということについては、従前もあったことでありますし、一応やむを得ない事情として認められないでもありませんが、休日制をとるべきであるということになると、ここに労働組合員の生活に直接触れるところの問題が起ってくる。言いかえれば、会社側の事情で政府の命令によって会社が休まざるを得なくなった。従って会社は政府が命令したのだからおれたちの責任ではない、そういうことで組合に対しては休ませて、それに対するまともな給料も払わないというような根拠がここに作られておるというふうな結果にもなるのでありますが、一体この点については政府はどういうふうに対処しておりますか、今後どういう措置をとろうとするのか、お聞きをしておきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/65
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066・永山時雄
○永山政府委員 操短方法は現在実施をさせておりますのは、休日制でもよろしいし、あるいは封緘制でもよろしい、業者が好む方法を自由に選択ができるということにいたしておるのであります。従って当初におきましては、むしろ操短の効果を早急に的確に出すというような意味で休日に重点を置いたのでございますが、現状においては今申し上げたような選択制をとっておりますので、従って工場の実情に応じてそれぞれ経営者側と労働組合側とが話をいたしまして、その話し合いによっていずれの方法でもとり得るということにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/66
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067・中崎敏
○中崎委員 実情は、会社側では、やれ二つの選択の道がある、片方封印だけやれということならこれでやれるのたから労働者の方に関係ない、ということはないが、直接給料はもらえないという問題は起らない。二つの選択の道があるからどちらをやっても会社の都合であるということになって、会社の都合であるということは結局自分たちは責任がない、政府の方から言われたことをやっているのであるから、労働者の給料についてのそうした責任は持てないということになる。この際封印によってやれというような勧告だけで目的を達成せられないというなら別だが、いずれにしても操短をやるという大きな至上命令で一応目的に到達さえすればいいのだから、その上に必ずしも労働者まで巻き添えを食わして道連れにする必要はない。そこで、政府の方で今度また操短の勧告を依然続けてやられるのでありましょうが、その際においては一つ封印によってやれというふうな勧告だけで目的を達せられないものかどうか。またそういう考え方があるのかどうか、それを一つお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/67
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068・永山時雄
○永山政府委員 今後の操短につきましても、方法論としては封緘制、休日制いずれでもよろしい、個々の工場の実情、会社の状態によってそれぞれ妥当な方法を選ぶようにということでやって参りたいと思っております。お話のように封緘制一本あるいは休日制一本ということは、それぞれ事情が各工場によってまちまちでございます。たとえば工員の非常に多いところと、比較的少いところとによっては、工員の少いところでありますれば、封緘制の一本でおそらくやっていけるんじゃなかろうかと考えますが、工員の多いところにいきますと、なかなかそうした事情にはいかないというようなことで、それぞれ事情が工場によって違いますので、従って私どもといたしましては、お話のように操短の効果が上ればよろしいというような趣旨で、休日制でも封緘制でも、いずれでも選択ができるという方法でやって参りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/68
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069・中崎敏
○中崎委員 それならなぜ会社の内部にまで入っていって——操短の目的を達すればいいのだから、あまりにこまかい具体的な施行の内容にまで入る必要はないじゃないかと思う。ことに国家の権力というものは、それほど広範なものでなくて、なるべくほんとうに必要な最低限度にすべきである。今みたいにそれが口実になって、政府の方から休日制をとらせるというところまで言ってきておるから、会社としては、経営者が、それをやるのだといって逃げておる。だから、そういうふうなつまらない摩擦を起したり、ことに労働者に大きな犠牲を負わせたりすることは、政府がつまらない指示をしてくるからそういう問題を起してくるということであります。その点について政府が反省をしていただかなければならぬ。責任を持って、言いかえれば、それだけ賃金が払えなくなったら政府の方で何らかの方法で埋め合せをしてやるのだということになればいいが、頑迷固陋な経営者がそれを口実に払わなくなった場合において、幾ら経営者と労働者が話し合いをしても、実際問題として誠意をもって話し合いをしない。そういうような発端を政府の方でやっているのだから、この際謙虚な気持をもって、具体的なことでなしに、ただこの範囲の操短をやってもらうことを希望するのだというふうな程度で一つ話を進められないものなのかどうか、これは一つ大臣にお聞きしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/69
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070・石橋湛山
○石橋国務大臣 なるべく労働者にも迷惑を少くするような方法がけっこうでありますが、私は技術のことはわからぬが、お話のように封緘にすれば全然労務者には迷惑は及ばぬ、休日にすれば非常に及ぶというものでもない、こう考えております。むしろやはりそれぞれの工場によって、できるだけ一つ話し合いでやってもらった方がいいのじゃないか、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/70
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071・中崎敏
○中崎委員 現実にはそうなっておるのです。言いかえれば、政府の方から休日制もやれというふうな指令があったものだから、そういう指令に従ってやる場合は自分たちの責任じゃないのだといって逃げておるのが現実だ。から政府の方で、そういうことがないように、言いかえれば、たとい休日制は必要によってとるとしても、その際においては何らかこれにかわるべき、労働者の収入の上に不安を与えない、生活の確保はするのだというような努力なり何なりするというお考えがあればいいけれども、言い放しであとの責任は持たぬというような無責任なやり方では私は賛成できない。だから、そういうような問題をどういうふうに処置するかという政府の考え方を聞いておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/71
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072・永山時雄
○永山政府委員 操短に伴う犠牲の問題は、私どもはかように考えておるのです。失業者を出すというようなことは、これは社会一般の立場から見ましてできるだけ防止をするという性質のものでございますし、また失業者が出るというようなことになりますと、操短そのものについてももう一度慎重な考慮を、すべきだというようなことにもなるので、従って今回の操短によっては失業者を出すことがないようにということの用意はいたしております。また業者の方からも失業者を出すことはしないということの回答が全部から来ておるのでございます。ただそれ以上に休日制によるか封緘制によるか、ないしは賃金の問題をどういうふうにするかというようなことは、これはお話のようにあまり政府が個々の工場あるいは会社の経営や操業の内面に立ち入るべきでないと考えておりますので、その点は労働組合あるいは経営者双方が良識をもってお互いに話し合いをするということを期待をいたしておるのであります。操短ということはもともと綿業を安定しようということでございますから、むろん経営者側にも利益がありますが、同時に労務者側にも会社がつぶれない、あるいは安定をするというような意味での利益というか、そういうものはあるわけでございます。従って犠牲の関係もできるだけ労使均分負担ということがその本旨でごございまして、その建前の上で労使が良識を持って話し合いをしてもらいたいということを、これは私どもの方から全繊に対しましてもあるいは紡績協会側に対しましても、それぞれ政府の意のあるところを伝えておるのでございます。従って、操短という大ワクの中で、個々の工場によって、どういう方法をとるか、あるいは賃金支給についてどういうような協定をするかという問題は、一切両当事者にまかせる、政府が千差万別の事情のある個々の内容に入るということは妥当でない、かように考えまして、先ほどから申し上げているような態度で方針をとっておる実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/72
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073・中崎敏
○中崎委員 操短について休日制によれとかあるいは封緘制によれとか、そういう具体的な指示を出した例は今までありますか。そうしてほかにもそういう具体的な方法まで指示して出す例が一体あるか、そうやらなければならぬ理由は一体どこにあるか、それをお聞きしたい。ことにまた労使が均分負担制というのだけれども、労働者の側においては生活するための最低限度の生活費なんだ。これによって事業がつぶれるというならそれはお互いにやらなければならない、十分余力のある事業までが——政府のそうした無用なくだらない内容干渉にわたる指示によって、現実に損害を受けておる。だから労使双方に均分にその責任を持てといったって、それは政府が不必要にその労働者を圧迫する方法に出ておる、こういうことが言えるのでありますが、そこのところを一つお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/73
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074・永山時雄
○永山政府委員 操短の方法といたしましては、結局休日か封緘かということになるのでありまして、ただ政府の方から押える方法としては生産数量そのものを、たとえば東洋紡なら東洋紡は何万コリあるいは日紡のどこそこの工場はどれだけというような生産限度を示すやり方もあるのでございます。これは三年ほど前に綿紡操短をいたしたときにもとった方法でありますが、必ずしも方法としていい成績を示さなかったというような実績もあるのでございます。ことに現状におきましては、生産数母を確実にチェックすることの的確な方法がまだ確立をいたしておりませんので、従って個々の工場、個々の会社の生産をこれだけに押えるという方法は一見非常にいいようでございますが、その方法論が備わっていないというような意味で、結局休日制によるか封緘制によるか、いずれかの方法によるということになってくるわけであります。そこで現状におきましては、休日制あるいは封緘制、いずれでもよろしいということにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/74
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075・中崎敏
○中崎委員 言いかえれば、その内容にわたって深入りした根拠を聞いておるのでありますが、それにしても今あなたがどっちかをやれと指示しておっても、現実には操短の実が上っていない。現に相当やっておる。全体としてはどの程度上っておるか知らぬが、やっておるところはやはりどんどんやっている。それだから、あまり大局的に最後の責任は持てぬというようなことではなくして、あのまじめな労働者、特に繊維産業の労働組合は非常にまじめである。非常にまじめな女工なんかが多いために、やかましい争議もやっていない。実に穏健な常識的な組合である。そういう組合であるがゆえに、政府の方からあまりにも一方的に押えつけるような印象を持たせる扱いをしてもらいたくないというのが私たちの要望なんです。
だから私はこういうことを一言要望しておきたいのです。さらに操短に関する継続的な勧告をされると思うから、その際においては——とにかくそうした組合は話をしたい、したいと言うけれども、あまり話をしたくないといって経営者の側ではよけている。あなたの方で話をしろ、話をしろと言ったってできっこない。ですからあなたの方から、ほんとうにお互いに十分に納得のいくまで話をするような勧告をできるだけ一つしてほしいと思うのです。
それからもう一つ、深夜業についての例の——これは労働基準局の範囲と思うのでありますが、そういう操短をして、一面では休め休めと従業員に言って強制的に休ませながら、反面においては深夜業を継続的、定期的にやっている。こういうことはきわめて不合理と思う。そこでこの問題についてあなたの方で労働省と話し合いをして、現段階においては必要ないのだから、まず深夜業を廃止すべきである、そういうことをやる考え方があるのかどうか、お伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/75
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076・永山時雄
○永山政府委員 深夜業の問題は現在まだ十時以降三十分ばかり延長してやっておるのであります。これはお話のように、今の休日制を設ける、あるいは設備を封緘してまでも操短をしなければならぬ事態におきましては、深夜の部分まで認めるということは妥当でたいように思うのでございますが、ただこの問題は、同時に八時間労働につきまして、いわゆる拘束八時間という観念をとるか、あるいは実働八時間という観念をとるか、その辺の問題が相当実質的に影響してくる問題だと思うのであります。十時以降の三十分をカットするということになりますと、その部分だけが結局七時間半というような結果になりますので、それで賃金の問題につきまして引き続き八時間の賃金を支給してもらいたいということになりますると、今申し上げたような問題が出て参るのでございます。この点はどうも経営者側の考えも私に言わせると、もっとオープン・マインドで話をしたらいいと思いますが、同時に労働組合側もただいま三十分の問題だけを問題にしておりまして、その先の労働時間、拘束制なり、実働制なり、その問題に当然関連をしてくる問題でございますが、その問題を多少避けて議論しているように思いますので、私どもはその意味におきまして、労使双方に対してもこの問題についてはもっと両方とも胸襟を開いて問題の先までさらけ出して話し合いをしたならばいいのではないかという意味の注意をいたしているのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/76
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077・中崎敏
○中崎委員 いろいろ問題はまだあるのですが、一応これでやめますが、ただいまのその問題ですが、少くともこれは拘束八時間と実働八時間という問題と関係して、各労働基準局において例外を設けて三十分ずつの延長をしていることは事実です。しかも片一方において政府の方からこの勧告をして、そうして休日をとって無理やり休ませているという事実がある。そこで少くともその操短によって休日制を実施しなければならぬということが続く限りにおいて、まず三十分の問題を解決していく——解決というか、一時的にその間において時間の延長を保留するというか、その間においてはもう八時間でいいんだ、こういう措置をとって将来またどんどんよけいやらなければならぬという事情が起ったときはあらためて話をすればいいのではないかと思うのでありますが、それらの点も十分に考えて、そうして経営者側が弱い労働組合に対してあまり反発心を起させたり、むほん心を起させないように気をつけていただきたいと思うのであります。この点政府に希望として要望いたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/77
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078・小笠公韶
○小笠委員長代理 本日はこの程度にとどめ、次会は明十二日午前十時より会議を開くことといたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後一時七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X03919550711/78
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