1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年六月三十日(木曜日)
午前十時四十九分開議
出席委員
委員長 松原喜之次君
理事 加藤 高藏君 理事 内藤 友明君
理事 森下 國雄君 理事 大平 正芳君
理事 奧村又十郎君 理事 横路 節雄君
理事 春日 一幸君
杉浦 武雄君 坊 秀男君
前田房之助君 山本 勝市君
川野 芳滿君 黒金 泰美君
小山 長規君 薄田 美朝君
古川 丈吉君 石村 英雄君
石山 權作君 横山 利秋君
井上 良二君 川島 金次君
河野 密君 平岡忠次郎君
石野 久男君
出席政府委員
大蔵政務次官 藤枝 泉介君
大蔵事務官
(主税局税関部
長) 北島 武雄君
大蔵事務官
(銀行局長) 河野 通一君
通商産業事務官
(鉱山局長) 川上 為治君
水産庁長官 前谷 重夫君
委員外の出席者
専 門 員 椎木 文也君
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六月二十九日
委員横山利秋君辞任につき、その補欠として坂
本泰良君が議長の指名で委員に選任された。
同月三十日
委員坂本泰良君辞任につき、その補欠として横
山利秋君が議長の指名で委員に選任された。
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六月二十八日
地方自治法第百五十六条第六項の規定に基き、
税関支署の設置に関し承認を求めるの件(内閣
提出、承認第三号)
同月二十九日
揮発油税すえ置きに関する請願(田中武夫君紹
介)(第二八四三号)
三級清酒設定反対に関する請願(栗原俊夫君紹
介)(第二八四四号)
同(武藤運十郎君紹介)(第二八四五号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
関税定率法等の一部を改正する法律案(内閣提
出第六〇号)
酒税法の一部を改正する法律案(井上良二君外
十二名提出、衆法第二九号)
地方自治法第百五十六条第六項の規定に基き、
税関支署の設置に関し承認を求めるの件(内閣
提出、承認第三号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/0
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001・横路節雄
○横路委員長代理 これより会議を開きます。
まず、去る二十七日当委員会に審査を付託されました井上良二君外十二名提出にかかる酒税法の一部を改正する法律案を議題として、提出者より提案理由の説明を聴取いたします。井上良二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/1
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002・井上良二
○井上委員 ただいま議題となりました酒税法の一部を改正する法律案の提案理由を御説明申し上げます。
現在の国民の租税負担の状況は、ここ数年来の税制改革にもかかわらず、依然として低額所得者重課の傾向にあり、政府もこの調整をはかるため、所得税、法人税等の改正案をそれぞれ今国会に提出したのでありますが、これら直接税の調整もさることながら、特に最近の経済事情を考慮いたしますならば、国民大衆の生活に密接な結びつきを有する消費物資について、その間接税の軽減をはかることもまたきわめて重要な問題であろうと思うのであります。
この間接税軽減の問題については、すでに各方面において慎重な検討が加えられつつありますが、なかんずく酒税においては、高級酒と大衆酒の税の比率が必ずしも妥当ではなく、また大衆酒の価格が高いため、依然として密造酒が跡を断たない現状であります。
従って、ここに合成二級酒、ビール、しょうちゅう等、いわゆる大衆酒に対する酒税を軽減するため本法律案を提出した次第でありますが、その大要を御説明申し上げますと、第一に合成二級酒については、現在一石につき一万七千六百円の税額を一万五千八百円に引き下げ、第二にビールについては、同じく一石につき二万円を一万八千円に引き下げる等、ほぼ一割の減税をはかりますとともに、第三にしょうちゅうについては、甲類二十五度の場合、現行税額石当り一万四千三百円から一万二千二百円に約一割五分の引き下げをはかっているのであります。
以上この法律案を提出いたしました理由及びその大要を御説明申し上げましたが、特にこの際明らかにしておきたいのは、この措置により予算上昭和三十年度の税収は、政府原案に対し約五十六億円の減収になるのでありますが、現下の酒類消費の状況及び過去の実績等から勘案いたしますと、この減税措置はこれら大衆酒の消費増大を伴いますため、実質的には酒税の減収はなく、むしろ若干の税収増が予想されることであります。
何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/2
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003・横路節雄
○横路委員長代理 これにて提案理由の説明は終りました。本法律案に対する質疑は後日に譲ります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/3
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004・横路節雄
○横路委員長代理 次に、去る二十八日当委員会に審査を付託せられました地方自治法第百五十六条第六項の規定に基き、税関支署の設置に関し承認を求めるの件を議題として政府側より提案理由の説明を聽取いたします。藤枝政務次官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/4
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005・藤枝泉介
○藤枝政府委員 ただいま議題となりました地方自治法第百五十六条第六順の規定に基き、税関支署の設置に関し承認を求めるの件につきまして、提案の理由を御説明いたします。
最近における外国貿易の趨勢に伴う税関業務の増加に対応し、税関行政の円滑な遂行をはかるため、現在税関における本関の出張所または税関支署の出張所となっている税関官署の中から、横浜税関川崎出張所外七出張所を税関支署に改める必要がありますので、これを提案いたした次第であります。
従来、税関支署及び税関の出張所において処理すべき事務のうち、税関長の権限とされているものにつきましては、あらかじめ一定範囲の事務につき、税関長から内部委任を受けて処理する体制となっていましたが、昭和二十九年四月の関税法の全面的改正に際して、同法第百七条の規定をもって税関長の権限の一部を税関支署長に対して法的に委任することができることとし、税関行政事務を現地において一層簡略かつ迅速に処理し得るようにいたしたのであります。
今回税関支署に改めようとする税関官署は、いずれも(一)港湾設備、背域産業等の立地条件に恵まれ、貿易実績が多く、さらに将来の伸展が期待されていること、(二)本関より比較的遠距離にあって、関税法規上税関長の権限とされているものの委任を受けて現地において税関業務をすみやかに処理すべき場合がしばしばあること、(三)その地方における税関行政の中心となって管下の税関行政を統括させることが適当であること等の諸条件を具備しているものでありまして、これらに税関支署としての独立性を賦与することは、現地において税関業務をさらに迅速に処理することができ、税関行政遂行上官民ともに多大の便益を受けるごととなるものであります。
以上が、これらの税関支署を設置する理由であります。何とぞ御審議の上、速やかに御賛成下さいますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/5
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006・横路節雄
○横路委員長代理 これにて提案理由の説明は終りました。本件に対する質疑は後日に譲ります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/6
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007・横路節雄
○横路委員長代理 次に、関税定率法等の一部を改正する法律案を議題として質疑を続行いたします。井上良二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/7
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008・井上良二
○井上委員 ただいま議題になりました関税定率法等の一部を改正する法律案、この法案はちょっと考えますと、大した法案でないように見えますけれども、その含んでおります内容をしさいに検討いたしますと、わが国の産業及び国民生活に至大の関係を有する重要な案件が含まれております。そこでこの法案を提出するに至りました政府側の責任ある答弁を求めなければなりませんが、大蔵大臣、通産大臣は出席できますか、できませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/8
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009・藤枝泉介
○藤枝政府委員 大蔵大臣につきましては、本日参議院の予算委員会において総括質問がございまして、一日続きますので、おそらく本日出席いたしますことは不可能ではないかと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/9
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010・横路節雄
○横路委員長代理 井上良二君に申し上げますが、通産大臣もただいま参議院の予算委員会に出ておりますので、本件に関しましては、井上委員の要求通り、大蔵大臣並びに通産大臣に本委員会に出席していただいて、なおこの点については適当な機会にさらに質問していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/10
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011・井上良二
○井上委員 通産大臣及び大蔵大臣に対する質問は、いずれ適当な機会に総括的にいたすことにいたしまして、今日の場合特に伺っておきたいのは、今度の改正によりますと、従来原油、重油及び粗油については、これを免税にしてきたのでありますが、今度はこれを従来の一〇%課税というのをやめまして、新しく原油、重油、粗油等については二分、それから重油のうちB、C重油については六分五厘の関税をかける、こういう案であります。同時に重要機械類及び児童給食用のミルク、大豆、石油、コークス等に対する関税は依然として免除する、こういう案であります。従来昭和二十四年来ですか、免税になるといっておったのですが、これを再び関税を復活するということになりました政府の根拠はどこにありますか、それを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/11
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012・北島武雄
○北島政府委員 原油、重油、粗油につきましては、昭和二十六年の関税率の改正の際に、基本税率といたしまして、従価一〇%の税率を盛ることになったわけでございます。その前にはどういう税率であったかと申しますと、従量税率でございまして、これは比重の区分に応じまして差異がございましたが、一キロリットル当り七円ないし二十四円の課税をいたしておりました。昭和二十六年の関税率改正は、従来従量税率でありましたものも、すべて従価税率に切りかえましたので、その一連の思想によりまして、炭化水素油につきましても従価税率に変えたわけであります。ただその際、従来従量税率でありましたものが、インフレーションの結果、実質的には非常に負担が軽くなっておりまして、いわばほとんどノミナルな課税にとどまっておりましたので、これを一挙に一割の従価税率をかけるということは非常に影響が大きいということが考えられたのであります。ただ、従価一割の関税を盛りましたのは、基本的には国内原油の生産を保護するという思想に基いておるものでありまして、従来から従量税率によりまして課税いたしておりましたのも、同じ思想に基くものであります。ところが二十六年当時におきましては、主としてタンカー運賃の関係によりまして、輸入の原油、重油等は非常に高値になりました。この高値のものにさらに従価一割の関税率を急にかけるということは、国内産業上も影響が大きいのではないか、こういう御議論でございまして、国会におきまして、暫定的に一年間免税ということに御修正になったのでございます。その後毎年国会におきまして暫定的に一年間ずつ期間延長をお願いしておったわけであります。ただ当初問題となっておりました輸入原油、重油の価格は、その後タンカー運賃の大幅な値下りに伴いまして、だんだん下って参りました。一時に比べまして、原油、重油ともCIF価格におきまして二千円以上の下落ということに相なっておりました。そうなりますと、本来の免税しておりましたところの基盤がすでにくずれて参ったわけでありまして、一昨年あたりから、これはそろそろ関税を復活すべき機運ではなかろうかということになって参りました。石油の採掘業の方面からも、もうそろそろ関税を復活してもらいたいというお話もあったわけであります。その当時の経済状態から申しまして、まだまだ多少早いようだということで、実はその後見送っておったのでございますが、その後重油価格の低落は依然として続いております。ことに最近におきましては、国産原油の増産五カ年計画が樹立いたされまして、現在では原油の日本の生産量は、年間約三十四万キロリットルでございますが、将来五カ年後には、これを約百万キロリットルに増産しようという計画が進められておるのであります。こういう事態になりますと、すでに原油、重油というものにつきまして関税を免除しておる根拠が非常に薄くなったのでございます。この際といたしましては、これらの炭化水素油についての関税を復活すべき時期になったのではないかと私どもは実は考えておるのであります。ところが、ただこれにいきなり従価一割の関税率を復活いたしますことは、まだ多少影響のある面もございますので、さしあたり石炭と消費面において競合いたします陸上用のB重油、C重油に対しまして、CIFにおきまして約八%の関税をかけるという思想に基きまして、海上用の重油には影響を及ぼさないという建前から、平均的な課税といたしましては、重油に対して六・五%の課税をする、原油につきましても同じような思想から二%の課税をする、こういうことに相なりまして、さしあたり影響の多い水産用あるいは機帆船用等につきましては、なお免税を続ける、こういう思想のもとに組み立てられておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/12
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013・井上良二
○井上委員 関税復活の重要な要素についてお話しがございましたが、この要素の中で一番重要な点は、一つは国際価格が下ってきた、原油の価格が暴落した、それから一つは、国内原油の増産の計画の上から復活した方がよい、いま一つは、石炭対策の一環として考えた、この三つのように承わりました。それに違いありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/13
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014・北島武雄
○北島政府委員 御理解の通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/14
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015・井上良二
○井上委員 原油、重油というものは、今日産業の近代化に絶対必要な基礎原料であります。この基礎原料が非常に豊富低廉に輸入されるということによってその国の産業が近代化され、合理化され、同時にこれが国民経済全般に及ぼす影響、対外貿易に対する飛躍的な進展というものの大きな要素になつておる。そういう考え方からわれわれが考えます場合に、日本だけ原油あるいは重油が非常に安く入り出した、日本は特例国として特別に安く入ることになっておるのだ、だから日本の石油業界だけが非常な好況を受けておる、こういう考え方ならまたこれは考えが別であります。ところが原油、重油の国際市場が非常に低落したということは、世界各国に同様の影響を与えおる。安くなればそれだけ原油、重油というものが豊富に使われる、新らしい使用面が開拓されてきておる。だから世界の各国ともこの重油、原油というものについて、それだけその国の生産力に影響を及ぼし、その国の国民生活に影響を及ぼし、その国の貿易に影響を及ぼしていることは事実なのであります。何か日本だけ特別に安く入ることになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/15
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016・北島武雄
○北島政府委員 日本だけ特別に輸入価格が安くなっておるわけではございません。世界的の傾向に基くものでございます。ただいまの井上先生の御質問は、実は関税理論の根本にわたるものでありまして、はなはだ釈迦に説法のきらいがございますが、一応私からも弁明させていただきたいと思います。原油、重油などの基本資材は関税をかけるべからず、こういう議論も確かに一つの大きな見識だと存じます。しかし関税と申しますものは、もともと国内産業の保護という大きな使命があるのでありまして、わが国におきまして、かりに原油、重油が少しの生産もないという場合には、基本資材であります原油、重油につきまして関税をかけることは不当でございましょう。しかしながら、わが国には昔から原油の生産がございますし、従ってわが国内産業の保護の見地から、関税定率法の制定以来数十年の間にわたりまして、原油、重油につきましては関税をかけて参ったのでございます。ただ先ほど申しましたように、昭和二十六年の従価税率を設定いたしました当時は、その当時の従量税率がほとんどノミナルにひとしいものであったのを一挙にこれに一割の関税をかける、しかもそれの輸入価格が非常に高いのに、これに対して一挙にかけるということは、国内産業保護の見地と、あるいは広くこれを消費する産業方面における利益を比較勘案いたしますと、国としてどちらが適当か、こういうことになりますと、もちろんその当時の国会の御判定は、これは暫定的には免税すべしという御決定であったかと思います。ところが先ほども御説明いたしましたように、輸入価格はだんだん下ってくる、国産原油の採掘の経費は高い、そういたしますと、いたずらにこの安い価格に対しまして何らの関税もかけないということは、結局国産原油を保護するゆえんではないのであります。ことに国産原油の増産五カ年計画を立てまして、これから日本としても本格的に原油を採掘しようという時期でございますので、関税としてはまさに基本税率に戻すべき時期になっておるのじゃなかろうか、こういうふうに実は私ども考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/16
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017・井上良二
○井上委員 国産原油の増産とのかね合いから輸入原油、重油に対して関税を復活するということが、いかにも妥当なような議論をあなたはされているのだが、現在の供給量のうちで、国内原油は一体何パーセントになっているか、全体の用途のわずか一割そこそこではありませんか。そうすれば、一体原油、重油の今日わが国の産業の上における比重の面が大切か、それともわずか一割の原油増産を保護する面が大切か、あなたはどちらが大切だと思うておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/17
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018・北島武雄
○北島政府委員 国産原油によりまして国内需要を満たすことができない現状であることは、お説の通りでございます。ただこの国産原油を見殺しにしていいかどうかという問題は、一つお考え願いたいのでございます。本来としては、やはり基本税率といたしまして国内原油の保護のために関税をかけるという思想は、昔から続いておるのでございます。他面今回この程度の関税を復活いたしました場合に、他の産業にどの程度はね返るかと申しますと、実はその影響は、私どもといたしましては非常に軽徴ではなかろうか、こういうように考えております。数字的に御説明申し上げてもけっこうでございますが、そういたしますと、両者の比較、利益の勘案からいたしまして、この際としては、やはり根本的な思想であるところの基本税率まで戻す、それができなければ、できるだけほかの影響を勘案しながら比較的妥当な税率を盛るということは、許されているのじゃないかと私は考えておるのでありまして、政府の提案の趣旨もそこにあるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/18
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019・井上良二
○井上委員 国内の原油を増産する、これは当然のことであって、このことに対して政府がいろいろの対策を考えて実行しなければならぬが、われわれは何もその面でそれを妨害し反対するものではありません。当然この国産原油開発については、政府が直接投融資を行なって、総合的な開発計画を立てて、どんどん推進していけばいい。それとこの重油の関税復活によるわが国の産業に与える影響、わが国の国民生活に及ぼす影響、この方の比重がもっと大きくはないかということを私は追及している。
御存じの通り、今日石油を燃料とする産業界の面は非常な改革が行われて、石油が豊富に使われなんだ石炭時代に比べて、格段の進歩を来たしていることは御存じの通りであります。今日鉄鋼界を初め、一般産業界の基礎燃料は、従来のような石炭を中心にした燃料の時代はすでに過ぎ去っており、燃料の流動化の問題がやかましくなってきている。燃料が平均に一つの温度をもって流れるというところに重油の需要が拡大してきておるのです。この燃料の流動化が拡大するところに、その製品もまた非常に品質を高め、かつこれがわが国の産業全体の技術水準を向上せしめるのみならず、その製品がきわめて安く、輸出にもまた対抗できるりっぱな製品ができつつある。このことをあなた方は全然考えてないじゃありませんか。それはどうして解決するのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/19
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020・北島武雄
○北島政府委員 私どもも、この重油関税の復活によりますところの産業方面に及ぼす影響を無視しておるわけではないのでございます。従来から免税を一年間ごとお願いして参りましたのも、その当時におけるところの各産業へのはね返りを頭に入れて、比較考量の上から、免税を続けたがいいという総合的判断に立ちまして、今まで免税延長をお願いいたしたのでございます。今回の場合におきましては、従来とやはり事情は非常に変っている。そこでこの程度の関税をかけることによりまして、各産業にどの程度はね返りを及ぼすかという点も実は慎重に研究いたしたのでございますが、数字的に申しますと、たとえば平炉鋼塊の部門におきまして、関税復活によりますところの原価の値上げ率は〇・三一%、線材におきまして〇・五三%、棒の鋼材におきまして〇・六三%、銅板につきまして〇・一六%という程度でございます。しかもこの算出は、今まで重油を使っている部門だけについての計算でございまして、これを全般的に産業界の鋼材方面に全部ならしますと、さらに率は低くなるのでございます。一応重油を使用する部門だけにつきまして、はね返りを計算いたしますと、この程度にとどまるのであります。一体どちらがいいかとなりますと、この程度の影響でありますならば、これは各産業におきましても忍んでいただけるのではないか。なるほど関税がかかることによりまして、確かにコストが増すということは事実でございますが、この程度のコストの増加ならば、これは企業努力等によってもちろん吸収が可能な部門も相当あるかと考えまして、比較考量いたしました結果、やはりこの程度は関税の復活をお願いいたした方が筋ではなかろうかと考えまして提案いたしておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/20
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021・井上良二
○井上委員 ただいまの御説明によると、鉄鋼界においてもさほど大きな影響はない、だからこのくらいならこの産業でも吸収できるであろう、こういうきわめて安易なお考えのようであります。ところが先般ここの公聽会において、その業界の代表者の公述の内容を聞いておっても、鉄鋼部門において、今度のこの関税の復活によるところのはね返りは五億円に達する、こういうのであります。今度関税全体の復活の税収入は御承知の通りほんのわずかです。大きな財源になっておりません。大きな財源になっていないのにかかわらず、末端へのはね返りは、鉄鋼部門だけで五億のはね返りを来たすという実情を、何とあなたはお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/21
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022・北島武雄
○北島政府委員 今度の関税復活によりまするところの関税の増収見込み額は、平年度におきまして十六億六千二百万円と算出されております。このうち数字的に最も多いのは、お説のように鉄鋼部門でございまして、約五億円程度のはね返りがあるのでございますが、この最も数字的に関税の負担額が多いと思われる鉄鋼界につきましても、先ほど申しましたように、重油を使っている部門に対する原価へのはね返りも〇・何%というような比較的軽微なものでございまするので、この程度のことでございましたならば、どちらを政府としてとるかと申しますと、やはり本来の原油基本税率の方にできるだけ近づけていく、こういう線をとらざるを得ないのでございます。業界といたしましては、負担が大きくかかる方はもちろん反対なさるでありましょう。これは関税すべてについて免れないところでございます。およそ関税につきましては、必ずしも引き下げるばかりがいいのではないのであります。引き下げますと、必ずまたそのメーカー側から反対が出まして、引き下げ反対、もっと引き上げろという御議論が出るのであります。逆に政府の面といたしましては、何でも関税をとればいいといって上げるわけにはいかない。そうしますと、必ず消費者部面において反対が出る。これは今までの関税問題の経緯でよく御承知の通りでございます。政府といたしましては、その間の利益を比較勘考いたしまして、どちらを政府はとるべきかという態度をきめなければならぬわけであります。政府といたして両方比較勘案いたしますと、この際としては、との程度の関税を復活するのが妥当であるという結論に達しまして、御審議をお願いいたしておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/22
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023・井上良二
○井上委員 問題は、わが国の産業を近代化し合理化して、そうして外国と輸出において太刀打ちできる体勢を作るということが日本に課せられた至上命令であることであります。その基礎原料たる燃料をできるだけ安く供給し、しかもそれがただいまも申します通り、これからの生産の基礎原料は、燃料流動化の方向へ持っていかなければいい製品ができないという事態になっておるときに——日本だけ特別に原油が安く輸入されておるということならわかる。ところが世界各国とも安いのであります。その安い豊富な燃料を使ってどんどん生産の近代化、合理化をはかっておるのです。しかるに日本はわずか一割の国内産の原油の増産に対する所要の開発計画さえ満足に立てぬでおいて、その原油の輸入に関税を復活すれば、年間わずか十五億か十六億の関税を復活すれば、それでいかにも国内の原油が増産されるような考え方を持っておるのですが、それで一体原油がどれだけ増産されるとお思いになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/23
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024・北島武雄
○北島政府委員 これは、国内産業の保護というのは、関税が万能薬でないことはもちろんでございます。関税としては関税として課し得る限度が一応あるわけでございます。ただその関税としての役割も、また国内産業保護の上から無視すべからざるものがあるのではなかろうかと思います。現在のように、わが国初め多くの国が輸入制限を実施いたしております場合におきましては、この関税の面の影響が実はあまり顕著に現われてないのであります。関税というものに対する一般社会の認識も、やはり比較的低いのは免れないところでございます。たとえばアメリカとかカナダのごとき輸入制限を課しておらない国におきましては、関税が直ちに国内産業保護の面に響いてくるのであります。毎年アメリカの国会等におきまして関税引き上げ問題が起りますのは、すなわち国内産業保護という点から出てくるのであります。もちろん私どもといたしましても、原油関税につきまして、基本税率一〇%をもちましてすべて事足りるとなすのではないのです。ただ関税の面から国内産業保護の見地を申しますならば、基本税率一〇%ということは、わが国としては適当の税率ではなかろうか。二十六年の関税の改正当時、基本税率一〇%という設定をいたした。もちろん関税につきましては、いつも両論があるのでありまして、先ほど申しました通りに、この両論のいずれにくみするかということは、やはり政府が慎重に判断してとらなければならない点でございまして、お説のように、原油、重油という基本資材に関税を課すべからずという御議論も確かに一見識あるのでありますが、国内産業保護の見地における関税としての見地、国産原油保護の見地から基本税率一〇%があるのでありますから、当時の基盤がくずれて参りました今日におきましては、これを復活する機運になることは、私はむしろ当然ではなかろうかと考えております。この点井上先生の御見解とはなはだ異なるようで恐縮でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/24
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025・井上良二
○井上委員 二十六年にこの関税定率をきめましたのは、これがいわゆる基礎原料として使わなければならぬということだったのです。当時朝鮮ブームがございまして、石炭が非常に不足したというような関係から、この関税をやめるということにきまったのです。これが基礎原料であるということであります。ところがその後、あなたがえらく御主張されるように、この四、五年の間に、国内の原油はこれを停止することによってどれだけ増産ができなかったか。またこれが復活されることによって、一体具体的にどれだけこの影響から原油の増産ができるか、その点一向説明がない。しかも重油が石炭と競合しておる部門について六・五%復活するというが、重油が石炭と競合する部門に六・五%くらいの関税を復活することによって、石炭がそんなによけい使われるとお考えになっておりますか。使われるとすれば、具体的に一体石炭がその部門にどれだけ使われるかというその量を示してもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/25
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026・北島武雄
○北島政府委員 国内原油の過去の生産量を一応御紹介申し上げますと、戦前の昭和十一年、十二年あたりにおきましては約四十万キロリッター、三十九万数千キロリッターの生産であります。それが戦後におきまして、関税の基本税率として一割を設定いたしました。しかも暫定的に免税いたしました昭和二十六年におきましては、三十七万キロリッター程度の生産量でございます。その後二十七年の数字は三十三万九千キロリッター、二十八年は三十三万四千キロリッター、二十九年は三十三万二千キロリッターと、わずかながら横ばい、あるいは若干減産の傾向になっておるのであります。こういう点から申しまして、今回石油の原油増産五カ年計画を立て、これを百万キロリッターにふやそうという場合におきましては、やはり関税面におきましても相当の援助をすることが必要であろうかと考えるのであります。
〔横路委員長代理退席、委員長着席〕
次に、重油につきまして六・五%かけた場合に、石炭から重油へどの程度転換するか、こういうお尋ねでありますが、実は私としてはちょっと申し上げる数字を持っておりませんけれども、この六・五%復活することによりまして、地区によっては従来石炭を使用する方が損でありましたのが、今後石炭を使用する方が割安になるという地区もございます。それから従来から石炭の方が割安であったが、さらに一そう割安になる、こういう面がございますので、かたがた通産省の提案しておりまする重油ボイラーの設置の制限等に関する法律等の運用と相待ちまして、やはり相当程度の石炭への転換が行われるのじゃなかろうか、こういうふうに期待しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/26
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027・井上良二
○井上委員 盛んに国内の原油々々ということを言うけれども、塩の場合、国内で相当塩の生産をやって、国内産の製塩は非常に高い。そこで外国からだいぶ入れている。この入れた部分については一体どういう税金をおかけになっておりますか。特にソーダ用の工業塩については特別価格で払い下げておりますが、これはどういうわけでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/27
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028・北島武雄
○北島政府委員 塩の問題につきましては、これは専売公社が専管でございますので、私実は詳しいことを存じておりませんので、機会を得まして専売公社から御説明願った方がよろしいかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/28
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029・井上良二
○井上委員 塩の輸入は専売公社が所管をしているか知らぬが、その関税は、あなたは知らぬ顔して通しているのですか。税関の方は塩と言ったら何でも通すか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/29
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030・北島武雄
○北島政府委員 塩は関税定率法の輸入税表におきまして無税になっております。それから関税定率法の本法の方におきましても、専売品で専売公社またはその委託を受けた者が輸入する場合については、免税ということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/30
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031・井上良二
○井上委員 その場合は、一向国内塩の保護とかねんとかいうことはお考えになっておりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/31
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032・北島武雄
○北島政府委員 その点は、専売制度の運営によりまして、国内塩の保護は行われているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/32
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033・井上良二
○井上委員 これは別な機会にも質問をいたしましたが、一般国内塩と外塩との間においては、非常な値開きがございます。そこで今の理論からいくと、それが専売品であろうと国内製塩を保護するという立場からいくならば、当然これは引き上げなければならぬ。特にソーダ塩のごときは、特別価格でソーダ産業を保護しようという立場から専売公社が払い下げておる。そういう原料塩については、特別価格までつけて安く払い下げている。こういう実例をあなた方大蔵省の内部においてやられている。ところが石油については、全然お考えになっていない。石油が高くなれば石炭を相当使うようになるだろう、こういう時代錯誤の考え方をあなた方は依然としてお持ちになっている。現在東京、関東方面の石炭と重油との価格差を調べてごらんなさい。どちらが高いと思っていますか。石炭の方がはるかに安いのです。関東地方においては、トン当りでだいぶ下回っている。下回っているのに石炭は使われておらぬ。一体これは何を意味するのか。だから関税を復活したくらいで、石炭は相当多く使われるだろう、これは反対ですよ。現在関税がかかってない状態においても石炭価格は下回っているのですよ。この事実を一体何とあなたはお考えになるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/33
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034・北島武雄
○北島政府委員 石炭の価格と重油の価格との比較ということは、非常にむずかしいのでございまして、私どもといたしましては、京浜地区において石炭の方が重油よりも割安であるとは思っておりません。これは石炭と重油との使用方法の差異による、いわゆるメリット差があるわけであります。このメリットを考えて算定いたしますれば、現在京浜地区においては石炭の方が割高なのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/34
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035・井上良二
○井上委員 石炭の不況対策のために、B、C重油に対する石炭競合の部分の関税を復活する、こういう考え方のようにわれわれは承わっている。そうでなかったら石炭競合とは言えない。石炭の不況対策、不況対策ということを盛んに言っているが、不況対策は当然やらなければなるまい。これは積極的にやってよろしいが、一体今までの石炭の合理化及び近代化に対して国費をどれだけつぎ込んでおりますか。どれだけ投融資をしていると思っているのです。ものすごい国費の投融資をしておって、それで一向石炭が合理化されておらぬ。近代化されておらぬ。そこであわてまくって、この不況を乗り切るための石炭鉱業合理化法案が今国会に提案されているが、一体今まで使った金はどこへどう使ったのです。これは近代化、合理化のために投融資したのと違うのです。政務次官、どうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/35
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036・藤枝泉介
○藤枝政府委員 石炭に政府資金をつぎ込みましたその総額等につきましては、通産省の方からも見えておりますから、数字の点は申し上げると思いますが、従来といえども開銀の融資その他によって、石炭の合理化についての努力をしておったことは、これは井上委員十分御承知の通りでございます。必ずしもそれでその効果が上っていないとは存じません。相当の効果を上げているものと考えておりますが、さらに最近の情勢にかんがみまして、本国会に御提案をいたし御審議を願っている合理化の処置を、さらに強力にとろうといたしているわけでございます。なお重油関税につきましては、石炭対策の一環であるという点については、お言葉の通りでございます。ただ先ほど税関部長からもお答え申し上げましたように、今回この重油について六・五%の関税をかけようといたしておりますのは、一方において海外の油の値段の問題、さらに国内の石油資源開発の問題等も考え、さらにもう一つ石炭の対策と、この三つをからみ合せてこのような結論を得たのでありまして、単に石炭対策だけをやっているということでないことだけは、御了解いただきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/36
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037・井上良二
○井上委員 石炭の対策も重要な問題の一つでございますから伺いますが、石炭産業に対して、政府は開銀を通して昭和二十六年度に三十一億円、二十七年度に三十五億円、二十八年度に四十五億円、二十九年度に二十五億円、こういう莫大な資金を年々投下している。これによって石炭は一体どう近代化され、合理化されておりますか、通産省が来ておれば通産省の方から具体的に御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/37
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038・藤枝泉介
○藤枝政府委員 石炭合理化と申しますか、石炭に対する政府の施策がどのような効果を具体的に上げているかという数字につきましては、後刻通産省の方から石炭局長に来ていただいて、あるいは通産大臣等お呼びでございますので、その答弁をしていただいた方が適当じゃないかと思いますので、一つその点だけは留保いただきたいと考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/38
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039・井上良二
○井上委員 これは大蔵当局でも、私は単に通産当局が石炭の不況対策とし、あるいは原油開発の一環として輸入関税を復活するのであるという意見に対して、そのままうのみにしたような形があるように考える。それは、私言葉を重ねてはなはだ議論になるようでありますけれども、B、Cの重油が工業部門に使用されますのは、さいぜんも申します通り、わが国の産業の施設が近代化されておるというとの事実を無視するわけには参りません。わが国の工業部門の施設が近代化することにより、またその製品が高度化を要求されているそのことを度外視してこの問題を考えてもらっては大へんであります。年々石油の需要が飛躍的に増大しておるゆえんは、国際競争に太刀打ちしようとしてひたむきに生産施設の近代化、合理化をはかり、製品の高度化をはかることに全力を注いでおるからであります。このためにはどうしても燃料の流動化存意味するのでありまして、その面から、単にこれを石炭対策として考えてはなりません。もし石炭が工業部門で飛躍的に使われようとするためには、石炭のガス化を考えることであり、石炭を電力化することであります。そうして化学化することであります。そういう方向に問題を考えずに、今日重油の輸入を制限し、これに関税を復活すれば、その身がわりに石炭が使われるであろうというような考え方は、はなはだ時代錯誤の考え方であります。昔かごかきが、チンチン電車が走り出して、これはえらい自分の営業妨害だということで、石を投げて妨害をした理論と一緒であります。もっとわが国の立っておるその資源の少い、人口の多いところで、この狭いところでどうしてこれだけの国民を養うか、これは科学の飛躍的な振興に基く技術の高揚と製品の高度化、近代化以外にありません。その一番基礎燃料たるものが国内ではなはだ少い、その九割は海外に依存しておる。だからこれに大幅な税をかけるということは何としても食いとめなければならぬ。これがまた従来ずっと関税定率の上においても一貫してとってきた、基礎原料、材料には関税をかけないという方針を堅持してきたゆえんのものであります。それに、あるときは石炭が非常に足らぬから重油を輸入せねばならぬ、重油は高いから関税をかけてはいかぬといい、石炭が不況になって、石炭が余ってきたから、今度は関税をかけて輸入を制限しようという。燃料政策は全く支離滅裂であります。かようなことでわが国の産業の恒久的な近代化の方向をたどることはできません。これに対して藤枝さんはどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/39
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040・藤枝泉介
○藤枝政府委員 重油が産業の近代化に大きな役割を持っておりますことは、御指摘の通りでございます。従いまして、わが国の産業もその方向に進んでおったことは御承知の通りでありますが、ただ申し上げるまでもなく、わが国のおかれておる状況、ことに外貨の事情等も考えますときに、そうそう重油だけを入れてやっていくのがいいかどうかということは、これはある程度考えなければならぬことであろうと思います。その意味で、ただいま御指摘のありましたように、わが国の燃料の総合対策が今まで十分でなかったことは十分認めるのでございますが、今回石炭の合理化に関する法律を御審議願い、あるいはこの関税の問題について御審議を願い、その他各般の燃料政策全般を考えて参っておりますことは、これまた御了解いただけることと存じます。そういう意味で、総合的な燃料政策の一環といたしまして、また関税本来の性質からいいまして、現在の外油の値段、あるいはわが国の石油資源の開発の問題等も考慮をいたしまして、今回の関税の一部復活を企図いたした次第であります。一方それがわが国の各般の産業に影響する点も十分考慮をいたしまして、その率等も十分な考慮の上に計算をいたしたということでありますが、根本はただいま御指摘のありましたように、日本の石炭工業を合理化し、そうして立ち行くようにしつつ、しかも一面においてわが国の産業の近代化をはかっていくというための総合的な燃料政策を樹立いたしまして、これらの調和をはかっていきたいと考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/40
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041・井上良二
○井上委員 私はえらくくどいようですけれども、この点だけを政府からはっきりしてもらいたいのです。一つは、外国原油が国際的に非常に大幅に下ったという一つの理由をあげておられます。しかし下ったものを使うというのは日本だけではありません。それはやはり基礎燃料として世界各国とも使っておるのですから、これに日本の製品を対抗さしていかなければなりません。だから向うが一である場合に、こっちは一・五であるというわけには参りません。向うが一の原料を使った場合は、やはりこっちも一の原料を使っていかなければ対抗できません。これはあなたは一体どういうふうに御理解なさるのですか。日本は向うと同じような立場に立っていない。輸入しているだけ日本の方が不利です。そういう国際価格が下ったからということは、理由にはならぬでしょう。対抗して日本が輸出をしなければなりませんから、基礎燃料であるがゆえにその点が非常に重要になってくるという問題が一つ。
それからいま一つは、国内原油の増産のためにといいますけれども、国内原油は全体の原油の一割そこそこしかありませんから、そのことのために全体を犠牲にすることはありませんので、その面からも、われわれとしてははなはだ納得しかねるということが一つあります。わずか一割のものを非常な増産計画を立ててやろうとしても、なかなかそううまくいきません。もしそういうことをやって、一方において輸出の方が伸びない、また諸外国の製品に比べて日本の製品が悪いということになって、日本の製品の信用を世界市場で落した場合、果して国家の損害はどういうことになっていくか、再び取り返すことができないことになる。一ぺん信用を落すと、信用回復に二年も三年も努力しなければできません。そういう実情から、国内原油のためにというふうなことにはわれわれは簡単に応じかねる点がある。
第三の石炭の問題にしても、わが国の基礎燃料というものが、さきにも申しました通り、一定の温度を必要とする流動化になっておりますから、石炭では流動的な燃料にならないのです。流動的な燃料にならない石炭を近代化され、近代施設になっておる工業部門に使えといったって使えるものではありません。だから石炭をもし使えというならば、さいぜん申しました通りに、これから石炭をガス化するガス化工業を一体どう伸ばして、そのガス化による燃料をどれだけ供給するかというこの線が打ち出されなければいけません。またガス化ができないものについては、火力発電によって電力による供給で補う分がこれだけふえてくる。さらにまた石炭液化その他の方法でこれだけふえていくという石炭の化学化、電力化、ガス化という問題をもっと具体的に示してもらいませんと、土台が狂ってきておりますから、土台が狂ってきているところへ無理にそれを結びつけようとしても、結びつかない現状にあるということをお考えにならぬと、大へんな錯誤を来たします。あなた方三つの説明をされるけれども、遺憾ながらわれわれの納得し得る条件が出て参りません。だから欧米諸国が原油を一対一でやっている場合、日本はやはり一でなければならぬ、さらに日本はそれよりももっと安くならなければならぬ。ところが逆に日本は高くしようという考え方によって世界市場を制覇することができるかという問題がございますから、その三つについてもっと具体的にわれわれの納得するような説明をしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/41
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042・藤枝泉介
○藤枝政府委員 石油の価格の安いのは、別段日本だけでないというととはごもっともでございます。しかしこれは、井上さん十分御承知だとは思いますが、石油を輸入する国においては、欧米各国ともいろいろな関税をかけておりますことば、すでに御承知の通りであります。ですから、なるほど安い石油を入れるのは日本ばかりでない、従って国際競争に打ち勝つためには、その安いものを安いまま入れた方がいいじゃないかという御意見は一応ごもっともであります。しかしまた国内のいろいろな燃料対策、産業とのにらみ合せも考えなければならぬと思います。御承知のようにイタリア等におきましても、一八%くらいでありますかの税金をかけておりますし、ドイツは国内のオイル・シエール等の問題もありましょうけれども、相当高率な関税をかけております。こういう点は、やはりその国その国のいろいろな産業状態というものをにらみ合せながら、国際競争とのバランスをとっていこうということであろうと思うのでありまして、そういう意味において、今回御提案申し上げました六・五%というのは、日本の現状からいたして適当ではないかというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/42
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043・井上良二
○井上委員 はなはだ答弁が抽象的でありまして、まだ納得するわけに参りません。そこで私、これ以上追及しましても御迷惑と思いますので、この法案を審議するに当りまして必要な資料を要求いたします。一つは、関税定率を免除いたしました二十六年から今日までの原油、重油、粗油等の輸入の年次表、それからそれが国内で各産業別に使われております内容、供給先。供給先というのは供給産業部門です。それからその量。いま一つは、国内石油の開発に伴う計画と、それに要する資金と、それに伴う開発の増産石数というものをお示し願いたいと思います。それからいま一つは、石油原油一トン当り、重油一トン当りの石炭との競合価格、一体どういう市場価格になっているか、これを京浜、阪神と、北九州で出して下さい。それからいま一つは、石炭と競合するという部分の重油の量及び石炭の量、この比率を出してもらいたい。それからそれによります石炭の使用量、この処置によってどれだけ石炭の使用がふえるかというふえる推定量をお知らせ願いたい。以上大体来週ぐらいまでの間にお出しを願えればけっこうだと思います。
なおいずれ私また来週大臣が来たら質問をすることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/43
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044・石村英雄
○石村委員 ちょっと資料の追加をお願いしたい。ただいま井上さんの資料のうちFOB価格とCIF価格と、それからこちらの市場の卸売価格、小売価格の中心的なもの、この二十六年以降の変遷をお知らせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/44
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045・春日一幸
○春日委員 それから先般政府から出された資料の三、輸入価格から小売価格に至る石油の価格の推移、この資料の中の輸入価格、揮発油、灯油、軽油、この各輸入価格が出されておりますが、この価格と、それから資料の五の石油製品の精製費等調べという項目にある製品別原価、これは国内において石油製品を精製した場合の原価が書いてあるわけでありますが、この原価の中の輸入原価と製品コストと、それから製造家のマージン、これを一つ分析したものを出してもらいたい。資料五の製品別原価、これを構成しております内訳ですか、原材料、それから精製に要するコスト、それから製造業としてのマージン、と申しますのは、この輸入価格と製品別原価とがおおむね混淆いたしておりますので、この輸入価格というものは、向うの製造業者の利益と輸出業者の利益と運賃諸掛り、そういうものを含めた輸入価格と国内価格との値段がどんなに一致しているかということが、われわれとしてはちょっと理解しにくい。従ってこの中には一体どの程度の精製マージンが含まれているかということをよくつかみたいと思いますから、これを一つお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/45
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046・松原喜之次
○松原委員長 次に小山長規君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/46
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047・小山長規
○小山(長)委員 石油関税のことでありますが、今までの各委員の質問に対する税関部長の答弁を聞いておりますと、提案理由といささか違いまして、関税の引き上げは国産原油の方が大体目的なのである。たまたまここに石炭対策なるものが出てきたので、その石炭対策と合せるために六・五%というような税率をきめたというふうな説明のようでありますが、第一番に私が疑問に思いますことは、ただいま井上委員が言われましたように、石油というものは日本における原料であるが、外国もこの原料は日本と同じような値段で、あるいは場合によっては日本よりも安く買っている。その安く買っている原料でお互いが国際市場で競争しているのでありますから、元来原料であるところの石油そのものに関税をかけることがすでに時代遅れじゃないか。今までの関税の歴史からいえば、従価税、従量税をかけてきたのでありますし、昭和二十六年にもこれを改正されたわけでありますが、あのときは、大体朝鮮ブームの関係もあって、元来原油、重油というものには、国際競争上、工業国としての日本の立場からいって、関税をかけるべきではないのだ、こういう根本意図があったことは、あなたもその当時から税関部長であったから御承知の通りです。当時たまたまわれわれは政府与党で、政府が出したものを即座に反対するのも妙なことであるというので反対しなかったが、その根本に流れる思想は、原料であるところの原油には税金をかけないのだ、便宜上一年延ばすだけだという考え方でやってきたものとわれわれは理解している。ところがあなたのお話を聞いておると、国産原油を保護するためにこの関税定率がきまっておるのでありますから、それをこのまま続行していくのである、こういうことであります。その話をだんだん煮詰めていくと、わずか一〇%の国産原油にさや寄せするところまで、関税定率一ぱい一ぱいまでいかない場合もあるのでありますれども、そこまでやっていく。国産原油はどんなに高くてもかまわないのだ、こういう意図があなたのお考えの中には入っていることになります。だからもう一ぺん思い直して、この関税定率表において石油類に関税をかけるのだということは考え直す時期にきているのじゃないかと思うのですが、やはりあなた方は、この定率表をきめたときの考え方というものは、今後もずっとやっていくのだということに変りないのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/47
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048・北島武雄
○北島政府委員 これも非常に基本的な問題に関連するのでございますが、そもそも生産の基本資材に対しましては、関税表上におきましてもできるだけ低い税金であることが好ましいのでございまして、わが国の関税定率表の現行の体系におきましても、基本的資材につきましては比較的低い税、あるいは無税ということにしまして、加工の程度を加えるに従ってだんだん関税率を高くしていくという思想が流れておるであります。これは各国とも同様でございます。ただ基本資材でありましても、それが全然国産がない場合の基本資材につきましては、当然無税にすべきであります。国産がなくて、それを生産する見込がない場合に基本的な資材に対しまして関税をかけるのは、御指摘の通り時代錯誤でございますが、御承知の通り、わが国としてやはり原油の生産ということは重要な一つのアイデアかと思いますので、当時二十六年におきまして、重油、原油の今後における増産の必要をやはり考えておったわけでありまして、そういう点を彼此勘案をいたしますと、基本資材に対してはすべて無税にすべきだということは、ちょっと私どもとしては申し上げかねるわけであります。もしかりに国産原油をあきらめて、国内では生産しない、今後とも増産しないのだということになりますれば、これは、関税を復活することはまさに時代錯誤でございますけれども、逆に国内原油をこれからどんどん増産していこう、現在三十四万キロリッターの生産しかないものを、五年後には百万キロリッターにしようという計画が現に進められておるのであります。こういう点から申しますと、やはり基本的な資材でありますので、関税は高くない方がいいのでありますけれども、関税の基本理論から申しましても、これは無税というわけにはいかないのじゃなかろうか、こういうふうに考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/48
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049・小山長規
○小山(長)委員 国産原油の今の四十万キロリッターを百万キロリッターにするのには、何も関税をかけないでもやれる。国費の投下をどんどんやればできるわけで、増産目的を達成するために関税をかけなければならぬという理屈はどうしても私にはわからない。これは議論になりますからやめますが、あなた方の提案理由の説明を聞いておってもまた今の答弁を聞いておっても、どうもあなた方の提案理由は、最初の間は石炭対策としてやられたのに違いない、ところが石炭対策ではどうも説明がしにくい部分がたくさんある、そこであなたの持論であるところの関税理論なるものを持ってきておる、こういうふうにしかどうしても考えられない。なぜかというと、今度の引き上げはB、C重油というものが基本になっておる。B、C重油に八%かけた場合には、原油の方は二・五%でいいのだ、こういう議論です。ということは、石炭対策として、関税の引き上げ率にめどを置いたということだけは明らかです。そうすると、あなた方は関税理論で逃げておられるけれども、提案のそもそもの理由はそこにあるのではなくて、石炭対策の一環として出されたことだけは間違いないのじゃありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/49
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050・北島武雄
○北島政府委員 先生のお話しで、石炭対策の一環として出されたことは間違いないかというお尋ねでございますが、これは間違いございません。ただ提案理由の説明といたしましては焦点を非常にしぼりまして、税率の算出の根拠になりましたことを端的に申し上げておるわけであります。ただ提案いたしました基本的な考え方は、やはり基本税率に対しまして、現在原油、重油に一割盛っておる、しかもその当時の免税を必要としたところの事情は解消しつつある、こういう思想的な流れがやはり根本にあるのでありまして、ただ端的に申しますと、税率の算出としては、確かに直接石炭の消費面と競合する部門についてB、C八%程度の関税をかける、こういう根拠から出ているわけであります。そしてその考え方の基本については、先ほど私が申し上げた通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/50
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051・小山長規
○小山(長)委員 そうすると、関税定率表上は原油、重油は一〇%になっており、ガソリンは二〇%になっておる。それではなお石炭対策の一環として〇・八というものが妥当であるかということの理由も聞かなければなりませんが、将来のことを考えてみると、関税定率表上の原油、重油は一〇%、ガソリンは二〇%となっている、ここまで持っていくのにはどういうものさしを使いながら、それはいつ関税定率で一ぱいになっていきますか。これは必ずガソリンにもかける。原油、重油だけでこの問題が終るのではない。あなたの持論からいけば、将来はガソリンにもかけるというところまでいかなければ首尾一貫しない。そこで、そこまでいくのにはどういうものさしを使って、どういう状態の場合には原油、重油は関税定率一ぱいまでできる、ガソリンはどういう段階でいくのだという、そのめどはどうなっておるでしょか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/51
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052・北島武雄
○北島政府委員 私どもといたしましては、炭化水素油について、輸入税表にありますような税率が基本的には妥当であると考えております。ただ先ほどから御説明いたしましたような事情で、二十六年以来暫定的に免税をお願いしてきておるわけでありますが、毎年諸般の状況をいろいろ考慮いたしまして、今年はどの程度にしようかということを今まできめてきておるわけであります。今後のめどは一体どうなるかというお尋ねに対しましては、やはりそのときの情勢をよく考えまして、そうして果してどの程度にまで持っていくのがよろしいかということの上から考慮さるべきで、ただいま何年後にどうこうということはちょっとお答えできかねるかと存じます。そのときの経済情勢等を頭に入れ、影響力も頭に入れて、そうして基本税率の方にだんだん持っていく、私どもとしてはこういう考え方をしているわけであります。ただそれを一挙に持っていくわけではありませんで、そのときの経済情勢をよく考えまして、それを果して今復活することがどの程度の影響があるかということを慎重に考慮してきめるべき問題であると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/52
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053・小山長規
○小山(長)委員 あなたのその議論は少しおかしいのであって、経済情勢を勘案していくならば、この関税定率を場合によっては下げることも考えられるわけですか。一ぺん〇・五と直したものを三に、ゼロにするということも考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/53
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054・北島武雄
○北島政府委員 関税の率は経済情勢に左右されるのでありまして、かりに将来国産重油だけで十分まかなえるということになりますと、その際には、別に関税を高くせよという議論も出てくるかと思います。その場合にまた逆に、うんと国産でできるならば、わずかばかりの輸入に対しては関税を下げてもいいのじゃないかという議論も出ると思います。その際における国産原油のコスト、あるいは外国からの輸入価格等を頭に入れて適当な関税率を盛るのが、従来の関税の根本的な考え方であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/54
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055・小山長規
○小山(長)委員 経済情勢というものがものさしになるのならば、これは今六・五%の関税率であるけれども、これをまた来年の経済情勢いかんによっては、四にするとか三にするとかいうことも考えているのか、これが一点であります。それからCIF価格で八%の関税をかければ、石炭と競合する——当面の経済情勢からいって、重油に対する関税の目的は達成される、その達成される目的になるものは、一体何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/55
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056・北島武雄
○北島政府委員 来年度におきまして、今の関税をこのまま続けるかどうかという点につきましては、やはり年度末におきまして、その当時におけるところの輸入価格、あるいは国産原油の開発状況、あるいは輸入を必要とする量等を頭に入れてきめるわけであります。ただいまそのままずっと続けていくか、あるいは来年はどうするかという点については、ちょっとお答えいたしかねると思います。それから次に、今の六・五%をかけることによってどうなるかというお尋ねでありますが、もともと当初の考え方におきましては、率直に申しますと、直接石炭と競合する部面については、もともと一割の関税をかけていいのじゃないか、こういう議論がございまして、これは私の主張なんでございますが、一応かけていいのじゃないかという議論がございましたけれども、ただ一拳にそこまで持っていくことについては、やはり陸上の問題も考えなければならぬということで、さしあたりB、C重油につきまして平均一キロリットル当り五百円程度関税を負担してもらおうという考え方から、輸入重油に対して、B、C重油に対して八%、これは平均いたしますと六・五%、こういう税率の算出になったわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/56
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057・小山長規
○小山(長)委員 それでは、ガソリンの方は関税定率表にあるのになぜやらぬ。あなたの議論からいえば、原油、重油といわず、国産のものを保護するためには、関税定率表の通りにやらなければならぬはずだ。そこまで待っていかなければならぬはずだ。原油と重油だけにこの際やって、ガソリンはなぜやらぬ。ガソリンは将来やるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/57
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058・北島武雄
○北島政府委員 原油、重油、粗油というものが基本税率の一〇%に復した場合におきましては、これは精製の過程等を考えまして、現在の二割という税率が妥当だと思います。二割の関税は復活しなければならぬかと思います。今回の場合におきましては、直ちにそれを揮発油と関連させる必要もないのであります。さしあたり石炭部面と競合する部面にかけるという考え方、しかも重油について最も影響の多い水産用、あるいは機帆船用等については免税する、こういう考え方から算出したわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/58
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059・小山長規
○小山(長)委員 それは重大な点です。関税定率表上一割になっているものを、今度は八%までかけるというわけでしょう。ところが今のあなたの説明では、それが一〇%の関税定率まで、あと二%ふえたときにはガソリンにも課税する、こういう考え方ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/59
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060・北島武雄
○北島政府委員 これは、平均的には重油は六・五%の関税、原油は二%——一番問題になりますのは、精製するもとになる原油についてこの関税率が一〇%になった場合には、どうしても精製業保護の見地から、揮発油の方の関税を上げなければならぬ、こういうことになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/60
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061・小山長規
○小山(長)委員 元来あなた方が今度こういう気になった基礎は、何といっても石炭対策であるに違いないと思う。そしてその石炭対策のためにたまたまこれを利用する、こういうことであると思うのでありますが、そういう議論が成り立つものならば、たとえば国内で、綿花のためにスフなりナイロンなりがどうも思わしくいかないというときには、綿花に関税をかけるという思想も出てくるわけですな。そういうようなことも考えるのですか。国産の原油を保護するために関税をかけるならばわかる。しかし石炭を保護するために石油にかけるんだったら、それじゃスフやナイロンを保護するために綿に税金をかけるということも一つの考え方であろうし、あるいは国内の澱粉が困るから、それでは砂糖に関税をかけようじゃないかということにもなりかねない。そういうことと思想は同じだと思うのであります、石炭を保護するために重油や原油に関税をかけるというその観念、少しおかしいと思いませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/61
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062・北島武雄
○北島政府委員 小山先生のお話でございますが、私はどうもおかしいような気がいたさないのであります。ただ、ただいまのスフを保護するために綿にかけるかという問題でありますが、関税の考え方といたしましては、もともと輸入品に対する国内産業保護という見地でありまして、第一次的には、同じ物の国内生産を保護するということにはなっておりますけれども、物によりまして、競合品に対してはやはりそれに対する相当な関税をかけないと保護できない場合もあり得るわけです。ただ、ただいまお話しのように、スフを保護するために綿にかけるかということは、どうもちょっと現在としてはとうてい考えられない考え方であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/62
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063・小山長規
○小山(長)委員 しかし、それは考え方は同じなのですよ。
それから、先を急ぎますからそれはカットいたしますけれども、大体重油に関税をかけていこうということは、石炭との競合を押えるということが目的である。石炭との競合を押えるということである以上は、値段が、需要者の方からいえば、石炭を買おうか石油を買おうかという選択ができるところまで持っていかなければうそだ。ところが今度の関税にいたしましても、あるいは関税定率いっぱいまで持っていっても、現在の石炭の値段と競合するところまで石油の値上りはしないと思うが、この点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/63
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064・北島武雄
○北島政府委員 先ほど御説明いたしましたように、石炭と重油の価格の比較につきましては、地区によって開きがあるのでございまして、たとえば阪神地方のごときは、現在は石炭の方が割高であるけれども、関税負担によって逆に石炭の方が割安になる。こういう牽連があるのであります。ただ、これによりまして果して石炭対策として十分かということになりますれば、これは、やはり石炭対策としてはあの手、この手を使わなければならぬ。そこが、関税といたしましてもやはり応分のお力添えをする必要はあるかと考えます。これが万能薬じゃもちろんないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/64
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065・小山長規
○小山(長)委員 結局値段と値段の問題でありますから、たとえば海外の原油なり重油の値段が下った、現在の関税定率表をもってしても、なおかつ現在の値開きまで達しないという状態のときには、また関税を上げなければなりませんな。あるいは国内の石炭が、たとえばストライキなどが起って、あるいはどういうのか知らぬが、石炭が減産されて、そうしてまた国内の石炭が上ったという場合には、石炭を使わせなければならぬために、またこの重油関税を上げていかなければならぬですね。従って今後のものさしは、国内の石炭価格はどうなってくるかということと、外国の原油なり重油の値段が下ってくるかどうかということによってこの関税率は動かしていかなければならぬですね。その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/65
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066・北島武雄
○北島政府委員 御説の通りでありまして、関税率はそのときの経済事情、すなわち国内産業の状況、数量、価格、これに対するところの輸入品の価格等を勘案してきめるわけであります。ただ輸入価格と申しましても、そのつど変動が物によりましては相当あり得るわけであります。関税率としては、相当長い目をもって、どの程度の関税が適当であるかということで輸入税表はできておるわけであります。ただ今後石炭の値段がうんと下ったときは、これを保護するために、どうしても重油に一〇%以上かける必要があるかということになりますと、私は関税といたしましては、関税の原油、重油、粗油の一割というのは、これ以上高くすべきじゃないだろう、国際的に見ましても、これ以上高くすべきではないだろう、日本の他の関税率とのつり合いから申しましても、一〇%程度の関税率が基本としては最も適当である、こういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/66
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067・小山長規
○小山(長)委員 私の伺いたいのはそこなんです。現在六・五%の関税率をかける、過去半年か一年間の海外の石油の値段及び国内における石炭の値段と比較して、この辺が適当と考えられた、そのものさしが動いた場合には、関税率を変えなければならぬですね。つまり極端に言うと、海外の石油なり重油がぐっと下った、そして国内の石炭は一向に下らぬという場合には、関税率を上げなければなりませんね。そうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/67
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068・北島武雄
○北島政府委員 もしこれを石炭対策といたしまして、関税の面だけから片づけようということになりますれば、おそらくそういうことになるかと思います。しかしその場合におきましても、私どもは、関税率といたしましては原油、重油、粗油の基本税率を一〇%にしたいということは、これははなはだ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/68
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069・小山長規
○小山(長)委員 いや、私は原油、重油を一〇%にしたいと言っておるのではありませんよ。まだ一〇%まで来ていないんだから……。私が申し上げたいのは、現在六・五%の税率をかけるということは、そういうものさしの上でやられたに違いない。ところが海外の石油が下ってくる、外国の石油が下ってくる、その場合には、現在の程度をものさしと考えるならば、この値開きをそのものさしに合わせるためには、来年度さらに関税率を上げなければならぬ。私は関税定率一ぱいのことを言っているのですよ。関税定率一ぱいまで上げていかなければならぬ。関税定率一ぱいまで上げるのはなぜかというと、海外の石油が下るからなんだ。そのときには、さっきのあなたの議論に従えば、ガソリンに税金をかけるというんでしょう。海外の石油が下って、外国ではどんどん安い石油を使って国内の産業が発達していくのに、日本は海外の石油が下るに従って関税率を上げていって、高い石油を使わして、しかもそれが関税定率一ぱいまで来たときには、ガソリンまで税金をかける、こういう考え方なのですが、これはとんでもない考えじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/69
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070・北島武雄
○北島政府委員 原油、重油、粗油につきまして、かりに将来某本税率の一〇%までになりました場合には、どうしても揮発油等については上げなければならぬ。これは現在の関税定率表の別表の輸入税をごらんになりますとわかりますが、加工の段階を経るに従って国内の加工産業を保護しなければならぬ関税としての使命がございます。かりに原油、重油、粗油が一〇%になりまして、なおかつ揮発油、灯油等を一〇%にいたしますことは、これは国内の製油保護にならない。その場合には、基本税率の復活が考えられるがまず筋かと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/70
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071・小山長規
○小山(長)委員 だから、私がこの定率表で一番問題にしておる点はそれなんです。海外の石油が安くなった、これは日本ではどうにもできないのです。海外の石油が安くなり、外国ではどんどん安い石油を使ってやっておる。それにあわせて日本の関税率が上っていって、そうして日本は、外国人が使う石油よりもさらにさらに高い石油を使いながら輸出産業をやっていかなければならぬ。しかも、それが関税定率の一ぱいまできたとき、これは二年後か三年後か知りませんが、一挙にガソリン税まで上げる。国内のガソリンを使っておるところのあらゆる産業は、海外の石油が値下りしたために、ガソリンに関税を課せられてしまうことになる。今度の改正法はそういうばかなことになる第一歩である。そこに私は非常に問題があると思う。それはなぜかというと、石炭というものをものさしにしているからだ。石炭というものをものさしにしておるからそういうことが起る。そうでしょう。石炭がものさしでなくして、すべての経済資料その他を勘案してやるというならば、あるいは弊害を最小限度にとどめることができるかもしれない。しかしながら石炭を目標にしたところの、石炭をものさしに使ったところの関税定率表の改正であるがゆえに、将来は必ずそういうことが起きてきますよ。この点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/71
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072・北島武雄
○北島政府委員 将来のことはちょっと予測できないのですが、しかし輸入原油または重油がどんどん値下りをして、しかも国産原油の保護の必要はますます増す。一方石炭の方も不況である。こういう場合には、やはり関税としても基本税率までだんだん持っていくのが筋である、こういうことに相なるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/72
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073・小山長規
○小山(長)委員 そうでしょう。だから私の申し上げたのは、石炭が一向合理化されない、一方海外の石油はどんどん下っていく、その場合には、関税定率でもって石炭を保護していかなければならぬ。動じに関税定率で原油、重油、粗油が一〇%になったときには、ガソリンも一挙に二〇%にしなければならぬことになりますね。だから大へんなことを政府は今お考えになっているということを申し上げたかったのであります。
それからもう一つ伺っておきたいことは、ボイラーに対して石炭と競合させないのだ、ボイラーにはなるだけ石炭を使ってもらって、重油をなるたけ使わせないのだということで、ボイラー用の燃料を規正し、あるいはボイラーの設置を規制することを政府は考えているようであります。これが法律になっておるのですが、その行政措置は知りませんが、そのものがだめになったときにもやはり関税定率をやるのですか、それと関連をさせるのか。あるいは石炭合理化法という法律が出ているが、かりにこれが通過しなかったときにも、やはりこの関税定率をやらなければいけないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/73
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074・北島武雄
○北島政府委員 そういうものがもし実現しなかった場合には、関税としては、どうしてもやはりお願いしている税率でかけねばなるまいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/74
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075・小山長規
○小山(長)委員 なおかつ高くするのですか。(「なおかつお願いしなければならぬということだ。」と呼ぶ者あり)それではあとの質問を留保することにしまして、銀行局長、政務次官に一言言わなければならぬ。
民主、自由両党でこの間予算の修正をしました。その予算の修正の基本の考え方になっていたのは、民間のいわゆる蓄積資金であるところの銀行預金の一定割合を留保せしめて、その留保したところの資金を引き当てにして公債あるいは金融債を発行していくのだ、こういう考え方で予算の共同修正が始まり、そして妥結の結果は、まあ当分の間は公債発行をしないということで話がおさまったのであります。しかしそれには法律がいるのであります。その法律を出すということであの予算修正なるものができ上っているのです。この法律は、政府の方で出すというふうにわれわれは了解しておったのでありますが、銀行局長、聞いておりましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/75
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076・藤枝泉介
○藤枝政府委員 両党の予算修正に当りまして、資金委員会という構想がありまして、それがお話し合いになっておることは存じております。そしてまたその法律は、政府から提出しろということも伺っております。従いまして、それに従って現在その法案の整備を急いておりますので、できるだけ早く部内をまとめまして御審議をいただきたいと考えております。ただ一言申し上げておきますが、両党の正式な文書を取りかわされまして、幹事長、政務調査会長が捺印をせられました協定書の中には、その資金委員会の問題は、条項には入っておりません。しかし私どもは、両党のお話し合いの過程においてそういう申し合せがありますと申しますか、了解が成り立ち、それを政府から出せというお話しでありましたので、目下その成案を急いでいるという段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/76
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077・小山長規
○小山(長)委員 政務次官、幸か不幸か、会期が三十日延長されたから、まだ審議の期間がありますよ。これは悪く解釈すると、実は二十八日にこの話をしようと思ったが、ちょっと都合があって申し上げなかったのでありますが、今日までこのことを何も知らぬ顔をしていることは食い逃げをするつもりではなかったかと思われる。僕は、藤枝君のように人柄のいい人がそんなことは考えていないとは思うけれども、そう思われても仕方がないでしょう。政務次官としては、適当な機会に発言を求められて、ただいま申されたようなことを言われるべきであったと思うのであります。資金委員会だけの問題ではない資金委員会というのは、その法案の内容の一部にすぎない。これは政務次官も御承知のように、自由党と民主党との間の話し合いでは、銀行預金の一定割合を蓄積せしめて、そしてそれを公債あるいは金融債に引き当てるのだ、そのためには法律が必要であり、またその資金を一体どこに向けるかについて大蔵大臣が諮問しなければならないというので、初めてそこに資金委員会というものが出てくるのであって、根本は民間の銀行に集まった預金の一定割合を蓄積せしめるんだ、それには金融債なり公債を買ってもらうんだというところに基本的な思想があるのでありますが、そういう趣旨でお出しになるのでありましょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/77
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078・藤枝泉介
○藤枝政府委員 民間の金融機関に蓄積されました資金の一部を国家的な方向をもって使う、使わせるという根本的な趣旨をもってただいま申しましたような法案を提出するように私は存じております。従いまして、その方向に従って現在せっかく成案を急いでおるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/78
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079・小山長規
○小山(長)委員 その法律は、今度はもうおそらく国会は延長になるまいと思いますが、一本申し上げておくけれども、今度の国会が終るまでに慎重審議するだけの時間はあるでしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/79
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080・藤枝泉介
○藤枝政府委員 できるだけ慎重に御審議をいただくようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/80
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081・松原喜之次
○松原委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明七月一日金曜日午前十時より開会することといたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時三十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X02619550630/81
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