1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年六月三十日(木曜日)
午前十時二十三分開議
出席委員
委員長 宮澤 胤勇君
理事 高橋 禎一君 理事 辻 政信君
理事 床次 徳二君 理事 江崎 真澄君
理事 高橋 等君 理事 森 三樹二君
林 唯義君 保科善四郎君
眞崎 勝次君 粟山 博君
越智 茂君 大坪 保雄君
小金 義照君 田中 正巳君
福井 順一君 船田 中君
飛鳥田一雄君 長谷川 保君
受田 新吉君
出席国務大臣
国 務 大 臣 大久保留次郎君
出席政府委員
内閣官房副長官 田中 榮一君
内閣総理大臣
官房審議室統轄
参事官 賀屋 正雄君
総理府事務官
(恩給局長) 三橋 則雄君
厚生事務官
(引揚援護局
長) 田邊 繁雄君
委員外の出席者
専 門 員 龜卦川 浩君
専 門 員 小關 紹夫君
専 門 員 安倍 三郎君
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六月三十日
委員田村元君辞任につき、その補欠として船田
中君が議長の指名で委員に選任された。
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六月二十九日
元満州国日本人官吏に恩給法適用に関する請願
(相川勝六君紹介)(第二八二八号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する
法律案(高橋等君外百十一名提出、衆法第二八
号)
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001・宮澤胤勇
○宮澤委員長 これより会議を開きます。
恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案を議題として質疑を継続いたします。どうか暑中の折柄上着をぬいで質疑応答をせられるようにいたしましょう。
それでは受田新吉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/1
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002・受田新吉
○受田委員 政府の御所見と提案者の御所見と双方にわたってお伺いいたしますが、恩給法そのものに対する考え方の基本的な問題として、政府におきましては現行恩給法をしばらくの間はこれを続けていこうという意図を持っておられるかどうか。またしばしば政府関係者において社会保障的性格を帯びるように努力したいと言うておりますが、その問題は恩給法の改正に当って直ちに取り入れるように努力しようとする意図であるのかどうか。こういう問題について御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/2
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003・田中榮一
○田中(榮)政府委員 ただいまの御質問にお答えいたします。恩給制度につきましては従来からいろいろ意見がございまして、現在のような国家保障的の制度でなく、むしろこれを社会保障的の制度として、合理的な方法として取り上げたらどうかという、いろいろの御意見もございますが、現在といたしましては、直ちにこれをそういう方面に切りかえるということには、いろいろ困難な点もございますので、しばらくは現行の恩給制度としてはこれを存続いたしまして、今後御意見のような方向に向って十分一つ検討を加えてみたい、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/3
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004・受田新吉
○受田委員 恩給法と関連する問題になるのですが、この公務員の給与というものをどう考えているか。結局国家公務員、地方公務員も含みますが、この公務員の恩給制度を新しい制度として、人事院は国家公務員退職年金法という形のものにこれをとりまとめて、政府及び国会に勧告しているのであります。ところがその勧告が一年半もたっておるのでありますが、何ら政府はこれに対して意思表示をしておられない。恩給法は国家公務員退職年金法が成立すればその方で当然吸収される問題なんです。この人事院勧告の新恩給制度なるものは、政府としては今どのようにお考えになっておられるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/4
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005・田中榮一
○田中(榮)政府委員 この国家公務員の恩給制度と、それからまたお話しの国家の雇用員に対しまする共済組合制度と、両者の間に非常に不合理な点もございますし、また均衡のとれない点もございますので、この点につきましては現在公務員制度調査会におきましてもいろいろ検討はいたしておるのでございます。ただ現場的の職種である雇用員の共済組合制度と、それから恩給制度とを同時に考えて一貫した制度にするということは、技術的にも非常に困難な点もございますので、この点を十分に検討いたしまして今後どういうふうにいたしますか、具体的な方法等も公務員制度調査会におきましても実は検討をいたしておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/5
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006・受田新吉
○受田委員 その困難なる事由とはどういう点か、具体的にお示し願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/6
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007・田中榮一
○田中(榮)政府委員 御承知のようにこの恩給制度というものは非常に古いところの沿革を持って、しかもまた非常に内容が複雑でございますし、いろいろの点におきまして国家公務員、地方公務員の関係もございますし、また共済制度におきましても負担の関係——本人の負担あるいは国家の負担、そのほかいろいろ給与の内容、給付の内容、あるいはその給付の資格が生ずる年限の相違だとか、いろいろこまかい技術的の問題等が多数含まれておりまして、この辺が今直ちに解決できないという一つの大きな理由になっておることと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/7
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008・受田新吉
○受田委員 その給付の内容とかあるいは給付の対象とかいうものが非常に多岐にわたっているからということで、この問題が遷延されておるということは、これははなはだ怠慢だと思うのです。人事院はこれは政府の中の独立した機関なんです。その機関が国家公務員法に基いてりっぱな勧告をしておる。それが一年半も放任されて、しかもまだいろいろむずかしいからという困難を唱えて、前途遼遠なる御説を立てておられるということは、何のために人事院というものがあるのか、その点について人事院の権威というものをいかにお考えになっておられるか、お伺い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/8
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009・田中榮一
○田中(榮)政府委員 お説のように人事院はもちろん不覊独立の立場にありまして、国家公務員の給与その他について、いわゆるこれが安定と申しますか、国家公務員の生活の安定を得せしめるような一つの機関でございまして、もちろん政府といたしましても、人事院の勧告につきましては十分にこれを尊重し、また当然これは実現に移すべき筋合いのものと考えておりますが、現下の状態からいたしましていろいろ財政上の点もございますし、今申しましたお尋ねの点につきましては、そうしたいろいろな複雑多岐な問題が包蔵されておりまして、今直ちに人事院の勧告の線に従って一挙にこれを解決することは非常に困難でございますが、政府といたしましても、人事院勧告の線は十分に尊重いたしまして、今後これを検討していきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/9
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010・受田新吉
○受田委員 財政上の理由をお示しになられましたけれども、国家公務員退職年金法の実施の場合における財政的な政府の責任は、ほとんど現行と大差がないということになっております。従ってただ制度の切りかえだけの問題です。つまり旧官吏の恩給と新しい雇用関係に基く公務員の共済組合的な、すなわち国家公務員共済組合法、そういうものを一本にまとめ、退職金とそして計画的に支給される年金との調整をとろうとするところに、例の退職年金法の性格があると思う。結果的に見たら予算上には大差がない。ただ制度上の問題としてこれをどう考えるかというところに重点を置かれているのです。この点いかがお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/10
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011・田中榮一
○田中(榮)政府委員 もちろん私は、この国家公務員の恩給制度も、また共済組合の年金制度も、理論的に申しましても、実際から申しましても、やはりこれは同じ範疇に入るべき性質のものだと考えております。これはお説の通りだと思います。ただ、ただいま申しましたような関係で、いろいろな事情からいたしまして、この点がまだ十分にお説のように早急に実現に移せないということはまことに残念でございますが、この点はいましばらく時間をかしていただきまして、検討の余地をお与え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/11
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012・受田新吉
○受田委員 人事院は数百の職員を擁し、しかも聡明なる職員が専門的に研究している機関なんです。しかも国家公務員法という最も基本的な公務員の身分その他を規定する法律に基いて勧告をされた数年間の研究を擁して政府に勧告したわけなんです。それを公務員制度調査会という——その中におられる方々はどういう方であるか、きのう、きょう資料を提出していただくようにお願いしてありますから即座に御発表願えると思うのですが、その公務員制度調査会なる何ら法律的には拘束力のない機関にお諮りになって、今その方で研究さしておるとおっしゃるのですが、数百名の職員が専門的な知能を動員して集めたその成果がまだ不安定である、研究を要するというので一年半も放任しておるというそのこと自体が、むしろ政府の良識を疑わしめると思っているのです。従って古いお役人は、恩給法という特典で高額の恩給をもらって退職後の身分が安定しており、新しい相互扶助のもとに立つ公務員は、共済組合の法律によって守られておる。そこに一つの大きな矛盾がある。それを双方のよいところを取り入れて、ここに国民年金制の第一歩として、公務員に対しては一貫的な一元的な法律のもとにこれを考えようとする、かかる法律をもう真剣に考えるという段階じゃないでしょうか。もうすぐ法律案を出すという段階に来ておるのではないでしょうか。今のお説では、当分まだ人事院の勧告は手をつけることがむずかしいという想定のように考えているような印象を私は受けるのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/12
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013・田中榮一
○田中(榮)政府委員 もちろんこの人事院の勧告は、人事院のその道の権威者がお集まりになって十分に検討に検討を加えました結果、政府に対しまして勧告をされたものでございますから、私どもとしましては、人事院の勧告の内容そのものにつきましては、何ら異議がないのでございます。それぞれの根拠に基いてやっておられますので、これにつきましては異議はないのでございますが、ただこれをいかに実現するかということにつきまして、いろいろ具体的な、ただいま申し上げましたような技術的な非常にむずかしい問題に逢着いたしておりますので、これをどういうふうに解決し、これをいかに処理するかということにつきまして、政府自体といたしましてももちろん考えておりますが、一応公務員制度調査会の意見を徴しました上で、さらに政府としてもこれを研究したらどうか、かように考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/13
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014・受田新吉
○受田委員 公務員制度調査会の意見を徴するということは、昨年末鳩山内閣成立以後、担当国務大臣によってしばしば述べられておりますが、すでにそれから半年以上たっている。半年以上たってなお意見を徴するという段階、こういうお言葉ですが、公務員制度調査会は、一カ月に何回くらい開かれ、どういう構成でやっておられ、またそれをいかに尊重しなければならないかの理由を御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/14
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015・田中榮一
○田中(榮)政府委員 この公務員制度調査会は、大体におきまして現在の各官庁の代表者と申しますか、局長、課長等の実際に事務を担当している連中を初めといたしまして、それから民間のその道に関しまして相当権威のある学識経験を持った方々、それからこの方面に相当いろいろ知識をお持ちになっております大学教授の方々、そういうような方々に毎週お集まりを願いまして、毎週審議を重ねております。それではっきりした数字ではございませんが、昨年じゅうに大体総会を二十回前後開いていると思います。それからさらに現在は総会から小委員会制度にこれが移されまして、小委員会におきまして、毎週関係者が集合いたしまして、具体的な個々の問題につきまして検討を重ねております。大体この小委員会の結論が近く出るのではないか。これをさらに総会に報告いたしまして、総会といたしましても、またいろいろ意見があろうかと考えておりますが、現在は大体の結論を得る程度まで至っているのではないかと考えております。近く総会にこれを報告いたしまして、また総会は総会としてこの問題を一ぺん取り上げてさらに検討するのではないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/15
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016・受田新吉
○受田委員 政府は、公務員制度調査会にあまりにも期待をかけ過ぎ、それにたより過ぎて、政府自身の意思を全然持っておりません。従って年末かあるいは六月のような期末手当の問題が起るときになると、いつでも政府は馬脚をお現わしになるような結果になっているのですが、はっきりした政府自身の腹ができていないから、公務員に対して不安定な気持を与える結果になると思う。従って公務員制度調査会とは別に、政府部内において、人事院に対して御安心できないとなれば、各省間の知能をすぐったそんなゆうゆうとした御審査をなさるような公務員制度調査会によらないで、はっきりした筋の通った意見をお求めになるような態度をお持ちになる意思がないか。すなわち恒久的な公務員制度については公務員制度調査会の諮問を待つがいいが、個々の問題についてはさっさと片づけていくという、そういう態度がほしいと思う。前の三好国務大臣、今回の大久保国務大臣等、ゆうゆうとして迫らざる春日遅々たる風格をお持ち合せの人々が、ここで何ら具体的な御答弁ができないというような、かかるだらしない政府は、何のためにこの公務員という制度を考えているか、われわれ了解に苦しみます。ちっとも骨がない。この点あなたは国務大臣の代理としておいでになっておられるのですから、都合によれば、この際総理大臣をお呼びする心要もあるし、官房長官をここえ即座に呼んで、御答弁願わなければいけないようなことになるかもしれませんが、政治的責任がありますので、御発言をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/16
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017・田中榮一
○田中(榮)政府委員 まことに公務員制度調査会が遅々として進まざる点は申しわけないと思います。ただ御承知のように、公務員制度と申しましても、非常に複雑多岐、広汎でございまして、これを一概に簡単に処理するということは、非常に困難な面もございます。こういうために、できるだけ公務員の実態を把握いたしまして、それによって不利益にならないように、また公平を期するように、またなるべく正確を期するように、かような見地から、鋭意その審議、調査を進めておりますので、決して政府としては、怠慢で調査会を遅延していることは絶対にないのであります。私どもも、ときどきこの公務員制度調査会に出席いたしまして、その審議の状況を現実に見ておりますが、非常に熱心に、長時間にわたって審議をいたしております。この点は、さらに、鋭意督励いたしまして、できるだけすみやかに結論に到達いたしますように、努力いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/17
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018・受田新吉
○受田委員 公務員制度調査会の結論が大かた出かけておるというお言葉がありましたが、その結論の目標はいつにされておるか。目標のない審査はありませんから、公務員制度調査会は、小委員会を設け、近々結論を出すという、その結論の目標はいつごろに置いておられますか、それをお示し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/18
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019・田中榮一
○田中(榮)政府委員 最初私どもの目標は、六月ごろには何とかして結論を出したいと、いろいろ努力しておったのでございますが、その後さらに、いろいろ調査する事項がふえたり何かいたしまして、七、八月以後になるんじゃないかということを——はっきりここでいつ結論が出るかということを確言することははばかりますが、できるだけ早急に結論を出したいということは考えておりますので、この点、御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/19
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020・受田新吉
○受田委員 六月末までに結論を出したいと思っているが、七、八月以後になるんじゃないかというお言葉でありますが、きょうは、六月三十日です。従って、きょうお出しにならない限りは、七月、八月以後になるのははっきりしている。従って、これはきわめて明瞭なことなんです。
私はもう一つ、これに関連した政府の所見に疑義を感じている点は、社会保障制度審議会が、社会保障制度審議会設置法の規定のもとに、内閣の中に設けられております。これはいやしくも国法に基いて設置された機関でありますが、その機関に対して、政府はいかなる諮問をしなければならぬかということは、政府御自身、社会保障に関するいろいろな制度の問題とか、機構の問題とか、その他いろいろな諮問事項を示されておりますけれども、社会保障制度審議会は、いまだかつて軍人の恩給とか、あるいは遺家族の扶助料とかいうものに対して諮問を受けたことが一回もないと聞いております。少くとも、戦傷病者、戦没者等の遺家族援護法は社会保障の性格を帯びておるものであることは、厚生省当局もはっきりいっておられます。恩給法に続く前提としての国家保障であり、同時に社会保障であるといっているが、遺家族援護に関しても、軍人の恩給に関しても、そういう社会保障の性格を帯びているものを、一回も諮問しないという政府は、まことに怠慢であると思いますが、御所見はいかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/20
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021・三橋則雄
○三橋政府委員 旧軍人に恩給を給するかどうかの問題につきましては、受田委員も御承知の通りに、法律をもって先年恩給法特例審議会というのが設けられまして、その審議会によって調査研究された結果、建議されたところによって政府が善処する。こういうことになっておったと承知しております。そういう関係からいたしまして、当初旧軍人及びその遺族の方々に恩給を給するかどうかの問題、その他については、社会保障制度審議会には諮問はされなかったのでございますが、今お話のように、社会保障制度審議会との関連もありますために、特例審議会におきまして審議されましたその結果につきましては、局の方から事務局の方に書類を送りまして、一応の説明をする機会は与えていただいております。それからその後の改正につきましても、私の方から事務局に連絡いたしました。そういう程度のことはいたしております。ただ政府から今度恩給法の一部等の改正法律案を出すにつきましては、これがまた直るような結果になるようでございましたので、事務当局の方にも連絡をいたしまして、実は参考送付とするに至っておりませんでしたことは事実であります。しかし今度議員の提出法案が定まりましたので、これを社会保障制度審議会の方に私の方から参考のために送付しようと思っているところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/21
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022・受田新吉
○受田委員 社会保障制度を尊重したごとく、また今後尊重しようという御意向があるごとくにうかがえるのでありますが、社会保障制度審議会は、すでに昭和二十四年に設置されて以来、二十五年に基本的な勧告をしているし、二十七年には意見書として厚生年金保険や公務員の恩給、軍人恩給等の年金問題という基本的な大問題について意見書を提出している。また二十八年には恩給法の特例審議会が結論を出したことに基いた年金制度全般にわたる恩給を含んだ勧告が出ている。社会保障制度審議会は、非常に熱心に、委員の中にもそういう方面のエキスパートが努力して結論を出して下さっている。その結論は、事実上政府としては尊重した結果になっておりません。従って恩給法特例審議会の結論が、そのまま恩給法の改正案に現われた結果になっているのであります。最近における政府の責任者たちは、しばしば社会保障の方向に軍人恩給を持っていかなければならぬという言明をしておられる。しからば少くともそういうものが何かの形で現われてこなければならぬと思うのです。しかるに今度の恩給法の改正を見ると、何らそういう社会保障的な要素が入っておりません。政府は社会保障という名をつけると、恩給に振り向けられる一千億の金が、これなら国民感情の上においても、恩給亡国の印象を与えないからというので、そうした方面の集まりなどのところでは、恩給や扶助料は、社会保障でわれわれは計算してみると、大体二千億近くも——国費の二〇%近くも社会保障的性格を持っている国家予算が組んでありますと言う。また遺族などのような、特に軍人の階級差別観念で法律などを律しようという考えを持った方々のところへ行くと、皆さんは社会保障などで守っているんではない。全然社会保障の要素はないんだ。皆さんははっきり恩給法一本で守っていくのであるというような印象を与えられる演説をしておられる。そのつど適当に社会保障の言葉が自分たちの都合のいいように利用されているような傾向が最近見られる。こういうことでは首尾一貫していない。恩給法は恩給法であくまでやるんだ。それならそれでいいし、社会保障としてやろうと思うが、しようがないからこういうものをもってやるんだというお説をなさるなら、少くとも社会保障に一歩前進するごとくにこの法律改正がなされておらなければなりません。多少でもそういう援護的、相互扶助的な性格のものが出されてくるというならば、政府が社会保障的性格をもって考えようとする意図をくみ取ることができますが、少くともそういう意図を持っている以上は漸次それを吸収しなければならぬ。たとえば援護法に規定されているところの多くの該当者は、せめて恩給法にこれを大幅に受け入れるようにする、あるいは国家総動員法によって動員された人人は、国家の至上命令で動かされた、自己の自由意思じゃなかったのだということになるならば、その人たちも恩給法に吸収するとか、そういう基本的なものがこの中に入ってくるなら、それはわれわれも一歩前進したと考えます。そういうものは援護法に残してない、いや援護法にも吸収しないで、国家の至上命令によって、たとえば学徒動員の人やあるいは徴用工やその他の従軍看護婦とか、あるいはそういう方面で動いた警察官とかいうものが、そのまま放任されておるというような現状は、まことに了解に苦しむのです。あくまで社会保障の前進の第一段階としてこの恩給法改正を考えたいという政府の意図を、何らかの形で具現化しなければならぬと私は思っておるのでありますが、何らそれを伺うことができない。この点につきましては、高橋議員は民自両党のこれらの調整の最高責任者として、そこで提案の理由を説明された偉大なる職責を考えられまして、政府の意図とこの恩給法改正案とは十分調整をとった結果であるとお認めになるか、いかがか、御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/22
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023・高橋等
○高橋(等)委員 ただいま受田委員からの御発言、政府側がそういうことを言っておられるかどうか、私は遺憾ながら確認をいたしておりません。従ってそれに対する批判を一応差し控えさしていただきたいと思うのでありますが、私たちはこの問題は、要するに旧軍人あるいは遺家族、傷痍軍人の国家保障の観点に立っての保障の問題と考えるべきだ。それは文官恩給が現在ある以上は恩給法でやるのが至当である、社会保障でいくべきではないということを実ははっきりと考えておる。ただ社会保障という言葉がいろいろ手品のように社会保障という一本の言葉で使われるものですから、これを徹底的に狭く解釈しますと、いわゆる生活保護法というような問題に局限される場合もあるでしょう。広く解釈しますと、たとえば上に薄く下に厚くというような考え方がとれる場合もある。現在恩給法におきましても若年停止とか、高額所得に対する減額とか、そうした意味では社会保障といいますか、社会政策的なことはもちろんいろいろやっている、今度もやった、こういうわけでございまして、その点は御了承をお願いいたしておきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/23
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024・受田新吉
○受田委員 社会保障という言葉が手品のごとく使われているということは、今私自身が申し上げたように、政府が、社会保障的な発言をした方がいいというところに行ったら恩給の額までも社会保障としては二〇%入っているのですと言うし、遺族会などで、恩給法で国家補償だけというようなところに行くと、いや諸君、社会保障なんというものじゃない、はっきりと恩給で諸君の特権を国家が認めようとしているのだと言うて演説している。こういうように閣僚の声もそのつどつど手品のごとく変えられて、利用されていく傾向があるのです。ここに国民の疑惑を抱かす一つの問題であるのであります。大蔵大臣にぜひここに出てもらいたい理由があるのは、きのうもここで、現段階においては国民世論は恩給法を守らなければならない、そして社会保障的な要素などというものは今考える段階ではないと私は断定しておるという発言をされたわけです。そういうような意向を政府が今持っておられることも一部の大臣の言明でわかる。だから閣僚の中にもいろいろの見解を持っていられる方があって、閣内不統一ということも言えるわけです。そういうことで官房の重任にあられる田中さんも御苦労が多いと思うのでありますが、しかし少くとも政府は一つの目標のもとに政治の中心を持っていかなければならぬのです。その点は重大な責任があると思います。
なおここで政府の政治的責任をお尋ね申し上げたいのですが、この改正案によりますと、来年度、平年度におきまして百六十億の国家予算の増額を必要とすることになる。この予算の増額ということは、私が議員生活を相当やっておる経験から考えて、次の年度にかかる多額な予算の制約を与えた記憶をいまだかつて持っておりません。これは内閣がいつかわっても、次の内閣は法律的にそれだけの束縛を受けることになるのでありますが、次年度における莫大な国費の予約をされるような法案を通された現在、政府としてはその予算の処理の問題をいかようにお考えになっておるのか。大蔵省などとも十分折衝しておられてこの民自両党の修正案をおのみになったのだと思いますが、改正案に対していかなる御見解を持っておられるか。政治的責任という立場からと、もう一つは政治的な良識から考えて、次年度にかかる莫大な予算の予約をさせるような法律を作ることそのものは妥当かどうか、御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/24
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025・田中榮一
○田中(榮)政府委員 国家財政の点でございますから、私からお答えするのはあるいは筋違かと存じますが、政府といたしましては、今回の恩給に関しまする増額につきましては、大体におきまして財政のめどをつけた上において支出いたすようにいたしておるのであります。それがために今回この予算案を現在国会に提案いたしておるような状況でございまして、もちろん今後の恩給がどの程度に増額さるべきであるか、あるいはまたどの程度に処理すべきかということにつきましては、大体の予想をつけまして今日提案いたしたような次第でございます。今後ますますこれを増額するということにつきましては、財政の点から抑制すべきではないかと考えておりますが、この程度の増額は現在の国家財政の上から十分に支出し得る能力を持っておるという観点から、ここに予算を編成いたしまして、国会に提案いたした次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/25
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026・受田新吉
○受田委員 これは政府が御提案になったと御発言されたように聞きますが、これは民自両党の提案であると私は思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/26
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027・田中榮一
○田中(榮)政府委員 言葉の言いまわしが悪くてはなはだ申しわけないのですが、これは政府が財政上の点からもちろんこの程度のものを承認をいたしまして修正されたものでございまして、政府としましても財政上につきましては十分責任を負うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/27
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028・受田新吉
○受田委員 政府は一十億前後の予算を考えておられたようであります。ところがそれが一躍して百数十億ふえる案をいかにも事もなげに了承をして、これを自分の方は撤回したというふうにおっしゃったわけです。百数十億に及ぶ莫大な国家予算が事もなげに了承されて、今度は両方の政党の改正案になったというようなことは、これはどうも了解に苦しむのでありますが、政府としてはそれだけの財政上の余裕をお認めになるならば、なせ世論にそういうものがあるとすでに大蔵大臣も認めておられた現状において、政府提案としてこれを御用意されなかったのか。それから百数十億が事もなげに変更できるような情勢に現在の国家財政はなっておるのかどうか、この点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/28
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029・田中榮一
○田中(榮)政府委員 御案内のように、今回修正されました恩給法は直ちに支出するというのではございません。完全実施が昭和三十二年の一月一日からということになっておりまして、財政上のいろいろのやりくりと申しますか、そういう点から完全実施が先に延ばされておりまして、かような点から現在の財政上において、この程度の支出は大体においてまかない得るという予想のもとに、その修正に応じた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/29
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030・受田新吉
○受田委員 内閣が総辞職した場合において、この大きな重荷を負うた次の内閣が、百数十億の財政上のやりくりをしなければならないのでありますが、こういうところについて、常に政治というものは、次の段階における政治まで考えた心づかいが必要だと思います。またきのう長谷川委員からお話がありましたように、いつ内閣が転換するかもしれない。民自両党が合同するかのごとく見えますが、いつまた爆弾が炸裂いたしまして、瓦解するかもしれない。社会党内閣が一年後に生まれてくるということが言えないこともない。こういう段階に立ち至っておるわけであります。こういうときに、いずれの内閣であっても、当面なし得るところの国家財政というものを考えて、次の政権への受け入れまでも、親切に考えてやるほどの政治的良識がいると思うのです。この点かりに民主党内閣が倒れて、自由党内閣ができたという場合も、同じことが言えると思うのです。この点少数内閣の悲しみはさもありなんと思いますけれども、ある程度の内閣の基本的な筋金だけは持ってもらわぬと、政治良識を疑われると思います。従って次の予算に影響する場合には、十分その内容を検討してもらわなければならぬと思いますが、政治良識からいって次の内閣に負担をかける場合においては、ちゃんと筋を通すという態度、これはぜひ必要だと思うのでありますが、官房副長官としての御所見をもう一度伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/30
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031・田中榮一
○田中(榮)政府委員 もちろん時の政府がいろいろ諸政策を実施する上におきまして、やはりその場限りであってはならぬと思います。やはり将来の財政計画、そういう点を十分考慮に入れまして予算を組み、また財政計画を立てるべきだと考えます。従って、現在のこの財政計画も、やはり国家の財政計画の将来性を見通しをいたしまして、一貫した方針のもとに、財政を立てたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/31
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032・宮澤胤勇
○宮澤委員長 ちょっと提案者から補足の説明があるそうであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/32
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033・高橋等
○高橋(等)委員 ただいまの御質問は、提案者としても責任がある点があると思いますので、私からも一言お答えをいたしておきます。来年度以降の予算増につきましては、これはなかなか重大な問題でございまして、実はこの案を決定する際の非常に大切な、またむずかしい研究課題であったわけであります。これは御存じの通りと思う。そこで一度に財政の膨張を防ぐという意味から、来年度の七月一日までを増加額の五割ということにいたしまして、それ以後を満額とする、こういうことになっております。従って来年度の予算増は本年度と比べますと、約百億、それからその次の年度になりますと、三十一年度と三十二年度と比べますと、約四十億の増加、こういう一応の見当を持っておる。一面自然減というものが相当ありますが、そういう詳しい点は省きますが、これらについてわれわれが提案をいたしますのに、将来の問題について非常に良心的に考えたことはもちろんでございます。自民両党がこの点においては一致いたしておるのでございます。どの保守党が内閣をつくりましても、あるいは合同した場合、あるいはしない場合、いろいろな場合が予想されますが、どういう形でできるにしましても、この点について現在自由党、民主党に籍を置いております者は、全員これを賛成いたしておるのであります。保守党の内閣におきましては、責任を持ってこれがやれるという認識の上でやっておりますことを御了承願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/33
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034・受田新吉
○受田委員 総括的問題の質問を一応終るに当って、もう一度政府の御所見を伺いたい点があります。それは社会保障制度審議会の勧告あるいは意見書というものは、旧軍人恩給、公務員恩給に関する限り、一切受け入れられておらない現状であるが、この社会保障制度審議会が法律で設置されておるのに、何らそれを実際に考慮しないでおるというこの態度は、これは国法を無視した態度であると思われるが、御所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/34
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035・田中榮一
○田中(榮)政府委員 この社会保障制度審議会から、実は二十七年でございましたか、やはり恩給年金等に関しまする答申——当時答申とはいわずに、何かこれは送付されたという形になっておるそうでございます。これは政府が諮問をいたしておりません。社会保障制度審議会が自発的にこの制度を十分に審議御調査を願いまして、その結論を政府の方に送付されております。
〔委員長退席、床次委員長代理着席〕
これは正式の答申とはなっていないので、送付という形式になっております。政府としましても、もちろん社会保障制度審議会の答申がかりに出なくても、送付という形式で送られましたこの答申案の内容につきましては、十分に私は検討したものと考えております。しかしながら実際問題としまして、ただ答申がそのまま採用されなかったことにつきましては、これはその当時のいろいろな事情があったと考えておりますが、政府としましては、根本的な問題は、社会保障制度審議会の答申を、政府がどの程度まで尊重するかという問題であろうかと考えておりますが、実は本年もやはり社会保障制度審議会から結核対策に関する答申、それからまた社会保障の企画庁を設置したらどうかというような御答申も現実に伺っております。従いまして政府としましては、決してこの社会保障制度審議会の答申を無視するとか、これを阻止するとか、これを全然没却するとか、そういう意思は毛頭ないことをここに申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/35
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036・受田新吉
○受田委員 高橋さんは、この恩給法に規定する事項は、社会保障的性格を帯びさせるというようなことは、これはおかしなことでとせせらお笑いになっておりましたが、この社会保障制度審議会は旧軍人恩給、公務員の恩給等に対して、国家の機関として非常に熱心に真剣に、政府に意見書を申し上げておるわけなんです。それがせせら笑われることになると、自由、民主両党の方々は、基本的には社会保障制度審議会なるものに、これはおおむね旧軍人恩給、公務員の恩給等、あるいは遺家族の援護に関する問題等々をこれは問題にしない。問題にしないからこそ一回の諮問もしなかったと断定できる。自由党民主党を通じて一貫せるものは、社会保障制度審議会にかかる問題をお尋ねにならなかったそのものが、軽視のほどを示しておると思う。なぜお尋ねにならなかったかを民主、自由両党の責任者としてお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/36
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037・高橋等
○高橋(等)委員 御質問が私に対する御質問としては、はなはだ御無理であると思う。ただ党の立場としての答弁ならば申し上げますが、本法案の提案者としての立場として申し上げるのは、私が申し上げても、これは大して——どう言っていいか、そんなしっかりしたことは申し上げられないと考えるのですが、私がせせら笑ったというような、言葉じりはとらえませんが、非常に尊敬の念を持ってあなたの御説を実は拝聴しておる。これも一つの意見でありますが、われわれは国家に対しまして、公務員あるいは旧軍人といたしまして、自分の全能力をあげて奉仕をした、それに対しまして国がこれに対する保障をいたすというこの恩給制度というものが現在文官においてもある以上は、これでやるのが適当である、こう考えておる。またこうした性格のものは社会保障制度の中へ入れるべきものじゃないのだという考え方を持っております。ただそれならわれわれ自由党内閣がなぜ諮問しなかったか、諮問する必要がなかったからしなかったんだろうと思いますが、私は当時政府の大臣をやっておったわけではなし、政務次官をやってはおらないのですから、この点の答弁は御容赦をお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/37
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038・田中榮一
○田中(榮)政府委員 当時の考え方としましては、やはり今高橋委員からお話がございました通り、恩給制度というものが国家補償であるという根本的な考え方もございましたでしょうし、またいろいろの点から、社会保障制度審議会というものがもう少し本格的な社会保障制度の方を十分に御研究願うという意味から、おそらく私は当時の政府が諮問しなかったのだろうと考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/38
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039・受田新吉
○受田委員 その問題を終りまして、次に仮定俸給の設定に関してお尋ね申し上げます。長谷川委員からもきのうるるお説をお聞きいただいたわけでございますが、あの仮定俸給で問題になるところだけを私は申し上げるのですが、この軍人の仮定俸給というものは、そもそも従来の軍人恩給法のときから特別の待遇がしてあって、実際支給額よりは高いところに仮定俸給が置かれておったと私は記憶いたしております。文官の恩給の算定基礎は、実際の俸給額、ことに退職前一年間の俸給額が基礎にされるという厳重なわくがはめられて、その恩給の基礎が算定されておったと記憶しております。ここに武官優先の原則が、旧恩給法時代には一応武官には実際の俸給額よりも高いところに仮定俸給を置くということが行われておったと思うのでありますが、この点政府としてその理由の御説明をいただきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/39
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040・三橋則雄
○三橋政府委員 旧軍人の恩給につきましては、従来は普通恩給なんかは、在職年別、階級別の定額制になっておったのであります。それが昭和八年だったと思いますが改正になりまして、今の文官、つまり私たちと同じように退職当時の俸給を土台といたしまして恩給の年額を計算するというふうになったのであります。その際に、旧軍人の方に給付されておりました今申し上げます階級別、それから在職年数別による金額を、今申し上げましたような現行法の規定によりまして、退職当時の俸給をきめて、そうして最短在職年の場合は百五十分の五十、こういうように逆算をしていって、そうしまして一つの恩給年額計算の場合の基礎になる仮定の俸給をきめたのであります。その仮定俸給が終戦のときまでずっと旧軍人の方々の恩給年額計算の基礎俸給になってきておったのでございます。
それからそれならば、基礎俸給はどうなっておったかということでございますが、今お話のように、大体において現実に給付された俸給よりも多くなっております。そうしてこのことはまた文官の場合におきましてもあることでございまして、受田委員も御承知のごとくに、文官につきましては、昭和六年ごろであったかと思いますが、いわゆる官吏の減俸というものがございました。あの減俸がありました結果、減俸前にやめた人と、減俸後にやめた人との間におきまして恩給法上の取扱いに差がつくということを避けまして、減俸後にやめた人につきましては、現実の俸給はかりに少かったといたしましても、減俸前の俸給に俸給額を還元しまして、それを基礎として恩給年額を計算するような措置が講ぜられてきておったのであります。従いまして現実に給付されている俸給を土台として計算をされなかった点につきましては、少し趣旨は違いますけれども、軍人の場合におきましても、文官の場合におきましても同じように取り扱っておったのであります。それから今の御質問の中に退職前の一年間云々というお言葉がございましたが、その点の取扱いにつきましては、旧軍人につきましても、文官につきましても同じように取り扱いはされておりまして、その差別はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/40
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041・受田新吉
○受田委員 軍人は退職当時階級が上った場合に、上った階級によって恩給が付せられておったと思います。文官の場合にはその処理が武官のように上った俸給というものが考えられていなかった、そういう差が私はあると思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/41
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042・三橋則雄
○三橋政府委員 文官の場合におきましても、官等と俸給と対応させてきめておる例がありました。御承知の通り、外交官の場合におきましてはそうでございまして、一等書記官は幾ら、二等書記官は幾ら、こういうふうになっておったと思うのであります。従いましてそういう官職にありました文官につきましては、官等が上りますれば必然的に俸給も上る、こういうふうになっておったのでございます。軍人の場合におきましては階級に俸給がくっつけてあったといっては語弊がありますが、ついておりましたために、階級が上ること、すなわち俸給が上ることになっておったのでございます。それから一般の文官につきましては官等と俸給とは必ずしも随伴することになっていなかったために、官等は上っても俸給が上らない場合が、今受田委員のおっしゃるように確かにあったのでございますが、階級すなわち官等といいますが、軍人の官等、階級が上れば軍人は俸給が上る、それは軍人だけのことであって、文官にはそういうことは全然なかったかと申しますと、必ずしもそうではないように承知いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/42
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043・受田新吉
○受田委員 外交官の一部に見られたきわめて稀有の現象をとらえて、あたかも文官全部にあったように宣伝されるのは非常に誤りで、これはまれなる例外なんです。基本的には武官は実際もらっている俸給よりは高い仮定俸給を設けられておる、文官は現実にもらっておる給与しかもらえない。官等が上るということも、武官の場合にはやめるときに官等が上るが、文官の場合にはさようなこともまたきわめてむずかしいことであったということを考えるときには、それは戦争中武官優先の原則を確立したという意味においては、われわれ一応認められると思うのでありますが、戦後平和時になって文武間においてそういう俸給上の差異を認めない今日、新しい恩給法にも依然として旧軍人は実際自分のもらった俸給よりも高い仮定俸給基礎額が設けられておる。文官の方は、特に問題になるのは、昭和二十三年六月以前の退職公務員の場合でありますが、昭和二十一年七月例の官吏俸給令が出たときに格付された俸給というものは、これはそのときに、従来の旧俸給で月額四十五円もらっておった人が新しい号俸、七十号俸のうちの十六号に該当した。それがさらに三六ベースになり、六三ベースになり、八千円ベースになり、一万円ベースになったときに、不均衡是正を含んだ一万円是正が考慮されたのでありますが、そのときに十六号であったものは、そのときの四十五円の最低の基準に当てはめたものは、六三ベースのときには十一号に切り下げられておる。その切り下げられたままで、自後五号差、一番下だけでも五号違っておるわけです。五号差がそのままずっとベース・アップ不均衡是正ということに処理されておりますので、特に二十三年の末に行われた年数の切りかえをするときの計算などが、ほとんどこれに入れられていないという関係で、二十三年六月以前の人は二回、三回と非常に不当な格づけをされたために差し繰られて、今日文官でありましても、高等官六等の十八年、十九年やった文官が五万円前後の恩給しかもらっていない。同じ官等の大尉は今度七万一千円ほど恩給をもらうという差等が生じた。また五十年近くも教員をやった元大校長が、現に八十才をこえた人がわずかに年額五万円に足らない恩給しかもらっていない。今小学校の校長の最高級は十二級でありますから、少くとも本省の課長級のところまでは恩給をもらわなければならないのがわずかに五万円しかもらっていないというような大きな差等を文官に生じたのです。これは何を物語るかというと、幾回か途中で切りかえをされた、その格づけのつど、そのときの予算の関係で差し繰られて低いところへ割当られた。それが今日そのままずっとベース・アップで一万円、一万二千円ベースできているというところに大きな矛盾がある。この点につきましては、旧武官も文官も比較して劣らないという目標を持っておられたのであるが、同じ運命にあった二十三年六月以前に退職した文官と比べたときには、その文官は完全に陥没されて、昭和二十三年六月以前に恩給を受ける資格を生じた武官が実際の俸給額よりも高い仮定俸給をもらったというので、大尉などにおいては完全に四号俸も調整をされて、当時同じ階級にあった文官と比較した場合に高いところに置かれており、今現実に二万円も違っているという差等が生じた。この点、文官に目標を置かれた武官としては有利なわけで、少くとも取り残す文官を作らないようにして、同時に二十三年六月以前に退職事由の生じた文武官は同じ線でいくという案をおとりになるべきでなかったか。それに伴う予算の措置は、四分の一・四半期で五億円前後でいいとわれわれは聞いておりますが、こういうこともあわせて一緒にしていただいてこれをお出しいただくことになったならば、文官で久しく沈黙しておった老齢の人が武官の恩給増額に対して何らのうらみも悲しみも感じないで、ともに助かるだろうと思うのであります。以前の文官の恩給額が非常に低い線にあるということを今日政府としてはどうお考えになるか。高橋さんといたしましても、この間本会議でそれは確認するとおっしゃったのでありますが、確認をするということになったら、そういう問題について個々に当って、いかにこれを救済するか。武官優先の原則が二十三年六月以前にはっきり出て、軍人恩給だけをうたおうとしたために、同じ事情にある文官を取り残したというこの問題の責任をいかにおとりになるかを双方からお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/43
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044・高橋等
○高橋(等)委員 ただいまのお言葉の中で、私は今よくわからぬが、何か言葉の確認をすると本会議で言ったといわれるが、決してそう申し上げておりません。この問題は確認するというような意味合いのことは絶対申し上げてない。これは一つ速記録をお調べを願いたいと思う。それでただいまお話になりました昭和二十三年以前の文官も、その退職当時の俸給からいきますと、やはり同じようなベース・アップもされておるのである。われわれはそこに何らか手違いはないと考えておる。これははっきり申し上げる。また官等六等同士を比較してお話になりましたが、官等では俸給は云々できないのです。普通文官の官等には高等官何等何級俸というように旧法では言っておったわけですから、官等だけで御比較になることは正確を欠くものと思います。ですから、この恩給法をきめます場合に、決して不公平な取扱いはいたしておらないということははっきり申し上げられると思うのですが、ただ二十三年以前の文官につきましては、今御指摘になりましたように、当時の基本俸給が低くなり過ぎておった、今はその基本俸給が高くなっておる。そこで低くなり過ぎておる基本俸給にべース・アップをその後二回やって、今一万二千円まで来ておる。ですからべース・アップをやりましても、そこに一つの低いものができておる。ですから、これは武官優先の原則とかいうことではなしに、別途の角度からこの問題は考えてみなければいけない。なるほど大へんお気の毒な点があるのですから、私もこの問題の解決はできるだけ早くやらねばならない、こう考えておるということを本会議で申し上げたのであります。(「同じことじゃないか」と呼ぶ者あり)いや、全然違うのです。この恩給法の立て方でこれをやらないから陥没地帯ができたのではないのだ。筋は通っておる。通っておりますが、ただ基本俸給が当時低過ぎたんだ。たとえて言えば、当時の学校の校長は係長級くらいの基本俸給しか出ていなかった。今の校長さんは部長級くらいの基本俸給が出ておるとすれば、それがベース・アップしていったらこれは違うにきまっている。当時の係長級の基本俸給ではあまりに気の毒すぎはしないか。そこで過去にいろいろ俸給を下げていった非常に犠牲的な面もあり、ことに老齢に達せられておる人人であるから、何かそこに是正を要する面があることは私ははっきり認めておるのです。しかしこれとの関連において決して確認はいたしておらないのでございますから、どうぞ御了承願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/44
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045・三橋則雄
○三橋政府委員 今の受田委員の御質問にお答えいたします。受田委員の基本的なお考えは、同じ官等であったところの文武官間におきましては、今度恩給が金額の点においてふつり合いになるのではなかろうか、こういうようなことが前提になっておるように思われるのでありますが、もしも官等ということを中心として考えました場合におきましては、あるいはそういうようなことが起ってくる場合もあるかと思いますけれども、しかし恩給年額の計算の基礎になっておりますところの退職当時の俸給そのものを土台として考えました場合におきましては、文武官の間におきまして不つり合いになるような措置はされていないように思うのであります。それからなお昭和二十三年六月三十日以前に退職した公務員の人とその後に退職した公務員の人との受けるところの恩給のいわゆるふつり合いの問題についてのお話がございました。御承知のように、昭和二十三年六月三十日以前に退職した人々の恩給の年額につきましては、数回にわたって増額をされて参ったのでございます。その増額はいわゆる在職中の公務員の俸給がベース・アップされる、そのべース・アップに伴う範囲におけるところの増額はされておるのでございますが、今高橋委員も仰せられましたように、公務員全体として考えました場合においては、前に割合に悪い待週を受けておったと思われる人が今非常に待遇が改善されていいところにある、こういうような人につきまして考えました場合におきましては、現在待遇が改善されているその改善に即応しての恩給の引き上げといいますか、そういうようなことはされておりません。従いまして、そういうような面から考えました場合におきましては、今受田委員の申されまするように、確かに問題はあるのでございますが、これにつきましてはかなりむずかしいいろいろな問題がございます。すなわち、退職当時におきまして同じ待遇を受けた人は同じ待遇を受けた人として、恩給の増額をする場合には同じように取り扱いをするという考え方が一つあるわけであります。それからもう一つは、過去において同じ待遇を受けておったといたしましても、ある種の人は後輩は非常に待遇が改善されてよくなった、そこでそれにつれてその先輩だけを取り上げて恩給の処遇をよくするという考え方もあるいはできるかもわかりませんが、これは同時退職者は大体同じような恩給的処遇を受けるという原則に立って考えまする場合には、またいろいろと論議が生ずることがあるかと思っております。今申し上げますように、ベース・アップに伴う恩給の増額はいたして参ったのでありますが、これにつきましては、受田委員も御承知の通り、技術的にもなかなかむずかしい点がございまして論ぜられたところであります。この点につきましては、私たちなお現在においてもいろいろと検討はいたしておりますが、もちろん私たちのやることでありますから、改むべき点がありますれば改めるにやぶさかではございませんが、先年いわゆる不均衡是正に関する法律もできまして、一応のところは調整がとられておるように思っております。しかしなお改善すべき余地があるということになりますれば、もちろん私たちは改善することにやぶさかではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/45
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046・受田新吉
○受田委員 今高橋さんのお言葉の中に官等が例に出されたのですが、私今言葉を十分尽すことができなかったのですが、官等で高等官六等というのが従来の大尉です。大尉の最初の俸給は年俸千四百七十円、これは文官の十級俸に当る。また大尉の昇級した第二位の俸給は千六百五十円というように、大尉の俸給が数階等に分れておる。ところがこの同じ官等の高等官六等の文官は二千円というのであって、大尉よりもはるかに高い俸給をもらっているのが、今日五万円、現実にそういう例が出ておる。俸給の実際額からいったり、むしろ下級のものにおいては軍人よりはるかに高い文官が同官等の中にできている。少尉などが高等官八等の俸給を取っているといえば、中尉から大尉の俸給が普通文官の高等官の待遇になっているはずです。これは、高橋さんもお役人をされたから、下級の高等官の同じ官等は、尉官の官等にある者よりも高い実際の俸給をもらっておられたことを御承知いただいておると思うのです。そういう立場から、今度の四号俸調整と一万二千円ベースと二つの恩典に浴した大尉までは、同じ官等にある文官を、特に昭和二十三年六月までの退職者を明らかにここで相当引き離す結果になっております。それはなぜかというと、中尉でやめて大尉になったばかりの人が千四百七十円の俸給からたちまち二千百五十円でしたか、あの一番高い俸給よりもさらに上回る仮定俸給をきめられて、恩給をつけられるからであります。大尉や中尉の俸給が実際支給額よりも高い仮定俸給をつけられたのを基準にして恩給額がきまっておるのは、矛盾があるというのであって、平和を回復した今日、文官、武官の差別なくものを考えようとするときには、その昔流の高い仮定俸給をつけることをこの際改めて、文官、武官を通じて実支給額を中心の仮定俸給を作るという態度になぜ出られなかったかということを、私はここで申し上げておるのです。この点をもう一度御答弁願いたい。その意味で、二十三年六月以前の退職者には、さっき私が指摘しましたように、ベースの切りかえのときに——例の二十三年六月のごときは、国家予算の都合で五号俸低い線で格付されておる。そのとき国家予算があったなら当りまえの格付をされたはずです。それが、予算が六億か七億と非常に限られておったので、一応ベースは三・七ベースに合すけれども、一つ低い線で仮定俸給を作ろうというので、低い線で作られたことは、三橋さんも御存じのはずです。その低い線で格付されたのは、国家予算の都合でそう格付されたのであります。従って、同じベースであっても格付の基準が違うのですから、その基準をそのままにしてその後ベース・アップした関係上、二十三年六月以前退職者というのは、今日一万二千円ベースといっても、実際は八千円ベース程度しかいっていない結果になる。今日軍人に比較してもそのくらい大きな開きがある。そこで、高橋さんとしましても恩給局としましても、少くと軍人に実際の支給額よりも高い仮定俸給をつけて恩給をきめることをやめてもらって、実際の階級によった実際支給額を中心にして、文官と同じ基準で仮定俸給をお設けいただいたならば、上級者においてかかる大きな開きはできなかったと思う。高橋さんは、佐官級を三号俸、将官級を二号俸調整をした、これも当りまえに調整したらまだうんと上るのであるが、ここで遠慮したというような意味のことをたびたび言っておられますが、この点、二号俸なり三号俸なり調整し、その昇給率からいったら五〇%とか四〇%とかベース・アップと号俸調整で上ってくる結果はどこから出るかというと、すなわち階級別の差等を多くつけ過ぎたということと、仮定俸給を実際の支給額より高いところに置いた結果、そういう開きが出たのでありますから、今日は文官、武官を通じて実際支給額より高い俸給額をつけるという、過去の遺物を取り上げて仮定俸給を作ることはおやめになったらいいのではないか。この点を私は申し上げたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/46
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047・高橋等
○高橋(等)委員 先ほど申し上げましたように、昭和二十三年以前の文官については別途考慮を要すべき問題があるので、この点についてはわれわれ——われわれというのは私は自由党の立場を申し上げておりますが、民主党においても同じなのであります。これについては至急の機会に処置をいたしたいと考えているということをまず先に申し上げておきます。しかしあなたのおっしゃっておられる所論というものは私は納得ができないのであります。といいますのは、官等で俸給を比較なさるというところに間違いがある。今の外交官は別ですが、官等で比較なさることは非常に間違いがある。たとえば三等官は大佐ですよ。ところが当時の官吏には事務官もあり書記官もある。同じ三等五級にしましても俸給の差は事務官と書記官では二階級違っておったのです。そういう調子で三等官でも非常に低い給俸の人もあればあるいは三等一級というような人もあったわけです。ですから官等をもってものを比較くださいますとこれは間違いが起るもとなんです。文官においては当時の給俸を基礎としてやっていく、軍人の方は今申しましたような、要するに大尉とかあるいは少佐とかというところで俸給がきまっているのであります。それを基礎にしてやっていく、こういう考えに立っているわけであります。それからなお今いろいろとお話しになりましたが、そういうわけでこれをやりましたために、二十三年以前の方が陥没をしたのではないのであります。二十三年以前の方が低いのは別の原因がある。この別の原因は、われわれはその後の文官の上昇と比較いたしまして引き上げようという考えを持っている。もしこれを百尺竿頭一歩を進めて、たとえばあなたの議論のように、二十三年以前の文官と歩調を合すとすれば、二十三年以前の文官はこれはそのまま一つも給与の引き上げも何もやらぬで済むでしょう、そのままでいいでしょう。しかしながらそうなった場合に現在の文官との比較をどうするか。私はどう考えましても、四号俸引き上げ、一万二千円ベース、その基礎になるのは昔の俸給である、こう割り切って考えていかなければ問題がむずかしいじゃないかと考える。それから二号俸の問題あるいは三号俸とか、号俸を上の方で区別したが、まだ金額が多いじゃないかと言われとます。これは、こんなことを申し上げるとあなたに失礼だと思うが、参議院であなたの方の議員の山下義信君を発議者として、その他参議院の右派の全議員が賛成者として署名をいたして、恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案をお出しになっている。その法律案は昭和三十年六月十七日に提案になっている。それを見ますと、大将、中将、少将は、今あなたが御所論になっておられるものを基礎にして、四号俸引き上げを大尉までやるとか、少佐以上は一万二千円ベースまで引き上げてやるとか、こういう段階をつけて、大将の段階において六十八万円の仮定俸給を作られた。われわれの原案によれば号俸を引き下げているために七十二万円の号俸になって、大将において仮定俸給四万円の違いがあるのです。(受田委員「大した違いだ」と呼ぶ)冗談じゃない。四万円の違いです。六十八万円と七十二万円を大した違いだというようなことを大きな声でおっしゃるのは非常におかしいのです。兵の階級においては、いろいろ御指摘になっているけれども、要するに議員提案において七万九千八百円ですが、われわれが出しているのもやはり同じ七万九千八百円が出ているのです。ですから、これはおそらく参議院の社会党の方のお考えであって、社会党として両院の方ではっきりきまったものじゃないかとも思うので、申し上げることをどうしようかと思ったのですが、やはりあなたのところの党の多数の方がこうしたことを基本に置いた考え方をお持ちになっておられる、われわれと同じ考え方でおられるということを喜んでいるわけですが、そういうようなことは別といたしまして、今申し上げますように四号俸引き上げ、一万二千円ベースに基礎を置いてやりましても、それなるがゆえに理論的に見まして昭和二十三年以前の退職された方々との間に差ができたのじゃないのです。もうすでに一般文官と差があるのでございます。その差は今言うように基本俸給が低きに失したことにあると私は考えておりますので、先ほど申し上げましたように、自由党としましても、民主党としましても、これは何とか早目に処理をいたさねばならぬ、今年度の予算でこの処理をいたす段階まできておらいなことをはなはだ遺憾といたしておりますが、早急の機会に処理をいたすべき問題であると考えておることを申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/47
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048・受田新吉
○受田委員 三橋さんの御答弁をいただく前にちょっと比較したいのですが、今高橋さんが指摘された文官との不均衡があるというのは、武官が今度上ったからじゃないのだということです。しかし今まで、武官がベース・アップされる前には双方の均衡が保たれておりました。はっきり申し上げますと、二十三年六月以前の文官と武官とは大体において均衡が保たれておる。ところが武官が今度上ったことになるから、文官の中で、先ほど私が申し上げた官吏俸給令を規定するときの格づけが五号俸低い線でやられた、また年数加算が考慮されなかったというように、基礎俸給を仮定俸給に直すときの切りかえが予算の都合とかいろいろの事情で低い線で格づけされたので、実際は、あなたがお説にしておられるような、文官は一万円ベース、一万二千円ベースと上ったのだというても、その一万円ベースというのは表面上ベースに合したのであって、実際ははるかに低い格づけをされておるという特殊の事情がある。その特殊の事情を勘案するときには、今までは明らかに武官と均衡が保たれていたのが、今度一万二千円ベースに昇給したことと、それから号俸調整でぐっと開きができたことを指摘しておるのでありまして、武官が上ったからこれが下ったという意味ではなくて、武官が上ったからこれが取り残されたということになるのです。
それと今参議院の出しておる案を申されたのですが、私は佐官級、将官級に対しましては号俸調整を考慮する必要はないという理論を今申し上げたので、一万二千円ベースを考慮する必要はないとは申し上げておりません。従って参議院の出した案のように、大将から少佐に至るまでの階級の上の人には号俸調整まで考慮しなくてもいいじゃないかということを私はさっきから申し上げておるのであります。一万二千円ベースをやめろとは申し上げておりません。従って私の今の説に高橋さんが五十歩百歩じゃないかという御意見を吐かれたのでありますが、少くとも上級者は遠慮したような形にこの法案の改正を持っていってはどうかという私の趣旨を申し上げたのです。この点を誤解されぬようにしてもらいたい。
それからいま一つ、これは恩給局長に伺っておきたいのでありますが、二十三年六月以前の文官が事実上陥没している、その実例は大将と大臣、中将と次官、少将と大学長という大体同列の基準で俸給令の号俸を出しておりますが、今度武官が上った場合、大将と大臣の場合ですが、大将は俸給が月五百五十円であったのが、本案では通し号俸が七十六号で仮定俸給が七十二万六千円、大臣は月五百五十円が、七十三号俸で仮定俸給が六十一万四千四百円、ここで十一万円も大将と大臣が開いております。それから次官と中将の場合は、中将が五十七万三千六百円ですが、次官はわずかに三十九万円で、われわれは少くとも文官と武官を比較するには、大臣と大将、次官と中将を同じ基準に置くべきだと思いますが、この号俸を見ると、これだけの違いの生ずる差等を設けるのは、武官優先の結果だと指摘せざるを得ない。従って武官がそうした特殊の仮定俸給を設けられていたのを、この際実際の俸給額に当てはめるような研究をされる必要はないか、両方とも実際に合った俸給額を基準にした恩給額の算定をされるのが正しいのじゃないかという所見を申し上げておるのです。この所見には御賛成いただけませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/48
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049・高橋等
○高橋(等)委員 私は賛成できません。大将と大臣が同じだとか中将と次官が同じだとかいう仮定によったお話は、立法者の立場では賛成できない。昨日も申し上げましたように、恩給特例審議会の議を経てできて、この国会において一承認を与えました恩給法では、旧軍人恩給と一般文官恩給を一緒に規定しております。その恩給を基礎としてわれわれはこれを算出いたす、こういう建前をとっております。それで大将と大臣を同じにするとか、大学総長と少将を同じにするとか、こういうことは私はいまだかつて聞いたことがないのでございます。それから官等とかそういうようなもので比較をなさらないで、現実にとっておった俸給を基礎にしてものを考えたい。おそらく仮定俸給の面におきまして、大将と大臣とは今おっしゃったより百円くらい開いておったのじゃないかと思います。そこで開きが出てきておるのですから、その点は御了承願わなければいかぬ。
なお社会党のお作りになった案は、一応あなたの今のお話では全面的に参議院の案をお認めになっております。そこでこの案を見ますと、先ほどからのお話に反論するわけじゃありませんが、要するにこれを作ったために二十三年以前の文官と差ができるという説をもしとるとすれば、やはり差ができておるのです。そこで私はこれは正しいと思う。社会党の号俸の引き上げその他は政策的ないろんな問題がありますから、これはとにかくおきまして、この立て方というものは私は今の文官恩給を是認するならば当然こう行くべきだと考えているのです。だけれども、今言うように、二十三年以前の方方の問題は別のことが原因になっているから、その別のことが原因になっておることを政策的に検討して何とかせなければならぬ。要するに号俸引き上げ、ベース・アップの問題とからんで考えたくないのだということを申し上げておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/49
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050・受田新吉
○受田委員 大将の基礎俸給は大臣と幾ら差があったかということになりますと、この点三橋さんのところに資料があれば読んでいただきたいのですが、私の記憶では大臣は八千円、大将は七千五百円か何か、八千円に足らなかったのじゃないか、大臣の方が給与は高かったのじゃないかと思います。それから各省次官における給与はそれで比較してみていただけばわかるのです。私が今申し上げておるのは実際の支給額です。従来の内閣総理大臣は一万二千五百円だったと思います。内閣総理大臣を最後にやったお役人の恩給は、東条さんのような三十三万という普通扶助料になる計算であります。総理大臣の官にあった者がもらっている俸給は軍人の最高級よりもさらに高いところにあるということになれば、実際の俸給額を比較して、実際の俸給額に準じた恩給を給したらどうか、そのことについての御意見を伺いたい、こう私は申し上げておるのです。この点を高橋さんはお答えがなかったのですが、いかがでしょう。それから残りを三橋さんにお答えいただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/50
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051・高橋等
○高橋(等)委員 いろいろな考え方があるのでございますが、先ほどお答えしたことで尽きておると思うのです。要するに過去の俸給を基礎として、それで順次ベース・アップをしていき、ここへ持ってきておる、文官の方は現在の俸給になっておる、それとの不均衡をここで是正いたしたい、こう考えておるのでありますから、これはもうそのお答えの中で尽きておると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/51
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052・三橋則雄
○三橋政府委員 今受田委員から、実際支給されていた俸給を基礎として恩給を計算するようにしたらどうか、こういうようなお話でございますが、問題は現実に恩給を給されるに当って、その恩給年額の計算の基礎になっている俸給を土台として考えるか、あるいはまた現実に給されておった俸給を土台として恩給の考え直しをするか、こういう問題だろうと思うのであります。もしも今受田委員の仰せられますように、現実に給された俸給を土台として恩給を考え直す、こうなりました場合におきましては、昭和三十三年六月三十日以前にやめられた方の中には、減俸されて俸給の少くなった方もありますし、また減俸前には相当多い俸給をもらっておった方もあります。そうなりますと、その現実の俸給を基礎とする関係からいたしまして、今せっかく減俸前と減俸後においては恩給的な差のないような取扱いがされておるのがまたこわれてくるのじゃないか、こういうことが一つ問題になるんじゃないか。また先ほど私が軍人の恩給について申し上げましたごとくに、昭和八年の恩給法の改正の際におきまして、一般文官の恩給年額計算の方向に合わせるために、その当時出されておったところの階級別、年数別の恩給を逆算して軍人の仮定俸給が作られておる、そういうことから考えまして、またいろいろ問題が起ってくるんじゃないかという気がするのです。私は今のお説はお説として、それを実行するに当っては相当慎重に研究しなければいかぬ問題じゃないかと思います。
それからもう一つ受田委員からのお話で、文武官の間における俸給につきまして、軍人の方が非常によくて文官の方が悪かったんじゃないか、こういうふうなお話でございます。私はこの席におきまして、過去における文武官の俸給につきまして、軍人がよくて文官が悪かったとか、あるいは逆に文官がよくて軍人が悪かったということを申し上げるわけじゃございませんが、事実を事実として申し上げさしていただきますならば、まず奏任官の一級俸、これは高等官三等のところと思いますが、年休四千五十円という俸給をもらっておったのであります。これは減俸後でございます。それで恩給年額の計算の場合におきましては還元されまして——先ほど還元と申しておりますが、還元しまして、実際には四千五百円というものを基礎として恩給年額を計算されていたことになっておったのでございます。海軍と陸軍とは終戦の直前におきましては違っておりまして、陸軍の方におきましては同じ大佐でありましても、在職年によりまして、俸給が分れておりました。その一番上の俸給は四千四百四十円でございます。また海軍の方は、大佐は一本でありまして、四千百五十円になっておったと思います。これは恩給年額計算の基礎は四千六百円となっておったのでございます。従いましてこういうことを考えますと、大佐は奏任官一級で高等官三等であり、奏任官一級、高等官三等の文官と比較いたしました場合におきましては、確かに文官の方がいいように思われるのでございます。
ところが今度はもう一つ考えなければならない事柄は、文官につきましては加俸の制度がございました。すなわち在職年が五年以上あります者につきましては、年功加俸がつきます。年功加俸がつきますと、今の文官の四千五十円の俸給はふえまして、四千六百五十円までなったのです。そうしまして、その恩給年額の基礎俸給は五千二百円ということになっておったのであります。ところが大佐の場合におきましては、そう長くおっても、俸給は四千四百四十円で押えられてしまいます。今のは陸軍でございますが、海軍の場合におきましては、四千百五十円に押えられてしまうということを考えますと、一がいに軍人がよくて文官が悪いとも言えませんし、また文官がよくて軍人が悪いとも言えないので、私たちはその判断はいずれともつけかねておるところでございます。ただそういうことはほかの場合にもずっとあるのでありまして、私は今一例として高等官三等一級俸の場合を申し上げましたが、今日になりましては、武官と文官との俸給がどちらがよかったとか悪かりたとかいう問題じゃなくて、軍人恩給廃止前におきまして、武官と文官との恩給年額計算基礎俸給が同じであった者は同じように取扱いをして、恩給の増額をするかどうかということが問題だろうと思っておるのでございます。今度の改正法案は、同じようにするということが根本的なものの考え方になっているのではないかと思っておりますので、その点につきましては私はこの改正案は大体間違わなくなっているんじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/52
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053・受田新吉
○受田委員 時間が相当迫まりましたし、党の予定がありますので、御迷惑かと思いますから、もうしばらく——十二時半くらいまでよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/53
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054・床次徳二
○床次委員長代理 その程度で打ち切りにしたいと思っておりますから、そのつもりで。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/54
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055・受田新吉
○受田委員 もうちょっと伺いますが、高橋さんは、文官の格付の際における格付の仕方が、そのときの財政事情などで非常に不利な立場に置かれたために、二十三年六月に文官が低い線に置かれている特殊の事情を御了承いただいた。そうなれば、その人々の特殊の事情を勘案するごとくに、今度は措置を至急にとるという付帯条件をつけ、あるいは次の段階に優先的に文官の不均衡是正の措置をとるということには御異議ありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/55
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056・高橋等
○高橋(等)委員 附帯決議については私は別に異議を差しはさむとか何とかという立場ではございません。これは皆様方でおきめを願うことと思いますので、さよう御了承おきを願いたい。ただその場合に、旧軍人の低い方とのいろいろな問題が起らないような調整を考えなければならぬと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/56
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057・受田新吉
○受田委員 今、三橋さんとの議論で解決しないところは、三橋さんはまた年功加俸と官吏減俸令のときの減俸の問題を出されたんですが、それは終戦からもう十年たっているのですから、そのときの調整は、終戦のときの俸給は恩給算定基礎にはほとんど影響しておりません。そのときの事情は別として、とにかく実支給額というものを中心にして考えるならば、年功加俸は本俸と同じに待遇されておったんですから、それを含んだものになれば、当然高くなるのが当りまえで、文官の方は年功加俸を含んでも、二十三年六月よりも低くなっておるから、それを申し上げておるんです。この点は議論の非常に存するところで、三橋さんとしても非常に御答弁がお苦しいように先ほどからお伺いするんですが、この問題は武官の恩給と比較して、基本的に同じ事情にある人が基本的陥没を生ずるということは、国の政治が不公平になるということであるから、その点は恩給局としても実態調査をしていただいて、従来何回か繰りかえされたベース・アップによる不均衡、なおかつ陥没していることに対していかがするかということを十分御研究願っておかなければならない、この点。
次の問題に移りますが、最低の兵の恩給がどこに置かれたかは、きのう長谷川さんとの一問一答である解決点に来たと思うのです。ところが私は理想としてもう一つ前進して考えたいことは、下士官でもうなくなった方々に対しては、一つの英霊としてこれを尊敬する意味で、たとえば曹長とか準士官という階級を基準にして、それから下の人々の英霊もその階級の待遇を受けるというような形に前進させる必要はないか。これは社会保障の性格を含めるということと、もう一つは英霊に対する尊敬。階級の下の人に対しても、英霊となられた人についての公務扶助料は、下の兵長の階級から置くというようなことはやめて、これを曹長とか準士官というところまで引き上げて、そこまでの待遇をして差し上げる、そういう基本線を打ち出す必要はないかと思うのですが、この点に対するお考えを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/57
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058・高橋等
○高橋(等)委員 私も、そうできれば、これに越した仕合せはないと思います。ただこの前の国会で恩給法の一部改正をやりましたときに、兵長以下の線は、あなたと同じような考え方で、一応兵長の線まで上げた。それと同じことですから、理論的に見てこれをやったらいいとかやらぬがいいとかいうことは私は申し上げません。特に階級の下級者は金額の点は実際は非常にひっついていると考えますが、ただ下級者の数が非常に多いのでございます。現在、先ほど御指摘になりましたように、国家財政というものが来年度におきましても、これをやるために約百億増、その次の年においてはさらに約四十億増ということになりまして、三十二年度におきましては、要するにこれがないものと仮定いたしますると、百六十億の予算増に、実はこれだけやってもなるのでございます。そこでそういうような見地からいたしまして、私は現在の国の実力ではここまでがぎりぎりだ、こう考えまして、起案をいたしておるようなわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/58
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059・受田新吉
○受田委員 階級の下の人を一つの線まで持ち込む場合は、それから上の人に対する昇給は遠慮してもらう。だから佐官級、将官級の方々の昇給を遠慮してもらって、下の者を引き上げる線に持っていく。だから実際は総予算の上においては違いがないようにして、そこの調整をとるような措置ができはしないか、私はそれを申し上げておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/59
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060・高橋等
○高橋(等)委員 どうも受田さんの思想が私はよくわからないのですが、元来これをやりますのは、つかみ金を出すという意味でないことは御存じの通りです。つかみ金を出されるということは、これは英霊の遺族にしましても、あるいは傷痍軍人にしましても、だれにしてもとにかくもらえばいいということを考えておるわけじゃない。筋道の通った出し方をやってもらいたいということは御了解の行くところだと思うのです。そこでこの下士官以下を全部同等に直しまして、それ以上の者をどうされるのか、私はこれを平均することは反対でございまして、これは先ほどから申し上げておる通りであります。それをそこから持ってこいと言われますが、よしんば持ってきても、実は下士官以上はおそらく全体の九〇%くらいを占めておるのじゃないか、残りは一〇%までないのじゃないか。これは私の想像的な数字で、もし非常な違いがあれば恩給局長から直してもらわなければなりませんが、今そういう状況になっておるのですから、まあ頭の中では考えられますが、つかみ金でなしに理論的にこれをやろうとすれば、どうしても国の予算をふやさない限りはこれはできないのだ、私はこう考えているのです。現在の下士官の仮定俸給をうんと下げてこれが下士官以下だ、こうおやりになるならば別ですよ。しかしそれでは筋が通らないんですよ。御意思はよくわかるのですけれども、やはりこれは財政上の問題、国の実力に直結する問題だ、こうお答えを申し上げておるようなわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/60
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061・受田新吉
○受田委員 わかりました。私はこれに関連して一言だけつけ加えますが、たとえば今までの兵長の階級を伍長に、伍長のものを軍曹にする。だんだんと階級を整理していって、こういうベース・アップをすることと一つずつ整理するという努力がされると非常にいいと私は思ったのです。すなわち今兵は二万六千円ですが、今度三万五千円になる。その場合に三万三千円に線を引かれてもいいわけです。現在大体三万五千円と言えば、今一番下の線は曹長の階級の前後じゃないかと思っておるのですが、その前後に持っていって全部合わせるのです。つまり上もそこでとめておくわけです。それでがまんしてもらって、すなわち階級を整理する。英霊の階級を一つずつ整理するという努力をする必要はなかったかと思うのです。しかも下級者を漸次なくしていく。私の申し上げておるのは公務扶助料ですが、私はそういうふうにしていただけたらと思ったのですが、先を急いでおりますので、もう一つ質問して高橋さんに対する質問は終ります。
文官の合算、これはきのうは通算として提案されたわけですが、恩給局では合算と称しておる。文官の合算をされて文武官の通算をされないということは、文武官を平等に見ようという法の精神に矛盾すると思うのです。ですから文官として一年ほど勤務した者が応召して、そうして今度また文官として勤務して一年以上になった、こういう者は武官としては六年しかないが、文官の一年以上を入れると七年になるという場合、これを救ってやる必要はないか、文武官の通算ということを考える必要はなかったか。またこれに対する該当者は一体どれくらいになるか、予算の都合がありますから、きのう要求した数字を御発表願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/61
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062・高橋等
○高橋(等)委員 予算の数字の点は私持ち合せておりませんから恩給局長に願いますが、実はこの通算の問題につきましては、私が予算委員会で政府に質問したときにも、今あなたが御要求なさっておる数字がないのであります。これは理論的にいえば受田委員のお話になりましたように、文武官の通算というものは認めるのが当然であります。私もそうなすべきものだと考えております。ところがこの通算の面におきましてこの実態がつかめない。文武官の通算をやりました場合に人員がどのくらいになって、一体どのくらいの予算がかかるのかということが第一つかめない。とにかく非常に膨大な予算がかかるという御説明を実は政府から受けております。そういうようなわけでこの加算を政府側に要求したいと思うのでありますが、加算について今度調査をやるために七千万円の調査費が出ております。このときにやはりこうした問題はあわせて調査していただきまして、これをやればどのくらいの国費がかかるのか、あるいは実態がどうであるかというようなところをつかんだ上で、そのときの状況によって問題の解決に努力をするのが行き方だと考えておるのでありまして、これを否定いたしておるわけではないのでありますが、実態がつかめないのであります。こういうことで御了承おき願いたいと思います。しかしそれもつかめないでおっぽり出しておるわけではなく、この調査費により、これを地区により各県によって調査をお願いしてみたい。そうしないと、われわれが政府の方にたびたび質問いたしましても、実態がつかめない、実態がつかめないということで毎年終るわけでありまして、こういうような点から一歩前進いたしておることを御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/62
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063・三橋則雄
○三橋政府委員 軍人の在職年と軍人以外の公務員の在職年と通算いたした場合においては大体どれくらいの恩給権者が増加して、そうしてどれくらいの恩給の年額がふえることになるか、こういう問題につきましてはいろいろと研究をしてきたのでありますが、それがためには、何と申しましても旧軍人としての経歴を持った公務員が一体どれくらいあって、そうしてその平均の在職年はどういうふうになっておるかということから明らかにしてこなければいけないと思うのであります。ところが御承知のように、終戦後における混乱のために軍歴に関する記録というものが必ずしも整備されておりませんため、従って各官庁の公務員であった者で軍隊に行った場合、その軍隊にいた在職年がどういうふうになっておるかというような調査も、全くと言ってもよいくらいにめどがつかないような状況でありますために、推定を下すことが困難なような状況であります。従来、恩給局におきまして、軍人の在職年とその他の公務員の在職年とを通算いたしまして恩給が給付されることになっておったのでございますが、それがそういう人たちに対しましては、似承知のように、昭和三十一年の勅令第六十八号によって軍人の在職年が除算されることになり、恩給を失った人がかなりあるのであります。そういうような人たちが今度は給付されることになっておりまして、その給付される人たちの恩給の金額がどれくらいになったかということを調べてみますと、今わかっておるところで申しますと、五億二千万円ほどになってきておるのであります。これからまた恩給局に請求が参りまして、さらにふえてくるかもしれませんが、今のところでは大体五億二千万円くらいと考えておるところであります。これは恩給局裁定の恩給だけでありまして、各都道府県知事の裁定いたしますところの恩給につきましても、やはりこれに類似した恩給の増加があるものと承知いたしております。そこで今度は無条件に旧軍人の在職印と一般公務員の在職年を通算した場合におきましては、おそらくこれの何倍かの恩給の増額になるであろうということは想像するにかたくないところでございます。それから今度はその軍歴に関する調査でございますが、ある官庁——これは国鉄の職員なんかは割合に軍隊に行った職員が多いのでございますが、これにつきましてこれはまだしっかりしたことではないのでございますが、ある係の者がわれわれの係の者とお話ししたところによりますと、かりに旧軍人の在職年とそれから他の一般公務員の在職年を通算するということになりました場合には、国鉄の職員関係だけでも約二十万人くらいの職員につきまして軍歴の調査書をしなければならない問題がある、こういうような話でございました。そういうことから推しますと相当の恩給の年額の増加になるのじゃなかろうか、こういうふうに想像しておるところでございます。
その次は旧軍人としての在職年だけの問題でございますが、この軍歴に関する記録がはっきりしておりませんので、今のところ無条件に合算をしまする場合におきましては相当な金額になるのじゃないかというような気もするのでありますが、はっきりしたところは今申し上げかねるのであります。今度のこの法案のように合算をいたしまする場合におきましては、大体該当する人員——該当する人員と言いますと今度新しく恩給権を取得するものでありますが、これは三千八百人と考えております。もちろんこの中には連合軍最高司令官によって抑留せられて、戦犯として巣鴨に拘禁せられておる、その拘禁中を通算することによって初めて普通恩給権を取得できる今も含めた数でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/63
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064・受田新吉
○受田委員 基本的な問題は一応終りまして、残余の質疑はまた次の何かの機会にいたしたいと思いますが、一つだけ恩給局と厚生省の両方にまたがる問題をお尋ねしておきます。
それはきのうお尋ねした例の未帰還公務員に対する普通恩給の支給規定が、恩給法の三十条かの附則で変えられた。これが実際四十五才に足らないものの場合には若年停止されておるが、若年停止された結果、この普通恩給を受ける家族が十八才未満あるいは六十才以上の親とかという場合に限られておる関係上、恩給法で規定してある受給の資格を持つ家族などにも法律の若年停止によってこれが支給されなくなる。こういうことになるとせっかく恩給法で恩典を与えておきながら支給されない対象ができるということは非常に気の毒だと思うのであります。恩相法の精神によりまして、恩給法に規定する十八才米満とかあるいは六十才以上の父母というものもこれが支給されるようにできないものかどうか。あるいは若年停止の規定を特別にこの法律では増加恩給を併給される人と同じように若年停止規定を設けないという措置をこれないものかどうか。これは非常に重大な、援護にも関係する問題だと思いますので、恩給局長の御答弁を願い、また関連して、今その人々は実際にどういうふうな処遇を受けているかを援護局長から御答弁願いたい。
もう一つ、それとあわせて死亡の日という言葉がこの未帰還公務員の場合にしばしば出てくるのでありますが、未帰還公務員が実際死亡判明したときをもってすべての計算がされるようになっておるのでありますが、いつ実際に死亡されたか、四、五年前にさかのぼって二十八年この法律が施行されたときに、死亡しているにもかかわらず、その後に死亡が確認されたという場合には、その期間中空白が起るわけですから、その空白期間中も埋めるように、死亡の日とするならば、その死亡確認の日までの道のりを救済できると思うのであります。この点についても法律の改正の要はないもんであろうか。事務規定のように見えますけれども非常に大事な問題でありますので御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/64
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065・三橋則雄
○三橋政府委員 今御質問は二つありましたが、そのうちの第一点の未帰還公務員の問題について最初お答えいたします。
未帰還公務員の方々に対して給すべき普通恩給について特別な措置を講じて、その留守家族の方に、本人にかわりて普通恩給を受けられるような道を開かれたのでありますが、その当時の私たちの考えでは、御承知のように、未帰還公務員の留守家族に対しましては、それぞれ留守家族の手当が給されておったと承知いたしております、そこで留守家族手当は、この恩給の給せられない人に対しては、依然として給せられる。こういうふうに考えておったのでありまして、今受田委員の仰せられますごとくに、恩給は給されない。また留守家族手当も給せられなくなるということは、実は私承わって驚いたような次第でございまして、この点につきましては、もちろん昨日ちょっと申し上げましたように、検討し、善処することにいたしたいと思います。
それからその次のお尋ねの死亡確認の問題でございますが、これにつきましては、こういうことになるのでございます。今お話しのように、実際の死亡された日をもって取扱いをいたしました場合においては、もちろん遺族の方に有利な取扱いになる場合もあります。また現在の法令のもとにおきましては、死亡されるまでは生存者としての取扱いを受けられるわけでございますから、その方は普通恩給を給せられておる方もあるわけであります。そういたしますと、死亡の確認あるまでは普通恩給が給せられることになって、死亡の確認があってから初めて死亡者としての取扱いをすることになりますから、死亡された後にもらわれるところの扶助料と、死亡の確認される日までの普通恩給で受けられる金を比較いたしましたならば、普通恩給の方が多いわけでありますから、必ずしも死亡確認の日を押えて措置するということが、関係者に不利な取扱いとも言いかねるのであります。今受田委員の仰せられる御質問は、おそらく遺族の公務扶助料の算出率が、昭和二十八年法律第二十五号によって非常に変りました。その結果といたしまして、その変る前に実際死亡しておったにかかわらず、死亡確認が非常におくれた。従ってその算出率の適用について昭和二十八年法律百二十五号ができる前の率を適用するようにすれば、非常に遺族にとって有利な場合があるではないか、こういう点について考慮しないか、こういうふうなお話しではないかと思うのでございます。これは確かにそのような場合が起ってくると私は思っておるのでございますが、死亡の確認されるまでは生存されておるものとして、その留守家族の方々に対しましてはすべての処遇がなされているのでありますから、これは今受田委員が仰せられるようなことがあるかと思いますが、ある特殊の場合に限ってのみ今お話しのような不利にならない取扱いをする方がよいかどうかにつきましては、よほど研究しなければならぬ問題ではないかと実は思っております。いずれにいたしましてもお話しのようなことにつきましては研究いたしまして善処するつもりでございますが、今お話しのように全部死亡の日をもって取扱いをするということには言い切れない事情もあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/65
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066・受田新吉
○受田委員 最後に大久保国務大臣に伺いますが、この間本会議で、外国人である日本軍人たりし死亡者に対する恩給法並びに援護法の保護が全然されていないことに対して、現在は日本人でないから仕方がないというような御答弁がありました。その後園田外務政務次官から、個々に当って努力を続けておると御答弁があったのですが、この問題は非常に重大な国際問題にも関係すると思いますので、日本軍人として戦死した以上は韓国人であろうと、台湾人であろうと、とにかく同等に国家の責任を果すという手を打ちたいと思うのですが、その後大臣としてもその点御検討いただいておると思いますから、御答弁いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/66
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067・大久保留次郎
○大久保国務大臣 ただいまのお尋ねのようにまことに同情にたえません。そこで表面的には恩給法によって支給することは困難ではありますけれども、外務省の手心により、もう一つはごく最近の話でありますが、通産省にもそういう申し出があるそうでありまして、通産省においてもある程度の便宜を与えて、これらの恩給をもらわぬ台湾人及び朝鮮人の救済に充てようという計画あるやに聞いておりますが、まだ確定ではないようであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/67
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068・床次徳二
○床次委員長代理 ほかに御質疑はございませんか。——なければ、これにて本案に対する質疑は終了いたしました。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時三十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03119550630/68
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