1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年七月六日(水曜日)
午前十時四十三分開議
出席委員
委員長 宮澤 胤勇君
理事 高橋 禎一君 理事 辻 政信君
理事 床次 徳二君 理事 江崎 真澄君
理事 高橋 等君 理事 森 三樹二君
理事 田原 春次君
大村 清一君 長井 源君
林 唯義君 保科善四郎君
眞崎 勝次君 粟山 博君
山本 正一君 大坪 保雄君
小金 義照君 田中 正巳君
田村 元君 福井 順一君
船田 中君 茜ケ久保重光君
飛鳥田一雄君 石橋 政嗣君
下川儀太郎君 長谷川 保君
受田 新吉君 鈴木 義男君
中村 高一君 吉田 賢一君
出席政府委員
総理府事務官
(恩給局長) 三橋 則雄君
委員外の出席者
参議院議員 山下 義信君
専 門 員 龜卦川 浩君
専 門 員 小關 紹夫君
専 門 員 安倍 三郎君
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七月六日
委員越智茂君、渡辺惣藏君、矢尾喜三郎君及び
吉田賢一君辞任につき、その補欠として田村元
君、長谷川保君、受田新吉君及び中村高一君が
議長の指名で委員に選任ざれた。
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七月五日
憲法調査会法案(清瀬一郎君外四名提出、衆法
第三一号)
通商産業省設置法の一部を改正する法律案(内
閣提出第一四一号)
同 日
教職員の給与改訂に関する請願(戸叶里子君紹
介)(第三三七四号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する
法律案(高橋等君外百十一名提出、衆法第二八
号)
恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する
法律案(山下義信君外三名提出、参法第一二
号)(予)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/0
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001・宮澤胤勇
○宮澤委員長 これより会議を開きます。
恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(山下義信君外三名提出、参法第一二号)を議題とし、提出者より提案理由の説明を求めます。山下義信君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/1
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002・山下義信
○山下参議院議員 ただいま議題となりました恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概略を御説明申し上げます。
御承知の通り、占領下における昭和二十年十一月、連合国最高司令官から発せられました覚書に基きまして、旧軍人軍属及びその遺族に対する恩給はそのごく一部を除いて廃止されていたのでありますが、わが国の独立後、従来一般公務員及びその遺族と恩給法上全く同じに扱われておりましたこれら旧軍人軍属及びその遺族の恩給を、廃止または制限の状態に放置いたしますことは妥当でないとして、昭和二十八年八月法律第百五十五号をもちまして、いわゆる軍人恩給の復活が行われたのでございます。しかしながら、この復活の措置も、当時の国家財政上の制約から完全には行われず、なお一般公務員と比較いたしまして不利な取扱いがなされておるのが現状でございます。これら旧軍人軍属及び遺族の大部分の者は、戦争責任者と申しますよりはむしろ逆に戦争犠牲者であり、また、たとい戦争責任の一部をになうべき者でありましても、その責任は別個に追及すべきでありまして、恩給制度がわれわれの理想といたしております総合的統一的社会保障制度の樹立への一環をなすものであると考えるときにおきましては、これらの者に対する恩給法上の取扱いを一般公務員と差別する理由は何ら見出せないといわなければなりません。
右のような趣旨から、現下の国家財政を考慮しながら、別個提案いたしました戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案と一体をなしつつ社会保障の実を上げるため、旧軍人軍属及び遺族に対する恩給上の取扱いを一般公務員のそれに近づけ、かつ一部戦争犠牲者に対する救済の手を差し伸べようとするのが、この法律案を提案いたしました理由であります。
次にその改正の内容を簡単に御説明申し上げます。
まず第一に恩給の金額の計算の基礎となります仮定俸給年額でありますが、現在一般公務員につきましては、これが一万二千円ベースで算出されておるのに対し、旧軍人及び旧準軍人につきましては一万円ベースで算出されておるのであります。また、法律第百五十五号によって軍人恩給を復活いたします際の国家財政の都合から、旧軍人の仮定俸給年額は一般公務員より四号引き下げて定められておるのであります。この旧軍人の俸給年額を一万二千円ベースに引き上げるとともに、尉官以下の号俸を四号ずつ引き上げようとするのが改正の第一点であります。
次に現行法によりますれば、旧軍人軍属としての在職年は特別の場合を除きまして「引き続く七年以上の実在職年」でなければ恩給の基礎在職年に算入されず、また加算年は既裁定のものを除き全然認められないこととなっておるのであります。このため数年を区切って何回も召集を受けた応召軍人等は何ら恩給の恩典に浴さないという不合理が生じておるのが現状であります。そこで旧勅令第六十八号第二条第二項のいわゆる戦地加算につきましては、文官たると軍人たるとを問わず一ヵ月につき一ヵ月の割合でこれを認めることとし、また引き続く実在職年に限らず通算加算して合計七年以上旧軍人軍属としての在職年があれば、これを恩給の基礎在職年に算入しようとするのが改正の第二点であります。
次に公務によって死亡した旧軍人または旧準軍人の遺族に給せられる公務扶助料の年額は、特にこれらの遺族の生活事情にかんがみ、最低額を三万八千三百五円に定めようとするのが改正の第三点であります。
次に今次終戦に関連する非常事態に当って、旧軍人、旧準軍人または旧軍属たる特別の事情に関連して死亡した者、特に自決した者で、その死亡を公務傷病により死亡した者と同視すべきものとして弔慰金を給されることとなる者については、公務扶助料の年額に相当する金額の扶助料を給しようとするのが改正の第四点であります。
その他この法律案の表面には出ておりませんが、別個提案いたしました戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案によりまして、軍人軍属が戦地における在職期間内に負傷しまたは疾病にかかり、その後死亡した場合において、その負傷または疾病が公務以外の事由によったことが明らかでないときは、公務上負傷しまたは疾病にかかったものとみなして、その遺族に弔慰金を給することといたしましたので、これらの者にも恩給法による公務扶助料が給されることとなるのであります。
以上がこの法律案を提出いたしました理由及びその内容の概容であります。
何とぞ、御審議の上、すみやかに御賛成あらんことを御願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/2
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003・宮澤胤勇
○宮澤委員長 本案及び恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(高橋等君外百十一名提出、衆法第二八号)に対する修正案を一括議題として、これより質疑に入ります。田中正巳君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/3
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004・田中正巳
○田中(正)委員 ただいま御提案になりました山下君外五名提出の恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案に対して、若干の質疑をいたしたいと思うのであります。
まず第一に日本社会党、特に右派は、従来軍人恩給の問題につきましては、社会保障制度をもって、その基底たる根拠思想としてこれを手当したいというような御意見であったようでございますが、このたび御提案になりましたところを見ると、やはり恩給法の一部を改正するというような形で御提案になったようでございます。従来お話になっておったところと若干その趣きが違うようでございます。この点いかがでございましょうかお尋ねいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/4
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005・山下義信
○山下参議院議員 私ども右派社会党の軍人恩給に対します基本的な態度につきまして、非常に重大な御質問を賜わったのでございますが、仰せの通り社会保障制度といたしまして、これらの軍人恩給の問題を処理いたすべきは、特に社会保障制度を十大政策といたしますわれわれといたしましては、御質疑のような考え方を持っておりますことは事実でございます。
先般、軍人恩給復活の際に、われわれといたしましても十分その点につきまして論議を重ねたのでございますが、何と申しましても国民年金制度につきましては、一部分の制度は、御承知のように、今日存在いたしておるのでございますが、国民全部に対します年金制度が今なお確立されておりません現状といたしましては、かつまたそれが急速に実現を期待しがたい現状に即して考えますときには、その社会保障制度が完備、確立いたしますまで軍人恩給を認めないというがごときは実情に即しないものであると考えまして同時にまた軍人恩給ということが世上いわゆる生存せる職業軍人の恩給のみであるということは、われわれといたしましてもこれは非常な誤解でありまして、その軍人恩給の復活の本質は、御承知のごとく戦争による犠牲者、すなわち戦没者の遺族扶助料が、その大部分を内容といたしております点等から考えましたときに、この戦没者の遺族扶助料の本質は、生活の保護という理念に基きますか、あるいは国家に対します一つの犠牲行為に対します国の損害賠償がその本質であるかというようなところを検討いたしました結果、われわれといたしましては、一つには社会保障制度の完備しておりません今日の実情の上において、一応恩給法の建前を認めざるを得ないのでありまして、ことにただいま申し上げましたような遺族扶助料の性格は、ただ単にその生活保障という理念のみならずいたしまして、その最も重大な部分は、国家のその犠牲に対して損害補償をするという建前をもって、主として私どもその点に留意をいたしましたわけであります。われわれといたしましては、先年恩給復活がなされますときに、ただいま申し上げましたような建前からこの際恩給復活には反対はいたさないということの態度をきめまして、ただその恩給復活の実際のこれが施行に当りましては、できるだけ上に薄く下に厚い建前をもちまして、将来社会保障制度と関連して考えられましたときに臨みましても、非常な大きなギャップのないように、また申すまでもなくこれらの問題に対して国民の考えております点等も考慮いたしまして、できるだけその支給方法については善処すべきであるという建前を取って参りましたので、当時の本院におきまする並びに私ども参議院におきまする党代表の討論等を参照いただきますれば明確になるのではないか、かように考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/5
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006・田中正巳
○田中(正)委員 理想といたしまして社会保障制度、しこうして現実の問題として恩給でいかれるというような御趣旨であったと思いますが、なおこの間において根本的な考え方についていささか不明確な点もなきにしもあらずでありますが、大体わかりました。
それでは左派社会党の長谷川さんにお尋ねいたしますが、あなたがかねて御質疑になっておった内容とこのたびの修正案として御提案になった御趣旨との間に若干ふに落ちない点がありますが、同様趣旨でありますから、あなたも御説明願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/6
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007・長谷川保
○長谷川(保)委員 ただいまお尋ねの点でございますが、私ども社会党左派といたしましては、今回におきましては、できれば先年来私どもが用意しておりました戦争犠牲者補償法案によって、つまり社会保障制度が確立いたしますまで、すなわち国民年金制度が確立いたしますまでの過渡的な行き方といたしまして、国家補償という立場で戦争犠牲者の最もはなはだしかった人々に集中的にこれを補償する、こういう立場をもちまして戦争犠牲者補償法案でやって参りたいのでございます。今回明確になりましたことは、法制局の意見としては、すでに裁定がなされました後の、つまり一昨年軍人恩給が復活いたしました後の軍人恩給というものは、これが財産権の既得権として確立しておる。そうすると、私どもが企図しておりました全部をフラットにいたしますという考え方は、この面から申しますと、今度フラットにいたしますよりも上になる面はすでに既得権として考えられておりまして、これは引き下げるわけに参りません。そこで私どもとしては、ただいまかつての考え方を一応ここで改めまして、下級の軍人を上に上げましてフラットにして、これに給する。原則としては大体将校公務扶助料においては大尉以上になりますが、大尉以上のところがこれ以上引き上げられますならば、またさらに大きな差等ができて参りますので、今回はこれ以上は上げないという考え方をもちまして、つまり国民年金制度に参ります過渡的な行き方といたしましてこれを認める次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/7
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008・田中正巳
○田中(正)委員 さすれば今まで長谷川さんが御質疑になった内容と今の御説明との間に相当の開きがございます。これはわからぬわけではありませんが、あの節の質疑の内容というものはいささか理想にすぎている、あるいはまた現在かような状態で旧軍人の恩給というものを引き上げたいという場合に対する質疑としては、建設的な御意見であったかどうか私は疑わしいとさえ思うのでございます。ともあれかような現実的な立場に引き戻ってお考えになったことについては了承をいたします。ついては両社の方にお尋ねいたしますが、おのおの御提案になりました内容によりまして予算の方は一体いかがに相なりますか、それをお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/8
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009・山下義信
○山下参議院議員 率直に申し上げまして予算の計算は非常に困難であるということは申し上げるまでもございません。しかしながら所定の手続によりまして提案いたしました本案に必要なる予算はどれだけ要るかということは手続上添付いたさなければならないことになっていますので、私ども政府機関を持っておりません野党の立場といたしましてできるだけその点を検討いたしたのでございますが、ただいま御審議を願っておりまする本案の末尾に付記しておきましたように、この法律施行によります経費というものは昭和三十年度に、大体におきまして九十二億円を要するのではないかと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/9
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010・長谷川保
○長谷川(保)委員 予算について申し上げる前に、先ほどのお話でありますが、私、高橋委員の御説明に対しましていろいろ御説明申し上げました中で、準士官以下を上まで上げる必要があるのじゃないか、こういうふうに申し上げたことを御記憶と存じます。一応このことを申し上げておきます。
それからただいまの予算でございますが、私どもの方の予算によりますと、民自の改正案に対しまして、本年度大体六億円増ということになるわけであります。全体から申しますと、本年度約二十六億円必要になってくる、それから三十一年度におきまして百五十七億必要になる、昭和三十二年度に二百九億、これだけが政府の最初出しました予算よりも増額せられるわけです。本年度におきまして民自案よりは六億よけい必要になってくる、こういうつもりであります。なおこまかいものがお入り用でございますれば後ほど差し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/10
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011・大坪保雄
○大坪委員 関連して長谷川さんにちょっとお尋ね申し上げたいと思いますが、今の予算の御答弁の前の事項でちょっと私ふに落ちないような感じがいたします。今の田中君に対するあなたの御答弁で、今度恩給法の修正案を出したについては、もともとわれわれは戦争犠牲者補償法を出すつもりであったけれども、まだ十分間に合わない、ちょうど一昨年できた恩給法の改正というものは、旧軍人に対する財産権としての既得権の復活であるから、それを一応認めるのだ、こういうように伺ったのですが、そういうふうにお答えになったのでありましょうか。——そうすると以前の恩給法、旧軍人にもともと支給しておりました基礎法である恩給法によって認められた軍人恩給が、すなわち既得権である、こういうお考えでございましょうか。そこの点をお伺い申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/11
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012・長谷川保
○長谷川(保)委員 ちょっと私の御説明が足りなかったか、あるいは言い方が悪かったかと思うのでありますが、そういう意味ではありません。昭和二十八年に旧軍人恩給というものが復活と申しますか、その点は非常にぼやけているのは御承知の通りでありますが、とにかくこれが一応できまして、そして御承知のようにそれぞれ大将幾ら、中将幾らというふうにきまりまして、その金が出されておるわけであります。昭和二十八年にそれがなされましたので、結局今日におきましてはすでに財産権としてこれが確立していると考えなければならない。つまり以前のものが復活したという意味ではなくて、ともかくも昭和二十八年にこの恩給法が施行されましたので、そこで財産権ができた、こういうふうに考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/12
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013・田中正巳
○田中(正)委員 先ほど予算の御説明が御両人よりありましたが、それではお尋ねいたしたいのであります。去る六月の七日に、昭和三十一年度の一般会計予算、特別会計予算、並びに政府関係機関予算の編成がえを求めるの動議を両派社会党共同提案として御提出になったと思いますが、その中の三に、両派社会党は恩給法の不公平を是正する意味ということで、それが組みかえの動議の一部となっておるのでありますが、それによりますれば二十億円の増額を御要求になったと思います。この二十億円の増額とただいま御両人から御説明の金額との間にかなりの相違があるように思うのでありますが、一体この点はいかがでございましょうか。それぞれ御説明を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/13
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014・長谷川保
○長谷川(保)委員 私の方といたしましては、すでに御承知のように、もう少し徹底した改正を実にしたいと思いました。しかし法制局の方に戦傷病者補償法案の要綱を持ちまして作っていただいたのでございますが、民自の方から出されましたのがなかなかにもたつきまして手間がとれました。先に民自の方からの要綱が提案されておりましたので、それが出まして私の方で見通しがつかない。それが御承知のようにおくれましたので、今日のように会期があと一ヵ月延びるということが予測されておればよろしゅうございましたが、そうでなくて、これは早急に作りませんと間に合わないということになって参ったのであります。そういうような事情からいたしまして、私どもとしてはこの徹底的な改正ということにつきましては、これを控えるという態度をとりました。ある程度で今回はとどめておく。さきに申し上げましたように、国民年金制度を実施するまでの過渡的な行き方でありますから、ある程度にとどめておく、やむを得ないという事情になりました。その結果といたしまして、私どもとしましてはある程度にとどめるということにいたしたのでございましたが、しかしいろいろ計算をして参りますと、これだけのものがかかるということになりました。なお私どもの出しましたかつての予算につきましては、すでに皆さん御承知のように、これは敗れておりますので、その後の事情も考えましてこの程度のものはやむを得なかろう。申すまでもなく革新的な、ほんとうの計算が出たのはごく最近でございまして、その前の私どもの大づかみな計算だけ見ますと少しく違ってきておりますけれども、この程度のものはやむを得なかろう、こういうことで提出した次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/14
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015・山下義信
○山下参議院議員 非常に重大なる御質問にあずかりましたので、率直にお答えいたしたいと思います。両社が予算の共同組みかえ案を作りまする中で最も問題となりました点の一つは、軍人恩給に関します点でありますことは御承知の通りであります。私ども政府原案よりは増額をいたしたいと考えております。左社さんの方ではまた独自のお考えでありますことは御推察の通りであります。結局御指摘になりましたように、約二十億増額を認めるということで両社の意見が一致いたしたのでございます。その二十億をどういうふうに増額するかということは、その当時その内容の実施方法につきまして詳しく協議いたします時間もございませんでしたので、大体におきましていわゆる下級の兵を中心として増額を認めようという程度の話し合いをいたしたのでございます。私どもがこの二十億の増額という、両社で意見を一致いたしましてそうして組みかえ要求をいたしましたこの数字は、その当時自由党、民主党等々におかれましても、政府予算案に対して恩給関係の増額の御意見の最も強い、そして私ども伺っておりましても、その実現のやや近い時期的段階にあったのでございます。率直に申し上げますれば、私ども右社といたしましては、民自両党において御心配になっておられますその金額にできるだけ近い金額を——われわれといたしましても、たとい野党でございましても、金額におきましてははなはだしく差異のないような修正を希望いたしたいと考えたのでございます。そのゆえんは多くを申し上げません。これら車人恩給の問題、遺族の問題等が各政党によりまして非常に意見の相違のありますことは、私どもとしてかねてから遺憾に存じておったのでございます。これらの問題は、たとい考え方あるいは思想その他におきまして立場を異にいたしておりましても、最終段階におきましては、できるだけ超党派的に一致点を見出して善処するのが至当ではないかということも考えの中にございまして、私ども野党が予算の組みかえを要求いたします際にも、できる限りそういう点を考慮の中に加えまして、二十億の増額を要求するという組みかえ案を作った次第でございます。その点に関する限りは、今回民自両党で御修正に相なりました金額と大体近い金額でございまして、金額に関する限りは大いな差異のないということに相なっておる次第でございます。
しかしながら御承知のごとく、これらの恩給問題、遺族扶助料等の問題に関連いたしまして、私どもの考え方といたしましては、毎年々々未解決の問題があとに残されていくということはできるだけ避けるべきではあるまいか、おそらく今回の措置をもって遺族の御要望に相なります点は、実現のためにできるだけ努力をいたす、予算はともかくといたしまして、その権利の確保と申しましょうか、問題の解決と申しましょうか、そういうことはいかなる政党であろうと、いかなる考えの差異がございましょうと、その点に関しましてはできるだけ最終解決をはかるべきではないかと考えた次第でございます。従いまして民自両党におかせられましては予算措置等は財源とにらみ合せまして、政局を御担当になっておられます建前上、その執行につきましては御提出になりましたような御案が出ておるわけでございますが、私どもも予算上の考慮、すなわち財政上の考慮を全然いたさないとは申し上げませんけれども、一応遺族問題、恩給問題としては少くともこの程度だけは解決をしておかなければまた問題が後に残るのではないかという点を取り上げまして、成案を得るということになりますと、ただいまお答え申し上げましたように、九十余億の予算が本年度としても要るということに相なります。従いまして両社の予算組みかえ案を作成いたしました当時と今回の提案とが、その内容におきまして相違いたしますので、従いまして左社さんと御相談申し上げる機会を得ませんで、私ども右社独自の立場で御審議を願いますただいまの案を提出いたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/15
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016・田中正巳
○田中(正)委員 どうも今の御説明で納得がいかぬのでありますが、予算の組みかえ動議というのは六月七日に出たのでありまして、かなり前のものでもございません。しかも本年の政府予算の取扱いでございまして、さすれば今御提案になった法案とこの組みかえ案との間に全然脈絡がないように思うのでありまして、はなはだ不用意であったのではないか、かように思うのであります。否決になったと申されますが、御意見もありましたようですけれども、かりに否決になるといたしましても、やはりそれだけ責任を持って法案をお出しになるからには、その予算の裏づけは十分やっておかなければならぬと私どもは考えるのであります。国会において一番いけないことは、予算の裏づけなしに法案を順次お出しになって、あるいは法案だけ通しておくならば何とかなるのではなかろうかというような考え方は、私ども厳にこれを戒めなければならないものと考えておるのでございます。これが悪く解釈いたされますれば、政党の宣伝に終始しておるというふうに曲解される向きもないではないのでありまして、かような点について私は非常に遺憾だと存ずるものであります。いやしくも法案をお出しになるからには、その予算についての十分なる配慮をいたしまして、これが表裏一体となって実現性のある御措置をおとりになることを私どもは希望してやまないものであります。かような意味でこの法案についての準備の不十分なことを遺憾と存じますが、この点を特に意見として申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/16
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017・山下義信
○山下参議院議員 御質議でございませなんだので、お答えを申し上げる限りではないと思いますが、私どもに対しまして御注意を賜わりましたので、つつしんで敬意を表して御注意は承わります。しかし私は申し上げておきたいと思います。予算の裏づけを考えないで出したではないかというお言葉でございますが、それは私ども両社が共同組みかえ案を出したときの予算数字と本案の裏づけになります予算の積算の数字との差異につきましては、先ほどお答え申し上げた通りであります。この本案に必要なる予算の積算はいたしてございます。内容等詳細に、都合によりましては資料として御提出申し上げてもよろしゅうございますし、御説明申し上げてもよろしいのでございます。私どもが本案に必要なる経費の予算を計上いたしましたこれらの金額は、今日のわが国の財政の上におきまして決して実行不可能である金額とは考えていないのでございます。もし実行不可能であるとお考えになりますならば、おそれ入りますが、どの点が実行不可能とお考えになりますか、御指摘にあずかりたいのでございます。
それからいま一つ、実行不可能であるにかかわらず、この法案をもって何か宣伝がましいことに使う疑いがあるという仰せでございますが、私は御批評は十分注意して承わりますが、しかしこれは私ども政党といたしまして御弁明申し上げておかなければならぬのでございまして、さような荒唐無稽な案を作成いたしまして、ただ自派の立場を宣伝するためにかような案を出したのではないかと仰せられましては、これは承服いたしかねます。御批評は自由でございますが、いやしくも私ども天下の公党でございます。もし宣伝を本位といたしますならば、あるいは他に幾らでもやり方があろうかと存じます。これは私どもこの問題の性質にかんがみまして、良心的にできるだけ注意をいたしまして、先ほど申し上げましたように、かくのごとき問題は政党政派がおのおのいろいろなことを申して争うべきではない、できるだけ超党派的に、これは国家が当然処理すべき問題として厳粛に扱うべきものである、かような観点からいたしまして、従来とかく世間では社会党は軍人恩給に反対するという誤解もいただいておりますが、心から本問題の解決をはかりたいと存じまして、野党の立場でかくのごとき提案をいたします作業の困難なことは御承知の通りでございまして、できるだけそういう宣伝がましい、あるいは思いつきのような、あるいは不可能なことを盛りだくさんに盛り込むというようなことは一切いたしてございません。従いまして本案の提出のごときも、蛇足を申し上げる必要はございませんが、ほとんどこれはまだ表面にかくのごとき提案をしたというようなことを党といたしても宣伝もしてございませんし、今日初めて御審議を願いますようなことでございまして、私どもといたしましてはさような考えは毛頭持っておりませんことを、この際申し上げまして御了承を得たいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/17
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018・辻政信
○辻委員 ただいまの田中君並びに山下さんの質疑応答を通じまして、それに関連しまして一言申し上げたいと思います。
今度通りました軍人恩給は、その内容を見ますと、八四%が公務扶助料であります。戦死者の遺族に対するものであります。生きておる軍人でもらったのが全体の六%にすぎない。とかく軍人恩給といいますと、生きた職業軍人が老後を楽しむために国家の金を使うというふうに誤解をされておりますが、内容を分析すれば、八四%が八百万の遺族に対する国家の救いである、こういうことが明らかになるのであります。今度提出されました両派社会党の案を見ますと、まことにうれしく感じましたことは、民自両党の案よりも予算において上回る案をお出しになっておるという点であります。ことに参議院の山下さんは、私この遺族の問題についてかねがね党派を離れて敬意を表しております。非常に御熱心にお世話下さっており、お出しになった案は民自両党の案とほとんど差がない。社会党左派の長谷川さんもまた討論のときに非常に強い口調でお述べになっておりますが、お出しになったものは、われわれの財政上の非常な苦痛を忍んで作った案よりもさらに六億円増加されておる。従来の国会において社会党特に左派の御議論を拝聴しますと、軍人に恩給をやるのは再軍備の前提であるという非常に激しい口調で反対をされておりました。それが今回は態度をすっかりお変えになって、われわれの案よりも六億円プラスした案を立てて恩給をやらなければならないというふうになったことは、大きな変化であると思いますが、これは社会党左派の諸君が従来にこだわらずに根本的に改められたものであり、将来もまたその線に沿うていかれるものと解釈していいかどうか、これを一つ両派社会党を代表して山下さんと長谷川さんから承わりたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/18
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019・山下義信
○山下参議院議員 ただいま辻先生から過分なお言葉をいただいたのでありますが、先生の仰せの通りでございまして、私どもこの軍人恩給につきましては、これが必ずしも軍国思想に直結しておるとは考えておりません。ただしかしながら数年以前におきましては、一部におきましては、軍備を促進するためには何としても遺族問題を解決しなければならぬ、この軍人恩給が復活しなければ軍備の促進はできないのであるという声が相当一部に高かったことは御承知の通りでございます。従いまして直接の関係はないといたしましても、ややもいたしますれば軍人恩給の復活ということが、再軍備促進のために国民世論を緩和しあるいは一部の再軍備促進をはかる具に供されることを、われわれといたしましては非常に警戒すべきである、再軍備の是非論は是非論として別個の問題、戦争犠牲者に対する国の当然の義務を尽すべきはこれまた別個の問題、両者に必ずしも直接の因果関係はないという考え方が私どもの考えで、従来一貫しております。ただこの遺族問題あるいは恩給問題を利用いたしまして、これが他の問題のために悪用せられることは、お互いにできるだけ避けなければならぬ、かように考えておる次第でございますが、将来軍人恩給に関します考え方、党の方針は、ただいま私がここで申し述べましたことにいささかも相違はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/19
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020・長谷川保
○長谷川(保)委員 ただいま辻先生の御質問でございますが、私どもの党といたしましては、従来御承知のように、戦争の犠牲が全国民的である、従って全国民に憲法の原則に従って公平な戦争犠牲の補償をすべきである、さらに突っ込んでいえば、社会保障という考え方と国家補償という考え方とを、戦争犠牲者においては二つのものをまぜ合せたような考え方で、特に全国民の戦争犠牲の最もはなはだしかったところにつきましては補償をすべきであるという考え方でございます。社会保障制度というような立場で国の金を使うことにつきましては、われわれは莫大な金を使うべきであるという考え方でおります。すなわち全国民を平等に公平にこれを国家が補償するという立場でございますから、そういう立場をとって参りました。ただ二十八年のいわゆる軍人恩給の復活におきましては、私どもといたしましては法案全体を見まして、職業軍人であられたところの旧将校たち、ことに高級将校たちに非常に厚くなっている。私どもとしますれば、むしろ戦死者の遺族あるいは傷痍者、こういう方々に集中的に援護すべきであると考えるのでありますけれども、案を見ますと、高級将校に非常に厚くなっている。数日来の当委員会における私の論議からいたしましても明白でございますが、下の方の下士官、兵、こういうような諸君に対しまする仮定俸給を見ますと非常に低い。上の方は職業としての給料でございますから、これに対して恩給の理念でこれを出すということも一応わかりますが、下の方は非常に薄い。こういう非常な不公平が行われておる。これは承服しがたい。なぜこういうような方法をとるかということにつきましては、私どもとしましてはこれに一まつの再軍備の伏線としてのにおいがある、こう断ぜざるを得ない。だからこれが最初より国民年金的な考え方を基盤といたしました意味におきましての、その年金が行われます前提といたしましての、平等のフラットの形において、上も下もなく平等に出されるというならば、われわれは賛成であった。従って私どもが当時考えました戦争犠牲者補償法案というものはそういう考え方で、軍人のみならず一般国民でも戦争犠牲者となりました方々、たとえば国家総動員法で動員されて犠牲にあった方々、こういう方々も平等にフラットにこれを救済すべきである、あるいは補償すべきである、こういう考え方であったのであります。今日も一貫してその考え方は変らないのでありますけれども、先ほど申しましたように、すでに上の方に出されましたものが、法制局の意見としましては、財産権として引き下げるわけにはいかぬ、こういうことでございますので、万やむなく上の方はそのままに置きまして、下の方だけは上に上げまして、そうして下の方でせめてフラット制を実現いたしまして、国民年金制度に参りますまでの過渡的な方法といたしまして、国家補償をもって、非常に生活困難であるあるいは混乱に陥ります戦争犠牲者の遺家族を主として、あるいは傷痍者を主として救って参りたい、こういうように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/20
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021・宮澤胤勇
○宮澤委員長 高橋等君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/21
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022・高橋等
○高橋(等)委員 私はきょうは御質問を申し上げないつもりでおったのでございますが、ごく大切なことで、まだ質疑がないようでございますので、特に長谷川さんに対しまして金額の引き上げの点についてお伺いをいたしておきたいと思います。
大体社会党の左右両派から、先ほどから議論になっておりますように、恩給の形における修正なりあるいは改正法案が提出されておることは、全く御同慶にたえないのでありますが、ことに右派の案を金額の点で拝見いたしますと、公務扶助料あたりで見ましても、少佐以上におきまして民自両党が出しております金額と若干開きがある。これはほんとうにごくわずかな開きでございます。たとえてみますれば、少佐においては八万五千円と七万六千円、大将の階級で二十万五千円と十九万二千円というようなことで、これは四号俸の調整いかんでこうなったのでありましょうが、一応右派の方への御質問はいたさないことにいたします。左派の方の立てられている立て方というものは、非常にわれわれと実はこの点が違うということについてのお話を承わりたいと思うのでありますが、まず第一に国民公平の原則ということを言われますが、公平というものは、やはり国民の間に文官というものがあって、文官も恩給をもらっておる。その文官の恩給と不均衡であるということが、これが一つの大きな公平を破る問題じゃないかと私は思うのです。その点についてはどういうようにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/22
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023・長谷川保
○長谷川(保)委員 私どもといたしましても、恩給制度全体に近い将来手を入れまして、国民年金制度をしかなければならないと考えております。従って今日の文官恩給がそのままいいと思っておりません。しかし民自案を拝見いたしますと、文官との公平ということをお考えになっておりますが、先ほど来申し上げておりますように、私どもといたしましては国民年金制度をしくということを前提といたしまして、それにできるだけ妨げのないようにと、社会保障制度のあらゆるものとともにこの恩給関係をも調整して参りたい、今からそれをやっていかなければ、これ以上でこぼこをたくさん作ったのではいけない、こういう考え方でございまして、たとえば昨年高橋委員とともに論議いたしましたあの厚生年金保険にいたしましても、その他あらゆる共済組合、恩給関係に似たようなもの、こういうものを全部私どもの党といたしましては、あくまでも将来の国民的な公平の観点に立つ社会保障制度でありまする国民年金制度の実現の妨げにならないように、妨げになる分はできるだけ今から用意いたしまして、その妨げはとっていく、こういう態度でおります。従って文官恩給に対しまする公平ということではなくて、私どもは自余のたくさんの国民に対する公平ということを考え、またこの軍人恩給の方におきましては、軍人恩給を受けます、たとえばただいま申しましたような、たくさんの御遺族その他の方々の間における公平をまず立てる。文官恩給に対しましては将来国民年金制度の線に従いましてこれまた調整をする、こういう考え方であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/23
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024・高橋等
○高橋(等)委員 二、三続けて質問をさせていただいて、終りたいと思います。この案で見ますと、準士官のところの仮定俸給というものが九万七千八百円、それ以下は全部同じになっております。この準士官の九万七千八百円というものの基礎は、われわれが考えました点とこの数字をお出しになる場合にどういうように変えられたか。九万七千八百円の数字を出された基礎というものを伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/24
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025・長谷川保
○長谷川(保)委員 私どもといたしましては、今回のこの恩給の年額をきめまするにつきましては、大体原則といたしまして準士官以下を全部フラットにして参る。そうして最下級の将校、少尉とほぼ同額にしよう、こういうことで考えたのであります。その結果いろいろ各公務扶助料、普通恩給その他の恩給を計算していってみますと、大体この九万七千八百円というところに置きますと、公務扶助料におきましては、大体この金額が準士官以下兵隊の金額では四万四百二十四円となりまして、これが大尉の少し下、中尉の上、大尉と中尉との間に入っておるのであります。それから普通恩給におきましては三万二千六百円でございまして、少尉の少し下というところに入って参るのであります。こういうように各種の恩給を勘案いたしまして、大体ここへ持って参りますれば、合理的な線が出るのではなかろうか、こういうことでいろいろ計算をいたしました末にここに求めたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/25
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026・高橋等
○高橋(等)委員 九万七千八百円という数字は、民自の法案によりますと、曹長の金額と同額でございまして、曹長と同額の文官恩給をとっておる人に対して、その四号俸引き上げ一万二千円ベースにした数字が九万七千八百円、この数字を私はおとりになったのだろうと実は考えておりましたが、今のお答えですと、その合理的基礎というものについては、私は十分納得するわけには参りません。漫然とした感覚をもって数字をお出しになっておるように思います。
それからいろいろと将官以下尉官、ことに尉官の低い方は幾分訂正になっておるようでありますが、中尉以上ぐらいからは据置をなさっておられる。これはどうも戦争の責任というものが、ひとり旧軍人のみに転嫁すべきではないという考え方を私は持っておるのです。おそらく長谷川さんも同じようなお考えだろうと思うのですが、どうもこうした行き方を見ますと、旧軍人に戦争責任を転嫁して一般国民である文官との差別待遇をことさらにやろうとなさっておるように私は感ぜざるを得ない。もしそうした考え方が入っておるとすれば、これは一つ直していかなければならぬことだと思うのであります。そういう意味で、あなたのお説をもし是認するとしましても、恩給法の修正をいたしておる際であります、あなたのは新しい法案ができても修正の機会はある。ひとり旧軍人の下級方面にのみ増額をなさるようなことをなさらないで、文官等のやはり下級者についても同じような措置がなぜとられないのか。良心的に言えばそこまでおいでにならないと所論が一致いたさぬのではないかということを一つ考えるのです。一つは上級者において文官とのアンバランスを作るということは、国民の間の不平等を残す。それ以外に実は了解に苦しむのでございます。それらについてもう一度お伺いをいたして質問を終っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/26
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027・長谷川保
○長谷川(保)委員 ここが高橋委員と私どもとの非常な考え方の基礎の違いでございます。高橋委員は先ほど来のお話でもわかりますように、また御提出の改正案でもわかりますように、文官との公平ということを原則として考えておられる。私どもの方は、文官の恩給も将来は変えるのだ。国民年金を実施するということを前提にして考えております。従って私どもとしては、文官から四号低いから上げるというような考え方ではございません。そうではなくて、むしろ国民年金の制度をしくときに一体幾らが国民年金では最低保障線かということを考えておるのであります。そこで私どもが予想されます、また外国の例等からいたしまして、日本の実情と比べまして、ほぼ予想されますのは、大体やはり寡婦年金にいたしましても、あるいは老齢年金にいたしましても、まずまず月三千円ぐらいは考えなければなるまい、その前後できめなければなるまい、こう考えられるわけであります。そうすると年額で三万六千円、従ってその前後を基礎として今日の財政の許す範囲内でということを考えていかなければなるまい、こういう考え方であります。つまり文官を主として一つ公平を考えていこうという高橋委員のお考えと、私どもの国民年金制度というものを土台にして考えていこうというその違いが今出てきたと思うのであります。
それからもう一つのお話の、旧軍人だけに戦争責任を負わせるということにつきましては、私もそう考えるのは妥当でないと思っております。しかし同時にまた、下級将校はともかくとして、高級将校におかれましては、これらの点につきましては、直接にそれぞれ責任を強くお感じになっている、また国民もそれを考えるであろうということも一応考えられるのでありまして、その点は、私ども全部何もかも責任はないという考えにはなり切れないのでございます。しかし下級将校以下につきましては、何らそういうものを考えているものではございません。もちろん戦争指導に当られた高級将校には、特に直接的な責任はあると考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/27
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028・高橋等
○高橋(等)委員 考え方の違いだと言われれば、それまででございますが、私はこれをおやりになるときには、文官恩給にも同時に手をおつけにならないということが、どうしてもふに落ちない。それともう一つ、そうすると、将来国民年金を考えると言われるが、国民年金をやるときには、恩給制度というものはなくするお考えですか。外国に例をとりましても、恩給制度というものを否定いたして、いわゆる年金制度といいますか、社会保障一本でやっている国を私は寡聞にして聞かないのでございます。むしろ、やはり恩給というものと併存させるべきものではないかと考えておるのです。それらについていろいろ考えてみますと、今度お出しになった数字というものは便宜の数字だ、根拠というものはないんだ、一応この辺が妥当だと思ってやったのだ、こう納得をしてよろしゅうございますか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/28
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029・長谷川保
○長谷川(保)委員 お話の国民年金制度と恩給の関係でありますが、この点は高橋委員もお聞きになったと思いますが、この間厚生大臣も明確におっしゃいましたことは、国民年金というものと恩給というものは差し引かれる、これが諸外国の両方やっている例であるということは、本会議でも厚生大臣がおっしゃった通りであります。私もさように承知をいたしておるのであります。従って私どもとして非常に考えなければならぬのは、下の方の恩給はよほど上げておかないと全部国民年金とすりかえられてしまう。上の方だけは残る。そうなりますと、先般も申し上げましたように、たとえば三万六千円というような数字を仮定いたしますと、それ以下のものは、国民年金をもらうならば恩給をもらえない。恩給をもらうならば国民年金をもらえないということになって参りますから、上の方だけが残る。今回の改正案のように上を上げますと、その分だけが恩給をもらって、一番下の兵、下士というようなものは、ほとんどもらえないということになる。そこでどうしても上を押えておかないと、そのときになって国民的な公平の原則に非常に違うようになる、これが上を絶対に上げてはならないという考え方であります。
なお、文官恩給等について、なぜ手をつけないかというお話につきましては、御承知のように、私どもは、早くより社会保障省を作って、根本的にあらゆる社会保障的な制度——恩給、共済組合も含めまして、あらゆるものを統合していくという形において考えなければいけない、早く社会保障省を作れ、こう主張しておるわけであります。御承知のごとく、これらの作業はきわめて困難な、また膨大な作業でありまして、これらのことは、もちろんお互いの小さい政党の力をもちましてはできるはずのものではございません。従いまして、今回厚生大臣が社会企画庁を作るということは、まずそれに対する一歩前進だと私どもは賛意を表しておるわけでありまして、これらにつきましては、日本のこういう方面の制度全体に根本的な再検討をする必要がある。それまでは、今申しましたような文官恩給等につきましてその合理的な線が出ますまでは、これに手をつけるわけには参らぬ、こう考える次第でございます。けれども将来は、文官恩給に対して必ず手をつけなければならぬ、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/29
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030・宮澤胤勇
○宮澤委員長 粟山博君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/30
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031・粟山博
○粟山委員 高橋さん、長谷川さん、山下さんなどの専門的な御見解によって私どもは非常に貴重な参考になったのであります。ただ一つ簡単に申し上げますれば、要はこれはイデオロギーの立場からはっきりと対立した理論系統の上に今いろいろな問題が集約されつつ、ここに議題になっておると思うのであります。そこで、ごく簡単に伺ってわかることは、長谷川さんは、年金制度にしよう、ただ恩給という言葉において給付されるものを残していくということだが、私は、そういうことになれば、この恩給という言葉は辞書の上から消えなくてはならないと思う。あなたは平等ということをしきりにおっしゃっておるが、今のあなた方の修正でも、あなた方のイデオロギーから推進していったものとして、非常に不平等だと思う。現に准尉以下の者を上げようとしても六億一千万円違うということであり、そうして上の方を押えて下の方を上げるということだが、それがもうすでに不平等である。そういう不平等の姿において、あなた方のイデオロギーの上において、こういうことを現実の問題としてなぜ取り扱わなければならないかということに、私どもは大きな問題があると思う。そこで軍人恩給と文官恩給との違いについては、文官恩給はいわゆる普通の恩給であり、軍人恩給はマッカーサーによって払拭されたものを呼び返したものである。たびたび政府も言うように、この軍人恩給は性格から言えばヌエ的のものである。ところがこのヌエ的存在のものがやがてこの年金制度を推進していくときには恩給と変って、まっ先にこれが取り上げられていく問題であることは私には常識的に考えられる。そういうときにあなたは、文官恩給についてはそうしておくが、軍人恩給だけは抹殺してしまうというようなお考えで、この平等主義を唱えられるのであるか、この点を一つ伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/31
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032・長谷川保
○長谷川(保)委員 私の申し上げ方が悪かったのか、栗山委員のお聞き取り方が違ったのかわかりませんが、私はそう申したのではありません。文官恩給は残して軍人恩給を抹殺するというのではありません。国民年金制度を考えるときに文官恩給も軍人恩給も全部手をつけるわけで、私どもが今日修正いたしました分でもごらんのように、上の方の大尉以上は全部現行通りに押えておいて下の方を厚くしていくということにつきましては、先ほど来申し上げたように、二年前に、私どもがこういうことになってくることをおそれまして、戦争犠牲者補償法というものを作るべきであるといことを強く主張したのでありますが、これにはたくさんの不合理があるということで、先般来この委員会で議論したわけでありまして、下士官、兵というものは給料ではないのであって、ほんの小づかいです。それが現行法でありますならば、月給にして六千円ばかりです。それを給料だと考えてはいけない。職業軍人はそれでよろしゅうございますが、しかし応召兵は、自分の仕事を捨て、高い給料をもらっておったのを捨てて応召していって、わずかの小づかいで働いたのであります。それを土台にして仮定俸給を作ってそれに恩給を出すということは間違いだということを、私も民自の改正案に対して強く指摘したのであります。今日いろいろな不合理が軍人恩給にありますから、二年前にそういう恩給の復活であってはいけないということを主張したのであります。しかしこれが一応できてしまって、法制当局の意見によりますと、すでにこれは既得権ということになり、憲法の保障いたします財産権となっているという見解である。先般ここで恩給局長にも私は念を押したのでありますが、それに対しても恩給局長は同様の御意見です。そうなりますと、もはや上の方はくずせない、従ってもうこの既成事実かできた以上は、上の方はこのままでとめておいて、下の方を上げる、そうして国民年金制度に参りましたときに、文官恩給といわず軍人恩給といわず、一切について、既得権は既得権として認めることといたしまして、既得権を侵害しないということで、大体外国等の例に従いましてもやっておりますような、公正妥当な、全国民の納得のできます線において、国民年金制度にこれを整理統合しよう、こう考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/32
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033・粟山博
○粟山委員 私はこの内閣委員会を見まして、非常にイデオロギーが違った立場におりながら、適当なところに結論を求めつつあることに私は満足するのです。およそ議会の中の議員とも、かような光景において切瑳琢磨されることを私は希望するので、私どもは右社の方々、左社の方々の御意見にも、自分たちが一つの研究の学徒として、十分参考に勉強させていただいたことを感謝します。またわれわれの立場においても、当然これは国家の重大問題でありますから、真剣に取り組んで研究しなければなりません。そこでこの程度で午後は円満に片づけて、真剣な態度でお互いにその研究を続けるようにいたしたいと思います。私感謝の辞をもって質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/33
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034・宮澤胤勇
○宮澤委員長 田中正巳君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/34
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035・田中正巳
○田中(正)委員 具体的な問題について若干質疑をして終りたいと思います。山下さんにお尋ねいたしますが、要綱の二にございます通算の問題でございますが、通算して七年以上になる場合はすべて恩給の基礎になる在職年に算入するというふうに書いておるようでありますが、一ヵ月でも二ヵ月でも算入するようなおつもりでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/35
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036・山下義信
○山下参議院議員 お尋ねの通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/36
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037・田中正巳
○田中(正)委員 それでは次に、いわゆる戦地加算の問題でございますが、これは一ヵ月につき一ヵ月の割合で在職年数に算入するといいますが、今日これを直ちに御施行になるのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/37
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038・山下義信
○山下参議院議員 この加算の制度をすぐ実施するかというお尋ねでございますが、その通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/38
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039・田中正巳
○田中(正)委員 通算の問題にいたしましても、一ヵ月、二ヵ月というような程度のものについては非常にその算定がむずかしい、かようにいわれているのであります。さすれば、私どもの方の提案には一年ということになっておるようでありますが、こういう点をめぐって、現実に実施できるだけの御用意があるのかどうか。あるいはまた加算の問題につきましては、現在われわれの方もぜひこれをやりたいという希望を持っておったのでありますが、何分にも終戦時において資料が散逸いたしましたので、よほどの調査をいたさなければ完全なかつ公平な措置がとれないということから、本年は調査費を計上いたしまして、じっくりこれをやっていこうという考えであったようでありますが、かような御配慮なしに一体これらの措置をおとりになれるものであるかどうか、その辺ちょっとお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/39
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040・山下義信
○山下参議院議員 この通算加算の問題は、軍人恩給の問題の中でも大きな問題でありますことは御承知の通りでございまして、漏れ承わるところによりますと、民自両党におかれても非常にこの点を御研究になったということでありますが、私どもの考え方といたしましては、通算を認めます以上は、ある一定の年限を切りまして、それ以下のいわゆる戦地従軍は加算の中に入れない。たとえば一年以上は通算の中に入れるが、十一ヵ月二十九日はこれは通算の資格がないというふうに切りますことが果して合理的であるかどうかということを非常に心配いたすのでございます。従いまして、私どもの考え方といたしましては、通算を認めます以上は、時の長短を問わず、これを認めることが最も合理的であって正しいと思うのでございます。そのことが調査の技術上困難であろう、容易でないといたしましても、建前といたしましては、合理的な正しい建前をとるべきでありまして、調査の結果不可能な対象が生じますことは、これは法の罪ではなくいたしまして、事態が調査不可能という不可抗力の事態に相なっておるのでございます。従って調査不可能を見越しましても、建前といたしましては正しい建前をとるべきである。あるいはこれは調査不可能であろうから、調査のできる程度のところで線を引こうということは、これは法の建前といたしましてはいかがかと一つには考えたのでございます。いま一つは、加算の問題は大へん御議論のおありになるところであろうと存じますし、お互いに心配いたす点でございますが、私どもの承わるところによりますと、通算の問題を取り上げますその主たる目的は、いわゆる応召軍人が主でございまして、申し上げるまでもなく、しばしば召集に応じて、その間幾たびか継続復職の切れましたその対象を、できるだけ恩給の恩典に浴せしめるということが目的であるわけでございます。その目的を達成いたしますならば、さらに加算を加えますことがその趣旨を貫徹いたすのでございまして、私どももこれに対します調査検討が十分であるとは申し上げかねますが、しかしながらいろいろ私どもの存じ上げております範囲内では、加算をつけなければせっかくの通算制度を立ててみたところで、この恩恵に浴するものはきわめて少いのではあるまいかということを承わるのでございます。さすれば過大な加算はすでに恩給法復活の当時から御議論が済んでおりまして、これはすべてできるだけ回避するという建前になっておるのでございますから、これが復活を望みますことは最も困難と存ずるのでございます。しかし応召軍人を主といたします恩給法上の恩典をこうむらしめるという建前で通算制度を認めます以上は、さらにその制度がほんとうの実を結ぶという上からいたしまして、この程度の最低の加算を認めますことによりまして、しばしば、しかも通算いたしますれば、長期にわたりまして戦役に服しました者を恩給法上の対象の中に加入できまするような措置をいたしたいと存じたのでございます。
なおこの機会に私どもの通算の考え方を申しますれば、これは恩給年限に達しようと達しまいと、すべて通算をいたすのでございまして、恩給法に達するまでは認める、それ以上は認めないという一つの制限というものは、私どもの案としては考えていないのでございまして、そういう考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/40
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041・田中正巳
○田中(正)委員 それではお尋ねいたしますが、加算によって生ずるところの予算とその人員を御想定になっておりますか。その点若干お聞きしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/41
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042・山下義信
○山下参議院議員 お答えを申し上げます。通算加算によりまする普通恩給扶助料の増額といたしまして、本年度におきまして必要な経費を四億四千四百万円と考えております。それから通算加算の遡及によりまする一時金恩給の増額を本年度におきまして五億三千六百万円と想定いたしております。それから通算加算による年金恩給の新規受給者分といたしまして、本年度六億八千五百万円を想定いたしております。それから通算加算によります一時金恩給の新規受給者分といたしまして、三十億六千万円を想定いたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/42
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043・田中正巳
○田中(正)委員 それでは三橋政府委員にお尋ねいたしますが、ただいま御説明の数字につきまして、恩給局といたしましては妥当な数字であるとお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/43
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044・三橋則雄
○三橋政府委員 今の山下議員の御答弁の中に通算ということがございましたが、その通算はこの前もこの委員会でも申し上げましたように、文武官、すなわち軍人の在職年と他の警察官や学校の先生とかあるいは私たちのような公務員との在職年相互の通算をした場合において、新しく権利を取得するその人員と金額はどれくらいか。それからまた軍人の在職年を相互に合算する場合において、新しく恩給を受けるその人員、金額はどれくらいか、これらがはっきりしないと私お答え申し上げかねるのでございますが、私たちの想像いたしておりましたところよりもかなり少い金額じゃないかというような気がするのでございまして、どういうふうにして御調査になっておりますか、それをちょっと伺わないと、はっきりしたことは申し上げられないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/44
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045・田中正巳
○田中(正)委員 この問題につきましては政府側と右派社会党の方の数字に相当食い違いがあるようでございまして、こういうことから見ましても、この問題はいましばらく検討を必要とするのじゃないかというふうに私どもは考えるのでございます。およそ法律というものを規定する場合においては、理想はさることながら、その中に持たれておるところの内容の実体性と申しますか、具体性というものを相当に考えていかなければならないと思うのでございます。かような意味から申しまして私どもはこの法案につきましてはいま少しくその具体性と申しますか、実体性というものを考えていただきたかった、かように存ずるものでございます。その理想とするところにつきましては、私どもも同様に努力をいたして実現をいたしたいというわけでございますから、この点については了承を申し上げます。私の質疑はこれで終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/45
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046・宮澤胤勇
○宮澤委員長 受田新吉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/46
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047・受田新吉
○受田委員 きょう御説明になりました左右両派社会党の御提案に対しまして、同時にすでに質疑を終了しておりまする民自両党案に関連した立場から政府に対して御質疑を申し上げたいと思います。民自両党の改正案によりますと、附則別表第一に各階級別の仮定俸給が設けられてある中において、伍長と軍曹はこれは仮定俸給が三号引き上げ一万二千円ベースということになっております。ところが今山下参議院議員の御提案によるならば、この階級は当然四号引き上げ一万二千円ベースということになりますと、ここに一号の差等が生じておるのでありまして、民自両党による案は伍長の場合が八万八千八百円、軍曹が九万一千八百円となっておるのであります。高橋提案者代表議員は、尉官以下は一万二千円ベース四号引き上げという線でやっておる、佐官は三号あるいは将官は二号という一万二千円ベースのほかに号俸調整がしてあるということでありましたが、ことさらに伍長と軍曹だけが号俸調整並びにベース引き上げにおいて一号が下げられておるというこの事情は、政府といたしましてはいかように了承しているのか、御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/47
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048・三橋則雄
○三橋政府委員 今受田委員の御質問になりましたことにお答えいたしますが、確かに今お話しのように、軍曹のところは三号になって伍長のところも三号になっておるのでございますが、これは現在におきまして、文官のもらっておるところの恩給の基礎になっておりまする仮定俸給と比較して考えました場合におきましては、ただいまこの曹長のところは今のようなところで押えなければ、文官の場合よりも優位な取扱いになるおそれがあるのであります。そこで今度の法案につきましては、先般も提案理由の際に御説明のありましたように、文武官の間におけるふつり合いを是正する、すなわち軍人の方が文官より悪くなっているところを是正するという御趣旨であって、しかしながらその是正はするけれども、その是正に当って特に文官よりもよくするというようなことはしない、こういうような前提に立ってこういうふうな調整をされたものと私は承知いたしておるのでございます。そこで軍曹の方をそういうふうにしますと、自然伍長のところも今のようにせざるを得なくなってきたものと考えておるのでございまして、高橋委員の先般の尉官以下四号と言われましたところは、大まかに御説明になったものと考えておるのでございます。従いまして今受田委員の仰せられましたように、先ほど山下議員から御提案になっておりまするように、四号俸上げられるという場合におきましては、確かに曹長のところはもう一号俸上げなければいけない、こういうことになるわけでございますが、そうしました場合におきましては軍人恩給廃止前に曹長と同じような恩給年額計算の基礎俸給になっておった文官の現在もらっておる恩給を考えました場合におきましては、軍人の方が文官の方よりも割がよくなる、こういうことになるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/48
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049・高橋等
○高橋(等)委員 私に対するお話がありましたからこの点誤解のないようにいたしておきます。私は提案理由の説明において佐官将官のみ号俸を引き下げるということを決して申し上げておらないのであります。これは速記録をごらん下さればよくわかると思うのであります。もう一度念のためそこだけを申し上げてみますと、一般文官との調整をはかり、原則として四号俸、一部のものについて三号俸または二号俸引き上げる、こう申し上げておりますので、どうぞその点を御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/49
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050・受田新吉
○受田委員 文官との比較においては、少尉にしましても、中尉にしましても、大尉にしましても、これは仮定俸給の設定が実際の給与額よりも高いところに置かれていたので、そこに差等が生じていることはこの前指摘申し上げた通りです。従って軍曹、伍長が問題にされるならば当然軍人の仮定俸給のつけ方そのものが問題になるのであって、何を好んで伍長と軍曹だけを、基本的な立場から下級者に対して四号俸引き上げを是正なさったかということになる。しからば兵の仮定俸給の設定は文官とのどこに問題が起るかというようなことが繰り返し論議されることになると思うのでありますが、最初は、伍長と軍曹、特に軍曹の仮定俸給設定の際における基準は四号俸引き下げのところでなかったという御説明がいただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/50
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051・三橋則雄
○三橋政府委員 今の御質問は大体二つになると思うのでございますが、一つは旧軍人の方につきましては、恩給を考える場合においては、現実に支給されておるところの俸給を土台として考えるべきであって、恩給年額計算の基礎俸給になっておったものを土台として考えるべきではないという、この前の御議論が前提になっておるように思うのであります。その点につきましては、私は今まで政府におきまして、昭和二十八年の法律第百五十五号を作りました趣旨から考えましても、今の仰せにはにわかに御同意を申し上げかねるのでありまして、恩給年額計算の基礎俸給を土台として考えるべきではないかと私は思っております。それから第二の点につきまして、軍曹のところにつきましては、今お話のごとくに四号俸引き上げました場合におきましては文官よりもよくなるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/51
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052・受田新吉
○受田委員 これは小さな問題のようであるが、基本的に考えますと、下級者に厚く上級者に薄いという民自両党の代表者の考えておられる考え方からいっても、問題が大きいと思うのでありますが、軍曹と伍長だけは結局ほかの下級者に比べて一号俸分だけ上り方か少いということになるのですから、手取りがそれだけほかの人と結果的には差等がつけられたわけです。こういうことは文官のどこにそれを当てはめたのか、文官の俸給で二十三年六月三十日以前の退職者の退職当時の俸給月額の四十円のところから計算してどういうところへ基準を置いておられるのか、軍曹、伍長及び兵の場合から勘案して、その四十円よりも下の俸給に当る立場の人々をなぜ一号俸下げなければならぬような問題が起ったのか、具体的に御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/52
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053・三橋則雄
○三橋政府委員 軍曹の仮定俸給は、従来は、すなわち軍人恩給廃止前におきましては七百六十五円でございます。文官におきまして七百六十五円が恩給年額計算の基礎俸給になっておった人は、現在におきましては増額されてどういうふうな金額になっておるか、こう考えてみますと、現在は九万一千八百円になっておるのでございますが、いわゆる一万円ベースの公務員の俸給と比較して考えてみますと、今申し上げました七百六十五円の文官は七万八千円というのが恩給年額計算の基礎俸給になっておったのでございます。その七万八千円になっておった文官に比較いたしまして、軍人は七万八百円というのが恩給年額計算の基礎俸給になっておる。これは現在の仮定俸給でございまして、これを文官と比較いたしますと、三号俸下っておるということになっておるわけでございます。そして文官で、一万円ベースのときに七万八千円の仮定俸給によって恩給年額が計算されておった人は、その後増額されまして九万一千八百円というのが恩給年額計算の基礎俸給として取り扱われているのであります。そこで軍曹の方につきましても、九万一千八百円のところまで持っていくべきである。その上の仮定俸給といいますと九万七千八百円になりますが、それに持っていくのは少し高過ぎやしないか、こういうことになるわけであります。そうすると受田委員の仰せられますように、どうしてこういう問題が起ってくるのか、四号俸上げることがどうしていけないのか、こういう問題になるわけであります。これは技術的な問題になるわけでございますが、この前の軍人恩給廃止前におきます俸給号俸は、御承知の通り非常に複雑になっておりまして、それが昭和二十一年の四月に変りまして、俸給表が整理されました。それから七月になりましてまた大きな改正があったことは御承知の通りであります。その後も変って参りまして、そうして昭和二十三年には、一般職のわれわれにつきましては今のような俸給号俸ができたのであります。そこで前の、すなわち軍人恩給廃止前に恩給年額計算の基礎俸給になっておりましたところの俸給と、それから今の公務員の俸給と対応させまして、仮定俸給を作る場合におきましては、どうしてもそこに若干のしわ寄せを上とか下にしなければならぬところができてきたのであります。その結果といたしまして、今申し上げました七百六十五円というようなところは、一般的に申し上げますと、ほかの軍人の場合に比べますと、現在においてはいささか割がいいようなことになっておる。これを下に持っていくと下に行き過ぎる、こういうことになっておるわけでございます。そこでほかの者が四号俸上るときに四号俸上げるといささか上げ過ぎるような結果になるので、三号俸を今度調整することによって一般文官とのつり合いがとれる、こういうふうにわれわれは考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/53
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054・受田新吉
○受田委員 私は、軍人恩給の廃止当時の基礎俸給、それからその後における新しい仮定俸給の設定の仕方、格付の方法等について今議論をする必要はもうないと思います。もう一つ問題になるのは、現にもらっている給与を基準にして下級者は一万二千円ベース及び四号俸引き上げという基準で進んでおるときに、ことさらに一番下層の伍長と軍曹だけを一号俸引き下げたやり方で実績を少くさしておるということは、これは給与体系の上からいっても、実際に今までもらっている人々の昇給率がこの二階級の人たちは押えられることになる、これは重大な実際問題に関連すると思うのです。従って過去の格付のときにおけるしわ寄せその他の議論の犠牲に、今ここに二階級の人がなったとしたならば——これはもともと一番低い線で、営外居住をしたときに三十円くらい別に手当を出すかどうかという議論になった階級です。非常に犠牲的な人々ですから、非常に気の毒だと思う。従って、今高橋議員が御説明になりましたけれども、高橋議員も各派の折衝の際においては、尉官以下は全部一万二千円ベース、四号俸引き上げれば、上の者に薄く、下の者に厚いという立場もとれるのだということであったけれども、実際問題として給与をもらっている人、恩給をもらっている人、あるいは扶助をもらっている人が、ほかの者より比率を下げて引き上げされたということになると、これは実績ですから問題になると思う。ですからその間の問題は、一律に下級者は四号俸引き上げをやってそこに文官などと比べて多少バランスの違いがあったとしても、下級者ですから、これは一番気の毒な目にあった人々であります。そこを考えられて一律に四号俸引き上げの措置をとられたとしても、これは社会的に見ても絶対に批判を受けるような問題でないと思うのです。この点この前の時間に議論することを私発見しなかったのですが、きょうたまたま山下案を拝見して、そうして民自案と比較検討する段階においてここに大きな問題が生じておるので、これは見のがすことのできない問題であるという感じを持っておる。特に文官と武官との比較検討ということになるならば、尉官級になると官等の問題を抜きにしても、実際俸給額を考えましても非常に大きな矛盾があるのであります。仮定俸給というものが実際もらっておる給与よりも高いというところに問題があります。もう一つ大将などを考えたときに、高橋さんは大将などは当然四号俸引き上げるのが当りまえだが、この際がまんして二号俸引き上げるというようにおっしゃっておりましたけれども、むしろ大将などを四号俸引き上げたら今の総理大臣と同じ給料になるのであって大へんな問題が起る。そういうことを考えると、文官と武官との比較検討ということは非常に問題がある。同時に文官に陥没者が非常にたくさんできたというのは、この間指摘した通りで、昭和二十三年六月以前の退職者、そういう当時の俸給月額の対象になっている人々の中で、文官の方で陥没した人々は何とか救済するということは各派も了解いただいておるのであります。同時に今の文武官の調整の上において、ほかの階級にも実際問題としてはたくさん問題が起ってくると思うのです。従ってこの最下級の二階級の方たちを対象にしてことさらに実績を基調とした計算からはずしたということは問題だと思う。実績を中心にして考えた場合の方が下級者に対して温情ある措置だと思う。もうすでに審査済みの法案に関連するのでありますけれども、一応筋を通すためにいま一度私が申し上げた実績を尊重するという立場から、しかも下級者であるという立場から、この二階級の人の救済についての御所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/54
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055・高橋等
○高橋(等)委員 私の提案いたしました恩給法の改正案についてはもう質疑は打ち切られておるはずなんですが、私が答弁を申し述べることを皆さんにお許しをお願いいたしたいと思いますことは、はなはだ一方的な御発言のみを速記に残しておきますことは、たくさんの百十二名の提案者の趣旨を速記へ残すことができないことになりますので、一言だけお答えを申し上げる責任を感じますのでお許しを願いたいと思うのです。
恩給特例審議会で決定になりました俸給がそのまま一応政府原案として出されて、そうして前回の恩給法というものが制定された。ですからこの問題は実はそのときにさかのぼった問題であろうと思う。ところが四号俸ずつ全部軍曹、曹長を引き上げますと、文官よりもこの点においては高額になるような措置になります。受田さんはこの前のわれわれに対する御質問に、この法律は昭和二十三年以前の文官と比べた場合、むしろ軍人優遇の法案であって、そうして文官の上において軍人を優遇する法案ではないかということで、そういう建前の御発言が本会議においてもなされておるし、この委員会においてもなされた。今もしあなたの所説を取り入れましてこれを四号俸ずつ引き上げた場合は、そのまま軍人が文官よりも優遇されることになるのであります。私たちは軍人も文官も同じような水準で、とにかく均衡のとれた待遇をしたい、こういう考えで措置をいたした。ですから根本はこの前の恩給法のときの仮定俸給のきめ方におきまして、政府提案において階級のきめ方で軍曹、曹長のところが幾分上回っておったということを私は了解をいたすのでございます。それをこのたびの修正において是正をいたしたんだ、この点をぜひとも御了承おきをお願いいたしておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/55
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056・宮澤胤勇
○宮澤委員長 大体質疑は終ったようでありまして、今のお話は討論においても言及されると思いますから、両案に対する質疑はここで終了いたしたいと思います。御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/56
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057・宮澤胤勇
○宮澤委員長 それではそのように決しました。
この際休憩いたしまして、午後二時半より再開いたします。
午後零時二十七分休憩
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午後三時四十五分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/57
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058・宮澤胤勇
○宮澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際お諮りいたしますが、長谷川君より本案に対する修正案の撤回の申し入れがありますので、これを許可するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/58
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059・宮澤胤勇
○宮澤委員長 なければさよう決します。
本日はこれにて散会いたします。
午後三時四十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X03519550706/59
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