1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年七月十五日(金曜日)
午前十時三十一分開議
出席委員
委員長 宮澤 胤勇君
理事 高橋 禎一君 理事 辻 政信君
理事 床次 徳二君 理事 江崎 真澄君
理事 高橋 等君 理事 森 三樹二君
長井 源君 林 唯義君
保科善四郎君 眞崎 勝次君
粟山 博君 大坪 保雄君
田中 正巳君 田村 元君
福井 順一君 船田 中君
茜ケ久保重光君 飛鳥田一雄君
下川儀太郎君 受田 新吉君
中村 高一君 矢尾喜三郎君
出席国務大臣
国 務 大 臣 杉原 荒太君
出席政府委員
防衛政務次官 田中 久雄君
防衛庁次長 増原 恵吉君
委員外の出席者
専 門 員 小關 紹夫君
専 門 員 安倍 三郎君
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七月十五日
委員西尾末廣君及び鈴木義男君辞任につき、そ
の補欠として受田新吉君及び中村高一君が議長
の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出第
八一号)
防衛庁設置法の一部を改正する法律案(内閣提
出第八二号)
防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案(内
閣提出第八三号)
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001・宮澤胤勇
○宮澤委員長 これより会議を開きます。
自衛隊法の一部を改正する法律案、防衛庁設置法の一部を改正する法律案及び防衛庁職員給与法の一部を改正する法律を一括議題とし、質疑を継続いたします。下川君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/1
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002・下川儀太郎
○下川委員 きょうは重光外相の出席を求めて、自衛隊三法に対して、いろいろな外交に関する問題を聞く予定でありましたが、予算委員会に取られておりますので、主として自衛隊三法の法案の内容に触れた点を若干質問して、重光外相に対する質問は月曜日に私譲りたいと思います。だいぶ自由党諸君の熱戦で、社会党はこの法案に対してはいまだそう発言しておりませんが、多少ダブる点もあると思いますが、防衛庁長官は、いつもと違ってきょうは穏やかに私の方は質問いたしますので、明確に御答弁をお願いしたいと思います。
この防衛三法につきまして、大橋武夫君からもいろいろと質問されておりますが、自衛隊の陸海空の約二万七千有余人の増強をなされておりますが、この二万七千有余の増強の人々の配置はどのようになっておりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/2
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003・杉原荒太
○杉原国務大臣 お答え申し上げます。この本年度の計画で増勢のうちで、自衛官が約二万七千名でございますが、これは二万名が陸、それから約三千五百が海の方、約四千が空の方、こういうことになっております。そして陸の方は、配置は方面隊を一つ九州に設置して、その方面隊を一つと、それから混成団を二つ、その混成団は一つは北海道、一つは九州、こういうことでございます。九州に作ります方面隊は、すでに九州に配置しております管区隊と、新しく今度増置します混成団一つを加えて、それを統一して方面隊、こうなるわけでございます。それからその混成団二つのほかに、独立の特科、特車、施設等の若干の部隊を新設いたします。それからさらに以上に伴いまして、補給、整備その他の若干の後方部隊を整備する、そういうところに配置いたします。それが陸上自衛隊でございます。
海の方は、御承知の通り新しく二十八年度から新造船を計画しておりますのと、アメリカから供与を受けております艦艇が若干ありますので、そういうのが入ってくる。そういうものに伴いましてそういう新しく就役するものに配置するために増員をするわけでございます。おもなるものとしてそういうものでございます。
空の方では、その主たるものといたしまして、三十年度におきましてアメリカ側からF86を五十四機供与を期待いたしております。それを基幹にして、それに若干の基地整備等のなにをつけまして、そうして航空団というものを作る、こういう計画でございます。それから本年度の新しい計画といたしまして実験航空隊、これは飛行機そのもの、あるいは飛行機に装備します装備品等の改善、改良ということを目的といたしましていろいろ実験をやっていく。最初は主として計器等の実験をやっていくつもりでございます。将来は日本に適した練習機その他の飛行機等も研究することになると思いますが、しかしそれはまだ先のことであります。とりあえず計器等、そういう裏備品の実験、こういう趣旨で実験航空隊を作る。それから訓練航空警戒隊こいうものを整備する。これはすでにあるものでございますが、それをさらに整備する。それから操縦学校をさらに拡充する。そういうものがおもなるものでございます。これらに配置する次第でございます。なお御要求がございますならばさらに詳しく政府委員から説明いたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/3
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004・下川儀太郎
○下川委員 ただいまの説明によると、その人員の配置が大体わかりますが、ただこれはあくまでも表面的な、形式的な配置の要素でございまして、いわゆる地上軍が二万名増強された。しかしその増強されるについての基礎別なものが残されてはならぬ。要するに、二万人増強することによって、どういう結果が現われてくるのか、あるいはまた防衛に関連してどれだけの役割を果し得るかというような、基礎的はものが増強に関して必ずあると思います。その基礎的なものはどこから生まれてきたのか、それを承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/4
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005・杉原荒太
○杉原国務大臣 お答え申し上げます。その二万七千名の自衛官の増強の基礎的の考え方といたしましては、要約して申し上げますと、まだ日本の自衛体制が不足しておる。何とかこれをもう少し整備、充実する必要がある。それとともに、ことに地上部隊においては、アメリカ側の地上軍の撤退をなるべく早い時期に可能なようにしたいということが、非常に重要な考慮に相なっておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/5
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006・下川儀太郎
○下川委員 そういう増強に対する基礎的なものというと、これは大橋さんもお尋ねしたと思いますが、いつもそういう御返答しか承わっておらないのです。あえて防衛六カ年計画を追及するわけではございませんけれども、本年度に二万名地上軍が増強される。そうすると、一つの計画的のものがなければならぬ。それが計画なしに、その口暮しの生活のように場当りでふやしていく、こういう考えでは、防衛力の基本的なものが何もなくて、ただいたずらに毎年々々予算をふやしておるにすぎない。だから、ことしも二万名増強する。それによってどれだけの国防力が養われ、どれほど日本が自主的な立場に置かれていくか。そういうものがおのずから裏づけにならなければならない。それがただ単に、地上軍が二万名、あるいは空軍がどのくらい、あるいは海上自衛隊がどのくらい、これは自由党当時に漸増したようなああいう形で、何らの目標なしに、意図なしに増強されているというふうに、われわれには聞えるわけです。ですからこれは大きな問題になると思うのです。ことしの増強計画が六年計画の一環をかすものである。あるいは、二万名増強によって、全体を含めた場合は、六カ年計画の第一年度としての立場にこれが置かれるのかどうか、そういう点がはなはだ明確でないと思う。もちろん六カ年計画は目下研究中であるというお答えをしばしば私聞いておりますが、研究中であるとするならば、今年度増強の勢力を含めたものが、六カ年計画の中の第一歩であるか、こういう点をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/6
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007・杉原荒太
○杉原国務大臣 お答え申し上げます。今、下川委員がおっしゃいましたように、防衛力の設備充実については、一つの目標を持って計画的にやっていく必要があるということ、それがまた他面においては、日本の防衛力の増強それ自体の必要のみならず、アメリカ側の撤退ことに地上軍の撤退を、見通しを立てて、そういうものが実現を見るようにやっていきたい、こう考えておるわけでございます。
〔宮澤委員長退席、森(三)委員長代理着席)
他方六カ年計画の最後の目標については、数字的に今幾ら幾らと申し上げるところまでの研究が進んでおりませんが、大体の基本的な考え方といたしましては、日本側として、陸上自衛隊については、少くとも一朝事ある場合でも、ある期間は持ちこたえ得るようなものを作っていきたい。それから空については、日本で完全に日本の制空権を持つというようなものはなかなかむずかしいだろう。しかし少くとも侵略を受けた場合に、その侵入する航空機のむやみな跳梁は許さない程度のものは持ちたいというような考え方をいたしております。それから海の関係においては、日本の主要港湾、水道の防衛、それかう周辺海域等の海上交通の防衛ということは、少くとも日本側でやり得るような体制を持ちたい、こういう一つの考え方を持っているわけであります。そうしてそれらは日米の相互安全保障体制ということを考えませんと、日本独力ではとうてい無理であろう。さらにこれは私の私見的なものでございますが、地上部隊はアメリカ側に全部撤退をしてもらう。それから空、海について、一体平時において外国の部隊を国内へ置くことがどうかというのが、今後。非常な研究問題である。郷土防衛を考えます場合に、必ずしも平時より国内におってもらわなければならぬということもないじゃないか。その辺のところは非常な研究問題だろうと思うのです。そういう考え方のもとに構想を練っているわけであります。今日に至るまで、数字的に各部隊をどの程度持つかということは、成案を得るに至っていない次第であります。従いまして三十年度におきましては、とりあえず三十年度において少くとも必要と認めた分を計上いたしまして、御審議をお願い申し上げている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/7
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008・下川儀太郎
○下川委員 成案がない、あるいは目下研究中だということは、同僚委員に対する答弁でよく聞いているところでありますが、しかしいやしくも予算が裏づけられており、その予算自体が国民の血税なんだ。その血税の裏づけによってなされる増強計画には、当然目的かなければならぬ。ただ単にその日暮しの生活的な目的でなくして、何年後にはこういう防衛体制を整え得る。日本は自主的な防衛はできない。当然アメリカとの共同防衛の立場に立つ防衛計画であることはわかりますが、それにしても、アメリカとの防衛計画が、日本側はこれだけの防衛計画の負担を負えば、完全に日本の独立的な立場に立っての防衛計画がなされるという、基本的なものが当然出されていなければならぬと私は思うのであります。もちろんあなた方の方で日本の防衛計画を立つに至っても、今日の状態では独立した立場の防衛計画はできない。それはあなたの方が説明されておりますか、そうすると当然にアメリカ側との防衛計画として現われてくると私は思うわけです。ですからたとえば今後二十万あるいは二十五万、三十万と自衛隊の増強がなされるでしょうが、しかしこれは当然そうした人員の増強にしろ、あるいは兵器その他の使用するもりの増強にしろ、アメリカ政府との交渉によってなされるものと思う。アメリカ側がどの程度の防衛を負担し、日本がどの程度の負担をするか、そういう両方の計画の上に立ってのおそらく防側六カ年計画だと私は思うわけです。そうするとやはり単独では防衛計画がなし得ないということが出てくる。そうした場合に当然アメリカ側の意見なり、あるいはアメリカ側の要望なりが必ず私は日本政府に伝えられてくると思う。これは先般の防衛分担金の削減による交渉とかあるいは援助計画その他の交渉の過程において、いろいろとそういうことをアメリカ側は出されたと思う。早く日本は防衛六カ年計画を立てろ、アメリカ側の方はこれだけのものを負担する、これだけの人員を目六から撤退するから君たちの方はこれだけの自衛隊員をふやせ、あるいは艦船もこのくらいにしろ、あるいは航空灘もこのくらいにしろ、そうすればたとえばよそから侵入してきた場合は、これだけの兵力があればお前たちは何日間くらい耐え得るだけの体制が整うのだ、それだけ整えればアメリカ軍はこれに向って防禦の応援にやってくる共同防衛の実際的な立場をとり得るというような具体的な面に触れての折衝も、今日までに私はなされてきたと思う。これは自由党内閣当時から民主党内閣当時へ日本とアメリカとの共同防衛とだ。ですから先般の分担金の折衝の過程においても、おそらく外務大臣あるいは防衛庁長官あるいは政府当局の首脳部に対しては全体的なそういう話し合いは僕はあったと思う。ですからあなたの方が六カ年計画を立つ。その立つ根底をなすものはあなた方であるとともにやはり共同防衛をしようとしておるアメリカそれ自体が大きな発言権を持っている。いわんや、安保条約その他の条約の上にのっとって名前は共同防衛でありますが、いわばアメリカ側に立つと、アメリカを守るという体制のもとにその尖兵としての防衛計画を日本にしいてくるのは当然なんです。また日本側からすればいわゆる日本を守るという立場で、アメリカの大きな防衛の中における一環としての防個計画を作るでしょう。ですから私は当然今日日本が計画中であるいわゆる防衛六カ年計画の中に、ことしはこのくらい、来年はこのくらい、最後的には何万人の自衛隊、自衛軍が必要、あるいは航空機が必要、艦船が必要というような面が、おそらくアメリカの声望の中に私は出ていると思う。ですから今日までの交渉の過程においてアメリカ軍が日本に要請しておる軍隊の断あるいは艦船の数、あるいははまた空軍の数、その要望がどの程度になされておるのか、この点を一つお伺いしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/8
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009・杉原荒太
○杉原国務大臣 お答え申し上げます。日本の自衛隊の増勢につきましてアメリカ側がきわめて大きな関心を持っておるということはその通りであります。そうしてまたこの点につきましては、日本側といたしましても適当な時期が参りますならば、これは私の私見でございますけれども、ある程度日本側の腹がまえといいますか、腹づもりといいますか、そういうものができましたならば、私はやはり率直に話すことが適当だろうというふうに実は考えております。そうしてこの長期の計画を立てるということにつきましては、私はありのままの事実を申し上げますが、分担金交渉の際こういうことでございました。それはこの交渉に当られました重光外務大臣から、先方に対しましてこういうことを申しておられます。それは日本政府はこれから長期の計画を立ててやっていくということを最近きめた。ツー・フォーミユレート・プランということを言っておられます。それを申された前後の関係を申し上げます方がさらにはっきりすると思いますから申し上げますが、それは日米安保条約に基いて、アメリカ側は日本側が自分の自衛についてみずから責任を負うことを期待するということを、御承知の通り書いてありまして、そうしてそれを受けて日本政府としてはその趣旨によって国力に応じて今後も自衛力を漸増していく方針である、そうしてそれを実行していくに当っては、この長期の計画を立ててやっていくということに最近きめた。しかるに一方において日本は現在財政的の困難に直面しており、ことに三十年度という年は、日本の経済上きわめて重大なる時期であるから、分担金の減額を要請する、こういう趣旨で折衝されまして、そうしてアメリカ側もこれを了承いたしまして、最後の妥結を見たような次第でございます。それが重光外務大臣とアメリカ側の交渉の要旨でございまして、それに尽きるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/9
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010・下川儀太郎
○下川委員 そうすると、私が先ほど質問申し上げましたアメリカ側の日本に対する防衛計画のいろいろな要望、たとえば先ほど申し上げたその数とかそういう問題の要望はなかったわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/10
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011・杉原荒太
○杉原国務大臣 これはないのでございます。それは私明白に申し上げますが、そういうのは全然ございませんでした。しかし今後アメリカ側としても日本に対する援助の関係等もございますから、そういう点等から見まして今研究をしておるものと私は承知いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/11
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012・下川儀太郎
○下川委員 長官はただいまアメリカ側は日本が自立的な防衛力を持てといわれておる、しかし日本側としては非常に経済情勢とか国内情勢が悪いので、むしろ防衛分担金の削減というふうな立場でいろいろ交渉を妥結されたということを御報告されたのですが、しかし防衛分担金の折衝に当って妥結された結果を見てみると、それほどに私はアメリカ側が一歩譲歩した、あるいは日本の実情を了解したというふうには考えておらないし、また政府が防衛分担金にいろいろ折衝されたその妥結の結果を見ても、国内事情、今日の情勢というものをそれほどに苦痛に考えておらない妥結の方法であったと私は考えております。私の手元にある資料によりますと、四月十九日の日米共同声明となって表われた、いわゆる防衛分担金に対する完全妥結の声明が出ております。その内容は、一が、飛行場の拡張、ジェット機の国産開始、地上兵力の増強など積極的に努力する。二が、二十九年度補正予算で節約した防衛庁費四十五億円を復活する。三は、米側は日本の分担金を百七十六億円削るが、同時に日本側は防衛庁費八百六十八億円計上する。四が、一千三百二十七億円の総ワクは認めるが、これは三十年度限りのものである、こういうふうな共同声明が出されておるというふうに私は受け取っておるのであります。そうなってくると、防衛分担金の削減というものは、いかにも鳩山内閣の公約を実行した、いわば日本の政治情勢あるいは経済情勢を十分勘案して、分担金は減らされたのだというふうなお考えで、何か得々とした感じを持っておりますが、しかしこれは減されたのではなくして、私に言わせるとむしろアメリカ側に昨年度に比べると百五十三億円の防衛分担金の削減がなったといっておりますが、これは単なる表面だけのことだと思う。それはこのほかに滑走路拡張のための二十八億円、またジェット機生産のための費用などから、実質的には百億程度の削減だと私は見ておる。それとともにいわゆる予算外契約として百五十四億八千万円の国庫債務負担行為が計上される。こうなってくると予算外のそういうものが責任を負わされている。同時にまた向うの方から飛行場の拡充とか、あるいはジェット機の国内生産に対する費用というものを、日本側に当然押しつけてくるのであります。それとともにもう二つは、その約束の中に飛行場の拡張というような大きな問題が出てきておる。この飛行場の拡張というものは、やはり日本の責任において防衛協定の中においてこれをどんどん締めつげていかなければならぬ。そうなるといかにも表面には防衛分担金が削減されたというけれども、実質的にはやはり国内の増強に、いわゆる日本国内におけるアメリカ軍の基地の拡張、あるいはまた防衛力を増強することを政府自身が約束しておる限りにおいては、本年度の増強計画に予算を伴う、あるいはまたこれらの防衛計画の基礎を作っていくというふうに、むしろ防衛分担金を削減することにおいて大きな義務を日本が押しつけられたように私は考えておるのであります。これをどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/12
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013・杉原荒太
○杉原国務大臣 お答え申し上げます。この分担金交渉についてのいろいろの御批判、御観察につきましては、これは私いろいろの御見解がございますから、それについて直接どういうことは申し上げる筋合いでもないと思いますが、ただ私ここで申し上げますことは、ジェット機の国内組み立て生産というものとか、それから飛行場の拡張というような問題は、それぞれその問題として前からずっと行われてきておった次第でありまして、それ自体が分担金交渉の際の交渉対象物になったわけじゃございません。事実はそうでございます。
それから予算外契約国庫債務負担行為ということがよく問題になるようでございますが、これは今下川委員からおっしゃられましたように、なるほどかなり大きな額の、百五十四億八千万円という予算外契約がございます。これはごく大まかにその内訳を見ますと、施設整備費関係が二十五億九千万、約二十六億、これはその内容等からいたしましても、陸海空の各施設の整備費でございまして、設備費の内容等からいたしましても、例年と格別そう違っているわけでございません。ただここで例年に比較いたしまして非常に大きくなっておりますのは、船舶建造費の関係、これが約六十億でございます。これは額からいたしますと相当大きいわけでございます。そのわけはこういうことでございます。この内容は警備艦を四隻、掃海艇三隻というものの分でございますが、その警備艦の方の四隻と申しますのは、実は最初日本側では、日本側自身の調達といたしまして警備艦二隻ということを考えておりました。そうしてあとの二隻の分はアメリカ側の域外調達に期待いたしたい、域外調達によるMSA援助というものを期待いたしておったのでありますが、その後だんだん判明いたしましたことは、アメリカ側で供与ということは期待を持つことができないということがはっきりいたしてきましたので、あとから追加的に二隻が加わりまして、日本側でこれを作る、こういうことに相成りました。それがためにもう一つ非常にふえておりますのは、従来の造船の計画の進み方の実績から見まして、設計その他に非常に時日がかかっている、そういう実績から見まして、本年度におきましては歳出予算に計上する分と国庫債務負担行為の方に回すものとの割合は、ことしの方が非常に大きく国庫債務負担行為の方にかけまして、約四分の三を国庫債務負担行為の方に回しました結果、こういうふうに額が非常に多くなっている次第でございます。それからジェット機の関係は、ことしの新しい計画として予算外契約の五十二億八千万円、これは歳出予算にジェット機関係の方は輸送機も合せて五億計上いたしておりますが、予算外契約の方に五十二億八千万円というものを計上いたしております。これは前々から申しますようにF86を約七十機、T33を約九十七機、そのうちで歳出予算の方で三十年度に約九機を予想しておりますから、国庫債務負担行為のT33は八十八機ということになっております。しかしそれにいたしましてもこれがために非常に予県外契約の方がふえている。もう一つ最後に装備費の予算約十六億ございますが、これは今まで陸上自衛隊等の装備品について、アメリカ側から大分供与を受けておるわけでございますが、こういうものはこれから日本側で、たとえば日本の地勢に合う中型の特車、それから自走砲、そういったものの試作発注をするということのため、それから技研の方で試作、研究をするため寺を含めまして、約十六億というものか予算外契約に計上いたしております。それらを全部合せまして百五十四億八千万円、こういうことに相なっておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/13
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014・下川儀太郎
○下川委員 懇切丁寧な御説明を承わったのでありますが、私の言わんとするところは、いわゆる防衛分担金の削減の妥結をみたときの共同声明の内容が私は問題だと思う。ただいまの説明は、これはあくまでも予算外契約の説明だと思いますが、この防衛分担金の妥結に当って、飛行場の拡張という一項がうたわれておる。この飛行場の拡張、あるいは軍事基地の拡張の問題は、今日の日本の大きな社会問題になっている。きのうあたりはおそくまでこの基地の人々の反対の陳情があった。いわば日本の国土のあらゆる方面において、こういう基地反対闘争が行われている。そしておそらくこの七百数カ所もある軍事基地の周辺には、すでに反米的な世論が高まっておる。その上にまた今度は軍事基地の拡張を飛行場拡張の名においてやるとなると、これは反米的な世論がもっと強く盛り上ってくると思う。これは行政協定による基地の拡張ということであるかもしれないけれども、しかしそれはあくまでも基地の周辺に住む人々、あるいは国民の世論を無視して約束するものではないと思う。それがこの妥結の声明の中に、軍事基地の拡張を日本側が約束されておる。これは私は非常に重大な問題だと思う。その候補地として上っておるところが小牧、新潟、立川、板付等々である。そうなってくると、表面は分担金の削減で、何かあなた方の方は公約を果し、国民を喜ばしたようなそういう気分でおられるかもしれないけれども、その払われておる代償は非常に大きい。来年度、再来年度の計画の中に日本が義務づけられ、またなおさねばならぬ立場としてこれが残されておる、それが問題なのです。ジェット機の国内生産をするというが、その生産されたものが、一体どこの飛行場に行き、そしてどの飛行場が拡張されるのか。その拡張に伴って、付近の人々、あるいは住民というものがどういう立場に置かれるのか、そういう社会性を伴った問題が、ジェット機の国産化あるいはジェット機の増強に伴ってこれが生まれてくるのです。そういうことを考慮に入れて、いわゆる政府当局は考えなければならぬと思う。それを、国民を無視する、あるいは国土を無視するような、ただ単に安保条約、行政協定等々にからんでのこうした分担金の妥結を見たということは、私は非常な失敗だと思うのです。この問題を重光さんに聞こうと思って用意したのでありますが、あるいは地上兵力の増強などに積極的に努力するということもまた約束されておる。そうなってくると、今年の陸上二万とともに海上自衛隊あるいは航空自衛隊が増強されておりますが、そういったものもおそらくこの約束に応じての結果だと思う。そして予算的な立場において見ますと、二十九年度七百四十億の防衛庁の予算が今年度は八百六半八億計上されておる、それから今年は一千三百二十七億の総ワクは認めるか、これは三十年度限りのものであるということがうたわれておる。そうしてこの今年の一千三百二十七億のワク、これは三十年度限りのものであるということを向うがうたう限りにおいては、来年度は増強するのだ、防衛費はこのワクよりももっとふやしてもらいたいといったことを、言外に現わしてきておるわけです。ですから、防衛費の舞舞ということは来年度は約束されておる。また自衛隊の飛躍的な発展に努力するというのだから、これは来年度あるいは再来年度にかけての増職が約束されておる。このように一つ一つ予算の面から、また防衛力に関し日本が積極的な努力をするということを約束しておることを考えてみると、防衛分担金は削減されたかわりに、もっと大きなものを日本に背負い込んだ結果になる。これは政府側が防衛六カ年計画を立て、防衛費を増大する、あるいは兵力を増大するという考え方に立つなら、これまた別問題でありますが、しかしそれには国民的な予算が伴う。国民の担税力の問題が出てくる、今年のいわゆる国内の経済情勢あるいは担税能力の実際が来年度どういうふうに変っていくのか、そういうこれからの日本の経済、国民生活の見通し、これを政府は考えなければならぬ。ところがそういうことを無視して、ただ単に防衛分担金の折衝の過程において妥結を見たといっても、来年度、再来年度にいわゆる軍事費予算の増大を約束した結果においての防衛分担金の削減があることを考えると、これは非常なマイナスあるいは国民自身が非常に大きな荷物を背負わされた結果になると思ったのですが、これをどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/14
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015・杉原荒太
○杉原国務大臣 これは自由党内閣時代からの政策と同じだと思うのでありますが、国力に応じて日本の自衛力をある程度まで漸増する。そうしてこれは日本の独立体制を完成していきたいというところに根本の思想、考え方があると思うのであります。そういうところから、御承知の通り、アメリカとの関係におきまして、すでに安保条約においても、表現としては必ずしも条約の本文の規定にはございませんけれども、そのトライアングルの中に日本側が自衛についてみずから漸増的に責任を負っていくということと、アメリカ側も期待し、日本側もこれを了承して、あの規定もできておるわけであります。さらにまた御了承の通り、その後できました日米相互防衛援助協定の中にも向う側の援助とともに日本側では日本の経済的諸条件等の許す範囲内において防衛力の増強ということを約束いたしておる次第でございます。現内閣といたしましても、その方針に基いて防衛力を漸増することを考えておる次第でございますが、しかしそれにいたしましても、いわゆる国力と申します際に、その意味は非常に広いと思いますけれども、その中で特に考えていかなければならぬのは、国民生活にあまり圧迫を加えない、また国民の生活水準の正常な上昇というものをこの防衛力の増強のために阻害されることはないように、その辺のことを十分考えてやっていかなければならぬ、これはむしろ当然そうやっていかなければならぬことだと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/15
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016・下川儀太郎
○下川委員 国民の経済力を考えて増強すると言っておりますが、来年の見通しはいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/16
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017・杉原荒太
○杉原国務大臣 来年度の防衛力をどの程度増強するか、それにどれぐらいり防衛支出が見込まれるかという点につきましてはまだきまっておりませんが、ただこういうことは申し得ると思うのです。それは三十年度における増分について今それに伴う法律案の御書域をお願いしておりますが、幸いにしてこれをお認めいただきました場合を前提にして、三十年度末の現体制を維持するために一体どれぐらいの経費がかかるかということを一応推算いたしてみますと、たしかその維持のための経費、それがざっと推計いたしまして七百四十七億だったかと思います。それに予算外経費の中の百五十四億八千万円から来年度において予算化を必要とする約二十四億を引いた百三十億、合計しますと大体八百七十八億になると思います。来年度どういうふうにいたしますかは、これは将来分担金との関係もございます。それで来年度一体どれぐらい増強するかというような点につきまして、なおよく研究した上でやっていきたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/17
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018・下川儀太郎
○下川委員 そうすると、来年度のいわゆる防衛費あるいはまた防衛庁の予算等は、本年度のものを基礎として考えておる、こういうわけなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/18
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019・杉原荒太
○杉原国務大臣 今申し上げましたのは、今推計し得るものを申し上げた次第でございまして、つまり三十年度の増勢計画が認められたといたしまして、従来の分と合せて大体現体制維持のための経費でございます。これを大体推計いたしますと、先ほど申し上げたような数字になる、それに今から予見されないものが予算外契約のうちでこれこれになる、こういうことを申し上げた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/19
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020・下川儀太郎
○下川委員 それとともに、一番今後の防衛計画に重大な関連があるのは、国際情勢だと思うのです。国内の経済情勢も十分考えなければなりませんけれども、しかし国際情勢の姿というものが果して防衛計画を必要とするか、あるいは必要としないかという重大なポイントにもなると思うのです。この際防衛計画に関連して今日の国際情勢を一つ御説明願いたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/20
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021・杉原荒太
○杉原国務大臣 国際情勢の今後の推移いかんは、日本の防衛関係のみならず経済全般の関係からいたしましても、非常に大きな影響を持つものであることは申すまでもございません。そうして今目前に迫っておりますジュネーヴの四巨頭会談は、そういう意味合いからいたしまして非常に注目すべきことだと見ております。ただ今度の巨頭会談においてその結果どうなるということの予想は、なかなかむずかしいのでありますが、まずあそこで討議される議題というものが一体どういうものであろうか。今までのいろいろの報道を見ますと、欧州方面のことで、どうもアジア関係の方は議題に乗るのか乗らぬのかその辺のところがはっきりしない、その点なども私非常に重要な点だと見ておるのであります。さらにもう一つ、防衛の関係から見まして非常に大事だと思っておりますのは、欧州方面に対する政治的のいろいろの問題、いわゆる全欧州のロカルノ機構の問題とか、ドイツの統一問題等に関連してかりに何らか方向づけるものが出てきたと仮定いたしましても、一体軍縮というものがどうなるか、直接防衛に関連いたしまして軍縮の問題——軍縮の問題でも、いわゆる新兵器、原爆、水爆の問題とそれ以外のものとの関係、その辺が一体どうなるか、それなどが非常に大きな関係を持ってくるものだと思います。そういう点今後よく注意して見ていく必要があるだろうと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/21
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022・下川儀太郎
○下川委員 きのうも予算委員会で鳩山総理は、戦争の危機は一応失われたということを言っておられる。その総理の言葉をそのままわれわれが受け入れてみると、戦争の危機が失われた、しかもこの戦争の危機というものがなぜ失われたかということは、原爆の醜い、いわゆる人類の破滅という大きな根拠が非常な心棒になっておると思うのですが、こういう問題を日本の防衛計画と関連してどのようにお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/22
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023・杉原荒太
○杉原国務大臣 今の国際情勢全般を見まして、確かに緩和に向っての努力のあることは大きな一つの事実だと用います。一般の政治的の動きとしてそういうものがあるのは事実だと思いますが、それに伴う具体的な軍縮というものはどうもまだ歩調が合っていないような感じがしておるのであります。これが各国ともほんとうに真剣になってそこまで具体的に大きな動きが出ているかというと、今日戦争の危機がだんだん遠のいたといいますけれども、軍備の方面からいたしますと、これを具体的に緩和するという大きな動きとしてまだ国際的には出てきていないように私は見ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/23
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024・飛鳥田一雄
○飛鳥田委員 ちょっと関連して。今国際情勢の話が出ましたので、一つこの際アジアにおける各国の軍備の模様、さらにその兵力の配置の実情、こういうような点について防衛庁で知っているだけのことを一つお話をいただきたい。なぜこんなことを聞くか、やぼのようですが、やはり防衛六カ年計画をみなが知りたい、こういうことと同じに、彼を知りおのれを知るということが重要ですから、とにかく日本を取り巻いているアジア諸国の軍備の状況、兵力配置の状況、こういうものを知ることは、二万名増強が妥当なりやいなやということについても重要な資料になるでしょうから、この点一つできる限り詳細にお話をいただきたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/24
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025・杉原荒太
○杉原国務大臣 御質問の御趣旨はごもっともでございますが、実は御承知の通り、防衛庁は発足早々まだきわめて日も浅いことでありまして、それから海外等にも十分な調査網を持っておりませんために、実は大へん申しわけないことでございますけれども、防衛庁といたしましても、アジア方面はどういうふうな兵力で、そうして配置はどうなっておるかという点については、特に新聞、雑誌、公刊物、ラジオ等によって一般に報道せられる以上の資料というものを、実は持ち合せないのでございます。従いまして、ここで特に私が、その点について申し上げることの意義というものが非常に薄くなると思いますが、私らの方でもいろいろの公刊された刊行物、その他今申し上げましたようなものに基いての資料は随時整えておりますので、もしそれでお差しつかえなければあるいは後ほど資料としてでも差し上げたらいかがであろうか、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/25
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026・飛鳥田一雄
○飛鳥田委員 それではその程度でもけっこうですから、資料として各委員に御配付をいただきたい、こう思います。しかし、よけいなことを言うようですけれども、少くとも十万、十五万こいうような軍隊を持ちながら、目隠しをして刀を差しているようなことは——大へん申しわけないことでございますか、というお話でありますが、大へん申しわけないことを通り越していると思うのです。私は専門家ではありませんが、少くとも一つの軍備を持つという以上、その軍備の対象とするところ、あるいは相手方を知るということは、これは重要な防備の一環だと思うのです。これなしに軍備するなどということは、むしろ私は国民に対して不忠実だと思うのですよ。はなはだ言い方が強いようですけれども。まあ孫氏だの呉氏だのというものを今さらひっぱり出すまでもないが、そういう兵法はいまだに生きているはずなんです。何も私は諜報機関を一つこしらえてやれというわけではありませんが、いろいろな点で、そういう点についての御努力を当然なすっていただかなければいけないのじゃないか。まあ私たちは自衛隊というものの存在について同意をいたしておりませんが、少くともお持ちになる主張をなさるあなた方の立場からも、このことはなさるべきが当然だと私は思うのです。そしてまた相手方をよく知るということが、場合によれば、戦争を絶滅する、戦争をしない原因にもなると思います。そういうような点で、至急その資料を配付していただいて、水曜日の討論までに間に合わせていただくようにお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/26
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027・森三樹二
○森(三)委員長代理 この際関連質問を受田君に許します。受田君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/27
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028・受田新吉
○受田委員 ただいまの下川、飛鳥田同君の質問に関連して、一つだけお尋ねしたい点があります。日本の四つの局に自衛隊がそれぞれ管区配置されたのでありますが、北部方面の総監部が札幌にあり、また西部方面の総監部が熊本に置かれている。これらの軍の中心部隊が北と西とにわかれてあるその地理的配置はいかなる理由からこういうふうになされたか。従来日本軍が師団配置をしていた当時を考えてみますと、元二十個師団当時には、北海道はわずかに一個師団旭川に配置されていたにすぎなかった。今日北海道に重点的に自衛隊の配置がされてあるという理由及び今度それを熊本へ置く理由は那辺に存するかという点について、大臣の御答弁をいただきたいものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/28
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029・杉原荒太
○杉原国務大臣 今日まで管区隊は六個ございまして、そのうちの二管区隊が北海道、それから本州、四国で三つ、九州に一管区あるわけでございます。そうして、今回御審議をお願いしております混成団について、これの一個師が北海道と九州に一つずつということを予定いたしておる次第でございます。これの配置のことは日本の地形、交通等のことを考えまして、しておるわけでございます。北海道にいたしましても、九州にいたしましても、交通等の関係のみからかりに考えてみましても、この方面に一つの総合的な部隊の相当なものを配置するということは必要なことだ、こう考えている次帯でございます。
〔森(三)委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/29
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030・受田新吉
○受田委員 地形、交通の関係、特に交通において北海道と九州が非常に重要であるという理由ですが、北海道は交通上いかなる好条件があるのでありましょうか。北海道は交通が非常に不例な地域であって、従来その点において、軍の配置についてはあまり重点が置かれなかったわけです。この点地形、交通という二つの理由で北海道に北部総監部が置かれ、熊本に西部総監部が置かれたというような理由ではどうも納得できないのであります。少くとも莫大な国費を使ってかかる大部隊を配置するにおいては相当なる根拠がなければこれはいけないはずであります。熊本と札幌にその中心を置かれているという理由を、地形、交通という簡単なばく然としたことでなく、もっと本質的に御答弁いただきたいと思います。これは予算の問題にも関係するし、また今飛鳥田君が質問された各国の軍の配置状況というようなものにも関係する問題と思いますので、もう少しうがった実情を御答弁いただいたらと思います。これは国民関心の的であるので、地形、交通ということにつきましてもっと掘り下げて、他の地域と比べて地形、交通上この二つの方面にどうして重点を置かれたかということを、もう少し他と比較検討の上で御答弁いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/30
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031・杉原荒太
○杉原国務大臣 防衛上の観点からいたしまして、日本の国土全体が一体として重要な——重要というよりも、むしろそれ自体が生命的な重要性を持っておることは申すまでもございません。そうして私先ほど地形交通等と申し上げましたが、一つ交通の関係から見ましても、自衛隊は申すまでもなく侵略を受けた場合にこれを防衛するというのが任務として与えられておるわけでございますから、その任務を果す上からいたしまして、各地に配置しております所在の部隊というものはそれ単独でその任務を果すのに非常に困難を感ずる場合もございましょう。そういう場合には他の地区から移動してそこに集中するというようなことも考えなくちゃならぬのでございましょう。場合によっては中間において交通破壊というようなことなども考えなくちゃならぬと思います。そういった点から見ましても、北海道、九州というところは平時から相当の総合部隊というものを配置する必要がある、こう考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/31
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032・下川儀太郎
○下川委員 先ほどからの問答を聞いていると、ただ地形上の関係とか、はなはだあいまいもことした答弁でございます。これをもっと率直に長官は言った方がいいと私は思う。いわゆる自衛隊の配置あるいはまた今後の防衛計画というものは当然目標がなければならぬ。今日の場合は米ソの共同防衛の形においての防衛の増強でございますが、これは当然アメリカでないことははっきりしております。そうなるといわゆる侵略国、あるいはまた間接侵略に備えるための防衛計画であるとするならば、当然これはアメリカでなくて、その逆の立場にあるソ連あるいは中国というものが目標として浮かび上ってくる。だから地形上ここへ置くとか、いろいろなそういう答弁でなくして、むしろはっきりとアメリカとともに、ソ連、中国に備えるために防衛計画を立てるのだ。従ってまた自衛隊の配置あるいは艦船の配置あるいはまた航空の配置というものは、それに伴ってやっているんだというふうに、率直に長官はお認になって御説明なさった方がいいと思います。それはいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/32
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033・杉原荒太
○杉原国務大臣 御意見ではございますが、ある国を一つの仮想敵国と見て、そうしてその特定国はこうだというふうには、やはり私申し上げかねるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/33
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034・下川儀太郎
○下川委員 今日の自衛隊の教育あるいは訓練について、昨日江崎君が違った角度で質問されておりましたが、この自衛隊の教育訓練をいろいろな資料について拝見してみますと、いわゆる反共教育をやっておられる。いわば共産主義に対する戦いの教育をしておるように聞いております。そうなると、自衛隊の方向というものはおのずからその教育の方向が中国、ソ連に向けられておるということが、もう明らかになっておる。自衛隊員は純真無垢な青年たちだ。その青年たちの指導を公平な立場で、いわゆる訓練のためとか、あるいは社会人としての素養とか、そういう立場の教育ならばいい、しかし日本を守るんだ、守るためには仮想敵国がある、その仮想敵国は共産主義国なんだ、共産主義即大国であるソ連、中国というふうな、そういう観点に飛躍してくる。そうなると、自衛隊の教育は即防衛庁のイデオロギーである。防衛庁のイデオロギーはこれは鳩山内閣のイデオロギーになってくる。そういう形でものを考えてくると、今後のいわゆる防衛六カ年計画というものは、中ソに対する防衛計画ということが明らかになってくる。もしも自衛隊が民主的な教育をやるというならば、これは当然アメリカに対する批判もなさなければならぬ。アメリカ自身の今日の占領政策的ないわゆる駐留軍の行動、あるいは基地問題、あるいはまたアメリカ側の貿易に対する干渉、そういうことを考えると、これは自衛隊それ自身がもし公平に民主主義的な教育が旅されるとするならば、これはアメリカの批判も当然なさなければならぬ。アメリカの批判もする、あるいけ中ソの批判もするという公平な立場に立っての社会人としての養成ならわかります。ところがいわゆる偏向教育を自衛隊自身がやっておる。その目的はやはりソ連、中共に防衛の計画が向けられておるということは明らかじゃございませんか。これはいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/34
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035・杉原荒太
○杉原国務大臣 自衛隊の教育につきましてはあくまでも任務第一主義でございまして、自衛隊の任務というものは、国会で御決定になっております法律に基いてちゃんと明白になっておることでございます。そうしてまたそれには、御承知の通り、日本の平和と独立を守るということが使命として明記されておるのでございまして、この使命その任務に徹するということが自衛隊の教育の根本をなしておる次第でございます。そしてその際日本はあくまでも民主主義を守るということが、憲法からいたしましても根本をなしておる次第でございますから、そういう意味において教育しておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/35
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036・下川儀太郎
○下川委員 そんな観念的な、抽象的な答弁ではこれははっきりしないのであります。やはり自衛隊の教育方針が、もう民主主義でなくして、いわゆる偏向的に中ソに向けられておる。しかもそれはアメリカとの共同防衛の立場に立っての自衛隊の活動等が指示づけられておるということは、自衛隊の人々の声を聞いてもはっきりしておる。これはおそらく長官も否定できないと思う。単に自衛隊の教育面だけではない、教育を施す指導者それ自体の考え方、いわば政府の考え方による防衛六カ年計画というものが、その目標を中国、ソ連に向けられておる、そういうふうに私は考える。そうすると恒山内閣は現実的に日ソ問題の解決を非常に急いでおられる、そのさ中にあって、一方においてはそうした中ソを仮想敵国として教育訓練をする、これは私は非常に矛盾していると思う。ですから、おそらく防衛六カ年計画にしても中ソを仮想敵国としてなされた防衛計画であるとともに、いわゆる教育方針もやはりそれにのっとってできたと私は思う。この点はどのようにお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/36
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037・杉原荒太
○杉原国務大臣 今中ソとの国交調整ということをやりながら、防衛の長期計画をどうやっているか、こういう点に関してのお話でございましたが、私はこう考えます。あくまでも世界全体の平和維持ということを目標として考えておる。ところがこれを世界の現実の情勢というものと照らし合せて、それに即して考えますときに、国防についての備えは備えとして、これはゆるがせにしないということはやはり一つの重要なことだと思います。そしてそれとともに、それじゃ軍事一点張りでいいかというと、そうじゃない。そりじゃなく外交方面においてはできるだけ調整の道をはかっていく、こういうことだと思います。そうして今現実に世界の諸国でいろいろ平和の声もあります。また現実にそういう動きもございますけれども、まだ世界の各国でも軍備の方面をおろそかにしている国はないと私は思うのでありまして、先ほど申し上げた点につきましては、私は政府の方針は何ら矛盾していないものと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/37
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038・下川儀太郎
○下川委員 しかし当然これは、防衛計画をするとか、あるいはまた自衛隊の増強をする場合においては、防衛の目標がなければならぬ。私はその目標を聞いているのです。何を目標に作るのだ、一体どこが侵略してぐる予想があるか、それを私はお聞きしたいのです。むしろ私はそれを率直に大臣が言われた方がいいと思う。これは明らかなるいわゆる事実として方々に伝えられておる、自衛隊の教育内容も伝えられておる、上からの命令によってそういうことをなされておるということも伝えられておるし、現実的にまた味わっているかつての自衛隊員もあるわけです。それを当然これから拡張されあるいは増強される自衛隊は、その線に沿って、いわば反共戦士としての訓練を受けるのだから、これは明らかに中ソを目標としていることは事実なんです。だからいわゆる中ソを目標としておるならば、ソ連が侵略するのかあるいは中国が侵略するのか、そういうおそれがあるのか、それが出てこなければならない。だからおそらくそういうおそれがあるから、あなた方はいわゆる防衛六カ年計画を立て、アメリカとの共同防衛の線に沿っていろいろと今日までやってきたと思う。またこれからもやると思う。そうなるとアメリカの対立国であるソ連、これが目標であるということがはっきりしてくる。ですからそれを明確に私は言った方がいいと思う。だから地形的な問題とかいうことでなく、もっと根本的な防衛に対する目標をこの際はっきりしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/38
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039・飛鳥田一雄
○飛鳥田委員 関連して。同じことですが、およそ軍隊なり軍備なりというもので、仮想敵という言葉が悪ければ、戦闘の対象というものを考慮しない軍隊、そういうものがあり得るかどうか。これは大臣でなく、一つここに御列席の政府委員の中にも相当の戦術家がいらっしゃるでしょうから、お示しいただきたいと思うのです。私たちしろうとでよくわからぬですが、いろいろな軍事的な本を読みましても、対象を持たない軍隊というものがあったという例を知らないのです。全世界を相手にして戦うとおっしゃるならばそれでもけっこうです。一つ軍事専門家としての立場から、この国会におけるかけ引きの多い答弁でなく、お答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/39
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040・杉原荒太
○杉原国務大臣 結局いわゆる仮想敵国というものをどう見ておるかということの問題でございますが、この点につきましては、今日までたびたび申し上げ、先ほどからも申し上げておる通りのところで一つ御了承を願いたいと出思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/40
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041・増原恵吉
○増原政府委員 この問題は、従来たびたび長官から申し上げました通りでございまして、私どもは法律に示されました任務、すなわちわが国を防衛するという建前において部隊編成なり、装備なり、訓練をしております。特にどこの国を敵としてという考え方をとる必要は必ずしもないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/41
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042・下川儀太郎
○下川委員 どうも自衛隊の増強といい、あるいは今後の防衛計画といい、これは当然目標がなければならぬけれども、目標が何にもない。どこかから侵略してくる、あるいは間接侵略に備えるといっても、だれが一体侵略するのか、だれが間接侵略をするのか、そういうことを考えてくると、当然その実態が出てくるはずなんです。それを何にもはっきりしてくれない。これでは防衛の意義がないと私は思う。基礎的なものが全然ないと思う。そんな目標もないようなものを作る必要もない。そんなものに国民の血税を支払う必要もないと私は思う。(「その通り」)将来こうしたらば日本が非常に安全になる、あるいは国民生活が豊かになる、そうならば、初めてわれわれは血税が支払える。ところが目標が何にもない。ただ見えざる敵におびえて、何だかわからないあやふやのうちにだんだん軍隊だけをふやしていく。(「幽霊た」と呼ぶ者あり)幽霊の軍隊におびえるような、そういう自衛隊とか、防衛計画というものは、これは意味をなさない。いかにこれはお盆とはいえ、あまりにもどうもばかばかしい話だ。(笑声)
まあたくさん質問がございますが、保留しておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/42
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043・宮澤胤勇
○宮澤委員長 これは諸君の大きな常蔵で判断していただくことにして、本月はこれにて散会いたします。
午前十一時五十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04119550715/43
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