1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年七月二十日(水曜日)
午前十一時二十五分開議
出席委員
委員長 宮澤 胤勇君
理事 高橋 禎一君 理事 辻 政信君
理事 床次 徳二君 理事 江崎 真澄君
理事 高橋 等君 理事 森 三樹二君
大村 清一君 長井 源君
林 唯義君 保科善四郎君
眞崎 勝次君 松岡 松平君
粟山 博君 山本 正一君
大坪 保雄君 小金 義照君
田中 正巳君 田村 元君
福井 順一君 船田 中君
茜ケ久保重光君 飛鳥田一雄君
石橋 政嗣君 下川儀太郎君
渡辺 惣蔵君 鈴木 義男君
田原 春次君 中村 高一君
矢尾喜三郎君
出席国務大臣
内閣総理大臣 鳩山 一郎君
国 務 大 臣 杉原 荒太君
出席政府委員
法制局長官 林 修三君
防衛政務次官 田中 久雄君
防衛庁次長 増原 恵吉君
委員外の出席者
専 門 員 安倍 三郎君
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七月二十日
委員濱野清吾君、大橋武夫君及び受田新吉君辞
任につき、その補欠として松岡松平君、福井順
一君及び田原春次君が議長の指名で委員に選任
された。
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七月二十日
国務大臣の私企業等への関与の制限に関する法
律案(参議院提出、参法第二号)
同月十五日
長野県上田市の地域給引上げの請願(小山亮君
紹介)(第四一四四号)
青野原演習地の米国空軍使用反対に関する請願
(田中武夫君紹介)(第四一五一号)
同月十九日
長野県上田市の地域給引上げの請願(高橋禎一
君紹介)(第四二六一号)
同(辻政信君紹介)(第四二六二号)
同(長井源君紹介)(第四二六三号)
平和憲法擁護に関する請願(八木昇君紹介)(
第四二九四号)
長野県上田市の地域給引上げの請願(中井徳次
郎君紹介)(第四二九五号)
旧軍人関係者の恩給不均衡是正に関する請願(
池田清志君紹介)(第四三一〇号)
長野県上田市の地域給引上げの請願外四件(井
出一太郎君紹介)(第四三一一号)
養護教諭の恩給不合理是正に関する請願(草野
一郎平君紹介)(第四三三五号)
町村合併に伴う勤務地手当改訂に関する請願(
石橋政嗣君紹介)(第四三三六号)
青野原演習地の米国空軍使用反対に関する請願
(渡海元三郎君紹介)(第四三四六号)
船岡旧第一海軍火薬廠復活に関する請願外九件
(保科善四郎君紹介)(第四三六一号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出第
八一号)
防衛庁設置法の一部を改正する法律案(内閣提
出第八二号)
防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案(内
閣提出第八三号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/0
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001・宮澤胤勇
○宮澤委員長 これより会議を開きます。
自衛隊法の一部を改正する法律案、防衛庁設置法の一部を改正する法律案、及び防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案を一括議題とし、質疑を継続いたします。江崎真澄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/1
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002・江崎真澄
○江崎委員 ただいま審議に乗っておりまする防衛三法の各質問を通じましてわれわれが承知いたしました点は、かつて鳩山総理が自衛隊に対する抱負、そうしてまた在野時代に、自衛隊はかくすべきであると考えておられました諸点につきましては、残念ながら一つとしてこれが実現いたさなかったという一言に尽きると思うのでございます。たとえて申しますならば、在野当時きわめて激しく吉田内閣を追及せられました自衛隊違憲論のごときは、現実政治の困難さに突き当るや、挫折してしまったのでございます。また先生が選挙中、その宣伝の一つとして唱えてこられました長期防衛計画、すなわち防衛六カ年計画なるものの実体は、この委員会の審議を通じまして、すでに組閣以来数カ月を経過するにもかかわらず、示すことができなかったのであります。この六カ年計画を示すことができなかった点につきましては、日米安全保障条約に縛られるという政治的な困難に突き当られたものか、あるいはかって非難攻撃をせられました秘密政治を鳩山内閣も同様についに身におつけになったのでありますか、それはいずれにいたしましても、防衛六カ年計画なるもののかけ声が非常に大きかっただけに、私どもはきわめて遺憾に存ずるところであります。そこで今日の鳩山内閣の自衛隊そのものに対する方針をながめてみますのに、ことごとくそれは吉田内閣当時の踏襲であるという印象を受けざるを得ないのでありますが、一体鳩山さんは今日かつての吉田内閣当時の自衛隊そのものの延長として了解をしておられるのであるかどうか。これはわれわれの印象はその延長、踏襲であるというふうにしか考えられません。あなたの今日まで叫ばれたところの自衛隊の改革も革新も、また抱負も、この防衛三法審議をめぐりましてはついに何ら実現をしなかったと見るべきであります。これはとりもなおさず、あなたが在野当時いろいろ自衛隊問題を通じて議論をせられましたことは、単なる無責任なる評論家の言であって、政治家としての言ではなかったということにも相なると思うのであります。
この際私は鳩山総理に率直簡明に承りたいのでありますが、もし鳩山内閣にして、この防衛三法採決を前にして、自衛隊等に対する新しい抱負、構想また鳩山内閣はこれをあえてしたのだという特徴があれば、この際承わっておきたいのでございます。それとも、そういう特徴は思ったけれども、全然これは実現をしなかった。残念ながら言出内閣当時の行き方というものが正しかったのであって、この点に屈服せざるを得なかった、これを言葉をやわらかくして申しますならば、踏襲せざるを得なかったという結論だとわれわれは解釈しておるのでありますが、この点についてお答えを賜わりたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/2
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003・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 自衛隊の指導精神は……。(江崎委員「そんなことは聞いておらぬのです」と呼ぶ)そこから言わないと私の考え方がわからないと思いますので、申すのでありますが、自衛隊の目的、これは指導精神から考えていただきたいと思うのであります。これは簡単にいえば、民主主義の日本を守るというのが自衛隊の指導精神であり、目的であると思っております。言いかえてみれば、攻撃的脅威を与えるような防衛力は持ち得ないというように言えると思います。吉田内閣もその関係並びに防衛計画について、防衛力の整備につきましては一定の計画のもとに国力に応じて自衛力の漸増を行い、逐次米駐留軍、特に地上軍の撤退を可能ならしめるようにすることを適当と考えまして、これがためには経済力との関係上、経済六カ年計画に見合った防衛計画を樹立することがよいと考えております。種々資料の収集、研究を重ねてきたのでありますが、各種の困難もありまして、実のところ今日に至るまで責任を持って申し上げるまでの成案を得るに至っていないのであります。この点御了承を賜わりたいと考えます。自由党内閣時代よりの研究はもとより重要な資料として私どもにおいても研究を重ねております。成案を得ましたならば適宜発表する所存でございます。今後の自衛隊に対しての抱負という二とを申し上げれば、民主主義日本を守る実力部隊として健全なる育成発展をさせたいと思うのであります。以上をもって江崎君の御質問に答えることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/3
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004・江崎真澄
○江崎委員 今の御答弁はきわめて慎重を期されたのか、原稿をお読みになってもらう程度のものであります。私が今お尋ねいたしました点は、今の総理の御答弁にもありましたように、六カ年計画はしきりにはなやかにお打ち出しになったけれども、現実の困難は日米安全保障条約に縛られたり、あるいはその他のいろいろな問題に縛られて実現を見なかった、これが第一点。
それから自衛隊違憲論、言葉を激しくして総理がかって在野当時追及せられた、これもやはり自衛隊そのものは合憲である、憲法の線に合っているものであるということになってしまった。今抱負としておっしゃった民主主義を守るための自衛の軍隊としての方向を律していきたい、これは吉田内閣当時からもその通りであります。だから鳩山内閣としてこの自衛隊そのものについての特徴、抱負の実現はこの法案の上には残念ながら一つも現われておらない、吉田内閣そのものの踏襲である、こういうようにわれわれは解するのでありますが、今日まで鳩山総理は、この自衛隊そのものの性格、そのものの動きということについてやはり吉田内閣当時の歩み方またはあり方というものが正しかったというふうに御認識になっておるものと思います。この点さように解釈してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/4
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005・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 先刻の答弁によって御了解をしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/5
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006・江崎真澄
○江崎委員 きょうは時間にも切りがありますので、あまりくどく追及することはやめまして、また国防会議その他の場面でいろいろこういった議論についてもお話を進めたいと思います。
陸上自衛隊は十三万人からいよいよ十五万人になり、防衛庁の総人員は十六万四千五百三十八人から一挙に十九万五千八百十人に膨張することに相なりました。これは防衛分担金削減というあの日米交渉をめぐって、なるほど分担金は削減されたけれども、減額の分だけは自衛隊の増強という形になって押しつけられたという魔術によるものでありますが、それはともかくとしまして、自衛軍だけでも十七万九千七百六十九人にもなることになるのでございます。今日自衛隊の隊員は鳩山内閣ができれば、今までのあなたの宣伝によりまして、言うところの日陰の軍隊から堂々たる国軍の姿になることができるという大きな希望を持っておったわけでありますが、今日までの法案の審議は、ただいま私が申し上げましたように、残念ながら在野当時の意見というものは一つも現実政治の上には現われずに、無残にもこの隊員の希望は踏みにじられてしまったのでございます。この責任は在野当時の意見がはなやかであればあっただけに、総理において責任をとらるべきは当然であると思うのであります。しかしあえて私はこれを深く追及しようとは思いませんが、総理はこの自衛隊をいかに指導なされるのでありますか。そうしてまたこの自衛隊なるものの地位をいかに遇せられるお気持を持っておられるのでありましょうか。言うところの六カ年計画なるものは成案を得ればすみやかにわれわれにもお諮りになるというでありますが、現在このままの自衛隊の姿で、吉田内閣当時からずっと続いてきたその上に六カ年計画を乗せていかれるつもりでありますか。先ほど指導精神についてもお話がございましたが、この点いま少しく詳細にはっきりと承わりたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/6
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007・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 先刻申し述べましたように、自衛隊というもののあり方について、私の希望を申し述べたつもりであります。自衛隊が日本の自衛のために働く上において自衛のための軍隊と言っても差しつかえないという解釈になってきたのでありますから、日陰者というような形からは自衛隊はもうすでに脱却したものと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/7
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008・江崎真澄
○江崎委員 防衛庁と自衛隊の現在の姿というもの——すでに憲法調査会なるものも設けて当委員会にかかることになっておりますが、現在の自衛隊の姿を国軍というような新たな方向に法律改正をして持っていこうとせられる御抱負——これはすみやかにそういうような改正の御意図は一体お持ちですか、お持ちでございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/8
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009・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 現在解釈法としては第九条の自衛隊というものは、確かに日本の国を守る軍隊だと思うのでありますが、疑いがないとも言えませんから、とにかくこれは明瞭にして日本の軍隊であるということに疑いのないようなものにしたいとは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/9
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010・江崎真澄
○江崎委員 現在のようなあいまいな形でなしに、どうぞそういう形において一つ総理の抱負というものをもっとはっきり打ち出されることが当然だというふうにわれわれは思います。それは今までの総理の言動から当然だというふうにわれわれは存じます。なおただいまも申し上げましたように、防衛庁の機構そのものも非常に膨大なものになったわけでございます。私はすでに杉原長官、増原次長等にも強く要望をいたしたのでありますが、一応隊員は、自衛隊法に基いて、国のために身命をなげうつという宣誓をしておるのでありますが、普通のサラリーマンとちっとも変らないじゃないか、昔の軍隊とは全然精神の持ち方において違っておるという世の中の批判はきびしいのであります。これはアメリカにおきましても、軍人精神の確立ということには非常に意を用いておることは、これはもう申し上げるまでもございません。特にアメリカにおける軍人精神の根本となっておるものは、神をおそれるという気持、すなわち正義を愛するという気持、これが根本になっておるというふうにわれわれは聞いておるのでありますが、どうぞ一つ総理におかれてはこの自衛隊が漸増によって数を増してくれば増してくるほど、特に精神方面の指導ということに留意せられまして、防衛庁長官とともに遺憾なきを期せらたいということを希望申し上げておきたいのであります。
なお続いて御質問申し上げたいのは、六カ年計画は成案を得ずということで、ここにお出しにならなかったのでありますが、杉原長官の答弁によりまして大体六カ年計画というものができた、またこれが完遂せられた暁には、アメリカ軍の地上軍だけは、とりあえず撤退するであろうという期待がかけられておる点がはっきりいたしたのであります。またアメリカの世論には日本の対米悪感情をやわらげるためには、やはり地上軍だけは一時も早く引き揚げなければならぬという意向があるのでございます。このときに陸上軍は日本から撤退する、従って、六年先には大体撤退する、これが期待せられるというふうに私どもは承わったのでありますが、それよりも早い機会にアメリカの世論のおもむくところ日本にも要請があったりして、六年より早い機会に撤退するということは考えられないかどうか。またそういう要求があった場合には、総理はこの要求を受け入れて二年でも三年でも、すみやかなる機会に地上軍は撤退すべしとする考え方にお立ちになっておられますかどうか。この点を承わりたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/10
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011・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 ただいま江崎君の御希望的御質問がありましたように、六年を経ればもとより地上部隊は撤退をするものと確信をしておりますが、それより早い機会において、できるだけ早い機会において、やはりアメリカの地上部隊は撤退するものと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/11
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012・江崎真澄
○江崎委員 六年先に撤退することは確実ですが、それより早い機会に向うも撤退したいという要求があれば、総理はそれを受け入れて、大いに自衛隊の充実を急いで撤退をはかる、こういうのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/12
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013・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/13
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014・江崎真澄
○江崎委員 わかりました。それから九州方面の重要性にかんがみて西部方面隊を作るというふうに述べられたこと、これは地理的重要性であるとかいろいろな場合、あらゆる場合を考慮してというふうに杉原長官は御答弁になっておられました。今ここで私はそのなまず問答を繰り返そうとは思いませんが、九州方面の重要性にかんがみるということは、たとえば北海道から米軍が、全体撤退のまず第一前提として引き揚げましたですね。だから九州方面は日本本土から米軍が引き上げるという北海道に続く撤退の地点というふうに解釈をしてよろしゅうございますかどうか、この点は防衛庁長官から承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/14
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015・杉原荒太
○杉原国務大臣 お答え申し上げます。はっきりと九州方面がすぐそうだということは、まだ断言を申し上げるだけの基礎を持っておりません。しかしやはり九州方面からの撤退ということも考慮に入れておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/15
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016・江崎真澄
○江崎委員 それではもう一点だけ簡単に御質問いたしますが、われわれは日米安全保障条約によりまして北鮮、ソ連というものが侵略をかまえました場合には、当然アメリカが動いてくれるものと信じておるわけでございます。しかし今日南鮮、いわゆる大韓国が、日本に対して非常に刺激的な態度に出ておることはいなむべくもありません。すでに五月の末から京城を中心として反日運動というものが五万ないし三十万の人がかり出されて繰り返し行われておるわけでございます。彼らは韓国を道心堅固な反共の聖徒であると自認をし、日本はソ連に使いを送っておりますがゆえに、あえてこの鳩山内閣になってからはソ連、中共、北鮮などと手を握ろうとしておって、日本は桃色に染まったというような感じを持っておることを私どもは聞くのでございます。また竹島の問題とか李ラインの問題、特に昨年以来拿捕抑留せられた漁船の乗組員は二百七十六名にも上っております。しかも一方的な裁判によって判決をせられ処罰に付せられた者、しかもこの刑を終えた者が百名もあるというふうに聞いておるのであります。これはわれわれ日本としても十分これに留意をせられてしかるべきものだと思っておるのでありますが、鳩山内閣は残念ながらこれに対して目をおおうておられるというふうにしか思えません。これは明らかに政治の貧困であります。独立国としての大きな屈辱であります。しかしこういった問題をいきなり武力に訴えるというようなことは、われわれは想像するだにいかにもこれは悲劇的なことであり、厳につつしまなければならぬと思うのでございますが、韓国がもし日本に事をかまえました場合に、アメリカはソ連や北鮮、中共というものが日本に事をかまえた場合とは違って、外交交渉にゆだねろとして、何らこれに手を染めないであろうということは容易に想像せられるのでございます。この問題に対して総理はお心がまえとして、自衛隊の士気にも影響する問題であります。今日の南鮮の日本に対する侮辱的な問題、刺激的な問題をどういうふうに考えておられるか、またこれにいかなる対策を御考慮になっておられるか、総理大臣と防衛庁長官とからはっきりと御答弁を承わりたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/16
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017・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 私は南鮮とのトラブルはどうしても外交折衝の平和的手段によって問題を処理していきたいという考え方をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/17
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018・杉原荒太
○杉原国務大臣 先ほど江崎委員のおっしゃいました通りに、大韓国側で日ソ交渉等に関連して、いかにも日本がいわゆる共産圏の方に近づく、こういうことは非常な誤解に基くものだと思いますので、その誤解を解くことが、非常に大事な重要なことだと思います。それから韓国側が日本に対して従来われわれの希望しないところの結果を生じておることは非常に遺憾に思います。それからまた漁船の拿捕の問題、そういう問題につきましても非常に遺憾なことでございます。また竹島の問題もございます。こういう問題につきましては、平和的外交手段でやることが原則としてとるべき建前であると思いますけれども、今日まで十分実績が上っていないことは遺憾なことだと存じます。しかしこの問題は、隠忍してでも、大局を誤まるようなことがあってはいけませんので、抑留とかあるいは漁船問題などに対して、自衛隊が直ちに出動するというようなこと以外の方法で、しんぼう強く解決をはかっていきたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/18
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019・宮澤胤勇
○宮澤委員長 茜ヶ久保君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/19
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020・茜ケ久保重光
○茜ケ久保委員 鳩山総理においでを願ったのは、防衛三法の審議に当りまして、私どもは真剣に討議をし質問をいたしておるのでありますが、防衛庁長官の御答弁を承わっておりますと、どうもその場をのがれることにきゅうきゅうとしておられて、私どもの質問の要点がはっきり浮んで参らない。こういうことでは、ことに日本の置かれた現実の姿から、三万という膨大な自衛隊の増強に対しまして、私どもは納得のいく答えが出て参らぬのであります。従いまして鳩山総理に一つ簡明率直に御所信をお伺いをして、そしてこれに対する私どもの態度をはっきりきめていきたい。こう思ったのであります。従いまして、一つ鳩山総理の今までお持ちになった明るいしかも簡明な御所信を承わりたいと思うのであります。
第一にお伺いしたいのは、先ほど同僚の江崎君も触れましたが、鳩山内閣並びに民主党は、先般の総選挙を通じ、あるいはその他の機会において、再軍備の必要性を非常に強調されました。その点について鳩山首相がおっしゃるように、自衛のためということももちろんありましたが、国民の多くを非常に惑わした点に、アメリカ駐留軍を帰すためにはどうしても日本が再軍備をしなくちゃならぬという点を非常に強調されて参ったのであります。従いまして国民の中には、私はたびたび指摘しますが、再軍備には非常な不安と反対を持っておりながら、今のアメリカ駐留軍の日本に対するあのような横暴な状態には耐え得ない、従って再軍備には反対であるが、アメリカ駐留軍を帰すためにはこれまたやむを得ぬという気持で、いわゆる鳩山民主党を支持した者が多数あります。こういう観点から私どもはこの防衛三法の審議に当って、防衛庁長官に、日本の再軍備をどのように強化したならばアメリカの駐留軍は撤退するか。そしてその時期はいつかという質問をいたしました。これに対してなかなか答弁がなかったのでありますが、今江崎君も触れましたように、ようやく六カ年後には地上軍は撤退するであろうという見通しと、さらに空軍部隊と海軍部隊はほとんど見通しがつかない状態であるということであります。私が鳩山総理にお伺いするのは鳩山総理は、日本が再軍備をすればアメリカ駐留軍は撤退するのである、また撤退させるために日本再軍備を強行せなければならぬ、という国民に対する公約に対して、政治的にどのような所信と、そしてその責任をおとりになる決意があるか。これだけの再軍備を強行すれば、必ずいつごろかにはアメリカの全駐留軍が日本から引き揚げるという御確信があるかどうか。もしないとすれば、国民に公約した手前、鳩山氏はどのような政治的責任をおとりになる考えであるか。この点を私ははっきりとお伺いしたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/20
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021・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 私は日本が他国の軍隊によって守られているということは非常な恥辱だと思います。私ども日本は日本の軍隊によって守らねばならないと考えております。たまたまアメリカも、長い間アメリカ軍が日本に滞在して、そうして日米の親善関係が継続できるはずがない、日米関係の悪くなるのはアメリカ軍の撤退しないのがおもな原因だというような考えをしておりますので、それでアメリカ軍は地上部隊を帰したい、空軍のことと艦艇の部隊はしばらくおきまして、地上部隊はできるだけすみやかに撤収したいという希望をアメリカは今日持っておるのであります。それですから私も、元来日本の国土は日本の軍人によって守られねばならぬと考えておりますが、アメリカ軍の希望を達するためには、できるだけ日本もお手伝いするのが当然だと考えている次第であります。もしも私が想像するがごとくに、六カ年たってもなおアメリカ軍が撤退をしないというようなことは、今日の情勢では、あり得ないことと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/21
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022・茜ケ久保重光
○茜ケ久保委員 私はただいまの総理の御答弁にまことに不審な点があります。アメリカ駐留軍が帰りたいと言っておるから、その帰りたいという御趣旨に沿って一つ帰ってもらうように努力をするという首相の言葉は、私は反対だと思う。日本国民がアメリカ駐留軍のいることに非常に不安と不満を持っておる。先般も私は申し上げましたが、鳩山首相は御存じないかもしらぬが、われわれ国会議員がアメリカの軍事基地に入る場合に、機関銃を突きつけられて、一々下級兵隊に尋問を受けなければ日本の国土の中に入り得ないというこの実態、こういったことを私どもはいつも経験をしている。こういう状態でありますから、国民も従ってアメリカ軍の撤退を非常に希望しているのであります。ところが今鳩山首相のお答えでは、国民のそういった感情でなくて、アメリカ兵が帰りたいという希望であるから、アメリカ兵の帰りたいという希望にこたえて撤退を早くしたい、こういう御答弁である。これは私はまことにけしからぬと思う。その点をはっきり日本の国民の要望にこたえるために、日本の総理であります鳩山総理は努力されたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/22
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023・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 茜ケ久保君の言われたことは、言わなくても当然だと思ったから、アメリカのことだけを申したのであります。日本の国民がアメリカ軍の撤退を希望しておることは、つとに承知はしておりますし、また当然な希望だと思っております。たまたまアメリカも日米関係の改善をしたい。日米関係の改善するには、アメリカ軍の撤退が最も捷径だとアメリカは考えておる。たまたまその両者の考えが一致して、アメリカもそれはもっともだということを考え出したのだということを、私は答弁したつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/23
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024・宮澤胤勇
○宮澤委員長 この際休憩いたします。午後二時くらいから再開いたします。
午後零時一分休憩
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午後二時二十七分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/24
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025・宮澤胤勇
○宮澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を継続いたします。茜ケ久保君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/25
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026・茜ケ久保重光
○茜ケ久保委員 先ほど質問の途中で総理がお立ちになりましたので、引き続いてお尋ねを申し上げますが、私が総理にお尋ねをしております要点は、今回の防衛三法の審議を通じてはっきりいたしましたことは、地上兵力は六年前後をもって引き揚げるという見通しはおつけになっているようでありますが、空軍、海上部隊の引き揚げについては全然見通しがついてないというすならば、これはほとんど現在の日本の自衛隊の状況あるいは今後の自衛隊を増強されるであろう趨勢等から勘案いたしまして、アメリカ駐留軍の、特に海上、空軍部隊は日本から引き揚げる可能性がないと断定せざるを得ない状況でございます。こうなりますと、私は鳩山総理並びに鳩山総裁をいただいておる民主党の、いわゆる天下に公約をした、アメリカ駐留軍を帰すためにも再軍備をしなければならぬというこういったことが、必然的に国民にうそを言ってしまったという結果になると思うのであります。これに対する総理並びに民主党総裁として政治的な責任をいかようにされるかということを聞いておるわけであります。どうか一つこの点に対しまして、もし幸いにして空軍も、海上兵力もこれは完全に撤退できるという確信と見通しがありますならばこれに対する御所信を、もしそういった確信がないならば、いわゆる国民に公約された首相並びに総裁としての政治的な責任をいかようにおとりになるか、はっきりと御明示を願いたい、こう思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/26
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027・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 アメリカ駐留軍の撤退について私が国民に向って話をした意味は、おもに地上部隊について申したのであります。空軍並びに艦艇部隊については私は見通しを持っておりませんでした。また現実においても、いつ空軍が全部撤退してもいいかどうか、海上部隊が撤退してもいいかどうかということについては、今後の国際情勢にもよることでございまして、ただいまのところ見通しを申すわけには参りません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/27
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028・茜ケ久保重光
○茜ケ久保委員 私は鳩山総理の御答弁はどうかと思うのであります。と申しますのは、鳩山総理が国民にアメリカ駐留軍の撤退ということを言ったのは、地上部隊のことだというお話でありますが、しかし私どもは地上部隊に限らず、海上あるいは空軍のアメリカ駐留軍の日本にあることそれ自体が日本にとって非常な不幸である、国民のいわゆる民族的な感情を大きく刺激し、さらにもし今総理のお答えのように地上部隊の撤退は期待できるが、空軍並びに海上部隊の撤退が期待できないとなりますならば、やはりこれは日米安全保障条約の効果というものは永久的に残るものであると思うのであります。そうといたしますならば、日本の半被占領的な、あるいはアメリカのいわゆる隷属国的な状態が半永久的に残るものと私は断定せざるを得ないのであります。これはまことにわが日本国民にとって不幸きわまりない事実でありまして、私はもちろん再軍備絶対反対の立場を堅持しておりますけれども、もし鳩山首相の御信念のごとく日本の再軍備を強行しますならば、あげてアメリカ駐留軍が完全に撤退するというならば、あるいは百歩を譲って国民も納得する点があるかもわかりません。しかし今の御答弁によると空軍、海上部隊の撤退が不可能なような御返事でありますが、そうなりますと、日本が片方においてはいわゆる使いものにもならないような自衛隊を増強して国民負担を非常に過重にし、反面において感情的には、アメリカ駐留軍の空軍、海上部隊といえども、これが残っておるということになりますと、日本の国民はいかようなことになりますか。私は全くこれは日本国民の非常な悲劇であると思うのであります。鳩山総理から公然と憲法を改正しないでも再軍備はできるという強い信念を私はこの間伺いましたが、それならば私は、やはりアメリカの海上、空軍ともに完全に撤退できるような方途を講ずべき責任があると思うが、これに対する所信はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/28
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029・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 あなたのおっしゃる通り、理想としてはあなたのおっしゃることは正しいと思います。日本の国防は、陸上といわず空軍においても海上部隊においても、日本の独力でもって守るのが当然なことだと思うのでありますけれども、現在の国際情勢において、かつ現在の内地の経済状態において、このことを直ちに実行することは私はできないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/29
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030・茜ケ久保重光
○茜ケ久保委員 そうしますと、いわゆる鳩山首相が堅持されている自衛力の漸増というものに対して、たびたび指摘をしますように、国民のだれも現在の自衛隊で今後起るであろう戦争というものに対して対処できるとはおそらく考えていないと思います。今の自衛隊をどこまで御増強になるか私は知りませんけれども、おそらくこの次に起る戦争というものに対して、私どもの血税をしぼりしぼって作った自衛隊ではあるけれども、こういった自衛隊で日本に外敵が侵入するということに対しまして防衛できるとは私には考えられません。考えられませんが、しかしこういったものを作りながら、しかもなお今言うようにアメリカの駐留軍がおるということは、ほんとうに日本がアメリカの属国的な状態になるということを感ぜざるを得ないのでありますが、私はこういった点で、やはり鳩山民主党内閣はその内閣なりに解決する点を出してもらいたいと思うのであります。でなければ——現在の自衛隊は幽霊な自衛隊であるという言葉がこの間出ましたが、まさしくそのような状態になるという危険性があるのであります。これに対しまして私は先般来たびたび論議をいたしましたが、いち早くこの日本の防衛計画の長期の計画というものを、はっきり明示されまして国民の批判を受け、またわれわれの今後の防衛関係の検討の資料として御明示を願いたいと思うのであります。これは私は鳩山総理に一つできるだけ早い機会に鳩山内閣の防衛長期計画をはっきりと御明示願いたいと思います。
さらに、観点を変えて申し上げますが、先般の内閣委員会で福島調達庁長官が政府を代表して答弁されました中に、こういうことをおっしゃっております。これはまことに重大なものを含んでおると思いますので、鳩山総理にその御所見を伺います。それは、今問題になっております立川その他の五飛行場の拡張に関しまして、私が福島政府委員にこういう質問をいたしました。アメリカの駐留軍が日本にいて日本の防衛に当るということを日米安保条約で明記しておって駐留しておるが、そのアメリカ軍が八百カ所に近い基地と坪数にして四億一千万坪に達する広大な地域を占有しておって、さらにその上に今回の五飛行場の拡張に手をつけておる。私はこの五飛行場のすべてを二回回って参りましたが、全く言語に絶するものがございます。農民はたんぼ畑を取り上げられようとするし、商店街は移動を命ぜられ、ほとんど生活苦というよりも、これが現実に五つの飛行場で実行されますならば、一部の諸君は死の中に追い込まれるような状態である。こういうことをあえてしてまでアメリカの要請である五飛行場の拡張をしなければならぬのか。日本人を守ってくれるはずのアメリカ軍が、現実において日本人を泣かせ、あるいは殺すようなことをしてまでも、アメリカのために五つの飛行場の拡張をしなければならぬのかという質問に対しまして、福島調達庁長官は、こういうようにはっきりお答えになっておる。「再三申し上げておると思いますが、今日問題となっております飛行場の拡張という問題は、アメリカのせいでやっておるわけではございませんので、日本の最小限度の防衛の必要からであって、たまたま今日ただいまの状況下におきましては、飛行機がアメリカの飛行機であるにすぎないという状態であります。われわれといたしましては、日本が防衛という態勢を維持していくべきであると考えております。その限りにおきましては、最小限度の飛行場の必要がある」云々とおっしゃっております。この福島長官の御答弁によりまして、あの五つの飛行場の拡張問題がアメリカの要請ではなくて、日本自体の防衛上の見地からやるのでありますならば、これは調達庁の関係ではなくて、当然防衛庁の関係でなければならぬ。政府を代表して福島政府委員は、これはアメリカの防衛要請ではない、日本の防衛のためにやるのだ、この五つの飛行場は、日米安全保障条約並びに行政協定によって行う措置でないということをはっきり言っておりますが、これをいかようにとっていくべきであるか、また鳩山首相はこれに対して今後どのような処置をされるか、一つ明確なお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/30
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031・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 これは日米共同の安全保障のために飛行場の拡張をやっておるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/31
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032・茜ケ久保重光
○茜ケ久保委員 時間がないそうでありますから簡単にしますが、この点は非常に重大なものを含んでおると思います。これはいわゆるアメリカの駐留軍の使用に供するための飛行場拡張であると私どもは理解しておったのでありますが、福島長官は、これはアメリカの要請ではない、日本独自の防衛のために必要であるということをおっしゃったのであります。そうなりますと、鳩山首相、これは調達庁の関係ではないと思います。これは防衛庁が担当して防衛庁がやるべきものであると思うのでありますが、もしそうでありますならば、これは防衛庁の責任において処理をしてもらわなければならぬ。しかし調達庁がやる場合には、これがアメリカの要請であれば、日米安全保障条約並びに行政協定に基いた特別措置でいかなければならぬと思う。そのいわゆる福島長官の答弁がもし政府の態度でありますならば、私はあの飛行場問題はおのずから観点が変ってこなければならぬと思うのであるが、いわゆる福島長官の答弁をしたことは、日本の防衛のためでアメリカの要請ではないという点か、あるいはあくまでも日米行政協定に基いたものであるかということをお聞きしているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/32
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033・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 安保条約と行政協定によって日本の防衛は日米の共同保障のもとに立っておるのでありますから、日本の防衛のために飛行場が拡張されておると福島長官が言うことはもとより当然だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/33
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034・茜ケ久保重光
○茜ケ久保委員 では時間が参りましたからとどめますが、先ほどお願い申したいわゆる長期計画の案はぜひ一つお願いしたいと思います。ここで一つはっきりした鳩山首相の御答弁を受けてやめておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/34
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035・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 政府としてはできるだけすみやかに防衛長期計画を立てなくてはならないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/35
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036・宮澤胤勇
○宮澤委員長 矢尾喜三郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/36
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037・矢尾喜三郎
○矢尾委員 毎年当委員会を通じまして日本の防衛問題を中心にして年中行事のごとき論議がかわされておるのでございますが、その根本はどこにあるかと申しますと、申し上げるまでもなく吉田政府以来日本の憲法を改正せずして、憲法違反ではないという建前に立ってなしくずしの軍備を続けてきたところに大きな原因があると思うのでございます。また鳩山総理も在野当時は吉田政府のなしくずし再軍備に対しましていろいろ批判されておったのでございますけれども、今日におきましては吉田政府の方針を踏襲されておるような状態でございます。また憲法の改正に対しましても自衛のためならば憲法を改正しなくともよいという方針を打ち立てられておることは申し上げるまでもないのでございます。しかしながら私はこういう立場から鳩山総理に対しまして国防の根本問題につきまして二、三お尋ねしたしたいと思うのでございます。
その第一点は、鳩山総理は、日本の自衛軍を漸増していく目的は、今茜ケ久保君が質問いたしましたように、アメリカの駐留軍に撤退してもらうためである、独立国である以上は自分の国は自分で守るという方針のもとに立って日本の軍備を進めていくという御方針に対しましては、首相は今日におきましてもお考えは変っておらないと考えますが、その点におきまして御答弁を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/37
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038・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 ただいま御質問の通りに、あなたのおっしゃった通りに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/38
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039・矢尾喜三郎
○矢尾委員 そういたしますと、鳩山総理は、アメリカ軍を撤退せしめるために、漸次軍備を確立されていくという方針をとっておられることは間違いのない事実でございますが、しかしながらアメリカ軍に撤してもらうためには何か方針がなければならない。ことしは二万なんぼか増員する、来年はどうする、こうするというように、防衛庁におきましても、六カ年計画あるいは五カ年計画を樹立しておられるならば、発表してもらいたいという要求を、当委員会を通じて同僚が再々申し上げておるのでございますが、防衛庁長官あるいはすべての閣僚は品をそろえてそのような計画はないということを申しておられるのでございますが、本日の江崎君の質問に対しまして、鳩山総理は、六カ年後の暁においては大体においてアメリカ軍を撤退せしめるという方針を申されたのでございます。これはまことにけっこうなことでございますけれども、私は今日日本の自衛ということにつきまして地上軍だけでは守ることはできない状態であると思う。もし日本が独自の立場から日本の防衛体制を打ち立てんとするならば地上軍百万、あるいは飛行機三千機を持たなければ日本を完全に防衛することはできないと考えておるのでございます。鳩山総理も御承知の通り、終戦当時、昭和二十年の八月十五日、天皇陛下がラジオを通じて放送された。日本はこれ以上守ることはできない、これ以上戦争をするならば、日本民族は困窮する以外に何ものもない、日本を救うただ一つの道は、この際無条件降服する以外にないという放送をされた。その原因は、日本の国に兵隊が一人もなくなったのではない、飛行機がなくなったのではない、軍艦や、その他の武器がなくなったのではございません。防衛庁においては終戦当時、日本の国内において幾十万の兵隊がおって、飛行機をどれだけ持っておったか、軍艦をどれだけ持っておったかということはよく御承知のことであろうと思います。かく考えて参りますならば、今日の日本の防衛体制というものは、地上軍をなんぼ持っても、完全なる防衛をすることはできません。しかしながら日本が独立国である以上は日本の国は自分が守る、自分の手で守っていくという方針はいずれの民族におきましても持っている気持でございます。しかしながら現実の日本の状態を見ましたときにおいて、鳩山首相がいかなる高遠なる理想を持たれましても、地上軍において日本を防衛することはできない。今日、日本の国を防衛するためには、地上軍を二十万にふやす、あるいは三十万にふやしても飛行機を持たなければならぬ、あるいは軍艦を持たなければならぬ。そういたしますならば、その予算はどれだけ要るか。先般内閣委員が立川、横田両基地を視察いたしましたときに。アメリカのベース代将は、B52一機を生産するための費用は五百万ドルといっております。日本の金に直しますと約十八億です。これでもしも飛行機をこしらえるとするならば、一兆の予算の中でどれだけの飛行機ができるか、軍艦ができるかということを考えますならば、自分の国は自分で守るんだという高遠なる理想は、私たちは肯定することはできますけれども、もはや現実の日本の姿は、自分の国を自分で守ることはできないところに追い込まれてきたのではございませんでしょうか。今日アメリカは日本に対する根本的な方針をどこに置いておりますか。東南アジアの防衛計画の中に、日本、朝鮮、台湾を引き入れたところの永久なる防衛計画を立てているではございませんか。その計画というものを考えてみますと、もはやアメリカの防衛の一環としての日本しか存在があり得ない。
かく考えて参りますと、私は鳩山首相にこの際お尋ねしたいのであります。あなたの理想の通り、自分の国は自分で守るという方針はりっぱなものでございますけれども、果して今日の日本の現状において日本がみずからの体制を打ち立てることができるか、その方針が打ち立てられるかということにつきまして、鳩山総理の偽わらざる御信念のほどを承わりたいと存ずる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/39
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040・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 わが国の財政経済の上から考えてみましても、日本単独での防衛では困難であると考えます。これはあなたと同じように、日本の完全なる防衛を日本の単独の力でできるとは私は考えておりません。すなわち集団安全保障体制をとらなくてはならないと私は思っております。しかし集団安全保障をとるからといって、日本が無防備で、日本の自衛力を少しも持っていなくても集団安全保障だけで防衛がでるとも考えません。日本は日本にできるだけの力を費して、つまり日本の経済、財政に相応するだけの力を費して、それだけの自衛力を持つ必要がある、こういう考え方であります。単独の力で完全な防衛ができるとは思っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/40
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041・矢尾喜三郎
○矢尾委員 そういたしますと、今の御答弁によりまして、日本が独自で防衛体制を打ち立てることはできないといたしますと、現実の日本の防衛というものはアメリカからセコハンの武器を借り入れ、そして日本の自衛軍は装備されておる現状でございます。アメリカの防衛計画の中に日本が引きずり込まれるということに相なりますと、アメリカの今日の方針は仮想敵国というものをソ連や中共に置いておることは私が申し上げるまでもございません。もしアメリカが仮想敵国としてのソ連に対して宣戦を布告した、あるいはそこに紛争が起ったという場合において、日本が引きずり込まれるということもやむを得ないとお考えになっておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/41
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042・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 どの国がどうあっても侵略的な戦争には日本は決して加入するおそれはありません。アメリカも中共も自衛のための戦争だけをするものと考えております。自衛のための戦争の場合におきましては、安全保障条約によって加盟する場合があるかもしれませんが、これは日本の自衛のためでございます。決して日本の自衛のため以外の戦争には日本は加盟することはないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/42
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043・矢尾喜三郎
○矢尾委員 今の御答弁によりますと、侵略のための戦争には日本は参加することはないということを言明されております。それは当然のことでございますが、現実において日本の国内においてアメリカに対して軍事基地を供与しておる。あるいはアメリカの武器をもらって日本の体制を立てておる。あるいはアメリカの飛行機その他が日本において発注されておる。そうしてその飛行機は日本だけではなく韓国あるいは台湾、フィリピン、この一貫したアメリカの同盟国——同盟国という言葉は間違っておるかもわかりませんが、そういうようなところに日本に発注された飛行機はどんどんと送られていくというこの現実は、もしもソ連や中共と宣戦を布告したような場合において、参加しないといっても、現実にアメリカの軍事基地がある限りにおいては、日本は攻撃されてくるということは私たちはのがれることはできない。日本とアメリカと戦争したそのときに、日本は戦争しておらないフィリピンやその他の国に対して爆撃をやったのは何のためでありますか。やはりアメリカの軍事基地があったから、第一番にわが軍がこれを爆撃に行ったのではございませんか。そういうことを私たちは考えますときに、いかにりっぱな理想を持っておっても、現実において軍事基地を貸しておる、アメリカのこの方針に賛成しておるということにおいて、私たちはその戦争の中に引きずり込まれるということを考えなければならぬと思うのですが、その点において総理はどういうお考えを持っておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/43
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044・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 日本が戦争に参加をするという前提条件として常に必要なるものは日本の自衛のためだということであります。それ以外に日本は戦争に参加する権利はないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/44
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045・矢尾喜三郎
○矢尾委員 時間がございませんので方向を変えて質問いたしますが、さきの私どもの質問に対しまして、総理は日本は独自の立場におい軍備を完全なものにすることはできないということを申されました。そうすると日本の軍備というものは、大体において永久にアメリカとの提携の上に立った軍備が推し進められるということは当然のことであると私は考えておる。しかしながら私たちは今日現実の面を考えてみると、アメリカの援助だけであなた方が理想とされておるような防衛体制を打ち立てることは困難であると考えておる。そうしたときにおいて、日本政府としては独自の軍備を進められていくでしょうが、しかしながらそこに大きく私たちが考えてみなければならない問題は、いわゆる間接侵略の問題でございます。自衛隊法あるいはそれらの法案を見ますと、直接侵略、間接侵略を防衛するためということが常に使われておるのでございますが、間接侵略というものは外から軍艦や飛行機に八を乗せて爆弾を落したり、あるいは鉄砲で攻撃して来るものではございません。国民の中に、読んで字のごとく間接的に侵略をして、思想的に扇動して暴動を起さしめ、発展せしめて軍命に持っていく、これがいわゆる間接侵略でしょう。そういたしますならば、いかに日本に一千万人の兵隊をこしらえても、何千機の飛行機をこしらえても、この間接侵略というものは防衛することができないのです。もしも強硬に再軍備を押し進められ、そして国民の生活に大きな圧迫が起ってきた場合において、今日現在の問題にしましても、アメリカ駐留軍の仕事をしておった人が相当失業しておる、アメリカの軍事方針の変更によって日本の労働者が大きな被害をこうむっておることを私ども考えますと、少くとも今日国民生活の苦しい中に不平と不満が起ってくる。それを扇動し、それを暴動に発展させ、革命に発展させるのが間接侵略である。そうするならば、私は日本の再軍備を強硬に押し進められることと日本に対する間接侵略を防衛するということは、相反する道をたどっておるものであると考えるのでございますが、この点につきまして総理はいかなる考えを持っておりましょうか。間接侵略はいかにして防衛するかということにつきましてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/45
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046・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 間接侵略すなわちあなたの今おっしゃっておる共産党の国内攪乱、内乱の使嗾に対しては、精神の作興その他によってこれに対する対策を考えていかなくてはならないことは当然でございます。間接侵略に対して鉄砲だけで防衛できるとは私は思っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/46
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047・矢尾喜三郎
○矢尾委員 今総理は精神作興その他において間接侵略を防衛されると申されましたけれども、そのような甘い考えでは間接侵略を防衛することはできないと私は思っておるのでございます。国民がこんなありがたい政治はない、こんなありがたい国に生れたことを腹の底から感謝するという念を持って生活するような政治が行われたら、日本人として祖国に弓を引くような者があるでしょうか。私はそういう者はないと考えておる。日本を守る道は、軍備をこしらえて国民を苦しめることではない。これは間接侵略の原因になる。また軍備をこしらえて日本がどれだけ防衛体制を整えても、今日の移り行くこの巨額の兵器の前には私たちは日本を守ることができない。ただ一つ日本を守る道は、もし再び世界第三次戦争が起った場合、どうすればこの戦争に日本の国が引きずり込まれないで済むかということを根本的に研究し、その方針を確立することにおいて、日本はいわゆる安全なる国家として存在価値があると考えるのでございますが、その点につきまして首相の御意見をお伺いいたしまして、私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/47
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048・鳩山一郎
○鳩山国務大臣 世界を平和に持っていって戦争を回避するということは、例外なく国民の熱望しておるところでありまして、現在の世界の情勢というものは、この傾向の方に向っておるものと思うのであります。でありますからジュネーヴの四巨頭会談が成功をして——どういう方法を考えるか知りませんけれども、ヨーロッパにおいての世界戦争の回避については必ず一段の進境があるだろう。その冷戦ということがなくなりますれば、冷戦の影響を東洋においても受けておるのでありますから、冷戦の影響がなくなれば、日本としても経済状態はずっと違ってくるものと思われます。間接の侵略に対する憂いも、ジュネーヴの会議が成功して、その結果東洋における冷戦の影響というものがなくなりましたならば、私は日本の国民生活というものはよほど変ってくるものと考えております。そういうような点に努力するのが現在の政治家の任務だろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/48
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049・宮澤胤勇
○宮澤委員長 これにて三案に対する質疑は終了いたしました。
防衛庁設置法の一部を改正する法律案に対し、江崎真澄君外十九名より修正案が提出されておりますので、その趣旨説明を求めます。江崎真澄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/49
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050・江崎真澄
○江崎委員 防衛庁設置法の一部を改正する法律案に対する修正案を民、目両党より提出いたすものでございます。
まずその案文を朗読いたします。
防衛庁設置法の一部を改正する
法律案に対する修正案
防衛庁設置法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。
第二十四条の改正に関する部分を削る。
すなわち陸上幕僚長を二人とするという政府原案を否定いたしまして、現行通り一名でいくべきであるということが、この修正案の趣旨であります。陸上幕僚副長のみを二人とする場合、その職務上、将来命令が二途に出ることを私どもは最も憂えるものでございます。企画と実行面を分けて、二人の副長に担当させたいというのが政府側の御意見であるように承わったのでありますが、もしこういう考え方で推し進めまするならば、防衛庁自体の次長にもやはりこの企画と実行の責任者の二人を置くという考え方にもなります。仕事が多いというのみで陸上幕僚副長というような重要な責任を帯びた人が二人になって、かえって先ほど申し上げましたように、命令が二途に出の際避けなければならないと思います。のみならず、今日では行政の簡素化ということが一般的な方向であります。このとき仕事が多いから二人とする、これだけでは理由がきわめて薄弱であるとしか私どもには了解ができないのでございます。防衛庁自体におかれましては、かつての警察予備隊以来、漸増に漸増を重ねまして、今や国軍としての形がだんだんはっきりして参ったのでございます。この際陸上幕僚副長を二人置くという継ぎはぎ的な考え方よりは、むしろこの機構、組織全体についての再検討をあらためて行わなければならない時期が来ておるのではないか。むしろその点を政府にお勧めをいたしたいのでございます。この際陸上幕僚副長はそのまま一名とし企画部門の担当は、たとえば企画室と申しますか、企画部といいますか、そういう機関により部内において解決せられることを希望いたします。
以上、修正案提出の理由につきましてその大要を申し上げ、委員諸君の賛成を求める次第でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/50
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051・宮澤胤勇
○宮澤委員長 これより自衛隊法の一部を改正する法律案、防衛庁設置法の一部を改正する法律案、同法に対する修正案、及び防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案を一括して討論に入ります。通告がありますので、順次これを許します。飛鳥田一雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/51
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052・飛鳥田一雄
○飛鳥田委員 日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程になっております諸法案について討論をいたします。
自衛隊そのものの本質、自衛隊に対してわが党がどいう態度をとっておるかということについては、おそらく本分議において茜ヶ久保君が討論をせられるに違いありませんので、私はここでただ二、三の疑問を申し述べて、むしろ皆様方の御教示をいただきたい、こういうことを考えております。
第一の疑問は、この法案によって自制隊を増強いたします理由として、米中をこれと引きかえに撤退せしめるのとある、こういうことが強く説明をせられておったように思います。これがすなわち今回の増勢の国民を納得させる主たる理由のように思われます。だがしかし、ほんとうにそれは日本の目測隊が独立国の軍隊となっていく過程としての営みととり得るであろうかどうか、これが第一の疑問であります。
と申しますのは、これにからめて私たちは米軍の戦略の転換というものを考慮していかないわけに参りません。御存じのように閉じ込め政策から巻き返し政策へ、巻き返し政策からニュー・ルックヘ、そうしてセカンド・ルックヘとあわただしく米軍の作戦は転換をいたしました。これは主として武器の発達、すなわち原子兵器の発達に即応するもののようであります。こうして原水爆の偉大なる発達をいたしました現在においては、日本はアメリカ軍にとっては陸上前進基地としての価値を喪失した、すなわち日本に米陸上兵力を置くことは、いたずらにその損粍を大ならしめるだけである。おそらく予想せられる第三次世界大戦においては、米軍は一時の抵抗の後に日本を放棄せざるを得ないであろうという考えに立っていることは疑いをいれないのであります。そこでアメリカ軍は日本を対ソ、対中共の攻撃のための前進飛行基地としての日本と考え直して参りました。こうしてアメリカ軍は、地上兵力を日本から続々と後退をさせつつある。その後退いたしております線は、グアムからミッドウェーの線だと私たちは考えております。こうしてアメリカがその戦略に従って米陸上軍を引き下げていく。しかし飛行場を裸にしておくわけには参りません。こうして日本の自衛隊の増強が迫られつつあります。この形は防衛分担金削減の交渉の中に歴然と現われました。日本における軍事基地の拡張、そうしてそれと引きかえに自衛隊の増強、その交渉の経緯が歴然とこれを物語っております。こういう事実から考えて参りますと、すなわち現在の自衛隊の増強は、日本の独立を守るためのものではなくて、アメリカの戦略に即応するために奉仕している結果に終らざるを得ないのであります。
その一つの証拠としてあげることのできるのは、アメリカは日本が強い航空軍を持つことを望んでいないということであります。前進基地として最も重要な飛行場だけはアメリカ軍が握る、そして日本の自衛隊がこれを守るという形、従って日本の飛行団に要らないのであります。自衛隊は初め飛行団を北海道の千歳に置こうとして、アメリカ軍にによって拒絶せられました。やむなくレーダーも何もない飛行場とだけ名前のつく原っぱの浜松に持っていかざるを得ない状況であります。こういう点を考えてみますと、それは歴然たるものがあるといわなければなりません。私たちはこう考えて参りますと、米軍の撤退を求めるために自衛隊を増強しなければならないという考え方、そしてまたその自衛隊が日本独自の自衛隊であるという考え方に根本的な疑念を差しはさまないわけには参らないのであります。むしろそれは米軍の作戦に即応するために、日本がサービスをしているのにすぎないのではないか。その結果は日本が第三次世界大戦の一つの焦点となり、われわれ日本民族が滅んでしまうであろう一つの誘因なりと考えられるのであります。こう申し上げますと、皆さん方の中には、いや日本の自衛隊は代替品ではない、日本独自のものだという御説が出てくると思いますが、そうおっしゃる方々に私は伺いたいのであります。と申しますのは、およそ一国の軍隊というものがどういう性格を持っておるかということを判断いたします重要なポイントとして、軍事顧問団というものがあります。かつて蒋介石の軍隊に何々国の軍事顧問団が乗り込んでいるかいなか、こういうことをわれわれ判定の基準にいたしました。日本の自衛隊についても、米軍事顧問団はわれわれの想像する以上に大きな発言力を持っておりますことは歴然としております。これが第一です。第二にこれは防衛庁の長官を初め、皆さん方がお認めになっているように、当然日本の自衛隊はアメリカ軍と共同作戦をすることを目的といたしております。ちょうど作戦をいたします場合に、弱小な勢力を持った軍隊が一体みずからのイニシアチブにおいて行動することができるかどうか、これはぜひお教えをいただきたいのであります。決してさようなことなく、巨大なる勢力を持ったものに引きずられ、この巨大なる勢力に奉仕する以外の道を発見し得ないはずであります。さらにまた第三には、幾つかのひもつきの援助がもたらされております。こうしたひもつきの援助によって、日本の自衛隊の独自の能力を持ち得ないことは歴然としております。すなわち自衛隊は、日本の独自の軍隊にはあらずして、米地上軍の代替品にしかすぎない。こう結論をせざるを得ないのであります。この点についてこの法案に賛成される方々のお教えをいただきたいと思います。これが第一です。
第二の疑問は、この二万名の増強がいかなる計画に基いて行われているかということであります。再々の質問によってうかがいしられるところによりますと、無計画ということに尽きます。およそ個人の趣味であるならば別個でありますが、しかし個人の趣味にあらずして一国の予算を傾けて作るべき軍隊が、かくのごとき無計画によって行われるなどということは、史上おそらくあり得ますまいと私たちは考えるのであります。すなわち軍備は、もしその軍備を肯定する立場に立ちましても、その国を守る最小限度にとどめなければならない義務があります。もしその国を守るために必要な最小限度の域を越えて軍備を拡張するとなれば、それは国民に対する背反であります。こう私たちは考えざるを得ない。しかるに最小限度なりやいなやを決定すべき計画というものと無関係に事をなしていくということは、すなわちそれは単なる乱雑の一語に尽きます。この重大な問題についてかくのごとき無計画によって二万名を増員しようとするこのことをもし許すとするならば、それはわれわれ自身の良心にそむかなければならないことだとすら考えざるを得ないのであります。一体いかなる計画に基いていかなる想定に基いてこの二万名が必要であるかという証明のなされない限り、われわれはこれに賛成することができないものであります。このことについても、非常な緻密な科学的な御質問をなさりながら、なおかつこれに賛成していこうとせられる方々にお教えを乞いたいのであります。私たちはその勇気に感嘆するのであります。
さらに次の問題でありますが、これはさきに大坪委員が御質問になられたところでありますが、仮想敵の問題であります。これは私もぜひお教えをいただきたいと考えているところであります。およそ防御ということについて、相手方を考えないで防御というものがあり得るでしょうか。日本の国を守るというのに、何から守らなければならないのか相手を考えずしてみずからの防衛の量を決定するなどということがあり得るでありましょうか。私もあちらこちらと図書館を探して回って、史上こうした例があるかいろいろ調べてみました。しかし仮想敵を持たない軍隊というものは、今までの世界の軍隊史上なかったと私は考えます。もしありましたらお教えをいただきたいと思います。こうした問題は、ただ単に軍事上の問題だけではありません。先ほどの計画に関連をいたして参ります。われわれは国民の重税を取り上げて軍隊を作りつつあります。それは最小限度でなければなりません。守るに必要な最小限度でなければなりません。このことのためには、当然対象を考え、対象がこれだけの数量の武器を持っているから、われわれはこれだけで足りるのだということでなければならないのであります。ここにも無計画の国費の濫費ありと私たちはいわざるを得ないのであります。この二万名の増強のために百数十億の国費がこれに投ぜられつつありまして、社会保障費はそのために削られました。病院の甲には、療養を願いつつも療養をし得ない人々が苦悩しう伸吟しております。本日も朝私のところにある一人の人がたずねて参りました。夫婦げんかをした、家内をぶんなぐってしまったと言う。なぜそういうことをやったのだと聞いてみますと、家内がないしょで人に三千円貸してしまったからだということです。三千円のために夫婦げんかか起る。至るところにこういう苦しい状態が満ち満ちております。そのときにこれだけの金を投じて軍隊を作ろうとされるのであります。少くとも指導者は、みずからおそれみずから慎しまなければないはずであります。ところが仮想敵を持っておりません。しかし仮想敵を持たないことは平和的でけっこうです。だがしかし軍隊の量を決定するために最小限度にとどめるためには当然なはずであります。えれは戦術家あるいは軍隊の専門家の方々にお伺いをいたしたいと思います。これが第二の疑問です。
第三の疑問は、現下の世界の情勢に照らし合せての問題であります。もう再々議論が出ておりますから省略をいたしますが、少くともソ連、中共は、防衛戦争は行うであろうが、侵略戦争は行わないと私たちは考える。皆様方もすべて同感をせられておるところでありまして、それなのになぜ私たちはこんなことをやらなければならないか。あるいは内乱鎮圧用だとおっしゃるのでありますが、しかし内乱を起す者は一体だれでしょう。内乱を起させようとやっておる者は一体だれでありましょう。今の日本に一千万の失業者がいると言われております。一体一千万人の人間を失業の中に追い込んでいったのはだれでありましょう。私どもはむしろここでもまたかえってこの自衛隊の問題の本質に触れていかざるを得ないのであります。
以上三つの疑問を私は提出をいたしました。この三つの疑問を明快にお教えを賜わりたいと存じますと同時に、この疑問があるがゆえに、われわれはこの諸法案に対して断固として賛成し得ないものであります。終りに自民の共同修正につきましても同様な意味で賛成いたしません。以上です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/52
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053・宮澤胤勇
○宮澤委員長 大坪保雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/53
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054・大坪保雄
○大坪委員 私はただいま議題になっております防衛庁設置法の一部を改正する法律案外二法律案について自由党を代表いたしまして、自民両党提案の修正案及び右修正案を除く原案に対し、賛成をいたすものでございます。
独立国が自衛の権利を有し、しこうして自国の防衛についてみずから責任を負うべきことは世界の常識であり、何人も疑う余地のない事柄であります。わが日本国は敗戦によって武装を解除され、みずから国を守る力を失いましたので、米国との間に安全保障条約を結び、アメリカ軍によって守ってもらっておるのでありますが、国の独立と安全とを他国の軍隊に依存しておることは、独立国の国民としてまことに忍びがたいことであります。この国民の気持や感情は、自然に他国の軍隊の駐留が長期に及ぶに従っていろいろの問題を惹起するに至るのであります。今日国内各地でアメリカ駐留軍との関係において種々の問題が発生しておりますことは、まことに遺憾なことでありますし、また日米国交の上からしましても好ましきことでなく、すなわち長期にわたって継続すべき事態ではないのであります。アメリカ駐留軍の撤退は、かような意味合いからわが国民もこれを希望し、アメリカ駐留軍自体もまたおそらくは希望しておるものと信じます。そこでかような事態に応ずるためにも、または米軍の撤退をすみやかならしめるためにも、わが防衛力は、われらの責任において漸増する必要があるのであります。ただ日本が自衛力を持つということについては、社会党は左派と右派とでは基本的な考え方や現実の国際情勢の判断等において相当隔たったものがあるように見受けられますが、社債党の諸君は、自衛力といえば反語のして参りますけれども、もちろんわれわれとしても国民生活の安定向上をはかるということが政治の第一要諦であるとすること、あえて社会党の諸君に劣るものではございません。いなわが自由党は、政権を担当しても野に下っても、そのことのためにこそ責任を持って努力を続けておるのであります。ただ国の安全がなく、国民の自由が守れなくしては、生活の安定もあり得ないことを知るのであります。自衛力の整備に反対する一部国民の随喜渇仰するソ連や中共が、いかに軍国主義にかり立てられ、いかに現在もなお軍備の充実に狂奔しつつあるかは世人のすでによく知るところであります。世界赤化が完成されるまでは真の世界の平和は来ないとし、これを絶対不変の信条として、その完成のためには武力侵略をもあえてする、しかも幾たびか侵略の実績を積み重ねた共産主義の国々が軍備の充実に現に狂奔をしておる、さような国際情勢のもとに、侵略の脅威を感じないとか、防衛準備は全く要らないとかいうこと自体が私どもには了解しがたいところであります。無神経なのか、または他に荷か考えがあるのか、もちろん世界の平和はわれわれの最も欲するところであります。防衛準備などする必要のない状態の一日も早く到来せんことを望むや切でございます。しかしそれまでは、少くともその希望が十分に持たれるまではわれわれは準備を怠ることを許されないのであります。日米安全保障条約の前文が明らかにうたっておりますように、無責任な軍国主義がまだ世界から駆逐されないので、日本国には危険があると感ずるからであります。国際共産党支配下の人たちの言う平和は、世界革命傍の平和であります。すなわち全世界が国際共産党の支配下に入って、その一党独裁の力によって鎮圧された個人の自由のない平和であります。イギリスの前首相チャーチルの言ったように、自由世界の共産制度に対する隷属化という形をとった平和であります。かかる平和はわれわれはまっぴらである。われわれは真の意味の自由と平和とを守るために防衛力を持たねばならぬ。
なおまた、私は自衛力保有に反対する諸君に反問したいのであります。わが国の領土であります島根県の竹島が韓国によって不法に占領されてしまっておるこの事実。またいわゆる李承晩ライン侵犯として、国際法上何人にも疑いのない公海上で、すなわち陸地から百五十マイル、百七十マイルも隔たったはるかな洋上において、何ら違法性のない日本の漁民が多数、船は拿捕され、人は拉致抑留されておる。この日本人、われらの同胞の生命財産に対する不法不当な侵害が繰り返えされておる事実、これを荷と見るのでありましょうか。私は現場において実力をもって対抗しろなどというものでは決してございません。自衛力を持たぬ国の現状はかくのごときものであるということを言うのであります。外交交渉には先方は応じないと言う。第三国のとりなしもなく、力による不法行為はなお続けられるのであります。あるいはもっとひどいことが起らぬとも限らぬ。すなわち国力に応ずる防衛力は持たねばならぬのであります。これ私どもが原案に賛成する第一の理由であります。
しかしながら現下の国際情勢は、共産主義諸国の平和攻勢もあって緊張緩和の方向に向って動いておるように見えます。ことに一昨十八日からジュネーブにおいて開かれておるいわゆる四大国臣頭会談なるものは、東西ドイツの統一問題をきっかけとして、大戦回避、世界平和の確立につきある程度の期待を持たせるものがあります。真の世界平和をこいねがうわれわれとしては、これら諸外国の政治家たちの誠意と努力に対して敬意を表し、その成功を祈る次第でありますが、しかしながらその成功を心から信じ得る者が今日果して何人ございましょう。現在のソ連の平和攻勢は、スターリンの末期においてとられた一種の戦略的転換でありますが、レーニンがかつて申しましたように、今二つの陣営があるが、ソ連の方が経済的に、軍事的に他の陣営に比べて弱いときには慎重な行動で臨み、できるだけ相手方の間に仲間割れを起して、互いにこれをかみ合わせる方針である。しかし一たんソ連の方が圧倒的に強い場合には、そのときこそ相手のえり首をつかむのであります。今日のソ連の平和攻勢、そうして緊張緩和には、いろいろの原因があるでありましょう。ただわれわれが見のがしてならないことは、チャーチル前首相が指摘したごとく各兵器の異常な発達と、その各兵器の米英側における優位と、しこうしてこれら米英を中心とする自由主義国家群の強力なる団結とが、共産側に対して大いなる抑制力になっておることであります。豺狼の侵入には垣をめぐらして守らねばならぬ、波浪に対しては堤防を築いて防がねばならぬ今日、波静かなりとて暴風のときを忘れてはならない。私どもはソ連や国際共産党が世界革命、世界赤化の野望を放棄したことを実証するまでは、直接侵略、間接侵略の脅威なしとするわけには参らぬのであります。国際情勢の現段階においては、非武装中立論のごときは現実遊離の観念論にすぎません。このことは単に直接侵略についてのみではない。いわゆる間接侵略、すなわち国内における大規模の内乱または騒擾についても同様であります。間接侵略は共産党の暴力革命以外には考えられませんが、その共産党も最近は特に戦術転換をして、暴力的革命手段は放棄したかのように見せかけておりますが、これまた国の内外の情勢判断に基く謀略てすぎないのであって、一たんコミンフォルムあたりからの指令が参れば、直ちにまた戦術を変えるのであることを知らねばなりません。ただ自衛力のごときは一朝にしてなるものではなく、長年月にわたり物心両面において準備と訓練とを積み重ねておかなければ、有事の用に立たぬのでありますから、今日内外の情勢において緊張緩和の様相が見えるからとて、国力に応ずる自衛力の増強を怠ってはならぬと思うのであります。米軍の代替品にならぬかとの飛鳥田委員の御心配もございましたが、その心配をなくするためにもこれは必要であると存じます。これ賛成の第二の理由であります。
次に自衛力を国力に応じて漸増する必要のあることは前にも申し述べたのでありますが、漸増するといっても、これには一定の目標と限度がなければなりません。政府は日米安全保障条約及び行政協定に基いて、駐留米軍の可及的すみやかなる撤退を可能ならしめ得るように、陸上自衛隊を初め各種自衛隊を逐次増強する必要を認めたと称して、本年度において陸上二万人、海上三千五百余人及び航空四千余人の増員を計画し、兵器その他の装備についても、それぞれ増強計画を立てておるのでありますが、これらの増員増強もかつて総選挙のころから盛んに宣伝したった防衛六カ年計画というような精密な長期防衛計画を立てて、それに基き、その一環として本年度分に計上したというのではなく、長期計画は結局まだ策定しておらず、かつての言明に反して、ただ本年度限の一応の間に合せ増強案を提出したにすぎないことを暴露し、将来どの程度の防衛力を何年後までに整備すれば足るか、少くとも米軍の撤退を可能ならしめ得るか等についても、全くお先まつ暗で、われわれをしてはなはだしく失望かつ不安ならしめたのでありますが、杉原防衛庁長官の言明によりますれば、現内閣の防衛計画の検討には、自由党内閣時代においてなされた研究を重要なる資料として研究しつつありとのことでありまするし、しこうして防衛力の増強の必要性はさきに申した通りでありますし、かつまた国民の要望するごとく、米駐留軍に一日も早く撤退してもらわなければなりませんので、わが国財政の現状を勘案して、この程度の自衛力の増強は、わが党独自の立場から見てもまさにやむを得ざるものと考えるのであります。これ賛成の第三の理由であります。
以上三点にわたって原案に賛成する理由を述べたのでありますけれども、わが党はただ無条件に賛成するものでないこと、さきに述べた通りであります。いなむしろ防衛の問題については、鳩山総理以下現内閣に対して多くの警告すべき事項があります。
まず第一に、鳩山総理は、昨年暮れ内閣を組織ざれるまでは、日本が自衛のための兵力を持つことは、憲法九条の規定の解釈上疑いがある。従って憲法九条の規定は改正する必要があると称して大いに吉田内閣を非難されたのであるが、一たび内閣を組織されるや、すでに法律によって自衛隊ができておるのであるから、憲法九条の規定も自衛兵力は持てると解釈すべきものと思う、さように考えが変ったと改論しておられますが、これは結局自由党の主張に従ってこられたのであるから、このことをわれわれは追及しようとは思いませんが、かくのごとき重大なる事項についての責任ある者の変節改論は、一般国民を惑わし、また士気に悪影響を及ぼすものであることに戒心されたいと思うのであります。
第二に、現内閣は鳩山総理を初め、本年春の総選挙当時から、防衛については六カ年計画を立てて、これが整備をはかると呼号、宣伝し来たったのでありますが、本委員会において、同僚各委員から追及した結果は、六カ年計画というような長期計画は樹立の意欲はあったようであるが、現実具体的のものは策定し得ず、本年度の防衛力増強計画もただ本年度だけの間に合せの計画にすぎないことが暴露し、六カ年計画なるものは、結局鳩山内閣の選挙宣伝の道具にすぎなかったことが明らかとなり、このことは今後の防衛力について国民に大きな不安を残し、また防衛力の漸増によって本国への撤退を期待する米軍の不信を買うことともなり、その不誠意と怠慢の責めは免れることができないものと思います。
第三に、国土の防衛のことはただ武器を携えた兵隊があればそれで足るものではない。隊員に国を守るという強い信念がなければならぬ。かかる信念は職務の自覚とそれから来る責任感によって築かれるものであるから、平素この自覚と責任感を与えることに努める要があろうと思うのであります。しこうしてまたこのことは、隊員の背景をなす一般国民の中にこれをバック・アップするという防衛思想、防衛精神の横溢することが大切でありますが、国民大衆にこの思想、精神を鼓吹するためには、政府自体にその気魄がなければならぬのでありますのに、鳩山総理初め現政府には、その気魄が認められないのはまことに遺憾であります。
私はこれらの諸点について政府の猛省を促し、今後格段の留意と努力を希望して原案賛成の討論を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/54
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055・宮澤胤勇
○宮澤委員長 田原春次君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/55
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056・田原春次
○田原委員 私は日本社会党を代表いたしまして、第一、自衛隊法の一部を改正する法律案、第二、防衛庁設置法の一部を改正する法律案、第三、防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案、この三法案に反対をいたし、また自民両党の修正案にも反対するものであります。以下簡単にその理由を申し述べます。
第一は、自衛隊の募集方法を見ておりますと、依然として平凡なる一般募集であります。その学力は新制中学出身程度である。この程度の兵力を二十万にふやしあるいは三十万にふやしても、原爆、水爆の前では何の力ともならないのであります。わが日本社会党は昭和二十八年一月の大会において、また昭和二十九年一月の大会におきまして、大衆討議の結果、国内防衛としてはあの発足当時の警察予備隊程度であるならばこれを認めることに決定しておるのであります。すなわち人員においては、七万五千人を最大限度としてそれで十分であるとわれわれは考えております。しこうして経費も、これに従って現在の半分以下で済むという計算になるのでございます。これらの経費の浮いた余力をもちまして、社会保障費その他に充てることにより、国民生活の安定をはかるのがほんとうの意味での防衛体制である、こう考えたからであります。かの武田信玄がかつて、人は城なりと喝破しております。すなわち山梨県におきましては、いまだに一つの城もありません。平素農民や一般町民をかわいがっておる、その生活を守っておる、従って城を築かなくても武田信玄は甲州を守り得たのであります。われわれの目標は、日本国民に生活の安定を与えることこそが、実はほんとうの国防であると考えておるからでありまして、従って七万五千人をもって、それならばどうして一体治安を維持するかという質問もありますが、それにつきましては、たとえば今日の自衛隊のように、新制中学卒業を目標とすることなく、高等学校卒業以上の者を集めるということも一つの考え方である。今日高等学校卒業は一カ年三十五万人をこえております。このうち上級学校に進む者およそ十五万人であり、残り二十万人は受験準備か、または家貧なるがゆえに進学を中止されたる多くの青年であります。この中から優秀なる者を一カ年二万または二万数千人得ることは決して困難ではありません。しこうして二カ年の在隊中においてあたかも短期大学工学部か理工学部程度の学科を教えるならば、除隊に際し一定数の指導力も高まるであろうし、また除隊後において社会に出ましても、各種の職業につくことができると考えるのであります。このことによりまして、今のように二カ年勤めるならば除隊に際し一人一人に六万円の退職手当を与えるというようなことはやめてもいいから、その一点だけでも大いに経費の節約ができる、こういうふうに考えております。すなわちかような入隊者の学力程度の引き上げによりまして、一人々々が五十人ないし百人の指導力を持つということともに、除隊後における生活の保障をわれわれは考えたのであります。
さらにまた進んでは、日本みずからが主催をいたしまして、世界平和会議のごときものを開き、第三次大戦の防止に努める、こういう方面にこそ力を入れるべきものでないか、かように考えるからであります。たとえば今日世界においてはいろいろな善意の戦争防止運動があり、あるいは世界連邦運動あり、あるいは国連の強化策あり、あるいは労働者の中には国際自由労連によって世界平和を維持しようという動きもある。また各国の労働党、社会民主党、社会党と、およそ三十六カ国の政党が集まりまして、社会主義インタナショナルという会合を持ち、すでに本年は第四回を過ぎ、いずれも第三次戦争を防止しようということに、おのおのの立場から努力しているのであります。従って日本が一個半個の兵隊カ増すことによって防衛するという考えを捨てまして、進んでみずから世界平和会議を招集し、世界の平和を維持することに努力し、このことによって日本の防衛をはかることこそ、ほんと言の日本の進むべき道ではないか、こういう観点から見ますれば、今回の改正案は私はいずれも不満足であります。従って三つの改正案に反対し、また三つの改正案の一部の単なる修正案にすぎませんところの自民両党の提出の修正案に反対いたします。われわれはこうやって日本を維持したいと思っておりますが、それよりいい案がありますれば、私もまた皆様に教えを請いたいと思うのでございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/56
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057・宮澤胤勇
○宮澤委員長 辻政信君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/57
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058・辻政信
○辻委員 ただいま議題となりました三つの法案に対し、民主党を代表して、防衛の根本問題数点について具体的に政府に要望し、現状の改善に努力されることを前提として、自民共同修正案、並びに修正部分を除く政府原案に賛成の意見を述べたいと存じます。
その第一点は、自主的な防衛計画を政府の責任においてすみやかに立てることを強く要望するものであります。年度の防衛計画は、原則的には国防の基本方針が確立し、それに基いて長期にわたる防衛計画の大綱が決定され、その一環としての具体的計画を、予算の裏づけとともに国会に提出すべきものであります。この点について、野党各派の熱心な質問が展開されたのは当然であるにかかわらず、政府にまだその用意がなく、明答を避けられた態度は、各党のみならず、国民全般に対し不安と疑惑を与える結果になったことは、まことに遺憾であります。経済六カ年計画の構想と世界情勢の推移、ことに米軍との関係、科学技術の進歩等を考慮して、すみやかに日本の自主的防衛計画を立て、一日もすみやかに米軍の撤退を実現し、自衛隊が米国の傭兵なるかのごとき疑惑を一掃し、また国力の限度をこえるかのごとき不安を除くことに努力すべきは当然であります。警察予備隊発足以来すでに五年を経過して、今なお国防の基本方針もなく、将来にわたる防衛計画の大綱さえ決定し得ない原因は、占領時代の惰性になれて、自国の防衛を他国の軍隊に依存しようとするような安易な態度をいまだに清算できないからであります。現在の自衛隊は、その前身たる警察予備隊の発展過程に徴しましても、多分に従属的、模倣的性格を持っていることは争えない事実であります。編成装備、訓練、制度等の全般にわたりすみやかに改善し、傭兵的性格の自衛隊を日本の自主的自衛隊に立て直すための重大な責任を自覚して努力されんことを、与党の立場において強く要求するものであります。
第二点は、民主党の防衛に対する基本方針、すなわち国力に相応し、空軍を主体とする少数精鋭の自衛軍を整備する方針を政府は明確に認識されて、その実現に努力されることを要望するものであります。近代的防衛力が空軍を主体とすることは、常識的に異論のないところであるにかかわらず、日本の国力では空軍は金がかかるから、安上りの陸軍をまず整え、海空軍は米国にお願いしようとする考えを政府はまだ清算できないように見受けられるのであります。前大戦で五百万の陸軍がなほ健在し、大和、武蔵の巨艦を擁しながらも一敗地にまみれた原因は、空軍の敗北にあったのであります。この苦い経験を無視し、または忘れて、旧式な陸上防衛力に重点を置くようでは、日本は永久に独立国家たり得ず、このよな自衛隊は、飛鳥田君が指摘された通り、米国の植民地的軍隊としての運命を免かれ得ないのであります。近代戦における戦力は、部隊の持っている火力と運動力の相乗積をもって比較すべきものであります。参考のために陸、海、空の単位部隊の持つ火力と、運動力を比較しますと、陸軍は一万二千七百の一個師団が、その全火器をもって一分間に発射する鉄量は約六十トンで、一時間の平均運動力を二十キロメートルと見て、その相乗積は千二百キロメートルトンとなります。海軍は千六百トンの駆逐艦一隻が、全火器をもって一分間に発射する鉄量は約八トンであり、その運動力を一時間五十四キロと見るとき、相乗積は四百三十二キロメートルトンとなります。空軍はF86一大隊二十五機の全火器一分間の発射する鉄量と、搭載爆弾を合せますと約二十八トンであり、スピードは一時間一千キロで、その相乗積は二万八千キロメートルトンとなります。すなわち陸軍一個師団と、一駆逐艦とう一爆撃隊の持つ戦力比は、一、二〇〇対四三二対二八、〇〇〇となります。しかも陸海軍は平面戦力であるのに、空軍は立体戦力であります。この比較から結論されることは、一億五千万円の戦闘機一機で、二十四億円の駆逐艦一隻を軽く撃沈し、空軍二十五機の一大隊は、一万二千八官人の一個師団を手も足も出ないように制圧できるのであります。次に部隊の建設費と維持費を比較しますと、陸軍一個師団一年の維持費は三十八億に対し、空軍一大隊一年の維持費はその四〇%の十五億円であります。建設費は一個師団百三十五億円に対し、空軍一大隊はその二七%の三十六億円で足ります。しかもその戦力は、千二百対二万八千すなわち二十倍となることを考えると、陸軍は、安上りで空軍は高くつくとの考えが、いかに幼稚な時代おくれの目先の見えない旧式思想であるかがわかるのであります。本年度の増強によって、防衛庁の定員は陸海空を合せ、十九万五千八百十名となり、満州事変直前の陸海軍平時兵力が合計約二十三万であった事実に思いをいたすとき、敗戦日本が、全盛時代の日本軍の平時兵力に近づいてきたことを認めざるを得ないのであります。米国の中古兵器の払い下げを受けて、旧式な陸海自衛隊の人員のみを増加する計画は、もはや議論の余地なく必要以上に達したものと私は考えるものであります。明年以降には量の拡大よりも質の増強に力を用い、空軍を優先充実することに徹底し、ことに科学技術の進歩におくれないことを、防衛力漸増の基本方針とされんことを、声を大にして、政府に反省を求めざるを得ないのであります。
第三の要望は、防衛生産の自立についてであります。ノモンハン事変当時、陸軍はイタリアから中型爆撃機百機を購入して、関東軍の航空戦力の心としたことがありましたが、部品の補給が続かないために、たった三カ月で戦力がゼロになったのであります。防衛生産の自立なき現状をもって、一旦有事の場合に、十九万五千の自衛隊は、おそらく三カ月を待たずしてくず鉄を持った失業者の集団になることは火を見るよりも明らかであります。本年度における空軍の充実計画を見ると、アメリカが約六〇形の経費を負担し、F86とT33の組み立てと製造準備を日本でやらせようとしておりますが、このF86は米国ではすでに第二線機として後退し、第一線にはF100がすでに登場しようとしております。従ってF86はもはや米国内では製造を中止するために、その治具、工作機械を日本に移し、日本で二流機の自給をやらせようとしていますが、日本でそれを完全にできるようになったときは、F86はもはや戦場には出れない旧式機になることはきわめて明瞭であります。この点を考えたならば、政府はすみやかに、F10の製造を目標として空軍の増強計画と防衛生産の自立計画とを立てられんことを特に強く要望するものであります。
第四は、米軍模倣の現制度を、日本に適するように、全般にわたり根本的に改めることであります。政府は今国会に陸上幕僚副長を二名に増加することを提案されましたが、その理由は陸幕の業務が忙しいとするものであります。何がゆえに忙しいかという点を根本的に検討するならば、これは疑いもなく、現在の制度が百パーセント米軍の膨大複雑な機構をこのままうのみにして日本に当てはめた結果、幕僚長が六部、十四課を直接指揮しなければならぬ不合理からくるものであります。その欠陥は、機構を簡素合理化することによって補わるべきであるにかかわらず、その努力を払わずに、副長を三名に増加する姑息な方法をとったのであります。この点については党内にも強い反対があり、また本委員会の審議を通じて、自由党から適切な修正意見が提出されましたので、私どもも虚心たんかい自由党と共同し、政府原案の修正を求めるものであります。機構を根本的に改めるまでの過渡期において、陸幕副長の業務処理を補うためには臨時の便法があります。それは法律改正を要せず政令をもって適宜処理できるものと考えるものであります。
第五は、自衛隊の配置について政府の善処を要望したいことであります。今回の改正において、部隊配置の重点が北海道と九州になったのでありますが、これを重視する理由について野党各派の追究を受けながら政府が、自信を持って、明確に説明されなかった点は遺憾であります。わが国の平和と独立を脅かす暴力が、一昨年以来李ラインにおいて公然行われ、日本の領土竹島が占領され、または北海道の海上において公海自由の原則がじゅうりんされ、あるいはスパイの密上陸や、領空の侵犯が行われているのは厳然たる事実であります。のみならず、北海道と九州は、わが国石炭の九〇%以上を生産し、動力の源を握りているのでありますから、外部の侵略に対して守るためにも、また内部の暴動を押える意味からも、北海道と、九州を重視するのは当然であり、言をあいまいにする必要なく、堂々とその必要なゆえんを国民に知らせるべきものと考えるのであります。飛鳥田委員から先ほど仮想敵国のない軍備はあり得ないとの反論がなされましたが、この前の戦争直前までは日本の仮想敵国は明らかにソ連でありました。それが国際情勢の変化に応じて、米英に対し準備なき戦争をしなければならなくなったのであります。この歴史的事実から見ましても仮想敵国を定める必要はない。わが国の平和と独立を現実に脅かすものに対しては守るべき毅然たる態度を表明すべきものであります。そのためにも、対馬、壱岐等の離島における防衛力を急速に整えられんことを政府に要望するものであります。
第六は、給与を適正公平ならしめることであります。今回の改正において航空機、艦船の乗り組み及び落下傘隊員の手当を増加されたことは当然でありますが、それと同様の重要さをもって北海道に在勤する隊員たちの、生活の苦しい現状を率直に認めてその地理的環境に応ずる増俸ないしは減税について根本的に検討し至急改善されんことを要望するとともに、本委員会において社会党右派の受田新吉君から指摘された給与体系是正の御意見は、与党としてもまた政府としても傾聴すべきものと考えますので、虚心たんかいに是は是として、改善されんことを期待するものであります。
第七は、文民優位の原則についてであります。この意味は、旧文官出身が旧軍人出身に比して、優越するという意味ではなく、政治が軍事に優先するという意味であります、真に自衛隊の正しい発展を希望するならば、過去の出身や経歴にかかわらず適材を適所に充当して、その全智全能を発揮するように人事行政を根本的に刷新されんことを、要望するものであります。
最後に、基地問題について政府の善処を要望したい点は、日米交渉の結果として約束された飛行場の拡張について、各地にはげしい反対運動が展開されている現状にかんがみ、政府は自主的な態度をもってこれが迅速な解決に当られることが必要であります。反対の大きな原因は拡張の理由が、日本を守るためではなく、ソ連を攻撃するための足場であるかのような誤解があるからであります。飛行機の進歩に伴い、F86を将来F100にかえるために必要最小限度の拡張をなすことは、日本自体の防衛に必要であります。その限度を、国民に知らせるとともに、ソ連攻撃を目標とするB52の日本基地使用は、狭義自衛の目的を越えるものであり、日本にソ連の原爆を誘致する危険がある点からも、拒否すべきものと考えるものでありますが、日米安保条約の精神から見ても、政府は進んで米国側に拡張の限度を通告し、F100の範囲にとどめることを明らかにして、一には国民の不安と誤解を解き、また他面において日米離間の政治謀略にすきを与えない考慮を必要とするのであります。これとともに使用度の少い飛行場や、演習地を進んで農民に解放する努力をさらに積極的に進められたいのであります。一例を申しますと、私の郷里、石川県小松市における米軍使用飛行場に対して、周辺地区の農耕利用を昨年以来陳情嘆願しましたが、一年たっても解決を見ない。最後に私が直接米空軍参謀長に面会して交渉した結果、わずかに二週間で二十九万坪の農地が解放を許可されたのであります。その結果として驚いたことは、一年以上も調達庁を通じて米軍と交渉しておったはずなのに、米軍参謀長には達していなかったという事実であります。政府の役人は国民にはトラのようにいばり、米国にはネコのように従順である、このような態度で現在の基地問題の解決はとうていできない。そこを率直に忠告するものであります。
以上八つの点の実現を政府は将来において必ず実行するという約束の前提のもとに、私は修正案並びにそれを除く政府原案に賛成の討論を終るものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/58
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059・宮澤胤勇
○宮澤委員長 これにて討論は終局いたしました。
これより採決いたします。まず自衛隊法の一部を改正する法律案及び防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案を一括して採決いたします。以上両案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/59
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060・宮澤胤勇
○宮澤委員長 起立多数。よって両案は原案の通り可決いたしました。
次に防衛庁設置法の一部を改正する法律案について採決いたします。まず江崎真澄君外十九名提出の修正案を採決いたします。本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/60
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061・宮澤胤勇
○宮澤委員長 起立多数。よって修正案は可決いたしました。
次にただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/61
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062・宮澤胤勇
○宮澤委員長 起立多数。よって修正部分を除く原案は可決いたしました。よって本案は修正議決すべきものと決しました。(拍手)
なおただいま議決いたしました三案に対する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/62
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063・宮澤胤勇
○宮澤委員長 御異議なければさよう決します。
この際委員各位の連日にわたる熱心なる御審議に対し、深く敬意を表します。本日はこれにて散会いたします。
午後四時三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204889X04419550720/63
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