1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年七月十三日(水曜日)
午前十時四十九分開議
出席委員
委員長 綱島 正興君
理事 安藤 覺君 理事 白浜 仁吉君
理事 松浦 東介君 理事 鈴木 善幸君
理事 足鹿 覺君 理事 稲富 稜人君
五十嵐吉藏君 井出一太郎君
石坂 繁君 大森 玉木君
木村 文男君 楠美 省吾君
小枝 一雄君 笹山茂太郎君
原 捨思君 足立 篤郎君
大坪 保雄君 川村善八郎君
助川 良平君 田口長治郎君
松野 頼三君 赤路 友藏君
淡谷 悠藏君 石田 宥全君
楯 兼次郎君 伊瀬幸太郎君
佐竹 新市君 中村 時雄君
出席国務大臣
農 林 大 臣 河野 一郎君
出席政府委員
農林政務次官 吉川 久衛君
農林事務官
(農地局長) 渡部 伍良君
農林事務官
(農業改良局長)小倉 武一君
委員外の出席者
農 林 技 官
(農地局建設部
災害復旧課長) 大塚 常治君
農 林 技 官
(農業改良局研
究部長) 河田 黨君
農林事務官
(食糧庁総務部
長) 新澤 寧君
農 林 技 官
(水産庁調査研
究部長) 藤永 元作君
専 門 員 岩隈 博君
専 門 員 徳久 三種君
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七月十二日
委員大野市郎君、中馬辰猪君及び松野頼三君辞
任につき、その補欠として足立篤郎君、戸塚九
一郎君及び小金義照君が議長の指名で委員に選
任された。
同月十三日
委員小金義照君辞任につき、その補欠として大
坪保雄君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員大坪保雄君辞任につき、その補欠として松
野頼三君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
開拓融資保証法の一部を改正する法律案(内閣
提出第二九号)(参議院送付)
水産業協同組合法の一部を改正する法律案起草
に関する件
漁業災害対策及び農業災害補償制度改正に関す
る件
中小企業安定法の一部を改正する法律案につい
て、商工委員会に修正意見申入れの件
昭和三十年産米価に関する件
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/0
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001・綱島正興
○綱島委員長 これより会議を開きます。
農林漁業災害対策の問題について調査を進めます。
過般来、全国各地に風水害等によりまして農林水産の被害が続発いたしておりますことにかんがみ、かつ有明湾における農薬使用による漁業被害等の問題も合せて、緊急問題及び恒久問題等について、調査することにいたします。右問題について質疑の通告がございますから、これを許します。足鹿覺君
。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/1
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002・足鹿覺
○足鹿委員 農林大臣が御出席になりましたこの機会に、農林漁業の災害対策等に関連いたしまして、農業災害補償制度について御質問申し上げたいと思います。
本年も春先より凍霜害ひょう害、水害等、まことに不幸ながら世界有数の災害国たるの名にそむかず、災害が続発いたしております。公共施設は言うまでもなく、農地、農産物等に多大の損害をもたらしておることは、御承知の通りであります。わが委員会といたしましても、すでに東北地方に調査班を派遣し、今また北海道に調査班二班を派遣して、その実情を精査し、また各党においても、それぞれ議員を派遣して対策の樹立にお努めになっておるのであります。
政府といたされましても、過般四、五月の災害に対して資金融通の法的措置をとられ、また引き続いて六、七月の東北、北海道の災害について同様の措置をとられることと存じまするが、しかし全体として通観いたしました場合、現政府の災害対策は遺憾ながら微温的といわざるを得ないのであります。先日も本委員会に北海道開発庁担当大久保国務大臣のおいでを願いまして、北海道水害の実情とその対策をただしたのでありますが、実情の把握も不十分であるのみならず、対策の樹立もおくれており、被災地農民の困窮をすみやかに救済する熱意に乏しいという印象を受けたのであります。すでに台風季節に入り、台風第七号は逐次北上中とのニュースが入っており、今後陸続として台風の来襲を予期しなければならない時期にきておるのでありますが、一方台風常襲地帯の議員が中心となり、これら地帯の農山漁村の人人の熱望にこたえ、災害防除及び災害復旧の法律案が提出される等、農林漁業災害対策確立の動きは、国会を中心としてあわただしく盛り上ってきておりますにもかかわらず、政府の関心はきわめて薄いように見受けられます。まことに残念に存ずるのであります。しこうして、農業災害対策を樹立いたしまする場合の一つの重要な柱とも申すべきものは、言うまでもなく農業災害補償制度でありますが、この制度に関する政府の御方針も一向に判然といたしておらないのであります。少くとも今日までのところ、この重要課題に対してどう対処せられるか、全く判明いたしておらないのであります。
政府は今回家畜共済の一元化及び総代会に関する規定の整備をおもなる内容として、農業災害補償法の一部を改正する法律案を提出せられております。
本案は、かつてわれわれが現在の死廃病傷共済一元化実験法を審議いたします際に、すでに予想せられておったのでありまして、農家の受ける利益を考えますとき、きわめて当然の措置と申すべく、私どもも一応の賛意を表するものであります。しかしながら冒頭に申し上げましたことと関連し、農業災害対策としての補償制度が当面しております諸問題、しかも緊急に解決いたさなければならぬ諸問題が、今日山積いたしておるにもかかわらず、今般御提出の改正案中には、これらについて何らかの努力を払われた形跡がないという点については、私どもといたしましては、これははなはだ不満とせざるを得ないのであります。
そこで私はこの際農業災害対策の一環として、災害補償制度の根本方針に関して農林大臣の所信を伺い、今後における行動の指針といたししたいのであります。農林大臣はすでに十分御存じのことと思うのでありますが、農業災害補償制度は、今日非常なる難局に直面しておるのであります。しかもこの事態は年一年次第に悪化して参っておるように私は見るのであります。国会といたしましてはつとにこの実情を認めまして、その対策の樹立に異常な努力を傾けて参ったことは、農林大臣も御存じの通りであります。農林省はこのわれわれの熱意にこたえて、農災制度改正協議会を設置し、われわれもこれに参画して、昨年七月以来熱心に審議検討した結果、昨年十二月二十一日、とりあえず政府に対して中間答申を行っておるのであります。
この中間答申の内容は、まず一筆石建、共済金額の農家別選択制、掛金率の細分化、統計調査機構による郡単位損害評価等については三十年度産水稲より実施することとし、共済組合の区域の適正化、連合会の赤字処理につきましては、三十年度中に実施することとし、他のすべての問題、たとえば農業災害補償の組み立て、中央団体の設立、任意共済の取扱い、共済団体の行う防除等々に関しましては、この会期中に審議を完了することに満場一致決定したのであります。しかるに中途において総選挙が行われ、国政方針が明確を欠いた等の事情はありましたが、農林省が今日まで半ヵ年間にとってきた施策の内容を見ますと、組合の合併、掛金の徴収、損害評価等について、知事、共済団体に若干の指示を行なったにとどまり、制度の基本方針については言うまでもなく、三十年度の暫定目標の大部分についても、実施細目に関して何ら具体的措置を講じている事実がないのみならず、二十二国会の会期は一応延期を見ましたものの、残期間も少い今日、いまだに協議会開催の運びにも至らず、農林省当局の意欲は全く冷却し切ったのかと疑わざるを得ない状態なのであります。農林大臣は、一体協議会の中間答申をいかようにお取扱いになるつもりでありましょうか、また次回の協議会はいつごろ招集せられる予定でしょうか、また制度改正の基本方針についていかなる用意をもって臨まれるのでありましょうか、伺っておきたいのであります。これが質問の第一点であります。
次に、昨年から今年にかけて行われておりますところの会計検査院の会計検査、及び行政管理庁の行政監察の結果、制度の欠陥、農業共済組合、同連合会の経理の不正事項ないしは事業経営上の不当事項等、あらゆる好ましからざる事実が次々に明らかにせられている点に関連して、御所見を伺いたいのであります。
わが委員会としましても、去る六月四日及び七月二日の二回にわたりまして、農災小委員会を開催して、会計検査院の小峰第三局長、行政管理庁の大森監察参事官及び松本参事官の詳細なる説明を聞いたのでありますが、会計検査院では、昨年から今日まで三百十組合の検査を行いましたところ、共済掛金の徴収、共済金の支払い等の事務は組合員から全く遊離して、組合または連合会の内部でから回りしておる事実、あるいは極端な損害評価の水増しの事実等、随所に不正不当の事例が発見され、本年度の検査組合百八十組合のうち、実に九〇%までは、いずれかの部面においてその運営状況は不良である旨の非難的な報告を受け、われわれ委員会はがく然として驚いたのであります。この会計検査院の報告は、われわれの専門的立場より見るならば、制度機構に対する統一的理解に欠くる点もあって、個々の事務上の欠陥をばらばらに指摘しておるきらいなしとはしないのであります。しかし全体的な傾向として見られることは、大部分の組合に憂慮すべき病患が痼疾のごとく伏在する厳然たる事実を否定することはできないと存ずるのでありまして、監督官庁たる農林省といたされましても、本制度の創設以来八年、この体たらくでは責を免れる余地はなかろうと存ずるのであります。また行政管理庁の監察報告は二回にわたって聴取いたしましたが、第一回は昨年四月から九月まで愛知と岐阜について監察せられた結果を報告せられ、第二回は六管区二百八十六組合に関する農業災害補償制度の行政監察中間報告について報告をせられたのでありますが、この報告におきましても組合及び連合会の組織運営状態に関して多数の欠陥が指摘されたのであります。その一々については申し上げませんが、要しまするに現行制度の仕組みは、農民の理解の上に立った協力を期待しないかのごとく、いたずらに複雑難解なるを誇り、中にはこれを悪用する団体指導者が生まれ、制度運営の行き詰まりとなって現われていることは、もはや否定できないのでありますし、農民を不慮の災害より守り、農業経営の安定と農業生産力の維持向上をはかるために、本制度の根幹にメスを加えまして、安んじて末端職員が使命に邁進できる態勢を築き上げたいというわれわれの念願よりいたしまして、これらの一連の悲観材料は真に遺憾千万と申すほかはないのであります。しかも今日までの農林省の態度を見まするに、正面から問題に対決していく用意と気魄を失っておるのではないか、われわれは何ものかに農林当局が脅かされているのではないか、かような感じすら持つのであります。とにかくその態度はすこぶるあいまいしごくであります。もしこのままじんぜんとして推移いたしまするならば、本制度は農民の怨嗟の的となり、やがて根底より崩壊するのうき目を見るものと断定せざるを得ないのであります。そこで農林大臣に伺いますが、国家補償と保険とを分離し、公共的性格の確立を主眼とする衆議院農林委員会の決議の精神を尊重し、かつ会計検査院、行政管理庁など国の監察機構が公表したもろもろの批難事項を率直に受け入れられまして、制度の抜本改正について真剣に再検討を加えられ、すみやかに案の作成提示に進まれる意図ありやなしや、しかして三十一年度産米については新制度をもって臨むというお覚悟と御用意を持っておられまするやいなや、明確なるところの大臣の御所信を承わりたいのであります。これが第二点であります。
次に第三点といたしましては、任意共済の問題について農林大臣の御所信を承わりたいのであります。この問題は、当面解決すべき問題と、制度の根本改正との関連において解決すべき問題との二つの問題を持っておると思うのであります。任意共済事業につきましては、私から申し上げるまでもなく、昭和二十四年に農業災害補償法が改正をされまして、農業共済団体が主要農作物以外の農作物、農機具、建物等について共済事業を行い得ることとなっておるのであります。このうち建物につきましては、農家の建物に対して短期の損害共済を実施し、火災のみならず風水害をも共済事故に取り上げ、加入戸数、共済金額等相当の実績をおさめておるのでありますが、最近におきましては長期の損害共済、更新共済をも開始するに至っておるのであります。しかるところこれらの建物共済事業に関しましては、生命共済などとともに農業協同組合が農協法に基いて終戦以来実施して参り、さらに昨年六月団体再編成問題の一環として農協法の一部を改正いたしまして、農協共済事業に対する行政庁の監督規定を整備強化して今後の発展に備えることとなったことは御存じの通りであります。かくして建物に関する任意共済事業について、農災法に基くものと農協法に基くものとが競合することと相なり、両者激しく対立し、近来とみに憂うべき事態を招来しているやに看取されるのであります。衆議院農林委員会におきましては、つとにこの状態を憂慮いたしまして、冷静にかつ同家的立場に立ってその解決策を検討して参ってきたことは御存じの通りであります。さきに農災制度の抜本改正を審議いたしました際、任意共済問題について深く立ち入って検討し、昨年四月二十七日付の決議の第五項において、共済農協連の行う共済事業と競合する建物等の任意共済は、一定期間後農協に一元化し、事業内容に法的基礎を与えるものとすることを決定いたしておるのであります。これは、災害防除事業は、経済事業を除いて、これを共済団体に一元化する旨の同決議の第九項と表裏一体の関係を持ちましてわれわれの意図を表明いたしておるのであります。このことは農協事業の一環として共済事業を営ましめ、農林資金の蓄積、蓄積資金の生産資金としての農村への還元によりまして、農村金融の体系を完璧ならしめんとする目的に出たものであることは、御了解いただけるところであろうと存ずるのであります。本件について農林省は、制度改正協議会の議を経て決定することとしたのでありますが、今日に至るまで最終結論に達せず、何らの解決策をも講ずるに至っておらないことをははなだ遺憾といたすものであります。しこうして共済団体の行なっておりまする任意共済事業のうち、建物の更新共済につきまして、その法律上の根拠を検討いたしまするに、これが現行法の範囲で実施し得るものなりやいなや全く疑問なきを得ないのであります。すなわち農林省は昭和二十七年四月二十三日付の農政局長通牒を都道府県知事あてに発し、本通牒によって農業共済組合及び同連合会の実施する建物更新共済に関する細目を決定指示しておるのでありますが、本通牒の法的根拠は、農業災害補償法第八十四条三項もしくは同法百二条によるものであると言っておるのであります。しかして法第八十四条三項は、農業共済組合は、任意共済にあっては建物について生じた損害について組合員に対し共済金を交付するものとする云々とあるのでありまして、農業共済団体が行い得る建物任意共済は建物の損害共済であることを明らかにしておるのであります。しからばこの損害とはいかなるものかと考えてみまするに、同法第一条に、不慮の災害により農家のこうむるべき損失であるとしておるのでありますが、建物更新共済では、同通牒において火災、風水害その他不可抗力による災害及び一定年数の経過を共済事故とする共済であると規定いたしておるところから見まするならば、時間の経過による建物の価値の自然的減耗を共済事故としておることになり、法律違反の疑いはきわめて濃厚であると断ぜざるを得ないのであります。また法第百二条には、「農業共済組合の組合員が、自己の責に帰すべき事由がなくて、命令の定めるところにより、一定年間組合から共済金の支払を受けないとき、又は支払を受けた共済金が一定の額に満たないときは、組合は、組合員に対して共済掛金の一部に相当する金額を払い戻すことができる。」とありますが、これはいわゆる農作物共済の無事戻しの制度を規定いたしておることは御存じの通りであります。しこうしてこの規定は、三年以上の掛金の掛捨て農家を救済するために、本条が設けられておると思うものでありますが、この制度と、あらかじめ積金をいたしておいて一定年数後にその払い戻しを受ける仕組みであるところの建物更新共済とは、全く別種のものであって、両者間に何らの関連性はないものといわなければならないと思います。
以上を要しまするに農業災害補償法は、更新共済のごとく満期に至るまでの間積立金を積み立てまして、建物の改築、新築等の資金に充当させまするところの一種の金融事業、貯蓄事業を認めたものでないことは一点疑問の余地のないことでありまして、以上の私の説明により大臣も御了解をいただけるものと存ずるのであります。従いまして農林省が昭和二十七年に農政局長通牒をもちまして、農業共済団体の建物更新共済に関してその実施細目を示達いたしましたことは違法なる行政処分でありまして、非常なる大失態であると申さなければなりません。また建物の損害共済におきましても、これに長期と短期とを行なっておるのでありますが、長期共済は一定額の積金をいたしておきますると、その運営利益が保険料となって火災等の場合保険金をもらうことができる仕組みと相なっておるのであります。これは明らかに一種の金銭信託業務であると思うのであります。農災法がかような信託業務を認めておるかどうか、これまた疑いなきを得ないところであります。よって私は農林大臣に伺うのでありますが、すなわち第一に、建物損害共済につきましては、近き将来すみやかなる機会において農業協同組合に一元化することを含みとして現行法の改正に関し適切なる措置を講ぜられる御意図がありますかどうか、これが第一点、第二点は共済団体の行う建物更新共済事業につきましては、さきにあげた局長通牒が法令違反であることを認められまして、すみやかにその事業を停止する措置を講ぜられますかどうか、これが任意共済に関する質問の第二点であります。
以上任意共済について二点のお尋ねをいたしましたが、総括して三つの問題に対し農林大臣の明確なる御方針をこの際明らかにせられんことを強く私は要望いたしまして、私の質疑を終りたいと思います。御所信を承わりました上でさらにお尋ねする事項がありまするならば、その上でお尋ね申し上げたいと思いますが、これをもちまして一応質疑を打ち切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/2
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003・河野一郎
○河野国務大臣 ただいまの足鹿さんの御質問に対してお答えいたします。農災制度のために国が年々数百億の財政支出を行い、わが国における最も重要な農民保護の制度であるにかかわらず、農業共済団体が会計検査院や行政整理庁から次々と非違を指摘されておることはまことに遺憾なことでございます。この点につきまして行政指導により改善し得る部面については部下を督励いたしまして、即刻改善に努める所存でありますが、制度の仕組みそれ自体の欠陥に起因するところの事業運営上の不正不当事項の是正につきましては、思い切った外科的手術を抜本的に行う以外に方法がないという点については足鹿委員と同意見でございます。しこうしてこの改正の方向につきましては、公共機関による国家補償的色彩の強い制度に切りかえることがわが国の実情に適合しておるように思われますので、さっそく事務当局に検討を命ずることにいたします。協議会の中間答申の取扱いもこれと並行して研究いたします。従いまして協議会の開催時日は若干おくれることになるかもしれませんが、以上の趣旨で成案を得次第進んで御諮問申し上ぐることにいたします。努力目標を三十一年度に置くことはもちろんでございます。
次に建物任意共済についてでありますが、共済事業特に金融事務、貯蓄事務のごときは、農業協同組合が統一的に行うのが妥当であると思いますし、また農林委員会の決議もありますのでこれを尊重し、共済団体の建物損害共済は近いうちに農協に一元化するという点に立って現行法の改正を検討いたしたいと存じます。また長期共済、更新共済につきましては、仰せのごとく手落ちがあれば検討いたし、御趣旨に従ってすみやかに処置いたしたいと存じます。
以上お答え申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/3
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004・足立篤郎
○足立委員 関連して……。ただいまの足鹿委員の質問に対しまして農林大臣は、建物任意共済につきましては農協に一元化する方向で法律改正の準備をいたしたいという御答弁がありました。これは実は非常に重大な問題であります。なぜかならば、これは懸案事項として現在制度改正協議会の重要な議題の一つになっておるにかかわらず、いまだ協議会で全然審議をされておりません。かねて農林大臣は、なおまた政府は、学識経験者及び国会代表等を網羅して作られたこの協議会の意思決定を待って善処しますということをたびたび言明されておるにかかわらず、政府がお作りになった協議会の議を経ずしてそういう答えを出されるということは、今までのいき方からして著しい変化と申さなければならぬ。これは従来いわれてきた、しかもこの協議会の一番大きな懸案になっておる、ガンともいわれておるこの問題について、今勇敢にそういう御答弁をなさった真意を私は疑わざるを得ない。ところで農林大臣にお伺いいたしますが、私は昨年農業団体法の改正案の提案者の一人といたしまして、参議院におきましてその問題について質問を受けましたときに、次の通り答えまして参議院側の了承を得、なおまた参議院側からは御承知の通り附帯決議がついております。その方向は、この任意共済を農協で一元化することは間違いであるという方向であります。そういう字句は使っておりませんが、そういう方向であることは関係者みな了承しておるところであります。特に農業団体間同士でお互いになわ張り争いするようなことはやめた方がいい、何とかこれを調整して、さような醜い争いをやめるべきだという意味の附帯決議が参議院側からついておるわけであります。そのときに私がどういう答弁をしたかということは、速記録によって明らかでありますが、私は次の通り答えておる。それは、すでに農業災害補償法に数年前からこの任意共済というものが認められ、全国的にこの建物共済が実施されまして、きわめて安い料率で全国の農家が多数これに加入しておるのであります。実績はもう明らかであります。おそらく数字に示せば八対二にも及びますまい。九割くらいのものがおそらく共済制度つまり農業災害補償法に基くところの共済組合の建物共済に加入しておりますため、そういう比率になっていると私は確信している。ところで私の考えでは、農家の建物というものは単に住宅ではない。町における商工業者などの建物とはわけが違う。もちろん商工業者でも店舗を兼ねた建物というものはありますが、農家においてはより以上農業というものと密接不可分な関係にある。つまりときには作業場にもなるし、ときには納屋にもなる、倉庫にもなる。農家の住宅というものは農業経営と不可分一体のものである。従いまして農家の建物についてはこの補償制度をさらに拡大強化いたしまして、農業災害補償法の強制加入課目に取り上げて国家補償を実現すべきであると私は確信しているという意味の答弁をいたしております。ところで両団体間の調整をはかるためには、農業協同組合が保有する倉庫その他の建物につきましては、農業協同組合が自主的に、ちょうど町村の役場が、全国町村会で共済事業をやっておるような考え方でやるというのであれば、これは自由だ。しかし農家の建物についてはあだおろそかに考えるわけにいかない。しかも共済農業協同組合連合会というものができて今活動しておりますが、その今までの経緯を考えてみましても必ずしも公明正大な運動を展開しているとは私は思えない。いろいろ暗い面もあるわけであります。そういう面を考えますときに、私は農家のためを考え、しかも零細な、災害その他を受けやすい、しかも風水害、地震等の被害によって農家は再び立つことができないような災害を受ける、これを完全に救うためには、今共済農業協同組合連合会でやらんとしておる火災保険だけではとうてい救い得ない。この風水害や地震等の惨たんたる被害を救ってこそ農家の建物を維持し、農業経営を安定せしめるための施策であると私は確信している。従ってこの農業災害補償法を拡大して国家補償を何がしか、たとえば家畜共済に行われておる程度の最低掛金に対するところの一部国庫負担でもけっこうです。あるいはまた超異常災害と申しますか、大風水害や地震等の場合、とても県の連合会あたりでは負担しきれないような保険責任を国が一部持つというような方法を確立いたしまして、料率をより以上安くして、あらゆる災害に対して農家の貴重な建物、これは申すまでもなく住宅のみならず納屋や倉庫、作業場も含めまして、こういう建物を国で補償するという制度がなければ、私は根本的に救えないと考えて、さような答弁をいたし、参議院において了承を得て、なおかつ私の答弁に対して付帯決議がついて通過成立を見たようないきさつもある。これは農業協同組合法に共済事業を行うことができるという一項目を加えることにつきまして、さような経過になっておる次第でございます。以上の点を考えますときに、農林大臣が今、足鹿君の質問に対して、にわかに改正を目途としてやるのだということを軽率にお答えになることはどうかと思う。農林大臣の私のこの意見に対する御所信をお伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/4
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005・河野一郎
○河野国務大臣 大体御意見を拝聴いたしましたが、それらの点は十分慎重に考慮いたし、善処いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/5
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006・田口長治郎
○田口委員 私は農薬による水産関係の被害問題につきまして、特に有明海、大村湾、橘湾、この非常に入り込んだ海面におきまして被害が相当激烈に起っておる問題につきまして、農林大臣及び関係当局に質問をせんとするものであります。まず第一に農業改良局長にお伺いいたしたいと思うのでございますが、皆さん方は昭和二十六年からホリドールの使用につきまして御試験になりました。そして二十七年には約一万町歩ないし三万町歩、二十八年六十万町歩から七十万町歩使用することになり、二十九年にはこれが一躍九十万町歩以上使用されるようになった。こういうことにつきまして、国の補助を与え、そして使用を奨励されまして、ここまでやってこられたということは、日本の米作が二化メイ虫その他で非常にいたみつけられておる事情からいたしまして、これを完全に駆除して生産増強をはかられるということにつきましては、まことに喜ばしいことと考えておる次第であります。ただこの反面において、人畜はもちろんでありますが、特に水産業、河川漁業あるいは内海漁業の方面に著しく大きな被害を与えておるのでございますが、この点について、この農薬使用を奨励されるときに、ここらの被害まで考慮しておすすめになったかどうか、その点をまず第一にお伺いいたしたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/6
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007・小倉武一
○小倉政府委員 農薬の使用、特に戦後の新しい各種の農薬の使用によりまして、人畜に非常な害を与えることがございますので、新農薬の使用につきましては十分注意しながら実は奨励をして参ったのであります。ただ人畜その他魚類につきましては、必ずしも各種農薬から同一の影響を受けるものでございません。特に動物につきまして、そういった大きな影響を持ちますのは、最近ではパラチオン剤であります。このパラチオンの人畜の被害につきましては、ことしの初めから承知をしておりまして、これについては十分な配慮をいたし、だんだんと使用上の注意も強化して参ったのですが、魚類に及ぼす影響については、必ずしも当初から的確に予想はできなかったのであります。しかしながらお話のようにだんだんと使用量がふえてくるということになりますと、パラチオンの影響ではないかと思われる節も魚類についても生じて参ったのであります。その点について、はなはだ申しわけないのですが、おそまきながら研究もいたし、だんだんと使用上の注意もいたして参っておるのでありますけれども、なお一層そういう方面の調査研究それから使用上の注意ということについては、細心の注意を払って努力いたしたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/7
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008・田口長治郎
○田口委員 相当注意をして奨励をした。ただ水産問題につきましてはいかなる被害を及ぼすか、さようなことは全然考えなかったというお話でございますが、現に有明海におきましては、ことに困ったことには海が入江になっておる。そして海水の環流が非常に悪い。それから干満の差が相当大きいために干がたが非常に発達をしておりまして、この干がたによって、いろいろの重要水産物が生産される、あるいは重要水産物の稚魚あるいは卵の発生がこの干がたの付近でなされるということ、それからもう一つ、背後に耕地が非常にたくさんあるという特殊事情からいたしまして、有明海一帯がこの農薬使用によって非常に打撃を受けております。ただ無鉄砲に政府にお願いをしてもいけないから、今日までいろいろ各県の水産試験場あるいは九州大学などが、被害の実態について調査をしておりましたから、中央に持ってくる期日が非常におそくなったわけなんですけれども、各県としてはこの問題を非常に重要視いたしまして、いろいろ無理な県財政のうちから金を回して、漁業者の救済に当るというような、地方的には相当長い問題でありますが、中央には最近ようやく持って来た。この研究によりますと、二億万分の一のホリドール液で、エビ類がほとんど死ぬ。しかも田畑から流されたホリドールというものは干がたに堆積している。海水中にもある。エビ類が死ぬということは、御承知の通りあらゆる魚のえさの元がエビになっているわけですから、エビ自体の減産ということも漁業者の生活を脅かしますけれども、それ以上に魚のエサがなくなってしまう。こういうことで非常な全体的な減産を来たしておりまして、長崎県にいたしましても、佐賀県にしても、あるいは熊本県にしても福岡県にしても、はなはだしい県では従来の生産の三分の一近くになっている。あるいは二分の一、いいところで、五分の三程度の生産を維持している。これを具体的に申しますと、ああいう内海のところでございますから、半農半漁も多いのでありますが、一ヵ年間に十万円程度の収入で生活をしているわけなのです。それがこの被害ができてから年の収入がわずかに四万六千円、月の収入にいたしまして三千八百円程度になっている。被害前は八千八百円程度の月収入で生活ができておった者が、三千八百円の収入になってしまって飯が食えない。こういう事情になりまして、配給米も取れないというような漁業者が相当できてきております。この被害につきましては、農業改良局長にいたしましてもあるいは水産庁関係にいたしましても、この減収が農薬の使用による、このことだけはおそらく各局の人がお認めになると思います。もしこの被害が認められないということになりますれば、私はその方と今日までの調査研究の資料によって議論をしようと思いますが、これはもう漁業者もそれであり、あるいは九州大学の中間報告なんかもそれによるし、各府県の水産試験場の研究もさようなことになっている。さようなことからいたしまして、今直ちに生活に困っているような漁業者がここにできている。この漁業者にどうして飯を食わせるかという問題を国としてどうしても考えてもらわなければならないと思うのでございます。われわれは近代産業と原始産業の衝突、この問題について今日まで悩んできましたが、今度は原始産業同士が衝突をするという結果になって、そして以上申し上げましたような状態になっているのでございますが、ここに約二万人程度の漁業者が飯が食えなくなっている。この現実に対しまして、農薬使用はおそらくこれをとめるわけにいかない。米の生産増強のためにはとめるわけにいかない。この二つの事情からいたしまして、農林大臣といたしましてはこの問題についていかなるお考えでありますか。いろいろな恒久対策の問題もありましょうが、さしあたり食えない問題に対して、どうお考えになりますか、その点をちょっとお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/8
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009・河野一郎
○河野国務大臣 有明湾一帯の沿岸の海域におきまして、農薬の影響によって、昭和二十七、八年来漁獲が激減して参ったというお話はたびたび承わるのでございます。そこでこの問題の対策といたしましては、まず第一にただいま御指摘になりましたように、当面応急の処置をどうして参るかということと、これは農薬の影響があるとかないとかということにかかわらず、漁獲が激減して漁民諸君の生活に困窮を来たしておられるということにつきましては、早急にこれに対して対策を講じなければならぬと思うのでございます。たとえば漁業の転換をいたすにいたしましても、その他の海岸において他の職業をこれに与えるにいたしましても、早急に応急策として第一に処置することを考えなければならぬと思っております。これが農薬の影響であるかないかということにつきましては、しかもそれがどの程度の影響があるのかということにつきましては、日本全体の農薬の影響と関係のあることでございますから、これについては根本的に徹底的に検討を加えまして、その結論を得ることが必要であると思います。その影響についての結論を得ると同時に、これに対する対策としいたまして、この農薬の使用がどういうふうにすればその害から免れることができるかということ等についても十分検討を加えまして、どうしてもその影響を免れることができないということになれば、さらにこれに対してまた別途考えなければならぬということが起ってくると思うのであります。今お尋ねになっております有明海域の問題につきましては、今の影響を受けておりますアミその他エビ類の生存に支障を来たしているし、また漁獲が激減しているという事実から見まして、これらの漁業の転換、たとえばノリを繁殖させましてその方面に転換をして参るとか、さらにまた近海漁業に転換して参るとかいうようなこと等々について、すみやかに対策を立てて善処するように、実はそれぞれの係の者に命じて、すみやかにこれが施策を講ずるようにいたしているわけであります。幸い今年度予算におきましても多少の余裕もあるようでございますから、御指摘の点につきましては、この方面に重点的にこれらの対策の施設を講ずるようにいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/9
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010・田口長治郎
○田口委員 ただいま大臣の御答弁によりまして、この問題について非常に頭を悩ましておられるということで、誠心誠意対策を講ずるというような御答弁のようでございますが、この二万人の漁業者が今日まで損害をこうむっている金額は約九億円でございます。御承知の通りこの内海漁業は非常に零細漁業でございまして、この零細漁業者が九億円の打撃をこうむったということで、今大臣からお話になりました漁業の転換であるとかあるいは地元の被害をこうむらない漁業に転向させるか、この施設、これも早急にやっていただくことが必要でございますが、さしあたりどうしても飯が食えない、配給米が受け取れない、このさしあたりの問題をどう処理していただきますか。その点について大臣の御答弁をさらにお願いしたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/10
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011・河野一郎
○河野国務大臣 よく地元の各県当局とも連絡をとりまして、実情に即した善処をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/11
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012・田口長治郎
○田口委員 それから私この問題につきまして深刻に考えているのでございますが、将来はどうしてもその被害を及ぼさない有効なる農薬を案出していただくことが根本的な解決と思うのでございますが、今日の農薬に対する研究程度では、直ちにこれに期待するということはなかなか容易でない。たまたま有明海の方は内海であり、水のかわりが悪い。こういうことがまず第一にこの被害が有明海に現われたわけなんでありますが、この次に起るところは、おそらく伊勢湾だとかあるいは東京湾だとかあるいは陸奥湾だとか、そういうようなところ、全国的におそらくこの問題が起るのじゃないか、こういうふうに考えるのでございますが、一方この農薬の使用を禁止することができない以上は、この問題に対して、国として真剣に一つ対処してもらわなければならぬ。かような意味におきまして、片足は水産庁で片足は農業改良局だ、こういうような態度では、この原始産業同士の調和ということはなかなかむずかしいと思うのでありまして、できますれば農林省内に政務次官くらいを対策本部長にでもしてこの問題に対しまして関係局あるいは研究機関、こういうものを一緒にしました対策本部を一つ作っていただけないか。これは今では有明海でありますから、ごく小さい問題でありますけれども、しかもこの原始産業同士仲よくいく連中がこの問題で相反するようなことがございますれば、思想上から申しましても、農村、漁村の平和な生活からいっても、非常に遺憾と思いますが、これを本式に農林省で取り上げていただくという意味におきまして、何か対策本部でも設置していただく、こういうことを御考慮願われませんか、この点を御考慮願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/12
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013・河野一郎
○河野国務大臣 御趣旨ごもっともに考えますので、至急研究して結論を出したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/13
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014・綱島正興
○綱島委員長 先ほどの田口さんの質問のうち、農薬の研究についての御質問がございましたね。今河田研究部長が来ておりますが、お聞きにならぬでもよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/14
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015・田口長治郎
○田口委員 この問題の根本的解決は、先ほど申しますように稲の害虫には効果があり、そしてほかの方面に被害を及ぼさないというような、そういう農薬の案出でございますが、今研究部長がおいでになっておるということで、この方面の研究について今日どの程度まで進めておられますか。その点をお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/15
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016・河田黨
○河田説明員 稲のメイ虫に対します農薬というのは非常にききにくいものでありまして、ようやく最近きくものが出てきたような状態でありますが、同時に人畜に及ぼす影響が非常に大きいので、人畜に対する影響について万全の措置をとりますように研究して参ったのでありますが、水産方面の問題につきましても、最近出て参ります農薬については細心の注意を払っておるのでありますが、現在のところでは完全に水産に影響がないという保証のついた、しかもメイ虫にきくというような薬はちょっとまだ見つかっておらない状態であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/16
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017・田口長治郎
○田口委員 先ほどからの大臣の御答弁によりまして、この問題がきわめて重大なる問題であり、農林省としても真剣に一つ被害漁業者に対する対策を講じていきたい、こういうような御答弁でございます。実行力のある農林大臣でございますし、誠意を持って答弁されておるのでございますから、この点は一つ農林大臣の御努力に期待をかけて、私の質問を終りたいと思いますが、ただ農業改良局にいたしましても水産庁にいたしましても、こういう深刻なる被害がどうも頭にまだぴんときていないような感じを受けるのでございます。これはこの暑いのに、しかも経費も何もないのに、各府県からやむを得ず二十人、三十人と上京して陳情しなければならぬような事情に立ち至っておるのでございますから、被害漁民の気持をぜひ持っていただくように、よく大臣からも打ち合せていただきたいと思うのでございます。その点だけを希望申し上げまして私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/17
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018・河野一郎
○河野国務大臣 とくと了承いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/18
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019・大坪保雄
○大坪委員 私も関連をして、一、二大臣並びに関係政府委員の方々にお伺いをいたします。
ただいま田口委員の質問に対して、大臣は、大体有明海方面に相当農薬の被害が魚介類に及んでおるであろうという程度の御認識をお持ちのように伺ったのであります。ただその御答弁の中に、有明海では相当魚類等に被害があるようであるが、果してそれが農薬の害であるかどうかということをもう少し研究しなければならぬように思う、特に日本全体の農薬と魚類等の関係にはもう少し検討を加えなければならぬように思うというようなお話のようでございますが、これはまことに無理からぬことだと思います。農林大臣は、あるいは有明海の海の状況を果してつぶさに御承知であるかどうか。この点に私どもは一点の疑いを持つわけであります。私は有明海沿岸に生まれて育ったものでありますが、有明海は日本で特殊の性質を持っておる内海であろうと思います。潮の干満がきわめてきついことは御承知の通りでありますが、この有明海の泥土というものは、私どもはがた泥と申しておりますが、他の内海等にはなかなか見得ないような特殊な粘土質であるのでありまして、水中の微生物のようなもの、あるいは小さい塵芥のようなものは付着して離れない。しかもあれは湾口が狭いのでありますから、有明海の海水というものは、外海の水と環流することがほとんどないであろうと思うほどの状態であります。でありますから、たとえば農薬の害が現実にあるとすれば、これは他の外海に直接面しておるような河川等によって流されてくる農薬とは違って、各地から流れてくる農薬の残滓とでも申しましょうか、流れ着いたものが始終停滞して泥土に付着し残る。それがだんだん累積をしてくるという状態になっておると思います。また海水も、今申し上げましたように、外海の海水との環流ができませんから、始終同じような状態で害毒を含んだままに停滞しておるということが認められると思うのであります。これが特徴の一点であります。
それからあそこは、有明海の周辺は、広漠たる面積のある単作地帯の農村でございます。従いまして流れ込んでくる農薬使用後の排水というものが非常に多いということも考えなければならぬ。これもやはりおそらく他の内湾等に比較して、比較にならぬ程度の大きなものでないかというように思うわけであります。そうして二十六、七年、特に七年ごろホリドールを使用することを農林省あたりの御奨励によって農民が使用するようになりましてから、明らかにそうでないかと深く疑いを持たれるような魚介類の損害——死滅損害でございますが、たとえば佐賀県におきましては、佐賀県の水産試験場において検査をしておる。福岡県においては、九州大学の農学部に委託して試験研究をいたしておる。その結果、海水の中にも、または泥土の中にも、明らかにホリドールの存在を認めておる。その存在の程度、含有量は、もう十分に、稚魚はもちろん、相当成長した魚をも、たとえば二十四時間以内に死滅せしめる、あるいは十時間以内に死滅せしめる程度の、濃度の高い農薬を含んでいるということが、試験研究の結果明らかになっておるわけであります。これは昨年の十月に福岡県でその結果を見ておりますから、おそらくその直後に農林省には報告されていると思うのであります。かように、有明海域につきましては、これは全国の他の農村地方あるいは農村と関係のある地方というものと比較研究せねばならぬというような、そんな実はなまやさしいものではないわけであります。これは大臣は御承知でありますかどうでありますか、九州大学の農学部の試験研究の結果如実に出てきておる問題でありますから、有明海の特殊性というものからしてそうであろうという御認識が大臣にあらためて得られますかどうか、その点を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/19
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020・河野一郎
○河野国務大臣 私の申し上げましたことが多少誤解をされていたかもしれませんが、実は私のお答え申しましたのは、その結論は、同時に全国にも影響いたすことでございますから、そこで十分研究をいたしたい、こう申したのでございまして、有明海域の点につきましては、いろいろ九州大学その他で御研究になっておることも、係から十分聞いております。その結果といたしまして、結論的に断定する——程度がどういうものであるかということにつき、またこれが対策についてはどうしたらよろしいかということについては、政府としてまだ結論は得ておりませんけれども、今申し上げましたように、応急策としては、この原因結果が何であるにしろ、早急に善処しなければいけないということは、先ほどお答え申し上げた通りであります。従いまして、その研究の結果を十分に顧慮いたしまして、そしてこれに対する対策等につきましても万遺憾なきを期して参りたいという意味で申し上げたのでございまして、これが全国的に影響があるとかないとか、その調査を全国的に済ました上でどうこうしょうというような意味で申したのではございませんから、その点は御了承いただきたいと思うのであります。有明海には、今お話のような現象が現われております。二十七年を契機にして非常に漁獲が減ってきたということ、それらの結果から見て、そこに何らかのものがあるということは、これはもう否定できない事実でございます。その原因について、今申されまするように、農薬が主たる原因である、農薬が沈澱してそういうことになってきたとかいうこと等につきましては、いろいろ研究も続けておられるようでございます。それらについて対策を講じ、農薬の使用等についても十分対策を講じなければならぬことでございますから、そういう意味で申し上げたのでございますから、お話しになりましたその特殊性等につきましては、十分これを考慮いたしまして、しかるべく係の方においてこれに対処するように指示いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/20
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021・大坪保雄
○大坪委員 ただいまの御答弁で、農林大臣のこの問題に対する御熱意と申しますか、誠意というようなものは私十分うかがえます。どうか十分御検討願いたいと思いますが、今御答弁の中にも、農薬の結果であるかどうかということをもう少し研究しなければならない——それは私非常な重大問題だと思うのです。有明海の海水なり泥土なりについては、佐賀県では水産試験場で現実に研究しておる。これは地方の県の研究機関であるからどうであるという御批判もいろいろあるかもしれません。しかしながら一方九州大学で学問的に検討した結果、これは稚魚ばかりでなく、成長した魚に対しても相当害があるということの結果報告が明らかに出ておるわけでありますから——これはいろいろ社会的な効果を考えらもまして、新聞紙等には発表されておりません。新聞紙等には発表されておりませんが、福岡県の委託によって研究されて、その結果を福岡県に答えられておる。その結論は福岡県から農林省に来ておるはずなんです。これが農薬の害の結果であるかどうかということは非常に問題です。今日日本は非常に食糧が不足いたしておりますから、これは何としても外国から食糧を仰がなければませんけれども、自給というところまではいかぬまでも、極力食糧増産を期待し、これをはからなければならぬ。それがためには病虫害の防除、駆除ということを考えなければならぬ。農薬もできるだけ使う、たとえばホリドールが有効であるならば、ホリドールを使わなければならぬと思います。これは今日必要だと私は思うのです。しかしその結果が絶対魚に害があるということであれば、これはどういうことになりましょうか。現在までは有明海の漁民たちは、百姓が使ったからけしからぬという考えまでにはなっておりません。なっておりませんけれども、これは政府が奨励して使わした農薬の結果であるから、何か政府に見ていただかなければならぬという気持は非常にある。政府の手当がおくれますと、これは漁民が農民を恨むことになりはしないか。先刻田口委員のお話の中に、約二万と仰せられたのでありますが、私はこれは、九州四県で漁業の戸数が二万戸で、人口は約十万になると思います。十万の人口の死活問題になっておる。特に佐賀県では、漁獲高の減少が、二十七年以前と八年、九年と比べますと半分くらいになっておりますが、そのうちで漁民が佐賀県では三千余戸数あるわけであります。そのうちの約七割は漁業専業なんです。これらの人が生活に苦しむ結果、農民を恨むようになっては大きな社会問題になると私は思うのであります。これが今日緊急の事態になっておる。そこを一つお考えいただかなければならぬ。何のためか知らぬが、魚族が死滅しておるというのではいけない。農薬の結果であるかどうかということをはっきりしていただかなければならぬ。それによって策がきまっていかなければならぬと思うのであります。農林大臣はおそらくその点をおもんぱかられて、研究をしようと仰せられたと思うのでありますが、私は、先刻申し上げましたように、農林大臣もよくおわかりのようでありますから、どうか一つ、もう今現実に生活困窮を来たしておる者もありますし、農薬のためであると思い切っておりますから、その研究が必要であれば、すみやかにもっと必要な研究をされる——私は九大の研究で十分だと思いますが、対策を至急にやっていただきたい。
もう一点お伺い申し上げたいと思いますのは、先刻農林大臣の御答弁の中に、本年度予算も多少余裕があることであるから、これに対す対策を講じたい、こう仰せられました。これは大よそどの程度のものをこの問題の処理にお充てになる御見当であるか、それが伺えれば伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/21
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022・河野一郎
○河野国務大臣 いろいろお述べいただきましたが、御趣旨は先ほど申し上げましたようによく了承しておりますから、これについて善処いたしたいと思うのであります。
最後に、これに対する対策としてどのくらいの予算を使うかということでございますが、今の沿岸における漁業を振興いたしますについての予算につきましては、むろん他の方面に必要な個所が非常にたくさんありますけれども、その中で特に有明海域に起っておりまするこれらの事情を勘案いたしまして、これをさいて、その方面に向けることができると考えておるというふうに今申し上げたのでございまして、これは全国的ににらみ合せましてむろんやることでございます。ただしその経費に不足を来たし、現地の調査をいたしまして必要やむを得ざる事態が起りますれば、場合によりましては予備金支出なり何なりをしてでも考えなければならぬ事態が来るでしょうし、ないしはまた一時のつなぎ資金を出しまするとか、必要なる事業をその方面に起しますとか、いろいろ手当の仕方はあろうと思いまするから、これらについていろいろの角度から検討いたしまして、よく地元の方々ともお打ち合せの上善処して参りたいと思う次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/22
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023・大坪保雄
○大坪委員 大体大臣のお気持はわかりますから、大臣の御誠意と御熱意と、また私ども平素敬服しております御手腕に期待いたしまして、それは九州の非常にへんぴなところだからと思って、神奈川県や東京のような大きなところばかりを主にされないように、特に十万の家族を持った漁民の今日の生活問題でありますから、これが漁民と農民の衝突になるような社会問題を起すことがないように、急速な御処置をお願い申し上げたいと存じます。
最後にもう一点。先刻田口委員のお尋ねというか御希望がありましたが、その中に現にいろいろ農林省内にも利害相反するがごとき局部の対立もあるようであるから、この問題の対策のために対策本部を設置していただけないかという御質問がありましたが、この点は私もぜひそういうふうにしていただきたいと思うのであります。もう一度私からも大臣にそれについての御所信を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/23
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024・河野一郎
○河野国務大臣 お答えいたします。最後の点についての対策について、本部を置いたらどうかという先ほど田口さんの御意見もあったわけでございますが、省内として水産とこれらの関係において意見の食い違いとか対立とかいうようなことは、私はあるとは思っておりません。しかし研究を一元化してこれが対策を講ずるということは適切なことと考えますので、先ほど田口委員にああいうふうにお答え申し上げたのでございます。さっそくよく係官とも会議をいたしまして善処することにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/24
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025・川村善八郎
○川村(善)委員 農薬によって水産の魚介類が被害を受けたということは私初めて承わったのであります。それに対しての対策等については農林大臣から御答弁がございましたから、私はそれを重ねて追及いたしません。ただ農薬の問題だけでなく、水産資源に対する被害というものは、やはり鉱工業による被害が相当ありますので、ただ農林省内の対策だけでは満足はできません。私たちはさきに水産資源保護法を制定いたしまして、農林大臣の許可を得なければいわゆる鉱毒を流す鉱工業の作業場が設置できないということで立法したのでございます。ところが参議院に行ってそれが通産委員会から排撃を受けまして、完全に削除されたのであります。従ってひとり農薬による被害ばかりでなく、鉱工業による被害等もあることを十分承知していただいて対策本部をやっていただく。言いかえるならば、農林省と通産省とも相談をして、そうしてそれらの方々の識者も入れて、いわゆる水質汚濁全体の問題を解決づけるような本部を作っていただきたいということを私は要望いたします。そういう御意思があるかどうかという点だけをお伺いしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/25
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026・河野一郎
○河野国務大臣 大へんけっこうな御趣旨でございまして、あわせてその点についても十分考慮いたしまして善処することをお答え申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/26
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027・稲富稜人
○稲富委員 ただいまの点に関連いたしまして一言だけ大臣にお尋ねしたいと思います。有明海の魚介の被害というものは、先刻田口委員、大坪委員から御質問がありましたように、九大等におきましても農薬の結果であるということを言っております。全国的にこういうような例は今までないようでありまして、有明海の被害というのは相当特殊事情というものがあるのではないかと思われるのであります。先刻これらの対策に対しましては、近海漁業あるいはノリの養殖等に転換するような方向をとらなくてはいけないという大臣の非常に御同情のある見解を承わったのであります。ただこれに対する予算の裏づけの問題であります。先刻大坪委員の御質問に対しまして、大臣は全国的ないろいろな事情を勘案して、予算の裏づけ等については考える、こういうようなお話がありました。ところが有明海の状態というものは、ただいま両委員からも申されましたように、今日切実な問題が起っておるのであります。ただ農薬の被害というものは顕著なものでありまして、全国的な事情を勘案してやられるのでは非常に対策がおくれるというきらいがあるのではないかと思いますので、特殊の事情をお考えになって、急速に予算の裏づけをして、これが対策をとってもらう必要に迫られておると思うのであります。こういう意味においてこれに対する処置を講じていただきたい、こう考えるのであります。これに対する大臣のお考えを承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/27
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028・河野一郎
○河野国務大臣 稲富さんのおっしゃることは私もよくわかるわけでございます。むろん全国的に勘案いたしましてと申しますのは、実はいろいろ事情もございますし、しかし今の有明海域における問題は、当面早急に対策を講じなければならぬ問題であることの事情については、十分私も了承いたしておりますから、まず第一にこの点の対策について十分なる考慮を払いまして、必要な経費をこれに投入する、私は大体その方針でおることを申し上げたわけでございます。但しあまりよけい経費が要りますと、本年度予算編成のときに、この問題についてそうたくさん入れるつもりで予算を組んだわけではありませんから、他に支障を来すという妙なことが起ってきますので、これらの全体の点を勘案して御答弁申し上げ、なお必要の場合には予備費等について考えるということを申し上げたのでありまして、それらの点を御了承いただいておまかせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/28
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029・稲富稜人
○稲富委員 ただいま予算の足らない場合は予備金から支出すると、非常に理解ある大臣の御答弁であります。私たちもその線に沿いまして、関係県等も直ちにこれが対策に対しましては本省にいろいろ折衝を進めて、そういう手続等もやると思いますので、その点一つ御了承の上、一日も早くこれが解決に進んでいただきたいということを重ねてお願い申し上げまして、私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/29
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030・綱島正興
○綱島委員長 災害に対する調査はこれをもって終ります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/30
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031・綱島正興
○綱島委員長 次に内閣提出参議院送付にかかる開拓融資保証法の一部を改正する法律案を議題といたし審議を進めます。本案につきましてはすでに予備審査の段階において提案理由の説明を聴取いたしておりますので、この際質疑があればこれを許します。——別に質疑もないようでありますので、この際討論を省略いたしまして直ちに採決をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/31
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032・綱島正興
○綱島委員長 御異議なしと認め、採決をいたします。本案に賛成の諸君の御起立を求めます。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/32
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033・綱島正興
○綱島委員長 起立総員。よって本案は原案通り可決すべきものと決定いたしました。
なおお諮りいたしますが、本案の委員会報告書の作成については委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/33
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034・綱島正興
○綱島委員長 御異議なしと認め、さように決定いたします。
午前はこれをもって終りまして、午後は一時半より再開いたします。
午後零時九分休憩
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午後一時五十五分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/34
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035・綱島正興
○綱島委員長 午前に引き続いて会議を開きます。
この際お諮りをいたします。外務委員会において審査中の日本海外移住振興株式会社法案に関しまして、昨日外務委員会との連合審査会が開会されたのでありますが、さらに引き続いて連合審査会の開催を希望する旨の農林委員よりの発言に対しまして、外務委員会は本日、連合審査会は昨日をもって終ることとなし、なお委員外発言はこれを認めることにするとの決定をした旨の連絡がございました。しかしながらこの法律案につきましては、農林委員会の立場からまだ慎重に検討を要すべき問題が多々残っておるのでありますので、この際さらに連合審査会を引き続き開会されるよう、外務委員会に申し入れたいと思いますが、これに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/35
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036・綱島正興
○綱島委員長 御異議なしと認め、さように決定いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/36
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037・綱島正興
○綱島委員長 昭和三十年産米価問題について農林大臣より説明をいたしたいとの申し出があります。これを許します。農林大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/37
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038・河野一郎
○河野国務大臣 昭和三十年産の米価の決定につきましては、だんだん御注意もちょうだいいたしましたし、またわれわれ各方面の御意見を拝聴する等、その他政府部内におきまする意見の調整等のために、その時期が非常に遅延をいたしまして、だんだん御配慮をいただきましたことを、まずもって厚くお礼を申し上げます。実は政府におきましては、御承知の通り先般これが価格の決定を閣議でいたしたのでございます。
まず第一に御報告申し上げたいと思いますことは、米価審議会の御答申もございましたし、また当委員会における御決議もございましたし、これらの諸点につきまして十分検討もいたし、勘案もいたしたのでございます。第一に生産費を基準にして十分に配慮いたしたのでございますけれども、これにつきましてもなおまた考慮をいたさなければならぬ点もごまざいしたので、原則として生産費に十分なるウェートを置いて、そうして農産物全体の価格決定をして参らなければいけないということはその方針を堅持して参ることにいたしておるのでございますが、さしあたり本年産米の決定につきましてはこれらの点を深く留意いたしますとともに、この資料にとるべきいろいろ条件につきまして、まだ十分に整っておらないものもあります等の関係からいたしまして各般の点を考慮に置いて、すでに発表いたしましたように決定をいたした次第でございます。これにつきましては、全国農民諸君におかれましてもいろいろ御意見もあることと思いますが、事情は今申し上げましたようなことでございますので、委員各位に特に御了解を願って、全国農民諸君に何とか御協力をいただくようにお願いを申し上げたいと思う次第でございます。
なお特にこの際つけ加えて御了解を得たいと思いますことは、私といたしましては、米麦はもちろんのこと、他の一般農作物につきましても、今後生産費を基準にして、これらの農産物の適正なる価格の目標を定めまして、これを中心にして農業政策を推進して参るということがどうしても重要なことであるということを深く考えまして、近く政府部内に農産物の価格をどういうふうに定めていくことが妥当であるか、どういうふうな考え方をしていくべきかということについて調査会を作って、それによって基本的に考えていきたいと思うのであります。そういうふうにしてもし必要な施策が決定いたしますれば、明年度以降において必要なる法律の改正でありますとか、処置をとっていくことに努力をしてみたいと思うのであります。
なおこの際この価格決定に当りまして特に申し添えて御了解を得たいと思いますことは、閣議決定に当って米の将来自由販売の問題がいろいろ話題になったことでございます。これは報道機関において伝えられました点について非常に誤解があるようでありますから、特に誤解を一掃するために私から御了解を得たいと思うのでございます。御承知の通り現在の食管法を中心にいたしまして、特に経理の点において十分に検討をいたさなければならぬ点がありますことは、御承知の通りであります。そこでこの制度をさらに将来続けて参ります上におきまして一段と検討を加えなければならぬ点のありますことも御了承いただけると思うのでございますが、この制度についての検討が直ちに自由販売に通ずるものであるというような誤解を生んでおることでございます。この点は、この制度の検討が直ちに自由販売になるということには私は考えていないのでございます。と申しますのは、自由販売を実行いたしますには、かねて私より機会あるごとにお話し申し上げました通り、それぞれの準備、用意、もしくは一般国民諸君の御理解が必要であることは申し上げるまでもございません。でございますから、この自由販売を実施いたしますにつきまして、いろいろな意味の用意と準備というようなものが、たとえばやるといたしましても相当の期限を必要といたしますので、この制度を改革することが直ちに自由販売に移行するということにはなるとは私は考えていないわけでございます。でございますから、今この制度について根底から根本的に検討を加えるということが、その結論があたかも自由販売が明年から実施されるだろうというような誤解を一部に生んでおることでございますが、これは私といたしましては、決してそういうふうに考えておるのではないのでございます。この制度を検討するということと明年から自由販売を実行するということとは全然関係もないのでございます。私といたしましては、この制度を検討を加えようと閣議で決定をいたしましたことは、それが自由販売に移行するために検討を加えるということになっていないということを、この際御了解を得ておきたいと思うのでございます。
さらにつけ加えて申し上げたいと思いますことは、米価をかように決定いたしましたにつきまして、これに要する財源について、いろいろ従来御意見もあったことでございますので、この点について一つ申し添えておきたいと思うのでございますが、財源につきましては、第一点は輸入米麦の値下りを期待して、これによって約四十八億くらいの資金が予算上から出てくるのではなかろうかと期待いたしておるのでございます。実はこの四十八億につきましては、なおいろいろ検討を要することかと思うのでございます。と申しますのは、大体従来われわれがある程度確定的に想定できます数字は、今日まで本年度の当初から輸入いたしました、輸入の確定した買い入れ価格と予算額とを比べまして、これと同様の計数をもってそろばんを入れますと、大体三十一、二億になるわけでございます。ところが、ここ最近一両年の傾向といたしまして、米麦の値下りは、年初と当該年度の終りとの下降率の趨勢を見て、これを考慮におきまして計数をはじきますと、大体四十八億くらいの数字が出るのでございます。でございますから、一応これは確定的に四十八億と見ることは少し妥当でないかもしれませんが、大体この目途において計数を想定することができるのではなかろうかと思うのでございます。
第二といたしまして、食管会計のもしくは経営費の節減におきまして、大体十八億くらいのものを想定いたしておるわけでございます。この十八億につきましては、従来運賃その他の節減におきまして十三億くらいに見ておったのでございますが、その十三億に加えるに五億加えたわけでございます。この五億はMSAの運賃の状況から余剰の出ておりますものが五億ほどございますので、これを加えて大体十八億と計算をいたしておるわけでございます。
次には業務用米としての売却をいたしたい。これも今後十分検討をいたしまして、その金を幾らにきめるか、数量を幾らにきめるかということにつきましては、なお今後検討を要する点が多々あると思いますが、一応想定いたしますのは、準内地米におきまして十七万トン、これは一升百三十円くらいで売却すれば大体三十八、九億出てくるだろうということを一応想定いたしまして、これらの数字を勘案いたしまして、そうして最後にこれのしわ寄せといたしまして考えたいのは、酒米の値上げでございます。現在一応酒米の価格につきましては、今年度は百十万石酒米に出すことにいたしまして、これの販売金額を一万二千四百円を二万三千八百円に値上げすることによって約二十三億の益があげられると考えておるのでございますが、もし他の費目においてそれだけの所要の経費が出てこない場合においては、酒米についてさらに考慮の余地があるのではなかろうかというふうに考えておるのでございます。こういうふうにして大体百二十八億の財源が得られるのでございますから、すなわち減収加算の費用を三十二億、今回の米価の予算米価に対する差額を九十六億、合計いたしまして百二十八億と見合う資金がここに得られるということを想定いたしておるわけでございます。
簡単でございますが、大体以上御報告を申し上げた通りでございまして、もちろんこの決定につきましては、従来いろいろ御主張を拝聴いたしました皆さんの御意見にそぐわない点も多々ございますので、いろいろ御不満等もあるかと存じますが、以上決定いたした次第でございますので、何とぞ御了承いただきたいと思う次第でございます。簡単でございますが、御報告を申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/38
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039・松野頼三
○松野委員 ただいま米価の問題で大臣から御説明がございましたが、第一に来年度の食管法に対する見解の不明確。第二番目には、米価審議会の答申に対する熱意がまことに欠けておる、答申を尊重しておらない。第三番目は財源における非常な不明瞭さ、この三点につきましても、実は重要な問題がございます。しかし本日は他の議事進行がございますので、当委員会においての質疑は保留いたしますが、この委員会は、本日は全面的な了承の段階にはなっておりません。しかし他の議事進行が会の順序としてございますから、従ってこれに対する質疑は本日はいたしません。一応ここで意思表示を明確にいたしておきます。
なお、ただいまの説明にも関連がございますが、河野農林大臣就任以来の黄変米の発生状況について、おわかりの数量だけ本日御説明願いたい。黄変米は、今後安い外米をますますたくさん買うことによって、国民生活に与える影響は多大でございますから、一応河野農林大臣就任以来の黄変米の発生状況——これはこの前からの懸案ですから、一つおわかりの点を御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/39
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040・河野一郎
○河野国務大臣 黄変米の点についてお尋ねでございますが、これにつきましては、現在まで厚生省から明確な報告を受けておりませんから、せっかく松野委員からの御注意もあったことでございますから、なお緊密な連絡をとりまして、精細調査いたしまして御報告申し上げたいと思ます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/40
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041・綱島正興
○綱島委員長 大臣は非常に差し迫った用があられるそうですから、今日はこれで……。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/41
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042・綱島正興
○綱島委員長 次に水産業協同組合法の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。本改正案起草の件については、去る六月八日の委員会におきまして、水産に関する小委員会の成案について小委員長の説明を聴取いたしましたが、小委員会の案のうち水産業協同組合共済会の問題につきましては、農業及び漁業災害補償制度に関する小委員会の立場からも検討する必要があるとのことから、さらに両小委員会連合会において検討がされたわけでありまするので、この際その経過について御報告を求めます。小委員長鈴木委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/42
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043・鈴木善幸
○鈴木(善)委員 去る五月三十日、水産に関する小委員会において起草いたしました水産業協同組合法の一部を改正するに法律案につきましては、六月八日の本委員会において私からその経過及び結果等について詳細に御報告を申し上げた通りでありますが、その際特に農業及び漁業災害補償制度に関する小委員長から、同小委員会においても本件についてさらに検討いたし、万遺憾なきを期したい旨の発言があり、その後この趣旨に沿って、両小委員会において、六月十一日及び七月九日の両日にわたって連合の小委員会を開催して、慎重審議いたした次第であります。
この連合小委員会における審議の内容につきましては、会議録によって詳細御了承を願いたいと存じますが、その質疑のおもなるものは、農業協同組合等が実施いたしておるこの種共済事業と水産業協同組合共済会の行う事業との競合関係についての点であります。この点に関しましては、政府当局において、本法実施に当っての共済規約の認可等の面において十分注意して、この種の弊害を惹記しないよう善処する旨の発言が行われ、これを了承した次第であります。なお各党におかれましても党議決定を見ておることであり、昨日の理事会にもお諮りして、御了承願っておりますから、本案の取扱いにつきましては、小委員会の起草にかかる本案を委員会の成案として御決定下さいますようお願いいたします。
簡単でありますが、その後の経過及び結果の御報告を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/43
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044・綱島正興
○綱島委員長 ただいまの報告に対し、御意見または質疑があれば発言を許します。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/44
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045・綱島正興
○綱島委員長 別に御発言もないようでありますので、この際お諮りいたします。水産に関する小委員会の起草にかかる水産業協同組合法の一部を改正する法律案を本委員会の成案とし、委員会提出の法律案とするに賛成の諸君の御起立を求めます。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/45
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046・綱島正興
○綱島委員長 起立総員。よって委員会提出の法律案とすることに決定いたしました。
ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/46
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047・綱島正興
○綱島委員長 速記を始めて下さい。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/47
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048・綱島正興
○綱島委員長 次にお諮りをいたします。ただいま商工委員会にて審議中の中小企業安定法の一部を改正する法律案について、商工委員会に修正意見申し入れの件についてお諮りをいたします。本委員会は去る六月二十八日本案につきまして商工委員会に連合審査開会の申し入れを行なっておりましたところが、商工委員会の審査の都合上連合審査会を開会することが困難とのことでありますので、本案に関し修正意見の申し入れを行いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/48
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049・綱島正興
○綱島委員長 御異議なしと認め、次に修正意見の案文を朗読いたします。
中小企業安定法の一部を改正する法律案に対する修正意見
一、中小企業安定法中「通商産業大臣」とあるを、指定業種に属する事業の所管大臣たる「主務大臣」と修正すること。
二、第三十条の二を削除すること。
三、本法中「通商産業省令」とあるを「主務省令」と修正すること。
右のごとく修正相なりたく申し入れる。
こういう申し入れをいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/49
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050・綱島正興
○綱島委員長 しからば委員長の手元においてさように取り計らうことにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/50
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051・綱島正興
○綱島委員長 御異議なしと認め、さように決定いたします。明日は正十時より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後二時二十八分散会
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205007X03919550713/51
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