1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年五月十日(火曜日)
午前十時四十一分開議
出席委員
委員長 佐藤觀次郎君
理事 伊東 岩男君 理事 並木 芳雄君
理事 坂田 道太君 理事 竹尾 弌君
理事 辻原 弘市君 理事 三宅 正一君
纐纈 彌三君 高村 坂彦君
杉浦 武雄君 野依 秀市君
藤本 捨助君 山口 好一君
永山 忠則君 河野 正君
野原 覺君 山崎 始男君
大西 正道君 小牧 次生君
平田 ヒデ君 小林 信一君
出席国務大臣
文 部 大 臣 松村 謙三君
出席政府委員
文部政務次官 寺本 広作君
文部事務官
(初等中等教育
局長) 緒方 信一君
文部事務官
(大学学術局
長) 稲田 清助君
文部事務官
(管理局長) 小林 行雄君
文化財保護委員
会委員長 高橋誠一郎君
委員外の出席者
議 員 池田 禎治君
総理府事務官
(調達庁不動産
部連絡調査官) 鈴木 昇君
文部事務官
(文化財保護委
員会事務局長) 森田 孝君
専 門 員 石井つとむ君
専 門 員 横田重左衞門君
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五月九日
委員久野忠治君辞任につき、その補欠として荒
舩清十郎君が議長の指名で委員に選任された。
同月十日
委員池田勇人君及び木下哲君辞任につき、その
補欠として山中貞則君及び大西正道君が議長の
指名で委員に選任された。
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五月七日
大都市の学童収容対策確立に関する請願(横井
太郎君紹介)(第三二九号)
教育財政の移譲に関する請願(横井太郎君紹
介)(第三三〇号)
追浜地内官修墳墓の祭し及び管理の復活に関す
る請願(山本正一君紹介)(第三四九号)
世界平和の日制定に関する請願(山下春江君紹
介)(第三八二号)
高等学校の定時制教育及び通信教育に関する予
算増額等に関する請願(山下春江君紹介)(第
三八三号)
公立学校施設の危機打開に関する請願(木下哲
君紹介)(第四三〇号)
同(田中幾三郎君外一名紹介)(第四三一号)
同(大矢省三君外三名紹介)(第四三二号)
同(野原覺君外三名紹介)(第四三三号)
同(田中織之進君外一名紹介)(第四三四号)
同(上林與市郎君外一名紹介)(第四三五号)
同(風見章君紹介)(第四三六号)
同(塚原俊郎君外二名紹介)(第四三七号)
同(石野久男君紹介)(第四三八号)
同(田村元君外一名紹介)(第四三九号)
同(村上勇君紹介)(第四四〇号)
日雇労働者子弟の一部教育費免除に関する請願
(横山利秋君紹介)(第四四九号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
国立学校設置法の一部を改正する法律案(内閣
提出第一七号)
文教行政に関する件
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/0
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001・佐藤觀次郎
○佐藤委員長 これより会議を開きます。
国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題とし、審議を行います。並木芳雄君。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/1
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002・並木芳雄
○並木委員 この際お尋ねをしておきたいのは、国立大学を増設していくのか、あるいは短縮していくのか、あるいは現状維持でいくのか。最近大学についての批判の声も出てきておりますので、当局としてはどういうふうに方針を立てておられるかをお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/2
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003・稲田清助
○稲田政府委員 ただいまの点は、非常に基本的な大問題でございますけれども、事務的として近ごろの方針のもとに処理いたしておりますところは、新しい大学につきましては、国立大学については特に拡張というよりも、内容の充実という点に力を注ぎつつあるわけであります。また公私立大学の認可に際しましても、十分内容その他整いましたものに限って認可するというような点について、十分慎重な態度をもつて臨んでおる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/3
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004・並木芳雄
○並木委員 短期大学を整理するというようなことも一部には伝えられておりますが、その点当局はどういう方針で臨んでおられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/4
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005・稲田清助
○稲田政府委員 短期大学を整理するという考えはないのでございます。ただ短期大学につきましては、いろいろこの制度が立てられました以後の実情にかんがみまして、短期大学の目的をもっとはっきりする、あるいは短期大学の基準について相当刷新改善をする必要がありはしないかという意見が、各方面からあったわけであります。ことに中央教育審議会からもそういう趣旨の答申があったのでありますけれども、とにかく現在短期大学としてはすでに二百六十七を数える学校が実在いたしております。それらの学校におきましても、この改善の問題について種々意見がありますので、そうした外界の意見、また短期大学当局の意見等を現在よく聴取いたしまして、研究中でございます。これについて今直ちにどういう方角に持っていくというような点につきましては、まだ方針がきまってないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/5
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006・並木芳雄
○並木委員 この法案の中に天文台関係のことがありますが、天文台については、先般三鷹の飛行場の問題がございました。多々ますます弁ずる重要事項を扱う天文台として、すでにあの場所が適当であるかどうかという点にも触れてくるかと思うのです。飛行場との関係の問題はその後どういうふうに処理されておりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/6
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007・稲田清助
○稲田政府委員 三鷹にあります天文台が、大東京の発展、その他東京都に関連いたしまする諸施設が近傍にできますことによって、その本来の研究なりその他の職能を発揮することについて従来しばしばいろいろな支障が生じて参ったのでございます。御指摘の、隣に飛行場が新たにできるという問題につきましても、この計画を聞きましてから関係者が非常に心配いたしたのであります。その結果文部省と運輸省あるいはまた天文台当局、その他といろいろ協議をいたしまして、これに対しましては科学行政協議会におきましても非常にあっせんの労をとってくれました。その結果、天文台と飛行場設置側との間において協定が成り立ったのであります。すなわち飛行場の利用のためにあかりをつける、あるいは電波を発するというようなことが、天文台の太陽電波観測、あるいは星の観測というようなものに支障のない時間を選び、また十分両者打ち合せの上行うという協定が成り立ったわけであります。その協定のもとに飛行場は経営せられることと思うのでございますけれども、まだ飛行場の仕事が進展してないので、現実においてその協定通り実施しているかどうかというようなことは、将来の問題になると思うのでありますけれども、当事者が両方誠意をもって約束したことでありますし、われわれといたしましても十分天文台のためにこの協定が実施せられることを監視いたして参りたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/7
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008・並木芳雄
○並木委員 天文台の場所でありますけれども、私は大きな対策として、昔はあの辺がかなり人里離れた好適地であったかもしれませんが、今はもう郊外住宅地のまん中にはさまってしまって、あるいは適格でないかとも思うのであります。思い切って、広い、もっといい場所というものを選定する方法もあるのではないかとも思うのですが、その点については何か当局としてもお考えになっておられますかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/8
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009・稲田清助
○稲田政府委員 お話のように、飛行場ばかりでなく、従来も近隣に大きな住宅建築のできますことをやめていただいたこともあり、あるいは進駐軍が水耕栽培をやることをやめてもらったり、始終障害排除にいとまがないのが今の現状でございます。とは申すものの、あの天文台をかりにどっかに移転するということになりますと、あの観測は寸時も休むわけにいかないのであります。従いまして、あれだけのものをあそこで働かせながら、同時にまた新しいところを探さなければならない。これは十億かあるいは何十億という金を用意してかからなければならない。それからまた適地を探す点にも非常に困難があります。現在までは極力近隣の妨害排除に努めてきておりますけれども、将来の問題としては、御指摘の点は考究しなければならぬ問題だと思つております。われわれといたしましてもいろいろな観点から考究いたしておりますけれども、なかなか容易なことでない、今直ちにその計画を得ることは困難だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/9
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010・並木芳雄
○並木委員 原子核の研究所のことでちょっとお伺いしておきたいのですが、これは東京大学だけに限定していく方針ですか。それとも将来は他の大学からも当然、原子核時代として、その研究所の申し出なんかあるんじゃないかと思いますが、その現況と将来に対する方針を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/10
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011・稲田清助
○稲田政府委員 ただいまの点でございますが、御審議をいただいております国立学校設置法の条文でもごらんいただけまするように、この研究所は普通の大学附置の研究所の章には規定いたしませんので、別にその共同利用の研究施設という章を設けられております。そのうちにこれを設ける予定であります。それによってもごらんいただけまするように、最初からこれは東京大学に附置いたしますけれども、「国立大学の教員その他の者で当該研究施設の目的たる研究と同一の研究に従事するものに利用させるため、」というふうにうたっております通りに、あらゆる方面の、あらゆる機関の研究者に利用せしめる意図でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/11
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012・並木芳雄
○並木委員 この原子核研究からくる排泄物の処理、灰とか煙とかそういうものですか、その処理というようなものについては、アメリカの方でもずいぶん手をやいておるというふうに聞いております。その場合、十分当局は衛生管理について準備をされておりますかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/12
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013・稲田清助
○稲田政府委員 お話の点が、この原子核研究所に関連いたしまする建築及び設備について非常に重要な関心を持たなければならぬ点でございまして、そのために特別に費用をかけ、特別にまた設計を考えまして、原子核研究によりまして近隣の人に影響を及ぼしましたり、あるいは研究従事者に対して健康上の障害がないように、配慮いたして参るつもりでございます。一般に考えられまするように、原子核研究所におきましては、いわゆる原子炉あるいは原子力利用というような場合と違いまして、非常にこうした障害は少いのでございますけれども、特にそういう点については慎重に配慮いたしまして、間違いのないことを期したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/13
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014・並木芳雄
○並木委員 そうしますと、昨今急に取り上げられて参りました濃縮ウラニュームですか、どんなものだか僕は知りませんけれども、これはまあ原子核から原子力利用の分野に入ったものなのでしょうね。近ごろ濃縮ウラニュームの問題が日本でも取り上げられてきましたが、これとの関連はどうなんでしょうか。つまりただいまのお話ですと、原子炉利用の点は関係なし、あるいは原子力利用の点は関係なしということで、原子核研究だけに限るというふうでございますから、濃縮ウラニュームの問題は出てこないかもしれませんけれども、原子核研究所が東京大学に一つだけである。しかもそれが共同利用のものであるということになると、将来これを拠点として濃縮ウラニュームの利用の問題にまで発展するのではあるまいかという疑念が出てくるのであります。あそこでかなり反対の意見も強かった中に、絶対に原子力利用のところまでいってはならないという条件がついておったように記憶いたしますが、そういうことになるとまた約束を裏切ることになりますので、この際はっきり濃縮ウラニュームその他原子力利用との関係を説明しておいていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/14
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015・稲田清助
○稲田政府委員 東大に附置いたしまするこの田無の原子核研究所におきましては、原子核構造あるいは素粒子というような点につきまして、基礎物理学に関しまする実験を行うだけであります。従いましてここにおいて直ちに原子力を発揮させるとか、原子力利用の実験を行うというようなことは、伴わしめる予定はないのであります。お話の、今問題になっておりますのは、通産省所管において、予算に基いて目下計画中のいわゆる原子炉に関しまする問題であろうと思うのであります。原子炉におきましては、原子力を起させましてこれを利用する実験もやれば、あるいは現実に平和的利用も行う。そのために材料といたしまして濃縮ウラニュームを輸入するかどうかということが今論議せられておるわけであります。従って研究の目的あるいは利用が非常に違います。たとえて申しますれば、われわれの方で原子核研究というのは、電気そのものの研究、たとえで非常に恐縮でございますけれども、原子力利用の原子炉の方は、発電所をつくるというような問題でありますので、そうした基礎研究の場所において発電所をつくるというようなことは不可能でもあり、これはまた別の問題である。原子核研究所におきましては、原子炉をつくるというようなことはあり得ないことだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/15
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016・佐藤觀次郎
○佐藤委員長 それに関連して辻原弘市君から発言を求められております。辻原君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/16
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017・辻原弘市
○辻原委員 二つの問題についてお伺いをいたしますが、一つは、これは解散以前の当委員会で決議せられた事項でありますが、大阪それから愛知、福岡、東京等における学芸大学の昇格の問題について、今度の設置法の中で法案を提出されるに当って、あるいは予算化されるに当って、どういう考慮を払われたか。当時決議の趣旨は、過般これは文部当局の方からもしばしば言明されておりまするし、またあらためてその後大臣のお考えの中にも大学制度万般についての方針が示されておりましたが、その趣旨にも私は合致しておると思いますけれども、学芸大学における短期大学制度をできる限り四年制度に切りかえていくという、こういう趣旨に基いて、特に先ほど申し上げました地域においては相当の伝統と教育施設もあり、また志願者の充足状況からみても昇格せしめることが適切であろう、こういう意味で当時議決せられたものでありますが、その後文部当局としては、この議決の趣旨に基いてできる限り努力いたしたいという答弁がありましただけで、何ら考慮が払われていないように私お見受けするのでありますが、どういうふうに取り扱われたかを、この際明らかにしておいていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/17
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018・稲田清助
○稲田政府委員 本件についてはお話のごとく十二月七日の文部委員会において御決議があり、当局においてこれを尊重する旨の答弁があったわけであります。ただ今年度の予算についてこれをどう現わしたかという点についてでありますけれども、これは全く新たに学生を募集するというような問題と関連いたしまするもので、本年度の予算の特殊な性格といたしまして、学年の初めに出発することのできなかった予算にはこうした点についての問題は盛りかねたのであります。今御審議いただいております学部、学科その他ありますけれども、これはそれぞれ特殊の事情がございまして、学年の初めに生徒を入れないでもよろしいというようなものだけを予算化し得た次第でございます。なおこの問題を解決いたしまするためには、先般も申し上げましたように、これは全国的に関連する問題であって、全国的に解決を予想して財政計画、教育計画を立てなければならぬ。それには非常な経費もかかります。またそれぞれの地区におきましては、なお相当意見の対立、その他もあるようであります。従いまして中央におきましては、一体いついかなる時期にこうした大きな仕事を実現するか、相当な用意を持って進まなければならぬ。また名地方におきましても、それについての意見の対立を解消していただかなければならぬと思います。そういうために相当な準備と時日がいると考えております。そうしたいろんな点からいたしまして、今御審議願っております予算には、本問題につきましては計上し得なかったことを御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/18
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019・辻原弘市
○辻原委員 この際政務次官にもお伺いしておきたいのでありますが、今説明がありましたような事情であるとするならば、近い機会に——これは私も二、三の地域の問題を取り上げて申すのではございません。学芸大学のスクーリング延長の問題と、それからもう一つは、やはり先国会で審議されました免許法の改正等ともからみ合せまして、教員資質の向上という意味において、やはり学芸大学は四年制に将来これを切りかえていくということを実現しなければ、どうも免許制度の確立が十分行きわたらないようにも考えまするので、それとの関連においても、早い機会に方針を確立して、あるいは年次計画等を立てるにいたしましても、これに着手するという考えで進んでいただかなくては、教員資質の向上、確立ということは望めないと思いまするので、この点大学制度万般の問題とも関係をいたしておりますが、大臣が出席されておりませんので政務次官等いかがお考えなさっていられるか、この機会にお伺いをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/19
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020・寺本廣作
○寺本政府委員 ただいま大学局長からお答えいたしました通り、昨年の十二月の当委員会における御決議の趣旨は十分尊重いたしまして、予算折衝の際考慮いたしましたが、大学の新設ということについては、多額の予算を要する問題でもありますし、十分の準備がなければ着手できない問題であるということで、今度の予算には計上いたされておりません。しかしお話の点は十分考慮いたしまして、将来の問題として研究いたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/20
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021・辻原弘市
○辻原委員 これは今研究というお話でありましたが、研究は積んでおられると思うので、明らかにしておいていただきたいのは、実際そういう方針に基いておやりになるお考えをはっきりお持ちになっているかどうか、確立されているか、この点を明らかにしておいてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/21
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022・稲田清助
○稲田政府委員 お話の点に二つの問題が入っていると思います。四年課程が本体で、二年が暫定だから、なるべく四年に移行するようにという御趣旨だと思います。この点は年々御審議いただきます予算でごらんの通り、本年度におきましても、多少なりとも二年を減らして四年をふやすというのが全国の状況でございます。
それから特殊の問題として、大都市その他における従来二つの教員養成機関があって、それが統合されたものを分離するという問題につきましては、今政務次官がお話しになりましたように、これはよほど慎重に検討もし、また地元の意向もまとめてかかりませんと、着手し得ない問題だと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/22
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023・辻原弘市
○辻原委員 先ほどからしばしば地元の対立ということを言われるのでありますが、そういう問題が近い機会に解決すれば、今日新しく四年制を確立する、そういうお考えを現在お持ちになっていられるのか、その点を一つ重ねて明らかにしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/23
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024・稲田清助
○稲田政府委員 とにかくこの点につきましては相当な用意が要る。ただいま政務次官からも申されましたように、建築費として関連の学校を考えますると、われわれの計算では二十七、八億の建築費が要る。経常費としても三億以上の経常費が要る。人員の増においても六百人以上要る。これだけのことを大学行政において実施いたしまするということは、相当な大きな拡張でございます。従いまして一面大学につきましては、今充実が主であって、拡張を従とすべしという御意見もずいぶん強く各方面からうかがわれる。そういうことと、両者相まって考えまして、いつ一体いかなる時期にこれを実施するかという点については、なおしばらく時をかしていただいて、研究さしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/24
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025・辻原弘市
○辻原委員 地元の問題等もいろいろあるようでありまするので、そういう点については継続的にやはり地元の意向、あるいはその間の経緯等を文部省としても積極的に一つお聞き取り願って、できれば、予算の問題になりますけれども、やはり養成機関の問題でありますので、地元の熱意にこたえられるような方針を一つ確立願っておきたいと思います。
次の問題は、やはり同じような問題でありますが、これも十三国会であったかと記憶しますが、神戸の商船大学の返還の問題で、当時の委員会の方々も非常に協力されて、ようやくこれが占領当局から返還を受けて、神戸商船大学の設立経過を今日まで見てきたわけでありますが、何か聞くところによりますと、当時神戸商船大学が設立いたされましたときには、海技専門学院でありますか、運輸省所管のものと一体の形で設立されて、その後経営、運営等についても協力態勢で今日まで進んできたし、発足の趣意もそういうことであったと思うのでありますが、本年度の予算で、この運輸省所管の海技専門学院が、芦屋市に新築移転をするというような方針のもとに予算を計上されているということを知ったのであります。こういうことに相なりますると、設立当時の趣旨も若干そこなわれる結果にもなりまするし、また今後の高等海員を養成するという国策的な立場に立ちまして、どうもそれで十分であるとは考えられにくい点がある。それに対応する商船大学強化のための予算措置が行われておるならば知らず、あるいは運営について何か補強、強化する特別の方法が講ぜられているならばいざ知らず、そのままの形では、どうもこの商船大学強化という面には、若干の危倶の面を抱かざるを得ないのでありまするが、そういう点について運輸省その他とどういう話し合いになってきたか、あるいはもし分離、新築移転ということになったあとの学校運営について、何らの措置が講ぜられておらないとするならば、これは多少考えなくてはならぬ問題でありまするので、それにかわる強化策を文部当局としては積極的にお打ちなさっていられるのか、この点をお聞かせを願っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/25
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026・稲田清助
○稲田政府委員 ただいまの点は、神戸商船大学を創設いたしまする際に、運輸省所管でありまする船員の再教育と、文部省所管でありまする大学における教育とを、将来これを分離するか、あるいは一緒にするかというような点については、いろいろ意見の対立がありましたが、根本的な解決を見ずに、当分の間は現在通り両者を同一の箇所で出発させようということで計画されたと記憶しております。その現実に基きまして、年々の年次的拡充の予算が今日まで計画されて参ったのであります。しかるところ運輸省にありまする船員教育審議会でいろいろ審議いたしました結果、教育上の見地から見て、この両者は分けた方がいいという意見が答申せられたのであります。その理由としては、再教育を受くべき船員というものは、みんな年をとっております。家族持ちでもあり、相当海上生活の練達経験者である。それを若い学生と一緒に教育する点について、かなりいろいろな問題もあるというような点から、両者をあまり遠くない距離において分けて実施する。従って教員は必要ならば交換をして協力してやっていったらいいじゃないかというような話がございまして、それに基いてただいまお話のように、運輸省におきましては、再教育の方を近傍の芦屋市に分離する計画を立てて、その予算を要求中であります。われわれといたしましては、分離することによって大学教育に何かマイナスになるならば、それに対しては埋めなければならぬ、すなわち分離することによって、大学が使っておりました器具、機械を持っていってしまっては因る。また分離することによって、定員に不足を生じてはいかぬ。こういう点で運輸省と話し合いまして、原則的には両省の間においてすでに了解が成り立っておるのです。これに対して一緒にいる方が教育的である、あるいは分離する方が教育的である、この意見は人々によっていろいろ違いまするけれども、われわれとしては、少くもマイナスであってはならぬという態度を持って今日まできたわけであります。どっちが積極的に教育的だという点については、これは意見の相違という点もありますので、われわれとしては、その点は運輸省でも分けることが正しい、船員教育審議会が分けてもらいたいと言われるならば、これに同意してもよろしいということで参ったわけであります。従いまして、ただいま辻原委員が御懸念になるような、このために大学の支障を来たさないという点については、運輸省とも話し合っておりまするし、今後もこれを確保いたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/26
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027・辻原弘市
○辻原委員 そういう経緯でありますると、文部省の言に信頼をしたいのでありますけれども、ただ私はこれを考えたときに、そもそもこれを一つにして、そして運営に当れという趣旨は、やはり再教育であろうと何であろうと、高等船員に対する養成機関として、これは一元化したものであろう。おそらく私はその後、これは片や運輸省所管、片や文部省所管などというのではなくして、どこかに一体にされて、教授の交流、あるいはその他施設等についても完全に全部統合した形において運営するのが、国家的にみても、経費の上、あるいは教育系統、いずれもその方が適切であるから、逐次この不自然な学校経営の形は解消せられていくものと考えておったのでありますけれども、それがにわかに分離されてきたということについては、今お話のようにそれぞれ理屈はつくことはつくのでありますけれども、ましてや神戸と芦屋という近い関係にあれば、さして分離したからといって、それによって特別に特殊な教育をやるのではないのでありまするから、大きな効果が期待できるように思わぬのでありまするけれども、何かその間に運輸省、文部省というふうな一つの所管争い、極端にいえばセクト主義、こういうにおいをどうも発散してしかたがないように考えるのでありまするけれども、そういうことはございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/27
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028・稲田清助
○稲田政府委員 その点は、私ども自身は感じないのであります、再教育でありますが、これは船主というものをつかんでいるものでないと、再教育の対象になりまする船員というものを集めにくい。これはどうしても文部省よりは運輸省がやるのが、私どもとしてはいいと思っております。もちろん青年の養成ということは、教育を主管とする文部省がよろしい。この両者が同じところでやるというのは、別に権限の争いとかいう問題でなくて、先ほど申しましたように、非常に状況の違う——片方は家族持ちの年とった人たち、片方は今高等学校から出てきた若い者、両方とも寄宿制度でありまするけれども、こういう場合に、両者の生活というものをある程度別にした方が、教育的に万全を期し得るのだというのが今回の分離の主眼であって、それ以外に別に他意はないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/28
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029・辻原弘市
○辻原委員 時間がありませんからあまりこまかいことは申し上げませんが、もしそういうようなお説が通ずるとなれば、一般教育の養成機関がたくさん教育機関に付設されておりますが、これをすべて分離した方がよろしいという議論になります。先ほど学大昇格の問題については、予算の問題を云々され、そしてこういうような特別に大きな理由がないにかかわらず、ただ所管が違うということで莫大な予算を計上するということなどは、教育という問題の上に立って考えてみれば、どうもあまり国費の効率的な運用ではない、こうきめつけざるを得ないのであります。本日は運輸省が出ておりませんので。文部省にだけ申し上げてもこの問題ははっきりいたしませんから、これにとどめておきますが、なお一点、教育的にあまりあと支障がないというお話でありますが、もちろん程度の問題はあります。しかしやはりこれによって従来協力的な形で運営をしておった教授面——これは学科担当の教授等についてはそうでないと思いますけれども、その他補助的な職員等については、十二、三名程度はやはり供出を受けております。そういうものがそっくり向うへ引き抜かれるとなれば、やはり定員の減少が起ってくるわけであります。そういう点については考慮されていないようでありますが、これも一つ十分補填の考えをお持ちなさるようにお願いをいたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/29
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030・佐藤觀次郎
○佐藤委員長 次に竹尾君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/30
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031・竹尾弌
○竹尾委員 今二人の委員さんから大体お尋ねいたしましたから、私の尋ねる分野が少くなったのであります。それともう一つは、いろいろわたしも事情を知っている方なんで、あまり局長をいじめてもしようがないので、遠慮しようと思ったのだが、一応お尋ねします。きょう出された法案の短期大学、あるいは学部の分離等々で予算はどのくらいかかつておりますか。調べればわかるけれども……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/31
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032・稲田清助
○稲田政府委員 学部の関係がおよそ四千八百万円程度でございます。それから短期大学が三百万円くらい、原子核研究所がおよそ三億、その程度でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/32
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033・竹尾弌
○竹尾委員 そうしますと、今度は大学の設置というようなことに移るのですが、今あなたの御回答では、設備の充実したりっぱなものは設置するのもよろしいし、分離するのもよろしい、こういう御答弁のようでしたが、それでいいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/33
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034・稲田清助
○稲田政府委員 申しましたのは公立、私立の大学を認可いたしまする場合に、私どもといたしましては、十分その教育効果の上ります程度に設備も教授力も充実したものを認可して参りたい、こう思っております。これは国立学校の点じゃございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/34
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035・竹尾弌
○竹尾委員 国立学校も入っているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/35
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036・稲田清助
○稲田政府委員 国立学校については、その前段に申し上げましたように、内容の充実という点に力を注いで参りたい。今後は拡張よりも内容の充実という点に主眼をおいて参りたい、こう申したのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/36
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037・竹尾弌
○竹尾委員 そうしますと、内容の充実に主眼をおくんだ、拡張は従であるということは、拡張しないという意味ですか、拡張は従であるというのは非常にぼんやりしているのですが、いいものであれば拡張するというのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/37
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038・稲田清助
○稲田政府委員 私の従であると申しました意味は、絶対にしないということでもないと思います。と申しますのは、なおまだ戦時中転換いたしました学科等で、もとへもどってない学科等もございまするし、そのほか学術の進歩なり、いろいろ土地の状況その他考えなければならぬと思いますけれども、何と申しましても、今大学をめぐる多くの批判というものは、大学の内容の充実、これはわれわれ始終鞭撻を受ける点でありますので、どういたしましても考えの中心が充実という点にとらわれる、こういう意味で申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/38
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039・竹尾弌
○竹尾委員 局長、なかなか答弁がうまくて、今逃げそうになっているのですが、わたしのお尋ねは、拡張は従であるということは、不可能じゃない、こういうことに受け取れますが、そうなると、やむを得ないものは新しい大学を作ってもよろしい、こういう工合に解釈していいのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/39
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040・稲田清助
○稲田政府委員 問題は、非常に喫緊のものと、あるいは着手の前後軽重というような問題で分れると思います。私どもは、決して絶対に将来永久にというようなことを申し得る立場でない。ただわれわれが今非常に関心事であるものが充実であって、充実を犠牲にしてまで拡張に走るということは今考えたくない。この程度にお聞き取りいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/40
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041・竹尾弌
○竹尾委員 どうもそこがはっきりしないのですが、緊急やむを得ないという言葉の解釈として、事実においてやむを得ないものは作らなくちゃならぬ。大学設置委員会もあるし、そう簡単にいかぬけれども、そういう場合には作らなくちゃならぬような事態が生じてくる、こう解釈してよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/41
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042・稲田清助
○稲田政府委員 決して限定した窮屈な絶対的な意味で申し上げているわけではないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/42
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043・竹尾弌
○竹尾委員 だからそういう場合には、作るようなこともあり得るということですね、そうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/43
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044・稲田清助
○稲田政府委員 もちろんあらゆる場合を予想し得ないのであるから、そうした場合も起り得ると思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/44
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045・竹尾弌
○竹尾委員 そこで問題は具体化するのですが、今の学芸大学の問題なんだが、これはきょうはお尋ねしないつもりだったのですが、あちらの委員さんからお尋ねがあったから、幸いか不幸かわからぬが、ちょっとお尋ねするのですが、あの問題につきましては、御承知のように昨年ああいう決議をした。そうしてどうしても四年コースだけは置かなくちゃならぬ、置きたい、こういうことであった。ただし具体的に申し上げますと、名古屋の問題、小倉、大阪、北海道、宮城に大学を一つ作らなければならぬ、こういう一連の問題がありますが、そこで緊急やむを得ないものは作らなくちゃならぬということになるとすると、事実上やむを得ない事態に追い込まれているところもある。だからそういう点は、三十億かかって、それで定員六百名を増員しなくちゃならぬから今はだめだ、こういうことになるので、あなたはうまく逃げているわけだ。ところが事態によってはすぐ作れるようなところもある。名古屋など非常にむずかしい。ところが大阪など、具体的に例を取れば、これは天王寺と池田の両方の同窓会がうまく進みつつあるから、やろうと思えばできるでしょう。九州などもそうだと思う。小倉と福岡がどういう関係か、おそらくそうだと私は思うんだけれども、だからそういう作れるところは作ったらいいじゃないですか。作れないところはあと回しにして。それは大学設置法による単科大学でなくてもいいんだ。四年コースをとにかく作ればいい。そういうことは行政措置でできるのですから、あなたがやろうと思えばできるんだ。やらないと思えばできない。そのうちにあなたが事務次官などに栄転してしまったらできなくなる。だからどういうお考えか、そこをちょっとはっきりしていただきたい。問題が具体化してる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/45
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046・稲田清助
○稲田政府委員 御意見拝聴いたすわけでございまするけれども、今竹尾委員は、分けて考え、片っ端から片づけていっていいじゃないかという御意見のように承ったのでありますけれども、私どもは現実の問題として、また今までの経緯から考えまする場合に、この御決議の出ます時分におきましては、関連の学校はみんな一連の問題としてこの場に出ているものと考えるのであります。従いまして財政計画を立て、あるいは教育計画を立てまする場合に、先は先でいい、できるものからというような片づけ方は、われわれ事務当局としてはいたしにくいのでありまして、やはり見通し、総額どのくらいかかるか、どのくらいな重みの仕事になるかということを考えて、それ以外の大学行政諸般の問題、いろんな着手の前後等を勘案しなければ、われわれの立場におきましては困難な次第と考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/46
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047・竹尾弌
○竹尾委員 そこがいかぬですよ、そういう考え方が。(「次官に聞け」と呼ぶ者あり)次官はいろいろ御存じない。局長が一番よく知っているんだから、局長がいいと言えばできるんであって、それは財政計画がどうのこうのなんといっても、それはそういう簡単なものじゃないのですよ。それは一つ一つできるところからやっていかなくちゃならない。それはまたあなたのおっしゃる緊急の事態に到達してると見なくちゃならぬ。そういうところから作らないという法はないでしょう。だからそれは作りなさいと言うんだ。できるんだから。できないことをやれとは言わない。しかもそれも大学設置審議会か、あれを通してりっぱな単科大学を作れ、こういうことじゃないのですよ。できるところから四年のコースにしたらどうか、こういうわけなんだ。それをもう一度一つ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/47
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048・稲田清助
○稲田政府委員 御意見に対しましてまた繰り返すこともおそれ多いのでありますけれども、私どもといたしましては一応そう考えますけれども、なおただいまの御意見とくと研究いたしたいと思ます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/48
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049・竹尾弌
○竹尾委員 とくと研究するということは、早くできるところからやって下さいという意味で、やればできるんだから、できないとは言わせない。必ずできる。だから一つそれはそれでお願いいたします。
それからもう一つ、それは神戸商船大学のことだったんだが、こちらで懸命にやって下さったから、それ以上やる必要もないのだけれども、あの大学を作るときは、これは昔の話でずっと前だけれども、私が委員長のときあなたがた反対された。文部省は消極的で、できなければこれはけ飛ばしてしまう。それをわれわれが作ったんだから、ある意味では無から有を生じたので、その間に非常に私、今でも苦労しておる。そこで神戸市、兵庫県、大阪府、市で寄附金を出さなくてはいけない。金を集めるのは大へんですよ。あなたもよく御存じの通り、そのときにそういう際に当って、海技専門学院が分離をするということは、あのときに分離しないでいこう、こういう趣旨でやったんですよ。だから定員が百六十何名かのところを、海技専門学院と交流するから百五十人以下で押えたわけだ。それを分離するということは、あの大学の将来に非常なマイナスを来たすと私は思うんだけれども、その点どうですか。それから先ずお尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/49
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050・稲田清助
○稲田政府委員 その点、先ほど辻原委員にお答えいたした通りでありまして、われわれの了解といたしましては、将来分離するか、あるいはもっと一緒にするかということは、当時解決しなかった問題でありますが、さしあたり同じ場所でやっていこうということで、年次計画を立てて今日に及んだと思います。今度運輸省の方で分離する計画を立てまして、その予算を運輸省所管において今要求いたしておるわけでありますが、先ほどお答えいたしましたように、分離する結果、大学がマイナスを生ずることであれば、われわれは分離に反対するということを運輸省にも申し入れております。従いまして、分離するために大学の必要な器具、機械を持っていってしまう。あるいは大学に必要な人手が足りなくなるというようなことがあってはならぬ。その点については、運輸省と原則的に了解が成り立っておるわけでありまして、予算が成立いたしまして、これを実施する場合におきましては、十分細心な注意を持って、大学教育に支障のないようにいたしたい所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/50
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051・竹尾弌
○竹尾委員 それは大学教育に支障がないようにじゃない。支障を来たしつつあるんだ。そして設備を持っていかれるようなことになれば考えますと、こうおっしゃるけれども、運輸省では持っていくと言っておるんだ。だからそれはあんたマイナスにきまっているじゃないか。そういうことをされて、すでに運輸省の方は予算を計上しておるわけなんだから、これを文部省で黙って見ているなんていうことは、私はどうかと思う。しかもこれはもとをただせば、あなたの方は反対した大学なんだから、それを今この際もう一年で完備しようという三十年度に、こういう問題が出てくるということは、商船大学の将来に対して非常に暗影を投げるものだ。そこをよく御注意していただかなければ困ると思うし、向うでは予算に出してきているから、これに対してどういう対応策を立てるか、話し合っているといっても承服できない。どの程度に何を話し合っているのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/51
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052・稲田清助
○稲田政府委員 ただいまの器具の問題については、両省共有というか、一緒に使っている分がたしかにございます。これは置いていくという運輸省の了解であります。それから技官等につきましては、文部省所管において定員増を見るまでは、やはり今まで通り両方の仕事をやれるようにあの場所に置いておく。教員がお互いに兼務するという点については、芦屋と神戸の問題でありますから、これも支障なく行なえる。再々申し上げておるように、原則的に両省間の意見は合致いたしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/52
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053・竹尾弌
○竹尾委員 私は合致していないと思うからしつっこくお尋ねするのですが、あそこに持っておる専門学院の設備を持っていってしまうと言っておる。それをあなたはそうじゃないと言うけれども、その通りに私はなるだろうと思う。それで心配しているんだが、話し合いといっても、そんな具体的な話し合いまでできていないんじゃないか。そこでこれはわれわれが責任があるんだ。議員立法で出した法律であって、われわれが通してわれわれが作ったようなものなんで、それを今度あなたの方で、完成の最終年度にそんなことをされて、いいかげんにやられてしまっては非常に困る。それから寄附の問題もからんできている。これ以上私申し上げませんが、あなたにも私は御注意申し上げた点もあるけれども、それをあなたはわれわれの注意も聞かずにやられたようなところも、具体的に私は申し上げませんが、あなたよく御存じのはずなんで、そういうことでこわされてしまっては困るんですよ。人事の関係も、私それ以上よく知っておりますが、ここで申し上げません。とにかくあの大学を三十年度に完成されるように、一つしっかり努力していただきたい。こういう強いお願いをいたしまして、この辺できょうは打ち切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/53
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054・佐藤觀次郎
○佐藤委員長 ただいま池田議員から学芸大学の問題に関して委員外の発言を求められております。これを許可したいと思いますが御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/54
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055・佐藤觀次郎
○佐藤委員長 御異議ないものと認めます。池田禎治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/55
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056・池田禎治
○池田禎治君 私、委員外発言を求めましたところ、お許しをいただきまして、大へん感謝いたしておるものであります。きわめて簡単なことでございまして、私は飛び入りで参ったもので、前後の事情をよく知りませんが、すでに辻原委員からもこの質問が行われたことを拝承いたしたのでありますが、重ねて私からも一言当局にお尋ねいたしたいと思います。
言うまでもなく、昨年の十二月七日、衆議院の文部委員会におきまして、学芸大学の設置法に関する特例の決議文を満場一致をもって本委員会を通過さしていただいたのであります。しかるところ今年度予算に何らの措置もなされておらないということを承りまして、これは予算上の措置でありまするが、そういう御見解については、たとえば三十年度予算に出されておらないが、どういう措置をもってこれを考えていただくかどうか、あるいはまた文部省の予算として今日は非常に困難であるが、それはどういうことの整備と相まって予算上の措置もできるのであるか、そういう点の見解もまた伺わしていただくならば、大へんありがたいと思って、こういう質問をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/56
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057・稲田清助
○稲田政府委員 その点も、先ほどお答えいたしたと同じことを申し上げることになるわけでございまするけれども、われわれといたしましては、これは全国的に同種類のものが関連して解決を迫つている問題だと思います。従いまして解決を考えまする場合には、やはり全体的に見通して財政計画も立てなければならない。財政計画を立てる場合に、先ほどお答えいたしましたように、相当莫大な金額を予定しなければならない。一面においてまた大学の充実というものも企図されておりますときに、いつ一体いかなるときから着手するかという点について、まだわれわれもめどがつきませんし、また地元の状況を見ますれば、かなりこれについて対立した意見もめぐっている地域が多いのでありまして、そうした点の見通しも立てました上でないと、この点についてはわれわれとしては着手は困難だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/57
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058・池田禎治
○池田禎治君 局長の御答弁でありますが、それでは三十年度予算においては、全然そういう予算折衝上の款項費目としては頭を出さなかったのでありましょうか。それとも、出したけれども査定上の問題で通らなかったというのか。今あなたの申しますように、財政経済上、教育基本法上、あるいは地元の関係等の問題から、予算上の措置としては初めから今回は組まれなかったというのでありましょうか、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/58
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059・稲田清助
○稲田政府委員 予算上の措置といたしましては、最初からこの問題を三十年度の問題としては組み得なかったのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/59
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060・池田禎治
○池田禎治君 そういうことであると、私実は文部委員会は昨年初めて出て、今回また委員外の発言を許されておりますので、従来の慣例等存じませんけれども、委員会が満場一致で御決定なさったものに対する扱い方というものについては、文部省は、他省との関連等は知りませんが、どういうことでございましょうか。そういうものについては、ただ単に承わりおくというものにお考えになるのか。財政上の措置においてできなければ、たとえばあなたは事務当局であるが、事務当局の見解としてはどうか。たとえばここに松村文部大臣がお見えになっておるが、民主党の唱えておる六カ年計画というものから見て、どういうふうに着手していこうというものであるか、そういうこともお考えになったかどうか、全然それは計画年度に入っておらないものであるか、明年度においてはどうとか、そういうことはいかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/60
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061・稲田清助
○稲田政府委員 毎々申しますように、これは文部省だけで中央的に解決し得ない問題であって、地元の意向も聞かなければならぬし、また当該大学の教育計画とも合致せしめなければならない。いろいろなよそとの折衝等がございまして、十二月に御決議がございましたけれども、今御審議願う予算には計上し得なかったのであります。なおまた特殊な問題といたしましては、本年度予算が四月一日から実施し得ないというような点からいたしまして、新たに課程の学生を募集するというような意味合いにおける学部あるいは学科等の創設というようなことが困難な事情等も、確かに現実としてはあったわけであります。今御審議願っておりまする国立学校設置法の学部、学科等は、すでにこれは学生が入っているものを学科に直し、学部に直す、こういうものだけに限られておるという本年の特殊事情も、この問題についてわれわれとしては処置し得なかった一つの事情であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/61
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062・松村謙三
○松村国務大臣 先ほど来、局長からお答えを申し上げた通りでございます。もちろんこの決議は、われわれは承わってもおりまするし、尊重もいたしますけれども、今日の大学教育の全体を見ますと、実際新設が相次ぎまして、そして内容の充実ということがほとんどできておりません。この状態から申しまして、ことにことしあたりも、ずっと前から約束済みの大学の新設、科の新設というようなものをある程度やらざるを得ません。それをすでに用意ができたのをまずやるということで、そうしておいてこれから大学の内容の整備、設備の充実というところに全力をあげなければならない。それを両方あわせてやればけっこうでありますけれども、なかなかこれは御承知のような状態においてはそうは参らないというようなわけで、この御決議通りにことしの予算に出し得なかった事情はこういう次第でございまして、どうかその点は御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/62
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063・池田禎治
○池田禎治君 委員外で、そう長時間にわたって質問するということは、本委員会の委員諸君に対してまことに申しわけないことでございますので、多く私は語れないのでありますが、この決議案の趣旨を生かすためには、これから先、どういうふうにあなた方としてのお考えを具体的にいただけるかどうか。たとえば財政上の措置、それから地元の関係の調整ということは、それは文部当局においてお考えを願えるものか。あるいは関係方面としてそういう点についての具体的な事実を解決するところの道を努力してこいというのか、あるいはまたそういうものを実現するに当りましては、もっと地元において経済上の負担に耐えられるかどうかを、文部当局として求めておるのかどうか。いわば私は空論でなくて、現実的にこれを推進していく上において、どういうことが相まって実現の緒につくかということの、具体的方式というものを、お考えがあればお聞かせ願いたい。
さらにまた私は、これは文部大臣におきましても、本委員会を満場一致通過した趣旨というものは、ぜひとも一つ生かしていただきたい。もとより決議文をつくるときにおきましては、当局の意向もただしておりますし、もちろん各党においても、それぞれ内意を得ておるし、一律に全国的にこういうふうに拡大しようとしたのではありません。当時の精神から申しますと、特定の数校についてこれを考えてもらいたいという、それは明文として決議文の中に説明しておりませんけれども、了解事項としては、当然これは生きておることは言うまでもないことでありまして、どこでもここでも昇格させようということでなかった。私の記憶する限りにおいては、三点についての御了解を得たその決議文であったと了承しておるのですが、そういう点は一つ文部大臣におかれましても、十分事務当局に過去の経緯等も聴取されまして、善処されんことをぜひ望むものであります。
なお局長につきましては、ただいま私の申しましたように、どういうことにするがいいか、たとえば文部当局だけで考えることであるか、あるいはまた当該の関係方面において、こういうこともすることが、われわれとしては望ましいというのか、あるいはそういう必要がないというのか、そういう点もありますれば、私は、将来この問題を生かしていく上において、具現化する上においてのわれわれのぜひ必要な参考といたしたい、こう思っている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/63
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064・稲田清助
○稲田政府委員 文部省といたしましては、毎々お答えいたしておりまするように、関連する学校に対して、御決議の趣旨にのっとって措置するとすれば、どのくらいな経費が要るかということを計算いたしまして、それだけの経費を、大学行政全般、あるいは文部行政全般の他のいろんな事項と勘案して、一体いつ実施できるかということを慎重に研究するのが、文部省の仕事だと考えております。またこれは教員養成の学校でありますから、受け入れる府県の教育委員会、あるいはそのほか地方の意向というものを十分尊重しなければならぬ。ところが地方におきましては、なお相当対立する意向がこれにありますので、その点は地方の意向を、地方の方によってまとめていただかなければならない。また同時にこれが今後の大学の人事の問題になりますと、大学の人事は大学の自治でありますが、関係大学が、大学自身として、その方角に合意していただかなければやりにくい。こういうような意味合いにおいて、中央、地方がこの実現につきましては、なお同じ方角を取るまでに相当の経緯が必要だろうと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/64
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065・池田禎治
○池田禎治君 ありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/65
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066・佐藤觀次郎
○佐藤委員長 本案に対する質疑は、この程度にとどめます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/66
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067・佐藤觀次郎
○佐藤委員長 次に文教行政に関する件を議題といたします。松村文部大臣並びに政府当局に対する質疑を行います。野原覺君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/67
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068・野原覺
○野原(覺)委員 私は文教関係の一般行政につきまして、当面しておる大きな問題と思う点について、二、三大臣にお伺いをしたいのであります。
その第一は、大臣も御承知のように、富士山麓の実弾演習が数日前から問題になりまして、大きく新聞に報道をせられておるのでございまするが、その問題の一つとして、富士山麓の天然樹林の棄損ということがあげられておるのであります。きのうの新聞などによりますると、地元民が非常に憤激をして、二千名ないし三千名もの者たちが、単にイデオロギーによる反対ではなしに、挙村一致して、その弾着地点へすわり込む。こういう事態にまで発展しておるのでございます。その問題の一つになっておる天然林棄損、これは御承知のように文部省並びに文化財保護委員会の所管であると私は思う。従ってこの委員会でお尋ねをするわけでありますが、実情はどうなっておるのか。一体富士山麓の天然林棄損が、アメリカ軍のあのような実弾射撃によって、一体どの程度の棄損を受けるのか。どういう実情に置かれることになるのか。まずこの点について承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/68
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069・松村謙三
○松村国務大臣 お答えを申し上げます。あの山梨県における演習地の問題は、私らもよく新聞その他によって関心を持っております。文部省といたしましては、あの今お話のような記念物の保護という点の関係でございまして、これにつきましては、すでにその係の方の調達庁の方でその措置について、それに傷のつかない、損害を及ぼさないだけのことをやってもらいたいという注意、話し合いもいたしたのでございます。それも、数日前にも同様の話し合いをいたしております。その返答といたしましては、十分注意をいたして、支障のないように取り計らっているからと、こういう回答を得ているわけでございまして、なお詳しいことは、直接その交渉のある方からお答えを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/69
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070・野原覺
○野原(覺)委員 大臣として、この天然林の棄損がなされないように注意を喚起してきておる。こういうことでございますが、私はあの新聞報道によってみてもおわかりいただけるように、単に文部大臣の、天然林棄損についてそういうことがないようにという注意の喚起だけで、天然林棄損はなされないというようななまやさしいものではないと思う。これは従ってほんとうに本腰を入れて、富士山麓の天然林はきわめて重大である。天然記念物に指定されておるから、どうしてもこれを守ろうとするならば、単に軍当局に対して棄損されないようにというような、そういう一片の希望的な話し合いだけでは、私はこの問題は解決されないと思う。従ってここに文化財保護委員会の方、ないしは調達庁の方がおれば、お伺いいたしたいのであります。この点について、もっと突っ込んだ対策というものが立てられるべきだと思うのですが、一体政府は拱手傍観をしておるのか。単にその注意を喚起するだけであるということは、これは実害の上から考えても、私は、単なる傍観じゃないか、国民に対する申しわけだけをやっておるのではないか、このように受け取れるのでありますが、調達庁なり文化財保護委員会はどういったように把握されておるか、質問いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/70
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071・高橋誠一郎
○高橋政府委員 この問題につきましては、御承知のように富士山は、五合目以上が名勝に指定されております。しかし登山道路の両側およそ百メートルずつが、やはり名勝に指定されております。なおそのほかに、このたびの演習によりまして、危機を感じまするものは、天然記念物でございます。これは富士桜であるとか、それからまたツツジであるとかいうようなものが危機にさらされるおそれがございます。そのほか風穴のごときも同様でございまして、これらのたっとい天然記念物が、演習のために危機にさらされますということは、まことにどうも残念しごくのことでございます。文化財保護委員会といたしましては、直接どうこうということのできない事情がございまするので、このたびのマックネア演習地使用条件に関しまする規定に基きまして、現地の調整によりまして、これらのものが十分に保護せられまするように、文化財保護委員会といたしましては最善の努力をいたす覚悟でございまして、すでにもうこれに向ってその歩を進めておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/71
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072・鈴木昇
○鈴木説明員 北富士の演習場につきましての使用条件等につきましては、昭和二十八年十月十六日に使用条件がきまっておるわけでございます。この使用条件によりますと、この演習場を使用する場合に、関係の現地の農民その他の方々がここに立ち入ることの禁止、その他の詳細がうたってあるわけでございます。そのほかに天然記念物のあるような箇所につきましては、米軍との使用条件の協定の際にも、はっきりと天然記念物の存在する地域を保護地域として、戦車、ブルトーザーの立ち入り禁止、かつ立木に損傷を与えないことに同意するというふうなことで、そのようなことにつきましての問題、それから毎年の植林計画の設定については、現地において調整するというふうなことにつきましても、同意を見ておるわけでございます。ただいま問題になっております演習の強化というふうな点につきましても、一応これらの条件が完全に守られるとするならば、たまを撃ち込まれる先は、従来とも立ち入り禁止区域として設定されておる地域でございますので、木の上を砲弾が通過するということと、それから大砲を撃つ砲座を作る箇所の選定が悪いと、若干の立木を損傷するんじゃないかと思われる点があるように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/72
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073・野原覺
○野原(覺)委員 そうなりますと、調達庁の方にお尋ねをいたしますが、今回の米軍のあの実弾射撃の演習は、昭和二十八年十月に協定をしたという使用条件を侵害するおそれがある、私はこのように判断をするのですが、その辺いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/73
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074・鈴木昇
○鈴木説明員 昭和二十八年の十月に同意をいたしました演習場の使用条件によりますと、在日合衆国軍は、富士吉田、富士御殿場、及び須走口の登山道を越える実弾射撃を原則として禁止することになっております。ただし七、八月及び九月を除いては、現地において調整の上、上述の射撃を行うことができる。このように両国間に合意ができておるわけでございます。従いまして現在米軍が射撃をしようといたしております地域は、すでに提供中の地域の中であることはもちろんでございますけれども、ただいま申し上げました条件の中において申し上げましたように、現地において調整の上ということが、米軍の現地司令官と山梨県知事との話し合いということになっておりますので、この点につきまして、米軍は演習の実施の場所と時期を通知いたしましたに対して、山梨県といたしましては、これに同意しておらないというところで問題があるわけでございます。この調整と申しますのは、撃つことについての調整であるわけでございます。ただいま私どもが聞いております範囲では、山梨県では、撃ってもらっては困るということで話をしておるように聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/74
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075・野原覺
○野原(覺)委員 現地で調整の上というにもかかわらず、あなたも御承知のように、山梨県の方は同意をしていないわけです。同意をされないままにこれが強行されようとしておる。そこに素朴な、純朴な地元村民の大きな憤激がある。調達庁としても、単にこれは現地で話し合うことになっておるから、現地の問題であるからといって、これを一体このままにほうっておくつもりなのか。あなたの答弁を聞いておると、これは現地での調整だから、われわれは関知しないのだというようにもとれるのですが、調達庁の見解を重ねて明確に一つお示し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/75
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076・鈴木昇
○鈴木説明員 この現地調整の不調ということにつきましては、米軍にもいろいろ意見があるようでございまするが、御指摘のように、今日ただいま調達庁におきましても、施設特別委員会を開催中でございます。その席上におきまして、この調整の件につきまして、長官がただいま話をいたしておるところでございます。御了承を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/76
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077・野原覺
○野原(覺)委員 そうすると、調達庁とすると天然林が棄損されないところの最善の努力を払っておる。そのためにただいま調達庁としての対策を決定するための委員会を開いておるのだ、こう受け取ってよろしゅうございますか。間違いございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/77
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078・鈴木昇
○鈴木説明員 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/78
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079・野原覺
○野原(覺)委員 そこで、なおこの問題については関連質問もございまするから、あとで小林委員も質問されるかと思うのでございますが、私は重ねて文化財保護委員会の責任者の方にお尋ねをしたいと思います。あなたの御答弁を聞いておれば、天然林の保護ということには責任があるから、保護委員会としては最善の努力を払っておるのだ、こういうことなんですが、一体文化財保護委員会が、ただいま当面しておる山梨県のあの演習場の問題について、富士山麓の天然林の保護について、一体どういう努力を具体的に払っておるか、これを一つ具体的にお示し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/79
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080・森田孝
○森田説明員 富士の演習地について、具体的にありましたことを説明いたします。ただいまのマックネア演習場の設置に関します条件につきましては、委員長並びに調達庁の方から御説明を申し上げましたように、特に天然記念物の保護について一条を入れるように要求をし、これが認められまして、ただいま条件付であるわけでございます。従来は御承知のA地域だけでやっておられたのでありますが、B地域に拡大されるといううわさを聞きましたので、先月四月、すでに文部次官名をもって、調達庁の長官に対して、この条項についての注意を喚起し、これが厳守されるようにとくとお願いするということを、公文をもってお願いしました。なお具体的には、係官を派遣しまして、逐次連絡をとっております。それからさらにいよいよ具体化するということが新聞紙上その他で伝わりましたので、山梨県側と連絡を密にいたしまして、これに対しても、公文をもって、現地において調整をされる場合に、いかなる地域に砲台が設置されるか、天然記念物にどの程度の影響があるか、あるいは影響がないかということを、具体的に直ちに報告するように、公文書をもってすでに連絡をいたしております。従って現在——けさも電話で連絡をいたしましたのですが、八時現在において、いまだ調整のととのうまでに至っていないという報告を受け取っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/80
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081・野原覺
○野原(覺)委員 天然林の保護、これは言うまでもなく山梨県知事の責任ではございません。これは政府の責任であろうと私は思うのであります。そこで私はもう一度文部大臣にお尋ねをいたしますが、調達庁その他においては、棄損されないよう努力を払っておる。いろいろ対策も講じておる。こういうことでございますが、そのような努力を払っても、なおかつ米軍が強行してくる。その結果、天然林が棄損されるという事実が起った場合、文部大臣としては一体どう対処されるか、このことを承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/81
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082・松村謙三
○松村国務大臣 もちろんそういう事態の起りませんように、最善の努力をいたしてもおりまするし、今後もいたすつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/82
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083・小林信一
○小林(信)委員 関連して——この問題について、私は多少地元ですから承知しておりますので、お聞きしたいのですが、文化財保護の問題は非常に重大な問題であります。今文化財保護委員会の委員長は、大事ではあるけれども、いかんともしがたい立場にあると御説明があったわけですが、これは占領治下から引続きまして、文部委員会でもたびたび問題になったことがたくさんあるのです。たとえば例の刀劍類等が、終戦当時米軍に持ち運ばれてしまったとか、あるいはそのほかに、重要文化財が、占領下という特別な権力下に置かれたときに、持ち運ばれてしまった。こういうふうな物をどういうふうにして取り返すか、あるいは向うに運ばれてしまった物をどういうふうに処置するかというような問題を論議した場合に、やはり今委員長もおっしゃったように、いかんともしがたいのだということでもって、ほっておかれる。この委員会ではその後の処置はまだ聞いていないわけですが、それと同様に、最近演習地が至るところに作られた。その場合必ずそこには文化財として保護しなければならぬものがたくさんに出てくるわけなんです。こういう問題をどういうふうに文化財保護委員会としては処置してきたのか。またこれに関連した所管事務として責任を持つ文部大臣は、どういうふうに努力してきたか、実際問題だと思うのです。私がお伺いするところでは、非常に努力はされてきておる。今事務局長が言われたように、協定の中に一つの条項を入れて、文化財に特別な影響がある場合には、これは使用を禁止するということまでやっておるとは聞いておるのですが、何としても私たちが一つの問題にぶつかって、その事態を収拾しようとする場合に、非常に物足りないものを感ずるわけなんです。今回も富士山麓の演習地の問題で私文部省に参りましたし、あるいは文化財保護委員会にも参りました。あるいは厚生省にも参りました。私の最も重点とするところは、とにかく国立公園である。しかも日本でも、外国に聞えた重要な観光地である。その観光地が演習地として使用されるということを黙って見ておるということは、日本人の立場からしても非常におもしろくないことであるし、またこれを外国の人たちに聞かしても、何という占領軍の無知であるか、あるいは日本側も無関心であるかという批判を受けるだろうと私は思うのです。今回の演習場の反対も、非常に熾烈な問題が起きている。その中心は観光地である、しかもその観光地の最近の要素というものは、風光が明媚である観光地であるということではなくて、今委員長もおっしゃったように、風穴があるとか、あるいは自然林、原始林があるとか、あるいは特殊な得がたいところのものがあるというふうなことが、国立公園等の一番の要素だと思うのです。そういうところを演習地として、砲弾の下にさらさしておくというようなことは、絶対あってはならないわけです。今調達庁の係の人は、事前においてそういう協定を結んでおいて、そういうふうな支障がない限り、これは許すという話し合いになっているから、それが支障がなければいいのだというふうに言われるのです。これは非常に事務的な言い方であって、観光地である、あるいは天然記念物保存という面からすれば、たといそういう協定が結ばれておったとしても、それを今初めて使用する段階に入ったのですが、それを事前においてなぜ私が今申しました点から解除をするような態度に政府は出なかったのか。地元の人たちはB地区というものを解除してほしい。それは地元の人は生活の問題もあるし、生命の危険もあるし、富士山麓は特別な地帯であって砲弾等がいたずらにぶち込まれると、単に樹木が損傷するばかりじゃないのです。非常な特別の地質ですから、それが保護林の損傷のもとをなすとかいろいろな影響をもちまして、この反対に非常な結束を固めておるわけなんです。しかも何といっても中心は観光地である。その観光地の一番の要素であるところの天然記念物保護というようなところに重点が置かれておるわけです。天然記念物の問題は、今富士桜、あるいは特別なツツジとか委員長がおっしゃったのですが、それは認識が足りないと思う。この原始林は、ああいう地帯ですから、富士山の高いところは、緯度にして北海道あたりまで、あるいは樺太あたりまでの地域に存する植物の分布状態が一括して見られるということが、文化財としての指定の理由なんです。一つの樹木じゃないわけです。山梨県では、これを文化財に指定されたために、——これがもし指定されなければ、県有財産としてあれを相当処理することができたわけなんですが、しかし指定されたから、やむを得ずこれに対しては、一木一草たりとも侵害しない態度をもって、山梨県庁は今日までやってきたわけなんです。一つは重要な研究材料とし、あるいは観光地の保全のために、きょうまで努力してきたわけなんです。ところが簡単に調達庁の係の方の言い分を聞けば、前にそういう協定を結んでおって、その協定事項の中に、これを侵害しないような事項があるから、それさえ励行するならばいいのだというふうな考えを持っておる。これは地元の人たちのことも、あるいは現地の実情というものも、国家的な見地から、あの地域に対して心配しなければならない責任を感じない言い分だと思うのです。私はこの問題でもって今までいろいろ折衝を重ねて参りました。先日も文部事務次官に会いましたが、そういうことは文化財保護委員会の仕事であって、文部省には関係がないのだ、こういうふうに言っておる。私の聞くところでは、文化財保護委員会がこういう問題を取り上げて、保全を期しようとする場合には、日米合同委員会までこれが連絡をされなければならないわけなんですが、その場合に、責任はどこで持ってもらうかというと、文化財保護委員会でなくて、これは文部省なんです。文部省の窓口は、管理局長です。そういうことは、文部次官は知らないのです。ことに管理局長は最近になったばかりですから、管理局長のところへ行きまして、あなたが当面の責任者ですから、あなたが努力してもらわなければ困ると言ったら、私はそんなことの責任は持つべき立場じゃございません。私はそんなことは知りませんと言われる。こういう状況下に置かれておるのですから、幾ら地元の人たちが筋を通して、そして政府の努力によって自分たちの希望を達しようとしても、らちがあかないのです。それが昨日二千人の地元の人たちが集まっての、あの憤激を買った一つの事例だと思う。私は文化財保護委員会は、あくまでもこれを保護しようとして努力なさっておると思うのですが、しかし努力をする機構というものはまことに不連絡で、一致しておらないことがこういう事態を引き起しておると思う。単に協定の問題でなくて、もっとほんとうに文化財を保護するという、そういう責任を持つ人たちの協力態勢がとられておらない。つまり政府の無責任から起きておるのだと言わざるを得ないわけです。私は今この問題につきまして、これらの関係当局にお願いしたいことは、以上私が申し上げましたような点から、B地区というものは演習場から解除すべきである。これはもう国民感情としてもしかりである。また国立公園であるというような立場から考えても、当然のことだと思う。これに対してどういう見解を持っておるかを、私はまずそれぞれの立場からお聞きしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/83
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084・高橋誠一郎
○高橋政府委員 演習地と文化財保護の問題がぶつかりましたのは、私のただいま記憶しておりますところでは、宮崎県に都井岬というところがありまして、ここに野生と申しておりますが、ほんとうの野生ではないようでありますが、日本馬が六十頭ないし七十頭おる。これを保護の対象といたしておるのでありますが、この場所がレーダーの基地として使用せられる。こういうことがございましたので、文化財保護委員会は直ちに関係方面と歩調をともにいたしまして、他に移転してもらいたいという要求をいたしましたところが、大した混乱もなく、これが他に移されたのであります。このたびの富士の演習地、今お話のございましたように、われわれとしては、富士の山麓を演習地として使用することは、むろん望ましくないことでございまして、すでに数年前この話が持ち上がりました当時、京都、奈良を戦火から救ってくれました恩人と称せられておりますウォーナー博士が参りましたときに、ウォーナーの意見を聞いたのでありますが、その際ウォーナーの申しますのには、富士の山麓を演習地として使用するというようなことをやったならば、おそらく富士山は憤激して噴火するであろう、こういうようなことまで申して、非常な強い言葉を使っておったのであります。アメリカにおきましても、むろんウォーナーと感じを同じゅうする者があって、これを基地として使うようなことは見合わされることと存じておったのでありますが、いろいろな事情によったのでありましょう、不幸にしてこれが演習地として使われるようになった。この上はわれわれといたしましては、どうもやはり全部解除してくれれば一番いいのであるが、もしそれができませんければ、先ほど来申しておりまするように、現地の調整によりまして、これを守り抜きたい。かように考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/84
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085・小林行雄
○小林政府委員 ただいま小林委員のお話の中に、管理局はそれについて責任を持たぬというようにお答えをしたというお話がございましたが、実は山梨県の方々をお連れ下さいまして、小林委員が私のところにお見えになったのは、私が管理局長を拝命した直後のことでございましたので、いわゆる文教施設についての接収に関する、あるいは接収解除に関する事務は、管理局の所掌事務でございまして、従来もいろいろ調達庁とも連絡し、いろいろ努力をして参ったのでございますけれども、このたびのような、たとえば天然記念物というようなものの接収問題に関連しては、文化財保護委員会という非常にりっぱな組織機構がございますので、そちらの方でおやりになるのではなかろうかということを申し上げたのでありますが、しかしその後私も勉強いたしました結果、一応接収及びこれに関連する事務については、すべて管理局を窓口として、文部省の方でやるということがわかりましたので、先ほど来文化財保護委員会の方から、調達庁の方へ御連絡申し上げましたような書面等にいたしましても、すべて私どもの方で立案をいたしまして、調達庁の方へ御連絡し、また実際の事務連絡等も、実質はやはり天然記念物でございますので、文化財保護委員会と十分連絡をいたして共同でやっておるのでございます。文部省といたしまして、もちろん北富士演習場が接収解除されるということになれば、最もいいことではあると思っておりますけれども、調達庁と連絡の結果は、そう簡単に解除になるものではないということでありますので、それが非常に困難な見通しであるならば、せめて実行を停止するとか、最小限度、今問題になっておりますような貴重な文化財に被害を及ぼさないように、米軍の方へ十分に連絡し、申し入れをしてもらいたいということで、文部省の方から調達庁の方に連絡し、お願いしておるのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/85
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086・松村謙三
○松村国務大臣 先刻来お答えを申し上げましたようなわけであります。私どもといたしましては、日本の文化財保護のためには最善の努力をいたしたいと思うのでございます。ただいまお答え申し上げますことはそういうようなわけでありまして、事務当局の方で何か文部省は関係がないのだというようなことは、そういうことはございませんので、できるだけ最善の努力をいたすつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/86
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087・小林信一
○小林(信)委員 これは占領下におきましては、あそこは直ちに演習場に使用する、おそらく接収の形でもって取扱われたと思うのです。それがいよいよ独立しましたから協定というような形になったと思いますが、これは当初から向うが意図しておったところで、そのまま日本の政府というものは応じてしまって、何ら政府としての見解というものを持つことができなかったのが現実だと思うのです。やはりもっと日本国の独自の立場を主張し得るような態勢というものが今までの間にとられなければならなかったと思うのです。その点で今後これは当然解除されなければならぬと思うし、努力してほしいのですが、今高橋委員長のおっしゃったように、あんなところを演習地に使えば、富士山が怒って噴火するだろう、これは米国民の文化財に対するところの一つのバロメーターを示しておると思うのです。だからこういう意向がこっちに駐留している連中にも反映するならば、おそらくあの連中も、あの大事な観光地を演習地なんかにしやしないと思う。そういうりっぱな根拠があるのですから、文化財保護委員会がほんとうに文化財を保護しようとするならば、もっと全力をあげてできるだろうと思う。そうすれば徐々に演習地問題というものがこんな問題を起さずにもっときれいに解決したのじゃないかと思うわけで、やはり一応文化財保護委員会にその責任というものを感じてもらわなければならぬと思う。解除できないならば、損傷がないように努力をするということでは、決して文化財保護委員会の責任を全うすることができないと思う。これはちょっと考えていただいても、あの付近に砲座を設けるとか、ただそこにぽつんとヘリコプターが大砲を運んできて捉えるのじゃないと思う。これは相当なものが運ばれるのですから、あの付近に道路をつくられたり、あるいは戦車を動かさぬといっても、そういうものが縦横無尽に飛び歩いたりして、めちゃくちゃになることは当然であるし、またそういうものが存置されておったら、これは観光地としての意味は絶対にないと思う。そういう意味から、委員会におきましては十分に今後努力してほしいと思うわけですが、事務局長はこういう点については一番責任を持って仕事されておるわけで、私もいつもこの点では御努力は感謝しておるものですが、一つお伺いしたいことは、この国立公園というような文化財に対して、これは一緒になっておる形ですから、管轄を厚生省の方でも持っておると思うのです。こういう事態に立ち入りますと、厚生省あたりは逃げているわけなんです。文化財保護委員会としても逃げれば逃げられるかもしれません。それは今度国立公園の管轄だから、厚生省の仕事だというふうに言われるかもしれませんが、とかく権限争いが行われておるようですが、一体厚生省あたりではこの問題についてはどういうふうに考えておるか、そういう権限の争いというものが生ずる原因というものがありはしないだろうかというふうなことを事務局長からちょっとお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/87
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088・森田孝
○森田説明員 ただいまの御質問でありますけれども、今まで権限争いをしたことはないのであります。と言いますのは、国立公園の趣旨はリクリエーションのために主としてこれを活用するという面に非常な主眼が置かれておるわけでありますし、また同じ名称にいたしましても、文化財としてこれを指定する場合におきましては、学術資料その他の資料として非常に大切なものを含んでおるということが主眼点でこれが選定せられるわけでありますので、国立公園とダブっておるというところは非常に数が少いのであります。たまたま富士山が両方ダブっておるということが起つたわけであります。従いまして根拠も違いますし、またその指定の主眼点も違うわけでありますので、両者相協力をいたして仕事を進めているのが現状であります。今回の事件につきましても、それぞれ事実上の問題でありますけれども、連絡を密にいたして進めておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/88
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089・小林信一
○小林(信)委員 事務局長はそういうふうにおっしゃるのですが、必ずしもそうでないと思うのです。別に本委員会の方で権限を拡張しようとして主張されておるというのではなくて、ふだんはかえって厚生省の方が自分の方の権限としてやろうというふうな気持があるように私は見ておるわけですが、先日も厚生省に参りましてこの問題を話しましたところ、合同委員会でどう言っていますかというような、どっちが主であるか従であるかわからぬようなことを言って、この問題は幾たびか陳情を受けて、実際自分たちが答弁しなければならぬのに、合同委員会ではどういうふうに言っておりますかというふうな状態で、まことにこういう事態が起きるのも無理もないと私は思ったわけですが、やはり両方ともが協力し合ってやってもらうところに、先ほど委員長がおっしゃったような解決が見られるのじゃないかと思うのです。
それから今度は調達庁の方にお伺いするわけなんですが、その前に、管理局長が御答弁なさったが、局長は就任したばかりでそういう事務系統というものを御存じなかったのは当然のことなんですが、しかしそれほど問題がすでに発展しておったときなんですから、事務引き継ぎをする場合にも、こういう仕事はあなたの責任だということが明白にならなかったということは、やはり文部省内部のこういう問題に対するところの責任がはっきりしてないというようなことになるわけですが、私は管理局長をとがめるよりも、先ごろ事務次官に会って話したところ、それは文化財保護委員会の仕事であって、文部省に関係ありますかという答弁を私は受けた。次官がそうですから、省内がこういう問題に対して責任を重大に感じておると私は言えないと思う、という意味で管理局長の例を取ったわけなんですが、そういうふうに私は認識していただきたいと思うのです。
それから今度は調達庁の方にお伺いいたしますが、調達庁も今いろいろ答弁を受けましたようなことを感じていただいたならば、今までこういう協定が結んであるから、その協定に触れなければ差しつかえないのだという見解でこの問題を御処理なさることは、私は非常に遺憾だと思うのです。先ほど申しましたように、占領政策から引き続いて日本側が何らあの地区に対する考えを述べずに継続されているような形で、地元との協定で一切が処理されるような形になっているので、その方に一切まかせておるというようなことでなくて、もっとこの地区の立場というものを十分認識していただいて、重大な措置をしていただかなければならぬと思うのです。そこで今のような解除の問題が困難だとすれば、単にその地域に侵入しないとか、これを棄損しないとかいうような問題だけではなく、一般事項として協定に結ばれてある条項を取り上げたら、私はこれを拒否することができると思うのです。第三条の中には、文化財に被害が及ぶような場合には、合同委員会で承認し次第使用するというようなことがありますし、それから第四条は、これはさっき御説明がありましたが、登山路を越えて砲弾がぶち込まれるような場合には、両者の協定の上でもってしなければならぬというようなことになっているわけなんですが、これは先日米軍の方から山梨県知事に対しまして、使用するから承認してくれと言ったのか、使用するという通告をしたのか、そこら辺ははっきりしませんが、とにかく条文でいえば承認を求めなければならぬので、それで山梨県知事は承認しませんという返答をしたわけです。この条文をたてにとって承認しませんというようにしたわけですが、こういう条文を取り上げて、そうして単にそういう地域に被害を与えないということでなくて、使用まかりならぬというところまで言ってもらえるかどうかという点をお伺いしたいと思うのです。
一体この問題は、当初は米軍の方ではA地区からB地区へ砲弾をぶち込むというのが向うの意向だったのですよ。それを今皆さんのおっしゃるところでは、もう前の問題は全然お知りにならないという状態なんです。それはやはり地元の結束した意向によって——砲弾をA地区からB地区にぶち込んだら、それこそ天然記念物というのはめちゃくちゃになるわけですから、これはアメリカの世論が承知しないばかりでなく、それこそ日本人全体が憤激すると思うのです。そういうことを地元の人たちの努力によって、今度は逆にB地区からA地区に砲弾をぶち込むという態勢に変ってきたのです。そういうことは決して政府の力ではない。世論の力でここまでやってきたのですが、そういうことも考えてこの問題に当るべく責任を感じていただきたいと思うのです。従ってこれから努力してもらう問題は、今御答弁なさったような、そういう地区に対して被害を与えないということでなくては絶対に相ならないと思う。地元の知事が取りかわしておるところの協定に基いて承認しないというならば、これは使用しては困るというところまで努力するのかどうか、お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/89
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090・鈴木昇
○鈴木説明員 ただいまの御指摘の点につきましては、調達庁といたしましても昨年の十月に関係各省とも十分協議いたしまして、米側に対しましても、一般のその他の施設にもそういう例はございますが、あまり使っていない土地の返還ということで、このB地区の相当部分についての返還要求を出しておるような次第でございますが、現在のところにおきましては先ほど申し上げましたような使用条件がありますので、使用条件の範囲内において現地の話合いをしてそれを使うことが適当ではないかというふうに考えておるような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/90
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091・小林信一
○小林(信)委員 そんななまぬるいことをやっていたら、それはやはり地元の人たちは承知しはしませんよ。使用条件に該当すればこれはやむを得ない、特別な施設か破壊されなければ仕方がないのだということでは、おそらく重大な事態というものが私は出てくるんじゃないかと思うのです。その使用条件の問題だって、第四条をとり上げれば、登山道をこえて砲弾を撃つ場合には両者の承認がなければできないという条文があるのだから、それをたてにとってでもこの問題はあくまでも拒否のところまで持っていくべきだと思うのです。そんな、使用条件に合致しておったらしかたがないのだというようなことでほうっておくならば、これは重大な事態が起きなければならぬ、私は帰ってその事態を報告します。おそらくそんなことだったら地元の人たちは何という政府はたよりないのだということを私は感ずると思うのです。そんな態度でもっていくならば、保護委員会の委員長の方でもあるいは文部大臣の方でも、もう少し強力に調達庁を押してもらわなければならぬ。第四条に登山道をこえて砲弾を撃つ場合には、両者の承認の上でやらなければならぬということがある。あるからそういう条項をとっても、これは拒否の形に持っていくべきだと思うのですが、これ以上質問をしても、今までの様子からして私は非常に遺憾を感じておるわけなんですが、重大なる事態を招来する以外にない、こう思うわけです。なお皆さんに御意見がありましたら調達庁並びに保護委員会にお伺いしたいのです。あるいは文部大臣からも重大な決意をお伺いすれば、私は地元に帰って、しばらく待て、こういう努力をするからということも言えると思うのです。今の状態では地元の方たちの今までの熱意に沿うものがないわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/91
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092・松村謙三
○松村国務大臣 先刻来の問答も、私どもよく御趣旨のほどはわかるのであります。先刻も申した通りに、最善の努力をいたすつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/92
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093・高橋誠一郎
○高橋政府委員 先ほど来申しておりますように、文化財保護委員会といたしましては、でき得る限りのことはいたしたいと思い、またいたしつつあるものでございまするが、何分全体の解除というようなことは、文化財保護委員会の権限を遺憾ながらこしておりますし、われわれ役所といたしましてはどうもなし得ないところのものが多いのでありまして、実にこの点遺憾でございまするが、一般の世論を動かすなり、そのほかわれわれの力でできることはどこまでもいたして参りたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/93
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094・鈴木昇
○鈴木説明員 先ほども申し上げましたように、本日調達庁におきまして、施設特別委員会におきましてこの調整の問題を軍とただいま話合い中でございますので、その精神といたしましても、いろいろと御指摘がありましたような線に沿いまして、鋭意努力することになっておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/94
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095・小林信一
○小林(信)委員 文化財保護委員長に特に私は申し上げますが、今おっしゃった言葉は、お立場とすればまことにやむを得ないような御返答で、これは私もよくわかるわけなんですが、しかし何と申しましてもこの問題を解決するのは、私は文化財保護委員会だと思うのです。私は委員長に責任持ってやってもらわなければならぬと思うのですが、そういう解除までする私には権限がないからでなくて、やはり文化財保護委員会にほんとうにしっかりしてもらって、あらゆるところに工作をしてもらって、初めて問題が解決するところがあるわけなんです。あなたのところでそういう態度をとっておれば、先刻申しましたように、文部省内でもまことに無関心でありますし、あるいは調達庁も今のような、その部分に対して被害がなければ協定違反でないからしかたがないのだ、そこだけは私たちが責任を負うというような形で持っていって、これは国立公園もあるいは文化財も原始林も意味がないわけなんです。そんなことになったら、山梨県民が今まで隠忍自重して、あの重大な県有財産の資源を、ほんとうに文化財保護委員会の趣旨に基いてあれを保存してきた意義もなくなってくるのです。今度は乱伐もしますし、あるいはこの中に侵入もするわけです。そういうふうな情勢から考えても、もっと重大なる決意を持ってもらわなきゃならぬ。あなたが先ほどおっしゃった噴火山が噴火するだろう、これはアメリカ人でさえそういうことを言っておるのです。どうかあなたも噴火山になってもらいたい。富士山が噴火するのはわかるのですが、あなたも噴火山になることもできると思うのです。それが地元の噴火山を鎮撫するただ一つの道だと思うのです。そういう意味であなたの御決意をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/95
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096・高橋誠一郎
○高橋政府委員 ただいまの仰せの通り、われわれといたしましては、文化財保護委員会といたしましては、でき得る限りの努力を払いたい、こう考えておる次第でございますので、どうぞその点ひとつ御了承いただきたい。文化財を守りますことは申すまでもなくわれわれの責任なのであります。しかしながらただいまも申し上げましたように、どうもわれわれの力に及ばないところのものがはなはだ多うございまするが、ただ力に及ばないとだけ申して責任を免れるようなことはむろんいたしません。まず考えますることは、先ほども申しましたように関係官庁を動かすとか、一般世論の力に訴えるとかいうようなことにおきまして、でき得る限りのことはいたしたいと考えておるのでございまするが、ひとつ権限の点をお考えいただきまして、直接われわれとしては行動をし得る限界をお認めいただければはなはだ仕合せと存ずるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/96
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097・並木芳雄
○並木委員 確かに委員長としては今までのいきさつからいえばそうでしょうが、私は与党でありますが、やはりこの問題は新しい観点からどうすべきかということを苦慮しておったのです。幸いにして行政協定に基く使用の問題は、もう二十八年です。ずっと前なんです。二年も前なんです。吉田内閣のころの閣議決定事項で、幸い内閣が変っておるのです。しかも二年もたっておって、今度の内閣は自主独立をうたって自衛隊を増強して、米軍にはなるべく早く撤退をしてもらいたいということで、鳩山首相初め強く主張しておる内閣なのであります。そういう観点にお立ちになって、もう少し自主性を持ってもらいたいと感じたのです。私どもの力でどうにもならないというふうにお考えにならずに、あの日米行政協定の双方の話し合いは、話し合いに持っていくには、委員長などの発言が非常な推進力になるわけなんです。委員長がどうしてもこれはだめだということを言えば、合同委員会に持っていくときに、今調達庁のお役人がやっておるのでしょうけれども、きっと違ってくると思う。それで委員長はあんなおとなしい人だから、あとどうにでもなろうというような気持で臨むのとはうんと違う。それを今小林委員も言っておるわけです。ですから今までのことは今までのこととして、とにかく新しい内閣ができ、新しい気概を持って対米関係の調節をはかっておるのですから、今までのことは一応そのままにして、新しい協定を結ぶまで待ってくれ、一日でも待ってくれ、こういうことから突っ込んでいくのが具体的な解決策になると思うのであります。幸いに文部大臣も先ほど努力をされるという決意を披瀝しましたから、どうか現に今日も開かれておるという合同委員会へ、ひとつ文部大臣並びに委員長からその決意を披瀝して申し入れをしてもらいたいと思うのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/97
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098・松村謙三
○松村国務大臣 すでに小林さんにお答え申したように最善の努力をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/98
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099・高橋誠一郎
○高橋政府委員 私といたしましても大臣同様に考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/99
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100・野原覺
○野原(覺)委員 私は次の質問に重大な問題が二、三ございますから、質問を続けたいと思いますが、なお締めくくる意味からも、実はきのうの現地の富士山麓の演習に関する決起大会に出席をして激励をされたのは、与党の民主党の代議士であります。このことを大臣はとくと御銘記願いたい。そこで調達庁の責任者は労働大臣であろうと思いまするので、私はこの問題の成り行きいかんによっては、ただいま開かれておる予算委員会において、これは徹底的に及追する。単に現地民だけの憤激ではなくて、国民全体が大きな関心を持って注目しておるということを、重ねて申し上げて次の質問に入りたいと思います。
第二点は、政令百六号の改正についてでございます。これは少し専門的になろうかと思いまするから、大臣から肝心の点は、御答弁いただいて、こまかい細部の点については事務当局の方で答弁を願ってけっこうでございます。今回この政令百六号の改正をなさっておるのでございまするけれども、御承知のように改正の要点は二つあるようであります。その一つは、政令該当の団体は、普通交付税の交付を受けない団体とするということ、もう一つは、その教員の給与を算定するに当って、一人当りの給与年額とそれから各府県における教員定数の算定の基準が修正されておる、この二点であろうかと思うのであります。ところでこの二つの改正がありましたために、十数府県のものが実は政令該当でないということで、義務教育費の半額国庫負担という点から見ますと、きわめて望ましい結論を得たことは、これは御同慶にたえないのでありまするけれども、しかししさいに検討してみますと、東京都それから大阪府、神奈川県、この三つの都府県が、実はそのためのしわを大きく寄せられておる。私はこの点について、今回の改正された政令の適用によって、東京においては国庫負担金額が一体どれだけ削減されておるか、大阪においてはどれだけの削減になるのか、神奈川県においてはどれだけになるのか伺いたい。三都府県の教育委員会から、あるいは教員の各個人たちからもたくさんの陳情が参っております。従って文部省としては、一体どういうように把握しておるか、まずその点についてお尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/100
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101・緒方信一
○緒方政府委員 ただいまお尋ねの政令改正によりまして、東京、大阪、神奈川におきまする交付額の見込みの問題でございますが、三十年度の生徒、児童増を前提といたしまして、その増を見込んだ学級数を基礎にして、二十九年度の従前の政令の基準で計算いたしました金額と、三十年度の政令基準におきまして計算いたしました金額の差額の問題でございますが、これは三都府県を合せまして大体三億程度になろうかと思っておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/101
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102・野原覺
○野原(覺)委員 そこで改正の内容にございました教員定数の算定の基準が、従来までは御承知のように六分の七であった。それが十二分の十三ということに修正になって、十二分の一だけこれはマイナスになっているわけです。それから中学校におきましては、六分の九という定数比率が九分の十三ということになっておりまするから、九分の〇・五だけ教員の定数が三都府県に関してはマイナスになっている。一体こういう算定の基礎をお変えになられた理由、これは実は重大なのですよ。これは私は次でお尋ねいたしますが、あなたの方でこういうように数字をひねったために、現実に東京においては二千名、大阪においては千二百名、神奈川県においては八百名の人員整理をしなければならぬという段階に、その三都府県の教育委員会は追い込められている。しかも学年途中でこういうような基準の変更を、文部当局は事前に連絡もしないでやっているということは、重大な問題です。三都府県の教育委員会というものは、そのため非常な混乱を来たしている。だから変えた理由をはっきり、自信があるでしょうからお示し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/102
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103・緒方信一
○緒方政府委員 先ほどお話のように、いわゆる政令の後段の撤廃の結果、それに関連いたしまして、定数の算定基準も若干変更いたしました。この変更の根拠といたしましては、従来もさようでございましたが、現在における全国の平均数をもって、政令府県の最高限をきめる定数算定の基準といたしております。かような点からこういうような改正をいたしたわけであります。なおただいまお話がございましたが、二十九年度の政令をもって定数を計算いたしましたのと、このたびは、先ほど申しましたように三都府県においても児童、生徒がふえますので、現実におきましては、新しい政令において計算いたしました人員との間には、三都府県においてお示しのような切り込みと申しますか、そういう点は起って参らぬと推算いたしております。若干定数基準の低下はございましたが、現実の問題といたしましては、定数とさらに定額の問題の両方を関連して考えました場合に、国庫負担金といたしましては、二十九年度に交付いたしました額と三十年度に交付いたすべき額との間には、それを切り込んでやるということには相ならぬと考えております。むしろ若干ふえていくと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/103
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104・野原覺
○野原(覺)委員 これは大臣にもお尋ねをしたい。実は大臣も御承知のように、各都道府県で教育予算を組むに当っては、前年度の実績ということを考えて組むわけです。ところで鳩山内閣は、暫定予算というものを四月分と五月分と出したわけです。従って、四月から新しい学年が発足するわけでございますが、この三都府県は政府の暫定予算の規模に基いて前年度通りの教員定数をもって、昭和三十年度の予算を立てるということが、これは当然のことだと思う。ところが今度政令百六号の改正というもので、四月の新学期発足後においてこういう比率の改正をやったわけです。学級数の教員に対するその六分の七というのを十二分の一だけ比率を減らして、十二分の十三でいくと学年の途中でやられましたために、もうこの三つの都府県は——現実に今一番ひどくて問題になっているのは神奈川県でございます。大阪がその次ですが、東京も問題が起っているわけですが、学級編成とそれから職員の新採用の配置を完了している。この学校にはこれだけの学級を、そして新しい教員はこれだけ採用するということが完了してしまったあとで、実は政令百六号の改正だといって、六分の七の定数比率が十二分の十三、こういうようなとんでもないことを押しつけられた日には、一体都道府県の教育行政というものは成り立たぬじゃないか。この点について大臣はどうお考えになるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/104
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105・松村謙三
○松村国務大臣 先に政府委員から御答弁して、それからまた私からお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/105
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106・緒方信一
○緒方政府委員 先ほども申しましたように、また野原委員のお話もございましたように、政令百六号の改正という問題は昨年度来から非常に重大な問題でございまして、この改正をいたさないでそのまま放置しておきますならば、三十年度におきましてはその基礎条件に該当いたします府県が一七県にも達しようかという見込みに相なっておったわけであります。従いまして私どもといたしましては、なるべく政令の最高限で押える該当府県を少くいたしたいという努力を今日までいたしまして、その結果ああいう改正をいたしたわけでございます。そうして後段を撤廃いたしまして、財政富裕の前段に該当いたしまする東京、大阪、神奈川だけを残してあとは撤廃をいたす、かような経緯に相なっておることは御承知の通りでございます。そこで先ほど申しましたように、定数の算定基準といたしまして十二分の十三、九分の十三というのをとりましたのは、全国の政令非該当の県の平均数でございまして、富裕県でもございまするし、富裕県におきまする最高限を国家が補償する限度といたしまして、四十三府県におきまする平均の基準でもってこれを押えていくと申しますか、それを基準として取り上げる、こういう観点から先ほど申しましたように改訂をいたしたわけであります。そこで東京、大阪、神奈川におきまして、ただいまお話のように三都府県におきまして若干の見込み違いが出ておるかと存じまするけれども、これは先ほどから申し述べますように、全体との関連におきまして、あるいはまた三都府県は交付税の交付を受けない富裕団体でございますので、全国の平均でもってその基準を押えていく、それまで補償していく、こういう立場で改正をいたしておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/106
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107・松村謙三
○松村国務大臣 四月へ入ってああいう形になりましたのはいろいろ支障もできたでしょうし、これは申しわけないと思います。しかしその実情はちょうど政変があって間もないときであり、そして事務的な話も承わりましたが、各府県を落して三都府県だけにするのが妥当か妥当でないかということも相当に研究を要しますので、私も決裁しかねたというようなこともございます。そしてできれば、根本から申しますれば、この東京、大阪、神奈川も全国一律にできるのが理想でございまして、それも何か予算措置においてできないかと考えてもみましたが、それらのことができ得ませんで、最後の決定が遅れた、こういうことであるわけでございまして、その点は御了承を願いたいと思います。できるだけ財政の都合が許せば今後全国一律にいたしたい、こういうふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/107
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108・野原覺
○野原(覺)委員 大臣の御答弁で、義務教育費国庫負担法のこういう最高限度の額を定めるような政令というようなものを実施しないで、何とかして教育財政確立の上からも、この負担法の精神そのままを生かしたい、こういうように受け取ってまことにうれしくてならぬのでございますが、しかし大臣はそうおっしゃられまするけれども、どうも文部当局の緒方局長の先ほどのものの考え方、御説明と焦点が合わないんです。だから私はくどいようですけれども、大事ですから重ねて尋ねたいことは、緒方さんはこういうことを言われた。三つの都府県、東京、大阪、神奈川の既定予算の歳入欠陥を生ずることは認める、途中でこういう比律をいじったために歳入欠陥を生ずることをお認めになられておる。これはもうだれだって認めざるを得ないんです。途中で六分の七が、十二分の十三になれば、これは歳入欠陥を生ずるんです。そこで今歳入欠陥を生ずるのを解決するために、三都府県がどういうことを考えているかというと、こういう混乱を文部省が与えたためにこういう手を考えている。一つは教員が余ってきたのですから、東京、大阪、神奈川とも人員整理をやらなければならぬ。東京は二千名、大阪は千二百名、神奈川は八百名、これは教育委員会の責任者の言明であります。これをやるかもしくは人員整理ということが非常に大きく問題になるので、これをやらないとすれば増俸を停止する、これはもう法律に基いて教員は増俸ができるわけなんですけれども、三都府県は残念ながら増俸を停止しなければなりません。あるいは夏季手当、年末手当という期末手当を、減額しなければならぬという事態に追い込まれておる。つまり言いかえれば文部省の、私はでたらめとまでは申しませんけれども、全く都道府県側の立場を考えないこういう政令の改悪によって——あえて改悪と申します、改悪によってこういう事態に追い込んだ責任というものは依然として残されると思う。委員長から注意がございまして、一時までにはやめてもらいたいということでありますから、私もできるだけ協力したいと思いますが、こういう二つの解決点を今日都道府県は迫られているのです。そこで緒方局長は六分の七がなぜ十二分の十三になったのか、それから教員の給与の単価は小学校は一万五千五百七十円、中学校は一万六千三十円、こういうように今度の政令では政令該当の都府県に対しては規定をいたしておりますが、これは一体実績であるのか、私はこれは実績でないと思う。これが実績でないとすれば、あなたが局長に就任される以前、この衆議院の文部委員会において義務教育費国庫負担法が昭和二十七年の八月八日法律第三百三号で制定になったときの記録を私は調査したのでございますが、第二条のただし書が非常に問題になりまして、衆議院は付帯決議を付しておるのであります。これは御承知かと思いますが読み上げますと、「教職員給与費の国庫負担額の最高限度を政令で定める場合には、その限度の基礎は、原案の趣旨を尊重し、」これはただいま大臣が言われたことでございますが、それから「各都道府県のその年度の実績を下まわらないように定めること。」云々と書いてある、それから同時にこのことが参議院でもその限度の基準は少くとも各都道府県の従来の実績を下回らないようにしなければならぬとしているのに、定数においても給与の単価においてもまったくその三つの都府県に関しては大きく下回ったものを押しつけておる、もっと悪口を言えば、十幾つかの府県を政令該当からはずしておる。今度の改正によってこのはずしたしわを三つの都府県に寄せたのではないか、このことは言えると思う。三つの都府県の東京、大阪、神奈川の犠牲において、その他の政令該当の県を救済しておる。私は救済したことは望ましいと思う。大臣から言われたようにこの点いかがでございますか、私はそう考えますが、私の考えが間違いであるとすれば、間違いである点を指摘して御指導願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/108
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109・緒方信一
○緒方政府委員 基準を変えたその理由いかんということであります。これは先ほども申し上げましたように、従前の基準としてとりました定数は、これはその当時におきまする全国平均の基準であったのでございます。このたび改正をいたしますに当りまして、先ほど申しましたように後段撤廃という事情もございましたが、この際にさらにその基準を改訂いたしまして、その改訂しました際に今度の基準として取り上げましたのは、やはり非該当の四十三府県の平均基準をもってこれに充てるということ、これは先ほど御説明申し上げました通りであります。それから単価の点でありますが、これはお話のように実質的じゃございません。政令に該当いたしません県、すなわち国庫負担法がそのまま適用される県におきましてはもちろん実績の二分の一を国庫が負担いたしますので、その実績を見ております。しかしながら政令の府県につきましては、これは富裕県でありますので、その国庫が補償します最高限を押えようという規定でありますので、これには当初から国立学校の平均給というものを標準として取り上げております。それで今日まで来ておるわけであります。三十年度におきまする単価は、前年度におきまする単価に対しまして、これは一般国家公務員の例に準じまして二%の昇給を加えまして、そうして三十年度の単価として出しておるわけであります。お話の通りにこれは国庫負担法の趣旨をなるべく広く実現していく。できるならば全体の府県に対しましても国庫負担法の趣旨の通りに出していきますることは、これは理想でございまするが、今日の状況といたしまして現に地方財政におきまする財政力と申しますか、実情に非常なアンバランスがございますので、その点も勘案いたされました結果、ただ従来の、二十九年の以前の政令をそのままにしておきますと、先ほども申し上げましたように、非常に多くの府県がこの最高限の線にひっかかることになりますので、このたびは三府県を残しまして、富裕団体だけを残しまして、あとの県に、後段は撤廃をいたしました。かような関連におきまして、先ほど申しましたように定数につきましては改訂を行い、単価につきましては本年度においては昨年度の国立学校の教員の平均単価に二%の昇給をつけた、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/109
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110・野原覺
○野原(覺)委員 私は、ただいまの局長の御答弁では了解できないのです。あなたは国立学校に準じて昇給予算を二%で押えた、こう言われますけれども、この政令該当県の昇給分は二%、これは明らかに実績を見ていないのです。それから私の質問に対する答えも十分でないと私は思う。この比率の問題、単価の問題、昇給予算の問題、従ってこの問題は当委員会に対してもおそらく三都府県の教育当局から今後強力に働きかけがあろうかと思いますが、これは、私は現実の問題解決として重要性を認めます。今後の理想というよりも、むしろ今後早急に政府に検討してもらわなければならぬのは、政令百六号のごときものは撤廃してしまう。文部大臣が先ほど申されましたように、教育財政を確立するという立場から国庫負担法の精神を全面的に生かして、こういう方向に文部当局としては進まれなければならないということを申し上げたい。
なお委員長に申し上げておきますが、あなたの御指示に従って私は了承できないながらも質疑を打ち切ります。なおあと教育二法律の重要な問題で実はお尋ねをしたいし、それから地方教育委員会の最近のあり方について全国至るところでトラブルを起しておりますから、これに対する指導助言を文部当局はどうしておるかということでも私は尋ねたいと思って準備をしておりますけれども、委員長の理事会の申し合せ等のことで指示がございますからこれで打ち切りまして、次会は、私は質問を続行する、こういうことで終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/110
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111・佐藤觀次郎
○佐藤委員長 了承いたしました。
本日はこれにて散会し、次会は公報をもってお知らせします。
午後一時五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205077X00619550510/111
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