1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年六月七日(火曜日)
午前十時三十分開議
出席委員
委員長 世耕 弘一君
理事 古島 義英君 理事 山本 粂吉君
理事 福井 盛太君 理事 古屋 貞雄君
理事 田中幾三郎君
椎名 隆君 高木 松吉君
高橋 禎一君 長井 源君
林 博君 生田 宏一君
横川 重次君 猪俣 浩三君
神近 市子君 淺沼稻次郎君
佐竹 晴記君 細田 綱吉君
出席政府委員
検 事
(民事局長) 村上 朝一君
委員外の出席者
参 考 人
(経済団体連合
会副会長) 植村甲午郎君
参 考 人
(早稲田大学教
授) 大野 実雄君
参 考 人
(大阪市立大学
教授) 西原 寛一君
参 考 人
(弁護士) 長野 潔君
参 考 人
(電気化学工業
株式会社取締役
社長) 野村与曾市君
専 門 員 村 教三君
専 門 員 小木 貞一君
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本日の会議に付した案件
商法の一部を改正する法律案(内閣提出第二七
号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/0
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001・世耕弘一
○世耕委員長 これより会議を開きます。
商法の一部を改正する法律案を課題とし、参考人より意見を聴取することといたします。
本日出席を予定されている参考人の方々は、経団連副会長植村甲午郎君、電気化学工業株式会社社長野村与曽市君、早稲田大学教授大野実雄君、大阪市立大学教授西原寛一君、弁護士長野潔君、総評法規対策部長加藤万吉君であります。
この際参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は御多用中にもかかわらず、御出席下さいましてまことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。
本日各位の御意見を承わる法律案は、商法の一部を改正する法律案であります。本法案は昭和二十五年の商法改正後の実施状況にかんがみ、新株引受権、株主名簿の閉鎖等に関する規定を整備し、これに伴う関係法律の規定を整備する必要があるとして提出されたのでありますが、御承知のように、昭和二十五年第七国会で行われた株式会社法の改正は、ドイツ法系から英米法系への切りかえであり、わが国経済の復興に資するため資本調達を目途とし、授権資本制と投資者たる株主の保護施策とを思い切って採用したものでありますが、占領下立法という特殊事情もあり、わが国社会、経済の実情に沿わない若干行き過ぎの点があるかもしれないというような懸念が立法当時からなかったわけではないと思います。その改正法は昭和二十六年七月一日から施行となり、その後約四カ年、各位におかれましては会社経営の体験を通じあるいは日ごろの調査研究を通じ、実際的あるいは学問的な意見をお持ちのことと存じます。本法案の改正要点は、諸君にお送りした資料により御承知かと存じますが、一、新株引受権に関する定款の記載事項、二、株主以外の者に新株引受権を与える場合の要件、三、裁判所の許可による少数株主が総会を招集する場合の要件等であります。
諸君におかれては、それぞれの立場から蘊蓄を傾けて忌憚のない御意見の開陳を願います。
なお、御意見の開陳は約二十分程度とし、その賛否を明らかにし、理由を説明していただくよう念のため申し上げます。
それでは植村甲午郎君よりお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/1
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002・植村甲午郎
○植村参考人 委員長からの御命令によりまして意見を開陳いたします。
ただいまのお話にもございましたが、現行商法は占領下という特殊事情のもとに、また短日月の間に立案されましたために、審議が幾らか不十分でありましたが、また条文の規定中にも不備、不徹底というように考えられます個所が多いのでありまして、適用に当っては、いろいろの不便や解釈上の疑点が生じておりますばかりでなく、法文上の欠陥がありますことから、訴訟問題等も起きまして、経済界といたしまして会社運営に支障を来たし、また不安定な感じを与えているというのが現状でございます。
そこで経済団体連合会では、大分前からこれらの点を心配いたしまして、一昨二十八年の二月に、商法中緊急改正問題に関する意見というものを建議いたしております。これは意見集の中に出ておりますからごらんいただくとわかりますが、そのうちに今回の改正事項などがあげられております次第でございます。なおそのほかにもいろいろな問題合計二十二点の一応の要望が出ておるわけでありますが、これら各方面からもいろいろな御意見が出ておって、今回の改正案というものは、そのうちのまた緊急を要するものを、また意見の割合に統一一致してきているようなものを取り上げられているように考えるのであります。
そこでなおあと一、二希望と申しますか、意見を申し上げますが、一番大切なところは、今回の改正案が早く成立いたしまして、そして実施に移されて、ただいまこの新株引受権をめぐって疑義を生じて裁判問題等にもなっておりますこの不安定な状況が、一日も早く安定した形になりたいというのが、われわれの根本の念願であるのであります。
内容について若干申し上げますと、今回の改正案によりますれば、新株引受権を定款の絶対的記載事項としない上に、原則として株主は新株引受権を有しない建前になっておるように考えられます。この点は、私どもが先に緊急改正について要望しました際の趣旨と全く同じであります。授権資本制度のもとにおいて、資本調達の機動性を発揮せしめる点からは、株主には有利な発行価額をもって新株引受権を与えないで、すべて適正価額をもって、新株を公募することが望ましいということになるのでありますが、しかしどういう場合でも、株主は、新株引受権を有せず、新株はすべて適正価額をもって公募しなければならないということにすることは、わが国の実情としましては必ずしも穏当でない。そこで経団連といたしましては、株主は原則として新株引受権を有しないこととして、株主総会もしくは取締役会の決議をもって与えることでできるように要望いたしたのであります。今回の改正は、大体私どもその当時研究しました意見等が組み入れられてできておるものと承知して、賛成をいたす次第であります。
現行商法が、新株引受権を定款の対絶的記載事項としたことにつきましては、当時いろいろな経緯もあったやに聞いておりまするが、条文構成が不備なために、その解釈が多岐にわたりまして、学説上の争いが出るまでに至ったわけであります。そのいずれの説が正しいかということは別にいたしましても、ほとんど大部分の会社は、その定款に、株主は新株引受権を有する。ただし取締役会の決議をもってこれを制限することができるという定め方をいたしまして、法務省においても、これを適法のものとして行政指導をしてこられたように承知するのであります。ところが先般東京地方裁判所において、一定款の記載例に関して無効判決を下されたのでありますが、もしこの定款の規定を無効としまして、それに伴って授権株数増加の決議が無効となるということになりますと、授権資本制度採用後の新株発行は全部無効となるというようなおそれが出てきますので、経済界としましては非常にその点を心配し、混乱の出るのをおそれておるのであります。従ってわれわれといたしましては、先ほど申し上げましたが、一日も早く今回の改正案の成立、実施を望むものであります。
なお本法案の附則第三項におきまして遡及規定を設けられて、「この法律の施行前に定めた新株引受権に関する定款の規定の不備は、会社の設立、新株の発行、合併、組織変更又は定款の他の規定の効力を妨げない。」という規定をなしまして、かりに前に申しましたような定款の規定が無効になるというふうな解釈が成り立ちましても、それがために定款の他の規定が全部無効となるということのないようにされてありますのは、私どもとしては最も望ましい規定であると思うのであります。多少この点については、法律的な意見も議論もあるように仄聞いたしますけれども、私どもといたしましては、安定を特に念願するのでありまして、こういう規定が置かれましたことは、非常にそのために喜ばしい、こう考えておる次第であります。
それから新株引受権を第三者に与える場合に、取締役会か総会において、これを与えることを必要とする理由を開示しなければならないということになっておりますが、その必要とする理由というのは何であるか、資本調達上の必要に限られるのであるか、あるいは役職員の、いわゆる功労株であるとか、あるいは得意先へも回さなければならぬ事情にあるとかいうようなことも含まれるのか、その辺のところが少しはっきりしないかもしれませんが、私どもとしましては、あまりに狭くこれを解釈するのはどうかと思います。法文上どうなりますか、いずれにいたしましても御審議の経過において、その解釈がはっきりすることが、また紛争を起さない意味から望ましい、こういうように考えるわけであります。
それから、いろいろな手続上の問題もございますが、一つこの少数株主の請求による株主総会招集の手続でございますが、この改正案によりますと、請求のあった日から六週間内の日を会日とする総会の招集の通知が発せられなければならないということになっております。実際上請求の日から四週間内に招集通知発送までの一切の手続を済まさなければならないことになっておりますが、実務に携わります者の意見を聞いてみますと、大会社等の非常に多数の株主のありますところでは、この四週間内に手続を済ますということが事実上なかなか困難である、ことに増資の時期と重なったような場合であると、いよいよ事務上困難であるというようなことも申しているのであります。従いまして、この規定が実際には大きな会社には適用される場合がほとんどないというふうに考えられますかどうか、その辺も問題はあると思いますが、どうも六週間では、大きな会社でありますと少し無理であるということを申しておりますので、この点についても、一つ実際を御審議を願いたい、こういうように考えるわけでございます。今申し上げました点は主要点でございますが、今回の改正は、全く当面しております経済界に問題を投げかけている現状から申しまして、特に緊急なものだけ、とにかくとりあえず取り上げていただいたという感じがいたすわけであります。従って、これはすみやかに御審議いただきまして、われわれが安心するようにしていただきたい。
なお、この商法全般の問題としまして、私どもこの前の研究においても二十五項目ばかりの意見を開陳してあるのでありますが、これらについての当局並びに関係の皆様の御研究が進みまして、実際に経済界の仕事が円満に行われて、そして経済の発展向上に進むことができますように、早くなりたいというようなことを考えている次第でございます。
はなはだ簡単でございますが、私の陳述はこれをもって終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/2
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003・世耕弘一
○世耕委員長 植村参考人は、所用のためやむを得ずお帰りになられますので、植村参考人の御意見に対する御質疑があれば、この際済ませたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/3
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004・猪俣浩三
○猪俣委員 私はおくれて参りまして、参考人の前の御意見を承わらなかったのでありますが、今回の改正は、新株引受けに関する規定が大部分であります。そこでこの問題は、この前の改正商法のときにも法制審議会で相当議論のあった問題だと思うのでありますが、一体株主に新株引受権を原則的に法律で認め、ただ定款でこれを制限したり排除したりすることがいいのであるか、あるいは特に定款で認めなければ、原則としては引受権が株主にないのだという方がいいのが、相当議論があったと聞いているのであります。その妥協の結果として、現行法はどちらともはっきりさせないで、ただ定款の絶対的記載事項というようにしてある。ところがそれでは解釈上いろいろあいまいな点があって、訴訟や何かが大へん起って、また改正することになった、そこで実務家としては一体株主に新株引受権を原則として認めて、その制限とか何とかいうことを定款の記載事項にするという方が便利であるが、その方が便利ではなくて、やはり現行法のようなのがいいのだということになるのか。と申しますことは、大阪市立大学の商法研究室で四人の学者が改正株式会社法施行の実態調査というものをやっております。これを見ますと、その調査に当りました二百十二社のうちほとんど大部分が、原則的に新株引受権を株主に認めておいて、ただそれを定款で制限したり何かしておる。そうしますと、この実態調査からくる統計数字と、今法務省の提案の改正との間にちょっと違っている点があるというふうに考えられる。ただ実際二百十幾つのうちほとんど六〇%に相当する会社が、全部新株引受権を株主に認めておるということ、それがやはり実際上必要であるのかどうか。そういう点について前に御説明があったとは存じますが、重ねてその点についての御意見を承わりたい。法律で、結局株主に新株引受権があるのだという株主の利益の規定を置いて、そうして取締役会あたりでそれを自由に剥奪することができないようにしてあるのがいいのであるか、あるいはそうじゃなく、全くの会社の自主権にまかせてしまうということがいいのであるか、現在の会社の実態が前者の方に傾いているのであるが、それに対する御意見はどうであるか、これを承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/4
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005・植村甲午郎
○植村参考人 ただいまの前の方の部分につきましては、これは私どもの方の審議のときにも両論あったわけでありますが、この授権資本制度の実際上の運用ということから考えて、やはりこの引受権はないということにした方が運用上便利である、こういう形の方をとっておるわけであります。それからただいまお話のありました現在の会社がどういう定款をやっているかという点でございますが、これは現行商法に基いて、つまり商法で会社を運営しておりました観念から定款ができておると思うのでありまして、従ってお話のように一応株主の引受権はある、そうして取締役会でこれを制限することができるというような、その法律的なもとはどうか知りませんが、最後にそこまで検討すればそういう形になっている会社が多いのじゃないかと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/5
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006・猪俣浩三
○猪俣委員 これは、あるいは参考人のお方でなしに、政府委員にお尋ねすることかもしれませんが、最近問題になりました東京地方裁判所の新株引受権に対する判決が出ております。この判決自体は、実に裁判所判事の不勉強と非常識を現わしたものであって、これは大隅教授の批判の通りだと思うのでありますが、こういう裁判所があるといたしますと——その判決は、現行法に基きまして新株引受権に対する定款の記載事項が絶対的記載要件になっておりますが、それに不備があるということで、数回の決議をたてに取って無効とし、増資の決議を絶対的無効としてしまうような判決でありまして、これが経済界に与える影響は重大だと思う。そしてその理由は、取締役会で会社の従業員とかその他の縁故者に引受権を認める、その株主以外の第三者に与える引き受けの数量を明らかにしなかったことが無効だという判決の理由になっておるようであります。そこでもしこういう判決が出るような状態だとすると、実際問題として今の改正法でそれが一体防止できるのかどうか、大部分の会社の現行の定款は、現行法のもとにおいてこの判決の趣旨に照らすとほとんど無効になるそうであります。これは、日本の経済を根底からくつがえすような判決がいともやすやすと裁判所によってなされる。そこで立法者もなかなか容易ならぬことだと思うのでありますが、かような判決の趣旨からして、これは、そういう判決が出ないように明確にするような条文になっておるだろうかどうかという御意見を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/6
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007・植村甲午郎
○植村参考人 今回の改正で、ただいまお話の点は明確になったものと考えておるわけでございます。ただ先ほどもちょっと申し上げましたが、株主総会でもって株主以外の者に与えますときに必要の理由というのですか、それを開示しなければならない、その必要の理由というものについてまた法律問題が起るようだと困るから、そこは一つ御審議の経過において、あとで問題が起きないようにありたいという希望を申し上げた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/7
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008・世耕弘一
○世耕委員長 他に御質疑はありませんか。——なければ次に早稲田大学教授大野実雄君の御発言をお願いいたします。
なお念のため申し上げますが、午前中は、大野参考人に引き続いて野村参考人より御意見を承わり、質疑はまとめて行いたいと存じます。
それでは大野参考人の御発言をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/8
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009・大野実雄
○大野参考人 私、早稲田大学の大野でございます。この法律案を拝見いたしまして、いろいろ申し上げたいのですが、最初に「二百八十条ノ二に次の三項を加える。株主以外ノ引受権ヲ与フルニハ定款ニ之ニ関スル定アルトキト雖モ与フルコトヲ得ベキ引受権ノ目的タル株式ノ額面無額面ノ別、種類、数及最低発行価額ニ付第三百四十三条ニ定ムル決議アルコトヲ要ス」その次なのでございます。「此ノ場合ニ於テハ取締役ハ株主総会ニ於テ株主以外ノ者ニ新株ノ引受権ヲ与フルコトヲ必要トスル理由ヲ開示スルコトヲ要ス」ここのところで多少私の意見を申し上げてみたいと思うのであります。この株主以外の者という言葉が一体何を意味しておるのか、従来の現行法によりますと、特定の第三者、こういう言葉を使っておるのでありますが、今度はそういう言葉がなくなってしまいまして、株主以外の者、こういう表現に変っておるようであります。ところがこれが株主という言葉と、役員、従業員あるいは縁故者、取引先、こういう言葉とは考え方がかなり違っているのではないかと思うのであります。たとえば取締役であって株主を兼ねている人、あるいは取引先であって株主を兼ねている人、従業員でありますが株主でもある、こういう人は一体株主以外の者に当るのか当らないのか、そういうことがきわめて不明確なのでありまして、この点はおそらく従来の制例とか、あるいは解説、学者の意見等によりますと、おそらく株主という資格と取締役なら取締役という資格とは兼併することができるんだ、こういう単純な考え方らしいのでありますが、取締役とか従業員というのは、労働者あるいは経営者としてのその労働に対して報酬を得られる、そういうポストでありますのに、株主というのは、これはおよそ投資として考えていいんじゃないか。そうなって参りますと、やはり株主という範疇と、役員とか従業員という範疇とは全く区別していかなければならない、そういうふうに考えた、のでございまして、株主以外の者というのに、株主でありかつ取締役である人たち、あるいは株主でありかつ従業員である人たちも入るか入らないかという点が、非常に疑問でありまして、これは附則の第五項にも、「株主以外の者」という言葉が出ておるようでございます。全くこれは従来の特定の第三者と同じように考えて立法されたのかどうかという点が、一つ私の抱いている疑問でございます。そしてこの後段の「此ノ場合ニ於テハ取締役ハ株主総会ニ於テ株主以外ノ者ニ新株ノ引受権ヲ与フルコトヲ必要トスル理由ヲ開示スルコトヲ要ス」その株主以外の者に取締役が入るといたしますと、取締役は株主総会において自己の新株の引受権を与うることを必要とする理由を開示しなければならない。ですから、必要とする理由というのは一体何を説明するか、総会でただばく然と新株の与えられる人たちの総数とか、あるいは総株数、最低発行価額、こういったものだけ説明すればいいというのか、実は私は取締役でありますが、私も何株か引受権を与えられるのですと、こういうことをはっきり取締役が説明して、そうして総会で承認を得られるようにするのか。民事局の解説書を拝見しますと、だれに与えるかということまで説明しなくてもいいんだ、こういう御趣旨のように私見ておるのでありますが、果してそれでいいのかどうかということを疑問にするわけでございます。この参考といたしまして、この立法資料のところにドイツの、一九三八年でございましたか、株式法の条文があるのでありますが、その三年ばかり前、一九三五年にフランスではこの新株引受権につきまして、十二カ条にわたる改正をやっておるのです。そのフランス法の第六条によりますと、「この総会に先だって代表取締役がなすべき報告の中には、増資をするに至った理由、新株を割り当てられるべき株主の氏名、各株主に割り当てるべき株式の数、発行価額及び発行価額算定の基準を開示した場合に限りこれを有効とする。」こういうふうになっておるのでございます。しかもこの法案では「開示スルコトヲ要ス」とありまして、もし開示しなかった場合には決議が無効になるのか、あるいは単なる訓示規定なのかということに疑問がありますから、これは私全く個人の私案でございますけれども、これを、この決議は取締役が株主総会において新株引受権を与えられるべき者の氏名、与えられるべき株式の数、発行価額及びその算定の基準を開示した場合に限り効力を生ず、こういうふうに直していただいた方が私はすっきりするのではないかと思うのでございますが、これはもちろん私の個人としての意見でございますから、御参考までに申し上げておきたいと思うにすぎません。
ただ新株引受権につきましては、非常に問題があるのでございます。ただいま申しましたフランスの制度なんかは、全く法律でもって株主の新株引受権を定めておりまして、特に定款の規定によってもこれを奪うことができない、きわめてはっきりした立法をしているわけでございます。ドイツの方はただ特別決議でもって全部または一部を排除することができるというようになっておりますが、各国の立法例を見てみますと、日本の現行法とかあるいは今度の改正案のような立法だけでなくして、世界の国々ではかなり変った趣きの立法をしているところもあるのだということを、ぜひ御注意していただきたいと思うのでございます。
それから特に私申し上げたいことは、授権資本制度をしきましたときの資本調達の機動性ということが、何といいますか、非常に鋭いきまり文句のようにどこでも使われたのでありますが、よく考えてみますと、株式会社をいかに改正いたしましても、資本の調達ということは市場が豊かでない限りそれは不可能じゃないか、しかも資本調達を機動的にするならば、調達される方の利益ということを考えてやらなければ、これは全く観念論に終ってしまう。ですから、よい銀行に預金した方が有利だとなれば、いかに商法を直しましても株式に投資するということは考えられないのでありまして、調達される方の経済的なインセンティブ、誘因というものを考えて、そうして取締役に割り当てるとか、あるいは従業員に割り当てる。しかも日本に慣行されております通り、市場価格にかかわらず、実際には額面で割り当てをするということが非常に大きな利益になるのでありまして、そういう利益があっても投資である限りは税法は課税しないというような点で、非常に妙な形で一部の人の営利追求心をそそるというようなことがあるのではないかと思うのであります。ですから私考えますのに、そういうことを前提として、そうして資本市場なりあるいは特定の資産家から増資の資金を仰ごうということならば、この二百八十条ノ二の、今申し上げました規定でも、まあしばらくはやむを得ないかと思うのでありますが、それにいたしましても、後段の場合には、やはりただばく然と株主以外の者に引受権を与える、そういう説明で果して株主全体あるいは従業員に納得がいくであろうかということを考えますと、やはりフランス法のように、だれに与えるのか、その氏名も明らかにし、だれに何株与えるか、そしてその発行価額を明確にしたならば、これは巷間に伝えられますような、何と申しますか、緑故割当とか、あるいは自己割当、二重割当、そういうようなお手盛り式の割当に対する妙な零囲気というものが一掃されるのではないか、こういうふうに考えている次第でございます。
私の申し上げたいことはその点だけなんですが、ただ二百八十条ノ五の第三項中「二十日」を「二週間」に改めるという点でございますが、これはやはり現行法通り三十日にしておいた方がいいのではないかと思うのであります。これは一般大衆が投資いたします場合に、二週間と三十日ではかなりの違いがあるのでございまして、この株式会社というものが一般大衆に公開されております以上は、やはり現行法のように三十日にしておいた方が私はいいのではないかと思うのであります。
簡単でありますが、これだけ私の考えを申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/9
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010・世耕弘一
○世耕委員長 これにて大野参考人の御意見の開陳は終りました。野村参考人がまだお見えになりませんので、順序を変更いたしまして、大阪市立大学教授西原寛一君より御意見を承わることにいたします。西原寛一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/10
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011・西原寛一
○西原参考人 突然お呼び出しを受けまして参上いたしましたので、十分にまとめておりませんが、気づいた点を若干申し上げたいと存じます。
御承知のように戦後政治経済上の大変動が起りまして、証券の民主化であるとか、あるいは大衆資本の回収といったような時代的な要請に従いまして、昭和二十五年にアメリカの仰せに従った大きな改正が株式会社法の部面でなされたのでございます。当時、政治上その他の理由によりまして、急速に改正を実現いたしましたために、全体としては合理的な方向に進んでおりましたけれども、わが国の実際にとってはまだ十分に熟していないような制度の受け入れ方もございました。そういった点の反省と、もう一つは、そのときに取り残されていた会社法の根本問題、こういったものについて現在は反省を要する時期だと存じます。従って今度の改正では、そういった規模の大きい改正案を予期いたしておったのでございますが、現われたところは比較的技術的な、部分的なものでございます。今日本の株式会社法で何が一番大きな欠点かと申しますと、結局法律のわくが非常に大き過ぎて、株式会社法がいわば乱用されまして、有限会社であるべきようなものが、実際は近代的な事業形態であるべき株式会社の形をとっておる。しかもそれが九〇何%を占めており、ほんとうに法律に適応するような株式会社というものは、ごくわずかなパーセンテージしかないというような状態でございます。これは法律上も、実際上もいろいろな混乱を起すもとでございますので、こういった点に抜本塞源的な改正案が出されるかと期待しておったのでございますが、そういった点は満たされておりませんので、この点については十分に満足いたすわけにはいかないのでございますが、ただ改正の第一歩として今回の提案になったというような事情を理解いたしますと、その御趣旨は納得できるのでございます。大体各方面において議論されておりましたところの、いわば最大公約数的なものが今度の案に表現されておりますので、議論さるべきところは比較的少いかと存じます。ただ項目を追いまして、ごく簡単にこれについての見解を申し上げます。
第一の問題は、株式申込証、社債申込証、株式転換請求書あるいは転換社債の転換請求書の数を二通から、二通の制限をとって一通でいいということにした点でございますが、これは別に問題はないと存じます。日本の商法はドイツ法系に従って二通取っていたのでございますが、すでに非訟事件手続法も改正されまして、株式申込証、社債申込証そのものを添付しないでもいいということになりましたからには、こういうものについてそのものを二通取る必要はございません。ことに株金の払込み取扱い者は銀行または信託会社に限られておりますし、社債の方も現在は委託募集の形態をとるのが大部分でございます。従って、委託募集を受けるものが銀行または信託会社に限られておりますので、この点も資金の取り扱い場所が限定されております関係上問題ないのでございます。
次に第二点は、今度の改正案の骨子をなす新株引受権の改正の問題でございます。すなわち、第一には、この規定を定款の絶対記載事項、登記事項及び株式申込証記載事項の中から削除した点でございます。この点については私ども賛成いたしております。すなわち、従来のように、新株引き受けに関する規定が何らかなければ定款全体が無効になったり、従ってまた会社の設立無効とかあるいは新株の発行無効といったような大問題が生ずるというほどの実益のある問題とは考えられません。といいますのは、現在の法律のもとにおきましては、新株引受権を株主に当然与えるものだという建前をとっておりません。あってもよい、なくてもよい、制限付でもよい。ただそれを定款に書いておけというだけのことでございまして、非常に実際的の意味が少い規定でございます。それにもかかわらず、これが定款の絶対的記載事項となっておりますことは、たとえば去る二月二十八日の下級審判決のごとき事態を招きますと実際界に混乱を生ずるということになりますので、これは削除して差しつかえないことだと考えます。この場合に、定款の絶対的記載事項とはしないけれども、法律において引受権を与えるのを原則とするか、あるいは与えないのを原則とするか、これが問題になるところだと考えますが、しかし実際上の結果から申しますと、これはほとんど意味が薄いと考えられます。先ほども御指摘になりましたが、私の研究室で先般会社の実態調査をいたしました。そのときの実情によりますと、新株引受権が株主に無条件にあるというものは、百十二社のうちでわずかに四社しかございません。端株などを除く意味で全体としてあるという建前をとっておりますものが七社ございますので、それらを合せまして合計十一社、すなわち五%程度でございます。それから、新株引受権は株主にあるが、取締役会の決議でその一部を排除し得るというのが百二十三社で、これが実際上非常に多いわけでございます。ただここで問題になりますのは、この一部ということの解釈でございますが、一部というのは必ずしも五〇%以下ということではございませんので、八〇%、九〇%でもやはり一部と解釈できないことはない。そういたしますと、一部という名前において実はほとんど新株引受権を意味ないものにすることができるということになりますのみならず、取締役会の決議でもって全部を排除できるというようなものさえも十八社あるのであります。これらはいずれも以前の法務府の通達に基いて登記所においては登記されている事柄でございます。従って、法律が、あると書いて、定款でこれを変更できる、制限できるということをいたしましても、事実上はこういうふうに非常に力のないものになる。一方新株引受権は株主にないものだといたしておきましても、取締役会の決議で付与するということにしておりますものが五十八社、相当の数ございますし、またこの規定に基いて現実に与えておる会社が相当に多数あるのでございます。そういたしますと、結局原則をどちらにとるかというだけの問題であるわけであります。もし株主に新株引受権があるが、定款でこれを排除あるいは制限できるというふうに法律を書きますと、その制限の仕方いかんがまた問題になるわけであります。そうして、たとえば先般の下級審判決のごとき態度をとりますならば、その制限の規定の有効、無効をめぐってまた問題が蒸し返されるわけであります。そうなりますと、ここはやはり一般の良識にまって取締役会の善処に一任するということで差しつかえないだろうと考えます。ことに改正法案におきましては、株主以外の者に引受権を与える場合には、特別決議という非常に慎重な手続をとっておりますので、そういたしますと、問題は非常に減るわけだと考えられます。従って全体といたしまして改正案のような立場で差しつかえなかろうと考えます。すなわち取締役会の決議によって新株引受権を与えるということが、実際上の立場から便利であろう。もし取締役が不公正な発行をいたしますと、例の差止請求権を行使いたしまして、それを差しとめるという道が開かれておりますので、それによって救済を求めることができるわけでございます。
それから引受権の問題の三は、株主以外の者の新株引受権でございますが、これについては、改正法案におきましては株主総会の特別決議を求めておりますが、私は、従来この株主以外の者の引受権が問題になったり、あるいは場合によったら乱用されるような危険がありました点にかんがみまして、このような特別決議の方策をとるということはいいことと考えますし、また実際上の結果としては、これによって第三者に引受権を与えるという事例が非常に減るのだと考えます。すなわち今後は株主に割り当てるか、しからずんば公募するかというような結果が多くなるのではなかろうか、こういうふうに結果を予測するわけでございます。
なお改正法案の、引受権を与えることを必要とする理由の開示ということが問題になっておりまして、多少言葉の点が問題に指摘されておりましたが、私ども解釈といたしましては、これはそれほど重要なものとは考えられない。提案される場合に全然その根拠がわからないというのでは判断のしようがありませんから、その事由をいわば疎明すればいいのであって、不審があれば株主総会においてその質問権を行使するということによって内容をさらに判断し、悪ければ否決すればいいのでありますから、理由の開示そのものにあまり重きを置く必要もなかろうかと考えます。
それから新株引受権の内容と割当日でございますが、この割当日とその予告については別段問題はございません。
端株の切り捨ても、現在の額面制度のもとにおいては一応原案の立場も理解できます。しかし根本的に考えますと、現在の法律のもとにおきましては、株式合併の場合に端株を無視いたしません。また再評価積立金の資本組入に関する法律におきましても、やはり端株は尊重いたしております。ことに将来額面の引き上げということが問題になります場合には、このように端株を切り捨てるということは疑問があると考えます。ただ、しばらく現行の額面制度のもとにおいて、きわめて便宜的な、一時的な措置としてならば、端株の切り捨てもやむを得ないことかと考えます。
それから新株引受権者に対する失権予告付催告の期間短縮、三十日を二週間に改正するという問題でございますが、これもまず諸国の法令その他を考えまして、また新株発行の場合に非常に時日がおくれるというような実情も考えまして、この改正でさしつかえなかろうと思います。
第三の改正点は、株主名簿の閉鎖または基準日の問題でございますが、それについて定款の規定がいらないようになることは当然のことであり、むしろ立法の場合、二十五年の改正のときに、従来定款に定められてあったことを法律に取り入れました関係上、つい定款の規定ということが前提になったのでありますが、実質的に考えまして、これは定款の規定のあるなしを問わないで差しつかえない問題であります。
次に期間の改正、六十日を二月に、三十日を二週間というのも、これ自体としては問題ございません。ただ全体として期間の改正はほかにもいろいろあるのでございます。たとえば株主総会の決議取り消しの訴えの提起期間であるとか、あるいは公示催告期間であるとか、あるいは株式併合の場合の株券提供期間であるとか、いろいろ問題があるのでございますので、近い将来にそれらもあわせて考慮されんことを希望したいと考えます。
最後に第四は、少数株主の総会招集請求権に関する問題でございます。これについて現行法の二百三十七条が非常に期間を限っておりますので、名簿の閉鎖その他を考えまして事実上不可能であるという事態にかんがみて、このような改正案が出たことだと考えます。六週間の期間というのは実際上非常に窮屈だというふうな話が実際界から出ておりますが、私はそれほど心配する必要はないのじゃないかと考えます。といいますのは大会社におきましては、この招集請求権を行使する前提にあります発行済み株数の百分の三を集めるということは、これは大へんなことであります。のみならず、取締役会の招集を繰り上げてやるとか、あるいは株主名簿の閉鎖の公告を迅速にやっておく、いろいろなことをいたしますと、まず六週間ということで実行不可能ではないと考えられます。従って改正いたしますとすれば、あまり一部の大会社本位に期間を長くするということはそう考えなくてもいいのじゃないかと考えられます。
ただ根本問題といたしまして、私は少数株主が会社に対して総会の招集を請求して会社がこれを開かないときに、裁判所の許可を得て自分で招集をする、こういう建前について疑問を持たざるを得ないのであります。こういう建前はドイツの株式法などもとっておりますが、アメリカなどではそういうことをとっておりません。しかし実際問題といたしまして、かりに裁判所の許可を得たといたしましても、少数株主が現実に招集をすることは非常に困難であります。すなわち会社のいわば株式課を全部自己の支配の中に収めなければ、事実上動きがとれないのであります。会社の関係以外の者が急にそういった事務当局を把握して総会の招集をするというようなことは、言うべくしてほとんど行われないのであります。従って、もし少数株主の立場を生かすといたしますれば、これはむしろ裁判所に総会の招集を命じてもらう、あるいはさらに裁判所がそういった少数株主の意見を聞いて、請求をしないところの取締役を解任する、こういうふうな制度、この方がむしろ合理的ではなかろうかというふうに考えられます。すなわち商法の第二百九十四条の第三項のように、裁判所が代表取締役をして総会を招集せしめるという制度、あるいは裁判所が取締役の法令、定款違反、不正行為などの場合に解任を命ずるという規定、この規定をこの場合に持ってくる方が合理的ではなかろうか、このように考える次第であります。
初めに申し上げましたように、これはごく改正の第一歩であると考えますが、これを拠点として全面的に新しい時代に即応した会社法の改正を実現されるように希望したいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/11
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012・世耕弘一
○世耕委員長 次に時間の都合上引き続き長野参考人より御意見を承わることにいたしたいと存じます。弁護士長野潔君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/12
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013・長野潔
○長野参考人 私は長野でございます。この商法の改正案につきまして一番問題になるのは、新株引受権の問題だと思います。新株引受権の問題は、この前の商法改正のとき定款の絶対的記載事項になりましたために、その絶対的記載事項である引受権の問題をどういうふうに定款に表現するかということがこの前の法律施行のときに種々問題になり、学者の座談会だとか、学者の著書あるいは法務省の見解等によって書き方も種々雑多になっておるのであります。そしてこれは当初は登記事項じゃなかったかと思うのですが、登記事項になりましたためにどういう登記か受けつけられるか、どういう登記が却下されるかということからも問題が起つたのであります。これでその新株引受権の規定が無効だということになりますと、結局会社の設立無効を来す。新株引受権というものは、会社の機構自体から言ったらそれほど重要なものではないと思うのでありますが、その一カ条が無効でありますために全体が無効になってくるというようなことは、どうも会社としてははなはだ困ることであったのであります。そしてその新株引受権の問題が有効か無効かということは、主として特定の第三者の引受権に関して争われておるように思うのであります。これを有効だとする学説、それから無効だとする学説があり、それをまた有効だとする判決があり、無効だとする判決がある。同じような事項についてそれぞれ異なった問題が起る。そして無効だという判決が、この前東京地方裁判所に一つ起ったために——その前にもほかの裁判所にはあったようでありますが、起ったがために、東京の地方裁判所もこういう判決をするならばこれは大へんだということで、大会社では非常な恐慌を来たしておったように思います。私は東京地方裁判所の判決は賛成いたさないのでありますけれども、実情を無視したものであり、ただ第三者の新株引受権についてパーセンテージが書いてないから無効だという形式論理で原告の請求を立てるというのはどうであるかと考えておるのでありまするが、一部を第三者に与えると書いてあるときに、これはパーセンテージを示したものではないでしょうけれども、一部というのは九割九分までは一部だという算術的な、数学的な計算をすることも可能でありましょうけれども、経済界並びに法律界の常識からいいますならば、一部という観念は少くとも二、三割程度はということであるべきだと思うのであります。そうすればそれを三割と限定すれば有効であるが、一部と書いたんじゃ無効であるというような議論はどうも受け入れられない。もし東京地方裁判所の判決通りとすれば、九割九分までは第三者に引き当てると書いても有効だということになるのかもしれませんが、そういうのは非常におかしいと思うのであります。しかしおかしくても何でも、裁判所が無効であるという判決を下せば、経済的に混乱を来たすことはこれは避けがたいところでありますので、この問題を立法的に解決するということはきわめて当を得た措置であると私は考えます。なおこの種の無効訴訟の特性といたしましては、事案関係はほとんど争いがない、そうして争いはもっぱら理論だけの争いになりますので、学者の論争が積極説、消極説がある、そのいずれに軍配をあげるかということが裁判のような形になって、訴訟としてもきわめて奇妙な形になると思うのであります。それからその原告となる人につきましても、これが特に会社の大株主であるという者は少いのであって、百株かその前後の者が原告となって、そしてしかもそれで設立無効あるいは定款無効というような問題が起き得るということは、どうもそういう法律自体は適当ではないんじゃないかと考えます。今回の改正案ではすべてこれを絶対的記載事項からはずしまして、そうして取締役会の定むるところで新株引受権を株主あるいは第三者に与える、こういうことになったのであり、また現在の取締役は株主の権利を無視して常に自己のみの利益をはかるものであると考えることは考え方が間違いであると思いますので、私は今度の改正案はこれでよろしいのであろうと思うのであります。ただ第三者に新株を引き受けさせる場合に、先ほども問題になりましたけれども、その「必要トスル理由ヲ開示スル」、必要とする理由を取締役会に開示しなければならないことは当然のことと考えるのでありますが、ここに「必要トスル理由ヲ開示スルコトヲ要ス」というのは、きわめて軽い意味であって、かりに必要とする理由の開示が十分でなかったとしても、決議そのものがある以上は引受権は有効に成立すると私は解釈する方が穏当であろうと思います。ただ問題は、この後段のこの場合において必要とする理由を開示しなければならないということは、いわゆる言いがかり訴訟を始めようとすれば、ここに言いがかりをつけ得る余地があるということは言い得ると思います。原告が勝訴の見込みはないけれども、とにかく訴訟を起してみようかという気になり得る余地は、この必要とする理由というものが、内容がはっきりいたしませんので、理由が不備であるとか何とかいうことから出てくるおそれはあると思いますけれども、しかしこの理由が不十分であるからというので無効だとするというような判決が下るとは、法律家としては考えることができないのであります。それから少数株主による総会招集につきまして期間の点が規定せられるようでありますが、これは少数株主権を行使するために内容証明で請求をいたしましても、総会を招集しないといって返事をよこす会社がある。そのときにやはり二週間待っていなければ裁判所の許可を受けることができない、現行ではそういう解釈になるかと思うのでありますが、今回の改正では、相手方が明白に拒絶した場合は、少くとも遅滞なく総会招集の手続をしないということに該当するであろうと思いますので、この点も同時に解決されるのではないかと考えております。また期間を、総会は招集したいが手続がなかなか進行しないという場合に、二週間内に発しなければいけないというのを、今度は少くとも四週間内に発すれば足りることにして、その倍にするわけでありますから、これでまかなえるのではないかと思うのであります。大体、そう株主の非常に多い会社にこの少数株主権の行使ということはほとんど不可能だと考える。従ってこれは資本額が中以下の会社にのみ考えられるといいますか、実際には行われる規定だと思いますので、これで差しつかえがないと思うのであります。
それから株主名簿の閉鎖期間の六十日を二カ月に改めるということがございますが、これは実際にも、六十日と二カ月というものを世間の人は同じように考えておりまして、実際問題として総会を招集した日は一日、もう六十日を過ぎておって、その日は停止になっていないのだというので、トラブルが起った例もございますが、これが二カ月といたしますれば、その点はきわめて明白となると考えます。私はこの法案につきまして、本分の方につきましては今申し上げたように賛成いたすのでありますが、この附則の二項から五項まで、これは非常に苦労された跡があるのでありますが、これによって過去の訴訟が一掃されるとは申しませんが、結局過去の訴訟は無効の判決が確定したとしても、経済界の混乱を来たすということはあり得ないのだ、こういうことに帰着するかと思いますので、きわめて妥当な経過規定の案であると思うのであります。なお旧来の引受権、現在までにあるところの株主の引受権についても、これをはずすことができるかできないかというようなことについて争いがあり、これは固有権だから総株主の同意がなければ廃止できないのだというふうにも言われておるかと思うのであります。私はこの四項の規定の「その定款の規定を廃止し、又は変更することを妨げない。」というのも、総株主の同意を得ないでも、特別の手続でもって変更することが許されるのだ、こういうふうに解釈することができると思いますので、この点も賛成いたします。ただしこれが許されないということになりまして、常に総株主の同意を要するんだということになりますれば、このただし書きはむしろおかしいんじゃないかと思っております。私の申し上げたいことは以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/13
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014・世耕弘一
○世耕委員長 これにて長野参考人の御意見の開陳は終りました。これより大野参考人、西原参考人及び長野参考人に対する質疑に移ります。田中幾三郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/14
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015・田中幾三郎
○田中(幾)委員 私はただいまの御三人に対して、各別個に御意見をお伺いしたいと思うのであります。今回り商法の一部改正法律案は、百六十六条の一の第五号、この条項を定款の絶対的記載事項からはずすという点が重要な点であると思うのでありますが、この五号を定款の絶対記載事項からはずしても、株主の新株引受権というものがあるかないかということは決定しないと思うのであります。西原参考人は、ただいまいろいろ統計によりまして、新株引受権が株主にあるとしてもないとしても、取締役会の決議によって大体の程度付与されておる、こういう点から実際問題としては、この点はそう決定しておく必要もないような御意見であります。これをきめるということは実益がないような御意見でありましたが、しかしこの新株引受権というものは、株主の会社創立当初からの原始的な、もしくは譲り受けたそのときから株主の有する権利であります。その権利をもとにして新株が割り当てられるということに相なりましたならば、これは株主の個有の旧株式から出てくる利益のほかに、株主たるがために将来ある利益を得られるという権利が、また別に発生しておるのではないかと考えるのであります。でありますから、この新株引受権というものが株主個有の権利としてあるのかないのかということは、株主にとっては非常な利害を伴っておる重大なる点ではないかと私は考える。法務省の民事局から出された意見書によりましても、新株引受権が株主にあるという法的根拠を明らかにして、その建前の上に立ってこれを制限できるか、排除できるかという規定を置くべきであるという御意見が、かなり多数あるように思われるのであります。でありまするから、私は、二の新株引受権という権利を不確定の状態に置かずに、商法もしくは法規の上で明らかに確定をしておいた方が株主の利益でもあるし、また私の言うように、一種の権利と認めましたならば、将来紛争を避けられるのではないかと考えるのであります。格別にこの引受権を確定しておく方がいいのではないかという私の意見に対して、皆さんの御意見を別個にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/15
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016・世耕弘一
○世耕委員長 それではただいまの田中委員の質疑に対しまして、大野さんの発言をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/16
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017・大野実雄
○大野参考人 私も新株引受権を法定するということには全く賛成なのでございまして、かねがね法定論を唱えておるわけであります。ただ今回の法案を読んでみますと、原案では、株主に新株引受権はないのだという前提に立って、取締役会がそれを与えることができる、こういう法案のようでございます。私個人としては、新株引受権は法律で定めるべきであって、定款でも奪うことはできない、こういう建前にいたすべきだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/17
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018・西原寛一
○西原参考人 株主の根本的な、奪うべからざる権利としては、利益配当請永権と残余財産分配請求権との二つが主でありまして、その他のものはいわば付随的なものだと考えるのであります。もし新株引受権を株主に絶対無条件に奪うべからざる権利として与えるという建前をとりますと、それも一つの方法ではございますが、しかし反面には資金の調達が非常に不便になって、その結果は、株主に不利益がはね返ってくるということも考えられます。そこで現行法におきましても、立法の当時にどちらともきめることができないで、あのような不手ぎわな結果になったわけでございます。そういたしますと、もし今度改正いたします場合には、法律が無条件に与えて、定款でこれを排除することができるとするか、あるいは法律がないものとして取締役会で与えることができるとするか、どちらか二つだと思います。今度の改正案はこのあとの方をとったものだと存じます。最初のような立場をとるということは一つの方法として考えられますが、その場合にはやはり定款による制限を認めなければならない。ところがその制限の仕方がまた問題になります。ことに東京地方裁判所のような判決のあったあとでは、制限が一そう問題になることになりますので、これはむしろ今度の案の方が実際上便宜でなかろうか。株主の利益は、自分の持っている財産上の権利が阻害されるといけませんけれども、その方は株式の不公正発行の差しとめということで押えられておりますし、また今度は第三者に与える場合には特に慎重な決議をとっておる次第でありますから、今後においては乱用される危険が非常に少くなっておる。むしろ資本の調達に非常に使宜な方法の方が実際問題としては得策ではなかろうか、このように考えられますので、私は改正案のようなもので差しつかえなかろうと思います。確かに方法が二つございまして、たとえばアメリカの各州におきましても、法律は絶対的にこれを与えておって、定款で制限することができるとするデラウェアーやイリノイ州の法律があります反面、カリフォルニアにおきましては、定款に規定すれば与えることができる、こういうふうになっておりまして、必ずしも一致いたしておりません。弊害さえ押えておくならば、今度の改正法案の方が問題を生じない意味において、かえって便宜ではなかろうかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/18
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019・長野潔
○長野参考人 私は、株主に新株引受権を原則として与えるという考え方には賛成なのであります。ただそれを奪うことのできない権利としてしまって、定款でも制限ができないということになりますと、先ほど申されましたように、資本の調達ということからいって非常に困難を生ずる場合があると考えますので、この前の法律もそうであり、今度の案もそうでありますが、取締役会できめるということの方が妥当ではないかと思います。申すまでもなく、定款の絶対的記載事項としては掲げなくても、相対的記載事項として、当初に株主の総意あるいは大多数の意見をもって引受権を認めるという道も開かれておりますので、この法律案で足りるのではないかと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/19
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020・田中幾三郎
○田中(幾)委員 それではもう一点各位にお尋ねいたしますが、御承知の通り現在の商法では百六十六条の五号によって定款に記載したときに、新株引受権の有無がはっきりするのであります。すなわち定款によって引受権があるかないかということが決定するのでありますが、二百八十条ノ二を見ますと、「会社ノ成立後株式ヲ発行スル場合ニ於テハ左ノ事項ニシテ定款ニ足ナキモノハ取締役会之ヲ決ス」取締役会がこれを決定しなければならないというような書き方になっております。そうして五号へ参りますと、新株の引受権をやるかやらないかということの有無でなくて、「新株ノ引受権ヲ与フベキ者」ということになっています。そうしますと、この取締役会は「定款ニ定ナキ」事項についてこれだけの行為を決定しなければならないが、やらないということを書いてないので「新株ノ引受権ヲ与フベキ者」と書いてありますから、必ず取締役会は新株引受権を与えなければならないようにも思われるのでありますが、学者としてはこの解釈について将来疑義を生むようなおそれはないでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/20
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021・大野実雄
○大野参考人 ちょっと御質問の趣旨がよくわからないのでございますけれども、現行法の規定に基いてでございますか。第一項の五号は今度削除になる関係で変ってくるんじゃないかと思うのでございますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/21
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022・田中幾三郎
○田中(幾)委員 もう一度申しましょう。第五号は削除になったんですが、五号には引受権の有無を明らかにしなければならなかった。やるといえば引受権は決定したわけです。そこで今回の改正案の二百八十条ノ二の第五号を見ますと、新株の引受権を与えるか与えないかという有無を決定しろということを書いてなくて、与うべき者を指定することになっておりますから、いかにも一項と五号を見まして旧法と対照しますと、取締役会は株主に対して新株券を与えなければならぬというような解釈になりはしないか、学者として、将来そういう解釈上の疑義の生ずるおそれが、このままではないであろうかということをお尋ねしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/22
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023・大野実雄
○大野参考人 私心配はないと思うのですが、大体新株引受権がないという建前に立っておりまして、株主以外の者に新株を与える場合については、与うべき者について特に定款で定めれば役員に与えるとか従業員に与えるとかいうことを相対的記載事項として掲げ得るわけでありますから、その疑義は生じないように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/23
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024・西原寛一
○西原参考人 私も同じように、二百八十条ノ二にできました五号は、取締役会が必ず新株引受権を与えるというのではなく、与える場合にこういうことを取締役会で定めるんだ、こういうふうな趣旨に読みまして、定款で株主に新株引受権を与えるんだ、こういうことをもし書いておれば、それによってこれもまた具体化することになりますですが、しかし全然規定がないときには引受権がないことが前提になっておるので、取締役会で与えようとする場合にこれを活用する、こういうふうに解釈いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/24
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025・長野潔
○長野参考人 私も同じ意見でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/25
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026・世耕弘一
○世耕委員長 よろしゅうございますか——それでは猪俣浩三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/26
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027・猪俣浩三
○猪俣委員 私もお三人の御意見を承わりたいと思います。まず授権資本制度を採用して資本に機動性を重視した商法の精神からしますと、たとえば新株引受権を定款の絶対記載要項にするということはもちろん必要な点があると思うが、私ども大体改正の趣旨には賛成するのであります。ただ取締役会における裁量権が拡大いたしますと、そこから発生する弊害、これをいかに除去するかというところに一つの点があると思うのであります。たとえば重役の縁故割当に陥るおそれがある。もちろん今不公正な株式の発行の差止権もありますけれども、商法の二百六十九条の重役の報酬規定なんど、脱法行為といたしましてこういうお手盛りな引き受けをやるおそれがある、それをこの改正だけで完全に阻止できるかどうかという点が一つ。それから今の株主の地位というものは、会社の経営者というよりも、ほとんどいわゆる社債権者みたいな立場になっておりますので、そこでこの引受権につきましても結局においてそれが株主以外の者に有利に売り出され、全体において株主の利益になるならば、それでも僕は絶対に株主に引受権を認めなければ株主に不利益だということにもならぬかと存ずるのでありますが、それだけなお会社の経営権とか支配権というものにからんで、この縁故割当あるいは会社の一、二の人間が自分たちの勢力を扶植するために新株の割当をするという点について、やはり不公平なところが出てくるというふうにも考えられる。そこでこの弊害をいかに除去するかということが立法の一つの要点じゃないかと思うのであります。その点について現行法あるいは改正案でこれでよかろうかどうかという点が一点であります。
それから先ほど大野教授が指摘されたことは私非常に同感でありますが、先ほど申しましたように株主の引受権を絶対的の定款の記載要項にしたため、これの訴訟が相当起っておる。しかも法務省の記載事例に従って登記したものさえ問題が起って、東京地方裁判所では被告敗訴の判決が出た。何万株の増資がみんな無効になってしまうという判決が出たということであります。そこでその原告になったのを調べてみますと古川何がしという人物で、これが今事例としてあげられておりまする三つ、四つの東京、横浜——東京あたりの裁判所に訴えて出た。それは全部原告が同一人である。最後に原告が勝訴の判決をとったのなどは、その会社に対して四十五株の株主である。何方株といううちに四十五株の株主が訴えて、そして定款の無効から増資の全決議を無効としてしまった、そういうような弱点があったわけで、今度はその道を防がなければならぬと思うのであります。そういたしますと、一番問題に相なりまするのは、先ほど大野教授が指摘されました新株発行の際に株主総会——二百八十条ノ二の改正の規定であります。このうちの五号は「新株ノ引受権ヲ与フベキ者並ニ引受権ノ目的タル株式ノ額面無額面ノ別、種類、数及発行価額」、こうなっております。なおその次には「株主以外ノ者ニ新株ノ引受権ヲ与フルコトヲ必要トスル理由ヲ開示スル」、先ほどからたびたび問題になっております。これが新たなる一つの解釈の紛糾を来たす問題になって、場合によるとあらためてまたこれから定款無効だの、株主総会決議無効だのという問題が起りはせぬか。そこでこの際これは疑義のないような規定にしておかぬと、甲の点を改めたと思ったら乙の新たなる問題がまた出てきたということになっては何にもならぬと思うのです。そこでこの規定だけで解釈の疑義が起きないようなことになるであろうかどうか。先ほど大野教授の指摘された点でありますが、私どもが二百八十条ノ二の五号ですか、「新株ノ引受権ヲ与フベキ者」というのは一体どの範囲のことになるのか。特定の人の住所、姓名まで明らかにしなければならないのか。法務省の解釈ではどうもそうじゃないようです。これはあいまいなのですが、「新株ノ引受権ヲ与フベキ者」というのはどれをいうのですか。姓名あるいは姓名まで出さぬのでもいいのか、だれであるかということがわかりさえすれば、特定の人が特定されればいいのであろうか。これがこの規定ではあいまいであると思うのですが、これに対して皆さんのお考えを私どもは聞きたい。もちろんこの「新株ノ引受権ヲ与フルコトヲ必要トスル理由」ということもはなはだ疑義がありますが、どういうふうにこれを直したらいいか、あるいはこのままで解釈上疑義がないものであろうか、ここに疑義を生じますと同じことを繰り返すことに相なります。そこでこの点についてのお考えを承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/27
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028・大野実雄
○大野参考人 おそれ入りますが、第一点をもう一度。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/28
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029・猪俣浩三
○猪俣委員 第一点は縁故割当、つまり何というか、今度は重役会、株主総会というものが生殺与奪の権を持つようになる。そこでこの取締役会なんかで決定する際に、縁故割当というような弊害を生ずるおそれがある。それを今度の改正案だけでそういうおそれをなくすることができるだろうか、それに対する御意見を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/29
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030・大野実雄
○大野参考人 その点、私は非常に疑問を抱いておりまして懐疑的なのでございますが、「株主以外ノ者」というこの言葉の表わし方が現行法の「特定ノ第三者」と一体どう違うのか私にはわからないわけなのでございます。大体現行法でも利益配当に株式配当というのがございまして、そして現金で配当しても株式で配当しても、それは大体同じような考え方がなされるのでありますが、アメリカの判例でございましたか、ある労働者が株を持っておって、そうしてほかの労働者が株を持っていない、その株を持っておる労働者に新株を割り当てたというような事件だと思いますが、そのときにこれは一種の不当配当じゃないか。それからまた私どもの考え方でも、極端な場合を想像いたしますと、重役賞与というものを総会の審議にかけて、そして現金で賞与を出すときにはこれは賞与の形になるのでございますが、株式でこれを縁故割当をいたしますと、これは賞与という形でなくて、その取締役が払い込みいたしますから、表面的には投資という形でカムフラージュされてくるのではないか、そういうことが考えられるのでありまして、とかく風評がございます縁故割当の、何と申しますか、暗い気持というものがどうしたら防げるかということは非常に大きな問題であります。また今の御質問にもございましたように、古川何がしという人が、わずか四十株か五十株の株主が訴訟を起して、それが端緒となって経済界があげてあたふたと混乱しなければならないということは、私は考え方の相違でありまして、何も小株主だからその人の権利は大して尊重しなくてもいいということではなく、むしろそういう疑惑を持つような立法をしたということが一つの悲劇の原因であったのではないか、こういうふうに私は痛切に感じたいのでございます。ですから縁故割当の問題を少しでも明朗に持っていくというのならば、どうしても取締役が株主以外の者として、現に株式があるという大株主でありまして、しかも取締役が自分に割り当てる場合には株主以外の者、言いかえれば取締役という、そういう呼び名を持ってくれば株主以外の者として割当が受けられるのだ、そうなれば何も隠すことはないのでございまして、その理由を発表したらいいのではないか。私が引き受けなければ資本調達の機動性が得られないのです、こう言うことを何もためらう必要はないのでありまして、総会でそれを発表なさったらどうかと私は考えるのでございます。それをやはりこの法文といたしましては、先ほど申し上げました通り新株を割り当てられるべき者、株主だれとだれであるということを開示し、そして取締役社長には何株、あるいは平取締役には何株というふうに開示する。従業員に割り当てるといいましても、従業員の中で一率に割当をしているかどうかということは、私どもはかなり疑問にいたすのでありまして、従業員の中で、また第二、第三の特定が行われて、しかもそれは取締役会といいますか、機動的と申しますか、そういったところで、わからない間に公示されないできめられていってしまう。そうなると、従業員の中でも、割当を受けられる人もあれば受けられない人もある、そういうアンバランスが生じてくるのではないかということをやはりおそれるのであります。従って従業員の場合には、従業員のだれとだれに割り当てられる、しかも一番肝心なことは、割り当てる価額が幾らであるかということも説明し、そうしてその割当の基準、算定の基準というものを、取締役会はどういうふうにして算定したか、いいかげんな腰だめな算定であるか、あるいは精密な計算に基いて立てた価額であるかということを開示して、そうしてこうしなければ自分の会社では資本調達ができないのだということをはっきりとさせたならば、株主総会がそれを理由なく拒否するということはあり得ないのでございまして、どうしてもそういったふうにこの条文は明白にすべきじゃないか、いわんや開示しなかった場合でも、それが決議の効力に影響ないというような考え方でなくて、法理論といたしましては、いろいろな解釈は立ちますけれども、一応日本の今日の立法といたしましては、開示しなければ総会の決議効力を持たせないのだ、それくらいにいたしませんと、現行法のもとで生じてくるようなこういった紛争あるいは訴訟は防ぎ得ないのではないか。昭和二十六年に現行法施行以来、資本調達の機動性を害したからという原因で訴訟が起きたのはほとんどないので、訴訟の背後にひそんでいる事情というものはなかった。そういった縁故割当ということに対して何となく反対であり、疑惑を持っているから、具体的に四十株か五十株といったような小さい株主が問題を起してくるのではないか、そういうことを調整する必要があると考えますので、先ほどフランスの一九三五年の法を援用いたしまして、私の私見を申し上げたわけであります。なおフランスにおきましても、数十年の聞こういう訴訟がたくさん繰り返されまして、そうしてこういう立法がされたということを、やはりわれわれは参考にすべきではないかと考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/30
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031・西原寛一
○西原参考人 株主以外のいわゆる第三者の引受権がとかく乱用される余地のあることは事実でございます。ただ第三者の引き受けというものを絶対的になくしてしまう株主の引受権か、しからずんば公募に進むか、この二本立で徹底するかどうかということになりますと、これは若干問題がございましょう。たとえば特許権その他の現物を出資して、それによって会社を建て直そうといったような場合、あるいは外資を導入してやっていこうといったような場合、第三者の引き受けが必要になることも、必ずしも絶無とは申せません。そこで若干第三者の引き受けの余地を残しておかなければならないのでございますが、従来問題のあった重役の縁故割当、そういったものをどういうふうに除くかということが、立法関係者の御関心の対象だと存じます。やり方といたしましては、これを全面的に禁止してしまうということが一つの徹底した方法であろうと考えます。もう一つは、従来ある程度行われてきているから、あまり弊害が起らなければとにかく全面的に禁止はしないという態度をとろうというのが第二の方法だと考える。改正案はいわば少しなまぬるい、第二の態度をとったものかと考えられます。すなわち総会の特別決議ということが要件になっておりますので、あまりに見えすいた乱用は防げるのであろう、こういう予測のもとにできたことかと思います。もし重役の縁故割当ということを全面的に禁止いたしますと、これはわれわれ関係以外のものは引受権を持ち得べきではないということが暗黙の前提になっておりますので、たとえばそれならば、従業員に対して引受権を与えるということも、やはり同じように問題になる余地があろうと思います。経営者の方に引受権は絶対に与えない、従業員の方はどうするか、こういったバランスの問題が起って参ります。そこでまずまず特別決議並びに不公正発行の差しとめ、この両方で極端なものを押えて、ある程度従来の慣行は全面的には否認しない、こういう態度をとったものかと考えられます。重役の引き受けが従来賞与の、いわば脱法的な方法のようになっておりましたが、これも最近国税庁のお取扱いで、税法の対象にもしているようでございますので、いろいろな面から弊害の矯正はできつつあるように思います。そこで問題は、全面的にそこまでいくか、あるいは漸進的にこの程度でいくかという判断の問題になろうかと思います。それからもし第三者に与える場合、全面的に氏名までも書かなければならないということになりますと、たとえば多数の従業員を擁している場合には非常に煩雑なことになりますし、また基準さえ明らかになって、特定さえしておれば、株式の数、あるいは最低発行価額というものがきまっておるのでございますから、必ずしも氏名まで明らかにしなくとも、その点の弊害はないものと考えられます。
それから第二にお尋ねの言葉の問題、ことに新株引受権を与えることを必要とする理由の開示、これが総会の決議の可否にからんできてどうなるか、懸念があるというお話でございますが、私どもは、でき上った法律を解釈する立場にございますので、ふだん若干の表現の不明瞭、不合理は、解釈によって合理化するように努めておるます関係上、もしできますれば、これが法律になりますれば、そういった合理的解釈をするつもりでございましたのですが、もし懸念があるとして、初めから表現の上でも問題をなくしておこうというのでございますれば、むろんそれに越したことはないと思います。そうでございますれば、あるいは数株の引受権を与えんとする理由を開示すべしといった訓示的な規定にする。必要とするというような言葉を省きまして、新株の引受権を与えんとする理由を開示すべしという程度でいかがかと思います。なお表現の点はそのほかにも若干ありますが、今言ったような立場から、一々指摘はいたしませんでした。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/31
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032・長野潔
○長野参考人 縁故割当の乱用を防止することがこの法律で足りるかというのが第一点でありますが、大体従来の縁故割当のどこに乱用があるかというと、株主と同じように額面で割り当てるというところに弊害があったと思います。これは法律的には、株主と同じように額面で割り当てなければならないものではなくて、むしろ第三者に企業に参加するチャンスを与えるだけで足りるのであって、会社の経営状態、採算状態というものを勘案して株価は当然に出てくるのでありますから、その時価に近いものでもって割り当てるという最低発行価額を調整する方法が、第三者割当の場合に考えられるならば、一番いいと思いますが、これもその計算の方法などを詳しく法律できめるということなどは不可能でありましょう。しかし従来はただ取締役がお手盛りで自己割当といいますか、縁故割当をやっておったようでありますけれども、今度は少くとも二百八十条ノ二の新しい規定によって特別決議で議題とせられることになるわけでありますから、その弊害があり、あるいは乱用があるということについては、法律的には株主から不服を言って是正させる道があると思うのであります。ただこれに御案内の通り現在の株主総会というものはきわめて形式化されており、実際に取締役のやり方について監査的な役目を果していないという弊害がありますので、私は法律的にはこれで足りるものと考えるのでありますが、これはどこまでも株主が会社経営について関心を持つか持たぬかということと関連を持つものだと思うのです。
それからこの権利の乱用にわたる割当については、重役の行為の差止権が株主に認めれられるわけでありますけれども、これとて現在の裁判制度というものは、時間的にきわめて長引きますし、株式の発行というものは期間的にはそう長くないものですから、一応仮処分といっても、仮処分で簡単に直ちに片をつけてくれるという状態になりませんで、ある意味において新株発行については有名無実、とまでは申しませんけれども、かなり保護に欠けるところがあるように思います。
それから新株の引受権をだれに与えるかということの氏名を特定するかどうかということにつきましては、これは第三者に与える場合の第三者の問題だと思うのでありますが、第三者に幾ばくかの株式を与えるか、引受権を与えるかということは、それだけ除いた残りに株主は引受権を持っているわけであって、残りの株式が第三者の何人に行くかということについては、株主の権利はごうも害せられないのだと思うのでございます。また特別決議は六カ月間有効であるようでありますが、六カ月間有効なのに半年前に銀行なら銀行で株を持ってくれということを特定して、その銀行なら銀行というものを書くことができるかどうか、この決議ができてから銀行に資金調達に行って株を持って下さいということの方が多いかもしれないということも考えられますし、それから従業員その他に与える場合に人数の点からいってそれを一々あげるということも不可能な場合もあろうと思いますので、私は名前まで書き上げる必要があるのではなくて、そのだれが引受権を持つかということが特定できるようにきめられておれば、新株の引受権を与うべきものをきめたことになると思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/32
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033・猪俣浩三
○猪俣委員 西原先生に一点お尋ねいたします。実はあなたの大学の研究室で新商法施行後の株式会社の実態調査という珍しい御努力をなさっている。私は「ジュリスト」でこれを拝見いたしまして敬意を表したのでありますが、その統計の中に、先ほども出ましたけれども、新株引受権というものは株主にあるのだということを前提にして、そうして取締役会の決議でその一部を制限する、一部という中には九割も入るということも言えぬことはないと思いますが、それは常識上ないことで、やっぱり少数だと思われるのです。こういう規定を置いたものがほとんど圧倒的に多数であるという御報告です。そこでこれは実態調査から出てきたことですが、新株引受権は株主にあるのだという、現在の一般の会社にはそういった意識かあるのでしょうか、あるいは株主に新株引受権があるという考え方があるわけじゃないが、どういう理由でこういうふうに圧倒的にそういう定款の規定が多かったのか、その辺の事情についてちょっと承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/33
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034・西原寛一
○西原参考人 私調査いたしました際の感想でございますが、先般の改正を各会社が定款にお入れをいたします場合に非常に苦労したことと考えるのであります。絶対的にあるとすると、これはまた資金調達の上で動きがとれないことになります。しかしまた反対に株主が絶対的にないとすることは、やはりいかにも株主の権利を害するようになっておもしろくない。そこで実質的にはないとしたいのだが、それを表にまで現わさないで取締役会の決議で与えることができるというふうな規定をするものが比較的多く五十八社ほどあったのであります。統計の数字の上で一番多くございましたのは、御指摘のように一応表の上では株主に引受権を認めておきまして、実質的には取締会でそれをいろいろにあんばいできる、こういうふうにして、このことによって資金調達の必要性と株主の感情とをあるいは妥協的に調節したものかと考えられます。ですからお話しのように一応引受権は株主にある、取締役会の決議で制限できるというような態度をとることも、そういった点では十分に考慮に値する案だと考えられますが、その場合には最近東京地裁で出された判断にかんがみまして、その制限の方法を非常に広く認めておくような立法措置を講じないと、やはり問題を残すことになります。すなわちパーセンテージは書くのみならず期間による制限をしてもいいし、あるいは全面的に取締役会にまかせてもいいのだというようなことまで立法の上ではっきりさせておかないといけないことになると考えられます。
このように、結果的には名目上株主にあるといっても、その動きは取締役会にいわば制肘されておるものでございますから、ここではそういった株主の感情を主にするか、あるいはそれよりも実務を主にしてそれを表に出すか、実際上はこういった非常に差の少いものになってくるのではないかというふうに考えられるわけです。出発点は非常に大きい違いがあるようでございますけれども、事実上は取締役会の動きに待たないと活用できないことになりますので、どちらの方から規律するのが立法上適当であろうかということになります。感情論としては一応株主にあるとする方が確かにいいと思います。しかしまた今言った制限に関する立法の技術上困難な問題、あるいは資金調達の非常な便宜性ということから考えますと、今度の改正法案のようになろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/34
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035・世耕弘一
○世耕委員長 他に御質疑はございませんか。——なければ、午前中はこの程度にとどめまして、午後は一時半より開会いたします。
午前中の参考人の方々には大へん御熱心に御意見をお述べ下さいまして、まことにありがとうございました。きわめて有意義な御意見と存じます。今後の審議に十分参考に供したいと存じます。御苦労さまでございました。厚くお礼を申し上げます。
では一時半まで休憩をいたします。
午後零時三十一分休憩
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午後一時五十六分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/35
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036・世耕弘一
○世耕委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
商法の一部を改正する法律案について、参考人より意見を聴取することを続行いたします。
この際、参考人に一言ごあいさつを申し上げます。本日は御多用中のところわざわざ御出店下さいまして、まことにありがとう存じます。どうか忌憚のない御意見の御開陳のほどをお願いいたします。
なお、この際申し上げますが、加藤万吉君は出席できないことになりましたので、御了承を願います。
それでは最後に野村参考人より御意見の開陳をお願いいたしたいと存じます。野村与曽市君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/36
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037・野村与曾市
○野村参考人 私は電気化学工業株式会社の社長野村でございます。現在私どもの会社の定款では、第五条におきまして、「当会社の発行する株式の総数は四千八十万株とする」、それから第六条で「当会社の株主は株式総数四千八十万株のうち未発行株式について新株引受権を有する但し取締役会の決議により新株の一部を公募し又は役員、従業員、旧役員及び旧従業員に新株引受権を与えることができる」、こういうふうになっておるのでありますが、このように定款をきめましたにつきましては、当時各方面の意見を聴取しまして、慎重に研究の上決定したわけでございます。すなわち、昭和二十六年七月施行の商法改正に伴いまして、昭和二十六年六月二十九日法務府民事局長より出されました各登記所への通達の中には、「一、株主は新株について引受権を有する、但し新株の発行に当り取締役会の決議をもって各回の発行株式の全部又は一部を排除することができるという定款の決め方は有効である」というふうに書いてございましたので、これを一つのよりどころといたしまして、なおかつ正確を期するために、当社の顧問弁護士にも十分検討していただきまして、また、商法改正に伴う各種研究会にも参加いたしまして研究を重ねて、有力会社の定款の定め方も参考として、慎重を期してきめたわけでございます。ところが、一昨年の六月に、当社の一株主より、定款を変更したこの決議が無効であるとの訴えがなされまして、第一審では敗訴となりまして、現在控訴中でございます。しかしながら、かりにもし第一審の判決が最終的に確定いたしますと、わが国の有力会社の大半が当社のごとき定款のきめ方をしておりますので、そのような会社が株主より新株発行無効の訴えが起される可能性がありますので、いろいろ不都合が生じてくるわけであります。
かくては授権資本制度の目的でありますところの資金調達の機動性が、非常に阻害される結果となりまして、ひいては経済界に及ぼす影響も決して少くはありません。
もともとこのような訴訟が起されるということも、その原因は現行商法の新株引受権の規定の仕方がよろしくないためでありまして、私ども実務に携わっておるものといたしましては、疑問の余地のない明確な法の定め方をせられんことを希望しておるのでございますが、幸いにこのたびの商法改正にこの問題が取り上げられましたことは、まことに喜びにたえないのでございます。
そこで今回の改正案は、新株引受権の規定は定款の絶対的記載事項より削除されて、株主に対する付与は取締役会に一任されることになるわけでありまして、取締役会による資金調達の機動性が従来よりも促進され、わが国の授権資本制度を採用した目的が達せられるものと存じます。
その他の問題につきましては、意見を省略させていただきますが、最後に申し上げたいことは、新法が施行された際、それ以前に定めた新株の引受権に関する定款の規定の不備のために、新株の発行その他定款の規定の効力が妨げられるようなことがありましては、禍根を将来に残すことになりますわけでありますからして、既往にさかのぼって有効であるという附則がつけられることは、まことにけっこうでございますので、ぜひお願いしたいと思います。
以上簡単ですが、意見の開陳といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/37
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038・世耕弘一
○世耕委員長 これにて野村参考人の御意見の開陳は終りました。これより質疑に入ります。野村参考人に対する質疑はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/38
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039・猪俣浩三
○猪俣委員 あなたの会社が被告になって、原告は古川浩、これが裁判になって判決になった。この古川浩という株主は、いつあなたの会社の株主になられたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/39
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040・野村与曾市
○野村参考人 古川浩氏が当社の株主になりましたのは、昭和二十六年の六月四日に十株、二十八年三月十六日に五株、これは一対〇・五の無償交付でございます。それから二十八年四月一日に十株、これは一対一の有償増資でございます。二十八年六月十五日二十株、そのようにいたしまして、現在四十五株持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/40
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041・猪俣浩三
○猪俣委員 この古川さんという人はどういう職業の人か御存じでありますか。なおほかの会社の株主でも、数会社の株主でもあるとやらのことも御存じでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/41
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042・野村与曾市
○野村参考人 あちこちの株を持っておられることは聞いております。現在の職業は昭和日々新聞の社長でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/42
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043・猪俣浩三
○猪俣委員 実はあなたの会社にしたと同じような訴訟も三つも四つもやっているが、それは全部古川氏が原告です。そこで特異な現象だからお尋ねしてみたのです。そこでこの判決の主文を見ますと「被告会社の昭和二十八年五月三十日の定時株主総会における、定款第五条中「一千六百万株」とあるのを「四千八十万株」に変更する旨の決議、並びに、定款第六条中「一千六百万株」とあるのを「四千八十万株」に変更する旨の決議が、いづれも無効であることを確定する。」こういう判決主文になっておりますが、これが確定をいたすとするならば、あなたの会社にとっていかなる影響があるか、その社会的、経済的な影響についてお話願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/43
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044・野村与曾市
○野村参考人 資本増加のために、二十八年六月三十日に四千八十万に直したわけです。それによりまして総会の手続を経て、それぞれ株主に渡したのですが、もしこれが無効になりますと、やったことを全部元に戻すということになりますけれども、今の実情からいきまして、とうていそういったことは非常な混乱を生じますのでできないのです。そのために会社は非常に困ります。ぜひとも有効であるということにならないと困ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/44
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045・猪俣浩三
○猪俣委員 判決が出たあと、会社はどういう処置をとっておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/45
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046・野村与曾市
○野村参考人 直ちに高等裁判所の方に控訴いたしております。今控訴中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/46
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047・猪俣浩三
○猪俣委員 四千八十万株の増資というものはどういうことになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/47
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048・野村与曾市
○野村参考人 これはまだ訴訟係属中ですから、自分の方の定款は有効と考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/48
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049・世耕弘一
○世耕委員長 田中幾三郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/49
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050・田中幾三郎
○田中(幾)委員 あなたの方は新株はまだ発行していないわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/50
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051・野村与曾市
○野村参考人 やっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/51
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052・田中幾三郎
○田中(幾)委員 一株の株券の額面は幾らですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/52
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053・野村与曾市
○野村参考人 五十円です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/53
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054・田中幾三郎
○田中(幾)委員 四千八十万株に変更する旨決議した当時、一株を幾らに決定するという会社の内部の話でもできておりましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/54
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055・野村与曾市
○野村参考人 これは定款に五十円と書いてあるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/55
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056・田中幾三郎
○田中(幾)委員 当時新株をどのようにして引き受けさせるというような、会社のまだ内規もなかったわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/56
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057・野村与曾市
○野村参考人 定款によりますと、原則は旧株主に全部割り当てる、こうなっておりますが、「但し取締役会の決議により新株の一部を公募し又は役員、従業員、旧役員及び旧従業員に新株引受権を与えることができる」こういう定款によりまして割り当てるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/57
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058・田中幾三郎
○田中(幾)委員 そうすると旧株主以外の第三者は、新株を引き受けることによって利益があるという見通しであったわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/58
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059・野村与曾市
○野村参考人 そうです。これは利益というよりはやはり資金の調達とかいろいろな関係から見まして、通念的にやったわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/59
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060・世耕弘一
○世耕委員長 他に質疑はございませんか——なければ本日はこの程度にとめます。参考人の方には熱心に御意見をお述べ下さいまして厚くお礼申し上げます。貴重な御意見と存じまするので、今後委員会の審議に十分参考にいたしたいと存じます。本日は御苦労さまでございました。
次会は公報をもってお知らせすることにいたしまして、本日はこれにて散会いたします。
午後二時十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01519550607/60
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