1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十年六月十三日(月曜日)
午前十一時四分開議
出席委員
委員長 世耕 弘一君
理事 古島 義英君 理事 山本 粂吉君
理事 三田村武夫君 理事 馬場 元治君
理事 福井 盛太君 理事 古屋 貞雄君
椎名 隆君 高橋 禎一君
長井 源君 林 博君
松永 東君 生田 宏一君
横川 重次君 神近 市子君
細迫 兼光君 細田 綱吉君
吉田 賢一君
出席政府委員
法務政務次官 小泉 純也君
検 事
(民事局長) 村上 朝一君
法務事務官
(矯正局長) 中尾 文策君
検 事
(保護局長) 斎藤 三郎君
委員外の出席者
専 門 員 村 教三君
専 門 員 小木 貞一君
—————————————
本日の会議に付した案件
商法の一部を改正する法律案(内閣提出第二七
号)
法務行政に関する件
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/0
-
001・世耕弘一
○世耕委員長 これより会議を開きます。
法務行政に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますので、これを許可いたします。吉田賢一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/1
-
002・吉田賢一
○吉田(賢)委員 調達庁の長官がきょうは出席しておりませんが、長官でない人は調達庁全体の、政府の意思を代表して答弁ができるのですか、ちょっとそれを伺つておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/2
-
003・世耕弘一
○世耕委員長 吉田君にお諮りいたします。調達庁長官並びに次長はまだ出席がありませんが、この際中尾矯正局長並びに村上民事局長がおいでになっておりますから、それから質問を進めて下さるうちに出席を要求いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/3
-
004・吉田賢一
○吉田(賢)委員 それではさように運ばさせていただきます。
矯正保護局長に伺いますが、私が今質問せんとしますのは巣鴨の受刑者の問題であります。そこでこの受刑者につきまして、衆議院におきましてもしばしば本会議の決議もあり、またしばしば各委員会における決議もありまして、全国民の意思は一日も早く受刑者が完全に釈放せられんことを強く要請してやまぬのであります。こういうような事実がしばしば国会で繰り返されておるのでありまするが、いまだその実現には至っておりません。よって最近の巣鴨受刑者の釈放要請につきましてどういう事情になっておるのか、一応御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/4
-
005・斎藤三郎
○斎藤(三)政府委員 お答え申し上げます。巣鴨の在所者につきましてはまことにお気の毒な事情にありますので、私どもといたしまして、極力一日も早く出所せらるるように努力をいたしておるのでございます。この巣鴨の在所者の出所につきましては、平和条約の第十一条によりまして、日本側におきまして戦争犯罪法廷の課した刑を受諾し、その執行を引き受け、その仮出所、赦免、減刑等につきましては関係国の同意のもとに日本政府がこれを実施する、こういうことになっておりますので、政府といたしましては関係国に極力その出所方を勧告いたしております。もちろん勧告につきましてはいろいろな方法が考えられまするが、全面的に赦免を勧告することが出所をはかるという意味においては一番適切でございますので、昭和二十七年平和条約発効後同年八月、ちようど終戦の記念日に当ります際に、B、C級全員につきましてそれぞれ関係国に対しまして全面赦免をしてもらうように勧告をいたしました。その後同年の十月立太子の礼のありました際にA級も含めましてA、B、C級全員につきまして関係国に赦免方を勧告いたしました。ところが関係国におきましてはそれぞれの国内事情があるものと見えまして、全面的に赦免をするということにつきましては回答をいたしません。その勧告に結果したといいますか、まずアメリカにおきまして日本側の勧告について個別的にこれを審査する、その上で許否を決するというような考えで、パロール委員会という委員会を作りました。国務省、外務省、国防省からそれぞれ一人ずつ委員が選ばれまして、そして大統領の諮問機関として日本側の勧告を審理いたし、大統領にそれぞれ意見を具申するというような機関ができまして、その他の国も大体それに準じまして日本側の釈放の要求に対し関係国としては個別的にこれを審査して、その上で決定するというような方針がとられたようでございます。その後今日まで、もちろん政府といたしましては全面赦免についてあらゆる機会を利用してそういうことをいたして参っておるのでございますが、それと並行いたしましてそれぞれ個別的に個々の事案について調査をいたしまして、仮出所資格のある人については仮出所の勧告をいたし、仮出所の資格のない人についてもそれぞれの情状に応じまして赦免あるいは減刑の勧告をいたして参つたのでございます。この個別勧告が今日までに一千百数十件に上っております。そしてそれぞれの国から仮出所、減刑、赦免等の同意の通知がございまして、それに応じまして国内的に仮出所、赦免、減刑等を実施いたして参つたのでございます。条約発効当時は巣鴨に残つておつた人は九百二十七名でございました。その後フイリピン及び豪州のマヌス島から二百二十一名の人々が巣鴨に戻つて参られまして、結局一千百四十八名という数になっております。その後今日まで赦免によりまして百五十一名、仮出所によりまして二百八十五名、満期で出所された方が百四名、途中まことに不幸なことでございますが、死亡されました方が十二名、結局五百五十二名が巣鴨を出られたようなことになりまして、現在五百九十六名在所しておることになっております。そのうち最近関係国から同意がございまして、米国関係二名、英国関係一名、豪州関係一名、それから朝鮮関係の人が二人、これは関係国から仮出所の同意があったのでございますが、本人の方からの要求がございまして、仮出所の手続にならない人がありました。結局それらが解決いたしますと、五百八十九名が巣鴨に在所しておるという数字になっております。なお従来は仮出所の資格が刑期三分の一あるいは終身あるいは刑期四十五年以上の人は十五年ということが仮出所の資格要件になっておりましたが、昨年の七月、米国政府では十年服役することによって全部仮出所の資格を与えることにいたして参りました。さらに本年五月でございますが、米国の従来のわが国からの勧告に対しての決定は、大統領が直接決裁をすることになっておりました。その大統領の諮問機関として仮出所委員会ができておつたのでございますが、それが簡略になりまして、赦免以外の者は仮出所委員会で決定をして日本政府にアクションを取るということになりまして、その点は事務的の問題でございますが、今後仮出所が早く参るのではないか、かような期待を持っております。最初申し上げましたように、私どもといたしましては一日も早くこの不幸な事態を解決いたし、国民の御要望にも沿いたいと思って、いろいろ向う側の事情も聞き、アメリカ側、その他の関係国においても事務的に、司法的に解決するということをまず第一の段階として考えておりますので、それに合うように事務を進め、勧告をし、さらに勧告後、その後のいろいろな事情を追加情報として先方に提出をいたし、極力巣鴨の人々の出所される日の早からんことに努力いたしておるような事情であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/5
-
006・吉田賢一
○吉田(賢)委員 以下の点は事務当局に伺いますのはあるいは適切でないかと思いますが、可能な範囲で御答弁願えばいいと思います。あなたの御説明は要するに条約によって日本が受諾したその義務を履行しておるのである、こういうことが大前提になっております。ところで御承知の通りに終戦以来十年、世界の情勢は一変いたしております。日本のあらゆる面における対アメリカ関係について見ましても、ここ十年間の変化というものは相当大きなものであることは申し上げるまでもございません。そこであなた方のほんとうの真意が、ただ単に条約を受諾したのであるから、以後義務を履行するのだというような考え方に閉ざされておりましたならば、この問題は国民の期待に沿うような解決はできないと思う。——政務次官が見えたから政務次官に御答弁をお願いいたします。国民の期待に沿うことはできぬと思う。一体十年間も——全部が十年とは申しませんけれども、いずれにいたしましても、終戦後十年になって今なお刑務所の服役者というような身分をもって巣鴨に拘置されるというようなことは、一体国民が納得するのだろうか。そういうようなことは国民の感情の上におきましても、あるいはまた行政の運営の上におきましても、きわめて重大な障害になっておるということは私はまぎれもないことだと思います。たとえばのどに何かとげがひつかかると同じように、そのとげは数は少い、形は小さいけれども、しかし重要な食道にひつかかるようなことになりましたならば、これはやはり国の政治の運営におきましても重大な支障があることは申し上げるまでもない。しからば政府は行政の当局といたしまして国民の要請にこたえるためには、この世界情勢、日米関係の情勢の変化というようなことももっと大きく考えて、根本的にぞれぞれ工夫をこらし、方法を考慮して勧告するなり、要請するなり、交渉なりすべきではないかと思うので、そういうようなことが、漫然とただ単にしりをぶったたかれて相手に勧告する、こういうような態度でありましたならば、いつまでたつてもこの問題は国民の納得するような、国会が納得するような解決はできぬと思う。政務次官が見えたから、この点に対して政府はどう考えておられるか、ほんとうの所信を一つはっきりしておいてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/6
-
007・小泉純也
○小泉政府委員 吉田委員の戦犯問題の処理に関する御意見につきましては、私も全く同様に考えておる一人でございます。政府におきましては、御承知の通り、鳩山総理大臣も戦犯釈放の問題については大いに努力をするということをしばしば声明いたしておりますし、その担当と申しまするか、相手国と政治的に問題を解決しなければならない衝にあられまする重光外務大臣も、先般特にこの問題に言及をいたしておりますことは御承知の通りでございます。法務省といたしましては、ただいままで局長がいろいろ御答弁申し上げておりました通り、事務当局としては、当然今までの条約上の義務その他法の示すことによって事務的にこれを処理して参りまして、それ以外に出ることができないことは、もう御理解を願えると思いますが、当局としては、今吉田委員のお考えになります通り、やはり法務大臣からも特に閣議の問題にするとか、あるいは外務大臣に個別に折衝いたしまして、一つの外交問題、政治問題として大きく扱つて根本的な解決に乗り出すということは当然なされなければならぬことと考える次第でございまして、本日の吉田委員の御意見を大臣にもよくお伝え申しまして、御意思に沿うよう格別な努力をばいたすよう考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/7
-
008・吉田賢一
○吉田(賢)委員 私はこの問題は鳩山総理が友愛政治を説き、電光外務大臣が戦犯としての体験者であるというようなことをもっと超越いたしまして、これは超党派的な問題であると思う。従って個人として、また政治に対する考え方のいかんによって左右されるべきものではなく、ともかく全国民がこの問題につきまして全く納得できない状態に今日はなっておると思いまするので、これはやはり適当な機会に、政務次官も大臣に質疑の要旨をお伝え下さることはけつこうだけれども、やはりこれは当委員会を通してもよし、本会議においてもよし、もっと考え方について根本的に国民が納得するような信念のあるなしをここで述べませんと、事務的に折衝してもだめです。それからもう一つ単にごきげんを伺つて、国民の要請がきついので、熾烈であるので、従ってそれによって交渉するというような消極的なことでもだめであります。戦後日本の解決しなければならぬ問題は山積しておりますけれども、遺家族、未帰還者留守家族の問題とあわせまして、対外関係において解決しなければならぬ根本的な最も重要な問題の一つであります。この問題の解決をし得ずして、防衛関係に関するあらゆる問題を論議する資格はないと思う。こういう点については、内閣として、もっと真剣な態度、積極的な信念のあるなしが、国民に対して表明せられなければならぬと思う。長年の間戦犯者の留守家族として今日なお気の毒な生活をしている人が全国に散在しておりますような事実の一つ一つについてみましても、早急に政府として決心を持ってもらわなければならぬきわめて緊要な問題であると考えるのであります。大臣に御伝達願いますことのほかに、政府として、これに対するほんとうの所信を国民に披瀝する措置をとつてもらわなければならぬと思う。そういうふうに御相談願いたいと思いますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/8
-
009・小泉純也
○小泉政府委員 この戦犯問題が戦後の日本における最も大きな、また重要な問題であるというお考えには、私どもも同様に痛感しているところでございまして、ただいま仰せになりましたようなこの問題の解決に対する政府のとるべき手段につきましては、全くごもっともであると考えております。先ほども申し上げました通りに、大臣ともよく御相談申し上げまして、吉田委員の御趣旨に沿うよう早急に、今までのようなただ単なる要請とか、そういうことではなしに、ほんとうに根本的に問題を解決するために政府が乗り出すというような動きになるよう十分善処したいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/9
-
010・吉田賢一
○吉田(賢)委員 ソ連の抑留者の釈放を松本全権は重要な事項として現に折衝しているとか聞きます。私は最も主たる相手国はアメリカかとも思いますが、この問題は非常に重要な国政上の問題であると思いますので、その点に関しましては、なお後日の適当な機会を得たいと思いますから質疑を留保させていただいて、次に事務的な問題に移りたいと思います。
赦免ないしは完全釈放ということが最大の問題であり、また最も根本的な問題であることは申し上げるまでもございません。そこで現在の服役している人が仮釈放せられました場合における処置の点につきまして、一、二伺つてみたいと思うのであります。これにつきまして、私ども一番気がかりになっております点は、住宅の問題、生活の問題、従って仕事とかあるいは生活費の問題でございます。何しろ長い間世の中の暗い陰のような生活をして参っております多数の家族、従って子供も終戦の当時やつと生まれた者も、今日では十才になっておりますので、このような時代に背たけが伸びて参りまして、学校にも行かねばならぬ、あるいはまたでき得べくんば人並みの教育もさせねばならぬ、あるいは嫁入りもさせねばならぬというように、年数がたちますと次第に生活環境は変化して複雑になり、経費もたくさんに要つて参りますことは申し上げるまでもございません。地方におきましていろいろな団体等の協力もあり、あるいはまた事務当局のいろいろなごあっせんもあるように聞いております。しかしながらやはりこの問題に対する根本的な考え方は、ほんとうに完全にこれらの生活の障害を一掃して、でき得る限りの力を傾けて、これらの人の家族にも心配のないようにしたいというようにしていかなければ、とても今日の財政事情からいい、あるいは世間の就職難の事情からいい、あるいは住宅難が深刻化しておるような事態にかんがみまして、実際問題として解決は容易じやありません。従ってこういう点につきましては、やはり格別の配慮と格別の努力が重ねられていくのでなければならぬと思うのです。そこで留守家族の人あるいは仮釈放になつた人、あるいは赦免されて出るような人に対しまして、今申しましたような住宅の問題——住宅の問題からまず取り上げて参りましょう。住宅の問題については、どういうように御調査になり、どういうように御認識になり、どういうように対策を講じ、どういうような障害があり、どうせなければならぬか、こういうことについて一つはっきりとしたところを伺つてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/10
-
011・中尾文策
○中尾政府委員 そういう問題につきましては、もちろんいろいろむずかしい問題もございますし、中の方々が社会に出られまして、いろいろ御苦労なさると思いますが、私たちの方といたしましては、その出所されます場合にできるだけ民間の方々と連絡をとりまして、御自分でいろいろ就職とか、あるいはその他の点につきましてお困りの方がございましたならば、私たちの方で連絡をとるようにいたしておりますが、各府県に援護課などがございますし、なおまた援護団体などもございますので、大体その方でお世話願つておるというように考えております。なお出所後いろいろ生活にお困りの方につきましては、これは厚生省関係の社会福祉の方法でお世話をいたす、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/11
-
012・吉田賢一
○吉田(賢)委員 この問題は大事なことですから、もし何でしたら後日の機会でもいいですが、あなたは今各府県の府県庁でいろいろお世話しているということをおっしゃっておるけれども、府県庁の財政の実情はどこもかも赤字だらけなんです。従って府県によりましては、職員の給料の遅払いすらできておるのであります。政府から交付するところの補助金その他の交付金が、予算外の目的に流用されておる事実もずいぶんあるのです。こういうような事態が今日の地方財政の実情なんです。申し上げるまでもなく、あなたよく御存じだろうけれども、そういうような中におきまして、民間の協力を求め、種々の会を作つて、それぞれ御協力になっておることは存じております。しかしなかなかそれは行き届くものではないのです。さりとて私はこの問題は政府一本で一切をおやりなさいとは申しません。やはり国民的協力というものが大きな根幹とならねばならぬということは、これも申し上げるまでもないのでありまして、私もそれはしごく賛成なんであります。しかしながら今あなたのお述べになっておりまするような片言隻句で私に対する答弁をなさるということは、事態の認識をはっきりしておらぬ。一体県庁なら県庁、都庁なら都庁へ持っていって、そういったたとえば住宅の問題が解決されるとお思いになりますか。また民生部とか民生課、世話課といったようなところで、この種の問題を処理しようといたしましても、あるいはまた何々会、保護会とか世話会で処理しようといたしましても、そういうようなところで簡単に解決し得るというような事態ではございません。私今住宅の問題を取り上げたのですが、住宅の問題にいたしましても、一例をあげましたならば、東京あたりたくさんの都営住宅ができております。都営住宅を都の協力によって借りようといたしましても、都におきましては第一ある程度の納税の実績者でないと申し込みは受けつけません。また定の収入の見通し、保証のないものはこれは適格者といたしません。要するに千遍一律に扱つて、何もこの種の人々に対する特殊な好意の扱いというものはありやしないのであります。これが実情なのであります。でありますから、その府県庁などによって解決されるというお考え方は、私は事態の認識が十分でないと思う、そんなことでいいのでしょうか。今御即答ができませんければもっと全体をおつかみになってやつていただきたい。あなたの方はそこまで手が届かぬ、それは厚生省のやることであるといえばそれまでかもしれませんが、しかしそうはいきません。やはり政府全体といたしましては、厚生省に向つてあなたの方は、厚生省がどうしておるのかということを横にしかるべく連絡をとつていかなければならぬ。厚生省の仕事だから法務省は知らないんだ、こういうことではこの種の仕事はできません。それらのセクト的なお考え方をもっては全体総合して効果をあげることは困難だろうと思う。しからば厚生省はどういうふうにやつているか、厚生省所管の出先はどういうふうにやつておるか、それをあなたの方で把握していなければいけないと思うのです。その点について御答弁ができませんければ文書でもよろしい。また別の機会でもよろしい。また現在ほんとうは十分に把握しておらぬ、十分にそれは行なっておらぬということであるならば、それはお考え直していただいてもいいのであります。いずれにしましても今の御答弁というものはなってやしません。どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/12
-
013・中尾文策
○中尾政府委員 全部につきまして一々ここで私よく存じませんが、しかし出所されます場合にお困りの方につきまして、私たちの方でいろいろ就職先であるとか、あるいはそれについて住み込み先を一緒に世話をしてもらうということにつきまして、現にあっせんをいたしております。そういうことは私も実例を知っております。ただ迎いに来られました方が、家のある方も多いわけでありまして、そういう方がお帰りになりますので、その後のことにつきまして、私の方で調査をいたしておりませんのは事実でございますが、そういう点につきましても、それぞれお世話をいたしてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/13
-
014・吉田賢一
○吉田(賢)委員 私の伺いましたのは、単に釈放されたものだけを問うておるのではないのです。今伺いましたのは、なお現在の受刑者の家族の問題であります。これはまたあなたの所管違いだとおつしやれば、所管先を追及していかなければ仕方がないのでありますが、やはりこの種の問題は国民からすれば、ばらばらにあちらこちらでやつておられても、どこかで総合されておらなければなるまいと私は思う。総合されるのはあなたの方じゃないか、それとも厚生省であるかもしれません。いずれにしましても、相互にお互いの状況は確実に把握して、足らざるところなきや、至らざるところなきやを完全に把握してもらわなければいかぬと思う。でありますから、この問題は、今の政務次官の御答弁の趣旨に徴しましても、また私の根本的に問おうとする基本線から考えましても、大事なことでありますから、やはりあなたの方も今問いまするような趣旨はいろいろと一つ御調査願いたいと思います。そうして何らかの方法でまた御答弁の機会がほしいと思います。
それで問題は移ります。政府におきましてただいま問題になっておるそうでありますが、韓国並びに台湾に籍がある外人の問題であります。それらにつきまして、これはすでに御調査済みかと思いますけれども、少し伺つてみたいと思いまするから、あわせて一つできるだけ当委員会における質疑応答が完全にできるように御準備願つて——これはあなたの方だけじゃないのかもしれませんけれども、要するに法務省関係の分は政務次官に適当に御配慮願つて、御準備の上、答弁の御用意の上質疑を続行する、こういうふうにしたいと思いますから、本日はこの程度にいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/14
-
015・世耕弘一
○世耕委員長 次に商法の一部を改正する法律案について質疑を行います。通告がありますから、これを許します。古屋貞雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/15
-
016・古屋貞雄
○古屋委員 商法の一部改正になりました根本の関係を聞きたいと思います。それは前回改正をいたしたときには、株主の新株引受権について有するとも有しないとも明確になっていないので、その点並びに定款の必要事項になっておつた関係上改正が行われるように改正要綱には書いてありますが、根本的なことをお伺いしたいと思います。それは株主の新株引受権に対する原則論ですか、原則として新株引受権はないのだ、しかし取締役会の決議によって与えることができるのだ、こういうような改正になるようですが、その前に、新株引受権があるという解釈をいたす場合にはいかなる弊害があるか、いかなるような不都合があるか。いわゆる資本の授権の問題に関係する以外には、新株引受権というものを株主に与えないというここがむしろ新しい資本を導入するために必要であるということだけでいいのか。それともその他に何か理由がございますか。その点の両者の得失の点を要点だけ御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/16
-
017・村上朝一
○村上(朝)政府委員 株主の新株引受権に関する事項を定款の絶対的記載事項から除きました結果、法律上当然に新株引受権が株主にないという建前をとるか、あるいは原則として株主に新株引受権があるという建前をとるかという問題になるわけであります。この点につきましては、法制審議会等におきましても前回の改正のとき以来の懸案でありまして、慎重に検討されたのであります。原則として株主に新株引受権があるという建前をとりましても、これに例外を認めないということになりますと、授権資本制を認めました効果が十分に期待できない。つまり授権資本制の妙味とされております資金調達の機動性というものが十分に発揮されないことになるのでありまして、原則として株主に新株引受権を与えるということの説をとる場合にも、そこに例外を認めることは容認せざるを得ないということになるわけであります。そこで、それでは定款で特に排除した場合に限り新株引受権がない、その他の場合は原則として新株引受権があるということにすることもまず考えられるのでありますが、この定款の規定も、その性質上定款というものはひんぱんに変更することができないのでありまして、定款で定めてしまいますと、取締役会が今公募することが最も有利であると考えました場合でも、新株引受権に関する定款の規定を変更せざる限り公募できない。あるいは反対に、株主に新株引受権を与えることが有利であると判断した場合にも、定款に拘束されてそういう行動がとれないということになりますので、もう一歩進めまして、原則として株主に新株引受権を認める立場に立ちましても、取締役会の決議で与えないことができるという程度までの例外はやむを得ないであろうというのが、その方の説をとる人たちもほとんど一致した意見であったのであります。そうなりますと、原則として株主に新株引受権を認めるということにいたしましても、例外的に取締役会の決議によってそれを制限または排除できるということにせざるを得ませんので、原則的に新株引受権が株主にあるという建前をとりませんで、この法案にありますように、取締役会の決議で与えることができるといたしましても、結果においては同一に帰着するということになるわけであります。そこで、それでは結果が同一ならばやはり法律の建前としては新株引受権があるということを原則とすることがいいのではないか、いわば株主の権利を尊重するという精神を法律に表わすことが望ましいのじゃないかという意見もあったのでありますが、そういたしますと、定款なり取締役会の決議で制限、排除をいたしました場合のその制限、排除の効力につきまして、御承知のように現行法のもとにおきましていろいろ起きておりますような争いを重ねるおそれがある。そこで、そういう定款なり取締役会の決議の有効無効ということを争う道を残しておくより、むしろ実質が同じならば、原則として株主に新株引受権を認めるという建前をとらないで、取締役会の決議で与えることができるとする方が、実際上妥当であろうということでかような原案になつた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/17
-
018・古屋貞雄
○古屋委員 そういたしますと、現在の商法でいろいろの紛争が起きる原因を除去するためにも、今回の改正が必要だ、こういうふうに承わつていいのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/18
-
019・村上朝一
○村上(朝)政府委員 さようであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/19
-
020・古屋貞雄
○古屋委員 それから今度改正されますように、新株の引受権は、原則としてはないのだ。取締役会の決議によってきめるのだということになつた場合の弊害というものがあるように私は考えるわけであります。それは取締役会に権限が強化されるために、取締役会そのものの専横をきわめた場合の弊害、たとえば私非常におそれるのは、日米通商航海条約によってアメリカの資本が、講和条約の発効でもうそろそろ三年たちますから、日本の商法に基いて株式が持てるようにきめられておるように記憶があるのですが、さような場合に、日本の基本産業に、国民の知らないままに外国の資本が強く入り込む。それは少数の取締役と結託することができるのだということのこの弊害、そういうおそれがあるかどうかということを本員は非常に心配するわけであります。その点につきましても、今回の改正などでは御考慮なさった上での改正の御提案でございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/20
-
021・村上朝一
○村上(朝)政府委員 外国人が株式を持ちますにつきましては、外資に関する法律かありまして、一定の場合に許可または届出を要件としておるのでありますが、一体株主に新株引受権があるという原則をとらない場合に、取締役の専横によって株主の利益が害される心配があるかどうかという点についての考え方を御説明申し上げますと、株主以外の者に新株引受権をみだりに与えない限り、株主が新株引受権を与えられましようとも、また与えられなくても、株主には少くとも計算上の利害はないのであります。適切かどうか存じませんが、一例をあげて御説明申し上げますと、額面五十円で時価一株百円という株式があるといたします。それに対しまして旧株一株について、新株一株の引受権を与えるということにいたしました場合に、新株発行の場合には、一般の公募価格よりも有利に発行価格を定めるととができることになっておりまして、従来の慣行上、新株引受権を有する者に対する発行価格は、額面で発行する例になっております。かりに新株の額面すなわち五十円という価格で発行いたしたといたしますと、新株はなるほど額面五十円の払い込みに対して、他の要素を一応除外して考えますと、時価七十五円という計算になるわけであります。その面において新株引受権を与えられた株主は、利得をしたように見えるのでありますが、他面旧株の時価が新株発行前一株百円であったものが、新株が五十円の払い込みで発行されますと、旧株もまた七十五円に下つてくるわけであります。つまり株主が新株によって利得したところを旧株において失うという結果になるのであります。株主だけを対象とする限りは、実質的には新株の発行ということは、株式の分割に類した経済的な作用があるものと考えられるのであります。従いまして株主の利益を保護するために必要なのは、株主以外の者に新株引受権がみだりに与えられることを防止することである、かように考えるのであります。ただいまの例で申しますと株主以外の者が額面五十円でもって新株引受権を与えられたといたしますと、時価と発行価格との差額だけ新株引受権者は利得するけれども、それに相当するだけ株主は不利益をこうむつている、株主以外の者に新株引受権が与えられることを防止するということが、株主の利益を擁護するために必要なわけであります。そこでこの案におきましては、株主以外の者に新株引受権を与える場合を特に厳重にいたしまして、あらかじめ株主総会の特別決議を必要とするということにいたしている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/21
-
022・古屋貞雄
○古屋委員 私もう一つ承わりたいのは、今の商法によりますと取締役はその会社の株主でも株主でなくてもいいことになっておりますから、一株も持たない者が取締役に就任され、その就任されておりまする取締役が会社を乗つ取るために策動をするには、ただいまの改正のようになりますと非常にやりよくなるわけであります。実は大阪に行われていることなのですが、一株も持っていない監査役、取締役が全員で成立された会社がある。そういう場合に今のようなことで行きますると、取締役会の決議で旧株主には一株も与えない、現在の株数の二倍に当るような新株の発行をいたします場合に、これを第三者に全部与えてしまう。こういうような場合、あとからお尋ねしたいと思うのですが、二百八十条ノ二の第二項の問題なのですが、そういうような手続に疑義があつていろいろ紛争を起したりする場合におきましても、前会の山本委員の御質問ありました二百八十条ノ二の二項に対する株主総会の特別決議、そういう問題に疑義があり争いがある場合でも、発行そのものは効力があるのだというようなお答えされたように承わつているのですが、間違つておりますれば別になりますが、そんなことを考えますと会社は乗つ取られてしまう、会社の実権は旧株主にほとんどなくなってしまうというおそれがありますので、こういう点に対する弊害は何か防止するような方法を講じなければまことに私は危険だと思っているが、その点はいかがでありましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/22
-
023・村上朝一
○村上(朝)政府委員 古屋委員のお示しになりました場合には、まず御指摘の二百八十条ノ二の新設の規定によりまして株主以外の者に新株の引受権を与えることでありますから、株主総会の特別決議を必要としているわけであります。現行法でありますと特定の第三者に新株の引受権を与えるということを定款で定めることになっておりますが、定款の定めというものはおおむね非常に抽象的でありまして、とかくそれが取締役会によって悪用される弊害があったのでありますが、この案におきましてはたとい定款でそれに関する定めがありましても、具体的な新株発行ごとに株主総会の特別決議による承認を要件とするということによって、さような取締役会の専横を防ぐことを考えているわけであります。
なおそのほか現行法によります不公正発行の場合の株主による差止請求権であるとか、あるいは通謀して不公正な価格で発行した場合には取締役会の責任追及であるとか、第三者に対する時価との差額の追徴の請求であるとかいうような各種の株主の権利、及びはなはだしい場合におきましては、株主が取締役の解任の訴えを裁判所に提起することもできることになっておりますので、株主がその権利の上に眠つておれば別でありますが、取締役会のはなはだしい専横に対しては、相当な保護の措置が法律の上で講ぜられておるわけであります。なお昭和二十五年の改正前には取締役が株主の中から選ばれることになっておつたのですが、前回の改正によりまして、取締役は株主でなくてもよいことになりました。これは、経営に練達な人を迎えるという趣旨で改正されたものと承知いたしておりますが、かりにこれを株主の中から選ぶということにいたしましても、改正前の運用の実情から見ましても、やはり、取締役になる人が予定されますと、名義だけその取締役に株を持たせるということもよく行われておつたのでありまして、それだけによっては、取締役会の専横を防止するということには不十分であると思うのであります。なお株主総会の権限及び少数株主権の規定にもかかわらず、取締役会が、ことに代表取締役が株主の利益を無視した行動をとるということは、まま実例もあることでありますし、現行法をもってしても、それに対する対策として十分であるとは考えておりません。これは、監査役の制度をどうするかという問題とも関連いたしまして、今後商法部会におきまして検討する問題の一つとしてあげられておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/23
-
024・古屋貞雄
○古屋委員 ただいま御説明がございましたけれども、日本の現在までの商法に関する株主の教育と申しましょうか、自覚と申しましょうか、商法に対する理解が非常に先進国に比較しておくれておるように思われまして、大体日本の株主総会というようなものはずいぶん無理な決議をするわけです。従いまして、特別決議に疑義がある、不当の決議をされたのだというようなことについて、これを防止し、一応の仮処分をいたしまして株の発行の停止をとりますには、非常な手続と費用が要るわけです。条文の上ではできますけれども、費用と手続が要りますので実際は困難なんです。従いましてこの株主取締役が専横をきわめた場合には、相当この専横が押えられる姿にならないと非常に困難だというのが、現在の日本の商法の実情だと私は思うのです。たとえば少数株主権行使に基いて臨時総会招集を請求いたしましても、総会を開かない。開かないからして、現在の商法の規定によりまして裁判所に向つて請求人みずからが、臨時株主総会を開く許可をしてもらいたい、こういうことを申し出ましても、今までの例では、大体半年以上かからなければ許可がありません。でありますから、半年以上経過いたしますと、もう臨時総会を開いても役に立たない。現に私がやつていますのは、半年以上たつてもまだ許可の可否が決定しないのです。しかも取締役は執行機関でありまするから、どしどし仕事をやつてしまう。こういうことになると、私はまことにこの点が憂慮にたえないのです。たとえば二百八十条ノ二の一号と五号との株式を発行する額面の相違が出てくるとか、あるいはそれがために株主が不利益をこうむるとか、あるいはただいま申し上げましたように、会社の実権というものを新しい株主に全部持っていかれてしまう、苦心さんたんして事業経営の任に当り、今日まで経験を積んできた前の株主諸公というものは会社から追放されるような形に実際はなるというようなことが、私どもは憂慮をされるのであります。従いましてこれは二百八十条ノ二の五号との関連の質問になってくるのでありますが、特別決議そのものは、果してお考えになられておるように、実際株主の世論に基き、株主の真意に基いて決議が行われるかどうか。あるいはこれに対する決議無効の訴えをいたす場合においても、実際会社の指揮をいたしますのはやはり取締役なのです。株主が出ていって指揮をするわけには参りません。会社の実情というものは事務的には非常に株主に不利益である。かようなことを考えますと、原則として株主には引受権を与える。しかし例外的に第三者にも与える。こういうようなことにきめられておりますと、一応は結論から考えまして変つてくるように思うのです。新株引受権の可否が取締役会で決定できまる。あるいは旧株主の意思によってきまる、この二つの相違になってくるわけですが、さような場合、ただいまの御説明では二百八十条ノ二の五号によって株主の総意というものが尊重されておるのではないか、特別決議というものを尊重されておつて、特別決議によって決定されるのではないか、こういう御説明でございますけれども、形式的にはそうなりますが、現在の日本の会社に対する取締役の地位、それから株主の商法の規定に関する理解力、かような実情を考えますときに、どうも改正をいたしまして取締役会の権限を強化することが、会社の将来のために非常に危険なような考えを持つのであります。ただいま申し上げましたように、特別決議に対する疑義があつて、訴訟の進行中であつても、これは仮処分に基いて発行停止の方法を講ずる前にはやはり新株発行ができるというように解釈せざるを得ない。新株発行が済んでしまつて後に至って、裁判の結果特別決議が無効であったといたしましても、その混乱、株主の損害は回復ができない状態に置かれるのではないか、かように私は考えますので、この点に対する御見解を重ねて一つ伺いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/24
-
025・村上朝一
○村上(朝)政府委員 株主総会が事実上無力であるという点は、これは法律の期待に反することでありますけれども、現にあることでありまして、多数の株主が存在し、しかも株主の地位というものに個性がなく、譲渡が自由に行われる。また多くの株主は投資なり投機のために株を持つのでありまして、永久にその会社の経営に参加するというつもりで入っておる株主は少い関係上、株主が株価の上下なりあるいは配当の多寡について非常な関心を持つのみで、会社の経営自体に無関心になる傾向があるということは、これは株式会社という組織からくる一つの宿命ではないかと考えておるのであります。そこでただいま御指摘になりました特別決議でありますが、これは御承知のように商法三百四十三条によりますと、発行済み株式総数の過半数に当る株式を有する株主が出席して、その議決権の三分の二以上に当る多数をもって議決しなければならぬということになっておるのであります。法律の規定といたしましてはこれ以上要件を厳格にする余地もないかと考えておるのであります。ただ株主が一般に無関心である結果、取締役の専横が行われて、株主の利害が知らず知らずのうちに無視されているというような傾向に対しましては、先ほどちょっと申し上げましたような業務監査の機関、株主の利益のために常時業務を監査する機関ということを別途に考える必要があるのではないか、かように考えるのであります。昭和二十五年の改正前におきましては、監査役は業務の監査と会計の監査を担当しておったのでありますが、昭和二十五年の改正の際に監査役というものは業務の監査をやらないで、会計の監査だけをやるというようにむしろ監査役の権限を縮小したのであります。これについてはいろいろその後批判も出ているのでありまして、旧法においてすら監査役というものは有名無実な場合が多かったのでありまして、それをさらに会計監査役というようなことにいたしまして、しかもその資格に制限がありませんので、会計監査の能力を持たない者が監査役になっているというのが実情でありまして、会社の機関双生のチェック・アンド・バランスと申しますか、そういうある機関の専横を抑止するための制度というものは根本的に考える必要がある、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/25
-
026・古屋貞雄
○古屋委員 非常に将来有望な会社で資本が少い、四分の一の株券の発行しかない会社、あと四分の三の株券発行ができる状況に置かれる会社が、他の資本家から重役が買収された、従って重役は会社の高級社員を通じて各株主を歴訪して最初から委任状をとつてしまう、こういうような実例が実はあるわけであります。従って最初から苦心惨たんして会社を設立し、将来有望な会社であるにかかわらず、あとから入って参ります新しい資本の悪らつな策動に基いて会社の実権をすべてそちらへ奪われてしまう、こういうようなことを実は私おそれまして質問申し上げているのです。日本における現在のような会社の組織の状況で参りますと、非常に大きな資本を持つ会社よりも、むしろ少い会社が多いわけであります。従って産業資本力の厖大な力を持って会社の実権を握つてしまう、たとえば競争相手の会社がその相手の会社の実権を握る、あるいは将来非常に有望な会社の実権を資本の力によって握つてしまうとかいうような場合に、現在のような日本の会社運営の状況から見まして、今回の改正に非常に私は疑義を持つわけであります。ただいま申し上げたような特別決議が行われる下工作として、まず取締役を買収する、取締役の意をくんだ高級社員が株主の株を——白紙委任状を金にあかしてまとめる、そういう場合があり得ると思うのです。そういう場合を実は私は心配しているのです。そういうような場合の何か取締役に対する罰則——今回の改正にはございませんけれども、罰則をもってこれに対抗していくような深い配慮が必要ではないかと思って実は質問しているのですが、その点いかがでしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/26
-
027・村上朝一
○村上(朝)政府委員 株主に新株引受権を与えないで、株主の委任状をとつて特別決議を成立させ、株主以外の者に新株の大部分を引き受けさせるというようなことも、十分想像されるのであります。これは株主が委任状を渡します以上は、さような決議に了解を与えているわけでありまして、これを防止する手段はお説の通り罰則等別途の方から考えなければ、二百八十条ノ二自体からは十分な防止法もないかと考えるのであります。ただいわゆる会社の乗つ取りということは、新株発行の機会に行われるばかりでなく、旧株の買い占め等によっても行われる事例のありますことは御承知の通りでありまして、現行法におきましては、適法に株式の多数を制すれば会社の経営者を取りかえることは自由にできることになっておりますから、その点についてこれを違法なものとして取り締るかどうかということは、これは相当重大な問題になってくると思います。
なお商法の罰則につきまして、このたび改正案に考えていないのでありますが、商法の罰則につきましては、前会山本委員から御指摘がございましたように、いろいろ不備な点もございましたので、罰則の改正につきましては刑事局とも連絡打ち合せ中であります。次の機会には法制審議会に諮ることができる、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/27
-
028・山本粂吉
○山本(粂)委員 新株発行の場合のことについて、あとで速記録を見たりなんかしてどうも不十分な点があるので、はっきりさせておきたいと思う。それは今度の改正により新株発行をする場合の株主総会の特別決議、それから理由開示、この二つの問題だが、取締役が特別決議を経ないで、普通決議でやつちやう。理由開示がだれが常識的に見ても理由開示になっておらない、きわめて違法性の明らかな理由開示をやる。そういう場合、その決議に基いて新株を発行しても、その新株発行は有効だ、しかしその新株発行の決議については、もちろん商法の他の規定によって取り消しもできる、あるいは無効の場合も起り得るかもしれない。そういう救済の道はあるけれども、その場合に新株発行が有効だということになりますと、実質的には特別決議を要求し、理由開示を要するという強行規定になっているにもかかわらず、実際は何か訓示規定のようなことになってしまいはせぬか、その場合には商法の罰則規定を適用して商法上の罰則を受けるか、あるいは場合によっては刑法上の責任を負担するようになるかもしれないけれども、どうもそこのところがすつきりしないように思うので、その点に対する当局の考え方をはっきりさせておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/28
-
029・村上朝一
○村上(朝)政府委員 改正案の二百八十条ノ二の新たな規定によりまして、株主総会の特別決議が必要な場合に、特別決議を経ないで株主以外の者に新株引受権を与えて、新株の割当てをしたという場合、あるいは決議がお示しのような理由で取り消されたというような場合、これは新株引受権のない者の申し込みに対して新株引受権のある場合の条件で株式を割り当てたということになるわけであります。御承知のように商法では新株を発行する場合には、その株の発行については、すべて均等の条件で発行しなければならぬことになっておる。ただ株式申込人に新株引受権を持つ者があれば、その者に対しては、均等でなく有利な条件で発行してよろしい、こういうことになっておる。そこで特別決議による授権がないにもかかわらず株主以外の者に新株引受権を与えた場合には、新株引受権のない者を新株引受権者として扱つたことになるわけであります。もし均等でない、有利な条件で株式を発行しているといたしますと、もとより差止請求権の対象にもなりますし、不公正発行ということで、取締役の責任問題も起きます。またその引き受けをした第三者が取締役と通謀してやつた場合には、その引受人も、均等な条件で引き受ける場合の発行価格と現実の有利に発行をされた発行価格との差額を、会社に対して支払う責任があるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/29
-
030・山本粂吉
○山本(粂)委員 株主総会の特別決議がなかったということがはっきりしておる場合は、御説の通り、私もそう思う。今度は理由開示が不十分であった場合、これも強行規定なんですね。理由開示を要すと書いてある。ところがそれが不十分であるが特別決議はあつたという場合には、今おっしゃるような引受権のない者に株をやつたということになるのか、それはならない、引受権だけは発生している、それは問題はないとして新株の発行は有効だ、その決議に対しては他の救済策をやるほかにない、その場合に取締役の責任は一体どうなるのか。どうも今の特別背任罪の商法の罰則規定を見ても、ぴつたり来ない。他の刑事罰を受けるような行為をしておれば別ですけれども、それは別個の問題として、単に理由開示がきわめて不十分である、そこで裁判が起つた、半年なり一年なり後においてその決議が取り消された、こういうような場合に、一方において新株の発行は有効だということは私どもも認める。そうでなければ会社の運営はできません。理由開示が不十分だという裁判が起つた、そのために新株の発行ができぬということになつたら会社の資金調達の面から考えても、どこから考えてもこれは困る。そうすれば、少数の悪徳株主を擁護することになるから、新株発行を有効と認めた方がいいのだが、その場合に理由開示がきわめて不十分な場合、あの強行規定の要するという規定に当てはまつておらない行為をした取締役の責任は一体どうすればいいのか、現在の規定で十分であるとおっしゃるのか、何かその場合に特別背任罪にひつかかればいいけれども、ひつかからない場合も考えられる。何か救済規定がないのか、こういうことなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/30
-
031・村上朝一
○村上(朝)政府委員 特別決議が後日取り消されますと、民事責任の関係は、先ほど申し上げた特別決議がなかった場合に帰着すると思いますが、刑事責任の問題から申し上げますと、いわゆる特別背任罪に該当する要件があります場合には、特別背任罪になるわけであります。取締役が総会に対して虚偽の事実を述べて必要の理由の開示をしたというような場合につきましては、商法四百九十八条におきまして総会に対する不実の申し述べをなし事実を隠蔽した、この規定によりまして三十万円以下の過料という、これは刑事責任でありますが、制裁が課せられることになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/31
-
032・古屋貞雄
○古屋委員 そこで私の言うのは、制裁でなくて、後日になってから総会が無効なんだという決議が行われても、先刻私が申し上げたように会社の実権が新しい株主に移つてしまつたらどうなるか。取締役と通謀しておりますから、従来の取締役は辞任し、臨時総会を開き新たな株主がその会社の実権を握つてしまう、そうなつた場合に後日になってその新株発行が無効になつた、それは特別決議がなかったことになつたという場合に、一体会社の混乱——それがさっきから質問している趣旨なのですが、そういう場合は確かにあり得ると思うのです。従ってその点に対する何らかの措置が行われていないと、ただいま申し上げたような、後刻に至って特別決議の総会決議無効が確定した場合、その点はどうなるか。これは会社に非常に大きな混乱が起る。財界に及ぼす影響も非常に大きい。従ってこの会社はその混乱のためにあるいは事業が不能になってしまうかもしれない、こういうおそれがあるように思う。しかもその中には、理由開示という形式の手続をとれば条件は具備します。しかしながら株主総会の決議が無効になつた場合の原状回復の関係は非常に恐しいのじゃないか。会社の実権が他に移つてしまう、その実権の移つた新しい株主の実権をもとの株主の実権に戻さなければならぬということになり、混乱しはしないか、こういうことをおそれるのですが、この点はどうお考えになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/32
-
033・村上朝一
○村上(朝)政府委員 総会の決議が取り消されました場合の効果につきましては、先ほど山本委員の御質問に対してお答え申し上げました通り、一方におきましては不公正発行による取締役の責任の追究、通謀して引き受けた第三者の差額支払いの責任という問題が残りますけれども、新株の発行そのものが無効ということにはならない、かように解釈いたしておるのであります。もしこれが総会の決議が取り消された、あるいは決議なくして株主以外の者に新株引受権を与えたということによりまして新株の発行そのものが無効になりますと、新株の流通によって受けた第三者の被害というものは甚大なものでありまして、新株発行そのものは無効にならないという解釈をとるわけであります。会社の支配権をすでに新株主に握られてしまうじゃないかという意味の古屋委員の御疑問の点ですが、さような懸念があるといたしますれば、この株主の新株引受権に関する改正法の規定も、定款に定めがない限り取締役会がきめると書いてありまして、定款でもって株主に新株引受権を留保する道が開かれておるわけです。それによりまして取締役が株主の総意に反して株主以外の者に会社を支配するほどの新株を与えるということを未然に防ぐ道はあるかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/33
-
034・古屋貞雄
○古屋委員 私が御質問申し上げておるのは、今御答弁があったような点ではないのです。一番問題になりますのは、二百八十条ノ二の二項の中の「株主以外ノ者二新株ノ引受権ヲ与フルコトヲ必要トスル理由ヲ開示スルコトヲ要ス」具体的なこの理由開示の程度の問題がおそらく株主総会で争いになると思うのです。一体どの程度の理由開示かという解釈問題が、これは紛争を起す原因になりはしないかと思うのです。何とかこの点についての紛争を起さないような適当な表現ができるかどうか。この趣旨はけつこうですけれども、おそらく会社が二派に分れて争つているような場合が多いのです。その場合、理由開示があったかないかという問題が、今の株主総会の決議無効の訴えの原因になると思うのです。そうなれば現在紛争を起しているようなことを再び繰り返すようなことになるのではないか、こういうことをおそれるわけです。その関係はおそらく後日具体的に理由開示とは何ぞやという解釈論が問題になってきはしないか、この点が一つと、ただいま申し上げたような、総会の特別決議が無効になれば、やはり新しい株式の発行は、これは結局有効とお認めになるのか、それとも総会決議が無効になればこれは無効になるのかという点が重大なんですが、ただいまの御答弁では有効だということになるわけですね。そういうことになりますと、それは社会的に及ぼす影響が大きいので、そういう解釈をなさるのか。この字句だけでは、必要条件であるから、総会の決議無効が確守すれば、発行されたものも無効だということに解釈しなければならないように考えるのであるが、この点については、金融財界に及ぼす影響が多いので、それらの点を考慮して有効とお認めになるのか、その点はどういうことなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/34
-
035・村上朝一
○村上(朝)政府委員 改正規定の二百八十条ノ二の第五号による、株主総会の決議がなくして株主以外のものに新株引受権が与えられ、新株が発行された場合のその新株の発行を有効と見る理由、根拠はどこにあるかという御質問だと存じますが、この改正法の二百八十条ノ二は、新株発行の権限は取締役会に与えているのであります。ただ株主総会の特別決議による授権がない限りは、新株引受権を株主以外のものに与えることができないということになっておりますので、新株引受権が成立する要件ではありますけれども、新株発行が有効である要件ではない、かように考えます。言いかえますと、新株の引受権のないものに新株を割り当てた、この株式の申し込みに対して株式を割り当てるということは、これは取締役会のいわゆる割当自由の原則によって、だれに割り当てるかということは取締役会できめ得るのでありますが、その場合に、新株引受権のないものに割り当てる場合には、均等な条件で割り当てなければならぬ。新株引受権のあるものに割り当てる場合は、均等な条件よりも有利な条件で割り当てることができるという差があるわけでありますが、新株の発行そのものが無効になるということは、この二百八十条ノ二の五号ができましたことによって、さような解釈にはならないのではないか、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/35
-
036・古屋貞雄
○古屋委員 そうしますと、株式の申し込みが行われ、株金の払い込みが行われたことは無効になるけれども、発行したものは無効でない、こういうことに分離された解釈になってくるように思うのですけれども、そうしますと、払い込みのない株券が発行されているということになるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/36
-
037・村上朝一
○村上(朝)政府委員 私、言葉が足りませんでしたが、新株の申し込み及び払い込みが無効であるが、株券そのものが有効だという趣旨でお答えしたのではなかったのであります。申し込み及びそれに対する割当、払い込み、いずれも有効なんであります。ただ発行条件が、新株引受権を有するものに対する有利な発行条件であったといたしますと、本来特別決議による授権のない場合でありますので、新株引受権のないものに新株引受権者に対する発行条件で発行したということで、不公正発行という問題が起るのではないか。従いまして、株式の発行そのものは、申し込みも、割当も、払い込みもすべて有効であるという解釈をとる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/37
-
038・古屋貞雄
○古屋委員 私はそのところがどうもわからないのですが、引受権のないものが申し込みをなす、その申し込みをなしたものが、株金の払い込みをして株主になる、こういうところにどうしても私理解がいかないのですが、そうなりますと、引受権に対する取締役会の決議が一切をきめてしまうということになるので、回り回って私が最初質問したようなことに決着するわけです。取締役が勝手に引き受けに対する関係を決定をし、そうしてただいま申し上げたような株主総会の特別決議——その要件が具備しないような問題を引き起しても、最初から取締役が引受権者そのものを決定いたした場合には、それだけでも効力を発生するとすれば、私は非常に納得いかない点があるのは、最初からもう取締役会で決定してしまうのだ、あとは単なる例示規定にすぎないのだ、こういうことになってくるように結論はなるわけです。ただいまの御説明によると、発行する価格の問題の利害の関係だけがそこに中心になってきて、そうして根本となるべき株式会社の株主となるべき必要条件というものが根本からくつがえつてきても、それでも株主になるというような結論になるわけです。その点がどうしても納得がいかないのです。そうしますと、申し込みも有効であり、払い込みも有効であり、従って株主として会社に対する権利義務を完全に持たれることに結論はなるわけでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/38
-
039・村上朝一
○村上(朝)政府委員 新株の引受権を持っているということは、株主となるために必要な要件ではないのでありまして、引受権のないものでも、株式の申し込みをして割当を受ければ、株主になるのであります。ただ引受権を持っておりますと、申し込みをする機会を優先的に与えられるということと、発行価格が公募の場合に比較いたしまして均等でない、有利な条件で発行を受けられるという点が違つてくるのでありますが、本来株式を公募いたします場合等は、引受権のないものが申し込みをして、それに割当をすることによって株主になるわけでありますので、この場合にもたまたま新株引受権を与えられたが、その与えるについて総会の特別決議がなかったために、新株引受権そのものは無効である、存在しないという場合でも、新株引受権のないものの申し込みに対して株式を割り当てた場合と同様に解していいのではないか。ただその場合に、引受権のある者に与えられるのと同様の有利な条件、つまり均等でない条件で株式を割り当てられるという点だけが不都合が生じますので、その場合には不公正発行ということで取締役なり株式引受人の責任が追及されるということになると考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/39
-
040・古屋貞雄
○古屋委員 そうしますと、第三者の株式引受権の制約されている条件というものは、結論から行けば、引受権がなくても株主にはなれるのだ、従ってここに並べているような条件は、単なる引受権そのものに対する条件であつて、株主になる条件ではない、こういうように御解釈になるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/40
-
041・村上朝一
○村上(朝)政府委員 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/41
-
042・古屋貞雄
○古屋委員 どうもその点が少し了解に苦しむのでございますが、そういたしますと、前の結論、私が最初に御質問申し上げた取締役会の決議、取締役の専恣横暴というものが非常に行われてきて、そうして少数株主権なども無視されるし、旧株主というものは非常に窮境に押しやられるというようなおそれがあるので、取締役会そのものによって決定をするという、その結論がいいか悪いかということになってくると考えるわけですが、現在の日本の会社運営の実情にかんがみましても、まことに私は取締役の専横が行われるような木規定というものは、さらに強化されていくように考えられるので、強化されるについては、今度はその強化の弊害そのものに対する御配慮は、今私考えますと、どうも処罰規定か何かより以外にはないように考えるのですが、これに対する処罰規定などの関係をお伺いしたいのです。というのは、先刻から私御質問申し上げたのですが、日本の基本産業に、なるほど許可を受けたりいろいろな制約がございましょうけれども、そういうような形式的な資本の出資のやり方をせずに、日本の特定の資本家を——実際の投資はアメリカならアメリカがやつておりますけれども、表面上の投資は、日本の子会社あるいは親しい経済的関連のある会社をしてやらせる、こういうようなことが、いわゆる法律の盲点をついて行われて参りまして、私は将来基本産業に対する外国資本——アメリカばかりではございませんが、そういうものが入ってくることを非常におそれて承わつておるわけなんですが、取締役会のそういう専横を何かの規定において刑罰で処罰するか、あるいは制約するということにならなければ——今のような御解釈でいくと非常に取締役に強い権限を与えることになるのではないかと思いますが、こういう点に対する弊害の御配慮は、ほかに何かこの改正に当つて具体的に表現されておりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/42
-
043・村上朝一
○村上(朝)政府委員 新株の引受権のない者が株式の申し込みをしました場合に、それに割当をするかしないかということは、これは一般公募の場合にもいろいろな即題がありますが、いはゆる割当自由の原則と称せられまして、取締役会が自由に割当をきめ得るようになっているのであります。これは昭和二十五年の改正前から、ずっとその点につきましては変つていないのであります。私先ほど株主の新株引受権の有無が、株主が有利に発行を受け得るかどうか、また新株引受権の機会を与えられるかどうかという二点にあるという点を申し上げたのでありますが、なおこの発行条件だけの点だといたしますと、少し説明としては足りないかと思います。旧来の株主が会社の総株式の中に占める自分の持ち株の一定の割合というものを維持するについて利益を持っている。その旧来の株式の持っております割合を維持する利益をどうして保持するか。発行価格が少々安い高いの問題でなく、会社の総株式の上に占める支配力と申しますか、割合の維持という点でありますが、この点も実は株主の新株引受権については考えなければならぬ問題なのであります。その点につきましては、先ほども古屋委員の御質問に対して申し上げましたように、二百八十条ノ二の第一項の冒頭におきまして、「会社ノ成立後株式ヲ発行スル場合ニ於テハ左ノ事項ニシテ定款ニ定ナキモノハ取締役会之ヲ決ス但シ本法ニ別段ノ定アルトキ又ハ定款ヲ以テ株主総会が之ヲ決スル旨ヲ定メタルトキハ此ノ限ニ在ラズ」かように相なっておりますので、もし株主が将来取締役の専横によって自分たちの持っている株式の割合を乱されては困るという心配があると思いますれば、定款を定めるに当つて株主の新株引受権というものを固定的なものにしてしまうということも考えられるのであります。ただ固定的なものにしてしまいますと、授権資本制の妙味が発揮できないということになりますので、ある一定の割合を限つて、たとえば七〇%までは株主に引受権があるというようなきめ方もできるわけです。またただいま読みました条文にありますように、第三者に対する新株発行その他新株の発行に関する事項は、株主総会がこれを決する旨を定めた場合には、これは第一項の本文は働いてこないのでありまして、その場合には定款で株主総会がきめるという規定を置きますと、それに拘束されることになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/43
-
044・世耕弘一
○世耕委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、午後二時まで休憩いたします。
午後零時四十八分休憩
————◇—————
午後二時三十九分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/44
-
045・世耕弘一
○世耕委員長 午前に引き続き会議を開きます。
商法の一部を改正する法律案について質疑を続行いたします。福井盛太君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/45
-
046・福井盛太
○福井(盛)委員 午前中にいろいろの質疑が出、またこれに対しましていろいろ説明を承わつたのでありますが、なお私どもとして不安かつ了解しにくい点がありますので、一、二点お尋ねしておきたいのであります。
この御説明をなお明瞭にしていただくために、二百八十条ノ二の第一項に記載しております会社の成立後株式を発行する、この発行権と、後の特別決議による株主以外の者に新株の引受権を与うるという引受権でありますが、この関係を明瞭にしていただくならば、あるいはわれわれの質疑も明瞭になることがあるのではないかと思うのであります。
さらに第二点といたしましては、何と申しましても不可解に思いますのは、株主以外の者に新株の引受権を与うるための三百四十三条に定める特別決議でありますが、この決議がかりに一般総会の手続によりまして特別決議でなかったというような場合におきましても、そしてその場合に総会無効の確認によりまして無効となつた場合においても、この発行権が有効であるのであるというふうに説明されておりますが、私といたしましては、この特別決議の内容をなすものは与うることを得べき引受権の目的たる株式の額面、無額面の別、種類及び最低発行価額というふうに明瞭になっておるのでありますから、もしもこの特別決議が無効になりました場合におきましては、これらの決議によって定められましたこれらの目的も従って無効になるのではないかというふうに考えられるのであります。この点は法律上いかように相なるものでありますか、政府のお考えをこの二点について御説明願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/46
-
047・村上朝一
○村上(朝)政府委員 二百八十条ノ二の第一項ただし書きに「但シ本法ニ別段ノ定アルトキ又ハ定款ヲ以テ株主総会が之ヲ決スル旨ヲ定メタルトキハ此ノ限ニ在ラズ」という規定がございます。この第一項は新株発行に関する事項を決定する取締役会の権限を本文において定めまして、ただ定款でそれは取締役会でやるのではなく、株主総会でやるということが規定してあります場合に、本来取締役会でやるべきものを株主総会でやるということであります。従いまして第一項ただし書きの株主総会の決議だけであれば、これは通常決議でいいわけであります。たとえば株主だけに新株引受権を与える、あるいはだれにも新株引受権を与えないという場合の新株発行であれば、もし定款に新株発行に関する事項は株主総会でこれを定めると規定してあります際には、通常総会で決定していいわけであります。ただ株主以外の者に新株引受権を与える場合には、第一項の本文に該当する場合、すなわち取締会で定め得る場合でありましても、第二項の特別決議による授権がなければ、株主以外の者に新株引受権を与えることはできない、また本文第一項ただし書きの、株主総会が取締役会にかわつて新株発行に関する事項を定める場合でありましても、株主以外の者に新株引受権を与えるためには特別決議が必要である、そういう意味でありまして、言いかえますれば第一項は新株発行そのものに関する事項を定めております。第二項は新株発行に当つての株主以外の者に新株引受権を発生させるための要件を規定しておるわけであります。かりに第二項の特別決議で定めなければならない場合、すなわち株主以外の者に新株引受権を与える場合に、これが通常決議の方法によって決議されたというようなときには、第二項の要求する特別決議の要件を満たしていないわけでありますから、株主以外の者の新株引受権は発生しないのであります。従いまして新株引受権者としてその第三者を扱うわけには参らないことになるわけであります。ただ新株発行そのものは、第一項によりまして取締役会、または定款の定めるところにより、場合によりましては、株主総会がやることでありまして、新株発行の効力にまで影響を来たすことはないと考えるのでありますが、ただ第二項によって、新株引受権ありと考えられて、新株引受権者として扱われた者が実は新株引受権がなかったということになりますと、まず商法の二百六十六条の第一項第五号によりまして、取締役が法令もしくは定款に違反する行為をした場合に該当します。従いまして取締役としては会社がこうむつた損害を賠償する責任があります。またその損害賠償責任を追及するにつきましては、会社から訴えを起し得るのみならず、一定の株主がみずから取締役の責任を追及する訴えを起し得るということが第二百六十七条に規定してあるわけであります。会社に損害を生ずるということはどういうことかと申しますと、商法二百八十条ノ三によりますと、「株式ノ発行価額共ノ他発行ノ条件ハ発行毎ニ之ヲ均等ニ定ムルコトヲ要ス但シ新株ノ引受権ヲ有スル者ニ対シ有利ニ之ヲ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ」とありまして、通常は一般の発行条件は会社の資産、並びに営業の状況及び市場の状況によって、会社にとつて最も有利な価額で発行されるわけであるが、新株引受権を有する者に対しての発行条件は、それよりも会社に不利益、従って新株引受権者に有利な条件で発行できるということになりますので、額面で発行しているのが通例のようであります。もし改正案の第二項による特別決議がないにかかわらず、株主以外の者に新株引受権ありとして一般公募価額よりも有利な条件で発行いたしましたとすると、この二百八十条ノ三の規定に違反したことになりまして、それによって生じた損害、つまり一般の公募価格と株主に対する発行価額との差額の賠償責任が取締役の責任として生ずるわけであります。またもしもその新株の引受権者とされた者が実は新株引受権がなかったという場合、取締役とその者とが通謀してやつたという場合には、二百八十条ノ十一という規定がありまして、「取締役ト通ジテ著シク不公平ナル発行価額ヲ以テ株式ヲ引受ケタル者ハ会社二対シ公正ナル発行価額トノ差額ニ相当スル金額ノ支払ヲ為ス義務ヲ負フ」ということになっておりまして株式引受人もまた差額の損害賠償責任を負うわけであります。また株主としましては二百八十条ノ十によりまして「会社ガ法令若ハ定款ニ違反シ又ハ著シク不公正ナル方法若ハ価額ニ依リテ株式ヲ発行シ之ニ因リ株主が不利益ヲ受クル虞アル場合ニ於テハ其ノ株主ハ会社ニ対シ其ノ発行ヲ止ムベキコトヲ請求スルコトヲ得」いわゆる差止請求権を行使することもできるわけであります。かように会社並びに旧株主の利益はこれらの規定によって擁護されておりますので、新たに発行された新株そのものを無効とする必要はないわけでありまして、新株そのものの発行効力には影響がない、かように考える次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/47
-
048・福井盛太
○福井(盛)委員 ただいまの御説明でわかつてきたような気持がしますが、なお一点お尋ねしたいのは、その第二項の特別決議がかりに無効となつたとしたならば、その場合には株主以外の者に新株引受権を与うるという決議は無効になるのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/48
-
049・村上朝一
○村上(朝)政府委員 第二項の特別決議で、取締役会なり定款の定むるところによって株主総会が新株発行に関する事項を定める場合には、ある第三者に新株引受権を与えるという取締役会なり総会の通常決議があったといたします、その第二項の特別決議が無効であった、あるいは取り消された場合には、第一項と第二項の関係は、第二項が取締役会なりあるいはただし書きの場合の株主総会に授権をするという関係になるわけであります。この授権がなって初めて株主以外の者に新株引受権を与えるという決定ができるわけであります。それが授権なくして決定したわけてあります。ですから、株主以外に新株の引受権を与えるという取締役会の決議なり通常総会の通常決議は効力を生じない、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/49
-
050・福井盛太
○福井(盛)委員 よくわかりました。ただその場合においても二百八十条ノ二の第一項の株主総会は生きておるのですから、これによって株主以外の者に新株引受権を与えるのでなくて、会社の成立後株式を発行するという、この決議は有効に残つておつて、これによって与えるわけですな。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/50
-
051・村上朝一
○村上(朝)政府委員 会社が発行し得る株式総数いわゆるワク内におきましては、取締役会と同様、このただし書の場合の総会も新株発行に関する事項を決議し得ると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/51
-
052・世耕弘一
○世耕委員長 本日はこの程度にとどめて、なお商法の一部を改正する法律案については、一応質疑はこれで終了いたしました。明日は少年院法の一部を改正する法律案を審議いたしたいと思います。なおその他の点もあわせ審議する予定になっております。いずれ公報をもって御通知申します。
本日はこれにて散会いたします。
午後二時五十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X01819550613/52
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。