1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年六月十六日(木曜日)
午前十時五十五分開議
出席委員
委員長 世耕 弘一君
理事 古島 義英君 理事 山本 粂吉君
理事 三田村武夫君 理事 馬場 元治君
理事 福井 盛太君 理事 古屋 貞雄君
理事 田中幾三郎君
椎名 隆君 長井 源君
生田 宏一君 横川 重次君
淺沼稻次郎君 佐竹 晴記君
細田 綱吉君
出席政府委員
法務政務次官 小泉 純也君
法務事務官
(入国管理局
長) 内田 藤雄君
委員外の出席者
検 事
(入国管理局次
長) 下牧 武君
専 門 員 村 教三君
専 門 員 小木 貞一君
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六月十五日
売春等処罰法案(神近市子君外十八名提出、衆
法第一四号)
同日
戦争受刑者の早期釈放に関する請願(山下春江
君紹介)(第二二六七号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
出入国管理令の一部を改正する法律案(内閣提
出第一〇六号)
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001・世耕弘一
○世耕委員長 これより会議を開きます。
本日は出入国管理令の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑の通告がありますので、順次これを許します。古屋貞雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/1
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002・古屋貞雄
○古屋委員 この法律の改正は、国際関係に重大な関係を持ちますと同時に、非常に困難な実情にございますので、私は政府に対しまして、出入国管理行政の全般について御質問をしたいと思うのです。
まず第一に、入国管理局の組織、機構、職員の配置状況等をお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/2
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003・内田藤雄
○内田政府委員 ただいまの御質問にお答え申し上げます。多分お手元にお届けしてあると存じます資料がございますが、今回組織法の改正を提出いたしておるのでございますが、この組織改正法が通りました場合に、どうなるかということを表にして出してございます。これは本質的に大した変化ではございません。ただ川崎に新たに収容所を設けまして、従来横浜にございました収容所を廃止する。それから大阪は、従来港の出張所だけでありましたものを管理事務所にいたしまして、同時に二つばかりの港をその管轄下に置くということがおもな点でございます。
そのほか、従来の港へ出入いたします船の実績等を勘案いたしまして、その船の出入りの少い港につきまして出張所を廃止いたす、または最近非常に船の出入りのふえておりますところに出張所を置くということで、数字的に申しますと、全体では前と同じでございます。それでその間に配属しております人の問題は、その表の裏に出ておるのですが、各事務所の仕事の量に応じまして、多少多い少いがございます。それで通計いたしまして本局に百二十四名、地方の事務所などに千百九十五名、合計千三百十九名の陣容でありますが、このほかに、今回の予算が通りますと、常勤労務者及び非常勤労務者が加わるわけで、この表には出ておりませんが、このほかに常勤労務者として百十六名、非常勤労務者として十九名という数字がこれに付加されるはずでございます。大体以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/3
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004・古屋貞雄
○古屋委員 管理局自身の組織はどうなっておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/4
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005・内田藤雄
○内田政府委員 管理局自身は、これはお手元に差し上げました表に載っておらぬようでございますから、ごく簡単に申し上げますと、課が六つございます。総務課は、これは一般の人事、会計その他庶務等をいたします。それから入国審査課、これは新しい入国につきまして査証を発給するというような仕事をいたすところでございます。それから資格審査課、これはこちらに在留しております人が、査証の期間が切れますと更新をいたさなければなりませんので、そういう事務をやるところでございまして、現在ちょうど講和条約発効後三年になっておりますので、あの当時三年の在留資格を相当簡単に出しておりました結果、現在その切かえ期に当っておりまして、かなり仕事がたくさんございます。それから審判課、これは不法入国その他不法残留等、違法の状態になりましたものをいかにするかということにつきましての問題でございまして、各地方事務所におきまして現地で片づかないで、法務大臣に異議を申し立てて参りましたものを、五十条の線で在留許可を与えるかいなかということを処理する課でございます。その次が警備課、これは現地において退去強制が確定しました者及び法務大臣の裁決の結果退令になりました者につきまして、収容とか退去等を執行いたす課でございます。それからもう一つ、登録課というのがございますが、これは御承知のように外国人登録法というのがございまして、外国人につきましては市町村における窓口におきまして登録事務を扱っておりますのですが、そのことを統轄するための課でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/5
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006・古屋貞雄
○古屋委員 それでこの第一線の職員などの配置についての改正をなさるというようなことをこれで言っておるのですが、第一線で一番困難な問題になりますのは、強制送還をするような場合に、何年も収容所に入れておくというようなものに対する問題等も、そういうものとの直接これに対する指導であるとかお世話をするというような関係の職員としては特に技術がいるように思うのですが、そういうような関係があるのでございましょうか。はっきり申し上げますれば、たとえば強制送還をする相手国がこれを受け取らないという関係で収容所に数年間おらなければならぬというものに対する処置は、ある場合にはこれらの人々の趣味の選択であるとか、たとえば読書に関する関係、あるいは娯楽に関する関係、いろいろございましょうが、そういう場合に特殊な技能を有するようなものが雇われておって、そういうような方たちに対する処置をとっておるかどうか、そういう点はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/6
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007・内田藤雄
○内田政府委員 正直に申し上げまして、われわれの方の収容施設と申しますのは、いわば船待ちのための収容施設であるのが本来の姿であるわけでございます。現に横浜などにおきましてミス・シップという形におきまして起ります不法上陸あるいは不法残留のケースは、これの相手になります国がみな国際的な常識を持って処置してくれます関係上、きわめて円滑に回転いたしておりまして、長い場合でも二週間ないし三週間収容施設におりますだけで解決して参っておるのでございます。ところがただいまお話しのございましたように、朝鮮、韓国の場合、また中国と申しましても台湾あるいは中共、こういう場合にはなかなかただいま申し上げましたようなことになって参らないのが実情でございます。それで昨年正月を最後といたしまして、韓国への引き揚げと申しますか、退去命令の実行というものは、約半歳以上にわたって途絶えておりましたのですが、昨年末から少し話しを始めまして、本年の二月以来毎月一隻の割合で、現在送還船が出ております。しかしこれにつきましても、実は問題が根本的に解決したわけではございませんので、最近韓国の方の対日空気の悪化に伴いまして、今後これが円滑な運営が行われ得るかいなかにつきましては、私どもといたしましても相当懸念いたしております。それから中国の方につきましては従来台湾政権に対する考慮から、中国本土への送還ということはなかなか実行できにくかったのでございますが、先般興安丸が日本人の引き揚げの迎えに参りますときに、多少本土向けの中国人を送り返しました。これが公然と中国への引き揚げを行なった第一回の例でございます。それで今御質問のごとく、実際収容施設に長期滞留という事態が起っておりますことは、まことにわれわれとして遺憾でございまして、これにつきましてはなるべくその御本人たちに無用な苦痛を与えないように努めてはおりますのですが、ただ本来われわれの方がそういう長期の収容ということを予想してできておる施設でございませんし、またこれを労働等に従事させるということになりますと、別の角度から、強制労働とか、非常にいろいろな問題を生じますので、現在のところ全く自由意思によりまして多少の労働をして、それによって収益を上げることを認めておる。きわめて限られた範囲において行われておるのが現在の状況でございます。これにつきましてはわれわれとしてもいろいろ考えておりますところでございまして、また状況によって非常に長期になることを予想しなければならないような事態になりましたならば、何かうまい形で本人たちの健康の維持、あるいは気をまぎらすための方法を考えたいと思っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/7
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008・古屋貞雄
○古屋委員 ただいま御説明がございました問題については、後ほど承わりたいと思うのですが、その点が国際関係に及ぼす影響が非常に大きいのであります。万全の処置をとっていただきたい、かように考えております。
なお進んでお尋ねしたいのは、管理行政の対象となる在留外国人の現状の大あらましがわかりましたならば御説明を願いたいと思うのですが、どんな状況になっておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/8
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009・内田藤雄
○内田政府委員 ただいまの御質問でございますが、これもお手元に差し上げてございます資料の中に八という番号を打ったところをごらんいただきますと、大体御了解いただけるのではないかと存じますが、これは登録いたしたものでございまして、登録いたしました外国人の総計は六十三万一千三百八十八でございます。それでそのうち特に数の多いものを申し上げますと、中国が四万四千五、それから次のページを見ていただきますと、韓国——韓国と申しますのは朝鮮と両方含めますと、五十六万七千五十三でございます。そのうちの朝鮮人につきましては、これは他の場合でもあることと思いますが、特に朝鮮人の場合には登録に現われていない人の数が相当あるであろうということを想像いたしております。この数につきましては、的確なことはだれにもわからないのでございますが、最近われわれの間の推定というのがほぼ一致して参りまして、大体この一割くらいのものが登録されないであるのではなかろうか、ごくラフな数字ではございますが、朝鮮人は大体六十万というふうにわれわれは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/9
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010・古屋貞雄
○古屋委員 ただいま御説明を受けました中で、不法入国者に対する処分の実情でございますが、特に強制収容、強制送還、自費出国の実情を、中国と韓国、台湾における分についてだけ御説明を願いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/10
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011・内田藤雄
○内田政府委員 この異議を申し立てられました場合に、いかなる標準でこれを許可し、あるいは退去さしておるかということにつきましては、また別に御説明いたす機会もあろうかと存じますが、大体現地におきまして密入国者、つまり船の中あるいは上陸いたしました直後に不法入国の現行犯として逮捕されたような場合には、大体そのまま異議申し立てをいたす者も非常に少うございまして、非常に短期間に大村収容所に収容されるという者が多うございます。しかしその中で刑事処分が長引きましたり、あるいは異議を申し立てまして東京に参りますような場合には、そう簡単に収容いたすことができない場合もございます。
それからもう一つは、密入国者としてもぐっておった者が、後に何かの機会に密入国者として発見せられる場合は非常に多くの者が大臣までの異議申し立てをして参りますので、確定までに多少時間をとられまして、各事務所の収容施設に収容せられる期間が長くなる場合もございます。そこでいよいよ退令にきまりますと、まず韓国の方の場合で申し上げますならば、ほんとうに密入国者であるかどうか、われわれは韓国のミッションにリストを出すのですが、それに応じまして向う側からほんとうに密入国であるかどうかの確認に参りまして、それが密入国であることがきまりますと、大体引き取るわけでございます。それが先ほど申しましたように昨年五月からことしの二月までとだえておったわけでございますので、だいぶその数がたまってしまっておりまして、この次にもう一回約二百五十名ほどの引き取りが行われますと、大体前からたまっておるものは全部はける予定でございます。のみならずその後に新しい密入国者も送還できるという予定でおります。
それから中国の方で申し上げますと、台湾政権は従来密入国者を引き取らぬというようなことは一回も申しておりません。しかし実際は密入国であれ何であれ、台湾に帰ります者——まあわれわれから申せば本来帰国のはずなんでございますが、台湾への入国ということにつきまして非常にやかましいことを申しております。それで保証人が二名なければならないとかいろいろなことで、実際台湾政府があたかも新しい外国人の入国に査証を発給するようなやかましい手続をとり、いろいろ注文を出しております結果なかなか円滑に動いておりません。
それで先ほどの自費出国の問題でございますが、韓国の方につきましては昨年末から大村の問題の処理の話し合いを始めまして、一時少くともわれわれに関します限り日韓の間の空気が非常にやわらいだ期間をここ数カ月続けまして、その間はかなり自由に自費出国の許可をよこしまして、それに入った人の数も相当にございます。しかし先ほど申し上げましたように、最近また本国の方で日本に対する感情がこじれてきておるようでございまして、ごく最近でございますがまた自費出国の許可をなかなか出さないような気配がうかがわれます。
台湾につきましては先ほど申し上げたようなわけでございまして、強制退去の場合にしろあるいは自費出国の場合にしろ、台湾政権がいろいろの内部的な規則によりましてなかなかすみやかに許可証を出さないというのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/11
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012・古屋貞雄
○古屋委員 ただいまの強制収容をされておりまする数字がおわかりでございましょうか。韓国人がどのくらい、中国人がどのくらい、台湾人がどのくらいか、大体の内訳を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/12
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013・内田藤雄
○内田政府委員 お手元に差し上げてございます資料の三八ページに大体の数字が並べてあるのでございますが、ただこれはちょっと古くなりましたので、おもな点のみを一番新しいところで申し上げます。現在大村入国者収容所に収容されております者の数は千百二十五名でございます。それから横浜収容所に収容されております者が三十四名、それから横浜収容所の浜松分室に収容されております者が二百二十九名、合計千三百八十八名という数字でございます。これは六月十三日現在でございます。そのほかに先ほど申し上げましたような違反調査の途中にありますために、各地の事務所の収容施設あるいは警察等に留置嘱託されております者の数が、これは五月三十一日の数字でございますが、合計いたしまして百七十でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/13
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014・古屋貞雄
○古屋委員 それからもう一つお尋ねしたいのは、強制送還をされた者の人数、これは昨年の数字でもよろしゅうございますが、一年にどのくらい強制送還をされておりますか。やはり韓国と中国と台湾の明細がわかりましたならば一つ御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/14
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015・内田藤雄
○内田政府委員 その問題につきましても、お手元に差し上げてございます資料の四五ページに「韓国向強制送還状況調査表」というのがございます。二十六年からずっと掲げてございますが、上に書いてあります数字は送還の便をあげてあるわけでございます。二十八年などは非常にたくさんの便が出ておりますが、二十九年は六月八日が最後の便でとまっております。それで総計いたしますと、二十九年は八百三十七の送還ということでございます。それから三十年になりまして現在までのところ二月、三月、四月と三回送還船が出ておりまして、五月の船は、これは原則的な拒否にあったわけではありませんでしたが、向うの態度が先ほど申し上げましたようにちょっとぐずつきましたために、目下その準備が行われておる段階でございまして、今月末あるいは来月の初めに一船出る予定でございますが、現在までのところでは七百七名の送還を行なっております。それから中国の方で申し上げますと、これも資料の四十六ページをごらんいただきたいのでございますが、昭和二十八年の十月二十九日を最後といたしまして帰郷は一応とまっておりましたが、今年の二月九日、三月十六日の二回にわたりまして、ここに掲げてございますように、三百五十名ほどの人が帰っております。しかしこの下に註釈がついておりますように、このうち退去命令に基きますものは、二月の場合に四十三名、三月の場合に十九名でございます。それから台湾の方を申し上げますと、これはその次のページに出ておりますが、昭和二十九年におきまして五十一名、三十年におきまして十五名でございます。これはみんな退令に基くものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/15
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016・古屋貞雄
○古屋委員 ただいま御説明いただきました強制送還に対する自費出国のパーセンテージはどんなことになっておりましょうか、おかわりでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/16
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017・内田藤雄
○内田政府委員 これはお手元に差し上げました資料についておりませんので申し上げますが、まず朝鮮人を申し上げますが、昭和二十七年が十三名、二十八年が七十三名、二十九年が百十四、昭和三十年が一月から五月までで百六名という数字になっております。中国人は昭和二十七年が二、二十八年が四十二、二十九年が百二十三、三十年が三十六、以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/17
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018・古屋貞雄
○古屋委員 さらに進んでお尋ねしたいのは、密入国の者に対する在留許可の基準、これはいかなる方針でおきめになっておるのか、その説明を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/18
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019・内田藤雄
○内田政府委員 これは実はなかなか説明のむずかしい問題なのでございまして、われわれの立場から申し上げますと、入国管理令の根本原則から申しまして、原則として密入国は困る、こういうことを申さざるを得ないわけなのでございます。その理由といたしましては、今日の国際慣行におきまして、旅券という制度が長い慣習の間にでき上ってきておりますので、外国に渡航する場合には旅券を持っていくという大原則が国際慣行として確立されておる。日本といたしましてもその原則をやはり希望せざるを得ないわけであります。それと、今日の日本の状況におきまして、日本人自身を政府の金をかけても外国に移民させようとしておるような状況でございますから、そこに外国人の移住者を寛大に迎え入れるということは、本来の矛盾ではないかということから考えまして、われわれとしては原則として密入国は困るという立場をとらざるを得ないわけでございます。しかしながら御承知のように戦後十年を経過いたしましたのではございますが、また先般の戦争またそれに至りますまでの日本のとった行動の跡始末ということは、やはりわれわれとして考えざるを得ないと思っておりますし、また特に朝鮮とか台湾とか戦争の終るまで日本の領土であった、また日本の国民であった人々が急に外国人に変ってしまいまして、しかもその際家族が国を異にするところに別れ別れに住むような状態が生じておるという事実もございますし、かたがたそうした特殊の事情を考慮いたしまして、先ほど申し上げましたような原則の適用に当りましては、具体的な事情に応じて考慮をいたさねばならぬと考えておる次第でございます。それで大体どういうことを考慮するかと申しますと、その当人の生まれたところあるいは成育した場所あるいは子供とか奥さんの場合でございますと、今度はそれを受け入れる方の側の父なり夫なりの従来の態度あるいは経済状態あるいはそういう別々に住むことになりました事情、たとえば本人の意思に反して疎開等によってそういう事情が生じたかどうか、それから先ほどちょっと触れたことでございますが、従来の日本との因縁つまり日本があとのめんどうを見てやらなければならないような人たちであるかどうか、そういうようなもろもろの事情を考慮いたしましてきめておるわけでございます。それで非常にしばしば問題になりますのは、これは前に法務委員会の小委員会でおきめになったものもございまして、われわれといたしましてそれを十分尊重はいたしておるのでございますが、しかしわれわれの立場から必ずしも結論において一致しがたい問題が起りますのは、われわれが俗に申しております現行犯のケースであります。これは見方によりますと、たまたまその現場においてつかまったということが不運なだけであって、何も現行犯を特別に扱う必要はないじゃないか、こういう御意見もあり得るということは承知いたしております。しかしいやしくもわれわれの方の立場から申しますと、密入国は阻止したいと思って海上保安庁、警察などとも協力してやっておりますやさきに、現行犯でつかまった者をそう寛大にしてしまうということでは、もうわれわれの方の根本の態勢がくずれてしまう。また各国の慣習におきましても、現行犯につきましては、文句なしの退去にいたしておるというのが国際慣例でもございます。それからもう一つ実質的に申しまして、現行犯には渋い結論を下さざるを得ませんのは、大体現行犯でつかまりますのは、集団密航でつかまるわけでございます。そうしますと四十名、五十名の多数が一緒につかまっております中で、ある特殊の事情だからということで、その中の数名をピック・アップいたしまして在留許可を与えるということは、われわれの方からいたしますとやりにくいのでございます。やはりわれわれの行政が公正に行われておるという印象を与えるということは非常に大事なことだと思っておりますので、何か理由がわからないでその中の数名が許可されてしまったというようなことで、非常な疑惑を起すようなことはわれれれとしては非常にやりにくいということが一つございます。
それからもう一つ、これは直接本人たちとは関係のないことなのでございますが、大体集団の密航の場合にはまず例外なしと申していいのでございますが、ブローカーが介在しておるわけでございます。このブローカーの組織等につきましてわれわれまだ的確な資料は持っておりませんが、大体想像できますことは、日本にもそういうブローカーの一人がおり、また向うに出かけていったり、向うにおる者でそういう片棒をかつぐ者もいる。またその間に行き来をいたしましてそれを手伝うような者がいる。こういう組織をもちまして、ある手数料と同時に、成功報酬の形で相当莫大な密航料をとって不当なもうけをしておるようでございます。それでこういう集団の密航につきまして、しかも現行犯でつかまった者をわれわれが寛大に扱いますことは、結果におきましてこれらのブローカーをいたずらにもうけしめ、われわれのほんとうに企図いたします密航というふうなものをなるべくなくしたい、ことにそういうブローカーがビジネスにならない状態を作りたいという角度から申しますと、現行犯について寛大なことをとるということは非常な矛盾になるわけでございまして、そういう角度からも現行犯の問題につきましては相当渋い結論を出しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/19
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020・古屋貞雄
○古屋委員 だいぶ詳しい御説明がありまして、実は昨年の当委員会の小委員会で決議いたしました決議の趣旨を大体御実行なさっておるようでございますが、もう一つつけ加えて御説明願いたいのは、戦争中に日本の軍人として出征した者あるいは徴用を受けて戦地に行かれた者、これらの者が戦犯として処罰を受けて、しかも日本の国内において処罰を受けた期限が経過いたしまして釈放をすることになった、こういう者に対する日本在留の許可の緩和についての御処置がどのよう行われておりますか。なおこれに対する在留許可だけでなくて、日本の政府がこれに対する思いやりの愛情のある処置をとっておるのかどうかということも、つけ加えて御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/20
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021・内田藤雄
○内田政府委員 ただいまの御質問でございますが、われわれの方に関係いたします限りは、戦犯で巣鴨から釈放されました方々には、戦前から日本に在留しておる方と同様な資格を与えております。ただ一つの問題のどういうあたたかい処置をとっておるかということにつきましては、私の承知しております限り、現在あの巣鴨を所管しておられます法務省の矯正局と、それから刑余の方々の問題を主として扱っておられます保護局とにおきまして、共同でいろいろ対策を研究しておられるように伺っております。私どもはこれには直接関係いたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/21
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022・古屋貞雄
○古屋委員 なお、ただいま御説明を伺いました緩和に対する特別な処置の中には、事業関係などの問題、それから技術員であるというような問題、こういうこともやはり在留許可をいたします基準に対しての緩和の中に特別にお入れ願っているような処置をおとりになっているのでございましょうか。実はこれは昨年の小委員会でかようなものを考慮されたいというような決議が行われておるわけですが、この実情はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/22
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023・内田藤雄
○内田政府委員 先ほど生活態度等と申し上げたのは、実はこういうことを含んでいる意味で申し上げたつもりでございましたが、率直に申しまして、こういうことをやっておれば、それだけで当然許可になるということは申し上げられないのでございますけれども、しかしここに掲げてございますような技術に従事している、あるいは芸能、学問、研究というような、いわば建設的な正常な生活をしておられる方は、われわれとして有利に考慮しておることは事実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/23
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024・古屋貞雄
○古屋委員 そういたしますと、昨年の七月当法務委員会の外国人出入国に関する小委員会で行われました決議が大体尊重されてやっていただいておる状況にある、こう承わってよろしゅうございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/24
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025・内田藤雄
○内田政府委員 大体そのように御了解いただいてけっこうと存じますが、ただ繰り返し申し上げるようでございますが、われわれの立場からいたしますと、ある一定の標準に合ったものならば、密入国者でも当然に在留が許可されるのであるというふうに御了解いただいては困ると存じます。われわれといたしましては、あくまで密入国は原則としては退去なのである、この基本的な線は堅持いたしたいと思っておる次第でございまして、ここにお掲げになられましたようないろいろな事情は、その拒否を決定いたします場合の一つの有利な事情として考慮しておるというふうに御了解いただけば幸いだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/25
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026・古屋貞雄
○古屋委員 ただいまの御答弁のような趣旨で決議されたように思っておりますので、さように心得えております。
なお進んでお尋ねいたしますのは、昨年のたしか第十九国会だと思いますが、外国人登録法第十四条に関する外国人の指紋押捺の点が改正をされて、しかもそれが本年度から実施されることになっておりますが、その実情はいかがでございましょうか。御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/26
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027・内田藤雄
○内田政府委員 この政令は先般発布されまして四月二十七日から実施いたしております。一部の外国人による反対運動というものは各地に少しずつ現われておりますが、幸いにも当初予期いたしましたような本格的と申しますか、執拗な反対運動というようなものはほとんど出ておりません。それで各都道府県からの報告によりますと、市町村の窓口におきましては、指紋押捺に際しましてもほとんど摩擦なく、若干人が押捺の目的の説明を求めた程度のことでございまして、大体きわめて鮮明なる指紋が押されて、もうこちらに届いておるものが千二百枚ございます。つまり少くとも現在までのところ、大体円滑に行われておると申し上げていいと思うのでございます。ことにその一つの副産物と申しますか、これは実は指紋押捺制度の、われわれとしてねらっておったことなのでございますが、従来のただの写真だけでございますと、これを簡単に他人に流用いたしまして、相当な値段で売買などされておったそうでございますが、写真を張りかえて他人が使い得るという状況にあったのですが、この制度になりましてからは、その登録証の再交付を要求いたします場合には、十指の指紋を押さなければならないといった関係で、登録証を非常に大事にするようになり、再交付を願い出る件数が平均に比べまして、著しく減少しておるという報告を受けております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/27
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028・古屋貞雄
○古屋委員 承わるところによりますと、特に朝鮮の方たちが集団的に反対運動をやっておる、そういうような集会をやったというようなこともちょっと新聞で拝見いたしましたので、非常に気にしておったのですが、ただいま局長の御説明ではさように憂慮すべきものではないというような御説明なんですが、実情はその通りでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/28
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029・内田藤雄
○内田政府委員 その反対運動の決議というようなことでは、すでに民団が反対の決議をいたしておりますし、そのほか、御承知のように従来の民戦は先般解消されましたが、もちろん左翼の方の急進分子によりましても、各地でそういう動きがないことはないようでございます。しかし現在のところ、非常にまじめな意味で中央において反対の決議をし、それを各地に流して反対運動をやらせるというような状況ではないようでございます。実際に現われましたところでも、先ほど申し上げましたように、各地に二、三その陳情に参った者はあるようでございますが、本格的な意味の反対運動というようなものは、そういう報告はございませんのみならず、実際ないとわれわれは信じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/29
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030・古屋貞雄
○古屋委員 大体その登録完成の見通しはいつごろですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/30
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031・内田藤雄
○内田政府委員 現在実施いたしましたのは、まだ新しく日本に入国してきた人についてのみでございます。それと再交付を申請しなければならない人が指紋を押しておるわけでございまして、昨年からことしの二月ごろにかけて行われました新しい登録を得ておる人々、これが在留外国人の大部分でございますが、この人々が現実に登録切りかえをなさねばならぬ、またその際に指紋を押さなければならないという時期は、来年の秋から再来年の一、二月にかけてでございます。従いまして、現在のところ大して問題が起っておらぬということは、見方によりますれば当然のことでございまして、本格的な切りかえが行われる来年の秋におきましては、われわれとしても相当の準備をして参らねばならないものと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/31
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032・古屋貞雄
○古屋委員 大体総括的な質問を承わりましたが、さかのぼるようでございますが、大村の収容所に置かれておりまする朝鮮の方たちで、相当長い年限の者があるやに承わっております。また朝鮮の方たちから私たちのところに、さような報告をしてきたのがございますが、一番長いのが四年くらい、それから三年くらいの者もあるというような報告が来ておりますが、さような者があるのかどうか、あるとすればその数並びにどういう性格、どういう事情でおくれておるのかということの御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/32
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033・内田藤雄
○内田政府委員 今御質問の問題は、実はわれわれ自身昨秋以来非常に頭を痛めておった問題なのでございます。先ほど申し上げました日韓間の話し合いの際にも、その問題が持ち出されまして、私どもとしては韓国側の要望にもこたえ、またわれわれ自身の問題として善処しなければならないと考えました結果、この一月以来、もう少しさかのぼりますと、あるいは去年の十一月ごろからと申してもいいかと存じますが、漸次古い人々をある基準に従って釈放いたして参りました。それで現在のところ、昭和二十七年度に大村に入ったという人は、私が今記憶しておりますのでは、前科八犯か何かのすりの常習の者を除きましては、全部釈放されたのではないかと存じます。それから二十八年度も、よほど凶悪であって治安の角度から見ていかにも釈放いたしかねるという者を除いては、大体釈放して参りまして、残っておる者がありましても、非常に少い数字だと思っております。われわれといたしましてこの問題は、非常にジレンマに陥っておりまして、通常の国際常識に従いますれば、在留国が、非常な犯罪のある不良な外国人であるから退去を命ずるという場合には、これを通常の場合引き取るわけでございますが、韓国の場合には、その説の当否は別といたしまして、戦前からいる韓国人については、これは日本側が無理に連れてきた人々なんであって、これを今さら退去させるというようなことはけしからぬ。こういった態度に出てきております結果、なかなかこれを受け取らないわけでございます。そういたしますと、結果としまして、治安の角度から見れば、こういう外国人はどうしても退去させたいと思う者が、なかなか退去の実効をあげ得ない結果、やむを得ず相当な長期勾留者を出しているというような現状になっております。この問題は日韓会談か何かで基本的に解決されない限り、当分われわれとしてもはなはだ頭の痛い、不愉快な問題として残るのではないかと考えている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/33
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034・古屋貞雄
○古屋委員 そうしますとこの問題は相手国がこれを引き取らない、しかし長くあすこにおられると非常に重大な関係を生んでくるので、今の御説明のように、政治的に両国間において何とか処置をしないと、入国管理局の手に負えないのだ、こういう結論になると私ども考えますが、そういうように承わってよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/34
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035・内田藤雄
○内田政府委員 実は私どももこれを打開しようと思って、現在もその努力中なんでございますが、従来もいろいろな方法で努力して参ったのでございます。つまり大きな意味の会談の成立を待たないでも、あるいはわれわれの手で何らか細い道でもあけるということは、可能かもしれないという希望は失っておりません。しかし何と申しましても、やはり両国の大きな政治的な——感情の融和とかいろいろなものが背景にございませんと、なかなかわれわれの手だけでは解決が困難ではないかというふうに感じている次第でございまして、絶対にあきらめているわけでもございませんが、これの根本的な解決は、やはり外交的な手段によらなければならないのじゃなかろうかと思っている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/35
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036・古屋貞雄
○古屋委員 前科八犯もあるし、釈放すればまた悪いことをするので、治安上わが国としても重大な関係を持つし、本国でもそれを受け付けぬということになりますと、これはいろいろジレンマに陥るわけでありますが、かような問題については、やはり局長の方から外務大臣に詳しく御報告を願って、そしてただいま申し上げたような、両国間の大きな政治交渉をも強く打ち出していただくような御処置をとっていただきたいと思います。最後に私は、出入国管理令そのものがポツダム政令として制定され、平和条約発効によって法律となったのでございますから、内容については国会の審議を経ていない法律だと思うのです。従いまして、今回一部の改正が行われるということになりますならば、この際われわれは全面的に、立法府としての使命の立場からも、国会が十分に審議をいたして、国会そのものの法律ということにしてこれを施行しなければならぬように思いますので、根本的な改正につきまして、当局の方では御調査になられておるのか、それとも根本的改正をしようという御意図があるのか、こういう点について参考に承わりたいと存ずるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/36
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037・内田藤雄
○内田政府委員 この問題は、私が昨年の夏局長に就任いたしましたとき以来の、いわば引き継がれました一つの重要な問題でございます。それで私といたしましても、せっかくこの問題を考えなければならないと思っておりますのですが、さしあたってわれわれが問題点として考えておりますことは、在留資格の整理の問題、それから在留資格の変更をもう少し緩和いたしたい、それから違反審査段階におけるいろいろなことをもう少し合理化いたしたい、こういうような大体の基本の線をきめまして、目下外国の例とか、いろいろな資料を取り寄せつつせっかく研究中であるというのが現在の段階でございます。それで確かに、私どもも改正をいたさなければならないということは感じておりますが、同時に入管令の改正ということになりますと、御承知のような現在の状況におきましては、外国人に対して相当な刺激を与えるということもございますので、それに今、外交的に一番大きな問題は日韓会談かと思いますが、こういう外交的な形においての解決と並行いたしつつ考えるのが妥当ではないだろうかというふうに考えておるわけなんでございまして、われわれの方で、それではいつ改正案を出すかということになりますと、本国会はとうていむずかしいと思いますのみならず、そう近き将来に出す予定だということもまだ申し上げる段階ではないと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/37
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038・古屋貞雄
○古屋委員 せっかく御研究をなされていらっしゃるということですが、ただいま局長からいろいろとその要点についての御説明を受けたのですが、私どもといたしましても、少くとも立法府としての責任上、やはりわれわれがわれわれの審議の過程においてこしらえた法律であるということの建前だけは堅持したい、実はかように考えておりますので御質問申し上げたのです。どうぞ御研究をなされましたさような趣旨において、努めて早い時期においての改正を全面的にしたいということに対する具体的な方法をお進め願いたい、かように私は御希望申し上げまして、総論的な私の質問は、本日はこれをもって打ち切りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/38
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039・世耕弘一
○世耕委員長 三田村武夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/39
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040・三田村武夫
○三田村委員 ただいまの古屋委員の質問に関連いたしまして、以下二、三点資料に基いてお尋ねいたしたいと思います。
今、日本の内地におります朝鮮人問題、国籍の点から申しますと、韓国人と北鮮系朝鮮人と両方ありますが、これはなかなかやかましい問題になっておるのです。資料を拝見いたしますと、二十七ページですが、いわゆる北鮮系の人で現在日本におる人が四十二万七千八百六十二名ですか、それから韓国籍の人が十三万九千百九十一名、こういう数字になっておりますが、両方合せて大体五十五万。しかしわれわれがよく聞く説明によりますと在留鮮人七十万ないし八十万、百万を越えると言う人もあるのです。この統計から判断いたしますと、出入国管理令の立場から御当局の調査対象——調査対象という言葉は、私の申し上げるのは、ただ取締りという立場だけでなく保護の立場も加えてですが、それ以外に相当多数のいわゆる無籍者というのですか、未登録の者があるわけです。これの大体の見当と申しますか、当局の方で推定判断をされておりますものは、どのような状態になっておりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/40
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041・内田藤雄
○内田政府委員 実は先ほど古屋委員の御質問でもその点触れたのでございますが、御説のように、登録をはっきり受けておりますのは五十六万余りでございます。それで、そのほかに登録されない者が相当あるということは、公安調査庁にいたしましても警察にいたしましても、いろいろこれに関心を持っておる者の一致しておる見解でありますが、その数字につきましては、実は従来非常に膨大な推定数がいわれておったのでございますが、しかしこの登録が数回行われて、だんだんこれが周知徹底していった結果、実は非常におもしろいことには、この数字がだんだんしぼられてきておるのでございます。それは、従来これが非常にルーズに行われました結果、しかも登録証というものがいろいろに利用できるものでありますから、一人の人間が数個の登録を行なったのではないかと思われるような場合も相当ございまして、結局かなり数字がしぼられて参るにつけまして、現在のところこれは非常に困難な問題なんでございますが、未登録の者の数は従来考えておったほど多いことはないのではないか、大体俗には一割くらいの者が未登録でおるのではないか。従いまして全体の数字といたしまして六十万少し越したくらいではないかというのが今日の一般的な推定でございます。しかしこれの根拠と言われましても、その根拠を出すのは非常にむずかしいのでございますが、韓国人の密入国者で逃亡しているとはっきり確認されている者が二十七年以降一万三千五百何がしであります。それから新しく生まれた子供で登録してこない、あるいは申告してこない者も相当あるでありましょうし、それから潜在の密入国というものもありましょうし、また知能程度などが非常に低くて、あるいはいなかの山奥などに住んでおるために登録しないという者も相当ありましょうし、かれこれみな合せまして、われわれのごくラフな推定では、そういう者が五、六万あるのではないか、こういうふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/41
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042・三田村武夫
○三田村委員 私も大体そうだと思いますが、終戦直後の混乱期ならともかく、今一応社会関係も正常に戻りつつあるのでありますから、そう何十万も未登録の人があるということは私は不思議でたまらない。北鮮系にしろ南鮮系にしろ、そういう膨大な二十万、三十万の鮮人が未登録のままでおるということはあり得ないと思いますが、しかし、かりに今局長御説明の六十万の中の一割といたしましても相当の数なんです。この六、七万の未登録というものが、本人の怠慢あるいは無知、法規関係を知らないとか、保護の権利行使をしていないとか、そういう面からの未登録ならそう大して問題はないですが、今局長のおっしゃるようにその中に逃亡者が一万三千五百おる。同じようなケースでどうしても登録を好まない、つまり日本の国内に居住しているということが表面化することを好まないというものが数万ないし十数万あるということになりますと、これはなかなか容易な問題ではないのです。この点私心配するのです。近ごろあまりそういう事案もありませんが、終戦直後からまだ二、三年前まで相当はげしい集団的直接行動の行われた際も、未確認の居住者がこれに相当多数加わっておったことは御承知の通りであります。そういう面から当委員会におきましても、つまり法務行政なりあるいは一般の治安行政の面を調査検討を加える観点に立っても、こういう法案審議の際、ある程度真実、実態の究明をしておきたいということが将来の立法への参考にもなり、また資料にもなると考えるのであります。私は警察権とか権力によってそういう実態を究明する、いわゆる調査活動をやるということは賛成しませんが、これは一面保護という面もありますので、この点十分方途についてお考え願いたいと思うのであります。
それからそれに関連してのお尋ねでありますが、いわゆる密入国で入ってきたものは、ほとんど未登録で終ってしまうのだろうと思うのです。未登録の中で今お話のように新しく生まれた子供とかそういうものは問題ではないのですが、密入国で入ってくるもの、これには善意と悪意とありましょう。先刻来局長からその在留を許可するかしないかという問題に関連しての御意見がありましたが、正常な生活を日本の国内で営む、その親とか、あるいは関係を正常に復して営みたいという意図から密入国してくる人もありましょうが、そのほかの目的を持って日本に密入国してくる人もあり得ると思うのですが、その場合には非常に問題だと思う。従来、これは戦前からですが、特別の意図を持ったものでなくて、正常なわれわれの日常生活と平和を守っていくという立場の治安対策の面からみて、常に法の裏をくぐって、その法の裏面に存在するというその存在者は、まことに好ましくない。そういう面からの入国取締りであり、出国対策がこの法の建前であり、また御当局の御苦心される点だと思う。ただ、ちょっとそこで私お伺いいたしておきますが、私がここでお尋ねするまでもなく、今でも相当数の密入国がある。これは大体どういうルートをとって入ってきたかお調べになったものがありますか。全部をここで承わろうとは思いませんが、大体の系統を御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/42
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043・内田藤雄
○内田政府委員 ただいまのお説はわれわれとして一々同感でありまして、密入国というものをやはり単なる人情の問題ばかりでなく、そういう治安とかいろいろな角度からまじめに取り上げなければならない、実際そう感じておる次第でございます。
最後の問題でございますが、ごく最近の密入国のルートというのも、やはりあるルートに対しまして取締りが厳重になりますと、また変って参ります。従来対馬が非常に密入国の仲介地点として使われて参ったようでございまして、現在といえども、先ほどちょっと申し上げましたブローカーあたりがいろいろ活躍いたします拠点としましては、相当な役割を果しておるのではないかと想像いたしますが、密入国者の直接の上陸地点というような点から申しますと、対馬への密入国というものは非常に減って参っております。それでこれは最近の例でございますが、福岡の管内というのは大体密入国者の現行犯のまず八割方が上るところでございますが、その調査によりますともちろん福岡、北九州の直接朝鮮に面したところでは何といっても一番数が多いわけでありますが、もう一つ最近の現象はずっと南の方に下りまして、熊本県あるいは佐賀県、あちらの方に上陸して参っております例が相当にございます。それから向うの出港いたします出発地はこれはつかまった者の供述でございますが、大部分が釜山でございます。釜山付近あるいは統営、それから一つ巨済島というのがございますが、大部分が釜山でございます。それからもう一つ下関管内の報告もございますが、これも要するに北九州と同じで、あれのつながった向うの下関付近の海岸に上っておる例が多いのでございます。もう一つ密入国の問題で見のがしてなりません問題は、韓国貿易船と称します小型の船でございます。これがまことに厄介なものでございまして、一応合法的な貿易船と申す形でこちらに参るのでありますが、これが行きがけの駄賃というようなことで相当密入国者を乗せてきておるのじゃないか。そういうことを発見された例もございますし、想像は十分できるのでございますが、これは本来の密入国船として仕立ててきた船ではございませんし、しかも小船でございますので、至るところにちょっと寄っては密入国者をちょっと上げてはまた大きな顔をして港に行く、こういうことをやり得る船なのでございます。われわれとしましては韓国貿易船を取り締るということには相当手をやいておるのでございまして、実は運輸省あたりとも協力いたしまして、小船の出入りする港を何か法律的にでも限定するような方法はないかということをいろいろ研究いたしたのでございますが、今の法令の建前ではそれもなかなか困難だということでございまして、実はこの漁船で関門海峡を通りまして瀬戸内海に入ってきております船は相当にございます。今回のわれわれの方の改正でわれわれが出張所を設けたいと思っております尾道とか宇野とかいうものは、まさにその韓国貿易船を実は主たるねらいにして出張所を置きたいと思っておるのでございます。まことにどうも遺憾でございますが、この漁船が——もっともこれはそれを目的とした船でございませんから大した大量ではないと思いますが、ちょこちょこいろいろな者を乗せてくる公算は大きい。と思っておりますが、遺憾ながらこれに対して取締りも非常に困難でありますし、またどういうものがこれによって入ったかということを正確に捕捉することも非常に困難を感じておるというような現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/43
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044・三田村武夫
○三田村委員 私は密入国というものはどうしても厳重に取り締ってほしいと思うのです。取り締って一応政府当局の手に渡ってからその情状によってどういう扱いをするかは別にいたしまして、とにかく密入国というものは厳重に取り締っていただきたい。今ルートというものをお尋ねいたしたのは、これは密入国の本質上、正規のルートというのはないのですね。今お話のように漁船とか貿易船に便乗してもぐって来るもの、それから完全に密入国船を仕立ててくる集団密入国、この二つがあるわけですが、いずれにしましても、局長のお話のように、きまった港にちゃんと入ってくればそのときの対策が立ち得るのですが、夜陰に乗じて、とんでもない、見当もつかないようなところにすっと入って来る。ことに集団密入国、特別に船を仕立ててくるものはそういう傾向が多いのです。そこで私は心配することが一つある。密入国者は、現行犯で押えない限りは、どこにも連絡がありませんので、わからなくなってしまうということです。現行犯で押えた場合にはわかりますが、現行犯で押えないで、どこかに上ってしまったといったら、もうあとはさっぱりわからない。これが私は今の実情じゃないかと思うのです。それが非常にこわい。私たちは、今冒頭に申しましたように、常に法秩序というものを厳粛に守り、われわれの日常の生活を平和的に維持していくということが政治のねらいであり、また法務当局の非常なお仕事だろうと思うのです。そういう立場から見ましても、密入国そのものが全部私は悪の対象になると申し上げるのではありませんが、これは密入国の性質上、その方面の危険性が多いということは、だれにも判断できます。そういう場合、局長も御承知のように、現行犯で押えればいいのですが、そうでなければほとんど手当ができておらぬ。私はときどき警察当局に聞いてみるのですが、連絡がないというのですか、とてもそういった監視、警戒の手が及ばないという。これが一年のうちでたとい二船でも三船でも、そういった何らかの特別の目的を持ったものが入ってくるということは、治安対策上非常に重要な問題だと思いますので、その点私心配してお伺いしたのです。正規の船に便乗してくるものは比較的楽なんです。けれども、そうでない、ほんとうの初めから密入国の目的を持って特別に密入国船なるものに乗ってくる、どこか港らしからぬ港に入る、こういうこともありますので、その点についての対策、御方針を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/44
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045・内田藤雄
○内田政府委員 この密入国というものをもっと阻止し、あるいは入ったものを捕捉するということにつきまして、一そうの努力をしなければならないという点については、全く同感でございます。それでわれわれ中央におきましても、海上保安庁あるいは警察などとよく話し合いをいたしておりますが、まず船を海上において捕捉するという観点に立ちます場合には、主として海上保安庁の問題でございまして、施設の科学化ということもあるかも存じませんが、まず量をもう少しふやしていくということが第一の問題だと考えますが、この点につきまして現在十分と言えませんまでも、あの朝鮮海峡を固めますだけの船でありますが、船の建造費だけでも二十六億六千万円という金が要るそうでございます。これに人員を十分に配置するということになりますと、費用の点でなかなか大へんな問題じゃないか。それからもう一つは、入りましてもぐってしまったあとの問題でございますが、これは間接にはわれわれもいろいろな手を打っております。たとえて申しますならば、登録証がないと配給がもらえないとか、あるいは学校にはいれない、それから失業手当と申しますか、生活扶助費とか、ああいうふうなものももらえないような仕組みにはなっております。そういうことで、最近やはり生活の困難のために自首して参ります者が漸次ふえてきております。それから先ほど申し上げました登録の切りかえというような際に、一斉に全国的に警察官が登録証を携帯しているかどうかの取締りをいたしまして、それによって昨年の秋からこの正月ごろにかけて、もぐっておったものがかなりあがって参りました例もございます。これはやはり警察が主としてただいまの登録証を持っているかどうかということで随時熱心に検査をしていただくという以外にはないかと思っております。それにつけまして、登録証の偽造とかあるいは譲渡というのが非常に簡単に行われて、先ほどおっしゃいましたように、密入国者をつかまえるということは困難でございますし、実は指紋というような制度をやりましたのも、主たるねらいはまさにそこにあるわけでございます。今後とも努力いたしたいと思いますが、われわれとして一応可能な手段はいろいろ考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/45
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046・三田村武夫
○三田村委員 きょうは午後の予定もありますから、私はきょうの質問はこの程度にいたしまして、また機会があったらもう少しお伺いしたいこともありますので、委員長もそれを御了承願いたいと思います。きょうはこの程度にしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/46
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047・世耕弘一
○世耕委員長 委員長からなお一、二点お伺いしますが、密入国者によって、たとえば検疫不能のために悪疫の伝播とか、あるいは麻薬等の密輸によって何か事件を起したという事例はないかどうか、その点をちょっとお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/47
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048・内田藤雄
○内田政府委員 密入国をいたしまして、犯罪者で別な意味での刑事犯罪であがったという例は、ないことはございませんが、非常に少うございます。ことに御質問のように、いわゆるスパイ的な意味で電波のことをどうしたとか、こういう事件は私ども現在まで一件も聞いておりません。麻薬の方の関係では、中国人にして密入国者であり、かつ麻薬の方の相当な犯罪者であったという例は一、二ございます。しかしこれも比較的数は少いのでございます。おそらくはむしろ麻薬などは、りっぱな紳士づらをして香港などと行き来しておりますもののうちにそういうものがあるのではないかということを想像いたしておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/48
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049・世耕弘一
○世耕委員長 なお一点、病菌を持って入った結果、悪疫の流行の原因になったというようなことはありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/49
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050・内田藤雄
○内田政府委員 これは私参ります前でございますが、二年か三年前に天然痘患者が密入国して参りましたために、名古屋でございましたか、えらい騒ぎを起したという事件を一件聞いております。それからもう一つ密入国者の中に往々らい病患者がおります。これはうわさによりますと朝鮮ではとうてい治療ができないので、日本でなおしたいということで、らい病患者が密入国して参るのだそうでございます。そういう例は二、三ございますが、われわれの方といたしましては厚生省と連絡いたしまして——実はらい病の者が密入国で参りますと非常に処置に困るのでありまして、大体法律上は帰せることになっておりますが、実際上は厚生省のその方の関係の療養所に入れておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/50
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051・世耕弘一
○世耕委員長 他に御質疑がなければ本日はこの程度で散会いたします。次会は明日午前十時半より開会いたします。
これにて散会いたします。
午後零時二十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02119550616/51
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