1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年六月二十三日(木曜日)
午前十時四十三分開議
出席委員
委員長 世耕 弘一君
理事 古島 義英君 理事 三田村武夫君
理事 馬場 元治君 理事 田中幾三郎君
椎名 隆君 高橋 禎一君
長井 源君 林 博君
牧野 良三君 生田 宏一君
船田 中君 横川 重次君
猪俣 浩三君 神近 市子君
細迫 兼光君 細田 綱吉君
吉田 賢一君
出席国務大臣
法 務 大 臣 花村 四郎君
出席政府委員 法務事務官
(入国管理局
長) 内田 藤雄君
委員外の出席者
判 事
(最高裁判所事
務総局総務局総
務課長) 磯崎 良譽君
専 門 員 村 教三君
専 門 員 小木 貞一君
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六月二十二日
下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の
一部を改正する法律案(内閣提出第九五号)
(参議院送付)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
出入国管理令の一部を改正する法律案(内閣提
出第一〇六号)
下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の
一部を改正する法律案(内閣提出第九五号)
(参議院送付)
売春等処罰法案(神近市子君外十八名提出、衆
法第一四号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02619550623/0
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001・世耕弘一
○世耕委員長 これにより法務委員会を開会いたします。
出入国管理令の一部を改正する法律案を議題といたします。別に質疑もないようでありますので質疑はこの程度で終局するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02619550623/1
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002・世耕弘一
○世耕委員長 異議なしと認め、直ちに討論採決を行いますが、討論は省略し直ちに採決を行いたいと思いますが、これに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02619550623/2
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003・世耕弘一
○世耕委員長 なければ出入国管理令の一部を改正する法律案に賛成の諸君の御起立を求めます。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02619550623/3
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004・世耕弘一
○世耕委員長 起立総員。よって本案は原案通り可決すべきものと決定しました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02619550623/4
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005・世耕弘一
○世耕委員長 次に下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。本案の質疑は終局いたしておりますので、本日は討論採決を行います。討論は通告がありませんからこれを省略して直ちに採決を行いたいと思いますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02619550623/5
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006・世耕弘一
○世耕委員長 御異議なければ下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の諸君の御起立を求めます。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02619550623/6
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007・世耕弘一
○世耕委員長 起立総員。よって本案は原案通り可決すべきものと決定いたしました。
なお本日議決いたしました二法案についての委員会報告書の作成につきましては、私に御一任を願うに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02619550623/7
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008・世耕弘一
○世耕委員長 御異議なければ私に御一任を願ったものといたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02619550623/8
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009・世耕弘一
○世耕委員長 それでは次に売春等処罰法案を議題といたします。まず提案理由の説明を求めます。神近市子君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02619550623/9
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010・神近市子
○神近委員 ただいま議題となりました売春等処罰法案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。
戦後の混乱期におきまして、社会不安、道義の頽廃等の影響を受け、売春をする婦女の数が著しく増加いたしましたことは、すでに御承知の通りと存じますが、その後わが国が独立を獲得し、社会の秩序も追い追いに回復して参りました今日においても、なお売春をする婦女の数がおびただしいものがありますことは、まことは遺憾のきわみと存じます。
申すまでもなく、売春は健全な性道徳を破壊し、善良な風俗を乱し、またおそるべき性病を蔓延させる原因となるものでありますが、一方それは、婦女の純潔を害し、その基本的人権を無視する行為でもありまして、現代の文明国家におきましては、ぜひともその絶滅を期さなければならぬものと考えるのであります。
ところで、わが国における売春の形態を概観いたしますと、古くからいわゆる公娼と私娼とが存在しておりましたことは御承知の通りでありますが、占領時代に、一九四六年一月二十一日付、連合国最高司令官の日本における公娼廃止に関する覚書によりまして、表面上は一応公娼その他契約に束縛された私娼の制度は廃止を見たのでありますが、事実におきましては依然として娼家及びこれに隷属する私娼と認められるものが、形を変え、公然と存在しているといわざるを得ない実情にあるのであります。かかる実情というものは、とりもなおさず一面においては身体及び意思の自由を拘束されて、日夜売春を行うことを余儀なくされている女性があり、他面においてはかかる白色奴隷ともいうべき女性を搾取して、その肉体的、精神的苦業による利得をむさばる業者があることを示すものでありまして、かかる事態は日本国憲法が基本的人権を確立し、個人の自由と尊敬とを宣言し、その奴隷的拘束を排除している趣旨に全く背反するものといわなければなりません。わが国が独立を獲得し、民主主義国家として鋭意再建に努力を拡っておりますときに、かかる封建的な暗黒面の存在を許すことは、根本的に矛盾する事態であるばかりでなく、将来国際連合に加盟した暁におきまして、世界人権宣言の目的を実現し、他の民主主義諸国家と肩を並べて、国際社会に名誉ある地位を占めようとするためにも、重大なる障害となるものと申さなければならないのであります。
以上のような事態に対処いたしまして、売春や売春をさせる行為等の絶滅を期するためには、もとより国民一般の民主主義的自覚、道徳的観念の高揚、衛生思想の普及向上にあわせて、民生の安定のための諸施策に待たなければならないことは言うまでもないのでありますが、これと同時に、売春及び売春をさせる行為等を処罰する立法措置を講ずべき必要のあることが痛感されるのであります。
現在におきましては、昭和二十二年勅令第九号婦女に売淫をさせた者等の処罰に関する勅令が、昭和二十七年法律第百三十七号がポツダム宣言の受諾に伴い発する法務府関係諸命令の措置に関する法律によりまして、独立後も法律としての効力が与えられているのでありますが、この勅令は全文わずかに三カ条にすぎず、その効果はあまり期待できないのであります。さきに昭和二十八年三月三日、第十五回国会において売春等処罰法案が参議院において議員から提出されましたが、これは同年三月十四日、衆議院の解散のため廃案となりました。その後、昭和二十九年五月十三日、第十九回国会において再び売春等処罰法案が衆議院において議員から提出されましたが、この法案は第二十回国会に継続審査の措置をとられたものの、同年十二月九日をもって廃案となりましたので、同年十二月十日、第二十一回国会において三たび同法案が衆議院において議員から提出されたのであります。しかしこの法案も昭和三十年一月二十四日、衆議院の解散のため廃案となりました。
以上が最近における売春等の処罰に関する法律案の立案並びに審議の経過でありますが、翻って諸外国の立法例を見ますれば、今日の民主主義諸国家におきましては、売春及び売春をさせる行為等を処罰するために法制を具備しているものが多いのでありまして、さきにも申し述べましたように、将来わが国が国際連合に加盟いたすためにも、この際、国際連合が採択いたしましたところの人身売買及び売春により利益を得る行為の禁止に関する条約の趣旨を尊重した法律を制定いたしますことは、きわめて必要なことと考え、また、今日世論において売春及び売春をさせる行為等の処罰に関する法律の制定を要望する声が高まっておりますので、この世論にこたえるために、この法律案を立案提出いたした次第であります。
次に、この法律案の内容の概略につき、御説明申し上げます。
第一に、この法律案におきましては、売春の定義を掲げて、婦女が対償を受け、または受ける約束で不特定の相手方と性交することをいうものとし、その売春をした者及びその相手方となった者をともに処罰することにいたしました。
第二に、売春の周旋、勧誘及び売春を行う場所を供与した者も処罰することにいたしました。
第三に、婦女を欺き、もしくは困惑させて、または親族、業務、雇用その他の特殊関係を利用して売春をさせた者も厳重に処罰することにいたしました。さらにその者が婦女からその売春の対償を収受し、要求し、約束した場合には、刑を加重して、一年以上十年以下の懲役または五十万円以下の罰金に処することにいたしました。
第四、婦女に売春をさせることを内容とする契約の申し込みまたは承諾をした者を処罰することにいたしました。これは、当然公序良俗に違反する行為でありますから、かかる契約が無効であることは論を要しないのでありますが、これに刑罰規定を設けることによって、人身売買を防ぎ、婦女を奴隷的に拘束するがごとき関係の成立を防止しようとするものであります。
第五に、売春施設を経営し、または管理した者、及び売春施設の経営に要する資金、建物その他の財産上の利益を供与した者を処罰することにいたしました。
なお、以上の罰則には情状により懲役及び罰金を併科し得ることとし、さらに第六条から第八条までの行為については、取締りの徹底を期するため、いわゆる両罰規定を設けることにいたしました。
以上、立法の趣旨及び本法案の要点につき御説明申し上げました。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことを希望する次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02619550623/10
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011・世耕弘一
○世耕委員長 猪俣浩三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02619550623/11
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012・猪俣浩三
○猪俣委員 私も提案者の一人に相なっておりまして、委員諸君にお願いがあるのであります。これは政府の原案にあらずして議員提案と相なっておりまして、そこでその審議の様子も多少変ると思うのでありますが、申すまでもなく重大な法案でありまするので、十二分なる論議を尽していただきたい。反対せんがための反対者などほとんどあるはずがありませんが、建設的な議論を十二分に戦わして、この法案をりっぱなものに仕上げていただきたい。議員提案でありまするがゆえになおさら法務委員会の責任も重大だと思うのであります。ついては、政府につきましてもこの法律の施行についていろいろの意見も聞かねばならぬと思いますし、また法律の内容につきましても学識経験者を招いて公聴会を開いてもらわなければならぬと思いますから、さようなことについても御配慮いただきたいとともに、なおまたいろいろの問題をたくさん含んでおると思うのであります。たとえば売春した者を所罰せんとしても、訴訟技術上立証の困難性というものをいかに克服するかという問題もあると思います。あるいはまた同じく売春の婦女といえども年令によって差別をつける必要があるのかないのかというような問題もあると思います。また相手が外国の軍人であった場合にどういうふうにするのであるか、ことにいわゆるオンリーと称せられておる者の存在はどういうことになるか、あるいはなお越えて人のめかけ稼業をやっておる者がどういうふうになるべきかというような幾多な問題もあるかと思います。かような問題につきまして法律上からも相当な議論が出るかと存じまするので、どうぞいろいろな問題を御考慮いただきまして、活発な質疑を展開さしていただきたいと存ずるのであります。そうして結局において完全な法律をここで議員の手で作り上げるようにしたい、こういう希望を持っておるものであります。どうぞその意味において御協力いただき、最後には御賛成をいただきまして、この法律が生み出されまして、日本の文化史上画期的な存在たらしめていただきたいということを議員の一員として切望いたします。更生関係方面のことは婦人議員団諸君その他の方方に権威者がおりますから御答弁するでありましょうし、法律問題につきましては私たち自分の意見を開陳したいとも考えておりますので、どうぞその意味においてともども研鑚をしていただきたいと思います。一応ごあいさついたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02619550623/12
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013・世耕弘一
○世耕委員長 ただいま猪俣委員からの御発議がございましたが、しごくもっともだと存じます。人間生活のうちで一番重大な問題といえば食欲と性欲の問題だということは、科学者の証明しているところであります。しかもその根本に触れる問題が本法案の問題と合致するものだとかように考えられます。博識な委員諸君におかれて、人生の根本に触れた名編卓説を御発表下さって、一はこの問題に対する世論の喚起にも資し、また民族発展の根本にも触れて、あらゆる角度から御論議が尽され、そして審議の目的を達成したいと、かように考えております。どうぞそのおつもりで御研究等の御発表を願いたいと思います。
さて提案理由の説明は一応これで終りました。なおつけ加えて、本案について委員諸君にお願いいたしたいのは、質疑がございましたらあらかじめ前もって御通告を願えば、提案者の方で説明の便宜が得られるのじゃないかと思います。なお本案に関する資料がありましたら、政府はもちろん委員各位におかれましても積極的に御提出を願うことを、委員長よりお願いいたします。
それでは質疑は次会に譲りまして、本日はこの程度で散会いたします。次会は公報をもってお知らせいたします。
午前十一時九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205206X02619550623/13
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