1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年六月二日(木曜日)
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議事日程 第二十一号
昭和三十年六月二日
午後一時開議
一 日本住宅公団法案(内閣提出)の趣旨説明
二 自作農維持創設資金融通法案(内閣提出)の趣旨説明
三 国防会議の構成等に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明
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●本日の会議に付した案件
日本住宅公団法案(内閣提出)の趣旨説明及びこれに対する質疑
国防会議の構成等に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明及びこれに対する質疑
午後二時十七分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/0
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001・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) これより会議を開きます。
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一 日本住宅公団法案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/1
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002・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 日本住宅公団法案の趣旨の説明を求めます。建設大臣竹山祐太郎君。
〔国務大臣竹山祐太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/2
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003・竹山祐太郎
○国務大臣(竹山祐太郎君) ただいま議題となりました日本住宅公団法案につきまして、提案の理由とその要旨を説明いたします。
政府は、昭和三十年度において四十二万戸の住宅建設を目途としておりますことは御承知の通りでありますが、これが実現をはかるため、政府の重点的施策といたしまして、公的資金による住宅建設の拡充、民間自力建設の促進及び宅地対策の推進をはかる所存であります。
現在行われております公的資金による住宅建設の中心をなすものは公営住宅及び公庫住宅の両者でありますが、地方行政区域を単位とする現行の公営住宅方式及び公庫住宅による住宅供給の方式のみをもってしては、住宅不足の著しい地域においては、この方法のみでは不十分でありますので、今回、地方行政区域にとらわれず、広域圏にわたる新たな住宅供給方式を考える必要が認められるのであります。
また、一方、宅地対策について見ますと、現在住宅建設が当面する最大の険路は宅地取得難で、これが有効な対策を講じない限り、今後の住宅建設は行き詰まらざるを得ない実情にあります。従って、宅地対策の一といたしまして、大都市地域において大規模に健全な新市街地を造成することが必要であり、このためには、都市周辺の適地において、衛星都市的配慮のもとに土地区画整理事業を施行することもできるような機関の設立が必要であります。
さらにまた、今後勤労者住宅建設の拡充をはかるためには、国及び地方の財政の現状から考えて、住宅建設資金の相当部分を民間資金の導入に仰ぐ必要があります。これらの住宅の建設に充てる民間資金を円滑に導入するための機関の設立を必要と感じたわけであります。
この法案は、以上のごとき観点に基きまして、現下における住宅の不足をすみやかに解消するため、住宅不足の著しい地域において、住宅に困窮する勤労者のために不燃性の集団住宅及び宅地を供給し、あるいは必要に応じ土地区画整理事業を施行する機関として、日本住宅公団を設立しようとするものであります。
以上が本法案を提案いたしました理由でありますが、次に、この概略を簡単に御説明申し上げます。
まず第一に、日本住宅公団は法人といたしまして、その資本金は政府及び地方公共団体からの出資金の合計額とし、政府は一般会計からは公団設立の際六十億円を出資することになっております。また、出資に当っては、土地、建物等をもって現物出資することもできるようにいたしております。
第二に、公団の管理機構といたしまして管理委員会を設置することといたしました。管理委員会は、任期二年の委員五入及び公団の総裁をもって組織するもので、予算、事業計画、資金計画、決算等の重要事項についての議決機関となるものであります。
第三に、公団の役員として総裁、副総裁、理事及び監事を置くこととし、その任期はおのおの四年といたしております。
第四に、公団の行う業務でありますが、日本住宅公団設立の目的に従いまして、住宅及び施設の建設、賃貸その他の管理及び譲渡、宅地の造成、賃貸その他の管理及び譲渡、土地区画整理事業の施行等を行わしめることといたしております。
第五に、土地区画整理事業についてでありますが、土地区画整理事業を施行すべきことが都市計画として決定された区域内の土地について、建設大臣が公団の行う住宅の建設または宅地の造成とあわせて、これと関連する新たな市街地を造成するための土地区画整理事業を施行する必要があると認めるときは、土地区画整理法の特例として、公団が当該土地区画整理事業を施行することができることといたしました。
第六に、公団の財務及び会計でありますが、公団の予算、資金計画、事業計画、財務諸表、借入金等については建設大臣の認可または承認を受くることを要することといたしましたのは、これは、公団の業務の公益性によるほか、その資本金が政府及び地方公共団体からの出資のみに限られているという理由に基くものであります。
第七は監督の問題でありますから省略をいたします。
この法案に基きまして、昭和三十年度におきましては、公団をして住宅二万戸の建設、約百万坪の宅地造成を行わしめ、これに要する事業費として百六十六億円を予定いたしております。
以上が本法案の提案の理由及びその要旨であります。(拍手)
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日本住宅公団法案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/3
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004・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) これよりただいまの趣旨の説明に対する質疑に入ります。二階堂進君。
〔二階堂進君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/4
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005・二階堂進
○二階堂進君 私は、自由党を代表いたしまして、ただいま議題となりました日本住宅公団法案と、これに関連いたします鳩山内閣の住宅政策に関して、鳩山総理、一萬田及び竹山両大臣に若干の質疑をいたさんとするものであります。
鳩山内閣は、選挙に臨み、その重要政策の一つとして住宅四十二万戸の建設を国民に約束いたしたのであります。従って、国民はこれが実現に大きな期待をかけて、多くの票が民主党に投ぜられたことを私は信じて疑いません。国民は政府の資金によって四十二万戸の住宅が建つものと考えたのであります。しかるに、その具体的内容が公表されまするや、各方面より辛らつなる非難の声がとうとうとして起って参っておるのであります。この非難のよって起る原因こそは、鳩山内閣の住宅公約がいかに欺瞞に満ちたものであり、国民に対して不誠意きわまる一片の口約束であったかを雄弁に物語るものであります。(拍手)私は、ここに、これらの欺瞞性を具体的に国民の前に明らかにいたしまして、政府の責任を追及せんとするものであります。
もとより、住宅難を一日も早く解消し、住宅困窮者に住宅を与えることはきわめて大切なる政策でありますので、自由党政府当時におきましても、積極的にこれが実施に当り、公庫、公営及び民間自力建設等を通じて毎年約三十万戸の建設を見たのであります。引き続き鳩山内閣も住宅政策に熱意を示されたことは、私どもの了とするところでありますが、政府の政策は自由党が一貫して推進して参りました住宅政策よりもはるかに後退したものであり、かつ内容的には選挙対策の具に供せられたインチキきわまるものであることは、国民とともに遺憾千万と言わざるを得ません。
鳩山総理は、去る三月、外人記者団との会見において、防衛分担金を削減して住宅建設に回すと述べておられます。また、施政演説においても、「政府が住宅政策に大きな重点を置いておりますことは、すでに種々の機会に申し述べたところであります。昭和三十年度における建設目標を四十二万戸といたす」旨を述べて、具体的に四十二万戸の公約をされておられます。まことにその構想たるやよし。しかるに、防衛分担金の交渉は完全に失敗し、ために予算が国民の痛烈なる批判を受けるに至った。また、四十二万戸建設もそのインチキ性がきびしく批判されることになり、総理大臣の政治的発言が今や国民の信頼を失墜しつつあることは、まことに遺憾しごくにたえないのであります。
さらに、この内容を具体的に申し述べますならば、鳩山公約四十二万戸の中には、政府の資金によって建つといわれる戸数はわずか十七万五千戸であります。また、公約の半数以上が民間自力建設に依存しております。さらにまた、十七万五千戸のうち三万戸は単なる増築であり、民間自立のうち一万五千戸は増改築であります。合計四万五千戸の増改築がりっぱなる二日分として計算されておるのであります。便所も台所もない一つの部屋を一戸と国民のだれが考えましょう。世界いずれの国を見ましても、増改築を戸数の中に入れておるところはどこにもありません。結論は、公約四十二万戸のつじつまを合せんがために、増改築も、また半数以上に及ぶ民間自力建設も戸数の中に計算して、選挙の具に住宅政策を供したということであります。総理は、この具体的な内容を十分御存じの上で四十二万戸の公約をなされたのであるかどうか。政府は、この際、謙虚な気持で、新築は三十七万五千戸、増改築四万五千室と正直にして正確なる表現に改めて、国民の前に率直に御訂正さるべきであると考えますが、総理の御所見をお伺いいたしたい。
さらにまた、今回の住宅政策で注目されまするのは、住宅公団の設立であります。この民間資本及び地方公共団体の資本をも利用いたしまして、行政区域を越えた地に高級住宅二万戸の建設を計画されておることであります。二万戸の住宅の対象者は、少くとも月収四、一五万円程度の高額所得者であり、最も住宅を必要とする階層ではありません。過去の経験から推して、わずか二万戸の建設は、金融公庫、公営等の機関の適切なる措置によっても十分可能であると考えられます。また、たとい公団の設立を許されましても、本年度中に二万戸の建設は不可能と信ぜられます。われわれは、公庫、公営住宅建設の強化こそが住宅政策の根幹と考えまするが、総理大臣はあくまでも公団の設立の御方針を変更される意図はないか。公団設立の真意と、二万戸建設に自信ありやいなやを明確にお答え願いたいのであります。(拍手)
大蔵大臣もまた、住宅政策を特に強調されまして、財政演説におきましても、予算の歳出において住宅建設を最も重点的に考え、必ずこれをやります、そして本年度中四十二万戸の建設ができるものと信じますと、まことに自信のほどを示しておられます。私は本年度中四十二万戸といわれる住宅建設は不可能だと信じておりまするが、大蔵大臣は今なおその御自信をお持ちになっているかどうか。また、三月二十八日の予算委員会におきましても、予算において住宅対策費に最も重点を置くと述べておられます。この重点の置き方は、防衛分担金削減の失敗と相待って、必然的に食糧増産対策費、治山治水対策費、災害復旧費等に大なる圧縮を加えたことは、予算書の示す通りであります。食糧増産を軽視し、貴重なる国土を荒して年間二千数巨億にも上る災害を放置して、何の住宅政策かと申し上げたいのであります。(拍手)この意味は、決して私は住宅政策が重要でないということではありませんが、はなはだ国民の納得のしがたいことだと痛感をいたすのであります。かくのごときアンバランス的な予算の編成は、大蔵大臣として今後深く反省熟慮いたさるべきことと考えまするが、大臣の御所見を承わっておきたい。
さらに、住宅公団に新たに生命保険の資金を利用されるに当り、五カ年、年利九分五厘の利息をお考えのようでありますが、何がゆえに、この民間資金利用に限り、かくのごとき高い金利をお考えになったのでありますか。同じ政府機関である電電公社、国鉄公債の利息は、七年、年利七分五厘弱として、特に住宅公団に対する生命保険の金利にこのような措置をとられることは、政府がみずから金利体系を乱すことでもありますし、かつまた国債の消化に非常な支障を来たすことにも相なると考えまするが、大蔵大臣の御所見を承わりたいのであります。
さらにまた、民間自力建設についてでありますが、二十九年度における民間自力建設は約十九万戸と推定されております。ことしは国民経済がデフレ的傾向を予測される上に、民間自力建設能力も限界に達している今日、政府の微温的な建設促進策をもってしては、昨年に比して五万戸も上回るという民間自力建設は不可能と考えるのでありまするが、いかようにこの点をお考えになりますか。
大蔵大臣は、さらに進んで、固定資産税の減免、住宅購入に対する不動産取得税の軽減等の一連の減税措置を積極的に講ずる意思はないか、御所見を承わりたいのであります。
最後に、建設大臣にお尋ねいたします。住宅難に悩む人たちの切実な関心は、どんなところに、どの程度の家が、どのくらいの家賃で建つかということであります。自由党は、これらの住宅困窮者の関心にこたえて、公営住宅の強化、六坪住宅の解消等に努力し、かつ、住宅申込者の八〇%近くが月収三万円以下の階層なるにかんがみて、これらの実情に沿う住宅政策を実施して参りましたが、現政府の住宅政策では、住宅規模をさらに六坪に引き下げ、公庫への融資率を昨年に比し一〇%も引き下げ、また住宅政策の根幹たるべき公営住宅の予算も昨年に比し十一億の削減をいたしておるのであります。これらの点に世間のきびしい批判が集まっておることを見ましても、明らかに政府の住宅政策は後退であると申さなければなりません。(拍手)これらは、要するに、四十二万戸という公約にとらわれ、非常な無理をした結果であり、やがて国民の支持を失墜し、悔いを永久に残すものであると私は考える次第であります。また、住宅公団を設立されても、本年度中二万戸の建設は不可能と私は考えます。また、最も土地の高度利用を必要とする区域に平屋の公営住宅が建ち並び、大都市の郊外に高層住宅ができるという矛盾が必然的に起ることは明らかであります。政府は、この際、四十二万戸の公約にとらわれず、六坪住宅をなくし、公庫への融資率を現状の通り維持され、住宅公団による二万戸を公庫及び公営に移されることが、最も私は賢明なる策と国民のために考えまするが、大臣の御所見を承わりたいのであります。(拍手)
要するに、鳩山公約四十二万戸は、ただ単に選挙のために供した、国民を愚にするものであったと私は考えざるを得ないのであります。国民を選挙のときにだまして、どうして一体国民が信頼する政治ができるとお考えになりますか。
私は、以上申し上げまして、各大臣の責任ある御答弁を要求いたしまして私の質問を終ります。(拍手)
〔国務大臣鳩山一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/5
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006・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 二階堂君の質問に対してお答えをいたします。
防衛分担金の減額されたものを住宅の方に用いたいということを私が申しましたことについてのお話がありました。私の考え方を申し上げます。自衛軍の漸増ということは、条約上日本の義務なのであります。この自衛軍の漸増のために多額の費用が使われれば、住宅の建設はできません。そこで、住宅の建設は——自衛軍の増強ができれば、それに応ずるだけのものが防衛分担金の減額ができるということになっておりまするから、防衛分担金の方から自衛軍の増強の方に間に合いますれば、実際においては防衛分担金で住宅ができるという結果になるのであります。ですから、形式上におきましては二階堂君のような疑問が生じますけれども、実質的においては私の主張が通るのであります。どうか御了承を願いたいと思います。(拍手)
その他の質問については関係大臣から答弁をいたします。(拍手)
〔国務大臣一萬田尚登君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/6
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007・一萬田尚登
○国務大臣(一萬田尚登君) 私は、今日、日本におきまして、住宅の建設ということが、すでに戦後における最も緊要であり、かつ重大な事柄であるという認識のもとにおきまして、住宅政策を唱えておるのであります。従いまして、今回の予算編成に当りましても、住宅のために相当多くの予算をさいておることも、これは御承知の通りであります。しかしながら、これによりまして決して予算がアンバランスになっておるとは考えておりません。
なお、今度の公団に対する民間資金の導入につきまして、金利が高いじゃないか。なるほど、九分五厘であります。決して私はこれは安いと言うのではありませんが、今日、長期の資金を民間から導入するといたしますれば、この程度の金利はやむを得ないと考えておるのでありまして今後一そう努力いたしまして金利の低下をはかりたいと考えております。
なお、この建築に際しまして、民間の住宅の建設を促進する意味におきまして、税法上いろいろの措置をとったらどうかという御質問がありましたが、ただいますでに明らかにいたしておりまする税法上の優遇域外は、ただいまのところは考えておりませんが、なお今後研究をしてみたいと考えております。
御答弁といたします。
〔国務大臣竹山祐太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/7
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008・竹山祐太郎
○国務大臣(竹山祐太郎君) お答えを申し上げます。総理大臣の御答弁に関連することもありますが、今のいろいろな御質問の中には実際の実情と多少食い違った点もありますから、全体を申し上げて答弁にかえたいと思います。
先ほど申し上げましたように、住宅対策は、なぜ公団を作るかといえば、公庫及び公営の二つの方式をもってしては、現に昨年まで前内閣も努力をされましたけれども、なかなか予定通りの家が建たないのが住宅問題の現状であります。(拍手)その一つの理由といたしましては、御承知の通り、公営住宅につきましては半額の地方財政負担が伴うのでありまして、この地方財政の現状からいたしまして、今回のわれわれの五万戸の公営住宅の計画は、これに裏打ちとして約百億の地方財政資金を必要とするわけでありまして、今の地方の財政から見ますならば、これ以上膨大な地方財政負担を住宅に要求することは私たちの立場としては困難と考えます。従って、今回公営にかわる公団の方式をとりました一つの理由は、先ほど申し上げましたように、公団の全経費百六十六億のうち、地方の負担は十六億で、一割にしかすぎません。その一割の地方負担をつけますことも御批判があるほどでありますが、しかし、この住宅は、あくまで従来の方式通り地方と密接な関連を持たせるためには、ある程度の地方負担を出していただくことが適切と考えて、最小限度一割の地方負担で住宅の建設をいたすのが公団のやり方であります。(拍手)
なお、今大蔵大臣からも申しましたけれども、約五十二億の民間資金の導入について利子が高いというお話であります。社会党は全部国費でやれとおっしゃいますが、私たちは、決して全部を国費でやるわけには行きませんし、どうしても住宅の計画を進めますためには、民間の資金をいかに導入するかということが新しい構想の大事な点であると考えます。(拍手)今回保険会社の金を約五十億住宅に回しますことは、この金が、そのままで行けば、あるいはデパートとなり、あるいはいろいろないわゆる不急不要の建築の方に回るでありましょうが、これを今回の住宅の建設に回すことによりまして、われわれの意図することが現実にできるわけであります。(拍手)かようなわけで、私たちは、この公団の方式を従来の原則である公営及び公庫の制度につけ加えることによりまして、初めて困難な住宅対策の解決が期し得られると考えた次第であります。(拍手)
なお、四十二万戸の戸数の内訳についていろいろお話がありましたが、これは、いわゆる自力建設は従来の住宅政策にもとられて参ったことでありまして、現内閣が初めて取り上げた問題ではありません。同時に、今申し上げましたように、この自力建設に対しましては、税法上のいわゆる特別償却制度を四倍にふやすとか、あるいは不動産取得税、固定資産税等の問題をやりましたほかに、五十二億の住宅資金に対する国家保証の制度をこの公団法壕外に新しい法律として現在提案、御審議をいただいておりますように、われわれは、これらの政策をあわせ用いることによりまして、二十三万戸の自力建設はできるものと確信をいたしております。(拍手)
なお、公営住宅の中におきまして、小さな家、六坪の家はいけないという御意見もありましたが、この六坪の家は、決して経費を節約をいたしたのではありません。いわゆる公営住宅のうちの第二種の中におきまして、従来八坪の家がありまして、これが月の家賃が千円であります。この木造の小さな家にかわるのに、今回いわゆる簡易耐火アパートを作るわけでありまして、この簡易アパートは而火でありますから、これに要する費用は八坪の木造よりも高くかかります。しかし、償却年限が長くなりますから、これで家賃は八百円であります。この八百円の家賃で、小さいということはありますけれども、しかし、今の国民の要請はりっぱな家だけを要求されておるのじゃありません。(拍手)できるだけ安い家賃の家を数多く供給することが一方における国民の要請でありますから、われわれは、この簡易耐火アパートを八千五百戸新たに追加いたしましたことは、公営住宅の中での進歩であると考えます。(拍手)今日住宅政策に対していろいろな要請のある中で、国費を使う場合においては、いわゆる耐火建築にしろというのが大きな要求で、われわれももっともだと考えますから、この公営を初め、公団、公庫を通じまして、今回の計画は前年度の計画に比べていわゆる耐火建築を倍にふやしておりますこともお認めをいただきたい。(拍手)われわれは、決して金をけちけちしておるわけではないのでありまして、家賃をいかに安くして耐火建築を建てるかということに一番注意を払っておるわけであります。(拍手)
さような考え方で公営と公庫の制度を進めます以外に、従来いわゆる勤労者住宅という建前のもとに進歩したアパートがありましたが、これを今回公団に移したわけでありまして、公団は全部四階建の耐火アパートを原則としておりまして、これ以上高いものも土地柄によっては作りましょうが、基本は四階建耐火アパートを考えております。いろいろ御批判はありましょうけれども、われわれは、現在の財政状態のもとにおきまして、地方の負担を著しく増強させないで、できるだけ国家の負担においてやり得る方法の最善を考えたつもりであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/8
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009・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 三鍋義三君。
〔三鍋義三君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/9
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010・三鍋義三
○三鍋義三君 私は、ただいま政府より御提案になりました日本住宅公団法案に対し、日本社会党を代表して、鳩山首相を初め関係各閣僚に明確なる所信をただしたいと思います。(拍手)
まず最初に鳩山さんにお尋ねします。過般の総選挙におきまして、民主党のたくさんの公約のうちで、特に日ソ国交の回復、中共貿易の拡大、住宅政策等を大きく掲げてお臨みになったのでありますが、そのうちでも、住宅対策の公約は、幾多住宅難にあえぐ国民に、真夏の旱魃になえしぼんでいるときに雷雨にでも出会ったような大いなる驚きと歓喜をもって迎えられましたことは、御承知の通りであります。これは、おぼれる者はわらをもつかむといった心理を巧みにつかまれたものでありまして、戦術としてはまことに敬服のほかはありません。しかし、戦いは、どのようなことをしても、ただ勝てばいいというものではありません。と申しますのは、国民は、この公約を信じたればこそ、民主党を支持したのではありませんか。その数は四十二万戸、いな、四十二万票くらいでは済まないと思うのであります。今その公約の正体をあばけば、まさに欺瞞そのものではありませんか。政府資金によるものわずかに十七万五千戸、それも公営住宅の質の低下による八坪、六坪といった戸数の水増しをも含めてであるから、あきれ果てるほかはありません。他の大部分は民間の自力建設二十三万戸に依存しているではありませんか。さらに、なお驚くことは、増改築分をまで一戸に数えて一万五千戸分を加え、合計四十二万戸の公約を果すのだと言うに至っては、何と理由をおつけになろうとも、国民は絶対に承知できないのであります。(拍手)
鳩山さん、あなたがかつて文相であったころに、犬養木堂翁と対談されて、スポーツマンシップを語り、スポーツの真剣さについて、フェア・プレーと友情について語っていられたのでありますが、現在でも当時のお気持にお変りはないか。きのうも、記者会見で、選挙はスポーツのように気軽にと語っていられるのでありますが、これはよろしい。しかし、私たちの心配するのは、気軽にでたらめを平気でやられたのでは、はなはだ迷惑するということであります。(拍手)あなたはあくまでフェア・プレーの精神に現在もなおいささかの曇りもないとされるならば、四十二万戸の公約は、あれはインチキであったとまでは言いにくかろうが、多少言葉が足りませんでした、皆さんにぬか喜びをさせて申しわけございませんでしたくらいの意思表示をされるのが当然であると思うのであります。(拍手)鳩山さんの鳩山さんたるゆえんは、あなたの率直さと正直さにあると思うのであります。現在のあなたからこれを差し引いたら、一体あとに何が残る。すべからく本院におきまして国民の前に陳謝されるお気持が、御意思があるかどうかをお聞きしたいのであります。
次に、竹山建設相にお尋ねします。
まず、この住宅公団法なるものをどうしても創設せなければ住宅対策が達成できないとされる根拠を、もっと明確にお示し願いたいのであります。あなたは、公団創設の必要性を、宅地の造成を容易ならしめるために、行政区域を越えての住宅建設促進のために、民間資金をできるだけ集中するために、と御説明になっているのでありますが、あなたは、ここでもう一度頭を切りかえて、公団に対するこの情熱を——公営と公庫住宅の運営を拡大強化して、ますますその充実をはかるお考えはありませんか。と申しますのは、かりに公団法が通過したといたしましても、実際にその機能を発揮いたしますまでは相当の日時を要するのではないか。
もっとも、自称か他称か知らないが、公団の総裁から副総裁まですでにできてしまっているといううわささえあるのでございますから、準備が着々と進んでしまっているのかもしれませんが、いずれにしても、わずかあと半年余りで、困難な宅地の造成から二万戸の建築が果してできるとお考えでありますか。いな、それよりも、公共団体や公庫で公団の考えているねらいがどうしても実施できないとされること自体が、私には理解できないのであります。鳩山さんは言われるでしょう。公庫は純然たる金融機関であり、公団は住宅建設や宅地造成をやる土建事業に属するものであるというお考えも理解できます。理解できるのでありますが、わずか二万戸の規模の小さい住宅建設のために、いたずらに機構のみをふやしていくという、そういうことにとらわれることなく、でき得れば現在あるものを活用するということこそ適切なる処置ではないかと思うのでございますが、いかがでございますか。地方公共団体に対する助成、民間の住宅建設諸団体に対する振興策、これらで十分にその目的を達成できると思うが、いかがなものでございましょう。
次に、私は住宅対策は社会保障制度の一環として行わなければならないものであるという基本的な考え方をしておるものでありますが、このたびの政府の住宅対策を見ますと、困窮度の最もはなはだしいと思われる庶民階級への対策はますます軽視され、比較的高い収入階層に向けられているのではないか。一体、政府の住宅対策はだれのためになされようとするのか。階層別に見て、どの階層に重点を置いているのか。日本住宅公団によって建てられる賃貸住宅家賃はどの程度を見込んでいられるのか。われわれは、現在の国民経済から見て、住宅費に対する負担能力は収入の五%から一〇%ぐらいと思うが、伝えられる公団の家賃が四、五千円ということになると、五万円以上の高給者用のものとなるのではないか。しかも、低額所得者のためのただ一つの住宅対策である公営住宅の予算が、昨年に比べて十億も削減されている。これは明らかに公団新設のための圧迫であって、蔵相が第一次鳩山内閣の財政演説において公営住宅費を増額すると言明されているが、この食言の責任を一体どうとられるのか。
政府は、また、公庫への融資率を一〇%引き下げようとしている。これも公団への資金が影響しているのではないか。昭和二十八年度と二十九年度における公庫への申込者の月収別の比較を見ると、月収二万円以下の者が、二十八年度一三・八%に対し、二十九年度は一〇・八%に、二万円台が三九・七%から三七%にそれぞれ下り、逆に三万円台が二六・六%より二七・七%に、また四万円以上が一九・九%から二四・五%にそれぞれ上っているということは、現行の融資率によってすら、すでに公庫の利用者は一般大衆には高ねの花となり、高給所得者へと移行していることが明らかではありませんか。(拍手)融資率の引き下げによる頭金の増大はさらにこの傾向に拍車をかけ、公庫は国民大衆の手より完全にもぎ取られてしまうのではないか。竹山さん、あなたは、上野駅のガード下に現在いかなる状態がかもし出されているかということを御承知か。午前四時ごろ、少し時間が早くてお気の毒ですが、川崎さんと連れ立って一度ごらんになって下さい。そうすれば、もっと国民の魂に触れる住宅対策がおのすとできてくるのではないかと考えるのであります。(拍手)
次に、この公団法によると、都会の中心部近くに平家が建ち、都市周辺の郊外に高層アパートが建設されるといろ結果になると思うが、これは、土地の価値と経済的利用を無視した、実に時代逆行もはなはだしい住宅対策であると思います。また、公団は宅地対策が一つのねらいであると思うが、区画整理について、農地その他にどのような方途で臨まれるのか。いたずらに土地価格のつり上げ助成の結果となると思うが、国営の宅地造成の意思はないか。少くとも国土総合開発の一環として行われるべきであると思うのでありますが、政府は中央産業道路計画による宅地造成の意思はないか。いや、それよりも、もっと抜本的な住宅対策、すなわち、国設の住宅を確立して国民の要望にこたえる意思があるかないか。
なお、本案には、公団経営のための管理機構において明確性を欠き、表面は一応民主的を装いつつも、あの戦時下に作られた何々公団のごとく、汚職の伏魔殿になる憂いが多分にあると思われるのであります。(拍手)また、民間資金の集中の美名のもとに、銀行や大会社、大きな高級料亭などの建築が一段落いたしました今日、一般住宅の投資に採算を求めてきた生命保険会社その他の産業投資に巧みにあやつられているのではないかの、いやなにおいさえするのでありますが、一萬田さん、どうです。
次に、前にもちょっと触れたのでありますが、川崎さんは、母子家庭、生活困窮者、浮浪者等の収容施設、住宅についての所見と計画をどのように考えていられるのでありますか。六坪の簡易耐火アパート八千戸の中にみんな押し詰めて満足しようとでも考えていられるのか、その所信をお聞きしたいのであります。
次に、西田さんにお尋ねしたい。あなたは産業労務者の住宅対策をどのようにお考えなのか。昨年より二千五百戸も削減されておるのを御賛成になっているのかどうか。
次に、松村さんにお尋ねします。(「いないぞ」と呼ぶ者あり)おいでになっていられない方は、次の機会に御答弁をお願いいたします。私は、あなたが文教関係の諸政策に非常な御努力をなされていることに対しましては、衷心より敬意を払っているものでありますが、しかし、あなたは大事なことを一つ忘れておられる。四畳間一部屋に四、五千円もの間代を払わされているアルバイト学生の苦闘の姿、いなかの親たちの苦しい叫びがあなたの耳に入らないのだろうかということでございます。これら学生を収容する低価格の寮等の施設に対する御所見をお聞きしたい。
以上の諸観点から、(「時間々々」と呼ぶ者あり)政府は、四十二万戸建設の公約が、防衛関係予算の強化による圧迫のために、砂上の楼閣にひとしいさらしものにされようとするのを隠蔽するために、場当り的法案を提出されたものであり、公約がバラックならば、本法案もまたバラック建築にひとしいものと断ぜざるを得ないのであります。
最後に、私は心からお願いしたい。政府は、公約の数にとらわれるの余り……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/10
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011・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 三鍋君、三鍋君……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/11
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012・三鍋義三
○三鍋義三君(続) かえって住宅政策の低下をたどるような本法案をすみやかに撤回されて、真に国民のための対策を確立されんことをお願いいたしまして、私の質問を終るものであります。(拍手)
〔国務大臣鳩山一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/12
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013・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) お答えいたします。
フェア・プレーの精神はもとより必要であると考えております。また、予定通りの建設は可能であると考えております。
その他の答弁は関係閣僚から申し上げます。
〔国務大臣竹山祐太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/13
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014・竹山祐太郎
○国務大臣(竹山祐太郎君) 御質問のうち、土地対策のお話がありましたが、宅地に対する対策は、先ほど申しましたように、毎年やって参りますが、まず今年度百万坪、公団で宅地の造成をいたしますほか、三十数万坪とりあえず国有の土地を宅地に現物で出資をいたしてもらいますこともあり、また、公庫が約五十万坪の宅地に一方において資金の融通をいたします。そのほか、できるだけ宅地の問題の展開をいたして参りたいと考えておりまして、国営で宅地を作る考えはないかとおっしゃられますが、公団には十億その金を見込んでおりますから、形こそ違え、政府みずからが宅地の造成に乗り出すわけだと考えております。
なお、二十三万戸の中の増改築の問題のお話もありましたが、これはしばしば出る問題でありますが、われわれは約五百万戸の家の不足を十年間で解消しようという。四十二万戸の出発の中には自力建設が入るのは当然であると考えておりますし、増改築の問題も非常に要望が強いので、主婦連などはぜひ増改築をやってくれという熱烈な要求がありますし、この不足戸数の中には、いわゆる過密住宅といって、一軒の家に何戸も入っているものも勘定の中に入れておりますから、これに対して、部屋を増せば、その一軒が独立したものと考えることも、決して十分ではありませんけれども、やむを得ないのが現状だと思います。
なお、六坪の問題につきましても、先ほど申し上げましたから、説明を省略いたします。
なお、産労住宅、いわゆる勤労者の住宅が少ないじゃないかというのは大へん間違った御観察でありまして、公団はほとんど全部が産労住宅であります。従って、これは公営の従来の産労住宅をここへ移したわけでありまして、公営の中における高層アパートを公団でやろうというわけでありますから、今われわれの考えでは、公営の次に公団の家賃がそれに続くもので、公庫はお話の通り金を借りて家を作る人でありますから、これよりも幾分上の段になりましょうが、決して金持に行くものとは考えておりませんことは、実情でおわかりの通りであります。そういうことでありますから、われわれは、今回の計画で一番力が入っておるものは、勤労者の、いわゆる産労住宅であると考えております。(拍手)
〔国務大臣一萬田尚登君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/14
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015・一萬田尚登
○国務大臣(一萬田尚登君) お尋ねは、民間資金を比較的高利に借りることは金融資本にいたされているのではないかというような趣旨の御質問であったと思うのでありますが、決してそうではありません。今日家を作るために資金を調達するということが、今日のこの資金需要の関係のもとにおいても、いかに困難であるかということは、お互いが体験しておることであろうと思うのであります。そうして、もしもこういう資本が高利に運用しようといたしますれば、地に幾らもあるのであります。私が先ほど申しましたように、五年以上の長期の金利で今日九分五厘というのは、日本の今日の金利情勢から見てやむを得ない。今後さらにこれの低下をはかろうといたしておるのであります。大体、従来こういう資金、特に保険の金は高層ビルに向っておったのであります。しかるに、これが、高層ビル、そういうところから離れまして、大衆のためにその資金を供給しようというこの考え方は、私は非常な進歩であると考えておるのであります。ただ、金利の点については、今後一そう低下をはかるつもりをいたしております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/15
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016・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 厚生、労働、文部各大臣の答弁は適当の機会に願うことにいたします。
今村等君。
〔今村等君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/16
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017・今村等
○今村等君 私は、日本社会党を代表いたしまして、政府の住宅政策に対し若干の質問をなさんとするものであります。
すでに過般の国会におきまして、鳩山内閣の施政方針については質問がここで行われましたけれども、財政、経済、外交に関してであって、選挙の際における民主党公約は、うつろな、から宣伝にすぎなかったということがはっきりしたために、国民は大いに失望を感じておると思うのであります。(拍手)特に住宅政策においては最もこれがはっきりしていると思うのでありますが、民主党の住宅に関する公約、すなわち住宅四十二万戸建設は、過般の選挙のときの公約中最も大きく、かつ重要なる政策であり、金看板であったにもかかわらず、その計画を見ますると、国民はその内容にいささか驚かされるのであります。
終戦後十年、われわれ国民の衣食住のうち、衣と食は戦前に復したと言えますけれども、住居の苦悩だけは戦前のそれと少しも変らない状態であります。戦前にも増してひどいと言っても決して過言ではないと思うのであります。狭いところに多勢の家族がひしめき合い、他人の家の小さい一室に不自由を忍びながら同居を余儀なくされている人々があまりにも多いのであります。一応建設省の調査したものについて見ますれば、本年四月一日現在における住宅不足数を二百八十四万戸といたしまして、その内容は、同居世帯のものが九十七万、狭い居住、いわゆる九畳、八畳の間におる者の世帯数が七十一万戸、危険な老朽化した住宅戸数が百十六万戸であり、計二百八十四万戸が不足しているということになっているのであります。しかし、建設省としてはこの数字を出しているけれども、その見方いかんによっては、さらだ膨大な数に上るだろうことは想像がつくのであります。しかるに、近時町には住宅が相当建築され、時折目にする不動産会社の表には貸家、売家、貸間の広告がかなり出ておるのにもかかわらず、一般大衆の住宅難は一向に解決される様子がない。すなわち、このことは、住宅政策というものがほんとうに住宅を要求している階層を対象として行われていないことの証左で、ただただ四十二万戸という数字にとらわれただけでは決して解決するものではないのであります。(拍手)この点について政府はどのように考えておるのか、ここで、住宅政策に期待と信頼を持って一票を投じた国民の前に、明確なる御答弁が願いたいと思うのであります。(拍手)
住宅を四十二万戸建設すると政府が言明されたことは、おそらく、国民だれしもが、政府の手によって、政府の資金によって建設されるものと信じていたと思うのでありますが、どうひいき目に見ましても、公約を裏切られたとしか、われわれには受け取れないのであります。その内容を分析してみますならば、公営住宅が五万戸であり、金融公庫住宅が七万五千戸であり、いわゆる公団法によるところの公団住宅二万戸、その他公務員住宅、入植者住宅、厚生年金住宅合せて三万戸、合計国の施策による建設戸数が十七万五千戸なのであります。それに、民間自力建設二十三万戸、民間増改築が一万五千戸、この二十四万五千戸を加えての四十二万戸であります。すなわち、政府の手で建てられるものが十七万五千戸にしてたった四一%であります。なお、さらに意外に思われるのは、金融公庫住宅の中には増改築によるもの三万戸が含まれていることであります。小さな一室が増改築されたことが建築戸数の二戸として数えられてもふしぎでない時代がやってきたようであります。過日、鳩山首相は、外国記者団との会見で、防衛分担金の削減ができれば、その分は住宅建設に回すと言われておりますが、この四十二万戸建設の中に、その首相のお約束がどの程度盛られておりますか、この点について首相の御答弁をお願いするものであります。
なお、民間自力建設増改築二十四万五千戸でありますが、この数字はおそらく昨年度の民間建設戸数二十余万戸だったからというので計算されたと思うのであります。しかし、民間において建設するだろうというものを政府の公約のためにちょっと借用に及ぶということは、少し虫のよい話であると私は思うのであります。(拍手)すなわち、民間において建設されるということは未知数なものであるばかりでなく、よし、それが建設されたとしても、さらに留意いたさねばならぬ点は、少しばかりの税の減免とか、銀行融資を円滑にする措置を講ずるとかによって家を建てられる人々は、先ほど私の述べましたところの、ほんとうに住む家を求めている階層とはよほど隔たりのあることを忘れてはなりません。この点について政府の所信を伺いたいのであります。(拍手)
さらに、私の心外にたえないのは、住宅政策全般を通じて、なけなしの金をはたいて何とか家を建てようとする者にだんだんと自己負担金を多くし一般勤労大衆はますます借りることのできなくなる、一部の人々のためにする政策であり、まことにもって現実にそぐわなくなりつつあります。その具体的な問題はあとで述べることといたしますが、その最もよい例であり、是が非でもこの点について再検討をわずらわさねばならない問題でありますから、政府関係大臣から明確かつ具体的なる御答弁をお願いしたいのであります。すなわち、政府が新しく今年度から実施せんとする日本住宅公団法の問題であります。
この公団法について、政府の原案によりますれば、建設予定戸数は二万戸であり、これに要する資金は政府出資、民間出資合せて百六十六億円であります。そこで、一戸当りの建設費はどうかと言いますれば、八十三万円になりまするが、昨年の住宅金融公庫において融資した金額は、四万戸に対して百四十二億円、すなわち二戸当りが三十五万円でありました。さらに、昨年の公営住宅の補助額は、五万五千戸に対して百二十六億、二戸当りが二十三万円であります。一昨年においてもまたしかりであります。すなわち、実績が示す通りに、従来平均にして二戸三十万円内外の融資あるいは補助額で建設されてきた住宅を、政府は、金がないと言いながら、ことさら、ことしより、何ゆえに三倍もかかるいわゆる高級住宅を建設することに努力を払われるのか、私はいささか了解に苦しむものであります。そこで、私は、この百六十六億の資金をもって従来の住宅金融公庫で取り扱うべく直ちに措置する意思はないか、この点について政府の答弁をお願いするのであります。
公庫における、三十年度、すなわち本年度の計画は、増改築費を含めて一戸当り二十五万円になっておるのでありますから、百六十六億をもってすれば六万六千戸が建てられることになり、政府原案の三倍強の住宅が即時建設されることになるので、一体政府は何を考えておるのかと言いたいのであります。さらに、この公団住宅は、コストが高くつくために、おそらく家賃も月当り六、七千円につくものと心配するのでありまするが、戦前において個人の家賃負担能力は一六%が限度とされていたのに対し、現今においては、食費の割合が高くなったために、家賃負担能力ははなはだしく低下して、一カ月収入一方六、七千円の場合、一〇%が限度とされているのであります。しからば、この公団住宅に入居できる第一条件としては、家賃負担能力一〇%内外として見た場合、月収五、六万円の所得者でなければとうてい入ることができないということになります。全国の公営住宅申込者の調査でも推定されるごとく、つまり、低額所得者、自力では家を建てられない人々、金額で言うなれば月収二万円以下の人々が大部分であることをよく知らねばなりません。すなわち、この公団住宅は、もっぱら一部の高級官吏、高級生活者のためだけの住宅であると断ぜざるを得ません。建設大臣は、住宅を緊急に必要とする国民階層を所得の上から見てどのように算定され、このようなる案出をされたのか、具体的に示していただきたいと思うのであります。
なお、ここでわれわれが特に見のがすことのできないのは、すなわち、今ですら複雑なる官庁機構の中にあって、住宅関係においても幾つもの機構があるにもかかわらず、さらにもう一つ増してそこに総裁以下多数の役人を任命しなければならないということは、官庁機構の簡素化をうたっている民主党の公約にも違反するものであり、国民の全く納得できないところであります。聞くところによりますると、建設省は営繕課職員の人員整理を企図しているとのことでありまするが、一方ではこのように置き場所のない古手役人をすべり込ませるところを無理に作りながら、これから働ける若い有能な人々を整理することは、いわゆる本末転倒したことではないか、建設大臣の考えを聞きたいと思うのであります。(拍手)
さて、この公団法一つを見ても明らかなことく、鳩山内閣の一枚看板ともいうべき住宅四十二万戸建設の公約は、まことに欺瞞に満ちたものであり、羊頭狗肉もはなはだしいと言わなければなりません。(拍手)当初、住宅公庫の融資による建設戸数は六万戸になっていたのでありますが、これでは公約の数に満たないということで、増改築分までも無理やりに押しつけて、わずかに前年度より四十五億円しか予算が多くないのに、七万五千戸を建てろと押しつけられたために、従来の貸付基準では割当戸数に足らないので、土地の購入分には融資しないことにし、また大きさは従来二戸当り平均十五坪であったものを十二坪に狭め、融資率を一〇%切り下げ、大衆の自己負担を増加させることにより公約戸数だけのつじつまを合せようと苦心さんたんしているのであります。その結果、利用する者は昨年よりは二倍も三倍もの自己負担を押しつけられるばかりでなく、土地の融資分が切られたために、ますますもって勤労階級にも高い峰の花のような存在になってしまっているのであります。果してこんなごまかしの法案で政府はこの住宅難を解決できると本気で考えているのか、全く理解に苦しむものであります。結局、鳩山内閣の住宅政策は欺瞞に満ちたもので、すなわち選挙の際国民に約束した公約をじゅうりんするものと断ぜざるを得ません。(拍手)
目下の急務は、住むに家なき人々、勤労大衆に、安い家賃の家を、すみやかに、しかもどしどし与えることであって、思いつきの公約のつじつまを合わせてごまかすためや、高級官吏の横すべりのポストを作るために法律をこしらえることでは断じてないのであります。社会党は、一この意味から、すでに参議院に国設住宅法案、日本分譲住宅公社法案を提案して、審議をわずらわしておるのであります。
以上、簡単ながら、私の質問を終ることにいたしまして、政府の具体的な、しかも明確なる御答弁をお願いしたいと思うのであります。(拍手)
〔国務大臣鳩山一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/17
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018・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 今村君の御質問にお答えをいたします。分担金の減額を幾ら住宅建設の方にまわしたのか。この質問はちょっと答えにくいのでありますが、少し回りくどいけれども、間違ってはいませんからお聞きとりを願いたいと思います。自衛力の漸増は条約上の義務であって、この必要に迫られて防衛庁費が増額いたしますれば、住宅問題も解決ができないのであります。しかしながら、自衛力が漸増すれば、それに応じて分担金の減額は要求できるわけです。この分担金の減額ができまして、防衛庁費との合額が前年度のワク内にとどまりますれば、それだけ住宅問題の方に金が回るわけなんであります。(拍手)そういうわけで、実は幾ら防衛分担金の減額が住宅の方に回ったかという質問には、形の上では答えられませんけれども、実質的には防衛分担金の減額のために住宅の建設の方に金が回ったということは、御了解ができることと存じます。(拍手)
〔国務大臣竹山祐太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/18
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019・竹山祐太郎
○国務大臣(竹山祐太郎君) お答え申し上げます。
住宅政策の基本方針を答弁しろということでありますから、ダブるようでありますけれども申し上げますと、今回の計画は、従来やって参りました公営住宅と公庫の制度を基本にいたしまして、これだけでは今緊急な場合に建ちませんから、そこで直接宅地を造成したり家を建てたりするために公団の制度を加えたわけであります。従って、今公団の一戸当りの費用が高いじゃないかというお話がありましたが、これは決して高くはありません。よく数字をごらん下さればわかりますが、公営の中における従来の高層アパートと公団の今度やりますものとは同じであります。何も単価は高くなっておりません。もっとも、社会党の方々から見ると高く見えますのは、社会党の御案を拝見しますと、約一千億の費用を見込んでおりますが、この中には宅地の費用は一文も入っておりません。そうしますと、宅地は全部どこかからただでもらうということになりますが、われわれの方はそうは行きませんから、単価が高いわけであります。従って、この公団の分は高級住宅でないかということでありますが、決してそういうことを考えておりません。先ほども申したように、これは従来の勤労者のための産労住宅をこのアパートでやるつもりでありまして、金持はこんなアパートなんかに入りはしないと私は思います。
それから、営繕職員の整理がありましたが、これは、おっしゃる通り、いわゆる占領下のいろいろな問題、進駐軍の施設等をやって参りまして、非常に大きな仕事をやって参りましたが、だんだんと米軍も撤退をいたしますし、そういう方面の施設が急激に減少をいたして参りましたので、やむを得ず営繕の機構を縮小するということは、仕事がないのに定員を置いておくわけに行きませんから、これはいたし方はありません。しかしながら、それと公団との関係は、これはまだ国会でおきまりになったわけではなし、そのことを予想してどうこうということは、この場合申し上げるわけに行きませんけれども、りっぱな技術者に必要な方面で大いに働いてもらうということについては、私は誠意をもって考えておるつもりであります。
なお、公庫の中で、いろいろ土地に金を貸せないじゃないかというようなこともありましたが、これはしばしば申し上げるように、何かの誤伝でありまして、土地にも融資をいたします。
それから、十五坪を十二坪にしたじゃないかとおっしゃられますが、十五坪の家も十二坪の家も依然としてやりますので、どうか御心配のないようにお願いいたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/19
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020・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 石野久男君。
〔石野久男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/20
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021・石野久男
○石野久男君 私は、ただいま御説明になりました日本住宅公団法案に関連する政府の住宅政策に関して、鳩山総理、竹山建設相、一萬田蔵相並びに川崎厚生大臣に対して質問をいたしたいと存じます。
鳩山総理は、今国会における施政演説の冒頭に、民主政治のあり方を説いております。そこでは「国民の議会政治に対する信頼を回復するために最善の努力をいたすべく深く決意しているのであります。」と言っております。自由党とあまりかわりばえのしない民主党の政策、非常にくたびれておる鳩山内閣に、今日もなお国民の期待するものがあるとすれば、それは、民主党の、アメリカの傭兵となる再軍備政策に対してではなくて、民主党が選挙で公約した日中、日ソ友好関係の回復と、住宅問題を先頭とする一連の社会保障に関する政策を実現することに対する期待であります。鳩山首相は、総選挙で、防衛分担金を削除して住宅を建てると盛んに宣伝した。特に施政演説の中でも、みずから住宅問題を取り上げて、四十二万戸の住宅を作ることを国民に再度アピールしたのであります。二月選挙当時から、今日もなお、純朴な国民は、総理の四十二万戸住宅建設に期待しております。ところが、政府が予算を発表し、住宅施策を説くに至って、政府及び民主党の四十二万戸は国民をだました食わせものであることがはっきりしたのであります。四十二万戸公約のうち、政府の責任で建てる家は十四万五千戸と三万の部屋であります。このほかに二十四万五千戸は民間の自力建設であります。
鳩山首相にお尋ねしますが、あなたは、選挙のときから、施政演説を行なったとき、そうして今日もなお、こうした内容をお知りになっていないのではございませんか。もしこうした内容をあらかじめ承知していながら、四十二万戸の建設を国民に訴えていたとすれば、あなたは、国民の議会政治に対する信頼を回復するために最善の努力をしているのではなくて、ますます国民の議会政治に対する不信と失望を増大させているのであります。あなたは再度総理大臣になろうとしてこのようなインチキきわまる四十二万戸住宅建設を公約したとは思いたくないのであります。十四万五千戸と三万の部屋しか政府の力で建てることができないものを承知でいたのであるか。竹山建設相は、二十四万五千戸の民間自力建設が入るのは当然だと先ほど答弁しました。総理も同じようなことを選挙の当時から考えておったのかどうか、はっきり、ここで、国民の前にその真意を表明していただきたいのであります。もしそのことを承知の上で四十二万戸を公約したとするならば、これは国民を愚弄するもはなはだしいものではありませんか。あまりにもさもしい政権亡者と断ぜざるを得ないのであります。もはやあなたは民主政治のあり方などを説く資格はないと言わなければなりません。鳩山総理の率直な答弁を求めるものであります。
防衛分掛金の削減金は住宅に回したという先ほどの答弁でございますが、ほんとうにそういう金が回っておるのかどうか、いま一度はっきりとここから答弁していただきたいのであります。われわれの見るところでは、防衛分担金の削減金は明らかに防衛庁費の中に回っておって、一文も残っていないのであります。住宅政策の中には一文も回っていないと思いますが、それでも先ほどのあなたの答弁は真実であると言われるのであるかどうか、はっきり示していただきたい。
日本住宅公団法案に関し、政府は、住宅金融公庫を金融機関としての業務に限定し、住宅公団は新たに住宅建設の機関として設けるのだと説明しております。日本の住宅問題がはかばかしく解決しないのは、住宅金融公庫や公営住宅資金だけでは家が建たないというのではございません。建設のための機関がないからではないのです。住宅建設、それに関連する所要資金がないからなのであります。その証拠には、十二坪の住宅は建たなくても、八階建、十階建のビルはいやというほど建っておるのです。そのことは政府はよくわかっておるはずであります。公団の新しい仕事のように宅地の造成についてもこれを主張しておりますけれども、宅地造成の問題は、従来とも住宅金融公庫で行なってきたものであります。今年度も、取得、造成合せて五十五万坪の造成が行われておるはずであります。政府が公団資金として百六十六億をそのまま住宅金融公庫並びに公営住宅資金に使うような積極的な措置をとるならば、このような日本住宅公団法などは作らなくてもよろしいとわれわれは考える。むしろその方がはるかに能率が上るものと思うが、政府はそのように考えないか、またそのようにする意思はないかどうか、建設大臣並びに大蔵大臣に承わりたいのであります。
次に、建設費の高騰、宅地取得の困難なことを考えまして、これからは高層耐火共同住宅の建設を国家の力でやり、住宅困窮者は直接にその恩恵に浴するようにすべきだとわれわれは思います。政府が住宅公団法に基いて作ろうとしておる中層耐火アパートは、明らかに月収三万五千円ないし四万円以上の者でなければこれに入居する資格がないのであります。真の住宅困窮者の救済の役には立たないのであります。のみならず、この公団の業務として、公団が建てた家を譲渡することになっておりますが、これは明らかに大資本が巧妙にその建てた住宅を買い取ることのできる危険を残すものであります。政府は住宅解決に言をかして本公団を作り、真の住宅困窮者を救うのではなく、高額所得者にこび、大資本のもうけ口を用意しておるかに見えるのであります。建設相、大蔵大臣の所見を承わりたいのであります。
これを公営住宅等に見ますと、昨二十九年度の住宅建設四万八千六百七十六戸から本年度五万戸に、戸数は確かにふえておるのであります。ところが、国の使う資金は、百十二億七千七百万円から百二億二千二百万円に、十億円も減じておるのであります。だから、十二坪の建家が八坪になったり、八坪のものが六坪になったりしておるのであります。民主党の内閣は、四十二万戸の住宅建設をえさにして、日本住宅公団では月収三万円以下のほんとうの住宅困窮者を見放し、公営住宅では六畳一間に母子家族を押し込めようとしておるのであります。労働者や一般市民を人並みに扱わず、選挙の票かせぎに使ったことを暴露しておるのであります。このような人権無視の住宅施策こそ、国民を欺瞞し、政権の座につこうとした民主党の、さもしい、醜いあがきを示しておるものであると私は思います。政府にして真に住宅施策に熱意を持つならば、低額所得でほんとうに住宅に困っておる者をこそ救済する施策をとるべきであります。日本住宅公団法案は、かかる観点からして、全く逆のものであります。建設大臣の所見を伺いたい。また、川崎厚生大臣は、かような問題をどのように見ておられるか。厚生大臣の立場から所見を伺いたいのであります。
第三に、政府は、公団設置の理由の一つとして、地方財政を圧迫しないためだと説いておりますが、われわれの聞き及ぶところでは、公団は、地方自治体の出資を十六億要請しておるし、反面、地方自治体にして出資能力を欠くものに対しては、その恩恵を及ぼさない方針であると聞いております。これは不公平きわまる取扱いであり、残酷な仕打であります。政府出資の六十億のうちには全国民の血税が結集されておるはずであります。だから、かような不公平な処置は許さるべきではありません。政府は、公団に出資できない地方自治体をどのように取り扱う所存であるか、あるいはまた、一律出資を要請する所存であるか、その見解を大蔵大臣並びに建設大臣から承わりたいのであります。
第四に、公団の所要資金のうち五十二億は民間資金を調達しておりますが、その資金を供出する生命保険でも、損保でも、余裕のある金を出しているのではありません。民主党内閣の政策に協力をしいられて資金操作に非常な無理をしていることは、火を見るよりも明らかであります。だからといって、保険会社が気の毒だと言うのではないのです。むしろ、これらの会社は、長期投資で年九分五厘という有利な利子を保証されているのであるから、安全投資と言えるのであります。資金操作の無理は、これらの会社が責任づけられておる産業投資の面への圧迫となって、金利の引き下げどころか、実効利率はますます上っていくという条件が出てくることであります。大蔵大臣は、五十二億の金が産業投資面に及ぼす影響をどう見ているか、その所見を承わりたいのであります。
最後に、政府は、今回の予算の中で、ジェット機の国内生産に踏み切りをつけ、予算案の中にもその体制をはっきり示しております。ジェット機一台はおよそ二億円でありますから、一台分で大衆住宅数百戸が建てられます。防衛隊員一人分でも数戸の家が建設できるのであります。総理大臣並びに建設相は、国民に住宅を保障し、災害から国土を守ることよりも、再軍備を行う方が大事だと考えておられるかどうか、大蔵大臣、厚生大臣にも、その所見を承わりたいのであります。
以上の諸点は、鳩山内閣が住宅政策の宣伝をはなばなしく行なっただけに、国民の聞きただしたい点であります。国民を欺瞞して内閣をとったが最後、大衆の手から届かないような公団住宅などを作る鳩山内閣の住宅政策は、大衆を踏み台にして大資本に奉仕することを専一に考えて、再軍備反対に煙幕を張ったもののごとくであります。右大臣の懇切丁寧な答弁をお願いして、私の質問を終ります。(拍手)
〔国務大臣鳩山一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/21
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022・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) お答えをいたします。
防衛分担金の減額の問題は、たびたびここから説明をいたしましたから、答弁は必要ないように思うのでありますけれども、簡単にもう一度申し上げます。防衛分担金の減額によりまして百七十八億も余裕を得たのであります。その百七十八億と防衛庁費とを合せて、前年度のワク内において防衛庁費プラス防衛分担金というものをとどめ得たのであります。そのために住宅問題の方にも金を回すことができたのでありまするから、間接には——間接というか、実質的には防衛分担金の減額によって住宅問題が解決できたと言えるのであります。どうぞ御了承を願いたいと思います。(拍手)
その他の御質問に対しましては建設大臣から答弁をいたします。
〔国務大臣竹山祐太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/22
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023・竹山祐太郎
○国務大臣(竹山祐太郎君) 選挙の際に申しました四十二万戸は、現在の計画を考えておったことはもちろんであります。
なお、公団がなぜ必要かということについても、たびたび申し上げましたように、民間資金を導入しなければ住宅建設の資金の拡大ができませんから、新しい構想を考えた次第であります。
なお、公団のアパートを作りますために、公庫の、あるいは公営の中で従来やっておりました、一番費用のかかるアパートの分を公団に移しましたから、従って公営の中で低家賃の家をたくさん作ることができるようになったわけでありまして、この両方を合せて住宅の対策とお考えいただくならば、われわれは公営及び公庫を基本にして、それに急速に公団で住宅を供給し、しかもそれは決して高級なものではなくて、勤労者を対象としておることは、従来の産労住宅と同様であります。
なお、十六億のいわゆる地方負担が問題になっているということでありますが、われわれは、先ほども申しましたように、公営では半額の地方負担を必要とするのに対して、全体の一割程度のこの負担は、決して無理をしいるものではないのでありまして、この程度のものをそんなに無理なくやっていくならば、地方との協力によりまして政府の施策を円滑にやり得る。もちろんこれについては起債その地のことも考慮をいたしますから、実情に合わないということは絶対にないと確信をいたしております。(拍手)
〔国務大臣一萬田尚登君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/23
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024・一萬田尚登
○国務大臣(一萬田尚登君) 先ほどのお尋ねは、家が建たないのは、何も家を建てる機関の問題でない、家を建てるのに必要な資金の問題だ、こういう御質問が一つであります。私も別に反対するわけではないのでありますが、今度の公団方式というものは、住宅建設に必要な資金を民間から吸収するために最も弾力性のある改正であるので、そういう意味におきまして御了承願いたいと思います。
なお、民間から五十二億でありますが、保険から四十億来るのであります。そのために民間資金を圧迫しまして資金の行方を狂わせばせぬかと言われますが、そういうことはありません。同時に、金利は、今日下げつつ、また下りつつあるのでありますが、その金利の下る傾向に悪影響を与えることは絶対にありません。これは、全体の産業資金からきわめて少い資金であるばかりでなく、この保険会社等の民間資金が従来使われていなかったのではないのでありまして、たとえば従来高層建築に使うその資金が大衆の住宅に向うということにすぎないのであります。
それから、公団の家賃が高くはないか、こういうことであります。これは、先ほど建設大臣から話があったと思いますが、むろん、公団の方については、借入金の金利も考えなければなりませんし、建設費の償却ということも考えなければなりません。しかし、それだからといって、公庫の金を借りてできる家の家賃より高くなることはない。大体そういうことであると考えております。
なお、地方の公団に出資する地方公共団体に対して何か特別の扱いというようなお説があったようであります。これもおそらく建設大臣から御答弁があったと思いますが、今度公団が大都市の周辺におきまして集団住宅建設をいたすのを目的といたしております。そうして、こういう地方団体は大体富裕な団体でありまして、特にこれが最も今日必要でありまする住宅建設に使うということでありますので、先ほどからお話がありましたように、この出資は必ず行われると考えて間違いないと思います。
御答弁いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/24
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025・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 厚生大臣は出席されておりませんので、この答弁は適当の機会に願うことといたします。
これにて質疑は終了いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/25
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026・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 自作農維持創設資金融通法案の趣旨の説明はこれをあと回しにするに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/26
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027・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。
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三 国防会議の権威等に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/27
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028・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 国防会議の構成等に関する法律案の趣旨の説明を求めます。国務大臣杉原荒太君。
〔「大臣はどうした」「休憩々々」と呼び、その他発言する者多し〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/28
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029・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) しばらくお待ちを願います。
〔「休憩々々」と呼び、その他発言する者多し〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/29
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030・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) ただいま杉原国務大臣が出席せられますので、しばらくお待ちを願います。
〔国務大臣杉原荒太君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/30
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031・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) 今回提案いたしました国防会議の構成等に関する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明いたします。
御承知の通り、さきに第十九回国会において成立を見ました防衛庁設置法は、その第三章におきまして国防会議のことを規定いたしておるのであります。すなわち、内閣に国防会議を置くこととし、国防の基本方針、防衛計画の大綱、防衛計画に関連する産業等の調整計画の大綱、防衛出動の可否等につきまして内閣総理大臣は国防会議に諮問すべきものとし、また、国防会議は、国防に関する重要事項について、必要に応じ内閣総理大臣に対して意見を述べることができるものといたしております。しかして、国防会議の構成その他必要なる事項は別に法律で定める旨を規定いたしておるのであります。
政府は、以上のような国防会議の任務にかんがみ、これが構成等につきまして慎重に検討して参ったのでありますが、ここに成案を得ましたので、今回本法律案を提出いたした次第であります。
次に、本法律案の主要なる点を申し上げます。
国防会議は議長及び議員をもって組織するものとし、議長は内閣総理大臣をもって充てることとし、議員は副総理たる国務大臣、外務大臣、大蔵大臣、防衛庁長官、経済審議庁長官並びに識見の高い練達の者のうちから内閣が両議院の同意を得て任命する五人以内の者をもって充てることといたしております。しかして国務大臣以外の議員の任期は三年といたしております。なお、議長は、必要があると認めるときは、議員以外の関係国務大臣、統合幕僚会議議長その他の関係者を会議に出席させ、意見を述べさせることができることといたしております。以上のほか、議長及び議員の職務上の秘密保持、国務大臣以外の議員の任免等につきまして所要の規定をいたしております。なお、国防会議の事務につきましては、内閣総理大臣官房に国防会議事務局を置き、これを処理させることといたしております。
以上が本法律案の提出の理由及びその内容の概要であります。何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。(拍手)
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国防会議の構成等に関する法律案
(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/31
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032・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) これよりただいまの趣旨の説明に対する質疑に入ります。江崎真澄君。
〔江崎真澄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/32
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033・江崎真澄
○江崎真澄君 私は、ただいま議題となりました国防会議の構成等に関する法律案につき、自由党を代表いたしまして質問いたすものであります。
国防会議は国防に関する重要案件を審議する機関でありまするが、今日、政府は、本法案の成立を期せられるとともに、一方におきましては防衛六カ年計画なるものを樹立し、着々と本格的な防衛力の増強を企図しておられるのであります。今こそ私どもは現行憲法につきまして真剣に再検討をする時期が来たものと思うのでありますが、かつて、鳩山総理は、自由党の時代におきまして、憲法改正による再軍備を熱心に唱えられたのであります。また改進党も、芦田試案等を発表せられまして、再軍備政党とまて言われたほどの政党でありまするが、この両者の合体してできた今日の民主党は、一たび政権の座につかれるや、在野時代吉田内閣を進んできめつけられたところの自衛隊違憲論はすっかり姿をかき消してしまったのであります。そのほこ先のやわらげ方は、いかにも私ども了解に苦しむものでありまするが、鳩山総理は、今日国防会議を設置しようとし、長期防衛計画を遂行するという段階におきましても、依然として、先般予算委員会において御答弁になりましたように、自衛のためならば現行憲法のままでどんな戦力でも持ち得るとの考え方に立っておられるのでありまするか、それとも、憲法を改正して自衛軍を——たまたま語るに落ちると申しまするが、先ほどの御答弁の中にも、自衛軍とあえて御答弁なさったのでありまするけれども、この際憲法改正を考慮せられるのでありまするか。これは、国防会議設置の基本問題としてまず第一番に明らかにしていただきたいのであります。そうして、また、憲法を改正せられるというのであるならば、それは一体いつごろに予定をせられるのでありましょうか。この際、その見通しにつきましても、はっきりと御表明いただきたいのであります。
政府は、本法案と並行いたしまして、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部改正法律案を提案し、陸海空合せて三万一千二百七十二名の増員と、その編成及び装備の飛躍的増強を全図いたしておるのであります。今回の増強は、陸上だけでも二万二千名の増強であり、陸上の制服はこれで十五万名になるのでありまするが、この計画が従来の計画と違っておりますることは、吉田内閣当時の受け身の立場に立った一年ごとのいわゆる漸増ではなくして、長期防衛計画、すなわち政府の言うところの防衛六カ年計画なるものに立脚した初年度の計画に当るというこの点であるのであります。聞くところによれば、この最終年次の昭和三十五年には、陸上兵力は十八万名、ほかに二万名の予備自衛官を持つと申すのであります。また、海上におきましては、人員は三万名となり、十一万六千総トン、百八十三隻、航空関係は四万名で、ジェット機を主体とする千二百機となり、このために要するところの経費は実に年間二千億円といわれるのであります。しかも、もっとわれわれが重大視しなければならぬと思いますることは、この六カ年計画の最終年、昭和三十五年を期して、在日米軍のうち、空軍部隊を除いて全部引き揚げることを想定して立案せられたものであるというのでありまするが、今日まで、鳩山総理も杉原防衛庁長官も、かかる国の運命を決する大計画を、しばしばの質問に際しまして、一向国会にはっきりと提示しようといたしておりません。しかも、もっと不可解なことは、過ぐる四月、アメリカとの防衛分担金の削減の交渉に際し、政府は、国防会議法の国会提案を約束いたしまして、防衛努力に対するところの関心ぶりを見せる一方、この防衛六カ年計画案なるものをアメリカに提示したというのであるが、一体、この点、外務大臣、ほんとうでありまするか。政府案たると、それが防衛庁の試案であるとを問わず、勝手に政府がかかる大計画を国際外交の取引の具に供するといたしまするならば、これは、国会をないがしろにし、国民を愚弄、瞞着するものであると言わなければならないのであります。(拍手)かくのごとき大問題を、担当の防衛庁長官が、いまだ成案を得ておらぬなどと言を左右にしてまかり通ろうとする限り、せっかくの国防会議法案をここに上程いたされましても、まじめな議論の対象にはなりがたいと言わざるを得ないのであります。(拍手)この際、総理大臣から、かねて政府の言われるところの防衛六カ年計画の全貌について、はっきりとお示しを賜わりたいのであります。
次に、私どもは、大蔵大臣に対しましても、この防衛六カ年計画なるものをお尋ねいたしてみたいのであります。これは経済六カ年計画とにらみ合せて作成せられたものであると聞くのでありますが、この経済六カ年計画と防衛六カ年計画とをいかに考え合せておられるのであるか。同時に、また、果してこの六カ年計画なるものは可能性ありやいなや、しかも、将来の国民経済の負担の上から申しまして耐えられるものであるかどうかということを、この際、大蔵大臣から、はっきりと御答弁を賜わりたいのであります。
次に、杉原防衛庁長官は、本年度の陸上自衛隊、これに九州方壷隊を新設するに当りまして、その説明において特に九州方面の重要性にかんがみ、と説明をいたしておられるのであります。政府は今日みずからあえて共産主義諸国家に進んで接近をいたしているのでありますが、この九州方面のいわゆる方面隊新設に当って、重要性にかんがみとは、一体何をさしておられるのでありまするか。これは防衛庁長官から具体的に御答弁を賜わりたいのであります。
〔議長退席、副議長着席〕
なおまた、長期にわたる六カ年計画というものを唱えられる以上は、いうところの仮想の防衛対象というものがなくては立てられるものではございません。一体、政府は、どこの何国を対象国として、相手として、この六カ年計画というものを立案いたしておられるのであるか。今日、民主党内閣のことを二また外交内閣であると言っておるのでありますが、この席上から、どこを対象にして立案したという点につきまして、はっきりと御答弁をせられる義務があると考えるのであります。(拍手)
さて、以上、国防会議発足に際しまして、基本的な問題について私は質疑を行なったのでありますが、少くとも、今度のこの法案を一べついたしまするのに、この法案は、残念ながら、すき間だらけのものであると言わざるを得ないのであります。われわれは、まず国防会議を設置するところの目的は、国務というものがあくまで統帥権を押えるためのものでなければならぬと考えるのでありまするが、この法案には何らそれについての規定は見当らないのであります。国防会議の議題となるところの国防方針等の策定というものが、一体、どの機関によって、だれが責任を持って作るのであるか、明瞭でないのであります。この法案によりまするならば、全部防衛庁にまかせてしまうのでありましょうか。防衛庁のみにまかせるものといたしまするならば、これは大へんなことになる憂いがあるのであります。軍事独裁の再現も考えられるのであります。すでに、杉原防衛庁長官は、吉田内閣のように一年々々のその日暮し的防衛計画は困ると非難をして一方において積極的長期防衛計画を立てておるのでありまするが、その内容については一言半句も触れようとしないではありませんか。もっとも、きょうは思い直されて、この壇上からはっきりと御答弁があることと存するのでありまするが、もし、こういった大問題をはっきりせられないようなことならば、すでにここにも軍事が国務を愚弄せんとするきざしがながめられると言わなければならぬのであります。(拍手)かつての日本におきまして軍事独裁が行われましたのは、軍を掌握するところの政治力が足りなかったことに基因いたすのであります。軍事力から遊離したところの政治は、これは単なる評論でしかないということは、かつての政治家は真剣に考えさせられたところであるのでございます。軍を政権の掌握下にしっかりと押え込んでおくことこそ、政治の絶対的な命題であると言わなければなりません。
もし法案の通りであるといたしますならば、防衛庁は事実上企画権と指揮権に独占的な監督権を持つことになります。そうして幕僚長ないしは統合幕僚長を中心に団結いたしまして、その思う通りになる可能性が考えられるのであります。首相は防衛庁長官の一方的な報告を聞いて、それを肯定することになってしまうでありましょう。あるいは防衛庁から回されたところの企画なるものを国防会議にかけるといたしましても、これはきわめて通り一ぺんのものとなりがちであります。会議は思いつきによるところの自由討議の場と化してしまうことも考えられます。せいぜいわずかの修正を加える程度で、自衛隊案がすらすらと通過してしまうという場面も考えられるのであります。私どもは、将来この国防会議のもとには完全に独立したところの企画力と監督力を持たしめる必要があると思うのでありまするが、今度の法案によりますれば、なるほど国防会議事務局の規定はございます。しかし、これを、予算書に見まするならば、わずか四十五万円の庁費しか計上してないのであります。これでは単なる会議取り回しの機関にすぎないのでありまするが、将来は当然直属の幕僚機関として軍事と政治の統一的話し合いに関する事務をつかさどり、防衛庁に対しましても根本的に指揮監督の任に当るべきであると考えるのであります。この点、鳩山総理大臣、杉原防衛庁長官はいかに考えられるのでありまするか、御所見を承わりたいのであります。
次に、会議の構成メンバーについてであります。会議の構成メンバーは、閣僚五名のほかに、いわゆる識見の高い練達の者を五名以内、これは「以内」という言葉で加えておるのであります。「以内」という書き方もあまりその例を見ないのでありまするが、民間人を加えることも諸外国にはやはりその例を見ないのであります。アメリカ、イギリスにおきましても、国防会議と同様の機関を見受けるのでありますが、民間人は加えておりません。アメリカの場合、大統領が随時個人的な意見を求める程度の民間人七名が非公式の顧問として設けられておる程度のものであるのであります。民間人を加えることに対しまする論議は、かつて自由党の当時からもあったのでありまするが、内閣がかわるたびに国防の基本方針がゆらぐことを防止しようという意図のようにも思えるのであります。それは前段に申し上げました国防会議事務局の充実とその機能の強化とによって容易に防止し得ると考えるものでありまするが、この点に対する御意見はいかがでありましょうか。
さらにまた、この会議の運営は多数決によってきめられるのでありまするが、これは事の性質上きわめて重大な点であると言わなければなりません。しかも、この多数決の会議に民間人五人が全部充足せられているといたしました場合において、多数決できまりましたときには、当然、諮問機関とはいいながら、総理は束縛を受けざるを得ないのであります。それは内閣責任制の建前をくずすことになると考えられるのでありますが、この点は一体どうでありましょうか。また、重大なる機密がこれら五名の民間人の間から漏れる場合もあり得ると思います。責任のある本人を罷免することは当然であるのでありまするが、事柄の性質上、本人を罷免しただけでは済まないということも考えられるのであります。すなわち、その事柄によっては、国家国民に対しまして大きな迷惑をかけることが想像せられるのでありまするが、その場合に、本人だけを罷免して、一体、議長を初めこの国防会議というものは、てんとして顧みないでいいものであるかどうか。このあたりに対しましても、はっきりと承わりたいのであります。
なおまた、念のために承わっておきたいのでありまするが、「識見の高い練達の者」という、この民間人の人選につきましては、いかなる人物をさして言っておられるのでありましょうか。それは旧軍人であるのか、あるいは、自由党があの当時考えましたように、総理大臣であった人を登用するという点を考えておられるのでありましょうか。それとも、鳩山内閣は普通以上に財界人に媚態を呈せられる内閣であるのでありまするが、そのお好きな財界人を登用せられようというのでありましょうか。その性格によりましては会議に重大なる影響をもたらすことも考えられますので、はっきり、具体的に、輪郭についてお示しを賜わりたいのであります。
その他いろいろお尋ねしたい点がたくさんあるのでありまするが、時間の関係上、詳細は委員会において十分御質問いたすことにいたしたいと存じます。
以上申し上げました諸点につきまして、鳩山総理大臣におかれましては、この法案が日本の長期防衛計画というものとともに審議せられておりまするがために、きわめて国際間の注目を浴びておるのでございますから、これを十分御認識になりまして、憲法改正は一体せられるのかどうか。あるいはまた、防衛六カ年計画というものは今日すでにアメリカとの取引の具に供しておられるのであるが、ほんとうにこれを実行する上において、われわれに何ら示さないまま、こういった重要法案の審議に入ろうとせられるのであるかどうか。こういった点につきまして、はっきりとした御答弁を承わりたいのであります。なお、関係閣僚におかれましても、実意をもってこの問題についての御答弁を賜わりたいことを要求いたしまして、私の質問を終るものであります。(拍手)
〔国務大臣鳩山一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/33
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034・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 江崎君の御質問にお答えをいたします。
自衛のために必要な限度においての防衛力の建設は、私は憲法違反にはならないと思います。従って、今回の法律は憲法改正とは関係がございません。
それから、六カ年の案があるようなお話でありますけれども、ほんとうに六カ年の案というものはできておらないのであります。これは国防会議においてきまるのでありまして、成案はないのであります。
それから、本法の制定によっては、私は政治の優先の方がきまると思います。政治の優先は今度の法律を出すことによって確保できるものと考えております。また、内閣が責任をとるということについては当然なことであります。
それから、練達堪能の士について、軍人、あるいは、かつて総理をなしたる者というようなことは、ただいま考えておりません。全く白紙において練達堪能の士を選びたいと思っております。(拍手)
他の質問に対しては防衛庁長官からお答えいたします。
〔国務大臣重光葵君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/34
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035・重光葵
○国務大臣(重光葵君) お答えいたします。防衛分担金交渉において防衛六カ年計画を相手方に提示した事実があるかどうかと、こういうお尋ねでございました。さような計画もございませんわけでありますから、さような事実は全くございませんことを御報告いたします。(拍手)
〔国務大臣一萬田尚登君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/35
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036・一萬田尚登
○国務大臣(一萬田尚登君) 防衛六カ年計画と財政との関係、こういう御質問と思うのでありますが、ただいま外務大臣からも御答弁がありましたように、防衛六カ年計画というものは全然承知をいたしておりません。ただ、今後、防衛庁費といいますか、この防衛に関する財政負担を考える場合におきまして私は、常に日本の経済力に順応したもの、国民生活を著しく圧迫しないというものを条件として考えるべきであるという考えだけを申し上げておきます。(拍手)
〔国務大臣杉原荒太君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/36
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037・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) いわゆる防衛六カ年計画なるものについて、先ほどいろいろと想定までおっしゃいましたが、事実、私の方ではほんとうに研究中でございますので、それは私は存じません。
それから、九州方面の防衛上の重要性というものを具体的に言え、また、その防衛の対象といいますか、いわゆる仮想敵なるものを言えという御趣旨の御質問だったと思いますが、われわれ、今、特にどこが敵だというふうに特定して考えておりません。万一の場合を考えまして、いろいろの場合を考えて考慮しております。(拍手)
また、国防方針等、その他国防会議にかける事項についての御質問でございました。これは私が申し上げるまでもなく、こういう国防会議を設置するということ、及びその所掌事務は、昨年の七月にできたことでございます。これは、自由党内閣において、よくこの点を検討しておきめになったことだと存じます。今度のこの法案の方は、その構成等に関することが残されておりましたので、その部分だけを特に規定いたした次第でございます、国防会議にかけます事柄は、それぞれの事柄によりまして、それぞれの関係庁がまず準備いたしまして、そうして関係省みんなが集まって——言うまでもなく、国防のことはいろいろな角度から慎重に考えなければならぬことはもちろんでありまするから、各省が集まって、まず準備的の処置をする次第でございます。
それから、国防会議の事務局についていろいろ御質問がございましたが、この国防会議の事務局につきましては、現在のところ、割に小規模なことを考えております。若干名の職員と関係行政機関の兼任職員をもって充てることに考えております。政府といたしましては、この事務局の人事及び運営につきましては、特に慎重な態度をもって処理する方針でございます。
それから、会議の議事について、多数決によるかどうかという御質問。会議の議事運営のことは、会議自体が自主的にきめることといたしまして、議長が会議に諮って、そこできめるという建前にいたしております。
それから、国務大臣以外の議員の秘密を漏洩した場合の責任といいますか、処罰といいますか、処分等についての御質問でございましたが、この種の公務員の場合は、御承知の通り、大臣の場合等においても、特に特別のそういった規定はございません。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/37
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038・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 森三樹二君
〔森三樹二君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/38
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039・森三樹二
○森三樹二君 私は、日本社会党を代表いたしまして、内閣提出にかかわる国防会議の構成等に関する法律案について、鳩山首相を初め関係閣僚に対し、本法案は憲法違反の性格を有するものであることを中心といたしまして、以下数点について質疑をなさんとするものであります。(拍手)この再軍備政策をさらに強化せんとする本法案に対しましては、私一人ばかりでなく、八千万国民のひとしく重大関心を持って聞かんとしているところでありまして、鳩山総理並びに関係閣僚は真摯率直に御答弁せられるよう要求する次第であります。
今や、世界の各国は、平和を愛好し、いかにすれば人類永遠の平和に寄与することができるかについて、深い考慮と努力をいたしております。すなわち、来たるべきスイスのローザンヌにおける米英仏ソ四カ国の巨頭会議を初め、目下ブルガーニンソ連首相のユーゴ訪問等による西洋諸国家間の平和への外交は、いずれも前途にその成功を大きく期待されております。また、東洋においては、すでに中共の周恩来首相とインドのネール首相との間における平和五原則による友好条約の締結、近くはバンドンにおけるアジア・アフリカ会議の開催によって、日本もまた世界の平和に寄与するものであることを深く印象づけたのであります。しかるに、吉田内閣の再軍備政策をさらに一歩前進せしめんとする鳩山内閣が、ここに、憲法を無視して、国防に名をかり、往時の軍国日本の参謀本部にも匹敵する国防会議を成立せしめんとすることは、MSA援助によって押しつけられた再軍備による戦争の危険を深めるものと言わなければなりません。(拍手)
憲法の前文には、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、」と規定せられ、また憲法第九条には、武力の行使は永久に放棄すること、陸海空軍その価の戦力はこれを保持しない、国の交戦権はこれを認めないと、明白に規定されております。従って、政府は、憲法の前文並びに第九条の規定及び第九十九条における国務大臣の憲法尊重の義務規定に従い、世界の平和達成に対する努力と貢献をなすべきにかかわらず、鳩山総理は、自衛のための軍隊は——先ほども申されましたように、すでに自衛軍という言葉も使われておりますが、独断的解釈をもって自衛隊を合法化し、さらに本法案を提出するに至っては、まさに世界に盛り上る平和の要求に逆行するものと言わなければなりません。(拍手)これに対し、鳩山首相並びに重光外相の所信をお尋ねしたいのであります。
第二に、鳩山内閣は、日ソ国交回復の実現をはからんとして、松本全権をロンドンに派遣し、まさにソ連のマリク代表と本格的交渉に入らんとしております。国民監視のうちに、日ソ間の戦争終結の宣言とともに、邦人抑留者の引き揚げ、領土の返還を初め、漁業協定の締結等、幾多の難問題を解決せんとする重大時期に直面している今日、かつての日本軍国主義復活を基礎づけんとする本法案の提出は、アメリカの極東軍事基地強化をさらに前進せしめんとするものでありまして、ソ連との国交回復に一大暗影を投ずるものと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)私は、自主中立の平和外交によってのみ日ソ国交回復を実現することができると信ずるものでありまして、これに対し鳩山首相並びに重光外相の責任ある答弁を求むる次第であります。
第三に、去る四月十五日のソ連とオーストリアの共同声明の条項において、オーストリアはいかなる国との軍事同盟にも加わらず、またどのような軍事基地をも認めないと発表いたしております。この原則は、日本の安全と独立を守る上にもきわめて重大な鉄則と思うのであります。日本は、日米安全保障条約第一条並びに行政協定第二十四条によって極東の平和と安全維持のため協力すべき義務を負担しておるのであり、この条約に従ってアメリカより自衛隊の海外派遣を求められた場合、その派遣については国会に諮るべきであると思うのでありますが、防衛庁設置法第四十二条により、内閣総理大臣は防衛出動の可否について国防会議に諮ることに規定されている関係上、本法案が成立の暁におきましては、これら自衛隊の海外出動については今後一切国防会議によって決定されるおそれがあるのであります。すなわち、本法案の目的とするところは、かつての天皇統帥権を総理大臣が一手に掌握し、無謀なる太平洋戦争を国民の秘密裏に決定遂行したと同一の行動をとらんとする計画に基くものと考えざるを得ないのでありまして、わが国の平和と安全を危殆に瀕せしむるものと言わなければなりません。本法案は、すなわち、旧憲法における軍政と作戦用兵の統帥権を区別したその制度の復活であると言わなければなりません。(拍手)自衛隊の海外出動については、国防会議のみによって決するものであるか、それともさらに閣議を経て国会に承認を求むるものであるかについて、明確なる御答弁をお願いする次第であります。
第四にお伺いいたしたいのは、本法案の規定する国防会議の議長は内閣総理大臣となっておるのでありまするが、アメリカの要請があれば日本の領土に原水爆を貯蔵することも差しつかえなしと考えている鳩山総理がこの会議の議長になっておるのでありまして、われわれ八千万の日本人の生命財産は逆に原水爆の報復爆撃を受ける危険にさらされていると言っても過言ではないのであります。この点について、安保条約並びに行政協定には何らの制限規定もないのでありますが、鳩山首相は、原水爆を日本に貯蔵することを要請された場合、断固としてこれを拒絶する意思ありやいなや、また、安保条約並びに行政協定を改正あるいは廃棄すべきであると思うが、この点につき責任ある御答弁をお願いしたいのであります。
なお、小牧飛行場は米軍の原水爆基地として拡張工事が計画されつつあると伝えられ、立川、横田、木更津、新潟等の飛行基地の拡張等が発表され、地元住民の反対は日増しに熾烈になっております。総理は、これら地元民の要求を率直に認め、米軍の要求するこの飛行基地拡張を拒絶すべきであると思うのでありますが、御所見をお伺いいたします。
第五に、国防会議の構成員としては、総理大臣を初め、副総理たる国務大臣、外務、防衛、経済審議庁長官、大蔵大臣の各大臣のほかに、内閣が両院の同意を得て任命する識見の高い練達の者五人以内が参加することになっておりまするが、これは旧軍人を対象としたものと思うのであります。このことこそ、かつての軍閥ばっこを復帰するものであり、侵略的軍備の再現であり、日本を焦土と化すおそれが多分にあるのでありまして、国防会議は変じて国家破滅会議に陥らんとするものであります。(拍手)しかも、これら閣僚以外の構成員の責任の所在をどのように考えておられるのでありますか。国務大臣は内閣を構成し、内閣は憲法上国会に対し連帯して責任を負うと規定されておりまするが、国務大臣ならざる国防会議員の責任は何らの規定なく、単に本法案第六条にその罷免権と、第七条に秘密を守る義務のみが規定されておるのであります。まことに、国民としては、かかる重大なる会議の構成員に対し、その責任を追及することさえも不可能であります。これらの者に対する責任について鳩山首相はいかなる御所見を持っておられるのでありますか、明快なる御答弁をお願いするものであります。
第六に、杉原防衛庁長官並びに高碕経審長官にお尋ねしたいのであります。政府は、今年度末における陸上、海上、航空の各自衛隊の主要編成の増強を計画し、陸上二万名、海上約三千五百名、航空約四千名を増員して、自衛官及び非自衛官を含めて総数十九万六千名に達するものと称され、特に、装備においても、ジェット戦闘機を初め、陸海空の内容を充実すると言われておるのでありますが、この増強はいかなる必要と根拠に基いて策定されておるのでありますか。防衛庁は、杉原長官の指示によって、経済審議庁の経済自立六カ年計画に見合う新防衛六カ年計画の樹立、いわゆる自主的防衛体制の確立と長期防衛計画の策定をされておるようでありますが、これについて明確なる御答弁を要求する次第であります。
なお、防衛上自衛隊の人員増強に付随する重大な問題として、鳩山総理は、かつて、憲法の改正による徴兵法の施行を考えておることを表明されました。この国防会議において秘密裏に徴兵制度採用の意図を有しておられるのではないか、この点について、首相よりの明確なる答弁をお願いするものであります。
最後に、鳩山総理、重光外相、一萬田蔵相にお伺いしたいのは、政府は、防衛分担金の削減により社会保障制度に対する予算の増額を行う旨をしばしば言明されたのでありまするが、ようやく削減されました百二十五億円は、遂に全額防衛庁予算に振り当てられ、国民に対する公約は一片のほごと化したのであります。特に昭和三十年度予算案は、日本政府みずからの判断によって自主的に決定することができず、防衛分担金の削減の折衝に、アメリカ側に叩頭再拝数カ月を費し、ために予算閣議決定は遷延に遷延を来たし、ひいては国会への提出が遅延いたしまして、六月暫定予算はおろか、七月も暫定予算を組まざるを得ない状態であります。これが国民の経済生活に与える影響は、けだし甚大なるものがありますが、これらの政治上の責任はあけて鳩山内閣にあるのであります。これに対する責任ある御答弁をお願いする次第であります。
さらに、防衛分担金削減に関する日米共同声明についてお伺いいたしたいのでありますが、この共同声明に盛られておる内容は、三十年度及び以後の日本財政については重大なる影響をもたらすものであります。これは形式上共同声明と言われておりますが、実質は日本政府の防衛に関するアメリカへの屈従的誓約書と言わねばなりません。すなわち、三十年度以降は日本経済の実情いかんにかかわらず防衛費は必ず増額すべきこと、しかも、三十一年度からは防衛分担金は絶対に削減しないから、行政協定通り五百五十八億円を必ず支払うことが確約されたのであります。このような、将来にわたって、憲法を無視し、国民生活を窮乏に瀕せしめ、日本の財政経済を拘束するような重大な取りきめを行なった日本政府の責任は、きわて重大であると言わなければなりません。かかる屈従的共同声明は、鳩山内閣の政府のみを拘束するものであるか、あるいは将来にわたってその拘束力を有するものであるか、明確なる御答弁を願いたいのであります。
今や、国民大衆は、憲法無視の再軍備政策によって一兆円予算に拘束せられ、しかもその二割強が再軍備に使用せられ、社会保障制度の確立も住宅問題の解決も不可能となり、実に塗炭の苦しみにあえいでいるのであります。従って、戦争準備の非生産的再軍備のために使うような余裕のある日本の財政ではないのであります。私は、憲法違反の再軍備を強化し、参謀本部的存在をでっち上げんとする本法案を政府はすみやかに撤回することを要求するものであります。(拍手)政府はいかなる心がまえを持って本法案を提出されたのでありますか、明確なる御答弁をお願いするものであります。
以上をもって私の質問を終らしていただきます。(拍手)
〔国務大臣鳩山一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/39
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040・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 森君の御質問にお答えをいたします。
憲法違反にはならないと私は思っております。自衛を目的とする場合は憲法違反にはなりません。防衛庁設置法及び自衛隊法によって、すでにもうきまった問題だと考えております。
日ソの交渉に悪影響がありはしないかというお話でありますが、日ソの交渉には悪影響はないと確信をしております。
防衛出動について国会の承認を求めるか求めないかという御質問でありますが、今度できます会議には、ただ諮問をするだけでありまして、もちろん自衛隊法の第七十六条によって国会の承認を求めることは明瞭であります。
それから、原水爆の基地についてでありますが、わが国の同意なしには、一方的にはアメリカは断じて行わないと、私は確信をしております。それから、アメリカが日本に意見を聞く場合においては、私は、現在の状態においては、同意をする気分は少しもありません。
それから、内閣が責任をとるのは当然でありまして、閣外の議員は忠実に義務を行うものと考えております。
長期の防衛計画というものは全くございませんで、研究中であります。
それから、徴兵制度を考えているかという御質問がありましたが、徴兵制度はただいま考えておりません。
予算案はすみやかなる通過を期待しております。七月の暫定予算などは考えておりません。
他の御質問に対しては関係閣僚から答弁をしてもらいます。(拍手)
〔国務大臣重光葵君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/40
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041・重光葵
○国務大臣(重光葵君) お答えいたします。
私は、自衛軍なるものは、自衛のためであって、いかなる他国をも侵略する目的を持っていないのでありますから、これが日ソ国交正常化の交渉に悪影響を与えることは、今内閣総理大臣の御説明の通りに、そういうことはない、こう考えます。
それから、オーストリアの問題でお話がありましたが、オーストリアは、御承知のように、ソ連との交渉によって独立を今回かち得たのであります。日本は独立国として日ソ交渉をなすものであります。従いまして、根本的にその関係は異なっておるということを申し上げます。
それから、防衛分担金の共同声明について、今後のことがある、こういうことについてでございますが、これは鳩山内閣の意向を表したものであって、この意向は将来とも尊重せられることを期待するものでありますけれども、これは国際条約ではございませんことを申し上げます。
なお、御質問の一部にありましたが、飛行場の拡張について米軍の要請は拒絶するか、こういうお話でございますが、これは、共同防衛の責任上、政府は拒否する意向のないことを申し上げます。
〔国務大臣杉原荒太君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/41
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042・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) 御質問に対してほとんど総理大臣がお答えになりましたが、お答えいたします。
この国防会議の設置の理由でございますが、これは、事国防に関することは、申すまでもなく、国家国民の運命に関する重大なことでありますから、慎重の上にも慎重を期し、万遺憾なきを期するためでございます。
それから、国務大臣以外の議員のその職務につきまして忠実に行う義務があることは当然でございまするが、国防会議は総理大臣の諮問機関でございまするから、その答申につきましては内閣が責任を持って処理するわけでございまして、内閣はこれに対して責任を持つわけでございます。
〔国務大臣高碕達之助君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/42
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043・高碕達之助
○国務大臣(高碕達之助君) 経済六カ年計画と長期防衛計画についての御質問にお答え申し上げます。防衛力は国民の経済力に準じて増減すべきものと存じます。経済六カ年計画は、この基礎におきまして、将来国民の経済力が増加するに従って増加することを見込んでおります。従いまして、国防会議において長期における防衛力が審議されますときには、ただいま申し上げました趣旨において合理的に審議されるべきものであると存じます。
〔国務大臣一萬田尚登君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/43
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044・一萬田尚登
○国務大臣(一萬田尚登君) お答えいたします。
防衛分担金と経済あるいは内政費の問題ですが、私は、大蔵大臣といたしまして、防衛分担金の減額を内政費に回すとかいうことは当初より考えていなかったことを申し上げておきます。
それから、防衛分担金の減額の交渉は、日米両国政府で合意の上ということになっておるのでありまするから、どうしてもこれは話し合いをしなくてはなりません。そうしますと、ここにやはり時間をとることも、これは場合によってやむを得ないのでありまして、その結果、私の考えとしましては、大体満足すべき結果に到達したと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/44
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045・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 矢尾喜三郎君。
〔矢尾喜三郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/45
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046・矢尾喜三郎
○矢尾喜三郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されておりまする国防会議の構成等に関する法律案に対しまして、鳩山総理並びに重光外相に対しまして質問を申し上げるものでございます。
まず質問の第一点は、本法案と憲法との関係でありますが、それに先だち強調しておきたいことは、現在までしばしば論議されて参った自衛権の問題であります。現在の平和憲法は、「再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、」「日本国民は、恒久の平和を念願」すると、その前文に日本国民心底からの叫びをうたっておるのであって、侵略戦争、防衛戦争を問わず、一切の戦争の惨禍を否定し、さらに第九条において、前文の根本精神を具体的に強調し、一切の戦力、武力はこれを行使しないことを明らかに打ち出しているのであります。わが国が独立国である以上、自衛は当然必要なことでありますが、重要なる点は、自衛国防がもはや戦力によらないところに国民の念願があり、平和憲法の精神が存するのであります。(拍手)かかる観点よりこのたびの国防会議を見るならば、これは明らかに吉田内閣当時より進んできた再軍備コースの新たなる転機を示すものであって、吉田内閣当時の防衛二法案、教育二法案等が対内的反動行政処置であるとするならば、このたびの国防会議法案はまさに対外的反動法案であると存ずるのであります。(拍手)鳩山総理は、外国の侵略に備える防衛のための自衛ということを盛んに言っておられるのでありますが、このたびの法案では、それより一歩進んで、国際紛争解決の手段とも考えられるのであって、しかも、現在の自衛隊は、総理も明確に認めておられるように、軍隊であって、この自衛隊を軍事的に取り扱うところの国防会議がなお憲法違反でないと言うのは、いかなる根拠によるものか承わりたいのであります。(拍手)
次に、質問の第二点は、このことに関連いたしまして、国防会議設置の理由であります。鳩山総理は、本来違憲である自衛隊再軍備政策をして合憲ならしめんがため、憲法改正を大上段に振りかざして選挙に臨まれたのでありますが、平和を愛する日本国民の厳粛なる審判の前に、ついに憲法改正を断行するに足る勢力を獲得することができなかったのであります。良心ある内閣であるならば、国民に公約せる憲法改正問題を取り上げ、大義名分の立つところに自衛問題を取り上ぐべきであると思うのでありまするが、ここに、条理を踏まず、国民を心服させないままに、なぜに国防会議を設置するか、理解に苦しむものであります。これは、アメリカとの防衛分担金削減交渉の際、防衛計画が不十分であって、アメリカ側を納得させることができず、また中ソ国交回復という公約によって米国の対日感情を阻害したために、国防会議を設置して対米依存度を深め、自衛力漸増の日本側の熱意をアメリカに伝えんとするものであり、さらに、国防会議の設置は、アメリカに強制せられる軍備拡充を合理化する手段であり、アメリカの軍事干渉をカムフラージュする機関であると考えるのでありますが、首相の所信を承わりたいのであります。(拍手)
次に、質問の第三点は、もし国防会議設置がアメリカの強制する軍備拡充の合理化手段でなく、またアメリカの軍事干渉のカムフラージュでないとするならば、行政協定及びMSAと国防会議との関係はどうかということであります。行政協定及びMSA援助のために、自衛隊は非常事態における日米共同防衛の義務、国際緊張の原因を除去する義務を課せられており、しかも、自衛隊法八十八条において明らかに武力による自衛権行使を打ち出し、同法七十六条においては、内閣総理大臣が防衛出動を命じ得るのは、外部から現実に武力攻撃が行われた場合に限らず、単に武力攻撃のおそれある場合を含むとなっており、さらに、このたびの国防会議法案においては、防衛出動は国防会議に諮らねばならないと明記されているのであります。以上のごとき一連の協定、法律をながめ、さらに国際公法の通説である自衛権は隣接せる他国の領土に及ぶという解釈をあわせ考えるときに、アメリカより海外派兵を要請せられた場合、国防会議の議長たる総理大臣は、自衛隊はあくまで国内治安維持のためのものだという信念のもとに、海外派兵は断固として行わないという確信があるかどうか、承わりたいのでございます。
総理は、昨年末の予算委員会において、自衛隊法の制定により自衛のための軍隊に対する世論がだいぶん変化してきたと言っているが、かかる不遜な言葉にわれわれは憤怒の念を押えることができないのであります。国内治安を目的とした警察予備隊が保安隊となり、三変して戦力を有する自衛隊となった事実を顧みるとき、自衛隊法制定による世論の変化は国防会議設置により必ず再変するともくろみ、既成事実の累積の上に世論をしゃにむに自家薬籠中のものにせんとする政府の陰謀を見るのであります。国防会議は内閣の諮問機関であるというが、これは紙上の詭弁にすぎず、国民を欺瞞し、既成事実を作って、海外派兵に至り、徴兵に至って、祖国日本をして対米軍事隷属化の道に陥れるステップであると考えるのでありますが、総理の所信は那辺にあるか承わりたいのでございます。(拍手)
次に、質問の第四点は、国内行政上に占める位置であります。国防会議の議員は、その過半数が議長たる総理大臣の容易に任免し得る大臣と、内閣が選定し両院の同意を得て任命する議員であるということは、総理大臣の独裁制になる危険があると思うのであります。さらに、国防会議設置の陰の推進力は旧陸海軍の軍事専門家であると報ぜられておるが、彼らが国防会議の事務局機構を毎年拡大し、彼ら旧軍人の策動の根拠地たらしめんとしていることは、容易にうなずけるのであります。旧軍人一派が事務局に巣食って、アメリカの意向を背景とし、軍事防衛計画、軍需産業計画、自衛隊出動の事実上の実権を握るようになれば、ゆゆしき大問題であるが、総理はいかに考えられておるか。
第五点といたしまして、最後にお聞きしたいのは、国防会議設置に伴う国内経済及び外交上の問題であります。国防というものは、言うまでもなく、外交、財政、産業、学術等すべてを総合して成り立つものであるが、本法案は、その構成より見て、いたずらに国防会議をして軍事会議と決定しており、もし練達の者が旧軍人をもって組織されるならば、まさに彼ら一派の策動の根拠地となり、また、民間人をもってこれに充てることは、とりもなおさず、しろうとの財界人を加入させるにすぎず、国防の美名に隠れて軍需産業計画を拡大せんとするは必至であります。本法案こそは、かかる意味において、生活にあえぐ中小企業者を圧迫し、勤労大衆の犠牲のもとに軍事産業の優先をはかるものであると考えるのでありますが、総理の所信を承わりたいのであります。(拍手)
さらに、現在中外の情勢を見るとき、去る三月二日、マニラのアジア各国駐在大公使会議において、アメリカのダレス国務長官は、日本経済を中共に依存せしめないため、アメリカは日本に対しより多くの関心を払うと述べて、わが国をSEATOの防衛計画、経済計画、情報計画に引き入れるための新工作の方針を示しているのであります。また、防衛分担金折衝に当っては、日本政府は米国が分担金削減の条件として提出した飛行場拡張とジェット機国産化をのんでおり、この結果、全国七カ所の空軍基地が拡張され、また現に新三菱重工と川崎航空がジェット機の組み立てを開始し、さらに台湾政府と新三菱重工との間に域外発注契約の下交渉が進められているのであります。これらを総合いたしますれば、すでに日本の生産能力がSEATO及び東北アジア同盟の軍装備に動員される方向が明白となって参っているのであります。かかる情勢のもとにおけるこのたびの法案は、単に一国内の行政措置にとどまらず、まさに日本をしてアメリカの対中ソ原子力戦争のための前衛基地化せんとするものであると確信するものでありますが、総理はいかに考えておられるか、承わりたい。(拍手)
さらに続いて、対外的に見るならば、国防会議の設置が呼ぶ海外の反響は、特に中ソ及び東南アジアの論調において、現在の日本としてまことに憂うべき結果を招来すること必定であります。アジア諸国は、日本がSEATOに加入し、東北アジア同盟に参画することを望むのでもなければ、わが国に対して高度の軍需産業を要求するものでもありません。アジア諸国がわが国に求めるものは優秀なる近代的平和産業技術であって、これこそ、永年隷属化をしいられ、そのもとに呻吟してきたアジア民族の血を賭した祈念であって、かようにアジアの希求するところを、われわれ日本国民は人類の名において確認しなければならないのであります。平和を求めて志を同じゅうする世界の国民に永遠の真理を訴え、もはや武力によらずして、平和の悲願に燃えて力強い進歩を続け、果敢な外交を続けるのは、戦争放棄の憲法を持つ日本ではなくして、インドを初めとする東南アジアであるという事実に対して、総理は深い反省をしなければならないと思うのであります。(拍手)このたびの法案は、いたずらに中ソ及び東南アジアとの貿易に暗影を投ずるものであると考えるのでありますが、外務大臣はいかなる所見を持っておられるかということをおただし申し上げまして、私の質問を終るものでございます。(拍手)
〔国務大臣鳩山一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/46
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047・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 矢尾君の御質問に対してお答えをいたします。
紛争解決の手段として用いるのならば全く憲法違反と考えます。たびたび申しますごとくに、自衛のためだけの範囲内においての自衛力は、私は憲法違反にはならないと思います。
それと平和との関係でありますけれども、今日の世の中は、自衛力を持たないということはかえって平和を乱すおそれがありまして自衛力を持つということによって世界の平和は維持できるものと思うのであります。(拍手)
それから、行政協定、MSA協定とは、このたびの国防会議の法律案は全く関係はございません。
海外の派兵あるいは徴兵制等の道をたどるということは、この法案によって全然関係のないことでございます。
対中ソとの原子力戦争の前線基地になるおそれはないかという御質問でありますが、私はそういう関係は全くないと思っております。
他の御質問に対しましては関係閣僚から答弁した方がいいと思いますので、それに譲ります。(拍手)
〔国務大臣重光葵君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/47
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048・重光葵
○国務大臣(重光葵君) お答えいたします。
国防会議を設置するのは国際紛争解決を目的としているのではないかというような御質問でありました。国防会議は国防に関する諮問機関でありまして、むろん国際紛争を解決する目的をもって設置されるものでないことは明らかでございます。
なお、わが国の国防は純然たる自衛のためでありますから、東南アジア方面との貿易に悪影響を与えるということは私はないように考えます。(拍手)
〔国務大臣杉原荒太君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/48
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049・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) 私から御答弁申し上げることはございません。
〔「ちゃんと要求しておるじゃないか」「答弁させろ」と呼び、その他発言する者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/49
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050・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 杉原国務大臣、言葉が足らなかったそうでありますから、もう一度お願いいたします。
〔国務大臣杉原荒太君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/50
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051・杉原荒太
○国務大臣(杉原荒太君) 私に対する御質問は最初ありませんでした。総理からみなお答えになりましたから、私からお答え申し上げることはございませんということを申し上げたのであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/51
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052・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) これにて質疑は終了いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/52
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053・長谷川四郎
○長谷川四郎君 自作農維持創設資金融通法案の趣旨説明は延期し、本日はこれにて散会されんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/53
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054・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/54
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055・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって動議のごとく決しました。
本日はこれにて散会いたします。
午後五時二十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02219550602/55
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