1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年六月九日(木曜日)
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議事日程 第二十五号
昭和三十年六月九日
午後一時開議
一 健康保険法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
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第一 千九百三十六年の危険薬品の不正取引の防止に関する条約の批准について承認を求めるの伴
第二 船舶積量測度法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
第三 道路運送車両法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第四 競馬法の一部を改正する法律案(参議院提出)
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●本日の会議に付した案件
予算委員長の選挙
米価審議会委員任命について国会法第三十九条但書の規定により議決を求めるの件
運輸審議会委員任命について同意を求めるの件
日程第一 千九百三十六年の危険薬品の不正取引の防止に関する条約の批准について承認を求めるの件
日程第二 船舶積量測度法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
日程第三 道路運送車両法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第四 競馬法の一部を改正する法律案(参議院提出)
農業共済再保険特別会計の歳入不足をうめるための一般会計からの繰入金に関する法律案(内閣提出)
昭和二十九年の台風及び冷害による被害農家に対して米麦を特別価格で売り渡したことにより食糧管理特別会計に生ずる損失をうめるための一般会計からの繰入金に関する法律案(内閣提出)
漁船再保険特別会計における給与保険の再保険事業について生じた損失をうめるための一般会計からの繰入金に関する法律案(内閣提出)
臨時通貨法の一部を改正する法律案(内閣提出)
健康保険法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及びこれに対する質疑
午後二時二十五分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/0
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001・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) これより会議を開きます。
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002・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 予算委員長の選挙を行います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/2
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003・長谷川四郎
○長谷川四郎君 予算委員長の選挙は、その手続を省略して議長において指名されんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/3
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004・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/4
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005・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって議長は予算委員長に三浦一雄君を指名いたします。(拍手)
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006・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) お諮りいたします。内閣から、米価審議会委員に本院議員安藤貴君、同村松久義君、同小笠原八十美君、同松山義雄君、同石田宥全君、同川俣清音君及び参議院議員片柳眞吉君を任命するため、国会法第三十九条ただし書きの規定により議決を得たいとの申し出がありました。右申し出の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/6
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007・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よってその通り決しました。
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008・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 次に、内閣から、運輸審議会委員に青盛忠雄君、有沢滋君及び三村令二郎君を任命するため、運輸省設置法第九条第一項の規定により本院の同意を得たいとの申し出がありました。右申し出の通り同意を与えるに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/8
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009・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって同意を与えるに決しました。
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第一 千九百三十六年の危険薬品の不正取引の防止に関する条約の批准について承認を求めるの件発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/9
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010・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 日程第一、千九百三十六年の危険薬品の不正取引の防止に関する条約の批准について承認を求めるの件を議題といたします。委員長の報告を求めます。外務委員会理事菊池義郎君。
〔菊池義郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/10
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011・菊池義郎
○菊池義郎君 簡単に御報告申し上げます。ただいま上程せられました千九百三十六年の危険薬品の不正取引の防止に関する条約の批准について承認を求めるの件につきまして、外務委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本件は、国際連盟主催のもとに一九三六年にジュネーヴで開催せられました麻薬不正取引防止会議において作成されたものでございまして、わが国は同年六月二十六日に署名を行なっております。本件は、わが国がさきに当事国となっておりまする麻薬に関する一九二一年一月二十三日のへーグ条約、一九二五年二月十九日及び一九三一年七月十三日のジュネーヴ条約の補足条約でありまして、これら三条約に対する違反行為を国際的に訴追処罰するための措置を拡充することを内容としておるのでございます。従いまして、わが国は、この条約の当事国となる場合には、麻薬の害毒流入に対する防衛態勢を一そう強化することができるばかりでなく、麻薬の分野における国際協力をさらに促進することができるわけでございます。
本件が五月十七日に外務委員会に付託せられると同時に、本委員会は慎重に審議を重ねました。その詳細につきましては委員会会議録に譲ることといたしまするが、まず政府当局に対する質疑を終りまして、本件を議題といたし、討論を省略して採決いたしました結果、全会一致異議なく承認を与えることに決定したのでございます。
以上、御報告を申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/11
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012・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 採決いたします。本件は委員長報告の通り承認するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/12
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013・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって本件は委員長報告の通り承認するに決しました。
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第二 船舶積量測度法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
第三 道路運送車両法の一部を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/13
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014・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 日程第二、船舶積量測度法の一部を改正する法律案、日程第三、道路運送車両法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。運輸委員長原健三郎君。
〔原健三郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/14
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015・原健三郎
○原健三郎君 ただいま議題となりました二法案につき、運輸委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
まず、船舶積量測度法の一部を改正する法律案について申し上げます。
本法案の趣旨を簡単に御説明いたしますと、現行法では、船舶の純積量を算定するに当り、機関室の積量を総積量から控除することになっておりますが、この控除積量は機関室の積量と総積量との割合が一定の比率以下になりますと急に小さくなり、はなはだしく均衡を失することになっております。
よって、かかる不均衡を是正するため所要の改正を行おうとするものであります。
本法案は去る五月十六日予備審査のため本委員会に付託され、同月二十八日政府より提案理由の説明を聴取し、六月三日本付託され、同月六日質疑に入りましたが、何らの発言もなく、討論を省略し直ちに採決の結果、本法案は全会一致をもって政府原案通り可決した次第であります。
次に、道路運送車両法の一部を改正する法律案について申し上げます。
本法案は、道路運送車両法実施後の実情にかんがみ、行政の簡素化をはかることを目的とするもので、その要旨は次の通りであります。
第一は、自動車の登録事項から原動機番号を削除し、原動機の型式を追加したことであります。第二は、営業用旅客自動車で、整備の状態が良好であり、かつ車齢、走行距離等が政令で定める基準に適合するものについては、現在九カ月となっております検査証の有効期間を一カ年まで伸長することができるようにいたしたことであります。第三は、自動車の登録、検査及び整備に関する諸規定を改正したことであります。
本法案は本月六日本委員会に付託され、直ちに政府より提案理由の説明を聴取し、七日質疑に入りましたが、格別の発言もなく、次いで討論を省略、採決の結果、全会一致をもって本法案は政府原案の通り可決いたしました。
以上、二法案について御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/15
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016・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 両案を一括して採決いたします。両案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/16
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017・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって両案は委員長報告の通り可決いたしました。
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第四 競馬法の一部を敏正する法律案(参議院提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/17
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018・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 日程第四、競馬法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。農林水産委員長綱島正興君。
〔綱島正興君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/18
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019・綱島正興
○綱島正興君 ただいま議題と相なりました、参議院提出、競馬法の一部を改正する法律案につきまして、農林水産委員会における審議の経過及び結果一の大要を御報告申し上げます。
現在、競馬の施行者は馬券を発売し、その収益によって畜産の振興及び地方財政等に寄与することになっておるのでありますが、最近主として地方競馬を対象として馬券購入の取次を業とする者が増加いたし、しかも、これらのほとんど全部はいわゆるのみ行為を行なっておりますことは天下周知の実事でありまして、検察庁の調査によりましても、去る二月現在で、東京、静岡を筆頭に各地に千数百の業者が蠢動し、年間平均百億円以上を取り扱っておるありさまでありまして、これを放置いたすにおいては、競馬の健全なる施行を阻害するはもちろん、社会公安上においてもきわめて悪影響をもたらすものと思われるのであります。しかるに、のみ行為の禁止は現行法にも規定せられておりますが、検察当局においてもその証挺はなかなかつかみがたく、馬券の取次業そのものを禁止しなければ、のみ屋の防渇は困難な事情にあります。よって、これと同様の事情が見られた競輪その他同種競技においてもすでに取次業禁止の措置がとられた例にならいましてこの際競馬についても同様の立法措置を講じようとして本案が提出されたのであります。すなわち、業として勝馬投票券の購入の委託を受け、または財産上の利益をはかる目的をもって不特定多数の者から勝馬投票券の購入の委託を受けた者は、三年目下の懲役もしくは三十万円以下の罰金に処するという罰則規定を競馬法に設け、もってのみ行為防遇に万全を期そうといたすものであります。
本案は参議院の提出でありまして、農林水産委員会には六月…日に付託となり、同八日、提案者を代表して参議院農林水産委員長江田三郎君より提案理由の説明を聞きました後、稻富、川俣、助川、大森等の各委員より、場外馬券問題、アラブ馬問題、競馬の平日開催の自粛問題等、現在の競馬が直面している重要問題に関し、提案者並びに政府当局に対して質疑が行われましたが、のみ屋対策の実施は早急を要しますので、競馬に関する一般問題の質疑は後日に譲ることといたし、本案に対する質疑は一日をもってこれを打ち切り、討論を省略いたしまして直ちに採決を行いましたところ、委員会は全会一致をもって原案の通り可決すべきものと議決いたしたのであります。
詳細は速記録に譲ることといたしまして、大要の御報告を申し上げます。何とぞ御審議の上、御賛同を賜わりたいと存じます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/19
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020・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/20
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021・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって本案は委員長報告の通り可決いたしました。
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農業共済再保険特別会計の歳入不足をうめるための一般会計からの繰入金に関する法律案(内閣提出)
昭和二十九年の台風及び冷害による被害農家に対して米麦を特別価格で売り渡したことにより食糧管理特別会計に生ずる損失をうめるための一般会計からの繰入金に関する法律案(内閣提出)
漁船再保険特別会計における給与保険の再保険事業について生じた損失をうめるための一般会計からの繰入金に関する法律案(内閣提出)
臨時通貨法の一部を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/21
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022・長谷川四郎
○長谷川四郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出、農業共済再保険特別会計の歳入不足をうめるための一般会計からの繰入金に関する法律案、昭和二十九年の台風及び冷害による被害農家に対して米麦を特別価格で売り渡したことにより食糧管理特別会計に生ずる損失をうめるための一般会計からの繰入金に関する法律案、漁船再保険特別会計における給与保険の再保険事業について生じた損失をうめるための一般会計からの繰入金に関する法律案、臨時通貨法の一部を改正する法律案、右四案を一括議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/22
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023・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/23
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024・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって日程は追加せられました。
農業共済再保険特別会計の歳入不足をうめるための一般会計からの繰入金に関する法律案、昭和二十九年の台風及び冷害による被害農家に対して米麦を特別価格で売り渡したことにより食糧管理特別会計に生ずる損失をうめるための一般会計からの繰入金に関する法律案、漁船再保険特別会計における胎与保険の再保険事業について生じた損失をうめるための一般会計からの繰入金に関する法律案、臨時通貨法の一部を改正する法律案、右四案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。大蔵委員長松原喜之次君。
〔松原喜之次君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/24
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025・松原喜之次
○松原喜之次君 ただいま議題となりました四法律案につきまして、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
ます、農業共済再保険特別会計の歳入不足をうめるための一般会計からの繰入金に関する法律案について申し上げます。
この法律案は、昭和二十九年度におきまして、風水害、冷害等が異常に発生したため、農業共済再保険特別会計の農業勘定の支払い財源に不足が生するに至りました。その不足を埋めるために、昭和三十年度において、一般会計から二十八億円を限度としてこの会計の農業勘定に繰り入れることができることといたそうとするものであります。なお、この繰入金につきましては、将来この会計において決算上の剰余金を生じた場合には再保険金支払基金勘定へ繰り入れることになっておりますが、その金額を差し引き、残額を一般会計に繰り戻すことといたしております。
次に、昭和二十九年の台風及び冷害による被害農家に対して米麦を特別価格で売り渡したことにより食糧管理特別会計に生ずる損失をうめるための一般会計からの繰入金に関する法律案について申し上げます。
この法律案は、昭和二十九年八月及び九月の台風並びに同年中の冷害による被害農家に対して一定の基準に基いて米麦を特別価格で売り渡したことによりまして食糧管理特別会計に生じました損失約一億二千万円を埋めるため、昭和三十年度におきまして、一般会計からこれらに相当する金額を限度としてこの会計に繰り入れることができることといたそうとするものであります。
次に、漁船再保険特別会計における給与保険の再保険事業について生じた損失をうめるための一般会計からの繰入金に関する法律案について申し上げます。
この法律案は、漁船乗組員給与保険法の規定により漁船の乗組員の抑留を保険事故とする給与保険につきまして、昭和二十九年度において保険事故が異常に発生いたしましたため、さきに、とりあえず一昨年十二月一日から昨年十月十五日までの間における損失を埋めるため、一般会計からこの会計の給与保険勘定に千五百万円を繰り入れることができることといたしたのでありますが、その後も引き続き保険事故が異常に発生し、本年三月三十一日までにさらに約七百万円の損失を生ずることとなりましたので、今回この損失を埋めるため、昭和三十年度におきまして、一般会計からこれに相当する金額をこの勘定に繰り入れることができることといたそうとするものであります。
最後に、臨時通貨法の一部を改正する法律案について申し上げます。
現在臨時通貨法上認められている補助貨幣は十円を最高の額面とするものでありまして、この系列をもってしては現在の経済取引の実情に即応し得ないうらみがありますので、新たに五十円の臨時補助貨幣を加え、この五十円の臨時補助貨幣は千円を限度とし法貨として通用する旨の規定を設けようとするものであります。
右四法律案につきましては、本委員会に付託せられて以来慎重に審議を重ねました後、本九日討論を省略して直ちに採決に入りましたところ、全会一致をもって本案は原案の通り可決いたしました。
以上、御報告申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/25
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026・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 四案を一括して採決いたします。四案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/26
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027・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって四案は委員長報告の通り可決いたしました。
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一 健康保険法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/27
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028・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) これより健康保険法の一部を改正する法律案の趣旨の説明を求めます。厚生大臣川崎秀二君。
〔国務大臣川崎秀二君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/28
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029・川崎秀二
○国務大臣(川崎秀二君) 健康保険法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明いたします。
今回の改正案の具体的な提案理由に入ります前に、当面いたしておりまする健康保険の諸問題とこれの処理対策につき御説明いたしたいと思います。
健康保険制度は、昭和二年実施以来、わが国社会保険の中核として、労働者の生活に不可欠の制度として親しまれ、その制度内容も逐年充実を重ねてきておるのでありますが、昭和二十八年の末に至りまして、相次ぐ医療費の増高が収入を上回り、昨年度に入りまして以来、保険経済はきわめて困難なる事態に立ち至ったのであります。この情勢に対処して、政府は、昨秋以来、被保険者の報酬の実態を把握いたしますとともに、不正請求、不正受診、不正受給の排除を行い、また保険料収納率の向上等の行政措置を強化いたしまして、極力財政の健全化をはかって参ったのでありますが、それにもかかわらず、政府管掌健康保険におきましては、昭和二十九年度約四十億円の赤字が生じ、本年度、すなわち昭和三十年度におきましては、その赤字額がさらに約六十億円と見込まれるに至ったのであります。医学の進歩と国民の保健衛生思想の向上とに伴いまして、医療費が逐年増加する趨勢にありますことは、決して悲しむべきことではなくして、近代福祉国家の当然の傾向としての要素を含み、やむを得ないことでありますが、問題はこの医療費をいかにしてまかなうかという点にあると思うのであります。社会保険の従来の仕組みの中におきましてこの医療費の増高をまかなうに足る保険料収入が確保されるならば問題は簡単でありますが、今日の健康保険の情勢は、従来の制度のままで毎年増大する医療費に対処することがきわめて困難な情勢にあると考えられるのであります。
〔議長退席、副議長着席〕
従って、健康保険制度の将来にわたっての恒久的な発展を期するためには、この際保険制度の根本的な検討が必要であると考えられ、引き続き調査研究を重ねている次第であります。しかしながら、問題はきわめて重大であり、かつ広範にわたりますため、その結論を得るまてにはなお若干の日時を必要としますので、昭和三十年度の予算の編成に際しましては、さしあたり当面収支の均衡のとれる財政措置を講ずることといたしたのであります。すなわち、昭和三十年度の予算におきましては、前年度と今年度との赤字見込み総額約百億円に対し、七十億円については国の財政的援助によって解決することとし、国庫の負担で赤字の半額を解決する以上は、残りの約三十億円については保険経済自体において収入増加の措置を講ずることといたしたのであります。保険経済自体における収入増加の措置といたしましては、法律に認められている範囲内における保険料率の引き上げを中心といたしまして標準報酬等級の改訂等を考慮した次第であります。
以上申し述べましたように、当面の健康保険の財政的措置といたしましては、予算措置及び行政措置によりまして赤字の大部分を解消することとし、あわせて健康保険法の一部を改正することにより、これに対処することといたしたのであります。従って、要約をいたしますれば、今回の改正法案そのものは、あたかも氷山の露頭の一角でありまして、法案自体よりも、問題はただいま御説明申し上げましたバック・グラウンドの重大性にあることを御了解願いたいと思うのでございます。
この法律案は主として右の趣旨に基き提案いたしたのでありますが、改正の機会に、従来から問題がありました点について、制度の不備を是正し、その他制度の合理化をはかるために、若干の改正を行わんとするものでありまして、その内容は、第一に、被扶養者の範囲を被保険者の三親等内の親族までとすること、第二に、標準報酬の等級を最低四千円から最高四万八千円までの二十三等級に改めること、第三に、厚生大臣または都道府県知事の検査に関する規定を整備すること、第四に、継続給付資格期間を一年に延長すること、第五に、不正受給者に対して損失を補てんさせる措置を講ずること、第六に、第三者の行為によって発生した事故につき受給権者が損害賠償を受けたときは、保険者は保務給付の責めを免れること等であります。
以上が、この法律案を提案しました理由であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。(拍手)
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健康保険法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/29
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030・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) ただいまの趣旨の説明に対する質疑に入ります。野澤清人君。
〔野澤清人君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/30
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031・野澤清人
○野澤清人君 私は、ただいま議題となりました健康保険法の一部を改正する法律案に対し、自由党を代表いたし、鳩山総理大臣、一萬田大蔵大臣及び川崎厚生大臣に質疑をいたすのであります。
第一は、鳩山民主党内閣の基本的な厚生行政についてであります。今般、政府は、健康保険の赤字財政の危機に直面し、赤字補てんの臨時処置として国庫負担の線を不用意にも打ち出し、さらに長期資金の貸付等により当面の弥縫策を政治的に実施いたしました反面、これが対策として健康保険法の改正案を上程いたしたのであります。すなわち、本改正案の内容を見まするに、標準報酬の引き上げが骨子でありまして、別に行政的に計画しております保険料率の値上げとともに、きわめて安易な健保財政の裏づけをいたさんとするものでありますが、政府は本法案を軽々しく上程したのでありまして、鳩山内閣は、単なる選挙公約に基く社会保障制度の拡充強化をスローガンとして、政治的に一時しのぎをしようといたしたのであります。本案を通じ、民主党内閣は、果して政策的なものを織り込んであるのかどうか。遺憾ながら、それはみじんを感じられないのであります。(拍手)つまり、政府は、昭和二十九年度の四十億円の赤字対策と、さらに昭和三十年度分の赤字の見込み額を故意に圧縮想定いたしまして、これが補強財源として別途に赤字の一部を事務的に補充する目的をもって今度の健保の改正を策し、保険料率の引き上げにより二十五億円及び標準報酬の引き上げにより五億円、合計三十億円の財源をきわめて安易に増加せんとばかり、さらに不足分を長期融資に依存したものであります。一時的なこの赤字対策は、当然、国民の世論により、ますますきびしく批判され、この便宜主義的ないわゆる抜本策こそ、民主党の本質的な政策上の矛盾を暴露したものでありまして、政策はおろか、むしろ継ぎはぎだらけの上塗り対策であると断言せざるを得ないのであります。
何となれば、現内閣の健保対策は、保険制度の内部の検討はもちろんのこと、健保の赤字解消に対する基本的な方策が何ら具体的に示されておらないのであります。そのため七十億の赤字が単なる国庫の余裕金に依存せしめられたのでありまして結果的にこれを見ますならば、鳩山内閣は、公約無視どころか、健保財政の輪郭だけの整備をしたものにすぎぬものと極論せざるを得ないのであります。ことに、保険料率及び標準報酬の引き上げ等は事業者、被保険者の犠牲においてのみ立案せられたもので、この対策の根底を流れるものは鳩山内閣の無策と不誠意のみであります。換言するならば、多年論議せられました社会保険の根本問題が改正法の対象ともならずして、わずかに厚生大臣の隠れみのである七人委員会の設置を見たにすぎないのであります。かくのごとく、民主党内閣の社会保険対策には決定的な政策を加味し得なかったのでありまして、この事実こそ、政府みずからがきわめて無計画、無方針の弱体内閣であることを裏書きするのみならず、天下にその醜態をさらし、国民をして、無為無策の鳩山内閣こそ、しごく迷惑千万であると嘆かしめざるを得ないと思うのであります。(拍手)
ここにおいて私は鳩山首相にお尋ねいたすのでありますが、今回の健康保険法の改正はいかなる意図のもとに立案せられたのか、その方針と、これを国会に提案せられた現内閣の政治的責任を明らかにしていただきたいと思うのであります。
なお、川崎厚生大臣には、この改正法案に現内閣の特別な政策上の含みがあったのかどうか、あったとするならば、いかなる点に反映しておるのか、具体的にお示し願いだいと思うのであります。
質問の第二の要点は、本法案をめぐる手続と予算措置の問題についてであります。政府は、保険医療の基本問題である保険医制度、医療費算定、診療報酬支払い制度等を初め、幾多の重要事項をたな上げするのみならず、さらに医療担当者の乱診乱療や、医師の不正受診等の弊害や欠陥を積極的に解決する熱意を示すことなく、わずかに保険監査の書類提出にお茶を濁す程度の法案を掲げたのみでありましてことに、今次の保険料率の引き上げ、標準報酬の引き上げ等を検討するならば、その内容は実に厚生官僚の事務的な窮余の策で、迎合的な官僚のつつがなき施策をそのまま鳩山内閣が取り入れたものであると信ずるのであります。(拍手)
社会保障制度審議会並びに社会保険審議会においては、いずれも健康保険の根本対策に対する政府の不誠実を唯一の理由として、保険料率、標準報酬引き上げ絶対反対が表明せられたのであります。しかも、その改正法の骨子となったものは、現行三千円より四千円に引き上げ、さらに等級をふやして七万円までを計上したのでありますが、事業者代表のみでなく、労働者の代表に至るまで、そのほとんど大部分の委員に反対せられ、やむなく原案を一夜にして修正いたしまして、閣議決定を形式的に終了し、その翌日四千円より四万八千円の二十三級の報酬額の原案にすりかえをいたしましたことは、たとい手品師の早わざとしても、まことに納得し得ざる立法措置であると思うのであります。民主党切っての闘士川崎君が、せっかく悲壮な決心で天下第一の手品師の看板を掲げたところ、まことに不運にも、その手品の種あかしになってしまったのであります。ここにおいて、一萬田蔵相に対し、標準報酬改訂による四千円から七万円の第一案が四万八千円にすりかえられましたが、その差額はいかように処置せられるのか、また、今度の改正案が否決または継続審議になったら予算措置をどうするのか。この点、明らかにしていただきたいと思うのであります。
さらに、川崎厚生大臣に対しまして、社会保障制度審議会及び社会保険審議会のこの二つの機関が最も有力な意思決定をしたにもかかわらず、断固これを強引に押し切って今次の改正案を上程されたのでありますが、この政府の態度は、審議会の権威を失墜させたのみでなく、官僚独善の緊急対策に便乗して、事務官僚への依存を政府みずからが助長せしめ、政党内閣の無策を暴露するの悪習を作ったもので、権威ある二つの審議会の意思をじゅうりんし、世論の帰趨を考慮せざる最も悪質なる民主議会の不信行為であると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)よって、鳩山内閣は、この暴挙に対し、すみやかに反省するはもちろんのこと、世論のしからしむるところに従い、社会保険の根本対策を早急に樹立するの条件を誠意をもって披瀝いたしまして本法案を撤回し、合理的な根本対策の完成を待ってあらためて提出するのが国民の総意にこたえるゆえんであると思うが、川崎厚生大臣はこの点に関しいかなる誠意と決断をお持ちになられるか、きわめて勇敢に御決意を伺う次第であります。
第三の質問の要点は、今日の健保の赤字の最大の原因が医療費の放漫な給付によるものであることは明白な事実でありまして、すでに、川崎大臣は、保険監査をしたら、その成果として、本年の一月分が一億五千万円、二月分で一億二千万円の節約ができたと報告しております。単に政府当局が保険監査の督励により一カ月一億五千万円もの成果が生まれたのでありますから、このまま実施しましても、優に年間最低十八億円の節約は可能となり、さらに、現下わが国の国民的な悪習となっております医師や被保険者の一部のものが行なっております不正事実の厳正な摘発や指導監督を着実に励行するならば、本年度の見込み赤字をはるかに上回ることは明らかでありまして、少くとも予期以上の成果が十二分に持てると推察されるのでありますが、川崎厚生大臣は、昭和三十年度においていかほどの金額が予算編成の対象となったかどうか、さらに、あなたのその想定金額は、この健保の改正によってどのくらい監査がきびしくなり、どのくらいの金額が節減されるか、簡明にお漏らしを願いたいと思います。
最後に、川崎厚生大臣の抱負と決意を聞いておきたいのでありますが、項目別に申し上げますから、的確な御答弁を願いたい。第一は、社会保険の根本対策として考えられております事項についてであります。第二には、そのうち実施すべき重要な実施の順序についてであります。第三は、新医療費体系の完了見込みについてであります。第四は、根本対策に制限診療を加えるかどうかということであります。
以上は、自由党の多年の貴重な経験を基礎として、日本の社会保険制度の育成強化に万遺憾なきを期せられることを念じつつ、特に鳩山首相以下各閣僚に対し——日本の社会保障制度は多年社会党の一貫した主張でありましたが、これを実際国政の上に反映したのはわが自由党でありまして、今日の発展を示しましたものは全くわが党の功績であると思うのであります。同じ保守系の民主党が、組閣以来半歳にも及んで今日の状態では、まことに悲しむべきものであると存じますので、極力、本問題に関しましては、わが自由党は協力を惜しまないのでありますけれども、もっと着実な対策をいたさるるよう特につつしんで御忠告を申し上げて、私の質疑を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/31
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032・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 内閣総理大臣及び大蔵大臣は参議院の予算委員会に出席されておりまするので、両大臣の答弁は適当な機会にお願いすることにいたします。
厚生大臣川崎秀二君。
〔国務大臣川崎秀二君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/32
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033・川崎秀二
○国務大臣(川崎秀二君) 野澤議員の質問に対してお答えいたします。
健康保険の赤字は、御承知の通り、昭和二十八年以来累増いたして参ったのでありまして特に昨年度の赤字がおもであります。私が厚生省の責任者として引き継いだときには、すでに四十一億の赤字となっておりましたので、従って赤字対策の責任を御追及でありましたが、私は、今日まで、むしろその解決策に当っておるような次第でございます。(拍手)
また、国費負担を軽率に行なったと言われますが、一千四百万に上る健康保険に加入しておる者は、日本国民の六分の一に該当するのでありましてこのような多くの大衆がかかっておる医療保険が危機に到達しておるとすれば、その一半はやはり国が責任をもって解決しなければならぬ、国費負担こそ社会保障の充実にとってとるべき第一の政策であると私は考えた次第であります。(拍手)
それから、社会保障政策の前進を一体今度の法案に盛っておるかどうか。私は、第一に国が責任を持ったということにつきまして、従来よりはやはり社会保障政策の充実強化に当っておるということを、責任を持ってお答えができると思うのであります。(拍手)
それから、次に御質問のありました新医療費体系の問題でありますが、この問題につきましては、健康保険制度の根本的立て直し策について目下調査研究中でありまして、健康保険制度の根本的な問題である保険医療組織との関連において、新医療費体系をことしの秋ごろまでには成案を得たいと思っております。
なお、社会保障制度審議会の意見を無視したというようなことでありましたが、社会保障制度審議会並びに社会保険審議会では、労使の間におきまして非常に反対があり、結論として反対であるという答申を得ております。しかしながら、その経緯を見ますと、学者や中立の方々の中には、政府の原案をもって最も妥当な政策であるという意見もあり、かつ、政府案の修正したる一部を見るならば、これが最も妥当であろうという意見も相当多数に上っておるのでありまして、そのような観点から、一部修正をしてここに提出をいたしたということをお答え申し上げたいと思うのでございます。
なお、保険医やその他の監査をした結果どのくらいの赤字を圧縮することができたかという具体的な御質問があったと思います。これは、本年の一月並びに二月におきまして、保険医の監査並びにその他の行政措置を通じまして、一月において一億五千万円、二月において一億二千万円の赤字を圧縮することができましたので、引き続きこれについて努力をいたしておる次第でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/33
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034・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 滝井義高君。
〔滝井義高君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/34
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035・滝井義高
○滝井義高君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案理由の説明がありました健康保険法の一部を改正する法律案について、鳩山総理以下関係閣僚に質問をいたさんとするものでございます。
まず第一に鳩山総理にお伺いいたしたいと思いますが、総理は不在でございますので、いずれ機会をあらためて質問に対する御答弁をいただきたいと思います。
まず第一に鳩山総理にお伺いをいたしたい点は、鳩山総理は予算委員会等を通じて国を守る努力と同時に国民の生活を守る努力をやっていくと言明をされました。すなわち、バターも大砲もというのが民主党の政策なのでございまして、その民主党の政策の基本的な現われがすなわち経済六カ年計画であったと思うのでございます。一方、私たちは、現実に憲法二十五条を持っております。憲法二十五条においては、国民は少くとも健康で文化的な最低の生活を営む権利を持ち、国は社会保障と社会福祉と公衆衛生の向上増進に努めなければならないことになっておるのでございます。そうだとするならば、厚生行政なき貧乏な日本の国民生活を守るために、総合経済六カ年計画の少くとも一環として、社会福祉六カ年計画ないしは社会保障六カ年計画というものを内閣は作るべきであると思うが、鳩山総理のこれに対する所見をお伺いいたしたいのでございます。(拍手)
次に川崎厚生大臣にお尋ねをいたしたいのでございますが、迫りくる健康保険の赤字の根本的な原因は一体何なのかということであります。政府は、その健康保険の赤字というものについて、まず第一に、昭和二十八年以来政府がとり来たったところの結核対策の拡大並びに往診料、入院料の引き上げ、第二番目に、医療の不正、すなわち乱診乱療、第三番目には、デフレ政策の遂行によっていわゆる企業の不況が保険料の滞納を慢性化してきたという、こういう三つの原因をあげておるのでございますが、この原因は、どれも、その原因を現象的に、表面的にとらえておるのでございます。従って、その原因のとらえ方が表面的であり、現象的であるがゆえに、政府のこれに対する対策もまたこそく的たらざるを得ませんでした。
まず第一に政府のとった政策は、行政措置による赤字対策でございました。これは、医療の適正化の名のもとに、監査を強化しようといたしております。また、法律のワク内において保険料率の引き上げを断行しようといたしておるというのが、行政措置による赤字対策の中心でございます。さらに第二には、今川崎厚生大臣からるる御説明のありました、法律改正による赤字対策であります。さらに第三には、政府は、純財政的な赤字対策としては、般会計から、わずかに十億円の、性格不明な——これが果して国庫負担であるのか赤字補てんの一時的なものであるか不明な十億円の金を厚生保険の特別会計につぎ込んでおるということ、また、六十億円の金を資金運用部から、しかも資金運用部のあの運用計画には入っていない六十億円という金を厚生保険の特別会計に借入金としておるということ、この三つの、きわめてこそく的な、一時的な赤字対策しかとり得なかったということなのでございます。
しかも、その赤字対策の一つ一つを検討してみますと、保険料率の引き上げといい、あるいは標準報酬の改訂といい、すべてこれは働く大衆の犠牲において日本の社会保険の危機に直面する赤字を解決しようとする、こそくな対策以外には何ものもないということでございます。(拍手)しかも、そればかりではございません。監査の強行によって必然的に医療内容は低下し、そのしわは、弱い、働く大衆である患者に寄ってくることも、また火を見るより明らかであると申さなければなりません。このように大衆犠牲の政策であると考えるが、川崎厚生大臣はそのような見解を持たないかどうか。これが川崎さんに対する質問でございます。
さらに、私たちは、赤字の根本的な原因はもっと深いと思っております。日本の健康保険の病根は深いと考えているのでございます。
ます第一の赤字の原因は、医師の数が飛躍的に増加をして、欧米並みになって参ったという点でございます。人口九百人に対してすでに一人の割合で医師が増加をいたして参りました。しかも、現実においては、医科大学というものは四十七校もあって、年々歳歳二千人ないし三千人の新しい医者が私たちの就職戦線に加わってきているということであります。
第二の根本的な原因は、日本の医療水準というものが世界的な水準に達して参ったということです。昨日ニューヨークで発見せられた医薬品は、そのまま翌日においては日本の第一線の医療機関で使われているということ。昨年から今年にかけて医療費が四割も増加をしてきているということは、すなわち最新の医学と医療の薬品が使われているということを意味するのでございます。さらに第三の原因は、もはや、現在の医療というものが、国民各階各層にわたって、老若男女を問わず、まんべんなく均一に注がれているということでございます。昭和二十二年までの状態を見てみますと、日本の医療費というものは主として結核や肺炎や乳幼児の死亡に注がれておりました。すなわち、乳幼児と青年に注がれておったのでございますが、最近における日本の人口構成というものは、老人方が多くなって参りました。たとえば、脳溢血だとか、老衰病とか、あるいは老人に多いガン腫というような、こういう老人性の疾患に多くの医療費をつぎ込まなければならない状態が出て参ったということであります。青年にも、乳幼児にも、そして老人にも、多くの金が必要になって参ったということでございます。
さらに第四の大きな赤字の原因は、デフレ政策の強行によって大衆の生活が窮乏化するとともに、いわゆる病人が多くなって、健康保険を利用する大衆が多くなってきたということでございます。
さらに第五には、医療費は飛躍的に増加していくけれども、国民所得はこれに伴わないということであります。昨年から今年にかけての国民所得はわずかに四財の増加であったけれども、医療費は実に四割以上増加したというこの現実でございます。
さらに第六には、制度自体にまつわる問題でございます。日本の健康保険制度というものは、かのビスマルクの時代にできた制度でございます。このビスマルクの時代における人間の平均寿命は、わずかに四十六歳でございました。しかし、現在の人間の平均寿命は、世界的にはすでに七十歳になんなんといたしております。生活条件の悪い貧乏な日本においても、すでに平均寿命は六十五歳になって参りました。四十六歳のときにできたその制度が、平均寿命が七十歳になんなんとする現実において適合しない矛盾が出てくることは、当然と申さなければなりません。
このように、現在の日本の健康保険制度の病根は深いと申さなければなりません。現在、日本にだきましては、このような健康保険の赤字に対するところの対策としては、口を開けば社会保険の統合一元化の問題が論ぜられております。わずかの国庫負麺の問題が論ぜられておりますが、もはや、それだけでは解決できません。それらの社会保険の統合一元化の問題とともに、医育機関の乱立を防ぎ、医療行政の一元化をはかり、医療機関の無秩序な分布を是正し、同時に、アメリカ資本の大きな支配を受けようとしている製薬業自体の自由放任をも是正するところの総合的な対策を立てる以外には、日本の社会保険、特に健康保険の赤字の解決はできないと考えるのであるが、行政管理庁長官の所見並びに川崎厚生大臣の所見をお伺いいたしたいのでございます。(拍手)
次に、健康保険と結核に対する関係についてでございます。健康保険は、御存じのように、短期保険でございます。この短期の健康保険をもって長期の疾患である結核をまかなうところに、大きな矛盾が健康保険に出て参りました。健康保険の医療費の実に四割は結核が食っております。入院料の六割以上は結核が食っております。政府は、特に大蔵大臣は、この健康保険り会計の中から結核の保険を別に取り出して独自の結核保険というものを作る意思はないかどうかという点でございます。同時に、これは川崎厚生大臣の所見もお伺いいたします。
さらに、現在、日本においては、結核の対策としては結核予防法があり、公費負担の制度がございます。すなわち、国が四分の一、都道府県が四分の一、計二分の一の結核に対する費用の支出が行われる制度がございまするが、地方財政の赤字で、都道府県の負担分である四分の一の負担ができないために、いたずらにそのしわ寄せが健康保険に参っておるということであります。ここにもまた健康保険の赤字の大きな原因があると思うのでございますが、大蔵大臣は、思い切って、地方財政の赤字解消の一助としてもまた、ここに公費負担制度を拡充して、生成発展をする結核対策を打ち立てる意思はないかどうか、これをお伺いいたしたいのでございます。
次に、社会保険、特に健康保険の赤字対策に対する政府、民主党の態度でございます。民主党は、選挙のときにおいては、医療費の五%の国庫負担と三割の患者負担を選挙公約のスローガンとして掲げました。ところがこれが大衆の反対にあうと見るや、いち早く引っ込めまして、内閣をとるや、一割五分の国庫負担の実現に向って大蔵省に予算を要求いたしました。ところが、大蔵省の反対にあうや、その一割五分の国庫負担を引っ込めまして、さらに保険料率の引き上げと標準報酬の改訂を持ち出したのでございます。ところが、さいぜん野澤議員からも指摘されておりましたように、この標準報酬の改訂や保険料率の引き上げが社会保険審議会や社会保障制度審議会の反対にあうや、今度はその原案を改訂いたしまして、国会には四千円から四万八千円に変えて提出をいたして参りました。ところが、同時に、予算案そのものは、四千円から七万円の予算案をそのままにしておるということでございます。わすかに二、三カ月の間に、社会保険の赤字に対する民主党、政府の対策というものが、ネコの目の変るがごとく、走馬灯のごとくに無方針に変って参ったということでございます。なぜ民主党は自信を持って社会保険の対策を打ち立てることができなかったのか、なぜこのように走馬灯のごとくに変らなければならなかったのか、その具体的な理由を鳩山総理並びに川崎厚生大臣にお尋ねをいたすとともに、もしこの法案が審議未了に終った場合にはいかなる措置をとられるか、あわせて御答弁をお願いいたしたいのでございます。
最後にお尋ねをいたしたい点は、健康保険の赤字と医療機関の赤字でございます。政府は、健康保険の赤字の問題をはなばなしく政治の舞台に登場せしめて参りました。あたかも健康保険の赤字の問題が解決すれば日本の一切の医療保険の問題は解決するかのごとき錯覚を国民に与えようといたしております。私は、これはきわめて悪い宣伝だと思います。現在、日本におきましては、健康保険、社会保険が赤字であるばかりでなくして、日本の全医療機関が赤字でございます。国立といわず、公立といわず、私立といわず、日本の全医療機関が赤字であるということであります。日本の医療保険の問題を真に政府が解決しようとするならば、この健康保険の赤字とともに日本の全医療機関の赤字の問題を解決する以外には、国民の医療は守ることができないと思うのでございますが、川崎厚生大臣は日本の医療機関の赤字と健康保険の赤字を同時に解決する方法を持たれておるか、これをお聞きいたしたいのでございます。
以上、要するに、日本の健康保険、社会保険は大きく行き詰まっております。重大な赤字の危機に直面をいたしております。制度的にも行き詰まっておるのでございます。これはう日本の社会保障制度の前途には、いばらの道が横たわっておるということであります。いばらの途を切り開いていくためには勇気と知性が必要です。勇気と知性をもっていばらの道を切り開いていくということは、歴史を作ることであると思います。鳩山内閣が日本の新しい、社会保障の歴史をいかにして切り開いていくか、私はまず率直にこの機会に鳩山総理から御表明を願いたいと思うものでございます。
以上をもって私の質問を終らしていただきます。(拍手)
〔国務大臣川崎秀二君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/35
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036・川崎秀二
○国務大臣(川崎秀二君) ただいま滝井議員から健康保険を中心として社会保障全般にわたりまして御質問でありましたので、逐次お答えを申し上げたいと存ずるのでございます。
第一に、社会保障の六カ年計画は、経済六カ年計画とタイアップをいたしまして、特に防衛との関係が対照的でありますために、厚生省におきましては、準備に着手をいたし、経済企画庁とも連絡をして草案を作成しようといたしておるのでございますが、根本的な具体策は、やはり、三十一年度予算案と関連して政府が作る予定になっておりまする社会保障企画庁で立案をいたすことが適当であろうと思っております。
第二は、健康保険についての赤字の根本原因は何かということで、いろいろお示しでありましたが、私は、実は滝井議員とことごとく同感でありまして、健康保険の赤字の原因は、保険医の監査だとか、いろいろな不正受診の問題も言われておりますけれども、それらは一部分でありまして根本的に申すならば、医療給付費が非常に増大をしてきて、国民が早期治療ということに目ざめた、このことにあると私も確信をいたしておるのであります。従って、現在、日本の平均年齢というものが驚異的にこの二、三年伸びまして、このことは世界的な問題にさえなっておる次第でありまして、その意味では、私は、決して悲しむべきことではなく、医療機関の増大ということを基礎にして問題を解決していきたいというふうに考えておる次第でございます。ただ、昭和二十八年以来、健康保険の充実のための施策がいろいろとられました。給付期間の延長とか、あるいは抗生物質の採用とか、点数の引き上げ、こういうものも副次的には今日の原因になっておると思うのでございます。
赤字の根本的対策についてどう考えるかということでございます。これは、国民の衛生思想の向上に伴う受診率の上昇と、ただいま申し上げたようないろいろの原因をもととして考えなければならぬのでありまするけれども、何といたしましても、やはり社会連帯の観念をもちまして、国家がますその責任を負うこと、次は、被保険者自体もこの赤字の根本的解決については一部分は負担をしてもらわなければならぬのではないかと私は考えておる次第でございます。この根本的施策につきましては、ただいま社会保険審議会並びに社会保障制度審議会にも御相談を申し上げる予定でありますが、その前に、七人委員会と申しまして、学識経験者を中心にした七人の委員を作って対処いたそうといたしておりまするから、その結論はおそくとも七月の終りくらいには一応の報告があるものと考えておる次第でございます。
なお、結核保険というものを創設する意思はないかということでございました。これは、御指摘の点も十分うなずけないこともございませんけれども、結核患者の治療費を全面的に現在の健康保険の中で見るか、あるいは結核保険といった別個の体系を作るかということは、相当大きな問題でありまして、ことに保険の統合ということが言われておる現在としては、厚生省としてはその方向に歩み出す意思はないのであります。しかし、この問題が非常に灼熱して参りまして輿論がこういう方向に行くということになりますれば、根本的に検討をいたしてみたいと思っております。
医療制度の統一と薬務行政の刷新についての御意見は私も同感でありまして次第に実行に着手していきたいと思っておる次第でございます。
なお、最後に、民主党の政策が選挙中からたびたび変ったではないか、こういう御質問がございました。一部分は認めざるを得ないと思います。しかし、その社会保障のことにつきまして、選挙中に、政務調査会の一部の者が、患者も一部負担をするということを言ってそれを打ち出したことがございますが、こは社会保障の後退になりますので、私は、この新内閣ができますとともに、一部負担は最終的にとるべき手段であるということを言い出しましてこの方針をくつがえしたわけであります。従って、政策としてはむしろ前進した方向に行ったのであります。社会保障制度審議会の勧告によって変ったのではないかということでございますが、まさに変ったのでありますが、このことは民主党政府がいかに輿論尊重の政府であるかということを身をもって示したものと思っております。(拍手)
〔国務大臣川島正次郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/36
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037・川島正次郎
○国務大臣(川島正次郎君) 社会保険機構を一元化して、雄大な構想のもとに社会保障を推進すべきだという滝井さんの御議論は、まことにごもっともでありまして、今日は運営がまちまちでありますために、いろいろな点において不便があり、不都合もあります。この問題につきましては、年来懸案としていろいろ研究をいたされておるのでありまして吉田内閣時代におきましても、行政機構改革対策本部においてこれを取り上げて研究いたしたのでありますが、まだ結論は出ておりません。現内閣になりましても、特に行政管理庁におきまして、この問題を扱いまして、関係各省と折衝し、一元化に努力をいたしておるのでありますが、根本の解決はあと回しとしましても、とりあえず末端におきます事務の統合、また窓口の一元化等によりまして、これはよほど国民の便利になる点があるのでありますから、こういう点だけはとりあえず解決いたしたいと今努力をいたしておる最中でございますから、さように御了承を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/37
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038・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 堂森芳夫君。
〔堂森芳夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/38
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039・堂森芳夫
○堂森芳夫君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま政府が説明をいたしました健康保険法の一部を改正する法律案につきまして、同僚議員が行いました質問と重複しないようにして若干質問をいたしたいと思います。
現内閣が総選挙を通じて公約いたしました多くの政策の中に、住宅四十二万戸の建設、三百億円の減税、あるいは社会保障の拡充強化、この三つの大きな公約があったと思うのであります。なかんずく、社会保障につきましては、国民生活と最も密接なものでありますだけに、国民は民主党政府の政策を注視して参ったのであります。しかるに、この時に当りまして政府が健康保険法の改正案を提出して参ったのでありますが、その内容は公約とは全く異なったものでありまして、社会保障の拡充強化どころか、逆に百歩の後退であることを、私は国民の名において指摘いたすものであります。(拍手)
今日、社会保険の問題は、二十九年度四十億、三十年度約七十三億、計百十三億と見込まれております健康保険経済の赤字をどう切り抜けるか、また、いかにして社会保険財政の健全化をはかるかというところにあるのでありますが、政府は、その対策として、ここに本法案を提案して参ったのであります。政府は、五月四日社会保障制度審議会に、五月二十三日社会保険審議会に、それぞれ本法案に対する諮問を行いましてその答申を得て参ったのであります。先刻の滝井議員、野澤議員の質問に対しまして、厚生大臣は、両審議会では、なるほど反対の決議はあったけれども、中には賛成の人もあったと言っておるのでありますが、しかし、社会保険審議会の委員は、全員一致をもってこの法案に反対いたしたのであります。(拍手)この両審議会は、法律によって設立されました権威ある審議会でありまして、政府がみずから法律によって定められた審議会の権威をじゅうりんして今日のような態度に出ますことは、全く前例なき非民主的態度と言わなければなら由のであります。(拍手)このような態度でよいのか、どうお考えであるのか、厚生大臣の御答弁を願いたいのであります。
今日の保険経済の赤字の原因は、もちろん医療給付費の増大にあることは周知のところであります。医療給付費の増大の原因は、治療医学の進歩と利用度の向上にありますが、最も大きな割合を占めておるのは結核医療給付費の増大であります。抗生物質療法、療養期間の延長などの諸施策は結核のための施策でありまして、赤字の原因が結核にあることは明々白々であります。保険の医療費の半ばは、いわば結核が占めておるのであります。国民の中で十七人に一人は結核菌に侵されておるといわれております。この国民の病気でありますところの結核の治療を健康保険に負担させておるのが現状でありまして、健康保険にそれほど負担をさせるのであれば、国庫で相応の負担をすることが当然であります。抗生物質療法、療養期間の延長、受診率の増加などは、赤字部面のどの点を取り上げましても、それ自体としては制度の向上を意味しておりまして、被保険者にとりましてはむしろ喜ぶべき現象であります。従つく、赤字解消の問題は、いかにすれば結核を撲滅することができるかというところにあるのであります。先刻、滝井議員の質問に対して、川崎厚生大臣は、結核に対する対策は今後研究するという答弁でありましたが、今日そのようなことを言っておる段階ではないのであります。まず、いかにして結核対策を立てるか、そして、この結核対策を統一しまして、これを国家の責任において充実することが急務でありますが、政府も、これから研究するというようななまぬるい態度ではなしに、いかなる具体的の対策を持っておるのであるか、御答弁を願いたいのであります。
さらに、民主党の公約に全国民に対して社会保障制度の確立をうたっておるのが今度の選挙であります。このことは、当時、首相自身全国民に対して約束をいたしております。しかるに、このたびの健康保険の改正法案を見ますと、被扶養者の範囲は被保険者の三親等以内の者でなければならないと、その適用範囲を著しく縮小いたしたのであります。従って、この適用からはずれました被扶養者は、今後、同居した場合におきましても、医療費の負担けすべて生計の責任者である被保険者もら直接支払われることに相なるのであリまして、今日のデフレ下で低賃金にあえいでおる労働者は、とうてい被扶養者の医療費を負担することができないのは当然でありまして、疾病にかかりましても、もう療養できない者は、街頭において再び感染源となることは自明の理であります。政府は、全国民への適用という公約と全く相反しました今回の改正案に対し、これで公約違反でないと思っておられるのかどうか、政府の答弁を願いたいのであります。
次は、監査制度の強化についてであります。今回の改正によりますと、刑法上の家宅捜索に準じました権力手段を用いまして係官を事業所あるいは被保険者の住宅、医師、歯科医師の診療所に立ち入らしめるというような改正を企図することによって社会保険を維持しようといたしておるのであります。このようなことをしなければ健康保険制度の維持ができない、こういう考え方は、社会保障に対して非見識きわまる警察的考えであるとわれわれは断ぜざるを得ないのであります。このような考えが正しいことと思っておられるのかどうかを伺いたいのであります。保険料率の引き上げであるとか、標準報酬の改正、被扶養者のワクの縮小など、このたびの一連の改正は、労働者、中小全業者にとりましてはきわめて大きい問題と相なっておるのであります。政府は、経済六カ年計画をさきに発表しまして、経済自立の達成を期しておるのでありますが、経済再建のためには、労働者の協力なくしては実現が不可能であることは明らかなことであります。しかるに、デフレ経済のもとにおきまする現在の労働者は低賃金に悩んでおります。そして、人事院勧告の線をすらのまれない給与水準にあることが現状であります。また、中八企業は破綻の状態にあることも皆様御承知の通りでありますが、このようだ状態にありまして、さらに保険料率の引き上げという、労働者あるいは中小企業者への一方的な負担のしわ寄せを押しつけるというようなことでは、経済計画への協力は断じて得られるものではありません。労働者の非協力はあげて政府の責任であると信ずるが、総理初め厚生大臣の所信を承わりたいのであります。(拍手)
また、年来関係団体が宿望して参りました国庫の負担を行うことなく、事業主、労働者の一方的な負担において健保の赤字を補てんせんとすることは言語道断でありまして、公約違反であることはもちろんであります。この点、政府はどのように考えておられるかを承わりたいのであります。
以上申し述べましたような諸理由におきまして、このような改正を行なって社会保険の財政の赤字を補てんせんとするとろの態度は全く鳩山内閣の心約違反でありまして、私は、このような意味合いにおきまして、政府はこのたび提出して参りました健康保険法の一部改正法案を撤回する意思がないかどうかを明らかにいたしたいのであります。(拍手)そして、われわれ社会党両派は、保険給付の百分の二十以内を国庫負担とし、料率は現行の千分の六十を維持すべきであるという改正法案を提出いたしておりまするが、政府、与党はわれわれの法案に対して賛成される意思があるかどうかを、あわせて御答弁願いたいのであります。(拍手)
〔国務大臣川崎秀二君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/39
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040・川崎秀二
○国務大臣(川崎秀二君) 堂森議員の御質問にお答えいたします。
社会保険、社会保障制度両審議会の反対を無視してこの法案を提出したうとはどうかということでございました。この法案につきましては、社会保険審議会の反対があり、また社会保険制度審議会の一部反対の意見がありましたので、これに基いて慎重な検討をいたし、最も問題となりました標準報酬の等級改訂につきまして原案を修正し、現在の情勢においてぜひとも実行しなければならない面のみを取り上げて提案いたしたのでございます。先ほど滝井議員からは勧告によって変更したのがいかぬという議論もあったほどでございまして、審議会の意見をも十分尊重いたして、そしてその重要な点について修正をいたしたことを御了承願いたいと思うのでございます。
また、健康保険の赤字処理につきましては、根本的には制度全般に対する十分な検討の結果に基いて考慮しなければならないと思いまして、これらの問題については、ただいま申し述べましたように、七人委員会において十分に議を練っておりまするので、これは必ず三十一年度予算と関連して実施をいたすつもりでございます。
先ほど、結核保険を今実施をするところの用意はない、こう申し上げましたことが、誤まって結核対策を何も考えていないというふうにただいま論ぜられましたが、私の言い方が悪かったならば訂正をいたします。結核対策につきましては、昨年と同様一万ベッドの増床を行うほか、健康診断の対象を本年からは非常に大きく拡大いたし、また、隔離病室の新設など、あらゆる施策を推進していくつもりでありますから、結核対策費は二億一千万円ほど面少いたしておりますけれども、健康保険の対策とからみ合わせますならば、充実をいたす方向に向っておると私は信じておるのでございます。
また、保険料率を千分の六十五に引き上げることは労働者に対して非常な負担ではないかというような御質問でありましたが、現在の保険料率が設定されましたのは昭和二十六年一月でありまして、当時の標準報酬は七千三百円であります。本年度は平均一万千七百円となっておりますので、標準報酬の上昇割合は六割六分、従ってこの面から保険料率の引き上げは私は可能であると思っております。また、実質賃金も上昇いたしておりまするから、労働者に対して確かに負担が増大したことは事実ではありますが、国がこれほどの負担をいたしたのでありますから、この程度の負担は、ぜひとも、保険財政の確立の意味において、労働者側においても御負担を願いたいと考えておる次第でございます。
また、被扶養者の範囲を著しく制限したということでありますが、十一万人の被扶養者の実際の調査をいたしました結果、該当者ほ五十五人にすぎませんので、著しい制限はないと思います。
さらに、現行の健康保険におきまして、ただいま、強権を発動するような改正を行うことはよろしくない、こういうことでございましたが、行政庁の検査の権限の規定はすでに設けられておりますが、その規定の仕方が不十分であり、従来法律の解釈、運用によって補った面もありますので、この際その規定を明確にいたしたいというのが改正の趣旨でございます。
最後に、このようなことでなしに、健康保険に対して医療給付費に百分の二十の負担をしろということでございました。私も、それが理想であるということを信じておりますから、社会党のお考え方には同調をいたすのでありますけれども、今日、日本の財政の余裕はそれほどありませんから、今日ただいまその法律案に同調することの意思はございません。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/40
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041・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) これにて質疑は終了いたしました。
本日はこれにて散会いたします。
午後三時四十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02619550609/41
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