1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年六月十四日(火曜日)
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議事日程 第二十七号
昭和三十年六月十四日
午後一時開議
一 地方財政再建促進特別措置法案(内閣提出)の趣旨説明
二 恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
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第一 補助金等の臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案中修正の件(内閣提出)(閣法第五〇号)
第二 地方税法の一部を改正する法律案中修正の件(内閣提出)
第三 厚生省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第四 総理府設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第五 労働省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
第六 外務省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第七 法務省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第八 文部省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第九 運輸省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第十 農林省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第十一 大蔵省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第十二 国の援助等を必要とする帰国者に関する領事官の職務等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
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●本日の会議に付した案件
日程第一 補助金等の臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案中修正の件(内閣提出)(閣法第五〇号)
日程第二 地方税法の一部を改正する法律案中修正の件(内閣提出)
日程第三 厚生省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第四 総理府設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第五 労働省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第六 外務省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第七 法務省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第八 文部省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第九 運輸省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第十 農林省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第十一 大蔵省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第十二 国の援助等を必要とする帰国者に関する領事官の職務等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
入場譲与税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
水防法の一部を改正する法律案(内閣提出)
地方財政再建促進特別措置法案(内閣提出)
の趣旨説明及びこれに対する質疑
午後一時三十八分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/0
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001・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) これより会議を開きます。
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第一 補助金等の臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案中修正の件(内閣提出)(閣法第五〇号)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/1
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002・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 日程第一、補助金等の臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案中修正の件を議題といたします。
本件を承諾するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/2
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003・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって承諾するに決しました。
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第二 地方税法の一部を改正する法律案中修正の件(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/3
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004・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 日程第二、地方税法の一部を改正する法律案中修正の件を議題といたします。
本件を承諾するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/4
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005・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって承諾するに決しました。
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第三 厚生省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第四 総理府設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第五 労働省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
第六 外務省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第七 法務省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第八 文部省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第九 運輸省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第十 農林省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第十一 大蔵省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/5
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006・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 日程第三、厚生省設置法の一部を改正する法律案、日程第四、総理府設置法の一部を改正する法律案、日程第五、労働省設置法等の一部を改正する法律案、日程第六、外務省設置法の一部を改正する法律案、日程第七、法務省設置法の一部を改正する法律案、日程第八、文部省設置法の一部を改正する法律案、日程第九、運輸省設置法の一部を改正する法律案、日程第十、農林省設置法の一部を改正する法律案、日程第十一、大蔵省設置法の一部を改正する法律案、右九案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。内閣委員長宮澤胤勇君。
〔宮澤胤勇君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/6
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007・宮澤胤勇
○宮澤胤勇君 ただいま議題となりました九つの法律案につきまして、内閣委員会における審議の経過並びに結果を簡単に御報告申し上げます。
まず各法律案の要旨について申し上げますれば、厚生省設置法の一部を改正する法律案におきましては、国民栄養の向上をはかるため、国立栄養研究所の所掌事務を拡充いたしまして、食品の栄養効果につき委託試験を行い得ることとすること、看護婦確保のため国立療養所に看護婦及び準看護婦の養成所を付属設置すること、引き揚げ援護及び復員関係事務の減少に伴いまして援護所及び舞鶴地方復員部を廃止いたすこと等であります。
次に総理府設置法の一部を改正する法律案におきましては、航空技術の向上をはかるための研究機関として航空技術研究所、及び海外移住政策に関する重要事項を審議するため海外移住審議会を設置して、これらを総理府の付属機関のうちに加えようとするものであります。
労働省設置法等の一部を改正する法律案におきましては、わが国最近の失業事情にかんがみまして、失業対策を強力に推進するため職業安定局の失業対策課を拡充強化いたしまして、これを失業対策部に昇格することであります。
外務省設置法の一部を改正する法律案におきましては、本邦人の海外移住を一そう促進するため、外務本省に移住局を新設するとともに、出先機関として横浜移住あっせん所を新設することと、ビルマ国との賠償関係事務を円滑に遂行するため、アジア局に賠償部を新設すること等であります。
次に法務省設置法の一部を改正する法律案は、入国管理局関係の出先機関に関する改正でありまして、横浜入国者収容所を廃止して川崎市に新設すること、大阪入国管理事務所を設置して、大阪、京都ほか三県をその管轄区域とすること、及び大村入国管理事務所を廃止して、その管轄区域を福岡入国管理事務所に移すこと等であります。
文部省設置法の一部を改正する法律案におきましては、賠償関係事務の増加に伴いまして、文部省の権限のうちに賠償及び国際協力に関する事務を明記することであります。
なお、厚生省、運輸省及び農林省の各設置法の一部を改正する法律案におきましても、文部省同様、賠償及び国際協力に関する事務につきそれぞれ規定を設けておるのであります。
運輸省設置法の一部を改正する法律案におきましては、海技専門学院の所在地を神戸市から芦屋市に移すこと、現在の港湾整備審議会を港湾審議会に改め、新たに重要港湾の港湾施設の建設改良等、港湾の開発に関する計画についても調査審議するものとすること、また、最近の都市周辺の交通事情にかんがみまして、都市交通の基本的な計画を調査審議する都市交通審議会を設けること等であります。
次に農林省設置法の一部を改正する法律案におきましては、敷地等の関係上、神戸肥料検査所を神戸市から尼崎声に移すこと、従来政令をもって定められておりました米価審議会につき、主要な規定は法律で定めることとし、委員及び専門委員の任命は、食糧庁長官が行なっておりましたのを、農林大臣が行うこととすること等であります。
大蔵省設置法の一部を改正する法律案は、税関行政の適正円滑な運営をはかるため、横浜税関の管轄区域の一部を東京税関に移すとともに、東京税関に鑑査部を設置すること等を内容とするものであります。
以上申し上げました各法律案は、去る四月二十五日以来六月三日までの間に相次いで当委員会に付託せられ、それぞれ政府から説明を聴取いたし、各委員より熱心な質疑がなされたのでありますが、その内容の詳細につきましては何とぞ委員会の会議録によってごらんを願います。
かくて、六月十一日、以上九つの法律案を一括議題とし、討論を省略、採決の結果、全会一致をもって原案の通り可決いたしました。
以上、概要を御報告申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/7
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008・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 九案を一括して採決いたします。九案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/8
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009・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって九案は委員長報告の通り可決いたしました。
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第十二 国の援助等を必要とする帰国者に関する領事官の職務等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/9
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010・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 日程第十二、国の援助等を必要とする帰国者に関する領事官の職務等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。外務委員長植原悦二郎君。
〔植原悦二郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/10
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011・植原悦二郎
○植原悦二郎君 国の援助等を必要とする帰国者に関する領事官の職務等に関する法律の一部を改正する法律案に関する件につきまして、外務委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
この法律は、その実施以来一年九カ月となりますが、この間に法律の運営上二、三の不備の点が認められたので、所要の改正を行わんとするのがこの法案の目的であります。
第一、現行法律によれば、生活の困窮のため帰国を希望する日本国民、または、在留国の官憲から退去命令等を受けて帰国しなければならない日本国民に帰国費を貸し付ける場合には、帰国者の在留地から本邦までの帰国費を貸し付けることができますが、船長に対する送還命令により帰国者を送還する場合には、乗船地までの船車賃等を貸し付けることができない現状であるので、このような場合にも、帰国者が乗船するまでの費用はこれを貸し付け得るようにいたしたことであります。
第二に、領事官は元来その管轄区域内の行政事務についてのみ職務を行うことになっているので、領事官の管轄区域外の地に帰国を援助する必要がある者がいる場合には、現行法律では帰国を援助することができないのであります。しかし、このような場合にも、もよりの領事官が帰国を援助することができるようにいたしたのであります。
第三に、夫婦は、わが国の民法上、相互協力扶助の建前をとっておりますので、いずれか一方が国の援助等を受けて帰国した場合には、他の一方が返済能力があれば、一方が借りた帰国費等を他方が国や船会社に対し返済するのが妥当と認められます。よって、帰国費等の償還義務者として新たに配偶者を加えるようにいたしたこと等であります。
この法律案は、五月二十三日内閣から国会に提出され、同日本委員会に付託されましたので、六月一日及び十一日会議を開き、政府当局の説明を聞き、質疑を行いましたが、その詳細については委員会の記録に譲ることといたします。
〔副議長退席、議長着席〕
続いて、討論を省略し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案の通り可決せられました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/11
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012・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/12
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013・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって本案は委員長報告の通り可決いたしました。
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入場譲与税法の一部を改正する法
律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/13
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014・長谷川四郎
○長谷川四郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出、入場譲与税法の一部を改正する法律案を議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/14
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015・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/15
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016・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって日程は追加せられました。
入場譲与税法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。地方行政委員長大矢省三君。
〔大矢省三君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/16
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017・大矢省三
○大矢省三君 ただいま議題となりました入場譲与税法の一部を改正する法律案について、地方行政委員会における審議の経過並びに結果の概要を御報告申し上げます。
本案は、昨年入場税の国税移管に伴って第十九回国会で成立いたしました入場譲与税法の一部に改正を加え、国が収納して地方に委譲すべき入場譲与税額を、毎年三月分から翌年二月分までとなっているのを、毎年四月分から翌年三月分までと改め、国が当該年度分の入場税として収入した額は、これをそのまま当該年度において入場譲与税として都道府県に譲与することとし、これに伴い、譲与の時期を七月、十月、一月及び三月と改めようとするものであります。なお、このほか、譲与額は、本法においては国が収納した額の十分の九の相当額となっているのを、地方財政の現状にかんがみ、昭和三十年度に限り、入場税の収入額の全額を入場譲与税として譲与することを附則において定めようとするものであります。
本案は五月十六日本委員会に付託になり、同月十八日川島国務大臣の提案理由の説明があり、本委員会は慎重審議いたしましたが、本案の目的とするところは、本法制定の趣旨並びに地方財政の現状に照らし、もとより妥当であって異論を見ず、よって、本日質疑終了、討論を省略して採決に付した結果、全会一致本案は可決すべきものと決定された次第であります。
右、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/17
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018・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/18
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019・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって本案は委員長報告の通り可決いたしました。
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水防法の一部を改正する法律案
(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/19
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020・長谷川四郎
○長谷川四郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出、水防法の一部を改正する法律案を議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/20
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021・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/21
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022・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって日程は追加せられました。
水防法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。建設委員長内海安吉君。
〔内海安吉君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/22
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023・内海安吉
○内海安吉君 ただいま議題となりました水防法の一部を改正する法律案につきまして、建設委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
まず本法案の提案の理由及び内容について申し上げますと、第五回国会におきまして、水防制度を整備するため水防法が制定されたのでありますが、今回さらに水防活動の強化をはかるため、洪水予報、災害補償、費用の分担補助等の規定を整備せんとするものであります。すなわち、第一には、建設大臣は、重要な河川については、中央気象台と共同の責任において洪水予報を行うこと、第二には、水防団長または水防団員が公務により死傷した場合における公務災害補償制度を確立するとともに、一般住民が水防に従事してことにより死傷した場合に対する補償についても所要の規定を整備したこと、第三には、現在予算措置のみでなされている水防費に対する補助を明確に法定すること等が、そのおもなる点であります。
本法案は、去る六月六日本委員会に付託せられて以来、数回にわたり審査いたしたのでありますが、その詳細は会議録に譲ることといたします。
ついで討論に入りましたところ、自由党を代表して二階堂進君、日本社会党を代表して小林幹君、日本社会党を代表して中島巖君、労農党を代表して石野久男君よりそれぞれ発言があり、いずれも、本改正案は水防活動に対する一歩前進ではあるが、水防活動に要する資材、器具等に要する経費並びに水防活動による災害補償に対する国庫補助の道が考慮せられていないのは、はなはだ遺憾である、この点に関しては次期国会においてぜひとも改正したいとの強い要望を付して賛成の意が述べられたのであります。
かくて、採決の結果、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決定いたした次第であります。
右、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/23
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024・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/24
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025・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって本案は委員長報告の通り可決いたしました。
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一 地方財政再建促進特別措置法案(内閣提出)の趣旨説明発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/25
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026・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 地方財政再建促進特別措置法案の趣旨の説明を求めます。国務大臣川島正次郎君。
〔国務大臣川島正次郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/26
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027・川島正次郎
○国務大臣(川島正次郎君) ただいま提案せられました地方財政再建促進特別措置法案につきまして、その提案の理由及び内容の概略を御説明申し上げます。
地方財政は漸次窮状を加え、昭和二十八年度決算におきましては、道府県の約八割、市の約七割、町村の約二割に達する千七百二十四団体が実質上の赤字決算を行なっている状況であり、昭和二十九年度におきましても、なお実質赤字額は増加せざるを得ない状況であります。これらの累増した赤字は地方団体の財政を圧迫し、ますます地方財政の苦境を招くようになるのでありまして、政府は、この事態を打開するため、とりあえず、すでに生じた赤字の解消整理に重点を置くこととし、地方制度調査会の答申及び前年国会において継続審議になりました地方財政再建整備法案の構想にのっとり、赤字の整理を行うことといたしたのであります。これが本法案を提案する理由であります。
次に、本法案の内容につきまして御説明申し上げます。
赤字地方団体の赤字の整理は、昭和二十九年度において赤字を生じた地方団体が、その議会の議決に基き、財政再建計画を定め、自治庁長官の承認を得た場合において、財政再建計画の誠実な実行を条件として、特に歳入欠陥補てん債の発行を認めるという方法により行うことといたしましたが、このような方式による財政の再建を行うといなとは赤字地方団体が自主的に決定することといたしております。
まず財政再建計画でありますが、財政再建計画は、歳入欠陥補てん債の発行により過去に生じた赤字を一応たな上げし、自後における財政の計画的運営によってその元利金を償還し、おおむね七年度以内に収支のバランスを回復することを目的として作成することといたしたのでありますが、その樹立に当っては、既定経費の節減、既存収入の確保に重点を置き、これによってもなお財政再建計画が立たないときは、現行制度のワク内において租税の増収をはかることといたしました。
この場合、歳入欠陥補てん債は、財政再建を行う団体、すなわち財政再建団体の実質赤字のうち必要額について認めるものとし、別に財政再建計画に基いて支払う退職金の支出に充てるため地方債の発行を許すこととするとともに、これらの地方債、いわゆる財政再建債のうち公募分については、年六分五厘をこえ年八分五厘に達するまでの部分について国が利子補給を行うこととするほか、財政再建債消化促進審議会を設け、公募分の消化について遺憾なきを期するとともに、右による公募債はなるべくすみやかに政府資金に借りかえることといたしました。
次に、財政再建計画の円滑な実施を担保する等の見地から、財政再建団体における長と各種行政委員会、長と議会との関係等につきまして、若干の特例措置を設けることといたしました。すなわち、財政再建団体においては、他の法令の規定にかかわらず、部局等の数を減じ、あるいは長の部局の職員と委員会等の職員とを兼ねさせて、行政の簡素化をはかることができるものとし、また府県教育委員会と管下市町村教育委員会との間の調整措置を講じ、長は予算の調整については財政再建計画に従わなければならないものとするとともに、財政再建計画の策定及び実施に関して長の提案が根本的に議会の同意を得られない場合に、両者の間の意見の調整をはかるために必要な規定を設けることといたしたのであります。さらに、財政再建団体中、財政の再建に長期を要する団体等については、その住民福祉の確保を考慮し、このような団体の行う国庫補助負担事業のうち一定のものについては地方負担軽減の道を開き、所要事業の施行に遺憾のないよう措置することといたしております。
第四に、財政再建団体については、その財政再建に関し特に政府が赤字債の引き受け、利子補給等各種の便宜を供与していることにかんがみ、財政再建団体が財政再建計画に反する財政運営を行なった場合に限り、これを是正するために、政府において必要な措置をとることができるものといたしたのであります。
なお、赤字地方団体の中でも、その赤字額の小額のもの等におきましては、その意思により自主的に財政再建の措置をとる団体もあるのでありますが、これらの団体につきましても、せっかくの財政再建計画の達成を可能ならしめるよう各種の面において配慮する必要がありますので、昭和二十九年度において赤字を生じた団体をも含め、赤字地方団体が自主的に財政の再建を行う場合においては、歳入欠陥補てん債の発行、監督及び国庫補助負担事業についての特例規定を除き、財政再建団体に関する諸規定を準用することといたしました。
以上のほか、特に最近の地方財政状況にかんがみ、その窮状の打開に資するため、一般に地方団体は当分の間地方債をもって退職金の支払い財源に充てることができるものとするとともに、地方団体が国またはその機関に対する寄付金等を支出することは、特殊の場合を除き、当分の間禁止することとする等の特例措置を講ずることといたしたのであります。
以上が本法案の内容の概略であります。
何とぞ、慎重御審議の上、本法案制定の趣旨に賛同せられ、すみやかに可決せられんことを希望いたすものでございます。(拍手)
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地方財政再建促進特別措置法案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/27
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028・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) ただいまの趣旨の説明に対する質疑に入ります。鈴木直人君。
〔鈴木直人君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/28
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029・鈴木直人
○鈴木直人君 私は、自由党を代表いたしまして、今回提案せられました地方財政再建促進特別措置法案並びにこれに関連する三十年度地方財政計画に関し、若干の質問をいたさんとするものであります。鳩山総理大臣初め一萬田大蔵大臣、川島自治庁長官の責任ある御答弁をお願いいたします。
地方財政は、今や、五百六十億になんなんとする莫大なる実質赤字を抱えまして、破局の寸前にあるのであります。これがため、地方自治体は極度の現金不足に悩みまして、月々の俸給の支払いにすらその金策に窮し、一時しのぎのやりくりによって辛うじて切り抜けているというのが偽わらざる真相であります。昨日の毎日新聞の記事によりましても、今や全国各地の自治体において給料遅配が続出しており、一日千秋の思いをもって待っておる夏季手当すら、一カ月以上繰り下げまたは分割支給のやむなきに至っているものが続出しているというのが実情であります。今後もかくのごとき状態のままにおいて推移するならば、おそらく近き将来において地方自治体はその機能を麻痺停頓するに至りまして、まことに憂慮すべき事態に立ち至るであろうということが予想されるのであります。地方財政の再建整備こそは何よりもまず解決しなければならない焦眉の急務でありまして、今回政府が法案を策定して地方財政の赤字解決に乗り出しましたことは適切な措置であると思うのであります。
しかしながら、いよいよこの法案を検討いたしてみまするに、その内容たるや全く不徹底きわまるものでありまして、地方財政の抜本的解決などにはほど遠いものであり、しかも、法案全体を通じて直感せられるところのものは、地方自治体をあたたかい手をもって育成強化しようというのではなく、むしろ地方自治体を金づかいの荒い準禁治産者的な扱いにして、地方自治庁長官の完全なる監督支配のもとに置こうという、あまりにも中央集権的な官治行政的な規定が終始一貫しているという感じを受けるのであります。しかも、国がいかなることをこの法案でしているかと申しますと、五十億の政府資金をただ貸し出すこと、百五十億の公募債の発行を許すこと、そうして、その公募債の利子には、先ほど大臣が言われたように、ただ二分の利子補給をすること、これだけであります。六百億の過去の赤字を解消するのに、ただ二百億というようなきわめて少い、しかも政府資金はただの五十億にすぎないのでありまして、この五十億をもって六百億に近いところの赤字を解消しようというのがこの案なのであります。しかも、五十億の政府資金は貸してやる、百五十億の公募債は許してやる、しかし今後七年間というものはお前たちの台所を差し押えるというのがこの内容であります。地方自治体側が、法案の内容を知りまして、これは血も涙もない仕打ちである、こう叫びまして、おそらくこれは官治行政への移行を考えているものであろうというようなことを疑心いたしまして、一斉に反撃に立ち上りましたことも、これは法案を直感いたしてみまして、ゆえなきにあらずと考えるのであります。
そこで、私は、まず第一に自治庁長官にお尋ねいたすのであります。六百億に近い赤字を解決するのに、わずか政府資金五十億、公募債百五十億をもって、どういうふうにしてこれを切りかえるのか、その切りかえ方を具体的にお教え願いたいのであります。政府が真に六百億の赤字を解消しようとするならば、少くとも百億ないし百五十億の政府資金をさらに必要とすると私は思うのであります。自治庁長官のこれに対する意見をお聞きしたいのであります。
第二の質問は大蔵大臣にお願いするのでありますが、政府は、五十億のこの政府資金のほかは、百五十億の公募債をもって、これを自治体において公募して借りて、それでやって行けということであります。しかしながら、私は、この三十年度は百五十億の公募債の消化というものは困難であると考えておるものであります。昨年は二百億の公募債がありましたが、先般政府から出されました五月十五日現在の資料をもって見ますと、わずかに二百億のうちの八十八億しか消化されていないのであります。あとの百十二億円というものは、まだ先月の十五日に消化が残っておるという状態なのであります。しかも、本年は、百五十億のこの再建債のほかに、一般公募債として二百三十億が予定されておるのでありますから、三百八十億というものがこの三十年度におけるところの公募債の割当になるのであります。この三百八十億というものは、とうていこれは消化し切れないと思うのであります。かくのごとき状態は、まるで絵にかいたぼたもちを見せて、こういうふうにしてやってやるという欺瞞政策、これは鳩山内閣一流の欺瞞政策であるかもしれませんが、これは一笑に付すにはあまりにも問題が大き過ぎると思うのであります。大蔵大臣は、おそらく、百五十億のこの再建債については、法律の中に来年になってこれを政府資金に切りかえるという規定があるから、これはできるとお答えになると思いますけれども、そうするならば、あとの平年度の二百三十億の公募債というものは、おそらく消化ができないということになりまして、地方自治体はこれがためにほとんど仕事ができないというようなことになると考えるのであります。この百五十億の再建債は必ず完全に消化してみせるという公約を、この際大蔵大臣の口より承わっておきたいと思うのであります。
第三は、地方債証券公庫を設立する意思があるかということを大蔵大臣にお聞きしたいのであります。前に申し上げました通り、地方自治体の地方債の消化の限度というものは、もう満度に来ております。従って、本年度三百八十億の消化というものは困難であることは、先ほど申し上げた通りであります。従って、これが方法として、地方債証券公庫というようなものを作りまして、国においてそれを出資し、地方団体も出資いたしまして、そうして従来の縁故募集、市場募集というものと一緒になりまして、この地方債を消化していくということが、今後地方自治体の財政運営上最も重要なものであると考えるのであります。この点につきましては、大蔵大臣はこの地方債証券公庫というものの設置に対しては反対であるということを聞いておるのでありますが、おそらく、大蔵大臣がそう言われるのでありますから、何か非常に確信があって、弊害もあるというのでそうされないのだろうと思いますが、これに対するところのお考えを伺いたいと思います。
第四は地方自治庁長官にお願いするのでありますが、六百億に達するこの赤字を解消するにわずか五十億というようなことになりましては、全国都道府県、市町村に分けますと、スズメの涙ほどにすぎないのであります。しかしながら、この法案を見ますと、そのような国の対策にかかわらず、先ほど申しましたように、二十六カ条にわたるところのこの規定を見ますと、ほとんど地方自治体をがんじがらめに縛りつけるような条文で一ぱいなのであります。地方自治体側の現在の空気というものは、政府は御存じだと思いますが、せめて二、三百億程度の政府資金があるならばこのように締められてもやむを得ないけれども、わずか五十億程度の政府資金でかくのごとく何年間も差し押えられるような結果になるならば、何とかして、できるならばこの法律によらず自力更生をやっていきたいというのが、地方自治体の大部分の現在におけるところの空気であります。しかるに、この第二条第四項には、もし自治体側がこの法律の適用を申し出でなかったならば自治庁長官は勧告することができるようになっておるのであります。そこで、長官にお聞きしたいのでありますが、この勧告というものは、いかなる場合にやり、どういうふうな意味をなすものであるか、その勧告の効力をお聞きしたいのであります。
しかも、条文によりますと、勧告に応じないで、そうしてこの三十年度も赤字が出たような場合には——おそらくこの三十年度は赤字が出ると思いますが、この三十年度の赤字団体に対しては、三十二年度からある程度地方債の発行を制限するという規定になるのであります。おそらく、全国の大部分が、もしこの適用を受けなかったならば、三十二年度は地方債を発行することができないという規定になるわけであります。これはまことに冷酷な仕打ちであると思うのであります。かくのごとく地方自治体にまま子いじめのごとく冷酷な処置をしなくてもいいのじゃないかということを、この条文を見て痛感いたしているのであります。鳩山内閣の地方自治に対する方針というものはこのようなものなのだろうか。このように、強いものには仕方がないが、弱いものは幾らでもいじめるというようなことが友愛精神であるのかどうか疑わしいのであります。いわゆる勧告の方針並びに勧告に応じなかった場合にどういうふうにするかという点について、この際自治庁長官に御説明をお願いしたいのであります。
第五は三十年度の地方財政計画についてでありますが、この三十年度の地方財政計画は、私たちの見るところにおいては、百四十億程度の赤字が出ることは必至であります。これは明らかに百四十億の赤字が出るということの結論になったのであるが、閣議において、それは国会に提出することができないということになって、一夜に、自治庁の役人に命令して、数十億をこれに入れまして、そうして赤字の出ないようなものにしたのであります。この百四十億というものは、ほとんど中央側に対する消費節約のものになっているのであります。かくのごときものは紙に書いた計画のようなものであって、地方財政の実態とは違っているものであります。自治庁長官も、この計画は紙の計画である、実際のものは別にあるのだということを言うておられるのであります。それで自治庁長官にお伺いしたいのでありますが、現在国会に提出してある、あの三十年度地方財政計画というものは、ほんとうに赤字が出ないと考えておるものであるかどうか、赤字が出ると思っているのか思っていないのか、その点をはっきりお聞きしたいと思うのであります。
第六の点は、鳩山総理大臣に最後にお聞きしておきたいのであります。最も近い機会において地方交付税率を引き上げる意思があるかどうかという点であります。過去における六百億に及ぶこの赤字、また本年起るであろうところの百四十億の歳入不足の原因というものは、もちろん地方自治体の財政運営の不手ぎわに責任の一半はありますけれども、根本的な原因というものは地方交付税の税率が国税三税の二二パーセントという低い税率にあることは明らかであります。でありまするから、昨年の国会におきましても、この衆議院におきましては満場一致をもって二五パーセントという決議をいたしたのでありますが、不幸にして参議院において二二パーセントに修正されたために、今日に至っておるのであります。もし昨年二五パーセントであるならば、その額は百八十九億でありまするから、このインチキな財政計画を出す必要はなかったと思うのであります。そこで、鳩山総理大臣にお聞きいたしたいのでありますが、この税率を上げるにいう意思があるかどうか。全国の都道府県、市町村は、鳩山首相の理解ある一言を期待いたしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/29
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030・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 鈴木君に申し上げます。申し合せの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/30
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031・鈴木直人
○鈴木直人君(続) 最も近い次の機会に地方交付税の税率を引き上げるお考えがあるかいなか、はっきりと鳩山総理大臣に一言お答えを願いたいのであります。
私の質問を終ります。
〔国務大臣鳩山一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/31
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032・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) ただいまの質問に対してお答えいたします。地方交付税は軽々しく変更すべきものではないと思います。従って、近い将来においてこれを変更する意思はございません。(拍手)
〔国務大臣一萬田尚登君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/32
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033・一萬田尚登
○国務大臣(一萬田尚登君) 今度地方の赤字の解消に百五十億の地方債が出るのでありますが、これについてどうするかという御質問でありますが、これは現在すでにもう借入金になっているのです。ですから、これを一応地方債の形に変えまして、そして来年になりまして資金運用部資金で肩がわりする、こういうことでありますから、これはもう消化することは明白であります。もうすでに貸してある金、それが債券になって、来年は肩がわりして現金になる、こういう形でありますから、これは消化することは確実と思います。そして、一方また公募債が二百三十億ございます。これについての消化の問題があります。しかし、今後の金融市場を考えます場合に、特に地方銀行の資金繰り等を考えます場合に、この二百三十億の消化は私できると考えております。二十九年度の消化状況から三十年度の消化を言うのは、金融市場が今非常な変化をいたしておりますから、これは私当らないと考えております。
それから、こういうときに地方の地方債証券公庫というような公庫案にどうして反対するか、こういうことでありまするが、私の考えでは、こういう「公庫を早く作ることによりましてどうも地方の財政の再建整備の意欲を鈍らせるおそれが多分にあって、自主的努力がどうも欠ける。赤字がある、それをすぐ補う何かのいい方法というような行き方は、私は安易に過ぎると思っております。特に公募された地方債の消化並びに償還についても、こういうものができることによって国の責任になるおそれも多分にあるのであります。なお、申し上げておきますが、従来地方債は縁故関係で消化をしておったのでありますから、こういう公庫ができたからすぐ消化がよくなるとは限らぬので、やはりこれを縁故関係に基いて消化していく、特に主としてこれは地方銀行等に消化をしてもらう以外にない。公庫ができても資金ができるわけではないので、こういう意味から、私は、今日公庫を作ることについては賛成をいたしかねて、極力地方の消化をはかることにいたしたいと思います。
〔国務大臣川島正次郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/33
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034・川島正次郎
○国務大臣(川島正次郎君) 地方財政の赤字は、二十八年度の決算で四百六十二億あるのであります。これに二十九年度も若干赤字が増すのでありますが、これはまだ決算がわかりません。そこで、地方財政を健全化するためには、まず従来出た赤字をどう処理するかということと、今後再び赤字の出ないような財政運用をさせるというこの両面から考える必要があるのでありまして、とりあえず、ただいま提案いたしました地方財政再建促進特別措置法案は、従来出ておりまする四百六十二億の赤字をたな上げする法案であります。鈴木さんの御議論によりますと、四百六十二億という多額の金があるのに、二百億の赤字債券では、それは追っつかないだろうというお話でありますけれども、四百六十二億のうち約百億に国の直轄工事に対する地方の分担金でありまして、これは大体延期をしてもらうことに大蔵省と話がついております。従いまして、残るのは三百六十億でありましてこのうち二百億だけを赤字債券に振りかえまして、あとの百六十億は大体府県よりも市町村に分散いたしておる小額が積ってこういう数字になるのでありますから、これは市町村財政の緊縮によってこれを解決いたしたい、こういうふうな考えのもとに立案をいたしたわけでございます。
三十年度の財政計画についてのお尋ねがありましたが、財政計画は、鈴木さん御承知の通り、従来、平衡交付金時代におきましては、歳入と歳出とにらみ合せまして、その不足額を平衡交付金で補っておったのでありまするが、昨年制度が変りまして交付税制度になりましてからは、国税に対する一定割合を地方に交付して、その範囲において地方において財政運用をするという建前になったのであります。二十九年度の財政計画を基本といたしまして、これに三十年度において当然増加する経費を計算し、一方におきまして、歳入を計算しますると約百四十億程度の赤字になることは事実であります。しかしながら、全部の府県じゃございません。全部の市町村じゃございませんけれども、赤字の最もひどい府県、市町村におきましては、いわば非常時代でありまするから、事業その他において極度の制限をしてもらってこの赤字を解消することが必要でありまして、私は、先般、知事会議におきましても、地方の自粛によって単独事業の圧縮、旅費、人件費その他すべての圧縮によってこの百四十億というものを解消してもらいたいということを希望いたしておるのでありまして、私は百四十億が直ちに三十年度の赤字とは考えておりません。これを各公共団体の緊縮政策によって解決してもらいたいということを念願し、また各地方団体においてもそういう措置を漸次とりつつあるのでございます。従いまして、三十年度に策定しました地方財政計画というものは、今日のところ、これがために直ちに結論として赤字が出るとは考えておらぬ次第でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/34
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035・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 加賀田進君。
〔加賀田進君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/35
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036・加賀田進
○加賀田進君 私は、ただいま提案されておりまする地方財政再建促進特別措置法案に対しまして、日本社会党を代表して、総理大臣、大蔵大臣並びに自治庁長官に対して、その主要な問題点をたださんとするものであります。
戦後民主政治の基盤として新しい理念のもとに出発いたしました地方公共団体は、地方住民の福祉増進を究極の目的として、地方自治の確立強化のために、すでに八年余にわたって努力を続けて参りましたが、その努力にもかかわらず、昨今の地方財政は実に容易ならざる事態に直面しております。すなわち、昭和二十八年度の決算におきましても、今川島自治庁長官が発表された通り、四百六十二億円余の赤字が生じておりまして、二十九年度の赤字推定は実に六百億をこすのではないかといわれております。このように、年々増加をたどります地方財政の赤字の根本的な原因に対して、一体政府はどのような理解を持たれておるのか。この地方財政再建の措置法案も、今次国会に提出されておりまする地方財政に関係のある諸法案におきましても、あるいは本年度の地方財政計画におきましても、さらには後刻提出されようといたしておりまする地方自治法の一部改正をわれわれが伝え聞いても、すべて底に流れておる思想は、地方財政の赤字発生の原因は地方団体の責任に帰すべきものであって、政府としての責任ではないという考え方が一貫しておるように思われるが、地方財政の赤字の責任の大半は政府にあるとわれわれは信じております。(拍手)
現在の地方財政における構成は、義務的な経費及び公共事業や国庫補助事業等、国の施策に伴う経費が七五パーセントから八〇パーセントを占めておりまして、地方独自の施策による事業はわずかに歳出の五、六パーセントにすぎない現状を考えるときには、地方財政の赤字の原因の大半は、政府が必要な財源を地方に与えないからであって、いわゆる地方団体に対する所要の財源措置を政府が極端に圧縮しておることに基因しておるものと私たちは思います。従って、総理大臣並びに大蔵大臣は、この地方財政が赤字を生じた根本原因をどのように考えておるか、この際明確にしていただきたいと思います。(拍手)
次に、本法案は、赤字によって破局寸前に悩む地方団体の弱点を利用して、政府は地方自治の自主性を不当に侵害するとともに、中央集権への道をさらに大きく切り開くおそれがあるということであります。赤字団体が議会の決議を経て決定した財政再建計画に対して、政府は自治庁長官を通じて自由に条件を付したり、さらには変更を加えてから承認するという権限を持ち、その上に、再建計画の執行に当って、財政運営が不当だという理由のもとに、地方団体に対して予算の一部執行の停止を命じ、その他いろいろな処置を命令することができることになっております。全く政府に支配権が握られているということになります。そればかりではなく、政府の命令に従わなかった場合には、財政再建債の利子補給を停止するとともに、地方自治法第二百五十条の自治庁長官の許可権を乱用して、地方債の許可を与えないという罰則まで設けてあります。実に、地方公共団体の財政窮乏の弱点を利用して政府の支配権を自治体の中に深く根をおろそうとする、民主政治逆行のおそるべき内容が含まれていると私は思います。(拍手)
そこで鳩山総理に質問いたしたいのでありますが、現行憲法は、帝国憲法と異なって、民主政治の基礎を築くために、特に地方自治の一章を設けて、地方公共団体の自主独立性を保障しているということは御存じの通りであります。この重大な使命を帯びている地方公共団体の行財政に対して政府が変更を命じたり執行停止を命ずるがごときことは、地方自治の本旨を誤まるばかりでなく、地方団体の事務の処理、行政執行の権能を侵害して、憲法第九十四条の違反になると思うが、総理大臣はいかに考えているか、この際明らかにしていただきたいと思います。(拍手)
次に、川島長官にお尋ねいたしまするが、赤字団体の長は、二重、三重にこのように政府の権力によってがんじがらめに拘束された財政再建計画に基いて予算を調整して、地方議会に提出することになります。その場合、ほとんど増額や修正をすることのできないような結果となって、地方住民の意思決定機関である議会は事実上予算案の審議決定権を奪われるということになります。従って、それは地方自治法第九十七条の議会の増額決議権を剥奪することであって、私はおそるべき地方自治に対する自治庁の魔の手が差し伸べられるものと言わざるを得ないと思うのであります。そればかりではなくして、教育委員会においても同じく予算の送付権が実質的に喪失して、教育委員会法第五十六条が空文化してしまいます。教育行政そのものの独立性を侵すことになると思うが、自治庁長官はいかに考えておられるか、この際その所見を明らかにしていただきたいと思います。
なお、赤字団体の財政を再建する基本方針として、地方公共団体が、別途に税目を起したり、普通税の標準税率を高めて、負担能力が限界に達している地方住民に対して増税を行うことになっております。先般の選挙を通じまして政府は、減税を公約して、今国税に対して少々の減額を行なって、公約完全実施の宣伝をいたしておりまするが、その裏から地方団体の手を通じて増税を強要するがごときことは、私は国民を欺瞞するもはなはだしいと言わざるを得ないと思います。大蔵大臣の御所見をお伺いいたします。
財政再建は、かかる増税と、職制の改廃による地方公務員の首切りと、そうして経費の節減を前提として、政府は赤字公債分として五十億円、首切り公債六十億円、地方公募債百五十億円、財政再建債の利子の一部を補給することによって、赤字を解消し、予算の均衡を保持する計画を立てねばならないようになっておりますが、果してこのようなこそくな政策によって地方財政の健全化が達成できると川島長官は思われているのかどうか、単なる金融的措置にのみとどまらず、抜本的対策を行う意思があるかどうかを、この際明確にしていただきたいと思います。
長官は、去る三月三十日の参議院地方行政委員会におきまして、秋山長造君の、地方財政の財源を増すために交付税を何パーセントくらい引き上げる見当ですかとの質問に対して、五パーセントですと明確に答弁されております。いわゆる二七パーセントにするということが川島長官によって言明されておりますが、その後現在まで何らの具体的実行案も現われておりません。依然として二二パーセントに据え置かれております。自治庁は大蔵省に対していかなる努力を払われたか、そうしてその結果がどのようになったか、この経緯に対して、この際事実を明確に発表していただきたいと存じます。
先般、両派社会党が、地方の赤字財政は政府と地方自治体がお互いに理解と協力体制を整えて助け合わなければ解決することは不可能であると確信をいたしまして、当面の財源処置として長官が言明されたと同率の二七パーセントに引き上げる改正案を提出いたしましたが、長官は今もなお二七パーセント引き上げるべきが妥当であると信ぜられておるかどうか、もし妥当だと信じられているとするならば、両派社会党の提出しております二七パーセントの改正案に賛同される意思があるかどうかを明確にしていただきたいと思います。(拍手)
最後に大蔵大臣に質問いたしまするが、地方財政の現状から、自治庁長官は、大蔵大臣に対して、交付税率の引き上げこそ赤字に苦しむ地方公共団体る救うただ一つの当面の政策であると強く主張して交渉されたと聞くが、なぜかかる全国各地方団体の要望にこたえた国民的要求を簡単に拒否されたのか。防衛庁経費のごとき再軍備費については惜しげもなく膨大な増額を無条件で認めた大蔵大臣が、国民生活と直結いたしております地方財政になぜあたたかい救済の手を差し伸べようとしないのか。なお、そればかりではなくして、本年度は一般公募債が例年よりも増加され、その上再建債が加わったため、一般金融機関はとうてい公募債消化の能力がないであろうということから、この公募債を引き受けるための機関として自治庁長官は地方債証券公庫を設置しようとしたが、大蔵大臣並びに大蔵省の強い反撃にあって実現しなかったといわれている。大蔵大臣は、いかなる理由によって、公募債の消化をはかろうとした地方債証券公庫の設置に反対されたのか。この際この点を明確にされたいということを強く要求いたしまして私の質問を終る次第であります。(拍手)
〔国務大臣鳩山一郎君登壇]発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/36
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037・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) 御質問にお答えをいたします。
第一に、この法案が憲法に違反せずということについて申し上げます。この法律案は、赤字に悩む地方財政の再建のために必要な限度で政府が一定範囲の調整を行おうとするものでありまして、地方自治の本旨を害するものとは考えません。(拍手)むしろ、その意味で地方自治の確立をはかろうとするものであります。これによって憲法第九十四条で認められた地方公共団体の権能を害するものではないと考えます。
次に、御質問の中に、国の財政の運営が赤字の原因になっていはしないかというようなお話がありました。赤字の原因についてはいろいろあります。各種の行政委員会制度とかあるいは地方行財政の制度とかに根ざすものもあるし、国及び地方団体の財政運営にも原因があると思います。御質問の通りに、国の財政運営が完全ではなかったことは認めなくてはならないと思います。それらにつきまして、地方財政計画が現在の財政運営と遊離して財政措置をやったということについても赤字の原因があると思います。これらの原因を除去するということが将来に課せられたる問題であることは、もとより当然であります。(拍手)
〔国務大臣一萬田尚登君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/37
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038・一萬田尚登
○国務大臣(一萬田尚登君) 御質疑の一つは、地方公共団体の赤字が国の方の責任ではないかということであります。この地方公共団体の赤字の原因は、私が申し上げるまでもなく、たくさんあると思います。これは地方側にもあります。ですから、まずこの赤字の原因をよく突きとめて、そうしてこれから直していかなくてはならないと私は思っております。中央といたしましては、今日の財政でできるだけの財源を差し上げておるわけであります。どちらが責任があるという問題じゃなくして、私の考えでは、中央と地方とが協力してこの赤字を解消していく、こういう方向にあるべきだと考えております。(拍手)
それから、地方に対して大蔵大臣として非常に冷淡であるかのようなお話があったのでありますが、そういうことは絶対ないのでありまして、乏しい財源のうちから今回もできるだけ税を差し上げたことは申すまでもありません。
なお、従来の赤字についても特別の措置を講じたわけであるのであります。ただ、今回の赤字に対する措置のうちで、地方債に依存しておるものの消化がどうかという問題でありますが、この点については先ほど詳しく申し上げた通りでありまして、私は十分市場で消化をするという確信のもとに立っております。従いまして、特に公庫を作ることをいたしておりません。
なお、地方の税のことについて、これは自治庁長官からお答えがあるのが適当であるのでありますが、これも別に増税をしようというわけではないのでありまして、こういう赤字団体におきまして、できるだけ経費の節約をして、なおかつ及ばぬ場合は税を増してもよかろう、こういうことになっておるのであります。(拍手)
〔国務大臣川島正次郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/38
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039・川島正次郎
○国務大臣(川島正次郎君) 赤字の原因につきましては、総理大臣並びに大蔵大臣から御説明があった通りでありまして、終局いたしますところ、この数年間にわたって各地方団体が自分の負担能力以上の仕事をしたということであります。しかし、これにつきましては、国の責任に属すべきものもありまするし、また地方の責任に属する点もあるのであります。そこにおきまして、今回国の責任におきまして地方財政再建促進特別措置法を出しまして、御審議を願っておるわけでございます。
この法案によれば中央集権化ではないかという御質問でありますけれども、従来、地方自治法におきましても、財政に関しましては監査監督の権限が自治庁長官にあるのでございまして、それをここに特に取り上げて書いただけでございまして、内容につきましては大した変更はないのであります。しかも、従来、各公共団体というものは、その年度々々だけの運営をいたしまして、長期にわたる計画的の財政計画をしないというところに欠陥があるのでございまして、今回、この再建措置法によりまして、約七カ年間にわたる長期の財政計画を立てまして、この財政計画が円満に運用できない際には、特に自治庁長官がこれを監督するという規定でありまして、これなくしてはとうてい地方財政の再建はできないのでございまして、決して中央集権化のためにやっておるのではないのでございます。
また、教育委員会の独立性についてのお話がありましたが、教育委員会のことについては、この法案は全然触れておりません。
それから、三月三十日、参議院の地方行政委員会において、私が交付税を五パーセント引き上げたらよかろうという言明をしたというお話でありますが、これはよくお調べ願えばわかるのでありまして、決してそういう言明はいたしておりません。おりませんのみならず、元来、かりに地方交付税を引き上げるとしても、一体二五パーセントにするのがいいのか二七パーセントにするのがいいのかということは、現在の地方財政の状況では全く見当がつかぬのであります。つかないからして、この地方財政再建促進特別措置法によって各地方で再建計画を立てて、その上に計算すれば、果して地方財政はどれだけ足りないかということがはっきりわかるのでありまして、その点から言いましても、この法案の成立はぜひ必要だということに相なるのでございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/39
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040・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 門司亮君。
〔門司亮君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/40
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041・門司亮
○門司亮君 私は、ただいま議題になっております地方財政再建促進特別措置法案に対して、大蔵大臣並びに自治庁長官、さらに内閣総理大臣に、社会党を代表いたしまして、きわめて簡単に御質問を申し上げて、詳細はいずれ委員会において十分お聞きしたいと思うのでございます。
今までの同僚各位の御質問に対して政府の答えられておりますることは、いずれも抽象的であって、実際の問題に触れておりません。地方の財政の赤字をなくしようといたしますには、やはり赤字のよって来たる原因を十分探究して、これをなくすることのために努力をする特別の考え方がなければ、幾らこういう法案をお出しになっても何にもならないのであります。
そこで、政府は、今お聞きいたしておりますると、若干国にも責任はあるが、しかし大部分は地方の自治体の責任である、ことに川島長官のごときは、地方の自治体が柄にもない仕事をするから赤字が出たんだというような言語道断のことを言われておる。(拍手)今日の地方自治体は、戦争中からさらに敗戦の今日に至るまでのあの荒廃し切った地方自治体のすべての機構を完全にすることのためには、仕事をやり過ぎたどころではないのであって、まだ幾多の財源がなければこれがやれないということは、政府の当初予算において各省が出して参りました事業計画をごらんになればよくわかるはずである。あれだけの膨大なる予算がなければ、地方の自治体の完全なる運営はできないのである。地方の自治体というが、これはすべて国の仕事であるということに間違いがないのである。私は、これを地方の自治体が仕事をやり過ぎたと言われるようなことは、遺憾千万でございます。(拍手)
以下、私は、今日の地方財政の赤字の原因のよって来たるものを二、三申し上げまして、政府の所信をただしたいと思います。
今日の地方の赤字を来たしておりまする最大の原因は、昭和二十四年の税制改革並びにシャウプの勧告、さらにドッジ・ラインによる財政規模の縮小がその原因である。事実を申し上げますならば、昭和二十四年まで、片山内閣当時において、当時の配付税は所得税と法人税の三三・一四を地方に必ず配付しなければならないとして、これは自主財源として与えておる。これる、時の自由党の政府が、一六・二九というように、ついにあのドッジ・ラインによって切り下げたために、自主財源を大幅に失ったというところに最大の原因がある。(拍手)そして、この自主財源を失うと同時に、シャウプ勧告による地方財政平衡交付金という調整財源にこれを切りかえたところに、そもそも今日の地方財政の赤字の大きな原因があるということを知ってもらいたい。(拍手)
この原因がずっとつながって参りました結果が、一体どうなっておるか。それは現在の鳩山内閣総理大臣の出された地方財政に対する報告書に明確に書いてあります。地方財政の赤字の出たのは、昭和二十五年、四つの県と三百数十の市町村で、五十一億の赤字が出ております。これが二十六年、七年、八年と続いて参りまして、ついに二十八年の決算におきましては、三十九府県、千四百の市町村の赤字の累計は、四百六十二億という膨大なる数字になっておる。これが今日の赤字の原因でございましょう。
しかも、その最も大きな原因は、それなら一体どこにあるかと言えば、まず、私が今申し上げましたように、自主財源を取り上げて調整財源に切りかえたという政府の一つの施策。その次には、政府が三百有余の種類に及びまする補助金を地方に交付いたしておりまするが、この補助金の額が地方の実態に沿わなかったということが一つの大きな原因。その次には、補助金並びに国の負担金、分担金が、適切なる時期に必ずしも地方の団体に交付されておりません。本年度においても、ごらんなさい。三月末日で調べてごらんなさい。当然地方に行くべき補助金の三割以上というものがまだ残っておるはずである。地方は、その間は、どうしても市中銀行からやりくりをして金を借りなければならない。そこには必ず利息がくっついてくる。その次に問題になっておりますものは、この分担金が適切なる時期に払われなかったということと、さらにデフレによる極度の金融引き締めから来る地方公共団体の金融の円滑でなかったということ、いわゆるつなぎ融資が不円滑だったということ。この三つの大きな原因は、私が言うまでもなく、昨年の八月十三日の閣議において時の自治庁長官であった塚田十一郎君がはっきりこれを申したと新聞は伝えておりましょう。
こういうことを考えて参りますときに、今日の地方財政の赤字というものは、あげて政府の財政処置の誤まりであるということを私ははっきり申し上げたいと思うのでありますが、これに対して、大臣は一体この事実を肯定されるかどうか、この点をはっきり御答弁願っておきたいと思うのでございます。(拍手)
さらに、その次に申し上げておきたいと思いますことは、そういう事態であって、自主財源がだんだんなくなって参りました。ことに、自主財源の問題でもう一言はっきり申し上げておきましょう。それは、去年の議会で入場税を国に取り上げて、そしてこれを地方の財源を円滑にするために譲与税とすることにされたそのときに、国にこの財源を取り上げることによって税収が非常にたくさんできるから、従って税率は半分に下げてもいいということが、あの自由党と民主党の合作による、いわゆる当時の五〇パーセントの税金を二五パーセントに下げた原因であり、説明であった。ところが、その後、今日の実績はどうなっておりますか。国がこれを取り上げて参りましても——多くを申し上げる時間がないから私は申し上げませんが、きょう、たった今、私の委員会でこの問題を質問いたしますると、自治庁の係官は、税率を半分に下げたことのために平年度において八十億の減税になりましたということをはっきり言っておる。そういたしまするならば、従来自主財源として地方に与えられておりましたこの八十億の財源が、完全に国のために取り上げられておるのである。これは財政処置の大きな誤まりであります。これらの事実を一体お認めになるかどうかということでございます。
さらに、私は、今日この法案全体を見てみますときに、最も遺憾に考えておりますものは、いろいろ同僚各位から聞かれておりますので重複することを避けますが、私が大蔵大臣に聞こうといたしまするのは、この問題に対して政府が当然責任を持つべきにもかかわらず、法案全体を通じて政府が実質的に地方の公共団体に援助をいたしまするものは、二十九年度の赤字によって、さらに三十年度の予算面から見ますならば、単に二百数十億の短期公債を長期に切りかえることのための利息の補給が、七千五百万円ばかり実質的に保証されることになっております。しかも、この法案によりますと、六分五厘以上八分五厘までの間の利子の補給をすると申しておりますが、今日まで、日本の情勢の中において、こういう処置をとられたのが二つあります。一つは農業団体の再建整備法、これは農民の出資の形において、一応借金をたな上げにして、あの苦境を一応切り抜けております。もう一つありますのは、いわゆる昭和二十三年にできた金融機関の再建整備法でございます。この法律は、戦後非常に金融界の苦しかったときに、預金は全部第二封鎖として払い戻しを法律をもって禁止して、その間に銀行の建て直しをするということが、この法律の趣旨でございましたが、これに対して今日まで政府が援助いたしておりますものは、私の調査によりますならば百六十二億に相なっているのでございます。さらに、昨年問題になって参りました造船利子補給の法律は、御承知のように、五分以上のものに対して政府が利息を保証している。これら、民間の、こういう金融関係、あるいは大きな財閥、会社等に対しては、惜しみもなく政府は財政援助をいたしておりますが、政府の責任においてできた地方公共団体の赤字に対しては、三十年度においてわずかに七千五百万円ということは、あまりに地方公共団体をいじめ過ぎはしないかと思います。一体、大蔵大臣は、これに対してどういうお考えをお持ちになっているか、この点を明確にしておいていただきたい。(拍手)
最後に、私が総理大臣にお伺いしておきたいと思いますことは、総理大臣が、五月二十八日と私は記憶しておりますが、委員会において、社会党の北山君の、政府は三十年度以後において地方財政計画に赤字の出ないような基本的な方針がおありになるかという質問に答えて、遺憾ながらまだそういうものはございませんという答弁をされている。しかりといたしまするならば、総理大臣がこの心境にいまだお変りがないといたしますならば、また実質上そういうものができていないといたしますならば、私が先ほどから申し上げておりますように、この原因を探究して、将来絶対に地方の公共団体に赤字ができないというような財政の基礎が固まらないうちに、どういう法案を幾らお出しになっても、来年度から、再来年度から、どんどん赤字団体ができてくるということになって参りますから、日本じゅう全部の地方公共団体が準禁治産のような形になって、すべてが政府管掌となるというような、全く民主主義と裏腹の形になると思います。もし、総理大臣が、あの委員会においてお話になったような、三十年度以後において十分なる処置はまだできていないというお考えであるといたしますならば、本法案は撤回された方が私は適切ではないかと考えるが、この点に対する総理大臣の御答弁をお伺いしたいと思うのでございます。(拍手)
〔国務大臣鳩山一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/41
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042・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) お答えをいたします。私は、本法案の提出によりまして、赤字に悩む地方の財政が救い得ると思います。再建のために必要な限度で、政府が一定の範囲内の調整を行わんとするもので、将来赤字の出ないようにはできるだけの努力を払いたいと思っております。まあそれでいいでしょう。(拍手)
〔国務大臣一萬田尚登君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/42
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043・一萬田尚登
○国務大臣(一萬田尚登君) お答え申します。地方公共団体の赤字の原因につきまして先ほど御質問がありました。ただいま国の責めになるようなところだけ御説明になったようでありますが、これは、私、たとえば給与費なんかについて今調査しておりますけれども、地方財政を赤字にしておる大きな理由はこういうところにもあると思います。先ほどのお話で、補助金が総花になって薄くなっておる、従って公共団体の持ち出しが多い、これが赤字の一つの原因である、これは私もやはりそう思うので、この補助金をできるだけ整理もしたいし、それから重点的に置きたいと思うのですが、これはなかなかむずかしいようです。(笑声)
それから交付金ですが、交付金に変えたことが赤字の一つの大きな原因、これは私はちょっと意見が違うのでありまして、平衡交付金みたいにして、地方の財政が幾ら膨張しても、これを国が平衡交付金でまかなうというような形にしておけば、地方財政は幾らでも膨張すると思う。今度はこれを交付金という形にして、これだけで地方財政を十分やってほしいというところで、地方財政の健全化が期待できるのではないか、私はこういうふうに考えておるわけであります。(拍手)こういう点については意見を異にしますが、いずれにいたしましても、これはほんとうに大事なことでありますので、責任といったところでしようがありません。ですから、地方も中央も一緒になって、それぞれ責任があるところはとって、そうして協力して、一日もすみやかに地方財政の再建をはかるということに邁進したい、かように考えております。(拍手)
それから、金利のことで、七千五百万円くらい計上して小さいじゃないかとおっしゃいましたが、これは六分五厘にいたして、八分五厘との間の差額を補給することにいたしたのであります。これは単に金利だけが国の援助ではないのでありまして、地方公共団体の赤字に対しては、各般のことで国も協力をし、援助もしなくてはならぬ、金利はこういうことでよかろうということで、ああいう予算を組んであるのであります。さように御了承を願います。(拍手)
〔国務大臣川島正次郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/43
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044・川島正次郎
○国務大臣(川島正次郎君) ただいまのお話で、三十年度で国はわずか七千五百万円だけしか犠牲を払わぬじゃないか、こういうことでありましたけれども、今度の再建促進法によりまして二百億円というものをたな上げするのでありまして、今日地方財政が困っているのは、この赤字を、きわめて短期に、地方銀行で繰り返し繰り返しころがして借りているがために、一般の地方債募集にも圧迫を加えておりますし、かつ元利金の支払いに困っているのであります。この二百億というものを七年の長期にたな上げしますれば、地方財政というものはすっきりした姿になるのでありまして、これを国の責任においてやろうというのでありますから、国の負担というものは単に今年度の利子補給七千五百万円だけでないということをはっきり申し上げておきます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/44
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045・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 門司君から再質問の申し出があります。残りの時間は三分ほどでありますから簡単に願います。門司亮君。
〔門司亮君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/45
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046・門司亮
○門司亮君 ごく簡単に再質問いたしたいと思います。私は実は当初から再質問の必要を感じておったのでありまするが、総理大臣はきわめてからだも御不自由でございますから、総理大臣の所信を聞くために私は特に遠慮を申し上げておきました。それは、私が聞かんとするのは、地方財政を確立するということについての意見は別段変りがない、しかし、財政の問題として再建整備をしようとするには、基本の問題として将来赤字が出ないという方針が立てられなければ、この法案をお出しになりましても、いたずらにこういう適用を受ける地方の公共団体をこしらえるだけである、いわゆる半身不随というか、準禁治産のようなものをこしらえて参りましても、日本の自治行政というものが破壊される危険性がありますから、その基礎となりまする三十年度以降についての地方財政計画が十分立っておるかどうかということを私の計画が立たないというならば、先ほど申し上げました私の意見のようにして、ぜひこれを撤回されることが私はこの際望ましいのです。そうして、さらに十分これを御勘考願いまして、これならば将来地方の公共団体に赤字が出ないという十分なる目安と確信のつきましたときにこういう法案をお出しになることが私は望ましいと考えますから、この法案の撤回を総理大臣に求めたのでございます。この御答弁がございませんので、はなはだお気の毒ではございますが、もう一応御答弁を煩わしたいと思います。(拍手)
〔国務大臣鳩山一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/46
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047・鳩山一郎
○国務大臣(鳩山一郎君) このたびの法律案のうちには、再建のため必要な限度で、政府が一定の範囲内の調整を行わんとするものでありまして、累積せる赤字についての一応の整理と、それから将来赤字が累積しないように、両面を含んだものでありまして、現在において適切なる法案だと思いますので、撤回する意思はございません。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/47
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048・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) これにて質疑は終了いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/48
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049・長谷川四郎
○長谷川四郎君 恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案の趣旨説明は延期し、本日はこれにて散会せられんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/49
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050・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/50
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051・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって動議のごとく決しました。
本日はこれにて散会いたします。
午後三時二十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02819550614/51
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