1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年七月十五日(金曜日)
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議事日程 第四十一号
昭和三十年七月十五日
午後一時開議
第一 農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第二 輸出入取引法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第三 中小企業安定法の一部を改正する法律案(小笠公韶君提出)
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●本日の会議に付した案件
日程第一 農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案(内閣提出)
森林法の一部を改正する法律案(川俣清音君外十名提出)
日程第二 輸出入取引法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第三 中小企業安定法の一部を改正する法律案(小笠公韶君提出)
繊維製品品質表示法案(内閣提出)
国民金融公庫法の一部を改正する法律案(内閣提出)
関税定率法の一部を改正する法律案(内閣提出)
博物館法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
昭和三十年度特別会計予算補正(特第1号)
午後三時十二分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/0
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001・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) これより会議を開きます。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/1
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002・長谷川四郎
○長谷川四郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、日程第一とともに、川俣清音君外十名提出、森林法の一部を改正する法律案を追加して、両案を一括議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/2
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003・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/3
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004・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって日程は追加せられました。
日程第一、農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案、森林法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。農林水産委員会理事安藤覺君。
〔安藤覺君登壇]発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/4
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005・安藤覺
○安藤覺君 ただいま議題と相なりました、内閣提出、農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案、及び、川俣清音君外十名提出、森林法の一部を改正する法律案につきまして、農林水産委員会における審査の概要を御報告申し上げます。
まず、農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案について申し上げます。
昭和二十八年に農林漁業金融公庫が設立されて以来、農林漁業の生産力の維持増進をはかるため、八百七十七億円余に上る長期かつ低利の資金が融通されておりますことは、御承知の通りであります。しかるに、本年度におきましては、資金全体として二百六十億円の貸付を計画いたしておりまして、その資金源の内訳は、政府からの出資十億円、資金運用部からの借入金百九十五億円及び回収金五十五億円が予定されております。このため、昭和三十年度一般会計から十億円の出資をすること及び公庫の業務の範囲を拡大すること等について現行法を改正しようとするのが本案の趣旨でありまして、そのおもなる内容は、第一点は、公庫に対し政府から本年度に十億円出資することにより、現在四百五十六億七百万円の公庫資本金を四百六十六億七百万円に改めること。第二点は、農林漁業者の共同利用施設以外の個人の施設に対しても資金の貸付を行い得ることとすること。第三点は、日本開発銀行の農林漁業金融公庫に対する貸付金を返済し、これに相当する金額を産業投資特別会計から同公庫に出資があったこととするため、すなわち借入金を出資金に振りかえるために必要な規定を加えること。以上でございます。
本案は、五月二十日に付託と相なり、七月八日吉川農林政務次官から提案理由の説明がありまして、同十四日質疑に入りましたが、足鹿委員と政府との間に質疑応答が行われ、本年度は公庫資金の構成内容に従来と変った措置がとられたわけであるが、今後公庫の貸出金利を引き上げる等の心配はないかとの質疑があり、これに対し、政府より、今後極力原資の増強に努め、長期低利資金を確保したい旨の答弁がございました。
同日質疑を終了いたし、討論を省略して採決を行いましたるところ、全会一致をもって本案は可決すべきものと決しました。
なお、その際本案に対し附帯決議が付されたのでありますが、その内容は次のごときものでございます。
農林漁業資金は本来長期低利資金たるべきものであるから、資金量の確保、金利の積極的引下げのため、政府は原資金の調達等に関し十分なる検討を加うべきである。
次に、森林法の一部を改正する法律案について御報告申し上げます。昭和二十六年に森林法が施行されまして、国土の保全、森林資源の保護培養等とともに、森林組合の円滑なる運営をはかって参ったのでありますが、この間の経験に徴し、また町村合併促進に伴いまして、従来の比較的小規模な森林組合を合併してその適正規模化をはかろうとする気運が生じて参ったのであります。しかるに、現行森林法による森林組合の管理規定をもって組合に臨みますと、零細な森林所有者をもって組織している組合の場合等については実態に沿わない面が出る等の支障がありますので、この際これらに必要な最小限度の改正を加えようとして、本案が提出いたされたのであります。
その改正内容について概要を申し上げますと、第一点は総代会の制度につ
いてでありますが、総代会制度の活用をはかるため、年一回は通常総会を開かねばならないという規定を削除すること、及び、総会にかわるべき総代会を設け得るのは組合員が百人をこえる場合となっているのを二百人に改め、総代の定数は組合員三百人をこえる場合は七十五人以上にする等であります。第二点は、役員及び総代の選出には投票選挙以外に選任制を設けること、及び選挙手続の簡素化をはかることであります。第三点は、理事の責任等を明確にする等、職務規定を整備することであります。第四点は、合併について行政庁の認可を受ける際に定款及び事業計画を提出することを規定いたしたことであります。
本案は、各派の議員十一名、賛成者二十九名をもって提出せられました法案でありまして、七月十四日付託となり、翌十五日提案者を代表して川俣清音君より提案理由の説明がございましたが、農林水産委員全員が提案者または賛成者でありまして委員各位とも法案の内容は熟知されておりますので、別に質疑、討論もなく、同日採決を行い、全員一致をもって本案は可決すべきものと決した次第であります。
以上、御報告を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/5
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006・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 両案を一括して採決いたします。両案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/6
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007・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって両案は委員長報告の通り可決いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/7
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008・長谷川四郎
○長谷川四郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、日程第二及び第三とともに、内閣提出、繊維製品品質表示法案を追加して、三案を一括議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/8
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009・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/9
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010・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって日程は追加せられました。
日程第二、輸出入取引法の一部を改正する法律案、日程第三、中小企業安定法の一部を改正する法律案、繊維製品品質表示法案、右三案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。商工委員長田中角榮君。
〔田中角榮君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/10
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011・田中角榮
○田中角榮君 ただいま議題となりました輸出入取引法の一部を改正する法律案外二件につきまして、商工委員会における審議の経過並びに結果を概略御報告申し上げます。
まず、輸出入取引法の一部を改正する法律案について申し上げます。
最近のわが国輸出貿易の現状は、輸出商社等においてお互いに無用の競争を行ういわゆる過度競争の結果、必要以上の安値輸出を行う傾向がますます強くなり、一面において、わが国輸出品の声価を失墜させると同時に、相手方の関係業界に不測の損害を与えることともなり、他面、わが国としては得ぺかりし外貨の喪失という二重の国家的損失をこ与むつているわけであります。しかるに、最近、国際貿易の潮流に顧み、わが国の輸出貿易の現象が現在のまま続く限りにおいては、貿易の今後の伸展にきわめて困難の度を加えることは必至でありまして、貿易を中心とするわが国経済自立計画に重大なる支障を与えるものと深く憂慮せられるのであります。従いまして、この際わが国の貿易の健全な発展をはかるのみでなく、国際貿易に大いに寄与するためにも、今日のごときいたずらな無用の競争は極力避け、合理的なお互いの自主的協調によって輸出秩序の確立をはかることは焦眉の急務であるのであります。以上が本法律案の趣旨であります。
次に、本案の要点を申し上げます。第一に、不公正な輸出取引をした輪島業者に対し、その行為がわが国の輸出業者の国際的信用を著しく害すると認められるときは、通商産業大臣は直ちに貨物の輸出の停止を命じ得ることといたしました。第二に、輸出業者の協定に対する制限を大幅に緩和し、その効果の急速なる実現を期することとしたのであります。第三に、輸出業者の協定の締結が困難であり、その協定をもってしても、なおかつ輸出取引の秩序の確立が困難なる場合には、必要な最小限度におきまして、生産業者または販売業者が輸出すべき貨物の国内取引に関する事項について協定を締結する道を講じました。第四に、特定の地域との輸出入の円滑な調整をはかるため、特に必要があると認められる地域には、その地域との輸出入の調整を主たる目的とする輸出入組合の設立を認めることとしたのであります。第五に、輸出入に関するアウトサイダー規制命令につきましては、規制の範囲を若干拡大することとしたのであります。以上が本法案の骨子であります。
本法律案は、六月十五日当委員会に付託せられ、翌十六日、政府委員より提案の趣旨説明を聴取したのであります。越えて六月二十二日質疑に入り、二十九日、七月六日、七月十三日と熱心な質疑応答が当委員と政府委員との間に行われたのであります。なお、七月八日には参考人を招致し、本案に対し意見の開陳を求め、六月二十二日には貿易特別委員会との連合審査を行なったのであります。質疑の内容の詳細は会議録を御参照願うことといたします。
十三日質疑を終了し、十四日、民主党山手滿男君、社会党を代表し帆足計君より、それぞれ修正案が提案せられました。よって、修正案につき質疑に入り、提案者と委員との質疑が行われたのであります。
修正案につき質疑終了後、討論に付しましたところ、社会党片島港君より、山手滿男君の提出修正案に反対、その修正部分を除く原案にも反対する。帆足計君提出修正案には賛意を表するとの意見の開陳があり、民主党首藤新八君より、社会党提出修正案に反対、山手滿男君提出修正案に賛成、並びに修正部分を除く原案に賛成の意を表されたのであります。
引き続き採決いたしましたところ、社会党帆足計君提出修正案は否決せられ、民主党山手滿男君提出修正案並びに修正部分を除く原案は多数をもって可決、よって本法律案は修正議決いたされました。
なお、本法律案の議決後、民主党小笠公韶君より、本法律案の施行に当っては、公正取引委員会の意見を尊重するとともに、独禁法の精神をそこなわざるようにとの趣旨の附帯決議案が提案されましたので、本決議案を議題として採決いたしましたところ、多数をもって本法律案の附帯決議と議決した次第であります。
次に、中小企業安定法の一部を改正する法律案について申し上げます。
中小企業安定法は昭和二十七年制定せられ、その施行後の経験と最近における日本経済がいわゆる正常化の方向に進むにつれて、中小企業のいわば慢性的不況の状態は放置することを許さなくなってきておりますのみならず、過度の競争の結果、輸出産業の、面においても国家的に多大の損失を見ているような状態でありますので、この法律の適用の要件につき、いわゆる不況要件を緩和するほか、輸出貿易の振興のためにも適用し得るようにして、機宜に応じ、かつ弾力的に運用し得るようにしたのであります。
その主要な改正点は次の通りであります。第一は、第一条の目的及び第二条の業種指定の要件について、その法律適用の範囲を従来の国内不況の場合に加えて輸出貿易の阻害せられる場合を加え、さらにこれらの場合について適用要件の緩和をはかったのであります。第二は、第二十九条のいわゆるアウトサイダー規制命令につきまして発動要件の緩和をはかりましたことと、第二十九条二項に基く命令の期間に関する規定は、第一項に基く命令と同様の取扱いによることといたしました。第三は、調整組合及び同連合会の事業範囲を拡張しまして、調整活動の強化をはかったのであります。
以上が提案の趣旨並びに要点であります。
本法律案は、民主党小笠公韶君より提出せられ、六月二十一日当委員会に付託になり、六月二十八日、提出者小笠公韶君より提案の趣旨説明を聴取したのであります。本法案は七月十一日質疑を終了いたしたのでありますが、七月七日には、中小企業に関する小委員会において、本法律案に関し参考人を招き、意見の聴取を行いました。内容については会議録に譲ります。
引き続き、七月十四日自由党南好雄君より修正案が提出せられ、その提案趣旨を聴取いたし、続いて討論に付し、社会党田中武夫君より賛成意見の開陳が行われました。
次に、採決に入りましたところ、南好雄君提出修正案並びに修正部分を除く原案は全会一致をもって可決され、よって本法律案は修正議決いたされました。
なお、本法律案議決後、民主党首藤新八君より附帯決議案が提出せられ、その趣旨弁明が行われました。本決議案を議題として採決いたしましたところ、全会一致をもって本法律案の附帯決議と議決した次第であります。
次は、繊維製品品質表示法案について申し上げます。
化学繊維の増産によりまして、繊維全体の中において化学繊維の占める比重が増加して参っておる実情でありますことと、また新しい合成繊維等が続々と生まれてきていることは、最近の世界の繊維事情の著しい特徴をなしておるのであります。わが国におきまいしても、特に天然繊維に恵まれない事情もあり、最近の世界的傾向と軌を一にして、化学繊維の増産は著しいものがあるのであります。このような実情のもとにおいて、繊維の種類が増加いたしますとともに、各種の繊維の混紡あるいは交織製品が生まれ、繊維製品の種類は複雑となり、その識別がはなはだ困難になってきております。その上、各種の繊維はおのおのの特色を持ち、そのすぐれた特質を生かすことは、繊維製品の消費者にとって最も大切なことでありますが、このためには、消費者が容易に繊維製品の内容を知り得ることが必要であります。以上のように、繊維製品の識別が困難な実情にありますので、繊維製品の内容を適当な方法によって表示することが消費者の利益を保護するゆえんであります。
次に、本法律案の骨子を申し上げます。第一に、重要な繊維製品について、その品質を示す名前と、その名前の示す繊維製品の内容を明らかにしております。第二に、繊維製品の製造業者、販売業者等が、きめられた名前を使用して繊維製品を表わす場合には、必ずきめられた内容のものでなければならないことにし、正しくない表示をすことを禁止しております。第三に、繊維製品の表示につきましては、業界の自主的な措置のみによっては表示が励行されず、あるいは正しくない表示が横行する等、表示の秩序が混乱して消費者に不測の損害を与えるというような場合には、表示を強制し、あるいは表示者を限定する等の措置を講じたのであります。
以上が本法律案の趣旨並びに要点であります。
本法律案は、六月三十日当委員会に付託せられ、翌七月一日、政府委員より提案の理由を聴取いたしました。七月十一日質疑に入り、十二日、十三日と三日間にわたり質疑応答があり、十三日質疑は終了いたしました。内容の詳細は会議録に譲りますので、御参照願います。
越えて十五日、各党を代表し社会党加藤清二君より修正案が提出せられ、その趣旨説明を聴取し、討論を省略し、修正案及び修正部分を除く原案について採決いたしましたところ、全会一致をもって可決され、よって本法律案は修正議決いたされました。
本法律案議決後、自由党江崎真澄君より附帯決議案が提案せられましたので、本決議案を議題として採決いたしましたところ、全会一致をもって本法律案の附帯決議と議決した次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/11
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012・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 日程第二に対しては、永井勝次郎君外十二名から成規により修正案が提出されております。この際修正案の趣旨弁明を許します。帆足計君。
〔帆足計君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/12
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013・帆足計
○帆足計君 私は、ここに、両派社会党を代表いたしまして、輸出入取引法一部改正案に対し修正案を提出し、各位の御賛同を要望する次第でございます。
申すまでもなく、今日わが国の現状におきまして、輸出においては過当なる乱売競争の弊を防止し、輸入においては過度の競争による原料輸入価格のせり上げの弊を防止すべき何らかの法的措置の必要でありますことは、周知のごとくでございます。しかしながら、このような輸出または輸入の統制は、現在の諸制度のもとにおきましては、一歩誤まりますならば、大資本の不当なる独占を招来し、あるいはまた官僚独善統制の弊を生じ、さらには中小企業の存在が不当に脅かされることが憂慮いたされる次第でございます。今日、保守政党の経済政策は、周知のごとく、一歩々々独占禁止法の制約を解いて、再び過去の財閥復興、過度の経済力の集中、弱肉強食、大資本制覇の傾向を帯びておりますこと、すこぶる顕著なる実例があるのでございます。われらは、もとより、大工業そのもの、大企業そのものに反対するものではありませんが、大資本の無制限なる跳梁ばっこは、価格の不当なるつり上げによって消費者大衆を圧迫するのみならず、中小企業の生存を不当に脅かす等のことに対しては、厳重なる監視の必要を痛感するものでございます。近時ますます加わり来たる大資本の圧力に対して、中小企業安定法の修正または百貨店法等の制定の必要が叫ばれておりますこと、並びに、現に今日このときにおきまして中小企業安定法修正案が上程されておりますことも、この事実を示すものでございます。しかるがゆえに、輸出入取引法改正案に対し、輸出、輸入、輸出入調整等の統制事項の決定に当りましては、官僚の独善と大資本偏重の弊害を除去し、中小業者の意見を十分に聴取し、その利益も考慮し、適切に所を得せしむべき旨の規定を第三十八条に挿入すべきことの必要を痛感し、これを提案いたすものでございます。
第二には、組合の機構並びに運営に関連することでございます。従来とかく同業組合の運営が一部大資本の利益に偏重いたしがちなことは、中小企業の部面に総合的合見地に立つ人材を得がたきこと等の若干の理由もありましたけれども、何分にも、組合その他の同業団体におきまして、幹部役員がややもすればボス化し、これが官僚の権力と結びますときは、中小企業者は萎縮し、後難をおそれて発言を遠慮し、このようなことにおきましては、とうてい組合の民主的運営は望みがたいのでございます。(拍手)また、いかなる場合におきましても、集団生活におきまして少数意見を尊重するということは、きわめて肝要なことでありますことにかんがみまして、われわれは、第五条等におきまして、組合が統制事項について組合経由をもって政府に申請をいたしますときは、少数意見をもあわせこれに添付し、政府がこれに対して深甚なる考慮を払うべきことを要望いたしたいのでございます。
第三に考慮いたすべきことは、今日輸出入調整法を直ちに中国貿易に適用することの可否についてでございます。周知のごとく、昨年すでに、日中貿易の実績は、輸出入実績七千万ドルをこえるに至りました。工業塩、米、大豆、マグネシアクリンカー、福州粘土、螢石、雑穀等々の原料の輸入はすでに相当量に達し、なかんずく工業塩の輸入は、本年度においては年間八十万トンの輸入が予想せられ、わが国輸入工業塩のすでに過半を占めるに至ったのでございます。また、見返り輸出といたしましては、硫安、過燐酸石灰、人絹糸、医薬品、染料中間体等の輸出も漸次増大の趨向を示して参っているのでございます。それにもかかわらず、今日中国向け輸出の伸展が遅々として進まざること、ややもすれば原料輸入に見合わないゆえんのものは、周知のごとく、ココム禁輸によるところの禁止的制限の結果でございます。
今日、新中国が日本からの輸入に期待するゆえんのものは、すでに昔日のごとき売薬、仁丹、かめのこたわし、こうもりがさ、中華どんぶり、フカのひれ、シイタケ、ナマコのたぐいではないのでございます。もちろん、このようなものも全然不要ではないのでありますけれども、今日、中国におきまして、インドにおいてもそうでありますけれども、まず農村においては自転車、少女は、ミシン、むしろ協同組合等においては工業用ミシンを必要とし、家庭においてはラジオ、写真機等の新生活用品を要望し、さらに病院におきましては、昔日の仁丹、万金丹等の売薬のかわりに、ズルフォンアミド剤、ペニシリン、ストレプトマイシン等の化学薬品を要求し、体温計、医療器械等を要望しておるのであります。さらに、輸送機関充実のために、鉄道用機材、機関車、貨車、信号機、トラック、オート三輪、各種の汽船、漁船、起重機、運搬車等々、さらにはまた、各種モーター、電気機械、電線、電燈、薄板、工作機械、産業機械等、総じてかくのごとき各種の平和建設機材の輸入を建設途上にある新中国は要望いたしておることは周知のことでございます。
しかるに、遺憾にたえませんことは、先ほど申しましたように、これらの各種平和建設資材の大部分は、戦略物資の名のもとに、アメリカ政府の利害に基き、その一方的指図に従いまして、中国市場に対しては全面的に貿易禁止の措置がとられておる現状でございます。さらに、ココム禁輸とはそもそも何であるかと申しますと、それは条約協定または国会において十分なる審議を経たものではなく、そうして、国民の納得の上に定められたることではないのでございます。国会の審議によらず、国民の納得によらず、日本の生命線であるところの貿易の問題に対し、他国の利害を基準として重大なる一方的制限が行われておりますことは、党派をこえて、まことに遺憾にたえぬ次第であると思うのでございます。(拍手)
そもそも、戦争直後の時代ならばいざ知らず、今日トラック、オート三輪、漁船、運搬車などがどうして戦略物資の名で呼び得るものでございましょうか。しいて戦略物資は何であるかと問うならば、ヨーロッパ諸国の経済雑誌等を見ましても、今日戦略物資とは、レーダー、ロケット砲、ジェット機並びに原水爆の一部の秘密、かように論じておるのでございます。しかも、その原子力の秘密さえが、今年八月の国際会議におきましては、世界諸国民に平和利用のために公開されようとしておるのが今日の潮流でございます。ただいま申し述べましたような建設物資の大部分は、今日すでにソ連、東欧諸国に対しては輸出が許されておるのでございます。しかるがゆえに、西ヨーロッパの諸国におきましては、近距離の東独またはスイッツル等の中立国を通じまして、自由に、かつ、きわめて円滑に中国の市場に対して輸出するの便宜が開かれておるのでございます。敗戦直後の当時ならばいざ知らず、戦争終ってすでに十年、原子力とジェット機の時代に、戦車、バズーカ砲さえもすでに過去の遺物となりつつあります今日において、前述のような平和建設物資が戦略物資の名のもとにとめられておりますことのまことに遺憾であることは、すでに石橋通商産業大臣もしばしば委員会において言明されたところでございます。(拍手)
今日、ココム輸出禁止は、日本と中国との経済交流を押え、ひいては日本経済の自立と繁栄を押えようとするところのアメリカ、イギリス等外国の利益のための商略とも言うべきものでありまして、戦略物資ではなく、貿易商業の競争のための商略物資と言うても過言でないと思うのでございます。(拍手)このことは、日本政府の外務大臣よりも、アメリカ上下両院外交委員長の方がよく知っておるかのようでありまして、過日の新聞記者会談において両委員長がこのココム制限の不合理に触れましたことも、皆様の記憶に新たなところでございます。従いまして貿易拡大のために、このような不当な制限下にあるところのココム禁輸の打破こそが、今日八方ふさがりの日本経済にとって急務中の急務でありますことを、私ども痛感いたす次第でございます。
今日、ココムの厳重なる制限下におきまして、中国への輸出物資の範囲はきわめて乏しく、りょうりょうたるものでございます。かかるときに、ココム制限打破への強力なる推進をなすことなく、いたずらに中国市場向き輸出入調整組合の創立を急ぎましたところで、それは官僚統制の強化に役立つではありましょうけれども、ほとんど得るところがないと思うのでございます。もし、それ、中国貿易の窓口は一つであるので、輸出または輸入等に若干の統制が必要であるということでありますならば、そのためには、当面は、業界の自治によりまして設けられた日中貿易の業者団体を活用し、あるいは商品別部会を設け、または現在すでに自治的に形成されております中国向け輸出入商品別グループの機構を活用し、輸出入取引法中の統制規定を適用すれば事足りるのではないかと思うのでございます。何ぞ花嫁の定まらざるうちに祝宴の席次について思いわずらうことなかれと申したい次第でございます。(拍手)
もとより、日本は島国、海の国でございまして、北アジア、中国との貿易の推進のみをもって能事終れりとすることのできないことは言うまでもございません。日本の置かれたる自然条件を客観的に勘案いたしますならば、北アジア、すなわち中国、朝鮮、台湾等の貿易がまず四〇%、東南アジアが三〇%、アメリカ、欧州その他が三〇%で、四〇、三〇、三〇というのが自然の摂理に基く比率であると思うのでございます。しかして、対中国貿易打開のかぎは、輸出入調整組合の設立を急いでかえって縮小均衡の迷路に足を踏み入れますことではなく、アメリカ政府の不当なる圧迫によるココム禁輸を超党派的な国民世論の圧力によって断固粉砕することの急務であることを痛感いたすのでございます。(拍手)
今日、貿易推進のかぎの一つは、官僚統制の強化にあらずして、国民の自覚と努力とその世論の支援による国民外交の強力なる推進によらねばならず、同時に、互恵平等の見地から、常に国民的自尊心と見識を持って事に当り、なかんずく北アジアの隣邦諸国に対して平和友好、相互理解を深めることが最も緊要な課題の一つであると思うのでございます。(拍手)ソ連の人口は二億一千万、アメリカの人口は一億四千万、しかるに、隣邦中国は六億、インドは三億でございます。かかるアジアの十億をこえる市場との互恵平等による平和的結合こそは、貿易に生きねばならぬ一億日本国民の進路であることを痛感いたすのでございます。(拍手)
かくのごとき観点に基きまして、三個の修正案を提出いたしました。輸出入取引法改正案の全貌につきましては、後刻友党の松平議員より詳細なる御批判が開陳されることと存じますので、私は、以上三点を修正案として諸兄の前に提出し、各位の御賛同を得ますことを切望いたす次第でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/13
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014・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 討論の通告があります。順次これを許します。内田常雄君。
〔内田常雄君登壇]発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/14
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015・内田常雄
○内田常雄君 私は、自由党を代表いたしまして、輸出入取引法の一部を改正する法律案に関して、社会党両派の修正案に反対いたし、民自両党議員の修正案を含む政府原案に賛成の意向を表明するものでございます。(拍手)
御承知のように、輸出入取引法は昭和二十七年初めて制定せられたものでありますが、その後昭和二十八年に一回の修正を見ておるのでございます。しかしながら、現在の輸出入取引法は、御承知のように、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律、すなわらいわゆる独占禁止法との関連におきまして、いろいろの制約を受けておりまして、わが国貿易の伸張をはかりますために十分の機能を発揮することができず、これが一そうの強化拡充は、今日まで日本国内業界の各方面から広く要望せられておるものでございます。これを一つの表現をもって申しますならば、今日の独占禁止法並びにこれによって制約をせられますところの輸出入取引法は、輸出入貿易に関して日本国民の利益のために窓を開いておると申しますよりも、むしろ外国の貿易商社のために利益の窓を開いておると申しましても過言でないような面があるのでありまして、どうしても、わが国八千万人の人口が自立をいたしますならば、事態に応じてこれを改正する必要があるのでございます。
今回政府が提出せられました改正案は、これらの点に関しまして、不十分ではありますが、従来の法律に比較して格段の改善を見ておるものでございまして、私ども自由党としてもこれに賛意を表するものでございますけれども、しかし、なおかつ政府の改正案におきましては、事態の変転に即して十分ならざる点が存するのでございます。かような点につきまして、われわれ自由党並びに民主党有志議員の者と相諮り、先ほど委員長から御報告がありましたような修正案を提起いたしたものでございます。
これらの内容につきましては、私は詳細に申し述べることをいたしませんけれども、そのうち最も社会党両派の方が心配をせられました点は、先ほどもお話がありましたように、今回の政府の改正案並びに民自両党の修正案は、中小企業の意見を聞くことが十分ではないじゃないかというお話でございますけれども、これはよく社会党の諸君がわれわれの修正案及び政府原案をお読みになれば十分明らかになるところでございまして、たとえば輸出業者の輸出取引に関する協定を認めまする場合に、一定の適格条項が定められておるのでありまして、この適格条項といたしまして、第五条の第二項に六つの条文が用意をせられておるのであります。そのうち、ことに私が社会党の諸君の注意を喚起いたしたいのは、その第四号に、この協定の内容が不当に差別的である場合、あるいは国内の関係事業者または一般の消費者の利益を不当に害するおそれがあります場合には、通商産業大臣はこの協定締結の認可をしてはならないという明文があるのでございまして、これらの点を十分に御勉強下さいますならば、先ほどの社会党の諸君の御心配はないことと考えるのであります。さらにまた、この法律案の第三十三条は、この法律によって認められた輸出組合等につきましては、独占禁止法等の適用を排除するのでありますけれども、その協定の内容が不公正な取引方法を含みます場合には、依然として公正取引委員会の活動機能を生かされるのでありまして、かような点におきましても、私は社会党の諸君の心配せられるような点はないことを確信いたすものでございます。
これを要しまするに、今回のわれわれの修正案は、政府の原案を、事態に即して一そう機動的な貿易活動ができまするように、よりよい改善をいたしたものでありまして、このことは、参考人の意見等に徴しましても、ひとり大企業のみならず、各般の業界、中小企業等を含めますところの生産業者、販売業者等も、かような改正並びに修正の線を希望せられておったのであります。かような趣旨から、私は、私どもの修正案に対しまして、社会党の諸君の御賛成をあらためてこいねがうものでございます。(拍手)
最後に申し述べたいことは、この修正案に対しましては、民主党の小笠君から附帯決議が提出をせられたのでありますが、この附帯決議の趣旨は、通商産業大臣は、本法案が修正せられました後におきましても、あくまでも私的独占禁止及び公正取引の確保に関する法律の精神を尊重し、公正取引委員会の意向を尊重すべきことをうたっておるのでありまするが、これに対しましても社会党の諸君が反対をせられておりますることは、まことに私の納得の行かないところでございます。(拍手)
思うに、今回の社会党の諸君の修正案の提出というものは、法律案の内容の修正と申しますよりも、近時新聞で伝えられますところの社会党両派の決定と申しますか、政府を攻撃し、保守党を攻撃せんとするその態度、さようなプロパガンダ、デモンストレーションの一つに供されたにすぎないものでありまして、いやしくも今日わが国が自立をいたし、貿易を振興いたしますためには、政党政派を超越して日本の行くべき道を考えなければならない際に当りまして、かようなプロパガンダやデモンストレーションによって人々を迷わすことは、私のさらに遺憾とするところでございます。
以上、簡単でありますが、私は、われわれの修正案を支持し、社会党の修正案に反対の意向を表明いたすものでございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/15
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016・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 松平忠久君。
〔松平忠久君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/16
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017・松平忠久
○松平忠久君 ただいま議題となりました輸出入取引法の一部改正案に対しまして、私は、両派社会党を代表して、政府原案並びに民自両党から提出されておるところの修正案に対して反対し、両派社会党の提出にかかる修正案に対して賛成の意見を表明しようと思うのであります。(拍手)
今回の国会におけるところの政府提出の各種の経済関係の法律案を見ますと、その最大の特徴は、独占禁止法の存在を骨抜きにして、重要産業における私的独占を促進かつ強化せんとする意図が露骨に現われておる点であります。(拍手)これは、鳩山総理のいわゆる友愛精神にも反するのみならず、民主党が総選挙における公約において掲げたところの中小企業対策とか、あるいは社会保障対策の強化とは全く正反対な方向に向っておるのであります。(拍手)すなわち、今回の、たとえば石炭鉱業合理化臨時措置法案にいたしましても、また今回のこの輸出入取引法の一部改正案にいたしましても、政府は、国民経済の発展のためという、この国民経済に名をかりておるのでありましてただいまの内田君の討論によりましても、その国民というのは、全体の国民ではなくして、実は一部の大資本家なのでございます。(拍手)すなわち、大資本家に奉仕し、大資本家の擁護にのみ没頭しておるのでありまして、大資本家の擁護に急であって、中小企業の犠牲になることに全然目をおおっておるのであります。しかも、今回の民自両党のこの修正案のごときは、それにさらに拍車をかけ輪をかけたところの改悪法案と言わなければなりません。
わが日本における貿易の進展をはかり、またその国際的な信用を向上するということの必要なることは、私どもも痛感をいたしておるのであります。しかしながら、一部の大資本家のみに奉仕いたしまして、中小企業の利益を犠牲にする、このやり方に対して私どもは、この中小企業の立場を守り、この利益を擁護せんがために、最小限度の所要の改正を加えんとするものでありまして、以下、私は、この二、三の点について意見を申し述べたいと存ずるのであります。
第一には、政府原案は独占禁止法の適用の緩和を従来よりも大幅にこれをしようとする点でありますけれども、実は、現在すでに、たとえば鉄鋼業のごときにおきましては、大メーカーが全く独占をいたしまして、鉄鋼問屋、輸出入業者、これらの一連の関連の業者とつながりまして、その背後に市中銀行があって強力にこれをバツクして、いわゆる集中融資を行なって、私的独占を一歩々々と促進し、中小企業の進出を阻害しておる現状なのであります。従って、今回のこの改正によりまして、メーカーが輸出協定を行うということになりますと、セメント、鉄鋼、肥料あるいは化繊、これらの大メーカーが生産品の過半数を占めておるいわゆる輸出商品は、たちまち大メーカー相互で輸出価格と数量とを決定いたしまして、中小企業はこれに追随せざるを得なくなるのであります。また、従来中小メーカーにほとんどゆだねられておったところの有望なる輸出品、たとえば光学機械であるとか、あるいは一部の水産加工品のようなものに対しては、大メーカーがさらに進出をしてきまして、中小メーカーを圧倒してしまう、こういうことは火を見るよりも明らかなのであります。
第二に、政府の改正案は、輸出、輸入についてのアウトサイダー規制の範囲、それをさらに国内取引にまで拡大しようという点であります。これによって自主統制の形で巨大資本中心の協定が結ばれ、それに反対する中小企業は、行政命令によって、協定違反の際には苛酷な行政罰を受けるということになっておるのであります。
以上の二点に関しまして、今回全国の中小企業者から期せずして上った声というものは、この改正によって貿易の面における大企業独占のおそれがある、また、組合の運営がボス化される、独禁法が全く骨抜きになる、また、官僚統制がさらに強化される、日本の貿易全体としての発展が阻害されるということが指摘されておるのでありまして、その修正の声が、全国の中小企業者によって、ほうはいとして起っておるのであります。内田君は、先ほど、ここで、国民的な要望であると申しましたけれども、中小企業のほとんど大部分は、これに対して修正意見を持っておるのであります。従って、これらの弱い中小企業者の最後の要望のためにも、通産大臣は、たとえば関連せる省令の制定または改廃、あるいは行政処分に当って、中小規模のものに対して意見を述べる最小限度の機会を与えることは、これは当然と言わねばなりません。また、輸出入協定に関して少数意見があるかないか、これを知る必要があることも当然でありますので、両派社会党は、この点に関して必要なる最小限度の修正案を提出して、これを法文化せんとしたのであります。これこそ弱い中小企業者の強い希望に合致するものでありまして、中小企業の保護育成をスローガンとしておるところの民主党、選挙において公約したこの民主党の諸君も、この最小限度の中小企業者の要望に対しては、頭から無視することはできないのではなかろうかと思うのであります。
他方、民自両党の修正案なるものは、独禁法を全く死文化するおそれがあるものでありまして、これは、商工委員の方々は、きのうの商工委員会の、あの醜態を御存じでありましょう。すなわち、わが党の伊藤卯四郎委員より、公正取引委員会の横田委員長に対して、この点をただしたところが、横田委員長は、民自修正には反対である、協定の認可に当って、通産大臣がこの認可をする場合において公取の同意を求めなければならないということを削除して、ただ単に協議をすればよい、こういうふうに改めんとしておるところの民自両党の修正には反対であるということを言明しておるのであります。(拍手)すなわち、政府、与党間におけるところの不一致が暴露いたしまして、委員会において空前の醜態を演じたことは、諸君も御承知の通りであるのであります。その後、政府、与党におきましては、窮余の一策として、附帯決議なるものを作って当面を糊塗しておるのでありますけれども、この附帯決議なるものを読んでみましても、全く言いわけであり、ごまかしであります。私は、かかる重要法案の修正が、このような一片の言いわけでごまかされるということは、国会の権威のためにも深く悲しむものであります。
最後に、第三点として指摘したい点は、第二十三条に掲げられておるところの中共向けの輸出入組合の設置に関してであります。政府は、組合を設立すれば、現在の中共貿易のアンバランス、すなわちわが方の入超は是正されるがごとき錯覚に陥っておるのでありますけれども、現在のアンバランスは、先ほども同僚帆足議員から説明がありましたけれども、中共の望んでおるところの品物は日本が禁止しておる、すなわち、ココム・リストが存在しているためにかかるアンバランスがあるということは、何人も否定することができない事実であります。このコユム・リストが緩和されない限りは、いかに組合を作って強化しようが、中共貿易のアンバランスは全く是正されるものではなくて、むしろ、逆にますます縮小均衡となるのであります。しかも、現在、米、塩、大豆、あるいは硫安、人絹のごときは、いずれも大体独占的な形態に移行しておるのであります。その一方において、近くジュネーヴで開催の予定の四大国会議、四巨頭会議におきましては、ココム・リスト緩和の前兆があるのであります。従って、新たなる分野の開拓のためにも、あらためて、業者の自主的な、はつらつたる行動によって拡大均衡をはかるべき時期が遠くはなく、また、われわれはこの方向に向って、この実現に努力しなければならないと思っておるのであります。
一部の論者は、中共側の窓口が一本化されておるから、わが日本の窓口も一本化する必要がある、そのために単一の輸出入組合を設置する必要があると言っておるのであります。これこそ一知半解の論者の見解であって、政府は、中共貿易に関しては、ほとんどめくらで、つんぼさじきにおるのであります。従って、かかる一知半解の論者の見解に乗せられておるのであります。
中共におきましては、外国為替の統制は厳重にいたしております。これは事実でありますけれども、しかし、あの中国の膨大なる地域、交通の不便、地域的な特殊性、これからいたしまして、中国の進出口公司が全面的にこれを統制しておるのではありません。私ども国会議員、各党の同僚議員も昨秋中共に行って参ったのでありますが、この国会議員が、私どもが昨秋中共へ視察に参りました節におきまして、直接北京政府の対外貿易部の次長から聞いたところによりますと、進出口公司の運営に当りましては、中共各地の支店に広範なる自主的な権限を与えておるのであります。すなわち、ある物資が北京の進出口公司の本店で要らない、不要であっても、上海とか、広東もしくは天津の進出口公司の分行においてはその輸入が必要な場合があるのでありまして、北京の本店のコントロール、統制というものは、地方の分行には完全に行われておらず、言いかえれば、地方の分店というものは、相当独立したところの権限を与えられておるのであります。また、今日約二千に及ぶところの民間の貿易業者がありますけれども、北京政府の責任者の言明によりますと、この民間貿易業者はおのおのその特徴を生かして活動させる方針であると、これを明らかにされておるのであります。従って、わが国といたしましては、もっと各地における進出口公司の分店なりあるいは民間業者とさらに密接な関係をつけなければならないのでありまして、かかる状態であるにもかかわらず、政府は全く一方的な判断に基いてこの法律案を出してきたのであります。政府は、全く相手国の実態を把握することなく、一知半解の知識によって今回の措置に出んとするものでありまして、はなはだ軽率と言わねばなりません。(拍手)
よって、両派社会党におきましては、日中貿易の現段階よりいたしまして、従来の知識と経験とを十分に活動させる時期である、中共向けの輸出入の組合の一体化というものは、今日の段階においては有害無益の消極政策であるとの結論でありまして、この条文を削除することは当然と考えておるのであります。相手国の実態を把握することなく、現在の段階における四国四巨頭会談の見きわめというものを把握することなく、かくのごとき措置に出たことに対して、私たちはきわめて遺憾とするのであります。従って私は、政府に対しては、相手国の実態をよく把握して、そのためにも日中貿易についてはもっと積極政策を打ち出さなければならない、そうして、縮小均衡というような弊に陥ることなく、こういう消極政策は断固として排除せられんことを要望いたしまして、私の討論を終るものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/17
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018・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) これにて討論は終局いたしました。
これより日程第二の採決に入ります。
まず、本案に対する永井勝次郎君外十二名提出の修正案につき採決いたします。永井勝次郎君外十二名提出の修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立]発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/18
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019・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 起立少数。よって修正案は否決されました。
次に、本案につき採決いたします。本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/19
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020・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 起立多数。よって本案は委員長報告の通り決しました。
次に、日程第三及び繊維製品品質表示法案の両案を一括して採決いたします。両案の委員長の報告はいずれも修正であります。両案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/20
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021・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって両案は委員長報告の通り決しました。(拍手)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/21
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022・長谷川四郎
○長谷川四郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出、国民金融公庫法の一部を改正する法律案、関税定率法の一部を改正する法律案、右両案を一括議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/22
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023・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/23
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024・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって日程は追加せられました。
国民金融公庫法の一部を改正する法律案、関税定率法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。大蔵委員会理事加藤高藏君。
〔加藤高藏君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/24
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025・加藤高藏
○加藤高藏君 ただいま議題となりました国民金融公庫法の一部を改正する法律案外一法律案につきまして、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
まず、国民金融公庫法の一部を改正する法律案について申し上げます。
この法案は、国民金融公庫に対する資金需要が本年度においても相当の額に達することが予想されますので、昭和三十年度におきまして一般会計から二十億円を公庫に対して出資することとし、これに伴って公庫法第五条の資本金百九十五億円を二百十五億円に改めようとするものであります。
本案につきましては、去る六月十六日、内藤友明委員外二十五名より修正案が提出いたされました。修正案の内容は、先般の昭和三十年度予算の修正により、一般会計から出資を予定していた二十億円を五億円に減額いたしましたので、従って、新資本金を二百億円といたそうとするものであります。
大蔵委員会においては、慎重に審議を重ねました後、本日各派共同提案による附帯決議が提出いたされました。すなわち
政府は、同公庫の資金需給の実情にかんがみ、次年度において十分なる政府出資を行うよう遺憾なきを期せられたい。
右決議する。以上であります。
次いで、質疑を終了し、討論を省略して直ちに採決に入りましたところ、本法律案は多数をもって修正議決いたされました。
なお、各派共同提出の附帯決議につきましては、全会一致をもって可決いたしました。
次に、関税定率法の一部を改正する法律案について申し上げます。
本法律案は、今回のガット、すなわち関税及び貿易に関する一般協定加入のための関税交渉の結果等を考慮して、映画用フィルムの税率を従量税率に改めるとともに、これに伴う規定の整備を行うため、関税定率法の一部を改正しようというのであります。
以下、その改正の内容について簡単に申し上げます。わが国の関税率は、昭和二十六年の改正により、すべて従価税率によることとされているのでありますが、映画用フィルムにつきましては、その取引形態の特殊性のため適正な課税価格の算定がきわめて困難であるため、従来から従量税率の採用につきまして検討を進めておりましたところ、今般、ガットの関税交渉におきまして、映画用フィルムの一部について従量税率による協定が行われましたので、これを機会に、露出済みの映画用フィルムの税率を従量税率に改めるとともに、このような従量税率の採用に伴いまして所要の規定を整備しようというのであります。なお、この改正は、ガットの譲許税率の適用と同時に施行しようとするものであります。
本法律案は、去る七月五日政府委員より提案理由の説明を聴取し、本日質疑を打ち切り、討論を省略、直ちに採決に入りましたところ、全会一致をもって本法律案は原案の通り可決いたされました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/25
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026・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) これより採決に入ります。
まず、国民金融公庫法の一部を改正する法律案につき採決いたします。本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/26
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027・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 起立多数。よって本案は委員長報告の通り決しました。
次に、関税定率法の一部を改正する法律案につき採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/27
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028・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって本案は委員長報告の通り可決いたしました。
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博物館法の一部を改正する法律案
(内閣提出、参議院送付)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/28
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029・長谷川四郎
○長谷川四郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出、博物館法の一部を改正する法律案を議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/29
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030・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/30
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031・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって日程は追加せられました。
博物館法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。文教委員長佐藤觀次郎君。
〔佐藤觀次郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/31
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032・佐藤觀次郎
○佐藤觀次郎君 ただいま上程になりました博物館法の一部を改正する法律案につきまして、文教委員会における審議の過程及びその結果を御報告申し上げます。
本法律案は内閣の提出でありまして、その提出理由は、博物館法が去る昭和二十六年十二月に制定されたのを契機として、博物館の建設と内容の整備は著しく促進され、特に専門職員である学芸員の資格を定めたことによって、従来欠けていた博物館の教育活動が充実されるとともに、博物館資料の活用によって国民の実生活向上に大きな役割を果してきたのでありますが、現行法の一部改正によって、さらに学芸員の充実を期し、各種博物館の振興をはかるとともに、わが国の社会教育活動を助長したいというのであります。
次に、本法律案の要点について簡単に申し上げますと、第一は、従来学芸員の資格取得の方法として講習の道が開かれておりましたが、博物館の実情に応じ、博物館職員の学芸員資格取得の便宜をはかり、学芸員の充実を一そう促進するために、講習制度を廃して文部大臣の認定制度に改定しようとしております。第二は、学芸員の職名を細分化することが地方博物館の総合的な性格から実情に適応しない点が多いために、従来の人文科学学芸員及び自然科学学芸員の別を廃止するよう規定しようとしております。第三は、現行法には博物館の設置主体の一として日本赤十字社があげられておりますが、日本赤十字社以外の特殊法人も博物館の設置主体となるべき場合を予想して、政令で定める法人を博物館の設置主体として認めるよう規定しようとしております。また、博物館の登録事項の変更届出の規定を簡易にして、博物館当事者の便宜をはかることを規定しようとしております。第四は、「文部大臣の指定する博物館に相当する施設」に関する現行法附則の規定を本則に規定して、法による博物館同様に助長しようとしております。なお、附則には経過規定を設けて法の改正による博物館行政に支障がないようにしようとしております。
本法律案は、去る六月十日委員会に付託され、以来慎重に審議を重ねて参りました。本委員会の審議に当りましては、永山忠則君等からきわめて熱心な質疑が行われ、一、博物館利用者の状況、特に修学旅行の児童、生徒に及ぼす成果について、二、博物館の入館料徴収について、三、博物館の施設、設備に対する補助の現況等について、細部にわたり検討が加えられたのでありますが、特に学芸員の資格取得を認定制度に改めることによってその質的低下を来たす心配はないか、その資質向上の対策について、また、博物館の設置主体として認めるという政令で定める法人とは何を予想しているかという質疑について、政府から、人手不足等の理由により受講できなかった者に対する勉学上のテキスト・ブック、参考書等がすでに完備普及しており、かつ受講できなかった者の大部分は、すでに講習を終った学芸員とともに実務に携わってその指導を受けている現状であるから、認定制度による資格取得のために質の低下を招くおそれはない、また、政令で定める法人については、現行法にあげられている日本赤十字社以外に、専売公社、日本国有鉄道、日本放送協会等が予想せられるので、政令で個々にそれらの法人を指定して詳細については速記録によって御承知願いたいと存じます。
次いで、七月十五日質疑を終了、討論を省略して採決の結果、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決定した次第であります。
右、御報告を申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/32
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033・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/33
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034・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって本案は委員長報告の通り可決いたしました。この際暫時休憩いたします。
午後四時二十六分休憩
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午後五時七分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/34
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035・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/35
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036・長谷川四郎
○長谷川四郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、昭和三十年度特別会計予算補正(特第1号)を議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/36
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037・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/37
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038・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって日程は追加せられました。
昭和三十年度特別会計予算補正(特第1号)を議題といたします。委員長の報告を求めます。予算委員長三浦一雄君。
〔三浦一雄君登壇]発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/38
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039・三浦一雄
○三浦一雄君 ただいま議題となりました昭和三十年度特別会計予算補正(特第1号)の、予算委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本補正予算案は、七月二日予算委員会に付託せられ、七月十四日政府より提案理由の説明を聞き、次いで質疑に入り、本日まで両日にわたり審議せられました。
本補正予算の要旨は、去る六月二十四日国会の承認を受けました農産物に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定に基きまして、米国余剰農産物の購入に伴い、米国政府からの借り入れ資金を財源として、電源開発、農地開発その他わが国の経済発展に資するための資金の貸付を行うこととし、その経理を明確にするため、新たに特別会計を設け、一般会計と区分し、余剰農産物資金融通特別会計法により処理せんとするものであります。従いまして、本補正予算により、昭和三十年度予算の規模には何ら変りはございません。
次に、この特別会計の歳入は、アメリカよりの借入金二百十四億二千万円及び貸付金の利子収入一億八千余万円、計二百十六億円をもって財源とし、歳出は、電源開発事業に百八十二億五千万円、農地開発事業に三十億円、日本生産性本部に一億五千万円を貸付せんとするものであります。
本予算案に対しましては熱心なる質疑応答が行われたのでございます。これらの詳細は会議録に譲ることといたします。
かくて、本日質疑を終了し、討論、採決に入り、政府原案通り多数をもって可決されました。
以上をもって報告といたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/39
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040・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) これより討論に入ります。中村時雄君。
〔中村時雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/40
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041・中村時雄
○中村時雄君 私は、日本社会党両派を代表いたしまして、昭和三十年度特別会計予算補正(特第1号)に対しまして反対の意思を表明し、その理由について若干の説明を加えんとするものであります。(拍手)
本補正予算案は、昨秋吉田前総理大臣が唯一の渡米みやげとして持ち帰り、その後、細目取りきめに関しまして、約半年の間わが方が譲歩を重ねたあげく、去る五月の二十七日ワシントンにおいて仮調印され、同三十一日重光外務大臣とアリソン大使との間で署名された後、重光外相の各党回りの結果、やっと先月二十四日国会の承認を受けました農産物に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結に伴い、これに基いて借り入れますところの外貨資金を財源といたしまして、国内の経済開発のための資金の貸付に関する経理を区分して計上するため、余剰農産物資金融通特別会計を設置する必要に伴って提出されたものであります。私は、昨年四月十五日、本壇上において、MSA協定の締結に伴い経済援助資金特別会計を新設するための特別会計予算補正に対して反対討論を行いましたことを思い起すのでありますが、吉田前内閣の悪政に引き続き、また鳩山内閣の失政に対し、再びこれを弾劾せざるを得ない場面にありますことを、国民とともに深く悲しむものであります。(拍手)
本予算補正の前提と相なっております、いわゆる日米余剰農産物協定そのものが、経済上に百害あって一利なきのみならず、政治的にも、アメリカ世界戦略の一環としてのMSA体制に日本を引っ込み、再軍備、憲法改正、平和破壊への道を選ばんとする反動的な鳩山内閣の隠された野望につながるゆえんについては、今日まで数々の反対論が展開されてきたのでありますが、その後における客観情勢の推移というものは、ますますわれわれの所論の妥当性を裏づけておることを指摘せざるを得ないのであります。すなわち、まず鳩山内閣は、本協定において、その自主性を完全に喪失し、遺憾なくその奴隷的根性を暴露したのであります。
すなわち、本協定の唯一の利点は、ドル貨を使用せず、円貨で必要な農産物が買えるということでありました。しかるに、アメリカ側よりドル条項を突きつけられ、これが大蔵事務当局の反対にあうや、これを回避せんとして数カ月の苦労を重ね、ドル貨買付に方針を変更しようとした際、今度は世界銀行からの異議の申し立てにあい、ついに円貨買付、ドル貨借款、ドル貨返済、ただし場合によって円貨返済という、まことに奇妙な苦肉策を編み出してきたのであります。しかし、いかにごまかそうといたしましても、本借款の手続上より見て、これが事実上ドル条項付であることは一点の疑問の余地のないものであろうと私は思うのであります。(拍手)唯一の口実である円貨借款の利点は全く雲散霧消しておるのであります。十数億ドルの外貨を常にわれわれは持っておると豪語しておる政府が、これほどまでにして、わずか一億ドルを借りる必要が、一体どこにあるでありましょうか。
しかして、本借款一億ドルは、御承知のごとく、円貨買付分八千五百万ドルと、グラント分一千五百万ドルと相なっており、買付分の七〇%、すなわち五千九百五十万ドル、円貨換算二百十四億二千万円がわが方の借款となり、三〇%すなわち二千五百五十万ドル、円貨九十一億八千万円が米側の使用に充てられるわけでありまするが、借款の使途は、アメリカ側から電源開発百八十二億五千万円、農地開発三十億円、生産性本部一億五千万円という厳重なひもがつけられ、使用に関するわが方の自主性は全く認められないのであります。しかも、アメリカ側の使用分は、在日米軍の軍費等に充てられるほか、わが国内におけるアメリカ農産物の売り込みの費用等に投ぜられるのでありまして、余った農産物を用いて、さらに何倍かの農産物を買わせようという、徹底した商人根性に立っておることは、私たちは全くあぜんたらざるを得ないのであります。(拍手)
次に、政府は、今回の協定が昨年のMSA小麦協定と異なるところは、軍事目的につながらず、純粋に経済目的につながるものであることを宣伝しているのでありますが、一国が他国を従属化する方法は種々さまざまで、一律でないことは、過去における帝国主義諸国家の対外政策を検討すれば、きわめて明白なものであろうと思うのであります。
さらに、本協定をめぐる国会の論戦を通じて、政府部内における方針の不統一あるいは思想的混乱は、まことに醜態のきわみであったと申さなければなりません。各新聞は大小さまざまな事例をあげて報道いたしておったのでありますが、参議院予算委員会におきまして、松村文部大臣は、矢嶋三義君の質問に答え、余剰農産物の受け入れは本年限りと心得ると言明されておるのであります。元来この協定は日本側から申し入れたものであることは、重光外務大臣の外務委員会における答弁よりしても明らかでありますから、来年から断わろうと断わるまいと勝手であるはずであります。しかるに、本日の新聞は、河野農林大臣は来月十日前後に第二次受け入れのために渡米することを伝えております。現に、大臣は、きのう農林省幹部を集めまして、計画の作成を命じておるのであります。農林大臣が、国内食糧増産に挺身することなくして、またも物ほしげに、わずか一億ドルの農産物のために渡米せられるということは、まさに私は不可解な行動であると思うのであります。(拍手)黙っておっても売り込みに来る余剰農産物を、いかなる理由によって、多額の経費を使って、はるばる出かけてまで買い付けねばならないのか、その真意が那辺にあるのか、私は理解に苦しむのであります。しかも、まことに奇々怪々たることは、買付業務の当面の責任者たる通産省内部より、綿花、米を中心に、有力な買い入れ中止論が台頭しておるという事実であります。
第四点といたしましては、本協定の条件がわが国にとって著しく不利であることは、いささか商取引の心得ある人にとっては直ちに気づくところであります。金利につきまして、かつて引き下げの交渉をやり、にべもなく断わられたことは、高碕国務大臣の説明にあるのでありますが、綿花については、その受け入れがわが国綿業界の不振を激化せしめるとともに、莫大な損失をもたらすことは、天下公知のところであります。すなわち、余剰綿花を正常輸入のワク外で買い付けることにより、過剰生産に拍車をかけ、合成繊維の増産をはばみ、品質粗悪の米綿のため日本品の声価を失墜せしめるのみならず、エジプト綿等と比較してはるかに高価であり、一儀を輸入するごとに二十ドルの損失を生じ、十七万五千俵の受け入れにより実に十二億六千万円の損失を与えるのであります。また、米におきましては、東南アジアとの貿易関係を冷却せしめ、十万トンの受け入れがビルマヘの輸出をすでに減しつつあることは、すでに歴然たるものがあるのであります。また、大麦の価格は割高であり、小麦が、カナダのマニトバ硬質小麦と異なり、パン用に不向きな軟質小麦であることは、すでに世間の常識とさえ相なっておるのであります。このように、本協定締結の条件が非常に不利でありますことは、いかように弁解されようと、専門家の間ではもはや通用しないのでありまして、高碕、石橋両大臣の責任はまことに重大であると申さねばならぬと思うのであります。(拍手)
さらに、以上私がるる申し述べましたいかなる問題よりも、より悪い条件、悪い影響をもたらしますのは、国内農産物の増産を阻害し、農家経営を圧迫し、かつ国民経済の自立体制を崩壊せしめる危険をはらんでいるということであります。アメリカよりの農産物輸入がわが国輸入総量の四〇%を占める事実は、国民すべてが深く反省すべきところであります。しかるに、鳩山内閣成立以来、国内食糧の自給方針は漸次退潮に向っておることは、三十年度予算案の審議に当り痛烈に批判されたところでありますが、本日公式発表予定の経済白書においても、国内農業の保護、食糧自給について一言半句も触れられておらないという事実は、現内閣の経済政策の特色を遺憾なく露呈したものと言わざるを得ないのであります。(拍手)
二十九年度下半期より農村経済が急激に悪化に向っておるということは、諸統計の明白に示すところでありますが、通常輸入のワク外であることを約束する余剰農産物の買付が国内農業にとって非常なマイナスでありますことは、高碕国務大臣自身がはっきり告白されております。しかも、国内農業の犠牲によって買い付けられた農産物による借款が、その大部分農業外の分野に投資されるということは、二重の意味において国内農業にとって大きなマイナスであると私は言わねばならぬと思うのであります。
また、わずか三十億円を農地開発に投下することにより表面を糊塗せられようとしておるのであります。その三十億円の配分をめぐって政府、与党内部に醜い争いが生じたことは、今日知らない者はないのであります。二百十四億円の全部をあげて農業開発に立ち向うということであるならば、農業における一時の犠牲を忍んで将来の発展に備えるという理屈も立つでありましょう。が、現在のような方法で、このように日本の農民がアメリカの農業恐慌を救済する義務とその実力が今日果してあるかどうかを考えていただきたいのであります。しかも、本協定の見返り円資金に依存して、愛知用水及び上北、篠津、根釧の機械開墾を行うために、内閣は法律案を提案されております。が、今後五カ年間に五百億円以上の投資を必要とするこの計画は、本協定の五カ年存続を予定するもののごとくであり、もし本協定が中途挫折しましたなれば、他の地方における土地改良、あるいは開墾、干拓、これらの大部分が停止のうき目を見るおそれなしとしないのであります。このような無謀なる計画を誘導し来たった本協定は、今後における食糧農業政策に救うべからざる不安と混乱を生ずる危険を包有するものと私は断定しなければならないのであります。
以上申し述べました諸種の理由により、私は、日米余剰農産物協定に伴う国内的財政処置たる昭和三十年度特別会計予算補正(特第1号)に対しまして断固反対することを明らかにして、私の討論を終る次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/41
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042・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 平野三郎君。
〔平野三郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/42
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043・平野三郎
○平野三郎君 私は、ただいま議題となりました昭和三十年度特別会計予算補正(特第1号)につきまして、自由党を代表し、希望意見を付して賛成の意を表するものであります。
本特別会計は、さきに政府が国会に承認を求めた余剰農産物受け入れに関する日米協定に基くものでありまして、当時わが党としては十分に意見を述べたところでありますから、本日はごく簡単でとどめたいと存じます。
アメリカにおいては大量の余剰農産物が生じておりますが、わが国としては、戦後において、土地の縮小に加うるに人口の増加のため著しい食糧不足を生じている関係上、本協定を締結することにより、一面、わが国の基本的問題たる食糧問題を解決するとともに、他面、本会計によって生ずる資金をもって電源開発並びに農地開発事業の推進をはからんとするものでありまして、サンフランシスコ平和条約を中軸とするわが国外交の根本方針に合致するとともに、国民の要望にこたえる適切なる施策であると確信いたします。ことに、余剰農産物の受け入れに当っては通常輸入計画の範囲内において行うことでありまするから、国内の農産物価格には特に影響を与えるおそれはないのであります。
本協定は、自由党内閣時代において企図せられ、幾多の外交交渉を経て結実に至ったものであります。今回、鳩山内閣が、わが党政策の衣鉢を継いで、本協定を締結し、それに伴う特別会計補正予算案を提出いたしたことは、わが意を得たるところとして賛意を惜しまざるものであります。ただ、はなはだ遺憾にたえざることは、来年度の本協定の進行に関し、閣内において意見の不統一が存在することであります。本日の予算委員会において、はしなくもこの点が暴露し、特に松村文部大臣のごときは、本年限りでこれを打ち切るがごとき認識不足を露呈いたし、あわててこれを取り消すというような醜態をいたしたのであります。本会計による投資事業は、電源開発は申すに及ばず、農地開発事業、なかんずく愛知用水事業のごときは五カ年計画として発足するものでありまして、もし本年限りにて打ち切るとすれば、明年度以降における資金計画に重大なるそごを来たすことは言うまでもありません。一たび開始いたしました事業を中途において打ち切るようなことはできませんから、万難を排して事業の完遂を期さなければなりませんが、貧弱なるわが国の財政金融の実力をもってしては、もし余剰農産物資金計画を失った場合は、重大なる難関に逢着することとなるのであります。さればと申して、明年度の本協定更新に当っては、わが国にさらに有利な条件を必要とするのでありまして、これらの外交交渉こそは、国家並びに国民の運命にもかかわる重大問題であります。政府は、この際、この重大任務にかんがみ、最善を尽すよう勇猛発奮すべきことをここに警告する次第であります。
以上、警告を付して賛成討論といたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/43
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044・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) これにて討論は終局いたしました。
採決いたします。本件の委員長の報告は可決であります。本件を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/44
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045・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 起立多数。よって本件は委員長報告の通り可決いたしました。
本日はこれにて散会いたします。
午後五時二十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X04219550715/45
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