1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年六月二十一日(火曜日)
午後一時四十二分開会
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出席者は左の通り。
委員長 加藤シヅエ君
理事
早川 愼一君
重盛 壽治君
木島 虎藏君
委員
入交 太藏君
岡田 信次君
川村 松助君
黒川 武雄君
一松 政二君
三木與吉郎君
内村 清次君
大倉 精一君
片岡 文重君
三浦 義男君
国務大臣
運 輸 大 臣 三木 武夫君
政府委員
法務省刑事局長 井本 臺吉君
運輸大臣官房長 山内 公猷君
運輸省海運局長 粟澤 一男君
運輸省自動車局
長 眞田 登君
専務局側
常任委員会専門
員 古谷 善亮君
常任委員会専門
員 田倉 八郎君
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本日の会議に付した案件
○道路運送車両法の一部を改正する法
律案(内閣提出、衆議院送付)
○海上運送法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
○運輸一般事情に関する調査の件(紫
雲丸遭難事件に関する件)
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001・加藤シヅエ
○委員長(加藤シヅエ君) では、ただいまから運輸委員会を開会いたします。
道路運送車両法の一部を改正する法律案を議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/1
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002・内村清次
○内村清次君 この法律案の内容によりますと、定員及び予算が国家財政の現状から足らないから、十分でないから、この法律によって自動車の登録及び検査の手続を簡素化する、こういうことでございますが、それを逆に、そうしたために定員を減らす一つの要素にするというようなことは、これは絶対にお考えでないでしょうね、この点について。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/2
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003・眞田登
○政府委員(眞田登君) われわれの方ではそういう考えは持っておりませんので、今までに相当にふやしていただくべきものがふやしていただけなかった。どうしても簡素化して一般の便宜をはかるとともに、われわれの方の仕事の能率も上げたい、こういうつもりでございまして、減らすということは全然考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/3
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004・内村清次
○内村清次君 そこで、実は検査をいたします際においては、これは従来検査をする個所というものは一定であって、あるいはまたは普遍的に場所を変えてやるということもあるわけですが、それに職員の方々が出張をして、そうして立ち合いによって検査をするというような際におけるところの出張旅費というものが非常に少いために、私もこれはもう相当以前でしたが、こういう公務出張の問題は、法律におきましても検査の規定ができておる以上は、これを遂行するための出張である以上、やはり十分に政府の方では、期間もはっきりしておりますから、期間該当の旅費だけは確保すべきである。反面には、もしも不足のためにあるいは業者負担になってみたり、そこにいろいろ不正なる問題ができて、それでやむなくともその職員が関係するというような不詳事件が起っては相ならないからして、これは一つ十分注意して予算を組んだらどうかということを、私は当時質問したことがございますが、そういうような部内の声というものも現在はございませんか。旅費の予算その他は支障ないか、その点明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/4
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005・眞田登
○政府委員(眞田登君) 仰せの通りでありまして、実際に車両検査に出て参りますのに旅費が不足で困っている面も相当ございます。毎年そういう点を関係方面に力説いたしまして、その増額に努力いたしておりますが、今後ともそういった御心配のないように大いに努力いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/5
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006・加藤シヅエ
○委員長(加藤シヅエ君) ほかに御質疑はございませんか。
別に御質疑もないようでございますから、これより討論採決に入りたいと存じます。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/6
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007・岡田信次
○岡田信次君 私は討論は省略したらいかがと思います。そういう動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/7
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008・加藤シヅエ
○委員長(加藤シヅエ君) 岡田委員の動議に御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/8
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009・加藤シヅエ
○委員長(加藤シヅエ君) 御異議なきものと認めまして、討論を省略をいたし、これより本案の採決に入ります。本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/9
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010・加藤シヅエ
○委員長(加藤シヅエ君) 全会一致でございます。よって本案は、全会一致をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。
なお本院規則第百四条により本会議における口頭報告の内容、第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成、その他自後の手続につきましては、これは委員長に一任願いたいと存じますが、御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/10
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011・加藤シヅエ
○委員長(加藤シヅエ君) 御異議なきものと認めます。
それから報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますから、本案を可とされた方は順次御署名を願います。
多数意見者署名
早川 愼一 木島 虎藏
岡田 信次 川村 松助
黒川 武雄 一松 政二
三木與吉郎 内村 溝次
大倉 精一 三浦 義男
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/11
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012・加藤シヅエ
○委員長(加藤シヅエ君) 次に、海上運送法の一部を改正する法律案を議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/12
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013・内村清次
○内村清次君 ちょっと委員長にお伺いいたしますが、運輸大臣はきょうはずっとおられますか、実は委員長には委員部を通じまして緊急な質問の形で質問書を出しておりますけれども、この質問が行かれますまでやっていただけますれば……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/13
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014・加藤シヅエ
○委員長(加藤シヅエ君) 大臣は四時ごろまで本委員会に出席されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/14
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015・内村清次
○内村清次君 委員長、その点も勘案されてよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/15
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016・加藤シヅエ
○委員長(加藤シヅエ君) よろしゅうございます。
ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/16
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017・加藤シヅエ
○委員長(加藤シヅエ君) 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/17
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018・一松政二
○一松政二君 私は三木運輸大臣にちょっと航路運送法のことについて伺いたいと思うのですが、航路運送事業法に今度あらためて、——海上運送法の一部を改正する法律案に不定期旅客運送事業というものが新しく登場してきたわけです。従前は不定期航路というものが、二十三条には、「不定期航路事業を営む者は、省令の定める手続により、その事業の開始の日から三十日以内に、運輸大臣にその旨を届け出なければならない。」というので、おそらく、これは旅客も貨物も一緒であったろうと思うのです。今度は、おそらく貨物については同じことであろうと思うのですが、特に旅客についてこれを許可事項に持っていった。それで、許可事項に持っていって、それをいろいろ伺ってみると、非常に小さな沿岸の、五トン、十トン、二十トンといった程度の、島と島との間、または一、二の港の間を運航しておる非常に零細なもんなんです、その実例を聞いてみると。私は、それが結局は運賃の統制を乱すということが一つの原因のようにもあるし、それからあるいは横浜の遊覧船が貨物船の出入にじゃまになるという一つの論点もあげられておるのですが、どうも、こういう海上運送法なんという基本の法律をそんな小さな、ごく波の先のくずれたあわみたいなような、たとえはどうかと思いますが、そういったものを規制するために波を規制するようなどうも気がしてしょうがないわけなんですが、あまりにそういった末梢的な現象にとらわれて、私は基本法律にそういうことを織り込むということについて、どうしてもぴったりといかないのです。その上にもっていって、もう一つそれが春秋の観光シーズンその他に行われるところの旅客をおもにして、修学旅行、あるいはまた団体旅行の温泉客その他を当てにしている。これはやはりある程度、一カ月、二カ月あるのですから、反復されておるのですから、そこにある程度混同が起りやすいことと、それからまたそれを見る人の、管掌する人の考え方によってこれが左右されると思うので、こういう規定を入れることそれ自身がかえってよけいな摩擦というのですか、そういう区別しにくいような問題をあらためて惹起するおそれがあると思うのですが、運輸大臣もそうあまり私は真剣になってお考えになったことは実はなかろうと思うのですが、われわれがこれを審議して、いろいろ実例を出してみると、そういうことになっておって、どうも基本法にそういうものを出してきて、事務当局の者でしょうが、それほどの値打を私は少くとも認めないのですが、運輸大臣に一つ御意見を伺いたいと思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/18
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019・三木武夫
○国務大臣(三木武夫君) 御承知のように最近いろいろな事故なども、不定期船、まあ観光客などが相当ふえて参りまして、この間も私は少し心配になったから、海上保安庁に依頼しまして、全国の港にあるいわゆる観光船に対して調べてもらいました。いろいろな事故が頻発して、そのために、事故が起れば生命の損傷もあるということで、そういうことを依頼をしたわけでございます。非常に心配になったわけであります。そういうために、一つはそういう海上における旅客輸送というものが、何らの行政権の関与なしに放任されておるということが、いろいろの不測の事故防止の点からもいかがであろう。また一つには、これはいろいろ旅客運送のいろいろ企業の適正化というものをいろいろ乱すような面も出てくるのではないか。こういうことで、いろいろな今日の状態から考えまして、こういう立法は、今一松さんの御指摘のように、少し繁雑に流れる点もございますけれども、しかし一応ここに、これは免許制ということにして一つの基準を考える方が、利用者に対してこの方が非常に利用者の利益を守るのではないか。まあこういうことで、少し繁雑ではございますが、こういう法案を御審議を願うような結論になった次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/19
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020・一松政二
○一松政二君 事故防止と、それから港のじゃまになるとか、あるいはそれの船の適、不適というようなことは、これは別な法律で私は規制があると思う。ことに、それから旅客に対しては、金銭的にはいわゆる団体保険によってカバーされておりますが、そうするとその基準というものは、この法律それ自体によれば、ごく雑駁な、ごく当りまえな常識的なことしかないので、その船の適、不適といえば、全部これはその場所によって到底一律には行かない。ある湾では危ないと思うものが、ある川や平水航路なら何ごともない。しかし平水航路と思われているところへ突風が起ってきたりして、事故というものは起りがちなのであって、免許事業にしたから、許可事業にしたから事故が起らず、届出制において事故が起るということは、私は事故に関する限りはどうかと思うのです。それは推定に属することだから、結局水かけ論になるかもしれませんが、私は事故に関する限りは、届出制にしたから事故があり、免許可にしたから事故がないとは限らないと思う。国鉄のああいう事故というものは、あらゆる安全装置、あらゆる訓練を経ておりながら、ああいうことがあるので、しかも鏡のごとき瀬戸内海の宇高船でああいうことがあるのですから、許可制にしたから事故がなくて、届出制にしたから事故があるという見方には、私は賛成することはできません。
それからもう一つは、運賃の問題だろうと思うのですが、運賃といったところで、やはりタクシー業者と同じようなもので、こいつなかなか取締りというものは私は実際において不可能であろうと思う。また僻遠の地の渡し船の、お客さんのあるなしによって、どうだ幾ら幾らで行かないかと言われれば、ごくわずかな人間の場合には、遊んでいてもしょうがないから、じゃ、行きましょうというようなことも必ずしもないとも限らないので、別な方面の規制で私はそういうことは避けられると思うのですけれども、これは意見になりますから、あえて私は大臣の答弁を求めません。
私は、そういう今の統制意識に従えば、これはちょっと委員長に相談ですが、ちょうど大臣に海運に関することで質問しているので、同じ関連になることですからちょっと伺いたいのです。それで、たとえば海上運送をする場合に、今までは全然船会社ばかりが特定の荷物を輸送しておった。その場合に、荷主が、それじゃ金ができたから船を作って、そうして同じものを取り上げてかりにやろうというようなことができたと仮定した場合には、しかもそれが海外航路に従事するようなものであったときには、大臣はそういう許可の申請があった場合には、それをどうお考えになるでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/20
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021・三木武夫
○国務大臣(三木武夫君) 船は、今貨物船を必要とするわけであります。いろいろ自己資本で貨物船を作るということは、これは考えなければなりません。しかしそのオペレートするのを、荷主自身がそれをオペレートするというようなことは、私は適当でないと思う。それは海運業者がやることだ、こういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/21
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022・一松政二
○一松政二君 そうすると、船の建造は差しつかえない、差しつかえないが、オペレートするには運送業者をしてやらしむるというお考えですか、もしそういう場合には……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/22
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023・三木武夫
○国務大臣(三木武夫君) まあ原則的にはそういうふうに考えておるのでありまして、これは個々のケース・バイ・ケースで検討を加える必要がある。一がいにこれは言うわけにもゆきますまい。そういうときは、申請があれば、その個々の申請に基いて検討を加える、こういう考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/23
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024・一松政二
○一松政二君 そうすると、そこが運輸省の日ごろの考え方の、いわゆる秩序維持あるいは混乱を避けるということが、ほとんど陸上はもう常にそういうことをやっているし、海上においても、今度の一部改正の問題についても、それが一つの主眼点になっておるのですが、船会社と荷主というものは、これは相より相待っておるのですが、船会社が当然輸送しておったところに持っていって、もし荷主が金のあるにまかせてどんどん作られたら、これはおそらく今日の船会社は借金ばかりしていて、いろいろ問題を起したくらいに弱いのです。ところが、荷主によっては非常に強いのがあるのです。しかも外国資本によっている石油業者のごときは、非常に強いのです。しかも石油というものは、今日はほとんどどの会社といえども莫大の利益をあげているのです、国民の犠牲において。しかもそれは外国資本が多く加わっておるのが、かりに船を作るというようなことが起ってくれば、私は日本の海運業者は、おそらく石油業者がかりに作るとすれば、タンカーですか、いわゆるタンカー業者というのは非常な打撃を受けると思うのです。そういう場合でもやはり、具体的にいえば原油の輸送なんですが、そういう場合、石油会社の申請がかりにあったとすればお許しになるかどうか。そういうことそれ自体が、海運の健全な発展ということが臨時船舶建造調整法かなんかの第一条件になっておるのですが、それに適合するとお考えになっておるか、おらないか。ちょうど大臣がお見えになったので、それは海上運送の秩序を乱るというようなことがいつでも何か理由になりますから、ついでに一つ御意見を伺っておきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/24
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025・三木武夫
○国務大臣(三木武夫君) この問題はやはりいろいろ、海運の秩序を乱してはいけないという見地もございまするし、いろんな点からやはりそのケース、ケースによって検討を加えるということよりほかにはないとこう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/25
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026・一松政二
○一松政二君 そうすると、具体的の事例が起った場合に、最初はある特定——そういうのがあるかないかは知りませんけれども、かりにあるとした場合に、甲の石油会社が作るというた場合には、乙の会社も必ずそれに均霑しようとする。乙の会社がやったらまた丙も、資力のある限り私はそういうことは企画してくると思う。結局、とめどがなくなってしまって、自己の貨物は自己が輸送する、そうしたら海運専門で、タンカー専門で立っているもの、なんじはどこへ行くという問題が起ってくる。そうして国家に莫大な借金を負うておるものは、ほとんどそういう場合に、これは国家が勝手にやったのだから、船をとっていってくれ、僕はあとの借金は何も知らないというすてばち気分が起らぬとも限らない。
これは、私は仮定のことを言っているので、これは今秩序を維持する、秩序を維持するとしょっちゅうおっしゃるから念のために伺っておきたい。というのは、ある特定の社に許したら、必ずもうそれは、ケース・バイ・ケースとおっしゃるけれども、一つの例を作ってほかを制止することは私はできないと思う。そうすれば、日本のいわゆるタンカー業者というやつは、これは旧式の、今までの大きなやつで二万トンそこらのものでしょうから、これから先はスーパー・タンカーになるわけですが、スーパー・タンカーを作って石油会社が勝手にやられたら、日本の小さな、そういう設備のない所だけがそういう従来の小さな船を使うので、需要がきまっちまう。従って、タンカー業者は今までの開発銀行あるいは市中銀行から借りている、国家の保証を受けておるようなものは、とうてい払えっこないことになるのです。で、そういうことは、それこそ運輸省が常にいう秩序の維持、いい悪いは別問題でありますが、それから海運の健全なる発達という点から見ると、一がいにケース・バイ・ケースと言っておられないと思うのです。一つのケースができれば次に必ずそれは、甲に許して乙に許さぬということは、私は運輸省としては非常にそれは困難なことじゃないかと思います。日本の石油業者でタンカーを持っておるものは、ごく一部あるかもしれませんが、何か大協石油がたしか小さなものを作ったと思うんですが、それが風を望んで勝手に作る場合には、非常な混乱が起ると思います。そういうときには、だれか一社がかりに申請をする場合に私は運輸大臣としては、一社だからいいんだと、次のやつは許さぬということは、ちょっとできなかろうと思うので、必ずしも私はケース・バイ・ケースというふうにお考えになることは非常に危険だと思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/26
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027・三木武夫
○国務大臣(三木武夫君) それはそうだと思います。こっちを許してほかは許さぬという性質のものじゃない。その資金の確保が十分であり、そしてそれが海運界を撹乱と申しましても、やはりそれは運転するものはやはり海運業者でなければいけない。それは荷主が海運業のやっておるようなことをやることは、これは好ましいことではないのでありまして、それは海運業者がやらなけりゃならない。船がまあ必要である、今日本に船が必要であるというのでありますから、しかも今申したようにそれは、その運営は海運業者自身がやるべき性質のものである、こういうことで、私は、しかもそれは単に一社とか二社とか、そういうことで差しつかえがなければ、それは考えていい課題である、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/27
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028・一松政二
○一松政二君 そうしまするとですね、資金的には今、石油会社というやつは、砂糖会社と同じように、非常に保護されておるのです。石油の輸入をカットしようということで、内地の原油というものはほとんど言うに足らざる、五十万トンかそこらですから、非常に保護されておる。将来も保護されている。そして今非常にそういうおかげでもうかっておるわけです。しかも、ほとんど半分に近いものは外国資本であり、それから運転資金も外国銀行から勝手に借りられる状態にあるから、もしただその資金の点だけで作ることが自由であるというならば、これは風を望んで作ってくると思うんです。それで今度は、カルテックスみたいなものにしましても、これはまた別に運送会社があるんだから、カルテックスの会社で作って、事実は、ただ裸傭船の名義は運送業者でやる。あるいは他の石油会社にいたしましても、傍系のものにやらせればいいんだとか、あるいは傍系のもののないものは船会社を作る。今日海運業者あげて船会社を作る場合に、お前船会社を作ってはいかぬというわけにはいかぬのじゃないかと思いますが、そうすると結局、その石油会社がかりにタンカーを作った場合に、お前が運航してはいかぬのだといえば、姉妹会社の運送業者を作る。あるいは従来の人間か、それに色をつけたもので、また姉妹会社を作るとかして、運営の仕方はいろいろあると思いますけれども、事実問題としてそういうことがもし可能だと、とめられないということになれば、私は従来のタンカー業者は多大の脅威を受けるものであると思います。それこそ混乱と何を招くので、私は海上運送法のこんな、先ほど私が言ったような波のくずれた先のあわみたいな問題とは根本的に違ってくると思います。だから、そういう問題について一応私は大臣の御所見を伺ったのですが、おそらくそういう問題が今後私は起ってくると思います。
石油会社が財政状態がいいんですから、金も借りられるのですから、外国銀行からも金が借りられるし、償却するのはわけはない。かりにその船舶に投資している方が、おそらく自分の営業状態からいって、船価償却にしたって、あるいは利益をある程度、何というのか、カムフラージュするのには、最も便宜なことであろうと思うんですから、これは容易ならざる問題が私は起ってくると思うのですけれども、今そういう問題が具体的に起っているのかどうか知りませんけれども、これは一応われわれとしても、海運の健全なる発達というときに、そうしてしかも従来のものは国の保護を受け、借金はまあ首の回らぬほどしておって、最近幾らか景気がいいというだけの話でありますから、そこへ持ってきて、新しくそういう脅威がかりに加わるとすれば、非常に問題だと思うんです。
まあ、今日大臣がお見えになったから、私はたまたまこの法案を審議しておって、秩序維持、それから運賃をどうとかいう問題、こんな問題じゃなくて、そういう基本問題が私は控えていると思うんです。だから、そういう基本問題の起ったときには一体どうするんだ。この運送法で取り締れる部門でもなし、あるいは臨時船舶建造調整法においても、これは「国際海運の健全な発展」という一つの条項がまああるだけだと思うんです。それをまた、見よう見方によって幾らでもできるけれども、まあ一つ大臣に、今後そういう問題の起ったときにどう処理するかということだけを——これ以上は私はその仮定のことに対してですね、御答弁を求めませんけれども、そういう問題が今後起ってくる可能性が私はあると思うんです。その点について、それこそつまり船会社対船主の問題、そうしてそれが波及するところ、日本の海運業の発達にかなりな波紋を投げかけるおそれがある。それを今度は国家が一方において金を貸して、そうして保護をした建前をとっているのに、全然それに無関係の荷主が、自分のいいスタンディングにおいて、あらためて海運業を始めるような格好になるので、かなり厄介な問題が起るであろうし、一つそれをどうおさばきになるかよくお考えおき願いたいと思う。たまたまこの運送法にそういうまあ類似のような問題がありましたから、お伺いしたわけです。
私はどうも納得がゆきかねるので、私は同じことを繰り返してもしょうがないから、この不定期航路専業についてこれをどうするかは、いずれ委員の皆さんとお話しをした上で、態度を決するよりほかないと思いますが、この前私はたまたま実は失礼して、いなかった。早く中座したのですが、臨時に起ってくる、ほんとうのいわゆる臨時船というのとこれは、何か別の規定を設けずして、明確な区別ができますか。これは海運局長からでいいですが、この前私が伺ったのでおよそおわかりだろうと思いますが、またほかの委員諸君も伺ったのだろうと思いますけれども、重複してはなはだ失礼かと思いますけれども、私はちょっと伺いたいのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/28
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029・粟澤一男
○政府委員(粟澤一男君) 実際問題としましてはやはり……理屈として一応割り切れるということは先般からたびたび申し上げておりますのでございますが、実際問題としまして、具体的な例があった場合に判断がなかなかむずかしいということは、御指摘のようにあるかと思いまして、私どもの運用上の気持としましては、先般も申し上げたと思いますが、反復継続の場合は大体継続的に一月をこえる程度のものというふうにして、実行適用に当っては統一して行いたいというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/29
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030・一松政二
○一松政二君 一月をこえるといっても、そいつは非常に問題ですね。一月をこえるといったって、まあ春秋の観光シーズンなどということになると、大てい一月をこえるのじゃないですか。私はやはり二月かそこいらくらいの、二、三カ月の程度で、それがまた来年やるかどうかわからぬ、適当な船があればやるし船がなければやらないのです。その辺が非常に私はあいまいだから、問題だと思うのです。たとえば、駿河湾でも三津海岸なら三津海岸から沼津みたいな所は、お客さんのあるときもあるし、ないときもある。あるときにはやるし、ないときはやらないのだけれども、天気の悪いときには全然やまっちゃうし、日曜にはやるけれどもウィーク・デーにはない、こういったものがみんなそのカテゴリーに入るのだろうと思うが、そういう場合でも、ここでもお客さんが多ければ臨時船が出てくる。だから、その辺が非常にかえって、こういう法律をこしらえたがために、そういう区別がむずかしくなるというおそれも私は多分にあるような気がするのですけれども、それが業者を痛めつけずにスムーズに行われるかということに対しては、私は危惧の念があるが、あなた方に言わせれば、必らずそうします、適用については万遺憾なきを期しますとおっしゃるだろうけれども、事実問題としては、結局、その地方のまあ海運局の人のごきげん次第でどうにでもなるのだろうと、極端に言えばそうなる。私の注文するのは、今の臨時船と旅客不定期航路事業というものを、もっと画然と区別してもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/30
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031・粟澤一男
○政府委員(粟澤一男君) ただいまのお話のございました季節によって運航するというのは、お話の通り、大体二月、夏であれば二月くらい、あるいはその他の季節でも三、四カ月というような、季節を限って運航しておるものが一番多いのでございます。従いまして、そういうものが大体既存の定期航路と同じ航路にして、そういう一番客の多い時期にだけ不定期航路をする。むしろ、それがひいては冬でも運航を義務づけられるところの定期船業者のために非常に悪影響があるという点かから、考慮されておるわけでございまして、先般もお配りいたしました資料にございますように、大体三百と申しましても、その事業者の約半数が大体そういう季節によって運航しておるというものでございます。一つの季節を通じて、しかも反復して旅客を取るというのは、やはりその期間を通じた航路事業たる目的をもって計画的にやっておるわけであります。私どもも、あるいは御見解と違うかもしれませんが、一月、二月というような季節的なしかも客の一番多い時期をねらって事業をしてやるというのは、やはりこの改正法で規制することが必要じゃないかというふうな考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/31
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032・一松政二
○一松政二君 今の御説明だと、許可事項にしただけではそれの弊害というものは全然私は取り去られるものではない。それでは今までやってきたものが申請してきて、それを不許可にするというわけにもいかぬだろうし、従って、そういう問題は結局組合を作るか統合するか、いずれにしても冬もよし夏もよしというなら、一番少いときのお客さんを目当にしてそうして何か採算の立つ方法でなければ、会社がいく道理がないから、そういう場合には夏になったら臨時に客が来たら、お客さんを運搬することはできませんよ。従って、どうしてもそれは必要上そういうものが生まれてくる。生まれてくるのを生まれてこさせないようにすることが無理なんで、それならそれだけのゆとりを持った、臨時船をいつでも出せるだけの準備をしたそこの航路業者へ、それを独占させるか、あるいは組合を作って規制するかなんかしなければ、私はこの許可のしっ放しでは、今のその問題は一つも解消しないと思う。競争してはいかぬというわけにも参りますまいし、運賃は同じにしろと言われても、かりに表面は同じにしたって、手ぬぐいの一本もやればそれだけ安くなるわけですから、そういうものもいかぬ、みやげ物をつけちゃいかぬというわけにも私はいくまいかと思うのです。だから、許可事項にしたら許可事項によってそういうことを避けるというお考えは、私は少しまだそれだけでは不足するのではなかろうかと思うのです。
これはある程度意見になると思いますが、許可事項にしたから事故が減る、それから届出だから事故が多いのだという結論は、私はそういうことは早計だ。それから許可事項にしたら運賃の競争をしてはならぬというような条件も、それはおつけにならぬと思うが、また適当な競争がなかったら独占になる。そうして独占ということはある程度の弊害を伴うておるものですから、ここがどうもピントが合わない点が私の頭にひらめいておるのですが、同じことを繰り返えしてもしょうがありませんから、私はこの問題は一応打ち切って、あとで委員の皆さんにお諮りしてみます。
私は、この旅客の不定期航路事業の許可制度のことについては、一応これで質問を打ち切ります、あとは同じことを繰り返えしますから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/32
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033・早川愼一
○早川愼一君 第四条の規定がちょっと変っておりますが、何か意味があるんですか。もとの条文によると、「基準に適合するときは、これを免許しなければならない。」と、こう書いてある。今度の改正法を見ると「左の基準に適合するかどうかを審査して、これをしなければならない。」、まあ読み方によって若干受ける感じが違うんですが、何か意識的に改正したのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/33
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034・粟澤一男
○政府委員(粟澤一男君) 先般も申し上げたのでございますが、法制局の見解によりますと、解釈としては、免許するという場合に、あるいは改正案のように基準を列挙いたしまして、基準に適合するかどうかを審査して、これをしなければならぬというのも、事実上変りがないという御意見でございます。あるいは道路運送法その他の規定につきましても、大体こういう表現になっております。それによって統一されたというわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/34
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035・早川愼一
○早川愼一君 道路運送法の方は、ここに分けて書いてある。審査しなければならない、審査してという——審査の結果、適合したら免許しなければならぬ。ところが、今度の改正によって一つの条文にそれがまとめてありますから、審査しなければならぬということが強く出ているように見受けるのですが、これは法制局の——「これを」というのは免許しなければならないという意味のことと思いますが、何か審査というところに非常に重みがかかってくる。一体免許するかしないかということを、基準に適合したら免許しなければならぬという趣旨であるのか、あるいは審査ということに第四条は重きをかけておられるのですか。そこのところがちょっと条文を読みますと、どうも前の方が——適合していたら免許をするしないということじゃない。適合をするかしないかということを審査した上は、免許しなければならぬ。義務付けられるのですね、その点は、どうも意識的に何か違ったような感じが受け取れるのですが、それは従来とちっとも変らないのだという御説明と承知していいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/35
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036・粟澤一男
○政府委員(粟澤一男君) その通りでございまして、道路運送法第六条もこれと同じ書き方をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/36
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037・早川愼一
○早川愼一君 やはり意味はちっとも違わない。だから、やはり適合しておったならば許すのだという方針には、この条文上変らない、こう解釈していいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/37
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038・粟澤一男
○政府委員(粟澤一男君) その通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/38
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039・加藤シヅエ
○委員長(加藤シヅエ君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/39
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040・加藤シヅエ
○委員長(加藤シヅエ君) 速記を始めて下さい。
ただいまの法律案につきまして、御質疑は今日はこの程度にいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/40
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041・加藤シヅエ
○委員長(加藤シヅエ君) 次に、運輸一般事情に関する調査を議題といたします。
最初に運輸大臣に対する御質問から始めて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/41
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042・内村清次
○内村清次君 運輸大臣に実はお尋ねしたいのですけれども、きょうは広範囲の、例の紫雲丸事件のその後の経過、こういうようなことはしばらくおきまして、実は今月の十日の産経新聞に紫雲丸関係につきましての職員の問題で、高松の地検ではこれを提訴する起訴するというような新聞記事が載っておりましたから、この点は運輸大臣といたしましてはどういう状況になっておるか、あるいはこういう新聞記事あたりをお読みになったのかどうか、この点をまずお伺いしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/42
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043・三木武夫
○国務大臣(三木武夫君) 私はその記事は読んでおりません。現地に参りましたときに、検察当局、検事正等に会って、海難審判所とも緊密な連絡をとるということでございましたので、その間どういうふうに検察当局の調べが進んでおるかは聞いておりませんけれども、その間は無連絡に検察当局が進んで行くようなことはないのではないか、こういうふうに考えておるのですけれども、報告を受けておりませんから、現在の状態がどうなっておるかは存じませんが、さっそくこれは調べてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/43
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044・内村清次
○内村清次君 これは井本刑事局長の方では御存じですか。ただいまの紫雲丸事件の高松地検で起訴するというような問題で、最高検に伺いを出しておるというようなことは、御存じでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/44
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045・井本臺吉
○政府委員(井本臺吉君) 高松地方検察庁におきましては、紫雲丸関係の被疑者を三人ほど逮捕いたしまして、大体調べもある程度段階がつきましたので、その被疑者につきましてどのように処理をするか、ただいま現地と最高検等におきまして検討中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/45
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046・内村清次
○内村清次君 検討中とおっしゃるけれども、この事件関係につきましては、すでに現地の海難審判所におきまして、これはもう当然法律的にもこれを審理しておるようでございますが、これとの御連絡はなさっておりますか、現地は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/46
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047・井本臺吉
○政府委員(井本臺吉君) 現地の報告では、この調べの初めから海難審判所の方とは密接な連絡をとりつつ、検察庁の調べを進めておるというように、報告を受けております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/47
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048・内村清次
○内村清次君 それにどういう理由で起訴をしたいというような形を表わして、そうして最高検の方に伺いを出す。その点に対する検討中だというと、どういうような理由になりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/48
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049・井本臺吉
○政府委員(井本臺吉君) どういう理由ということでございますが、この関係の被疑者が業務上の過失によってかような事故を起したのかどうかということを、刑法犯といたしまして検討して、その結果有罪であるということになりますれば、そこで起訴するかしないかという刑訴法の問題が起きてくるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/49
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050・内村清次
○内村清次君 刑事犯関係といたしましての総合的な関係当局としての御検討は、御検討としてもされておることも私たちはとやかく言おうとは考えませんけれども、御検討中の上において、その方針でどういうお考えを持っていらっしゃるのだろうかと、その点が私たち重要ですから——たとえば、率直に申しますれば、海難審判の審理を待たずして先行的にやるようなお考えの御方針を考えておられるのかどうか。この点が重要だと思うのですが、その点はどうお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/50
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051・井本臺吉
○政府委員(井本臺吉君) 御承知の通り、海難審判先行の原則ということがございまして、もう古く、明治時代からさようなことの協定がなされておるように聞いております。従いまして、通常の場合でございますれば、海難審判所のある程度の裁決があって、刑事罰にするということになると思いますが、これはあくまで原則でありまして、場合によりましては、検察独自の立場である程度の処分をしなければならぬということもありますから、さような観点で、いかようにするか慎重審議をしておるというのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/51
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052・内村清次
○内村清次君 まあそういうような御答弁の内容もわかることがございますけれども、しかしこの問題に限りましては、これはやはり海難審判の先行の原則というものが遵守されていかなければならぬのではないか、こういうふうに私たちは希望もし、判断もいたしておるわけであります。こういうようなことで、大臣の方は大体どういうふうにお考えでございますか。これはもう影響するところ非常に広いと存じますが、運輸大臣の方は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/52
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053・三木武夫
○国務大臣(三木武夫君) 私もこれはまあ、法律的には何も規定はないよう
ですけれども、明治二十六年ですか、逓信大臣と司法大臣との間にそういう、何といいますか、取りきめがあって、やはり海難審判の優先ということ、これは守らるべき性質のものだと、私はかように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/53
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054・内村清次
○内村清次君 これはそうすると、紫雲丸事件に対しましては、運輸大臣といたしましては、ぜひ一つ海難審判の方を先行して、そうして事件の糾明をやる、過失の実態を糾明して、海難審判の第一条にありまする目的を達成するように自分としては希望するのだ、という御答弁として考えてよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/54
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055・三木武夫
○国務大臣(三木武夫君) 今申したように、法律上の規定がないのですから、そういうことが妥当であると、自分は運輸大臣として考えておるということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/55
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056・内村清次
○内村清次君 これは局長も一つそういうふうに……。もちろん、これは確かに相当世論関係におきましても重要な事件であったことは、当委員会といたしましても認められております。が、問題はやはりいろいろな条件が備わっておるのであって、たとえば過失ということが認定されましても、過失の実態というものがこれは相当先例にもなり、あるいはまたは内容も複雑であろうと感じますが、そういうような形からいたしまして、まず海難審判所の方に先行させて、よく技術的な方面から検討させるというようなことに、井本局長も御努力が願えられませんか、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/56
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057・井本臺吉
○政府委員(井本臺吉君) 御趣旨の点は私どもよくわかりますが、私ども検察庁の立場もまた御理解願いたいのでありまして、御趣旨の点は十分検討の上、海難審判の請求と並行して刑事の事件を進行させるかどうかという点について、ただいま検討中でございますので、会議等の際には、ただいまの御趣旨の点は十分反映させたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/57
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058・片岡文重
○片岡文重君 今の内村君からの御質問に対する御答弁を伺っておったのでは、私どもにはさっぱり要領を得ないのですが、一応この経過を私は御説明いただいて、それに基いて一つ御質問したいと思うのですが、紫雲丸事件が起ってから今日まで、検察庁としてとられた措置を概括的に一応御説明いただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/58
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059・井本臺吉
○政府委員(井本臺吉君) それでは、紫雲丸事件がございましてから私どものとりました処置の経過を、御説明申し上げます。
本年の五月十一日の午後七時十五分過ぎに、高松の警察署並びに高松の海上保安部から高松の地方検察庁に、午前六時四十分の高松港発上り連絡船紫雲丸が、宇野港に向けて航行中に、六時五十五分ごろ中ノ瀬附近におきまして、濃霧のため運航を誤って、貨船と衝突して紫雲丸が沈没した模様であるが、相手船の船名、被害状況の詳細は不明であるという電話の報告に接したのでございます。そこで高松地方検察庁の中島検事正は直ちに、中田次席検事並びに通山検事を帯同し、事務官を三名連れまして、現場に急行をいたしまして預場の状況を検問したのであります。
その結果、同日午前六時五十六分ごろに、香川県香川郡雌雄島女木島西方の沖合におきまして、この紫雲丸と貨車航送船の第三宇高丸が衝突し、紫雲丸は午前七時ごろ沈没して、当務船長の中村正雄氏は殉職した。乗客は約八百名中、救助された者が約六百名、死亡推定もしくは生死不明の者が約三百名であるということが判明したわけであります。そこで中島検事正は事件の重大性及び船舶事故という特殊性にかんがみまして、このことを東京の中央部に報告するとともに、高松の小坂検事長の指揮を受けまして、高松の中田次席検事を主任検事として、検事四名、副検事四名、事務官十一名を動員いたしまして、紫雲丸沈没事件特捜本部というものを設けて、この捜査に専従することになったのでございます。
五月十一日事故発生の直後に、本件の事故の責任者である第三宇高丸の当務船長三宅實氏及び同船の非直の船長である福島金太郎氏を同船上において一応取り調べて、衝突前後の事情を聴取するとともに、この船の実況検問を行なって、一方紫雲丸の生存責任者である紫雲丸の航海副直二等運転士立岩正義氏にも、高松地方検察庁に出頭を求めまして、同様衝突前後の事情について取調べを行い、翌十二日、第三宇高丸二等運転士杉崎敏氏、紫雲丸の操舵手和田年行氏らに対しましても、任意出頭を求めて取調べを行なったのでございます。
そこで、五月十三日、この三宅、杉崎及び立岩三氏を業務上過失艦船覆没並びに業務上過失致死の容疑によりまして、逮捕勾留の上取り調べました結果、大体の事情は十日間の勾留期間で判明するに至ったのでありますが、なおその裏づけの捜査及び細部にわたる調べの必要上、五月二十三日勾留期間を七日延長請求、二十八日さらに三日の再延長を請求しまして、六月三日勾留期間満了と同時に三名を釈放したわけであります。なお五月二十八日には、参考人として取調べ中でありました第三宇高丸の航海副直三等運転士穴吹正数氏を業務上過失致死、艦船覆没罪等の被疑者といたしまして、これも一応被疑者と立てまして取調べを開始したのでございます。
なお、この事件に着手以来、高松海上保安部、香川県の警察、神戸地方海難審判理事所などの関係機関等が、常時密接な連絡のもとに捜査を進めまして、ただいま申し上げた四名のほかに、参考人として宇高丸関係が三十九名、紫雲丸乗組員の関係が五十八名、乗客が六十六名、その他二十五名の取調べを行うとともに、衝突現状、紫雲丸沈没状況、第三宇高丸の損失状況、また第三宇高丸並びに紫雲丸型連絡船鷲羽丸及び眉山丸のレーダー状況なども各実況検問、第三宇高丸備えつけレーダーの性能及び機能に対する関係、あるいはこの船の無線電話の機能及び性能に関する実況検問、あるいは潜水夫による沈没船紫雲丸の船況並びに機関室の状況調査等の捜査を、その間進めて参ったのであります。
なお、その間本件の捜査中に、紫雲丸の非直の船長岡忠雄氏ほか五名に関しましては、証憑隠滅のおそれがあるということで、捜査の途中でその方々を取調べをいたしたのでありますが、大体全般的には捜査は一応終了いたしまして、先ほど申し上げたように、海難審判所の請求関係と合して本件をどうするかということで、ただいま慎重審議しておるというのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/59
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060・片岡文重
○片岡文重君 ただいまの経過を伺っておりまして、二、三疑点についてお伺いしたいのですが、十一日の七時近くにこの事故が起って、すでにその日のうちに、身柄を拘束して、紫雲丸それから第三宇高の最高幹部を取り調べておられる。十二日も取り調べる。十三日も取り調べる。そうして十日間の勾留予定をもって、すでに勾留のまま取調べを進めておられる。しかし警察、海上保安部、海難審判所等とは常に密接な連絡をとって取調べを進めた、こういう御説明のようでしたか、少くとも海難審判所関係の理事官がその立場において調査を進める場合に、やはり調査の対象となるものは、その検事諸君が拘引をした人たちと同じものではないかと思うのですが、それを検事局に連れて行かれておって、海難審判所の理事官諸君がこれを調査することができるとお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/60
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061・井本臺吉
○政府委員(井本臺吉君) 身柄の拘束をいたしましたのは、五月十三白でございます。われわれの聞いております報告では、五月十一日の事故発生以来十三日までの間、海難審判所の方々も調べをしておったように聞いておりますが、さらに身柄の拘束後も、検察庁の調べに差しつかえない限り、十分海難審判所の方々の調査については便宜をはかって、面会その他調べに差しつかえないようにしておったというふうに聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/61
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062・片岡文重
○片岡文重君 身柄が拘束されて、しかも理事官が検事局へ行って面会を求めて調査をする、事実審判をするということは、きわめて事実審判の上に不便な立場に理事官がおかれたということは、あなたはお認めになりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/62
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063・井本臺吉
○政府委員(井本臺吉君) いわゆる在宅処置で、身柄の拘束がなかった方が便宜ではなかったかというような御見解につきましては、さようなこともあったかと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/63
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064・片岡文重
○片岡文重君 さようなことがあったかとも存じますということは、かなり私には異様な感じを受けるのですけれども、少くとも取調べをしようとする対象になる者が、自分の取調べる方の立場にある者の自由にならない所に置かれておって、そうしてなおかつ自由に調べられるということは、これは考えられないでしょう。かなり不自由な立場におかれておったということは、お認めにならざるを得ないと思うのです。しかし、その点については、そうであったかとも思うというような程度であるというなら、これはあなたの主観ですから、やむを得ないが、さらに、関係者が海難審判所に置かれておって、第三宇高丸、紫雲丸の関係者の諸君が審判所の方に連行されておってそこで調べられておって、検事局としてはそこに行って面会を求める、そうして取調べを進められたということであるならば、話の筋としてはわかると思うのですけれども、由来海難事故については海難審判が先行する原則が打ち立てられておるということは、あなたも衆議院の運輸委員会でも言明せられておる。少くとも認めておられる。それから運輸大臣も先ほどの内村委員の質問に対しては認めておられる。これはかつまた、あなた方御両所がお認めになるならないにかかわらず、厳として今日まで守られてきた原則です。しかるに、今度の紫雲丸の事故について、いち早く検事が先頭に立って、海難審判がこれに従属といいますか、驥尾に付して行ったという事態は、どういうところから原則を破らなければならないという判断に立たれたのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/64
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065・井本臺吉
○政府委員(井本臺吉君) 海難審判先行の原則は、原則としてさようにあるという趣旨であると私は考えております。従って、例外がある程度あるのでありまして、私どもといたしましては、海難審判のような技術的な方々の判断がなければ事件の処置ができないというような事案につきましては、当然この原則に従うべきものでございますが、検察官の方におきまして十分調べができて処置し得るというようなものにつきましては、明治二十六年以来の申し合せにもあります通り、「刑事証拠の明らかなるものは」というようなことが書いてございますが、さような観点から、この関係は従来のいわゆる海難審判先行の原則の一つの例外的な事案ではないかと考えております。
しかし従来におきましても、検察官といえども取調べをしなければならぬ権能と義務がありますので、調べを続けてきたのでありまして、この起訴その他の処置についてさらにいま一度検討しようというので、ただいま検討しておるというわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/65
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066・片岡文重
○片岡文重君 原則であるから例外もあり得る、これはごもっともです。しかし、例外というものは、少くとも原則に対してまれな場合でなければ、例外にはならないと思うのですね。この例外な措置をとるということは、例外な措置をとるにたやすく認定し得る事態にあったと思われるのですけれども、この例外の措置をたやすくとるに至った動機は、あなたの言葉を借りると、つまり刑事責任がきわめて容易に判断し得るという事態は、どこから判断されたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/66
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067・井本臺吉
○政府委員(井本臺吉君) 具体的にどの点で過失が明瞭であったということがわかって検挙したかということは、報告を受けておりませんが、全般的にこの事件は検察官の手元におきましても事件として調べがつき得るという状況にあったというように現地が認定いたしまして、さような処置をとったものと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/67
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068・片岡文重
○片岡文重君 私のお伺いしているのは、その現地において例外的な措置をとって差しつかえないという認定をとられた何といいますか、理由といいますかね、その認定をされた根拠をお尋ねしているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/68
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069・井本臺吉
○政府委員(井本臺吉君) とにかく、濃霧中において非常な速力で走っておりましてかような大事故が起きたというような点について、検察官としてどうしても調べなければならぬという気持になったと同時に、検察官自身におきましてもこの程度の事案であれば刑事責任が明らかなのではないかという観点に立ってやったのではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/69
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070・片岡文重
○片岡文重君 今私お尋ねしておるような問題、この事案は、すでに五月の十六日の衆議院における運輸委員会においてやはり取り上げられております。そうして私が今お尋ねしておるようなことも、すでにあなたは御質問を受けておられる。それに対して、現地における調査が十分ではないからという御答弁をしばしばなされておられる。きょうはすでにもう六月の半ばを過ぎておる。あなたが衆議院の運輸委員会において御答弁をなさってから一カ月以上たっておるのですから、当然その間において、あなたはこのかつて衆議院の運輸委員会で御質問を受けられてそれにお答えなされたその現地の状態については、すでに御調査をなさっておられる、現地から報告を受けておられると私考えて、本日これをお伺いしておるのですけれども、その間において何ら現地に対する御照会はなさっておられないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/70
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071・井本臺吉
○政府委員(井本臺吉君) 何回も現地には照会をいたしまするし、私どもの所管の課長を現地に派しまして現地の状況も十分調べております。先ほど冒頭に申しましたように、ただいまこの事件を刑事事件としてどう処置するかという段階になっておりますので、この関係がどの点で過失を認める、どの点でだれを被疑者に立てるかというようなことにつきましては、ただいま発表の自由を持っていないということを申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/71
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072・片岡文重
○片岡文重君 少し質問の先を行ってあなたはくぎをさされたようですけれども、少くともあの濃霧の中を相当の速力でもって走っておった、そしてこの事故が起きた、だから刑事責任は明らかだとたやすく認められたように今の御答弁を私伺ったのですけれども、この濃霧中に相当の速力をもって走っておられたということは、確かに一般的な事態から見れば、そういうこと考えられるのでしょうけれども、この船は決して一般の航行船ではない。いわゆる連絡航路という特定の任務を持って、しかも何時何分に発車をしなければならない列車に連絡をせしめなければならないという至上命令を与えられて走っておって、しかも従来といえども濃霧中に——もちろんさらにきびしい濃霧の中では停船をしておったでしょうけれども、少くともあの事故の起ったときの程度の濃霧中においては、従来は停船はしておらない。速度も落しておらないということは、あなた方お調べになっておわかりになっておられるのだと思うのですが、その濃霧中に速度を落しもしくはとまっておらなかったということは、少くとも船長の一個の判断では、停船しもしくはその連絡を不能ならしめるという措置をとり得ない事態に置かれておったのであって、被疑者としてもし検束をされる、拘束をされるというなら、むしろそういう命令を発しておるところの総裁なり副総裁なり、もしくは少くとも局長なりが被疑者として問われるところであって、船長等がその責めに関わるべきではないと思う。しかし、それはその先の問題であって、その前に、濃霧中に事故が起ったからといって、それは直ちにその刑事責任は確実であるということには、どうしてなるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/72
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073・井本臺吉
○政府委員(井本臺吉君) 列車に間に合わせるということのためにある程度無理があったのじゃないかという点は、この事件からうかがえるのでありますが、さればといって、濃霧衝突の危険のある際に全速力で走ってもいいという理屈は、これはどうも私どもとして成り立たないように考えるのであります。もちろん、いきなり船長を逮捕、勾留したというのじゃなくて、事故が起きてからまる二日後に、いろいろの点から調べまして、その結論によってさらに詳細な捜査を進めたというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/73
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074・片岡文重
○片岡文重君 検事局でお調べになるときに、今まで申し上げましたように、たやすくこれは検事局が直ちにその権限を発動すべき事態だということでまあ発動されたのでしょうけれども、すでに十三日にはもうその専門家である国鉄側とそれから高松地検との間では、この衝突の原因をめぐって大きな論争をやっておるはずですが、この一事は結局、何といいますか、当事者というよりもむしろそういう特殊な仕事に携わっておる者以外の判断をもってしては容易にその真相をつかみ得ない問題であるということが言えると思うでありますけれども、そういうふうにはお考えになれませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/74
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075・井本臺吉
○政府委員(井本臺吉君) 国鉄側の関係者その他のいろいろな御見解もごもっともな点があり、あるいは首肯できない点もありまして、検察庁は検察庁独自の立場でこの事件を判定しようということで調べを進めたのでありまして、検察庁の能力においてもこの程度の事件は処置すれば処置し得る事件であると私は考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/75
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076・片岡文重
○片岡文重君 大へん検察庁の能力を高く評価されておるということは敬意を表しますけれども、少くとも十三日、事件の起った翌々日においてすでにその当事者の監督官庁である国鉄側と、そうしてしろうとである地検とが論争を起しているということは、もちろん専門家であるから常に正しい判断のみだということは言えないにしても、通常の例をもってするならば、やはりしろうとの判断が専門家の判断に及ばなかった、もしくは専門家の判断と見方が、鑑定が違っておった、とらえどころが違っておったというようなことも、私は考えられると思うのです。それがつまり国鉄側と四国鉄道局の当事者と、それから高松地検との論争の原因になったと思うのですけれども、あなたは立場上は高松地検の断定が正しいとお考えになっておられるのでしょうけれども、もしそういうふうにお考えになっておられるとするならば、その正しいと御判断になる理由を一つお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/76
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077・井本臺吉
○政府委員(井本臺吉君) 実は国鉄で五月十三日ごろにどういうことの断定を下したかということを私は聞いていないのでありまして、この事件が刑事事件として成り立つかどうかという観点だけを何回も検討し、報告を受け、協議をしておるということで、国鉄関係の方がどういうことを言っておられるか、もしまとまった何か報告書でもございますれば、それについてわれわれの方で検討いたしまして、また御意見を申し上げたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/77
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078・片岡文重
○片岡文重君 だれを被疑者にするか、あるいは起訴するかしないかというような問題を決定されるためには、当然その現地に起ったいろいろな問題は詳細にわって御調査なさらなければ、その判断に的確性を持つことは私はできない。先ほどあなたは、現地からの報告あるいは照会はたびたび十分にしておるというような意味の御答弁であったので、この問題もお尋ねしたわけですが、少くとも国鉄とその地検との間に根本原因で、事故の起った原因についての論争が起っておるのですから、その程度のことはこれは当然お聞きになって、お調べになって、判断の資料とさるべきではないかと思うのですけれども、もしそれを聞いておられないとするならば、今あなたが少くとも判断をなされつつある事案について、もう一ぺんこれは白紙に立ちかえって最初からお調べを願うということになると思うのですが、そこまでお考えになれますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/78
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079・井本臺吉
○政府委員(井本臺吉君) 今申し上げましたように、われわれといたしましては、この紫雲丸沈没のケースが業務上過失致死罪ということになるかならないかという点を検討しておるのでありまして、それに対してはいろいろな人がいろいろなことを言って参りますが、かようなことを一々現地においてこれを検討して、結局事件になるかならぬかということを判定するわけでございまして、こまかい点について具体的な書類を持って参っておりませんし、私この点についての詳細な報告を聞いていないのでありまして、お答えいたしかねますが、事件としてなるかならぬかということの判定の際には、当然さような点は十分検討して結論を出すということで、御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/79
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080・片岡文重
○片岡文重君 事件が起ってその捜査の進行中に、いろいろなことを、いろいろな方面から言ってくる。それを一々取り上げておったのでは調べにならぬ。これは一応ごもっともでしょう。ことに事件が大きいだけに、いろいろな所からいろいろのことを言ってくるでしょう。けれどもどうしても聞かなければならない所からは意見を聞き、見解をただしていかなければならないと私は思うのです。その事件を正確に判断していくために、この国鉄というものはこの場合、これは重大なる立場に置かれておるのですから、その重大な立場に置かれておる国鉄側と捜査に当っておる地検との間に論争が起ったとすれば、これは当然その国鉄の意見も重視しなければならない立場にあなた方は置かれているのじゃないですか。それをあちらからもこちらからもという、十ぱ一からげの中に入れて顧みないということは、少し軽卒じゃないですかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/80
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081・井本臺吉
○政府委員(井本臺吉君) もちろん、国鉄側の意見も十分尊重して検討していただくとは考えますが、国鉄関係者もその事件の当事者でありまして、公平という第三者ということは私できないと考えます。また検察庁といたしましても、検察庁がかりに起訴処分いたしましても、それが最終の結論ではないのでありまして、さらに独立的な裁判官がこの事件の裁決を下すわけでありますから、検察官が自分の恣意な判断で起訴いたしましても、その起訴は直ちに公判でくずれるということになりますから、そういうような点も十分考慮に入れて結論を出すというのが、われわれの考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/81
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082・片岡文重
○片岡文重君 少くとも、この重大な立場に置かれておる者と地検との間に論争が起っておるということについて、あまりお調べになっておらないということは、私どもとして少し納得がいきかねまするので、なお十分にこの点については御研究になっていただきたい。
それから海難審判所とは緊密な連絡をとって今日までやってきておるという御答弁でありましたけれども、すでに十四日には神戸海難審判所の理事官諸君は全部、現地においての調査は不能である、検事局によって押えられておってこれ以上の事実審判はできないということで、十四日には早くも海難審判の理事官諸君は神戸に引き揚げております。従って、もし緊密な連絡をとられたというならば、それ以後においてどういう方法で海難審判所と連絡をとられたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/82
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083・井本臺吉
○政府委員(井本臺吉君) われわれは、身柄の逮捕の際にも、現地の高松地方検察庁におきましては、海難審判所の方々とある程度連絡をして、御了解の上で逮捕しておったというように聞いております。その後の坂調べにつきましても、海難審判所の方からの御要求があればできるだけ調べには便宜をはかるようにしてきたというように聞いておりますので、多分緊密な連絡をしてきたとは存じます。具体的にしからばどういうような連絡をしてきたかという点につきましては、詳細な報告を得ておりませんので、わかりかねます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/83
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084・片岡文重
○片岡文重君 どうも肝心のところにくると詳細な報告がないようですけれども、しからばこの取調べを行なって、身柄を拘束されたのは十三日からでありましたかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/84
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085・井本臺吉
○政府委員(井本臺吉君) そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/85
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086・片岡文重
○片岡文重君 十三旧からということになると、その間事故が起ってから、事故の起った日を加えて二日、そしてその間はほとんど拘束も同じような状態で私は調べられていると思うのですが、そうしてなおかつ十三日からこの六月の三日まで、先ほどのお話によると取調べておられたようです。これは一体どういう必要があってこの逮捕取調べをされたのですか。結局、身柄を拘束して取調べをされるということについては、条件がなければならないはずです。これはあなたの御専門ですから申し上げるまでもないのですが、その条件がどの条件に合せてこれを勾留されたのですか、その点を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/86
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087・井本臺吉
○政府委員(井本臺吉君) もちろん、逮捕勾留の要件はいろいろございますが、証憑隠滅のおそれがあるということがその要件になっておると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/87
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088・片岡文重
○片岡文重君 証拠隠滅のおそれとおっしゃいますけれども、別に、船の状態をさらに悪くするとか、あるいは位置を変えるとか、もしくは航海日誌を作り変えるとか、とにかくあなたがたが危険と思われるような措置は、相手が船なんですから、そう普通の被疑事件のような簡単な証拠隠滅等はできないと思うのですが、どういう点があれば証拠隠滅になるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/88
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089・井本臺吉
○政府委員(井本臺吉君) まことに不幸な事件でございますけれども、この捜査の過程におきまして、先ほども申し上げたように、紫雲丸の非直の船長岡忠雄氏ほか数名を証憑隠滅罪で検挙しております。これはお話の通り、船の沈没状況をどうするということはできませんが、いろいろ過失事件といたしましては、尽すべき義務を尽さなかったという点に過失が出てくるというようなことが普通でありまして、しからばどのような注意を払って自分の職務を遂行しておったかというような微細な点が問題になるので、本人供述以外にも、当日の目撃者その他が非常に重要になってくることがあります。そういうような供述が、被疑者との通謀によりまして、少しでも曲げられまするというと、その状況がはっきり顕出してこないのでありまして、そのような点も一つの証憑隠滅の事例になると思います。その他いろいろあると思いますが、法律的にこれを概括して言えば、証憑隠滅のおそれがあるということに帰着すると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/89
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090・片岡文重
○片岡文重君 逮捕取調べたのは証拠隠滅のおそれがあると。証拠隠滅ということは結局、被疑者間において口裏を合わせるおそれがあるからということのように今の御答弁ではありましたが、事故の性格からいって、それから当時のおかれた状況等からいって、その口裏を合わせるなどという小細工をする余地は生じない事態におかれておると私は思うのです。のみならず、海難審判所においてこの事件を、さらにその専門的な立場から、しかもおかれた職責から、真実を見出そうとして事実審判を行おうとしても、それができ得ないような状態におかれておる。少くとも、きわめて不自由な状態におかれるところに持っていかれたということは、従来しばしば繰り返されてきたところの司法権の権威保持のために、必要以上の厳格さといいますか、セクショナリズムが働いておったのではないか。海難審判の理事官をして十分にその事実審判をなし得る事態におかせなかったことは、少くとも意識の中にあったのではないかと考えられる節もないではないけれども、もちろんあなたの立場としてそれはそうではないということをお考えになると思うのですけれども、現地において従来そういう点について耳にされたようなことはありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/90
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091・井本臺吉
○政府委員(井本臺吉君) もちろん、検察庁が何かこうセクショナリズムで自分の権限を振り回したようなことは、断じて私はないと思います。今お話しのような点も現在までのところでは私は耳にいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/91
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092・片岡文重
○片岡文重君 海難審判官が十四日に神戸に引き揚げられてからの連絡については、詳細報告を受けておらないからわからないということで、海難審判がどの程度に進行しておるかということも従って検察庁とししはおわかりにならないと思いますが、そうすると、検察庁としてこの事件の起訴をするかどうか、最高検として判定をするときには、当然あなたの方にも意見も求められると思うのですけれども、その場合に海難審判庁の意見というものは全然しんしゃくするということを考えておられないのかどうか、その点を一つ伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/92
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093・井本臺吉
○政府委員(井本臺吉君) 神戸地方海難審判理事所におきまして、本年の五月十一日に神戸地方海難審判所に対して三宅実氏、杉崎敏氏、立岩正義氏、この三人を受審人として審判開始の申し立てをしたということが、現地の高松地方検察庁から報告が来ております。もちろんこの海難審判所の申し立てということもわれわれ十分に考慮に入れまして結論を出したいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/93
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094・片岡文重
○片岡文重君 問題はさかのぼるかと思うのですけれども、少くともこの海上の事故につきましては、先ほど刑事局長並びに運輸大臣からそれぞれお認めになっておられたように、明治時代からこの海難審判の先行主義というものは原則として認められ、しかもこれが例外として破られたことはきわめてまれであった。しかもこれが帝国議会の時代、戦前の時代においてさえ守られておった。しかるに、これが戦後において、二十三年でしたかにも例外は破られておる。今回またこれが破られようとしておる。しかも、この例外を破るに至った事件というものは、いずれも事故の大きかったということにもよりますけれども、過失とか故意とかという事故原因の把握が容易であるかいなかということよりも、むしろニュース・バリューのある事案であるかどうかということに問題がかかっている。この二十三年の場合においても、検察権の発動かおくれたことについて市民から非難を受けておる。あるいは今度の事件についても、その遺族からどうこう言われておるということが、この検察庁が即時発動したという重大な理由に私はなっておると思うのです。こういうことはきわめて遺憾なことであって、一般市民がそのおかれておる検察庁と海難審判庁との関係というものを知悉しておらないところにその原因があるのであって、ごうも検察庁がその非難を甘受し、あるいはその原則を破って、あえてしろうとが火中の栗を拾うようなことをしなくてもいいのではないかと思うのですが、今後なおこういうような事案については検察庁としては、海難審判先行主義を破って検察庁が主導権をとる、先べんをつけるという建前でいこうとされるのか、この問題については、少くとも海難審判所におけるところの審判の結果が判明するまでは、この起訴をするかしないかというような最後の決定も延期をする、見合わせるというような考えを持っておられるか、そういう点、その二つについて御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/94
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095・井本臺吉
○政府委員(井本臺吉君) 事案々々によりまして結論が違うのでありまして、原則としてどうであるというようなお尋ねでありますれば、冒頭に申し上げました通り、原則として海難審判先行であるというように申し上げざるを得ないのでありますが、それには多少例外があるということはどうしてもっけ加えておかなければ私がでたらめを言ったことになりますので、さような点について御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/95
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096・片岡文重
○片岡文重君 海難先行主義を原則として認めるということはよろしゅうございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/96
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097・井本臺吉
○政府委員(井本臺吉君) 先ほどの御答弁で御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/97
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098・片岡文重
○片岡文重君 先ほどの答弁ということは、結局海難審判の先行主義を原則として認めるということに私は解釈をいたしますが、そうするとこの海難審判の先行主義を認めるということは、結局その事態が確立されてから、もしくはその確立されるに至った原因というものが、常に船員の特殊な立場、それから海運の重要性等が十分に考慮されて、そうしてこの海難先行主義というものが確立されたものだと、従って、たとえばかって衆議院で、これは帝国議会の衆議院ですが、付帯決議として、船員の業務上の過失に対しては慎重なる態度をもって臨み、軽々にこれを処断せざるよう検察当局に対して訓令をせよ、あるいは船員の喚問取調をなすに当っては、その業務に支障をきたさざるよう十分に理解ある態度をとって臨めというようなことが決議として出ております。決議されておる。こういう点を十分に御認識になられた上にその先行主義というものは認められておると私は思うのですが、その点さように解釈をしてよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/98
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099・井本臺吉
○政府委員(井本臺吉君) 何回も申し上げます通り、原則としての海難審判先行主義というのは、その通りであると私は考えます。ただ明治二十六年以来の申し合せにあります通り、刑事証憑の十分なるものは格別なれどもというようなことがうたってありますが、場合によりましては例外があるということを御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/99
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100・片岡文重
○片岡文重君 ですから、例外というものはあくまでも例外であって、原則として守られる事故と少くともその数が比例されるような、あるいは比例というよりも対照されるような大きな数ではあり得ないと思う。それだったら、むしろそれは例外が原則になって、原則が例外になるのであって、やはり原則として守られるからには、そういう今私が申し上げましたような特別な原因なり事態というものが、職業というものが、また責任というものが認識されて、その上に打ち建てられたということを十分にお考えになって、認識されて初めてこの先行主義というものが守られる、もしこれが守られていくということになれば、そうそう例外というものは起り得べきものではない。例外というものはあくまでも例外ですから、そうそうあり得べきものではない。しかるにそれが、戦後すでに何回かその原則が破られて、いわゆる例外というものが数を増しつつあるということは、この海難事故に対する検察庁の態度というか、認識というものが徐々にその特異性に対する認識を薄くしているのじゃないか、こういうふうに考えられるのですけれども、そういう点については、やはり明治何年か以来のこの原則というもの、またこの原則の打ち立てられた事態についてはあくまでも守り抜く、ただしかしながら、たとえば故意によって船艦を覆没さしたとか、あるいは保険金ほしさに覆没さしたとか、火災を起さしたとかいうようなきわめて例外的な、しかも原因の明瞭な事件に対しては、これは検察庁としての発動はやむを得ないことじゃないか。少くとも今度の紫雲丸のような事件については私は軽々に検察庁が海難審判に先行して発動すべきものではない。従って例外の中には入らないと考えるのですけれども、すでに事件は例外的に扱われて、起訴すべきかいなかについて最高検にまでその見解を求められておる、指示を求められておるということだそうでありますが、従って私はこの紫雲丸の事件についてはこの例外ではないということをまず認めていただきたい。それからさらに海難審判の結果がはっきりと結論づけるまで、この紫雲丸に関する起訴するかいなかというような結論については見合わせてほしい、こう考えるのですが、この点について刑事局長はお約束はできないでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/100
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101・井本臺吉
○政府委員(井本臺吉君) 海難審判先行主義の原則に対する例外が故意犯だけであるというような御趣旨でございますれば、どうも私といたしましては賛成いたしかねるのでございます。具体的な紫雲丸事件はしからば原則の例外であるかどうかという点でございますが、それをただいま私どもで慎重審議しておるのでありまして、先ほどお尋ねのようなこれは過失犯であるから当然原則に従うべきであるというような点の御意見は、貴重な御意見として拝聴いたしますが、今直ちに御希望に沿い得るということは申し上げかねます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/101
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102・片岡文重
○片岡文重君 遺憾ながら希望には沿い得ないという御答弁ですけれども、しかし海難審判が少くとも高松地検の検事諸君と並行して事実審判が行われておったという事態であるならばともかくとして、どうも客観的な立場に立って見ておるとそうは考えられない、見受けられません。のみならず、あの紫雲丸の事故というものは、そうしろうとがはたから見たほど簡単に原因を割り切れるようなものでもないと考えるのです。かつての事故によってそれぞれ紫雲丸並びに第三宇高丸の関係者諸君が起訴をせられてかりに有罪となった場合には、当然海難審判のまた裁決が出た場合には、これによって行政処分を受けた場合、結局海難審判の裁決による行政処分と、そうして起訴されて有罪となった場合の刑事処分と、さらに国鉄からして解雇される、あるいは減俸を受ける等の結局三重の処分を受けなければならない立場におかれているわけです。こういう点等も考えましたときには、なるほど被害者の数も大きくまことに悲惨なものがあり、その惹起された原因については峻烈に私は追及さるべきだと思う。そうしてその責任は関わるべきであるけれども、その責任を問われた結果がどんなに苛酷なものであっても、それが正しい判断に基いて誤まりのない判定のもとになされる責任追及であるならば、私はそれは当然のことであって、ごうもこれに対してとやかく言うべきものではないと思う。しかし、かりにしろうとが専門家の事実審判に十分な手を伸ばさせないで先行しておいて、かりに少しでも誤まった判断の資料がこれに加えられ、誤まった判定のもとにこれが起訴せられ、そうして有罪となるというようなことになると、その与えられる影響というものはきわめて私は過酷なものだと思う、不当なものだと思います。そういう点等も考え合わせれば、検察庁としてはもっと慎重な態度をもって私は臨むべきだと思う。少くともあなたが今おっしゃるように、海難審判もかりに事実審判について不自由を与えておらない、並行して進んでおるのだ、緊密な連絡をとってやってきたのだ、こうおっしゃるならば、その審判の結果も必ず近いうちに私は出ることと思う。それを待って起訴すべきかいなかを決定されても、あえておそいわけでもないと思う。この際はもちろんこの決定はあなたがされるわけではあるまいから、あなたにその決定を求めることは無理だとしても、当然最高裁からは検察庁に対してその意見が求められるでしょう。そのときに刑事局長としては、当然その起訴は、海難審判がなされてから、裁決がなされてから起訴するかいなかを決定すべきであるという意見を一つ具申してほしい、こう私はお願いするわけだが、そういうことには考えられませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/102
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103・井本臺吉
○政府委員(井本臺吉君) 何か検察庁の判断が間違った判断で間違った裁判がされるかもしれんというようなお話しでございますが、私どもといたしましては、検察庁は検察庁なりに良心に従いまして、少しの過誤もないように努力してやるつもりでありまして、間違った判断のもとに起訴もしくは裁判を求めるというようなことは絶対にしないつもりであります。なお、審判の申し立てがあって、それと並行して刑事処分をするかどうかという点についてのただいまの御要望は、非常にごもっともな点もありますので、私さらに十分この点を検討いたしたいと考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/103
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104・片岡文重
○片岡文重君 起訴するかいなかの決定をする場合に当ってなお検討して下さるということを私は喜んで伺っておきます。もちろん検察庁が、これは誤っておる、この判断は間違っておるという考え、もしくは資料がこれはおかしいと、そう思いながら判断をされるようなことは、それはないでしょう。私はそこまで申し上げておるのではない。けれども、現に刑事裁判所において有罪の判決を受けながら、海難審判所において懲戒されなかったという例もあるわけであります。こういう事態も考えた場合に、それからまたかりに百歩譲って、海難審判においてもなおかつその裁決が、これは懲戒すべきものである、これは免状を停止すべきものであるというようなかりに判断が出たとしても、なおその刑事処分の場合においては三年の刑になるものが二年で妥当なものがあるかもしらん、あるいは二年のものが執行猶予で妥当なものがあるかもしれません。こういう刑量の測定等についても、一そうしんしゃくしていただかなければならないし、またそうなされるのが当然であろうと思う。そういう場合には当然その専門家である理事官の意見というものも聞くべきである。聞いたところで決してそれが検察庁の威信に関することではない。むしろ検察庁として国民のためにできる限りの努力をしたと敬意を払われこそすれ、決してそれによって検察庁の威信がとやかく言われることはない。ですから、この際は一ついろいろなお立場もあるでしょう。しかしその審判を受ける者の身になって、またこれによって被害を受けられた方方、犠牲となられた方々としても、不当にこれらの責任者を処罰せよとは私は言おうとはしない。ことに先日慰霊祭に行かれた遺族の代表の諸君が、涙ながらに報告されておりましたが、国鉄の従事員諸君がこの事故に対して責任を感じて献身的に努力していることで、遺族の代表の諸君が涙ながらにその間瀬管理局長の辞表を返してやってほしい、免官にしないでほしいという要求がなされております。これは遺族も従事員も両方から要求がなされた。そういう点等も考え合せて下されば、あえてこの際海難審判所の裁決がなされる前に、起訴すべきかいなかを決定しなければならないということはないと思う。でき得るならば私はこの際裁決がなされてから起訴するかいなかを決定するということに一つお答えをいただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/104
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105・井本臺吉
○政府委員(井本臺吉君) 先ほど申し上げましたように、御要望は御要望でございまして、直ちにここで、しからば海難審判が済むまで、少くとも一審の裁決があるまで起訴は待てというふうに拝聴したのでありますが、私ここでさよういたしますとは明言いたしかねるのでございます。元来この事件につきまして、私どもの方ではもっと早く処分すべきであったという意見もあったわけでありますが、海難審判の方の申し立てもどのようになるか、一応従来密接な連絡をとってきておるように聞いておりますので、さような点を考慮した上できめようということになっておりますので、先ほど来慎重審議をしてこの結着をつけると申し上げたわけでございます。なお、おのずから海難審判の審判と検察官の取調べ、もしくは刑事事件とは処罰の根拠を異にしておりまして、審判の方である程度の裁決があったから、検察官はそれに従わなければならないというのではありませんし、検察官の方でも起訴もしくは裁判所の裁判がかくかくになったから、それに応じて海難審判所の方もさようにしなければならぬというのではないと私は考えます。もっとも実際的の結論といたしましては、国家の機関がなす処分でありますから、一致するのが望ましいとは考えますが、それぞれの立場で良心的に裁決するのであるが、違った結論が出てくるということもやむを得ないと私は考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/105
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106・片岡文重
○片岡文重君 ここであなたが決断を、即決的に表示することは言えないとおっしゃることも一応もっともです。しかし先ほどのお話しもあったのですから、ぜひこの点については、決してあなたの方の判断が誤っているから延期せよとか、審判の結果を待てということではないのであって、あなたの、つまり検察庁としては、高松地検にしろ検察庁にしろ、それぞれの立場において十分に良心的な立場に立って、かつ職責を重んじて捜査をされる、取り調べていかれるということについては、それはもうとやかく言うべきことではないのであって、当然そうされておることであろうし、そうなければならないと私は思います。その結果が誤っているかどうかということではなしに、少くとも事態が誤っておったとしても、その関係の検察官諸君は、当然これは是なりと信じてやっておられるのですから、それを責めているのではないので、この事案の性格上、専門家の、特に海灘審判というものが設けられた事態を、またそして、この海難審判の先行主義が確立された原因等をお考え下さって、今回の事件も、せめて、起訴するかいなかということは、さらに海難審判所との連絡も密にされて、その海難審判の裁決が出てからにしてほしい。これはぜひ検察庁においても、また最高裁の方においても、そうなるように御努力を願います。
大臣に一つお尋ねいたしますが、今刑事局長の御答弁をここで聞いて下さったと思うのですが、一体運輸大臣として今回の紫雲丸事件について、私どもは海難審判の審判所と、それから検察庁との間に、必ずしも緊密な連絡がとられていない、十分な事態であったとは考えがたい点もあります。しかし今ここでそれを追及するということも一つの重大な問題には違いないが、今日に至っては、この結果をいかにするか、そして将来こういう事態が再びないように、こういう事態というのは紫雲丸のこの事故、こういう事故が再びないと同時に、今回とられた検察の措置、高松地検のような措置が、やはり海難審判という特殊な事情というものを考えて、先行主義の原則というものは将来守られてゆくべきであるというように考えて、刑事局長にもお尋ねして参ったのでありますけれども、大臣としてはこの点、つまり一つは、海難審判所と高松地検との間に緊密な連絡が完全に持たれておったと考えられるか、それから結論的に、この起訴すべきかいなかについて、すでに高松地検からは最高検に対して伺いが立てられておる。しかるに海難審判の裁決はまだ出ておらない。この場合海難審判は行政機関であり、検察庁は司法機関であり、これはやむを得ないというふうにお考えになられたのか。少くともこの国鉄の監督官庁の大臣の立場からどうお考えになるか、一つお聞きしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/106
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107・三木武夫
○国務大臣(三木武夫君) 海難審判所と検察当局の連絡は、私は現地に参ったときも緊密に連絡をとるという話しでありました。従って緊密に連絡をとってやられておるものと私は考えるのでございます。また海難審判先行の原則、これは原則として長い歴史を持っておるものですから、その原則によることが望ましいと思いますけれども、それが法律上の規定でもございませんし、これが検察当局を絶対に拘束するものであるというふうには私は考えていない。やはり検察当局としてのいろんな独自の見解があるわけです。しかし原則としてはそれを守られることが望ましい、こう考えるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/107
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108・片岡文重
○片岡文重君 大臣は、この海難審判の先行主義が原則としてとりきめられておるということは、法律でもないからということで、はなはだその効力が怪しまれるようなお考えを持っておられるのですけれども、少くともこの海難審判の先行の原則が確立されたのは、御承知のように議会における決議に基いてなされたものである。これはむしろ場合によっては、法律以上のやはりわれわれは拘束を受けなければならない。従ってこの原則は、たやすく忘れられ打ち捨てられるというようなことを考えておられるとすれば、これは将来ゆゆしい問題だと思うのです。大臣としては、もう少しはっきりとして、この原則はあくまでも貫かなければならないという考えを持つべきではないかと私は思うのですが、そう考えませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/108
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109・三木武夫
○国務大臣(三木武夫君) これは私が申したように長い歴史を持って、明治十六年ですか、そういう歴史を持って原則として承認されているので、今お話しの通りだと思います。従って、この原則がやはり守られていくことが運輸大臣としては好ましいものである。しかし、これが絶対のものとして、検察当局のいろんな見解を絶対のものとして何らの例外を認めず拘束されなければならぬということも、これは断言し得ないものがある、こういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/109
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110・片岡文重
○片岡文重君 まあもちろん絶対のものではないでしょう。例外は認めなければならないし、また認められてきておる。けれども、戦後の傾向を見ておると、この原則がむしろたやすく破られて、このままでいくと例外が多くなって、結局海難審判などということは意味をなさなくなってくるのではないか。今日はそういう事態ではないにしても、紫雲丸のような事件が容易にこれが例外だというようなことで扱われてくるならば、今後大部分の問題が例外になってくるのではないか。そういうことでは、海難審判所というものを設けられた意味はなくなってくる。そうではなくして、この際もっとはっきりこの海運の重要性というものを認識して、船員の特殊な立場というものを十分に考えて、この原則は確保されていくべきだ、再確認さるべき時期ではないかとこう私は思うのです。そういう意味からも、少くとも今度の事件についても、この起訴の問題については審判所の裁定があるまで待つように、大臣として一つ政府において法務大臣とも話し合いをされて善処されるお考えはありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/110
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111・三木武夫
○国務大臣(三木武夫君) 原則として、今話しのことは私守られていくことが好ましいと思いますが、しかしこの紫雲丸の問題については、運輸大臣から一方的に、この起訴は海難審判所の裁定があるまで待つべきであるという意見は申し上げるべき筋合いものではない。私がこういう原則の上に立ってそれが望ましいという意見は申し上げられるにしても、起訴を、運輸大臣がそれを猶予すべきであるというような意見は申し上げるのもいかがかと考えるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/111
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112・片岡文重
○片岡文重君 大臣の約束の時間が来たようですけれども、もちろん直接監督官庁の立場にある大臣が、起訴を延期せよという強力な意思表示といいますか、希望を述べることにはちゅうちょされるというお考えもわかります。けれども、これはたまたま船が紫雲丸であり国鉄の船であったから、大臣としてそういう気がねをされるのですけれども、日本全体の海運という問題を考えたときには、厳としてこれは確保されなければならない海難審判の先行原則です。そういう広い意味に立った上で、しかもこの原則が打ち破られようとする危機にあると今私は考えまするので、海運全般を指導し監督していくお立場にある大臣として、政府部内においてこれを再確認をする方向に持って行かれるということはごうも差し支えないことであり、むしろそうさるべきであると私は考えますので、さらに一つお考えをいただきたい。希望しておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/112
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113・重盛壽治
○重盛壽治君 ちょっと関連して刑事局長に一つ聞くのですが、時間がないようだから結論だけでいいですから……。あの洞爺丸事件の起きたときに、検察庁はどういう態度をとったか、そして今日までどういう結論が出たか、簡潔にお話し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/113
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114・井本臺吉
○政府員(井本臺吉君) これは函館地方検察庁の管轄の事件でございまして、当時函館の検事正が主任になりまして次席検事を直接調べに当らせました。その後に東京からも最高検の川井検事並びに本省から長戸刑事課長が参りまして、いろいろ現地の事情を調査するとともに、数カ月見ておりまして、関係者を数十人調べたと記憶します。その結果ある程度結論が出たのでございますが、問題の洞爺丸がいずれ浮揚するということでありますので、その洞爺丸の浮揚を待ってこれを検証して、その上で最終的な結論を出すということに一応さような判断になりまして、現在あの事件はなお検察庁の処分としては取調べ中であるということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/114
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115・重盛壽治
○重盛壽治君 これは海難審判所でも言うのですが船が浮揚してから検証する、形の上ではそういうことが言われますが、一年も水の中につかった船が浮揚してから、それを調べてから結論を出すという考え方からいえば、これは法律的の欠陥があるかもしれんが、やり方自体が違っておるのじゃないか。もっと率直に私が言うならば、今度の紫雲丸の場合でも、直接事件を監督したというのか、関連したいわゆる従業員の責めにあるかのような考え方を深く持たれたために検察庁は直ちに乗り出した、今の言い分だとそういうことになる。しかしそれがもし国鉄当局の大きなほんとうのいわゆる間接な原因の方を調査せずして、それをつかんで調べるということになるならば、洞爺丸のときであっても、この紫雲丸のときでも、私は同じ態度で臨むべきではないか。あのときは、石井運輸大臣は、私どもはいろいろ問題を追及したところが、海の問題は私どもが考えるようには参りません。すべてを海難審判所の決定を待って処理をいたしたいと思います。この一本槍で参りまして、こういうときに私どもは、あなた方が先に進んで調査をして、しかもあのときの私どもの感覚からいくらならば、必ずしも天災だけではなく、たとえば政府にその責任の一半があった。その責任の一半は一体どこにあるか、気象問題を非常に軽視しておった。気象の関係の予算を非常に削減しておったとか、いろいろな問題等々があって、そういう大きな問題こそ検察庁が中心になって調べて、そうしてそこに問題が起きたという考え方があるならばけっこうだが、そうではなく、比較的調べやすい、そうして調査しやすい、どこにも関係のないような問題はぱっと飛びついて調べる。それからぐんぐん調べていくと、それが政府の責任になったり、国家の責任になったりするということに対しては、何か足踏みをしているように感じられるが、今度の紫雲丸の事件は、そんなにあなたの方が飛び込んでいかずに、あの洞爺丸のときと同じ考えならば、十分海難審判所で調査できるような、逆に便宜を与える方がいいのじゃないかと思いますが、それに対してどのように考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/115
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116・井本臺吉
○政府委員(井本臺吉君) われわれも、事件には多数関係者がありまして、一時を過しますと、人間の記憶が全部薄らいで、十分の取調べができませんので、その当時におきましても、記憶の新たなうちに早く調べるということで、関係者を相当多数調べました。しかし詳細に記憶しておりませんですが、同じ型の大雪丸という船がありまして、その船の方は洞爺丸のあとで函館港を、避難のための出港でございますが、外に出ておりますが、これは船長その他の処置が非常によかった関係だと思いまするが、無事に沈没を免れまして帰港しておりますが、同じ型の洞爺丸が沈没したという点につきましては、相当関係者に過失があるのではないかという点を追及いたしまして、ある程度の緒論が出たのでありまするが、その結論を確かめる意味におきまして、先ほど申し上げましたように、船舶の浮揚を待って、自分たちの結論がその通りであったかどうかということを確かめて、最終的な結論を出したいということでさような処置をしたように記憶しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/116
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117・重盛壽治
○重盛壽治君 今度の紫雲丸に対する調査が、先ほどから片岡委員との質疑をお聞きしておると、何かいわゆる船長をもすぐに刑事処分をしなければならんというような認定のもとに、海難審判所より先に調べてゆくというような形をとったように私は今感じたのですが、そうであるとするならば、紫雲丸のときの言い表わし方と、それから今日のあなた方の言い表わし方とはまるで違った形ができてくる。海難審判所が海で起った事件の唯一の審判権を持つもので、最高のものであって、これは動かすことができないものだ、このようにすら私は考えておった。ところが今あなた方に聞くと、あの濃霧の中をスピードを落さずに行ったというようなことを考える場合に、これは直ちに刑事問題になるから、処理したのだというふうにお聞きするのだが、もう一つ考えることがありはしないか、ということは、先ほど片岡委員が言われたのだが、連絡船であり時間が限られている。そうするとそこにああいう濃霧の中でスピードを落すこともできないで走らなければならんという立場におかれた。その立場におるそういう人たちが疲労しておったかどうかというような問題もあろうし、そういった直接の問題だけを取り上げるのではなくして、そういった事態になった、たとえばダイヤを組んだ国鉄当局は、これは総裁をやめたからいいということで済むかもしれませんけれども、その他の先ほどお伺いすると局長にはやめないようにしてくれというお話があったようでありますが、あるいは局長の責任であるのか、部課長の責任であるのか知りませんが、そういう方面により責任があるのではないかと私は思うのですが、そういう点を今片岡さんの言われるように海難審判所とあなた方との調査の結果をどこでつなぎ合わせるというのか、照合して結論を出すというような形になっておるのか。あるいはあなたがたの方が先になるのか、海難審判所の方が先になるのか、その点をお聞きしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/117
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118・井本臺吉
○政府委員(井本臺吉君) われわれの方の捜査の対象は、個人々々に過失があるかないかという問題でありまして、船舶の交通事故になりますと、船長には平常から非常に重大な義務が課せられておりますので、勢い船長の過失があるかないかということが第一に問題になりがちであるということは、これはやむを得ないと考えます。個人個人が守るべき義務を守っていなかった。その結果事故が起きたということになりますれば、その守らなかった点について過失が認められれば、その個人個人がそれぞれ刑法上の責任を負うものと私は考えるのでありまして、その調べの経過におきまして、いろいろダイヤの組み方が無理だったとか、いろいろな無理な命令が出ておったとかいうような点がございますれば、それはその事件の情状になりまするし、場合によってはその個人の過失の共犯というようなことになるということもあるかと考えます。しかしながら何を申しましても、われわれの方の捜査の対象は個人をどうするか、処分するかしないか、刑法上の犯罪であるかないかという点を追及するのが建前でございますから、その点全力を注いできたというのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/118
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119・重盛壽治
○重盛壽治君 だから私は冒頭において、われわれの作った法律が全部完全なものだとは言えないということは、そこにあるということは、直接目の前に出たもの以外は法律の中では処理できないということを言われるし、何か話を聞いておると非常に冷たい感じを感ずるのですが、私の言うのはそういう形でもけっこうだが、今あなたの言われたようにどこに関連があり、ほんとうの原因はどこにあったかということを十分に私は究明してもらいたいと思う。そういう究明があなたの立場だけで果してできるかできないのかということが一点と、従来言われてきた常に海の問題が起きれば、海難審判所海難審判所ということで、私どもはきょうまで海難審判所でなければこの問題は解決がつかないものだ、このくらいに考えておった。そういう言い方であった。少くとも前の大臣も、あなた方がおいでになったときもそういう言い方だった。洞爺丸の事件については海難審判所で一切の問題が明るくならない限りは、その洞爺丸の犠牲者の弔慰の問題もすべての問題は最終的な解決はできません。しかも最終的な結果を見出すことは、あの船が上ってから、さびた船を引き上げてそれを検証してどうだということは一つの形ではあるかもしれませんが、そんなことはわけのわからない形になってしまいます。そういうことは私はいかがであろうか、そういう建前からいくならば、やはり少くともわれわれがここで質問したときに海難審判所を第一義として、それで出た結論を中心にしてものをやるということを明確に二度も三度も、去年の洞爺丸事件のときのあれを出していただけばわかりますが、大臣は答弁しておられる。そういう点を十分に参照して海難審判所の権威ある海難審判所だということであるから、それの結論とあなた方の結論とをつき合した上に立って、しかも従事した、その船のいわゆる船長さんあるいは舵手、そういう者のみの責任であるのかどうか。より重要な責任はダイヤを組んだ人の責任であるとか、国鉄の責任であるとかいうような原因まで掘り下げて十分の調査をせられることを私は要望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/119
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120・内村清次
○内村清次君 私は先ほど井本刑事局長にも要望事項としては出しておきましたが、そこで各委員からもただいままでの質疑があったと思いますがやはりこれは結論といたしましては、まず個人の犯罪事件に該当するんだというような刑事畑からながめた結論がかりにあるにいたしましても、私はその事犯の業務上の過失という問題については、いろいろな条件が総合しておるんだ、しかもそのいろいろな条件というものはやはりこれは単なる簡単な犯罪の動機やあるいはその結果というような問題と違うような、そこにはやはり海難審判所が設けられるゆえんの専門的な動機というものがそこにあるんだから、その上に立って一応一つ刑事畑においてはまず先行というようなことを取りやめて、海難審判所の決定を待った後において起訴、あるいは問題を考えてもらいたいというのが私たちの総合的な意見だろうと思うのですがね。これは考えられませんか、この問題に関しまして……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/120
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121・井本臺吉
○政府委員(井本臺吉君) 御要望の趣旨はともかくこの上とも十分に検討いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/121
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122・加藤シヅエ
○委員長(加藤シヅエ君) それでは残余の質疑は次回に譲ることにしてよろしゅうございますか……。
本日はこれにて散会いたします。
午後四時十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213830X01919550621/122
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