1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年七月五日(火曜日)
午前十時四十分開会
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出席者は左の通り。
委員長 石黒 忠篤君
理事
鹿島守之助君
小滝 彬君
羽生 三七君
苫米地義三君
委員
大谷 贇雄君
梶原 茂嘉君
後藤 文夫君
佐藤 尚武君
岡田 宗司君
佐多 忠隆君
須藤 五郎君
政府委員
外務政務次官 園田 直君
外務省参事官 矢口 麓藏君
大蔵省主計局次
長 正示啓次郎君
事務局側
常任委員会専門
員 渡辺 信雄君
説明員
外務省参事官 石井 喬君
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本日の会議に付した案件
○日本海外移住振興株式会社法案(内
閣送付、予備審査)
○国際情勢等に関する調査の件
(海外同胞引揚問題等に関する件)
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001・石黒忠篤
○委員長(石黒忠篤君) それではこれより外務委員会を開きます。
まだ大蔵省から係の方がおいでになっておりませんから、御質疑は、大蔵省に関係のあるものはできるだけ出席をみたあとでのことにして、これより日本海外移住振興株式会社法案につきまして、前回御説明がありましたから、御質疑の方がございましたら、一つ御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/1
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002・羽生三七
○羽生三七君 この法案自体の内容については、逐次これからお伺いしていきますが、その前に政府の根本的な移民政策を承わりたいのであります。というのは、ここに第一条に農業、漁業、工業というふうに掲げてありますが、政府はそのどれに重点を置いて移民政策を行おうとするのかということであります。というのは、昭和三十年度予算で政府がいう移民という問題は、主として農業移民に中心を置いて予算編成ができておると思うのでありますが、それらの関係から、政府の考えておる基本的な移民政策とは、その重点がどこに置かれておるか、この点からまずお伺いしていきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/2
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003・矢口麓藏
○政府委員(矢口麓藏君) お答え申し上げます。今年の予算編成の時期におきまして、移住振興会社ができるかどうか、まだきまっておりませんで、なお不確定な状態にございました。従いまして、主として従来の線に沿いまして、すなわち、従来と申し上げますると、ほとんど大部分が農業移民でございます。従いまして、その予算編成当時におきましては、農業移民を中心といたしまして重点を置きまして、予算編成をいたしたのでございます。最近の中南米移民の形態は、独伊の例をみますと、往年のごとき農業一般の政策から離れまして、すなわち、最もわかりやすい言葉で申し上げれば、原始的な「くわ」と「おの」をもってやる開拓移民的なものから離れまして、資本、技術を持ったところの農業形態によるところのいわば農業移民、機械化した農業移民的な移民政策が行われておるのであります。これがいわゆる「くわ」と「おの」とをもってやる農業移民よりもはるかに能率的であるから、そういうような形態に変りつつあるのであります。日本の移民政策といたしましても、従来のような「お」のと「くわ」による移民政策はもちろんやりますけれども、それよりも、もっと効率的な、能率の上るところの、機械と資本を持った農業の移民を作りたいという意向を強く持っております。それから、これに関連しまして、その次には工業移民、企業とともに向うに行く、すなわち企業移民という言葉が当るか当らんかしれませんが、日本の労働者を、労働移民を吸収するところの企業を移民政策の一つの柱といたしたいと考えております。さらに中南米におきましては、御承知のことと思いますけれども、日本の漁業に対しまして非常な関心を持っておる。日本の漁業技術を誘導したいという気持を持っております。そういう御意見もしばしば聞くのであります。できればこの方面の漁業移民的なものもやりたいという意向を持っております。
これを一言で申し上げれば、農業移民がもちろん重点でございまして、次に工業移民、漁業移民ということになるのが本当の移民の姿ではないかと思います。農業移民と申しましても、純粋の「おの」と「くわ」とによる農業移民のほうから、さらに躍進いたしまして、近代的な形態による農業移民というようなところへもっていきたいという念願を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/3
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004・羽生三七
○羽生三七君 ただいまの御説明でいくと、つまり予算編成の過程ではまだ本法案は出ていなかったから、要するに農業移民を重点に考えておったのだというお話でありましたが、その原始的な「くわ」や「おの」の移民から新しい機械化された移民に移行していくということは、これは時代の動きでもあるし、私はそれに異議はない。むしろ、そうなければならぬとは思っておりますが、そういう内容のいかんにかかわらず、政府の政策なり本法案の意図するところが、農業移民に重点を置いておるそういうことは間違いないのですか。この点を重ねてお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/4
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005・矢口麓藏
○政府委員(矢口麓藏君) さよう御了解になってけっこうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/5
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006・羽生三七
○羽生三七君 そこで、この第一条について考えてみた場合に、前半と後半に分けてお尋ねしてみたいと思います。たとえばこの法案で、「農業、漁業、工業その他の事業に必要な資金の貸付を行うほか、必要に応じ、移住者を受け入れる事業に対する資金の貸付及び投資並びにその事業の経営を行うことを目的とする」、こういうふうに二段がまえになっておりますが、本法案を中心に考えた場合に、政府の意図するところは、「必要に応じ、」というその前半の方のことに目的を置いておるのか。それとも、後半の、受け入れる事業に対する資金の貸付とか投資とか、そういうことに重点を置いておるのか。前半、後半に分けた場合に、どちらにそのウエイトがあるのか、この点お伺いしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/6
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007・矢口麓藏
○政府委員(矢口麓藏君) お答え申し上げます。この後段の趣旨を最初に申し上げさしていただきたいと思いますが、移民政策の一つの根幹といたしまして、できるだけ、より多く移民を吸収するところに力を入れたいという希望、念願を持っておるのであります。といいますのは、現在の農業移民の例を御覧なさいましてもおわかりになると思うのでありますが、一番移民政策として、ことに農業移民政策として健全なのは、いわゆる開拓移民というような集団的に参る移民ではございませんで、それよりも、コロノと称するいわゆる雇用移民でございますね、向うに使われて、三年くらいそこの使用人として勤務している、しかる後に独立する、こういったようなコロノ的移民が最も健全な移民政策であるのであります。今日までの中南米におきます彼らの発展状況を見ましても、こういったふうな形態をたどりましたところの移民の人たちがいわゆる成功を重ねておるのであります。いろいろなトラブルを、こういう人たちはまことに少い程度しか起していないのでございます。でありまして、移民政策の一つの方針といたしまして力を入れていきたいと思うことは、将来はできるだけ、そういうふうな移民を吸収してくれる、あるいは工業的にも農業的にもそういうふうな移民を吸収してくれるような母体を作りたいというのが念願であるのであります。これが後段に力を入れる理由なんでございます。しかし、ただいまの御質問にもございました前段と後段どちらにウエートをかけるかということに対しましては、前段が主でございまして、後段は後になると申し上げて差しつかえないと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/7
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008・羽生三七
○羽生三七君 そうしますと、第一条の目的からいって、前半に主たる目的がある、ウエートはそちらにかかっておるということになると思う。渡航費の貸付なんかが非常な大きな仕事になると思う。そういう場合に、実際にこういう株式会社を作って、しかも株式会社というものは企業的には僕は成り立たなきゃいかんと思う。ペイしなきゃならぬ。しかもこれは、損失は国家が補てんするような公社ではない。そして実際採算をとりながら、しかも年間五千五百というような移民の計画を立てて、さらにもっと大規模なものに発展していかなければ意味がないのですが、そういう場合に、こういう会社で、国家的なそういう性格というものをにない得るとお考えになるのですか。この会社の性格から考えて、その辺のことをもう少し詳しく御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/8
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009・矢口麓藏
○政府委員(矢口麓藏君) ただいまの御質問は、会社として成り立つかという御質問だと了解いたしますが、よろしうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/9
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010・羽生三七
○羽生三七君 ええ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/10
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011・矢口麓藏
○政府委員(矢口麓藏君) 株式会社といたしましたことは、これはいろいろな理由がございまするが、その点は省きまして、まあ、いわゆるペイするという出発点から出ているのでございます。と言いまするのは、いろいろなこれは詳しい説明を申し上げても仕方がございませんから、簡単な一例を申し上げますと、現在、中南米、特にブラジル方面、サンパウロ方面に参っておりまするところの移民の実績をみますれば、移民というものはペイするということが、りっぱに証明できるのじゃないかと考えるのでございます。すなわち現在ブラジルに参っておりまするところの十人の例を調査いたしましたところ、そのうちの二人は、いわゆるビリオネヤと申しますか、いわゆる大成功を、大げさに言えば、雲をつかむような財をたくわえておりますが、二人は脱落する、あとの四人は子弟を大学に送るくらいの生活には困らぬというくらいの生活のレベルを保っておりますので、この一例をみましても、この移民政策は失敗に終るものじゃないということを申し上げ得るのじゃないかと思います。北米についても同様でございます。しからば、この会社形態をみますと、果してこれが成り立つかどうかという点でありまするが、まあ、この仕事の実態は、条文にもございますように、アメリカ側から借りますが、外貨を、これは外貨でございまするが、今のところでは年四分という利率でございます。まだ最後的な回答は来ておりませんが、まあ悪くいっても四分にはまとまるだろうというので、そういう計算の下にこの法案もこしらえてあるのでありまするが、それをたとえばブラジルにおける利率をみますると、実際には一割三分乃至は四分、大体一割三分くらいの利率になっておるのでございます。しかし、まあ一割三分で貸すわけにはいきませんから、まあ、かりに一割といたしましても、四分で借りた金を一割で貸し出すということにいたしますると、そこに六分の利ざやができますので、一応のそこに採算がとれるのじゃないかということ、それから、貸し出すものにつきましては担保をとりまして、その国々の、たとえばブラジルにおきましてはブラジルの法規に基きまして貸借関係をはっきりさしてゆく、そしてできる限り担保をとって貸し出したい、こういう念願でございます。ただし、これは普通の商業ベースではありまするけれども、普通のいわゆるコマーシャル・ベースとは違いまして、農業、工業等の移民を促進する機関なのでございますから、安全第一ということばかりを念頭に置くわけにいかないのでございます。従いまして、そこに相当の危険性をはらむかもしれませんけれども、初めのうちは小口に手がたくいきまして、そうして相当の健全な発達を保つという見通しができましたときに、逐次これを拡大してゆくという方針でございます。なお、この法文にも、御覧になりますとおわかりなさいますように、アメリカ銀行側に対する関係におきましては、元金は日本政府が保証する、元金については保証するという言葉は使っておりませんけれども、移民の実体はそういうことと同じことでございますが、保証するということになっておりますので、このアメリカの銀行に対する返済、債権債務の関係は、アメリカ側には迷惑がかからぬような仕組みになっております。要は、この会社が日本政府にどれだけの負担をかけるかどうか、できるだけかけないようにしませんと、これは長続きしませんので、というところにかかっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/11
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012・羽生三七
○羽生三七君 私は、この海外移住の仕事を、もうけ仕事にしようというのではないのです。そういう意味で私はペイするかということをお尋ねしているのではないので、むしろ逆で、ほんとうに政府がそういう考えがあるならば、場合によったら欠損なんか政府が補償するくらいにして、本格的な熱意を持たれなければ、この重要な海外移民なんということはできないと思う。特に、この渡航費の貸付なんかをどんどんやっていった場合には、こればかりの資本金では、当然、第一条前半にウエートを置かなければ、後半の仕事なんかできっこないでしょう、この資本で……。だから、当然私は、第一条前半にウエートを置くならば、企業採算もある程度無視して、そうして政府補償するくらいでなければだめだということを申し上げているのです。だから、第一条で渡航費の貸付申請があれば幾らでも貸しますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/12
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013・矢口麓藏
○政府委員(矢口麓藏君) お答え申し上げます。渡航費は現在は政府の一般予算の中に繰り入れてございまして、それを海外移民協会連合会という一つの団体に取り扱わせるのでありますが、この新法案によりましては、渡航費の貸付の事務をも、この新会社にやらしむるという工合にうたっておるのでございます。従いまして、その渡航費は一般国庫から出るのであります。もっと簡単に申し上げれば、事業費に使うところの、移民の事業、営農資金その他を援助するところの外貨はアメリカ側から借りまするけれども、渡航費それ自体は日本政府が一般国庫から支弁する、こういう形になっておるのでございます。その採算を無視してやらなければ移民政策ができないじゃないかという御質問は、私たちもごもっともに存ずるのでありまして、まあ、つぶれない限度において採算を無視してこれを運行してゆくというところに結局は落ちつくだろうとと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/13
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014・小滝彬
○小滝彬君 関連質問。今の答弁で、国庫から渡航費を出すとおっしゃるけれども、これはあくまで貸付なんですね。それが、一方は長く続かなければならない会社である。おそらくあなた方の狙っておるのは、ただ単に関係の日本の会社から出資させるだけじゃなしに、将来は、外国人も、外国の人もこれに投資できるようにしようというので、株式会社にされたのだと思うのです。しかりとすれば、この渡航費の貸付を受けて、国庫が出すとおっしゃるけれども、結局、会社が債務者になるから返さなければならぬでしょう。そうすると、この仕事を今までのように、海外移民協会連合会ですか、そういうものなら一つの財団法人のような法的性格でいいけれども、この会社に引き受けさすということは、もう根本的に間違っていはしないか。非常に性質の違う二つのものを同じところに放り込んだということになるので、私は根本的にこれは考え方を変えなければいかんものではないか。少くとも渡航費の貸付は、私が結論をいえば、従来通りにやってゆく、会社はりっぱに育てあげるというのでなければ、外国の資本家も信用しないということになりはしないかと思うのですが、それに対する率直な御答弁をお願いしたいと思います。それは大蔵省の人が見えておったら大蔵省の方からもはっきりしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/14
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015・羽生三七
○羽生三七君 鈴木財務官はおられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/15
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016・正示啓次郎
○政府委員(正示啓次郎君) 財務官は来ておりませんが、私でよろしゅうございますか……。それでは大蔵省からお答えを申し上げます。ただいまの御質問は、株式会社にいたしておきまして、採算ベースというふうな考え方をいたしておりながら、渡航費を第九条に規定をいたしておりますが、「政府は、予算の範囲内において、会社に対し、前条第一項条一号の渡航費の貸付に必要な資金を貸し付けることができる。」、こういう規定を設けているわけでございます。これは、渡航費のようなものは、従来通り、海外移民協会連合会のような、いわば公益法人の仕事にしておいた方がいいんではないかという御意見、御質問であったのであります。この点につきまして大蔵省から、はっきり申し上げたいと思うのでありますが、御承知のように海外移民協会連合会は、これは何ら法律の根拠を持ちません一般の公益法人でございまして、いわば終戦後のこの移民事業につきまして、はっきりしたこういう国会の議決に基く法律というふうなものもない間の暫定的なやり方であったものと了解をいたしているわけであります。今回この海外移住振興株式会社法を御議決を願いまするにつきましては、どうしても移民の仕事を、募集、選考並びに送出、現地における営農というふうな全体を一貫いたしまして、できる限りこういうはっきりした機構を持った機関に扱わせることが適当ではないかということを、先ずわれわれとしては考えたのであります。
次に、しかし、その中に渡航費と営農資金とでは多少採算が違うのではないかという御趣旨でございますが、この点につきましては、先ほども御説明がございましたが、現地の営農資金は、アメリカ三銀行からの借款によりまして、これは四分で借りまして、相当の高利率で現地において貸し付けることに相なるようでございますが、渡航費につきましても、従来は法律の規定がございませんものですから、財政法第九条の一般の金利水準による金利ということになっておりまして、政府から五分五厘で貸しておったわけであります。これは相当私どもとしても、渡航費の条件としては、まあいわば相当の高利であるということは率直に認めておったのでありますが、何しろ法律も何もございませんので、この点につきましては、いかんともいたし方なかったのであります。今回、先ほど申し上げた九条の第二項に「前項の資金の貸付の利率その他の条件は、政令で定める。」という規定をおくようにお願いをしているわけでありますが、この条文がお認めをいただきました暁におきまして、大体ただいま考えておりまする利率等の条件は、これは国内における開拓者資金等の例をも取りまして、三分六厘五毛程度に政府の貸付利率を引き下げたいというふうに考えております。なお、現在は据置期間が四年で、八年間というふうなことに償還をお願いをいたしておりますが、これらの点につきましても、だんだんと渡航費の償還の実績も明らかになってきましたので、特別の事態等に処しましては償還の期限の延長ということも考えていきたいというふうに考えております。さようにいたしまして、政府から相当の低利で渡航費を貸し付けまして、この会社が、大体いろいろの事例から見まして、いわば採算ベースと申しますか、決してもうける必要はないのでありますが、現実に会社としての損失を生じないような条件において、これを移民に貸し付けるというふうなことを会社としてやっていただくように期待をいたしているわけであります。この点につきまして、従って私どもは、営農資金は渡航費とはその本質において相当の違いがあることは率直にこれを認めておりまするので、現地の資金は外貨の借款を財源にいたしまして、会社が相当のこれは高利率でお貸しになるようでございますが、渡航費につきましては、政府の会社に対する貸付の利率その他の条件を適正に定めまして、これを基礎にいたしまして、会社から各移住者に適正な条件でお貸しになる、そうして会社としても、これは、やはり国民の税金を財源にしているのでございまするから、やはり償還の確保については万全を期していただくということを期待しているような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/16
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017・羽生三七
○羽生三七君 さきほどブラジルの移民について、非常に好成績のようなお話がありましたが、私どもは全く逆な情報を手にしているのです。それは別として、このアメリカの三銀行から借りる分についてですが、これは大蔵省にお伺いしたいと思うのであります。最初吉田首相がアメリカに行ったときに、移民借款を持ち出した場合に、向うでは、そんなことは、農業移民などは普通の金融機関からやるべきでなしに、政府がやるべきではないかということをアメリカから言われたと聞いております。その場合、政府がそれは一兆円予算のワクがあるからできないのだと言ったときに、そういうことであるならば、それはアメリカでも考えてやろうということから、この借款という問題が起って、しかもその重点は明白に農業移民であったということを聞いているのです。その後全く、今の御説明でもわかるように、だんだん内容が変ってきて、単に渡航費の貸付というような、従来の政府予算にあるというのなら、あえて法律の第一条にそんなことを特に掲げる必要のないものであると思うのですが、それをここに掲げて、しかも実質的にはほかの企業のことも考えてやるというような法律には、どうも何か私たちは割り切れぬものがあるのです。その後鈴木財務官とのアメリカの折衝の経過についてわかった線があったら、もう少しお示し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/17
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018・正示啓次郎
○政府委員(正示啓次郎君) お答え申し上げます。ただいまお話のように、吉田前総理に随行いたしました鈴木財務官のお話を伝え伺っているのでありますが、その最初の大体のアメリカのバンカーのお気持は、ただいま羽生先生がお話のようであったように承知いたしております。いろいろ借款の話もあったようでございますが、何かほんとうに日本の人口問題の解決に役立つようなことで、政府がただいま緊縮政策をやっている現在の状況の下において、国の財政ではなかなかむずかしいようなことというふうなことから、この移民借款が現実に実を結ぶようになったものと私どもは伺っているのであります。従いましてこの点につきましては、先ほど外務当局からも御説明がございますように、本法第一条におきましても、先ず農業移民というものを主にいたしまして、これに対する渡航費の貸付、営農資金というふうな大体の順序でこの法律案ができているのであります。従ってその点は当初のバンカーとの話し合いの線とそう著しく食い違ってもいないしするものと私どもは了解をいたしているわけであります。なお先ほども外務当局から御説明がございましたが、第十六条におきまして、「政府は、国会の議決を経た金額の範囲内において、外国銀行と、会社が外貨資金の借入のため当該外国銀行を受取人として振り出す手形を、その満期の日の前日までに買い取る旨の契約をすることができる。」という権限をお認めをいただくことにお瀬いいたしております趣旨も、ただいま羽生先生御指摘のようにやはり移民の仕事は、なるほど一攫千金的な事例もございましょうが、そういう甘いことばかり考えてもいけないのではないか、そこでアメリカのバンカーの立場といたしましては、やはり本質的にこの移民というふうな仕事のために必要な金でございまするから、その元利の償還は一切日本国政府において責任を負うべきであるというふうな考え方をもっておられる関係上、かような条文をおきまして責任を政府が負うようにいたしているわけでございます。しからばその後だんだん考え方が変っているのではないかという御趣旨もございましたが、この点は私どもは現実と理想との両方にこの法律案がまたがっているというふうにも申し上げることができるのではないかと思うのでありまして、先ず現実はそういうふうな事態に対処いたしまして、ステディに進めているわけでございますが、しからば移民の事業というものは、将来永久に非常にその何といいますか、そういうブライトな面のない、きわめて従来のような何といいましょうか、じみちなものばかりかと申しますと、これはもう羽生先生よく御案内のように、たとえばイタリアの移民等にいたしましても、大へん最近は昔とは違ったようなキャラクターを持って来ておる。この点を外務御当局は相当重きをおいてお話になっておられるようにも思うのでありまして、やはり大きなスケールにおいて、人口問題を処理していくには、そういう手にすき、くわを持ったような移民から、大規模なキャルティヴェーターの移民に発展していく、あるいはエンタープライザーの移民に発展していくということを、私は将来の一つの理想としては、やはりそれをねらっていくこともあながち大それた望みでもないのではないかというふうな気もいたしまして、第一条の本文におきましても、従いまして最後の方にみずから会社が事業の経営を行うということもうたわれておるようにも了解をいたしておるのであります。そういうふうなことを一つの目標にして、しかも渡航費の貸付について九条の規定を設けたのはどういう趣旨かという御趣旨でございますが、これはやはり法律をはっきりお作りいただきます場合に、渡航費は政府が毎年国会の御議決を得た予算によってこの会社に貸し付けていくのであるということをはっきりうたった意味と、それから主としてこの第二項にこの渡航費の資金の貸付の利率その他の条件は政令で定めることをお許し願いたい、この政令で定めることによりまして、移民の仕事というものもだんだんと時代の推移に応じて変っていくのでございますが、それらの推移に適応する渡航費の貸付条件を定めまして、この会社と移民との間の関係もきわめて円滑に参りますし、また会社と国との間の関係をも妥当な線において処理して参りたい、かような意味で九条をお願いをいたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/18
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019・羽生三七
○羽生三七君 私はまだこのほかたくさん質問したい問題がありますが、どなたかほかの委員の方で御質問があればやっていただいて、逐次あとからやっていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/19
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020・小滝彬
○小滝彬君 ただいま大蔵省側の説明されたのは私ちょっと承服しがたいのです。なるほど一本建のものにしてそこに責任を全部引受けてやらした方がはっきりする、こういう気持はよくわかるわけです。が、しかしこの会社のスタートから、まだそれは実績も十分出ていないかもしれんけれども、相当不安のあるこの個々の移民に対する渡航費の貸付も、この目的の中に織り込んでおくということは、この会社に対して最初から資金補充なんかもしないうちから、非常な不安を覚えさせるもとを作るのじゃないか、で、この海外協会連合会ですか、これはまあ特別な法的な効果もないとしても、もしそれだったらそれに対する必要最小限度の法律的な資格を持たせてもけっこうでありまして、そういうものがないからここへ織り込むということは私どもわからないのです。
それからもう一つは利率の点をるる述べられましたけれども、利子の問題よりも、むしろ元も子も取り返せないという場合を考えなきゃならないと思うのです。そこでそれは政令できめられるかもしれないが、問題を限定して承わりたいのです。
まず第一には、それじゃ政令の方は内容は出ておりませんが、どういうふうな政令を想定しておられるか、もしこれが回収が不可能な場合には、政府の方で負担するというふうなことを、それを補給するというようなことを考えておられるのか、まず政令についてはいかなるものを想定しているかという点からお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/20
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021・正示啓次郎
○政府委員(正示啓次郎君) お答え申し上げます。まず第一に、第九条第二項の政令の内容でございますが、実はこの点は外務御当局、あるいは農林その他関係の御当局となお折衝を要する面でございますが、一応大蔵省といたしまして、ただいま小瀧先生お述べになりましたような御趣旨の御質問を、あっちこっちでもいただいておりまするので、今日までのいわば予算上の措置だけでやって参りました渡航費の貸付と、今回この法律をお認めいただいた上での貸付について、どの程度そういう条件の緩和ということを考えておるかということを率直に申し上げてみたいと存じます。
まず利率でございますが、先ほど申し上げましたように従来は五分五厘でお貸しをいたしておるのでありますが、これを国内の開拓者資金並みの三分六厘五毛まで軽減をいたしたい。これは今後の、この法律をお認めいただいた以後の問題でございます。政令によってきめたいと存じております。また貸付期間でございますが、これは原則として、今日は四年据置、八年の年賦償還、通計十二年ということになっておりますが、これを政令によりまして据置期間五年を含めて二十年の年賦償還ということに——やはり大体これも国内の開拓者資金その他の例を見まして軽減をしていきたいと考えております。返済の方法は元利均等償還ということで考えております。それから特にこの移住の関係の特殊な事例でございますが、たとえば移民が死亡したり、天災その他やむを得ない事情によりまして、会社に対しましてこの渡航費の借入金の返済が不可能になったような場合におきましては、外務大臣と大蔵大臣が協議いたしまして一定の基準を定めていきたい。これはどういう場合にどうするか、たとえば御本人はおなくなりになっても非常に家族の方が盛大にやっておられるというような場合をどうするかというふうな問題がございまするから、一定の基準を定めまして、先ほど申し上げましたこの貸付の期間、五年据置通計二十年の期間をさらに五年程度は延長できるというふうなことにいたしまして、実質的な負担の軽減をはかっていきたいというふうに考えております。ただ政令では、国が債権を放棄する、すなわち償還を免除するというところまではちょっと書き切れないのであります。この点は率直に申し上げておきます。
そこでその点についてどう考えておるかという御質問に対しましては、私どもは目下大蔵省を中心にいたしまして関係の向々と御相談をいたしておりますところの債権管理法、これは国の債権を管理する法律が現在共通の法規がないわけでございます。たとえば国税について国税徴収法という特殊の法律はあるのでございますが、国の一般債権を管理する法律がございませんので、この債権管理法というものを早急に立案をいたしまして、できればこの次の通常国会へというふうに大体考えておるのでありますが、この債権管理法におきまして、ただいまの渡航費の貸付その他中小企業への貸付、あるいは災害等の場合における貸付等、いろいろの態様の貸付金がございますが、これらにつきまして一つ統一的な規定を設けまして、ほんとうにやむを得ない事情のもとに債権を国が放棄しなければならんというふうな事態につきましては、この法律ではっきりと規定を設けたい。なぜ今回特にここに規定を設けないかという御疑問に対しましては、こういう債権のごときものは、やはり個々ばらばらに規定いたしますと、とにかく相互の権衝ということが無視されがちになりますので、これは償還期限は、据置期間もございますることでありまするから、次の機会までに十分国の債権全体の相互のバランスをよく考えまして適切な規定を設けましても、十分時期的にもカバーできるんじゃないかと、こういう見解をもちまして最終的な処理につきましても検討を進めて参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/21
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022・小滝彬
○小滝彬君 政令で条件を緩和せられる、まことにけっこうなことで、それによって回収も容易になるだろうということも一応期待できるかと思いますが、しかし外資は安く借りて比較的高率で貸し付けるのだからという話が最初の説明のときにあった、その口吻からみると、結局この渡航費の貸付については、そうした操作によって、できるだけその方の損失も補填させたいという御意向があるようにも聞えたわけなんです。もちろんできるだけこれを回収するようにしなければならぬことは当然ですが、しかし先ほども申しましたように、この性格的に相当違ったものがここへ入っているということになると、実際この会社を設立し、そうしてまた海外からの支持も得るというようなときに、非常な一つの障害になり、いつもこれが疑問点になりゃしないか、これについてこの主管省である外務省はいかなる見解を持っておられるか、打ちくだけたところの率直なるところの運営についての皆様の見通し、外務省側の考え方ということをお述べ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/22
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023・園田直
○政府委員(園田直君) お答えいたします。この会社を作りまするに際して、先ほど大蔵省側から見解を述べました通りに、理想と現実の間にできた法律案がこれであるというお話でございましたが、その通りでございまして、移民の理想を主張する外務省とそれから国家資金の規制をやっている大蔵省との間に相当の開きがあったことは事実でございます。その経緯を率直に御報告申し上げますると、われわれといたしましては、先ほどから羽生委員から御指摘もありました通りに、今日までの移民の具体的な問題をみましても、中南米等にはいろいろなことが起っております。あるいは松原機関の問題や、あるいはその他の問題、いろいろ起っております。これはその原因は移民されたあと、日本の政府が責任をもってこれを保障し、援助をするところの道がなかったことが主たる原因であると考えております。従いましてこの会社を作りまして、この会社の業務内容に伴い、あるいは資金の貸付、あるいはその他の援助、あるいは政府の責任における保証等をやって、移民後の移民した人々の事業の保証をしたいというのがこの法の念願でございます。従いまして戦後の移民が逐次、年々ふえておりまするのは、第一には今問題になっております渡航費の貸付をやっておりますことが、移民のふえた原因であると考えております。この移民というものの本質に対する考え方が、若干大蔵省と外務省では差異があるように考えております。われわれの考え方は、イタリアあるいはその他の各国において実施しておりますように、戦後狭隘なる島におる日本民族が働く場所を与えるという移民問題をやることは、これは国家の義務と責任であると考えておるわけでございます。従いましてでき得るならば渡航費なんというものは、イタリアその他各国の例に従って国家でこれを支払ってやって、国家が責任をもって出してやるのが当然であると考えるのでございまするが、しかし国家財政緊縮の折柄でございまするから、そのようなこともできませんので、国家資金から財源をお願いをして、貸付方法を便法的にとっておるものであるとわれわれは解釈いたすわけでございます。従いましてこの国家からの資金の貸付というのは、一般営利会社に対する投資やあるいは資金の補助とは全然性質を異にした問題であって、国家の財政が許すならば、国家が全面的にこれは出してやるのが当然である、しかし今日は国家財政緊縮の折柄でございますから、これを貸付の方法によっておるというのがわれわれの解釈でございます。従いまして渡航費の貸付は今小瀧委員から御指摘の通りに、われわれといたしましては、この会社の業務とは別個に切り離して、そうしてやるのが当然である、そうしなければ、この会社自体の経営がうまくいかずに、渡航費貸付の方からどんどん赤字が出てきまして、食い入って、ついには運行不能となって、移民後の人たちの生活の保障なり援助ができなくなるという心配を非常にいたしておるわけでございます。しかしながら今日の段階では、国家資金を規制しておる大蔵省の方の御意見もごもっともでございますから、いろいろ折衝いたしました結果、これが第九条のところになってきたわけでございます。その第九条の第一項の予算の、渡航費の貸付を予算で出すということが、「必要な資金を貸し付けることができる」となっております。これはわれわれは最初は義務立法を主張したのでございまして、当然これは貸し付けるべきだと言ったのでございます。しかしながらこれは大蔵省でも議会の方でも移民の重要性は逐次、年々重要視しておられまするので、これは義務立法ではなくてもこれでよろしい、この第二項の「前項の資金の貸付の利率その他の条件は、政令で定める」、これが大蔵省と外務省との見解が一致しないままに、本法律案を早く成立せしめようということから、実は意見の一致しないままに提案してお願いをした段階に入っておるわけでございまして、従いましてわれわれとしてはこの渡航費をできるならば切り離したい、しかし今申し上げましたような事情でこの会社の中に入ってくるからには、この渡航費によってくる赤字、ただいまのところまだ償還の時期には達しておりませんが、利子の回収にしても、わずか五・五%の利子の回収率でございます。こういう点から考えましても、渡航費が国家に回収される率というのは、これは相当低率ではないかとわれわれは考えております。そういう関係で、天災、死亡あるいはその他やむを得ない事情があった場合には、この会社の中に資金の貸付業務を入れるならば、それに対する赤字の補償の方法を考えてもらいたいというのが、われわれの意見でございまして、その意見に従って実はただいま大蔵省と外務省が政令の問題で話合い中でございます。その政令は今大蔵省から言われた通りでございまするが、その大蔵省の御意見は、これが移民の重要さを非常に認識されてわれわれの意見をとり入れられたものだと思って、われわれは好意をもってこれを今検討中でございますが、ただ、われわれはまだ非常に気にかかることは、貸付の利率が年三分六厘三毛ということになっておりますが、結局この政令の方法を見ますと、貸付金の回収が、国家から三分六厘五毛で借りて、そして会社がまあ五分五厘くらいで移民の方々に貸す、その間でいろいろな損失を補償するというようになっているようでございますが、こういうことになりますると、われわれ非常に心配のことは善良なる移民が五分五厘の利子を払う、そうすると、まじめに働いた人々が、払えない人々の損害を、まじめに働いた人の犠牲において払うということになりますると、移民の方々を援助するというよりも、むしろ移民で働いて苦労しておられる方々の上前をはねて、赤字の解決を国家としてはかろうということになってくると、いろいろな問題が起るのではないか。その次には天災地変あるいはやむを得ない場合に、大蔵大臣と外務大臣が協議をしてやることがよろしいのでございますが、その際に、五カ年延期ということがこれで果して解決できるがどうか、こういう点で疑問がありますので、さらに検討して大蔵省の方々と相談したいと考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/23
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024・小滝彬
○小滝彬君 今のお話を聞いてみますと、外務省側はすでに相当な困難を予想せられているという感じを受けるわけであります。一体九条の二項が先ほどから論ぜられますけれども、これは政令で定めるということになれば、大蔵省側ですでに申されました通りに、国家の債権を免除するというようなことは、政令ではできないだろう、しかりとすれば、むしろこれは法律なんですから、ここへそうした特殊の場合における免除規定を設けることも一つの考え方であろうと思いますが、そういうことはできないのか、この点が第一点、もう一つは先ほどから現在の貸付では公益法人に貸しておりますけれども、これでははっきりした法律的な特殊の取扱い方法がないので困るからということでしたが、これについては、実はこの振興株式会社法案が出る前にも関係当局では相当研究されておったように私記憶いたしております。しかりとすれば、一体今の企業、法人に貸し付ける方法が不満足とすれば、そういう法律を整備することにより、これを二本建にし、しかも双方の協力関係を増すというやり方は十分できはしないか。これが第二点、今の第一点と第二点を大蔵省側からもう一度御答弁を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/24
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025・正示啓次郎
○政府委員(正示啓次郎君) まず第一点としてお挙げになりました点でございますが、これはなるほど海外移住協会連合会でございますが、これにはっきりした法的基礎を与えまして渡航費の貸付け事務は従来通りこの団体に扱わせるというのが一つのお考え方であろうかと思うのでありますが、しかしながらこれも私から申し上げるまでもなく、よく御承知でございましょうと思いますが、この移民のいわば渡航の問題、これにつきましては、やはり相当いろいろ関係するところがございまして、たとえば運賃をどうするか、これはやはり相当強力な機関によりまして、海運当局、海運会社あるいは将来は航空というような面まで折衝を続けて、また実力を示してもらわなければならないということも考えられまして、そういう意味からも、やはりこの国内、国外を通じまして一つになった機関、強力な機関、こういう考え方がやはりわれわれとしては望ましいのではないか。またこれは常に大蔵省の申すことで恐縮でございますが、何といいましても、二つ機関を作れば、ここから下の一般職員に至るまで、やはりいわゆる二重機構ということになりまして、結局は国民の税金によってまかなわれる人件費が、それだけかさむわけでございます。事務費もまた多くなって参るわけでございまして、やはり、そういう国策としての移住というふうな大事な仕事でございまするから、そういう総がかり質的なものはできるだけセーブをいたしまして、やはり重点的にほんとうに必要な面に必要な資金を流すということに主力をおくべきではないかというふうに、実は考えておるのでありまして、もとよりそれが絶対不可能なことであるならば、おおせの通り二つ、二本建てにすることはまたやむを得ないことと存じますが、これは必ずしも不可能ではない。先ほどちょっと言い落したのでございますが、この会社の経理におきましては、渡航費の関係と現地の営農資金その他の事業資金の関係は全然別個の会計にいたしまして経理をして参る。そうして渡航費の貸付けにつきましてただいま外務政務次官がお話になりましたようないろいろ御心配の点もございまするから、それらが一体どういう状況で推移していくか。これは移民につきまして先ほど来いろいろお話のような、非常にブライトな、将来の望みある見通しもあるわけでございますから、あながち私どもは悲観ばかりすべきではない。まじめな方と不まじめな方とのお話もございましたが、やはり不まじめなものこそ、私どもとしては強力にこれは償還の義務を追及すべきであって、まじめな方の犠牲において不まじめなものが義務を怠るというような事態は、厳にこれを排除して参らなければならんというふうに実は考えておるわけでございます。従って最後にやはり死亡その他天災というふうな、ほんとうにやむを得ない事情の方だけが残るわけでございます。
そこで第二の御質問の点に移るわけでございますが、そういう特殊な例外的な事態のものはここではっきり法律に規定をいたしまして、免除するということを書いたらどうかというお話でございますが、この点私どもは先ほど申し上げましたように、個々の、こういう立法の場合にそういうことをうたって参るよりは、やはり債権管理法というふうな一般的な法律の下におきまして、たとえば本法によるところの移住者の資金については、どういう場合にどうするかというふうなことを考えて参ったほうが、国の債権はいろいろな態様に分れておるわけでございますが、その全体を睨み合せまして、国会の御審議におきましても、十分バランスのとれた検討がなされていくのではないか。いろいろ法律案を出しました場合に、どうもてんでんばらばらな法律で、全体のコンストラクションがどうなっておるか一向わからんというふうな御批判もございます。これが一日を争う非常に緊急の問題でございますれば、あるいはまたやむを得ない例外としてさようなことが起ることがあると存じますが、先ほども申し上げました通りに、据置期間も五年ということになっておることでもございまするので、なおかすに若干の時日をもっていたしまして、私どもとしても慎重に検討の上、しかしながらできるだけすみやかに、大体次の通常国会を目途にいたして債権管理法というものの中にその最終的な処理、例外的な事由による最終的な処理の規定は債権管理法に譲って規定いたしたい、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/25
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026・羽生三七
○羽生三七君 この渡航費の問題は先ほど来政府から御答弁のあった際、この第一条後段の「移住者を受け入れる事業に対する資金の貸付及び投資並びにその事業の経営を行うことを目的とする」と、こうあるわけですが、しかも何か非常に法案の成立をお急ぎになっているようであるくらいですから、一体この渡航費なんかの貸し付けと別に、今ここにうたわれた資金の貸し付けとか投資とか、その他その事業とは、そういうものは一体どういうことを予定されておるのか、どういう事業があるのか、具体的にこれを御説明願わんと、政府がわざわざ出資をして、しかも私は政府出資するような公的事業は世の中にまだいくらもあると思う。そういう際に、特にこの事業を重視して政府出資をしようとする際であり、しかも渡航費については先ほどの御説明があり、さらに法案成立を格別急いでおられるとするならば、今の私の指摘した点についても具体的にどういう事業をやって、どういう経営をやろうとするのか、特にこの移住と関係して具体的に一つこういうことをやるのだ、こういう事業だ。そうすると、これだけの移民ができるのだ、そういうことを一つ御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/26
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027・石井喬
○説明員(石井喬君) 私からお答えを申し上げます。この後段の方のことでございますが、私どもは前段にわたりまする向うへ参りました移住者、すでに参りましたものにつきまして、それの営農資金でございますとか、あるいは先ほどお話しに出ましたコロノで参りました場合、その人々が数年働きましていよいよ向うの風俗、気候、あるいは言語に通暁いたしまして独立するという場合の、その独立資金の援助というふうなことを前段において私どもは考えているわけでございますが、後段につきましては私どもはいろいろ向うにおきまして、たとえばドイツ、イタリアあたりが現在やっております移民政策を見ていまして、過去のたとえば興農移民でございますとか、あるいは農業開拓移民でございますとかいうようなものは、現在ほとんどその影をひそめておりまして、いずれも中小の企業を向うへ進出させる、あるいは現地の中小企業に助成をいたしまして、それが新らしく本国からの労働者を受け入れていくというふうな格好をとっておるのでございます。それで私どもといたしましては、いろいろあらゆる種類の事業にわたっておりますが、この中南米諸国は、御承知のように現状におきましてはまだいわゆる工業化が非常に進展いたしておりません。大規模な工業につきましては米国等の資本で相当進んでおるように聞いております。それからきわめて零細なる土着の資本による工業といったような、工業と名のつかないような工業がぼつぼつ起りつつある。もちろんブラジルとかあるいはアルゼンチンとかいうような国は多少例外でございまして、相当いろいろな工業がございますが、それ以外の国におきましてなかなか工業と名のつくようなものはないので、ブラジル、アルゼンチン等におきましてもまだまだ工業化の余地というものは非常にございますし、またこれらの諸国も非常な熱意に燃えて工業化の道を進んでおるわけでございます。従いまして私どもは現地の、現地と申しますか、日本の移民を受け入れる国々におきまして、いろいろな工業、漁業、農業、その他の面におきまして今後大いにそれを発展させていくような、事実それに日本の移民を受け入れることが可能な事業、そういうような事業がいろいろございます。たとえばここで具体的に申し上げますと、ブラジルにおきましては陶磁器の事業といったようなものが非常に要望されております。それから絹のより糸工業といったようなものも要望されております。それからブラジルでは特殊の鉄線を使いまして農場の棚等をいろいろ作っていますが、これの切断のために非常な仕事があるのでございます。そういったような事業、そういうようなもの、つまり現地の現にございまする産業と競合しないような面の各種の産業、あるいはそれ以下のたとえば井戸掘りの工事でございまするとか、農村に参りますれば井戸掘りの工事でございますとか、あるいは自転車の修理でございますとか、いろいろなものがございます。そういうような事業であります。小さなものにつきましては日本の移民を受け入れるというような、数は少いかも知れませんが、いろいろな工業で日本の移民を受け入れよう、あるいは日本の資本と技術を受け入れようというようないろいろな企業に対しましては、私どもはこの会社を通じて日本の移民を受け入れることを条件といたしまして、ある程度の金を貸してやって、日本からの移民を促進しようというように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/27
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028・羽生三七
○羽生三七君 今御指摘の、たとえば陶磁器とか、自転車の修理とか、井戸掘りとか、そういう事例をあげられたわけですが、ただそれだけではまだ不十分だと思うのです。そういう事例があって、そういうところへ金を貸してほしい、あるいはこれだけの事業をやれば、これだけの雇用移民が可能だと、そういう事例があって、外務省あたりにどんどん書類が出てきた。どうしてもこういう法律を作らなければ、この目的が達せられないのだというような程度の事例をお示しにならんと、やはり井戸掘りがあるとか、自転車の修繕があるのだというようなことでは、私は適当でないと思う。もっと具体的に、たとえばそういうことをやったならば、この程度の雇用移民ができる、雇用移民は外国の労働事情もあって非常にむずかしいのです。そう簡単に雇用移民よろしゅうございますとなかなか言わないと思う。日本の従来の農業移民、それが原始的であることを意味するわけじゃない、非常に近代的なことを望みます。たとえば農業移民なら、そうでない、今のお話のようなことであるならば望ましいことであるが、果して相手国がそう簡単に雇用移民を許すかどうか、相手国の労働者と競合することが可能であるかどうかということを考える場合に、それでもなおかつこういう事業をやれば、これだけの移民が可能である、外務省の想定ではおよそ年間これだけができそうだ、そういうものをお示しにならぬとちょっといかんのじゃないかと思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/28
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029・矢口麓藏
○政府委員(矢口麓藏君) まず第一にこの法案を急ぎました理由を、私が了解するところを申し上げさしていただきますると、本件借款の起りは、先ほども大蔵当局から御説明ございましたように、昨年の秋にさかのぼるのでございますが、その日本に貸すという基本方針がきまりましたのは十二月の八日であるのであります。こういう条件でなら大体貸してもよろしいというくらいのことが、アメリカの三銀行の間にきまったのであります。といいますのは、アメリカ三銀行の代表者が東京におりまして、いわゆる極東の総支配人、本社の副総裁という名前でおりまして、本件交渉はニューヨークから東京に移されておりまするので、そこで承知した話でございますが、自来最近までこの話は一向に進行しないものでございますから、アメリカ側としては日本の真意が那辺にあるやということを疑うといいますか、危惧を持ったのは事実のようであるのでありまして、その関係から一つ急ぎたいという気持にも相なったと私は了解しておるのでございます。
それから今の第一条の問題、前段と後段とのお話でございまするが、全般的にいいまして、各国一般的にいいまして、前段に力を入れておりますのは先ほど申し上げた通りであります。しかし一概にもそう言えませんのですが、例えば具体的に申し上げますと、パラグァイから現に二、三日前も電報、公信がきておるのでありますが、純粋の農業もさることながら、一つ工業を入れてもらいたいということをさかんにパラグァイ当局は申しておるのであります。もちろんわれわれといたしましては、純粋の工業であって、移民を吸収しないような工業は、われわれの、少くとも私たち受け持っておるものの考えの対象にならぬのでありますが、移民を吸収するところの工業であるならば、大いに持っていきたいという考えを持っておるのであります。
それから競合するかしなかという御質問でございますが、もちろん先方と競合するようなところでは初めから問題にならないと思うのであります。国によりまして一向にそういうものを好まぬところもありますし、国によりましては大いに歓迎するというところもございますので、たとえばパラグァイ、ドミニカのごときは、そういったような企業的なものを歓迎するという意思をはっきり通じておるのでありますが、競合はその国々によりまして、競合しないところにやるというわけでございます。
それからはっきりした数字を出せという御質疑でございますが、遺憾ながら現段階におきましては、そこまで手は届きかねておるのでございますけれども、いよいよスタッフも局の態勢も整うようでございますから、今後ははっきりしたものをお示しすることができるのじゃないかと、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/29
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030・羽生三七
○羽生三七君 これはちょっとそういうことではほんとうは法案審査は困るのですが、お話承わっておると、アメリカの三銀行から金を借入れるようになったから、それに基いて法案を早く作らなければならぬというだけなんですよ。だからそうでない普通の工業振興というようなことだったら、私は通産省の関係でいける問題がたくさんあるし、それから特に移住振興の法律を作らなければならんことはないと思う。だから移住振興という法律を作って新らしい会社を作るについては、やはり先ほど来おっしゃる、それが農業であれ漁業であれ工業であれ、そこに何らかの投資が行われ事業が起ったときに、幾ばくの人が移住可能であるかという見通しが立たないと、私はあらかじめ本年中に、何千何百何十何人でなければならぬというやかましいことは言わないが、こういう事業を起すなら本年中はこういう事業については何百人ぐらいいきそうだということでないと、そういう目安がないと、なかなかこれからスタッフを作ってこれから考えるというようなことで、こういう法案が出たということは、私は非常に不適当じゃないかと思うのですがどうですか。私はけちをつけるのではないのですよ、まじめに考えて……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/30
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031・石井喬
○説明員(石井喬君) ただいまの先生の御質問私誠にごもっともだと思うのです。ただ実は私非常に感じておりますことは、日本がこういう会社を作りまして、こういう事業をどこの国で起してこれだけの人が向うに行くのだというようなことを実は明らさまに申し上げますことは、もちろんその準備も不足でございますが、公表することは極めてデリケートな関係にあるとは思います。しかしながらどこかで一つ事業を起すといたします、向うでいろいろ設備を作りまして事業を起すといたします。それだけで、一単位の事業だけで五、六百人の人は行けるのではないか。それからこれは極めて卑近な例でございますが、先ほど申し上げました陶磁器の製造業というようなこと、これは非常に有望な事業だと思われておりまするが、これは機械設備等約三千万円程度の資本投下、あるいはこちらから機械を持って行ってもいいのでございますが、こういうことで百五十名程度の移民は出すことができるのだという程度のことで、一つお考えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/31
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032・羽生三七
○羽生三七君 そういうように聞けばわかるのです。
そこでもう一つお尋ねしたい点は、通産省あたりで普通取り扱っている海外投資問題と、この法案に基く投資の形態との区別という、その限界というものをどこに置くのか、それは事業を起せば必らず幾人かついて行く、そういう場合に、それはもう移民と見なして本法案で金を貸したり援助するとか、そういうことは従来通りなのか。どの程度ならばこの本法案に基く移民というのか。その辺の限界をはっきりさせんと、これは非常に紛糾すると思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/32
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033・石井喬
○説明員(石井喬君) 私からお答え申し上げます。ただいまの御指摘になりました点は、非常になかなかデリケートな点ではないかと思います。この移民というのはどういう種類の移民をいうのか。これは日本におきましては従来移民保護法というような規定がございまして、これによりますと、海外に参りまして労働に従事するものというような規定がなされております。それからドイツあたりの例を引いてみますと、一年以上自分の国を離れる者を移民として取り扱うというような規定もございます。そこで今後この会社が大いに移民事業を推進するというような場合に、どういうような程度の人を移民と称するかというのは、なかなかむずかしい問題でございます。私どもといたしましては、一応向うに定住するというようなことが一つの条件になるのかとも思います。もちろん一時的に技術顧問として招聘されるというような人間は、これは私どもは移民ではないというふうに考えております。しからば十年くらいのものはどうかということになりますと、これはどういうふうに取り扱いますか、まことに研究不十分で申しわけないのでございますが、さらにいろいろ検討してみなければならない点があるのではないか。私どもはいわゆる従来の移民、基本的には向うに行って定着する人間というようなものを、推進するためにやるものでございますので、ただいま申しました技術者的な人間を、どこまで移民とみるのかというようなことは、やはりそのときどきによってきめていかなければならぬような問題が出てくるのではなかろうかというふうに考えます。ただ一年行ってくる、二年行ってくるというような人間を移民として渡航費を出す、というようなことは考えておりません。
それから資金の面でございますが、これはただいまの御質問は輸出入銀行との関係の点ではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/33
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034・石黒忠篤
○委員長(石黒忠篤君) ちょっと、今衆議院の方から、政務次官に五分ばかり来ていただきたいというのですが、よろしうございますね。五分ばかり……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/34
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035・石井喬
○説明員(石井喬君) 輸出入銀行との関係ではないかと考えます。移民に伴いまして資金が要るというのは、主として機械設備等を向うに出す、あるいは現地においていろいろ投資をするというような関係で起ってくるのではないかと思いますので、主たる関連は輸出入銀行との間に起ってくるのではないかと思います。そしてこの法律におきましては、「輸出入銀行の業務の範囲に属するものを除く」というふうに規定してございます。これは私どもは当初この輸出入銀行との関連において、大いに補完的な立場に立ってやったらいいのじゃないかというようなことも考えたことがございます。つまり輸出入銀行で扱いますものは、現状におきましては、相当大きなものでないと、これを扱わない。小さなものは輸出入銀行に持っていってもはねられる。しかし移民の振興という点からものを考えます場合に、必ずしも大きいということが必要ではない。従って輸出入銀行が、大きさという点ではねたようなものにつきましては、この会社がやったらどうかというようなことを考えたことがございますが、一方輸出入銀行がはねるような、今度は大きさではございませんで、不良と申しますか、輸出入銀行が信用できないようなものが、輸出入銀行ではねられた場合に、この会社に結びつけて金を使うというようなことでは、これは非常におもしろくない現象を生ずるというような意見もございまして、この点いろいろ大蔵省等と話し合いをしました結果、この法案としましては、一応この「輸出入銀行の業務の範囲に属するものを除く」という項目を入れまして、ここに作った次第でございます。この点はいろいろ検討を要する点もございますので、いろいろお教えをいただきましてやっていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/35
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036・小滝彬
○小滝彬君 ちょっと最後に一点だけ申し上げておきたいことがあるのですが、大蔵省側のお話では、別個の会計をこのために設けるとおっしゃるけれども、これはなるほど経理の状況を明確にするため別個にされましても、債務がある場合は、結局はこの会社の債務となるだろうと思います。別個の会計だったら、その方はほったらかしていいというものではないだろうと思います。
それからもう一つは、外務政務次官の言葉に批判を加えられたのですが、外務政務次官が言ったのを私が了解するところでは、結局三分六厘五毛で借りたものを五分五厘で貸して、まじめな人から回収したもので払っていけば、結論的にはふまじめなものを援護るような結果になるのじゃないかということを言われたので、私は大蔵当局の言われるだけでなしに、もっと率直に利率の問題を外務政務次官が言及されたわけであって、結論を言えば、私はどうしても外務政務次官の言った通りになりやしないかと思う。幾ら厳重にするといっても、強制執行も海外じゃできないということになれば、結論的には外務政務次官の言ったことが正しい。が、しかし、そういう点はさておいて、一体この二つの組織が働けば結局合理化できないというような点も一応わかるのですが、しかし性格的には渡航費の貸付に伴っては、募集だとか訓練だとか、完全に営利的な見地と離れての活動をしなければならぬ。しかるに一方この振興会社というものは株式会社として活動をしなければならないにもかかわらず、そうした株式会社としての活動には必ずしもふさわしくないようなものを受け持ちますというと、どういう結果になるかというと、どうしても募集とか訓練とかいう点は、それは大蔵省とかがもう協力されて、外務省なり農林省もお手伝いをするでしょう。やりましょうが、そういうことがないと、かえってこの振興会社はそういうことをむしろ厄介もの扱いにして、一方の貸付の方で何か回収ができて、そうしてうまく一応の利潤をあげるようなことには一生懸命になるけれども、そうした渡航費の貸付に関連するような活動というものは、ややもすれば等閉視するのじゃなかろうか、そういう点において私はどうも今の大蔵当局の説明では依然として承服し得ないものがあると思うのですが、これについて外務省は一体どういうように考えておるか。私はこれは非常に外務省にとって、責任を負うからには重大問題だと思うので、今外務政務次官いませんが、矢口参事官からでも御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/36
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037・矢口麓藏
○政府委員(矢口麓藏君) お答え申し上げます。先ほど政務次官から申し上げたような意向がわれわれ全体としての意向でございまして、昨日来何とか妥結の道がないかと苦慮しておるような事実でございます。要はこの会社が安全に動くようなところに重点をおいて、もう少しはっきりした方法がないかというような、小瀧委員が持たれるような考えは、私たちも持っておるところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/37
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038・正示啓次郎
○政府委員(正示啓次郎君) 私の申し上げましたことについての御質問でございまするから……。ちょっとただいま小瀧先生の私の答えに対しましてあるいは言葉が足りなかったためかと思いますが、特別会計を設けまして、渡航費の貸付の経理は別にいたすと申し上げた趣旨は、それをほうっておくという趣旨では決してございませんので、渡航費の貸付と営農資金の貸付をチャンポンにして、渡航費の貸付の面がどういうふうな償還の状況になるか、従ってまた貸付の資金をどうすればいいかという点を的確に出せないようでは困りまするので、会社の経理の面におきまして渡航費は特別に経理をさしていきたい。そうしまして、それによって将来、これは相当長期にわたることでございますが、渡航費の回収の状況等の実績を見まして、ただいままでに申し上げました第九条第二項の条件の定め方等につきましても、それらの実績を勘案して適正に定めて参るようにいたしたい。とりあえずのところ先ほど申し上げたような条件に定めたい。かような趣旨でございまするので、決して私は小瀧先生のお考えと私どもの考えは違っておるのではなくして、ほんとうに渡航費というのは特別の経費であり、これの償還については角をためて牛を殺さないように、やはり十分心して条件を適正に定めていくようにして参りたい。それにはそれとして別経理ではっきりと実績を検討して参りたい。かような趣旨で申し上げたのでございまするから、その点を御了解をたまわりたいと存じます。
それから利率の点でございますが、なるほど三分六厘五毛で政府がお貸しをいたします。それを会社が、まあ五分五厘というお話しもございましたが、最終的にどうなさいますか、会社の方のこれは御判断の問題だと思うのであります。その場合にヴォランタリーに返すものだけを財源にして、そのほかのものは捨てておくということでは私はやはり困るのじゃないか。ほんとうに返せない条件があって、これは最後に申し上げた債権管理法の適用によっても免除しなければならんような条件があればこれは免除できるにいたしましても、強制執行ができないというお話しがございましたが、この点は外務御当局とも話し合っております。
外貨表示にするかどうかというような技術的な問題があるようでございますが、それは一応法律上の問題でございますが、少くともモラリーに、やはり能力のあるもの、一定の条件を備えて特殊の扱いをするもの以外は、すべて返していただくという建前でやはり利率を定めていくと、その際利率を幾らにするかという点は、私は大へんなもうけをするような利率はむろん考えられないのであります。しかし営農資金につきましても、現に四分で借りて、それを一割とかいうふうにこれはいっておられるのでありまするから、私は渡航費についてのみ利率を設ける、マージンを設けることが不適当だという外務当局の考えにもにわかに賛成できないのであります。
それから別個の機関があった方がやはりいいのじゃないかというような御趣旨につきましては、これは多少私どもと見解が違うのでございますが、やはり渡航費というものがもともと返らないのだという考え方ではないのであります。やはり条件いかんにより一般には大体お返しを願えるのだ、またこれはいわゆる国民の税金でございまするから、外国から借りた金は必ず返すのだけれども、国民の税金でまかなわれた渡航費の方はどうだということでは、納税者は浮かばれないのではないか。従いましてこれらにつきましてもやはりこの会社に責任を持っていただくという態勢を整えまして、しかし現実の事務の便利から申しますと、外務大臣の指定される団体に貸付の事務を委託されることは会社としても必要であろうかと存じまして、さような規定を設けておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/38
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039・羽生三七
○羽生三七君 もう一つ。この第一条にやはり関連するのですが、「移住者を受け入れる事業に対する資金の貸付及び投資」、これはわかるのですが、「その事業の経営を行うことを目的とする」というのは、この会社自体がやはり何か経営もやることがあるわけですか。やるとすればどういうこと、やはり移民事業と同じことを、移民団体、移民個人でなしに、この会社自体がやるということなのか、その辺もう少し具体的に……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/39
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040・矢口麓藏
○政府委員(矢口麓藏君) 御説明申し上げます。これはまあ原則としてはあまりそういうことを考えておりませんので、たとえばどうしても民間の手でやり切れないような場合を主として考えております。一例をあげさせていただきますると、終戦直後に第一回目に入りましたウナの入植地というのがございますけれども、これは選考不十分であった関係でございましょう、いろいろなトラブルが起きまして、えらいブラジル側を刺激した事例がございますけれども、そこからだいぶ入植者が渡航して逃げちゃって問題を起したのでありますが、やはりそういうものの跡始末などをやりませんと、移民政策上非常におもしろくないというようなことが起りました場合に、そういうときはそういう機関はありませんでしたからやらなかったのですけれども、やむを得ず新会社、移住会社がやらなくちゃならない場合を考えておるのでございます。
また、一例をあげた方がはっきりすると思いますから申し上げますが、ドミニカあたりで、ここには日本人というのは公使館員以外には一人もおりません。そこに相当数の移民を要望してきておるのでありまするが、それは農業移民がもちろん主体でありまするが、それ以外の工業移民も希望しておるのであります。そういうような場合に、農業形態にせよ工業形態にせよ、だれも引き受け手がないような場合においてはまあ新会社がやるというようなことを考えております。また他の場合もあり得るかもしれませんけれども、現段階で考えておるのは主としてそういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/40
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041・石黒忠篤
○委員長(石黒忠篤君) それでは私からちょっと一つ……。この三銀行の外資の問題は、前内閣のときの首相があちらへ行かれて口を切られたように思うのでありまして、私は当初から多少知っておる。そのときには渡航費のことが問題であったように思うのであります。まあ現実と理想とをあわせての今度の会社でありますが、しかし前段の方に重きをおくのだという御説明であれば、渡航費の貸付ということはこの会社がやるが適当か、あるいは現在やっている移住連合会に委託してやらせるのがいいか、それはまあ技術の問題といたしまして、とにかく一応この会社がやる、しかも主要なことであると、こういうことに了解してよろしうございますか、どうでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/41
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042・矢口麓藏
○政府委員(矢口麓藏君) 渡航費の貸付を新移住会社がやることについてでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/42
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043・石黒忠篤
○委員長(石黒忠篤君) 移住会社が委託をしてやらせることになりましても、移住会社の目的のやはり主たるものであると見てよろしうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/43
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044・矢口麓藏
○政府委員(矢口麓藏君) この法文にうたってありますことは、この貸付業務が、第八条の「会社は、その目的を達成するため、次の業務を行うものとする。」というところの第一に書いてございますけれども、外国へ移住する者に対して、渡航費を貸し付けることとするという工合に、渡航費の貸付業務をこの会社の重要なる一つの仕事にうたってございますから、法案の趣旨はそこにあるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/44
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045・石黒忠篤
○委員長(石黒忠篤君) そうしますと、小瀧さんの御質問のように、両方一緒にやっておくのが、これが正当のことであって、八条の二にある「外務大臣の指定する団体に委託することができる。」ということであって、これはやらないのが正当だと、こういうことになりますのですか。もし、他の団体にやることが適当であるのならば、他の団体をして貸し付けることというふうに、外務大臣の指定する団体に委託して貸し付けることと、こう書かなければおかしいように思うのでありますが、そこはどうでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/45
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046・矢口麓藏
○政府委員(矢口麓藏君) 直接法文の作成に当りました石井参事官からお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/46
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047・石井喬
○説明員(石井喬君) 私からお答え申し上げます。私どもの考え方といたしましては、この渡航費の貸付を行います前提といたしましては、やはり参りまする移民の選考あるいは教育ということが非常に重要なファクターになって参ると思うのでございます。そこでこの会社はこういうここに書いてございますような事業をいたしますが、一方海外移住協会連合会というのは、昨年の閣議決定に従いまして、この選考の問題あるいは教養の問題に相当今後力を入れてやらしていかなければならない。そういたしますと、この選考、教養の問題と貸付、現実に貸付を行うということとは非常に密接な関係がございますので、それを前提にしまして、この事業はどこまでも会社の計算において、会社の責任において行うものでございまするが、その実際の事務と申しますのは、選考、教養を行いまする団体に委託してやるのがよろしいというつもりで書いたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/47
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048・石黒忠篤
○委員長(石黒忠篤君) ちょっと私まだ了解ができない点があるのでありますが、会社が主たる仕事として渡航費の貸付をするということになって、それは政府から渡航費の予算の支出になる。もし今のお話のようなことであれば、政府と連合会との問題にそれはしてしまってもいいのを、これを会社の方に第一の目的として書いているのは、前内閣のときに口火を切られた、人口問題としての移住の貸付にアメリカの銀行が応じて、外資の便宜を与える、こういうことになって急いで立てられるようになったのでありますから、予算の範囲内における渡航費の貸付のほかに、新たに開けた外資を渡航費として貸し付けるということは当然あることと思うのでありますが、それはどうでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/48
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049・石井喬
○説明員(石井喬君) お答え申し上げます。私どもがいろいろ伺いましたところによりますれば、この渡航費の貸付を外資、アメリカからの借款をもって行うというふうには私は聞いておりませんで、むしろアメリカから借りまする借款は移民を振興するような、あるいは現地において移民を助けるようなことに持っていくというふうに聞いておりますので、私どもは借款を渡航費に使うというふうには聞いていないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/49
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050・石黒忠篤
○委員長(石黒忠篤君) それについては大いに疑問がございますが、政務次官が帰られましたので……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/50
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051・須藤五郎
○須藤五郎君 最近日ソ交渉の過程で在留邦人の帰国問題が非常に大きく問題にされて参りましたので、この際私はその点に関して以下五点に対して外務省の責任ある答弁を求めたいと存じます。それで一問一答になりますと時間がかかって、また委員長に御迷惑をかけることになると思いますので、ずっと私は私の問題点を続けて述べますから、政務次官一つ聞いていただきたいと思うのです。
外務省は去る十七日、在ソ抑留者の実態と称して、なお一万二千六百名がソ同盟に抑留されておるという発表を行なった。だが国民は今までたびたび行われたこの種数字発表のいきさつから見て納得できないものを感じております。そこで以下数点について質問いたしますから確固たる御答弁をしていただきたいと思います。
第一に、外務省は二十五年十二月には三十一万六千二百三十九人が正確な抑留者数であると発表しました。ところが半年もたたない二十六年三月になりますと、二十六万六千人、外務政務次官発表でありますが、となり、また一年四カ月後の二十七年七月には一挙に六万三百三十一人に減らして発表いたしました。これは引揚白書であります。しかも今回の発表ではさらに大きく切り下げて一万二千六百人となっております。このように発表ごとに数字が大幅に開いてきておりますが、どうして変ってきたのか。三十一万が結局一万二千に下ったのはあまりにもでたらめではないかと思うのでありますが、その根拠を説明していただきたい、これが第一点であります。
それから第二点は、今回の外務省発表によりますと、在ソ抑留者に関する個人資料につき、未帰還者の留守家族から未帰還届を出させたり、帰還者の証言などを総合整理して調査したものだと言っております。だがわれわれの調査によりますと、在外同胞帰還促進全国協議会の会員のうち、実際に未帰還者から通信が来ているのはその一割に満ちません。政府は留守家族の申告によって数を調べたと言っておりますが、これら未帰還者のすべてがソ同盟にいると、一体何を根拠にして確認されているのかどうか。先年豊島区の民生課長は、政府の秘密の指示で、政府統計で南方と中国の引き揚げは終ったから、未帰還者は行方不明を含めてソ連の残留者とみなされると説明しておりますが、一例をあげますならば、つい先ごろ日食観測でインドシナのツーランにおもむいた観測隊は十三名の元日水兵に会い、そのほかにも在留しておるということを話しております。このような事実が次々と現われてきておりますが、これに関して政府の見解を求めたいと存じます。
第三は、戦犯を早く帰してもらいたいというのは、家族としては考えられることでありますが、戦犯問題が残っているのはソ同盟だけではありません。すでにサンフランシスコ条約を結んでいるアメリカ、イギリス、オランダ、オーストラリアの諸国についても戦犯は釈放されておりません。ところが今度の外務省発表は、ソ連側が真に国交正常化の誠意を持つならば、戦犯の名がつけられていようといまいとを問わず、すべての抑留邦人が即時かつ無条件に釈放、送還されることを強く期待していると述べております。国民は、このような無理な要求を持ち出すことによって、まとまる交渉もぶちこわしになるのではないかという心配をしております。そういうことは私たちの手元までもいろいろな方面から申し出でられておるのでありますが、政府はこれをどういうふうに考えておりますか。さきに大会に参加されました在ソ同胞留守家族会代表委員の小畑富子さんなど、その他の方々がおっしゃっていらっしゃったのは、強く主張してもらうのはありがたいが、強過ぎてすべてが御破算になってしまったら大へんだという素朴な不安を漏らしていらっしゃいますが、政府はこれに対してどう処置をなさるつもりか。
第四でありますが、政府は抑留者の数字を発表しながら、その氏名をまだ一度も発表したことがありません。関係団体が全部の氏名の公表を要求してもいつも拒絶をしてきております。ほんとうに確固とした資料があるならば、この委員会に未帰還者氏名、軍人ならば旧所属部隊、留守家族氏名を即時提出することを要求いたします。
第五、内閣の最高責任者である鳩山総理は選挙公報におきまして次のようなことを述べていらっしゃる。「またハボマイ、シコタン島の帰属や、抑留者や戦犯者の帰還問題が片づけないのに、国交を回復することはいけないという論もありますが、これほどの本末顛倒はありません。これらの問題は常に交渉を行うべきことですが、両国が国交を回復して対等に話合いが出来るようになってからでも、堂々と要求してよい事柄で、そのためにも、一刻も早く国交を回復する必要があるのであります。」、こういうふうに言明されていらっしゃる。ところがその後外務省の態度は、懸案の解決をはかりつつ国交の調整を進めるといい、さらに現在保守合同問題が始まりますと、今度は未帰還者の即時釈放が前提であるというように変ってきております。このような変化は一体どこからきているのか。明らかにアメリカと自由党の圧力だとわれわれは考えるのであります。訪米中の西ドイツのアデナウアー首相は、十七日に、米、英、仏三国外相会談に参加いたしまして、ソ連首脳との会談に同意する条件として次の三件をあげたといわれております。一は、現在まだソ連に抑留されている九千名以上のドイツ人捕虜の釈放をモスクワ訪問中に発表すること、二番が、西独が東独共産政権を承認することはあり得ない、三は、オーデル、ナイセの線をドイツの東国境として認めることはできない、こういうふうに三つの点をあげておりますが、これはちょうど現在ロンドンにおいて日ソ交渉が開かれている条件と符合するものであります。これこそ明らかに日本の日ソ交渉そのものがアメリカの指導によってなされているということが看取できると思うのであります。政府は国民の期待にこたえて、日ソ交渉を成功させる意思がほんとうにあるのかどうか、それともアメリカと自由党の指図に従って交渉をぶちこわし、国民の期待を裏切り、平和と日本の独立への道にそむこうという意思があるのか、以上の点について率直な答弁を求めたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/51
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052・園田直
○政府委員(園田直君) 逐次お答えいたします。まず日本の発表の数字とソ連の発表の数字が食い違っておりますが、その数字についての御質問でありますが、この数字の調査は厚生省の未帰還調査部で調査したものに、ただいまおっしゃいました留守家族あるいは帰還者の情報及びソ連地区から来ました書簡、こういうものを資料にして逐次修正をしてやった最後の発表でございます。当初第一回目の発表は、終戦直後の在ソ及びかつての在満部隊及び在留邦人の総計から推定をした数でございますから、逐次情報が判明するにつれて若干の異同のあったことは事実でございますが、今般のものは厚生省未帰還調査部の資料を中心にして数回検討し、ただいま申し上げましたような資料に基き、各都道府県でも調査を願って調査したものでございます。従いまして、これはソ連地区から中共あるいは蒙古、あるいはその他の地区へ送還された者もおりまするし、ソ連と日本の数字が食い違ってはおりまするが、正式にこれが話し合いに移れば、これはある程度の実情は判明するし、数字の食い違いによっていろいろな問題が出てくるとは考えられません。こちらの方ではいろんな行方不明その他の調査については、資料を持っておるものは資料を提出して、調査が進めば調査にいかなる協力もするという申し入れもしております。
次に、引揚問題が、未帰還者のすべてがソ連にいるという認定の根拠でございまするが、その根拠も、ただいま申し上げました通り、帰還者の情報や書簡や、あるいは当時の推定から推定された数字でございまして、中に若干のソ連の方から中共に引き渡したという発表になった分も若干の食い違いもございましょうし、あるいは氏名の発表等のないやつもございますので、その点について若干の誤差はあると思いますので、その点もこれは話し合いが進めば、両方の国の言分は、話し合いが立って真相が判明すると思いますが、いずれにいたしましても、今回発表いたしました数字は、各種の資料に基く責任ある数字の発表でございまして、決していいかげんな数字ではございません。
次の御質問は、日ソの国交を調整するに当って、抑留者同胞の引揚が先か、あるいはあとか、これをあまりに主張してぶちこわすことはないかという御質問でございまするが、ただいま折衝中でございますから、両方の申し合せによって、詳細は御報告するわけには参りませんが、この点については、国交調整と抑留同胞送還の問題とは別個の問題であるということについては、日本もソ連も解釈が一致しております。はっきり向うも国交調整とは別個の問題である、こちらも国交調整とは別個の問題として取扱いたい。ただ抑留同胞の問題は人道上の問題であるから、いろいろな国交調整上の条約その他のことの話し合いに入る前に話し合いを進めてくれぬかというのがこちらの要求でもあるし、向うはそれをあとに回すとは決して言ってはおりませんが、その問題は国交調整のいろいろな条約の話し合いが進めばきわめて有利に展開するのではないか、そういう点で現在主張をし合っておる段階でございまして、決して抑留同胞問題をめぐって意見が対立して、双方譲らず、これが最悪の事態に突入したわけではござ
いません。両方から話し合いの段階でございまするし、なおまた、強く主張することによってぶちこわれるおそれはないかということでありますが、ソ連自体もはっきり言っております。われわれはこれをいつまでも抑留する意思は毛頭ないのだということを数回にわたって、抑留問題に対する人道上の問題に対する彼らの見解と主張とをはっきり述べておりまして、不当にこれを抑留したり、あるいは無理に引張っておこうという考え方はないのだから、話し合いを進めようという程度の話し合いでございまして、これを出張するからぶちこわれるなどということは、われわれは今回の会談では予想もしておりません。またこの問題でぶちこわれるとするならば、それは少くとも双方の責任であって、真に国交調整をやる意思がないからぶちこわれるのであろうと考えておりますので、その問題は留守家族の方の心中、並びに国民大多数の意見に従って向うとの折衝を続けておる段階でございます。
領土とそれから抑留者の問題は、これは若干の会談の内容では差異がございます。その差異について詳細を御報告申し上げますると、簡単なことではございまするが、それから日ソ会談の核心が暴露するおそれがございまするから、これに対する御答弁は御容赦願いたいと考えます。
それから抑留同胞の送還の問題と、それから領土の問題、それからそのほか漁業その他の問題等は、私どもも今話し合いを進めるについて、条約の締結であるとか、正式の国交調整を待つ段階までは待てない問題であるから、まずこの話し合いを進めてくれぬかという段階でございまして、これについては、あとにするか先にするかというまだ論議はされてない段階でございます。
以上御報告申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/52
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053・須藤五郎
○須藤五郎君 ちょっと私の質問の重点が……、もう一度……。
そうすると園田次官の話を聞きますと、数字がどんどん変ってきたのは、いろいろな情勢の変化、また次々と新らしい資料が入ってきたので、その結果そのように数が変った、こうおっしゃっていらっしゃいまするが、私たち最初外務省が四十万という数を発表いたしましたとき、その数字には何ら根拠がない数だということを主張すると同時に、ときに四十万と申しますと、当時の日本の小学校の、国民学校の先生の数と匹敵する数だ。そこで私たちの党で各学校の地区、ある学校の児童の通ってくる学校の地区に何人の未帰還者があるかという数字を調べたところが、とてもその学校の先生の数だけはないということが明らかになった。それからその後村役場や方々で、その地区に何人帰ってこない人があるかというような調査をいたしたところが、どうしてもその調査に応じてくれない。政府からの言いつけだと言って調査を拒否したような例がありまして、もともと私たちは、この四十万という数字に何ら根拠のない、これは最初から反ソ反共の手段として使った数であって、何も根拠がないということを私たちは主張してきました。今園田政務次官の答弁を聞きますと、政府も最初四十万と発表したが、その後いろいろな資料によってこのような数に変ったということですから、最初に四十万という数を出されたことは、これは実にでたらめな数を出された。何ら責任のある数を出したのじゃないということが私どもはっきりしました。それから、いろいろありますが、一万何千の数にしましても、これは非常に確実な資料に基いた数のごとくおっしゃっていらっしゃいますが、ツーランに行ったときにすら、ツーラン一カ所だけですらも数十名の人がいるわけです。十三名の日本兵が出てきて、ほかにもまだ在留者がおるということをはっきり言っておる。こういうのがまだ南方に行けばたくさんあると思う。ところがそういう人たちまでも在ソ未帰還者というふうに発表しておるところの根拠がどこにあるか、もうそういう根拠が全然私はなくなってくるのではないか、非常に希薄ではないか、こういうふうに考えるのですが、それに対する考えをもう一ぺん述べていただきたい。
それからもう一つは、数字だけ発表して氏名を発表しないのはなぜか、それがくさい、数字がわかっておるならば氏名もわからなくちゃならない。氏名すらもわからないという数字なんというものはあり得ない。なぜそういう氏名を、われわれがたびたび要求しておるのに外務省は氏名を発表しようとしないのか、こういう点が私たちは非常に不満であります。それでまあ総理が選挙公報ではっきりと述べていらっしゃるが、最近外務省の考え方もいろいろ変ってきたということに関しましては、まだ私は不満でありますが、先ほど政務次官がいろいろ答えられましたから、その点におきましては今日のところは私は追及はいたしませんが、以上述べました点でもう一度一つ政務次官から……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/53
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054・園田直
○政府委員(園田直君) 数字の問題の変更があってでたらめだということでございまするが、決してでたらめな数字ではございません。若干の端数の増減があったということでございまして、今日わかっておりまするのは、氏名の判明した生存確認数は、ソ連地区で千三百六十三名、千島、樺太が八十九名、氏名の判明した状況不明者はソ連地区で九千五百名、千島、樺太で千六百九十名、計、ソ連地区で氏名の判明した生存者、状況不明者で氏名の判明している者が一万八百六十三名、千島、樺太が千七百七十九名、もちろん先ほどのような事情もございまするから、調査が行きわたらずに、これ以外にまだ行方不明になったり、生き残っておる人があるかもしれませんが、政府が責任をもって発表しましたこの数字は氏名の判明したものでございます。
その判明しておる氏名を資料として提出をせよとのことでございまするが、これは御承知の通り、政府は一回も氏名を発表いたしておりません。御承知の通りソ連地区におきましては、抑留されておる同胞では、中には名前を、日本で使ってなかった名前を使っている人もおるようでございまするし、あるいはその残っておる一万八百六十三名は、ソ連も言っておりまするように、一般捕虜ではないと、こう言っておりまするが、その中にはいろいろな各種の任務に服しておった者や、いろいろな経歴を持った者があるかもしれませんが、従いまして折衝中の段階において向うといろいろな話し合いが進んだあとでは、直ちに氏名を出して、お互いに両方から調査したいと考えておりまするが、今日の段階において氏名を発表し、これを公表することは、折衝の経過上これは控えておるわけでございます。
なお領土の問題と抑留同胞の問題は、外務省といたしましては当初から国交調整、すなわち国交調整という言葉は、正式に条約を締結をして、ソ連と日本の国交が回復する、その前に領土の問題や抑留同胞の問題は話し合うと言っております。しかしこれはあとにする意思があるか、あるいはどうやるか、これは交渉の経過中でございまするから、交渉の経過においてこれを先にするかあとにするか、そういうことは御答弁ができません。外務省といたしましては、あくまでこれは国交調整前にこれらの話し合いがつくならば、日本人は、ソ連の日本に対する国交調整の意思と平和に対するソ連の気持も理解するであろう、このように盛んに主張をいたしております。今後ともその主張を続けるつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/54
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055・須藤五郎
○須藤五郎君 そうすると、今の答弁によりますと、千数百名の氏名がわかって、あと九千名余りの人の氏名がわかっていない、こういう答弁だったと思うのでありますが、その千三百名余りの氏名のわかっている人はいつ発表するのか、発表を必ずするのか、それとも九千名の氏名のわかっていない人を未帰還者とする根拠がどこにあるのか。
それからもう一つ、この未帰還者の問題も、それから領土の問題を前提としなかったならば、この解決を前提としなかったならば国交調整には応じないという態度ではないということが、今の政府の基本的な考え方であるというふうに、あなたの言葉を通じて私は理解するのですが、その理解は間違いないのか、その点をもう一ぺん。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/55
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056・園田直
○政府委員(園田直君) お聞き違いがあると思いますが、氏名の判明した生存確認者数が千三百六十三名で、氏名のわかっておる状況不明者が九千五百名でございます。一万八百六十三名で、千島の千七百七十九名は、全部行方不明にしても生存者にしても、姓名のわかっている者だけでございます。従いましてソ連に対する申し入れは、今生き残っている方々を帰してもらいたいということや、あるいは死んだ方はその死んだ模様や埋葬個所、それから行方不明はソ連の方でもわからないのが多いでございましょうから、そういう者についての調査や資料等はこちらも提供して、いかなる協力も惜しまない、こういう申し入れをやっておるわけでございます。氏名の発表はソ連と日本の間の話し合いがもしまとまりまして、その問題は何とか研究しようではないかという段階になれば、正式に氏名、あるいはその他の資料はことごとくソ連の方に呈示をいたします。それ以前においては公表はごかんべんを願いたいと考えております。
それから抑留の問題と領土の問題が先に解決をしなければ国交調整に応じないということではないのが、外務省の基本方針かという御質問でございまするが、そのようなことは非常にこれは重大な問題でございまして、これができなければこれは譲るとか、あるいはこれを聞かなければこれは破談にするとか、そういうことは全くこれは会談の重要な技術の問題でございまするから、答弁するわけには参りません。われわれはあくまで抑留同胞の即時送還と、それから領土その他の諸懸案を正式に国交調整する前に話し合いをつけたい、このように主張をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/56
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057・須藤五郎
○須藤五郎君 私たちはその未帰還者の氏名、所属部隊、あらゆる問題、この遺家族、そういうものがわかっているものは即刻発表してもらうことを強く要望するものであります。外務省はソビエトとの間に了解がついたならば、即刻発表するという御方針でありますが、われわれとしても一日も早く発表して、そうして国内的にこの問題が悪用されることを避ける意味からも、私はこの問題は明らかにすべきである。何もソビエトの了解を求める性格のものではない、これだけの人が帰っていないということをはっきり発表することができるならば、即刻発表すべきであると、私はそういうふうに考えます。そうして最後の点でありましたが、外務省は非常に言葉を濁すのでありますが、鳩山総理が最高責任者として選挙の公約において、公報ではっきりこういうふうな公報を出しているが、それにもかかわらず、外務省が最近とやかくといろいろなことを言を濁すような方向にいっているのは、これはけしからぬではないか。これはアメリカの制肘を受けたり、または自由党から足を引っぱられるために、こういう行動をとらなくちゃならぬのじゃないか。これでは国交調整も暗礁に乗り上げる危険が起るのではないか。だから元通り、総理の公約通り邁進すべきであるというのが私たちの意見であります。それに対して私は政務次官の責任ある見解を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/57
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058・園田直
○政府委員(園田直君) 御意見はよくわかりました。しかし今の会談の焦点は、こちらから提示をした諸懸案を先に話し合いを進めるか、あるいはそれを並行か、あるいはあとかわかりませんが、平和条約その他の国交調整を先に進める方がいいというソ連の意見と、その先に諸懸案を解決しようとするわれわれの意見とまっこうから対立しているときに、これを解決しなくても国交調整に入るとか、それを解決しなければ御破算にするとか、そういうようなことは御答弁できるものではないということは、よくおわかりの上の御質問だと思いますので、御答弁はいたしません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/58
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059・石黒忠篤
○委員長(石黒忠篤君) それではこれをもって本日の委員会は散会いたします。
午後零時四十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01619550705/59
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