1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年七月二十二日(金曜日)
午後二時三十三分開会
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出席者は左の通り。
委員長 石黒 忠篤君
理事
鹿島守之助君
草葉 隆圓君
羽生 三七君
苫米地義三君
委員
平井 太郎君
梶原 茂嘉君
後藤 文夫君
佐藤 尚武君
佐多 忠隆君
委員外議員
高橋進太郎君
政府委員
外務政務次官 園田 直君
外務省移住局長 矢口 麓藏君
大蔵省主計局次
長 正示啓次郎君
事務局側
常任委員会専門
員 渡邊 信雄君
説明員
外務省移住局参
事官 石井 喬君
外務省移住局第
一課長 種谷 清三君
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本日の会議に付した案件
○日本海外移住振興株式会社法案(内
閣提出、衆議院送付)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/0
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001・石黒忠篤
○委員長(石黒忠篤君) それではこれより外務委員会を開会いたします。
日本海外移住振興株式会社法案を議題といたします。御質疑のおありの方は順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/1
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002・羽生三七
○羽生三七君 資料として配付していただいたこの会社の目論見書について少し……、これだけなのか、まだ他にも計画があるのか。これについてももう少し詳しく御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/2
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003・園田直
○政府委員(園田直君) 日本海外移住振興株式会社の業務並びに事業計画等につきまして提出申し上げましたのは、ただいま仰せの目論見書案だけでございまして、これについて詳細はあとで参事官より説明をいたさせますが、これを事業計画あるいは業務内容とせず、目論見書で、さらに案という名前をつけて提出いたしましたゆえんのものは、実は本会社が国策を遂行する会社ではありますが、本会社の法律案作成の当初より、いろいろ運営上の問題で論議をいたしまして、これが営利会社ではございませんが、国家資金の僅少な折柄、出された資金などが借款等の赤字によって倒れることなしに運営することができるかどうか。なお、また初年度に予定します民間会社の数千万が集まるかどうかどうかということは議論の焦点でございまして、その後損失補償などの点について大蔵省との間などの意見の統一をいたしましたので、何とかやれるとは思いますけれども、それにつきましても、この会社を運営されるに当りましては、外務省並びに政府といたしましては、これの監督あるいはその他の指導等は十分注意をしなければならぬが、あまり縛ることによって、この会社に対する民間資本の集まり、あるいは人事その他運営上の諸問題の運行に支障を来たしてはならぬということと、それからもう一つは、先般来からしばしば御指摘を受けておりますが、本法律案ができ上りまして、会社が通常されるに当りましては、人事の問題から業務、いろいろな事業計画と、ことごとく関係各省と密接に連絡をとって計画を立てたいとも考えておりまするし、なおまたこの会社の発足に先立って、内閣に審議会というものを設けることとし、すでにその人選中でもございますから、審議会において、なるべく長期の立案計画、あるいは業務事業計画等についても、広く各省の御意見を承わり、さらにそれを各省が検討をして、細部の計画を作りたい、こう考えておりまするので、非常に不十分ではございまするが、本法律案を審議していただきますための参考の資料として、目論見案として出したわけでございまするので、このほかに資料はないわけでございます。なお、細部については、参事官より説明をいたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/3
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004・石井喬
○説明員(石井喬君) それではただいま政務次官から申し上げました趣旨で作ったものでございますとの目論見書案に対して、私から簡単にこの内容を御説明申し上げます。
第一ページは、これは法律案に書いてあることをそのまま書いたようなものでございますが、商号は日本海外移住振興株式会社という名前にしてあります。
それからその目的でございますが、これも法律案に書いてあるところでございまして、移民に渡航費の貸付を行う。それから移民及びその団体の行う農業、漁業、工業その他、必要な事業資金の貸付を行う。これは移民が直接借りる場合もございますし、これらの者が組織いたします、たとえば組合のような団体がこの金を借りることもあるということでございます。それから三番目は、移民を受け入れる事業に必要な資金の貸付及び投資を行う。これは農業、工業、水産業、その他いろいろあると思いますが、日本から移民を受け入れようというような事業に対しまして、移民を受け入れることを条件として、必要な資金を貸してやろうというのがそれであります。それからその次に四番目でございますが、移民を受け入れる事業を経営すること、これは一応会社が直接事業を経営することがで承るようなことになっておりますが、これにつきましては私どもただちにこの仕事を行おうと思っておりますわけではございませんが、日本の移民を受け入れるために、非常に有利な事業もあるけれども、現地でなかなかそれを行う者がいないというような場合に、こういう規定を置いておきまして、必要によってはこういうふうな事業もできるということであります。これが目的でございますが、こういう目的を全部一度に会社が全部行おうとするのではございませんで、このように書いておきまして、そのうち現地の情勢によりまして必要な事業を徐々に、当初は堅実に確実にだんだんやっていくという趣旨でございます。
資本金は一億五千万円という予定でございます。そのうち一億円は政府が出資するごとになりまして、残りの五千万円は民間から株を募集したい、こういう予定でございます。それからこの会社が将来どのくらいの大きさになるかということにつきましては将来の問題でございまして、確たる見通しがなかなか立たないと思いますが、一応目論見案なるもの存作成いたします段階におきましては、本年度一億五千万、さらに三十一年度におきまして一億五千万というものを増資するということを考えまして、その範囲内で目論見書というものを作った次第であります。
それからその次に事業資金でございますが、事業資金の方はアメリカの三つの銀行から借り入れまする外貨の千五百万ドルというものを事業資金として使おうということでございます。
それから事務所でございますが、本社は東京に置くわけでございます。この会社の事業はすべて現地において行えるものでありますので、支社を必要な土地に順次作っていきたい。ただその場合支社あるいは支店という格好で出せるところもあると思います。あるいは現地法による法人を作りまして、それを支店として動かしていくという格好をとるようなところもあるというふうに考えております。
それから役職員でございますが、この目論見書といたしまして当初取締役は三人というふうに考えております。これは法律によりますれば取締役は四人ということになっておりますが、目論見書といたしましては三人、それから監査役一人ということで出発するように計算してあるわけでございます。職員はこれも将来この会社の運営によりましていろいろ変ってくると思いますが、とりあえずできるだけ経費を節減したいという意味からいたしまして、本社に十人程度、それから支社一個所あたり日本から出します人間は二人程度にしたい。それから現地から四人程度を置いてとりあえず出発することにしたいと考えているわけであります。
それから業務の開始でございますが、これは一応の予定といたしまして九月一日に会社を設立いたしまして、それからいろいろ準備をいたしまして十月一日から業務を始めるようにしたいという希望でございます。
それからその次に事業の概要でございます。業務の範囲でございますが、これは先ほど申し上げましたところの目的につきるわけでございます。
その内容を多少申し上げますと、第一番目には移民に対する渡航費の貸付の問題でございます。その渡航費の貸付につきましては渡航費資金というものが別途毎年国の予算から支出を受けまして、これを会社が貸し付けるということになっているわけでございますが、渡航費につきましては現状から考えましてあるいは渡航費の性質から考えまして、なかなかその回収は困難ではないか。そのために法律の第九条第二項に基く政令というようなものを作る必要もあるわけでございますので、渡航費につきましては一応目論見書の計算からは除外いたしたわけであります。
次に移民またはその団体に対する資金の貸付でございます。その内訳を多少申し上げますと、いろいろな種類があると思いますが、現地の移民の事情に即応いたしましていろいろな形態があると思いますが、一応定型的に幾つかのものを拾ってみますと、一つは営農資金の貸付でございますが、これはすでに南米その他に移民が相当入っておりまして、資金的な援助を必要とするものが相当あるのであります。そういうような人々及び今後新たに入って参りまする移民の方々に対しまして、これを対象として金を貸し付けよう、しかしこれは営農資金でありますから、その対象となるものは農具を買う、種子を購入するという、そういったような営農のために必要な資金を貸し付けようということでございます。その次に独立資金の貸付でございます。これは従来も戦前におきましてはいわゆるコロノ移民、雇用契約でもって参りました移民がほとんど大部分であったわけでございますが、戦後におきましてもコロノ移民の数は相当多いわけでございます。今後全然新しい天地と申しますか、気候、風土、言語すべてが日本と異なる所に行く人でありますから、いわゆるコロノ移民として参りまして、多少修練した上で独立するというような形態が望ましいのじゃないかと思いますが、この労働契約で参りますコロノ移民、それから向うのいろいろな企業等に雇われて参ります技術移民、そういう人々がいよいよ向うの風俗、習慣にもなれまして、これから独立しようという際に、中にはもちろんこの労働期間におきまして十分に資金を作って自分の力で独立で承る人はいるわけでありますが、そうでなしにさらに独立資金を必要とするというような人につきましては、この独立資金の貸付を行なおうということであります。
それからその次に移民を受け入れる事業体に対する資金の貸付でございます。これもいろいろ種類がございますし、国によっていろいろ形態が違ってくると思いますが、一つは農企業資金の貸付でございます。たとえばどこかでコーヒーのプランテーションを作る、そのためにそこのいろいろな技術者なり労務者なりを日本から受け入れようというような企業が向うで起る場合に、それに対するいろいろの資金を貸し付けてやろうということでございます。これはもちろん資金の貸付でございますから、主体は現地に足る企業でございまして、必ずしもその全部をここで貸すというわけではございません。必要な資金を貸そうというわけでございます。その次は水産企業資金の貸付、これは最近水産関係の企業の話がいろいろ話に上って参りますので、これを一つ取り上げまして新しく移民を入れようというような水産企業が起る場合に、それの加工施設その他につきまして必要な資金を貸そうということでございます。それから工業資金の貸付、これは御承知の通り、戦後中南米の方面におきましては非常に工業化の趨勢にございますので今後こういった種類のいわゆる工業移民と申しますか企業移民と申しますか、そういうものもだんだん出て参ると思うのであります。あるいは技術移民と申してもいいかと思いますが、出て参ると思うのであります。そういうような移民を受け入れようとする企業に対しましても資金を貸付けようということでございます。それから運転資金でございますが、ただいまいろいろ申し上げました企業に対する貸付は、大体におきましていろいろな固定設備等に対する資金の貸付ということになると思うのでありますが、そのほかに運転資金と称する面にもいろいろと需要があると思いますので、これももしこの金を必要とする企業が日本から移民を受け入れようというものがあればそういうのも見るべきじゃないか、こういうことでございます。
それから移民を受け入れる事業体に対する投資でございます。これは大体貸付で事が済みます場合には貸付で行いたいと思いますが、国によりましては、貸付というようなことよりも、むしろ日本からの投資を歓迎するというような国が相当ございます。ことに水産といつたようなものにつきましては著しく投資を要望するというようなことがございます。その場合には投資もできるようにしておきたいということでございます。これは水産だけに限りませんで、工業方面でもそういうことがあり得ると思いますので、これもそういう必要がありますれば投資もで承るようにしておきたいということでございます。
それから業務の対象となる移民概数でございますが、これは非常に算定困難な問題でございます。先ほど申し上げましたコロノで参りました移民を考えてみましても、コロノで参りました移民の数はわかりますが、しからばそのうちどのくらいの人が新しく独立する際に資金の貸付を欲するかということになりますと、これはなかなか数の算定はで費かねるのでございますが、一応いろいろな見地から考えまして、きわめてラフな数字ではございますが、一応この程度の人々が援助されるような格好になるのじゃねいかということで算出した数字でございます。
その次に資金計画でございます。所要資金のところでございますが、これも実は現地の事情によりましていろいろと差違がございます。従いましてこの際農水産関係に幾ら、工業関係に幾らということをはっきりきめることはできかねるのでございます。会社ができまして実際問題として現地でいろいろ折衝してみませんと、はっきりした数字はつかみかねると思います。私どもといたしましては、一応こういうワクを考えてみたという数字がこの数字でございます。
それから資金の調達方法でございますが、これは株式の払い込みは先ほど申し上げた通りでございまして、現地の企業資金といたしましてはアメリカの三銀行から借りる千五百万ドル、これを五年間に借りることになりますので、それをあげてございます。そのほかに貸しました金の回収金が入って参るわけでございますが、これは事業の性質によりまして一年限りで返るものもあると思いますが、いろいろな設備に投資したり、あるいは農業関係に投資いたしましたり、投資と申しますか、金を貸しましたりいたしました場合には、なかなか一年で返すということはとうていできないのでございますので、そこに何年かのやはり貸付期間というものがある。従いまして毎年前年に貸した金が返ってくるということにはなりませんので、それをいろいろ考えまして、そこに回収金の数字をあげた次第でございます。
それから次に収支の予算でございますが、収入といたしましてはこの貸付金の利息、投資金の配当というものを考えまして、ここにこうあげたわけでございます。そのほかやはりこの貸付なり投資なりにまだなりません段階、あるいは返りました段階の預金というようなものも出てくることを考えまして、この預金利子まで計算したわけであります。支出の方はこれは経費でございまして、借入金の利子の支払い、本支社費、創業費というようなものをここに想定してあげた次第でございます。
それから次に損益の見通しの問題でございますが、これもなかなか具体的にはっきりした数字がつかめないことは当然でございまして、現地の現状に即応いたしまして、いろいろ変って参ることは当然でございますが、まあ一応の見通しをここに立てた次第でございます。これにつきましては、私どもといたしましては先ほど申し上げましたような金利あるいは配当というようなものを考えて参りまして、それに税金でありますとか、いろいろな法定の積立金、貸し倒れ準備金というようなものをここにみたわけでございます。これにつきましては非常にあまいではないかというような御批判も受けるかと思いますが、私どもといたしましては一応の見通しということでこの数字を出した次第でございます。貸し倒れ準備金等も日本の国内におきまする法定のものをみてある次第でございます。そういたしますと第五年といたしまして一億九千三百万円という数字があがっておるのでございますが、これもいろいろ検討の余地のある数字だとは思いまするけれども、やはり五年目になりまして五十数億の金を動かすということになりますれば、せめてこの程度の利益金というものは最小限度できるように運営してもらいたいものだということでございます。
簡単でございますが以上をもちまして御説明を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/4
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005・羽生三七
○羽生三七君 この移民概数のところですが、第一年度の数字は今年度の五千五百名という予定のうちこうなんですか。もちろんこの第一年度というものは何か予算的に昭和三十年度にマッチするわけではないけれども、五千五百名のうちと解釈していいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/5
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006・石井喬
○説明員(石井喬君) この第一年度のうち新移民が千八百五十名、旧移民が二千百名となっておりますが、旧移民の方は大体従来入りました連中を想定いたしております。新移民の方は本年度に入ります移民の中から、この程度の人が会社から援助を受けることになるという想定をしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/6
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007・羽生三七
○羽生三七君 この政府出資で公社でなしに株式会社の形をとるものが現在どのくらいあるのですか、どなたかおわかりですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/7
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008・園田直
○政府委員(園田直君) 大蔵省からおいでになりますとわかりますが、私がおぼえているのは日本航空がやはりそうでございます。その他数社あると思いますが、大蔵省から参りましてからお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/8
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009・石黒忠篤
○委員長(石黒忠篤君) 羽生さん、ちょっと時間を拝借してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/9
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010・羽生三七
○羽生三七君 どうぞ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/10
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011・石黒忠篤
○委員長(石黒忠篤君) この際、委員諸君にお諮りをいたしますが、自由党議員の高橋進太郎君から本案について委員外の発言を行いたい旨の申出がありまして、ただいまおいでになっておりますが、これを許可することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/11
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012・石黒忠篤
○委員長(石黒忠篤君) 御異議がないと認め、高橋君に発言を許します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/12
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013・高橋進太郎
○委員外議員(高橋進太郎君) それではお許しを得まして二、三本法案について政府当局の御意見を承わりたいと思うのであります。現下の諸情勢から見ましてきわめて適当な案だとは思うのでありますが、ただ渡航費について、従来こういう移住関係で渡航費というものは全額国庫負担というように通例はねっておって、こういう貸付方法というものはほかに例がないではないかと思うのです。従ってこの会社が将来これをしょい込むということになりますと、非常にこの会社の財政的な負担となると思うのですが、これについては大蔵省側と、とりあえずはこういう形でゆくが、将来はとにかく国庫で見てやるのだと、こういうことになっているかどうか、その点が私は非常に本案についての一番財政的には心配になると思います。その点をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/13
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014・園田直
○政府委員(園田直君) 御指摘の通り渡航費の問題については当初から外務省と大蔵省の間には相当な開きがございまして、その後資料として提出をいたしました大蔵省と外務省の申し合せで、とりあえずはこの渡航費というものは、外物省の見解は渡航費は国民の方が自由な意思によって働く場所と土地を求める際には、この移民に対しては援助するのが国家の義務と責任であるから国家の財政から補助すべきである。イタリアその他の諸外国においてもその通り、日本でも戦前やっておる。ところが大蔵省としてはやはり国家資金を補助するという立場でございますので、本質内には差異があって、このままでは御指摘の通りに移民されたあとのお世話をすることよりも、むしろ援助すべきはずの渡航費を回収しようということによって非常な無理が出て参ります。今日まだ元利の支払いの時期がきておりませんが、利率の回収だけを考えてみましてもわずか二・七%でございまして、この点からみても回収は困難であるし、また困難であるとか困難でないとかいうことよりも、との渡航費を取り立てることは実際問題としては相当われわれつらいところがあるわけでございます。そこでいろいろ折衝して取りあえず今までよりも利子を下げること、据え置き期間が今までは四年でございましたが、これを五年として貸付の期間を三十年にふやす。あるいは天災地変、あるいは本人の死亡、あるいはやむを得ない事情で返せない場合には、しばらく据え置き期間を延ばす、さらに渡航費の問題は特別会計として債権処理法によって政府が補償する、こういう話まではきまりましたが、外務省はあくまでも、国家財政緊縮の折であるからやむを得ない、しかし将来許すようになれば、まず第一にこの渡航費は政府の補助金として貸し付けるように進むべむだというふうに主張しておりますし、大蔵省もそこまで反対しない段階にまできております。承ておりますが、はっきりした約束を結ぶ段階にはまだ至っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/14
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015・高橋進太郎
○委員外議員(高橋進太郎君) 次にお尋ねしたいのですが、ただいまの石井参事官の御説明によりまして、大体今度の会社の事業目論見というものを承わったのですが、そうしますと、その事業内容から見まして、従来同じこの特殊法人として設立されておりました日南産業との関係ですね、たとえば御承知の通り内地に本社があって、政府出資の会社であり、外務省が監督せられる会社であり、現地にはいわゆるブラ拓と称して現地法人としてあるのですが、それらの機構との調整としますか、あるいはこれを統合合併するのか、その辺のことはどうなっているか、一つ伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/15
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016・園田直
○政府委員(園田直君) 日南産業は、昭和十二年四月五日の法律第四十三号の「海外移住組合連合会二対スル政府貸付金ノ出資等ニ関スル法律」という基準法律によって作られておりまして、ただいまなくなりましたが、海外移住組合会のブラジルにおける業務を継承したものでございます。その主なる事業は、チェテ、アリアンサ、バストス、それからトレス・バラスの四移住の経営を主としてやっております。定款を見ますると、大体業務としては、「食糧、繊維及び鉱工品の輸出入並びに販売」二として「前各号の事業に付帯する事業」と、こういう事業をやっておるようでございまして、この四つの移住地はすでに完成をしておりまして、現地機関としては、今御指摘の日南産業が現地のブラ拓に依託をしてやっておる格好になっておるわけです。この日南産業は、もちろんこれは外務省の監督するところになっておりまするが、ただいま申し上げました通りに移住地はすでに完成をし、現地機関であるブラ拓は右田移住地の土地分壌代金の回収に専念しておる状態でございます。従って現地のブラ拓を含む日南産業は、一応事業が完成したものとして清算せしめるべきであるか、あるいはこれを今お願いしておりまする会社に統合すべきであるか、こういうことをただいま検討しておる段階でございまするが、政府としては新設された移住審議会においてその方針をよく検討の上に、具体的な措置をとりたいと考えております。でき得れば私としてはこれに統合した方がいいのではないか、ただ御承知の通りに企業整備令その他によって旧海外資産を継承しておりますので、そういう点については大蔵省といろいろ相談しなければならん問題があると考えております。ただ、今申し上げました通りに、資金としては戦後の企業再建整備会によりまして在外資産のブラ拓関係資金を簿外といたしまして、一千万の資本を三百万にただいま減額して逐次減らす方針をとっております。従ってブラ拓関係の資産状況等を明確にして、そうしてはっきりした措置を実情に沿ってやりたい、このように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/16
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017・高橋進太郎
○委員外議員(高橋進太郎君) 大体園田政務次官のお話を承わったのですが、ただ若干私と見解を異にいたしますのは、ブラ拓は四移住地だけの仕事を主にして、今清算会社のような形になっているのではないのでありまして、実際は向うで各地、やはり本会社がもくろんだと同じような仕事もするし、また相当の実績もあげておりますし、これはやはり同じ政府会社であります。かつまた現地機関を持っていることであり、また現地におきましても相当長い歴史と経験からなじみも深いというので、これはできるだけやはり活用すべきだと思うのでありまして、従って清算会社という考えでお取り扱いは願わず、むしろそうした過去の経歴と経験のある会社として、あるいは現地機関として十分これは御活用願うのが適当だと思うのでありますが、軍ねて一つ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/17
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018・園田直
○政府委員(園田直君) ただいま申し上げまして説明が不十分であったかもしれませんが、清算すべきであるか、あるいは本会社に統合すべきであるか検討しなければならんが、私としては統合すべきであると考えておりますと申し上げましたのは、ただいま高橋先生より申されたような意味の点から、こういうものを活用して人的にも機関的にも使っていくことが、本会社の進展に対しては有利である、このように考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/18
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019・高橋進太郎
○委員外議員(高橋進太郎君) 私の質問はこれで終ります。どうも皆さんありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/19
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020・羽生三七
○羽生三七君 先ほど目論見書に基いてかなり詳しい説明を承わったわけでありますが、こういう仕事をやるについて全くのもくろみで、しかも案であって、まだ確たる自信があるわけではないし、この点はもちろんこれからスタートするんですから了解できますが、実際に外地に支店なんか置いたり人を使ったりしてやっていって、採算を考えるのが目的ではない会社で、あくまで移民の送出に貢献すればいいのでありますが、ここにあげてあるような利潤が実際に確保できるとまじめにお考えになっておるか、どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/20
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021・園田直
○政府委員(園田直君) この点は非常にわれわれが心配をしておる点でございまして、営利が伴わないにしても、少くとも民間資本が集まり、しかもこの会社が企業の続行がで承る程度には持っていきたい、これを最低の目標にいたしておりますが、そういう点からいたしますると、ただいま大蔵省と外務省の申し合せに基きました損失補償あるいは渡航費に対する政府の補助あるいは特例等を考えて参りますると、いつにこの会社の人的要素並びに資金の出どころ、将来の経営の仕方等によって何とかその目的を達し得ると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/21
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022・羽生三七
○羽生三七君 この前にも一度お尋ねしたことでありますが、その際のお答えはちょっと不十分だったので、重ねてもう一度お伺いしますが、つまり移民としてでなしに、普通何か事業をやる場合、海外において事業をやる場合、その場合とこの会社がもくろむ移民というものとの区別ですね、つまり現地で、この会社法によらなくとも何らかの事業を興して、そうして場合によったら貸付を受ける、それからまじめなほんとの意味の移住というようなものに対する投資なり融資なりというものがかえって食われてしまう、そういうことは予想されないんですか、どうでありますか。その限界は一体どこなのか、私なかなかこの識別に困難ではないかと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/22
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023・園田直
○政府委員(園田直君) これはそういう識別からと、もう一つは相手国のいろいろな業者や、あるいはその他の者から反対競争等ができないように、十分事業並びに投資をやる場合には考えなければならんと考えております。従いまして民間資本を集めるためにはやはりこの会社が相当有望であるという印象を与えなければなりませんが、ただ利益の点のみから考えますると、今御指摘の通りのような点が多々出て参りまするから、その点についてはまず相手国の政府並びに現地の業者等とよく連係をいたしまして、現地の銀行や、あるいはその他の業者と達成するための事業をまず優先的にやりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/23
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024・正示啓次郎
○政府委員(正示啓次郎君) 出席がおくれて申しわけございませんでした。羽生委員の御質問につきましてお答え申し上げます。政府出資で株式会社になっておるものの数は幾つかということでございますが、これはちょっと昔にさかのぼりますと、いろいろございますが、戦後の最近の例といたしましては日本航空がたしか唯一の例でございます。失礼しました。それから電源開発株式会社もございます。それから国際電々もそうでございます。これはまことに申しわけありません、ちょっと今とまどいまして。なお正確にこれは調査をいたしまして、後刻資料で提出いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/24
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025・羽生三七
○羽生三七君 私がそれをお尋ねしたのは、つまり政府出資で作った会社は、私は厳密にある程度の公益性を持たなきゃいかんと思うのです。これはまあ実際には移民という、海外移住という重要な国策に沿っておるには違いないが、しかも中身はなるべくやかましいことを言わんようにという、かなり自主性も出してということになっておりますが、その限度、限界を誤まると、私はかなりこの国民の税金による国家予算というものを非常に乱脈にする危険がある。そういう意味で政府出資の場合のものは、よほど公的な性格で貫かれないと、軽々にやるべきでないという考え方から今お尋ねしたのでが、まあ政府がそういう自身があれば、もちろんそういう自信を持っておやりになることだと思いますが、私はこの問題についてはこれ以上申し上げませんが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/25
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026・正示啓次郎
○政府委員(正示啓次郎君) 先ほど答弁を間違えましたのですが、実は私どももただいま羽生委員の御指摘の通りに考えておりまして、今回日本海外移住振興株式会社法案を提出いたします前に、政府部内におきましてもいろいろ議論をいたしましたことは、かねがね外務御当局から御説明申し上げた通りであります。この海外移住の振興の問題はきわめて公共性の強い仕事でございまするので、実は大蔵省等におきましては部内の意見といたしましては、むしろ公社というふうな形の方が適正ではないかという議論も相当強かったわけでございます。なお先ほど上げましたようないろいろのものにつきましても、大体同じような議論があろうかと存じますが、それぞれ多少のニュアンスはございますが、まあ海外移住振興は特に私どもは公共性の強いものと考えておるわけでございます。しかしこれはいろいろの事情もありまして、結局移住振興株式会社という形をとったわけでございますが、その公共性におきましては、私どもはきわめて高いものであるというふうに確信をいたしております。なお、今後政府出資をいたしますような事業につきましては、やはりただいま御質問のような趣旨を十分体しまして厳重にして参りたい、こう考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/26
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027・羽生三七
○羽生三七君 これは園田政務次官の答弁に対してお尋ねしたいのですが、この前次官の御説明があったと思いますけれども、この海外移住会社を公社でなしに株式会社にしたという理由です。特にこれを作ったという理由、それからもう一つはこの国内における政府出資のいわゆる会社形態というものは私はある程度目が届くと思うのです。で、海外だつたら私はなかなか目が届かないし、のみならず場合によって非常に私は乱脈になる危険があると思う。だからそういう場合にほんとうに外務省が責任をもって、出先機関がその公正なる運営に当って、ほんとうの意味の渡航者の役に立つような配慮が十分にできる確信があるかどうか、この点を一つお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/27
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028・園田直
○政府委員(園田直君) ただいま大蔵省の方から答弁がありました通りに、この会社を作りますに先だちまして、大蔵省としてはまず公益性の点、第二には国家資金の監督の面、こういう面から今まで作られた国家出資の株式会社というものがとかく監督不十分になるおそれがあるから、ぜひ公社にしたいという、それは相当な最後までの主張があったわけでございまして、私たちもこの意見には相当傾倒いたしました。第一番にこれを会社にいたしました理由は、移民の特殊性から公社という国家的機関の性格の強く出るものをもって移民特に移民されたあとの世話をしようとすることは、過去の経歴からいたしましても、非常に移民業務並びに移民外交に支障を来たしまするので、なるべく印象というものを民間の自由意思による動きであるというようにしたい、これが第一のわれわれの会社にぜひしたいと主張した理由でございます。第二番目にはただし大蔵省の主張は当然でございまするから、一般の株式会社よりも業務に対する命令、指導の権限はそう強い方ではございません。ただし監督権、罰則権等はこれは相当強くしてございます。なおまたもう一つは、これは運営の面で非常に大きな面があると思いますが、特にこの民間資本をどこから集めるかという点によりましても、相当企業が公益性を維持できるか、あるいは営利の方に走りがちであるかという点が出て来ると考えます。国内の初年度の民間資本の五千万は、取りあえずは何と申しましてもやはり移民に関係のある方面でなければ資金が集まりませんので、やはり商船あるいは郵船あるいは保険、それから輸出運輸に当っているような各所から資金を集めなければならんとは考えておりまするが、それにいたしましても、将来はなるべく現地の移民で成功さされ、移民を推進をしようという御理解のある方から資金を集めたい。そうしてその資金もなるべく一カ所から固めて集めずに、なるべく数の多い分散した民族資本とでもいうが、そういうものを集めていかなければならん。なお、運営の源泉である人事に関しましても、そういう点でございまするから、社長等はただいままだ人選はいたしておりませんが、その社長等の人選の基本方針としては、これは相当な海外的な視野、あるいは識見あるいは移民に対する専門的な知識、特に各界の常識を持つ人でなければなりませんので、この関係各省を終ったいわゆる公務員上りの者をもって来ることは不適当であると考えて、立派な経済界の人を迎えたいと思っておりますが、具体的には理事級には少くとも私は大蔵なりあるいはその他の関係各省出身で、非常に縁の深い者をもって来て、そうして事業的にもこういう監督は十分にしていくべきであろうと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/28
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029・羽生三七
○羽生三七君 この法案自体からちょっとそれるのですが、何か近くボリビアですか、移民協定をするそうですが、何かそういうことでもっとほかの国と協定のできるような見通しはあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/29
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030・矢口麓藏
○政府委員(矢口麓藏君) ボリビアにつきましてはただいま御指摘の通り近くできるのでございます。現在におきましては進行中でございます。それからその可能性の問題につきましてはドミニカが比較的早くできるのじゃないか。それからパラグワイに非常に必要があるのでございますけれども、その可能性もあるのでありますが、ただ遺憾ながらあそこには在外公館が現在ございませんので、事務的にこれを進めにくいという事情があります。それから一番大きなのはブラジルにつきましては、御承知の通り日本人の力量その他は十分買いながらも、一面には日本に対して心よからず思っている、いわゆる排日分子と申す人が相当ありますので、これらの人々を刺激するようなことにしてはまずい。すなわち移民協定というような形をとりますと、自然ブラジル国会におきまして討論せなきやならないし、そうなるといろいろと宣伝等もされまして、かえって工合が悪いのじゃないかという考慮がございますので、実際現地の大使に、出先の大使に任せるのでございまして、その間の空気を察しつつ、できれば早目にやってもらいたいということになっております。しかしもしそういったふうな国家間の協定ができませんならば、これに代るべき私的とでも、セミ・オフィシャルとでも言いますか、そういったものを作りたいと考えております。やってみなければわかりませんけれども、私的な団体、たとえばこの会社等もそういうことで役立つことがあればということも考えております。そのことは一に現地の大使の判断にまかしておるような状態でございます。それからもう一つぜひやりたいと思っておりまするが、アルゼンチンにつきましては、今のところ非公式に申し入れているのでありますけれども、まだ向うから、これをアクセプトするという意思表示はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/30
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031・正示啓次郎
○政府委員(正示啓次郎君) 先ほどの御質疑につきまして答弁が不十分でございましたので、つけ加えてお答え申し上げます。ただいま調査をいたしました結果、一般会計から政府出資をいたしております株式会社の名前でございますが、先ほど他の方から御質問があったと思いますが、日南産業株式会社、これは古い会社でございますが、なお現存いたしております。次に東北興業株式会社、これも古いのでありますが、現在ございます。それから新しいものといたしましては、国際電信電話株式会社、それから日本航空株式会社、それから帝国石油株式会社、これはやはり古いのでありますが、ございます。以上一般会計から出資をいたしまして、現存いたしておりますのは五つでございます。なお古くからの株式会社でございまして、現在清算中のものが約十社ほどございまして、これはすでに清算中のものでございます。次に特別会計から出資をいたしておりますものが電源開発株式会社等でございますが、これが一番おもなものだと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/31
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032・石黒忠篤
○委員長(石黒忠篤君) ちょっと関連して私から伺いますが、日南産業については先ほど政務次官の御説明だと、特別の法律が出ております。そうすると、それの審議会にお諮りになって、しかるべくそれに対処する、その結果は、合併になりましてもあるいは清算になりましても、法律的措置を必要とすることになりますが、国会としましては、立法府としましては、ここにかけて、国会の協賛でもってできました法律に関することでありますから、その点も考えておかなくては。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/32
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033・園田直
○政府委員(園田直君) 先ほど申し上げました昭和十二年四月五日の法律第四十三号でできておる会社でございまするから、当然、今後清算するにいたしましても統合するにいたしましても、議会の協賛をいただくのは当然のことでございますので、来国会にかけてこれを収拾したいと思っております発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/33
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034・石黒忠篤
○委員長(石黒忠篤君) 了解いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/34
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035・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 この会社の性格に関連して二、三お伺いしたいのでありますが、先ほど御説明の民間出資であります。第一年度五千万円、第二年度五千万円ですかな、なかなかこういう性質の会社に民間の資金を導入するということは相当困難でもあり、また無理が伴うのじゃないかと私は思われるのであります。先ほどの御説明で、移民に関係のあるところから集めるというお話であったのであります。おそらくそうなるであろう。しかしそうなればそうなったあと、また一つの何といいますか、この株式を持っておる性質から見て、弊害といいますか、ということも予想されないわけではないように思うのであります。それぞれある意味での利害関係を伴ってくると思われるのであります。今のところ、第一年度の五千万円の株の募集について、具体的にどういう見通しを持っておられるか、その点を一つ伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/35
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036・園田直
○政府委員(園田直君) 審議中の法律案でございまするし、この法律案ができましてから社長その他の人事もきまりまするので、具体的な折衝等は全然いたしておりませんが、内々いろいろな検討をいたしまして、御指摘の通りに、これに関係する商船、郵船あるいは輸出運輸の業者、あるいは保険関係等の経済界から資金を集めますることは、ただいま御指摘の通りのようないろいろな不安が出てくるわけでございまして、なるべく避けたいと考えておるわけでございまして、五千万円の資金は、なるべくできるだけ社長の個人的な経済界における能力によって集めたいと考えておるわけでございまして、しかしながら五千万円という金は今日の段階においては相当困難でございまするから、やはりやむを得ずただいま申し上げましたような移民関係の方面にお願いする結果に触るのではなかろうか、虫のいい考え方でございますが、そのように考えております。従いまして社長の人選に当りましては、特にまず資金募集能力といいまするか、そういう点を考慮をして、ただいま検討中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/36
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037・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 私ここで社長がどういう人であるべきかということについては触れるつもりはありません。外務大臣が監督される立場にあるのであります。ただ、今お話のようであれば、またそれに伴っての若干の不安を私は感ずるのであります、この会社の性格から見ましてですね。経済界に有力な人であって、そういう資金が個人的の力によって集め得るであろうというふうな人を対象にするということ自体が私は問題ではなかろうかと、こういう感じがするのでありますが、今それをここで論ずるつもりはありません。それから次に、これはこの前もお話があったのでありますが、この会社の資金として、それの中心をなしまする外資千五百万ドルの件であります。この外資についての当初からの経過と申しまするか、経過と、それから現在の段階においてきまっておりまする条件等、これは大体もうきまっておるのだろうと思います。これを一度御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/37
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038・園田直
○政府委員(園田直君) 千五百万ドルの借款の当初からの具体的なものについては、直接局長なりあるいは大蔵借の次長から答弁をいたします。最初はまず第一に、この受け入れ機関に対する相手の希望、それから千五百万ドルの金の使い方に対する希望なども、いろいろな条件めいたことは多少向うは話を出したようでございますが、その後逐次折衝につれまして、向うも、今日の段階としても、この千五百万ドルの金の使い方について布望はあるけれども、借款の契約をするについての条件は、元利を政区が保証をするということだけでございまして、今日早急にこの法律案の審議を願って借款が成立をすれば、今日インフレで金利等は相当上っておりまするが、今までの大体の相談の四分ぐらいの見当で契約ができる、以上のようなことでございます。これの経過につきましては、それぞれ関係者から答弁いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/38
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039・矢口麓藏
○政府委員(矢口麓藏君) 最初にでき上りまするときのことは、これは鈴木大蔵財務官が一番よく御承知なのでありますが、そこまでさかのぼって私が承知しておりますととろを申し上げさしていただきますると、前総理の吉田大臣が、この前アメリカへ参りましたときに、向うの銀行側と、御承知の通り三銀行側と話し合いを進めまして、その結果去年の十二月の七日に三銀行側の基本方針がきまりまして、すなわちただいま政務次官から答弁いたしましたように、日本側が元利を保証するならば、大体四分ぐらいの利子で貸しても差しつかえないというような趣旨の決定を、三銀行においてみたのであります。自来話し合いの舞台はニューヨークから東京に移されまして、三銀行の代表者と私などもしばしば会って話し合いをしておるのでありますが、条件といたしましては、ただいま政務次官からお答えいたしましたように、希望する点はあるけれども、日本側を拘束するような条件というものは何もつけないということを、はっきり明示いたしております。それで本法案ができますると同時に――これは翻訳いたしまして、これを三銀行側に提示してございます。三銀行側の代表者のナショナル・シテー・バンクの総支配人という人が、この法案を持ちまして、ニューヨークに帰っております。もちろん彼はこれだけの用事で帰ったのではございません。ほかの用事もありまして参って帰ったのでありまして、いよいよ本法案が通りますると、正式にまた書類を提示して契約を結び、協定を結ぶ、こういう段取りになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/39
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040・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 そうしますと、資金の用途については何らのお話し合いは、最終段階にもきめられずに借款ができると、こう考えていいわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/40
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041・矢口麓藏
○政府委員(矢口麓藏君) ちょっと先ほど言い落しましたが、移民借款でございまして、日本の移民を促進するための借款であるということは初めからはっきりうたってございます。先ほど、私がこの点を言い落したのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/41
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042・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 それは当然だと思うのですが、その程度で話し合いはつくと、こういう意味に解していいですね。それから償還の条件はどうなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/42
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043・矢口麓藏
○政府委員(矢口麓藏君) その点をもう少し詳しく申し上げさしていただきますると、実はこういったふうなテクニカルの問題につきましては、大蔵当局の方が御専門でおられるので、鈴木事務官におまかせをいたしておるのでありますが、私の承知しておりますところでは、千五百万ドルを三銀行が五百万ドルずつ出しまして、そうして五カ年間、すなわち換言いたしますると、一つの銀行が毎年百万ドルずつ出す、あわせまして三百万ドルとなるのであります。そういたしまして、その期限を三カ年間と一応区切りまして、そうして一年の終りに、一年間の歩んできたところの実績を見まして、これをさらに三年間延ばすかどうかということを決定するわけです。でありますから最悪の場合、実績が非常に上らなくて悪いということになれば、いわゆるコマーシャル・ベースにのらないとアメリカ側が判断を下すでありましよう。これは私の想像でありますが……。少くとも向うに継続する意思がなくなった場合には、三年目で打ち切られるおそれがあるのであります。第一年目によかったら三年延ばす、また三年目に実績をみてだんだん延ばしていく、まず差し当り三回九年間継続するうとい意図を向うは持っておるようであります。その点は今度の協定案の中にうたいますかどうか、その点はよく知りませんけれども、向うの説明はそういう趣旨でございました。でありまするからまず千五百万ドルを九年間と想定できるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/43
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044・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 そうしますと、一年の実績できめていくということになりますと、どうなるのでしょうか、九百万ドルが最低というふうになるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/44
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045・矢口麓藏
○政府委員(矢口麓藏君) 私も実は率直に申し上げまして、その質問をしたのでありまするが、向うといたしましては、どうせ最初の一年間や二年間じゃ実績がわかるものではない、初めの二、三年間は非常に困難な時代を歩むであろうから、理論的にはそういうことを言い得るけれども、実際上はそういうことはないのじゃないかと思うというようなことを言っておりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/45
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046・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 そうしますと、そういう点は、おそらく協定と言いますか、そういう点までははっきり出てくるわけなんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/46
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047・矢口麓藏
○政府委員(矢口麓藏君) その点は先ほど申し上げました通り、テクニカルの方は大蔵省の方におまかせしておるわけでありまして、私必ずしも適当な説明者じゃございませんけれども、三年間実績云々というようなことはうたわないだろうと思います。うたわずに千五百万ドルということと、一つの期間を三年間にする、こういうようなうたい方をするのじゃないかと思われます。それで貸し出すときの条件は、そのときの案文がございますけれども、大蔵大臣が千五百万ドルの借款をギャランティするならばという意味の手紙を向うに出す、それに応じて向うは貸し出す、こういう形式になると思います。具体的にどういうことになるかどうか存じませんけれども、別段やかましい法則はつけないと私は想像されます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/47
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048・園田直
○政府委員(園田直君) 補足をいたします。この借款は御承知の通りに吉田前総理が渡米されました際に、日本の国内事情、特に人口問題等の政治的なお話がございまして、それによってアメリカ側の方では日本側が移民というものを積極的に推進していくならば、それに対しての援助はしよう、こういう政治的な意図から出ました借款でございます。従いまして三銀行は民間銀行でございまするから、元利の保証だけは政府に求めておりますが、その出さんとする動機というものは、そういう政治的な面から出ておりまするので、初年度の実績を見た上でというのは、初年度の実績の営利上の状況をみるという意味ではなくて、移民というものがほんとうに日米両国の合意のもとに所期の目的通りに推進されているかどうかということを大きく見ているようでございます。以上補足として御報告いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/48
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049・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 もちろん私もそうであろうと一応は思うのであります。ただ一年間の実績といいますか、移民の進行の状況を見るという場合に、金の使い方ですね、あるいは移民の実態といいますか、そういうものによって見方が違うのじゃなかろうか、こう思うのであります。そういう点が借款をする場合にその基準といいますか、基礎というようなものが、話し合いの上できまるものか、そういうのは一切こちら側にまかされるのであって、こちら側が自由に使えるのかどうか。その点をお聞きしたかったのであります。
なおもう一つ私の質問は、千五百万ドル借款ということが、ともかくもこの会社ができるについての実質的の動機になっているわけです。これがどういう条件で借りられて、どういう条件で返済していくかということをお伺いしたいというわけです。一年に三銀行がそれぞれ百万ドルずつを出していく、そうして三年間ということになりますというと、千五百万ドルでなくて、ちょっと計算してみますと、九百万ドルのようになるのですけれども、そういう点も、それからわれわれの頭には千五百万ドルというものが先入主的に入っておるのですが、はっきりしていただけば好都合かと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/49
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050・園田直
○政府委員(園田直君) 条件としては先ほど申し上げた通りでございますが、いろいろ希望は向うも持っております。しかし希望を表面上の契約書なり、あるいはその他に書こうという意思は、今までの折衝の段階においてはないようでございまして、この業務に対するアメリカ資本の干渉という点は、十分注意してやっておるようでございます。なおまた、三年度に対する九百万ドルでございますが、それから三年、三年の更新ということで、向うとしてはむしろ千五百万ドルうまくいけば、また将来のことも考えてよろしいという程度の折衝でございまするから、契約書を作る場合には、十分そういう点を注意してやりたいとは考えておりまするが、今の折衝の段階では先に折衝された趣旨なり、目的がそのまま通されているとわれわれは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/50
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051・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 参考のために向うの方の希望というものを御披露願えないでしょうか、どういう考えを向うの方は持っているでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/51
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052・矢口麓藏
○政府委員(矢口麓藏君) これはぜひ誤解のないようにお願いしたいのでありまして、私もしばしばそれを伺ったのでありますが、希望を言えといえばいろいろな雑談の、また非公式に会ったとき、公式に会ったときの話を総合いたしますとそれはある。たとえばこれは何といっても商業ベースに貸すものであるから、非採算的な仕事には使って欲しくない、当然渡航費等は非採算的なものであるのだから、そういうものには使ってもらいたくないという希望はあるけれども、しかし日本側がこれに使用した場合でも、もちろん何も日本がアメリカの支配を受けるべき立場にも何もないのだから、アメリカとしては何らこれに対して干渉がましい言辞や態度をとるべきではない、これは一切日本の御自由であります。しかし希望はどういうことを要求するかと聞かれれば、今のようなことを言いたい。それがまあ一番大きなことでございまして、私が特に申し上げたいのはそれぐらいでございます。あとの農業その他のことについて別段どうということはないようでございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/52
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053・石黒忠篤
○委員長(石黒忠篤君) ちょっと連関して。今の局長の御答弁だというと、あちらの希望の唯一のものは渡航費等には出したくないと、希望を聞かれれば。こういうことが希望であるやに伺っております。これは沿革上も借款をこちらから前内閣総理が要求されたのと大きな行き違いになるように私は思う。そこで新内閣としては、その希望に支配されたとは言いませんけれども、きわめて同感に思いなさって、そうしてこの渡航費には外資は充てない、こういうことになったのでありますか、その点を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/53
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054・園田直
○政府委員(園田直君) 渡航費を特別勘定とし、なおそれに対するいろいろな損失、あるいはその他の面を考えまして、渡航費は政府出資とし、借款からこれを使わないようにしたのは、決して当初の方針から変って三銀行等の要請によってやったものではございません。渡航費の本質が国家として国家財政が許すならば、国民の人々が自由なる意思によって働く土地と場所を求めて、これに新しい天地を開拓する際には、当然国家が責任をもってこれを補助すべき義務があって、財政が許すならば国家が補助してやるべき筋合いのむのであって、渡航費と渡航後の営農資金の補助とは別途に考えてやったのは、その通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/54
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055・石黒忠篤
○委員長(石黒忠篤君) ちょっと私続いて伺いたい。これは私はまだ渡航費の出すがいいとか出さぬがいいとかいう問題を申し上げるのではないのでありますから、さよう御承知願いたい。ただこの借款の話が始まりましたゆえんは、先日も私が申し上げたように思う。私よく承知しておる。世界の平和のためには、日本の人口問題というものが非常に大きい関係がある。それを解決していくのは、日本政府の資金を、財政をもって用意するのが、移民の費用のごときは当然のことであるけれども、それが足りないがゆえに元利の償還というものをはっきりと保証するならば、外資をもってやることができればそうしたいと思うということで話が始まっているように私は思っている。そこでその点に関しては前内閣も現内閣も国費をもって支弁すべきものであるということは、これはだれが見ても同じなのですから、そこは同じだと思う。ただ足りない、支弁をするととがある程度以上はいかない、そしてこれはそれにつけ加えてやらなければいけないという緊要性を感じての交渉が起ったように私は思っておる。今の政務次官のお話だというと、性質上は国費をもって支弁すべきものだ、だからゆとりがあるなればそれでやりたいということでありますと、ただいまの国費をもっての渡航費というものは、それで十分なりとお認めになっておるように思うのでありますが、その点が私は今の財政をもってしている範囲内では足りないから、そこでやるのだ、外資を求めるのだ、という点については違いがあるのではないか、こういうふうに思いますが、それはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/55
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056・園田直
○政府委員(園田直君) 私の考えております方針は、委員長のお考えと同じでございまして、ただ渡航費が今日の額で十分であるかどうかということについては、これは十分であると言い切るだけの自信はございませんが、なるべく渡航費の中で最大の人員を送って移民の成果を上げたいということを考えておりますので、そういうわけでございます。
なお、われわれが渡航費にさらに借款を追加して、もっと渡航費を使わなかったというのは、借款は外貨でございまするので、渡航費は御承知の通り円でまかなえるものでございます。従いまして円でまかなえる渡航費はなるべく国家の円でまかなって、外貨を必要とする移民の育成のためにこの外貨を使用したい、そういう考え方からやっただけでございまして、移民三銀行から借りた金を渡航費、さらに追加をして渡航費を増すなり渡航の費用を潤沢にするということについて異存があってやったわけでは決してございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/56
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057・石黒忠篤
○委員長(石黒忠篤君) そうでなくちゃならぬと思うのでありますが、使用の目的からいたしまして、ドル資金を使うのに外貨使用より適当ということは、これは異存はない。しかしながら、借款の起りが人口問題解決の少しでも役に立つようにこういうことから来ているものとしまするというと、そこに私は外貨資金でも使う場合あるべし、こういうことにしておかなければ立たないのではないか。それが政府資金限度内において移住連合会をして代行せしめるということになっても、渡航資金貸付ということが本会社の第一目的に掲げられているゆえんは、これが証明しているのではねいかと私は思う。そこでこういうことを私が申すゆえんは、その後のいろいろな国外の事情が、外国政府の施設でもって便宜を与えられていたといったようなことが積極的にならなくなったというような変化があり、これがために今度の外資をそういうところに用いるというようなことになっていくのは、私はきわめて適当な行き方じゃないかと思っておりますが、ややもすると外務省の今までお出しになった書類を見ると、ごく平静に見ましても、小企業移民、企業ということを言っておられるがために、われわれとしては小さな一旗組なんかが外国で企業をするといったような援助とかいうことであって、人口問題の解決にいささかでも資するといったようなことがネグレクトされるようなおそれが多分に感じられるのです。その点をはっきりしていただくならば、私はいろいろ国際情勢の変化及び資金の性質というようなことから見て、十分の監督をおやりになって、そしてこれを渡航費以外の目的に用いられるのも了解がつくんじゃないかというふうに思います。で、農林水産委員会との合同審議を昨日、前回一日やったのでありますが、その結果が、これは政府の方へもいっておると思いますが、委員長の手元に農林水産委員会の委員長から申し込みが今日ございました。これは後ほど委員諸君にもお諮りをいたします。同じような点について心配が持たれるという結果が出てきておるように私は思うのでありまして、その点は外務省としては十分にお考えをいただきたいと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/57
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058・園田直
○政府委員(園田直君) 御指摘の点につきましては、先ほど委員の方から、この会社が営利を重点に走るか、それとも移民推進の公益のために推進をされるかという重大な分岐点は、やはり今委員長の御指摘の点であると考えております。われわれといたしましては、企業移民と申しておりまするが、その企業移民とは一つのグループあるいは団体等が海外地において金もうけをするための一つの投機的なものをやろうとは決して考えておりません。当然これは農業なり漁業なり工業、重点はやはり農業でございましょう。ただいままでの移民というものは、土地がなくて、非常に貧乏をして困っておった者が、海外に行くといったら、政府から何らの援助もない。そういうことで移民の阻害をしておる点が多々ございます。従いまして向うに渡ったあと、雇用農民として雇われておった農民が独立をする際に、土地を買うのを援助するとか、あるいは相手国が了承をして、有利な土地があるならば、これを国家で買っておいて、そうして独立をする農民の方々にこれを分譲をするとか、そういう今のやっておられる農業、大多数の農業、漁業あるいは工業、そういう方々の移民の道が開けて、そうして移民の数がどんどんふえることを重点に考えておりまして、決して一つの企業なりあるいは一つの投資をやるための援助をしてはならぬ。この点は十分注意をいたしております。なおまたそういう点に対する注意こそが移民に関する重大な問題であると考えます。従いまして、今の借款とそれから渡航費の関係は本法律案の第九条に政府は渡航費を予算の許す範囲内において会社に対し、前条第一項第一号の渡航費の貸付に必要な資金を貸し付けることができる、となっておりまして、義務法律ではございません。従いまして、われわれとしましては、今日の状態では今渡っておられる方で、苦しんでおられる方、あるいは今後渡られる方の向うにおける生活なりその他の援助をする、そうして苦しい中ではでございまするが、国家からもなるべく出してもらって、渡航費の方もふやしていきたい、こういう方針をとっておるだけでございまして、御指摘の点については十分注意をする所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/58
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059・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 渡航費に関連して、私非常に重要な問題はそれに引き続く現地における若干の生活費及び営農資金、特に準備的な営農資金というものが大事だろうと思います。これは渡航費と一連の関係のあることであって、渡航費に対して非常に危険視するといいますか、この償還がむずかしいということをしばしばお話しになるのでありますけれども、そのことは同時に若干の当初の生活援護費なり、あるいは当初の営農資金についても同じであろうと思われるのであります。私が聞きたいことは、現在現に移民が運ばれておるわけであります。現在現地における営農資金といいますか、営農に着手する資金といいますか、そういうものはどういう実情にあるのかということですね、それを一つお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/59
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060・石井喬
○説明員(石井喬君) 私からお答え申し上げます。ただいま向うに参ります移民は大別いたしまして、向うの連邦政府の植民地に入りますいわゆる自営開拓と申しますか、そういう移民と、コーヒー園等の個人に雇われたような格好で参りますコロノ移民と、大体二種類に分れます。連邦政府の植民地に入ります移民につきましては、これは先般のウナ事件以来向う側の取扱いが多少変りまして十八コントの生活資金を必ず携行しなければならぬ、これが一つの条件になります。従いましてこの十八コントと申しますのは、大体当初一年間の生活資金に当るものでございます。従いまして当初一年間の生活資金は持っていかなければ向うに渡れないという格好になっております。向うの植民地に入りますと、これは最近は全部違って、たとえば種子でございますとか、農具でありますとかいうものを、従前はただくれたところもございますし、それから貸してくれたところもございますが、このウナ事件以後は全部これを貸してくれるという格好でやっております。従いましてこれは将来連邦政府の方に返していかなければならぬのでございますが、とりあえず借り受けるという格好で必要なものは手に入る。それからこれも場所によっていろいろ違いますが、アマゾンあたりでは連邦政府側があっせんをいたしまして、銀行等から営農資金を借りております。これの成績につきましては、場所によっていろいろ違いますが、中には最初の年はいろいろな天変地異その他の関係で返せなかったところもございますけれども、大部分のものはブラジルの銀行から借りましたものにつきましては、ほとんど返しているというのが実情でございます。それからいわゆるコロノ移民については、これは向うに参りまして働きますれば、すぐに日給でもって金が入って参りますので、生活資金というものは必要でございません。これも契約にいろいろ種類がございまして、ただ日給だけで働いておりますものと、請負のような格好でやっておりますものといろいろございます。ただ日給で働いておりますようなものでは、なかなか数年働きましても独立資金を蓄積するところまではいき得ないと思いますが、それにしても生活の不安はございません。それから請負の格好によりますものにつきましては、多くは数年そこで働いておりますと、大体独立の資金程度のものはもうけとして入ってくるという格好になっておりますので、こちらの方につきましては、ほとんどそういったような、向う側の援助その他のものはなしにやっていけるような格好になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/60
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061・羽生三七
○羽生三七君 ちょっとただいまの梶原委員の御質問に関連してですが、先ほど御説明いただきましたこの目論見案との関連でこういうことが考えられるのです。つまりここに出てくるような計画、事業、これは外務省が海外の事情を勘案してデスク・プランとしてお考えになったのか、あるいは、現地の移民の方々が、現に向うへ渡っておられる諸君が、自分の経験に徴してこういうことが必要だという要請があって、そういうものがまとまったものが、こういうことになってきたのか、その辺はどうなんでしょうか。つまりここに掲げられているような諸事業は、現地の在留者の一般的要求を総合したものなのか、それとも外務省が適当にデスク・プランとして、この法律を通さなければならんために急いで作った目論見というのか、どうなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/61
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062・石井喬
○説明員(石井喬君) お答えを申し上げます。この点は、私どもの方は、戦後におきましても二、三年にわたりまして移民の関係をずっと取り扱って参っております。従いまして、現地において移民がどういうような状態にあるか、どういうふうな要望があるかということにつきましては、一応私どもは知っているつもりでございます。従いまして、これを起草いたします際には、そういったような知識を、知識と申しますか、経験と申しますか、というようなものをもとにいたしまして、しかしながら、特に現地の移民その他の方々の意見を徴したということではなしに、私どもが集めました資料によりまして、私どもが作ったものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/62
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063・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 そうすると、現地に入植といいますか、移民した者の当初の生活は別として、援護資金はブラジルであれば連邦というか、政府で貸付をしている、従ってその面においては会社としては別段の、心配をする必要がない、こういうふうに考えていいのですか。それとも最近の情勢からみて、そういう面も今後はこの会社の方で肩がわりするといいますか、会社の方で担当していくのだ、こういうふうに考えるべきでありますのか、その点を一つ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/63
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064・園田直
○政府委員(園田直君) ただいま現地の銀行等でやっていますが、その金融等はごく一部でございまして、現地の銀行等は、当然、金を貸すというような営利的な面からそういうことをいたしております。従いまして、この会社では移民の方々を保証するという意味において、移民の方々の立場の方から当然この会社がしなければならん、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/64
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065・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 大体これは一人当りといいますか、どの程度そういう意味合の営農資金としてとの会社は、計画をこの目論見においては、この目論見を離れてもいいのですが、大体一人当りどの程度融資をすることになりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/65
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066・石井喬
○説明員(石井喬君) これにつきましては実は非常にむずかしいのでございます。ただいま政務次官からお答え申し上げたのでございますが、たとえばアマゾンの中でも、中には銀行から金を借りないで自分だけで十分やっているというような人もあるわけでございまして、中には全然困ってしまって、生活資金を食いつぶして、何から何まで借りなければならんというような人もあるわけでございまして、従いまして一概にこの程度ということは言えないわけでございまして、私たちがいろいろ考えまして、はっきりした数字は申し上げかねますが、一応平均して二十万円程度あれば、まあ大体いいのではなかろうかということを考えておりますが、しかしこれは、と申しますのは、現在のところブラジルの銀行から借りておりますのが大体そのぐらいの平均になっておりますので、大体その程度のものをみておけばいいのではないか。しかしこれは必要に応じまして、ここに書きました資金計画等、コンクリートなものじゃございませんので、必要に応じて、最も必要性の大きいものからやって参りますから、いろいろ実情によって変って参ると存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/66
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067・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 私は、この会社案に関連して、事業計画がいまだ出ておらない、あるいは目論見がやや具体性を欠いている、資金計画がまだはっきりしておらない、そういうことは現在の段階においてはある程度無理ではなかろうかと思うのであります。従って、これをこの際はっきりしておくとかいうことを言うつもりはない。しかしながら、この会社の性格から見て、たとえば向うにおける営農資金は現地の銀行等の関係も見合って、大体との程度は会社として担当していくのだという一つの考え方は、これは相当はっきりしていないというと、この会社の性格というものはきわめてぼやけてしまうということを実は心配するのであります。一人当りかりに平均二十万円といたしまして、一万人寄れば二十億の金であります。五千人にしても相当の金になるわけですね。従って一年三百万見当であっても、なかなかそれはまかないきれるものでは私は安いのじゃないか。年間三百万ドルという金はきわめて小さい金のように実は思われるのであります。会社の性格というものも、会社法上の文句とか、あるいはここにあらわれている目論見は別として、コンクリートにはっきりして書くことが非常に大事じゃないかと思うので、実は御質問したわけであります。
それから渡航費に関連するわけでありますけれども、渡航費はもちろん会社が政府に対しては責任を持つわけ並んですね、政府に対しては払っていく責任がある。従って、取り立てていく責任を当然会社が持たれることだと思う。ところが相当の営農資金を出して、それを会社としてはやはり償還を一方にするためにも、その返済については適当な取り立てをやっていかなくちゃならない。一人の対象の移民についても同じような性質の債権と申しますか、これはまあ重なってくるわけなんです。そのときに政府に対する渡航費の償還と申しますか、それと、それから外資に対する償還ですね。これをどういうふうに処理されていくことになるだろうか、この点ちょっと実は疑問なんです。というのは、しばしば渡航費はこれは当然国が持つべき性質のものである、非常に危険をともなうので国が補助すべきものである、まあそういうふうに私も考えます。しかしながら、それと一連の関係にある営農費関係は、しかも相当かたまって五年先とか十年先になれば、これは問題は全然ないでしょう。当初二年、三年、四年の間は、内外を問わず、移民の営農というものは非常に困難であろうと思う。そういう場合に、まあ、とにもかくにも若干の金を取り立ててきた、まず優先的に渡航費の方に返すのかどうかということなんですが、そういう点はどういうふうに考えられているか、国に対する渡航費の方は、これはまあ補助すべき性質だから返さない、外資の方は返すのだ、こういうふうに触るのか、どうかですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/67
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068・園田直
○政府委員(園田直君) 渡航費は海外連合協会に貸付の場合は委託をすることになっておりまするが、従いまして渡航費の回収も、それから一たん向うへ渡ったあとの貸付も回収も、これは同じように責任をもって取扱うべきであると考えておりますが、ただ渡航費の点は大蔵省がいろいろ移民の重大性を認識されまして、今までとは違って、大蔵省としては相当思い切った措置をしております。それは渡航費の貸付利率が今までは五分五厘でございましたが、こんどは三分六厘五毛に切り下げる、それから貸付期間を今までは八年間で、据え置き四年でございました。それをさらに拡大いたしまして、据置期間を五年といたして、貸し付けの期間は二十年でございます。しかもその据え置き五カ年間の間は無利子ということに話し合いがまとまっております。なお、そのほか天災あるいは死亡あるいはやむを得ない事情によって渡航費の償還が困難となった場合には、外務大臣は大蔵大臣と協議をして、貸し付けの期間をさらに五カ年間延長するということをやっておりまするので貸し付けにつきましては、大体この年限を見ておけばいいのではなかろうか。会社の方の一般事業資金は、これとは違って参りますが、これは会社の事業資金をお貸しする場合には、すでに独立をするなり、あるいは一個の農場を経営される段階でございまするから、渡航資の回収とは違いまするが、渡航費と事業資金とが一緒になって両方の取り立てをやるというようなことは、大体起らないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/68
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069・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 いわゆる企業移民といいますか、相当独立をしてそれが事業を拡充するために金を貸すとかいうふうな場合においては、その通りだと思う。ところが当初移民して、入植して、そうしてすぐに若干の営農資金というものが要るわけです。こういうものを私は渡航費の一つの延長のように思うのですね、延長のように思われるわけです。やはりそれについてもある程度の据置期間があり、金利にいたしましても、企業に対する金利とまた別の低率の金利というものは当然考えられるべきものであろうと私は思うのであります。従ってこの千五百万ドルがそういう営農資金に相当融資がされると、またされるべきものだと思うのであります。そうすると、渡航費と一しょになるように考えることがむしろ自然ではなかろうかと、実はこう思うのであります。今の政務次官の御返事はちょっと違うのですね、対象が違うのです。今お話しのようなことが重点になるというと、また会社の性格論にちょっと戻ってこなくちゃならないように実はなるのであります。そういう点を一つこれはできるだけはっきりしてもらいたい、こう思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/69
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070・石井喬
○説明員(石井喬君) 私からお答え申し上げます。まことにごもっともでございまして、確かにそういうものも出て参るかと思います。しかし私ども一応考えますと、渡航費の方は五年間据え置きまして、その間無利子である。一方営農資金の方は、私どもの見るととろによりますれば、五年間たちますれば、もう当初のような困難はまず脱却するのではないだろうか、なるほど非常にいろいろ困難なところもあると思いまするけれども、しかしまず当初の二年、三年というところが一番苦しいところでございまして、その時期を経過いたしますれば、まず安定していくのではないだろうか、また安定するように指導していくようにしなければならぬと思っておりますので、そういうことを考えますると――まあそれにしても、多少ダブる面もあるかと思いまするけれども、まずその場合にはいろいろ調整していかなければならないと思いますが、大体何とかいくのではないだろうかというふうに考えておりますが、なお、詳細に研究したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/70
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071・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 私は五年すれば大体のところ見当もつく、一応農家としても自分の営農の見通しもつく、問題は入ってから五年間の間ですね。五年間の間の資金というものがどうされるかということであります。そこに問題が私はあるだろうと思います。大体五年して見当がついていけば、これはまあ端的に言えば、それから先までその国の保証しておる資金を考える必要はむしろないのであって、それまでの過程が大事じゃないかと実は思うのです。先ほどのお話しも現在二十万円見当ブラジルの銀行が貸しておるというのも、私の伺うのは、そういう五年といいますか、ともかく一人前になるぐらいまでの間の一つの金融と、こういうふうに見ておったのであります。そういう面をこの会社としては重点を置いて考えらるべきじゃないか。そうすれば、まあ渡航費の償還の関係においては、渡航費とそれは一しょになってくるというふうに考えたわけです。私はまあそういうふうになにしたわけです。従ってその渡航費の関係はいいとして、そういう場合に、そういう資金に対して、との会社の事業資金としては、たとえば据置の点なり、あるいは金利の点なり等において、何らかの特別の考慮が払われておるのかどうか、これは事業計画といいますか、これは問題は非常に違ってくると思うわけです。その点はどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/71
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072・園田直
○政府委員(園田直君) 御質問の趣旨も御指摘の点も十分わかっております。当然これは渡航費のみならず、移民された人の起るべき生活保障の問題、あるいは渡航直後に購入される土地の資金などは、当然これは重点として考えるべきであって、でき得れば潤沢なる国家資金を持っておって、そうしてそれに対して渡航費と同じに、むしろそれ以上にやるのが当然であると思いますものの、何といたしましても、一億の国家資金に民間の五千万を相当困難をして集めて、千五百万ドルの借款をしてやろうとしておりまするので、この会社のやりようによっては、民間資本も集まらないし、将来事業が進んで参りますると、移民に理解のある現地の成功者の資金も集まって、そういういろいろな点も当然考えなければなりませんが、発足当時に据置期間あるいは金利等の措置を講ずることは会社の運営上非常に困難を来たしますので、そういう点もこれは十分注意すべきでありまするが、遺憾ながら会社におきましては、事業資金の貸付につきまして三カ年の期間になっております。その間据置、無利子等の措置は今のところ全然講ぜられていない状態であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/72
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073・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 私は無利子にしろとか何とか言っているわけじゃない。ただ、そういう方面にこの際資金を出せるわけです。どうせそれから無理に利潤が上ってくるわけじゃないのです。多分に危険が伴う。それはちょうど渡航費について国に危険が伴うと同じに危険が伴う。従ってそういうことを考えれば民間資金も集って来ない。だから会社としてはそういうことを考えないのだという考え方は、これはいささか実はふに落ちないのです。国費で当然そこまでいけばけっこうだろうけれども、そこまでいき得ない。それはそれでいい。従ってそれを補うためにわざわざ前政府が折衝して千五百万ドルの借款をしてきた。しかもそれに対しては国は保証しておる。そういうところまで触ったゆえんは、やはり渡航費の延長式のものと一応考えるのが、これは本来の筋であろうと私は思うのであります。そういう危険があるから採算的に有利な方にさしあたりやるのだ、それによって民間資金をわずか五千万、あるいは一億円民間資金を期待するのだという考え方は、これは非常に何といいますか、移民政策を今後ほんとうに伸長していとうという外務省のお考えがそこにあるとすれば、私は間違った方向じァないかと思うのです。そういうことでは、この会社の性格というものはその本来の軌道からそれた性格になるのじゃないかということを実は心配されるのであります。むしろ会社である以上、初めから赤字ということでやるわけには、これはいかぬでしゃう。しかしながらこれが相当とのもくろみにあるように、五年目には莫大なる利益が上るというふうなことは、これは考え得ないことなんです。従ってとにもかくにも赤字はでき得る限り出さない、しかし会社としてはやっていけるというころに線を引くのが当然だろうと思います。しかも既入植の移民を伸張して、その実をあげるために現地における営農資金、それに関連しての指導保護、この保護施策が会社の本来の使命だ、こういうふうに考えるべきじゃないかと私は思ってきたわけなんです。それが外務省の今の御説明では、私の考えときわめて距離が遠いと思うのであります。それはまたの機会にすることにして、次は、企業移民ということがしばしば言われておる。私は実は企業移民というものは性格をよく理解しないのであります。この前の委員会においても、農林委員会と連合の会合においても、最近のドイツなりイタリアの移民政策が変ってきて、いわゆる企業移民に重点が置かれておる、その趨勢に即応してという説明が繰り返されてきたかと思うのでありますが、一体そのドイツなりあるいはイタリアが、中南米において、どういう具体的を構想において企業移民というものをやっておるかということと、それからブラジルその他の中南米諸国におけるこの企業移民に対する受け入れの状況ですね、法律的なりまた現実の状況、これを一つお話を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/73
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074・園田直
○政府委員(園田直君) 先ほどの御質問に対しましては、外務省といたしましても当然御質問の通りにわれわれも考えておるわけでございます。ただし、これは営利を考えての問題ではなくて、移民の方々をお世話をする会社を支障なく進めていくためのいろいろな問題がざいまして、結局据え置きなりその他の特別の保護を考えるためには、これに対する損失の補償なり、あるいは政府の補償なり、政府の補償がなければできませんので、当然われわれも早急にそうすべきであるし、したいという熱意は十分ございますが、御指摘の通りでございますから、関係各省とも相談して、そういう方向に進むことのできるように努力いたしたいと考えております。
なおその次の企業移民の点に関しましては、種谷課長より答弁いたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/74
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075・種谷清三
○説明員(種谷清三君) 企業移民の意義でございますが、その前に、現在のヨーロッパの移民の態勢を考察いたしまするに、その大部分はいわゆる雇用移民でございまして、すぐに向うに参りましてから自営をしていくという種類の移民が、すなわち私どもが考えておる企業移民でございまして、これは農業、漁業、工業、その他の職業を全部包含する移民でございまして、その職業を営まんために資本あるいは技術を携行して行く移民のことを私は企業移民であるというふうな概念を持っております。その企業移民には、特にヨーロッパから中南米に対してどういうふうに行われておるか、ただいま申し上げましたように、ヨーロッパから中南米に参ります移民のその大部分は雇用移民でございまして、農業、工業、その他特にヨーロッパの移民は工業あるいは商業に従事する者が大部分でございますけれども、要するにヨーロッパ移民の大宗は雇用移民である。しかるに中南米におきましては、最近特に農業にいたしましても大きな資本を必要とする、またさらに最近の工業化の趨勢に応じまして、中南米の国々において不足をしておる、あるいは全然欠いておるような産業を、初めてその国に移植するというような場合には、ヨーロッパの、ただいま申し上げました意味における企業移民が非常に歓迎せられるわけでございます。この企業移民の種類はほとんどあらゆる種類に及んでいるのが現状のようであります。簡単でございますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/75
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076・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 それはそれぞれの国で無条件にそういうのを受け入れる態勢にあるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/76
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077・種谷清三
○説明員(種谷清三君) 決して無条件というわけではございません。その国が現在必要としている事業でありまして、行ってみますというと中南米の、たとえば工業で申しましても、実情はのこぎりの刃のようになっていると思うのでありますが、ある部門につきましては非常に発達したヨーロッパの一流の工場と変らないような施設を持っておると思うし、その他のあるものについてはほとんど何も安いというような、非常に跛行的な均衡を失した状態にあるといわれているのでございまするが、要するに一つののこぎりの刃のくびれを埋めるようなものであれば大いに歓迎をする、その意味におきましては、ヨーロッパのみならず、その他の諸国、特に日本人の進出も大いに歓迎をするというのが中南米を通じての各国の態度であろうとわれわれは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/77
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078・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 第一年度の当面の計画で、いわゆる外務省のしばしば言われる工業方面の企業移民ですね、これは大体人数にしてどれほどを想定されているのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/78
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079・石井喬
○説明員(石井喬君) これは実は非常に想定が困難でございまして、現実に工業移民というようなことで向うへ出すということになりますと、向うと相当折衝していかなければなりません。果してどれとどれが行けるのかというようなにともきまりませんので、なかなかわからないと思いますが、一例をとって申しますると、ブラジルに今陶磁器の工業が一つ行こうとする例がございます。それが参りますと、それに従いまして大体百五十人から二百人くらい、規模によって違いますが、それくらいの人が向うに行けるというととは申し上げ得ると思いますが、それが幾つくらい行けるかということは、今ちょっとなかなか予測しかねると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/79
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080・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 かりに陶磁器の工場に二百人、三百人は行ける、それの企業体の資金はどのくらいになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/80
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081・石井喬
○説明員(石井喬君) ただいま申し上げました百五十人ないし二百人程度のものといたしまして、大体三千万円くらいということが言われております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/81
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082・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 私は具体的に陶磁器工場がどうこうということは……この前もお話があったのですけれども、私の聞かんとすることは、そういうのではなくて、今年の計画としては五千五百人の移民が計画されている、それに関連して千五百万ドルの中の三百万ドルが、ともかくこの会社ができれば事業資金として入ってくる、で、政府はしばしばそういう企業的の移民ということを相当に強調をされている。そうすると、第一年度において大体どの見当を、どの程度の工業的の移民というものがもくろまれているのであろうかということを、それから将来を考えて、毎年二万人とか、十年間に相当の数が移民として計画されているわけですね、一体現状から判断して、まあ五年先にはどの程度一体工業的の移民というものが期待されるのかという、その大体のところでいいのであります。ということは、私現地の事情をよくは知りませんけれども、なかなかそういう意味合で一つの工場を作って、そうして合弁の会社を作って、相当数の日本のいわゆる労働者に技術があるというけれども、労働者を移民として出してゆくということはそう多く、いわゆる移民政策としては大きな期待は持ち得ないのじゃないか、これは私十分実態を認識しておらないところから、こういうことを誓うのかもしれませんが、どうも大きな期待を持ち得ない。そのこと自体がよろしくないというわけじゃありません。しかし移民として日本の現状から考えてみたときに、どうもそう大きな期待を実は持ち得ない。大体そういう工場を設置するところは未開拓地じゃなくして、大体は都会なりその近郊、そとにはやはり相当原住の民族の勢力と、いうものがあるのだろうと思います。それらと並んで日本の能力が導入されるわけですね、どういうふうにそれを期待されておるか。たとえばとの五年間のもくろみでありますけれども、いわゆる工業移民として五年間にどの程度期待し得るかという程度でいいのであります、私の聞かんとするところは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/82
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083・石井喬
○説明員(石井喬君) 大へんむずかしい御質問で、はっきりお答え申しかねますのは申しわけないのでありますが、私どもは今後といえども、やはり数の上におきましても一番多いのは、当初雇用移民という格好で向うの農業労働といいますか、そういう方面に入るのが数として一番多いのであります。これは先ほど申しましたように、言語、風俗、習慣その他いろいろ違いますので、いきなり向うに参りましてはっきりした目的と申しますか、目当てのある事業でありますればよろしゅうございますが、一般の人がなかなかいきなり行って企業なり、中小の企業といったものに取りかかるということはできないと思いますので、ほとんど七、八割というものは、私はそういうような事業を将来やる人といえども、雇用移民という形体で入ってゆくことが多いのではないかと思っております。雇用移民として数年たちまして、そうして独立する隊に農業で独立する人もありましょうし、あるいは中小企業として独立する人もあるかと思うのでありますが、当初におきましてはやはりそういう格好になってゆくことが多い、こういうことが一つ考えられます。それからこれは多少私どもの方の関係だけではないのでありますが、先般パラグワイにチャーベスという植民地がありますが、あれが近く満植になるので、やはり相当数の日本の農民を入れてくれないかという申し入れをしましたら、日本の農民は将来農民として入ってくるものについてはあまり歓迎しない、むしろ工業というものを持って入って来るならばこれを歓迎するというようなことを言っておりましたが、そういうことで向うの要望するような工業を興すということになりますれば、これは相当のただいまおっしゃいましたような労働力その他の点がございますが、これは現地の、いわゆるパラグワイあたり、その他多くは現地の土人でございまして、社会的、経済的に押えておるのは白人でございます。そういったようなことで土人労働力に比べますれば、はるかに能率がいいということで向うの要望する工業その他でありますれば、私は相当入れるのじゃないかと考えております。これは多少私どもだけの関係じゃございませんで、ボリビアあたりで、あそこは砂糖をほとんど輸入いたしております。その砂糖のプラントをこちらから輸出いたしまして、輸出して向うで始めるということになりますと、これに伴うカンショの栽培の能力というようなものも相当これに伴って入ってゆくというようなこともございますので、ただいま申し上げましたような製糖事業というようなことになりますと、どこまでが工業による移民であり、それについて行った者が農業移民といいますか、あるいは全部ひっくるめて企業移民と申しますか、いろいろむずかしい問題だろうと思います。従いましてただいまるる申し上げましたようなことで将来やってゆきたいと思いますが、五年間にしからば工業関係で何人入るかということにつきましては、まことに申しかねますけれども、今ちょっとはっきりした数字は申し上げられないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/83
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084・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 はっきりした数字は期待するわけじゃありません。ただごく今日常識的に考えまして、ある製糖会社を作った。それは若干の人は要るでしょう。あるいは紡績会社を作る、それには若干の人が要るでしょう。しかしその資本は私は相当の額になるであろうと思う。しかもそれによって日本から出し得る人数というものがそう多くはないであろう。そうすれば、これは初めにかえるわけですけれども、千五百万ドルの借款をして、それに対して国が保証をして移民を促進するというけれども、現地には現実に工場もできた、利益があがっておる。しかし現実日本から出た移民の数というものはきわめて少い。しかも定着性というものは、これまた少いのだということになったとすれば、これは移民政策の問題でしょうけれども、相当考えなくちゃならぬのじゃないか、大きな砂糖の工場を作るとかいうことは、それに対する日本からの投融資というものは、おのずから別途収入があるわけなんです。これはあとでも御質問したいと思いますけれども、たとえば輸出入銀行との関係等にもすぐそういう問題が触れておるので、との会社自体の性格から、何と言いますか、問題が将来残るであろうということを言わんとしたわけであります。それから次は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/84
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085・鹿島守之助
○鹿島守之助君 それにちょっと関連して質問したい。移民の大体の歴史から見ますと、たとえばイタリアあたりが大へんな移民国だ、あれは一つのサンプルですが、第一段階はともかくその国でどちらかというと、生存競争で負けたような、そういうような何が海外に職を求めて、無規律に自由に向うへ行った段階なんです。日本でもまだ今でもサントス渡しとかなんとかいうので非常にあわれな様相を呈しておるのです。第二段階は私たちがイタリアにいた時分に、それじゃいけない、行くものはみんな一応の教育をしていく、その教育というのは主として価値を与える、価値化と言いますか、女が行くのならばそれは看護婦だとか、あるいは産婆だとか、何かそういうふうに技術をつける、それから男ならば左官でも大工でも、それからいろんな機械工具の……、何かともかく食いつめてというようなのでなしに、イタリア人として品位のある、そういうような何にしたい。それで非常な施設をやりまして教育もし、それからともかくそういう方面の学校を建てる、まあ学校といっても、それほど何年間というのじゃないのです。六カ月ぐらいの速成のそういうものをやる。それから第三段階として、戦後にイタリアやドイツの企業移民ということが、エンタープライジングな企業の移民ができるというのは、そこにイタリア人なりドイツ人がたくさんいて、そこでマカロニの工場を建てても、そこにイタリア人がおるから、たくさん中小企業をやっても購買力があるわけです。ドイツならば、ビールの小さい工場を建ててもやり得る。一種の中小企業の移民が成功するためには、そこに需要者相当のイタリア人やドイツ人がおるということが一つの前提条件じゃないかと思います。プラント輸出あたりは今例がありましたが、あとで問題は出ましょうが、日本の移民の段階としてはこのサントス渡しというような、ああいうあわれな言葉がないように、ある程度今度出ていきますには、相当ないい移民を送るということが非常に重要じゃないか、またとの会社が成功するためには、私は人的要素というのが非常な大きな何で、理事とか、重役、そうしてエンジニアの立派な人が同時に海外へ出て行く、とにかく移民が人格の点においても、またそうした技術の点においても、相当な人を出さないというと、資金の回収はおろか、世界の物笑いになる。各国の借款、金を借りておいてそれを踏み倒しておいて、変なことになる、日本が移民をわずかの千五百万ドルで。今後日本の海外の外資導入あるいは東南アジア全体において、まあそういうアメリカのいろんな援助の資金を利用するのに、日本がこれを成功さす、そのためには、人格も立派であるし、移民の質ですね、これが非常に大事だと思う。同じ農業移民するにしても、そこらで食いつめた移民よりも、いわゆる後藤先生のおっしゃる産業開発青年隊、どうしても日本でも二男坊、三男坊の対策で、どうしてそれを食わせるという問題がある。それに相当な技術を教えて、農業の方へ産業開発青年隊、そういうふうな訓練を受けたものを優先的に出すということになると、日本には礼儀の点においても作法の点においても、技術の点においても劣らないということが、現在の段階としては非常に私は重要なことじゃないかと思うのです。ところがこの精神的な規定は、いろんなもののあるうちに、何も入っておらないのは非常に遺憾に思うのです。どうかそういうふうにやってもらいたいと思うのですが、政府はどういうふうにお考えになっているか、との点に対して見解を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/85
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086・園田直
○政府委員(園田直君) 全く御指摘の通りに考えておりまして、特に移民の募集、選考、訓練等については、従来の行き方を相当変えていきたいと、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/86
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087・鹿島守之助
○鹿島守之助君 ことに雇用移民が重要ですね。この移民というのは、どうしても雇用移民の段階じゃ、雇われる方でも雇う方でも問題が起らないように、そういう価値のある、技術のある、そういうものを送るように、この点はぜひお願いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/87
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088・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 次に私は現地における移民の保護指導の機関、この現状がどういうふうになっておるのか。それからこの会社はそういう面でどう機能を果すのかということをお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/88
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089・石井喬
○説明員(石井喬君) 先ほど申し上げましたように、ただいま出ております移民の形態に二つございまして、コロノ移民と連邦政府の植民地に入る移民とがございます。コロノ移民の方につきましては、これは別に指導その他のことはございません。おのおの個人個人において入っております。そういう必要の起きておりますのは連邦政府に入る移民でございます。この場合に日本の政府側あるいは日本側があまりにこまかい指導その他をいいますことは、特に悪い影響を与えますので、現在のところでは、現地の受け入れ機関といたしまして例の辻機関と松原機関がございますが、これが向う側といろいろ折衝をし、参りました移民を植民地に連れて参りまして、これの通訳という格好でもって、現地に非常に長く生活しております人々をこの通訳に雇いまして、これはたとえばアマゾンあたりでは例の高等拓殖学校の卒業生という二十年、三十年地元におる人がこの通訳の職業を買って出まして、この人々が通訳という名義で移民のいろいろの面倒を見ております。英語関係におきましてもこの人々が通訳という名義でやっておりますので、今のところは向う側と別に折衝なしにやっておる段階でございます。で、こういう通訳等を置きます費用は、これは政府が別途委託費を支出いたしましてその費用でやっておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/89
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090・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 そうしますと、この会社としては会社が発足しても、大体現地におけるそういう面の活動といいますか、これは別段の考慮といいますか配慮はないと、こう見ていいでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/90
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091・石井喬
○説明員(石井喬君) これは表向きはどこまでも移民に金融的な援助をする建前になると思いますので、この会社自体がそういったよう指導的な人々を自分の経費で抱えて、常に指導して歩くような格好をとることはないと思いますが、おそらくこの自営開拓移民につきましても、営農資金の融資というようなことは組合等を結成いたしまして、どうせ個人でもって開拓いたしますのではなかなか将来の何もございませんので、大農式な経営になって参ると思います。そういったようなことを日本人だけで集団を作りますと非常に問題になりますが、現地の入植者等を入れまして一つの組合を作って、それに営農資金を貸して行くという格好になって参ると思います。そういう際にやはり目立たないように、相当の指導を加えるようなスタッフは持っていなければならぬというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/91
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092・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 そういうように会社がその経費を負担しない、外務省が適当なる方法で負担しておる、――これは相当今後拡充する計画にあるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/92
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093・石井喬
○説明員(石井喬君) これはやはり本来公共的な事業でございますから、できるだけ大蔵省にお願いしまして、予算を獲得と申しますと何ですが、予算をお願いしまして一つ拡充して参らなければならぬと思います。先ほど申し忘れたのでありますが、私どもはできればアマゾンあたりにこの会社が、会社直営でなくてもよろしいのでございますが、一つの農場の経営を、直接にあるいは誰かと共同で経営いたしまして、そこに試験場なり研究所なりというものを作りまして、そこでもっていろいろな試験研究をし、そういうものを通じて指導もやって行きたいというふうには考えております。ただ先ほど申し上げたのでありますけれども、目立つということを非常におそれておりますから、それだけは……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/93
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094・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 それから海外協会連合会の問題であります。昨年閣議の決定ですか、了解ですかがあって、海外協会連合会を中心にしての、中心と言いますか、政府の移民政策に関連しての方針というものが一応きまっておる。今度この会社ができたについては、これまでの方針が当然再検討されることになるであろうと私は思うのでありますが、その点はどうか。特にあのときに海外協会連合会というものが国内国外を通じて一元的に移民の世話をするという趣旨になっておったかと思うのですが、そういう点は依然その通りになるのか、あるいはこの会社が発足することによって、その点は変って来るのかどうかということが一つと、それから先日農林水産委員会との合同の委員会で政務次官より海外協会連合会については、次の国会に法律を、特別法を基礎にする特殊の法人格を与えたい、そういう考えであるというお話があったのであります。どうも私自身にはそのことがよくのみ込めないのであります。御説明を願いたいというのは、現在渡航費については、この会社が一元的に渡航費を出す建前になっておって、海外協会なるものは単に事務をやるに過ぎない、事務をやるに過ぎないのであって渡航費を貸付ける責任の主体でも何でもないのであります。事務を下請けをする性格なんですね、はっきり言うと、一体事務を下請けするようなものについて、何の必要があって法律を出して、特殊法人を作らなくちゃいけないか、私には了解ができないのです。なるほど渡航費の貸付の仕事は大事ですが、何らの責任がない協会の渡航費貸付の事務に対する直接の監督と言いますか、これはおそらく会社がおやりになるのであろう。会社の附属的な事務を担当する集りにすぎないように思われるのであります。それを特殊法人にしてゆくということ自体がどうもふに落ちない。むしろ渡航費の貸し付けそれ自体は当然に移民の募集、訓練とつながる問題である。さらにそれが移民してから後の問題にもつながる重要な問題だとすれば、むしろこれはこの会社自体に一元的にこれを行うということを考えるべきであって、単に事務下請けをするものだけをわざわざ特別法をもってする特別法人格を与えるという意味合いが一体那辺にあるのか、どうも了解ができないのであります。一つもう一度なぜそれが必要なのかということを御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/94
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095・石井喬
○説明員(石井喬君) 私からお答え申し上げます。昨年例の閣議決定があったときには、まだ本日のこの会社の問題が起きておりませんでしたので、ああいう閣議決定になりましたが、会社ができますれば、当然にもう一度あの方針につきましては再検討をする必要が生じてくると思っております。そこで先ほどお話がございました内外の事務を一元的にやるかどうかという問題でございます。これはいろいろ考え方があると思いますので、目下いろいろ検討いたしておりますが、私どもの考え方といたしましては、会社は現地でもって先ほどるる申し上げましたようないろいろの事業をいたしますが、これがやはり運営の基本的な方針と申しまするものは、もちろん純粋に営利を追求する会社ではございませんけれども、その運営方法というものはどこまでも、何と申しますか、少くともペイするということを原則にしてやっていかなければならないと思います。株式会社である以上、当然そういうふうにやっていかなければならないと思いますので、おのずからその会社のやる仕事には限度があるのではないかというふうに考えております。一方との国内における海外協会連合会の担当している事務でございますが、これは募集、選考、訓練というような仕事でございまして、これは実は私は先ほど御指摘がございましたように、非常に重要な基本的な仕事ではないか、従いまして今後はこれに大いに力を入れてやっていかなければならないのでございますが、この仕事自体は私は会社がやっておりますような指導理念ではなかなかうまくいかない。ことに今後優良なる移民を送り出すということになりますと、やはり私は国民全般が移民というものに対する基本的な認識を改めてかからなければならない。さらに進んで申しますれば、あるいは小学校の教育からしてもうそういったようなことをやっていかなければならない。いいすぎかもしれませんが、一つの国民運動というような格好でもって推進してゆく必要すらあるのではないかというふうに考えております。そういったような仕事を今後大いにやらせるということになりますと、やはり会社とは別にこういったような性格の団体が一つ必要ではないか。ことに現状におきましては公益法人ということでやっておりますと、地方あたりにおきましては、相当有力な方々が卒先して手弁当でいろいろ仕事をしてくれまするが、会社ということになりますと、やはりそういったようなことはできない。やはりそういったような公益的な仕事は公益法人的な性格を持ったものがいいのではないか、こういうふうに考えております。
それから渡航費の問題でございますが、ただ単に事務下請けをするようなことであって、というお話でございましたが、結局私どもは実はただ単に事務の下請けというふうには考えておりませんので、やはり連合会はどこまでも自主性を持って選考をやってゆく。連合会の選考に合格したものに対して、これは優良な移民であるという意味でもって金を貸し付けるということでなければならんと考えておりますが、今後ともに連合会のこの面は大いに強化していかなければならんものであるというふうに考えております。さらにただいま申し上げましたような、今後においてわれわれ大いに期待しているわけでございますが、同時にこの事業を推進いたしますためには、やはり相当多額の国家の資金をちょうだいしなければやっていけないのではないかと思います。そういったような公共的な面が非常に強いということ、相当多額の国家資金を使っていくというような面からいたしまして、やはり法制化の必要はどうしてもあるのではないか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/95
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096・梶原茂嘉
○梶原茂嘉君 今後渡航費等について相当これを増していかなくちゃならない、あるいは募集訓練についても相当費用がかかることもお説の通りだと思う。しかし渡航費はこの会社に来て、この会社から直接移住者に行くわけですね。私下請といったのは、下請だからずさんだということではないのであって、制度的に単に事務の下請をすることになっているということを言ったわけであります。
それから、どうも会社の指導理念と別なんだ。別なんだから片方を法的に強化していくのだというお話ですけれども、なるほど株式会社だからそうだということは簡単にいえますけれども、現在株式会社法案だからそうであって、もし必要であればこれは公社のように書いてもいいわけです。会社だからこうだというのではなくして、移民の仕事の本質から考えるべきだと私は思うのです。会社であっても本質をそれてはいけない。やはり会社が扱う面においてはコマーシャル・ベースだから単に有利な方面に金を貸していくのだ、ほかの、何といいますか、それ以外の仕事はこれは公的な仕事なんで別な団体にやらすのだ、この考え自体が私には割り切れない。そもそもそれは一体であるべきだ。一体であるべきが移民の本質だと思うのであります。会社の理念というものは、株式会社だからというのでそういう理念を強く出して、ほかは公的なあれだから一つ大いに別な国民運動で、政府は大いに金を出したらいいだろう。現地においても現地におけるそういう移民の指導は、これは海外協会が一本でやられるか、あるいは移民の協同組合でおやりになるか、それはおやりになったらいいだろう、私どもはこの会社であくまでコマーシャル・ベースでいく、こういうことでは、私はとうていこの会社というものはうまくいかないと思います。うまくいかないということを、ほんとうにこれは心配するわけです。しばしば政務次官もそれから移住局長も会社の性格論については、ときによっては大いに公益的な観点を強調され、ときによってはコマーシャル・ベースというものを大いに強調される。事実、いまだに私自身は一体外務省の考え方の基本はどこにあるのか、はなはだつかむのに苦しんでいるのであって、どちらかといえば、やはりこれは千五百万ドル借りて四分の利子だ。現地においては撰択よろしきを得れば十分利益が上っていくのだ。その結果、これはやはり移民にもある程度の役に立つのだ。言葉は悪いけれども、いわゆる企業的といいますか、海外における事業の投融資そのほうに重点があって、結果において多少は移民に役立つであろうというふうな考え方がどうも強いように、実は少しとり違えているかもわかりませんけれども、そういう感じを受けるのでありまして、海外協会をここに特別法をもって法人格を与える場合においては、おそらくは私はもう一ぺんこの会社とあわせて考えるということに、結果は別としてなるであろうと、ごくこだわらずに考えますと、そういう気がするのであります。国内において特別の法人がで登る、それは何をやるのか、移民送出のことをやる、海外においてやはりその移民の指導のこともやるのだ、渡航費の実際の貸し付けのこともやるのだ、実際上の責任がある。それに対して国は相当の援助をする、別途にまた同じく会社があって、それに対して国は出資をし、保証もやっていくのだ、という二本建といいますか、二元のいき方が十分納得されるかどうか。私にはやや疑問なのであります。十分一つ御検討願いたい。あの協会を法人会社に変えて別にするのだということを簡単に結論を下すことは、少し軽いのじゃないか。これは所感でありますが、感じがいたします。以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/96
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097・石黒忠篤
○委員長(石黒忠篤君) 今日の質疑応答は大体この程度でとりやめたいと思います。明日十時から一つ外務委員会を開きたいと思いますが、いかがでございましょうか。
ちょっと速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/97
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098・石黒忠篤
○委員長(石黒忠篤君) 速記を始めて下さい。
それでは本日の外務委員会はこれをもって散会いたします。
午後五時四分散会
――――・――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102213968X01919550722/98
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