1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十年五月十四日(土曜日)
午前十時二十三分開会
—————————————
出席者は左の通り。
委員長 小林 英三君
理事
常岡 一郎君
竹中 勝男君
山下 義信君
委員
榊原 亨君
高野 一夫君
谷口弥三郎君
横山 フク君
田村 文吉君
阿具根 登君
山本 經勝君
相馬 助治君
有馬 英二君
国務大臣
労 働 大 臣 西田 隆男君
政府委員
労働政務次官 高瀬 傳君
労働大臣官房会
計課長 澁谷 直藏君
労働省労政局長 中西 実君
労働省基準局長 富樫 総一君
労働省婦人少年
局長 藤田 たき君
労働省職業安定
局長 江下 孝君
事務局側
常任委員会専門
員 草間 弘司君
常任委員会専門
員 多田 仁己君
常任委員会専門
員 磯部 巌君
常任委員会専門
員 高戸義太郎君
—————————————
本日の会議に付した案件
○労働情勢に関する調査の件
(昭和三十年度労働省関係予算に関
する件)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X00719550514/0
-
001・小林英三
○委員長(小林英三君) それでは委員会を開会いたします。
労働情勢に関する調査を議題といたしまして、労働省関係昭和三十年度予算及び労働行政方針につきまして、西田労働大臣の説明をお願いいたすことにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X00719550514/1
-
002・西田隆男
○国務大臣(西田隆男君) 私労働大臣の西田でございます。何とぞよろしくお願いいたします。労働大臣に就任以来今日まで皆様にごあいさつ申し上げる機会がありませんでしたが、本日この機会におきまして労働行政についての私の基本的な考え方を申し述べるとともに、労働省関係予算案の概要を説明いたしたいと存じます。
労働問題が経済問題の一環であることは言うまでもありませんが、私は労働問題は経済問題と総合的関連をもって解決されなければならないとともに、労働問題の合理的解決こそ経済諸問題解決の基本であると確信するものであります。現在わが国にとっては経済の自立を達成することが喫緊の要務であります。これがため政府におきましては、ききに経済審議庁を中心に総合経済六カ年計画を策定し、長期の見通しを持つ総合的な経済計画の線に沿って経済自立達成の基盤を確立するための諸施策を実施しつつあるのでありますが私はこれらの施策が真に実効を上げるためには、ただ単に総花的に各諸施策を実施するということではなく、まずわが国経済の中核ともいうべき石炭、電力、鉄鋼等の基幹産業の合理化、能率化を促進するための方策を講じ、ひいては全産業の生産性の向上をはかるという方向に進まなければならないと考えるのであります。
私はこのような角度から、経済閣僚の一員として、経済各省と密接な連絡のもとに労働諸施策と調整のとれた総合的経済諸施策の実施に努力して参っております。しかしながらこれらの施策が現実に実施され、産業と企業の実態に触れて参りますときには、直接生産に携わる労使の間にはいろいろの問題がいわゆる労働問題という形で生じてくるのでありまして、かかる問題の合理的解決なくしては、経済諸施策は到底実効を上げ得ないと考えるのであります。
第一に、労働問題の基本的な課題は、労使関係者が相携えて生産の向上をはかる労使協力態勢を確立することであると信ずるのであります。現在のように年中行事的に労働争議が繰り返され、労使双方とも常時その解決のためにいとまがないというような状態では、生産能率の向上をはかることはきわめて困難であります。私は賃金をめぐる労働争議が行われる場合、常に遺憾に思っておりますのは、企業の利益が上った場合、労使が労働と資本だけでその利益を分け合うという考え方に立っているように思われることであります。企業の利益が上ればこれをただ安易にベースアップに回すとか配当の増加に充てるという方法をとるだけでなく、製品の販売価格を引き下げることによって、利益を消費者その他国民大衆にも分つという方向へ考え方を変えることが望ましいのであります。
このように国民全体の立場に立って労働争議の合理的解決をはかるためには、労使関係者が常に国民経済的視野に立って、良識をもって話し合いを尽すという基本的態度を持することが必要なことは言うまでもありませんが、さらに労使双方とも進んで労働委員会等公正な第三者機関の調整に従うという合理的なよき慣行を樹立し、能率的平和的労使関係を確立することが肝要であると考えるのであります。
政府におきましても、いろいろな機会を通じて、労使関係者に国民経済の実情や政府の諸施策を十分認識し、理解していただくとともに、労使関係者の御意見はこれを率直に承わり、ともどもに労働諸問題の合理的解決をはかって参る所存であります。
次に予算を中心として、当面の労働行政の重要事項について申し上げます。
まず第一に、失業対策についてであります。わが国経済の課題が長期的に経済の拡大均衡をはかることにあることはさきに申し述べた通りでありますが、当面の経済計画の目標は、安定経済の基礎のもとに、経済の正常化、なかんずく国際収支の均衡をはかることに努めるとともに、将来のわが国経済発展の基盤を育成することにあると存ずるのであります。狭隘な国土と貧弱な資源に膨大な人口を扶養しなければならないわが国にとって、雇用問題の解決はきわめて重要かつ困難な問題であります。特に現下の失業情勢は、いわゆるデフレ経済の進展によりすでに相当悪化しておりますが、少くとも本年はいまだ経済正常化の努力を必要とする段階であり、従って一般経済活動の改善はあまり見込まれない実情を思いますとき、失業状勢はなお当分楽観を許さない状態を持続することを覚悟しなければなりません。経済審議庁の推定によりましても、三十年度は二十九年度に比し、総人口は百三万人の増加となり、労働人口は八千四万人の増加となると考えられるのでありまして、生産の上昇、住宅の建設による労働力の吸収等を考慮いたしましても、なお今後の雇用情勢は楽観を許さないと予想されるのであります。政府といたしましては、このような失業状勢に対処して現行失業対策事業のワクの拡大をはかりこれを再編成するとともに、新たに特別失業対策事業として建設的な事業を大規模に実施するほか、失業保険制度を改善し、適用範囲の拡大、給付内容の適正化等の措置を講ずることによって失業者の生活の安定を期することとし、これに必要な経費として失業対策事業費補助百六十八億、失業保険費負担金百十七億、政府職員等の失業者退職手当三億六千万、計二百八十八億を計上いたしております。これは昨年度に比べて約四十六億円の増加となっております。右のち失業対策事業関係についてその内容を申し上げます。
失業対策事業費補助につきましては、二十九年度は、補正予算を含めて百十九億円、吸収人員一日平均十七万人であったのに対し、本年度は前述のように百六十八億円、吸収人員一日平均二十二万円を予定しております。これは金額にして約四十九億円、人員にして五万人の増助となるのであります。なかんずく特別失業対策事業については、一日平均三万人を吸収することとし、これに要する経費三十五億円を計上し、失業者の能率的吸収に万全を期するとともに、地方財政の逼迫した現状に鑑み、一部富裕県を除き労力費、事務費に対する国庫補助率を従来の三分の二から五分の四に引き上げ、国が予算的に十分責任を持って本事業の円滑な推進をはかる態勢を確立したのであります。
さらにこれに加えて鉱害復旧事業、都市建設道路事業に優先的に失業者を吸収する等の措置を講ずることを初め、失業対策事業と公共事業、財政投融資対象事業等との総合的計画的運営をはかることといたしております。
この際特に申し上げたいことは、特別失業対策事業はもとより、一般失業対策事業についても、事業種目の選定、事業運営に当つては、極力長期間にわたる継続的建設事業であって生産的な能率の高いものに切りかえ、事業が全体として一つの雇用状態を継続させるごとき方途を検討の上実施したい所存であります。もちろんこのような建設的事業に就労するに適しない労働能力の低い失業者に対しては、従来の事業種目にとらわれず、広い見地から選定した簡易な作業を内容とする失業対策事業を社会保障と関連して行うようにしたいと思っております。
ざらにこれらの失業対策を一層効果あらしめるため、一般職業補導施設の強化拡充をはかるとともに、特に失業保険積立金の運用により総合職業補導所の新設拡充を行うこととし、合計九億円を計上することといたしたのであります。
以上の諸施策を強力に実施することによって失業対策の総合的効果を上げ、失業情勢の悪化を防ぎ、いやしくも社会不安が惹起ざれることのないよう万全の措置を講ずる所存であります。
第二に、労使関係の安定促進であります。
労使関係者が国民経済の実情を十分認識して真に合理的能率的労使関係の確立をはかることが重要なことは前述の通りでありますが、かかる見地から民主的労働組合を育成し、健全な労使関係を発展助長するため、労働教育の整備充実をはかるとともに、労働組合の福祉厚生活動の促進、労働金庫の適正な運営等の施策を強力に推進することとし、これに必要な経費として約六千万円を計上し、さらに労使関係の合理的かつ円滑な調整をはかるための中央労働委員会等の活動に要する経費として約一億円を計上いたしております。
第三に、労働経済に関する統計調査の整備充実であります。
労働経済に関する統計を迅速かつ的確に収集整備することは、単に労働行政施策の基礎資料としてのみならず、労使その他の関係者がこれらの資料を常時活用して労働経済の実情を認識し、紛争議の合理的解決、生産の増強をはかるための資料としてもきわめて重要な意義を持つものと考えられますので、前年度に引き続き毎月勤労統計、労働生産性統計、職種別賃金実態調査及びその他労働事情に関する統計調査を実施するほか、特に今回は新たに地域的に発生する失業情勢を迅速的確に把握し、失業対策に万全を期するため、地域別等就業失業調査を実施することとし、これらに必要な経費として約一億八千万円計上いたしました。
第四に、労働者の福祉の増進と能率の向上をはかることであります。現在わが国経済に課せられた重大な課題が、労働能率を高揚し労働生産性を高めることにあることは言うまでもありませんが、これがためには直接生産に携わる労働者の保護と福祉の増進をはかることがきわめて重要であるとの見地から、本予算の編成に当つてもこの方面に重点を指向いたしたものであります。
すなわち適正な労働条件の維持と労働者の保護をはかるための労働基準行政を一段と刷新整備するとともに、産業災害の防止とけい肺を初めとする職業病の特殊性に鑑みまして、これが予防及び特別保護の方途を講ずるほか、中小企業における労働者の技能水準の向上をはかるため技能者養成施設に対し助成を行うこととし、これらに必要な経費として十二億五千万円を計上いたしました。
また就職の促進を一層強力に実施し、産業界の要求する技能労働力の円滑な需給調整をはかるため、前年度に引き続き一般公共職業補導所を運営するほか、新たに家庭婦人、未亡人等を対象とする家庭内職、家事サービス等の職業補導事業を実施することとし、これに必要な経費として約三十億円を計上いたしております。なお労災補償保険特別会計におきましては、労働者の業務災害被災者に対する療養給付の適正充実をはかるため、前年度に引き続き労災病院の整備拡充を行うことを中心として必要な経費約十二億八千万円を計上いたしました。また失業保険特別会計におきましては、本会計の積立金より生ずる運用利子収入のおおむね二分の一を労働者の福祉増進に充当することとし、総合職業補導施設及び宿泊施設等の保険施設の拡充整備に必要な経費として五億五千万円を計上することといたしました。以上の諸経費を効率的に運用して労働者の福祉の増進に格段の努力を払つて参りたい所存であります。
以上予算の重要事項について申し述べましたが、これを総括した労働省関係予算の全貌について申しますと次の通りであります。
一般会計におきましては、歳入総額三億十五万九千円で、前年度の二億三千四百十九万四千円に比較して六千五百九十六万五千円の増加となっており、歳出におきましては三百三十九億七千七百三十三万八千円と前年度の二百九十二億六千八百五十七万三千円に比較して四十七億八百七十五万五千円の増加となっております。なおこのほかに建設省所管官庁営繕費に五千六百二十二万七千円を労働省関係分として計上いたしております。
次に、特別会計でありますが、労働者災害補償保険特別会計につきましては、歳入、歳出いづれも二百三十二億五千六百七十三万円で、前年度の二百四十億四千八百二万九千円に比較して七億九千百二十九万九千円の減少となっております。また失業保険特別会計におきましては、歳入、歳出はいづれも四百五億九千三百五十八万四千円で、前年度の四百二億九千六百五万一千円に比較して二億九千七百五十三万三千円の増加となっております。
最後に本国会に提出を予定いたしております法律案関係について申し上げます。労働省におきまして本国会に提出すべくただいま準備いたしております法律案は、けい肺等特別保護法案、失業保険法の一部改正法案、労災保険法の一部改正法案及び労働省設置法の一部改正法案の四つであります。
けい肺等特別保護法案につきましては、さきの国会において、あるいは本国会において議員立法の形で提出され、従来から労働委員会において種々論議され、最も悲惨な職業病の一つとしてその保護対策の強力な推進が要望されて参ったところであります。私は従来からいろいろな御意見を検討した結果、けい肺対策としてはすみやかに病症を発見し、その進行を防止するための積極的対策を中心とする立法を行うことが真にその保護を全うするゆえんであるとの見地から、今回けい肺症について早期健康診断の実施、配置転換給付、労災補償打ち切り後二カ年間の源養給付及び休業給付を行い、また外傷性脊髄障害にかかって療養中の労働者に対しては、療養給付及び休業給付を行い、必要な経費の三分の一を国が負担することを主たる内容とする法案を準備中であります。
失業保険法の一部改正法案は、失業保険強制適用事業の拡大、長期被保険者に対する失業保険金給付日数の延長、季節労働者その他短期被保険者に対する保険金給付の規定の整備、失業保険施設等に関する規定の整備等を内容とするものであります。
労災保険法の一部改正法案は、船員法の適用を受けない漁業を労災保険の強制適用事業とすること、土木建設事業にいわゆるメリット制を採用すること等を内容とするものであります。
また労働省設置法の一部改正法案は、当面の失業情勢に対処し、失業対策の効果的な実施をはかるため職業安定局に失業対策部を設置することに伴う改正であります。
以上の各法案につきましては、目下事務当局において立案中でありますが、六月中旬を目途として成案を得次第国会に提出することとしたいと考えておりますが、提案のあかつきにはよろしく御審議を賜わりたいと存じます。
以上労働行政について私の基本的考え方と三十年度予算の重点及び提出予定法案の概要について申し述べたのでありますが、本委員会を通じ経験豊かな各位の貴重な御意見を今般十分承わり、適切な労働諸施策の実施に万遺憾なきを期して参る所存でありますので、格段の御協力御鞭撻を賜わらんことをお願いしてごあいさつとする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X00719550514/2
-
003・小林英三
○委員長(小林英三君) 労働大臣に対しまする質疑は、次の機会に譲ることといたします。
次に予算の細目につきまして、渋谷会計課長に説明を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X00719550514/3
-
004・澁谷直藏
○政府委員(澁谷直藏君) ただいまの大臣の御説明に関連いたしまして、私から重要事項につきまして、補足説明を申し上げたいと思います。お手元に昭和三十年度歳出予算の概要という刷りものをお配りいたしておりますので、これをごらんいただきながら御説明を申し上げたいと思います。
五ページをお開きいただきまして、最初に失業対策事業費補助でございますが、これの大要は、先ほど大臣の御説明の中にもあったのでございますが、御承知のように失業者が定職につくまでの間、これを失業対策事業に吸収して、その生活の安定をはかるために、緊急失業対策法に基いて、地方公共団体の実施する失業対策事業に対し、その経費の一部を補助するための必要な経費でございます。予算額は三十年度が百六十八億二千万、二十九年度、百十九億五千万に対しまして四十八億七千万の増加となっております。約四割の増加でございます。その内訳を申し上げますると、二つに分れまして、一つは、一般失業対策事業、これは従来から実施して参りましたそのままの失業対策事業でございまして、これも予算額が百三十三億三千万、二十九年度百十九億五千万に対しまして十三億八千万の増加でございます。これの吸収人員は、三十年度におきまして十九万人、昭和二十九年度の十七万人に対しまして二万人の増加となっております。補助単価、補助率は従前の通りでございます。
次に、本年度新しく設けましたのが特別失業対策事業でございまして、これによって建設的な事業効果を追求すると同時に、能率的な労働力を吸収して参りたいという考えでこの事業を設定いたしたのでございます。予算が三十四億九千万、吸収人員が三万人でございまして、これは純然たる新規でございます。
以上が失業対策事業費の概要でございまして、これに伴いまして先ほど大臣のごあいさつにもありましたように、失業対策部を新たに設置するということにいたしまして、定員は一般職員が四十五名、これはすでに三十五人ございます。そのほかに新たに常勤労働者十名を加えまして、合計五十五人で実施して参りたい。
次に七ページに参りまして、失業保険費負担金でございますが、これは御承知のように失業保険法に基きまして、保険給付に要する費用の三分の一及び失業保険事業の事務執行に要する費用のうち、運用収入及び雑収入をもって支弁できない部分を負担するために必要な経費でございます。予算額が三十年度百十七億四百万円、二十九年度の百十九億八千万に対しまして二億七千六百万の減少となっております。そのうち保険給付の負担金は、その下に書いてございますように、百十四億四千四百万円、二十九年度の百十八億九千万に対しまして四億四千六百万円の減少となっております。事業費の負担金が二億六千万でございまして、二十九年度の九千万に対しまして一億七千万の増加となっております。
これの積算の基礎でございますが、一般の労働者に対する失業保険金でございますが、ここに書いてございますように、月平均の支給実人員が四十五万四千人となっております。前年度、二十九年度はどうであったかと申しますと、四十九万二千人という数字になっておるのでございます。これの差額が失業保険金の減少となってくるわけでございますが、これは御承知のように、昭和二十九年におきましてデフレ予算を実施いたしました関係上、デフレ政策の浸透が急激に参りましたために、二十九年度におきましては、失業者の増加が急激にふえて参つたわけでございます。これに伴いまして失業保険金の支給が毎月々々増加して参りまして、年間を通じまして月平均四十九万二千人の支給実人員が出て参ったのでございますが、三十年度におきましては、上半期は大体二十九年度の下半期と同じ程度の初回受給者、つまり初めて失業しまして失業保険金をもらう初回受給者の数が大体前年度の下半期と同じ程度であろう、しかしながら三十年度の下半期になりますると、新たに出てきて失業保険金をもらう受給者の数は月五千人程度減少するであろう、こういろ見通しに立ちまして、三十年度年間を通じますると、支給実人員が四十五万四千人程度ではないかと、こういう見通しに立っておるわけでございます。しかしながらこの見通しの通りに参らない場合も考えられますので、これとは別に、予備費といたしまして四十二億円を計上いたしておりますので、これによりまして、月五万七千人程度吸収可能でございますので、これを合計いたしますと五十一万一千人、二十九年度に対しまして約四%の増加となるわけでございますので、相当失業情勢が見通しよりも悪くなりましても、失業保険金の給付には万遺憾なきを期せられる、こういうふうに考えておる次第でございます。
次に九ページに参りまして政府職員等失業者退職手当でございますが、これは国家公務員等退職手当暫定措置法第十条の規定に基いて、退職した政府職員、日本国有鉄道、日本電信電話公社及び日本専売公社の職員、その他政府関係機関職員の失業中の退職手当を支給するために必要な経費でございまして、三十年度が三億六千万、二十九年度の三億三千六百万に対しまして二千四百万の増加となっております。これは大体二十九年度とほぼ同じような傾向で推移するであろうという考え方でございます。
次に十ページに参りまして、職業補導費でございます。労働力の需給の状況に応じまして求職者に特殊な技能を与え、その就職を促進するため、職業補導事業を実施するために必要な経費でございます。予算額は三十年度が三億五千万、二十九年度の三億三千万に対しまして一千九百万の増加となっております。内訳は、その下に書いてございますように、一般公共職業補導所、これはほぼ従前と同じでございます。次の夜間職業補導、家内職職業補導所、家事サービス補導所の三つが新規でございまして、これは金額は少うございますが、新しい試みとしてここに新規事項として計上されておるのでございます。身体障害者の職業補導所はこれもほぼ従前と同様で変りはございません。
その次に、ただいま申しました一般補導所以下の補導所の個所数、それからこの補導生の定員、補導期間、職員数、補助率等もその十一ページに書いてございますので、これをごらんいただいたらけっこうだと思います。
次に十二ページに参りまして、けい肺等の特別保護費でございますが、これは先ほど労働大臣から御説明申し上げましたけい肺等予防及び特別保護に関する法律案が近く国会に提出されるわけでございますが、その法律の実施に要する裏づけとなる予算額でございます。三十年度が八千二百二十九万五千円、これは当然純然たる新規事項でございます。内容といたしましては、労災補償打ち切り後二年間の給付費、それから健康診断に要する健康診断費が八千四十五万一千円でございまして、そのうちの三分の一を国庫が負担するということで二千六百八十一万七千円、それから次にけい肺の診断器具購入費、けい肺対策審議会費の事務費がそれぞれ百五十万、三十四万四千円でございますが、これがこれに伴う事務費でございます。それの積算の基礎のこまかい事項は十三ページに書いてございますのでごらんいただきたいと思います。
次に十四ページに参りまして、技能者養成費の補助、これも先ほど労働大臣の説明にございました事項でございますが、わが国産業の基盤及び規模、構造等に見られる特殊事情にかんがみまして、中小企業における技能者の共同養成を積極的に援助、育成するため共同養成所施設の運営費に対し、その一部を補助する経費でございます。三十年度新規事項でございまして、一千三百五十万円、補助対象人員は、次の積算の基礎に書いてございますように、七千五百人でございます。これは大きな企業体は自力によりましてそれぞれ必要な技能者を養成しておりますが、中小企業におきましては自分の力だけでは、単独の力ではなかなか必要な技能者養成ができないという実情でございますので、二十人以上の共同養成体の養成工が全国で約三万人おるわけでございますが、三十年度におきましては、それの約四分の一の七千五百人を対象といたしまして、その経費の約四分の一を国庫補助する、それに必要な経費がこの一千三百五十万円でございます。
以上で一般会計の重要事項を終りまして、次に十五ページ、労災特別会計でございますが、労災病院新営費でございます。三十年度の予算額十二億五百四十五万八千円、二十九年度の十一億円に対しまして一億五百四十五万八千円の増加でございます。それの内訳は、十六ページに詳細にそれを掲げてございます。一番左に病院の名前が書いてございますが、工事内容が次の欄に書いてございます。二十九年度までにでき上りましたベッドの数が次にございまして、その次の欄に昭和三十年度の予算で新たにベッドを新設する数が書いてございます。最後の将来計画というのは、これは総合計画、完成計画というふうに書いた方がおわかりいいじゃないかと思いますが、要するに、でき上りの形はこういうことになるという数字でございます。
それで労災病院を終りまして、十八ページ、失業保険特別会計の方でございますが、これは失業保険施設としまして総合職業補導所、簡易福利施設等の保険施設を拡充強化する経費でございます、御承知のように失業保険におきましては約二百五十億の積立金がございますので、その積立金の運用利子収入のおおむね二分の一の五億五千万円を充当いたしまして、これらの保険施設を拡充して参りたいという経費でございます。前年度に対しまして一億五千万円の増加となっております。内訳は、その下に書いてございますように、職業補導所十七カ所、すでに二十九年度で設置着工いたしておるわけでございますが、それを三十年度におきまして引き続き継続工事をやるという計画でございまして、これによって補導種目が八十種目、補導定員数が二千九百四十人、年間延べ三千二百七十人の補導生に技能を授けて参る、こういう計画になっておるわけでございます。簡易福利施設、その次の十九ページでございますが、百人収容の簡易福利施設を一カ所、五十人収容の簡易福利施設を五カ所、これを新たに設置する、こういう計画でございます。
以上で重要事項及び新規事項の説明を終りまして、その他の人件費、事務、事業費は二十ページ以下に総表を掲げてございますが、これは従来とほとんど変化がございませんので、特別に説明は必要ないかと思いますので、以上をもって私の御説明を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X00719550514/4
-
005・小林英三
○委員長(小林英三君) ちょっと速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X00719550514/5
-
006・小林英三
○委員長(小林英三君) 速記を始めて下さい。
なお先ほど申し上げましたように、本件に関する質疑は次の機会に譲りたいと思っておりますが、資料要求等ございましたらして下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X00719550514/6
-
007・相馬助治
○相馬助治君 私委員が変ったので、もし前にそういう説明がこの委員会で行われておるのでしたら、専門員のほらから承わりたいと思っておりますが、その前に労働省にお尋ねしたいのですが、大蔵省と交渉の過程における労働省の第一次の歳出予算案の概要調査書、それが当委員会に前に提出したか、しないか。
それから第二は、昭和三十年度歳出予算提案に当っての新規事業計画書というものがあって、そのうち大蔵省に認められたものと、大蔵省にけ飛ばされたものとあると思うのですが、その両方をそろえた書類を本委員会に提出して説明したことがあるかどうか、この二つちょっと伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X00719550514/7
-
008・澁谷直藏
○政府委員(澁谷直藏君) ただいまの要求事項でございますが、大蔵省に労働省の予算要求の原案を提出したことがあるかという御質問でございますが、これは出したことがございません。それから新規事業の労働省の要求書と、それから大蔵省の査定と、この二つも提出したことはございません。これはいうまでもなく、予算としましては、それぞれの各省から原案を大蔵省に要求いたしまして、大蔵省と折衝の末に政府の予算原案として閣議決定で正式にきまったものを国会に提出するわけでございますので、政府の予算原案の決定する過程の資料を国会に提出することは必要もないのではないかと思われますし、また正式の予算原案を提出いたして御審議をいただいておるわけでございますので、その点は一つ差し控えさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X00719550514/8
-
009・小林英三
○委員長(小林英三君) 速記をやめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X00719550514/9
-
010・小林英三
○委員長(小林英三君) 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X00719550514/10
-
011・相馬助治
○相馬助治君 私は委員長を通じて次の書類を労働省に要求いたします。昭和三十年度歳出予算案の労働省の第一次案、それから大蔵省との折衝過程において第二次案等ができたかどうか知りませんけれども、大蔵省に要求した第一次原案、これを出していただきたい。それからもちろんそこで第一次案を見れば新規事業等が明らかでありますけれども、特に新規事業について説明書があるわけです。労働省としては、昭和三十年度歳出予算を提出するについては次のような新規事業をやりたいという資料があるはずです。従いまして大蔵省から認められたもの、け飛ばされたものを含んだいわば第一次の新規事業目論見案と申しましょうか、その説明書、この二つの資料を次の委員会までに委員長を通じて本委員会に配布されるよう要求します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X00719550514/11
-
012・小林英三
○委員長(小林英三君) 他に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X00719550514/12
-
013・榊原亨
○榊原亨君 本日の労働大臣のごあいさつ中にもありますように、政府のお立てになりました経済六カ年計画並びにその雇用問題、人口問題それらについての一貫した政府の施策を示すに足る数字的資料をお願いいたします。この次まででいいです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X00719550514/13
-
014・小林英三
○委員長(小林英三君) ほかに、今日はまあ労働省関係のなんですが、いずれ近いうちにどっちが先になるか知れませんが、両大臣に対して質疑をいたすわけであります。厚生省関係の方につきましても、やはり資料要求がございましたらこの際お申し出を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X00719550514/14
-
015・相馬助治
○相馬助治君 昨日私余儀ない事情で厚生大臣の説明を聞き落して、書類において私は承知したのですが、私が今労働省に要求したような資料の要求は委員長になかったでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X00719550514/15
-
016・小林英三
○委員長(小林英三君) なかったです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X00719550514/16
-
017・相馬助治
○相馬助治君 厚生省に対しましても、昭和三十年度歳出予算の大蔵省に対する第一次要求書、それからそれを見ればおのずから明らかでありましようけれども、いわば新規事業等についての説明書、それを付して本委員会に配布していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X00719550514/17
-
018・榊原亨
○榊原亨君 厚生省に次回までに次の資料をお願いいたしたいと思います。わが国におきますところの結核患者の開放性並びに非開放性の患者の統計的数字並びに結核病床、言いかえますならば国立病院、国立療養所におきますところの結核病床、一床に対するところの費用、それが今日まで社会保険並びにそのほかの生活保護法等の医療費に比較しまして生じた赤字、その数字をお示し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X00719550514/18
-
019・小林英三
○委員長(小林英三君) 他にございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X00719550514/19
-
020・田村文吉
○田村文吉君 今の結核の問題について、きのう感じたのですが、あるいは私は初めて社会労働委員になったので知らなかったのかもしれませんが、何か結核の趨勢がどんなふうに進んできているのか、そういうようなものを、文書でできておるのじゃないかと思いますが、そういうようなものがございましたら、一ぺん一つお願いしたいと、こう思うのですが、もしなければ、できるだけこまかい点を私は質問しなければなりませんから、そうでなくて済むように一つ結核、らいその他の重要な病気ですね、そういう問題がどんなふうに推移してきているか、そういうものを一つお示し願えればけっこうなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X00719550514/20
-
021・小林英三
○委員長(小林英三君) ただいまの各委員の資料要求につきましては、委員長を通じまして次の機会までに提出いたさせます。
なおこの機会に労働政務次官の高瀬傳君からごあいさつがございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X00719550514/21
-
022・高瀬傳
○政府委員(高瀬傳君) 私が労働政務次官の高瀬でございます。どうぞよろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X00719550514/22
-
023・小林英三
○委員長(小林英三君) それでは本日はこれにて散会いたします。
午前十一時十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X00719550514/23
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。