1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年七月二十八日(木曜日)
午前十時二十一分開会
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委員の異動
七月二十八日委員横山フク君及び吉田
法晴君辞任につき、その補欠として草
葉隆圓君及び河合義一君を議長におい
て指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 小林 英三君
理事
加藤 武徳君
常岡 一郎君
竹中 勝男君
山下 義信君
委員
草場 隆圓君
榊原 亨君
高野 一夫君
谷口弥三郎君
松岡 平市君
高良 とみ君
田村 文吉君
森田 義衞君
阿具根 登君
山本 經勝君
相馬 助治君
有馬 英二君
寺本 広作君
長谷部廣子君
委員外議員
長島 銀藏君
衆議院議員
長谷川 保君
植村 武一君
山下 春江君
早川 崇君
政府委員
総理府恩給局長 三橋 則雄君
法務省刑事局長 井本 臺吉君
厚生政務次官 紅露 みつ君
厚生省公衆衛生
局環境衛生部長 楠本 正康君
厚生省薬務局長 高田 正巳君
厚生省引揚援護
局長 田邊 繁雄君
労働政務次官 高瀬 傳君
労働省職業安定
局長 江下 孝君
事務局側
常任委員会専門
員 多田 仁己君
説明員
法務省刑事局参
事官 勝尾 鐐三君
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本日の会議に付した案件
○調理改善法案(片柳眞吉君外七名発
議)
○クリーニング業法の一部を改正する
法律案(衆議院提出)
○母子福祉資金の貸付等に関する法律
の一部を改正する法律案(衆議院提
出)
○失業保険法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
○未帰還者留守家族等援護法の一部を
改正する法律案(内閣提出、衆議院
送付)
○戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部
を改正する法律案(内閣提出、衆議
院送付)
○理容師美容師法の一部を改正する法
律案(内閣提出、衆議院送付)
○覚せい剤取締法の一部を改正する法
律案(衆議院提出)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/0
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001・小林英三
○委員長(小林英三君) ただいまから委員会を開会いたします。
本日は、調理改善法案、クリーニング業法の一部を改正する法律案、母子福祉資金の貸付等に関する法律の一部を改正する法律案、以上三案を議題といたします。提案理由の説明を求めます。
まず、調理改善法案に対しまして、参議院議員長島銀藏君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/1
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002・長島銀藏
○委員外議員(長島銀藏君) 提案理由の説明をいたします前に、一言申し上げておきたいと思います。
この調理改善法案と申しますのは、片柳眞吉君外七名の発議者となっておりまして、賛成者は、ここにいらっしゃる委員長もお入り下さっておるような法案でございしますが、大体超党派的に提案をいたしていただくことになっておりましたが、社会党右の諸君が、やはりこの会期のいろんな関係上急ぎましたために、調印をおとりすることが大へんおそくなっておりまして、この発議者の中に載っておらないわけでございますが、まあ以上のような次第で、非常に急いだためにかような結果になったことをおわび申し上げます。なお、私はこの委員会にちょうど長い間、今まで御厄介になっておりまして、在所へ帰ったような気持がしております。どうぞ何分よろしくお願いいたしたいと思います。
それでは提案理由の説明を申し上げます。
ただいま議題となりました調理改善法案の提案理由を御説明申し上げます。
食品の調理のいかんは、国民の食生活に対し種々重大な関係を有するものであります。
まず、公衆衛生の面におきましては、伝染病を予防し、中毒事件等各種の飲食に起因する危害の発生を防止いたしますためには、食品の選別、処理等の各段階を通じまして十分な注意を要するものでありまして、相当の知識、技能及び経験を有する調理人がこれに当ることが必要であります。
また、食生活の改善は、国民経済の観点からいたしましても、国民各自の健康の増進、家計の合理化等の見地からいたしましても、ますますその重要性を増して参っておるのであります。すなわち、わが国の食糧特に米穀、小麦等の輸入額が相当の額に上り国際収支上重圧となっておりますことは、周知の事実であるのみならず、米食の偏重が国民の健康に著しい悪影響を及ぼしていることも今日識者により指摘されている事実でありまして、従来の食生活の内容を転換して食事内容の合理化、食慣習の改善をはかりますことは、まことに緊要なことであります。さらに、食品の利用に当りましてその効率化をはかりますことは、食糧事情の緩和いたしました現在におきましても、依然としてその重要性を失いません。また、栄養の改善が、食生活の改善の重要な一環をなすことは、申すまでもないことであります。
しかして、食生活改善の目的を達成いたしますためには、調理方法の改善、向上が重要な意義を有するのであります。すべての食品は調理を通じまして国民の食膳に供せられるのでありまして、いかに栄養豊富な食品も、また、合理的に構成された食事内容も、好んで摂取されるように調理されたものでなければその効果を発揮することが不可能であります。上述の諸目的はすべて、調理を媒介としてのみ達成されるのでありまして、その成否は、調理方法のいかんによって左右されると申しても過言ではないと信じます。
以上調理の重要性につきまして申し述べた次第でありますが、調理方法を改善、向上いたしますためには、その主たる担当者である調理従業肩の資質の向上をはかり、また、これらの者が社会一般の調理に対し指導的活動をなし得る道を開くことが必要かつ適当なことではなかろうかと存じます。また、現在各都道府県におきましては、すでに条例または規則により調理士制度を設けており、その数も二十六に上っておりますので、この際、国が、これを統一して、全国的制度といたし、適切な措置を講ずることも必要な段階に達しておると考える次第であります。
以上本法案の提出の理由を申し上げましたが、次に本法案の内容について簡単に御説明申し上げます。
第一は、調理士の制度に関するものであります。すなわち、食品の調理を業とする者は都道府県知事の免許を受けて調理士となることができるものとし、調理士以外の者は調理士の名称の使用を禁止され、また、政令で定める集団給食施設の管理者または政令で定める飲食営業を営む者は、調理士を置くようにしなければならないものといたしております。
第二は、指定法人に関するものであります。すなわち、一定の要件を備え主君大臣の指定を受けた法人は、調理士のうちから社会一般の調理に対する指導を行い得る適格者を、政令で定める基準に従って登録することができるものとし、この登録を受けた者は、集団給食施設の管理者、飲食営業者または講習会等の主催者から申出を受けたときは、その申し出に応じて、調理の指導を行うように努めなければならないことといたしております。
第三は、調理士の組織する団体に関するものであります。すなわち、調理方法の改善または調理士の資質の向上をはかることを目的として調理士の組織する団体に対し、主務大臣は、必要な助言または援助を与え得ることとし、また、都道府県知事は、調理士試験を行います場合には、技能に関する面につきましては、この団体の意見を聞くことができることにいたしております。
なお、以上申し述べましたうち、第二及び第三の点につきましては、その事項が国民経済的見地からする食糧資源の消費の合理化とも関係する点を考慮いたしまして、この部分につきましては、主務大臣を厚生、農林両大臣と
いたしております。その他、罰則を規定し、さらに、当分の間、一定の要件を備える者は試験を要せずして免許を受け得ることとし、また、従来都道府県知事の免許を受けて調理士となっている者に対しましては、一定期間、この法律による免許を受けた者とみなすこととする経過的措置を講じております。
以上が本法案の提案理由及びその内容の要旨でございます。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことお願い申し上げます。
なお、本日私は前座をつとめまして説明を申し上げたのでございますが、あと順次この発議者からこの提案に対しまする質疑応答に応ずる考えでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/2
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003・小林英三
○委員長(小林英三君) 次は、クリーニング業法の一部を改正する法律案につきまして、衆議院議員長谷川保君の提案の理由の説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/3
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004・長谷川保
○衆議院議員(長谷川保君) ただいま議題となりましたクリーニング業法の一部を改正する法律案につきまして提案の理由を御説明申し上げます。
昭和二十五年本法が制定公布されて以来五年を経まして、クリーニング業の発展もまた著しいものがあり、その実態に即した公衆衛生上の措置を講ずることが必要となりましたので、現行法を整備してクリーニング業の適正な経営を期するため本法案を提出した次第であります。
この法律案の改正のおもな点を申し上げますと、第一に、従来のドライクリーニング師の制度を廃止して、新たにクリーニング師の制度を設けたことであります。従来は、ドライクリーニング営業に対してのみ一定の衛生的知識と技術を要求していたのでありまして、その現れがドライクリーニング師制度でありますが、一般のクリーニング営業についても、昨今のように洗たく物の処理に関する方法が衛生的、技術的に高度になって参りますと、一定の衛生的知識と技術とが伴わなければ、衛生的かつ合理的な処理を望むことができないのでありまして、この改正によってこれを確保しようとするものであります。
すなわち、営業者は、常時五人以上の従事者を使用するクリーニング所ごとに一人以上のクリーニング師を置かなければならないこととしたことであります。従来、ドライクリーニング営業で従事者十人以上を使用する場合にのみドライクリーニング師を置くことになっていたのを、ドライクリーニングに限らず、クリーニング営業全般を対象とし、かつ、その実情を考慮しまして、この際は、常時五人以上の従事者を使用するクリーニング所について適用することとしたのであります。
第二に、営業者がクリーニング所について講ずべき衛生上の措置について、都道府県知事が地方の実情に沿い得るような衛生上必要な事項を定めることができることとしたことであります。これは、クリーニング所の施設の構造設備及び管理について、現状及び地方的実情に即し得るような必要な措置を行わせようとするものであります。
第三に、クリーニング所における営業についての公衆衛生上の措置またはクリーニング師設置の規定に違反しているときは、従来は、都道府県知事が直ちに営業停止または閉鎖処分を行うことができたのでありますが、まず都道府県知事が措置命令を出し、その措置命令に従わないときに、初めて営業停止または閉鎖処分を行うことに改めたのであります。
第四に、クリーニング師の試験科目に、新たに洗たく物の処理に関する技能を加えたことであります。これは、従来の試験の運用からみましても、クリーニング業の現状から考慮してみましても、きわめて必要を規定と思料されるのであります。
以上がこの法律案の提案理由及び概要でありますが、何とぞ慎重御、審議の上、すみやかに御議決あらんことをお願い申し上げます。
なお、本法案は衆議院の民主、自由、両派社会党の共同提案であることを念のため申し添えます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/4
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005・小林英三
○委員長(小林英三君) 次は、母子福祉資金の貸付等に関する法律の一部を改正する法律案の提案理由につきまして、衆議院議員、植村武一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/5
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006・植村武一
○衆議院議員(植村武一君) ただいま議題となりました母子福祉資金の貸付等に関する法律の一部を改正する法律案は、各党共同提出にかかるものでありまして、私は提案者一同にかわりまして、その提案理由を簡単に御説明申し上げます。
わが国における母子家庭は御承知の通り生活能力はきわめて乏しく、しかもおおむね幼少の子女を抱え一家の生計を営みつつ母としてその子女の養育をはからなければならないという社会的、経済的重圧にあえいでいるのが、実情であります。これが福祉対策としては昭和二十七年母子福祉資金の貸付等に関する法律が実施せられましてややその光明を見出し得たのでありますが、最近における一般経済状勢の悪化は母子家庭に対しての影響は特に著しくなってきましたので、今回その法律の一部を改正し、不遇な母府家庭の福祉を少しでも増進しもってその生活意欲を助長せしめ、経済的自立の助成に寄与ぜんとするのがその提案の趣旨なのであります。しかしてその改正の第一点は、修学資金のうち、大学に就学している者に対しての貸付額は現行法では二千円以内となっておりますが、これを三千円以内とした点であります。母子家庭がその子女を教育することによって将来自立更生する機会を与えることは最も望ましいことでありますが、現行の貸付額では実際の就学に際し容易でないものがありますので、特に必要がある者に対して三千円以内を貸付けてこれが有効なる活用をはかることとしたものであります。
改正の第二点は、事業継続資金に対した六ヵ月の据置期間を設けた点であります。事業継続資金はその資金の性質上現行法では据置期間々設けていないのでありますが、当初の予想に反し思わしくいかない事業に従事している母子家庭がこの資金を借り受けることによってその事業の建て直しをはかる事例がきわめて多いのであります。このような場合には事業が再び軌道に乗るまで最小限度の据置期間を設けてこれが適正な運用をはかることとしたものであります。
以上が改正案の大要でありますが、何とぞ御審議の上すみやかに可決せられんことをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/6
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007・小林英三
○委員長(小林英三君) 以上三案の質疑は次回に譲りたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/7
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008・小林英三
○委員長(小林英三君) 御異議ないものと認めます。
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009・小林英三
○委員長(小林英三君) 次は、失業保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。御質疑を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/9
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010・山下義信
○山下義信君 ちょっと速記をとめて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/10
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011・小林英三
○委員長(小林英三君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/11
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012・小林英三
○委員長(小林英三君) 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/12
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013・阿具根登
○阿具根登君 御質問申し上げますが、本改正案を出された趣旨は、あくまでも赤字によるものかどうか、赤字によるものであって十億の金を浮かすための法律案であるとするならば、現在まで二百六十億からの黒字があった場合は、何らこういう懸念もされずに、たまたま十億の赤字があったからといってこういう法の改正々出しておられますが、数百億に上るこういう黒字は、そういう場合に使用するのが第一の私は目的だと思うのでございます。そうすれば二十九年度の十億の赤字を、この二百六十億からのかしたとしても、まだ二百五十億からの金が浮いておるはずである。それをなぜ急にこういう法律の改正をしなければならなかったか、この点をまず第一に御質問申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/13
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014・江下孝
○政府委員(江下孝君) お答え申し上げます。昨日申し上げましたように、赤字が単に出たから改正するというわけじゃございません。これはとにかく非常に短期被保険者の乱用が目立っておるということから、将来このままこれを放置いたしますならば、相当保険経済が苦しくなる。特に二十九年度には十億の赤字だ、先生御承知の通り本年度予算におきましては、予備費を含めまして失業保険の支出に充てます金は二百七十五億、昨年の実績から比べますと二十億ふえておる。それだけ政府としては支出をふやしておるのであり、十億減らすというのでなくて、これらの合理的な給付期間の調整をやることによって、そして今まで不必要の、不必要と申しますと語弊がございますが、必ずしもいかがかと思われたようなものを、できるだけ善意の人に給付する、こういう建前でこの保険の基礎を確定しておきたい、こういうつもりでやっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/14
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015・阿具根登
○阿具根登君 きのうの説明によりましても、また法の建前から見ましても、季節労働者に対しては失業保険を支給しなければ支給しなくてもいいんだ、こういうことをはっきり言われておったのでございますが、現在こういう改正案を出さなければならなかったような事情に至るまで、普通ならば法を建前にとって、情的には出してあげたいものも出さないのが、今までその関係の方々のやられたことだと思う。何がゆえにそういうことを、われわれがこれに対する質問をした場合に、法によっては支払わなくてもいいんですが、支払っておりますと、こういうようなことになったか、その理由を御説明願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/15
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016・江下孝
○政府委員(江下孝君) 季節的に雇用されるものという内容について昨日ちょっと申し上げましたが、これは事前において判定することが非常に困難で、特に短期な、他に本業を有しておる短期な季節的雇用者というものは、比較的事前において把握できるものでございますが、たとえば北海道に今から自分は行くといった場合に、果してこの人は一年で帰るか、半年で帰るかということは、なかなか安定所の窓口では一人一人になりますと、正確につかみがたいのであります。そして今までといたしましては、一応二、三年前まではこういう事例があまり起りません。つまり失業保険をこれら季節労働者が使うということは、ほとんどなかったのでございますが、両三年来失業保険制度の均一制度の弱点をついた季節的利用が非常にふえてきた、こういうことでございます。何とかして私どももこれをチェックいたしたいということで、事務的にはやってみたのでございますが、具体的にこれを判定する場合には、季節的な雇用というものについては、現実の問題として把握が困難であるということから、まあ行政的に一応大部分、全部じゃございません、相当の部分を適用したという点はございます。この点についでおしかりを受けることはごもっともと思いますけれども、行政上そうせざるを得ないという点を御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/16
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017・阿具根登
○阿具根登君 臨時雇用の工員、臨時工でございますが、こういう者に対してはどういうお考えを持っておられるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/17
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018・江下孝
○政府委員(江下孝君) これも昨日ちょっと触れたのでございますけれども、まあ季節的なものとごく類似した考え方で、最近におきましては安定所の窓口の職員等に聞いてみますと、大体最初から雇用期間を半年というように限って雇われる方が非常に多い。これはもちろん雇用情勢が苦しいということで、臨時工が多くなったという点もあると思いますけれども、事情をよく調べてみますと、どうも計画的に、窓口でかような点が計画的に行われておるという点が非常に把握されるのでございます。で、某々工場等におきましても、計画的に最初から失業保険を一定人員支給することを前提として人を雇っておるという実例もあがっております。こういうことになりますと、結局長期の保険をかけた者がやめましても百八十日、短かい者がむしろこれを乱用して、どんどん保険を食う、これじゃ結局その乱用する人のためにせっかくの長期被保険者が保護されない。将来にわたって、むろん保険料率の値上げ等が起りました場合には、これらの人の利益が侵害される、こういうことから私どもはやはりごく短期の被保険者については、この程度の規制はやむを得ないと考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/18
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019・阿具根登
○阿具根登君 失業保険法が制定されてからまだ八年にしかならないと私は思っておるのですが、今度の改正案では十年以上の人が二百七十日、一見すれば非常に長期間働いた人に対して有利だというような感覚を与えますけれども、現実はこの法案が制定されても、二年間は十年以上というような人が一人もおらない。こういうことを考えます場合に、改正の表面はいかにも長期に勤めた人に有利にやるんだというようなことをにおわしてあるけれども、実際は二年間はそういう適用される者は一人もおらない。そうすれば、ただ単なる十億を浮かすための、この二年間というのは口実に使われたのではないか、こういうような考えもするのでございますが、これに対するお考えはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/19
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020・江下孝
○政府委員(江下孝君) ごもっともな御質問であると思いますが、これは私どもには制度の立て方の問題だと思うのであります。私ども当初考えましたのは、五年以上の者だけについて一応案を考えたのでございましたけれども、正直に申し上げまして、職業安定審議会等の意向によりますと、これは五年以上については一ヵ月、それ以外については慎重に考えてもらいたいという意見等が非常に強く出ました。で、私どもといたしましては、そういう点にやや羊頭狗肉のきらいはあるけれども、しかし現実には、制度として五年と十年という差をつけてやることは、これは適当でございますので、この案で社会保障制度審議会に諮問いたしまして、最初の答申を得ておるのでございます。ややその点についてここ二年云々という点はございますけれども、しかし将来におきまして、必ずこれらの十年以上の人が九十日という相当なボーナスをもらえるのでございますので、制度としては私はもちろん改善だと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/20
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021・山本經勝
○山本經勝君 きのう局長の方で御答弁なさった際にも、しばしば使われた言葉ですが、制度の乱用という言葉がございます。それによって赤字が生じたというような意味に受け取っておるのですが、実はこの資料に出されております中央職業安定審議会からの答申といいますか、によりますというと、季節的労働者及び循環的労働者のように制度の乱用を行うもの云々というのがあるわけなんでありますが、これについて、きのう吉田さんからもちょっと御質問があったように考えるのでありますが、具体的にその実態を御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/21
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022・江下孝
○政府委員(江下孝君) 昨日申し上げましたように、この二十八年度におきまして、ある程度正確に把握いたしておりますものが、季節的労務者としまして約八万人おる、これらの八万人はまあ全国各地にございますが、特には東北神方が主体をなしております。毎年大体におきまして、四月、五月ごろから主として土木事業でございますが、土木建築事業に出かける。出かける先は北海道が主体になっておりますが、必ずしも北海道には限らないのでございます。おおむね雪の降る前、十月から十一月ごろになりますと帰って参ります。その間相当高い賃金を実はもらっております。季節的労働者というのは雇用期間が短かいものでございますから、相当賃金も一般より高いのでございますが、その高い賃金を基礎にいたしまして、国に帰って俸給の六割の失業保険をもらう、こういうことでございますが、これが二十九年度におきましては、十三万五千人ということでございます。そのほか、これに類似するようなものが相当実はあるのでございます。各地におきまして私どもが把握いたしました数字によりますと、相当こういうことが全国的に最近は行われつつあるという点を認めておるのでございます。循環的な雇用と申しますのは、先ほど阿具根先生の質問に答えましたように、相当の会社でございましても、一定数の労働者を必ず失業保険によって賃金の肩がわりをすると申しますと、少し言い過ぎかもしれませんが、そういうような形で失業保険を使っておるのでございます。六ヵ月だけ雇用して、その部分については、仕事がひまになると失業保険、こういう計画的な失業保険の雇用というものをやられましては、これは失業保険といたしましては、どうしてもこれは苦しくなるわけであります。その根源を調べれば、六ヵ月という一つの制度が原因をなしておる、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/22
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023・山本經勝
○山本經勝君 今の問題に関連してさらにお伺いしておきたいのは、政府ではかって帰休制度というのを問題にしたことがありますが、むしろ政府ではこうした方法で当面の企業整備や、あるいは企業の合理化をはかったような実例があるのです。むしろ、こうした行政の中からいわれる労働対策の一環として、帰休制度等を奨励された事実がある。このことは否定ができないと思うのですが、そういう状態から、今言われるような循環労働者というものが、今になって失業保険の対象から除外されるというようなことは、実に私ども理解できぬ点があるのです。わかりやすく御説明を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/23
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024・江下孝
○政府委員(江下孝君) お話の点ごもっともだと思います。きのういろいろ申し上げましたように、この法律では決してそういう循環的、また季節的なものを全面的に排除してないのでございます。すなわち九十日というものについては支給するわけであります。あの当時われわれが帰休制度を打ち出しましたときは、御承知の通り三ヵ月という線でやっておるのであります。今度のやつはそれに合うわけであります。決してこれは奨励するわけではございませんけれども、今までの失業保険の運用の状態、過去の実態から申しまして、これだけのものを支給をするということに、実は今度はむしろ積極的に踏み込んだという点の方が正しいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/24
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025・山本經勝
○山本經勝君 この失業保険事業月報を見ますというと、年々適用事業所数も増大しておりますが、特に被保険者数も相当大幅に上ってきております。
それからまた保険料収納済額も逐次上昇しておるようであります。この保険料の収納済額というものについて伺っておきたいのは、保険料は勤労者が納める場合に、源泉徴収をされて、そうして事業主が納める。その場合に事業主が納める収納額の中に、滞納せられておるものが相当あるのじゃないかと思いますが、この点はどういう実態になっているか、御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/25
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026・江下孝
○政府委員(江下孝君) 現在まで積り積りまして約二十億の滞納額があります。大体毎年の平均といたしましては、調定額の九六%を収納いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/26
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027・山本經勝
○山本經勝君 そうしますと、今赤字になっておると言われますが、この未徴収額を徴収すれば相当赤字は出ないことになるのじゃないですか。また三十七条でありますかに規定されております。百分の百五十を超過した支給額の場合は、再審議して適当な処理をなさなければならないということになっておりますが、この未徴収額を徴収するということをすれば、こういうことにならぬのじゃないかと思いますが、この点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/27
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028・江下孝
○政府委員(江下孝君) ごもっともな御質問ですが、実は収納済額につきましては、正直に申し上げますと、相当まあ整理してしまわなければならぬものも入っております。会社側がつぶれたとか、その他の理由で、現実には滞納を取ることが不可能だというのが相当部分を占めております。従ってこれは私どもの整理が、手が足りないためにおくれたという点もございますが、これは整理をしてみますれば、僅少な滞納額にしかならないということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/28
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029・山本經勝
○山本經勝君 先ほどのお話のように、二十億に上る多額の滞納があって、そうしてその実態が政府で掌握ができないということは、ちょっとうなずけない。事業者がつぶれて、もうすでに徴収の対象も何もない、かような実態のがどれくらいあるのですか。具体的に御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/29
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030・江下孝
○政府委員(江下孝君) ざっと計算しまして十二、三億はそういうものがあると思います。私どもの方では把握していないと申し上げたのじゃない。そういうものが現実には徴収が不可能な状態にある。ただ保険の一応の建前としましては、時効が完成しない限りは取るということになっておりますので、一応滞納額としては上りますけれども、しかしながら現実には徴収がもうできないというのが、その程度あるということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/30
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031・山本經勝
○山本經勝君 そうなると、ますます私は理解ができぬのですが、労働者は、この法律の適用を受ける事業所においては、当然給与の中からいわゆる源泉徴収されて、事業主がこれを納めるというのですが、労働者は納めているのですが、ところが納めている金が政府に渡らないというのは、事業主が怠慢であるか、その他に流用したか、何かであると思う。つぶれると申しますが、つぶれていなくても問題があろうと思う。そこら辺はもっと責任ある監督新の立場から御説明をしていただかないと理解ができない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/31
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032・江下孝
○政府委員(江下孝君) 滞納処分は、これは全部そういう工場についてはやっております。それから賃金からもちろん引かれるということが大部分でございますが、相当これは事業主としては、最近のデフレ政策によりまして運営が苦しいものでありますから、そうでなくて、全然未納というものも相当あるようでございます。処分は引き続きやって、国の収入の道を確保いたしておるのでございますけれども、何しろ昭和二十二年から始めた制度でございます。二十二年からの総滞納額の数でございますので、全体からいたしますと、そう私どもは大きな額ではないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/32
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033・山本經勝
○山本經勝君 大体先ほどのお話ですと、十二、三億は取れないのがあると言われたのですが、なお取れるのは七、八億ぐらいあるわけですが、そうすると十億の赤字が出るのを、それを取り立てれば、むしろ埋まっていくのじゃないですか。私は先ほどから伺いたい問題は、政府においてはデフレ政策をとっておられる。そのために事業が不振になったり、経営困難になったり、労働者から取り立てた保険料を事業主が自分の事業に流用したり、あるいはどういうものに使ったかわけがわからぬ形で納めておらないというようなことになりますと、その責任はむしろ政府にあるのじゃないかと思います。政府委員も言われるように、デフレ政策の影響ということをお考えになるならば、むしろこうした縮減するような方向に持っていかれなくてもやれるのじゃないか、こうやるべきじゃないか、こういうように考えておるのでありますが、一つ次官の方から、こうした基本的な問題についての考え方を御説明いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/33
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034・江下孝
○政府委員(江下孝君) 失業保険の滞納でございますが、これはもちろん労働者も負担をいたします保険料でございますので、政府といたしましては、事業主に対して相当厳重に滞納の督促その他の処置を実施をいたしておるのでございます。法律の建前は、先生御承知の通り、事業主がこれは納入の責任に相なっております。労働者がまたその中の半分を負担するが、納入責任は事業主でございます。そこで私どもといたしましては、事業主に対して手をかえ品をかえ、この労働者の権利が棄損されないようにということで、保険料の滞納については十分督促いたしております。もちろん、あるいは手が足りないという点もございまして、万全とは申し上げられないかもしれませんけれども、失業保険に関する限りは、私は他の保険に比べて相当滞納の整理等については成績を上げておるというふうに私は考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/34
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035・山本經勝
○山本經勝君 そういう意味で伺っておるのじゃなくて、先ほど局長自身おっしゃったように、デフレ政策の影響ということをおっしゃっておられますが、もしデフレ政策の影響で、こうした企業の中における労働者から源泉徴収しておきながら、事業主がそれを納めなかったということであれば、なおさら政府の責任であると思います。デフレ政策の影響でこういうことになったというようなことになれば、なおさらのこと、十億の赤字が出るならば、それくらいは政府の責任において、賃金の中から納めた労働者に対する権利の保障を与えでやるのが私は当然だと思うのでありますが、この点に関しては次官の方から御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/35
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036・高瀬傳
○政府委員(高瀬傳君) 御意見でありますが、やはり敗り立てる方は一応取り立てていきまして、積み立てばやはり積み立て、こういうふうにはっきりとその辺を区別して保険経済を立てていきたいというふうに考えておりますので、ただいまおっしゃったようなお考えには、にわかにわれわれの方としては賛成することができないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/36
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037・山本經勝
○山本經勝君 それが実は全く納得いかぬことなんで、実ば今言われるように取り立てる方は取り立てる、これは当然のことだと思うのです。ところがその労働者は納めているのです。労働者は納めている。被保険者として救済の対象になる労働者は自分の賃金の中から納めている。しかもそれがデフレ政策のために企業がうまくいかないとか、あるいは経営難のためにそれを流用することによって納めていない。そうなりますと、労働者の責任じゃこれはないと思うのです。いわゆる納めるべき責任者である事業主の責任でありますが、それが政府のとっているデフレ政策の影響であるというなれば、むしろそれらの労働者に対するものは、政府自身の責任として守られるべきじゃないかということを私は申し上げているのです。その点のお考え方を一つ伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/37
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038・江下孝
○政府委員(江下孝君) 考え方としましては、私はやはり保険料というものにつきましては、これはほかの社会保険も皆同様でございますが、事業主に対して保険料納入の義務がある。かりに逆の場合を考えられるのでございますが、どうかして間違いまして、労働者から保険料を差し引かなかったという場合におきましても、これは事業主が保険料納付の義務を持つ、逆の場合におきましても事業主が保険料納入の義務を持つわけでございます。制度としてそういうようにでき上っておるわけでございますので、その分について、かりに私は労働者の保険料取り立てのものを納めなかったというものがありましても、それは政府のデフレ政策の結果であるから政府がそれについて補償するという点にはどうも御賛成申し上げかねるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/38
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039・田村文吉
○田村文吉君 それに関連。今のお話は私質問された方ももっともな意見があると思うので、これはこの法律ができる時からの問題なのです。それで実際の扱いの上で事実労働者は保険料を払っていた。会社の方で仕事の金の都合がつかなんで納めておらなんだというような場合があった場合、実際の扱いにはそういうものを払うような方法の運用ができないものですか。しているのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/39
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040・江下孝
○政府委員(江下孝君) かりに保険料の滞納がございましても、その滞納事業所の離職者は、一応六ヵ月以上働いた、賃金をもらったということがあれば、これは滞納とは関係なしに保険金は出す、こういう建前に相なっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/40
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041・阿具根登
○阿具根登君 関連して。今のに関連してですが、今田村委員言われましたように、労働者は金を出している、ところがそれが政府に納まっておらない、それが九億も十億もあってくる。そういうことになって、今度それで赤字が累積してくる。今度十億からの赤字を処理するためにこういう法案を出されておるけれども、結局は損をしたのはだれかということを言っているのだ。労働者は金を出している。損をしたのは労働者であり、もうかったのはだれかといえば、労働者から吸い上げて、それを政府に納めなかった人でしょう、それは。そうすれば、その間に立って損をした労働者に対して、政府はどういう考えを持っているかということをこちらから聞いているわけで、その点はっきりしてもらいたい。労働者は言われるだけの金は出しておる。それが政府に入っておらない。そういうことが積り積ってこういう法案を出さなければできないようになってくる。これは今九億だからまだ少いとおっしゃるかもしれないけれども、もうちょっとこれが進んでくれば、これが二十億にも三十億にもなってくる。そうすればまたこういう法案が出てこなければできない。そうすれば正直者はいつもばかを見るようになってくるのではないか。この労働者に対してどういうお考えを持っておられるかということを質問しておると思うのでございますから、はっきりと御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/41
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042・江下孝
○政府委員(江下孝君) これはまあ結局現在の制度から出ます問題でございますが、二十二年から三十年までこの保険料を徴収しましたのが千億以上になっておるわけでございます。そのうちの実は二十億でございます。そこでほかの保険制度に比べますれば、この失業保険の徴収成績は非常に私は上っておると思うのであります。そこで再々申し上げますように、これは労働者が納めているという保険料でございますので、事業主に対しては私どもはできるだけこの労働者の納めた保険料は当然正当な国庫に帰属すべきように、これは努力をいたしております。いたしておりますから、相当な成績が上っております。かりに今申し上げましたように、労働者の納めました保険料が国に納まらなくても、保険金の支給という面については支給をする。それから全体の保険経済から申し上げました——先ほど阿県根先生の質問に答弁いたしましたように、十億の赤字が出たからすぐ法律改正をするということではなくして、むしろこの保険給付の全体の予算といたしましては昨年よりよけい組んでおる。ただ乱用という面からこの保険制度をできるだけ合理的に基礎を与えるために改正をするという点でございますので、この点は御了承願えると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/42
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043・阿具根登
○阿具根登君 ただいま言われましたように、二十二年から一千億の金を徴収しておる。その中にわずか取れないのは九億だと、これは私は成績いいと思います。そればわかります。これは一千億から集めた金の中から二百六十億、四分の一からの金は黒字として残っている。なお残っているにもかかわらず、去年は十億の赤字にならざるを得なかったと、こういうのが一つのやはり原因になっていると思うのです。千億本集めたうちに九億しが集まらなかったのだから、成績はいい方じゃありませんかと言われるけれども、二百五十億から金が余っているのにもかかわらす、こういう法律案を作らねばならないようになったということは、この制度を考えなければ、次々に二十億、三十億というような赤字が出てくる心配がある。またそれを悪用する心配があるから作ったのだとおっしゃるのです。そうすれば私たちとしては、わずか九億と言うけれども、その赤字の原因になっておる十億でさえもそういう心配があるならば、今後デフレがこのまま続くとすれば、それ以上に二十億、三十億というような心配が出てくるではないかということを質問しているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/43
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044・江下孝
○政府委員(江下孝君) 先ほど申し上げたと思うのですが、その問題は滞納の問題とも若干は関連いたしますけれども、まあ積立金から実は現実に昨年度におきましては十億ばかりおろしたわけであります。そのための確かに積立金でございます。従ってもし正常なこの保険の運用によりまして赤字が出ました場合には、法律の許容する限度において積立金からおろすということはわれわれも考えているわけでございます。ただ再々申し上げますように、今回の改正におきましては、これはむしろそういう一部の特定な人が不当に、特別に失業保険の恩恵に浴し過ぎて、本来の善意の者の利益を害するという点がございますので、この間の調整をはかる。それから全体の保険金の支出におきましては、決して政府はこれによって全体を減らすというようなことは全然考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/44
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045・田村文吉
○田村文吉君 もう少しメリット制を強くする考えはありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/45
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046・江下孝
○政府委員(江下孝君) 実は諸外国の例々見ましても相当徹底したメリット制をしているところもございます。私も実は今回の改正におきまして、相当いろいろその点について考えたのでございますが、何と言いましても今まで現実にやってきた制度が六ヵ月働けば百八十日出すという、非常に簡単直截な制度でございまして、これを急激に精細なメリット制に変えるということは、これはやはりその点からどうしても問題が大きいだろうということで、あわせましてまあわれわれの事務的な行政能力の点、日本の零細企業の非常に多いという点本考えまして、今回は簡明直截なこの給付期間によるメリット制ということを考えた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/46
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047・田村文吉
○田村文吉君 条文のこまかい問題になるのでありますが、三十四条ですね、三十四条の五が一、二、三、四、五、六号までございまして、それから第二項ですか、第二項のあとに六と書いてありますのは、三十四条の六なんですか、どういう意味のこれは六ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/47
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048・江下孝
○政府委員(江下孝君) 三十六条の次
の次の行に六とありますのは、これは三十六条の第六号という意床でございます。「納期を繰り上げて徴収するとき。」といいますのは、三十六条の第五項の第五号の次に第六号を加えると、こういう意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/48
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049・田村文吉
○田村文吉君 「納期を繰り上げて徴収するとき。」というようなものをそこ
に入れなければならないというのはどういうわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/49
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050・江下孝
○政府委員(江下孝君) これは延滞金をつけない場合でございます。で、延滞金をつけない場合には一応、しかしながら督促はいたしますので、黙っておりますと延滞金かつきますので、特にこの場合には徴収をしないという規則を明確にいたしたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/50
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051・田村文吉
○田村文吉君 納期を大体なんですね、三十四条の五に「国税、地方税その他の公課の滞納により滞納処分を受けるとき。」、その他云々によりまして「事業主が左の各号の一に該当するときは、政府は、納期限前においても、保険料を徴収することができる。」ということは、これは健康保険にもある、同じ条文が。これはちょっと大体おかしな条文ではないかとすでに思っていたのですが、そこで納期を繰り上げて徴収するというようなことは、どういう場合を一体想定されておって、そういう場合をこの項にはつけ加えなければならなくなったのか、そのてんまつをちょっと御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/51
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052・江下孝
○政府委員(江下孝君) 保険料の納期限はその保険料の義務の発生しました翌月末までに払い込むと、こういう建前でございます。そこでかりにその翌月末まで待ちますといたしますと、その前に国税、地方税等によって滞納処分が行われる、あるいは強制執行を受ける、破産の宣告を受けるというようなことがございますと、保険法の建前で行きますと、翌月末までとにかく待たなければならないということになりまして、債権の確保がやはりどうしても不可能になる。そこでここに並べましたような事項につきましては、これは翌月末まで待たなくても繰り上げてこの場合には保険料も徴収し得るということにいたしまして、保険料の債権の確保をはかると、こういう趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/52
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053・田村文吉
○田村文吉君 大体法の観念のもとは一体どこから出ておるのですか。そういう期限がこなければ債務の生じないものを繰り上げてやり得るのだという観念は一体どういう観念から出てきておりますのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/53
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054・江下孝
○政府委員(江下孝君) これは法律の解釈の問題になりますが、私どもの解釈では、保険料というのは、保険料の債務というものは一応賃金を支払いましたときに発生をしておる、そこでこれをそれじゃいつまで納めさせるかということについての規定が現在は翌月末までと、こうなっております。債務の発生は賃金支払いのときでありますので、法律によってこういう規定を置くことができるではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/54
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055・田村文吉
○田村文吉君 憲法の精神からいって、その点がどうもちょっと無理があると前から考えているのですが、そういう点については、十分法制局あたりの御検討も済んだ上でのことであろうと思いますが、十分御研究になっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/55
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056・江下孝
○政府委員(江下孝君) 実はこの規定をあとでこういうふうに訂正して入れますものですから非常に私も、従来は六月末までということにしておいて、こういう規定を改正して入れますので既得権の侵害というような議論も出ると思いますが、これはもちろん法制局とも十分相談いたしまして、これは実は他の保険法にほとんど全部ございます規定でございますし、今回改正をいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/56
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057・田村文吉
○田村文吉君 もう一つ、そこでさきの問題にかえるのですが、三十六条に新たに六号を加えて、納期を繰り上げて徴収するときには延滞金を徴収しない。しかし納期を繰り上げた場合には延滞金を徴収するように見えるのですが、そこにはいいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/57
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058・江下孝
○政府委員(江下孝君) 三十六条のこれは第五号でございますが、延滞金はここに揚げてあります五号、今回六号を入れまして、徴収しないといたしましたのは、翌月末まで一般の場合ならば待てるもの々特に繰り上げて徴収をいたします。そこでこの規定を置いておきませんと、やはり納期を繰り上げて徴収するときといえども、一応督促ということはいたすわけでございますので、督促に応じて指定された期限に払いませんと延滞金がつくというおそれもございますので、ここではっきりと除外をするというふうにいたしたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/58
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059・相馬助治
○相馬助治君 私はこの際次官に一点伺っておきたいのですが、今度の改正によって、長期被保険者に対する給付日数が延長されたというふうなことは、これは保険経済の建前からきわめてけっこうなことです。ところが一面短期被保険者の取扱いというものが、今般は非常に冷酷になりました。計画的に失業保険をとろうとするような、あるいはまた季節的労働者の場合における短期被保険者の取扱いについては、これは十分考えなければなりませんけれども、日本の現在の経済状況の特殊性から労働者みずからの意思でなくて短期の就職期間しか与えられずやむなく職を離れてくるというような者がきわめて多いし、今度またきわめて多くなることが予想されるのですが、従って労働省というのは政府の一省として執行機関であるけれども、同時に労働省設置法案というものをかってわれわれが国会において審議したときのことを思い起しますと、労働省は常に労働者の利益を守るという一つの大きな目的を持っていたはずでありますひしかるにもかかわらず、国家経済の現実を無視し、現在の雇用状況に目をおおうてこのような法律を出さねばならなかった直接の理由は何であるか。同時に本法が成立した暁において、労働省は本法を運用することによって失業者に対する政策を万全の策として行い得る自信ありやいなや。この二点について伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/59
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060・高瀬傳
○政府委員(高瀬傳君) お答えいたします。ただいま相馬委員の御質問はごもっともでありますが、実は短期に就労してやめる人の中にはいろいろな人があると思います。たとえば北海道へ働きに行って半年ぐらい働いておって、漁場が締まったので帰ってくる、いろいろそういう人もありますし、あるいはこの非常に善意で半年しか働けなくてやむを得ず失業保険をもらう人、あるいは失業保険をもらうということを見越して適当に保険を、乱用すると言うと妙でありますが、ある程度まで悪用するような人もあります。そこで失業保険の建前から言いましても善意の人と悪意の人を区別して画然と運用することもなかなか事実問題としてむずかしいのでありまして、われわれとしては多少の欠陥はありませんけれども、短かい間就労した、半年ぐらい就労した人に対しては、やはり一種のメリット制式の考え方からいいまして、この改正のような三ヵ月の失業保険を支給する、こういうふうにしたしたようなわけであります。
ただし非常に善意の人に対しては、労働省として別途失業対策というような面でこれを救済していきたい、こういうふうに考えておるわけでありまして、失業対策の方で自信があるかというお言葉でありましたが、われわれとしてはできるだけ、今年の予算をごらん下すってもわかりますように、緊急就労対策あるいは一般の対策として百六十八億の予算も計上し、今後もこの点についてはぜひとも全力をあげてやっていきたい、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/60
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061・相馬助治
○相馬助治君 局長にお尋ねしますが、今の善意の入と悪意の人ですね、区別するべく本法を作る場合に考慮しましたか。また将来その問題はどういうふうに運用上考えていくつもりですか。私は質問でも明らかにしましたように、季節的労働者の場合の取扱いの整理はやむを得ないと言っているのです。それから失業保険を計画的にとるというようなこの保険の精神の温情を悪用するというような者を取り締る、これをもやむを得ない、当然だと言っているのです。問題は、日本の現在の経済界の姿というものは、労働者の意思に反して短期間しか雇用されないというような者が多いという、そういう者が職を離れた場合には別途雇用関係を改善してどこかで使ってやるというようなことを言うても、それはこの場限りの答弁で、こういうものに納得できないので、私は本法の範囲内において聞いている。そういうふうな者に対してどういうふうに考えていくのかということを聞いているのです。悪意のものと善意のものの区別をどこでして将来どういうふうに考えていくのかと、こういうふうに私は聞いているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/61
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062・江下孝
○政府委員(江下孝君) 昨日申し上げたかと思いますが、季節的のものとか、あるいは循環的なもの、あるいは悪意のものというものをつきつめて参りますと、もちろん計画的な利用という面ではこれは乱用——季節的なものもさようでございますが、しかしながら現実の問題といたしまして、これを把握いたしました場合に、それでは季節的なものの中にもほんとうは仕事がなくて困って失業保険をもらっている者も中にはあるかもしれない。あるいは循環的なものもやむを得ずしてそうなっているかもしれない。こういうことからいたしますと、これを現実に区分して給付云々ということは不可能でございます。で、私どもの考えましたのは、日本のように、産業事情が非常に複雑でそうして多岐多様にわたっているものについて、特定の産業についてはどうであるとか、特定の仕事をするものはどうもどうであるというようなきめ方をすることは、現実には実情に沿わない。沿わないよりは不可能である。そこで考えましたのは、今申し上げましたように、日本で六ヵ月というのは幾ら何でもそれを繰り返すことは私どもは甘いということで、この点については九十日という線で一応現状との妥協をいたしたのでございます。結局、給付期間による調整を行なっていく、もちろん乱用という面につきましては、たとえばこの法律の中の規定でございますが、雇用主の意に反してやめたという場合におきましては、一定の期間のこれは給付制限はこの法律の規定で行われているという面もございまするし、そのほかまたこの乱用の弊がきわまると将来ということになりますれば、また私どもとしてはその際に適応した保険法の改正をいたすべきであるというふうに私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/62
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063・相馬助治
○相馬助治君 今のお話には内容的に賛同いたしかねるものがありまするけれども、まあしばらくそれをおくとして、改正前の法律は受給要件というものを、きわめて簡明素朴に何人にもわかるようにきめております。これは保険の性質、保険というものの持つ精神からいうて、こういうふうにできるならばこれが一番いいと思うのであります。生命保険の場合でも積んでおく、死ねばもらうのだからきわめて簡明で、失業保険をその通りにすることはできないかもしれませんけれども、今度は簡易な受給要件を法第二十条の規定によって縛ってきました。こういうふうに分けて考えた場合ですね、この分けるということを一応認めるとして、そうすると、二十条の二の規定というものはかなり私は問題になってきてしまうと思うのであります。すなわち、十年、五年、またそれ以下を今度は一年というふうに切ってこれをおりますが、こんな大ざっぱに切ってこれで運用上うまくいくとお考えですか。私は簡単がいいと言っているんです。しかし分けるならば分けるで、こんなまた大ざっぱでは実態に沿わないのじゃないか、こういうことを言っている。どういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/63
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064・江下孝
○政府委員(江下孝君) 先ほど田村先生の御質問にありましたように、もう少しこれを合理的に考えるということも当然この改正案の際には考えたのでございまして、で、ただ、今の制度があまりにも単純でございますために、これを一時に細分いたしまして、こまかくやるということは、やはり相当な私は社会経済情勢に影響がある。そこで私の考えましたのは、この制度をとりましても、全体のうちの六五%は従来と同じ給付を受けられるということでございます。可及的この社会経済情勢との実情を勘案いたしまして、今回の制度を考えた次第でございます。仰せのような点につきましては、さらに今後この保険法の制度がもう少し軌道に乗りますれば、当然また考慮しなければならない問題として上ってくると考えているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/64
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065・山下義信
○山下義信君 私も一つか二つ簡単に伺いたいと思うのですが、もう大部分問題は他の委員から出ましたから、あるいは重複するかもわかりませんが、短期被保険者に対する対策が今度行われた。だんだん質疑応答を伺っておりますと、悪意のものと善意のものとの見分けがつきにくいということですね。見分けがつきにくいから、従って善意の人たちに対する区別を立てた措置をするということはできにくい、こういうことの答弁。言いかえると、この制度の欠点を利用して乱用する、悪用するということと、短期被保険者に対する従来の制度の乱用と活用というものが区別がつきにくいということでありますから、結局、これに対する措置をこのたびの改正でなされた結果は、しばしば質疑で繰り返されておりますように、悪意のものと善意のものとが、いわゆる玉石混淆されて、一斉に今度の改正の影響をこうむることなんです。同僚相馬委員が指摘されたように、われわれも不正的な乱用者に対して、従来の制度の盲点を改められることについては、これは異議を差しはさまない、しかしながらせっかく短期の被保険者にもこれだけの保障を与えなければ、制度がそれがために悪影響をこうむるということは、実に遺憾だ、こういうことを言っておって、それに対する当局の考え方はどうかということが、これが一つの問題であるわけなんです。どうもそれはしようがない、どこまでが善意でどこまが悪意でということは、分析もしにくいし、別個の対策も立てようがないのだ、まあこの制度で行くより、改正で行くよりほかには手がないのだ、こういう御答弁で、われわれとしても、実はその点の不徹底さに納得しがたいところがある。しかもこれは議論しても仕方がない。それでどういうふうな配慮が善意の短期被保険者に対して考慮されてあるかということを、いろいろ経過規定などのところで現わされていると見るとないのですね。別にないのですね。善意の被保険者に対する当局の思いやりということは別にないのですね。ただ本法の施行前に離職した者については従来通りに六カ月の給付はやるという措置があるだけですね。これはしかし悪意も善意も共通ですね。そういう点、私は当局の対策も非常におむずかしいということはよくわかるのでありますが、制度を改めてその不正者に対する悪用を阻止しようとする行き方は、私はいつまでいっても同じことが繰り返されるのじゃないかと思うのです。この点を質問するのです。それで何か前置きに、前段の問題に対してあらためて当局は善意の対象者に対しては、先ほどから政務次官のお答えがあり、江下局長も随時お答えがあったのですが、特段にこうだということがあればあらためて承わりますが、後段の私の質問は、不正者は制度を悪用するのですから別個に取り締るか、別個の対策でない限りは、制度を改めても今度改まった制度を悪用したら同じことじゃないかということを私は質問するのです。ですから今度改まったのは何が改まったかというと、六カ月が九カ月に改まったのですね。一年間の雇用期間が六ヵ月であったものを九カ月に引き上げた、三ヵ月延長したということが制度の改正です。その三カ月延長したことによって従来の制度の乱用が防止できる、不正乱用の防止ができるというお見通しは、どういう根拠に立っておられるかということを明確にしていただきたい。これが後段の質問です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/65
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066・江下孝
○政府委員(江下孝君) 前々御答弁申し上げましたように、従来の制度から申しまして、今回の改正によりますると、仰せの通り一部善意のものに対しては給付期間の削減ということになることははっきりこれは申し上げなければならぬと思うのであります。ただ私どもが考えましたのは、一つには事務的にこれは区分はほとんど不可能に近い。もしそれを一々善意であるか悪意であるかという点を取り上げましたときには、一つ一つが審査の事件になりまして、これは事務上不可能であるという点が一つと、こういう制度がありますために、この乱用が非常に大幅に行われてきつつあるというのが現状であります。しかもこれをこのまま放置いたしておきますならば、ほとんど全国津々浦々に至るまで、この形をとる被保険者が今後ふえてくるということが、もう実は目に見えているのであります。そこで今申し上げましたように、この制度がそういうふうになっているというために、乱用が一部起っているのでございますので、その乱用を全面的に削除するということはもちろん望ましいことでございますけれども、この点について、今申し上げましたような、不可能な事情もございますので、今回の措置といたしましては、給付期間々特に減少することによって乱用の相当部分をこれによって排除したいというのがねらいでございますが、今これを乱用してやろうという、全国に相当な人数がありますものに対するこれが一つの警告ともなるかというふうに考えておるのでございます。
なお三ヵ月延長するということは、私はやはり三ヵ月を延長いたしましたのは、十年もたちまして離職いたしました人はこれはもう相当、妻帯者でもございますし、年令も相当高いということからいたしまして、どうしても保険経済の面への寄与も考えまして、今後も保護もしてやらなくちゃならない、こういうことで長く働いた人に対しては、その点については手厚く政府として見てやる。こういうことで私は保険制度の改正といたしましては、国民全般に対しては相当いい影響を与えるものじゃないかというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/66
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067・山下義信
○山下義信君 ちょっと、私のあとの質問を局長が取り違えられておる。私は今の短期被保険者の給付日数を百八十日から九十日に減少したと、それは今御説明で趣旨がわかったのであります。給付日数が減少したのだから、つまり乱用してたくさん取ってやろうということは防げる。ところがその資格を、受給要件を六ヵ月から九カ月に引き上げたのですね。それによって季節的な、こういったような、いろいろ当局が心配をしておる、いわゆる乱用者のそれを防止しようという目的の一つでもあるのですね。一つは給付の金額を減す、日数を減す、それから一つには、資格要件を引き上げる、この二つで対策とされたのですね。しかし、そうされても制度はやはり残っておるのですね。この種の短期被保険者に対する失業保険給付の制度は残っておる。ただ従来の一年以内六カ月というのが九ヵ月になり、百八十日の給付日数が九十日に改正されたということですね。それでそれだけ改正されたらば乱用が防止されるということはどういうところにめどをつけておいておるかということが後段の質問であります。今回の改正で、不正乱用というものはこの制度ならば今後はできないという、そういうお見通しでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/67
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068・江下孝
○政府委員(江下孝君) 不正受給の防止と申しますか、この点につきましては、これはもちろん今回の改正でも二、三点取り上げております。架空の被保険者が保険をもらいに来た場合に対しましては、事業主に対しても絶対責任を負わせるというようなこと本規定をいたしております。その他不正受給の防止については、相当今回の改正については考慮したのでございます。今お尋ねの給付期間の伸縮の実施による不正受給の防止ということは、そのこと自体からはこれは直ちに不正受給の防止ということは出てこないのでございます。ただ、私申し上げましたのは、結局短期の、乱用寺か大部分を占める短期の被保険者というものを九十日とすることによって、相当この乱用が制限をされるのじゃないか、これによって乱用防止は相当行えるのじゃないか、こういうふうに先ほども御答弁いたした次第であります。まあ延長するということによりまして、私どもは長く働いたという人がそれだけ給付をよけいもらうということになれば、やはりこれも全体といたしましてはいい影響を持つのではないかというふうに考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/68
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069・山下義信
○山下義信君 わかりました。私答えをまた聞き違えておった。いわゆる給付日数を減少したということによって一種の防止ができる、それで九ヵ月にしたということにはあまり関係がありませんが、これも一つ、何といいますか、被保険者というものの三ヵ月延ばしたことによって、これも防止できますか。これは延ばすことにようて六カ月の給付ができる、あなたのお説の方はよくわかります。私の尋ねているのは、三ヵ月延ばしたことによって、資格要件を延ばしたことによって、今言ったような乱用の防止ができますか、三ヵ月延ばすことによって。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/69
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070・江下孝
○政府委員(江下孝君) 御質問の通り、いわゆる季節労務者というものは、大体において九カ月程度以上は働かないのでございます。ごく長期に亘りますもので一部長いのもございますが、大体において季節的に雇用されたものの実態を調べてみますとみな九ヵ月以内であります。従って今回のこの措置によりますればこの点が半減される、こういう措置になりますので、これは私は相当な防止ができるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/70
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071・山下義信
○山下義信君 なおもう一点、メリット制のことですね。これはどういう趣旨になるのですか、理念としては。これはむしろ教えてもらいたいのです。まあ失業保険というものにその種メリット制を今回初めてしこう。これはどういう一体失業保険法の上における理念に基いてこういう制度をやろうとするのか。私の伺いたいのは、つまり失業保険金というもの、失業保険というものは一体どういう性格を持つものか。失業という事故に対して、の保障なんですが、この失業保険がそれが雇用期間の長短によって給付の日数を変えていくという制度は、失業という事故に対する保障というものの上にどういう理念を立てていくのかということを私はそれを一つ明かにしてもらいたいと思うのです。先ほど江下局長はボーナスという言葉を言われたのですが、ボーナス的なものを与えるということ。長期雇用の、使われておった労働者に対して失業と同時に失業保険を給付する。同時にたくさん与えるということはボーナスを与えるようなものだ、こういうことなんですが、ですからそれが私はメリット制というものがそういう性質のものですが、それを失業保険に持ってくるということは、私はどういう理念かということを寡聞にしてよく存じませんので、明快にしておいていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/71
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072・江下孝
○政府委員(江下孝君) 非常にむずかしい問題でございますが、失業保険制度の根本理念でございますが、これは先ほどちょっと申し上げたのですが、失業保険の制度はこれは日本はおくれて施行されまして、世界各国にまず実施されまして後でございますので、一応理念的に見れば、これは諸外国のやはり考え方というものを基本にしなければならないものでございます。もちろん日本の実情に即した保険制度を考えるということであろうと思います。そこで失業保険制度というものは、これは決してこういう計画的な場合には失業保険ということではこれはないと思います。これは計画的にやる場合にはこれは政府の一種の失業保障といいますか、生活扶助というか、そういうものであります。それは結局資本主義の世の中におきまするいわゆる景気の変動によります摩擦的な失業に対するごく短期の、次の就職までの生活安定を幾分でもせしめてやるというのが、失業保険制度の本来の立て方のように私どもは聞いております。日本の失業保険制度も大体さような考え方で立案をされておる。当時この制度ができましたときは、もちろん駐留軍の非常な強力な指導がありまして、一応こういう制度になったわけであります。しかしながら諸外国の例を調べてみますと、これが非常に雑多でございまして、必ずしも六ヵ月という制度ではございません。特にドイツのごときはもう一月ぐらいに区切りまして、一月保険を払ってやめた場合は十日出すとか、こういう非常にこまかいやり方をいたしておる例もあります。日本の制度はアメリカの一部の州の制度を大体基本にしたというように私どもは聞いております。これが実施されまして八年間たちますと、大体におきまして、この失業保険制度の功罪というものが最近におきましては、世間から相当目をつけられて参りまして、こういう場合においては、私はやはりある程度日本的な失業保険制度というものを考えていかなければならないのではないか。いつまでも外国の通りにすることはない。当面の乱用防止という点とあわせて保険経済に長く寄与した人に対する給付期間の延長、このことは諸外国でもやっている例がありますが、ただいま申し上げましたように乱用の弊がきわまるというおそれもありまするので、この際としてこういう措置を実施するということが適切ではないかと考えたのでございます。で、ごく長くそれでは失業保険金を出すということは、これは本来の失業保険制度の建前ではございませんので、御承知の通りイギリス等でも一定期間以後におきましては、これは政府の生活扶助に切りかわる。失業扶助に切りかわるのでございます。そういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/72
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073・山下義信
○山下義信君 私はもう一つでいいのですが、私はメリット制を日本にしくということは非常に大きな問題で、これは議論をしていると切りがないのですが、果してこの制度が労働者のために利益かどうかということも、一面から考えて必ずしもこれが額面通りにすぐに利益ということが受け取れるかどうか非常に問題だと思うのです。いろいろ直接間接労働雇用条件その他労働者にとりまして影響するところが非常に多いのでありまして、即断は許されないと思いますが、また各種の他の社会保障制度との関連性もありまして、軽々に即断はできないと思うのですが、やる以上なら合理的に、先ほど田村委員も指摘されましたが、合理的にこれは制度として完全なものにやっていかなければならぬと思うのですが、この程度でいいかどうかということには、私はまだ権討の余地があるということだけ私はこの際申して、この点はおきます。
それからもう一つは、これで私の質問はしまいですが、確認の制度ですね。確認はこれは被保険者にとってどういう利益をもたらしますか。その点だけに明確しておいてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/73
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074・江下孝
○政府委員(江下孝君) これは現在の失業保険法では、被保険者であるかどうかということは、現実に保険事故が起って初めてこれを確認する建前になっている。すでに保険関係があります者についての個々の被保険者関係をつかんでいないのでございます。そこでどういうことになりますかと申しますと、事業主が、かりに適用事業所であっても知らぬ顔をしている。労働者もそれによって知らぬ顔をしておる。知らなかったという場合に、労働者個人の確認を行わないために、労働者も知らないままに失業保険料を納付しない。被保険者の届出をしないということになりますと、これが受給の際に相当めんどうな関係を持ってくる。これは明らかに被保険者の保険の面も持っておる確認制度でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/74
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075・山下義信
○山下義信君 そうすると事業主が届け出たということがまたこの被用者の方からわからなくてはならない。被用者は自分が被保険者になっているというということの確認の請求をすることができている。あれをしなければこれがはっきりしませんから、つまり言い加えると、それだけの手数を要するという建前になるように見えますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/75
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076・江下孝
○政府委員(江下孝君) この法律ではもちろん事業主の届出を必要といたしますが、労働者も確認の請求ができる。それから政府の方で職権で確認をするということもあわせて行える建前にいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/76
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077・山下義信
○山下義信君 事業主が届けただけで被保険者の権利が今後それで保護されているというのでは私は十分でないと思う。それから、それなら被保険者の方が、自分の権利がちゃんと登録されているかということを一つ請求して調べてみなければならぬ。ここでもこれは非常に実際においてそういうことは行われ得ないのです。ですからどうしても、最後に当局がおっしゃった、この確認制度を政府の方の手で、被保険者の権利の保護ということならば、何らかのそれに対するこの制度の活用の対策がなければ、届出だけということで被保険者の権利が保護されているということは言えないと思うのです。重ねてその辺に対する御配慮を承わっておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/77
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078・江下孝
○政府委員(江下孝君) 資格の取得喪失につきましては、今回のやり方といたしましては、事業主から個々の被保険者の名簿を安定所に提出させます。それによって安定所で台帳を作りまして、一人々々の被保険者について確認の通知を事業主に出し、事業主に対してこれを本人に渡せという命令を出します。それによりまして大体私は相当がっちりと把握ができる。なおしかしながら無知によりまして、法律を知らぬことによりまして届出を怠るというようなものに対しましては、政府ができるだけ行政措置で、職権でこれらのものを把握するというふうに行いますれば、今度は漏れたものはないように私は処置できると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/78
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079・竹中勝男
○竹中勝男君 約束されておる時間が相当過ぎておりますので、いろいろ御質問申し上げたいのですけれども、一点だけ次官に質問したいと思っておりますが、民主党が完全雇用をやる、社会保障の充実をやる、こう約束しておるわけですが、社会保障の中で医療に関する社会保障、それから厚生年金あるいは老後の社会保障とこの二つに対して、失業保障ということは最も重要なやはり社会保障の一環になっておるのでありますが、実はこの改正は今までの労働者に保障されておったところの失業時期において保障を縮小しておることになるわけです。すなわち六ヵ月働けば六ヵ月の失業保険を受けることができるというこの権利を、この法律によって縮小っあるいは剥奪するところの、これは労働階級にとっては実に重大な意味を持つ私は改正案だと考えております。その理由とされるところは、乱用者があるということの一点にあるわけです。ところが乱用者はだれかと言うならば、昨日の御答弁にございました通りに、百五万の失業保険の受給者の二七・七%が短期失業保険の受領者である。すなわち六ヵ月の失業者が二十九万人あります。そのうちの二十二万人はこれは出かせぎ労働者、すなわち季節労働者であって、自己の意思によらないところの短期失業者なんです。そうするならば、もし乱用者があるとするならば、残りの七万人の中に乱用者があるというふうに私どもは考えざるを得ないのです。その七万人が全部乱用者であるということも言えないわけでありまして、だれも好んで六割の失業手当のために失業を計画して雇用される人はないのであって、あるとしても非常に少数の例外であると思います。これは普通われわれが考えれば、半年働いてあとの半年は寝て暮すということは、過去の日本の産業がもう少し発展期にあったときにはそういうこともあったかもしれないけれども、何を好んで、今日一千万近くの潜在失業者があるときに好んでこれを乱用するというふうな人間は私は一人もないと思います。ただ生活が苦しいから、仕事がないから、最後の一つのよりどころとして失業保険にたよる人が少数あるかもしれない。しかしそういう人も、今日雇用が正常であるならば、企業の合理化が行われないならば、そうして産業の縮小生産が拡大されるならば、だれも好んで短期の失業保険を願うような者は一人もないわけなんです。すなわちこの法律はごく少数の者のために大多数の勤勉な、まじめな労働者の権利を奪うところの法律だと私は考えております。そうであるならば、政府が国民に完全雇用とか、あるいは社会保障の充実とかと言った手前、労働者の権利を半減していくところのこの法律というものを一体民主党は、政府委員として、閣僚、次官として一体これをどういうふうに国民に説明されるのですか。乱用というようなことでは絶対にこれは国民が——事実乱用者というのは少いのですから、いわんや少数のために大多数の正直な勤勉な労働階級の権利を奪ってしまうという法律は私はゆゆしい法律だと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/79
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080・高瀬傳
○政府委員(高瀬傳君) お答え申し上げます。実はただいまの御質問は、この改正案が実施されますといかにも勤労階級の権利を縮めるような、実際上経済的な圧迫を加えるようなふうに見受けられがちでありますが、われわれとしては、やはりこの日本全体の失業の問題というものは必ずしも保険制度、こういうものだけでは考えておりませんので、ほかにも積極的に失業対策を行い、あるいは経済六ヵ年計画をやって経済の基盤を拡大するというような方途で順次に完全雇用の域まで六年後にやっていこうという考えを持っておりますが、ただ御承知のように、この保険経済の——別にわれわれは労働者の権利を縮めるという考えでなぐ、健全なる保険経済、失業保険制度の運用という観点と、また実際の実情に適した運用をやっていきたいということからこういう改正をいたしたのでありまして、いかにも先ほど竹中委員のおっしゃいましたように、六ヵ月間で働いてまた保険を受ける者が全体の二七%、二十九万人というふうにおっしゃったことはその通りでありますが、ただ現実にこの二十九万人のうち約二十二万人が出かせぎの労働者、季節労働者ということになっておりますので、七万人がそれに当るのではないかというようなお話でありましたが、さようではないのであります。事実現に出かせぎの方は非常に現実にこの失業保険制度を乱用しておる傾きもありますので、われわれとしては、一方長い間勤労に従事した人に対しては九ヵ月の給付をやり、どっちかというと短かい間でこの乱用の傾向のある期間働いた人に対しては三ヵ月というふうにして、先ほど申し上げましたように、メリット制の観念をこの中に取り入れてこの改正を行なったような次第であります。
なお念のために申し上げますが、この改正につきましては、政府といたしましても社会制度審議会の方にも十分この内容を付議いたしまして、その賛成をいただいておるような次第でありますことを申し添えておく次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/80
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081・小林英三
○委員長(小林英三君) この際皆さんにお諮りいたします。この辺で質疑は打ち切られたものと認めまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/81
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082・小林英三
○委員長(小林英三君) 御異議ないと認めます。それではこれより討論に入ります。ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/82
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083・小林英三
○委員長(小林英三君) 速記を始めて。
これより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/83
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084・竹中勝男
○竹中勝男君 それでは社会党第四控室を代表しまして、この失業保険法の一部を改正する法律案に対しまして反対の意思を表示いたしまして、理由を明らかにいたしておきたいと思います。
私どもは現在の日本の産業経済事情のもとにおきましては、短期の雇用関係がきわめて一般的にならざるを得ない現実に直面いたしております。長期に雇用される関係というものは大企業のうちに属するものでありまして、日本産業が実質上でき上っておるところの中小零細企業の中に吸収されておるところの労働者は一日としてその就労の安全感を持っていないのであります。この労働者の職業に対する安定感を与えるものは、ただ一つ失業保険制度があるだけであります。しかるにこの大多数の日本労働者が不安にさらされておるこの現状にあって、さらにその失業保険の権利が縮少されるというこの法律案に対しては、われわれは絶対に反対をせざるを得ないのであります。六ヵ月働いた者が六ヵ月の失業保険を受領することができるというのは、すでに日本労働者が持っておるところの権利であります。この権利に対してこの改正法はこれを保険経済の赤字の補てんの目的を重要な目的の一つとして、他に失業対策の画期的な拡張もなく、あるいは日本産業機構が拡大されていくという見通しもなく、あるいはその他の何ら失業者に対する、この権利を半分にすることに対する何らの施策もなくて、一片の法律の改正をもって少数の乱用者があるということを口実に、失業保険経済を全体として充実するというような名目を立ててこの改正を断行しようとすることに対しては、全く日本の現在の労働者の不安を加重化するものであるという立場から、これに反対するものであります。できれば私どもは日本社会党——勤労階級の利害を守るために成立しておる、存立しておりますところの日本社会党はもっと明確に、できれば本会議の場合においてもこういう国民勤労大衆を圧迫するところのその権利を奪うところの法律に対しては、堂々と反対したい機会を得たいと私どもは考えております。時間がございませんので、簡単にここで反対を申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/84
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085・相馬助治
○相馬助治君 私は、ただいま議題となっている失業保険法の一部を改正する法律案に対しまして、社会党第二控室を代表して反対の意思を表明するものでございます。
私はこの討論を通じて特に良識ある本院のこの本法に賛成の意思を持たれると推定される委員諸君の一つには注意を喚起し、一つにはこの重大なる時期に際しましてこの改正案が提案されているというこの現実に対しまして、鳩山内閣の反省を促さんとするものであり、しこうして本法が本院において否決されることを期待するものでございます。
御承知のように保険の精神は何であるかと申しまするならば、火災保険は火災にあわない者が掛金をし、不幸にして火災にあった者を救済することを目的といたしております。生命保険においては、生命の長き者がその零細なる掛金をして不幸にして命を終ったる者の家族を救わんとするところにその精神が宿っております。御承知のように失業保険は、現在の特に戦後の混乱した経済界の状態において、その反省の上に立って労働者自体が掛金を納め、事業主がその三分の一を負担し、国家また三分の一の負担を甘んじてこの法律案というものは成立を見て今日に至り、この法律によって救われたる者が今日まできわめて多かったということを、われわれはこの際思い起すべきだと思うのでございます。日本の経済界の現実、雇用状況の現実というものは、その労働者の意思にかかわらず、あるいはまたときによると雇用主の意思にもかかわらず、短期雇用を余儀なくさせられている面がきわめて多いということを思い見るべきでございます。本法は長期被保険者に対して長期の給付をするということを規定せんとしておるのでありまして、これは一部には労働者の利益を守らんとするやに見えるのでありまするが、事実はこれに反します。しかも失業保険法の精神に違反しております。長期にわたって就業の機会を与えられておる者は長期にわたってその生活が安定していたことを意味します。しかもその者がその職を失う場合には他の年金制度であるとか、他の退職資金等によって救われる度合の多いことをもまた意味しております。しかもまたある種のものに至りましては、長期にわたって同一の職場を守り得た者は、かりに経済界の変動によってその職場を失ったとしても、ある特殊の業務を身につけて再就職の機会が短期雇用者に比較して多いと見ることも、これは謬見ではございません。かような事実を思い合せまするときに、一方において長期被保険者に対しては長期の給付をするということを掲げて、しかも現実には保険経済赤字救済のために本法を提出した鳩山内閣の勤労者に対する底意地の悪さに私は驚くとともに、現在の経済界、雇用界を眺めたときに厳粛に私はその反省を求めるものであります。それは一一私が実例をあげて申し上げるまでもなく、悪意、善意の問題が先ほど質疑応答のうちにおいて問題となりました。従いまして政府が本法によって現在まで失業保険制度を実施してきたその事実に照らしまして、失業保険の適用事業の範囲の拡大をはかり、かつまた季節的労働者の短期被保険者の取扱いの整備をするというような問題、あるいは一方福祉施設の設置を法において定めたというような問題は、当然なすべきこれは改正であることを私も容認いたします。しかしながら本法において、先ほど同僚山下委員の質疑においてすでに明らかでありますように、悪意のものと善意のものをその運用面において区別することは困難であることがその答弁においてすでに明らかでありまして、この悪意の、すなわちこの制度を悪用するものに対しましては、別途立法措置をもってこれを厳重に取り締る以外にその道がないのでありまして、この法案自体がその制度並びに給付期間等、あるいは受給資格の期間等を操作することによって、この悪意のものを防止するということはすでに不可能であろうと思うのでございます。鳩山内閣は現在デフレ政策をその基調として持っておることは各委員御承知の通りであります。従いまして産業の拡大も今日予想されません。従いまして現在職にあった者がその職を失うことは今日は死を意味します。再就職の機会はほとんど恵まれないと見るべきであります。再就職の機会の恵まれないことは、その生活が成り立たざることを立証いたします。かように考えて参りまするならば、保険経済赤字救済のために、しかもまた悪意のものをその適用から除外するという意図とその名目のもとに、短期被保険者に対してきわめて不利な本法の改正というものは、何と申しましても、いかに陳弁しようといたしましても、明らかにこれは労働者に対する思いやりの減退を意味するものでありまするとともに、日本における失業保険制度の後退を意味するものでございます。質疑においてすでに明らかでありまするように、理由はともあれ、政府はこの法律を改正することによって、政府の出資金を少くしようとする意図が歴然としております。
かように考えて参りまするときに、私はこの保険法改正には、改正しなければならない幾つかの点のあることを認めまするけれども、この改正が目途とするものに対しましては、社会党として、しかも日本の常に失業の危機にさらされておる全勤労者の名において、私どもは反対せざるを得ないのでございます。どうか各委員においても、この趣旨を十分体せられまして、一つ本法につきましては深甚なる考慮を払われたことを、まことに言い過ぎで恐縮でございまするが、申し添え、私は社会虎第二控室を代表して、ただいま議題となっておりまする失業保険法の一部を改正する法律案に体しまして反対の意思を表明するものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/85
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086・長谷部廣子
○長谷部廣子君 私は無所属クラブを代表いたしまして本法案に反対をいたします。
失業保険法の第一条に規定してございますように、保険の精神は、失業した労働者に対して保険金を支給して生活の安定をはかろうということであると思います。これは人道上から申しましても当然だと思います。だれしも失業したい者は一人もございません。しかしながらこうした社会情勢のもとにありましては、やむなく失業するのでございますから、社会全体の責任において扶助しなければならないと存じます。そこでこの法案をよく注意して見ますと、被保険者として期間の短かい者は給付が少く、そうして短い者に対してだけこの法案が適用されるということになるのでございます。そこでこうした法案には賛成することはできません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/86
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087・小林英三
○委員長(小林英三君) 以上をもちまして討論は終局したものと認めます。
これより失業保険法の一部改正の法律案につきまして採決をいたします。本案を原案の通り可決することに賛成の諸君の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/87
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088・小林英三
○委員長(小林英三君) 多数と認めます。よって本案は多数をもちまして原案の通り可決すべきものと決定いたしました。
なお、本会議におきまする口頭報告の内容、議長に提出する報告書の作成その他の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/88
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089・小林英三
○委員長(小林英三君) 御異議はないものと認めます。
なお報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますから、本案を可とする諸君の順次御署名を願います。
多数意見者署名
松岡 平市 田村 文吉
高野 一夫 加藤 武徳
榊原 亨 有馬 英二
寺本 広作 高良 とみ
谷口弥三郎 常岡 一郎
森田 義衞 草葉 隆圓
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/89
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090・小林英三
○委員長(小林英三君) 次に、未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律案、戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案、両案を議題といたします。
それでは午後は一時半から再開をいたしますが、ごらんの通りに多数まだ法案もたまっておりまするから、時間正確に御出席を願いたいと思います。なお提案者の諸君も一時半よりも前に御出席を願いたいと思います。
暫時休憩をいたします。
午後零時十七分休憩
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午後一時五十四分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/90
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091・小林英三
○委員長(小林英三君) 休憩前に引き続きまして委員会を開きます。
未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律案、戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案につきまして質疑を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/91
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092・草葉隆圓
○草葉隆圓君 まずお尋ねしたいと思いますのは、今までの裁定状況を御説明いただきたいと思います。ことに却下と保留の分については、できるだけ分類ができまするならおよその分類をしながら御説明を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/92
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093・田邊繁雄
○政府委員(田邊繁雄君) 遺族援護法の裁定状況について、本年の五月末日現在における状況を申し上げますと、受付件数は二百十二万一千五件で、そのうち裁定になりましたものは二百十万一千十二件でございます。従って未裁定件数は一万九千九百九十三件でございます。裁定になりましたもののうちで可決になった件数は二百四万五千四百七十三件、否決になりました件数は五万五千五百三十九件でございます。
否決になりました件数の内訳を区分いたしますと、死因に関するものは約四万一千件でございます。次に身分が軍人軍属に該当しないということで却下になったものが約三千件でございます。次に親族関係、遺族の身分が原因となっておるものが約六千件でございます。その他が約五千件ばかりになっております。なお死亡原因が理由となりまして否決になりましたもの約四万一千件のうちで約三万五千件に対しましては、特別弔慰金というのが支給されております。
次に未裁定件数の内訳を申し上げますと、軍人軍属関係が約一万五千でございます。それから準軍属——学徒、徴用工あるいは広島の義勇隊、戦闘参加者等いわゆる法律の三十四条関係のものをさすのでございます。これを俗に準軍属と申しておりますが、この準軍属関係が約四千でございます。その他障害年金、障害一時金関係で保留になっておるものは九百件でございます。軍人軍属関係の夫裁定件数一万五千件の区分をさらに分けますというと、目下作業中のものが六千件でございます。それから都道府県ないし市町村に対しましてもう一ぺん再調査を依頼いたしておりますものが三千件、合計九千件でございます。それから目下死因、身分、親族等につきまして本局におきましていろいろ検討を加えているものが六千件でございます。
以上が現在の裁定の概況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/93
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094・草葉隆圓
○草葉隆圓君 今回の改正の要点は、多くは身分関係もありますけれども、死因関係、俗にいう公務死の範囲の拡大ということになってくると思うのであります。そこで私どもも平素からこの点については、政府なりあるいは修正されました衆議院の御意見を拝聴して、同様な考え方を持っている次第でございます。そこでだんだんとお尋ねしたいと思いますが、これらの問題にあわせてもう一つ重要な問題になりますか、戦地あるいは事変地というものを政令で定めるということになっているが、大体その政令の内容はどういう内容を考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/94
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095・田邊繁雄
○政府委員(田邊繁雄君) 改正案によりますると、第四条第二項の戦地を「政令で定める」ことになっておりますが、その地域、期間につきましては、恩給法におきまして、いわゆる戦地加算のついております地域及び期間等を十分参考にいたしまして決定いたしたいと考えております。具体案を一応作っておるのでございますが、おおむね先ほど申し上げました基準によりまして決定いたすつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/95
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096・草葉隆圓
○草葉隆圓君 そこで今度いろいろ具体的な問題に入って参るのでありますが、戦傷病者戦没者遺族等援護法は第一条に示してありまするように、「軍人軍属の公務上の負傷若しくは疾病又は死亡」ということが根本でありますから、いわゆる公務死に対する援護という前提のもとに立っている。そこでその前提のもとに立ちながら、今御報告になりましたように、なお四万一千件の却下というものが、いわゆる従来の観念からする公務死というものに該当せずに却下されたという考え方が多く入っておる面もあるのではないか。全部がそうじゃないのですが、従ってその中には戦地なるがゆえに資料が不十分である、同情はするけれども、なかなかやりにくいというようなのがあるので、従って衆議院修正のようなその前提に立って、故意または自己の重大なる過失によらない場合は多く公務死の範疇に加えていくという大体の修正で衆議院はこの修正案をお出しになったと思いますが、その点について修正者の山下先生の御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/96
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097・山下春江
○衆議院議員(山下春江君) ただいま草葉委員の仰せられた通りの気持でございまして、公務死というものをわれわれは全然無視いたしたのではございませんが、その死因等は、非常に困難な状況にありました大東亜戦争の終期におきまする状態を勘案いたしまして、あとう限り広く解釈をしてもらいたいというのがねらいでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/97
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098・草葉隆圓
○草葉隆圓君 そこでその前提のもとに立ちまする場合に、今後のいろいろな取扱いの上から、従来公務死であるか、公務死でないかということ々裁定する場合に資料がなかった、あるいは疑義を生じ、従ってせっかくこういう国家の一つの恩給法、あるいは援護法の恩典がありながら、これを受けることができないという状態になっておる。それをなるべくこのようなことのないようにというのが修正の眼目であると存じます。そういう立場から考えますると、従来のいろいろな問題なり、あるいは今後の問題等を考えます場合に、具体的な問題等を考えて、今後はどういうように取り扱われるかというのが問題になるというわけでございますが、それらの問題について一、二具体的な問題を、これはむしろ修正が可決された場合には、こういうふうな考え方であるということを政府当局の方からお答えいただく方が、実際の執行者として適当である、かように考えますので、そういう意味で一つ御答弁をお伺いしたい。
次に、お尋ねいたしまするのは、従来の却下の中にも具体的ないろいろな問題があろうと存じます。従ってもし、故意または重過失といいまするのは、今私が申し上げました公務であるという一つの前提のもとに取り扱う、従来ややもしますると、故意または重過失というのは、服務観念でもなければ、公務死でもないというように俗に考えられている場合が多いけれども、今回ここに用いられている字句は、決してそういう意味ではなしに、公務死という前提のもとに、その公務死という範疇に入った中における今申し上げた故意または重過失というものを考えてくるという立場において、今後の裁定の線を一つ伺ってみたいと思います。従ってもしゃ、ただお尋ねしますることが、本日単にこう思うということよりも、今後はこういう範疇で裁定するという意味で一つはっきりとお答えをいただくことが、今後の裁定の上に必要であると存じますから、この点一つ前もってお願いを申し上げておきたいと思います。
そこでこの公務であるか公務でないかという意味において、従来は遺族等が自分で資料を集めて裁定を申し出ている、その資料が不備である、あるいは公務でないと認められたような場合には、それぞれ審査会等を経てこれを却下するなりする、今度はむしろその挙証責任は政府がとって、そうしてその範疇に当てはめて措置をされるという行き方になってくると思いまするので、現実の問題として考えまするときに、ここに「故意又は重大な過失」ということが、単にそれにとらわれまする場合には、いろいろ疑議を生ずる問題が生じてこないかと思うのであります。
そこできょうははっきりとこの点厚お尋ね申し上げておきたいと思いまするが、たとえばその一つといたしまして、かりに隊を離れて逃亡した、その逃亡しておりまする場合に、従来の病気その他というものとは全然関係なしに、いわゆる故意、重過失ではなしに死亡した、こういう場合には、これは一体どういう範疇に入るのか。で、普通の場合にはそれは個々の問題を一つ審査しないと、その人のそのときの状態なり、あるいは従来からの体質と申しますか、模様なり、いろいろ個々の場合でないとわからないというのが多いと思いますが、そうではなしに一つのごく——この故意または重過失によらないで公務死と取り扱われるという範疇の場合において、今申し上げました離隊逃亡中死亡した、その死亡の原因がその方にひっかからない、ごく純な姿の場合、この場合にはここで言う公務として取り扱うか、非公務として取り扱われるか、この問題について伺いたい。
それから第二の問題は、刑罰法令に触れ禁固なり懲役を受けて、在監中の者そのものが自分の故意または重大な過失によってでなく、傷病が原因で死亡した、このときはどういうふうな取り扱いをするか。それから最もその極端な例でありまするが、かりに敵前において部隊のそれぞれの立場の人からの指示によって、あるいは軍務についておる、それが軍紀を保つ上に、やむを得ず、命令に違反したから、あるいはそれに従わなかったから指揮官から処断をされる、これは決して故意でもない、重過失でもないというものであります。これらの問題については、この場合にどちらの範疇に入れるか。
それからもう一つは、この戦地において、休暇の外出中に、これは今までの中にもよくあると思いますが、まあ飲酒をしたり、あるいは飲酒の結果相当めいていして、その結果による死亡、その死亡はいろいろありましょうが、交通事故による死亡もありましょうし、川に落ちた死亡も今まで再々ありましょうが、これまた休暇中に水泳をしておってそうして死亡した、その水泳は決して隊の訓練でない水泳をした場合、それから戦地でも営外居住で家族をつれて生活をしておった人が、その人たちが家庭内において死亡した、その死亡は全然隊の勤務とは違った意底における死亡をした、これらまで——まただんだん思いつきますとほかにもまだありますが、代表的なものを二、三取り上げてみたのであります。従来私どもも何とかと思っておった。たとえば、あるいはガンで死亡したというような場合、この改正が通過いたしました場合における裁定上の手続において、これをどう取り扱うかということをお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/98
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099・田邊繁雄
○政府委員(田邊繁雄君) ただいま草葉先生から、衆議院における修正案が国会として決定になった場合において、こういう場合はいかにきめるかという具体的な例を示してのお尋ねであったのであります。実はこの法案が通過したあとにおいて、裁定は現実の問題でございまして、解釈がはっきりしておらないというと、私ども個々の裁定に当って係官が迷っておる場合には指示を与えてこれを裁かねばならぬ立場にありますので、できるだけ疑問のないようにいたしたいという気持でございましたところ、ただいまいい例をお引き下さいましていろいろお尋ねがありましたので、率直に私どもの考えを述べたいと思いますが、実はこういうことはすでに衆議院におきましてはっきりしておけばよかったのでありますが、いろいろな事情でそれができませんので、あるいは提案者のお気持に沿わないような点があるかもしれませんが、解釈上できるだけこの制度の本質に照らして妥当だと私ども考える所見を一応申し述べさしていただきたいと思います。
御質問の趣旨は二つに分れておったようでありますが、第一点は、刑罰法令に触れて禁固または懲役に処せられた場合、敵前において軍紀を無視して処断を受けた場合、あるいは軍の命令に反して離隊逃亡しておった場合、いずれも軍の紀律に対する重要な違反行為があった場合、それが原因となって、原因となって死亡に至ったという場合でありますが、その場合死亡の直接の原因に故意または、重大なる過失があるかどうか非常に疑問の場合が多いと思います。ことに原因が不明である場合が相当多いと思います。普通これら故意または重大なる過失によって受傷、罹病したという場合には、直接の原因が故意または重大なる過失は起因している場合をさすのが普通の場合であると思いますけれども、そういうふうにとりまするというと、おそらくただいまあげましたような例は、すべて恩給法上または援護法上の公務災害、公務死亡というものに該当することになって、恩給法なり援護法による遺族年金を支給しなければならないようになると思うのでありますが、さような、これは国家補償といいますか、軍人軍属の公務災害に対する国家補償という精神に照らした場合どうであろうかという疑問を持つのでございます。そこで私ども、推測でございまするが、提案者とされましては故意または重大なる過失というのは、必ずしも直接のその原因をいうのではなくて、その前の原因において、つまり間接原因におきましても故意または重大なる過失があって、それが原因、原因となって遂に死亡に至ったという場合も、修正案においては含むのである、こういう御趣旨ではないかと推察いたすのでございます。従って重要なる軍紀違反が行われ、その結果受傷、受病、死亡という過程を踏まれた方はこの公務死とみなされないと解釈するのが適当ではないかと、こう考えております。
それから第二の場合でございますが、服務、公務ないし勤務に全然関係がなくて受傷、受病したことがきわめて明瞭である例をお引きになったのでありますが、条文を読みますというと、どうもその勤務に関係がない場合ということは除外してございません。従って法文をそのまま読みますときには、御指摘になったような場合におきましても、当然故意または重大なる過失なきものとして遺族年金、弔慰金の受給の対象になるものだと思われます。先ほど草葉先生お話しの通りに、すべて公務を前提としているから、第一条を受けておる以上、当然公務ということを前提としておるのである。ただ公務であるかどうかはっきりしないというものについては、できるだけ広くこれを有効とみなしていくように援用するのだと、こういう解釈であれいたしまするというと、その前提に立ってこの条文を読んだということにいたしまするというと、かように公務でないことがきわめて明確であった場合におきましては除外すべきではないかと思うのでありますが、ただ法文の上におきましては、そのことが必ずしも明確に現われておりませんので、むしろ逆に、こういう場合は当然公務死とみなされて年金、弔慰金及び恩給法による扶助料が支給されるようになるのではないかと、こういうふうに事務的には一応思うわけでありますが、しかしこの前段に、公務とか服務とかいうことが当然前提になっているものであって、それが当然かかってくるのだから、それがない場合において、服務、勤務に全然関係がない場合においては、処理上当然除外していくべきである、こういう御解釈でございますれば、ただいまおあげになりました第二の場合においては、取扱い上公務死とはならないのではないかと、こう考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/99
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100・草葉隆圓
○草葉隆圓君 今のお答えでは、逃亡中の不慮死は非公務ということ、私幾つも例を出しましたが、その他の場合には、公務でも非公務でも——むしろ非公務である場合が多いのじゃないかというようなお話でありますが、必ずしも私はそうではない問題が今申し上げた中にはあるので、たとえば故意または重過失というのが、その字そのものはそうですけれども、大前提は必務というのにかかっておりますから、それを従来どうも遺族の一般から考えると、公務として取り扱い得る範疇にはあるけれども、どうしてもそこまでいかない、従来の取扱い例からいかないという場合において、そういう場合が多くあるから、今度政府も修正をし、さらにもっとこまかく衆議院ではそれを修正する、こういう格好になってきたと思う。それでなるべくそういうのを国民に疑義を与えずにはっきりしながら今後の範疇をきめておこう、従ってできるだけはっきりその点をきめておいていただく方がいいと思って、こういう御質問をいたしておるわけです。もう一点具体的に申し上げますと、今後は自殺の場合においても、あるいは終戦前後の責任自殺、その自殺が故意でない場合の自殺、従来事変あるいは戦争中におきまして、責任者としての自殺というものも間々あると思う。また責任感によるそういう場合もある。あるは痴情関係における自殺というような場合には、これは一般的に別といたしましても、そうでない場合においては、当然その範疇の中に入れるのではないか、それから休暇中といえども、部隊が、戦地または事変地である以上、特別な故意または重過失以外においては、むしろ公務死の範囲のえるのであります。そういう場合においては、どういうふうに裁定をされるお考えであるか、この点。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/100
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101・田邊繁雄
○政府委員(田邊繁雄君) 私は法文の条文をそのまま読みました場合におきましては、休暇中における軽過失等による死亡は、当然この条文では公務死としてみなされるというふうに取り扱われていくのが解釈上妥当であろうと思いますから、ただいま草葉先生は、虫質的な面からこれは公務死と同様に扱ったらいいのじゃないかという御意見をお述べになったのであります。私は実質的な意見につきましてはともかく、法文の解釈といたしましては、服務に関しとか、あるいは服務上とか、あるいは公務上という言葉を排除しておりますので、いかなる場合、戦地に行ったことがすでに全部公務であると、こういう割り切ったお考えに立っておられるのではなかろうか、戦地に行った以上はすべて公務である、故意または重過失があった場合だけは除外するのだ、こういうお考えではなかろうかと実はひそかに考えて想像いたしておるのでありますが、ただいまお述べになりましたような公務ということを前提とするというお言葉は、これはどうもどの程度までかはわかりませんが、そういうことを前提とするということにいたしましても、服務に関しということを公務を前提とすると申しましても、ピンからキリまで含めたすべてを公務を前提とするを言えるわけでございまして、あるいは公務を前提とする、ある場合は公務を前提としないと分けることもなかなかむずかしいと思いますので、一応提案理由によりますれば、これはすべて公務をみなされるものとして取り扱うのが条文に最も沿うのではないか、一応こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/101
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102・山下義信
○山下義信君 ちょっと関連して。今質疑している点は、今度の衆議院の修正案の重大な修正点なんですね。それで草葉委員から質疑があって政府がそれに答弁されるんですから、まあ衆議院の方の御意思はこうであろう、ああであろうとそんたくしながら政府当局の見解を述べておられるんですが、非常に参考にはなるわけですがね、これは順序が転倒していると思うんです。それで私は衆議院の方の修正の御意思はどういう御意思がこれをはっきり一つお示しを願って、それでいいかどうかということに質疑が変ってくるとわれわれにもよくわかると思う。それで私はその点を、衆議院の修正のお気持をはっきり御説明願って、それから今度は政府原案の方は一体こういうもとの修正前の政府の方は公務死の範囲の拡大について、その認定についてはどういうやり方をするつもりであったかということを、これも一つ、もう修正されたんだから言わなくてもいいようなものだが一つ言って、そうして比較してもらえば、今の草葉委員の質問が非常にわれわれにもよくわかって参考になる。衆議院の方の修正の意思を、これをそちらの方にそのまま置いておいてやったんでは、ちょっとどうかと思うんで、衆議院の一つ修正の意味を明確にしていただきたいと思うんですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/102
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103・山下春江
○衆議院議員(山下春江君) これは大へんむずかしく、私どもとしましても申し上げました通りに、大東亜戦争の半ば以後というものは全く混迷の戦争状態で、常識的に考えられない状態であった点を勘案いたしまして、政府が今回非常に公務死の範囲を拡大するつもりで原案をお出しになったことはわれわれもよくわかりますけれども、なおそれでは救いがたい点を多々感じますので、端的に申しますれば、故意または重過失によらざるものは、その他の理由によるものは全部公務死と扱えと、こういうことでございますけれども、しかしながらその根底には全く公務規定を無視した上に当って考えておるのではないのでございます。ある程度その意味を底流に持ちながら、ほとんどの問題、たとえば休日にお酒を飲んで泥酔して死亡したというような者は、これは公務でないという解釈がもし成り立つとすれば、私どもはそれに対しては反対でございまして、休日といえども、あるいは自分の僚友が特攻隊等で、あすは出発するんだと、万に一つも帰ってこない特攻隊員が自分の友だちであった場合に、再び相まみえることのない友だちとはおそらく泥酔するほど飲んだであろうことが想像つきますので、これらの者は、もし休日の飲酒による死亡といえども、われわれはこれを非公務と扱われることには承服いたしかねる。例をまじえて申し上げれば、そのような気持で、故意または重過失によるもの以外はということで、非常に考えようによりましては、もうそのほかのものは全部公務だと、一切自由裁量を許さぬという、強い言い方のようでございますが、一切つ、というところがほんとうの私どもの気持であったのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/103
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104・山下義信
○山下義信君 今の御説明でわかりましたのですが、私も率直に伺うのですが、つまり言いかえますと、従来は公務死として扱われていなかった戦地におけるところの病死者ですね、そういう人たちを、今の故意は言うまでもないことでありますが、重大なる自分の不注意でない限りにおきましては、それらをことごとく公務死として扱ってやろうというのが衆議院の方の御修正意思ではないかと思うのです。ところが今の御説明によりますと、そうではないようですね。ことに先ほど草葉委員の質問の要旨等をここで引用して重ねて伺いますと、大体公務死として取り扱わるべきケースの中で、こういうような故意または重大な過失による云云というようなことを除いて公務死として扱う意思かと、こういうような政府との間の質疑応答があったのですが、そういう公務死として扱わるべき範疇というようなワクの中での修正の御意思であったのですか。そうじゃないでしょう、この御修正は。この条文を見ると、条文の上の表面を伺うと、今の山下先生の御説明のようなご趣旨は、この条文の表面からは出てこないのですね。お心持ちはそういうお心持ちでありましょうけれども、出てこない。この修正の条文の表面を伺いますと、従来公務として取り扱われていなかったものでも、故意または重大な過失によってということが明かでない場合には、公務死としての認定の範囲を拡大するということが御修正の御趣旨であったように思うのですね。私は先ほどからの草葉委員の質問とは反対の意味を持たせて伺っておるのです。それでその点はどうなんでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/104
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105・山下春江
○衆議院議員(山下春江君) 注文の表面も裏面もございません。説明は山下委員の仰せの通りでございますが、はなはだややこしい表現で恐縮なんでありますが、故意または重大な過失であるということが判明しないものは全部公務として扱え、非常に強く規定いたしておりますが、しからばもう一切故意、重過失とみなされないものは全部公務だと、お前はここで言い切れるのか、それが法の精神であったのか、私衆議院の審議過程において出ました議論の全体を総括して申しますと、そのように扱え、文章の通りに扱えという議論が半分と、その底には、しかしながら公務ということを従来の公務の規定という精神を全く無視した考え方ではないのだという意見が半分でございました。そういう上に立って私が今説明をいたすものですから、山下委員にもはなはだ要領を得ない答弁になったと思うのでありますが、大体におきましては、故意、重過失が明らかでないものは全部公務として扱ってもらいたいということが修正の意思でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/105
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106・山下義信
○山下義信君 そういたしますと、今の御答弁ではっきりわかったのですが、この修正の御論議の過程は、率直にお述べになりましたように、いろいろ御意見があったんでしょう。しかしながらこの衆議院の修正の趣旨というのは、従来公務死として取り扱われていなかったものに対して、故意もしくは重大な過失によるもの以外には、ことごとく公務死として扱え、その扱い方を広く拡大をする、こういう御趣旨の御修正である、かように承わりましてよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/106
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107・山下春江
○衆議院議員(山下春江君) その通りでよろしいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/107
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108・山下義信
○山下義信君 私は政府に、衆議院の修正前の原案について、公務死の範囲を拡大するという政府原案の当初の御趣旨は、公務死として扱うべき範囲の中において、その公務死であったということを立証するに困難なものたちに対して、その立証の責任を政府が持ってやろう、すなわち公務死でなかったということを、当人の責任に帰するということを政府自身が立証することができなかった場合には、大体公務として扱うべき範疇の中において、その前提に立って政府が一つ責任を負って、お前さんの過失によるのだ、お前さんの責任に基くのだということが立証できなかった場合においては、一つ公務死の中に入れてやろうというのが政府の原案の趣旨であったように思いますが、私の解釈は違いますか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/108
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109・田邊繁雄
○政府委員(田邊繁雄君) いわゆる公務傷病の範囲に関する第四条第二項の政府原案の趣旨は、今山下先生が言われたような趣旨でございます。大東亜戦争、ことに末期近く、中期以降における戦地における傷病というものにつきまして、積極的に公務傷病が立証できない場合においても、これを公務としてみてゆく道を開く、つまり公務であるか非公職であるかわからない場合は公務とみなそう、こういう趣旨であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/109
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110・山下義信
○山下義信君 よくわかりました。ですから政府の原案を衆議院の方の御修正は、従来非公務と見られておったものでも、これを今申したように、故意もしくは重大な過失という理由以外には、ことごとく公務死の範囲内にこれを拡大して取り入れよう、こういう御趣旨の御修正である、かように修正の御意思だけは明確になったと私は了解します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/110
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111・草葉隆圓
○草葉隆圓君 そこで山下君の御質問ではっきりしてきたわけなんですが、私は公務死というものと公務死でないものというのは、一つの恩給法上の厳然たる線があって、公務死の場合に上は、倍率を加算して恩給年限に達せぬでも一日でも恩給をつけて、しかも倍率をつけるというところに普通恩給あるいは普通扶助料と公務扶助料との区別がある。この公務であるかないかという線だけは恩給法上はっきりしておかなければならぬ。援護法のこの改正がもとになりまして、恩給法の今度の修正は通過しましたが、この条項がもとになって今後の公務か公務でないかという決定が行われてくるわけです。従って私は少しさっきは順序が違ったのでありますが、具体的な問題から先にお尋ねしてやってきたわけです。そこでそういう前提から議論をいたして参りますと、公務でないという場合には、恩給法上の公務の取扱いはできないことになる。従って故意または重大な過失というのは、従来のわれわれの使っております言葉の持っております意味から申しますと、服務観念以外の場合に使う場合が多かったのであります。また服務観念以外の場合が故意または重過失という問題が起ってくる。しかしこの援護法で衆議院が修正されましたのはやはり援護法の第一条に「この法律は、軍人軍属の公務上の負傷若しくは疾病又は死亡に関し、国家補償の精神に基き、軍人軍属であった者又はこれらの者の遺族を援護することを目的とする。」、どこまでも公務というのを一つの前提に置いてやっておりまするから、従ってこの中に入れておりまする故意または重過失、こういうものもその範疇において取り扱いを考えてこないと恩給法上の一貫性を欠いて、将来いろいろな問題を起すもとになりはしないかと、こう考えまして、その意味で私はさっきから御質問申し上げておったのであります。それで衆議院の修正の意味は、今お話しになった「故意又は重大な過失によって」と「公務以外の事由により」というのを御修正になりましたが、その修正の意味は、「公物以外の事田により」ということよりも、「故意又は重大な過失によって」ということの方が一そう明瞭であるからという意味において御修正になったのか。それは全然公務以外をとるという法律上の立場から考えるという意味でなしに、具体的になりますると、従来公務でないとして却下されておったのが、それは戦地にいるということそのものがもう服務観念であるという前提のもとに取り扱ってこられた問題であろうと、かように解釈しながら実は御質問申し上げておったわけであります。そこでこの点については、修正されました山下衆議院議員はどういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/111
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112・山下春江
○衆議院議員(山下春江君) ただいまの草葉先生の御意見の通りでありまして、私どもが恩給法上の振り合いを考えましてこれを強く、故意、重過失が明らかでないときということにしますと、非常に範囲が広くなると思いますけれども、しかしながら大東亜戦争による疾病、負傷、死亡は全部公務であると規定しないで、故意、重過失が明らかな場合は公務としないというところに、非常に広範囲ではあるけれども、その線を乱さないということは根底にあるのでございまして、解釈のいたし方だと思いますけれども、その恩給法上のことをも勘案しつつ故意または重過失といたしたのでございますから、一切大東亜戦争のものを全都公務として処置せよということは違いますのて、草葉先生の御意見とそごいたさないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/112
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113・山下義信
○山下義信君 関連して。そうおっしゃっていただくと困るのです。草葉君の質問に対しては、山下衆議院議員はそのお説の通りだ上言われた。私の質問は草葉君とは違うんです。対照的なんです。反対なんです。私の質問に対してはその通りだとおっしゃった。さっき、速記にも残っておりますんですが、どっちかにしていただかぬと困るんです。尋ねている方の腹はみなお互いにわかっているんですから。(笑声)ですからこんなに広げると、これはトンネルで、ここで援護法を変えるとこれがすぐ恩給法に適用されてしまって、トンネルですから、今まで病死だ病死だというので戦死者に扱わなかった者が、もう故意、重大な過失が立証されない限りにおいてはみな戦死者になるというので、ずっと公務死傷者として支給しなければならないということが起きてくれば、これは裁定上のしんしゃくが困難だ、そういうこともありましょう。同時にその対象者の数からそれは大へんなことになるんだというので、これはこんなに無制限に広げてもらっては困るという趣旨で質問しているのかしてないのか知りません。(笑声)知りませんけれども、それでこの衆議院の修正字句を見ると、そういうようなしぼり方というものが線が引いてないので、このままの修正では、衆議院の修正文を読んで見ると、つまりもう故意、重大な過失ということの立証のない限りには公務死として扱ってやるんだということに解釈できる。実は従来主張がそうだったんでしょう。率直に言うて今日まで遺族問題について非常に国会にも要望しているところの世論というか、遺族の要求というものは、今山下衆議院議員の言われるように、戦役に従事した者がたまに当ろうと、病気にかかろうと、よほど勝手なふるまいをして、酒をくらって勝手なふるまいをした者がない限りでは、ひとしく戦いの犠牲者じゃないか。たまに当ることと病気になることと相違があるか、自分の家にいればかかる病気ではないが、僚属風雨のはなはだしい所に行って、それがために健康を害したのではないか、それを特殊の病気以外は戦死者として扱わないのは不都合だ、ここに起因して公務死の範囲を広げようという問題が従来あった。それをわれわれは衆議院はお取り上げになったのではないかと、法文を解釈してそう思っておる。今度はそれじゃ困るという方の御意思があるかどうかわからないけれども、公務死として扱うべきその範疇の中で、その実証が非常に困難なものについては、政府の方で一つ考えてやることを、審査については考えてやることが政府原案の趣旨のようなものだろう、こういうような草葉君の質問に対してはそうだとおっしゃる。それでは御修正の趣旨がどこにあるかわからないことになるのでありまして、御趣旨をきめていただけばそれに沿うような字句が不十分ならこれは相談して変えなければならない。この字句だけでそういう趣旨だという解釈をさせるように質問者がしているかしていないか私は知りません。そんな無理なことをせぬでも、なに、一時間あってこちらからそちらの方へ行って相談すればいいのだから、字句が不適当なら直せばよい。解釈が、草葉質問のように解釈できるなら、これはあらためてどの字句からそういう解釈が生まれてくるかということを聞かなければならないが、その前に修正の御意思はどこにあるかということをはっきりしていただいて、その修正の御趣旨が悪ければこれは変えてもらわなければならぬし、その御趣旨がよければ、われわれ参議院の方でとってもよい。それから御趣旨のよしあしと、字句のよしあしと関連がありますが、まず御趣旨がどこにあるかどうかをきめていただいて、御修正の字句に合うかどうかこの二段に行った方がよい。一つずつ片づけた方がよいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/113
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114・山下春江
○衆議院議員(山下春江君) どうも明瞭な答えが出ないためにおしかりを受けるのでありますが、私は山下先生のおっしゃる正面から、全くまつ正面から故意、重過失でないものは全部公務死だ、そういう気持でお前はきめたのだろう、その通りでございます。また草葉先生の裏から、そうはいっても、そう行き過ぎた考え方ではなかろうと、それはその通りだと、しかし故意、重過失ということのはっきりしたものまでも、そういうところまでも突っ込んできょうまでの一切の公務死のワクの中を通り抜けて、一切を無視してやれと、そこまで行き過ぎた考えではなかろうと裏からなだめられるのでありまして、正面からがんと来られる方と、裏からそうでもなかったのではないかという、それが衆議院の審議の実相であったのであります。従いまして、今法文としてこう生まれました以上、私はそういうことでありましても、法を立てたときの精神はどうであったか、それは従来いろいろな点で公務死でないとしぼられたケースが相当たくさんございまして、今死因について四万一千円と仰せられた通りであります。従ってそういうことはこの際私どもは許さない。やはりそういうものは公務死として扱ってやるべきだということに立ってでございますから、山下先生のおっしゃる故意、重過失にあらざるものは、全部公務死として扱えということに私どもは基点を置いて、その底流に、さりとて一切を無視した言い方ではないということでございまして、これがもうどこまで行っても真相でございまして、従いまして先生のおっしゃるきょうまでの死因等について、公務死と見られないものを、公務死として扱えというのが法の精神でございます。表現が悪いと思いますけれども、それが実相でございます。先生のお気持の通り、あまり強くそれを主張いたしますと、これでは法文として多少の疑義があると仰せられますならば、私がここで提案者を代表いたしまして、その文学に対しては、参議院の方でよりよき文学があればそれをお使いになってよろしいというようなことは、私はそういう尊大なことは申し上げられませんけれども、文学の上で、その精神を殺さない程度において、法文上文学はかくある方がよろしいということでございますれば、参議院の非常に御研究の深い、桶に衆議院が御尊敬申し上げている参議院で、適切な言葉を、これに表現をいただくことについて、提案者全体も異論はないと存じますけれども、法の精神は、今、山下議員の仰せられる通りであったことを申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/114
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115・山下義信
○山下義信君 私は問題だけ明白になっておればいいと思うのですね。あとは本委員会が御判断されると思うのです。それから結局、一昨日山下春江元生の提案理由の説明を聞いて、私は実は目を回したのです。これはうそじゃございません。医務室で卒倒しまして、そのくらい実は感激したのです。北はアリューシャン列島から、南はという実に悲痛きわまる提案理由がありました。あの提案理由によりますというと、私の質問にお答え下さったような前段の御趣旨が、よくこの戦争の代表者を公務死として扱う、この範囲の拡大について非常に力説せられた。ですから私の質問で、衆議院の御修正は、そういうふうに非常に公務死の範囲の拡大を企図せられて御修正になったところでいいのじゃないかと思うのです。この表の御理由で、それでよろしゅうございますね。再確認をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/115
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116・山下春江
○衆議院議員(山下春江君) その通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/116
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117・相馬助治
○相馬助治君 私、衆議院が修正されたことについていいとか悪いとかということでなしに、わからないので山下衆議院議員にお尋ねをしておきたいと思うのですが、本法が衆議院の修正通りに本院においても可決せられた場合には、この法律によって運営されていくわけですが、この軍人及び準軍人について丁故意または重大な過失によるもの以外の死亡を公務死とみなすと、こういうことでありますから、大部分が公務死となる。別な表現をすればほとんど公務死となる、こういうことに現実はなると思います。なればいいとか惑いということではなくて、私の言いたいのは法文には「重大な過失」云々とありますが、この重大な過失があったということを立証する、すなわち裁判でいう検事の役をなすものは、本法運用上だれなんですか。ちょっと速記をとめて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/117
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118・小林英三
○委員長(小林英三君) 速記をとみて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/118
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119・小林英三
○委員長(小林英三君) 速記を始めて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/119
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120・相馬助治
○相馬助治君 この法律によりますと故意または重大な過失によるものは公務死とみなされないわけですが、故意または重大な過失によるものであると立証する立場をとるもの、それはだれですか。そうしてまたそれは明確にそういうことを本法運用上とらえますか。それともまたそんなものはとらえなくとも修正の精神上必要ないのだというので、さして衆議院では問題にしないのですか、参考までに。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/120
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121・山下春江
○衆議院議員(山下春江君) 故意または重大過失であったかどうかの挙証の証明をするものは厚生大臣であると考えます。
それでその厚生大臣が究極最終的にその証明をなし得るものかどうかということでございますが、もしその証明が不明確なものは、公務死として扱ってもらうべきものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/121
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122・相馬助治
○相馬助治君 そうすると、こうですか。公務死であると遺族の者が主張した。ところが厚生大臣は、いや、これはかくかくの事情で故意または重大な過失によるものであると立証した。そこでトラブルが起きた。そのときは第三者的なものはこれを仲裁するものでもなく、司扶裁判所が仲裁するものでもないから、このときは、いや、公務死だとがんばった方が勝つことになっているのだと、こういうことの法の解釈ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/122
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123・山下春江
○衆議院議員(山下春江君) 大体そういうふうに御解釈願ってもよろしいかと存じますが、筋は多少違いますけれども、援護審査会というものが現存いたしておりますから、そういうところにかけることを実は衆議院では非常にきらいまして、これは既裁定のものだけをさばくという機関に残したのでございますけれども、非常に困難な場合はそういうところに相談するのも一手であろうかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/123
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124・相馬助治
○相馬助治君 速記をとめて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/124
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125・小林英三
○委員長(小林英三君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/125
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126・小林英三
○委員長(小林英三君) 速記を始めて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/126
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127・草葉隆圓
○草葉隆圓君 さっきから問題が故意または重大なる過失によると、この問題が中心であり、これが今後の公務死の問題を左右する問題でありますから、いろいろ関連的に質疑が行われておると思うのであります。そこで現在これは援護法の二十九条におきましても、故意という字は使っておりませんが、「重大な過失によって公務上負傷し、又は疾病にかかり、これにより死亡した者の遺族」には遺族年金は支給しないということになっておる。公務上でも、いわゆる重大な過失の場合には遺族年金は支給しない。また恩給法によりましても、四十六条には同様な意味を述べておるのであります。公務の場合においても——従来の恩給法、援護法でも、重大過失の場合には公務でもっても、それはいわゆる公務扶助料、あるいは遺族年金は支給しない。そこでそれをここに同じような字句を使って「重大な過失」というのが出て参っているのですが、私は私自身が戦地において、このような大東亜戦争の様相においては、なるべく従来の陸軍あるいは海軍当時の恩給法等を中心にして、恩給なり遺族年金、遺族扶助料の支給をするという考えは毛頭持っておりません。これはむしろさきに山下君のお話のように、なるべくあのような戦争の様相であったから、その後資料もなし、しかも敗戦の状態になったので、なるべくならばこれを広く支給していく方法をとっていきたい。ただ法律になって参りますときには、そういう精神をどういうふうに表わしてくるかというのに問題がある。従って前後のよく継ぎ目の合うようにその精神を生かしていくことが必要じゃないか。その精神を生かす場合においては、衆議院の「故意又は重大な過失」という修正は、私がさきに申し上げたような解釈をもってこないと、これが生きてこないのではなかろうかということを、法理論的と申しまするか、一応表面に出します場合には、そう言っていかなければいかぬのじゃいか。そうしないと、次には私は戦地にだけはこの方法で適用するが、戦地でない内地には、これがこの状態にあって内地は従来のやり方をする。戦地は今度は故意または重大な過失によるもの以外には大体これで取扱われる。そこで今度はほかの一般恩給法との関連性、それから内地との関連性等を考えました場合に、この点をよく解釈上統一をしておかないと、将来大へんな疑義を生ずるからというのが私の懸念としてお尋ねを申し上げ、その場合に具体的な事例をあげてお尋ねをしたいというような意味であります。で、私はこの「故意又は重大な過失」というのは、この援護法の大前提のものと言うべきものであり、また政府原案の「公務以外の事由」というのは、それはあまり漠然たるものであるから、重ねて二十九条なり恩給法等にも出ておるけれども、それをここにさらにはっきりと表わすためにこういう文字をもって表示されたものである。で、恩給法上の公務死という考え方は一貫しておるものであるが、その一貫した——今まではその解釈をごくしぼって解釈しておったけれども、そうではなしに、戦地または事変地においてはこれを広く解釈するというこの新しい援護法の改正並びに修正、それによる解釈によって取扱っていこう、こういうお考えだろうと思いますが、この点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/127
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128・山下春江
○衆議院議員(山下春江君) 先ほど来由しましたような気持でございますから、ただいま草葉先生の御質疑も、われわれの解釈と同様な意味を方角をかえておっしゃったことであると存じますので、われわれがきょうまで解釈いたしました解釈は、幾様にも考えられるものではなく、常に一通りしか解釈がございませんが、私、前に申しましたように、公務というものを低流において考えておるのでありまして、表面のところには私どもは故意または重過失以外は全部公務だと解釈しつつも、全くすべての条件を無視したという考え方ではございませんから、草葉先生の御質疑の点と私の点とは食い違いがないのではなかろうかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/128
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129・竹中勝男
○竹中勝男君 関連ですが、故意または過失によるものという、非常に抽象的なんですが、これは法律上、何かこれは今の民法その他にも関係してくると思いますが、他の恩給、一般の恩給あるいは産業労働者の場合にも、こういう法律ができますと、一つのこういう標準ができるわけです。それで今度は逆に判決例といいますか、事例であげてみて下さい。どういうことが故意または重大な過失によるものだといてり例をあげてみて下さい。それを数種あげるということが、やはり必要になってくると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/129
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130・山下春江
○衆議院議員(山下春江君) 例をあげて示せと仰せられますと、私はその故意または重大な過失というものが戦地にどのようにあったかということの多くを存じませんけれども、ここにたとえば私情による自殺というような例が一つございます。これなぞも、私ども必ずしも文字通りに解釈できるかどうかということに多少の疑義は持ちますけれども、まあ戦地にありまして私情なぞによって自殺した者は故意であろうと考えますので、そういうものをこの事例として考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/130
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131・竹中勝男
○竹中勝男君 重大な過失はどれですか、片方の。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/131
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132・山下春江
○衆議院議員(山下春江君) 私は、実は性病も重大な過失と考えておらないのでございます。もしも、そういう説明もあろうかと思いますけれども、しかしながら性病も、平和に家庭に暮らしておる農家のいい農夫の夫婦であります場合に、そんな悪質な性病にかからないであろう、戦地なるがゆえにであろうという私は考え方を持っておりますがゆえに、性病も必ずしも私は重大な過失とは実は考えておらないのでございます。まあここに一つの例がございますが、注意義務を要求された者が爆発物の安全規則を順守しなかったために起きた事故……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/132
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133・竹中勝男
○竹中勝男君 それも家庭におったら起りませんね。そんなことは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/133
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134・山下春江
○衆議院議員(山下春江君) ということ、これはまあ私があげた事例ではなく、厚生省等において考えられた過失の一つの事例だと思いますが、厳密に申しますと、今の性病が重大な過失だということがしぼられればでございますが、私には多分の疑義があると思いますので、性病をとらえて重大な自己の過失と私はきめきれない気持でおります。たとえば、私のところに陳情がありました一つの例をもちましても、メチールを飲んで死んだ、しょうちゅうと思って飲んだところが、それはアルコールであってメチールを含んで おって、メチール死であった、これは重大な自己の過失ということで実は範疇から取りはずされておりました、従来。けれども、このしょちゅうを飲むということも、おそらく飲んだ人は、この中にメーチルが含有されておるということを承知して飲まなかったに違いありません。従って、自己の過失と私はこれを限定することは困難だと考えておりますので、重大な自己の過失というものが戦地によって起る確実な事例を今実は私としては持っておりませんが、そういうものもあろうと想像しての規定でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/134
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135・竹中勝男
○竹中勝男君 今の問題に関係しておるのですが、架空のもので具体的にないものを、提案者がそういうものがわからない、ないというものをあるかのごとくこういう法律の条文にするということに疑義があるのです。その点について、重大な過失というものに相当するものがないのですか。提案者、これは重大なことですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/135
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136・山下春江
○衆議院議員(山下春江君) ですから、先ほど申しました、その注意義務を要求せられた、けれども爆発物の安全規則を順守しなかったために爆発物が爆発して死亡した、それもうちにいれば……と、こう仰せられましたので……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/136
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137・竹中勝男
○竹中勝男君 あなたは、うちにいれば性病にかからないと言われるから、それもうちにいれば爆発物……、同じことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/137
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138・山下春江
○衆議院議員(山下春江君) それはそうでありますが、しかし性病の場合とこの爆発物の輸送の場合と私は性格が違うと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/138
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139・竹中勝男
○竹中勝男君 爆発物の場合はなおさらこれは戦場における重大な過失になるが、性病が過失でなかったら、これはより戦争に連なる行為としての事件ですから、重大な過失とは言えない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/139
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140・山下春江
○衆議院議員(山下春江君) 前言を取り消しまして、日本の男子を信頼いたしまして、性病を自己の過失とみなします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/140
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141・竹中勝男
○竹中勝男君 これは援護局長にも事例を少し集めてほしいと思うのです。そうでなければ、法律にならない。事例が、架空のものであって、どうも考えつかぬとか、あるいは牽強付会に類するようなそういう事例では、われわれは納得できない、審議する者としては。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/141
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142・小林英三
○委員長(小林英三君) 援護局長、今の事例ありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/142
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143・田邊繁雄
○政府委員(田邊繁雄君) ただいまメチールのお話が出たのでございますが、メチールによる生涯にもいろいろございます。たとえば、一番極端な例を申し上げまするというと、飛行機のために使うガソリンをわざわざ盗んで飲んでメチールの傷害を受けてなくなったとか、それからきようは何かおめでたいことがあるということで、部隊の方から祝い酒を出した。部隊から出したいわゆる祝い酒を飲んでいるうちに、足らなくなったというところから、つい、もっと持ってこいというようなところから、当然いい酒だと思って持ってきたものを、それを飲んでいるうちに、メチールが入っておったらしくて、メチールの傷害を受けた、これはまあ死亡したかどうかまでは確かめておりませんが、そういう事例がよくあると思います。こういうようにいろいろ同じメチールを飲んだ場合におきましても、その当時の事情が情状酌量すべきものかどうかということについては、個々にこまかく判断をしていかなければならないのでございまして、先ほど申し上げました航空機用のガソリンをわざわざ盗んで飲んだどいう場合は、過失の相当なものじゃないかと思うのでありますが、それはまあ勤務に関連していないとも言えませんし、勤務に関連しているかどうか、公務を前提としているかということになりますると、大ていがやはり公務を前提としております。日曜日に休暇を与えられて、その日、どこかに行ってレクリェーションということをするというのも、公務を前提としている。従って広く解釈すれば、戦地にいる間は全都公務を前提としているように言わざるを得ないのではないかと私は思うのでございます。その場合に、ある場合は公務を前提としている、ある場合は公務を前提としていないということは言えないのではないかと思います。個々の審査に当って、われわれ、私を含めましての審査の裁定の場合といたしましては、そこまでのところの判断を要求せられることは、非常に困難ではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/143
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144・小林英三
○委員長(小林英三君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/144
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145・小林英三
○委員長(小林英三君) 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/145
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146・相馬助治
○相馬助治君 竹中委員の質問に答えて山下衆議院議員からの答弁がございましたが、この委員会で今質疑されて速記録に残っているこの問題は、私は後日やはり重大な一つの資料になるものと、かように考えるわけであります。それで私は最終的に衆議院の修正に敬意を表しておりますものですから、何ら反対するものを持っておりませんが、ただ立法府にある者としては、やはりあとうる限りこの法の運用上のことにまで思いをいたして明確にさしておきたいと思いますので、この際一つ紅露政務次官にお尋ねしたい。それは山下議員の昨日提案理由の説明の中にも、川崎厚生大臣も賛意を表しているという御発言がありました。そのことは本日、実例を上げて御説明しておりまする山下議員の発言並びにその意思等をも含めて当然賛意を表しておるものと本員は了解しますが、私の了解は間違っておりませんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/146
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147・紅露みつ
○政府委員(紅露みつ君) 大臣がこの修正案に対して賛意を表されたということでございますが、それまでにはただいま例に出ておりまするようないろいろな実例ですね、そういうことは取り上げられておったのではなくて、ただ議員提案として衆議院を通過して参ったのでございまするから、そのことについては、議院のつまり決議に対して賛意を表しておられたと私は解釈いたします。ですから総括的にこの修正自体に対して賛意を表されたのでございまして、その中のこまごましたことには審議に一々携わってそれらの事例を聞いたわけではないはずでございまするので、そのこまかいことにつきましては、よろしく委員会におきまして審議を願って、そうしてその結果につきましては、当然厚生大臣としては、その御決議に賛意を表してそれに従うということであろうと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/147
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148・相馬助治
○相馬助治君 私は議員としては常識を疑われるような質問をしたのです。当然のことを私は聞いたのです。それは万が一今のような次官のような答弁がありはしないかと思うから聞いたのです。今の次官の答弁はまことに奇怪です。それは決議々々とおっしゃるが、付帯決議なんかの場合には、大臣がその院の決議の趣旨を尊重して法の運用をはかりますということであって、その法の運用をどうはかるかということに対しては、かなりな幅があるわけです。ここでは修正案なんです。法律なんです。その法律が成立したそれに対して大臣がこの趣旨がよくわかったというならば、具体的な今の実例等について山下議員が触れているような問題も当然含めてこれは賛意を表しているはずなんです。従いまして次官のその御答弁は私には一応ふに落ちません。ふに落ちるか落ちなないかということは見解の相違になりましょうから、政治的な問題と離れて私は事務局にお尋ねしますが、事務局ではこの修正案がまとまりまする過程において何らか意見を徴された事実がございますか、第一点。
第二点、この修正案でもってあなたたちは当然両院において成立すればこの本法によって運営をはかるわけですが、これに対しては当然責任を持ってこの運営をはかるのであって、立法上の、あるいは事実上の重大なる疑義等はないというふうにお考えであろうと思いまするが、さように了解してよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/148
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149・田邊繁雄
○政府委員(田邊繁雄君) 衆議院の社会労働委員会におきまして、この修正案について私どもの事務的な立場から、いろいろ事務的に検討するという意味で質疑等を行う資格はございません。それからこれが通った場合におきましては、この法文の趣旨にのっとりましてこの法律を運用していかなければならぬと思いまするが、ただ若干疑問がございましたので、ありていに申しまするというと、衆議院の法制局等にもいろいろ伺ってみたのでございますが、はっきりしない点がございますので、この点は将来運用するわれわれとして勝手な解釈をするということも慎しまなければなりませんので、この国会において成立する過程におきまして、解釈だけははっきりしていただきたいということの希望を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/149
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150・相馬助治
○相馬助治君 この問題につきまして、恩給局長がここに御列席でございますが、何か御所見がありましたら一つ聞かせて下さい。具体的にいえば、修正案通りで十分恩給局としては運営できますという御見解か、それとも何か疑義等をお持ちか、率直にこの際承わってだけおきたいと思います。私は意見を全然持っておりませんから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/150
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151・三橋則雄
○政府委員(三橋則雄君) 法文そのものにつきましては、きわめて明確に「故意または重大な過失」と書いてありますので、法文の文字については疑いはありません。これを実施します場合におきまして、先ほど来いろいろの御意見が出ておるのは、こういう事態に対してあるいは遺族年金を給するのはどうかと思われる、あるいはまたこういう場合にはどうするかというふうな意見を持つ人もあるのではなかろうかというような前提についてのいろいろの御意見、御質問があったのではないかと思っておるのでございまするが、そういうような問題につきましては、いやしくも法律にはっきり書いてある以上は、受給者の側からいえば、権利を与えられることでございますから、これは忠実に法律の規定通りに運用すべきものだと思っております。これは恐らく田邊君も責任をもってこの法律に規定されておる通りに忠実に運用されるものと思っておりますので、法文の言葉の使い方があいまいであるために法の運用において困るといりようなことは私はないと思っております。
それからその次の問題といたしまして、今の恩給の取扱いにおいて何か困ることはないかというお話でございますが、これにつきましては、私は根本的に一つ考えるべきことがあると思うのです。それは戦地において傷庫、疾病にかかって死亡されたといった者に対しては、その傷病の原因については援護法によって遺族年金が給されたものについては、あらためて恩給法において扶助料を給するかどうかということの詮議をしないでそのままそれを支給するかどうかという、こういう問題があると思うのであります。すでにこの問題につきましては、昨年の恩給法の改正におきまして、遺族年金を支給された者につきましては、そのまま扶助料を給する措置をする、こういうことがきめられておりまして、そういう線に沿うて処理をされることになっておりますることを考えまするならば、私は今度のこの法律改正によりまして、援護法によって遺族年金を給せられることになった者に対して、恩給局において扶助料を給しないという措置をするということは却っておもしろからぬ結果になるのではなかろうか、こういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/151
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152・榊原亨
○榊原亨君 昨日来嘆願書を出しておられる方々があるのでありますが、その方々のお話を聞きますと、軍属、船員がこの対象から落ちておることに気がついた。どうかこれを入れてもらいたいという嘆願であるのでありますが、陸海軍指定船乗組船員及び陸海軍の命令によって軍事任務を課せられた船舶乗組船員、こういうことでありますが、提案者は、これはこの対象に入っておりますかどうか、ちょっと御趣旨お述べを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/152
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153・山下春江
○衆議院議員(山下春江君) 衆議院で非常に長い時間、榊原先生の御指摘の船員につきましては研究をいたしました。それはC船員に登録するの手続をとる機会なく死没した船員と思います。当然C船員とみなされる船員であったと思います。そこで田辺援護局長にその点は質疑いたしましたところ、C船員とみなされる船員は大部分もうすでに措置をしてしまった。今後もC船員とみなされる船員を発見すれば扱いますという御答弁がございましたので、今回の修正には入れてございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/153
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154・榊原亨
○榊原亨君 ただいまの点でよろしゅうございますか、事務当局の御意見を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/154
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155・田邊繁雄
○政府委員(田邊繁雄君) 言葉でございますが、C船員という言葉は、陸海軍所属の船員以外の船員という意味でございます。民間の船員ということでございます。援護法では船舶運営会に所属する船の船員ということでございます。従ってC船員でも船舶運営会に所属する船の船員、こういうのが援護法の対象になるわけでございます。船舶運営会に所属する船であったかどうかという点が実際問題になるわけでございますが、当然船舶運営会に所属しておった船であったにかかわらず、手続がおくれておったというものも中にはあるようでございます。こういうものは手続中であった、または手続をするべきはずであった船の船員は、船舶運営会の所属の船の船員として援護法の対象として扱っておるわけでございます。C船員という言葉を使いますとそこに混乱を起しますので、C船員というのは船舶運営会の、陸海軍以外の船の船員全部を含むわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/155
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156・榊原亨
○榊原亨君 この点私よくわからないのでありますが、嘆願を出された方々は、陸海軍指定船の乗組船員及び陸海軍の命令によって軍事任務を課せられた船舶乗組員、こういうことをいうておられるのでありますか、それらは入るのでありますか、入らないのでありますか、はっきりこの際御意見を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/156
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157・田邊繁雄
○政府委員(田邊繁雄君) 私どもの方の従来の調査によりますというと、ほとんど大部分対象になっておりまするし、今後も大部分は対象になると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/157
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158・山下義信
○山下義信君 関連して一つ衆議院の修正者に伺っておきたいのですが、今度の修正で、今問題になっている「故意又は重大な過失によって」ということが立証されない限りは公務死とみなす、こういうことの大修正なんです。これが今問題になっているのです。それが現在の援護法の第二十九条には、重大な過失によって負傷しあるいは疾病にかかった者には遺族年金を支給しないという第二十九条があるのです。第二十九条には重大な過失によって負傷または疾病にかかった者は遺族年金を支給しないという——今回のこの改正には、重大な過失によるという立証がない限りは云々というこの排除されたこの修正との関係ですね、これはどういう関係になりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/158
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159・山下春江
○衆議院議員(山下春江君) 故意または重大な過失によるものは扶助料を支払わないというその二十九条の規定と、今回の故意または重大な過失によるものは公務死とみなさないというこのことは全く同じものであろうと思います。従来の援護法二十九条でいっておりましたことと何ら変らないと思いますが、その従来明らかにそういうふうに書いてありましたものですけれども、その範囲拡大のところに来ますると、いわばこれを執行する事務当局において任意に裁定する範疇が非常に広く残されておったのを、それを極度に狭めようとする、ほとんど任意裁定を残さないということを規定するために、たまたまその「故意又は重大な過失」という文字をもって現わしたのでございまして、その二十九条といかなる関連があるかということの関連性を考えないで、その表現する文字をたまたま同じ文字を使ったということであると存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/159
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160・山下義信
○山下義信君 ちょっと私は問題だけ明確にしておきますからね。今の二十九条ではですよ、公務上負傷した者でも、公務上病気にかかった者でも、重大な過失があったら遺族年金やらぬというのですよ。今度あなたの方ではですね、重大な過失の立証がない限りにはみな公務死にして遺族年金やるというのですよ。公務死にしてやるというのですよ。片っ方は公務死にしてやっても重大な過失で疾病にかかり、負傷した者にはやらぬという、裏を言っているのですよ。あなたの方の修正をひっくり返すと第二十九条になるのですよ、第二十九条では、せっかくあなた方が公務死に入れてやっても、それが重大な過失によって負傷もしくは死亡した場合は公務死でもやらぬというのですよ。今度の修正はですね、公務死にしてやるというのですよ。ちょうどその反対なんですね。一方では公務死の取扱いの範囲を広げておいて、今度は公務死の中で重大な過失の疾病や負傷にはやらぬというのですよ。私はこの両者の関係を一つ、関連性を何といいますか、法律的にも扱い上にも明確にしておく必要があると思ってお尋ねしておるのですが、これを明確にしておいていただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/160
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161・山下春江
○衆議院議員(山下春江君) 二十九条の規定は、公務死であるとこが明確であっても、故意または重大な過失であればやらない。今回は故意または重大な過失でないものはやるということが一体どう関連するかということにつきましては、私は二十九条の規定に対する措置をぬかったものと考えます。その通りに原文が生きておるのではわれわれの考え方は非常に食い違って参りますので、二十九条をそのまま生かしておきましたのでは今回の修正は扱う際に非常にそごを来たすと思いますが、しかしその二十九条の規定に対する衆議院の心づかいが足りなかったであろうことを率直に申し上げる以外に方法がないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/161
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162・山下義信
○山下義信君 私も同感です。私、これですね、十分関係を明確にしておく必要があると思いますから、問題だけ一応きょうは出しておくことにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/162
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163・田村文吉
○田村文吉君 今の問題に対する事務当局の見解を一つはっきりしておいていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/163
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164・田邊繁雄
○政府委員(田邊繁雄君) 修正案々事務的な立場から立案いたしましたのが衆議院の法制局でございますので、衆議院の法制局の係官から答弁申し上げるのが適当かと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/164
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165・田村文吉
○田村文吉君 今の問題は厚生大臣が容認をしてこれに賛成いたしますということをはっきり言っておるのだから、今さら法制局云々ということをおっしゃらないで、厚生省の当局からはっきりと答弁をいただきたいと思います。答弁を要求します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/165
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166・田邊繁雄
○政府委員(田邊繁雄君) 私は、実は二十九条によりまして「重大な過失によって公務上負傷し、又は疾病にかかり、これにより死亡した者の遺族」には支給しないという規定があるにかかわらず、さらに重ねて今度改正案におきまして「重大な過失」を書いたについては、それ相応の理由がなければならぬと事務的に申せば考えざるを得ないわけであります。援護法及び恩給法におきましては、故意の場合におきましては何ら明文はないのでございます。これは条理上、故意によって負傷し、また疾病した場合におきましては、当然公務上の傷病ではないという解釈をとっておるからだと思います。そこでもしも何らの規定がなくて、故意または重大な過失という場合でなくても同じことになるのではないかという、戦地における傷病はすべて公務であると書いたのと同じじゃないかという事務的な疑問を一応持ったのでございますが、書く以上は書くだけの理由があるであろう、そこで私は普通条文の解釈は、負傷または疾病の直接の原因が故意または重大なる過失によった場合が普通の条文であるけれども、ことさら二十九条とは別にこういう条文を書いた趣旨は、間接に故意または重大な過失があって、それが原因となって負傷または疾病、死亡という過程をとった者にまでこの改正案を働かせようという趣旨ではないか、こういうふうに考えたわけでございます。従って最初申し上げましたように、重要な違反をやってそれが原因となって死亡に至ったような場合におきましては、当然この重大なる過失または故意に該当するものと取り扱っていいのではないか、こういう解釈を一応下したわけであります。これは提案者の趣旨に沿っているかどうかわかりませんが、先ほど草葉先生からの御質問に気、しましてこれは含めて解釈するのが当然であろうと申し上げましたのは、二十九条との関連において特に今度は新しい条文が故意または重大な過失を重ねて書いた意味、合いをも参酌いたしまして、こういうふうにしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/166
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167・相馬助治
○相馬助治君 関連して。そうすると今田村委員の質問したことは、援護局長の御答弁はこういうことですか。今度の衆議院の修正は、遺族援護法二十九条のあらゆる立場をも包含しておるので、実施上は何ら支障ないものと認めております。こういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/167
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168・田邊繁雄
○政府委員(田邊繁雄君) 私が申し上げましたのは、故意または重大なる過失というのは、普通の解釈では、罹傷、罹病の直接の原因が故意または重大なる過失に原因する場合だけでなしに、故意または重大なる過失が間接の原因となって、この場合におきましても、今度の衆議院の修正案は、それを包含するのだ、こういう趣旨ではないかと、了解しておる、こういう解釈を申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/168
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169・小林英三
○委員長(小林英三君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/169
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170・小林英三
○委員長(小林英三君) 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/170
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171・山下春江
○衆議院議員(山下春江君) ただいま山下委員の御質問に対して私がお答えいたしました中に誤まりがありますので、訂正をいたしたいと思います。それは公務死の範囲拡大のところで、故意または重大な過失によらざるものは全部公務として扱うと規定したのだが、しかし二十九条には、公務であっても重大な過失または故意の場合には、遺族年金を払わないとなっておることとの間の関連はどうなっておるのかという御質問に対しまして、私がお答えいたしました。それは衆議院においてその点が配慮が足りなかったことを率直に申し上げたのでありますが、今よく前の援護法の規定をつぶさに見ますると、それは一向に差しつかえがないのでございまして、前段に故意または重大な過失によらざるものは全都公務死とするという規定は、二十九条によって何ら制肘を受けないことが明らかになりましたので、取り消しをいたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/171
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172・山下義信
○山下義信君 私の質問に対する御答弁を御訂正になりましたので、伺っておくのですが、そうすると、第二十九条と今回御修正のこの故意または重大な過失によるという公務死での範囲の拡大とは全く同じであるとおつしゅるのですか。一向差しつかえないということは、全く同じであるということなんですね。もし少しでも相違があるということになれば、二十九条と今回の大修正との関連性いかんということを私は質問をしておるのです。そのままにしておかれたのでは矛盾撞着はしないにしても、きわめて両者の関係があいまいもことして、今回の御修正によって第二十九条を伺えばまた意味のとり方が違ってくる。第二十九条にすわって今回の御修正を伺えば修正の意味が違ってくる。全く同じであれば無用であるし、違っておるならばどこがお違いになっておるかということを明にしてもらわなければならぬ。私どもは第二十九条の規定と今回の御修正の規定とが違うというならば、どこが違うのか、同じというのなら必要ないじゃないか、こういうことになるので、二十九条をそのままにして今回の第四条の大修正をなされたということならば、この関連性を明確にされておかなければいけないであろうと申し上げたので、一向差しつかえないとおっしゃったのでは、私は納得がいかない、こういうことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/172
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173・山下春江
○衆議院議員(山下春江君) その点は田邊援護局長の説明を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/173
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174・田邊繁雄
○政府委員(田邊繁雄君) 二十九条がダブってるではないかという御懸念はごもっともあります。ただし二十九条はこれは援護法全般に働く規定でございますので、今回の改正規定と関係のない場合、すなわち内地における死傷、罹病の場合にはむろんこの規定が十分働く余地があるわけであります。
それから書く以上は何か特別の意味がなければならないという点は、私どももそう考えたのでございます。従って先ほどから申し上げます通り、重要なる軍紀違反をやり、その結果軍法会議にかけられて一定の刑を受けてそれが原因となって死亡に至ったというような場合にまでも、この法文では年金をやる趣旨であるかどうかということになりますると、常識的に考えますると、排除するのが妥当ではないか。しかし「故意又は重大な過失」というそのまま読んだ場合においては、どうもその場合でも死亡の直接の原因は決して故意または重大な過失によるものではない、そう読まざるを得ないと思います。ただし、もしこれが間接に故意または重大な過失があった場合においてはやはりこれは排除するのだ、こういう趣意だと了解いたしまするというと、この「故意又は重大な過失」ということを重ねて衆議院の修正案によって変えた趣旨が若干違背してくるんじゃなかろうかと、こう考えるわけであります。これはそういう点までお考えになって提案者がお書きになったかどうかは存じませんけれども、できました以上、二十九条との関連においてこれを法理的に解釈する場合においては、そう解釈するのがその説明ではないかと、こう考えるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/174
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175・小林英三
○委員長(小林英三君) お諮りいたします。この辺で一つ両案の質疑を打切りたいと思いますが御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/175
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176・小林英三
○委員長(小林英三君) 御異議ないものと認めます。(「異議あり」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/176
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177・山下義信
○山下義信君 異議あります。本案の質疑を打ち切るんですか、質疑を打ち切ると言っても、答弁でも問題が明確になっていないので、これをこのままで質疑を打ち切るということは反対です。これは時間をかけるかけないでなくして、問題を明確にして、このままでいいかどうかということだけは明らかにしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/177
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178・小林英三
○委員長(小林英三君) 今の御発言ですが、今のあなたの御質問に対する答弁があってそのまま御発言がなかったから、それで御了解になったものとみなして委員長からお諮りをして質疑はないものと認めたわけなんですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/178
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179・山下義信
○山下義信君 わかりました。それではただいまの答弁を納得いたしませんし、まだ質疑は私は残っておるのです。それで質疑打ち切りには反対です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/179
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180・小林英三
○委員長(小林英三君) 質疑は打ち切ったんですが、宣告をしたんですが……。(「それは何もそこまで言っていない」と呼ぶ者あり)
速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/180
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181・小林英三
○委員長(小林英三君) 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/181
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182・阿具根登
○阿具根登君 皆さんの意見が相当一致しておるようですし、非常に長い時間も費しておりますから、簡単に質問して提案者に今後の考え方をお尋ねしたいと思いますが、私はこの法案に賛成なんですけれども、戦場というものをどういうように解釈されておるか、気候、風土の変る所というように解釈されておるならば、もっと戦場というのは広く考えなければできない。また銃弾砲火の落ちる所とするならば、内地にも落ちておる。なおまた、この考えでは非常に広く優遇される考えでありますが、私は戦地にも、あるいは内地にもおりました。戦地の苦しいことも知っておりますし、内地の苦しいことも知っております。しかも当時は焦土決戦、内地は戦場だという国をあげての声で、学徒動員が行われ、勤労報国隊が続々となれない土地に来て倒れていった人がたくさんおりますが、こういう人たちはどういうお考えを持っておられるか、一応お聞きしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/182
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183・山下春江
○衆議院議員(山下春江君) 気候、風土の変化、あるいは終戦直前の戦線の混乱状況等を勘案いたしまして、あとう限り広くと思いましたけれども、今回の修正は、いろいろ予算その他の制約もあり、私の考えておるその戦地、非戦地の別ということに対しても一つの考えを持っておりましたが、従来の戦地ということのワクの中で考えたのでありまして、従いまして、今回あとち限り広くという、いわゆる故意または重大な過失にあらざるものは全部公務死と申しましたのは、従来言われておった戦地の規定の中の人たちのことを考えたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/183
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184・阿具根登
○阿具根登君 この法案においては、それはわかりますから質問いたしておりませんが、今後この法案から出されてくるこういう問題に関して、今度は内地、あるいは準内地といいますか、朝鮮、台湾その他の所でも相当な問題が起ってくると思うのでございますが、これに対する考え方はいかがですかということをお尋ねしておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/184
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185・山下春江
○衆議院議員(山下春江君) 今回の修正は、遺憾ながら従来の戦地と考えられておりました範疇において行うものと御了解を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/185
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186・阿具根登
○阿具根登君 将来におきまして、そういう不幸な人がおることは御承知の通りでございますから、ただいまは予算の範囲内においてというような政府の御答弁みたいなことを聞きましたが、そういう意味におきましても、将来はそういう人たちを十分救済するのだという御意思があるかどうかお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/186
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187・山下春江
○衆議院議員(山下春江君) 全くそのような気持を十分に持っておりつつ、立案いたしたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/187
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188・山下義信
○山下義信君 私が質疑打ち切りに反対して、質疑がまだ残っておるということを申し上げたのですから、残っておる質疑だけをしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/188
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189・山下春江
○衆議院議員(山下春江君) 発言中大へんおそれ入りますが、本会議で私今日緊急質問をいたしますので、今本会議のベルが鳴ったので、緊急質問時間申出てこいということですから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/189
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190・山下義信
○山下義信君 長くないです。結局これはよくわれわれが遺族等援護法の改正で聞かれますから、明確にしておかなければならぬと同時に、これの改正の対象が非常に多くて、これを明確にしておかぬというと、参議院の審議で「故意又は重大な過失」とは何ぞや、いかなる場合をさすかということが、まだ実は明確になっておらないのです。たった一つ二つの例を出されたのですが、私はたった一つ二つの非常な稀有の例を出されたのでは問題が起ると思う。ですから、「故意又は重大な過失」というのは一体どういう場合か、少くとも五つや六つの例を出しておかれぬと、これは大へんなことになるだろうと思うのです。それが一点であります。
もう一つは、もとより病の原因が戦地にあることは言うまでもないことですが、内地に戻って死んだ者にも及ぼすのですね。これは蛇足な質問をするようでありますが、死んだ場所は戦地には限らぬのであって、先ほど戦地々々とわれわれが質疑応答で言っておるが、政府原案では内地に帰って一年以内に死んだ者としぼってあったが、これがすっかりそのしぼりが除かれておる。そうすると、戦地で負傷もしくは病気にかかって帰ってきて、何年あとに死んだ者でも私は衆議院の修正が及ぶと思うが、その点はいかがですか。
それから第三点は、これは軍人または準軍人のみに限られてあって、かような扱い方衣軍属に及ぼされなのは何がゆえであるか。先ほど榊原委員からも御質疑がありましたが、この戦傷病者戦没者遺族等援護法は軍人のみの規定ではないのだと、むしろこの本法の主眼たるものは、軍属を扱うておる、準軍属を扱うておるのが実は遺族等援護法の本体であります。しかるに軍人、準軍人のみに限って、かような非常に、何といいますか、画期的な扱い方々軍属に及ぼされなかった理由は何であるか。
この三点を明らかにしておいて下されば、あとは問題ありません。おそらくこの点が明確にならなければ、委員長は委員長報告を良心的になさることができないのではないかと思う。本案について慎重審議というような御報告には、私はさような報告書には賛成することはできません。この三点は問題の主眼です。これは明確にしておいていただかなければならぬ。私の質疑が残っておるということは無理はないと思うのですが、委員長いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/190
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191・小林英三
○委員長(小林英三君) けっこうです。了承いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/191
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192・山下春江
○衆議院議員(山下春江君) 第一点の、少くともこういう不明確なものに対して明確にするためには相当な事例をここにあげる必要があるのではないかと、その通りだと存じます。
それかれ第二点の、戦地において発病した者が帰国後何年たってもそれは公務死として扱うということになるのだが、そうなのか、それでよろしいのか、そういう意味なのかということでございますが、この点は、前に修正になっております範囲内と御了解を賜わりたいと思います。
それから第三点の、軍属を扱うことが非常に少かった、軍人だけしか対象にしていない。これはごもっともでありまして、非常に多くのケースを出しまして研究をいたしましたが、明確な資料等の得られるものがきわめて時間的に少かったために、満州義勇隊のみを今回取り上げたのでございまして、これをもって最後といたす考えもなければ、これをもって最善といたした考えではございませんでしたが、時間的に資料等を得られない関係上、そのような措置をいたしたのでございまして、その点は今後なお努力いたすつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/192
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193・山下義信
○山下義信君 私はただいまの御答弁では問題は明確になっていないと思いますが、しかしこれ以上は委員会の御良識の判断に待つことにしまして、私は今の御答弁では明確になっていないと思う。ことに最後の御答弁は私の質問と違います。私の質問は、公務死の扱い方、公務死の範囲の広げ方を軍人並びに準軍人に限られたのはいかがですか、軍属をこういうような扱いになされたらいかがですかということを聞いたのでありまして、満州開拓義勇団をお入れになったのは、これは本法の対象の拡大でありまして、公務死の認定の範囲を及ぼした問題とは違います。私の提起した問題は今の御答弁では明確になっていない思います。ですから、委員長はこれらの問題が明確になっていないということを御報告なさるならば、ここで質疑を打ち切られてよろしゅうございます。(「打ち切り、打ち切り」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/193
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194・相馬助治
○相馬助治君 山下議員の修正者としての意思を本院に表明された中で明白でありまするように、非常な温情を持ってこの公務死の拡大をはかるということに努力されたことに対しては、もう明白でございまするが、同一の精神に成り立つならば、第二十三条の遺族年金支給原因の拡大において、総動員法によって徴用された者あるいは総動員業務の協力者で、そうして戦闘または作戦行動に関連する業務に従っていてそれぞれ負傷し死亡した者、あるいはまた国民義勇隊、そういう方々にまで受給対象の拡大をなぜはからなかったんであろうかという疑問を持つのでありますが、そういうことが問題になったのでございますか、別に問題にならなかったのでございますか、第一点として承わりたいと思います。
第二点は、第三十四条弔慰金支給予算の拡大において、支給対象拡大として満州開拓青年義勇隊の隊員に対して弔慰金を支給すると修正されたことに対しては、まことに同感でございまするが、同一の精神をもって、軍の要請によって事変地あるいは戦地においてその作戦行動に関連する業務に従っていた者であるとか、あるいは軍所属の病院に勤務して傷病者の救護に従事していたこういうふうな人々をも、なぜ加えなかったであろうかと疑問を持つのですが、修正案の成立の過程においてさような方々が問題になったのでございますか、ならなかったのでございますか、また入れなかった積極的な理由は何なのか、これらについて承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/194
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195・山下春江
○衆議院議員(山下春江君) 第一点の、軍属に公務死の範囲の拡大を及ぼさなかった理由につきましては、私ども修正をいたす者といたしましては非常に論議の的といたし、ぜひそういたしたいと存じましたけれども、諸般の情勢上、今回それを入れるに至らなかったことを遺憾に存じておるのであります。
それから第二点の、満州開拓義勇隊だけ取り上げなくても、同様の趣旨のものがたくさんあるではないか、適用範囲をなぜもう少し広げなかったか、こういうことに関しましても非常に論議いたしましたが、資料の正確なものを得ないとかその他のことで、今回その他に及ぼすことのできなかったことをこれまた遺憾に存じておりまして、今後そいうう範囲にも努力をいたしたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/195
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196・小林英三
○委員長(小林英三君) 両案に対する質疑は、この程度で終了したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/196
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197・小林英三
○委員長(小林英三君) 御異議ないものと認めます。
それではこれより討論に入るのでありますがまず未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律案につきまして討論をいたします。
ちょっと速記とめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/197
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198・小林英三
○委員長(小林英三君) 速記始めて。
それでは、討論を省略いたしまして、直ちに採決に入ります。未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律案につきまして採決をいたします。本案を原案通り可決することに賛成の諸君の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/198
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199・小林英三
○委員長(小林英三君) 全会一致と認めます。よって本案は、全会一致をもちまして原案通り可決すべきものと決定をいたしました。
次に、戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案につきまして、討論を省略いたしまして、直ちに採決することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/199
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200・小林英三
○委員長(小林英三君) 御異議ないものと認めます。
それでは、対討を省略いたしまして、直ちに採決に入ります。本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/200
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201・小林英三
○委員長(小林英三君) 全会一致と認めます。よって本案は、全会一致をもちまして原案通り可決すべきものと決定いたしました。
なお、本会議における口頭報告の内容、議長に提出する報告書の作成、その他の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/201
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202・小林英三
○委員長(小林英三君) 御異議ないものと認めます。
なお、報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますから、両案を可とせられる諸君の御署名を願います。
多数意見者署名
竹中 勝男 山本 經勝
阿具根 登 加藤 武徳
高良 とみ 田村 文吉
高野 一夫 有馬 英二
長谷部廣子 常岡 一郎
谷口弥三郎 森田 義衞
山下 義信 草葉 隆圓
榊原 亨
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/202
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203・小林英三
○委員長(小林英三君) 次に、理容師美容師法の一部を改正する法律案を議題といたします。御質疑を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/203
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204・榊原亨
○榊原亨君 今回御提出になりましたものを見ますと、理容所、美容所の構造設備を厳重にするというような御趣旨の一端がうかがわれるのでありますが、その設備を厳重にするという意味はどの程度のことを考えていらっしゃるのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/204
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205・楠本正康
○政府委員(楠本正康君) お答えを申し上げます。現在のこの現行法並びに地方条例等におきまして、おおむねの施設の基準というものが定められております。ただ、最近は理容師でない者が理容師を雇い上げまして業を営む者が増加の傾向にございます。その結果、ややもいたしますと、何ら責任がない第三者がこれら施設の基準を十分に守らずに業を始める者が出て参ります。従いまして、今回はこれらの施設の徹底を期する意味でかような措置を講じたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/205
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206・榊原亨
○榊原亨君 私どもの聞き及びますところによりますと、理容師、美容師の方々に二つの団体がありまして、一つは学校教育を今まで通り拡充しようというお考えもありますし、一つは、徒弟制度ではございませんけれども、各塩の理容所、美容所において経験を積んだ者は受験の資格があるという方が望ましいということで、いろいろな陳情をしておられるように見受けるのでありますが、当局はどちらの方をおとりになるか。あるいはまたその受験の場合、あるいは補習教育の場合、あるいは実習の場合等におきまして、費用その他につきましてもどういうお考えでありますか。時間がありませんので、簡単直歓に一つ御答辯を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/206
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207・楠本正康
○政府委員(楠本正康君) 御指摘のように、学校制度が是かあるいは徒弟制度が是かという問題につきましては、業界にかなりの意見があるように聞いております。その大体を申し上げますと、理容業界におきましてはほとんど一致して現行制度を是認いたしております。これに反しまして、美容界の一部には、ただいま御指摘のように、現行法よりむしろ徒弟制度を可とする意見があるように存じております。なお、私どもといたしましては、これは前回の改正の際にも御答弁を申し上げました通り、学校教育一本建でゆくことは日本の現状として必ずしも適当とは考えられません。そこで私どもといたしましては、家庭の事情あるいは地理的の関係等で学校に通学できない者に対しましては、通信教育の制度を設けまして、これによってきわめて軽費でしかも完全な教育を受けられることが一番合理的だと考えております。ただ、この場合、これまたただいま御指摘のように、現在それら通信教育に関しまする経費の点が必ずしも安くない。そのために、せっかくのねらいでありますところの経済的に恵まれない人たち、あるいは地理的関係で学校へ通えない人たちの助けにならないかとも存じますので、今後はこれらの通信教育に要します経費を思い切って低額とするよう極力指導をいたしたい方針でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/207
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208・榊原亨
○榊原亨君 ただいまの場合、厚生省当局の御努力は認めるのでありまするが、たとえば教科書にいたしましても、通信教育の教科書にいたしましても、あるいはまた実習に使います器具等につきましても、それらの業者でございまするか何でございまするか、そういう人たちによってボス的なと申しましては失礼でありますが、一応そういうような形において、非常に高価につくようなものを売りつけるようなことになっておりはしないかという非難もときどき聞くのでありまするが、これらにつきましては、特にこれらの業務に志す方々はあまり裕福な人でもないのであります。従いまして、これらにつきまして当局は今後さらに御努力願えるのでありますか、その点についての御趣旨を政務次官から承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/208
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209・紅露みつ
○政府委員(紅露みつ君) 学校一本建でいくということが、私どもはその資質の向上の上からはけっこうだと存じましたけれども、やはり経済上の問題が、現在の日本にはこれはなかなか重大でございまして、まあ二本建にいたしまして、そして講義録によって勉強する、こういうことになったわけでございますが、それは地域の関係もございましたり、家庭の事情等もございますが、主としてこれは経済的の問題がございまするので、それから考えましても、現在の通信教育の教科書等も値下げをするようにという指導に力を注いでおります。従って、器具とか薬品とかいうものにつきましても、極力これは安くそれぞれの手に入るように配慮いたして参りたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/209
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210・田村文吉
○田村文吉君 この法律は、業者は大体どういう気分で受けておりますか。業者はこういう法律ができることを喜んでいるのでありますか、喜ばないのでありますか、ちょっと伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/210
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211・楠本正康
○政府委員(楠本正康君) これらの、今回法律改正の趣旨につきましては、おおむね妥当なところという判断から、業界においてもむしろ歓迎しておるのではないかと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/211
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212・田村文吉
○田村文吉君 近ごろ法律がたくさん出過ぎまして、非常に迷惑しておる分が多い。あまりこういうことは、たとえば厚生省から各都道府県の知事にかようの点についての取締りをやれというくらいのことで済むものを、わざわざ施設をこうせにやならぬという法律までお作りになる必要が、一体どこにあるのか。私はなぜこんなことまで厚生省はせにやならぬのか、こういうことを非常に不思議に思うのですがね。いわんや、今承わるというと、業者が喜んでいると。大体取締りを受けるということを業者は、普通ならば、きらうのです。きらうのに、それを喜んでいるような情勢にあるということは、何か隠れた御利益でもあるのですか、一つざっくばらんのところを聞かしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/212
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213・楠本正康
○政府委員(楠本正康君) 今回の改正の要点は、従来理容所あるいは美容所を開設した場合に、その取締りあるいは規制の対象となりますものは、もっぱら理容師、美容師の身分を持った者だけに限られておったのが、現行法でございます。と申しますのは、従来は理容師、美容師だけがおおむね営業をするという形で進んで参ったわけであります。ところが、最近は理容師、美容師を雇い上げまして、これによって営業を行うものが逐次ふえて参っております。ところが、現行法の建前におきましては、これら第三者に対しては何ら規制あるいは責任等が課してございません。きわめて弱い使用人である理容師、美容師だけにこの責任が課してある現状でありますので、この点を改正いたしまして、第三者が経営いたします場合にも、理容師、美容師同様の責任義務というものを第三者の開設者に課そうというのが、この法案改正の要点でございます。従いまして、従来弱い美容師、理容師が一部の第三者に使われてしかも責任が果せない、うまく行かない場合は、それが強圧的に開設者から命令されたことであっても、その責任をかぶる者は弱い理容師、美容師だけでありますので、かまうな点でむしろ理容師、美容師は今回の措置を歓迎しておるのではないかと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/213
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214・田村文吉
○田村文吉君 在来のつまりそれを営業にして、自分はやらないけれども、経営だけやる、こういうような人たちの数は相当あるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/214
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215・楠本正康
○政府委員(楠本正康君) 先ほどもお答えを申し上げましたように、従前はこれらのものは特別な福祉施設以外にはほとんど見受けられませんでした。福祉施設としては会社工場等でやっておるものもありました。現在は福祉施設でなくて、営業として理容師、美容師を雇い上げてやるものが出て参っております。しかもこれらの場合に……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/215
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216・田村文吉
○田村文吉君 どれくらい数があるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/216
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217・楠本正康
○政府委員(楠本正康君) これは全国的な調査はしてございませんが、大体五先程度はあるものと、かように考えております。なお、この傾向は逐次ふえつつあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/217
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218・田村文吉
○田村文吉君 営業でもってそういうことをやっておる人たちに対しては、都道府県で取り締る方法というのはないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/218
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219・楠本正康
○政府委員(楠本正康君) 現行法の建前は、理容師、美容師の身分を持った者だけを規制の対象にいたしております関係で、第三者が営業いたします場合には何ら取締り根拠はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/219
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220・田村文吉
○田村文吉君 そういうものは、厚生省から都道府県の知事にあてて、かようなものもあるから、同じく取締りの対象にしてもらいたいというくらいのことで、済むことではないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/220
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221・楠本正康
○政府委員(楠本正康君) これは罰則を掲げておる関係もありますので、法的根拠がありませんと、少くとも現在の行政体系においては不可能かと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/221
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222・田村文吉
○田村文吉君 さっきお話が出ました学校の問題についても、実は私はいなかの実例を知っておるのですが、ああいう法律ができたために、非常に子弟の多くが、二十里も三十里も離れた所へ通学をする、あるいは下宿をして非常に高い経費を払って学校へ入る。通信教育でその後できる方法もできたようでありますけれども、それでは満足ができかねる観たちが、ある程度までみえもありましょうが、わざわざ離れた都会までやって勉強させておる。こんなことは私は一体悪政だと思う。政治の悪い面だと思う。
これと同じことで、こんな複雑な法律をお作りになるということは、いわゆる国民を苦しめるだけのもので、ちっとも御利益のないものを、法律をお作りになってはめんどうなことをなさる、こういうふうに私は考えますので、都会ならばあるいはそういうものが適合している点もあるかもしれないけれども、いなかへ行きまして、その設備がいいとか悪いとかいって、えらいやかましいことを——都道府県知事に一体取締りをまかしたらいいので、そういうところまで一体法律を作る必要があるのかないのか。私はないと、こういうふうに考えるのですが、しいてこれをお作りになるのには、何かほかに隠れたお考えでもあるのじゃないかと、こう私はそんたくしたくなるのです。そういう点、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/222
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223・楠本正康
○政府委員(楠本正康君) 第一点のお話のございました、現在学校に通うことがなかなか困難である、そのためにせっかく理容師、美容師になりたいと思っても容易になれないという点につきましては、全く私どももそのように考えております。従いまして、さような隘路を取り除きますために、従来のように見習として理容所、あるいは美容所で見習いの仕事に従事しておるそういう者が、一定期間の通信教育さえ受ければ、どこで見習いをしておっても理容師、美容師になれるように、私どもは通信教育の道を開いてあるわけでございます。従いまして、学校へ行くのがいやな人には、ぜひさような便法をとって理容師、美容師になっていただきたいと、かように考えております。
それから第二点の、かような理容師、美容師の取締りあるいはその身分のごときものは、むしろ都道府県知事にまかした方がいいのじゃないかという御意見こつきましては、これはもちろんそういう考え方もございます。現に旧憲法の時代におきましては、これらは警察命令として地方で自由にかような規制をいたしておりました。従いまして、その当時はただいま御指摘のようなことになっておりました。最近はかように地方におきまして任意にやる措置というものはできるだけ幅が狭まりまして、法律で定めてゆくというのが現在の行政の建前でありますので、さような線に沿っておるだけのことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/223
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224・田村文吉
○田村文吉君 今の後段の御説明が、私どもと根本考えが違うのです。東京のような所で警視庁のお坂締りなさる程度の問題と、もう山村僻地で麦を食ってようやく暮しておる、まあそこいらに水車小屋があってそこいらに床屋があるというような所と、これをすべて一緒にして取り締るという法律が無理なんです。一体そういうところに中央集権を働かせるということが、考え方が根本に間違っている、こう私は考えている。なるべくさようなことは今日はできるだけ自由に、みな各自治体においてやれるような方法に考えてゆくべきことが、いわゆる民主政治のほんとうのあり方じゃないか。それを、何もかも、重箱のすみまで一体中央でほじくって、こういう法律をきめておいでになることが、どうも行き過ぎじゃないか、こう考えまするので、どうしてもお作りにならなければならないような何か隠れた理由があるのかどうか、こういうので私は実はお伺いをいたしておるのです。というのは、一体業者がこれがためにいいということを言われますが、そんな、人をたくさんかかえて、その理容所なり美容所の経営をやろうというほどの人は、威容を厳にして、りっぱにして、それでお客をたくさん集めるということをむしろ考えるべきでありますから、決して設備が悪くなろうはずはないはずなんです。であるのに、どうもそういう経営者を取り締るのだといっておきながら、一方において理容師や美容師の方方がこの法律ができた方がいいのだと言われるところに、何かしら私どもの方にちょっと割り切れない、わからぬ点があるのですが、何かそこに理由があるのでしょうか。どうしてもそんなに、片いなかまでもこんな法律で取り締らなければならないほど重大な現在の欠陥があるのでしょうか、これをちょっと伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/224
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225・楠本正康
○政府委員(楠本正康君) 第一点の、地方の実情に即して取締りを行うべきだという点につきましては、現在もそのように実施いたしております。従いまして、施設あるいは取扱いの基準等は、細部にわたりましては都道府県知事がそれぞれ地方の実情に応じて定めることと相なっております。
それから次に第二の点につきましては、これはこの業者がなぜこれによって今回の措置を歓迎しておるかという点でございますが、これは従来理容師、美容師でない第三者、場合によりますと第三国人でありますが、いわゆるアウト・サイダーというような形で業界にデビューをしてきておる。このためにいろいろ弊害も、弊害と申しましょうか、衛生上の弊害のほかに、弱い理容師、美容師というようなものの経常に支障を来たす、かような点があるために、こういうことは少くとも今後は是正されるので、おそらく歓迎をしておるのじゃないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/225
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226・田村文吉
○田村文吉君 このあとにも同じような法律があって、議員立法として出ておるのでありますが、今日の非常に失業者の多い時代に、各職業を持っておる方が、昔でいえば株ですね、株をみな確保したい、こういうような考え方でみな出てきておられる。これは由々しいことなんです。もしさようなことがあまりにも行き過ぎますということになりますと、いわゆるほんとうの民主主義というものは行われなくなるんじゃないか、こういうことを私は心配しているんです。それで、これを実は法律を拝見したとき、内容を見ると、実に、そう申しては失礼ですが、くだらない内容なんです。要はそういう株を作ってやろう、こういうようなふうに私には見えますので、何か隠れた目途があるのじゃないか。このあとにクリーニングが出ております。クリーニングの業者の方の御陳情を承わっておるんですが、内容はきわめてわずかなものであるが、何かしら自分たちの特権とか株とかというものをきめていきたい、こういうふうにされますことは、今日の時代の失業者が多くて困っておる場合に、一人でも二人でも一つ救ってやらなければならない、時代に、お互いがバスに乗った限りにおいては他人は乗せぬ、わしだけはバスに乗っているんだ、こういうふうな考え方に持っていくということは非常に危険な考え方だ、こう私は考えますので、しいて内容の大して重要でないものをなぜ一体厚生省がお作りになるのだろう、こういう疑念を持ったわけなんです。なお、それについて、そういうわけじゃなくて、ほかの原因でおやりなさるなら、あくまでもこういうことでこういう絶対必要がある、こういうことなら、そういうことで答弁を伺い、議事を進行していきましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/226
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227・竹中勝男
○竹中勝男君 私はこの法律の趣意には大体賛成ていいように思いますが、わからないことが相当ありまするので……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/227
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228・田村文吉
○田村文吉君 答弁が済んでおらない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/228
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229・竹中勝男
○竹中勝男君 失礼しました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/229
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230・楠本正康
○政府委員(楠本正康君) お答え申し上げます。隠れたところといっても、別に深い面もございません。ただ、先ほどもお答えを申し上げましたように、現在、第三者が理容師、美容師を使いまして営業するものがふえてきた、ふえる傾向にあります。これら第三者として営業するものに対しては、何ら規制が加えられておらぬわけです。これは片手落ちだから、理容師、美容師同様に、第三者が営業する場合にも若干の同様の規制を加えようというのが趣旨であります。それによりましてどういうしからば隠れた点が出てくるかと申しますと、おそらく従来相当の資本を投じて理容師、美容師を雇って仕事をするようなものは、結果としてアウトサイダーのような形で業界を混乱させる傾きにあったんではないか。特に第三国人等の場合にはその傾向が強いように思われます。従って、かような点が是正されますので、かような意味はおそらくこれから来る隠れたところと言えば言えるのじゃなかろうか、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/230
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231・榊原亨
○榊原亨君 ただいま田村先生がお話しになったのでありまするが、このごろ師と士、お師匠さんの師とさむらいの士と、これがだんだん、各業態が全部士とお師匠さんになってしまう、こういうようなことなんでありますが、昔は、御承知のように、写真師、薬剤師くらいのところでありましょう。ところが、士と師匠とふえてくるのでありますが、士と師という名前をお付けになるその業態は、どういう種類のものがその範囲に属するという厚生省の御方針があってでありますか、あるいは業態が特殊の技能を持っている者はみな士とお師匠さんにしてしまうというお考えでありますか、当局の御方針等をこの際承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/231
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232・紅露みつ
○政府委員(紅露みつ君) お師匠さんと士だけになってしまうというお言葉でございますが、おっしゃられてみますと、ずいぶん士とお師匠さんが多いようでございます。しかし厚生省の方・針といたしまして考えておるようなことはございません。やはり習慣に従って、自然とできてしまったと申し上げるよりほかないと思います。別段今後これをふやそうとも減らそうとも存じておりませんので、これは耳新しいことを伺ったような気さえいたす次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/232
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233・榊原亨
○榊原亨君 私が申しますのは、かみ砕いて申しましたのであります。結局身分法を制定する業種はどういう場合であるか。これは特に国民の保健衛生上こういう身分法を制定しなければならぬ業態であるか、あるいは国民の経済発展の上に特にこうしなければならぬ業態であるかという、大体その場合に身分法を制定するという当局の御方針がなければ、全部の業態が士と師になってしまう。身分法を制定するということになると、先ほど田村先生がおっしゃいますように、やたらに法律を作ってくるということになるのでありますが、その点を私はかみ砕いて、紅露さんが女でありますから、申し上げたつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/233
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234・紅露みつ
○政府委員(紅露みつ君) やはりこれは一応技術を持っておりまして、しかも保健衛生という意味を取り入れておるものが現在多いと存じますが、一応技術を持っているというようなことに該当するのではなかろうかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/234
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235・榊原亨
○榊原亨君 これは大へん失礼でございますが、事務当局からはっきり承わりたい。各種の技能を持っておる、技術を持っておる業態のお方に対しまして、士でも何でもいいのですが、身分法を制定するという場合はこの場合だという大体の御方針がなければ、日本中のすべての業態はみな技能を持っているわけになるわけでありまして、み、んな身分法を制定するというと、非常に数が多い身分法が次々と出てくると思うのでありますが、その点当局の御方針がありそうなものだと思いますが、それはどうか。事務当局からお答えいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/235
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236・楠本正康
○政府委員(楠本正康君) これは他の行政にも関連して参りますので、私からお答えを申し上げるのはあるいは不適当かとも存じますが、私どもは、ただいま政務次官も申し上げましたように、確立した一つの技術性を要し、しかもその技術性の欠如によっては公衆衛生上かなりの危害を与えるというものに対しては、身分法を制定していいものと考えております。しかしながら、この範疇がかなり最近安売りになっていやせぬかという点につきましては、十分反省をさせられております。果してその範疇に入るかどうかという点につきましては、おそらく疑問のあるようなものもあると存じておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/236
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237・竹中勝男
○竹中勝男君 関連して……。公衆衛生上あるいは保健衛生上、理容師、美容師、私は、理容師というのは床屋のことですね、それは行ったことがあるからわかっておりますけれども、美容院にはまだ行かないものですから、どういう点が、たとえば薬品などを相当使う業務なのですが、どういうことを美容師がするのですか。爪を染めたり、眉毛に毛を植えたりする、頭を染めたり、あるいははげたところに植えたりするようなことまでやるわけですか。どういう点——相当薬品を使いあるいは医療に似たようなことまでやられるわけですか。まずその点伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/237
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238・楠本正康
○政府委員(楠本正康君) 美容師は、一応包括的に考えておりますことは、髪形を直す、しかもこれをパーマネントその他の形によりまして、髪形を主として直すことを包括いたしております。しかしながら、最近はただいま御指摘のように、たとえば爪を染めるとか、あるいは最近はさらに全身美容といって脂肪を減らすとか、あるいは色を白くするとかいった、いわゆる全身美容の域にまで進んで参っております。しかしながら、これらは現在全身美容はいまだ確立もされておりませんので、私どもといたしましては具体的にはこれは取締り規制等は考えていないわけであります。これらの点はもっぱら将来の発展いかんによって解決されるべきものだと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/238
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239・竹中勝男
○竹中勝男君 私のお伺いしたいのは、相当薬品を使って、人間の顔を漂白したり、それからこのごろ頭の毛を紫色に染めたり、それから相当電気を使うらしいのですね、頭に何か潜水夫みたいなものをかぶしてそのために危害があるものかないものか。相当これはやはり公衆衛生局としては取り締る必要があるのじゃないか。ことに保健所との関係はどうなっておるか。こういう人間漂白、いろいろそういう頭の毛を抜いたり——植えたりはしないかもしれませんが、縮らしたりしますのに、電気をかけたりいたしますから、これは美容術以上に相当危険があるのじゃないかという気がしますものですから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/239
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240・楠本正康
○政府委員(楠本正康君) 先ほどもお答え申し上げましたように、現在は主として髪の毛に電気をかけたりいろいろ操作をいたしまして、髪形を整えることを一応総括して一つの美容の対象としております。この場合にはもちろん、以前取締りをしなかった時代には、これによりましてたとえばシラミが流行をするとか、あるいは禿頭病が流行をするとか、いろいろな事故が出ておりました。最近それらの点は一応防いでおる現状であります。ただ、将来発展するだろうと考えられますたとえば爪のマニキュアあるいは全身美容等が、現在はごく一部の人が実施をいたしております。従いまして、いまだこれに弊害ありとして規制を加えるところまで至っておりませんが、将来これらのものの発展の状況によりましては、あるいは爪を染めて病気を起す、あるいは色を白くさせようとして薬を使って弊害が起きるというような事態が現われますれば、これを規制をしていく必要があろうかと思いますが、これらはいずれも今後の発展の状況を見てからの問題だと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/240
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241・竹中勝男
○竹中勝男君 衛生設備については、保健所ですか、どういう所でそれを監督というか、監査されるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/241
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242・楠本正康
○政府委員(楠本正康君) これは現在は保健所がこの監督に当っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/242
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243・田村文吉
○田村文吉君 ちょうど話が出ましたが、今のようなことこそ、保健所が取り締るとか、あるいはまた法律を作って取締り方法を考えるとかいうようなことはわかるのですが、今お出しになった法律案というものは、これは問題は簡単なようだけれども、日本の経済機構の根本に触れる問題なんです。というのは、徳川時代にはいろいろな名前で座とか株とかいうものがございました。いかなる商売でもある軒数以上はふやさぬ。それからふろ屋さん、床屋さんなどは当然きまっておる。そういうふうにして株を与えてやっていった。こういうこともいわゆる徳川期における時代として当然のあるいは善政であったかもしれぬ。これは無理やりに競争をしてやったんでは共倒れになるから、つまりある程度まではやむを得ないというので、座を作り株を作り、そういうものをやってきた。そこでさっき榊原先生からお言葉が出たのですが、一種の職業法というようなものをおきめになる御精神があると、みんなあらゆるものについて名前は士とか婦とか、何でもいいですよ、そういうようなお考えを根本にお持ちになって、こういうものを今後容認していらっしゃるというおつもりか。そういうことであると、私は問題が非常に大きいと思う。そこで、ひとり厚生省だけの問題ではないのでありまするが、こういうことについてはよほど慎重にお考えにならなければいかぬのじゃないか。こういうことは将来、昔の座だとか株とかいうようなことで、ある程度の人数以上はある町ではふやさないというようなことをお考えになっているのであるかどうか。ねらいとしてそういうことが業者の中にあると思う。業者のねらうところはそこにある、そういうことをお考えになってお進みになることも、絶対悪いとは言いませんよ。あるいはそういうことが必要な場合も職業によっちゃあるかもしれない。あるかもしれないが、そういう大きな目から見てお考えになっているのかどうかっこれを一つ、次官でもけっこうですが、次官が何でしたら一つ局長からお話をいただいて、大臣がどういう意図を持っているのかということを伺いいたしたいとお思います。
今も冗談に話が出たんですが、しまいには便所のくみ取りもくみ取り士というようなものができてくるかもしれない、こういうことを言われるんですが、私はあまりに職業、々々といって職業法をお作りになっていくよりは、こういうことは地方へまかせて、地方で適当にやっていくのがほんとじゃないかと思う。こういうことを厚生省が基本的にお触れになることは間違いじゃないかということを考えますので、根本方針をお伺いいたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/243
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244・紅露みつ
○政府委員(紅露みつ君) 田村委員からは先ほど来、株というようなことについて御心配をいただいておるようであります。自分さえよければあと同業者をふやさないというような業者の気持、そんな気持があって、それをまた助けるというような方針でむやみと身分法をこしらえているんじゃないか、今度のような改正が行われているのじゃないかというようなお話でございますが、そんなことは絶対ございません。株を確保してほかの人を開業せしめないというような考えは全くございませんし、また事実相当数の理容師、美容師が養成されつつありますので、やはり人口の増加とともにこれは自然とふえていきますもので、これを押えるつもりは絶対にございません。
それから帥方々々で取り締れるようた問題、たとえば今度の理容師にしましても、保健所で監督をしていったらいいじゃないかというお考えについても、私どももそれはごもっともだと存じます。
それから身分法をむやみに作っていくということに対する御指摘でございますが、ほんとうにそうした傾向がずいぶんございますようですが、その点はむやみと身分法を作っていくような方針はございません。作らなくてもよろしいようなものはこの際作りたくない、ぜひ作らなくてはならないというものについては、だんだんと改正もいたしますし、必要欠くべからざるものについては考えもいたしましようが、むやみとこういうものを粗製乱造していくというような考えは持っておりません。厚生大臣におきましてもそういう考えでおられることはたしかでございまして、この点は私から申し上げて矛盾しないと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/244
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245・田村文吉
○田村文吉君 私はこれだけの法律でありますれば、とやかくは申しませんが、今後厚生省がなおなお、こういうことをお考えでお進みになるということは、非常に危険がある。議員立法でおみやげ的にいろいろな法案が出てくるのは、それは私は何が出てきてもいいと思いますけれども、厚生省が役所としてお出しになる場合においては、そういう見地でよほど慎重に考えて御立法なさらぬと、とんでもない間違いができる、こう考えますので、以上のことを質問とあわせて御警告を申し上げて、私は審議をお進め願うことを希望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/245
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246・相馬助治
○相馬助治君 童謡に、「お山の大将おれ一人、あとから来る者突ぎ落せ」こういう歌がありますが、この法律がそうだというのじゃなくて、やはり一般の身分法というものが持つ必然的な運命といいますか、それが今言ったような童謡みたいなことになることを懸念されて、榊原委員、田村委員からお話があったのだと思う。
そこで理容師美容師法の一部を改正する法律案が議会で問題になりました。ところが、業者の方から手紙が参りまして、私は最初の一通目を見たときに、どこか直してくれ、あるいは反対だというのかと思って見たら、そうでなかったわけです。そこで私つらつら考えてみまするのに、今度のこの法改正によって既設の事業所ですね。これに対する指導監督の強化というものが当然あるのであろうということを予想するわけです。いわゆる今までの特権のものはとどめておく。あとからくるものはなかなか大へんなんだというのじゃなくて、あとからくるものはなかなか大へんだ、それで私はいいと思う。国民の重大な公衆衛生に関連する事業ですから、厚生省としてはこういう法改正をやって厳重に措置するのはいいと思う。問題は、既存のものに対してこれと並行した一貫した統一的な政策がどういうふうに打ち出されるのかといとうころに問題があると思う。従って、本法に関連して、榊原、田村委員が心配するような点のあることを含めて、この際部長からこれらの諸点に関する総合的な見解を承わっておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/246
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247・楠本正康
○政府委員(楠本正康君) 御質問の点はまことにごもっともと存じておりまして、これは決してあとからくるものをなるたけむつかしくするとか、あるいは既得権擁護をするとかいう意味は毛頭持っておりません。たた、従来は単に届出さえすれば自由にできたものを、今後はさらに検査をするということになりまして、少しくむつかしくなっておるようでございますが、しかしこれは既得権のものに対しても同じように、従来といえども監視が行われておるわけでございます。従って、そこには何ら、新しきものに対してもあるいは既得権業者に対しましても、何ら差等はないわけでございます。これは同様に検査を受ける責任を持っておるわけでございます。従いまして、今後ただいま御指摘のようなことをよく注意いたしまして、運営して参りますれば、むしろ公平になるのじゃないか、こう考えます。ただ、従来は届出でさえすればいいのだ、ことに第三者かやる場合には、何ら罰則もなければ責任がない。そういうようなことで、何をしてもいいというものこそむしろは私はなはだ片手落ちの現状ではなかったか、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/247
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248・相馬助治
○相馬助治君 従来の届出でだけでよろしいという場合には、このような問題は現実にどう処置していたのでしょうか。各府県ごとによって、美容師なら美容師、そういう事業所を持つ場合には規格があろうと思う。そうすると、届出でによってその業務が始まった、巡視をして検査した結果、規格に合っていない、きわめて非衛生的である、警告を発した。業者が聞かなかった、こういうような事例のときには、どういう行政措置をやるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/248
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249・楠本正康
○政府委員(楠本正康君) 現在その届出を受けまして、さらにあとで調べましたところが、規格違反であった、きわめて不衛生な状態であったというような場合には、これは最後的には改善命令を出します。なお聞かない場合には、これは一時業務の停止処分をすることができることに相なっております。しかしながら、第三者がやる場合には、現行法におきましては何ら規制々加えることができないわけであります。そこに一つの矛盾がありますので、今回改正の措置をとったのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/249
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250・竹中勝男
○竹中勝男君 私はさっきは関連的な質問をしたわけですが、田村さんや榊原さんの身分法という考え方に対して、私は多少違った意見を持っております。そういう意味では、そういう立場から美容師というものが社会的な職業としてはっきりしてくるということに私は賛成なわけです。特に女子の職業領域としての美容師というものを、健全な社会的職業に仕立てるという必要があると私は考えておる。そういう意味で賛成しておるわけでございます。ことに非常に文化が複雑になってくれば、そうして文化が複雑になってゆくという中には、おしゃれというようなことがやはり一つの必要になってきておるときでありますからして、分業が行われるということには、それに相当の、必要に対する需給関係の上から、美容師という職業ができてくる。従って、もし美容師ができておれば、それをやはりいいものに育て上げるというのが、やはり分業的な文化の発展の原則に私は合うことだと、こういうように考えておるのです。ただ女子の職業の領野においては、先ほど榊原さんや田村さんの御懸念のように、職業的な自己統制の領野が非常に弱いことです。たとえば組合というようなものがあって、当然自分で一つの規則、業者の規則や申し合せを作って、その業務に対して発展するような基礎を作ってゆくべきだと思うのですが、どうも美容師の女の人たちに話を聞くと、話がばらばらなんですね。反対のような立場から、両方で陳情してくるようなところもありますし、あなた方はなぜ組合がないのかと言うと、なかなか組合ができませんと、こういうところに私は女子の職業として今社会的に相当重要な位置を占めつつある美容師が、やはり法律によって一応はそういう身分というものがはっきりしてくることは必要だと私は考えておりますが、組合などを作ることについて厚生省としてはどういう方法を奨励されておりますか。されておるとすれば、この組合の現状はどういうようになっておりますか。そういう点か第一にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/250
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251・楠本正康
○政府委員(楠本正康君) 美容師に限らず、すべてお互いに仲間割れをせずに、互いに切瑳琢磨して発展してゆくという態勢は必要だと存じます。従いまして、さような意味で私どもといたしましては、業界全体が一致して、お互いに向上してゆくことを大いに望んでおります。しかしながら、美容界につきましては、ただいま御指摘がありましたように、まことにまとまりませんので、いろいろ派閥があるかに聞いております。従いまして、お互いに足を引っ張り合いっこをする等の現状でありまして、これらの問題は、むしろ日本の女性のためにはなはだ遺憾と考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/251
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252・竹中勝男
○竹中勝男君 それで、あん摩、はり、きゆうの場合に無免許の者が相当現在あるわけでありますので、同じように無免許といいますか、無資格の美容師が相当ありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/252
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253・楠本正康
○政府委員(楠本正康君) 現在私どもが調べました範囲におきましては、無免許の美容師が美容師と称して業に従事しておるものはないと存じます。ただ、しかし見習いと美容師の資格を持ったものとの業務の区別というものに、多少困難な点がある場合がございますので、かような点はまれに見受けられるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/253
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254・竹中勝男
○竹中勝男君 公衆衛生上危険と思われる点は、どういう点なんですか。今後取り締らなければならない、規制してゆかなければならないと思われる点は、どういう点にあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/254
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255・楠本正康
○政府委員(楠本正康君) 公衆衛生上は、申すまでもなく、たとえば皮膚病の蔓延、あるいはその他衛生上の危害を私どもは防ぐことが、公衆衛生上の目的だと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/255
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256・竹中勝男
○竹中勝男君 もう一つ。今後も、無免許の者で修業中の者が相当就業している者がいると訴えられる。そうして、それが結局もぐりのようになってほんとうの美容師の業務を圧迫してくるという陳情を、私はたびたび聞いておりますが、しかしながら、また一面からいえば、自然淘汰で、下手な美容師はなくなるから、しっかりした者が、その設備をよくして技術をよくすれば、そんなものはおそれる必要はないというふうに私は見ているのですが、この法律を作られて、そういう目的は相当達せられると思われますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/256
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257・楠本正康
○政府委員(楠本正康君) 現行法におきましては、第三者が無資格者を使用いたしまして業を営んでも、何ら規制の道がございません。しかし今後は、第三者が無資格者を使用した場合には、これは処罰を受けますので、かような点は改善されてゆくものと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/257
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258・長谷部廣子
○長谷部廣子君 ちょうどいい機会だと思いますので、ちょっとお伺いしたいと思うのでございますが、美容院によりまして、コールド・パーマ、電気のパーマの値段が違うのでございますよ。それは地方の方でやはり御監督になっているのですか。そういうことは組合の方でおきめになって、地方のそういう監督は、それ々政府の方では御監督にならないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/258
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259・楠本正康
○政府委員(楠本正康君) 現在理容料金並びに美容料金は、いずれも野放しにしております。従いまして、利用者が適宜しんしゃくをして、解決をしているわけでございます。しかしながら、最近私どもが承知しておりますのでは、きわめてそこに大きな幅があり過ぎまして、かえってこれが混乱のもとになっているかに聞いております。しかしながら、私どもとしては、これらの料金を統制するというような気持は現在のところ持っておりません。ただ、あまりにも高い料金というようなものもどうかと思います。従いまして、私どもとしては、現在十分慎重に研究をいたしまして、ただいま相当幅々持った範囲内で料金というものを定めまして、今後業界を指導いたしたいと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/259
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260・長谷部廣子
○長谷部廣子君 もうちょっと……。幅を持ったちおっしゃいますけれども、あるお店へ参りますと、コールド・パーマで五百五十円くらい、あるお店へ行きますと、それが千五百円くらいになってくるわけなんですが、それで、それだけにどこが違うだろうと思いますと、大して違いはないわけなんですよ。そういう状態を監督になって、そんな幅を持たせるなんていうことをおっしゃらないで、大体おきめになった方がいいんじゃないかと思うのです。その点を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/260
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261・紅露みつ
○政府委員(紅露みつ君) それでは経験上私がお答え申し上げた方がいいかと思うのでございますが、このごろコールド・パーマは、特に差別があると思うのです。大へん高い所と安い所がございます。竹中委員は電気を使ったというお話だけでございましたが、現在では電気を使う方は少うございまして、薬品で電髪のようにいたします。それはやはり電気をかけますよりも高くついておるのでございますが、その薬にもいろいろあるようでございまして、安い薬を使っておる所では料金が安い、高いいい薬を使っておる所では高いらしいのでございますね。大へんに開きがあることは私もよく聞いておるのでございますが、やはり高い。
まあ現在は、今部長からお答え申し上げましたように、野放しにしてございますが、一応組合でもってそれぞれきめておるようでございます。その中にも多少差があるのでございますが、それは私はあまりまあ規制をせぬでもよろしいのではないかと思います。その点は長谷部委員とちょっと意見が違うのでございますが、やはり薬のいいのを使うばかりでなく、ずいぶん丁寧に扱う所と、またほんとうにパーマをやりっぱなしにただかけるだけというような所もございますようですが、そういうようなところは、やはりそれぞれの経済状態に応じたものがあっても差しつかえないのじゃないかと思います。それで高い料金をとってやはり粗末なやり方でございますならば、自然と淘汰されていく。客が少くなるのではないかと思います。まあ大へんに幅のあることは確かでございますが、これが上手に規制できて、どなたにもあまり粗末な扱いをしないで、またばか丁寧なこともしないで、ならしていけるという行き方も生まれてくれば、それでもいいと存じますけれども、やはりその違いは主として薬にあるようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/261
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262・森田義衞
○森田義衞君 先ほどちょっと政府委員の説明を聞き間違えたかとも思いますが、それに関連しましてお聞きしたいと思いますが、先ほど理容師、美容師では免許を有していない者が現在有しているものの中で従事している者がある、これが今度の法律改正によってそういったものがなくなるであろうといったようなお答えがあったのですが、実は私手元にもらっておりまするが、公衆衛生局の資料によりますると、業者の中で東京都内における理容所、美容所の開設者内訳調べというのがございますが、これに免許を有する開設者、免許を有しない開設者というものが、理容所も美容所も、ともにあるわけです。こういったものが現在開設者の中にもすでにあるのではないかといったようなことがあるようですが、これはどういうふうに大体お考えになっていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/262
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263・楠本正康
○政府委員(楠本正康君) 理容所、美容所を営業として開設することにつきましては、別に資格というものをきめておりませんです。従いまして、素人が第三者として理容所、美容所を開くことは、今後も差しつかえないわけでございます。ただ先ほど来御説明申し上げましたように、そういうものに対して、今後は、理容師、美容師同様に規制を加えていきたい。かような点でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/263
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264・森田義衞
○森田義衞君 そういたしますと、別に、現在免許を有した業者なりあるいは免許を有しない業者でも、これについての保健衛生上の実際上取締りの対象として、その間の差異はないわけでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/264
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265・楠本正康
○政府委員(楠本正康君) もちろん第三者が開設いたしましても、あるいは理容師、美容師が開設いたしましても、取締りの間の差異はございません。ただ、第三者に対しては何ら罰則その他の規制がございませんので、やってもどうも手がつかない。これだけのことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/265
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266・森田義衞
○森田義衞君 今後、それじゃこの法律の改正によりまして、それがやっぱり同一の規制を受けて、それで取締りの対象としてうまく運用できるということが言えるのでございますか。開設をだれがやろうと、今後ともかまわないのだ、ただ従事する者が資格を有する者でなければならないのだ。開設者に対してそういったような義務づけを大体要求しているんじゃないかと思うのですが、それが、そういった者がこの中に、何といいますか、今度はそういった資格の者でなければならないのだというふうにさっき言われたのですが、その点で取締りの対象として別に差異はないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/266
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267・楠本正康
○政府委員(楠本正康君) 第三者が開設いたしましても、理容師、美容師が開設いたしましても、開設者としての責任には差別はございません。従って、取締りにも差等はございません。ただ業を営む、実際の理髪行為あるいは美容行為を実施いたします者は、これは今後も資格者でなければ行為は実施できないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/267
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268・小林英三
○委員長(小林英三君) 他に御質問がなければ、質疑は打ち切ったものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/268
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269・小林英三
○委員長(小林英三君) 御異議がないものと認めます。
それでは、これより討論々省略いたしまして、直ちに採決に入りたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/269
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270・小林英三
○委員長(小林英三君) それでは、理容師美容師法の一部を改正する法律案につきまして採決をいたします。本案を原案通り可決することに賛成の諸君の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/270
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271・小林英三
○委員長(小林英三君) 全会一致と認めます。よって本案は、全会一致をもちまして原案の通り可決すべきものと決定いたしました。
なお、本会議におきます口頭報告の内容、議長に提出する報告書の作成、その他の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じます。御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/271
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272・小林英三
○委員長(小林英三君) 御異議ないと認めます。
なお、報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますから、本案を可とせられた諸君の御署名を願います。
多数意見者署名
竹中 勝男 山本 經勝
加藤 武徳 田村 文吉
榊原 亨 有馬 英二
長谷部廣子 谷口弥三郎
森田 義衞発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/272
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273・小林英三
○委員長(小林英三君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/273
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274・小林英三
○委員長(小林英三君) 速記々始めて下さい。
次に、覚せい剤取締法の一部を改正する法律案を議題といたします。御質疑を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/274
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275・高野一夫
○高野一夫君 提案者に伺いたいのでありますが、従来覚せい剤の取締りにつきましては、参議院の厚生委員会で立案をせられ、昨年また相当期間慎重調査を重ねた結果、同法改正案の議員立法を出して、衆参両院を通過したわけであります。そこで今回の改正案を見まするというと、非常な広範囲にわたっての改正案である。しかもその内容は、われわれがかって参議院ですでに調査済みあるいは検討済みの点があらためてこの改正案の取り上げられておるわけです。そこでそういう点について私は伺いたいのでありますが、私の伺うのは、一つ一つここに法務省関係がおいでになって、そうして提案者の御説明を聞いて、それに対する法務省の昨年改正した後の経過並びにこれに対する見解を伺わぬというと、どうも次の質問がしにくいのでありますが、そこで取りあえず早川さんに伺いたいのでありますが、この罰則の効果と、従来五年ないし七年を標準にしておったのが、今度は七年ないし最高十年になっておるのでございますが、昨年参議院で改正しました五年ないし七峯という罰則でなぜいけないで、七年ないし十年に上げなければならないのであろうか、この点について一点、まず伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/275
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276・早川崇
○衆議院議員(早川崇君) この点に関しましては、私は二点改正の理由を申し上げたいと思います。
第一点は、アヘンとかヘロインとか、いわゆるあへん法、麻薬取締法による罰則が、常習者は一年以上十年となっております。覚せい剤は、私の見解では、アヘン、ヘロインよりも精神分裂症、精神異常を来たすというおそるべき弊害がございまして、アヘン中毒者の場合には、自分自身は非常に弊害がありますけれども、人を殺したり、あるいは傷害をかえたりする精神異常的な弊害を起さない。ところが、ヒロポンの場合には、高野委員の御承知のように、患者が精神異常をきたして人を殺したり、また家庭内であばれすぎるために、親が子を殺したりというような事犯が非常に多いのです。従って、これをヘロインあるいはあへん法における罰則よりも特に軽くしておくという理由はないのでございまして、むしろ私はこれは間接的殺人だと思うのです。ヒロポンの製造業者なんかは、従って、私の気持としては、日取高無期にまでしたい気もするのでございますが、とりあえずアヘン、ヘロインの麻薬取締法による罰則と同じ程度まで引き上げて、一そうこの弊害を徹底的に直そう、こういう趣旨以外にはないのでございまして、特にこの説明書で申し上げました一年以上十年とすることのもう一つの理由は、御承知のように、北鮮人が非常に製造業者に多い。しかる場合に一年以上の懲役ということで縛っておりますると、国外退去、本国送還ということが可能になるのであります。判例を見ますると、非常に低い判例でございますので、この際百尺竿頭一歩を進めまして、あへん法、麻薬取締法並みに改正をいたした、こういう理由ございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/276
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277・高野一夫
○高野一夫君 従来覚せい剤の違反者に対する処罰が極めてルーズであったというのは、検察庁も一半の責任がありましようが、それよりは裁判所における判決が極めて軽いのではないか。昨年われわれが改正する前が三年であった。その三ヵ年の刑があるにかかわらず、ほとんど刑の処罰を受けたものがない。裁判所にいきまするというと、大てい何ヵ月、しかもそれが執行猶予である。こういうところに密造も絶えず、それから所持そのほか施用の違反者も絶えなかったという原因があるということが、昨年長い間のわれわれ委員会における調査からわかってきたのであります。そこで、いかに刑を高くいたしましょうとも、検察庁が十分その気になってこれの摘発検挙に当り、そうして裁判官が適切なる判決を下さない限りは、何にもならないということがわかって参りました。そこで検察庁に言わせますれば——あとで見えましょうが、言わせれば、われわれの方は相当重い三年に近い量刑を要求するのであるけれども、裁判所の方においてほとんど一ヵ月あるいは六ヵ月、しかもそれも執行猶予というような判決になって、非常に軽くこの違反者を見ている。これが警察庁としても非常に困っているのだ、こういうお話があったわけであります。従いまして、刑の重い軽いということが主でなくして、いかにこれを処分するかというそこに、私は一に判定いかんに問題がかかっていると考えた。そこで三年を五年にし、あるいは常習者は七年にする、罰金も五十万までに持っていくということにしたらどうかということをいろいろ打ち合しましたところが、そこまでいって今後裁判所で判事にこの覚せい剤違反行為がいかに重大なる問題であるかということをよく反省してもらうならば、一年以上の相当の重い刑の判決を下すことができる、こういうことでありまして、当時麻薬取締りとほとんど同様の刑罰をわれわれも考えて案を出したのでございますが、大体五年、七年、こういうところが最高ではなかろうか、こういうふうに衆議一決、検察庁の方の意向も十分しんしゃくをいたしまして、実は五年と七年にきめたのであります。そうして五年と七年にきめたときには、法務省の解釈といたしましては、これをもって一つ重い刑を科することができるであろう、こういうことであったわけであります。
先ほどお話にあった出入国管理令につきましては、われわれは改正案まで考えたのでございますが、これも法務省の要望に従って一時改正を見合した。そこで一年以上の刑を受けた者が強制退去を命ぜられることになっております。これは仰せの通りであります。そこで昨年の改正のごとく五年ないし七年にすれば、ほとんどが一年以上の刑を科することができて、この管理令の一年以上の懲役に処せられた者、これに該当する者としてこれは強制退去を命ずる、この条項に適用することができる、こういう刑事局長の、また刑事課長の説明もありまして、管理令の改正も思いとまり、そうして五年、七年で十分この目的を達し得ると実はわれわれ考えたのであります。
そこでその後の様子を見てみますというと、次第々々に効果を上げつつあるやに考えておるのでございます。今回衆議院におけるあなた方のこの改正からすれば、昨年の参議院における法律改正後の当局の、この違反者に対する検挙、処罰、その根絶というものにさらにまた欠陥がある、この量刑を重くしなければこれが改善ができない、こういうふうにお考えにならなければ、この刑を重くする案が出てこなかったであろうと思うのでありますが、五年ないし七年というこの常習者と、営利の目的のためとで、いろいろ変っておりますけれども、昨年の参議院の改正を不可とされるこの点について、もっとはっきりした御見解を伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/277
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278・早川崇
○衆議院議員(早川崇君) 刑の最高が七年より十年に上りますと、自動的に判決というものはそれに伴って重くなることになってくると思います。また短期を一年にいたしますると、営利常習者は一年以上の判決をせざるを得ない。従って、最高七年、以下はなしという罰則よりも、一年以上十年ということは、裁判の面におきましてもそれだけ高い判決を下さなければならぬという結果になりまして、その面から悪質の密造常習、営利常習を強く心理的にもこれを抑圧し、それを少くしていく効果は非常に大きいと、かように考えておりますので、一年前の改正を決して私は否定する意味ではなく、さらにその趣旨を一そう発展せしめまして、現在新生活運動で考えておりまする少くとも二年以内には六十万人のヒロポン患者をアヘン常習者、ヘロイイン常習者くらいの数まで撲滅してしまおう、こういう強い決意をもってこの改正をはかっている、こういう事情にございまするので、決して参議院の一年前の修正が瑕疵がなかったというることが捜査技術上非常に都合がいだけではなくして、むしろその成果を一そう発揮せしめたい、かような意向でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/278
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279・高野一夫
○高野一夫君 昨年五年ないし七年に改正後の取締り上の実情はどうなって改正しましてそれがどの程度の効果をおりますか、それによって効果がどのあげたものかどうか、これは当委員会で十分調査をすることになっておったのでありますが、そのままになっておるわけでありますけれども、その改正後の検挙、取締りの実情を承知することが必要かと思うのであります。そこでこの点につきましては、先年改正後さらに今回の、まだようやく一年たつかたたぬ間に、再びこういう量刑の改正をすることが、検察及び裁判所の仕事を効果あらしめる上において、かえっていいことか、そうでないことかということも考えてみたいと思いますので、これは法務省から政府委員並びに説明員が見えましてから、昨年の五年ないし七年の問題について、一応見解、調査の結果を聞いてみたいと思います。そこで、その点はあとで法務省ら見えましてから…。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/279
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280・小林英三
○委員長(小林英三君) ちょっと高野君に申し上げますが、刑事局長は今書類をとりに行って、すぐ参ります。それから勝尾という刑事局の参事官は見えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/280
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281・高野一夫
○高野一夫君 それじゃ、政府委員に伺いますが、昨年覚せい剤取締法の改正をいたしまして、法務省関係の要望にこたえて、五年ないし七年といたしたのであります。しかも密造、密輸をわれわれは重く考えて刑を定めたいと思ったのでありますが、これも法務省関係の要望を入れまして、所持、使用、その違反者も密造、密輸と同様に見ることが操作技術上非常に都合がいい、こういうお話がございまして、同そう発揮せしめたい、かような意向格に五年ないし七年の刑を科することにいたしたわけであります。その後、程度あがっているかどうか。さらにまたこの量刑を重くすることがより一そう、この違反者摘発と申しますか、根絶させるための効果をあげることに非常に役立つものであるかどうか。こういうことについて一応伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/281
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282・勝尾鐐三
○説明員(勝尾鐐三君) 刑事局長も間もなく参りますが、その前に私のほうで簡単に御参考までに実情を申し上げてみたいと思います。実は去る七月十五日に全国の覚せい剤の係り検事を中央に集めまして、ただいまご質問がありました昨日の覚せい剤取締法の一部改正後の検察の実情の報告を受けまして、その実情にかんがみまして、今後の覚せい剤事犯の取締りをどのようにしたらよろしいかという趣旨の協議をいたしましたのでございます。その結論だけを簡単に申し上げますと、詳細な数字ならびに判決の結果につきましては、資料もございますのでお届けできるかと思います。検挙の数が増加したということ、それからさらに、従来非常に検察の面で困難を感じておりました悪質のブローカー並びに製造事犯の検挙、これが十分とは申し上げかねますが、ようやく軌道に乗り始めたということは申し上げて差しつかえないと思うのであります。さらに科刑の面でございますが、これも覚せい剤の害悪というものを地検を通じて裁判官に強く主張をいたしました効果がようやく現われ始めまして、三年、五年という刑を言い渡される事犯もぼつぼつ出てきておる状況でございます。
こういう状況のもとにおきまして、この刑を上げるという法律の改正がどのような影響を及ぼすであろうかという点でございますが、同日の検察官並びに私たちの意見では、国民の意思として覚せい剤に対してこういう刑が盛あられたということは、やはり従来より以上にこの覚せい剤というものの悪質性というものが明らかなことになりますので、検察官の取締り並びに公訴の維持の面において主張する一つの有力な根拠となり得るということで、刑を上げるということにつきましては、それだけでもちろん十分目的が達成できるものではございませんが、検察の面における仕事を効果あらしめる効果はあるであろうという一応結論に達しておるわけであります。
それからなお裁判の面につきまして私たちの一番苦労いたしておりますのは、この覚せい剤の事犯の一般的な悪、質というものを裁判官によく認識してもらうという面について、非常な苦労を重ねておるわけでありますが、これにつきまして本刑が上った、すなわち国民の意思として覚せい剤事犯というものは非常に悪質であるということが明らかになったということを、論告等の場合に強く主張をし、また軽い判決のあったものに対しては、是刑不当をもって争うという場合の理由としてはやはり有力な理由になり得るであろうということで、この一部改正につきましては賛成をする、こういう結論になっておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/282
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283・高野一夫
○高野一夫君 麻薬とほとんど同様の刑罰をおいた方がよくないかということは、昨年参議院においても持ったのであります。ところが、そのときのはっきり私はよく記憶しておりませんから、速記を見なければわかりませんが、あるいは小委員会を作って小委員会においても十分検討を加えたのでありまするけれども、麻薬並みの刑を科するということでなくとも、五年ないし七年の刑で十分その目的を達し得ると、こういうような御見解々伺ったので、そこでそういうようなことについては、われわれにはこの法務関係のいろいろなお仕事の都合がわからぬので、十分御意思を尊重してきめたつもりでありますけれども、しからば、そのときのお話のように、五年ないし七年で十分目的を達し得るのだという御見解がもしも変らない、そのときの御見解が適正であったとするならば、何をまた一年たつかたたぬ間に、いたずらに法をいじるということでなくして、それでやってみて、そして十分の刑罰に値する一つの判決を下してやるということで、十分所期の目的を達し得るのではなかろうかと、こういうふうに本考えるわけである。一年たつかたたぬうちにまた改正をすると、こういうようなことが法律々軽々に改廃するということと相待って、これは検察庁あるいは裁判所のお仕事としてどんなものであろうかということをまあ憂慮するわけなんでありまして、それならば、現在の方がよければ、昨年でも現在の通りに改正しておくことにごうも差しつかえはなかった昨年の当委員会の情勢であったわけです。その点については、当時は、あなたのお話は当時伺っておらないので、ほかの関係者の方でありましたから、あなたの言責というものはないわけでありますけれども、そういうことについてどうお考えになりますか、法務省として……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/283
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284・勝尾鐐三
○説明員(勝尾鐐三君) ただいまのお説、いわゆる法律の安定性と申しますか、これを尊重するということは、私も全く全面的に賛成なんでございます。ところで、この麻薬と覚せい剤とまあ比較いたした場合におきまして、抽象的に麻薬の害悪と覚せい剤の害悪というものを、全く抽象的に比較してみた場合には、これはおそらく麻薬の方がはるかにおそろしい害悪があるというのが、おそらく私は世界的にそういうのが常識じゃなかろうかと思うのであります。しかしながら、わが国のまあ現状というものに当てはめてみますと、麻薬事犯のおそろしいことは当然のことでありますが、私たちの面に表われた限りでは、麻薬というものがわが国の国民性にまああまりマッチしないのじゃないか。すなわち、その麻薬を使われる層が国民の全体から見ますと、覚せい剤に比較して、まあ特殊の層に麻薬の使用が行われ、また従ってその害悪も限られているように感ぜられるのであります。ところが、覚せい剤につきましては、広く国民の各層と、現状ではほとんど地域的にもまた年令的その他の層から見ましても、広く国民の各層に広がりつつあり。これもやはりわが国の特殊の事情じゃなかろうかと思われるわけであります。そういう現状とにらみ合して、害悪を考えた場合には、麻薬に対する取締りと、それと覚せい剤に対する取締りというものに対して、どうも現状では高低をつけにくいのじゃなかろうか。そういう意味で覚せい剤の量刑を麻薬の量刑の程度にまで上げるということは、この現状から見ました場合には、決して妥当ではないという工合に言い切れないように思うのであります。それで覚せい剤につきましては、先ほどからも御発言がありましたように、ここ二年以内に根絶をするという、まあ強い方針が打ち立てられておるのであります。その根絶をするという方針を強く実現する一環としてこの刑を上げるという件に対しまして、私たちの方でしいて反対する理由はない。また実際の面から申し上げるならば、効果があるという工合に思われますので、賛成をいたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/284
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285・高野一夫
○高野一夫君 早川さんに申し上げますが、私はこの量刑を上げることに対して根本的に、最後まで徹底的に反対しているわけじゃないのでありますが、昨年改正をしてまだ一年たつかたたぬに、またその刑罰の内容を変えることがどうかと、こういうことを実は考えておるわけであります。そこで、しかもこの今度の衆議院の案は、かつてやっぱりこういう案をわれわれは持って、そしてその必要はなかろうということまではなかったかもしらぬけれども、現在改正されている程度で十分目的を達し得ると、こういう取締り当局の見解をしんしゃくして実は現在改正されている線に沿うてきめたわけなのです。ところで、今勝尾さんからもお話しあったようでありますが、この根絶ということには現在政府が力を入れているように、やっぱり啓蒙指導というものが伴わなければならないので、これは刑罰だけではとうてい目的は達しないと思うのであります。これは政府が対策本部を置いて十分力を注ぎたいと言っておりますから、その効果の早く上ることを期待するわけでありますが、その啓蒙指導をやっていくと同時に、こちらの検挙処罰は十分厳格にやらなければならぬ、こういうふうに考えました場合に、ここで結局最後にはどうも見解のお互いの相違だといえば相違になってしまうのでありますが、現在の刑罰でなおだめなものかどうか、どうしてもこういうふうにやっぱり上げなければ、麻薬並みに上げなければ根絶の目的が達しないものかどうか、こういう点については私はなはだ十分の納得ができないのでありますが、ただいたずらに刑罰を重くして、そうして最後には十年やったって判事が七年の刑を宣する、七年やっても三年半の判決しかしないと、こういうようなふうになるならば刑を上げても何にもならぬのであります。当時もお話しあったのでありますが、とにかく最高標準を上げておくというと、まあその半分ぐらいのところで最高の判決が下される判例が非常に多いから、だから最高を上げておけばけっこうである、こういうお話しがありまして、われわれは最高を五年ないし七年に上げたわけだったのであります。今度も十年にしょうが七年にしようが、やはりそういう考え方で、十年の刑だからまあ三年でよかろう、五年でよかろう。七年の刑だから二年でよかろう、一年でよかろう、こういうような裁判が行われる限りは、この法律で刑罰の最高水準をきめても私は意味をなさないと思う。こういう点については早川さんはどういうふうに、あなたは法律の方は詳しいわけですから、お考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/285
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286・早川崇
○衆議院議員(早川崇君) 私は全体的なことは申し上げられないと思うので、やはりこの刑罰は上げるということはよほど慎重でなければならぬということは、高野委員の言われる通りでございますが、同時に、これは社会情勢というものをも勘案してやらなければならぬ。去年の一年前の改正以後、たとえば鏡子ちゃん殺しとか、徳島の何の罪もない学生をヒロポン中毒者が背後からあいくちで殺したという事件が起っておる。また私の小さい和歌山県の例をとりましても、わずか二ヵ月間に覚せい剤の中毒者が親をなぐり、その母親をなぐるということで、親が子供のヒロポン中毒者を殺した事件が二件、ヒロポン患者が親を殺した事件が一件、現実に私の身近な小さい和歌山県においても起っております。さらに統計の明らかなところによりますと、殺人犯罪の七%はヒロポンの患者である。しかもヒロポン中毒者は五十万ないし六十万でありまするから、日本国民の一%にも満たないのですね。にもかかわらず、殺人強盗の六%、七%というきわめて大きい部面がこのヒロホンという害悪によって起っておると、かく考えたときに、われわれはこのような、昨年、一年前の状況以後のそういったヒロポンに対する状態というものも考えて、世論は最高十年はなまぬるいと、前の国警長官なんかは、無期にしろ、死刑にしろ、これは間接的な殺人じゃないかとまでいうような世論も一部にはあるのであります。そこでいたずらに刑罰を高くするということは、われわれは賛成するものでありませんので、麻薬並びにヘロイン程度のあれに引き上げるとか、かように考えるわけでございます。
諸外国の立法例を調べてみますると、アヘンは死刑、無期のところが非常に多いのです。アメリカにおいても数州において無期懲役まで科しております。中共、台湾は麻薬は死刑でございます。エジプト、トルコその他にいたしましても、無期ないし死刑の国が非常に多いのでありまして、あへん法並びに麻薬取締法の最高十年すら非常に諸外国に比べては低い。しかもその低いものよりもなお覚せい剤が低いという状況でございまして、われわれといたしましては、最近の社会情勢を考えて、好むところではございませんが、世論に従って麻薬並みにしようというのでございまするので、別に刑罰を上げて、異を立てて、刑法の安定性を害するという不純な気持は毛頭ございませんので、その点御了解願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/286
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287・高野一夫
○高野一夫君 法務省の方の御見解を伺いたいのでありますが、これは昨年話が出たと思うのでありますが、麻薬に関しては、御承知の通りに、国際連盟、さらにその前のアヘン会議、麻薬会議以来、国際条約もできているし、国際的に共同の連絡を持っていろいろ取締りをやっているわけであります。ところが、覚せい剤に関する取締りはこれは日本だけである。しかも日本は、ただいま提案者のおっしゃる通り、まことにこの覚せい剤に関する限り憂慮すべき社会情勢にあることは、これはもう、だれしも認めるところであるわけなのでありますが、そこで麻薬のごとく国際的の連絡をとって条約を結んで、そして厳重なる製造、貿易、そのほか使用についての禁止を国際的に定めているそのものと、日本だけの独特の取締りである覚せい剤と、こういうものを考えた場合に、その国際的の問題である麻薬並みの罰則そのほかを考えるということは、覚せい剤取締法としてはどうも適当ではないのではないか、こういうような意見も当時出たやに記憶しておるのでありますが、こういう点はあなた方法務省の方でお考えになって、どういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/287
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288・勝尾鐐三
○説明員(勝尾鐐三君) ただいまも御発言がありましたように、覚せい剤問題というのは、どうも私の承知しておる範囲では、日本独特のもののように考えられるのでございます。従って、諸外国におきましては、覚せい剤の害悪というものは日本ほどおそらく切実な問題にはなっていないように思われるのでございます。従って、これを国際間において覚せい剤そのものを麻薬と同様に条約でどうこうするということは十分考えられますが、実際問題としては、外国が問題になっていないとすれば、そういう話し合いはまあ非常に困難なのではなかろうか。従って、わが国の方だけの問題として、しかもそれが非常に重要な問題であるということにかんがみますと、やはりわが国の立場から覚せい剤の取締りを考えていくということは十分考えられていいことではなかろうか。
そこで問題は、国際的な視野において覚せい剤の取締りを効果あらしめるということに嘘は、結局覚せい剤の原料の輸入ということが考えられるだろうと思いますが その面の取締りについて話し合いをするということはある程度考えられるのでございますが、覚せい剤の原料というものが必ずしも覚せい剤だけに使用されるものでもないように伺いますので、覚せい剤の原料になるからということで諸外国と条約その他で取りきめをするということは、事実上むずかしいのではなかろうかと思われるのであります。
そこでわが国の立場から、この覚せい剤というものの取締りを考えますと、その害悪の広さ、深さというものは、わが国に関する限りは、どうも麻薬にも劣らないようなゆゆしい状態であるということで、覚せい剤取締法の一部を改正して、刑罰を上げていくということが一つの方法であろうと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/288
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289・高野一夫
○高野一夫君 どうも罰則の問題は、刑罰の問題をやってみなければわからぬ問題でありますから、結局お互いに見解の相違になりがちでありますから、まあ深くこれ以上伺うことをやめにいたしますが、その次に一つ伺いたいのは、今回は覚せい剤製造原料の規制と申しますか、原料に対する坂締り、この面が取り上げてあるわけであります。これは昨年も、参議院においても衆議院においても問題になったのでありますが、少くとも昨年の委員会におきましては適当でないということで、これは取り上げなかったのであります。それが今回は取り上げられているということにつきましては、何か特別のお考えでもあろうかと思います。そこで今回正規の使用者、医師にしても薬局にしても、そのほか正規の製造業者、取扱い者というものは除外をして、そのほかの者が持っていたり使ったりするのを取り締るということでございますけれども、この原料の取締りというものは果してうまくでき得るかできないのかということについては、私どもも非常な疑問を持つわけであります。これはどういうふうにお考えになりますか、提案者の御見解を伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/289
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290・早川崇
○衆議院議員(早川崇君) 昨年の覚せい剤取締法の改正に当りまして、この点が未解決の問題として議論になったことは承知しております。その後厚生省の意見を徴しまして、製造の次の段階のフェニルアセトンとかフェニル酪酸とかいうものは、これは取り締り得るという自信がつきまして、しかもこの程度、ここに、別表に掲げておる程度のものを押えさえすれば、さらに一そう困難な合成の方法にその製造業者は追い込まれる。しかもその方法たるや、安価で簡単な方法ではない。こういう結論に到達をいたしまして、他方警察当局は、製品は非常に、粉末の製品は隠すのが早いですけれども、原料なんかがある場合、もしこれを取り締り得るのであれば、一そう取締りは容易になり、覚せい剤の密造者を検挙するに非常に捜査が容易になるという強い御意見もございましたので、両方あわせまして、薬を扱う人には若干の不便はございますが、しかしその程度の不便はこの覚せい剤撲滅という大目的のためには必要最小限度の不便である、かような結論に到達いたしましたので、このたび原料規制というところまで徹底いたすことになったようなわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/290
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291・高野一夫
○高野一夫君 この原料規制の問題で厚生省当局の御見解を伺いたいのでありますが、われわれが昨年原料規制を取り上げることができないとして一応断案を下しましたゆえんのものは、たとえばモルヒネ、ヘロインのごときものであるならば、アヘンを規制すればこれは根絶する。アヘンを規制するためには、ケシの栽培をとめてしまえばいいわけであります。きわめて簡単にできる。ところが、ヒロポンのごとき合成化学的薬品は、いろいろの方法でもっていろいろ原料から、御承知の通りに、合成されていくわけです。そこで昨年も問題になりましたときはエフェドリン々規制してくれ、こういうお話であったけれども、エフェドリンを規制すればほとんど何十パーセントか、大部分のヒロポンの取締りが成功する、こういうお話であったけれども、私はエフェドリンを規制するにしても、エフェドリンに一連の誘導体がございますから、これをことごとく規制することはとうてい不可能である。同時に、エフェドリンがだめになるならばほかの原料に移り、次の原料に移る。現在でもすでに原料において十幾つかのパテントがある。パテントでありますから、公知の方法である。これを調べていった場合は、原料といい、中間体といい、実に数十種の薬品をいかにしてこれを取り締ることができるか、こういうことになる。ここに合成化学の非常な難点があるわけであります。従って、これは実際問題としてこの原料規制ができない、こういうわれわれは断案を一応下した。それでもしもこの法案が通過いたしました場合に、厚生省は原料規制についていかなる確信をもって、法務省もそうでありますが、これ々取り締ることがおできになるかどうか、この点について一応伺っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/291
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292・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 覚せい剤が、御存じのように、合成でできる品物で、ございますので、これの原料規制ということについては、理屈の上ではただいま高野先生が申された通りでありまして、それが昨年と今年と変っておることはないのでございます。従いまして、今御引例になりましたように、モルヒネを押えるにアヘンなりケシなりを押えるというふうな的確な押え方をしようということになりますると、これはとうてい合成品の本質からいきまして不可能なことになるのであります。その点は御指摘の通りでございます。ただ、私ども考えますところは、昨年はエフェドリンが非常に問題になっておったのでございまするが、その後原末の密造が相当検挙されまして、フェニル酷酸を使って合成したもので検挙されたものが十一件ほどその後あがっております。そのことはちょうど昨年本委員会で御審議をいただいて、原料の規制ができないじゃないか、エフェドリンを押えたってほかに移るじゃないかといって、原料の規制はできないと御結論になりましたそのことを実は実証しているわけなんです。ある意味ではそういうことになるのであります。ただ、先ほど来いろいろお話がございまするように、昨年法律を改正していただきまして、政府といたしましても関係各省が協力いたしまして、この覚せい剤禍撲滅のために格段の努力をいたしておるのでございますが、その後本年の一月に入りまして、特に国会方面で衆参両院の御注意がありましたように、関係各省が力を一つにして努力をするということをねらいまして、推進本部というものを内閣に設けられまして、ここにおきましていろいろ協議の結果、この二年間でもってこの問題を一つ政府としても撲滅するような目途で進みたいということが、政府の意図として決定された次第でございます。さようなわけ合いでありますので、何でも一つできるものはやってみようじゃないか、こういうふうな立場からものを考えますると、本質的には今先生御指摘の通りでございまするが、ただいま現われておりまするこのエフェドリンあるいはフェニル酷酸、この両系統の原料を規制することによって、先ほど提案者の先生から御説明がございましたように、この密造というものをより困難な方向に追い込んでいく。そうすることによって一つの覚せい剤禍撲滅に寄与し得るじゃないか、こういうふうな考え方から、この改正案につきまして私ども御同意いたして申し上げておるような次第でございます。
ただ、そのために、従ってねらいが今のような点にあるのでありまするから、この原料々規制することによりまして、罪のない正規のこれらの取扱い者が非常な不便をこうむり、あるいは産業の発展にも影響をするというふうなことであるといたしますると、これは功罪あわせて考えまして、相当検討しなければならぬと思うのでございます。御提案になっておりまするこの原料の規制の面におきましては、その点が非常に細心の配慮がいたしてあるように見受けまするので、この程度のことであれば、関係業者もこの際一つ覚せい剤禍撲滅のためにごしんぼうを願える程度ではあるまいか、まあ不本意ながらごしんぼうを願える程度ではなかろうかというようなことを考えまして、先ほど申し上げました原末密造というものがより困難な方向に追い込まれるということをねらったも一のとして、何と申しまするか、現段階においては妥当なる措置ではあるいまいかというふうに考えて、賛成をいたしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/292
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293・高野一夫
○高野一夫君 そのお考え、まことにけっこうなんで、私としてもそういうやり方を効果あるようにやってもらいたいと、こう思うわけでありますけれども、昨年もエフェドリンを押えれば大体成功するというお話であった。ところが、次にフェニル酪酸を使いかけておって、エフェドリンがフェニル酷酸に移行した。エフェドリンは、製造業者が自発的でありますか、厚生省の指示があったのかもしれませんけれども、相当業者自身十分自粛しているので、相当それらが手に入りにくくなった。それで今度は別な薬品からスタートして合成をするようになってきた。今度はフェニル酪酸の一連の系統のものを押えましても、次にまた別の系統のものが幾らでも、私はここに図表を持っておりますが、すでにできているわけであります。しかも専門家がおって製造するわけであります。だから、一連の原料を押えましても、次の原料にすぐ移る。しかも次の原料から出ましても、一つの中間体ができて、そこからヒロポンになりエフェドリンになっていく。原料というものは、ヒロポンを作る限りにおいても、これも原料、これも原料ということになる。しか本発売の製品で染料会社の染料の原料、そうすると染料工場の中間体として、工場の中に中間体ができる。こういうことにもなるわけでありますから、そういうものをいかにして取り締ることができるか、こういうところで、私は実際の合成化学の立場から考えて、日本の染料色素会社、香料会社、製薬会社、こういう工場の事態からみて、原料の取締りということに対して、取り締るということが実際問題として、できるかできないかということを考えているのであります。ほとんど有名無実に終るのじゃないかということを私は考えているのであります。すでに現在わかっている数十種の原料を全部これに包含することができるかというと、ほとんどできますまい。これは合成化学が非常に障害を受けるから、そんなことはできないと思う。結局一部分のものしかやれぬということになるのであります。そこが私は煮え切らぬ、何と申しますか、徹底しないやり方が出てくるのであって、そこで正規の業者、たとえば色素会社、香料会社、こういうようなところに対しては、どうだこうだというただし書きがありまするけれども、染料会社なり石けん会社なり、そのほか工業薬品の会社なりが持っている原料、あるいはその工場で合成化学の過程に起る中間体、すなわちこれはことごとくヒロポンの原料になってくるわけであります。どういうふうにしてこれをお取り締りになるのか、このただし書きを除外して、このただし書きがなければまだいいと思うのであります。ただし書きを置いて製造業者には触れない、正規の販売業者は除外している。こうしておいて、私は原料、中間体一連のものの取締りができるかできないか、こういうことを実際懸念するわけなんでありまして、これが通過したときに、どういう方法でこの法律を運営されることができるか、これを一つ厚生省の方にお聞きしたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/293
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294・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) お答えいたします。当面取り上げられておりますのはエフェドリン並びにメチルエフェドリン、それからフェニル酷酸の両系統のものであります。さらに必要のあるものが取締りの必要がある場合には、政令でその範囲を拡張し得ることにこの法案ではなっております。従いまして、必要のあるものがありますれば、政令で指定をして取締りをしていくということでございまするが、高野先生今御指摘のように、それでは次から次へ移った場合には一体どうなるだろうかという御質問に対しましては、これは先生の御指摘の通りに、それらを全部押えて参るということはおそらく私はできないことと思います。従いまして、覚せい剤原料を、覚せい剤の原料になり得るものを全部完全に押え切ってしまうということは、これは合成化学の本質からいいまして、非常に至難なことであり、産業上に及ぼす影響を考えれば、これはできないことだと私は言わざるを得ないと思います。しかしながら、それかと申して、ただ、すでに密造されておりまする覚せい剤の原料になっておるものがはっきりわかって、しかも今回この提案で内容とされておりまするフェニル酷酸等につきましては、これをこういうふうな規制をされましても関係業界には大した影響がない、日本の産業界に大した影響がないという見通しもあることでございまするので、本質的にはさようなものだといたしましても、大した産業界に影響を及ぼさないで、しかもよりむずかしい方向に覚せい剤の密造を追い込んでいく、こういうふうな意味合いから、この法律案は意味があるものと私も考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/294
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295・小林英三
○委員長(小林英三君) 高野君に申し上げますが、先ほど御要求の井本刑事局長が見えておりますから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/295
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296・高野一夫
○高野一夫君 今、あとでもう少し……。
薬務局長にもう一つ伺いますが、次第次第に追い込んでいくというやり方もけっこうだろうと思います。次に、また新しい原料に移った場合は、それはまた取り締るということも可能であるし、そうするよりほか原料規制をする以上はできなかろうと思うのでありますけれども、この私が合成化学的の日本の産業の状況、パテントの状況、すっかり製造関係を調べ上げて見ているわけでありますが、これを調べ上げた結果、これの影響するところは日本の工業界、色素染料化学、医薬品化学、そのほか少くとも合成化学に関係する産業にことごとく影響していると思います。原料あるいは中間体で。そこで、今のごとく追い詰めていくということは暫定的の間においてはけっこうであるけれども、だんだん追い詰めていって、政令できめるということになれば、相当の、非常に数多くのものを政令で規定されるようになると思うので、私は刑罰を重くしてもこの密造がしごく簡単に退治られると、現在の情勢からなかなか楽観はしておられぬのであります。従って、なかなか根強く密造をやるだろうと思う。それをいかにかして根絶させる、こういうわけでありますから、原料を規制すれば、次から次に原料、中間体を政令で規定してやる、このことを考えました場合に、私は昨年もこれは十分、われわれ小委員会においても、この小委員会においても、衆議院に出ましても論議をし尽した問題でありまして、また二度も三度も繰り返すのもいやでありますから、あまり深く触れませんけれども、こういうことがうまくやれるかやれないか、この法務省の関係のやり方と、専門的知識を加味してこの検挙捜査に当る場合を考え合した場合に、どうなるであろうかということを考えるわけであります。
そこで、原料でありまするけれども、密造部落、しかも違反者のうちで密造者はきわめてわずかで、昨年の検察庁の統計を見てもわずか六百人しかいない。それでも密造者としとは大きな数でありましょうけれども、この密造部落をつくことがむずかしい。そこでいろいろ一連のそういう原料を仕入れる所からたどっていって密造部落をつこうと、こういう考え方でありましょうけれども、密造部落をつくことができれば、そのついた瞬間に原料も手に入るわけだし、見られるわけだし、証拠物件として、どういうふうにそれが伝わってきたかはわかることになるわけじゃなかろうかと思うわけであります。そこで密造部落をつかないでおいて、その原料中間体をつくことができるか。ついて、そうしてその密造部落をつくことができるかどうか。問題は私はここにあると思う。これができましょうかね。中間における原料中間体を。しかしその取締りをすることによってそれをずっとたどっていって、どこどこで密造をやっている、こういうところがつけるものかしら、こう思うのでありますが、これはどうでしょうか。これはそういう薬品についての、原料についての専門家である厚生省側と、刑事局長がお見えになっておるようでありますから、刑事局長の方の取締りのお仕事の関係からいって、一応見解を伺っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/296
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297・高田正巳
○政府委員(高田正巳君) 密造部落をつくということが本論でございまして、これがつけないようなものが原料をたどっていくことによってつけるかという御質問でございますが、これはお説の通り、そう簡単につき得るものではないと思います。しかしながら、原料の面をつくことによって、それに端緒を得て密造部落をつくということも、私は捜査の実際上あり得ることと思います。従いまして、その辺のところは私どもいろいろ考えられると思うのでございまするが、要は、この原料取締りだけで覚せい剤の惨禍を撲滅していこうというのではないだろうと思います。いろいろな考えられる手を何もかも打ってみて、そのためには啓蒙宣伝とか、あるいはその他の中毒者の保護というようなことが非常に大切な問題になりますけれども、さようなものも何もかも打てる手を打つ。その中の一つとして、この原料規制も意味があるのではないだろうかというふうに私は実は考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/297
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298・高野一夫
○高野一夫君 刑事局長に伺いたいのは、これは捜査技術上のことはわれわれわからぬので、そういうような捜査技術上非常な利便が得られて、そういう密造部落をつくことがより以上たやすくなるであろうかということと、それともう一つ、昨年来あなたにもお願いしたと思うのですが、当時法務大臣にもお願いしたのですけれども、これは私の考え方であって、公安調査庁長官に伺ってみたのですが、まあ今後一つ調べておこうと、こういうことになっている問題は、この密造部落をつくということについて当局でお考えを願いたいことは、密造は第三国人が非常に多いわけでありますが、果して金もうけだけでやっているかどうか。金もうけだけでやる仕事かどうか。あるいは何らか一つの思想的の考え方があって、それで日本の民族の、特に青少年の素質を心身共に破壊していく、こういうふうなことにまで深く立ち入って、考え方のそういう働きが動いておって、そうして金もうけと相待ってそういう密造が企てられる、こういう傾向がないものであるかどうか、こういう質問を私は昨年法務省にも公安調査庁にも申し上げたのです。ところが、当時はそういうような考え方でこの問題について取り調べたことがないから、そこで今後一つそういうことも考え合せて十分取り調べに当ってみよう、こういうお答えをいただいたのでありますが、その後何かそういうことについてヒントを得えられたと申しますか、どうもそういうこともあるらしい、あるいはそういう事実は全然ない、単なる経済問題にすぎないのだと、こういうような結論になっているかどうか。その辺をあわせて聞かせてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/298
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299・井本臺吉
○政府委員(井本臺吉君) あとの方の問題からお答え申し上げます。密造部落における覚せい剤違反が思想的立場で、金もうけ以外にいろいろ考えてやっているのじゃないかという点につきましては、われわれといたしましては特にその点について検討したことがございますが、現在までわかっております状況では、金もうけの目的以外にいろいろ考えてやっておったというような事跡は上って参っておりません。しかしながら、お話しのような、ある思想的な立場でいろいろ考えてやっておるというようなことも考えられますが、なお引き続きさような観点からも検討を続けていきたいと考えております。
それから前の方の御質問でございますが、原料中間体から密造業者が発覚したという事例は今までのところはございません。われわれの方といたしましては、はなはだ卑近な例で恐縮でございますが、覚せい剤の密造事犯を検挙する際に家宅捜索なりいたしまして、覚せい剤に見つからなかったけれども、原料に該当するものがあったというような場合には、原料所持処罰の規定がありますと取締り上は非常に便利であるというような点がございます。それから覚せい剤の取締りにつきましては鋭意努力をしてやっておりますので、非常に全国的に情報の交換などをやっております。従って、これからの取締りの観点から、原料の流れる方向にある程度密造業者があるのではないかというような情報も比較的得やすいのではないかという将来の予想もありまして、まだ的確にさようなことで検挙した事例はございませんけれども、これによってある程度の成果が上げ得られることもなきにしもあらずというような程度の考えを持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/299
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300・高野一夫
○高野一夫君 この原料規制によって非常に捜査上利便が得られる。そうして密造の根源をついて、これを根絶するために非常に役に立つというような考え方が非常に強く私はあるのじゃないかしらと思う。そこで今刑事局長のお話を伺っても、まあないよりはましな程度であって、従来も原料中間体からたどっていって密造部落をついた実例はないというお話である。そこでこのことは非常に大事に考えて、これによって密造部落をつくことができるというふうに考えれば、私は厚生省側も、特に法務省側も、非常な失望をされる結果になるのではないかと思う。これに対して、ともすれば非常なる期待がかけられる。これは私はおそらく合成化学の現在の日本の産業の本質がやはり十分徹底して理解されていないからじゃないかと思う。それでこの法案はせっかく衆議院で田中さんたちが中心になってお作りになったのでありますから、あえて私は反対いたしませんけれども、これを運営する場合には十分これらをお考えにならないというと、またこんなものをやって、そうして次に政令で十も二十も指定しなければならない、こんなようなことでは、どうもしょうがない。これでもとの取締法を改正しなければならないというようなことになりますと、いかにも法律の改廃を軽々に国会がやるという印象を強く国民に与える結果になる、こういうふうに私は考えまするので、先ほど来質問したわけであります。
そこで井本局長にあらためて一つだけ、最後に伺っておきたい。この刑罰を昨年五年ないし七年にきめたわけでございますが、これが今度の改正案で七年ないし十年になったわけであります。それぞれの情勢に応じて七年あるいは十年になるわけでありまするが、この五年ないし七年に昨年改正した後、一年たつかたたぬ間に、七年ないし十年に上げられることによって、検察庁方面あるいは裁判所方面のこの仕事の効果はより以上上るとお考えになりますかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/300
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301・井本臺吉
○政府委員(井本臺吉君) 罰則改正後まだようやく一年あまりたっているだけでございまして、この罰則を改正しなければならない、ぜひさような状況であるから改正してもらいたいというような要望は別に出ておりません。おそらくこの常習者に対して一年以上十年以下の懲役及び五十万円以下の罰金という重刑にいたしましたのは、麻薬と同じように扱おうというようなことで、医学的な意味も相当あると思います。具体的な事案といたしましては、相当重く処断しておりまするが、七年以上を求刑しなければならぬという事例はまだわれわれといたしましては報告を受けておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/301
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302・高野一夫
○高野一夫君 それじゃ、最後に提案者に一つ伺いますが、ただいまお聞きの通りでありまして、あなた方が衆議院において改正の中心とされた原料規制の問題と、この刑罰を高度化する問題については、ただいま井本刑事局長の御意見では、原料中間体からたどって密造部落をついた事例もまだない。まだないというよりは、まだまれな程度である、こういう考え方である。しかも七年以上の刑を科するような場合が起るかどうかという点について、どうも今お聞きの通りの、繰り返しませんが説明であるし、要は、検察庁並びに裁判所がいかなる断を下すかということにかかっていると思いますので、そこで私は最後に意見を付して、最後に、これはもう最後にしますから、伺いたいのでありますが、現在この取締りの主として任に当っておられる法務省関係であまり期待しない法律改正である。そうして期待しない法律改正、ないよりはまだましな程度であると、こういうような法律改正を、昨年改正した後一年たつかたたぬ間になおかつやらなければならない一つの真意ですね、そういう強い意味がどこにあるであろうかということを考えるわけです。この点についてあらためてもう一度提案者から伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/302
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303・早川崇
○衆議院議員(早川崇君) 井本刑事局長さんとあらかじめ連絡しておりませんし、今の御意見は非常に消極的な御意見で、私はなはだ意外に思うのですが、先ほど参事官のお話では検察当局は罰則が上るということによって非常に覚せい剤密造業者に対する心理的、また取締り上の利便を強く要望されているのが私は本体じゃないかと思います。また原料取締りに対しても、具体的な事例は上っておらぬと言われますが、警察当局は強くこれを要望しているのであります。さらに家庭のおかみさんなり母親なりその他は、ほんとうに自分の子供が覚せい剤事犯によって人を殺し、また殺される事態を見て、これはむしろ営利密造者を死刑にしろ、無期にしろという強い要望は、私は政治家として無視できないのでありまして、少し刑事局長は非常に消極的なお話でありましたけれども一、われわれは少くとも麻薬事犯並みに上げる社会的、またヒロポン撲滅上の効果を十分認めておりますので、その点は私は確信を持ってヒロポン撲滅に多く効果あるものと提案者は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/303
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304・井本臺吉
○政府委員(井本臺吉君) ちょっと一応……、覚せい剤撲滅につきまして、われわれも非常に頭を悩ましているのでございます。ようやくこの検挙によって、われわれの観測では増加がとまったと、少し下に下ったという程度にしか今私は見ておりません。従って、この二年間で撲滅し得るかどうかということにつきましては、非常に疑問を持っているのでありまして、これを早急に解決するのには、できるだけ何か手を打たなければならぬという気持は持っております。従いまして、先ほど申し上げましたように、原料中間体などの問題が、家宅捜索などにおきまして、その際にいろいろほかの観点から取り締っていきたいものが、わずかに覚せい剤がないので逃げてしまうというようなことで、検挙ができないことが往々にしてあります。またその提案者がただいま申されたように、とにかく常習者に対して相当の重刑になるということの威嚇の意味も、ある意味で私はあると思うのでありまして、いろいろな立場におきまして、少しでも取締り、撲滅ということについて寄与するのであれば、われわれといたしましてはさような法案が通ることは、歓迎といいますか、反対する気持はごうもございませんから、御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/304
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305・小林英三
○委員長(小林英三君) ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/305
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306・小林英三
○委員長(小林英三君) 速記を始めて。
本案につきましては、質疑は打ち切られたものとみなして御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/306
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307・小林英三
○委員長(小林英三君) 御異議ないものと認めます。
それではこれより討論に入ります。
速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/307
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308・小林英三
○委員長(小林英三君) 速記を始めて。
討論は省略いたしまして、直ちに採決に入りたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/308
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309・小林英三
○委員長(小林英三君) 御異議ないものと認めます。
これより覚せい剤取締法の一部を改正する法律案につきまして採決をいたします。本案を原案通り可決することに賛成の諸君の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/309
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310・小林英三
○委員長(小林英三君) 全会一致と認めます。よって本法案は、全会一致をもちまして原案通り可決すべきものと決定いたしました。
なお、本会議におきまする口頭報告の内容、議長に提出する報告書の作成、その他の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと思います。御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/310
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311・小林英三
○委員長(小林英三君) 御異議ないと認めます。
なお、報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますから、本案を可とせられた方は順次御署名を願います。
多数意見者署名
竹中 勝男 山本 經勝
加藤 武徳 田村 文吉
榊原 亨 有馬 英二
長谷部廣子 谷口弥三郎
森田 義衞 草葉 隆圓
高野 一夫発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102214410X03419550728/311
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312・小林英三
○委員長(小林英三君) 本日は、これにて散会いたします。
午後六時二十五分散会
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